説明

CD138を標的とする剤及びその使用

【課題】実質的にそのマウス相当物の抗原結合領域を保持し、抗原に対する結合親和性の向上、及び標的細胞へのより均一な結合の少なくともいずれかを示す、ヒトマウスキメラ抗体を開示する。
【解決手段】CD138に対する非ヒト抗体の抗原結合領域(ABR)と、少なくとも一部がヒト抗体のものである、更なる抗体領域と、を含む、CD138を認識する改変された標的抗体であって、以下の(a)及び(b)の少なくともいずれかである抗体、(a)前記非ヒト抗体のCD138に対する結合親和性を超える結合親和性でCD138に結合する抗体、(b)CD138発現細胞のCD138に均一に結合する抗体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許仮出願第61/016,630号明細書(2007年12月26日出願)の利益を主張し、これらの全体を参照することにより本願に援用する。
【0002】
本発明は、抗原CD138に対する改善された標的剤、該標的剤を含む組成物、及びこれらを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
CD138は、細胞外マトリックスの受容体として作用するものであり、多発性骨髄腫(MM)細胞で高発現し、MM細胞の発生及び増殖の少なくともいずれかに影響を与えることが示されている。CD138はまた、数例を挙げると、卵巣癌腫細胞、腎臓癌腫細胞、胆嚢癌腫細胞、乳癌腫細胞、前立腺癌細胞、肺癌細胞、結腸癌腫細胞、ホジキンリンパ腫細胞、及び非ホジキンリンパ腫細胞細胞、慢性リンパ球性白血病(CLL)細胞でも発現する。
【0004】
本発明を説明するために、特に実施に関連する更なる詳細情報を提供するために、本明細書で用いられる特許文献などの刊行物及びその他の資料は、参照することにより援用される。便宜上、これらの刊行物については、その著者と発行年度を以下の本文中に記載するか、或いは添付の参考文献に著者名のアルファベット順に従って列挙する。
【0005】
非特許文献1は、MM細胞の表面に発現するCD138抗原に対する、マウスIgG1抗体B−B4の優れた結合性について報告している。非特許文献1はまた、エフェクタ分子としてマイタンシノイドDM1を含む免疫複合体B−B4−DM1の、多発性骨髄腫細胞に対する細胞傷害活性が高いことについても報告している(特許文献1も参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0183971号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Tassone et al. Blood,2004,104(12),pp.3688−3696
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
B−B4に関連する、ある性質及び機能の少なくともいずれかを欠くB−B4に基づく標的剤、具体的には標的抗体に対する要求が依然として存する。かかる標的抗体は、1以上のヒト抗体の抗体領域を含んでいてもよい。特に、B−B4と同程度に有効にCD138に結合するが、重篤な副作用を伴うことなくヒトに投与することができる、B−B4に基づくキメラ抗体に対する要求が存する。また、B−B4の結合親和性を超える結合親和性を有する標的剤に対する要求も依然として存する。また、そのマウスの相当物に比べて1以上の有利な性質を示す、B−B4に基づく該標的剤に対する要求も存する。これらの性質としては、特にCD138発現腫瘍細胞とそれに付属する細胞を含む腫瘍細胞に対する抗原結合性の改善、及びより均一な結合性などが挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、CD138に均一に結合させる方法であって、
CD138に対する非ヒト抗体の抗原結合領域と、
少なくとも一部がヒト抗体のものである、更なる抗体領域と、
を含む、改変された標的抗体を提供する工程と、
前記改変された標的抗体をCD138発現細胞に接種する工程と、
を含み、
前記改変された標的抗体が、前記CD138発現細胞上で発現しているCD138に均一に結合する方法に関する。
【0010】
本発明はまた、免疫グロブリン重鎖及びその一部のいずれかのアミノ酸配列を含む単離ポリペプチドであって、前記免疫グロブリン重鎖及びその一部のいずれかのアミノ酸配列が、配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、及び少なくとも98%のいずれかの配列同一性を有し、前記免疫グロブリン重鎖及びその一部のいずれかを含む標的剤が、CD138を標的とする、単離ポリペプチドに関する。
【0011】
免疫グロブリン重鎖及びその一部のいずれかのアミノ酸配列は、配列番号1で表されるアミノ酸配列の残基31〜35、残基51〜68、及び残基99〜111と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有していてもよく、標的剤は、改変された標的抗体であってもよい。
【0012】
免疫グロブリン重鎖及びその一部のいずれかの定常領域は、IgG4アイソタイプ定常領域であってもよい。
【0013】
標的剤は、マウスヒトキメラ抗体であってもよい。
【0014】
標的剤及び改変された標的抗体のいずれかは、ヒト化抗体であってもよい。
【0015】
単離ポリペプチドは更に、免疫グロブリン軽鎖及びその一部のいずれかのアミノ酸配列を更に含んでもよく、前記免疫グロブリン軽鎖及びその一部のいずれかのアミノ酸配列は、配列番号2で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、及び少なくとも98%のいずれかの配列同一性を有していてもよい。
【0016】
単離ポリペプチドは更に、免疫グロブリン軽鎖及びその一部のいずれかのアミノ酸配列を更に含んでいてもよく、前記免疫グロブリン軽鎖及びその一部のいずれかのアミノ酸配列は、配列番号2で表されるアミノ酸配列の残基24〜34、残基50〜56、及び残基89〜97と、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、及び少なくとも97%のいずれかの配列同一性を有する。
【0017】
免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列は、配列番号1で表されるアミノ酸配列と同一であってもよい。
【0018】
免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一であってもよい。
【0019】
本発明はまた、
CD138に対する非ヒト抗体の抗原結合領域と、
少なくとも一部がヒト抗体のものである、更なる抗体領域と、
を含み、以下の(a)及び(b)の少なくともいずれかであるCD138を認識する改変された標的抗体に関する、
(a)前記非ヒト抗体のCD138に対する結合親和性を超える結合親和性でCD138に結合する抗体、
(b)CD138発現細胞のCD138に均一に結合する抗体。
【0020】
更なる抗体領域は、ヒト抗体の重鎖定常領域及びその一部のいずれかを含む、少なくとも1つの定常領域であってもよく、ここで改変された標的抗体はIgG4アイソタイプのものである。
【0021】
改変された標的抗体は、キメラ抗体であってもよく、非ヒト抗体は、B−B4であってもよい。
【0022】
改変された標的抗体は、ヒト化抗体であってもよく、非ヒト抗体は、B−B4であってもよい。
【0023】
重鎖のアミノ酸配列は、配列番号1で表されるアミノ酸配列と、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、及び少なくとも98%のいずれかの配列同一性を有していてもよい。
【0024】
改変された標的抗体は、少なくとも1本の軽鎖であって、そのアミノ酸配列が配列番号2で表されるアミノ酸配列と、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、及び少なくとも98%のいずれかの配列同一性を有する軽鎖を含んでいてもよい。
【0025】
重鎖のアミノ酸配列は、配列番号1で表されるアミノ酸配列の残基31〜35、残基51〜68、及び残基99〜111の少なくともいずれかと、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、及び100%のいずれかの割合の配列同一性を有していてもよい。重鎖のアミノ酸配列は、配列番号2で表されるアミノ酸配列の残基24〜34、残基50〜56、及び残基89〜97の少なくともいずれかと、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも97%、及び100%のいずれかの配列同一性を有していてもよい。
【0026】
更なる抗体領域は、
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸残基123〜448、及び
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列のアミノ酸残基108〜214、の少なくともいずれかと、
以下の少なくともいずれかの突然変異とを含んでいてもよい、
改変された標的抗体の抗体依存性細胞傷害性及び補体依存性細胞傷害性の少なくともいずれかを、維持させる或いは低下させる突然変異、
改変された標的抗体を安定化させる突然変異。
【0027】
更なる抗体領域は、ヒト抗体の定常重鎖領域であってもよい。
【0028】
改変された標的抗体は、150%、140%、130%、120%、110%、100%、90%、80%、70%、60%、及び50%のいずれか未満のターゲティング変動で、CD138に結合することができる。
【0029】
重鎖のアミノ酸配列は、配列番号1で表されるアミノ酸配列と、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、及び少なくとも98%のいずれかの配列同一性を有していてもよい。
【0030】
改変された標的抗体は、少なくとも1本の軽鎖であって、そのアミノ酸配列が配列番号2で表されるアミノ酸配列と、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、及び少なくとも98%のいずれかの配列同一性を有する軽鎖を含んでいてもよい。
【0031】
重鎖のアミノ酸配列は、配列番号1で表されるアミノ酸配列の残基31〜35、残基51〜68、及び残基99〜111と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、及び少なくとも95%のいずれかの配列同一性を有していてもよい。
【0032】
重鎖のアミノ酸配列は、配列番号2で表されるアミノ酸配列の残基24〜34、残基50〜56、及び残基89〜97と、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、及び少なくとも97%のいずれかの配列同一性を有していてもよい。
【0033】
本発明はまた、改変された標的抗体と、薬学的に許容される担体と、を含む、或いは本質的にこれらから成る、医薬組成物に関する。
【0034】
改変された標的抗体を産生するハイブリドーマもまた、本発明の一部である。
【0035】
本発明はまた、改変された標的抗体を含む、抗体に基づくアッセイを含む。
【0036】
本発明は、医薬品で使用するための、本明細書に記載する改変された標的抗体を提供する。具体的には、改変された標的抗体は、
CD138に対する非ヒト抗体の抗原結合領域と、
少なくとも一部がヒト抗体のものである、更なる抗体領域と、
を含む。
【0037】
より具体的には、改変された標的抗体は、腫瘍細胞を標的とする治療で用いるためのものである。
【0038】
本発明はまた、腫瘍細胞を標的とする薬品の製造における、本明細書に記載する改変された標的抗体の使用を提供する。具体的には、改変された標的抗体は、
CD138に対する非ヒト抗体の抗原結合領域と、
少なくとも一部がヒト抗体のものである、更なる抗体領域と、
を含む。
【0039】
より具体的には、本発明のこれらの医学的使用では、改変された標的抗体は、CD138発現細胞を有する個体に投与されるものである。更に、改変された標的抗体は、CD138発現細胞上で発現しているCD138に均一に結合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、結合したエフェクタ分子を有するnBT062の模式図を提供する。
【図2】図2は、BT062の化学式である。
【図3】図3は、アンサマイトシンP−3のマイタンシノールへの変換を示す(立体化学は単純化するために省略する)。
【図4】図4は、代表的なDM4の合成スキームを示す。
【図5】図5は、(nBT062のDM4への)抗体複合体化の概略図を示す。
【図6】図6は、nBT062−SPDB−DM4、nBT062−SPP−DM1、nBT062−SMCC−DM1、及びnBT062抗体のOPM−2細胞への結合の分析を示す。様々な濃度のnBT062及び複合体を細胞に与え、FACS分析によって平均蛍光を測定した。
【図7A】図7Aは、MOLP−8(CD138)及びBJAB(CD138)に対するnBT062−DMx複合体のインビトロ細胞傷害性を表す。細胞を平底プレートで培養し、指示した濃度の免疫複合体とともに5日間インキュベートした。WST試薬を更に3時間添加して、細胞生存性を評価した。
【図7B】図7Bは、MOLP−8(CD138)及びBJAB(CD138)に対するnBT062−DMx複合体のインビトロ細胞傷害性を表す。細胞を平底プレートで培養し、指示した濃度の免疫複合体とともに5日間インキュベートした。WST試薬を更に3時間添加して、細胞生存性を評価した。
【図7C】図7Cは、MOLP−8(CD138)及びBJAB(CD138)に対するnBT062−DMx複合体のインビトロ細胞傷害性を表す。細胞を平底プレートで培養し、指示した濃度の免疫複合体とともに5日間インキュベートした。WST試薬を更に3時間添加して、細胞生存性を評価した。
【図7D】図7Dは、nBT062−SPDB−DM4の細胞傷害活性を、遮断抗体(1μMのnBT062)の存在下及び非存在下のいずれかで分析した。
【図8A】図8Aは、MOLP−8腫瘍細胞に接種した後の、経時的な(日)、PBSで処理した個々のマウスの腫瘍体積を示す。
【図8B】図8Bは、MOLP−8腫瘍細胞に接種した後の、経時的な(日)、nBT062抗体で処理した個々のマウスの腫瘍体積を示す。
【図8C】図8Cは、MOLP−8腫瘍細胞に接種した後の、経時的な(日)、遊離DM4で処理した個々のマウスの腫瘍体積を示す。
【図8D】図8Dは、MOLP−8腫瘍細胞に接種した後の、経時的な(日)、非標的複合体huC242−DM4で処理した個々のマウスの腫瘍体積を示す。
【図9A】図9Aは、MOLP−8腫瘍細胞に接種した後の、経時的な(日)、PBSで処理した個々のマウスの腫瘍体積を示す。
【図9B】図9Bは、MOLP−8腫瘍細胞に接種した後の、経時的な(日)、nBT062−SPDB−DM4で処理した個々のマウスの腫瘍体積を示す。
【図9C】図9Cは、MOLP−8腫瘍細胞に接種した後の、経時的な(日)、B−B4−SPP−DM1で処理した個々のマウスの腫瘍体積を示す。
【図9D】図9Dは、MOLP−8腫瘍細胞に接種した後の、経時的な(日)、nBT062−SPP−DM1で処理した個々のマウスの腫瘍体積を示す。
【図10】図10は、接種後の、経時的な(日)、CB.17 SCIDマウスにおけるMOLP−8ヒト多発性骨髄腫異種移植片の平均腫瘍体積(+/−SD)を表す。
【図11A】図11Aは、SCIDマウスの嵩高いMOLP−8腫瘍モデルにおける、CD138MOLP−8腫瘍細胞に対するnBT062−DMxの抗腫瘍活性を示す。各群について、腫瘍体積を平均(+/−SD)で示す。
【図11B】図11Bは、SCIDマウスの嵩高いMOLP−8腫瘍モデルにおける、CD138MOLP−8腫瘍細胞に対するnBT062−DMxの抗腫瘍活性を示す。各群について、腫瘍体積を平均(+/−SD)で示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、標的剤、具体的にはCD138標的抗体、より具体的には、改変されたCD138標的抗体に関する。該標的剤を含む免疫複合体により、エフェクタ分子(1及び複数のいずれか)の標的部位への送達と、標的細胞、標的組織、及び標的器官とそれらの近傍のいずれかにおけるエフェクタ分子(1及び複数のいずれか)の部位特異的放出とが可能になる。エフェクタ分子は、標的部位において、免疫複合体の標的剤部分から切断/解離されることにより活性化される。
【0042】
本発明に係る抗体及びそれを含む免疫複合体の少なくともいずれかは、治療を必要としている被験体に投与してもよく、治療を必要とする被験体から単離した細胞に投与してもよい。エフェクタ分子(1及び複数のいずれか)は、標的細胞、標的組織、及び標的器官とそれらの近傍で切断/解離されて免疫複合体から放出され得る。
【0043】
1例として、抗体nBT062を呈色(chromographic)アッセイで使用する。患者の、ホルマリンで固定したパラフィン包埋組織を提供する。抗体nBT062を、一次抗体として添加すると、組織の表面で発現しているCD138が抗体に結合する。検出抗体を添加して、nBT062に結合させる。最終行程では、色素原を含む検出抗体と、nBT062との結合を測定する。抗体nBT062を用いて、造血細胞の中からヒト形質細胞を同定し、それにより種々の造血器腫瘍の診断を可能にする。方法はまた、特定の癌腫の進行を追うことを可能にする。Fc受容体との交差反応性の低下に起因して、マウス相当物とは対照的に、nBT062を使用すると、非特異的検出の減少が観察される。
【0044】
第2の例として、nBT062抗体と、抗体nBT062、並びにエフェクタ分子としての少なくとも1種の細胞傷害性の高い薬物及び免疫毒素のいずれかを含む免疫複合体とを提供し、癌患者に投与する。この例では、有効量のnBT062は、後に患者に静脈内投与して癌細胞に濃縮させる、治療に有効な量の免疫複合体から、CD138発現非腫瘍細胞を保護する。エフェクタ分子(1及び複数のいずれか)は、外的手段により抗体から放出されて、癌細胞における細胞死及び連続細胞周期停止を誘導する。
【0045】
CD138、即ちシンデカン−1(SYND1、SYNDECAN、SDC、SCD1、CD138抗原としても記載される、SwissProtアクセッション番号:P18827 human)は、元来上皮起源の細胞上に存在すると記載されており、後に造血細胞で見出された(Sanderson,1989)膜糖タンパク質である。CD138は、ヘパラン硫酸鎖を通して、可溶性分子(例えば、増殖因子EGF、FGF、HGF)、及び不溶性分子(例えば、細胞外マトリックス成分であるコラーゲン及びフィブロネクチン)に結合する、長い細胞外ドメインを有し(Langford,1998;Yang,2007)、細胞外マトリックスの受容体として作用する。CD138はまた、接着性細胞が発現するヘパリン結合分子を通して細胞間接着を媒介する。CD138は骨髄腫細胞の増殖因子の共受容体としての役割を有することが示されている(Bisping,2006)。形質細胞の分化に関する研究で、CD138を分化抗原としても考えなければならないことが示された(Bataille,2006)。
【0046】
悪性造血では、CD138は、MM細胞、卵巣癌腫細胞、腎臓癌腫細胞、胆嚢癌腫細胞、乳癌腫細胞、前立腺癌細胞、肺癌細胞、結腸癌腫細胞、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫の細胞、慢性リンパ球性白血病(CLL)の細胞(Horvathova,1995)、急性リンパ球性白血病(ALL)の細胞、急性骨髄芽球性白血病(AML)の細胞(Seftalioglu,2003(a);Seftalioglu,2003(b))、固形組織肉腫細胞、結腸癌腫細胞、その他の造血器悪性腫瘍細胞、及びCD138を発現する固形腫瘍細胞(Carbone et al.,1999;Sebestyen et al.,1999;Han et al.,2004;Charnaux et al.,2004;O’Connell et al.,2004;Orosz and Kopper,2001)の大部分で高度に発現する。
【0047】
CD138発現陽性であることが示されているその他の癌は、多くの卵巣腺癌、移行性細胞膀胱癌腫、腎臓明細胞癌腫、扁平上皮細胞肺癌腫;乳癌腫、及び子宮癌(例えば、Davies et al.,2004;Barbareschi et al.,2003;Mennerich et al.,2004;Anttonen et al.,2001;Wijdenes,2002を参照)である。
【0048】
正常なヒト造血コンパートメントでは、CD138発現は形質細胞に限定されており(Wijdenes,1996;Chilosi,1999)、CD138は、末梢血リンパ球、単球、顆粒球、及び赤血球では発現しない。特に、CD34幹細胞及びCD34前駆細胞は、CD138を発現せず、抗CD138 mAbは、造血幹細胞培養におけるコロニー形成単位の数に影響を与えない(Wijdenes,1996)。非造血コンパートメントでは、CD138は、肺、肝臓、皮膚、腎臓、及び腸内の単純及び重層化上皮上で主に発現する。内皮細胞上では僅かな染色しか見られなかった(Bernfield,1992;Vooijs,1996)。CD138は、ヒトリンパ腫細胞において多様な形で存在することが報告されている(Gattei,1999)。
【0049】
モノクローナル抗体B−B4、BC/B−B4、B−B2、DL−101、1 D4、MI15、1.BB.210、2Q1484、5F7、104−9、281−2、特にB−B4は、CD138に対して特異的であることが報告されている。これらのうちB−B4、1D4、及びMI15は、CD138のインタクトな分子とコアタンパク質の両方を認識し、同一或いは密接に関連するエピトープ、を認識することが示された(Gattei,1999)。これまでの研究では、B−B4は可溶性CD138を認識せず、膜に結合した形のCD138のみを認識することが報告されている(Wijdenes,2002)。
【0050】
B−B4(マウスIgG1 mAb)は、ヒトシンデカン−1(CD138)上のコアタンパク質の残基90〜95の線状エピトープに結合する(Wijdenes,1996;Dore,1998)。CD138の発現パターンに一致して、B−B4は、形質細胞株RPMI8226に強く反応するが、内皮細胞には反応しないことが示された。またCD138の発現パターンに一致して、B−B4はまた、上皮細胞株A431(ケラチノサイト由来)及びHepG2(肝細胞由来)と反応した。免疫毒素B−B4−サポリンはまた、形質細胞株RPMI8226に対する毒性が強く、実際に遊離サポリンより遥かに毒性が強かった。しかしながら、試験した2種の上皮細胞株から、B−B4−サポリンは、細胞株A431に対してのみ毒性を示したが、クローン原性アッセイでは、B−B4サポリンは、A431細胞の増殖に対して阻害効果を示さなかった(Vooijs,1996)。他の研究者が、MM−関連抗原が腫瘍に対して特異性を有しないことを報告した(Couturier,1999)。
【0051】
ある成分から「本質的に成る」抗体は、本発明の状況では、該抗体が、特定の成分と、抗体の基本的特徴に実質的に影響を与えない任意の追加的な物質及び成分のいずれかから成ることを意味する。
本発明において使用される用語「腫瘍細胞」は、固形腫瘍の一部を形成してもしなくてもよい癌細胞及び前癌性細胞を含む。
本発明に係る「標的剤」は、標的細胞により発現される分子に結合することができ、ペプチド及び非ペプチドを含む。具体的には、本発明に係る標的剤としては、標的抗体、及び非免疫グロブリン標的分子が挙げられる。これらの分子は、AFFILIN(登録商標)分子、ANTICALINS(登録商標)、及びAFFIBODIES(登録商標)などの非免疫グロブリンタンパク質に基づいたものであってもよいが、非免疫グロブリンタンパク質はこれらに限定されない。非免疫グロブリン標的分子はまた、標的DNA及びRNAオリゴヌクレオチド(アプタマー)等の非ペプチド標的分子も含むが、生理学的リガンド、特にCD138等の、対象とする抗原のリガンドも含む。
【0052】
本発明に係る「標的抗体」は、天然の抗体であるか、天然の抗体に基づく抗体であるか、合成的或いは遺伝子工学的に産生され、対象細胞(1及び複数のいずれか)(標的細胞(1及び複数のいずれか))上の抗原に結合する。本発明に係る標的抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片が挙げられる。標的抗体は、例えば、その標的細胞に対する親和性を改善する(Ross,2003)、或いはその免疫原性を低下させるように改変してもよい。標的抗体は、エフェクタ分子を含むリポソーム製剤に結合することができる(Carter,2003)。抗体断片は、インタクトな抗体の一部、好ましくはインタクトな抗体の抗原結合領域及び可変領域のいずれかを含む。本発明に係る抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片が挙げられるが、二重特異性抗体;ドメイン抗体(dAb)(Ward,1989;米国特許第6,005,079号明細書);線状抗体;単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成される多重特異性抗体も含む。単鎖可変断片抗体(scFv)では、重鎖及び軽鎖(VH及びVL)は、例えば、配列(グリシンセリン)を有する短いアミノ酸リンカーにより結合することができ、このリンカーは、2つのドメインが機能的抗原結合ポケットを構築することを可能にするのに十分な柔軟性を有する。種々のシグナル配列の付加により、標的抗体のより正確なターゲティングが可能になる場合がある。軽鎖定常領域(CL)の付加により、ジスルフィド結合を介した二量体化が可能になる場合があり、これによって安定性及び結合力が増す。scFvを構築するための可変領域は、対象とする標的に対するmAbが利用可能である場合、親ハイブリドーマから抽出されたmRNAの可変領域をクローン化するRT−PCRにより得ることができる。或いは、scFvは、ファージディスプレイ技術により新たに作製することができる(Smith,2001)。本明細書で使用する用語「機能的断片」は、標的抗体について用いられる場合、該標的抗体の一部分であって、該抗体が特異的に結合する抗原に特異的に結合することができる一部分を意味することを意図する。本発明の二重特異性抗体は、例えば、標的組織に対して反応性を有する少なくとも1本の腕と、リンカー部分に対して反応性を有する1本の腕を有することができる(米国特許出願公開第2002/0006379号明細書)。本発明の二重特異性抗体はまた、標的細胞上の2種以上の抗原に結合することができる(Carter,2003)。本発明の抗体は、例えば、チオール基を導入するために、システイン残基を導入することにより修飾してもよい(Olafsen,2004)。
【0053】
本発明に従って、標的抗体はいずれの源に由来してもよく、ラクダ抗体、マウス抗体、キメラヒト/マウス抗体、及びキメラヒト/サル抗体、特にnBT062のようなキメラヒト/マウス抗体のいずれであってもよいが、これらに限定されない。
【0054】
ヒト化抗体は、ヒト抗体及び非ヒト抗体に由来する配列を含む抗体であり、これもまた本発明の範囲内である。抗体をヒト化するのに好適な方法としては、CDRグラフティング(相補性決定領域グラフティング)(欧州特許第0 239 400号明細書;国際公開第91/09967号;米国特許第5,530,101号明細書;及び米国特許第5,585,089号明細書)、ベニアリング(veneering)及び再表面化(resurfacing)(欧州特許第0 592 106号明細書;欧州特許第0 519 596号明細書;Padlan,199;Studnicka et al.,1994;Roguska et al.,1994)、鎖シャフリング(米国特許第5,565,332号明細書)のいずれか、並びにDeImmunosation(商標)(Biovation,LTD)が挙げられる。CDRグラフティングでは、例えば、mAb B−B4由来のマウス相補性決定領域(CDR)を、ヒト可変フレームワークにグラフトし、次いでこれをヒト定常領域に結合させて、ヒトB−B4抗体(hB−B4)を作り出す。MYLOTARG(Sievers et al.,2001)、及びHECEPTIN(Pegram et al,1998)を含む、CDRグラフティングによりヒト化された幾つかの抗体が、現在臨床使用されている。
【0055】
再表面化技術は、分子モデリング、統計解析、及び突然変異誘発の組み合わせを用いて、標的とするホストの既知の抗体の表面に類似するように、抗体可変領域の非CDR表面を変化させる。抗体を再表面化するためのストラテジー及び方法、並びに異なるホスト内で抗体の免疫原性を低下させるための他の方法は、例えば、米国特許第5,639,641号明細書に開示されている。ヒト抗体は、ファージディスプレイ法を含む、当該技術分野において既知である種々の方法により作製することができる。また、米国特許第4,444,887号、同第4,716,111号明細書、同第5,545,806号明細書、及び同第5,814,318号明細書;並びに国際公開第98/46645号、同第98/50433号、同第98/24893号、同第98/16654号、同第96/34096号、同第96/33735号、及び同第91/10741号を参照。
【0056】
キメラヒト/マウス抗体或いはキメラヒト/サル抗体など、何らかの非天然修飾が施されている標的抗体、例えば、その標的細胞に対する親和性を改善する、或いはその免疫原性を低下させるよう改変されたヒト化抗体(1及び複数のいずれか)、また抗体断片、特に何らかの非天然修飾が施されている該標的抗体の機能的断片、ダイアボディ、ドメイン抗体、線状抗体、単鎖抗体分子、及び多重特異性抗体を、本明細書においては、改変された標的抗体と称する。
【0057】
キメラ抗体は、その基となる非ヒト抗体、例えばマウス抗体の抗体結合領域(ABR及びFab領域のいずれか)を保持しているが、定常領域は、例えばヒト抗体のものであってもよい。一般に、抗体のキメラ化及び抗体の定常領域の交換の少なくともいずれかは、抗原結合に寄与する抗体の領域がこの交換により影響を受けないため、抗体の親和性に影響を与えない。本発明の好ましい実施形態では、改変された、特にキメラ化された本発明の抗体は、その基となるそれぞれの非ヒト抗体よりも高い結合親和性(K値により表される)を有することができる。特に、マウスB−B4に基づくnBT062抗体(1及び複数のいずれか)は、マウスB−B4よりも高い抗体親和性を有することができる。本発明の他の好ましい実施形態においては、改変された/キメラ化された抗体を含む免疫複合体もまた、このような高い抗体親和性を示す。これらの免疫複合体はまた、ある実施形態では、そのB−B4を含む相当物より腫瘍の減少量が多い等の、更なる有利な特性を示す場合がある。好ましい実施形態においては、改変された、特にキメラ化された標的抗体は、1.6未満、1.5未満、約1.4或いは1.4未満の解離定数K(nM)によって特徴付けられる結合親和性を示し、一方そのマウス相当物は、約1.6及び1.6超のいずれか解離定数K(nM)によって特徴付けられる。2.6未満、2.5未満、2.4未満、2.3未満、2.2未満、2.1未満、2.0未満、1.9未満、及び約1.9のいずれかの解離定数K(nM)によって特徴付けられる、標的抗体のような標的剤を含む免疫複合体が好ましいが、マウスの相当物抗体を含む免疫複合体は、約2.6、及び2.6超のいずれかの解離定数K(nM)によって特徴付けられる(表3、材料及び方法と比較)。
【0058】
完全ヒト抗体を用いてもよい。これらの抗体は、ファージディスプレイアプローチにより選択することができ、この場合CD138及びその抗原決定基のいずれかが用いられて、例えばB−B4可変領域を発現しているファージに選択的に結合する(Krebs,2001を参照)。このアプローチを、親和性成熟技術と組み合わせることは有利であり、これにより抗体の親和性が向上する。本明細書で抗体と称されるものは全て、単離された抗体である。
【0059】
1つの実施形態では、標的抗体は、コンジュゲートされていない形態であり、中程度に内在化される、或いは内在化が不十分である。中程度の内在化は、37℃で3時間インキュベートした後の抗体の内在化の約30%〜約75%に相当し、不十分な内在化は、約0.01%〜約30%に相当する。他の好ましい実施形態では、標的抗体は、CD138、例えば、抗体B−B4、BC/B−B4、B−B2、DL−101、1 D4、MI15、1.BB.210、2Q1484、5F7、104−9、281−2、特にB−B4に結合する。ハイブリドーマ細胞(SP02/0骨髄腫細胞をBalb/cマウスの脾臓細胞とハイブリダイズさせることにより作製した)は、2007年12月11日に、DSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(Mascheroder Weg 1,D−38124 Braunschweig)に寄託されている。これらのB−B4発現ハイブリドーマ細胞の識別番号は、DSM ACC2874である。別の実施形態では、標的抗体は、細胞表面に発現していないCD138に実質的に結合しない。本発明の状況では、「nBT062標的抗体」のように、特定の抗体の名称を用語「標的抗体」と組み合わせたとき、これは、この標的抗体が抗体nBT062の結合特異性を有することを意味する。標的抗体が、特定の抗体に「基づく」と言われる場合、これは、この標的抗体がこの抗体の結合特異性を有するが、標的抗体の上記記載に一致するいずれの形態をとってもよいことを意味する。本発明の状況では、「CD138標的抗体」のように、特定の抗原の名称を用語「標的抗体」と組み合わせたとき、これは、この標的抗体がCD138に対する結合特異性を有することを意味する。本発明の状況では、標的抗体が、「細胞表面で発現するCD138を選択的に標的とする」のように、「選択的に」何かをする、或いは何かに対して「選択的」であると言うとき、これは、与えられた例の場合、他のいずれかの抗原と比べて、細胞表面に発現するCD138に対して有意な選択性が存在する(即ち、CD138陰性細胞に比べて、CD138陽性細胞に対する親和性が高い)ことを意味する。所定の環境における有害な副作用は、この選択性によって実質的に低減されるか、或いは回避されることさえもある。
【0060】
本発明に係る「非免疫グロブリン標的分子」は、非免疫グロブリンタンパク質、及び非ペプチド性標的分子に由来する標的分子を含む。この定義に含まれる小さな非免疫グロブリンタンパク質は、特に表面に発現するCD138に対して特異的親和性を有するよう設計される。これらの小さな非免疫グロブリンタンパク質としては、10kDa〜20kDa等の比較的低分子量のAffilin(登録商標)分子等の、スカフォールドに基づく改変された分子を含む。適切なスカフォールドとしては、例えば、ガンマクリスタリンが挙げられる。これらの分子は、天然の状態では、標的分子に対する非特異的結合活性を有する。溶媒に曝露されたアミノ酸の局所的に定義されたランダム化を通して、タンパク質表面を改変することにより、全く新しい結合部位が作り出される。前者の非結合タンパク質は、それによって特異的結合タンパク質に変換される。このような分子は、CD138等の標的に結合し、1種以上のエフェクタ分子の特異的送達を可能にするよう、特別に設計することができる(www.scilproteins.comにおけるscil Proteins GmbH,2004を参照)。別の種類の非免疫グロブリン標的分子は、リポカリンに由来し、例えば、若干免疫グロブリンの構造に類似している、ANTICALINS(登録商標)が挙げられる。しかしながら、リポカリンは、160〜180アミノ酸残基を有する単一ポリペプチドから構成されている。リポカリンの結合ポケットは、高親和性及び特異性により対象分子を認識するよう再形成することができる(例えば、Beste et al.,1999を参照)。商標Affibody(登録商標)(Affibody AB)として市販されているもの等の、人工細菌受容体もまた、本発明の範囲内である。これらの人工細菌受容体は、小さく単純なタンパク質であり、プロテインAのIgG結合ドメインのうち1つのスカフォールドに基づいた、3つのヘリックスバンドルから構成されていてもよい(Staphylococcus aureus)。これらの分子は、多くの免疫グロブリンに類似の結合特性を有するが、実質的に小さく(10kDaを超えない分子量を有することが多い)、また比較的安定である。好適な人工細胞受容体分子は、例えば、米国特許第5,831,012号明細書、同第6,534,628号明細書、及び同第6,740,734号明細書に記載されている。
【0061】
本発明に係る「エフェクタ分子」は、標的剤、特に標的抗体及び改変された標的抗体の少なくともいずれかに結合し、例えば、標的細胞(1及び複数のいずれか)にアポトーシス、別の種類のいずれかの細胞死及び連続細胞周期停止のいずれか等の所望の効果を及ぼす分子及び誘導体のいずれか、並びにその類似体のいずれかである。本発明に係るエフェクタ分子は、標的細胞に所望の効果を及ぼすことができる分子を含み、毒素、薬物、特に低分子量細胞傷害性薬物、放射性核種、生物反応調節剤、ポア形成剤、リボヌクレアーゼ、アポトーシス誘導活性を有するアポトーシス性シグナル伝達カスケードのタンパク質、細胞傷害性酵素、プロドラッグ活性化酵素、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗体及びサイトカインのいずれか、並びにその機能的誘導体と、類似体/断片との少なくともいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。毒素は、ジフテリア毒素及び外毒素Aのいずれか等であるがこれらに限定されない細菌毒素、リシン等であるがこれらに限定されない植物毒素を含んでいてもよい。アポトーシス誘導活性を有するアポトーシス性シグナル伝達カスケードのタンパク質としては、グランザイムB、グランザイムA、カスパーゼ−3、カスパーゼ−7、カスパーゼ−8、カスパーゼ−9、切頭型Bid(tBid)、Bax、及びBakが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
好ましい実施形態では、エフェクタは、特に免疫複合体の標的抗体の基となる抗体の天然型の内在化能が不十分であるとき、免疫複合体の内部エフェクタ送達を増加させる。別の好ましい実施形態では、エフェクタは、その天然型では非選択的である。ある実施形態では、エフェクタは、天然型であるとき、全身毒性を含む、高い非選択的毒性を有する。本発明のエフェクタ分子の「天然型」は、標的剤に結合して、免疫複合体を形成する前のエフェクタ分子である。別の好ましい実施形態では、エフェクタ分子の非選択的毒性は、標的剤に複合体化すると実質的になくなる。別の好ましい実施形態では、エフェクタ分子は、標的細胞に到達したとき、標的細胞において死及び連続細胞周期停止のいずれかを引き起こす。本発明に係る薬物−エフェクタ分子としては、例えば、マイタンシノイド、ドラスタチン、アウリスタチン、及びクリトフィシン等のチューブリン重合の阻害剤として作用する、高い細胞傷害性を有する小さい薬物;CC−1065類似体及び誘導体のいずれか、及びデュオカルマイシン等のDNAアルキル化剤(米国特許第5,475,092号明細書;同第5,585,499号明細書;同第6,716,821号明細書);カリチアマイシン及びエスペラミシン等のエイジイン抗生物質;並びに強力なタキソイド(タキサン)薬物(Payne,2003)、を含む薬物が挙げられるが、これらに限定されない。マイタンシノイド及びカリチアマイシンが特に好ましい。エフェクタマイタンシノイドとしては、合成マイタンシノール、並びにマイタンシノール類似体及び誘導体が挙げられるが、これらに限定されない、任意の起源のマイタンシノイドが挙げられる。ドキソルビシン、ダウノマイシン、メトトレキサート、ビンブラスチン、ネオカルチノスタチン、マクロマイシン、トレニモン、及びα−アマニチンは、本発明の範囲内の幾つかの他のエフェクタ分子である。また、エフェクタ分子としてのアンチセンスDNA分子も本発明の範囲内である。例えば、特定の薬物及び薬物のクラスのいずれかの名称を、本明細書で用語「エフェクタ」及び「エフェクタ分子」のいずれかと組み合わせるとき、その特定の薬物及び薬物のクラスのいずれかに基づく本発明に係る免疫複合体のエフェクタに言及する。
【0063】
マイタンシンは、元々エチオピアの灌木であるMaytenus serrataに由来する天然物である(Remillard,1975;米国特許第3,896,111号明細書)。この薬物は、チューブリン重合を阻害し、その結果有糸分裂の遮断、及び細胞死が生じる(Remillard,1975;Bhattacharyya,1977;Kupchan,1978)。マイタンシンの細胞傷害性は、ビンカアルカノイド及びタキソールのいずれか等の、チューブリン重合に影響を与える、臨床的に用いられている抗癌剤より200〜1000倍高い。しかしながら、マイタンシンの臨床試験により、その高い全身毒性のために治療域を欠くことが示された。マイタンシン及びマイタンシノイドは、細胞傷害性は高いが、それを癌治療において臨床的に使用することは、主に腫瘍に対する選択性が不十分であることに起因する、重篤な全身性副作用により非常に限定されている。マイタンシンを用いた臨床試験は、中枢神経系及び消化器系に重大な副作用を示した。
【0064】
マイタンシノイドは、Trewia nudifloraの種子組織を含む、他の植物からも単離されている(米国特許第4,418,064号明細書)。
【0065】
ある微生物もまた、マイタンシノール、及びC−3マイタンシノールエステルのような、マイタンシノイドを産生する(米国特許第4,151,042号明細書)。
【0066】
本発明は、例えば、米国特許第4,137,230号明細書;同第4,248,870号明細書;同第4,256,746号明細書;同第4,260,608号明細書;同第4,265,814号明細書;同第4,294,757号明細書;同第4,307,016号明細書;同第4,308,268号明細書;同第4,308,269号明細書;同第4,309,428号明細書;同第4,313,946号明細書;同第4,315,929号明細書;同第4,317,821号明細書;同第4,322,348号明細書;同第4,331,598号明細書;同第4,361,650号明細書;同第4,362,663号明細書;同第4,364,866号明細書;同第4,371,533号明細書;同第4,424,219号明細書、及び同第4,151,042号明細書に開示されている、合成マイタンシノール及びマイタンシノール類似体を含む、任意の起源のマイタンシノイドに関する。
【0067】
好ましい実施形態では、マイタンシノイドは、チオールを含有するマイタンシノイドであり、より好ましくは米国特許第6,333,410号明細書(Chariら)及びChari et al.(Chari,1992)のいずれかに開示されているプロセスに従って製造される。
【0068】
DM−1(N−デアセチル−N−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−マイタンシン)は、本発明の状況において好ましいエフェクタ分子である。DM1は、マイタンシンの3倍〜10倍細胞傷害性が高く、腫瘍関連抗原に対するモノクローナル抗体へ、ジスルフィド結合(1及び複数のいずれか)を介して、結合することにより、プロドラックに変換されている。あるこれらの複合体(時に「腫瘍活性化プロドラッグ」(TAP)と呼ばれる)は、血液コンパートメントにおいて細胞傷害性ではない。その理由は、それらは標的細胞に結合して活性化され、内在化し、それにより薬物を放出するためである(Blaettler,2001)。幾つかの抗体−DM1複合体が開発されており(Payne,2003)、臨床試験で評価されている。例えば、結腸直腸癌患者のhuC242−DM1治療は、耐容性良好であり、検出可能な免疫反応を全く誘導せず、循環時間が長かった(Tolcher,2003)。
【0069】
マイタンシノイドN2’−デアセチル−N2’−(4−メルカプト−1−オキソペンチル)−マイタンシン(「DM3」とも呼ばれる)、及びN2’−デアセチル−N2’−(4−メチル−4−メルカプト−1−オキソペンチル)−マイタンシン(「DM4」とも呼ばれる)等であるが、これらに限定されない、他の特に好ましいマイタンシノイドは、立体障害のあるチオール結合を含む側鎖を含む。DM4の合成を図3及び図4に示し、本明細書の他の箇所に記載する。DM4は、そのαCにメチル基を有する点でDM1及びDM3とは異なる。これにより、DM4が、リンカー、具体的にはこれに限定されないがジスルフィド結合を含むリンガーを介して、nBT062のような標的剤に結合するとき、立体障害が生じる。立体障害のあるチオール基を有する広範なマイタンシノイド(1つ及び2つのいずれかの置換基、具体的には、DM4のメチル置換基のような、アルキル置換基を有する)が、2004年11月25日公開の米国特許出願公開第2004/0235840号明細書に開示されており、この全体を参照することにより本願に援用する。
【0070】
米国特許出願公開第2006/0233814号明細書で、Goldmahkerらにより報告されているように、いったん薬物がその標的で放出されると、このような障害は遊離薬物のアルキル化(例えば、メチル化)を誘導する。アルキル化は、薬物の安定性を増し、いわゆるバイスタンダー(bystander)効果を可能にすることができる。しかしながら、当業者が認識しているように、エフェクタがリンカーを介して標的剤に結合するとき、立体障害が生じる位置にアルキル基等の置換基を含む他のエフェクタ分子も、本発明の一部である。好ましくは、この障害は、遊離薬物のアルキル化等の化学修飾を誘導して、その全体の安定性を高め、これによって薬物が、CD138発現腫瘍細胞における細胞死及び連続細胞周期停止のいずれかを誘導するだけでなく、任意的に、例えば腫瘍、具体的には腫瘍間質及び腫瘍脈管構造の細胞を支持し或いは薬物から保護し、一般にCD138を発現しない補助細胞に影響を与え、その支持機能及び保護機能のいずれかを低下させるか、或いは失わせることも可能にする。
【0071】
DNAアルキル化剤はまた、エフェクタ分子として特に好ましく、CC−1065類似体及び誘導体のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。CC−1065は、Streptomyces zelensisの培養物から単離された強力な抗腫瘍抗生物質であり、インビトロで極めて細胞傷害性が高いことが示されている(米国特許第4,169,888号明細書)。例えば、米国特許第5,475,092号明細書、同第5,585,499号明細書、及び同第5,739,350号に記載されているCC−1065類似体及び誘導体のいずれかも、本発明の範囲内である。当業者であれば容易に理解されるように、米国特許第5,846,545号明細書に記載されているような修飾されたCC−1065類似体及び誘導体のいずれか、並びに例えば米国特許第6,756,397号明細書に記載されているようなCC−1065類似体及び誘導体のいずれかのプロドラッグも、本発明の範囲内である。本発明のある実施形態では、CC−1065類似体及び誘導体のいずれかは、例えば、米国特許第6,534,660号明細書に記載されているように合成することができる。
【0072】
好ましいエフェクタ分子を作製する化合物の別の群は、特に非常に強力で、チオール及びジスルフィド基のいずれかを含むタキサンである。タキサンは、チューブリンの脱重合を阻害する紡錘体毒であり、結果として微小管の組み立て及び細胞死の速度を上昇させる。本発明の範囲内であるタキサンは、例えば、米国特許第6,436,931号明細書、同第6,340,701号明細書、同第6,706,708号明細書、並びに米国特許出願公開第2004/0087649号明細書、同第2004/0024049号明細書、及び同第2003/0004210号明細書に開示されている。他のタキサンは、例えば、米国特許第6,002,023号明細書、米国特許第5,998,656号明細書、米国特許第5,892,063号明細書、米国特許第5,763,477号明細書、米国特許第5,705,508号明細書、米国特許第5,703,247号明細書、及び米国特許第5,367,086号明細書に開示されている。当業者であれば、米国特許第6,596,757号明細書に記載されているもの等の、PEG化タキサンもまた本発明の範囲内であることが理解されよう。
【0073】
本発明に係るカリチアマイシンエフェクタ分子としては、ガンマ1l、N−アセチルカリチアマイシン、及び他のカリチアマイシン誘導体が挙げられる。カリチアマイシンは、配列特異的な方式で、DNAの副溝に結合し、再編成され、フリーラジカルに曝されるため、二本鎖DNAの破壊を導き、細胞のアポトーシス及び細胞死をもたらす。本発明の状況で用いることができるカリチアマイシンエフェクタ分子の1例は、米国特許第5,053,394号明細書に記載されている。
【0074】
本発明に係る免疫複合体は、少なくとも1種の標的剤、具体的には、改変された標的抗体等の標的抗体と、1種のエフェクタ分子とを含む。免疫複合体は、例えば安定化のために更に分子を含んでいてもよい。免疫複合体について、用語「複合体」は、一般に、標的剤と1以上のエフェクタ分子との機能的結合を定義するために用いられ、機能的結合のいずれかの種類のみを指すことを意図せず、特に化学的「複合体化」に限定されるものではない。標的剤が標的部位に結合することができ、結合したエフェクタが、特に標的部位に送達されたときに、意図した通りに十分に機能する限り、どのような結合様式も好適である。本発明に係る複合体化法としては、エフェクタ分子、及び標的抗体の少なくともいずれかを予め修飾して、或いは修飾せずに、標的抗体にエフェクタ分子を直接結合させること、及びリンカーを介して結合させることのいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。リンカーは、例えば、酸に不安定なリンカー、感光性リンカー、ペプチダーゼにより切断できるリンカー等の酵素で切断可能なリンカーに、機能的に分類することができる。切断可能なリンカーが、本発明の多くの実施形態で好ましい。このような切断可能なリンカーは、細胞環境、特に細胞内環境に存在し、切断時に放出される薬物に対して有害な作用を有しない条件下で切断され得る。リンカーが細胞内のある部分に存在するとき、pH4〜5のような低pHによって、酸に不安定なリンカーが切断され、一方感光性リンカーは、例えば赤外光により切断され得る。しかしながら、大部分の細胞内に存在する生理学的条件により/生理学的条件下で切断されるリンカーが好ましく、本明細書では生理学的に切断可能なリンカーと称する。従って、ジスルフィドリンカーが、本発明の多くの実施形態で好ましい。これらのリンカーは、ジスルフィド交換を通して切断可能であり、これは生理学的条件下で生じ得る。好ましいヘテロ二官能性ジスルフィドリンカーとしては、N−スクシニミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)(例えば、Carlsson et al.(1978)を参照)、N−スクシニミジル4−(2−ピリジルジチオ)ブタノエート(SPDB)(例えば、米国特許第4,563,304号明細書を参照)、N−スクシニミジル4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP)(例えば、CAS登録番号341498−08−6)、N−スクシニミジル4−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)(例えば、Yoshitake et al.,(1979)を参照)、及びN−スクシニミジル4−メチル−4−[2−(5−ニトロ−ピリジル)−ジチオ]ペンタノエート(SMNP)(例えば、米国特許第4,563,304号明細書を参照)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物で使用するのに最も好ましいリンカー分子は、SPP、SMCC、及びSPDBである。
【0075】
他の好適なリンカーとしては、スルホスクシニミジルマレイミドメチルシクロヘキサンカルボキシレート(SMCC)(これは化合物をSH−含有化合物と結合することができるヘテロ二官能性リンカーである)等であるが、これらに限定されない「切断不可能な」結合を含んでいてもよい。S−(2−チオピリジル)−L−システインヒドラジド(TPCH)等の、炭水化物指向性ヘテロ二官能性リンカー分子等の、二官能性及びヘテロ二官能性リンカー分子もまた、本発明の範囲内である(Vogel,2004)。マイタンシノイドのようなエフェクタ分子は、2段階反応プロセスを介して標的抗体と複合体化することができ、第1の工程として、N−スクシニミジルピリジルジチオプロピオネート(SPDP)のような架橋試薬によって、標的抗体を修飾して、標的抗体にジチオピリジル基を導入する工程を含む。第2の工程では、DM1のような、チオール基を有する反応性マイタンシノイドを、修飾された抗体に添加して、修飾された抗体におけるチオピリジル基の置換、及びジスルフィド結合した細胞傷害性マイタンシノイド/抗体複合体の産生を生じさせる(米国特許第5,208,020号明細書)。しかしながら、米国特許出願公開第20030055226号明細書(Chariら)に開示されているもののような1段階複合体化プロセスもまた、本発明の範囲内である。本発明の1つの実施形態では、同一種類及び異なる種類のいずれかの複数のエフェクタ分子が、標的抗体に結合する。
【0076】
CC−1065類似体及び誘導体のいずれかは、例えば、米国特許第6,716,821号明細書に記載されているようなPEG結合基を介して、標的剤と複合体化することができる。カリチアマイシンは、リンカー(米国特許第5,877,296号明細書、及び米国特許第5,773,001号明細書)を介して、或いは米国特許第5,712,374号、及び米国特許第5,714,586号明細書に開示されている複合体化方法に従って、標的抗体と複合体化することができる。カリチアマイシン複合体を調製するための別の好ましい方法は、米国特許出願公開第20040082764号明細書に開示されている。本発明の免疫複合体は、組み換え融合タンパク質の形態をとってもよい。
【0077】
用語配列同一性は、ヌクレオチド配列、及びアミノ酸配列のいずれかの同一性の程度を指す。一般に、最も高い水準の一致が得られるように、配列を整列させる。「同一性」は、それ自体、当該技術分野で認識されている意味を有し、公開されている技術を用いて判定することができる(例えば、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;及びSequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991を参照)。2つのポリヌクレオチド及びポリペプチド配列のいずれかの間の同一性を測定するための、多くの方法が存在するが、用語「同一性」は当業者に周知である(Carillo,H.&Lipton,D.,SIAM J Applied Math 48:1073(1988))。
【0078】
特定の核酸分子のいずれかが、例えば、nBT062核酸配列、及びその一部のいずれかに対して、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、及び99%のいずれか同一であるがどうかは、従来法で、初期配列整列用のDNAsisソフトウェア(Hitachi Software,San Bruno,Calif.)、続いて複数の配列整列用のESEEバージョン3.0 DNA/タンパク質配列ソフトウェア(cabot@trog.mbb.sfu.ca)等の、既知のコンピュータプログラムを用いて決定することができる。
【0079】
アミノ酸配列が、例えば配列番号1で表されるアミノ酸配列及び配列番号2で表されるアミノ酸配列のいずれか、並びにその一部のいずれかに対して、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、及び99%のいずれか同一であるかどうかは、従来法で、BESTFITプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix(登録商標),Genetics Computer Group,University Research Park,575 Science Drive,Madison,Wis.53711)等の、既知のコンピュータプログラムを用いて決定することができる。BESTFITは、Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics 2:482−489 (1981)のローカルホモロジーアルゴリズムを用いて、2つの配列間で最良の相同セグメントを見つける。
【0080】
DNAsis、ESEE、BESTFIT、及び他の配列整列プログラムのいずれかを用いて、特定の配列が、例えば、本発明に係る参照配列に対して95%同一であるかどうかを決定するとき、同一性の割合が参照核酸及びアミノ酸配列のいずれかの完全長に対して計算され、相同性において、参照配列中のヌクレオチドの合計数の最大5%のギャップが許容されるように、パラメータを設定する。
【0081】
本発明の状況において、特定の配列の残基の組み合わせと共に、ある配列同一性について言及する場合、この配列同一性は特定された全ての残基の合計に関連する。
【0082】
基本的な抗体分子は、可変領域が抗原に結合し、一方残りの定常領域が抗原非依存性反応を誘発することができる、二機能性構造である。抗体の主なクラスである、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMは、定常領域により決定される。これらのクラスは、サブクラス(アイソタイプ)に更に分類することができる。例えば、IgGクラスは、定常領域により決定される、4つのアイソタイプ、即ちIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を有する。種々のヒト抗体のクラスのうち、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、及びIgMのみが、補体系を有効に活性化することが知られている。定常領域は、抗原結合部位を形成しないが、定常領域、及びヒンジ領域の配置は、分子に、それが抗原と結合することを可能にする、セグメンタルフレキシビリティ(segmental flexibility)を付与することができる。
【0083】
様々なIgGアイソタイプが、単球、B細胞、及びNK細胞のような細胞上のFc受容体に結合し、それにより細胞を活性化して、サイトカインを放出させることができる。様々なアイソタイプはまた、補体を活性化して、局所及び全身炎症のいずれかを引き起こす恐れがある。具体的には、様々なIgGアイソタイプが、FcγRに、様々な程度結合することができる。FcγRは、Igスーパーファミリーに属する表面糖タンパク質の群であり、大部分は白血球上で発現する。FcγR糖タンパク質は、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、及びFcγRIII(CD16)と名付けられた3つのクラスに分類される。IgG1、IgG2、及びIgG3は、様々なこれらのクラスのFcγR糖タンパク質に強く結合するが、IgG4は非常に弱い結合を示す。具体的には、IgG4は、FcγRIの中間結合剤であり、これは比較的低いADCC(抗体依存性細胞傷害)を生じさせるか、或いは全くADCCを生じさせず、FcγRIIIA及びFcγRIIAのいずれにも結合しない。IgG4はまた、阻害性受容体であるFcγRIIBの弱い結合剤でもある。更に、IgG4は、補体結合を僅かにしか媒介しないか、或いは全く媒介せず、補体依存性細胞傷害(CDC)を僅かにしか媒介しないか、或いは全く媒介しない。本発明の状況では、IgG4がLSEC(肝類洞内皮細胞)上のFcRγIIと全く相互作用を示さず、クッパー細胞(マクロファージ)上のFcRγI−IIIと全く相互作用を示さない、及び弱い相互作用しか示さない、のいずれかであり、肝NK細胞上のFcRγIIIと全く相互作用を示さないとき、IgG4を特異的に使用して、肝臓のFcRのFc媒介性標的を防ぐことができる。いずれかのCDCを更に減少させる特定の突然変異もまた、本発明の一部である。例えば、位置327、330、及び331におけるIgG4残基は、ADCC(抗体依存性細胞傷害)、及びCDCを減少させることが示されている(Amour,1999;Shields,2001)。抗体を安定化する突然変異の中の1つもまた、本発明の一部である(本明細書では、「安定化突然変異」とも称される)。これらの突然変異は、具体的には、IgG4のCH2領域におけるロイシンからグルタミン酸への突然変異、及びIgG4のヒンジコアにおけるセリンからプロリンへの交換を含む。これらの突然変異は、本発明のある実施形態では、半分子(half−molecule)の量を、10%未満、5%未満、好ましくは2%及び1%未満のいずれかに減少させる。更に、このように安定化した抗体のインビボ半減期は、1、2、3、4、及び5日超のいずれかを含む、数日間増加する場合がある(Schuurman,1999)。
【0084】
本明細書に開示する標的抗体、具体的には改変された標的抗体を含む標的剤はまた、抗原、具体的にはCD138に対するその結合親和性の観点で説明或いは特定することができる。標的抗体、具体的には改変された標的抗体等の標的剤の好ましい結合親和性は、1.6未満、1.5未満、並びに約1.4及びそれ未満のいずれかの解離定数K(nM)を特徴とする。標的抗体等の標的剤を含む免疫複合体では、1.6未満、1.5未満、或いは2.5未満、2.4未満、2.3未満、2.2未満、2.1未満、2.0未満、1.9未満、及び約1.9のいずれかの解離定数K(nM)が好ましい。
【0085】
本発明に係る抗原結合領域(ABR)は、使用される標的抗体及び改変された標的抗体のいずれかの種類に基づいて変化する。天然に存在する抗体、並びに大部分のキメラ及びヒト化抗体では、抗原結合領域は、軽鎖、及び重鎖の最初の2つのドメインで構成される。しかしながら、軽鎖を有しない重鎖抗体では、抗原結合領域は、例えば重鎖の最初の2つのドメインのみで構成され、一方単鎖抗体(ScFv)(抗体分子の軽鎖及び重鎖可変ドメインを1つのポリペプチド鎖に結合させた)では、ABRは、1つのポリペプチド分子のみによって提供される。FAB断片は、通常、パパイン消化により得られ、1本の軽鎖及び重鎖の一部を有し、よって抗原結合部位を1つだけ有するABRを含む。他方、二重特異性抗体は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗原断片である。しかしながら、本発明の状況では、標的抗体及び改変された標的抗体のいずれかの抗原結合領域は、標的抗体及び改変された標的抗体のいずれかの結合親和性を主に決定するいずれかの領域である。
【0086】
ABR及び別の標的抗体領域のいずれかが「ある抗体のもの」である、例えばヒト抗体及び非ヒト抗体のいずれかのものであると言う場合、これは、本発明の状況では、ABRが対応する天然に存在するABRと同一である、及びそれに基づいている、のいずれかであることを意味する。ABRは、天然に存在するABRの結合特異性を有するとき、天然に存在するABRに基づく。しかしながら、このようなABRは、例えば、点変異、付加、欠失、及びグリコシル化のいずれかのような翻訳後修飾を含んでいてもよい。このようなABRは、具体的には、天然に存在するABRの配列と、70%超、80%超、90%超、好ましくは95%超、98%超、及び99%超のいずれかの配列同一性を有してもよい。
【0087】
標的抗体などの標的剤の、特にそれを含む免疫複合体の均一なターゲティングは、本発明の状況では、標的剤による前記標的の所望の結果を得ることに関連する分散の尺度である。本発明のある実施形態では、所望の結果は、標的への単純な結合により得られる。これは、例えば、ある標的剤がその後の結合を遮断する実施形態の場合である。しかしながら、標的剤の均一性は、例えば、前記標的剤を含む免疫複合体の有効性を介して、容易に評価することができる。例えば、腫瘍細胞の破壊、及び腫瘍の増殖停止の少なくともいずれかに関するエフェクタを含む、CD138のような腫瘍抗原に対する前記免疫複合体の有効性は、CD138抗原を発現している細胞を含む腫瘍の増殖抑制の程度により決定することができる。該免疫複合体は、その有効性が大きく変動する場合がある。例えば、その免疫複合体は時に、高い有効性によって腫瘍増殖を停止することができるが、他の時には、対照の効力を殆ど上回らない有効性しか有しない。他方、免疫複合体の有効性における変動が少ないことは、免疫複合体及び標的剤の少なくともいずれかが、それぞれ、一貫して所望の結果を提供することを示す。ターゲティングの均一性を定量化する1つの方法は、ターゲティング変動を計算することである。ある標的剤を含む免疫複合体により腫瘍増殖が停止される状況では、ターゲティング変動は、先ず腫瘍が、所定の体積、例えば300mmに達する時間を決定することにより計算できる。好ましくは、所定の体積は、前記所定の体積に達する前、及び達した後の任意の腫瘍増殖が、ほぼ同一速度で着実に増加するように選択される。このような時間を被験体の群について決定した後、被験体(例えば、SCIDマウス、及び均一な腫瘍増殖を示す別の好適なモデルのいずれか)の群におけるこれらの時間の平均(T)を計算する。次いで、以下の式に従って、所定の体積についてのターゲティング変動を計算することにより、ターゲティング効率が最低であり、よって前記所定の体積に達するのに必要な時間が最も短い(T)腫瘍に関連する群の被験体と、他方、ターゲティング効率が最高であり、よって前記所定の体積に達するのに必要な時間が最も長い(T)腫瘍に関連する群の被験体とにおいて得られた知見とTを相互に関連づける。
ターゲティング変動[%]=T−T/T×100
【0088】
好ましい実施形態では、本発明の改変された標的抗体のターゲティング変動は、150%未満、140%未満、130%未満、120%未満、110%未満、100%未満、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、及び50%未満のいずれかであり、ある実施形態では、45%未満でさえある。好ましくは、ターゲティング変動は、約10%〜約150%であり、好ましくは約10%〜約100%、約10%〜約80%、約10%〜約70%、約10%〜約60%、約10%〜約50%である。
【0089】
標的の均一性(本明細書では特定の抗原に対する結合性の均一性とも称される)はまた、腫瘍増殖の遅延の測定のような他の手段により定量化することもできる。また、当業者は、特定の大きさの腫瘍体積が、基準のターゲティング変動を決定することができるただ1つのパラメータであることを、容易に理解する。所望の結果に応じて、時間(例えば、腫瘍増殖の遅延を測定するための)、及び結合の割合(%)のいずれかを含む他のパラメータを使用してもよい。当業者は、このような他のパラメータを容易に決定することができる。
【0090】
nBT062(図1を参照)は、B−B4のキメラ化バージョンである、マウスヒトキメラIgG4mAbである。このB−B4のキメラ化バージョンは、HAMA(ヒト抗マウス抗体)反応は低下するが、CD138に対するB−B4の抗体結合領域の機能性は維持するよう作製した。驚くべきことに、このキメラ抗体は、B−B4に対して改善された結合親和性を示すことが見出された。また驚くべきことに、キメラ抗体は、均一なターゲティングに関連し、この均一なターゲティングにより、該抗体及びそれを含む免疫複合体のいずれかを用いたときに得られる結果より分散が減少する。nBT062を産生するためのプロトコルを、以下に記す。nBT062を発現しているチャイニーズハムスター卵巣細胞は、2007年12月11日に、DSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH,Mascheroder Weg 1,D−38124 Braunschweigに寄託されている。識別番号は、DSM ACC2875である。B−B4に基づくCD138特異的キメラ抗体を、一般に、本明細書ではcB−B4と称する。
【0091】
重鎖及び軽鎖の両方のアミノ酸配列は、nBR062のヌクレオチド配列の翻訳から予測されている。重鎖及び軽鎖について予測されるアミノ酸配列を、表1に示す。予測される可変領域を太字で表し、予測されるCDRに下線を引く。
【0092】
表1は、nBT062の予測されるアミノ酸配列である。
【表1】

C末端のリジンは、クリッピングする傾向があり、ある程度不完全なクリッピングのために存在する場合があり、配列番号1で表されるアミノ酸配列の一部ではない。

【0093】
表2は、Krabat及びChothiaの一般的なCDRの定義と、BT062についての予測CDRとの比較を示す。
【表2】


【0094】
BT062は、細胞分裂停止性マイタンシノイド誘導体DM4に、リンカー、ここではSPDBを介して結合した、CD138標的キメラ抗体nBT062を含む、免疫複合体である。BT062の化学的表現を図1及び図2に提供する。nBT062及びマイタンシノイドエフェクタ分子を含む免疫複合体は、そのリンカー、及びマイタンシノイドエフェクタの観点で特徴付けられることが多く、例えばnBT062−SMCC−DM1は、nBT062、SMCC(チオエステル結合を含む「切断不可能な」リンカー)、及びエフェクタとしてDM1を含む免疫複合体である。より一般的に、nBT062及びエフェクタ分子を含む免疫複合体はまた、nBT062−リンカー−エフェクタ、及びただnBT062−エフェクタ(nBT062N)(Nは本明細書に記載するエフェクタのいずれかである)のいずれかとして記載することもある。
【0095】
本明細書では、切断可能なリンカー(CL)を介してエフェクタ分子に結合している、CD138に対する改変された標的抗体を含む免疫複合体の立体障害のない相当物(UI:立体障害のない免疫複合体)(本明細書では、UICLと記載する)について言及し、これを前記エフェクタ分子に対する立体障害があるが、切断可能なリンカーを含む免疫複合体(HICL)と対比させる。UICLは、改変された標的抗体を含むが、エフェクタ分子に対する立体障害のないHICLに相当する免疫複合体である。HICL/UICL対の例は、BT062及びnBT062−SPP−DM1である。切断不可能なリンカーを含むこのような免疫複合体の立体障害のない相当物(UINCL)は、エフェクタ分子の立体障害がなく、切断不可能なリンカーを含む、改変された標的抗体を含む同等の免疫複合体を指す。BT062では、nBT062−SMCC−DM1は、このような切断不可能なリンカーを含む立体障害のない相当物の例を構成する。
【0096】
免疫複合体の腫瘍の増殖を阻害する活性(=腫瘍増殖阻害活性)は、相対的な測定値である。腫瘍増殖阻害活性は、最高の性能の免疫複合体(この活性を100%として設定する)の活性に対する、複合体の腫瘍増殖阻害活性を表す。例えば、最高の性能の免疫複合体、例えば、BT062の活性(32日の腫瘍増殖の遅延(TGD)を引き起こす)を100%として設定した場合、例えば、18日の腫瘍増殖の遅延(TGD)を示す、nBT062−DM1の活性は、以下のように計算される。
腫瘍増殖阻害活性=100×(TGDnBT062−DM1/TGDBT062)、
より一般的には、
腫瘍増殖阻害活性=100×(TGDサンプル/TGDリファレンス)。
【0097】
表3は、図11Bに示した結果から好適な例を提供する。
【表3】

表3:450μg/kgの用量を投与された処理群に基づく、SCIDマウスのMOLP−8腫瘍異種移植片に対する、nBT062−DMxの腫瘍増殖の遅延(TGD)及び活性(%)
)処理群が所定の大きさ(160mm)に達する平均時間(日)から、対照群がこの所定の大きさに達する平均時間を引いたときの、腫瘍増殖遅延(TGD)(日)
**)腫瘍増殖阻害活性=100×(TGDサンプル/TGDBT062)。BT062の活性を100%であると定義する。
【0098】
表2に提供した例では、BT062は、その立体障害のない相当物(nBT062−SPP−DM1)を60%上回る腫瘍増殖阻害活性、及び切断不可能なリンカーを含む、立体障害のない相当物の免疫複合体(nBT062−SMCC−DM1)を44%上回る腫瘍増殖阻害活性を提供する。
【0099】
免疫複合体における切断可能なリンカーは、いわゆるバイスタンダー効果を提供することが、既に報告されている。Goldmahkerら(米国特許出願公開第2006/0233814号明細書)はまた、標的剤から切断されて、エフェクタ分子が更なる修飾、具体的にはアルキル化を受けるとき、バイスタンダー効果が特に顕著であることも開示している。Goldmahkerらはまた、UICLが、それぞれのUINCLより良好なTGDを示すことを示し、この事実もまたバイスタンダー効果と称されるものに起因していた(例えば、米国特許出願公開第2006/0233814号明細書の図6を参照)。
ここで、驚くべきことに、高単回用量レジメン(250μg/kg)におけるUICLは、実際UINCLより良い結果を全く示さないことが見出された。要するに、このようなレジメンにおけるUICLで観察されたTGDの日数は、実際UINCLより短かった。この観察は、用量の増加につれて(450μg/kg)より顕著になった。即ち、単回投与実験において、予想以上に、HICLはUICLより優れていた。加えて、UINCLは、高用量において、予想外にUICLより優れていた。
【0100】
本明細書に開示する、標的剤、具体的には、標的抗体、及び免疫複合体の少なくともいずれかは、静脈内に、非経口的に、経口的に、筋肉内に、髄腔内に、及びエアゾールとしてのいずれかを含む、いずれの経路で投与してもよい。送達方式は、所望の効果に応じて決定される。当業者は、本発明に従って、特定の処理についての最良の投与経路を容易に知る。適切な用量は、投与経路、及び指示された処理に応じて決定され、現在の治療プロトコルを考慮して当業者が容易に決定することができる。
【0101】
活性成分として、本発明の複合体化していない標的剤、及び免疫複合体を含有する医薬組成物は、従来の医薬品調合技術に従って調製することができる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th Ed.(1985,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.)を参照。典型的には、有効量の活性成分を、薬学的に許容される担体と混合する。担体は、例えば、静脈内、経口、非経口、髄腔内、経皮、及びエアゾールのいずれかとして等、投与にとって望ましい製剤形態に応じて、広範な形態をとることができる。
【0102】
経口投与では、標的剤及び免疫複合体の少なくともいずれかを、カプセル、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤、溶解物(melt)、粉剤、懸濁液、及びエマルションのいずれか等の、固体製剤及び液体製剤のいずれかに配合することができる。経口剤形の組成物の調製では、経口液体製剤(例えば、懸濁液、エリキシル剤、及び溶液)の場合、例えば、水、グリコール、油、アルコール、着香剤、防腐剤、着色剤、懸濁剤等、或いは経口固体製剤(例えば、粉剤、カプセル、及び錠剤)の場合、デンプン、砂糖、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤等の、通常の医薬媒質のいずれを使用してもよい。投与が容易であるため、錠剤及びカプセルが最も有利な経口単位剤形を表し、この場合無論固体医薬担体が使用される。必要に応じて、錠剤は、標準的な技術により糖コーティングしてもよく、腸溶性コーティングを施してもよい。活性剤は、消化管を通過するために安定でなければならない。必要な場合、安定な通過に好適な薬剤を用いてもよく、文献に記載されているリン脂質及びレシチン誘導体のいずれか、並びにリポソーム、微粒子(ミクロスフィア及びマクロスフィアを含む)を含んでいてもよい。
【0103】
非経口投与では、標的剤及び免疫複合体の少なくともいずれかを、医薬担体に溶解させ、溶液及び懸濁液のいずれかとして投与してもよい。好適な担体の例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝溶液(PBS)、デキストロース溶液、フラクトース溶液、エタノール、並びに動物油、植物油、及び合成起源の油の少なくともいずれかである。担体はまた、他の成分、例えば、防腐剤、懸濁剤、可溶化剤、緩衝剤等を含有していてもよい。複合体化していない標的剤、及び免疫複合体の少なくともいずれかを、脳室内、及び髄腔内のいずれかに投与するとき、それらはまた脳脊髄液に溶解する場合もある。
【0104】
被験体に投与される用量は、被験体(ヒト及び非ヒト動物を含む)の表面積当たり、定められた量であってもよい。用量は、このような被験体に、好ましくは、約5mg/m〜約300mg/m(約20mg/m、約50mg/m、約100mg/m、約150mg/m、約200mg/m、及び約250mg/mを含む)であるが、これに限らない量投与することができる。標的剤/免疫複合体は、好適には、1回に、及び一連の処理の間のいずれかに投与される。複数回投与レジメンでは、これらの量を、1日1回、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、及び6週間に1回のいずれかの間隔で投与してもよい。単一高用量、及び互いの直後に、続いてより長い間隔で投与される複数回の低用量のいずれかを含む負荷用量が、本発明の好ましい実施形態を構成する。好ましい実施形態では、投薬のタイミングは、2回目の処理及び任意のその後の処理のいずれかの前に十分な時間が経過し、その結果前回の用量が実質的に代謝されているが、被験体の系に存在する免疫複合体の量が、依然として腫瘍の増殖の阻害、遅延、及び防止の少なくともいずれかを行うように、被験体に応じて調整される。代表的な「反復単回用量」レジメンは、3週間に1回、約200mg/mの免疫複合体の初期量を投与することを含む。或いは、高初期量に続いて、1週間に2回、約150μg/mの維持量を投与してもよい。しかしながら、他の投薬レジメンが有用である場合がある。この治療の進行は、既知の技術及びアッセイにより容易にモニタされる。用量は、それが予防目的のために投与されるか治療目的のために投与されるか、任意のそれ以前の治療の過程、患者の臨床歴、及び標的剤/免疫複合体に対する反応、並びに主治医の裁量に応じて、変更してもよい。
【0105】
本発明に従って、例としてnBT062及びBT062を用いて、MMを以下のように治療する。この例は、如何なる方法によっても本発明を限定することを意図するものではなく、当業者は、本発明の範囲内である他の免疫複合体及びnBT062に基づく系、及びMMのような疾患の治療に利用することができる他の治療レジメンを容易に決定することができる。
【0106】
血流が接近可能な細胞上における、患者のMM細胞上でのCD138の選択的発現、血流中におけるnBT062の特異性、及びBT062の安定性により、BT062はDM4の全身毒性を除去し、DM4エフェクタ分子(1及び複数のいずれか)の送達を標的とする機会を提供する。ある用量のnBT062の投与は、低発現CD138陽性非腫瘍細胞のBT062との結合、好ましくは破壊に対する、これらの細胞の保護に有利であり、一方本発明の免疫複合体は、エフェクタ分子が免疫複合体から放出され得る細胞部位に、エフェクタ分子を有効に投与するための手段を提供する。現在の化学療法が提供する寛解は時に不完全であるため、この標的とされる送達及び放出は、多発性骨髄腫の治療を著しく進歩させる。
【実施例】
【0107】
本発明は、以下の実施例を参照することにより更に説明されるが、実施例は例示目的のために提供され、如何なる方法によっても本発明を限定することを意図するものではない。当該技術分野において周知である標準的な技術、及び以下に明確に記載されている技術のいずれかが利用される。
【0108】
材料及び方法
キメラ抗体の構築(cB−B4:nBT062)
B−B4
既に特性評価されているマウス抗体B−B4(Wijdenes et al.,Br J Haematol.,94(1996),318)を、これらの実験で用いた。
【0109】
B−B4及びcB−B4/nBT062のクローニング及び発現
J.Sambrook;Molecular Cloning,A Laboratory Manual;2nd Ed.(1989),Cold Spring Harbor Laboratory Press,USAなどのテキストブックに詳述されているように、或いはキットを用いる場合は製造業者の取扱説明書により推奨されているように、標準的な組み換えDNA技術を実施した。マウス可変領域のPCR−クローニング及び修飾は、標準的なPCR法を用いて実施した。用いたプライマーはそれぞれの結果のセクションに示した。
【0110】
cB−B4/nBT062の発現
10%のFCS、580μg/mLのL−グルタミン、50ユニット/mLのペニシリン、及び50μg/mLのストレプトマイシンを添加したDMEM中で培養した、対数増殖期のCOS細胞を、トリプシン処理により回収し、遠心分離して、PBSで洗浄した。最終濃度が1×10細胞/mLになるように、細胞をPBSに再懸濁した。700μLのCOS細胞懸濁液を、Gene Pulserキュベットに移し、重鎖及びカッパ軽鎖発現ベクターDNA(それぞれ10μg、及び13μgのいずれかのSupervector)と混合した。Bio−Rad Gene Pulserを用いて、1900V、25μFで細胞を電気穿孔処理した。形質転換された細胞を、10%のガンマグロブリン遊離FBS、580μg/mLのL−グルタミン、50ユニット/mLのペニシリン、及び50μg/mLのストレプトマイシンを添加したDMEM中で72時間培養し、その後、抗体含有細胞培養上清を回収した。
【0111】
cB−B4/nBT062の発現レベルを測定するためのキャプチャーELISA
96ウェルプレートを、PBSで希釈した0.4μg/mLのヤギ抗ヒトIgG抗体の100μLのアリコートでコーティングした(4℃、一晩)。プレートを、200μL/ウェルの洗浄緩衝液(PBS+0.1%のTween−20)で3回洗浄した。ウェルを、0.2%BSA−PBS溶液、0.02%Tween−20−PBS溶液でブロッキングして、その後分泌された抗体を含有する200μLの細胞培養上清(37℃で1時間インキュベート)を添加した。ウェルを、洗浄バッファーで6回洗浄し、その後ヤギ抗ヒトカッパ軽鎖ペルオキシダ−ゼ複合体と結合した抗体を検出した。
【0112】
細胞培養上清からのcB−B4/nBT062の精製
製造業者の推奨に従って、Protein A ImmunoPure Plus kit(Pierce,Rockford,IL)を用いて、形質転換されたCOS7細胞の上清から、cB−B4抗体を精製した。
【0113】
cB−B4結合及び競合アッセイ
B−B4及びcB−B4のCD138への結合活性の分析を、Diaclone(Besancon,France)sCD138 kitを用いて、製造業者の推奨に従って、結果のセクションに記載した変化を考慮して実施した。
【0114】
RNA調製及びcDNA合成
ハイブリドーマB−B4細胞を増殖させ、Qiagen Midi kit(Hilden,Germany)を用いて処理して、製造業者のプロトコルに従ってRNAを単離した。約5μgのB−B4 RNAを逆転写させて、Amersham Biosciences(Piscataway,NJ)1st strand synthesis kitを用いて、製造業者のプロトコルに従ってB−B4 cDNAを作製した。
【0115】
B−B4免疫グロブリンcDNAのクローニング
免疫グロブリン重鎖(IgH)cDNAを、IgHプライマーMHV7(5’−ATGGGCATCAAGATGGAGTCACAGACCCAGG−3’)(配列番号3)、及びIgG1定常領域プライマーMHCG1(5’−CAGTGGATAGACAGATGGGGG−3’)(配列番号4)を用いて、PCRにより増幅した。同様に、免疫グロブリン軽鎖(IgL)を、それぞれプライマーMKC(5’−ACTGGATGGTGGGAAGATGG−3’)(配列番号8)と組み合わせた、3種の異なるIgプライマーMKV2(5’−ATGGAGACAGACACACTCCTGCTATGGGTG−3’)(配列番号5)、MKV4(5’−ATGAGGGCCCCTGCTCAGTTTTTTGGCTTCTTG−3’)(配列番号6)、及びMKV9(5’−ATGGTATCCACACCTCAGTTCCTTG−3’)(配列番号7)を用いて増幅した。全ての増幅産物を、製造業者の取扱説明書に従って、TOPO−TA cloning kit(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて、pCR2.1−TOPOベクターと直接ライゲーションした。
ライゲーションしたpCR2.1ベクターのコンストラクトで形質転換したE.coli TOP10 bacteria(Invitrogen)を、LB−アンピシリン−Xgal寒天プレート上で選択した。少量の培養物に単一白色コロニーを接種し、一晩増殖させ、QIAprep Spin Miniprep kitを用いて、製造業者の取扱説明書に従って、プラスミドを単離した。
【0116】
cDNAの配列決定
BigDye Termination v3.0 Cycle Sequencing Ready Reaction Kit(ABI,Foster City,CA)を用いて、プラスミドの配列を決定した。選択された各プラスミドを、1210及び1233プライマーを用いて、GeneAmp9600PCR装置で増幅させ(cycle)両方向に配列決定した。電気泳動配列分析を、ABIキャピラリシーケンサで行った。
RT−PCRの完全サイクル、クローニング、及びDNA配列分析を繰り返して、各免疫グロブリン鎖について、完全に独立な3つの配列情報のセットを得た。
【0117】
B−B4 VのDNA配列
1st strand synthesisを3つの独立な反応で実施した。プライマーMKC及びMKV2(上記配列)を用いて作製したRCP産物を、製造業者の取扱説明書に従ってpCR2.1−TOPOベクターにライゲーションした。RT−PCR反応のそれぞれの独立なセットから得られたクローンを、両方向に配列決定した。MKV−2プライマーを用いた産物の配列は、MOPC−21、SP2、及びAg8のような骨髄腫融合パートナーを起源とする無菌カッパ転写産物に非常に類似していたため((Carroll et al.,Mol Immunol.,25(1988),991;Cabilly et al.,Gene,40(1985);157)、無視した。
【0118】
MKV4及びMKV9プライマーとともにMKCを用いたPCR産物は、互いに類似しており、リーダー配列プライマー内のゆらぎ(wobble)の位置のみが異なっていた。
【0119】
B−B4 VH DNA配列
1st strand合成を3つの独立な反応において実施し、PCR産物を各1st strand産物からクローニングおよび配列決定した。5つのクローンを各1st strandから配列決定した。
【0120】
キメラcB−B4発現ベクターの構築
キメラ発現ベクターの構築は、VH及びVに、BamHI制限酵素部位及びKozak配列が先行する、好適なリーダー配列を付加することを必要とする。Kozak共通配列は、可変領域配列の効率的翻訳にとって極めて重要である。Kozak共通配列は、そこからリボソームが翻訳を開始することができる正確なAUGコドンを規定し、1つの最も重要な塩基は、AUG開始の上流、−3の位置にあるアデニン(或いはそれ程好ましくはないが、グアニン)である。リーダー配列は、Kabatデータベースにおいて最も類似する配列として選択される(Kabat et al.,NIH National Technical Information Service,1991)。これらの付加は、フォワード(For)プライマー内にコードされる(両方、配列5’−AGAGAAGCTTGCCGCCACCATGATTGCCTCTGCTCAGTTCCTTGGTCTCC−3’(配列番号9)を有する;制限酵素部位には下線をひき、GCCGCCACCはKozak配列である)。更に、キメラ発現ベクターの構築は、B−B4のJ領域の3’末端に隣接する、天然ApaI制限酵素部位に至るまで、ヒトガンマ1定常領域の5’断片を導入し、軽鎖には、スプライス供与部位及びHindIII部位を付加することを必要とする。スプライス供与部位は、可変領域配列を、適切な定常領域へ正確にインフレームで結合させ、V:Cイントロンを切り出すのに重要である。カッパイントロン+CKは、B−B4のV配列の下流の発現コンストラクトにコードされる。同様に、ガンマ−4 CHは、B−B4 VH配列の下流の発現コンストラクトにコードされる。
B−B4 VH及びV遺伝子を先ず注意深く分析して、不所望のスプライス供与部位、スプライス受容部位、Kozak配列、並びにその後機能的全抗体のサブクローニング及び発現の少なくともいずれかに干渉する、任意の余分なサブクローニング制限酵素部位の存在を全て同定した。アミノ酸配列を変化させることなくPCRを介して部位特異的突然変異誘発により除去する必要があった、不所望なHindIII部位がV配列中に見出された。この反応では、オリゴヌクレオチドプライマーBT03(5’−CAACAGTATAGTAAGCTCCCTCGGACGTTCGGTGG−3’)(配列番号10)及びBT04(5’−CCACCGAACGTCCGAGGGAGCTTACTATACTGTTG−3’)(配列番号11)を用いて、Stratagene(La Jolla,CA)Quickchange Mutagenesis Kitのプロトコルに従って突然変異誘発を実施した。
【0121】
カッパ鎖キメラ化プライマー
非多義性B−B4 Vリーダー配列(PCRプライマー配列とは独立)を、Kabatデータベースにおけるマウスリーダー配列と整列させた。B−B4 VHリーダー配列に最もよく一致していたのは、VK−10 ARS−Aであった(Sanz et al.,PNAS,84(1987),1085)。このリーダー配列は、SignalPアルゴリズムにより正確に切断されることが予測される(Nielsen et al.,Protein Eng,10(1997);1)。pKN100発現ベクターにクローニングするために、プライマーCBB4Kfor(上記参照)及びg2258(5’−CGCGGGATCCACTCACGTTTGATTTCCAGCTTGGTGCCTCC−3’(配列番号12);制限酵素部位に下線を引く)を設計して、この完全リーダー、B−B4 V領域、並びにHindIII及びBamHI末端制限酵素部位を含むPCR産物を作製した。フォワードプライマーCBB4Kは、HindIII制限酵素部位、Kozak翻訳開始部位、及びVK−10 ARS−Aリーダー配列を導入する。リバースプライマーg2258は、スプライス供与部位、及びBamHI制限酵素部位を導入する。得られた断片を、pKN100のHindIII/BamHI制限酵素部位にクローニングした。
【0122】
重鎖キメラ化プライマー
非多義性B−B4 VHリーダー配列(PCRプライマー配列とは独立)を、Kabatデータベースにおけるマウスリーダー配列と整列させた。B−B4 VKリーダーに最もよく一致したのは、VH17−1A(Sun et al.,PNAS,84(1987),214)であった。このリーダー配列は、SignalPアルゴリズムにより正確に切断されことが予測される。pG4D200発現ベクターにクローニングするために、プライマーcBB4Hfor(上記参照)及びg22949(5’−CGATGGGCCCTTGGTGGAGGCTGAGGAGACGGTGACTGAGGTTCC−3’(配列番号13);制限酵素部位に下線を引く)を設計して、VH17−1Aリーダー、B−B4のVH領域、並びに末端HindIII及びApaI制限酵素部位を含むPCR産物を作製した。フォワードプライマーCBBHForは、HindIII制限酵素部位、Kozak翻訳開始部位、及びVK−17 1Aリーダー配列を導入する。リバースプライマーg22949は、ガンマ4 C領域の5’末端、及び天然ApaI制限酵素部位を導入する。得られた断片を、pG4D200のHindIII/ApaI制限酵素部位にクローニングし、ベクターpG4D200cBB4を得た。
【0123】
cBB4抗体の産生
バイアル瓶1本分のCOS7細胞を解凍し、抗生物質を含む10%の胎児クローンI血清を添加したDMEM中で増殖させた。1週間後、細胞(10細胞/mLで0.7mL)を、pG4D200cBB4+pKN100cBB4(それぞれ10μgのDNA)を用いて、或いはDNAを用いずに電気穿孔処理した。細胞を4日間8mLの増殖培地にプレーティングした。電気穿孔処理を7回繰り返した。
【0124】
キメラ抗体の検出
サンドイッチELISAを用いて、COS7上清中の抗体濃度を測定した。一過性に形質転換されたCOS7細胞は、約6,956ng/mLの抗体を分泌した(データは示さず)。
【0125】
cB−B4の結合活性
COS7培養上清におけるcB−B4の結合活性を検定するために、Diaclone sCD138キットを用いた(固相サンドイッチELISA)。sCD138に特異的なモノクローナル抗体で、提供されたマイクロタイターストリップのウェルをコーティングした。最初のインキュベート中、sCD138及びビオチン化B−B4(bio−B−B4)抗体を、非標識試験抗体(B−B4及びcB−B4のいずれか)の希釈系列とともに同時にインキュベートした。
低濃度の非標識抗体と競合させるために、この検定におけるbio−B−B4の濃度を低下させた(さもなければ、COS7細胞培養上清におけるcB−B4の濃度は、十分な競合を得るには低過ぎた)。この検定の結果から、両方の抗体がCD138に対して同一の特異性を有することが明らかになる(データは示さず)。
【0126】
cB−B4の精製
キメラB−B4を、製造業者の推奨に従って、Protein A ImmunoPure Plus kit(Pierce)を用いて、COS7細胞上清から精製した(データは示さず)。
【0127】
−決定:比較 nBT062/BB4
可溶性CD138の精製
U−266細胞培養上清由来の可溶性CD138抗原を、B−B4にカップリングした1mLの「HiTrap NHS−活性化HP」カラムを用いて、FPLCにより精製した。細胞培養上清を、カラム上のPBS緩衝液(pH7.4)にロードし、その後CD138抗原を、50mMのトリエチルアミン(pH11)で、2mLの画分に溶出させた。溶出したCD138を、375μLの1M Tris−HCl(pH3)で直ちに中和して、構造的損傷及び機能的損傷の少なくともいずれかを防いだ。
【0128】
CD138のビオチン化
スルホ−NHS−LC(Pierce)を用いて、CD138を標識した。NHS−活性化ビオチンは、pH7〜9の緩衝液中で、リジン残基のような一級アミノ基と効率よく反応して、安定なアミド結合を形成する。
CD138のビオチン化では、50μLのCD138を、タンパク質脱塩スピンカラム(Pierce)を用いて脱塩した。ビオチン化試薬(EZ−Link Sulfo NHS−LC−Biotin,Pierce)を、最終濃度が0.5mg/mLになるように氷冷した脱イオン水に溶解させた。捕捉試薬に比べて、12倍モル過剰であるビオチン化試薬を有する(50pmolのCD138に対して600pmolのビオチン化試薬)、ビオチン化試薬及び捕捉試薬溶液を混合し、バイアル瓶を穏やかに振盪しながら、室温で1時間インキュベートした。非結合ビオチン化試薬を、タンパク質脱塩カラムを用いて除去した。
【0129】
CD138の固定化
BIACORE検定で用いるセンサチップ(SENSOR CHIP SA、BIACORE AB)を、BIACOREシステムにおける相互作用分析のためにビオチン化分子に結合するよう設計した。表面は、ストレプトアビジンで予め固定化されたカルボキシメチル化デキストランマトリックスから成り、ビオチン化リガンドの高親和性捕捉の準備が整っている。手動注入により、10μL/分の流速を用いて、SENSOR CHIP SA上で、bCD138の固定化を実施した。50mMのNaOH中の1MのNaClを、3回連続して1分間注入することにより、チップ表面を調整した。次いで、ビオチン化CD138を1分間注入した。
【0130】
BIACOREを用いる異なる抗体のK−決定
BIACORE Cのソフトウェアは、異なる実験に対して、ある設計のみを変化させることができる、予め規定されたマスク、いわゆる「ウィザード」を用いる。BIACORE Cは、元々濃度を測定するために開発されたため、親和性測定を実行するよう設計されたウィザードが存在しない。しかしながら、適切な設定を行えば、「非特異的結合」のためのウィザードを用いて、親和性速度定数を測定することができたため、K−決定に用いた。このウィザードでは、BIACOREランニング緩衝液を用いて「再生(Regeneration)1」を実施することにより、2つのフローセルを測定し、解離相を90秒に設定した。真の再生に相当する「再生2」を、10mMのグリシン−HCl(pH2.5)を用いて実施した。この工程後、リガンドCD138は、再び結合競合状態になった。全手順の間、HBS−EPをランニング及び希釈緩衝液として用いた。様々な抗体(〜150kDa)のCD138への結合を決定するために、会合及び解離を様々な濃度(100nM、50nM、25nM、12.5nM、6.25nM、及び3.13nM)で分析した。速度定数ka及びkdを計算することにより、解離平衡定数を決定した。その後、BIAevaluationソフトウェアでkd及びkaの商を求めることにより、分析物のK−値を計算した。結果を表4に示す。
【表4】

表4:nBT062及びB−B4のK値の比較分析。標準偏差は、平均K値について得た。
【0131】
考察
各抗体の平均K値を、3つの独立な実験から計算した。結果は、全ての実験において、nBT062が、B−B4に比べて僅かに低いK値を呈することを示す(それぞれ、平均K値は1.4nM及び1.6nMであった)。
【0132】
免疫複合体の調製
nBT062−DM1及びhuC242−DM1
チオール含有マイタンシノイドDM1を、Chari(Chari et al.,Cancer Res.1(1992),127)により既に記載されているように、微生物の発酵産物であるアンサマイトシンP−3から合成した。ヒト化C242(huC242)の調製((Roguska et al.,PNAS,91(1994),969)は、既に記載されている。抗体−薬物複合体を、既に記載されているように調製した(Liu et al.,PNAS,93(1996),8618)。抗体分子1つ当たり、平均3.5個のDM1分子が結合した。
【0133】
nBT062−DM4
BT062は、nBT062キメラ化モノクローナル抗体に、リンカーを介して、ジスルフィド結合で結合した、細胞傷害性マイタンシノイド薬であるDM4から構成される、抗体−薬物複合体である。マイタンシノイドは、チューブリン重合及び微小管の組み立てを阻害する有糸分裂阻害剤である(Remillard et al.,Science 189(1977),1002)。BT062(nBT062−DM4)の化学的及び模式的表現を図1及び2に示す。
【0134】
DM4の合成
DM4は、周知の誘導体マイタンシノールから調製される(Kupchan et al.,J. Med. Chem.,21(1978),31)。マイタンシノールは、微生物の発酵産物である、アンサマイトシンP3のエステル部分を、リチウムトリメトキシアルミニウム水素化物で還元的に切断することにより調製される(図3参照)。
DM4は、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)及び塩化亜鉛の存在下で、マイタンシノールを、N−メチル−N−(4−メチジチオペンタノイル)−L−アラニン(DM4側鎖)でアシル化して、ジスルフィド含有マイタンシノイドDM4−SMeを得ることにより合成される。DM4−SMeは、ジチオスレイトール(DTT)で還元されて、所望のチオール含有マイタンシノイドDM4になる(DM4のプロセスフロー図については図4を参照)。
【0135】
免疫複合体BT062
nBT062−DM4の調製手順を図5に概説する。nBT062抗体を、N−スクシニミジル−4−(2−ピリジルジチオ)ブチラート(SPDBリンカー)で修飾して、ジチオピリジル基を導入する。DM4を、ジチオピリジル基の等量を超える濃度で、修飾された抗体と混合する。DM4のチオール基と、リンカーを介して抗体に導入されたジチオピリジル基との間のジスルフィド交換反応により、BT062複合体を形成する。クロマトグラフィー及び透析ろ過により精製して、低分子量反応体(DM4)及び反応産物(チオピリジン)、並びに複合体化抗体の凝集物を除去し、バルク原体を作製する。
【0136】
FACS分析及びWST細胞傷害性検定
FACS分析
OPM−2細胞は、CD138を高発現している形質細胞白血病細胞株である。OPM−2細胞を、様々な濃度のnBT062、nBT062−SPDB−DM4、nBT062−SPP−DM1、及びnBT062−SMCC−DM1のいずれかとともにインキュベートした(図6に示す)。細胞を洗浄し、CD138に結合した抗体及び複合体のいずれかを、FACS分析において蛍光標識された二次抗体を用いて検出した。これらの実験で測定された平均蛍光を、抗体濃度に対してプロットした。
【0137】
細胞生存性アッセイ
CD138MOLP−8細胞を、3,000細胞/ウェルで平底プレートに播種した。CD138BJAB対照細胞を1,000細胞/ウェルで播種した。細胞を、様々な濃度のnBT062−SPDB−DM4、nBT062−SPP−DM1、及びnBT062−SMCC−DM1のいずれか(図7A〜Dに示す)で5日間処理した。製造業者の取扱説明書(ROCHE)に従って、細胞生存性を測定するために、WST試薬(水溶性テトラゾリウム塩、ROCHE)を添加した。試薬をMOLP−8細胞上で7.5時間、及びBJAB細胞上で2時間インキュベートした。標準的な手順を用いてマイクロタイターリーダープレートで測定した光学密度に基づいて、生存細胞の割合を計算した。
【0138】
考察
nBT062−SPDB−DM4、nBT062−SPP−DM1、nBT062−SMCC−DM1、及びnBT062のいずれかの結合をFACSにより分析した。標的細胞として、CD138OPM−2を、nBT062及び免疫複合体のいずれかとともにインキュベートし、細胞に結合した分子を、蛍光標識された二次抗体を用いて検出した。図6では、細胞に結合した抗体の量の尺度として平均蛍光を、様々な抗体及び複合体のいずれかの濃度に対してプロットした。結果は、nBT062−SPDB−DM4、nBT062−SPP−DM1、及びnBT062−SMCC−DM1は、非常に類似する結合特性を示すことを示す。更に、結果は、複合体化していない抗体の結合特性が、複合体化した毒素により影響を受けないことを強く示唆する。
細胞生存性アッセイでは、CD138MOLP−8標的細胞、及びCD138BJAB B−リンパ芽球腫対照細胞に対する抗体の細胞傷害活性を分析した。両方の細胞株を平底プレートに播種し、濃度の上昇する免疫複合体とともにインキュベートした。複合体化していない抗体を対照として用いた。細胞生存性を測定するために、WST試薬を用いることにより、免疫複合体の添加後5日間、細胞傷害活性を分析した。図7A〜Cでは、ビヒクル対照で処理した対照細胞に対する生存細胞の割合を、上昇する免疫複合体濃度に対してプロットした。結果は、MOLP−8細胞に対する、nBT062−SPDB−DM4、nBT062−SPP−DM1、及びnBT062−SMCC−DM1の細胞傷害活性が非常に類似していることを示す。予想通り、CD138BJAB対照細胞は、免疫複合体により死滅せず、これは全ての免疫複合体がCD138への細胞特異的結合を介して作用することを示す。競合実験では、MOLP−8細胞を、モル過剰な複合体化していないnBT062とともにプレインキュベートした。プレインキュベートにより、nBT062−SPDB−DM4の細胞傷害性が実質的に遮断され、これは免疫複合体が細胞表面上のCD138への特異的結合を介して細胞を死滅させるという更なるエビデンスを提供する(図7D)。
【0139】
異種移植マウス実験
B−B4抗体のヒトキメラバージョンであるnBT062の抗体−マイタンシノイド複合体の抗腫瘍活性に対する、CD138標的の重要性を評価するために、異種移植マウス実験を実施した。ジスルフィド結合の化学的安定性の異なる可能性のある、nBT062−マイタンシノイド複合体の2つのバージョンを調製した(nBT062−SPP−DM1及びnBT062−SPDB−DM4)。これらの抗体−薬物複合体の抗腫瘍活性を、B−B4−SPP−DM1複合体(マウス親抗体を含む)、並びに複合体化していない遊離マイタンシノイド(DM4)、ネイティブな非修飾nBT062抗体、及び標的ではない(無関係な)IgG1−マイタンシノイド複合体の活性と比較した。重症複合型免疫不全症(SCID)マウスにおいて、ヒト多発性骨髄腫のCD138陽性異種移植モデル(MOLP−8)で、複合体を評価した。
これらのマウスでは、MOLP−8細胞懸濁液を接種することにより、皮下腫瘍を確立した(雌CB.17 SCIDマウス)。腫瘍体積が平均113mmに達したとき、単回ボーラス静脈内注射による処理を実施した。腫瘍体積及び体重の変化を、1週間に2回モニタした。腫瘍細胞の接種後、68日間に亘って実験を実行した。
【0140】
異種移植マウス実験A
マウス
雌CB.17 SCIDマウス(5週齢)を、Charles River Laboratoriesから入手した。
ヒト腫瘍細胞株
MOLP−8(ヒト多発性骨髄腫細胞株)は、ATCCから供給された。MOLP−8細胞(その細胞表面上でCD138抗原を発現し、SCIDマウスにおいて異種移植腫瘍を発達させる)を、4mMのL−グルタミン(Biowhittaker,Walkersville,MD)、10%のウシ胎児血清(Hyclone,Logan,Utah)、及び1%のストレプトマイシン/ペニシリンを添加したRPMI−1640培地で、5%のCOを含む湿気のある大気中にて、37℃で維持した。
【0141】
パートI
マウスにおける腫瘍増殖
各マウスの右肩下の領域に、1×10個のMOLP−8細胞を皮下接種した。総体積はマウス当たり0.2mLであり、ここで血清を含有しない培地の、マトリゲル(BD Bioscience,Bedford,MA)に対する比は1/1(v/v)であった。処理前に、異種移植腫瘍を毎日モニタし、確立を可能にした。腫瘍体積は、腫瘍細胞接種後約11日で、およそ113mmに達した。CB.17 SCIDマウスの腫瘍発現率(take rate)は100%であった。
腫瘍細胞接種の11日後、42匹のマウスを腫瘍体積及び体重に基づいて選択した。腫瘍体積は、68.2mm〜135.9mmの範囲であった。42匹のマウスを、それぞれ腫瘍体積に基づいて、無作為に6匹の動物の7群(A〜G)に分けた。
A群の6匹のマウスにはそれぞれ、ビヒクル対照として200μLのPBSを投与した。B群のマウスにはそれぞれ、13.8mg/kgのnBT062のネイキッド(naked)抗体を投与した。この用量は、250μg/kgのマイタンシノイドが結合した抗体中のnBT062抗体成分の量に相当する。複合体分子中のマイタンシノイドのnBT062抗体に対する分子量の比は、約1/55である。C群のマウスにはそれぞれ、250μg/kgのDM4を投与した。D群のマウスにはそれぞれ、250μg/kgのhuC242−DM4を投与した。E、F、及びG群のマウスには、それぞれ、250μg/kgのnBT062−SPDB−DM4、B−B4−SPP−DM1、及びnBT062−SPP−DM1を投与した。
27ゲージの、1/2インチの針を備える1mLの注射器を用いて、外側尾静脈を通して、単回ボーラス注射として、全ての薬剤を静脈内投与した。投与前に、nBT062抗体、nBT062−SPDB−DM4、及びnBT062−SPP−DM1の原液を、滅菌PBSで、それぞれ2mg/mL、28.1μg/mL、及び28.1μg/mLの濃度に希釈し、その結果各マウスに注射された体積は120〜220μLであった。
【0142】
パートII
第2の実験セットでは、血清を含有しない培地及びマトリゲルの50:50混合物に懸濁したMOLP−8細胞(マウス当たり1.5×10細胞)を、右肩下の領域に100μL皮下注射した。腫瘍体積は、細胞接種後11日目に約80mmに達し、対照の平均は25日目で約750mmであった。腫瘍の倍加時間は、4.58日であると推定された。対照群の各マウス(n=6)には、0.2mLの滅菌PBSを、ボーラス注射で外側尾静脈に投与した(i.v.)。全ての処理用量は、複合体化マイタンシノイドに基づいた。それぞれ、450μg/kg、250μg/kg、及び100μg/kgの用量で、nBT062−SMCC−DM1、nBT062−SPDB−DM4、及びnBT062−SPP−DM1のいずれかを単回静脈内注射することにより、9群(n=6)を処理した。追加群(n=6)には、反復投与(週1回5週間)で250μg/kgのnBT062−SMCC−DM1を投与した。LabCatプログラムを用いて、腫瘍体積により、マウスを11群(n=6)に無作為に分けた。腫瘍体積は、40.0mm〜152.5mmの範囲であった。マウスには、個体の体重に基づいて投薬した。
腫瘍の大きさを、LabCatシステム(Tumor Measurement and Tracking,Innovative Programming Associated,Inc.,Princeton,NJ)を用いて、3次元で1週間に2回測定した。腫瘍体積(mm)を、Tomayko et al.,Cancer Chemother. Pharmacol,24(1989),148に記載の方法を用いて計算した:
体積=長さ×幅×高さ×1/2
Log10細胞死滅(cell kill)を、Bissery et al.,Cancer Res.,51(1991),4845に記載の式を用いて計算した:
Log10細胞死滅=(T−C)/T×3.32
式中、(T−C)、即ち腫瘍増殖遅延は、処理群(T)及び対照群(C)の腫瘍が、所定の大きさ(600mm)に達するのに必要な日数の中央時間である。Tは、対照マウスの中央腫瘍体積に基づいた、腫瘍倍加時間であり、3.32は、細胞増殖の対数当たりの細胞倍加数である。
【0143】
結果
個々のマウスにおける腫瘍増殖を図8A〜9Dに示す。各群の平均(+/−SD)腫瘍増殖を図10に示す。
PBS処理した動物における腫瘍増殖と比べて、nBT062抗体、複合体化していない遊離DM4、及び無関係の非標的複合体huC242−DM4のいずれかによる処理は、腫瘍増殖をそれ程阻害しなかった。
250μg/kgの用量では、3つ全てのCD138標的複合体、nBT062−SPDB−DM4、B−B4−SPP−DM1、及びnBT062−SPP−DM1が、腫瘍増殖の著しい遅延を引き起こした。処理群で測定した平均腫瘍体積に基づくと、DM4複合体nBT062−SPDB−DM4の活性が最も高く、一方nBT062−SPP−DM1は、そのマウス相当物B−B4−SPP−DM1に比べて、僅かに高い活性を示した(図10)。加えて、個々のマウスで得られた結果は、B−B4−SPP−DM1で得られた抗腫瘍活性がより不均一であり、それ故nBT062−SPP−DM1で処理したマウスにおける測定値より予測が難しい。抗腫瘍活性の均一性の観点では、標的抗体としてnBT062を用いる他の複合体、nBT062−SPDB−DM4はnBT062−SPP−DM1に類似した挙動を示した。
いずれの処理群でも体重減少は見られず、これは処理が耐容性良好であったことを示唆する。
【0144】
考察
実験動物における3種のCD138標的複合体の分析結果は、抗腫瘍活性にいとって、標的送達が重要であることを示す。ヒトキメラnBT062及びマウスB−B4抗体のマイタンシノイド複合体は、対数細胞死滅により測定したとき、非常に高い活性を示すが、複合体化していないDM4、修飾されていないネイティブなhuBT062抗体、及び非標的対照複合体(huC242−DM4)のいずれかによる処理は、腫瘍増殖に対してそれ程影響を与えなかった。
ヒトキメラ抗体から調製した免疫複合体、nBT062−SPP−DM1は、そのマウス相当物から調製した複合体、B−B4−SPP−DM1より(then)、僅かに高い抗腫瘍活性をもたらした。加えて、nBT062−SPP−DM1及びnBT062−SPDB−DM4で処理することにより、B−B4−SPP−DM1による処理と比べて、個々のマウスにおいてより均一な反応が得られた。B−B4−SPP−DM1の高結合変異は、接種後の経時的な(日)、CB.17 SCIDマウスにおけるMOLP−8ヒト多発性骨髄腫異種移植片の中央腫瘍体積(+/−SD)が、実際に、nBT062−SPP−DM1よりも、B−B4−SPP−DM1について、比較的良好な結果をもたらしたことを説明した(データは示さず)。標的抗体としてnBT062を用いる免疫複合体のこの特徴は、特に複合体の治療的用途に有益であると思われる。
最後に、SCIDマウスのMOLP−8異種移植モデルにおいて単回iv投与した後、最も強力なマイタンシノイド複合体はnBT062−SPDB−DM4であった。
【0145】
異種移植マウス実験B
この実験セットでは、85匹のマウスの右肩にMOLP−8細胞(1.5×10細胞/マウス)を皮下接種した。腫瘍発現率は100%であった。平均腫瘍体積が約80mmである、嵩高いMOLP−8腫瘍を有する66匹のSCIDマウスを、11の処理群(n=6)に無作為に分けた。マウスを、3種の複合体(nBT062−SMCC−DM1、nBT062−SPDB−DM4、及びnBT062−SPP−DM1のいずれか)のうち1種の単回用量で処理した。追加群には、週用量のnBT062−SMCC−DM1を5回投与し、対照群には単回用量のPBSを投与した。平均腫瘍体積を図11Aに示す。各複合体について、用量反応が確立された。PBS処理した動物では、25日目に中央腫瘍体積が750mmに達した。対照腫瘍増殖の対数線形プロット上において最も適合した線形回帰曲線適合により決定された腫瘍倍加時間は、4.58日であった。450μg/kgのnBT062−SPDB−DM4で処理した動物が、最高の対数細胞死滅(LCK=2.89)を有し、続いて、250μg/kgの週用量のnBT062−SMCC−DM1で処理した動物(LCK=2.1;表5を参照)であった。ダネットの多重比較試験を実施してANOVAを反復測定することによる、処理群の平均腫瘍体積曲線の比較は、PBS対照群と、450μg/kgのnBT062−SPDB−DM4(p<0.01)、250μg/kgのnBT062−SPDB−DM4(p<0.05)、及び250μg/kgの週用量5回のnBT062−SMCC−DM1(p<0.05)との間に有意な差を示した。接種後85日目までに腫瘍が部分的に縮小した、450μg/kgのnBT062−SPDB−DM4を投与した動物を除いて、いずれの処理群でも、部分的腫瘍縮小及び完全な腫瘍縮小のいずれも生じなかった。
【0146】
表5は、様々な投薬スキームにおける、様々なnBT062−DMx複合体の抗腫瘍活性尺度としての対数細胞死滅(LCK)値である。LCK値の計算に関する情報については、材料及び方法の部分を参照。
【表5】

【0147】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD138に対する非ヒト抗体の抗原結合領域(ABR)と、
少なくとも一部がヒト抗体のものである、更なる抗体領域と、
を含み、以下の(a)及び(b)の少なくともいずれかであることを特徴とするCD138を認識する改変された標的抗体、
(a)前記非ヒト抗体のCD138に対する結合親和性を超える結合親和性でCD138に結合する抗体、
(b)CD138発現細胞のCD138に均一に結合する抗体。
【請求項2】
更なる抗体領域が、ヒト抗体の重鎖定常領域及びその一部のいずれかを含む、少なくとも1つの定常領域であり、改変された標的抗体が、IgG4アイソタイプのものである、請求項1に記載の改変された標的抗体。
【請求項3】
抗体が、非ヒト抗体のCD138に対する結合親和性を超える結合親和性でCD138に結合する、請求項2に記載の改変された標的抗体。
【請求項4】
抗体が、CD138発現細胞のCD138に均一に結合する、請求項2に記載の改変された標的抗体。
【請求項5】
改変された標的抗体が、150%、140%、130%、120%、110%、100%、90%、80%、70%、60%、及び50%のいずれか未満のターゲティング変動で、CD138に結合する、請求項4に記載の改変された標的抗体。
【請求項6】
ABRが、
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸残基99〜111を含む重鎖可変領域CDR3と、
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列のアミノ酸残基89〜97を含む軽鎖可変領域CDR3と、
を含む、請求項1及び2のいずれかに記載の改変された標的抗体。
【請求項7】
ABRが更に、
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸残基31〜35を含む重鎖可変領域CDR1、及び配列番号1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸残基51〜68を含む重鎖可変領域CDR2と、
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列のアミノ酸残基24〜34を含む軽鎖可変領域CDR1、及び配列番号2で表されるアミノ酸配列のアミノ酸残基50〜56を含む軽鎖可変領域CDR2と、
を含む、請求項6に記載の改変された標的抗体。
【請求項8】
更なる抗体領域が、
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸残基123〜448、及び
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列のアミノ酸残基108〜214、の少なくともいずれかと、
以下の(i)及び(ii)の少なくともいずれかの突然変異とを含む、請求項6に記載の改変された標的抗体、
(i)改変された標的抗体の抗体依存性細胞傷害性及び補体依存性細胞傷害性の少なくともいずれかを、維持させる或いは低下させる突然変異、
(ii)改変された標的抗体を安定化させる突然変異。
【請求項9】
非ヒト抗体の抗原結合領域が、マウス抗体のものである、請求項1及び2のいずれかに記載の改変された標的抗体。
【請求項10】
改変された標的抗体が、キメラ抗体であり、非ヒト抗体がB−B4である、請求項1及び2のいずれかに記載の改変された標的抗体。
【請求項11】
改変された標的抗体が、少なくとも1本の重鎖及び1本の軽鎖を含み、
前記重鎖が、(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも約70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖であるか、
前記軽鎖が、(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列と少なくとも約70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖であるか、或いは
前記重鎖と前記軽鎖がそれぞれ、(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも約70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖である、及び(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列と少なくとも約70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖である、
請求項3に記載の改変された標的抗体。
【請求項12】
(a)重鎖のアミノ酸配列が、配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも約90%の配列同一性を有し、
(b)軽鎖のアミノ酸配列が、配列番号2で表されるアミノ酸配列と少なくとも約90%の配列同一性を有する、請求項8に記載の改変された標的抗体。
【請求項13】
ABRが、本質的に非ヒト抗体のABRから成る、請求項1及び2のいずれかに記載の改変された標的抗体。
【請求項14】
請求項1及び2のいずれかに記載の抗体と、薬学的に許容される担体と、を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項15】
請求項1及び2のいずれかに記載の抗体を産生することを特徴とするハイブリドーマ。
【請求項16】
抗体に基づくアッセイであって、請求項1及び2のいずれかに記載の抗体を含むことを特徴とするアッセイ。
【請求項17】
免疫グロブリン重鎖及びその一部のいずれかのアミノ酸配列を含む単離ポリペプチドであって、前記免疫グロブリン重鎖及びその一部のいずれかのアミノ酸配列が、配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、及び少なくとも98%のいずれかの配列同一性を有し、前記免疫グロブリン重鎖及びその一部のいずれかを含む標的剤がCD138を標的とすることを特徴とする単離ポリペプチド。
【請求項18】
免疫グロブリン重鎖及びその一部のいずれかの定常領域が、IgG4アイソタイプ定常領域である、請求項17に記載の単離ポリペプチド。
【請求項19】
標的剤が、マウスヒトキメラ抗体である、請求項17に記載の単離ポリペプチド。
【請求項20】
免疫グロブリン軽鎖及びその一部のいずれかのアミノ酸配列を更に含み、前記免疫グロブリン軽鎖及びその一部のいずれかのアミノ酸配列が、配列番号2で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、及び少なくとも98%のいずれかの配列同一性を有する、請求項17に記載の単離ポリペプチド。
【請求項21】
免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列が、配列番号1で表されるアミノ酸配列と同一である、請求項17に記載の単離ポリペプチド。
【請求項22】
免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列が、配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一である、請求項20及び21のいずれかに記載の単離ポリペプチド。
【請求項23】
CD138に均一に結合させる方法であって、
請求項1及び2のいずれかに記載の改変された標的抗体を提供する工程と、
前記改変された標的抗体をCD138発現細胞に接種する工程と、
を含み、
前記改変された標的抗体が、前記CD138発現細胞上で発現しているCD138に均一に結合することを特徴とする方法。
【請求項24】
改変された標的抗体が、150%、140%、130%、120%、110%、100%、90%、80%、70%、60%、及び50%のいずれか未満のターゲティング変動でCD138に結合する、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【公表番号】特表2011−509245(P2011−509245A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540128(P2010−540128)
【出願日】平成20年12月23日(2008.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2008/068266
【国際公開番号】WO2009/080829
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(390035378)バイオテスト・アクチエンゲゼルシヤフト (13)
【Fターム(参考)】