説明

ActRIIbアンタゴニストならびにその投薬および使用

ある態様において、本発明は、骨成長を促進し、骨密度を増大するための、ならびに多発性骨髄腫を処置するための組成物および方法を提供する。ActRIIbアンタゴニストを患者に投薬するための方法も提供する。ある態様において、本開示は、ActRIIb−Fc融合タンパク質を患者に投薬するための方法であって、少なくとも8μg/mLのActRIIb−Fc融合タンパク質の血清濃度を維持する投薬計画に基づいてActRIIb−Fc融合タンパク質を患者に投与することを含む方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2009年9月9日に出願された米国仮特許出願第61/276,287号の利益を主張し、この米国仮特許出願の教示は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
骨障害は骨粗鬆症から骨折におよび、それらに対する有効な薬剤があまり存在しない一組の病理学的状態を表す。処置は、その代わりに、理学的介入および行動的介入に焦点をあてるものであり、固定化、運動、および食事を変えることが含まれる。様々な骨障害を処置する目的で骨成長を促進し、骨密度を増大する治療薬があれば有益である。
【0003】
骨成長および石灰化は、破骨細胞および造骨細胞の2つの細胞型の活性に依存するが、軟骨細胞および血管系の細胞もこれらの過程の決定的な局面に加担している。発生的に、骨形成は軟骨内骨化および膜内骨化の2つのメカニズムによって生じ、軟骨内骨化は長軸方向の骨形成を担い、膜内骨化は頭蓋の骨など、形態的に扁平な骨の形成を担っている。軟骨内骨化は成長板における軟骨構造の逐次的な形成および分解を必要とし、成長板は造骨細胞、破骨細胞、血管系の形成、およびその後の石灰化のための鋳型として働く。膜内骨化の間、骨は結合組織において直接形成される。両過程とも造骨細胞の浸潤およびその後の基質の沈着を必要とする。
【0004】
少なくとも表面的には骨形成の発生事象の順序に似ており、軟骨組織の形成およびその後の石灰化を含む過程によって、骨折およびその他の骨の構造の破壊は治癒する。骨折の治癒の過程は2つの方法において生じ得る。直接的、または一次的な骨の治癒は仮骨を形成せずに起こる。間接的、または二次的な骨の治癒は仮骨の前駆段階とともに起こる。骨折の一次治癒は、密接につけた破壊面を渡る機械的連続性の再編性を伴う。適切な条件下、破壊を取り囲む骨吸収細胞はトンネリング再吸収反応を示し、血管を透過しその後の治癒のための経路を確立する。骨の二次治癒は、炎症、軟性仮骨形成、仮骨の石灰化、および仮骨のリモデリングの過程に続く。炎症段階において、血腫および出血の形成は、損傷部位における骨膜および骨内膜の血管の破壊に起因するものである。炎症細胞がその領域に侵入する。軟性仮骨形成段階において、細胞は新たな血管、線維芽細胞、細胞内材料、および支持細胞を生成し、骨折断片間の空間に肉芽組織を形成する。破壊にわたる臨床的な癒合が、線維組織または軟骨組織によって確立される(軟性仮骨)。造骨細胞が形成され、軟性仮骨の石灰化を媒介し、次いで軟性仮骨は層状骨によって置き換えられ、正常なリモデリング過程を受ける。
【0005】
骨折および骨構造の他の物理的破壊の他に、骨塩量および骨量の喪失が多種多様な条件によって引き起こされることがあり、重大な医薬上の問題をもたらすことがある。骨量に対する変化は個体の生涯にわたって比較的予測可能な方法で起こる。約30歳までは、軟骨内の成長板の直線的な成長および放射状の成長によって、男女とも骨は最大量まで成長する。約30歳を過ぎると(例えば、椎骨および骨盤などの扁平骨などの骨梁骨について)、また40歳を過ぎると(例えば、肢に見られる長骨などの皮質骨について)、男女ともにゆっくりとした骨喪失が起こる。女性では、実質的な骨喪失の最終段階が、おそらく閉経後のエストロゲン欠乏のためにやはり生じる。この段階の間、女性では、皮質骨から骨量のさらなる10%が失われることがあり、骨梁コンパートメントからさらなる25%が失われることがある。進行性の骨喪失により骨粗鬆症などの病理学的状態がもたらされるか否かは、個体の最初の骨量および増悪的な状態があるか否かに大いに依存する。
【0006】
骨喪失は、正常な骨のリモデリング過程におけるアンバランスと特徴付けられることがある。健康な骨は常にリモデリングを受けている。リモデリングは破骨細胞による骨の吸収で始まる。吸収された骨は、次いで、新たな骨組織によって置き換えられ、これは造骨細胞によるコラーゲン形成およびその後のカルシウム沈着を特徴とする。健康な個体において、吸収と形成との速度はバランスがとれている。骨粗鬆症は慢性的で進行性の状態であり、吸収に向けた推移を特徴とし、骨量の全体的な減少および骨の石灰化をもたらす。ヒトにおける骨粗鬆症には臨床上の骨減少症(骨塩密度が、1を超え2.5未満の標準偏差で若年成人の骨に対する平均値を下回る)が先行する。世界中で、およそ7500万人に骨粗鬆症の危険性がある。
【0007】
このように、骨折および骨に対する他の損傷の治癒を促進するのに、ならびに骨量および骨石灰化の喪失に付随する、骨粗鬆症などの障害を処置するのに、破骨細胞と造骨細胞との間の活性のバランスをコントロールするための方法が有用であり得る。
【0008】
骨粗鬆症に関して、エストロゲン、カルシトニン、ビタミンKと一緒のオステオカルシン、または高用量の食事性カルシウムが全て治療的介入として用いられる。骨粗鬆症に対する他の治療的取組みには、ビスホスホネート、副甲状腺ホルモン、カルシウム擬態薬、スタチン、タンパク同化ステロイド、ランタン塩およびストロンチウム塩、ならびにフッ化ナトリウムが含まれる。しかし、このような治療法には、望ましくない副作用が付随することが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本開示の目的は、骨成長および石灰化を促進するための組成物および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一部には、本開示は、ActRIIbベースの分子(例えば、ActRIIb細胞外ドメインのリガンド結合性部分を含む分子またはそのバリアント、例えば、ActRIIb−Fc)、およびActRIIbシグナル伝達の他のアンタゴニストを含めたActRIIbアンタゴニストは、骨密度を増大し、骨成長を促進し、および/または骨強度を増大するのに用いることができることを実証するものである。特に、本開示は、可溶性型のActRIIbは、in vivoで骨密度、骨成長、および骨強度の増大を促進することを実証するものである。骨成長を促進し、または骨喪失を阻害するほとんどの薬剤は、抗異化薬(通常「異化薬」とも呼ばれる)(例えば、ビスホスホネート)または同化薬(例えば、好適に投薬される場合、副甲状腺ホルモン、PTH)のいずれかとして作用し、可溶性ActRIIbタンパク質は、抗異化効果および同化効果を両方とも有する二重活性を示す。このように、ActRIIbアンタゴニストは、骨密度を増大し、骨成長を促進するのに用いられてよい。抗ActRIIb抗体、ならびにActRIIb標的化小分子およびアプタマー、ならびにActRIIbの発現を低減する核酸も、骨粗鬆症など、低骨密度もしくは低骨強度に付随する障害を処置するのに、または骨の骨折を有する患者など、それを必要とする患者における骨成長を促進するのに用いることができる(このような分子も、本明細書で用いられる「ActRIIbアンタゴニスト」の語に含まれる)。本開示は、ActRIIbアンタゴニストは、多発性骨髄腫の腫瘍および骨への転移(例えば、乳癌、食道癌、大腸癌、前立腺癌、もしくは肺癌)によって引き起こされる骨損傷を予防および/または修復する上で有効であり、さらにActRIIbアンタゴニストは多発性骨髄腫における腫瘍負荷を減じることをさらに指摘するものである。
【0011】
ActRIIbアンタゴニストは、様々な障害または状態、特に、筋肉および神経筋の障害(例えば、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および筋萎縮)、脂肪組織障害(例えば、肥満)、代謝障害(例えば、2型糖尿病)、神経変性障害、ならびに高齢に付随する筋肉の消耗(筋肉減少症)、前立腺癌治療、ならびに癌の悪液質の処置にも用いることができる。特定の実施形態において、ActRIIbアンタゴニスト(例えば、可溶性ActRIIbポリペプチド)は、ActRIIb活性に付随するあらゆる過程においてActRIIb受容体に拮抗することができる。場合により、本発明のActRIIbアンタゴニストは、GDF8(ミオスタチンとも呼ばれる)、GDF11、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、Nodal、およびBMP7(OP−1とも呼ばれる)などのActRIIb受容体の1つまたは複数のリガンドに優先的に拮抗するようにデザインされていてよく、したがってさらなる障害の処置において有用であり得る。ActRIIbアンタゴニストの例には、天然に存在するActRIIbポリペプチド、およびその機能的バリアントが含まれる。
【0012】
ある態様において、本開示は、可溶性のActRIIbポリペプチドを含むポリペプチドを提供する。ActRIIbポリペプチドは、ActRIIbポリペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む医薬調製物として調合されてよい。場合により、ActRIIbポリペプチドは、1マイクロモル未満、または100ナノモル、10ナノモル、もしくは1ナノモル未満のKでアクチビンに結合する。好ましくは、組成物は、サイズ排除クロマトグラフィーによって推定して、他のポリペプチド成分に関して少なくとも95%純粋であり、より好ましくは、組成物は少なくとも98%純粋である。このような調製物において用いるためのActRIIbポリペプチドは、配列番号2、3、13、17、もしくは20から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、または配列番号2、3、13、17、もしくは20から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドなど、本明細書に開示するあらゆるものであってよい。ActRIIbポリペプチドは、配列番号1〜3から選択される配列もしくは配列番号2の配列のアミノ酸を少なくとも10個、20個、または30個含むもの、C末端の10個から15個のアミノ酸(「テイル」)を欠くものなど、天然のActRIIbポリペプチドの機能的フラグメントを含んでいてよい。ActRIIbポリペプチドは、ストリンジェントな条件下で配列番号3または5の核酸にハイブリダイズする核酸によってコードされていてよい。
【0013】
ActRIIbポリペプチドは、天然に存在するActRIIbポリペプチドに比べて、アミノ酸配列(例えば、リガンド結合ドメインにおける)における1つまたは複数の変更を含むことができる。変更されているActRIIbポリペプチドの例は、本明細書に参照によって組み入れられる国際公開第WO2006/012627号、59〜60頁において提供されている。アミノ酸配列における変更は、例えば、哺乳動物、昆虫、または他の真核生物の細胞において生成される場合はポリペプチドのグリコシル化を変更することがあり、または天然に存在するActRIIbポリペプチドに比べてポリペプチドのタンパク分解性の切断を変更することがある。
【0014】
ActRIIbポリペプチドは、1ドメインとして、ActRIIbポリペプチド(例えば、ActRIIbもしくはそのバリアントのリガンド結合性部分)、および望ましい性質(例えば、薬物動態の改善、より容易な精製、特定の組織に対する標的化など)をもたらす1つまたは複数のさらなるドメインを有する融合タンパク質であってよい。例えば、融合タンパク質のドメインは、in vivoの安定性、in vivoの半減期、取込み/投与、組織の局在化もしくは分布、タンパク質複合体の形成、融合タンパク質の多量体化、および/または精製の1つまたは複数を増強することがある。二量体化または多量体化はリガンド結合性親和性の増大をもたらすことがある。ActRIIb−Fc融合タンパク質は、薬物動態の改善、可溶性の改善、もしくは安定性の改善などの望ましい性質をもたらす、免疫グロブリンFcドメイン(野生型もしくは変異体)または血清アルブミンまたは他のポリペプチド部分を含むことができる。典型的に、ActRIIb−Fc融合タンパク質はホモ二量体複合体として生成される。場合により、ActRIIb−Fc融合は、Fcドメインと細胞外ActRIIbドメインとの間に位置する、比較的組織化されていないリンカーを含んでいる。この組織化されていないリンカーは、ActRIIbの細胞外ドメインのC末端終端(「テイル」)の大まかにアミノ酸15個の組織化されていない領域に対応していてよく、あるいは2次構造が比較的ないアミノ酸1、2、3、4、もしくは5個、または長さ5個と15、20、30、50個もしくはそれを超える間のアミノ酸の人工的な配列であってよく、あるいは両方の混合物であってよい。リンカーは、グリシンおよびプロリン残基に富んでいてよく、例えば、スレオニン/セリンおよびグリシンの単一の配列、またはスレオニン/セリンおよびグリシンの繰返し配列を含有していてよい(例えば、TG、TG、SG、もしくはSG単一体もしくは繰返し)。融合タンパク質は、エピトープタグ、FLAGタグ、ポリヒスチジン配列、およびGST融合などの精製配列を含んでいてよい。場合により、可溶性ActRIIbポリペプチドは、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分にコンジュゲートしているアミノ酸、および有機誘導体化剤にコンジュゲートしているアミノ酸から選択される1つまたは複数の修飾されているアミノ酸残基を含んでいる。医薬調製物は、骨障害を処置するのに用いられる化合物など、1つまたは複数のさらなる化合物も含むことができる。好ましくは、医薬調製物は実質的にパイロジェンフリーである。一般的に、ActRIIbタンパク質が、患者における好ましくない免疫反応の可能性を減じるようにActRIIbタンパク質の天然のグリコシル化を適切に媒介する哺乳動物細胞系において発現されるのが好ましい。ヒトおよびCHO細胞系が上首尾に用いられており、他の通常の哺乳動物発現系が有用であることが予想される。
【0015】
ある態様において、本開示はActRIIbポリペプチドをコードする核酸を提供する。単離されたポリヌクレオチドは、上記に記載したものなどActRIIbポリペプチドに対するコード配列を含むことができる。例えば、単離された核酸は、ActRIIbの細胞外ドメイン(例えば、リガンド結合ドメイン)をコードする配列、ならびに膜貫通ドメインおよび/またはActRIIbの細胞質ドメインの部分または全てをコードするが、膜貫通ドメインもしくは細胞質ドメイン内に位置する終止コドンをコードし、または細胞外ドメインと膜貫通ドメインもしくは細胞質ドメインとの間に位置する配列を含むことができる。例えば、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号4もしくは配列番号5などの全長のActRIIbポリヌクレオチド配列、または部分的に切断されているバージョンを含むことができ、前記単離されたポリヌクレオチドは、3’末端の前または他の方法で、ポリヌクレオチドの翻訳が全長のActRIIbの切断された部分に場合により融合している細胞外ドメインを生じるように位置する少なくとも600個のヌクレオチドの転写終結コドンをさらに含んでいる。好ましい核酸配列は配列番号18である。本明細書に開示する核酸は発現用のプロモーターに作動可能に連結していてよく、本開示はこのような組換えポリヌクレオチドで形質転換された細胞を提供する。細胞がCHO細胞など、哺乳動物細胞であるのが好ましい。
【0016】
ある態様において、本開示は、ActRIIbポリペプチドを作成する方法を提供する。このような方法は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの適切な細胞において、本明細書に開示するあらゆる核酸(例えば、配列番号4、5、または18)を発現させることを含むことができる。このような方法は、a)ActRIIbポリペプチドの発現に適する条件下で細胞を培養し(前記細胞はActRIIb発現構築物で形質転換される)、b)このように発現されたActRIIbポリペプチドを回収することを含むことができる。ActRIIbポリペプチドは、粗製の分画、部分的に精製されている分画、または高度に精製されている分画として回収されてよい。精製は、例えば、あらゆる順序で以下の1つ、2つ、もしくは3つ、またはそれを超えて含む、一連の精製ステップによって実現されてよい:タンパク質Aクロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー(例えば、Qセファロース)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(例えば、フェニルセファロース)、サイズ排除クロマトグラフィー、および陽イオン交換クロマトグラフィー。
【0017】
ある態様において、ActRIIbポリペプチドなど、本明細書に開示するActRIIbアンタゴニストは、被験体における骨成長を促進し、または骨密度を増大するための方法において用いられてよい。ある実施形態において、本開示は、それを必要とする患者における、低骨密度に付随する障害を処置し、または骨成長を促進するための方法を提供する。方法は、それを必要とする被験体に、有効量のActRIIbアンタゴニストを投与することを含むことができる。ある態様において、本開示は、本明細書に記載する障害または状態を処置するための薬物を作成するためのActRIIbアンタゴニストの使用を提供する。
【0018】
ある態様において、本開示は、骨の成長を刺激し、または骨の石灰化を増大する薬剤を同定するための方法を提供する。この方法は、a)ActRIIbポリペプチドのリガンド結合ドメインに結合する試験薬剤を同定し、b)骨の成長または石灰化に対する薬剤の効果を評価することを含む。
【0019】
ある態様において、本開示は、ActRIIb−Fc融合タンパク質を患者に投薬するための方法であって、少なくとも8μg/mLのActRIIb−Fc融合タンパク質の血清濃度を維持する投薬計画に基づいてActRIIb−Fc融合タンパク質を患者に投与することを含む方法を提供する。
【0020】
ある態様において、本開示は、少なくとも8μg/mLのActRIIb−Fc融合タンパク質の血清濃度を維持する計画に基づいてActRIIb−Fc融合タンパク質を投与する、ActRIIb−Fc融合タンパク質を患者に投薬することにおいて用いるための化合物を提供する。他の例示の化合物、使用、および投薬レジメンを、本明細書および特許請求の範囲において記載する。
【0021】
本発明または出願ファイルは、カラーで製作された少なくとも1つの図面を含有する。カラーの図面(複数可)を有する本特許または特許出願公報のコピーは、必要な手数料を支払って請求すれば当庁によって提供されよう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、様々な脊椎動物のActRIIbタンパク質およびヒトActRIIAの複数の配列アラインメントを示す図である。
【図2】図2は、皮下投与した単回用量のActRIIb−Fcに対するヒト患者の薬物動態(PK)プロファイルを示す図である。
【図3】図3は、単回用量のActRIIb−Fcをヒト患者に皮下投与して15日、29日、または57日後の除脂肪体重における平均パーセント変化を示す図である。
【図4】図4は、単回用量のActRIIb−Fcをヒト患者に皮下投与して15日、29日、または57日後の除脂肪体重における≧0.5kg増大(上パネル)または≧1.0kg増大(下パネル)を有する被験体のパーセントを示す図である。
【図5】図5は、単回用量のActRIIb−Fcをヒト患者に皮下投与した後の様々な時間点における脂肪代謝の血清生物マーカーであるレプチンにおける変化を示す図である。
【図6】図6は、単回用量のActRIIb−Fcをヒト患者に皮下投与した後の様々な時間点における、脂肪代謝の血清生物マーカーであるアディポネクチンにおける変化を示す図である。
【図7】図7は、単回用量のActRIIb−Fcをヒト患者に皮下投与した後の様々な時間点における骨形成の血清生物マーカーである骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)における平均パーセント変化を示す図である。
【図8】図8は、単回用量のActRIIb−Fcをヒト患者に皮下投与した後の様々な時間点における骨吸収の血清生物マーカーである1型コラーゲンC末端テロペプチド(CTX)における平均パーセント変化を示す図である。
【図9】図9は、単回用量のActRIIb−Fcをヒト患者に皮下投与した後の様々な時間点における血清卵胞刺激ホルモン(FSH)における平均パーセント変化を示す図である。
【図10】図10は、ActRIIb−Fc3mg/kgの単回皮下投与を投薬した代表的なヒト被験体における大腿横断面の磁気共鳴画像法(MRI)スキャンを示す図である。上パネルは大腿のMRI評価を示し、中パネルは9日目のベースラインを示し、下パネルは投薬29日後の結果を示す。筋肉を灰色で、皮下脂肪を桃色で、筋肉内脂肪を緑色で示す。
【図11】図11は、プラセボと比較した、ActRIIb−Fc1mg/kgまたはActRIIb−Fc3mg/kgの単回皮下投与を投薬したヒト被験体に対する、29日目の大腿筋肉体積におけるベースラインからの平均パーセント変化を示す図である。
【図12】図12は、配列番号1からのActRIIbのシグナル配列および細胞外ドメインのアラインメントを示す図であり(配列番号1の残基1〜134)、ActRIIbの細胞外ドメインを配列番号2によって表す。示すように、シグナル配列は長さ19個のアミノ酸である。したがって、配列番号1におけるX位のアミノ酸は、配列番号2におけるX−19に対応する位置を有する。説明すると、配列番号1におけるアミノ酸30位は、配列番号2におけるアミノ酸11位である。同様の相関を、本明細書に記載する他のActRIIb配列に対して決定することができる。
【図13】図13は、ヒトActRIIaおよびActRIIbのアラインメントを示す図である。四角で囲んだ残基は、複数のActRIIbおよびActRIIa結晶構造の複合解析に基づいて、直接接触しているリガンド(すなわち、リガンド結合ポケット)と考えられているアミノ酸残基を表す。
【図14】図14は、実施例5に記載する複数回漸増用量試験の間の様々な日の血清におけるActRIIb−hFcの薬物動態プロファイルを示す図である。
【図15】図15は、上軸上にActRIIb−hFcの血清濃度、下軸上に卵胞刺激ホルモン(FSH)におけるパーセント変化を示す図である。
【図16】図16は、DXAによって測定した、様々な用量のActRIIb−hFcによって引き起こされる、全身除脂肪体重におけるパーセント変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.概要
トランスフォーミング増殖因子−ベータ(TGF−ベータ)スーパーファミリーは、共通の配列エレメントおよび構造モチーフを共有する様々な増殖因子を含んでいる。これらのタンパク質は、脊椎動物および非脊椎動物の両方における非常に様々な細胞型に対して生物学的効果を発揮することが知られている。スーパーファミリーのメンバーは、パターン形成および組織の特異化における胚発生の間に重要な機能を行い、脂肪生成、筋形成、軟骨形成、心発生、造血、神経発生、および上皮細胞の分化を含めた様々な分化プロセスに影響を及ぼし得る。TGF−ベータファミリーメンバーの活性を操作することによって、生物体における意義深い生理学的変化を引き起こすことがしばしば可能である。例えば、PiedmonteseおよびBelgian Blueウシ品種は、筋肉量における著しい増大を引き起こすGDF8(ミオスタチンとも呼ばれる)遺伝子における機能喪失型の変異を保有する。Grobetら、Nat Genet.、1997年、17巻(1号)、71〜4頁。さらに、ヒトにおいて、GDF8の不活性型の対立遺伝子は筋肉量の増大に関連し、例外的に強力であると報告されている。Schuelkeら、N Engl J Med、2004年、350巻、2682〜8頁。
【0024】
アクチビンはTGF−ベータスーパーファミリーに属する二量体ポリペプチドの増殖因子である。緊密に関連しているβサブユニット2個のホモ/ヘテロ二量体(ββ、ββ、およびββ)である、3原則のアクチビン型(A、B、およびAB)が存在する。ヒトゲノムもアクチビンCおよびアクチビンEをコードしているが、これらは主に肝臓において発現される。TGF−ベータスーパーファミリーにおいて、アクチビンは独特かつ多機能性の因子であり、卵巣および胎盤の細胞においてホルモン生成を刺激し、神経細胞の生存を支持し、細胞型に応じて細胞周期の進行を正または負に影響を及ぼし、少なくとも両生類の胚における中胚葉の分化を誘発することができる(DePaoloら、1991年、Proc Soc Ep Biol Med.、198巻、500〜512頁; Dysonら、1997年、Curr Biol.、7巻、81〜84頁; Woodruff、1998年、Biochem Pharmacol.、55巻、953〜963頁)。さらに、刺激したヒト単球白血球細胞から単離される赤芽球分化誘導因子(EDF)はアクチビンAと同一であることが見出された(Murataら、1988年、PNAS、85巻、2434頁)。アクチビンAは、骨髄における赤血球新生の、天然の、正の制御因子として働くことが示唆されている。いくつかの組織において、アクチビンのシグナル伝達は、その関連のヘテロ二量体であるインヒビンによって拮抗される。例えば、下垂体から卵胞刺激ホルモン(FSH)が放出される間、アクチビンはFSHの分泌および合成を促進し、インヒビンはFSHの分泌および合成を防止する。アクチビンの生物活性を制御し、かつ/またはアクチビンに結合し得る他のタンパク質には、フォリスタチン(FS)、フォリスタチン関連タンパク質(FSRP)、およびα−マクログロブリンが含まれる。
【0025】
TGF−βファミリーのシグナルは、I型およびII型セリン/スレオニンキナーゼ受容体のヘテロマーの複合体によって媒介されるが、これらはリガンドが刺激されると、Smadタンパク質をリン酸化し、下流を活性化する(Massague、2000年、Nat. Rev. Mol. Cell Biol.、1巻、169〜178頁)。これらI型およびII型の受容体は膜貫通型タンパク質であり、システインリッチ領域を有するリガンド結合性細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、およびセリン/スレオニン特異性が予測される細胞質ドメインからなる。I型受容体はシグナル伝達に不可欠であり、II型受容体は、結合性リガンドおよびI型受容体の発現に必要とされる。I型およびII型アクチビン受容体は、リガンド結合後に安定な複合体を形成し、II型受容体によるI型受容体のリン酸化をもたらす。
【0026】
2つの関連するII型受容体である、ActRIIaおよびActRIIbは、アクチビンに対するII型受容体と同定されている(MathewsおよびVale、1991年、Cell、65巻、973〜982頁; Attisanoら、1992年、Cell、68巻、97〜108頁)。ActRIIaおよびActRIIbはアクチビンの他に、BMP7、Nodal、GDF8、およびGDF11を含めた、いくつかの他のTGF−βファミリーのタンパク質と生化学的に相互作用することができる(Yamashitaら、1995年、J. Cell Biol.、130巻、217〜226頁; LeeおよびMcPherron、2001年、Proc. Natl. Acad. Sci.、98巻、9306〜9311頁; YeoおよびWhitman、2001年、Mol. Cell、7巻、949〜957頁; Ohら、2002年、Genes Dev.、16巻、2749〜54頁)。ALK4は、アクチビン、特にアクチビンAに対する主要なI型受容体であり、ALK7も、アクチビン、特にアクチビンBに対する受容体として働くことができる。
【0027】
本明細書において実証する通り、ActRIIbポリペプチド(ActRIIb[20−134]−Fc)は骨成長を促進し、in vivoで骨密度を増大するのに有効であり、筋肉量も増大する。あらゆる特定のメカニズムに拘泥しようとするものではないが、骨に対するActRIIbの効果は、主にアクチビンのアンタゴニスト効果によって引き起こされることが予想される。メカニズムにかかわらず、本明細書に提示するデータから、ActRIIbアンタゴニストがヒトにおける同化/抗吸収の組合せの効果に一致する様式で骨密度を増大し、骨の生物マーカーに影響を及ぼすことは明白である。骨は、骨を生成し、石灰化を刺激する因子(主に、造骨細胞)、および骨を破壊し脱石灰化する因子(主に、破骨細胞)のバランスに応じて成長または収縮し、密度を増大または低減する動的な組織であることに留意されたい。骨成長および石灰化は、生産的な因子を増大し、破壊的な因子を低減することによって、または両方によって増大され得る。「骨成長を促進する」および「骨石灰化を増大する」の語は、骨における観察可能な物理的変化を意味し、それによって骨における変化が生じるメカニズムに対して中立であることが意図される。
【0028】
骨成長の促進の他に、本開示は、ActRIIbまたはActRIIbリガンドの活性の異常活性に付随する疾患または状態の処置または防止におけるActRIIbアンタゴニストの使用を企図するものである。例えば、ActRIIbアンタゴニストを、ヒトまたは動物の障害または状態を処置するのに用いることができる。このような障害または状態の例には、それだけには限定されないが、2型糖尿病、耐糖能障害、メタボリックシンドローム(例えば、X症候群)、および外傷(例えば、火傷、または窒素のアンバランス)によって誘発されるインスリン耐性などの代謝障害;脂肪組織障害(例えば、肥満);筋ジストロフィー(デュシェンヌ型筋ジストロフィーを含む)などの筋肉および神経筋の障害;筋萎縮性側索硬化症(ALS);筋萎縮;臓器萎縮;脆弱;手根管症候群;うっ血性閉塞性肺疾患;ならびに筋肉減少症、悪液質、および他の筋肉消耗症候群が含まれる。他の例には、特に高齢および/または閉経後の女性における骨粗鬆症、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症、骨減少症、骨関節炎、および骨粗鬆症関連の骨折が含まれる。またさらなる例には、慢性的なグルココルチコイド治療による低骨量、未熟な性腺機能不全、アンドロゲン抑制、ビタミンD欠乏症、二次性副甲状腺機能亢進症、栄養障害、および神経性食欲不振症が含まれる。
【0029】
本開示は、ActRIIbポリペプチドおよび他のActRIIbアンタゴニストを用いてヒトにおける骨成長を促進し、骨密度を増大し、また筋肉量を増大するための方法を提供する。ActRIIbアンタゴニストには、例えば、リガンド結合性ActRIIbポリペプチド(例えば、ActRIIb−Fc)、ActRIIbに結合し、1つまたは複数のリガンドの結合を破壊する抗体、例えば、アクチビンまたはミオスタチン、ActRIIbの結合性に対して選択される非抗体タンパク質(例えば、このようなタンパク質、およびこのようなタンパク質をデザインおよび選択するための方法の例に対して、国際公開第WO/2002/088171号、第WO/2006/055689号、および第WO/2002/032925号を参照されたい)、Fcドメインに対してしばしば固定されているActRIIb結合に対して選択されるランダム化ペプチドが含まれる。ActRIIb結合活性を有する2つの異なるタンパク質(または他の部分)、特にI型(例えば、可溶性I型アクチビン受容体)およびII型(例えば、可溶性II型アクチビン受容体)結合部位を阻止するアクチビンバインダーはそれぞれ、一緒に連結して2機能性の結合性分子を作り出すことができる。核酸アプタマー、小分子、およびActRIIbシグナル伝達軸を阻害する他の薬剤には、ActRIIbアンタゴニストが含まれる。
【0030】
本明細書において用いられる語は、一般に、本発明の状況内において、および各々の語が用いられる特定の状況において、当技術分野におけるその通常の意味を有する。本発明の組成物および方法、ならびにこれらを作成し、用いる方法を記載する上で開業医にさらなる指導を提供するために、ある種の語を、以下に、または本明細書の別の箇所において論じる。ある語のあらゆる使用の範囲または意味は、その語が用いられる特定の状況から明らかであろう。
【0031】
「約」および「およそ」は、一般に、測定値の性質または精度を考慮して測定された量に対する許容できる誤差の程度を意味する。典型的に、例示の誤差の程度は、所与の値または値の範囲の、20パーセント(%)以内であり、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内である。
【0032】
あるいは、生物学的系において特に、「約」および「およそ」の語は、好ましくは所与の値の5倍以内、より好ましくは2倍以内のオーダー内である値を意味することができる。本明細書にもたらされる数量は、別段の記載がなければ概算であり、「約」または「およそ」の語が特に記載されない場合に推測され得ることを意味する。
【0033】
本発明の方法は、野生型配列を1つまたは複数の変異体(配列バリアント)と比較することを含めた、相互に配列を比較するステップを含むことができる。このような比較は、例えば、当技術分野において周知である配列アラインメントプログラムならびに/またはアルゴリズム(例えば、少数を挙げれば、BLAST、FASTA、およびMEGALIGN)を用いた、ポリマー配列のアラインメントを典型的に含む。当業者であれば、このようなアラインメントにおいて、変異が残基の挿入または欠失を含む場合、配列アラインメントは、挿入または欠失された残基を含有しないポリマー配列において「ギャップ」(典型的に、ダッシュもしくは「A」によって表される)を導入することを容易に理解することができる。
【0034】
「相同の」は、その文法的な形および綴りの変形全てにおいて、生物体の同じ種におけるスーパーファミリーからのタンパク質、および生物体の異なる種からの相同のタンパク質を含む、「進化上の共通の起源」を所有する2つのタンパク質間の関係を意味する。このようなタンパク質(およびこれらがコードする核酸)は、パーセント同一性に関しても、または特定の残基もしくはモチーフおよび保存されている位置の存在によっても、これらの配列類似性によって反映される配列相同性を有する。
【0035】
「配列類似性」の語は、その文法的な形において、進化上の共通の起源を共有することがあり、または共有することがない、核酸またはアミノ酸配列間の同一性または対応の度合いを意味する。
【0036】
しかし、共通の使用および本開示において、「相同の」の語は、「高度に」などの副詞で修飾される場合、配列類似性を意味することがあり、進化上の共通の起源に関係することもあり、または関係しないこともある。
【0037】
2.ActRIIbポリペプチド
ある態様では、本発明は、ActRIIbポリペプチドに関する。本明細書で用いられる「ActRIIb」の語は、あらゆる種からのアクチビン受容体IIb型(ActRIIb)タンパク質のファミリー、および変異誘発または他の修飾によるこのようなActRIIbタンパク質に由来するバリアントを意味する。本明細書におけるActRIIbに対する言及は、あらゆる1つの現在同定されている形に対する言及であると理解される。ActRIIbファミリーのメンバーは一般に、システインリッチ領域を有するリガンド結合性細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、およびセリン/スレオニンキナーゼ活性が予測される細胞質ドメインからなる膜貫通タンパク質である。
【0038】
「ActRIIbポリペプチド」の語は、ActRIIbファミリーメンバーのあらゆる天然に存在するポリペプチド、および有用な活性を保持しているそのあらゆるバリアント(変異体、フラグメント、融合物、およびペプチドミメチック型を含む)を含むポリペプチドを含んでいる。例えば、ActRIIbポリペプチドが参照によって本明細書に組み入れられる、国際公開第WO/2006/012627号を参照されたい。例えば、ActRIIbポリペプチドは、ActRIIbポリペプチドの配列と少なくとも約80%同一であり、場合により少なくとも85%、90%、95%、97%、99%、またはそれを超えて同一である配列を有する、あらゆる公知のActRIIbの配列に由来するポリペプチドを含んでいる。例えば、本発明のActRIIbポリペプチドは、ActRIIbタンパク質に結合し、その機能を阻害することがある。ActRIIbポリペプチドは、in vivoで赤血球細胞の形成を促進することにおける活性に対して選択されてよい。ActRIIbポリペプチドの例には、ヒトActRIIb前駆体ポリペプチド(配列番号1)、および可溶性ヒトActRIIbポリペプチド(例えば、配列番号2、3、13、17、または20)が含まれる。
【0039】
ヒトActRIIb前駆体タンパク質の配列は以下の通りである:
【0040】
【化1】

シグナルペプチドには一重下線を付け、細胞外ドメインは太字、可能なN−連結しているグリコシル化部位を四角で囲んである。
【0041】
加工されているポリペプチド配列であるヒトActRIIb可溶性(細胞外)は以下の通りである:
【0042】
【化2】

いくつかの条件において、N−末端に「SGR・・・」配列を有するタンパク質が生成され得る。細胞外ドメインのC−末端「テイル」に下線を付けてある。欠失した「テイル」を有する配列(Δ15配列)は以下の通りである:
【0043】
【化3】

いくつかの条件において、N−末端に「SGR・・・」配列を有するタンパク質が生成され得る。ヒトActRIIb前駆体タンパク質をコードする核酸配列は以下の通りである:(Genbank登録NM_001106のヌクレオチド5〜1543)
【0044】
【化4−1】

【0045】
【化4−2】

ヒトActRIIb可溶性(細胞外)ポリペプチドをコードする核酸配列は以下の通りである:
【0046】
【化5】

特定の一実施形態では、本発明は可溶性ActRIIbポリペプチドに関する。本明細書に記載する「可溶性ActRIIbポリペプチド」の語は、一般に、ActRIIbタンパク質の細胞外ドメインを含むポリペプチドを意味する。本明細書で用いられる「可溶性ActRIIbポリペプチド」の語は、ActRIIbタンパク質のあらゆる天然に存在する細胞外ドメインおよびあらゆるそのバリアント(変異体、フラグメント、およびペプチドミメチック型を含む)を含む。アクチビン結合性ActRIIbポリペプチドは、例えば、アクチビンAA、AB、BB、またはCもしくはEサブユニットを含む型を含めた、アクチビンに結合する能力を保持するものである。場合により、アクチビン結合性ActRIIbポリペプチドは、1nMまたはそれ未満の解離定数でアクチビンAAに結合する。ActRIIbタンパク質の細胞外ドメインが、アクチビンに結合し、一般に、生理学的条件において可溶性であり、したがって、可溶性アクチビン結合性ActRIIbポリペプチドと呼ばれてよい。可溶性のアクチビン結合性ActRIIbポリペプチドの例には、配列番号2、3、13、17、または20において例示する可溶性ポリペプチドが含まれる。配列番号13はActRIIb(20−134)−hFcと呼ばれており、実施例においてさらに記載する。可溶性ActRIIbポリペプチドの他の例は、ミツバチのメリチンリーダー配列(配列番号14)、組織プラスミノーゲンアクチベータ(TPA)リーダー(配列番号15)、または天然のActRIIbリーダー(配列番号16)など、ActRIIbタンパク質の細胞外ドメインの他にシグナル配列を含んでいる。配列番号17に示すActRIIb−hFcポリペプチドはTPAリーダーを用いている。
【0047】
ある種の実施形態では、本発明はActRIIbバリアントポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIbポリペプチド)に関する。場合により、フラグメント、機能性バリアント、および修飾型は、これらの対応する野生型ActRIIbポリペプチドと同様または同じ生物学的活性を有する。例えば、本発明のActRIIbバリアントは、ActRIIbリガンド(例えば、アクチビンA、アクチビンAB、アクチビンB、Nodal、GDF8、GDF11、またはBMP7)に結合し、その機能を阻害することがある。場合により、ActRIIbポリペプチドは、骨、軟骨、筋肉、または脂肪などの組織の成長を変調する。ActRIIbポリペプチドの例には、ヒトActRIIb前駆体ポリペプチド(配列番号1)および可溶性ヒトActRIIbポリペプチド(例えば、配列番号2、3、13、17、または20)が含まれる。
【0048】
別段の記載がなければ、本明細書において論じるActRIIbポリペプチドにおけるアミノ酸位置は、前駆体ActRIIbポリペプチド(すなわち、配列番号1)を基準として作成される。別のActRIIbポリペプチドにおける対応する位置は、本明細書に提供する情報に基づいて容易に同定され得ることを理解されたい。例えば、前駆体ActRIIbポリペプチドは、配列番号2において示す通り、ActRIIbの可溶性の細胞外部分中に含有されていないアミノ酸19個のリーダー配列を含有している。したがって、配列番号1におけるX位の残基は、配列番号2における残基X−19に対応する。例えば、配列番号1の残基30は、配列番号2における残基11に対応する(図12を参照されたい)。本明細書に記載する他のActRIIb配列に対して同様の相互関係が決定されてよい。
【0049】
本開示は、ActRIIbの機能的に活性な部分およびバリアントを同定するものである。出願者らは、Hildenら(Blood.、1994年4月15日、83巻(8号)、2163〜70頁)によって開示される配列を有するFc融合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸64(A64)に対応する位置にアラニンを有し、アクチビンおよびGDF−11に対して比較的親和性が低いことを確認した。これとは対照的に、64位にアルギニンを有する(R64)同じFc融合タンパク質は、アクチビンおよびGDF−11に対して低ナノモルから高ピコモル範囲の親和性を有する。したがって、R64を有する配列を、本開示におけるヒトActRIIbに対する野生型参考配列として用いる。
【0050】
Attisanoら(Cell.、1992年1月10日、68巻(1号)、97〜108頁)は、ActRIIbの細胞外ドメインのC末端のプロリンノットの欠失により、アクチビンに対する受容体の親和性が低減することを示した。配列番号1のアミノ酸20〜119を含有するActRIIb−Fc融合タンパク質である「ActRIIb(20−119)−Fc」は、GDF−11およびアクチビンに対する結合性が、ActRIIb(20−134)−Fc(プロリンノット領域および完全な近傍膜ドメインを含む)に比べて低減している(米国公開第2009/0005308号を参照されたい)。しかし、ActRIIb(20−129)−Fcタンパク質は、プロリンノット領域が破壊されているものの、野生型に比べて同様であるが幾分低下した活性を保持している。このように、アミノ酸134、133、132、131、130、および129で停止するActRIIb細胞外ドメインは全て活性であると予想されるが、134または133で停止する構築物が最も活性であり得る。同様に、あらゆる残基129〜134の変異体は、大幅にリガンド結合親和性を変えないことが予想される。これを支持するように、P129およびP130の変異はリガンド結合性を実質的に低減しない。したがって、ActRIIb−Fc融合タンパク質はアミノ酸109(最後のシステイン)ほど早々に終わることがあるが、109と119、またはその間に終わる型は、リガンド結合性が低減することが予想される。アミノ酸119は保存が不十分であり、したがって容易に変更または切断される。128またはその後で終わる型はリガンド結合活性を保持する。119と127、またはその間に終わる型は中間の結合能力を有する。ActRIIb(25−118)−hFcはアクチビンおよび他のリガンドを阻害するのに、また筋肉量を促進するのに有効であることが報告されており、したがってこのような切断されたActRIIb−hFcタンパク質を本明細書に記載する方法に用いることができる(Zhouら、2010年、Cell、142巻、531〜543頁を参照されたい)。これらのあらゆる型が、臨床または実験の設定に応じて、用いるのが望ましいことがある。
【0051】
ActRIIbのN末端では、アミノ酸29またはそれ以前に始まるタンパク質はリガンド結合活性を保持すると予想される。アミノ酸29は最初のシステインを表す。24位のアラニンからアスパラギンへの変異は、リガンド結合性に実質的に影響を及ぼさずにN−連結しているグリコシル化配列を導入する。これにより、アミノ酸20〜29に対応する、シグナル切断ペプチドとシステイン架橋領域との間の領域における変異は十分許容されることが確認される。特に、20、21、22、23、および24位で始まる構築物は活性を保持しており、25、26、27、28、および29位で始まる構築物も活性を保持することが予想される。22、23、24、または25で始まる構築物が最高の活性を有する(米国公開第2009/0005308号を参照されたい)。
【0052】
まとめると、ActRIIbの活性部分は、配列番号1のアミノ酸29〜109を含んでおり、構築物は、例えば、アミノ酸20〜29に対応する残基で始まり、アミノ酸109〜134に対応する位置で終わる。他の例には、20〜29または21〜29からの位置で始まり、118〜134、118〜133、119〜134、119〜133、または129〜134、129〜133からの位置で終わる構築物が含まれる。他の例には、20〜24(もしくは21〜24、もしくは22〜25)からの位置で始まり、109〜134(もしくは109〜133)、118〜134(もしくは118〜133)、119〜134(もしくは119〜133)、または129〜134(もしくは129〜133)からの位置で終わる構築物が含まれる。これらの範囲内のバリアント、特に、配列番号2の対応する部分と少なくとも80%、85%、90%、95%、または99%同一性を有するバリアントも企図される。
【0053】
ActRIIbの構造機能分析の大規模な分析は、米国公開第2009/0005308号において提供されており、この分析は参照によって本明細書に組み入れられる。結合ポケットにおいてリガンドと接触している可能性があるActRIIb残基は、配列番号1の残基Y31、N33、N35、L38からT41、E47、E50、Q53からK55、L57、H58、Y60、S62、K74、W78からN83、Y85、R87、A92、およびE94からF101と規定されている。これらの位置では、保存的変異が十分許容されるが、R40A、K55A、F82A、および位置L79の変異同様、K74A変異が十分許容されることが予想される。R40はアフリカツメガエルにおけるKであり、この位置では塩基性アミノ酸が許容されることを示している。Q53はウシActRIIbにおけるRであり、アフリカツメガエルActRIIbにおけるKであり、したがってこの位置ではR、K、Q、N、およびHを含むアミノ酸が許容される。これらの残基の外では、このような変更がタンパク質の構造を全体的に破壊しないのであれば、修飾が比較的十分に許容されることが予想される。培養培地中でタンパク質の発現が不十分であり、またはタンパク質が分解される傾向があるために、タンパク質構造が破壊される場合は容易に明らかである。このように活性なActRIIbバリアントタンパク質に対する一般式は、アミノ酸29〜109を含むが、場合により20〜24または22〜25からの範囲の位置で始まり、129〜134からの範囲の位置で終わり、リガンド結合ポケットにおいて1、2、5、10、または15個を超えない保存的なアミノ酸変化を含み、リガンド結合ポケットにおける40、53、55、74、79、および/または82位に0個、1個または複数の非保存的な変更を含むものである。このようなタンパク質は、配列番号1のアミノ酸29〜109の配列に対して、80%、90%、95%、または99%を超える配列同一性を保持し得る。結合ポケットの外の部位では可変性が特に十分に許容されることがあり、細胞外ドメイン(上記に記載)のアミノ末端およびカルボキシ末端、ならびに配列番号1の42〜46位および65〜73位を含んでいる。65位のアスパラギンからアラニンへの変更(N65A)は、実際にA64バックグラウンドにおけるリガンド結合性を改善し、したがってR64バックグラウンドにおけるリガンド結合性に対して有害な効果がないことが予想される。この変化はおそらく、A64バックグラウンドにおけるN65のグリコシル化を除去するものであり、したがってこの領域における著しい変化は許容される可能性があることを実証している。R64Aの変化は十分に許容されないが、R64Kは十分に許容され、したがってHなどの別の塩基性残基は64位で許容され得る。
【0054】
ActRIIbは、ほぼ全ての脊椎動物にわたって十分に保存されており、細胞外ドメインの大規模な一続きが完全に保存されている。ActRIIbに結合する多くのリガンドも高度に保存されている。したがって、様々な脊椎動物の生物体からのActRIIb配列を比較することで、変更され得る残基に対する洞察がもたらされる。したがって、活性な、ヒトActRIIbバリアントは、別の脊椎動物のActRIIbの配列からの対応する位置の1つもしくは複数のアミノ酸を含むことがあり、またはヒトもしくは他の脊椎動物の配列における残基に同様の残基を含むことがある。以下の例は、活性なActRIIbバリアントを規定するためのこの取組みを説明するものである。ヒトActRIIbのL46はアフリカツメガエルActRIIbにおけるバリンであり、したがってこの位置は変更されてよく、場合により、V、I、もしくはFなどの別の疎水性残基、またはAなどの非極性の残基に変更されてよい。ヒトActRIIbのE52はアフリカツメガエルActRIIbにおけるKであり、この部位はE、D、K、R、H、S、T、P、G、Y、およびおそらくAなどの極性残基を含めた様々な変化に許容されてよいことを示している。ヒトActRIIbのT93はアフリカツメガエルActRIIbにおけるKであり、この位置では広い構造上の変動が許容されることを示しており、S、K、R、E、D、H、G、P、G、およびYなどの極性残基が好ましい。ヒトActRIIbのF108はアフリカツメガエルActRIIbにおけるYであり、したがってYまたは他の疎水性基、例えば、I、V、またはLが許容されなければならない。ヒトActRIIbのE111はアフリカツメガエルActRIIbにおけるKであり、D、R、K、およびHを含む荷電している残基、ならびにQおよびNがこの位置で許容されることを示している。ヒトActRIIbのR112はアフリカツメガエルActRIIbにおけるKであり、RおよびHを含めた塩基性残基がこの位置で許容されることを示している。ヒトActRIIbの119位のAは比較的不十分に保存されており、齧歯動物ActRIIbにおけるPおよびアフリカツメガエルActRIIbにおけるVとして出現し、したがってこのポジションでは本質的にあらゆるアミノ酸が許容されなければならない。
【0055】
さらなるN−連結しているグリコシル化部位(N−X−S/T)の付加により、ActRIIb−Fc融合タンパク質の血清半減期は、ActRIIb(R64)−Fc型に比べて増大する(米国公開第2009/0005308号を参照されたい)。24位にアスパラギンを導入することにより(A24N構築物)、より長い半減期を付与するNXT配列が作り出される。他のNX(T/S)配列は、配列番号1の42〜44(NQS)および65〜67(NSS)に見出されるが、後者は64位のRで効果的にグリコシル化されていないことがある。N−X−S/T配列は概ね、図13において規定されるリガンド結合ポケットの外側の位置に導入され得る。内因性ではないN−X−S/T配列の導入に特に適する部位には、配列番号1のアミノ酸20〜29、20〜24、22〜25、109〜134、120〜134、または129〜134が含まれる。N−X−S/T配列はまた、ActRIIb配列とFcまたは他の融合成分との間のリンカー中に導入されてもよい。このような部位は、予め存在するSもしくはTに関して正確な位置にNを導入することによって、または予め存在するNに対応する位置にSもしくはTを導入することによって最小の努力で導入され得る。このように、N−連結したグリコシル化部位を作り出す望ましい変更は、A24N、R64N、S67N(おそらくN65A変更と組み合わされる)、E106N、R112N、G120N、E123N、P129N、A132N、R112S、およびR112Tである。グリコシル化されることが予想されるあらゆるSは、グリコシル化によってもたらされる保護のために、免疫原性部位を作り出さずにTに変更され得る。同様に、グリコシル化されることが予測されるあらゆるTはSに変更され得る。このように、S67TおよびS44Tの変更が企図される。同様に、A24Nバリアントにおいて、S26Tの変更が用いられてよい。したがって、ActRIIbバリアントは、1つまたは複数のさらなる、内因性ではない、N−連結しているグリコシル化コンセンサス配列を含むことができる。
【0056】
L79位は、変更されたアクチビン−ミオスタチン(GDF−11)の結合性質を付与するように変更されてよい。L79AまたはL79Pは、GDF−11結合性をアクチビン結合性よりも大幅に低減する。L79EまたはL79DはGDF−11結合性を保持している。明らかに、L79EおよびL79Dバリアントはアクチビン結合性が大幅に低減している。in vivoの実験は、これら非アクチビン受容体は、筋肉量を増大する著しい能力を保持しているが、他の組織に対する効果の低減を示すことが指摘している。これらのデータは、アクチビンに対する効果が低減したポリペプチドを得ることに対する望ましさおよび実現可能性を実証するものである。
【0057】
記載するバリアントは、様々な方法で組み合わされてよい。さらに、本明細書に記載する変異原性プログラムの結果は、ActRIIbにはしばしば保存に有益であるアミノ酸位置が存在することを指摘している。これらのアミノ酸位置は、64位(塩基性アミノ酸)、80位(酸性または疎水性のアミノ酸)、78位(疎水性、特にトリプトファン)、37位(酸性、特にアスパラギン酸またはグルタミン酸)、56位(塩基性アミノ酸)、60位(疎水性アミノ酸、特にフェニルアラニンまたはチロシン)を含んでいる。このように、本明細書に開示する各々のバリアントにおいて、本開示は、保存され得るアミノ酸のフレームワークを提供する。保存するのが望ましいことがある他の位置は以下の通りである:52位(酸性アミノ酸)、55位(塩基性アミノ酸)、81位(酸性)、98(極性または荷電、特に、E、D、R、またはK)。
【0058】
ある実施形態では、ActRIIbポリペプチドの単離されたフラグメントは、ActRIIbポリペプチドをコードする核酸の対応するフラグメント(例えば、配列番号4および5)から組換えで生成されるポリペプチドをスクリーニングすることによって得ることができる。さらに、フラグメントは、当技術分野において公知である技術、例えば、従来のMerrifield固相f−MOCまたはt−BOCの化学を用いて化学的に合成することができる。フラグメントは(組換えで、または化学合成によって)生成することができ、試験して、例えば、ActRIIbタンパク質またはActRIIbリガンドのアンタゴニスト(阻害薬)またはアゴニスト(活性化薬)として機能することができるこれらのペプチジルフラグメントを同定することができる。
【0059】
ある実施形態では、ActRIIbポリペプチドの機能的バリアントは、配列番号2、3、13、17、または20から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有する。ある場合において、機能的バリアントは、配列番号2、3、13、17、または20から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0060】
ある実施形態では、本発明は、治療効果の増強または安定性(例えば、ex vivoの有効期間およびin vivoにおけるタンパク分解性の分解に対する耐性)などの目的で、ActRIIbポリペプチドの構造を修飾することによって機能的バリアントを作成することを企図するものである。修飾されたActRIIbポリペプチドは、例えば、アミノ酸の置換、欠失、または付加によって生成されてもよい。例えば、ロイシンのイソロイシンもしくはバリンでの、アスパラギン酸のグルタミン酸での、スレオニンのセリンでの分離置換、またはアミノ酸の構造的に関係のあるアミノ酸での同様の置換(例えば、保存的変異)には、結果として得られる分子の生物学的活性に対して主要な効果がないことを予想するのは理にかなっている。保存的置換は、アミノ酸の側鎖において関連するアミノ酸のファミリー内で行われるものである。ActRIIbポリペプチドのアミノ酸配列における変化が機能的な相同体をもたらすか否かは、バリアントのActRIIbポリペプチドが細胞中で野生型ActRIIbポリペプチドに同様の流儀で反応を生成する能力、または野生型と同様の流儀でアクチビン、GDF−11、またはミオスタチンなどの1つまたは複数のリガンドに結合する能力を評価することによって容易に決定することができる。
【0061】
ある種の特定の実施形態では、本発明は、バリアント(または変異体)のActRIIbポリペプチドが変更されたリガンド結合活性(例えば、結合親和性、または結合特異性)を有するように、ActRIIbポリペプチドの細胞外ドメイン(リガンド結合ドメインとも呼ばれる)における変異を作成することを企図するものである。ある場合において、このようなバリアントのActRIIbポリペプチドは、特定のリガンドに対する結合親和性の変更(上昇または低下)を有する。他の場合において、バリアントのActRIIbポリペプチドは、そのリガンドに対する結合特異性の変更を有する。
【0062】
例えば、本開示は、アクチビンに比べて優先的にGDF8/GDF11に結合する、バリアントのActRIIbポリペプチドを提供する。筋肉量における非常に大幅な増加が治療効果に必要とされることがあり、いくらかのレベルのオフターゲット効果が許容される重症の疾患の処置に、このような選択性のバリアントはあまり望ましくないことがあるが、本開示は、オフターゲット効果を低減するためのこのようなポリペプチドの望ましさをさらに確立するものである。例えば、E39、K55、Y60、K74、W78、D80、およびF101などのActRIIbタンパク質のアミノ酸残基はリガンド結合ポケット中にあり、アクチビンおよびGDF8などのリガンドに対する結合性を媒介する。このように、本発明は、これらアミノ酸残基に1つまたは複数の変異を含む、ActRIIb受容体の変更されたリガンド結合ドメイン(例えば、GDF8結合性ドメイン)を提供する。場合により、変更されたリガンド結合ドメインは、ActRIIb受容体の野生型リガンド結合ドメインに比べて、GDF8などのリガンドに対する選択性の増大を有することがある。説明すると、これらの変異は、GDF8に対する変更されたリガンド結合ドメインの選択性を、アクチビンを上回って増大する。場合により、変更されたリガンド結合ドメインは、アクチビン結合に対するKの、GDF8結合に対するKに対する比率が、野生型リガンド結合ドメインに対する比率に比べて少なくとも2、5、10、または100倍大きい。場合により、変更されたリガンド結合ドメインは、アクチビンの阻害に対するIC50の、GDF8の阻害に対するIC50に対する比率が、野生型のリガンド結合ドメインに比べて、少なくとも2、5、10、または100倍大きい。場合により、変更されたリガンド結合ドメインは、アクチビンの阻害に対するIC50よりも、少なくとも2、5、10、または100倍少ないIC50でGDF8を阻害する。
【0063】
特定の一例として、ActRIIbのリガンド結合ドメインの正に荷電しているアミノ酸残基であるAsp(D80)は、バリアントのActRIIbポリペプチドが、アクチビンではなくGDF8に優先的に結合するように、異なるアミノ酸残基に変異されてよい。D80残基を、無荷電のアミノ酸残基、負のアミノ酸残基、および疎水性アミノ酸残基からなる群から選択されるアミノ酸残基に変えるのが好ましい。さらなる特定の一例として、アクチビン結合性を大幅に低減しながらGDF11結合性を保持するために、疎水性残基であるL79を酸性アミノ酸であるアスパラギン酸またはグルタミン酸に変更してもよい。当業者であれば認めるように、記載した変異、バリアント、または修飾のほとんどは核酸レベルで行われてよく、あるいはいくつかの場合において、翻訳後修飾または化学合成によって行われてよい。このような技術は、当技術分野において周知である。
【0064】
ある実施形態では、本発明は、ポリペプチドのグリコシル化を変更するようなActRIIbポリペプチドの特異的な変異を企図するものである。ActRIIbポリペプチドにおける例示のグリコシル化部位を、配列番号1に示す。このような変異は、O−連結またはN−連結しているグリコシル化部位など、1つまたは複数のグリコシル化部位を導入または除去するように選択されてよい。アスパラギン連結しているグリコシル化認識部位は、一般に、トリペプチド配列であるアスパラギン−X−スレオニン(式中、Xはあらゆるアミノ酸である)を含み、この配列は好適な細胞のグリコシル化酵素によって特異的に認識される。変更は、(O−連結しているグリコシル化部位に対して)野生型ActRIIbポリペプチドの配列に対して、1つまたは複数のセリンまたはスレオニン残基の付加、またはこれらによる置換によって行われてもよい。グリコシル化認識部位の1位または3位のアミノ酸位置の一方または両方の様々なアミノ酸の置換または欠失(および/または2位のアミノ酸欠失)により、修飾されたトリペプチド配列の非グリコシル化がもたらされる。ActRIIbポリペプチド上の炭水化物の数を増大する別の手段は、ActRIIbポリペプチドへの配糖体の化学的または酵素的なカップリングによるものである。用いられるカップリング様式に応じて、糖(複数可)は、(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離のカルボキシル基、(c)遊離のスルフヒドリル基、例えば、システインのスルフヒドリル基、(d)遊離のヒドロキシル基、例えば、セリン、スレオニン、またはヒドロキシプロリンのヒドロキシル基、(e)芳香族残基、例えば、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンの芳香族残基、あるいは(f)グルタミンのアミド基に付着していてよい。これらの方法は、参照によって本明細書に組み入れられる、1987年9月11日発行の国際公開第WO87/05330号、およびAplinおよびWriston、(1981年)CRC Crit. Rev. Biochem.、259〜306頁において記載されている。ActRIIbポリペプチド上に存在する1つまたは複数の炭水化物部分の除去は、化学的および/または酵素的に遂行されてよい。化学的な脱グリコシル化は、例えば、ActRIIbポリペプチドを、トリフルオロメタンスルホン酸化合物、または同等の化合物に曝露することを伴ってよい。この処理により、連結性の糖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)以外のほとんどまたは全ての糖の切断がもたらされ、アミノ酸はそのまま残される。化学的脱グリコシル化は、Hakimuddinら(1987年)、Arch. Biochem. Biophys.、259巻、52頁およびEdgeら(1981年)Anal. Biochem.、118巻、131頁によってさらに記載されている。ActRIIbポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakuraら(1987年)、Meth. Enzymol.、138巻、350頁によって記載されている様々なエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼの使用によって実現することができる。哺乳動物、酵母菌、昆虫、および植物の細胞は全て、異なるグリコシル化のパターンを導入することができ、このパターンはペプチドのアミノ酸配列によって影響を受けることがあるので、ActRIIbポリペプチドの配列は、用いられる発現系のタイプに応じて適宜調節されてよい。一般に、ヒトにおいて用いるためのActRIIbタンパク質は、HEK293またはCHO細胞系など、好適なグリコシル化をもたらす哺乳動物の細胞系において発現されるが、他の哺乳動物の発現細胞系も有用であることが予想される。
【0065】
本開示は、バリアント、特にActRIIbポリペプチドのコンビナトリアルバリアントのセット(場合により、切断バリアントを含む)を産生する方法をさらに企図するものであり、コンビナトリアル変異体のプールは、機能的なバリアントの配列を同定するのに特に有用である。このようなコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする目的は、例えば、変更された薬物動態、または変更されたリガンド結合性など、変更された性質を有するActRIIbポリペプチドバリアントを産生するためであってよい。様々なスクリーニングアッセイを以下に提供し、バリアントを評価するのにこのようなアッセイを用いることができる。例えば、ActRIIbポリペプチドバリアントは、ActRIIbリガンドのActRIIbポリペプチドへの結合を防ぐために、ActRIIbポリペプチドに結合する能力に対してスクリーニングされてよい。
【0066】
ActRIIbポリペプチドまたはそのバリアントの活性は、細胞ベースのアッセイまたはin vivoのアッセイにおいて試験することもできる。例えば、造骨細胞または前駆体における骨生成に関与する遺伝子の発現に対する、ActRIIbポリペプチドバリアントの効果を評価することができる。これは、必要に応じて、1つまたは複数の組換えActRIIbリガンドタンパク質(例えば、BMP7)の存在下で行われてよく、細胞は、ActRIIbポリペプチドおよび/またはそのバリアント、ならびに場合によりActRIIbリガンドを生成するようにトランスフェクションされてよい。同様に、ActRIIbポリペプチドはマウスまたは他の動物に投与されてよく、密度または容積などの1つまたは複数の骨の性質を評価することができる。骨の骨折に対する治癒速度も評価することができる。同様にActRIIbポリペプチドまたはそのバリアントの活性を、筋肉細胞、脂肪細胞、および神経細胞において、例えば、以下に記載するアッセイによって、これらの細胞の増殖に対するあらゆる効果に対して試験することができる。このようなアッセイは当技術分野において周知であり、日常的である。SMAD応答性レポーター遺伝子をこのような細胞系において用いて、下流のシグナル伝達に対する効果をモニタリングしてもよい。
【0067】
天然に存在するActRIIbポリペプチドに比べて選択的効力を有するコンビナトリアル由来のバリアントを産生することができる。このようなバリアントは、組換えDNA構築物から発現される場合、遺伝子治療のプロトコールにおいて用いることができる。同様に、変異原性は、対応する野生型のActRIIbポリペプチドと細胞内半減期が劇的に異なるバリアントを生じることができる。例えば、変更されたタンパク質は、天然のActRIIbポリペプチドの破壊または他の点で不活性化をもたらす、タンパク分解性の分解または他の過程に対して、より安定にされることがあり、またはより不安定にされることがある。このようなバリアント、およびこれらをコードする遺伝子は、ActRIIbポリペプチドの半減期を変調することによって、ActRIIbポリペプチドのレベルを変更するように利用されてよい。例えば、半減期が短いと、より一過性の生物学的効果を生じることがあり、誘導性の発現系の部分である場合は、半減期が短いと細胞内の組換えActRIIbポリペプチドレベルのコントロールをより堅固にすることができる。
【0068】
ある実施形態では、本発明のActRIIbポリペプチドは、ActRIIbポリペプチド中に天然に存在するあらゆるものの他に、翻訳語修飾をさらに含むことができる。このような修飾には、それだけには限定されないが、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、およびアシル化が含まれる。その結果、修飾されたActRIIbポリペプチドは、ポリエチレングリコール、脂質、多糖または単糖、およびホスフェートなどの非アミノ酸エレメントを含有することがある。このような非アミノ酸エレメントのActRIIbポリペプチドの機能性に対する効果は、他のActRIIbポリペプチドバリアントに対して本明細書に記載するように試験されてよい。ActRIIbポリペプチドが、ActRIIbポリペプチドの新生型を切断することによって細胞中で生成される場合、翻訳後プロセシングもタンパク質の正確なフォールディングおよび/または機能に重要であり得る。異なる細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、293、WI38、NIH−3T3、またはHEK293)が、特定の細胞機構およびこのような翻訳後活性に特徴的なメカニズムを有しており、ActRIIbポリペプチドの正確な修飾およびプロセシングを確実にするように選択されてよい。
【0069】
ある態様では、ActRIIbポリペプチドの機能的バリアントまたは修飾型には、少なくともActRIIbポリペプチドの部分、および1つまたは複数の融合ドメインを有する融合タンパク質が含まれる。このような融合ドメインのよく知られている例には、それだけには限定されないが、ポリヒスチジン、Glu−Glu、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、タンパク質A、タンパク質G、免疫グロブリン重鎖定常領域(例えば、Fc)、マルトース結合タンパク質(MBP)、またはヒト血清アルブミンが含まれる。融合ドメインは望ましい性質を付与するように選択されてよい。例えば、いくつかの融合ドメインは、アフィニティクロマトグラフィーによる融合タンパク質の単離に特に有用である。アフィニティ精製の目的では、アフィニティクロマトグラフィーに関連のあるマトリクス、例えば、グルタチオンコンジュゲート、アミラーゼコンジュゲート、およびニッケルコンジュゲートもしくはコバルトコンジュゲートした樹脂が用いられる。このようなマトリクスの多くは、(HIS)融合パートナーに有用であるQIAexpress(商標)システム(Qiagen)およびPharmacia GST精製システムなどの「キット」の形態において入手できる。別の一例として、融合ドメインはActRIIbポリペプチドの検出を促進するように選択されてよい。このような検出ドメインの例には、様々な蛍光タンパク質(例えば、GFP)および「エピトープタグ」が含まれ、これらは通常、特定の抗体が入手できる短いペプチド配列である。それに対して特異的なモノクローナル抗体が容易に入手できるよく知られているエピトープタグには、FLAG、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)、およびc−mycタグが含まれる。いくつかの場合において、融合ドメインは、Factor XaまたはThrombinなどのプロテアーゼ切断部位を有しており、これらの部位により関連のプロテアーゼが融合タンパク質を部分的に消化し、それによってそれから組換えタンパク質を遊離できるようになる。遊離されたタンパク質は、次いで、引き続きクロマトグラフィーの分離によって融合ドメインから単離され得る。ある好ましい実施形態では、ActRIIbポリペプチドは、in vivoでActRIIbポリペプチドを安定化するドメイン(「安定化(stabilizer)」ドメイン)と融合している。「安定化(stabilizing)」は、これが分解の低減によるものでも、腎臓によるクリアランスの低減によるものでも、または他の薬物動態学的効果でも、血清半減期を増大するあらゆるものを意味する。免疫グロブリンのFc部分との融合は、広範囲のタンパク質に対して望ましい薬物動態学的性質を付与することが知られている。同様に、ヒトアルブミンに対する融合は望ましい性質を付与することができる。選択され得る他のタイプの融合ドメインには、多量体化(例えば、二量体化、四量体化)ドメインおよび機能的ドメイン(筋肉成長のさらなる刺激など、さらなる生物学的機能を付与する)が含まれる。
【0070】
特定の一例として、本発明は、GDF8アンタゴニストとして融合タンパク質を提供し(例えば、配列番号6)、この融合タンパク質はFcドメインに融合している細胞外(例えば、GDF8−結合性)ドメインを含んでいる。
【0071】
【化6】

好ましくは、Fcドメインは、Asp−265、リシン322、およびAsn−434などの残基に1つまたは複数の変異を有する。ある場合において、1つまたは複数のこれらの変異(例えば、Asp−265変異)を有する変異体Fcドメインは、野生型Fcドメインに比べてFcγ受容体に対する結合能力が低減している。他の場合において、1つまたは複数のこれらの変異(例えば、Asn−434変異)を有する変異体Fcドメインは、野生型Fcドメインに比べて、MHCクラスI関連Fc受容体(FcRN)に対する結合能力が増大している。
【0072】
融合タンパク質の様々なエレメントが、望ましい機能性に一致するあらゆる様式において配列され得ることが理解される。例えば、ActRIIbポリペプチドが非相同ドメインに対してC末端に配置されてよく、またはその代わりに非相同ドメインがActRIIbポリペプチドに対してC末端に配置されてもよい。ActRIIbポリペプチドドメインおよび非相同ドメインは融合タンパク質において隣接している必要はなく、さらなるドメインまたはアミノ酸配列が、いずれかのドメインに対するC末端もしくはN末端、またはドメイン間に含まれていてよい。
【0073】
ある実施形態では、本発明のActRIIbポリペプチドは、ActRIIbポリペプチドを安定化することができる1つまたは複数の修飾を含有している。例えば、このような修飾は、ActRIIbポリペプチドのin vitroの半減期を増強し、ActRIIbポリペプチドの循環半減期を増強し、またはActRIIbポリペプチドのタンパク分解性の分解を低減する。このような安定化の修飾には、それだけには限定されないが、融合タンパク質(例えば、ActRIIbポリペプチドおよび安定化ドメインを含む融合タンパク質を含む)、グリコシル化部位の修飾(例えば、ActRIIbポリペプチドに対するグリコシル化部位の付加を含む)、および炭水化物部分の修飾(例えば、ActRIIbポリペプチドからの炭水化物部分の除去を含む)が含まれる。融合タンパク質の場合、ActRIIbポリペプチドは、IgG分子(例えば、Fcドメイン)などの安定化ドメインに融合している。本明細書で用いられる「安定化ドメイン」の語は、融合タンパク質の場合における融合ドメイン(例えば、Fc)を意味するだけではなく、炭水化物部分などの非タンパク質性の修飾、またはポリエチレングリコールなどの非タンパク質性のポリマーも含んでいる。
【0074】
ある実施形態では、本発明は、ActRIIbポリペプチドの単離された型および/または精製された型(これらは単離された型である)、あるいはその他の点で他のタンパク質が本質的にないものを入手可能にするものである。ActRIIbポリペプチドは、一般に、組換え核酸からの発現によって生成される。
【0075】
ある実施形態では、本発明の(非修飾または修飾の)ActRIIbポリペプチドは、当技術分野では公知の様々な技術によって生成することができる。例えば、このようなActRIIbポリペプチドは、Bodansky, M.、Principles of Peptide Synthesis、Springer Verlag、ベルリン(1993年)およびGrant G. A.(編集)、Synthetic Peptides: A User’s Guide, W. H. Freeman and Company、ニューヨーク(1992年)において記載されているものなど、標準のタンパク質化学の技術を用いて合成することができる。さらに、ペプチド自動合成機は市販されている(例えば、Advanced ChemTech Model 396;Milligen/Biosearch 9600)。あるいは、ActRIIbポリペプチド、そのフラグメントまたはバリアントは、当技術分野において周知であるように、様々な発現系(例えば、E.coli、チャイニーズハムスター卵巣細胞、COS細胞、バキュロウイルス)を用いて組換えで生成してもよい(下記も参照されたい)。さらなる一実施形態では、修飾または非修飾のActRIIbポリペプチドは、天然に存在する、または組換えで生成される全長のActRIIbポリペプチドの消化によって、例えば、プロテアーゼ、例えば、トリプシン、サーモリシン、キモトリプシン、ペプシン、または対合塩基性アミノ酸変換酵素(PACE)を用いて生成することができる。コンピュータ分析(市販のソフトウエア、例えば、MacVector、Omega、PCGene、Molecular Simulation,Inc.を用いた)を用いて、タンパク分解性の切断部位を同定することができる。あるいは、このようなActRIIbポリペプチドを、例えば、化学切断(例えば、臭化シアン、ヒドロキシルアミン)などによる、当技術分野において周知の標準技術など、天然に存在する、または組換えで生成される全長のActRIIbポリペプチドから生成してもよい。
【0076】
3.ActRIIbポリペプチドをコードする核酸
ある態様では、本発明は、本明細書に開示するフラグメント、機能的バリアント、および融合タンパク質を含めた、あらゆるActRIIbポリペプチド(例えば、全長および可溶性のActRIIbポリペプチド)をコードする、単離された、および/または組換えの核酸を提供する。例えば、配列番号4は天然に存在するヒトActRIIb前駆体ポリペプチドをコードするものであり、配列番号5はActRIIbのプロセシングされた細胞外ドメインをコードするものである。対象の核酸は一本鎖でも、または二本鎖でもよい。このような核酸はDNA分子でも、またはRNA分子でもよい。これらの核酸は、ActRIIbポリペプチドを作成するための方法において、または直接的な治療薬剤として(例えば、遺伝子治療の取組みにおいて)用いることができる。
【0077】
ある態様では、ActRIIbポリペプチドをコードする対象の核酸は、配列番号4または5のバリアントである核酸を含むことがさらに理解される。バリアントのヌクレオチド配列は、対立遺伝子のバリアントなど、1つまたは複数のヌクレオチド置換、付加、または欠失によって異なる配列を含んでいる。
【0078】
ある実施形態では、本発明は、配列番号4、5、または18と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一である、単離の、または組換えの核酸配列を提供する。当業者であれば、配列番号4、5、または18に相補的である核酸配列、および配列番号4、5、または18のバリアントも本発明の範囲内であることを理解されよう。さらなる実施形態では、本発明の核酸配列は、非相同のヌクレオチド配列との、またはDNAライブラリーにおける、単離、組換え、および/または融合であってよい。
【0079】
他の実施形態では、本発明の核酸はまた、ヌクレオチド配列、および高度にストリンジェントな条件下で配列番号4、5、または18において指定するヌクレオチド配列にハイブリダイズする核酸によってコードされるActRIIbポリペプチド、配列番号4、5、または18の相補的配列、または先のあらゆるもののフラグメントを含む。上記で論じた通り、当業者であれば、DNAハイブリダイゼーションを促進する好適なストリンジェンシー条件は変化され得ることが容易に理解されよう。当業者であれば、DNAハイブリダイゼーションを促進する好適なストリンジェンシー条件は変化され得ることが容易に理解されよう。例えば、約45℃の6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)のハイブリダイゼーション、その後50℃の2.0×SSCの洗浄を行ってもよい。例えば、洗浄ステップにおける塩濃度は、50℃で約2.0×SSCの低ストリンジェンシーから50℃で約0.2×SSCの高ストリンジェンシーまで選択することができる。さらに、洗浄ステップにおける温度は、約22℃の室温の低ストリンジェンシー条件から約65℃の高ストリンジェンシー条件まで上昇させることができる。温度および塩の両方を変化させてもよく、または温度もしくは塩濃度を一定に保持し、他の変数を変更させてもよい。一実施形態では、本発明は、室温で6×SSCの低ストリンジェンシー条件の後、室温で2×SSCの洗浄の下でハイブリダイズする核酸を提供する。
【0080】
遺伝暗号における縮重のため、配列番号4、5、または18に記載する核酸と異なる単離された核酸も、本発明の範囲内にある。例えば、1つを超えるトリプレットによって数々のアミノ酸が指定される。同じアミノ酸を特定するコドン、またはシノニム(例えば、CAUとCACはヒスチジンに対するシノニムである)により、タンパク質のアミノ酸配列に影響を及ぼさない「サイレントな」変異がもたらされ得る。しかし、対象のタンパク質のアミノ酸配列において変化をもたらすDNA配列の多形が哺乳動物細胞の間に存在することが予想される。当業者であれば、天然の対立遺伝子の変動により、特定のタンパク質をコードする核酸の1つまたは複数のヌクレオチド(最高約3〜5%のヌクレオチド)におけるこれらの変動が所与の種の個体間に存在し得ることを理解されよう。ありとあらゆるこのようなヌクレオチドの変動および結果として生じるアミノ酸の多形は本発明の範囲内である。
【0081】
ある実施形態では、本発明の組換えの核酸は、発現構築物における1つまたは複数のヌクレオチド制御配列に作動可能に連結していてよい。ヌクレオチド制御配列は、一般に、発現に用いられる宿主細胞に好適である。多数のタイプの好適な発現ベクター、および適切な制御配列が、様々な宿主細胞に対して当技術分野では公知である。典型的に、前記1つまたは複数のヌクレオチド制御配列には、それだけには限定されないが、プロモーター配列、リーダーまたはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始および終結配列、翻訳開始および終結配列、ならびにエンハンサーまたはアクチベーター配列が含まれていてよい。当技術分野において公知である構成的プロモーターまたは誘導プロモーターが、本発明によって企図される。プロモーターは、天然に存在するプロモーターであってよく、または1つを超えるプロモーターのエレメントに結びつくハイブリッドのプロモーターであってもよい。発現構築物は、プラスミドなど、エピソーム上の細胞中に存在してよく、または発現構築物を染色体中に挿入してもよい。好ましい一実施形態では、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択を可能にするような選択マーカー遺伝子を含有している。選択マーカー遺伝子は当技術分野において周知であり、用いられる宿主細胞とともに変化する。
【0082】
本発明のある態様では、ActRIIbポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、少なくとも1つの制御配列に作動可能に連結している発現ベクターにおいて、対象の核酸が提供される。制御配列は技術分野で認められており、ActRIIbポリペプチドの直接的な発現に対して選択される。したがって、制御配列の語は、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御エレメントを含んでいる。例示の制御配列は、Goeddel; Gene Expression Technology: Methods in Enzymology、Academic Press、San Diego、カリフォルニア州(1990年)に記載されている。例えば、それに作動可能に連結している場合にDNA配列の発現をコントロールする広範囲の発現コントロール配列のあらゆるものが、ActRIIbポリペプチドをコードするDNA配列を発現するための、これらのベクターにおいて用いられてよい。このような有用な発現コントロール配列には、例えば、SV40の初期および後期プロモーター、tetプロモーター、アデノウイルスまたはサイトメガロウイルスの最初期プロモーター、RSVプロモーター、lac系、trp系、TAC系またはTRC系、その発現がT7 RNAポリメラーゼによって指示されるT7プロモーター、ラムダファージのメジャーオペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質のコントロール領域、3−ホスホグリセレートキナーゼまたは他の糖分解酵素に対するプロモーター、酸ホスファターゼのプロモーター、例えば、Pho5、酵母菌α−接合因子のプロモーター、バキュロウイルス系の多面体プロモーター、および原核細胞もしくは真核細胞、またはこれらのウイルスの遺伝子の発現をコントロールすることが知られている他の配列、ならびにこれらの様々な組合せが含まれる。発現ベクターのデザインは、形質転換される宿主細胞の選択、および/または発現されるのが望まれるタンパク質の型などの因子に依存し得ることを理解されたい。さらに、ベクターのコピー数、ベクターによってコードされるあらゆる他のタンパク質(例えば、抗生物質のマーカー)のコピー数および発現をコントロールする能力も考慮しなければならない。
【0083】
本発明の組換え核酸は、クローニングされた遺伝子またはその部分を、原核細胞、真核細胞(酵母菌、トリ、昆虫、もしくは哺乳動物)、またはその両方のいずれかにおける発現に適するベクター中にライゲーションすることによって生成することができる。組換えのActRIIbポリペプチドを生成するための発現ビヒクルには、プラスミドおよび他のベクターが含まれる。例えば、適切なベクターには、E.coliなどの原核細胞における発現に対して、pBR322由来のプラスミド、pEMBL由来のプラスミド、pEX由来のプラスミド、pBTac由来のプラスミド、およびpUC由来のプラスミドの型のプラスミドが含まれる。
【0084】
いくつかの哺乳動物の発現ベクターは、細菌においてベクターの繁殖を促進するための原核生物の配列、および真核細胞において発現される1つまたは複数の真核生物の転写単位の両方を含有する。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2−dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko−neo、およびpHyg由来のベクターは、真核細胞のトランスフェクションに適する哺乳動物の発現ベクターの例である。これらのベクターのいくつかは、原核細胞および真核細胞の両方における複製および薬物耐性の選択を促進するために、pBR322などの細菌のプラスミドからの配列で修飾されている。あるいは、ウシパピローマウイルス(BPV−1)、またはエプスタインバーウイルス(pHEBo、pREP由来、およびp205)などのウイルスの派生物も、真核細胞におけるタンパク質の一過性の発現に用いることができる。他のウイルス(レトロウイルスを含む)の発現系の例は、以下の遺伝子治療送達系の記載において見出すことができる。プラスミドの調製および宿主生物体の形質転換において使用される様々な方法は、当技術分野において周知である。原核細胞および真核細胞の両方に適する他の発現系、および一般的な組換え手順について、Molecular Cloning A Laboratory Manual、第3版、Sambrook、Fritsch、およびManiatis編集(Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001年)を参照されたい。いくつかの場合において、バキュロウイルス発現系を用いることによって、組換えポリペプチドを発現させるのが望ましいことがある。このようなバキュロウイルス発現系の例には、pVL由来のベクター(例えば、pVL1392、pVL1393、およびpVL941)、pAcUW由来のベクター(例えばpAcUW1)、およびpBlueBac由来のベクター(例えば、β−gal含有pBlueBac III)が含まれる。
【0085】
好ましい一実施形態では、ベクターは、Pcmv−Scriptベクター(Stratagene、La Jolla、Calif.)、pcDNA4ベクター(Invitrogen、Carlsbad、Calif.)、およびpCI−neoベクター(Promega、Madison、Wisc.)など、CHO細胞において対象のActRIIbポリペプチドを生成するようにデザインされる。明らかであるように、対象の遺伝子構築物を用いて、例えば、精製用に、融合タンパク質またはバリアントのタンパク質を含めたタンパク質を生成するなど、培養物中で繁殖された細胞において対象のActRIIbポリペプチドの発現を引き起こすことができる。
【0086】
本開示は、1つまたは複数の対象のActRIIbポリペプチドに対するコード配列(例えば、配列番号4、5、または18)を含む組換え遺伝子をトランスフェクションした宿主細胞にも関する。宿主細胞はあらゆる原核細胞でも、または真核細胞でもよい。例えば、本発明のActRIIbポリペプチドは、E.coliなどの細菌細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルスの発現系を用いて)、酵母菌、または哺乳動物細胞において発現されてよい。他の適切な宿主細胞は、当業者には公知である。
【0087】
したがって、本発明はさらに、対象のActRIIbポリペプチドを生成する方法に関する。例えば、ActRIIbポリペプチドをコードする発現ベクターをトランスフェクションした宿主細胞を好適な条件下で培養して、ActRIIbポリペプチドの発現を生じさせることができる。ActRIIbポリペプチドは、ActRIIbポリペプチドを含む細胞と培地との混合物から分泌され、単離されてよい。あるいは、ActRIIbポリペプチドは細胞質または膜分画中に保持されていてよく、細胞を回収し、溶解し、タンパク質を単離してもよい。細胞培養物は、宿主細胞、培地、および他の副産物を含んでいる。細胞培養に適する培地は当技術分野において周知である。対象のActRIIbポリペプチドを、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、限外ろ過、電気泳動、ActRIIbポリペプチドの特定のエピトープに特異的な抗体でのイムノアフィニティ精製、およびActRIIbポリペプチドに融合しているドメインに結合する薬剤を用いるアフィニティ精製(例えば、ActRIIb−Fc融合物を精製するのにタンパク質Aカラムを用いてもよい)を含めた、タンパク質を精製するのに当技術分野では公知の技術を用いて、細胞培養培地、宿主細胞、または両方から単離することができる。好ましい一実施形態では、ActRIIbポリペプチドは、その精製を促進するドメインを含んでいる融合タンパク質である。好ましい一実施形態では、精製は、あらゆる順序で以下の3つ以上:タンパク質Aクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、および陽イオン交換クロマトグラフィーを含めた一連のカラムクロマトグラフィーのステップによって実現される。精製は、ウイルスのろ過およびバッファーの交換で完了してよい。場合により、精製スキームは以下を伴い:Tris緩衝食塩水溶液中タンパク質(pH8.0)(TBS)を有するMabSelect(商標)タンパク質Aカラム(GE Healthcare)、TBS(150 mM NaCl、pH8.0)およびTBS(50mM NaCl、pH8.0)中洗浄、pH3.0の0.1mMグリシン中に溶出;溶出はTBS pH8.0中Qセファロースカラム上を通過させてよく、200〜250、210〜250、220〜250、210〜230、215〜225、または225〜235mM NaClからのいずれかを含有するTBS中に溶出し;溶出液を1.1M NHSO、50mM Tris pH8.0に交換し、同じバッファー中で洗浄し、200〜250、210〜250、220〜250、210〜230、215〜225、または225〜235mM NHSO からの随所のpH7.2または7.4のリン酸緩衝食塩水中で溶出してもよい。溶出した材料を透析し、ウイルスろ過にかけ、最終の調合に用いることができる。
【0088】
別の一実施形態では、組換えのActRIIbポリペプチドの望ましい部分のN末端にポリ(His)/エンテロキナーゼ切断部位配列などの精製リーダー配列をコードする融合遺伝子を、Ni2+金属樹脂を用いたアフィニティクロマトグラフィーによって、発現された融合タンパク質を精製することができる。次いで、精製リーダー配列を引き続き、エンテロキナーゼでの処理によって除去して精製されたActRIIbポリペプチドをもたらすことができる(例えば、Hochuliら、(1987年)J. Chromatography、411巻、177頁;およびJanknechtら、PNAS USA、88巻、8972頁を参照されたい)。
【0089】
融合遺伝子を作成するための技術はよく知られている。本質的に、異なるポリペプチド配列をコードする様々なDNAフラグメントの接合を、ライゲーション用の平滑末端またはスタガーエンド(stagger−ended)末端、好適な末端を提供する制限酵素消化、適宜突出末端の充填、望ましくない接合を避けるためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素的ライゲーションを用いて従来の技術に従って行う。別の一実施形態では、融合遺伝子を、DNA自動合成機を含めた従来の技術によって合成することができる。あるいは、2つの連続する遺伝子フラグメント間に相補性のオーバーハングを生じるアンカープライマーを用いて、遺伝子フラグメントのPCR増幅を行うことができ、引き続き2つの連続する遺伝子フラグメントをアニーリングしてキメラの遺伝子配列を産生することができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubelら編集、John Wiley & Sons: 1992年を参照されたい)。
【0090】
4.代替のアクチビンActRIIbアンタゴニスト
可溶性ActRIIbポリペプチド、特にActRIIb−Fc融合物は好ましいアンタゴニストであるが、抗ActRIIb抗体、アンチセンス、ActRIIbの生成を阻害するRNAiまたはリボザイム核酸、および他のActRIIbの阻害物質、特にActRIIbの結合を破壊するものを含めた、他のタイプのActRIIbアンタゴニストが有用であることが予想される。
【0091】
ActRIIbポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIbポリペプチド)と特異的に反応性である抗体、およびリガンドに対してActRIIbポリペプチドと競合的に結合し、または他の点でActRIIb媒介性シグナル伝達を阻害する抗体が、ActRIIbポリペプチド活性のアンタゴニストとして用いられてよい。
【0092】
ActRIIbポリペプチドに由来する免疫原を用いることによって、抗タンパク質/抗ペプチドの抗血清またはモノクローナル抗体を標準のプロトコールによって作製することができる(例えば、Antibodies: A Laboratory Manual、HarlowおよびLane編集(Cold Spring Harbor Press: 1988年)を参照されたい)。マウス、ハムスター、またはウサギなどの哺乳動物を、ActRIIbポリペプチドの免疫原性型、抗体反応を誘発することができる抗原フラグメント、または融合タンパク質で免疫化することができる。タンパク質またはペプチドに対して免疫原性を付与するための技術には、担体に対するコンジュゲーション、または当技術分野において周知の他の技術が含まれる。ActRIIbポリペプチドの免疫原性部分を、アジュバントの存在下で投与してもよい。免疫化の進行を、血漿または血清における抗体タイターを検出することによってモニタリングすることができる。標準のELISAまたは他の免疫アッセイを、抗原としての免疫原とともに用いて、抗体のレベルを評価することができる。
【0093】
ActRIIbポリペプチドの抗原調製物で動物を免疫化した後、抗血清を得ることができ、所望により、ポリクローナル抗体を血清から単離することができる。モノクローナル抗体を生成するには、免疫化した動物から抗体産生細胞(リンパ球)を回収し、標準の体細胞融合手順によって、ミエローマ細胞などの不死化した細胞と融合してハイブリドーマ細胞を得ることができる。このような技術は当技術分野において周知であり、例えば、ハイブリドーマ技術(当初KohlerおよびMilstein、(1975年)Nature、256巻、495〜497頁によって開発された)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbarら、(1983年) Immunology Today、4巻、72頁)、およびヒトモノクローナル抗体を生成するためのEBV−ハイブリドーマ技術(Coleら、(1985年)Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss, Inc.、77〜96頁)が含まれる。ハイブリドーマ細胞を、ActRIIbポリペプチドと特異的に反応性の抗体、およびこのようなハイブリドーマ細胞を含む培養物から単離したモノクローナル抗体の生成に対して免疫化学的にスクリーニングすることができる。
【0094】
本明細書で用いられる「抗体」の語は、例えば、あらゆるイソ型(IgG、IgA、IgM、IgEなど)の抗体全体を含み、選択された抗原と反応性である免疫グロブリンのフラグメントまたはドメインを含むものとされる。抗体を、従来の技術、ならびに有用性および/または対象の特定のエピトープとの相互作用に対してスクリーニングされたフラグメントを用いてフラグメント化することができる。このように、この語は、ある種のタンパク質と選択的に反応することができる抗体分子の、タンパク分解性に切断された部分または組換えで調製された部分のセグメントを含んでいる。このようなタンパク分解性および/または組換えのフラグメントの非限定的な例には、Fab、F(ab’)2、Fab’、Fv、およびペプチドリンカーによってジョイントしているV[L]および/またはV[H]ドメインを含んでいる単鎖抗体(scFv)が含まれる。scFvは共有結合性に、または非共有結合性に連結して2つまたはそれを超える結合部位を有する抗体を形成することができる。抗体の語はまた、ポリクローナル、モノクローナル、または抗体の精製された他の調製物、および組換え抗体を含む。「組換え抗体」の語は、単鎖抗体から開発されたヒト化抗体または完全なヒト抗体など、分子生物学の技術を用いて構築されている核酸から発現された、抗体、または免疫グロブリンの抗原結合性ドメインを意味する。単一ドメイン、および単鎖抗体も「組換え抗体」の語の範囲内に含まれる。
【0095】
ある実施形態では、本発明の抗体はモノクローナル抗体であり、ある実施形態では、本発明は新規な抗体を産生するための利用可能な方法を作成するものである。例えば、ActRIIbポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するための方法は、検出可能な免疫反応を刺激するのに効果的な抗原ポリペプチドを含む免疫原性組成物のある量をマウスに投与し、マウスから抗体産生細胞(例えば、脾臓からの細胞)を得、抗体産生細胞をミエローマ細胞と融合して抗体産生ハイブリドーマを得、抗体産生ハイブリドーマを試験して抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマを同定することを含むことができる。得られた後は、場合によりハイブリドーマ由来細胞が抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体を生成する培養条件において、ハイブリドーマを細胞培養物中で繁殖させることができる。モノクローナル抗体は細胞培養物から精製することができる。
【0096】
抗体に関して用いられる「と特異的に反応性である」の形容語は、当技術分野において一般的に理解されている通り、抗体が対象の抗原(例えば、ActRIIbポリペプチド)と対象ではない他の抗原との間で十分に選択性であり、抗体が、最小でも、特定のタイプの生物学的試料中の対象の抗原の存在を検出するのに有用であることを意味するものとされる。治療適用など、抗体を使用するある方法において、結合における高度の特異性が望ましいことがある。モノクローナル抗体は一般に、望ましい抗原と交差反応性のポリペプチドとの間を効果的に識別する傾向が(ポリクローナル抗体に比べて)高い。抗体:抗原相互作用の特異性に影響を及ぼす特徴の1つは、抗体の抗原に対する親和性である。望ましい特異性は、ある範囲の様々な親和性で到達され得るが、一般に好ましい抗体は、約10−6M、10−7M、10−8M、10−9Mまたはそれ未満の親和性(解離定数)を有する。
【0097】
さらに、望ましい抗体を同定するために抗体をスクリーニングするのに用いられる技術は、得られた抗体の性質に影響を及ぼすことがある。例えば、溶液中の抗原に結合させるために抗体を用いようとする場合、溶液の結合性を試験するのが望ましいことがある。特定の望ましい抗体を同定するために、抗体と抗原との間の相互作用を試験するのに様々な異なる技術が利用可能である。このような技術には、ELISA、表面プラズモン共鳴結合アッセイ(例えば、Biacore(商標)結合アッセイ、Biacore AB、Uppsala、スウェーデン)、サンドイッチアッセイ(例えば、IGEN International,Inc.、Gaithersburg、Marylandの常磁性ビーズシステム)、ウエスタンブロット、免疫沈降アッセイ、および免疫組織化学が含まれる。
【0098】
ActRIIbアンタゴニストである核酸化合物のカテゴリーの例には、アンチセンス核酸、RNAi構築物、および触媒性の核酸構築物が含まれる。核酸構築物は一本鎖でも、または二本鎖でもよい。二本鎖化合物はオーバーハングまたは非相補性の領域も含み、この場合、鎖の一方または他方が一本鎖である。一本鎖化合物は自己相補的な領域を含むことができ、これはその化合物が、二重らせん構造の領域と一緒に、いわゆる「ヘアピン」または「ステムループ」構造を形成することを意味する。核酸化合物は、全長のActRIIb核酸配列またはアクチビンβ、β、β、またはβ核酸配列のわずか1000ヌクレオチド、わずか500ヌクレオチド、わずか250ヌクレオチド、わずか100ヌクレオチド、またはわずか50、35、25、22、20、18、もしくは15ヌクレオチドからなる領域に相補的であるヌクレオチド配列を含むことができる。相補性の領域が少なくとも8ヌクレオチド、場合により約18ヌクレオチドから35ヌクレオチドであるのが好ましい。相補性の領域は、コード配列部分など、標的の転写物のコード配列または非コード配列であるイントロン内に含まれることがある。一般に、核酸化合物は、長さ約8ヌクレオチドから約500ヌクレオチド、または場合により長さ約14ヌクレオチドから約50ヌクレオチドである塩基対を有する。核酸はDNAでも(特にアンチセンスとしての使用に対して)、RNAでも、またはRNA:DNAハイブリッドであってもよい。あらゆる1本の鎖はDNAとRNAとの混合物、およびDNAまたはRNAのいずれかと容易に分類することができない修飾された型を含んでいてよい。同様に、二本鎖化合物は、DNA:DNA、DNA:RNA、またはRNA:RNAであってよく、あらゆる1本の鎖はやはり、DNAとRNAとの混合物、およびDNAまたはRNAのいずれかと容易に分類することができない修飾された型を含んでいてよい。核酸化合物は、バックボーン(ヌクレオチド間連結を含む、天然の核酸における糖−リン酸部分)または塩基部分(天然の核酸のプリンもしくはピリミジン部分)に対する1つまたは複数の修飾を含めた、あらゆる様々な修飾を含んでいてよい。アンチセンス核酸化合物の長さは約15ヌクレオチドから約30ヌクレオチドであるのが好ましく、血清中、細胞中、または化合物が由来する可能性がある場所(例えば、経口的に送達される化合物の場合は胃、吸入される化合物の場合は肺)における安定性などの特徴を改善するための1つまたは複数の修飾をしばしば含有する。RNAi構築物の場合、標的転写物に対して相補的な鎖は、一般に、RNAまたはその修飾である。他の鎖はRNAでも、DNAでも、またはあらゆる他の変形であってもよい。二本鎖または一本鎖の「ヘアピン」RNAi構築物の二重鎖部分は、それがダイサー基質として働くかぎり、一般に長さ18ヌクレオチドから40ヌクレオチドであり、場合により長さ約21ヌクレオチドから23ヌクレオチドである。触媒的または酵素的な核酸はリボザイムまたはDNA酵素であってよく、やはり修飾された型を含有することができる。核酸化合物は、生理学的条件下、およびナンセンスまたはセンスのコントロールがほとんどまたはまったく効果がない濃度で細胞と接触させた場合に、約50%、75%、90%、またはそれを超えて標的の発現を阻害することができる。核酸化合物の効果を試験するのに好ましい濃度は1マイクロモル、5マイクロモル、および10マイクロモルである。核酸化合物を、例えば、赤血球細胞レベルに対する効果に対して試験してもよい。
【0099】
ある実施形態では、ActRIIbアンタゴニストは、アクチビンの生理活性に拮抗し、かつ/またはアクチビンに結合するフォリスタチンポリペプチドであってよい。「フォリスタチンポリペプチド」の語には、あらゆる天然に存在するフォリスタチンのポリペプチド、および有用な活性を保持しているそのバリアント(変異体、フラグメント、融合物、およびペプチドミメチック型を含む)を含むポリペプチドが含まれ、フォリスタチンのあらゆる機能的な単量体または多量体もさらに含まれる。アクチビン結合性の性質を保持しているフォリスタチンポリペプチドのバリアントは、フォリスタチンとアクチビンとの相互作用を伴う以前の研究に基づいて同定することができる。例えば、国際公開第WO2008/030367号は、アクチビン結合に重要であることが示されている特異的なフォリスタチンドメイン(「FSD」)を開示している。以下、配列番号9〜11において示す通り、N末端フォリスタチンドメイン(「FSND」配列番号9)、FSD2(配列番号10)、およびより低い程度でFSD1(配列番号11)は、アクチビン結合に重要なフォリスタチン内の例示のドメインを表すものである。さらに、ポリペプチドのライブラリーを作成し、試験するための方法は、ActRIIbポリペプチドの状況において上記に記載されており、このような方法もまたフォリスタチンのバリアントを作成し、試験することに関係する。フォリスタチンポリペプチドは、フォリスタチンポリペプチドの配列と少なくとも約80%同一であり、場合により少なくとも85%、90%、95%、97%、99%、またはそれを超えて同一である配列を有する、あらゆる公知のフォリスタチンの配列に由来するポリペプチドを含んでいる。フォリスタチンポリペプチドの例には、成熟フォリスタチンポリペプチド、または例えば、国際公開第WO2005/025601号において記載されているヒトフォリスタチン前駆体ポリペプチド(配列番号7)のより短いイソ型もしくは他のバリアントが含まれる。
【0100】
ヒトフォリスタチン前駆体ポリペプチドイソ型FST344は以下の通りである:
【0101】
【化7】

シグナルペプチドには一本線の下線を付け、最後の太字における27個の残基は、以下のより短いフォリスタチンイソ型FST317(NP_006341)に比べたさらなるアミノ酸を表す。
【0102】
ヒトフォリスタチン前駆体ポリペプチドイソ型FST317は以下の通りである:
【0103】
【化8】

シグナルペプチドには一本線の下線を付けてある。
【0104】
N末端フォリスタチンドメイン(FSND)配列は以下の通りである:
【0105】
【化9】

FSD1およびFSD2配列は以下の通りである:
【0106】
【化10】

他の実施形態では、本明細書において用いるためのアンタゴニストは、アクチビンの生理活性に拮抗し、ならびに/またはActRIIb−Fcに類似するスペクトルでアクチビンおよび他のリガンドに結合する、フォリスタチン様関連遺伝子(FLRG)であってよい。「FLRGポリペプチド」の語は、あらゆる天然に存在するFLRGのポリペプチド、および有用な活性を保持しているあらゆるそのバリアント(変異体、フラグメント、融合物、およびペプチドミメチック型を含む)を含めたポリペプチドを含む。アクチビン結合性の性質を保持しているFLRGポリペプチドのバリアントは、FLRGとアクチビンとの相互作用をアッセイするためのルーチン法を用いて同定することができる。例えば、米国特許第6,537,966号を参照されたい。さらに、ポリペプチドのライブラリーを作成し、試験するための方法は、ActRIIbポリペプチドの状況において上記に記載されており、このような方法もまた、FLRGのバリアントを作成し、試験することに関係する。FLRGポリペプチドは、FLRGポリペプチドの配列と少なくとも約80%同一であり、場合により少なくとも85%、90%、95%、97%、99%、またはそれを超えて同一である配列を有するあらゆる公知のFLRGの配列に由来するポリペプチドを含んでいる。
【0107】
ヒトFLRG前駆体ポリペプチドは以下の通りである:
【0108】
【化11】

シグナルペプチドには一本線の下線を付けてある。
【0109】
ある実施形態では、フォリスタチンポリペプチドおよびFLRGポリペプチドの機能的バリアントまたは修飾された型には、フォリスタチンポリペプチドまたはFLRGポリペプチドの少なくとも一部分を有する融合タンパク質、および、例えば、ポリペプチドの単離、検出、安定化、または多量体化を促進するドメインなどの1つまたは複数の融合ドメインが含まれる。適切な融合ドメインは、ActRIIbポリペプチドに関して上記に詳しく論じてある。一実施形態では、アンタゴニストは、Fcドメインに融合しているフォリスタチンポリペプチドのアクチビン結合性部分を含む融合タンパク質である。別の一実施形態では、アンタゴニストは、Fcドメインに融合しているFLRGポリペプチドのアクチビン結合性部分を含む融合タンパク質である。フォリスタチンおよびFLRGは、ピコモル範囲のアクチビンAに対する親和性を有すると、文献中に、およびFLRGに関して出願者らによって示されており、これらの薬剤はActRIIb−Fcと同程度にアクチビンAのシグナル伝達を阻害することが指摘される。
【0110】
5.スクリーニングアッセイ
ある態様では、本発明は、ActRIIbシグナル伝達経路のアゴニストまたはアンタゴニストである化合物(薬剤)を同定するための、ActRIIbポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIbポリペプチド)およびアクチビンまたは他のActRIIbリガンドの使用に関する。このスクリーニングによって同定される化合物を試験して、in vitroで骨成長もしくは石灰化を変調し、または筋肉成長を刺激するこれらの能力を評価することができる。場合により、これらの化合物を動物モデルにおいてさらに試験して、in vivoで組織の増殖を変調するこれらの能力を評価することができる。
【0111】
ActRIIbポリペプチドを標的化することによる組織の増殖の変調に対する治療薬のスクリーニングに、多くの取組みが存在する。ある実施形態では、化合物のハイスループットのスクリーニングを行って、骨または筋肉に対するActRIIb媒介性の効果を撹乱する薬剤を同定することができる。ある実施形態では、アッセイを行って、アクチビンまたは別のリガンドに対するActRIIbポリペプチドの結合を特異的に阻害または低減する化合物をスクリーニングし、同定する。あるいは、アッセイを用いて、アクチビンまたは別のリガンドに対するActRIIbポリペプチドの結合を増強する化合物を同定することができる。さらなる一実施形態では、化合物がActRIIbポリペプチドと相互作用する能力によって、化合物を同定することができる。
【0112】
様々なアッセイフォーマットが十分であり、本開示に鑑みて、本明細書に明白に記載されていないものもやはり当業者であれば理解されよう。本明細書に記載する通り、本発明の試験化合物(薬剤)は、あらゆるコンビナトリアル化学の方法によって作り出すことができる。あるいは、対象の化合物は、in vivoまたはin vitroで合成される天然に存在する生体分子であってよい。組織成長のモジュレーターとして働く能力に対して試験される化合物(薬剤)は、例えば、細菌、酵母菌、植物、または他の生物体(例えば、天然物)によって生成されてよく、化学的に生成されてよく(例えば、ペプチドミメチックを含む小分子)、または組換えで生成されてよい。本発明が企図する試験化合物には、非ペプチド性有機分子、ペプチド、ポリペプチド、ペプチドミメチック、糖、ホルモン、および核酸分子が含まれる。特定の一実施形態では、試験薬剤は、分子量が約2000ダルトン未満である有機小分子である。
【0113】
本発明の試験化合物は、1個の分離している実体として提供されてよく、またはコンビナトリアル化学によって作成されるなど、複雑さの大きいライブラリーにおいて提供されてもよい。これらのライブラリーは、例えば、アルコール、ハロゲン化アルキル、アミン、アミド、エステル、アルデヒド、エーテル、および他のクラスの有機化合物を含むことができる。試験化合物の試験系に対する提示は、特に最初のスクリーニングステップにおいて、単離された型において、または化合物の混合としてのいずれかであってよい。場合により、化合物は、場合により他の化合物と誘導体化されてよく、化合物の単離を促進する誘導体化群を有していてよい。誘導体化群の非限定的な例には、ビオチン、フルオレセイン、ジゴキシゲニン、緑色蛍光タンパク質、同位体、ポリヒスチジン、磁性ビース、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、光で活性化され得る架橋剤、またはこれらのあらゆる組合せが含まれる。
【0114】
化合物および天然抽出物のライブラリーを試験する多くの薬物スクリーニングプログラムにおいて、所与の期間に調査される化合物の数を最大にするために、ハイスループットのアッセイが望ましい。精製されたタンパク質または半精製のタンパク質と引き出され得るなど、無細胞系において行われるアッセイは、これらが試験化合物によって媒介される分子標的における変更を速やかに展開し、比較的容易に検出できるように産生され得ることから、「一次」スクリーニングとしてしばしば好まれる。さらに、試験化合物の細胞毒性またはバイオアベイラビリティの効果は、in vitro系において一般に無視され得ることがあり、アッセイはその代わりに、ActRIIbポリペプチドとアクチビンとの間の結合親和性の変更において明らかであり得るように、分子標的に対する薬物の効果に主に注目している。
【0115】
単なる説明として、本発明の例示のスクリーニングアッセイにおいて、対象の化合物を、通常アクチビンに結合することができる、単離され、精製されたActRIIbポリペプチドと接触させる。次いで、化合物とActRIIbポリペプチドとの混合物に、ActRIIbリガンドを含む組成物を加える。ActRIIb/アクチビン複合体の検出および定量により、ActRIIbポリペプチドとアクチビンとの間の複合体形成を阻害(または助長)する化合物の効果を決定するための手段がもたらされる。化合物の効果は、様々な濃度の試験化合物を用いて得たデータから、用量反応曲線を生成することによって評価することができる。さらに、比較用のベースラインを提供するためにコントロールアッセイを行ってもよい。例えば、コントロールアッセイにおいて、単離され、精製されたアクチビンを、ActRIIbポリペプチドを含有する組成物に加え、ActRIIb/アクチビン複合体の形成を試験化合物の非存在下で定量する。一般に、反応物が混合され得る順序は変動してよく、同時に混合されてもよい。さらに、精製されたタンパク質の代わりに、細胞抽出物および溶解物を用いて適切な無細胞アッセイ系にしてもよい。
【0116】
ActRIIbポリペプチドとアクチビンとの間の複合体形成は、様々な技術によって検出することができる。例えば、複合体の形成の変調は、例えば、検出可能な程度に標識されているタンパク質、例えば、放射標識されている(例えば、32P、35S、14C、もしくはH)、蛍光標識されている(例えば、FITC)、または酵素標識されているActRIIbポリペプチドもしくはアクチビンを用いて、イムノアッセイによって、あるいはクロマトグラフィー検出によって、定量化することができる。
【0117】
ある実施形態では、本発明は、ActRIIbポリペプチドとその結合タンパク質との間の相互作用の度合いを直接的または間接的のいずれかで測定することにおける、蛍光偏光測定法および蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)アッセイの使用を企図するものである。さらに、光学波長に基づくもの(PCT国際公開第WO96/26432号および米国特許第5,677,196号)、表面プラズモン共鳴(SPR)、表面電荷センサー、および表面力センサーなどの他の検出様式が、本発明の多くの実施形態に適合性である。
【0118】
さらに、本発明は、ActRIIbポリペプチドとその結合タンパク質との間の相互作用を破壊または助長する薬剤を同定するための「2ハイブリッドアッセイ」としても知られている相互作用トラップアッセイの使用を企図するものである。例えば、米国特許第5,283,317号;Zervosら、(1993年)、Cell、72巻、223〜232頁; Maduraら(1993年)、J Biol Chem、268巻、12046〜12054頁; Bartelら、(1993年)Biotechniques、14巻、920〜924頁;およびIwabuchiら、(1993年)、Oncogene、8巻、1693〜1696頁)を参照されたい。特定の一実施形態では、本発明は、ActRIIbポリペプチドとその結合タンパク質との間の相互作用を解離する化合物(例えば、小分子またはペプチド)を同定するための2つの逆のハイブリッド系の使用を企図するものである。例えば、VidalおよびLegrain、(1999年)Nucleic Acids Res、27巻、919〜29頁;VidalおよびLegrain、(1999年)Trends Biotechnol、17巻、374〜81頁; ならびに米国特許第5,525,490号、第5,955,280号、および第5,965,368号を参照されたい。
【0119】
ある実施形態では、対象の化合物は、本発明のActRIIbまたはアクチビンポリペプチドと相互作用するその能力によって同定される。化合物とActRIIbまたはアクチビンポリペプチドとの間の相互作用は共有結合性でも、または非共有結合性でもよい。例えば、このような相互作用は、光架橋、放射標識したリガンド結合、およびアフィニティクロマトグラフィーを含めたin vitroの生化学的方法を用いて、タンパク質レベルで同定することができる(Jakoby WBら、1974年、Methods in Enzymology、46巻、1頁)。ある場合において、化合物を、アクチビンまたはActRIIbポリペプチドに結合する化合物を検出するためのアッセイなど、メカニズムベースのアッセイにおいてスクリーニングしてもよい。これには、固相または液相の結合性イベントが含まれてよい。あるいは、アクチビンまたはActRIIbポリペプチドをコードする遺伝子を、レポーター系(例えば、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、または緑色蛍光タンパク質)と一緒に細胞中にトランスフェクションし、好ましくはハイスループットのスクリーニングによってライブラリーに対して、またはライブラリーの個々のメンバーで、スクリーニングしてもよい。自由エネルギーにおける変化を検出する結合アッセイなど、他のメカニズムベースの結合アッセイを用いてもよい。結合アッセイは、ウエル、ビーズ、もしくはチップに固定され、または固定化抗体によって捕獲され、またはキャピラリー電気泳動法によって分離された標的で行うことができる。結合している化合物を、通常、比色分析または蛍光または表面プラズモン共鳴を用いて検出することができる。
【0120】
ある態様では、本発明は、骨形成を変調し(刺激または阻害し)、骨量を増大するための方法および薬剤を提供する。したがって、同定されるあらゆる化合物を、全体の細胞または組織において、in vitroまたはin vivoで試験して、骨または軟骨の成長を変調するその能力を確認することができる。当技術分野において公知の様々な方法を、この目的に利用することができる。
【0121】
例えば、ActRIIbもしくはアクチビンポリペプチド、または試験化合物の、骨または軟骨の成長に対する効果を、細胞ベースのアッセイにおいて、Msx2の誘導、または骨芽前駆細胞の造骨細胞への分化を測定することによって決定することができる(例えば、Daluiskiら、Nat Genet.、2001年、27巻(1号)、84〜8頁;Hinoら、Front Biosci.、2004年、9巻、1520〜9頁を参照されたい)。細胞ベースのアッセイの別の一例は、間葉系前駆細胞および造骨細胞における、対象のActRIIbまたはアクチビンポリペプチドおよび試験化合物の骨原性の活性を分析することを含む。説明すると、アクチビンまたはActRIIbポリペプチドを発現する組換えアデノウイルスを構築して、多能性間葉系前駆C3H10T1/2細胞、前増骨C2C12細胞、および造骨TE−85細胞に感染させることができる。次いで、アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、およびマトリクス石灰化の誘導を測定することによって、骨原性の活性を決定する(例えば、Chengら、J bone Joint Surg Am.、2003年、85A巻(8号)、1544〜52頁を参照されたい)。
【0122】
本発明は、骨または軟骨の成長を測定するためのin vivoのアッセイも企図するものである。例えば、Namkung−Matthaiら、Bone、28巻、80〜86頁(2001年)は、骨折後の初期の間に骨修復が研究されるラット骨粗鬆症モデルを公開している。Kuboら、Steroid Biochemistry & Molecular Biology、68巻、197〜202頁(1999年)はまた、骨折後の後期の間に骨修復が研究されるラット骨粗鬆症モデルを公開している。Anderssonら、J. Endocrinol.、170巻、529〜537頁は、マウスが卵巣切除されているマウス骨粗鬆症モデルを記載しており、卵巣切除によりマウスの実質的な骨塩含量および骨塩密度の喪失がもたらされ、骨梁骨は骨塩密度の大まかに50%を失う。骨密度は、卵巣切除したマウスにおいて、副甲状腺ホルモンなどの因子の投与によって増大することがある。ある態様では、本発明は、当技術分野では公知の骨折治癒アッセイを使用する。これらのアッセイには、例えば、骨折を引き起こすための、および骨折の程度を測定するための、ならびに修復のプロセスの実験プロトコールの開示に対して、その全文において、参照によって組み入れられる米国特許第6,521,750号に記載されている、骨折技術、組織学的分析、および生化学的アッセイが含まれる。
【0123】
ある態様では、本発明は、例えば、ActRIIbポリペプチドおよび/またはActRIIbリガンドの機能に拮抗することによって、骨成長を刺激し、骨量を増大するための方法および薬剤を提供する。したがって、同定されるあらゆる化合物を、筋肉成長を変調するその能力を確かめるために、in vitroまたはin vivoにおいて全体の細胞または組織において試験することができる。当技術分野において公知の様々な方法が、この目的で利用されてよい。例えば、ActRIIbリガンド(例えば、GDF8)に結合することによって活性化されるActRIIbタンパク質によるシグナル伝達が低減または阻止されるように、本発明の方法が行われる。生物体における筋肉組織の成長が、生物体における筋肉量が、ActRIIbタンパク質によるシグナル伝達がそれほど行われていなかった対応する生物体(または生物体の集団)の筋肉量と比べて、生物体における筋肉量の増大をもたらすことが認められよう。
【0124】
例えば、ActRIIbポリペプチドまたは試験化合物の筋肉細胞の成長/増殖に対する効果を、Pax−3およびMyf−5の遺伝子発現を測定することによって決定することができるが、これらの遺伝子は筋原細胞の増殖に付随しており、MyoD遺伝子の発現は筋肉の分化に関連する(例えば、Amthorら、Dev Biol.、2002年、251巻、241〜57頁)。GDF8はPax−3およびMyf−5の遺伝子発現を下方制御し、MyoDの遺伝子発現を防ぐことが知られている。ActRIIbポリペプチドまたは試験化合物は、GDF8のこの活性に拮抗することが予想される。細胞ベースのアッセイの別の一例は、ActRIIbポリペプチドまたは試験化合物の存在下、C(2)C(12)筋芽細胞などの筋芽細胞の増殖を測定することを含む(例えば、Thomasら、J Biol Chem. 2000年、275巻、40235〜43頁)。
【0125】
本発明は、筋肉量および強度を測定するためのin vivoのアッセイも企図するものである。例えば、Whittemoreら(Biochem Biophys Res Commun.、2003年、300巻、965〜71頁)は、マウスにおける骨格筋量の増大および握力の増大を測定する方法を公開している。場合により、この方法は、筋肉量が限定的である疾患などの筋肉の疾患または状態に対する試験化合物(例えば、ActRIIbポリペプチド)の治療効果を決定するのに用いられてよい。
【0126】
本発明のスクリーニングアッセイは、対象のActRIIbポリペプチドおよびActRIIbポリペプチドのバリアントだけでなく、ActRIIbポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニストを含めたあらゆる試験化合物にも適用することが理解される。さらに、これらのスクリーニングアッセイは、薬物標的の検証および品質管理の目的に有用である。
【0127】
6.例示の治療的使用
ある実施形態では、本発明のActRIIbアンタゴニスト(例えば、ActRIIbポリペプチド)は、同化的な骨成長を刺激し、溶骨性の骨腫瘍を処置し、かつ/または筋肉成長から利益を得る疾患もしくは状態を、処置または防止するために用いられてよい。ある実施形態では、ActRIIbアンタゴニスト、特にActRIIb−Fc構築物は、癌に関連する骨喪失を処置または防止するのに用いられてよい。ある実施形態では、本発明は、個体に治療有効量のActRIIbアンタゴニスト、特にActRIIbポリペプチドを投与することによって、それを必要とする個体における骨損傷を処置または防止する方法を提供する。ある実施形態では、本発明は、個体に治療有効量のActRIIbアンタゴニスト、特にActRIIbポリペプチドを投与することによって、それを必要とする個体における骨成長または石灰化を促進する方法を提供する。これらの方法は、好ましくは、動物、より好ましくはヒトの治療的処置および予防的処置を目的とする。ある実施形態では、本開示は、低骨密度または骨強度の低下に付随する障害を処置するための、ActRIIbアンタゴニスト(特に、可溶性ActRIIbポリペプチドおよびActRIIbを標的にする中和抗体)の使用を提供する。
【0128】
本明細書で用いられる、障害または状態を「防止する」治療は、統計学的試料において、非処置の対照試料に比べて処置試料における障害もしくは状態の出現を低減し、または非処置の対照試料に比べて、障害もしくは状態の1つもしくは複数の症状の発症を遅らせ、または重症度を低下させる化合物を意味する。本明細書で用いられる「処置する」の語は、状態が確立された後、言及した状態の予防、または状態の寛解もしくは除去を含む。いずれの場合も、防止または処置は、医師によってもたらされる診断および治療薬の投与の意図された結果において識別されてよい。
【0129】
本開示は、骨および/もしくは軟骨の形成を誘発し、骨喪失を防ぎ、骨石灰化を増大し、または骨の脱石灰化を防ぐ方法を提供する。例えば、対象のActRIIbアンタゴニストは、ヒトおよび他の動物における、骨粗鬆症の処置、および骨の骨折の治癒、および軟骨の欠損における適用を有する。ActRIIbポリペプチドは、無症状の低骨密度と診断される患者において、骨粗鬆症の発症に対する予防措置として有用であり得る。
【0130】
特定の一実施形態では、本発明の方法および組成物は、ヒトおよび他の動物における骨の骨折の治癒および軟骨の欠損において医薬上の有用性を見出し得る。対象の方法および組成物は、皮下骨折および開放骨折の低減において、ならびに人工関節の固定の改善においても、予防的使用を有することができる。骨原性薬剤によって誘発される新規な骨形成は、先天性の、外傷誘発性の、または腫瘍切除術が誘発する頭蓋顔面欠損の修復に寄与し、美容形成外科においても有用である。ある場合において、対象のActRIIbアンタゴニストは、骨形成細胞を誘引し、骨形成細胞の成長を刺激し、または骨形成細胞の前駆体の分化を誘発するための環境を提供することができる。本発明のActRIIbアンタゴニストは、骨粗鬆症の処置においても有用であり得る。
【0131】
本発明の方法および組成物を、骨粗鬆症(二次性骨粗鬆症を含む)、副甲状腺機能亢進症、クッシング病、パジェット病、甲状腺中毒症、慢性下痢状態もしくは吸収不良、慢性腎疾患、尿細管性アシドーシス、または神経性食欲不振など、骨喪失を特徴とし、または骨喪失を引き起こす状態に適用することができる。
【0132】
骨粗鬆症は様々な因子によって引き起こされ、または様々な因子に付随し得る。女性である、特に閉経後の女性である、体重が少ない、座りがちな生活であるというのは全て骨粗鬆症に対する危険因子である(骨折の危険性をもたらす骨塩密度の損失)。以下のプロファイルのいずれかを有するヒトはActRIIbアンタゴニストで処置するための候補者であり得る:閉経後の女性であり、エストロゲンまたは他のホルモン補充療法を受けていない;股関節部骨折または喫煙の個人歴または母親の既往歴を有する人;長身(5フィート7インチ(170.18cm)を超え)または痩せ型(125ポンド(56.7kg)未満)である閉経後の女性;骨喪失に付随する臨床的状態を有する男性;コルチコステロイド(例えばPredonisone(商標))、様々な抗てんかん薬(例えばDilantin(商標))、およびある種のバルビツレート、または高用量の甲状腺補充薬を含めた骨喪失を引き起こすことが知られている薬物を用いている人;肝疾患または骨粗鬆症の家族歴のある人;骨代謝回転の高い人(例えば、尿試料中の過剰なコラーゲン);甲状腺機能亢進症など、甲状腺の状態を有する人;軽度の外傷の後でも骨折を経験したことのある人;脊椎骨折または骨粗鬆症の他の徴候のX線証拠を有したことのある人。
【0133】
上記に記載した通り、骨粗鬆症はまた、別の障害に付随する状態またはある種の医薬品の使用に起因し得る。薬物または別の医学的状態に起因する骨粗鬆症は、二次性骨粗鬆症として知られている。クッシング病として知られている状態において、身体によって生成される過剰量のコルチゾールが骨粗鬆症および骨折をもたらす。二次性骨粗鬆症に関連する最もありふれた薬物療法はコルチコステロイドであり、これは副腎によって天然に生成されるホルモンであるコルチゾール同様に作用する一クラスの薬物である。骨格の発達には十分なレベルの甲状腺ホルモン(甲状腺によって生成される)が必要とされるが、過剰の甲状腺ホルモンは骨量を徐々に低減させ得る。二次性骨粗鬆症を引き起こし得る他の薬物療法には、てんかん発作を防ぐのに用いられるフェニトイン(Dilantin)およびバルビツレート;ある形態の関節炎、癌、および免疫障害に対する薬物であるメトトレキセート(Rheumatrex、Immunex、FolexPFS);いくつかの自己免疫疾患を処置し、臓器移植患者において免疫系を抑制するのに用いられる薬物である、シクロスポリン(Sandimmune、Neoral);前立腺癌および子宮内膜症を処置するのに用いられる、黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニスト(Lupron、Zoladex);抗凝固薬である、ヘパリン(Calciparine、Liquaemin);ならびに高コレステロールを処置するのに用いられる、コレスチラミン(Questran)およびコレスチポール(Colestid)が含まれる。
【0134】
癌治療に起因する骨喪失は広く認められており、癌治療誘発性骨減少症(CTIBL)と呼ばれている。骨転移により骨中に孔が作り出されることがあり、これはActRIIbアンタゴニストでの処置によって正すことができる。
【0135】
好ましい一実施形態では、本明細書に開示する、ActRIIbアンタゴニスト、特に可溶性ActRIIbを癌患者に用いてもよい。本明細書において実証する通り、ActRIIb−Fc融合タンパク質は、ヒト患者において同化的な骨成長を促進することができる。同化的な骨薬剤は、多発性骨髄腫を処置するのに有用であることが実証されている(例えば、Yaccobyら、Blood、109巻(5号):2106〜11頁(2007年);Oyajobiら、Br J Haematol.、139巻(3号):434〜8頁(2007年);Fulcinitiら、Blood、114巻(2号):371〜9頁(2009年);Stewartら、Journal of Cellular Biochemistry、98巻、1〜13頁(2006年)を参照されたい)。したがって、本明細書に記載するアクチビン−ActRIIbアンタゴニストは、多発性骨髄腫および他の骨腫瘍を処置するのに有用であると考えられている。ある種の腫瘍(例えば、前立腺癌、乳癌、多発性骨髄腫、または副甲状腺機能亢進症を引き起こすあらゆる腫瘍)を有する患者は、腫瘍誘発性骨喪失のため、ならびに骨転移および治療薬のため、骨喪失に対する危険性が高い。このような患者は、骨喪失または骨転移の証拠がなくても、ActRIIbアンタゴニストで処置することができる。患者をやはり、骨喪失または骨転移の証拠に対してモニタリングし、指標が危険性の増大を示唆する場合にはActRIIbアンタゴニストで処置することができる。一般に、骨密度における変化を評価するのにDEXAスキャンが用いられ、骨リモデリングの指標を用いて骨転移の可能性を評価してもよい。血清マーカーをモニタリングしてもよい。骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)は、造骨細胞中に存在する酵素である。骨転移、および骨リモデリングの増大をもたらす他の状態を有する患者では、BSAPの血中レベルは増大する。オステオカルシンおよびプロコラーゲンペプチドもまた、骨形成および骨転移に関連する。BSAPの増大は、前立腺癌によって引き起こされる骨転移を有する患者において検出されており、より低い程度で乳癌からの骨転移を有する患者において検出されている。骨形成タンパク質−7(BMP−7)レベルは、骨に転位した前立腺癌において高いが、膀胱癌、皮膚癌、肝臓癌、または肺癌による骨転移では高くない。I型カルボキシ末端テロペプチド(ICTP)は骨吸収の間に形成されるコラーゲン中に見出される架橋である。骨は常に破壊され再編成されるので、ICTPは身体中に見られる。しかし、骨転移の部位では、そのレベルは正常の骨の領域におけるよりも著しく高い。ICTPは、前立腺癌、肺癌、および乳癌による骨転移において高レベルで見出されている。別のコラーゲン架橋であるI型N末端テロペプチド(NTx)は、骨の代謝回転の間にICTPと一緒に生成される。NTxの量は、肺癌、前立腺癌、および乳癌を含めた多くの様々なタイプの癌によって引き起こされる骨転移において増大する。また、NTxのレベルは、骨転移の進行とともに増大する。したがって、このマーカーは、転移を検出し、疾患の程度を測定するのに用いられ得る。他の吸収のマーカーには、ピリジノリンおよびデオキシピリジノリンが含まれる。吸収マーカー、または骨転移のマーカーにおけるいかなる増大も、患者においてActRIIbアンタゴニスト治療が必要であることを指摘するものである。
【0136】
ActRIIb−Fcは造骨細胞活性のマーカー(例えば、BSAPレベル)に対して明らかな効果があるので、ActRIIb−Fc分子は、骨疾患が造骨性の性質ではなく溶骨性の性質である場合の癌関連の骨喪失の設定において特に有用であり得る。これは、多発性骨髄腫、および様々な腫瘍からの骨転移に典型的に当てはまる。しかし、特に前立腺癌からの骨転移は性質上造骨的である傾向を有し、ActRIIb−Fc融合タンパク質はこの設定において有益ではないことがある。
【0137】
ActRIIbアンタゴニストは他の医薬品と共同して投与されてよい。共同投与は、1つの共同製剤を、同時投与による、または別々の時間の投与による投与によって遂行され得る。ActRIIbアンタゴニストは、他の骨有効薬剤と一緒に投与される場合、特に有利であり得る。患者は、ActRIIbアンタゴニストの投与、ならびにカルシウム補充剤、ビタミンD、好適な運動、および/またはある場合には他の薬物治療の摂取から共同的に利益を得ることがある。他の薬物療法の例には、ビスホスホネート(アレンドロネート、イバンドロネート、およびリセドロネート)、カルシトニン、エストロゲン、副甲状腺ホルモン、およびラロキシフェンが含まれる。ビスホスホネート(アレンドロネート、イバンドロネート、およびリセドロネート)、カルシトニン、エストロゲン、およびラロキシフェンは骨のリモデリングサイクルに影響を及ぼし、抗吸収薬と分類される。骨リモデリングは、骨吸収および骨形成の2つの異なる段階からなる。抗吸収薬は骨リモデリングサイクルの骨吸収部分を遅くし、または停止するが、サイクルの骨形成部分は遅くしない。その結果、新たな形成が、骨吸収より大きな速度で継続し、骨密度が徐々に増大し得る。テリパラタイドは副甲状腺ホルモンの1つの型であり、骨リモデリングサイクルにおける骨形成の速度を増大する。アレンドロネートは、閉経後骨粗鬆症の防止(1日あたり5mgまたは週1回35mg)および処置(1日あたり10mgまたは週1回70mg)の両方に認可されている。アレンドロネートは骨喪失を低減し、骨密度を増大し、脊椎、手首、および股関節部の骨折の危険性を低減する。アレンドロネートはまた、男性および女性において、グルココルチコイドの薬物療法(すなわち、プレドニゾンおよびコルチゾン)の長期使用の結果としてのグルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の処置に、ならびに男性における骨粗鬆症の処置に認可されている。アレンドロネートプラスビタミンDは、閉経後の女性における骨粗鬆症の処置に(週1回70mgプラスビタミンD)、および骨粗鬆症を有する男性における骨量を改善するための処置に認可されている。イバンドロネートは、閉経後骨粗鬆症の防止および処置に認可されている。イバンドロネートは1カ月に1回の丸剤(150mg)として投与され、各月の同じ日に投与されなければならない。イバンドロネートは骨喪失を低減し、骨密度を増大し、脊椎骨折の危険性を低減する。リセドロネートは閉経後骨粗鬆症の防止および処置に認可されている。毎日(用量5mg)または毎週(用量35mgまたはカルシウムと一緒に用量35mg)投与することにより、リセドロネートは骨喪失を遅らせ、骨密度を増大し、脊椎および脊椎以外の骨折の危険性を低減する。リセドロネートも、これら薬物療法(すなわち、プレドニゾンおよびコルチゾン)の長期使用に起因するグルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の防止および/または処置のために、男性および女性による使用に認可されている。カルシトニンは、カルシウム調節および骨代謝に関与する、天然に存在するホルモンである。5年を超えて閉経を過ぎた女性において、カルシトニンは骨喪失を遅らせ、脊椎の骨密度を増大し、骨の骨折に伴う疼痛を和らげることがある。カルシトニンは脊椎骨折の危険性を低減する。カルシトニンは、注射剤(毎日50〜100IU)または鼻内噴霧(毎日200IU)として利用可能である。エストロゲン療法(ET)/ホルモン療法(HT)は骨粗鬆症の防止に認可されている。ETは、閉経後の女性において、骨喪失を低減し、脊椎および股関節両方における骨密度を増大し、股関節および脊椎の骨折の危険性を低減することが示されている。ETは、最も一般的には1日およそ0.3mgの低用量または1日およそ0.625mgの標準用量を送達するピルまたは皮膚パッチの形態において投与され、70歳を超えて開始した場合でも有効である。エストロゲンを単独で投与する場合、女性が子宮内膜の癌(子宮体癌)を発症する危険性を増大することがある。この危険性を排除するために、医療提供者は、無傷の子宮を有する女性に対して、エストロゲン(ホルモン補充療法またはHT)と併用してホルモンのプロゲスチンを処方する。ET/HTは更年期症状を和らげ、骨の健康に有益な効果があることが示されている。副作用には、膣出血、乳房の圧痛、気分障害、および胆嚢疾患が含まれ得る。1日60mgのラロキシフェンは、閉経後骨粗鬆症の防止および処置に認可されている。これは潜在的な短所なくエストロゲンの有益な効果をもたらすように開発された、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)と呼ばれる一クラスの薬物に由来する。ラロキシフェンは骨量を増大し、脊椎骨折の危険性を低減する。ラロキシフェンが股関節および他の脊椎以外の骨折の危険性を低減し得ることを実証するデータは未だ入手できない。テリパラタイドは、副甲状腺ホルモンの1つの型であり、閉経後の女性および骨折の危険性が高い男性における骨粗鬆症の処置に認可されている。この薬物療法は新たな骨の形成を刺激し、骨塩密度を著しく増大する。閉経後の女性において、骨折の低減が脊椎、股関節、足、肋骨、および手首において注目された。男性において、骨折の低減が脊椎において注目されたが、他の部位における骨折の低減を評価するデータは不十分であった。テリパラタイドは、最高24カ月間、毎日注射として自己投与される。
【0138】
本明細書において示す通り、ActRIIbアンタゴニストはまた、筋肉成長を促進するのに有用であり、そのようなものとして筋肉関連障害の宿主において有用であり得る。例示の筋肉関連状態には、神経筋障害(例えば、筋ジストロフィー、および筋萎縮)、うっ血性閉塞性肺疾患(およびCOPDに伴う筋肉消耗)、筋肉消耗症候群、筋肉減少症、悪液質、脂肪組織障害(例えば、肥満)、2型糖尿病、および骨変性疾患(例えば、骨粗鬆症)が含まれる。他の例示の状態には、筋肉変性障害および神経筋障害、組織修復(例えば、創傷治癒)、神経変性疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症)、免疫学的障害(例えば、リンパ球の異常な増殖または機能に関連する障害)、および肥満、または脂肪細胞の異常な増殖に関連する障害が含まれる。
【0139】
ある実施形態では、ActRIIbアンタゴニストは、筋ジストロフィーに対する処置の部分として用いられる。「筋ジストロフィー」の語は、骨格筋、時には心筋および呼吸筋の漸進的な弱化および悪化を特徴とする一群の変性性筋肉疾患を意味する。筋ジストロフィーは、筋肉における顕微鏡的な変化に始まる、漸進的な筋肉の消耗および弱化を特徴とする遺伝性障害である。筋肉が徐々に変性するとともに、その人の筋肉強度は低下する。対象のActRIIbポリペプチドを含むレジメンで処置することができる例示の筋ジストロフィーには、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)、エメリドライフス筋ジストロフィー(EDMD)、肢帯型筋ジストロフィー(LGMD)、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHまたはFSHD)(ランドウジーデジェリンとしても知られている)、筋緊張性ジストロフィー(MMD)(スタイナート病としても知られている)、眼咽頭筋ジストロフィー(OPMD)、遠位筋ジストロフィー(DD)、先天性筋ジストロフィー(CMD)が含まれる。
【0140】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、1860年代に、フランスの神経学者であるGuillaume Benjamin Amand Duchenneによって最初に記載された。ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)は、1950年代に、このDMDの変形を最初に記載したドイツ人医師であるPeter Emil Beckerに因んで名付けられている。DMDは、男性において最も頻繁に遺伝される疾患の1つであり、男児3500人に1人が罹患する。DMDは、X染色体の短腕上に位置するジストロフィン遺伝子が壊される場合に生じる。男性はX染色体のコピーを1つだけ保有するので、ジストロフィン遺伝子のコピーを1つだけ有する。ジストロフィンタンパク質がないと、筋肉は収縮と弛緩とのサイクルの間に容易に損傷される。疾患の初期には、筋肉は再生によって補償するが、後には筋肉前駆細胞は進行中の損傷についていくことができず、健康な筋肉が非機能的な線維脂肪組織によって置き換えられる。筋肉および骨に対する二重効果が、筋ジストロフィー患者において有用であり得る。
【0141】
BMDは、ジストロフィン遺伝子における様々な変異に起因する。BMD患者はジストロフィンをいくつか有するが、量が不十分であり、または質において劣るいずれかである。ジストロフィンをいくつか有することで、BMDを有するものの筋肉は、DMDを有するもの同じくらいにひどく、または速やかな変性から保護される。
【0142】
例えば、最近の調査により、in vivoでGDF8(ActRIIbリガンド)の機能を阻止または排除すると、DMDおよびBMDの患者における少なくともある種の症状を効果的に処置することができることが実証されている。このように、対象のActRIIbアンタゴニストは、GDF8阻害薬(アンタゴニスト)として作用し、DMDおよびBMD患者においてin vivoでGDF8および/またはActRIIbの機能を阻止する代替的な手段を構成する。ActRIIb−Fcタンパク質は、筋ジストロフィーのマウスモデルにおいて筋肉量を増大することが示されている(米国公開第2009/0005308号を参照されたい)。
【0143】
同様に、対象のActRIIbアンタゴニストは、筋肉成長を必要とする他の疾患状態において筋肉量を増大するための有効な手段を提供する。例えば、ルーゲーリック病とも呼ばれるALS(運動ニューロン疾患)は、脳を骨格筋に連絡するCNSの成分である運動ニューロンを攻撃する、慢性の、不治で、抑止することのできないCNS障害である。ALSにおいて、運動ニューロンは悪化し、最終的に死滅し、ヒトの脳は通常完全な機能および機敏さを留めているが、動くための指令が筋肉に到達しない。ALSに罹患する人はほとんどが40歳と70歳との間である。弱化する最初の運動ニューロンは腕または脚につながるものである。ALSを有する人は歩くのに困難を有することがあり、モノを落とし、落下し、話すのに音をたて、抑制できずに笑い、または泣き叫ぶことがある。最終的に四肢における筋肉が廃用から萎縮し始める。この筋肉の弱化は衰弱性となり、人は車椅子を必要とし、または床を離れて機能することができなくなる。ALS患者のほとんどは、疾患の発症から3〜5年に、呼吸不全から、または肺炎などの人工呼吸器の補助の合併症から死亡する。ActRIIb−Fcタンパク質は、ALSマウスモデルの外見、筋肉量、および寿命を改善することが示されている(米国公開第2009/0005308号を参照されたい)。
【0144】
ActRIIbアンタゴニスト誘発性の筋肉量の増大は、筋肉消耗性疾患に罹患しているものにも有益であり得る。GDF8発現はヒトにおける除脂肪体重に反比例し、GDF8遺伝子の発現の増大は、AIDS消耗症候群を有する男性における体重減少に関連することが観察されている。AIDS患者におけるGDF8の機能を阻害することによって、AIDSの少なくともある種の症状が、完全に除去されなくても軽減されることがあり、したがってAIDS患者の生活の質を著しく改善する。
【0145】
GDF8(ActRIIbリガンド)機能の喪失は、栄養摂取を減少させない脂肪減少にも関連し、対象のActRIIbアンタゴニストは、肥満およびII型糖尿病の発生を遅らせ、または防止するための治療薬剤としてさらに用いることができる。この取組みは、ActRIIb−Fcタンパク質が肥満マウスにおける代謝状態を改善することが示された、本明細書に示すデータによって確認および支持される。
【0146】
癌の食欲不振−悪液質症候群は、癌の最も衰弱性で命を危うくする局面の中にある。癌の食欲不振−悪液質症候群における進行性の体重減少は、多くのタイプの癌に共通の特徴であり、劣悪な生活の質および化学療法に対する低反応の原因であるだけでなく、体重減少のない匹敵する腫瘍を有する患者に見られるよりも生存時間が短くなる原因でもある。食欲不振、脂肪組織および筋肉組織の消耗、心理的苦痛、および生活の質の低下と関連して、悪液質は癌と宿主との間の複雑な相互作用から生じる。悪液質は癌患者間での最も一般的な死因の1つであり、死亡時に80%に存在する。悪液質は、タンパク質、炭水化物、および脂肪の代謝をもたらす代謝的無秩序の複雑な一例である。腫瘍は直接的および間接的両方の異常を作り出し、食欲不振および体重減少をもたらす。この過程を制御または逆転させる処置は、現在存在しない。癌の食欲不振−悪液質症候群は、サイトカイン生成に影響を及ぼし、脂質動員性の因子およびタンパク分解誘発性因子を放出し、中間代謝を変更する。食欲不振は一般的であるが、食事摂取の減少だけでは、癌患者に見られる身体組成における変化を説明することができず、栄養摂取を増大させても消耗性症候群を逆転することはできない。発病前の体重の5%を超える非自発的な体重減少が6カ月以内に生じた場合に、癌患者における悪液質が疑われなければならない。
【0147】
成年マウスにおけるGDF8の全身性の過剰発現が、ヒト悪液質症候群において見られるのと同様の深刻な筋肉および筋肉の喪失を誘発することが示されているので、筋肉成長が望ましい場合、対象のActRIIbアンタゴニストを医薬組成物として有益に用いて悪液質症候群の症状を防止、処置、または軽減することができる。
【0148】
他の実施形態では、本発明は、動物における体脂肪含量を制御し、これらに関連する状態、特にこれらに関連する健康を損なう状態を処置または防止するための組成物および方法を提供する。本発明によると、体重の制御(コントロール)は、体重を低減もしくは増大し、体重増加の速度を低減もしくは増大し、または体重減少の速度を増大もしくは低減することを意味することができ、また体重を積極的に維持し、または(例えば、体重を他の点で増大もしくは低減し得る外部的もしくは内部的影響に対抗して)体重を著しく変えないことも含む。本発明の一実施形態は、ActRIIbアンタゴニストを、それを必要とする動物(例えば、ヒト)に投与することによって体重を制御することに関する。
【0149】
特定の一実施形態では、本発明は、動物における体重を低減し、かつ/または体重増加を低減するための、より詳しくは、肥満に対する危険性があり、または肥満に悩む患者における肥満を処置または軽減するための方法および化合物に関する。別の詳しい一実施形態では、本発明は、体重を増大し、または保持することができない動物(例えば、消耗症候群を有する動物)を処置するための方法および化合物に対するものである。このような方法は、体重および/または質量を増大し、あるいは体重および/または質量の減少を低減するのに、あるいは望ましくないほど低い(例えば、不健康な)体重および/または質量に付随し、または引き起こされる状態を改善するのに効果的である。
【0150】
7.投薬
ある実施形態では、本開示は、患者にActRIIbポリペプチドを投薬するための方法を提供する。本開示の方法は、患者に、望ましい期間にわたって維持されるActRIIbタンパク質の最適血清濃度を提供する投薬計画に基づいてActRIIbタンパク質を投与することを含む。患者は、患者に投与されるActRIIbポリペプチドの量、およびActRIIbポリペプチドを患者に投与する頻度の望ましい組合せを伴う計画に基づいて投薬されてよい。このような投薬計画において用いるためのActRIIbポリペプチドは、配列番号2、3、13、17、もしくは20から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、または配列番号2、3、13、17、もしくは20から選択されるアミノ酸と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドなど、本明細書に開示するあらゆるものであってよい。ActRIIbポリペプチドは、C末端の10個から15個のアミノ酸(「テイル」)を欠く、配列番号1〜3から選択される配列または配列番号2の配列の少なくとも10、20、または30個のアミノ酸を含むものなど、天然のActRIIbポリペプチドの機能的フラグメントを含むことができる。ある実施形態では、ActRIIbポリペプチドは、ActRIIbの部分に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%同一性を有するアミノ酸配列を含み、ActRIIbポリペプチドのN末端は、配列番号1のアミノ酸19〜25から選択されるアミノ酸残基に対応し、ActRIIbポリペプチドのC末端は、配列番号1のアミノ酸109〜134から選択されるアミノ酸残基に対応する。好ましい実施形態では、ActRIIbポリペプチドは、本明細書に開示するActRIIb−Fc融合タンパク質である。
【0151】
患者は、ActRIIbポリペプチドの最適血清濃度を達成するように投薬されてよい。最適血清濃度は、例えば、in vivoで望ましい生物学的効果を促進するのに十分である血清濃度であってよい。このような生物学的効果には、骨成長の促進、骨密度の増大、低骨密度に付随する障害の処置または防止、神経筋障害、脂肪組織障害、代謝障害、神経変性障害、筋肉消耗性障害、または癌の処置を含めた、本明細書に開示するあらゆる治療効果が含まれる。
【0152】
本明細書に開示する通り、本開示のActRIIbポリペプチドは、患者が、少なくとも10μg/mLのActRIIbポリペプチド血清濃度に到達し、維持する場合、一定の生物学的効果を実証する。したがって、ある実施形態では、患者は、少なくとも8μg/mL、10μg/mL、12.5μg/mL、15μg/mL、20μg/mL、25μg/mL、30μg/mL、35μg/mL、40μg/mL、50μg/mL、または少なくとも70μg/mLのActRIIb血清濃度を維持する投薬計画に基づいてActRIIbポリペプチドが投与されてよい。ある実施形態では、ActRIIbポリペプチドの血清濃度を、例えば、約8μg/mLから約100μg/mLまで(例えば、8〜100μg/mL、8〜70μg/mL、8〜50μg/mL、8〜40μg/mL、8〜35μg/mL、8〜30μg/mL、8〜25μg/mL、8〜20μg/mL、8〜15μg/mL、8〜12.5μg/mL、8〜10μg/mL、10〜100μg/mL、10〜70μg/mL、10〜50μg/mL、10〜40μg/mL、10〜35μg/mL、10〜30μg/mL、10〜25μg/mL、10〜20μg/mL、10〜15μg/mL、10〜12.5μg/mL、12〜100μg/mL、12〜70μg/mL、12〜50μg/mL、12〜40μg/mL、12〜35μg/mL、12〜30μg/mL、12〜25μg/mL、12〜20μg/mL、12〜15μg/mL、15〜100μg/mL、15〜70μg/mL、15〜50μg/mL、15〜40μg/mL、15〜35μg/mL、15〜30μg/mL、15〜25μg/mL、15〜20μg/mL、20〜70μg/mL、20〜50μg/mL、20〜35μg/mL、または20〜30μg/mL)の範囲内などの最適な範囲内に維持するのが望ましいことがある。
【0153】
ある実施形態では、本開示の投薬計画は、望ましい期間、ActRIIbタンパク質の望ましい血清濃度を維持するのに十分な量において、および十分な間隔で、ActRIIbポリペプチドを投与することを含む。患者における望ましいActRIIb血清濃度を維持するのに望ましい持続時間は、望ましい生物学的効果(例えば、骨障害の処置)に依存する。例えば、患者は、約1週間から1年、またはそれを超える経過にわたって望ましい血清濃度を維持する(例えば、5日、7日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、20日、25日、30日、1週間から2週間、1週間から1カ月、2カ月、4カ月、6カ月、1年、もしくは2年もしくはそれを超えて望ましい血清濃度を維持する)のに十分な量において、および十分な間隔でActRIIbタンパク質を投与されてよい。好ましくは、患者は、治療的処置の経過にわたって望ましい血清濃度を維持するのに十分な量のActRIIbタンパク質を投与される。ある実施形態では、投薬計画は、投薬間隔の間(例えば、ActRIIb投与の間)、ActRIIbの望ましい血清濃度を維持するのに十分である。
【0154】
本明細書に開示する通り、ActRIIbポリペプチドの生物学的効果は、0.3mg/kgまたはそれを超える用量で達成され得る。したがって、ある実施形態では、患者は、ActRIIbポリペプチド約0.3mg/kgから約15mg/kg(例えば、0.3、0.5、1.0、1.5、2.0、3.0、4.0、5.0、7.0、10.0、12.0、または15.0mg/kg)を投薬されてよい。好ましい実施形態では、患者は、少なくとも1.0mg/kgを投与される。さらに、以下に示す実験は、ActRIIb−Fc融合タンパク質の血清半減期は、約10日と16日との間であることを指摘している。したがって、ある態様では、患者は、少なくとも1カ月に1回(例えば、5〜30日毎に1回、10〜16日毎に1回、5日毎に1回、7日毎に1回、10日毎に1回、11日毎に1回、12日毎に1回、13日毎に1回、14日毎に1回、15日毎に1回、もしくは16日毎に1回、または毎月もしくは2カ月ベースで)、本開示のActRIIbタンパク質を投薬されてよい。
【0155】
8.医薬組成物
ある実施形態では、本発明のActRIIbアンタゴニスト(例えば、ActRIIbポリペプチド)は、薬学的に許容される担体と一緒に調合される。例えば、ActRIIbポリペプチドは、単独で、または医薬製剤(治療用組成物)の成分として投与され得る。対象の化合物は、ヒトまたは獣医学上の医薬における使用に便利なあらゆる方法において投与するために調合されてよい。
【0156】
ある実施形態では、本発明の治療方法は、全身性に、または埋め込みもしくは装置として局所的に組成物を投与することを含む。投与する場合、本発明において用いるための治療用組成物は、パイロジェンフリーの生理学的に許容される形態におけるものである。上記に記載した通り、組成物中に場合により含まれていてもよいActRIIbアンタゴニスト以外の治療上有用な薬剤は、本発明の方法において対象の化合物(例えば、ActRIIbポリペプチド)と同時に、または逐次的に投与されてよい。
【0157】
典型的に、ActRIIbアンタゴニストは、非経口的に、特に、静脈内または皮下に投与される。非経口投与に適する医薬組成物は、1つまたは複数のActRIIbポリペプチドを、1つまたは複数の薬学的に許容される無菌で等張の水性もしくは非水性の溶液、分散液、懸濁液もしくは乳液、または使用直前に無菌の注射用溶液もしくは分散液中に再構成することができる無菌の粉末と組み合わせて含むことができ、これらは抗酸化剤、バッファー、静菌剤、意図する受容者の血液と製剤を等張にする溶質、または懸濁化剤もしくは増粘剤を含有することができる。本発明の医薬組成物において使用され得る適切な水性および非水性の担体の例には、水、エタノール、多価アルコール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物、植物油、例えば、オリーブ油、ならびに注射用有機エステル、例えば、オレイン酸エチルが含まれる。例えば、レシチンなどのコーティング材料を用いることによって、分散液の場合は必要とされる粒子サイズを維持することによって、および界面活性剤を用いることによって、適切な流動性が維持され得る。
【0158】
さらに、組成物は、標的の組織部位(例えば、骨もしくは筋肉)に送達するための形態において、カプセル化され、または注射されてよい。ある実施形態では、本発明の組成物は、標的の組織部位(例えば、骨もしくは筋肉)に1つまたは複数の治療用組成物(例えば、ActRIIbポリペプチド)を送達することができ、発達する組織に構造を提供し、最適に身体中に吸収され得るマトリクスを含んでいてよい。例えば、マトリクスは、ActRIIbポリペプチドのゆっくりとした放出を提供することがある。このようなマトリクスは、他の埋め込みの医薬の応用に現在用いられている材料で形成されていてよい。
【0159】
マトリクス材料の選択は、生体適合性、生分解性、機械的性質、美容的外観、および境界面の性質に基づく。対象の組成物の特定の適用は、好適な製剤を規定するものである。組成物に対する潜在的なマトリクスは、生分解性で、化学的に規定されているカルシウム表面、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸、およびポリ無水物であってよい。他の潜在的な材料は、骨または皮膚のコラーゲンなど、生分解性で、生物学的に十分規定されている。さらなるマトリクスは、純粋なタンパク質または細胞外マトリクス成分からなる。他の潜在的なマトリクスは、焼結ヒドロキシアパタイト、バイオグラス、アルミン酸塩、または他のセラミクスなど、非生分解性で、化学的に規定されている。マトリクスは、ポリ乳酸とヒドロキシアパタイトと、またはコラーゲンと酸リン酸カルシウムとなど、上記で言及したタイプの材料のあらゆるものの組合せからなっていてよい。バイオセラミクスは、カルシウム−アルミン酸塩−リン酸塩におけるように、組成物において変更されてよく、孔サイズ、粒子サイズ、粒子形状、および生分解性を変更するように処理加工されてもよい。
【0160】
ある実施形態では、本発明の方法は、例えば、各々が有効成分として予め決定された量の薬剤を含んでいる、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、菓子錠剤(通常ショ糖もしくはアラビアゴムもしくはトラガカントゴムである香り付けした基剤を用いて)、散剤、顆粒剤、または水性もしくは非水性の液体中の液剤もしくは懸濁剤として、または水中油型もしくは油中水型の液体乳剤として、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として、またはトローチ剤(ゼラチンおよびグリセリン、もしくはショ糖およびアラビアゴムなどの不活性の基剤を用いて)として、ならびに/あるいは含嗽剤などとして、経口的に投与され得る。薬剤は、ボーラス剤、舐剤、またはパスタ剤として投与されてもよい。
【0161】
経口投与用の固形剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠剤、散剤、顆粒剤など)において、本発明の1つまたは複数の治療用組成物は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの1つまたは複数の薬学的に許容される担体、ならびに/あるいは以下のあらゆるもの;(1)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、ショ糖、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸、(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、および/またはアラビアゴム、(3)湿潤剤、例えば、グリセロール、(4)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、バレイショデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のシリケート、および炭酸ナトリウム、(5)溶液凝結遅延剤、例えば、パラフィン、(6)吸収促進剤、例えば、4級アンモニウム化合物、(7)加湿剤、例えば、セチルアルコール、およびグリセロールモノステアレート、(8)吸収剤、例えば、カオリン、およびベントナイト粘土、(9)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物、ならびに(10)着色剤と混合されてよい。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、医薬組成物は緩衝化剤を含むこともできる。同様のタイプの固形組成物を、ラクトースまたは乳糖、および高分子量のポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いた軟充填ゼラチンカプセル剤および硬充填ゼラチンカプセル剤における充填剤として使用することもできる。
【0162】
経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が含まれる。有効成分の他に、液体剤形は、当技術分野において一般的に用いられている不活性な希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物を含有することができる。不活性な希釈剤の他に、経口組成物は、加湿剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤、ならびに保存剤などの補助剤も含むことができる。
【0163】
懸濁剤は、有効化合物の他に、懸濁化剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、およびソルビタンエステル、微結晶性セルロール、アルミニウムメタヒドロキシド(aluminum metahydroxide)、ベントナイト、寒天、およびトラガカントゴム、ならびにこれらの混合物を含むことができる。
【0164】
本発明の組成物は、補助剤、例えば、保存剤、加湿剤、乳化剤、および分散剤も含有することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸(phenol sorbic acid)などを含むことによって確実にされ得る。等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを組成物中に含めるのが望ましいこともある。さらに、注射用医薬形態の長期の吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなど、吸収を遅らせる薬剤を含めることによってもたらされ得る。
【0165】
投薬レジメンは、本発明の対象の化合物(例えば、ActRIIbアンタゴニスト)の作用を修飾する様々な因子を考慮に入れて、担当の医師によって決定される。様々な因子には、それだけには限定されないが、形成されるのが望ましい骨重量の量、骨密度喪失の程度、骨損傷の部位、損傷した骨の状態、患者の年齢、性別、および食事、骨喪失の原因となり得るあらゆる疾患の重症度、投与時間、および他の臨床上の因子が含まれる。場合により、用量は、再構成において用いられるマトリクスのタイプ、および組成物における化合物のタイプとともに変化することがある。他の公知の増殖因子を最終の組成物に加えることも、用量に影響を及ぼし得る。X線(DEXAを含む)、組織形態計測的決定、およびテトラサイクリン標識化など、骨成長および/または修復を定期的に評価することによって、進行をモニタリングすることができる。
【0166】
下記に示す実験は、ActRIIb−Fcの骨に対する効果は、1mg/kgまたはそれを超える単回用量で達成され得ることを実証するものである。観察される分子の血清半減期は、約10日と16日との間である。このように、持続性の有効な血清レベルは、例えば、毎週または隔週毎のベースで約0.5mg/kgから5mg/kgの投薬によって達成され得る。例えば、0.3mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、もしくは5mg/kg、またはその間の値の用量が、7日毎に1回、10日毎に1回、15日毎に1回、または毎月もしくは隔月に1回のベースで用いられてよい。他の例示の投薬レジメンを上記に提供する。
【0167】
ある実施形態では、本発明は、ActRIIbポリペプチドのin vivo生成に対する遺伝子治療も提供する。このような治療法は、ActRIIbポリペプチド配列を、上記に列挙した障害を有する細胞または組織中に導入することによって、その治療効果を達成する。ActRIIbポリヌクレオチド配列は、キメラのウイルス等の組換え発現ベクター、またはコロイド分散系を用いて達成されてよい。標的化したリポソームの使用が、ActRIIbポリヌクレオチド配列の治療的送達に好ましい。
【0168】
本明細書に教示する遺伝子治療に利用することができる様々なウイルスのベクターには、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニア、または好ましくはレトロウイルスなどのRNAウイルスが含まれる。レトロウイルスベクターが、マウスまたはトリのレトロウイルスの派生物であるのが好ましい。その中に単一の外来遺伝子が挿入され得るレトロウイルスベクターの例には、それだけには限定されないが、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーヴェイネズミ肉腫ウイルス(HaMuSV)、ネズミ乳房腫瘍ウイルス(MuMTV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)が含まれる。数々のさらなるレトロウイルスベクターが多くの遺伝子を組み入れることができる。これらのベクターは全て、形質導入された細胞を同定および産生することができるように、分泌可能なマーカーに対する遺伝子を、形質導入し、または組み入れることができる。レトロウイルスベクターは、例えば、糖、糖脂質、またはタンパク質に付着することによって、標的特異的になされ得る。好ましい標的化は、抗体を用いることによって遂行される。当業者であれば、特異的なポリヌクレオチド配列をレトロウイルスのゲノム中に挿入し、またはウイルスのエンベロープに付着させて、ActRIIbポリヌクレオチドを含有するレトロウイルスベクターの標的特異的な送達を可能にすることができる。好ましい一実施形態では、ベクターは骨または軟骨を標的化する。
【0169】
あるいは、組織培養細胞に、従来のリン酸カルシウムトランスフェクションによって、レトロウイルスの構造遺伝子であるgag、pol、およびenvをコードするプラスミドを直接トランスフェクションしてもよい。これらの細胞に、次いで、対象の遺伝子を含有するベクタープラスミドをトランスフェクションする。結果として得られた細胞は、レトロウイルスベクターを培養培地中に放出する。
【0170】
ActRIIbポリヌクレオチドに対する別の標的化送達系は、コロイド分散系である。コロイド分散系には、巨大分子複合体、ナノカプセル、微粒子、ビーズ、ならびに、水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質ベース系が含まれる。本発明の好ましいコロイド系はリポソームである。リポソームは、in vitroおよびin vivoで送達ビヒクルとして有用である人工膜小胞である。RNA、DNA、および無処置のビリオンを、水性の内部内にカプセル封入し、生物学的に活性な型において細胞に送達することができる(例えば、Fraleyら、Trends Biochem. Sci.、6巻、77頁、1981年を参照されたい)。リポソームビヒクルを用いた効果的な遺伝子伝達のための方法は、当技術分野において公知であり、例えば、Manninoら、Biotechniques、6巻、682頁、1988年を参照されたい。リポソームの組成は、通常リン脂質の組合せ、通常ステロイド、特にコレステロールとの組合せである。他のリン脂質または他の脂質も用いることができる。リポソームの物理的性質は、pH、イオン強度、および2価の陽イオンの存在に依存する。
【0171】
リポソーム生成に有用な脂質の例には、ホスファチジル化合物、例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、およびガングリオシドが含まれる。例示のリン脂質には、卵のホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、およびジステアロイルホスファチジルコリンが含まれる。リポソームの標的化は、例えば、器官特異性、細胞特異性に基づいてやはり可能であり、器官特異性が当技術分野において公知である。
【実施例】
【0172】
本発明を現在、全般的に記載しているが、以下の実施例を参照することによって本発明はさらに容易に理解されよう。以下の実施例は、ある種の実施形態および本発明の実施形態を説明する目的だけで含まれるものであり、本発明を限定しようとするものではない。
【0173】
(実施例1)
ActRIIb−Fc融合タンパク質
出願者らは、ヒトのActRIIbの細胞外ドメインがヒトまたはマウスのFcドメインに、間に最小のリンカー(3個のアミノ酸グリシン)を有して融合している、可溶性ActRIIb融合タンパク質を構築した。構築物をそれぞれ、ActRIIb−hFcおよびActRIIb−mFcと呼ぶ。
【0174】
ActRIIb−hFcを、CHO細胞系から精製したものとして以下に示す(配列番号13)。
【0175】
【化12】

ActRIIb−hFcタンパク質およびActRIIb−mFcタンパク質はCHO細胞系において発現された。3つの異なるリーダー配列が考慮された。
【0176】
(i)ミツバチメリチン(HBML)
【0177】
【化13】

(ii)組織プラスミノーゲンアクチベータ(TPA):
【0178】
【化14】

(iii)天然:
【0179】
【化15】

選択された型はTPAリーダーを使用しており、以下の未加工のアミノ酸配列を有する:
【0180】
【化16】

このポリペプチドは、以下の核酸配列によってコードされる(配列番号18):
【0181】
【化17】

CHO細胞が生成する材料のN末端配列は、主要配列−GRGEAE(配列番号19)を明らかにした。とりわけ、文献中で報告されている他の構築物は、−SGR・・・配列で始まる。
【0182】
精製は、例えば、以下の3つまたはそれを超えるものをあらゆる順序で含む、一連のカラムクロマトグラフィーのステップによって達成され得る:タンパク質Aクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、および陽イオン交換クロマトグラフィー。精製は、ウイルスろ過およびバッファー交換で完了し得る。
【0183】
ActRIIb−Fc融合タンパク質は、HEK293およびCOS細胞中でも発現された。全ての細胞系からの材料および合理的な培養条件によりin vivoで筋肉構築活性を有するタンパク質がもたらされたが、おそらく細胞系の選択および/または培養条件に関連する、効力における変動が観察された。精製は、上記の明細書に記載した通りに達成された。
【0184】
(実施例2)
ActRIIb−Fc変異体の産生
出願者らは、ActRIIbの細胞外ドメインにおける一連の変異体を産生し、これらの変異体タンパク質を、細胞外ActRIIbとFcドメインとの間に可溶性融合タンパク質として生成した。ActRIIb−Fc融合のバックグラウンドはこの配列を有する(Fc部分に下線を付けた)(配列番号20):
【0185】
【化18】

N末端およびC末端の切断を含めた様々な変異体を、バックグラウンドのActRIIb−Fcタンパク質中に導入した。実施例1に示したデータに基づき、これらの構築物は、TPAリーダーと一緒に発現される場合、N末端のセリンを欠くことが予想される。PCR変異誘発によって、ActRIIb細胞外ドメイン中に変異体が産生された。PCR後、フラグメントをQiagenカラムを通して精製し、SfoIおよびAgeIで消化し、ゲル精製した。ライゲーションの際、ヒトIgG1との融合キメラを作成するように、これらのフラグメントを発現ベクターpAID4中にライゲーションした(国際公開第WO2006/012627号を参照されたい)。E.coli DH5αに形質転換する際、コロニーを拾い、DNAを単離した。マウス構築物(mFc)に対して、マウスIgG2aをヒトIgG1に置き換えた。変異体を全て配列検証した。
【0186】
変異体は全て、一過性のトランスフェクションによってHEK293T細胞中に生成された。要約すると、500mlスピナー中、HEK293T細胞を、容積250mlのFreestyle(Invitrogen)培地中6×10細胞/mlにセットし、一夜増殖させた。翌日、これらの細胞を、最終DNA濃度0.5ug/mlのDNA:PEI(1:1)複合体で処理した。4時間後、培地250mlを加え、細胞を7日間増殖させた。細胞を遠心沈澱することによって条件培地を回収し、濃縮した。
【0187】
変異体を、タンパク質Aカラムなどを含む様々な技術を用いて精製し、低pH(3.0)のグリシンバッファーで溶出した。中和した後、これらをPBSに対して透析した。
【0188】
変異体は、同様の方法によってCHO細胞中にも生成された。
【0189】
変異体を、以下に記載する結合アッセイおよび/またはバイオアッセイにおいて試験した。いくつかの場合において、アッセイを、精製したタンパク質ではなく、条件培地で行った。
【0190】
(実施例3)
GDF−11およびアクチビン媒介性シグナル伝達に対するバイオアッセイ
A−204レポーター遺伝子アッセイを用いて、ActRIIb−Fcタンパク質のGDF−11およびアクチビンAによるシグナル伝達に対する効果を評価した。細胞系:ヒト横紋筋肉腫(筋肉由来)。レポーターベクター:pGL3(CAGA)12(Dennlerら、1998年、EMBO、17巻、3091〜3100頁に記載されている)図1を参照されたい。CAGA12モチーフはTGF−ベータ反応性遺伝子(PAI−1遺伝子)中に存在するので、このベクターはSmad2および3による因子のシグナル伝達に一般的に有用である。
【0191】
1日目:A−204細胞を48ウエルプレート中に分割
2日目:A−204細胞に10ug pGL3(CAGA)12またはpGL3(CAGA)12(10ug)+pRLCMV(1ug)およびFugeneをトランスフェクション
3日目:因子(培地中に希釈+0.1%BSA)を添加。阻害物質は、細胞に添加する1時間前に因子とプレインキュベートする必要あり。6時間後、細胞をPBSですすぎ、細胞を溶解。
【0192】
この後、ルシフェラーゼアッセイを行う。いかなる阻害物質の非存在下で、アクチビンAは、レポーター遺伝子の発現の10倍の刺激、およびED50約2ng/mlを示した。GDF−11:16倍の刺激、ED50:約1.5ng/ml。
【0193】
ActRIIb(R64、20−134)は、このアッセイにおいて、アクチビン、GDF−8およびGDF−11活性の強力な阻害物質である。バリアントも本アッセイにおいて試験した。
【0194】
(実施例4)
ヒト臨床試験、単回漸増用量
実施例1に記載したActRIIb(20−134)−hFcタンパク質を、健康な閉経後女性におけるタンパク質の安全性を主に評価するために行った、無作為化二重目隠しプラセボ対照試験においてヒト患者に投与した。被験体48人を、単回用量のActRIIb−hFcまたはプラセボのいずれかを投与する被験体8人の6コホートに無作為化した(実薬6人:プラセボ2人)。用量レベルは、皮下投与(SC)0.02mg/kgから3.0mg/kgの範囲であった。被験体全員が57日間従った。被験体は、試験参加の6カ月以内に骨代謝に影響を及ぼす薬物を投与されていた場合、試験参加者から除外された。各コホートに従って安全性評価を行って用量漸増を決定した。薬物動態(PK)分析の他に、骨形成および骨吸収の生化学マーカー、ならびにFSHレベルを測定することによって、ActRIIb−hFcの生物学的活性をやはり評価した。
【0195】
本試験において重篤な有害事象は報告されなかった。
【0196】
ActRIIb−hFcのPK分析により用量との直線状のプロファイル、およびおよそ10〜16日の平均半減期が示された(図2を参照されたい)。ActRIIb−hFcに対する曲線下面積(AUC)は用量に直線状に関連しており、SC投薬後の吸収は本質的に完全であった。高用量のActRIIb−hFcは、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)スキャンを用いて実証された通り、除脂肪体重(LBM)における増大を引き起こした(図3を参照されたい)。ベースラインと比べたLBMにおける増大の平均値は、3mg/kg投薬で2カ月後に2.6%(0.92kg)であった。プラセボ処置群は0.2%減少した。高用量(1mg/kgおよび3mg/kg)のより多くの被験体に、プラセボおよび低用量に比べて、ActRIIb−hFc投薬15日後ほどの早期にLBMにおける少なくとも0.5kgの増大があり、これは57日目まで維持された(図4を参照されたい)。ActRIIb−hFc1mg/kgおよび3mg/kgを投薬した被験体に、脂肪代謝の血清生物マーカーにおいて、有意な用量依存性の変化が測定された(アディポネクチンの増大およびレプチンの減少)(図5および6を参照されたい)。ActRIIb−hFcは、同化的な骨成長に対するマーカーである骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)の血清レベルにおける速やかで持続的な用量依存性の増大をもたらし、骨吸収のマーカーであるC末端1型コラーゲンテロペプチド(CTX)における用量依存性の低下をもたらした(図7および8を参照されたい)。BSAPレベルは、最高用量の薬物でほぼ飽和的な効果を示し、この同化的な骨のバイオマーカーに対する最大効果の半分の効果が、1mg/kgまたはそれより低い用量で達成され得ることを指摘していた。これら骨のバイオマーカーの変化は、試験した最高用量レベルでおよそ57日間持続した。血清FSHレベルにおいて、アクチビンの阻害と一致する用量依存性の低下も存在した(図9を参照されたい)。
【0197】
大腿筋体積における増大が、磁気共鳴画像法(MRI)によって、ActRIIb−hFc単回用量1mg/kgおよび3mg/kgの29日後に観察され、高用量(3mg/kg)ではプラセボに比べて著しく増大した(図10を参照されたい)。特に、ActRIIb−hFc単回用量3mg/kg投与29日後に、筋肉面積における16.4%の増大、筋肉体積における11.5%の増大、および皮下脂肪における2.2%の増大が観察された。プラセボと比べた1mg/kgおよび3mg/kg用量レベルでの29日目の大腿筋肉体積におけるベースラインからの平均パーセント変化を図11に示す。
【0198】
単回用量のActRIIb−hFcの健康な閉経後女性に対する投与は、試験した用量レベルの範囲では安全かつ認容性が良好であった。この臨床試験は、ヒトにおいて、ActRIIb−hFcは、骨形成における増大および骨吸収における低減の生物学的証拠を有する骨同化薬であることを実証している。ActRIIb−hFcは筋肉サイズおよび機能も増大する。
【0199】
(実施例5)
ヒト臨床試験、複数回漸増用量
無作為化二重目隠しプラセボ対照複数用量用量漸増試験を行って、健康な閉経後女性における、主に、ActRIIb−hFcの安全性、認容性、PK、およびPD効果を評価した。この試験は、被験体各10人の6コホートを含んでいた。各コホートにおける被験体を、ActRIIb−hFcまたはプラセボのいずれかを投与するように無作為化した(1コホートあたり実薬8人:プラセボ2人の被験体)。
【0200】
コホートには以下の通り投薬した:コホート1(0.1mg/kg)、コホート2(0.3mg/kg)、およびコホート3(1mg/kg)にはActRIIb−hFcを皮下的に(SC)14日毎、1日目、15日目、および29日目に全3用量を投与した。コホート4(1mg/kg)、コホート5(2mg/kg)、およびコホート6(3mg/kg)にはActRIIb−hFcをSCで28日毎、1日目および29日目に全2用量を投与した。
【0201】
以下のデータを評価した:有害事象、臨床検査(血液学、化学、尿検査、内分泌機能検査、副腎機能検査、ACTH刺激試験)、バイタルサイン、例えば、仰臥位(少なくとも5分後)および立位(2分±30秒後)の血圧、ECG、心エコー(ECHO)、理学的検査、ならびに抗薬物抗体。薬物動態:血清ActRIIb−hFc濃度曲線下面積(AUC)、ピーク濃度(Cmax)、ピーク濃度までの時間(Tmax)、排出半減期(t1/2)、クリアランス(Cl/F)、および分布容積(Vz/F)。薬力学:FSH、全身DXAスキャンによって測定した除脂肪体重、腰椎によって測定した骨塩密度(BMD)、股関節および全身のDXAスキャン、コホート3〜6におけるMRIスキャンによって測定した筋肉サイズ、ならびに薬力学的効果の他のマーカー。
【0202】
図14に示す通り、ActRIIb−hFcの血清濃度は、用量の量および頻度に関連していた。特に、28日毎に2mg/kgおよび3mg/kg用量を投与すると、トラフ値が著明な高いピーク濃度を達成した。14日毎に1mg/kg用量を投与すると、トラフ値の小さな上昇性の濃度を達成した。第2の投薬後14日毎に1mg/kgを投与すると、患者における平均血清濃度はおよそ12マイクログラム/mLを超えて維持され、2mg/kgおよび3mg/kg用量を28日毎に投与すると、それぞれおよそ8マイクログラム/mLおよびおよそ10マイクログラム/mLの平均値に対するトラフを示した。図15に示す通り、血清濃度におけるトラフ値はFSHに対する効果において反映された。FSH生成はアクチビンによって刺激されると考えられており、したがってActRIIb−hFcなどのアクチビンアンタゴニストの使用はFSH生成を阻害することが予想される。実際、ActRIIb−hFcは全ての用量でFSHのいくらかの阻害を示した。これは、図15において軌線がX軸の下方に潜伏していることによって示される。興味深いことに、14日毎に1mg/kgの用量を投与しても、投薬期間の間FSH阻害における平均の減少は示されなかったが、28日毎に2mg/kgおよび3mg/kg用量を投与するとFSH生成における実質的な増大(したがってFSH抑制における低減)を示し、これは血清濃度におけるトラフ値に対応した(大まかに試験15日目と36日目との間)。本発明者らは、ActRIIb−hFcタンパク質を、血清濃度を8マイクログラム/mLまたは10マイクログラム/mLほど低く低下させる様式において投薬すると、薬物によるアクチビンシグナル伝達の抑制における一過性の放出、およびおそらくはミオスタチンまたはGDF−11などの他のリガンドの抑制における一過性の放出がもたらされると結論する。とりわけ、14日毎に1mg/kg用量を投与すると、少ない頻度で2mg/kgおよび3mg/kg用量を投与したよりも、全身徐脂肪体重によって測定される通り、筋肉量における大幅な増大を引き起こすと思われた(図16を参照されたい)。28日毎に2mg/kgおよび3mg/kg用量を投与された患者は、試験の間、合計4mg/kgまたは6mg/kgの薬物を投与されたが、14日毎に1mg/kg用量を投与された患者は、試験の間、合計3mg/kgしか投与されなかった。それでも、より低く、より頻繁な投薬により、筋肉量に対して明らかに大きな効果がもたらされた(本試験において、統計上の有意性の到達しない傾向として示された)。この、低用量の優れた有効性は、FSHに対する効果によって示される通り、より頻繁な投薬レジメンで起こるよりも持続的なリガンドの抑制によるものであることが予想される。その結果、血清濃度を約8マイクログラム/mL、10マイクログラム/mL、または12マイクログラム/mLを超えて維持する投薬レジメンが、ActRIIb−hFcの作用様式に基づく薬物に最適な効果をもたらすことが予想される。この結論は、このようなタンパク質が、野生型ActRIIb−hFcに対するのと同じ範囲においてアクチビンおよびミオスタチン/GDF−11に対する親和性を有するのであれば、血清半減期にかかわらず、数多くの様々なActRIIb−hFcタンパク質に適用できるはずである。
【0203】
(参考)
本明細書において言及する出版物および特許は全て、各々の出版物または特許が特に、個々に参照によって組み入れられることが指摘されるように、その全文において参照によって本明細書に組み入れられる。
【0204】
対象の特定の実施形態を論じてきたが、上記の明細書は例示的なものであり、限定的なものではない。当業者であれば、本明細書および以下の特許請求の範囲を参照すれば多くの変形が明らかになろう。本発明の全範囲は、同等物、および本明細書の全範囲とともに、このような変形とともに、特許請求の範囲を参照することによって決定されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ActRIIb−Fc融合タンパク質を患者に投薬するための方法であって、少なくとも8μg/mLの前記ActRIIb−Fc融合タンパク質の血清濃度を維持する投薬計画に基づいてActRIIb−Fc融合タンパク質を前記患者に投与することを含む方法。
【請求項2】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質の前記血清濃度が少なくとも10μg/mLの濃度に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質の前記血清濃度が少なくとも12μg/mLの濃度に維持される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質の前記血清濃度が少なくとも20μg/mLの濃度に維持される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質の前記血清濃度が8〜70μg/mLの間の濃度に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記投薬計画が、少なくとも0.3〜5mg/kgの前記ActRIIb−Fc融合タンパク質を前記患者に投与することを伴う、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記投薬計画が、少なくとも1〜3mg/kgの前記ActRIIb−Fc融合タンパク質を前記患者に投与することを伴う、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記投薬計画が、1mg/kgの前記ActRIIb−Fc融合タンパク質を前記患者に投与することを伴う、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記投薬計画が、前記ActRIIb−Fc融合タンパク質を5日から30日毎に1回前記患者に投与することを伴う、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記投薬計画が、前記ActRIIb−Fc融合タンパク質を10日〜16日毎に1回前記患者に投与することを伴う、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記投薬計画が、前記ActRIIb−Fc融合タンパク質を14日毎に1回前記患者に投与することを伴う、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記投薬計画が、1mg/kgの前記ActRIIb−Fc融合タンパク質を14日毎に1回前記患者に投与することを伴う、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記患者が、骨成長、骨密度の増大、または骨強度の増大を必要とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記患者が骨関連障害に罹患している、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記患者が癌を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記患者が乳癌を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記患者が不十分な筋肉成長の筋肉喪失に付随する障害に罹患している、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質が、
a)配列番号2、3、または13と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
b)配列番号2、3、または13と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
c)配列番号2、3、または13のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
d)配列番号2の少なくとも50個の連続のアミノ酸を含むポリペプチド、ならびに
e)ActRIIbの一部分と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、N末端が配列番号1のアミノ酸19〜25から選択されるアミノ酸残基に対応し、C末端が配列番号1のアミノ酸109〜134から選択されるアミノ酸残基に対応するポリペプチド、
f)ActRIIbの一部分と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、N末端が配列番号1のアミノ酸19〜25から選択されるアミノ酸残基に対応し、C末端が配列番号1のアミノ酸109〜134から選択されるアミノ酸残基に対応するポリペプチド、ならびに
g)ActRIIbの一部分を含むポリペプチドであって、N末端が配列番号1のアミノ酸19〜25から選択されるアミノ酸残基に対応し、C末端が配列番号1のアミノ酸109〜134から選択されるアミノ酸残基に対応するポリペプチド
からなる群から選択される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質が、
少なくとも10−7MのKでActRIIbリガンドに結合する特徴、および
細胞におけるActRIIbのシグナル伝達を阻害する特徴
の1つまたは複数を有する、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質が、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分にコンジュゲートしているアミノ酸、および有機誘導体化剤にコンジュゲートしているアミノ酸から選択される1つまたは複数の修飾されているアミノ酸残基を含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質が配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質が配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質が配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質が配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質が、正常の健康なヒトで、10日と16日との間の血清半減期を有する、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
ActRIIb−Fc融合タンパク質を患者に投薬するための方法であって、0.3mg/kgから5mg/kgのActRIIb−Fcを5日から30日毎に1回前記患者に投薬することを含む方法。
【請求項27】
前記患者に1〜3mg/kgのActRIIbを投薬する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記患者にActRIIbを10日〜16日毎に投薬する、請求項26から27に記載の方法。
【請求項29】
前記患者が、骨成長、骨密度の増大、または骨強度の増大を必要とする、請求項26から28に記載の方法。
【請求項30】
前記患者が骨関連障害に罹患している、請求項26から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記患者が癌を有する、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記患者が乳癌を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記患者が筋肉喪失または不十分な筋肉成長に付随する障害に罹患している、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
(i)同化的な骨成長を促進するか、または(ii)骨腫瘍を処置するための方法であって、被験体に有効量のActRIIb−Fc融合タンパク質を投与することを含む方法。
【請求項35】
前記患者が多発性骨髄腫に罹患している、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記患者が前記骨に転移した癌に罹患している、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質が、
配列番号2、3、または13と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
配列番号2、3、または13と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
配列番号2、3、または13のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
配列番号2の少なくとも50個の連続のアミノ酸を含むポリペプチド、
ActRIIbの一部分と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、N末端が配列番号1のアミノ酸19〜25から選択されるアミノ酸残基に対応し、C末端が配列番号1のアミノ酸109〜134から選択されるアミノ酸残基に対応するポリペプチド、
ActRIIbの一部分と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、N末端が配列番号1のアミノ酸19〜25から選択されるアミノ酸残基に対応し、C末端が配列番号1のアミノ酸109〜134から選択されるアミノ酸残基に対応するポリペプチド、ならびに
ActRIIbの一部分を含むポリペプチドであって、N末端が配列番号1のアミノ酸19〜25から選択されるアミノ酸残基に対応し、C末端が配列番号1のアミノ酸109〜134から選択されるアミノ酸残基に対応するポリペプチド
からなる群から選択される、請求項26から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質が、
少なくとも10−7MのKでActRIIbリガンドに結合する特徴、および
細胞におけるActRIIbのシグナル伝達を阻害する特徴
の1つまたは複数を有する、請求項26から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質が、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分にコンジュゲートしているアミノ酸、および有機誘導体化剤にコンジュゲートしているアミノ酸から選択される1つまたは複数の修飾されているアミノ酸残基を含む、請求項26から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質が、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項26から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質が、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質が配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質が配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質が、正常の健康なヒトで、10日と16日との間の血清半減期を有する、請求項34から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質を1週間あたり1回の頻度以下の頻度で前記患者に投与する、請求項34から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質を2週間毎に1回の頻度以下の頻度で前記患者に投与する、請求項34から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質を10〜16日毎に前記患者に投与する、請求項34から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質を10日毎に前記患者に投与する、請求項34から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記ActRIIb−Fc融合タンパク質が骨吸収を阻害する、請求項1から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記患者に吸収抑制薬をさらに投与する、請求項1から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記吸収抑制薬がビスホスホネート薬である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記吸収抑制薬がRANKリガンドアンタゴニストまたはオステオプロテゲリン(osteoprotegrin)アンタゴニストである、請求項50に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図1】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2013−504589(P2013−504589A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528909(P2012−528909)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/048322
【国際公開番号】WO2011/031901
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(509125475)アクセルロン ファーマ, インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】