説明

CXCR7エピトープに結合する抗体

CXCR7エピトープに結合する抗体、ならびにCXCR7モジュレータを識別する方法について、説明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照することにより組み込まれる、2006年10月18日に出願された米国暫定特許出願第60/852,745号の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
ケモカインは、炎症で産生される、特に、小型サイトカインファミリーを含み、白血球動員、活性化および増殖を調節する(Baggiolini,M.et al.,Adv.Immunol.55:97−179(1994);Springer,T.A.,Annu.Rev.Physiol.57:827−872(1995);およびSchall,T.J. and K.B.Bacon,Curr.Opin.Immunol.6:865−873(1994))。ケモカインは、好中球、単球、マクロファージ、好酸球、好塩基球、肥満細胞、およびT細胞ならびにB細胞等のリンパ球を含む、血液の形成要素(赤血球細胞以外)の走化性を選択的に誘導可能である。走化性の刺激に加えて、他の変更は、白血球の活性化、成長および増殖に関連する、細胞形状の変化、細胞内遊離カルシウムイオン(Ca2+)の濃度の一過性の上昇、顆粒エキソサイトーシス、インテグリン上方調節、生物活性脂質(例えば、ロイコトリエン)の形成、サイトカインの発現、および呼吸バーストを含む、応答細胞におけるケモカインによって選択的に誘導できる。このため、ケモカインは、炎症性の伝達物質の放出、感染または炎症部位への走化性および血管外遊出を引き起こす炎症性の反応の初期の要因となる。
【0003】
CXCおよびCCケモカインと称されるケモカインの2つのサブファミリーは、(CXCケモカインSDF−1、IL−8、IP−10、MIG、PF4、ENA−78、GCP−2、GROα、GROβ、GROγ、NAP−2、NAP−4、I−TAC内としての)1つのアミノ酸によって分離される、または、(CCケモカインMIP−1α、MIP−1β、RANTES、MCP−1、MCP−2、MCP−3、I−309内としての)隣接する残基である、4つの保存システイン残基の最初の2つの配列によって区別される。ほとんどのCXCケモカインは、好中球白血球を誘引する。例えば、CXCケモカインインターロイキン8(IL−8)、血小板因子4(PF4)、および好中球活性化ペプチド2(NAP−2)は、好中球の強力な走化性因子および活性化因子である。MIG(ガンマインターフェロンによるモノカイン誘導)およびIP−10(インターフェロン−γ誘導10kDaタンパク質)と称されるCXCケモカインは特に、活性化末梢血リンパ球の走化性の誘発において特に活動的である。CCケモカインは概してあまり選択的でなく、単球、好酸球、好塩基球、Tリンパ球、顆粒球およびナチュラルキラー細胞を含む様々な白血球細胞タイプを誘引することが可能である。ヒトの単球走化性タンパク質1−3(MCP−1、MCP−2およびMCP−3)、RANTES(活性化、通常のT発現および分泌における調節)、およびマクロファージ炎症性タンパク質1αおよび1β(MIP−1αおよびMIP−1β)等のCCケモカインは、単球またはリンパ球の走化性因子および活性化因子として特徴付けられてきたが、好中球の走化性因子であるとは考えられていない。
【0004】
CCおよびCXCケモカインは、7回膜貫通型Gタンパク質結合受容体のスーパーファミリーに属する受容体として作用する(Murphy,P.M.,Pharmacol Rev.52:145−176(2000))。受容体と結合するこのファミリーのGタンパク質は、7回膜貫通領域を含有する、内在性膜タンパク質の大きなグループを含む。受容体は、例えば、細胞内伝達物質の産生によってGTPを結合し、結合受容体からのシグナル伝達を媒介可能なヘテロ三量体調節タンパク質であるGタンパク質に結合し得る。さらにケモカイン受容体は、Gタンパク質結合とは無関係に作用し得る。例えば、赤血球細胞において主に発現するダフィ(Duffy)受容体は、ケモカインとして作用すると考えられている広宿主域ケモカイン結合受容体であり、血液循環環境からケモカインを除去する。
【0005】
概して、1つのケモカインは多数のケモカイン受容体を結合させることができ、反対に、単一のケモカイン受容体はいくつかのケモカインと相互作用できるという点において、ケモカインおよびケモカイン受容体の相互作用は一定ではない傾向がある
【0006】
リガンドのためのケモカイン受容体のシグナルおよび選択の多数の態様が存在するが、以前は、これは明らかではなかった。例えば、多数のオーファン受容体が存在するが、その機能については、以前は認識されていなかった。例えば、RDC1は、当初は血管活性腸管ペプチド(VlP)の受容体であると考えられていたが、最近まで、その内生リガンドが認識されていなかったためにオーファン受容体であると考えられていた。例えば、Cook et al,FEBS Letts.300(2):149−152(1992)を参照されたい。
【0007】
最近では、CXCR7とも称されることのあるRDC1が、ケモカインSDF−1およびI−TACの両方に結合することが明らかになった。例えば、参照することによってその全体が組み込まれている、PCT/US04/34807および米国特許出願第10/698,541号、第10/912,638号および第11/050,345号を参照されたい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、CXCR7のエピトープに結合する抗体を提供する。一部の実施形態においては、本発明は、
FSDISWPC(配列番号12)から成るポリペプチド、または
SWPCNSSDCIVV(配列番号15)から成るポリペプチド、または
本明細書に記載されている他のCXCR7エピトープに結合する抗体を提供する。
一部の実施形態においては、抗体は検出可能な標識に連結する。一部の実施形態においては、抗体はモノクローナル抗体である。一部の実施形態においては、抗体はヒト化抗体である。一部の実施形態においては、抗体は、FSDISWPC(配列番号12)から成るポリペプチドに結合する。一部の実施形態においては、抗体は、SWPCNSSDCIVV(配列番号15)から成るポリペプチドに結合する。一部の実施形態においては、抗体は、CXCR7への結合のためにSDF−1と拮抗する。
【0009】
本発明はさらに、医薬的に容認可能な賦形剤および、
FSDISWPC(配列番号12)から成るポリペプチド、または
SWPCNSSDCIVV(配列番号15)から成るポリペプチド、または
本明細書に記載されている他のCXCR7エピトープ、に結合する抗体を含む医薬組成物を提供する。
一部の実施形態においては、抗体はモノクローナル抗体である。一部の実施形態においては、抗体はヒト化抗体である。一部の実施形態においては、抗体は、FSDISWPC(配列番号12)から成るポリペプチドに結合する。一部の実施形態においては、抗体は、SWPCNSSDCIVV(配列番号15)から成るポリペプチドに結合する。
【0010】
本発明はさらに、生体試料における細胞発現CXCR7を検出する方法を提供する。一部の実施形態においては、該方法は、生体試料の抗体への接触と抗体の存在の検出を含み、該抗体は、
FSDISWPC(配列番号12)から成るポリペプチド、または
SWPCNSSDCIVV(配列番号15)から成るポリペプチド、または
本明細書に記載されている他のCXCR7エピトープ、に結合する。
【0011】
本発明はさらに、疾病を治療、予防、または改善するための方法を提供し、該方法は、抗体を、それを必要とする個体へ投与するステップを含み、該抗体は、
FSDISWPC(配列番号12)から成るポリペプチド、または
SWPCNSSDCIVV(配列番号15)から成るポリペプチド、または
本明細書に記載されている他のCXCR7エピトープに結合する。
【0012】
本発明はさらに、癌細胞の増殖を抑制する方法を提供する。一部の実施形態においては、該方法は、抗体を、それを必要とする個体へ投与するステップを含み、該抗体は、
FSDISWPC(配列番号12)から成るポリペプチド、または
SWPCNSSDCIVV(配列番号15)から成るポリペプチド、または
本明細書に記載されている他のCXCR7エピトープに結合する。
【0013】
本発明はさらに、血管形成または血管新生を抑制する方法を提供する。一部の実施形態においては、該方法は、抗体を、それを必要とする個体へ投与するステップ含み、該抗体は、
FSDISWPC(配列番号12)から成るポリペプチド、または
SWPCNSSDCIVV(配列番号15)から成るポリペプチド、または
本明細書に記載されている他のCXCR7エピトープ、に結合する。
【0014】
一部の実施形態においては、個体は関節炎に罹患している、または関節炎に罹患しやすい状態である。一部の実施形態においては、個体は癌に罹患している。
【0015】
本発明はさらに、CXCR7のモジュレータを識別するための方法を提供する。一部の実施形態においては、該方法は、
(a)CXCR7のフラグメントを含むポリペプチドへの試験薬の接触(例えば、250個以下の配列番号30の連続したアミノ酸を有する)と、該ポリペプチドは最小エピトープFSDISWP(配列番号39)またはWPCNSSDCIV(配列番号40)またはポリペプチドFSDISWPC(配列番号12)またはSWPCNSSDCIVV(配列番号15)を含み、
(b)ポリペプチドに結合する薬剤の選択とを含み、
ポリペプチドへの試験薬の結合は、試験薬がCXCR7活性のモジュレータであることを示す。
【0016】
一部の実施形態においては、選択するステップは、該ポリペプチドへの結合のために、SDF−1またはI−TACと拮抗する試験薬の能力を計測するステップを含む。一部の実施形態においては、ポリペプチドは、50個以下の配列番号30の連続するアミノ酸を有する。
【0017】
一部の実施形態においては、本発明の抗体は、配列番号2、8、9、11、12、14、15、16、17の任意の、または本明細書中に開示されている他の配列番号を含むポリペプチドに結合する。
【0018】
一部の実施形態においては、本発明の抗体は、Balbanian et al.,J.Biologic.Chem280(42):35760−35766(2005)に開示されている抗RDC1抗体(「9C4」抗体等)を含まない。一部の実施形態においては、本明細書中に記載されているエピトープに結合する抗体は、抗体11G8または6E10を含まない、および/または図1またはPCT/US06/15492に記載される他の抗CXCR7抗体において示される可変領域を含まない。一部の実施形態においては、該抗体は、配列番号23、配列番号25、配列番号27、または配列番号29において示される可変領域の相補性決定領域(CDR)を含まない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の抗体のいくつかの相補性決定領域(CDR)のいくつかの実施形態を示す(それぞれ、配列番号31〜34、配列番号23、25、27、および29)図である。
【図2】435−CXCR7細胞への11G8汚染におけるペプチド抑制の結果を示す図である。
【図3】抗体11G8および6E10(それぞれ、配列番号1〜7、2、8〜10、35〜38、11、2、12〜17、12、18、19、16、20および21)のペプチド拮抗実験の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(定義)
本明細書中で「CXCR7」と称される「「RDC1」(「CCX−CKR2」としても公知である)は、7回膜貫通領域で推定されるGタンパク質結合受容体(GPCR)を指す。例えば、Burns et al,J Exp Med.203(9):2201−13(2006)を参照されたい。CXCR7イヌ相同分子種(ortholog)は、最初、1991年に発見された。Libert et al.Science 244:569−572(1989)を参照されたい。イヌ配列は、Libert et al.,Nuc.Acids Res.18(7):1917(1990)に記載されている。マウス配列は、例えば、Heesen et al.,Immunogenetics 47:364−370(1998)に記載されている。ヒト配列は、例えば、Sreedharan et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA88:4986−4990(1991)に記載されており、これは、タンパク質を、血管活性腸管ペプチドの受容体として誤って説明している。「CXCR7」は、配列番号30と、さらに、配列番号30の保存的変性変異体(conservatively modified variant)である配列を含む。例えば、PCT/US04/34807を参照されたい。CXCR7のフラグメントは少なくとも5個のフラグメントであり、および、場合によっては、上記にリストされた配列の1つの、少なくとも10、20、50、100、200、300個または最大で300個の連続したアミノ酸、またはその保存的変性変異体である。
【0021】
特定のポリペプチドに「結合」する抗体は、細胞上に発現およびFACSによって計測される際の、CXCR7(例えば、配列番号30)への結合のためにポリペプチドと拮抗する抗体を指す。
【0022】
「対象」または「個体」は、ヒト、ヒト以外の霊長類、マウス、ラット、イヌまたは他の哺乳類を含む動物を指す。
【0023】
「化学治療薬」は、個体に投与する場合に、癌細胞の成長を抑制、速度遅延または阻止するために十分である、または癌細胞における細胞毒性効果をもたらすのに十分である物質を指す。
【0024】
「抗体」は、抗原を特異的に結合および認識する免疫グロブリン遺伝子またはフラグメントからのフレームワーク領域を含むポリペプチドを指す。認識される免疫グロブリン遺伝子には、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、エプシロン、およびミューの定常領域遺伝子、さらに、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖は、カッパまたはラムダとして分類される。重鎖は、免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEをそれぞれ定義するガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはエプシロンとして分類される。
【0025】
自然発生の免疫グロブリンは、2つの同一の軽鎖(約24kD)および2つの同一の重鎖(約55または70kD)が四量体を形成する、共通コア構造を有する。各鎖のアミノ末端部は、可変(V)領域として公知であり、各鎖の他のより保存定常(C)領域から区別可能である。軽鎖の可変領域内は、J領域として公知のC末端部である。重鎖の可変領域内において、J領域以外に、D領域がある。免疫グロブリンにおけるほとんどのアミノ酸配列の変異は、抗原結合に直接関わるハイパー可変領域または相補性決定領域(CDR)として公知のV領域の3つの別々の位置に限局される。アミノ末端から数えて、これらの領域は、それぞれCDR1、CDR2およびCDR3と称される。CDRは、保存フレームワーク領域(FR)によって適所に固定される。アミノ末端から数えて、これらの領域は、それぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4と称される。CDRおよびFR領域の位置およびナンバリングシステムは、例えば、Kabat et al.によって定義されている(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,U.S. Government Printing Office(1991))。
【0026】
典型的な免疫グロブリン(抗体)構造の単位には四量体を含む。各四量体はポリペプチド鎖の2つの同一のペアで構成され、各ペアは1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50−70kDa)を有する。各鎖のN末端は、抗原の認識に主に関与する約100乃至110の可変領域またはそれ以上のアミノ酸を定義する。可変軽鎖(V)および可変重鎖(V)という用語は、それぞれ、これらの軽鎖および重鎖を指す。
【0027】
抗体は、例えば、無傷免疫グロブリンまたは様々なペプチダーゼによる消化によって産生される多数の大きな特徴を持つフラグメント等に存在する。このため、例えば、ペプシンは、それ自体はジスルフィド結合によってV−CHlへ結合される軽鎖である、Fabの二量体F(ab)´を産生するためにヒンジ領域のジスルフィド結合の下の抗体を消化する。F(ab)´は、ヒンジ領域のジスルフィド結合を破壊するために軽めの条件において低減させてもよく、これにより、F(ab)´二量体をFab´単量体に変換する。Fab´単量体は、本質的には、ヒンジ領域の部分を有するFabである(FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY(Paul ed.,3d ed.1993)参照)。無傷抗体の消化に関して様々な抗体フラグメントが定義されているが、当業者は、このようなフラグメントを、化学的に、または組み換えDNA方法論を使用して、新たに合成してもよいことを理解されよう。このため、抗体という用語は、本明細書中で使用されているように、抗体全体の修正によって産生される抗体フラグメント、または組み換えDNA方法論を使用して新たに合成される抗体フラグメント(例えば、単鎖Fv)、あるいはファージ提示ライブラリを使用して識別される抗体フラグメントも含む(例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552−554(1990)を参照)。
【0028】
モノクローナル抗体またはポリクローン抗体の作製のために、当分野で公知の技術を利用可能である(例えば、Kohler & Milstein,Nature 256:495−497(1975);Kozbor et al,Immunology Today 4:72(1983);Cole et al.,pp.77−96 in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy(1985)を参照)。「モノクローナル抗体」は、単クローン由来の抗体を指す。単鎖抗体の産生のための技術(米国特許第4,946,778号)は、本発明のポリペプチドへの抗体を産生するよう適用できる。さらに、遺伝子組み換えマウス、または他の哺乳類等の他の生物を、ヒト化抗体を発現させるために使用してもよい。あるいは、ファージ提示技術は、選択した抗原に特異的に結合する抗体および異種Fabフラグメントを識別するために使用可能である(例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552−554(1990);Marks et al.,Biotechnology 10:779−783(1992)を参照)。
【0029】
「キメラ抗体」は、(a)定常領域、またはその一部が変化、置換または交換されることで、抗原結合部位(可変領域)が、異なるまたは変化したクラス、エフェクター機能および/または種、またはキメラ抗体に新しい特性を与える完全に異なる分子の定常領域に連結される、例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬等、または(b)可変領域、またはその一部が、異なるまたは変化した抗原特異性を有する可変領域と、変化、置換または交換される、抗体分子である。
【0030】
「ヒト化」抗体は、ヒトにおいては免疫原性が低くなっている一方で、非ヒトの抗体の再活性を保持する抗体である。例えば、非ヒトのCDR領域を保持し、抗体の他の部分をそのヒトの対応物に置換することにより、これを実現できる。例えば、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855(1984);Morrison and Oi,Adv.Immunol.,44:65−92(1988);Verhoeyen et al.,Science,239:1534−1536(1988);Padlan,Molec.Immun.,28:489−498(1991);Padlan,Molec.Immun.,31(3):169−217(1994)を参照されたい。
【0031】
「分離」という用語は、タンパク質に適用される場合、タンパク質に、自然状態に関連する他の細胞の構成要素が基本的にないことを示す。いくつかの微量の不純物が存在してもよいが、好適には、均一の状態である。ドライソリューションまたは水溶液内に入れることが可能である。純度および均一性は、典型的には、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法または高速液体クロマトグラフィーなどの分析的化学技術を使用して判定される。作製において存在する優勢種であるタンパク質は、実質的に、純化される。「純化」という用語は、タンパク質が電気泳動ゲルにおいて本質的に1バンド(band)上昇することを示す。特に、これは、タンパク質が少なくとも85%の純度であり、より好適には、少なくとも95%の純度であり、最も好適には、少なくとも99%の純度であることを意味する。
【0032】
抗体への「特異的(または選択的)結合」、またはタンパク質、糖タンパク質またはペプチドを指す場合の「特異的(または選択的に)免疫反応」というフレーズは、タンパク質および他の生態(細胞溶解物等)の異種遺伝子集団におけるタンパク質の存在を判定する結合反応を指す。このため、指定された免疫測定条件において、特定された抗体は特定のタンパク質に、バックグランドの少なくとも2倍結合し、実質的に、試料に存在する他のタンパク質にかなりの量で結合することはない。典型的には、特異的または選択的な反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍となり、より典型的には、10乃至100倍のバックグラウンドよりも多くなる。
【0033】
「ペプチド模倣薬」および「類似」という用語は、自然発生または非自然発生のポリペプチド(例えば、CXCR7に結合する試薬)と実質的に同じ構造的および機能的性質を有する合成化学的複合体を指す。ペプチド類似体は、テンプレートペプチドの特性と類似する特性を有する非ペプチド薬として、製薬業界で通常使用される。これらのタイプの非ペプチド複合体は、「ペプチド模倣薬」または「ペプチド類似薬」と呼ばれる(参照することにより本明細書中に組み込まれている、Fauchere,J.Adv.Drug Res.15:29(1986);Veber and Freidinger TINS p.392(1985);およびEvans et al.J.Med.Chem.30:1229(1987))。治療的に有用なペプチドと構造的に類似したペプチド模倣薬は、等価のまたは改良された治療的または予防的な効果を生み出すために使用可能である。概して、ペプチド模倣薬は、対象のポリペプチドに見られるような、模倣対象のポリペプチド(つまり、生体または薬理的な活性を有するポリペプチド)と構造的に類似しているおり、例えば、−CHNH−、−CHS−、−CH−CH−、−CH=CH−(cisおよびtrans)、−COCH−、−CH(OH)CH−、および−CHSO−で構成されるグループから選択される結合によって、任意で置換される1つ以上のペプチド結合を有する。模倣薬は、合成した、アミノ酸の非自然の類似体で全体を構成可能である、または、一部が自然のペプチドアミノ酸であり一部がアミノ酸の非自然の類似体であるキメラ分子である。この模倣薬はさらに、このような置換が、実質的に類似の構造および/または活性を変化させるのでない限り、任意の量の自然のアミノ酸の同類置換を組み込むことが可能である。例えば、対象のポリペプチドの結合または酵素活性の少なくとも1つを実行することができる場合に、模倣薬組成物は本発明の範囲内である。
【0034】
「リガンド」は、受容体を結合可能な物質、例えばポリペプチドまたは他の分子を指す。
【0035】
「保存的変性変異体」は、アミノ酸および核酸の両方の配列に適用される。特定の核酸配列に関して、「保存的変性変異体」とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードするこうした核酸を指し、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、基本的に同一の配列を指す。遺伝情報の退化のために、多数の核酸配列が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは全て、アミノ酸アラニンをコードする。このため、アラニンがコドンによって指定される各位置において、コドンは、コードされたポリペプチドを変更せずに、記載される対応するコドンのいずれかに変化することが可能である。このような核酸変異は、保存的変性変異の一種である「サイレント変異」である。ポリペプチドをコードする本明細書中の各核酸配列はさらに、考えられるあらゆる核酸サイレント変異を記載している。当業者は、核酸内の各コドン(通常はメチオニンのコドンにすぎないAUG、および、通常はトリプトファンのコドンにすぎないTGGを除く)を、機能的に同一の分子を産生させるために改良できることを理解されよう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異が、記載した各配列に内在する。
【0036】
アミノ酸配列について、当業者は、コードされた配列において単数のアミノ酸または低いパーセンテージのアミノ酸を変更、追加または削除する核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列に対する個々の置換、削除または追加は、変更によって化学的に類似のアミノ酸にアミノ酸が置換される、「保存的に変性変異体」であることを認識されるであろう。機能的に類似のアミノ酸を示す同類置換表が、当分野で公知である。このような同類変性変異体はさらに、多型変異体、種間同族体、および本発明の対立遺伝子を除外しない。
【0037】
以下の8つのグループでは、それぞれ、互いに同類置換されるアミノ酸を含む。
1)アラニン(A)、グリシン(G)
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)
4)アルギニン(R)、リジン(K)
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)
7)セリン(S)、スレオニン(T)、および
8)システイン(C)、メチオニン(M)
(例えば、Creighton,Proteins(1984)を参照)。
【0038】
「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウにおいて2つの最適に並んだ配列を比較することで判定され、2つの配列の最適な並び方のために(追加または削除を含まない)参照配列と比較して、比較ウィンドウのポリヌクレオチド配列の一部は追加または削除を含んでもよい(つまり、ギャップ)。パーセンテージは、一致する位置の数を出すために、両配列において同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が発生する位置の数を判定し、比較ウィンドウの全ての位置数によって一致する位置数を除算し、配列同一性のパーセンテージを出すためにその結果を100で乗算することによって算出される。
【0039】
2つのまたはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈における、「同一」またはパーセント「同一性」という用語は、比較ウィンドウ、または指定された領域における最大限の一致のために比較および並べた場合に、以下の配列比較アルゴリズムの1つを使用して、または手動で並べ目視することによって計測されるものと、同じである、または同じであるアミノ酸残基またはヌクレオチドを特定のパーセンテージ有する、2つ以上の配列またはサブ配列を指す(つまり、特定の領域における60%の同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性であってもよく、特定の領域は、例えば、本発明のポリペプチド全体の配列または本発明のポリペプチドの余分な細胞領域である)。このような配列は、このため、「実質的に同一である」と言われる。この定義はさらに、試験配列の補体を指す。同一性は、少なくとも長さが約50ヌクレオチドの領域、またはより好適には、長さが100乃至500または1000、あるいはそれ以上のヌクレオチドの領域上に存在してもよい。
【0040】
配列比較のために、典型的には1つの配列は、試験配列が比較される対象の参照配列としての役割をする。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験および参照配列がコンピュータに入力され、必要な場合、サブ配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。デフォルトプログラムパラメータを使用することができる、または代替のパラメータを指定することができる。配列比較アルゴリズムは次に、プログラムパラメータに基づく、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0041】
本明細書で使用されているように、「比較ウィンドウ」は、例えば、全長さ配列または20乃至600個、約50乃至約200個、または約100乃至約150個のアミノ酸またはヌクレオチドから成るグループから選択された、連続した位置の数のいずれか1つのセグメントへの参照を含み、ここで、配列は、2つの配列が最適に並べられている後の連続した位置の同じ数の配列を参照するように、比較してもよい。比較のための配列の並べ方の方法が、当分野において公知である。比較のための配列の最適な並べ方は、例えば、Smith and Waterman(1970)Adv.Appl.Math.2:482cの局部的同族体アルゴリズム、Needleman and Wunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443の同族体の並べ方アルゴリズム、Pearson and Lipman(1988)Proc.NaT’I.Acad.Sci. USA85:2444の類似性方法の検索、これらのアルゴリズムの電子制御の実施(GAP,BESTFIT,FASTA, and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WI)、または手動の並べ方および目視(例えば、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(1995 supplement)を参照)によって、実行可能である。
【0042】
パーセント配列同一性および配列類似性を判定するのに適したアルゴリズムの実施例は、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、これらは、Altschul et al.(1977)Nuc.Acids Res.25:3389−3402、およびAltschul et al.(1990)J Mol.Biol.215:403−410にそれぞれ記載されている。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から公的に利用可能である。このアルゴリズムは、まず、データベース配列において同じ長さのワードと共に並べられた場合に、いくつかの正の値の閾値スコアTと一致するまたは満足させる、クエリ配列の長さWの短いワードを識別することで、高スコアの配列ペア(HSP)を識別することを含む。Tは、近隣ワードのスコア閾値(Altschul et al.,supra)と称される。これらの初期の近隣ワードヒットは、これらを含むより長いHSPを見つけるための検索を開始するための種としての役割がある。ワードヒットは、累積する並び方スコアが増えることができる限り、各配列に沿って両方面に拡張される。累積スコアは、ヌクレオチド配列、パラメータM(一致する残基のペアのための報酬スコア、常に>0)およびN(一致しない残基のためのペナルティスコア、常に<0)を使用して計算される。アミノ酸配列では、累積スコアを算出するためにマトリクスのスコアが使用される。累積並び方スコアがその最大達成値からの量Xだけ減少する場合、1つ以上の負のスコア残基の並び方の累積により累積スコアがゼロまたはそれ以下になる場合、または各配列の末端に達する場合には、各方向におけるワードヒットの拡張は停止される。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、感度および並び方の速度を判定する。(ヌクレオチド配列のための)BLASTNプログラムは、デフォルトワード長(W)として11、期待値(E)または10、M=5、N=−4および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、ワード長を3、および期待値(E)を10として使用し、およびBLOSUM62のスコアリングマトリクス(Henikoff and Henikoff(1989)Proc.Natl.Acad.Sci. USA89:10915を参照)は、アライメント(B)を50、期待値(E)を10、M=5、N=−4として使用して、両鎖を比較する。
【0043】
BLASTアルゴリズムはさらに、2つの配列の間の類似性の統計分析を実行する(例えば、Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:5873−5787を参照)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの基準は、最小の和の確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の一致が偶然発生する確率を示す。例えば、試験核酸と参照核酸への比較の最小の和の確率が約0.2未満、より好適には約0.01未満、および最も好適には0.001未満である場合に、核酸は参照配列と類似であると考えられる。
【0044】
2つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であることを示すのは、1番目の核酸によってコードされるポリペプチドが、以下に説明するように、2番目の核酸でコードされるポリペプチドに対する抗体と、免疫学的に交差反応するということである。このため、ポリペプチドは、典型的には、例えば、2つのペプチドが同類置換によってのみ異なる場合には、2番目のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であることを示す別の場合は、以下に説明するように、ストリンジェントな条件において、2つの分子またはその補体が互いにハイブリタイズするということである。2つの核酸配列が実質的に同一であることをさらに示す場合、配列を増幅させるために同じプライマーが使用可能であるということである。
【0045】
I.導入
本発明は、CXCR7へのSDF−1およびI−TACのケモカイン結合に拮抗する抗体のエピトープの識別を行う。このため、本発明は、リガンド結合および/またはシグナルに関連するCXCR7のエピトープに結合する抗体を提供する。さらに、CXCR7受容体によってシグナルを調節する上で有用なアンタゴニストおよび作用薬物質を識別するために、これらの方法が有用であるため、エピトープに結合する物質のスクリーニング方法も提供する。
【0046】
11G8および6E10で指定される抗体は、CXCR7上の結合のためにSDF−1と拮抗し、したがって、抗体で結合されるエピトープがマップされた。表1に示されるペプチドは、結合のために抗体と拮抗できるかどうか試験された。
表1
【表1−1】

【表1−2】

配列番号2、11、12、14、および18は、抗体11G8と拮抗した。配列番号2、8、9、15、16、および17は、抗体6E10と拮抗した。抗体11G8の最小のエピトープはFSDISWP(配列番号39)であると判定され、抗体6E10の最小のエピトープはWPCNSSDCIV(配列番号40)であると判定された。
【0047】
II.本発明の抗体
本発明は、本明細書に記載されているように、配列番号2、8、9、11、12、14、15、16、17のいずれかまたは他のエピトープに結合する抗体を提供する。本発明は、CXCR7に対する抗体を使用して、CXCR7に関連する疾病および疾患の治療、診断および予後のための試薬および方法を提供する。CXCR7に関連する疾病および疾患は、以下にさらに例示されており、癌、過剰または異常な血管形成および関節炎を含む疾病を含むが、これに限定されない。
【0048】
一部の実施形態においては、抗体は分離している。一部の実施形態においては、抗体はCXCR7に結合し、CXCR7への結合のためにケモカインSDF−1およびI−TACと拮抗する。CXCR7結合のための拮抗アッセイは、例えば、PCT/US04/34807および米国特許文書第US2004/0170634および第2005/0074826号に記載されている。抗体結合の拮抗は、抗体のみと比較される場合、ペプチドの存在における抗体結合の減少によって判定される。拮抗は、FACSによって計測されるように、0.5ログ、好適には1ログ、より好適には2ログまたはそれ以上のシフトによって示される。
【0049】
本発明の一部の実施形態においては、抗体はCXCR7に結合するが、ヒトの末梢血には結合しない。例えば、一部の実施形態においては、本発明の抗体は好塩基球、単球、形質細胞様樹状細胞、B細胞、またはCD4T細胞の少なくとも1つに結合しない。
【0050】
CDRおよびFR領域の位置およびナンバリングシステムについて上述した。例えば、Kabat et al.(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,U.S.Government Printing Office(1991))である。CDRは、概して、NCBI IgBLASTアルゴリズムを使用して識別可能である。当業者は、異なる配列アルゴリズムは、特定の抗体のアミノ酸配列におけるCDRの位置のわずかに異なる記述を提供できることを理解されるであろう。いくつかの場合においては、重鎖CDRは、アミノ酸位置31〜35(CDR1)、50〜65(CDR2)および96〜102(CDR3)において発生する。いくつかの場合においては、軽鎖CDRは、アミノ酸位置24〜34(CDR1)、50〜56(CDR2)および89〜97(CDR3)において発生する。一部の実施形態においては、CDRは、図1に図示されるように示される。
【0051】
特定の抗体の、別の抗体と同じエピトープを認識する能力は、典型的には、ある抗体が抗原への、例えば、CXCR7またはフラグメントまたはその融合への、2番目の抗体の結合を競合的に阻害する能力によって判定される。多数の競合的な結合アッセイのいずれかを使用して、同じ抗原の2つの抗体間の拮抗を計測するために使用できる。典型的なアッセイはバイアコア(Biacore)アッセイである。つまりこれらのアッセイにおいて、結合部位は、反応体の能力を試験することによって、構造的な条件においてマップすることができ、例えば、別の結合を阻害するための異なる抗体がある。十分な濃度での2つの連続した抗体試料の注入により、同じ結合エピトープの拮抗する抗体のペアを識別可能である。抗体試料は、各注射によって著しい飽和率に達すると考えられるべきである。2番目の抗体の注射の正味の結合は、結合エピトープ分析を示す。2つの反応レベルは、完全な拮抗と明確なエピトープによる非拮抗結合の境界を説明するために使用可能である。同一のおよび明確な結合エピトープの結合に対する、2番目の抗体注射の結合反応の相対量は、エピトープ重複の度合いを判定する。抗体は、線形または立体構造のエピトープを認識してもよく、こうして、抗体は、類似していない、および末端のエピトープを認識する一方で、拮抗してもよい。
【0052】
当分野において公知の他の従来の免疫測定を、本発明に利用することができる。例えば、抗体は、サンドイッチELISAアッセイを使用して結合するエピトープによって区別することができる。これは、ウェルの表面をコートするために捕捉抗体を使用することで実行される。タグを付けられた抗原の亜飽和濃度が、次に、捕捉表面に加えられる。このタンパク質は、特定の抗体、エピトープ相互作用によって、抗体に結合される。検出可能な部分へ共有結合された、2番目の抗体を洗浄後(例えば、検出抗体として定義されている標識された抗体を有する、HRP)、ELISAに加えられる。この抗体が同じエピトープを捕捉抗体として認識する場合、特定のエピトープは結合することができなくなるため、標的のタンパク質に結合することはできなくなる。しかし、この2番目の抗体が標的のタンパク質に異なるエピトープを認識する場合、結合が可能であり、およびこの結合は、関連する基質を使用して、活性レベルを定量化することによって検出可能である(すなわち、抗体結合である)。バックグラウンドは、単一の抗体を捕捉および検出の両方に使用することで定義され、ここで、抗原特異抗体を捕捉し、抗原のタグを抗体によって検出することで、最大シグナルが確立可能である。バックグラウンドおよび最大シグナルを参考として使用することで、エピトープ特異性を判定するためにペア方式で抗体を評価することができる。
【0053】
上述のアッセイのいずれかを使用する1番目の抗体の存在において、2番目の抗体の抗原への結合が少なくとも30%、通常で少なくとも約40%、50%、60%または75%、および多くの場合少なくとも約90%減少している場合、1番目の抗体は、2番目の抗体の結合を競合的に阻害すると考えられる。
【0054】
ポリクローン抗体を作製する方法は、当業者に公知である。ポリクローン抗体は、例えば、免疫物質の1回以上の注射、および所望の場合、アドジュバントによって、哺乳類内において増加させることができる。典型的には、免疫物質および/またはアドジュバントは、複数の皮下または腹腔内注射によって、哺乳類内に注入される。免疫物質は、核酸またはそのフラグメントまたはその融合タンパク質によってコードされるタンパク質を含んでもよい。また、免疫性を与えられる哺乳類における免疫原性として公知のタンパク質へ免疫物質を共役させることが有用である場合もある。このような免疫原性タンパク質の実施例には、キーホールリンペットヘモシアニン、ウシ血清アルブミン、ウシのチログロブリン、およびダイズのトリプシン阻害物質を含むが、これに限定されない。利用可能なアドジュバントの実施例は、フロイトの完全アドジュバントおよびMPL−TDMアドジュバントを含む(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコレート)。免疫方法は、必要以上の実験をせずに、当業者によって選択してもよい。
【0055】
抗体は、あるいは、モノクローナル抗体にしてもよい。モノクローナル抗体は、Kohler & Milstein,Nature 256:495(1975)に記載されている方法等のハイブリドーマ方法を使用して作製してもよい。ハイブリドーマ方法において、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物は、免疫物質に特異的に結合する抗体を産生する、または産生可能なリンパ球を発現させるために、典型的には、免疫物質によって免疫性を有している。あるいは、リンパ球は、体外で免疫性を与えられてもよい。免疫物質は、典型的には、CXCR7ポリペプチド、またはそのフラグメントまたは融合を含む。一般的に、ヒト由来の細胞が所望である場合に末梢血リンパ球(「PBL」)を使用するか、または、非ヒトの哺乳類ソースが所望である場合には脾臓細胞またはリンパ節細胞を使用する。リンパ球は次に、ハイブリドーマ細胞を形成するために、ポリエチレングリコール等の適した融合物質を使用して、不死化細胞株と融合される(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59−103(1986))。不死化細胞株は通常、哺乳類の形質転換細胞、特にげっ歯類、ウシおよびヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラットまたはマウス骨髄腫細胞株が使用される。ハイブリドーマ細胞は、融合していない不死化細胞の成長または生存を阻害する1つ以上の物質を含む、適した培養媒質において培養可能である。例えば、親細胞に酵素が不足している場合、ヒポキサンチングアニンホスホリボシル転移酵素(HGPRTまたはHPRT)、ハイブリドーマの培養媒質は、典型的には、HGPRT欠損細胞の成長を防ぐ、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(「HAT媒質」)を含む。
【0056】
一部の実施形態においては、本発明の抗体は、CXCR7の結合のために、配列番号23および配列番号25、または配列番号27および配列番号29を含む抗体を拮抗するキメラまたはヒト化抗体である。上述のように、抗体のヒト化フォームは、ヒトの抗体の相補性決定領域(CDR)からの残基を、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラットまたはラビット等の非ヒトの種のCDRからの残基によって置換可能なキメラ免疫グロブリンである。例えば、配列番号23および配列番号25のCDR、または配列番号27および配列番号29は、ヒトの抗体のフレームワークに挿入可能である。
【0057】
ヒトの抗体を、ファージ提示ライブラリを含む、当分野において公知の様々な技術を使用して産生可能である(Hoogenboom & Winter,J.Mol.Biol.227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581(1991))。Cole et al.およびBoerner et al.の技術も、ヒトのモノクローナル抗体の作製に利用可能である(Cole et al.,Mnoclonal Antibodies and Cancer Therapy,p.77(1985) and Boerner et al.,J.Immunol.147(1):86−95(1991))。同様に、ヒトの抗体は、ヒトの免疫グロブリン座を、例えば、内生免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは全体的に不活性にされているマウス等の遺伝子組み換え動物に導入することによって、産生可能である。抗原の投与において、遺伝子の再編成、組み立て、および抗体レパートリーを含む、すべての面においてヒトに見られるものと非常に似ている、ヒトの抗体産生が観察される。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号、第5,545,806号、第5,569,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,661,016号、および科学系出版物:Marks et al.,Bio/Technology 10:779−783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856−859(1994);Morrison,Nature 368:812−13(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14:845−51(1996);Neuberger,Nature Biotechnology 14:826(1996);Lonberg & Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65−93(1995)に記載されている。
【0058】
一部の実施形態においては、本発明の抗体は、単鎖Fv(scFv)である。scFv抗体のVおよびV領域(例えば、配列番号12および配列番号14、または配列番号16および配列番号18)は、2つの鎖抗体で見つかったものと類似の抗原結合部位を作製するために畳まれる単鎖を含む。畳まれると、非共有の相互作用は、単鎖抗体を安定化させる。いくつかの抗体実施形態のVおよびV領域は直接互いに結合可能であるが、当業者は、領域は1つ以上のアミノ酸を構成するペプチドリンカーによって分離してもよいことを理解するであろう。ペプチドリンカーおよびその利用は当分野において公知である。例えば、Huston et al,Proc.NaT‘I Acad.Sci.USA8:5879(1988);Bird et al.,Science 242:4236(1988);Glockshuber et al.,Biochemistry 29:1362(1990);米国特許第4,946,778号、米国特許第5,132,405号およびStemmer et al.,Biotechniques 14:256−265(1993)を参照されたい。一般に、ペプチドリンカーは、領域を結合し、いくつかの最短距離またはVおよびVの間の他の空間的関係を維持するため以外には、特定の生体活性を有しない。しかし、ペプチドリンカーの構成要素のアミノ酸は、折り畳み、正味荷電、または疎水性等のいくつかの分子特性に影響を与えるように選択してもよい。単鎖Fv(scFv)抗体は、長さが50個以下のアミノ酸、概して40個以下のアミノ酸、好適には30個以下のアミノ酸、およびより好適には、20個以下のアミノ酸のペプチドリンカーを含んでもよい。一部の実施形態においては、ペプチドリンカーは配列Gly−Gly−Gly−Gly−Serのコンカテマー(配列番号41)であり、好適には2、3、4、5、または6のこのような配列である。しかしながら、リンカー内のいくつかのアミノ酸置換を行うことができることが理解されよう。例えば、バリンは、グリシンと置換することができる。
【0059】
次に、scFv抗体を産生する方法について説明する。Huse et al.,Science 246:1275−1281(1989);Ward et al.,Nature 341 :544−546(1989);およびVaughan et al.,Nature Biotech.14:309−314(1996)を参照されたい。つまり、免疫性を与えられた動物のB細胞からのmRNAは、分離しており、cDNAが産生される。cDNAは、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域に特異なプライマーを使用して増殖される。PCRの生成物質は純化され、核酸配列が結合される。リンカーのペプチドが所望のものである場合、ペプチドをコードする核酸配列が重鎖および軽鎖核酸配列の間に挿入される。scFvをコードする核酸はベクターに挿入され、適切な宿主細胞において発現される。所望の抗原に特異的に結合するscFvは、典型的には、ファージ提示ライブラリのパニングによって見つけることができる。パニングは、いくつかの任意の方法によって実行可能である。パニングは、その表面に所望の抗原を発現させる細胞を使用して、または所望の抗原でコートされる固体表面を使用して、便利に実行することができる。都合の良いことに、表面は電磁ビーズにすることができる。非結合ファージは、固体表面から洗い流され(washed off)、結合したファージは溶離される。
【0060】
最も高い親和性を有する抗体の発見は、選択プロセスの効率によって判定され、スクリーニング可能なクローンの数およびそれが行われるストリンジェンシーに依存する。典型的には、より高いストリンジェンシーは、より選択的なパニングに対応する。しかしながら、条件がストリンジェントでありすぎる場合には、ファージは結合されない。パニングを1回実行した後、CXCR7でコートされたプレートまたはその表面の細胞発現CXCR7に結合するファージは、大腸菌内で拡張し、もう一度パニングされる。このように、多数の畳みの濃縮(enrichment of many fold)は、3度のパニングにおいて行われる。このため、各回の濃縮が低くなっても、複数回のパニングによって、希少なファージおよび遺伝子材料の分離につながり、この中において、最も高い親和性を有するscFv、およびファージにおいてより良く発現しているものをコードする。
【0061】
選択したパニングの方法に関わらず、ファージ提示によって提供される遺伝子型および表現型の間の物理的な連結は、クローンの最も大きいライブラリにおいてさえも、抗原への結合のためにcDNAライブラリの各メンバを試験することを可能にする。
【0062】
一実施形態において、抗体は二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原の結合特異性を有する、または同じ抗原上に2つのエピトープの結合特異性を有するヒトのまたはヒト化の抗体を含むが、これに限定されないモノクローナル抗体である。一実施形態において、結合特異性の1つはCXCR7タンパク質のものであり、他は別の異なる癌抗原のものである。あるいは、四量体タイプの技術で、多価性の試薬を作製してもよい。
【0063】
一部の実施形態においては、抗体はエフェクター部分に共役する。エフェクター部分は、放射性標識または蛍光標識等の検出可能な標識化部分を含む、任意の数の分子とすることができる、または治療的部分とすることができる。
【0064】
他の実施形態においては、治療的部分は細胞毒性薬である。この方法において、細胞毒性薬の標的を癌組織または細胞にすることで、罹患細胞の数が減少し、それによって、癌に関連する症状が和らぐ。細胞毒性薬は数が大変多くその種類も幅広く、これに限定されないが、細胞毒性薬または毒素あるいはこのような毒素の活性フラグメントを含む。適した毒素およびその対応するフラグメントは、ジフテリアA鎖、外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、アウリスタチン(auristatin)等を含む。細胞毒性薬はさらに、ラジオアイソトープを本発明の抗体に共役化させることで産生される放射化学も含む。
【0065】
III.免疫測定
本発明の抗体は、多数の公知の免疫学的結合アッセイのいずれかを使用して、CXCR7またはCXCR7発現細胞を検出するために使用可能である(例えば、米国特許第4,366,241号、第4,376,110号、第4,517,288号、および第4,837,168号を参照)。一般的な免疫測定の説明のために、さらに、Methods in Cell Biology,Vol.37,Asai,ed.Academic Press,Inc.New York(1993),Basic and Clinical Immunology 7th Edition,Stites & Terr,eds.(1991)を参照されたい。
【0066】
このため、本発明は、CXCR7を発現する細胞を検出する方法を提供する。一方法において、対象に生検を実施し、採集した組織を体外で試験する。組織または組織からの細胞を、次に、本発明の抗CXCR7抗体に接触させる。生じる任意の免疫複合体は、生検された試料のCXCR7タンパク質の存在を示す。このような検出を促進するために、抗体は放射性同位体で標識、または蛍光標識等の検出可能な標識であるエフェクター分子に連結することが可能である。別の方法において、細胞は、画像作成システムを使用して、生体内で検出可能である。次に、標識の局在性を判定する。診断画像を視覚化するための従来の方法を使用可能である。例えば、MRIに常磁性アイソトープを使用可能である。抗体の内在化は特別な細胞結合によって提供される有機体内の延命のために重要である場合があり、これは、循環のクリアランスと連結される特別な細胞酵素環境によって、クリアランスを起こしやすくなる。
【0067】
CXCR7タンパク質は、さらに、標準的な免疫測定方法および本発明の抗体を使用して検出可能である。標準的な方法には、例えば、放射免疫測定、サンドイッチ免疫測定(ELISAを含む)、免疫蛍光検査アッセイ、ウェスタンブロット、親和性クロマトグラフィー(固相に結合される親和性リガンド)、および標識された抗体による細胞内検出を含む。二次的な検出剤は、さらに、ヤギ抗マウスFITCなどを使用してもよい。適用可能な技術の一般概要については、Harlow & Lane,Antibodies:Laboratory Manual(1988)を参照されたい。
【0068】
本発明は、癌の予後または診断を提供する方法を含む、癌細胞の検出方法を提供する。CXCR7は、これまで、試験されるほぼあらゆる癌細胞に発現し、一方で、通常のCXCR7(非癌)発現は、胎児の肝臓の特定の発達段階と共に、腎臓およびいくつかの脳細胞に限定されているようである。例えば、PCT/US04/34807および米国特許出願第10/698,541号および第10/912,638号を参照されたい。したがって、細胞における、とりわけ、非胎児の細胞および/または腎臓または脳細胞以外の細胞におけるCXCR7の発現は、可能性のある癌細胞の存在を示す。組織細胞または組織の血管内皮のCXCR7の存在は、さらに癌の存在を示してもよい。いくつかの場合においては、CXCR7−発現細胞を含む試料が、当分野で公知の他の方法を使用して癌細胞の存在について確認される。
【0069】
さらに別の発明の態様によると、癌を罹患しているまたは癌を罹患している疑いのある対象の治療方法を選択する方法が提供されている。該方法には、対象生体試料からの取得、CXCR7に特異的に結合する試料の抗体またはその抗原結合フラグメントへの接触、抗体結合の存在の検出、および対象の癌に適切な治療法の選択を含む。一部の実施形態においては、治療は、対象に対して本発明の抗体CXCR7を投与することである。
【0070】
本発明は、癌、例えば、上皮性悪性腫瘍、神経膠腫、中皮腫、メラノーマ、リンパ腫、白血病、腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、膠芽細胞腫、白血病、リンパ腫、前立腺癌、およびバーキットリンパ腫の形態の癌、頭部癌および咽頭癌、結腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝胆道癌、胆嚢癌、小腸癌、直腸癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、陰茎癌、尿道癌、睾丸癌、子宮頸癌、膣癌、子宮癌、卵巣癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、膵臓内分泌線癌、カルチノイド癌、骨肉腫、皮膚癌、網膜芽腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(他の癌の場合、CANCER:PRINCIPLES AND PRACTICE(DeVita,V.T.et al.eds 1997)を参照)、さらに、アルツハイマー病および多発性硬化(症)等の脳およびニューロンの機能不全、腎臓機能不全、関節リウマチ、心臓同種移植片拒絶、アテローム性動脈硬化症、ぜんそく、糸球体腎炎、接触性皮膚炎、炎症性腸疾患、大腸炎、乾癬、再かん流傷害、および、本明細書に記載されている他の疾患および疾病を含むが、これに限定されないヒトの疾病の診断方法を提供する。
【0071】
IV.CXCR7のモジュレータ
A.ケモカイン受容体のモジュレータ識別の方法
多数の異なるスクリーニング方法は、細胞、特に哺乳類の細胞、および特にヒト細胞における、CXCR7の活性レベルまたは機能を調節する物質を識別するために利用可能である。一般的に、スクリーニング方法は、配列番号2、8、9、11、12、14、15、16、17のいずれかを含む、または本明細書に記載されている、ポリペプチドと相互作用する物質を識別するための、例えば、CXCR7フラグメントに結合し、本発明の抗体がCXCR7フラグメントに結合したり、CXCR7を活性化させたりするのを防ぐことにより、これらの配列を含むCXCR7のフラグメントを含む、複数の物質のスクリーニングを含む。一部の実施形態においては、物質は、少なくとも約1.5、2、3、4、5、10、20、50、100、300、500、または1000回、別のタンパク質の物質の親和性にCXCR7を結合させる。一部の実施形態においては、本明細書に記載されているエピトープを含む(および非CXCR7のアミノ酸TNおよび/またはC末端をさらに含んでもよい)CXCR7のフラグメントは、例えば、300、250、200、150、100、50、40、30、20個以下またはさらに少ない数のアミノ酸である。一部の実施形態においては、CXCR7フラグメントは、完全な長さのCXCR7ポリペプチドにおける全アミノ酸より少ない数を有するいずれかのフラグメントである。
【0072】
1.アッセイに結合するケモカイン受容体
一部の実施形態においては、CXCR7モジュレータは、CXCR7ポリペプチド、またはそのフラグメントへの結合から、本発明の抗体と拮抗する分子をスクリーニングすることによって識別される。当業者は、拮抗の分析を実行するために多くの方法が存在することを理解されるであろう。一部の実施形態においては、CXCR7の試料は、標識された本発明の抗体によって事前培養され(例えば、配列番号23、配列番号25、配列番号27および/または配列番号29の少なくともCDRを含む抗体)、次に、考えられる拮抗分子に接触される。試験複合体の存在においてCXCR7に結合される抗体の量の変化(例えば、減少)は、試験複合体が考えられるCXCR7モジュレータであることを示す。
【0073】
事前のスクリーニングは、少なくともいくつかの物質として、CXCR7に結合可能な物質のスクリーニングにより実行可能であるため、識別されるものはケモカイン受容体モジュレータである可能性がある。アッセイの結合は、通常、1つ以上の検査剤にCXCR7を接触させ、タンパク質および検査剤が結合複合体となるよう十分な時間を与えることを含む。形成された任意の結合複合体は、多数の確立された分析技術のいずれかを使って、検出可能である。タンパク質結合アッセイには、免疫組織化学的結合アッセイ、フローサイトメトリー、放射性リガンド結合、ユウロピウム標識されたリガンド結合、ビオチン標識されたリガンド結合またはCXCR7の立体構造を維持する他のアッセイを含むが、これに限定されない。このようなアッセイで利用されるケモカイン受容体は、自然に発現、複製または合成可能である。結合アッセイは、作用薬または抑制因子を識別するために使用してもよい。例えば、考えられる作用薬にCXCR7を接触させ、CXCR7活性の計測を行うことで、CXCR7活性を刺激するこうした分子を識別することが可能である。
【0074】
2.細胞および試薬
本発明のスクリーニング方法は、体外、または細胞ベースのアッセイとして実行可能である。体外アッセイは、例えば、CXCR7を含む、膜の一部または細胞全部を使用して再実行可能である。細胞ベースのアッセイは、CXCR7が発現された任意の細胞内で実行可能である。
【0075】
細胞ベースのアッセイは、物質によるCXCR7活性の物質結合または調節のためにスクリーニングするCXCR7を含む細胞全部または細胞の一部を含有する。本発明の方法によって使用される典型的な細胞タイプは、例えば、好中球、単球、マクロファージ、好酸球、好塩基球、肥満細胞、およびT細胞およびB細胞等のリンパ球等の白血球、白血病、バーキットリンパ腫、腫瘍細胞、内皮細胞、周皮細胞、線維芽細胞、心筋細胞、筋肉細胞、乳腫瘍細胞、卵巣癌癌腫、子宮頸癌、グリア芽腫、肝臓細胞、腎臓細胞、およびニューロンの細胞を含む任意の哺乳類の細胞、さらに、酵母を含むカビ細胞を含む。細胞は、一次細胞または腫瘍細胞または他のタイプの不死細胞株にすることができる。当然ながら、CXCR7は、内生版のCXCR7を発現しない、または発現が誘導されている細胞において発現することができる。
【0076】
いくつかの場合においては、CXCR7のフラグメントは、タンパク質融合と共に、スクリーニングに使用可能である。CXCR7リガンドに結合するために拮抗する分子が所望のものである場合、使用されるCXCR7フラグメントは、本発明の抗体を結合することができるフラグメントである。あるいは、CXCR7に結合する分子を識別するための標的として、CXCR7の任意のフラグメントを使用可能である。CXCR7フラグメントは、例えば、少なくとも20個、30個、40個、50個のアミノ酸を、CXCR7の1つのアミノ酸以外の全てを含むタンパク質に含むことができる。典型的には、リガンド結合フラグメントは、膜貫通領域および/またはCXCR7の特別な細胞領域のほとんどまたは全てを含む。
【0077】
3.シグナルまたは接着活性
一部の実施形態においては、CXCR7活性化によってトリガされるシグナルを使用して、CXCR7モジュレータを識別する。ケモカイン受容体のシグナル活性は、多数の方法で判定できる。例えば、シグナルは、受容体の結合から自然発生するリガンドとなり(例えば、SDF−1またはI−TACのCXCR7結合)、および受容体内在化、受容体媒介シグナル(例えば、哺乳類のGタンパク質の活性化、細胞質ゾルを含有しないカルシウムの濃度の急速および一時的な上昇の表示)、細胞反応機能(例えば、走化性の刺激または炎症性の伝達物質の放出)等を含むことができる細胞機能または構造の変更を指す。あるいは、シグナルは、ケモカイン受容体媒介の細胞接着を検出することによって判定可能である。ケモカインおよびケモカイン受容体の間の相互作用により、インテグリン親和性およびアビディティの修正による迅速な接着を生じさせることができる。例えば、Laudanna,Immunological Reviews 186:37−46(2002)を参照されたい。
【0078】
シグナルは、さらに、循環AMPまたはイノシトールリン酸塩等の二次伝達物質を定性的および定量的に判定することで計測可能であり、リン酸化反応または脱リン酸化反応の発生をさらに監視することができる。例えば、Premack,et al.Nature Medicine 2:1174−1178(1996)およびBokoch,Blood 86:1649−1660(1995)を参照されたい。
【0079】
さらに、CXCR7活性化の下流の他の事象を、シグナル活性を判定するために監視可能である。下流の事象は、ケモカイン受容体の刺激の結果として生じるこうした活性または発現を含む。典型的な下流の事象は、例えば、細胞の変更された状態を含む(例えば、通常細胞から癌細胞へ、または癌細胞から非癌細胞へ)。細胞反応には、(例えば、内皮細胞への)細胞の接着を含む。血管形成に関与する確立されたシグナルカスケードは、(例えば、VEGF媒介のシグナル)さらに、CXCR7モジュレータによって生じる効果を監視可能である。物質の血管形成を促進できる能力は、Leung et al.(1989)Science 246:1306−1309に記載されているように、例えば、ニワトリ胚絨毛尿膜において評価可能である。別のオプションは、Rastinejad et al.(1989)Cell 56:345−355に記載されるように、ラットの角膜にアッセイを実行することである。他のアッセイは、米国特許第5,840,693号に開示されている。卵巣血管形成モデルも利用可能である(例えば、Zimmerman,R.C.,et al.(2003)J.Clin.Invest.112:659−669,Zimmerman,R.C.,et al.(2001)Microvasc.Res.62:15−25;およびHixenbaugh,E.A.,et al.(1993)Anat.Rec.235:487−500を参照)。
【0080】
他のスクリーニング方法は、特定の調節タンパク質の発現はCXCR7の有無または活性化によって誘導されるという観察に基づく。このようなタンパク質の検出は、このため、CXCR7の活性を間接的に判定するために使用可能である。一連のELISAの調査を行い、CXCR7でトランスフェクトされた細胞および非トランスフェクト細胞に対する、細胞培地における様々な分泌タンパク質の相対濃度を比較した。これらの研究により、CXCR7は、成長因子、ケモカイン、メタロプロテイナーゼおよびメタロプロテイナーゼの抑制剤を含む、多数の多様な調節タンパク質の産生を誘発することが明らかになった。このため、提供されているスクリーニング方法のいくつかは、試験薬がCXCR7によって、特定の成長因子、ケモカイン、メタロプロテイナーゼおよびメタロプロテイナーゼの抑制剤の産生を統制するかどうかを判定することを含む。いくつかの例において、アッセイは、CXCR7誘導タンパク質の産生を増加させることがわかっているため、限られた血清の条件において成長した細胞(またはその抽出物)と共に行われる。
【0081】
以下のタンパク質は、各クラス内の特定のタンパク質、(1)成長因子(例えば、GM−CSF)、(2)ケモカイン(例えば、RANTES、MCP−1)、(3)サイトカイン(例えば、IL−6)(4)メタロプロテイナーゼ(例えば、MMP3)、および(5)メタロプロテイナーゼの阻害物質(例えば、TIMP−1)と共に、検出されたタンパク質の様々なクラスの実施例である。また、これらの様々なクラスの他のタンパク質がさらに検出可能であることが予想される。
【0082】
これらの特定のタンパク質は、当分野において公知の標準的な免疫学的検出方法を使用して検出可能である。高生産性フォーマットで使用するために適したあるアプローチは、例えば、マルチウェルプレートで実行されるELISAである。TIMP−1を検出するためのELISAキットは、DakoCytomation(製品コード番号EL513)から入手可能である。IL−6およびMMP3のELISAキットが、RおよびDシステムから入手可能である。特に上記にリストされたタンパク質と結合する抗体のサプライヤーのさらなる実施例を、以下の実施例にて概説する。酵素であるメタロプロテイナーゼなどのタンパク質は、さらに、公知の酵素アッセイによって検出可能である。
【0083】
他の実施形態においては、CCX−CK2の考えられるモジュレータを、細胞接着を調節する能力について試験する。内皮細胞単層に対する腫瘍細胞の接着が、転移性の侵襲のモデルとして調査されている。(例えば、Blood and Zetter,Biovhem.Biophys.Acta,1032,89−119(1990)を参照されたい。内皮細胞のこれらの単層はリンパ管構造を模倣しており、様々なサイトカインおよび成長因子(例えば、TNFアルファおよびIL−1ベータ)で刺激することができる。細胞発現CXCR7は、静的接着アッセイおよび細胞がフロー条件化で生体内における管構造の力を模倣するアッセイにおいて、この単分子層に接着する能力について、評価することが可能である。さらに、接着を評価するためのアッセイは、さらに、生体内で実行することもできる(例えば、von Andrian,U.H.Microcirculation.3(3):287−300(1996)を参照)。
【0084】
4.バリデーション
従来のスクリーニング方法のいずれかによって当初、識別される物質を、さらに、擬似活性(apparent activity)を検証するために試験することができる。好適には、このような調査は適した動物モデルで実行される。このような方法の基本的なフォーマットには、ヒトの疾病モデルとして役立つ動物への初期のスクリーニング中に識別される鉛複合体の投与、および、次に疾病(例えば、癌、心筋梗塞(症)、創傷治癒、または血管形成に関する他の疾病)が実際に調節されるおよび/または疾病または症状が改善するかどうかの判定を含む。バリデーションの調査に利用される動物モデルは、一般に、あらゆる種類の哺乳類である。適した動物の特定の実施例は、霊長類、マウス、ラットおよびゼブラフィッシュを含むが、これに限定されない。
【0085】
一部の実施形態においては、関節炎の動物モデルを、CXCR7を調節する物質への治療的利用をスクリーニングおよび/または検証するために使用する。典型的な関節炎の動物モデルには、例えば、コラーゲン誘導関節炎(CIA)動物モデルを含む。
【0086】
B.CXCR7と相互作用のある物質
CXCR7のモジュレータ(例えば、抑制因子または作用薬)は、例えば、抗体(当分野で公知の結合タンパク質のモノクローナル抗体、ヒト化または他のタイプを含む)、小さい臓器分子、siRNA、CXCR7ポリペプチドまたはその変異体、ケモカイン(SDF−1および/またはI−TACを含むがこれに限定されない)、ケモカイン模倣薬、ケモカインポリペプチド等を含むことができる。
【0087】
CXCR7のモジュレータとして試験される物質は、ポリペプチド、糖、核酸または脂質等の任意の小さい化学的複合体、または生体エンティティにすることができる。あるいは、モジュレータは、遺伝子的に変化した版、またはケモカインまたは他のリガンドのペプチド模倣薬版にすることができる。典型的には、試験化合物は、小さい化学的分子およびペプチドとなる。基本的に、本発明のアッセイの考えられるモジュレータまたはリガンドとして任意の化学的複合体を使用できるが、最も多くは、水溶液または臓器(特にDMSOベースの)溶液に溶解される複合体が使用される。アッセイは、典型的には並列実行される(例えば、ロボットアッセイにおけるマイクロタイタープレート上のマイクロタイター形式)、アッセイステップの自動化およびアッセイへの任意の便利なソースからの複合体の提供によって、大きな化学的ライブラリをスクリーニングするように指定される。Sigma(St.Louis,MO)、Aldrich(St.Louis,MO)、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)、Fluka Chemika−Biochemic Analytika(Buchs,Switzerland)等を含む、多数の化学的複合体サプライヤーが存在することが理解されよう。
【0088】
一部の実施形態においては、物質は、1,500ダルトン未満、およびいくつかの場合においては、1,000、800、600、500、または400あるいは300ダルトン未満の分子量を有する。比較的小さいサイズの物質は、より小さい分子は、より高い分子量を有する物質よりも、経口吸収を含む良好な薬物動態性質と互換可能な物理的化学的特性を有している可能性が高いため、好適であるといえる。例えば、浸透性および溶解性に基づく薬として、有効である可能性がより低い物質が、Lipinskiらによって以下のように説明されている。5H結合ドナーより多く有する(OHsおよびNHsの合計として表される)、500を超える分子量を有する、5を超えるLogPを有する(または4.15を超えるMLogPを有する)、および/または10H結合受容体より多くを有する(NsおよびOsの合計として表される)。例えば、Lipinski et al.Adv Drug Delivery Res 23:3−25(1997)を参照されたい。生体輸送のための基質である複合体クラスは、典型的には例外である。
【0089】
一実施形態において、ハイスループットのスクリーニング方法は、多数の考えられる治療的な複合体(考えられるモジュレータまたはリガンド複合体)を含むコンビナトリアル化学的またはペプチドライブラリの提供を含む。このような「コンビナトリアル化学的ライブラリ」または「リガンドライブラリ」は次に、所望の特徴的な活性を示すこうしたライブラリメンバー(特定の化学種またはサブクラス)を識別するために、本明細書に記載されているように、1つ以上のアッセイにおいてスクリーンされる。このように識別される複合体は、従来の「鉛複合体」として機能することができるか、または可能性のある治療または実際の治療として使用できる。
【0090】
コンビナトリアル化学的ライブラリは、多数の化学的「構成要素」を結合することにより、化学的合成または生体合成によって生成される多様な化学的複合体を集めたものである。例えば、ポリペプチドライブラリ等の線形コンビナトリアル化学的ライブラリが、所定の複合体長さのあらゆる考えられる方法で、化学的構成要素(アミノ酸)セットを組み合わせることで、形成される(つまり、ポリペプチド複合体におけるアミノ酸の数)。何百万もの化学的複合体は、化学的構成要素のこのようなコンビナトリアル混合によって合成可能である。
【0091】
コンビナトリアル化学的ライブラリの作製およびスクリーニングが、当業者に公知である。このようなコンビナトリアル化学的ライブラリには、ペプチドライブラリが含まれるが、これに限定されない(例えば、米国特許第5,010,175号、Furka,Int.J.Pept.Prot.Res.37:487−493(1991)およびHoughton et al,Nature 354:84−88(1991)を参照)。化学的多様性ライブラリの生成のための他の化学物質をさらに使用することができる。このような化学物質には、ペプトイド(例えば、PCT文書第WO91/19735号)、コードされたペプチド(例えば、PCT文書第WO93/20242号)、無作為のバイオオリゴマー(例えば、PCT文書第WO92/00091号)、ベンゾジアゼピン系薬(例えば、米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピン系薬およびディペプチド等のダイバーソマー(diversomers)(Hobbs et al,Proc.Nat.Acad.Sci.USA90:6909−6913(1993))、ビニル性ポリペプチド(Hagihar et al,J.Amer.Chem.Soc.114:6568(1992))、グルコース付着物を有する非ペプチド系ペプチド模倣薬(Hirschmann et al.,J.Amer.Chem.Soc.114:9217−9218(1992))、小さい複合体ライブラリの類似体臓器合成(Chen et al.,J.Amer.Chem.Soc.116:2661(1994))、オリゴカルバミン酸(oligocarbamates)(Cho et al.,Science.261:1303(1993))、および/またはペプチジルホスホン酸塩(Campbell et al.,J.Org.Chem.59:658(1994))、核酸ライブラリ(Ausubel、BergerおよびSambrook,all supraを参照)、ペプチド核酸ライブラリ(例えば、米国特許第5,539,083号を参照)、抗体ライブラリ(例えば、Vaughn et al.,Nature Biotechnology,14(3):309−314(1996)およびPCT/US96/10287を参照)、炭水化物ライブラリ(例えば、Liang et al.,Science,274:1520−1522(1996)および米国特許第5,593,853号を参照)、小さい臓器分子ライブラリ(例えば、ベンゾジアゼピン系薬、Baum C&EN、Jan 18、33ページ(1993)、イソプレノイド、米国特許第5,569,588号、チアゾリジノンおよびメタチアザノン(metathiazanones)、米国特許第5,549,974号、ピロリジン、米国特許第5,525,735号および第5,519,134号、モルホリノ複合体、米国特許第5,506,337号、ベンゾジアゼピン系薬、第5,288,514号等を参照)を含むが、これに限定されない。
【0092】
コンビナトリアルライブラリ作製のための手段が市販されている(例えば、357MPS,390MPS,Advanced Chem Tech,Louisville KY,Symphony,Rainin,Woburn,MA,433A Applied Biosystems,Foster City,CA,9050、さらに、Millipore,Bedford,MAを参照)。さらに、多数のコンビナトリアルライブラリが市販されている(例えば、ComGenex,Princeton,N.J.,Tripos,Inc.,St.Louis,MO、3D Pharmaceuticals,Exton,PA,Martek Biosciences,Columbia,MD等を参照)。
【0093】
V.CXCR7の癌、血管形成および他の生体的態様
本発明の抗体は、体外、生体内、または生体外で細胞発現CXCR7に接触することができる(つまり、体内から除去して治療し、体内に戻す)。本発明の抗体は、ケモカイン受容体活性の生体内の調節のために哺乳類の対象に直接投与可能である。一部の実施形態においては、抗体は、CXCR7への結合のためにSDF1および/またはI−TACと拮抗する。一部の実施形態においては、抗体は、配列番号23および/または配列番号25、または配列番号27および/または配列番号29を含まない。
【0094】
一部の実施形態においては、CXCR7抗体は癌にかかっている対象に投与される。いくつかの場合においては、CXCR7のモジュレータは、癌、例えば、神経膠腫、中皮腫、メラノーマ、リンパ腫、白血病、腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、グリア芽腫、白血病、リンパ腫、前立腺癌、およびバーキットリンパ腫、頭部癌および咽頭癌、大腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝胆道癌、胆嚢癌、小腸癌、直腸癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、陰茎癌、尿道癌、睾丸癌、子宮頸癌、膣癌、子宮癌、卵巣癌、甲状腺癌、副甲状腺の癌、副腎癌、膵臓内分泌線癌、カルチノイド癌、骨肉腫、皮膚癌、網膜芽腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(他の癌の場合には、CANCER:PRINCIPLES AND PRACTICE(DeVita,V.T.et al.eds 1997を参照))、さらに、アルツハイマー病および多発性硬化(症)等の脳およびニューロンの機能不全、腎臓機能不全、関節リウマチ、心臓同種移植片拒絶、アテローム性動脈硬化症、ぜんそく、糸球体腎炎、接触性皮膚炎、炎症性腸疾患、大腸炎、乾癬、再かん流傷害、および、本明細書に記載されている他の疾患および疾病を治療するために投与される。
【0095】
本発明はさらに、本発明の抗体を投与することにより、それを必要とする任意の対象における血管形成の減少を含む。例えば、CXCR7を本発明の抗体に接触させることによるCXCR7活性の低減、それによる血管形成の低減は、腫瘍、特に固形癌の形成、成長および/または転移を抑制するために有用である。調節されたCXCR7および血管形成に関連する実施形態の説明は、例えば、米国特許出願第11/050,345号に記載されている。
【0096】
不要または問題のある血管形成を含む他の疾患には、関節リウマチ、乾癬、眼の血管由来の疾病、例えば、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、黄斑変性症、角膜移植拒絶反応、血管新生緑内障、後水晶体線維増殖症、ルベオーシス、オスラー−ウェバー症候群、心筋血管形成、血小板新血管形成、毛細血管拡張症、血友病関節、血管線維腫、腸の接着を含む、内皮細胞過剰または異常な刺激の疾病、クローン病、乾癬、湿疹、および強皮症等の皮膚病、糖尿病、糖尿病性網膜症、未熟児の網膜症、年齢に関係する黄斑変性症、アテローム性動脈硬化症、強皮症、創傷肉芽形成および肥厚性瘢痕、つまり、ケロイド、および猫引っかき病および潰瘍(ヘリコバクターピロリ)等の病理学的な帰結としての血管形成を有する疾病が含まれ、さらに、本発明の抗体で治療可能である。血管由来の抑制剤を、接着、特に観血療法または腹腔鏡手術および熱傷収縮後に生じる接着等の、腹腔内または骨盤の接着を防ぐまたは抑制するために使用可能である。血管形成抑制剤を使用することで有利に取り扱われるべき他の条件は、移植後の瘢痕化の発生の予防を含む、肝硬変、急性呼吸促迫症候群後の肺線維症または他の新生児肺線維症、一時的な人工装具の埋め込み、および脳および硬膜の間の手術後の接着を含む。子宮内膜症、ポリープ症、心臓肥大、および、肥満症も、血管形成抑制によって治療してもよい。これらの疾患は、子宮筋腫、前立腺肥大、およびアミロイド症等の他のタイプの通常の組織のサイズの増大または成長を含むことがある。本発明の抗体は、本明細書中に記載される疾患または疾病のいずれかのために予防学的にまたは治療的に利用してもよい。
【0097】
本発明の抗体によるCXCR7活性の低減は、さらに、疾患の宿主を有効に治療するために、新血管形成を防ぐために使用することができる。このため、例えば、血管形成の低下を、血管の疾患(例えば、血管腫および動脈硬化プラーク内の毛細血管増殖)、筋肉疾病(例えば、心筋血管形成、心筋梗塞(症)または平滑筋内の血管形成)、関節(例えば、関節炎、血友病関節等)、および血管形成に関わる他の疾患の治療の一部として使用可能である。血管形成の促進は、さらに、創傷、骨折、および火傷、炎症性の疾病、虚血性心疾患、および末梢血管疾病の治癒等のさらなる血管新生を必要とする疾病の様々な生理学的なプロセスおよび治療の進展に役立つことができる。
【0098】
本発明の抗体は、創傷治癒を向上させるためにも使用することができる。本発明を特定の作用メカニズムに制限することを意図することなく、CXCR7の拮抗作用によって、内生リガンドを、代わりにより低い親和性の受容体に結合させることで、創傷治癒を向上させるということであり得る。例えば、SDF−1はCXCR7およびCXCR4の両方に結合するが、より低い親和性を有するCXCR4に結合する。同様に、I−TACは、I−TACがCXCR7に結合するよりも低い親和性でCXCR3に結合する。これらのリガンドのCXCR7への結合を防ぐことによって、CXCR7抑制因子は、リガンドを他の受容体に結合させることが可能であり、これによって、創傷治癒を向上し得る。このため、創傷治癒を向上させるためのCXCR7の拮抗作用は、作用薬によってCXCR7活性を刺激することによって創傷治癒を向上させるのとは異なるメカニズムによって媒介され得る。
【0099】
新血管形成に関連する疾患および症状の治療とは別に、血管形成抑制を、新血管形成に関連する通常の生理的状態の発生を調節または防ぐために使用可能である。このため、例えば本発明の方法は、受胎調節として使用可能である。本発明によると、卵巣または子宮内膜内のCXCR7活性の低減は、排卵、受精卵の着床、胎盤形成等に関連する新血管形成を減少させることができる
【0100】
血管形成の抑制剤は、さらに他の治療的な用途がある。例えば、本発明の抗体は、以下の目的に利用され得る。
(a)脂肪組織切除および肥満症治療。例えば、Kolonin et al.,Nature Medicine 10(6):625−632(2004)を参照。
(b)子癇前症の治療。例えば、Levine et al.,N.Engl.J.Med.350(7):672−683(2004),Maynard,et al.,J.Clin.Invest.111(5):649−658(2003)を参照。
(c)心臓血管疾病の治療。例えば、March,et al.,Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.287:H458−H463(2004)、Rehman et al,Circulation 109:1292−1298(2004)を参照。
【0101】
VI.投与および医薬組成物
本発明の医薬組成物は、例えば、本発明の抗体および医薬的に容認可能な担体を含んでもよい。医薬的に容認可能な担体は、投与される特定の組成物によって、また、組成物の投与に使用される特定の方法によって、一部が判定される。したがって、本発明の医薬組成物の広範囲の適した処方が存在する(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.1985)を参照)。
【0102】
投与に適した処方には、酸化防止剤、緩衝液、静菌薬、および処方を等浸透圧にする溶質を含む、水溶液および非水溶液、等浸透圧の殺菌済み溶液、および、懸濁化剤、可乳化剤、増粘剤、安定剤、および保存料を含む水溶性および非水溶性の殺菌済み懸濁液を含む。この発明の実施において、組成物は、例えば、経口的、経鼻的、局所的に、静脈内、腹腔内、皮下、または髄腔内に投与可能である。複合体の処方は、単位投与または複数投与でアンプルおよび薬壜等の密封容器で提供することができる。溶液および懸濁液は、上述した種類の殺菌した粉末、顆粒、およびタブレットから作製可能である。
【0103】
組成物は、例えば、インスリンまたは化学療法を特定の臓器または腫瘍に伝達するために使用するタイプの、融合ポンプ内にて投与可能である。本発明の組成物は、切除をする前に、注射器またはカテーテルを、腫瘍または原発性腫瘍部位に直接使用して、または原発性腫瘍の切除後に組織的に、注入することが可能である。本発明の組成物は、局所的(topically)にまたは必要に応じて局部的(locally)に投与可能である。長期にわたる局部的な投与のために、抗体は、腫瘍の部位に注入される、制御された徐放性の埋め込みで投与してもよい。あるいは、個体の細胞を、本発明の抗体を発現するように、プラスミドによって生体外でトランスフェクトし、次に腫瘍部位に注入することができる。皮膚の症状の局所的な治療には、酵素抗体を軟膏またはジェルで、皮膚に投与することができる。
【0104】
一部の実施形態においては、CXCR7本発明の抗体を、例えば、化学治療薬、放射線等を含む他の適切な治療薬による組み合わせで投与可能である。組み合わせ療法で使用する適切な物質の選択を、従来の製薬的な法則によって、当業者が行ってもよい。治療薬の組み合わせは、例えば、癌、創傷、腎臓機能不全、脳の機能不全またはニューロンの機能不全等の様々な疾患の効果的な治療または予防のために相乗的に作用し得る。このアプローチを使用して、各物質がより低用量で治療の効能を得られ得るため、望ましくない副作用が低減する。
【0105】
本発明の文脈における患者に投与される投与量は、経時的な対象の有効な反応をもたらすために十分であるべきである(例えば、腫瘍の大きさまたは腫瘍の負荷を縮小させるため)。いずれの患者にも最適な投与量レベルは、使用される特定のモジュレータの効能、年齢、体重、物理的活性、および患者の食生活を含む、様々な因子、他の薬との考えられる組み合わせ、および特定の疾病の重症度によって決まる。投与量はさらに、特定の対象における特定の複合体またはベクターの投与に伴う、望ましくない副作用の存在、性質、および程度によって判定される。
【0106】
投与すべき抗体の有効量を判定する上で、医者は、抗体、抗体毒性、および抗体の抗体産生のプラズマレベルの計算を評価してもよい。一般的に、抗体と等価の投与量は、典型的な対象の場合、約1nG/kg乃至10mg/kgである。
【0107】
投与に関しては、本発明の抗体は、検体の健康全般および質量に適するように、抗体のLD−50、および様々な濃度における抗体の副作用によって判定される割合で投与することができる。受容者の免疫系による抗体の除去も、適した投与用量に影響し得る。投与は、一回または分割して行うことができる。
【0108】
本発明の抗体を含有する組成物は、治療的なまたは予防的な治療のために投与可能である。治療的用途において、組成物は、疾病およびその合併症を治癒させる、または少なくとも部分的に阻止する(腫瘍サイズの減少等)ために十分な量を、疾病(例えば、癌、関節炎または他のCXCR7関連の疾病または疾患)に罹患している患者に投与する。これを達成するために適切な量を、「治療的に有効な投与量」として定義する。この利用に有効な量は、疾病の重病度および患者の健康の一般的な状態による。組成物の、一回または複数回の投与は、患者によって必要時に、および患者が耐えられるような、用量および頻度によって、投与し得る。いかなる場合においても、組成物は、患者を有効に治療するために、本発明の物質の十分な量を提供する必要がある。哺乳類の癌の進展を防ぐまたは遅らせることができるモジュレータの量は、「予防学的に有効な投与量」と称される。予防的な治療に必要な特定の投与量は、その哺乳類の病状および病歴、および、年齢、体重、性別、投与経路、効率等の他の因子によって決まり、特定の癌が予防される。このような予防的治療は、例えば、癌の再発を防ぐために以前に癌に罹患したことのある哺乳類に、または、癌を進行させる可能性が高いと考えられる哺乳類に使用してもよい。
【0109】
VII.組み合わせ療法
本発明の抗体は、単独で、または1つ以上の他の薬と共に提供可能である。考えられる組み合わせパートナーは、例えば、さらなる抗血管由来因子および/または化学治療薬(例えば、細胞毒性薬)または放射線、癌ワクチン、免疫割賦剤、抗血管物質、シグナル伝達抑制物質、抗増殖剤、またはアポトーシス誘導因子を含むことができる。
【0110】
本発明の抗体は、インテグリン結合を阻害する抗体およびペプチド、メタロプロテイナーゼ(例えば、マーミスタット(marmistat))を抑制するタンパク質および小さい分子、内皮細胞内のリン酸化反応カスケードを抑制する物質(例えば、ハーバマイシン(herbamycin))、血管形成の公知の優勢ネガティブ受容体阻害因子、血管形成の誘引因子に対する抗体またはその活性を阻害する他の複合体(例えば、スラミン(suramin))、または他の手段によって機能する他の複合体(例えば、レチノイド、IL−4、インターフェロン等)と共に使用可能である。実際に、このような因子は異なるメカニズムによって血管形成を調節してもよいため、他の抗血管由来物質と組み合わせて本発明の抗体を使用することは、所望の組織内の血管形成のより強力な(および潜在的に相乗的な)抑制を可能にする。
【0111】
MMP−2(マトリックス−メタロプロテイナーゼ2)抑制剤、MMP−9(マトリックス−メタロプロテイナーゼ9)抑制剤、およびCOX−II(シクロオキシゲナーゼII)抑制剤等の抗血管形成剤を、本発明の抗体および本明細書に記載している医薬組成物と共に使用可能である。本発明の抗CXCR7抗体はさらに、EGFR(表皮性成長因子受容体)反応を抑制する物質等のシグナル伝達抑制剤、EGFR抗体、EGF抗体、およびEGFR抑制剤である分子、VEGF受容体およびVEGFを抑制する分子等のVEGF(血管内皮成長因子)抑制剤、および、臓器分子またはerbB2受容体と結合する抗体、例えば、HERCEPTIN(登録商標)(Genentech,Inc.of South San Francisco,California,USA)等のerbB2受容体の抑制剤と共に使用可能である。
【0112】
本発明の抗CXCR7抗体はさらに、血管形成および/または創傷治癒を促進する薬を含む他の薬と組み合わせることができる。当業者は、1つ以上の医療外科的に有用な物質または治療薬、例えば、さらに血管由来反応を増強し、および/またはこの組成物が血管形成が必要な所望の部位に適用される場合に治癒プロセスを促進および/または有益に修正するものを組み込むことを理解するであろう。例えば、さらに血管形成、修復および/または組織成長を促進するために、いくつかのホルモン、成長因子または分裂促進タンパク質の少なくとも1つを組成物に含むことができる。例えば、線維芽細胞成長因子、血小板由来の成長因子、マクロファージ由来の成長因子等である。さらに、抗菌薬物質、例えば、ゲンタマイシン硫酸塩、またはエリスロマイシン等の抗生物質を組成物に含むことができる。他の医療外科的に有用な物質には、抗炎症薬、鎮痛薬、麻酔薬、炎症剤、酵素、抗ヒスタミン剤および着色剤を含むことができる。
【0113】
本発明の抗CXCR7抗体はさらに、関節炎治療のための薬を含む、他の薬と組み合わせることができる。このような薬剤の例には、抗炎症性の治療薬を含む。例えば、プレドニゾロンおよびメチルプレドニゾロン等のグルココルチコステロイドがよく使用される抗炎症性の薬である。非ステロイド系抗炎症性の薬(NSAID)も炎症を抑えるために使用される。NSAIDは、炎症部位において過剰に産生されるプロスタグランジンの産生の中核となっている、シクロオキシゲナーゼ(COX)酵素、COX−1およびCOX−2を抑制する。さらに、炎症促進サイトカイン、腫瘍壊死因子α(TNFα)は、関節炎を含む複数の炎症性の発生に関連しており、抗TNFα療法が臨床的に使用されている。
【0114】
VIII.診断的および/または予後の応用で使用するためのキット
上述された診断的、研究的、および治療的用途における利用のために、本発明により、キットも提供される。診断的および研究的用途において、このようなキットは、検定用試薬、緩衝液、および本発明の抗CXCR7抗体のいずれかまたは全てを含んでもよい。治療的な製品は、殺菌した生理的食塩水または別の医薬的に容認可能な乳濁液および懸濁基材を含んでもよい。
【0115】
さらに、キットは、本発明の方法の実施にあたり、方針(つまり、手順)を含む指導的な資料を含んでもよい。この指導的な資料は典型的には書面または印刷された資料を含むが、これらは、このようなもののみに制限されない。このような指示を保存することができ、これをエンドユーザに伝達できる任意の媒体が、本発明で想定される。このような媒体には、電子的保存媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CDROM)等が含まれるが、これに限定されない。このような媒体は、このような指導的な資料を提供するインターネットサイトへのアドレスを含んでも良い。
【実施例】
【0116】
G−タンパク質結合受容体(GPCR)に対する抗体の産生は、周知のことながら困難であった。われわれは、カナダ特許出願第C2 350 078号に概説されているGenovac AG,DEの方法を使用した。CXCR7に結合する抗体は、マウスの、cDNA発現CXCR7(配列番号30)の植菌によって産生された。つまり、CXCR7は発現ベクターに複製され、およびマウスは遺伝子銃方法によって、ベクターで接種された。適切な時点において、B細胞が分離させられ、これは標準的な技術によって骨髄腫細胞と融合、および、体外培養で選択されるハイブリドーマ細胞と融合された。クローン培養物からの上清が、フロー血球計算によって、CXCR7で安定してトランスフェクトされた細胞との結合について、分析された。正のクローンが増殖され、流動細胞スクリーニングがさらに数回行われた。
【0117】
モノクローナル抗体6E10および11G8はCXCR7と結合すると判定された。抗体6E10および11G8は、CXCR7を内生的に産生しないトランスフェクタント細胞株において、また、HeLaおよびMCF−7(ATCC、VA)等のCXCR7を内生的に発現する細胞上においても、CXCR7を検出した。さらに抗体は、CXCR7のマウス同族体を認識可能であった。例えば、抗体6E10および11G8は、マウス乳房の腫瘍細胞株4Tlおよびルイス肺癌細胞(ATCC、VA)においてCCX−CR2を検出した。アイソタイプ制御ではなく、抗体6E10および11G8は、CXCR7でトランスフェクトされたHEK293細胞株で検出されたが、空のベクターでトランスフェクトされたHEK293細胞または他のケモカイン受容体(例えば、CXCR2)を発現させるこれらの細胞には結合しなかった。
【0118】
放射性リガンドの拮抗する結合アッセイによって示されるように、抗体も中和した。抗体6E10および11G8の両方は、マウスおよびヒトのCXCR7の両方と結合するためにSDF−1およびI−TACの両方と拮抗する。抗体11G8は、典型的には、抗体6E10の場合よりも、ケモカイン結合のより大きな抑制率を示す。
【0119】
抗体6E10および11G8はさらに、固定パラフィン埋め込み組織切片において免疫組織化学(IHC)アッセイ内でCXCR7を認識する。様々な組織タイプにおける実験において、抗体6E10および11G8によって汚染するIHCは、各組織上で放射性標識されたSDFまたはI−TACを組み込む結合アッセイによって判定される発現パターンと一致した。例えばCXCR7汚染が、E13胎児のマウスの切片で見つかったが、E17の胎児のまたはアダルトマウスの切片では見つからなかった。CXCR7汚染は、ヒトのCXCR7を安定して発現する細胞のサイトスピンでも見られた。
【0120】
重鎖および軽鎖可変領域のコード配列、および予測されるアミノ酸配列が決定された。6E10の重鎖可変領域は配列番号23(配列番号22でコードされる)に含まれる。6E10の軽鎖可変領域は配列番号25(配列番号24でコードされる)に含まれる。11G8の重鎖可変領域は配列番号27(配列番号26でコードされる)に含まれる。11G8の軽鎖可変領域は配列番号29(配列番号28でコードされる)に含まれる。
【0121】
われわれは、11G8および6E10の両抗体は、FACSによって細胞表面に発現するCXCR7受容体を認識することを理解した。これは、FACSプロットのX軸に沿って、背景(白線)上の蛍光シグナル(塗りつぶし)の増加として示される(図2)。アミノ酸残基11G8および6E10が認識および結合する対象について問い合わせるために、CXCR7配列由来の多数の短いペプチド(0.5乃至5μG)は、100μlのPBSにおいて、いずれかの(0.5乃至5μG)で事前培養された。この混合物は、次に、室温で、15分間、CXCR7を発現する500,000個の細胞と共に培養された。抗体がペプチドでコードされる配列を認識した場合には、ペプチドは、結合から細胞関連の受容体へ、抗体を有効に拮抗させ、これにより、FACSプロットが徐々に低減する。配列がいずれかの抗体と相互作用しなかった場合、減少は観察されなかった。これらの値は、不完全な抗体汚染を示す「ペプチドなし」、ペプチド拮抗を示す「ペプチド2.2.1」、およびペプチド拮抗がないことを示す「ペプチド2.3.4」によって、図2で例示されている。このアッセイにおけるペプチド配列のわずかな変更によって、抗体の認識に必要な最小のペプチド配列が認識された。図3は、抗体11G8または6E10と拮抗するペプチドの概要について示す。
【0122】
本発明は、明確な理解を目的として、図示および実施例によってある程度詳細に記載しているが、当業者は、本発明の教示に照らして、添付の請求項に記載の精神または範囲から逸脱することなく、特定の変更および修正を加えることが可能であることが明白であろう。
【0123】
本明細書内で引用される全ての出版物、データベース、ジェンバンク(GenBank)配列、特許、および特許出願は、それぞれが参照として組み込まれるよう具体的および個別に示されているかのように、本明細書中において参照として組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FSDISWPC(配列番号12)から成るポリペプチド、または
SWPCNSSDCIVV(配列番号15)から成るポリペプチドに結合する抗体であって、
前記抗体は、配列番号23、配列番号25、配列番号27、または配列番号29に示される可変領域の相補性決定領域(CDR)を含まないことを特徴とする抗体。
【請求項2】
前記抗体は検出可能な標識に連結されることを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体はモノクローナル抗体であることを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体はヒト化抗体であることを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体は、FSDISWPC(配列番号12)から成るポリペプチドに結合することを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体は、SWPCNSSDCIVV(配列番号15)から成るポリペプチドに結合することを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体は、CXCR7への結合のためにSDF−1と拮抗することを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項8】
医薬的に容認可能な賦形剤および請求項1に記載の抗体を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項9】
前記抗体はモノクローナル抗体であることを特徴とする請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記抗体はヒト化抗体であることを特徴とする請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記抗体はFSDISWPC(配列番号12)から成るポリペプチドに結合することを特徴とする請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記抗体はSWPCNSSDCIVV(配列番号15)から成るポリペプチドに結合することを特徴とする請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項13】
生体試料中においてCXCR7を発現する細胞を検出する方法であって、前記方法は、前記生体試料を請求項1に記載の抗体と接触させるステップと、前記抗体の存在を検出するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
疾病を治療、予防、または改善する方法であって、前記方法は、請求項1に記載の抗体をそれを必要とする個体に投与するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記投与するステップの後に、前記個体において癌細胞の増殖が抑制されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記投与するステップの後に、前記個体において血管形成または血管新生が抑制されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記個体は関節炎に罹患している、または関節炎に罹患しやすい状態であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記個体は癌に罹患していることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】
CXCR7のモジュレータを識別するための方法であって、
(a)250個未満の配列番号30の連続したアミノ酸を有するポリペプチドへ試験薬を接触させるステップであって、前記ポリペプチドは、FSDISWP(配列番号39)またはWPCNSSDCIV(配列番号40)またはFSDISWPC(配列番号12)またはSWPCNSSDCIVV(配列番号15)を含む、ステップと、
(b)前記ポリペプチドに結合する薬剤を選択するステップであって、
前記ポリペプチドへの前記試験薬の結合は、前記試験薬がCXCR7活性のモジュレータであることを示す、ステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
前記選択するステップは、前記ポリペプチドへの結合のために、SDF−1またはI−TACと拮抗する前記試験薬の能力を計測するステップを含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリペプチドは、50個未満の配列番号30の連続するアミノ酸を有することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリペプチドは、FSDISWPC(配列番号12)またはSWPCNSSDCIVV(配列番号15)から成ることを特徴とする請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−506912(P2010−506912A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533326(P2009−533326)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/021927
【国際公開番号】WO2008/048519
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(502129656)ケモセントリックス, インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】