説明

BCL−2を標的とする抑制性オリゴヌクレオチド

Bcl-2をコードする核酸に存在する標的領域の3つの特定標的領域およびサブ配列を標的とする抑制性オリゴヌクレオチドを開示する。これらの抑制性オリゴヌクレオチドは一般に約8から約50ヌクレオチド長である。特定の好ましいオリゴヌクレオチドを開示する。本発明のオリゴヌクレオチドは、医薬組成物などの組成物に内包でき、また、細胞または組織におけるBcl-2発現を抑制する方法、生物におけるBcl-2発現の改変の影響を受けやすい状態を処置する方法、およびBCL-2をコードする核酸を検出する方法に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2002年11月14日出願の米国仮出願第60/426,269号に優先権を主張する。
【発明の背景】
【0002】
[1.発明の分野]
本発明は概して遺伝子発現を調節する物質および標的核酸に関する。より具体的には、本発明はBcl-2をコードする核酸の発現を調節する化合物、組成物および方法に関する。
【0003】
[2.技術的な背景]
ヒトの遺伝的な設計図は、体細胞の核にある複数の染色体に書き込まれ保存されている。これらの染色体はそれぞれDNAという単一の分子から構成されている。DNAは二本鎖のポリマー化合物であり、その鎖は、ヌクレオチドサブユニットのアデニン、チミン、シトシンおよびグアニンの鎖である。これらの鎖は、その鎖の相補的核酸間に形成される水素結合によって互いに結合している。アデニン(A)はチミン(T)と、またグアニン(G)はシトシン(C)と水素結合を形成する。ヌクレオチド鎖におけるこれらの核酸塩基の隣接する3つの組は個々のアミノ酸をコードしている。同時に、DNAのヌクレオチド鎖は人体の構築、維持および燃料供給に必要な多様な全てのタンパク質をコードしている。
【0004】
タンパク質は、メッセンジャーRNAと呼ばれるDNAの転写複製物から翻訳される。メッセンジャーRNAは、DNAが部分的にほぐれ、そのDNAの配列が細胞機構によって複製・転写されることにより生成する。メッセンジャーRNAはDNAと同様の成分からできているが、チミンがウラシルに置き換わっており、また全てのヌクレオチドにおいてデオキシリボースがリボースに置き換わっている。転写がひとたび完了すると、そのメッセンジャーRNAは核からサイトゾルへ輸送される。そこでmRNAは細胞のタンパク質生産機構である複数の酵素の作用を受ける。その酵素とタンパク質生産機構を構成する他の関連分子がmRNAに結合し、メッセンジャーRNAの暗号の読み取りを開始する。同時に、鎖にコードされているアミノ酸を集めて結合し、元のDNAがコードしていたタンパク質を生産する。
【0005】
ある種の癌のような疾病および疾患状態は、特定タンパク質の過剰生産または誤生産と関係している。これらの場合のいくつかでは、遺伝子に欠陥が存在すると、非機能性または非効率的なタンパク質をコードするメッセンジャーRNAの生成が起こる。さらに、いくつかの疾患は、正常なタンパク質生産を増加または減少させることによって制御できる。特に、数種の癌では、特定タンパク質をコードする遺伝子の調節が可能であれば、その癌は寛解するかまたは処置に対する感受性がより高くなる可能性があると考えられている。結果、遺伝子活性を調節する方法を見出すために多くの研究がなされてきた。ある研究では、前立腺癌細胞におけるBcl-2生産の下方制御によって、その癌細胞の成長が抑制され、またアドリアマイシン誘導性アポトーシスの影響を受けやすくなったことが確認された。Shi et al., Cancer Biother. Radiopharm., 16(5):421-9 (Oct. 2001)。
【0006】
遺伝子発現の調節に用いられる技術の一つに、アンチセンス技術がある。アンチセンス技術では、タンパク質をコードする核酸に分子を結合させることによって、そのタンパク質の生産を制御する。一般にこの分子は、広くアンチセンスオリゴヌクレオチドと呼ばれている短いDNAまたはRNAである。これらのオリゴヌクレオチドは目的タンパク質をコードする核酸断片に相補的である。使用の際は、これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドを処置したい細胞または組織に投与する。投与したオリゴヌクレオチドは細胞内に取り込まれ、目的タンパク質をコードするそれらと相補的な核酸の一領域に接触し結合する。この結合によって、核酸とRNA翻訳酵素などの細胞機構との正常な相互作用が妨げられ、メッセンジャーRNAの分解が誘導される。こうしてメッセンジャーRNAの適切な翻訳が抑制または妨害される。
【0007】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いると、核酸の特定領域を厳密に標的化することができ、オリゴヌクレオチドと抑制または活性化を望まない他の分子との相互作用を妨げることができるので、多くの人がアンチセンス技術は強力な技術であると考えている。選択した核酸の特定領域をしばしば標的配列と呼ぶ。アンチセンスオリゴヌクレオチドは標的配列を非常に厳密に標的化するので、ほぼ絶対的な特異性を有し、効果が高く、毒性が低く、副作用の少ない、薬物などの組成物の提供に用いることができる。
【0008】
しかしながら、ある遺伝子に用いる効果的なアンチセンスオリゴヌクレオチドの特定が困難であるため、その有用性は陰に身を潜めている。個々の遺伝子に利用できる潜在的なオリゴヌクレオチドは概して数多くあるが、遺伝子発現に対するそれぞれのアンチセンスオリゴヌクレオチドの効果は様々である。これは、少なくとも部分的には、核酸の最終的な折りたたみ構造によって、核酸配列によってはその領域へのオリゴヌクレオチドの接触が妨害され、無効化される可能性があるためであることが分かっている。さらに、有効部位の特徴を決定する作業は、標的とする個々の遺伝子に対して繰り返し行われなければならない。この過程は一般に時間と費用のかかる作業である。癌を含めた多くの疾患状態は、アンチセンス治療が功を奏するものであるが、特定遺伝子に有効なオリゴヌクレオチドが入手しにくい状況にある。
【0009】
Bcl-2は、いくつかの細胞種で細胞のアポトーシス死の妨害を示す、ミトコンドリア内膜タンパク質である。胸腺のアポトーシスにはBcl-2の発現が関係していることが示されている(Kanavaros et al., Histol. Histopathol. 16(4):1005-12 (Oct. 2001)。Bcl-2はまた、前立腺癌に何らかの役割を持つことが示されており、特に、特定の霊長類によく見られる悪性腫瘍と関連づけられてきた。Shi et al., Cancer Biother. Radiopharm., 16(5):421-9 (Oct. 2001)、Slothower, Study Suggests Bcl-2 Gene as a Cause for Aggressive Prostate Cancer in African American Men, U.C. Davis Med. Ctr,. (May 1998)。上記で手短に述べたように、ある研究で前立腺癌細胞においてBcl-2産生を下方制御すると、細胞成長の抑制が見られ、アポトーシスを誘導するように考案した処置に対する感受性が増大した。Shi et al., Biother. Radiopharm., 16(5):421-9 (Oct. 2001)。
【0010】
従って、癌などの疾患に何らかの役割を持つタンパク質をコードする核酸に結合し、その活性を改変するように構成した抑制性オリゴヌクレオチド化合物を提供することは、当分野の進歩となる可能性がある。また、Bcl-2遺伝子を調節するための効果的な標的部位を提供することはさらなる進歩となる可能性がある。Bcl-2をコードする核酸の効果的なアンチセンス標的領域に相補的なオリゴヌクレオチドを提供することは、当分野の進歩となる可能性がある。さらに、そのようなオリゴヌクレオチドを含む、薬剤などの組成物を提供することは当分野において利益となる可能性がある。最後に、そのようなオリゴヌクレオチドおよび組成物を利用する方法を提供することは、当分野の進展となる可能性がある。
【0011】
そのようなオリゴヌクレオチド、標的領域、該オリゴヌクレオチドを含む組成物、およびそれらの使用方法を本明細書に記載する。
【発明の簡単な概要】
【0012】
本発明はBcl-2をコードする核酸を標的とするオリゴヌクレオチドを対象とする。その化合物は、Bcl-2をコードする核酸の標的領域の少なくとも一部分に相補的であり、結果としてBcl-2の発現を改変するよう設計されている。
【0013】
本発明は、Bcl-2をコードするオリゴヌクレオチドの少なくとも一部分にハイブリダイズするように構成されたオリゴヌクレオチドのような化合物を第一に包含する。Bcl-2をコードするそのようなオリゴヌクレオチドの一例は、配列番号:18のオリゴヌクレオチドである。Bcl-2 cDNAの配列変異体を配列番号:35に示す。これらの化合物のいくつかは、配列番号:18の少なくとも一部分に相補的な少なくとも8つの連続した核酸塩基を有する、核酸塩基長が約8から約30のオリゴヌクレオチドである。本明細書で用いられる「核酸塩基」なる用語は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)およびウラシル(U)、それらの複製後または転写後修飾誘導体、および核酸に含めるのが適当な他の塩基を意味する。本発明の抑制性オリゴヌクレオチドは、便宜的にDNA配列として添付の配列表に示す。しかし、配列表にある配列のTをUに置き換えて得られる、対応するRNAの抑制性配列も本発明に含まれると理解されたい。
【0014】
具体的な態様において、本発明のオリゴヌクレオチドは、配列番号:19または配列番号:36の少なくとも一部分に、好ましくは配列番号:15の少なくとも一部分に相補的な少なくとも約8つの連続するヌクレオチドを含む。そのようなオリゴヌクレオチドのいくつかは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:14、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24および配列番号:25を含む群から選択される配列を有する。
【0015】
他の態様において、本発明のオリゴヌクレオチドは、配列番号:20または配列番号:37の少なくとも一部分に、好ましくは配列番号:16の少なくとも一部分に相補的な少なくとも約8つの連続するヌクレオチドを含む。そのようなオリゴヌクレオチドのいくつかは、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29および配列番号:30を含む群から選択される配列を有する。
【0016】
他の態様において、本発明のオリゴヌクレオチドは、配列番号:21の少なくとも一部分に、好ましくは配列番号:17の少なくとも一部分に相補的な少なくとも約8つの連続するヌクレオチドを含む。そのようなオリゴヌクレオチドのいくつかは、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:31、配列番号:32配列番号:33および配列番号:34を含む群から選択される配列を有する。
【0017】
本発明のオリゴヌクレオチドは、被修飾ヌクレオチド間結合、被修飾糖部分および被修飾核酸塩基などの特性または成分を含んでもよい。該オリゴヌクレオチドは、DNAまたはRNA由来のヌクレオチドも含み得る。
【0018】
本発明にはさらに、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:36および配列番号:37の標的領域を含む配列番号:18または配列番号:35にある本発明のあらゆる標的領域を標的とする上記のヌクレオチド化合物を含む、医薬などの組成物が含まれる。そのような組成物は、製薬的に許容される担体、希釈剤またはアジュバントなどの付加的な成分を含んでもよい。
【0019】
本発明はまた、細胞または組織におけるBcl-2発現を抑制する方法を含む。その方法には、細胞または組織と、本発明のオリゴヌクレオチドとともに調製した組成物とを接触させる段階が含まれる。そのようなオリゴヌクレオチドは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:36および配列番号:37からなる群から選択される配列の、約8から約30の核酸塩基長の断片を含む化合物を含み得る。
【詳細な説明】
【0020】
本発明を実施するにあたり、特に断らない限り、当分野の範囲内のウイルス学、微生物学、分子生物学および組換えDNA技術の従来法を用いる。そのような技術は文献にて十分に説明されている。例えば、Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Current Edition)、DNA Cloning: A Practical Approach, vol. I & II (D. Glover, ed.)、Oligonucleotide Synthesis (N. Gait, ed., Current Edition)、Nucleic Acid Hybridization (B. Hames & S. Higgins, eds., Current Edition)、Transcription and Translation (B. Hames & S. Higgins, eds., Current Edition)、CRC Handbook of Parvoviruses, vol. I & II (P. Tijessen, ed.)、Fundamental Virology, 2nd Edition, vol. I & II (B.N. Fields & D.M. Knipe, eds.)を参照のこと。
【0021】
上記、下記の別なく、本明細書に引用するあらゆる出版物、特許および特許出願は、参照することによりそのまま本明細書に含まれる。本明細書および添付の特許請求の範囲で単数形の記載(「a」、「and」および「the」)は文脈上明確な指示がない限り、複数である場合を含む。
【0022】
本発明は、Bcl-2をコードする核酸分子の機能を改変するオリゴマー化合物に関する。より具体的には、本発明は、Bcl-2をコードする核酸と相互作用するように構成した抑制性のオリゴヌクレオチドのようなオリゴマー化合物に関する。本発明はさらに、そのようなオリゴヌクレオチドや製薬的化合物を含む組成物、およびそれらの使用法を含む。本発明は、いくつかの癌のようにBcl-2の改変に反応する疾患を処置する方法をさらに含む。
【0023】
[1.定義]
以下の用語は、本発明の化合物や方法を記載する際に用いられる。それらは以下に示す通りに定義する。
【0024】
本明細書で用いられる「オリゴヌクレオチド」および「核酸」なる用語は、ポリヌクレオチド、つまりヌクレオチドのポリマーを意味する。さらに、本明細書で用いられる「標的核酸」および「Bcl-2をコードする核酸」なる用語は、Bcl-2のセンスまたはアンチセンスコードの少なくとも一部分を有するポリヌクレオチドを含む。従ってBcl-2をコードするDNAも含まれ、同様にプレmRNAやmRNA、cDNAおよびBcl-2の配列の少なくとも一部分を有する人工配列のような混成核酸も含まれる。本明細書において「核酸」、「標的核酸」および「Bcl-2をコードする核酸」なる用語はまた、以下のようなあらゆる既知のDNAおよびRNAの塩基類似体を有する配列を含むが、それらに限定されない:4-アセチルシトシン、8-ヒドロキシ-N6-メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、偽イソシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルアデニン、1-メチル偽ウラシル、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシ-アミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルクエオシン(beta-D-mannosylqueosine)、5'-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、オキシブトクソシン(oxybutoxosine)、偽ウラシル、クエオシン(queosine)、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、2,6-ジアミノプリン、およびO-メチル、アミノおよびフルオロ修飾類似体などであるがそれらに限定されない2'-修飾類似体。
【0025】
本発明を説明するにあたって、「オリゴヌクレオチド」なる用語は、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)のオリゴマーまたはポリマー、またはそれらの類似体を意味する。この用語には、天然に存在する核酸塩基、糖およびヌクレオチド間(または「バックボーン」)結合、並びに同様の機能を持つ非天然部分を有するオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0026】
本明細書において、「抑制性オリゴヌクレオチド」なる用語は、核酸の選択部分との相互作用が可能な配列を有するオリゴヌクレオチドを意味する。この相互作用はしばしば、核酸の機能を中断させるのに十分である。本発明のオリゴヌクレオチドはRNAまたはDNAのどちらかである可能性があり、核酸の選択部分の少なくとも一断片と実質的に相補的な配列を有する。このように、該オリゴヌクレオチドには、実質的にセンスな配列、または実質的にアンチセンスな配列があり得る。そのようなオリゴヌクレオチドは、核酸に特異的にハイブリダイズして核酸の機能を阻害し得る。該オリゴヌクレオチドのいくつかは核酸の選択部分に特異的にハイブリダイズする。加えて、該抑制性オリゴヌクレオチドは、核酸の選択部分の配列と実質的に同一な配列を持つ可能性がある。
【0027】
本明細書で用いられる「アンチセンスオリゴヌクレオチド」なる用語は、核酸に相補的であり、よって該核酸に特異的にハイブリダイズ可能であるオリゴヌクレオチドを意味する。この語は特に、結合によって標的核酸の正常な活性または機能を改変するオリゴヌクレオチドを表す際に本明細書で用いられる。このオリゴヌクレオチドによって核酸の活性を改変することを、広く「アンチセンス」技術と言う。アンチセンスオリゴヌクレオチドはRNAまたはDNAのいずれかであり得る。
【0028】
本発明の抑制性オリゴヌクレオチドはアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは標的配列の完全長と同じ長さであり得る。あるいは、該オリゴヌクレオチドは約8から約50の核酸塩基長(つまり、約8から約50のヌクレオシドの連結)であってもよい。さらに、該オリゴヌクレオチド化合物は約10から約30の核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドであってもよい。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド化合物は、RNAまたはDNAのいずれかである可能性があり、リボザイム、外部ガイド配列(EGS)、オリゴザイム、他の小さな触媒RNAおよび他の触媒オリゴヌクレオチド、またはsiRNA、miRNAおよびshRNAのような他の小さなRNA、その他を含み、標的核酸にハイブリダイズし、且つその発現または状態を改変する。
【0029】
本明細書で用いられる「相補的」なる用語は、2つのヌクレオチドの互いが確実に対形成する能力を意味する。これはしばしば「ワトソン-クリック対」と呼ばれる。この用語はまた、互いに確実に対形成する能力を示すオリゴヌクレオチドを表す際にも用いられる。例えば、2つのオリゴヌクレオチド上のある場所に位置するヌクレオチドが水素結合可能である場合、そのオリゴヌクレオチドはその場所で互いに相補的であると見なされる。オリゴヌクレオチドおよびDNAまたはRNAが、各々の分子内の十分数の対応する場所が互いに水素結合可能なヌクレオチドで占められている時、それ自体互いに相補的である。このように、「特異的にハイブリダイズ可能な」および「相補的」は、オリゴヌクレオチドおよびDNAまたはRNA標的間に安定且つ特異的な結合が形成されるのに十分な相補性または確実な対形成を示す際に用いられる用語である。
【0030】
当分野では、抑制性オリゴヌクレオチド化合物の配列がその標的核酸と特異的にハイブリダイズするためには必ずしも100%相補的である必要はないと考えられている。抑制性オリゴヌクレオチド化合物が標的DNAまたはRNA分子に結合することによって、標的DNAまたはRNAの正常機能が妨げられる場合、その抑制性オリゴヌクレオチド化合物は特異的にハイブリダイズ可能ということである。相補性が十分であると、特異的結合が必要な条件下、つまり、インビボ分析または治療的処置の場合の生理学的条件、またインビトロ分析の場合その分析を行う条件下で、抑制性オリゴヌクレオチド化合物が非標的配列に非特異的に結合するのを防ぐことができる。
【0031】
当分野で周知の通り、ヌクレオシドとは塩基と糖の組み合わせである。ヌクレオシドの塩基部分は通常、複素環塩基である。最も一般的な2種類の複素環塩基は、プリンおよびピリミジンである。
【0032】
ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分にリン酸基がさらに結合しているヌクレオシドである。ペンタフラノシル糖を含むこれらのヌクレオシドには、その糖の2'、3'または5'のいずれかのヒドロキシル部分にリン酸基が結合可能である。オリゴヌクレオチドを形成する際、リン酸基は互いに隣接するヌクレオシドに結合し、線形ポリマーを形成する。そのような線形ポリマーの末端同士も結合可能であるので、環状構造が形成され得る。ヌクレオチド構造の中で、リン酸基はオリゴヌクレオチドのヌクレオチド間バックボーンを形成する。RNAおよびDNAの正常な結合またはバックボーンは、3'から5'へのホスホジエステル結合である。
【0033】
本発明に有用な化合物の例には、被修飾バックボーンまたは非天然ヌクレオチド間結合を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。そのような被修飾オリゴヌクレオチドバックボーンには、例えば、正常な3'-5'結合ならびにそれらの2'-5'結合類似体を有する、ホスホロチオエート、キラルなホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3'-アルキレンホスホネートなどのメチルおよび他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3'-アミノホスホラミデートおよびアミノアルキルホスホラミデートなどのホスホラミデート、チオノホスホラミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、セレノホスフェート、およびボラノホスフェートが含まれる。これらの被修飾オリゴヌクレオチドは方向性が逆になる可能性もあり、そこではヌクレオチド間結合の1つまたはそれ以上が3'から3'、5'から5'、または2'から2'への結合になっている。方向性が逆のオリゴヌクレオチドは、最も3'側のヌクレオチド間結合に3'から3'の結合を単一に含む可能性がある。被修飾および非修飾オリゴヌクレオチドの様々な塩、混合塩および遊離酸型もまた含まれる。
【0034】
好ましい被修飾オリゴヌクレオチドはリン原子を含まないバックボーンを持ち得る。これらのバックボーンは、短鎖アルキルまたはシクロアルキルヌクレオチド間結合、または1つまたはそれ以上の短鎖ヘテロ原子または複素環ヌクレオチド間結合で形成され得る。これらには、モルホリノ結合、シロキサンバックボーン、硫化物、スルホキシドおよびスルホンバックボーン、ホルムアセチルおよびチオホルムアセチルバックボーン、メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチルバックボーン、リボアセチルバックボーン、アルケン含有バックボーン、スルファミン酸バックボーン、メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノバックボーン、スルホン酸およびスルホンアミドバックボーン、アミドバックボーン、およびN、O、SおよびCH2混合構成成分を有する他のバックボーンを持つオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0035】
他のオリゴヌクレオチド類似体においては、ヌクレオチドの糖およびヌクレオチド間結合の両方が新規な基によって置換されている。ハイブリダイゼーションを行うために塩基単位は保持されている。そのようなオリゴマー化合物の1つに、ペプチド核酸または「PNA」がある。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖バックボーンがアミノエチルグリシンバックボーンのようなアミド含有バックボーンに置き換わっている。
【0036】
本発明の抑制性化合物は、2つまたはそれ以上の上記のオリゴヌクレオチド、被修飾オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシドおよび/またはオリゴヌクレオチド類似体の複合構造体として形成され得る。このような化合物は当分野でハイブリッドまたはギャップマーとも呼ばれている。
【0037】
「コード配列」または特定のタンパク質を「コードする」配列とは、インビトロまたはインビボで適切な調節配列の制御下に、転写(DNAの場合)またはポリペプチドに翻訳(mRNAの場合)される核酸配列(またはその一部分)を指す。コード配列には、原核生物または真核生物のmRNAに由来するcDNA、原核生物または真核生物DNAのゲノムDNA配列、さらに合成DNA配列が含まれるがこれらに限定されない。転写終結配列は通常コード配列の3'に位置する。
【0038】
本明細書において、特定の核酸分子内のヌクレオチド配列の相対位置を記述する際、例えば特定のヌクレオチド配列が別の配列に対して「上流」、「下流」、「5'」または「3'」に位置すると記載される場合は、当分野での形式通り、DNA分子の「センス」または「コード」鎖内配列の参照される位置であると理解されたい。
【0039】
「相同性」は、少なくとも2つのオリゴヌクレオチドまたはポリペプチド間の一致度を意味する。配列間のある部分から別の部分までの一致度は、当分野に周知の技術で決定できる。相同性は、National Biomedical Research Foundation(ワシントンDC)製のAtlas of Protein Sequence and Structure 5:Supp.3のALIGN, Dayhoff, M.O.(1978)などのすぐに入手可能なコンピュータープログラムを用いて配列情報をアライニングすることによって、2つのポリペプチド分子間の配列情報を直接比較して決定することができる。アライメントには初期パラメーターが利用できる。初期パラメーターまたは手動でセットするパラメーターを用いるアライメントプログラムの1つにBLASTがある。これらのプログラムの詳細は以下のインターネットアドレスで参照することができる:http://www.ncbi.nlm.gov/cgi-bin/BLAST。
【0040】
また一方、相同領域間で安定な二本鎖が形成される条件下でポリヌクレオチドをハイブリダイゼーションさせ、一本鎖特異的ヌクレアーゼで消化し、消化断片の大きさを測定して相同性を決定することができる。2つのDNAまたは2つのポリペプチド配列は、ある特定の長さの分子における上記の方法を用いて決定した配列の少なくとも約80から85%、好ましくは少なくとも約90%、もっとも好ましくは少なくとも約95%から98%の配列が一致していた場合に、互いに「実質的に相同」である。本明細書で用いられる実質的に相同とは、特定のDNAまたはポリペプチド配列に対して完全な一致を示す配列も意味する。実質的に相同なDNA配列は、サザンハイブリダイゼーション実験で、例えばその特定のシステムに定められるストリンジェントな条件下で同定することができる。適切なハイブリダイゼーション条件は当分野技術の範囲内のものである。例えば、Sambrook et al., supra; DNA Cloning, supra; Nucleic Acid Hybridization, supraを参照のこと。
【0041】
あるポリペプチドの「機能的相同体」または「機能的等価物」には、野生型ポリペプチド配列由来の分子はもとより、野生型分子と同様に機能して目的の結果が得られる、組換え技術で生産するかまたは化学的に合成したポリペプチドも含まれる。従って、Bcl-2の機能的相同体には、そのポリペプチド配列内部あるいはそのアミノまたはカルボキシ末端に、1つまたは複数のアミノ酸の付加、置換および/または欠失を、統合的な作用が保持される限りで含む、ポリペプチド誘導体および類似体が包含される。
【0042】
「遺伝子移入」または「遺伝子導入」は、宿主細胞へ外部DNAを確実に挿入するための方法またはシステムを意味する。この方法によって、非統合移入DNAの一時的発現、移入レプリコン(例えばエピソーム)の染色体外複製および発現、または移入遺伝物質の宿主細胞ゲノムDNAへの統合が実行できる。
【0043】
プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオンなどのあらゆる遺伝的要素は、「ベクター」と呼ぶことで、遺伝子配列を細胞に移入でき、その宿主細胞内で複製され得るという意味を持つ。このようにベクターなる用語には、ウイルスベクターはもちろん、クローニングし、発現するための媒体が含まれる。
【0044】
「形質移入」なる用語は、細胞への外部DNAの取り込みを表す際に用いられ、外来DNAが細胞膜内に導入されると、その細胞は「形質移入」されているという。多くの移入技術が当分野で一般に知られている。例えば、Graham et al., (1973) Virology, 52:456、Sambrook et al., (1989) Molecular Cloning、a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratories, New York、Davis et al., (1986) Basic Methods in Molecular Biology、Elsevier, and Chu et al., (1981) Gene 13:197を参照のこと。これらの技術は、ヌクレオチド統合ベクターおよび他の核酸分子のような、1つまたはそれ以上の外来DNA部分を適切な宿主細胞へ導入するのに用いることができる。
【0045】
本明細書で用いられる「宿主細胞」は、原核生物または真核生物細胞のどちらかであり得る。特に、宿主細胞は外来DNA配列を移入した酵母細胞、昆虫細胞または哺乳類細胞、およびその細胞の子孫であり得る。単一親細胞の子孫はその親と形態学的にあるいはゲノムまたは全DNAにおいて必ずしも完全に同一である必要はなく、天然、偶発的または計画的突然変異を含んでもよいと考えられている。
【0046】
本明細書で用いられる「細胞株」なる用語は、インビトロで継続的にまたは長期に渡って育成・分割可能な細胞集団を意味する。細胞株は多くの場合単一の前駆細胞に由来するクローン集団である。そのクローン集団を保存または移入する間に、その核型に自然発生的または人工的な変化が起こり得ることは当分野で周知である。それゆえ、記載の細胞株由来の細胞は祖先細胞または培養と確実に同一ではない可能性があり、記載の細胞株にはそのような変異体が含まれる。
【0047】
「制御配列」なる用語は、プロモーター配列、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、上流調節ドメイン、複製開始点、配列内リボソーム侵入部位(「IRES」)、エンハンサーなどの総称であり、これらは総じて受容細胞におけるコード配列の複製、転写および翻訳に作用する。選択コード配列が適切な宿主細胞内で複製、転写および翻訳可能であるならば、これらの制御配列のすべてが必要ということはない。
【0048】
「作用可能に連結した」は、そのように記載した成分の通常の機能が発揮されるように構成されている各要素の配置を意味する。つまり、コード配列に作用可能に連結した制御配列は、そのコード配列の発現に作用することが可能である。制御配列は、コード配列の発現に直接作用できるならば、そのコード配列に隣接している必要はない。従って、例えば、翻訳されないが転写される介在配列がプロモーター配列とコード配列の間に存在することがあるが、それでもプロモーター配列はコード配列に「作用可能に連結」しているとみなされる。
【0049】
「プロドラッグ」なる用語は、非活性型に調製され、体内またはその細胞内で内在性の酵素または他の化学物質および/または状態の作用によって活性型(薬物)に変換される治療薬を意味する。
【0050】
「製薬的に許容される塩」なる用語は、生理学的且つ製薬的に許容される本発明の化合物の塩、すなわち、望まない毒素学的な影響が加わることなく、親化合物の所望の生物学的活性を保持する塩を意味する。
【0051】
[2.一般的な方法]
遺伝子抑制技術は、DNAの複製または転写、RNAの翻訳部位への移動、RNAの翻訳、RNAのスプライシング、およびRNAが行うかまたは補助する触媒作用などの機能を改変するのにしばしば用いられる。本発明において、標的核酸の機能の抑制の総合的な効果は、Bcl-2の発現を改変することである。このことは、本発明の一本鎖抑制性オリゴヌクレオチドでBcl-2 mRNAを妨害することによってなされる。抑制性オリゴヌクレオチドによる妨害によって、Bcl-2 mRNAの正常な機能が阻害される、つまり正常な発現が妨げられる。このような妨害は一般に標的核酸の「ノックダウン」と呼ばれる。これにより、疾患の諸症状が改善されるかまたは様々な疾患が回復する可能性がある。本発明を説明するにあたり、「改変」は、遺伝子の発現を増加せるかまたは減少させるかのどちらかを意味する。本発明において、抑制とは遺伝子発現を改変したことの好ましい結果であり、好ましい標的核酸はmRNAである。
【0052】
抑制性化合物を特定の核酸に標的化するには一般に複数の段階が必要である。第一に、疾患状態に関与する核酸を同定する。それからその核酸配列を決定する。その核酸は例えば、疾患において、またはウイルス、菌または他の感染性微生物のような感染物質の核酸分子において活性な物質をその発現によって生産する、細胞遺伝子またはmRNAであり得る。本発明の標的配列はBcl-2をコードする配列である。標的化過程の次の段階では、抑制性オリゴヌクレオチドとの相互作用が起こりやすい標的核酸分子上の部位を決定する。この過程ではまた、どの特定部位を標的化すると、他の特定部位を標的化するよりも、核酸発現の改変がより効率的に行われるかを評価する。
【0053】
本発明において、この標的化過程は当分野で既知の様々な方法で行うことができる。加えて、米国特許第6,586,180号に特異的アンチセンスライブラリー(Directed Antisense Libraries)という題目で概説されている方法でも行うことができ、この方法は本明細書にそのまま組み込まれている。その出願には特異的アンチセンスライブラリーの構築の仕方が開示されている。
【0054】
これらのライブラリーには目的完全長遺伝子のあらゆる重複断片が含まれる。あるDNA断片がインビトロまたはインビボで転写されることにより、そのDNA断片がコードしていたRNA転写物上の部位を標的化する抑制性RNAが産生される。完全長DNA断片ライブラリーを転写することで、標的RNA上のあらゆる位置を標的化するあらゆるアンチセンスRNA分子が産生できる。従って、哺乳類細胞でこのライブラリーを発現させることにより、アンチセンス媒介性遺伝子抑制に用いる核酸上の効果的な標的部位の同定が可能になる。
【0055】
上記で作成した特異的ライブラリーが各標的の発現を改変する能力を、培養細胞を用いてインビボで分析することができる。そのようなインビボ分析を行うために、目的遺伝子を発現する適切な細胞株に該アンチセンスライブラリーを導入する。一般に個々の宿主細胞に、ライブラリーの1メンバーのみがそれぞれ取り込まれるように移入条件を選択すればよいことを、当業者には理解頂けるであろう。この方法で、ライブラリーに存在するそれぞれの目的遺伝子断片を別個に同定でき、他の目的遺伝子断片から単離することができる。
【0056】
本発明の一態様においては、ライブラリーの各メンバーを、個々の細胞の染色体の同じ遺伝子座に組み込む。これにより以下の項目が確保される:(1)個々の宿主細胞にはライブラリーの1メンバーのみがそれぞれ取り込まれる、(2)ライブラリーの各メンバーは細胞分裂中に失われることはない、(3)ライブラリーの全てのメンバーが、宿主細胞において同じ水準で発現される。結果として、目的遺伝子のRNA転写物上の異なる部位を標的とする異なる抑制性分子をそれぞれ発現する細胞群が得られる。あらゆる標的部位は生産した全細胞集団内のどれかに存在する。適切な検出法を用いて、標的RNAの発現が減少または消失している細胞のクローンを同定できる。これらのクローンは、遺伝子の活性を効果的に改変することが可能な、RNA転写物上の一部位を標的とする抑制性オリゴヌクレオチドを有する。この時点では、抑制性オリゴヌクレオチドをコードするプラスミドまたはその一部を回収し、その配列を決定することができる。
【0057】
ひとたび特定標的部位を同定できれば、標的に対して十分に相補的で、所望の結果が得られるオリゴヌクレオチドが選択できる。これは、同定した標的に対する適切なオリゴヌクレオチドを化学的に合成し、それらを細胞に外因的に輸送することによって行い、遺伝子発現の測定に用いられる標準法でその効果を分析できる。もしくは、該オリゴヌクレオチドを個々に適切なベクターに組み込んで、細胞に再導入することができる。その効果は標準法で分析できる。
【0058】
このように本発明には、Bcl-2をコードする核酸上の異なる3つの標的領域およびその領域のサブ配列を対象とし、該核酸の機能を改変する抑制性オリゴヌクレオチドが含まれる。これらの各標的領域には、潜在的な抑制性オリゴヌクレオチドが多く含まれ、それらも本発明の範囲に含まれる。本発明は、各標的配列に対する潜在的な抑制性オリゴヌクレオチドの中から同定された特異的な抑制性オリゴヌクレオチドをさらに含み、それらは本発明の実施にあたって目下好ましいものである。
【0059】
Bcl-2核酸の第一標的領域(領域A)は、配列番号:19およびその配列の変異体である配列番号:36に存在する。第一標的領域のサブ配列(配列番号:15および対応する配列変異体)からは、スクリーニング過程において特に多数の抑制性オリゴヌクレオチドが得られる。領域Aは約40ヌクレオチド長であり、配列番号:15に示される領域Aのサブ配列は約30ヌクレオチド長である。領域Aの標的領域の一部または配列番号:15に相補的なオリゴヌクレオチドはBcl-2の発現を改変可能な抑制性オリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは好ましくは約8から約30塩基長、より好ましくは約10から約26核酸塩基長、もっとも好ましくは約14から約20核酸塩基長であり得る。そのような、領域Aの少なくとも一部または配列番号:15の少なくとも一部に相補的なオリゴヌクレオチドは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:14、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24および配列番号:25を含むがこれらに限定されず、本発明の実施において抑制性オリゴヌクレオチドとして有用である。本発明にはさらに、抑制性オリゴヌクレオチドとして、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:14、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24および配列番号:25の少なくとも8つの連続する核酸塩基を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0060】
Bcl-2核酸の第二標的領域(領域B)は配列番号:20およびその配列の変異体である配列番号:37に存在する。抑制性オリゴヌクレオチドの誘導に用いる領域Bの好ましいサブ配列は配列番号:16および対応する配列変異体である。領域Bは約62核酸塩基長であり、配列番号:16は約14核酸塩基長である。領域Bの標的領域の少なくとも一部または配列番号:16の少なくとも一部に相補的なオリゴヌクレオチドは、Bcl-2の発現を改変可能な抑制性オリゴヌクレオチドであり、一般に約10から26核酸塩基長である。これらのオリゴヌクレオチドは好ましくは約8から約14核酸塩基長、より好ましくは約10から14核酸塩基長、もっとも好ましくは約12から14核酸塩基長であり得る。そのような、領域Bまたは配列番号:16に相補的なオリゴヌクレオチドは、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29および配列番号:30を含むがこれらに限定されず、本発明の実施において抑制性オリゴヌクレオチドとして有用である。本発明にはさらに、抑制性オリゴヌクレオチドとして、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29および配列番号:30の少なくとも8つの連続する核酸塩基を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0061】
Bcl-2核酸の第三標的領域(領域C)は配列番号:21に存在する。抑制性オリゴヌクレオチドの誘導に用いる配列番号:21の好ましいサブ配列は、配列番号:17である。領域Cは約23核酸塩基長である。配列番号:17は約17核酸塩基長である。領域Cの標的領域の少なくとも一部または配列番号:17の少なくとも一部に相補的なオリゴヌクレオチドは、Bcl-2の発現を改変可能な抑制性オリゴヌクレオチドであり、一般に約100から23核酸塩基長である。これらのオリゴヌクレオチドは好ましくは約8から約17核酸塩基長、より好ましくは約10から17核酸塩基長、もっとも好ましくは約12から14核酸塩基長であり得る。そのような、領域Cまたは配列番号:17に相補的なオリゴヌクレオチドは、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:31、配列番号:32および配列番号:33および配列番号:34を含むがこれらに限定されず、本発明の実施において抑制性オリゴヌクレオチドとして有用である。本発明にはさらに、抑制性オリゴヌクレオチドとして、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:31、配列番号:32および配列番号:33および配列番号:34の少なくとも8つの連続する核酸塩基を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0062】
本発明のオリゴヌクレオチドは、医薬組成物に包含されてもよい。該オリゴヌクレオチドは細胞または組織におけるBcl-2発現を改変する方法にさらに用いることができる。そのような方法では、オリゴヌクレオチド単体を用いても、本発明の医薬組成物を用いてもよい。
【0063】
抑制性オリゴヌクレオチド化合物は一般に、研究試薬として、また診断上で用いられる。該オリゴヌクレオチドは遺伝子発現を特異的に抑制することができるので、特定遺伝子の機能を解明するために当業者にしばしば用いられている。抑制性オリゴヌクレオチド化合物はまた、生物学的経路の様々な構成要素の機能を区別するのに用いられる。
【0064】
抑制性オリゴヌクレオチド技術の特異性および感受性はまた、当業者によって治療に利用されている。この技術の一種にアンチセンスオリゴヌクレオチドがある。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、動物およびヒトの疾患状態の処置において治療用成分として用いられてきた。リボザイムなどの他の薬物は安全且つ効果的にヒトに投与されており、数多くの臨床試験が現在行われている。有用な治療手段として、抑制性オリゴヌクレオチドは、細胞、組織および動物、特にヒトを処置する治療計画に役立つように構成することができる。
【0065】
本発明の抑制性化合物は、固相合成などの技術によって便利よく且つ日常的に生産することができる。そのような合成をするための装置は、例えばApplied Biosystems(フォスターシティ、カリフォルニア)などのいくつかの業者が販売している。当分野で周知の在来の合成法も、付加的にまたは代わりに用いてもよい。同様の技術を用いてホスホロチオエート化およびアルキル化誘導体のようなオリゴヌクレオチドを調製できることはよく知られている。
【0066】
本発明は、ヒトなどの生物に投与すると生物学的に活性な本発明の抑制性オリゴヌクレオチドを(直接的にまたは間接的に)供給可能な、製薬的に許容される塩、エステル、エステルの塩、または他のあらゆる化合物を包含する。従って本発明の開示は、例えば、プロドラッグおよび他の生物学的等価物にも及ぶ。本発明の化合物は、混合され、カプセルに封入され、コンジュゲートさせられるか、または他の態様にて例えばリポソーム、レセプターを標的にする分子などの他の分子、分子構造、または化合物の混合物、経口、局所的製剤形態および摂取、分配および/または吸収を補助する他の製剤形態と関連づけられる。
【0067】
本発明の抑制性化合物は診断用、治療用、予防用、および研究試薬やキットとして利用できる。治療においては、Bcl-2の発現を改変すると処置できる疾患や障害を持つヒトなどの生物に、本発明の抑制性化合物を投与して処置する。本発明の抑制性化合物は、その有効量を製薬的に許容される適切な希釈剤または担体に加えることにより医薬組成物として有用化できる。本発明の抑制性化合物および方法はまた、感染、炎症または腫瘍形成などの予防または遅延にも有用である。
【0068】
本発明の抑制性化合物は、Bcl-2をコードする核酸にハイブリダイズするので、研究や診断に有用である。本発明の抑制性オリゴヌクレオチドとBcl-2をコードする核酸とのハイブリダイゼーションは当分野に既知の方法で検出できる。そのような方法には、酵素をオリゴヌクレオチドにコンジュゲートさせる過程、オリゴヌクレオチドを放射性同位体標識する過程、またはあらゆる他の適切な検出法を使用する過程が含まれ得る。サンプル中に存在するBcl-2濃度を検出するためのそのような検出法を用いるキットも入手できる。
【0069】
本発明の医薬組成物は、局所的または全身的処置のどちらが望ましいか、また処置するべき部位に依拠する多くの方法で投与され得る。投与には、局所的投与(眼内投与および粘膜への投与など)、噴霧器を使用するなど粉末またはエアロゾルの吸入またはガス注入による、経気管、経鼻腔、表皮および経皮を含む肺への投与、経口または非経口投与があり得る。非経口投与には、静脈、動脈、皮下、腹腔内または筋肉内注射または注入、および頭蓋内(例えばくも膜下腔内または脳室内)投与が含まれる。少なくとも1つの2'-O-メトキシエチル修飾を有するオリゴヌクレオチドは経口投与に特に有用であるとされている。
【0070】
局所的投与のための医薬組成物および製剤には、経皮貼付、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐薬、スプレー、液体および粉末などがあり得る。従来の医薬担体、水溶性、粉末性または油性基剤、増粘剤などが必要または望ましい場合がある。局所的製剤には、脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート化剤および界面活性剤などの局所的輸送剤と本発明のオリゴヌクレオチドとの混合製剤が含まれる。好ましい脂質およびリポソームは、中性、陰イオン性および陽イオン性であり得る。本発明のオリゴヌクレオチドは、リポソームに封入してもよく、または陽イオン性リポソームなどのリポソームと複合体を形成してもよい。もしくは、オリゴヌクレオチドは、陽イオン性脂質などの脂質と複合体を形成してもよい。
【0071】
[3.実施例]
【実施例1】
【0072】
実施例1では、上記概説の本発明の方法を用いて抗Bcl-2アンチセンスオリゴヌクレオチドライブラリーを作成した。このアンチセンスプラスミドライブラリーはBcl-2 RNA転写物に位置するあらゆるヌクレオチドを標的とすると思われるヌクレオチドを含んでいた。該プラスミドライブラリーを哺乳類細胞に導入し、このライブラリーからBcl-2の発現を抑制するヌクレオチド配列を単離した。誘導物質を加えた条件下で、該哺乳類細胞は抗Bcl-2配列を発現するので、このようにして抗Bcl-2 RNAを生産した。Bcl-2の抑制は一般に細胞にとって毒性であるので、細胞をすぐに選別できる状態で抗Bcl-2配列の発現を誘導した。本実施例では、テトラサイクリンを誘導物質として用いた。他の適切な誘導物質および誘導性プロモーター系は当業者に周知である。
【0073】
抗Bcl-2配列の誘導および発現に次いで、フルオレセイン活性化細胞選別機を用いて、Bcl-2陰性細胞を他の細胞から選別した。Bcl-2陰性細胞から抗Bcl-2ヌクレオチド配列を読み出して配列決定した。これらの抗Bcl-2配列は癌を含む疾患の治療薬として有用であり得る。
【実施例2】
【0074】
細胞株A-2780Rは、ヒト卵巣癌に由来し、Bcl-2タンパク質を発現することが知られている。A-2780Rを無胸腺ヌード(免疫不全)宿主マウスに皮下移植すると、A-2780Rはすぐに進行成長性の腫瘍塊を形成する。これは、Bcl-2作用性抗癌剤の治療効力を評価できる好適なインビボモデルとなる。本発明の代表的な抑制性オリゴヌクレオチドのインビボ抗癌効力を調べるために、無胸腺ヌードマウスにA-2780R腫瘍を皮下移植した。その後、担癌マウスをG3139(ポジティブコントロール:Genta, Inc.が開発したBcl-2アンチセンスオリゴヌクレオチド)または配列番号:32(DNA版)で処置した。これら2つの処置群と未処置対照群の腫瘍成長を比較し、治療効力を決定した。実験の詳細は以下の通りである。
【0075】
約5週齢のメスヌードBalb/cマウス(nu/nu)(Animal Technologies, フレモント, CA)の右横腹後部に接種溶液0.1mlを皮下(SC)注射して107個のA-2780R腫瘍細胞を移植した。腫瘍細胞接種溶液は滅菌DME/F-12培地+10%ウシ胎児血清中、細胞密度1.0×108細胞/mlに調製した。腫瘍が約6mm×6mmの大きさ(約110mg)になった時、群ごとに平均腫瘍質量が標準化されるように、マウスを処置群および対照群に振り分けた(実験1日目)。各群は4匹のマウスで構成された。この時点での平均体重は約20gであった。
【0076】
配列番号:32(Applied Biosystems, ソルトレークシティー、ユタ州)およびG3139(GENASENSETM, TriLink BioTechnologies, Inc., サンディエゴ, CA)のホスホロチオエート化DNAオリゴヌクレオチドの注射溶液を、pH7.2のリン酸緩衝食塩水(PBS)中、最終DNA濃度1.0mg/mlに調製した。実験1,2および3日目に、それぞれのマウスの側尾静脈に注射溶液の1つを0.2ml静脈注射投与した(1投与あたり200μg DNAまたは10mg DNA/Kg)。未処置対照マウスには、オリゴヌクレオチド処置群と同様の方法でPBSのみの見せかけの注射をした。
【0077】
実験1、4、7および9日目にマウスの体重を測定した。腫瘍の寸法(長さと幅)を1日おきに測定し、式:(腫瘍質量)=L2×W/2を用いて腫瘍質量(mg)に換算した。得られた腫瘍質量値は各実験日の各実験群で平均し、時間軸上にプロットした。オリゴヌクレオチドの腫瘍質量への影響に関する実験結果を図2に示す。
【0078】
前記2つのDNAオリゴヌクレオチドの腫瘍成長抑制活性は、実験4、7および9日目時点の未処置群に対する腫瘍成長抑制率を計算して表した。腫瘍成長抑制率は、式:(腫瘍成長抑制率(%))=100−[(被処置腫瘍の平均重量/対照腫瘍の平均重量)×100]を用いて計算した。腫瘍成長抑制活性を下の表にまとめた。
【表1】

【0079】
両アンチセンスBcl-2オリゴヌクレオチドがA-2780R腫瘍の成長に対して抑制性であることが分かったのであるが、各実験日において配列番号:32はポジティブコントロール(G3139)よりも約2倍効果的であった。配列番号:32で処置したことにより、実験9日目に72%という最大腫瘍成長抑制値が得られた。ポジティブコントロールG3139で処置したマウスでは、最大腫瘍成長抑制値は実験7日目に現れた32.7%にとどまった。
【0080】
体重に対する処置効果も評価した。処置に対する体重減少は、全身毒性の一般的な指標である。各実験日の各群の体重の変化率を式:(体重変化率(%))=[(実験X日目の平均体重−実験1日目の平均体重)/実験1日目の平均体重]×100を用いて計算した。全実験群において体重減少は見られなかったので、マウスは実験期間を通じて両オリゴヌクレオチドに対して良好な耐容性を持つことが分かった。
【実施例3】
【0081】
細胞株PC-3はヒト前立腺腺癌に由来し、Bcl-2タンパク質を発現することが知られている。それゆえ、この細胞株はアンチセンスBcl-2オリゴヌクレオチドを評価するためのインビトロ移入実験に適している。Bcl-2発現悪性腫瘍に対する本発明の代表的な抑制性オリゴヌクレオチドのインビトロ細胞毒性または成長抑制活性を調べるために、インビトロでPC-3細胞にDNA版の配列番号:5および配列番号:32を移入した。アンチセンスBcl-2 DNAオリゴヌクレオチドであるG3139をポジティブコントロールとして用いた。移入後、細胞密度に対する影響を測定し、未処置の対照細胞と比較して細胞毒性または成長抑制活性を決定した。実験の詳細は以下の通りである。
【0082】
この実験で評価したDNAオリゴヌクレオチドは、配列番号:5(Applied Biosystems, ソルトレークシティー、ユタ州)、配列番号:32(Applied Biosystems, ソルトレークシティー、ユタ州)、G3139(MWG-Biotech, ハイポイント、ノースカロライナ州)およびBcl-2遺伝子に由来するが標的領域A、BおよびCの外部にあるDNAオリゴヌクレオチドである。
【0083】
初めに、無血清組織培養培地(MEM/EBSS)で前記4つのアンチセンスBcl-2 DNAオリゴヌクレオチドを濃度4.0μMにそれぞれ希釈した。DNA溶液を別に用意した移入剤リポフェクトアミン2000(Invitrogen, life technologies)溶液(同様に無血清組織培養培地に調製)に、連結比がDNA(μg):リポフェクトアミン2000(μl)=1:2.5になるように加えて、各オリゴヌクレオチド溶液とリポフェクトアミン2000とを複合体形成させた。また、DNAを加えずにリポフェクトアミン2000を等濃度に含むように無血清培地に希釈して、別個にリポフェクトアミン2000対照溶液を調製した(リポフェクトアミン対照)。同様に、移入剤リポフェクトアミン2000を含まないDNA溶液を無血清培地に別個に調製した(DNA対照)。得られた溶液は攪拌し、複合体形成相互作用が平衡に達するように室温で約20分間インキュベートした。得られた9つのそれぞれの溶液を、無血清組織培養培地で2倍ずつ段階希釈した。PC-3細胞(American Type Culture Collection, マナッサス, VA)懸濁液を20%ウシ胎児血清を補った組織培養培地(MEM/EBSS)に密度が1×106細胞/mlになるように調製した。DNA−リポフェクトアミン2000複合体溶液、複合体でないDNA対照溶液およびリポフェクトアミン2000対照溶液それぞれ50μlを96穴分析プレートの各穴に注入し、次いでPC-3細胞懸濁液50μl(細胞50,000個)を注入した。細胞対照用の穴には、10%ウシ胎児血清を補った組織培養培地100μlに50,000個のPC-3細胞が含まれるようにした。あらゆる細胞懸濁液の穴は重複して2つずつ用意した。その後、分析プレートを5%のCO2(95%は空気)と湿度を含む大気中で37℃で72時間インキュベートした。
【0084】
72時間のインキュベーションの後、20μlのMTS/PES溶液(Promega CellTiter 96 AQ One Solution Cell Proliferation Assay, No. G-3580)をプレートの各穴に注入した。分析プレートを上記と同じ条件で37℃でさらに2時間インキュベートした。96穴マイクロプレートリーダーを用いて、490nmで各穴の吸光度を測定した。10%ウシ胎児血清を補った組織培養培地100μlおよびMTS/PES溶液20μlの入った穴を用いて装置をゼロ補正した。重複して作成した組の各穴の平均吸光度を算出し、得られた値を式:(成長抑制率(%))=(1−[移入試験群の吸光度/細胞対照の吸光度])×100に代入して成長抑制率(%)を計算した。一次y軸に細胞成長抑制率(%)、対数x軸にDNA濃度を用いて用量反応曲線をプロットした。各群の50%抑制濃度(IC50)値を決定し、各移入群間の細胞成長抑制活性を比較した。IC50値は、未処置対照(細胞対照)を基準に細胞の50%に成長抑制または死が起こるDNA濃度と定義する。結果を図3に示す。
【0085】
各移入群に対応するIC50値を下の表に示す。
【表2】

【0086】
リポフェクトアミン2000移入剤と複合体形成させた場合、移入開始後72時間時に全4つのアンチセンスBcl-2 DNAオリゴヌクレオチドにPC-3細胞成長抑制が見られた。配列番号:32(領域C)はIC50値が184nMと最も有効であり、これはG3139ポジティブコントロール(領域A, IC50=280nM)より1.52倍有効であった。配列番号:5(領域A)のIC50値もまた高い抑制活性を示した。領域A,B,C外部のオリゴヌクレオチドは有効ではあるものの、その抑制性は本発明の標的領域に由来するオリゴヌクレオチドよりも実質的に低かった。リポフェクトアミン2000対照は最も高濃度で最小の細胞毒性しか示さなかった。DNAのみで(リポフェクトアミン2000移入剤なしで)処置した細胞は、成長抑制を少ししか示さないかあるいは全く示さなかった。
【0087】
本発明は、本明細書および添付の特許請求の範囲にあまねく記載した、その構造、方法または他の本質的特質から逸脱することなく、他の特定の形態に具体化され得る。本明細書に記載の態様は、あらゆる点で例示的にのみ示したものであって、限定的に用いたものではないことを理解されたい。従って、本発明の範囲は前述の記載よりもむしろ添付の特許請求の範囲に示されている。特許請求の範囲と同等の意味および範囲内でのあらゆる改変は、本発明の範囲に包含されるものである。
【0088】
米国特許状によって保護を請求し要請するものは、添付の特許請求の範囲の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
これまで手短に説明した本発明のより詳細な説明を、添付の図に図示されている具体的な態様を参照して行う。これらの図は本発明の典型的な態様のみを図示したものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下に説明する添付の図および詳細な説明を用いて本発明をさらに専門的に且つ詳細に記載、説明する所存である:
【図1】図1は本発明のオリゴヌクレオチドと、対応する領域であるそのオリゴヌクレオチドが由来したBcl-2 cDNAの一部を示す抗Bcl-2アンチセンス標的のマップである(配列番号:38)。
【図2】図2は実施例2の結果を示す。
【図3】図3は実施例3の結果を示す。
【配列表】











【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:19、配列番号:36またはそれらに対応するRNA配列の少なくとも一部分と実質的に同一または相補的な少なくとも8つの連続する核酸塩基配列を含む単離オリゴヌクレオチド。
【請求項2】
前記核酸塩基配列が、配列番号:15またはそれに対応するRNA配列と実質的に同一または相補的である、請求項1記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記核酸塩基配列が、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:14、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25またはそれらに対応するRNA配列と実質的に同一または相補的である、請求項1記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
実質的に同一または相補的な配列が約10-26核酸塩基長である、請求項1記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
RNAオリゴヌクレオチドである、請求項1記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
非天然の核酸塩基、糖またはヌクレオチド間結合を含む、請求項1記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
ホスホロチオエート化ヌクレオチド間結合を含む、請求項6記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
請求項1記載のオリゴヌクレオチドおよび製薬的に許容される担体、希釈剤またはアジュバントを含む組成物。
【請求項9】
Bcl-2発現を抑制する方法であって、請求項1記載のオリゴヌクレオチドを細胞、組織または生物に投与することを含む方法。
【請求項10】
Bcl-2をコードする核酸を検出する方法であって、請求項1記載のオリゴヌクレオチドをBcl-2をコードする核酸にハイブリダイズさせることを含む方法。
【請求項11】
核酸がRNAである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記オリゴヌクレオチドが検出可能な標識をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
配列番号:20、配列番号:37またはそれらに対応するRNA配列の少なくとも一部分と実質的に同一または相補的な少なくとも8つの連続する核酸塩基配列を含む単離オリゴヌクレオチド。
【請求項14】
前記核酸塩基配列が、配列番号:16またはそれに対応するRNA配列と実質的に同一または相補的である、請求項13記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項15】
前記核酸塩基配列が、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30またはそれらに対応するRNA配列と実質的に同一または相補的である、請求項13記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項16】
実質的に同一または相補的な配列が約10-26核酸塩基長である、請求項13記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項17】
RNAまたはDNAオリゴヌクレオチドである、請求項13記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項18】
非天然の核酸塩基、糖またはヌクレオチド間結合を含む、請求項13記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項19】
ホスホロチオエート化ヌクレオチド間結合を含む、請求項18記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項20】
請求項13記載のオリゴヌクレオチドおよび製薬的に許容される担体、希釈剤またはアジュバントを含む組成物。
【請求項21】
Bcl-2発現を抑制する方法であって、請求項13記載のオリゴヌクレオチドを細胞、組織または生物に投与することを含む方法。
【請求項22】
Bcl-2をコードする核酸を検出する方法であって、請求項13記載のオリゴヌクレオチドをBcl-2をコードする核酸にハイブリダイズさせることを含む方法。
【請求項23】
オリゴヌクレオチドがRNAである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記オリゴヌクレオチドが検出可能な標識をさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項25】
配列番号:21またはそれに対応するRNA配列の少なくとも一部分と実質的に同一または相補的な少なくとも8つの連続する核酸塩基配列を含む単離オリゴヌクレオチド。
【請求項26】
前記核酸塩基配列が、配列番号:17またはそれに対応するRNA配列と実質的に同一または相補的である、請求項25記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項27】
前記核酸塩基配列が、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34またはそれらに対応するRNA配列と実質的に同一または相補的である、請求項25記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項28】
実質的に同一または相補的な配列が約10-23核酸塩基長である、請求項25記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項29】
RNAオリゴヌクレオチドである、請求項25記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項30】
非天然の核酸塩基、糖またはヌクレオチド間結合を含む、請求項25記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項31】
ホスホロチオエート化ヌクレオチド間結合を含む、請求項30記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項32】
請求項25記載のオリゴヌクレオチドおよび製薬的に許容される担体、希釈剤またはアジュバントを含む組成物。
【請求項33】
Bcl-2発現を抑制する方法であって、請求項25記載のオリゴヌクレオチドを細胞、組織または生物に投与することを含む方法。
【請求項34】
Bcl-2をコードする核酸を検出する方法であって、請求項25記載のオリゴヌクレオチドをBcl-2をコードする核酸にハイブリダイズさせることを含む方法。
【請求項35】
核酸がRNAまたはDNAである、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記オリゴヌクレオチドが検出可能な標識をさらに含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
生物においてBcl-2発現の変化の影響を受けやすい状態を処置する方法であって、請求項8記載の組成物を該生物に投与することを含む方法。
【請求項38】
生物がヒトである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
生物においてBcl-2発現の変化の影響を受けやすい状態を処置する方法であって、請求項20記載の組成物を該生物に投与することを含む方法。
【請求項40】
生物がヒトである、請求項39記載の方法。
【請求項41】
生物においてBcl-2発現の変化の影響を受けやすい状態を処置する方法であって、請求項32記載の組成物を該生物に投与することを含む方法。
【請求項42】
生物がヒトである、請求項41記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−514546(P2006−514546A)
【公表日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553781(P2004−553781)
【出願日】平成15年11月14日(2003.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/036614
【国際公開番号】WO2004/046327
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(504206296)ジェンタ・サルース・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (1)
【氏名又は名称原語表記】GENTA SALUS LLC
【Fターム(参考)】