説明

CD59のレベルを調節するための、免疫調節化合物を使用する方法

低いCD59レベルに関連する障害を治療、予防又は管理する方法が提供される。前記方法は、本明細書において提供される免疫調節化合物、例えば3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオン又は1,3−ジオキソ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−4−アミノイソインドリンの投与を包含する。免疫調節化合物をその他の治療薬又は治療法と組合せて用いる治療方法がさらに記載される。本明細書において提供される方法での使用に適した医薬組成物及び単回剤形も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年1月29日出願の米国特許仮出願第61/063,011号に対する優先権を主張し、その全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
1.分野
本明細書において、溶血性疾患、例えば、発作性夜間ヘモグロビン尿症(「PNH」)などを含むCD59欠損症に関連する疾患を免疫調節化合物を投与することにより治療、予防、又は管理する方法が提供される。例示的な免疫調節化合物としては、例えば、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオン(レナリドマイドとしても公知)及び4−アミノ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)イソインドリン−1,3−ジオン(CC−4047又はポマリドマイド(pomolidomide)としても公知)が挙げられる。
【0003】
一実施形態では、本明細書に提供される方法及び組成物は、レナリドマイドとその他の治療法、例えばステロイドを用いる治療、輸血、抗凝血療法、骨髄移植及びそれらの組合せ、との特定の組合せ又は「カクテル」の使用を包含する。免疫調節化合物を用いる医薬組成物及び投薬計画も提供される。
【0004】
2.背景
発作性夜間ヘモグロビン尿症(「PNH」)は、赤血球が損なわれ、従って正常な赤血球よりも赤血球が急速に破壊される血液障害である。PNHは骨髄細胞の突然変異の結果起こり、異常な血液細胞の産生をもたらす。より具体的には、PNHは、別個の成熟血液細胞集団を生じさせる造血幹細胞の障害であると考えられる。この疾患の基礎は、タンパク質と細胞膜の結合を担うグリコシル−ホスファチジルイノシトール(「GPI」)アンカーの合成不能につながる体細胞変異であると考えられる。変異遺伝子である、PIG−A(ホスファチジルイノシトールグリカンクラスA)はX染色体上にあり、欠失から点変異までさまざまの数個の異なる突然変異を有する可能性がある。
【0005】
PNHは、細胞膜で生じる補体タンパク質に対する感受性を引き起こす。PNH細胞は、多数のタンパク質を欠損している。例えば、PNH細胞は、重要な補体調節表面タンパク質の欠損に関連している。これらの補体調節表面タンパク質には、CD55としても公知の崩壊促進因子(「DAF」)及び、CD59としても公知の反応性溶解の膜インヒビター(「MIRL」)が含まれる。
【0006】
CD59欠損症はまた、虚血再灌流傷害(Yamada et. al. J. Immun. 2004; Omidvar et. al. J. Immun. 2006, Turnberg et al Amer. J of Pathology 2004)及び自己免疫疾患、例えば紅斑性狼瘡(lupus erythematosis)及び関節リウマチ(Kinderlerer et al. Arhritis Research & Therapy 2006, Alahlafi et. al. J Cutaneous Pathology 2005)を含む疾患の病態生理学において潜在的な役割を有すると文献に記載されている。
【0007】
溶血性疾患、例えばPNHなどを含むCD59欠損症に関連する疾患を治療、予防又は管理するために使用することのできる、効果的な方法及び組成物が継続的に必要とされている。
【0008】
3.概要
一実施形態では、血液疾患、例えば、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)などを含むCD59欠損症に関連する疾患を治療、予防、又は管理する方法が本明細書において提供される。
【0009】
もう一つの実施形態では、CD59のレベルを上方制御するための方法が本明細書において提供される。ある種の実施形態では、CD59のレベルは、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又はそれ以上より多く上方制御される。ある種の実施形態では、CD59のレベルは、遺伝子発現(例えば、転写及び翻訳)を刺激することにより上方制御される。ある種の実施形態では、虚血性再灌流傷害及び自己免疫疾患、例えば紅斑性狼瘡(lupus erythematosis)及び関節リウマチを治療、予防又は管理する方法が提供される。
【0010】
別の態様では、溶血性疾患に罹患している患者において全赤血球含量中の補体感受性III型赤血球の割合を増加させる方法が企図される。ある種の実施形態では、補体感受性III型赤血球の割合を増加させることにより、溶血性疾患に罹患している患者において全赤血球数の増加がもたらされる。ある種の実施形態では、補体感受性III型赤血球の割合は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又はそれ以上より多く増加する。III型赤血球数を増加させることにより、溶血性疾患に罹患している患者において、疲労及び貧血などの症状も軽減され得る。従って、ある種の実施形態では、溶血性疾患に罹患した対象において疲労を治療するための方法が本明細書において提供される。
【0011】
もう一つの実施形態では、血栓症を治療する方法が本明細書において提供される。さらにもう一つの態様では、1)(例えば、産生を後押しし、幹細胞破壊を除去するか又は幹細胞阻害を除去することのいずれかにより)造血を増加させることが公知の1種類以上の化合物と、2)本明細書に提供される免疫調節化合物を組み合わせて投与することにより、溶血性疾患に罹患した対象を治療する方法が本明細書において提供される。造血を増加させることが公知の適した化合物としては、例えば、ステロイド、免疫抑制薬(例えばシクロスポリンなど)、抗凝固薬(例えばワルファリンなど)、葉酸、鉄など、エリスロポエチン(EPO)及び抗胸腺細胞グロブリン(ATG)及び抗リンパ球グロブリン(ALG)が挙げられる。ある種の実施形態では、エリスロポエチン(EPO)(造血を増加させることが公知の化合物)が抗C5抗体と組み合わせて投与される。抗C5抗体の例としては、限定されるものではないが、エクリズマブ、h5G1.1−mAb、h5G1.1−scFv及びその他のh5G1.1の機能性断片が挙げられる。
【0012】
本方法は、患者に治療上又は予防上有効量の、本明細書において提供される免疫調節化合物、あるいはその製薬上許容される塩、溶媒和物(例えば、水和物)、立体異性体、クラスレート、又はプロドラッグを投与することを含む。
【0013】
もう一つの実施形態では、本明細書において提供される免疫調節化合物は、溶血及び血栓症を含む、CD59の欠損症に関連する症状を治療、予防又は管理するために従来使用されている治療法と組み合わせて投与される。かかる従来の治療法の例としては、限定されるものではないが、ステロイドを用いる治療、輸血、抗凝血療法、骨髄移植及びそれらの組合せが挙げられる。
【0014】
本明細書において提供される免疫調節化合物、あるいはその製薬上許容される塩、溶媒和物(例えば、水和物)、立体異性体、クラスレート、又はプロドラッグ、及び第2の又は追加の活性薬剤又は成分を含む、医薬組成物、単回剤形、及び投薬計画も提供される。第2の活性薬剤又は成分には、薬剤又は治療の、あるいは両方の特定の組合せ、すなわち「カクテル」が含まれる。
【0015】
一実施形態では、本方法及び組成物中で使用される化合物は、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオン(レナリドマイド)、4−アミノ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)イソインドリン−1,3−ジオン又はN−{[2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル)−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル]メチル}シクロプロピル−カルボキサミドである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
4.図面の簡単な説明
【図1】例示的な免疫調節化合物、レナリドマイド及びCC−4047による処置後の末梢血単核細胞におけるCD59 mRNAレベルの増加を説明する図である。
【図2】例示的な免疫調節化合物、レナリドマイド又はCC−4047による処置後の非刺激単球におけるCD59 mRNAレベルの増加を説明する図である。
【図3】例示的な免疫調節化合物、レナリドマイド及びCC−4047による処置後のα−cd3/cd28刺激T細胞におけるCD59 mRNAレベルの増加を示す図である。
【0017】
5.詳細な説明
ある種の実施形態では、治療上又は予防上有効量の、本明細書において提供される免疫調節化合物、あるいはその製薬上許容される塩、溶媒和物(例えば、水和物)、立体異性体、クラスレート、又はプロドラッグを投与することによりCD59のレベルを上方制御する方法が本明細書において提供される。一実施形態では、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、虚血性再灌流傷害及び自己免疫疾患を含む、CD59に関連する溶血性疾患の治療、予防又は管理を包含する方法が本明細書において提供される。ある種の実施形態では、自己免疫疾患は、紅斑性狼瘡(lupus erythematosis)及び関節リウマチから選択される。
【0018】
5.1免疫調節化合物
特に指定されない限り、本明細書において使用する「免疫調節化合物」は、「IMiDs(登録商標)」(Celgene Corporation)として公知のものを含む、LPS誘導性単球TNF−α、IL−1β、IL−12、IL−6、MIP−1α、MCP−1、GM−CSF、G−CSF、及び/又はCOX−2産生を阻害する特定の有機小分子を包含する。具体的な免疫調節化合物は下に考察される。
【0019】
TNF−αは、急性炎症の際にマクロファージ及び単球により産生される炎症性サイトカインである。TNF−αは細胞内の多様な範囲のシグナル伝達事象を司っている。特定の理論に制限されるものではないが、本明細書において提供される免疫調節化合物により発揮される生物学的効果の一つは、骨髄系細胞TNF−α産生の低下である。本明細書において提供される免疫調節化合物は、TNF−α mRNAの分解を亢進させることができる。
【0020】
さらに、理論に制限されるものではないが、本明細書において使用される免疫調節化合物はT細胞の強力な共刺激剤でもあり、かつ、用量依存的に細胞増殖を劇的に増大させ得る。本明細書において提供される免疫調節化合物はまた、CD4+T細胞サブセットに対するよりもCD8+T細胞サブセットに対して、より大きな共刺激剤効果を有し得る。加えて、本化合物は、ある種の実施形態において、骨髄系細胞応答に対して抗炎症性特性を有するが、その上、T細胞を効率的に同時刺激してより多くの量のIL−2、IFN−γを産生し、T細胞増殖及びCD8+T細胞の細胞傷害活性を促進する。さらに、特定の理論に制限されるものではないが、本明細書において使用される免疫調節化合物は、サイトカイン活性化により間接的に、かつナチュラルキラー(「NK」)細胞及びナチュラルキラーT(「NKT」)細胞において直接的に作用することができ、有益なサイトカイン(例えば、限定されるものではないが、IFN−γ)を産生するNK細胞の能力、及びNK及びNKT細胞の細胞傷害活性を促進するNK細胞の能力を増大させる。
【0021】
免疫調節化合物の具体的な例としては、置換スチレンのシアノ及びカルボキシ誘導体、例えば米国特許第5,929,117号に開示されるものなど;1−オキソ−2−(2,6−ジオキソ−3−フルオロピペリジン−3イル)イソインドリン及び1,3−ジオキソ−2−(2,6−ジオキソ−3−フルオロピペリジン−3−イル)イソインドリン、例えば米国特許第5,874,448号及び同第5,955,476号に記載されるものなど;米国特許第5,798,368号に記載されるテトラ置換2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−1−オキソイソインドリン;1−オキソ及び1,3−ジオキソ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)イソインドリン(例えば、サリドマイドの4−メチル誘導体)、置換2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)フタルイミド及び置換2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−1−オキソイソインドール(限定されるものではないが、米国特許第5,635,517号、同第6,281,230号、同第6,316,471号、同第6,403,613号、同第6,476,052号及び同第6,555,554号に開示されるものを含む);米国特許第6,380,239号に記載されている、インドリン環の4位又は5位が置換された1−オキソ及び1,3−ジオキソイソインドリン(例えば、4−(4−アミノ−1,3−ジオキソイソインドリン−2−イル)−4−カルバモイルブタン酸);米国特許第6,458,810号に記載されている、2,6−ジオキソ−3−ヒドロキシピペリジン−5−イルの2位が置換されたイソインドリン−1−オン及びイソインドリン−1,3−ジオン(例えば、2−(2,6−ジオキソ−3−ヒドロキシ−5−フルオロピペリジン−5−イル)−4−アミノイソインドリン−1−オン);米国特許第5,698,579号及び同第5,877,200号に開示される非ポリペプチド環状アミドのクラス;ならびに、イソインドール−イミド化合物、例えば2003年3月6日公開の米国特許出願公開第2003/0045552号、2003年5月22日公開の米国特許出願公開第2003/0096841号、及び国際出願第PCT/US01/50401号(国際公開第02/059106号)に記載されるものが挙げられる。本明細書において確認される前記特許及び特許出願の各々の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。免疫調節化合物にはサリドマイドは含まれない。
【0022】
本明細書において提供される様々な免疫調節化合物は、1又はそれ以上のキラル中心を含み、鏡像異性体のラセミ混合物又はジアステレオマーの混合物として存在し得る。本明細書の方法及び組成物は、本発明は、このような化合物の立体異性的に純粋な形態の使用、ならびにこれらの形態の混合物の使用を包含する。例えば、本発明の特定の免疫調節化合物の鏡像異性体を等量で又は不等量で含む混合物を、本明細書において提供される方法及び組成物で使用してよい。これらの異性体は、不斉合成するか、あるいはキラルカラム又はキラル分割剤などの標準技法を用いて分割することができる。例えば、Jacques, J., et al, Enantiomers, Racemates and Resolutions (Wiley-Interscience, New York, 1981); Wilen, S. H., et al, Tetrahedron 33:2725 (1977); Eliel, E. L., Stereochemistry of Carbon Compounds (McGraw-Hill, NY, 1962); 及び Wilen, S. H., Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p. 268 (E.L. Eliel, Ed., Univ. of Notre Dame Press, Notre Dame, IN, 1972)を参照されたい。
【0023】
一実施形態では、提供される免疫調節化合物としては、限定されるものではないが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,635,517号に記載される、ベンゾ環においてアミノで置換された、1−オキソ−及び1,3ジオキソ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)イソインドリンが挙げられる。これらの化合物は構造Iを有する:
【化1】


(式中、X及びYのうち一方はC=Oであり、X及びYのうち他方はC=O又はCHであり、Rは水素又は低級アルキル、特にメチルである)。具体的な免疫調節化合物としては、限定されるものではないが:
【化2】


1−オキソ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−4−アミノイソインドリン;
【化3】


1,3−ジオキソ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−4−アミノイソインドリン;及び
【化4】


1,3−ジオキソ−2−(3−メチル−2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−4−アミノイソインドール、ならびにその光学的に純粋な異性体が挙げられる。これらの化合物は、標準的な合成法により得ることができる(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,635,517号を参照されたい)。これらの化合物はまた、Celgene Corporation,Warren,NJから入手可能である。
【0024】
本明細書において、かつ特に断りのない限り、用語「光学的に純粋な」とは、ある化合物の1つの光学異性体を含み、かつ、その化合物のその他の異性体を実質的に含まない組成物を意味する。例えば、1つのキラル中心を有する化合物の光学的に純粋な組成物は、化合物の反対の鏡像異性体を実質的に含まない。2つのキラル中心を有する化合物の光学的に純粋な組成物は、その化合物のその他のジアステレオマーを実質的に含まない。典型的な光学的に純粋な化合物は、約80重量%を上回るその化合物の1つの鏡像異性体と約20重量%未満のその化合物のその他の鏡像異性体、約90重量%を上回るその化合物の1つの鏡像異性体と約10重量%のその化合物のその他の鏡像異性体、約95重量%を上回るその化合物の1つの鏡像異性体と約5重量%未満のその化合物のその他の鏡像異性体、約97重量%を上回るその化合物の1つの鏡像異性体と約3重量%未満のその化合物のその他の鏡像異性体、又は約99重量%を上回るその化合物の1つの鏡像異性体と約1重量%未満のその化合物のその他の鏡像異性体を含む。
【0025】
その他の具体的な免疫調節化合物は、置換2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)フタルイミド及び置換2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−1−オキソイソインドールのクラスに属し、例えばその各々が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,281,230号;同第6,316,471号;同第6,335,349号;及び同第6,476,052号、ならびに国際特許出願第PCT/US97/13375号に(国際公開第98/03502号)記載されるものなどである。代表的な化合物は次式のものである:
【化5】


(式中:X及びYのうち一方はC=Oであり、X及びYのうち他方はC=O又はCHであり;
(i)R、R、R、及びRのそれぞれは、互いに独立して、ハロ、炭素原子1〜4個を有するアルキル、又は炭素原子1〜4個を有するアルコキシであるか、又は(ii)R、R、R、及びRのうち1つは−NHRであり、R、R、R、及びRのうち残りは水素であり;
は水素又は1〜8個の炭素原子を有するアルキルであり;
は水素、1〜8個の炭素原子を有するアルキル、ベンジル、又はハロである;
ただし、X及びYがC=Oであり、かつ(i)R、R、R、及びRのそれぞれがフルオロであるか、又は(ii)R、R、R、又はRのうち1つがアミノである場合は、Rは水素以外である)。
【0026】
このクラスの代表的な化合物は次式のものである:
【化6】


及び
【化7】


(式中、Rは、水素又はメチルである)。別々の実施形態において、本明細書において提供される方法及び組成物は、これらの化合物の鏡像異性的に純粋な形態(例えば、光学的に純粋な(R)又は(S)鏡像異性体)の使用を包含する。
【0027】
さらにその他の具体的な免疫調節化合物は、その各々が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第US2003/0096841号及びUS2003/0045552号、及び国際出願第PCT/US01/50401(国際公開第02/059106)に開示されるイソインドール−イミドのクラスに属する。代表的な化合物は式II:
【化8】


の化合物ならびにその製薬上許容される塩、水和物、溶媒和物、クラスレート、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ化合物、及び立体異性体の混合物であり、式中:
X及びYのうち一方はC=Oであり、他方はCH又はC=Oであり;
はH、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、ベンジル、アリール、(C−C)アルキル−(C−C)ヘテロシクロアルキル、(C−C)アルキル−(C−C)ヘテロアリール、C(O)R、C(S)R、C(O)OR、(C−C)アルキル−N(R、(C−C)アルキル−OR、(C−C)アルキル−C(O)OR、C(O)NHR、C(S)NHR、C(O)NR3’、C(S)NR3’又は(C−C)アルキル−O(CO)Rであり;
はH、F、ベンジル、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、又は(C−C)アルキニル;
及びR3’は独立に(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、ベンジル、アリール、(C−C)アルキル−(C−C)ヘテロシクロアルキル、(C−C)アルキル−(C−C)ヘテロアリール、(C−C)アルキル−N(R、(C−C)アルキル−OR、(C−C)アルキル−C(O)OR、(C−C)アルキル−O(CO)R、又はC(O)ORであり;
は(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、(C−C)アルキル−OR、ベンジル、アリール、(C−C)アルキル−(C−C)ヘテロシクロアルキル、又は(C−C)アルキル−(C−C)ヘテロアリールであり;
は(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、ベンジル、アリール、又は(C−C)ヘテロアリールであり;
は出現するごとに独立に、H、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、ベンジル、アリール、(C−C)ヘテロアリール、又は(C−C)アルキル−C(O)O−Rであるか、あるいは、R基は一緒になってヘテロシクロアルキル基を形成することができ;
nは0又は1であり;かつ
は、キラル炭素中心を表す。
式IIの具体的な化合物において、nが0ならば、Rは(C−C)シクロアルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、ベンジル、アリール、(C−C)アルキル−(C−C)ヘテロシクロアルキル、(C−C)アルキル−(C−C)ヘテロアリール、C(O)R、C(O)OR、(C−C)アルキル−N(R、(C−C)アルキル−OR、(C−C)アルキル−C(O)OR、C(S)NHR、又は(C−C)アルキル−O(CO)Rであり;
はH又は(C−C)アルキルであり;かつ
は(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、ベンジル、アリール、(C−C)アルキル−(C−C)ヘテロシクロアルキル、(C−C)アルキル−(C−C)ヘテロアリール、(C−C)アルキル−N(R;(C−C)アルキル−NH−C(O)O−R;(C−C)アルキル−OR、(C−C)アルキル−C(O)OR、(C−C)アルキル−O(CO)R、又はC(O)ORであり;かつ、その他の変数は同じ定義を有する。
【0028】
式IIのその他の具体的な化合物において、RはH又は(C−C)アルキルである。
【0029】
式IIのその他の具体的な化合物において、Rは(C−C)アルキル又はベンジルである。
【0030】
式IIのその他の具体的な化合物において、RはH、(C−C)アルキル、ベンジル、CHOCH,CHCHOCH、又は
【化9】


である。
【0031】
式IIの化合物のもう一つの実施形態では、R
【化10】


(式中、QはO又はSであり、Rは出現するごとに独立に、H、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、ベンジル、アリール、ハロゲン、(C−C)アルキル−(C−C)ヘテロシクロアルキル、(C−C)アルキル−(C−C)ヘテロアリール、(C−C)アルキル−N(R、(C−C)アルキル−OR、(C−C)アルキル−C(O)OR、(C−C)アルキル−O(CO)R、又はC(O)ORであるか、又はRが隣接して出現する場合には一緒になって二環状アルキル又はアリール環を形成することができる)である。式IIのその他の具体的な化合物において、RはC(O)Rである。
【0032】
式IIのその他の具体的な化合物において、Rは(C−C)アルキル−(C−C)ヘテロアリール、(C−C)アルキル、アリール、又は(C−C)アルキル−ORである。
【0033】
式IIのその他の具体的な化合物において、ヘテロアリールは、ピリジル、フリル、又はチエニルである。
【0034】
式IIのその他の具体的な化合物において、RはC(O)ORである。
【0035】
式IIのその他の具体的な化合物において、C(O)NHC(O)のHは、(C−C)アルキル、アリール、又はベンジルで置換されてよい。
【0036】
このクラスの化合物のさらなる例としては、限定されるものではないが:[2−(2,6−ジオキソ−ピペリジン−3−イル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−4−イルメチル]−アミド;(2−(2,6−ジオキソ−ピペリジン−3−イル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−4−イルメチル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル;4−(アミノメチル)−2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−イソインドリン−1,3−ジオン;N−(2−(2,6−ジオキソ−ピペリジン−3−イル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−4−イルメチル)−アセトアミド;N−{(2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル)−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)メチル}シクロプロピル−カルボキサミド;2−クロロ−N−{(2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)メチル}アセトアミド;N−(2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)−3−ピリジルカルボキサミド;3−{1−オキソ−4−(ベンジルアミノ)イソインドリン−2−イル}ピペリジン−2,6−ジオン;2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−4−(ベンジルアミノ)イソインドリン−1,3−ジオン;N−{(2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)メチル}プロパンアミド;N−{(2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)メチル}−3−ピリジルカルボキサミド;N−{(2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)メチル}ヘプタンアミド;N−{(2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)メチル}−2−フリルカルボキサミド;{N−(2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)カルバモイル}メチルアセテート;N−(2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)ペンタンアミド;N−(2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル)−2−チエニルカルボキサミド;N−{[2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル]メチル}(ブチルアミノ)カルボキサミド;N−{[2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル]メチル}(オクチルアミノ)カルボキサミド;及びN−{[2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル))−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル]メチル}(ベンジルアミノ)カルボキサミドが挙げられる。
【0037】
さらにその他の具体的な免疫調節化合物は、その各々が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第US2002/0045643号、国際公開第98/54170号、及び米国特許第6,395,754号に開示されるイソインドール−イミドのクラスに属する。代表的な化合物は式III:
【化11】


の化合物ならびにその製薬上許容される塩、水和物、溶媒和物、クラスレート、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ化合物、及び立体異性体の混合物であり、式中:
X及びYのうち一方はC=Oであり、他方はCH又はC=Oであり;
RはH又はCHOCOR'であり;
(i)R、R、R、又はRのそれぞれは、互いに独立して、ハロ、炭素原子1〜4個を有するアルキル、又は炭素原子1〜4個を有するアルコキシであるか、又は(ii)R、R、R、又はRのうち1つはニトロ又は−NHRであり、R、R、R、又はRのうち残りは水素であり;
は水素又は炭素1〜8個を有するアルキルであり
は水素、炭素原子1〜8個を有するアルキル、ベンゾ、クロロ、又はフルオロであり;
R’はR−CHR10−N(R)であり;
はm−フェニレン又はp−フェニレン又はnが0〜4の値を有する−(C2n)−であり;
及びRのそれぞれは他方とは独立して、水素又は炭素原子1〜8個を有するアルキルであるか、あるいはR及びRは一緒になって、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、又は−CHCHCHCH−(式中、Xは−O−、−S−、又は−NH−である)であり;
10は水素、炭素原子8個を有するアルキル、又はフェニルであり;かつ
は、キラル炭素中心を表す。
【0038】
その他の代表的な化合物は次式のものである:
【化12】


(式中、X及びYのうち一方はC=Oであり、X及びYのうち他方はC=O又はCHであり;
(i)R、R、R、又はRのそれぞれは、互いに独立して、ハロ、炭素原子1〜4個を有するアルキル、又は炭素原子1〜4個を有するアルコキシであるか、又は(ii)R、R、R、及びRのうち1つは−NHRであり、R、R、R、及びRのうち残りは水素であり;
は水素又は炭素原子1〜8個を有するアルキルであり;
は水素、炭素原子1〜8個を有するアルキル、ベンゾ、クロロ、又はフルオロであり;
はm−フェニレン又はp−フェニレン又はnが0〜4の値を有する−(C2n)−であり;
及びRのそれぞれは他方とは独立して、水素又は炭素原子1〜8個を有するアルキルであるか、あるいはR及びRは一緒になって、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、又は−CHCHCHCH−(式中、Xは−O−、−S−、又は−NH−である)であり;かつ
10は水素、炭素原子8個を有するアルキル、又はフェニルである)。
【0039】
その他の代表的な化合物は次式のものである:
【化13】


(式中、X及びYのうち一方はC=Oであり、X及びYのうち他方はC=O又はCHであり;
、R、R、及びRのそれぞれは、互いに独立して、ハロ、炭素原子1〜4個を有するアルキル、又は炭素原子1〜4個を有するアルコキシであるか、又は(ii)R、R、R、及びRのうち1つはニトロ又は保護アミノであり、R、R、R、及びRのうち残りは水素であり;かつ
は水素、炭素原子1〜8個を有するアルキル、ベンゾ、クロロ、又はフルオロである)。
【0040】
その他の代表的な化合物は次式のものである:
【化14】


(式中、X及びYのうち一方はC=Oであり、X及びYのうち他方はC=O又はCHであり;
(i)R、R、R、及びRのそれぞれは、互いに独立して、ハロ、炭素原子1〜4個を有するアルキル、又は炭素原子1〜4個を有するアルコキシであるか、又は(ii)R、R、R、及びRのうち1つは−NHRであり、R、R、R、又はRのうち残りは水素であり;
は水素、炭素原子1〜8個を有するアルキル、又はCO−R−CH(R10)NR(式中、R、R、R、及びR10のそれぞれは本明細書に定義したとおりである);かつ
は炭素原子1〜8個を有するアルキル、ベンゾ、クロロ、又はフルオロである)。
【0041】
化合物の具体的な例は次式のものである:
【化15】


(式中、X及びYのうち一方はC=Oであり、X及びYのうち他方はC=O又はCHであり;
は水素、炭素原子1〜8個を有するアルキル、ベンジル、クロロ、又はフルオロであり;
はm−フェニレン、p−フェニレン又はnが0〜4の値を有する−(C2n)−であり;
及びRのそれぞれは他方とは独立して、水素又は炭素原子1〜8個を有するアルキルであるか、あるいはR及びRは一緒になって、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、又は−CHCHCHCH−(式中、Xは−O−、−S−、又は−NH−である)であり;かつ
10は水素、炭素原子1〜8個を有するアルキル、又はフェニルである)。
【0042】
その他の具体的な免疫調節化合物としては、限定されるものではないが、1−オキソ−2−(2,6−ジオキソ−3−フルオロピペリジン−3イル)イソインドリン及び1,3−ジオキソ−2−(2,6−ジオキソ−3−フルオロピペリジン−3−イル)イソインドリン、例えば参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,874,448号及び同第5,955,476号に記載されるものなどが挙げられる。代表的な化合物は次式のものである:
【化16】


(式中、Yは酸素又はHであり、R、R、R、及びRのそれぞれは、互いに独立して、水素、ハロ、炭素原子1〜4個を有するアルキル、炭素原子1〜4個を有するアルコキシ、又はアミノである)。
【0043】
その他の具体的な免疫調節化合物としては、限定されるものではないが、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,798,368号に記載されるテトラ置換2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−1−オキソイソインドリンが挙げられる。代表的な化合物は次式のものである:
【化17】


(式中、R、R、R、及びRのそれぞれは、互いに独立して、ハロ、炭素原子1〜4個を有するアルキル、又は炭素原子1〜4個を有するアルコキシである)。
【0044】
その他の具体的な免疫調節化合物としては、限定されるものではないが、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,403,613号に開示される1−オキソ及び1,3−ジオキソ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)イソインドリンが挙げられる。代表的な化合物は次式のものである:
【化18】


(式中、Yは酸素又はHであり、
及びRのうちの第1はハロ、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シアノ、又はカルバモイルであり、R及びRのうちの第2は、第1のものとは独立して、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シアノ、又はカルバモイルであり、かつ
は水素、アルキル、又はベンジルである)。
【0045】
化合物の具体的な例は次式のものである:
【化19】


(式中、R及びRのうちの第1はハロ、炭素原子1〜4個を有するアルキル、炭素原子1〜4個を有するアルコキシ、それぞれのアルキルが炭素原子1〜4個を有するジアルキルアミノ、シアノ、又はカルバモイルであり;
及びRのうちの第2は、第1のものとは独立して、水素、ハロ、炭素原子1〜4個を有するアルキル、炭素原子1〜4個を有するアルコキシ、アルキルが炭素原子1〜4個を有するアルキルアミノ、それぞれのアルキルが炭素原子1〜4個を有するジアルキルアミノ、シアノ、又はカルバモイルであり;かつ
は水素、炭素原子1〜4個を有するアルキル、又はベンジルである)。具体的な例としては、限定されるものではないが、1−オキソ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)−4−メチルイソインドリンが挙げられる。
【0046】
その他の代表的な化合物は次式のものである。
【化20】


(式中、R及びRのうちの第1はハロ、炭素原子1〜4個を有するアルキル、炭素原子1〜4個を有するアルコキシ、それぞれのアルキルが炭素原子1〜4個を有するジアルキルアミノ、シアノ、又はカルバモイルであり;
及びRのうちの第2は、第1のものとは独立して、水素、ハロ、炭素原子1〜4個を有するアルキル、炭素原子1〜4個を有するアルコキシ、アルキルが炭素原子1〜4個を有するアルキルアミノ、それぞれのアルキルが炭素原子1〜4個を有するジアルキルアミノ、シアノ、又はカルバモイルであり;かつ
は水素、炭素原子1〜4個を有するアルキル、又はベンジルである)。
【0047】
その他の具体的な免疫調節化合物としては、限定されるものではないが、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,380,239号及び2006年4月20日公開の同時係属の米国特許出願公開第20060084815号に記載されている、インドリン環の4位又は5位が置換された1−オキソ及び1,3−ジオキソイソインドリンが挙げられる。代表的な化合物は次式:
【化21】


(式中、Cで示される炭素原子はキラリティーの中心を構成し(nがゼロでなくRがRと同じでない場合);X及びXのうち一方はアミノ、ニトロ、1〜6個の炭素を有するアルキル、又はNH−Zであり、X又はXのうち他方は水素であり;R及びRのそれぞれは相互に独立して、ヒドロキシ又はNH−Zであり;Rは水素、1〜6個の炭素を有するアルキル、ハロ、又はハロアルキルであり;Zは水素、アリール、1〜6個の炭素を有するアルキル、ホルミル、又は1〜6個の炭素を有するアシルであり;かつ、nは0、1、又は2の値を有する;ただし、Xがアミノであり、nが1又は2であるならば、R及びRは両方はヒドロキシではない);ならびにその塩である。
【0048】
さらに代表的な化合物は次式のものである:
【化22】


(式中、Cで示される炭素原子は、nがゼロでなくRがRでない場合にキラリティーの中心を構成し;X及びXのうち一方はアミノ、ニトロ、1〜6個の炭素を有するアルキル、又はNH−Zであり、X及びXのうち他方は水素であり;R及びRのそれぞれは相互に独立して、ヒドロキシ又はNH−Zであり;Rは1〜6個の炭素を有するアルキル、ハロ、又は水素であり;Zは水素、アリール、又は1〜6個の炭素を有するアルキルもしくはアシルであり;かつ、nは0、1、又は2の値を有する)。
【0049】
具体的な例としては、限定されるものではないが、それぞれ次の構造を有する、2−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−4−カルバモイル−酪酸及び4−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−4−カルバモイル(cabamoyl)−酪酸、ならびにその製薬上許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ、及び立体異性体が挙げられる。
【化23】

【0050】
その他の代表的な化合物は次式:
【化24】


(式中、Cで示される炭素原子は、nがゼロでなくRがRでない場合にキラリティーの中心を構成し;X及びXのうち一方はアミノ、ニトロ、1〜6個の炭素を有するアルキル、又はNH−Zであり、X及びXのうち他方は水素であり;R及びRのそれぞれは相互に独立して、ヒドロキシ又はNH−Zであり;Rは1〜6個の炭素を有するアルキル、ハロ、又は水素であり;Zは水素、アリール、又は1〜6個の炭素を有するアルキルもしくはアシルであり;かつ、nは0、1、又は2の値を有する)の化合物;及びその塩である。
【0051】
具体的な例としては、限定されるものではないが、それぞれ次の構造を有する、4−カルバモイル−4−{4−[(フラン−2−イル−メチル)−アミノ]−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル}−酪酸、4−カルバモイル−2−{4−[(フラン−2−イル−メチル)−アミノ]−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル}−酪酸、2−{4−[(フラン−2−イル−メチル)−アミノ]−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル}−4−フェニルカルバモイル−酪酸、及び2−{4−[(フラン−2−イル−メチル)−アミノ]−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル}−ペンタン二酸、ならびにその製薬上許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ、及び立体異性体が挙げられる:
【化25】

【0052】
その他の化合物の具体的な例は次式のものである:
【化26】


(式中、X及びXのうち一方はニトロ、又はNH−Zであり、X及びXのうち他方は水素であり;
及びRのそれぞれは相互に独立して、ヒドロキシ又はNH−Zであり;
は1〜6個の炭素を有するアルキル、ハロ、又は水素であり;
Zは水素、フェニル、1〜6個の炭素を有するアシル、又は1〜6個の炭素を有するアルキルであり;かつ、
nは0、1、又は2の値を有し;−COR及び−(CHCORが異なる場合は、Cで示される炭素原子はキラリティーの中心を構成する)。
【0053】
その他の代表的な化合物は次式のものである:
【化27】


(式中、X及びXのうち一方は1〜6個の炭素を有するアルキルであり;
及びRのそれぞれは相互に独立して、ヒドロキシ又はNH−Zであり;
は1〜6個の炭素を有するアルキル、ハロ、又は水素であり;
Zは水素、フェニル、1〜6個の炭素を有するアシル、又は1〜6個の炭素を有するアルキルであり;かつ、
nは0、1、又は2の値を有し;−COR及び−(CHCORが異なる場合は、Cで示される炭素原子はキラリティーの中心を構成する)。
【0054】
さらにその他の具体的な免疫調節化合物としては、限定されるものではないが、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,458,810号に記載されている、2,6−ジオキソ−3−ヒドロキシピペリジン−5−イルの2位が置換されたイソインドリン−1−オン及びイソインドリン−1,3−ジオンが挙げられる。代表的な化合物は次式のものである:
【化28】


(式中、で示される炭素原子はキラリティーの中心を構成する;
Xは−C(O)−又は−CH−であり;
は炭素原子1〜8個を有するアルキル又は−NHRであり;
は水素、炭素原子1〜8個を有するアルキル、又はハロゲンであり;かつ
は水素、
置換されていない、又は炭素原子1〜8個を有するアルコキシ、ハロ、アミノ、もしくは炭素原子1〜4個を有するアルキルアミノで置換された、炭素原子1〜8個を有するアルキル、
炭素原子3〜18個を有するシクロアルキル、
置換されていない、又は炭素原子1〜8個を有するアルキル、炭素原子1〜8個を有するアルコキシ、ハロ、アミノ、もしくは炭素原子1〜4個を有するアルキルアミノで置換されたフェニル、
置換されていない、又は炭素原子1〜8個を有するアルキル、炭素原子1〜8個を有するアルコキシ、ハロ、アミノ、もしくは炭素原子1〜4個を有するアルキルアミノ、もしくはRが水素である−CORで置換されたベンジル、
置換されていない、又は炭素原子1〜8個を有するアルコキシ、ハロ、アミノ、もしくは炭素原子1〜4個を有するアルキルアミノで置換された炭素原子1〜8個を有するアルキル、
炭素原子3〜18個を有するシクロアルキル、
置換されていない、又は炭素原子1〜8個を有するアルキル、炭素原子1〜8個を有するアルコキシ、ハロ、アミノ、もしくは炭素原子1〜4個を有するアルキルアミノで置換されたフェニル、あるいは
置換されていない、又は炭素原子1〜8個を有するアルキル、炭素原子1〜8個を有するアルコキシ、ハロ、アミノ、もしくは炭素原子1〜4個を有するアルキルアミノで置換されたベンジルである)。
【0055】
記載したすべての化合物は、いずれも商業的に購入するか又は本明細書に開示される特許又は特許公報に記載される方法に従って調製することができる。さらに、光学的に純粋な化合物は、不斉合成されるか、あるいは公知の分割剤又はキラルカラムならびにその他の標準的な合成有機化学技術を用いて分割することができる。
【0056】
本明細書で使用される化合物は、約1,000g/モル未満の分子量を有する有機小分子であり、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、オリゴ糖又はその他の高分子ではない。
【0057】
示した構造とその構造に与えた名称とに矛盾が存在する場合は、示した構造により重きを与えることに留意されたい。さらに、構造又は構造の一部分の立体化学が、例えば、太字又は破線で示されていない場合は、その構造又はその構造の一部分は、そのすべての立体異性体を包含すると解釈される。
【0058】
5.2定義
特に指定されない限り、本明細書において使用する用語「製薬上許容される塩」とは、その用語がさす化合物の無毒の酸及び塩基付加塩を包含する。許容される無毒の酸付加塩には、当分野で公知の有機酸及び無機酸又は塩基に由来するものが含まれ、それには、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、メタンスルホン酸、酢酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、ソルビン酸、アコニット酸、サリチル酸、フタル酸、エンボン酸(embolic acid)、エナント酸などが含まれる。
【0059】
酸性性質の化合物は、様々な製薬上許容される塩基と塩を形成することができる。このような酸性化合物の製薬上許容される塩基付加塩を調製するために用いることができる塩基は、無毒の塩基付加塩、すなわち薬理学的に許容されるカチオンを含有する塩、例えば、限定されるものではないが、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩及び特にカルシウム、マグネシウム、ナトリウム又はカリウム塩などを形成する塩基である。適した有機塩基としては、限定されるものではないが、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(meglumaine)(N−メチルグルカミン)、リジン、及びプロカインが挙げられる。
【0060】
特に指定されない限り、本明細書において使用する用語「プロドラッグ」とは、生体条件下(in vitro又はin vivo)で加水分解、酸化、又はその他の方法で反応して化合物を提供することのできる化合物の誘導体を意味する。プロドラッグの例としては、限定されるものではないが、生加水分解性部分、例えば生加水分解性アミド、生加水分解性エステル、生加水分解性カルバミン酸塩、生加水分解性炭酸塩、生加水分解性ウレイド、及び生加水分解性リン酸塩類似体などを含む免疫調節化合物の誘導体が挙げられる。プロドラッグのその他の例としては、−NO、−NO、−ONO、又は−ONO部分を含む免疫調節化合物の誘導体が挙げられる。プロドラッグは、一般に周知の方法、例えば1 Burger 's Medicinal Chemistry and Drug Discovery, 172-178, 949-982 (Manfred E. Wolff ed., 5th ed. 1995)、及びDesign of Prodrugs (H. Bundgaard ed., Elselvier, New York 1985)に記載されるものなどを用いて調製することができる。
【0061】
特に指定されない限り、本明細書において使用する用語「生加水分解性アミド」、「生加水分解性エステル」、「生加水分解性カルバミン酸塩」、「生加水分解性炭酸塩」、「生加水分解性ウレイド」、「生加水分解性リン酸塩」は、1)化合物の生物活性を妨害しないが、in vivoにおける有利な特性、例えば取り込み、作用持続時間、又は作用開始などをその化合物に与えることができる;か又は2)生物学的に不活性であるが、in vivoで生物活性のある化合物に変換されるかのいずれかの化合物のそれぞれアミド、エステル、カルバミン酸塩、炭酸塩、ウレイド、又はリン酸塩を意味する。生加水分解性エステルの例としては、限定されるものではないが、低級アルキルエステル、低級アシルオキシアルキルエステル(例えばアセトキシルメチル、アセトキシエチル、アミノカルボニルオキシメチル、ピバロイルオキシメチル、及びピバロイルオキシエチルなどのエステル)、ラクトニルエステル(例えば、フタリジル及びチオフタリジルなどのエステル)、低級アルコキシアシルオキシアルキルエステル(例えば、メトキシカルボニル−オキシメチル、エトキシカルボニルオキシエチル及びイソプロポキシカルボニルオキシエチルなどのエステル)、アルコキシアルキルエステル、コリンエステル、及びアシルアミノアルキルエステル(例えば、アセトアミドメチルエステルなど)が挙げられる。生加水分解性アミドの例としては、限定されるものではないが、低級アルキルアミド、α−アミノ酸アミド、アルコキシアシルアミド、及びアルキルアミノアルキルカルボニルアミドが挙げられる。生加水分解性カルバミン酸塩の例としては、限定されるものではないが、低級アルキルアミン、置換エチレンジアミン、アミノ酸、ヒドロキシアルキルアミン、複素環式及び芳香族複素環式アミン、及びポリエーテルアミンが挙げられる。
【0062】
本方法及び組成物で用いる免疫調節化合物はキラル中心を含み、従ってR及びS鏡像異性体のラセミ混合物として存在することができる。本明細書において提供される方法及び組成物は、この化合物の立体異性体的に純粋な形態の使用、ならびにこれらの形態の混合物の使用を包含する。例えば、等量又は不等量の鏡像異性体を含む混合物を本明細書において提供される方法及び組成物で使用することができる。これらの異性体は不斉合成されてもよいし、キラルカラム又はキラル分割剤などの標準技法を用いて分割されてもよい。例えば、Jacques, J., et al, Enantiomers, Racemates and Resolutions (Wiley-Interscience, New York, 1981); Wilen, S. H., et al, Tetrahedron 33:2725 (1977); Eliel, E. L., Stereochemistry of Carbon Compounds (McGraw-Hill, NY, 1962); 及び Wilen, S. H., Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p. 268 (E. L. Eliel, Ed., Univ. of Notre Dame Press, Notre Dame, IN, 1972)を参照されたい。
【0063】
特に指定されない限り、本明細書において使用する用語「立体異性体的に純粋な」とは、化合物の1つの立体異性体を含み、化合物のその他の立体異性体を実質的に含まない組成物を意味する。例えば、1つのキラル中心を有する化合物の立体異性体的に純粋な組成物は、化合物の反対の鏡像異性体を実質的に含まない。2つのキラル中心を有する化合物の立体異性体的に純粋な組成物は、その化合物のその他のジアステレオマーを実質的に含まない。典型的な立体異性体的に純粋な化合物は、約80重量%を上回る化合物の1つの立体異性体及び約20重量%未満のその化合物のその他の立体異性体、約90重量%を上回る化合物の1つの立体異性体及び約10重量%未満のその化合物のその他の立体異性体、約95重量%を上回る化合物の1つの立体異性体及び約5重量%未満のその化合物のその他の立体異性体、又は約97重量%を上回る化合物の1つの立体異性体及び約3重量%未満のその化合物のその他の立体異性体を含む。特に指定されない限り、本明細書において使用する用語「立体異性的に濃縮されている」とは、約60重量%を上回る化合物の1つの立体異性体、約70重量%、又は約80重量%を上回る化合物の1つの立体異性体を含む組成物を意味する。特に指定されない限り、本明細書において使用する用語「鏡像異性的に純粋な」とは、1つのキラル中心を有する化合物の立体異性体的に純粋な組成物を意味する。同様に、用語「立体異性的に濃縮されている」とは、1つのキラル中心を有する化合物の立体異性的に濃縮されている組成物を意味する。言い換えれば、本明細書において提供される方法は、本免疫調節化合物のR又はS鏡像異性体の使用を包含する。
【0064】
特に指定されない限り、本明細書において使用する「治療すること」とは、特定の疾患の症状を発症した後の、本明細書において提供される化合物又はその他の追加の活性薬剤の投与をさす。特に指定されない限り、本明細書において使用する「予防すること」とは、症状の発症より前の、特にCD59の欠損症に関連する疾患、例えば発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)などのリスクのある患者への免疫調節化合物による治療又は免疫調節化合物の投与をさす。用語「予防」には、特定の疾患の症状の阻害が含まれる。CD59の欠損症に関連する疾患すなわちPNHの家族歴をもつ患者は特に、ある種の実施形態における予防的投与計画の候補である。特に指定されない限り、本明細書において使用する用語「管理すること」は、CD59の欠損症に関連する疾患を患っている患者においてその再発を予防すること及び/又はその患者の死亡率を低下させることを包含する。
【0065】
示した構造とその構造に与えた名称とに矛盾が存在する場合は、示した構造により重きを与えることに留意されたい。さらに、構造又は構造の一部分の立体化学が、例えば、太字又は破線で示されていない場合は、その構造又はその構造の一部分は、そのすべての立体異性体を包含すると解釈される。
【0066】
5.3第2の活性薬剤
免疫調節化合物は、本明細書において提供される方法及び組成物においてその他の薬理学的活性のある化合物(「第2の活性薬剤又は成分」)とともに又は組み合わせて使用することができる。特定の組合せが、本明細書において提供される方法において相乗的に作用すると考えられる。免疫調節化合物はまた、特定の第2の活性薬剤に関連する有害作用を軽減する働きをすることができ、一部の第2の活性薬剤は、本発明の免疫調節化合物に関連する有害作用を軽減させるために使用することができる。
【0067】
1又はそれ以上の第2の活性成分もしくは薬剤を、本明細書において提供される方法及び組成物において免疫調節化合物と一緒に使用することができる。第2の活性薬剤は大分子(例えば、タンパク質)であってもよいし、小分子(例えば、合成の無機分子、有機金属分子、又は有機分子)であってもよい。
【0068】
ある種の実施形態では、第2の活性薬剤は、溶血を抑制するためのプレドニゾンなどのステロイドである。その他の実施形態では、第2の活性薬剤は血餅形成を予防するための抗凝固薬である。
【0069】
一実施形態では、本明細書において提供される免疫調節化合物は、(例えば、産生を後押しし、幹細胞破壊を除去するか又は幹細胞阻害を除去することのいずれかにより)造血を増加させることが公知の1又はそれ以上の化合物と組み合わせて投与することができる。造血を増加させることが公知の適した化合物としては、例えば、ステロイド、免疫抑制薬(例えば、シクロスポリンなど)、抗凝固薬(例えば、ワルファリンなど)、葉酸、鉄など、エリスロポエチン(EPO)及び抗胸腺細胞グロブリン(ATG)及び抗リンパ球グロブリン(ALG)が挙げられる。ある種の実施形態では、第2の薬剤は、エクリズマブ、h5G1.1−mAb、h5G1.1−scFv及びh5G1.1のその他の機能性断片からなる群から選択される抗C5抗体である。ある種の実施形態では、抗C5抗体はエクリズマブである。
【0070】
一実施形態では、溶血性PNHの治療は、本明細書において提供される免疫調節化合物を、骨髄が赤血球を作るために必要とされる葉酸と組み合わせて使用することを伴う。多量の鉄をその尿に排出するために、低い血中鉄レベル(通常フェリチンレベルで評価される)を有する患者は、鉄錠剤を必要とし得る。症状を伴う重篤な貧血を有する患者は、時々又は定期的な輸血が必要である可能性がある。
【0071】
5.4治療及び予防方法
CD59のレベルを上方制御するための方法が本明細書において提供される。ある種の実施形態では、CD59のレベルは、遺伝子発現(例えば、転写及び翻訳)を刺激することにより上方制御される。ある種の実施形態では、CD59のレベルは、当分野で公知の方法ならびに本明細書に記載される方法により測定して、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又はより多く上方制御される。血液疾患、例えば、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)などを含む、CD59欠損症に関連する疾患を治療、予防、又は管理する方法がさらに提供される。
【0072】
一実施形態では、虚血性再灌流傷害を治療、予防又は管理する方法が提供される。虚血再灌流傷害(IRI)は、急性腎不全の主原因であり、卒中、心筋梗塞、心肺バイパス、及び腸管虚血などの状態での組織損傷の主な原因である。腎臓のIRIの重要なメディエーターとしての補体系の役割は、多数の動物実験において実証されてきた。CD59欠損マウスは膜侵襲複合体の上方制御及び相当に高いIRIに対する感受性を示す。ある種の実施形態では、CD59のレベルを上方制御することにより、虚血性再灌流傷害を治療、予防又は管理する方法が提供される。
【0073】
一実施形態では、自己免疫性溶血性貧血を治療、予防又は管理する方法が提供される。特定の理論に制限されるものではないが、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)は、自己抗体による補体媒介性溶解の結果生じる可能性があり、一部の患者においては全身性紅斑性狼瘡(SLE)に続いて見られる。原発性AIHAをもつ患者又は正常なボランティアに対して、続発性AIHAをもつSLE患者及び続発性AIHAをもたないSLE患者の赤血球中のCD59レベルを比較する研究により、SLE+AIHA患者においてCD59の低下が示されたが、その他の患者群においては示されなかった。ある種の実施形態では、CD59のレベルを上方制御することにより自己免疫性溶血性貧血を治療、予防又は管理する方法が本明細書において提供される。
【0074】
ある種の実施形態では、自己免疫疾患、例えば紅斑性狼瘡(lupus erythematosis)及び関節リウマチなどを治療、予防又は管理する方法が提供される。
【0075】
一実施形態では、本明細書において提供されるPNH及びその他の溶血性疾患に関連する1又はそれ以上の症状を治療する方法が本明細書において提供される。かかる症状には、例えば、腹痛、疲労、呼吸困難及び不眠症が含まれる。特定の理論に制限されるものではないが、症状は、赤血球の溶解の直接的な結果(例えば、ヘモグロビン尿症、貧血、疲労、低赤血球数など)である可能性があり、又は症状は、患者の血流中の低酸化窒素(NO)レベル(例えば、腹痛、勃起不全、嚥下障害、血栓症など)に起因する可能性がある。最近の報告によれば、40%を上回るPNH III型顆粒球クローンを有するほぼ全ての患者が、血栓症、腹痛、勃起不全及び嚥下障害をもち、高い溶血率が示される(Moyo et al, British J. Haematol. 126:133-138 (2004)を参照されたい)。
【0076】
ある種の実施形態では、本明細書において提供される方法は、症状、例えば発作性夜間ヘモグロビン尿症に関連するヘモグロビン尿症、貧血、ヘモグロビン血症、嚥下障害、疲労、勃起不全、再発性腹痛及び血栓症などを含む溶血性疾患の予防、治療又は管理を包含する。ある種の実施形態では、溶血性疾患に罹患している患者において発作性夜間ヘモグロビン尿症に関連する溶血を治療する方法が本明細書において提供される。ある種の実施形態では、溶血を治療するとは、人が溶血に苦しむ持続時間が、当分野で公知のあらゆる方法を用いて約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%又はそれ以上減少することを意味する。ある種の実施形態では、溶血を治療するとは、溶血の強さが、当分野で公知のあらゆる方法を用いて約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%又はそれ以上減少することを意味する。
【0077】
ある種の実施形態では、ヘモグロビン尿症を治療するとは、赤色、褐色、又は暗色尿を経験する回数の減少を意味し、この場合の減少は、当分野で公知の任意の方法により測定して一般に約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%又はそれ以上である。ヘモグロビン尿症は、患者の自然レベルのハプトグロビンが血管内溶血の結果として血流中に放出されたすべての遊離ヘモグロビンを処理できない結果生じる症状である。特定の理論に縛られるものではないが、赤血球の溶解を減少させることにより、本明細書において提供される方法は血流及び尿中の遊離ヘモグロビンの量を低下させ、それによりヘモグロビン尿症が治療されると考えられる。
【0078】
一態様では、発作性夜間ヘモグロビン尿症及びその他の溶血性疾患に関連する疲労を治療する方法が企図される。一実施形態では、疲労を治療するとは、人が疲労に苦しむ持続時間が、当分野で公知の任意の方法により測定して約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%又はそれ以上減少することを意味する。一実施形態では、疲労を治療するとは、疲労の強度が、当分野で公知の任意の方法により測定して約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%又はそれ以上低下することを意味する。特定の理論に縛られるものではないが、貧血が存在していても、ヘモグロビン尿症が回復すると疲労は治まるので、疲労は血管内溶血に関連する症状であると考えられる。一実施形態では、本明細書において提供される方法は、赤血球の溶解を減少させることにより疲労を治療する。
【0079】
別の態様では、発作性夜間ヘモグロビン尿症及びその他の溶血性疾患に関連する腹痛を治療する方法が企図される。一実施形態では、腹痛を治療するとは、人が腹痛に苦しむ持続時間が、当分野で公知の任意の方法により測定して約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%又はそれ以上減少することを意味する。一実施形態では、腹痛を治療するとは、腹痛の強度が、当分野で公知の任意の方法により測定して約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%又はそれ以上減少することを意味する。特定の理論に縛られるものではないが、腹痛は、患者の自然レベルのハプトグロビンが、血管内溶血の結果として血流中に放出されたすべての遊離ヘモグロビンを処理できず、酸化窒素(NO)の除去ならびに腸の失調症及び痙攣を引き起こす結果生じる症状であると考えられる。一実施形態では、本明細書において提供される方法は、血流中の遊離ヘモグロビンの量を低下させ、それにより赤血球の溶解を減少させることにより腹痛を緩和する。
【0080】
発作性夜間ヘモグロビン尿症及びその他の溶血性疾患に関連する嚥下障害を治療する方法がさらに提供される。一実施形態では、嚥下障害を治療するとは、人が嚥下障害の発作を起こす持続時間が、当分野で公知の任意の方法により測定して約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%又はそれ以上減少することを意味する。一実施形態では、嚥下障害を治療するとは、嚥下障害発作の強度が、当分野で公知の任意の方法により測定して約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%又はそれ以上減少することを意味する。特定の理論に縛られるものではないが、嚥下障害は、患者の自然レベルのハプトグロビンが、血管内溶血の結果として血流中に放出されたすべての遊離ヘモグロビンを処理できず、NOの除去及び食道の痙攣を引き起こす結果生じる症状であると考えられる。一実施形態では、本明細書において提供される方法は、赤血球の溶解を減少させ、それにより血流中の遊離ヘモグロビンの量を低下させることにより嚥下障害を治療する
【0081】
さらなる実施形態では、発作性夜間ヘモグロビン尿症及びその他の溶血性疾患に関連する勃起不全を治療する方法が提供される。特定の理論に縛られるものではないが、勃起不全は、血管内溶血の結果として血流中に放出された遊離ヘモグロビンによるNOの除去に関連する症状であると考えられる。一実施形態では、本明細書に記載される方法は、血流中の遊離ヘモグロビンの量を低下させ、それによりNOの血清レベルを増加させ、発作性夜間ヘモグロビン尿症に関連する勃起不全を治療する。
【0082】
さらに別の態様では、発作性夜間ヘモグロビン尿症及びその他の溶血性疾患に関連する血栓症を治療する方法が企図される。血栓症を治療するとは、人が血栓症の発作を起こす持続時間が、当分野で公知の任意の方法により測定して約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%又はそれ以上減少することを意味する。血栓症を治療するとは、血栓症発作の強度が、当分野で公知の任意の方法により測定して約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%又はそれ以上減少することを意味する。特定の理論に縛られるものではないが、血栓症は、血管内溶血の結果として血流中に放出された遊離ヘモグロビンによるNOの除去、及び/又は、末端の補体媒介性血小板活性化をもたらす血小板の表面のCD59の欠損に関連する症状であると考えられる。赤血球の溶解を減少させることにより、本明細書において提供される方法は、血流中の遊離ヘモグロビンの量を低下させ、それによりNOの血清レベルを増加させ、発作性夜間ヘモグロビン尿症に関連する血栓症を治療する。
【0083】
さらなる実施形態では、発作性夜間ヘモグロビン尿症及びその他の溶血性疾患に関連する貧血痛(anemia pain)を治療する方法が企図される。一実施形態では、貧血痛を治療するとは、人が貧血痛を有する持続時間が、当分野で公知の任意の方法により測定して約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%又はそれ以上減少することを意味する。一実施形態では、貧血痛を治療するとは、貧血痛の強度が、当分野で公知の任意の方法により測定して約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%又はそれ以上減少することを意味する。特定の理論に縛られるものではないが、溶血性疾患における貧血は、赤血球質量の損失のために血液が酸素を運ぶ能力が低下すること起因すると考えられる。ある種の実施形態では、本明細書において提供される方法は、赤血球の溶解を減少させることにより赤血球レベルが増加することを補助し、それにより発作性夜間ヘモグロビン尿症に関連する貧血を治療する。
【0084】
文献において、CD59は高濃度のグルコース又はその他の糖化糖(glycating sugar)の存在下の糖化により失活することが報告されている、Davies et al., Immunology. 2005 Feb; 114(2):280-6。糖化誘導性のCD59の不活化が1型糖尿病における貧血に寄与する要素としてさらに報告されている。そのため、1型糖尿病における貧血を治療する方法が本明細書において提供される。
【0085】
別の態様では、溶血性疾患に罹患している患者において全赤血球含量中の補体感受性III型赤血球の割合を増加させる方法が企図される。ある種の実施形態では、対象の全赤血球含量中のPNH III型赤血球の割合は、治療前のそれと比較して5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、75%又はそれ以上増加する。PNH III型赤血球の割合は、当分野で公知のあらゆる方法により決定することができる。補体感受性III型赤血球の割合を増加させることにより、全赤血球数も増加し、それにより疲労、貧血を治療し、患者の輸血に対する必要性を低下させる。輸血の減少は、輸血の頻度、輸血される血液単位の量、又はその両方の減少であり得る。
【0086】
一実施形態では、溶血性疾患に罹患している患者において赤血球数を増加させる方法が本明細書において提供される。その他の実施形態では、この方法は溶血性疾患に罹患している患者において赤血球数を増加させて、当分野で公知の任意の方法により測定して、対象の全赤血球含量中のPNH III型赤血球の割合を、治療前のそれと比較して5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、75%又はそれ以上大きくする。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法は、溶血性疾患、例えばPNHなどに罹患している患者において、当分野で公知の任意の方法により測定して、輸血の頻度を、治療前のそれと比較して約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、75%、80%、90%、95%又はそれ以上減少させる。
【0087】
ある種の実施形態では、PNH又は何らかのその他の溶血性疾患を有する患者において酸化窒素(NO)レベルを増加させる方法が本明細書において提供される。特定の理論に縛られるものではないが、低いNOレベルは、血管内溶血の結果として血流中に放出された遊離ヘモグロビンによるNOの除去の結果として、PNH又はその他の溶血性疾患に罹患している患者に生じると考えられる。赤血球の溶解を減少させることにより、本明細書において提供される方法は、血流中の遊離ヘモグロビンの量を低下させ、それによりNOの血清レベルを増加させる。ある種の実施形態では、NOの血清レベルは、当分野で公知の任意の方法により測定して約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、75%、80%、90%、95%又はそれ以上増加する。ある種の実施形態では、NOの欠乏症に起因する症状の回復から明らかなように、治療前のそれと比較して、NOのホメオスタシスは回復する。
【0088】
CD59の欠損症がT細胞活性を亢進することが文献中で報告されている、Longhi et al., Trends in Immunology, (27) 2, 2006, 102-107を参照されたい。ある種の実施形態では、本明細書において提供される化合物の投与によりT細胞活性を効果的に下方制御することができる。
【0089】
ある種の実施形態では、本明細書において提供される免疫調節化合物、例えば3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル−ピペリジン−2,6−ジオン(レナリドマイド)、4−アミノ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)イソインドリン−1,3−ジオン又はN−{[2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル)−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル]メチル}シクロプロピル−カルボキサミドなどは、アフィメトリクス遺伝子アレイ実験(初代細胞と細胞系の両方)でのいくつかのin vitro細胞モデルにおけるCD59のmRNAレベルの増加を誘導する。ある種の態様では、この増加は、初代T細胞、初代単球、NK細胞、正常及びCLL患者由来の培養PBMC、ならびにNamalwaバーキットリンパ腫細胞株において見出される。
【0090】
本方法は、患者に治療上又は予防上有効量の本明細書において提供される免疫調節化合物、あるいはその製薬上許容される塩、溶媒和物(例えば、水和物)、立体異性体、クラスレート、又はプロドラッグを投与することを含む。
【0091】
一実施形態では、本明細書において提供される免疫調節化合物は、約0.10〜約150mg/日の量の単回又は分割日用量で経口投与することができる。もう一つの実施形態では、免疫調節化合物は、約0.10〜150mg/日、約1〜約50mg/日、又は約5〜約25mg/日もしくは約10〜約25mg/日の量で投与してよい。具体的な1日当たりの用量には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50mg/日が含まれる。一実施形態では、免疫調節化合物は、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル−ピペリジン−2,6−ジオン、4−アミノ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)イソインドリン−1,3−ジオン又はN−{[2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル)−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル]メチル}シクロプロピル−カルボキサミドである。
【0092】
一実施形態では、免疫調節化合物は、溶血性疾患、例えば発作性夜間ヘモグロビン尿症などの患者に、約1〜50mg/日、約5〜約25mg/日又は約10〜約25mg/日の量を投与されてよい。もう一つの実施形態では、免疫調節化合物、例えば3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル−ピペリジン−2,6−ジオン、4−アミノ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)イソインドリン−1,3−ジオン又はN−{[2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル)−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル]メチル}シクロプロピル−カルボキサミドなどは、約10、15、20、25又は50mg/日の量で投与されてよい。もう一つの実施形態では、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル−ピペリジン−2,6−ジオンは、約25mg/日の量で投与されてよい。
【0093】
5.4.1第2の活性薬剤を用いる併用療法
ある種の実施形態では、本免疫調節化合物、あるいはその製薬上許容される塩、溶媒和物(例えば、水和物)、立体異性体、クラスレート、又はプロドラッグは、1又はそれ以上の第2の活性薬剤を組み合わせて、かつ/あるいは、輸血、抗凝血療法、骨髄移植及びそれらの組合せと組み合わせて投与されてよい。本明細書での使用のための免疫調節化合物の例は本明細書に開示される(例えば、セクション5.1を参照)。第2の活性薬剤の例も本明細書に開示される(例えば、セクション5.3を参照)。
【0094】
免疫調節化合物及び第2の活性薬剤の患者への投与は、同時に又は逐次的に、同一又は異なる投与経路により行うことができる。特定の活性薬剤に用いる特定の投与経路が適しているかどうかは、活性薬剤自体(例えば、血流に入る前に分解されることなく経口投与することができるかどうか)及び治療する疾患によって決まる。一実施形態では、本明細書において提供される免疫調節化合物は、経口的に投与される。本明細書において提供される第2の活性薬剤又は成分の典型的な投与経路は、当業者に公知である。例えば、Physicians ' Desk Reference, (2006)を参照されたい。
【0095】
本明細書において提供される免疫調節化合物を溶血性疾患のための公知の治療法の投与計画と組み合わせて投与する併用療法が使用されてよいことがさらに企図される。かかる投与計画には、1)(例えば、産生を後押しし、幹細胞破壊を除去するか又は幹細胞阻害を除去することのいずれかにより)造血を増加させることが公知の1又はそれ以上の化合物を、2)1又はそれ以上の補体成分に結合する化合物(comounds)、1又はそれ以上の補体成分の産生を阻害する化合物及び1又はそれ以上の補体成分の活性を阻害する化合物の群から選択される化合物と組み合わせた投与が含まれる。造血を増加させることが公知の適した化合物としては、例えば、ステロイド、免疫抑制薬(例えば、シクロスポリンなど)、抗凝固薬(例えば、ワルファリンなど)、葉酸、鉄など、エリスロポエチン(EPO)、免疫抑制薬、例えば、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)及び抗リンパ球グロブリン(ALG)など、EPO誘導体、及びダルベポエチンアルファ(Aranesp(登録商標)として商業的に入手可能(Aranesp(登録商標)は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において組換えDNA技術により産生される人工形態のEPOである))が挙げられる。ある種の実施形態では、この併用療法には、エクリズマブ、h5G1.1−mAb、h5G1.1−scFv及びその他のh5G1.1の機能性断片からなる群から選択される抗C5抗体の投与が含まれる。ある種の実施形態では、抗C5抗体はエクリズマブである。
【0096】
本明細書において提供される免疫調節化合物を従来の治療法と組み合わせて使用することにより、特定の患者において効果的な特有の治療計画を提供することができる。理論に制限されるものではないが、本明細書において提供される免疫調節化合物は、その他の治療法と同時に投与されると相加又は相乗作用をもたらす可能性があると考えられる。
【0097】
一実施形態では、本明細書の免疫調節化合物は、単独で、又は本明細書に開示される第2の活性薬剤と組み合わせて、従来の治療を使用する前、使用している間、又は使用した後に、約0.10〜約150mg、約1〜約50mg又は約5〜約25mgの量で毎日経口投与することができる。
【0098】
5.5医薬組成物及び剤形
医薬組成物は、個別の、単回剤形(single unit dosage form)の調製に使用することができる。本明細書において提供される医薬組成物及び剤形は、本明細書において提供される免疫調節化合物、あるいはその製薬上許容される塩、溶媒和物(例えば、水和物)、立体異性体、クラスレート、又はプロドラッグを含む。本明細書において提供される医薬組成物及び剤形は1又はそれ以上の賦形剤をさらに含んでよい。
【0099】
本明細書において提供される医薬組成物及び剤形はまた、1又はそれ以上の追加の活性成分を含んでもよい。結果的に、本明細書の医薬組成物及び剤形は、本明細書に開示される活性成分を含む(例えば、免疫調節化合物及び第2の活性薬剤)。随意の第2の、又は追加の活性成分の例は本明細書に開示される(例えば、セクション5.3を参照)。
【0100】
本明細書において提供される単回剤形は、患者への経口、粘膜、非経口(例えば、皮下、静脈内、ボーラス注射、筋肉内、又は動脈内)、局所、経皮(transdermal or transcutaneous)投与に適している。剤形の例としては、限定されるものではないが:錠剤;カプレット;カプセル剤、例えば軟弾性ゼラチンカプセル剤など;カシェ剤;トローチ剤;ロゼンジ剤;分散剤;坐剤;粉末;ゲル;懸濁液(例えば、水性もしくは非水性懸濁液、水中油型乳濁液、又は油中水型乳濁液)、溶液、及びエリキシル剤を含む、患者への経口又は粘膜投与に適した液体剤形;患者への非経口投与に適した液体剤形;ならびに再構成して患者への非経口投与に適した液体剤形を提供することのできる無菌固体(例えば、結晶性もしくは非晶質固体)が挙げられる。
【0101】
本明細書において提供される組成、形状、及び剤形の種類は、一般にその使用によって変化する。例えば、疾患の急性期治療で使用される剤形は、同じ疾患の慢性期治療で使用される剤形よりも多くの量の1又はそれ以上の、それに含まれる活性成分を含んでよい。同様に、非経口剤形は、同じ疾患を治療するために使用される経口剤形よりも少ない量の1又はそれ以上の、それに含まれる活性成分を含んでよい。本明細書に包含される具体的な剤形が1種類から別の種類へと変動するこれら及びその他の方法は、当業者には容易に明らかである。例えば、Remington 's Pharmaceutical Sciences, 20th ed., Mack Publishing, Easton PA (2000)を参照されたい。
【0102】
典型的な医薬組成物及び剤形は、1又はそれ以上の賦形剤を含む。適した賦形剤は製薬の当業者に周知であり、適した賦形剤の限定されない例が本明細書において提供される。特定の賦形剤が医薬組成物又は剤形への組み込みに適しているかどうかは、当分野で周知の多様な要素によって決まり、それには、限定されるものではないが、剤形を患者に投与する方法が含まれる。例えば、経口剤形、例えば錠剤などは、非経口剤形での使用に不適の賦形剤を含んでよい。特定の賦形剤が適しているかどうかも剤形中の具体的な活性成分によって決まり得る。例えば、一部の活性成分の分解は、一部の賦形剤、例えばラクトースなどにより、又は水にさらされた場合に加速され得る。第一級もしくは第二級アミンを含む活性成分はそのような分解の加速に特に影響を受けやすい。結果的に、ラクトースその他の単糖又は二糖を存在するとしても僅かしか含まない医薬組成物及び剤形が、ある種の実施形態において提供される。本明細書において、用語「ラクトースを含まない」とは、存在するならば、存在するラクトースの量が、活性成分の分解速度を実質的に増加させるためには不十分であることを意味する。
【0103】
ラクトースを含まない組成物は、当分野で周知であり、例えば、米国薬局方(U.S. Pharmacopeia(USP) 25-NF20 (2002))に記載される賦形剤を含んでよい。一般に、ラクトースを含まない組成物は、活性成分、結合剤/充填剤、及び滑沢剤を、製薬上適合性があり、かつ製薬上許容される量で含む。一実施形態では、ラクトースを含まない剤形は、活性成分、微結晶性セルロース、アルファ化デンプン、及びステアリン酸マグネシウムを含む。
【0104】
水は一部の化合物の分解を促進し得るので、活性成分を含有する無水医薬組成物及び剤形がさらに包含される。例えば、水を(例えば5%)添加することは、経時的に配合物の所蔵寿命又は安定性などの特徴を決定するための長期貯蔵をシミュレートする手段として、製薬分野において広く認められている。例えば、Jens T. Carstensen, Drug Stability: Principles & Practice, 2d. Ed., Marcel Dekker, NY, NY, 1995, pp. 379-80を参照されたい。実際には、水及び熱が一部の化合物の分解を加速させる。従って、一般的に配合物の製造、取り扱い、梱包、貯蔵、輸送、及び使用の間に水分及び/又は湿度に遭遇するので、配合物への水の影響は重大である可能性がある。
【0105】
本明細書において提供される無水の医薬組成物及び剤形は、無水又は含水量の低い成分及び低水分又は低湿度条件を用いて調製することができる。ラクトース及び第一級もしくは第二級アミンを含む少なくとも1種類の活性成分を含む医薬組成物及び剤形は、製造、梱包、及び/又は貯蔵の間に相当な水分及び/又は湿度との接触が予期される場合には無水である。
【0106】
無水医薬組成物は、その無水性質が維持されるように調製及び貯蔵されるべきである。したがって、無水組成物は、例えば、適した配合キットに含めることができるように水への暴露を防ぐことが公知の材料を用いて梱包される。適した梱包材の例としては、限定されるものではないが、密閉箔、プラスチック、単位用量容器(例えば、バイアル)、ブリスター包装、及びストリップ包装が挙げられる。
【0107】
活性成分が分解する速度を低下させる1又はそれ以上の化合物を含む医薬組成物及び剤形がさらに提供される。本明細書において「安定化剤」と呼ぶそのような化合物には、限定されるものではないが、抗酸化薬、例えばアスコルビン酸など、pH緩衝剤、又は塩緩衝剤が含まれる。
【0108】
賦形剤の量及び種類と同様に、剤形中の活性成分の量及び具体的な種類は、限定されるものではないが、それが患者に投与される経路などの要素によって変化する可能性がある。ある種の実施形態では、剤形は、本明細書において提供される免疫調節化合物あるいはその製薬上許容される塩、溶媒和物(例えば、水和物)、立体異性体、クラスレート、又はプロドラッグを約0.10〜約150mgの量で含む。別の実施形態では、剤形は、本明細書において提供される免疫調節化合物あるいはその製薬上許容される塩、溶媒和物(例えば、水和物)、立体異性体、クラスレート、又はプロドラッグを約0.1、1、2.5、5、7.5、10、12.5、15、17.5、20、25、50、100、150又は200mgの量で含む。一実施形態では、剤形は、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオン(レナリドマイド)を約1、2.5、5、10、15、20、25又は50mgの量で含む。ある種の実施形態では、剤形は、第2の活性成分を1〜約1000mg、約5〜約500mg、約10〜約350mg、又は約50〜約200mgの量で含む。当然、第2の薬剤の具体的な量は、使用する具体的な薬剤、治療又は管理されている疾患の種類、ならびに、本明細書において提供される免疫調節化合物及び患者に同時に投与されるあらゆる随意の追加の活性薬剤の量によって決まる。
【0109】
5.5.1経口剤形
経口投与に適した医薬組成物は、個別の剤形、例えば、限定されるものではないが、錠剤(例えば、咀嚼錠)、カプレット、カプセル剤、及び液剤(例えば、味付シロップ剤)として提供することができる。そのような剤形は所定量の活性成分を含み、当業者に周知の製薬方法により調製することができる。一般に、Remington 's Pharmaceutical Sciences, 20th ed., Mack Publishing, Easton PA (2000)を参照されたい。
【0110】
一実施形態では、剤形は、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンを約1、2.5、5、10、15、20、25又は50mgの量で含むカプセル剤又は錠剤である。一実施形態では、カプセル剤又は錠剤の剤形は、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンを約5又は10mgの量で含む。
【0111】
ある種の実施形態では、本明細書において提供される経口剤形は、従来の製薬配合技術に従って活性成分を少なくとも1種類の賦形剤と均質に混和することにより調製される。賦形剤は、投与に望ましい調製物の形態に応じて幅広い種類の形態をとることができる。例えば、経口液体もしくはエアゾール剤形での使用に適した賦形剤としては、限定されるものではないが、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、防腐剤、及び着色剤が挙げられる。固体経口剤形(例えば、粉末、錠剤、カプセル剤、及びカプレット)での使用に適した賦形剤の例としては、限定されるものではないが、デンプン、糖、微晶質セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、及び崩壊剤が挙げられる。
【0112】
その投与の容易さのため、錠剤及びカプセル剤は最も有利な経口投薬単位形態を代表し、その場合は固体の賦形剤が用いられる。所望であれば、錠剤を標準的な水性又は非水性技術によりコーティングしてもよい。そのような剤形は任意の製薬方法により調製することができる。一般に、医薬組成物及び剤形は、活性成分を液体担体、微粉砕固体担体、又は両方と均一かつ均質に混合し、次に必要であれば生成物を所望の形に成形することにより調製することができる。
【0113】
例えば、錠剤は、圧縮又は成型により調製することができる。圧縮錠剤は、所望により賦形剤と混合した自由流動形態、例えば粉末又は顆粒などの活性成分を適した機械で圧縮することにより調製することができる。成型錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適した機械で成型することにより作製することができる。
【0114】
経口剤形で使用することのできる賦形剤の例としては、限定されるものではないが、結合剤、充填剤、崩壊剤、及び滑沢剤が挙げられる。医薬組成物及び剤形での使用に適した結合剤としては、限定されるものではないが、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、又はその他のデンプン、ゼラチン、天然及び合成ゴム、例えばアラビアガムなど、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、その他のアルギン酸塩、トラガント末、グアーガム、セルロース及びその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、(例えば、2208、2906、2910)、微晶質セルロース、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0115】
適した形態の微晶質セルロースとしては、限定されるものではないが、AVICEL−PH−101、AVICEL−PH−103 AVICEL RC−581、AVICEL−PH−105として販売されている材料(FMC Corporation,American Viscose Division,Avicel Sales,Marcus Hook,PAより入手可能)、及びそれらの混合物が挙げられる。具体的な結合剤は、AVICEL RC−581として販売されている微晶質セルロースとカルボキシメチルセルロースナトリウムの混合物である。適した無水もしくは低水分賦形剤又は添加剤としては、AVICEL−PH−103(商標)及びStarch 1500 LMが挙げられる。
【0116】
本明細書に開示される医薬組成物及び剤形での使用に適した充填剤の例としては、限定されるものではないが、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒又は粉末)、微晶質セルロース、粉末セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、及びそれらの混合物が挙げられる。医薬組成物中の結合剤又は充填剤は、一般に医薬組成物又は剤形の約50〜約99重量パーセントで存在する。
【0117】
崩壊剤は、水性環境に曝されると崩壊する錠剤を得るために組成物中で使用される。多すぎる崩壊剤を含む錠剤は貯蔵の際に崩壊する可能性があり、一方、少なすぎる崩壊剤を含む錠剤は所望の速度又は所望の条件下で従って崩壊しない可能性がある。従って、活性成分の放出を不利に変更しない、多すぎもせず少なすぎもしない十分な量の崩壊剤を用いて本明細書において提供される固体経口剤形を形成するべきである。使用する崩壊剤の量は、配合物の種類によって変動し、当業者には容易に認識できる。典型的な医薬組成物は、約0.5〜約15重量パーセントの崩壊剤又は約1〜約5重量パーセントの崩壊剤を含む。
【0118】
医薬組成物及び剤形で使用することのできる崩壊剤としては、限定されるものではないが、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微晶質セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、グリコール酸ナトリウムデンプン、ジャガイモ又はタピオカデンプン、その他のデンプン、アルファ化デンプン、その他のデンプン、クレイ、その他のアルギン、その他のセルロース、ゴム、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0119】
医薬組成物及び剤形で使用することのできる滑沢剤としては、限定されるものではないが、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、その他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、硬化植物油(例えば、ピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及びダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、エチルラウリエート、寒天、及びそれらの混合物が上げられる。さらなる滑沢剤としては、例えば、シロイドシリカゲル(AEROSIL200、メリーランド州BaltimoreのW.R.Grace Co.が製造)、合成シリカの凝固エアゾール(テキサス州PlanoのDegussa Co.が販売)、CAB−O−SIL(マサチューセッツ州BostonのCabot Co.により販売される発熱性二酸化ケイ素製品)、及びそれらの混合物が挙げられる。仮に使用する場合、滑沢剤は一般に、それらを組み込む医薬組成物又は剤形の1重量パーセント未満の量で使用される。
【0120】
ある種の実施形態では、固体経口剤形は、本明細書において提供される免疫調節化合物、無水ラクトース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸、コロイド状無水シリカ、及びゼラチンを含む。
【0121】
5.5.2制御放出剤形
本明細書において提供される活性成分は、制御放出手段又は当業者に周知の送達装置により投与することができる。例としては、限定されるものではないが、その各々が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第3,845,770号;同第3,916,899号;同第3,536,809号;同第3,598,123号;及び同第4,008,719号、同第5,674,533号、同第5,059,595号、同第5,591,767号、同第5,120,548号、同第5,073,543号、同第5,639,476号、同第5,354,556号、同第5,639,480号、同第5,733,566号、同第5,739,108号、同第5,891,474号、同第5,922,356号、同第5,972,891号、同第5,980,945号、同第5,993,855号、同第6,045,830号、同第6,087,324号、同第6,113,943号、同第6,197,350号、同第6,248,363号、同第6,264,970号、同第6,267,981号、同第6,376,461、同第6,419,961号、同第6,589,548号、同第6,613,358号、同第6,699,500号及び同第6,740,634号に記載されるものが挙げられる。そのような剤形は、所望の放出プロフィールを得るために、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、その他のポリマーマトリックス、ゲル、透過性膜、浸透圧系、多層コーティング、微粒子、リポソーム、ミクロスフェア、又はそれらの組合せを様々な割合で用いて、1又はそれ以上の活性成分の持続もしくは制御放出をもたらすために使用することができる。本明細書に記載されるものを含む、当業者に公知の適した制御放出配合物は、本明細書において提供される活性成分と共に使用するために容易に選択され得る。従って、経口投与に適した単回剤形、例えば、限定されるものではないが、制御放出に合わせた錠剤、カプセル剤、ジェルキャップ、及びカプレットが本明細書において提供される。
【0122】
すべての制御放出医薬製剤は、その制御されない同等物によって達成されるよりも改良された薬物療法という共通目標を有する。理想的には、医療における最適に設計された制御放出調製物の使用は、最小限の時間で状態を治癒又は制御するために最小限の薬物を用いることを特徴とする。制御放出配合物の利点には、長期の薬物活性、投薬頻度の減少、及び患者コンプライアンスの増加が含まれる。加えて、制御放出配合物は、作用開始時間又はその他の特徴、例えば薬物の血液レベルなどに影響を与えるために使用することができ、従って副作用(例えば有害作用)の発生に影響を及ぼすことができる。
【0123】
大部分の制御放出配合物は、最初に即座に所望の治療効果を生じる量の薬物(活性成分)を放出し、残りの量の薬物を徐々に、かつ連続的に放出してこのレベルの治療効果又は予防効果を長期間にわたって維持するよう設計されている。この一定レベルの薬物を体内で維持するために、薬物は、代謝されて身体から排出される薬物の量を置き換える速度で剤形から放出されなければならない。活性成分の制御放出は様々な条件により刺激される可能性があり、それには、限定されるものではないが、pH、温度、酵素、水、又はその他の生理的条件又は化合物が含まれる。
【0124】
ある種の実施形態では、薬剤は、静脈内注入、埋め込み可能な浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソーム、又はその他の投与様式を用いて投与されてよい。一実施形態では、ポンプが使用されてよい(Sefton, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201 (1987); Buchwald et al, Surgery 88:507 (1980); Saudek et al, N. Engl. J. Med. 321 :574 (1989)参照)。もう一つの実施形態では、ポリマー材料が使用されてよい。さらにその他の実施形態では、制御放出系は、技術を持つ開業医により決定された対象の適切な部位に取り付けることができる、すなわちそれ故に全身用量のごく一部のみを必要とする(例えば、Goodson, Medical Applications of Controlled Release, vol. 2, pp. 115-138 (1984)参照)。その他の制御放出系は、Langerによる概説に考察されている(Science 249: 1527-1533 (1990))。活性成分は、固体内部マトリックス、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化もしくは非可塑化ポリビニルクロライド、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタラート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン−ビニルアセテート共重合体、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカルボネート共重合体、親水性ポリマー、例えばアクリル酸及びメタクリル酸のエステルのヒドロゲルなど、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコール及び一部分加水分解された架橋ポリビニルアセテートなどの中に分散することができ、それは体液に不溶性である外部ポリマー膜、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/ビニルアセテート共重合体、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリビニルクロライド、ビニルアセテートとのビニルクロライド共重合体、ビニリデンクロライド、エチレン及びプロピレン、アイオノマーポリエチレンテレフタラート、ブチルゴム エピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/ビニルアセテート/ビニルアルコールターポリマー、及びエチレン/ビニルオキシエタノール共重合体などによって取り囲まれている。次に、活性成分は、放出速度制御段階で外部ポリマー膜全体から拡散する。そのような非経口組成物中の活性成分の割合はその具体的な性質、ならびに対象のニーズに大きく依存する。
【0125】
5.5.3非経口剤形
一般に皮下、筋肉内又は静脈内のいずれかへの注射を特徴とする非経口投与も本明細書において企図される。注射剤は従来の形態で、液体溶液か又は懸濁液のいずれかとして、注射前に液体中で溶液又は懸濁液とするのに適した固体形態、あるいは乳濁液として調製することができる。適した賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール又はエタノールである。加えて、所望であれば、投与する医薬組成物も少量の無毒の補助剤、例えば湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、安定化剤、溶解度向上剤、及びその他のかかる薬剤、例えば、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレイエート及びシクロデキストリンを含んでよい(米国特許第5,134,127号参照)。
【0126】
組成物の非経口投与には、静脈内、皮下及び筋肉投与が含まれる。非経口投与のための調製物には、注射できる状態の滅菌溶液、無菌の乾燥可溶性生成物、例えば使用直前に溶媒と混合する状態の凍結乾燥粉末(皮下用錠剤(hypodermic tablets)を含む)、注射できる状態の滅菌懸濁液、使用直前にビヒクルと混合する状態の無菌の乾燥不溶性生成物及び滅菌乳濁液が含まれる。溶液は水性であっても非水性であってもよい。
【0127】
静脈内に投与する場合、適した担体には、生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ならびに増粘剤及び可溶化剤、例えばグルコース、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールなどを含有する溶液、ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0128】
非経口調製物中に使用される製薬上許容される担体、賦形剤又は希釈剤としては、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌薬、等張剤、緩衝剤、抗酸化薬、局所麻酔、懸濁剤及び分散剤、乳化剤、金属封鎖剤又はキレート化剤ならびにその他の製薬上許容される物質が挙げられる。
【0129】
水性ビヒクルの例としては、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張性デキストロース注射液、滅菌水注射液、デキストロース及び乳酸リンゲル注射液が挙げられる。非水性非経口ビヒクルには、植物由来の硬化油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油及びピーナッツ油が含まれる。静菌性又は静真菌性濃度の抗菌薬は、多用量容器に充填される非経口調製物に添加されなければならず、それにはフェノール又はクレゾール、水銀、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチル及びプロピルp−ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムが含まれる。等張剤には、塩化ナトリウム及びデキストロースが含まれる。緩衝剤には、リン酸塩及びクエン酸塩が含まれる。抗酸化薬には、重硫酸ナトリウムが含まれる。局所麻酔には塩酸プロカインが含まれる。懸濁剤及び分散剤には、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドンが含まれる。乳化剤にはポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)が含まれる。金属封鎖剤又は金属イオンのキレート化剤にはEDTAが含まれる。製薬担体には、水混和性ビヒクルのためのエチルアルコール、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコール、ならびにpH調整のための水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸又は乳酸も含まれる。
【0130】
活性成分の濃度は、注射により所望の薬理効果が生じる有効量が提供されるように調節される。正確な用量は、当分野で公知のように患者又は動物の年齢、体重及び状態によって決まる。
【0131】
単位用量非経口調製物は、アンプル、バイアル又は針つきのシリンジに充填される。すべての非経口投与用の調製物は、当分野で公知かつ実施されているように無菌でなければならない。
【0132】
実例として、活性成分を含む滅菌水溶液の静脈内又は動脈内注射は、効果的な投与様式である。その他の実施形態は、所望の薬理効果を生じるために必要な時に注射される活性材料を含む滅菌水性もしくは油性溶液又は懸濁液である。
【0133】
注射剤は局所及び全身投与用に設計される。一般に、治療上有効な投薬量は、治療している組織に対して少なくとも約0.1%w/wから約90%w/w又はそれ以上まで、あるいは1%w/wより多くの活性成分の濃度を含むように処方される。活性成分は一度に投与しもよいし、又はいくつかのより少ない量に分割して時間間隔をあけて投与してもよい。正確な投薬量及び治療の持続時間は、治療される組織の関数であり、公知の試験プロトコールを使用して、あるいはin vivo又はin vitroの試験データからの外挿によって経験的に決定できることは当然理解される。濃度及び投薬量値もまた、治療される個体の年齢によって変化する可能性があることは当然理解される。さらに、特定の対象に関して、具体的な投与計画は、個人の必要性、及び処方物の投与を管理又は監督する人物の専門的判断に従って経時的に調節されるべきであること、ならびに、本明細書中に示す濃度範囲は、単なる例であって、特許請求される処方物の範囲又は実施を限定することを意味するものでないことは当然理解される。
【0134】
本化合物は微粒子化された形態又はその他の適した形態で懸濁させてもよいし、あるいは、より溶けやすい活性生成物を生じさせるか又はプロドラッグを生じさせるために誘導体化してよい。結果として得られる混合物の形態は多数の要因によって決まり、それには、意図される投与様式及び選択された担体又はビヒクルへの化合物の溶解性が含まれる。効果的な濃度は、状態の症状を改善するために十分な濃度であり、経験的に決定することができる。
【0135】
5.5.4凍結乾燥粉末
本明細書では、溶液、乳濁液及びその他の混合物として投与するために再構成することのできる凍結乾燥した粉末も対象である。これらを固体又はゲルとして再構成及び処方することもできる。
【0136】
無菌の凍結乾燥粉末は、活性成分あるいはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物又はプロドラッグを適した溶媒に溶解させることにより調製される。溶媒は、安定性を改善する賦形剤、あるいは粉末又はその粉末から調製された再構成溶液の他の薬理成分を含んでよい。使用してよい賦形剤としては、限定されるものではないが、デキストロース、ソルビタール(sorbital)、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロース又はその他の適した物質である。溶媒はまた、緩衝剤、例えばクエン酸緩衝剤、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウム緩衝剤又はその他の当業者に公知のそのような緩衝剤を、一般に、大体中性のpHで含んでよい。その後、溶液を濾過滅菌した後、当業者に公知の標準条件下で凍結乾燥によって所望の処方物が得られる。一般に、得られる溶液は凍結乾燥用にバイアルに分配される。それぞれのバイアルは、単一回投薬量(10〜1000mg又は100〜500mg)又は複数回投薬量の活性成分を含む。凍結乾燥粉末は適当な条件下で、例えば約4℃〜室温で貯蔵することができる。
【0137】
この凍結乾燥した粉末を注射水で再構成することにより、非経口投与で用いる処方物が得られる。再構成のため、約1〜50mg、5〜35mg又は約9〜30mgの凍結乾燥粉末を1mLの滅菌水又はその他の適した担体に添加する。正確な量は使用する化合物によって決まる。そのような量は、経験的に決定することができる。
【0138】
6.実施例
本明細書において提供される特定の実施形態を次の限定されない例により示す。例示的な免疫調節化合物によるCD59の増加の一部の例を下に示す。
【0139】
6.1非刺激単球におけるCD59 mRNAレベルの増加
フィコール勾配遠心分離を用いて、3名の健康なボランティアから得た軟膜からヒトPBMCを単離した。抗CD14マイクロビーズ(Miltenyi)を用いてPBMCのそれぞれのバッチからCD14+単球を単離した。0.1% DMSO又は4−アミノ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)イソインドリン−1,3−ジオン(1μM)1又はレナリドマイド(10μM)を用いて30分間細胞を処理した。その後、細胞を刺激せずに置いておくか、又は100ng/ml LPSで刺激し、6時間インキュベートした。インキュベーション時間の後、RNA単離のために細胞をTRI試薬(Sigma)に溶解させた。TRI試薬RNA単離プロトコールを用いて単離したRNAは、カラム洗浄され (were column cleaned)(Qiagen)、ドナーから離されたRNAを、cDNA合成のためにプールした。手短に言えば、2〜5μgの全RNAを用いて二本鎖を合成する。ビオチン標識されたcRNAはMessageAmp aRNAキット(Ambion)を用いて合成され、15μgのcRNAは断片化され、それぞれアフィメトリクスヒトU133Aアレイを用いてハイブリダイズされる。上記の手順は、複製ビオチン標識プローブを得るためにそれぞれのRNAサンプルに対して2回行われる。GeneSpring(Agilent)を用いてデータ解析を行った。
【0140】
図2に見られるように、非刺激単球でのCD59 mRNAレベルは、10nM又はそれ以上の3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル−ピペリジン−2,6−ジオン又は4−アミノ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)イソインドリン−1,3−ジオンによる治療後に増加を示した。
【0141】
6.2α−CD3/CD28刺激T細胞におけるCD59 mRNAレベルの増加
フィコール勾配遠心分離を用いて、4名の健康なボランティアから得た軟膜からヒトPBMCを単離した。抗CD14マイクロビーズ(Miltenyi)を用いてPBMCのそれぞれのバッチからCD4+T細胞を単離した。0.1% DMSO又は4−アミノ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)イソインドリン−1,3−ジオン(1μM)1又はレナリドマイド(10μM)を用いて、抗CD3/抗CD28刺激の存在下又は不在下で、3、6、12及び24時間の処理を含む時間経過の間、細胞を処理した。示される時間に上記の通り細胞を回収し、RNAを単離した。アフィメトリクス遺伝子アレイ解析の方法は上記の通りであった。
【0142】
図3に見られるように、α−cd3/cd28刺激T細胞におけるCD59 mRNAレベルは、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル−ピペリジン−2,6−ジオン又は4−アミノ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)イソインドリン−1,3−ジオンでの処理後に増加を示す。
【0143】
6.3PBMCにおけるCD59 mRNAレベルの増加
フィコール勾配遠心分離を用いて、健康なボランティアから得た軟膜からヒトPBMCを単離した。4−アミノ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)イソインドリン−1,3−ジオン(1μM)又はレナリドマイド(10μM)又はビヒクル対照(0.1% DMSO)を用いて24時間、48時間、及び72時間PBMCを処理した。上記の通り細胞を回収し、RNAを単離した。アフィメトリクス遺伝子アレイ解析の方法は上記の通りであった。
【0144】
図1に見られるように、PBMC細胞におけるCD59 mRNAレベルは、4−アミノ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)イソインドリン−1,3−ジオン及びレナリドマイドでの処理後に増加を示す。
【0145】
6.4Namalwa細胞におけるCD59 mRNAレベルの増加
10%ウシ胎児血清を補充したRPM1中でNamalwa細胞を培養した。ビヒクル対照(0.1% DMSO)又は4−アミノ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)イソインドリン−1,3−ジオン(10μM)又はレナリドマイド(10μM)で8時間及び24時間細胞を処理した。上記の通り細胞を回収し、RNAを単離した。アフィメトリクス遺伝子アレイ解析の方法は上記の通りであった。
【0146】
6.5CLL細胞におけるCD59 mRNAレベルの増
フィコール勾配遠心分離を用いて、CLL患者の全血(MD Anderson)からPBMCを単離する。4−アミノ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)イソインドリン−1,3−ジオン(1μM)、レナリドマイド(10μM)又はN−{[2−(2,6−ジオキソ(3−ピペリジル)−1,3−ジオキソイソインドリン−4−イル]メチル}シクロプロピル−カルボキサミド(10μM)を用いて24及び48時間細胞を処理する。5名のCLL患者由来のサンプルを個別に分析する。上記の通り細胞を回収し、RNAを単離した。アフィメトリクス遺伝子アレイ解析の方法は上記の通りである。
【0147】
上記の実施形態は単なる例を意図するものであり、当業者であれば日常的な実験を用いるだけで、特定の化合物、物質、及び手順の多数の同等物を理解するか、又は確認することができるであろう。かかる同等物はすべて特許請求される主題の範囲内であると考えられ、添付される特許請求の範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫調節化合物をヒトに投与することを含む、CD59のレベルを上方制御するための方法。
【請求項2】
患者に治療上有効な量の免疫調節化合物を投与することを含む、CD59欠損症に関連する疾患を治療、予防又は管理する方法。
【請求項3】
前記疾患が血液疾患である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記疾患が、ヘモグロビン尿症、貧血、ヘモグロビン血症、嚥下障害、疲労、勃起不全、再発性腹痛又は血栓症を特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記疾患が発作性夜間ヘモグロビン尿症である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記疾患が虚血性再灌流傷害である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記投与される免疫調節化合物の量が、1日あたり約1〜約50mgである、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記免疫調節化合物が経口的に投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記免疫調節化合物がカプセル剤又は錠剤の形態で投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物が、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオン及び4−アミノ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)イソインドリン−1,3−ジオンから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
投与される3−(4−アミノ−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンが、鏡像異性的に純粋である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
投与される3−(4−アミノ−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンが、S鏡像異性体である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
投与される3−(4−アミノ−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンが、R鏡像異性体である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
投与される4−アミノ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)イソインドリン−1,3−ジオンが、鏡像異性的に純粋である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
投与される4−アミノ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)イソインドリン−1,3−ジオンが、S鏡像異性体である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
投与される4−アミノ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)イソインドリン−1,3−ジオンが、R鏡像異性体である、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
ステロイド、免疫抑制薬、抗凝固薬、葉酸、鉄、抗胸腺細胞グロブリン、抗リンパ球グロブリン、エリスロポエチン、又はエリスロポエチン誘導体の投与をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
抗C5抗体が、エクリズマブ、h5G1.1−mAb、h5G1.1−scFv、又はh5G1.1の機能断片である、抗C5抗体の投与をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記抗C5抗体が、エクリズマブである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記疾患が自己免疫疾患である、請求項2に記載の方法。
【請求項21】
前記自己免疫疾患が、紅斑性狼瘡(lupus erythematosis)又は関節リウマチである、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−510983(P2011−510983A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545016(P2010−545016)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/000555
【国際公開番号】WO2009/097120
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(500026935)セルジーン コーポレイション (41)
【Fターム(参考)】