説明

CSF3Rポリペプチド及びそれらの使用

本発明は、CSF3Rポリペプチド変種及び、特にヒト対象における治療的又は予防的処置のためのそれらの使用に関する。本発明はまた、該ポリペプチドをコードする核酸、そのような核酸を含むベクター及びそれを含む組換え細胞に関する。本発明は更に、そのようなポリペプチドを製造する方法、更には任意の試料中のこれらのポリペプチドを検出又は投薬のための方法及び道具を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CSF3Rポリペプチド及びそれらの使用、特にヒト対象における治療的又は予防的処置のための使用に関する。本発明はまた、該ポリペプチドをコードする核酸、そのような核酸を含むベクター及びそれを含む組換え細胞、並びに対応する医薬組成物にも関する。本発明は更に、そのようなポリペプチドの製造法に加え、任意の試料中のこれらのポリペプチドの検出又は投薬のための方法及び道具を開示する。
【背景技術】
【0002】
背景
顆粒球コロニー刺激因子(GCSF又はCSF3)は、クラスIサイトカイン受容体とも称される、ヘマトポイエチン受容体スーパーファミリーに属する膜受容体であるコロニー刺激因子3受容体(CSF3R)の活性化を介して、その機能を発揮する。CSF3Rは、顆粒球コロニー刺激因子受容体(GCSFR)又はCD114としても公知である。
【0003】
リンホカイン、造血成長因子、及び成長ホルモン−関連分子に関する多くの受容体は、共通の結合ドメインを共有することがわかっている。これらの受容体は、ヘマトポイエチン受容体と称され、対応するリガンドはヘマトポイエチンと称される。更にヘマトポイエチンは、2つの主要な構造群に細分される:大/長ヘマトポイエチン及び小/短ヘマトポイエチン。大ヘマトポイエチンの受容体複合体の一部である個別の受容体鎖のひとつのサブセットは、それらの細胞外部分に共通の構造エレメント:免疫グロビン−様ドメイン、ヘマトポイエチン−受容体ドメイン、及び3フィブロネクチンIII型ドメイン(レプチン受容体の2)を含む。この亜群は、「gp130受容体ファミリー」と命名されており(Mosleyら、J. Biol. Chem. 1996, 271, 32635-43)、レプチン受容体(LPTR)、顆粒球コロニー刺激因子受容体(GCSFR)、インターロイキン−6/−11/LIF/OSM/CNTF共通β鎖(GP130)、白血病抑制因子受容体(LIFR)、オンコスタチン−M受容体β鎖(OSMR)、インターロイキン−12受容体β−1鎖(IL12RB1)、インターロイキン−12受容体β−2鎖(IL12RB2)を含む。これらの受容体鎖は、同族サイトカインの結合時に、ホモ二量体化(GCSFR、GP130、LPTR)又はヘテロ二量体化(GP130とLIFR又はOSMR、IL12RB1とIL12RB2)する。
【0004】
ヒトCSF3Rタンパク質は、シグナルペプチド(アミノ酸残基1−24)、タンパク質のN−末端領域内に位置した細胞外ドメイン(アミノ酸残基25−627)、細胞内ドメイン(アミノ酸残基651−836)及び膜貫通領域(アミノ酸残基628−650)を含んでなる、826個のアミノ酸のポリペプチドである。この細胞外部分は、N−末端免疫グロブリン(Ig)−様ドメイン(アミノ酸残基25−117)、サイトカイン受容体相同(CRH)ドメイン(アミノ酸残基122−330)、及び3つのフィブロネクチンIII型(FNIII)ドメインを含む。CRH領域内には、2つのFNIIIドメイン、4つの保存されたシステイン残基、及びCRHドメインを安定化する保存されたWSXWSモチーフ(アミノ酸残基318−322)がある。Ig−様ドメイン及びCRHドメインは、高−親和性結合に重要であるように思われる。ボックス1モチーフは、JAK相互作用及び/又は活性化に必要である細胞内ドメイン(アミノ酸残基658−666)に存在する。
【0005】
GCSFは、特異的GCSF受容体への結合を通じて、好中性顆粒球系列に拘束された(committed)細胞の増殖、生存、及び成熟を刺激する(Hartung T.ら, Curr. Opin. Hematol. 1998; 5: 221-5を参照のこと)。CSF3R受容体は、細胞質ドメイン内に固有のキナーゼ活性を有さず、Janusチロシンキナーゼ(JAK)のような受容体−会合した細胞内プロテインキナーゼを使用し、シグナル伝達を開始する。細胞のG−CSFによる刺激は、複数のシグナル伝達経路を活性化することが示されており、これはシグナル伝達性転写因子(STAT)、Ras/Raf/Erk、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3−K)/Aktを含むが、Stat5プロテアーゼのようなStatプロテアーゼも含む。脱制御されたStat5活性化は、CSF3に対する異常な細胞反応に繋がり、白血病誘発に寄与することがある。
【0006】
GCSFは典型的には、ヒトにおける様々な種類の好中球減少症の治療のために使用される。これは、臨床使用が承認されたわずかな増殖因子のひとつである。特にこれは、化学療法(CT)が誘導した血球減少症を軽減するために使用される(Viensら, J. of Clin. Oncology, Vol. 20, No. 1, 2002: 24-36)。GCSFは、可能性のある補助薬として感染症における治療的用途にも関係がある(Hubelら, J. of Infections, Vol. 185: 1490-501, 2002)。
【0007】
心筋梗塞マウスモデルにおいて、CSF3治療は、3日目の初期の梗塞サイズには影響を及ぼさなかったが、梗塞後1週目と早期に心機能を改善し、この恩恵のある作用は、治療開始が遅れることにより低下した(Haradaら, Nature Med. Vol. 11: 305-311, 2005)。CSF3は、抗アポトーシスタンパク質を誘導し、かつ心筋細胞のアポトーシスによる死滅を阻害し、並びにCSF3は、内皮細胞のアポトーシスを低下し、梗塞心における血管新生を増大する。Haradaらは、CSF3は、心筋細胞の生存を促進し、心筋梗塞後の左心室リモデリングを予防することを示唆している。
【0008】
市中肺炎(CAP)の患者におけるG−CSF単回投与量の適用は、生存の延長を引き起こし、かつ抗炎症性サイトカインの徐放と組合せた好中球の活性化を増大する(Droemannら, Respiration. 2005 Dec 12. 出版前電子版論文)。
【0009】
CSF3は、免疫が媒介した疾患、例えば移植片対宿主病、多発性硬化症、全身性紅斑性狼瘡、炎症性腸疾患、及び糖尿病などの予防及び/又は治療にも恩恵がある(Rutellaら, J Immunol. 2005 Dec 1; 175(11): 7085-91)。
【発明の概要】
【0010】
発明の概要
本発明は、CSF3Rポリペプチド変種及びそれらの使用、特にヒト対象における治療的又は予防的処置のための使用に関する。本発明はまた、該ポリペプチドをコードする核酸、そのような核酸を含むベクター、特に発現ベクター、及びそれを含む組換え細胞、並びに対応する医薬組成物に関する。本発明は更に、そのようなポリペプチドの製造法、並びに任意の試料中のこれらのポリペプチドの検出又は投薬のための方法及び道具を開示する。更に本発明の新規CSF3Rポリペプチド変種に特異的な抗体が含まれる。
【0011】
より具体的には、本発明は、有用な医薬を提供する、特定の構造的及び生物学的特徴を有する、sCSF3Rと称される、ヒトCSF3Rの天然の新規の可溶性スプライシング変種の同定、単離及び特徴決定から生じる。
【0012】
従って本発明の目的は、単離されたCSF3Rポリペプチド変種、又はそれらの特徴的断片に存在する。本発明のポリペプチド変種は、CSF3リガンド−結合ドメインの配列を含み、及び機能性膜貫通ドメインを欠いている。本発明のCSF3Rポリペプチドは、CSF3Rの可溶性型を表し、これは様々な病態においてそれらのアゴニスト又はアンタゴニストとして使用することができる。
【0013】
本発明の別の目的は、先に規定されたようなCSF3Rの成熟型において存在する。
本発明の別の目的は、先に規定されたようなCSF3Rポリペプチド変種を含んでなる融合タンパク質に存在する。
本発明の別の目的は、先に規定されたようなCSF3Rポリペプチド変種を含んでなるコンジュゲートに存在する。
【0014】
本発明の別の目的は、先に規定されたようなCSF3Rポリペプチド変種を含んでなる受容体複合体に存在する。
本発明の更なる目的は、先に規定されたようなCSF3Rポリペプチド変種をコードしている核酸又は融合タンパク質、更にはそのような核酸を含んでなるクローニングベクター又は発現ベクターに存在する。
【0015】
本発明は、先に規定されたようなベクター又は核酸を含んでなる組換え宿主細胞、更にはそのような組換え細胞を使用する、先に規定されたようなCSF3Rポリペプチド変種の作製法に関する。
【0016】
本発明の更なる態様は、先に規定されたような生成物(例えば、ポリペプチド、融合タンパク質、コンジュゲート、受容体複合体、核酸、ベクター又は組換え細胞)を含んでなる医薬組成物に存在する。
【0017】
本発明の更なる態様は、ヒト対象における使用のための医薬組成物の製造のための、先に規定されたような生成物(例えば、ポリペプチド、融合タンパク質、コンジュゲート、受容体複合体、核酸、ベクター又は組換え細胞)の使用に存在する。
本発明の更なる目的は、先に規定されたようなポリペプチドに選択的に結合する、抗体、又はそのような抗体の断片もしくは誘導体にも関する。
【0018】
前記生成物及び医薬組成物は、例えば移植片対宿主病、癌、好中球減少症、神経学的障害又は状態、肺炎、自己免疫疾患、血液病、造血障害、感染症、炎症性腸疾患、及び糖尿病の治療に特に適している。
【0019】
本発明の更なる態様は、例えば先に規定されたような抗体、それらの断片又は誘導体を使用する、試料中の先に規定されたようなポリペプチドの検出又は投薬の方法に存在する。
本発明の他の態様は、先に規定されたような核酸に特異的なプライマー及びプローブ、更には試料中のそのような核酸の存在を検出又は診断するためのそれらの使用を含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図面の説明
【図1】図1は、sCSF3R DNA及びタンパク質配列を示す。クローニングに使用されるPCRプライマーの位置は、矢印で示されている。
【図2】図2は、sCSF3R PCR産物の翻訳を伴う、ヌクレオチド配列を示す。
【図3】図3は、sCSF3R及び膜結合タンパク質の間のアラインメントを示す。膜結合タンパク質は、アミノ酸1−24のシグナルペプチド(ボックス内)、Ig−様C2型ドメイン(明灰色)及び5つのフィブロネクチンIIIドメイン(暗灰色)を含む。この変種は、シグナルペプチド、Ig−様ドメインを含み、いずれのフィブロネクチンIIIドメインも示さない。ボックス1モチーフは、jak相互作用及び/又は活性化に必要である。sCSF3Rの推定分子量は20667.7761である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は、新規生物学的活性ヒトCSF3Rポリペプチド変種の同定及び特徴決定から生じる。これらのポリペプチドは典型的には、機能的膜貫通ドメインを欠いている成熟ヒトCSF3Rポリペプチドの配列を含んでなる。特に本発明は、sCFS3R(配列番号2)と称される、CSF3Rの天然のスプライシング変種の同定に存在する。更に、本発明のCSF3Rポリペプチド変種の生物活性の少なくとも一部を保持する特徴的断片が含まれる。本発明は、天然の又は合成のCSF3Rポリペプチド変種であってよく、有用な治療的分子を表している。更に本発明のCSF3Rポリペプチド変種は、機能的膜貫通ドメインが存在しないために、細胞膜にアンカーされず、生物学的液体、特に血液、血漿、血清、リンパ液などの中で循環することができる。
【0022】
膜結合型CSF3R(Swissprot寄託番号Q99062;配列番号10)の細胞外領域は、6種の構造的ドメインを含んでなる:N−末端免疫グロブリン(Ig)−様ドメイン、それに続く5つのフィブロネクチンIII型(FNIII)ドメイン。始めの2つのFNIIIドメイン(D2及びD3と称す)は、サイトカイン受容体ホモログ(CRH)モジュールを作出し、これはD2内に4個のシステイン残基及びD3内にWSXWSモチーフを含む。これらのCRHモジュールの特徴は、クラス1サイトカイン受容体ファミリーのメンバーにおいて保存されている。膜結合型CSF3Rは、15のコーディングエクソンで構成される。5'UTRには、2つの非−コーディングエクソンが存在する。開始コドンは、エクソン3であり、停止コドンはエクソン15である。
【0023】
本発明の可溶性CSF3R変種(配列番号2)は、エクソン3、エクソン4、及びエクソン4の遺伝子の4番目のイントロンへのゲノム伸張(genomic prolongation)によりコードされている。可溶性CSF3R変種は、189個のアミノ酸のポリペプチドをコードしている、599個の塩基対長である。第一のエクソンは、塩基1から塩基84に広がり、第二のエクソンは、塩基85から塩基599に広がる。従って可溶性CSF3R変種のタンパク質配列は、エクソン3及びエクソン4によりコードされた膜結合型CSF3RのN−末端部分、並びにイントロン4への伸張を形成する69個の補助アミノ酸により、特徴づけられる。
【0024】
従って本発明のCSF3Rポリペプチド変種は、機能的リガンド−結合ドメインを含むが、機能的膜貫通ドメインを欠き、更には任意に細胞質領域を欠いている。本発明は、このようなタンパク質は天然に生成され、通常でない構造的高次構造を伴う予想外のCSF3R変種を表すことを示している。実際本発明の分子は、Ig−様ドメインの後に独自の69個の追加のアミノ酸を含む。この69個の追加のアミノ酸は、配列番号4のアミノ酸残基97〜165からなる。本発明のsCFS3Rは、リガンド−結合ドメインのIg−様ドメイン(完全で)のみ保持し、CRHモジュール及びフィブロネクチンIII型ドメインを欠くという事実によっても、これは特徴づけられる。従って本発明のポリペプチドは好ましくは、CRHモジュール及び/又は1、2、3、4、5もしくは全てのフィブロネクチンIII型ドメイン(複数)を欠いている。このIg−様ドメインは、溶液中のCSF3との受容体ホモ二量体化に必要であり、及びIg−様ドメインは、CSF3へ結合することが示された(Laytonら, J Biol Chem. 2001 Sep 28; 276(39): 36779-87)。従って配列番号4に列記されたような本発明の可溶性CSF3R変種は、Ig−様ドメインからなるCSF3リガンド結合ドメインの本質的特徴を維持する。
【0025】
本発明のCSF3Rポリペプチド変種は、機能的膜貫通ドメインを欠いており、すなわちこれらは、ポリペプチドの膜−アンカーを可能にするCSF3R由来の機能ドメインを含まない。機能的膜貫通ドメインの欠如は、CSF3R膜貫通ドメインにおける任意のアミノ酸変更(例えば、1個又は数個のアミノ酸残基の欠失、置換及び/又は付加)の結果であることができ、これは非−機能的膜貫通ドメインを生じる。典型的実施態様において、機能的膜貫通ドメインの欠如は、膜貫通ドメインを形成するアミノ酸残基の全て又は一部の欠失、好ましくは配列番号10のアミノ酸残基628〜650の欠失の結果である。
【0026】
ひとつの態様において、本発明は、単離されたCSF3Rポリペプチド変種、又はそれらの特徴的断片を提供し、ここで該ポリペプチド変種は、リガンド−結合ドメインの配列を含んでなる又はからなり、機能的膜貫通ドメインを欠き、及び細胞質ドメインを欠いている。
【0027】
可溶性受容体の機構の現時点での理解は、リガンドとの競合によるそれらの各膜−結合型受容体の阻害因子、膜−結合型受容体の発現のダウンレギュレーター、リガンドのタンパク質の安定化、及びリガンド−誘導したシグナル伝達の参加者としてのそれらの役割を含む。Kuらは、G−CSF受容体の可溶性型(sG−CSFRと称す)は、スチール因子(SF、Kitリガンド)又はFlt3/Flk2リガンド(FL)と相乗作用し、原始造血前駆細胞の増殖を支援することができることを示した(Kuら, Blood, 1996 Dec 1;88(11): 4124-31)。Kuらは、可溶性G−CSF受容体は、その各膜−結合型受容体と相互作用することにより、シグナルを伝達するように見えることを指摘している。
【0028】
従って本発明の可溶性CSF3Rポリペプチド変種は、リガンド及び/又は膜アンカーされたCSF3Rタンパク質を安定化し、リガンド−誘導したシグナル伝達を促進し、並びにSF3Rアゴニストとして作用することを示す。本発明の可溶性受容体は、リガンド、膜−結合型CSF3R、又はリガンド及び膜結合型CSF3Rの両方のいずれかを安定化することができる。好ましくはこのリガンドはCSF3である。可溶性成長ホルモン受容体について認められるように、可溶性CSF3Rは、その同族リガンドが分解するのを防ぐことができる。
【0029】
Asanoらは、キメラ可溶性CSF3Rは、正常骨髄コロニー形成に対するCSF3の生物活性を阻害することができることを示した(Asanoら, Cancer Res. 1997 Aug 15;57(16): 3395-7)。加えて、キメラ可溶性CSF3Rは、CSF3の白血病前駆細胞の増殖に対する刺激作用を完全に阻害し、白血病芽球コロニー(leukemic blast colony)を形成し、これは急性骨髄芽球性白血病のための臨床適用における可能性のある治療的候補薬を表している。Iwasakiらは、CSF3Rの可溶性アイソフォームは、標的細胞上の膜−アンカーされたCSF3Rと競合することがあり、かつ骨髄造血の負のレギュレーターとして働くことを示唆した(Iwasakiら J Immunol. 1999 Dec 15;163(12): 6907-11)。
【0030】
従って本発明の可溶性CSF3Rポリペプチド変種は、CSF3Rの天然の内在性リガンドと結合し、これによりCSF3R−媒介された活性を低下し、CSF3Rアンタゴニストとして作用し得るデコイを表すことができる。特にそのような可溶性CSF3Rポリペプチド変種は、ドミナント−ネガティブ機構により、CSF3Rが媒介した活性のレギュレーターとして作用する。
【0031】
好ましくは本発明の可溶性CSF3Rポリペプチド変種は、リガンド及び/又は膜アンカーされたCSF3Rタンパク質を安定化し、リガンド−誘導したシグナル伝達を促進し、並びにCSF3Rアゴニストとして作用することを示す。
【0032】
Laytonらは、Ig−様ドメインのモデル化により、CSF3Rドメイン構造は、最も近いホモログgp130においても認められ、これはサイトカインのインターロイキン(IL)−6ファミリーの共有されたシグナル伝達受容体鎖であることを示した(Laytonら, J Biol Chem. 2001 Sep 28;276(39): 36779-87)。G−CSF3R及びgp130は、細胞外領域において46%の配列類似性を共有している。加えて同様の構造的関係が、IL−6のgp30とによるか、又はCSF3のCSF3Rとにより形成された四量体2:2複合体間で認められる。IL−6の、gp130と相互作用するその可溶性受容体(sIL−6R)との間の複合体の形成は、STAT3の増大した発現及び核移行につながり、これはBcl−x1のような抗−アポトーシス遺伝子の誘導を引き起こす(Atreya R及びNeurath MF, Clin Rev Allergy Immunol. 2005 Jun;28(3): 187-96)。
【0033】
別の本発明の目的は、本発明のCSF3Rポリペプチド変種を含んでなる受容体複合体に存在する。
別の本発明の目的は、本発明のCSF3Rポリペプチド変種を含む融合タンパク質を含んでなる受容体複合体に存在する。
別の本発明の目的は、CSF3、本発明の可溶性CSF3R変種及び膜−アンカーされたCSF3Rにより形成された受容体複合体に存在する。
【0034】
別の本発明の目的は、本発明の可溶性CSF3R変種及び膜−アンカーされたCSF3Rにより形成された受容体複合体に存在する。
別の本発明の目的は、CSF3及び本発明の可溶性CSF3R変種により形成された受容体複合体に存在する。
好ましくはこの受容体複合体は、四量体2:2複合体からなる。
【0035】
本発明の可溶性CSF3Rポリペプチド変種は、CSF3Rの天然のアゴニスト及び/又はアンタゴニストを表し、並びに移植片対宿主病、癌、好中球減少症、神経学的障害又は状態、肺炎、自己免疫疾患、血液病、造血障害、感染症、炎症性腸疾患、及び糖尿病を治療するために、例えば融合タンパク質、コンジュゲート又は受容体複合体など又はそのような形で使用されてよい。
【0036】
本発明の別の目的は、配列番号1のイントロン4によりコードされた1個又は複数のアミノ酸を含んでなる又はからなるアミノ酸配列に融合した免疫グロブリン(Ig)−様ドメイン及びCRHモジュールを含む可溶性CSF3Rに存在する。好ましくは本発明の目的は、配列番号1のイントロン4によりコードされた1個又は複数のアミノ酸を含んでなる又はからなるアミノ酸配列に融合した免疫グロブリン(Ig)−様ドメインを含む可溶性CSF3Rに存在する。好ましくは、Ig−様ドメインは、配列番号1のイントロン4によりコードされた1、2、5、10、25、50又は69個のアミノ酸を含んでなる又はからなるアミノ酸配列に融合される。あるいは、Ig−様ドメインは、配列番号4のアミノ酸97−165(成熟sCSF3R)由来の1、2、5、10、25、50又は69個のアミノ酸を含んでなる又はからなるアミノ酸配列に融合される。好ましくは、Ig−様ドメインは、配列番号4のアミノ酸97〜165からなるアミノ酸配列に融合される。
【0037】
別の態様において従って本発明は、ポリペプチドが、配列番号1のイントロン4によりコードされたアミノ酸配列を更に含むか、又は少なくとも3、4、5、7、10、15、20、25、30、40、50、60又は69個のアミノ酸の配列番号1のイントロン4によりコードされたアミノ酸配列の断片を更に含む、単離された本発明のCSF3Rポリペプチド変種を提供する。好ましくは、単離されたCSF3Rポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸97〜165からなるアミノ酸配列を更に含む。
【0038】
より具体的には、本発明は、特定の構造的及び生物学的特性を有する、sCSF3R(配列番号2)と称される、ヒトCSF3Rの天然の新規の可溶性スプライシング変種であり、有用な医薬を表すものの同定、単離及び特徴決定から生じる。従って本発明の目的は、配列番号2に列記された可溶性CSF3R、それらの成熟型、それらのグリコシル化型、それらの機能的等価体又はそれらの特徴的断片に存在する。好ましくは、配列番号2の成熟型は、配列番号4である。
【0039】
従って本発明の別の目的は、配列番号4に列記されたような可溶性CSF3R変種の成熟型に存在する。あるいは、本発明の目的は、シグナルペプチドを欠いている配列番号2に存在する。好ましくは、シグナルペプチドは、配列番号2のアミノ酸1〜25、又は配列番号2のアミノ酸1〜24、又は配列番号2のアミノ酸1〜23に広がる。
【0040】
本発明の別の目的は、配列番号6に列記されたようなクローニングされた配列、それらの成熟型、それらのグリコシル化型、それらの機能的等価体又はそれらの特徴的断片に存在する。好ましくは配列番号6の成熟型は、配列番号8である。
【0041】
従って本発明の別の目的は、配列番号8に列記されたような可溶性CSF3R変種の成熟型に存在する。あるいは、本発明の目的は、シグナルペプチドを欠いている配列番号6に存在する。好ましくは、シグナルペプチドは、配列番号6のアミノ酸1〜25、又は配列番号6のアミノ酸1〜24、又は配列番号6のアミノ酸1〜23に広がる。
【0042】
本発明の特定の目的は、単離されたCSF3Rポリペプチド変種、又はそれらの特徴的断片に存在し、ここで該ポリペプチド変種は、CSF3リガンド−結合ドメインの配列を含み、及び機能的膜貫通ドメインを欠いている。好ましくは、CSF3リガンド−結合ドメインは、配列番号10のアミノ酸残基25〜627からなり、より好ましくは配列番号10のアミノ酸残基25〜618からなり、更により好ましくは膜結合型CSF3RのIg−様ドメイン及びCRHドメインからなるか、又は配列番号10のアミノ酸残基25〜330からなる。最も好ましいCSF3−リガンド結合ドメインは、膜結合型CSF3RのIg様ドメインからなるか、又は配列番号10のアミノ酸残基25〜120(配列番号12に列記された)からなるか、又は配列番号10のアミノ酸25〜117からなる。
【0043】
本発明の別の目的は、単離されたCSF3Rポリペプチド変種、又はそれらの特徴的断片に存在し、ここで該ポリペプチド変種は、CSF3リガンド−結合ドメインの配列を含み、機能的膜貫通ドメインを欠き、及び細胞質領域を欠いている。好ましくは、膜貫通ドメインは、配列番号10のアミノ酸残基628〜650からなる。細胞質領域は、膜結合型CSF3R(配列番号10)のアミノ酸残基651〜836からなることが好ましい。
【0044】
従って別の本発明の目的は、本発明の単離されたCSF3Rポリペプチド変種に存在し、ここで該単離されたCSF3Rポリペプチド変種は、配列番号10のアミノ酸628−650を欠くか、及び/又は配列番号10のアミノ酸651〜836を欠く。
【0045】
本発明の別の目的は、配列番号1のイントロン4によりコードされた単離されたCSF3Rポリペプチド変種、又はそれらの断片に存在する。
本発明の別の目的は、配列番号4のアミノ酸97〜165からなる単離されたCSF3Rポリペプチド変種に存在する。
本発明の別の目的は、リガンド−結合ドメイン、好ましくはIg−様ドメインの1個又は複数のアミノ酸に融合された、配列番号1のイントロン4によりコードされた単離されたCSF3Rポリペプチド変種、又はそれらの断片に存在する。
【0046】
従って本発明の別の目的は、単離されたCSF3Rポリペプチド変種に存在し、ここで該ポリペプチドは、配列番号1のイントロン4によりコードされたアミノ酸配列、又は少なくとも6、7、8、10、15、20、25、30、40、50、60又は69個のアミノ酸の配列番号1のイントロン4によりコードされたアミノ酸配列の断片を含んでなる又はからなる。別の本発明の目的において、このような単離されたCSF3Rポリペプチドは、CSF3Rのリガンド−結合ドメインの1個又は複数のアミノ酸に融合されてよい。
【0047】
本発明の別の目的は、配列番号4のアミノ酸残基97〜165に融合された膜結合型CSF3RのIg−様ドメイン又はそれらの断片に存在する。本発明の別の目的は、配列番号4のアミノ酸残基97〜165からなる配列の断片に融合された、膜結合型CSF3RのIg−様ドメイン又はそれらの断片に存在する。好ましくは、この断片は、配列番号4のアミノ酸残基98〜100、配列番号4のアミノ酸残基98〜120、又は配列番号4のアミノ酸残基98〜150からなる。
【0048】
好ましくは、本発明のリガンド結合ドメインは、CSF3Rの免疫グロブリン−様ドメインである。
好ましくは、本発明の免疫グロブリン様−ドメインは、Ig−様C2−型ドメインである。好ましくは、Ig−様C2−型ドメインは、ジスルフィド橋を形成する2個のシステイン残基を含む。
【0049】
好ましくは、本発明のIg−様ドメインは、8個のβ−鎖を含む。好ましくは、本発明のIg−様ドメインは、配列番号4のCys−2−Cys−77とCys−22−Cys−28間、より好ましくは配列番号4のCys−2−Cys−28とCys−22−Cys−77の間に2個のジスルフィド結合を含む。
【0050】
本発明の別の目的は、配列番号10に列記されるような膜結合型CSF3RのIg−様ドメインに存在する。好ましくは、Ig−様ドメインは、配列番号10のアミノ酸残基25〜120(配列番号12に列記)又は配列番号10のアミノ酸残基25〜117からなる。
【0051】
好ましくは、本発明のポリペプチドは、可溶性であり、すなわちこれらは機能的膜−アンカー配列を含まず、従って体液中を循環することができる。最も好ましい態様において、本発明のポリペプチドは、天然の可溶性ポリペプチドである。
従って本発明の別の目的は、可溶性の単離されたCSF3R変種に存在する。好ましくは、可溶性の単離されたCSF3R変種は、天然の可溶性変種である。
【0052】
同じく本発明の好ましいCSF3Rポリペプチド変種は、CSF3R天然リガンドに結合する能力を維持している。従ってこのようなポリペプチドは、アゴニスト及び/又はアンタゴニストとして機能し、かつ例えば病的状態において、CSF3R−媒介された活性を刺激及び/又は阻害するために使用されてよい。好ましくは、本発明のポリペプチドは、CSF3のアゴニストとして機能する。
【0053】
本発明の別の目的は、本発明の単離されたCSF3Rポリペプチド変種に存在し、ここで変種は、それらの成熟型、それらのグリコシル化型、それらのペグ化型、それらの機能的等価体及びそれらの特徴的断片から選択される。
【0054】
用語CSF3Rは、前記配列の機能的等価体、すなわち天然の多型、他の種に起源する配列、更にはCSF3Rタンパク質機能に実質的に影響を及ぼさない1つ又は複数のアミノ酸修飾を含む配列も含むことは理解されるべきである。機能的等価体は典型的には、配列番号2と80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の配列同一性を示す。
【0055】
CSF3Rのリガンド−結合ドメイン由来の配列は、CSF3Rの細胞外ドメインの全ての配列又はリガンド−結合部分配列、又はそれらの機能的等価体に由来するか又は含むことができる。前述のように、機能的等価体は、CSF3Rリガンドへ結合する能力を維持している、1又は複数のアミノ酸の欠失、付加及び/又は置換、好ましくは1、2、3、5、10、15、20、30、50又はそれよりも多い欠失、付加及び/又は置換を含んでなる、任意の修飾された配列を示す。
【0056】
本発明の具体的実施態様は、CSF3Rアゴニスト活性を維持する、配列番号4、それらの機能的等価体又はそれらの特徴的断片を有するか又は含んでなる、CSF3Rポリペプチド変種である。
本発明の具体的実施態様は、CSF3Rアンタゴニスト活性を維持する、配列番号4、それらの機能的等価体又はそれらの特徴的断片を有する又は含んでなる、CSF3Rポリペプチド変種である。
【0057】
本発明は同じく、先に明らかにされたCSF3Rポリペプチド変種の特徴的断片を含んでなる任意のポリペプチドを含む。本発明の文脈において、特徴的断片は、欠失された介在アミノ酸残基の結果として形成された接合部配列を含む、少なくとも5個の連続するアミノ酸の断片を示す。このような特徴的断片は、好ましくは先に規定された接合部配列を含む、その変種の最大10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180又はそれよりも多い連続アミノ酸残基を含んでなることが好ましい。好ましくは、本発明の断片は、配列番号2の少なくとも6、7、8、10、20、30、40、60、80、100、120、140、160、180、185、187又は188のアミノ酸からなる。好ましくはこの断片は、連続アミノ酸からなる。
【0058】
本明細書において使用される用語「断片」は、CSF3Rポリペプチドのアミノ酸配列と一部は同じであるが全て同じではないアミノ酸配列、又はその機能的等価体のひとつを有するポリペプチドを意味する。これらの断片は、その配列由来の少なくともn個の連続アミノ酸を含まなければならず、その特定の配列に応じて、nは好ましくは、7又はそれよりも大きく、好ましくは配列番号2の8、10、20、30、40、60、80、100、120、140、160、180、185、187又は188個のアミノ酸である。小型の断片は、抗原決定基を形成することができる。
【0059】
好ましくは、この断片の最小長は、6、10、20、30、40、50、60、68、100、150、200、250、300、350、400、450又は500個のアミノ酸である。
好ましくは、この断片の最大長は、188、187、186、185、180、170、166、165、164、163、160、155、150、125、100、75又は50個のアミノ酸である。
【0060】
好ましくは、この断片の最小長は、18、30、60、90、120、150、180、204、300、450、600、750、1050、1200、1350又は1500個の核酸である。
好ましくは、この断片の最大長は、564、561、558、555、540、510、498、495、492、489、480、465、450、375、300、225又は150個の核酸である。
【0061】
好ましくは、本発明のポリペプチドの最大長は、189、190、192、195、200、210、230、250、300、400、500、600、650、700、800、900、1000、1250、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500又は5000個のアミノ酸である。
好ましくは、本発明の核酸の最大長は、567、570、576、585、600、630、690、750、900、1200、1500、1800、1950、2100、2400、2700、3000、5000、7500、10000、20000、30000、50000、75000又は100000個の核酸である。
【0062】
好ましくは、この機能的等価体は、配列番号4と少なくとも75%の同一性、好ましくは少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の同一性を有する。
好ましくは、この機能的等価体は、配列番号4の6、7、8、10、12、14、16、18、20、22、26、30、34、38又はそれよりも多いアミノ酸からなる配列番号4と共通の抗原決定基を有する。
【0063】
本発明の「抗原決定基」は、本発明のポリペプチドの一部であってよく、これは抗体−結合部位又はT−細胞受容体(TCR)に結合する。あるいは、「抗原決定基」は、それに単独の抗体分子が結合する、本発明のポリペプチドの表面上の部位であってよい。一般に抗原は、いくつかの又は多くの様々な抗原決定基を有し、並びに多くの様々な特異性の抗体と反応する。好ましくはこの抗体は、本発明のポリペプチドに対し免疫特異性である。好ましくはこの抗体は、本発明のポリペプチドに対し免疫特異性であり、これは融合タンパク質の一部ではない。好ましくはこの抗体は、CSF3R又はそれらの断片に対し免疫特異性である。抗原決定基は通常、アミノ酸又は糖側鎖のような分子の化学的活性のある表面基からなり、並びに特異的三次元構造特徴に加え、特定の電荷特徴を有することができる。好ましくは「抗原決定基」は、抗原性である、すなわち特定の免疫応答を誘発する、本発明のポリペプチド上の特定の化学基を意味する。
【0064】
好ましくは、本機能的等価体は、1又は複数のアミノ酸修飾、1又は複数の非保存的置換、1又は複数の保存的置換及び/又は1又は複数のアミノ酸誘導体を含む。
【0065】
本明細書において使用される「機能的等価体」は、本発明のポリペプチド又は核酸分子と実質的に類似している機能的又は構造的特徴を有する、タンパク質又は核酸分子を意味する。タンパク質の機能的等価体は、特定の機能の性能に関するそのような修飾の必要性に応じた修飾を含んでよい。用語「機能的等価体」は、分子の断片、突然変異体、ハイブリッド、変種、類似体、又は化学誘導体を含むことが意図される。
【0066】
更に好ましい実施態様において、機能的誘導体は、アミノ酸残基上の1個又は複数の側鎖として生じる、1個又は複数の官能基に付加された少なくとも1つの部分を含んでなる。好ましくは、この部分は、ポリエチレン(PEG)部分である。ペグ化(PEGylation)は、例えばWO 99/55377に開示されたもののような、公知の方法により実行することができる。
【0067】
ポリペプチドは、翻訳後プロセシングのような天然のプロセスによるか、又は当該技術分野において周知の化学修飾技術のいずれかにより修飾された、20種の遺伝子−コードされたアミノ酸以外のアミノ酸を含んでよい。中でも本発明のポリペプチド内に通常存在し得る公知の修飾は、グリコシル化、脂質結合、硫酸化、例えばグルタミン酸残基のようなγ−カルボキシル化、ヒドロキシル化及びADP−リボシル化がある。他の可能性のある修飾は、アセチル化、アシル化、アミド化、フラビンの共有的結合、ヘム部分の共有的結合、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有的架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、GPIアンカー形成、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解性プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレン酸化、例えばアルギニン化のような、tRNA媒介したタンパク質へのアミノ酸の付加、並びにユビキチン化を含む。
【0068】
修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖及びアミノもしくはカルボキシル末端を含む、ポリペプチドのどこかで生じることができる。事実、共有的修飾による、ポリペプチドのアミノ又はカルボキシル末端、又は両方の遮断は、天然及び合成のポリペプチドにおいて一般的であり、このような修飾は、本発明のポリペプチドに存在してよい。
【0069】
ポリペプチドにおいて生じる修飾は、いかにしてポリペプチドが生成されるかの機能であることが多い。組換えにより生成されたポリペプチドに関して、大部分の修飾の性質及び程度は、特定の宿主細胞の翻訳後修飾能及び問題のポリペプチドのアミノ酸配列に存在する修飾シグナルにより決定される。例えばグリコシル化パターンは、異なる種類の宿主細胞間で異なる。
【0070】
本発明のポリペプチドは、任意の好適な方式により調製することができる。このようなポリペプチドは、単離された天然のポリペプチド(例えば細胞培養物から精製された)、組換えにより作出されたポリペプチド(融合タンパク質を含む)、合成により作出されたポリペプチド、又はこれらの方法の組合せにより作出されたポリペプチドを含む。
【0071】
機能的等価体は、CSF3Rポリペプチドの天然の生物学的変種(例えば、それからポリペプチドが由来する種内のアレル変種又は地理的変異)及び突然変異体(例えば、アミノ酸の置換、挿入又は欠失を含む突然変異体)を含む。そのような突然変異体は、その1個又は複数のアミノ酸残基が、保存された又は保存されないアミノ酸残基(好ましくは保存されたアミノ酸残基)により置換されているポリペプチドを含んでよく、並びにそのような置換されたアミノ酸残基は、遺伝暗号によりコードされたものであってもよく、そうでなくてもよい。典型的そのような置換は、Ala、Val、Leu及びIleの間;Ser及びThrの間;酸性残基Asp及びGluの間;Asn及びGlnの間;塩基性残基Lys及びArgの間;又は、芳香族残基Phe及びTyrの間である。特に好ましいのは、いくつかの、すなわち5〜10、1〜5、1〜3、1〜2又はただ1つのアミノ酸が、任意の組合せで、置換、欠失又は付加された変種である。特に好ましいのは、タンパク質の特性及び活性を変更しない、サイレント置換、付加及び欠失である。同じくこれに関して特に好ましいのは、同類置換である。
そのような突然変異体は、その中の1個又は複数のアミノ酸残基が置換基群を含むポリペプチドも含む。
【0072】
本発明に従い、任意の置換は、好ましくは「保存された」又は「安全な」置換でなければならず、このことは、置換はその分子の構造及び生物学的機能を保持するために、十分に類似した化学特性を有するアミノ酸を導入すること(例えば塩基性の正帯電したアミノ酸は、別の塩基性の正帯電したアミノ酸により置換されなければならない)を一般に規定している。
【0073】
文献は、同類アミノ酸置換の選択を、タンパク質の配列及び/又は構造に関する統計学的及び物理化学的試験を基に行うことができる多くのモデルを提供している(Rogov SI及びNekrasov AN, 2001)。タンパク質デザイン実験は、アミノ酸の特異的サブセットの使用は、フォールディング可能で活性のあるタンパク質を作製することを示し、これはタンパク質構造においてより容易に適用することができ並びに機能的及び構造的ホモログ及びパラログ(paralog)を検出するために使用することができるアミノ酸「同義」置換の分類を補助している(Murphy LRら, 2000)。同義アミノ酸の群及びより好ましい同義アミノ酸の群は、表1に示している。
【0074】
特定の非保存的突然変異も、様々な目的で、本発明のポリペプチドに導入することができる。FN3ドメイン含有タンパク質の親和性を低下する突然変異は、その再利用及び再循環される能力を増強し、潜在的にその治療的効能を増大する(Robinson CR, 2002)。本発明のポリペプチドに最終的に存在する免疫原性エピトープは、ワクチンの開発のために有効に活用されるか(Stevanovic S, 2002)、又はタンパク質安定性を増大するよう突然変異を選択し、及びそれらを補正するために公知の方法に従いそれらの配列を修飾することにより、除外される(van den Burg B and Eijsink V, 2002;WO 02/05146、WO 00/34317、WO 98/52976)。
【0075】
ペプチド模倣体に含まれるアミノ酸誘導体の好ましい代替の同義の群は、表2に規定されているものである。アミノ酸誘導体の網羅的でないリストは、アミノイソ酪酸(Aib)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、1,2,3,4−テトラヒドロ−イソキノリン−3−COOH、インドリン−2カルボン酸、4−ジフルオロ−プロリン、L−チアゾリジン−4−カルボン酸、L−ホモプロリン、3,4−デヒドロ−プロリン、3,4−ジヒドロキシ−フェニルアラニン、シクロヘキシル−グリシン、及びフェニルグリシンも含む。
【0076】
「アミノ酸誘導体」は、20種の遺伝的にコードされた天然のアミノ酸のひとつ以外のアミノ酸又はアミノ酸−様化学体を意図している。特に本アミノ酸誘導体は、置換又は非置換の、線状、分枝した又は環状のアルキル部分を含んでよく、及び1個又は複数のヘテロ原子を含んでよい。アミノ酸誘導体は、新たに(de novo)生成されるか、又は商業的供給業者(Calbiochem-Novabiochem AG, スイス;Bachem, 米国)から入手することができる。
【0077】
タンパク質の構造及び機能を探索及び/又は改善するために、インビトロ及びインビボの両方の翻訳システムを使用し、非天然のアミノ酸誘導体をタンパク質に組み込む様々な方法論が、文献において明らかにされている(Dougherty DA, 2000)。ペプチド模倣体に加え、非ペプチド模倣体の合成技術及び開発も、当該技術分野において周知である(Golebiowski Aら, 2001;Hruby VJ and Balse PM, 2000;Sawyer TK, 「Structure Based Drug Design」, Veerapandian P編集, Marcel Dekker Inc., pg. 557-663, 1997)。
【0078】
「同一性」とは、並置された配列の任意の特定の位置で、配列間でアミノ酸残基が同一であることを示す。
典型的には、ふたつのポリペプチド間の30%よりも大きい同一性が、機能的等価体の指標であると考えられる。好ましくは本発明の第一の態様の機能的に同等なポリペプチドは、70%又は80%よりも大きい、CSF3Rポリペプチド又はそれらの活性断片との配列同一性の程度を有する。より好ましいポリペプチドは、各々、85%、90%、95%、98%、98.5%、99%又は99.5%よりも大きい同一性の程度を有する。
【0079】
好ましくは「機能的等価体」は、本発明のポリペプチドの1種又は複数の機能的活性のいずれかを示すタンパク質又は核酸分子であることができる。
好ましくは「機能的等価体」は、生物活性又は機能の測定に関する好適なアッセイにおいて、CSF3R又はそれらの断片と比べ、実質的に同様の活性を発揮するタンパク質又は核酸分子であることができる。好ましくは、「機能的等価体」は、生物活性又は機能の測定に関する好適なアッセイにおいて、CSF3R又はそれらの断片と比べて、同じ又はより高い活性を発揮するタンパク質又は核酸分子であってよい。好ましくは「機能的等価体」は、生物活性又は機能の測定に関する好適なアッセイにおいて、CSF3R又はそれらの断片と比べて、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、100%又はそれよりも大きい活性を発揮する、タンパク質又は核酸分子であることができる。
【0080】
好ましくは「機能的等価体」は、本発明のポリペプチドと実質的に類似しているインビボ又はインビトロ活性を示すことが可能なタンパク質又はポリペプチドであることができる。好ましくは「機能的等価体」は、本発明のポリペプチドの対応する部分での方式に実質的に類似した様式で、他の細胞内又は細胞外分子と相互作用することが可能であるタンパク質又はポリペプチドであることができる。例えば「機能的等価体」は、免疫学的検定において、本発明のポリペプチドの対応するペプチド(すなわち、「機能的等価体」を実現するように修飾されたアミノ酸配列のペプチド)、又は本発明のポリペプチドそれ自身に対する抗体の結合を縮小することができ、ここでこの抗体は、本発明のポリペプチドの対応するペプチドに対して生じる。等モル濃度の機能的等価体は、少なくとも約5%、好ましくは約5%〜10%、より好ましくは約10%〜25%、更により好ましくは約25%〜50%、最も好ましくは約40%〜50%だけ、対応するペプチドの前述の結合を縮小するであろう。
【0081】
例えば、機能的等価体は、完全に機能的であることができるか、又は1種もしくは複数の活性の機能を欠くことができる。従って本発明において変動は、例えばそれがIg−様ドメインを持つことを反映しているポリペプチド活性の機能に影響を及ぼすことができる。
【0082】
本発明のポリペプチド活性は、以下のアッセイの少なくとも一つにより確認することができる:
−好中性顆粒球系列に拘束された細胞の増殖、生存、及び成熟の変調、又は
−シグナル伝達性転写因子(STAT)、Ras/Raf/Erk、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3−K)/Aktを含むが、同じくStat5プロテアーゼのようなStatプロテアーゼも含む、複数のシグナル伝達経路の活性化の変調、又は
−心機能の改善、又は
−抗アポトーシス性タンパク質誘導の変調、心筋梗塞後の心筋細胞のアポトーシス死の阻害、及び心機能の改善、又は
−虚血性損傷を防ぐための、梗塞心における内皮細胞のアポトーシスの低下、及び血管新生の増加、又は
−心筋梗塞後の心筋細胞の生存及び左心室リモデリングの防止、又は
−市中肺炎(CAP)患者における延長された生存及び抗炎症性サイトカインの持続放出と組合せられた好中球の増大された活性、又は
−原始造血前駆細胞の増殖を支援する、スチール因子(SF、Kitリガンド)又はFlt3/Flk2リガンド(FL)との相乗作用、又は
−白血病芽球コロニーを形成するための、正常骨髄コロニー形成に対するCSF3の生物活性の阻害、白血病前駆細胞の増殖に対するCSF3の刺激作用の阻害。
【0083】
別の本発明の目的は、本発明のポリペプチドを患者に投与し、前述の生物学的活性の1つ又は複数を発揮することである。
【0084】
あるいは、本発明のポリペプチドの活性は、以下のアッセイの少なくとも一つにおいて確認することができる(総説はRutellaら, J Immunol. 2005 Dec l;175(11): 7085-91による):
−正常な造血幹細胞(HSC)の増殖及び分化の変調、又は
−放射線療法又は化学療法が誘導した骨髄機能抑制後の好中球再構成の変調、又は
−成熟好中球におけるエフェクター機能、及び骨髄HSCの末梢血への動員の変調、又は
−T細胞反応性を変更し、及びAPC機能を修飾することによる、免疫系との相互作用(例えば、ヒトマイトジェン−活性化されたCD3+ T細胞への、及びTリンパ芽球様細胞株への、CSF結合の変調;例えば、薬理学的投与量で、T細胞による前炎症サイトカイン産生を直接阻害する、GATA−3及びStat5などのT細胞免疫調節遺伝子の変調)、又は
【0085】
−サイトカイン産生の変調(例えば、ヒト白血球によるエクスビボサイトカイン産生の修飾;例えば、LPS−刺激された全血及び/又は単球による、IL−1β、IL−12、IFN−γ、IL−18、及びTNF−α産生の変調;例えば、IL−I受容体アンタゴニスト(IL−1ra)並びに可溶性p55及びp75 TNFRのLPS−誘導した放出の変調;例えば、インビボ抗炎症作用を示唆する、健常志願者における本発明のポリペプチドで予備処置されない対照対象と比較した、引き続きのサルモネラ・アボルタス・エクイのエンドトキシン投与後の、可溶性TNFR及びIL−1βの血漿レベルの変調;例えば、転写後レベルでの正常なアロ抗原−活性化されたPBMCによる、TNF−α産生の変調;上昇した血清肝細胞増殖因子、CSF3により誘導された微細血管形成に寄与する血管形成性サイトカインの変調;例えば、同種免疫応答を変調すると報告されている、可溶性ヒトHLA Agレベル、例えばHLA−G及びHLAクラスIの変調)、又は
【0086】
−寛容原性の樹状細胞(DC)−様のインビトロ分化、又は
−T細胞機能の変調(例えば健常被験者における、可溶性抑制因子の放出を通じマイトジェンに反応するT細胞増殖の阻害の変調;例えば、NKT細胞のα−ガラクトシルセラミドに反応したインビトロ拡大能の変調;例えば、機能的骨髄CD4+CD25+FoxP3+調節性T(Treg)細胞に加え、天然の抑制因子CD4- CD8- TCRα+β+ T細胞の動員、骨髄中のCXCL12/SDF−1α、CXCR4リガンド発現の変調、その結果のCD4+CD25+ Treg細胞輸送の変調;例えば、T細胞マイトジェン反応及びリンホカイン−活性化されたキラー細胞−媒介型細胞傷害性の変調、これは個々のHLA対立遺伝子の発現と相関する)、又は
−Treg細胞の誘導(例えば、ヒトTr1細胞発生の変調;例えばIL−10−産生Treg細胞発生及び移植寛容促進の変調)、又は
【0087】
−DC数及び機能の変調(例えば、DC2の動員、これは同種異系のナイーブT細胞を誘導し、IL−4及びIL−10を産生する;例えば、血液DCに対するCCR7発現の変調、その結果のDCの遊走及びホーミング能への影響;例えば、骨髄芽球HSC移植後のDC回収によるIL−12産生の変調;例えば、例としてヒト単球−由来DCの分化経路におけるような、Treg細胞分化に関与している、IL−10及びIFN−α産生の変調)、又は
−寛容原性APCとしての骨髄前駆体の拡大(例えば、調節活性を持つ、マウスのGM前駆体集団の拡大;例えば、同種異系レシピエント動物における同時移植時のGVHD発生の変調;例えば、拡大したGM細胞に恵まれた(favored by)宿主Agに特異的なTreg細胞のインビトロ分化)、又は
【0088】
−HSC移植の変調(例えば、NK細胞が激しい拒絶反応を媒介するハイブリッド抵抗システムの使用による、骨髄親細胞の生着の変調、及びF1ハイブリッドマウスの連続前処置によるドナー起源の脾臓コロニーの出現;例えば、本発明のポリペプチドを発現しているトランスジェニックマウスにおける異種移植されたラット骨髄細胞の許容;例えば、マウスにおけるマイトジェン及びアロ抗原に対するT細胞増殖のダウンレギュレーション、並びにT細胞による1型サイトカイン産生の減少;例えば、本発明のポリペプチドで処理されたT細胞によるIL−4の放出、これはTh2サイトカインパターンへのシフトと一致する;例えば、本発明のポリペプチドによるドナーマウス前処置後の、ドナー細胞の急性GVHDを媒介し、及びレシピエントマウスにおける全般的生存を改善する能力;例えば、本発明のポリペプチドで処置されたドナーマウスにおける大量のIL−4の分泌に寄与するCD4-CD8- NK1.1+ T細胞の頻度の増加)、又は
−虚血性病巣後の、ニューロン前駆細胞分化、ニューロン新生の刺激、及び行動の転帰の改善。
【0089】
別の本発明の目的は、本発明のポリペプチドを患者に投与し、1つ又は複数の前述の生物学的活性を発揮することである。
【0090】
本発明のポリペプチドの生物活性を確認するために、いくつかの公知のアッセイを、単独で又は組合せて使用することができる。本発明のポリペプチドの機能を決定する例は、Schneiderら, J Clin Invest. 2005 Aug;115(8): 2083-98、Schneiderら, Cell Cycle. 2005 Dec;4(12): 1753-7及び米国特許出願US2005/0142102に説明されている。例えば、sCFS3R機能を確認する方法は、マウスの骨髄細胞を使用するコロニー形成アッセイ;sCFS3Rにより誘導された骨髄細胞増殖の刺激;増殖に関してsCFS3Rに左右されるか又はsCFS3Rに対し反応する細胞株による特異的バイオアッセイ(例えば、AML−193;32D;BaF3;GNFS−60;HL−60,M1;NFS−60;OCI/AML1a;及び、WEHI−3B)を含む。これら及び他のアッセイは、Bramanら, Am. J. Hematology 39: 194-201 (1992);Clogston C Lら, Anal Biochem 202: 375-83 (1992);Hattori Kら, Blood 75: 1228-33 (1990);Kuwabara Tら, Journal of Pharmacobiodyn 15: 121-9 (1992);Motojima Hら, Journal of Immunological Methods 118: 187-92 (1989);Sallerfors B及びOlofsson, European Journal of Haematology 49: 199-207 (1992);Shorter S Cら, Immunology 75: 468-74 (1992);Tanaka H及びKaneko, Journal of Pharmacobiodyn, 15: 359-66 (1992);Tie Fら, Journal of Immunological Methods 149: 115-20 (1992);Watanabe Mら, Anal. Biochem. 195: 38-44 (1991)に説明されている。
【0091】
最も好ましい態様において、本発明のポリペプチドの活性は、原始造血前駆細胞の増殖の測定、本発明の単離されたCSF3Rポリペプチド変種の存在下で、1、2又は3日以内に1ディッシュ当たりに形成されたコロニー数の決定により確認される(Kuらの論文を参照のこと)。好ましくは、活性は、1ディッシュ当たり少なくとも1、2、3、5、7、10、15、20、25、30個又はそれよりも多いコロニーが形成された場合に確認される。これらのコロニーは、1日以内に形成されることが好ましい。好ましくは、CSF3Rポリペプチドの任意の活性量を使用することができる。
【0092】
本発明は、追加的アミノ酸ドメインに作動可能に連結された、先に開示されたCSF3Rポリペプチドを含有する融合タンパク質にも関する。追加的アミノ酸ドメインは、CSF3Rポリペプチド配列の上流(N−末端)又は下流(C−末端)に位置してよい。追加的ドメインは、任意の機能的領域を含むことができ、例えば融合タンパク質の増大した安定性、標的化又は生物学的利用能を提供し;精製もしくは生成を促進し、又は分子へ追加的生物活性を付与する。このような追加的アミノ酸ドメインの典型例は、タグ、標的化ペプチド、免疫グロブリンの定常領域、多量体化ドメイン及び/又は生物学的活性タンパク質もしくはそれらの断片又は、例えば米国特許第6,193,972号に開示されたヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)のようなヘテロ二量体タンパク質ホルモンを含むが、これらに限定されるものではない。用語「作動可能に連結される」とは、ポリペプチド及び追加的アミノ酸ドメインが、直接的又はスペーサー残基(例えば、1個又は複数のGly−Serモチーフ)を介してのいずれかで、ペプチド連結を通じて会合されていることを示している。この様式において、融合タンパク質は、以下に考察するように、これをコードしている核酸分子の宿主細胞における直接発現により、組換え的に生成され得る。同じく必要ならば本融合タンパク質に含まれた追加的アミノ酸配列は、生成/精製プロセスの最後に又はインビボにおいてのいずれかで、好適なエンド−/エキソペプチダーゼにより、除去されてよい。例えば、融合タンパク質に含まれたスペーサー配列は、インビボ又はインビトロのいずれかで、追加的アミノ酸ドメインから所望のポリペプチド変種を酵素的切断により分離するために使用することができる、エンドペプチダーゼ(カスパーゼなど)の認識部位を含んでよい。
【0093】
追加的アミノ酸残基の具体例は、例えばGST配列及びHisタグ配列から選択されるタグ配列を含む。タグ配列は、CSF3Rポリペプチド変種のC−末端又はN−末端へ、好ましくはC−末端へ連結されてよい。
【0094】
特定の実施態様において、追加的アミノ酸残基は、タンパク質の分泌を方向付ける、ペプチドシグナルとして機能する。CSF3Rは、I型膜貫通タンパク質である。しかし本発明のCSF3Rポリペプチド変種は、ポリペプチドのN−末端で、異種シグナル配列に融合され、それらの分泌を可能にするか又は増大する。このようなシグナルペプチドは、真核宿主細胞(例えば哺乳類の)又は原核宿主細胞のような、選択された宿主細胞において配列機能的であってよい。このようなペプチドシグナルの例は、当該技術分野において周知である。
【0095】
更なる特定の実施態様において、融合タンパク質内の追加的アミノ酸残基は、免疫グロブリンの定常領域、特にヒト免疫グロブリンのFc部分由来のアミノ酸配列を含む。Fc部分の配列は、例えばIgGからの、好ましくはヒトIgGから由来してよい。好ましくは、これは、任意に例えばヒトIgG1のヒンジ領域を含む、CH2及びCH3ドメインなどの、重鎖領域に融合される。Fc部分は、相補的結合、Fc受容体への結合などの望ましくない活性を防止するために、例えば突然変異されてよい。従って該Ig配列は、得られる二量体のエフェクター機能を低下又は安定性を増大するように修飾されてもよい。免疫グロブリンの定常領域に由来したアミノ酸配列は、CSF3Rポリペプチド変種のC−末端又はN−末端に、好ましくはC−末端に連結されてよい。
【0096】
本発明の第一の態様のポリペプチド及び免疫グロブリンの一部を含む特異的融合タンパク質の生成は、例えば、WO 99/09063の実施例11に開示されている。例えば、イソ型IgG2もしくはIgG4、又は他のIgクラス、IgMもしくはIgAなどの、Ig分子の他のイソ型も、本発明の融合タンパク質の生成に適している。融合タンパク質は、単量体又は多量体、ヘテロ−又はホモ多量体であってよい。
【0097】
更なる本発明の第一の態様のポリペプチドの融合タンパク質は、他のタンパク質から単離されたドメインを融合し、二量体、三量体などを形成することにより調製されてよい。本発明のポリペプチドの多量体化を可能にするタンパク質配列の例は、hCG(WO 97/30161)、コラーゲンX(WO 04/33486)、C4BP(WO 04/20639)、Erbタンパク質(WO 98/02540)、又はコイルドコイルペプチド(WO 01/00814)などのタンパク質から単離されたドメインである。ポリペプチドは、翻訳後プロセシングによるような天然のプロセスによるか、又は当該技術分野において周知の化学修飾技術のいずれかにより修飾された、20種の遺伝子−コードされたアミノ酸以外のアミノ酸を含んでよい。中でも、本発明のポリペプチドに通常存在し得る公知の修飾は、グリコシル化、脂質付着、硫酸化、例えばグルタミン酸残基のγ−カルボキシル化、ヒドロキシル化及びADP−リボシル化である。他の可能性のある修飾は、アセチル化、アシル化、アミド化、フラビンの共有的結合、ヘム部分の共有的結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有的結合、脂質誘導体の共有的結合、ホスファチジルイノシトールの共有的結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有的架橋の形成、システイン形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、GPIアンカー形成、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解性プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレン酸化、アルギニン化のようなt−RNA媒介したアミノ酸のタンパク質への付加、及びユビキチン化を含む。
【0098】
更に特定の実施態様において、本融合タンパク質内の追加的アミノ酸残基は、多量体化ドメインを含み、これは本発明の2種又はそれよりも多い融合タンパク質の間で、又は本発明の1種又は複数の融合タンパク質と個別のタンパク質の間で、複合体が形成されることを可能にする。このような多量体化ドメインの例は、ロイシンジッパーを含む。この多量体化ドメインは、CSF3Rポリペプチド変種のC−末端又はN−末端に、好ましくはC−末端に連結されてよい。
【0099】
本発明の融合タンパク質は、前記追加的アミノ酸残基を1個のみ、又はそれらの組合せのいずれかを含んでよいことは理解されるべきである。例えば、融合タンパク質は、シグナルペプチド及びタグ配列、又はシグナルペプチド及び多量体化ドメイン又はシグナルペプチド及び免疫グロブリンの定常領域、又はタグ及び免疫グロブリンの定常領域を含んでよい。同じく先に示されたように、追加的アミノ酸配列の一部は、スペーサー残基を介して、特に必要ならばこれらのエレメントの引き続きの分離を可能にする切断可能なスペーサー残基を介して、CSF3Rポリペプチド変種へ連結されてよい。このような融合タンパク質は、以下に考察されるような、当該技術分野においてそれ自身公知の任意の通常の技術により作出されてよい。
【0100】
従って本発明の実施態様に従い、1個よりも多い融合ポリペプチドを含んでなる多量体タンパク質である、ハイブリッド融合タンパク質が提供される。従って先に説明された融合タンパク質は、ホモ二量体及びヘテロ二量体を形成してよく、これらも同じく本発明に含まれる。本ハイブリッド融合タンパク質は、前述の本発明の第六の態様の第一の実施態様に従い、2、3、4又はそれよりも多い融合ポリペプチドを含んでよい。好ましくは、このハイブリッド融合タンパク質は、前述のような2種の融合ポリペプチドを含む二量体である。ハイブリッド融合タンパク質が二量体である場合、これはホモ二量体又はヘテロ二量体であってよい。好ましくは本ハイブリッド融合タンパク質は、前記融合ポリペプチドから選択された1種よりも多い融合ポリペプチドを含んでなる又はからなる。従って本発明は、2つの融合ポリペプチドを含んでなるホモ二量体を含む。更に本発明は、これらの配列の組合せを含んでなるヘテロ二量体を含む。
【0101】
従ってヘテロ二量体のタンパク質性ホルモンのような非-免疫グロブリンタンパク質も、融合タンパク質の作出に使用することができる。この融合タンパク質は、ヘテロ二量体ホルモンのα及びβ鎖又はそれらの一部を、それに本発明のポリペプチドが連結される足場として利用する。ヘテロ二量体のタンパク質性ホルモンの例は、半減期が長い安定した分泌タンパク質である、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)ホルモンである。hCGを利用するハイブリッドタンパク質の例は、Campbellらの米国特許第6,194,177号に開示されており、その内容全体は参照により本明細書に組み入れられる。
【0102】
一般に、本発明のハイブリッドタンパク質は、少なくとも2つのポリペプチド鎖を含み、各ポリペプチド鎖は、ヘテロ二量体のタンパク質性ホルモンのサブユニット又はそれらの断片へ連結された、少なくとも1つの本発明のポリペプチドを含む。本発明において使用するためのタンパク質性ヘテロ二量体ホルモンの例は、FSH、インヒビン、TSH、hCG、及びLHを含むが、これらに限定されるものではない。
【0103】
一部の実施態様において、本ハイブリッドタンパク質におけるヘテロ二量体のタンパク質性ホルモンのサブユニットの1つは、ホルモンの生物活性を低下又は排除する1又は複数の変更を含むが、変更されたサブユニットのホルモンの別のサブユニットと二量体化する能力は維持する。一部の実施態様において、変更されたサブユニットは、アミノ酸88−92の欠失(del 88〜92)を含むhCGαのサブユニットであり、これはαdes88〜92と称され、これによりhCGは生物学的に不活性となるが;しかし、αサブユニットのhCGβサブユニットと二量体化する能力は維持される(hCGのサブユニットのカルボキシル−最末端の単に5個の残基の除去は、その生物活性を効果的に排除するが、ヘテロ二量体を形成するその能力は維持する)。別の実施態様において、変更されたサブユニットは、アミノ酸位26のシステイン残基のアラニンとの置換(C26A)を含んでなるαサブユニットである。別の実施態様において、変更されたサブユニットは、アミノ酸88〜92の欠失(del 88〜92)及びアミノ酸位26のシステイン残基のアラニンとの置換(C26A)を含んでなるαサブユニットである。別の実施態様において、変更されたサブユニットは、アミノ酸104〜145の欠失(del 104〜145)を含んでなるβサブユニットである。本発明のハイブリッドタンパク質は、以下を含んでよい:a)変更されたαサブユニット及び変更されないβサブユニット;b)変更されたαサブユニット及び変更されたβサブユニット;c)変更されないαサブユニット及び変更されたβサブユニット;又は、d)変更されないαサブユニット及び変更されないβサブユニット。
【0104】
本発明のポリペプチド又は融合タンパク質は、単離された形で、又はそれらの活性のあるコンジュゲートもしくは複合体の形で単離することができる。
【0105】
これに関して、本発明の特定の目的は、先に規定されたようなCSF3Rポリペプチド変種又は融合タンパク質を含むコンジュゲートに存在する。本コンジュゲートは、ポリペプチドに(共有的)に結合した少なくとも1個の化学基、例えば標識、安定化剤、毒素、薬物などを含む。特定の実施態様において、このコンジュゲートは、CSF3Rポリペプチド変種の任意のアミノ酸残基に共有的に結合された、放射活性標識、ビオチン、蛍光標識、細胞毒性物質、薬物又は薬物送達物質から選択された分子を含んでなる。有用なコンジュゲートは、例えば、リガンドとの相互作用の検出をもたらす(放射活性標識又は蛍光標識、ビオチン)、又は例えばポリエチレングリコール及び他の天然もしくは合成のポリマーのような薬物送達の有効性に関して物質を改善する、それ自身当該技術分野において公知の分子及び方法を使用し、作出することができる(Harris JM及びChess RB, 2003;Greenwald RBら, 2003; Pillai O及びPanchagnula R, 2001)。
【0106】
本発明の別の態様は、先に規定されたようなCSF3Rポリペプチド変種又は融合タンパク質又はコンジュゲートを含んでなる、受容体複合体である。このような受容体複合体は典型的には、2種もしくはそれよりも多い本発明の融合タンパク質の間で、又は1種もしくは複数の本発明の融合タンパク質と別のタンパク質の間で形成された多量体を含む。多量体化は、先に考察されたような、タンパク質中に含まれた特定の多量体化ドメイン(類)により得ることができる。このような多量体は、インビトロにおいて形成されるか、又は生物への投与時に、これらはインビボにおいて形成されてよい。
【0107】
本発明のポリペプチド及び融合タンパク質は、組換え技術、化学合成、クローニング、ライゲーション、又はそれらの組合せのような、当該技術分野においてそれ自身公知の任意の技術により作出することができる。
特定の実施態様において、これらのポリペプチド又は融合タンパク質は、組換え技術、例えば好適な宿主細胞における対応する核酸の発現により作出される。
【0108】
これに関して、用語「核酸分子」は、先に明らかにされたポリペプチド又は融合タンパク質をコードしている任意の核酸分子を包含している。この核酸は、DNA(例えばcDNA、gDNA、合成DNAなど)、RNA(例えばmRNA)、PNA(ペプチド核酸)など、より好ましくはDNA、更により好ましくはcDNA分子であってよい。本発明の特定の目的は、より具体的には、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号11又はそれらの相補鎖もしくは縮重配列から選択されたヌクレオチド配列を含んでなる又はからなる核酸分子に存在する。
【0109】
用語「精製された核酸分子」とは好ましくは、本発明の核酸分子であって、(1)全核酸が給源細胞から単離される場合に、天然において共に認められるタンパク質、脂質、炭水化物、もしくは他の物質の少なくとも約50%から分離されているもの、(2)「精製された核酸分子」が事実上連結しているポリヌクレオチドの全て又は一部に連結していないもの、(3)事実上連結されていないポリヌクレオチドに作動可能に連結されているもの、又は、(4)比較的大きいポリヌクレオチド配列の一部として事実上生じないものを意味する。好ましくは、本発明の単離された核酸分子は、ポリペプチド生成におけるその使用又はその治療的、診断的、予防的もしくは研究的使用を妨害するような、任意の他の夾雑している核酸分子(複数)、又はその天然の環境において認められる他の夾雑物を実質的に含まない。好ましい実施態様において、ゲノムDNAは、本発明の範囲から明確に排除される。好ましくは10kbp(キロ塩基対)、50kbp、100kbp、150kbp、200kbp、250kbp又は300kbpよりも大きいゲノムDNAは、本発明の範囲から明確に排除される。好ましくは「精製された核酸分子」は、cDNAのみからなる。
【0110】
縮重配列は、参照ヌクレオチド配列と同じアミノ酸配列をコードしているが、遺伝暗号の縮重の結果として異なるヌクレオチド配列を含んでなる、任意のヌクレオチド配列を示す。
【0111】
本発明の更なる目的は、先に規定されたような核酸分子を含んでなるベクターである。このベクターは、任意の原核細胞又は真核細胞において機能的に、組込み又は自立複製する、任意のクローニングベクター又は発現ベクターであってよい。特に本ベクターは、プラスミド、コスミド、ウイルス、ファージ、エピソーム、人工染色体等であってよい。ベクターは、プロモーター、ターミネーター、エンハンサーなどの調節エレメント、選択マーカー、複製起点などを含んでよい。このようなベクターの具体例は、以下に考察されるような、例えばpBR、pUC又はpcDNAプラスミドなどの、原核生物プラスミド;レトロウイルス、アデノウイルス又はAAVベクターを含む、ウイルスベクター;バクテリオファージ;バキュロウイルス;BAC又はYACなどを含む。
【0112】
本発明の更なる態様は、組換え宿主細胞であり、ここで該細胞は、先に規定されたような核酸分子又はベクターを含む。この宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞であってよい。原核細胞の例は、大腸菌(E.coli)のような細菌を含む。真核細胞の例は、酵母細胞、植物細胞、哺乳類細胞を含み、任意の初代細胞培養物又は確立された株化細胞(例えば、3T3、Vero、HEK293、TN5など)を含む。特に好ましい本発明の哺乳類細胞は、CHO細胞である。
【0113】
本発明の別の目的は、先に規定されたようなCSF3Rポリペプチド変種又は融合タンパク質の製造法であり、この方法は、本発明の組換え宿主細胞の核酸分子の発現を可能にする条件下での培養、及び製造されたポリペプチドの回収を含んでなる。このポリペプチドは、ポリペプチドが分泌される場合は細胞培養物上清から、又は好適である場合は細胞の細胞質もしくは残骸から回収することができる。ポリペプチド産物は、グリコシル化されてもされなくてもよく、又は使用される宿主細胞に応じて他の翻訳後修飾を含んでもよい。好ましいグリコシル化部位は、配列番号10のアミノ酸51、93、128、134、389、474、579、610に存在する。
【0114】
多くの書籍及び総説が、ベクター及び原核又は真核宿主細胞を使用する、組換えタンパク質のクローニング及び生成の方法に関する教示を提供しており、このシリーズの一部のタイトルは、Oxford University Pressにより刊行された「実践的方法(A Practical Approach)」(「DNA Cloning 2: Expression Systems」、1995;「DNA Cloning 4: Mammalian Systems」、1996;「Protein Expression」、1999;「Protein Purification Techniques」、2001)である。
【0115】
一般にこれらのベクターは、エピソームの又は非相同/相同組込みベクターであることができ、これは好適な手段(形質転換、トランスフェクション、コンジュゲート、プロトプラスト融合、電気穿孔法、リン酸カルシウム沈降法、直接の微量注入など)により、適した宿主細胞へ導入され、それらを形質転換することができる。特定のプラスミド、ウイルス又はレトロウイルスベクターを選択する重要な要素は、以下を含む:ベクターを含むレシピエント細胞が、認識されかつベクターを含まないそれらのレシピエント細胞から選択されることの容易さ;特定の宿主において望ましいベクターのコピー数;並びに、異なる種の宿主細胞間でベクターを「シャトル」することができることが望ましいかどうか。これらのベクターは、原核又は真核宿主細胞において、適当な転写開始/終結調節配列の制御下で、本発明のポリペプチド又は融合タンパク質の発現を可能にしなければならず、これは該細胞において構成的に活性のある又は誘導性であるように選択される。そのような細胞において実質的に濃厚化された細胞株は、次に単離され、安定した細胞株を提供する。
【0116】
本発明の組換えポリペプチドの高収量の生成の特に好ましい方法は、米国特許第4,889,803号に開示されたような、漸増レベルのメトトレキサートを使用することによる、DHFR−欠損CHO細胞におけるジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)の使用による増幅である。得られたポリペプチドは、グリコシル化型であってよい。
【0117】
真核宿主細胞(例えば酵母細胞、昆虫細胞又は哺乳類細胞)に関して、宿主の性質に応じて、異なる転写及び翻訳調節配列が使用されてよい。これらは、アデノウイルス、パピローマウイルス、シミアンウイルスなどのウイルス給源に由来することができ、ここで調節シグナルは、高レベルで発現する特定の遺伝子に会合されている。例には、ヘルペスウイルスのTKプロモーター、SV40初期プロモーター、酵母gal4遺伝子プロモーターなどがある。抑制及び活性化を可能にする転写開始調節シグナルが選択されてよく、その結果遺伝子の発現を変調することができる。導入されたDNAにより安定して形質転換された細胞は、その発現ベクターを含む宿主細胞の選択を可能にするマーカーを1種又は複数導入することによっても選択することができる。このマーカーは、栄養要求性宿主に対する光栄養性、例えば抗生物質のような殺生物剤への抵抗性、又は銅などの重金属なども提供してよい。選択マーカー遺伝子は、発現されるDNA配列へ直接連結される(例えば同じベクター上)か、又は同時−トランスフェクションにより同じ細胞へ導入されるかのいずれかであることができる。追加のエレメントも、本発明のタンパク質の最適な合成に必要なことがある。
【0118】
特に好適な原核細胞は、組換えバクテリオファージ、プラスミド又はコスミドDNA発現ベクターにより形質転換された細菌(枯草菌又は大腸菌など)を含む。このような細胞は典型的には、N−末端メチオニン残基を含有するタンパク質を産生し、そのようなタンパク質は、本発明の特定の目的を表している。本発明において使用される好ましい細胞は、真核宿主細胞、例えばヒト、サル、マウス、及びチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳類の細胞であり、その理由は、これらは正確なフォールディング又は正確な部位でのグリコシル化のような、翻訳後修飾をタンパク質分子へ提供するからである。別の真核宿主細胞は、酵母発現ベクターで形質転換された酵母細胞(例えばサッカロミセス属、クルイベロマイセス属など)である。同じく酵母細胞は、グリコシル化を含む翻訳後ペプチド修飾を実行することができる。酵母における所望のタンパク質の産生に利用することができる強力なプロモーター配列及びプラスミドの高いコピー数を利用する、多くの組換えDNA戦略が存在する。酵母細胞は、クローニングされた哺乳類遺伝子産物においてリーダー配列を認識し、リーダー配列を持つポリペプチド(すなわちプレ−ペプチド)を分泌する。
【0119】
組換えポリペプチドの長期の高収量の産生について、安定した発現が好ましい。例えば、関心対象のポリペプチドを安定して発現する細胞株は、同じ又は個別のベクター上にウイルス複製起点及び/又は内在性発現エレメント及び選択マーカー遺伝子を含むことができる発現ベクターを用いて形質転換されてよい。このベクターの導入後、細胞は、富栄養培地において1〜2日間増殖し、その後これらを選択培地に交換することができる。選択マーカーの目的は、選択に対する抵抗性を付与することであり、その存在は、導入された配列をうまく発現する細胞の増殖及び回収を可能にする。安定して形質転換された細胞の抵抗クローンは、その細胞型に適した組織培養技術を用いて増殖されてよい。そのような細胞において実質的に豊富な細胞株は、次に単離され、安定した細胞株を提供することができる。
【0120】
発現のための宿主として利用可能な哺乳類細胞株は、当該技術分野において公知であり、かつアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から入手可能な多くの不死化された細胞株を含み、これはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、仔ハムスター腎(BHK)細胞、サル腎臓(COS)細胞、C127細胞、3T3細胞、BHK細胞、HEK 293細胞、Bowesメラノーマ細胞及びヒト肝細胞癌(例えばHepG2)細胞並びに多くの他の細胞株を含むが、これらに限定されるものではない。バキュロウイルスシステムにおいて、バキュロウイルス/昆虫細胞発現システムのための材料は、キットの形で、とりわけInvitrogen社から市販されている。
【0121】
本発明のポリペプチド又は融合タンパク質は、組換えDNA技術に加え、化学合成技術により調製することができる。化学合成技術の例は、固相合成及び液相合成である。固相合成として、例えば合成されるポリペプチドのカルボキシ−末端に対応するアミノ酸が、有機溶媒中に不溶性である支持体に結合され、並びに反応の交互反復(例えば、アミノ酸の好適な保護基により保護されたそれらのアミノ基及び側鎖官能基との逐次縮合)により、そのポリペプチド鎖が伸長される。固相合成法は、使用される保護基の種類に応じて、tBoc法及びFmoc法に、大きく分類される。CSF3Rのサイズと同等のサイズの合成タンパク質の全体は、文献に明らかにされている(Brown Aら, 1996)。
【0122】
本発明のポリペプチドは、所望の使用法及び/又は生成法に従い好ましくあることができる他の代替型において、生成、製剤、投与、又は一般に使用することができる。本発明のタンパク質は、例えばグリコシル化により、翻訳後修飾することができる。本発明のポリペプチド又はタンパク質は、単離された(又は精製された)活性型、もしくはそれらの前駆体、誘導体及び/又は塩で提供することができる。
【0123】
先に指摘したように、用語「活性」又は「生物学的活性」は、そのようなポリペプチドが、CSF3Rリガンドへの結合能を有し、かつCSF3Rアゴニストもしくはアンタゴニストとして機能することを意味する。本発明の「生物学的活性」のあるポリペプチドは更に、前述のアッセイの少なくとも1つにおいて活性を示すものである。
「前駆体」は、それらの細胞又は生物への投与前又は後に、代謝的及び/又は酵素的プロセシングにより、本発明のポリペプチドへ転換することができる化合物である。
【0124】
本明細書における用語「塩」は、本発明のポリペプチドのカルボキシル基の塩及びアミノ基の酸付加塩の両方を意味する。カルボキシル基の塩は、当該技術分野において公知の手段により形成されてよく、これは無機塩、例えば、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、第二鉄又は亜鉛の塩など、並びに有機塩基との塩、例えば、アミン、例えばトリエタノールアミン、アルギニン又はリシン、ピペリジン、プロカインなどと形成されたものを含む。酸付加塩は、例えば、塩酸又は硫酸などのような鉱酸との塩、及び例えば酢酸又はシュウ酸などの有機酸との塩を含む。このような塩のいずれも、本発明のポリペプチドと実質的に類似した活性を有さなければならない。
【0125】
本明細書において使用される用語「誘導体」は、当該技術分野においてそれ自身公知の方法により、アミノ酸部分の側鎖上に又はアミノ−/もしくはカルボキシ−末端基上に存在する官能基から調製することができる誘導体を意味する。このような誘導体は、例えば、カルボキシル−基のエステル又は脂肪族アミド、及び遊離アミノ基のN−アシル誘導体又は遊離ヒドロキシル−基のO−アシル誘導体を含み、並びに例えばアルカノイル−もしくはアロイル−基のようなアシル−基により形成される。
【0126】
本発明のポリペプチド又は融合タンパク質の精製は、非限定的に、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、電気泳動などが関連する任意の通常の手法などの、当該技術分野においてそれ自身公知の様々な方法により実行され得る。特定の精製手法は、ポリペプチドに選択的に結合し、及び典型的にはカラム内に含まれたゲルマトリックス上に固定されている(モノクローナル)抗体又は親和基を使用する、アフィニティクロマトグラフィーである。本明細書に記されたように精製された本発明のタンパク質の調製物は、夾雑物を15%未満含有する調製物、より好ましくは該ポリペプチドを少なくとも90、95又は97%含んでなる調製物を意味する。単離されたタンパク質、ポリペプチド又は核酸は、その天然の環境内にないタンパク質、ポリペプチド又は核酸を意味する。
【0127】
本発明のポリペプチドは、それら自身、もしくはFc融合体のような融合タンパク質の成分として、並びに/又は別の作用物質と組合せて、有用である。好ましくはFc融合体は、配列番号4又は配列番号8を含む。
【0128】
好ましくはこの作用物質は、インターフェロン−β、CSF3、GM−CSF、組織−プラスミノーゲン活性化因子、造血因子、可溶性NgRメンバー(例えばNogo−66)、NgRに標的化されたアンタゴニスト(例えば抗体)、ミエリンインヒビター(例えばNogo、MAG又はOmgp)に標的化されたアンタゴニスト(例えば抗体)、スチール因子(SF、Kitリガンド)、Flt3/Flk2リガンド(FL)、RhoAブロッカー、Rhoブロッカー、ROCKブロッカー、ナトリウムチャネルブロッカー、BDNF、VEGF、エリスロポエチン(EPO)、ニューロトロフィン−3(NT−3)又はGAP−43などの成長関連タンパク質、β−セクレターゼモジュレーター、CXCL10、セロトニン受容体のアゴニスト(例えば5−HT1A/2A/7)、LIF、エルロチニブのようなEGFRブロッカー、及び/又はメチルプレドニゾロンから選択される。特に好ましいのは、インターフェロン−βである。
【0129】
以下のいくつかの組合せが想定されている:1)本発明のポリペプチドの、抗−CD3 AbのようなT細胞活性化阻害因子との組合せ;2)本発明のポリペプチドの、分離されたか又はキメラ分子(プロゲニポイエチン(progenipoietin))と組合せられたかのいずれかの、Flt3−Lのような他の造血因子との組合せ;3)本発明のポリペプチドにより誘導された特定の細胞サブセットの選別、これは自己免疫反応及びアロ反応性の反応に対する保護を提供する;並びに、4)本発明のポリペプチドとG−CSFを含む増殖因子との組合せにより移動される特定の細胞サブセットの選別(例えばG−CSFを含む増殖因子及び本発明のポリペプチドの組合せにより移動される未熟な造血前駆細胞の特定のサブセットは、顕在性糖尿病の発症を停止する能力を有する)。
【0130】
本発明の更なる目的は、先に規定されたような生成物(例えば、ポリペプチド、融合タンパク質、コンジュゲート、受容体複合体、核酸分子、ベクター又は細胞)、及び医薬として許容される担体又は希釈剤を含有する医薬組成物である。より好ましい本発明の医薬組成物は、配列番号4もしくは配列番号8を含むポリペプチド、又はそのようなポリペプチドを含む融合タンパク質を含んでなる。
【0131】
本発明の別の態様は、ヒト対象の治療のための医薬組成物の製造に関する、先に明らかにされたような生成物(例えば、ポリペプチド、融合タンパク質、コンジュゲート、受容体複合体、核酸分子、ベクター又は細胞)の使用に関する。
【0132】
G−CSFは典型的には、ヒトにおける様々な種類の好中球減少症の治療のために使用される。これは、臨床使用が認められたわずかな増殖因子のひとつである。特にこれは、化学療法(CT)が誘導した血球減少を軽減するために使用される(Viensら, J. of Clin. Oncology, Vol. 20, No. 1, 2002: 24-36)。G−CSFは、可能性のある補助的薬剤として感染症における治療的用途にも関係している(Hubelら, J. of Infections Diseases, Vol. 185: 1490-501, 2002)。
【0133】
療法において使用されるCSF3のアゴニストは公知である。例えばAmgen社は、化学療法が誘導した好中球減少症又は白血球減少症の治療のために、組換えCSF3のペグ化型であるペグフィルグラスチムに着手した。Bolder Biotechnology社は、白血球減少症の治療のための、BBT−001と称される、IgG−Fcに連結されたペグ化されたCSF3を含む融合タンパク質を開発した。Chugai Pharmaceutical社は、白血球減少症、血液病、免疫障害、好中球減少症、及びウイルス感染症の治療のための、組換えヒトCSF3であるレノグラスチンに着手した。Dragon Pharmaceuticals社は、白血球減少症の治療のための経口CSF3製剤を開発した。Kancer社は、白血球減少症の治療のためのCSF3製剤を開発した。協和醗酵工業社は、貧血又は白血球減少症の治療のためのナルトグラスチム(注射用CFS3)に着手した。Neose Technologies社は、好中球減少症の治療のための長期間作用する糖ペグ化されたCSF3を開発した。Transkaryotic Therapies社は、好中球減少症の治療のための遺伝子活性化されたCSF3(GA−GCSF)を開発した。
【0134】
心筋梗塞のマウスモデルにおいて、CSF3治療は、3日目の初期の梗塞サイズに影響を及ぼさなかったが、梗塞後1週間と早期に心機能を改善し、この有益な作用は、治療開始が遅れることにより低下された(Haradaら Nature Med. Vol. 11: 305-311, 2005)。CSF3は、抗アポトーシスタンパク質を誘導し、心筋のアポトーシス性の死亡を阻害し、同じくCSF3は、内皮細胞のアポトーシスを低下し、かつ梗塞心の脈管新生を増大した。Haradaらは、CSF3は、心筋細胞の生存を促進し、及び心筋細胞と非心筋細胞の間の機能的連絡により心筋梗塞後の左心室リモデリングを防止することを示唆した。
【0135】
市中肺炎(CAP)の患者における単回投与量のG−CSFの適用は、生存の延長及び抗炎症性サイトカインの徐放と組み合わせられた好中球の活性化亢進を引き起こした(Droemannら Respiration. 2005 Dec 12. 出版前電子版論文)。
CSF3は、動物において、移植片対宿主病、多発性硬化症、全身紅斑性狼瘡、炎症性腸疾患及び糖尿病などの免疫媒介型疾患の予防及び/又は治療のためにも恩恵がある(Rutellaら J Immunol. 2005 Dec 1;175(11): 7085-91)。
【0136】
移植片対宿主病において、G−CSF投与後5日目のドナー細胞のインビトロアロ反応は、移植患者における急性GVHDの発生の予測であり、インビトロアロ反応性の著しいG−CSF−誘導した抑制を伴うドナー由来のT細胞は、レシピエントにおいてGVHDを誘導する頻度が低い。同種HSC移植後のTGF−βの生成は、急性−対−慢性GVHDに対するドナーへのG−CSF投与の相反する作用に関する追加説明を提供するであろう。これに関して、ドナーマウスへのG−CSF投与は、急性GVHDからのTGF−β−及びIL−10−依存型の保護を誘導するが、慢性GVHDのTGF−β−依存型増悪に寄与するであろう。移植マウスにおけるTGF−βの中和は、胃腸管及び皮膚における慢性GVHDを保護するが、肝臓異常は保護しない。
【0137】
炎症性腸疾患において、G−CSFは、ホワイトニュージーランドウサギの実験的大腸炎での使用に成功した。動物は、大腸炎誘導の24時間前又は誘導時のいずれかに、rG−CSFの50又は200μg/kgのいずれかで前処置した。いずれかの投与量でのサイトカイン投与は、組織ミエロペルオキシダーゼレベルの上昇に翻訳されたにもかかわらず、組織学的に類似した粘膜多型核細胞は、G−CSF−処置群において、対照対腸炎群と比べ浸潤する。更にロイコトリエンB4及びトロンボキサンB2の透析液レベルは、処置した動物において有意に低かった。Th1疾患モデルのラットの2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸大腸炎において、同様の結果が得られた。G−CSFの250μg/kg/日は、進行性貫壁性炎症に起因した体重減少及び結腸壁肥厚の両方を著しく弱めた。この作用は、IFN−γ及びIL−12p35転写の著しい阻害に関連していた。前臨床データは、ヒト炎症性腸疾患の治療にも翻訳されている。G−CSFは、クローン病の重症の内視鏡手術後の再発に有効であることが証明されている。患者5名を、週3回組換えヒトG−CSFの300μgで12週間処置した。G−CSFは、安全かつ忍容性が良好であり、好中球数、IL−1ra、並びに可溶性TNFR p55及びp75の有意な増加が、G−CSF−治療した患者の血漿において示された。オープンラベル試験において、活動期クローン病の治療に関するG−CSFの安全性及び有効性を明らかにした。患者は、G−CSFの300μgを連続して12週間受け取り、疾患活動の統計学的に有意な減少に達した。これらの試験は、rG−CSFはクローン病の将来性のある治療アプローチであることを示唆している。
【0138】
G−CSFの抗炎症特性、並びにT細胞サイトカインプロファイルをTh2へスイッチしかつ寛容原性DC及びTreg細胞の分化を促進するG−CSFの能力は、全身紅斑性狼瘡(SLE)及び関節リウマチ(RA)のような自己免疫疾患の実験モデルにおけるその治療的評価を促した。初期タンパク尿に既に罹患した動物において治療が開始された場合であっても、炎症が顕著な特徴である狼瘡疾患の最終病期である腎炎は、高投与量G−CSF療法(200μg/kg)が与えられたマウスにおいて予防された。免疫複合体沈着と腎臓損傷の間の無関係(uncoupling)が認められ、これは糸球体内でのFcγRIII(CD16)発現の大きな低下に対応し、受容体はIg類に対する腎メサンギウム細胞の炎症反応を媒介する。従って、炎症性IL−12血清反応は制限され、死亡は有意に遅延される。炎症性関節炎において、内在性G−CSFの中和は、抗−TNF治療と同じ程度まで疾患の進行を著しく低下した。G−CSF−動員された造血前駆細胞による細胞療法は、他のG−CSF−誘導したプロ炎症細胞サブセットを欠いているが、これは自己免疫疾患患者の治療において見込みがあることを示すことができる。
【0139】
多発性硬化症(MS)及び1型自己免疫型糖尿病(T1D)のT細胞−依存型動物モデルにおけるG−CSFの有益な作用は、治療的戦略への解釈に関する潜在的関心であることが証明された。臨床徴候の発生時に開始された、G−CSF(200μg/kg)による7日の短期治療は、SJL:Jマウスのミエリン塩基性タンパク質−誘導した実験的自己免疫型脳脊髄炎に対する長続きする保護をもたらした。保護されたマウスは、限定された脱髄及び低下したT細胞のCNSへの補充(recruitment)、更には非常に識別できる自己免疫炎症並びにCNSにおけるかろうじて検出可能なサイトカイン及びケモカインのmRNAレベルを示した。これらの作用は、末梢において生じ、かつマクロファージ及び自己反応性リンパ球によるケモカイン(MIP−1α/MCP−1、例えばCCL3/CCL2)産生比の不均衡を含んだ免疫調節事象を基にし、これは自己反応性反応のTh2への免疫誘導に相関している。全身及びリンパ球のTNF−α産生の劇的低下も認められた。G−CSFの保護的作用は、MOGペプチドで免疫化したC57BL/6マウスにおいて確認された。上昇したG−CSF遺伝子発現は、MSの急性相で患者の脳病巣において選択的に生じ、このことは、この増殖因子の内在性保護的役割を示唆している。
【0140】
従って別の本発明の実施態様において、本発明のポリペプチドは、単独で及び/又は1種又は複数の追加因子と組合せて、多発性硬化症(MS)の治療に使用し、及び/又は多発性硬化症患者における予防的神経保護療法を提供することができる。これは、乏突起膠細胞上のGCSF受容体の存在を基にし、MSの一次標的細胞上のGCSFの直接の効力を支持している。加えてGCSF受容体は、神経細胞及びそれらの突起に存在し、これはMSのより後期において損なわれ、永久不能に関連するであろう(Cidら (2002), J Neurol Sci, 193, 103-9)。白質変化に関して正常のように見える脳の平らな領域は、神経変性の徴候を示す。従って軸索病変及び神経変性は、多発性硬化症の重要な治療標的である。ニューロン内のその抗−アポトーシス活性及びそのプロ−再生能(ニューロン新生及び可塑性の増強による)を伴うGCSFは、本明細書に説明された組成物は、多発性硬化症治療に関する新規療法として使用することができることを裏付ける。
【0141】
更に多発性硬化症の病態生理学的機序は、脳虚血の重要な機序、例えば一酸化窒素の関与(Smithら, (2001), Ann Neurol, 49, 470-6)、及びグルタミン酸興奮毒の関与(Pittら, (2000), Nat Med, 6, 67-70)と重複している。この情報を考慮し、本発明のポリペプチドは、いずれか特定の機序又は理論に結びつけられるものではないが、炎症を低下する通常の治療とは対照的に、ニューロンを直接保護するという、多発性硬化症の新規治療の選択肢である。
【0142】
急性神経変性に対抗しかつ急性虚血におけるニューロン新生を駆動するG−CSFの能力を明らかにしている結果は、G−CSFは、脳卒中、行動改善、神経系の変性、及び自己免疫疾患のための有望な薬物であることを指摘している(Schneiderら, J Clin Invest. 2005 Aug;115(8): 2083-98;Schneiderら, Cell Cycle. 2005 Dec;4(12): 1753-7; US 2005/0142102)。CSF3Rは、CNSにおいて驚くほど広範な優先的神経発現パターンを有する。G−CSFは、STAT3及びERK1/2の一過性の活性化並びにERK5の強力な持続性の活性化を伴う病巣性脳虚血の2つの異なるモデルにおいて、神経保護的であることが示され、このことはニューロン生存の促進に加え、G−CSFの抗アポトーシス活性に関連したPI3K/Akt経路活性化の促進に関係している。末梢投与されたG−CSFの脳に対する最も印象的な作用は、歯状回において認められ、そこではG−CSFは、虚血状態下で新たに生成されたニューロンの数を増大したが、非虚血性、偽−手術を施した動物においても増大した。従ってG−CSFは、構造的修復を増強し、かつ健常な又は脳卒中後長時間経った対象においてであっても機能すると推測することは、興味深い。様々な研究室からのデータの広範なアレイは、様々な脳卒中モデルにおけるG−CSFの非常に安定した神経保護的作用及びプロ−再生作用を基礎としている。G−CSFは、脳卒中後のリハビリ期における支持的療法としても適しているであろう。虚血後の脳内の前駆細胞の生存及び分化におけるG−CSFの支配的役割も、示唆されている。Schneiderらが使用した皮質の光血栓作成モデル(photothrombosis)は、実行された検査バッテリーにおいても測定された感覚運動行動に対し最も目立つ影響を有したのに対し、海馬体は最も頻繁に学習及び記憶プロセスに結びつけられる。しかし運動障害の機能回復における海馬の可能性のある役割を指示する豊富なデータも存在する。海馬ニューロン新生のG-CSF-誘導した増加は、皮質病巣-誘導した感覚運動障害からの回復に直接影響を及ぼすことが示唆された。従って急性神経変性に対抗し及び新規ニューロン形成を調節することに関与しているG−CSFシグナル伝達は、脳における新規保護システムであるように思われる。
【0143】
ニューロン新生は、神経網の増大した可塑性に繋がることができ、ニューロンの段階的喪失を代替することができるひとつの機序である。従って本発明のひとつの実施態様は、本明細書に考察された投与に従い個人に本明細書に説明された1種又は複数の組成物を投与することにより、若干のレベルの認知喪失に罹患した、これを露呈した及び/又はこれと考えられる個人における、認識能の増強、改善又は増加を提供することである。別の実施態様において、認知増強は、病的でない状態下であっても有用である個人、例えば認知機能障害を示さない個人においても恩恵がある。
【0144】
認識力の決定及びその結果の増強は、当業者には公知である。認識力の増加又は増強が測定される場合、これらは、同じ試験、例えば同じ判定基準、パラメータなどを使用し、本発明の組成物の投与前及び投与後(並びに一部の実施態様においては投与時に測定することもできる)に比較される。
【0145】
加えて、認知増強における本発明の組成物の使用は、知的能力の病的でない減退に限定されず、例えば記憶増強、細かい運動協調性の増強、及び/又は論理力の増強などの、知力の正常で生理的レパートリーを高めるためにも適用することができる。
【0146】
G−CSFは、NODマウスにおける実験的自己免疫型糖尿病に対する保護も提供した。G−CSF(200μg/kg)は、シクロホスファミドの促進作用を逆行し、CD4+CD25+ Treg細胞の喪失を防止し、シクロホスファミドにより免疫細胞において引き金を引かれる強固なサイトカイン−特にIFN−γ−及びケモカインのバーストを無効にした。自然発生糖尿病モデルにおいて、4週齢のNODマウスの連続5日間の治療は、その後16週齢まで4週毎に反復され、疾患発症及び破壊的インスリン炎を永久に予防した。この保護は、2つの主要な調節サブセット、すなわち形質細胞様樹状細胞及びCD4+CD25+ Treg細胞の顕著なリクルートメントに相関していた。更にG−CSFレシピエントは、特に膵臓周囲のリンパ節への、CD4+CD25+ Treg細胞の蓄積を示し、これは高レベルのTGF−β1を産生し、及び2代目(secondary)NOD−SCIDレシピエントにおける糖尿病移入の機能的で能動的な抑制を維持した。5−日間G−CSF処置を1回受けたマウスから選別されたDCは、賦形剤−処置されたドナー由来のDCと比べ、2代目NODレシピエントへの養子移入時に、有意に高レベルの膜TGF−β1を発現したCD4+CD25+ Treg細胞の顕著に増強された蓄積の引き金を引くことができた。G−CSFなどの感染症に対する内因性反応因子は、特にそれらが糖尿病発症の初期相において起こる場合、感染性事象によりもたらされたT1D発症に対する保護に関与することができる。
【0147】
前述の疾患における本発明のポリペプチドの活性を、同様に明らかにすることができる。
G−CSFにより動員されたCD4+CD25+ Treg細胞は、人工的APC及び高−投与量IL−2により最大40,000倍増殖することができるので、これらは臨床適用のためのTreg細胞の有望な給源を示すことができる。同様に本発明のポリペプチドは、CD4+CD25+ Treg細胞を動員することができる。
【0148】
従ってCSF3は、下記疾患に関連している:移植片対宿主病、癌、好中球減少症、神経学的障害又は状態、肺炎、自己免疫疾患、血液病、造血障害、感染症、炎症性腸疾患、及び糖尿病。
【0149】
本発明に従い治療することができる神経学的状態は、一般に、3つのクラスへ分類することができる:虚血-関連疾患と本明細書において称される、虚血性又は低酸素性機序を伴う疾患;神経変性疾患(Adamsら, Principles of Neurology, 1997, 6.sup.th Ed., ニューヨーク, pp 1048 ffを参照のこと);並びに、神経細胞死に関連した神経学的及び精神医学的疾患。本発明に従い治療することができる他の神経学的状態は同じく、認識力の増強、並びに膠芽細胞腫、星状細胞腫、髄膜腫及び神経線維腫などの脳腫瘍の治療を含む。神経細胞死に関連した神経学的及び精神医学的疾患の例は、敗血性ショック、脳内出血、くも膜下出血、多発梗塞性認知症、炎症疾患(血管炎、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群など)、神経外傷(脊髄損傷、及び脳損傷など)、末梢性ニューロパシー、多発性神経障害、てんかん、精神分裂病、うつ病、代謝性脳症、及び中枢神経系の(ウイルス、細菌、真菌の)感染症を含む。
【0150】
虚血−関連疾患と本明細書において称される、虚血性又は低酸素性機序を伴う疾患は、更に全身疾患と脳虚血に細分類することができる。虚血性又は低酸素性機序に関連したそのような全身疾患の例は、心筋梗塞、心筋機能不全、心不全、うっ血性心不全、心筋炎、心膜炎、心外膜心筋炎、冠動脈性心臓病(冠状動脈の狭窄)、狭心症、先天性心疾患、ショック、四肢(extremities)の虚血、虚血損傷、腎動脈狭窄、糖尿病性網膜症、マラリアに関連した血栓症、人工心弁、貧血、脾機能亢進症、気腫、肺線維症、及び肺浮腫を含む。脳虚血疾患の例は、脳卒中(更には出血性脳卒中)、脳微小血管障害(細小血管疾患)、分娩時脳虚血、心停止又は蘇生時/後の脳虚血、術中の問題に起因した脳虚血、頸動脈手術時の脳虚血、脳への血液−供給動脈の狭窄に起因した慢性脳虚血、洞血栓症又は大脳静脈血栓症、脳血管奇形、及び糖尿病性網膜症を含む。
【0151】
神経変性疾患の例は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、ウィルソン病、多系統萎縮症、アルツハイマー病、ピック病、レビー小体病、ハレルフォルデン・スパッツ病、捻転ジストニー、遺伝性運動感覚ニューロパチー(HMSN)、ゲルスマン・シュトロイスラー・シャインカー疾患、クロイツフェルト・ヤコブ病、マチャド・ジョセフ病、フリードライヒ運動失調、非−フリートライヒ運動失調、ジル・ド・ラ・トゥレット病、家族性振戦、オリーブ橋小脳変性、腫瘍外脳症候群、遺伝性痙性対麻痺、遺伝性視神経症(レーベル)、網膜色素変性症、シュタルガルト病、及びキーンズ・セイアー症候群を含む。より好ましくは神経変性疾患は、多発性硬化症である。
【0152】
好ましくは、移植片対宿主病は、急性GVHD又は慢性GVHDである。より好ましくは、移植片対宿主病は、急性GVHDである。CSF3のアゴニストは、急性GVHDについて有用であり、及びCSF3のアンタゴニストは、慢性GVHDについて有用である。
【0153】
好ましくは、炎症性腸疾患は、大腸炎又はクローン病(例えばクローン病の重症内視鏡手術後再発又は活動期クローン病)である。
好ましくは、自己免疫疾患は、神経系自己免疫疾患、全身紅斑性狼瘡(SLE)、骨関節炎細胞、又は関節リウマチ(RA)である。
【0154】
好ましくは、糖尿病は、1型自己免疫型糖尿病(T1D)である。
好ましくは、肺炎は市中肺炎(CAP)である。
好ましくは、好中球減少症は、重症先天性好中球減少症、化学療法(CT)が誘導した血球減少、白血球減少症である。
【0155】
好ましくは、癌は、骨髄細胞系の悪性障害、例えば急性骨髄芽球性白血病(AML)、白血病、白血病誘発、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、急性白血病、慢性骨髄性白血病(CML)、固形腫瘍、上皮性卵巣癌、新生物、膀胱癌、癌腫、前立腺癌、扁平上皮癌、メラノーマ、又は結腸直腸癌である。
【0156】
好ましくは、血液病は、心筋梗塞である。
従って本発明のひとつの目的は、本発明のポリペプチド、それらの誘導体、それらの模倣体、それらの融合タンパク質、及びそれらの組合せ、又はこれらの因子を分泌する細胞を哺乳類へ投与し、その症状を治療することによる、哺乳類における前述の疾患の1種又は複数の治療法を提供することである。
【0157】
従って前記製品及び医薬組成物は、例えば移植片対宿主病、癌、好中球減少症、神経学的障害又は状態、肺炎、自己免疫疾患、血液病、造血障害、感染症、炎症性腸疾患、及び糖尿病の治療に適している。
【0158】
別の本発明の目的は、本発明のポリペプチド、それらの誘導体、それらの模倣体及びそれらの組合せによる、神経幹細胞組成物の馴化;並びに、その状態の治療のために、神経幹細胞を哺乳類へ引き続き投与することにより、哺乳類における神経学的状態の治療法を提供することである。
【0159】
別の本発明の目的は、神経学的状態の治療のために、本発明のポリペプチドを哺乳類へ投与することにより、哺乳類における神経学的状態の治療法を提供することである。
【0160】
別の本発明の目的は、哺乳類への細胞の移植前に、本発明のポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド、それらの誘導体、それらの模倣体及び/又はそれらの組合せの1種又は複数を、細胞へ導入し、これにより細胞が、本発明のポリペプチドを、ポリヌクレオチドの導入前の細胞生存と比べ、該細胞の生存を増強するのに十分量発現することにより、哺乳類へ移植された細胞の生存を増強する方法を提供することである。
【0161】
別の本発明の目的は、造血因子を提供する前の培養物と比べ神経細胞培養物の生存度を増強するために、本発明のポリヌクレオチド、それらの誘導体、それらの模倣体、それらの融合タンパク質及び/又はそれらの組合せを提供することによる、神経細胞培養物の生存度を増強する方法を提供することである。このような方法において、本発明のポリペプチドは、培養物の細胞と接触するように使用することができるか、又は本発明のポリペプチドをコードしかつ発現しているポリヌクレオチドを使用し提供されてよい。
【0162】
別の本発明の目的は、本発明のポリペプチド又はそれらの融合タンパク質により、トリヌクレオチドリピート伸長病、末梢神経障害、リソソーム蓄積症、パーキンソニズム又は緑内障のような、神経学的状態を治療する方法を提供することである。
【0163】
本発明は、対象においてCSF3Rとそれらのリガンドの間の相互作用を増強する方法も包含しており、この方法は、先に規定されたような製品の有効量を対象へ投与することを含んでなる。
【0164】
本発明は、対象においてCSF3Rとそれらのリガンドの間の相互作用を低下する方法も包含しており、この方法は、先に規定されたような製品の有効量を対象へ投与することを含んでなる。
【0165】
本発明の文脈内で、用語治療は、対象、特にヒト対象における予防的又は治癒的治療を含む。治療は、疾患の臨床症状発現の改善、疾患発症の、特に急性疾患発症の遅延;その重症度の軽減、疾患進行の軽減、又はそれらの原因(複数)の抑制を含む。
【0166】
有効量は、患者、疾患及び製品に応じ、当業者により調節されてよい。典型的には、有効量は、約5μg/kg〜50mg/kg、特に100μg/kg〜10mg/kgを含んでなる。
【0167】
これらの医薬組成物は、本発明の1種又は複数の製品(類)を、単独の活性成分として又は他の活性成分との併用のいずれかとして、並びに任意の好適な医薬として許容される希釈剤、担体、生物学的に適合性のあるビヒクル及び動物への投与に適した添加剤(例えば生理食塩水)を含んでよく、並びに任意に医薬的に使用することができる調製物への活性化合物の加工を促進する助剤(賦形剤、安定剤又はアジュバントなど)を含有してよい。医薬組成物は、投与様式の必要性に合致するように、いずれか許容される方法で製剤されてよい。例えば、薬物送達のための生体材料及び他のポリマーの使用、更には特定の投与様式をバリデートするための様々な技術及びモデルは、文献において明らかにされている(Luo B及びPrestwich GD, 2001;Cleland JLら, 2001)。
【0168】
「医薬的に許容される」は、活性成分の生物活性の有効性を妨害せず、並びにそれが投与される宿主にとって毒性がない、任意の担体を包含することを意味する。例えば非経口的投与に関して、前記活性成分は、食塩水、デキストロース液、血清アルブミン及びリンゲル液などのビヒクル中の、注射用単位剤形で製剤されてよい。同じく担体は、デンプン、セルロース、タルク、ブドウ糖、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール、及び石油、動物、植物又は合成を起源とするもの(ピーナッツ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油)を含む様々な油分から選択することができる。
【0169】
当業者は、活性成分の望ましい血液レベルを達成するために、任意の許容された投与様式を使用及び決定することができる。例えば投与は、皮下、静脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、経真皮、経直腸、経口、又は口腔内経路などの様々な非経口経路によるものであってよい。本発明の医薬組成物は、好ましくは正確な用量の単回投与に好適な単位剤形での、予め決定された速度でのポリペプチドの延長された投与のために、デポ注射、浸透圧ポンプなどを含む、徐放剤形又は制御放出剤形で投与されてもよい。
【0170】
非経口的投与は、ボーラス注射又は時間をかけた緩やかな灌流によることができる。非経口的投与のための調製物は、無菌の水性又は非水性の溶液、懸濁液及び乳液を含み、これは当該技術分野において公知の助剤又は賦形剤を含有してよく、並びに慣習的方法に従い調製され得る。加えて、好適な油性注射用懸濁液としての活性化合物の懸濁液が投与されてよい。好適な親油性溶媒又はビヒクルは、脂肪油、例えばゴマ油、又は合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドを含む。懸濁液の粘度を増大する物質を含んでよい水性注射用懸濁液は、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、及び/又はデキストランを含む。任意にこの懸濁液は、安定剤も含んでよい。医薬組成物は、注射による投与に適した溶液を含み、及び賦形剤と一緒に活性化合物を約0.01〜99.99%、好ましくは約20〜75%含有する。
【0171】
投与される用量は、レシピエントの年齢、性別、健康状態、及び体重、もしあれば併用治療の種類、治療頻度、並びに望ましい作用の性質に応じて決定されることが理解される。この用量は、当業者に理解されかつ決定されるように、個々の対象に合わせられる。各治療に必要な総投与量は、反復投与量又は単回投与量で投与されてよい。本発明の医薬組成物は、単独で、又はその状態に対するもしくはその状態の他の症状に対する他の治療薬と一緒に投与されてよい。通常活性成分の1日用量は、0.01〜100mg/kg体重/日である。通常所望の結果を得るためには、分割投与量で、又は徐放型で投与される1〜40mg/kg体重/日が、有効である。2回目又は後続の投与は、その個人に投与された初回又は前回の投与量と、同じ、より少ない又はより多い用量で行うことができる。
【0172】
本発明の更なる態様は、試料中の本発明のポリペプチド又は核酸を検出又は投薬する、組成物及び方法に関する。そのような組成物は、例えば、本発明のポリペプチドの任意の特異的リガンド、例えば抗体、又はそれらの断片もしくは誘導体;又は、任意の特異的核酸プローブもしくはプライマーを含む。
【0173】
これに関して、本発明の更なる目的は、先に明らかにされたようなCSF3Rポリペプチド変種に選択的に結合する、抗体、又はそれらの断片もしくは誘導体である。より具体的な実施態様において、抗体、それらの断片又は誘導体は、本発明のポリペプチドのエピトープへ選択的に結合する。配列番号4の残基His4、Phe74、Gln86、Leu88、及びGln90は、受容体機能に重要であり、Gln87が最も重要であることがわかった(Laytonら)。従って好ましいエピトープは、これらの残基、特に配列番号4のGln87、Phe74、Gln86及びGln90を含むエピトープからなる。これらの残基は、アンカーされたCSF3RのF及びGβ鎖に存在する。Laytonらは、mAb LMM711を更に明らかにし、これも、Ig−様ドメインのF及びG鎖上にあり、CSF3結合部位が重複し、このmAbの強力な中和作用と一致する。従って好ましいエピトープは、配列番号4のPhe74、Gln86及びGln90を含むものである。本発明は、先に規定されたような抗体、それらの断片又は誘導体を含んでなる医薬組成物にも関する。
【0174】
Ig−様ドメインの好ましい断片は、配列番号4の残基His4、Phe74、Gln86、Leu88及びGln90を含んでなる又はからなる。より好ましいIg−様ドメインの断片は、配列番号4の残基Phe74、Gln86及びGln90を含んでなる又はからなる。あるいは、Ig−様ドメインの好ましい断片は、Ig−様ドメインのF及びG鎖を含んでなる又はからなる。
【0175】
本発明の文脈において用語「選択的」結合は、その抗体が、標的ポリペプチド又はエピトープへ優先的に、すなわちいずれか他の抗原又はエピトープへの結合よりもより高い親和性で結合することを示す。別の言い方をすると、標的ポリペプチドへの結合は、他の抗原への非特異的結合から識別することができる。
【0176】
これらの抗体は、毒素、標識、薬物又は他の治療的物質のような異種部分に、共有的に又はそうではなく、直接的又はカップリング剤もしくはリンカーの使用を通じてのいずれかで結合されてよい。
【0177】
本発明の抗体は、本発明のCSF3Rポリペプチド変種の検出、投薬、精製又は中和に使用することができる。従って特定の態様において、本発明は、試料中の先に規定されたようなCSF3Rポリペプチド変種の検出又は投薬の方法であって、このような試料を、先に明らかにされた抗体、それらの断片又は誘導体と接触すること、並びに免疫複合体の形成を決定すること又はその(相対)量を投薬することを含む方法に存在する。この試料は例えば、任意に希釈及び/又は処置された、血液、血漿、血清などの任意の生物学的液体であってよい。抗体、それらの断片又は誘導体は、懸濁液中であるか、又は支持体上に固定されてよい。免疫複合体の存在もしくは量は、例えばリポーター抗体、標識抗体などを使用し、例えば、ELISA、RIAなど当該技術分野においてそれ自身公知の技術により決定されてよい。
【0178】
抗体、それらの断片又は誘導体の生成法は、当該技術分野において周知であり、これは動物の免疫化及び血清(ポリクローナル)又は脾細胞(好適な細胞株との融合によるハイブリドーマの作出)を含む。齧歯類、霊長類及びウマを含む様々な種からのポリクローナル抗体の生成法は、例えばVaitukaitisらの論文(J Clin Endocrinol Metab. 33 (1971) p. 988)に説明されている。簡単に述べると抗原を、アジュバント(例えばフロイントアジュバント)と組合せ、動物へ、典型的には皮下注射により投与する。反復注射を行ってよい。血液試料を収集し、免疫グロブリン又は血清を分離する。同じく本発明のCSF3Rポリペプチドに対するモノクローナル抗体も、当業者により容易に産生され得る。ハイブリドーマ技術を使用するモノクローナル抗体の生成に関する一般的方法論は、周知である(例えば、Kohler, G.及びMilstein, C, Nature 256: 495-497 (1975);Kozborら, Immunology Today 4: 72 (1983);Coleら, 「Monoclonal Antibody and Cancer Therapy」77-96, Alan R. Liss, Inc. (1985);「Antibody: A laboratory Manual」, CSH Press, 1988;Kohlerら, Nature 256 (1975) 495を参照のこと)。簡単に述べると、これらの方法は、動物を抗原で免疫化すること、引き続き脾細胞を回収すること、及びこれらの細胞をミエローマ細胞などの不死化細胞と融合し、ハイブリドーマを作出することを含んでなる。所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、限界希釈により選択することができる。抗体は、例えばWardらの論文(Nature 341 (1989) 544)に明らかにされたような、免疫グロブリンのコンビナトリアルライブラリーの選択によっても産生される。
【0179】
本発明の第一の態様のポリペプチドに対して産生されたモノクローナル抗体のパネルは、様々な特性、すなわちアイソタイプ、エピトープ、親和性などについてスクリーニングすることができる。モノクローナル抗体は特に、それらが方向づけられた個々のポリペプチドの精製において有用である。あるいは、関心対象のモノクローナル抗体をコードしている遺伝子は、例えば当該技術分野において公知のPCR技術により、ハイブリドーマから単離され、クローニングされ、好適なベクターにおいて発現されてよい。
【0180】
キメラ抗体は、非−ヒト可変領域がヒト定常領域へ結合又は融合されているものであるが(例えばLiuら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 3439 (1987)を参照のこと)、これを使用することもできる。
【0181】
抗体は、個体におけるその免疫原をより少なくするために、例えばヒト化(Jonesら, Nature, 321, 522 (1986);Verhoeyenら, Science, 239, 1534 (1988);Kabatら, J. Immunol, 147, 1709 (1991);Queenら, Proc. Natl Acad. Sci. USA, 86, 10029 (1989);Gormanら, Proc. Natl Acad. Sci. USA, 88, 34181 (1991);及び、Hodgsonら, Bio/Technology, 9, 421 (1991)を参照のこと)などにより、修飾されてよい。本明細書において使用される用語「ヒト化抗体」は、非−ヒトドナー抗体の重鎖及び/又は軽鎖の可変ドメインにおけるCDRアミノ酸及び選択された他のアミノ酸が、ヒト抗体中の同等のアミノ酸の代わりに置換されている抗体分子を意味する。従ってヒト化抗体は、ヒト抗体と密接に類似しているが、そのドナー抗体の結合能を有す。
【0182】
更なる代替において、抗体は、「二重特異性」抗体、すなわち、2つの異なる抗原結合ドメインを有する抗体であり、各ドメインは異なるエピトープに対するものであってよい。
【0183】
ファージディスプレイ技術を利用し、関連抗体をプロセシングするためにスクリーニングされたヒト由来のリンパ球のPCR増幅されたV−遺伝子のレパートリーから、又はナイーブライブラリー(McCafferty, J.ら, (1990), Nature 348, 552-554;Marks, J.ら, (1992) Biotechnology 10, 779-783)からのいずれかで、本発明のポリペプチドに対する結合活性を伴う抗体をコードしている遺伝子を選択してもよい。これらの抗体の親和性は、鎖シャッフリング(Clackson, T.ら, (1991) Nature 352, 624-628)によっても改善され得る。
【0184】
前記技術により作出されたポリクローナル又はモノクローナルのいずれかの抗体は、免疫検定、放射性免疫測定(RIA)又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)における試薬として利用される点で、これらは追加の有用性を有する。これらの適用において、抗体は、分析で検出可能な試薬、例えば放射性同位元素、蛍光分子又は酵素などで標識することができる。
【0185】
本発明のポリペプチドに対するポリクローナル抗体は一般に、動物(例えばウサギ又はマウス)において、sCSF3Rポリペプチド及びアジュバントの複数回の皮下又は腹腔内注射により、産生される。本発明のポリペプチドを、キーホールリムペットヘモシアニン、血清、アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシンインヒビターなどの、免疫される種において免疫原性である担体タンパク質に共役することは有用である。同じくミョウバンのような凝集剤を使用し、免疫応答を増強する。免疫化後、これらの動物を放血し、血清を、抗−sCSF3R抗体力価についてアッセイする。
【0186】
本発明のポリペプチドに対するモノクローナル抗体は、培養中の持続性(continuous)の細胞株により抗体分子の産生を提供する任意の方法を用い産生される。モノクローナル抗体を調製する好適な方法の例は、ハイブリドーマ法及びヒトB細胞ハイブリドーマ法である。同じく本発明により、sCSF3Rポリペプチドと反応性であるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株も提供される。
【0187】
本発明のモノクローナル抗体は、治療薬として使用するために修飾されてよい。ひとつの実施態様は、重(H)鎖及び/又は軽(L)鎖部分が、特定種由来の抗体又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であるが、この鎖(類)の残余は、別の種由来の抗体又は別の抗体クラスもしくはサブクラスの対応する配列と同一又は相同である、「キメラ」抗体である。そのような抗体の断片が、望ましい生物活性を示す限りは、これらも含まれる。
【0188】
別の実施態様において、本発明のモノクローナル抗体は、「ヒト化」抗体である。一般にヒト化抗体は、非−ヒトである給源に由来したそれに導入された1個又は複数のアミノ酸残基を有する。ヒト化は、例えば齧歯類の相補性決定領域の少なくとも一部のヒト抗体の対応する領域との置換による、当該技術分野において明らかにされた方法を用いて、実行することができる。
【0189】
用語「抗体」又は「免疫グロブリン」は、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の両方を包含することが意図されている。好ましい抗体は、抗原と反応性であるモノクローナル抗体である。用語「抗体」は、抗原と反応性である2種以上の抗体の混合物(例えば抗原と反応性である異なる種類のモノクローナル抗体のカクテル)を包含することも意図されている。用語「抗体」は更に、抗体全体、それらの生物学的に機能的な断片、単鎖抗体、及び2つ以上の種に由来する部分を含むキメラ抗体のような遺伝的に変更された抗体、二価抗体、抗体コンジュゲート、ヒト化及びヒト抗体を包含することが意図されている。生物学的に機能性の抗体断片も使用することができ、これは抗原に結合するのに十分である抗体に由来するそれらのペプチド断片である。本明細書において使用される抗体は、全抗体に加え、関心対象のエピトープ、抗原又は抗原断片に結合することが可能である、任意の抗体断片(例えばF(ab’).sub.2、Fab’、Fab、Fv)を含むことを意味する。
【0190】
「精製された抗体」は、それと天然には会合されている他のタンパク質、炭水化物、及び脂質を十分に含まないものを意味する。このような抗体は、本発明のsCSF3Rポリペプチド(又はそれらの抗原断片)へ「優先的に結合」し、すなわち他の抗原的に無関係の分子は実質的に認識も結合もしない。本発明の精製された抗体は、好ましくは特定種のsCSF3Rと免疫反応性かつ免疫特異性であり、より好ましくは未変性のヒトsCSF3Rと免疫特異性である。
【0191】
「特異的に結合する」は、抗体の特異的ポリペプチド、すなわちsCSF3Rへの高い親和力及び/又は高い親和性結合を意味する。この特異的ポリペプチド上のそのエピトープへの抗体の結合は、同じ抗体の任意の他のエピトープへの結合よりも、より強力であることが好ましい。sCSF3Rへ特異的に結合する抗体は、他のポリペプチドへ弱いが検出可能なレベルで結合することが可能であってよい(例えば、関心対象のポリペプチドに対し示された結合の10%未満)。このような弱い結合、又はバックグラウンド結合は、例えば適当な対照の使用により、関心対象の化合物又はポリペプチドへの特異的抗体結合から容易に識別できる。
【0192】
好ましくは、親和性は、本発明のポリペプチドについて、CSF3Rファミリーの他の公知のメンバーについてよりも、少なくとも1.5倍、2倍、5倍、10倍、100倍、103倍、104倍、105倍、又は106倍大きい。
【0193】
用語「遺伝的に改変された抗体」とは、そのアミノ酸配列が未変性の抗体のアミノ酸配列から改変されている抗体を意味する。組換えDNA技術の本発明との関連のために、天然の抗体において認められたアミノ酸の配列に限定される必要はなく;抗体は、望ましい特性を得るように再度デザインすることができる。可能な改変は、ただ1個又はわずかなアミノ酸の変更から、例えば可変領域又は定常領域の完全な再デザインまで、数多くかつ幅がある。定常領域の変化は、一般に、補体結合、膜との相互作用及び他のエフェクター機能などの特徴を改善又は変更するために行われる。可変領域の変化は、抗原結合特徴を改善するために行われる。
【0194】
用語「ヒト化抗体」又は「ヒト化免疫グロブリン」は、ヒトフレームワーク、少なくとも1つ及び好ましくは全ての非−ヒト抗体由来の相補性決定領域(CDR)を含んでなる、並びにその中に存在する定常領域は、ヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同じ、すなわち少なくとも約85〜90%、好ましくは少なくとも95%同一である、免疫グロブリンを意味する。従って恐らくCDRを除き、ヒト化免疫グロブリンの全ての部分は、1種又は複数の未変性のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同じである。例えば、Queenらの米国特許第5,5301,101号;第5,585,089号;第5,693,762号;及び、第6,180,370号を参照のこと(その各々は全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0195】
「完全ヒト化抗体」は、ヒト免疫グロブリンの可変領域及び定常領域の両方を含む分子である。完全ヒト化抗体は、自己免疫疾患などの慢性及び再発性疾患のために反復治療が必要であるような治療薬用途で使用する可能性がある。完全ヒト抗体の調製法のひとつは、マウス体液性免疫系の「ヒト化」、すなわちヒト免疫グロブリン(Ig)遺伝子座の、内在性Ig遺伝子が不活性化されているマウスへの導入による、ヒトIgを産生することができるマウス系統(キセノマウス)の作出からなる。Ig遺伝子座は、それらの物理的構造並びに広範な免疫応答の最終的な産生に必要とされる遺伝子再編成及び発現プロセスの両方に関して、極めて複雑である。抗体多様性は、Ig遺伝子座に存在する異なるV、D及びJ遺伝子間のコンビナトリアル再編成により主に作製される。これらの遺伝子座は、抗体発現、対立遺伝子排除、クラススイッチ及び親和性成熟を制御する、散在(interspersed)された調節エレメントも含む。再編成されないヒトIg導入遺伝子のマウスへの導入は、マウス組換え機構は、ヒト遺伝子と適合性があることを明らかにした。更に、様々なアイソタイプの抗原特異性hu−mAbを分泌するハイブリドーマを、抗原で免疫化したキセノマウスにより得ることができる。
【0196】
完全ヒト化抗体及びそれらの作出法は、当該技術分野において公知である(Mendezら, Nature Genetics 15: 146-156 (1997);Buggemannら, Eur. J. Immunol. 21: 1323-1326 (1991);Tomizukaら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 722-727 (2000)、特許WO 98/24893)。
【0197】
用語「キメラ抗体」は、定常領域が、ひとつの種(典型的にはヒト)の抗体に由来し、及び可変領域が、別の種(典型的には齧歯類)の抗体に由来する抗体を意味する。従ってキメラ抗体は、マウスMab由来の可変領域及びヒト免疫グロブリン定常領域を有するもののような、異なる部分が、異なる動物種に由来している分子である。キメラ抗体は、適用において免疫原性を低下するため、及び産生時の収量を増大するために主に使用され、この場合例えば、マウスMabは、ハイブリドーマよりもより高い収量を有するが、ヒトにおける免疫原性がより高く、その結果ヒト/マウスキメラMabが使用される。キメラ抗体及びそれらの産生法は、当該技術分野において公知である(Cabillyら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 3273-3277 (1984);Morrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 6851-6855 (1984);Boulianneら, Nature 312: 643-646 (1984);Cabillyら, 欧州特許出願第125023号(1984年11月14日公開);Neubergerら, Nature 314: 268-270 (1985);Taniguchiら, 欧州特許出願第171496号(1985年2月19日公開);Morrisonら, 欧州特許出願第173494号(1986年5月5日公開);Neubergerら, PCT公開WO 8601533(1986年3月13日公開);Kudoら, 欧州特許出願第184187号(1986年6月11日公開);Sahaganら, J. Immunol. 137: 1066-1074 (1986);Robinsonら, 国際特許出願WO8702671 (1987年5月7日公開);Liuら, Proc. Natl. Acad. Sci USA 84: 3439-3443 (1987);Sunら, Proc. Natl. Acad. Sci USA 84: 214-218 (1987);Betterら, Science 240:1041-1043 (1988);Riechmannら, Nature 332: 323-327;並びに、Harlow及びLane, AANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, 前掲。これらの参考文献は全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0198】
本明細書において使用される語句「抗体断片」は、抗原、抗原決定基又はエピトープへ特異的に結合することが可能な抗体の一部を含む分子を意味する。本発明において有用な抗体のFab及びF(ab’)2及び他の断片を、未処置の抗体分子に関して、本明細書に開示された方法に従いそれらの抗原の検出及び定量に使用することができることは明らかであろう。このような断片は、典型的にはパパイン(Fab断片を生成)又はペプシン(F(ab’)2断片を生成)などの酵素を使用する、タンパク質分解性切断により産生される。
【0199】
本明細書を通じて言及される抗体に関して、用語「モノクローナル抗体」は、可溶性型又は結合型で標識され得る、モノクローナル抗体、キメラ抗体、完全ヒト化抗体、抗−イディオタイプ抗体に対する抗体(抗−抗−Id抗体)に加え、非限定的に酵素切断、ペプチド合成又は組換え技術などの任意の公知の技術により提供されるそれらの断片を含むことを意味する。モノクローナル抗体は、抗原に特異的な抗体の実質的に均質な集団を含み、この集団は、実質的に類似したエピトープ結合部位を含む。Mabは、当業者に公知の方法により得ることもできる。例えば、Kohler及びMilstein, Nature, 256: 495-497 (1975);米国特許第4,376,110号;Ausubelら編集, Harlow及びLane, ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory (1988);並びに、Colliganら編集, Current Protocols in Immunology, Greene Publishing Assoc, and Wiley Interscience N.Y., (1992-1996)を参照することとし、これらの内容は全体が参照により本明細書に組み入れられる。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、GILD及びそれらの任意のサブクラスを含む、いずれかの免疫グロブリンクラスであってよい。本発明のmAbを産生するハイブリドーマは、インビトロ、インサイチュ又はインビボにおいて培養されてよい。高力価のMabのインビボ又はインサイチュの産生は、その現在好ましい産生法をもたらす。用語「モノクローナル抗体」は、未処置の分子に加え、抗原結合が可能である、例えばFab及びF(ab’)2などのそれらの断片の両方を含むことも意味する。Fab及びF(ab’)2断片は、未処置の抗体のFc断片を欠いており、より迅速に循環からクリアランスされ、非−特異性組織結合が、無傷の抗体よりも低いことがある(Wahlら, J Nucl. Med. 24: 316-325 (1983))。
【0200】
モノクローナル抗体は、分子と特異的に反応し、これによりこの分子を抗体に結合することが可能である場合に、分子に「結合が可能である」と言われる。
【0201】
「抗原」は、抗体により結合されることが可能である分子又は分子の一部であり、この抗原は、その抗原のエピトープに結合することが可能である抗体の産生を動物において誘導することが更に可能である。抗原は、1つ又は2以上のエピトープを有することができる。先に言及された特異的反応とは、抗原が、その対応する抗体上のエピトープと高度に選択的様式で反応し、他の抗原により惹起され得る数多くの他の抗体と反応しないことを示すことを意味する。
【0202】
本発明において有用な抗体の断片を含む抗体は、試料中のそれらの抗原を定量的又は定性的に検出するため、又はそれらの抗原を発現する細胞の存在を検出するために使用されてよい。これは、蛍光顕微鏡、フローサイトメトリー、又は蛍光検出器と組合せて、蛍光標識された抗体(下記参照)を使用する免疫蛍光技術により、実現することができる。
【0203】
本発明において有用な抗体(又はそれらの断片)は、それらの抗原のインサイチュ検出のために、免疫蛍光顕微鏡又は免疫電子顕微鏡において、組織学的に使用されてよい。インサイチュ検出は、患者から組織標本を採取し、及びそのような標本に本発明は標識された抗体を提供することにより実現されてよい。この抗体(又は断片)は、生物学的試料への標識された抗体(又は断片)の塗布又は積層により提供されることが、好ましい。このような手順の使用を通じ、抗原の存在のみではなく、試験組織上のその分布を決定することが可能である。本発明を使用し、当業者は、そのようなインサイチュ検出を実現するために、多種多様な組織学的方法(例えば染色手順)のいずれかを変更することができることを容易に理解するであろう。
【0204】
抗原に関するそのようなアッセイは典型的には、生物学的液体、組織抽出物、リンパ球もしくは白血球などの新たに収集した細胞、又は組織培養物中でインキュベーションされた細胞などの生物学的試料を、抗原を同定することが可能な標識された抗体の存在下で、インキュベーションする工程、並びに抗体を、当該技術分野において周知の数多くの技術のいずれかにより検出する工程を含んでなる。
【0205】
生物学的試料は、ニトロセルロースのような固相支持体もしくは担体、又は細胞、細胞粒子もしくは可溶性タンパク質を固定することが可能である他の固相支持体もしくは担体と組合せてもよい。その後支持体又は担体は、好適な緩衝液により洗浄され、引き続き前述のような本発明に従い標識された抗体により処理される。固相支持体又は担体は次に、緩衝液で2回目洗浄され、未結合の抗体が除去される。その後該固形支持体又は担体上の結合した標識の量を、通常の様式で検出することができる。
【0206】
本発明の抗体分子は、「2側」アッセイ又は「サンドイッチ」アッセイとしても公知の免疫測定アッセイにおける利用のために適合されてよい。典型的免疫測定アッセイにおいて、多量の非標識抗体(又は抗体の断片)は固形支持体又は担体に結合され、多量の検出できるように標識された可溶性抗体が添加され、固相抗体、抗原、及び標識抗体の間で形成された3つ組の複合体の検出及び/又は定量を可能にする。
【0207】
本発明の抗体は、免疫アフィニティクロマトグラフィー技術と一緒に使用することができる。より具体的には、この抗体は、クロマトグラフィーカラム内の物質の表面に配置することができる。その後精製されるべき組成物は、このカラムを通過することができる。精製されるべき試料が抗体に結合するsCSF3Rポリペプチドを含有する場合、これによりsCSF3Rポリペプチドは、試料から除去され、その結果精製される。
【0208】
従ってまとめると、診断法は、哺乳類から得た細胞試料(例えば血液試料、リンパ節生検又は組織)を用い、インビトロにおいて行うことができるか、又はインビボ造影により行うことができる。
【0209】
本発明の抗体を含んでなる組成物を使用し、例えば放射性免疫測定、ELISA、FACSなどにより、sCSF3Rの存在を検出することができる。1種又は複数の標識部分は、ヒト化免疫グロブリンに結合することができる。標識部分の例は、放射線不透過性色素、放射線造影剤、蛍光分子、スピン標識分子、酵素、又は診断価値のある他の標識部分、特に放射性又は磁気共鳴造影技術におけるものを含む。
【0210】
本発明のIgG抗体調製物は、有利なことにプロテインG親和性精製を用い、好ましくはプロテインG免疫沈降により、本発明の抗−血清から精製されてよい。免疫化された動物由来の抗−血清は、sCSF3Rポリペプチドを、ウェスタン免疫ブロット分析、免疫沈降及びELISAにより、最適な感度で検出するために使用することができる。
【0211】
一般に最適な再現性、標準化、又は正確さから恩恵を受ける適用に関して、標的抗原に特異的に結合することが可能である本発明の精製された抗体又は抗体断片は、本発明の未精製の調製物と比べ全般的に最適である。
【0212】
同族抗原について最大10-12までの解離定数で特徴づけられる親和性を有する抗体又は抗体断片を、当該技術分野における常法を用いて得ることができることは当業者には明らかであろう。
先に説明されたように、この調製物は有利なことに、様々な種類の検出可能な分子のいずれかに付着された抗体又は抗体断片を含んでなる。
【0213】
抗体断片は、それが由来した親抗体よりもより小さいが、他方で親抗体と実質的に同じ標的−抗原結合特異性、又は結合特異性及び結合親和性の両方を保持するという利点を有する。従ってこれにより抗体断片は、親抗体よりもより小さいために、一般に親抗体よりも優れた生体分布、及び拡散特性(例えば全身性にインビボで又は単離された組織において)を有する。単鎖Fv、Fab’、及びFab、F(ab’)2又はCDRなどの、Fc領域を実質的に欠いている抗体断片は、そのようなFc領域への特異的結合が可能で、そこでこのような結合が望ましくないような分子への、本調製物の曝露が関連する適用において有利である。典型的にはこれは、同族Fc受容体、又はFc−結合補体成分(例えば、血清中に存在する補体成分C1q)へ曝露されたFc領域の望ましくない結合に関連し得る。Fc受容体は、以下を含む多くの免疫細胞型の表面に提示される:樹状細胞のようなプロフェッショナル抗原提示細胞;Bリンパ球;並びに、好中球、好塩基球、好酸球、単球、マクロファージ、及びマスト細胞のような顆粒球。従って抗体断片由来のFc領域の非存在は、望ましくないFc受容体が媒介した免疫細胞活性化又は補体成分が媒介した補体カスケードを回避するために、特に本調製物がインビボで個体へ投与される場合に、特に有利である。
【0214】
F(ab’)2は、抗体分子の二価の抗原−結合部分を含む抗体分子の断片である。
本発明のF(ab’)2調製物は、好都合なことに、本発明の抗−血清のような、本発明の抗体調製物を、酵素ペプシンで処理することによる、当該技術分野における常法を用いて得ることができる。得られるF(ab’)2製品は、5S粒子である。
Fab、又はFab’は、抗体の一価の抗原−結合部分を含む抗体分子の断片である。
【0215】
CDRは、例えば欧州特許第EP0585939号に開示されたように、又はStrandbergらの論文(Protein Eng. 2001 Jan; 14(1): 67-74)に説明されたように、作製することができる。本発明のCDRは、sCSF3Rポリペプチドの変調に対し増強された作用を有する、修飾されたCDRであってよい。活性ペプチドの修飾法の例は、1999年のSawaらの論文(J. Med. Chem. 42, 3289-3299)に説明されている。
【0216】
本発明のFab’調製物は、好都合なことに、本発明の抗−血清のような本発明の抗体調製物の酵素ペプシンでの処理、それに続く得られたF(ab’)2の還元による、当該技術分野における常法を用いて得ることができる。このような還元は、チオール還元剤を、及び任意にジスルフィド結合の切断から生じるスルフヒドリル基の遮断基を用いて、実行されてよい。このような処理は、2つの一価の3.5S Fab’のFc断片を生じる。
【0217】
Fab調製物は、好都合なことに、本発明の抗−血清のような本発明の抗体調製物を、酵素パパインで処理し、未処置の軽鎖並びに可変ドメイン及びCH1ドメインで構成された重鎖部分を得ることによる、当該技術分野における常法を用いて得ることができる。
抗体の酵素処理により抗体断片を作製するための十分な指針は、当該技術分野の文献(例えば、Goldenberg, 米国特許第4,036,945号及び第4,331,647号;Porter RR., 1959. Biochem J. 73: 119-126)で提供される。
【0218】
単鎖Fv(当該技術分野において「scFv」とも称される)は、好適なポリペプチドリンカーにより連結された軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域を含む、単鎖分子である。
本発明のF(ab’)2、Fab’、Fab、又は単鎖Fv又はCDR調製物は、組換え技術を用い得ることができる。
【0219】
組換え抗体断片を得ることは、標的抗原で免疫化された動物のBリンパ球のmRNAを単離し、mRNAからcDNAをRT−PCRにより作製し、並びにcDNAを使用し抗体断片ファージ−ディスプレイライブラリーを構築することにより実現される。Bリンパ球は、好都合なことに、免疫化動物の脾臓から、あるいは血液、骨髄もしくはリンパ節から単離され得る。
【0220】
前述の方法論を使用し、本質的にいずれかの所望の標的抗原−結合親和性及び/又は特異性を有する本発明のモノクローナル抗体断片調製物を得ることができることは明らかであろう。このような調製物は、このような規定された標的抗原−結合特性を伴う標的抗原の結合が可能な試薬から恩恵がある様々な適用において利用することができる。
【0221】
Fab’は構造が本質的にFabに似ているので、Fab’を含んでなる本発明の調製物は、Fabを含んでなるものと本質的に互換的に使用されてよく、ここでこのようなFab’及びFabは、本質的に同じ重鎖及び軽鎖可変領域を含んでなる。通常のように、最大親和性を伴う標的抗原の結合が可能な抗体断片を含んでなる本発明の調製物から恩恵のある適用に関して、本発明のF(ab’)2調製物は、そのような一価の抗体断片の一価の結合と比べ、F(ab’)2の標的抗原への二価結合のため、本発明のFab、Fab’又はscFv調製物よりも優れている。
【0222】
前述のように、適用及び目的に応じ、抗体又は抗体断片調製物は、様々な哺乳類種のいずれかに起源してよい。
望ましい種が起源である本発明の抗体又は抗体断片調製物は、標的抗原で免疫化されたそのような種の動物の血清に由来してよい。
【0223】
本発明のヒト又はヒト化抗体又は抗体断片の調製物は、この調製物の個体への投与に関連する適用にとって好ましい。例えば、ヒト又はヒト化抗体又は抗体断片は、一般に、免疫学的に最適に寛容される傾向があり、従ってヒトにおける最適なインビボ半減期を示し、これにより最適な有効性を示すであろう。ヒト又はヒト化抗体の産生及び開発に関する更なる指針は、以下に提示される。
【0224】
この調製物は、それ自身使用されてよいか、又は医薬組成物中の活性成分として製剤され得る。
従って本発明に従い、医薬として許容される担体、及び活性成分として、本発明の抗体又は抗体断片を含んでなる医薬組成物が提供される。
医薬組成物中の活性成分として本発明の抗体又は抗体断片を製剤する方法、及びそのような医薬組成物を開発する方法が、以下に説明される。
【0225】
好ましくは、抗体又は抗体断片の投与は、本発明の抗体又は抗体断片を活性成分として含んでなる本発明の医薬組成物を投与することにより実行される。
この抗体又は抗体断片は、好ましくは、生化学活性の望ましい調節を実現するために、標的抗原に結合した抗体断片の十分なレベルに到達するように投与される。
【0226】
当業者、例えば医師、より好ましくはその疾患の専門医は、本発明の内容に従い疾患を効果的に治療するための、抗体又は抗体断片の好適な投与経路、及び好適な用量を含む、好適な治療プロトコールを決定するために必要な専門知識を有するであろう。
【0227】
本発明の別の態様は核酸プローブであり、ここで該プローブは、先に規定されたような核酸又はそれらの相補鎖に選択的にハイブリダイスする。プローブは、試料中に存在する特定のポリヌクレオチド配列を同定するために使用することができる、規定された核酸セグメント(又はヌクレオチド類似体セグメント、例えば本明細書において規定されたポリヌクレオチド)を意味し、該核酸セグメントは同定されるべきの特定のポリヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含む。本発明のプローブは典型的には、長さが12〜600ヌクレオチド、例えば12〜500、より好ましくは15〜400、典型的には20〜300の1本鎖核酸を含む。本プローブの配列は、CSF3Rポリペプチド変種遺伝子配列の配列に由来することができる。本プローブは、例えばハイブリッドの安定性を増大するため又はプローブを標識するために、ヌクレオチド置換及び/又は化学修飾を含んでもよい。標識の典型例は、非限定的に、放射活性、蛍光、ルミネセンスなどを含む。
【0228】
本発明の更なる態様は、少なくとも先に規定されたようなCSF3Rポリペプチド変種をコードしている核酸分子の特徴的断片を増幅するために使用することができる核酸プライマーである。「プライマー」は、標的ヌクレオチド配列に相補的であり、及び標的ヌクレオチド配列にハイブリダイズするために使用される、特定のオリゴヌクレオチド配列を意味する。プライマーは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ又は逆転写酵素のいずれかにより触媒されるヌクレオチド重合の開始点として働く。本発明の典型的プライマーは、長さ約6〜50ヌクレオチド、より好ましくは長さ約8〜約40ヌクレオチドの1本鎖核酸分子である。このプライマー配列は、標的核酸分子の配列に直接由来することができる。プライマー配列と標的遺伝子の間の完全な相補性は、高度の特異性を確かにするために好ましい。しかしある程度のミスマッチは容認されてよい。
【0229】
特定の核酸プライマーは、そのようなポリペプチドの特徴的断片に隣接するか又はこれをコードするかのいずれかのCSF3R変種核酸の一部に特異的にハイブリダイズすることができる。本発明のプライマーの具体例を以下に示す:
【0230】
【表1】

【0231】
従って本発明の更なる態様は、試料中の本発明のCSF3Rポリペプチド変種をコードしている核酸の存在の検出又は診断のための、先に明らかにされたプライマー又はプローブの使用に存在する。この方法は、ハイブリダイゼーションの発生を可能にする条件下での試料の先に規定されたようなプローブとの接触、及びハイブリッドの存在の決定;又は、核酸増幅を可能にする条件下での試料の先に規定されたようなプライマーとの接触、及び増幅産物の存在の決定などの、当該技術分野において周知の技術に従い実行することができる。
【0232】
従って本発明は、診断用試薬としての本発明の核酸分子の使用にも関連する。機能障害に関連している本発明の核酸分子により特徴づけられる遺伝子の変異型の検出は、その遺伝子の過小−発現、過剰−発現又は変更された空間的もしくは時間的発現から生じる、疾患、又は疾患への易罹患性の診断に追加、又は診断を規定することができる診断道具を提供する。この遺伝子内に突然変異を保持する個体は、様々な技術により、DNAレベルで検出することができる。
【0233】
診断のための核酸分子は、対象の細胞、例えば血液、尿、唾液、組織生検又は剖検材料などから得ることができる。ゲノムDNAは、検出のために直接使用するか、又は分析前に、PCR、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)、もしくは他の増幅技術(Saikiら, Nature, 324, 163-166 (1986);Bejら, Crit. Rev. Biochem. Molec. Biol, 26, 301-334 (1991);Birkenmeyerら, J. Virol. Meth., 35, 117-126 (1991);Van Brunt, J., Bio/Technology, 8, 291-294 (1990)参照)を使用し、酵素的に増幅することができる。
【0234】
ひとつの実施態様において、本発明のこの態様は、本発明のポリペプチドをコードしている天然の遺伝子の発現レベルを評価する段階、及び該発現レベルを、対照レベルと比較する段階を含み、ここで該対照レベルと異なるレベルは疾患の指標である、患者における疾患の診断法を提供する。この方法は:
a)患者由来の組織試料を、核酸プローブと、本発明の核酸分子とプローブの間のハイブリッド複合体の形成を可能にするストリンジェントな条件下で接触する工程;
b)対照試料を、該プローブと、工程a)で使用したものと同じ条件下で接触する工程;及び
c)該試料中のハイブリッド複合体の存在を検出する工程;を含み、
ここで対照試料中のハイブリッド複合体レベルとは異なる患者試料中のハイブリッド複合体レベルの検出は、疾患の指標である。
【0235】
本発明の更なる態様は:
a)疾患について試験される患者から組織試料を得る工程;
b)該組織試料から本発明の核酸分子を単離する工程;及び
c)疾患に関連している核酸分子中の突然変異の存在を検出することにより、疾患について患者を診断する工程:を含む診断法を含んでなる。
前述の方法における核酸分子の検出を補助するために、例えばPCRを使用する増幅工程が含まれてよい。
【0236】
欠失及び挿入は、正常な遺伝子型と比べた増幅産物のサイズの変化により検出することができる。点突然変異は、増幅されたDNAを、標識された本発明のRNAに、あるいは標識された本発明のアンチセンスDNA配列にハイブリダイズすることにより、同定することができる。完全にマッチした配列は、RNase消化によるか又は融解温度の差の評価により、ミスマッチの二重鎖から識別することができる。患者におけるこの突然変異の存在又は非存在は、DNAを、ストリンジェントな条件下でDNAにハイブリダイズする核酸プローブと接触し、ハイブリッド2本鎖分子を形成し、このハイブリッド2本鎖分子は、疾患に関連した突然変異に相当する任意の部分で、核酸プローブ鎖のハイブリダイズしない部分を有し;並びに、DNA鎖の対応する部分における疾患−関連した突然変異の存在又は非存在の指標として、プローブ鎖のハイブリダイズしない部分の存在又は非存在を調べることにより、検出することができる。
このような診断は、特に出生前診断で、及び更には新生児診断で有用である。
【0237】
参照遺伝子と「突然変異体」遺伝子の間の点突然変異及び他の配列差は、直接のDNA配列決定又は1本鎖高次構造多型などの、他の周知の技術により、同定することができる(Oritaら, Genomics, 5, 874-879 (1989)を参照のこと)。例えば、配列決定プライマーを、改変されたPCRにより作出された2本鎖PCR産物又は1本鎖鋳型分子と共に使用することができる。配列決定は、放射標識されたヌクレオチドによる通常の手順によるか又は蛍光タグによる自動配列決定手順により実行される。クローニングされたDNAセグメントも、特定のDNAセグメントを検出するためのプローブとして使用されてよい。この方法の感度は、PCRと組合せた場合に、大きく増強される。更に点突然変異及び多型のような他の配列変化は、例えば1個のヌクレオチドが異なる配列のPCR増幅のための対立遺伝子−特異性オリゴヌクレオチドの使用により、前述のように検出することができる。
【0238】
DNA配列の差異は、変性剤を伴う又は伴わない、ゲル内のDNA断片の電気泳動の移動度の変化によって、又は直接のDNA配列決定によっても検出されてよい(例えば、Myersら, Science (1985) 230:1242)。特定の位置での配列変化は、RNase及びS1保護のようなヌクレアーゼ保護アッセイ又は化学切断法によっても明らかにされてよい(Cottonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1985) 85: 4397-4401を参照のこと)。
【0239】
通常のゲル電気泳動及びDNA配列決定に加え、微小欠失、異数性、転座、反転などのような突然変異は、インサイチュ分析によっても検出することができ(例えば、Kellerら, DNA Probes, 第2版, Stockton Press, ニューヨーク, N.Y., USA (1993)を参照のこと)、すなわち細胞内のDNA又はRNA配列は、それらの単離及び/又は膜への固定の必要なく、突然変異について分析することができる。蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)は、現在最も一般的に適用される方法であり、FISHに関する多くの総説が明らかにされている(例えば、Trachuckら, Science, 250, 559-562 (1990)、及びTraskら, Trends, Genet., 7, 149-154 (1991)を参照のこと)。
【0240】
別の本発明の実施態様において、本発明の核酸分子を含むオリゴヌクレオチドプローブのアレイは、遺伝子の変種、突然変異及び多型の効率的スクリーニングを行うために、構築することができる。アレイ技法は、周知であり、全般的適用可能性があり、かつ遺伝子発現、遺伝連鎖、及び遺伝的可変性を含む分子遺伝学の様々な問題点に対処するために使用することができる(例えば、M.Cheeら, Science (1996), Vol 274, pp 610-613を参照のこと)。
【0241】
ひとつの実施態様において、PCT出願WO 95/11995(Cheeら);Lockhart, D. J.らの論文(Nat. Biotech. 14: 1675-1680(1996));及び、Schena, M.らの論文(Proc. Natl. Acad. Sci. 93: 10614-10619(1996))に説明された方法に従い、アレイが調製されかつ使用される。オリゴヌクレオチド対は、2から100万を超える範囲であってよい。これらのオリゴマーは、光指向化学プロセスを使用し、基体上の指定された領域で合成される。この基体は、紙、ナイロン又はその他の種類の膜、フィルター、チップ、スライドガラスもしくは他の好適な固形支持体であってよい。別の態様において、オリゴヌクレオチドは、PCT出願WO 95/25116(Baldeschweilerら)に開示されたような、化学カップリング手法及びインクジェット塗布装置を使用し、基体の表面上で合成されてよい。別の態様において、ドット(又はスロット)ブロットに類似した「格子入り」アレイを使用し、真空システム、熱的、UV、力学的又は化学的結合手順を使用し、基板の表面に、cDNA断片又はオリゴヌクレオチドを配置しかつ連結してよい。前述のようなアレイは、手作業によるか又は利用可能な装置(スロットブロット装置又はドットブロット装置)、材料(任意の好適な固形支持体)、及び機械(ロボット装置を含む)により作製することができ、並びにこれらは市販の装置の有効使用に向いている、8、24、96、384、1536もしくは6144種のオリゴヌクレオチド、又は2から100万を超えるまでの間の任意の他の数のオリゴヌクレオチドを含んでよい。
【0242】
前述の方法に加え、疾患は、対象由来の試料から、ポリペプチド又はmRNAの異常に減少又は増加したレベルを決定することを含む方法により診断されてよい。減少又は増加した発現は、ポリヌクレオチドの定量に関する当該技術分野において周知の方法、例えばPCR、RT−PCR、RNase保護、ノーザンブロット及び他のハイブリダイゼーション法などの核酸増幅などを用い、RNAレベルで測定され得る。
【0243】
宿主由来の試料中の本発明のポリペプチドのレベルを決定するために使用することができるアッセイ技術は、当業者に周知であり、かつ先に一部詳細に説明されている(放射性免疫測定、競合的−結合アッセイ、ウェスタンブロット分析及びELISAアッセイを含む)。本発明のこの態様において、(a)前述のリガンドを、生物学的試料と、リガンド−ポリペプチド複合体の形成に適した条件下で接触する工程;及び、(b)該複合体を検出する工程:を含む診断法を提供する。
【0244】
ポリペプチドレベルを測定するためのELISA、RIA、及びFACSのようなプロトコールは、ポリペプチド発現の変更された又は異常なレベルを診断するための基礎を追加的に提供することができる。ポリペプチド発現の正常値又は標準値は、正常な哺乳類対象、好ましくはヒトから採取した体液又は細胞抽出物を、そのポリペプチドに対する抗体と、複合体形成に適した条件下で一緒にすることにより確立される。標準の複合体形成の量は、例えば光度測定手段によるなど、様々な方法により、定量されてよい。
【0245】
本発明のポリペプチドへ特異的に結合する抗体は、ポリペプチドの発現を特徴とする状態もしくは疾患の診断のために、又は本発明のポリペプチド、核酸分子、リガンド及び他の化合物で治療される患者をモニタリングするアッセイにおいて使用されてよい。診断目的で有用な抗体は、治療薬について先に説明されたものと同じように調製されてよい。ポリペプチドに関する診断アッセイは、ヒト体液又は細胞もしくは組織の抽出物中のポリペプチドの検出のために、抗体及び標識を利用する方法を含む。抗体は、修飾を伴うか又は伴わずに使用されてよく、並びにそれらをレポーター分子と共有的又は非共有的のいずれかで連結することにより標識されてよい。当該技術分野において公知の多種多様なレポーター分子が使用されてよく、そのいくつかは先に説明されている。
【0246】
対象生検組織由来の対照及び疾患試料において発現されたポリペプチドの量は、標準値と比較される。標準値と対象値の間の偏差は、疾患の診断のためのパラメータを確立する。診断アッセイを使用し、ポリペプチドの非存在、存在及び過剰な発現の間を識別し、並びに治療的介入時のポリペプチドレベルの調節をモニタリングすることができる。このようなアッセイは同じく、動物試験、臨床試験又は個々の患者の治療のモニタリングにおいて、特定の治療的処置レジメンの効力を評価するために使用される。
【0247】
本発明の診断キットは:
(a)本発明の核酸分子;
(b)本発明のポリペプチド;又は
(c)本発明のリガンド:を備えてよい。
【0248】
ひとつの本発明の態様において、診断キットは、ストリンジェントな条件下で本発明の核酸分子とハイブリダイズする核酸プローブを含む第一の容器;核酸分子の増幅に有用なプライマーを含む第二の容器;並びに、疾患の診断を促進するためのプローブ及びプライマーの使用に関する説明書:を備える。このキットは更に、ハイブリダイズされないRNAを消化するための薬剤を保持する第三の容器を備えてよい。
【0249】
本発明の別の態様において、診断キットは、その少なくとも1個は本発明の核酸分子である、核酸分子のアレイを備えてよい。
【0250】
本発明のポリペプチドを検出するために、本診断キットは、本発明のポリペプチドへ結合する1種又は複数の抗体;及び、抗体とポリペプチドの間の結合反応の検出に有用な試薬を備えてよい。
【0251】
このようなキットは、移植片対宿主病、癌、好中球減少症、神経学的障害又は状態、肺炎、自己免疫疾患、血液病、造血障害、感染症、炎症性腸疾患、及び糖尿病から選択される、疾患又は疾患の易罹患性の診断に使用される。
【0252】
本発明のポリペプチドの発現は同じく、骨髄造血の程度並びに骨髄細胞系の悪性障害(例えば急性骨髄芽球性白血病)もしくは造血障害の活動又は予後判定の評価のための、有効なマーカーでもある(Iwasakiら)。
【0253】
本発明の更なる態様及び利点は、以下の実施例により明らかであるが、これらは単に例示としてみなされ、本出願の範囲を限定するものではない。
【0254】
【表2】

【0255】
【表3】

【実施例】
【0256】
実施例1−sCSF3R Ig−様C2型ドメインのクローニング
緒言
sCSF3Rは、CSF3R遺伝子(コロニー刺激因子3受容体)の変種である。CSF3R遺伝子は、15個のコーディングエクソンにより構成される。5'UTRには2個のノンコーディングエクソンが存在する。sCSF3Rは、シグナルペプチド(アミノ酸1−25)及びLep受容体Ig−様C2−型ドメイン(アミノ酸22−111)を含む189個のアミノ酸のタンパク質である。これは、最初の120個のアミノ酸(エクソン3及びエクソン4の5’末端に広がる)に及ぶ野生型CSF3R(Q99062)のN−末端側と同じであるが、エクソン4において、その結果異なるC−末端及び未熟な停止コドンを導入するように逸脱し、これは切断型タンパク質を生成することが予測される。
【0257】
2種のPCRプライマー対(sCSF3R−F1/sCSF3R−R1及びsCSF3R−F1ネスト/sCSF3R−R1−ネスト)(図1)は、第一の対が外側対を形成する、ネスティッド対として作用するようにデザインした。sCSF3R−F1ネスト/sCSF3R−R1−ネストは、sCSF3R配列のエクソン3及び4内の500bp産物を増幅するようにデザインした。クローンを同定し、混合型RA滑膜、混合型骨関節炎細胞及び肺線維芽細胞に由来したcDNAを含有するPS3プールから増幅し、これはこのPCRに使用したネスティッドプライマーの位置のために、5’末端の27bpの欠損及び3’末端の40bpの欠損以外は、配列sCSF3Rを含んだ。このクローンは、pCR4−TOPO−sCSF3RF1/R1ネストであった。この欠損ヌクレオチドは、cDNAのGateway発現ベクターへのサブクローニング時に追加した。
【0258】
sCSF3Rのクローニング
a)ヒトcDNA鋳型の調製
第一鎖cDNAは、様々なヒト組織総RNA試料(Clontech社、StrataGene社、Ambion社、Biochain Institute社及びインハウスの調製物)から、Superscript II又はSuperscript III RNase H-逆転写酵素(Invitrogen社)を製造業者のプロトコールに従い用いて、調製した。
【0259】
Superscript IIに関して:オリゴ(dT)15プライマー(500μg/mlを1μl)(Promega社)、ヒト総RNA 2μg、10mM dNTPミックス(中性pHで各10mMのdATP、dGTP、dCTP及びdTTP)1μl及び滅菌蒸留水で最終容積12μlとしたものを、1.5mlエッペンドルフチューブ内で混合し、65℃で5分間加熱し、氷上で冷却した。これらの内容物を、短時間の遠心分離により収集し、5X第一鎖緩衝液4μl、0.1M DTT 2μl、及びRnaseOUT(商標)組換えリボヌクレアーゼ阻害因子(40単位/μl, Invitrogen社)1μlを添加した。このチューブの内容物を、穏やかに混合し、42℃で2分間インキュベーションし、その後Superscript II(商標)酵素1μl(200単位)を添加し、ピペッティングにより穏やかに混合した。この混合物を、42℃で50分間インキュベーションし、その後70℃で15分間加熱することにより失活した。cDNAに相補的なRNAを除去するために、大腸菌RNase H(Invitrogen社)1μl(2単位)を添加し、反応混合物を37℃で20分間インキュベーションした。
【0260】
Superscript IIIに関して:オリゴ(dT)20プライマー(50μM, Invitrogen社)1μl、ヒト総RNA 2μg、10mM dNTPミックス(中性pHで各10mMのdATP、dGTP、dCTP及びdTTP)1μl及び滅菌蒸留水で最終容積10μlとしたものを、1.5mlエッペンドルフチューブ内で一緒にし、65℃で5分間加熱し、次に氷上で冷却した。各RT反応に関して、cDNA合成混合物を、以下のように調製した:10×RT緩衝液2μl、25mM MgCl2 4μl、0.1M DTT 2μl、RNaseOUT(商標)(40U/μl)1μl及びSuperscript III(商標)RT酵素1μlを、セパレートチューブ内で一緒にし、その後この混合物10μlを、RNA/プライマー混合物を含有するチューブへ添加した。このチューブの内容物を、穏やかに混合し、短時間の遠心分離により収集し、50℃で50分間インキュベーションした。反応を、80℃で5分間インキュベーションすることにより終結させ、その後この反応混合物を、氷上で冷却し、短い遠心分離により収集した。cDNAに相補的なRNAを除去するために、大腸菌RNase H(Invitrogen社)1μl(2単位)を添加し、反応混合物を37℃で20分間インキュベーションした。
【0261】
最終の21μl反応混合物を、滅菌水179μlを添加することにより希釈し、総容積200μlとした。このRNA試料をプールに一緒にし、その結果各プールは、5種の異なるcDNA試料を含んだ。各cDNAプール5μlを、最終反応容積50μl中でのPCRの鋳型として使用し、これはそのプール中の各cDNA試料1μlからなった。これは、各個別のcDNA鋳型約20ngを表した。
【0262】
b)cDNAライブラリー
ヒトcDNAライブラリー(バクテリオファージラムダ(λ)ベクター中)を、Stratagene社、Clontech社又はInvitrogen社から購入するか、又は製造業者のプロトコール(Stratagene社、Clontech社及びInvitrogen社)に従い、λZAP、λGT10、λGT11又はTriplEx2ベクターにおいて、Serono Pharmaceutical Research Instituteで調製した。バクテリオファージλDNAを、製造業者(Promega社, マジソン WI)の指示に従い、Wizard Lambda Preps DNA精製システムを用い、感染した大腸菌宿主株の小規模培養から調製した。
【0263】
c)PCRのための遺伝子特異的クローニングプライマー
長さ18〜25塩基のPCRプライマーの2つの対を、Primer Designerソフトウェア(Scientific & Educational Software社, PO Box 72045, ダーハム, NC 27722-2045, USA)を使用し、sCSF3Rのエクソン3及び4配列を増幅するためにデザインした。PCRプライマーは、55±10℃に近いTm及びGC含量40〜60%を有するように、最適化した。ほとんど又は全く特異的にプライミングしない、標的配列(sCSF3R)に関する高い選択性を有するプライマーを選択した。これらのプライマーは、2種のネスティッド対を形成するようにデザインし、その結果sCSF3R−F1ネスト/sCSF3R−R1ネストプライマーは、プライマーsCSF3R−F1/sCSF3R−R1に対しわずかに内側に位置した。
【0264】
d)sCSF3RヒトcDNA鋳型のPCR増幅
遺伝子特異的クローニングプライマーsCSF3R−F1/sCSF3R−R1(表3、図1)を、sCSF3Rエクソン3及び4内の554bpのcDNA断片を増幅するためにデザインした。このプライマー対sCSF3R−F1/sCSF3R−R1を、cDNAライブラリー鋳型のパネル及び個々の組織由来のcDNA鋳型のプールについて、PCR1で使用した。このPCR1は、1×AmpliTaq(商標)緩衝液、200μM dNTP類、各クローニングプライマー50pmole、AmpliTaq(商標)(Applied Biosystems社)2.5単位及びcDNAライブラリー約20ng又はプールしたcDNA鋳型100ngを含有する、最終容積50μlで、以下のようにプログラムされたMJ Research DNA Engineを使用し、実行した:94℃で2分間;94℃で1分間、57℃で1分間、及び72℃で1分間を40サイクル;引き続き、72℃で7分間を1サイクル、及び4℃の保持(holding)サイクル。各PCR1増幅産物30μlを、1×TAE緩衝液(Invitrogen社)中0.8%アガロースゲル上で可視化したが、産物は認められなかった。
【0265】
次に各PCR1産物を、増幅プライマーsCSF3R−F1ネスト/sCSF3R−R1ネストを使用する、PCR2の鋳型として使用し(表3、図1−4)、sCSF3R−F1/sCSF3R−R1産物内の500bpのcDNA断片を増幅するようにデザインした。PCR2を、1×AmpliTaq(商標)緩衝液、200μM dNTP類、各クローニングプライマー50pmole、AmpliTaq(商標)(Applied Biosystems社)2.5単位及びPCR1産物1μlを含有する、最終容積50μlで、以下のようにプログラムされたMJ Research DNA Engineを使用し、実行した:94℃で2分間;94℃で1分間、61℃で1分間、及び72℃で1分間を40サイクル;引き続き、72℃で7分間を1サイクル、及び4℃での保持サイクル。
【0266】
各PCR2増幅産物30μlを、1×TAE緩衝液(Invitrogen社)中0.8%アガロースゲル上で可視化した。ほぼ予想された分子量の産物を、Qiagen MinElute DNA精製システム(Qiagen社)を用いて、ゲルから精製し、EB緩衝液(10mMトリスHCl, pH8.5)10μlで溶出し、直接サブクローニングした。
【0267】
e)PCR産物のサブクローニング
このPCR産物を、トポイソメラーゼIで修飾したクローニングベクター(pCR4−TOPO)へ、Invitrogen社から購入したTAクローニングキットを使用し、製造業者により指定された条件を用い、サブクローニングした。簡単に述べると、ゲル精製したPCR産物4μlを、TOPOベクター1μl及び塩溶液1μlと共に、室温で15分間インキュベーションした。その後反応混合物を、大腸菌株TOP10(Invitrogen社)へ、以下のように形質転換した:One Shot TOP10細胞の50μlアリコートを、氷上で解凍し、TOPO反応液2μlを添加した。この混合物を、氷上で15分間インキュベーションし、その後42℃で正確に30秒間のインキュベーションによりヒートショックした。試料を、氷に戻し、温かい(室温)SOC培地250μlを添加した。試料を、振盪(220rpm)しながら37℃で1時間インキュベーションした。その後形質転換混合物を、アンピシリン(100μg/ml)を含有するL−ブロス(LB)プレート上に塗布し、37℃で一晩インキュベーションした。
【0268】
f)コロニーPCR
コロニーを、滅菌水50μlに、滅菌した爪楊枝を使用し接種した。その後この接種材料の10μlアリコートを、MJ Research DNA Engineを使用し、1×AmpliTaq(商標)緩衝液、200μM dNTP類、T7プライマー20pmole、T3プライマー20pmole、及びAmpliTaq(商標)(Applied Biosystems社)1単位を含有する総反応容積20μl中で、PCRに供した、サイクリング条件は、以下であった:94℃で2分間;94℃で30秒間、48℃で30秒間及び72℃で1分間を30サイクル。試料は更なる分析前に、4℃で維持した(保持サイクル)。
【0269】
PCR反応産物を、1×TAE緩衝液中、1%アガロースゲル上で分析した。ほぼ予想された分子量のPCR産物(マルチクローニングサイト(MCS)のために500bp+105bp)を生じるコロニーを、アンピシリン(100μg/ml)含有するL−ブロス(LB)5ml中で、220rpmで振盪しながら、37℃で一晩増殖した。
【0270】
f)プラスミドDNA調製及び配列決定
ミニプレッププラスミドDNAを、Biorobot 8000ロボットシステム(Qiagen社)又はWizard Plus SV Miniprepsキット(Promega社、カタログ番号1460)を製造業者の指示に従い用い、5ml培養物から調製した。プラスミドDNAを、滅菌水80μlに溶出した。DNA濃度を、Spectramax 190光度計(Molecular Devices社)を用いて測定した。プラスミドDNA(200〜500ng)を、製造業者の指示に従いBigDye Terminatorシステム(Applied Biosystems社、カタログ番号4390246)を使用する、T7及びT3プライマー(表3)によるDNA配列決定に供した。配列決定反応物は、Dye-Exカラム(Qiagen社)又はMontage SEQ 96クリーンアッププレート(Millipore社、カタログ番号LSKS09624)を使用し精製し、その後Applied Biosystems社3700シークエンサー上で解析した。
【0271】
配列解析は、混合型RA滑膜、混合型骨関節炎細胞細胞及び肺線維芽細胞に由来したcDNAを含むプール(PS3)から増幅されたクローンを同定し、これはsCSF3R配列を含んだ。このクローニングされた配列において、本PCRに使用したネスティッドプライマーの位置により、5’末端で27bp欠損し、及び3’末端で40bp欠損した。クローニングされたcDNA断片の配列は、図2に示した。クローニングしたPCR産物は、プラスミドpCR4−TOPO−sCSF3RF1/R1ネストに含まれた。
【0272】
sCSF3Rのための哺乳類細胞発現ベクターの構築
プラスミドpCR4−TOPO−sCSF3RF1/R1ネストをPCR鋳型として用い、Gateway(商標)クローニング法(Invitrogen社)を使用し、6HISタグをコードしている3’配列を伴い、sCSF3R ORF配列を含む、pEAK12d及びpDEST12.2発現クローンを作出した。
【0273】
a)6HISタグ配列にインフレームで融合されたGateway互換性(compatible)sCSF3R ORFの作出
Gatewayクローニングプロセスの第一段階は、attB1組換え部位及びコザック配列が5’末端で隣接し、並びにインフレーム6ヒスチジン(6HIS)タグ、停止コドン及びattB2組換え部位をコードしている配列が3’末端で隣接した、sCSF3RのORF(Gateway互換性cDNA)を作出する、4段階PCR反応に関連している。推定されたcdsの欠損塩基は、フォワードプライマーsCSF3R−EX1、sCSF3R−EX3及びリバースプライマーsCSF3R−EX2、SCSF3R−EX4により追加した。
【0274】
第一のPCR反応(5’末端に14塩基及び3’末端に18塩基を追加するため)は、各々以下を含んだ(最終容積50μl):プラスミドpCR4−TOPO−sCSF3RF1/R1ネスト1μl(30ng)、dNTP類(10mM)1.5μl、10×Pfxポリメラーゼ緩衝液10μl、MgSO4 (50mM) 1μl、各遺伝子特異的プライマー(100μM)(sCSF3R−EX1及びSCSF3R−EX2)0.5μl、及びプラチナPfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen社)0.5μl。PCR反応を、95℃で2分の最初の変性工程、それに続く94℃で15秒;55℃で30秒及び68℃で2分を20サイクル;並びに、4℃の保持サイクルを用いて行った。
【0275】
その産物が予想された分子量(500+32=532bp)であることを証明するために、10μlアリコートを、1×TAE緩衝液(Invitrogen社)中の0.8%アガロースゲル上で可視化した。残りの40μlを、1X TAE緩衝液ゲル中で0.8%アガロースゲル上に装加し、バンドを、製造業者の指示に従いWizard PCR Preps DNA精製システム(Promega社)を用いて精製し、滅菌水50μl中に回収した。第二のPCR反応(両端に残りのヌクレオチドを追加するため)は、各々以下を含んだ(最終容積50μl):精製したPCR1産物4μl、dNTP類(10mM)1.5μl、10×Pfxポリメラーゼ緩衝液10μl、MgSO4(50mM)1μl、各遺伝子特異的プライマー(100μM)(sCSF3R−EX3及びsCSF3R−EX4)0.5μl、及びプラチナPfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen社)0.5μl。PCR反応を、95℃で2分の最初の変性工程、それに続く94℃で15秒;55℃で30秒及び68℃で2分を20サイクル;並びに、4℃の保持サイクルを用いて行った。その産物が予想された分子量であることを証明するために、10μlアリコートを、1×TAE緩衝液(Invitrogen社)中の0.8%アガロースゲル上で可視化した。残りの40μlを、1×TAE緩衝液ゲル中で0.8%アガロースゲル上に装加し、バンドを、製造業者の指示に従いWizard SV Gel及びPCR Clean-up System (Promega社)を用いて精製し、滅菌水40μl中に回収した。
【0276】
第三のPCR反応(最終容積50μl)は、各々以下を含んだ:精製したPCR2産物4μl、dNTP類(10mM)1.5μl、10×Pfxポリメラーゼ緩衝液10μl、MgSO4(50mM)1μl、各遺伝子特異的プライマー(100μM)(sCSF3R−EX5及びSCSF3R−EX6)0.5μl、及びプラチナPfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen社)0.5μl。PCR反応を、95℃で2分の最初の変性工程、それに続く94℃で15秒;55℃で30秒及び68℃で2分を12サイクル;並びに、4℃の保持サイクルを用いて行った。増幅産物を、製造業者の指示に従いWizard PCR Preps DNA精製システム(Promega社)を用いて直接精製し、滅菌水50μl中に回収した。
【0277】
第四のPCR反応(最終容積50μl)は、精製したPCR3産物10μl、dNTP類(10mM)1.5μl、10×Pfxポリメラーゼ緩衝液5μl、MgSO4(50mM)1μl、各Gateway転換プライマー(100μM)(GCPフォワード及びGCPリバース)0.5μl、及びプラチナPfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen社)0.5μlを含んだ。2回のPCR(2nd PCR)反応の条件は以下であった:95℃で1分;94℃で15秒;50℃で30秒及び68℃で2分を4サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒及び68℃で2分を25サイクル;それに続く4℃の保持サイクル。その産物が予想された分子量(567+70=637bp)であることを証明するために、10μlアリコートを、1×TAE緩衝液(Invitrogen社)中の0.8%アガロースゲル上で可視化した。残りの40μlを、1×TAE緩衝液ゲル中で0.8%アガロースゲル上に装加し、バンドを、製造業者の指示に従いWizard PCR Preps DNA精製システム(Promega社)を用いて精製し、滅菌水50μl中に回収した。
【0278】
b)Gateway互換性sCSF3R ORFのGatewayエントリーベクターpDONR221並びに発現ベクターpEAK12d及びpDEST12.2へのサブクローニング
Gatewayクローニングプロセスの第二段階は、以下に従う、Gateway修飾されたPCR産物のGatewayエントリーベクターpDONR221(Invitrogen社)へのサブクローニングに関連している:精製したPCR4産物5μlを、最終容積10μl中で、pDONR221ベクター(0.1μg/μl)1.5μl、BP緩衝液2μl及びBPクロナーゼ酵素ミックス(Invitrogen社)1.5μlと共に、室温で1時間インキュベーションした。この反応を、プロテイナーゼK 1μl(2μg/μl)の添加により停止し、更に10分間37℃でインキュベーションした。この反応液のアリコート(1μl)を用い、以下に従う電気穿孔法により、大腸菌DH10B細胞に形質転換した:DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen社)のアリコート25μlを、氷上で解凍し、BP反応混合液1μlを添加した。この混合物を、冷却した0.1cm電気穿孔キュベットに移し、BioRad Gene-Pulser(商標)を製造業者の推奨したプロトコールに従い使用し、細胞を電気穿孔した。予め室温に温めたSOC培地(0.5ml)を、電気穿孔法後直ちに添加した。この混合物を、15mlのスナップキャップ付きチューブに移し、振盪(220rpm)しながら37℃で1時間インキュベーションした。その後形質転換混合物のアリコート(10μl及び50μl)を、カナマイシン(40μg/ml)を含有するL−ブロス(LB)プレート上に塗布し、37℃で一晩インキュベーションした。
【0279】
プラスミドミニプレップDNAを、Qiaprep BioRobot 8000システム(Qiagen社)を使用し、得られたコロニーの8種に由来する5ml培養物から調製した。プラスミドDNA(150〜200ng)を、BigDyeTerminatorシステム(Applied Biosystems社、カタログ番号4336919)を製造業者の指示に従い使用する、21M13及びM13リバースプライマーによる、DNA配列決定に供した。これらのプライマー配列は、表3に示した。配列決定反応物は、Montage SEQ 96クリーンアッププレート(Millipore社、カタログ番号LSKS09624)を用い精製し、次にApplied Biosystems 3700シークエンサー上で解析した。
【0280】
正確な(correct)配列を含むクローン(pENTR sCSF3R−6HIS)の一つに由来するプラスミド溶出液(2μl又は約150ng)を、最終容積10μlのpEAK12dベクター又はpDEST12.2ベクター(0.1μg/μl)のいずれか1.5μl、LR緩衝液2μl及びLRクロナーゼ(Invitrogen社)1.5μlを含有する組換え反応物において使用した。この混合物を、室温で1時間インキュベーションし、プロテイナーゼK(2μg)の添加により停止し、37℃で更に10分間インキュベーションした。この反応物のアリコート(1μl)を使用し、以下に従う電気穿孔法により、大腸菌DH10B細胞へ形質転換した:DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen社)の25μlアリコートを、氷上で解凍し、LR反応混合物1μlを添加した。この混合物を、冷却した0.1cm電気穿孔キュベットに移し、BioRad Gene-Pulser(商標)を製造業者の推奨プロトコールに従い使用し、細胞を電気穿孔した。予め室温に温めたSOC培地(0.5ml)を、電気穿孔直後に添加した。この混合物を、15mlスナップキャップ付きチューブへ移し、振盪(220rpm)しながら37℃で1時間インキュベーションした。次に形質転換混合物のアリコート(10μl及び50μl)を、アンピシリン(100μg/ml)を含有するL−ブロス(LB)プレート上に塗布し、37℃で一晩インキュベーションした。
【0281】
プラスミドミニプレップDNAを、Qiaprep BioRobot 8000システム(Qiagen社)を使用し、各ベクターにおいてサブクローニングした得られたコロニーの6種に由来する5ml培養物から調製した。pEAK12dベクター内のプラスミドDNA(200〜500ng)を、前述のような、pEAK12F及びpEAK12RプライマーによるDNA配列決定に供した。pDEST12.2ベクター内のプラスミドDNA(200〜500ng)を、前述のような、21M13及びM13リバースプライマーによるDNA配列決定に供した。プライマー配列は表3に示した。
【0282】
Sambrook J.らの文献(Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)に説明された方法を使用し、CsCl勾配精製したマキシプレップDNAを、配列が証明されたクローン(pEAK12d sCSF3R−6HIS)の500ml培養物から調製した。プラスミドDNAを、滅菌水(又は10mMトリス−HCl、pH8.5)中で濃度1μg/μlで再浮遊させ、−20℃で貯蔵した。
【0283】
EndoFree Plasmid Megaキット(Qiagen社)を製造業者の指示に従い使用し、エンドトキシン−非含有ミニプレップDNAを、配列が証明されたクローン(pDEST12.2 sCSF3R−6HIS)の500ml培養物から調製した。精製したプラスミドDNAを、エンドトキシン非含有TE緩衝液中に最終濃度少なくとも3μg/μlで再浮遊させ、−20℃で貯蔵した。
【0284】
【表4】

【0285】
実施例2−クローニングされたHis−タグ付きプラスミドpEAK12d sCSF3R−6HISの哺乳類細胞における機能性ゲノム発現及び精製
エプスタイン・バーウイルス核抗原を発現しているヒト胚性腎293細胞(HEK293-EBNA, Invitrogen社)を、Ex-cell VPRO無血清培地(種ストック、維持培地、JRH)において浮遊状態で維持した。細胞を、1%FCSを補充した、FEME(DMEM/Ham's F−12 1:1、19mM HEPES、5g/Lグルコース、7.5mM L−グルタミン、4ml/L ITS−X)(全てInvitrogen-Life Technologies社)培地250ml中に、1x106個細胞/mlで接種した。500μg DNA(pEAK12d sCSF3R−6HIS)に10μgレポーター遺伝子DNAを加えたこのトランスフェクション混合物を、FEMEの1%FCSの50mlに希釈した。次にPEI(1mg/l、Polysciences社, 米国)1mlを添加した。この混合物を、室温で10分間インキュベーションした。10分後、トランスフェクション混合物を、前記細胞に添加し、インキュベーター内で、37℃で90分間インキュベーションした。最後に非−無菌DNAによる夾雑を防止するために、その容積を、2.5ml Pen−Strepを含有するFEMEの1%FCS残り200mlを足した。6日目に定量的蛍光試験を行い(Axiovert 10 Zeiss社)、陽性トランスフェクションを確認した。6日目(収穫日)に、上清(500ml)を遠心し(4℃、400g)、独自の識別子を有するポットに配置した。
【0286】
1つのアリコート(500μl)を、6His−タグ付きタンパク質のQC(内部バイオプロセッシングQC)のために保持した。
【0287】
精製プロセス
このC−末端6Hisタグを伴う組換えタンパク質を含有する培養培地試料500mlを、1容積の冷緩衝液A(50mM NaH2PO4;600mM NaCl;8.7%(w/v)グリセロール、pH7.5)で希釈し、最終容積1000mlとした。この試料を、0.22μm滅菌フィルター(Millipore社、500mlフィルターユニット)を通して濾過し、1リットルの滅菌方形培地ボトル(Nalgene社)中に4℃で維持した。
【0288】
精製は、自動試料充填機(Labomatic社)に連結したVISIONワークステーション(Applied Biosystems社)上で4℃で行った。精製手順は、二連続工程で構成され、Niイオンで帯電されたPoros 20MC (Applied Biosystems社)カラム(10×50mm、3.93ml)上での金属アフィニティクロマトグラフィー、それに続くSephadex G−25培地(Amersham Pharmacia社)ゲル濾過カラム(1.0×15cm)上での緩衝液交換であった。
【0289】
第一のクロマトグラフィー工程に関して、金属アフィニティカラムは、30倍カラム容積のEDTA溶液(100mM EDTA;1M NaCl;pH8.0)で再生し、15倍カラム容積の100mM NiSO4溶液による洗浄を通じてNiイオンを再帯電し、10倍カラム容積の緩衝液Aで、引き続き7倍カラム容積の緩衝液B(50mM NaH2PO4;600mM NaCl;8.7%(w/v)グリセロール、400mM;イミダゾール、pH7.5)で洗浄し、最後に15倍カラム容積の15mMイミダゾール含有緩衝液Aで平衡とした。この試料を、Labomatic試料充填機により、200ml試料ループに移し、引き続きNi金属アフィニティカラム上に流量20ml/分でチャージした。全試料(1000ml)をNiカラム上に移すために、このチャージ手順を5回繰り返した。引き続きカラムを、12倍カラム容積の緩衝液Aで、引き続き28倍カラム容積の20mMイミダゾール含有緩衝液Aで洗浄した。20mMイミダゾール洗浄時に緩く付着した夾雑タンパク質は、カラムから溶出した。本組換えHis−タグ付きタンパク質を最後に、10倍カラム容積の緩衝液Bで、流量2ml/分で溶出し、溶出したタンパク質を2.7ml画分で収集した。
【0290】
第二のクロマトグラフィー工程に関して、Sephadex G−25ゲル濾過カラムを、緩衝液D(1.137M NaCl;2.7mM KCl;1.5mM KH2PO4;8mM Na2HPO4;pH7.2)の2mlで再生し、引き続き4倍カラム容積の緩衝液C(137mM NaCl;2.7mM KCl;1.5mM KH2PO4;8mM Na2HPO4;20%(w/v)グリセロール;pH7.4)で平衡とした。Ni−カラムから溶出したピーク画分は、自動的にVISION上の一体型試料充填装置を通り、Sephadex G−25カラム上に装加され、このタンパク質は、流量2ml/分で緩衝液Cで溶出した。脱塩した試料を、2.7ml画分で回収した。この画分を、0.22μm滅菌遠心分離用フィルター(Millipore社)を通して濾過し、アリコートとし、凍結し、−80℃で貯蔵した。試料のアリコートを、クマーシーブルー染色によるSDS−PAGE(4〜12%NuPAGEゲル;Novex社)及び抗−His抗体によるウェスタンブロットで分析した。
【0291】
クマーシーブルー染色
NuPAGEゲルを、0.1%クマーシーブルーR250染色液(30%メタノール、10%酢酸)により室温で1時間染色し、引き続き20%メタノール、7.5%酢酸で、バックグラウンドが透明になりかつタンパク質バンドが明確に視認できるまで、脱色した。
【0292】
ウェスタンブロット
電気泳動後、タンパク質を、ゲルからニトロセルロース膜へ、290mAで1時間、4℃で電気的に移した。膜を、緩衝液E(137mM NaCl;2.7mM KCl;1.5mM KH2PO4;8mM Na2HPO4;0.1% Tween20、pH7.4)中の5%粉ミルクにより、室温で1時間ブロックし、引き続き、緩衝液E中の2.5%粉ミルク中の2種のウサギポリクローナル抗−His抗体(G−18及びH−15、各0.2μg/ml;Santa Cruz)の混合物と共に4℃で一晩インキュベーションした。更に1時間室温でインキュベーションした後、膜を緩衝液Eで洗浄し(3×10分間)、次に2.5%粉ミルクを含有する緩衝液E中に1/3000希釈した二次HRP−複合した抗−ウサギ抗体(DAKO社, HRP 0399)と共に、室温で2時間インキュベーションした。緩衝液Eで洗浄(3×10分間)した後、膜をECLキット(Amersham社)で1分間呈色した。引き続き膜を、Hyperfilm(Amersham社)に曝し、フィルムを呈色し、ウェスタンブロット像を目視により分析した。
【0293】
タンパク質アッセイ
タンパク質濃度を、標準としてウシ血清アルブミンを用いるBCAタンパク質アッセイキット(Pierce社)を用いて決定した。精製したsCSF3R−6HISの収量は、184μgであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたCSF3Rポリペプチド変種、又はそれらの特徴的断片であって、ここで該ポリペプチド変種は、リガンド−結合ドメインの配列を含むか又は該配列からなり、機能性膜貫通ドメインを欠きかつ細胞質ドメインを欠いている、前記変種。
【請求項2】
原始造血前駆細胞の増殖において活性を有する、請求項1記載の単離されたCSF3Rポリペプチド変種。
【請求項3】
前記活性が、前記単離されたCSF3Rポリペプチド変種の存在下で1日以内に1ディッシュ当たりに形成されたコロニー数により決定され、好ましくは1ディッシュ当たり少なくとも1、2、3、5、7、10、15、20、25、30個又はそれ以上のコロニーが形成される、請求項2記載の単離されたCSF3Rポリペプチド変種。
【請求項4】
前記単離されたCSF3Rポリペプチド変種が、配列番号10のアミノ酸628〜650を欠き、及び/又は配列番号10のアミノ酸651〜836を欠く、請求項1記載の単離されたCSF3Rポリペプチド変種。
【請求項5】
前記ポリペプチドが、配列番号1のイントロン4によりコードされたアミノ酸配列を更に含むか、又は少なくとも3、4、5、7、10、15、20、25、30、40、50、60もしくは69個のアミノ酸の配列番号1のイントロン4によりコードされたアミノ酸配列の断片を更に含む、請求項1記載の単離されたCSF3Rポリペプチド変種。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、配列番号1のイントロン4によりコードされたアミノ酸配列、又は少なくとも6、7、8、10、15、20、25、30、40、50、60もしくは69個のアミノ酸の配列番号1のイントロン4によりコードされたアミノ酸配列の断片を含むか又は該断片からなる、単離されたCSF3Rポリペプチド変種。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、CSF3Rのリガンド−結合ドメインの1個又は複数のアミノ酸に融合されている、請求項6記載の単離されたCSF3Rポリペプチド変種。
【請求項8】
前記リガンド結合ドメインが、CSF3Rの免疫グロブリン−様ドメインである、請求項1〜5及び7のいずれか1項記載の単離されたCSF3Rポリペプチド変種。
【請求項9】
前記免疫グロブリン−様ドメインが、配列番号10のアミノ酸25〜120からなるか、又は配列番号10のアミノ酸25〜117からなる、請求項8記載の単離されたCSF3Rポリペプチド変種。
【請求項10】
配列番号2、配列番号2の成熟型、配列番号2のグリコシル化型、配列番号2の機能的等価体及び配列番号2の特徴的断片から選択される、請求項1記載の単離されたCSF3Rポリペプチド変種。
【請求項11】
前記成熟型が、配列番号4である、請求項10記載の単離されたCSF3Rポリペプチド変種。
【請求項12】
配列番号6、配列番号6の成熟型、配列番号6のグリコシル化型、配列番号6の機能的等価体、又は配列番号6の特徴的断片から選択される、請求項1記載の単離されたCSF3Rポリペプチド変種。
【請求項13】
前記成熟型が、配列番号8である、請求項12記載の単離されたCSF3Rポリペプチド変種。
【請求項14】
可溶性であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項記載の単離されたCSF3Rポリペプチド変種。
【請求項15】
天然の可溶性変種であることを特徴とする、請求項14記載の単離されたCSF3Rポリペプチド変種。
【請求項16】
それらの成熟型、それらのグリコシル化型、それらのペグ化型、それらの機能的等価体及びそれらの特徴的断片から選択される、請求項1〜15のいずれか1項記載の単離されたCSF3Rポリペプチド変種。
【請求項17】
前記断片が、配列番号2の少なくとも6、7、8、10、20、30、40、60、80、100、120、140、160、180、185、187又は188個のアミノ酸からなる、請求項16記載の単離されたCSF3Rポリペプチド変種。
【請求項18】
前記機能的等価体が、配列番号4と少なくとも75%の同一性、好ましくは少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の同一性を有する、請求項16記載の単離されたCSF3Rポリペプチド変種。
【請求項19】
前記機能的等価体が、配列番号4の6、7、8、10、12、14、16、18、20、22、26、30、34、38個又はそれよりも多いアミノ酸からなる配列番号4と共通の抗原決定基を有する、請求項16記載の単離されたCSF3Rポリペプチド変種。
【請求項20】
前記機能的等価体が、1もしくは複数のアミノ酸修飾、1もしくは複数の非保存的置換、1もしくは複数の保存的置換及び/又は1もしくは複数のアミノ酸誘導体を含む、請求項16記載の単離されたCSF3Rポリペプチド変種。
【請求項21】
追加のアミノ酸ドメインに作動可能に連結される、請求項1〜20のいずれか1項記載のCSF3Rポリペプチドを含む融合タンパク質。
【請求項22】
前記追加のアミノ酸ドメインが、シグナルペプチド、タグ、標的化ペプチド、免疫グロブリンの定常ドメイン、多量体化ドメイン又は生物学的活性タンパク質もしくはそれらの断片を含む、請求項21記載の融合タンパク質。
【請求項23】
免疫グロブリンの定常ドメインに作動可能に連結される、請求項1〜20のいずれか1項記載のCSF3Rポリペプチドを含む、請求項22記載の融合タンパク質。
【請求項24】
請求項1〜20のいずれか1項記載のCSF3Rポリペプチド、又は請求項21〜23のいずれか1項記載の融合タンパク質を含む、受容体複合体。
【請求項25】
請求項1〜20のいずれか1項記載のCSF3Rポリペプチド、又は請求項21〜23のいずれか1項記載の融合タンパク質を含む、コンジュゲート。
【請求項26】
請求項1〜20のいずれか1項記載のポリペプチドをコードする、単離された核酸分子。
【請求項27】
cDNA分子である、請求項26記載の単離された核酸分子。
【請求項28】
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号11、又はそれらの相補鎖もしくは縮重配列から選択されたヌクレオチド配列を含むか又は該ヌクレオチド配列からなる、請求項26又は27記載の単離された核酸分子。
【請求項29】
請求項26〜28のいずれか1項記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項30】
前記細胞が、請求項26〜28のいずれか1項記載の核酸分子又は請求項29記載のベクターを含む、組換え宿主細胞。
【請求項31】
請求項1〜20のいずれか1項記載のポリペプチドを発現する、請求項30記載の宿主細胞。
【請求項32】
原核細胞又は真核細胞である、請求項30又は31記載の宿主細胞。
【請求項33】
請求項1〜20のいずれか1項記載のポリペプチドの製造法であって、以下のステップ:
請求項30〜32のいずれか1項記載の組換え宿主細胞を、核酸分子の発現を可能にする条件下で培養し;及び
製造されたポリペプチドを回収すること、
を含む、前記方法。
【請求項34】
請求項1〜20のいずれか1項記載のポリペプチド変種、請求項21〜23のいずれか1項記載の融合タンパク質、請求項24記載の受容体複合体、請求項25記載のコンジュゲート、請求項26〜28いずれか1項記載の核酸分子、請求項29記載のベクター、又は請求項30〜32記載の細胞、及び医薬として許容される担体又は希釈剤を含有する、医薬組成物。
【請求項35】
請求項12記載のポリペプチド及び医薬として許容される担体又は希釈剤を含む、請求項34記載の医薬組成物。
【請求項36】
医薬として使用するための、請求項1〜20のいずれか1項記載のポリペプチド変種、請求項21〜23のいずれか1項記載の融合タンパク質、請求項24記載の受容体複合体、請求項25記載のコンジュゲート、請求項26〜28のいずれか1項記載の核酸分子、請求項29記載のベクター、又は請求項30〜32記載の細胞。
【請求項37】
移植片対宿主病、癌、好中球減少症、神経学的障害又は状態、肺炎、自己免疫疾患、血液病、造血障害、感染症、炎症性腸疾患、及び糖尿病を治療するための医薬の製造のための、請求項1〜20のいずれか1項記載のポリペプチド変種、請求項21〜23のいずれか1項記載の融合タンパク質、請求項24記載の受容体複合体、請求項25記載のコンジュゲート、請求項26〜28のいずれか1項記載の核酸分子、請求項29記載のベクター、又は請求項30〜32記載の細胞の使用。
【請求項38】
多発性硬化症の治療のための医薬の製造のための、請求項1〜20のいずれか1項記載のポリペプチド変種、請求項21〜23のいずれか1項記載の融合タンパク質、請求項24記載の受容体複合体、請求項25記載のコンジュゲート、請求項26〜28のいずれか1項記載の核酸分子、請求項29記載のベクター、又は請求項30〜32記載の細胞の使用。
【請求項39】
請求項1〜20のいずれか1項記載のCSF3Rポリペプチドに選択的に結合する、抗体、又はそれらの断片もしくは誘導体。
【請求項40】
前記抗体、断片又は誘導体が、配列番号4のアミノ酸残基4個を含むエピトープに選択的に結合する、好ましくは配列番号4のアミノ酸残基74、86、88及び/又は90を含むエピトープに結合する、請求項39記載の抗体、断片又は誘導体。
【請求項41】
モノクローナル抗体又はそれらの断片もしくは誘導体である、請求項39又は40記載の抗体。
【請求項42】
前記プローブが、請求項26〜28のいずれか1項記載の核酸、又はそれらの相補鎖に選択的にハイブリダイズする、核酸プローブ。
【請求項43】
請求項1〜20のいずれか1項記載のCSF3Rポリペプチドをコードする核酸分子の少なくとも特徴的断片を増幅するために使用することができる、核酸プライマー。
【請求項44】
前記プライマーが、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、及び/又は配列番号22からなる、請求項43記載の核酸プライマー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2009−542197(P2009−542197A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517279(P2009−517279)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056846
【国際公開番号】WO2008/003763
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(309025524)メルク セローノ ソシエテ アノニム (49)
【Fターム(参考)】