説明

CNTの製造

本発明は、工程a)カーボンナノチューブを合成する工程、b)任意の不活性化工程およびc)生成物を冷却する工程を含む方法に関する。該方法は、カーボンナノチューブの製造された貯蔵の問題のない取り扱いおよび包装を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工程a)カーボンナノチューブの合成(合成工程)、b)任意の不活性化(1以上の不活性化工程)およびc)生成物の冷却(冷却工程)を含む方法に関する。該方法は、製造されるカーボンナノチューブ物質の問題のない取り扱いおよび包装を可能とする。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(CNT)は、多くの用途について重要な物質である。カーボンナノチューブは、0.5〜100nmの直径および直径の数倍である長さを有する円筒状のカーボンチューブであると主に理解される。該チューブは、規則的に並んだ炭素原子の1以上の層を含み、および異なった形態のコアを有する。また、カーボンナノチューブは、例えば「カーボンフィブリル」または「中空カーボンファイバー」とも称される。
【0003】
カーボンナノチューブは、長い間、専門文献において知られている。一般に、Iijima(出版物:S.Iijima、Nature 354、第56〜58頁、1991年)がカーボンナノチューブの発見者として挙げられるが、これらの物質、特に、複数の黒鉛層を有する繊維状黒鉛物質は、1970年代または1980年代初期から知られている。最初に、TatesおよびBaker(GB1469930A1、1977年およびEP56004A2、1982年)が、炭化水素の触媒分解からの極めて微細な繊維状炭素の堆積物を記載した。しかしながら、短鎖炭化水素に基づいて製造された炭素フィラメントは、その直径について詳細に特徴付けられていない。
【0004】
100nmより小さい直径を有するカーボンナノチューブの製造は、最初にEP205556B1および国際公開WOA86/03455に記載されている。この製造のために、軽質(すなわち、短鎖および中鎖脂肪族または単核または二核芳香族)炭化水素および鉄系触媒(この触媒によって炭素担体化合物は800℃超〜900℃の温度にて分解される)が使用される。
【0005】
今日、カーボンナノチューブの製造について既知の方法としては、アーク放電法、レーザーアブレーション法および触媒法が挙げられる。これらの方法の多くでは、カーボンブラック、非晶質カーボンおよび大径を有する繊維が副生成物として形成される。触媒法では、例えば担持触媒粒子上での堆積と、インサイチュによりナノメーター範囲で直径を有するインサイチュで形成される金属中心上の堆積との間で区別され得る(いわゆる流れ法)。反応条件下でガス状である炭化水素からの炭素の触媒堆積による製造の場合では(以下、CCVD、触媒炭素蒸着)、アセチレン、メタン、エタン、エチレン、ブタン、ブタジエン、ベンゼンおよび更なる炭素含有出発物質が、可能な炭素供与体として挙げられる。
【0006】
種々の方法および触媒は、カーボンナノチューブの触媒製造について先行技術から既知である。通常、触媒は、金属、金属酸化物または分解性もしくは還元性金属成分を含む。例えばFe、Mo、Ni、V、Mn、Sn、Co、Cu等は、金属として先行技術に記載されている。それぞれの金属のほとんどは、ナノチューブを形成する傾向を有するが、高収率および非晶質炭素の低含有量は、先行技術により、上記金属の組合せを含有する金属触媒により有利に達成される。
【0007】
カーボンナノチューブの形成および形成されたチューブの特性は、触媒として用いる金属成分または複数の金属成分の組合せ、用いる触媒担体物質および触媒と担体との間の相互作用、遊離体ガスおよび分圧、水素または更なるガスの混合、反応温度および滞留時間または用いる反応器について複雑な様式で依存する。
【0008】
EP−A0205556(Hyperion Catalysis International)は、鉄含有触媒および800℃超〜1000℃の高温での種々の炭化水素の反応により製造されるカーボンナノチューブを記載する。
【0009】
Niをベースとする系は、Shaikhutdinovらにより、カーボンナノ材料の分解において活性であると記載されている(Shamil’ K.Shaikhutdinov、L.B.Avdeeva、O.V.Goncharova、D.I.Kochubey、B.N.Novgorodov、L.M.Plyasova、「Coprecipiated Ni−Al and Ni−Cu−Al catalysts for methane decomposition and carbon deposition I.」、Applied Catalysis A:General、126、1995年、125〜139頁)。
【0010】
CA2374848(Centre National de la Recherche Scientifique、仏国)は、炭素ドナーとしてアセチレンを用いて、コバルト触媒によって触媒1g当たり3gのCNTの収率を得る方法が、可能性のあるカーボンナノチューブの大量製造法として開示する。しかしながら、この比較的非常に小さい収率は、該方法の工業規模反応についての魅力を失わせるように見える。
【0011】
同様に、Mauronら(Ph.Mauron、Ch.Emmenegger、P.Sudan、P.Wenger、S.Rentsch、A.Zuettel、「Fluidised−bed CVD synthesis of carbon nanotubes on Fe/MgO」、Diamond and Related Materials 12、2003年、第780〜785頁)は、イソペンタンまたはアセチレンからのCNTの製造において、鉄触媒により非常に小さい収率のみを得る。
【0012】
EP−A1399384(Institut National Polytechnique、ツールーズ、仏国)は、CCVD法においてインライン触媒製造用の上流反応器でのカーボンナノチューブの製造を記載する。ここで触媒は、10μm〜1000μmの平均粒度を有し得、および触媒量の20倍までの凝集体の体積増加が得られる。
【0013】
実際の製造工程に加えて、工業規模でのカーボンナノチューブの製造方法における実際の合成の下流に付与されるプロセス工程もまた、確実に製造することができる生成物特性を有する高品質生成物の経済的な信頼性のある製造について著しく重要である。しかしながら、先行技術は、実験室規模または小規模で得られた試験結果を主に記載する。従って、該記載は、製造工程の下流に付与される生成物不活性化のプロセス工程(すなわち、可燃性ガス、例えば水素または出発物質ガスの残存物等の分離)に限定される。急速な生成物冷却を確保する、工業規模についての製造のための効率的な冷却工程の必要性は、これまで認識されなかったが、冷却工程は、全体として製造方法において潜在的なボトルネックを示す。
【0014】
例えばEP−A1594802(Universite de Liege)は、反応器出口での洗浄弁を有する回転式管型反応器中でのCCVDによるカーボンナノチューブの製造を記載する。反応器の入口および出口では、粉末出発材料および生成物を、不活性ガスで洗浄する。実験室規模での試験のみが、該特許の実施例に記載される。物質の交換および熱の消散はいずれも規模に著しく依存するので、効率的な冷却工程を有さないこの方法は、適当な市販容器、例えばドラム缶またはBig Bag等への充填を、温度があまりに高く直接行うことができないので、工業規模で行うことができず、導入の生産力は低下することとなる。さらに、未だ熱い生成物が周囲空気と接触するようになる場合には、火事の重大な危険性が存在することとなる。
【0015】
EP−A2107140(Grupo Antolin Ingenieri)は、カーボンナノチューブの製造の下流に付与されるプロセス工程に用いられる装置を記載する。この装置では、付着性付随物質をカーボンナノチューブから不活性ガスによる洗浄により除去するが、この場合、生成物のなお高い温度が1以上の反応および/または下流に付与される表面変性について用いられる。ここでも、生成物は、反応器を出る場合に未だ熱く、次いで複雑な操作において冷却されなければならない。CCVDによるCNTの製造において得られる高度に多孔質の非不活性化粉末生成物は、反応後、バッチ式および連続製造のいずれの場合も、可燃性ガス(例えば炭素ドナーガス、例えばエチレンまたは生成物ガス水素等)の付着性残留物の除去後でさえ、熱い状態で空気に対してなお高い反応性であり、従って一般に注意深く不活性化し、充填および発送することができる前に冷却しなければならない。このような工業規模での合成の下流に付与される製造工程は、製造方法に必要であるが、さもなければ、製造能力が低下するからである(例えばバッチサイクルの長期化)。しかしながら、カーボンナノチューブの比較的低い嵩密度および比較的低い熱伝導性に起因して、効率的で穏やかな急速冷却工程は、重要ではなく、標準冷却工程の任意の使用により行うことができない:例えば、冷却ガスをバルク生成物へ通過させることによる放熱は、生成物の低い嵩密度に起因して、摩耗ならびにガス流による生成物の放電を避けるために、低いガス速度だけを用いることができないのであまり効率的ではない。従って、散逸させることができる熱流は、著しく限定され、従って冷却は極めて非効率的であり、通気および高温による死角の形成も除外することができない。さらに、洗浄ガスの必要性を減らすことは、排ガスが、周囲へ放出される前に費用のかかる洗浄操作を施さなければならないので費用について問題となる。
【0016】
冷却に加えて、生成物の不活性化は、健康および安全および爆発防止のために、最終生成物が、出発材料ガスの付着性残留物および粒間空間における出発物質ガスの残留物をできる限り含まないことを確保するために行わなければならない。この工程も、適当な不活性ガス、例えば窒素またはアルゴン等を通過させることにより先行技術において典型的に行われるが、冷却について記載した同じ理由のために、効率性を損なうことなく実験室規模から工業規模へ簡単にスケールアップすることができない。
【0017】
概して、先行技術に記載の製造方法は、工業規模での経済的で信頼性のある方法について、冷却について可能な限り短い滞留時間、信頼性のある冷却、適切な場合には流動性が低くおよび摩耗について耐性を有さない生成物ならびにバッチ式または連続操作様式における可能性のある操作に関する製造方法に対する適合性を考慮したプロセス工程(実質的なカーボンナノチューブの合成の下流に付与される)を有さない。
【0018】
できる限り柔軟な製造方法とするために、完全連続反応器操作および実質的に連続反応器操作(いずれの場合にも、反応器中に存在する生成物の少ない割合のみを除去する極めて短いバッチサイクル)はいずれについても、または純粋なバッチ式反応器操作について適した生成物冷却および不活性化のためのプロセス工程を含む方法を提供することが更に望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】英国特許出願公開第1469930号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第56004号明細書
【特許文献3】欧州特許第205556号明細書
【特許文献4】国際公開第86/03455号パンフレット
【特許文献5】欧州特許出願公開第0205556号明細書
【特許文献6】カナダ国特許出願公開第2374848号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第1399384号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第1594802号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第2107140号明細書
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】S.Iijima、「Nature 354」、第56〜58頁、1991年
【非特許文献2】Shamil’K.Shaikhutdinov、L.B.Avdeeva、O.V.Goncharova、D.I.Kochubey、B.N.Novgorodov、L.M.Plyasova、「Coprecipiated Ni−Al and Ni−Cu−Al catalysts for methane decomposition and carbon deposition I.」、Applied Catalysis A:General、126、1995年、125〜139頁
【非特許文献3】Ph.Mauron、Ch.Emmenegger、P.Sudan、P.Wenger、S.Rentsch、A.Zuettel、「Fluidised−bed CVD synthesis of carbon nanotubes on Fe2O3/MgO」、Diamond and Related Materials 12、2003年、第780〜785頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従って、本明細書に記載の発明の課題は、a)合成工程、b)任意に、不活性化するための工程、およびc)生成物を冷却するための工程を含むカーボンナノチューブの製造方法全体を開発することであり、該方法により、全ての阻害性(ガス)付着がほとんどなく、問題なく充填することができる程度に冷却される生成物が提供され、後処理工程は、ボトルネックを生じさせずに製造工程の時間系列へ独立して挿入される。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題は、本発明の請求項1の特徴を有する方法により解決された。該方法は、工程:
a)カーボンナノチューブの合成、
b)任意のカーボンナノチューブの不活性化、
c)生成物を同時に輸送しおよび動かせる冷却系による生成物の冷却
を含み、個々のプロセス工程は、以下の通り特徴付けられる:
【発明を実施するための形態】
【0023】
a)カーボンナノチューブの合成
カーボンナノチューブの合成は、CCVD法、すなわち、反応条件下で気体状である炭化水素からのカーボンの触媒堆積により好ましく行われる。使用のための生成物としては、炭素供与体、例えばアセチレン、メタン、エタン、エチレン、ブタン、ブテン、ブタジエン、ベンゼンおよび更なる炭素を含有する出発物質等が挙げられる。
【0024】
実質的なCCVD合成法は、上で議論した一般的な先行技術から既知である。WO2006050903A2およびWO2007118668A2に記載の合成条件を、好ましく用いる。触媒として担体物質上の遷移金属を一般に用いるが、その組成物は、例えばWO2006050903A2において議論され、その製造は、例えばWO2007093337A2において議論されている。好ましいのは、WO2007093337A2(第8頁)による連続法において製造される担体物質としてのAlおよびMgOでの共沈Co−Mn触媒の使用である。
【0025】
合成工程に用いる反応器は、WO2006050903A2に記載の反応器、すなわち、例えば固定床反応器、管型反応器、回転式管型反応器、移動性床反応器、気泡形成性乱流または照射流動床ならびに内部または外部循環流動床を有する反応器である。WO2007118668A2による流動床反応器を好ましく用いる。
【0026】
c)生成物の冷却
生成物の冷却は、物質を、装置の壁と、または急速で効率的な冷却のための容器の任意の冷却組み込み部品との良好な接触を確保するために冷却工程に運びおよび移動させることができ、および反応装置の下流に配置された、またはそこに統合された導入部により行う。ここでは、生成物の移動を、物質とダストの付随生成物との摩擦が、損失を最小限にし、生成物のほこりのない取り扱いを確保しまたは得るために最小化されるような方法により行うことが重要である。
【0027】
従って、この冷却工程について、低摩耗性能動機械的搬送を与えながら同時に、冷却容器壁または対応する容器の冷却組み込み部品においてバルク生成物の良好な熱伝導を確保する装置のみが適当である。本発明の範囲内では、「能動」は、重力単独の作用によって生じない運動のことである。能動搬送を有する装置として、例えば回転式管、冷却スクリュー、流動床または振動式螺旋コンベヤーが挙げられる。
【0028】
b)任意の不活性化工程
不活性化工程もまた、必要に応じて、合成工程の下流に付与される。
【0029】
これは、有利には冷却工程中に集約することができるが、粒間ガスを、通過させる洗浄ガスとの強いおよび均一な接触により部分的にまたは完全に置き換え、破壊的な吸着付随物質を部分的または完全に脱離する。
【0030】
更なる実施態様では、不活性化および冷却の工程は、2つの別個の装置において行ってもよい。これは、合成工程または冷却工程を、連続的または実質的に連続して行わないが、バッチ式に行う場合に特に有利であり得る。次いで、合成工程および冷却工程の間の所要の緩衝容器は、効率的に不活性化の働きをすることもできるが、生成物運動は、該容器中において必要ではない(代表参照図1)。
【0031】
更なる実施態様では、不活性化および冷却の工程を、反応装置中へ統合することもできる。これは、例えば反応装置が連続操作回転式管型反応器である場合、このような装置では、生成物は通常、反応器土台を保護する必要がある壁冷却により、反応器を出る前に既に予め冷却されるので有利である。
【0032】
工程b)は、工程c)前または工程c)後に行うことができる。好ましくは、工程b)は、少なくとも部分的に、工程c)前に行う。
【0033】
特に好ましい実施態様では、不活性化は、生成物が未だ熱い間に行う。従って、本発明の特に好ましい実施態様では、不活性化は、合成工程の下流に付与された工程において、反応生成物が未だ高温である間に反応生成物の洗浄により、更に容易に揮発する付着を放出させ得ることを確保するために行う。この場合には、不活性化工程もまた加熱可能な装置において行うこともできる。この場合、安全な充填に必要な温度への急速および効果的な冷却のみを行う。
【0034】
特に好ましい実施態様では、工程a)、b)およびc)は全て、1つの装置において行うが、例えば合成工程は、回転式管型反応器中で行い、不活性化工程および冷却工程は、装置について回転管中へ統合する。連続製造のために、工程を、回転管中で異なった領域において互いに空間的に分け、生成物不活性化を、不活性化ガスの意図した添加により不活性化領域において確保することができる。図2は、合成区域ならびに不活性化および冷却区域を有する対応して区分化された回転管装置の回路図を示す。粉末CNT生成物へ付着する出発物質ガスまたは排ガスの成分の脱離は、CNT生成物に反して供給され、これにより予備加熱される不活性化性ガスにより行われるが、同時に、CNT生成物は、対応して不活性化性ガスにより冷却される。
【0035】
本発明による方法は、極めて柔軟に用いることができる。本発明による方法は、バッチ(バッチ式)手順および連続手順のいずれにおいても用いることができる。これは、全体としての方法および個々の工程のいずれについても当てはまる。例えば、合成は、バッチ法により行うことができるが、不活性化および冷却は連続的に行う。完全連続操作様式の代わりに、実質的に連続な操作様式を選択することも可能であり、反応器中に存在する生成物の少ない割合のみを極めて短いバッチサイクル中で除去する。本発明による方法は、実施例に示す通り、工業規模へ容易に変換することができる。
【0036】
本発明の方法および本発明の装置の好ましいおよび有利な実施態様は、下位の請求項およびに示し、以下に説明する。本発明の更なる実施態様は、本説明から明らかな方法により当業者へ明らかとなる。
【0037】
高温合成によるカーボンナノチューブの製造のための本発明の方法は、工程a)カーボンナノチューブの合成(合成工程)、b)任意の不活性化(1以上の不活性化工程)およびc)生成物の冷却(冷却工程)を含み、冷却工程は、生成物の能動運動により行うことを特徴とする。
【0038】
好ましい実施態様では、合成および/または不活性化および/または冷却は、バッチ式または連続的に行う。
【0039】
触媒化学蒸着による合成工程は、好ましくは回転式管型反応器、流動床反応器または固定床反応器中で、またはレーザーアブレーションにより、またはアーク放電法により行う。
【0040】
1つの実施態様では、不活性化工程および冷却工程は、複数の相互に接続した装置において行うことができるが、他の実施態様では、不活性化工程および冷却工程は、1つの装置において行う。
【0041】
冷却/冷却工程は、好ましくは、回転管、冷却スクリュー、流動床または振動螺旋コンベヤーにおいて行う。
【0042】
1つの実施態様では、不活性化工程または複数の不活性化工程の1つは、能動的に機械的に動かない床を有する緩衝容器中で行う。不活性化工程または複数の不活性化工程の1つは、加熱可能な装置において行うことができる。
【0043】
本発明の方法の好ましい実施態様は、回転式管型反応器において触媒化学蒸着であり、プロセス工程不活性化および冷却の少なくとも1つを、装置について回転式管型反応器中へ統合する。
【0044】
他の好ましい実施態様では、合成工程は、触媒化学蒸着により流動床反応器において行い、不活性化および冷却工程は、下流に配置された1以上の装置において行う。
【0045】
1つの実施態様では、合成工程をバッチ式に操作し、不活性化工程または複数の不活性化工程の1つを、合成工程の下流に付与される不活性ガス洗浄の形態で反応器中へ統合する。
【0046】
他の実施態様では、合成工程を連続的にまたは実質的に連続的に操作し、および不活性化工程または複数の不活性化工程の1つを、反応器の下流へ配置された装置において行う。
【0047】
1つの実施態様では、不活性化および冷却を行う少なくとも2つの装置を、反応器の下流に配置し、その装置の少なくとも1つを能動機械的生成物移動により操作する。好ましくは下流の装置の1つを連続的に操作する。
【0048】
本発明を、以下に詳細に、図を参照して実施例を示して説明する。図において:
【0049】
図1は、記載の方法の可能性のある実施態様について、図式形態において、例として、流動床反応器の配置(1、合成工程、バッチ式に操作)、緩衝容器(2、不活性化)および回転式冷却管(3、連続的に操作)を示す。図面の更なる要素:4 触媒の添加、5 出発物質ガスの供給、6 不活性化ガスの供給、7 任意の不活性化性ガスの供給、8 排ガス、9 反応器からのCNT生成物の取り出し、10 充填するための不活性化および冷却CNT生成物。
【0050】
図2は、図式形態により、例として、不活性化ガス(例えば窒素)が粉末生成物に反して流れる、統合された不活性化および生成物冷却を有する連続的に操作される回転式管型反応器を示す。図面の要素:11 回転管、11a 合成区域、11b 不活性化および冷却区域、12 加熱、13 冷却、14 吸引ランス、15 第1バッフル板(回転)、16 第2バッフル板(回転または固定)、17 触媒の供給、18 出発物質ガスの供給、19 不活性化ガスの供給、20 反応からの排ガス、21 充填のためのCNT生成物のオーバーフロー、22 反応からのガスおよび不活性化性ガスからの排ガス、23 バルクCNT。
【0051】
本発明を、以下の実施例により更に説明する。
【実施例】
【0052】
実施例1(本発明による):回転式管における効率的および穏やかな冷却の試験
用いる回転式管型装置は、300mmの内径、5mmのドラム壁厚み、560mmの空冷長さおよび1860mmの散水により冷却される長さを有し、回転式管の勾配は1%であり、組み込み部品、例えば押し上げバー等は存在しない。冷却領域の上流は、生成物を加熱する炉区域である。回転式管に、市販のカーボンナノチューブ凝集体(Baytubes(登録商標) C 150 P、Bayer MaterialScience AG、嵩密度150〜160kg/m、熱容量710J(kg K))を、周期的に振動するコンベヤーおよびコンベヤースクリューにより連続的に装填する。炉区域においては、生成物を、窒素での洗浄を同時に行いながら間接的に加熱する。加熱区域の終わりでは、ドラムの内側から冷却区域への熱の照射を減らすために放射線遮蔽が存在する。熱区域後には、生成物を、実質的に間接的に冷却された水冷却区域へ入る前に空冷区域を通過させる。冷却ドラムの終わりでは、完成生成物を、排出ヘッドの供給傾斜台へ入れる。供給傾斜台は、周囲空気から二重フラップ仕切りにより分離する。二重フラップ仕切りの後には、窒素で洗浄した収集容器が続く。炉区域の温度は、試験では、1000℃であり、回転式管の速度は、4.5分−1であり、間接冷却のための水の流速は、300L/時間であった。5.6、7.5および10.0kg/時の値を、固体スループットについて設定した。これら3つのスループットについて、加熱区域の終わり(冷却領域への入口)において決定した生成物温度はそれぞれ、582、561および613℃であり、排出容器において決定した生成物温度はそれぞれ、36、39および51℃であった。回転式管における処理により引き起こされた機械応力の表示としての生成物の嵩密度または粒度分布における変化は、検出することができなかった。
【0053】
実施例2(本発明によらない):連続操作回転式管型装置(254mmの内径、外側から電気的に加熱される長さ3048mm、速度5分−1、傾斜勾配1度)において、カーボンナノチューブを、650℃にて、WO2006050903A2に従って出発物質ガスとしてエチレンおよび粉末Co−Mn−Al−MgO触媒を用いて製造する。エチレン流速は、120Ln/分であり、触媒の質量流は、120g/時である。出発物質ガスおよび触媒を、反応器の同じ終端にて添加し、装置に同時に流し、触媒の1g当たり約40gの収率および約140kg/mの嵩密度を有するCNT凝集体の粉末生成物を形成する。加熱領域の下流に約1800mmの長さの第2領域を設け、回転式管を、外側から自由対流により冷却する。第2領域の終わりにおいて、非回転式バッフル板を存在させ、これにより、粉末CNT生成物を、交互の圧力仕切りへ入れ、エチレンおよび水素を含有する排ガスを、排ガス燃焼へ供給する。仕切りに入れることにより、CNT生成物は、50℃未満の温度を有する。仕切りでは、CNT生成物を、窒素で循環的に洗浄し、次いで100ミリバールの絶対圧へ真空にする。このような3つの交互の圧力サイクルの後、生成物を、計量系により用意してあった貯蔵ドラム中へ入れる。貯蔵ドラムを開ける際、著しいエチレン臭が認められ、すなわち、生成物に付着する出発物質ガスの残留物の脱離は、低い仕切り温度では不完全であった。
【0054】
実施例3(本発明によらない):実験室規模:100mmの直径を有するCNT合成および不活性化、動かない排出容器における冷却
鋼製流動床(100mmの内径、1000mmを越えない床高さ、650℃の床温度へ電気的に加熱)において、カーボンナノチューブを、バッチ法により製造する。装填の開始時に、WO2006050903A2に従う粉末Co−Mn−Al−MgO触媒24gを、反応器中へ仕切りより導入し、次いで36Ln/分エチレンおよび4Ln/分窒素を34分間反応器中へ導入する。エチレンを、触媒により反応させてカーボンナノチューブおよび水素を与え、触媒粒子を壊して開け、CNT凝集体を形成し、反応器中の床高さを増加させる。装填時間の終わりでは、エチレンの供給を停止し、生成物床を、エチレンおよび水素が排ガス中に反応器出口で検出されなくなるまで40Ln/分窒素で流動させ、加熱は、この時間の間、活性化した状態にする。次いで826gの粉末CNT凝集体(嵩密度148kg/m)を、反応器から円筒状排出容器中へ排出弁よりアルゴン(空気より重い)で排出する。生成物の取り出しが完了する際、排出容器を片側にセットし、空気中で冷却する。これにより100Ln/時のアルゴンを、熱生成物を不活性にし、空気中での燃焼を避けることを確保するために、動かないバルク生成物へランスより通過させる。この時間の間、次の装填を反応器中で製造し、その終了前(更なる34分後)に排出容器中の生成物を、板鋼製の貯蔵ドラムへの危険を伴わずに移すことができるように十分に冷却(250℃未満)し、従って排出容器は、次の装填について利用可能である。得られた粉末CNT生成物は、完全に臭気がない。
【0055】
実施例4(本発明によらない、試料計算):立方体状貯蔵庫(縁の長さL=1m)においては、m=150kgの粉末CNT生成物が存在する。CNT生成物の熱容量Cは、0.7kJ/kgにおいて推定され、バルク生成物の熱伝導性λは、0.4W/(mK)において確立する。バルク物質の出発温度Tは、実施例2および3の通り、650℃であり、周囲温度T=20℃である。生成物を、純粋に熱伝導によりT=50℃へ冷却する。この場合、冷却に必要な時間tは、以下の式:
【数1】

によりおおよそ計算される。
【0056】
上記データにより、18.5時間のおおよその冷却時間tが得られる。この値は、上流合成装置の容量が劇的に減少することとなるか、または非経済的な多くの上記冷却容器が必要となるので工業用途について受け入れ難いほど大きい。より長い冷却時間が、貯蔵庫の寸法が増加する場合に得られる。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温合成によるカーボンナノチューブの製造方法であって、工程a)カーボンナノチューブの合成(合成工程)、b)任意の不活性化(1以上の不活性化工程)およびc)生成物の冷却(冷却工程)を含み、該冷却工程を生成物の能動運動により行うことを特徴とする、方法。
【請求項2】
合成工程、不活性化工程および冷却工程を含む群から選択される1以上の工程を、バッチ式または連続的に行うことを更に特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
合成工程を、回転式管型反応器、流動床反応器もしくは固定床反応器において触媒化学蒸着により、またはレーザーアブレーションによりまたはアーク放電法により行うことを更に特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
不活性化工程または複数の不活性化工程の少なくとも1つおよび冷却工程を、複数の相互に接続した装置において行うことを更に特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
不活性化工程または複数の不活性化工程の少なくとも1つを、能動的に機械的に動かない床を有する緩衝容器において行うことを更に特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
冷却を、回転式管、冷却スクリュー、流動床または振動式螺旋コンベヤーにおいて行うことを更に特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
不活性化工程または複数の不活性化工程の少なくとも1つおよび冷却工程を、1つの装置において行うことを更に特徴とする、請求項1、2、3、5および6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
合成工程および不活性化工程または複数の不活性化工程の少なくとも1つを、1つの装置において行うことを更に特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
不活性化工程または複数の不活性化工程の少なくとも1つを、加熱可能な装置において行うことを更に特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
合成工程を、触媒化学蒸着により回転式管型反応器において行い、およびプロセス工程不活性化および冷却の少なくとも1つを、装置について回転式管型反応器中へ統合することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
合成工程を、触媒化学蒸着により流動床反応器において行い、および不活性化および冷却を、下流に配置された1以上の装置において行うことを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
反応器をバッチ式に操作し、および不活性化工程または複数の不活性化工程の少なくとも1つを、合成工程の下流に付与される不活性ガス洗浄の形態で反応器中へ統合することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
反応器を、連続的または実質的に連続的に操作し、および不活性化工程または複数の不活性化工程の少なくとも1つを、反応器の下流へ配置された装置において行うことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
不活性化および冷却を行う少なくとも2つの装置を反応器の下流に設け、その装置の少なくとも1つを能動機械的生成物運動により操作することを特徴とする、請求項10〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
下流に設けられた装置の少なくとも1つを、連続的に操作することを特徴とする、請求項13に記載の方法。

【公表番号】特表2013−518015(P2013−518015A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549358(P2012−549358)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050782
【国際公開番号】WO2011/089195
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(512137348)バイエル・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (91)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Intellectual Property GmbH
【Fターム(参考)】