説明

CO2圧縮ガス源と超過圧力保護手段とを有する容器

液体を充填することができ、圧密に閉じられており、液体を取り出すことができる容器は、容器の開口部に、シール状態で取り付けられることができるインサートを有する。インサートは、CO高圧カートリッジ(14)と、COをこのCO高圧カートリッジから排出させるための圧力制御弁と、外側から接近可能な制御要素とを有する。この制御要素の作動によって、CO高圧カートリッジ(14)に穴が開けられる。超過圧力保護手段は、容器内での望ましくない圧力の上昇の際に、容器の上部空間からインサートを通って大気へ通じる流路を開放する。超過圧力保護手段は、内圧が、容器が視覚的に膨らむほどの値を上回った後に、しかし、内圧が、容器が割れるほどの値に達する前に、破裂する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を充填することができ、圧密に閉じられており、液体を取り出すことができる容器に関する。このような容器の例は、樽、ミニ樽(パーティー用樽)または缶である。これらの容器には、CO含有の液体、特に飲料が、圧力下で充填されている。本発明は、特に、ビール用のパーティー用樽に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術である特許文献1に記載の容器は、シール状態で容器の開口部に取り付けられ、CO高圧カートリッジと、COをこのCO高圧カートリッジから排出させるための圧力制御弁と、外側から接近可能な制御要素とを有するインサートを具備する。制御要素の制御によって、CO高圧カートリッジに、穴が開けられる。
【0003】
関連の容器のために適切な大きさを有する、市販の穴開け可能なCOカートリッジは、約60Barの圧力下で、約16gのCOを含む。特許文献1の圧力制御弁は、容器の上部空間に排出されるCOが受けている圧力の減少および正確な制御を引き起こす。圧力は、典型的には、0.7と1.3Barとの間にある。圧力は、液体に溶けたCOの分圧と同じか、あるいは分圧よりも僅かに高い。
【0004】
本発明は、特許文献1に記載の圧力制御弁が、何らかの理由からたびたび作動しないという、有りそうにない故障を取り扱う。容器の中の制御の利かない圧力上昇が、緩慢に、または迅速に生じることがある。複数の実験は、ビール用の従来のパーティー用樽が、約6.5Barまでの内圧に耐えることを示す。約4Barからは、パーティー用樽が破裂する。すなわち、パーティー用樽の上蓋および/または下蓋は、膨張する。約6.5Barの場合には、しかも大抵は、パーティー用樽のジャケットと、上蓋または下蓋との間の結合した継目に裂け目ができることによってである。残りのCOは漏れる。パーティー用樽は、可能ならば、ビールの強力な噴水となって、ビールがこぼれる。このことによって、人々は、危険な目に会うわけではないが、物の損傷はあり得る。厄介な片付け作業が生じる。
【0005】
特許文献2からは、容器に組み込まれた圧力システムを有する容器が公知である。この圧力システムは、CO高圧カートリッジと、COをこのCO高圧カートリッジから排出させるための圧力制御弁と、外側から接近可能な制御要素とを有し、この制御要素の作動によって、CO高圧カートリッジに穴が開けられる。圧力システムは、超過圧力保護手段を有し、この超過圧力保護手段は、容器内での望ましくない圧力の上昇の際に、容器の上部空間から圧力システムを通って大気へ通じる流路を開放する。
【0006】
特許文献2に記載の超過圧力保護手段は、超過圧力管部分の形態をとる弁部材を有し、かつ複数の開口部、孔およびダクトを介して、複雑な流路を閉じまたは開放する超過圧力弁からなる。このような超過圧力保護手段の、構造的な複雑さおよび原価は、高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP 1 642 861 A1
【特許文献2】EP 1 688 813 A1
【発明の概要】
【0008】
本発明の課題は、単純な構造を有しかつ機能的に信頼性があり、故障の際に、顧客に、容器内の圧力システムで何かが正常でないことを送信する超過圧力保護手段を、上記タイプの容器に備えることである。
【0009】
この課題を解決する超過圧力保護手段は、内圧が、容器が視覚的に膨らむほどの値を上回った後に、しかし、内圧が、容器が割れるほどの値に達する前に、破裂する。超過圧力保護手段の破裂する部分は、ハウジングの壁に設けられたダイアフラムであって、インサートのこのハウジングが、容器の中へ延びている。
【0010】
超過圧力保護手段が破裂した後に、残りのCOが、容器の上部空間から、特定の流路を通って放出される。この場合、液体または泡の流出が全然生じないか、あるいは注目すべき流出が全然生じない。とにかく、このことによって、損傷が生じるとしても、損傷は、限度内に留まる。容器が目に見えて膨らむとき、この容器は、顧客に、容器内の圧力システムで何かが正常でないことを送信する。
【0011】
好ましい実施の形態では、流路は、COの放出のために、制御要素の非密封区域を通って延びている。ここでは、特許文献1に記載のインサートに設けられた制御要素が有する現存の非密封区域を活用することができ、制御要素の(dessen)構造を僅かに変化しさえすればよい。
【0012】
好ましい実施の形態では、超過圧力保護手段は、CO高圧カートリッジへの穴開け前には作動されない。超過圧力保護手段は、CO高圧カートリッジへの穴開けによって作動される。このことによって、超過圧力保護手段が、実際に使用されるときにのみ、すなわち、圧力制御弁の故障の際にのみ、機能することが保証される。
【0013】
好ましい実施の形態では、超過圧力保護手段は、内圧が4.0Barないし9.0Bar、好ましくは4.5Barないし7.0Bar、更に好ましくは5.0ないし6.0Barであるとき、破裂する。
【0014】
好ましい実施の形態では、ダイアフラムは、CO高圧カートリッジへの穴開けの前に、制御要素において支持される。CO高圧カートリッジへの穴開けの際に、ダイアフラムは、制御要素から開放される。
【0015】
好ましい実施の形態では、ダイアフラムは、インサートに埋め込まれている。このことによって、ダイアフラムは、損傷に対して保護されている。
【0016】
好ましい実施の形態では、ダイアフラムは、弾性的なプラスチックからなる。内圧が制御できないほどに上昇する際には、ダイアフラムは弾性変形の増大を被って、ついには、破裂する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】縦断面図のCO圧縮ガス源を示す。
【図2】図1の詳細IIの弾性的なプラスチック・コンポーネントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に示した実施の形態を参照して本発明を詳述する。CO圧縮ガス源は、容器の注ぎ口を通って容器に適合しかつ注ぎ口をきつく閉じているインサートとして形成されている。容器には、圧力下で、CO含有の液体が、通常は容器の上蓋の真中に位置している注ぎ口を通って、充填される。次に、注ぎ口がインサートによって閉じられる。
【0019】
液体を取り除くためには、一体型の排出コックが用いられることができる。この排出コックは、容器の下蓋の高さで、容器の側壁に設けられている。液体は、減圧が、容器の上部空間における液位の上方にある、容器の上部空間で、達せられるまで、流れ出る。減圧を正確に調整し、制御された状態に維持するために、CO圧縮ガス源を作動させる。CO圧縮ガス源は、COを、液体中に溶けたCOの分圧に対応するか、またはこの分圧を僅かに上回る圧力下で、容器の上部空間に供給する。このことによって、容器を常に空にすることが保証されている。容器の上部空間には空気が達しない。液体のCO含有が一定に保たれている。
【0020】
インサートは、細長い形状であり、大部分は、中心軸に対し径方向に対称的に構成されている。インサートは、主に、プラスチックからなる。製造のためには、2成分プラスチック射出成形技術が考えられる。
【0021】
インサートが取付位置にあって、容器の注ぎ口を閉じているときは、インサートのハウジング10が容器の中へ延びている。
【0022】
ハウジング10は、その内端に、CO高圧カートリッジ14をプレス嵌めで受けるためのチャンバ12を有する。カートリッジ14の頭部は、注ぎ口の方に向けられている。頭部の端面では、カートリッジが穴開け用針によって穴があけられることが可能である。
【0023】
ハウジング10は、外側で、周囲を取り巻くカラー16によって、注ぎ口のフランジ付き縁部(Boerdelrand)に取り付けられている。カラー16には、シール18が成形されており、シールによって、インサートは、注ぎ口を密閉する。
【0024】
ハウジング10に挿入された回転ノブ20が、カラー16から外側へ突き出ている。回転ノブの作動の際に、COカートリッジ14に穴が開けられる。回転ノブ20は、急勾配の雄ねじ22を有する。雄ねじによって、回転ノブは、ハウジング10の補完的な雌ねじに螺入されている。
【0025】
COカートリッジ14に穴を開けるために、穴開け用針24が用いられる。穴開け用針は、圧力制御弁の弁部材と構造的に結合されている。弁部材は、弾性的なダイアフラム26と共に、ハウジング10の軸心に取り付けられている。穴開け用針24の先端は、COカートリッジ14の端面からほんの僅か間隔をあけている。
【0026】
穴開け用針24がCOカートリッジ14へ軸方向に調整移動する間に、弁部材は、圧力制御弁の弁座28から持ち上がる。弁座28は、弾性的な密封材料からなり、ハウジングに成形されている。
【0027】
穴開け用針24は、回転ノブ20と穴開け用針24との間に位置しているスライダ30によって作用を受ける。スライダ30は、ハウジング10内で、縦方向移動可能に案内されている。作動中に、回転ノブ20は、スライダ30に抗して前進する。スライダは、この際に、軸方向に移動される。
【0028】
回転ノブ20とスライダ30との間には、圧縮ばね32が挟み込まれている。圧縮ばね32は、穴開け用針24に抗して、スライダ30に事前に負荷を加える。
【0029】
ダイアフラム26は、作業空間を、圧力制御弁の弁座28の下流に対し区画する。作業空間は、側方の出口開口部を有する。この出口開口部の直前には、弾性的なシールリング34が設けられている。シールリング34は、逆止め弁の機能を有する。シールリングは、液体がインサートに達することを阻止する。
【0030】
COカートリッジ14に穴を開けるために、回転ノブ20が、約90°だけ回転される。スライダ30は、回転ノブ20のねじの前進によって、軸方向内側へ移動される。穴開け用針24は、ダイアフラム26の弾性変形下で、軸方向内側に連行される。弁部材は、弁座28から持ち上がる。穴開けの後に、COカートリッジ14の頭部の手前における非常に小さな弁空間に、高圧下にあるCOが充填される。
【0031】
回転ノブ20が完全に90°回転するか、それを越えて回転した後に、スライダ30は、圧縮ばね32の力に抗して、軸方向外側に跳ね戻る。この目的のために、回転ノブは、穴開け用針24によって作動される。穴開け用針は、ダイアフラム26の弾性的な復元(Rueckverformung)によって、軸方向に戻される。圧縮ばね32は圧縮される。圧力制御弁は閉じられ、高圧下にある少量のCOが作業空間に入れられる。ダイアフラムに存在しているCOの圧力は、穴開け用針によって作動される、スライダ30の跳ね戻りに寄与する。
【0032】
圧力制御弁を更に開閉することは、ダイアフラム26における力の釣り合いによって定められる。この釣り合いに寄与するのは、ダイアフラム26の弾性特性と、圧縮ばね32のばね定数と、作業空間におけるCOの圧力とである。排出されたCOの圧力にとって、圧縮ばね32のばね定数は決定的である。
【0033】
通常、ユーザが、CO圧縮ガス源を作動するのは、容器内の内圧が、排出コックを通って流出する液体の噴流が余りに弱くなるまでに、下がったときである。しかしながら、CO圧縮ガス源を既に事前に容易に作動させることができるのは、容器内の圧力がまだ高いとき、特に、ユーザが最初に容器を操作しようとするときである。COを適量配分して容器の上部空間に入れることは、高圧が、出口開口部の手前のシールリング34に負荷する限り、起こらない。
【0034】
CO圧縮ガス源は超過圧力保護手段を有する。この超過圧力保護手段は、圧力制御弁が故障し、COが、制御できないほどに高い圧力下で、容器の上部空間に達するときに、作動する。
【0035】
超過圧力保護手段としては、注ぎ口の直ぐ手前で、ハウジング10の壁部に、熱可塑性エラストマ(TPE)が射出成形されている。最も少ない材料の厚みを有する、熱可塑性エラストマの部分は、壁部に埋め込まれたダイアフラム36である。
【0036】
ダイアフラム36は、COカートリッジ14に穴を開けるためにまだ作動されない回転ノブ20の外側ジャケットと、面一に接触している。この目的のために、ダイアフラムは、回転ノブ20において、雄ねじ22の、2つの隣接したねじ山の間に取り付けられている。
【0037】
COカートリッジ14に穴を開けるために回転ノブ20が90°回転されるとき、回転ノブ20のジャケットに設けられた窓は、ダイアフラム36に向かい合う。内圧が、制御できないほどに高くなるときには、ダイアフラム36は、この窓へ弾性的に膨張することができ、約5.7barの場合に、材料の最も少ない厚みの個所で、破裂する。このことによって、流路が、容器の上部空間から、回転ノブ20のジャケットへ開かれる。この流路は、カラー16に対し絶対に漏れないわけではない。それ故に、COは、容器の上部空間から大気へ流出することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 ハウジング
12 チャンバ
14 CO圧縮ガス源
16 カラー
18 シール
20 回転ノブ
22 雄ねじ
28 弁座
24 穴開け用針
26 ダイアフラム
30 スライダ
32 圧縮ねじ
34 シールリング
36 ダイアフラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を充填することができ、圧密に閉じられており、液体を取り出すことができる容器であって、インサートおよび超過圧力保護手段を有し、前記インサートは、前記容器の開口部に、シール状態で、取り付けられることができ、CO高圧カートリッジ(14)と、COをこのCO高圧カートリッジから排出させるための圧力制御弁と、外側から接近可能な制御要素とを有し、この制御要素の作動によって、前記CO高圧カートリッジ(14)に穴を開けることが可能であり、前記超過圧力保護手段は、前記容器内での望ましくない圧力の上昇の際に、前記容器の上部空間から前記インサートを通って大気へ通じる流路を開放してなる容器において、
前記超過圧力保護手段は、内圧が、前記容器が視覚的に膨らむほどの値を上回った後に、しかし、内圧が、前記容器が割れるほどの値に達する前に、破裂すること、および前記超過圧力保護手段の破裂する部分が、ハウジング(10)の壁に設けられたダイアフラム(36)であって、前記インサートのこのハウジングが、前記容器の中へ延びていることを特徴とする容器。
【請求項2】
前記流路は、前記制御要素の非密封区域を通って延びていることを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記超過圧力保護手段は、前記CO高圧カートリッジ(14)に穴が開けられる前には作動せず、前記CO高圧カートリッジ(14)に穴を開けることによって作動可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の容器。
【請求項4】
前記超過圧力保護手段は、内圧が4.0ないし9.0Bar、好ましくは4.5ないし7.0Bar、更に好ましくは5.0ないし6.0Barであるとき、破裂することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の容器。
【請求項5】
前記ダイアフラムは、前記CO高圧カートリッジ(14)への穴開けの前に、前記制御要素において支持され、前記CO高圧カートリッジ(14)への穴開けの際に、前記制御要素から開放されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の容器。
【請求項6】
前記ダイアフラム(36)は、前記インサートに埋め込まれていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の容器。
【請求項7】
前記ダイアフラム(36)は、弾性的なプラスチックからなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−526263(P2010−526263A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506843(P2010−506843)
【出願日】平成20年5月6日(2008.5.6)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003611
【国際公開番号】WO2008/138513
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(507087247)
【出願人】(507087258)
【Fターム(参考)】