説明

CGRPアンタゴニスト1−[N2−[3,5−ジブロモ−N−[[4−(3,4−ジヒドロ−2(1H)−オキソキナゾリン−3−イル)−1−ピペリジニル]カルボニル]−D−チロシル]−L−リシル]−4−(4−ピリジニル)−ピペラジンを含有する粉末製剤、その吸入粉末としての製造方法及び使用

本発明は、下記式(A)のCGRPアンタゴニスト1-[N2-[3,5-ジブロモ-N-[[4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル]カルボニル]-D-チロシル]-L-リシル]-4-(4-ピリジニル)-ピペラジンを、標準条件下(T<50℃、相対湿度<75%)非晶質状態で安定な球状ナノ構造微粒子の形態で含んでなる肺吸入又は鼻吸入用粉末吸入薬、前記微粒子の製造方法、並びに頭痛、偏頭痛及び群発性頭痛の治療用粉末吸入薬の製造のための前記微粒子の使用に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、CGRPアンタゴニスト1-[N2-[3,5-ジブロモ-N-[[4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル]カルボニル]-D-チロシル]-L-リシル]-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン(A)を、標準条件下(T<50℃、相対湿度<75%)その非晶質状態で安定な球状ナノ構造(nanostrukturierten)微粒子の形態で含有する肺吸入又は鼻吸入用の粉末吸入薬、前記微粒子の製造方法、並びに頭痛、偏頭痛及び群発性頭痛の治療用粉末吸入薬を製造するための前記微粒子の使用に関する。
本発明の球状ナノ構造微粒子は、さらに直接加工できる産業的に実用できる粉末を得るために他の賦形剤又は添加剤(担体材料)を必要とせず、分散性の点で優れた特性を有し、かつその凝集特性について十分簡単に加工される粉末吸入薬の製造に好適である。別の局面では、本発明は、本発明の方法で得られる粉末吸入薬に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
CGRPアンタゴニスト1-[N2-[3,5-ジブロモ-N-[[4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル]カルボニル]-D-チロシル]-L-リシル]-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン(A)は、国際特許出願PCT/EP97/04862(WO 98/11128として公開)により公知であり、かつ以下の構造を有する。
【化1】

【0003】
〔先行技術〕
活性物質塩基(A)は頭痛、特に偏頭痛及び群発性頭痛の急性治療及び予防的治療に非常に有効なCGRPアンタゴニストであるが、この物質は経口バイオアベイラビリティーが非常に制限されているので通常の製剤で経口投与できない。さらに、この化合物の推定される治療用量は、今まで吸入薬として技術的に可能でない範囲内である。
偏頭痛の急な発作の治療には、できるだけ速く活性物質が全身的に有効なことが必須である。治療は投与する患者にとって複雑であってはならず、かつバイオアベイラビリティー(例えば、食物効果)に影響しうる他の条件が患者の薬物の使用を制限すべきでない。
全身的に有効であることを意図した活性物質は、通常経口で投与される。活性物質の特有の性質又はその適用から生じる特有の要求が理由で経口経路が不適切又は望ましくない場合、物質を全身投与できる他の方法が技術的に知られている。例えば、吸入によって、活性物質を局所のみならず全身的に投与することができ、先般来検討中である。溶液中でのその分解が理由で限界があることがわかっている物質、又はそれ自体十分に溶けない物質では、粉末吸入が1つの選択肢である。適用毎に投与しなければならない活性物質の絶対量はその製剤の特有の要求を生じさせる。他方、活性物質の物理的安定性(例えば、空気力学的粒径、分散性、物理化学的性質)が吸入用粉末の開発及び製造の臨界要件であることが分かっている。
【0004】
粉末吸入薬タイプの製剤では、例えば適切なカプセル(インハレット(inhallete))に詰めた吸入用粉末を粉末吸入器で肺に送達する。同様に、投与すべき粉末の量を予め分けた(例えば、ブリスター)他のシステム、及び複数回投与粉末システムも知られている。或いは、例えば、噴霧ガスとしてHFA134a、HFA227又はその混合物中に懸濁している適宜粉末化した吸入用エアゾールの使用によっても薬物を吸入することができる。
粉末吸入では、純粋な活性物質の微粒子が、吸入プロセスで気道を介して肺、例えば肺胞の表面上に投与される。これら微粒子はその表面上に定着し、それらだけが活性及び受動的輸送プロセスによる溶解プロセス後に体内に吸収されうる。
吸入システムは文献公知であり、活性物質は、適切な溶媒系中の微粉化懸濁液として、又は乾燥粉末の形態のどちらかで固体粒子の形態で存在する。通常、例えば、吸入用カプセル剤の形態の粉末吸入薬は、DE-A-179 22 07に記載されているような一般的教示に基づいて調製される。この種の複数物質系の臨界因子は、粉末混合物中の製剤組成物の均質な分散である。
粉末吸入薬の別の重要な局面は、活性物質を吸入で投与するとき、特定の空気力学的サイズの粒子だけが標的器官、すなわち肺に到達することである。これら肺-限界(lung-bound)粒子の平均サイズ(吸入可能フラクション)は数ミクロン、典型的に0.1〜10μm、好ましくは6μm未満の範囲である。このような粒子は通常微粉化(エアジェット粉砕)によって製造される。
この機械的工程がこの種の粒子の組成物中におけるその結晶特性を複雑にすることが多い。また、出発原料の粒子の幾何形状が微粉化製剤の形態特性を決定する。この製剤タイプでは、この種の粉末化製剤中で熱力学的に安定又は最も安定な形態の活性物質を使用することが重要であることが分かった。これは通常結晶形態の活性物質である。
サブミクロン範囲の粒子を噴霧-乾燥法で製造できることは文献公知である。通常、医療用途(吸入)で十分な分散性を示す産業上適切な製剤は、上記で引用した方法で噴霧-乾燥したこの種の粒子から調製することができる(DE-A-179 22 07)[Y.-F. Maa, P.-A. Ngyuyen, J.D. Andya, N. Dasovich, T.D. Sweeny, S.J. Shire, C.C. Hsu, Pharmaceutical Research, 15, No. 5 (1998), 768-775; M.T. Vidgren, P.A. Vidgren, T.P. Paronen, Int. J. Pharmaceutics, 35 (1987), 139-144; R.W. Niven, F.D. Lott, A.Y. Ip, J.M. Cribbs, Pharmaceutical Research, 11, No. 8 (1994), 1101-1109]。上述したような製剤では、粉末混合物中の製剤組成物の均質な分布が、とりわけ重要である。
【0005】
しかしながら、上述した要件に加え、その一般的形態の粉末吸入薬は主に病気の局所使用で知られていることを心に留めておくべきである。肺を介する活性物質の全身投与が議論されることもあるが、活性物質の実際のバイオアベイラビリティーの最適化は、文献及び薬局方で論じられている“活性物質の肺-限界フラクション”によって不十分に記載されているだけである。この肺-限界フラクションは、例えば、アンダーソンカスケードインパクター(EP Suppl. 2002又はUSP 25に対応する)によって大きさが5μm未満の粒子の割合として定義することができる。粒径によって決まるバイオアベイラビリティーを観察する別の方法は、活性物質の関数として全身使用を検討すること及び活性物質の要件を満たす溶液を探すことである。
一般的条件では、粉末投与によって吸入に利用できるようにする活性物質の粒径の依存性は、とりわけ、Kohlerらによって記載されている[D. Kohler, W. Fleischer, "Theorie und Praxis der Inhalationstherapie", Arcis-Verlag Munich 2000, page 25]。
【0006】
〔課題の供述〕
本発明の複合目的は、肺吸入及び鼻吸入用の粉末吸入薬に課されている上記の厳しい要件を満たす、CGRPアンタゴニスト1-[N2-[3,5-ジブロモ-N-[[4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル]カルボニル]-D-チロシル]-L-リシル]-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン(A)の最適化噴霧-乾燥製剤を提供することだった。本発明の噴霧-乾燥製剤は、従来の微粉化出発原料(例えば、エアジェット粉砕法で得た)と比較した場合、その薬理学的/薬物速度論特性の点で粉末吸入薬として使用するのに好適であることが分かった。本発明により、微粒子のモルフォロジーを、該微粒子を含む製剤が好ましくは賦形剤を含有せず、ひいては該製剤が排他的に活性物質から成るように最適化すべきである。
本発明の製剤は、偏頭痛で非常に突然に起こる激痛の治療のための活性の迅速な開始をも示すべきである。このことは、活性物質の迅速な吸収と血漿レベルでの迅速な増加を保証しなければならない。
【0007】
〔発明の詳細な説明〕
非常に短時間内での激痛の治療のための活性の迅速な開始並びにCGRPアンタゴニスト1-[N2-[3,5-ジブロモ-N-[[4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル]カルボニル]-D-チロシル]-L-リシル]-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン(A)及びその生理的に許容しうる塩の高い血漿レベルは、吸収部位として肺を介して最もよく達成されうる。活性物質(A)を粉末吸入薬の形態で吸入によって投与すると、該製剤の微細な含量に基づいて約60%のバイオアベイラビリティーを達成することができる(USP 24 Suppl. 2000に従って決定されるFPD“微細粒子用量”に対応する)。
本発明の活性物質塩基(A)の噴霧-乾燥製剤は、特に、適用毎の最小可能総量(計量用量(metered dose)/公称用量)を投与して活性物質を肺吸入又は鼻吸入による適用で十分に全身的に有効にしうることを特徴とすることが分かった。
本製剤は、適用毎に投与される活性物質の公称用量に関連する微粒子の特定の物理化学的性質を特徴とし、担体材料の添加を必要としない。
驚くべきことに、活性物質(A)の全身使用では、5μm未満のサイズ(アンダーソンカスケードインパクターで測定)を有する粒子のフラクションは不十分であり;むしろ、この物質では粒子が2.8μm未満の空気力学的サイズを有するさらに微細なフラクションが必要であることが分かった。
【0008】
本発明は、必要な、より微細なフラクションを有する適切な微粉化粉末、これら粒子の製造方法及び例としていくつかのインハレット製剤について述べる。
第1局面では、本発明は、活性物質として球状ナノ構造微粒子の形態で活性物質塩基1-[N2-[3,5-ジブロモ-N-[[4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル]カルボニル]-D-チロシル]-L-リシル]-4-(4-ピリジニル)-ピペラジン(A)を含有する粉末吸入薬であって、
(a)前記粒子が1m2/g〜25m2/gの比表面積を有し、
(b)固有値Q(5.8)が50%〜100%であり、
(c)パラメーターX50が1μm〜6μmの範囲内であり、かつ
(d)製剤組成物の活性物質含量(計量用量)に基づき、5μm未満の粒径の吸入可能微細粒子フラクションが40%を超え、好ましくは2.8μm未満の粒径の吸入可能微細粒子フラクションが20%を超え、特に好ましくは2.8μm未満の粒径の吸入可能微細粒子フラクションが25%を超えることを特徴とする粉末吸入薬に関する。
【0009】
これら微粒子は特殊な物理的性質及び物理化学的性質を特徴とし、前記物質を吸入で投与したときに改良された薬理学的/薬物速度論的活性をもたらす。物質の有効性は(投与した活性物質の量に基づいて定量的に、またできるだけ速く高い血漿レベルを達成することに関しても)、物質の生化学的性質によってのみならず、物理化学的性質によっても決定される。固体を投与する場合(粉末吸入薬の場合のように)、周囲媒体中の絶対溶解度、活性物質の局所濃度と時間の関数としての周囲媒体中での溶解速度、及び肺中での粉末の沈着部位(空気力学的粒径によって決まる)のパラメーターを特に考慮しなければならない。
従って、吸入による最適投与は、活性物質の粒子が肺の表面上に微細コーティングを形成するという事実を考慮しなければならない。ここで重大な因子は、活性物質が、吸入される微粒子が粒子-粒子相互作用及びその分散特性又は空気力学的特性の(一方で粒子が肺の下部に多く沈着し、他方で肺の可能な最も広い表面積を覆うことを保証する)点でも有利になるように変化することである。従って、粉末吸入薬では吸入される微粒子の物理化学的性質が非常に重要である。
【0010】
本発明の方法で生成される粒子は高い物理的安定性を特徴とする。特に、粉末吸入薬として使用する場合、粒子の特性によって送達時に高微細含量の生成が可能となり、例えば技術的にカスケードインパクター計測で測定される(Pharm Eur. 2002 "Inhalanda / Preparations for Inhalations" and USP 25<601> for dry powder inhalers, using an ANDERSEN 1 ACFM Mark II cascade impactor)。典型的に、大きさが5μm未満(空気力学的に)であるこの方法の粒子の割合は40%を超える。
吸入薬のこの重要なパラメーターに加え、粉末は、通常の工業的方法でさらに加工できることを特徴とする。この方法で製造される粉末は、例えば、レーザー回折によって測定される粒径、例えばマルチポイントB.E.T計測で測定される比表面積という物理化学的パラメーターで特徴づけられる。固有値Q(5.8)については、この方法で製造される粉末の粒径は典型的に50%〜100%であり、パラメーターX50については、1μm〜6μmの範囲である。上記方法で製造される粒子は、1m2/g〜25m2/g、理想的には1m2/g〜20m2/g、最も好ましくは3m2/g〜10m2/gの比表面積の値を有する。70%を超える固有値Q(2.5)(液滴の体積による分布に基づいて大きさが2.5μm未満の粒子の量に対応する)を有する本発明の粉末が特に好ましい。幾何学については、上記方法で調製される粒子は、試験条件により、極端な“球形”、“キャビティ、おそらく穴を有する球形”、“内方向に形作られた凸部を有する球形”乃至“へこんだ中空体”と描写しうる粒子形状を有する。走査型電子顕微鏡では、このような粒子の表面は実質的にナノ構造である。
【0011】
本発明により、活性物質塩基(A)は、驚くべきことに噴霧乾燥法によって形態的に変化するので、こうして製造された粉末は、いずれのさらなる工程もなしで一次パッケージング手段に直接詰めることができ、何よりもまず、より粗い担体材料と混合する必要がなく、この吸入用パッケージングを粉末吸入器で送達できることが分かった。粒子が適切な粒径、通常0.1μm〜10μmの範囲になるように製造方法を制御することができ、このような粒子は容易にボルテックス/分散されるような表面特性を有する。
また、プロセスパラメーターと製造パラメーターの選択によって粒径を含む粒子のモルフォロジーを臨界的に制御できることも分かった。驚くべき事実は、“従来の”ジェット粉砕法で微粉化し、かつ匹敵する範囲の粒径で存在するこの物質の粉末は、その表面特性/粒子-粒子相互作用の点で、この発明で製造される粒子と根源的に形態が異なることである。このことは、品質パラメーター(“送達用量の微細粒子フラクション(Fine Particle Fraction of Delivered Dose)”(例えば、”Aerodynamic Particle Size Distribution" - Pharm Eur. 2002 "Inhalanda / Preparations for Inhalations" and USP 25<601> for dry powder inhalersの決定法に準拠)が3以上の係数で改良されるという事実から明かである。製剤に担体材料を使用する必要がないので、患者が実際に利用できる活性物質の絶対用量が、投与される総所定量に対してずっと高い係数によって高まる。
【0012】
本発明の製造方法は、噴霧塔内で活性物質を適宜溶かし、噴霧し、かつ乾燥させることを特徴とする。噴霧乾燥法の原理は、乾燥させる製品の溶液又は懸濁液を微細液滴に分割し、これら液滴を熱ガス流で乾燥させることにある。溶媒の蒸発後に残っている固形フラクションを重力分離装置(例えば、サイクロン)及び/又はろ過装置でガス流から分離して収集する。このようにして生成した微粒子は粒径、比表面積及びモルフォロジーの点で特殊な値で特徴づけられる。
このようにして得た微粉化製剤は粉末吸入薬として直接使用できる。より粗い担体材料と混合する必要がない。投与すべき粉末の量は予計量用量の形態で患者に適宜示される。これは、例えば、10mg〜100mg、好ましくは20mg〜60mgの上記方法で得た微粉化製剤をインハレットに(又は他の適切な形態、例えば、適切な吸入器を用いて吸入できるブリスターに)詰めることによって行い、例えば、Handihale(登録商標)を用いて投与することができる。
【0013】
噴霧-乾燥法により、必要な微粒子を調製するための溶媒として有機溶媒、有機-水性溶媒混合物が適切であることが分かった。好ましくはアルコール-水性溶媒系を用い、特に好ましくはエタノール/メタノール/水又はエタノール/プロパノール/水から成る溶媒混合物、最も好ましくはエタノール/水の溶媒混合物を使用する。溶媒混合物中の水のモル比は、アルコール成分のモル比の0.1〜10倍量、好ましくは0.5〜4倍量にすべきである。活性物質の濃度を調整することは主にこの方法を経済的にするのに役立つ。しかし、達成すべき活性物質の濃度によって限界があり、液滴サイズと固体濃度との特有の比を達成することで粒子の表面の質を最適化でき、かつ液滴と固体濃度によって一定の粒径が得られるという事実で規定される。通常、0.5wt.%〜20wt.%、好ましくは2wt.%〜10wt.%、特に好ましくは2.5wt.%〜7wt.%の濃度を選択すべきである。
【0014】
液滴サイズは、吸入可能粒子の製造で重要なパラメーターである。使用するノズルによって、所望の液滴サイズを得るように溶液のスループットと共に噴霧ガスのスループットを選択すべきである。好適な液滴サイズにつながるパラメーター、ノズル-噴霧ガススループット-溶液スループットの組合せはたくさんあるので、そのプロセス用に選択される液滴サイズを用いてプロセスを有用に定義することができる。これは、パラメーターX50(メジアン値=粒子サイズ/液滴サイズ;個々の粒子/液滴の体積による分布に基づいて粒子の量の50%が入る)が1μm〜20μm、好ましくは1μm〜8μm、特に好ましくは1μm〜3μm、及び固有値Q(5.8)(液滴の体積による分布に基づいて5.8μm未満に入る粒子の量に対応する)が10%〜100%、好ましくは30%〜100%、特に好ましくは60%〜100%であることで特徴づけられる。
【0015】
これは、対応する市販ノズル、例えば単物質又は複数物質ノズルを用いて技術的に実施される。これらノズルはノズルパラメーター(例えば、回転式噴霧器による回転速度又は加えられる噴霧圧力及び二物質ノズルの場合の噴霧ガスの生成マスフロー)及び噴霧速度(“噴霧溶液”の流量)によって決まる特徴を有する。乾燥プロセスに適した液滴を生成するために実際の噴霧プロセスの間に固守しなければならない特別の条件に加え、粒子の表面特性は乾燥パラメーターの選択によってもポジティブに/ゆっくりと影響を受けうることが分かる。乾燥工程に影響を及ぼす重大な特徴は、乾燥ガスの入口温度と出口温度、及び通過する乾燥ガスの流量である。液滴と乾燥した粒子が噴霧塔の壁にほとんど又はまったく接触しないように、適切な液滴サイズの液滴が乾燥チャンバーを通過することを確実にするように注意しなければならない。これは、適切な噴霧コーンを備えたノズルと、適切な直径の噴霧塔を用い、その装置のフロー条件を使って達成される。開始温度は、粉末が十分低い残存溶媒含量を有し、ひいては十分な化学的及び物理的安定性が達成されるようなプロセスに適合させなければならない。これは、理想的には出口温度を沸点又は沸点よりわずかに高い範囲の温度に維持することによって行われる。他方、乾燥ガスの入口温度は、乾燥ガスの流量と噴霧速度のパラメーターと関連して乾燥が適切な表面特性を有する粒子を形成するのに十分穏やかであるように選択すべきである。噴霧乾燥プロセスは、上述した微細な粒子も回収できるようにも設計しなければならない。これは、例えば適切なサイクロン又は非常に微細な粒子フィルターを用いて行うことができる。
【0016】
従って、第2局面では、本発明は、球状ナノ構造微粒子の形態の活性物質塩基(A)の製造方法であって、以下の工程:
(a)活性物質塩基(A)を有機溶媒又は有機-水性溶媒混合物に溶かして活性物質の濃度が0.5wt.%〜20wt.%、好ましくは2wt.%〜10wt.%、特に好ましくは2.5wt.%〜7wt.%の活性物質の溶液を調製する工程、
(b)このようにして得た活性物質溶液を、1μm〜20μm、好ましくは1μm〜8μm、特に好ましくは1μm〜3μmの範囲のパラメーターX50と、10%〜100%、好ましくは30%〜100%、特に好ましくは60%〜100%の固有値Q(5.8)(シンパテック(Sympatec)レーザー回折で測定)を有する液滴サイズの噴霧ミストを得るように常法で噴霧する工程、
(c)このようにして得た噴霧ミストを、以下のパラメーターを固守しながら乾燥ガスを用いて乾燥させる工程:
(i)100℃〜350℃、好ましくは120℃〜250℃、特に好ましくは130℃〜200℃の乾燥ガスの入口温度、及び
(ii)40℃〜120℃の乾燥ガスの出口温度、及び
(d)乾燥ガスの流れから乾燥した固形フラクションを常法で分離する工程
を含む方法に関する。
【0017】
本発明の好ましい方法は、球状ナノ構造微粒子の形態の活性物質塩基(A)の製造方法であって、以下の工程:
(a)活性物質塩基(A)を有機溶媒又は有機-水性溶媒混合物に溶かして活性物質の濃度が0.5wt.%〜20wt.%、好ましくは2wt.%〜10wt.%、特に好ましくは2.5wt.%〜7wt.%の活性物質の溶液を調製する工程、
(b)このようにして得た活性物質溶液を、1μm〜20μm、好ましくは1μm〜8μm、特に好ましくは1μm〜3μmの範囲のパラメーターX50と、10%〜100%、好ましくは30%〜100%、特に好ましくは60%〜100%の固有値Q(5.8)(シンパテック(Sympatec)レーザー回折で測定)を有する液滴サイズの噴霧ミストを得るように、1Nm3/h〜15Nm3/h、好ましくは3Nm3/h〜15Nm3/hの噴霧ガスの流量で常法で噴霧する工程、
(c)このようにして得た噴霧ミストを、以下のパラメーターを固守しながら乾燥ガスを用いて乾燥させる工程:
(i)100℃〜350℃、好ましくは120℃〜250℃、特に好ましくは130℃〜200℃の乾燥ガスの入口温度、
(ii)40℃〜120℃の乾燥ガスの出口温度、及び
(iii)15Nm3/h〜1500Nm3/h、好ましくは15Nm3/h〜150Nm3/hの乾燥ガスの流量、及び
(d)乾燥ガスの流れから乾燥した固形フラクションを常法で分離する工程
を含む方法に関する。
【0018】
上記方法の代替では、微粉化製剤を充填操作の前に常法で賦形剤と均質に混合することができる。
上述したように得た微粉化製剤は、吸入(粉末混合物の形態でも)によって直接投与することができる。このため、投与すべき粉末の量を予め1回分ずつに分けて吸入カプセルに入れなければならない。吸入器、例えばHandihaler(登録商標)を用いて粉末を投与sることができる。或いは、この微粉化製剤の1回用量は、類似の様式で例えばブリスターウェルの形態で調製することもできる。ブリスターを吸入器(装置)に入れ、吸入プロセスの間、1回用量をウェルから装置にあけ、或いは粉末をウェルから直接吸入する。粉末製剤を複数用量粉末吸入器を用いて投与することもできる。原則として、貯蔵容器から吸入すべき粉末の量を適用前に分け、第2工程でこの粉末の用量を吸入する。驚くべきことに、噴霧乾燥法で得た非晶質の微粉化製剤の分散は、なんの問題もなく一次パッケージングから起こり、かつ空気力学的粒度分布が活性物質の全身投与の要件を満たすことが分かった。こうして、FPF<5μm(アンダーソンカスケードインパクターで測定)が40%より多い、純粋な活性物質の微粉化物から成る粉末吸入薬を調製できることが分かった。特に、これら粉末吸入薬は2.8μm未満の分離サイズを有するFPFが20%を超え、好ましくは25%を超える微細粒子を特徴とする。驚くべきことに、この活性物質から上述したように調製した粉末吸入薬は微粉化製剤が非晶質形態で存在し、かつ高温多湿と無関係に使用できることを特徴とする。ここで述べる製品は、40℃及び75%の相対湿度という気候条件下で数日の上記物理的/空気力学的性質に関して破壊安定性を有する。
【0019】
従って、本明細書で述べる本発明は、予計量吸入可能粉末、特に微粉化製剤を詰めた吸入カプセル剤又はブリスターウェルにも関し、吸入器を使って投与することができる。この形態で投与するために与えられるカプセル剤又は他の方法で包装される粉末の量は、10mg〜100mg、好ましくは15mg〜70mg、特に好ましくは20mg〜60mgの量で非晶質の微粉化活性物質を含む。
第3局面では、本発明は前述した方法で得られる本方法の粉末吸入薬に関する。
第4局面では、本発明は、肺吸入又は鼻吸入用粉末吸入薬を調製するための、前述した方法で得られる球状ナノ構造微粒子の形態の活性物質塩基(A)の使用に関する。
第5局面では、本発明は、10mg〜100mg、好ましくは15mg〜70mg、特に好ましくは20mg〜60mgの範囲の活性物質の量を含む本発明の粉末吸入薬を含有する予計量製剤形態に関する。
第6局面は、10mg〜100mg、好ましくは15mg〜70mg、特に好ましくは20mg〜60mgの範囲の活性物質の量を含む本発明の粉末吸入薬を含有する吸入用カプセル剤(粉末インハレット)(Pulverinhalette)に関する。
【0020】
〔実験セクション〕
1)測定方法
a)レーザー回折(フラウエンフェルダー回折)による粒径の決定:
測定方法:粒径を測定するため、粉末を分散装置でレーザー回折分光計に供給する。メジアン値X50は、粒子の量の50%が入る粒径未満の粒径を指す。Q(5.8)値は、サイズが5.8μm未満の粒子のパーセンテージを示す。Q(2.5)値は、サイズが2.5μm未満の粒子のパーセンテージを示す。
測定装置:レーザー回折分光計(HELOS)、Messrs. Sympatec
ソフトウェア:WINDOX バージョン4
分散装置:RODOS/分散圧力:3バール
焦点距離:50mm[測定範囲:0.45……87.5μm]
評価方法:HRLD(V 3.3 Rel. 1)
b)比表面積の決定
測定方法:粉末サンプルを回折圧力で窒素雰囲気にさらすことによって比表面積を決定する。サンプルを冷却すると窒素分子が粒子の表面上で凝縮する。凝縮した窒素の量を系の圧力内での滴下を使って決定し、表面窒素要件とサンプルの重量を用いてサンプルの比表面積を計算する。
測定装置:Tri Star Multi Point BET, Messrs. Micromeritics
加熱ステーション:VacPrep 061, Messrs. Micromeritics
加熱:約12時間/40℃
〔分析パラメーター〕
サンプル管:1.27cm(1/2インチ);注入ロッドを備える
分析方法:16ポイントBET表面積測定
0.05〜0.20p/p0
絶対圧許容範囲:5.0mmHg
相対圧許容範囲:5.0%
排気速度:50.0mmHg/秒
排気時間:0.1時間
フリースペース:低いデュワー(Dewar)、t:0.5時間
保持時間:20秒
最小平衡遅延:600秒
吸着体:窒素
c)レーザー回折による液滴サイズの決定(Mieに準拠)
測定装置:レーザー回折分光計(HELOS), Messrs. Sympatec
ソフトウェア:WINDOX バージョン4
焦点距離:100mm[測定範囲:0.9……175μm]
測定方法:噴霧乾燥器からノズルを除去し、レーザービームの中心の噴霧コーンの上から3番目に噴霧器を置くことによって液滴サイズを決定する。測定は標準媒体として水による周囲温度で、その他の点では同一条件下で行う。
d)空気力学的粒径の決定
方法:Pharm Eur. 2002 "Inhalanda / Preparations for Inhalations" and USP 25<601> for dry powder inhalersに準拠
インパクター:ANDERSEN 1 ACFM Mark IIカスケードインパクター(8段階、フィルター及び予分離器、USP高トップ、サンプル誘導ポート(SIP))
吸入器:Handihaler(登録商標)
流量:39L/分
FPF(<5μm):沈着プレート2〜7incl.フィルター
FPF(<2.8μm):沈着プレート4〜7incl.フィルター
【0021】
2)実施例
実施例1:(A)のアルコール溶液に適切な噴霧パラメーター(改変BUCHI噴霧塔)

【0022】
3)得られた固形粒子の特徴


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)
【化1】

の活性物質塩基1-[N2-[3,5-ジブロモ-N-[[4-(3,4-ジヒドロ-2(1H)-オキソキナゾリン-3-イル)-1-ピペリジニル]カルボニル]-D-チロシル]-L-リシル]-4-(4-ピリジニル)-ピペラジンを球状ナノ構造微粒子の形態で含んでなる粉末吸入薬であって、
(a)前記粒子が1m2/g〜25m2/g、好ましくは1m2/g〜20m2/g、特に好ましくは3m2/g〜10m2/gの比表面積を有し、
(b)固有値Q(5.8)が50%〜100%であり、
(c)パラメーターX50が1μm〜6μmの範囲であり、かつ
(d)5μm未満の粒径の吸入可能微細粒子フラクションが、該製剤組成物の活性物質フラクション(計量用量)に基づいて40%より多い
ことを特徴とする粉末吸入薬。
【請求項2】
前記固有値Q(2.5)が70%〜100%であることを特徴とする請求項1記載の粉末吸入薬。
【請求項3】
20%を超える2.8μm未満の粒径の微細粒子フラクションを含有することを特徴とする請求項1又は2記載の粉末吸入薬。
【請求項4】
25%を超える2.8μm未満の粒径の微細粒子フラクションを含有することを特徴とする請求項1又は2記載の粉末吸入薬。
【請求項5】
球状ナノ構造微粒子の形態の活性物質塩基(A)の製造方法であって、以下の工程:
(a)活性物質塩基(A)を有機溶媒又は有機-水性溶媒混合物に溶かして活性物質の濃度が0.5wt.%〜20wt.%、好ましくは2wt.%〜10wt.%、特に好ましくは2.5wt.%〜7wt.%の活性物質の溶液を調製する工程、
(b)このようにして得た活性物質溶液を、1μm〜20μm、好ましくは1μm〜8μm、特に好ましくは1μm〜3μmの範囲のパラメーターX50と、10%〜100%、好ましくは30%〜100%、特に好ましくは60%〜100%の固有値Q(5.8)(シンパテックレーザー回折で測定)を有する液滴サイズの噴霧ミストを得るように常法で噴霧する工程、
(c)このようにして得た噴霧ミストを、以下のパラメーターを固守しながら乾燥ガスを用いて乾燥させる工程:
(i)100℃〜350℃、好ましくは120℃〜250℃、特に好ましくは130℃〜200℃の乾燥ガスの入口温度、及び
(ii)40℃〜120℃の乾燥ガスの出口温度、及び
(d)乾燥ガスの流れから乾燥した固形フラクションを常法で分離する工程
を含む方法。
【請求項6】
球状ナノ構造微粒子の形態の活性物質塩基(A)の製造方法であって、以下の工程:
(a)活性物質塩基(A)を有機溶媒又は有機-水性溶媒混合物に溶かして活性物質の濃度が0.5wt.%〜20wt.%、好ましくは2wt.%〜10wt.%、特に好ましくは2.5wt.%〜7wt.%の活性物質の溶液を調製する工程、
(b)このようにして得た活性物質溶液を、1μm〜20μm、好ましくは1μm〜8μm、特に好ましくは1μm〜3μmの範囲のパラメーターX50と、10%〜100%、好ましくは30%〜100%、特に好ましくは60%〜100%のパラメーターQ(5.8)(シンパテックレーザー回折で測定)を有する液滴サイズの噴霧ミストを得るように、1Nm3/h〜15Nm3/h、好ましくは3Nm3/h〜15Nm3/hの噴霧ガスの流量で常法で噴霧する工程、
(c)このようにして得た噴霧ミストを、以下のパラメーターを固守しながら乾燥ガスを用いて乾燥させる工程:
(i)100℃〜350℃、好ましくは120℃〜250℃、特に好ましくは130℃〜200℃の乾燥ガスの入口温度、
(ii)40℃〜120℃の乾燥ガスの出口温度、及び
(iii)15Nm3/h〜1500Nm3/h、好ましくは15Nm3/h〜150Nm3/hの乾燥ガスの流量、及び
(d)乾燥ガスの流れから乾燥した固形フラクションを常法で分離する工程
を含む方法。
【請求項7】
活性物質を溶かすために使用する溶媒が有機-水性溶媒系であり、水のモル比がアルコール成分のモル比の0.1〜10倍量、好ましくは0.5〜4倍量であることを特徴とする請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
前記有機-水性溶媒系が、エタノール/メタノール/水から成り、水のモル比がアルコール成分のモル比の0.1〜10倍量、好ましくは0.5〜4倍量であることを特徴とする請求項5又は6記載の方法。
【請求項9】
前記有機-水性溶媒系が、エタノール/プロパノール/水から成り、水のモル比がアルコール成分のモル比の0.1〜10倍量、好ましくは0.5〜4倍量であることを特徴とする請求項5又は6記載の方法。
【請求項10】
前記有機-水性溶媒系が、エタノール/水から成り、水のモル比がアルコール成分のモル比の0.1〜10倍量、好ましくは0.5〜4倍量であることを特徴とする請求項5又は6記載の方法。
【請求項11】
請求項5〜10のいずれか1項に記載の方法で得られる請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉末吸入薬。
【請求項12】
請求項5〜10のいずれか1項に従って得られる球状ナノ構造微粒子の形態の活性物質塩基(A)の、肺吸入又は鼻吸入用粉末吸入薬を製造するための使用。
【請求項13】
請求項1〜4又は11のいずれか1項に記載の粉末吸入薬を含有し、10〜100mg、好ましくは15mg〜70mg、特に好ましくは20mg〜60mgの活性物質含量を有する、予計量型製剤形態。
【請求項14】
請求項1〜4又は11のいずれか1項に記載の粉末吸入薬を含有し、10〜100mg、好ましくは15mg〜70mg、特に好ましくは20mg〜60mgの活性物質含量を有する、吸入用カプセル剤(粉末インハレット)。

【公表番号】特表2007−502792(P2007−502792A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523585(P2006−523585)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009103
【国際公開番号】WO2005/018614
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】