説明

C型肝炎の予防および治療のための免疫刺激物質の組合せ

本発明は、TLR3 アゴニスト、CD40 アゴニストおよびC型肝炎ウイルスのNS3 タンパク質を含むことを特徴とする、C型肝炎の予防および治療のための免疫刺激物質の組合せに関する。さらに本発明は、前記免疫刺激物質の組合せを含む医薬組成物、その使用、および前記医薬組成物から構成されるキットに関する。最後に、本発明は、C型肝炎ウイルスに対する免疫応答を生じさせる方法および前記ウイルスに対するワクチンの産生方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HCVのNS3 タンパク質を、HCV ウイルスに対する特異的な強力かつ持続性のCD8+およびCD4+ 応答の誘導能のため選択されたアジュバントとともに含む、C型肝炎の予防および治療のための免疫刺激物質の組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルス (HCV)の感染は今日、全世界の推定感染患者数が1億7千万人を超えており、公衆衛生の多大な負担となっている。また、この患者数はこの先数年は変化しそうにない。
【0003】
HCVの感染は、慢性化の傾向が高いことが特徴である。HCVは70%の感染個体中に存在し続け、その20%が硬変を発症し、2.5%が肝臓癌に進展する。
【0004】
現在の標準的治療手段は、インターフェロンの使用に基づく治療プロトコールである。それにもかかわらず、この抗ウイルス療法は高価であり、比較的毒性があり、また処置した患者の50-60%にしか有効でない。それゆえ、より効果的でより患者の耐用性に優れた新しい治療法を開発する必要があり、またその開発が望まれている。
【0005】
最新のHCV の総説は、Natureにみられる (”Insights: Hepatitis C”. Nature 2005, Supplements; Vol. 436, Nr. 7053, pp 929-978)。
【0006】
残念なことにまだC型肝炎ウイルスに対する有効なワクチンはないが、有効なワクチンが可能と考えられる実験データおよび証拠が存在する。抗ウイルス抗体は感染に応答して合成されるが、細胞傷害性T細胞(CD8+) およびヘルパーT細胞 (CD4+)の部分の細胞性免疫応答が存在しないことが慢性状態の特徴である。つまり、HCVが特異的に抗ウイルス免疫応答から逃れられる方法を発達させたと仮定される。ここで細胞傷害性T 応答およびヘルパーT 応答の力および質がその患者が(自然にまたは治療に応じて)回復するか慢性感染に進展するかを決定する。
【0007】
いずれのワクチンも主な目的は抗原特異的獲得免疫を刺激することであり、そのメディエーターはBおよびT-リンパ球である。これに関して、抗原提示細胞(APC) は特異的免疫応答の開始に、特にT リンパ球の活性化に重要な役割を果たす。APC、主に樹状細胞は、末梢臓器で抗原を捕捉し、活性化刺激を受けた後にリンパ系臓器に移行する。そこで樹状細胞は、抗原(エピトープ)の分解により生じたペプチド産物を主要組織適合性複合体MHCの存在分子に結合してその表面に提示し、同時にケモカインおよびサイトカインを産生し、T細胞を誘引および活性化する。樹状細胞の活性化プロセス(成熟としても知られる)は、MHC 分子 (シグナル 1)、補助刺激分子 (シグナル 2)および分極性サイトカイン、例えばインターロイキン-12 (IL-12) (シグナル 3)の高発現を特徴とする。成熟は、病原体成分または炎症もしくは細胞傷害プロセスにおいて頻出する宿主の分子のような因子により誘導される。これらの因子は微生物由来産物に対する特異的レセプター、例えばTLR タイプレセプター (Toll様レセプター)、サイトカイン(TNF-α、IL-1、IFN-α)に対するレセプター、または細胞表面上のリガンドに対するレセプター(例えばCD40)を介して樹状細胞に作用する。
【0008】
様々なT 細胞集団のAPCによる刺激および活性化は、一方ではMHC 分子のタイプに拘束され、他方ではこれらMHC 分子と複合体を形成するエピトープの特徴に拘束される。つまり、例えば細胞傷害性CD8+ T リンパ球(CTL)の活性化を特異的に誘導するウイルスタンパク質のある種のフラグメントが同定されており、これはリンパ球エピトープまたはCD8+ T 細胞もしくはCD8+ エピトープとして知られている; あるいは、CD4+ ヘルパーT リンパ球(HTL)の活性化を特異的に誘導するエピトープ、CD4+ エピトープが知られている。データベース”HCV Immunology Database” (http://hcv.lanl.gov/content/immuno/immuno-main.html) は、C型肝炎ウイルスの様々な株および分離株のウイルスタンパク質に基づいて同定された、CD8+ CTLおよびCD4+ HTLの両方のT リンパ球に対するエピトープを蓄積する。
【0009】
ペプチド形態のエピトープの使用に基づく免疫化プロトコールの開発は、このように、各個体が提示するMHC 分子に依存した各個体に適するそれらペプチドの事前の選択を必要とする。このことは、各個体のMHCに依存して、この状況でエピトープとして機能しうる特定のペプチドの組合せを選択しなければならないことを示唆する。大きな抗原を使用すればこの問題は克服でき、なぜならそれは通常多エピトープ性(polyepitopic)であり、その配列中に異なる個体のMHC 分子によって提示されうるCD8+ CTLおよびCD4+ HTLの両方に対する各種エプトープが存在するからである。このように、単一の抗原が異なるMHCを有する個体においてワクチンとして使用可能である。
【0010】
HCVの各種タンパク質の中で、コアおよびNS3は優れた免疫原性を示し、感染を克服した個体ではそれらに対する強力なCD8+ CTLおよびCD4+ HTL応答が検出される。それにもかかわらず、コアが免疫系の細胞に接触したときにそれらに対して有害な効果を有することを示すデータも存在し、そのためコアはワクチン法における抗原として推奨されない。一方、NS3はこのタイプの効果をほとんど示さないタンパク質であり、CD8+ CTLおよびCD4+ HTL応答の誘導のための抗原としてふさわしい候補でありうる。
【0011】
CD4+ HTLは獲得免疫において機能し、様々なメカニズムの中でもとりわけAPC 活性化、CTL 活性化およびメモリー誘導により機能する。特に、HCVに特異的なCD4+ 細胞が抗ウイルスCTLの維持に必要であることが示されている (Grakoui A. et al., ”HCV persistence and immune evasion in the absence of memory T cell help”; Science, 2003; 302: 659-662)。それゆえ、C型肝炎ウイルスに対して有効なワクチンは、CD8+ CTL 応答だけでなくCD4+ HTL応答の誘導にも最大の効力を示さなければならない。かかるワクチンは、それゆえ、これら応答を提供する特異的抗原の選択を必要とする。
【0012】
それにもかかわらず、抗原の組合せ自体はHCVに対する有効なワクチンを提供しえないようである。樹状細胞の成熟がT リンパ球の効果的な惹起および活性化に必要であることを考慮すると、かかるワクチンは樹状細胞の成熟を刺激する幾つかのアジュバントを含む免疫刺激物質の組合せに含ませることが有益であろう。アジュバントとして、TLRレセプター、サイトカインレセプター、または前述の細胞内リガンドのレセプターに対するリガンド、あるいはより好ましくはこれらアジュバントの相乗的組合せを使用することができる。
【0013】
つまり、例えば、US2004/0141950はTLRアンタゴニストおよび腫瘍壊死因子 (TNF) またはそのレセプター (TNFR)のスーパーファミリーの分子のアンタゴニストを含み、さらに抗原を含みうる免疫刺激物質の組合せについて記載する。多数の可能性ある組合せの中で、CD40のリガンド(抗CD40 抗体) とポリ(I:C)、すなわちTLR3の合成リガンドとの組合せが提示され、この組合せはCD8+ T リンパ球の増殖において相乗効果を示す。同様に、Ahonen et al. (J. Exp. Med. 2004; 199: 775-784) は、CD4+ T リンパ球とは無関係に抗原特異的CD8+ CTLの増殖および分化を誘導するアゴニストの相乗的誘導能についてのデータを示す。これらの研究はTLR/CD40の抗原特異的メモリーCD8+ T リンパ球の活性化能について記載するが、TLR/CD40アゴニストの組合せがCD4+ HTL応答も高めることができるかについては確立できていない。
【0014】
HCVの感染の場合、感染患者と感染を除去できた患者とを比較するとCD4+ HTL応答に明らかな相違が見られている。一方、治癒した患者より弱いもののCD8+ CTL応答は感染患者でもまだ検出可能である。つまり、CTLがHCV 感染の除去に重要なエフェクター集団として機能するが、CD4+ 細胞もまたこの疾患の制御に重要な役割を果たしている。さらに、CD4+ T-リンパ球の誘導は抗ウイルスCTL応答の維持に重要であることが示されている (Grakoui A. et al., ”HCV persistence and immune evasion in the absence of memory T cell help”; Science, 2003; 302: 659-662)。これらのデータは、HCVによるウイルス性疾患に対するワクチン接種および治療に、強力かつ持続性のCD8+およびCD4+両方の抗ウイルス応答の誘導が重要であることを示唆する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
それゆえ、本発明の目的は、より強力、完全かつ持続性の、CD8+およびCD4+両方の応答を刺激するC型肝炎の予防および治療に適する抗原およびアジュバントの免疫刺激物質の組合せを選択することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の第一の目的は、C型肝炎の予防および治療のための免疫刺激物質の組合せであって、TLR3 アゴニスト、CD40 アゴニストまたはそれをコードするDNA配列、およびC型肝炎ウイルスのNS3 タンパク質またはCD8+およびCD4+応答の誘導能を有する前記NS3 タンパク質のフラグメントを含むポリペプチドを含む免疫刺激物質の組合せ(以下本発明の免疫刺激物質の組合せと称する)に関する。
【0017】
「TLR3 アゴニスト」とは、TLR3 レセプター(「Toll様受容体 3」) に作用または結合し、細胞応答を提供しうるリガンドを意味する。TLR3は、NF-κBを活性化してタイプ Iインターフェロン (IFN) (IFN-αおよびIFN-β) を産生させるシグナルを伝達し樹状細胞の成熟を刺激する二本鎖RNAの受容体である。TLR3を発現しないマウスは、ポリ(I:C) (HCV タイプのウイルスの複製中に生じる二本鎖RNAに類似するTLR3 リガンド)に対する応答が減少し、D-ガラクトサミンで感作した場合のポリ(I:C)の致死効果に対して耐性を示し、また炎症性サイトカインの産生が減少していた (Alexopoulou et al. Nature, 2001, Vol. 413, pp. 732-738)。本発明の特定の態様において、前記TLR3リガンドは、ウイルスの二本鎖RNAまたはポリイノシン酸-ポリシチジル酸二本鎖、すなわちポリ(I:C)であってよい。
【0018】
「CD40 アゴニスト」は、CD40 レセプターに作用または結合し、同様に細胞応答を誘導しうるリガンドを意味する。CD40は、各種細胞タイプ、例えばB-リンパ球または抗原提示細胞(マクロファージ、樹状細胞など)、の膜に発現する分子である。CD40の天然リガンド(CD40LまたはCD154) は、抗原の認識後に活性化されたT リンパ球上に主に発現する。CD40Lと抗原提示細胞に存在するCD40との相互作用は、その抗原提示細胞の成熟を誘導する。この現象は、病原体由来の刺激と同様の方法で、抗原提示細胞により優れた免疫応答誘導能を持たせる。それゆえ、本発明の免疫刺激物質組成物のCD40 アゴニストは、一方ではCD40L リガンドを意味し、またはCD40に対する結合能および細胞応答または免疫応答の誘導能を保存するCD40Lのフラグメントを意味する。特定の態様において、リガンドはCD40特異的抗体(抗CD40) またはCD40に対する結合能を保存するそのフラグメントでありうる。さらに、CD40 リガンドまたはそのフラグメントは、タンパク質の形態にて、あるいはそのリガンドをコードする組換え核酸 (DNA)、例えば移行または遺伝子治療のためのウイルスベクター、の形態にても、免疫刺激物質の組合せに存在しうる。
【0019】
「抗原」とは、個体(ヒトまたは動物)の生命体において免疫応答(液性および細胞性)を誘導しうる、または免疫細胞と接触したときに細胞性免疫応答(免疫細胞の増殖、活性化および/または成熟、サイトカインまたは抗体の産生)を誘導しうる、あらゆる物質を意味する。特に、抗原は、ウイルスタンパク質、ウイルスタンパク質のペプチドもしくはフラグメント、またはウイルスタンパク質の組換えタンパク質であってよく、あるいはそれにより伝達される応答を誘導しうる合成ペプチドであってもよい。
【0020】
「CD8+誘導エピトープ」とは、特異的にCD8+ 細胞傷害性T リンパ球 (CTL)の活性化を誘導しうる抗原のフラグメントまたは部分ポリペプチド鎖を意味する。「CD4+誘導エピトープ」とは、特異的にCD4+ ヘルパーT リンパ球 (HTL)の活性化を誘導しうる抗原のフラグメントまたは部分ポリペプチド鎖を意味する。
【0021】
「NS3 タンパク質」とは、C型肝炎ウイルスの非構造性タンパク質 NS3を意味し、これはN末端の189 アミノ酸をカバーするセリンプロテイナーゼ、およびC末端の442 アミノ酸をカバーするヘリカーゼ-ヌクレオシドトリフォスファターゼ活性を有するドメインの2つのドメインを含む67 kDaのタンパク質である。本発明の免疫刺激物質の組合せのポリペプチドに含まれるNS3 タンパク質の配列は、C型肝炎ウイルスのいずれの株または分離株に、特にヒトC型肝炎ウイルスのいずれの株または分離株に相当するものであってもよい。特定の態様において、NS3 タンパク質を含むポリペプチドは、組換え技術によって得られたものである。本発明の具体的な非限定的態様において、配列番号 1の配列(Genebank登録番号DQ068198.1およびAAY84763.1, VRL 28-NOV-2005に相当)を有する組換えNS3 タンパク質が用いられる。また、配列番号 2の配列(Genebank登録番号D90208に相当)を有する別の組換えタンパク質も使用した。
【0022】
本発明の別の態様において、CD4+およびCD8+ 応答を誘導可能なようにNS3 タンパク質のフラグメントを含むポリペプチドもまた使用可能である。それゆえ、前記フラグメントは少なくとも1つのCD8+誘導エピトープおよび少なくとも1つのCD4+誘導エピトープを含まなければならない。
【0023】
具体的態様において、本発明の免疫刺激物質の組合せは、ポリ(I:C)、抗CD40抗体、およびNS3 タンパク質を含むポリペプチドを含む。
【0024】
本発明の好ましい態様において、免疫刺激物質の組合せは、全ての成分が同一の医薬組成物の一部を形成し、ここで各成分は医薬上許容される量にて存在する。さらに、本発明はまた、前記医薬組成物に関する。
【0025】
本発明の別の具体的態様において、免疫刺激物質の組合せの成分は少なくとも2つの医薬組成物の一部を形成する。同様に本発明は、前記医薬組成物が同時に投与されることを特徴とする前記免疫刺激物質の組合せの使用に関する。本発明の別の態様において、前記免疫刺激物質の組合せの使用は、前記医薬組成物が異なる時点に同じまたは相異なる投与経路にて投与されることを特徴とする。それゆえ、本発明のある具体的態様は、少なくとも2つの異なる医薬組成物を含むことを特徴とする、上記の免疫刺激物質の組合せの投与のためのキットである。
【0026】
別の局面において、本発明は、上記定義の刺激用組合せを免疫応答の誘導に有効な量にて投与することからなることを特徴とする、C型肝炎ウイルスに対する免疫応答を生じさせる方法に関する。好ましい態様において、本発明の方法は、予防的処置である。より好ましい態様において、本発明の方法は、治療的処置である。
【0027】
最後に、本発明はまた、上記定義の免疫刺激物質の組合せを含むことを特徴とするC型肝炎ウイルスに対するワクチンに関し、これは本発明の目的を形成する。
【実施例】
【0028】
本発明の実施態様
以下の実施例は、決して限定ではなく、本特許出願を形成する発明の態様を説明することを目的とする。
【0029】
関連する材料および方法
エピトープ、抗原、および試薬
使用したペプチドまたはエピトープは、Fmoc化学を用いてマルチプルペプチドシンセサイザにより手動で合成した(Wellings DA. and Atherton E. Methods Enzymol 1997; 289: 44-67)。カイザーニンヒドリン試験を各工程のモニタリングに使用した。合成の最後に継ぎ合わせ、トリフルオロ酢酸で脱保護し、ジエチルエーテルで洗浄した。HPLCで測定したペプチドの純度は常に90%以上であった。
【表1】

【0030】
ペプチドまたはエピトープのナンバリングは、通常プロトタイプと見なされるヒトC型肝炎のH 株における完全配列(GeneBank登録番号M67463)をレファレンスとした、その相対的HCVH位置を意味する。つまり、例えばデータベース”HCV Immunology Database (http://hcv.lanl.gov/content/immuno/immuno-main.html)”はC型肝炎ウイルスの様々な株および分離株のウイルスタンパク質において同定された細胞傷害性T リンパ球およびヘルパー T リンパ球の両方のT リンパ球に対するエピトープを蓄積しており、それらも全て前述のGenbankレファレンスのH株ウイルスに関する相対的位置にしたがって並んでいる。
【0031】
免疫原として、NS3 タンパク質の完全配列 (配列番号: 1; Genebank登録番号AAY84763.1, VRL 28-NOV-2005; 631アミノ酸)を含む655 アミノ酸の組換えポリペプチドを使用した。NS3 タンパク質の631 アミノ酸に加えて、このポリペプチドはまた、抗mycモノクローナル抗体による検出のためのc-myc 配列を有するテイルおよびヒスチジンテイルを含む。このタンパク質はPichia pastorisにおいて産生した。これをTris 22.5 mM / 尿素 3.76 M / NaCl 300 mMの溶液中に懸濁して維持した。このタンパク質をNi カラムクロマトグラフィーにより精製した。
【0032】
NS3 タンパク質の完全配列 (配列番号: 2; Genebank登録番号D90208)を含む635 アミノ酸を含む別の組換えポリペプチドもまた免疫原として使用した。NS3に相当するアミノ酸に加えて、このポリぺプチドはまた精製用のヒスチジンテイルを含む。NS3に相当するDNA配列は、NS3配列を含むgWIZプラスミド (Dr. G. Inchauspe, Lyon, Franceより供与)をSal IおよびNot Iにより消化して得た。消化産物をpET-45 (+)プラスミド (Novagen, Madison WI)のBsrG IサイトとNot Iサイトの間にクローン化した。これをE. coliで発現し、そしてアフィニティークロマトグラフィーによりニッケルカラムにて精製し、次いでイオン交換 クロマトグラフィーにより精製した。
【0033】
同様に、インビトロアッセイのため、組換えポリペプチド(Mikrogen; カタログNo. 94302) を抗原として使用した。これは非構造タンパク質 NS2の最後の20 アミノ酸およびHVCのNS3 タンパク質の最初の508 アミノ酸を含む(配列番号: 3)。
【0034】
TLR3 アゴニストとして、ポリ(I:C)をAmershamより得て使用した(カタログNo. 27-4732-01)。
【0035】
CD40 アゴニストとして、ハイブリドーマFGK-45 (Rolink A. et al., Immunity 1996. 5: 319-330)から精製した抗CD40抗体を使用した。
【0036】
いずれも試薬も、変形細胞リムルス(amoebocyte limulus)のライセート QCL-1000 アッセイ(Bio Whittaker)により測定した産物1mgあたりのエンドトキシンは<1ユニットであった。
【0037】
マウス
6〜8週齢のC57B1/6 マウスをHarlanから入手した。ヒトHLA-A2.1分子のトランスジェニックマウスであるHHD マウスもまた使用した (Pascolo S. et al., J. Exp. Med. 1997. 185: 2043-2051)。いずれの動物も無菌条件下で維持され、施設の規則にしたがい扱われた。
【0038】
細胞株
T2 細胞 (Salter R. et al. immunogenetics, 1985 21: 235-246) をHHDマウス由来の細胞傷害性T-リンパ球 (CTL) を用いたクロム放出アッセイの標的細胞として使用した。
【0039】
T1 細胞にHCVのコード領域のキャリアプラスミドをトランスフェクトして(T1/HCVcon 細胞)、HCVのタンパク質を発現する細胞の認識アッセイに使用した。これらの細胞はDr. D. Moradpour (Freiburg, Germany; Volk B. et al., J Gen Virol. 2005; 86: 1737-1746)より供与された。トランスフェクトしていないT1 細胞(ATCC, カタログNo. CRL-1991) をコントロールとして使用した。
【0040】
細胞はいずれも完全培地(RPMI 1640、10% ウシ胎児血清、100 U/ml ペニシリン、100 μg/ml ストレプトマイシン、2 mM グルタミン、および50 μM 2-メルカプトエタノール含有)中にて培養した。T1/HCVcon 細胞株の培養には2 mg/ml G418 (Gibco)も含めた。
【0041】
免疫化
2匹のマウスの群をi.p. 経路にて50 μg 抗CD40により免疫化した。4時間後、50 μg ポリ(I:C) (i.v.) 、および様々な量の抗原、つまりNS3 タンパク質またはNS3とペプチドの混合物 (i.p.)を注射した。
【0042】
サイトカイン産生のための脾細胞の刺激
脾細胞を完全培地に再懸濁し、ペプチドまたは組換えHCV NS3 タンパク質の存在または非存在下において、8 x 105 細胞/ウェル、0.2 ml中にてU底96-ウェルプレート上に播種した。
【0043】
2日後、上清を回収し、IFN-γの存在をELISA (BD-Pharmingen)により製造元の指示書にしたがい測定した。
【0044】
CTLの溶解活性の測定
CTL 応答を測定するため、免疫化した動物に由来する脾細胞をペプチド (10 μM) と2 時間37℃でインキュベートし、2回洗浄し、そして24-ウェルプレートで7.5 x 106 細胞/ウェルのコンフルエンスにて培養した。T1/HCVcon 細胞の認識の測定ため行った実験では、HHD マウスの7.5 x 106の脾細胞を、事前にマイトマイシン C (Sigma)で刺激した7.5 x 105 のT1/HCVcon 細胞とともに培養した。全てのケースで、2日後に2.5 U/ml IL-2 (Boehringer-Mannheim GmbH, Germany) をウェルに添加し、そして5日後に細胞を回収し、クロム放出活性を行った。
【0045】
溶解活性は、様々な量のエフェクター細胞を、事前にペプチド(標的)と51Crまたは51Crのみをロードした3000個のT2 標的細胞と4時間インキュベートすることで測定した。T1/HCVconで刺激した細胞の場合、事前に51CrをロードしたT1/HCVcon またはT1とエフェクター細胞を接触させた。培養上清を4 時間のインキュベーション後に回収した。
【0046】
特異的溶解率は以下の式にしたがい計算した:
(cpm実験 − cpm自発) / (cpm最大 − cpm自発) x 100
、ここで、自発溶解 (cpm自発として測定) はエフェクター細胞の非存在下でインキュベートした標的細胞であり、また最大溶解 (cpm最大) は標的細胞を5% Tritonx100とインキュベートして得られるものである。
【0047】
実施例1
NS3 タンパク質とともに抗CD40およびポリ(I:C)を用いて免疫化すると、多エピトープ性CD4+およびCD8+ T 応答が誘導される。
抗CD40およびポリ(I:C)による免疫化は、CD8+細胞のエピトープに相当する合成ペプチドを免疫原として使用したCD8+ 応答の誘導に非常に効果的であることが示されている。この方法は強力な応答を誘導するが、CD4+ 応答を誘導する少量のNS3 タンパク質 (5 μg/マウス)とともに共免疫化すると、CD8+ 応答の大きさが増強され、また、高親和性のCD8+ 応答、換言すれば低濃度の抗原を認識するCD8+ 応答が増加することが示されている。さらに、ペプチドによる免疫化は、選択したペプチドと同じ拘束性のHLA 分子を有する個体においてのみ有効である。これらの2つの点に対処するため、多量の組換えNS3 タンパク質による免疫化によってCD4+応答だけでなくCD8+応答も誘導できるかについて研究を行った。この目的のため、マウスをポリ(I:C)および抗CD40とともにNS3にて免疫化し、そして誘導された応答について研究した。つまり、HHD マウス(各群2匹) に50 μg 抗CD40をi.p.注射した。4時間後、それらに50 μg ポリ(I:C) (i.v.) および500 μg 組換えNS3 タンパク質 (i.p.) (配列番号: 1)を注射した。6日後、動物を屠殺し、脾細胞を抽出した。NS3の能力を解析する目的で、CD8+およびCD4+ T 応答を誘導すべくアジュバント ポリ(I:C) と抗CD40 とを処方する場合、脾細胞をこれら細胞集団を特異的に活性化する様々な抗原によりイン・ビトロで刺激した。(A) CD8+ 応答の解析のため、第一の実験では、脾細胞をCD8+ エピトープ 1073、1406、または1038でIL-2の存在下5日間刺激した。その後、ペプチドで刺激した各細胞群について、対応ペプチドをロードした標的細胞 (黒バー) またはペプチドなしのコントロール標的細胞(白バー)の溶解能を測定した。図1Aは、エフェクター:標的比 100:1で得られた結果を示す。(B) NS3による免疫化後に誘導されるCD8+ 応答は、同じCD8+ エピトープに対するIFN-γ産生の研究によっても解析した。この目的のため、脾細胞を様々な量の1073 (黒丸)、1406 (白三角) または1038 (黒三角)とともに培養した。培養48時間後、上清を回収し、IFN-γ含量を測定した。(C) 誘導されたCD4+ 応答を解析するため、脾細胞を免疫化に使用したNS3 タンパク質(配列番号: 1)で刺激した。また、細胞を細菌で産生された市販のNS3 タンパク質 (配列番号: 3)で刺激した。前述のように、活性化の程度はIFN-γの産生により測定した。
【0048】
第一に、この抗原がCD8+ 応答を誘導できることが確認され、これはクロム放出アッセイ (図 1A) および IFN-γの産生誘導(図 1B)の両方により検出できた。さらに、この応答は多エピトープ性で、NS3 配列内に特徴的な各種CD8+ エピトープ(例えば、ペプチド1073、1406および1038)に対するものであった。最後に、免疫化に使用したNS3 タンパク質および細菌で産生された市販のNS3 タンパク質を認識するCD4+ 応答を誘導できることも確認された(図 1C)。この後者に対する応答のほうが弱く、これはおそらく、両タンパク質の配列に何らかの変化が存在すること、および細菌で発現させたタンパク質の方が短く、CD4+ T リンパ球により認識される一部のエピトープを欠失している可能性があることによる。
【0049】
実施例 2
25 μg 組換えNS3はポリ(I:C)および抗CD40とともに投与すればCD4+およびCD8+ T 応答を十分に誘導できる。
以前の実験から、本発明者らは、5 μg NS3ではCD4+ 応答は誘導されるがCD8+応答は誘導されないことがわかっていたので、CD8+ 応答の誘導に十分なNS3の最小量を知りたかった。この目的のため、HHD マウスを500、250、125、および25 μg のNS3 (配列番号: 1)で免疫化した。また、コントロールとして、CD8+ 応答を誘導するCD8+ エピトープに相当するペプチドとCD4+ 応答を誘導する5 μg NS3 (配列番号: 1)とで免疫化した群を含めた。このため、ある投与量のNS3で免疫化した動物の群それぞれにおいて、CD8+ 応答およびCD4+ 応答について解析を行った。CD8+ 応答は、CD8+ エピトープ1073をロードした標的細胞の溶解能(図 2A)として、また様々な濃度のCD8+ エピトープ1073 (図 2B)および1038 (図 2C)についてのIFN-γ産生能として解析した。CD4+ 応答は、様々な濃度のNS3 (配列番号: 1)についてのIFN-γ産生能により測定した (図 2D)。この実験は、解析したいずれの量のNS3もCD8+ 応答を誘導できることを示し、ペプチド 1073に対する溶解応答を研究すると (図 2A)投与量25 μg で誘導される応答が最も弱かった。さらに、エピトープ1073 (図 2B) および1038 (図2C)についていずれの投与量もIFN-γ産生を誘導することができ、このことは多エピトープ性応答の誘導能が投与量を減らしても維持されたことを示唆する。最後に、予想されたように、それらはいずれもCD4+ 応答を誘導できた。大抵の場合25 μg NS3を使用したときに誘導された応答の方がより弱かったことを考慮して、後の実験では、応答の誘導の増加がみられなくなった投与量100 μg/マウスを選択した。
【0050】
実施例 3
NS3 タンパク質とともにポリ(I:C)および抗CD40を用いて免疫化すると、異なるMHCを有する他のマウスの系統においてCD4+およびCD8+ 応答が誘導される。
NS3 タンパク質と同じ大きさの抗原において様々なMHC分子に提示されうるCD4+およびCD8+ エピトープが見つかることを考慮して、この免疫化プロトコールのCD4+およびCD8+応答の誘導能を異なるMHC分子を有する別のマウスの系統において研究した。この目的のため、H-2b拘束性MHC 分子を有するC57/B16 マウスを100 μg NS3 (配列番号: 1)で免疫化した。応答の改善を目的として、一方の群は1回の免疫化を行い、他方の群には第二の追加免疫化を行った。第一に、CD8+ 応答を、クラス I H-2 Db のMHC 分子に提示されるCD8+ エピトープを含むペプチド1629-1637 (配列番号: 7)に対するIFN-γ産生として測定した。図 3Aに示されるように、検出可能な応答が両マウス群において誘導されたが、そのレベルは2回の免疫化を施した群(黒四角)のほうが1回の免疫化を施した群 (白四角)よりもかなり大きかった。組換えNS3 タンパク質 (配列番号: 1)に対するIFN-γ産生として測定したCD4+ 応答もまた両群で検出され (図 3B)、ここでも2回の免疫化 (黒四角) は1回の免疫化 (白四角)よりもより強力な応答を誘導した。
【0051】
実施例 4
NS3 タンパク質とともにポリ(I:C)および抗CD40を用いて免疫化すると、HCVタンパク質発現細胞を認識できるCD8+ 応答が誘導される。
ポリ(I:C)および抗CD40とともにNS3 タンパク質を用いる免疫化によりHCV感染細胞を傷害できる可能性のある応答を誘導できるかについて研究するため、HCVのタンパク質を発現するプラスミドをトランスフェクトした標的細胞 (T1/HCVcon)のインビトロモデルを使用した。これら細胞は、HCV感染細胞が発現するペプチドと同じペプチドをそのクラス I MHC 分子に発現する;それゆえ、それらに対する何らかの応答はHCV感染細胞に対する応答と見なすことができる。図 1〜3の実験に使用したNS3 タンパク質 (配列番号: 1)は、T1/HCVcon細胞に存在するウイルス株とは異なるウイルス株に相当する。これら2つの株は、これまで研究されたCD8+ エピトープに一部相違が見られる。T1/HCVcon細胞に存在するCD8+ エピトープの認識能を最適化することを目的として、この実験ではT1/HCVcon細胞に存在するタンパク質により高い相同性を有する配列であるNS3 タンパク質 (配列番号: 2) を免疫原として使用した。HHD マウスを100 μg NS3で免疫化した6日後、脾細胞をT1/HCVcon細胞で刺激した。T1/HCVcon 細胞を認識する能力は溶解活性アッセイにおいて解析した。この目的のため、刺激した脾細胞をT1/HCVcon 細胞およびT1コントロール細胞と接触させた。図 4に示すように、NS3による免疫化により、HCV タンパク質を発現するT1 細胞(黒丸) に対してT1 コントロール細胞(白丸)に対してよりも優れた溶解応答が誘導された。
【0052】
実施例 5
NS3 タンパク質とともにポリ(I:C)および抗CD40を用いて免疫化すると、持続性のT CD4+およびCD8+ 応答が誘導される。
ワクチン接種プロトコールが有する主要な性質の1つは、免疫化によって付与される保護が長期間持続できるように、持続性の免疫応答を誘導する能力である。NS3 タンパク質とともにポリ(I:C)および抗CD40を用いる免疫化によりこの種の応答を誘導できるかについて研究するため、HHD マウスを100 μg NS3にて実施例 1に記載のプロトコールにしたがい免疫化した。応答を強化するため、15日後に動物に同じ条件下で追加投与を施した。2回目の免疫化の60日後、動物を屠殺し、その脾細胞を様々な抗原で刺激し、その時点で持続しているCD8+およびCD4+ T 応答を解析した。CD8+ T 応答の研究のため、細胞をエピトープ1073で刺激し、IFN-γの産生および溶解活性を測定した。図 5Aに示すように、2回目の免疫化の60日後、NS3 タンパク質とともに抗CD40およびポリ(I:C)を用いて免疫化したマウスの脾細胞は、ペプチド 1073で刺激した場合は多量のIFN-γを産生することができたが、抗原の非存在下では産生できなかった。さらに、これら細胞はペプチド 1073をパルスした標的細胞(黒丸)を溶解できたが、抗原を含まない標的細胞 (白丸) は溶解できなかった(図 5B)。最後に、免疫化に使用したNS3 タンパク質を抗原として用いてCD4+ 応答 も研究した。図 5Cは、この免疫化プロトコールが特異的にNS3を認識する強力かつ持続性の CD4+ 応答も誘導できることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】NS3 タンパク質とともに抗CD40およびポリ(I:C) を用いて免疫化すると、多エピトープ性CD4+およびCD8+ T 応答が誘導される。HHD マウス(各群2匹) に50 g 抗CD40 を注射(i.p.)した。4時間後、50 g ポリ(I:C) (i.v.) および500 g 組換えNS3 タンパク質 (i.p.) (配列番号: 1)を注射した。6日後、動物を屠殺し、脾細胞を抽出し、様々な抗原でイン・ビトロ刺激し、誘導された免疫応答を解析した。(A) 細胞をCD8+ エピトープ1073、1406、または1038 (10 μM)でIL-2の存在下5日間刺激した。その後、脾細胞の各群について、対応ペプチドをロードした標的細胞(ペプチド; 黒バー) またはロードしていない標的細胞 (コントロール; 白バー) に対する溶解応答を測定した。エフェクター:標的比 100:1を用いて得られた結果を示した。B) 同様に、脾細胞を様々な濃度 (0.1-10 μM) のペプチド 1073 (黒丸)、 1406 (白三角) または1038 (黒三角)とともに培養し、刺激の48時間後に得た上清においてIFN-γ含量をELISAにより測定した。(C) また、CD4+ 応答の測定のため、脾細胞を48時間、5または1 μg/mlの免疫化に使用したNS3 タンパク質 (配列番号: 1)、1 μg/mlの細菌で産生されたNS3 タンパク質(配列番号: 3)、または培養培地(コントロール)で刺激した。この時間の後、上清を回収し、IFN-γの産生量をELISAにより測定した。
【図2】ポリ(I:C)および抗CD40を用いる免疫化においてCD4+およびCD8+ T 応答の誘導に必要なNS3 タンパク質の量の測定。HHD マウス(各群2匹)を、NS3 タンパク質 (配列番号: 1) (500、250、125または25μg/マウス) によりポリ(I:C)および抗CD40をともに用いて図 1に記載されるプロトコールにしたがい免疫化した。5 μg NS3 (配列番号: 1) および50 μg ペプチド 1073および1038を抗原としてポリ(I:C)および抗CD40とともに使用して同様に免疫化した群をコントロールとして含めた。6日後、動物を屠殺し、脾細胞を抽出し、様々な抗原で刺激した。(A) 誘導された溶解応答を測定するため、細胞を5日間CD8+ エピトープ1073(10μM)およびIL-2で刺激した。その後、ペプチドをロードした一定数の標的細胞に対して様々な量のエフェクター細胞を接触させることにより応答を測定した。さらに、誘導されたCD8+ 応答はIFN-γの産生によっても解析した。この目的のため、細胞を様々な濃度のペプチド 1073 (B) および1038 (C)で刺激した。CD4+ 応答を定量するため、この細胞をNS3 タンパク質 (配列番号: 1) (D)によっても刺激した。48時間後、上清中に存在するIFN-γの量を測定した。
【図3】NS3 タンパク質とともに抗CD40およびポリ(I:C) を用いて免疫化すると、MHCの異なる他の系統のマウスにおいてCD4+およびCD8+ 応答が誘導される。C57BL6 マウス(H-2bタイプのMHC分子を有する) (各群2匹) に、100 μg NS3 (配列番号: 1) をポリ(I:C)および抗CD40とともに用いて図 1に示したプロトコールにしたがい1回 (白四角) または2回 (黒四角) の免疫化を施した。6日後、動物を屠殺し、脾細胞を様々な抗原とともに培養し、誘導されたCD8+ およびCD4+ 応答を測定した。拘束性エピトープ H-2 Db 1629-1637 (GAVQNEVTL) (配列番号: 7)を脾細胞の刺激およびCD8+ 応答の測定に使用した(A)。NS3 タンパク質 (配列番号: 1) (B) をCD4+ 応答の評価のための刺激物質として使用した。2日間培養後、上清を回収し、IFN-γ産生量を測定した。
【図4】NS3 タンパク質とともに抗CD40およびポリ(I:C) を用いて免疫化すると、HCVのタンパク質を発現する細胞を認識しうるCD8+ 応答が誘導される。(A) HHD マウス(各群2匹) に100 μg NS3 タンパク質 (配列番号: 2) とポリ(I:C)および抗CD40とを図 1に示すように注射した。6日後、動物を屠殺し、その脾細胞を、マイトマイシンを処置したT1/HCVcon 細胞(HCVのタンパク質を発現するプラスミドをトランスフェクトしたT1 細胞)でIL-2の存在下刺激した。刺激の5日後、脾細胞のT1/HCVcon 細胞認識能を溶解活性アッセイにおいて測定した。この目的のため、様々な量の脾細胞を一定数のT1/HCVcon 細胞(黒丸) またはトランスフェクトなしのT1 コントロール細胞 (白丸)と接触させた。
【図5】NS3 タンパク質とともに抗CD40およびポリ(I:C) を用いて免疫化すると、持続性の T CD4+およびCD8+ 応答が誘導される。HHD マウス(各群2匹) に100 μg NS3 タンパク質 (配列番号: 2) とポリ(I:C)および抗CD40とを図 1に示すように注射した。2週間後、動物に同じ条件下で2回目の免疫化を行った。2回目の免疫化の60日後、動物を屠殺し、脾細胞を抽出し、持続性の CD8+ およびCD4+ T 応答を研究した。(A) 脾細胞をCD8+ エピトープ1073 (10 μM) で刺激し、または抗原の非存在下におき、48時間後培養上清を回収し、IFN-γ産生量を測定した。(B) 脾細胞を5日間ペプチド 1073 (10 μM) およびIL-2とともに培養し、ペプチド 1073をロードした標的細胞を溶解する能力について研究した。この目的のため、様々な量のエフェクター細胞を、一定数のペプチド 1073をロードした標的細胞 (黒丸)またはペプチドをロードしていない標的細胞 (白丸)と接触させた。(C)脾細胞をNS3 タンパク質 (1 μg/ml) (配列番号: 2) で刺激し、または抗原の非存在下におき、CD4+ 応答を研究した。48時間後、上清を回収し、IFN-γ産生量を測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むことを特徴とする、C型肝炎の予防および治療のための免疫刺激物質の組合せ:
a)TLR3 アゴニスト、
b)CD40 アゴニストまたはそれをコードするDNA配列、および
c)C型肝炎ウイルスのNS3 タンパク質またはCD8+およびCD4+ 応答の誘導能を有する該NS3 タンパク質のフラグメントを含むポリペプチド。
【請求項2】
TLR3 アゴニストがポリ(I:C)であることを特徴とする、請求項1の免疫刺激物質の組合せ。
【請求項3】
CD40 アゴニストが抗CD40抗体、CD40LおよびCD40に対する結合能が保存されたそれらのフラグメントから選択されることを特徴とする、請求項1または2の免疫刺激物質の組合せ。
【請求項4】
CD40 アゴニストが抗CD40抗体であることを特徴とする、請求項3の免疫刺激物質の組合せ。
【請求項5】
以下を含むことを特徴とする、請求項1の免疫刺激物質の組合せ:
a)ポリ(I:C)、
b)抗CD40抗体、および
c)NS3 タンパク質を含むポリペプチド。
【請求項6】
NS3 タンパク質を含むポリペプチドが配列番号1のポリペプチドであることを特徴とする、請求項4または5の免疫刺激物質の組合せ。
【請求項7】
全ての成分が単一の医薬組成物の一部を形成することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかの免疫刺激物質の組合せ。
【請求項8】
全ての成分が少なくとも2つの異なる医薬組成物の一部を形成することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかの免疫刺激物質の組合せ。
【請求項9】
該医薬組成物が同時に投与されることを特徴とする、請求項8の免疫刺激物質の組合せの使用。
【請求項10】
該医薬組成物が異なる時点で投与されることを特徴とする、請求項9の免疫刺激物質の組合せの使用。
【請求項11】
該医薬組成物が異なる投与経路で投与されることを特徴とする、請求項9の免疫刺激物質の組合せの使用。
【請求項12】
各成分が医薬上許容される量にて存在することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかの免疫刺激物質の組合せを含む医薬組成物。
【請求項13】
少なくとも2つの異なる医薬組成物を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかの免疫刺激物質の組合せを投与するためのキット。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれかの免疫刺激物質の組合せを免疫応答の誘導に有効な量にて投与することからなることを特徴とする、C型肝炎ウイルスに対する免疫応答を生じさせる方法。
【請求項15】
予防的処置であることを特徴とする、請求項14の方法。
【請求項16】
治療的処置であることを特徴とする、請求項14の方法。
【請求項17】
請求項1〜8のいずれかの免疫刺激物質の組合せを含むことを特徴とする、C型肝炎ウイルスに対するワクチン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2009−511452(P2009−511452A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534032(P2008−534032)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際出願番号】PCT/ES2006/000554
【国際公開番号】WO2007/042583
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(506061716)プロイェクト、デ、ビオメディシナ、シーマ、ソシエダッド、リミターダ (34)
【氏名又は名称原語表記】PROYECTO DE BIOMEDICINA CIMA, S.L.
【Fターム(参考)】