説明

DC−DCコンバータ

【課題】巻き上げ巻線の巻数を増やさず必要な昇圧比を得る。
【解決手段】直流電源Viの両端に1次巻線1aと第1リアクトルLr1とを介して接続される第1スイッチTr1、1次巻線2aと第2リアクトルLr2とを介して接続される第2スイッチTr2、第1リアクトルと第1スイッチTr1との直列回路の両端に接続され巻き上げ巻線1bとダイオードD1と平滑コンデンサCoとの直列回路、第1リアクトルと第1スイッチTr1との接続点と平滑コンデンサCoの一端とに接続されたダイオードD2、第2リアクトルLr2と第2スイッチTr2との直列回路の両端に接続され巻き上げ巻線2bとダイオードD3と平滑コンデンサCoとの直列回路、第2リアクトルLr2と第2スイッチTr2との接続点と平滑コンデンサCoの一端とに接続されたダイオードD4、2次巻線1cと2次巻線2cとの直列回路両端に接続される第3リアクトルL1、制御回路10を有す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇圧チョッパ回路からなるDC−DCコンバータに関し、特に電気自動車に適用されるDC−DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
図5は従来のDC−DCコンバータの回路構成図である。昇圧型のDC−DCコンバータは、直流電源Vdc1、トランスT3,T4、リアクトルL3、スイッチQ1,Q2、ダイオードD3,D4、平滑コンデンサC1及び制御回路100を有する。
【0003】
トランスT3は、1次巻線5a(巻数np)と、1次巻線5aに直列に接続された巻き上げ巻線5b(巻数np1)と、1次巻線5a及び巻き上げ巻線5bに電磁結合する2次巻線5c(巻数ns)とを有する。トランスT4は、トランスT3と同一に構成され、1次巻線6a(巻数np)と、1次巻線6aに直列に接続された巻き上げ巻線6b(巻数np1)と、1次巻線6a及び巻き上げ巻線6bに電磁結合する2次巻線6c(巻数ns)とを有する。
【0004】
直流電源Vdc1の両端にはトランスT3の1次巻線5aを介してMOSFET等からなるスイッチQ1のドレイン−ソース間が接続されている。直流電源Vdc1の両端にはトランスT4の1次巻線6aを介してMOSFET等からなるスイッチQ2のドレイン−ソース間が接続されている。トランスT3の1次巻線5aとスイッチQ1のドレインとの接続点とスイッチQ1のソースとには、トランスT3の巻き上げ巻線5bとダイオードD3と平滑コンデンサC1とからなる第1直列回路が接続されている。トランスT4の1次巻線6aとスイッチQ2のドレインとの接続点とスイッチQ2のソースとには、トランスT4の巻き上げ巻線6bとダイオードD4と平滑コンデンサC1とからなる第2直列回路が接続されている。
【0005】
トランスT3の2次巻線5cとトランスT4の2次巻線6cとの直列回路の両端には、リアクトルL3が接続されている。制御回路100は、平滑コンデンサC1の出力電圧Voに基づきスイッチQ1とスイッチQ2とを180°の位相差でオン/オフさせる。
【0006】
このように構成された従来のDC−DCコンバータによれば、制御回路100からのQ1制御信号Q1gによりスイッチQ1をオンさせると、電流は、Vdc1プラス→5a→Q1→Vdc1マイナスの経路で流れる。このため、スイッチQ1の電流Q1iは直線的に増加する。同時に、トランスT3の2次巻線5cにも電圧が発生し、5c→L3→6c→5cの経路でリアクトルL3に電流L3iが流れる。
【0007】
電流L3iは、トランスの等アンペアーターンの法則により流れて、リアクトルL3にエネルギーを蓄積すると共にトランスT4の2次巻線6cにも同一電流が流れる。このため、トランスT4の1次巻線6aと巻き上げ巻線6bには、巻数に応じた電圧が誘起される。
【0008】
また、トランスT4の巻き上げ比をA=(np+np1)/npとした場合に、ダイオードD4には、スイッチQ1の電流Q1iの1/Aの電流がVdc1プラス→6a→6b→D4→C1→Vdc1マイナスの経路で流れる。ダイオードD4の電流D4iはスイッチQ2をオンする時刻まで流れる。平滑コンデンサC1の出力電圧Voは、直流電源Vdc1の電圧(入力電圧)とトランスT4の1次巻線6aに発生する電圧とトランスT4の巻き上げ巻線6bに発生する電圧との和となる。
【0009】
トランスT4に発生する電圧は、スイッチQ1のオンデューティ(D=Ton/T)をDとした場合、A・Vdc1・Dである。TonはスイッチQ1のオン時間である。TはスイッチQ1をスイッチングさせる周期である。平滑コンデンサC1の出力電圧Voは、Vo=Vdc1(1+A・D)となり、オンデューティDを可変することにより、出力電圧Voを制御できる。
【0010】
次に、制御回路100からのQ1制御信号Q1gによりスイッチQ1をオフさせる。このとき、Vdc1プラス→5a→5b→D3→C1→Vdc1マイナスの経路で電流D3iが流れる。
【0011】
次に、制御回路100からのQ2制御信号Q2gによりスイッチQ2をオンさせる。このとき、電流は、Vdc1プラス→6a→Q2→Vdc1マイナスの経路で流れる。このため、スイッチQ2の電流Q2iは直線的に増加する。同時に、トランスT4の2次巻線6cにも電圧が発生し、6c→5c→L3→6cの経路でリアクトルL3に電流L3iが増加しながら流れる。
【0012】
電流L3iは、トランスの等アンペアーターンの法則により流れて、リアクトルL3にエネルギーを蓄積すると共にトランスT3の2次巻線5cにも同一電流が流れる。このため、トランスT3の1次巻線5aと巻き上げ巻線5bには、巻数に応じた電圧が誘起される。
【0013】
また、トランスT3の巻き上げ比をA=(np+np1)/npとした場合に、ダイオードD3には、スイッチQ2の電流Q2iの1/Aの電流がVdc1プラス→5a→5b→D3→C1→Vdc1マイナスの経路で流れる。ダイオードD3の電流D3iはスイッチQ1をオンする時刻まで流れる。平滑コンデンサC1の出力電圧Voは、直流電源Vdc1の電圧(入力電圧)とトランスT3の1次巻線5aに発生する電圧とトランスT3の巻き上げ巻線5bに発生する電圧との和となる。
【0014】
このように、図5に示すマルチフェーズ方式トランスリンク型の昇圧チョッパ回路では、独立していた2つの相をトランスで結合している。このようにすることで、2つ必要であったコアを1つのコアのみで昇圧動作させることができる。
【特許文献1】特開2006−262601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、図5に示すDC−DCコンバータでは、ダイオードD3,D4のリカバリ損失が発生する。また、スイッチQ1,Q2のターンオン時にスイッチング損失が発生していた。
【0016】
そこで、ダイオードD3と巻き上げ巻線5bとの間にリアクトルLa(図示せず)を接続し、ダイオードD4と巻き上げ巻線6bとの間にリアクトルLb(図示せず)を接続することにより、ダイオードD3,D4のリカバリ損失を抑制することができる。
【0017】
しかしながら、ダイオードD3,D4のリカバリ損失を抑制できても、トランスの巻数比によって出力電圧の昇圧比を変調する場合、昇圧比の変調に関しての特性があまり良くなく、負荷の変動等によって出力電流が変化すると昇圧比の特性が大きく変化してしまうという問題がある。
【0018】
また、巻き上げ巻線5b,6bに直列にリアクトルLa,Lbが接続されているため、電圧が出力される際に巻き上げ巻線5b,6bにかかる電圧をリアクトルLa,Lbが妨げてしまい、その分、昇圧比が下がってしまうため、必要な昇圧比を得るために巻き上げ巻線5b,6bの巻数を増やす必要がある。
【0019】
さらに、リアクトルLa,Lbのインダクタンスや出力電流の値などの諸条件を変更すると、リアクトルLa,Lbが巻き上げ巻線5b,6bにかかる電圧を妨げる期間も変わるため、昇圧比の特性は大きく変化してしまう。このため、デューティ比を既定しての最適設計を行うことは困難である。
【0020】
本発明は、ダイオードのリカバリ損失とスイッチのターンオン時のスイッチング損失を抑制することができるDC−DCコンバータを提供することにある。また、巻き上げ巻線の巻数を増やすことなく必要な昇圧比を得ることができ、しかもデューティ比を既定した上で容易に最適設計を行うことができるDC−DCコンバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、直流電源の電圧を昇圧するDC−DCコンバータであって、前記直流電源の両端に第1トランスの1次巻線と第1リアクトルとを介して接続される第1スイッチと、前記直流電源の両端に第2トランスの1次巻線と第2リアクトルとを介して接続される第2スイッチと、前記第1リアクトルと前記第1スイッチとの直列回路の両端に接続され、前記第1トランスの前記1次巻線に直列に接続された前記第1トランスの巻き上げ巻線と第1ダイオードと平滑コンデンサとからなる第1直列回路と、前記第1リアクトルと前記第1スイッチとの接続点と前記平滑コンデンサの一端とに接続された第2ダイオードと、前記第2リアクトルと前記第2スイッチとの直列回路の両端に接続され、前記第2トランスの前記1次巻線に直列に接続された前記第2トランスの巻き上げ巻線と第3ダイオードと前記平滑コンデンサとからなる第2直列回路と、前記第2リアクトルと前記第2スイッチとの接続点と前記平滑コンデンサの一端とに接続された第4ダイオードと、前記第1トランスの2次巻線と前記第2トランスの2次巻線とが直列に接続された直列回路の両端に接続される第3リアクトルと、前記第1スイッチと前記第2スイッチとを1/2周期毎に交互にターンオンさせ、前記第1スイッチを前記第2スイッチのオン期間にターンオフさせ、前記第2スイッチを前記第1スイッチのオン期間にターンオフさせる制御回路とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、第1スイッチに直列に第1リアクトルを接続し、第2スイッチに直列に第2リアクトルを接続したので、第1、第2、第3及び第4ダイオードのリカバリ損失と第1及び第2スイッチのターンオン時のスイッチング損失を抑制できる。また、巻き上げ巻線の巻数を増やすことなく必要な昇圧比を得ることができ、しかもデューティ比を既定した上で容易に最適設計を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明のDC−DCコンバータの実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は実施例1のDC−DCコンバータを示す回路構成図である。図1に示すDC−DCコンバータは、マルチフェーズ方式トランスリンク型昇圧チョッパ回路からなる。
【0025】
DC−DCコンバータは、直流電源Vi、トランスT1(第1トランス)、トランスT2(第2トランス)、リアクトルLr1(第1リアクトル),リアクトルLr2(第2リアクトル)、リアクトルL1(第3リアクトル)、スイッチTr1(第1スイッチ)、スイッチTr2(第2スイッチ)、ダイオードD1,D2,D3,D4、平滑コンデンサCo、制御回路10を有する。
【0026】
トランスT1は、1次巻線1a(巻数n1)と、1次巻線1aに直列に接続された巻き上げ巻線1b(巻数n3)と、1次巻線1aに電磁結合する2次巻線1c(巻数n2)とを有する。トランスT2は、トランスT1と同一に構成され、1次巻線2a(巻数n4)と、1次巻線2aに直列に接続された巻き上げ巻線2b(巻数n6)と、1次巻線2aに電磁結合する2次巻線2c(巻数n5)とを有する。
【0027】
直流電源Viの両端にはトランスT1の1次巻線1aとリアクトルLr1とを介してIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)からなるスイッチTr1のコレクタ−エミッタ間が接続されている。直流電源Viの両端にはトランスT2の1次巻線2aとリアクトルLr2とを介してIGBTからなるスイッチTr2のコレクタ−エミッタ間が接続されている。
【0028】
リアクトルLr1とスイッチTr1との直列回路の両端には、トランスT1の巻き上げ巻線1bとダイオードD1と平滑コンデンサCoとからなる第1直列回路が接続されている。リアクトルLr2とスイッチTr2との直列回路の両端には、トランスT2の巻き上げ巻線2bとダイオードD3と平滑コンデンサCoとからなる第2直列回路が接続されている。
【0029】
リアクトルLr1とスイッチTr1との接続点と平滑コンデンサCoの一端との間にダイオードD2が接続されている。リアクトルLr2とスイッチTr2との接続点と平滑コンデンサCoの一端との間にダイオードD4が接続されている。
【0030】
トランスT1の2次巻線1cとトランスT2の2次巻線2cとが直列に接続された直列回路の両端には、リアクトルL1が接続されている。制御回路10は、平滑コンデンサCoの出力電圧Voに基づき、スイッチTr1がターンオンした後にスイッチTr1がターンオフする前にスイッチTr2がターンオンし、スイッチTr2がターンオフする前にスイッチTr1がターンオンするように制御する。即ち、1/2周期毎にスイッチTr1とスイッチTr2とが同時にオンしている重複期間が存在する。
【0031】
トランスT1とリアクトルLr1とダイオードD1とダイオードD2とスイッチTr1とは第1コンバータを構成し、トランスT2とリアクトルLr2とダイオードD3とダイオードD4とスイッチTr2とは第2コンバータを構成している。
【0032】
次に、このように構成された実施例1のDC−DCコンバータの動作を、図2に示すタイミングチャートを参照しながら説明する。
【0033】
なお、図2において、時刻t0〜t3は、1/2周期であり、時刻t0〜t1、時刻t3〜t4は、スイッチTr1とスイッチTr2とが同時にオンしている重複期間である。
【0034】
まず、時刻t0において、制御回路10からのスイッチTr1のゲート信号Tr1gによりスイッチTr1がオンする。このとき、電流は、Viプラス→1a→Lr1→Tr1→Viマイナスの経路で流れる。このため、トランスT1の1次巻線1aに流れる電流i1は増加する。同時に、トランスT1の2次巻線1cにも電圧が発生し、1c→2c→L1→1cの経路でリアクトルL1に電流L1iが流れる。
【0035】
この電流L1iは、トランスの等アンペアーターンの法則により流れて、リアクトルL1にエネルギーが蓄積されると共にトランスT2の2次巻線2cにも同一電流が流れる。このため、トランスT2の1次巻線2aと巻き上げ巻線2bには、巻数に応じた電圧が誘起される。
【0036】
また、トランスT2の巻き上げ比がA=(n4+n6)/n4である場合に、ダイオードD3には、スイッチTr1の電流の1/Aの電流が、Viプラス→2a→2b→D3→Co→Viマイナスの経路で流れる。このダイオードD3の電流D3iは、時刻t1からスイッチTr2がオンされる時刻t3まで流れる。平滑コンデンサCoの出力電圧Voは、直流電源Viの電圧(入力電圧)とトランスT2の1次巻線2aに発生する電圧とトランスT2の巻き上げ巻線2bに発生する電圧との和となる。
【0037】
トランスT2に発生する電圧は、スイッチTr1のオンデューティ(D=Ton/T)がDである場合に、A・Vi・Dである。TonはスイッチTr1のオン時間である。TはスイッチTr1をスイッチングさせる周期である。平滑コンデンサCoの出力電圧Voは、Vo=Vi(1+A・D)となる。このため、オンデューティDを可変することにより、出力電圧Voを制御することができる。
【0038】
次に、時刻t1において、制御回路10からのゲート信号Tr2gによりスイッチTr2がオフしスイッチTr2のコレクタ−エミッタ間電圧Tr2vが上昇する。すると、まず、Viプラス→2a→Lr2→D4→Co→Viマイナスの経路で電流が流れる。このため、ダイオードD4に電流D4iが流れる。
【0039】
しかし、トランスT2の巻き上げ巻線2bにかかる電圧によりリアクトルLr2の電流がダイオードD3に転流してくる。このため、ダイオードD3に流れる電流D3iが増加する。これに伴い、ダイオードD4の電流D4iは緩やかに減少する。トランスT2の1次巻線2aと巻き上げ巻線2bとの電流がダイオードD3に転流し終わると、ダイオードD4は時刻t2においてターンオフする。電流が緩やかに減少してダイオードD4がターンオフするため、ダイオードD4でのリカバリ損失の発生は抑制される。
【0040】
時刻t2〜時刻t3においては、トランス電流は、ダイオードD3に完全に転流し、電流はダイオードD3のみを通って出力されている状態である。
【0041】
時刻t3において、制御回路10からのスイッチTr2のゲート信号Tr2gによりスイッチTr2がオンすると、トランスT2の1次巻線2aと巻き上げ巻線2bとの電流は、ダイオードD3からスイッチTr2へと転流を始める。
【0042】
このとき、リアクトルLr2によって、スイッチTr2の電流の増加は緩やかになり、ゼロ電流ターンオン動作を実現できる。これに伴ってダイオードD3の電流の減少も緩やかになり、ターンオフ時のリカバリ損失の発生が抑制される。
【0043】
電流は、Viプラス→2a→Lr2→Tr2→Viマイナスの経路で流れる。このため、トランスT2の1次巻線2aに流れる電流i2は増加する。同時に、トランスT2の2次巻線2cにも電圧が発生し、2c→L1→1c→2cの経路でリアクトルL1に電流L1iが流れる。
【0044】
この電流L1iは、トランスの等アンペアーターンの法則により流れて、リアクトルL1にエネルギーが蓄積されると共にトランスT1の2次巻線1cにも同一電流が流れる。このため、トランスT1の1次巻線1aと巻き上げ巻線1bには、巻数に応じた電圧が誘起される。
【0045】
また、トランスT1の巻き上げ比がA=(n1+n3)/n1である場合に、ダイオードD1には、スイッチTr2の電流の1/Aの電流が、Viプラス→1a→1b→D1→Co→Viマイナスの経路で流れる。このダイオードD1の電流D1iは、時刻t4からスイッチTr1がオンされる時刻t6まで流れる。平滑コンデンサCoの出力電圧Voは、直流電源Viの電圧(入力電圧)とトランスT1の1次巻線1aに発生する電圧とトランスT1の巻き上げ巻線1bに発生する電圧との和となる。
【0046】
トランスT1に発生する電圧は、スイッチTr2のオンデューティ(D=Ton/T)がDである場合に、A・Vi・Dである。TonはスイッチTr2のオン時間である。TはスイッチTr2をスイッチングさせる周期である。平滑コンデンサCoの出力電圧Voは、Vo=Vi(1+A・D)となる。このため、オンデューティDを可変することにより、出力電圧Voを制御することができる。
【0047】
次に、時刻t4において、制御回路10からのゲート信号Tr1gによりスイッチTr1がオフしスイッチTr1のコレクタ−エミッタ間電圧Tr1vが上昇する。すると、まず、Viプラス→1a→Lr1→D2→Co→Viマイナスの経路で電流が流れる。このため、ダイオードD2に電流D2iが流れる。
【0048】
しかし、トランスT1の巻き上げ巻線1bにかかる電圧によりリアクトルLr1の電流がダイオードD1に転流してくる。このため、ダイオードD1に流れる電流D1iが増加する。これに伴い、ダイオードD2の電流D2iは緩やかに減少する。トランスT1の1次巻線1aと巻き上げ巻線1bとの電流がダイオードD1に転流し終わると、ダイオードD2は時刻t5においてターンオフする。電流が緩やかに減少してダイオードD2がターンオフするため、ダイオードD2でのリカバリ損失の発生は抑制される。
【0049】
時刻t5〜時刻t6においては、トランス電流は、ダイオードD1に完全に転流し、電流はダイオードD1のみを通って出力されている状態である。
【0050】
時刻t6(時刻t0と同じ)において、スイッチTr1がオンすると、トランスT1の1次巻線1aと巻き上げ巻線1bとの電流は、ダイオードD1からスイッチTr1へと転流を始める。
【0051】
このとき、リアクトルLr1によって、スイッチTr1の電流の増加は緩やかになり、ゼロ電流ターンオン動作を実現できる。これに伴ってダイオードD1の電流の減少も緩やかになり、ターンオフ時のリカバリ損失の発生が抑制される。
【0052】
また、実施例1では、リアクトルLr1,Lr2をスイッチTr1,Tr2側に配置することでトランスT1,T2の巻き上げ巻線1b,2bにかかる電圧がリアクトルLr1,Lr2によって妨げられないことから、従来の回路(図5のダイオードD3と巻き上げ巻線5bとの間にリアクトルLa(図示せず)を接続し、ダイオードD4と巻き上げ巻線6bとの間にリアクトルLb(図示せず)を接続した回路)の問題が発生しなくなる。
【0053】
即ち、実施例1の回路では、トランスT1,T2の巻き上げ巻線1b,2bの巻数を増やすことなく必要な昇圧比を得ることができ、昇圧比の変調に対する特性は比較的容易に解析することができ、デューティ比を既定した上で容易に最適設計を行うことができる。
【0054】
また、リアクトルLr1,Lr2のインダクタンス値も小さくて済む。また、平滑コンデンサCoを小型化することができる。
【0055】
なお、図3に従来のDC−DCコンバータの各部の電圧及び電流の波形を示す。図3では、図5のダイオードD3と巻き上げ巻線5bとの間にリアクトルLa(図示せず)を接続し、ダイオードD4と巻き上げ巻線6bとの間にリアクトルLb(図示せず)を接続した回路を用いた。
【0056】
図4に実施例1のDC−DCコンバータの各部の電圧及び電流の波形を示す。図3及び図4において、リアクトル電流は、リアクトルLa,Lb、リアクトルLr1,Lr2に流れる電流である。ダイオード電流は、ダイオードD2,D4に流れる電流である。コンデンサリップル電圧は、平滑コンデンサCoのリップル電圧である。
【0057】
図3に対して、図4では、リアクトル電流のリップルとコンデンサリップル電圧のリップルとが大幅に低減していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施例1のDC−DCコンバータを示す回路構成図である。
【図2】実施例1のDC−DCコンバータの各部のタイミングチャートである。
【図3】従来のDC−DCコンバータの各部の電圧及び電流の波形を示す図である。
【図4】実施例1のDC−DCコンバータの各部の電圧及び電流の波形を示す図である。
【図5】従来のDC−DCコンバータの回路構成図である。
【符号の説明】
【0059】
Vi 直流電源
Co 平滑コンデンサ
T1,T2 トランス
Tr1,Tr2 スイッチ
D1〜D4 ダイオード
Ro 負荷抵抗
L1,Lr1,Lr2 リアクトル
1a,2a 1次巻線
1b,2b 巻き上げ巻線
1c,2c 2次巻線
10 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の電圧を昇圧するDC−DCコンバータであって、
前記直流電源の両端に第1トランスの1次巻線と第1リアクトルとを介して接続される第1スイッチと、
前記直流電源の両端に第2トランスの1次巻線と第2リアクトルとを介して接続される第2スイッチと、
前記第1リアクトルと前記第1スイッチとの直列回路の両端に接続され、前記第1トランスの前記1次巻線に直列に接続された前記第1トランスの巻き上げ巻線と第1ダイオードと平滑コンデンサとからなる第1直列回路と、
前記第1リアクトルと前記第1スイッチとの接続点と前記平滑コンデンサの一端とに接続された第2ダイオードと、
前記第2リアクトルと前記第2スイッチとの直列回路の両端に接続され、前記第2トランスの前記1次巻線に直列に接続された前記第2トランスの巻き上げ巻線と第3ダイオードと前記平滑コンデンサとからなる第2直列回路と、
前記第2リアクトルと前記第2スイッチとの接続点と前記平滑コンデンサの一端とに接続された第4ダイオードと、
前記第1トランスの2次巻線と前記第2トランスの2次巻線とが直列に接続された直列回路の両端に接続される第3リアクトルと、
前記第1スイッチと前記第2スイッチとを1/2周期毎に交互にターンオンさせ、前記第1スイッチを前記第2スイッチのオン期間にターンオフさせ、前記第2スイッチを前記第1スイッチのオン期間にターンオフさせる制御回路と、
を有することを特徴とするDC−DCコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−4704(P2010−4704A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163257(P2008−163257)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【出願人】(504155293)国立大学法人島根大学 (113)
【Fターム(参考)】