説明

BMP−6の調節によって鉄の恒常性を制御するための方法および組成物

BMP−6活性を制御することによる鉄の恒常性の調節が提供される。ヒトにおいて血清鉄レベルを変化させるためにBMP−6およびBMP−6タンパク質特異的試薬、例えば抗体を用いる方法が提供される。該抗体は、炎症のヘモクロマトーシスおよび貧血の予防および治療のための医薬組成物において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2008年11月13日に出願された米国仮特許出願第61/114,290号;および2008年12月29日に出願された米国仮特許出願第61/141,155号に対する優先権を主張するものであって、該出願は全体において参照することによって本明細書に援用される。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、概して、鉄の恒常性疾患の治療、予防および改善に関する。本発明は、より具体的には、BMP−6およびBMP−6タンパク質特異的試薬、例えばヒトの血清鉄、血清ヘモグロビンおよび/またはヘマトクリットレベルを変化させるための抗体を用いる方法に関する。該抗体は、炎症のヘモクロマトーシスおよび貧血の予防および治療のための医薬組成物において有用である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
鉄は、ほとんど全ての生物の増殖および生存に必要な必須元素である。赤血球(RBC)は、赤色で鉄に富むタンパク質であるヘモグロビン(Hb)を含有するが、それは肺から全ての体の筋肉および臓器へ酸素を輸送し、そこで酸素が反応して正常な活動のために体が必要とするエネルギーを供給する。赤血球の数または赤血球が含有するヘモグロビンの量が正常以下に下がると、体は、適切に機能するために必要な量よりも少ない酸素しか受け取ることができず、必要な量よりも少ないエネルギーしか産生することができなくなる。この状態は一般的に、貧血と呼ばれる。幼児および小児の中での貧血の一般的な原因は、鉄欠乏である。米国における20%もの小児および開発途上国における80%もの小児が、年齢18歳までのある時期に貧血になるようである。Martin, P. L., et al. The Anemias, Principles and Practices of Pediatrics, 1657 (2d ed., Lippincott 1994)。
【0004】
哺乳類において、鉄バランスは、食事に含まれる鉄の十二指腸吸収の段階で主に制御される。ヒトにおいて、遺伝性ヘモクロマトーシス(HH)は食事に含まれる鉄の過吸収に起因するよくある常染色体性劣性遺伝病であり、血漿および多臓器、特に膵臓、肝臓、および皮膚における鉄過剰状態をもたらし、鉄沈着によってこれらの臓器および組織に損傷をもたらす。
【0005】
若年性ヘモクロマトーシスは、主要な鉄調節ホルモン、ヘプシジン(HAMP)およびヘモジュベリン(HFE2)をコードする遺伝子内の突然変異に起因する鉄過剰疾患である(Roetto, A., et al.. 2003. Nut. Genet. 33:21-22; Papanikolaou, G., et al. 2004. Nut. Genet. 36:77-82.)。ヘモジュベリンは骨形成タンパク質(BMP)共受容体であり、ヘモジュベリン媒介BMPシグナルはヘプシジン発現および鉄代謝を制御することが示されている(Babitt, J.L., et al. 2006. Nat. Genet. 38:531-539; Babitt, J.L., et al.. 2007. J Clin Invest. 117:1933-1939.)。しかしながら、インビボのヘプシジンの内在性BMP制御因子は未知である。
【0006】
BMPは、40以上のリガンドからなるTGF−βスーパーファミリーのメンバーである(Shi, Y., and Massague, J. 2003. Cell.113:685-700.)。これらの増殖因子は、多様な生物学的プロセス、例えば細胞増殖、分化、アポトーシス、およびパターン形成を媒介する。BMP/TGF−βスーパーファミリーリガンドは、I型およびII型セリンスレオニンキナーゼ受容体の複合体への結合によって細胞内シグナル伝達カスケードを開始する。活性型受容体複合体は細胞内Smadタンパク質をリン酸化し、次いでこれが核へ移行して遺伝子発現を調節する。
【0007】
近年、主要な鉄調節ホルモン、ヘプシジンの制御にBMPシグナル伝達経路が果たす役割が分かってきた(Babitt, J.L., et al. 2006. Nat. Genet. 38:531-539; Babitt, J.L., H et al. J Clin Invest. 117:1933-1939; Wang, R.H., et al. 2005. Cell Metab. 2:399-409.)。肝臓によって分泌されるヘプシジンは、鉄排出タンパク質フェロポーチンの細胞表面発現を減少させることによって鉄の腸管吸収およびマクロファージ鉄放出を阻害する(Nemeth, E., et al. 2004. Science. 306:2090-2093)。ヘプシジンは鉄投与によって上方制御され(Pigeon, C., et al.2001. J. Biol. Chem. 276:7811-7819, Nicolas, G., et al. 2002. J. Clin. Invest.110:1037-1044; Nemeth, E., et al. 2004. J. Clin. Invest. 113: 1271-1276.)、貧血によって阻害される(Nicolas, G., et al. 2002. J. Clin. Invest.110:1037-1044)。ヘプシジン欠乏および抑制されないフェロポーチン活性は、HAMP自体、HFE2、HFE、TFR2(トランスフェリン受容体2型をコードする)内の突然変異、およびSCLAOAl(フェロポーチンをコードする)のまれな突然変異による遺伝的鉄過剰疾患、遺伝性ヘモクロマトーシスの根底にある一般的な発症メカニズムである(Pietrangelo, A. 2006. Biochim Biophys Acta 1763:700-710)。ヘプシジンは炎症性サイトカイン、例えばIL−6によっても上方制御され、ヘプシジン過剰は炎症の貧血の発病と関係付けられる(Pigeon, C., et al.2001. J. Biol. Chem. 276:7811-7819, Nicolas, G., et al. 2002. J. Clin. Invest.110:1037-1044; Nemeth, E., et al. 2004. J. Clin. Invest. 113: 1271-1276; Nemeth, E., et al. 2003. Blood. 101 :246 1-2463; Weiss, G. and Goodnough, L.T. 2005. N.Engl. J. Med. 352:1011-1023; Andrews NC. 2008. Blood. 1122 19-30.)。
【0008】
一般的なBMP/TGF−β細胞内メディエーター、Smad4の肝臓特異的コンディショナルノックアウトによる肝臓のBMPシグナル伝達の減少(Wang, R.H., et al. 2005. Cell Metab.2:399-409.)、または、BMP共受容体ヘモジュベリンをコードするHFE2内の突然変異による肝臓のBMPシグナル伝達の減少は(Papanikolaou, G., et al.2004. Nut. Genet. 36:77-82; Babitt, J.L., et al. 2006. Nat. Genet. 38:531-539; Huang, F.W., et al. J. Clin. Invest. 115:2187-2191; Niederkofler, V., Salie, R., Arber, S. 2005. J Clin Invest. 115:2180-6)、不適切に低いヘプシジン発現および鉄過剰状態と関連する。BMPシグナルは、インビトロでのヘプシジン発現を転写レベルで正に上昇させる(Babitt, J.L., et al. 2006. Nat. Genet. 38:531-539; Babitt, J.L., H et al. J Clin Invest. 117:1933-1939; Wang, R.H., et al. 2005. Cell Metab.2:399-409; Truksa, J., et al. 2006. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 103:10289-10293; Verga Falzacappa, M.V., et al. 2008. J Mol Med. 86:531-40.)。インビボでの鉄投与は肝臓のBMPシグナル伝達を上昇させる(Yu, P.B., et al. 2008. Nut Chem Biol. 4:33-41)。インビボでのBMP投与は、ヘプシジン発現を上昇させ、血清鉄を減少させる(Babitt, J.L., H et al. J Clin Invest. 117:1933-1939)。逆に、ヒト免疫グロブリンFcのFc部分に縮合した可溶性ヘモジュベリン(HJV.Fc)(BMP−2、BMP−4、BMP−5、およびBMP−6を選択的に阻害するが、BMP−7またはBMP−9は阻害しない)のインビボでの投与は、インビボでヘプシジン発現を阻害し、フェロポーチン発現を上昇させ、細網内皮細胞の鉄貯蔵を動員し、血清鉄を上昇させる(Babitt, J.L., et al. 2007. J Clin Invest. 117: 1933-1939.)。非選択的小分子BMP阻害剤、ドルソモルフィン(Dorsomorphin)の投与も、インビボでヘプシジン発現を阻害し、血清鉄を上昇させる(Yu, P.B., et al. 2008. Nut Chem Biol. 4:33-41)。
【0009】
ヘモジュベリン(RGMcとしても知られる)は、RGMaおよびDRAGON(RGMb)(50〜60%のアミノ酸相同性を有する)を含む反発性ガイダンス分子(Repulsive Guidance Molecules)タンパク質ファミリーのメンバーである(Samad, T.A., et al. 2004. J. Neurosci. 24:2027-2036.)。ヘモジュベリンと同様に、RGMa(Babitt, J.L., et al. 2005. J. Biol. Chem.280:29820-29827)およびDRAGON(Samad, T.A., et al. 2005. J. Biol. Chem. 280:14122- 14129)も、BMPシグナル伝達経路のための共受容体として機能する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ヘプシジン発現および鉄代謝を制御するための、費用対効果が高くて効率的な方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概略
本発明は、ヘプシジン欠乏による鉄過剰疾患またはヘプシジン過剰による炎症の貧血を治療するためにBMP−6を調節する新規な方法を提供する。
【0012】
本発明は、ヘプシジン欠乏による鉄過剰疾患またはヘプシジン過剰による炎症の貧血の治療において役割を有するBMPシグナル伝達経路の修飾因子に関する。
【0013】
本発明は、対象における鉄の恒常性を制御する方法であって、該対象における鉄の恒常性、ヘモグロビンレベルおよび/またはヘマトクリットレベルを変化させるのに十分なレベルでBMP−6シグナル伝達を調節するのに十分な医薬組成物の有効量を該対象に投与する工程を含む方法に関する。いくつかの態様では、組成物の投与はBMP−6シグナル伝達を減少させる。いくつかの態様では、組成物はBMP−6に結合することができる試薬を含む。いくつかの実施態様では、試薬は残基TQSQDVARVSSASDY(配列番号3(SEQ ID NO:3))でBMP−6に結合する。いくつかの態様では、試薬は抗体である。いくつかの態様では、抗体は可溶性ヒトヘモジュベリンタンパク質によるBMP−6結合を競合的に阻害する。特定の実施態様では、可溶性ヒトヘモジュベリンタンパク質はHJV.FcまたはHJV.Hisである。他の態様では、抗体は可溶性ヒトヘモジュベリンタンパク質がBMP−6に結合するドメインと無関係のドメインでBMP−6に結合することによってBMP−6活性を阻害する。特定の実施態様では、可溶性ヒトヘモジュベリンタンパク質はHJV.FcまたはHJV.Hisである。
【0014】
本発明は、化合物の投与がヘプシジン発現のヘモジュベリン媒介誘導を減少させる方法に関する。いくつかの態様では、試薬はヘモジュベリンとBMP−6の相互作用を阻害するのに十分な量にて投与される。いくつかの態様では、試薬は、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−7またはBMP−9よりもヒトBMP−6の発現または活性を好んで阻害する。いくつかの態様では、試薬は、BMP−7よりも少なくとも5倍高い親和性でBMP−6に結合する。
【0015】
本発明は、対象の血清鉄レベルの上昇または血清トランスフェリン飽和度の上昇をもたらす本発明の組成物の投与方法を提供する。本発明は、ヘモグロビンまたはヘマトクリットレベルの上昇をもたらす本発明の組成物の投与方法も提供する。
【0016】
本発明は、BMP−6シグナル伝達の上昇をもたらす本発明の組成物の投与方法を提供する。いくつかの態様では、組成物は血清BMP−6レベルを上昇させることができる試薬を含む。いくつかの態様では、試薬はBMP−6発現レベルを上昇させる。
【0017】
本発明は、遺伝性ヘモクロマトーシスの1つ以上の症状であって、血清鉄レベルの上昇、血清トランスフェリン飽和度の上昇、ヘプシジン発現の減少、脾臓鉄貯蔵の減少、フェロポーチン発現の上昇、および組織鉄過剰からなる群から選択される症状を有する対象を治療する方法を提供する。
【0018】
本発明は、BMP−6の発現レベルを減少させる組成物の投与方法を提供する。いくつかの態様では、組成物はBMP−6遺伝子発現を阻害することができる試薬を含み、試薬はアンチセンスDNA、siRNA、干渉RNA、マイクロRNA(miRNA)またはアンチセンスRNAであり、BMP−6の発現の減少は対象の血清鉄レベルまたは血清トランスフェリン飽和度を上昇させるのに十分である。
【0019】
本発明は、配列番号1(SEQ ID NO:1)に記述しているアミノ酸配列からなるヒトBMP−6に特異的に結合してBMP−6の鉄制御活性を阻害する単離されたモノクローナル抗体を提供し、かつ、単離されたモノクローナル抗体を含み、対象の血清鉄レベルまたは血清トランスフェリン飽和度を上昇させるのに十分な量の抗体を含む組成物を提供する。いくつかの実施態様では、単離されたモノクローナル抗体は、可溶性ヒトヘモジュベリンタンパク質によるBMP−6結合を競合的に阻害し、BMP−6への結合を25%〜100%減少させる。特定の実施態様では、可溶性ヒトヘモジュベリンタンパク質は、HJV.FcまたはHJV.Hisである。より具体的な実施態様では、単離されたモノクローナル抗体は、ヒトBMP−6に対するR&Dシステムズ社(R & D Systems)のモノクローナル抗体、MAB507(クローン74219)、ヒトBMP−6に対するR&Dシステムズ社のポリクローナル抗体、AF507(ロットCXL04A)、およびサンタクルズ社(Santa Cruz)のポリクローナル抗体からなる群から選択される抗BMP−6抗体によるBMP−6結合を、25%〜100%の範囲で競合的に阻害する。他の実施態様では、単離されたモノクローナル抗体は、HJV.Fcが結合するドメインと異なるドメインでBMP−6に結合する。
【0020】
本発明は、抗BMP−6抗体、例えば、キメラ化抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、単鎖Fv断片、F(ab’)断片、Fd、ドメイン抗体(dAb)、二重特異性抗体、マキシボディー(maxibody)、およびナノボディー(nanobody)からなるヒト抗体も提供する。いくつかの態様では、単離されたモノクローナル抗体は、ヒトBMP−6およびマウスBMP−6の両方に結合する。
【0021】
本発明は、抗BMP−6抗体をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子、および調節制御配列(regulatory control sequence)に操作可能に結合した(operably linked)核酸分子を含む発現ベクターも提供する。
【0022】
本発明は、抗体を産生するために請求項のベクターまたは核酸分子を含む宿主細胞を用いる方法であって、請求項の宿主細胞を適切な条件下で培養することにより、抗体を産生するために核酸を発現させることを含む方法も提供する。
【0023】
本発明は、(a)鉄の恒常性、ヘモグロビンレベルおよび/またはヘマトクリットレベルを変化させるのに十分なレベルでBMP−6シグナル伝達を調節するのに十分な医薬組成物、ならびに(b)赤血球生成刺激因子を治療的有効量にて投与することによって遺伝性ヘモクロマトーシスの1つ以上の症状を有する対象を治療することも提供する。典型的な赤血球生成刺激因子は、エリスロポエチン、エリスロポエチンアゴニスト変異型、およびペプチドまたはエリスロポエチン受容体に結合して活性化する抗体を含む。赤血球生成刺激因子は、エポエチンアルファ、エポエチンベータ、エポエチンデルタ、エポエチンオメガ、エポエチンイオタ、エポエチンゼータ、およびその類似体、模倣ペプチド、模倣抗体ならびにHIF阻害剤を含み、これらに限定されない(米国特許公開第2005/0020487号を参照のこと(その開示は全体において参照することによって援用される))。特に、エリスロポエチンは、下記の特許または特許出願(そのそれぞれは全体において参照することによって本明細書に援用される)に開示されているようなエリスロポエチン分子またはその変異型もしくは類似体を含み、これらに限定されない:米国特許第4,703,008号;第5,441,868号;第5,547,933号;第5,618,698号;第5,621,080号;第5,756,349号;第5,955,422号および第5,856,298号;ならびにWO91/05867;WO95/05465;WO00/24893およびWO01/81405。典型的な実施態様では、赤血球生成刺激因子は、ヒトエリスロポエチンおよびダルベポエチンアルファからなる群から選択される。
【0024】
本発明は、BMP−6関連疾患を診断する方法であって、(a)ヒトBMP−6への抗体の結合に適切な条件下、該疾患を有している疑いがあるヒトから採取した生体サンプルをBMP−6に特異的に結合する抗体と接触させること;および(b)抗体に結合したBMP−6を定量化することを含む方法であって、(b)にて定量化された該サンプル中のBMP−6の量が正常なレベル以上または以下であることがBMP−6関連疾患の存在を示す方法も提供する。
【0025】
本発明は、BMP−6アンタゴニストが投与される治療をモニターする方法であって、(a)ヒトBMP−6への抗体の結合に適切な条件下、BMP−6アンタゴニストを投与されたヒトから採取した生体サンプルをBMP−6に特異的に結合する抗体と接触させること;および(b)抗体に結合したBMP−6を定量化することを含む方法であって、(b)にて定量化された血清BMP−6レベルの量の変化がBMP−6アンタゴニストの有効性を示す方法も提供する。いくつかの態様では、アンタゴニストは抗体または小分子である。
【0026】
本発明は、BMP−6シグナル伝達を調節する医薬組成物の投与を通じて、鉄レベルの上昇または貧血を有する哺乳類を治療する方法も提供する。
【0027】
本発明は、抗BMP−6抗体を含むバイアルまたはプレフィルドシリンジ(prefilled syringe)を含む製品を含む、鉄の恒常性と関連する疾患を治療するためのキットも提供する。
【0028】
本発明は、ヒトBMP−6に結合する化合物をスクリーニングする方法であって、生理活性BMP−6を含む組成物と候補化合物を接触させること、および候補化合物と組成物中のヒトBMP−6の複合体を検出することを含む方法であって、複合体の検出が、候補化合物がヒトBMP−6に結合することを示し、さらに、候補化合物がBMP−6とHJV.Fcの結合を少なくとも25%阻害する方法も提供する。
【0029】
本発明は、ヒトBMP−6に対する抗体を産生する方法であって、免疫グロブリン産生細胞を配列番号1またはその変異型のBMP−6配列を含むポリペプチドと接触させること、および該細胞によって産生された免疫グロブリンを単離することを含む方法も提供する。
【0030】
本発明は、BMP−6に特異的に結合する抗体およびHJV.Fcを含む、鉄欠乏症の治療のための組成物も提供する。1つの実施態様では、抗体は可溶性ヒトヘモジュベリン抱合体(HJV.Fc)タンパク質によるBMP−6結合を競合的に阻害する。別の実施態様では、抗体は可溶性ヒトヘモジュベリン抱合体(HJV.Fc)タンパク質によるBMP−6結合を競合的に阻害する。別の実施態様では、抗体はHJV.Fcが結合するドメインと異なるBMP−6上のドメインに結合する。
【0031】
別の特定の実施態様では、抗体はBMP−6へのHJV.Fc結合を25%〜100%減少させるのに十分な量にて存在する。好ましくは、抗体はR&Dシステムズ社のモノクローナル抗体、R&Dシステムズ社のポリクローナル抗体、およびサンタクルズ社のポリクローナル抗体からなる群から選択される。別の特定の実施態様では、抗体はヒト抗体である。他の実施態様では、該抗体はキメラ化抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、単鎖Fv断片、F(ab’)断片、Fd、ドメイン抗体(dAb)、二重特異性抗体、マキシボディー(maxibody)、およびナノボディー(nanobody)からなる群から選択される。
【0032】
本発明は、BMP−6に特異的に結合する抗体をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子も提供する。本発明は、調節制御配列(regulatory control sequence)に操作可能に結合した(operably linked)この核酸分子を含む発現ベクターも提供する。本発明は、請求項31のベクターまたは請求項30の核酸分子を含む宿主細胞も提供する。
【0033】
本発明は、抗体を産生するために請求項32の宿主細胞を用いる方法であって、請求項の宿主細胞を適切な条件下で培養することにより、抗体を産生するために核酸を発現させることを含む方法も提供する。
【0034】
本発明は、BMP−6関連疾患を診断する方法であって、ヒトBMP−6への抗体の結合に適切な条件下、該疾患を有している疑いがあるヒトから採取した生体サンプルをBMP−6に特異的に結合する抗体と接触させること;および、抗体に結合したBMP−6を定量化することを含む方法であって、(b)にて定量化された該サンプル中のBMP−6の量が正常なレベル以上または以下であることがBMP−6関連疾患の存在を示す方法も提供する。
【0035】
本発明は、BMP−6アンタゴニストが投与される治療をモニターする方法であって、ヒトBMP−6への抗体の結合に適切な条件下、BMP−6アンタゴニストを投与されたヒトから採取した生体サンプルを、BMP−6に特異的に結合する抗体と接触させること;および、抗体に結合したBMP−6を定量化することを含む方法であって、(b)にて定量化された血清BMP−6レベルの量の変化がBMP−6アンタゴニストの有効性を示す方法も提供する。特定の実施態様では、アンタゴニストは抗体である。別の特定の実施態様では、アンタゴニストは小分子である。
【0036】
本発明は、ヒトBMP−6に特異的に結合する抗体であって、TQSQDVARVSSASDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含む一定濃度のペプチドの存在下、ヒトBMP−6への特異的な結合から離れて競合される抗体(the antibody is competed away from specifically binding to human BMP-6)も提供する。
【0037】
本発明は、TQSQDVARVSSASDY(配列番号3)のいずれか5個の連続するアミノ酸に特異的に結合する抗体も提供する。特定の実施態様では、抗体はTQSQDVARVSSASDY(配列番号3)のいずれか6、7、8、9または10個の連続するアミノ酸に特異的に結合する。
【0038】
本発明ならびに本発明の他の目的、特徴、および利点は、下記の発明の詳細な記載ならびに添付の図面および実施態様にてさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1A〜1Dは、DRAGON.Fcがヘプシジン発現のBMP誘導を選択的に阻害する証拠を示す。
【0040】
【図2】図2A〜2Gは、マウスにおけるDRAGON.Fc投与がヘプシジン発現または鉄代謝に影響しない証拠を示す。
【0041】
【図3】図3A〜3Dは、特異的中和BMP−6抗体がインビボで肝臓のヘプシジン発現を阻害し、血清鉄およびトランスフェリン飽和度を上昇させる証拠を示す。
【0042】
【図4】図4A〜4Hは、Bmp6欠損マウスが肝臓のヘプシジン発現の減少、脾臓フェロポーチン発現の上昇、血清鉄およびトランスフェリン飽和度の上昇、肝臓鉄含量の上昇、ならびに脾臓鉄含量の減少を示す証拠を示す。
【0043】
【図5】図5A〜5Cは、マウスにおけるBMP−6投与がヘプシジンmRNA発現を上昇させ、血清鉄を減少させる証拠を示す。
【0044】
【図6】図6はBMP−6についてのウェスタンブロットである。
【0045】
【図7】図7はHJVについてのウェスタンブロットである。
【0046】
【図8】図8はhBMP−6のウェスタンブロットである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
発明の詳細な記載
驚いたことに、本発明者はBMP−6がヘプシジン発現および鉄代謝の重要な制御因子であることを発見した。可溶性ヘモジュベリン(HJV.Fc)と比較して、相同のDRAGON.Fc融合タンパク質は、インビトロでBMP−2およびBMP−4によるヘプシジンプロモーター活性化のより強力な阻害剤であるが、BMP−6の弱い阻害剤である。インビボでは、DRAGON.Fcはヘプシジン発現および鉄代謝に対する効果はないが、一方、HJV.Fcまたは特異的中和BMP−6抗体はヘプシジン発現を阻害し、血清鉄を上昇させる。さらに、Bmp6欠損マウスは遺伝性ヘモクロマトーシスと類似した表現型を有し、ヘプシジン発現の減少、フェロポーチン発現の上昇、血清鉄およびトランスフェリン飽和度の上昇、脾臓鉄貯蔵の減少、ならびに組織鉄過剰を有する。本発明者は、マウスにおけるBMP−6投与がヘプシジン発現を上昇させ、血清鉄を減少させることを示す。まとめると、これらのデータは、BMP−6がインビボでのヘプシジン発現および鉄代謝の内在性制御因子として重要な役割を有することを支持している。
【0048】
特異的中和BMP−6抗体の投与は血清鉄およびトランスフェリン飽和度の上昇をもたらしたが、これはヘプシジン発現および鉄代謝に対する効果を示している。siRNAまたは中和抗体による内在性BMP−6の阻害は、ヘプシジン発現のヘモジュベリン媒介誘導を阻害する。BMP−6はヘモジュベリンのリガンドであるようである。
【0049】
さらに、外因性のBMP−6の添加はヘプシジン発現を上昇させ、血清鉄および血清トランスフェリン飽和度の用量依存性の減少をもたらすことが分かった。
【0050】
プロBMP−6のアミノ酸配列を下記の第1表に示す:
【表1】

【0051】
BMP−6は第1表に示したプロBMP−6配列のアミノ酸297〜428で構成されている。BMP−6を下記の第2表に示す。
【表2】

【0052】
特に定義しない限り、本発明に関連して用いられている科学的および技術的用語は、当業者によって通常理解されている意味を有するであろう。さらに、文脈によって特に要求されない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むであろう。一般的に、、本明細書で記載している細胞および組織培養、分子生物学、タンパク質およびオリゴまたはポリヌクレオチド化学ならびにハイブリダイゼーションに関連して利用されている命名法および技術は、当該技術分野で周知かつ通常用いられているものである。組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、および組織培養ならびに形質転換について標準的な技術が用いられている(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)。酵素反応および精製技術は、製造者の仕様書に従って、または当該技術分野で通常達成されているように、もしくは本明細書で記載しているようにして行われる。本発明の実行は、特に反対を示す記載がない限り、ウイルス学、免疫学、微生物学、分子生物学および組換えDNA技術の従来の方法を当業者の技能の範囲内で利用するであろうが、その多くは説明目的で以下に記載されている。該技術は文献にて十分に説明されている。例えば、Sambrook, et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition, 1989); Maniatis et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual (1982); DNA Cloning: A Practical Approach, vol. I & II (D. Glover, ed.); Oligonucleotide Synthesis (N. Gait, ed., 1984); Nucleic Acid Hybridization (B. Hames & S. Higgins, eds., 1985); Transcription and Translation (B. Hames & S. Higgins, eds., 1984); Animal Cell Culture (R. Freshney, ed., 1986); Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning (1984)を参照のこと。
【0053】
本明細書で記載している分析化学、合成有機化学、ならびに医薬品化学および製薬化学に関連して利用されている命名法、ならびにこれらの検査法および技術は、当該技術分野で周知かつ通常用いられているものである。化学合成、化学分析、医薬品、製剤、および送達、ならびに患者の治療について、標準的な技術が用いられている。
【0054】
以下の定義は本発明を理解するのに有用である:
【0055】
本明細書で用いられている用語「抗体」(Ab)は、所望の生物学的活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異的抗体(例えば、二特異的抗体)、および抗体断片を含む。本明細書で用語「免疫グロブリン」(Ig)は、「抗体」と互換的に用いられている。
【0056】
「単離された抗体」は、その自然環境の成分から分離および/または回収された抗体である。その自然環境の混入成分は、抗体の診断用途または治療用途を妨げうる物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含みうる。好ましい実施態様では、抗体は(1)ローリー法で決定した場合に抗体が95重量%を越えるまで、最も好ましくは99重量%を越えるまで精製され;(2)スピニングカップシーケネーター(spinning cup sequenator)の使用によってN末端もしくは内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで精製され;または(3)クマシーブルー、もしくは、好ましくは、銀染色を用いる還元もしくは非還元条件下のSDS−PAGEで均一になるまで精製される。抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないであろうから、単離された抗体は組換え細胞内のインサイツの抗体を含む。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも1つの精製ステップによって調製されるであろう。
【0057】
基本となる4本鎖の抗体単位は、2本の同一の軽(L)鎖および2本の同一の重(H)鎖から成るヘテロ4量体糖タンパク質である。IgM抗体は5個の基本となるヘテロ4量体単位に加えてJ鎖と呼ばれる付加的なポリペプチドからなり、それゆえ10個の抗原結合部位を含有するが、一方、分泌型IgA抗体はポリマー化して2〜5個の基本となる4本鎖単位に加えてJ鎖を含む多価集合体を形成することができる。IgGsの場合、4本鎖単位は一般的に約150,000ダルトンである。各L鎖は1つの共有結合性ジスルフィド結合によってH鎖と結合しているが、一方、2つのH鎖はH鎖アイソタイプに依存して1つ以上のジスルフィド結合によって互いに結合している。各HおよびL鎖は、規則的に間隔が開いた鎖内ジスルフィド架橋も有している。各H鎖はN末端側で可変領域(V)を有し、続いてαおよびγ鎖のそれぞれについては3つの定常領域(C)を有し、μおよびεアイソタイプについては4つのCドメインを有する。各L鎖はN末端側で可変領域(V)を有し、続いて他の末端側で定常領域(C)を有する。VはVと並んでおり、Cは重鎖の1つ目の定常領域(C1)と並んでいる。特定のアミノ酸残基が軽鎖と重鎖可変領域の間の界面を形成すると信じられている。VとVのペアが一緒になって単一の抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造および性質については、例えば、Basic and Clinical Immunology, 8th edition, Daniel P. Stites, Abba I. Terr and Tristram G. Parslow (eds.), Appleton & Lange, Norwalk, Conn., 1994, page 71, and Chapter 6を参照のこと。
【0058】
いずれかの脊椎動物種のL鎖は、それらの定常領域(C)のアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に異なる型の1つに帰属させることができる。免疫グロブリンは、それらの重鎖の定常領域(C)のアミノ酸配列に依存して、異なるクラスまたはアイソタイプに帰属させることができる。5つのクラスの免疫グロブリンがある:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMであり、それぞれアルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)およびミュー(μ)と命名された重鎖を有する。γおよびαクラスは、C配列および機能の相対的に小さな違いに基づいてさらにサブクラスに分けられ、例えば、ヒトは下記のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2。
【0059】
用語「可変」は、抗体の中でVドメインの特定のセグメントが配列において広範囲にわたって異なっているという事実を指す。Vドメインは抗原結合を媒介し、その特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を規定する。しかしながら、可変性は可変領域の110アミノ酸全長にわたって均等に分布しているわけではない。むしろ、V領域は、フレームワーク領域(FRs)と呼ばれる15〜30アミノ酸の相対的に不変の配列(stretches)が、各9〜12アミノ酸長の「超可変領域」と呼ばれる極度に可変性のより短い領域によって分離された構成となっている。天然の重鎖および軽鎖の可変領域は、それぞれ4つのFRsを含み、大部分はβシート立体配置をしており、3つの超可変領域によって結合しているが、これはβシート構造を結合するループを形成し、場合によってはβシート構造の一部を形成する。各鎖の超可変領域はFRsによってごく接近して結合しており、他の鎖由来の超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)を参照のこと)。定常領域は抗体と抗原の結合に直接的には関与していないが、様々なエフェクター機能、例えば抗体の抗体依存性細胞毒性(ADCC)への関与などを示す。
【0060】
本明細書で用語「超可変領域」が用いられている場合、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、一般的に「相補性決定領域」または「CDR」由来のアミノ酸残基を含む(例えば、Vのおよそ残基24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)のあたり、ならびにVのおよそ1〜35(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3)あたり;Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))および/または「超可変ループ」由来の残基(例えば、Vの残基26〜32(L1)、50〜52(L2)および91〜96(L3)、ならびにVの26〜32(H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3);Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。
【0061】
本明細書で用いられている用語「モノクローナル抗体」は、実質的に同種の抗体の集団、すなわち、少量にて存在しうる可能性のある自然発生的な突然変異を除いて、含まれる個々の抗体が同一である集団から得られた抗体を指す。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一の抗原部位に対する抗体である。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤と対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対する抗体である。モノクローナル抗体は、それらの特異性に加えて、他の抗体によって汚染されずに合成されうる点で有利である。修飾因子「モノクローナル」は、いずれかの特定の方法による抗体の産生を必要としていると解釈されるべきではない。例えば、本発明に有用なモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature, 256:495 (1975)に最初に記載されたハイブリドーマ法によって調製され得、または、細菌、真核動物もしくは植物細胞内の組換えDNA法を用いて製造されうる(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)。「モノクローナル抗体」は、例えばClackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)に記載されている技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0062】
本明細書のモノクローナル抗体は、「キメラ」抗体、すなわち、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応配列と同一または相同であるが、鎖の残部が別の種に由来する抗体または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応配列と同一または相同である抗体を含み、さらに所望の生物学的活性を示す限り、該抗体の断片も含む(米国特許第4,816,567号;およびMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984)を参照のこと)。本発明は、ヒト抗体に由来する可変領域抗原結合配列を提供する。従って、本明細書で主に関心のあるキメラ抗体は、1つ以上のヒト抗原結合配列(例えば、CDRs)を有し、非ヒト抗体に由来する1つ以上の配列、例えば、FRまたはC領域配列を含有する抗体を含む。さらに、本明細書で主に関心のあるキメラ抗体は、1つの抗体クラスまたはサブクラスのヒト可変領域抗原結合配列および別の配列、例えば、別の抗体クラスまたはサブクラスに由来するFRまたはC領域配列を含む抗体を含む。本明細書で関心のあるキメラ抗体は、本明細書で記載している配列と関連する可変領域抗原結合配列を含有する抗体、または異なる種、例えば非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル、類人猿など)に由来する抗体も含む。キメラ抗体は霊長類化(primatized)およびヒト化抗体も含む。
【0063】
さらに、キメラ抗体はレシピエント抗体またはドナー抗体中に見られない残基を含んでよい。これらの修飾は、抗体の性能をさらに洗練するためになされる。さらなる詳細については、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。
【0064】
「ヒト化抗体」は、一般的に、1つ以上の非ヒト由来のアミノ酸残基が導入されたヒト抗体であると考えられている。これらの非ヒトアミノ酸残基はしばしば「移入(import)」残基と呼ばれ、典型的には「移入(import)」可変領域から取られる。ヒト化は伝統的にウィンター(Winter)と共同研究者の方法に従って(Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986); Reichmann et al., Nature, 332:323-327 (1988); Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536 (1988))、移入(import)超可変領域配列をヒト抗体の対応配列の代わりにすることによって行われる。したがって、該「ヒト化」抗体は、完全なヒト可変領域よりも実質的に少ない領域が非ヒト種由来の対応配列によって置換されているキメラ抗体である(米国特許第4,816,567号)。
【0065】
「ヒト抗体」は、ヒトによって自然に産生される抗体中に存在する配列のみを含有する抗体である。しかしながら、本明細書で用いられているヒト抗体は、自然発生的なヒト抗体には見られない残基または修飾を含んでよく、例えば本明細書で記載している修飾および変異型配列を含んでよい。これらは典型的には、抗体の性能をさらに洗練または高めるためになされる。
【0066】
「完全(intact)」抗体は、抗原結合部位、ならびにC、ならびに少なくとも重鎖定常領域、C1、C2およびC3を含む抗体である。定常領域は天然配列定常領域(例えば、ヒト天然配列定常領域)またはそのアミノ酸配列変異型であってよい。好ましくは、完全抗体は1つ以上のエフェクター機能を有する。
【0067】
「抗体断片」は、完全抗体の一部、好ましくは完全抗体の抗原結合または可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFv断片;二重特異性抗体;線状抗体(linear antibodies)(米国特許第5,641,870号;Zapata et al., Protein Eng. 8(10): 1057-1062 [1995]を参照のこと);一本鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成される多特異的抗体を含む。
【0068】
語句、抗体の「機能的断片または類似体」は、全長抗体と同様に定性的な生物学的活性を有する化合物である。例えば、抗IgE抗体の機能的断片または類似体は、該分子が高親和性受容体、FcεRIに結合する能力を有する能力を阻止または実質的に減少させる様式にてIgE免疫グロブリンに結合することができるものである。
【0069】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片、および残りの「Fc」断片(容易に結晶化する能力を反映して命名されている)と呼ばれる2本の同一の抗原結合断片を産生する。Fab断片は、全L鎖、ならびにH鎖の可変領域ドメイン(V)、および1つの重鎖の第一定常領域(C1)からなる。各Fab断片は、抗原結合について一価、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。抗体をペプシン処理すると単一の大きなF(ab’)断片を産生するが、これは二価の抗原結合活性を有し、さらに抗原を架橋結合することができる2つのジスルフィド結合したFab断片におよそ相当する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含むC1ドメインのカルボキシ末端で付加的な数残基を有する点でFab断片と異なっている。本明細書でFab’−SHは、定常領域のシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’を指す。F(ab’)抗体断片は、最初はその間にヒンジシステインを有するFab’断片のペアとして産生される。抗体断片の他の化学カップリングも知られている。
【0070】
「Fc」断片は、ジスルフィドによって結合している両H鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能はFc領域内の配列によって決定されるが、この領域は特定の型の細胞上に見られるFc受容体(FcR)によって認識される部分でもある。
【0071】
「Fv」は、完全な抗原認識および抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。この断片は、強い非共有結合性の会合をしている1本の重鎖および1本の軽鎖可変領域ドメインの2量体からなる。これら2つのドメインのフォールディングから、6本の超可変ループ(HおよびL鎖からそれぞれ3本のループ)が出ているが、これらは抗原結合のためのアミノ酸残基を提供し、抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、単一可変領域(または抗原に対して特異的な3つのCDRsのみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも低い親和性ではあるが、抗原を認識および結合する能力を有する。
【0072】
「一本鎖Fv」は「sFv」または「scFv」とも略されるが、単一ポリペプチド鎖に結合したVおよびV抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするVおよびVドメインの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。sFvのレビューについては、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994); 下記のBorrebaeck 1995を参照のこと。
【0073】
用語「二重特異性抗体」は、Vドメインの鎖内ペアではなく鎖間ペアが達成されるようにVとVドメイン間の短いリンカー(約5〜10残基)でsFv断片(前述の段落を参照のこと)を構築することによって調製され、二価の断片、すなわち、2つの抗原結合部位を有する断片をもたらす小さな抗体断片を指す。二重特異性抗体(Bispecific diabodies)は、2つの抗体のVおよびVドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在している2つの「クロスオーバー」sFv断片のヘテロ2量体である。二重特異性抗体は、例えば、EP404,097;WO93/11161;およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)にさらに詳細に記載されている。
【0074】
本明細書で用いられている「内部移行する」抗体は、哺乳類細胞上の抗原(例えば、細胞表面ポリペプチドまたは受容体)に結合した際に細胞に取り込まれる(すなわち、入る)抗体である。内部移行する抗体は、もちろん、抗体断片、ヒトまたはキメラ抗体、および抗体抱合体を含むであろう。特定の治療への適用については、インビボでの内部移行が考えられる。内部移行した抗体分子の数は、細胞、特に感染細胞を死滅させ、またはその増殖を阻害するのに十分または適切であろう。抗体または抗体抱合体の効力に依存して、場合によっては、単一抗体分子の細胞への取り込みは抗体が結合する標的細胞を死滅させるのに十分である。例えば、特定の毒素は死滅において非常に強力であるため、抗体に抱合した毒素の1分子の内部移行は感染細胞を死滅させるのに十分である。
【0075】
本明細書で用いられている抗体は、抗原と検出可能なレベルで、好ましくは親和性定数Kが約10−1以上、約10−1以上、約10−1以上、約10−1以上、または10−1以上で反応する場合、「免疫特異的な」、抗原「に対して特異的な」または抗原に「特異的に結合する」といわれる。その同族の抗原に対する抗体の親和性も通常は解離定数Kとして表現され、特定の実施態様では、抗BMP−6抗体は、Kが10−4M以下、約10−5M以下、約10−6M以下、10−7M以下、または10−8M以下で結合する場合、BMP−6に特異的に結合する。抗体の親和性は、従来の技術、例えば、Scatchard et al. (Ann. N.Y. Acad. Sci. USA 51:660 (1949))によって記載された技術を用いて容易に決定することができる。
【0076】
抗原、その細胞または組織に対する抗体の結合特性は、一般的に、免疫検出法、例えば、免疫蛍光法に基づくアッセイ、例えば免疫組織化学的検査(IHC)および/または蛍光活性化細胞選別法(FACS)などを用いて決定および評価することができる。
【0077】
指定された抗体の「生物学的特徴」を有する抗体は、他の抗体と区別するその抗体の1つ以上の生物学的特徴を有する抗体である。例えば、特定の実施態様では、指定された抗体の生物学的特徴を有する抗体は、指定された抗体と同一のエピトープに結合し、および/または指定された抗体と共通のエフェクター機能を有するであろう。
【0078】
用語「アンタゴニスト」抗体は、広義で用いられており、それが特異的に結合するエピトープ、ポリペプチド、または細胞の生物学的活性を部分的または完全に遮断、阻害、または中和する抗体を含む。アンタゴニスト抗体を同定する方法は、候補アンタゴニスト抗体が特異的に結合するポリペプチドまたは細胞を候補アンタゴニスト抗体と接触させること、および通常はポリペプチドまたは細胞と関連する1つ以上の生物学的活性の検出可能な変化を測定することを含んでよい。
【0079】
抗体「エフェクター機能」は、生物学的活性抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列変異型Fc領域)に起因し得、抗体アイソタイプで変化する機能を指す。抗体エフェクター機能の例は、C1q結合および補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;ならびにB細胞活性化を含む。
【0080】
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記載するものである。特定の実施態様では、FcRは天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRはIgG抗体(γ受容体)に結合するものであり、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これらの受容体の対立遺伝子変異型および選択的スプライスによる形態を含む。FCγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害受容体」)を含むが、これらは主にその細胞質ドメインにおいて異なっている類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン抑制モチーフ(ITIM)を含有する。(レビュー、M. in Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997)を参照のこと)。FcRsは、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991); Capel et al., Immunomethods 4:25-34 (1994);およびde Haas et al., J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)にてレビューされている。他のFcRsは、将来同定されるであろうものを含み、本明細書では用語「FcR」によって包含される。該用語は新生児型受容体、FcRnも含むが、これは母方のIgGsの胎児への移動に関与する(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976)およびKim et al., J. Immunol. 24:249 (1994))。
【0081】
「ヒトエフェクター細胞」は、1つ以上のFcRsを発現し、エフェクター機能を果たす白血球細胞である。好ましくは、該細胞は少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を果たす。ADCCを媒介するヒト白血球細胞の例は、PBMC、NK細胞、単球、細胞傷害性T細胞および好中球を含み;PBMCsおよびNK細胞が好ましい。エフェクター細胞は天然源、例えば血液から単離することができる。
【0082】
感染を治療する対象となる「哺乳類」は、ヒト、飼育動物および家畜、ならびに動物園の動物、競技用(sports)動物、またはペット動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギ等を含むいずれかの哺乳類を指す。好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0083】
「治療すること」、「治療」または「軽減」は、治療(therapeutic treatment)および予防(prophylactic or preventative)方法の両方を指し;目的は、標的となる病的状態または疾患を予防または遅延(減少)することである。治療が必要な対象は、既に疾患を有している対象のみならず、疾患を有しやすい対象または疾患が予防されるべき対象を含む。対象または哺乳類は、本発明の方法の抗体の治療量を摂取した後、患者が以下の1つ以上の観察可能および/または測定可能な減少または非存在を示した場合、感染がうまく「治療され」たことになる:感染細胞の数の減少または感染細胞の非存在;全感染細胞のパーセントの減少;および/または、特異的感染と関連する1つ以上の症状のある程度の軽減;罹患率および死亡率の減少、ならびに生活の質の問題の改善。疾患の治療および改善の成功を評価する上記パラメーターは、医師によく知られた通常の手順によって容易に測定することができる。
【0084】
用語「治療的有効量」は、対象または哺乳類の疾患または障害を「治療する」のに効果的な抗体または薬物の量を指す。前述の「治療すること」の定義を参照のこと。
【0085】
「慢性」投与は、最初の治療効果(活性)を長期間にわたって持続させるために、急性的な様式とは対照的に継続的な様式にて薬剤を投与することを指す。「間欠」投与は、中断なく継続的になされるのではなく、むしろ周期的な性質を有する治療である。
【0086】
1つ以上のさらなる治療薬「と組み合わせた」投与は、同時投与およびいずれかの順序での連続投与を含む。本発明の1つの実施態様では、鉄の恒常性、ヘモグロビンレベルおよび/またはヘマトクリットレベルを変化させるのに十分なレベルでBMP−6シグナル伝達を調節するのに十分な医薬組成物、ならびに赤血球生成刺激因子を用いる併用療法が用いられる。この組み合わせは、遺伝性ヘモクロマトーシスの1つ以上の症状を有する対象を治療するのに有用である。様々な実施態様では、赤血球生成刺激因子は貧血を有する患者の治療を改善するために用いることができる。特に、赤血球生成刺激因子治療、例えばエリスロポエチンまたはその類似体(エポエチンアルファ、エポエチンベータ、ダルベポエチンアルファ)に対する反応性が低下した(無反応を含む)患者は、とりわけ、ヘプシジン活性アンタゴニストまたはヘプシジン発現阻害剤との共治療から恩恵を受けるであろう。
【0087】
本明細書で用いられている「赤血球生成刺激因子」は、例えば、受容体に結合して2量体化を引き起こすことによって、または内在性エリスロポエチン発現を刺激することによってエリスロポエチン受容体の活性化を直接的または間接的に引き起こす化学的化合物を意味する。赤血球生成刺激因子は、エリスロポエチン受容体に結合して活性化するエリスロポエチンおよびその変異型、類似体、または誘導体;エリスロポエチン受容体に結合して受容体を活性化する抗体;またはエリスロポエチン受容体に結合して活性化するペプチド;または、任意に分子量約1000ダルトン未満であり、エリスロポエチン受容体に結合して活性化する低分子量有機化学化合物を含む。赤血球生成刺激因子は、エポエチンアルファ、エポエチンベータ、エポエチンデルタ、エポエチンオメガ、エポエチンイオタ、エポエチンゼータ、およびその類似体、ペグ化エリスロポエチン、カルバミル化エリスロポエチン、模倣ペプチド(EMP1/ヘマタイドを含む)、模倣抗体およびHIF阻害剤(米国特許公開第2005/0020487号を参照のこと、その開示は全体において参照することによって援用される)を含み、これらに限定されない。典型的な赤血球生成刺激因子は、エリスロポエチン受容体に結合して活性化するエリスロポエチン、ダルベポエチン、エリスロポエチンアゴニスト変異型、およびペプチドまたは抗体(米国特許出願公開第2003/0215444号および第2006/0040858号に報告されている化合物を含む、そのそれぞれの開示は全体において参照することによって本明細書に援用される)、ならびに下記の特許または特許出願(そのそれぞれは全体において参照することによって本明細書に援用される)に開示されているようなエリスロポエチン分子またはその変異型もしくは類似体を含む:米国特許第4,703,008号;第5,441,868号;第5,547,933号;第5,618,698号;第5,621,080号;第5,756,349号;第5,767,078号;第5,773,569号;第5,955,422号;第5,830,851号;第5,856,298号;第5,986,047号;第6,030,086号;第6,310,078号;第6,391,633号;第6,583,272号;第6,586,398号;第6,900,292号;第6,750,369号;第7,030,226号;第7,084,245号;第7,217,689号;PCT出願WO91/05867;WO95/05465;WO99/66054;WO00/24893;WO01/81405;WO00/61637;WO01/36489;WO02/014356;WO02/19963;WO02/20034;WO02/49673;WO02/085940;WO03/029291;WO2003/055526;WO2003/084477;WO2003/094858;WO2004/002417;WO2004/002424;WO2004/009627;WO2004/024761;WO2004/033651;WO2004/035603;WO2004/043382;WO2004/101600;WO2004/101606;WO2004/101611;WO2004/106373;WO2004/018667;WO2005/001025;WO2005/001136;WO2005/021579;WO2005/025606;WO2005/032460;WO2005/051327;WO2005/063808;WO2005/063809;WO2005/070451;WO2005/081687;WO2005/084711;WO2005/103076;WO2005/100403;WO2005/092369;WO2006/50959;WO2006/02646;WO2006/29094;ならびに米国出願US2002/0155998;US2003/0077753;US2003/0082749;US2003/0143202;US2004/0009902;US2004/0071694;US2004/0091961;US2004/0143857;US2004/0157293;US2004/0175379;US2004/0175824;US2004/0229318;US2004/0248815;US2004/0266690;US2005/0019914;US2005/0026834;US2005/0096461;US2005/0107297;US2005/0107591;US2005/0124045;US2005/0124564;US2005/0137329;US2005/0142642;US2005/0143292;US2005/0153879;US2005/0158822;US2005/0158832;US2005/0170457;US2005/0181359;US2005/0181482;US2005/0192211;US2005/0202538;US2005/0227289;US2005/0244409;US2006/0088906;US2006/0111279。
【0088】
組換えヒトエリスロポエチンの典型的な配列、製造、精製および使用は、リン(Lin)の米国特許第4,703,008号およびライ(Lai)らの米国特許第4,667,016号を含みこれらに限定されない多数の特許公報に記載されているが、そのそれぞれは全体において参照することによって本明細書に援用される。ダルベポエチンは、2つの付加的な炭水化物鎖を提供するrHuEPOのアミノ酸配列に5つの変化を有する高度にグリコシル化されたエリスロポエチン類似体である。より具体的には、ダルベポエチンアルファはアミノ酸残基30〜88で2つの付加的なN結合型炭水化物鎖を含有する。ダルベポエチンおよび他のエリスロポエチン類似体の典型的な配列、製造、精製および使用は、ストリックランド(Strickland)らの91/05867、エリオット(Elliott)らのWO95/05465、エグリー(Egrie)らのWO00/24893、およびエグリー(Egrie)らのWO01/81405を含む多数の特許公報に記載され、そのそれぞれは全体において参照することによって本明細書に援用される。天然に存在するまたは類似体ポリペプチドの誘導体は、化学的に修飾されたもの、例えば、水溶性ポリマーを結合したもの(例えば、ペグ化)、放射性核種を結合したもの、または他の診断用、標的用もしくは治療用部分を結合したものを含む。
【0089】
用語「赤血球生成活性」は、インビボアッセイ、例えば、赤血球増加症マウス(exhypoxic polycythemic mouse)アッセイにて実証されている、赤血球生成を刺激する活性を意味する。例えば、Cotes and Bangham, Nature 191:1065(1961)を参照のこと。
【0090】
本明細書で用いられている「担体」は、利用される投与量および濃度でそれに曝露された細胞または哺乳類に対して無毒である、医薬的に許容される担体、賦形剤、または安定剤を含む。しばしば、生理的に許容される担体はpH緩衝水溶液である。生理的に許容される担体の例は、緩衝液、例えばリン酸、クエン酸、および他の有機酸の緩衝液など;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸など;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなど;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドンなど;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジンなど;単糖、二糖、および他の炭水化物、例えばグルコース、マンノース、またはデキストリンなど;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトールまたはソルビトールなど;塩形成対イオン、例えばナトリウムなど;および/または非イオン性界面活性剤、例えばツイーン(TWEEN(商標))ポリエチレングリコール(PEG)、およびプルロニクス(PLURONICS(商標))などを含む。
【0091】
本明細書で用いられている「標識」は、抗体に直接的または間接的に抱合して「標識」抗体を産生する検出可能な化合物または組成物を指す。標識はそれ自体検出可能であってよく(例えば、放射性同位元素標識もしくは蛍光標識)または、酵素標識の場合には、検出可能な基質化合物もしくは組成物の化学変化を触媒してよい。
【0092】
本明細書で用いられている用語「エピトープタグをつけた」は、「タグポリペプチド」に縮合したポリペプチドを含むキメラポリペプチドを指す。タグポリペプチドは抗体が作成できるエピトープを提供する程度に十分な残基を有し、かつ、それが縮合しているポリペプチドの活性を妨げない程度に十分に短い。タグポリペプチドは、抗体が他のエピトープと実質的に交差反応しない程度に好ましくはかなりユニークでもある。適切なタグポリペプチドは、一般的に少なくとも6つのアミノ酸残基を有し、通常は約8〜50アミノ酸残基(好ましくは、約10〜20アミノ酸残基)を有する。
【0093】
本明細書で「小分子」は、約500ダルトン以下の分子量を有する分子として定義される。
【0094】
用語「核酸」および「ポリヌクレオチド」は、一本鎖または二本鎖RNA、DNA、PNA、または混合ポリマーを指すよう本明細書で互換的に用いられている。ポリヌクレオチドは、ポリペプチドを発現し、またはポリペプチドを発現するよう適応されていてよいゲノム配列、エキストラゲノミック(extra-genomic)およびプラスミド配列、ならびにより小型の操作した遺伝子断片を含んでよい。
【0095】
「単離された核酸」は、他のゲノムDNA配列ならびにタンパク質またはリボソームおよびポリメラーゼなどの複合体から実質的に分離され、自然に天然配列を伴う核酸である。該用語はその自然発生的な環境から除かれた核酸配列を包含し、組換えまたはクローン化DNA単離体(isolates)および化学的に合成された類似体または異種系によって生物学的に合成された類似体を含む。実質的に純粋な核酸は、単離された形態の核酸を含む。もちろん、これは、最初に単離された核酸を指し、かつ、単離された核酸に後から人間の手によって付加された遺伝子または配列を排除しない。
【0096】
用語「ポリペプチド」は、その従来の意味にて、すなわち、アミノ酸の配列として用いられている。ポリペプチドは特定の長さの産物に限定されない。ペプチド、オリゴペプチド、およびタンパク質はポリペプチドの定義に含まれており、特に示さない限り、該用語は本明細書で互換的に用いられてよい。この用語は、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、自然発生的および非自然発生的なグリコシル化、アセチル化、およびリン酸化など、ならびに当該技術分野で公知の他の修飾を指さず、または排除する。ポリペプチドは全長タンパク質、またはその部分配列であってよい。本発明の文脈で関心のある特定のポリペプチドは、CDRsを含み、抗原またはインフルエンザA感染細胞に結合することができるアミノ酸部分配列である。
【0097】
「単離されたポリペプチド」は、同定され、その自然環境の成分から分離および/または回収されたポリペプチドである。好ましい実施態様では、単離されたポリペプチドは、(1)ローリー法で決定した場合にポリペプチドが95重量%を越える、最も好ましくは99重量%を越えるまで精製され、(2)スピニングカップシーケネーター(spinning cup sequenator)の使用によってN末端もしくは内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで精製され、または(3)クマシーブルー、もしくは好ましくは、銀染色を用いる還元または非還元条件下のSDS−PAGEによって均一になるまで精製されるであろう。単離されたポリペプチドは、ポリペプチドの自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないであろうから、組換え細胞内のインサイツのポリペプチドを含む。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチドは少なくとも1つの精製ステップによって調製されるであろう。
【0098】
「天然配列」ポリヌクレオチドは、天然に由来するポリヌクレオチドと同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドである。「天然配列」ポリペプチドは、天然(例えば、いずれかの種由来)に由来するポリペプチド(例えば、抗体)と同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。該天然配列ポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、天然から単離することができ、または組換えもしくは合成手段によって産生することができる。
【0099】
本明細書で用いられている用語ポリヌクレオチド「変異型」は、1つ以上の置換、欠失、付加および/または挿入において、本明細書で具体的に開示されたポリヌクレオチドと典型的には異なっているポリヌクレオチドである。該変異型は自然発生的に産生されてよく、または合成的に産生されてよく、例えば、本発明の1つ以上のポリヌクレオチド配列を修飾し、本明細書で記載しているコードされたポリペプチドの1つ以上の生物学的活性を評価することによって、および/または当該技術分野で周知の多数の技術のいずれかを用いることによって産生されてよい。
【0100】
本明細書で用いられている用語ポリペプチド「変異型」は、1つ以上の置換、欠失、付加および/または挿入において、本明細書で具体的に開示されたポリペプチドと典型的には異なっているポリペプチドである。該変異型は、自然発生的に産生されてよく、または合成的に産生されてよく、例えば、本発明の1つ以上の上記ポリペプチド配列を修飾し、本明細書で記載しているポリペプチドの1つ以上の生物学的活性を評価することによって、および/または当該技術分野で周知の多数の技術のいずれかを用いることによって産生されてよい。
【0101】
修飾は本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの構造になされてよく、さらに所望の特徴を有する変異型または誘導体ポリペプチドをコードする機能的分子を得てよい。本発明のポリペプチドの変異型または部分と等価の、またはさらに改善されたものを作成するためにポリペプチドのアミノ酸配列を変化させることが所望である場合、当業者はコードするDNA配列の1つ以上のコドンを典型的には変化させるであろう。
【0102】
例えば、特定のアミノ酸は、他のポリペプチド(例えば、抗原)または細胞に結合する能力についてはっきりと認識できる喪失をすることなくタンパク質構造において他のアミノ酸に置換されてよい。タンパク質の生物学的機能活性を定義するのはそのタンパク質の結合能力および性質であるため、特定のアミノ酸配列置換はタンパク質配列、および、もちろん、その根底にあるDNAコード配列になされてよく、それでもなお同様の性質を有するタンパク質を得ることができる。それゆえ、それらの生物学的有用性または活性についてはっきりと認識できる喪失をすることなく開示された組成物のペプチド配列、または該ペプチドをコードする対応するDNA配列に様々な変化がなされてよいと考えられる。
【0103】
多くの場合では、ポリペプチド変異型は1つ以上の保存的置換を含有するであろう。「保存的置換」は、アミノ酸が類似の性質を有する別のアミノ酸に置換され、それゆえペプチド化学の当業者が、ポリペプチドの二次構造およびヒドロパシー特性が実質的に未変化であることを期待できるであろう置換である。
【0104】
当該技術分野では、特定のアミノ酸は類似のヒドロパシー指数またはスコアを有する他のアミノ酸によって置換されてよく、なおも類似の生物学的活性を有するタンパク質をもたらす、すなわちなおも生物学的機能上等価のタンパク質が得られうることが知られている。該変化がなされる場合、ヒドロパシー指数が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内である置換が特に好ましく、±0.5以内の置換がさらに好ましい。アミノ酸などの置換は親水性に基づいて効果的になすことができることも当該技術分野で理解されるであろう。米国特許第4,554,101号は、その隣接するアミノ酸の親水性によって支配されるタンパク質の最大の局所平均(greatest local average)親水性は、タンパク質の生物学的特性と相関すると記載している。
【0105】
それゆえ、上記で概要を述べたように、アミノ酸置換は一般的に、アミノ酸側鎖置換基の相対的な類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、および大きさなどに基づく。様々な前述の特徴を考慮した典型的な置換は当業者に周知であり、下記を含む:アルギニンとリジン;グルタミン酸とアスパラギン酸;セリンとスレオニン;グルタミンとアスパラギン;およびバリン、ロイシンとイソロイシン。
【0106】
アミノ酸置換は、さらに残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性の類似性に基づいてなされてよい。例えば、負に帯電したアミノ酸はアスパラギン酸およびグルタミン酸を含み;正に帯電したアミノ酸はリジンおよびアルギニンを含み;類似の親水性値を有する非荷電極性頭部基を有するアミノ酸はロイシン、イソロイシンおよびバリンを含み;グリシンおよびアラニンを含み;アスパラギンおよびグルタミンを含み;ならびにセリン、スレオニン、フェニルアラニンおよびチロシンを含む。保存的変化を表しうるアミノ酸の他の基は下記を含む:(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr;(2)cys、ser、tyr、thr;(3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his;および(5)phe、tyr、trp、his。あるいは、変異型は非保存的変化を含有してもよい。好ましい実施態様では、変異型ポリペプチドは、5つ以下のアミノ酸の置換、欠失または付加がある点で天然配列と異なっている。さらに(あるいは)変異型は、例えば、ポリペプチドの免疫原性、二次構造およびヒドロパシー特性に最小限の影響のみを及ぼすアミノ酸の欠失または付加によって修飾されていてもよい。
【0107】
ポリペプチドはタンパク質のN末端に、翻訳と同時または翻訳後にタンパク質の移動を指示するシグナル(またはリーダー)配列を含んでよい。ポリペプチドはポリペプチドの合成、精製もしくは同定の簡便性のために、またはポリペプチドの固体支持への結合を高めるためにリンカーまたは他の配列(例えば、ポリHis)に抱合していてもよい。例えば、ポリペプチドは免疫グロブリンFc領域に抱合していてよい。
【0108】
比較のための最適な配列アライメントは、レーザージーン・スイート・オブ・バイオインフォマティクス・ソフトウェア(Lasergene suite of bioinformatics software)(DNASTAR社、マディソン、ウィスコンシン州)のメガライン(Megalign)プログラムを、デフォルトパラメーターを用いることによって行われてよい。このプログラムは、下記の参考文献に記載されたいくつかのアライメントスキームを具体化している:Dayhoff, M.O. (1978) A model of evolutionary change in proteins - Matrices for detecting distant relationships. In Dayhoff, M.O. (ed.) Atlas of Protein Sequence and Structure, National Biomedical Research Foundation, Washington DC Vol. 5, Suppl. 3, pp. 345-358; Hein J. (1990) Unified Approach to Alignment and Phylogenes pp. 626-645 Methods in Enzymology vol. 183, Academic Press, Inc., San Diego, CA; Higgins, D.G. and Sharp, P.M. (1989) CABIOS 5:151-153; Myers, E.W. and Muller W. (1988) CABIOS 4:11-17; Robinson, E.D. (1971) Comb. Theor 11:105; Santou, N. Nes, M. (1987) Mol. Biol. Evol. 4:406-425; Sneath, P.H.A. and Sokal, R.R. (1973) Numerical Taxonomy - the Principles and Practice of Numerical Taxonomy, Freeman Press, San Francisco, CA; Wilbur, W.J. and Lipman, D.J. (1983) Proc. Natl. Acad., Sci. USA 80:726-730。
【0109】
あるいは、比較のための最適な配列アライメントは、Smith and Waterman (1981) Add. APL. Math 2:482の局所的相同性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:443の相同性アライメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 2444の類似法の探索によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ処理した実行(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group (GCG), 575 Science Dr., Madison, WIのGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、およびTFASTA)によって、または検査(inspection)によって行われてよい。
【0110】
配列相同性および配列類似性のパーセントを決定するのに適切な1つの好ましいアルゴリズムの例はBLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、それぞれAltschul et al. (1977) Nucl. Acids Res. 25:3389-3402およびAltschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410に記載されている。BLASTおよびBLAST2.0は、例えば本明細書で記載しているパラメーターを用いて、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの配列相同性パーセントを決定するのに用いることができる。BLAST分析を実行するソフトウェアは、全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)を通じて公的に入手可能である。
【0111】
「相同性」は、必要であれば、最大相同性パーセントを達成するために配列を並べ、ギャップを導入した後の、非変異型配列と同一のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列変異型の残基のパーセンテージを指す。特定の実施態様では、ポリヌクレオチドおよびポリペプチド変異型は、本明細書で記載しているポリヌクレオチドまたはポリペプチドと、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%のポリヌクレオチドまたはポリペプチド相同性を有する。
【0112】
「ベクター」はシャトルベクターおよび発現ベクターを含む。典型的には、プラスミドコンストラクトは、細菌内のプラスミドにそれぞれ複製および選択のための複製の開始点(例えば、複製のColE1開始点)および選択可能なマーカー(例えば、アンピシリンまたはテトラサイクリン耐性)も含むであろう。「発現ベクター」は、細菌または真核細胞内にある、本発明の抗体断片を含む抗体の発現のための必要な制御配列または調節エレメントを含有するベクターを指す。適切なベクターは下記に開示している。
【0113】
本発明は、Bmp6に対応するポリヌクレオチド配列によってコードされたポリペプチド、ならびにその断片および変異型を含む、本発明のポリペプチドを含むヒトBMP−6抗体を含む。特定の実施態様では、本発明の抗体はBMP−6タンパク質に結合する。特定の実施態様では、本発明は、天然の立体構造、すなわち、細胞内で発現された状態の立体構造にてのみ存在するBMP−6内のエピトープに結合するBMP−6抗体を提供する。
【0114】
当業者であれば理解できるであろうが、本明細書の抗体の概要ならびに該抗体を製造および用いる方法も、個々の抗体ポリペプチド成分および抗体断片に適用する。
【0115】
本発明の抗体はポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であってよい。しかしながら、好ましい実施態様では、それらはモノクローナル抗体である。特定の実施態様では、本発明の抗体は完全ヒト抗体である。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を産生する方法は当該技術分野で周知であり、例えば、米国特許第6,824,780号に一般的に記載されている。典型的には、本発明の抗体は、ベクターおよび下記でさらに記載されている当該技術分野で利用可能な方法を用いて、組換えで産生される。ヒト抗体は、インビトロで活性型B細胞によって産生されてもよい(米国特許第5,567,610号および第5,229,275号を参照のこと)。
【0116】
ヒト抗体は、内在性免疫グロブリン産生がない中でヒト抗体の完全なレパートリー(repertoire)を産生することができる遺伝子導入動物(例えば、マウス)内で産生されてもよい。例えば、キメラの生殖細胞系列変異マウスにおける抗体重鎖連結領域(J)遺伝子のホモ接合型欠失が、内在性抗体産生の完全な阻害をもたらすと記載されている。ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子アレイを該生殖細胞系列変異マウスに導入すると、抗原チャレンジでヒト抗体の産生をもたらす。例えば、Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 (1993); Jakobovits et al., Nature, 362:255-258 (1993); Bruggemann et al., Year in Immuno., 7:33 (1993);米国特許第5,545,806号、第5,569,825号、第5,591,669号(全てGenPharm);米国特許第5,545,807号;およびWO97/17852を参照のこと。該動物は本発明のポリペプチドを含むヒト抗体を産生するように遺伝的に操作されていてよい。
【0117】
特定の実施態様では、本発明の抗体はヒトおよび非ヒトの両方に由来する配列を含むキメラ抗体である。特定の実施態様では、これらのキメラ抗体はヒト化または霊長類化(PRIMATIZED(商標))抗体である。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかの超可変領域残基および場合によってはいくつかのFR残基がげっ歯類抗体の類似の部位由来の残基によって置換されたヒト抗体である。
【0118】
本発明の文脈において、キメラ抗体は、ヒト超可変領域または1つ以上のCDRsが保持されているが、配列の1つ以上の他の領域が非ヒト動物由来の対応配列によって交換されている完全ヒト抗体も含む。
【0119】
抗体がヒト治療用途を意図する場合、軽鎖および重鎖の両方で、キメラ抗体の作成に用いられる非ヒト配列の選択は抗原性およびヒト抗非ヒト抗体(human anti-non-human antibody)応答を減少させるのに重要である。キメラ抗体が抗原に対する高結合親和性および他の有益な生物学的性質を保持していることがさらに重要である。この目的を達成するために、好ましい方法に従って、キメラ抗体は親配列の分析工程ならびに親ヒトおよび非ヒト配列の3次元モデルを用いる様々な概念的なキメラ産物によって調製される。3次元免疫グロブリンモデルは通常利用可能であり、当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の可能性のある3次元立体構造を図示および表示するコンピュータープログラムが利用可能である。これらの表示の検査は、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能性のある役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響する残基の分析を可能にする。このような方法で、FR残基を選択し、レシピエント(recipient)および移入(import)配列と組み合わせて、所望の抗体特徴、例えば標的抗原に対する親和性の上昇を達成することができる。一般的に、超可変領域残基は、抗原結合への影響に直接的および最も実質的に関与する。
【0120】
上で述べたように、抗体(または免疫グロブリン)は、重鎖の定常領域のアミノ酸配列の違いに基づいて5つの異なるクラスに分けることができる。特定のクラスの中にある全ての免疫グロブリンは非常に類似した重鎖定常領域を有する。これらの違いは、配列研究によって、またはより通常には血清学的手段によって(すなわちこれらの違いに対する抗体の使用によって)検出することができる。本発明の抗体またはその断片はいずれかのクラスであってよく、それゆえ、γ、μ、α、δ、またはε重鎖を有してよい。γ鎖はγ1、γ2、γ3、またはγ4であってよく;かつ、α鎖はα1またはα2であってよい。
【0121】
好ましい実施態様では、本発明の抗体またはその断片は、IgGである。IgGは、免疫グロブリン分子の機能の全てを行うことができるため、最も多用途の免疫グロブリンであると考えられている。IgGは血清中の主要なIgであり、胎盤を通過するIgの唯一のクラスである。IgGは補体を固定する機能をも有する(もっとも、IgG4サブクラスは有さないが)。マクロファージ、単球、PMNおよび一部のリンパ球は、IgGのFc領域についてのFc受容体を有する。全てのサブクラスが同等に強く結合するわけではない;IgG2およびIgG4はFc受容体に結合しない。PMN、単球およびマクロファージ上のFc受容体に対する結合の結果、細胞は抗原をよりうまく内部移行させることができる。IgGは食作用を高めるオプソニンである。他の型の細胞上のFc受容体に対するIgGの結合は、他の機能の活性化をもたらす。本発明の抗体はIgGサブクラスのいずれかであってよい。
【0122】
別の好ましい実施態様では、本発明の抗体またはその断片はIgEである。IgEは、抗原と相互作用する前でさえ好塩基球およびマスト細胞上のFc受容体に非常に固く結合するため、極めてまれな血清Igである。好塩基球およびマスト細胞に結合した結果、IgEはアレルギー反応に関与する。細胞上のIgEに対するアレルゲンの結合は、アレルギー症状をもたらす様々な薬理学的メディエーターの放出をもたらす。IgEは寄生蠕虫疾患における役割も果たす。好酸球はIgEについてのFc受容体を有し、IgEで覆われた蠕虫に対する好酸球の結合は寄生虫の死滅をもたらす。IgEは補体を固定しない。
【0123】
様々な実施態様では、本発明の抗体およびその断片は、κまたはλの可変軽鎖を含む。λ鎖は、例えば、λ1、λ2、λ3、およびλ4を含むサブタイプのいずれかであってよい。
【0124】
上で述べたように、本発明は、本発明のポリペプチドを含む抗体断片をさらに提供する。特定の状況では、全抗体よりもむしろ抗体断片を用いる方が有利である。例えば、より小さなサイズの断片は迅速なクリアランスを可能にし、特定の組織、例えば固形腫瘍への接近の改善をもたらしうる。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)およびFv断片;二重特異性抗体;線状抗体(linear antibodies);一本鎖抗体;ならびに抗体断片から形成される多特異的抗体を含む。
【0125】
抗体断片の産生のための様々な技術が開発されている。伝統的に、これらの断片は完全抗体のタンパク分解性の消化に由来するものであった(例えば、Morimoto et al., Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992);およびBrennan et al., Science, 229:81 (1985)を参照のこと)。しかしながら、これらの断片は現在では組換え宿主細胞によって直接的に産生することができる。Fab、FvおよびScFv抗体断片は全て大腸菌によって発現および分泌され得、それゆえこれらの断片を容易に大量産生することが可能になっている。Fab’−SH断片は大腸菌から直接的に回収することができ、化学的に共役してF(ab’)断片を形成することができる(Carter et al., Bio/Technology 10:163-167 (1992))。別のアプローチでは、F(ab’)断片は組換え宿主細胞培養液から直接的に単離することができる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含むインビボ半減期の上昇を有するFabおよびF(ab’)断片は、米国特許第5,869,046号に記載されている。抗体断片の産生のための他の技術は、当業者には明らかであろう。
【0126】
他の実施態様では、選択される抗体は単鎖Fv断片(scFv)である。WO93/16185;米国特許第5,571,894号;および第5,587,458号を参照のこと。FvおよびsFvは、定常領域を欠く完全な結合部位を有する唯一の種である。それゆえ、それらはインビボ使用の間の非特異的結合の減少に適切である。sFv融合タンパク質を構築してsFvのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかでエフェクタータンパク質の融合を産生してよい。上記のAntibody Engineering, ed. Borrebaeckを参照のこと。抗体断片は、例えば、米国特許第5,641,870号などに記載されているように「線状抗体(linear antibody)」であってもよい。該線状抗体(linear antibody)断片は、単一特異的または二重特異的であってよい。本発明の抗体はさらに単鎖抗体を含む。
【0127】
本明細書で記載している抗体は、アミノ酸配列修飾が考えられる。例えば、それは抗体の結合親和性および/または他の生物学的性質を改善するのに所望でありうる。抗体のアミノ酸配列変異型は、抗体をコードするポリヌクレオチドもしくはその鎖に適切なヌクレオチド変化を導入することによって、またはペプチド合成によって調製することができる。該修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、および/または挿入および/または置換を含む。最終コンストラクトが所望の特徴を有するならば、最終抗体に達するために、欠失、挿入、および置換のいずれかの組み合わせがなされてよい。アミノ酸変化は、抗体の翻訳後プロセスを変化させてもよく、例えばグリコシル化部位の数または位置を変化させる。本発明のポリペプチドについての上記の変化および修飾のいずれかは、本発明の抗体に含まれてよい。変異誘発に好ましい位置である抗体の特定の残基または領域の同定のための有用な方法は、Cunningham and Wells in Science, 244:1081-1085 (1989)に記載されているように「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。
【0128】
BMP−6を結合する、および/または本明細書で記載している可溶性HJV.Fcもしくは典型的な抗体をクロスブロック(cross-block)する、および/またはBMP−6活性を阻害する抗体または特異的結合剤を同定する方法も提供される。該方法は、本明細書で提供される高度に精製された、生理活性の、ヒトBMP−6(化学的に合成されまたは細菌もしくは非哺乳類細胞内で産生される)の組成物を利用してよい。
【0129】
抗体または特異的結合剤は、当該技術分野で周知の方法によって結合親和性についてスクリーニングされてよい。例えば、ゲルシフトアッセイ、ウェスタンブロット、放射性標識競合アッセイ、クロマトグラフィーによる共分画(co-fractionation)、共沈、架橋結合、およびELISAなどが用いられてよく、これらは、例えば、Current Protocols in Molecular Biology (1999) John Wiley & Sons, NYに記載されており、これは全体において参照することによって本明細書に援用される。
【0130】
標的抗原上の所望のエピトープに結合する抗体または特異的結合剤について最初にスクリーニングするために、例えばAntibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow and David Lane (1988)に記載されている所定のクロスブロッキングアッセイ(cross-blocking assay)が行われてよい。所定の競合的結合アッセイが用いられてもよく、それによって、標的が本発明の標的特異的抗体に結合するのを阻害する能力によって未知の抗体が特徴付けられる。完全な抗原、その断片、例えば細胞外ドメイン、または直線状エピトープを用いることができる。エピトープマッピングはChampe et al., J. Biol. Chem. 270: 1388-1394 (1995)に記載されている。
【0131】
インビトロ結合アッセイの1つのバリエーションでは、本発明は、(a)固定化BMP−6を候補抗体または特異的結合剤と接触させること、および(b)候補抗体または特異的結合剤とBMP−6の結合を検出することを含む方法を提供する。別の実施態様では、候補抗体または特異的結合剤が固定化され、BMP−6の結合が検出される。固定化は当該技術分野で周知のいずれかの方法を用いて達成され、例えば担体(support)、ビーズ、またはクロマトグラフィー樹脂への共有結合、および非共有結合性、高親和性相互作用、例えば抗体結合、または固定化化合物がビオチン部分を含むストレプトアビジン/ビオチン結合の使用を含む。結合の検出は、(i)固定化していない化合物上の放射性標識を用いて、(ii)非固定化化合物上の蛍光標識を用いて、(iii)非固定化化合物に対して免疫特異的な抗体を用いて、(iv)固定化化合物が結合している蛍光担体(fluorescent support)を励起させる非固定化化合物上の標識を用いて、および当該技術分野で周知かつルーチン的に実行される他の技術を用いて達成することができる。
【0132】
いくつかの実施態様では、ヒトBMP−6活性を阻害または中和する抗体または特異的結合剤は、BMP−6を抗体(または特異的結合剤)と接触させること、試験抗体(または特異的結合剤)の存在下および非存在下でBMP−6活性を比較すること、ならびに抗体(または特異的結合剤)の存在がBMP−6の活性を減少させるかどうかを決定することによって同定することができる。特定の抗体もしくは特異的結合剤、または抗体もしくは特異的結合剤の組み合わせの生物学的活性は、本明細書で記載しているいずれかを含む適切な動物モデルを用いて、インビボで評価することができる。
【0133】
特定の実施態様では、本発明の抗体はアンタゴニスト抗体であり、それが特異的または優先的に結合するポリペプチドまたは細胞の生物学的活性を部分的または完全に遮断または阻害する。他の実施態様では、本発明の抗体は増殖阻害性抗体であり、それが結合する感染細胞の増殖を部分的または完全に遮断または阻害する。別の実施態様では、本発明の抗体はアポトーシスを誘導する。さらに別の実施態様では、本発明の抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害または補体依存性細胞傷害を誘導または促進する。
【0134】
ヘモジュベリン(RGMcとしても知られる)は、50〜60%のアミノ酸相同性を有するRGMaおよびDRAGON(RGMb)を含む、反発性ガイダンス分子(Repulsive Guidance Molecules)タンパク質ファミリーのメンバーである(Samad, T.A., et al. 2004. J. Neurosci. 24:2027-2036)。ヘモジュベリンと同様に、RGMa(Babitt, J.L., et al. 2005. J. Biol. Chem.280:29820-29827)およびDRAGON(Samad, T.A., et al. 2005. J. Biol. Chem. 280:14122- 14129)もBMPシグナル伝達経路についての共受容体として機能する。
【0135】
他のBMP阻害剤は、ヘプシジン過剰による貧血のための可能性のある治療剤として機能しうる。ヒト免疫グロブリンFcのFc部分と縮合した精製された可溶性DRAGON(DRAGON.Fc)が、HJV.Fc(Babitt, J.L., et al. 2007. J Clin Invest. 117:1933-1939)と類似の様式にてヘプシジン発現のBMP誘導を阻害するかどうかを検査した。Hep3B細胞に、ヘプシジンプロモーターホタルルシフェラーゼレポーターおよびコントロールのウミシイタケルシフェラーゼベクターをトランスフェクトした。細胞を様々なBMPリガンド単独で、または徐々に濃度を上昇させたDRAGON.Fcと組み合わせて刺激した。図1Aに示すように、DRAGON.FcはBMP−2およびBMP−4に応答してヘプシジンプロモーター誘導を有意に阻害したが、BMP−5、BMP−6、およびBMP−7の阻害には効果が弱く、BMP−9は阻害しなかった。HJV.Fcと比較して、DRAGON.FcはBMP−2(図1B)およびBMP−4(図lC)に対して有意に強力であったが、BMP−6(図ID)に対しては弱かった。DRAGON.Fcは、基礎ヘプシジン発現が内在性BMP−2、BMP−4、およびBMP−6リガンドに部分的に依存する肝細胞癌由来のHepG2細胞において、内在性ヘプシジンmRNA発現も阻害した(データは示していない;Babitt, J.L., et al. 2007. J Clin Invest. 117:1933-1939)。
【0136】
マウスにおけるDRAGON.Fcの投与がヘプシジン発現および鉄代謝に影響するかどうかを検査した。DRAGON.Fcは、擬似処置コントロールマウスと比較して、定量的リアルタイムRT−PCRによって測定した肝臓のヘプシジン発現(図2A)、ウェスタンブロットによって測定した脾臓のフェロポーチン発現(図2B)、血清鉄(図2C)、血清トランスフェリン飽和度(図2D)、肝臓鉄含量(図2E)、または脾臓鉄含量(図2F)に対する効果がなかった。等価な用量のHJV.Fcは、擬似処置コントロールマウスと比較して、肝臓のヘプシジン発現を減少させ(図2A)、脾臓のフェロポーチン発現を上昇させ(図2B)、血清鉄(図2C)およびトランスフェリン飽和度(図2D)を上昇させ、肝臓鉄含量を上昇させ(図2E)、脾臓鉄含量を減少させた(図2F)。BMP−2を阻害するためにDRAGON.Fcタンパク質を注射されたマウスの血清中に十分な活性型DRAGON.Fcが存在していることを確認するために、我々はこれらのマウス由来の血清がルシフェラーゼアッセイによって測定されるヘプシジンプロモーター活性のBMP−2誘導を阻害する能力を検査した。擬似処置コントロールマウス由来の血清は、ヘプシジンプロモーター活性のBMP−2誘導を約30%阻害したが(図2G、バー3と2を比較のこと)、これはおそらくNoggin(23)などの既知の分泌型BMP阻害剤の存在のためであろう。DRAGON.Fc処置マウス由来の血清は、擬似処置コントロールマウス由来の血清と比較して有意に強力であり、ヘプシジンプロモーター活性のBMP−2誘導を70%以上阻害した(図2G、バー4)。
【0137】
DRAGON.Fcは、インビトロでBMP−2およびBMP−4の阻害剤としてHJV.Fcと比較してより効力が強いにもかかわらず、インビボでヘプシジン発現および鉄代謝に対する効果がなく、一方、DRAGON.FcはHJV.Fcと比較してBMP−6を阻害する効力が弱いため、BMP−6はヘプシジン発現および鉄代謝の重要な内在性制御因子であるかもしれない。マウスにおける特異的中和BMP−6抗体の投与がヘプシジン発現および鉄代謝に影響するかどうかを検査した。図3Aに示すように、BMP−6中和抗体は、Hep3B細胞においてヘプシジンプロモータールシフェラーゼレポーターのBMP−6活性化を選択的に阻害したが、BMP−2、BMP−4、BMP−5、またはBMP−9に対する有意な効果はなかった。BMP−6抗体は高濃度でBMP−7に対するいくらかの阻害活性を示したが、BMP−6と比較して有意に弱かった(図3A)。図3Bに示すように、BMP−6抗体で3日間処置したマウスは、擬似処置コントロールマウスと比較して、定量的リアルタイムRT−PCRによって測定した場合に、肝臓のヘプシジン発現を有意に約50%減少させた。さらに、BMP−6抗体処置マウスは、擬似処置コントロールと比較して、血清鉄およびトランスフェリン飽和度を有意に上昇させた(図3CおよびD)。
【0138】
ヘプシジン発現および鉄代謝の制御における内在性BMP−6の重要性は、8週齢のBmp6欠損マウスにおいて検査することによって確認されたが、これは以前にソロウェイ(Solloway)ら(Solloway MJ, et al. 1998. Dev Genet. 22:321-39)によってなされたものである。これらのBmp6欠損マウスは発生中に骨形成のいくらかの軽度の遅延を有するものの、野生型のコントロールマウスと比較して他の明白な欠損がないと記載されているが、Bmp6欠損マウスは定量的リアルタイムRTPCRによって測定すると肝臓のヘプシジン発現においておよそ10倍の減少を示し(図4A)、ウェスタンブロットによって測定すると脾臓のフェロポーチン発現において2.3倍の上昇を示した(図4BおよびC)。さらに、Bmp6欠損マウスは血清鉄を有意に上昇させ、血清トランスフェリン飽和度が100%近くになった(図4DおよびE)。野生型のコントロールと比較すると、Bmp6欠損マウスでは肝臓鉄含量は20倍以上上昇したが(図4FおよびH)、一方、脾臓鉄含量は4倍減少した(図4G)。8週齢のBmp6欠損マウスの肝臓における鉄過剰状態の程度は、同じような年齢のHfe2−Iマウスで報告されているものに匹敵するようである(Huang, F.W., et al. J. Clin. Invest. 115:2187-2191; Niederkofler, V., Salie, R., Arber, S. 2005. J Clin Invest. 115:2180-6)。それゆえ、Bmp6欠損マウスは、BMP共受容体ヘモジュベリンの欠損のため、若年性ヘモクロマトーシスと類似した表現型を有する。
【0139】
次に、外因性のBMP−6がインビボでヘプシジン発現および鉄代謝を制御する能力を検査した。マウスに外因性のBMP−6リガンドを250および1000μg/kgでIP投与によって単回注射した。定量的リアルタイムRT−PCRによって測定すると、BMP−6投与は肝臓のヘプシジン発現を有意に上昇させた。BMP−6投与は血清鉄(図5B)および血清トランスフェリン飽和度(図5C)の用量依存性の減少をももたらした。
【0140】
これらの結果は、インビボでの外因性BMP−6投与はヘプシジン発現を正に制御し、血清鉄を減少させるが、一方、Bmp6遺伝子のノックアウトまたはBMP−6抗体を用いた内在性BMP−6の選択的阻害は、ヘプシジン発現を阻害し、血清鉄を上昇させ、最終的にBMP共受容体Hfe2の突然変異による遺伝性ヘモクロマトーシスと類似した表現型をもたらすことを実証するものである。これらのデータは、ヘプシジン発現の主要な内在性制御因子としてのBMP−6の重要性を支持するものである。
【0141】
多数のBMPリガンド、例えばBMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、およびBMP−9がインビトロでヘプシジンを制御することが示されている(Babitt, J.L., et al. 2006. Nat. Genet. 38:531-539; Babitt, J.L., et al. 2007. J Clin Invest. 117:1933-1939; Wang, R.H., et al. 2005. Cell Metab.2:399-409; Truksa, J., et al. 2006. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 103:10289-10293)。BMP−7を除くこれらのリガンドの全てのメッセンジャーRNAは、ヒト肝臓内で内在的に発現される(Xia Y, et al. 2008. Blood. 1115 195-204)。ヘモジュベリンはBMP−2およびBMP−4リガンドに直接的に結合することが以前に示されたが(Babitt, J.L., et al. 2006. Nat. Genet. 38:531-539)、ヘモジュベリンの可溶性バージョン、HJV.Fcは、BMP−2およびBMP−4活性を阻害する能力よりもさらに強力にヘプシジン活性のBMP−6活性化を阻害する(Babitt, J.L., et al. 2007. J Clin Invest. 117:1933-1939)。さらに、siRNAまたは中和抗体による内在性BMP−6の阻害は、ヘプシジン発現のヘモジュベリン媒介誘導を阻害する(Xia Y, et al. 2008. Blood. 1115 195-204)。これらのデータは、BMP−6がヘモジュベリンについてのリガンドであることを示唆するものである。
【0142】
鉄代謝におけるBMP−6の役割についてのさらなるサポートは、Bmp6転写が鉄に富む食事に応答して上昇し、鉄が乏しい食事に応答して減少することを報告する最近の研究に見ることができる(Kautz, L., et al. 2008. Blood. 112:1503-9)。その研究では、Bmp2転写は極度の鉄過剰状態下で若干上方制御されたが、Bmp4は変化しなかった(同文献)。ヘモジュベリンは確かにBMP−2およびBMP−4の両方に結合するが、我々の研究が示したように、BMP−2およびBMP−4を選択的に阻害するDRAGON.Fcがヘプシジン発現を阻害し、全身の鉄バランスを調節する能力を有さないことは、この文脈においてBMP−2およびBMP−4リガンドがあまり重要ではない可能性を示唆するものである。発明者による検査でも、有意な鉄過剰状態にもかかわらずBmp6欠損マウスの肝臓におけるBmp2およびBmp4転写レベルにおいて何ら変化を発見しなかった(データは示していない)。しかしながら、データは、鉄代謝におけるBMP−2およびBMP−4を含む他のBMPリガンドについて、いずれかの可能な役割を断定的に除外するものではない。
【0143】
データは、選択的BMP−6阻害剤がヘプシジン過剰による炎症の貧血を治療するための効果的な薬剤となりうることを明確に示唆している。Bmp6欠損マウスにおいていずれかの他の注目すべき表現型が欠如していることは、より選択的な阻害剤がオフターゲットの効果が少なくてよりよく耐えられうることを示唆するものである。さらに、BMP−6様アゴニストは、現在の治療に抵抗性を示す患者の鉄過剰疾患を扱う別の治療戦略となりうる。BMP−6突然変異を有するヒト患者についてはいまだ記載されていないが、データはBMP−6突然変異またはBMP−6遺伝子変異型が遺伝性ヘモクロマトーシスまたは疾患浸透度の修飾因子の別の原因として機能しうることをも示唆するものである。
【0144】
さらに詳述することなく、当業者は前述の記載を用いて、本発明を最大限に利用することができると考えられる。以下の実施例は、説明目的にのみ提供されているのであって、いかなる場合であっても本開示の残部を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0145】
実施例1 cDNAの調製
コドンを最適化したDRAGON.FcをコードするcDNAは、予測される(predicted)GPIアンカーの上流のヒトDRAGONタンパク質配列(UniProtKB/Swiss-Prot accession Q6NW40、アミノ酸1〜409)ならびにヒトIgGl Fc配列(Signal pIg plusベクター(R&Dシステムズ社)およびGenBank AF150959由来)に基づいて、ゲンスクリプト社(ピスカタウェイ、ニュージャージー州08854)によって製造されたものである。
【0146】
実施例2 DRAGON.FcおよびHJV.Fcの産生および精製
DRAGON.FcをコードするcDNAは、メーカーの使用説明書に従って293フェクチン(インビトロジェン社)を用いて、フリースタイル293−F細胞(インビトロジェン社)にトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞をGIBCOフリースタイル293発現培地(インビトロジェン社)中、加湿した8%COインキュベーター内にて37℃で、110RPMで振盪しながら培養した。トランスフェクションから7日後、遠心分離によって細胞をペレット状にし、Babbitt, J.L., et al. 2005. J. Biol. Chem.280:29820-29827に記載されているように、Hi−Trap rProtein A FFカラム(アマシャム・バイオサイエンシズ社)を用いるワンステップタンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーによって培地からDRAGON.Fcを精製した。HJV.FcはBabitt, J.L., et al. 2007. J Clin Invest. 117:1933-9に記載されているようにして産生した。純度を決定し、タンパク質濃度を定量化するために、DRAGON.FcおよびHJV.Fcを還元SDS−PAGEで分析し、続いてバイオ−セーフ・クマシーブルー染色(バイオ・ラッド社)、ならびに抗HJV抗体(Babitt, J.L., et al. 2006. Nat. Genet. 38:531-539)、抗DRAGON抗体(Samad, T.A., et al. 2004. J. Neurosci. 24:2027-2036)、およびヤギ抗ヒトFc抗体(ジャクソン・イムノリサーチ・ラボラトリーズ)によるウェスタンブロットを行った(Babitt, J.L., et al. 2006. Nat. Genet. 38:531-539; Samad, T.A., et al. 2004. J. Neurosci. 24:2027-2036に記載されている)。ウシ血清アルブミンタンパク質アッセイ(ピアース社)によってタンパク質濃度も定量化した。
【0147】
実施例3 BMP−6の産生
精製された組換えヒトBMP−6を以前に記載されたようにして調製した(Simic, P., et al.2006. J Biol Chem. 281:25509-21)。凍結乾燥したBMP−6を動物注射用の20mM酢酸ナトリウム、5%マンニトール溶液、pH4.0に溶解した。
【0148】
実施例4 ルシフェラーゼアッセイ
肝細胞癌由来Hep3B細胞中でのヘプシジンプロモータールシフェラーゼレポーターアッセイは、以前に記載されたデュアルルシフェラーゼレポーターアッセイシステム(プロメガ社)を用いて(Babitt, J.L., et al. 2006. Nat. Genet. 38:531-539; Babitt, J.L., et al. 2007. J Clin Invest. 117:1933-9)、下記の修飾を施して行った。ヘプシジンプロモータールシフェラーゼレポーター(Babitt, J.L., et al. 2006. Nat. Genet. 38:531-539)およびコントロールのウミシイタケルシフェラーゼベクター(pRL−TK)をトランスフェクトしたHep3B細胞を、1%FBSを6時間補充したL−グルタミン(インビトロジェン社)入りのa−MEM中で血清不足にし、続いて25ng/mLのBMP−2(Vicki Rosen氏(Harvard School of Dental Medicine)のご厚意によって提供された)、BMP−4、BMP−6、もしくはBMP−7、50ng/mLのBMP−5または5ng/mLのBMP−9(R&Dシステムズ社)で、単独または0.2〜25μg/mLのDRAGON.Fc、HJV.Fcもしくは抗BMP−6抗体と共に16時間刺激した。BMPリガンドの相対的濃度は、以前に記載されたように、同程度のヘプシジンプロモータールシフェラーゼ活性を誘発するように選択した(Babitt, J.L., et al. 2007. J Clin Invest. 117:1933-9)。
【0149】
実施例5 動物
全ての動物プロトコールは、マサチューセッツ・ジェネラル・ホスピタルの動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)ならびにザグレブ大学医学部(University of Zagreb School of Medicine)の動物管理委員会(Institutional Animal Care Committee)および科学技術部(Ministry of Science and Technology)によって承認された。8週齢の129S6/SvEvTacマウス(タコニック社)をマサチューセッツ・ジェネラル・ホスピタルのげっ歯類施設で飼育し、380ppmの鉄を含むプロラボ5P75イソプロRMH3000ダイエットで飼育した。混合129Sv/C57バックグラウンドのBmp6欠損マウス(Solloway MJ, et al. 1998. Dev Genet. 22:321-39)は、Elizabeth J. Robertson氏のご厚意によって提供され、ザグレブ大学医学部(University of Zagreb School of Medicine)で飼育し、標準的な180mg/kgの鉄を含むGLPダイエット(4RF21、ムセドラ、イタリア)で維持した。
【0150】
DRAGON.FcおよびHJV.Fc実験のために、8週齢の129S6/SvEvTacマウス(タコニック社)にDRAGON.Fcを用量5もしくは10mg/kgで、HJV.Fcを用量5もしくは7mg/kgで、または等量の等張生理食塩水を毎週3回、3週間腹腔内注射した。BMP−6抗体注射実験のために、8週齢の129S6/SvEvTacマウスにモノクローナル抗ヒトBMP−6抗体(R&Dシステムズ社)を10mg/kgで、または等張生理食塩水を3日間毎日、腹腔内注射した。最後の注射から12時間後、マウスを屠殺し、鉄パラメーターおよびヘプシジン発現の測定用に血液および肝臓を収集した。
【0151】
BMP−6注射実験のために、8週齢の129S6/SvEvTacマウスにBMP−6を250もしくは1000mcg/kgまたは等量のビヒクルのみ(20mM酢酸ナトリウム、5%マンニトール溶液、pH4.0)を腹腔内注射した。注射から6時間後、マウスを屠殺し、鉄パラメーターおよびヘプシジン発現測定用に血液、肝臓、および脾臓を収集した。
【0152】
Bmp6欠損マウス実験のために、5匹の8週齢のBmp6欠損マウスおよび5匹の野生型のコントロールマウスを屠殺し、血液、肝臓、および脾臓を鉄パラメーターおよびヘプシジン発現の測定用に収集した。
【0153】
実施例6 定量的リアルタイムRT−PCR
全RNAは、メーカーの使用説明書に従ってRNeasyキット(キアゲン社)を用いてマウス肝臓から単離した。RPLl9に対するHampl mRNA転写のリアルタイム定量化は、以前に記載されたように2ステップの定量的リアルタイムRT−PCRを用いて行った(Babitt, J.L., et al. 2006. Nat. Genet. 38:531-539; Babitt, J.L., et al. 2007. J Clin Invest. 117:1933-9; Xia, Y., et al. 2007. J Biol Chem. 282:18129-40)。野生型マウスに対するBmp6欠損マウスの肝臓由来のBmp2、Bmp4、およびBmp6 mRNAのリアルタイム定量化も、以前に記載されたプライマーを用いて行った(Kautz, L., et al. 2008. Blood. 112:1503-9)。
【0154】
実施例7 ウェスタンブロット
フェロポーチンアッセイのために、脾臓膜標本を以前に記載されたようにして調製した。タンパク質濃度はBCAアッセイ(ピアース社)によって決定した。lxラエムリ緩衝液中、室温で30分間可溶化後、プレキャストNuPAGE Novex4〜12%ビス−トリスゲル(インビトロジェン社)を用いてサンプル当たり20μgのタンパク質をSDS−PAGEによって分離し、PDVF膜上に移した(液体輸送法)。0.1%ツイーンを含有するトリス緩衝生理食塩水(TBS)(TBS−T)中の10%脱脂乳でブロットを飽和し、2.5μg/mlのフェロポーチン抗体(5%脱脂乳を含有するTBS−T中で希釈した)を用いて4℃で一晩プローブした(Knutson, M.D., et al. 2005. Proc Natl Acad Sci U S A .102:1324-8)。TBS−Tで洗浄後、ブロットを1:5000希釈のペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギIgG(シグマ社)で1時間インキュベートした。検出は高感度化学発光ECLB法(パーキンエルマー社)で行った。Babitt, J.L., et al. 2006. Nat. Genet. 38:531-539に記載されているように、ブロットを剥がし、ローディングコントロールとしてのβ−アクチン発現用に再プローブした。化学発光は、IPLabスペクトルソフトウェアバージョン3.9.5 r2(スキャナリティックス社)を用いて定量化した。
【0155】
実施例8 血清および組織鉄測定
以前に記載されたようにして血清を収集し、鉄濃度および不飽和鉄結合能を分析した。総鉄結合能およびトランスフェリン飽和度を、以前に記載されたようにして計算した。肝臓および脾臓組織について、非ヘム鉄の定量的測定を以前に記載されたようにして行った(Babitt, J.L., et al. 2007. J Clin Invest. 117:1933-9を参照のこと)。
【0156】
実施例9 組織学
Bmp6欠損マウスおよび野生型マウス由来の肝臓を2%パラホルムアルデヒドにて固定し、続いて2%エタノールで固定し、パラフィンに包埋した。5pmのセクションをキシレン中で脱パラフィンし、蒸留水に水和させた。次いでセクションを等量の2%フェロシアン化カリウム(エレクトロン・マイクロスコピー・サイエンシズ社、ハットフィールド、ペンシルベニア州)および2%塩酸を含む染色溶液中に、室温で60分間置いた。次いでセクションを蒸留水でリンスし、サフラニン0.2%(エレクトロン・マイクロスコピー・サイエンシズ社、ハットフィールド、ペンシルベニア州)中で2分間対比染色し、1%酢酸で洗浄し、その後95%アルコール、無水アルコールで脱水し、キシレンでクリアにし、DPXにマウントした。
【0157】
実施例10 統計学
両側スチューデントt検定でP<0.05である場合に統計的有意性があると決定した。
【0158】
実施例11 DRAGON.Fcはヘプシジン発現のBMP誘導を選択的に阻害する
図1. Hep3B細胞にヘプシジンプロモータールシフェラーゼレポーターおよびコントロールのウミシイタケルシフェラーゼベクター(pRL−TK)をトランスフェクトした。示しているように、トランスフェクションから48時間後、細胞をBMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、またはBMP−9リガンドの非存在下または存在下、単独または0.2〜25μg/mLの精製DRAGON.Fc(Dra.Fc)もしくはHJV.Fcと組み合わせて16時間インキュベートした。細胞溶解物のルシフェラーゼ活性をアッセイし、トランスフェクション効率を求めるために、相対的ルシフェラーゼ活性をウミシイタケルシフェラーゼコントロールに対するホタルルシフェラーゼの比率として計算した。結果は、BMPリガンド単独で処理した細胞と比較したDRAGON.FcまたはHJV.Fcと組み合わせてBMPリガンドで処理した細胞についての相対的ルシフェラーゼ活性のパーセント減少の平均値+/−標準偏差として報告している(群あたりn=2〜4)。正確なP値を示している。(1A)BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、およびBMP−9リガンドに対するDRAGON.Fcの効果。(1B−1D)BMP−2(1B)、BMP−4(1C)およびBMP−6(1D)の阻害についてのDRAGON.FcとHJV.Fcの直接比較を示している。
【0159】
実施例12 マウスにおけるDRAGON.Fc投与はヘプシジン発現または鉄代謝に影響しない
図2. 8週齢の雄性129S6/SvEvTacマウスに、精製可溶性DRAGON.Fc(Dra.Fc)を、5(n=3)もしくは10mg/kg(n=4)で、または等量の等張生理食塩水(コントロール(Con)、n=7)を毎週3回3週間腹腔内注射した。ポジティブコントロールとして別の群のマウスに、等量のHJV.Fcを、5(n=3)もしくは7mg/kg(n=4)で、または等量の等張生理食塩水(コントロール(Con)、n=7)を毎週3回3週間腹腔内注射した。DRAGON.FcおよびHJV.Fc投与の両方の結果は類似しており、それゆえ組み合わせて1つの群にした。(A)全肝臓RNAを単離し、内部コントロールとしてのRPLl9mRNAに対するヘプシジンmRNAについての定量的リアルタイムRT−PCRによって分析した。(B)ウェスタンブロットによって脾臓膜標本のフェロポーチン(FPN)発現を分析した。ブロットを剥がし、ローディングコントロールとしての抗p−アクチン抗体でプローブした。p−アクチン発現に対するフェロポーチン発現について、化学発光をIPLabスペクトルソフトウェアによって定量化した。(CおよびD)血清鉄(C)およびトランスフェリン飽和度(D)の測定。(EおよびF)肝臓(E)および脾臓(F)組織鉄含量の定量化。(G)図1と同様にHep3B細胞にヘプシジンプロモータールシフェラーゼレポーターおよびpRL−TKをトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後、細胞を1ng/mLのBMP−2の非存在下または存在下、単独または擬似処置コントロールマウス由来(コントロール(Con)、n=4)もしくはDRAGON.Fc処置マウス由来(Dra.Fc、n=4)の20%のプール血清と組み合わせて16時間インキュベートした。相対的ルシフェラーゼ活性は図1と同様にして計算した。結果は平均値+I−標準偏差として報告している。正確なP値を示している。
【0160】
実施例13 特異的中和BMP−6抗体はインビボで肝臓のヘプシジン発現を阻害し、血清鉄およびトランスフェリン飽和度を上昇させる。
図3. (A)図1と同様にして、Hep3B細胞にヘプシジンプロモータールシフェラーゼレポーターおよびコントロールのpRL−TKをトランスフェクトした。示しているように、トランスフェクションから48時間後、細胞をBMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、またはBMP−9リガンドの非存在下または存在下、単独または0.2〜25μg/mLの中和BMP−6抗体と組み合わせてインキュベートした(群あたりn=2)。相対的ルシフェラーゼ活性は図1と同様にして計算した。(B−D)8週齢の雄性129S6/SvEvTacマウスに、中和BMP−6抗体を10mg/kg(a−BMP−6、n=4)で、または等量の等張生理食塩水(コントロール、n=4)を毎日3日間腹腔内注射した。(B)全肝臓RNAを単離し、内部コントロールとしてのRPLl9mRNAに対するヘプシジンmRNAについて定量的リアルタイムRT−PCRによって分析した。(CおよびD)血清鉄(C)およびトランスフェリン飽和度(D)の測定。結果は平均値+I−標準偏差として示している。正確なP値を示している。
【0161】
実施例14 Bmp6欠損マウスは肝臓のヘプシジン発現の減少、脾臓フェロポーチン発現の上昇、血清鉄およびトランスフェリン飽和度の上昇、肝臓鉄含量の上昇および脾臓鉄含量の減少を示す。
図4. 8週齢の雄性Bmp6欠損マウス(n=5)および系統を一致させた(strain matched)野生型コントロールマウス(WT、n=5)について、図2に記載されているようにして、(A)定量的リアルタイムRT−PCRによってRPL19mRNA発現に対するヘプシジンmRNA発現を分析し、(BおよびC)ウェスタンブロット(C)および続くIPLabスペクトルソフトウェアを用いた定量化(B)によってp−アクチン発現に対するフェロポーチン発現を分析し、(D)血清鉄、(E)血清トランスフェリン飽和度、(F)肝臓鉄含量、(G)ならびに脾臓鉄含量を分析した。(H)野生型マウス(WT)およびBmp6欠損マウス肝臓の組織鉄のペルルスのプルシアンブルー染色。本来の倍率x10。結果は平均値+/−標準偏差として示している。正確なP値を示している。
【0162】
実施例15 マウスにおけるBMP−6投与はヘプシジンmRNA発現を上昇させ、血清鉄を減少させる
図5. 8週齢の雄性129S6/SvEvTacマウスにBMP−6を250μg/kg(n=6)もしくは1000μg/kg(n=7)で、または等量のビヒクル単独(n=6)を腹腔内注射した。注射から6時間後、血液および肝臓を収集した。(A)全肝臓RNAを単離し、内部コントロールとしてのRPL19mRNAに対するヘプシジンmRNAについて定量的リアルタイムRT−PCRによって分析した。(BおよびC)血清鉄(B)およびトランスフェリン飽和度(C)の測定。結果は平均値+/−標準偏差として報告している。正確なP値を示している。
【0163】
実施例16.貧血のマウスモデルに用いられる腹腔内注射用のウシ流産菌の調製
ウシ流産菌(BA)は、マウスに腹腔内(IP)注射された場合に炎症性貧血(inflammatory anemia)を誘発するために用いられる。結果として生じる貧血は、通常は7日以内に発症し、ヘモグロビンレベルの2〜3g/dLの低下によって特徴付けられる。該貧血は典型的には注射後28日間続く。28日後、マウスは回復し始め、ヘモグロビンレベルが上昇し始めるのが見られる。このプロトコールは、1)フェノールを含む(phenolized)緩衝液からBA粒子をどのようにして洗浄および分離し、2)10匹のマウスについて200μL容量の5x10粒子/マウスのIP送達用のBAをどのようにして調製するのかを記載するものである。
【0164】
5x10ストックは下記の方法で洗浄し、調製される。第1に、60mLボトルを冷蔵庫から取り出し、完全に混合する。次いで500mLのBAを500mLの遠心分離ボトルに移す。次いでこれらを、超遠心機を用いて10,000rpmで15分間遠心分離する。上清を除去し、100mLのPBSに再懸濁する。懸濁液は5x10粒子/mLとなる。等分して−80℃で冷凍し、典型的には1mL分割量に等分する。
【0165】
注射用の5x10粒子を下記の方法で調製する(10匹のマウスについての例)。200μL/マウスが注射されるように開始濃度は2.5x10粒子/mLである必要がある。PBSを用いてストックを2倍希釈する。例えば、10匹のマウスx0.200μL=2mL+20%過剰量=2.2mLの2.5x10粒子/mLが必要となる。1.1mLのBAストック+1.1mLのPBS。
【0166】
材料
BA:60mLボトルに入ったウシ流産菌リング試験抗原(菌株1119−3)は、米国農務省、動植物衛生検査部、国立獣医学検査機関(エームズ、アイオワ州)から購入することができる。ブルセラ症リング試験抗原は、フェノールを含む(phenolized)緩衝液中の、死滅し、染色されたウシ流産菌1119−3細胞株の懸濁液を含有する。各60mLボトルの濃度はおよそ10粒子/mLである。抗原は4℃で保存する。
希釈剤:DPBS(ギブコ社)を洗浄剤、担体およびコントロールに用いた。
【0167】
結果
BMP−6に特異的に結合する抗体を、ウシ流産菌を腹腔内注射したマウスに投与する。ウシ流産菌の腹腔内注射によるマウスの炎症性貧血の症状を減少または消滅させる抗体は、哺乳類の貧血の治療に用いられるのに適切である。
【0168】
実施例17.BMP−6上の複数の部位への結合は、肝臓のヘプシジン発現を阻害し、血清鉄およびトランスフェリン飽和度を上昇させる。
上記実施例13にて用いられたHJVおよびBMP−6抗体が、同一部位でBMP−6に結合するかどうかを確認するためにプルダウンアッセイを行った。
【0169】
hBMP6(1μg)+/−hHJV.His(mAbに対して5xモル比の場合は7.1μg、または25xモル比の場合は35.5μg)を、500μlの生理食塩水溶液中、4℃で一晩インキュベートした。次いで、2.5μgのmAb(mAb507、R&Dシステムズ社)を1時間加え、その後タンパク質Aビーズでプルダウンした。次いでサンプルをSDS−PAGEゲル4〜12%に流し、PVDF膜に移した。図6に示すウェスタンブロット分析は、一次抗体としてウサギポリクローナル抗BMP6抗体を用い、二次Abとしてヤギ抗ウサギIgG−HRPを用いて行った。ブロットはECL試薬に3分間さらすことによって検出した。BMP6タンパク質バンドは矢印で示し、BMP6を含有するサンプルにのみ存在しているが(レーン2、3、4、5、8および9)、BMP6を含有しないサンプルには存在していない(レーン6、7および10)。
【0170】
レーン:
1.ブループラス2プレステインドMWラダーを参照のこと
2.hBMP6+mAb混合物のプレIP分割量(Pre-IP aliquot)
3.hBMP6+mAbのIP
4.hBMP6+mAb+5xhHJV.HisのIP
5.hBMP6+mAb+25xhHJV.HisのIP
6.mAbのみのIP
7.ブランク
8.hBMP6+mAb+5xhHJV.HisのプレIP分割量
9.hBMP6+mAb+25xhHJV.HisのプレIP分割量
10.mAbのプレIP分割量
【0171】
結果:
図6のレーン3に示すように、抗BMP6 mAb(R&Dシステムズ社)はhBMP6をプルダウンした。図6のレーン4および5に示すように、モル過剰hHJV.Hisの添加はプルダウンを阻害しなかった。これに基づいて、我々はhHJV.Hisおよび抗BMP6はhBMP6上の異なる部位に結合しうると認識するに至った。次に、hHJV.hisもまたプルダウンされるかどうかを調べるために、その存在についてブロットをチェックした。
【0172】
図7は図6に示したものと同一のブロットを示し、剥がした後、mAb 24C8−C10(HJVに対して特異的である)で再プローブしてhHJV.Hisを可視化した。図7に示すように、抗BMP6 mAb(R&Dシステムズ社)はhBMP6の存在下、hHJV.Hisタンパク質をプルダウンした(レーン4および5)。それゆえ、我々はhHJV.hisおよび抗BMP6はhBMP6上の非重複部位に結合するという結論に至ったが、これは非自明な結果である。
【0173】
実施例18.BMP−6に対する抗体の産生に使用するためのhBMP−6ペプチド
hBMP6ペプチドTQSQDVARVSSASDYに対する抗体を作成した。
【0174】
TQSQDVARVSSASDY(配列番号3)として定義される成熟hBMP6内の特異的ペプチドドメインに対する抗体を産生することが可能であることを実証するためにウェスタンブロット分析アッセイを行った。
【0175】
ヤギポリクローナル抗hBMP6抗体(RアンドDシステムズAF507)は、システイン残基によってhBMP6ペプチドに抱合したウシ血清アルブミン(BSA)(BSA−C−TQSQDVARVSSASDY(配列番号4))を特異的に検出する(図8、レーン1)。
【0176】
500xモル過剰の非抱合hBMP6ペプチドとの競合は、BSA−C−TQSQDVARVSSASDY(配列番号4)に対するポリクローナル抗体の結合を排除した(図8、レーン2)。
【0177】
これは、TQSQDVARVSSASDY(配列番号3)として定義される成熟hBMP6内の特異的ペプチドドメインに対する抗体を産生することが可能であることを示すものである。
【0178】
参考文献
下記の参考文献のそれぞれは、全体において本明細書で説明しているかの如く、参照することによって本明細書に援用される:
1.Roetto, A., et al. 2003. Nat. Genet. 33:21-22.
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30.Andriopoulos, B. et al 2009. Nat Genet. 41(4):482-7.
【0179】
下記の特許文献のそれぞれは、全体において参照することによって本明細書に援用される:2008年4月9日に出願されたPCT出願 PCT1/US08/059753;2007年8月16日に出願された米国特許出願第11/884,509号;2005年8月2日出願された米国特許出願第11/195,205号;および2003年4月17日に出願された米国特許出願第10/419,296号。
【0180】
本明細書で引用している全ての出版物および特許出願は、個々の出版物または特許出願が参照することによって援用されるために具体的かつ個々に示されているかの如く、参照することによって本明細書に援用される。
【0181】
前述の発明は理解を明確にする目的のために説明および例によって多少詳しく記載されているが、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく特定の変化および修飾がそれになされてよいことは、本発明の教示を考慮して当業者であれば容易に理解できるであろう。
【図1−1】

【図1−2】

【図2−1】

【図2−2】

【図2−3】

【図3−1】

【図3−2】

【図4−1】

【図4−2】

【図4−3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における鉄の恒常性を制御する方法であって、該対象における鉄の恒常性を変化させるのに十分なレベルでBMP−6シグナル伝達を調節するのに十分な医薬組成物の有効量を該対象に投与する工程を含む方法。
【請求項2】
組成物の投与がBMP−6シグナル伝達を減少させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
組成物がBMP−6に結合することができる試薬を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
試薬が残基TQSQDVARVSSASDY(配列番号3)内でBMP−6に結合する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
試薬が抗体である、請求項3記載の方法。
【請求項6】
抗体が、可溶性ヒトヘモジュベリンタンパク質によるBMP−6結合を競合的に阻害する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
可溶性ヒトヘモジュベリンタンパク質がHJV.FcまたはHJV.Hisである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
抗体が、可溶性ヒトヘモジュベリンタンパク質が結合するドメインと異なるBMP−6上のドメインに結合する、請求項5記載の方法。
【請求項9】
可溶性ヒトヘモジュベリンタンパク質がHJV.FcまたはHJV.Hisである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
化合物の投与が、ヘプシジン発現のヘモジュベリン媒介誘導を減少させる、請求項2〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
試薬が、ヘモジュベリンとBMP−6の間の相互作用を阻害するのに十分な量にて投与される、請求項3〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
試薬が、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−7またはBMP−9よりもヒトBMP−6を好んで阻害する、請求項2〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
試薬が、BMP−7よりも少なくとも5倍高い親和性でBMP−6に結合する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
組成物の投与が対象の血清鉄レベルの上昇をもたらす、請求項2記載の方法。
【請求項15】
組成物の投与が対象の血清トランスフェリン飽和度の上昇をもたらす、請求項2記載の方法。
【請求項16】
組成物の投与がBMP−6シグナル伝達を上昇させる、請求項1記載の方法。
【請求項17】
組成物が血清BMP−6レベルを上昇させることができる試薬を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
試薬がBMP−6発現レベルを上昇させる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
対象が、遺伝性ヘモクロマトーシスの1つ以上の症状であって、血清鉄レベルの上昇、血清トランスフェリン飽和度の上昇、ヘプシジン発現の減少、脾臓鉄貯蔵の減少、フェロポーチン発現の上昇、および組織鉄過剰からなる群から選択される1つ以上の症状を有する、請求項16記載の方法。
【請求項20】
試薬が、遺伝性ヘモクロマトーシスと関連する少なくとも1つの症状を軽減するのに十分な量にて投与される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
組成物の投与がBMP−6の発現レベルを減少させる、請求項2記載の方法。
【請求項22】
組成物が、BMP−6遺伝子発現を阻害することができる試薬を含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
試薬が、siRNA、miRNA、またはアンチセンスRNAである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
BMP−6の発現の減少が、対象の血清鉄レベルまたは血清トランスフェリン飽和度を上昇させるのに十分である、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
BMP−6に特異的に結合する抗体を含む、鉄欠乏症の治療のための組成物。
【請求項26】
抗体が、残基TQSQDVARVSSASDY(配列番号3)内でBMP−6に結合する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
抗体が、可溶性ヒトヘモジュベリンタンパク質によるBMP−6結合を競合的に阻害する、請求項25記載の組成物。
【請求項28】
可溶性ヒトヘモジュベリンタンパク質がHJV.FcまたはHJV.Hisである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
抗体が、可溶性ヒトヘモジュベリンタンパク質が結合するドメインと異なるBMP−6上のドメインに結合する、請求項25記載の組成物。
【請求項30】
可溶性ヒトヘモジュベリンタンパク質がHJV.FcまたはHJV.Hisである、請求項29記載の方法。
【請求項31】
抗体が、BMP−6へのHJV.Fc結合を25%〜100%減少させるのに十分な量にて存在する、請求項25記載の組成物。
【請求項32】
抗体が、R&Dシステムズ社のモノクローナル抗体mAb507、R&Dシステムズ社のポリクローナル抗体、およびサンタクルズ社のポリクローナル抗体からなる群から選択される、請求項25記載の組成物。
【請求項33】
抗体がヒト抗体である、請求項25記載の組成物。
【請求項34】
該抗体が、キメラ化抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、単鎖Fv断片、F(ab’)断片、Fd、ドメイン抗体(dAb)、二重特異性抗体、マキシボディー(maxibody)、およびナノボディー(nanobody)からなる群から選択される、請求項25記載の組成物。
【請求項35】
請求項25の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項36】
調節制御配列(regulatory control sequence)に操作可能に結合した(operably linked)請求項35の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項37】
請求項30のベクターまたは請求項36の核酸分子を含む宿主細胞。
【請求項38】
抗体を産生するために請求項37の宿主細胞を用いる方法であって、請求項の宿主細胞を適切な条件下で培養することにより、抗体を産生するために核酸を発現させることを含む方法。
【請求項39】
医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤をさらに含む、請求項25記載の組成物。
【請求項40】
BMP−6関連疾患を診断する方法であって、
(a)ヒトBMP−6への抗体の結合に適切な条件下、該疾患を有している疑いがあるヒトから採取した生体サンプルをBMP−6に特異的に結合する抗体と接触させること;および
(b)抗体に結合したBMP−6を定量化することを含む方法であって、(b)にて定量化された該サンプル中のBMP−6の量が正常なレベル以上または以下であることがBMP−6関連疾患の存在を示す方法。
【請求項41】
BMP−6アンタゴニストが投与される治療をモニターする方法であって、
(a)ヒトBMP−6への抗体の結合に適切な条件下、BMP−6アンタゴニストを投与されたヒトから採取した生体サンプルを、BMP−6に特異的に結合する抗体と接触させること;および
(b)抗体に結合したBMP−6を定量化することを含む方法であって、(b)にて定量化された血清BMP−6レベルの量の変化がBMP−6アンタゴニストの有効性を示す方法。
【請求項42】
アンタゴニストが抗体である、請求項41記載の方法。
【請求項43】
アンタゴニストが小分子である、請求項41記載の方法。
【請求項44】
治療を必要とする対象における鉄の恒常性の疾患を治療する方法であって、請求項25のモノクローナル抗体を該対象に投与する工程を含む方法。
【請求項45】
鉄の恒常性の疾患が貧血である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
ヒトBMP−6に結合する化合物をスクリーニングする方法であって、生理活性BMP−6を含む組成物と候補化合物を接触させること、および候補化合物と組成物中のヒトBMP−6の複合体を検出することを含む方法であって、複合体の検出が、候補化合物がヒトBMP−6に結合することを示し、さらに、候補化合物がBMP−6とHJV.Fcの結合を少なくとも25%阻害する方法。
【請求項47】
ヒトBMP−6に特異的に結合する抗体であって、TQSQDVARVSSASDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含む一定濃度のペプチドの存在下、ヒトBMP−6への特異的な結合から離れて競合される抗体。
【請求項48】
TQSQDVARVSSASDY(配列番号3)のいずれか5個の連続するアミノ酸に特異的に結合する抗体。
【請求項49】
抗体が、TQSQDVARVSSASDY(配列番号3)のいずれか6個の連続するアミノ酸に特異的に結合する、請求項48記載の抗体。
【請求項50】
抗体が、TQSQDVARVSSASDY(配列番号3)のいずれか7個の連続するアミノ酸に特異的に結合する、請求項48記載の抗体。
【請求項51】
抗体が、TQSQDVARVSSASDY(配列番号3)のいずれか8個の連続するアミノ酸に特異的に結合する、請求項48記載の抗体。
【請求項52】
抗体が、TQSQDVARVSSASDY(配列番号3)のいずれか9個の連続するアミノ酸に特異的に結合する、請求項48記載の抗体。
【請求項53】
抗体が、TQSQDVARVSSASDY(配列番号3)のいずれか10個の連続するアミノ酸に特異的に結合する、請求項48記載の抗体。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−508764(P2012−508764A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536510(P2011−536510)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/064369
【国際公開番号】WO2010/056981
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(392015468)ザ・ジェネラル・ホスピタル・コーポレイション (14)
【氏名又は名称原語表記】THE GENERAL HOSPITAL CORPORATION
【Fターム(参考)】