説明

CO2の回収方法及びCO2の回収装置

【課題】石炭ガス化ガス中のCOをCOに転換するシフト反応器でのCO転化反応の温度上昇を抑制して触媒及びシフト反応器の長寿命化を図ると共に、COをCOに変換するシフト反応を促進させる。
【解決手段】炭素を含む固体燃料をガス化した生成ガス中のCOをCOへ転換する触媒を有するシフト反応器を備えたシフト工程と、転化されたCOを含んだ生成ガスを吸収液に吸収させる吸収塔及び吸収させたCOを分離して吸収液を再生する再生塔を有するCO回収工程を備えており、シフト反応器の内部に生成ガス中のCOをCOに転換するCO転換触媒と生成ガス中のメタン又はメタノールをHとCOに転換するメタン改質触媒又はメタノール改質触媒との双方を充填させ、CO転換触媒下での発熱反応となるシフト転換反応によって温度が上昇した生成ガスの温度を改質触媒下での吸熱反応となる改質反応によって低下させるCOの回収方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COとメタン、及び/又はメタノールを含む燃料ガス中のCOを、触媒により効率的にCOに変換するCOの回収に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭、石油及び天然ガス等の燃料を用いて発電する火力発電プラントが従来から多数稼動している。その中でも、埋蔵量が多く、将来的にも安定供給が可能な石炭を燃料とし、一旦ガス化した後に発電用の燃料として供給する石炭ガス化複合発電(Integrated Coal Gasification Combined Cycle: IGCC)という技術が近年注目されている。
【0003】
近年、地球温暖化防止の観点から、プラントからのCO排出量を削減するためにCOを回収する技術が開発されている。
【0004】
公知例の特許第2870929号公報及び特許第3149561号公報に記載された技術では、ガス化炉から生成した生成ガスに含まれるHSやCOSの硫黄分を脱硫設備により除去し、その後、下記した反応式(1)を行うシフト反応器によってガス化炉で生成した生成ガス中のCOを反応式1によりCOに変換するシフト反応を行わせ、その後、CO回収設備によって生成ガス中COを回収する石炭ガス化発電プラントが開示されている。
【0005】
CO+HO→CO+H+41.2kJ/mol ・・・(1)
この反応式(1)は発熱反応であり、反応進行に伴って生成ガス及びシフト反応器に充填された触媒温度が上昇する。ガス化炉で生成した生成ガスに含まれるCO濃度は約50%と高いため、上記発熱反応の進行によって200〜300℃の温度上昇が生じる。
【0006】
公知例の特開2004−331701号公報に記載された技術に開示されているように、一般的にはシフト反応器の入口温度は250〜350℃で運転するケースが多い。この場合、シフト反応器の出口温度は500℃以上と高温になる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2870929号公報
【特許文献2】特許第3149561号公報
【特許文献3】特開2004−331701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記した特開2004−331701号公報に記載されたように、シフト反応器の出口温度が例えば500℃以上の高温になると、シフト反応器に充填される触媒の熱劣化、例えばシンタリングによる比表面積低下を引き起こし、触媒活性の低下を引き起こすリスクが高くなる。加えて、反応器内の温度上昇により、シフト反応器の容器やシフト反応器の出口配管の熱劣化を引き起こす可能性も高くなる。
【0009】
本発明の目的は、石炭ガス化ガス中のCOをCOに転換するシフト反応器でのCO転化反応の温度上昇を抑制して触媒及びシフト反応器の長寿命化を図ると共に、ガス中のCOをCOに変換するシフト反応の促進を可能にしたCOの回収方法及びCOの回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のCOの回収方法は、炭素を含む固体燃料をガス化した生成ガス中に含まれるCOを触媒によりCOへ転換する触媒を有するシフト反応器を備えたシフト工程と、前記シフト工程によって転化されたCOを含んだ生成ガスからCOを吸収液に吸収させる吸収塔、及びこの吸収塔から供給された吸収液に吸収させたCOを分離して該吸収液を再生し、前記吸収塔に再生した吸収液を供給する再生塔をそれぞれ有するCO回収工程を備えたCOの回収方法において、前記シフト工程を構成するシフト反応器の内部に、生成ガス中のCOをCOに転換するCO転換触媒と、生成ガス中のメタン又はメタノールをHとCOに転換するメタン改質触媒又はメタノール改質触媒との双方を充填させ、前記CO転換触媒下での発熱反応となるシフト転換反応によって温度が上昇した生成ガスの温度を、前記改質触媒下での吸熱反応となる改質反応によって前記生成ガスの温度を低下させるようにしたことを特徴とする。
【0011】
本発明のCOの回収装置は、炭素を含む固体燃料をガス化した生成ガス中に含まれるCOを触媒によりCOへ転換する触媒を有するシフト反応器を備えたシフト工程と、前記シフト工程によって転化されたCOを含んだ生成ガスからCOを吸収液に吸収させる吸収塔、及びこの吸収塔から供給された吸収液に吸収させたCOを分離して該吸収液を再生し、前記吸収塔に再生した吸収液を供給する再生塔をそれぞれ有するCO回収工程を有するCOの回収装置において、前記シフト工程を構成するシフト反応器の内部に、生成ガス中のCOをCOに転換するCO転換触媒を充填するように配置すると共に、生成ガス中のメタン又はメタノールをHとCOに転換するメタン改質触媒又はメタノール改質触媒を充填するように配置して、前記CO転換触媒下での発熱反応となるシフト転換反応によって温度が上昇した生成ガスの温度をメタン改質触媒下又はメタノール改質触媒下での吸熱反応となる改質反応によって前記生成ガスの温度を低下させるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ガス中のCOをCOに転換するシフト反応器でのCO転化反応の温度上昇を抑制して触媒及びシフト反応器の長寿命化を図ると共に、ガス中のCOをCOに変換するシフト反応の促進を可能にしたCOの回収方法及びCOの回収装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施例であるCOの回収装置の概略構成を示すシステム構成図。
【図2】本発明の第2実施例であるCOの回収装置の概略構成を示すシステム構成図。
【図3】本発明の第3実施例であるCOの回収装置の概略構成を示すシステム構成図。
【図4】本発明の第1実施例であるCOの回収装置の触媒層に対する1つの解析例を示す図。
【図5】本発明の第1実施例であるCOの回収装置の触媒層に対するもう一つの解析例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施例であるCOの回収方法及びCOの回収装置について図面を引用して以下に説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明の第1実施例であるCOの回収方法及びCOの回収装置の概略構成について図1を用いて説明する。
【0016】
図1に示した第1実施例のCOの回収装置は、ガス化炉(図示せず)で生成された生成ガスであり、Cを含有する石炭のガス化ガスに含まれている重金属やハロゲン化水素等を洗浄する水洗塔1と、前記水洗塔1を経由して供給されるガス化ガスの経路途中に高温の水蒸気を供給して石炭のガス化ガス中のCOを水蒸気との反応によりCOとHとに転換するシフト反応器2とを備えたシフト工程と、このシフト工程の前記シフト反応器2から出たガス化ガスに含まれるCOとHSを吸収液に吸収させるHS/CO同時吸収塔3及び前記HS/CO同時吸収塔3で吸収液に吸収したCOとHSを該吸収液から分離して回収すると共に、前記吸収液を再生する再生塔4を備えたCO回収工程によって構成されている。
【0017】
ここで、前記シフト反応器2は石炭のガス化ガス中のCOをCOに転換するシフト工程を構成しており、前記HS/CO同時吸収塔3と前記再生塔4は石炭ガス化ガス中のCOを回収する回収工程を構成している。
【0018】
図1に示した本実施例のCOの回収装置の構成について更に詳細に説明すると、ガス化炉(図示せず)で生成した石炭のガス化ガスである生成ガスは水洗塔1に送られ、この水洗塔1で生成ガス中の重金属やハロゲン化水素等の不純物質が除去される。
【0019】
その後、水洗塔1で洗浄された生成ガスは、水洗塔1に供給される生成ガスの上流側に設置され、前記水洗塔1に供給される生成ガスを熱源として前記水洗塔1で洗浄された生成ガスを昇温する熱交換器5、及び前記熱交換器5の下流側に設置され、この熱交換器5で昇温した生成ガスを加熱するガス加熱器6を経由して、シフト工程を構成するシフト反応器2に送られる。
【0020】
前記熱交換器5及びガス加熱器6によって、シフト反応器2に供給される生成ガスはシフト工程を構成するシフト反応器2の内部に充填されるCO転化触媒の反応温度まで昇温される。
【0021】
また、ガス加熱器6で昇温した生成ガスの経路の途中には、シフト工程のシフト反応器2におけるガス化ガス中のCOをCOに転換するシフト反応に必要な高温の水蒸気が供給されるように構成されている。
【0022】
そして前記シフト反応器2の内部には、CO転化触媒21と改質触媒22とが同時に充填されている。尚、定常運転時でのシフト反応器2の入口ガスの主成分はCOとHであり、COが乾燥状態で約60vol%、H2が約25vol%である。
【0023】
本実施例のCOの回収装置の特徴は、炭素を含む固体燃料をガス化した生成ガス中に含まれるCOを触媒によってCOへ転換するシフト工程と、生成ガス中のCOを回収するCO回収工程を備えるガス精製設備において、前記シフト工程にCO転化触媒と同時にメタン改質触媒又はメタノール改質触媒を充填させていることにある。
【0024】
上述した反応式(1)におけるメタン改質反応、及びメタノール改質反応は、反応式(2)及び反応式(3)によって進行する。
【0025】
CH+2HO→CO+4H−165.0kJ/mol ・・・(2)
CHOH+HO→CO+3H−49.0kJ/mol ・・・(3)
上記反応式(2)及び(3)はいずれも吸熱反応であり、反応進行に伴い雰囲気温度は低下する。メタンはガス化炉で生成された生成ガス中に含まれるガスであり、メタノールはシフト反応を行うシフト工程において、反応式(4)によって一部生成する。
【0026】
CO+3H→CHOH ・・・(4)
メタンはシフト反応器2の出口ガスに同伴して、次のCO回収工程に送られるが、CO回収工程でもメタンの回収ができないため、吸収塔3で分離させて燃料としてガスタービンに供給して燃焼させる。また、メタノールはシフト反応器2の出口で凝縮水を除去する段階で凝縮水中に溶解し、その後処理される。
【0027】
メタン及びメタノールのいずれのガスもCを含有するガスであるが、COに転化されずに系外に排出されるため、回収できずにプラントのC回収率低下の要因となっていた。
【0028】
そこで、メタン及びメタノールをシフト反応器2内で反応式(2)及び(3)に基いてCOとHに変換することにより、シフト反応器2内の温度上昇の抑制に寄与するだけでなく、COの回収装置を構成するプラントのC回収率の向上にも寄与することができる。
【0029】
図1に示した本実施例のCOの回収装置においては、シフト反応器2の下流側に、前記シフト反応器2から排出された生成ガスを冷却する熱交換器7と、生成ガス中の水分を除去するノックアウトドラム8が夫々設置されており、シフト反応器2から排出された生成ガスは前記熱交換器7によって冷却され、ノックアウトドラム8によって生成ガス中の水分を凝縮させて系外に除去している。
【0030】
前記ノックアウトドラム8を流下した生成ガスは、その後、HS/CO同時吸収塔3に送られ、前記HS/CO同時吸収塔3において生成ガス中のHSとCOを吸収液に吸収させることによって前記HSとCOを生成ガスから除去する。
【0031】
そして前記HS/CO同時吸収塔3で吸収液に吸収されなかったHは、HS/CO同時吸収塔3から排出され、燃料としてガスタービン25の燃焼器に供給されて燃焼し、燃焼ガスとなってガスタービン25を駆動する。
【0032】
前記HS/CO同時吸収塔3でHSとCOを吸収した吸収液は、リッチ液流路9を通じて前記HS/CO同時吸収塔3の下流側に設置された再生塔4に送られ、この再生塔4で加熱して前記吸収液からHSとCOを分離することによって前記吸収液を再生し、再生した吸収液は、リーン液流路10を通じて前記再生塔4から再度、前記HS/CO同時吸収塔3に供給されるように構成されている。
【0033】
これらのHS/CO同時吸収塔3及び再生塔4はCO回収工程を構成している。
【0034】
そして再生塔4での加熱によって吸収液から分離して前記再生塔4から排出されたHSは図示していないカルシウム系吸収剤によって石膏化されて回収させ、また、吸収液から分離して前記再生塔4から排出されたCOは図示していない液化及び固化によって回収される。
【0035】
本実施例のCOの回収装置では、シフト反応器2の前段に水洗塔1を設置し、ガス化炉で生成された生成ガス中の重金属やハロゲン化水素を除去している。シフト反応器2に充填される触媒の多くは重金属やハロゲン化水素の流入により被毒し、活性が低下する。
【0036】
従って、シフト反応器2の前段で重金属やハロゲン化水素を除去する必要がある。本実施例では湿式除去装置である水洗塔1を用いた例を示したが、この水洗塔1に代えて吸着材又は吸収材を用いた乾式除去装置を使用しても良い。
【0037】
前記の乾式除去装置においては、生成ガス中の重金属やハロゲン化水素を除去する吸着材又は吸収材として、アルカリ金属、アルカリ土類金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物の他、活性炭やゼオライト等の多孔性物質を使用することができる。
【0038】
前記した乾式除去装置を用いることにより、ガス化炉から供給される生成ガスの冷却、昇温操作を省くことができるため、エネルギーロスを抑制することができる。
【0039】
ところで、湿式除去装置である水洗塔1を用いる場合には、水洗塔1から発生する同伴水蒸気が期待でき、ガス化炉で生成した生成ガス中のCOを水蒸気との反応によりCOとHとに転換する水蒸気としてシフト反応器2に供給する必要がある水蒸気量を低減することができる利点もある。
本実施例のCOの回収装置では、シフト工程を構成するシフト反応器2の下流側に配設したCO回収工程にてガス化炉で生成した生成ガス中のHSとCOを同時に回収するシステムとしているため、シフト反応器2には生成ガスに含まれる多量のHSが流入する。
従って、生成ガス中のCOをCOに変換するシフト反応を行うために、シフト反応器2の内部に充填するCO転化触媒21としては、耐S性を有するCo−Mo系、又はNi−Mo系触媒が好ましいが、これ以外にも耐S性を有するCO転化触媒であれば何でも良い。
【0040】
また、HSをシフト反応器2の前段で除去するためには、シフト反応器2の前段に脱硫装置を備えてもよい。シフト反応器2の前段に脱硫装置を備えるシステムであれば、シフト反応器2には耐S性を有しない触媒、例えばCu−Zn系、Fe−Cr系も使用することができる。
【0041】
また、シフト反応器2の内部に充填する改質触媒22としては、メタン、メタノール改質触媒のいずれでも良い。これらの触媒は、ガス化炉での使用炭種、及び運用条件によって流入するガス組成は異なるので、ガス組成によって選定することが望ましい。
【0042】
メタン改質触媒22としては、Ni−Al系や酸化ニッケルが使用できるがこれ以外にもメタンと水蒸気からCOとHを生成させる触媒であれば何でも良い。また、メタノール改質触媒としては代表的な触媒としてCu−Zn系触媒があるが、これに限らず、メタン改質触媒と同様に水蒸気との反応によりCOとHを生成する触媒であれば何でも良い。
【0043】
メタン改質反応はメタノール改質反応よりも吸熱量が多いが、より高温域で進行する反応であるので、COシフト反応との共存を見据えた場合、メタノール改質触媒を使用する方が好ましい。
【0044】
本実施例のCOの回収装置では、図1に示したように、シフト反応器2の内部に充填する触媒は、CO転化触媒21を、シフト反応器2の内部の上流側と下流側との双方に設置し、改質触媒22を上流側と下流側とに設置した前記CO転化触媒21の間に位置するように設置しているが、改質触媒22の設置位置をシフト反応器2の内部に複数配置したCO転化触媒21の中間の位置に限るものではない。
【0045】
S/CO同時吸収塔3としては、物理吸収塔、化学吸収塔いずれも適用できる。双方の吸収塔で使用する吸収液の例としては、物理吸収ではセレクソール、レクチゾール等があり、また、化学吸収ではメチルジエタノールアミン(MDEA)やアンモニア等が使用できる。
【0046】
本実施例のCOの回収装置では前記HS/CO同時吸収塔3でHS/COを吸収した吸収液は再生塔4で再生するシステムとしているが、圧力スイングを利用したフラッシュ再生方式、及びフラッシュ再生、再生塔再生の組合せによる再生方式を採用しても良い。フラッシュ再生を利用することでHSとCOの分離回収が可能となり、純度の高いCOを回収することができる。
【0047】
次に、本実施例であるCOの回収方法及びCOの回収装置について、シフト反応器2の内部にCO転化触媒21とメタン改質触媒22を設置した場合における触媒層の温度変化を平衡計算により解析した結果について示す。
(解析例1)
本解析例ではシフト反応器2にCO転化触媒21のみを充填した条件での解析結果を示す。解析条件を以下に示す。ガス化炉からの生成ガスの組成は、乾燥条件でCO:55%、H2:20%、CO2:5%、CH4:0.5%、N2:19.5%とし、シフト反応器2に流入するガス量は1,000m3/hとした。
【0048】
上記乾燥ガスにシフト反応の反応物質である水蒸気を1,000m3/h供給した条件において、触媒層の出口温度が500℃で平衡状態となるように触媒層の入口温度を試算した試算結果を図3に示す。
【0049】
図3の試算結果に示したように、出口平衡組成からCO転化量が求められ、それにより温度上昇を試算すると209℃となった。即ち、触媒層の出口温度を500℃に設定し、平衡状態まで反応を進行させるとすると、触媒層の入口温度は291℃に設定する必要があることが判った。
(解析例2)
本解析例では、CO転化触媒21の中間にメタン改質触媒22を充填した系で触媒層の温度変化を解析した結果を図4に示す。
【0050】
図4に示したように、触媒層の入口温度は解析例1と同様に291℃とし、CO転化触媒21の温度が400℃に達した位置にメタン改質触媒22を充填した。メタン改質触媒22により生成ガス中のメタンが全て反応式(2)によりCOとHに変換したとすると、吸熱反応により触媒層の温度は約16℃低下する。
【0051】
メタン改質触媒22の下流側には更にCO転化触媒21を充填しており、残りのCOがCOに変換される。メタン改質触媒22により温度を低下させることにより、CO転化反応は促進され、解析例1と同様のシフト率80%を達成する温度は16℃低下し、484℃となった。
【0052】
以上説明した様に、本実施例のCOの回収方法及びCOの回収装置によれば、ガス中のCOをCOに転換するシフト反応器でのCO転化反応の温度上昇を抑制して触媒及びシフト反応器の長寿命化を図ると共に、ガス中のCOをCOに変換するシフト反応の促進を可能にしたCOの回収方法及びCOの回収装置を実現することができる。
【実施例2】
【0053】
次に 本発明の第2実施例であるCOの回収方法及びCOの回収装置の概略構成について図2を用いて説明する。本実施例のCOの回収装置は図1に示した先の実施例のCOの回収装置と基本的な構成は共通しているので、両者に共通した構成の説明は省略し、相違する部分についてのみ以下に説明する。
【0054】
図2に示した第2実施例のCOの回収装置は、上流側から下流側に沿ってシフト反応器2a、2b、2cと多段に3塔設置したシステム構成となっている。シフト反応器2a、2b、2cを多段に構成した理由は、反応式(1)の反応が発熱反応であるため、シフト反応器を多段に構成することによってシフト反応器2a、2b、2cの1段当たりの負荷を分散させることが可能となり、各シフト反応器2a、2b、2cの温度上昇を抑制することができるためである。
【0055】
従って、シフト反応器2a、2b、2cは図2に示したように多段にして配設することが望ましく、逐次的にシフト反応を進行させることでシフト反応器2に充填した触媒、及びシフト反応器2の過熱を抑制する。尚、本実施例のCOの回収装置では、シフト反応器2を3塔設置した構成としたがこれに限ることなく、シフト反応器2を多段に設置するものであれば良い。
【0056】
また、図2に示された本実施例のCOの回収装置において、多段に3塔設置されたシフト反応器2a、2b、2cへのCO転化触媒21及び改質触媒22の充填に関しては、多段に設置したこれらのシフト反応器2a、2b、2cのうち、最上流に位置する第1シフト反応器2aの内部にCO転化触媒21及び改質触媒22の双方を充填するように構成することが望ましい。これは、最上流に位置するシフト反応器2aの温度上昇が最も著しいためである。
【0057】
そして、2段目及び3段目に設置した第2シフト反応器2b、及び第3シフト反応器2cの内部には、CO転化触媒21のみをそれぞれ充填して構成している。
【0058】
また、本実施例のCOの回収装置では、最上流に位置する第1シフト反応器2aの内部に充填する改質触媒22をCO転化触媒21の下流側となる位置に設置している。
【0059】
また、第1実施例のCOの回収装置におけるシフト反応器2の内部に充填した触媒のように、改質触媒22が上流側と下流側の双方に配置したCO転化触媒21の中間に設置することがメンテナンス上困難な場合は、図2に示した本実施例の第1シフト反応器2aに充填させた触媒のように、充填する触媒層を2段にして上下に直列に設置してもよい。但し、この場合は必ず改質触媒22の方をCO転化触媒21の下流側となる位置に設置する。
【0060】
本実施例のCOの回収装置では、第2反応器2b、第3反応器3cの前段に熱交換器11をそれぞれ設置している。これは熱交換器11によって前段の第1反応器2a、第2反応器2bで発生した熱量をそれぞれ回収し、後段の第2反応器2b、第3反応器3cの入口温度をそれぞれ低下させると同時に、効率的な熱回収によって、発電効率の低下を抑制するためである。
【0061】
本実施例によれば、ガス中のCOをCOに転換するシフト反応器でのCO転化反応の温度上昇を抑制して触媒及びシフト反応器の長寿命化を図ると共に、ガス中のCOをCOに変換するシフト反応の促進を可能にしたCOの回収方法及びCOの回収装置を実現することができる。
【実施例3】
【0062】
次に 本発明の第3実施例であるCOの回収方法及びCOの回収装置の概略構成について図2を用いて説明する。本実施例のCOの回収装置は図1に示した先の実施例のCOの回収装置と基本的な構成は共通しているので、両者に共通した構成の説明は省略し、相違する部分についてのみ以下に説明する。
【0063】
図3に示した第3実施例のCOの回収装置では、シフト反応器2の上流側にメタン又はメタノールを前記シフト反応器2に供給するメタン及びメタノール供給管13が配設されており、前記メタン及びメタノール供給管13には供給するメタン又はメタノールの流量を調節するマスフローコントローラー14が設置されている。
【0064】
前記シフト反応器2の下流側の生成ガスを流下させる配管には該配管を流下する生成ガスの温度を測定する温度計15が設置されている。
そして、前記温度計15で測定した生成ガスの検出温度に基づいて前記マスフローコントローラー14によってシフト反応器2に供給するメタン又はメタノール量の流量値を演算して操作信号として前記マスフローコントローラー14に出力する制御器16が設置されている。
【0065】
上記した構成のCOの回収装置においては、温度計15によってシフト反応器2の出口ガス温度を測定し、温度計15で測定したガス温度の検出値に応じて前記シフト反応器2にメタン及びメタノール供給管13を通じて供給するメタン又はメタノールの流量値を制御器15により算出し、この制御器16から操作信号として出力して前記マスフローコントローラー14の開度を調節し、シフト反応器2に供給するメタン又はメタノール量の流量を制御するものである。
【0066】
このようなシステム構成とすることで、外部から、シフト反応器2にメタン又はメタノールを供給する場合でもシフト反応器2に供給するメタン又はメタノールの供給量を適切に制御することができる。
【0067】
本実施例によれば、ガス中のCOをCOに転換するシフト反応器でのCO転化反応の温度上昇を抑制して触媒及びシフト反応器の長寿命化を図ると共に、ガス中のCOをCOに変換するシフト反応の促進を可能にしたCOの回収方法及びCOの回収装置を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明はCOとメタン、及び/又はメタノールを含む燃料ガス中のCOを、触媒により効率的にCOに変換するCOの回収方法及びCOの回収装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1:水洗塔、2、2a、2b、2c:シフト反応器、3:H2S/CO2同時吸収塔、4:再生塔、5、7:熱交換器、6:ガス加熱器、8:ノックアウトドラム、9:リッチ液流路、10:リーン液流路、11:熱交換器、13:メタン及びメタノール供給管、14:マスフローコントローラ、15:温度計、16:制御器、25:ガスタービン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素を含む固体燃料をガス化した生成ガス中に含まれるCOを触媒によりCOへ転換する触媒を有するシフト反応器を備えたシフト工程と、前記シフト工程によって転化されたCOを含んだ生成ガスからCOを吸収液に吸収させる吸収塔、及びこの吸収塔から供給された吸収液に吸収させたCOを分離して該吸収液を再生し、前記吸収塔に再生した吸収液を供給する再生塔をそれぞれ有するCO回収工程を備えたCOの回収方法において、
前記シフト工程を構成するシフト反応器の内部に、生成ガス中のCOをCOに転換するCO転換触媒と、生成ガス中のメタン又はメタノールをHとCOに転換するメタン改質触媒又はメタノール改質触媒との双方を充填させ、前記CO転換触媒下での発熱反応となるシフト転換反応によって温度が上昇した生成ガスの温度を、前記改質触媒下での吸熱反応となる改質反応によって前記生成ガスの温度を低下させるようにしたことを特徴とするCOの回収方法。
【請求項2】
請求項1に記載のCOの回収方法において、
シフト反応器に充填される前記CO転換触媒は、前記シフト反応器の内部の上流側の位置に充填し、シフト反応器に充填される前記メタン改質触媒又はメタノール改質触媒は、前記シフト反応器の内部の前記CO転換触媒よりも下流側の位置に充填していることを特徴とするCOの回収方法。
【請求項3】
請求項1に記載のCOの回収方法において、
シフト反応器に充填される前記CO転換触媒は、前記シフト反応器の内部の上流側の位置と下流側の位置にそれぞれ充填し、シフト反応器に充填される前記メタン改質触媒又はメタノール改質触媒は、前記シフト反応器の内部の上流側及び下流側の位置に充填された前記CO転換触媒の間となる位置に充填していることを特徴とするCOの回収方法。
【請求項4】
請求項1に記載のCOの回収方法において、
前記シフト工程の前段となるメタン又はメタノール供給工程からメタン又はメタノールを前記シフト工程のシフト反応器に供給するようにしていることを特徴とするCOの回収方法。
【請求項5】
請求項1に記載のCOの回収方法において、
前記シフト反応器は複数段の反応器から構成されており、これらの複数段の反応器のうち最も上流側に位置するシフト反応器にはCO転換触媒及びメタン改質触媒又はメタノール改質触媒を充填し、前記複数段の反応器のうち最も上流側に位置するシフト反応器よりも下流側に位置するシフト反応器にはCO転換触媒のみを充填していることを特徴とするCOの回収方法。
【請求項6】
炭素を含む固体燃料をガス化した生成ガス中に含まれるCOを触媒によりCOへ転換する触媒を有するシフト反応器を備えたシフト工程と、前記シフト工程によって転化されたCOを含んだ生成ガスからCOを吸収液に吸収させる吸収塔、及びこの吸収塔から供給された吸収液に吸収させたCOを分離して該吸収液を再生し、前記吸収塔に再生した吸収液を供給する再生塔をそれぞれ有するCO回収工程を有するCOの回収装置において、
前記シフト工程を構成するシフト反応器の内部に、生成ガス中のCOをCOに転換するCO転換触媒を充填するように配置すると共に、生成ガス中のメタン又はメタノールをHとCOに転換するメタン改質触媒又はメタノール改質触媒を充填するように配置して、前記CO転換触媒下での発熱反応となるシフト転換反応によって温度が上昇した生成ガスの温度をメタン改質触媒下又はメタノール改質触媒下での吸熱反応となる改質反応によって前記生成ガスの温度を低下させるように構成したことを特徴とするCOの回収装置。
【請求項7】
請求項6に記載のCOの回収装置において、
前記シフト反応器の内部に充填される前記CO転換触媒は前記シフト反応器の内部の上流側の位置に配設し、前記シフト反応器の内部に充填される前記メタン改質触媒又はメタノール改質触媒は前記CO転換触媒よりも下流側となる位置に配設したことを特徴とするCOの回収装置。
【請求項8】
請求項6に記載のCOの回収装置において、
前記シフト反応器の内部に充填される前記CO転換触媒は前記シフト反応器の内部の上流側の位置と下流側の位置にそれぞれ充填されるように配設し、前記シフト反応器の内部に充填される前記メタン改質触媒又はメタノール改質触媒は、前記シフト反応器の内部の上流側及び下流側の位置にそれぞれ充填された前記CO転換触媒の間となる位置に配設したことを特徴とするCOの回収装置。
【請求項9】
請求項6に記載のCOの回収装置において、
前記シフト工程の前段にメタン又はメタノール供給工程を配設し、このメタン又はメタノール供給工程からメタン又はメタノールを前記シフト工程の前記シフト反応器に供給するように構成したことを特徴とするCOの回収装置。
【請求項10】
請求項6に記載のCOの回収装置において、
前記シフト反応器は複数段のシフト反応器から構成されており、これらの複数段のシフト反応器のうち最も上流側に位置するシフト反応器には、前記CO転換触媒と、前記メタン改質触媒又はメタノール改質触媒の双方がそれぞれ充填するように配置されて構成されており、前記複数段の反応器のうち最も上流側に位置するシフト反応器よりも下流側に位置するシフト反応器には、前記CO転換触媒のみが充填するように配置されていることを特徴とするCOの回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−162425(P2012−162425A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24643(P2011−24643)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】