説明

Al含有銅合金被覆鋼材およびその製造方法

【課題】Alを含有する銅合金の表面特性(耐食性や耐摩耗性)を有し、工業的に生産性良く製造することができる金属材料を提供する。
【解決手段】平均厚さ0.5〜100μm、Al含有量1〜15質量%の銅合金層を鋼材表面に有するAl含有銅合金被覆鋼材。このAl含有銅合金被覆鋼材は、Al含有量1〜20質量%の鋼材を基材として、その表面にCuめっき層を形成したCuめっき鋼材を、非酸化性雰囲気中600〜1050℃に加熱保持することにより、基材中のAlがCuめっき層側に拡散する現象を利用して鋼材表面にAl含有量1質量%以上の銅合金層を形成させる手法によって製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にAl含有銅合金被覆層を有する鋼材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Alを含有する銅合金は従来よりアルミニウム青銅として知られており、例えばJIS H3100には合金番号C6140、C6161、C6280、C6301の各種Cu−Al系合金が規定されている。Al含有銅合金は耐食性、耐海水性、耐高温酸化性、耐摩耗性等に優れることから、車両用、機械用、化学工業用、船舶用等のギヤーピニオン、シャフト、ブッシュといった様々な用途に使用されている。
【0003】
しかし近年、銅原料価格の高騰が銅合金の価格上昇を招いており、相場の変動に伴う銅合金価格の不安定さも問題となっている。また銅合金は一般的に強靱性の点で鋼材に劣り、機械部品などでは更なる高強度化が望まれる場合も多い。このような状況において、Al含有銅合金の上記長所を具備したまま、より強靱性に優れ、かつ安価な材料の出現が望まれるところである。
【0004】
【特許文献1】特開平3−236952号公報
【特許文献2】特表2007−510809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Al含有銅合金の長所を具備した強靱な材料として、芯材に鋼材を用い、その表層にCu−Al合金を設けた複合材料を採用することが有効であると考えられる。しかしながら、現状においてそのような複合材料を生産性良く安価に製造する技術は確立されていない。
【0006】
例えば特許文献1には、Alを含有する銅合金皮膜を金属やセラミックスの表面に形成する技術が記載されている。しかし、これは真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などのドライめっき法によるものであり、成膜速度が遅いことから生産性に劣る。同文献にはCuめっき上にAlめっき皮膜を形成したのち熱拡散によって合金化する方法も記載されているが、Alは標準電極電位が低いため水溶性電解液からの電気めっきが不可能であり、特殊有機溶媒浴あるいは溶融塩浴を用いる必要がある。このような非水系の浴を使用した電気めっきは厳密な浴管理が必要となりコスト的に大量生産化は難しい。
【0007】
特許文献2には、Al、Cu、Niなどの金属層で被覆されたステンレス鋼ストリップを、電子ビーム蒸着法を用いて製造する方法が提案されている。しかし、この手法もドライめっきの欠点である生産性の低さによりコスト上昇は免れない。
【0008】
また、従来から一般的に知られている鋼材表面への異種金属の被覆方法として、合金箔を圧延(熱間、温間または冷間)によりクラッディングする方法、合金粉末のペーストを鋼材表面に塗布したのち焼結させる方法、溶融した合金を鋼材表面に溶射する方法などがある。しかし、これらの方法は皮膜密着性や生産性の面で問題があり、品質の良い銅合金被覆鋼材を安定的に低コストで製造することは難しい。
【0009】
本発明は、Alを含有する銅合金の表面特性(耐食性や耐摩耗性)を有し、工業的に生産性良く製造することができる金属材料を提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、平均厚さ0.5〜100μm、Al含有量1〜15質量%の銅合金層を鋼材表面に有するAl含有銅合金被覆鋼材によって達成される。その銅合金層は例えば、Al含有鋼にCuめっきを施したCuめっき鋼材において、鋼中に存在するAlが、Cuめっき層側に加熱拡散することにより形成されたものである。銅合金層の組成としては、質量%でAl:1〜15%を含有し、Ni:7%以下、Fe:6%以下、Cr:2%以下、Mn:2%以下の1種以上を含有し、残部Cuおよび不可避的不純物であるものが挙げられる。
【0011】
また本発明では、Al含有量1〜20質量%の鋼材を基材として、その表面にCuめっき層を形成したCuめっき鋼材を、非酸化性雰囲気中600〜1050℃に加熱保持することにより、基材中のAlがCuめっき層側に拡散する現象を利用して鋼材表面にAl含有量1質量%以上の銅合金層を形成させるAl含有銅合金被覆鋼材の製造方法が提供される。
【0012】
前記の基材としては、質量%で、C:1%以下、Al:1〜20%を含有し、その他の合金成分として、Si:3%以下、Mn:5%以下、P:0.1%以下、S:0.03%以下、Cr:35%以下、Ni:24%以下、Mo:5%以下、Cu:6%以下、Ti:1%以下、Nb:1%以下、V:1%以下、N:0.5%以下、B:1%以下、Ca:0.1%以下、Mg:0.1%以下、Y:0.1%以下、REM(希土類元素):0.1%以下の1種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を採用することができる。
【0013】
特にフェライト系ステンレス鋼等の高Crフェライト系鋼種を基材として採用する場合には、質量%で、C:0.1%以下、Cr:9〜32%、Al:1〜6%であり、その他の合金成分として、Si:1%以下、Mn:1%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下、Ni:0.6%以下、Mo:5%以下、Cu:3.5%以下、Ti:0.8%以下、Nb:0.8%以下、V:1%以下、N:0.025%以下、B:0.1%以下、Ca:0.1%以下、Mg:0.1%以下、Y:0.1%以下、REM(希土類元素):0.1%以下の1種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系鋼種を採用することができる。
【0014】
基材表面のCuめっき層としては、例えば平均厚さ0.5μm以上の電気Cuめっき層を採用することができる。その電気Cuめっき層は、基材鋼材の表面に形成させたNiストライクめっき層の上に形成させても構わない。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以下のようなメリットを有する。
(1)電気Cuめっき法を採用することで高生産性、低コストでの製造が可能である。
(2)本発明の鋼材表面を被覆するAl含有銅合金層の構成元素であるAlは、基材側からの拡散により供給されるため、ドライめっきや非水系浴を用いたAlめっきによってAlを供給する必要がなく、簡便な方法で均一性の高いAl含有銅合金層が形成可能である。
(3)Al含有銅合金層は加熱拡散処理により形成されたものであるため基材との密着性に優れる。
(4)本発明の手法により形成されたAl含有銅合金層は優れた耐酸化性、耐食性、耐高温酸化性および耐摩耗性を有し、ギヤーピニオン、シャフトなどの機械部品、船舶用スクリューなど、従来Cu−Al系合金が使用されていた用途の他、SOFC(固体酸化物形燃料電池)のインターコネクタ(金属セパレータ)等への適用が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
〔Al含有銅合金層〕
本発明によって提供されるAl含有銅合金被覆鋼材は、表面に、平均厚さ0.5μm以上、Al含有量1〜15質量%のAl含有銅合金層を有するものである。Al含有銅合金層の平均厚さが0.5μm未満では銅にAlを添加することによる耐食性や耐摩耗性などの向上作用を効果的に発揮させることが難しい。1μm以上を確保することがより望ましい。Al含有銅合金層の厚さ上限については特に制限しなくてもよいが、用途に応じて平均厚さ100μm以下の範囲で調整すればよい。Al含有銅合金層の厚さは拡散処理前のCuめっき層の形成厚さに依存する。過剰な膜厚とすることは不経済となるので、Al含有銅合金層の平均厚さは例えば10μm以下に管理しても構わない。
【0017】
Al含有銅合金層の組成は、当該合金層の厚さ中央部で測定すればよい。Al含有銅合金層中のAl含有量は1質量%以上とすることが望ましい。それよりAl含有量が少ないとCu−Al系合金の特長を発揮させる効果が薄い。ただし、拡散処理による基材側からのAlの供給においては、15質量%を超えるAl含有量を実現させることは難しい。通常、Al含有銅合金層中のAl含有量は12質量%以下とすればよく、10質量以下、あるいは8質量%以下としても構わない。
【0018】
Al含有銅合金層を構成するAl以外の残部元素は、質量%で例えばNi:7%以下、Fe:6%以下、Cr:2%以下、Mn:2%以下の1種以上を含有し、残部Cuおよび不可避的不純物とすることができる。これらの元素は後述のNiストライクめっき層や基材の鋼からの拡散により混入し得る。また、これらの元素がCuめっき層中に含まれる場合も、Al含有銅合金層の構成成分となる。Cu、Al、Ni、Fe、Cr、Mn以外の混入元素の含有量は合計1質量%以下であることが望ましい。
【0019】
〔基材〕
本発明のAl含有銅合金被覆鋼材は、後述のようにCuめっき鋼材を加熱拡散処理に供することにより好適に製造することができる。そのCuめっき鋼材の基材となる鋼としては、Alを1〜20質量%含有するものが適用される。基材のAl含有量が1質量%未満だと拡散処理によって表層Cu皮膜中のAl濃度を十分に増大させることが難しくなる。一方、鋼中のAl含有量が多くなると鋼の金属組織においてFe−Al系金属間化合物相の存在量が増大し、鋼材の製造が難しくなるので、基材中のAl含有量は20質量%以下の範囲とする。製造性を重視する場合はFe−Al系金属間化合物相がほとんど生成しないAl含有量10質量%以下の範囲とすることが望ましく、8質量%以下あるいは6質量%以下に管理しても構わない。
【0020】
基材の鋼は、Al含有量が上記の範囲にある鋼であれば、種々の鋼種が適用可能である。例えば鋼板素材に加工して使用することを想定すると、以下のような成分組成を例示することができる。
質量%で、C:0.5%以下、Al:1〜20%を含有し、その他の合金成分として、Si:3%以下、Mn:5%以下、P:0.1%以下、S:0.03%以下、Cr:35%以下、Ni:24%以下、Mo:5%以下、Cu:6%以下、Ti:1%以下、Nb:1%以下、V:1%以下、N:0.5%以下、B:1%以下、Ca:0.1%以下、Mg:0.1%以下、Y:0.1%以下、REM(希土類元素):0.1%以下の1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物
【0021】
また、耐食性が要求される用途ではステンレス鋼を採用することが望まれる。特にSOFCのインターコネクタなどの用途には熱膨張係数が比較的小さく、応力腐食割れの問題も生じないフェライト系ステンレス鋼の採用が有利となる。フェライト系ステンレス鋼としては、鋼板素材に加工して使用することを想定すると、以下のような成分組成を例示することができる。
質量%で、C:0.1%以下、Cr:9〜32%、Al:1〜6%であり、その他の合金成分として、Si:1%以下、Mn:1%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下、Ni:0.6%以下、Mo:5%以下、Cu:3.5%以下、Ti:0.8%以下、Nb:0.8%以下、V:1%以下、N:0.025%以下、B:0.1%以下、Ca:0.1%以下、Mg:0.1%以下、Y:0.1%以下、REM(希土類元素):0.1%以下の1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物
【0022】
〔Cuめっき層の形成〕
上記の基材の表面にCuめっきを施す。めっき方法としては大量生産に適する電気Cuめっき法を採用することができる。電気めっき浴は例えば従来一般的な硫酸銅浴、シアン化銅浴、ピロりん酸銅浴などを使用すればよい。Cuめっき層の平均厚さは0.5μm以上とすることが望ましい。それより薄いと拡散処理後に十分な厚さのAl含有銅合金層を安定して形成させることが難しくなる場合ある。Cuめっき層の厚さは用途に応じて例えば100μm以下の範囲で調整すればよい。10μm以下の範囲に管理しても構わない。
【0023】
Cuめっきに先立ち、鋼材表面には下地処理としてNiストライクめっき、あるいはCuストライクめっきを施しても構わない。Cuストライクめっきを施した場合は、上記Cuめっき層の厚さとしてストライクめっき層の厚さが含まれる。Niストライクめっきの場合は膜厚0.05〜0.3μm程度のNi薄膜層を形成させることが望ましい。NiストライクめっきによるNi薄膜層は拡散処理を行うことでほとんど消失し、Al含有銅合金層中には拡散してきたNiストライクめっき由来のNiが観測される。
【0024】
以下に、Niストライクめっきを施す場合を例に挙げて、Cuめっき層を形成させる一般的な手順を例示する。
(1)基材(めっき原板)となる鋼材(鋼板)を脱脂、酸洗処理する。
(2)Niストライクめっきを施す。条件は例えば、塩化ニッケル200〜300g/L、塩酸100〜150mL/Lを含有する水溶液をめっき浴として、浴温30〜40℃、電流密度5〜10A/dm2にて、平均膜厚0.05〜0.3μm程度のNi薄膜層を形成させる。
(3)Cuめっきを施す。条件は例えば、硫酸銅150〜250g/L、硫酸30〜80g/Lを含有する水溶液をめっき浴(硫酸銅浴)として、浴温20〜60℃、電流密度3〜10A/dm2にて、平均膜厚0.5〜100μm、好ましくは1〜10μm程度のCuめっき層を形成させる。
【0025】
〔Al含有銅合金層の形成〕
基材表面にCuめっき層を形成した「Cuめっき鋼材」を高温に加熱すると、基材中に存在するAlがCuめっき層の内部に拡散し、鋼材表層部にはAl含有銅合金層が形成される。加熱温度は600〜1050℃とすることが望ましく、700℃〜1020℃とすることがより好ましい。加熱時間は0〜24hの範囲で最適条件を設定すればよい。ここで加熱時間0hとは、上記温度範囲に設定した所定の加熱温度に材料温度が到達した後、直ちに降温過程に移行させるヒートパターンを採用する場合を意味する。加熱温度および加熱時間は、Cuめっき層の厚さ、基材中のAl含有量などに応じて、Al含有銅合金層の膜厚およびAl含有量が目的の範囲となるように条件を設定すればよい。
【0026】
この拡散処理の加熱は非酸化性雰囲気で行う。例えば、真空雰囲気、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気、水素ガスなどの還元性ガス雰囲気などが例示できる。さらに露点を−20℃以下好ましくは−30℃以下に低く保つことが表面酸化を抑制する上で特に効果的である。
【実施例1】
【0027】
表1に示す鋼種Aからなる板厚1mmの鋼板を用意した。この鋼板の表面を#1000耐水研磨紙で研磨したのち、60℃の5質量%オルソ珪酸ナトリウム水溶液中で電解脱脂し、次いで5質量%塩酸水溶液で中和処理することにより基材(めっき原板)とした。
この基材に、硫酸銅200g/L、硫酸50g/Lを含有する硫酸銅浴を用いて、浴温40℃、電流密度10A/dm2にて電気Cuめっきを施し、平均厚さ1μmのCuめっき層を表面に有するCuめっき鋼材を得た。
このCuめっき鋼材を、露点−60℃の100%窒素ガス雰囲気中にて、加熱温度1000℃、加熱時間5minの拡散処理に供した。
【0028】
拡散処理後の材料について、表面付近の断面をSEM−EDXで観察・分析したところ、鋼材表面に平均厚さ約1μmのAl含有銅合金層が形成されていた。その組成は、Cu、Al、Ni、Feの分析値によると、厚さ中央部10箇所の測定結果の平均値で、Al:2.1質量%、Ni:0.02質量%、Fe:0.6質量%であり、残部はCuであった。
このAl含有銅合金層は厚さ変動および組成変動が少なく、均一性の高いものであった。
【実施例2】
【0029】
表1に示す鋼種Bからなる板厚1mmの鋼板を用意した。この鋼板の表面を#1000耐水研磨紙で研磨したのち、60℃の5質量%オルソ珪酸ナトリウム水溶液中で電解脱脂し、次いで5質量%塩酸水溶液で中和処理することにより基材(めっき原板)とした。
この基材に、塩化ニッケル240g/L、塩酸120mL/Lを含有する塩化ニッケル浴を用いて、浴温30℃、電流密度5A/dm2にてNiストライクめっきを施し、平均厚さ0.3μmのNi薄膜層を表面に有する鋼材を得た。
このNi薄膜層の上に、硫酸銅200g/L、硫酸50g/Lを含有する硫酸銅浴を用いて、浴温40℃、電流密度10A/dm2にて電気Cuめっきを施し、平均厚さ3μmのCuめっき層を表面に有するCuめっき鋼材を得た。
このCuめっき鋼材を、露点−30℃の100%水素ガス雰囲気中にて、加熱温度800℃、加熱時間2hの拡散処理に供した。
【0030】
拡散処理後の材料について、表面付近の断面をSEM−EDXで観察・分析したところ、鋼材表面に平均厚さ約3μmのAl含有銅合金層が形成されていた。その組成は、Cu、Al、Ni、Feの分析値によると、厚さ中央部10箇所の測定結果の平均値で、Al:6.2質量%、Ni:0.6質量%、Fe:1.2質量%であり、残部はCuであった。
【0031】
図1に、拡散処理後の材料の表面付近の断面SEM写真を示す。図2に、拡散処理前のCuめっき鋼材および拡散処理後のAl含有銅合金被覆鋼材について、高周波グロー放電分光分析(GDS)による表面から深さ方向への元素濃度分布の測定結果を示す。拡散処理により基材の鋼中に存在していたAlがCuめっき層側に拡散し、厚さ方向の濃度変動が少ない均質性の高いAl含有銅合金層が形成されていることがわかる。
【0032】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例2で得られた拡散処理後の材料の表面付近の断面SEM写真。
【図2】実施例2で得られた拡散処理前・後の材料についてGDSによる表面から深さ方向への元素濃度分布の測定結果を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均厚さ0.5〜100μm、Al含有量1〜15質量%の銅合金層を鋼材表面に有するAl含有銅合金被覆鋼材。
【請求項2】
銅合金層は、Al含有鋼にCuめっきを施したCuめっき鋼材において、鋼中に存在するAlが、Cuめっき層側に加熱拡散することにより形成されたものである請求項1に記載のAl含有銅合金被覆鋼材。
【請求項3】
銅合金層は、厚さ中央部において、質量%でAl:1〜15%を含有し、Ni:7%以下、Fe:6%以下、Cr:2%以下、Mn:2%以下の1種以上を含有し、残部Cuおよび不可避的不純物の組成を有するものである請求項1または2に記載のAl含有銅合金被覆鋼材。
【請求項4】
Al含有量1〜20質量%の鋼材を基材として、その表面にCuめっき層を形成したCuめっき鋼材を、非酸化性雰囲気中600〜1050℃に加熱保持することにより、基材中のAlがCuめっき層側に拡散する現象を利用して鋼材表面にAl含有量1質量%以上の銅合金層を形成させるAl含有銅合金被覆鋼材の製造方法。
【請求項5】
基材は、質量%で、C:1%以下、Al:1〜20%を含有し、その他の合金成分として、Si:3%以下、Mn:5%以下、P:0.1%以下、S:0.03%以下、Cr:35%以下、Ni:24%以下、Mo:5%以下、Cu:6%以下、Ti:1%以下、Nb:1%以下、V:1%以下、N:0.5%以下、B:1%以下、Ca:0.1%以下、Mg:0.1%以下、Y:0.1%以下、REM(希土類元素):0.1%以下の1種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼である請求項4に記載のAl含有銅合金被覆鋼材の製造方法。
【請求項6】
基材は、質量%で、C:0.1%以下、Cr:9〜32%、Al:1〜6%であり、その他の合金成分として、Si:1%以下、Mn:1%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下、Ni:0.6%以下、Mo:5%以下、Cu:3.5%以下、Ti:0.8%以下、Nb:0.8%以下、V:1%以下、N:0.025%以下、B:0.1%以下、Ca:0.1%以下、Mg:0.1%以下、Y:0.1%以下、REM(希土類元素):0.1%以下の1種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系鋼種である請求項4に記載のAl含有銅合金被覆鋼材の製造方法。
【請求項7】
基材表面のCuめっき層は平均厚さ0.5μm以上の電気Cuめっき層である請求項4〜6のいずれかに記載のAl含有銅合金被覆鋼材の製造方法。
【請求項8】
基材表面のCuめっき層は、Niストライクめっき層を介して基材表面に形成された平均厚さ0.5μm以上の電気Cuめっき層である請求項4〜6のいずれかに記載のAl含有銅合金被覆鋼材の製造方法。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−47791(P2010−47791A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211413(P2008−211413)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【Fターム(参考)】