説明

CT装置

【課題】管電圧と管電流の設定を容易にしたCT装置を提供する。
【解決手段】複数の回転位置で検出された透過像から被検体5の断面像を再構成する再構成部9fを有するCT装置において、X線管1の管電圧と管電流を設定された値に制御するX線制御部8と、X線管1とX線検出器3との距離を変更して設定するシフト機構7と、管電圧,管電流,距離それぞれの基準値の組み合わせを複数組記憶し、複数組の内の一組である管電圧Vj,管電流Ij,距離FDDjが選択され、かつ距離FDDが設定された場合に、管電圧Vを管電圧Vjに設定し、管電流Iを管電流Ijから距離FDDj及び設定された距離FDDに応じて変更して設定する撮影条件設定部9dとを有するCT装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の断面像を撮影するコンピュータ断層撮影装置(以下、CT(Computed Tomography)装置と記載する)に関する。
【背景技術】
【0002】
回転のみを行う所謂RR(Rotate Rotate)方式(第三世代方式)のCT装置は、放射線源から発生する放射線(X線)を被検体に向けて照射し、被検体を放射線の光軸の方向に対し交差する回転軸で放射線に対して相対的に回転させ、一回転中の所定回転位置ごとに被検体から透過してくる放射線を1次元あるいは2次元の複数検出チャンネルを有する放射線検出器で検出し、この検出器出力から被検体の断面像ないし3次元データを得る(断層撮影する)ものである。
【0003】
図4に従来例として、特許文献1に記載されているCT装置の構成を示す(正面図)。X線管101と、ここから発生する角錐状のX線ビーム102を2次元の分解能で検出するX線検出器103が対向して配置され、このX線ビーム102に入るようにテーブル104上に載置された被検体105の透過像(透過データ)を得るようになっている。
【0004】
テーブル104は回転・昇降機構106上に配置され、被検体105の断面像を撮影する時は、テーブル104を回転軸RAに対し回転・昇降機構106により1回転させながら多数の方向について透過像を得る(スキャンと言う)。この多数の透過像を制御処理部107で処理して被検体105の断面像(1枚ないし多数枚)を得る。
【0005】
さらに、回転軸RAおよびX線検出器103はシフト機構108によりX線管101のX線焦点Fに近づけあるいは遠ざける(シフトする)ことができ、撮影距離FCD(Focus to rotation Center Distance)と検出距離FDD(Focus to Detector Distance)を変えて、目的に応じて撮影倍率(=FDD/FCD)を変更できるようになっている。
【0006】
また、X線管101の管電圧と管電流はX線制御部109により被検体105に合わせて自由に設定でき、被検体を十分透過する管電圧と、X線検出器103の最大出力(空気部の出力)が飽和しない管電流が設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−62268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のCT装置で、撮影前の撮影条件設定は次のように行っている。
【0009】
まず、被検体105をテーブル104に載置し、X線を放射させ、X線検出器が出力する透過像をリアルタイムで制御処理部107に表示させ、これを目視しながら、被検体105を十分透過する管電圧と、明るさが飽和しない管電流を設定し、透過像が良く見える状態とする。次に、FCDとFDDを調整し、被検体105の所望する部分が所望する撮影倍率でX線検出器103の視野に納まるようにする。
【0010】
上述した撮影条件設定で、従来のCT装置の第一の問題点は、管電圧設定において、透過像を目視しつつ管電圧と管電流の両方を調整しなければならないことである。
【0011】
また、第二の問題点は、撮影倍率の調整において、FDDの変更に伴って透過像の明るさが変わり、暗すぎたり飽和したりするので、管電流を調整しながら透過像を目視しつつFCDとFDDの調整を行なう必要があり操作が煩わしいことである。
【0012】
本発明の目的は、管電圧と管電流の設定を容易にしたCT装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る請求項1記載のCT装置は、被検体に向けてX線を放射するX線源と、前記被検体を透過したX線を検出して透過像として出力するX線検出手段と、前記X線と交差する回転軸に対し前記被検体と前記X線とを相対的に回転させる回転手段と、複数の前記回転の位置で検出された透過像から前記被検体の断面像を再構成する再構成手段を有するCT装置において、前記X線源の管電圧と管電流を設定された値に制御するX線制御手段と、前記X線源と前記X線検出手段との距離を変更して設定するシフト機構と、前記管電圧,前記管電流,前記距離それぞれの基準値の組み合わせを複数組記憶し、前記複数組の内の一組である管電圧Vj,管電流Ij,距離FDDjが選択され、かつ前記距離FDDが設定された場合に、管電圧Vを前記管電圧Vjに設定し、管電流Iを前記管電流Ijから前記距離FDDj及び前記設定された距離FDDに応じて変更して設定するX線条件設定手段と、を有することを要旨とする。
【0014】
この構成により、管電圧Vの設定において、基準値Vjを選択するだけで自動的に、管電圧Vと管電流Iが設定され、管電流Iの手動設定が不要である。
【0015】
さらに、この構成により、撮影倍率(FCDとFDD)の調整において、FDDの変化に対し、自動的に管電流Iを、IjからFDDj及び設定されたFDDに応じて変更して設定するので、X線検出手段の最大出力を一定に保つことができ、調整が容易である。
【0016】
本発明に係る請求項2記載のCT装置は、被検体に向けてX線を放射するX線源と、前記被検体を透過したX線を検出して透過像として出力するX線検出手段と、前記X線と交差する回転軸に対し前記被検体と前記X線とを相対的に回転させる回転手段と、複数の前記回転の位置で検出された透過像から前記被検体の断面像を再構成する再構成手段を有するCT装置において、前記X線源の管電圧と管電流を設定された値に制御するX線制御手段と、前記X線源と前記X線検出手段との距離を変更して設定するシフト機構と、前記管電圧,前記管電流,前記距離それぞれが初期値である管電圧Vj,管電流Ij,距離FDDjに設定され、かつ前記初期値の設定の後に前記距離FDDjが距離FDDに変更された場合に、管電圧Vを前記管電圧Vjに設定し、管電流Iを前記管電流Ijから前記距離FDDj及び前記変更された距離FDDに応じて変更して設定するX線条件設定手段と、を有することを要旨とする。
【0017】
この構成により、管電圧と管電流とFDDの初期値設定(Vj,Ij,FDDj)をした後、撮影倍率(FCDとFDD)の調整において、FDDの変化に対し、自動的に管電流Iを、IjからFDDj及び設定されたFDDに応じて変更して設定するので、X線検出手段の最大出力を一定に保つことができ、調整が容易である。
【0018】
本発明に係る請求項3記載のCT装置は、請求項1または請求項2に記載のCT装置において、前記X線条件設定手段は、前記管電流Iを、式1、I=Ij・(FDD/FDDj)で求めた値に変更して設定することを要旨とする。
【0019】
この構成により、FDDの変化に対し、自動的に管電流Iを、具体的に式1で変更して設定するので、X線検出手段の最大出力を一定に保つことができる。なお、X線検出手段の出力はI/FDDに比例することから、式1のようにIをFDDに比例させて変化させれば出力は一定になる。
【0020】
本発明に係る請求項4記載のCT装置は、請求項3に記載のCT装置において、前記X線条件設定手段は、前記管電圧における前記管電流の下限値を記憶し、前記管電圧Vjにおける管電流下限値IjLを用いて、前記式1で求めた管電流Iが前記管電流下限値IjLより小さい場合、前記管電圧Vを、式2、V=Vj・(I/IjL)1/γで求めた値に設定し、前記管電流Iを式2で求めた管電圧Vにおける管電流下限値に設定することを要旨とする。
【0021】
本発明に係る請求項5記載のCT装置は、請求項3に記載のCT装置において、前記X線条件設定手段は、前記管電圧における前記管電流の上限値を記憶し、前記管電圧Vjにおける管電流上限値IjUを用いて、前記式1で求めた管電流Iが前記管電流上限値IjUより大きい場合、前記管電圧Vを、式3、V=Vj・(I/IjU)1/γで求めた値に設定し、前記管電流Iを式3で求めた管電圧Vにおける管電流上限値に設定することを要旨とする。
【0022】
請求項4,5記載の構成により、撮影倍率(FCDとFDD)の調整において、自動設定する管電流が下限以下、あるいは上限以上となる場合に、管電圧Vを、自動的に式2、あるいは式3により変更して設定することで、X線検出手段の最大出力を一定に保つことができ、調整が容易である。なお、X線検出手段の出力はI・Vγに比例するので、式2,3のようにVを(1/I)1/γに比例させて変化させれば出力は一定になる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、管電圧と管電流の設定を容易にしたCT装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るCT装置の構成を示した模式図(正面図)。
【図2】第一の実施形態における撮影条件設定(プリセットモード)のフロー図。
【図3】第一の実施形態における撮影条件設定(手動モード)のフロー図。
【図4】従来のCT装置の構成を示した模式図(正面図)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0026】
(本発明の第一の実施の形態の構成)
以下、本発明の第一の実施形態の構成について図1を参照して説明する。図1は本発明の第一の実施形態に係るCT装置の構成を示した模式図(正面図)である。
【0027】
X線管(X線源)1と、X線管1のX線焦点Fより放射されたX線の一部である角錐状のX線ビーム(X線)2を2次元の分解能で検出するX線検出器(X線検出手段)3とが対向して配置され、このX線ビーム2に入るようにテーブル4上に載置された被検体5を透過したX線ビーム2がX線検出器3により検出され、透過像(透過データ)として出力される。
【0028】
テーブル4は回転・昇降機構(回転手段)6上に配置され、回転・昇降機構6によりX線ビーム2の中央のX線光軸Lと垂直に交差する回転軸RAに対して回転されるとともに、回転軸RAと平行なz方向にz移動(昇降)される。
【0029】
さらに、シフト機構7は回転軸RAおよびX線検出器3を位置決めし、撮影距離FCD(Focus to rotation Center Distance)と検出距離FDD(Focus to Detector Distance)(距離)を設定するとともに、回転軸RAおよびX線検出器3をX線管1に近づけあるいは遠ざけて撮影距離FCD、検出距離FDDを変更する。
【0030】
ここで、シフト機構7は目的に応じて撮影倍率(=FDD/FCD)を変更するために用いられ、回転・昇降機構6のz移動(昇降)は被検体5の着目部をX線ビーム2の高さに合わせるのに用いられる。また、回転・昇降機構6の回転は断面像を撮影する場合に被検体5をX線ビーム2に対し回転させて、多数の方向について透過像を得るために用いられる。
【0031】
シフト機構7は、エンコーダ(図示省略)によりFCDとFDDを測定して出力し、回転・昇降機構6は、同様に、エンコーダ(図示省略)により回転角度φと昇降位置zを測定し出力する。
【0032】
X線制御部(X線制御手段)8は、X線管1に対し、設定された管電圧と管電流を印加して、X線ビーム2を放射させるようにX線管1を制御する。
【0033】
構成要素として、他に、各機構部(回転・昇降機構6、シフト機構7)を制御し、また、X線検出器3からの透過データを処理する制御処理部9、処理結果等を表示する表示部9a等がある。
【0034】
制御処理部9は通常のコンピュータで、CPU、メモリ、ディスク(不揮発メモリ)、表示部9a、入力部(キーボードやマウス等)9b、機構制御ボード、インターフェース、等より成っている。
【0035】
制御処理部9は、機構制御ボードにより、各機構部6,7が出力する動作位置の信号(FCD,FDD,φ,z)を受けて各機構部6,7を制御して被検体の位置合わせやスキャン(断層撮影走査)等を行わせる他、透過像の収集指令パルス等をX線検出器3に送る(制御する)。
【0036】
また、制御処理部9は、撮影条件設定時に、X線検出器3からの透過像を取込み、表示部9aにリアルタイム表示し、断層撮影時には、X線検出器3からの透過像を収集し、記憶し、再構成処理して被検体の断面像を作成し、表示部9aに表示する。
【0037】
また、制御処理部9は、X線制御部8に指令を出し、管電圧、管電流を設定すると共に、X線の放射、停止の指示を行なう。管電圧、管電流は被検体に合わせて変えることができる。制御処理部9は、設定可能な管電圧と全ての設定可能な管電圧に対する管電流下限値及び管電流上限値を記憶しており、この範囲を超えて設定しないようにしている。
【0038】
図1に示すように、制御処理部9はソフトウエアを読み込んでCPUが機能する機能ブロックとして、予め基準の管電圧・管電流を較正する較正制御部9c、断層撮影前に管電圧・管電流や幾何条件を設定する撮影条件設定部(X線条件設定手段)9d、断層撮影のスキャンをするためのスキャン制御部(スキャン制御手段)9eとスキャンで得られた透過データから断面像を作成する再構成部(再構成手段)9f、等を備えている。
【0039】
(第一の実施の形態の作用)
図2及び図3を参照して作用を説明する。
【0040】
作用は、
1.管電圧・管電流基準値の較正
2.撮影条件設定(プリセットモードまたは手動モード)
3.断層撮影
の順で行う。ここで、1の較正は予め一度行っておけばよいが、2の設定は断層撮影を行う毎に行うものである。
【0041】
<管電圧・管電流基準値の較正>
この較正は、較正制御部9cが、管電圧,管電流,検出距離それぞれのプリセット値(基準値)の組み合わせVj,Ij,FDDjをJ組(j=1,2,……,J)記憶する較正である。ここでVjはjが大きくなるほど大きくなるように任意に設定する。Jは3以上の任意の値である。
【0042】
j番目プリセット値の較正は次のように行う。
まず、操作者は、被検体の無い状態で管電圧をVjに、検出距離を任意の値FDDjに設定し、X線を放射させ、透過像を表示させる。透過像はデジタルのデータであり、明るい(X線量が多い)ほど大きな値で、0から飽和値(AD変換の最大値)までの値を持つ。操作者は、透過像(空気像)の値が、余裕をもって飽和せず、かつ、なるべく大きな値となるように、例えば透過像(空気像)の最大値部分(通常は中央部)の平均値が飽和値の90%となるように、管電流を調整し、この管電流をIjとして、Vj、Ij、FDDjを制御処理部9に記憶させる。ここで、FDDjは、管電流Ijが、Vjにおける設定可能な管電流下限値IjLと管電流上限値IjUの間になるように設定する必要がある。
以下、j=1,2,……,Jで同様に較正を行なう。<>終了
【0043】
次に、操作者は、撮影条件設定を行うとき、プリセットモードまたは手動モードのどちらか1つを選んで行う。
【0044】
<撮影条件設定(プリセットモード)>
図2は第一の実施形態における撮影条件設定(プリセットモード)のフロー図である。この設定は、撮影条件設定部9dが行う。
【0045】
ステップS1で、操作者は被検体5をテーブル4に載置し、任意のj番目のプリセット値Vj,Ij,FDDjを選択する。
【0046】
ステップS2で、操作者は適当な検出距離FDDを設定し、撮影条件設定開始の指令を入力する。
【0047】
ステップS3で、撮影条件設定部9dは、管電圧VをVjに設定し、管電流Iをプリセット値と設定したFDDに応じて、式、
I=Ij・(FDD/FDDj) ………(1)
でIjから変更して設定する。
【0048】
ステップS4で、撮影条件設定部9dは、管電流Iが管電圧Vjにおける管電流下限値IjLより小さい場合、管電圧Vを、式、
V=VJ・(I/IjL)1/γ ………(2)
を計算して修正設定し、管電流Iを、求めたVにおける管電流下限値に設定する。ここで、γは2.0乃至2.4の値、例えば2.2を用いる。なお、γの値はX線フィルタの条件(厚みや材質)で最適値が異なる。
【0049】
ステップS5で、撮影条件設定部9dは、管電流Iが管電圧Vjにおける管電流上限値IjUより大きい場合、管電圧Vを、式、
V=Vj・(I/IjU)1/γ ………(3)
を計算して修正設定し、管電流Iを、求めたVにおける管電流上限値に設定する。
【0050】
ステップS6で、撮影条件設定部9dは、設定したV,IでX線ビーム2を放射させる。
【0051】
ステップS7で、撮影条件設定部9dは、X線検出器3が出力した透過像を取込んで、表示部9aにリアルタイム表示させる。
【0052】
ステップS8で、操作者は表示された透過像を目視しこれで良いと判定した場合、設定終了を入力する。撮影条件設定部9dは、操作者からの設定終了の指令があるか?を判定し、無い場合、ステップS9に進む。
【0053】
ステップS9で、操作者は必要な場合、プリセット番号j,FCD,FDD(,φ,z)を変更する。ここで、適当に設定したj,FCD,FDD(,φ,z)を透過像を目視しながら変更できる。透過像の透過率を上げたい場合jを増やし、FCD,FDDを変えて撮影倍率を変更し、φを変えて透視方向を変え、zを変えて被検体5の着目部をX線ビーム2の高さに合わせる。
【0054】
さらに、ステップS9で修正したj,FCD,FDD(,φ,z)をもってステップS3乃至ステップS7を繰り返し、撮影条件V,I,FCD,FDD(,φ,z)を変更して設定し、この撮影条件での透過像が表示される。
【0055】
ステップS8で、操作者からの設定終了の指令があった場合、撮影条件設定部9dは、そのときの撮影条件V,I,FCD,FDD(,z)を最終撮影条件として記憶し、撮影条件設定(プリセットモード)を終了する。
【0056】
以上のフローで、終了指令を入力しない限り、(ステップS9で撮影条件の変更が無い場合でも)ステップS3乃至ステップS9が作るループは高速に繰り返される。従って撮影条件を変更したときそれに追従してリアルタイムで表示される透過像が変化するのでこれを目視しながら撮影条件の設定ができる。<>終了
【0057】
<撮影条件設定(手動モード)>
手動モードは、プリセットモードで管電圧のプリセット値Vjに適当な値が無く、別の管電圧に設定したい場合に用いる。
【0058】
図3は第一の実施形態における撮影条件設定(手動モード)のフロー図である。この設定は、撮影条件設定部9dが行う。
【0059】
操作者は被検体5をテーブル4に載置すると、ステップT1で、操作者は適当な任意の初期値Vj,Ij,FDDjを設定する。
【0060】
ステップT2で、撮影条件設定部9dは、設定したVj,IjでX線ビーム2を放射させる。
【0061】
ステップT3で、撮影条件設定部9dは、X線検出器3が出力した透過像を取込んで、表示部9aにリアルタイム表示させる。
【0062】
ステップT4で、操作者は表示された透過像を目視しこれで良いと判定した場合、初期設定終了を入力する。撮影条件設定部9dは、操作者からの初期設定終了の指令があるか?を判定し、無い場合、ステップT1に進み、ステップT1乃至ステップT3を繰り返す。
【0063】
ステップT4で、操作者からの初期設定終了の指令があった場合、撮影条件設定部9dは、そのときの撮影条件Vj,Ij,FDDjを初期撮影条件としてステップT5に進む。
【0064】
ステップT5で、操作者は、FCD,FDD(,φ,z)を変更する。ここで、適当に設定したFCD,FDD(,φ,z)を透過像を目視しながら変更できる。FCD,FDDを変えて撮影倍率を変更し、φを変えて透視方向を変え、zを変えて被検体5の着目部をX線ビーム2の高さに合わせる。
【0065】
ステップT6で、撮影条件設定部9dは、管電圧VをVjに設定し、管電流Iを、初期値と設定したFDDに応じて式(1)で、Ijから変更して設定する。
【0066】
ステップT7で、撮影条件設定部9dは、管電流Iが管電圧Vjにおける管電流下限値IjLより小さい場合、管電圧Vを、式(2)を計算して修正設定し、管電流Iを、式(2)で求めたVにおける管電流下限値に設定する。
【0067】
ステップT8で、撮影条件設定部9dは、管電流Iが管電圧Vjにおける管電流上限値IjUより大きい場合、管電圧Vを、式(3)を計算して修正設定し、管電流Iを、式(3)で求めたVにおける管電流上限値に設定する。
【0068】
ステップT9で、撮影条件設定部9dは、設定したV,IでX線ビーム2を放射させる。
【0069】
ステップT10で、撮影条件設定部9dは、X線検出器3が出力した透過像を取込んで、表示部9aにリアルタイム表示させる。
【0070】
ステップT11で、操作者は表示された透過像を目視しこれで良いと判定した場合、設定終了を入力する。撮影条件設定部9dは、操作者からの設定終了の指令があるか?を判定し、無い場合、ステップT5に進み、ステップT5乃至ステップT10を繰り返す。
【0071】
ステップT11で、操作者からの設定終了の指令があった場合、撮影条件設定部9dは、そのときの撮影条件V,I,FCD,FDD(,z)を最終撮影条件として記憶し、撮影条件設定(手動モード)を終了する。
【0072】
以上のフローで、初期設定終了指令を入力しない限り、(ステップT1で初期値の変更が無い場合でも)ステップT1乃至ステップT4が作るループは高速に繰り返される。従って初期値を変更したときそれに追従してリアルタイムで表示される透過像が変化するのでこれを目視しながら初期値の設定ができる。
【0073】
また、撮影条件設定終了指令を入力しない限り、(ステップT5でFCD,FDDの変更が無い場合でも)ステップT5乃至ステップT11が作るループは高速に繰り返される。従ってFCD,FDDを変更したときそれに追従してリアルタイムで表示される透過像が変化するのでこれを目視しながらFCD,FDDの設定ができる。<>終了
【0074】
<断層撮影>
撮影条件設定が終わり、操作者から断層撮影開始の入力があると、スキャン制御部9eは設定した管電圧V、管電流IでX線ビーム2を放射させると共に、回転・昇降機構6によりテーブル4を回転させながら、1回転に亘り一定回転角度毎にX線検出器3から透過像を取込み記憶する。
【0075】
引き続き、再構成部9fは取込んで記憶した1回転に亘る透過像から、公知の再構成処理を行って、被検体5の断面像を1枚乃至複数枚再構成し、記憶及び表示を行う。<>終了
【0076】
(第一の実施の形態の効果)
第一の実施形態(プリセットモード)によれば、管電圧Vの設定において、プリセット値Vjを選択するだけで自動的に、予め設定したX線検出器3の最大出力の値(透過像の空気部の値)が、余裕をもって飽和せず、かつ、なるべく大きな値、例えば飽和値の約90%、となるような管電流Ijが設定される。つまり、従来のように管電圧と管電流の2次元的な調整は必要なく、管電圧のみの1次元的調整で済み、管電圧設定が容易である。すなわち、前述した第一の問題点が解決する。
【0077】
また、第一の実施形態(プリセットモード及び手動モード)によれば、撮影倍率(FCDとFDD)の調整において、FDDの変化に対し、自動的に管電流Iを、式(1)によりFDDの2乗に比例して変化させるので、X線検出器3の最大出力(空気部の出力)を一定に保てる。これは、X線検出器3の出力はI/FDDに比例することから、IをFDDに比例させて変化させれば出力は一定になることから導ける。つまり、撮影倍率(FCDとFDD)の調整をするとき、X線検出器3の最大出力(空気部の出力)を一定に保つように管電流Iを自動設定するので調整が容易である。すなわち、前述した第二の問題点が解決する。
【0078】
さらに、第一の実施形態(プリセットモード及び手動モード)によれば、撮影倍率(FCDとFDD)の調整において、自動設定する管電流が下限以下、あるいは上限以上となる場合に、管電圧Vを、式(2)あるいは式(3)により調整することでX線検出器3の最大出力(空気部の出力)を一定に保てる。これは、X線検出器3の出力はI・Vγに比例するので、Vを(1/I)1/γに比例させて変化させれば出力は一定になることから導ける。従って、撮影倍率(FCDとFDD)の調整において、管電流Iが上限あるいは下限を超える場合でも、X線検出器3の最大出力(空気部の出力)を一定に保つように管電圧V、管電圧Iを自動設定するので調整が容易である。
【0079】
(第一の実施の形態の変形)
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。
【0080】
例えば、第一の実施形態では、X線ビーム2に対し被検体5を回転させているが、逆に、被検体5を固定し、X線ビーム2を回転軸RAに対し回転させてもよい。この場合は、回転軸RAに対して回転するフレームにX線管1とX線検出器3を固定する。そして、この回転するフレーム上でX線管1とX線検出器3を近づけまた遠ざけるように移動させてFCDとFDDを変化させるようにする。このような場合でも、第一の実施形態の作用と効果はそのまま適用できる。
【0081】
また、第一の実施形態では、1回転のスキャンを行っているが、180°+ファン角以上の回転を行うハーフスキャンや被検体を回転軸に沿って昇降させながら回転を行うヘリカルスキャンを行ってもよい。さらにX線光軸Lと回転軸RAとに直交する方向のテーブル移動(トランスレート)機構を設け、所謂TR(Translate Rotate)方式(第二世代方式)のスキャンをおこなってもよい。
【0082】
また、第一の実施形態では、回転軸RAはX線光軸Lと垂直に交差しているが、回転軸を垂直から傾斜させた所謂傾斜型CT装置とすることもできる。
【符号の説明】
【0083】
1…X線管、2…X線ビーム、3…X線検出器、4…テーブル、5…被検体、6…回転・昇降機構、7…シフト機構、8…X線制御部、9…制御処理部、9a…表示部、9b…入力部、9c…較正制御部、9d…撮影条件設定部、9e…スキャン制御部、9f…再構成部、
101…X線管、102…X線ビーム、103…X線検出器、104…テーブル、105…被検体、106…回転・昇降機構、107…制御処理部、108…シフト機構、109…X線制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に向けてX線を放射するX線源と、前記被検体を透過したX線を検出して透過像として出力するX線検出手段と、前記X線と交差する回転軸に対し前記被検体と前記X線とを相対的に回転させる回転手段と、複数の前記回転の位置で検出された透過像から前記被検体の断面像を再構成する再構成手段を有するCT装置において、
前記X線源の管電圧と管電流を設定された値に制御するX線制御手段と、
前記X線源と前記X線検出手段との距離を変更して設定するシフト機構と、
前記管電圧,前記管電流,前記距離それぞれの基準値の組み合わせを複数組記憶し、前記複数組の内の一組である管電圧Vj,管電流Ij,距離FDDjが選択され、かつ前記距離FDDが設定された場合に、管電圧Vを前記管電圧Vjに設定し、管電流Iを前記管電流Ijから前記距離FDDj及び前記設定された距離FDDに応じて変更して設定するX線条件設定手段と、
を有することを特徴とするCT装置。
【請求項2】
被検体に向けてX線を放射するX線源と、前記被検体を透過したX線を検出して透過像として出力するX線検出手段と、前記X線と交差する回転軸に対し前記被検体と前記X線とを相対的に回転させる回転手段と、複数の前記回転の位置で検出された透過像から前記被検体の断面像を再構成する再構成手段を有するCT装置において、
前記X線源の管電圧と管電流を設定された値に制御するX線制御手段と、
前記X線源と前記X線検出手段との距離を変更して設定するシフト機構と、
前記管電圧,前記管電流,前記距離それぞれが初期値である管電圧Vj,管電流Ij,距離FDDjに設定され、かつ前記初期値の設定の後に前記距離FDDjが距離FDDに変更された場合に、管電圧Vを前記管電圧Vjに設定し、管電流Iを前記管電流Ijから前記距離FDDj及び前記変更された距離FDDに応じて変更して設定するX線条件設定手段と、
を有することを特徴とするCT装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のCT装置において、
前記X線条件設定手段は、前記管電流Iを、式1、
I=Ij・(FDD/FDDj)
で求めた値に変更して設定することを特徴とするCT装置。
【請求項4】
請求項3に記載のCT装置において、
前記X線条件設定手段は、前記管電圧における前記管電流の下限値を記憶し、前記管電圧Vjにおける管電流下限値IjLを用いて、前記式1で求めた管電流Iが前記管電流下限値IjLより小さい場合、前記管電圧Vを、式2、
V=Vj・(I/IjL)1/γ
で求めた値に設定し、前記管電流Iを式2で求めた管電圧Vにおける管電流下限値に設定することを特徴とするCT装置。
【請求項5】
請求項3に記載のCT装置において、
前記X線条件設定手段は、前記管電圧における前記管電流の上限値を記憶し、前記管電圧Vjにおける管電流上限値IjUを用いて、前記式1で求めた管電流Iが前記管電流上限値IjUより大きい場合、前記管電圧Vを、式3、
V=Vj・(I/IjU)1/γ
で求めた値に設定し、前記管電流Iを式3で求めた管電圧Vにおける管電流上限値に設定することを特徴とするCT装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−80971(P2011−80971A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248233(P2009−248233)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】