説明

B細胞アッセイに関する組成物及び方法

本発明は、被検体の血清BAFFレベルを測定することによる疾患の新規の治療方法及び被検体のB細胞レベルのモニタリング方法及びそれに関する組成物及びキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、疾患を治療して、被検体のB細胞レベルをモニタリングするための方法及びそれに関する組成物及びキットに関する。
【0002】
(発明の背景)
B細胞を枯渇(減少)させるための治療法は、多種多様なB細胞媒介性の疾患を治療する際に有用であることが明らかにされている。例えば、ヒトのCD20抗原に対する遺伝的に操作したキメラマウス/ヒトのモノクローナル抗体であるリツキシマブ、RITUXAN(登録商標)抗体(Genentech, Inc., South San Francisco, California, U.S.から市販されている)は、再発性または難治性低悪性度の(refractory low-grade)または濾胞性の(follicular)、CD20陽性、B細胞非ホジキンリンパ腫患者の治療のためのものである。リツキシマブの臨床試験及び事例研究の結果から(Biogen Idec, Cambridge, MA, USA and Genentech, South San Francisco, CA, USA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)及びシェーグレン症候群(SS)患者だけでなく、共通性の低い自己免疫性疾患、例えば難治性皮膚筋炎、II型混合クリオグロブリン血症、ウェゲナー肉芽腫症、自己免疫性溶血性貧血症、特発性血小板減少症及び免疫グロブリンM(IgM)多発性神経炎の患者においても治療的な有用性が報告されている(Gorman C,等, (2003) Arthritis Res Ther 5: S17-S21;Somer BG,等, (2003) Arthritis Rheum 49:394-398)。
【0003】
現在、被検体のB細胞を枯渇させる治療法の活性は、B細胞枯渇と充満(回復)の間の血中の実際のB細胞レベルを測定することによってモニターされることが多い。あるいは又はさらに、B細胞を枯渇させる治療法の活性は本来疾患と関係している血中マーカーをモニターすることによって評価されている。例えば、特定の自己免疫性疾患について、二本鎖DNA抗体のような自己抗体がモニターされている。これらの方法はいずれも、被検体における他の領域のB細胞群を明確かつ同時に観察できるものではない。患者の組織(例えば脾臓、リンパ節及び関節)の生検を得ること又は他の体液(例えば脊髄液、関節液)を評価することができない、又は少なくとも不都合なことが多い。
【0004】
いくつかの自己免疫性疾患、例えば全身性エリテマトーデス、関節リウマチ及びシェーグレン症候群において増加する一ポリペプチドは、BAFFポリペプチドである(Cheema, G. S,等, (2001) Arthritis Rheum. 44:1313-1319;Groom, J.,等, (2002) J. Clin. Invest. 109:59-68;Zhang, J.,等, (2001) J. Immunol. 166:6-10)。BAFF(BLyS、TALL-1、THANK、TNFSF13B又はzTNF4としても知られる)は、B細胞の生存及び成熟に必須であるTNFリガンドスーパーファミリのメンバーである(Mackay & Browning (2002) Nature Rev. Immunol. 2:465-475に概説される)。BAFFは、B細胞でなく、単球、マクロファージ、樹状細胞及び好中球から分泌されるか、これらの細胞表面上に見られうる(Nardelli B,等 (2000) Blood 97: 198-204;Scapini P,等 (2003) J Exp Med 197:297-302)。トランスジェニックマウスにおけるBAFF過剰発現によりB細胞過形成と重度の自己免疫性疾患の発達が起こる(Mackay,等 (1999) J. Exp. Med. 190: 1697-1710;Gross,等 (2000) Nature 404:995-999;Khare,等 (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 97:3370-33752-4)。
【0005】
さらに、BAFFレベルは重症度と相関していることから、BAFFがこれらの疾患の病因に直接的な役割を果たしうることが示唆される。BAFFはTNFレセプタースーパーファミリの3つのメンバーであるTACI、BCMA及びBR3(BAFF-Rとしても知られる)に結合する(Gross,等, supra;Thompson, J. S.,等, (2001) Science 293, 2108-2111;Yan, M.,等 (2001) Curr. Biol. 11:1547-1552;Yan, M.,等, (2000) Nat. Immunol. 1:37-41;Schiemann, B.,等, (2001) Science 293:2111-2114)。3つのうちBR3だけはBAFF特異的であり、その他の2つのレセプターも、関連したTNFファミリーであるAPRILを結合する。BAFF及びレセプターのノックアウトないしは変異マウスの表現型の比較により、BR3によるシグナル伝達がBAFFのB細胞生存機能を媒介することが示される(上掲のThompson,等;上掲のYan, (2002);上掲のSchiemann)。一方、TACIは阻害性レセプターとして作用するようである(Yan, M., (2001) Nat. Immunol. 2, 638-643)のに対して、BCMAの役割はあまり明確でない(上掲のSchiemann)。
【0006】
現在、BAFFを標的とする遮断用(blocking)mAb(Lymphostat-BTM、Human Genome Sciences, Rockville, MD)はRA及びSLEの患者において臨床試験中であり、TACI-Fc(ZymoGenetics, Seattle, WA and Serono, Geneva, CH)はSLE患者において臨床試験中であり、BAFF-R:Fc(BR3-Fcとも呼称される) (Biogen Idec, Cambridge, MA and Genentech, South San Francisco, CA)は臨床開発中である。関節リウマチにおけるLymphostat-BTMによる第II相治験からのデータの報告では、患者は選択したB細胞群が減少したことが述べられている(McKay, J.,等, 69th Annual Scientific Meeting of the American College of Rheumatology/Association of Rheumatology Health Professionals. Oral Presentation #1920 (November 16, 2005))。
【0007】
B細胞が媒介する疾患を治療するためにBAFFの阻害薬を使用するための論理的根拠は明らかである。しかしながら、治療薬の標的としてではなくマーカーとしてのBAFFの有用性の範囲、及び治療投薬計画においてマーカーとしてどのように用いるかについてはあまり理解されていない。これらの論点に対する解決策及びその他を以下に記載する。
【0008】
(発明の概要)
本発明は、血清BAFFレベルが被検体のB細胞レベルの指標であり、この指標にはB細胞枯渇(減少)治療薬(B cell depletion therapeutic agent)又はB細胞増殖治療薬(B cell proliferating therapeutic agent)によって治療された被検体の組織B細胞レベルの早期指標が含まれるという発見と、それによる被検体のB細胞レベルを知ることで利益を得うる被検体の治療又は評価の任意の方法又はキットにおける使用に関する。さらに、本発明は、血清BAFFレベルがB細胞治療薬による治療後の患者において組織中のB細胞レベルと逆に関係しているという発見と、患者を治療する際のこの認識の利用に関する。
【0009】
本発明は、被検体のB細胞レベルをモニタリングするための方法であって、被検体の試験試料中の血清BAFFレベルを決定し、コントロール試料中の血清BAFFレベルを決定し、そしてコントロールと比較して被検体のB細胞レベルを算出する工程を含んでなり、このときの算出に試験試料中の血清BAFFレベルをコントロール試料中の血清BAFFレベルと比較する工程(例えばコントロール試料中の血清BAFFレベルに対して試験試料中の血清BAFFレベルを分けること)が含まれる方法を提供する。一実施態様では、コントロール試料は治療薬による治療前の被検体からのものであり、試験試料は治療薬による治療後の被検体からのものである。他の実施態様では、試験試料は疾患を患っている被検体からのものであり、コントロール試料は疾患を患っていない被検体からのものである。一実施態様によると、B細胞はCD19陽性及び/又はCD20陽性のB細胞である。この方法は、被検体のB細胞レベルの認識が疾患を治療するために有用となりうる任意の被検体のB細胞レベルを決定するために有用である。したがって、この方法は、B細胞が影響を受けるか又はモニターされなければならないか、あるいは、疾患がB細胞促進薬又はB細胞枯渇薬によって治療される任意の疾患に関して被検体をモニタリングする又は治療するために有用でありうる。ゆえに、本方法は、自己免疫性疾患免疫不全、リンパ腫又は白血病を患っていない被検体を含む様々な被検体のB細胞をモニターするために有用である。
【0010】
本発明は、疾患を患っている被検体の治療方法であって、(1) 該被検体に治療上有効量の治療薬を投与し、(2) 該被検体の試験試料中の血清BAFFレベルを決定し、(3) コントロール試料と試験試料中のB細胞レベルを比較し、そして(4) 該被検体の血清BAFFレベルに依存する時点で、治療上有効量の同じ治療薬又は異なる治療薬を投与する工程を含んでなる方法を提供する。他の実施態様では、本発明は、疾患を患っている被検体の治療方法であって、(1) 該被検体に治療上有効量の治療薬を投与し、(2) 該被検体の試験試料中の血清BAFFレベルを決定し、そして(3) 該試験試料中の血清BAFFレベルに依存する時点で、治療上の有効量の同じ治療薬又は異なる治療薬を投与する工程を含んでなる方法を提供する。一実施態様によると、前記の時点は最大のB細胞枯渇段階の間又はその後である。他の実施態様によると、前記の時点はB細胞回復段階の間である。ある好適な実施態様によると、前記の時点は、末梢血液B細胞回復の前である組織B細胞回復の前又はその間である。ある特定の実施態様によると、B細胞回復段階は、血清BAFFレベルを低下させるという特徴がある。ある特定の実施態様によると、最大のB細胞枯渇段階は、被検体の血清における最大レベルのBAFFに特徴がある。
【0011】
本発明は、B細胞枯渇薬にて既に治療された被検体のための維持治療法であって、該被検体の血清BAFFレベルを決定し、そして試験試料中の血清BAFFレベルに依存する時点に、例えば最大のB細胞枯渇時に又は最大のB細胞枯渇後及び血清BAFFレベルが減少している間に、B細胞枯渇薬(同じないしは異なる薬剤)又は他の治療薬にて患者を治療する工程を含んでなる方法を提供する。ある好適な実施態様によると、前記の時点は、末梢血液B細胞回復の前である組織B細胞回復の前又はその間である。
【0012】
本発明のいくつかの実施態様によると、治療薬は、B細胞促進薬及びB細胞枯渇薬からなる群から選択される。好適な実施態様によると、治療薬はBAFFに結合するBAFFアンタゴニストではない。他の実施態様によると、治療薬は、BAFFに結合してその相互作用を遮断することによって、BAFFのBCMA、TACI又はBR3への結合を遮断しない。ある実体態様によると、治療薬が、CD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD40、CD52、D53、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85、CD86、CD180(RP105)、FcRH2(IRTA4)、CD79A、C79B、CR2、CCR6、CD72、P2X5、HLA-DOB、CXCR5(BLR1)、FCER2、BR3(aka BAFF-R)、TACI、BTLA、NAG14(aka LRRC4)、SLGC16270(ala LOC283663)、FcRH1(IRTA5)、FcRH5(IRTA2)、ATWD578(aka MGC15619)、FcRH3(IRTA3)、FcRH4(IRTA1)、FcRH6(aka LOC343413)及びBCMA(aka TNFRSF17)、HLA-DO、HLA-Dr10及びMHCクラスIIからなる群から選択されるB細胞表面抗原に結合するB細胞枯渇薬である。ある実施態様によると、B細胞表面抗原を標的とするB細胞枯渇薬はモノクローナル抗体又はペプチボディである。ある特定の実施態様によると、モノクローナル抗体は、ヒト、ヒト化、キメラ、又はそれ以外の操作した抗体である。
【0013】
本発明のある実施態様によると、疾患は免疫学的疾患又は癌である。他の実施態様によると、免疫学的疾患はリンパ腫、白血病又は多発性骨髄腫である。他の実施態様では、疾患はB細胞リンパ腫又は白血病である。本発明の他の実施態様によると、疾患は、自己免疫性疾患、B細胞新生物、B細胞リンパ増殖性疾患又は免疫不全症からなる群から選択される。ある実施態様によると、自己免疫性疾患は、関節リウマチ、例えば若年性慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)を含むループス、ウェゲナー病、炎症性腸疾患、例えばクローン病及び潰瘍性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgAネフロパシ、IgM多発性神経炎、重症筋無力症、血管炎、真正糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群、糸球体腎炎、皮膚筋炎/多発性筋炎、ANCA関連血管炎(AAV)、再生不良性貧血、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、第VIII因子欠損症、血友病A、自己免疫性好中球減少症、カールスマン症候群、グッドパスチャー症候群、固形臓器移植拒絶反応、移植片対宿主病(GVHD)、IgMが媒介する血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、橋本甲状腺炎、自己免疫性肝炎、リンパ系間質性肺炎(LIP)、閉塞性細気管支炎(非移植)対NSIP、ギラン-バレー症候群、大脈管血管炎、巨細胞(高安)動脈炎、中脈管血管炎、川崎病、結節性多発動脈炎、視神経脊髄炎(NMO)、IgG神経障害及び重症筋無力症及び尋常性天疱瘡からなる群から選択される。他の実施態様によると、リンパ腫又は白血病は、B細胞リンパ腫又は白血病である。ある特定の実施態様によると、疾患は、非ホジキンリンパ腫(NHL)又はリンパ球優性ホジキン病(LPHD)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、及び多発性骨髄腫からなる群から選択される。
【0014】
いくつかの実施態様によると、B細胞枯渇薬は、抗CD20抗体、抗BR3抗体、抗CD22抗体及び抗CD52抗体からなる群から選択される。本発明の方法、組成物及び製造品のいずれかの実施態様では、抗CD20抗体はキメラ、ヒト、ヒト化のその他の操作された抗体でありうる。ある実施態様によると、抗BR3抗体は、本明細書に記載のVH及びVLのドメインを含んでなる。
【0015】
抗CD20抗体の具体的な実施態様には、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))、m2H7(マウス2H7)、hu2H7(ヒト化2H7)及びすべてのその機能的な変異体、hu2H7.v16(vはバージョンを表す)、v31、v96、v114及びv115が含まれる(例として国際公開第2004/056312号を参照)。他の実施態様によると、B細胞促進薬は、B細胞増殖又は生存を促すサイトカイン又は抗体からなる群から選択される。B細胞促進薬はBAFFでないことが好ましい。
【0016】
また、本発明は、治療薬投与後の被検体における血清BAFFレベルをアッセイすることについて、及び再治療投薬計画を設定するための該アッセイ結果の使用についての指示書を具備するキット及び製造品を提供する。また、本発明は、被検体の血清BAFFレベルをアッセイすることについて、及び治療薬投与後の被検体におけるB細胞枯渇の有効性及び/又はB細胞充満の動態をモニターするための該アッセイ結果の使用についての指示書を具備するキットを提供する。BAFF結合試薬と、BAFF結合試薬を用いて血清BAFFレベルを決定することについて、及びB細胞枯渇薬又はB細胞促進薬による治療後の患者におけるB細胞レベルと血清BAFFレベルを関連させることについての指示を含むパッケージ挿入物とを具備するキットが提供される。
【0017】
(発明の詳細な説明)
B細胞をもたらす治療薬に対する被検体の臨床応答は、被検体の血液中のB細胞枯渇を評価することによって測定されることが多い。しかしながら、この結果は、組織(脾臓、リンパ節、関節などの自己免疫性部位、脊髄液など)において観察されるB細胞枯渇のレベルと完全に相関しない。実際には、B細胞枯渇療法の臨床応答は、特に腫瘍学において、血液B細胞枯渇より標的臓器のB細胞枯渇により相関する。したがって、組織B細胞枯渇と同時にB細胞回復(充満)を示すためにより良好なマーカーを探すことは、B細胞を枯渇させる治療法を最適化するために重要である。
【0018】
本出願は、血清BAFFレベルが被検体の総B細胞負荷を反映するためにより適当なマーカーであることを開示する。このように、治療薬が細胞の増殖又は生存の阻害又は刺激のためにB細胞を標的とするかどうかにかかわらず、血清BAFFレベルの評価を用いて被検体のB細胞レベルを決定することができる。患者の血清BAFFレベルの評価は、B細胞枯渇薬又はB細胞促進薬などのB細胞治療法の有効性をモニターする際に特に有用でありうる。さらに、B細胞枯渇後のB細胞回復の間の血清BAFFレベルの再評価は、B細胞枯渇薬についての再治療投薬計画又は、免疫系を調節する任意の他の治療薬(例えばDMARDS、T細胞枯渇薬、免疫抑制剤、ワクチンなど)による治療をいつ再開するかを決定するために有用でありうる。また、血清BAFFレベルは、B細胞治療に応答せずにすぐに代替治療を必要とする患者に対してB細胞治療に十分応答する患者を決定するための早期マーカーでありうる。血清BAFFレベルの評価は維持療法に有用であり得、このときの治療法は治療薬による治療後の疾患の状態を維持するために行われるものである。例えば、維持療法は、自己免疫性疾患又は癌の寛解段階を維持することが望まれうる。
【0019】
「BAFF」なる用語は、BLyS、TALL-1、THANK、TNFSF13B又はzTNF4(例えば配列番号:102)としても知られるポリペプチドであり、B細胞生存に役割を有するTNFリガンドスーパーファミリのメンバー、及びBAFF活性を有するホモログ、アイソフォーム、その断片及びその変異体を指す。BAFFなる用語には、Shu等, J. Leukocyte Biol., 65:680 (1999);GenBank受託番号AF136293;1998年5月7日公開の国際公開第98/18921号;1998年10月7日発行の欧州特許第869180号;1998年6月25日公開の国際公開第98/27114号;1999年3月18日公開の国際公開第99/12964号;1999年7月8日公開の国際公開第99/33980号;Moore等, Science, 285:260-263 (1999);Schneider等, J. Exp. Med., 189:1747-1756 (1999);Mukhopadhyay等, J. Biol. Chem., 274:15978-15981 (1999)に記載のポリペプチドが含まれる。
【0020】
本発明に係るBAFFのレセプターには、TACI、BR43X2、hTACI(265)、BCMA及びBR3と、BAFF結合活性を有し、それによってBAFFが細胞シグナル伝達することができる任意のホモログ、アイソフォーム、その断片及びその変異体が含まれる。また、「BR3」は当分野においてBAFF-Rと称されることが多い。BR3の例には、PCT出願国際公開第02/24909号及び同第03/014294号に記載のもの、例えばヒトのBR3(配列番号:103)、ヒトのBR3細胞外ドメイン(配列番号:104)、及びマウスのBR3細胞外ドメイン(配列番号:105)が含まれる。TACI、BR43X2、hTACI(265)の例には、Gross等, (200) Nature 404:995-999、国際公開第98/39361号、同第00/40716号及び同第01/60397号に記載のものが含まれる。BCMAの例には、Laabi等, (1992) EMBO J. 11(11): 3897-3904に記載のものが含まれる。
【0021】
「抗BAFFレセプター抗体」又は「BAFFレセプター結合抗体」なる用語は、BAFFのレセプターの少なくとも一のエピトープに特異的に結合する任意の抗体を指す。抗BR3抗体の例には、国際公開第02/24909号(例えば9.1及び2.1)及び国際公開第2006/073941号に記載のものが含まれるが、これらに限定されるものではない。抗TACI抗体の例には、国際公開第2004/011611号に記載のものが含まれるが、これらに限定されるものではない。抗BCMA抗体の例には、Thompson等, (2001) 293(5537): 2108 - 2111に記載のもの(例えば、C4.E2.1)及びVicky-1抗体(Abcam, Inc., Cambridge, Ma)が含まれるが、これらに限定されるものではない。抗BAFFレセプター抗体はモノクローナル抗体であることが好ましい。BAFFのレセプターへの結合を阻害する抗BAFFレセプター抗体と、治療薬としてBAFFのレセプターへの結合を阻害しない抗BAFFレセプター抗体のいずれかの使用が本発明の方法において考慮される。ヒトの治療に有用な、ヒト、ヒト化、キメラ化又はその他の向上された形態の抗BAFFレセプター抗体、例えば向上された形態の前述のものが、本発明の方法において治療薬として考慮される。ある好適な実施態様では、抗BAFFレセプター抗体は、10nMより小さいKdでBAFFレセプターを結合するであろう。他の好適な実施態様では、前記の結合は、7.5nMより小さい、より好ましくは5nMより小さい、さらにより好ましくは1〜5nMの間、最も好ましくは1nMより小さいKdである。
【0022】
本明細書中で用いられる「BAFFアンタゴニスト」なる用語は、最も広義の意味で用いられ、(1) BAFFポリペプチドを結合するか又はBAFFのレセプターを結合するかしてBAFFのBAFFレセプターとの相互作用を部分的にないしは完全に遮断する任意の分子、及び(2) BAFFレセプターによるBAFFシグナル伝達を部分的にないしは完全に遮断するか阻害する任意の分子を含む。BAFFアンタゴニストは、タンパク質性(例えば抗体、レセプター融合タンパク質、ペプチド、ペプチボディ、優性ネガティブなBAFF変異体)又は非タンパク質性の分子(例えば小有機分子(およそ500Da以下))、例えばsiRNA及びアプタマーなどであってもよい。BAFFアンタゴニストの生物学的活性の中和を評価するための方法には、当分野で記載される公知のものが含まれる。BAFFアンタゴニストの例には、BAFFレセプターのBAFF-結合部分を含んでなるポリペプチド又はそのBAFF-結合変異体(例えば国際公開第01/12812号、国際公開第02/24909号、国際公開第00/40716号、国際公開第03/024991号)、抗BAFF抗体(例えば国際公開第03/33658号)、BAFF-結合ペプチボディ(例えば国際公開第02/092620号)、抗BAFF-R抗体(例えば国際公開第02/24909号)及びBAFF-結合ペプチド(例えば国際公開第02/16412号)が含まれる。ある実施態様では、BAFFアンタゴニストは、BCMA-Fc(例えば国際公開第01/12812号)、BAFF-R-Fc(例えば国際公開第02/24909号)、TACI-Ig(例えば国際公開第00/40716号)、抗BAFF抗体(例えば国際公開第03/33658号)、抗BAFF-R抗体(例えば国際公開第02/24909号)、BAFF-結合ペプチボディ(例えば国際公開第02/092620号)、優性ネガティブなBAFF(例えば国際公開第04/081043号)からなる群から選択される。更なる実施態様では、抗BAFF抗体及び抗BAFFレセプター抗体は、ヒト、ヒト化、キメラ化であり、さもなければヒトの治療のために向上されている。抗BAFF抗体の例には、ベリムマブ(belimumab)及び国際公開第02/02641号及び同第03/55979号に記載のBAFF-結合抗体が含まれる。BAFF-結合ペプチド-Fc融合タンパク質の例には、国際公開第02/24909号に記載のBAFF-結合融合タンパク質が含まれる。
【0023】
本明細書中の「B細胞表面マーカー」又は「B細胞表面抗原」は、結合するアンタゴニストにより標的とされうるB細胞の表面上に発現する抗原である。例示的なB細胞表面マーカーには、CD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD40、CD52、D53、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85、CD86、CD180(RP105)、FcRH2(IRTA4)、CD79A、C79B、CR2、CCR6、CD72、P2X5、HLA-DOB、CXCR5(BLR1)、FCER2、BR3(aka BAFF-R)、TACI、BTLA、NAG14(aka LRRC4)、SLGC16270(ala LOC283663)、FcRH1(IRTA5)、FcRH5(IRTA2)、ATWD578(aka MGC15619)、FcRH3(IRTA3)、FcRH4(IRTA1)、FcRH6(aka LOC343413)及びBCMA(aka TNFRSF17)、HLA-DO、HLA-Dr10及びMHCクラスIIが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
ある好適な実施態様では、特に興味があるB細胞表面マーカーは、哺乳動物の他の非B細胞組織よりもB細胞上に発現されており、前駆体B細胞及び成熟B細胞に発現されてもよい。好適なB細胞表面マーカーの例には、CD19、CD20及びCD22が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
「CD19」抗原は、例えばHD237-CD19又はB4抗体により同定される抗原を指す(Kiesel等, Leukemia Research II 12:1119 (1987))。CD19は、プラズマ細胞への終末分化の直前の時期まで、プロB、プレB、未成熟及び成熟、活性化及びメモリーB細胞上にみられる。CD19及びCD20はいずれも造血幹細胞又はプラズマ細胞上で発現しない。CD19へのアンタゴニストの結合により、CD19抗原の内部移行が生じうる。ヒトCD19のアミノ酸配列は、The Leukocyte Antigen Facts Book, 上掲のBarclay等, 180頁、及びEMBL Genbank受託番号M28170及びSwissprot P11836にも示される。
【0026】
BL-CAM又はLyb8としても知られる「CD22」抗原は、およそ130kD(還元型)から140kD(非還元型)の分子量を有するタイプ1完全膜糖タンパク質である。それはBリンパ球の細胞質及び細胞膜に発現される。CD22抗原は、B細胞リンパ球分化の初めにCD19抗原とおよそ同じ段階で現れる。他のB細胞マーカーと異なり、CD22膜発現は成熟B細胞(CD22+)とプラズマ細胞(CD22−)の間の後期分化段階に限定される。CD22抗原は、例えば、Wilson 等 J. Exp. Med. 173: 137 (1991)及びWilson 等 J. Immunol. 150:5013 (1993)に記述されている。
【0027】
「CD20」抗原は、末梢血又はリンパ系器官の90%以上のB細胞の表面で見出される分子量およそ35kDの非グルコシル化膜結合型リンタンパク質である。CD20は初期のプレB細胞発育中に発現し、プラズマ細胞分化まで残る;ヒトの幹細胞、リンパ球祖先細胞(プロジェニタ)または正常血漿細胞にはみられない。CD20は正常なB細胞及び悪性のB細胞の双方に存在する。文献でのCD20の他の名称には「Bリンパ球限局性分化抗原」及び「Bp35」がある。CD20抗原は、例えば、ClarkおよびLedbetter, Adv. Can. Res. 52:81-149 (1989)、およびValentineら, J. Biol. Chem. 264(19):11282-11287 (1989)に記載されている。
【0028】
CD20結合抗体および抗CD20抗体はここで交換可能に用いられ、抗体が抗原を発現する細胞を標的とした治療薬として有効な程度に親和性を持ってCD20を結合するすべての抗体を包含し、以下に記載のアッセイのネガティブコントロールタンパク質などの他のタンパク質と顕著な交差反応を示さない。また、抗体の一アームがCD20を結合する二重特異性抗体を包含する。このCD20結合抗体の定義によって前述の抗体の機能的断片(フラグメント)も包含する。CD20結合抗体は10nMより小さいKdでCD20を結合するであろう。好ましい実施態様では、該結合は7.5nMより小さい、より好ましくは5nMより小さい、さらにより好ましくは1−5nMの間、最も好ましくは1nMより小さいKdである。
【0029】
CD20抗原に結合する抗体の例には:現在「リツキシマブ」(「リツキサン(登録商標)」)と呼称される「C2B8」(米国特許第5736137号、出典明記によりここに特別に援用される);「Y2B8」または「イブリツモマブチウキセタン(Ibritumomab Tiuxetan)」ゼバリン(登録商標)と呼称されるイットリウム-[90]-標識2B8マウス抗体(米国特許第5736137号、出典明記によりここに特別に援用される);「トシツモマブ(Beckman Coulter)とも呼称され場合によっては131Iで標識して「131I−B1」抗体となるマウスIgG2a「B1」(ヨードI131トシツモマブ、 BEXXARTM) 米国特許第5595721号、出典明記によりここに特別に援用される);マウスモノクローナル抗体「1F5」(Press 等. Blood 69(2):584-591 (1987)および「フレームワーク部分」またはヒト化1F5を含む変異体(国際公開公報03/002607, Leung, S.);ATCC寄託番号HB-96450);マウス2H7およびキメラ2H7抗体(米国特許第5677180号、出典明記によりここに特別に援用される);ヒト化2H7;huMax-CD20 (Genmab, Denmark);AME-133(Applied Molecular Evolution);A20抗体又はその変異体、例えばキメラA20抗体ないしヒト化A20抗体(それぞれcA20、hA20) (米国公開特許第2003/0219433号、Immunomedics);およびInternational Leukocyte Typing Workshopより入手可能なモノクローナル抗体L27、G28-2、93-1B3、B-ClまたはNU-B2(Valentine 等., In: Leukocyte Typing III (McMichael, Ed., p. 440, Oxford University Press (1987))が含まれる。
【0030】
本明細書中の「リツキシマブ」又は「リツキサン(登録商標)」なる用語は、CD20抗原に対する遺伝的に操作したキメラマウス/ヒトモノクローナル抗体を指し、出典明記によって本明細書中に組み込まれる米国特許第5736137号に記載の「C2B8」を表すものであり、CD20を結合する能力を有するその断片を含む。
【0031】
具体的な実施態様では、抗CD20抗体はヒトおよび霊長類のCD20を結合する。具体的な実施態様では、CD20を結合する抗体はヒト化またはキメラである。CD20結合抗体には、リツキシマブ(リツキサン(登録商標))、m2H7(マウス2H7)、hu2H7(ヒト化2H7)、およびそのすべての機能的変異体、限定するものではないがhu2H7.v16(vはバージョンを表す)、v31、v73、v75並びにフコース欠乏性変異体、及び国際公開公報2004/056312に記載の他の2H7変異体が含まれる。特に明記しない場合、本明細書中に開示するヒト化2H7v.16の配列及びその変異体は成熟ポリペプチド、すなわちリーダー配列を有さないものである。
【0032】
CD20抗体に関する特許および特許文献には、米国特許第5776456号、同第5736137号、同第5843439号、同第6399061号、および同第6682734号、並びに米国公開特許第2002/0197255号Al、同第2003/0021781号A1、同第2003/0082172号Al、同第2003/0095963号Al、同第2003/0147885号Al (Anderson 等.);米国特許第6455043号B 1および国際公開第00/09160号(Grillo-Lopez, A.);国際公開第00/27428号(Grillo-LopezおよびWhite);国際公開第00/27433号(Grillo-LopezおよびLeonard);国際公開第00/44788第(Braslawsky 等);国際公開第01/10462号(Rastetter, W.);国際公開第01/10461号(RastetterおよびWhite);国際公開第01/10460号(WhiteおよびGrillo-Lopez);米国公開特許第2001/0018041号A1、同第2003/0180292号A1、国際公開第01/34194号(HannaおよびHariharan);米国公開特許第2002/0006404号および国際公開第02/04021号(HannaおよびHariharan);米国公開特許第2002/0012665号Alおよび国際公開第01/74388号(Hanna, N.);米国公開特許第2002/0058029同Al(Hanna, N.);米国公開特許第2003/0103971号Al(HariharanおよびHanna);米国公開特許第2002/0009444号A1および国際公開第01/80884号(Grillo-Lopez, A.);国際公開第01/97858号(White, C.);米国公開特許第2002/0128488号A1および国際公開第02/34790号(Reff, M.);国際公開第02/060955号(Braslawsky 等);国際公開第02/096948号(Braslawsky 等);国際公開第02/079255号(ReffおよびDavies);米国特許第6171586号B1および国際公開第98/56418号(Lam 等);国際公開第98/58964号(Raju, S.);国際公開第99/22764号(Raju, S.);国際公開第99/51642号、米国特許第6194551号B1、米国特許第6242195号B1、米国特許第6528624号B1および米国特許第6538124号(Idusogie 等);国際公開第00/42072号(Presta, L.);国際公開第00/67796号(Curd 等);国際公開第01/03734号(Grillo-Lopez 等);米国公開特許第2002/0004587号A1および国際公開第01/77342号(MillerおよびPresta);米国公開特許第2002/0197256号(Grewal, I.);米国公開特許第2003/0157108号Al (Presta, L.);米国特許第6565827号B1、同第6090365号B1、同第6287537号B1、同第6015542号、同第5843398号、および同第5595721号、(Kaminski 等);米国特許第5500362号、同第5677180号、同第5721108号、同第6120767号、同第6652852号B1 (Robinson 等);米国特許第6410391号B1 (Raubitschek 等);米国特許第6224866号B1および国際公開第00/20864号(Barbera-Guillem, E.);国際公開第01/13945号(Barbera-Guillem, E.);国際公開第00/67795号(Goldenberg);米国公開特許第2003/0133930号Alおよび国際公開第00/74718号(GoldenbergおよびHansen);国際公開第00/76542号(Golay 等.);国際公開第01/72333号(WolinおよびRosenblatt);米国特許第6368596号B1(Ghetie 等);米国特許第6306393号および米国公開特許第2002/0041847号Al、(Goldenberg, D.);米国公開特許第2003/0026801号A1(WeinerおよびHartmann);国際公開第02/102312号(Engleman, E.);米国公開特許第2003/0068664号(Albitar 等);国際公開第03/002607号(Leung, S.);国際公開第03/049694号、米国公開特許第2002/0009427号A1および米国公開特許第2003/0185796号Al(Wolin 等);国際公開第03/061694号(SingおよびSiegall);米国公開特許第2003/0219818号Al(Bohen 等);米国公開特許第2003/0219433号Alおよび国際公開第03/068821号(Hansen 等);米国公開特許第2003/0219818号A1 (Bohen 等);米国公開特許第2002/0136719号A1(Shenoy 等);国際公開第2004/032828号(Wahl 等)が含まれ、これらは出典明記により特別に組み込まれる。また、米国特許第5849898号および欧州特許第330191号(Seed 等);米国特許第4861579号および欧州特許第332865号A2 (MeyerおよびWeiss);USP4861579 (Meyer 等);国際公開第95/03770号(Bhat 等);米国公開特許第2003/0219433号Al(Hansen 等)を参照のこと。
【0033】
CD20抗体は、ネイキッド抗体または細胞障害性合成物、例えば放射性同位元素又は毒素などに抱合したものでありうる。このような抗体には、放射性同位元素、イットリウム-90に連結した抗体ZevalinTM(IDEC Pharmaceuticals, San Diego, CA)、とI-131を抱合したBexxarTM(Corixa, WA)とが含まれる。ヒト化2H7変異体には、FRのアミノ酸置換と移植されたCDRに変異を持つ親和性成熟変異体を有するものが含まれる。CDR又はFRの置換されたアミノ酸は、ドナー又はアクセプタ抗体にあるものに限らない。他の実施態様では、さらに本発明の抗CD20抗体は、CDCおよび/またはADCC機能およびB細胞殺傷(またここではB細胞枯渇とも称する)の亢進を含むエフェクター機能の改善を導くFc領域のアミノ酸残基変化を含む。記載のように(Idusogie 等., 上掲(2001);Shields 等., 上掲)、特に、3つの突然変異はCDCおよびADCC活性を改良することが同定された:S298A/E333A/K334A(またここでは3つのAla突然変異または変異体として示す;Fc領域の番号付けはEU番号付けシステムに従う;Kabat 等, 上掲)。
【0034】
本発明の他の抗CD20抗体には、安定性を改善する特定の変化を有するものが含まれる。一実施態様では、キメラ抗CD20抗体はマウスV領域およびヒトC領域を有する。そのようなある特定のキメラ抗CD20抗体はリツキサン(登録商標)(リツキシマブ(登録商標);Genentech, Inc.)である。リツキシマブおよびhu2H7は補体依存性細胞障害(CDC)および抗体依存性細胞性細胞障害(ADCC)の両方を介してB細胞の溶解を媒介しうる。改変したFc領域アミノ酸配列および亢進または減弱したC1q結合能を有する抗体変異体は、米国特許第6194551号および国際公開第99/51642号に記載されている。それら特許公報の内容は出典明記によって特別にここに組み込まれる。また、Idusogie 等. J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)も参照のこと。
【0035】
「治療薬剤(治療薬)」とは疾患又は疾患の症状を軽減する際に有用である薬剤を指す。治療薬は、タンパク質性(例えば抗体、レセプター融合タンパク質、ペプチド、ペプチボディ、イムノアドヘシン)又は非タンパク質性の分子(例えば小有機分子(500Da以下))、例えばsiRNA及びアプタマーなどであってもよい。
【0036】
「B細胞促進薬」とはB細胞の増殖又は生存を刺激する薬剤を指す。B細胞促進薬の例には、B細胞の増殖又は生存を促すサイトカイン及び抗体が含まれる。B細胞促進薬であるサイトカインの例には、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-14、IL-15及びIL-21が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
ここで用いる「B細胞枯渇」は、治療前のB細胞レベルと比較して薬剤または抗体治療後に動物またはヒトにおいて末梢血B細胞レベルが減少することを表す。B細胞レベルは、完全に血球数を数えること又は公知のB細胞マーカー(例えば、マウスではB220又はCD19、又はヒトではCD19及びCD20)についてのFACS分析によるなどの周知のアッセイを用いて測定可能である。B細胞枯渇は完全または部分的なものであり得る。一実施態様では、CD20発現末梢B細胞の枯渇は少なくとも25%である。他の実施態様では、CD20発現末梢B細胞の枯渇は少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%である。何れか一のメカニズムに限定されるものではなく、B細胞枯渇の考えられうるメカニズムには、ADCC、CDC、アポトーシス、カルシウム流動の調整又は前述の2以上の組合せが含まれる。
【0038】
「B細胞枯渇(減少)薬」又は「B細胞を枯渇させる薬剤」は、末梢のB細胞を少なくとも25%減少する薬剤を指す。他の実施態様では、末梢のB細胞の枯渇は少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%である。ある好適な実施態様では、B細胞枯渇薬は白血球に特異的に結合し、他の細胞型には結合しない。他の実施態様では、B細胞枯渇薬はB細胞に特異的に結合して、他の細胞型には結合しない。ある実施態様では、B細胞枯渇薬は抗体である。ある好適な実施態様では、抗体はモノクローナル抗体である。他の実施態様では、抗体は化学療法剤又は細胞障害性剤にコンジュゲートしている。B細胞枯渇薬の具体的な例には、限定するものではないが、前述の抗CD20抗体、アレムツズマブ(抗CD52抗体)、及びエピラツズマブ又はCMC-544(Wyeth) (抗CD22抗体)又は本明細書に記載の抗BR3抗体が含まれる。
【0039】
「B細胞回復段階」は、治療薬による治療により被検体のB細胞レベルをその最低レベルにまで減少させた後の、被検体のB細胞充満の段階である。「組織B細胞回復段階」は、治療薬による治療により被検体の組織B細胞レベルをその最低レベルにまで減少させた後の、被検体の組織におけるB細胞充満の段階である。「末梢B細胞回復段階」は、治療薬による治療により被検体の末梢血B細胞レベルをその最低レベルにまで減少させた後の、被検体の末梢血におけるB細胞充満の段階である。
【0040】
「最大のB細胞枯渇段階」は、B細胞レベルを減少させる治療薬による治療の後の被検体における最大のB細胞枯渇の段階である。
【0041】
「T細胞枯渇薬」は、末梢血における少なくとも25%のT細胞を減少させる薬剤を指す。他の実施態様では、末梢T細胞の枯渇は、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%である。好適な実施態様では、T細胞枯渇薬はT細胞に特異的に結合するが他の種の細胞には結合しない。一実施態様では、T細胞枯渇薬は抗体又は化学化合物である。好適な実施態様では、抗体はモノクローナル抗体である。他の実施態様では、抗体は化学療法剤又は細胞障害性薬にコンジュゲートされる。
【0042】
「DMARDS」又は「疾患を変更する抗リウマチ剤」は、持続性の炎症の推進力となる生物学的プロセスを遅くする薬剤である。DMARDSには、メトトレキセート、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、メトトレキセート、レフルノミド、エタネルセプト、インフリキシマブ、アザチオプリン、D-ペニシラミン、ゴールド(経口)、ゴールド(筋肉内)、ミノサイクリン、シクロスポリン、ブドウ球菌プロテインA免疫吸着が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本明細書中で用いる「免疫抑制剤」は、患者の免疫系を抑制又はマスクするために作用する物質を意味する。このような薬剤には、サイトカイン生成を抑制する、自己抗原発現を下方制御又は抑制する、あるいはMHC抗原をマスクする物質を含む。このような薬剤の例は、グルココルチコステロイド、例えばプレドニゾン、メチルプレドニソロン、及びデキサメタゾンなどのステロイド;2-アミノ-6-アリール-5-置換ピリミジン(米国特許第4665077号参照);アザチオプリン(アザチオプリンに抵抗性の場合はシクロホスファミド)、ブロモクリプチン;グルタルアルデヒド(米国特許第4120649号に記載されているように、MHC抗原をマスクする);MHC抗原及びMHC断片に対する抗イディオタイプ抗体;シクロスポリンA;抗インターフェロン-γ、-β又は-α抗体を含むサイトカイン又はサイトカインレセプターアンタゴニスト、抗腫瘍壊死因子-α抗体、抗腫瘍壊死因子-β抗体、抗インターロイキン-2抗体及び;抗IL-2レセプター抗体;抗L3T4抗体;異種性抗リンパ球グロブリン;全T抗体、好ましくは抗CD3又は抗CD4/CD4a抗体;LFA-3結合ドメインを持つ可溶性ペプチド(1990年7月26日に公開された国際公開第90/08187号);ストレプトキナーゼ;TGF-β;ストレプトドルナーゼ;宿主からのRNA又はDNA;FK506;RS-61443;デオキシスペルグアリン(deoxyspergualin);ラパマイシイン(rapamycin);T細胞レセプター(米国特許第5114721号);T細胞レセプター断片(Offner等, Science, 251: 430-432 (1991);国際公開第90/11294号;及び国際公開第91/01133号);及びT10B9等のT細胞レセプター抗体(欧州特許第340109号)を含む。
【0044】
「免疫学的疾患」なる用語は、免疫応答が異常である疾患及び状態を指す。異常な応答は、(a) 例えばT及び/又はB細胞などの免疫細胞の異常な増殖、成熟、生存、分化又は機能によるものでありうる。免疫学的疾患の例には、限定するものではないが、過剰増殖の免疫疾患、抗体が媒介する症状、自己免疫性疾患、プラズマ細胞疾患を含むB細胞疾患、B細胞リンパ増殖性疾患、例えばB細胞腫瘍形成及びB細胞過形成、抗体が媒介する病態、移植拒絶反応、アレルギーが含まれる。ある実施態様によると、免疫学的疾患は、ある程度、コントロールと比較して(例えば、正常な、健康な被検体の血清BAFFレベルと比較して)、上昇した血清BAFFレベル又は減少した血清BAFFレベルを表す。
【0045】
「免疫不全性疾患」は、免疫応答が減少する疾患又は症状(例えば、重症複合免疫不全症(SCID)-X染色体連鎖、SCID-常染色体の、アデノシンデアミナーゼ欠損(ADA欠損症)、X染色体連鎖の無γグロブリン血症(XLA)、ブラットン病、先天性無γグロブリン血症、X染色体連鎖幼児の無γグロブリン血症、後天性無γグロブリン血症、成人発症無γグロブリン血症、遅発性無γグロブリン血症、異常γグロブリン血症、低γグロブリン血症、乳児期の一過性低γグロブリン血症、詳細不明の低γグロブリン血症、無γグロブリン血症、一般的な可変性免疫不全症(CVID)(後天性)、ウィスコット-オールドリッチ症候群(WAS)、過剰IgMを有するX染色体連鎖免疫不全症、過剰IgMを有する非X染色体連鎖免疫不全症、選択的なIgA欠損症、IgGサブクラス欠損症(IgA欠損の有無にかかわらず)、通常であるか高い免疫グロブリンを有する抗体欠損症、胸腺腫を有する免疫不全症、Ig重鎖欠失、κ鎖欠損、B細胞リンパ増殖性疾患(BLPD)、選択的なIgM免疫不全症、劣性無γグロブリン血症(スイスタイプ)、細網異形成症、新生児期好中球減少症、重症先天性白血球減少症、免疫不全を有する胸腺リンパ形成不全症-形成不全又は形成異常、運動失調-毛細管拡張症毛細管拡張症(小脳性運動失調、眼皮膚の毛細管拡張症及び免疫不全)、短い手足の低身長症、X染色体連鎖リンパ組織増殖性症候群(XLP)、免疫グロブリンを有するネゼロフ症候群混合性免疫不全(Nezelof syndrome-cumbined immunodeficiency with Igs)、ないしは、プリンヌクレオチドホスホリラーゼ欠損症(PNP)、MHCクラスII欠損症(裸リンパ球症候群)及び重症複合免疫欠損症)、免疫不全に関連する症状、ヤヌス関連キナーゼ3(JAK3)欠損症、ディジョージ症候群(単離性T細胞欠損症)及び関連の症候群、例えば、ダウン症候群、慢性皮膚粘膜カンジダ症、過剰IgE徴候、慢性肉芽腫症、部分的な白化およびWHIM症候群(疣、低γグロブリン血症、感染、及びmyelokathexis[過剰細胞性髄中の白血球の保持])である。
【0046】
本明細書中の「自己免疫性疾患」は、個体の自己組織ないしは臓器又は同時分離したものに対する及びそれらから生じる疾患又は症状、又はその徴候又は結果として生じるその症状である。これら多くの自己免疫性及び炎症性疾患において、多くの臨床用及び研究用のマーカーが存在してもよく、限定するものではないが、高ガンマグロブリン血症、高レベルの自己抗体、組織中の抗原抗体複合体蓄積、副腎皮質ステロイド又は免疫抑制性治療の利点、及び、影響を受けた組織中のリンパ系細胞の凝集塊が含まれうる。B細胞が媒介する自己免疫性疾患に関して何か一つの理論に限定されるものではないが、B細胞は、自己抗体産生、免疫複合体形成、樹状及びT細胞活性化、サイトカイン合成、ケモカインの直接放出、及び病巣への異所性新リンパ形成を含む、多くの機構的な経路によりヒト自己免疫性疾患において病原性効果を示すことが考えられる。各々のこれらの経路は、自己免疫性疾患の病状の程度の違いに寄与しうる。
【0047】
「自己免疫性疾患」は、臓器特異的疾患(すなわち、免疫応答が、内分泌系、造血系、皮膚、循環器系、胃腸及び肝臓系、腎臓系、甲状腺、耳、神経筋系、中枢神経系などといった臓器系に対して特異的である)又は、複数の臓器系に影響しうる全身性疾患(例えば全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、多発性筋炎など)でありうる。好ましい前記疾患には、自己免疫性リウマチ学疾患(例えば、関節リウマチ、シェーグレン症候群、強皮症、SLE及びループス腎炎などの狼瘡、多発性筋炎/皮膚筋炎、クリオグロブリン血症、抗リン脂質抗体症候群、及び乾癬の関節炎など)、自己免疫性胃腸及び肝臓疾患(例えば、炎症性腸疾患(例えば潰瘍性大腸炎及びクローン病)、自己免疫性胃炎及び悪性貧血、自己免疫性肝炎、原発性胆管萎縮症、原発性硬化性胆管炎、及び小児脂肪便病など)、血管炎(例えば、チャング-シュトラウス血管炎、ウェゲナー肉芽腫症及び多発動脈炎を含むANCA-関連血管炎)、自己免疫性神経学的疾患(例えば、多発性硬化症、眼球クローヌスミオクローヌス症候群、重症筋無力症、視神経脊髄炎、パーキンソン病、アルツハイマー病、及び自己免疫性多発性神経炎など)、腎臓疾患(例えば、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、及びベルガー病など)、自己免疫性皮膚科疾患(例えば、乾癬、蕁麻疹、蕁麻疹、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、及び皮膚紅班性狼瘡など)、血液系疾患(例えば、血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、輸血後の紫斑病、及び自己免疫溶血性貧血など)、アテローム性動脈硬化、ブドウ膜炎、自己免疫性聴覚疾患(例えば、内耳疾患及び聴力障害など)、ベーチェット病、レイノー症候群、臓器移植及び自己免疫性内分泌系疾患(例えば、インスリン依存型糖尿病(IDDM)などの糖尿病関連の自己免疫性疾患、アジソン病及び自己免疫性甲状腺疾患(例えばグレーブス病及び甲状腺炎)など)が含まれる。より好ましい前記疾患には、例えば、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、ANCA関連血管炎、狼瘡、多発性硬化症、シェーグレン症候群、グレーブス病、IDDM、悪性貧血、甲状腺炎及び糸球体腎炎が含まれる。
【0048】
場合によって上記のものを包含する、本明細書中で定義されるような他の自己免疫性疾患の具体的な例には、限定されるものではないが、関節炎(急性及び慢性の関節リウマチ、例として、若年発症関節リウマチ及び段階、例として、関節リウマチ関節滑膜炎、痛風又は痛風性関節炎、急性の免疫学的な関節炎、慢性炎症性関節炎、変形性関節症、II型コラーゲン誘導性の関節炎、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬の関節炎、スティル病、椎骨関節炎、骨関節炎、慢性関節炎プログレディエンテ、変形性関節炎、慢性多発性関節炎プリマリア、反応性関節炎、閉経期の関節炎、エストロゲン-枯渇関節炎、及び強直性脊椎炎/リウマチ様脊椎炎)、自己免疫性リンパ系増殖性疾患、炎症性過剰増殖性皮膚病、乾癬、例としてプラーク乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬及び爪乾癬、アトピー、例としてアトピー性疾患、例えば花粉症及びジョブ症候群、皮膚炎、例として接触皮膚炎、慢性接触皮膚炎、剥脱性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、蕁麻疹、疱疹状皮膚炎、貨幣状皮膚炎、脂漏性皮膚炎、非特異的皮膚炎、原発性刺激物接触皮膚炎、及びアトピー性皮膚炎、X連鎖過剰IgM症候群、アレルギー性眼内炎症性疾患、蕁麻疹、例として慢性アレルギー性蕁麻疹及び慢性特発性蕁麻疹、例として慢性自己免疫性蕁麻疹、筋炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性上皮性表皮壊死症、強皮症(全身強皮症を含む)、全身性硬化症などの硬化症、多発性硬化症(MS)、例として脊髄-視神経MS、原発性進行性MS(PPMS)、及び再発性寛解型MS(RRMS)、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化、動脈硬化症、皮膚硬化症、失調性硬化症、視神経脊髄炎(NMO)、炎症性腸疾患(IBD)(例えば、クローン病、自己免疫媒介性胃腸疾患、胃腸炎症、大腸炎、例えば潰瘍性大腸炎、大腸炎潰瘍、顕微鏡的大腸炎、膠原性大腸炎、多発性大腸炎、壊死性全腸炎、及び経壁性大腸炎、及び自己免疫性炎症性腸疾患)、腸炎症、膿皮症壊疽、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、呼吸窮迫症候群、例として、成人又は急性の呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、葡萄膜の全部又は一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫性血液疾患、移植片対宿主病、遺伝性血管性浮腫などの血管性浮腫、髄膜炎の脳神経損傷、妊娠ヘルペス、妊娠性類天疱瘡、陰嚢掻痒、自己免疫性早期卵巣機能不全、自己免疫性症状による急性聴力損失、IgE媒介性疾患、例えばアナフィラキシー及びアレルギー性鼻炎及びアトピー性鼻炎、脳炎、例えばラスマッセンの脳炎及び辺縁及び/又は脳幹脳炎、ブドウ膜炎、例として、前部ブドウ膜炎、急性前ブドウ膜炎、肉芽腫ブドウ膜炎、非顆粒性ブドウ膜炎、水晶体抗原性ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎又は自己免疫ブドウ膜炎、ネフローゼ症候群を有する又は有さない糸球体腎炎(GN)、例として、慢性又は急性の糸球体腎炎、例として原発性GN、免疫性GN、膜性GN(膜性ネフロパシ)、特発性膜性GN又は特発性膜性ネフロパシ、膜又は膜性増殖性GN(MPGN)(タイプI及びタイプIIを含む)、急速進行性GN(RPGN)、増殖性腎炎、自己免疫性多腺性内分泌不全、亀頭炎、例として形質細胞限局性亀頭炎、亀頭包皮炎、遠心性環状紅斑、色素異常性固定性紅斑、多形性紅斑、環状肉芽腫、光沢苔癬、硬化性萎縮性苔癬、慢性単純性苔癬、棘状苔癬、扁平苔癬、薄板状魚鱗癬、表皮剥離性角質増殖症、妊娠前角化症、膿皮症壊疽、アレルギー性状態および応答、食物アレルギー、薬剤アレルギー、昆虫アレルギー、まれなアレルギー性疾患、例として肥満細胞症、アレルギー性応答、湿疹、例としてアレルギー性又はアトピー性湿疹、乾皮性湿疹、異常発汗剤湿疹および小胞の掌蹠湿疹、喘息、例えば喘息気管支炎、気管支喘息及び自己免疫喘息、T細胞の浸潤を伴う症状及び慢性炎症反応、妊娠中の胎児のABO式血液型など外来性抗原に対する免疫反応、慢性肺炎症性疾患、自己免疫心筋炎、白血球粘着力欠損、ループス、例としてループス腎炎、ループス脳炎、小児ループス、非腎性ループス、腎外ループス、ジスコイドループス、円板状エリテマトーデス、全身性エリテマトーデス(SLE)、脱毛症ループス、SLE、例えば皮膚SLE又は亜急性の皮膚SLE、新生児期ループス症候群(NLE)及び紅班性狼瘡汎発、若年性開始型(I型)真正糖尿病、例として小児IDDM、成人発症型真正糖尿病(II型糖尿病)、自己免疫性糖尿病、特発性の尿崩症、糖尿病性網膜症、糖尿病性ネフロパシ、糖尿病性大腸炎、糖尿病性大動脈疾患、サイトカイン及びTリンパ球によって媒介される急性及び遅発性過敏症と関係する免疫応答、結核、サルコイドーシス、肉芽腫症、例としてリンパ腫肉芽腫症、ヴェゲナー肉芽腫症、無顆粒球症、脈管炎、例として血管炎、大脈管脈管炎(リウマチ性多発性筋痛及び巨細胞(高安)動脈炎を含む)、中脈管脈管炎(川崎病及び結節性多発動脈炎/結節性動脈周囲炎を含む)、微小多発動脈炎、免疫血管炎、CNS血管炎、皮膚血管炎、過敏性血管炎、全身性壊死性血管炎のような壊死性血管炎、及びANCA関連の脈管炎、例として、チャーグ-ストラウス脈管炎又は症候群(CSS)及びANCA関連血管炎、側頭動脈炎、無形成性貧血、自己免疫無形成性貧血、クームズ陽性貧血症、ダイアモンドブラックファン貧血症、溶血性貧血又は免疫溶血性貧血、例として自己免疫溶血性貧血(AIHA)、悪性貧血(貧血症悪性熱)、アジソン病、純粋な赤血球貧血症又は形成不全(PRCA)、第VIII因子欠損症、血友病A、自己免疫好中球減少症、例として汎血球減少症、白血球減少症、白血球血管外遊出を伴う疾患、CNS炎症性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、多器官損傷症候群、例えば敗血症、外傷又は出血の二次症状、抗原-抗体複合体関連疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、単神経炎、アレルギー性神経炎、ベーチェット病/症候群、カールスマン症候群、グッドパスチャー症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンスジョンソン症候群、類天疱瘡、例えば水疱性類天ぽうそう及び類天疱瘡皮膚、天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、ペンフィグス粘液膜類天疱瘡及び天疱瘡エリテマトーデスを含む)、自己免疫多腺性内分泌障害、ライター病又は症候群、自己免疫性状態による熱性損傷、子癇前症、免疫複合体疾患、例として、免疫複合体腎炎、抗体が媒介する腎炎、神経炎症性疾患、多発性神経炎、慢性神経障害、例えばIgM多発性神経炎又はIgM媒介性神経障害、血小板減少(例えば心筋梗塞患者によるもの)、例えば血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、輸血後紫斑病(PTP)、ヘパリン誘発性血小板減少及び自己免疫性又は免疫媒介性血小板減少、例えば慢性及び急性のITPを含む特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、強膜炎、例えば特発性のセラト強膜炎、上強膜炎、自己免疫性精巣炎及び卵巣炎を含む精巣及び卵巣の自己免疫性疾患、一次甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、自己免疫内分泌性疾患、例えば甲状腺炎、例えば自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)又は亜急性の甲状腺炎、自己免疫甲状腺性疾患、特発性甲状腺機能低下症、グレーブ病、自己免疫多腺性症候群、例として多腺性症候群、例えばタイプI(又は、多腺性内分泌障害症候群)、腫瘍随伴症候群、例として神経系新生物関連症候群、例えばランバート-イートン筋無力症症候群又はイートン―ランバート症候群、スティッフマン又はスティッフマン症候群、脳脊髄炎、例として、アレルギー性脳脊髄炎又は脳脊髄炎性アレルギー及び実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、重症筋無力症、例えば胸腺腫関連の重症筋無力症、小脳性退化、神経ミオトニ、眼球クローヌス又は眼球クローヌス筋硬直症候群(OMS)及び感覚系神経障害、多病巣性運動神経障害、シーハン症候群、自己免疫肝炎、慢性肝炎、類狼瘡肝炎、巨細胞肝炎、慢性活動性肝炎又は自己免疫慢性活動性肝炎、間質性肺炎、例えばリンパ系間隙間質性肺炎(LIP)、閉塞性細気管支炎(非移植)対NSIP、ギラン‐バレー症候群、ベルガー病(IgAネフロパシ)、特発性IgAネフロパシ、線状IgA皮膚病、急性発熱性好中性皮膚病、角層下膿疱症、一過性棘融解皮膚病、肝硬変、例として原発性胆管萎縮症及び肺線維症、自己免疫腸疾患症候群、セリアックないしはコエリアック病、脂肪便症(グルテン腸疾患)、抵抗性スプルー、特発性スプルー、クリオグロブリン血症、例として混合性クリオグロブリン血症、アミロトロフィック側索硬化症(ALS;筋萎縮性側索硬化症(Lou Gehrig's disease))、冠状動脈疾患、自己免疫性耳疾患、例として、自己免疫内耳疾患(AIED)、自己免疫聴力障害、多発性軟骨炎、例として、抵抗性又は再発性ないしは再発する多発性軟骨炎、肺胞状蛋白症、コーガン症候群/非梅毒性間質性角膜炎、ベル麻痺、スウィート病/症候群、自己免疫性酒さ、帯状ヘルペス関連疼痛、アミロイドーシス、非癌性リンパ球増多症、一次リンパ球増多症、これにはモノクローナルB細胞リンパ球増多症(例えば良性モノクローナル免疫グロブリン症及び未同定の有意なモノクローナルガーモパチィ(monoclonal garnmopathy of undetermined significance)、MGUS)が含まれる、末梢性神経障害、腫瘍随伴症候群、チャネル病、例として、癲癇、片頭痛、不整脈、筋疾患、難聴、盲目、周期性麻痺及びCNSのチャネル病、自閉症、炎症性ミオパシ、局所性又は分節性又は限局性分節性糸球体硬化症(FSGS)、内分泌性眼障害、ブドウ膜網膜炎、脈絡網膜炎、自己免疫性肝臓病、線維症、多内分泌性不全、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮、初老期痴呆、脱髄性疾患、例として、自己免疫脱髄性病及び慢性炎症性脱髄性多発性神経炎、ドレスラー症候群、円形脱毛症、完全脱毛症、CREST症候群(石灰沈着、レイノー現象、食道運動障害、強指症及び毛細管拡張症)、雌雄自己免疫性不妊性、例えば、抗精子抗体によるもの、混合性結合組織病、シャーガス病、リウマチ熱、再発性中絶、農夫肺、多形性紅斑、心切開術後症候群、クッシング症候群、愛鳥家肺、アレルギー性肉芽腫性脈管炎、良性リンパ球血管炎、アルポート症候群、肺胞炎、例えばアレルギー性肺胞炎及び繊維化肺胞炎、間隙肺疾患、輸血反応、ハンセン病、マラリア、寄生虫病、例としてリーシュマニア症、キパノソミアシス(kypanosomiasis)、住血吸虫症、蛔虫症、アスペルギルス症、サンプター症候群、カプラン症候群、デング熱、心内膜炎、心内膜心筋線維形成、広汎性間隙肺線維形成、間質性肺線維形成、繊維化縦隔炎、肺線維形成、特発性の肺線維形成、嚢胞性線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、胎児赤芽球症、好酸性筋膜炎(eosinophilic faciitis)、シャルマン症候群、フェルティー症候群、フィラリア(flariasis)、毛様体炎、例えば慢性毛様体炎、ヘテロ慢性毛様体炎、虹彩毛様体炎(急性又は慢性)又はFuchの毛様体炎)、ヘーノホ-シェーンライン紫斑病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、SCID、後天性免疫不全症候群(AIDS)、エコーウィルス感染、敗血症(全身性炎症反応症候群(SIRS))、内毒血症、膵炎、thyroxicosis、パルボウィルス感染、風疹ウィルス感染、種痘後症候群、先天性風疹感染、エプスタインバーウイルス感染、耳下腺炎、エヴァンの症候群、自己免疫性腺機能不全、シドナム舞踏病、連鎖球菌感染後腎炎、閉塞性血栓性血管炎(thromboangitis ubiterans)、甲状腺中毒症、脊髄癆、脈絡膜炎、巨細胞多発性筋痛、慢性過敏性肺炎、結膜炎、例として、春季カタル、乾性角結膜炎及び流行性角結膜炎、特発性腎臓症候群、微小変化ネフロパシ、良性家族性及び乏血-再灌流障害、移植臓器再灌流、網膜自己免疫、関節炎症、気管支炎、慢性閉塞性気道/肺性疾患、珪肺症、アフタ、アフタ性口内炎、動脈硬化症疾患、(大脳血管性不足)、例として動脈硬化脳症及び動脈硬化症網膜症、アスペルミオジェネース(aspermiogenese)、自己免疫性溶血、ベック病、クリオグロブリン血症、デュピュイトラン拘縮、水晶体過敏性眼内炎、腸炎アレルギー、結節性紅斑、leprosum、特発性顔麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ性熱、ハンマンリッチ病、感覚器性(sensoneural)聴力障害、血色素
尿症発作(haemoglobinuria paroxysmatica)、性機能低下、回腸炎領域、白血球減少症、単核細胞増加症感染、横移動脊髄炎、一次特発性の粘液水腫、ネフローゼ、眼炎symphatica、精巣炎肉芽腫症、膵炎、多発性神経根炎急性、膿皮症壊疽、Quervain甲状腺炎、後天性脾臓萎縮、非悪性胸腺腫、リンパ濾胞性胸腺炎、白斑、毒性ショック症候群、食中毒、T細胞の浸潤を伴う症状、白血球-粘着力欠損、サイトカイン及びTリンパ球に媒介される急性及び遅発性過敏症関連免疫応答、白血球血管外遊出を伴う疾患、多器官損傷症候群、抗原-抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、自己免疫多腺性内分泌障害、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫萎縮性胃炎、交感性眼炎、リウマチ性疾患、混合性結合組織病、ネフローゼ症候群、膵島炎、多内分泌性不全、自己免疫多腺性症候群、例えば多腺性症候群I型、成人発症型特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、拡張型心筋症、例えば後天性表皮水疱症(EBA)、ヘモクロマトーシス、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、化膿性又は非化膿性副鼻腔炎、急性又は慢性副鼻腔炎、篩骨、正面、上顎骨又は蝶形骨副鼻腔炎、アレルギー性副鼻腔炎、好酸球性関連疾患、例えば好酸球増加症、肺浸潤好酸球増加症、好酸球増加症-筋肉痛症候群、レフラー症候群、慢性好酸性肺炎、熱帯肺好酸球増加症、気管支肺炎アスペルギルス症、アスペルギローム又は好酸球性を含有する肉芽腫、アナフィラキシー、脊椎関節症、血清陰性脊椎関節炎疹、多内分泌性自己免疫性疾患、硬化性胆管炎、強膜、上強膜、慢性皮膚粘膜カンジダ症、ブラットン症候群、乳児期の一過性低ガンマグロブリン血症、ウィスコット‐アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症候群、血管拡張症、膠原病と関係する自己免疫疾患、リウマチ、例えば慢性関節リウマチ、リンパ節炎、血圧応答の減退、血管機能不全、組織損傷、心血管乏血、痛覚過敏、腎虚血、脳虚血、及び脈管化を伴う疾患、アレルギー性過敏症疾患、糸球体腎炎、再灌流障害、虚血性再灌流障害、心筋又は他の組織の再灌流損傷、リンパ腫気管気管支炎、炎症性皮膚病、急性炎症性成分を有する皮膚病、多臓器不全、水疱性疾患、腎皮質壊死、急性化膿性髄膜炎又は他の中枢神経系炎症性疾患、眼性及び眼窩の炎症性疾患、顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘発性毒性、ナルコレプシ、急性重症炎症、慢性難治性炎症、腎盂炎、動脈内過形成、消化性潰瘍、弁膜炎、及び子宮内膜症などがある。
【0049】
過剰増殖性免疫疾患の例には、限定するものではないが、非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ球白血病(CLL)、急性リンパ球白血病(ALL)、マントル細胞リンパ腫、周辺帯関連腫瘍、濾胞性リンパ腫(FL)、大細胞リンパ腫、例として広汎性大B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、プラズマ細胞疾患、例として多発性骨髄腫が含まれる。
【0050】
抗体が媒介する症状の例には、限定するものではないが、ITP、重症筋無力症、自己免疫溶血性貧血(赤血球自己抗体)、橋本甲状腺炎(甲状腺自己抗体)、重症筋無力症(アセチルコリンレセプター自己抗体)、広汎性甲状腺腫及び甲状腺機能亢進症(サイロトロピンレセプター自己抗体)に特徴があるグレーブス病及び抗GBM自己抗体を含むグッドパスチャー症候群が含まれる。
【0051】
B細胞悪性腫瘍には、リンパ球支配的ホジキン病(LPHD)を含むホジキン病;非ホジキンリンパ腫(NHL);濾胞性中心細胞(FCC)リンパ腫;急性リンパ球性白血病(ALL);慢性リンパ球性白血病(CLL);及び毛様細胞白血病が含まれる。非ホジキンリンパ腫には、軽度の/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球(SL)NHL、中程度の/濾胞性NHL、中程度の拡散性NHL、重度の免疫芽細胞NHL、重度のリンパ芽球NHL、重度の非正円形細胞でない小細胞性NHL、バルキー疾患(bulky disease)性NHL、形質細胞様リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症が含まれる。これら癌再発の治療も包含する。LPHDは、放射線照射や化学療法にも関わらずたびたび再発するホジキン疾患のタイプである。CLLは白血病の主要な4タイプのうちの一つである。リンパ球と呼称される成熟したB細胞の癌であるCLLは、血液、骨髄およびリンパ系組織での細胞の蓄積によって確認される。無痛性リンパ腫は、低成長性で難治性であり、多くの緩解と再発を繰り返して患者の平均生存率は6〜10年となる。
【0052】
本明細書で使用する「非ホジキンリンパ腫」又は「NHL」という用語は、ホジキンリンパ腫以外のリンパ系の癌を意味する。通常、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫とは、ホジキンリンパ腫にはリードシュテルンベルク細胞が存在し、非ホジキンリンパ腫には前記細胞が不在であることにより区別することができる。本明細書で使用する用語に含まれる非ホジキンリンパ腫の例は、従来技術に既知の分類方式、例えばColor Atlas of Clinical Hematology第3版; A. Victor Hoffbrand及びJohn E. Pettit(編)(Harcourt Publishers Limited 2000)(特に図11.57、11.58及び/又は11.59参照)に記載の改訂版European-American Lymphoma (REAL)方式に従って当業者(腫瘍学者または病理学者)によって認識されるあらゆるものを含む。より具体的な例としては、限定するものではないが、再発性又は抵抗性NHL、前線低悪性度NHL、第III/IV期NHL、化学療法に抵抗性のNHL、前駆体Bリンパ芽球性白血病及び/又はリンパ腫、小リンパ球リンパ腫、B細胞慢性リンパ性白血病及び/又は前リンパ球性白血病及び/又は小リンパ球リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、immunocytoma及び/又はリンパ形質細胞性リンパ腫、周辺帯B細胞リンパ腫、脾周辺帯リンパ腫、結節外周辺帯−MALTリンパ腫、結節周辺帯リンパ腫、有毛細胞白血病、プラズマ細胞腫及び/又は形質細胞骨髄腫、低悪性度/濾胞性リンパ腫、中悪性度/濾胞性NHL、マントル細胞リンパ腫、濾胞性中心リンパ腫(濾胞性)、中悪性度拡散性NHL、広汎性大B細胞リンパ腫、高悪性度NHL(高悪性度前線NHL及び高悪性度再発性NHLを含む)、自己幹細胞移植後の又は自己肝細胞移植に抵抗性のNHL再発、原発性縦隔大B細胞リンパ腫、原発性浸出リンパ腫、高悪性度免疫芽細胞性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度非切断小細胞性NHL、巨大病変NHL、バーキットリンパ腫、前駆体(周辺性)T細胞リンパ芽球性白血病及び/又はリンパ腫、成人T細胞リンパ腫及び/又は白血病、T細胞慢性リンパ球性白血病及び/又は前リンパ球性白血病、大顆粒リンパ球性白血病、菌状息肉腫及び/又はセザリー症候群、結節外ナチュラルキラー/T細胞(鼻腔型)リンパ腫、超疾患型T細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、皮下脂肪組織炎様T細胞リンパ腫、皮膚(皮膚性)リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、血管動原体リンパ腫、腸T細胞リンパ腫、末梢T細胞(特に断らない限り)リンパ腫及び血管免疫芽細胞性T細胞リンパ腫が挙げられる。
【0053】
「癌」及び「癌性」という用語は、典型的には調節されない細胞成長を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指すか記述する。癌の例には、これらに限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれる。このような癌のより特定の例には、扁平細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平癌腫(squamous carcinoma)を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃(gastric)又は腹部(stomach)癌(胃腸癌を含む)、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸管癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓(kidney)又は腎(renal)癌、肝臓癌、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、肝臓癌及び様々なタイプの頭部及び頸部の癌、並びにB細胞リンパ腫(低級/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球(SL)NHL;中級/濾胞性NHL;中級びまん性NHL;高級免疫芽細胞性NHL;高級リンパ芽球性NHL;高級小非分割細胞NHL;バルキー疾患NHL;外套細胞リンパ腫;エイズ関連リンパ腫;及びワルデンストロームのマクログロブリン病を含む);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球白血病(ALL);ヘアリー細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;多発性骨髄腫及び移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)を含む。
【0054】
本明細書中で用いられる「イムノアドヘシン」という用語は、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能を持つ異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性を付与した分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは抗体の抗原認識及び結合部位以外の所望の結合特異性を持つアミノ酸配列(即ち「異種」)と免疫グロブリン定常ドメイン配列(例えばIgGのCH及び/又はCH配列)との融合物である。例示的なアドヘシン配列には、対象のタンパク質に結合するリガンド又はレセプターの一部を含む近接アミノ酸配列を含む。アドヘシン配列は対象のタンパク質を結合する配列でもあるが、レセプター又はリガンド配列(例えばペプチボディのアドヘシン配列)ではない。このようなポリペプチド配列は、ファージディスプレイ技術及びハイスループット分類法を含む様々な方法によって選択されるか又は同定されうる。イムノアドヘシンの免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG-1、IgG-2、IgG-3、又はIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1及びIgA-2を含む)、IgE、IgD又はIgMなどの任意の免疫グロブリンから得ることができる。
【0055】
本明細書中の「Fc領域」なる用語は、天然配列Fc領域及び変異体Fc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化するかも知れないが、通常、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226の位置又はPro230からの位置のアミノ酸残基からそのカルボキシル末端まで伸長すると定義される。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムによれば残基447)は、例えば、抗体ないしはイムノアドヘシンの産生又は精製中に、又はK447を除くためにFc領域を組み換え遺伝子操作することによって取り除かれてもよい。したがって、本明細書中で挙げるような抗体ないしはイムノアドヘシンの組成物は、すべてのK447残基が除去された抗体群、K447残基が除去されていない抗体群、及びK447残基を有する抗体と有さない抗体の混合を含む抗体群を含みうる。
【0056】
特に明記しない限り、本明細書中の免疫グロブリン重鎖の残基の番号付けは、出典明記によって本明細書中に特別に援用されるKabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)のEUインデックスのものである。「KabatのEUインデックス」はヒトIgG1 EU抗体の残基番号を指す。
【0057】
「抗体」なる用語は最も広い意味において使用され、例えば、単一のモノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、及び中和抗体を含む)、多エピトープ(polyepitopic)特異性を持つ抗体組成物、ポリクローナル抗体、一本鎖抗体、及び、天然のポリペプチドを特異的に結合する及び/又は本発明の生物学的又は免疫学的活性を呈する限りの抗体の断片(下記を参照)を包含する。ある実施態様によると、抗体は標的タンパク質のオリゴマー形態、例えばトリマー形態に結合する。他の実施態様によると、抗体はタンパク質に特異的に結合し、この結合は本発明のモノクローナル抗体(例えば本発明の蓄積された抗体など)によって阻害されうる。抗体の「機能的な断片又は類似体」なる句は、それが意味する抗体と共通する性質上の生物学的活性を有する化合物である。例えば、本発明の抗体の機能的な断片又は類似体は、B細胞表面抗原に特異的に結合することができるものでありうる。「免疫グロブリン」(Ig)なる用語は、本明細書中の「抗体」と変換可能に用いられる。
【0058】
「単離された抗体」とは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたものを意味する。その自然環境の汚染成分とは、抗体の診断又は治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様では、抗体は、(1)ローリー(Lowry)法によって定量して95重量%以上の、最も好ましくは99重量%以上の抗体まで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15のN末端あるいは内部アミノ酸配列の残基を得るのに充分な程度まで、あるいは(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた還元又は非還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。単離された抗体には、組換え体細胞内のインサイツの抗体が含まれるが、これは抗体の自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないからである。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも一つの精製工程により調製される。
【0059】
基本的な4-鎖抗体ユニットは2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖から構成されるヘテロ四量体の糖タンパクである(IgM抗体は、基本的なヘテロ四量体ユニットとそれに付随するJ鎖と称される付加的なポリペプチドの5つからなり、よって10の抗原結合部位を有するが、分泌されたIgA抗体は重合して、基本的4-鎖ユニットとそれ付随するJ鎖のうち2-5つを含む多価集合を形成可能である)。IgGの場合、4-鎖ユニットは一般的に約150000ダルトンである。それぞれのL鎖は1つの共有ジスルフィド結合によってH鎖に結合するが、2つのH鎖はH鎖のアイソタイプに応じて一又は複数のジスルフィド結合により互いに結合している。それぞれのH及びL鎖はまた規則的な間隔を持った鎖内ジスルフィド結合を持つ。それぞれのH鎖は、α及びγ鎖の各々に対しては3つの定常ドメイン(C)が、μ及びεアイソタイプに対しては4つのCドメインが続く可変ドメイン(V)をN末端に有する。それぞれのL鎖は、その他端に定常ドメイン(C)が続く可変ドメイン(V)をN末端に有する。VはVと整列し、Cは重鎖の第一定常ドメイン(C1)と整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。VとVは共同して対になって、単一の抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造及び特性は、例えばBasic and Clinical Immunology, 8版, Daniel P. Stites, Abba I. Terr and Tristram G. Parslow(編), Appleton & Lange, Norwalk, CT, 1994, 71頁及び6章を参照のこと。
【0060】
任意の脊椎動物種からのL鎖には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ及びラムダと呼ばれる2つの明確に区別される型の一つを割り当てることができる。また、その重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンには異なったクラス又はアイソタイプを割り当てることができる。IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMという免疫グロブリンの5つの主要なクラスがあり、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる重鎖を有する。さらにγ及びαのクラスは、CH配列及び機能等の比較的小さな差異に基づいてサブクラスに分割され、例えば、ヒトにおいては次のサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2が発現する。
【0061】
「可変」という用語は、可変ドメインのある部分が抗体の間で配列が広範囲に異なることを意味する。Vドメインは抗原結合性を媒介し、その特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を定める。しかし、可変性は可変ドメインの110-アミノ酸スパンを通して均等には分布されていない。代わりに、V領域は、それぞれ9−12アミノ酸長である「高頻度可変領域」と称される極度の可変性を有するより短い領域によって分離された15−30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変の伸展からなる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメイン各々は、大きなβ-シート配置をとり、3つの高頻度可変領域により接続された4つのFR領域を含み、それはループ状の接続を形成し、β-シート構造の一部を形成することもある。各鎖の高頻度可変領域はFRにより他の鎖からの高頻度可変領域とともに極近傍に保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ED. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。定常ドメインは抗体の抗原への結合に直接は関係ないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞障害(ADCC)における抗体の寄与を示す。
【0062】
ここで使用されるところの「高頻度可変領域」なる用語は、抗原結合に寄与する抗体のアミノ酸残基を意味する。高頻度可変領域は一般には「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、Vの残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)の周辺及びVの31−35B(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3)の周辺(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest,5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991))及び/又は「高頻度可変ループ」の残基(例えば、Vの残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)及びVの残基26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3)(Chothia及びLesk J.Mol.Biol. 196:901-917 (1987))を含む。
【0063】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、モノクローナル抗体の産生中に生じ得、一般に少量で存在しうる可能な変異を除いて、同一であり、及び/又は同じエピトープに結合する。そのようなモノクローナル抗体は典型的には標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列を選択することを含む方法によって得られている。例えば、選択方法は、ハイブリドーマクローンのプール、ファージクローン又は組換えDNAクローンのような複数のクローンから独特のクローンを選択することでありうる。選択された標的結合配列は、例えば標的への親和性を改善し、標的結合配列をヒト化し、細胞培養においてその生産を改善し、インビボでのその免疫原性を減少させ、多重特異的抗体を作り出す等のために、更に改変することができ、改変された標的結合配列を含む抗体はまた本発明のモノクローナル抗体であることが理解されなければならない。異なった決定基(エピトープ)に対する異なった抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物と異なり、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対する。その特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、典型的には他の免疫グロブリンによって汚染されていない点で有利である。「モノクローナル」との修飾語句は、実質的に均一な抗体の集団から得たものとしての抗体の性質を表すものであり、抗体が何か特定の方法による生成を必要とするものであると考えてはならない。例えば、本発明で使用されるモノクローナル抗体は、例えばハイブリドーマ法(例えばKohler等, Nature, 256:495 (1975);Harlow等, Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2版 1988);Hammerling等, Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681, (Elsevier, N.Y., 1981))、組換えDNA法(例えば米国特許第4816567号を参照)、ファージディスプレイ法(例えばClackson等, Nature, 352:624-628 (1991);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991);Sidhu等, J. Mol. Biol. 338(2):299-310 (2004);Lee等, J.Mol.Biol.340(5):1073-1093 (2004);Fellouse, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 101(34):12467-12472 (2004);及びLee等 J. Immunol. Methods 284(1-2):119-132 (2004)を参照)、及びヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座又は遺伝子の一部又は全てを有する動物においてヒト又はヒト様抗体を産生する技術(例えば国際公開第1998/24893号;同第1996/34096号;同第1996/33735号;同第1991/10741号;Jakobovits等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 (1993);Jakobovits等, Nature, 362:255-258 (1993);Bruggemann等, Year in Immuno., 7:33 (1993);米国特許第5545806号;同第5569825号;同第5591669号(全てGenPharm);同第5545807号;国際公開第1997/17852号;米国特許第5545807号;同第5545806号;同第5569825号;同第5625126号;同第5633425号;及び同第5661016号; Marks等, Bio/Technology, 10: 779-783 (1992);Lonberg等, Nature, 368: 856-859 (1994);Morrison, Nature, 368: 812-813 (1994);Fishwild等, Nature Biotechnology, 14: 845-851 (1996);Neuberger, Nature Biotechnology, 14: 826 (1996);及びLonberg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol., 13: 65-93 (1995)を参照)を含む様々な技術によって作製することができる。
【0064】
本明細書中のモノクローナル抗体は、特に「キメラ」抗体を含み、それは特定の種由来又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列に相同な又は同一な重鎖及び/又は軽鎖の一部を含むものであり、残りの鎖は、本発明の生物学的活性を表す限り、抗体断片のように他の種由来又は他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列に相同な又は同一なものである(米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。ここで対象とするキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、旧世界サル、サルなど)由来の可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体を含む。
【0065】
「インタクトな」抗体は、抗原-結合部位、並びにC及び少なくとも重鎖定常ドメイン、C1、C2及びC3を含むものである。定常ドメインは天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)又はそれらのアミノ酸配列変異体であってよい。好ましくは、インタクトな抗体は一又は複数のエフェクター機能を有する。
【0066】
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、好ましくは無傷の抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab')、及びFv断片;ダイアボディ(diabodies);直鎖状抗体(米国特許第5641870号、実施例2;Zapata等, Protein Eng. 8(10): 1057-1062 [1995]);単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された又は他の技術から形成された多重特異性抗体を含む。
【0067】
「線状抗体」なる表現はZapata等, Protein Eng., 8(10):1057-1062頁(1995)に記載されている抗体を指す。つまり、これらの抗体は相補性の軽鎖ポリペプチドと共に一対の抗原結合領域を形成する、一対のタンデムFdセグメント(VH−CH1−VH−CH1)を含む。線状抗体は二重特異性または単一特異性であり得る。
【0068】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片と、容易に結晶化する能力を反映して命名された残留「Fc」断片を産生する。Fab断片は全長L鎖とH鎖の可変領域ドメイン(V)、及び一つの重鎖の第一定常ドメイン(C1)からなる。各Fab断片は抗原結合性に関して一価である、すなわち単一の抗原-結合部位を有する。抗体のペプシン処理により、単一の大きなF(ab')断片が生じ、これは2価の抗原結合部位を持つ2つのジスルフィド結合されたFab断片にほぼ対応し、抗原を交差結合させることができるものである。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含むC1ドメインのカルボキシ末端に幾つかの残基が付加されていることによりFab断片と相違する。Fab'-SHは、ここでは定常ドメインのシステイン残基(類)が遊離のチオール基を持つFab'を表す。F(ab')抗体断片は、通常はFab'断片の対として生成され、それらの間にヒンジシステインを有する。抗体断片の他の化学的結合も知られている。
【0069】
Fc断片はジスルフィドにより一緒に保持されている双方のH鎖のカルボキシ末端部位を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域の配列により決定され、その領域は、所定の型の細胞に見出されるFcレセプター(FcR)によって認識される部位である。
【0070】
「Fv」は、完全な抗原-認識及び-結合部位を含む最小の抗体断片である。この断片は、密接に非共有結合した1本の重鎖と1本の軽鎖の可変領域の二量体からなる。これら2つのドメインの折り畳みから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に対する抗原結合特異性を付与する6つの高頻度可変ループ(H及びL鎖から、それぞれ3つのループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含んでなるFvの半分)でさえ、結合部位全体よりは低い親和性であるが、抗原を認識し結合する能力を持つ。
【0071】
「sFv」又は「scFv」とも略称される「単鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖内に結合したV及びV抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドはV及びVドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それはsFVが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。sFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994);Borrebaeck 1995, 以下を参照のこと。
【0072】
「ダイアボディ(diabodies)」という用語は、鎖間ではなく鎖内でVドメインを対形成させ、結果として二価の断片、すなわち2つの抗原-結合部位を有する断片が得られるように、VとVドメインとの間に、短いリンカー(約5-10残基)を持つsFv断片(前の段落を参照)を構築することにより調製される小型の抗体断片を意味する。二重特異性ダイアボディは2つの「交差」sFv断片のヘテロダイマーであり、そこでは2つの抗体のV及びVドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404097号;国際公開93/11161号;及びHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448 (1993)により十分に記載されている。
【0073】
非ヒト(例えば齧歯類)抗体の「ヒト化」形とは、非ヒト抗体から得られた最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような所望の抗体特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、全て又はほとんど全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに一致し、全て又はほとんど全てのFRがヒト免疫グロブリン配列である、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、状況に応じて免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。さらなる詳細は、Jones等, Nature 321, 522-525(1986);Riechmann等, Nature 332, 323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2, 593-596(1992)を参照のこと。
【0074】
「種依存性抗体」抗体は、二番目の哺乳動物種からの抗原の相同体に対して有している結合親和性よりも、一番目の哺乳動物種からの抗原に対してより強力な結合親和性を有する抗体である。通常、種依存性抗体は、ヒト抗原(すなわち、約1×10−7M以下、好ましくは約1×10−8以下、最も好ましくは約1×10−9M以下の結合親和性(Kd)値を有する)と「特異的に結合」するが、そのヒト抗原に対する結合親和性よりも、少なくとも約50倍、又は少なくとも約500倍、又は少なくとも約1000倍弱い、二番目の非ヒト哺乳動物種からの抗原の相同体に対する結合親和性を有する。種依存性抗体は、上にて定義した種々の型の抗体のいずれでもあることが可能だが、好ましくはヒト化又はヒト抗体である。
【0075】
対象の抗原を「結合する」薬剤は、ポリペプチド、抗体、アンタゴニスト又は組成物がその抗原を発現している細胞又は組織を標的とする診断及び/又は治療剤として有用であり、他のタンパク質と有意には交差反応しないように十分な親和性でその抗原と結合するものである(特記しない限り)。そのような実施態様では、薬剤の「非標的」タンパク質との結合の程度は、蛍光標示式細胞分取器(FACS)分析又は放射免疫沈降(RIA)によって定量することができる、その特定の標的タンパク質とのポリペプチド、抗体、アンタゴニスト又又は組成物の結合の約10%よりも低い。標的分子へのポリペプチド薬剤の結合に関して、特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープと「特異的に結合」又は「特異的に結合する」、又はそれに対して「特異的である」という用語は、非特異的な相互作用とは測定して異なる結合を意味する。特異的な結合は、例えば、一般に結合活性を持たない類似した構造の分子であるコントロール分子の結合性と比較して、分子の結合性を定量することによって測定することができる。例えば、特異的な結合性は、標的、例えば過剰の非標識標的に類似したコントロール分子とも競合にとって定量することができる。この場合、プローブに対する標識標的の結合が過剰の非標識標的によって競合的に阻害されるならば、特異的結合が表示される。ここで使用される特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープと「特異的に結合」又は「特異的に結合する」、又はそれに対して「特異的である」という用語は、例えば標的に対して少なくとも約10−4M、あるいは少なくとも約10−5M、あるいは少なくとも約10−6M、あるいは少なくとも約10−7M、あるいは少なくとも約10−8M、あるいは少なくとも約10−9M、あるいは少なくとも約10−10M、あるいは少なくとも約10−11M、あるいは少なくとも約10−12M、あるいはそれ以上のKdを持つ分子によって示されうる。一実施態様では、「特異的に結合する」という用語は、如何なる他のポリペプチド又はポリペプチドエピトープへ実質的に結合することなく分子が特定のポリペプチド又は特定のポリペプチドのエピトープに結合する結合を意味する。
【0076】
抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に帰する生物学的活性を意味し、抗体のアイソタイプにより変わる。抗体のエフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞障害;Fcレセプター結合性;抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC);貪食作用;細胞表面レセプター(例えば、B細胞レセプター)のダウンレギュレーション;及びB細胞活性化が含まれる。
【0077】
「抗体依存性細胞媒介性細胞障害」又は「ADCC」とは、ある種の細胞障害細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFcレセプター(FcRs)と結合した分泌Igにより、これらの細胞障害エフェクター細胞が抗原-担持標的細胞に特異的に結合し、続いて細胞毒により標的細胞を死滅させることを可能にする細胞障害性の形態を意味する。抗体は細胞障害細胞を「備えて」おり、これはこのような死滅には絶対に必要なものである。ADCCを媒介する主要な細胞NK細胞はFcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991) の464頁の表3に要約されている。対象の分子のADCC活性をアッセイするために、米国特許第5500362号又は同第5821337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイを実施することができる。このようなアッセイにおいて有用なエフェクター細胞には、末梢血液単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー細胞(NK細胞)が含まれる。代わりとして、もしくは付加的に、対象の分子のADCC活性は、例えば、Clynes等, (USA) 95:652-656 (1998)において開示されているような動物モデルにおいて、インビボで評価することが可能である。
【0078】
「Fcレセプター」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを記載するものである。好適なFcRは天然配列ヒトFcRである。さらに好適なFcRは、IgG抗体(ガンマレセプター)と結合するもので、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含み、これらのレセプターの対立遺伝子変異体、選択的にスプライシングされた形態のものも含まれる。FcγRIIレセプターには、FcγRIIA(「活性型レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害型レセプター」)が含まれ、主としてその細胞質ドメインは異なるが、類似のアミノ酸配列を有するものである。活性型レセプターFcγRIIAは、細胞質ドメインにチロシン依存性免疫レセプター活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif ;ITAM)を含んでいる。阻害型レセプターFcγRIIBは、細胞質ドメインにチロシン依存性免疫レセプター阻害性モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibition motif ;ITIM)を含んでいる(Daeron, Annu. Rev. immunol. 15:203-234 (1997)を参照)。FcRsに関しては、 Ravetch and Kinet, Annu.Rev. Immunol. 9:457-492 (1991); Capel等, Immunomethods 4:25-34 (1994); 及びde Haas等, J.Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995) に概説されている。将来的に同定されるものも含む他のFcRsはここでの「FcR」という言葉によって包含される。また、該用語には、母性IgGsが胎児に受け継がれる要因となっている新生児性レセプターFcRn(Guyer等, J. Immunol. 117:587 (1976) Kim等, J. Immunol.24:249 (1994))も含まれる。
【0079】
「ヒトエフェクター細胞」とは、一又は複数のFcRsを発現し、エフェクター機能を実行する白血球のことである。その細胞が少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行することが望ましい。ADCCを媒介するヒト白血球の例として、末梢血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞障害性T細胞及び好中球が含まれるが、PBMCとNK細胞が好適である。エフェクター細胞は天然源、例えば血液から単離してもよい。
【0080】
「補体依存性細胞障害」もしくは「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解することを意味する。典型的な補体経路の活性化は補体系(Clq)の第1補体が、同族抗原と結合した(適切なサブクラスの)抗体に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているように実施することができる。
【0081】
本発明に係る治療される被検体は哺乳動物である。哺乳動物は、例えば、霊長類(例えばヒト)、齧歯動物(例えばラット又はマウス)又は他の種の哺乳動物でありうる。上記方法のそれぞれにおいて、哺乳動物は免疫学的疾患を患うものであってもよい。
【0082】
治療の「必要な」哺乳動物には、免疫学的疾患を有する哺乳動物、免疫学的疾患を有していた哺乳動物、免疫学的疾患の症状をもつ哺乳動物又はBAFFレベルを上昇させたか又は低下させた哺乳動物が含まれるが、これらに限定されるものではなくてもよい。
【0083】
本明細書中に開示する薬剤の「有効量」は、特に述べた目的を実行するために十分な量である。「有効量」は、経験的に、そして、述べた目的に関する公知の方法によって決定されうる。
【0084】
「治療上の有効量」なる用語は、哺乳動物(aka患者)の疾患又は疾病を「治療」するのに効果的な本発明の治療薬の量を指す。場合によって、治療上の有効量は一又はいくつかの種類の細胞にとって増殖が阻害される量又は細胞障害性の量であってよい。自己免疫性疾患の場合、治療上の有効量は、疾患の一又は複数の症状を軽減する量又は疾患を寛解の状態に保つために必要な量であってよい。癌の場合、治療上の有効量の薬は、癌細胞の数を減じ;腫瘍の大きさを減じ;末梢器官への癌細胞の浸潤を阻害(すなわち、ある程度まで減速、好ましくは停止)し;腫瘍転移を阻害(すなわち、ある程度まで減速及び好ましくは停止)し;腫瘍成長をある程度まで阻害し;及び/又は癌に関連する一又は複数の症状をある程度まで緩和するのいずれか一に対して活性である。薬が存在する癌細胞の成長を妨げ及び/又は死滅させる程度まで、それは、細胞分裂停止及び/又は細胞障害性であり得る。「治療」又は「治療上の有効量」とは、治療薬の投与の経過を指し、この経過には所望の効果を達成するための一定期間にわたる複数の投薬展開を含みうる。
【0085】
治療薬の「増殖阻害量」は、細胞、特に腫瘍、例えば癌細胞の増殖をインビトロ又はインビボで阻害できる量である。本発明のポリペプチド、抗体、アンタゴニスト又は組成物の「増殖阻害量」は、経験的又は当分野で公知の方法によって決定することができる。
【0086】
治療薬の「細胞障害性量」は、細胞、特に腫瘍、例えば癌細胞をインビトロ又はインビボで破壊できる量である。治療薬の「細胞障害性量」は、経験的又は当分野で公知の方法によって決定することができる。
【0087】
「決定する」なる用語は、物質の量を評価するための任意の方法を含むことを目的とする。通常、検出のために使用する特定の技術は本発明の実施に重要でない。
【0088】
比較のコントロールの例には、正常な健康な患者からの血清、非悪性組織及び治療前又は治療後の試料が含まれるが、これらに限定されるものではない。一実施態様では、免疫学的疾患をもつ哺乳動物の血清中のBAFFポリペプチドレベルは、正常な哺乳動物の血清と比較される。
【0089】
抗体の産生
(i) ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、関連する抗原とアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより動物に産生されうる。免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシンインヒビターに関連抗原を、二官能性又は誘導体形成剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基による抱合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、又はRとRが異なったアルキル基であるRN=C=NRにより抱合させることが有用である。
【0090】
動物を、例えばタンパク質又はコンジュゲート100μg又は5μg(それぞれウサギ又はマウスの場合)を完全フロイントアジュバント3容量と併せ、この溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫化する。1か月後、該動物を、完全フロイントアジュバントに入れた初回量の1/5ないし1/10のペプチド又はコンジュゲートを用いて複数部位に皮下注射することにより、追加免疫する。7ないし14日後に動物を採血し、抗体価について血清を検定する。動物は、力価がプラトーに達するまで追加免疫する。好ましくは、動物は、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なったタンパク質にコンジュゲートさせた、及び/又は異なった架橋剤によってコンジュゲートさせたコンジュゲートで追加免疫する。コンジュゲートはまたタンパク融合として組換え細胞培養中で調製することもできる。また、ミョウバンのような凝集化剤が、免疫反応の増強のために好適に使用される。
【0091】
(ii) モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を意味する、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、わずかに存在する天然に生じうる突然変異体を除いて同一である。よって、「モノクローナル」との修飾詞は、別個又はポリクローナルの抗体の混合物ではなく、抗体の特性を示すものである。
【0092】
例えば、モノクローナル抗体は、Kohler等, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製でき、又は組換えDNA法(米国特許第4816567号)によって作製することができる。
【0093】
ハイブリドーマ法においては、マウス又はその他の適当な宿主動物、例えばハムスターを上記したようにして免疫し、免疫化に用いられるタンパク質と特異的に結合する抗体を生産するか又は生産することのできるリンパ球を導き出す。別法として、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。次に、リンパ球を、ポリエチレングリコールのような適当な融剤を用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice,59-103頁(Academic Press, 1986))。
【0094】
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親の骨髄腫細胞の増殖又は生存を阻害する一又は複数の物質を含みうる適当な培地に蒔き、増殖させる。例えば、親の骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニジンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失するならば、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、HGPRT欠失細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有するであろう(HAT培地)。
【0095】
ある実施態様では、骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの生産を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である細胞である。これらの中でも、好ましい骨髄腫株化細胞には、マウス骨髄腫系、例えば、ソーク・インスティテュート・セル・ディストリビューション・センター、San Diego, California USAから入手し得るMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍、及びアメリカ培養細胞系統保存機関、Rockville, Maryland USAから入手し得るSP-2又はX63-Ag8-653細胞から誘導されたものが含まれる。ヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫株化細胞もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために開示されている(Kozbor, J.Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,51-63頁(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
【0096】
ハイブリドーマ細胞が生育している培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。ある実施態様では、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定する。
【0097】
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson等, Anal. Biochem., 107:220 (1980)のスキャッチャード分析法によって測定することができる。
【0098】
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が確定された後、該クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103頁(Academic Press, 1986))。この目的に対して好適な培地には、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が包含される。加えて、該ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
【0099】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィのような常套的な免疫グロブリン精製法により、培地、腹水、又は血清から好適に分離される。
【0100】
モノクローナル抗体をコードしているDNAは、常法を用いて(例えば、マウスの重鎖及び軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)即座に単離され配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの一つの供給源となる。ひとたび単離されたならば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、そうしないと免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞のような宿主細胞中にトランスフェクトし、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成を達成することができる。抗体をコードするDNAの細菌中での組換え発現に関する概説論文には、Skerra等, Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262(1993)及びPlueckthum, Immunol. Revs., 130:151-188(1992)がある。
【0101】
更なる実施態様では、抗体又は抗体断片は、例えばMcCafferty等, Nature, 348:552-554 (1990)に記載された技術を使用して産生される抗体ファージライブラリから単離することができる。Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991)及び Marks等, J.Mol.Biol., 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリを使用したマウス及びヒト抗体の単離を記述している。続く刊行物は、鎖混合による高親和性(nM範囲)のヒト抗体の生産(Marks等, Bio/Technology, 10:779-783(1992))、並びに非常に大きなファージライブラリを構築するための方策としてコンビナトリアル感染とインビボ組換え(Waterhouse等, Nuc.Acids.Res., 21:2265-2266(1993))を記述している。従って、これらの技術はモノクローナル抗体の分離に対する伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に対する実行可能な別法である。
【0102】
DNAはまた、例えば、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード化配列を、相同的マウス配列に代えて置換することにより(米国特許第4816567号;Morrison等, Proc.Nat.Acad.Sci.,USA,81:6851(1984))、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部又は一部を共有結合させることで修飾できる。
【0103】
典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインに置換され、又は抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換されて、抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位と異なる抗原に対する特異性を有するもう一つの抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作り出す。
【0104】
(iii) ヒト化抗体
非ヒト抗体をヒト化する方法の例は記載されている。一般には、ヒト化抗体は非ヒト由来のものに一又は複数のアミノ酸残基を有する。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と呼ばれる(Jones等, Nature, 321:522-525 (1986)、Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988)、Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536(1988))。たびたび、ヒト化抗体は、いくつかの高頻度可変領域残基及び場合によってはいくらかのFR残基が齧歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
【0105】
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を生成する際に使用するヒトの軽重両方の可変ドメインの選択が非常に重要である。「ベストフィット法」では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものと最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトフレームワーク領域(FR)として受け入れる(Sims等, J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothia等, J. Mol. Biol., 196:901(1987))。他の方法では、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用できる(Carter等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Presta等, J. Immunol., 151:2623(1993))。
【0106】
抗体を、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要であることが多い。この目標を達成するべく、好ましい方法では、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは購入可能である。これら表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、高頻度可変領域残基は、直接的かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
【0107】
(iv) ヒト抗体
ヒト化のための別法により、ヒト抗体を生産することができる。例えば、内因性の免疫グロブリン産生がなくともヒト抗体の全レパートリーを免疫化することで産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが可能である。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(J)遺伝子の同型接合除去が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列突然変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子列の転移は、抗原投与時にヒト抗体の産生をもたらす。Jakobovits等, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:2551 (1993);Jakobovits等, Nature 362:255-258 (1993);Bruggerman等, Year in Immuno., 7:33 (1993);米国特許第5591669号、同5589369号及び同5545807号を参照されたい。
【0108】
あるいは、ファージディスプレイ技術(例えばMcCafferty等, Nature 348:552-553(1990))を、非免疫化ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体及び抗体断片を産出させるために使用することができる。ある実施態様では、抗体Vドメイン遺伝子は、繊維状バクテリオファージ、例えばM13のメジャー又はマイナーコートタンパク質遺伝子のいずれかにおいてイン-フレームをクローンする。繊維状粒子がファージゲノムの一本鎖のDNAコピーを含むので、抗体の機能特性に基づいた選択により、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択がなされる。よって、ファージはB細胞の特性のいくつかを模倣している。ファージディスプレイは多様な形式で行うことができる;例えばJohnson, Kevin S. 及びChiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571(1993)を参照のこと。V-遺伝子セグメントのいくつかの供給源がファージディスプレイのために使用可能である。Clackson等, Nature, 352:624-628(1991)は、免疫化されたマウス脾臓から得られたV遺伝子の小ランダム組合せライブラリーからの抗オキサゾロン抗体の異なった配列を単離した。非免疫化ヒトドナーからのV遺伝子のレパートリーを構成可能で、抗原(自己抗原を含む)とは異なる配列の抗体を、Marks等, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)、又はGriffith等, EMBO J. 12:725-734(1993)に記載の技術に本質的に従って単離することができる。また、米国特許第5565332号及び同5573905号を参照のこと。
またヒト抗体は、活性化B細胞によりインビトロで生産してもよい(例えば米国特許第5567610号及び同5229275号を参照)。
【0109】
(v) 抗体断片
抗体断片を生産するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、インタクト抗体のタンパク分解性消化を介して誘導されていた(例えば、Morimoto等, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennan等, Science, 229:81(1985)を参照されたい)。しかし、これらの断片は現在は組換え宿主細胞により直接生産することができる。例えば、抗体断片は上述において検討した抗体ファージライブラリーから分離することができる。別法として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合してF(ab')断片を形成することができる(Carter等, Bio/Technology 10:163-167(1992))。他のアプローチ法では、F(ab')断片を組換え宿主細胞培養から直接分離することができる。抗体断片の生産のための他の方法は当業者には明らかであろう。他の実施態様では、選択抗体は単鎖Fv断片(scFV)である。国際公開93/16185号;米国特許第5571894号;及び米国特許第5587458号を参照のこと。また、抗体断片は、例えば米国特許第5641870号に記載されているような「直鎖状抗体」であってもよい。このような直線状の断片は単特異的又は二重特異的であってもよい。
【0110】
(vi) 二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗体である。例示的な二重特異性抗体は、B細胞表面マーカーの2つの異なるエピトープに結合しうる。他のこのような抗体では第一B細胞マーカーを結合し、更に第二のB細胞表面上のマーカーが結合しうる。あるいは、抗B細胞マーカーは、B細胞に細胞防御メカニズムを集中させるように、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)等のIgG(FcγR)に対するFcレセプター、又はT細胞レセプター分子(例えばCD2又はCD3)等の白血球上のトリガー分子に結合するアームと結合しうる。また、二重特異性抗体はB細胞に細胞障害剤を局在化するためにも使用されうる。これらの抗体はB細胞マーカー結合アーム及び細胞障害剤(例えば、サポリン(saporin)、抗インターフェロン-α、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキセート又は放射性同位体ハプテン)と結合するアームを有する。二重特異性抗体は全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab')二重特異性抗体)として調製することができる。
【0111】
完全長二重特異性抗体の伝統的な産生は二つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づき、ここで二つの鎖は異なる特異性を持っている(Millstein等, Nature, 305:537-539(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖が無作為に取り揃えられているため、これらのハイブリドーマ(四部雑種)は10個の異なる抗体分子の可能性ある混合物を産生し、そのうちただ一つが正しい二重特異性構造を有する。通常、アフィニティークロマトグラフィ工程により行われる正しい分子の精製は、かなり煩わしく、生成物収率は低い。同様の方法が国際公開第93/8829号及びTraunecker等, EMBO J. 10:3655-3659(1991)に開示されている。
【0112】
異なったアプローチ法では、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗原−抗体結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合させる。該融合は、少なくともヒンジの一部、CH2及びCH3領域を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合でありうる。ある実施態様によると、軽鎖の結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)は、融合の少なくとも一つに存在する。免疫グロブリン重鎖の融合、望まれるならば免疫グロブリン軽鎖をコードしているDNAを、別個の発現ベクター中に挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。これにより、コンストラクトに使用される3つのポリペプチド鎖の等しくない比率が最適な収率をもたらす態様において、3つのポリペプチド断片の相互の割合の調節に大きな融通性が与えられる。しかし、少なくとも2つのポリペプチド鎖の等しい比率での発現が高収率をもたらすとき、又はその比率が特に重要性を持たないときは、2又は3個全てのポリペプチド鎖のためのコード化配列を一つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0113】
このアプローチ法のある実施態様では、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を有する一方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖と他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)とからなる。二重特異性分子の半分にしか免疫グロブリン軽鎖がないと容易な分離法が提供されるため、この非対称的構造は、所望の二重特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にすることが分かった。このアプローチ法は、国際公開第94/04690号に開示されている。二重特異性抗体を産生する更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。
【0114】
米国特許第5731168号に記載された他のアプローチ法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収されるヘテロダイマーのパーセントを最大にすることができる。界面は抗体定常ドメインのC3ドメインの少なくとも一部を含みうる。この方法では、第1抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモダイマーのような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
【0115】
二特異性抗体とは架橋抗体や「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲートの一方の抗体がアビジンと結合し、他方はビオチンと結合していても良い。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせること(米国特許第4676980号)及びHIV感染の治療(国際公開第91/00360号、国際公開第92/200373号及び欧州特許第03089号)等の用途が提案されている。ヘテロ抱合抗体は適当な架橋方法によって生成できる。当技術分野においては、適切な架橋剤は周知であり、それらは複数の架橋法と共に米国特許第4676980号などに記されている。
【0116】
抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennan等, Science, 229:81 (1985) はインタクト抗体をタンパク分解性に切断してF(ab')断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルヒド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転換される。Fab'-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab'-チオールに再転換し、他のFab'-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
【0117】
最近の進歩により、大腸菌からのFab'-SH断片の直接の回収が容易になり、これは化学的に結合して二重特異性抗体を形成することができる。Shalaby等,J.Exp.Med., 175:217-225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab')2分子の製造を記述している。各Fab'断片は大腸菌から別々に分泌され、インビトロで定方向化学的カップリングを受けて二重特異性抗体を形成する。このようにして形成された二重特異性抗体は、正常なヒトT細胞及びErbB2レセプターを過剰発現する細胞に結合可能であるだけでなく、ヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞障害性リンパ球の細胞溶解活性の誘因となりうる。
【0118】
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作成し分離する様々な方法もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生産された。Kostelny等, J.Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により2つの異なった抗体のFab'部分に結合させられた。抗体ホモダイマーはヒンジ領域で還元されてモノマーを形成し、ついで再酸化させて抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法はまた抗体ホモダイマーの生産に対して使用することができる。Hollinger等, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするのに十分に短いリンカーにより軽鎖可変ドメイン(V)に重鎖可変ドメイン(V)を結合してなる。従って、一つの断片のV及びVドメインは他の断片の相補的V及びVドメインと強制的に対形成させられ、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーを使用する他の二重特異性抗体断片製造方策もまた報告されている。Gruber等, J.Immunol., 152:5368 (1994)を参照されたい。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tutt等, J.Immunol. 147:60(1991)。
【0119】
ここで記載のタンパク質又はペプチドアンタゴニスト及び抗体のアミノ酸配列の修飾を考察する。例えば、元の分子(例えばB細胞枯渇薬)の結合親和性及び/又は他の生物学的特性が改善されることが望ましい。アンタゴニストのアミノ酸配列変異体は、適当なヌクレオチド変化をアンタゴニスト核酸に導入することにより、又はペプチド合成により調製される。そのような修飾は、例えば、アンタゴニストのアミノ酸配列内の残基の欠失、及び/又は挿入及び/又は置換を含む。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせは、最終構造物に達するまでなされるが、その最終構造物は所望の特徴を有する。また、アミノ酸変化は、グリコシル化部位の数の変化などのアンタゴニストの翻訳後過程を変更しうる。
【0120】
突然変異のための好ましい位置にある特定の残基又は領域の同定のために有用な方法は、Cunningham及びWells , Science 244:1081-1085 (1989)に記載されているように「アラニンスキャンニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、標的残基の残基又は基が同定され(例えば、arg, asp, his, lys,及びglu等の荷電残基)、中性又は負荷電アミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリペプチドアニリンであることが多い)に置換され、アミノ酸と抗原との相互作用に影響を及ぼす。次いで置換に対する機能的感受性を示すこれらのアミノ酸の位置は、置換部位において又はそれに対して更に又は他の置換を導入することにより精密にされる。即ち、アミノ酸配列変異を導入する部位は予め決定されるが、変異自体の性質は予め決める必要はない。例えば、与えられた部位における変異の性能を分析するために、alaスキャンニング又はランダム突然変異誘発を標的コドン又は領域で実施し、発現された変異体を所望の活性についてスクリーニングする。
【0121】
アミノ酸配列挿入は、1残基から100以上の残基を含むポリペプチドの長さの範囲のアミノ-及び/又はカルボキシル末端融合物、並びに一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入物を含む。末端挿入物の例は、N-末端メチオニル残基を持つポリペプチド又は細胞障害ポリペプチドに融合したポリペプチドを含む。他の挿入変異体は、元の分子のN-又はC-末端への分子の血清半減期を向上させる酵素又はポリペプチドの融合物を含む。
【0122】
他の型の変異体はアミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、異なる残基によって置換された元の分子に少なくとも一つのアミノ酸残基を有する。抗体アンタゴニストの置換突然変異について最も対象となる部位は高度可変領域を含むが、FR変化も考慮される。保存的置換は、「好ましい置換」と題して表1に示す。これらの置換により生物学的活性に変化が生じる場合、表1に「例示的置換」と称した又はアミノ酸の分類を参照して以下に更に記載するような、より実質的な変化を導入し、生成物をスクリーニングしてよい。
【0123】
表1

【0124】
元の分子の生物学的性質における実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又はヘリックス配置、(b)標的部位の分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩を維持するそれらの効果において実質的に異なる置換を選択することにより達成される。天然に生じる残基は共通の側鎖特性に基づいて群に分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性の親水性:cys、ser、thr;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly、pro; 及び
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。
【0125】
元の分子の適切な高次構造を維持するために関与しない任意のシステイン残基も、一般的には、セリンと置換して、分子の酸化的安定性を改善して、異常な交差を防いでもよい。逆に、システイン結合を元の分子に付加して、その安定性を改善してもよい(特にこの場合、元の分子はFv断片などの抗体断片である)。
【0126】
ある好ましい型の置換変異体は、親抗体の一又は複数の高頻度可変領域残基の置換を含む。一般的に、さらなる発展のために選択され、得られた変異体は、それらが作製された親抗体と比較して向上した生物学的特性を有している。そのような置換変異体を作製する簡便な方法は、ファージディスプレイを使用する親和性突然変異である。簡潔に言えば、幾つかの高頻度可変領域部位(例えば6−7部位)を突然変異させて各部位における全ての可能なアミノ酸置換を生成させる。このように生成された多価抗体は、繊維状ファージ粒子から、各粒子内に充填されたM13の遺伝子III産物への融合物としてディスプレイされる。ファージディスプレイ変異体は、ついで、ここに開示されるようなそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。修飾のための候補となる高頻度可変領域部位を同定するために、アラニンスキャンニング突然変異誘発を実施し、抗原結合に有意に寄与する高頻度可変領域残基を同定することができる。別法として、又はそれに加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析して抗体と抗原の接点を特定するのが有利である場合もある。このような接触残基及び隣接残基は、ここに述べた技術に従う置換の候補である。そのような変異体が生成されると、変異体のパネルにここに記載するようなスクリーニングを施し、一又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を持つ抗体を更なる開発のために選択する。
【0127】
アミノ酸変異の他の型は、アンタゴニストの元のグリコシル化パターンを変更する。変更とは、元の分子に見い出される一又は複数の糖鎖部分の欠失、及び/又は元の分子に存在しない一又は複数のグリコシル化部位の付加を意味する。
ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N結合又はO結合の何れかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を意味する。アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(ここでXはプロリンを除く任意のアミノ酸)のトリペプチド配列は、アスパラギン側鎖への糖鎖部分の酵素的結合のための認識配列である。従って、ポリペプチド中にこれらのトリペプチド配列の何れかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が作出される。O結合グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンに、糖類N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースの一つが結合することを意味するが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンもまた用いられる。
【0128】
元の分子へのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を、それが一又は複数の上述したトリペプチド配列(N結合グリコシル化部位のもの)を含むように変化させることによって簡便に達成される。該変化は、元の分子の配列への一又は複数のセリン又はスレオニン残基の付加、又はこれによる置換によってもなされる(O-結合グリコシル化部位の場合)。
【0129】
元の分子のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、この分野で知られた種々の方法によって調製される。これらの方法は、限定するものではないが、天然源からの単離(天然に生じるアミノ酸配列変異体の場合)又は初期に調製された元の分子の変異体又は非変異体のオリゴヌクレオチド媒介(又は部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、及びカセット突然変異誘発による調製を含む。
【0130】
エフェクター機能、例えば元の分子の抗原依存性細胞媒介性細胞障害性(ADCC)及び/又は補体依存性細胞障害性(CDC)を向上させるために、本発明の抗体を修飾することが望ましい。このことは、抗体のFc領域に一又は複数のアミノ酸修飾を導入することで達成される。代わりにまたは加えて、Fc領域にシステイン残基を導入することによってこの領域での鎖間のジスルフィド結合形成が起こりうる。故に、生成されたホモ二量体抗体は内部移行能を向上および/または補体媒介性細胞障害および抗体依存性細胞障害(ADCC)を増強する。Caron等, J. Exp Med. 176:1191-1195 (1992) およびShopes, B. J. Immunol. 148:2918-2922 (1992)を参照。抗腫瘍活性が亢進されたホモ二量体抗体もまた、Wolff ら Cancer Research 53:2560-2565 (1993)に記載されているような異種性二機能性交差結合を用いて調製されうる。または、抗体を二重のFc領域を持つように操作して、それによって補体媒介性溶解およびADCC能を亢進した。StevensonらAnti-Cancer Drug Design 3:219-230 (1989)を参照。
【0131】
元の分子の血清半減期を延長するために、例として米国特許第5739277号に記載されているように元の分子(特に抗体断片)内にサルベージレセプター結合エピトープを組み込む方法がある。ここで用いる、「サルベージレセプター結合エピトープ」は、IgG分子のインビボ血清半減期延長に関与するIgG分子(例えば、IgG、IgG、IgG又はIgG)のFc領域のエピトープを表す。
【0132】
用量
当業の医師によく知られた用量に関する因子及び治療される徴候に応じて、典型的には毒素および副作用を最小限につつ、治療効能を有効にする用量で本発明の治療薬が投与されるであろう。必要に応じて、治療セッションは間欠的でもよい。例えば、患者は週単位の用量を受けた後にしばらく休止し、その後治療を再開してもよい。B細胞枯渇薬による腫瘍学的な疾患の治療は、CHOP又はフルダラビンやチトキサンなどの化学療法剤と組み合わされうる。枯渇薬による自己免疫性疾患の治療は、メトトレキセートなどの該疾患に有用な治療薬と組み合わされうる。
【0133】
B細胞腫瘍、例として非ホジキンリンパ腫を患う患者の治療の一例では、本発明の抗CD20抗体は1mg/kgから20mg/kg体重量、好ましくは2.5mg/kgから10mg/kgの用量で患者に投与されうる。NHLの治療の一実施態様では、抗CD20抗体が10mg/kg又は375mg/mの用量で投与される。
【0134】
ある実施態様によると、自己免疫性疾患の治療では、抗CD20療法は、用量当たり250〜1000mgで2〜4用量で隔週ないしは3週間毎に投与される。例えば、リウマチ様関節炎の治療では、ある実施態様では、キメラ抗体であるリツキサンTMを用量当たり500mgで隔週、全2用量で投与する。ヒト化抗CD20抗体、例えばhu2H7v.16又はここで開示したhu2H7の任意の他の変異体を、用量当たり500mg以下で、例えば用量当たりおよそ200〜500mg、およそ250mg〜450mg、又は300〜400mgで隔週あるいは3週間毎に2〜4用量で投与されうる。
【0135】
一実施態様では、抗BR3療法は、必要に応じて週に100mg/m〜1500mg/m又は体重にして1m/kg〜20mg/kgで投与される。
本発明の治療方法は、抗CD20抗体とBAFFアンタゴニスト(ここでは両方とも薬剤を意味する)を同時におよび連続して投与することを含む。連続的投与では、薬剤は何れの投与順番でもよい、すなわち初めにBAFFアンタゴニストをついで抗CD20抗体を投与する。患者は一薬剤で治療し、一薬剤での治療前に効果についてモニターする。あるいは、初めに患者に両方の薬剤を投与し、続く用量では一方のみあるいは他の薬剤を投与する。
【0136】
患者を薬剤耐性に順応させるためおよび/または、治療用化合物の初回投与やその後の投与から生じる注入関連症状などの副作用の発生を減らすために、必要とする哺乳動物に一方又は両方の薬剤の初回ないし開始順化用量を投与し、ついで少なくとも第二の治療上有効量の一方又は両方の薬剤を投与する。このとき第二およびそれに続く用量は初回用量より多い。初回用量により哺乳動物に用量が多い第二治療用量への耐性ができる。この方法では、哺乳動物は初回投与量よりも高い用量の治療用化合物に耐性ができる。「順化用量」とは、治療用化合物の投与に伴う初回投与副作用効果の頻度や重症度を減弱ないし低減させる用量である。順化用量は、治療的用量、副治療的用量、症状用量、ないし副症状用量でもよい。治療的用量は、患者に治療上の効果を示す用量であり、副治療的用量は治療される患者に治療上の効果を示さない用量である。症状用量は投与に少なくとも一の逆効果を起こす用量であり、副症状用量は逆効果を起こさない用量である。いくつかの逆効果は、発熱、頭痛、吐き気、嘔吐、呼吸困難、筋肉痛および悪寒である。
【0137】
投与方法
B細胞枯渇薬又はB細胞促進薬と他の治療剤は様々な方法で、例としてボーラスなどの静脈内投与、または一定期間わたる継続注入、皮下的、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、動脈内、滑膜内、クモ膜下腔内、または吸入によってヒト患者に投与されうる。一般的に、抗CD20抗体は、静脈内投与ないし皮下投与される。薬剤は同じないし異なる経路で投与することができる。
【0138】
キット
本発明の他の実施態様は、血清BAFFレベルを決定する際に用いるための抗BAFF抗体又はBAFFを結合することができる他のポリペプチドといったBAFF結合試薬と、B細胞促進薬又はB細胞枯渇薬による治療の後の患者における総B細胞レベル又は組織B細胞レベルに血清BAFFレベルをどのように関連づけるかを指示するラベル又はパッケージ挿入物とを具備するキットである。場合によって、前記キットはB細胞促進薬又はB細胞枯渇薬を具備する。更なる実施態様では、前記キットはさらに、患者の血清BAFFレベルに基づいてB細胞枯渇薬又は他の治療薬によって患者を再治療するための指示を含む。前記パッケージ挿入物は、血清BAFFレベルが最も高いとき又は血清BAFFレベルが減少するにつれて(例えばB細胞回復段階)患者を再治療するための指示を含んでもよい。前記指示は、末梢B細胞回復段階前の組織B細胞回復段階の時又はその前の再治療を示しうる。
【0139】
キットは、少なくとも一の容器と容器上ないし容器に付属するラベルまたはパッケージ挿入物を具備する。好適な容器は、例えばボトル、バイアル、シリンジ等を含む。容器はガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成されうる。容器は、治療剤を抽出するための無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針による穴あきストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってよい)。ラベルまたはパッケージ挿入物は、組成物が特定の症状、例として非ホジキンリンパ腫ないしリウマチ様関節炎の治療のために使用されることを示している。さらに、キットは薬剤的に受容可能なバッファ、例として注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝液食塩水、リンガー液およびデキストラン溶液を収容する第二容器をさらに含んでもよい。さらに、他のバッファ、希釈剤、フィルター、針およびシリンジなどの商業および使用者の立場から望ましい他の材料を内包してもよい。
【0140】
具体的な抗BR3抗体の例
本発明の抗体には、具体的に、表2(下記)に開示される抗体のいずれか一の可変重鎖配列を含んでなる抗体、及びハイブリドーマ細胞によって生産されなかったそのBR3-結合断片が含まれる。本発明の抗体には、具体的に、表2の抗体のいずれか一の可変重鎖配列を含んでなる抗体、表2の抗体によって競合的に阻害されうる抗BR3抗体、及びそのBR3-結合断片が含まれる。更なる実施態様によると、本発明の抗体は、表2に開示される抗体のいずれか一の可変重鎖及び可変軽鎖領域、及びそのBR3-結合断片を含んでなる。
【0141】
表2.抗-BR3抗体配列の例


【0142】
本発明の抗体には、表2の配列のいずれか一のH3配列に対して、少なくともおよそ70%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくともおよそ71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のアミノ酸配列同一性であるH3配列を有するBR3-結合抗体、及びこれら抗体のBR3結合断片が含まれる。
【0143】
本発明の抗体には、表2に記載の抗体配列のいずれか一のCDRに対して少なくとも70%の同一性である、又あるいは少なくともおよそ71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のアミノ酸配列同一性を有するH1、H2及びH3の配列を有するBR3-結合抗体が含まれる。ある実施態様によると、H1、H2及びH3はそれぞれ、配列番号:124、123及び122それぞれに少なくとも70%の同一性であり、抗体は場合によって、配列番号:3を含むVL又は配列番号:3に少なくとも70%の同一性であるVLを含んでなる。
【0144】
本発明の抗体には、表2に記載の抗体のいずれか一のCDRに対して少なくとも70%の同一性である、又あるいは少なくともおよそ71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のアミノ酸配列同一性を有するL1、L2及びL3の配列を有するBR3-結合抗体が含まれる。ある実施態様によると、L1、L2及びL3はそれぞれ、配列番号:133、134及び135それぞれに少なくとも70%の同一性であり、抗体は場合によって、配列番号:17を含むVH又は配列番号:17に少なくとも70%の同一性であるVHを含んでなる。
【0145】
本発明の抗体には、表2に記載の抗体のいずれか一のVHドメインに対して少なくとも70%の同一性を有する、又あるいは少なくともおよそ71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のアミノ酸配列同一性を有するVHドメインを有するBR3-結合抗体が含まれる。更なる実施態様では、前記のVHドメイン配列に加えて、前記抗体はさらに、表2の対応する抗体のVLドメインに対して少なくとも70%の同一性を有する、又あるいは少なくともおよそ71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のアミノ酸配列同一性を有するVLドメインを含んでなる。一実施態様では、抗体は、9.1RFのVH及びVL、又は配列番号:17に少なくとも70%同一であるVHと配列番号:3に少なくとも70%同一であるVLを含んでなる。
【0146】
ある好適な実施態様によると、本発明の抗体は天然のヒトのBR3ポリペプチドの配列に特異的に結合する。更なる他の実施態様では、本発明の抗体は、9.1-RF Igとして公知の抗体と比較して、ヒトのエフェクター細胞の存在下において向上したADCC機能を有する。さらに他の実施態様によると、この発明の抗体は、9.1-RF免疫グロブリンとして知られている抗体と比較して、ヒトのエフェクター細胞がある場合には、ADCC機能を減少させた。他の実施態様によると、抗体は、哺乳類の細胞、細菌細胞、真菌細胞、酵母菌、昆虫細胞及び植物細胞からなる群から選択される細胞から本発明の抗体をコードする核酸配列を発現するプロセスによって作製される。
本発明のすべての抗体には、シグナル配列を欠く抗体及びFc領域のK447残基を欠く抗体が含まれると解釈される。
【0147】
具体的な抗CD20抗体の例
CD20抗体の例には以下のものが含まれる:現在では「リツキシマブ」(「リツキサン(登録商標)」)と呼称される「C2B8」(米国特許第5736137号);「Y2B8」又は「Ibritumomab Tiuxetan」(ゼバリン(登録商標))と命名されるイットリウム-[90]-標識2B8マウス抗体、IDEC Pharmaceuticals, Inc.から市販(米国特許第5736137号;1993年6月22日に受託番号HB11388としてATCCに寄託された2B8);場合によっては「131I-B1」またはCorixaから市販の「ヨードI131 Tositumomab」抗体(BEXXARTM)を生成するために131Iで標識した「Tositumomab」とも呼称されるマウスIgG2a「B1」(米国特許第5595721号も参照のこと);マウスモノクローナル抗体「1F5」(Press等 Blood 69(2):584-591 (1987)及びそれらの変異体、例として「フレームワークパッチ」又はヒト化1F5(国際公開第03/002607号、Leung, S;ATCC寄託番号HB-96450);マウス2H7及びキメラ2H7抗体(米国特許第5677180号);ヒト化2H7(国際公開第2004/056312号、Lowman等)及び以下に挙げるもの);huMax-CD20TM完全ヒト抗体(Genmab, Denmark;例としてGlennie及びvan de Winkel, Drug Discovery Today 8: 503-510 (2003)とCragg 等, Blood 101: 1045-1052 (2003)を参照);国際公開第2004/035607号(Teeling 等)に記載のヒトモノクローナル抗体;米国公開特許第2004/0093621号(Shitara等)に記載されたFc領域に複合N-グリコシド結合糖鎖が結合した抗体;国際公開第2004/103404号(Watkins等, Applied Molecular Evolution)に記載されたAME-133TM抗体のようなAME抗体シリーズのようなCD20結合分子;キメラ又はヒト化A20抗体(それぞれcA20、IMMU-106 a.k.a.hA20)AME-133TM抗体(Applied Molecular Evolution);キメラ又はヒト化A20抗体などのA20抗体(それぞれcA20、hA20)又はその変異形(米国公開特許第2003/0219433号、Immunomedics);及びInternational Leukocyte Typing Workshopより入手のモノクローナル抗体L27、G28-2、93-1B3、B-C1又はNU-B2(Valentine等, Leukocyte Typing III (McMichael, 編集, 440頁, Oxford University Press (1987))。本明細書中の好適なCD20抗体は、ヒト化CD20抗体、キメラCD20抗体またはヒトCD20抗体、より好ましくはヒト化2H7、リツキシマブ、キメラないしはヒト化A20抗体(Immunomedics)、及びHUMAX-CD20TMヒトCD20抗体(Genmab)である。
【0148】
ここでの目的では、「ヒト化2H7」は、可変軽鎖(V)配列:

;及び、可変重鎖(V)配列:

を含んでなるインタクトな抗体ないし抗体断片を指す。
【0149】
ヒト化2H7抗体がインタクトな抗体である場合、v16軽鎖アミノ酸配列:

;及び、重鎖アミノ酸配列:

を含んでなることが好ましい。
【0150】
バージョン16に基づく全ての他の変異体のV領域は、以下の表3に示すアミノ酸置換の位置を除いてv16のアミノ酸配列を有する。特段示さない限り、2H7変異体はv16のものと同じL鎖を有する。ヒト化抗体2H7v.16はまたrhuMAb2H7又はオクレリツマブ(Ocrelizumab)とも呼ばれる。
【0151】
表3

表4

【0152】
残基番号付けは、Kabat等, Sequences of Immunological Interest. 5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)に従っており、配列図において挿入はa、b、c、d、及びeで示し、間隙はダッシュで示す。Fc領域を含むCD20結合抗体において、Fc領域のC末端リジン(EU番号付け系によると残基447)は、例えばAbの精製の間、又は抗体ポリペプチドをコードする核酸を組換え操作することによって、除去することができる。したがって、本発明に有用なCD20結合抗体組成物は、K447を持つ抗体、全てのK447が除去された抗体、又はK447残基を持つ抗体と持たない抗体の混合物を含みうる。
【0153】
IgG中のNグリコシル化部位はCH2ドメインのAsn297にある。本発明の治療方法に有用なCD20結合及びBR3結合抗体は、Fc領域を有する前述の抗体の任意のものの組成物を含み、ここで組成物中の抗体の約80〜100%(好ましくは約90〜99%)は糖タンパク質のFc領域に結合したフコースを欠く成熟コア糖鎖構造を含む。
【0154】
CD20結合抗体には、抗体の1本のアームが本発明のヒト化2H7抗体のH鎖及び/又はL鎖といったCD20結合抗体のH鎖及びL鎖を有し、他のアームは第二抗原に対してV領域結合特異性を有する二重特異性CD20結合抗体が包含される。具体的な実施態様では、第二抗原は、CD3、CD64、CD32A、CD16、NKG2D又は他のNK活性化リガンドからなる群から選択される。
【0155】
アッセイ方法
血清BAFFレベルは様々な技術で測定されうる。血清BAFFレベルをアッセイするための最も便利な技術には、ウェスタンブロット、ドットブロット、ELISA、免疫沈降ないしは任意の他のイムノアッセイ、又は抗BAFF抗体ないしはBAFFを特異的に結合する分子を用いた技術が含まれる。例えば、可溶型BAFFの測定のためのサンドイッチELISAは以下又は実施例1において記述するように、行うことができる。またZhang, J.,等, (2001) J. Immunol. 166:6-10を参照。簡単に言うと、96ウェルプレートを、2μg/mlの精製したマウス抗BAFFモノクローナル抗体(クローン3D4、mIgG1)を含むリン酸緩衝食塩水(PBS)にて4℃で終夜をかけてコートし、1%ウシ血清アルブミン(BSA)/PBSにて反応を止める。すべての試料を、3%BSA/PBSにて1:10に希釈し、ELISAプレートにて37℃で4時間インキュベートする。洗浄後、プレートを、まず0.2μg/mlのビオチンをコンジュゲートしたポリクローナル抗BAFF抗体とともにインキュベートし、その後、1:30000に希釈したHRPコンジュゲートストレプトアビジン(Southern Biotechnology, Birmingham, AL)とともにインキュベートする。リウマチ因子活性の任意の混同効果を避けるために、mIgG1アイソタイプをキャプチャー抗体についてのバックグラウンドコントロールとして、各試料とともに用いる。トリメチルベンジジン基質(Sigma, St Louis, MO)と反応させ、Eマックスプレート読み取り機(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)にて読み取る。このアッセイにおいて、mIgG1コントロールウェルの吸光度値を、対応する抗BAFFキャプチャーウェルから減算する。この吸光度値は典型的に総吸光度の10%未満であった。組換えBAFFの階段希釈物を用いた標準曲線を各アッセイに組み込む。
【0156】
本明細書において引用されるすべての刊行物(特許及び特許出願を含む)は、出典明記によってその全体に援用される。また、2005年11月23日発行の米国特許仮出願第60/739266号及び、2006年11月10日発行のMETHODS AND COMPOSITIONS RELATED TO B CELL ASSAYSと題する米国特許仮出願(発明者:Flavius Martin)も本明細書全体に援用される。
【0157】
実施例で言及されている市販試薬は、特に示さない限りは製造者の使用説明に従い使用した。ATCC登録番号により以下の実施例及び明細書全体を通して特定されている細胞の供給源はアメリカ培養細胞系統保存機関、マナッサス、VAである。特に記さない限り、本発明は上記及び以下の教科書に記載されたもののような組換えDNA技術の標準的な手法を用いた:上掲のSambrook等;Ausubel等, Current Protocols in Molecular Biology(Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y., 1989);Innis等, PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications(Academic Press, Inc.; N.Y., 1990);Harlow等, Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press: Cold Spring Harbor 1988);Gait, Oligonucleotide synthesis(IRL Press, Oxford, 1984);Freshney, Animal Cell Culture, 1987;Coligan等, Current Protocols in Immunology, 1991。
【0158】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、「含む」なる語彙、又は「含む」ないし「含んでいる」の変形型は、定めた完全体又は完全体の群を包含するもので、任意の他の完全体又は完全体の群を除外するものではない。
前記の明細書は、当業者に本発明を実施できるようにするために十分であると考えられる。以下の実施例は例示的目的のためのみに示すのであり、本発明の範囲が多少なりとも限定されるものではない。実際、ここに示し記載したものに加えて、本発明を様々に改変することは、前記の記載から当業者にとっては明らかなものであり、添付の特許請求の範囲内に入るものである。
【実施例】
【0159】
実施例1−マウスのB細胞枯渇の際に上方制御される血清BAFF
マウスに、200ugのコントロール(マウスIgG2a)、抗BR3抗体又は抗CD20抗体(N=5マウス/群)を注射した。注射後の7日に、B細胞枯渇及びBAFFレベルについてマウスを試験した。一般的に、BAFF血清レベルは以下の通りに決定された:ヒトBCMA-Fc(Genentech, Inc.)は、PBSにて0.5μg/mLに希釈し、2〜8℃で12〜72時間インキュベートすることによって384ウェルELISAプレート(Immuno Plate with MaxiSorp surface, Nunc, Neptune, NJ)にコートした。PBS/0.5%BSAによる遮断の後、試料バッファ(PBS/0.5%BSA/0.05%ツイーン-20/0.25%CHAPS/0.2%ウシγグロブリン/5mM EDTA/0.35M NaCl)に希釈したマウス血清試料をプレートに加えた。プレートは、軌道板振とう器にてゆっくりと撹拌しながら室温で2時間インキュベートした。次いでプレートを、室温のPBS+0.05%ツイーン-20洗浄バッファにて洗浄した。また、同じバッファに希釈したマウスBAFF(Genentech, Inc.)の標準曲線を加えた(範囲:1000−15.6pg/mL)。プレートに結合したBAFFはラット抗マウスBAFFモノクローナル抗体(R&D Systems, Minneapolis, MN)にて検出し、結合した抗BAFF mAbはヤギ抗ラットIgG Fc-HRP抗体(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)を用いて検出した。テトラメチルベンジジン(TMB) (Kirkegaard & Perry Laboratories, Gaithersburg, MD)を用いて呈色反応させ、1M リン酸にて反応を止めた。試料BAFF濃度は、BAFF標準曲線の4-パラメーターから内挿した。血清試料の1/4最低希釈となる最低の定量可能な濃度は62.5pg/mLであった。
【0160】
抗BR3抗体(Genentech, Inc.)又は抗CD20抗体(Genentech, Inc.)による治療により、95%より多い血液B細胞の枯渇と、75%より多い脾臓及びリンパ節B細胞の枯渇が生じた。同時に、血清BAFFのレベルは、抗BR3抗体治療の後に10〜20倍に、抗CD20治療の後に4〜10倍に増えた。図1を参照。
【0161】
これらの結果に基づいて、血清BAFFのレベルと組織のB細胞枯渇の範囲との間に相関性があるかもしれないと仮定された。この仮説は以下の4つの図のデータに裏付けられる。理論と関連するものでなく、血清のBAFFレベルは存在するそのレセプターのレベルに依存しうるようである。このようにして、B細胞枯渇又はBAFFレセプターの遮断が増すと血清BAFF濃度が増加する。
【0162】
実施例2−マウスの抗CD20組織B細胞枯渇の程度と相関する血清BAFF上方制御。
5匹のマウス/群を、コントロール(mIgG2a)、1.25ug、12.5ug又は125ugの抗CD20抗体(マウス2H7)にて治療した。3日後に、血液及び脾臓のB細胞枯渇をフローサイトメトリーにて測定した。血清BAFFのレベルを%B細胞枯渇に対してプロットする。コントロールマウスは0%のB細胞枯渇を有するとみなした。図2は、12.5ug及び125ugの治療マウスの血液から多くのB細胞が枯渇したことを示す。これに対して、高用量のみは、脾臓の多数のB細胞を枯渇させた。血清BAFFレベルの増加と組織B細胞枯渇(例えば脾臓)の増加との間に良好な用量依存性の相関があった。図2を参照。
【0163】
実施例3−B細胞が枯渇したマウスの組織B細胞充満の予測手段としての血清BAFF。
複数の群のマウスを、抗BR3抗体又は抗CD20抗体(200ug/マウス)で治療した。B細胞枯渇は、異なる時間点の血液及び脾臓の試料によるフローサイトメトリー(B220又はCD19陽性細胞)を用いて測定した。mIgG2aで治療したコントロールマウスの試料をコントロール試料として用いて、%B細胞枯渇を決定した。抗BR3治療の後、1日目ではいくらかの血液B細胞枯渇があり、7日目にわずかにより多くの血液B細胞枯渇があった。一方脾臓においては、1日目に極僅かな組織B細胞枯渇があり、7日目に多量の組織B細胞枯渇があった。同時に、BAFFの血清レベルは、1日目と7日目との間で比例的に増加していた。したがって、BAFFの血清レベル及び組織(例えば脾臓及び他のリンパ系器官)のB細胞のレベルは、B細胞枯渇薬による治療後に逆の関係にあった。同様に、抗CD20で治療したマウスは、治療後7日目に血清BAFFが高かった。
【0164】
治療後最大の組織B細胞枯渇の後、血清BAFFレベルは組織のB細胞レベルが回復するにつれて減少した。これ以降のみに血液のB細胞レベルが回復した。これは、血清BAFFレベルが組織のB細胞充満を評価するための早期指標であるのに対して、B細胞は血液中では依然として枯渇していたことを示す。
【0165】
実施例4−カニクイザル(cyno)血液における抗BR3末梢B細胞枯渇及び可溶性BAFFレベル。
マウスと同様に、抗BR3抗体により非ヒト霊長類(カニクイザル)を治療すると組織のB細胞枯渇とともに血清のBAFFレベルの増加が生じる。
図4Aは、6か月の治療後評価期間にわたる、20mg/kg単回用量抗BR3抗体によって治療されるサルにおける%CD20血液B細胞枯渇と血清BAFFレベルを示す。%CD20血液B細胞枯渇は、試験試料を、抗BR3抗体による治療前のサルからの試料と比較することによって算出した。サルは、血清BAFFレベルの増加(デルタ+)と一致して血液B細胞枯渇段階が最大となり、その後B細胞充満と一致して血清BAFFレベルの低下(デルタ−)が起こった。図4Aにおいて1及び2と識別した2匹のサルは、枯渇の間に選別し、図4Bに記載のように更に詳細に調べる。図4Bは、サル1及び2の血清BAFFとB細胞枯渇の動態描写を示す。矢印は、最大の血清BAFFレベルが最大のB細胞枯渇と一致しており、その後血清BAFFレベルが低下し、B細胞枯渇が少なくなることを示す(矢印方向を見る)。このことから、基準への血清BAFFの低下(デルタ−)が血液B細胞回復より早く生じることが示唆される。
【0166】
実施例5−抗BR3抗体による治療後のカニクイザル血液における末梢CD20 B細胞枯渇及び可溶性BAFFレベル−2匹のカニクイザルにおける代表的な動態。
実施例4において試験した2匹のカニクイザル(cyno)からのデータを図5の完全な動態学的曲線として描写する。両方のサルは、血清BAFFレベルは血液B細胞枯渇と同時に増加する(デルタ+)ことを示す。カニクイザル#01(図5A)に示すように、血清BAFFレベルは22日目までに低下し(デルタ−)、B細胞回復段階が始まり、40日目までに完全に続く。カニクイザル#09(図5B)では、血清BAFFレベルが上がるのに対して、血液B細胞レベルは下がっている。カニクイザル#09は、血液B細胞の回復をほとんどないしは全く示さなかった(50日目以降を参照)。この試験においても、カニクイザルの血液のB細胞レベルと血清BAFFレベルとの間に逆の関係が示され、マウスにおいて観察された組織に対して血液におけるB細胞枯渇と充満との時間差は霊長類に置き換えたものであると考えられる。したがって、血清BAFFレベルは、組織B細胞区画の大きさ(脾臓、リンパ節など)の優れた早期指標となる。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】マウスにおいてB細胞枯渇後に上方制御される血清BAFF。
【図2】マウスにおいて抗CD20組織B細胞枯渇の程度と相関する血清BAFF上方制御。
【図3】正常なマウスにおける抗BR3組織B細胞充満の指標である血清BAFF。
【図4】カニクイザル(cyno)血液における抗BR3末梢B細胞枯渇と可溶性BAFFレベル。
【図5】カニクイザル(cyno)血液における抗BR3末梢CD20 B細胞枯渇と可溶性BAFFレベル −2匹の代表的なカニクイザルの個々の動態 。
【図6】組織B細胞回復と比較したときの末梢B細胞回復の遅延を示す説明図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体のB細胞レベルをモニタリングするための方法であって、被検体の試験試料中の血清BAFFレベルを決定し、コントロール試料中の血清BAFFレベルを決定し、そしてコントロールと比較して被検体のB細胞レベルを算出する工程を含んでなり、このときの算出に試験試料中の血清BAFFレベルをコントロール試料中の血清BAFFレベルと比較する工程が含まれる方法。
【請求項2】
前記コントロール試料が治療薬による治療前の被検体からのものであり、前記試験試料が治療薬による治療後の被検体からのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試験試料が疾患を患っている被検体からのものであり、前記コントロール試料が疾患を患っていない被検体からのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
疾患を患っている被検体の治療方法であって、(1) 該被検体に治療上有効量の治療薬を投与し、(2) 該被検体の試験試料中の血清BAFFレベルを決定し、(3) コントロール試料と試験試料中のB細胞レベルを比較し、そして(4) 該被検体の血清BAFFレベルに依存する時点で、治療上有効量の同じ治療薬又は異なる治療薬を投与する工程を含んでなる方法。
【請求項5】
疾患を患っている被検体の治療方法であって、(1) 該被検体に治療上有効量の治療薬を投与し、(2) 該被検体の試験試料中の血清BAFFレベルを決定し、そして(3) 該試験試料中の血清BAFFレベルに依存する時点で、治療上有効量の同じ治療薬又は異なる治療薬を投与する工程を含んでなる方法。
【請求項6】
疾患のためにB細胞枯渇薬にて既に治療された被検体のための維持治療法であって、該被検体の血清BAFFレベルを決定し、そして最大のB細胞枯渇後の時点及び血清BAFFレベルが減少している間に、B細胞枯渇薬にて患者を治療する工程を含んでなる方法。
【請求項7】
前記時点が、最大のB細胞枯渇段階の時又はその後である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項8】
前記時点が、B細胞回復段階の間である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項9】
前記B細胞回復段階が血清BAFFレベルを低下させることに特徴がある、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記最大のB細胞枯渇段階が被検体の血清中のBAFFの最大レベルに特徴がある、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項11】
前記治療薬がB細胞枯渇薬である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項12】
前記治療薬がBAFFに結合するBAFFアンタゴニストではない、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項13】
前記治療薬がBAFFを結合し、BAFFのBCMA、TACI又はBR3への結合を遮断する、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項14】
前記治療薬がB細胞促進薬である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項15】
前記治療薬が、CD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD40、CD52、D53、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85、CD86、CD180 (RP105)、FcRH2 (IRTA4)、CD79A、C79B、CR2、CCR6、CD72、P2X5、HLA-DOB、CXCR5(BLR1)、FCER2、BR3(aka BAFF-R)、TACI、BTLA、NAG14(aka LRRC4)、SLGC16270(ala LOC283663)、FcRH1(IRTA5)、FcRH5(IRTA2)、ATWD578(aka MGC15619)、FcRH3(IRTA3)、FcRH4(IRTA1)、FcRH6(aka LOC343413)及びBCMA(aka TNFRSF17)、HLA-DO、HLA-Dr10及びMHCクラスIIからなる群から選択されるB細胞表面抗原に結合するB細胞枯渇薬である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記B細胞枯渇薬が抗体である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記疾患が免疫学的疾患である、請求項4から16のいずれか一に記載の方法。
【請求項18】
前記疾患が免疫不全病である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項19】
前記疾患が、関節リウマチ、若年性慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ウェゲナー病、炎症性腸疾患、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgAネフロパシ、IgM多発性神経炎、重症筋無力症、血管炎、真正糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群、糸球体腎炎、視神経脊髄炎(NMO)及びIgG神経障害からなる群から選択される自己免疫性疾患である、請求項4から13のいずれか一に記載の方法。
【請求項20】
前記疾患がB細胞リンパ腫、B細胞白血病及び多発性骨髄腫からなる群から選択される癌である、請求項4から13のいずれか一に記載の方法。
【請求項21】
前記B細胞がCD19を発現する、請求項4から12のいずれか一に記載の方法。
【請求項22】
前記B細胞がCD20を発現する、請求項4から12のいずれか一に記載の方法。
【請求項23】
前記被検体が哺乳動物である、請求項4から12のいずれか一に記載の方法。
【請求項24】
前記被検体がヒトである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記B細胞枯渇薬が、抗CD20抗体、抗BR3抗体、抗CD22抗体及び抗CD52抗体からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項26】
前記抗CD20抗体がリツキシマブ又は2H7である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記B細胞促進薬がサイトカインである、請求項14に記載の方法。
【請求項28】
前記異なる治療薬が、T細胞枯渇薬、免疫抑制剤、DMARD及びワクチンからなる群から選択される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項29】
前記時点が、末梢血液B細胞回復の前にある組織B細胞回復の前かその間である、請求項4から6のいずれか一に記載の方法。
【請求項30】
BAFF結合試薬とパッケージ挿入物とを具備するキットであって、該パッケージ挿入物にBAFF結合試薬を用いて血清BAFFレベルを決定するための指示及びB細胞枯渇薬ないしはB細胞促進薬にて治療した後の患者のB細胞レベルに血清BAFFレベルを関連づけるための指示が含まれるものであるキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−517046(P2009−517046A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542424(P2008−542424)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/045148
【国際公開番号】WO2007/062090
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】