説明

D/A変換回路及び半導体装置

【課題】 高いビット数のデジタル信号に対応し、線形性が良く、占有面積の小さいD/A変換回路を提供する。
【解決手段】 n−m+1個(mはnより小さい自然数)の容量を有し、下位mビットのデジタルビデオ信号によって、前記n−m+1個の容量のうちの1個の容量への電荷の充放電が制御され、nビットのデジタルビデオ信号のうち、上位n−mビットのデジタルビデオ信号によって、前記n−m+1個の容量のうちの残りのn−m個の容量への電荷の充放電が制御されていることを特徴とするD/A変換回路。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、D/A変換(デジタル/アナログ変換)回路(DAC)に関する。特に、半導体装置の駆動回路に用いられるDACに関する。また、このDACを用いた半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ガラス基板上に形成された多結晶シリコン膜を活性層に用いた、薄膜トランジスタ(TFT)の研究開発が活発に行われている。多結晶シリコン膜を用いたTFTは、非晶質シリコン膜を用いたTFTと比べて移動度が2桁以上高いため、TFTのゲート幅を小さく微細化しても回路の動作に必要な電流値を十分確保できる。よって、マトリクス型のフラットパネルディスプレイの画素部とその駆動回路を同一基板上に一体形成した、システム・オン・パネルの実現が可能である。
【0003】システム・オン・パネルの実現は、ディスプレイの組立工程や検査工程の削減によるコストダウンを可能にし、また、フラットパネルディスプレイの小型化、高精細化をも可能にする。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】フラットパネルディスプレイの更なる小型化、高精細化を進める上で課題となるのは、高速動作が可能で、かつ基板上の占有面積の小さいDACの実現である。
【0005】DACには様々な種類のものが存在するが、代表的なものとして容量分割型と、抵抗分割型とが挙げられる。容量分割型のDACは、抵抗分割型に比べて比較的少ない面積で高速に動作させることが可能である。
【0006】図11に、従来の容量分割型のDACの一例を示す。図11に示す従来の容量分割型のDACは、nビットのデジタル信号D1〜Dnの各ビットが制御するn個のスイッチSW[1]〜SW[n]と、各スイッチに接続されたn個の容量C、2C、…、2n-1Cと、リセットスイッチSWRとを有している。また、この従来のDACには、電源A(電位VA)、電源B(電位VB)が接続されている。電源Aと電源Bは異なる電位に保たれている。また、DACから出力されるアナログ信号の電位VOUTは出力線に与えられる。
【0007】スイッチSW[1]〜SW[n]のそれぞれに、対応するビットのデジタル信号が入力される。そして入力されたデジタル信号の有する0または1の情報によって、各容量が電源Aに接続されるか、電源Bに接続されるかが選択される。
【0008】この従来のDACの動作を順を追って説明する。この従来のDACの動作は、リセット期間TRと書き込み期間TAとに分けて説明することができる。
【0009】まず、リセット期間TR中、リセットスイッチSWRが閉じる。また、デジタル信号によって、全てのスイッチSW[1]〜SW[n]が同じ電源に接続される。ここでは仮に、電源Aに接続されたとする。このリセット期間終了直前における従来のDACの等価回路図を図12(A)に示す。なおCTは全ての容量の合成容量を意味する。
【0010】リセット期間TR終了後、書き込み期間TAが開始され、0または1の任意の情報を有する各ビットのデジタル信号が、スイッチSW[1]〜SW[n]を制御する。そして、各ビットの情報に応じて各容量は電源Aまたは電源Bに接続されることで、電荷がn個の容量へ充電され、その後定常状態になる。この時の等価回路図を図12(B)に示す。なおCAは電源Aに接続された容量の合成容量を意味し、CBは電源Bに接続された容量の合成容量を意味する。
【0011】上述したリセット期間TRと書き込み期間TAの動作を繰り返すことで、デジタル信号をアナログ信号に変換することが可能である。
【0012】容量分割型のDACは、上述したように抵抗分割型のDACに比べて比較的少ない面積で高速に動作するため、フラットパネルディスプレイの小型化を進める上で有望視されている。しかしフラットパネルディスプレイを高精細化するためにデジタル信号のビット数が増えると、容量分割型のDACの場合でも、その基板上における占有面積を抑えることが難しくなってくる。
【0013】占有面積を抑えるために、容量分割型のDACの各容量を縮小して設計したとすると、最下位ビットに対応する容量の面積及び容量値が小さくなる。容量は、形成する際のマスク等のずれ、パターニングのなまり、予測しなかった寄生容量等によって、容量値に多少のずれが生じる。そのため、容量を縮小して設計すると、最下位ビットに対応する容量の容量値に占めるずれの割合が大きくなり、線形性の良い容量分割型のDACを形成するのが難しくなる。
【0014】また、抵抗分割型のDACは、対応するデジタル信号のビット数が増加すると、面積が抑えられないばかりではなく、出力抵抗が高くなって高速動作が難しくなる。
【0015】上述した問題に鑑み、フラットパネルディスプレイの更なる小型化、高精細化を進めるために、デジタル信号のビット数が増加しても面積を抑えることが可能で、なおかつ高速駆動が可能な線形性の良いDACの作製を課題とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者は、容量分割型のDACの線形性の良し悪しを左右する、下位ビットに対応する容量の代わりに、抵抗分割型のDACもしくはセレクタ回路を用いることを考えた。
【0017】本発明では、例えばnビットのデジタル信号D1〜Dnに対応するDACには、下位mビット(m<n)のデジタル信号に対応する1個の容量と、上位n−mビットに対応するn−m個の容量とが設けられている。以下、下位mビットのデジタル信号に対応する1個の容量を下位ビット対応容量(CL)と呼ぶ。また以下、上位n−mビットに対応するn−m個の容量を上位ビット対応容量(CU)と呼ぶ。
【0018】下位ビット対応容量の容量値はC(Cは定数)で表され、n−m個の上位ビット対応容量の容量値は、上位ビットのうち下位の方に対応する容量から順に、それぞれCU[1]=C、CU[2]=2C、CU[3]=22C、…、CU[n−m−1]=2n-m-2C、CU[n−m]=2n-m-1Cで表される。
【0019】本発明のDACは、電位の異なる電源A(電位VA)と電源B(電位VB)に接続されている。そして、該2つの電源によるn−m個の上位ビット対応容量の充電は、上位n−mビットのデジタル信号の各ビットによって制御されている。
【0020】また、本発明のDACが有する下位mビットに対応する抵抗分割型のDACまたはセレクタ回路において、下位mビットのデジタル信号がアナログに変換され、下位ビット対応アナログ信号(電位VL)として、下位ビット用出力線に入力される。下位ビット用出力線に入力された下位ビット対応アナログ信号によって、下位ビット対応容量が充電される。
【0021】本発明のDACが有する容量は、全て1つの出力線に接続されており、デジタル信号の各ビットが有する1または0の情報により、各容量に充電される電荷の量によって、出力線の電位、言いかえるとアナログ信号の電位が定まる。
【0022】上記構成により、高速駆動が可能で、かつ面積を比較的抑えることができるという容量分割型の利点を生かしつつ、線形性を崩さないで高いビット数のデジタル信号に対応するDACを形成することができる。
【0023】以下に、本発明の構成を示す。
【0024】本発明によって、nビットのデジタル信号(nは自然数)をアナログ信号に変換するD/A変換回路であって、前記D/A変換回路はn−m+1個(mはnより小さい自然数)の容量を有しており、前記nビットのデジタル信号のうち、下位mビットのデジタル信号によって、前記n−m+1個の容量のうちの1個の容量への電荷の充電が制御され、前記nビットのデジタル信号のうち、上位n−mビットのデジタル信号によって、前記n−m+1個の容量のうちの残りのn−m個の容量への電荷の充電が制御されていることを特徴とするD/A変換回路が提供される。
【0025】本発明によって、nビットのデジタル信号(nは自然数)をアナログ信号に変換するD/A変換回路であって、前記D/A変換回路はn−m+1個(mはnより小さい自然数)の容量を有しており、前記nビットのデジタル信号のうち、下位mビットのデジタル信号によって、前記n−m+1個の容量のうちの、容量値がC(Cは定数)である1個の容量への電荷の充電が制御され、前記nビットのデジタル信号のうち、上位n−mビットのデジタル信号によって、前記n−m+1個の容量のうちの残りのn−m個の容量への電荷の充電が制御されており、前記残りのn−m個の容量は、その容量値がそれぞれC、2C、22C、…、2n-m-1で表されることを特徴とするD/A変換回路が提供される。
【0026】本発明によって、nビットのデジタル信号(nは自然数)をアナログ信号に変換するD/A変換回路であって、前記D/A変換回路はn−m+1個(mはnより小さい自然数)の容量と、2m個の抵抗とを有しており、前記nビットのデジタル信号のうち、下位mビットのデジタル信号と前記2m個の抵抗とによって定められた電荷が、前記n−m+1個の容量のうちの1個の容量へ充電され、前記nビットのデジタル信号のうち、上位n−mビットのデジタル信号によって定められた電荷が、前記n−m+1個の容量のうちの残りのn−m個の容量へ充電されていることを特徴とするD/A変換回路が提供される。
【0027】本発明によって、nビットのデジタル信号(nは自然数)をアナログ信号に変換するD/A変換回路であって、前記D/A変換回路はn−m+1個(mはnより小さい自然数)の容量と、2m個の抵抗とを有しており、前記nビットのデジタル信号のうち、下位mビットのデジタル信号と前記2m個の抵抗とによって定められた電荷が、前記n−m+1個の容量のうちの1個の容量へ充電され、前記2m個の抵抗の抵抗値は全て同じであり、前記nビットのデジタル信号のうち、上位n−mビットのデジタル信号によって定められた電荷が、前記n−m+1個の容量のうちの残りのn−m個の容量へ充電されていることを特徴とするD/A変換回路が提供される。
【0028】本発明によって、nビットのデジタル信号(nは自然数)をアナログ信号に変換するD/A変換回路であって、前記D/A変換回路はn−m+1個(mはnより小さい自然数)の容量と、2m本の階調電圧線とを有しており、前記nビットのデジタル信号のうち、下位mビットのデジタル信号によって、前記2m本の階調電圧線のうちの1本が選択され、前期選択された階調電圧線の電位によって前記n−m+1個の容量のうちの容量値がC(Cは定数)である1個の容量へ電荷が充電され、前記nビットのデジタル信号のうち、上位n−mビットのデジタル信号によって、前記n−m+1個の容量のうちの残りのn−m個の容量への電荷の充電が制御されており、前記残りのn−m個の容量は、その容量値がそれぞれC、2C、22C、…、2n-m-1で表されることを特徴とするD/A変換回路が提供される。
【0029】本発明は、前記2m個の抵抗が直列に接続されていることを特徴としていても良い。
【0030】本発明は、前記2m個の抵抗のうち、一方の端子が他の抵抗に接続されていない2つの抵抗は、該端子がそれぞれ低電圧側の電源と、高電圧側の電源に接続されていることを特徴としていても良い。
【0031】本発明は、リセット期間において前記n−m+1個の容量へ充電される電荷の量が、常に特定の値に保たれることを特徴としていても良い。
【0032】本発明は、前記D/A変換回路を有することを特徴としていても良い。
【0033】本発明は、表示装置、デジタルスチルカメラ、ノートブック型パーソナルコンピュータ、モバイルコンピュータ、DVDプレーヤー、ヘッドマウントディスプレイ、ビデオカメラまたは携帯電話であることを特徴としていても良い。
【0034】
【発明の実施の形態】(実施の形態1)図1に本発明のDACの構成を示す。
【0035】図1に示すDACは、下位mビットのデジタル信号を、下位ビット対応抵抗分割型DAC(R−DAC)101において下位ビット対応アナログ信号に変換することで、nビットのデジタル信号をアナログ信号に変換している。
【0036】また、下位mビットに対応する1個の下位ビット対応容量(CL)と、上位n−mビットに対応するn−m個の上位ビット対応容量(CU[1]、CU[2]、CU[3]、…、CU[n−m−1]、CU[n−m])とを有している。
【0037】下位ビット対応容量CLの容量値はCL=C(Cは定数)で表され、上位ビット対応容量CUの容量値は、上位ビットのうち、下位の方に対応する容量から順にCU[1]=C、CU[2]=2C、CU[3]=22C、…、CU[n−m−1]=2n-m-2C、CU[n−m]=2n-m-1Cで表される。
【0038】下位ビット対応容量CLが有する2つの電極は、一方は出力線102に接続されており、もう一方は下位mビットのデジタル信号に対応している抵抗分割型のDAC(下位ビット対応抵抗分割型DAC(R−DAC))101の下位ビット用出力線103に接続されている。
【0039】R−DAC101は、2m個の抵抗RL[1]、RL[2]、RL[3]、…、RL[2m]と、2m個のスイッチSW[1]、SW[2]、SW[3]、…、SW[2m]とを有する。
【0040】2m個の抵抗の抵抗値は全て同じであり、RL[1]=RL[2]=RL[3]=…=RL[2m]=R(Rは定数)で表される。
【0041】また、2m個の抵抗RL[1]、RL[2]、RL[3]、…、RL[2m]は全て直列に接続されており、接続の両端に位置する抵抗RL[1]とRL[2m]は電源Aと電源Bにそれぞれ接続されている。
【0042】また、電源Aの電位と、直列に接続されている各抵抗間の電位とが、2m個のスイッチSW[1]、SW[2]、SW[3]、…、SW[2m]のそれぞれを介して下位ビット用出力線103に与えられるように、配線が接続されている。なお図1とは異なり、電源Bの電位と、直列に接続されている各抵抗間の電位とが、2m個のスイッチSW[1]、SW[2]、SW[3]、…、SW[2m]のそれぞれを介して下位ビット用出力線103に与えられるように、配線が接続されていても良い。
【0043】上位ビット対応容量がそれぞれ有する2つの電極のうち、一方の電極は、上位n−mビットのうち下位に対応する容量から順に、それぞれn−m個のスイッチSW[2m+1]、SW[2m+2]、…、SW[2m+n−m−1]、SW[2m+n−m]を介して、電源Aまたは電源Bに接続されるようになっている。またもう一方の電極は、全て出力線102に接続されている。
【0044】書き込み期間において、上位ビット対応容量の一方の電極が電源Aと電源Bのどちらに接続されるかは、n−m個のスイッチSW[2m+1]、SW[2m+2]、…、SW[2m+n−m−1]、SW[2m+n−m]にそれぞれ入力される、上位n−mビットの各ビットが有する情報によって決まる。
【0045】また出力線102はリセット用スイッチSWRを介して、リセット用電源に接続されている。なお、リセット用電源の電位VRと電源Aの電位VAは、同じであっても良いし、異なっていても良い。また、リセット用電源の電位VRと電源Bの電位VBは、同じであっても良いし異なっていても良い。リセット用スイッチSWRは、リセット信号(Res)によってそのスイッチングが制御されている。
【0046】なお出力線102は配線容量(CW)を有しており、VGはグランドの電位を意味する。ただし配線容量は必ずしもグランドと出力線102との間に形成されていなくとも良く、グランド以外の電源と出力線との間に形成されていても良い。
【0047】次に図1に示した本発明のDACの動作について、順を追って説明する。本発明のDACの動作は、リセット期間TRと書き込み期間TAとに分けて説明することができる。図2に、本発明のDACが有する各スイッチの、リセット期間TRと書き込み期間TAとにおける動作について示す。
【0048】まず、リセット期間TR中、リセット信号(Res)によってリセットスイッチSWRがオンになる。
【0049】また、下位mビットのデジタル信号によって、R−DAC101が有する2m個のスイッチSW[1]、SW[2]、SW[3]、…、SW[2m]は、スイッチSW[1]のみがオンとなり、残りは全てオフになる。
【0050】さらに、上位n−mビットのデジタル信号によって、上位n−mビットに対応するn−m個のスイッチSW[2m+1]、SW[2m+2]、…、SW[2m+n−m−1]、SW[2m+n−m]が、全て電源Aに接続される。
【0051】このリセット期間TR終了直前における、本発明のDACの等価回路図を、図3(A)に示す。容量CTは、下位ビット対応容量CLと、全ての上位ビット対応容量CU[1]、CU[2]、…、CU[n−m]の合成容量に相当する。容量CTは、式1に示すように表される。
【0052】
【式1】


【0053】この合成容量CTに蓄えられる電荷QT0は、以下の式2で表される。
【0054】
【式2】


【0055】リセット期間TRにおいて配線容量(CW)に蓄えられる電荷QW0は、以下の式3で表される。
【0056】
【式3】


【0057】リセット期間TR終了後、書き込み期間TAが開始され、デジタル信号によってスイッチSW[1]〜SW[2m+n−m]の動作が制御される。
【0058】まず、下位mビットに対応するm個のスイッチSW[1]、SW[2]、…、SW[2m−1]、SW[2m]は、下位mビットのデジタル信号D1、D2、…、Dm-1、Dmによって、その動作が制御される。
【0059】具体的には、下位mビットのデジタル信号D1〜Dmはそれぞれ1または0の情報を有しており、下位mビットのデジタル信号が有する情報の1または0のm個の組み合わせは2m組存在する。その下位mビットのデジタル信号が有する情報の2m組の組み合わせによって、2m個のスイッチSW[1]、SW[2]、SW[3]、…、SW[2m]のいずれか1つのみが選択され、オンになる。
【0060】デジタル信号D1〜Dmが与えられれば、スイッチSW[t](1≦t≦2m)が選択されてオンになる。ここで、D1〜Dmには、次の式4の関係が成り立つ。
【0061】
【式4】


【0062】スイッチSW[t](1≦t≦2m)が選択されてオンになった場合、下位ビット用出力線103の電位VLOUTは、以下の式5で表される。ただし、RL[0]=0と定義した。
【0063】
【式5】


【0064】2m個の抵抗RL[1]、RL[2]、RL[3]、…、RL[2m]の抵抗値は全て同じであるので、式5から以下の式6が導き出せる。
【0065】
【式6】


【0066】式6に式4を代入すれば、下位mビットD1〜Dmにより定まる次の式7で与えられる電位VLOUTが、下位ビット用出力線103に与えられる。
【0067】
【式7】


【0068】一方、上位n−mビットに対応するn−m個のスイッチSW[2m+1]、SW[2m+2]、…、SW[2m+n−m−1]、SW[2m+n−m]は、上位n−mビットのデジタル信号Dm+1、Dm+2、…、Dn-1、Dnに1対1で対応しており、各ビットが有する0または1の情報によって、その動作が制御される。
【0069】具体的には、n−m個のスイッチSW[2m+1]、SW[2m+2]、…、SW[2m+n−m−1]、SW[2m+n−m]を介して、上位ビット対応容量CU[1]、CU[2]、…、CU[n−m]のそれぞれの一方の電極と、電源Aまたは電源Bとが接続される。各ビットが有する情報が0のとき、電源Aと接続され、1のときは電源Bと接続される。
【0070】この書き込み期間TA終了直前における、本発明のDACの等価回路図を、図3(B)に示す。容量CAは上位ビット対応容量のうち電源Aに接続されたものの合成容量であり、容量CBは上位ビット対応容量のうち電源Bに接続されたものの合成容量である。合成容量CA、CBは次の式8、式9で表される。
【0071】
【式8】


【0072】
【式9】


【0073】書き込み期間TAにおいて容量CAに蓄積される電荷QAは、以下の式10で表される。
【0074】
【式10】


【0075】書き込み期間TAにおいて容量CBに蓄積される電荷QBは、以下の式11で表される。
【0076】
【式11】


【0077】書き込み期間TAにおいて配線容量CWに蓄えられる電荷QWは、以下の式12で表される。
【0078】
【式12】


【0079】また、書き込み期間TAにおいて下位ビット対応容量CLに蓄えられる電荷QLは、以下の式13で表される。
【0080】
【式13】


【0081】また、CAとCBは、以下の式14の関係が成り立っている。
【0082】
【式14】


【0083】ここで電荷保存の法則より、以下の式15が成り立つ。
【0084】
【式15】


【0085】式1〜式15より、以下の式16が導き出される。
【0086】
【式16】


【0087】式16より、nビットのデジタル信号に対する、アナログ信号の電位を、図4にグラフにして示す。図4に示したとおり、入力したnビットのデジタル信号に対して、線形性を有するアナログ信号の電位VOUTが出力線に与えられる。
【0088】上述したリセット期間TRと書き込み期間TAの動作を連続して行うことで、nビットのデジタル信号をアナログ信号に変換することが可能である。
【0089】本発明は上記構成によって、高速駆動が可能で、かつ面積を比較的抑えることができるという容量分割型の利点を生かしつつ、線形性を崩さないで高いビット数のデジタル信号に対応するDACを形成することができる。
【0090】なお図1とは異なり、電源Bの電位と、直列に接続されている各抵抗間の電位とが、2m個のスイッチSW[1]、SW[2]、SW[3]、…、SW[2m]のそれぞれを介して下位ビット用出力線103に与えられるように配線が接続されている場合、VOUTは以下の式17で表される。
【0091】
【式17】


【0092】配線の接続によって、式16または式17を適宜選択する。
【0093】(実施の形態2)本実施の形態では、本発明のDACにおいて、R−DACの代わりにセレクタ回路を用いる構成について説明する。
【0094】図5にセレクタ回路を用いた本発明のDACの構成を示す。図5に示すDACは、下位mビットのデジタル信号を、下位mビットに対応するセレクタ回路(下位ビット対応セレクタ回路)201において下位ビット対応アナログ信号に変換することで、nビットのデジタル信号をアナログ信号に変換している。
【0095】また、下位mビットに対応する1個の下位ビット対応容量(CL)と、上位n−mビットに対応するn−m個の上位ビット対応容量容量(CU[1]、CU[2]、CU[3]、…、CU[n−m−1]、CU[n−m])とを有している。
【0096】下位ビット対応容量CLの容量値はCL=C(Cは定数)で表され、上位ビット対応容量CUの容量値は、上位ビットのうち、下位の方に対応する容量から順にCU[1]=C、CU[2]=2C、CU[3]=22C、…、CU[n−m−1]=2n-m-2C、CU[n−m]=2n-m-1Cで表される。
【0097】下位ビット対応容量CLが有する2つの電極は、一方は出力線202に接続されており、もう一方は下位ビット対応セレクタ回路201の下位ビット用出力線203に接続されている。
【0098】下位ビット対応セレクタ回路201は、2m本の階調電圧線205と、2m個のスイッチSW[1]、SW[2]、SW[3]、…、SW[2m]とを有する。
【0099】2m本の階調電圧線205の電位は、それぞれ、VA+(VB−VA)/2m、VA+2(VB−VA)/2m、VA+3(VB−VA)/2m、…、VA+(2m−1)(VB−VA)/2m、VBで表される。
【0100】また、各階調電圧線205の電位が、2m個のスイッチSW[1]、SW[2]、SW[3]、…、SW[2m]のそれぞれを介して下位ビット用出力線203に与えられるように、配線が接続されている。
【0101】上位ビット対応容量がそれぞれ有する2つの電極のうち、一方の電極は、上位n−mビットのうち下位に対応する容量から順に、それぞれn−m個のスイッチSW[2m+1]、SW[2m+2]、…、SW[2m+n−m−1]、SW[2m+n−m]を介して、電源Aまたは電源Bに接続されるようになっている。またもう一方の電極は、全て出力線202に接続されている。
【0102】上位ビット対応容量の一方の電極が電源Aと電源Bのどちらに接続されるかは、n−m個のスイッチSW[2m+1]、SW[2m+2]、…、SW[2m+n−m−1]、SW[2m+n−m]にそれぞれ入力される、上位n−mビットの各ビットが有する情報によって決まる。
【0103】また出力線202はリセット用スイッチSWRを介して、リセット用電源に接続されている。なお、リセット用電源の電位VRと電源Aの電位VAは、同じであっても良いし、異なっていても良い。また、リセット用電源の電位VRと電源Bの電位VBは、同じであっても良いし異なっていても良い。リセット用スイッチSWRは、リセット信号(Res)によってそのスイッチングが制御されている。
【0104】なお出力線202は配線容量(CW)を有しており、VGはグランドの電位を意味する。ただし配線容量は必ずしもグランドと出力線202との間に形成されていなくとも良く、グランド以外の電源と出力線との間に形成されていても良い。
【0105】次に図5に示した本発明のDACの動作については、リセット期間TRと書き込み期間TAとに分けて説明することができる。各スイッチの動作は実施の形態1で示した場合と同じであるので、ここでは説明を省略する。デジタル信号が各スイッチの動作を制御することで、出力線に入力されるアナログ信号の電位が、デジタル信号のビットに対して線形性を有する。
【0106】本発明は上記構成によって、高速駆動が可能で、かつ面積を比較的抑えることができるという容量分割型の利点を生かしつつ、線形性を崩さないで高いビット数のデジタル信号に対応するDACを形成することができる。
【0107】
【実施例】 以下に、本発明の実施例について説明する。
【0108】(実施例1)本実施例では、図1に示した本発明のDACにおいて、m=2の場合ついて説明する。
【0109】図6に本実施例のDACの構成を示す。図6に示すDACは、下位2ビットのデジタル信号を、下位ビット対応抵抗分割型DAC301において下位ビット対応アナログ信号に変換することで、nビットのデジタル信号をアナログ信号に変換している。
【0110】下位2ビットに対応する1個の下位ビット対応容量(CL)と、上位n−2ビットに対応するn−2個の上位ビット対応容量(CU[1]、CU[2]、CU[3]、…、CU[n−3]、CU[n−2])とを有している。
【0111】下位ビット対応容量CLの容量値はCL=C(Cは定数)で表され、上位ビット対応容量CUの容量値は、上位ビットのうち、下位の方に対応する容量から順にCU[1]=C、CU[2]=2C、CU[3]=22C、…、CU[n−3]=2n-4C、CU[n−2]=2n-3Cで表される。
【0112】下位ビット対応容量CLが有する2つの電極は、一方は出力線302に接続されており、もう一方は下位2ビットのデジタル信号に対応している抵抗分割型のDAC(下位ビット対応抵抗分割型DAC(R−DAC))301の下位ビット用出力線303に接続されている。
【0113】R−DAC301は、4個の抵抗RL[1]、RL[2]、RL[3]、RL[4]と、4個のスイッチSW[1]、SW[2]、SW[3]、SW[4]とを有する。
【0114】4個の抵抗の抵抗値は全て同じであり、RL[1]=RL[2]=RL[3]=RL[4]=R(Rは定数)で表される。
【0115】また、4個の抵抗RL[1]、RL[2]、RL[3]、RL[4]は全て直列に接続されており、接続の両端に位置する抵抗RL[1]とRL[4]は電源Aと電源Bにそれぞれ接続されている。
【0116】また、電源Aの電位と、直列に接続されている各抵抗間の電位とが、22個のスイッチSW[1]、SW[2]、SW[3]、SW[4]のそれぞれを介して下位ビット用出力線303に与えられるように、配線が接続されている。なお図6とは異なり、電源Bの電位と、直列に接続されている各抵抗間の電位とが、4個のスイッチSW[1]、SW[2]、SW[3]、SW[4]のそれぞれを介して下位ビット用出力線303に与えられるように、配線が接続されていても良い。
【0117】上位ビット対応容量がそれぞれ有する2つの電極のうち、一方の電極は、上位n−2ビットのうち下位に対応する容量から順に、それぞれn−2個のスイッチSW[5]、SW[6]、…、SW[n+1]、SW[n+2]を介して、電源Aまたは電源Bに接続されるようになっている。またもう一方の電極は、全て出力線302に接続されている。
【0118】上位ビット対応容量の一方の電極が電源Aと電源Bのどちらに接続されるかは、n−2個のスイッチSW[5]、SW[6]、…、SW[n+1]、SW[n+2]にそれぞれ入力される、上位n−2ビットの各ビットが有する情報によって決まる。
【0119】また出力線302はリセット用スイッチSWRを介して、リセット用電源に接続されている。なお、リセット用電源の電位VRと電源Aの電位VAは、同じであっても良いし、異なっていても良い。また、リセット用電源の電位VRと電源Bの電位VBは、同じであっても良いし異なっていても良い。リセット用スイッチSWRは、リセット信号(Res)によってそのスイッチングが制御されている。
【0120】なお出力線302は配線容量(CW)を有しており、VGはグランドの電位を意味する。ただし配線容量は必ずしもグランドと出力線302との間に形成されていなくとも良く、グランド以外の電源と出力線との間に形成されていても良い。
【0121】次に図6に示した本発明のDACの動作については、リセット期間TRと書き込み期間TAとに分けて説明することができる。各スイッチの動作は実施の形態1で示した場合と同じであるので、ここでは説明を省略する。デジタル信号が各スイッチの動作を制御することで、出力線に入力されるアナログ信号の電位が、デジタル信号のビットに対して線形性を有する。
【0122】本発明は上記構成によって、高速駆動が可能で、かつ面積を比較的抑えることができるという容量分割型の利点を生かしつつ、線形性を崩さないで高いビット数のデジタル信号に対応するDACを形成することができる。
【0123】なお本実施例ではm=2の場合について述べたが、本発明はこれに限定されない。mの値は、設計者が適宜選択することが可能である。
【0124】(実施例2)本実施例では、図5に示した本発明のDACにおいて、m=2の場合ついて説明する。
【0125】図7に本実施例のDACの構成を示す。図7に示すDACは、下位2ビットのデジタル信号を、下位ビット対応セレクタ回路401において下位ビット対応アナログ信号に変換することで、nビットのデジタル信号をアナログ信号に変換している。
【0126】また、下位2ビットに対応する1個の下位ビット対応容量(CL)と、上位n−2ビットに対応するn−2個の上位ビット(対応容量容量CU[1]、CU[2]、CU[3]、…、CU[n−3]、CU[n−2])とを有している。
【0127】下位ビット対応容量CLの容量値はCL=C(Cは定数)で表され、上位ビット対応容量CUの容量値は、上位ビットのうち、下位の方に対応する容量から順にCU[1]=C、CU[2]=2C、CU[3]=22C、…、CU[n−3]=2n-4C、CU[n−2]=2n-3Cで表される。
【0128】下位ビット対応容量CLが有する2つの電極は、一方は出力線402に接続されており、もう一方は下位ビット対応セレクタ回路401の下位ビット用出力線403に接続されている。
【0129】下位ビット対応セレクタ回路401は、4本の階調電圧線405と、4個のスイッチSW[1]、SW[2]、SW[3]、SW[4]とを有する。
【0130】4本の階調電圧線405の電位は、それぞれ、VA+(VB−VA)/4、VA+2(VB−VA)/4、VA+3(VB−VA)/4、VBで表される。
【0131】また、各階調電圧線405の電位が、4個のスイッチSW[1]、SW[2]、SW[3]、…、SW[4]のそれぞれを介して下位ビット用出力線403に与えられるように、配線が接続されている。
【0132】上位ビット対応容量がそれぞれ有する2つの電極のうち、一方の電極は、上位n−2ビットのうち下位に対応する容量から順に、それぞれn−2個のスイッチSW[5]、SW[6]、…、SW[n+1]、SW[n+2]を介して、電源Aまたは電源Bに接続されるようになっている。またもう一方の電極は、全て出力線402に接続されている。
【0133】上位ビット対応容量の一方の電極が電源Aと電源Bのどちらに接続されるかは、n−2個のスイッチSW[5]、SW[6]、…、SW[n+1]、SW[n+2]にそれぞれ入力される、上位n−2ビットの各ビットが有する情報によって決まる。
【0134】また出力線402はリセット用スイッチSWRを介して、リセット用電源に接続されている。なお、リセット用電源の電位VRと電源Aの電位VAは、同じであっても良いし、異なっていても良い。また、リセット用電源の電位VRと電源Bの電位VBは、同じであっても良いし異なっていても良い。リセット用スイッチSWRは、リセット信号(Res)によってそのスイッチングが制御されている。
【0135】なお出力線402は配線容量(CW)を有しており、VGはグランドの電位を意味する。ただし配線容量は必ずしもグランドと出力線402との間に形成されていなくとも良く、グランド以外の電源と出力線との間に形成されていても良い。
【0136】図7に示した本発明のDACの動作については、リセット期間TRと書き込み期間TAとに分けて説明することができる。各スイッチの動作は実施の形態1で示した場合と同じであるので、ここでは説明を省略する。デジタル信号が各スイッチの動作を制御することで、出力線に入力されるアナログ信号の電位が、デジタル信号のビットに対して線形性を有する。
【0137】本発明は上記構成によって、高速駆動が可能で、かつ面積を比較的抑えることができるという容量分割型の利点を生かしつつ、線形性を崩さないで高いビット数のデジタル信号に対応するDACを形成することができる。
【0138】(実施例3)本実施例では、本発明のDACに用いられるスイッチの一例を示す。
【0139】図8に示すように、本実施例のスイッチは、nチャネル型TFTとpチャネル型TFTとを有している。デジタル信号と、デジタル信号の極性が反転した信号(反転デジタル信号)とが、それぞれINとINbとに入力される。
【0140】INとINbとに入力されるデジタル信号と反転デジタル信号とによって、入力端子に与えられた電位が、サンプリングされて出力端子に与えられる。
【0141】なお、本発明のDACに用いられるスイッチは、図8に示した構成に限定されない。
【0142】また本実施例の構成は、実施例1または2と自由に組み合わせて実施することが可能である。
【0143】(実施例4)本実施例では、本発明のDACに用いられるTFTの作成工程の一例について説明する。なお図9にはpチャネル型TFTとnチャネル型TFTを1つづつ作成する工程についてのみ示したが、本発明で用いられる全てのトランジスタは図9に示した工程に基づいて作成することが可能である。
【0144】図9(A)において、基板1001にはコーニング社の#7059ガラスや#1737ガラスなどに代表されるバリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板の他に、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)など光学的異方性を有しないプラスチック基板を用いることができる。また、石英基板を用いても良い。ガラス基板を用いる場合には、ガラス歪み点よりも10〜20℃程度低い温度であらかじめ熱処理しておくとその後の工程で基板が変形することを防ぐことができる。
【0145】基板1001のTFTを形成する表面に、基板1001からの不純物拡散を防ぐために、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜などの絶縁膜から成る下地膜1002を10〜200nmの厚さで形成する。下地膜は前記絶縁膜の一層で形成しても良いし、複数の層で形成しても良い。
【0146】島状半導体層1003、1004は、非晶質構造を有する半導体膜をレーザーアニール法や熱アニール法、またはラピットサーマルアニール法(RTA法)などで結晶化させた結晶質半導体膜から形成する。また、スパッタ法、プラズマCVD法、熱CVD法などで形成した結晶質半導体膜から形成しても良い。或いは特開平7−130652号公報で開示された技術に従って、触媒元素を用いる結晶化法で結晶質半導体層1003、1004を形成することもできる。結晶化の工程ではまず、非晶質半導体層が含有する水素を放出させておくことが好ましく、400〜500℃で1時間程度の熱処理を行い含有する水素量を5atom%以下にしてから結晶化させると膜表面の荒れを防ぐことができるので良い。いずれにしても、このように形成した結晶質半導体膜を選択的にエッチングして所定の場所に島状半導体層1003、1004を形成する。
【0147】または、基板1001上に単結晶シリコン層を形成したSOI(Silicon On Insulators)基板としても良い。SOI基板にはその構造や作製方法によっていくつかの種類が知られているが、代表的には、SIMOX(Separation by Implanted Oxygen)、ELTRAN(Epitaxial Layer Transfer:キャノン社の登録商標)基板、Smart-Cut(SOITEC社の登録商標)などを使用することができる。勿論、その他のSOI基板を使用することも可能である。
【0148】ゲート絶縁膜はプラズマCVD法、スパッタ法、減圧CVD法などにより、膜厚を40〜150nmとしてシリコンを含む絶縁膜で形成する。例えば、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜などから形成する。これを第1の形状のゲート絶縁膜1005とする。そして、第1の形状のゲート絶縁膜1005上にゲート電極を形成するための導電層1006を形成する。この導電層1006は耐熱性を有する導電性材料から形成することが望ましく、単層で形成しても良いが、必要に応じて二層あるいは三層といった複数の層から成る積層構造としても良い。例えば、タングステン(W)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)から選ばれた元素、または前記元素を成分とする合金か、前記元素を組み合わせた合金膜で形成する。また、これらの元素の窒化物である窒化タングステン(WN)、窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)、窒化モリブデン(MoN)やシリサイド化物であるタングステンシリサイド、タンタルシリサイド、チタンシリサイド、モリブデンシリサイドなどとの積層構造を形成しても良い。そして、第1の形状のマスク1007を形成する。第1の形状のマスク1007はフォトリソグラフィーの技術を用いてレジスト材料で形成する。
【0149】そして図9(B)で示すように、導電層1006をエッチング処理する。エッチング処理はドライエッチング法を用い、好ましくはICPエッチング装置を用いて行う。エッチングガスにはCF4とCl2の混合ガスを用い、基板にバイアス電圧を印加して行い、少なくとも島状半導体層1003、1004上に第1のテーパー形状を有する導電層1008、1009を形成する。テーパー部の形状は、上記エッチングガスの混合比、エッチング時の圧力、基板側に印加するバイアス電圧によって変化させることができる。最もテーパー形状を制御できるのは基板側に印加するバイアス電圧である。
【0150】ドライエッチングでは、フッ素(F)や塩素(Cl)などの元素または該元素を含む分子の中性種やイオン種により行われる。通常、中性種によるエッチングが支配的であると等方性にエッチングが進み、テーパー形状は形成されにくくなる。基板側に正または負のバイアス電圧を印加することにより異方性のエッチングが成される。テーパー形状を形成するためのエッチングは、基板側にバイアス電圧を印加すると同時に、被膜とレジストとのエッチング速度の差(選択比とも呼び、被加工物のエッチング速度/レジストのエッチング速度で表す)をある一定の範囲の値として、レジストを同時にエッチングしながら行う。最初に形成するレジストの形状を適したものとすることにより、レジストの端部から徐々にエッチングされ、下地にある被膜にテーパー形状を形成することができる。第1の形状のマスク1007の形状も変化し、第2の形状のマスク1010が形成される。また、エッチングが進むと導電層1006の下層にあるゲート絶縁膜1005の表面が露呈され、ゲート絶縁膜も表面からある程度エッチングされて第2の形状のゲート絶縁膜1011が形成される。
【0151】そして、レジスト1010をマスクとして、第1のドーピング処理を行い、島状半導体層1003、1004にn型を付与するの不純物元素を添加する。ドーピング処理は不純物元素をイオン化し電界で加速して半導体層に注入するイオンドープ法やイオン注入法で行う。n型を付与する不純物元素はゲート絶縁膜を通してその下の半導体層1003、1004に添加する。一部のn型の不純物元素はテーパー形状が形成された第1の形状のゲート電極1008、1009の端部及びその近傍を通してその下の半導体層に添加することができる。
【0152】第1の不純物領域1012、1013には一導電型の不純物元素の濃度が1×1020〜1×1021atoms/cm3の濃度で含まれるようにする。また、第2の不純物領域1014、1015は第1の不純物領域1012、1013に比較して第2の形状のゲート絶縁膜1011の厚さが増加する分半導体層に添加される不純物元素の濃度が低下し、第2の不純物領域1014、1015内で必ずしも均一な濃度分布を取り得ないが、1×1017〜1×1020atoms/cm3の濃度範囲で不純物元素が添加されるようにする。
【0153】第2の不純物領域1014、1015はゲート絶縁膜1011と導電層1008、1009のテーパー部の下に形成される。第2の不純物領域1014、1015における不純物元素の濃度分布は、第1の不純物領域1012、1013から遠ざかるにつれ減少する。この減少の割合は、イオンドープにおける加速電圧やドーズ量などの条件、テーパー部の角度や第1の形状のゲート電極1008、1009の厚さにより異なってくる。
【0154】次に、図9(C)に示すように第2のエッチング処理を行う。第2のエッチング処理は第1の形状を有するゲート電極1008、1009のチャネル長方向の幅を短くするようにエッチングする。エッチングの方法は、第1のエッチング処理と同じでありICPエッチング装置を用いる。エッチングガスには同様にCF4とCl2の混合ガスを用い、基板側にバイアス電圧を印加して行い、第2の形状のゲート電極1016、1017を形成する。第2のエッチング処理においても下地であるゲート絶縁膜1011の一部が表面からエッチングされることにより第2の形状のゲート絶縁膜1018が形成される。図9(C)において、第2のテーパー形状を有する導電層1016、1017の端部にもテーパー部が形成される。
【0155】そして、レジスト1021をマスクとして、第2のドーピング処理を行い、島状半導体層1003、1004にn型の不純物元素を添加する。この場合、一部の不純物元素は第2の形状のゲート電極1016、1017の端部及びその近傍を通してその下の半導体層に添加することができる。
【0156】第2のドーピング処理では、半導体層に1×1016〜5×1018atoms/cm3の濃度で一導電型の不純物元素が含まれるようにする。この処理では第1のドーピング処理で形成された第1の不純物領域1012、1013と第2の不純物領域1014、1015にも重ねて一導電型の不純物元素が添加されるが、添加量が低いためその影響を無視することができる。新に形成される第3の不純物領域1019、1020にはn型の不純物元素の濃度が1×1016〜5×1018atoms/cm3の濃度で含まれるようにする。第3の不純物領域1019、1020は第2の形状のゲート電極1016、1017の厚さが増加する分半導体層に添加される不純物元素の濃度が低下し、第3の不純物領域1019、1020内で必ずしも均一な濃度分布を取り得ないが上記濃度範囲で不純物元素が含まれるようにする。
【0157】第3の不純物領域1019、1020は第2の形状のゲート絶縁膜1018と第2の形状のゲート電極1016、1017のテーパー部の下に形成される。第3の不純物領域1019、1020の濃度分布は、第1の不純物領域1012、1013から遠ざかるにつれ減少する。第2の形状のゲート電極1016、1017はゲート電極として用いる。このように、ゲート電極の端部をテーパー形状として、テーパー部を通して不純物元素をドーピングすることにより、テーパー部の下に存在する半導体層中に、徐々に前記不純物元素の濃度が変化するような不純物領域を形成することができる。本発明はこのような不純物領域を積極的に活用する。このような不純物領域を形成することにより、ドレイン領域近傍に発生する高電界を緩和して、ホットキャリアの発生を防ぎ、TFTの劣化を防止することができる。
【0158】次に図9(D)に示すように島状半導体層1003をレジストマスク1022で覆い、島状半導体層1004にp型を付与する不純物元素を添加する。この場合も第2の形状のゲート電極1017をマスクとしてp型を付与する不純物元素を添加し、自己整合的に不純物領域を形成する。ここで形成される不純物領域1023はジボラン(B26)を用いたイオンドープ法で形成する。不純物領域1023のp型を付与する不純物元素の濃度は、2×1020〜2×1021atoms/cm3となるようにする。
【0159】しかしながら、この不純物領域1023は詳細にはn型を付与する不純物元素を含有する3つの領域に分けて見ることができる。第4の不純物領域1023aは1×1020〜1×1021atoms/cm3の濃度でn型を付与する不純物元素を含み、第5の不純物領域1023bは1×1017〜1×1020atoms/cm3の濃度でn型を付与する不純物元素を含み、第5の不純物領域1023cは1×1016〜5×1018atoms/cm3の濃度でn型を付与する不純物元素を含んでいる。しかし、これらの不純物領域1023b、1023cのp型を付与する不純物元素の濃度を1×1019atoms/cm3以上となるようにし、第4の不純物領域1023aにおいては、p型を付与する不純物元素の濃度をn型を付与する不純物元素の濃度の1.5から3倍となるようにすることにより、第4の不純物領域1023aでpチャネル型TFTのソース領域およびドレイン領域として機能するために何ら問題は生じない。また、第6の不純物領域1023cは一部が第2の形状のゲート電極1017と重なって形成される。
【0160】以上のようにして、島状半導体層1003にソース領域またはドレイン領域となる第1の不純物領域1024、ゲート電極と重ならないLDD領域を形成する第2の不純物領域1025、ゲート電極と一部が重なるLDD領域を形成する第3の不純物領域1026及びチャネル形成領域1027が形成される。また、島状半導体層1004にソース領域またはドレイン領域となる第1の不純物領域1028、ゲート電極と重ならないLDD領域を形成する第2の不純物領域1029、ゲート電極と一部が重なるLDD領域を形成する第3の不純物領域1030及びチャネル形成領域1031が形成される。
【0161】その後、図9(E)に示すように、必要に応じて層間絶縁膜1032を形成しソース領域またはドレイン領域とコンタクトを形成する配線1034を形成しても良い。
【0162】なお、本発明のDACにおいて用いられるトランジスタは、単結晶シリコンを用いて形成されたトランジスタであっても良いし、ポリシリコンやアモルファスシリコンを用いた薄膜トランジスタであっても良い。
【0163】本実施例は、実施例1〜実施例3と自由に組み合わせて実施することが可能である。
【0164】
【0165】(実施例5)本発明のDACを有する半導体装置は、様々な電子機器に用いることができる。
【0166】本発明のDACを用いた電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはデジタルビデオディスク(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)などが挙げられる。それら電子機器の具体例を図10に示す。
【0167】図10(A)は表示装置であり、筐体2001、支持台2002、表示部2003、スピーカー部2004、ビデオ入力端子2005等を含む。本発明のDACは表示部2003またはその他制御回路に用いることができる。なお、表示装置は、パソコン用、TV放送受信用、広告表示用などの全ての情報表示用表示装置が含まれる。
【0168】図10(B)はデジタルスチルカメラであり、本体2101、表示部2102、受像部2103、操作キー2104、外部接続ポート2105、シャッター2106等を含む。本発明のDACは表示部2102またはその他制御回路に用いることができる。
【0169】図10(C)はノート型パーソナルコンピュータであり、本体2201、筐体2202、表示部2203、キーボード2204、外部接続ポート2205、ポインティングマウス2206等を含む。本発明のDACは表示部2203またはその他制御回路に用いることができる。
【0170】図10(D)はモバイルコンピュータであり、本体2301、表示部2302、スイッチ2303、操作キー2304、赤外線ポート2305等を含む。本発明のDACは表示部2302またはその他制御回路に用いることができる。
【0171】図10(E)は記録媒体を備えた携帯型の画像再生装置(具体的にはDVD再生装置)であり、本体2401、筐体2402、表示部A2403、表示部B2404、記録媒体(DVD等)読み込み部2405、操作キー2406、スピーカー部2407等を含む。表示部A2403は主として画像情報を表示し、表示部B2404は主として文字情報を表示するが、本発明のDACはこれら表示部A、B2403、2404またはその他制御回路に用いることができる。なお、記録媒体を備えた画像再生装置には家庭用ゲーム機器なども含まれる。
【0172】図10(F)はゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)であり、本体2501、表示部2502、アーム部2503を含む。本発明のDACは表示部2502またはその他制御回路に用いることができる。
【0173】図10(G)はビデオカメラであり、本体2601、表示部2602、筐体2603、外部接続ポート2604、リモコン受信部2605、受像部2606、バッテリー2607、音声入力部2608、操作キー2609、接眼部2610等を含む。本発明のDACは表示部2602またはその他制御回路に用いることができる。
【0174】ここで図10(H)は携帯電話であり、本体2701、筐体2702、表示部2703、音声入力部2704、音声出力部2705、操作キー2706、外部接続ポート2707、アンテナ2708等を含む。本発明のDACは表示部2703またはその他制御回路に用いることができる。
【0175】また、上記電子機器はインターネットやCATV(ケーブルテレビ)などの電子通信回線を通じて配信された情報を表示することが多くなり、特に動画を表示する機会が増してきている。本発明のDACは、高速動作が可能で、かつ高いビット数のデジタル信号をアナログ信号に変換することが可能であり、出力するアナログ信号の線形性も確保することができるので、有用である。
【0176】以上の様に、本発明のDACの適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に用いることが可能である。また、本実施例の電子機器は実施例1〜4に示したいずれの構成のDACを用いても良い。
【0177】
【発明の効果】本発明は構成により、高速駆動が可能で、かつ面積を比較的抑えることができるという容量分割型の利点を生かしつつ、線形性を崩さないで高いビット数のデジタル信号に対応するDACを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の構成を有するDACの構成を示す図。
【図2】 本発明のDACが有するスイッチの動作を説明する図。
【図3】 本発明のDACの等価回路図。
【図4】 本発明のDACにおいて、デジタル信号のビット数と出力されるアナログ信号の電位の関係を示す図。
【図5】 本発明の構成を有するDACの構成を示す図。
【図6】 本発明の構成を有するDACの構成を示す図。
【図7】 本発明の構成を有するDACの構成を示す図。
【図8】 本発明のDACに用いられるスイッチの回路図
【図9】 TFTの作製工程を示す図。
【図10】 本発明のDACを用いた電子機器の図。
【図11】 従来の容量分割型のDACの構成を示す図。
【図12】 従来の容量分割型のDACの等価回路図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】nビットのデジタル信号(nは自然数)をアナログ信号に変換するD/A変換回路であって、前記D/A変換回路はn−m+1個(mはnより小さい自然数)の容量を有しており、前記nビットのデジタル信号のうち、下位mビットのデジタル信号によって、前記n−m+1個の容量のうちの1個の容量への電荷の充電が制御され、前記nビットのデジタル信号のうち、上位n−mビットのデジタル信号によって、前記n−m+1個の容量のうちの残りのn−m個の容量への電荷の充電が制御されていることを特徴とするD/A変換回路。
【請求項2】nビットのデジタル信号(nは自然数)をアナログ信号に変換するD/A変換回路であって、前記D/A変換回路はn−m+1個(mはnより小さい自然数)の容量を有しており、前記nビットのデジタル信号のうち、下位mビットのデジタル信号によって、前記n−m+1個の容量のうちの、容量値がC(Cは定数)である1個の容量への電荷の充電が制御され、前記nビットのデジタル信号のうち、上位n−mビットのデジタル信号によって、前記n−m+1個の容量のうちの残りのn−m個の容量への電荷の充電が制御されており、前記残りのn−m個の容量は、その容量値がそれぞれC、2C、22C、…、2n-m-1で表されることを特徴とするD/A変換回路。
【請求項3】nビットのデジタル信号(nは自然数)をアナログ信号に変換するD/A変換回路であって、前記D/A変換回路はn−m+1個(mはnより小さい自然数)の容量と、2m個の抵抗とを有しており、前記nビットのデジタル信号のうち、下位mビットのデジタル信号と前記2m個の抵抗とによって定められた電荷が、前記n−m+1個の容量のうちの1個の容量へ充電され、前記nビットのデジタル信号のうち、上位n−mビットのデジタル信号によって定められた電荷が、前記n−m+1個の容量のうちの残りのn−m個の容量へ充電されていることを特徴とするD/A変換回路。
【請求項4】nビットのデジタル信号(nは自然数)をアナログ信号に変換するD/A変換回路であって、前記D/A変換回路はn−m+1個(mはnより小さい自然数)の容量と、2m個の抵抗とを有しており、前記nビットのデジタル信号のうち、下位mビットのデジタル信号と前記2m個の抵抗とによって定められた電荷が、前記n−m+1個の容量のうちの1個の容量へ充電され、前記2m個の抵抗の抵抗値は全て同じであり、前記nビットのデジタル信号のうち、上位n−mビットのデジタル信号によって定められた電荷が、前記n−m+1個の容量のうちの残りのn−m個の容量へ充電されていることを特徴とするD/A変換回路。
【請求項5】請求項3または請求項4において、前記2m個の抵抗は直列に接続されていることを特徴とするD/A変換回路。
【請求項6】請求項5において、前記2m個の抵抗のうち、一方の端子が他の抵抗に接続されていない2つの抵抗は、該端子がそれぞれ低電圧側の電源と、高電圧側の電源に接続されていることを特徴とするD/A変換回路。
【請求項7】nビットのデジタル信号(nは自然数)をアナログ信号に変換するD/A変換回路であって、前記D/A変換回路はn−m+1個(mはnより小さい自然数)の容量と、2m本の階調電圧線とを有しており、前記nビットのデジタル信号のうち、下位mビットのデジタル信号によって、前記2m本の階調電圧線のうちの1本が選択され、前期選択された階調電圧線の電位によって前記n−m+1個の容量のうちの容量値がC(Cは定数)である1個の容量へ電荷が充電され、前記nビットのデジタル信号のうち、上位n−mビットのデジタル信号によって、前記n−m+1個の容量のうちの残りのn−m個の容量への電荷の充電が制御されており、前記残りのn−m個の容量は、その容量値がそれぞれC、2C、22C、…、2n-m-1で表されることを特徴とするD/A変換回路。
【請求項8】請求項1乃至請求項7のいずれか1項において、リセット期間において前記n−m+1個の容量へ充電される電荷の量は、常に特定の値に保たれることを特徴とするD/A変換回路。
【請求項9】請求項1乃至請求項8のいずれか1項において、前記D/A変換回路を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項10】請求項9において、表示装置、デジタルスチルカメラ、ノートブック型パーソナルコンピュータ、モバイルコンピュータ、DVDプレーヤー、ヘッドマウントディスプレイ、ビデオカメラまたは携帯電話であることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図5】
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【図6】
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【図11】
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【図12】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2002−223166(P2002−223166A)
【公開日】平成14年8月9日(2002.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−353892(P2001−353892)
【出願日】平成13年11月20日(2001.11.20)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】