説明

CVTバリエータを備えた動力分割式のオートマチックトランスミッション

オートマチックトランスミッションの構造であって、入力軸と結合された遊星機構伝動装置が設けられており、遊星機構伝動装置が、2本のバリエータ軸を備えたCVTバリエータと少なくとも1つの歯車対とを介して、出力軸と結合されており、クラッチを備えた歯車対および/また軸結合を介して、伝動装置の軸の間の、様々な走行段に対応する相対回動不能な結合が形成されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートマチックトランスミッションであって、入力軸と結合された遊星機構伝動装置が設けられており、遊星機構伝動装置が、2本バリエータ軸を備えたCVTバリエータと少なくとも1つの歯車対とを介して、出力軸と結合されており、少なくとも3つのクラッチが設けられており、クラッチの作動によって、走行段R,N,D−LowおよびD−Highが切り換えられるようになっている、オートマチックトランスミッションに関する。
【0002】
このような構成を有する車両伝動装置は、国際公開第2004/038257号パンフレットにおいて公知である。ここでは変速機を介して内燃機関と結合された、伝動装置の入力軸が、遊星機構伝動装置の遊星キャリアと結合されており、遊星キャリアの中空車は、バリエータのバリエータ軸と結合されており、バリエータ軸上に、出力軸と結合された出力軸歯車が支承されており、出力軸歯車は、クラッチを介してバリエータ軸と相対回動不能に結合可能である。遊星機構伝動装置の太陽車は、中間軸と相対回動不能に結合された第1の中間軸歯車と噛み合い、第1の中間軸歯車上に、第2の中間軸歯車が支承されており、第2の中間軸歯車は、出力軸歯車と噛み合い、かつクラッチを介して、中間軸と相対回動不能に結合可能である。第1の中間軸歯車は、さらに別のバリエータ軸と相対回動不能に結合された歯車と噛み合い、別のバリエータ軸上に、別の歯車が、回動可能に支承されており、別の歯車は、後進クラッチを介して、別のバリエータ軸と相対回動不能に結合可能である。
【0003】
本発明の課題は、冒頭で述べた構造を有するオートマチックトランスミッションを改良して、良好な作用効率で広範囲の前進段を実現し、変速機において生じるモーメント伝達がバリエータを通って伝達されないような、変速機の構造を実現するものを提供することである。
【0004】
独立請求項の構成は、この課題を解決するオートマチックトランスミッションを成す。
【0005】
従属請求項の構成は、引用する車両伝動装置の有利な構成を形成する。
【0006】
第1の解決手段によれば、オートマチックトランスミッションであって、入力軸と結合された遊星機構伝動装置が設けられており、該遊星機構伝動装置が、2本バリエータ軸を備えたCVTバリエータと少なくとも1つの歯車対とを介して、出力軸と結合されており、少なくとも3つのクラッチが設けられており、該クラッチの作動によって、走行段R,N,D−LowおよびD−Highが切り換えられるようになっており、遊星キャリアが、入力軸と結合されており、遊星機構伝動装置の太陽車が、太陽車軸と結合されており、該太陽車軸が、太陽車軸歯車を支持していて、かつ一方のバリエータ軸と相対回動不能に結合されており、中空車が、中空車軸と相対回動不能に結合されており、該中空車軸が、中空車軸歯車と相対回動不能に結合されており、該中空軸歯車が、出力軸上に支承された第1の出力軸歯車と噛み合い、該第1の出力軸歯車が、他方のバリエータ軸と相対回動不能に結合された第1のバリエータ軸歯車と噛み合い、出力軸によって支持された第2の出力軸歯車が、太陽軸歯車と噛み合い、出力軸によって支持された第3の出力軸歯車が、他方のバリエータ軸によって支持された第2のバリエータ軸歯車と噛み合い、第1の出力軸歯車が、第1のクラッチによって、出力軸と相対回動不能に結合されるようになっており、太陽車軸が、第2のクラッチによって、出力軸と相対回動不能に結合されるようになっており、第3の出力軸歯車が、後進クラッチによって、他方のバリエータ軸と相対回動不能に結合されるようになっている。
【0007】
有利には、第2のバリエータ軸歯車が、他方のバリエータ軸と相対回動不能に結合されており、太陽車軸歯車が、太陽車軸と相対回動不能に結合されており、第1、第2および第3の出力軸歯車が、出力軸上に回動可能に支承されていて、かつそれぞれ1つのクラッチを介して、出力軸と相対回動不能に結合されるようになっている。
【0008】
太陽車軸は、有利には、一方のバリエータ軸と固く結合されている。
【0009】
本発明の第2の解決手段によれば、オートマチックトランスミッションであって、入力軸と結合された遊星機構伝動装置が設けられており、該遊星機構伝動装置が、2本のバリエータ軸を備えたCVTバリエータと少なくとも1つの歯車対とを介して、出力軸と結合されており、少なくとも3つのクラッチが設けられており、該クラッチの作動によって、走行段R,N,D−LowおよびD−Highが切り換えられるようになっており、遊星機構伝動装置の遊星キャリアが、入力軸と結合されており、遊星機構伝動装置の中空車が、中空車軸と相対回動不能に結合されており、該中空車軸が、第1の中空車軸歯車と第2の中空車軸歯車とを支持しており、中間軸が設けられており、該中間軸が、第1の中間軸歯車と第2の中空車軸歯車とを支持しており、該中間軸上に第3の中間軸歯車が支承されており、該中間軸が、第4の中間軸歯車と相対回動不能に結合されており、第1の中空車軸歯車が、第1の中間軸歯車と噛み合い、第2の中空車軸歯車が、中間歯車を介して、第2の中間軸歯車と噛み合い、第3の中間軸歯車が、遊星機構伝動装置の太陽車軸と相対回動不能に結合された太陽車軸歯車と接続歯車とに噛み合い、一方のバリエータ軸上に、第1のバリエータ軸歯車および第2のバリエータ軸歯車が支承されており、他方のバリエータ軸上に、第3のバリエータ軸歯車および第4のバリエータ軸歯車が支承されており、第4の中間軸歯車が、第1のバリエータ軸歯車と第3のバリエータ軸歯車とに噛み合い、出力軸と相対回動不能に結合された出力軸歯車が、第2のバリエータ軸歯車と第4のバリエータ軸歯車とに噛み合い、接続歯車が、第1のクラッチを介して、一方のバリエータ軸と相対回動不能に結合されるようになっており、太陽車軸が、第2のクラッチを介して、他方のバリエータ軸と相対回動不能に結合されるようになっており、バリエータ軸上に回動可能に支承された第1、第2、第3および第4のバリエータ軸歯車が、それぞれ第3、第4、第5および第6のクラッチを介して、これらのクラッチに割り当てられたバリエータ軸と相対回動不能に結合されるようになっており、第7および第8のクラッチによって、第1の中空車軸歯車もしくは第2の中空車軸歯車と第1の中間軸歯車もしくは第2の中間軸歯車との間の相対回動不能な結合が形成されるようになっている。
【0010】
このような伝動装置では、第1の中間軸歯車および第2の中間軸歯車が、中間軸上に回動可能に支承されていて、かつ第7のクラッチおよび第8のクラッチによって、中間軸と相対回動不能に結合されるようになっており、第1の中空車軸歯車および第2の中空車軸歯車が、中空車軸と相対回動不能に結合されている。
【0011】
第3のクラッチは、有利には、第1のクラッチおよび第5のクラッチの閉鎖と同時に、開放されるようになっている。
【0012】
第4のクラッチは、有利には、第2のクラッチおよび第6のクラッチの閉鎖と同時に、開放されるようになっている。
【0013】
太陽車軸は、中空車軸に対して同軸的に配置されていて、かつ該中空車軸を貫通して延びている。
【0014】
本発明の第3の解決手段によれば、オートマチックトランスミッションであって、入力軸と結合された遊星機構伝動装置が設けられており、該遊星機構伝動装置が、2本のバリエータ軸を備えたCVTバリエータと少なくとも1つの歯車対とを介して、出力軸と結合されており、少なくとも3つのクラッチが設けられており、該クラッチの作動によって、走行段R,N,D−LowおよびD−Highが切り換えられるようになっており、遊星機構伝動装置が、プラス伝動装置として形成されており、該遊星機構伝動装置の中空車が、入力軸と相対回動不能に結合されており、遊星機構伝動装置の両遊星キャリアが、共通の遊星キャリア軸と相対回動不能に結合されており、該遊星キャリア軸が、遊星キャリア軸歯車と相対回動不能に結合されており、遊星機構伝動装置の太陽車が、太陽車軸と相対回動不能に結合されており、該太陽車軸が、太陽車軸歯車と相対回動不能に結合されており、一方のバリエータ軸が、第1のバリエータ軸歯車と相対回動不能に結合されており、該第1のバリエータ軸歯車が、中間歯車を介して、遊星キャリア軸歯車と噛み合い、他方のバリエータ軸が、第2のバリエータ軸歯車と相対回動不能に結合されており、かつ他方のバリエータ軸上に支承された第3のバリエータ軸歯車を支持しており、中間軸が設けられており、該中間軸が、第1の中間軸歯車と相対回動不能に結合されており、該第1の中間軸歯車が、太陽軸歯車と第2のバリエータ軸歯車とに噛み合い、中間軸が、該中間軸上に支承された第2の中間軸歯車と第3の中間軸歯車とを支持しており、出力軸上に、第1の出力軸歯車が回動可能に支承されており、該第1の出力軸歯車が、第3のバリエータ軸歯車と第2の中間軸歯車とに噛み合い、出力軸が、第2の出力軸歯車を支持しており、該第2の出力軸歯車が、第3の中間軸歯車と噛み合い、軸クラッチが設けられており、該軸クラッチによって、一方のバリエータ軸が、出力軸と相対回動不能に結合されるようになっており、後進クラッチが設けられており、該後進クラッチによって、第3のバリエータ軸歯車が、他方のバリエータ軸と相対回動不能に結合されるようになっており、第1のクラッチおよび第3のクラッチが設けられており、該第1のクラッチおよび第3のクラッチによって、第2の中間軸歯車が、中間軸と相対回動不能に結合されるようになっているか、もしくは第1の出力軸歯車が、出力軸と相対回動不能に結合されるようになっており、第4のクラッチが設けられており、該第4のクラッチによって、出力軸が、第2の出力軸歯車と第3の中間軸歯車とを介して、中間軸と相対回動不能に結合されるようになっている。
【0015】
このような伝動装置では、太陽車軸は、有利には遊星キャリア軸に対して同軸的に配置されていて、かつ該遊星キャリア軸を貫通して延びている。
【0016】
以下に、図面に基づいて本発明を詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1a】車両伝動装置のブロック図である。
【図1b】クラッチ作動を表す図である。
【図1c】様々な切換段におけるクラッチの作動態で伝動装置を示したブロック回路図である。
【図1d】様々な切換段におけるクラッチの作動態で伝動装置を示したブロック回路図である。
【図1e】様々な切換段におけるクラッチの作動態で伝動装置を示したブロック回路図である。
【図2a】車両伝動装置のブロック図である。
【図2b】クラッチ作動を表す図である。
【図2c】様々な切換段におけるクラッチの作動態で伝動装置を示したブロック回路図である。
【図2d】様々な切換段におけるクラッチの作動態で伝動装置を示したブロック回路図である。
【図2e】様々な切換段におけるクラッチの作動態で伝動装置を示したブロック回路図である。
【図3a】車両伝動装置のブロック図である。
【図3b】クラッチ作動を表す図である。
【図3c】様々な切換段におけるクラッチの作動態で伝動装置を示したブロック回路図である。
【図3d】様々な切換段におけるクラッチの作動態で伝動装置を示したブロック回路図である。
【図3e】様々な切換段におけるクラッチの作動態で伝動装置を示したブロック回路図である。
【図3f】様々な切換段におけるクラッチの作動態で伝動装置を示したブロック回路図である。
【0018】
以下に、図示した3つの形態に基づいて、本発明を説明する。軸に図示した矢印は、トルク伝達方向を表している。CVTバリエータ(連続的に可変の伝達比を有する伝動装置段)は、公知の円錐円盤巻掛伝動装置として形成されており、ここでは巻掛手段が2つの円錐円盤対に巻き掛けられており、伝達比は、円錐円盤対の間の間隔を互いに逆方向に変化させることによって変化される。バリエータは、2つの軸の間で連続的に可変の伝達比を有する別のあらゆる伝動装置によって代用することができる。
【0019】
図1aに示したように、動力分割式のオートマチックトランスミッション(パワースプリット式の伝動装置)は、入力軸10と結合された遊星機構伝動装置12を備えており、遊星機構伝動装置12は、異なる車対を介して、CVTバリエータ14と出力軸16とに結合されている。遊星機構伝動装置12の遊星キャリア18は、入力軸10と相対回動不能(つまり一緒に回転するように)に結合されている。太陽車20は、太陽車軸22を備えており、太陽車軸22は、太陽軸歯車24とCVTバリエータ14とに相対回動不能に結合されている。
【0020】
遊星機構伝動装置12の中空車26は、中空車軸28と相対回動不能に結合されており、中空車軸28は、中空車軸歯車30と相対回動不能に結合されている。
【0021】
出力軸16上に、第1の出力軸歯車32、第2の出力軸歯車34および第3の出力軸歯車36が回動可能に支承されている。
【0022】
別のバリエータ軸38と、第1のバリエータ軸歯車40および第2のバリエータ軸歯車42が、相対回動不能に結合されている。
【0023】
出力軸16と第1の出力軸歯車32とを相対回動不能に結合するために、クラッチK1が設けられている。出力軸16と第2の出力軸歯車34とを相対回動不能に結合するために、第2のクラッチK2が設けられている。出力軸16と第3の出力軸歯車36とを相対回動不能に結合するために、後進クラッチKRが設けられており、後進クラッチKRは、後進走行段に入れるために用いられる。
【0024】
図1bに示した表に、走行段R(後進)、N(ゼロ)、D−Low(高い変速比を有する前進走行)およびD−High(低い変速比を有する前進走行)を示した。さらにブロック図でその機能を示した図1c〜図1eには、それぞれトルク伝達経路を示した。クラッチは、公知のようにセレクトレバーによって操作される。CVTバリエータの伝達比は、電子制御装置によって、車両の運転パラメータ、たとえば走行ペダル位置、車両の速度、駆動モータの回転数などに応じて制御される。
【0025】
図2aには、本発明によるオートマチックトランスミッションの別の形態を示した。入力軸10は、ここでも遊星機構伝動装置12の遊星キャリア18と相対回動不能に結合されている。太陽車20は、軸22を備えており、軸22は、中空車26の軸28を貫通して延びていて、かつ太陽車軸歯車24を支持しており、太陽車軸歯車24は、軸22と相対回動不能に結合されている。
【0026】
中空軸28と、第1の中空車軸歯車48および第2の中空車軸歯車50が相対回動不能に結合されており、第1の中空車軸歯車48は、第1の中間軸歯車52と噛み合い、第2の中空車軸歯車50は、変向歯車53を介して、第2の中間軸歯車54と噛み合う。中間軸歯車52,54は、中間軸上に支承されており、中間軸は、第3の、中間軸上に支承された中間軸歯車56(第3の中間軸歯車56は太陽軸歯車24と噛み合う)を支持し、相対回動不能に第4の中間軸歯車58とを支持する。
【0027】
第3の中間軸歯車56は、接続歯車60と噛み合い、接続歯車60は、接続歯車軸62と相対回動不能に結合されている。
【0028】
中空の第1のスライド軸64上に、第1のバリエータ軸歯車40および第2のバリエータ軸歯車42が回動可能に支承されており、第1のバリエータ軸歯車40は、第4の中間軸歯車58と噛み合う。第1のスライド軸64に、バリエータ軸25が収容されており、バリエータ軸25は、たとえば歯列を介して第1のスライド軸64と相対回動不能に結合されている。
【0029】
出力軸16は、出力軸歯車66と相対回動不能に結合されており、出力軸歯車66は、第2のバリエータ軸42と噛み合う。
【0030】
別のバリエータ軸38は、第2のスライド軸68に収容されていて、かつたとえば歯列を介して第2のスライド軸68と相対回動不能に結合されている。第2のスライド軸68上に、第3のバリエータ軸歯車70および第4のバリエータ軸歯車72が回動可能に支承されている。第3のバリエータ軸歯車70は、第4の中間軸歯車と噛み合う。第4のバリエータ軸歯車72は、出力軸歯車66と噛み合う。
【0031】
図示した伝動装置を作動させるために、全体で8つのクラッチが設けられている。
【0032】
第1のクラッチK1は、図示したように第1のスライド軸64が左向きにスライドする際に、接続歯車軸62の外側に形成された歯列と、スライド軸の内側に形成された歯列との係合を介して、接続歯車軸62を、バリエータ軸25と相対回動不能に結合する。
【0033】
第2のクラッチK2は、同様に、第2のスライド軸68を太陽車軸22と相対回動不能に結合する。
【0034】
第3〜第6のクラッチは、バリエータ軸歯車を、それぞれスライド軸もしくはバリエータ軸と相対回動不能に結合する。図面から看取されるように、クラッチK1およびクラッチK5(第2のバリエータ軸42に対応して配置された)は、同時に閉じられ、これと同時に、クラッチK3(第2のバリエータ軸42に対応して配置された)は、開かれる。
【0035】
同様に、クラッチK2およびクラッチK6(第4のバリエータ軸歯車72に対応して配置された)は、同時に閉じられ、これと同時に、第4のクラッチK4(第3のバリエータ軸歯車70に対応して配置された)は、開かれる。
【0036】
第1の中間軸歯車52は、第7のクラッチK7により、中間軸55と相対回動不能に結合可能である。第8のクラッチK8は、中間軸55と第2の中間軸歯車54とを相対回動不能に結合するために設けられている。
【0037】
図2bには、クラッチの切換を示した。伝動装置によって、後進走行段、ニュートラル走行段、D−Low走行段およびD−High走行段が切換可能である。
【0038】
それぞれの回転モーメント流れは、異なる範囲を表す図2c〜図2eに略示した。
【0039】
図3aには、本発明によるオートマチックトランスミッションの別の形態を示した。
【0040】
遊星機構伝動装置12は、本形態では、2つの遊星キャリア18,18’を備えたプラス伝動装置(Plusgetriebe)として形成されており、つまり太陽車20と中空車26とが同方向に回動する。入力軸10は、中空車26と相対回動不能に結合されている。遊星キャリア18,18’は、遊星キャリア軸74と相対回動不能に結合されており、遊星キャリア軸74は、遊星キャリア軸歯車76を相対回動不能に支持する。遊星キャリア軸74を貫通して太陽車軸22が延びており、太陽車軸22と、太陽車軸歯車24が相対回動不能に結合されている。CVTバリエータ14のバリエータ軸25は、第1のバリエータ軸歯車40と相対回動不能に結合されており、第1のバリエータ軸歯車40は、中間歯車78を介して遊星キャリア歯車76と噛み合う。バリエータ軸25は、さらに軸クラッチKWを介して、出力軸16と相対回動不能に結合されており、出力軸16上に、第1の出力軸歯車32および第2の出力軸歯車34が支承されている。
【0041】
中間軸55は、第1の中間軸歯車52と第3の中間軸歯車56(第3の中間軸歯車56は第2の出力軸歯車34と噛み合う)とに相対回動不能に結合されていて、かつ第2の中間軸歯車54を回動可能に支持する。
【0042】
別のバリエータ軸38は、第2のバリエータ軸歯車42と相対回動不能に結合されていて、かつ第3のバリエータ軸歯車70を回動可能に支持する。第2のバリエータ軸歯車42は、第1の中間軸歯車52と噛み合う。第3のバリエータ軸歯車70は、第2の中間軸歯車54と同様に、第1の出力軸歯車32と噛み合う。
【0043】
伝動装置を作動させるために、軸クラッチKWの他に、第1、第3および第4のクラッチK1,K3,K4が設けられており、これらのクラッチによって、第2の中間軸歯車54が、中間軸55と相対回動不能に結合可能であるか、もしくは第2の中間軸歯車32が、出力軸16と相対回動不能に結合可能であるか、もしくは第2の出力軸歯車34が、出力軸16と相対回動不能に結合可能である。さらに後進クラッチKRが設けられており、後進クラッチKRによって、第3のバリエータ軸歯車70が、別のバリエータ軸38と相対回動不能に結合可能である。
【0044】
5つの走行段、つまりR,N,D−Low,D−High1およびD−High2を切り換えるためのクラッチの切換を図3bに表で示した。トルク流れ経路は、図3c〜図3fに略示した。
【0045】
説明した伝動装置構造は、多様に変化させることができる。たとえば歯車および歯車に割り当てられたクラッチ(クラッチは歯車を割り当てられた軸と相対回動不能に結合する)は、別の軸に配置してもよく、1軸上の歯車の回動可能な支承と、別の1軸上の別の歯車の相対回動不能な結合とを、交換してもよい(たとえば図3から看取されるように、クラッチK4を第3の中間軸歯車56に配置し、第2の出力軸歯車34を出力軸16と相対回動不能に結合してもよい。歯車と各軸との間のクラッチを介さない相対回動不能な結合は、固い結合によって代用してもよい。歯車対によって伝達される各伝達比は、好適に選択されている。
【符号の説明】
【0046】
10 入力軸、 12 遊星機構伝動装置、 14 CVTバリエータ、 16 出力軸、 18 遊星キャリア、 18’ 遊星キャリア、 20 太陽車、 22 太陽車軸、 24 太陽車軸歯車、 25 バリエータ軸、 26 中空車、 28 中空車軸、 30 中空車軸歯車、 32 第1の出力軸歯車、 34 第2の出力軸歯車、 36 第3の出力軸歯車、 38 別のバリエータ軸、 40 第1のバリエータ軸歯車、 42 第2のバリエータ軸歯車、 48 第1の中空車軸歯車、 50 第2の中空車軸歯車、 52 第1の中間軸歯車、 53 変向歯車、 54 第2の中間軸歯車、 55 中間軸、 56 第3の中間軸歯車、 58 第4の中間軸歯車、 60 接続歯車、 62 接続歯車軸、 64 第1のスライド軸、 66 出力軸歯車、 68 第2のスライド軸、 70 第3のバリエータ軸歯車、 72 第4のバリエータ軸歯車、 74 遊星キャリア軸、 76 遊星キャリア軸歯車、 78 中間歯車、 K1 クラッチ、 K2 クラッチ、 K3 クラッチ、 K4 クラッチ、 K5 クラッチ、 K6 クラッチ、 K7 クラッチ、 K8 クラッチ、 KR 後進クラッチ、 KW 軸クラッチ、 D−Low 高い伝達比を有する前進走行、 D−High 低い伝達比を有する前進走行、 D−Low Range 高い伝達比を有する前進走行段、 D−High Range 低い伝達比を有する前進走行段、 R−Range 後進走行段、 D−High1 低い伝達比1を有する前進走行、 D−High2 低い伝達比2を有する前進走行、 D−High1 range 低い伝達比1を有する前進走行段、 D−High2 range 低い伝達比2を有する前進走行段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オートマチックトランスミッションであって、
入力軸(10)と結合された遊星機構伝動装置(12)が設けられており、該遊星機構伝動装置(12)が、2本バリエータ軸(25,38)を備えたCVTバリエータ(14)と少なくとも1つの歯車対とを介して、出力軸(16)と結合されており、少なくとも3つのクラッチが設けられており、該クラッチの作動によって、走行段R,N,D−LowおよびD−Highが切り換えられるようになっており、
遊星キャリア(18)が、入力軸(10)と結合されており、
遊星機構伝動装置(12)の太陽車(20)が、太陽車軸(22)と結合されており、該太陽車軸(22)が、太陽車軸歯車(24)を支持していて、かつ一方のバリエータ軸(25)と相対回動不能に結合されており、
中空車(26)が、中空車軸(28)と相対回動不能に結合されており、該中空車軸(28)が、中空車軸歯車(30)と相対回動不能に結合されており、該中空軸歯車(30)が、出力軸(16)上に支承された第1の出力軸歯車(32)と噛み合い、該第1の出力軸歯車(32)が、他方のバリエータ軸(38)と相対回動不能に結合された第1のバリエータ軸歯車(40)と噛み合い、
出力軸によって支持された第2の出力軸歯車(34)が、太陽軸歯車(24)と噛み合い、
出力軸によって支持された第3の出力軸歯車(36)が、他方のバリエータ軸によって支持された第2のバリエータ軸歯車(42)と噛み合い、
第1の出力軸歯車(32)が、第1のクラッチ(K1)によって、出力軸(16)と相対回動不能に結合されるようになっており、
太陽車軸(22)が、第2のクラッチ(K2)によって、出力軸(16)と相対回動不能に結合されるようになっており、
第3の出力軸歯車(36)が、後進クラッチ(KR)によって、他方のバリエータ軸(38)と相対回動不能に結合されるようになっている、
ことを特徴とする、オートマチックトランスミッション。
【請求項2】
第2のバリエータ軸歯車(42)が、他方のバリエータ軸(38)と相対回動不能に結合されており、太陽車軸歯車(24)が、太陽車軸(22)と相対回動不能に結合されており、第1、第2および第3の出力軸歯車(32,34,36)が、出力軸(16)上に回動可能に支承されていて、かつそれぞれ1つのクラッチ(K1,K2,KR)を介して、出力軸(16)と相対回動不能に結合されるようになっている、請求項1記載のオートマチックトランスミッション。
【請求項3】
太陽車軸(22)が、一方のバリエータ軸(25)と固く結合されている、請求項1または2記載のオートマチックトランスミッション。
【請求項4】
オートマチックトランスミッションであって、
入力軸(10)と結合された遊星機構伝動装置(12)が設けられており、該遊星機構伝動装置(12)が、2本のバリエータ軸(25,38)を備えたCVTバリエータ(14)と少なくとも1つの歯車対とを介して、出力軸(16)と結合されており、少なくとも3つのクラッチが設けられており、該クラッチの作動によって、走行段R,N,D−LowおよびD−Highが切り換えられるようになっており、
遊星機構伝動装置(12)の遊星キャリア(18)が、入力軸(10)と結合されており、
遊星機構伝動装置の中空車(26)が、中空車軸(28)と相対回動不能に結合されており、該中空車軸(28)が、第1の中空車軸歯車(48)と第2の中空車軸歯車(50)とを支持しており、
中間軸(55)が設けられており、該中間軸(55)が、第1の中間軸歯車(52)と第2の中空車軸歯車(54)とを支持しており、該中間軸(55)上に第3の中間軸歯車(56)が支承されており、該中間軸(55)が、第4の中間軸歯車(58)と相対回動不能に結合されており、
第1の中空車軸歯車(48)が、第1の中間軸歯車(52)と噛み合い、
第2の中空車軸歯車(50)が、中間歯車を介して、第2の中間軸歯車(54)と噛み合い、
第3の中間軸歯車(56)が、遊星機構伝動装置(12)の太陽車軸(22)と相対回動不能に結合された太陽車軸歯車(24)と接続歯車(60)とに噛み合い、
一方のバリエータ軸(25)上に、第1のバリエータ軸歯車(40)および第2のバリエータ軸歯車(42)が支承されており、
他方のバリエータ軸(38)上に、第3のバリエータ軸歯車(70)および第4のバリエータ軸歯車(72)が支承されており、
第4の中間軸歯車(58)が、第1のバリエータ軸歯車(40)と第3のバリエータ軸歯車(70)とに噛み合い、
出力軸(16)と相対回動不能に結合された出力軸歯車(66)が、第2のバリエータ軸歯車(42)と第4のバリエータ軸歯車(72)とに噛み合い、
接続歯車(60)が、第1のクラッチ(K1)を介して、一方のバリエータ軸(25)と相対回動不能に結合されるようになっており、
太陽車軸(22)が、第2のクラッチ(K2)を介して、他方のバリエータ軸(38)と相対回動不能に結合されるようになっており、
バリエータ軸(25,38)上に回動可能に支承された第1、第2、第3および第4のバリエータ軸歯車(40,42,70,72)が、それぞれ第3、第4、第5および第6のクラッチ(K3,K4,K5,K6)を介して、これらのクラッチに割り当てられたバリエータ軸(25,38)と相対回動不能に結合されるようになっており、第7および第8のクラッチ(K7,K8)によって、第1の中空車軸歯車(48)もしくは第2の中空車軸歯車(50)と第1の中間軸歯車(52)もしくは第2の中間軸歯車(54)との間の相対回動不能な結合が形成されるようになっている、
ことを特徴とする、オートマチックトランスミッション。
【請求項5】
第1の中間軸歯車(52)および第2の中間軸歯車(54)が、中間軸(55)上に回動可能に支承されていて、かつ第7のクラッチ(K7)および第8のクラッチ(K8)によって、中間軸(55)と相対回動不能に結合されるようになっており、第1の中空車軸歯車(48)および第2の中空車軸歯車(50)が、中空車軸(28)と相対回動不能に結合されている、請求項4記載のオートマチックトランスミッション。
【請求項6】
第3のクラッチ(K3)が、第1のクラッチ(K1)および第5のクラッチ(K5)の閉鎖と同時に、開放されるようになっている、請求項1または2記載のオートマチックトランスミッション。
【請求項7】
第4のクラッチ(K4)が、第2のクラッチ(K2)および第6のクラッチ(K6)の閉鎖と同時に、開放されるようになっている、請求項4から6までのいずれか1項記載のオートマチックトランスミッション。
【請求項8】
太陽車軸(22)が、中空車軸(28)に対して同軸的に配置されていて、かつ該中空車軸(28)を貫通して延びている、請求項1から7までのいずれか1項記載のオートマチックトランスミッション。
【請求項9】
オートマチックトランスミッションであって、
入力軸(10)と結合された遊星機構伝動装置(12)が設けられており、該遊星機構伝動装置(12)が、2本のバリエータ軸(25,38)を備えたCVTバリエータ(14)と少なくとも1つの歯車対とを介して、出力軸(16)と結合されており、少なくとも3つのクラッチが設けられており、該クラッチの作動によって、走行段R,N,D−LowおよびD−Highが切り換えられるようになっており、
遊星機構伝動装置(12)が、プラス伝動装置として形成されており、該遊星機構伝動装置(12)の中空車(26)が、入力軸(10)と相対回動不能に結合されており、
遊星機構伝動装置(12)の両遊星キャリア(18,18’)が、共通の遊星キャリア軸(74)と相対回動不能に結合されており、該遊星キャリア軸(74)が、遊星キャリア軸歯車(76)と相対回動不能に結合されており、遊星機構伝動装置(12)の太陽車(20)が、太陽車軸(22)と相対回動不能に結合されており、該太陽車軸(22)が、太陽車軸歯車(24)と相対回動不能に結合されており、
一方のバリエータ軸(25)が、第1のバリエータ軸歯車(40)と相対回動不能に結合されており、該第1のバリエータ軸歯車(40)が、中間歯車(78)を介して、遊星キャリア軸歯車(76)と噛み合い、
他方のバリエータ軸(38)が、第2のバリエータ軸歯車(42)と相対回動不能に結合されており、かつ他方のバリエータ軸(38)上に支承された第3のバリエータ軸歯車(70)を支持しており、
中間軸(55)が設けられており、該中間軸(55)が、第1の中間軸歯車(52)と相対回動不能に結合されており、該第1の中間軸歯車(52)が、太陽軸歯車(24)と第2のバリエータ軸歯車(42)とに噛み合い、中間軸(55)が、該中間軸(55)上に支承された第2の中間軸歯車(54)と第3の中間軸歯車(56)とを支持しており、
出力軸(16)上に、第1の出力軸歯車(32)が回動可能に支承されており、該第1の出力軸歯車(32)が、第3のバリエータ軸歯車(70)と第2の中間軸歯車(54)とに噛み合い、出力軸(16)が、第2の出力軸歯車(34)を支持しており、該第2の出力軸歯車(34)が、第3の中間軸歯車(56)と噛み合い、
軸クラッチ(KW)が設けられており、該軸クラッチ(KW)によって、一方のバリエータ軸が、出力軸(16)と相対回動不能に結合されるようになっており、
後進クラッチ(KR)が設けられており、該後進クラッチ(KR)によって、第3のバリエータ軸歯車(70)が、他方のバリエータ軸(38)と相対回動不能に結合されるようになっており、
第1のクラッチ(K1)および第3のクラッチ(K3)が設けられており、該第1のクラッチ(K1)および第3のクラッチ(K3)によって、第2の中間軸歯車(54)が、中間軸(55)と相対回動不能に結合されるようになっているか、もしくは第1の出力軸歯車(32)が、出力軸(16)と相対回動不能に結合されるようになっており、
第4のクラッチ(K4)が設けられており、該第4のクラッチ(K4)によって、出力軸(16)が、第2の出力軸歯車(34)と第3の中間軸歯車(56)とを介して、中間軸(55)と相対回動不能に結合されるようになっている、
ことを特徴とする、オートマチックトランスミッション。
【請求項10】
太陽車軸(22)が、遊星キャリア軸(74)に対して同軸的に配置されていて、かつ該遊星キャリア軸(74)を貫通して延びている、請求項9記載のオートマチックトランスミッション。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図3f】
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【公表番号】特表2010−530502(P2010−530502A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512503(P2010−512503)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【国際出願番号】PCT/DE2008/000974
【国際公開番号】WO2008/154895
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Germany
【Fターム(参考)】