説明

CD200レセプターを調節する方法

【課題】CD200レセプターを調節する方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、細胞活性を調節する方法を提供し、この方法は、その細胞と、CD200Ra(配列番号2または6)またはその抗原性フラグメントに特異的に結合する抗体の抗原結合部位に由来する結合組成物とを接触させる工程を包含する、する。この細胞が肥満細胞である、上記の方法もまた提供され、この調節が細胞活性を阻害するか、または細胞活性を刺激するか;この調節が細胞活性を阻害し、そしてこの結合組成物がCD200Ra(配列番号2または6)のアゴニストを含むか;あるいは、この調節が細胞活性を増大させ、そしてこの結合組成物がCD200Ra(配列番号2または6)のアンタゴニストを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、哺乳動物の生理学(免疫系の機能を含む)を調節するための方法および組成物に関連する。特に、本発明は、肥満細胞の代謝および活性を調節するための方法を提供する。診断用途および治療用途が、開示される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
骨髄細胞、脾臓細胞、および造血細胞(リンパ球および骨髄系統細胞が挙げられるが、これらに限定されない)から構成される免疫系は、細菌、ウイルス、および外来の多細胞生物ならびに癌細胞に対する防御を担う。免疫系の不適切な調節は、多数の障害または病理学的状態(例えば、慢性的な炎症、自己免疫疾患および自己免疫障害ならびに外来性の粒子または外来性の組織に対する所望されないアレルギー反応)を生じ得る。
【0003】
肥満細胞、骨髄系統免疫細胞は、炎症を生じる種々のサイトカインおよび酵素を分泌する。これらの物質のいくつかが顆粒状の分泌性小胞中で生じる場合、分泌プロセスは、時には脱顆粒と呼ばれる。肥満細胞による急速な脱顆粒が、喘息、アナフィラキシー、および他のアレルギー応答の病理に寄与する一方で、肥満細胞によるゆっくりとした脱顆粒は、関節炎および他の型の慢性炎症に寄与する。肥満細胞による炎症性サイトカインおよび酵素の放出は、組織損傷、肥満細胞のさらなる誘引を引き起こし得、そしてさらなる組織損傷を引き起こし得る。
【0004】
免疫系細胞は、レセプターとして作用し得る多くの型の膜結合型タンパク質を保有する。これらのレセプターに対するリガンドは、低分子、タンパク質(例えば、サイトカインまたはケモカイン)または別の細胞上に存在する膜結合型タンパク質であり得る。細胞または組織の活性における変化は、その生理学的リガンド、生理学的リガンドのアナログ、抗体、同様のレセプターを互いに架橋する因子、および非同一レセプターを互いに架橋する因子による、レセプターの占有から生じ得る。
【0005】
肥満細胞は、細胞に対して阻害シグナルを中継する多数のレセプターを含む。これらとしては、CD200レセプターa(別名CD200Ra;OX2Ra)および種々のIg−ITIMを保有レセプター(例えば、低親和性IgGレセプターであるFcγRIIB)、膜貫通型糖タンパク質レセプターであるgp49B1、シグナル調節タンパク質(SIRP)、肥満細胞機能関連Ag、ならびに血小板内皮細胞接着分子−1(PECAM−1)(CD31)(Wongら.(2002)J.Immunol.168:6455〜6462)が挙げられる。
【0006】
CD200(別名OX2)は、リンパ球、ニューロン細胞、内皮細胞、樹状細胞、およびB細胞上に存在する、幅広く分布する膜結合型タンパク質である(Wrightら.(2000)Immunity 13,233〜242;Wrightら.(2001)Immunology 102:173〜179;Hoekら.(2000)Science 290:1768〜1771;Barclayら(2001)Immunol.102:173〜179;McCaughanら(1987)Immunogenetics
25:329〜335)。CD200(CD200Rのリガンド)は、CD200Rに結合し得、このCD200Rは、別の細胞上で発現される。ヒトにおいて、CD200Rの2つのサブタイプが同定されている(hCD200Ra(配列番号2)およびhCD200Rb(配列番号4))。CD200Rのマウスのホモログは、4つのレセプターサブタイプ(CD200Ra(配列番号6)、CD200Rb(配列番号8)、CD200Rc(配列番号10)、およびCD200Rd(配列番号12))からなる。CD200Raは、例えば、ラットのマクロファージ、樹状細胞、および小神経膠細胞上に存在する(Wrightら.(2000)(前出);Prestonら.(1997)Eur.J.Immunol.27:1911〜1918)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
種々の免疫細胞について膜結合型タンパク質を含むいくつかの調節経路が、同定されている。しかし、肥満細胞調節を担う分子は、十分に理解されていない。本発明は、肥満細胞レセプター分子(例えば、CD200R)を標的にすることによる肥満細胞障害の診断および処置の方法を提供することによって、この必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、阻害レセプター(例えば、CD200Ra)への抗体の結合が細胞を不活化するという発見に一部基づく。
【0009】
本発明は、細胞活性を調節する方法を提供し、この方法は、その細胞と、CD200Ra(配列番号2または6)またはその抗原性フラグメントに特異的に結合する抗体の抗原結合部位に由来する結合組成物とを接触させる工程を包含する、する。この細胞が肥満細胞である、上記の方法もまた提供され、この調節が細胞活性を阻害するか、または細胞活性を刺激するか;この調節が細胞活性を阻害し、そしてこの結合組成物がCD200Ra(配列番号2または6)のアゴニストを含むか;あるいは、この調節が細胞活性を増大させ、そしてこの結合組成物がCD200Ra(配列番号2または6)のアンタゴニストを含む。別の実施形態において、本発明は、この結合組成物が、ヒト化抗体;モノクローナル抗体;ポリクローナル抗体;Fabフラグメント;F(ab’)フラグメント;抗体のペプチド模倣体;または検出可能な標識を含む上記の方法もまた、提供する。本発明のさらに別の局面は、上記細胞と、CD200Ra(配列番号2または6)の発現を特に増大させる因子とを接触させる工程をさらに包含する、上記の方法である。
【0010】
免疫状態に苦しむ被験体を処置する方法もまた提供され、この方法は、CD200Ra(配列番号2または6)またはその抗原性フラグメントに特異的に結合する抗体の抗原結合部位に由来する結合組成物で処置するか、またはこの結合組成物を投与する工程を包含する。上記結合組成物がCD200Ra(配列番号2または6)のアゴニストまたはアンタゴニストを含み、この免疫状態が炎症状態または自己免疫状態である上記の方法もまた、提供される。この免疫状態が、慢性関節リウマチであるか;内毒血症であるか;乾癬であるか;またはアレルギーである上記の方法、あるいはこの免疫状態が、感染または癌状態である上記の方法もまた、企図される。この結合組成物が、CD200Ra(配列番号2または6)またはその抗原性フラグメントの発現を特異的に増強する因子とともに投与される上記の方法が、さらに企図される。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
細胞の活性を調節する方法であって、該細胞と、CD200Ra(配列番号2もしくは配列番号6)またはその抗原性フラグメントに特異的に結合する抗体の抗原結合部位に由来する結合組成物とを接触させる工程を包含する、方法。
(項目2)
項目1に記載の方法であって、前記細胞が肥満細胞である、方法。
(項目3)
項目1に記載の方法であって、前記調節が、
a)細胞活性を阻害するか;または
b)細胞活性を刺激する、
方法。
(項目4)
項目1に記載の方法であって、前記調節が細胞活性を阻害し、そして前記結合組成物が、CD200Ra(配列番号2もしくは配列番号6)のアゴニストを含む、方法。
(項目5)
項目1に記載の方法であって、前記調節が、細胞活性を増加させ、そして前記結合組成物が、CD200Ra(配列番号2もしくは配列番号6)のアンタゴニストを含む、方法。
(項目6)
項目1に記載の方法であって、前記結合組成物が、
a)ヒト化抗体;
b)モノクローナル抗体;
c)ポリクローナル抗体;
d)Fabフラグメント;
e)F(ab’)フラグメント;
f)抗体のペプチド模倣体;または
g)検出可能な標識
を含む、方法。
(項目7)
項目1に記載の方法であって、前記細胞と、CD200Ra(配列番号2もしくは配列番号6)またはその抗原性フラグメントの発現を増強する因子とを接触させる工程をさらに包含する、方法。
(項目8)
免疫状態に苦しむ被験体を処置する方法であって、項目1に記載の結合組成物で処置するか、または項目1に記載の結合組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目9)
項目8に記載の方法であって、前記結合組成物が、CD200Ra(配列番号2もしくは配列番号6)のアゴニストまたはアンタゴニストを含む、方法。
(項目10)
項目8に記載の方法であって、前記免疫状態が、
a)炎症性状態;または
b)自己免疫性状態
である、方法。
(項目11)
項目8に記載の方法であって、前記免疫状態が、
a)慢性関節リウマチ;
b)内毒血症;
c)乾癬;または
d)アレルギーである、方法。
(項目12)
項目8に記載の方法であって、前記免疫状態が、
a)感染;または
b)癌状態
である、方法。
(項目13)
項目8に記載の方法であって、前記結合組成物が、CD200Ra(配列番号2もしくは配列番号6)またはその抗原性フラグメントの発現を特異的に増強する因子とともに投与される、方法。
(項目14)
免疫障害を診断する方法であって、サンプルと、項目1に記載の結合組成物を接触させる工程、および細胞活性の前記調節を測定する工程を包含する、方法。
(項目15)
項目14に記載の方法であって、前記調節が、
a)阻害;または
b)活性化
である、方法。
(項目16)
項目14に記載の方法であって、ここで、前記接触工程がインビトロで行われる、方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、β−ヘキソサミニダーゼの分泌対脱顆粒シグナルの濃度を示す。
【図2】図2は、サイトカイン放出対脱顆粒シグナルの濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(詳細な説明)
本明細書中(添付される特許請求の範囲を含む)で使用される場合、「a」「an」および「the」のような単数形の語句は、その文脈が、明らかに他の意味を示さない限り、対応する複数の言及を含む。
【0013】
(I.定義)
分子の「活性」は、その分子のリガンドまたはレセプターへの結合、触媒活性、遺伝子発現を刺激する能力、抗原活性、他の分子の活性調節などを記載し得るか、またはこれらを指し得る。分子の「活性」とはまた、細胞間相互作用(例えば、接着)の調節または維持における活性、あるいは細胞構造(細胞膜または細胞骨格)の維持における活性を指し得る。「活性」はまた、比活性(例えば、[触媒活性]/[mgタンパク質]または[免疫学的活性]/[mgタンパク質]など)を意味し得る。
【0014】
「アミノ酸」とは、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣体をいう。天然に存在するアミノ酸は、遺伝情報によってコードされるアミノ酸(セレノメチオニンを含む)およびポリペプチドへの組み込み後に改変されるアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、O−ホスホセリン、O−ホスホチロシン、γ−カルボキシグルタメート、およびシステイン)である。アミノ酸アナログとは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造(すなわち、水素に結合しているα−炭素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基)を有する化合物(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)をいう。このようなアナログは、改変されたR基(例えば、ノルロイシン)または改変されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能する、化学化合物をいう。アミノ酸は、本明細書中で、一般的に公知である三文字記号または一文字記号のいずれかによって示され得る。
【0015】
「結合組成物」は、例えば、抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、操作された抗体、組換え抗体、ヒト化抗体、抗体に由来する結合フラグメント、抗体のペプチド模倣体、二機能性の試薬または多機能性の試薬を包含する。この結合組成物は、例えば、リンカー、オリゴ糖、または標識をさらに含み得る。「抗体に由来する」とは、例えば、フラグメントまたは複合体(例えば、抗体の抗原結合部位)を産生するために抗体を処理するかまたは操作すること、あるいは抗体の所定の特徴(例えば、抗原結合部位)を模倣する分子または複合体を産生するために遺伝子操作を使用することをいう。
【0016】
「二重特異性抗体」とは、一般的に共有結合性の複合体をいうが、2つの異なる抗体由来の結合フラグメントの安定な非共有結合性の複合体、2つの異なる抗体由来のヒト化結合フラグメント、または2つの異なる抗体由来の結合フラグメントのペプチド模倣体を称し得る。それぞれの結合フラグメントは、異なる標的またはエピトープ(例えば、阻害レセプターおよび活性化レセプターのような異なるレセプター)を認識する。二重特異性の抗体は、一般的に、2つの異なる抗原への特異的な結合を示す。
【0017】
「保存的に改変された改変体」は、アミノ酸配列およびヌクレオチド配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のアミノ酸配列または本質的に同一なアミノ酸配列をコードする核酸をいう。保存的な置換の例は、以下の群の1つにおけるアミノ酸を、同じ群の別のアミノ酸と交換することである(Leeらに発行された米国特許第5,767,063号;KyteおよびDoolittle(1982)J.Mol.Biol.157:105〜132)。
疎水性:ノルロイシン、Ile、Val、Leu、Phe、Cys、Met;
中性親水性:Cys、Ser、Thr;
酸性:Asp、Glu;
塩基性:Asn、Gln、His、Lys、Arg;
鎖の方向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
芳香族:Trp、Tyr、Phe;および
低分子アミノ酸:Gly、Ala、Ser。
【0018】
CD200またはCD200R(配列番号2、4、6、8、10、12)と実質的に同じアミノ酸配列を有するが、機能面に実質的に影響しないアミノ酸置換、アミノ酸短縮、またはアミノ酸欠失を保有するポリペプチド分子に関する方法は、企図される発明の定義の範囲内である。1つ以上のペプチド結合切断を含む改変体は、娘ポリペプチドが、互いに結合したままである場合は、企図される発明の定義の範囲内である。
【0019】
「ITIM」および「ITAM」は、それぞれいくつかの阻害レセプターおよび活性化レセプター上に見出される2つのモチーフである。このITIMモチーフは、細胞質ドメインにおけるコンセンサス配列I/V/LxYxxL/Vによって定義され、ここで、(Y)はリン酸化され得、ITIMモチーフを有するポリペプチドが、種々の酵素を補充する能力を生じ得る(ここで、これらの酵素は、細胞への阻害シグナルの中継を助ける(Sathish,ら.(2001)J.Immunol.166:1763〜1770))。コンセンサスITAM配列は、YxxL/Ix6−8YxxL/Iであり、ここで、(Y)は、リン酸化され得、活性化レセプターまたはアクセサリータンパク質のシグナル特性における変化を生じ得る。このITAMモチーフは、活性化レセプター自体または活性化レセプターに結合するアクセサリータンパク質において生じ得、従って、活性化レセプターに対して活性特性を付与する。
【0020】
「一機能性試薬」とは、例えば、抗体、抗体の結合部位に由来する結合組成物、抗体模倣体、可溶レセプター、それらの操作された誘導体、組換え誘導体、または化学的に改変された誘導体(これらは、単一の型の標的に特異的に結合する)をいう。例えば、一機能性試薬は、CD200レセプターに対する1つ以上の機能性結合部位を含み得る。「一機能性試薬」はまた、ポリペプチド、抗体、または他の試薬(例えば、CD200レセプターなどに対する1つ以上の機能性結合部位およびFcレセプターに対する1つ以上の非機能性結合部位を含む)をいう。例えば、一機能性試薬は、CD200レセプターおよび操作されたFcフラグメント(故に、このFcフラグメントは、Fcレセプターに特異的に結合しない)に対する抗体結合部位を含み得る。
【0021】
「二機能性試薬」は、例えば、抗体、抗体の結合部位に由来する結合組成物、抗体模倣体、可溶レセプター、それらの操作された誘導体、組換え誘導体、または化学的に改変された誘導体(これらは、2つの異なる標的(例えば、阻害性CD200レセプターおよび活性化レセプター)に特異的に結合する)をいう。一般的に、二機能性試薬は、例えば、2つの異なる抗体、2つの異なる可溶レセプター、または抗体および可溶レセプターからの結合部位を含む。
【0022】
「核酸」とは、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、および一本鎖形態または二本鎖形態のいずれかであるそれらのポリマーをいう。用語「核酸」は、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと交換可能に使用され得る。特定の核酸配列はまた、「対立遺伝子改変体」および「スプライスバリアント」を暗に含む。
【0023】
結合組成物の「特異的結合」は、この結合組成物は、別の抗原に対して通常約2倍より大きい結合定数、代表的には、別の抗原に対してよりも約4倍大きい結合定数、より代表的には、別の抗原に対してよりも少なくとも約10倍大きい結合定数、頻繁には、別の抗原に対してよりも少なくとも約40倍大きい結合定数、および最も頻繁には、別の抗原に対してよりも少なくとも約100倍大きい結合定数で、特定の抗原(例えば、CD200Ra(配列番号2))に結合することを意味する。
【0024】
「リガンド」とは、レセプターのアゴニストまたはアンタゴニストとして作用する低分子、ペプチド、ポリペプチド、および膜関連分子または膜結合分子ならびに上記の膜関連分子または膜結合分子の可溶型をいう。このリガンドが、第1の細胞上で膜結合性である場合、そのレセプターは、通常第2の細胞上で生じる。第2の細胞は、第1の細胞と同じ特性または異なった特性を有し得る。リガンドまたはレセプターは、全体として細胞内に存在し得、すなわち、これらは、細胞質ゾル、核、またはいくつかの他の細胞内区画中に存在し得る。このリガンドまたはレセプターは、例えば、細胞内区画から原形質膜の外面にその位置を変化し得る。リガンドおよびレセプターの複合体は、「リガンドレセプター複合体」と称される。リガンドおよびレセプターが、シグナル経路に関与する場合、リガンドはシグナル経路の上流位置で生じ、そしてレセプターはシグナル経路の下流位置で生じる。
【0025】
「ヒト化抗体」は、非ヒト起源(例えば、げっ歯類)の抗原結合領域およびヒト起源の免疫グロブリンの少なくとも一部分(例えば、ヒトフレームワーク領域、ヒト定常領域、またはそれらの部分)を含む抗体を意味する。例えば、米国特許番号6,352,832号を参照のこと。
【0026】
「免疫状態」は、例えば、病理学的炎症、炎症性障害、炎症性疾患または障害、あるいは自己免疫障害または自己免疫疾患を意味する。「免疫状態」とはまた、感染または癌状態(例えば、免疫系が感染を減少させようとはかるか、または癌状態を減少させようとはかる病理学的状態)をいう。「癌状態」としては、例えば、癌、癌細胞、腫瘍、血管新生、および異形成症のような前癌状態が挙げられる。
【0027】
「サンプル」とは、ヒト、動物由来のサンプルをいうか、または例えば細胞、組織、器官、流体、ガス、エアロゾル、スラリー、コロイド、または凝固物質のような研究サンプルをいう。「サンプル」は、インビボで(例えば、ヒトからの動物からも取り出されることなく)試験され得るか、またはインビトロで試験され得る。サンプルは、処理後に、例えば組織学的な方法によって試験され得る。「サンプル」とはまた、例えば、流体サンプルまたは組織サンプルを含む細胞、あるいは流体サンプルまたは組織サンプルから分離された細胞をいう。「サンプル」とはまた、ヒトまたは動物から新鮮な状態で得られる細胞、組織、器官、または流体をいうか、あるいは、処理されたかまたは保存された細胞、組織、器官、または流体をいう。
【0028】
治療因子の「治療上有効な量」は、意味のある患者の利益を示すために(すなわち、処置される状態の症状を軽減させるかまたは寛解するために)十分である、薬学的処方物のそれぞれの活性成分の量として定義される。この薬学的処方物が診断因子を含む場合、「治療上有効な量」は、シグナル、画像、または他の診断パラメーターを産生するために十分な量として定義される。薬学的処方物の有効量は、個体の感受性の程度、個体の年齢、性別、および体重、ならびに個体の特有の応答のような因子にしたがって変動する。例えば、米国特許第5,888,530号を参照のこと。
【0029】
(II.概要)
本発明は、免疫状態(炎症性の状態および自己免疫障害)の処置および診断のための方法を提供し、この方法は、CD200Rを有する細胞(例えば、肥満細胞、抗原提示細胞(APC)、樹状細胞、好中球、T細胞、単球、およびマクロファージ)を含む。樹状細胞は、プロフェショナルAPCである。これらの状態としては、例えば、慢性関節リウマチ、気管支機能亢進、喘息、アレルギー状態、乾癬、炎症性腸疾患、多発性硬化症、および病理学的先天性応答(例えば、内毒血症、敗血症、および敗血症性ショック)が挙げられる。本発明は、例えば、CD200RaまたはCD200Rbのアゴニストまたはアンタゴニストを使用するCD200Rの調節方法を企図する。
【0030】
本発明は、例えば、肥満細胞依存性の病理学的状態の処置において肥満細胞を阻害するために、CD200Raに対する結合組成物を使用することを企図する。肥満細胞は、慢性関節リウマチ(RA)の惹起および拡大に関係付けられる(Leeら(2002)Science 297:1689〜1692;Vastag(2002)J.Am.Med.Assoc.288:1457〜1458;WoolleyおよびTetlow(2000)Arthritis Res 2:65〜74;Olssonら(2001)Ann.Rheum.Dis.60:187〜193)。コラーゲン誘導性関節炎(CIA)は、RAについての実験動物モデルである。RAおよびCIAは、例えば、フィブリン沈着、滑膜細胞の肥厚、軟骨膜骨形成、単核浸潤、パンヌス形成、および関節強直症を含む(LurossおよびWillians(2001)Immunology 103:407〜416)。T細胞およびB細胞のような免疫細胞は関節に浸潤し、そして病理(例えば、炎症、浮腫、または骨および軟骨の破壊)を誘導する。RAは、部分的には、自己免疫障害であり、ここで、自己免疫は、種々のタンパク質(軟骨構造のタンパク質を含む)に対して起こる(GriffithsおよびRemmers(2001)Immunol.Revs.184:172〜183)。CIAは、いくつかのヒト自己免疫疾患(例えば、RA、糖尿病、多発性硬化症、および自己免疫性甲状腺炎)と共通する多くの特徴を含む(GriffithsおよびRemmers(前出))。
【0031】
肥満細胞はまた、内毒血症に寄与し、この内毒血症は、マウスへのLPSの投与および関連条件によって誘導され得る(Tuncelら(2000)Peptides 21:81〜89;Muchamuelら(1997)J.Immunol.158:2898〜2903;Howardら(1993)J.Exp.Med.177:1205〜1208)。内毒血症は、敗血症、敗血症性ショック、グラム陰性細菌および他の細菌による感染、ならびに先天性免疫における有害反応と相関する(Cohen(2000)Intensive Care Med.26(補遺)1:S51〜56;Freiseら(2001)J.Invest.Surg.14:195〜212)。
【0032】
肥満細胞およびAPCは、皮膚障害(例えば、乾癬およびアトピー性皮膚炎)の病理に関係付けられている。乾癬は、西洋諸国の人口の4%より多くにおいて起こる。いくつかの場合において生命を脅かし得る乾癬は、頻繁な再発によって特徴付けられる。乾癬はまた、乾癬性関節炎として公知の関節炎の形態と関連付けられている(AckermannおよびHarvima(1998)Arch.Dermatol.Res.290:353〜359;Yamamotoら(2000)J.Dermatol.Sci.24:171〜176;Ackermanら(1999)Br.J.Dermatol.140:624〜633;Schopf(2002)Curr.Opin.Invest.Drugs 3:720〜724;Granstein(1996)J.Clin.Invest.98:1695〜1696;Christophers(2001)Clin.Exp.Dermatol.26:314〜320;GreavesおよびWeinstein(1995)New Engl.J.Med.332:581〜588;RobertおよびKupper(1999)New Engl.J.Med.341:1817〜1828;FearonおよびVeale(2001)Clin.Exp.Dermatol.26:333〜337;Mrowietzら(2001)Exp.Dermatol.10:238〜245;Ackermannら(1999)Br.J.Dermatol.140:624〜633)。
【0033】
喘息は、肥満細胞、APC、および他の免疫細胞に関する別の障害である(Black(2002)New Engl.J.Med.346:1742〜1743;Brightlingら(2002)New Engl.J.Med.346:1699〜1705;Carrollら(2002)Eur.Respir.J.19:1〜7;XiangおよびNilsson(2000)Clin.Exp.Allergy 30:1379〜1386;WoodruffおよびFahy(2001)J.Am.Med.Assoc.286:395〜398)。喘息は、気管支機能亢進によって特徴付けられる慢性障害であり、これは、肺炎症性障害(喘息、慢性閉塞性肺疾患(別名COPD;慢性閉塞性肺障害)、慢性気管支炎、好酸球増加性気管支炎、気管支炎、およびウイルス性気管支炎を含む)の症状である(Riffo−VasquezおよびSpina(2002)Pharmacol.Therapeutics 94:185〜211)。喘息は、免疫事象(IgEの放出を含む)のカスケードの結果である(例えば、Marone(1998)Immunol.Today 19:5〜9;BarnesおよびLemanske(2001)New Engl.J.Med. 344:350〜362を参照のこと)。
【0034】
肥満細胞は、炎症性腸疾患(例えば、クローン病および大腸炎)の病理に寄与する(Raithelら(2001)Scand.J.Gastroenterol.36:174〜179;Nishidaら(2002)Hepatogastroenterol.49:678〜682;Gelbmannら(1999)Gut 45:210〜217;Nolteら(1990)Gut 31:791〜794;Jeziorskaら(2001)J.Pathol.194:484〜492)。IgEは、肥満細胞を活性化、気道の狭窄および好酸球による気道への損傷を生じる。
【0035】
肥満細胞はまた、神経系の炎症状態(例えば、多発性硬化症)の病理に寄与する(Robbie−Ryanら(2003)J.Immunol.170:1630〜1634;DinesおよびPowell(1997)J.Neuropathol.Exp.Neurol.56:627〜640)。これらの細胞はまた、例えば、肝臓、腎臓、および肺の同種移植拒絶、ならびに移植片対宿主病(GVHD)、ならびに糸球体腎炎においても役割を果たす(O’Keefeら(2002)Liver Transpl.8:50〜57;Lajoieら(1996)Mod.Pathol.9:1118〜1125;Yousem(1997)Hum.Pathol.28:179〜182;Levi−SchafferおよびWeg(1997)Clin.Exp.Allergy,27(補遺)1:64〜70;Hiromuraら(1998)Am.J.Kidney Dis.32:593〜599)。肥満細胞はまた、心血管疾患に関わっている(Haraら(2002)J.Exp.Med.195:375〜381)。
【0036】
肥満細胞に加えて、APCはまた、慢性関節リウマチ、アレルギー、喘息、内毒血症、敗血症性ショック、および皮膚状態(例えば、乾癬)のような障害の機構に関わる(Santiago−Schwarzら(2001)J.Immunol.167:1758〜1768;LambrechtおよびHammad(2003)Curr.Opin.Pulm.Med.9:34〜41;Eigenmann(2002)Pediatr.Allergy Immunol.13:162〜167;Curryら(2003)Arch.Pathol.Lab.Med.127:178〜186;Supajaturaら(2002)J.Clin.Invest.109:1351〜1359;Kogaら(2002)Dermatol.204:100〜103)。
【0037】
本発明はまた、感染または増殖性状態(例えば、癌および腫瘍)の処置の際に、例えば、CD200RaのアンタゴニストまたはCD200Rbのアゴニストを使用してCD200Rを調節する方法を企図する。肥満細胞、APC、および他の免疫系の細胞は、感染(例えば、細菌感染、ウイルス感染、および原生動物感染)を防止するかまたはこれと闘う際に役割を果たす。例えば、Marshallら(2003)Curr.Pharm.Dis.9:11〜24;MalaviyaおよびGeorges(2002)Clin.Rev.Allergy Immunol.22:189〜204;MekoriおよびMetcalfe(2000)Immunol.Rev.173:131〜140;Galliら(1999)Curr.Opinion Immunol.11:53〜59;MilesおよびMamlok(1992)J.Allergy Clin.Immunol.89:638〜639;SacksおよびSher(2002)Nature Immunol.3:1041〜1047;Eigenmann(2002)Pediatr.Allergy Immunol.13:162〜171を参照のこと。肥満細胞、APC、または免疫系の他の細胞はまた、増殖性状態(例えば、癌および腫瘍)の防止またはこれとの闘いに関与することが見出されている。例えば、Reay(2001)Expert Opin.Ther.Targets 5:491〜506;Heckelsmillerら(2002)Eur.J.Immunol.32:3235〜3245;Stiftら(2003)Int.J.Oncol.22:651〜656;VermorkenおよびVan Tendeloo(2003)Expert Rev.Anticancer Ther.3:1〜3を参照のこと。
【0038】
(III.CD200レセプター)
マウスCD200Ra(別名muCD200Ra;配列番号6)は、比較的長い細胞質テールを有する。インビボ研究から、muCD200Raは、阻害レセプターであると考えられているが、これは、古典的なITIM配列を欠く。muCD200Rb(配列番号8)、muCD200Rc(配列番号10)およびmuCD200Rd(配列番号12)は、短い細胞質テールを有し、その膜貫通領域において荷電したアミノ酸を有し、そして細胞性活性化アダプター分子(Dap1.2)と対合することが示されている(LanierおよびBakker(2000)Immunol.Today 21:611〜614)。ヒトCD200Raは、マウスCD200Raと相同である。ヒトCD200Rb(配列番号4)は、muCD200Rb/dと最も相同性であり、そしてまた、Dap12との対合パートナーでもある。
【0039】
(IV.ポリペプチドの精製および改変)
企図された方法において使用するためのポリペプチド(例えば、抗原、抗体、および抗体フラグメント)は、当該分野において確立された方法によって精製され得る。精製は、細胞または組織のホモジナイゼーション、免疫沈降、およびクロマトグラフィーを含み得る。精製または貯蔵の間の安定性は、例えば、抗プロテアーゼ因子、抗酸化剤、イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤、ならびにグリセロールまたはジメチルスルホキシドのような溶媒によって高められ得る。
【0040】
タンパク質およびペプチドに対する改変としては、エピトープタグ、蛍光基または放射性基、単糖類またはオリゴ多糖類、サルフェート基またはホスフェート基、C末端アミド、アセチル化N基およびエステル化N基、アシル化(例えば、脂肪酸)、内切断したペプチド結合、および脱アミド化の産物が挙げられる(Johnsonら(1989)J.Biol.Chem.264:14262〜14271;Youngら(2001)J.Biol.Chem.276:37161〜37165)。グリコシル化は、使用される組換え宿主生物の性質または生理学的状態に依存する(Jefferis(2001)BioPharm.14:19〜27;Mimuraら(2001)J.Biol.Chem.276:45539〜45547;Axford(1999)Biochim.Biophys.Acta.1:219〜229;Malhotraら(1995)Nature Medicine 1:237〜243)。
【0041】
ポリペプチドの誘導体もまた、融合タンパク質パートナーによる改変を含む(Ausubelら(2001)Current Protocols in Molecular
Biology,第3巻,John Wiley and Sons,Inc.,NY,NY,16.0.5〜16.22.17頁;Sigma−Aldrich,Co(2001)Products for Life Science Research,St.Louis,MO;45〜89頁;Amersham Pharmacia Biotech(2001)BioDirectory,Piscataway,NJ,384〜391頁)。
【0042】
(V.結合組成物)
抗体は、ヒト供給源または非ヒト供給源に由来し得る。インタクトなタンパク質、変性したタンパク質、またはそのタンパク質のペプチドフラグメントは、免疫のために使用され得る(HarlowおよびLane(前出),139〜243頁)。抗原性が高まった領域は、ペプチドフラグメント免疫のために使用され得る。ヒトCD200Ra(配列番号2)は、例えば、配列番号2のアミノ酸43〜47、62〜66、109〜114、165〜174、187〜199、210〜214、239〜244、260〜267、および293〜300(Vector NTI(登録商標)Suite,InforMax,Inc.,Bethesda,MD)における、抗原性が高まった領域を有する。ヒトCD200Rb(配列番号4)は、配列番号4のアミノ酸55〜75で著しく抗原性である。マウスCD200Ra(配列番号6)は、配列番号6のアミノ酸25〜40およびアミノ酸85〜95で、抗原性が高まった領域を有する。マウスCD200Rb(配列番号8)は、配列番号8のアミノ酸10〜22、85〜90、および105〜120で、抗原性が高まった領域を有する。マウスCD200Rc(配列番号10)は、配列番号10のアミノ酸20〜40、115〜130、および190〜220で、抗原性が高まった領域を有する。マウスCD200Rdは、配列番号12のアミノ酸20〜50、90〜120、155〜175、および180〜200で、抗原性が高まった領域を有する(Mac Vector 6.5(登録商標),Accelrys,San Diego,CA)。抗原性フラグメントおよび抗原性領域のこの列挙によって、抗体を惹起するために使用され得るかまたは抗体によって結合され得るポリペプチドの領域を限定することは、意図されない。
【0043】
CD200の細胞外ドメイン、またはその抗原性フラグメントを含む結合組成物が、例えば、一機能性因子または二機能性因子の状態で企図される。ヒトCD200、マウスCD200、およびラットCD200の細胞外ドメインが記載される(Chenら(1997)Biochim.Biophys.Acta.1362:6〜10)。
【0044】
マウス供給源または他の非ヒト供給源に由来する抗体は、免疫応答を引き起こし得るか、エフェクター機能の弱い補充を提供し得るか、または血流からの急速なクリアランスを示し得る(Bacaら(1997)J.Biol.Chem.272:10678〜10684)。これらの理由のために、ヒト化によって治療抗体を調製することが所望され得る。ヒト化抗体は、ヒト抗体フレームワーク上に移植されている、親マウス抗体の6個の相補性決定領域(CDR)由来のアミノ酸配列を含む。ヒト化抗体における非ヒト配列の含有量は、好ましくは低い(すなわち、約5%である)(Bacaら(1997)J.Biol.Chem.272:10678〜10684)。最適な結合を達成するために、ヒト化抗体は、特定のフレームワークアミノ酸(通常CDRの立体配座の支持に関与する)を、親のマウス抗体において見出される対応するアミノ酸に戻す変化による微調整を必要とし得る。一般的に親のフレームワークアミノ酸に戻されるフレームワークアミノ酸は、CDRループの立体配座の支持に関与するフレームワークアミノ酸である(Chothiaら(1989)Nature 342:877〜883;FooteおよびWinter(1992)J.Mol.Biol.224:487〜499)。抗原結合に最もしばしば影響するフレームワーク残基は比較的小さく、そして11残基程度に小さくてもよい(Bacaら(1997)J.Biol.Chem.272:10678〜10684)
【0045】
ヒト化抗体としては、定常領域の全ての型を有する抗体(IgM、IgG、IgD、IgA、およびIgEを含む)、および任意のアイソタイプ(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む)が挙げられる。ヒト化抗体が細胞傷害活性を示すことが所望される場合、この定常ドメインは、通常、補体結合性の定常ドメインであり、そしてそのクラスは、代表的にはIgG1である。このような細胞傷害活性が所望されない場合、この定常ドメインは、IgG2クラスであり得る。ヒト化抗体は、1つより多くのクラスまたはアイソタイプからの配列を含み得る(Vasquezに発行された米国特許第6,329,511号)。
【0046】
ヒト化に代わるものは、ファージ上で示されるヒト抗体ライブラリーまたはトランスジェニックマウスにおけるヒト抗体ライブラリーを使用することである(Vaughanら(1996)Nature Biotechnol.14:309〜314;Barbas(1995)Nature Medicine 1:837〜839;Mendezら(1997)Nature Genetics 15:146〜156;HoogenboomおよびChames(2000)Immunol.Today 21:371〜377;Barbasら(2001)Phage Display:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York;Kayら(1996)Phage Display of Peptides and Proteins:A Laboratory Manual,Academic Press,San Diego,CA;de Bruinら(1999)Nature Biotechnol.17:397〜399)。
【0047】
二機能性抗体が提供される。例えば、Mackら(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:7021〜7025;Carter(2001)J.Immunol.Methods 248:7〜15;Volkelら(2001)Protein Engineering 14:815〜823;Segalら(2001)J.Immunol.Methods 248:1〜6;Brennanら(1985)Science 229:81;Rasoら(1997)J.Biol.Chem.272:27623;Morrison(1985)Science 229:1202;Trauneckerら(1991)EMBO J.10:3655;ならびに米国特許第5,932,448号、同第5,532,210号および同第6,129,914号を参照のこと。一本鎖抗体および二重特異性抗体(diabody)が記載される。例えば、Maleckiら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:213〜218;Conrathら(2001)J.Biol.Chem.276:7346〜7350;Desmyterら(2001)J.Biol.Chem.276:26285〜26290;HudsonおよびKortt(1999)J.Immunol.Methods 231:177〜189;および米国特許第4,946,778号を参照のこと。
【0048】
抗原の精製は、抗体の生成のために必ずしも必要ではない。動物は、目的の抗原を有する細胞で免疫され得る。次いで、脾細胞が、この免疫された動物から単離され得、そしてこの脾細胞は、ハイブリドーマを産生するために骨髄腫細胞株と融合され得る(Meyaardら(1997)Immunity 7:283〜290;Wrightら(2000)Immunity 13:233〜242;Prestonら(前出);Kaithamanaら(1999)J.Immunol.163:5157〜5164)。
【0049】
治療抗体は、例えば、薬物低分子、酵素、リポソーム、ポリエチレングリコール(PFG)、または融合タンパク質抗体と結合体化され得る。例えば、van Oosterhoutら(2001)Int.J.Pharm 221:175〜186;MarshおよびKlinman(1990)144:1046〜1051;Kreitman(2001)Curr.Pharm.Biotechnol 2:313〜325;Dinndorfら(2001)J.Immunother.24:511〜516;Wahlら(2001)Int.J.Cancer 93:540〜600;Garber(2000)J.Nat.Cancer Instit.92:1462〜1464;Evertsら(2002)J.Immunol.168:883〜889;Chenら(2001)Int.J.Cancer 94:850〜858;Shaikら(2001)J.Control.Release 76:285〜295;Parkら(2001)J.Control.Release 74:95〜113;Solorzanoら(1998)J.Appl.Physiol.84:1119〜1130;Rosenbergら(2001)J.Appl.Physiol.91:2213〜2223;Bendeleら(2000)Arthritis Rheum.43:2648〜2659;TrakasおよびTzartos(2001)J.Neurochem.120:42〜49;Chapmanら(1999)Nature Biotechnol.17:780〜783;Gaidamakovaら(2001)J.Control.Release 74:341〜347;Coiffierら(2002)New Engl.J.Med.346:235〜242を参照のこと。
【0050】
抗体は、診断目的またはキット化の目的のために有用であり、そして、例えば、色素に結合している抗体、放射性同位元素に結合している抗体、酵素に結合している抗体、または金属(例えば、金コロイド)に結合している抗体を含む(Le Doussalら(1991)J.Immunol.146:169〜175;Gibelliniら(1998)J.Immunol.160:3891〜3898;HsingおよびBishop(1999)J.Immunol.162:2804〜2811;Evertsら(2002)J.Immunol.168:883〜889)。
【0051】
(VI.阻害レセプターおよび活性化レセプター)
本発明は、細胞活性を調節するために、2つの異なるレセプター(例えば、阻害レセプターおよび活性化レセプター)を架橋結合する方法を提供する。
【0052】
阻害レセプターの例としては、例えば、FcγRIIB、LAIR、FDF03、KIR、gp49B、ILT25、PIR−B、Ly49、CTLA−4、CD200Ra(配列番号2)、CD94/NKG2A、NKG2B−E、PECAM−1、CD5、CD22、CD72、PIR1、SIRPα、HM18、LRC、ILT、KIR,LIR、MIR、およびMAFAが挙げられる。例えば、Long(1999)Ann.Rev.Immunol.17:875〜904;Lanier(1997)Immunity 6:371〜378;Sinclair(1999)Scan.J.Immunol.50:10〜13;Panら(1999)Immunity 11:495〜506を参照のこと。阻害レセプターとしてはまた、DNAX表面タンパク質−1(別名DSP−1)(Cantoniら(1999)Eur.J.Immunol.29:3148〜3159)が挙げられる。
【0053】
活性化レセプターとしては、例えば、CD3、CD2、CD10、CD161、Dap12、KAR、KARAP、FcεRI、FcεRII、FcγRIIA、FcγRIIC、FcγRIII/CD16、Trem−1、Trem−2、CD28、p44、p46、B細胞レセプター、LMP2A、STAM、STAM−2、GPVI、およびCD40が挙げられる。例えば、Azzoniら(1998)J.Immunol.161:3493〜3500;Kitaら(1999)J.Immunol.162:6901〜6911;Merchantら(2000)J.Virol.74:9115〜9124;Pandeyら(2000)J.Biol.Chem.275:38633〜38639;Zhengら(2001)J.Biol.Chem.276:12999〜13006;Propstら(2000)J.Immunol.165:2214〜2221が挙げられる。
【0054】
本発明は、例えば、リンパ系細胞、骨髄性細胞、および内皮細胞を阻害するための方法を提供する。細胞阻害は、例えば、細胞、組織、器官、細胞外流体、動物、ヒト被験体、あるいはエキソビボの細胞または組織を、一機能性試薬、二機能性試薬または多機能性試薬あるいは結合組成物で処置することによって達成される。
【0055】
例えば、細胞表面上のレセプターの発現を調節する因子が、所望される。例えば、van de Winkelら(1991)J.Leukocyte Biol.49:511〜524;van de Winkelら(1993)Immunol.Today 14:215〜221;Heijnenら(1997)Intern.Rev.Immunol.16:29〜55;FridmanおよびSautes(1996)Cell−Mediated Effects of Immunoglobins、Chapman and Hall、New York、NY、39〜40頁を参照のこと。本発明は、CD200Raに特異的な結合組成物とCD200Ra(例えば、肥満細胞、APC,好中球、T細胞、B細胞、好塩基球、好酸球、または上皮細胞と関連する)の相互作用の効率を増大させるために、因子を使用して阻害レセプター(例えば、CD200Ra(配列番号2)の発現を増加させる工程を包含する。因子を使用して活性化レセプター(例えば、CD200Rb(配列番号4))の発現を増加させることもまた、企図される。この因子は、例えば、インターフェロンまたはIL−10のようなサイトカイン、成長因子、二機能性の試薬、酵素、あるいはアデノシンのような低分子を含み得る。この因子は、例えば、肥満細胞、樹状細胞、または他のAPC、あるいは好中球の成熟を促す因子(例えば、幹細胞因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、腫瘍壊死因子、またはIL−6)を含み得る(Hjertsonら(1999)Brit.J.Haematol.104:516〜522;AustenおよびBoyce(2001)Leuk.Res.25:511〜518;VandenabeeleおよびWu(1999)Immunol.Cell Biol.77:411〜419;Santiago−Schwarz(1999)J.Leuk.Biol.66:209〜216;Liuら(2001)Nat.Immunol.2:585〜589;Kondoら(2003)Ann.Rev.Immunol;Dumortierら(2003)Blood 101:2219〜2226)。
【0056】
(VII.スクリーニング)
動物、細胞、または試薬(例えば、ビーズまたはウェル)を含むアッセイが、CD200、CD200R、およびCD200とCD200Rとの間の相互作用を調節する因子をスクリーニングするために企図される。例えば、Steinitz(2000)Analyt.Biochem.232〜238;Gastら(1999)Analyt.Biochem.276:227〜241;Kaiserら(2000)Analyt.Biochem.282:173〜185;ならびに米国特許第6,176,962号および同第6,517,234号を参照のこと。
【0057】
細胞または動物は、スクリーニングの際のその使用を容易にするために、例えば、CD200Rを発現するように操作され得る。発現は、例えば、ハイブリダイゼーションをベースにした技術(Ausubelら(2001)Curr.Protocols Mol.Biol.,第4巻,John Wiley and Sons,New York,NY,25.0.1〜25B.2.20頁;Ausubelら(2001)Curr.Protocols Mol.Biol.,第3巻,John Wiley and Sons,New York,NY,14.0.1〜14.14.8頁;Liuら(2002)Analyt.Biochem.300:40〜45;Huangら(2000)Cancer Res.60:6868〜6874;Wittwerら(1997)Biotechniques 22:130〜138;Schmittgenら(2000)Analyt.Biochem.285:194〜204;Heidら(1996)Genome Res.6:989〜994)によって測定され得る。ポリペプチドは、例えば、抗体ベースの技術によって検出され得る。例えば、HarlowおよびLane(前出)、553〜612頁;Simsら(2000)Analyt.Biochem.281:230〜232を参照のこと。
【0058】
(VIII.治療組成物)
例えば、結合組成物、結合化合物、または抗体の処方物は、例えば、所望の純度を有する抗体を、凍結乾燥した固形形態または水性溶液形態の最適な生理学的に受容可能なキャリア、賦形剤、または安定化剤と混合することによって調製される。例えば、Hardmanら(2001)Goodman and Gilman‘s the Pharmacological Basis of Therapeutics、McGraw−Hill、New York、NY;およびGennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy、Lippincott、Williams、and Wilkins、New York、NY;Avisら(編)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications、Marcel Dekker、NY;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forma:Tablets、Marcel Dekker、NY;およびLibermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems、Dekker、NYを参照のこと。本発明の治療剤および薬剤は、例えば、抗炎症性剤、化学的治療剤または化学的予防剤と合わせられ得るか、またはこれらとともに使用され得る。
【0059】
受容可能なキャリア、賦形剤、緩衝剤、安定化剤、および界面活性剤が、記載される。例えば、米国特許第6,342,220号;同第5,440,021号;同第6,096,728号およびWeinerおよびKotkoskie(2000)Excipient Toxicity and Safety、Marcel Dekker、Inc.、New York、NYを参照のこと。
【0060】
治療抗体組成物は、一般的に、無菌のアクセスポート(access port)を有する容器(例えば、皮下注射針による貫通が可能なストッパーを有する静脈の溶液バックまたはバイアル)中に配置される。抗体投与の経路は、例えば、静脈経路、腹腔内経路、脳内経路、筋内経路、眼内経路、動脈内経路、脳脊髄内経路、病変内経路、または肺経路による注射または注入であるか、あるいは叙放系による。叙放系が記載される。例えば、Sidmanら(1983)Biopolymers、22:547〜556;Langerら(1981)J.Biomed.Mater.Res.15:167〜277;Langer(1982)Chem.Tech.12:98〜105;Epsteinら(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688〜3692;Hwangら(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4030〜4034;米国特許第6,350466号および同第6,316,024号を参照のこと。
【0061】
治療的に使用されるべき抗体の「有効量」は、例えば、治療対象、投与経路、使用される抗体の型、および患者の状態に依存する。従って、最適な治療効果を得るための要求に応じて、療法士が投与量を滴定し、そして投与経路を改変することが必要である。代表的には、臨床家は、所望の効果を達成する投与量に到達するまで、抗体を投与する。この治療の進行は、従来のアッセイによって容易にモニターされる。
【0062】
例えば、炎症性障害または増殖性障害の処置または予防において、企図される方法によって、結合組成物は、処方され、調薬され、そして良好な医事と一致する様式で投与される。この状況において考慮すべき因子としては、処置されるべき特定の障害、処置されるべき特定の哺乳類、個々の患者の臨床状態、障害の原因、抗体の送達部位、抗体の特定の型、投与方法、投与計画、および実務家に公知である他の因子が挙げられる。投与されるべき抗体の「治療上有効な量」は、このような考慮によって支配され、そして増殖性の障害を予防するか、寛解させるか、または処置するために必要な最小量である。このような量は、好ましくは、宿主に対して毒性である量より低い。
【0063】
一般的な提案として、非経口投与される抗体の初期の薬学的に有効な量は、1日あたり患者の体重量の約0.1μg/kg〜10mg/kg、通常は、0.1μg/kg/日〜1.0mg/kg/日であり、好ましくは、0.1μg/kg/日〜0.1mg/kg/日であり、より好ましくは、0.1μg/kg/日〜0.01mg/kg/日であり、そして最も好ましくは、0.1μg/kg/日か、またはそれ以下の範囲である。所望の投薬量は、抗体の単回のボーラス投与、複数のボーラス投与、または連続注入投与によって送達され得、実務家が達成を望む薬物動態学のパターンに依存する。しかし、上述されるように、これらの示唆される抗体量は、かなりの量の決定権に供される。適切な投薬量および計画を選択する際の重要な因子は、得られる結果である。
【0064】
(IX.二次治療)
本発明は、CD200Rのアゴニストまたはアンタゴニストの、第二の因子(例えば、抗炎症剤、免疫抑制剤、または抗新生物剤)との併用の使用を企図する。抗炎症剤としては、例えば、ステロイドおよび非ステロイド性抗炎症剤(米国特許第6,294,170号(Booneらに発行);米国特許第6,096,728号(Collinsらに発行);Hardmanら(2001)Goodman and Gilman’s the
Pharmacological Basis of Therapeutics、McGraw−Hill、New York、NY)が挙げられる。免疫抑制剤としては、例えば、アゾチオプリン(azothioprine)、メルカプトプリン、およびメトトレキサートが挙げられる。抗新生物剤としては、例えば、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、シス−プラチン(cis−platin)、ドキソルビシン(米国特許第6,066,668号(Hauheerらに発行))が挙げられる。
【0065】
(X.キット)
企図される方法は、キットにおける使用について、(すなわち、スクリーニング目的または診断のために)適応される。このキットは、CD200Rに対する結合組成物の検出または定量における(例えば、薬学的組成物または生物学的サンプルにおける)使用について、適応され得る。企図されるキットは、例えば、被験体または患者由来の肥満細胞に対する使用について、適用される。代表的には、このキットは、区画、因子、または使用もしくは廃棄の説明書、あるいはこれらの任意の組み合わせを有する。結合アッセイに適応したキットは、例えば、米国特許第6,306,608号;同第6,150,122号;同第6,083,760号;および同第5,863,739号に記載される。
【0066】
(XI.利用法)
本発明は、CD200Rに特異的な結合組成物を使用して、免疫系の細胞(例えば、肥満細胞、樹状細胞のようなAPC、T細胞、好中球、単球、またはマクロファージ)の不都合な機能に関連する障害を調節するための方法を、企図する。この結合組成物は、CD200Rのアゴニストまたはアンタゴニストを含み得る。阻害レセプター(例えば、CD200Ra(配列番号2または6))のアゴニストは、肥満細胞、樹状細胞のようなAPC、T細胞、好中球、単球、またはマクロファージの活性の阻害において有用である。活性化レセプター(例えば、CD200Rb(配列番号4、6、10または12))のアンタゴニストもまた、肥満細胞、樹状細胞のようなAPC、T細胞、好中球、単球、またはマクロファージの活性の阻害において有用である。CD200RaのアンタゴニストまたはCD200Rbのアゴニストは、感染および増殖の状態の処置のために、例えば、肥満細胞、樹状細胞のようなAPC、T細胞、好中球、単球、またはマクロファージを刺激するために有用である。
【0067】
本発明の方法は、種々の免疫障害(例えば、気道過敏性、アレルギー性鼻炎、喘息、気道炎、およびアナフィラキシー)を処置または診断するための、例えば、ペプチド、低分子、抗体、および抗体の抗原結合部位に由来する結合組成物の使用を企図する。例えば、WoodruffおよびFahy(既出);Plaut(2001)J.Am.Med.Assoc.286:3005−3006;ならびにMarshallおよびBienenstock(1994)Curr.Op.Immunol.6:853−859;LuskinおよびLuskin(1996)Am.J.Ther.3:515−520を、参照のこと。
【0068】
本発明の方法はまた、関節リウマチおよび皮膚障害(乾癬およびアトピー性皮膚炎を含む)を処置または診断するために使用され得る。例えば、MicanおよびMetcalfe(1990)J.Allergy Clin.Immunol.86:677−683;Maloneら(1987)Arthritis Rheum.30:130−137;Malfaitら(1999)J.Immunol.163:6278−6280;AckermannおよびHarvima(1998)Arch.Dermatol.Res.290:353−359;Ackermannら(1999)Brit.J.Dermatol.140:624−633;Askenaseら(1983)J.Immunol.131:2687−2694を、参照のこと。本方法はまた、消化管の炎症性疾患(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性大腸症候群)の処置または診断も企図する。例えば、Malaviyaら(1995)Am.J.Ther.2:787−792;Jeziorskaら(2001)J.Pathol.194:484−492;Sullivanら(2000)Neurogastroenterol.Motility
12:449;Nolteら(1990)Gut 31:791−794;Raithelら(2001)Scand.J.Gastroenterol.36:174−179を、参照のこと。本方法はまた、慢性的肝臓疾患および鬱血性心不全の処置における使用も企図する(O’Keefeら(2002)Liver Transpl.8:50−57;Haraら(2002)J.Exp.Med.195:375−381)。
【0069】
本発明はまた、脱髄または神経変性(例えば、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、アルツハイマー病、パーキンソン病、および癲癇)の処置または診断の方法も包含する(PurcellおよびAtterwill(1995)Neurochem.Res.20:521−532;Secorら(2000)J.Exp.Med.191:813−822;DinesおよびPowell(1997)J.Neuropathol.Exp.Neurol.56:627−640;PurcellおよびAtterwill(1995)Neurochem.Res.20:521−532;DierschおよびHinrichs(1989)J.Immunol.142:1476−1481)。
【0070】
さらに、本発明は、ショーグレン症候群、移植拒絶および移植片拒絶、移植片対宿主病(GVHD)、肥満細胞症を処置するかまたは診断する方法、ならびに血管新生を防ぐ方法を、包含する(PedersenおよびNauntofte(2001)Expert
Opin.Pharmacother。2:1415−1436;Konttinenら(2001)Rheumatol.Int.19:141−147;Moutsopoulous and Youinou(1991)Curr.Opin.Rheumatol.3:815−822,Gorczynskiら(2000)Clin.Immounol.95:182−189;Koskinenら(2000)Transplantation 71:174−1747;O’Keefeら(2002)Liver Transpl.8:50−57;Lajoieら(1996)Mod.Pathol.9;1118−1125;Pardoら(2000)Virchows Arch.437:167−172;Yousem(1997)Hum.Pathol.28:179−182;ならびにLevi−SchafferおよびWej(1997)Clin.Exp.Allergy 27(補遺)1:64−70;Tomitaら(2000)Ann.Thorac.Surg.69:1686−1690;BrockowおよびMetcalfe(2001)Curr.Opin.Allergy Clin.Immunol.1:449−454;HiromatsuおよびToda(2003)Microsc.Res.Tech.60:64−69)。
【0071】
本発明のさらに別の局面は、心血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化)の処置または予防のためにCD200R(例えば、配列番号2)の活性を調節する方法を提供する。免疫細胞(例えば、肥満細胞、樹状細胞、好中球、単球、およびマクロファージ)は、アテローム性動脈硬化の病理学に寄与する。例えば、Huangら(2002)Cardiovasc.Res 55:150−160;Kelleyら(2000)Mol.Med.Today 6:304−308;Aicherら(2003)Circulation 107:604−611;Ozmenら(2002)Histol。Histopathol 17:223−237;Wandersら(1994)Transpl.Int.7(補遺)1:S371−S375を、参照のこと。
【0072】
CD200Ra(配列番号2)のアンタゴニストまたはCD200Rb(配列番号4)のアゴニストを提供し、細胞活性を刺激する(細菌感染、ウイルス感染、持続感染、外来の多細胞生物による感染、癌の状態および腫瘍を攻撃し、そして創傷治癒を促進する)方法もまた、包含される。
【0073】
本発明の広範な範囲は、以下の実施例に関して最もよく理解される。これらの実施例は、本発明を特定の実施形態に限定することを意図しない。
【実施例】
【0074】
(I.一般的方法)
動物およびヒトにおける、炎症状態の処置または診断のための方法が、記載される。例えば、Ackerman(1997)Histological Diagnosis of Inflammatory Skin Disease,第2版、Lippincott,Williams,and Wilkins,New York,NY;Gallin,ら(1999)Inflammatation:Basic Principles and Clinical Correlates,第3版,Lippincott,Williams,and Wilkins,New York,NY;GeppettiおよびHolzer(1996)Neurogenic Inflammatation,CRC Press,Boca Raton,FL;Nelsonら(2000)Cytokines in Pulmonary Disease:Infection and Inflammatation,Marcel Dekker,Inc.,New York,NY.,;O’Byrne(1990)Asthuma as an
Inflammatory; Parnhamら(1991)Drugs in Inflammatation(Agents and Actions(補遺)Vol.32)Springer Verlag,Inc.,New York,NY;Benezra(1999)Ocular Inflammatation:Basic and Clinical Concepts,Blackwell Science,Ltd.,Ocford,UKを、参照のこと。
【0075】
分子生物学における標準的方法が、記載される(Maniatisら(1982)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold
Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;SambrookおよびRussell(2001)Molecular Cloning,(第3版)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Wu(1993)Recombinant DNA,Vol.217,Academic Press,San Diego,CA)。標準的方法はまた、Ausbelら(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vols.1−4,John Wiley and Sons,Inc.New York,NY(細菌細胞におけるクローニングおよびDNA突然変異誘発(Vol.1)、哺乳動物細胞および酵母におけるクローニング(Vol.2)、複合多糖およびタンパク質発現(Vol.3)、およびバイオインフォマティクス(Vol.4)を記載する)でも記載される。
【0076】
タンパク質精製のための方法が記載され、これらとしては、免疫沈降法、クロマトグラフィー、電気泳動法、遠心分離法および結晶化が挙げられる(Coliganら(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York)。化学分析、化学修飾、転写後修飾、およびタンパク質の糖鎖形成は、記載される(Coliganら(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.2,John Wiley and Sons,Inc.,New York)。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の産生、精製、および断片化が、記載される(Coliganら(2001)Current Protocols in Immunology,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York;HarlowおよびLane(1999)Using Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;HarlowおよびLane(既出))。
【0077】
リガンド/レセプター相互作用を特徴付けるための標準的技術が、利用され得る。例えば、Coliganら(2001)Current Protocols in Immunology,Vol.4,John Wiley and Sons,Inc.,New Yorkを、参照のこと。
【0078】
細胞および組織の培養における標準的技術が、記載される。例えば、Freshney(2000)Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique,第4版、Wiley−Liss,Hoboken,NJ;Masters(編)(2000)Animal Cell Culture:A Practical Approach,第3版,Oxford Univ.Press,Oxford,UK;Doyleら(編)(1994)Cells and Tissue Culture:Laboratory Procedures,John Wiley and Sons,NY;Melamedら(1990)Flow Cytometry and Sorting,Wiley−Liss,Inc.,New York,NY;Shapiro(1988)Practical Flow Cytometry,Liss,New York,NY;Robinsonら(1993)Handbook of Flow Cytometry Methods,Wiley−Liss,New York,NYを、参照のこと。
【0079】
関節炎、多発性硬化症、乾癬、およびリポ多糖類(LPS)誘導性炎症についての動物モデルが、利用可能である。例えば、LurossおよびWilliams(2001)Immunology 103:407−416;GriffithsおよびRemmers(2001)Immunol.Rev.184:172−183;Beurler(2000)Curr.Opin.Immunol.12:20−26;Campbellら(1998)J.Immunol.161:3639−3644;Tompkinsら(2002)J.Immunol.168:4173−4183;Hongら(1999)J.Immunol.162:7480−7491を、参照のこと。
【0080】
例えば、抗原性フラグメント、シグナル配列およびリーダー配列、タンパク質の折り畳み、および機能的ドメインを決定するためのソフトウェアパッケージが、利用可能である。例えば、Vector NTI(登録商標)Suite(Informax、Inc.,Bethesda,MD);GCG Wisconsin Package(Accelrys,Inc.,San Diego,CA),およびDeCypher(登録商標)(TimeLogic Corp.,Crystal Bay,Nevada);Menneら(2000)Bioinformatics 16:741−742を、参照のこと。また、公共の配列データベース(例えば、GeneBankなどから)も、使用した。
【0081】
(II.肥満細胞の調製)
マウス肥満細胞培養物を、2〜3週齢のC57BL/6マウスから樹立した。骨髄を、2〜3匹のマウスの大腿骨から採取し、その後リン酸緩衝化食塩水(PBS)で3回洗浄した。細胞を、ピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸、2−メルカプトエタノール、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)、グルタミン、10〜15%ウシ胎児血清(Hyclone,Inc.,Logan,UT)、100ng/mg rSCF、および100ng/mlのrIL−3で補充したDulbecco最小必須培地(MEM)15mlに再懸濁した。細胞を、T25フラスコ中において37℃でインキュベートした。非接着細胞を、1週間間隔で新鮮な培地でリフィードし、新しいフラスコに移した。2週間目に、培養培地に、5.0ng/mlのIL−4で補充した。4週間目には、非接着細胞の大部分は、IgE FcRを発現する、代表的なマウス肥満細胞となることが予測される。4週間目から、細胞をrIL−3およびIL−4の補充のみで維持した。
【0082】
(III.CD200Rの分布)
RNAEASY(登録商標)RNA単離キット(Qiagen,Inc.,Valencia,CA)を使用して、総RNAを、種々の細胞型および組織から単離した。RNAを、オリゴdTプライマーおよびMultiscribe(登録商標)逆転写酵素(Applied Biosystems、Inc.,Foster City,CA)を用いて、逆転写した。cDNAを、CD200レセプターおよびユビキチンの発現について、Perkin Elmer ABI Prism 5700(登録商標)配列検出システム(Perkin Elmer,Inc.,Wellesley,MA)を使用したTaqman(登録商標)PCRアッセイにより、分析した。標的遺伝子発現の定量を、ユビキチン発現に対応する値を基準化することにより、算出した。
【0083】
Taqman(登録商標)分析の結果を、表1に示す。最高の発現を(+++)で表し、中程度の発現を(++)または(+)で表し、一方で、検出不可能な発現レベルとの境界線を(−)で表した。NDは、未測定を意味する。
【0084】
【表1−1】

【0085】
【表1−2】

(IV.CD200RとDap12の結合)
CD200レセプターのDap12との結合を確認するため、CD200レセプターを、以前に以下のFLAGタグ化分子(Dap12、Dap10、FcεRγ、またはCD3−ζ)の1つでトランスフェクトしたBaf細胞株に、レトロウイルスベクターにより導入した。FLAGタグ化分子は、適切な対合パートナー分子と安定的に結合する場合、細胞表面上でのみ発現される。マウスCD200Rc(配列番号10)またはマウスCD200Rd(配列番号12)をこれらのトランスフェクト体の中に導入した場合、FLAGタグ化Dap12のみがレスキューされ、CD200レセプターがDap12と特異的に対になることを示した。
【0086】
(V.CD200Rのアゴニスト抗体)
エピトープタグ化CD200R分子を、正常マウス肥満細胞に、安定的に導入した。次いで、これらのCD200Rを、種々のエピトープタグに特異的なモノクローナル抗体と直接に結合させた。その後、抗タグ抗体を交差結合させ、または交差結合させずに、肥満細胞の脱顆粒、サイトカイン分泌、および増殖を、モニターした。CD200Raの誘発は、休止肥満細胞に対して効力を有さないが、しかし、Dap12と対になるCD200レセプター(すなわち、活性化CD200R)の誘発は、有意の、肥満細胞脱顆粒、サイトカイン分泌、および自己分泌依存性増殖を引き起こした。
【0087】
エピトープタグ化CD200Raを、正常肥満細胞内に安定的に導入した。エピトープタグをさらに含むCD200Ra(配列番号6)を、CD200 Ig融合タンパク質またはエピトープタグに対するモノクローナル抗体と結合させる一方で、IgE抗体でFcεRIを活性化させた。次いで、肥満細胞を、脱顆粒、サイトカイン分泌、および増殖応答について、モニターした。幾つかの実験において、CD200RaおよびFcεRIを、二次抗体によって共連結させた。これらの結果は、CD200Raが肥満細胞においてFcεRI依存性応答を阻害し得る阻害性レセプターであることを、実証した。
【0088】
関連の研究において、マウスCD200Ra(配列番号6)に特異的なモノクローナル抗体を、抗タグ抗体の代わりに使用した。マウス肥満細胞を用いたこれらの研究における結果は、CD200Raが阻害性レセプターであることを、再び示した。
【0089】
ヒトCD200Raに特異的なモノクローナル抗体を、活性化肥満細胞を使用して、アゴニスト活性について試験した。抗huCD200Ra抗体(すなわち、DX136(rIgG2a)およびDX139(rIgM))を、ヒトCD200Raを発現するマウス肥満細胞を用いて脱顆粒および分泌における変化を評価することによって測定した際に、これらがCD200Raのアゴニストであることを見出した。アゴニスト活性を、IC50で表した。
【0090】
Fc領域に融合する2つのCD200細胞外ドメインを含む融合タンパク質をまた、アゴニスト活性(huCD200−Ig;muCD200−Ig)について試験した。これらの融合タンパク質は、変異(Fcの定常領域内のD265Aを使用し、huCD200−IgおよびmuCD200−Igの両方を作製する)を含み、Fcレセプター(FcR)および補体に対する結合を防いだ(Idusogieら(2000)J.Immunol.164:4178−4184)。これらの融合タンパク質はまた、肥満細胞の脱顆粒およびサイトカイン分泌を阻害するシグナルも、送達した。
【0091】
血液細胞のFACS分析は、CD200Rを発現する白血球細胞の型を明らかにした(示した抗体により細胞をタグ化した)(表2)。レセプターの内在化を、共焦点顕微鏡により、測定した(Liuら(1998)Cancer Res.58:4055−4060;Leeら(2000)J.Pharmacol.Exp.Therapeutics
292:1048−1052)(表2)。NDは、未測定を意味する。免疫組織化学(IHC)は、凍結アセトン固定化ヒト組織または凍結アセトン固定化マウス組織、あるいはホルマリン化した固定化、パラフィン包埋ヒト組織またはホルマリン固定化したパラフィン包埋マウス組織中の細胞を染色する、示したmAbの能力を言及する。
【0092】
【表2】

ヒトCD200Ra分子を発現するマウス肥満細胞を、25μg/mlのモノクローナル抗体で刺激し、マウスCD200RdのDap12連結活性化レセプターを誘発して、その後にβ−ヘキサミニダーゼの分泌を、1.0時間にわたって測定した(表2)。抗CD200Ra抗体またはCD200−Ig融合タンパク質のアゴニスト活性を、細胞インキュベーション混合物に抗CD200Ra抗体またはCD200−Ig融合タンパク質を加えて分泌阻害を決定することにより、評価した。インキュベーションを、0μg/ml、0.01μg/ml、0.03μg/ml、0.1μg/ml、0.3μg/ml、1.0μg/ml、3.0μg/ml、および9.0μg/mlの濃度の抗体またはCD200−Ig融合タンパク質の存在下で行った。コントロール細胞インキュベーションを、ラットアイソタイプコントロールmAb存在下で行った。
【0093】
これらの結果は、抗CD200RaのそれぞれおよびCD200−Ig融合タンパク質での処理が、肥満細胞脱顆粒を阻害することを実証した。コントロールアイソタイプ抗体は、分泌に検出可能な影響を及ぼさなかった。しかし、試験化合物のそれぞれは、異なった効率(IC50(表2)で決定される)で阻害した。より良いアゴニストの効果を有することに加え、抗体の効果はまた、Ig−融合タンパク質の効果より、長く続いた。
【0094】
マウス肥満細胞を、抗原(TNP−キーホールリンペットヘモシアニン;KIH)を有するIgE抗TNPで刺激し、続けて、放出されたβ−ヘキソサミニダーゼ(脱顆粒;Abs405650)およびサイトカイン(分泌)をアッセイした(図1〜2)。脱顆粒シグナル(IgEおよびTNP)を、示した濃度で使用した。DX109モノクローナル抗CD200R抗体(mAb)およびコントロールラットIgG1 mAbを、肥満細胞活性の阻害におけるこれらの効果について、試験した。DX109mAbまたはラットIgG1mAbを、一定濃度(13nM)で加えた。アッセイしたサイトカインは、IL−13および腫瘍壊死因子(TNF)(図1〜2)であった。ヘキソサミニダーゼ放出によって評価される脱顆粒を、調べた(図1)。コントロールラットIgG1を加えた場合、刺激物質濃度の増加に続けてヘキサソミニダーゼ放出が増加した(図1、黒四角、上側の曲線)が、一方、DX109mAbの添加を含むインキュベーションは、刺激物質の最高レベルにおける場合を除き、比較的低いレベルのヘキソサミニダーゼ放出を有した(図1、黒三角、下側の曲線)。刺激物質の増加は、IL−13(図2、黒丸)およびTNF(図2、黒四角)の分泌の増加を生じ、ここで、両サイトカインの分泌は、DX109モノクローナル抗体によって阻害された。これらの結果は、抗CD200R抗体が脱顆粒およびサイトカイン分泌に効果的であることを、実証する。
【0095】
(VI.阻害レセプターと活性化レセプターの架橋)
ヒト肥満細胞による脱顆粒および分泌を、抗IgEレセプター抗体(IgEレセプターに結合する)の添加、抗CD200R抗体(CD200Ra(配列番号2)に結合する)の添加、およびヤギ抗マウスF(ab’)(抗IgE抗体(IgEレセプターに結合している)と抗CD200R抗体(CD200Rに結合している)とに同時に結合する)を含むプロトコールによって測定した。コントロール実験は、本プロトコールの変更を含んだ。
【0096】
臍帯血細胞の全体を、幹細胞刺激因子(SCF)およびIL−6を補充したYssels培地中で4〜6週間培養し、ヒト肥満細胞を産生した。IL−4およびIgEを、さらなる2週間にわたって、培養物に加えた。次いで、細胞を、96ウェル平底プレート内に10細胞/ウェルでプレートした。次いで、阻害抗体(抗CD200Ra抗体)またはコントロール抗体(マウスIg)を、加えた。20分のインキュベーション後、抗IgEレセプター抗体を、20ng/mlの濃度まで加えた。さらなる20分のインキュベーション後、ウェルを洗浄し、架橋剤(crosslinker)(ヤギ抗マウス抗体)を加えた。混合物を1時間インキュベートし、上清を除去し、脱顆粒アッセイ(トリプターゼ放出により評価する)のために使用した。トリプターゼアッセイを、基質N−α−ベンジル−DL−アルギニンp−ニトロアニリド塩酸塩(BAPNA)を用い、405〜570nmでの色測定によって、行った。
【0097】
脱顆粒(トリプターゼ放出)は、抗IgEレセプター抗体およびコントロール抗体(マウスIg)の添加で、最大である。最大トリプターゼ放出は、これらの条件下で、Abs405−570=0.44−0.51となった。抗CD200Ra抗体とのインキュベーションにおいて、抗CD200Ra抗体の滴定レベルを使用した(0〜1000ng/ml抗CD200Ra抗体)。異なったレベルの抗体を、別々のインキュベーション混合物中で使用した。増加するレベルの抗CD200Ra抗体は、トリプターゼ放出の進行性の阻害をもたらした(ここで、最大の阻害(Abs405−570=0.05)は、約1000ng/ml抗CD200Ra抗体で生じた)。中間レベルの抗CD200Ra抗体(200ng/ml)は、トリプターゼ放出を、最大トリプターゼ放出のレベルの約25%まで阻害した。これらの結果は、CD200RaのIgEレセプターとの架橋が、ヒト肥満細胞において、IgEレセプター依存性脱顆粒を妨げることを実証した。
【0098】
種々の阻害レセプター(CD200Ra(配列番号2)以外)の、FcεRIとの架橋もまた、肥満細胞活性を阻害した。調べた阻害レセプターは、DSP−1およびLAIR−1であった。抗DSP−1抗体および抗LAIR−1抗体を、それぞれDSP−1またはLAIR−1のアゴニストとして使用した。脱顆粒(トリプターゼ放出)は、抗IgEレセプター抗体+コントロール抗体(マウスIg)の添加で、最大であった。このような条件下の最大のトリプターゼ放出は、Abs405−570=0.05となった。別々のインキュベーション混合物中の異なったレベルの抗DSP−1抗体に対し、抗DSP−1抗体の滴定レベル(0〜1000ng/ml抗DSP−1抗体)を使用した。増加するレベルの抗DSP−1抗体は、トリプターゼ放出の進行性の阻害をもたらした(ここで、最大の阻害(Abs405−570=0.08)は、約40ng/ml抗DSP−1抗体およびより高い抗DSP−1抗体濃度において生じた)。中間濃度の抗DSP−1抗体(約8ng/ml)は、最大トリプターゼ放出の25%を生じた。これらの結果は、DSP−1のIgEレセプターとの架橋が、IgEレセプター依存性脱顆粒を妨げることを実証した。
【0099】
阻害レセプターLAIR−1に関する研究において、抗LAIR−1抗体を、0ng/mlまたは50ng/mlで使用した。インキュベーションが、活性化抗体(抗IgEレセプター抗体)のみを含む場合、トリプターゼ放出は、約Abs405−570=0.69(最大値と規定される)であった。インキュベーションが、活性化抗体(抗IgEレセプター)、抗LAIR−1抗体(50ng/ml)、および架橋剤を含む場合、トリプターゼ放出は阻害され、そして阻害されたレベルのトリプターゼ放出は、最大値の約10%(Abs405−570=0.07)であった。活性化抗体を含まないコントロールインキュベーションは、非常に少ないトリプターゼ放出を生じた(Abs405−570=0.06)。これらの結果は、LAIR−1のIgEレセプターとの架橋が、IgEレセプター依存性脱顆粒を妨げることを実証した。
【0100】
(VII.インビボでの肥満細胞脱顆粒の防止)
CD200Ra分子の闘争性(agonism)が、インビボでもまた、肥満細胞の脱顆粒を妨げ得るか否かを決定するため、受動皮膚アナフィラキシー(PCA)を、使用した。5匹の30gCDIマウスの群のマウスそれぞれに、100μgのDX109(ラット抗muCD200Ra mAb)を静脈注射した。5匹の30gCDIマウスの第2群のマウスそれぞれに、100μgのラットIgG1コントロールmAbを静脈注射した。1時間後、10匹全てのマウスの背中を剃り、そしてマウスIgE抗DNP mAbを、20μlの容量で、1匹のマウスにつき3箇所、1箇所につきIgEをそれぞれ10、20または40ng、皮内(i.d.)注射した。24時間後、全てのマウスに抗原(DNP−HSA)混合物およびEvan’s blue色素を、静脈内に与えた。注射した抗原が、皮膚肥満細胞に結合するIgEに結合して架橋する場合、脱顆粒が生じ、ヒスタミンのような媒介物の放出を導き、この媒介物が血管浮腫を引き起こし、血液から皮膚への青色色素の移動を可能にし、皮膚上に青色の斑が現れる。青色斑の大きさは、皮膚内のその部位に注射したIgEの量に比例する。100μgのコントロールIgG1 mAbを受けたマウスにおいて、PCA反応が進行し、5匹のマウス全てに青色斑が現れ、40ngのIgEを注射した部位に最大の斑が、10ngのIgEを注射した部位に最小の斑が現れた。DX109抗CD200Ra mAbを受けたマウスにおいて、注射されたどの濃度のIgEにおいても、青色斑は現れなかった。従って、インビトロ研究のように、DX109 mAbは、インビボの皮膚肥満細胞に阻害性シグナルを送達し、脱顆粒を防止した。
【0101】
(VIII.抗CD200Ra抗体を用いたコラーゲン誘導性関節炎(CIA)の処置)
マウスにおいてCIAを誘導し、その後に抗CD200Ra抗体(DX109 mAb)またはコントロール IgG抗体で処置した。雌性のB10RIIIマウス(8〜10週齢)を、フロイント完全アジュバント(CFA)において、ウシII型コラーゲンで処置した(Jirholtら(1998)Eur.J.Immunol.28:3321−3328)。0日目に、マウスを、CFA中のウシII型コラーゲンの1用量で処置した。7日目に抗体投与を開始し、抗体を、1週間間隔で投与した。DX109抗体およびコントロールIgGの用量は、7日目および14日目に腹腔内に1mg、21日目および28日目に皮下に1mgであった。疾患の等級付けを、14日目に開始し、45日目まで続けた。実験マウスにDX109を与え、一方、コントロールマウスにはコントロールIgGを与えた。
【0102】
CIAを、パーセント単位の累積性の発生率により、評点した。コントロール群は、以下を示した:t=14〜18日から0%スコア;t=19〜20日で40%スコア;t=21〜30日で60%スコア;およびt=31〜44日で80%スコア。DX109処置群は、以下を示した:t=14〜24日から0%スコアおよびt=25〜44日で20%スコア。従って、DX109処置はより低いスコアおよびCIAからの開放を生じる。
【0103】
CIAを、臨床スコア平均(MCS)(Hoekら(既出))によってもまた、評点した。コントロール群は、以下を示した:t=14〜19日でMCS=0;t=20〜21日でMCS=1;t=22〜31日でMCS=約−2;この後、MCS=約−4.5まで漸進的に増加し、MCS=約−4.5は31〜44日目で生じる。DX109処置群は、以下を示した:14〜24日目でMCS=0;25〜26日目でMCS=0.2;27〜34日目でMCS=0.5;35〜42日目でMCS=0.2;43〜44日目でMCS=0.5。再び、この結果は、DX109処置がより低いスコアおよびCIAからの開放を生じることを、実証する。
【0104】
(IX.LPS誘導性内毒血症に対する抗CD200R抗体の効果)
LPS処置によりマウスにおいて内毒血症を誘導し、その後、抗CD200R抗体(DX109)またはコントロール抗体での処置、および生存率の評価を、行った。LPS用量を、毒性およびマウスの死を引き起こすために十分な毒性を提供するために、調節する一方で、抗体が生存を増加するのを妨げる飽和レベルを回避した。マウスは、C57BL/6系統であった。マウスに、0.5mgの抗体を(腹腔内で)、2回の時点で(すなわち、LPSより1時間前およびLPSと同時に)与えた。抗CD200R抗体処置マウスは、種々の時点で、コントロール群と比較してより高い生存率を示した。この結果は、抗CD200R抗体が、マウスをLPS誘導性毒性から保護することを実証した。
【0105】
(X.ヒト皮膚におけるCD200Raの分布)
CD200Raは、ラット抗CD200Raによって緑色に可視化し、そしてAlexa Fluor(登録商標)−488(Molecular Probes,Eugene,OR)含有のヤギ抗ラットでタグ化した。肥満細胞を、マウス抗CD117(肥満細胞のマーカー)で赤色に可視化し、そしてAlexa Fluor(登録商標)−594(Molecular Probes,Eugene,OR)含有ヤギ抗マウスでタグ化した。抗CD117での染色は、分散した一群の赤色の斑点の配列を明らかにした。両抗体での染色は、抗CD200Ra保有細胞の約1/3が肥満細胞であることを示した。
【0106】
正常ヒト皮膚もまた、マクロファージ上でのCD200Ra(配列番号2)の局在化について試験した。CD200Raを、緑色にタグ化された抗CD200Raによって染色することにより、位置決定した。マクロファージを、赤色にタグ化された抗CD11b抗体によって位置決定した。抗体単独または両方一緒の抗体いずれかでの染色は、マクロファージの大半がCD200Raを発現することを実証した。
【0107】
正常ヒト皮膚および乾癬皮膚を、抗CD200Ra(DX136)でプローブし、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で染色し、そして可視光下で検査した。この結果は、乾癬の皮膚が、正常な皮膚と比較して、真皮および表皮の両方で豊富に染まることを示した。乾癬の皮膚は、CD200Ra細胞の大型の塊を含んだ(これらの細胞はT細胞および骨髄性細胞からなるようであった)。
【0108】
(配列識別子)
配列番号1は、ヒトCD200Ra核酸である。
配列番号2は、ヒトCD200Raポリペプチドである。
配列番号3は、ヒトCD200Rb核酸である。
配列番号4は、ヒトCD200Rbポリペプチドである。
配列番号5は、マウスCD200Ra核酸である。
配列番号6は、マウスCD200Raポリペプチドである。
配列番号7は、マウスCD200Rb核酸である。
配列番号8は、マウスCD200Rbポリペプチドである。
配列番号9は、マウスCD200Rc核酸である。
配列番号10は、マウスCD200Rcポリペプチドである。
配列番号11は、マウスCD200Rd核酸である。
配列番号12は、マウスCD200Rdポリペプチドである。
配列番号13は、ラットCD200R核酸である。
配列番号14は、ラットCD200Rポリペプチドである。
【0109】
本明細書中の全ての引用は、各々個別の刊行物、特許出願または特許が、全ての図面を含めて具体的かつ個別に参考として援用されることを示されるのと同じ程度に、本明細書中で参考として援用される。
【0110】
当業者に明らかであるように、本発明の目的、精神および範囲を保護するために、特定の状況、物質、組成物、プロセス、工程に適合させるように、本発明の多くの改変および変更が、なされ得る。このような全ての改変は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に添付の特許請求の範囲の範囲内にあることが、意図される。本明細書中に記載される特定の実施形態は、ほんの一例として提供されたに過ぎず、そして本発明は、添付の特許請求の範囲によって、これらの特許請求の範囲に与えられる権利と等価の全ての範囲と共に限定される;そして本発明は、本明細書中で例として示されている特定の実施形態に限定されるべきではない。
(配列表)
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【数5】

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【数8】

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【数10】

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【数15】

【数16】

【数17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−178813(P2011−178813A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−134635(P2011−134635)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【分割の表示】特願2003−576000(P2003−576000)の分割
【原出願日】平成15年3月13日(2003.3.13)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】