説明

C5A受容体を遮断する化合物および治療法におけるその使用

本発明は、ヒトC5aRのN-末端残基10から18と細胞外ループとの分子内接触を防ぐことができる化合物に関する。より具体的には、本発明は、ヒトC5aRの10、15、および18位のアスパラギン酸および12位のグリシンを結合することができる化合物に関する。このような化合物は、好ましくはXn-E-X39-K-X7 Y-V-X11-Y-Xmの一般式で表され、Xn X39、X7 X11およびXmは、アミノ酸の伸長であり、他の文字は、対応するアミノ酸または非タンパク質構成類似体を表す。本発明は、さらに、予防および治療での使用にも関係する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症性疾患および病状の治療のための、C5a受容体(C5aR)を結合し、内因性C5aにより媒介される炎症および免疫調節活性を遮断する化合物に関する。本発明は、さらに、C5a受容体(C5aR)N末端アミノ酸配列を使用して抗C5aR化合物の選択および開発を行うことに関する。
【背景技術】
【0002】
われわれの先天性免疫システムは、外部からの侵入者(例えば、細菌、ウイルス、菌類、および癌細胞)から人体を護る。このシステムの最も重要な細胞は、単球と好中球である。これらの細胞は、細菌、菌類、およびウイルスなどの侵入者を認識した後、摂取して、殺す。これらの細胞は、人体の防御の最前線の一部であるため、その最も重要な仕事は、侵入者をできる限り迅速に殺して取り除くことである。これは、侵入者に致命的なだけでなく、付近の宿主細胞にも損傷をもたらす非常に攻撃的な物質(例えば、フリーラジカルおよび酵素)を通じて達成される。これら損傷した細胞および先天的システム自体からの局部的活性化細胞から出る物質は、さらに、引きつける好中球および単球を増やして、局部的炎症を引き起こす。炎症は、すべての侵入者が殺され、このプロセスで殺されたさまざま細胞とともに、取り除かれると、鎮静する。こうして、炎症反応により引き起こされる傷の治癒が開始できる。
【0003】
場合によっては、過剰活性化好中球によって引き起こされる、このような攻撃的な炎症反応は、いたずらに強いか、またはさらには感染誘因が存在しなくても始まる。場合によっては、この炎症反応は、重大な、ときには死を招く疾患に関与し、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、心臓発作および脳卒中などの血栓事象の後の重大な組織障害、炎症性腸疾患、および関節リウマチのような病気を含む。
【0004】
補体(C)システムは、病原体からの宿主防衛に中心的役割を果たす、先天性免疫システムの重要な構成要素である。また、これは、炎症を開始する強力な推進力でもあり、無制御だと、重大な組織障害に至る病変を引き起こしうる。細菌が人体に侵入し、例えば、中枢神経系に感染した場合(髄膜炎のように)、微生物由来の物質は、補体因子5(C5)転換酵素複合体を活性化し、補体システムのC5を活性化されたC5a形態に転換する。C5aは、化学誘引物質、つまり、血管から細胞を活性化し、誘引する物質である(移行プロセス)。好中球は、これらの2つの物質、さらにインターロイキン-8(IL-8)に反応する。
【0005】
活性化された好中球は、血管から容易に移行することができる。これは、化学誘引物質、微生物生成物、および活性化された単球からの物質が、血管の浸透性を高め、血管壁の内皮細胞を刺激したことで、ある種の接着分子を発現させるからである。好中球は、これらの接着分子に結合するセレクチンおよびインテグリン(例えば、CD11b/CD18)を発現させる。好中球は、内皮細胞に接着すると、化学誘引物質/ケモカインの誘導の下で、細胞内を移行し、感染部位に向かい、そこで、これらの物質の濃度が最高になる。
【0006】
これらの物質は、さらに、好中球を活性化し、さまざまな他の分子を生成し、その一部は、さらに多くの好中球(したがって、単球)を誘引するが、ほとんどの場合、侵入細菌を破壊する役割を持つ。これらの物質の一部(例えば、フリーラジカル、タンパク質を破壊する酵素(プロテアーゼ)および細胞膜を破壊する酵素(リパーゼ))は、反応性を有し、非特異的であるため、周辺組織(および好中球自体)からの細胞が破壊され、組織障害を引き起こす。このような損傷は、漏れのある血管壁を破り、常に炎症を伴う腫れ(浮腫と呼ばれる)に関与する血液由来の流体の存在により悪化する。この過剰な流体により引き起こされる圧力増大は、さらに細胞損傷をもたらし、死に至らしめる。
【0007】
炎症プロセスの後のほうで、単球は、現場に移動し、活性化する。これらは、細菌および細胞残屑を取り除く役割のほかに、さらに、腫瘍壊死因子(TNF)およびIL-8などの物質を生産するが、これが、より活性のある好中球を引き寄せ、さらなる局部的損傷を引き起こす。TNFは、好中球に対し直接的促進作用も有する。すべての侵入者が取り除かれた後、炎症反応は鎮静し、その領域から、残っている「被害者」が取り除かれる。次いで、創傷治癒のプロセスが開始する。一般に、損傷を受けた組織は、主に線維芽細胞およびコラーゲンから形成された瘢痕組織で置き換えられる。心筋細胞、脳細胞、または肺胞細胞から形成されている組織のような、重要な機能を有する人体の領域内に炎症が発生した場合、その結果生じる瘢痕形成により正常な機能が損なわれ、心不全、麻痺、および肺気腫のような重大な病気を引き起こす。このような病気の衰弱を引き起こす結果を最小限に抑えるために、炎症反応をできる限り速やかに「減衰」させることが重要である。
【0008】
急性の急性期初期炎症反応を制御するための介入では、そのような事象に遡って追跡できる症状を有する広範にわたる患者に対する予後診断を改善する機会が得られる。このようなアプローチは、多くの急性および慢性炎症に基づく疾病について支持されており、関連する疾病モデルからの研究結果に基づき有望であることが示されている。ステロイドおよび非ステロイド抗炎症薬(NSAIDS)などの古典的な抗炎症性薬は、効能の面でも安全性の面でも理想的な作用プロファイルを有しない。ステロイドは、「間違った」細胞種類(単球)に影響を及ぼし、その減衰効果は容易にバイパスされる。NSAIDSは、一般に、一部は炎症プロセスの後の段階で介入するという理由から、比較的穏やかな効果を示す。両クラスの薬剤は、薬理学的活性の他の側面から結果として生じるさまざまな望ましくない副作用を生み出す。直接および特異的に作用し、好中球の移行および活性化を妨げる薬剤は、多数の利点を有すると考えられる。初期に開発されているいくつかの薬剤は、好中球の活性化(例えば、C5転換酵素阻害薬、C5aに対する抗体、C5a受容体遮断薬)および移行(好中球上のインテグリン(CD11b/CD18など)およびL-セレクチンに対する抗体および内皮細胞上の接着分子(ICAM-1およびE-セレクチンなど)に対する抗体)のうちの1つの個別の側面にしか干渉しない。TNFおよびIL-8に対する抗体は、慢性炎症に効果を有し、急性炎症には限界効果しか有しないが、それは、単球(主に、それらの物質の生産に関与している)が急性期に最低限の役割を果たすだけだからである。
【0009】
ときには、急性炎症の原因を取り除くことができず、炎症が慢性になることもある。結核、慢性肝炎、およびいくつかの他の病気を除けば、これは、滅多に感染のケースではない。しかし、慢性炎症は、自己免疫反応などの、細菌以外の刺激により引き起こされる可能性もある。研究の結果、慢性炎症では、単球の役割がかなり突出しており、好中球の移行および活性化、単球の移行および活性化、組織損傷、死細胞の除去、および創傷治癒はすべて、同時に進行することがわかった。細胞と多くの異なるサイトカインおよびケモカインとの間のこのような次々に発生する複雑な相互作用は、長年、集中的な研究のテーマであった。単球およびその産物は、慢性炎症を弱めるために阻害される必要のある最も重要な要素であると信じられていた。これは、単球と特異的に相互作用するステロイドが、一般に、急性炎症とは反対に慢性の場合に効果がある理由の説明になっている。しかし、ステロイドを使用した維持療法は望ましい選択肢ではない、それというのも、重大な、許容できない副作用が、臨床効果を得るために必要な用量で発生しうるからである。TNFまたはIL-8に対する抗体を使用するより新しい治療法は、良好な結果を示しており、最初は、単球が慢性炎症に果たしていると考えられた大きな役割の証明であるとみなされた。近年の研究では、炎症における単球の排他的役割に疑問を投げかけ、薬物療法介入のより適した標的を代表するものと現在みなされている、好中球のクリティカルな役割を指摘している。
【0010】
慢性炎症の病状の根本にある原因は、必ずしも明確ではなく、元の原因が常に将来の再発に関わるとはいえない。一部の科学者は、いくつかの慢性炎症疾患では、事象が連続して繰り返されると確信している。それは、既存の活性化された好中球および単球は、新しい細胞群を連続的に誘引し、活性化し、それにより、初期刺激がもはや存在していないとしても炎症反応を永続化するという考えである。これは、好中球および単球の活性化の効果的阻害薬による急性期または定期的治療が、新しい細胞動員のサイクルを停止し、やがて、疾患の増悪の修正、またはさらには全快をもたらし、症状軽減だけではないことを示唆している。
【0011】
炎症の治療に使用することができる代替え化合物を見つけることが望ましい。
【0012】
有望な候補の1つが、WO00/02913で説明されているような、黄色ブドウ球菌に由来する走化性阻害タンパク質(CHemotaxis Inhibitory Protein)(CHIPS)という名前の、増殖黄色ブドウ球菌(S.aureus)の細胞外培地内で見つかった炎症阻害特性を有する新しい薬剤であった。CHIPSは、fMLP-およびC5a-が好中球の走化性を誘発する、好中球のfMLP-およびC5a-誘発活性化を阻害することがわかった。FITC標識CHIPSを使用したところ、CHIPSは異なる領域を使用してC5aRとFPRの両方を結合することが発見された。これらの受容体は、7-膜貫通ヘテロ三量体Gタンパク質結合受容体(GPCR)のスーパーファミリーのすべてのメンバーであるケモカイン受容体のファミリーに属す。好中球は、ホルミル化ペプチド、C5a、C3a、PAF、およびLTB4に対する受容体、さらにIL-8およびNAP/GRO/ENAをそれぞれ認識するケモカイン受容体CXCR1およびCXCR2を含むそれらの表面上にこの受容体ファミリーの複数のメンバーを持つ。細胞外N末端部、3つの細胞外および3つの細胞内ループ、および細胞内C末端部のGPCRが存在する。
【0013】
しかし、完全体の分子は大きすぎて治療に使用できないと考えられた。さらに、CHIPSが患者に投与された場合、この細菌毒性因子に対する既存の抗体があるため、免疫複合体が形成されることが判明した。
【特許文献1】WO00/02913
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【非特許文献49】Ho SNら、1989年、Gene 77、51
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、炎症阻害特性を有する代替え化合物を形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、CHIPSとC5aRとの相互作用、したがってC5a媒介活性化の阻害の研究成果に基づく。文献から、C5aは異なる2つの部位、つまり認識部位と活性化部位で受容体に結合することが知られている。認識部位は、C5aRのN末端の残基21〜30のセグメント内にあると考えられる。けれども、C5aR N末端の10、15、16、および18位に存在するアスパラギン酸も、C5aの受容体の結合親和力にとって重要であるように思われる。
【0016】
これらの結果から、本発明者らは、C5aがアミノ酸21〜30からなる認識部位に結合し、そうして得られた立体配座はC5aR N末端残基10〜18とC5aRの細胞外ループとの分子内接触により安定するという概念に至った。この結合と安定化により、C5aは、C末端活性化部位を介して受容体を活性化する適切な位置に置かれる。
【0017】
本発明者らは、C5aR全体とC5aR N末端単独がHEK293細胞内で発現される2つの異なる発現系を使用した。それにより、CHIPSは主にC5aR N末端に結合することが発見された。
【0018】
驚いたことに、C5aR N末端の部位特異的突然変異生成研究から、CHIPS結合部位がC5a認識部位(アミノ酸21〜30)に位置しないことが証明された。CHIPSは、アミノ酸10から18のこの領域に結合することによりC5aR N末端残基10〜18とC5aRの細胞外ループとの分子内接触を妨げるように見える。10、15、および18位のアスパラギン酸(D10、D15、およびD18)および12位のグリシン(G12)は、ここでは重要な役割を果たす。
【0019】
完全なC5aRのN末端の部位特異的突然変異生成は、D18およびG12は、CHIPSの結合に関与する最も重要なアミノ酸であるが、アスパラギン酸の2つの突然変異体の少なくとも一組合せは、CHIPSの結合を完全に阻害する必要があることを示している。
【0020】
C5aRのアミノ酸38から350は、CHIPSの結合に関与しない。
【0021】
さらに、核磁気共鳴(NMR)で、アミノ酸7から28(ここでは「SO4-C5AR pep7-28」と呼ばれる)を含む、スルホン化C5aR由来ペプチドを使用し、C5aR-pep7-28を15N-標識CHIPSΔ30(CHIPSから最初の30個のアミノ酸を取り去る)に滴定すると、C5aR-N末端への結合に関与するCHIPSΔ30の正確なアミノ酸が発見された。関与が最も明らかなアミノ酸は、R46、K50、K51、G52、K54、E60、K100、K101、G102、K105、Y108、V109、およびY121であるが、アミノ酸T37、L38、R44、L45、N47、Y48、L49、T53、A57、F59、K61、V63、I64、L65、Y71、T73、L76、L80、D83、R84、K85、E88、L89、G91、M93、T96、Y97、E103、I110、N111、およびK115も、C5aR-N-末端へのCHIPSの結合に関与している可能性がある。
【0022】
リシン突然変異体K50、K51+K54、およびK100、K101+K105を含む、2つのCHIPS突然変異体を使用する予備実験は、これらのリシン領域がC5aRへのCHIPSの結合に関与していることを実際に示している。
【0023】
そこで、本発明は、C5aRへのCHIPSの正確な結合部位に関する情報に基づく。さらに、これは、C5aRへの結合に関与するCHIPS分子内のアミノ酸に関する情報を与える。その後、この二重の発見は、CHIPS由来の化合物または非CHIPS由来の化合物としてよい、抗C5aR化合物の開発に使用される。
【0024】
したがって、本発明は、ヒトC5aRのN-末端残基10から18と細胞外ループとの分子内接触を防ぐことができる化合物に関する。特に、本発明は、ヒトC5a受容体(C5aR)内の残基である、10、15、および18位のアスパラギン酸(D10、D15、およびD18)および12位のグリシン(G12)に結合する化合物に関する。
【0025】
本発明は、より具体的には、以下の一般化学式の化合物に関する。
【0026】
Xn-E-X39-K-X7-Y-V-X11-Y-Xm (I)
【0027】
式中、
Xnは、存在する場合も存在しない場合もあり、タンパク質構成アミノ酸、非タンパク質構成アミノ酸、D-アミノ酸、ペプチド模倣薬構成単位、またはそれらの組合せの伸長であり、
Kは、リシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Eは、グルタミン酸またはその非タンパク質構成類似体であり、
Yは、チロシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Vは、バリンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
X39、X7、およびX11は、それぞれ、39、7、または11のタンパク質構成アミノ酸、非タンパク質構成アミノ酸、D-アミノ酸、ペプチド模倣薬構成単位、またはそれらの組合せの伸長であり、
Xmは、存在する場合も存在しない場合もあり、タンパク質構成アミノ酸、非タンパク質構成アミノ酸、D-アミノ酸、ペプチド模倣薬構成単位、またはそれらの組合せの伸長であり、
自然に分泌されるCHIPSと同じ3次元立体配座を有する。
【0028】
より具体的には、本発明は、以下の一般化学式の化合物に関する。
【0029】
Xn-R-X3-K-K-G-X-K-X5-E-X39-K-K-G-X2-K-X2-Y-V-X11-Y-Xm (II)
【0030】
式中、
Xnは、存在する場合も存在しない場合もあり、タンパク質構成アミノ酸、非タンパク質構成アミノ酸、D-アミノ酸、ペプチド模倣薬構成単位、またはそれらの組合せの伸長であり、
Rは、アルギニンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Kは、リシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Eは、グルタミン酸またはその非タンパク質構成類似体であり、
X、X2、X3、X5、X11、およびX39は、それぞれ、1、2、3、5、11、および39のタンパク質構成アミノ酸、非タンパク質構成アミノ酸、D-アミノ酸、ペプチド模倣薬構成単位、またはそれらの組合せの伸長であり、
Yは、チロシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Vは、バリンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Xmは、存在する場合も存在しない場合もあり、タンパク質構成アミノ酸、非タンパク質構成アミノ酸、D-アミノ酸、ペプチド模倣薬構成単位、またはそれらの組合せの伸長であり、
自然に分泌されるCHIPSと同じ3次元立体配座を有する。
【0031】
本発明の具体的一実施形態では、化合物は以下の化学式である。
【0032】
Xn-T-X6-R-L-R-N-X2-K-K-G-T-K-X4-F-E-K-X-V-X7-Y-X4-L-X11-E-X11-K-K-G-E-X-K-X2-Y-V-X-N-X3-K-X5-Y-Xm (III)
【0033】
式中、
Xnは、存在する場合も存在しない場合もあり、タンパク質構成アミノ酸、非タンパク質構成アミノ酸、D-アミノ酸、ペプチド模倣薬構成単位、またはそれらの組合せの伸長であり、
Tは、トレオニンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Rは、アルギニンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Lは、ロイシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Nは、アスパラギンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
X、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X11、およびX16は、それぞれ、1、2、3、4、5、6、7、または16のタンパク質構成アミノ酸、非タンパク質構成アミノ酸、D-アミノ酸、ペプチド模倣薬構成単位、またはそれらの組合せの伸長であり、
Kは、リシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Gは、グリシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Fは、フェニルアラニンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Eは、グルタミン酸またはその非タンパク質構成類似体であり、
Yは、チロシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Vは、バリンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
自然に分泌されるCHIPSと同じ3次元立体配座を有する。
【0034】
本発明の他の実施形態では、化合物は以下の化学式である。
【0035】
Xn-T-L-X5-R-L-R-N-Y-L-K-K-G-T-K-X2-A-X-F-E-K-X-V-I-L-X5-Y-X-T-X2-L-X3-L-X2-D-R-K-X2-E-L-X-G-X-M-X2-T-Y-X2-K-K-G-E-X-K-X2-Y-V-I-N-X3-K-X5-Y-Xm (IV)
【0036】
式中、
Xnは、存在する場合も存在しない場合もあり、タンパク質構成アミノ酸、非タンパク質構成アミノ酸、D-アミノ酸、ペプチド模倣薬構成単位、またはそれらの組合せの伸長であり、
Tは、トレオニンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Rは、アルギニンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Lは、ロイシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Iは、イソロイシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Mは、メチオニンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Aは、アラニンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Dは、アスパラギンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Nは、アスパラギンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Kは、リシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Gは、グリシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Fは、フェニルアラニンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Eは、グルタミン酸またはその非タンパク質構成類似体であり、
Yは、チロシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Vは、バリンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
X、X2、X3、およびX5は、それぞれ、1、2、3、または5のタンパク質構成アミノ酸、非タンパク質構成アミノ酸、D-アミノ酸、ペプチド模倣薬構成単位、またはそれらの組合せの伸長であり、
自然に分泌されるCHIPSと同じ3次元立体配座を有する。
【0037】
式Iでは、XnおよびXmは、それぞれ、0〜100、好ましくは1〜90、より好ましくは1〜75、最も好ましくは1〜59を含むことができる。
【0038】
式IIでは、XnおよびXmは、それぞれ、0〜100、好ましくは1〜50、より好ましくは1〜25、最も好ましくは1〜15を含むことができる。
【0039】
式IIIおよびIVでは、XnおよびXmは、それぞれ、0〜100、好ましくは1〜50、より好ましくは1〜25、最も好ましくは1〜6を含むことができる。
【0040】
より具体的な実施形態は、自然に分泌されるCHIPSのN-末端ドメイン1、17、および30のアミノ酸を欠損した、CHIPSΔ1、CHIPSΔ17、CHIPSΔ30である。自然のCHIPSは、請求されているとおり本発明により包含されることを意図されていない。
【0041】
したがって、本発明は、同じまたは類似のアミノ酸が、それらを一0、15、および18のアスパラギン酸(D10、D15、およびD18)およびC5aRの12位のグリシン(G12)に結合させることができるCHIPSと同じまたは類似の立体配座で提示される骨格を有する化合物に関する。結合に関与するCHIPSのアミノ酸残基の識別は、非常に異なる場合があるが、1つ共通点がある、つまり要求される立体配座内の結合残基を有するさまざまな化合物の生産の基礎となる。分子モデリングの当業者であれば、これに基づき、抗体つまりいわゆる結合抗体を使用し、ペプチドライブラリのスクリーニングまたはテンプレートとしてそれらの知られている配列を採用する他の方法により、これらの要件を満たす、したがってC5aRを伴う指標の処理に使用できる化合物を設計することができる。
【0042】
自然に分泌されるCHIPSに見つかったのと同じまたは類似の立体配座で本発明の化合物中の結合残基を提示することは、アミノ酸、非タンパク質構成類似体、または同じ空間距離に広がる他の分子を使ってホットスポットを連結するなど、さまざまな方法で実行することができる。
【0043】
それとは別に、C5aRの側から提供される情報は、C5aRに結合する化合物用の化合物のライブラリをスクリーニングするために使用することができる。したがって、本発明は、C5aRに結合できる化合物を同定する方法を提供し、これは、
a)候補化合物のライブラリを提供することと、
b)ライブラリのメンバーを、自然に分泌されるC5aR中に見つかる立体配座と同じまたは類似の立体配座において、式中Xq、X、X2、およびXrをそれぞれ0〜9、1、2、および0〜20のタンパク質構成アミノ酸またはその非タンパク質構成類似体の伸長とし、Dをアスパラギン酸とし、GをグリシンとするモチーフXq-D-X-G-X2-D-X2-D-Xrを含むC5aR関連化合物と接触させることと、
c)C5aR関連化合物に結合するライブラリのメンバーを同定することを含む。C5aR関連化合物は、C5aRそれ自体であるか、または自然に発生する立体配座内のCHIPSの結合に関与することが判明している少なくとも残基を含む化合物とすることができる。
【0044】
上記の方法は、さらに、予防または治療で使用するためにこうして同定されたメンバーを用意する工程を含むことができる。本発明は、さらに、こうして同定された化合物およびその使用に関係する。
【0045】
CHIPS内に見つかるようなC5aR結合残基を有する本発明の化合物は、適宜、ペプチドまたはポリペプチドである。しかし、これらのペプチドはすべて、例えば、アミノ酸の1つまたは複数を他の構成単位で置換することにより、さらに修飾する出発点として使用することができる。
【0046】
C5aRを結合する能力を有するペプチドは、知られている化学合成により生産することができる。合成手段によりペプチドを構成する方法は、当業者に知られている。これらの合成ペプチドは、C5aRへの結合に関与するCHIPSの伸長とともに一次、二次、および/または三次構造、および/または立体配座特性を共有しているため、それらと活性を共通に持つ、つまりC5aR結合特性を持つ。したがって、このような合成的に生産されるペプチドは、必要なC5aR結合能力を有し、タンパク質構成アミノ酸からなる(ポリ)ペプチドの生物活性または免疫学的代用として採用されることができる。
【0047】
本明細書で用意された化合物は、さらに、修飾が自然に行われるか、または意図的に計画されて持ち込まれたアミノ酸配列を特徴とする化合物を含む。ペプチドの修飾は、当業者であれば、知られている従来技術を使用して行うことができる。化合物の配列中の注目される修飾は、コード配列内の選択されたアミノ酸残基の置き換え、挿入、または削除を含むとができる。
【0048】
場合によっては、薬剤中にペプチドを使用する潜在的可能性は、いくつかの理由から制限される可能性がある。ペプチドは、例えば、親水性が強すぎて、細胞膜および血液脳関門などの膜を通過できず、腎臓および肝臓により人体から急速に排泄され、その結果、生体利用効率が低下しうる。さらに、ペプチドは、例えば、胃腸管内で、プロテアーゼにより急速に分解されうるため、生体安定性および化学安定性が劣ることがある。さらに、ペプチドは、一般に、数千の立体配座を取りうる柔軟な化合物である。生物活性立体配座は、通常、これらの可能性のうちの1つにすぎず、このため、ときには、C5aRなどの標的受容体に対する選択性および親和性が低下する可能性もある。最後に、ペプチドの効力は、治療目的のためには十分とはいえない。
【0049】
上述の欠点の結果として、ペプチドは、ときには、主に他の薬物を設計するためのソースとして使用され、実際の薬物自体としては使用されないことがある。このような場合、これらの欠点が減らされた化合物を開発することが望ましい。ペプチドの代替えは、いわゆるペプチド模倣薬である。本発明の化合物に基づくペプチド模倣薬は、さらに、この応用の一部でもある。その場合、アミノ酸の1つまたは複数は、ペプチド模倣薬構成単位で置換される。
【0050】
文献では、ペプチド模倣薬のさまざまな定義が立てられている。とりわけ、ペプチド模倣薬は、「小さな非ペプチド構造体に含まれる情報を変換するために設計された化学構造体」、「ペプチドの生物活性を模倣するが、もはやペプチド結合を含まない分子」、「受容体および酵素と相互作用するペプチドの適切な置換として使用される構造体」、および「化学的トロイの木馬」と説明されてきた。
【0051】
一般に、ペプチド模倣薬は、2つのカテゴリに分類することができる。第1のものは、非ペプチド類似構造体、多くの場合薬理作用団が付着されている骨格を含む化合物からなる。したがって、これらは低分子量化合物であり、天然ペプチドとの構造上の類似性を持たず、その結果、タンパク質分解酵素への安定性が向上する。
【0052】
ペプチド模倣薬の第2の主要なクラスは、そのペプチドに相当するモジュール構造の化合物、つまりオリゴマーペプチド模倣薬からなる。これらの化合物は、ペプチド側鎖またはペプチド骨格のいずれかの修飾により得ることができる。後者のカテゴリのペプチド模倣薬は、アミド結合を他の部分で置き換えることによりペプチドから由来すると考えることができる。その結果、これらの化合物は、プロテアーゼによる分解を受けにくいことが予想される。アミド結合の修飾も、親油性、水素結合能力、および配座可動性などの他の特性に影響を及ぼし、都合のよい場合には、化合物の全体的な改善された薬理学的および/または薬学的プロファイルが得られる。
【0053】
オリゴマーペプチド模倣薬は、原理上、反応工程の反復サイクルにおける単量体構成単位から開始して調製することができる。したがって、これらの化合物は、ペプチドシンセサイザによるペプチドの既定の調製に類似している自動合成に適していると考えられる。単量体構成単位のもう1つの応用は、ペプチド/ペプチド模倣薬ハイブリッドの調製にあり、これは、天然アミノ酸およびペプチド模倣薬構成単位を組み合わせて複数のアミド結合のうちの一部のみが置き換えられた生成物を得るものである。この結果、生物安定性が向上する、天然ペプチドと十分に異なる化合物が生じうるが、それでも生物活性を保持する、元の構造体との十分な類似性を有する。
【0054】
本発明で使用するのに好適なペプチド模倣薬構成単位は、オリゴ-β-ペプチド(Juaristi,E.「Enantioselective Synthesis of b-Amino Acids」、Wiley-VCH、New York、1996年)、ビニロガスペプチド(Hagihari,M.ら、J.Am.Chem.Soc.1992年、114、10672〜10674頁)、ペプトイド(Simon,R.J.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1992年、89、9367〜9371頁、Zuckermann,R.N.ら、J.Med.Chem.1994年、37、2678〜2685年、Kruijtzer,J.A.W.およびLiskamp,R.M.J.、Tetrahedron Lett.1995年、36、6969〜6972頁、Kruijtzer,J.A.W.Thesis、Utrecht University、1996年、Kruijtzer,J.A.W.ら、Chem.Eur.J.1998年、4、1570〜1580頁)、オリゴスルホン(Sommerfield,T.およびSeebach,D.Angew.Chem.,Int.Ed.Eng.1995年、34、553〜554頁)、ホスホジエステル(Lin,P.S.、Ganesan,A.Bioorg.Med.Chem.Lett.1998年、8、511〜514頁)、オリゴスルホンアミド(Moree,W.J.ら、Tetrahedron Lett.1991年、32、409〜412頁、Moree,W.J.ら、Tetrahedron Lett.1992年、33、6389〜6392頁、Moree,W.J.ら、Tetrahedron 1993年、49、1133〜1150頁、Moree,W.J.Thesis、Leiden University、1994年、Moree,W.J.ら、J.Org.Chem.1995年、60、5157〜5169年、de Bont,D.B.A.ら、Bioorg.Med.Chem.Lett.1996年、6、3035〜3040頁、de Bont,D.B.A.ら、Bioorg.Med.Chem.1996年、4、667〜672頁、Lowik、D.W.P.M.Thesis、Utrecht University、1998年)、ペプトイドスルホンア
ミド(van Ameijde,J.およびLiskamp,R.M.J.Tetrahedron Lett.2000年、41、1103〜1106頁)、ビニロガススルホンアミド(Gennari,C.ら、Eur.J.Org.Chem.1998年、2437〜2449頁)、アザチド(またはヒドラジンペプチド)(Han,H.およびJanda,K.D.J.Am.Chem.Soc.1996年、118、2539〜2544頁)、オリゴカルバメート(Paikoff,S.J.ら、Tetrahedron Lett.1996年、37、5653〜5656頁、Cho,C.Y.ら、Science 1993年、261、1303〜1305頁)、ウレアペプトイド(Kruijtzer,J.A.W.ら、Tetrahedron Lett.1997年、38、5335〜5338頁、Wilson,M.E.およびNowick,J.S.Tetrahedron Lett.1998年、39、6613〜6616頁)、およびオリゴピロリノン(Smith III,A.B.ら、J.Am.Chem.Soc.1992年、114、10672〜10674頁)などのアミド結合代用物である。
【0055】
ビニロガスペプチドおよびオリゴピロリノンは、ペプチドの構造と類似の二次構造(β-ストランド立体配座)を形成するか、またはペプチドの二次構造を模倣するために開発された。これらのすべてのオリゴマーペプチド模倣薬は、プロテアーゼに耐性があると予想され、光学活性単量体(ペプトイドを除く)から高収量カップリング反応において組み立てることができる。
【0056】
ペプチドスルホンアミドは、アミド結合の加水分解の類似体として、1つまたは複数のスルホンアミド遷移状態イソステアを含むα-またはβ-置換アミノエタンスルホンアミドからなるアミド結合の加水分解の遷移状態類似体を含むペプチド類似体は、プロテアーゼ阻害薬、例えば、HIVプロテアーゼ阻害薬の開発で広く使用されてきた。
【0057】
オリゴマーペプチド模倣薬を開発する他のアプローチでは、すべてのアミド結合を加水分解不可能な代用物、例えば、カルバメート、スルホン、尿素、およびスルホンアミド基で置き換えることにより、ペプチド骨格を完全に修飾する。このようなオリゴマーペプチド模倣薬を使用すると、代謝安定性を高めている可能性がある。近年、アミドベースの代替えオリゴマーペプチド模倣薬が設計された、つまり、N-置換グリシンオリゴペプチド、いわゆるペプトイドが設計された。ペプトイドは、ペプチド内のα-C-原子上に存在するのとは反対に、アミノ酸側鎖がアミド窒素上に存在することを特徴とし、これにより、代謝安定性が高まり、さらには、骨格キラリティが除去される。キラルα-C原子が存在しないことは、利点であると考えることができるが、それは、ペプトイドを取り扱うときに、ペプチド内に存在する空間制約条件が存在しないからである。さらに、ペプトイド中の側鎖とカルボニル基との間の空間が、ペプチド内のそれと同一である。ペプチドとペプトイドとの間に違いがあるにも関わらず、生物活性化合物を生じさせることが示されている。
【0058】
ペプチド鎖をペプトイドペプチド模倣薬内に変換すると、ペプトイド(直接変換)またはレトロペプトイド(レトロ配列)のいずれかが得られる。後者のカテゴリでは、側鎖へのカルボニル基の相対的向きは、保持され、親ペプチドとの類似性が向上する。
【0059】
ここで組み込まれるペプチド模倣薬に関するレビュー記事は、
Adang,A.E.P.ら、Recl.Trav.Chim.Pays-Bas 1994年、113、63〜78頁、Giannis,A.およびKolter,T.Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1993年、32、1244〜1267頁、Moos,W.H.ら、Annu.Rep.Med.Chem.1993年、28、315〜324頁、Gallop,M.A.ら、J.Med.Chem.1994年、37、1233〜1251頁、Olson,G.L.ら、J.Med.Chem.1993年、36、3039〜30304頁、Liskamp,R.M.J.Recl.Trav.Chim.Pays-Bas 1994年、113、1〜19頁、Liskamp,R.M.J.Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1994年、33、305〜307頁、Gante,J.Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1994年、33、1699〜1720頁、Gordon,E.M.ら、Med.Chem.1994年、37、1385〜1401頁、およびLiskamp,R.M.J.Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1994年、33、633〜636頁である。
【0060】
本発明は、さらに、それ自体ペプチドでもポリペプチドでもないが、本発明の化合物のと類似の構造および機能を有する化合物に関する。このような分子の例は、上述のペプチド模倣薬であるが、さらに、タンパク質構成アミノ酸の1つまたは複数が非タンパク質構成アミノ酸またはD-アミノ酸により置き換えられた化合物でもある。本出願において化合物を参照する場合、類似の、または同じ構造および機能を有する、その結果、元のペプチド化合物と類似の、または同じ生物活性を有するそのような他の化合物も含むことが意図されている。
【0061】
より具体的には、2-ナフチルアラニン(Nal(2))、β-シクロヘキシルアラニン(Cha)、p-アミノ-フェニルアラニン((Phe(p-NH2)、p-ベンゾイル-フェニルアラニン(Bpa)、オルニチン(Orn)、ノルロイシン(Nle)、4-フルオロ-フェニルアラニン(Phe(p-F))、4-クロロ-フェニルアラニン(Phe(p-Cl))、4-ブロモ-フェニルアラニン(Phe(p-Br))、4-ヨード-フェニルアラニン(Phe(p-I))、4-メチル-フェニルアラニン(Phe(p-Me))、4-メトキシ-フェニルアラニン(Tyr(Me))、4-ニトロ-フェニルアラニン(Phe(p-NO2))からなる群から選択された非タンパク質構成アミノ酸との置換を行える。
【0062】
本発明の化合物中のタンパク質構成アミノ酸を置換するのに好適なD-アミノ酸は、例えば、D-フェニルアラニン、D-アラニン、D-アルギニン、D-アスパラギン、D-アスパラギン酸、D-システイン、D-グルタミン酸、D-グルタミン、D-ヒスチジン、D-イソロイシン、D-ロイシン、D-リシン、D-メチオニン、D-プロリン、D-セリン、D-トレオニン、D-トリプトファン、D-チロシン、D-バリン、D-2-ナフチルアラニン(D-Nal(2))、β-シクロヘキシル-D-アラニン(D-Cha)、4-アミノ-D-フェニルアラニン(D-Phe(p-NH2))、p-ベンゾイル-D-フェニルアラニン(D-Bpa)、D-オルニチン(D-Orn)、D-ノルロイシン(D-Nle)、4-フルオロ-D-フェニルアラニン(D-Phe(p-F))、4-クロロ-D-フェニルアラニン(D-Phe(p-Cl))、4-ブロモ-D-フェニルアラニン(D-Phe(p-Br))、4-ヨード-D-フェニルアラニン(D-Phe(p-I))、4-メチル-D-フェニルアラニン(D-Phe(p-Me))、4-メトキシ-D-フェニルアラニン(D-Tyr(Me))、4-ニトロ-D-フェニルアラニン(D-Phe(p-NO2))からなる群から選択されたものである。
【0063】
本発明の化合物中のタンパク質構成アミノ酸の1つまたは複数は、ペプトイド構成単位、例えば、N-ベンジルグリシン(NPhe)、N-メチルグリシン(NAla)、N-(3-グアニジノプロピル)グリシン(NArg)、N-(カルボキシメチル)グリシン(NAsp)、N-(カルバミルメチル)グリシン(NAsn)、N-(チオエチル)-グリシン(NhCys)、N-(2-カルボキシエチル)グリシン(NGlu)、N-(2-カルバミルエチル)グリシン(NGln)、N-(イミダゾリルエチル)グリシン(NhHis)、N-(1-メチルプロピル)グリシン(NIle)、N-(2-メチルプロピル)グリシン(NLeu)、N-(4-アミノブチル)グリシン(NLys)、N-(2-メチルチオエチル)グリシン(NMet)、N-(ヒドロキシエチル)グリシン(NhSer)、N-(2-ヒドロキシプロピル)グリシン(NhThr)、N-(3-インドリルメチル)グリシン(NTrp)、N-(p-ヒドロキシフェンメチル)-グリシン(NTyr)、N-(1-メチルエチル)グリシン(NVal)などのN-置換グリシンからなる群から選択された、ペプトイド構成単位で置き換えることができる。
【0064】
本発明のすべての化合物は、環式であってもよい。環式化合物は、効力、安定性、剛性、および/または他の薬学的および/または薬理学特性を改善していることがある。
【0065】
本発明の他の態様によれば、本発明は、Xq、X、X2、およびXrを0〜9、1、2、および0〜20の伸長とする、モチーフXq-D-X-G-X2-D-X2-D-Xrを含むC5aRまたはC5aR関連化合物に対する抗体またはその誘導体に関する。本明細書で使用されているような誘導体は、抗体の特異性を有するが、もはや完全な抗体ではないよく知られている化合物である。誘導体の例は、当業でよく知られており、scFv、Fab断片、キメラ抗体、二元機能性抗体などを含む。
【0066】
本発明の化合物の機能活性は、さまざまな方法により化学分析することができる。化合物のこのC5aR結合活性は、フローサイトメトリーにより決定されるように、蛍光-C5aR(FITC-C5aなど)が好中球に結合するのを防ぐ能力により測定することができる。
【0067】
本発明の化合物の活性は、さらに、Transwellシステムなどの走化性アッセイにより決定されるように、好中球がC5aへ移行するのを防ぐ能力により測定される。さらに、C5aを含むケモカインが細胞内カルシウム濃度の急速な一時的上昇を開始する能力に基づくアッセイは、本発明の化合物の生物活性についてスクリーニングするために使用することができる。それとは別に、C5aを含むケモカインがサイトカラシンB-刺激好中球内の例えばエラスターゼの排出を開始する能力に基づくアッセイは、本発明の化合物の生物活性についてスクリーニングするために使用することができる。限定はしないが、各種のカルシウム特異的蛍光プローブとフローサイトメトリーまたは蛍光光度法、または微小生理機能測定法との併用を含む、当業で知られている他のさまざまなアッセイを使用することができる。いずれかの方法による生物活性のスクリーニングのための細胞として、例えば、新鮮分離した好中球を使用するか、または細胞に対し、この受容体のC5aR、野生型、または突然変異型とともに核酸導入することができる。
【0068】
本発明の化合物は、好中球、単球、および内皮細胞上のC5a-受容体(C5aR)を伴う兆候の予防または治療に使用することができる。このような兆候は、急性または慢性炎症反応を伴う場合があり、表4に記載されている群から選択することができる。表4は、本発明の化合物の可能な使用を制限することを意図していない。将来現れる兆候でこれらの化合物を使用することも、本発明の一部である。
【0069】
本発明は、さらに、好中球、単球、および内皮細胞以外の細胞上のC5a-受容体(C5aR)を伴う兆候の予防または治療でこれらの化合物を使用することに関する。他の細胞としては、リンパ球、樹状細胞、好酸球、好塩基球、マクロファージ、小グリア細胞、星状細胞、クッパー細胞、肝細胞、上皮細胞がある。
【0070】
本発明の化合物は、さらに、黄色ブドウ球菌などのCHIPS生産菌により引き起こされる感染用の予防ワクチンまたは治療ワクチンで使用することもできる。
【0071】
本発明の化合物は、さらに、皮膚を通して人体に導入される、または外科手術中に人体内に置かれる医療装置の表面上に使用するコーティング組成物の調製に使用することもできる。このような表面は、カテーテル先端の表面とすることができる。組成物は、徐放性組成物であると都合がよい。
【0072】
本発明は、化合物それ自体に関するものであり、また上述のような化合物のさまざまな使用にも関係する。さらに、本発明は、好適な賦形剤および請求されているような1つまたは複数の化合物を含む治療および予防組成物を実現する。
【0073】
本発明は、他の態様により、請求されているような化合物の1つまたは複数の予防上または治療上効果のある量を投与することを含む好中球、単球、および内皮細胞上でC5aRを伴う兆候を患っている被験者の予防または治療処置の方法に関する。治療すべき兆候は、上述のと同じである。
【0074】
他の実施形態では、本発明は、請求されているような化合物の1つまたは複数の予防上または治療上効果のある量を投与することを含む好中球、単球、および内皮細胞以外の細胞上でC5aRを伴う兆候を患っている被験者の予防または治療処置の方法に関する。他の細胞としては、リンパ球、樹状細胞、好酸球、好塩基球、マクロファージ、小グリア細胞、星状細胞、クッパー細胞、肝細胞、上皮細胞がある。
【0075】
本発明の他の実施形態は、請求されているような1つまたは複数の化合物の予防上または治療上効果のある量を投与することを含むCHIPS生産菌の感染に対する被験者の予防または治療処置の方法に関する。
【0076】
20個のアミノ酸は、標準遺伝暗号によりコード化され、タンパク質構成(タンパク質を組み立てる)であると呼ばれる。天然では、500個を超える他のアミノ酸が見つかっている。これらの他のアミノ酸は、本明細書では、「非タンパク質構成アミノ酸」と呼ばれる。
【0077】
タンパク質中のアミノ酸はすべて、L-グリセルアルデヒドと同じ絶対立体配置を示す。したがって、それらはすべてL-アミノ酸である。D-アミノ酸は、タンパク質中に決して見つかることはないが、自然界には存在する。本明細書では、「D-アミノ酸」と呼ばれる。
【0078】
ペプチド模倣薬は、天然の親ペプチドの(複数の)生物作用を模倣するか、またはその作用に拮抗することができる非ペプチド構造要素を含む化合物である。ペプチド模倣薬は、もはや、ペプチド結合などの古典的ペプチド特性を有しない。ペプチド模倣薬の構成要素は、本明細書では、「ペプチド模倣薬構成単位」と呼ばれる。
【0079】
特定のアミノ酸の非タンパク質構成の変種は、本明細書では、「非タンパク質構成類似体」と呼ばれる。
【0080】
本発明は、さらに、以下の、本発明に限定することを決して意図されていないいくつかの実施例により例示される。これらの実施例では、いくつかの図面を参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0081】
表1は、図1および2に示されているように、WT-CHIPS結合についてすべてのC5aR突然変異体およびC5aRキメラをテストすることにより得られるような、野生型CHIPS(WT-CHIPS)への結合に関わるC5aRのすべてのアミノ酸を示している。
【0082】
表2は、15N-1H-HSQC NMR実験においてSO4-C5AR pep7〜28を15N-標識CHIPS31〜121に滴定することにより得られるような、C5aRへのCHIPS31〜121の結合に関与するか、または関与すると思われるCHIPS31〜121のすべてのアミノ酸を示している。
【0083】
表3は、単一アミノ酸がアラニン中に置換された(断りのない限り)多様なCHIPS31〜121突然変異体のIC50値を示している。IC50の定量は、図6A+Bに示されている実験を使用して行われた。
【0084】
表4は、補体活性化および/または好中球およびまたは、単球関与を伴う、炎症反応により引き起こされる疾病および疾病状態をまとめたものである。これらの疾病を治療するために本発明の(ポリ)ペプチドが治療上有用であることの裏付けは、以下の参考文献に記載されている。
【0085】
ARDSについて:Demling RH(1995)「The modern version of adult respiratory distress syndrome.」、Ann.Rev.Med.46:193〜202頁、およびFujishima S、Aikawa N(1995年)「Neutrophil-mediated tissue injury and its modulation.」、Intensive Care Med 21:277〜285頁。
【0086】
重症感染症(髄膜炎)について:Tunkel ARおよびScheld WM(1993年)「Pathogenesis and pathophysiology of bacterial meningitis.」、Clin.Microbiol.Rev.6:118頁。虚血再灌流の後の損傷について:Helier Tら(1999年)「Selection of a C5a receptor antagonist from phage libraries attenuating the inflammatory response in immune complex disease and ischemia/reperfusion injury.」、J.Immunol.163:985〜994頁。
【0087】
関節リウマチについて:Edwards SWおよびHallett MB(1997年)「Seeing the wood for the trees:the forgotten role of neutrophils in rheumatoid arthritis.」、Immunology Today 18:320〜324頁、およびPillinger MH、Abramson SB(1995年)「The neutrophil in rheumatoid arthritis.」、Rheum.Dis.Clin.North Am.1995年21:691〜714頁。
【0088】
心筋梗塞について:Byrne JG、Smith WJ、Murphy MP、Couper GS、Appleyard RF、Cohn LH(1992年)「Complete prevention of myocardial stunning,contracture,low-reflow,and edema after heart transplantation by blocking neutrophil adhesion molecules during reperfusion.」、J.Thorac.Cardiovasc Surg.104:1589〜96頁。
【0089】
COPDについて:Cox G(1998年)「The role of neutrophils in inflammation.」、Can.Respir.J.5 Suppl A:37A〜40A頁、およびHiemstra PS、van Wetering S、Stolk J(1998年)「Neutrophil serine proteinases and defensins in chronic obstructive pulmonary disease:effects on pulmonary epithelium.」、Eur.Respir.J.12:1200〜1208頁。
【0090】
脳卒中について:Barone FC、Feuerstein GZ(1999年)「Inflammatory mediators and stroke:new opportunities for novel therapeutics.」、J.Cereb.Blood Flow Metab.19:819〜834頁、およびJean WC、Spellman SR、Nussbaum ES、Low WC(1998年)「Reperfusion injury after focal cerebral ischemia:the role of inflammation and the therapeutic horizon.」、Neurosurgery 43:1382〜1396頁。
【0091】
髄膜炎について:Tuomanen EI(1996年)「Molecular and cellular mechanisms of pneumococcal meningitis.」、Ann.N.Y.Acad.Sci.797:42 52頁。
【0092】
すべての直接的補体関連疾病について:出典:A.SahuおよびJ.D.Lambris Immunopharmacology 49(2000年)133〜148頁。
【実施例】
【0093】
(実施例1)
C5aR内のCHIPS結合部位の同定
材料と方法
1.1 C5aR全体およびC5aR N-末端のクローニング
完全なヒトC5aRをコード化するDNA配列は、プライマーを使用して、PCRにより増幅されたが、そのプライマーの配列は、発現プラスミドpcDNA3.1内でFLAG-標識C5aR配列のクローニングを可能にするC5aRオープンリーディングフレーム(ORF)および制限酵素認識部位(EcoRIおよびXbaI)の第1のメチオニン(開始コドン)の下流にN-末端FLAGエピトープ標識(DYKDDDDK)を導入するように修飾された(Invitrogen、英国ペーズリー)。断片が適切な向きで挿入され、これにより、CMVプロモーター遺伝子によるFLAG-標識C5aRの発現が可能になった。クローン化FLAG-標識C5aR配列は、配列分析により検証された。FLAG-標識により、モノクローナル抗体(mAb)M2によるC5aRの検出が可能である(Sigma Chemical Co.、米国ミズーリ州セントルイス)。
【0094】
ヒトC5aR(C5aR N-末端に等しい)の最初の38個のアミノ酸をコード化するDNA配列のクローニングは、プライマーを使用して、PCRにより実行され、そのプライマーの配列は、発現プラスミドpDISPLAY内のC5aR N-末端配列のクローニングを可能にする制限酵素認識部位(AccIおよびBglII)を導入するように修飾された。断片が適切な向きで挿入され、これにより、CMVプロモーター遺伝子によるC5aR N-末端の発現が可能になった。C5aR N-末端配列の上流に存在するネズミIg κ-鎖V-J2-Cシグナルペプチド配列により、C5aR N-末端タンパク質の標的を真核細胞にすることができる。C5aR N-末端配列の下流にあるPDGF受容体膜貫通ドメインは、C5aR N-末端タンパク質を発現のため真核細胞のプラズマ細胞膜に固着する。C5aR N-末端配列の上流、およびシグナルペプチドの下流に存在する、血球凝集素Aエピトープ標識により、mAb 12CA5によるpDISPLAY C5aR N-末端タンパク質の検出が可能になる(Roche,Molecular Biochemicals、ドイツ、マンハイム)。クローン化C5aR N-末端配列は、配列分析により検証された。
【0095】
1.2 CHIPS生産
WT-CHIPS(CHIPS1〜121)についてコードする、黄色ブドウ球菌の染色体DNAは、プライマーつまり3'CGTCCTGAATTCTTAGTATGCATATTCATTAG(下線が付いている配列はEcoRI部位を表す)と組み合わされたCHIPS1〜121に対する5'TTTACTTTTGAACCGTTTCCTACを使用して、Thermal Ace DNAポリメラーゼ(Invitrogen、英国ペーズリー)とともにPCRにより、増幅された。増幅反応は、テンプレートとして、高純度PCRテンプレート調製キット(Roche Molecular Biochemicals、ドイツ、マンハイム)で分離された黄色ブドウ球菌Newmanの染色体DNAを使用して実行された。N-末端ヒスチジン標識を与える、pREST発現ベクター(Invitrogen)をBamHIで消化し、S1ヌクレアーゼ(Roche Diagnostics、100U/ml、30分37℃)で処理し、エンテロキナーゼ切断部位をコード化するDNA配列の直後に平滑末端ベクターを与えた。
【0096】
その後、ベクターは、EcoRIにより消化され、EcoRI消化PCR生成物でライゲーションされた。プラスミドは、TOP10F'大腸菌内に伝播された発現について、BL21(DE3)大腸菌は、形質転換され、1コロニーが一日2ml LBで増殖され、これは50μg/mlのカルベニシリン(シグマ)を含み、その後一晩増殖された(1:1000)。翌朝、細胞をペレット状にし、再懸濁して新鮮なLBにし、50μg/mlのカルベニシリンを含むようにし、0.1のOD660とした。培養物は、0.8のOD660まで増殖され、2.5時間、37℃の温度で、1mMのIPTGで誘起された。次いで、細胞はペレット状にされ、500mMのNaClを含む、pH7.8の20mMリン酸ナトリウム緩衝液中で再懸濁され、使用するまで-20℃で保管された。
【0097】
CHIPS1〜121またはCHIPS31〜121の分離では、細胞は、氷の上で15分間、100μg/mlの卵白リゾチーム(シグマ)により処理された。他の細胞溶解では、合計4サイクルで、細菌を超音波処理し、液体N2で凍結し、37℃の水槽内で解かした。
【0098】
その後、RNaseおよびDNase(5μg/ml)を氷の上で30分間加えた。その後、溶解物は、30'、4℃、3000gで遠心分離され、0.45μm濾過器で濾過され、pH7.8の冷リン酸緩衝液で1:1に希釈され、充填ニッケルカラム(Invitrogen)に0.2ml/分の速度で通された。カラムは、それぞれ、pH7.8、pH6.0、およびpH 5.3のリン酸緩衝液で洗浄された。カラムは、PBS/50mM EDTAで溶出された。ヒスチジン標識は、室温で4時間かけてエンテロキナーゼ切断(1 U/mlタンパク質)により除去された。
【0099】
1.3 精製CHIPSタンパク質のFITC標識付け
精製されたCHIPS(500μg/mlタンパク質)は、室温で1時間の間pH9.6の1Mの炭酸ナトリウム緩衝液中で、1mg/ml FITC(フルオレセインイソチオシアネート、異性体I、シグマ)の1/10の体積によりインキュベートされた。FITC標識CHIPSは、混合物を脱塩カラム(Pharmacia、Fast Desalting HR 10/10)に送り、オンライン連結蛍光光度計(Perkin Elmer)でOD280および蛍光について溶出液を監視することにより遊離FITCから分離される。OD280および蛍光が高い留分は、プールされ、Micro BCA蛋白質分析装置(Pierce)によりタンパク質含有量について分析された。CHIPS-FITCは、-20℃で少量保管される。
【0100】
1.4 C5aRおよびC5aR N-末端の発現
C5aR全体は、HEK293細胞内にC5aRのORFを含むpcDNA3.1プラスミドのトランスフェクションを行うことにより発現された。したがって、0.1mMの非必須アミノ酸、1mMのピルビン酸塩ナトリウム、10g/mlのゲンタマイシン、および10% FCSを含有するMEM(Gibco Invitrogen Corporation)に保持されているHEK293細胞は、メーカーの説明書(Invitrogen)に従いリポフェクタミン2000(5μl)を使用して6ウェルプレート内で1μgのDNAによりトランスフェクションされた。
【0101】
トランスフェクションしてから2から3日後、細胞は、PBS/トリプシンにより回収され、RPMI/0.05%ヒト血清アルブミン(HSA、CLB、オランダ、アムステルダム)で洗浄され、10μg/mlの抗-FLAG M2 mAbおよび3μg/mlのFITC-標識CHIPSで、その後、2μg/mlのAPC-標識ヤギ-抗-マウスIgs(PharMingen、米国カリフォルニア州サンジエゴ)でインキュベートされた。細胞は、プロピジウムアイオダイドの添加後、洗浄され、フローサイトメーターで化学分析され、CHIPS-FITCをC5aR N-末端タンパク質-発現(APC-陽性)およびプロピジウムアイオダイド-陰性細胞(生きている)細胞に結合した。
【0102】
C5aR N-末端の発現のため、C5aR N-末端配列を含むpDISPLAYプラスミドは、上述のように、HEK293細胞内でトランスフェクションされたが、ただし、CHIPS-FITC結合の検出については、細胞は抗-FLAG M2 mAbの代わりに5μg/mlの抗-HA標識12CA5 mAbでインキュベートされた。
【0103】
1.5 C5aR-またはC5aR N-末端突然変異体およびC5aRキメラのクローニングと発現
部位特異的突然変異生成は、C5aR-および/またはC5aR N-末端上で、オーバーラップエクステンションPRにより実行された(Ho SNら、1989年、Gene 77、51)。突然変異生成は、アミノ酸プロリン9(P9と命名)からアスパラギン酸21(D21と命名)までのC5aR N-末端からのすべてのアミノ酸上で実行された。C5aR N-末端の完全なアミノ酸配列は、表1に示されている。すべてのアミノ酸は、単一突然変異または組合せとしてアラニンに突然変異した(A、P9A、D10Aなどと命名される)。他のチロシン(Y)11および14は、アラニンではなく、フェニルアラニン(F,Y11Fなどとして命名)に変えられた。他の突然変異体は、del-8、del-13、del-18と命名された、N-末端8、13、または18アミノ酸内で抹消される。また、以下のC5aRキメラは、オーバーラップエクステンションPCRにより形成された。
【0104】
* N-C3aR+C5aR:C5aRのN-末端(C5aRアミノ酸1〜37に対応する)は、C3aRのN-末端(C3aRアミノ酸1〜23に対応する)に関して交換された。
【0105】
* N-C5aR+C3aR:C3aRのN-末端(C3aRアミノ酸1〜23に対応する)は、C5aRのN-末端(C5aRアミノ酸1〜37に対応する)に関して交換された。
【0106】
* C5aR-lp1(IL8R):C5aRのループ1(C5aRアミノ酸90〜117に対応する)は、IL8Rの細胞外ループ1(IL8Rアミノ酸93〜118に対応する)に関して交換された。
【0107】
* C5aR-lp2(IL8R):C5aRの細胞外ループ2(C5aRアミノ酸172〜211に対応する)は、IL8Rの細胞外ループ2(IL8Rアミノ酸172〜211に対応する)に関して交換された。
【0108】
* C5aR-lp3(C3aR):C5aRの細胞外ループ3(C5aRアミノ酸265〜280に対応する)は、C3aRの細胞外ループ3(C3aRアミノ酸400〜415に対応する)に関して交換された。
【0109】
N-C3aR+C5aRを除く、上述のすべてのC5aRキメラにおいて、さらに、余分なD10A突然変異が形成された。1.1で説明されているように、突然変異した完全C5aRおよびC5aRキメラのPCR断片は、pcDNA3.1プラスミド内にクローニングされた。1.1で説明されているように、突然変異した完全C5aR N-末端のPCR断片は、pcDISPLAYプラスミド内にクローニングされた。
【0110】
結果
図1は、pDISPLAYベクターを使用してHEK-293上に発現された、多様な点突然変異および欠失を含む、C5aR N-末端へのCHIPS-FITCの結合を示している。結合は、15および18位における突然変異およびアミノ酸1〜13およびそれよりも上の欠失により、ほとんど完全に根絶されるということになる。
【0111】
図2Aは、pcDNA3.1ベクターを使用してHEK-293上に発現された、N-末端における多様な点突然変異および欠失を含む、C5aR全体へのCHIPS-FITCの結合を示す図である。10、15、および18位の3つのアスパラギン酸の突然変異は、CHIPS-FITCのC5aR全体への結合を最も著しく減らすということになる。
【0112】
図2Bは、N-末端および細胞外ループが他のGタンパク質共役受容体の対応する領域について交換される、C5aRおよびC5aRキメラ全体へのCHIPS-FITCの結合を示す図である。キメラのほとんどでは、さらに、追加のD10A突然変異が構成された。受容体はすべて、pcDNA3.1 ベクターを使用して、HEK-293細胞上に発現された。図2Bは、C5aRの細胞外ループのいずれもが、CHIPSへの結合に関与しないことを示している。したがって、CHIPSは、C5aR N-末端にしか結合しない。
【0113】
表1は、図1および2に示されているように、WT-CHIPS結合についてすべてのC5aR突然変異体およびC5aRキメラをテストすることにより得られるような、WT-CHIPSへの結合に関わるC5aRのすべてのアミノ酸を示している。10、15、および18位のアスパラギン酸および12位のグリシンは、関与していることが判明した。アミノ酸38〜350の関与は見つかっていない。
【0114】
(実施例2)
C5aRへのCHIPS-FITC結合に対するスルホン化C5aR N-末端ペプチド7〜28の効果
材料と方法
C5aRへのCHIPS-FITC結合に対するSO4-C5aR pep7〜28の効果
CHIPS-FITC(0から1μg/ml)を30分間、4℃で200MのSO4-C5aR pep7〜28により事前インキュベートした。次いで、野生型C5aRを発現する、U937細胞(5x106個の細胞/ml)が加えられ、さらに30分間、4℃でインキュベートされた。その後、U937細胞へのCHIPS-FITCの結合が、フローサイトメーターで分析された。
【0115】
結果
図3は、SO4-C5aR pep7〜28によりU937細胞上に発現された野生型C5aRへのCHIPS-FITC結合の阻害を示す。これらの結果から、硫酸化ペプチドとして合成された(また天然のC5aRの場合のように、このペプチド中に存在する両方のチロシンは硫酸化される)、C5aR N-末端の一部のみ(アミノ酸7から28)は、CHIPSに結合し、U937細胞上に発現されたC5aRに結合するのを防ぐことができると結論することができる。
【0116】
(実施例3)
WT-CHIPS(CHIPS1〜121)およびCHIPS31〜121のC5a阻害活性の比較
材料と方法
3.1 CHIPS31〜121の発現および精製
CHIPS31〜121は、プライマー、5'AATAGTGGTCTTCCTACAACおよび3'CGTCCTGAATTCTTAGTATGCATATTCATTAG(下線が付いている配列はEcoRI部位を表す)を使用して、1.2節のCHIPS生産で説明されているように、クローニング、発現、および精製が行われた。
【0117】
3.2 好中球内の細胞内カルシウム動員
C5a由来細胞内カルシウム動員に対するWT-CHIPS(CHIPS1〜121)およびCHIPS31〜121の効果を測定するために、 好中球を、RPMI/0.05% HSA中で2MのFluo-3AMとともに20分間、室温で、常時攪拌して充填し、緩衝液で2回洗浄し、RPMI/0.05% HSA中で1x106個の細胞/mlに再懸濁した。その後、細胞は、30nMのWT-CHIPSまたはCHIPS31〜121とともに、またはなしで、15分間、室温で事前インキュベートされた。最初に、細胞のそれぞれの試料を、約10秒間測定し、基礎蛍光レベルを調べた。次に、濃縮C5a(c5Aで使用した濃度範囲:10-12Mから10-7M)を加え、試料ホルダ内に素早く戻し、測定を続けた。死細胞および細胞残屑を除外するために、前方および側方散乱についてゲート設定されたFACScanまたはCaliburフローサイトメーターで細胞が分析された。
【0118】
結果
図4は、ヒト好中球のC5a由来カルシウム動員を阻害するWT-CHIPSおよびCHIPS31〜121の効力を示す。CHIPS31〜121は、C5a-由来カルシウム動員を阻害する際にWT-CHIPS程度の効力、またはそれ以上の効力を有する。したがって、C5a阻害効力については、WT-CHIPSの最初の30個のアミノ酸は重要でない。
【0119】
(実施例4)
C5aRへのCHIPSの結合に関与するCHIPS31〜121のアミノ酸
材料と方法
4.1 一様に15N-標識された、および13C/15N-標識されたCHIPS31〜121の生成
15N-標識された、および13C/15N-標識されたCHIPS31〜121(最初の30個のアミノ酸がないCHIPS)は、プライマー、5'AATAGTGGTCTTCCTACAACおよび3'CGTCCTGAATTCTTAGTATGCATATTCATTAG(下線が付いている配列はEcoRI部位を表す)を使用して、1.2節のCHIPS生産で説明されているように、クローニングおよび発現が行われた。
【0120】
CHIPS31〜121の15N-標識付けについては、pRSET/CHIPS31〜121プラスミドにより形質転換されたBL21(DE3)大腸菌は、LB培地では増殖せず、M9最少培地では増殖したが、これは1リットル当たり、Na2HPO4 6g、KH2PO4 3g、NaCl 0.5g、15NH4Cl 1g、1M MgSO4 2ml、CaCl2 10μl、0.01M FeSO4 1ml、20%グルコース10ml、1000×ビタミン溶液1ml(1000×ビタミン溶液は1リットル当たり、塩化コリン0.4g、葉酸0.5g、パントテン酸0.5g、ニコチンアミド0.5g、ミオイノシトール1.0g、ピリドキサールHCl 0.5g、チアミンHCl 0.5g、リボフラビン0.05g、およびビオチン1gを含む)、および1000×微量栄養素1ml(1000×微量栄養素は1リットル当たり、3×10-6M モリブデン酸アンモニウム、4×10-4M H3BO3、3×10-5M CoCl2、1×10-5M CuSO4、8×10-5M MnCl2、および1×10-5M ZnSO4を含む)を含有する。
【0121】
CHIPS31〜121の13C/15N-標識付けでは、M9最少培地1リットルにつき15NH4Cl 1gおよび13C-グルコース2gを使用した。精製されたCHIPS31〜121試料を解かして、pH5.0/0.01% NaN3の20mMリン酸ナトリウム緩衝液を含む93% 1H2O/7% 2H2O(v/v)中で1〜2mMの濃度にした。
【0122】
4.2 NMR分光法
4.2.1 概要
NMRデータは、Varian Unity INOVA 500(UIPS)またはINOVA600(GBB)NMR分光計を使用して298Kで収集された。NMRデータは、NMRPipeパッケージ(Delaglioら、1995年)を使用して処理され、Sparky NMR帰属および積分ソフトウェア(T.D.GoddardおよびD.G.Kneller、SPARKY 3、カリフォルニア大学、サンフランシスコ)を使用して分析された。
【0123】
4.2.2 スペクトル帰属
骨格1H、15N、13Cα/β、および1Hα/β核は、標準の三重共鳴実験を使用して帰属された(Cavanaghらを参照)。脂肪族側鎖の帰属は、13Cα/βおよび1Hα/β核の前の帰属を開始点として使用するHC(C)H-TOCSY(Kayら、1993年)実験により行われた。芳香族側鎖は、13Cβ/1Hβ共鳴を芳香族部分のプロトンと相関させ(Yamazakiら、1993年)、さらに3D HC(C)H-TOCSYを芳香族領域内に置かれた13C担体と相関させ芳香族スピン系を接続する2D実験を使用して帰属された。HC(C)H-TOCSY実験における可干渉混合は、15.5ms DIPSI-3混合シーケンス(Shakaら、1988年)を使用して行われた。
【0124】
4.2.3 NMR滴定実験
CHIPS31〜121 1Hおよび15N化学シフトがSO4-C5AR pep7〜28の増大する量の関数として監視される滴定実験が実行された。[SO4-C5AR pep7〜28]:[CHIPS31〜121]の比が0:1から1:1の範囲内である試料の1H-15N HSQC実験の複数の系列が取得された。これは、0.45mM CHIPS31-121 400mlの溶液に、4mM SO4-C5AR pep7-28 9ml(これは1:5の開始[SO4-C5ARpep7〜28]:[CHIPS31〜121]比を与える)を加え、その後9mlの量を加えることにより実行された。
【0125】
結果
表2は、15N-1H-HSQC NMR実験においてSO4-C5AR pep7〜28を15N-標識CHIPS31〜121に滴定することにより得られるような、C5aRへのCHIPS31〜121の結合に関与するか、または関与すると思われるCHIPS31〜121のすべてのアミノ酸を示している。残基R46、K50、K51、K54、E60、K100、K101、G102、K105、Y108、V109、およびY121は、この結合に関与していることが証明される。
【0126】
(実施例5)
C5aRへのCHIPSの結合に関与するCHIPS31〜121のアミノ酸の分子生物学的確認
材料と方法
5.1 ペリプラズミックでリーキーな発現系におけるCHIPS31〜121およびCHIPS31〜121突然変異体の発現
ペリプラズミックでリーキーな発現系におけるCHIPS31〜121およびCHIPS31〜121突然変異体の発現については、CHIPS31〜121はpET-22b(+)-ベクター(Novagen)にクローニングされた。したがって、CHIPS31〜121は、1.2節のCHIPS生産で説明されているように、プライマー、5'CGATGGCCAATAGTGGTCTTCCTACAACGおよび3'CTACTAGCTGAATTCTTAGTATGCATATTCATTAGを使用して、PCRにより増幅された。
【0127】
すべてのCHIPS31〜121突然変異体は、CHIPS31〜121上で部位特異的突然変異生成を使用してオーバーラップエクステンションPCR(Ho SNら、1989年、Gene 77、51)により形成された。精製PCR生成物は、MscIとEcoRIにより消化され、その後、MscI-およびEcoRI-消化pET-22b(+)-ベクターにライゲーションされた。プラスミドは、TOP10F'大腸菌内に伝播された。
【0128】
発現について、BL21(DE3)大腸菌は、構成物により形質転換された。CHIPS31〜121およびCHIPS31〜121突然変異体の発現は、1mMのイソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を、一晩、30℃で誘導することにより実行された。タンパク質が失われないようHSA(0.1 %)が加えられた。その後、上清を集めて、PMSFを加え、発現タンパク質に対するプロテアーゼ活性を回避するようにした。
【0129】
細菌が含まれる上清中の発現されたCHIPS31〜121またはCHIPS31〜121突然変異体の濃度は、ポリクローナルウサギ抗-CHIPS抗体がELISAプレートにコーティングされているキャプチャELISAを使用して決定された。
【0130】
結合後、CHIPS31〜121またはCHIPS31〜121突然変異体は、ビオチニル化ポリクローナルウサギ抗-CHIPS抗体、およびその後のストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ結合により検出される。
【0131】
5.2 C5aRを発現する、CHIPS31〜121またはCHIPS31-121突然変異体およびU937細胞への抗-C5aR mAb結合の競合
C5aRを発現するU937細胞は、0.05%のヒト血清アルブミン(RPMI/0.05% HSA)を含む、RPMI中の氷の上で15分間、高濃度のCHIPS31〜121またはCHIPS31〜121突然変異体(細菌が含まれる上清中に存在する)によりインキュベートされた。次いで、これらの試料は、30分間氷の上で、10μg/mlのFITC-標識抗-C5aR S5/1 mAb(抗-CD88(Serotec、英国オックスフォード))によりインキュベートされた。洗浄後、これらの細胞は、FACscanフローサイトメーター(Becton Dickinson、米国カリフォルニア州サンノゼ)で分析された。
【0132】
結果
図5A+5Bは、CHIPS31〜121およびCHIPS31〜121の指示された突然変異体による、U937細胞上に発現された、C5aRへの抗C5aRモノクローナル抗体の結合の阻害を示す。図5Aの中の太線は、C5aRへの結合で最も影響を受けるCHIPS31〜121およびCHIPS31〜121突然変異体を示す(E60、K100、Y108、V109、およびY121である)。図5Bの中の太線は、C5aRへの結合で最も影響を受けるCHIPS31〜121およびCHIPS31〜121突然変異体を示す(R46、N47、K50、K51、K54、K101、G102、K105、Y121は欠失)。すべての突然変異は、アラニン内への単一アミノ酸置換体であった(断りのない限り)。
【0133】
表3は、単一アミノ酸がアラニン中に置換された(断りのない限り)多様なCHIPS31〜121突然変異体のIC50値を示している。IC50の定量は、図5A+Bに示されている実験を使用して行われた。
【0134】
【表1】

【0135】
アミノ酸38から350
ILALVIFAVVFLVGVLGNALVVWVTAFEAKRTINAIWFLNLAVADFLSCLALPILFTSlV
QHHHWPFGGAACSILPSLILLNMYASILLLATISADRFLLVFKPIWCQNFRGAGLAWIAC
AVAWGLALLLTIPSFLYRVVREEYFPPKVLCGVDYSHDKRRERAVAIVRLVLGFLWPLLT
LTICYTFILLRTWSRRATRSTKTLKVVVAVVASFFIFWLPYQVTGIMMSFLEPSSPTFLL
LNKLDSLCVSFAYINCCINPIIYVVAGQGFQGRLRKSLPSLLRNVLTEESVVRESKSFTR
STVDTMAQKTQAV
は、CHIPSの結合に関与しない。
【0136】
【表2】

【0137】
【表3】

【0138】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】pDISPLAYベクターを使用してHEK-293上に発現された、多様な点突然変異および欠失を含む、C5aR N-末端へのCHIPS-FITCの結合を示す図である。
【図2A】pcDNA3.1ベクターを使用してHEK-293上に発現された、N-末端における多様な点突然変異および欠失を含む、C5aR全体へのCHIPS-FITCの結合を示す図である。
【図2B】N-末端および細胞外ループが他のGタンパク質共役受容体の対応する領域について交換される、C5aRおよびC5aRキメラ全体へのCHIPS-FITCの結合を示す図である。キメラのほとんどでは、さらに、追加のD10A突然変異が構成された。受容体はすべて、pcDNA3.1 ベクターを使用して、HEK-293細胞上に発現された。
【図3】アミノ酸7から28を含む、SO4-C5aR-N-末端ペプチドによりU937細胞上に発現された野生型C5aRへのCHIPS-FITC結合の阻害を示す図である。
【図4】ヒト好中球のC5a由来カルシウム動員を阻害するWT-CHIPSおよびCHIPS31〜121の効力を示す図である。
【図5A】CHIPS31〜121およびCHIPS31〜121の指示された突然変異体による、U937細胞上に発現された、C5aRへの抗C5aRモノクローナル抗体の結合の阻害を示す図である。
【図5B】CHIPS31〜121およびCHIPS31〜121の指示された突然変異体による、U937細胞上に発現された、C5aRへの抗C5aRモノクローナル抗体の結合の阻害を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトC5aRのN-末端残基10から18とその細胞外ループとの分子内接触を防ぐことができる化合物。
【請求項2】
前記ヒトC5aRの10、15、および18位のアスパラギン酸および12位のグリシンに結合することができることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物は、一般式
Xn-E-X39-K-X7-Y-V-X11-Y-Xm (I)
で表され、
式中、
Xnは、存在する場合も存在しない場合もあり、タンパク質構成アミノ酸、非タンパク質構成アミノ酸、D-アミノ酸、ペプチド模倣薬構成単位、またはそれらの組合せの伸長であり、
Kは、リシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Eは、グルタミン酸またはその非タンパク質構成類似体であり、
Yは、チロシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Vは、バリンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
X39、X7、およびX11は、それぞれ、39、7、または11のタンパク質構成アミノ酸、非タンパク質構成アミノ酸、D-アミノ酸、ペプチド模倣薬構成単位、またはそれらの組合せの伸長であり、
Xmは、存在する場合も存在しない場合もあり、タンパク質構成アミノ酸、非タンパク質構成アミノ酸、D-アミノ酸、ペプチド模倣薬構成単位、またはそれらの組合せの伸長であり、
自然に分泌されるCHIPSと同じ3次元立体配座を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項4】
式I中のXnおよびXmは、それぞれ、0〜100、好ましくは1〜90、より好ましくは〜75、最も好ましくは1〜59個の残基を含むことができる請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物は、一般式
Xn-R-X3-K-K-G-X-K-X5-E-X39-K-K-G-X2-K-X2-Y-V-X11-Y-Xm (II)
で表され、
式中、
Xnは、存在する場合も存在しない場合もあり、タンパク質構成アミノ酸、非タンパク質構成アミノ酸、D-アミノ酸、ペプチド模倣薬構成単位、またはそれらの組合せの伸長であり、
Rは、アルギニンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Kは、リシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Eは、グルタミン酸またはその非タンパク質構成類似体であり、
X、X2、X3、X5、X39、およびX11は、それぞれ、1、2、3、5、39、および11のタンパク質構成アミノ酸、非タンパク質構成アミノ酸、D-アミノ酸、ペプチド模倣薬構成単位、またはそれらの組合せの伸長であり、
Yは、チロシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Vは、バリンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Xmは、存在する場合も存在しない場合もあり、タンパク質構成アミノ酸、非タンパク質構成アミノ酸、D-アミノ酸、ペプチド模倣薬構成単位、またはそれらの組合せの伸長であり、
自然に分泌されるCHIPSと同じ3次元立体配座を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
式II中のXnおよびXmは、それぞれ、0〜100、好ましくは1〜50、より好ましくは1〜25、最も好ましくは1〜15を含むことができる請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記化合物は、一般式
Xn-T-X6-R-L-R-N-X2-K-K-G-T-K-X4-F-E-K-X-V-X7-Y-X4-L-X11-E-X11-K-K-G-E-X-K-X2-Y-V-X-N-X3-K-X5-Y-Xm (III)
で表され、
式中、
Xnは、存在する場合も存在しない場合もあり、タンパク質構成アミノ酸、非タンパク質構成アミノ酸、D-アミノ酸、ペプチド模倣薬構成単位、またはそれらの組合せの伸長であり、
Tは、トレオニンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Rは、アルギニンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Lは、ロイシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Nは、アスパラギンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
X、X2、X3、X4、X5、X6、X7、およびX11は、それぞれ、1、2、3、4、5、6、7、または11のタンパク質構成アミノ酸、非タンパク質構成アミノ酸、D-アミノ酸、ペプチド模倣薬構成単位、またはそれらの組合せの伸長であり、
Kは、リシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Gは、グリシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Fは、フェニルアラニンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Eは、グルタミン酸またはその非タンパク質構成類似体であり、
Yは、チロシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Vは、バリンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
自然に分泌されるCHIPSと同じ3次元立体配座を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物は、一般式
Xn-T-L-X5-R-L-R-N-Y-L-K-K-G-T-K-X2-A-X-F-E-K-X-V-I-L-X5-Y-X-T-X2-L-X3-L-X2-D-R-K-X2-E-L-X-G-X-M-X2-T-Y-X2-K-K-G-E-X-K-X2-Y-V-I-N-X3-K-X5-Y-Xm (IV)
で表され、
式中、
Xnは、存在する場合も存在しない場合もあり、タンパク質構成アミノ酸、非タンパク質構成アミノ酸、D-アミノ酸、ペプチド模倣薬構成単位、またはそれらの組合せの伸長であり、
Tは、トレオニンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Rは、アルギニンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Lは、ロイシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Iは、イソロイシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Mは、メチオニンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Aは、アラニンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Dは、アスパラギンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Nは、アスパラギンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Kは、リシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Gは、グリシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Fは、フェニルアラニンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Eは、グルタミン酸またはその非タンパク質構成類似体であり、
Yは、チロシンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
Vは、バリンまたはその非タンパク質構成類似体であり、
X、X2、X3、およびX5は、それぞれ、1、2、3、または5のタンパク質構成アミノ酸、非タンパク質構成アミノ酸、D-アミノ酸、ペプチド模倣薬構成単位、またはそれらの組合せの伸長であり、
自然に分泌されるCHIPSと同じ3次元立体配座を有する請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
式IIIおよびIV中のXnおよびXmは、それぞれ、0〜100、好ましくは1〜50、より好ましくは1〜25、最も好ましくは1〜6を含むことができる請求項7または8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
自然に分泌されるCHIPSのN-末端ドメインのそれぞれ1、17、および30のアミノ酸を欠損している、CHIPSΔ1、CHIPSΔ17、CHIPSΔ30から選択される請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
前記非タンパク質構成類似体は、2-ナフチルアラニン(Nal(2))、β-シクロヘキシルアラニン(Cha)、p-アミノ-フェニルアラニン((Phe(p-NH2)、p-ベンゾイル-フェニルアラニン(Bpa)、オルニチン(Orn)、ノルロイシン(Nle)、4-フルオロ-フェニルアラニン(Phe(p-F))、4-クロロ-フェニルアラニン(Phe(p-Cl))、4-ブロモ-フェニルアラニン(Phe(p-Br))、4-ヨード-フェニルアラニン(Phe(p-I))、4-メチル-フェニルアラニン(Phe(p-Me))、4-メトキシ-フェニルアラニン(Tyr(Me))、4-ニトロ-フェニルアラニン(Phe(p-NO2))からなる群から選択される請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
前記非タンパク質構成類似体は、D-フェニルアラニン、D-アラニン、D-アルギニン、D-アスパラギン、D-アスパラギン酸、D-システイン、D-グルタミン酸、D-グルタミン、D-ヒスチジン、D-イソロイシン、D-ロイシン、D-リシン、D-メチオニン、D-プロリン、D-セリン、D-トレオニン、D-トリプトファン、D-チロシン、D-バリン、D-2-ナフチルアラニン(D-Nal(2))、β-シクロヘキシル-D-アラニン(D-Cha)、4-アミノ-D-フェニルアラニン(D-Phe(p-NH2))、p-ベンゾイル-D-フェニルアラニン(D-Bpa)、D-オルニチン(D-Orn)、D-ノルロイシン(D-Nle)、4-フルオロ-D-フェニルアラニン(D-Phe(p-F))、4-クロロ-D-フェニルアラニン(D-Phe(p-Cl))、4-ブロモ-D-フェニルアラニン(D-Phe(p-Br))、4-ヨード-D-フェニルアラニン(D-Phe(p-I))、4-メチル-D-フェニルアラニン(D-Phe(p-Me))、4-メトキシ-D-フェニルアラニン(D-Tyr(Me))、4-ニトロ-D-フェニルアラニン(D-Phe(p-NO2))からなる群から選択されたD-アミノ酸である請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
前記非タンパク質構成類似体は、オリゴ-β-ペプチド、オリゴスルホンアミド、ビニロガススルホンアミド、ヒドラジンペプチド/アザチド、オリゴカルバメート、ウレアペプトイド、オリゴウレア、ホスホジエステル、ペプトイド、オリゴスルホン、ペプトイドスルホンアミド、ビニロガスペプチドからなる群から選択されたペプチド模倣薬構成単位である請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
前記ペプチド模倣薬構成単位は、N-ベンジルグリシン(NPhe)、N-メチルグリシン(NAla)、N-(3-グアニジノプロピル)グリシン(NArg)、N-(カルボキシメチル)グリシン(NAsp)、N-(カルバミルメチル)グリシン(NAsn)、N-(チオエチル)-グリシン(NhCys)、N-(2-カルボキシエチル)グリシン(NGlu)、N-(2-カルバミルエチル)グリシン(NGln)、N-(イミダゾリルエチル)グリシン(NhHis)、N-(1-メチルプロピル)グリシン(NIle)、N-(2-メチルプロピル)グリシン(NLeu)、N-(4-アミノブチル)グリシン(NLys)、N-(2-メチルチオエチル)グリシン(NMet)、N-(ヒドロキシエチル)グリシン(NhSer)、N-(2-ヒドロキシプロピル)グリシン(NhThr)、N-(3-インドリルメチル)グリシン(Ntrp)、N-(p-ヒドロキシフェンメチル)-グリシン(NTyr)、N-(1-メチルエチル)グリシン(NVal)のようなN-置換グリシンからなる群から選択される請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
環式である請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
モチーフXq-D-X-G-X2-D-X2-D-Xrを含むC5aRまたはC5aR関連化合物に対する抗体またはその誘導体である化合物であって、Xq、X、X2、およびXrは0〜9、1、2、および0〜20の伸長である請求項1および2に記載の化合物。
【請求項17】
予防または治療に使用する請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
好中球、単球、および内皮細胞上のC5a-受容体(C5aR)を伴う兆候の予防または治療に使用する請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
前記兆候は、急性または慢性炎症反応を伴う請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
前記兆候は、表4に記載の群から選択される請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
好中球、単球、および内皮細胞以外の細胞上のC5aRを伴う兆候の予防または治療で使用する請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
前記他の細胞は、リンパ球、樹状細胞、好酸球、好塩基球、マクロファージ、小グリア細胞、星状細胞、クッパー細胞、肝細胞、上皮細胞である請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
CHIPS生産菌により引き起こされる感染用の予防ワクチンまたは治療ワクチンで使用する請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
前記CHIPS生産菌は、黄色ブドウ球菌である請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
予防または治療用の治療製剤の製造のための請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項26】
前記治療製剤は、好中球、単球、および内皮細胞上のC5aRを伴う兆候の予防および治療用である請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記兆候は、急性または慢性炎症反応を伴う請求項25に記載の使用。
【請求項28】
前記兆候は、表4に記載の群から選択される請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記治療組成物は、好中球、単球、および内皮細胞以外の細胞上のC5aRを伴う兆候の予防または治療用である請求項25に記載の使用。
【請求項30】
前記他の細胞は、リンパ球、樹状細胞、好酸球、好塩基球、マクロファージ、小グリア細胞、星状細胞、クッパー細胞、肝細胞、上皮細胞である請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記治療製剤は、CHIPS生産菌により引き起こされる感染の予防または治療で使用することができる予防ワクチンまたは治療ワクチンである請求項25に記載の使用。
【請求項32】
前記CHIPS生産菌は、黄色ブドウ球菌である請求項31に記載の使用。
【請求項33】
請求項1から16のいずれか一項に記載の好適な賦形剤および1つまたは複数の化合物を含む治療組成物。
【請求項34】
請求項1から16のいずれか一項に記載の好適な賦形剤および1つまたは複数の化合物を含む予防組成物。
【請求項35】
皮膚を通して人体に導入される、または外科手術中に前記人体内に置かれる医療装置の表面上に使用するコーティング組成物を調製するための請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項36】
前記表面は、カテーテル先端の表面である請求項35に記載の使用。
【請求項37】
前記組成物は、徐放性組成物である請求項35および36に記載の使用。
【請求項38】
請求項1から16のいずれか一項に記載の好適な賦形剤および1つまたは複数の化合物を含む治療または予防組成物。
【請求項39】
請求項1から16のいずれか一項に記載の前記化合物の1つまたは複数の予防上または治療上効果のある量を投与することを含む好中球、単球、および内皮細胞上のC5aRを伴う兆候を患っている被験者の予防または治療処置の方法。
【請求項40】
前記兆候は、急性または慢性炎症反応を伴う請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記兆候は、表4に記載の群から選択される請求項39に記載の方法。
【請求項42】
請求項1から16のいずれか一項に記載の前記化合物の1つまたは複数の予防上または治療上効果のある量を投与することを含む好中球、単球、および内皮細胞以外の細胞上のC5aRを伴う兆候を患っている被験者を予防または治療する方法。
【請求項43】
前記他の細胞は、リンパ球、樹状細胞、好酸球、好塩基球、マクロファージ、小グリア細胞、星状細胞、クッパー細胞、肝細胞、上皮細胞である請求項42に記載の方法。
【請求項44】
請求項1から16のいずれか一項に記載の1つまたは複数の化合物の予防上または治療上効果のある量を投与することを含むCHIPS生産菌の感染に対する被験者の予防または治療処置の方法。
【請求項45】
前記C5aRに結合できる化合物を同定する方法であって、
a)候補化合物のライブラリを提供することと、
b)前記ライブラリのメンバーを、自然に分泌されるC5aR中に見つかる立体配座と同じまたは類似の立体配座において、式中Xq、X、X2、およびXrをそれぞれ0〜9、1、2、および0〜20のタンパク質構成アミノ酸またはその非タンパク質構成類似体の伸長とし、Dをアスパラギン酸とし、GをグリシンとするモチーフXq-D-X-G-X2-D-X2-D-Xrを含むC5aR関連化合物と接触させることと、
c)前記C5aR関連化合物に結合する前記ライブラリのメンバーを同定することを含む方法。
【請求項46】
さらに、予防または治療で使用するためにこうして同定されたメンバーを用意する工程を含む請求項45に記載の方法。
【請求項47】
請求項45に記載の方法で同定される化合物。
【請求項48】
前記C5aRを伴う兆候を治療および予防する薬剤組成物を調製するための請求項47に記載の化合物の使用。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2008−509077(P2008−509077A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507780(P2007−507780)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004156
【国際公開番号】WO2005/100385
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(503211529)アリゲーター・バイオサイエンス・アーベー (4)
【Fターム(参考)】