説明

CG−MALSデータを表現するための方法、可逆的に会合する巨大分子の自己会合を特徴付けるための方法、および、可逆的に会合する2つの巨大分子種のヘテロ会合を特徴付けるための方法

【課題】高濃度の巨大分子の溶液の会合特性を特徴付けるための新たな方法を提示する。
【解決手段】さまざまな濃度にわたる試料アリコートが光散乱光度計に連続的に注入される。平衡会合定数および会合化学量論は、分散信号の角度および濃度の依存性を分析することによって得られる。熱力学的非理想性は、高濃度では重要なものとなるが、分析時には、複数の会合された種に適用可能な単純な態様で処理される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
たとえばタンパク質、多糖類、合成高分子などの巨大分子は、溶液中でさまざまなタイプの相互作用を受ける。非特異的で反発的なこれらの相互作用のうちいくつかは、一般に「熱力学的非理想性(thermodynamic non-ideality)」と称される。中には、特異的であろうと非特異的であろうと、誘引的であり、可逆的会合をもたらすものがあり、この場合、単量体と会合された錯体との部分的濃度の比が、溶液中の分子の全体濃度、分子の特有の特性および溶媒に左右される平衡状態に達する。さらに、可逆的会合状態は、溶液の官能性に影響を及ぼす。たとえば、製薬産業においては、可逆的な抗体オリゴマーを存在させることにより溶液粘性を高める場合があるが、これは、これらの抗体を含有する治療製剤の製造および送達に悪影響を及ぼす。抗体薬剤のオリゴマー形態は免疫原性リスクの高まりを示す可能性がある。このような巨大分子について、平衡会合定数および会合化学量論の形で会合状態を決定することは、基礎をなす相互作用を理解および制御するのに必須の工程である。
【0002】
溶液中の非可逆的な集合体または強固に結合された錯体を特徴付けるための標準的な方法、たとえば、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC:size-exclusion chromatography)、多角度静的光散乱との併用型SEC(SEC−MALS:SEC in combination with multi-angle static light scattering)、または沈殿速度(SV:sedimentation velocity)などは、不十分な可逆的会合には適用することができない。というのも、これらの特徴付け技術は、希釈や、錯体の分離につながり、これにより平衡状態からのずれを招いてしまうからである。
【0003】
強力に相互作用する可逆的会合を特徴付けることで公知である一般的な方法には、沈降平衡法(SE:sedimentation equilibrium)、等温滴定熱量測定法(ITC:isothermal titration calorimetry)、および組成勾配多角度静的光散乱(CG−MALS:composition gradient multi-angle static light scattering)が含まれる。SEでは、分子の溶液を分析用超遠心分離機に配置し、極めて高速で回転させて、平衡分布を形成し、これを記録して分析する。分布の特定形状には、自己会合する単量体および錯体の量や、会合化学量論についての情報が含まれている。ITCでは、自己会合の場合、溶液が溶媒に対して滴定されるか、または、ヘテロ会合の場合、初めに巨大分子を1つしか含まない溶液が第2の巨大分子に対して滴定され、そして、溶液が発するかまたは吸収する熱の量が測定される。この熱測定および滴定曲線の対応する形状、すなわち、熱対滴定容積および濃度は、相互作用の強さおよび会合化学量論についての必要な情報を含んでいるが、但し、典型的には、化学量論だけを特徴付ければよい。CG−MALSでは、一連の希釈液が準備され、MALS検出器に送達される。濃度に対する散乱光強度の依存性を分析して、会合化学量論と平衡会合定数とを決定することもできる。CG−MALSは、沈降平衡させるのにさほど長い平衡時間を必要としないので、特に有用な技術となる。加えて、CG−MALSは、結果として複数のオリゴマー状態をもたらす会合と、同時に起こる自己会合およびヘテロ会合とを決定するには、ITCよりも優れている。会合の相互作用が強力である場合、溶液は、通常、低濃度で特徴付けられる。しかしながら、会合の相互作用が、抗体薬剤調合の場合によく見られるように弱いものである場合、溶液は、しばしば10〜100g/Lの範囲で高濃度で特徴付けられなければならない。
【0004】
1g/Lを上回る分子濃度では、非特異的で、典型的には反発的な相互作用が有意なものとなり、SE、ITCおよびCG−MALSの可逆的会合の測定に影響を及ぼすこととなる。したがって、しばしば、分析時に非特異的な相互作用の原因にもなるはずである濃度範囲で弱い会合の特徴付けを行なわなければならない。
【0005】
非特異的な相互作用を受けた溶液中の複数種による光の静的散乱を説明する理論は、「変動理論(fluctuation theory)」として公知であるが、カークウッド(Kirkwood)およびゴールドバーグ(Goldberg)によって化学物理学ジャーナル(J. Chem. Phys.:Journal of Chemical Physics)(第18巻、54〜59頁、1950年)に記載されている。単一の非会合種に対する希釈条件下で変動理論を光散乱に適用することは周知であり、わずかに3つのパラメータ、すなわち、モル質量、平均二乗半径および第2ビリアル係数しか必要としない。溶液濃度が上昇すると、より高次のビリアル係数が使用されなければならず、分析を連続的に行なうことがより困難になる。ミントン(Minton)により生物物理学ジャーナル(Biophys. J.:Biophysical Journal)(第93巻、1321〜1328頁、2007年)に記載された単純化は、「有効剛体球近似(effective hard sphere approximation)」またはEHSAとして公知であり、分子間の非特異的相互作用が、分子の実半径とは異なり得る有効半径を有する不透過性球体の非特異的相互作用に等しいものであると想定している。EHSAの枠組みは、他の場合には処理し難い、10〜150g/Lの高濃度でのCG−MALSおよび他のデータの解釈に有用である。フェルナンデス(Fernandez)およびミントンは、生物物理学ジャーナル(Biophysical J.:Biophysical Journal)(第96巻、1992〜1998頁、2009年)において、EHSAと組合された変動理論が、70g/Lまでの濃度での1つまたは2つのオリゴマー状態に対するタンパク質の可逆的な自己会合についてのCG−MALS分析にうまく適用され得ることを示している。
【0006】
組合された変動/EHSA理論は厳密なものであるが、単量体および錯体を含む2または3を上回る数の種を処理しなければならない場合には数学的に非常に複雑になる。さらに多くの重要なシステムでは、会合についての複数の化学量論が呈示されており、すなわち、単量体といくつかの錯体との間の平衡状態が同時に達成される。一例として、二量体、三量体、四量体などを高次のオリゴマーに至るまで形成する漸進的な自己会合が挙げられる。別の例として、同時に起こる自己会合およびへテロ会合が挙げられる。これらの場合について完全な変動理論方程式を詳細に書き出すことだけでなく、以下の方程式1の複素方程式によってデータを分析することももちろん、極めて困難である。
【0007】
したがって、CG−MALSを用いて高濃度の巨大分子の可逆的な会合を分析するための方法は、熱力学的非理想性についてのより扱いやすい表現を用いているにもかかわらず、会合定数および化学量論についての標的を正確に決定するものであり、有利なものとなるだろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】化学物理学ジャーナル(Journal of Chemical Physics)第18巻、54〜59頁(1950年)
【非特許文献2】生物物理学ジャーナル(Biophysical Journal)第93巻、1321〜1328頁(2007年)
【非特許文献3】生物物理学ジャーナル(Biophysical Journal)第96巻、1992〜1998頁(2009年)
【発明の概要】
【0009】
この発明は、複雑な複数の化学量論を簡易に分析するのに適した非常に扱いやすい形で、可逆的に会合する高濃度の溶液からCG−MALSデータを表現する方法を提供する。
【0010】
加えて、この発明の方法を用いることにより、上述の扱いやすい表現を用いたCG−MALSにより、高濃度の巨大分子溶液についての平衡会合パラメータ、すなわち、会合錯体の化学量論、平衡会合定数および存在する不適格な画分の基準が決定される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】可逆的に自己会合する種の溶液の非理想性を表現するための方法を示すフロー図である。
【図2】可逆的錯体を形成する2つの成分種の溶液についての非理想性を表現するための方法を示すフロー図である。
【図3】可逆的な会合がなされた1つ以上の種の平衡会合パラメータを決定するのに用いられる装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
理論的説明
多成分の静的光散乱についての一般化された変動理論の結果は、入射光が垂直に平面偏光され、入射光の方向に対して角度θをなす水平面において観察がなされるものと想定すると、以下の通りである。
【0013】
【数1】

【0014】
ここで、R(cX,θ)は、組成cXの巨大分子の溶液から如何なる散乱角度でも検出される過剰なレイリー比(Rayleigh ratio)を表わしている。この場合、Xはさまざまな単量体種を表わし、cXは、各々の種の重量/体積濃度[c1,c2,c3…]の全体を表わし、過剰なレイリー比は、溶液のレイリー比と純溶媒のレイリー比との差であり、溶液のレイリー比は、
【0015】
【数2】

【0016】
であり、Iは、入射強度Iのために散乱する地点からの距離rsにおいて観察される単位立体角ごとの分散光の強度であり、vは分散量であり、
【0017】
【数3】

【0018】
であり、n0は溶液の屈折率であり、NAはアボガドロ数であり、λ0は真空中における入射光の波長であり、mおよびnは、自由な単量体および錯体を含んで存在するさまざまな種を表わし、cnは、単位体積当たりの質量単位でのn番目の種の重量濃度であり、Q1,m,nは、概してmおよびn個の分子内におけるサイズおよび質量の分布に依存する散乱角θの何らかの関数であり、θが0(ゼロ)に近づくかまたは全体のサイズが、
【0019】
【数4】

【0020】
よりもはるかに小さくなるにつれて1の値に近づく。
【0021】
【数5】

【0022】
この場合、δm,nは、m=nであれば1に等しく、それ以外の場合には0に等しくなる。γnは、成分nの熱力学的活量であり、Q2,m,nは、概してmおよびn個の分子内におけるサイズおよび質量の分布に依存するθの何らかの関数であり、θが0に近づくかまたはサイズが、
【0023】
【数6】

【0024】
よりもはるかに小さくなるにつれて1の値に近づく。
【0025】
【数7】

【0026】
dn/dcmは、m番目の種の示差屈折率増分である。m番目の種がタイプXのix単量体、タイプYのiY単量体などからなるヘテロ錯体である場合、dn/dcmは、成分分子についての寄与する屈折率増分の重量平均である。屈折増分の重量平均は、
【0027】
【数8】

【0028】
であり、この場合、下付き文字Xは異なる成分の単量体を指している。方程式(1)は、行列式および副行列式に多くの項が組込まれているために、存在する種の数が2または3を上回っている場合には非常に複雑になる。
【0029】
【数9】

【0030】
上述の式は、熱力学的非理想性につながる、巨大分子種mとnとの間の本質的な特異的相互作用容積Vinteraction/(Mm+Mn)を表わしていると理解され得る。
【0031】
【数10】

【0032】
に寄与するものとして、中核をなす反発力、さらにはさまざまな静電的かつ変動的な双極子相互作用が含まれる。少なくとも中間的なイオン強度をもつ溶液においては、長期にわたる相互作用が十分にスクリーニングされ、非理想性が短期にわたる相互作用によって支配される。この条件では、特異的相互作用の容積は、質量の合計で割られる分子容積の合計にほぼ比例しており、これは、有効な分子密度
【0033】
【数11】

【0034】
によって表わされ得る。
溶液中のさまざまな種が、i−量体(i−mer)を形成するよう自己会合する一種の単量体のオリゴマーとして形成される場合、すべてのi−量体(i−mer)の有効密度がほぼ定数ρになることを合理的に予想することもできる。この場合、
【0035】
【数12】

【0036】
は、mまたはnとは無関係である。
【0037】
【数13】

【0038】
は、一般に、以下のとおり濃度の累乗における列として近似される。
【0039】
【数14】

【0040】
この場合、係数A2およびA3は、それぞれ、特定の溶媒中における単量体の第2および第3ビリアル係数として公知である。この近似を適用すると、方程式(1)を、科学文献においてこれまで知られていなかった簡略化された形にすることもできる。この場合、すべての非理想的な自己相互作用および異種相互作用は、単に2つのパラメータA2およびA3で取り込まれる。
【0041】
【数15】

【0042】
ここで、R(c,θ)は、アジマス角θおよび合計巨大分子濃度cで観察された過剰なレイリー比である。Mは単量体のモル質量である。dn/dcは、溶媒中の分子の示差屈折率増分である。iは自己会合の次数である。ciはi−量体(i−mer)の平衡状態における重量濃度である。
【0043】
【数16】

【0044】
は、垂直に偏光された入射光に対して垂直な面内におけるi−量体(i−mer)についての散乱光の角度依存性である。θは、光線の伝搬方向に対して測定される。
【0045】
【数17】

【0046】
この場合、rは、分子の質量の中心から分子質量要素miまでの距離で、分子のすべての質量要素について積分されたものである。方程式(2)の妥当性が以下のとおり比較的単純な例で示される。
【0047】
・2種の場合−単量体および1つのi−量体(i−mer)
【0048】
【数18】

【0049】
このため、以下の項
【0050】
【数19】

【0051】
は、他の項よりも高次であるだけでなく、同等の大きさをもつ2つの分量の差であり、このため、1つの二次項と比べても小さくなるはずであり、また、濃度のうちの1つが0に向かうにつれて小さくなるだろう。分母についての最終式は、
【0052】
【数20】

【0053】
となるだろう。同様に、種の数がいくつであっても、高次項を無視して以下の式を導き出してもよい。
【0054】
【数21】

【0055】
・上述のとおり、ビリアル係数によって、
【0056】
【数22】

【0057】
が表され得るが、この場合、近似により、逆密度に密接に関連しているA2MおよびA3Mが、単量体およびすべてのオリゴマーに対してほぼ定数となっている。
【0058】
【数23】

【0059】
・2種、単量体および1つのi−量体(i−mer)の場合、
【0060】
【数24】

【0061】
となり、このため、方程式(1)の分子が
【0062】
【数25】

【0063】
となる。ここでも、大きさが極めて似ている高次項同士の差を含む項が存在する場合、無視してもよい。同様に、オリゴマー種の数がいくつであっても、最終式は以下のようになるだろう。
【0064】
【数26】

【0065】
方程式(1)の分子および分母についてのこれらの近似値を組合わせることにより、方程式(2)が導き出される。数値について調査研究することにより、抜け落ちている項は、最大で数10g/Lの濃度までの非理想性補正全体のほんの一部を占めているにすぎず、このため、この発明の主題となる関係がこのような高い濃度でも適用可能であることが明らかになる。
【0066】
いくつかの一般的な想定の下では、A2とA3との間に一定の関係が想定され得るので、単一のパラメータによりすべての非理想的な挙動が捉えられる。たとえば、分子が剛体球のように挙動すると想定される場合、
【0067】
【数27】

【0068】
となる。
数値解析に精通している当業者にとって自明なものであるように、PiにおけるA2、A3およびsin2(θ/2)の項についての相対的な大きさに応じて、方程式(2)における項のうちのいくつかが無視されてもよい。たとえば、濃度の高さが中程度でしかない溶液中の分子の場合、A3が無視されてもよく、錯体がすべてλ/70よりも小さい場合には、角度依存性が同様に無視されてもよく、非常に単純な形式
【0069】
【数28】

【0070】
が導き出され得る。ここで、
【0071】
【数29】

【0072】
は、溶液中の材料の重量/容積濃度の合計である。
溶液中のさまざまな種が2つの異なる単量体XおよびYの錯体として形成された場合、上述したのと同様の想定のもとでは、方程式(1)を、科学文献においてこれまで知られていなかった極めて単純化された形にすることもできる。この場合、非理想的な自己相互作用および異種相互作用はすべて、2つのパラメータA2XおよびA2Yに取り込まれる。
【0073】
【数30】

【0074】
ここで、MXおよびMYは、XおよびYの単量体のモル質量に対応する。dn/dcXおよびdn/dcYは、特定の溶媒中のXおよびYの単量体の示差屈折率増分に対応する。iおよびjは、錯体におけるXおよびYの単量体の数である。Mij=iMX+jMYはモル質量であり、cijは、平衡状態におけるXiYj錯体の重量濃度である。A2XおよびA2Yは、特定の溶媒中のXおよびYの単量体の第2ビリアル係数を指している。
【0075】
【数31】

【0076】
は、ij錯体の平均二乗半径である。導出については、同じ単量体のオリゴマーについて記載されたものと同様である。
【0077】
錯体が約λ/70よりも小さい場合、角度依存性が無視されてもよく、方程式(4)が、
【0078】
【数32】

【0079】
とされてもよい。この場合、
【0080】
【数33】

【0081】
は、溶液中のXおよびYの重量/容積濃度の合計である。方程式(4)および(5)は、3つ以上の別個の単量体種に容易に一般化され得る。
【0082】
2の決定
非理想性パラメータA2は演繹的に推定され得るか、または、以下に記載される非理想性補正済みの光散乱方程式および会合モデル方程式に対するデータの適合のパラメータであり得る。
【0083】
演繹的な情報からA2を推定するために、既知の分子半径を公式に代入して、剛体球のA2を計算することもできる。
【0084】
【数34】

【0085】
単量体の分子半径は、たとえば、x線結晶学によって決定され得るかまたは流体力学半径rhの測定値から推定され得るように、構造についての情報から導き出すこともできる。流体力学半径は、巨大分子の特徴付けに精通している当業者にとって公知であるように、希釈条件下で動的光散乱または示差粘度を測定することによって計算され得る。
【0086】
非理想溶液についての単純化された表現のための方法
したがって、さらなる分析に適した非常に単純化された形式で、可逆的に自己会合する高濃度の溶液からCG−MALSデータを表現するための一方法は、図1に示されるような以下のステップを含む。
【0087】
1.適度に低い濃度または適切な会合制限溶媒などの非会合条件下で得られた流体力学半径rhの示差粘度測定もしくは準弾性光散乱から、または分子の既知の構造から有効な分子半径rの好適な推定値を決定する。
【0088】
2.単量体Mの既知のモル質量および推定された有効な分子半径rに基づいて、単量体が除外された容積値
【0089】
【数35】

【0090】
を推定する。場合によっては、会合が比較的弱く、低濃度での一連の測定値からA2を推定することができる。
【0091】
3.対象となる最大濃度をcmaxと想定して、最大の非理想性寄与ζ=2A2Mcmaxの推定値を計算する。ζが予め定められたカットオフ値、たとえば0.3、よりも大きい場合、方程式(2)のA3項を維持する。そうでない場合、A3項を削除する。
【0092】
4.形成が予想される最大オリゴマーの平均二乗半径rmaxを推定する。rmax>λ/70であれば、方程式(2)における角度項を維持する。そうでなければ、角度項を削除する。
【0093】
5.方程式(2)の最終形式を用いてCG−MALSデータを表現する。巨大分子のうちのいくつかが可逆的会合に不適格であると予想される場合、会合しないが適格な巨大分子と同じビリアル係数を有する別個の種として方程式中で処理する。
【0094】
さらなる分析に適した極めて単純化された形式で、可逆的にヘテロ会合する高濃度の溶液からCG−MALSデータを表現するための一方法は、図2に示されるような以下のステップを含む。
【0095】
1.流体力学半径rh,Xおよびrh,Yの示差粘度測定もしくは準弾性光散乱から、または分子の既知の構造から有効な分子半径rXおよびrYの好適な推定値を決定する。
【0096】
2.単量体MXおよびMYの既知のモル質量ならびに推定された有効な分子半径rXおよびrYに基づいて、単量体が除外された容積値
【0097】
【数36】

【0098】
を推定する。場合によっては、会合が比較的弱く、低濃度での一連の測定値からA2を推定することができる。
【0099】
3.形成が予想される最大錯体の平均二乗半径rmaxを推定する。rmax>λ/70である場合、方程式(4)における角度項を維持する。そうでなければ、角度項を削除する。
【0100】
4.方程式(4)の最終形式を用いてCG−MALSデータを表現する。巨大分子のうちのいくつかが可逆的会合に不適格であると予想される場合、会合しないが適格な巨大分子と同じビリアル係数を有する別個の種として式中で処理する。
【0101】
上述の方程式の適切な形式を決定するこれらの方法についての変形例は、数値解析に精通している当業者にとっては明らかであるだろう。
【0102】
可逆的に会合する非理想溶液を特徴付けるための方法
上述の形式のうちのいずれかに従った単純化された方程式において明らかにされる熱力学的非理想性の場合、化学量論および平衡会合定数による相互作用の特徴付けは簡単明瞭であり、理想溶液についてアトリ(Attri)およびミントンによって分析生化学(Anal. Biochem.:Analytical Biochemistry)(第346巻、132〜138頁、2005年)に記載され、濃縮溶液についてフェルナンデスおよびミントンによって生物物理学ジャーナル(第96巻,1992〜1998頁、2009年)に記載されている方法に類似している。但し、当該方法では、この明細書中に記載されている単純化された形式のいずれかではなく方程式(1)を用いている。
【0103】
特徴付けの方法は、1つ以上の巨大分子種を含む一連の溶液を準備するステップと、各々の溶液を自由な単量体といずれかの可逆的に会合する錯体との間で平衡状態にさせるステップと、各溶液の光散乱強度を測定するステップと、光散乱データを一連の過剰なレイリー比に変換するステップと、データを、非理想的な光散乱の適切な単純化された表現と以下に記載される特定の会合モデルについての方程式とに同時に適合させるステップとを含む。
【0104】
自己会合についてのモデル方程式は以下のとおりである。
1.特定の化学量論についての対応する平衡会合定数Kiに各々の平衡オリゴマー濃度ciを関連付ける質量作用と、自由な単量体c1の濃度とについての方程式。
【0105】
【数37】

【0106】
2.質量保存についての方程式。
【0107】
【数38】

【0108】
この場合、ctotは、準備手順によって決定されるかまたは濃度検出器によって測定されるので、各溶液について既知であり、cincは、会合には不適格な巨大分子の濃度であり、別個の種であるとみなされる。
【0109】
2つの異なる単量体種XおよびYのヘテロ会合についてのモデル方程式は以下のとおりである。
【0110】
1.特定の化学量論についての対応する平衡会合定数Kijに各々の平衡錯体濃度cijを関連付ける質量作用と、自由な単量体cX、Yの濃度とについての方程式。
【0111】
【数39】

【0112】
2.質量保存の方程式。
【0113】
【数40】

【0114】
この場合、cXtotおよびcYtotは、準備手順によって決定されるかまたは濃度検出器によって測定されるので、各溶液について既知であり、cXincおよびcYincはそれぞれ、会合には不適格なXおよびYの巨大分子の濃度であり、付加的な別個の種であるとみなされる。
【0115】
レーベンバーグ・マルカート(Levenberg-Marquardt)非線形最小二乗アルゴリズムなどのさまざまな適合アルゴリズムは、数値解析理論から周知である。これらのアルゴリズムは、非理想的な光散乱方程式、質量保存の方程式および質量作用の方程式を含む連立方程式にデータを適合させ、これにより相互作用パラメータKiまたはKij、A2などの適合された値を得るのに用いられてもよい。
【0116】
測定装置および手順−自己会合
図3を参照すると、対象となる巨大分子の1組のアリコートが濃度c1、c2、…ckで、複数の散乱角θvの光検出器を備えるMALS検出器1に導入される。MALS検出器の一例として、ワイアット・テクノロジ・コーポレイション(Wyatt Technology corporation)(カリフォルニア州(California)、サンタバーバラ(Santa Barbara))から入手されるDAWN−HELEOS(登録商標)が挙げられる。
【0117】
典型的な手順においては、濃度列はcs=αΔcに対応する。この場合、s=1、2、…kであり、Δcは、一定の濃度段階であり、kは濃度の番号であり、通常、少なくとも5である。kの濃度を有する各々のアリコートが準備され、さまざまな方法によって検出器に導入され得る。或る一方法においては、これらのアリコートは手作業で準備され、シンチレーションバイアルまたはキュベットを用いてMALS検出器に配置される。第2の方法においては、アリコートが手作業で準備され、ポンプ2によって光散乱検出器フローセルに注入される。第3の方法においては、アリコートが、コンピュータの制御下で複式ポンプ2によって自動的に準備され、貯蔵溶液6を溶媒7で最大濃度cmaxに希釈し、次いで、作製された各アリコートを順次検出器に送達する。希釈および送達を実行することのできる現存するシステムの一例として、ワイアット・テクノロジ・コーポレイション(カリフォルニア州、サンタバーバラ)から入手されるCalypsoTMソフトウェアを用いるCalypsoTMSP3アクセサリが挙げられる。
【0118】
フローセル中のアリコートの実際の濃度は、元の調整されたままの値Csとは異なっている可能性がある。というのも、試料が、システムを通って流れてフィルタ3、表面などと相互作用している間に薄くなるからである。十分な注入量であれば、注入された各濃度で検出器フローセルが十分に平衡化されるので、MALSフローセルにおける実際の濃度を決定するには、濃度Csが調整されたままであるという知識だけで十分である。代替的には、任意の直列型の濃度検出器4を用いて実際の試料濃度を測定してもよい。
【0119】
溶液中の試料の濃度を決定するためのさまざまな方法が公知である。アリコートを手作業で準備するのに適用可能な一方法においては、濃縮または凍結乾燥された試料の適切な質量が量り分けられ、既知の容積の溶媒中に溶解される。第2の方法においては、濃度は分光光度計で吸光度を測定することによって決定される。第3の方法においては、濃度は、MALS検出器と直列に接続された好適な直列型の濃度検出器4によって決定される。直列型の濃度検出器の例として、同様にワイアット・テクノロジ・コーポレイションから得られるOptilab(登録商標)rEXTMが挙げられる。UV/Vis吸収検出器および蛍光検出器を含む他の直列型濃度検出器も公知である。直列型の濃度検出器は、MALS検出器に対して直列に接続されてもまたは並列に接続されてもよい。MALS検出器と濃度検出器とが直列に接続される場合、十分な量の試料が、所望の濃度で両方のフローセルを飽和させるよう送達されなければならない。MALS検出器と濃度検出器とが並列に接続される場合、各々の試料注入の完了時に2つの検出器内の濃度が確実に同じになるように制御しながら、試料の流れをこれら2つの検出器の間で分割しなければならない。試料の流れの分割は、典型的には、所望の比率を維持するように、ニードル弁によって制御され、好適な流量計によって監視される。
【0120】
試料が流れ、注入の合間に止められている間にデータが検出器から得られ、上述の適合手順を行なうコンピュータ5によって記憶され、分析される。分析に用いられるデータとしては、流れが停止し、試料が平衡になった後に得られるものが最適である。
【0121】
各々の連続した試料がMALS検出器1を通過し、これにより、各々の検出器角度θvでの過剰なレイリー比の値RS(cS,θv)が連続的な試料濃度cSで測定される。次いで、結果として得られる光散乱および濃度信号がコンピュータ手段5によって記憶および処理されて、各々の注入されたアリコートsについて値cS、RS(cS,θv)が計算される。コンピュータ5は、さらに、会合モデル方程式とともに、方程式(2)またはその単純化された形式に計算結果を適合させることにより、Mおよび
【0122】
【数41】

【0123】
を含む分子特徴、ならびに分子の相互作用特徴A2およびKiを計算する。分子の相互作用特徴を抽出するためにさまざまな適合手順が実現されてもよい。好ましい実施例においては、適合手順は、MおよびA2が一定である2つの変数(cおよびsin2(θ/2))に適用されるようなレーベンバーグ・マルカートアルゴリズムを含む。
【0124】
数値解析理論から、測定されたデータを光散乱方程式および会合モデル方程式の形式に適合させることは、レーベンバーグ・マルカート法によるものであろうと他のアルゴリズムによるものであろうと、統計的重み付けを含み得るものであり、これにより、これらの適合を実行するのに用いられるデータが、それらの相互測定された標準偏差によって重み付けされる。
【0125】
測定装置および手順−ヘテロ会合
各アリコートが、濃度の異なる2つの巨大分子種XおよびYを、決定すべきさまざまな会合状態で含有していることを除いては、単一種の測定と同様に測定が行なわれる。
【0126】
交差型組成勾配として公知である一手順においては、kのアリコートが準備される。この場合、s番目のアリコートの組成は[sΔcX,(k-s)ΔcY]であり、ΔcXおよびΔcYは一定の濃度ステップサイズである。
【0127】
一定比率の組成勾配として公知である別の手順においては、kのアリコートが準備される。この場合、s番目のアリコートの組成は[sΔcX,sΔcY]であり、ΔcXおよびΔcYは一定の濃度ステップサイズである。
【0128】
所望の組成の種X、種Yおよび溶媒を含むアリコートを生成、混合および送達するようコンピュータによって制御可能な各ポンプを備えるコンピュータ制御型の3連ポンプシステムが複式ポンプシステムの代わりに用いられることは除いては、単一種の測定に用いられるのと同様の装置が用いられる。このような3連ポンプシステムおよび好適な制御ソフトウェアとして、ワイアット・テクノロジ・コーポレイション(カリフォルニア州、サンタバーバラ)のCalypsoシステムが挙げられる。
【0129】
成分XおよびYの合計濃度、ならびに
【0130】
【数42】

【0131】
の合計濃度は、それぞれ、準備方法において設定されるとおりに、または、溶液中の2つの種の濃度を測定するための方法によって、予め定められた貯蔵溶液濃度および混合比から決定され得る。
【0132】
溶液中の2つの別個の分子の濃度を測定する一方法においては、合計濃度信号が、オンライン濃度検出器4によって測定され、成分濃度が、2つの成分種間の既知の比率と、合計濃度信号に対する各々の成分種による相対的寄与とから計算される。このような方法は、アトリおよびミントンによって分析生化学(第346巻、2005年、132〜138頁)に記載されている。
【0133】
溶液中の2つの別個の分子の濃度を測定するための第2の方法においては、少なくとも2つの異なるオンライン濃度検出手段が用いられ、成分濃度が、濃度信号と、各濃度検出手段に対する各成分種の既知の反応とから決定される。たとえば、示差屈折計およびUV吸収検出器の信号は、それぞれの濃度検出器に対する分子の反応が少なくとも1回の測定の間に異なる場合、同じ溶液中に存在する2つの種の各々の濃度が得られるよう分析され得る。
【0134】
光散乱、巨大分子の特徴付けおよび数値解析の技術分野の当業者に明らかになるように、我々が意図しかつ説明してきた方法について、それらの実施のために列挙してきた基本要素から逸脱することのない多くの自明な変形例が存在する。しかし、このような変形例はすべて、上述の発明の自明な実現例であり、添付の特許請求の範囲を参照することにより包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方程式
【数1】

に従って極めて単純化された形式で熱力学的非理想性を明らかにする、自己会合する高濃度の溶液からCG−MALSデータを表現するための方法であって、
式中、Mは単量体のモル質量であり、iは会合された各々のi−量体(i−mer)の次数であり、ciはi−量体(i−mer)の部分平衡濃度であり、
【数2】

であり、λは照明光線の波長であり、
【数3】

は、i−量体(i−mer)の平均二乗半径であり、
【数4】

であり、nは前記溶液の屈折率であり、NAはアボガドロ数であり、dn/dcは前記溶液中の巨大分子の屈折増分であり、ctotは溶液中の分子の合計重量濃度であり、A2およびA3は、それぞれ、前記単量体の第2および第3ビリアル係数である、方法。
【請求項2】
【数5】

は、R(c,θ)についての方程式の分母においてすべてのi−量体(i−mer)について0に設定され、結果として、より単純な形式
【数6】

にされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
【数7】

は、R(c,θ)についての方程式の分母および分子においてすべてのi−量体(i−mer)について0に設定され、結果として、さらにより単純な形式
【数8】

にされる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
3が0に設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
方程式
【数9】

に従って極めて単純化された形式で熱力学的非理想性を明らかにする、可逆的にヘテロ会合する巨大分子MおよびYの高濃度の溶液からCG−MALSデータを表現するための方法であって、
式中、MXおよびMYはXおよびY単量体のモル質量であり、iおよびjはXij錯体の化学量論の次数であり、Mij=iMX+jMYはモル質量であり、cijは、Xij錯体の部分平衡濃度であり、
【数10】

であり、λは照明光線の波長であり、
【数11】

は、Xij錯体の平均二乗半径であり、
【数12】

であり、nは前記溶液の屈折率であり、NAはアボガドロ数であり、dn/dcXおよびdn/dcYは前記溶液中の分子種XおよびYの屈折増分である、方法。
【請求項6】
【数13】

は、すべてのijについて、分母において0に設定され、結果として、より単純な形式の方程式
【数14】

にされ、式中、cXtotおよびcYtotは、それぞれ、溶液中のXおよびYの合計濃度である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
【数15】

は、分子において0に設定され、結果として、さらにより単純な形式の方程式
【数16】

にされる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
溶媒において高濃度の溶液中における可逆的に会合する巨大分子の自己会合を特徴付けるための方法であって、
1.対象となる分子の溶液の一連のkのアリコートを濃度cf,f=1…kで光散乱光度計に導入するステップを含み、前記光散乱光度計は、
i.注入された各々の希釈アリコートを光線で照らし、
ii.そこから散乱した光の強度を、感光性検出器が配置されている1つ以上の角度位置θで検出し、前記方法はさらに、
2.各々の希釈アリコートfの濃度cfを決定するステップと、
3.前記検出された散乱光の強度から過剰なレイリー比R(cf,θ)を形成するステップと、
4.kの希釈液cf,f=1…kにより熱力学的非理想性を補正するよう前記過剰なレイリー比を
【数17】

として表現するステップとを含み、式中、Mは単量体のモル質量であり、iは、自己会合する各々のi−量体(i−mer)の次数であり、cf,iは、f番目の希釈アリコート中のi−量体(i−mer)の部分平衡濃度であり、
【数18】

であり、λは照明光線の波長であり、
【数19】

は、i−量体(i−mer)の平均二乗半径であり、
【数20】

であり、nは前記溶液の屈折率であり、NAはアボガドロ数であり、dn/dcは前記溶液中の前記巨大分子の屈折増分であり、前記方法はさらに、
5.平衡会合定数、会合の化学量論、不適格な画分、第2および第3ビリアル係数、ならびにモル質量のうちのいくつかまたはすべてを決定するために、前記過剰なレイリー比の前記表現を会合モデルの方程式に適合させるステップを含む、方法。
【請求項9】
2が、分子構造から得られる分子半径rの推定値に基づいて、除外された容積値
【数21】

として推定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
2が、動的光散乱、示差粘度測定または同様の実験技術によって決定される流体力学半径に対応する分子半径rの推定値に基づいて、除外された容積値、
【数22】

として推定される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
3が0に設定される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
【数23】

がすべてのi−量体(i−mer)について0に設定される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
【数24】

が、R(cf,θ)の分母においてのみすべてのi−量体(i−mer)について0に設定される、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記アリコートが手作業で準備され、シンチレーションバイアルによって検出器に導入される、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記アリコートが手作業で準備され、ポンプによって検出器に導入される、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記アリコートが準備され、最も高い所望の濃度で貯蔵溶液を希釈する複式ポンプによって自動的に検出器に導入される、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記濃度を決定するステップは、
a.光散乱光度計に沿って濃度検出器を配置するステップと、
b.光散乱光度計および濃度検出器の両方のフローセルを満たすように十分な容積の希釈アリコートを注入するステップと、
c.前記濃度検出器から信号を検出するステップと、
d.巨大分子の既知の応答係数に基づいて信号を濃度に変換するステップとを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記濃度を決定するステップは、
a.濃度検出器において高濃度溶液の濃度を測定するステップと、
b.希釈手順のパラメータから各々の希釈アリコートの濃度cjを計算するステップとを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項19】
前記濃度検出器がUV/可視光吸光光度計を含み、前記応答係数が吸収係数である、請求項8に記載の方法。
【請求項20】
前記濃度検出器が示差屈折計を含み、前記応答係数が屈折増分である、請求項8に記載の方法。
【請求項21】
前記適合させるステップは、レーベンバーグ・マルカート(Levenberg-Marquardt)非線形最小二乗適合を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項22】
溶媒において高濃度の溶液中における可逆的に会合する2つの巨大分子種のヘテロ会合を特徴付けるための方法であって、
1.各々の巨大分子種の高濃度溶液を含有する貯蔵器と、前記溶媒を含有する別の貯蔵器とを準備するステップと、
2.前記溶媒および前記高濃度溶液のアリコートを混合することにより前記高濃度溶液の一連のkの組成アリコート[cXf,cXf],f=1…kを準備するステップとを含み、各々の組成アリコートは、濃度cXfの巨大分子Xおよび濃度cYfの巨大分子Yを含み、前記方法はさらに、
3.前記組成アリコートを連続的に光散乱光度計に注入するステップを含み、前記光散乱光度計は、
i.注入された各々の希釈液を光線で照らし、
ii.そこから散乱した光の強度を、感光性検出器が配置されている1つ以上の角度位置で検出し、前記方法はさらに、
4.濃度検出器による各組成アリコートfの組成[cXf,cYf]と、前記溶液中の前記巨大分子の応答係数とを決定するステップと、
5.前記検出された散乱光強度から過剰なレイリー比R(cXf,cYf,θ)を形成するステップと、
6.前記kの希釈液cf,f=1…kにより熱力学的非理想性を補正するよう前記過剰なレイリー比を
【数25】

として表現するステップとを含み、式中、Mは単量体のモル質量であり、iおよびjはXiYj錯体の化学量論比であり、cf,ijは、f番目の組成アリコートでのXiYj錯体の部分平衡濃度であり、
【数26】

であり、λは照明光線の波長であり、
【数27】

は、XiYj錯体の平均二乗半径であり、
【数28】

であり、nは前記溶液の屈折率であり、NAはアボガドロ数であり、dn/dcXおよびdn/dcYは前記溶液中の前記巨大分子XおよびYの屈折増分であり、前記方法はさらに、
7.平衡会合定数、会合の化学量論、不適格な画分、第2ビリアル係数、およびモル質量のうちのいくつかまたはすべてを決定するために、前記過剰なレイリー比の前記表現を会合モデルの方程式に適合させるステップを含む、方法。
【請求項23】
2,XおよびA2,Yは、それぞれ、分子構造から得られる分子半径rXおよびrYの推定値に基づいて、除外された容積値
【数29】

として推定される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
2,XおよびA2,Yは、動的光散乱、示差粘度測定または同様の実験技術によって決定される流体力学半径に対応する分子半径rXおよびrYの推定値に基づいて、除外された容積値
【数30】

として推定される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
【数31】

は、すべてのijについて、R(cf,θ)の分母において0に設定される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
【数32】

は、すべてのijについて、R(cf,θ)の分子および分母において0に設定される、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記アリコートが手作業で準備され、シンチレーションバイアルによって検出器に導入される、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記アリコートが手作業で準備され、ポンプによって検出器に導入される、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記アリコートが準備され、溶媒、および最も高い所望の濃度の分子XおよびYの貯蔵溶液を吸込み、これらの溶液を所望の組成に混合し、次にアリコートを検出器に送達する3連ポンプによって自動的に検出器に導入される、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記組成を決定するステップは、
a.光散乱光度計に沿って濃度検出器を配置するステップと、
b.光散乱光度計および濃度検出器の両方のフローセルを満たすように十分な容積の組成アリコートを注入するステップと、
c.前記濃度検出器から信号を検出するステップと、
d.巨大分子の既知の応答係数および混合手順によって規定されるそれらの比率に基づいて信号を組成[cXf,cYf]に変換するステップとを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
前記組成を決定するステップは、
a.光散乱光度計に沿って濃度検出器を配置するステップを含み、濃度検出器は、分子が有する2つの無関係の特性に感受性があり、前記組成を決定するステップはさらに、
b.光散乱光度計および濃度検出器の両方のフローセルを満たすように十分な容積の組成アリコートを注入するステップと、
c.前記濃度検出器から信号を検出するステップと、
d.前記無関係の特性に対する巨大分子の既知の応答係数に基づいて信号を組成[cXf,cYf]に変換するステップとを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
前記2つの特性が、2つの異なる波長の分光吸光度である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記2つの特性が、1つの波長における分光吸光度、および屈折増分である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記組成を決定するステップは、
a.濃度検出器において各々の高濃度溶液を測定するステップと、
b.アリコート混合手順のパラメータから各々の組成アリコートの組成[cXf,cYf]を計算するステップとを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項35】
前記濃度検出器がUV/可視光吸光光度計を含み、前記応答係数が吸収係数である、請求項22に記載の方法。
【請求項36】
前記濃度検出器が示差屈折計を含み、前記応答係数が屈折増分である、請求項22に記載の方法。
【請求項37】
前記適合させるステップが、レーベンバーグ・マルカート非線形最小二乗適合を含む、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−13217(P2011−13217A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−147515(P2010−147515)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(594035932)ワイアット テクノロジー コーポレイション (8)
【氏名又は名称原語表記】Wyatt Tecknology Corporation
【Fターム(参考)】