説明

Bcl−2ファミリーの抗アポトーシスタンパク質と相互作用する新規ペプチド

本発明は、Bcl−2、Bcl−W及び/又はBcl−XLの抗アポトーシスタンパク質と相互作用する新規ペプチドの同定、及び前記相互作用のモジュレーターを同定するためのスクリーニング方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Bcl−XL及び/又はBcl−2及び/又はBcl−Wと相互作用する新規ペプチドに関し、そしてその相互作用を改変することができる化合物を同定するスクリーニング方法にも関する。
【0002】
最も生物学的な過程として、タンパク質−タンパク質相互作用が挙げられる。プロテオミクスが設定するゴールの1つは、これらの相互作用のマップを作成することである。それらが多数のシグナル伝達メカニズムに関与することから、これらの相互作用は医薬開発における選択のターゲットとされる。
【0003】
タンパク質の相互作用を同定することができる多数の方法論がある。最も一般的なものの1つは、Fieldsら(US5,283,173; US5,468,614; US5,667,973)により初めて開発され、記載されたツーハイブリッドシステムである。
このシステムは、基本的に2つの組換えタンパク質間のin vitro試験からなる。これらのうち1つめは「ベイト」タンパク質として既知であり、レポーター遺伝子の上流に結合することができるDNA結合ドメイン(BD)に融合したキメラタンパク質である。通常、用いる結合ドメインは、Gal4またはE.coli LexAのものである。
2つめのタンパク質もキメラタンパク質であり、通常「プレイ」タンパク質として既知であり、一般にGal4から生じる活性化ドメイン(AD)を含む。
しかし、これらの慣用の方法には限界がある。例えば、このようなスクリーニング方法は偽陽性及び/又は偽陰性という結果となり、そして得られた結果の生化学的確認が必要となることが、周知である。
偽陽性又は陰性を最小とするためにより有効な技術が、特許出願WO9942612に記載されており、「ベイト」又は「プレイ」タンパク質を含む組換えハプロイド酵母を用いる。このシステムでは、当該技術分野で用いられる他の従来方法よりも、より正確で、より再現可能で、かつより感受性の高い様式で、1つの「ベイト」を用いて多数の「プレイ」の検出が可能となる。
【0004】
アポトーシスは、多細胞組織において重大な役割を担う細胞死過程である。実際、細胞死には2形態:ネクローシスとアポトーシスがある。ネクローシスは、組織破壊の場合に見い出され:細胞膨張、細胞内容物の放出、そして次に細胞溶解に到り、周辺組織の炎症を引き起こす。
アポトーシスは、他方で、プログラムされ、そして制御された生理的過程であり、我々の10個の細胞が毎日このメカニズムにより死ぬことから、その重要性は過小評価することができない。多数の症状が細胞の成長、生存及び死の間に存在する平衡状態の調節解除につながっている。
特に、自己免疫疾患、特定の神経疾患及びガンを挙げることができる。
生細胞の保持又はその死のプログラミングは、異なるタンパク質の少なくとも10種のファミリーを要求しており、そのうちBcl−2ファミリーは主要な役割を担う。このファミリーは、約20個のタンパク質を含み、Bcl−2、Bcl−XLおよびBcl−Wが挙げられるが、これらは細胞の生存に有利に働く抗アポトーシスタンパク質であり、アポトーシス促進性であるBax、Bak及びBidとは対照的である。アポトーシスの過程では、Bcl−2ファミリーのメンバーは、そのパートナーとの相互作用を改変して、細胞内に不可逆的な変化を引き起こし、細胞死に至らしめるようである。
【0005】
従って、アポトーシスの調節解除、特には自己免疫疾患、特定の神経変性疾患及びガンといった症状に効果的な本当の候補医薬を得るためには、これらの相互作用を改変することができる化合物を同定することが欠かせない。
【0006】
出願人は、今やBcl−2ファミリー、より特にはBcl−2、Bcl−XLおよびBcl−Wの抗アポトーシスタンパク質と相互作用する新規ペプチドを同定した。
【0007】
22個のアミノ酸のこのペプチドは、Bcl−2ファミリー、より特にはBcl−2及び/又はBcl−XL及び/又はBcl−Wの抗アポトーシスファミリーと正確に相互作用するドメインに対応し、そして「BH3」モチーフの典型的な構造的特長、ホモ又はヘテロ二量体を形成することができる相互作用のドメインを有する。
【0008】
このペプチはサイズが小さいので、これらのタンパク質間の相互作用を改変することができる化合物を非常に有効にスクリーニングすることができる試験を開発するための理想的な候補である。
【0009】
タンパク質−タンパク質相互作用の改変遺伝子をスクリーニングするために、多数の試験が文献に記載されているが、それらは大抵その感受性及びその高処理量の実現可能性に関して制限がある。通例採用される方法は、複雑なツールの使用(融合タンパク質間、組換えタンパク質間などの相互作用)を必要とし、これは高処理量のスクリーニングにはあまり適しない。非常に頻繁に、高レベルのバックグラウンドのノイズを生じ、定量的観点からの信頼性は低く、すなわち読み取りウィンドウを縮小し、試験化合物の最適なスクリーニングをすることができない。
【0010】
しかし、出願人は蛍光偏光に基づいて、非常に有効なスクリーニング試験を開発した(O wicki J.C.ら、Journal of Biomolecular Screening、5、2000年、297〜306)。この技術によれば、例えば蛍光ラベルしたリガンドと受容体との間の相互作用の測定が可能となる。原理は、その受容体へ結合した場合にリガンドにより放出される蛍光偏光における増大を、遊離リガンドにより放出されるものに比較して測定することからなる。遊離リガンドの蛍光偏光はその分子量に依存し、そして該リガンドの分子量が高いほど高い。従って、高い分子量のリガンドを用いて試験を実施する場合は、内因性の蛍光偏光のレベルが高く、遊離リガンドと結合リガンドとの間の蛍光偏光における差異を信頼して評価することは難しいであろう。他方、サイズを下げたリガンドを用いると、差異を強調することができ、そして結果的にアッセイの精度を高めることができる。従って、化合物の本当の活性をよりよく評価し、そして高処理量のスクリーニングを実施することができるであろう。
【0011】
より具体的には、本発明は、配列番号1に記載するアミノ酸配列を含むペプチド及びその機能的変異体に関する。
【0012】
「機能的変異体」とは、Bcl−2ファミリー、より特にはBcl−2及び/又はBcl−XL及び/又はBcl−Wの抗アポトーシスタンパク質と相互作用することができる、配列番号1に記載するペプチドのすべてのフラグメント又は点突然変異体であると解される。
【0013】
このペプチドを、「ベイト」タンパク質としてBcl−XL、Bcl−W及びBcl−2を用いたツーハイブリッド法により、特定した。ヒトcDNAの3つのバンク(胎盤、脳、細胞株CEMC7)をスクリーニングして、配列HC21ORF80の部分配列に対応する「プレイ」フラグメントの同定した(Accession番号NM_015227)。
次に、ツーハイブリッド技術により、その配列のフラグメントがBcl−XL及び/又はBcl−2及び/又はBcl−Wとの相互作用を得るのに必要かつ充分であり、そして配列番号1に記載する22個のアミノ酸のフラグメントに対応することを実験的に決定した。
【0014】
タンパク質Bcl−2、Bcl−W及びBcl−XLとの相互作用は、生化学技術(共免疫沈殿、GSTプルダウン)により確認し、そしてアポトーシスを引き起こすことを示した細胞へのトランスフェクション及び/又はマイクロインジェクションによりこのペプチドの生物活性を確認することができた。
【0015】
また本発明は、配列番号1に記載するアミノ酸配列の遺伝暗号に従って推定される核酸配列、及び本明細書中に前記した機能的変異体から推定されるものにも関する。
【0016】
より具体的には、本発明は、配列番号1に記載するペプチドをコードする配列番号2の核酸配列に関する。
【0017】
「核酸配列」とは、その自然な状況から単離された核酸配列であり、そして特には遺伝子技術により修飾されてもよく、単離、増幅及び/又は精製された配列をいうと、解される。
【0018】
また本発明は、本発明に従う核酸配列を含む組換えベクターにも関する。
「ベクター」とは、宿主細胞へ核酸配列を導入し、ポリペプチドを発現させるすべてのタイプのベクターをいうと、解される。
本発明に従う組換えベクターは、本発明に従うペプチド、より特には配列番号1に記載するペプチドの発現に必要なDNA配列を含むことを特長とする。
特に、細菌性プラスミド、バクテリオファージ、酵母プラスミド及び染色体、ウイルスなどに由来するベクターを挙げることができる。
【0019】
また本発明は、組換えベクターにより形質転換した宿主細胞にも関する。これらの細胞は、好ましくは細菌又は真核生物の細胞である。例えば、Escherichia coli、酵母、昆虫細胞又は哺乳類細胞を挙げることができる。
【0020】
さらに本発明は、本発明に従うペプチド、より特には配列番号1に記載するペプチドと、Bcl−2ファミリーの抗アポトーシスタンパク質、より特にはBcl−2、Bcl−W及びBcl−XLとの間の相互作用を改変することができる試薬のスクリーニング方法に関する。これらの相互作用を改変する試薬は、有利には化学的に合成されるか、又は化合物バンクから得られる化合物であろう。
【0021】
本発明に従うスクリーニング方法は、以下の工程:
a)蛍光ラベルでラベルした本発明に従うペプチドの調製;
b)試験用化合物とのインキュベーション;
c)抗アポトーシスタンパク質を含む融合タンパク質の添加;
d)蛍光偏光の測定
を含む。
【0022】
本発明は、特にはペプチドと抗アポトーシスタンパク質との間の相互作用を阻害することができる化合物をスクリーニングする方法であって、以下の工程:
a)蛍光ラベルでラベルした本発明に従うペプチドの調製;
b)試験用化合物の有無でのインキュベーション;
c)抗アポトーシスタンパク質を含む融合タンパク質の添加;
d)試験用化合物の有無での蛍光偏光の測定;
e)試験用化合物を用いて観察した蛍光偏光の増大が、試験用化合物を用いずに観察したものよりも有意に低い化合物の選択
を含む方法に関する。
【0023】
本発明は、特にはペプチドと抗アポトーシスタンパク質との間の相互作用を高めることができる化合物をスクリーニングする方法であって、以下の工程:
a)蛍光ラベルでラベルした本発明に従うペプチドの調製;
b)試験用化合物の有無でのインキュベーション;
c)坑アポトーシスタンパク質を含む融合タンパク質の添加;
d)試験用化合物の有無での蛍光偏光の測定;
e)試験用化合物を用いて観察した蛍光偏光の増大が、試験用化合物を用いずに観察したものよりも有意に高い化合物の選択
を含む方法に関する。
【0024】
本明細書中に前記した方法の好ましい実施態様に従えば、蛍光ラベルは、例えばOregon Green、Bodipy及びフルオレッセイン、より特にはフルオレッセインであろう。
【0025】
スクリーニング方法で用いる本発明に従うペプチドは、好ましくは配列番号1に記載するペプチドであればよい。
【0026】
本発明に従う方法は、Bcl−2ファミリーの抗アポトーシスタンパク質、より特にはBcl−2、Bcl−W及びBcl−XLを用いて有利に実施できる。
【0027】
結果として、本発明はまた、本発明に従った、アポトーシスを改変することができる活性化合物のスクリーニングにおける本発明に従うペプチドの使用にも関する。
【0028】
より特には、本発明は、本発明に従った、アポトーシスの調節解除に関する症状の処置に有用である化合物のスクリーニングにおける本発明に従うペプチドの使用に関する。
【0029】
従って、本発明は、本発明の方法に従った、自己免疫疾患、特定の神経疾患及びガンの処置に有用な化合物のスクリーニングにおける本発明に従うペプチドの使用に関する。下記の実施例は、決して限定することなく本発明を説明する。
【0030】
実施例1:配列番号1に記載するペプチドの同定
ヒトcDNAの3つのバンク(胎盤、脳、細胞株CEMC7)を、コンジュゲーションプロトコールを用いる酵母でのツーハイブリッド技術(Fieldsら)によりスクリーニングした(Legrainら、Nature Genetics、1997年、16、277〜282)。
【0031】
1)「ベイト」及び「プレイ」の調製
a)用いた「ベイト」は:
・LexADNA結合ドメインに融合したBcl−XLのC末端切断(1〜209)
・LexADNA結合ドメインに融合したBcl−2のC末端切断(1〜211)
である。
それらをSaccharomyces cerevisiae(CG1945又はL40ΔGal4)で発現させ、そして30℃で、トリプトファンを欠いた合成培地(DO−Trp)中で、DO600nmが包括的に0.1〜0.5を得るまで、プレインキュベートする。その前培養の希釈液50ml(DO600nm=0.006)を30℃で一晩インキュベートする。
【0032】
b)cDNAバンクを発現するプラスミドを含み、Gal4転写活性化ドメインに融合した酵母コレクションを、形質転換後、ロイシンを欠いた培地上で(DO−Leu)選択して得る。
【0033】
2)コンジュゲーション
抱合は、2の「ベイト」/「プレイ」比率を用いて実施する。
50unitsのDO600nmに相当する工程1)a)で得られた「酵母ベイト」細胞の量を、工程1)b)で得られた「酵母プレイ」と混合する。遠心分離後、沈殿物をYPGlu培地に再懸濁し、YPGlu培養プレート上に広げ、そして4時間30分30℃でインキュベートする。お互いに相互作用することができる「ベイト」及び「プレイ」を含むコンジュゲーション酵母の選択は、DO−Leu−Trp−His培地、すなわちロイシン及びトリプトファンの欠損により、プラスミドの2つのタイプ(「ベイト」/「プレイ」)を含むこれらの酵母のみを発育させる選択圧を維持でき、培地からのヒスチジンの欠損により、お互いに相互作用できる「ベイト」プラスミド及び「プレイ」プラスミドを含むコンジュゲーション酵母を選択することができ、この相互作用はヒスチジンの生合成に関与する酵素をコードするHIS3遺伝子を活性化することができる培地で、実施する。
【0034】
3)陽性クローンの同定
2)に従って選択した酵母のコロニーの「プレイ」フラグメントを、「プレイ」ベクターの特異的プライマー:
ABS1 5’−GCTTTGGAATCACTACAGG−3’ (配列番号3)
ABS2 5’−CACGATGCACGTTGAAGTG−3’ (配列番号4)
を用いてそのコロニーの粗ライセートから、PCRにより増幅する。
次に、PCR産物を配列決定し、そして得られた配列をデータベースとの比較により同定する。
得られた陽性クローンのうち、配列HC21ORF80(Accession番号:NM_015227)の部分配列である約300個のアミノ酸のフラグメントを同定することができた。
【0035】
4)配列番号1に記載するペプチドの同定
配列HC21ORF80の小さい方のフラグメントについて前記した工程1)、2)及び3)に従って実施したツーハイブリッド実験により、Bcl−XL及び/又はBcl−W及び/又はBcl−2との相互作用を得るために必要かつ充分である22個のアミノ酸の短いペプチド:Asp−Thr−Arg−Arg−Ser−Met−Val−Phe−Ala−Arg−His−Leu−Arg−Glu−Val−Gly−Asp−Glu−Phe−Arg−Ser−Arg(配列番号1)を同定することができた。
【0036】
実施例2:実施例1に記載したペプチドとBcl−W及び/又はBcl−XL及び/又はBcl−2との間の相互作用の確認
1)GST「プルダウン」
実施例1で得られたペプチドとBcl−W及び/又はBcl−XL及び/又はBcl−2との間の相互作用を、「BH3」モチーフを有するBidタンパク質と融合タンパク質GST−Bcl−XL、GST−Bcl−W又はGST−Bcl−2との間の相互作用におけるシフトを測定することにより確認する。
a)放射ラベルしたBidの合成
ラベルしたタンパク質を、TNT Quick Masterキット(Promega)を用いて得る。40μlのTNT混合物を90分間30℃で、2μl(20μCiに等量)の35S−メチオニン(Amersham)、Bidをコードする1μgのプラスミドDNA及び容量が50μlとなるのに充分量の水と共にインキュベートする。
産生した放射活性なタンパク質のfmoles/μl数を、タンパク質中のメチオニン数に基づいて計算する。
【0037】
b)GST「プルダウン」
4fmolesの放射活性なBidタンパク質を、4℃で3時間、3μlの融合タンパク質グルタチオン−S−トランスフェラーゼーBcl−XL(GST−Bcl−XL)又はグルタチオン−S−トランスフェラーゼーBcl−2(GST−Bcl−2)又はグルタチオン−S−トランスフェラーゼ−Bcl−W(GST−Bcl−W)と共に、又はGST単独で、300μlの結合緩衝液(142mMのKCl、5mMのMgCl、10mMのHepes緩衝液、0.5mMのDTT、1mMのEDTA、プロテアーゼ阻害剤、pH7.4)及び0.4%のTritonX100中でインキュベートする。「グルタチオンセファロース4Fast Flow」(Amersham)のビーズを結合緩衝液中で3回洗浄し、そしてその緩衝液に、50%溶液を得るように再懸濁する。20μlを各試料に加え、そして回転させながら4℃で1時間インキュベートする。次に、ビーズを結合緩衝液中で3回洗浄し、そして次に25μlの2×SDS緩衝液、Laemmli(Sigma)を加える。次に試料を5分間95℃で保持し、そして次に12%Tris−グリシンゲル(Invitrogen)にアプライする。電気泳動後、引き続いてゲルを乾燥溶液(Invitrogen)中で30分間インキュベートし、そして次に150分間70℃で乾燥させる。放射活性なタンパク質をKodak BioMax MS-1フィルム(Sigma)に露出して明らかにする。試験するペプチドを用いた競合試験を実施するために、後者を5〜20μMの濃度範囲で最初の溶液に加える。
【0038】
c)結果
実施例1で得られたペプチドを最初の溶液に加えると、Bidのオートラジオグラフィーのシグナルは消える。この結果は、実施例1で得られるペプチドがBcl−WとBidとの間、Bcl−XLとBidとの間、そしてBcl−2とBidとの間の相互作用を阻害することを示す。
【0039】
実施例により、Bcl−XLとBidとの間で得られた結果を、図1に示す。
【0040】
2)蛍光偏光:実施例1で得られたペプチドと抗アポトーシスタンパク質との間の相互作用のKの決定
実施例1で得られ、N末端でフルオレッセインを用いてラベルしたペプチドの15nM溶液を、NaHPO 20mM pH7.4、EDTA 1mM、NaCl 50mM、プルロニック酸F−68 0.05%を含有する緩衝液中で1nM〜5μMと濃度を変えた融合タンパク質GST−Bcl−XLまたはGST−Bcl−Wを含む溶液と、混合する。次に、蛍光偏光を、En Vision装置(Packard Perkin-Elmer)により測定する。
得られた結果を、図2及び3に示す。
【0041】
結果:実施例1で得られたペプチドをBcl−XL及びBCl−Wを含む融合タンパク質とインキュベートして観察して、蛍光偏光での有意な増大を観察し、これらのタンパク質へ結合したことを実証した。
【0042】
Bcl−XLで得たKは2.15×10−7Mであり(図2)、そしてBcl−Wで得たKは4.11×10−7Mである(図3)。
【0043】
実施例3:Bcl−W及び/又はBcl−XL及び/又はBcl−2と、実施例1で得られたペプチドとの間の相互作用を阻害することができる化合物のスクリーニング試験
試験用化合物を、384ウェルのプレート(Corning Flat Bottom)へ、最終濃度10μg/mlで分注する。1つのウェルを、試験用化合物を用いずに等量の緩衝液/溶媒で充填し、コンロトールにする。実施例1で得られ、フルオレッセインでラベルしたペプチドを、最終濃度15nMとなるように各ウェルに加える。融合タンパク質GST−Bcl−XL、GST−Bcl−W、GST−Bcl−2を次に、NaHPO 20mM pH7.4、EDTA 1mM、NaCl 50mM及びプルロニック酸F−68 0.05%を含有する緩衝液中で最終濃度500nM(Bcl−XL、Bcl−2)及び1μM(Bcl−W)となるように加える。次に、蛍光偏光をEn Vision装置(Packard Perkin-Elmer)により測定する。試験化合物を用いずに得た蛍光偏光(コントロールのウェル)に比較して、試験化合物を用いて実施した試験で記録した蛍光偏光における有意な減少により、化合物が阻害活性を有することを結論付けることができる。反対に、コントロールに比較して、試験化合物を用いた試験における蛍光偏光の有意な増大により、化合物が活性化活性を有することを結論付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、配列番号1に記載するペプチドと競合した、「GSTプルダウン」GST−Bcl−XL+TBidを示す。
【図2】図2は、Bcl−XLについて、配列番号1に記載するペプチドのKの決定である。
【図3】図3は、Bcl−Wについて、配列番号1に記載するペプチドのKの決定である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1:Asp−Thr−Arg−Arg−Ser−Met−Val−Phe−Ala−Arg−Arg−His−Leu−Arg−Glu−Val−Gly−Asp−Glu−Phe−Arg−Ser−Argの配列を特徴とする、Bcl−2ファミリーの抗アポトーシスタンパク質と相互作用するペプチド。
【請求項2】
抗アポトーシスタンパク質Bcl−2、Bcl−XL及び/又はBcl−Wと相互作用する、請求項1記載のペプチド。
【請求項3】
配列番号1に記載のペプチドのフラグメント又は点突然変異体に対応することを特徴とする、請求項1又は2記載のペプチド。
【請求項4】
配列番号2:
【表1】


の配列を特徴とする、請求項1記載のペプチドをコードする核酸配列。
【請求項5】
請求項1又は2記載のアミノ酸配列の遺伝暗号に従って推定される核酸配列。
【請求項6】
請求項3記載のアミノ酸配列の遺伝暗号に従って推定される核酸配列。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項記載の核酸配列を含むことを特徴とする、組換えベクター。
【請求項8】
ベクターが、宿主細胞でのペプチドの発現に必要な配列を含むプラスミドであることを特徴とする、請求項7記載の組換えベクター。
【請求項9】
請求項7又は8のいずれかに記載の組換えベクターにより形質転換したことを特徴とする、宿主細胞。
【請求項10】
請求項1、2又は3のいずれか1項記載のペプチドと、Bcl−2ファミリーの抗アポトーシスタンパク質との間の相互作用を改変することができる化合物の同定方法であって、以下の工程:
a)蛍光ラベルでラベルした請求項1、2又は3のいずれか1項記載のペプチドの調製;
b)試験用化合物とのインキュベーション;
c)Bcl−2ファミリーの抗アポトーシスタンパク質を含む融合タンパク質の添加;
d)蛍光偏光の測定
を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1、2又は3のいずれか1項記載のペプチドと、Bcl−2ファミリーの抗アポトーシスタンパク質との間の相互作用を阻害することができる化合物の同定方法であって、以下の工程:
a)蛍光ラベルでラベルした請求項1又は2のいずれかに記載のペプチドの調製:
b)試験用化合物の有無でのインキュベーション;
c)Bcl−2ファミリーの抗アポトーシスタンパク質を含む融合タンパク質の添加;
d)蛍光偏光の測定;
e)試験用化合物を用いて観察した蛍光偏光の増大が、試験用化合物を用いずに観察したものよりも有意に低い化合物の選択
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1、2又は3記載のいずれか1項記載のペプチドと、Bcl−2ファミリーの抗アポトーシスタンパク質との間の相互作用を高めることができる化合物を同定する方法であって、以下の工程:
a)蛍光ラベルでラベルした請求項1又は2のいずれかに記載のペプチドの調製;
b)試験用化合物の有無でのインキュベーション;
c)Bcl−2ファミリーの抗アポトーシスタンパク質を含む融合タンパク質の添加;
d)蛍光偏光の測定;
e)試験用化合物を用いて観察した蛍光偏光の増大が、試験用化合物を用いずに観察したものよりも有意に高い化合物の選択
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
抗アポトーシスタンパク質がBcl−2である、請求項10〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
抗アポトーシスタンパク質がBcl−XLである、請求項10〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
抗アポトーシスタンパク質がBcl−Wである、請求項10〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
用いるペプチドが配列番号1を特徴とする、請求項10〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
用いる蛍光ラベルがフルオレッセインである、請求項10〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
請求項10〜17のいずれか1項記載の方法に従った、アポトーシス改変化合物の同定における、請求項1、2又は3のいずれか1項記載のペプチドの使用。
【請求項19】
請求項10〜17のいずれか1項記載の方法に従った、アポトーシス調節解除に関与する症状の処置に有用である化合物の同定における、請求項1、2又は3のいずれか1項記載のペプチドの使用。
【請求項20】
請求項10〜17のいずれか1項記載の方法に従った、自己免疫疾患、特定の神経疾患及びガンの処置に有用である化合物の同定における、請求項1、2又は3のいずれか1項記載のペプチドの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−529193(P2007−529193A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522376(P2006−522376)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002081
【国際公開番号】WO2005/014638
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(500287019)レ ラボラトワール セルヴィエ (166)
【出願人】(503047685)
【氏名又は名称原語表記】HYBRIGENICS
【Fターム(参考)】