説明

DIG−5殺虫性CRY毒素

DIG−5Cry毒素、かかる毒素をコードするポリヌクレオチド、有害生物を防除するためのかかる毒素の使用、及びかかる毒素を産生する遺伝子組換え植物が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年6月16日に出願された米国仮出願第61/187,455号の利益を主張するものであり、同号を本明細書において参照により明示的に援用する。
【0002】
発明の分野
本発明は、新規殺虫性のCry毒素及び昆虫を防除する(control)ためのその使用に関連する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)(B.t.)は、デルタエンドトキシン又はCryタンパク質として公知の殺有害生物性の結晶タンパク質を産生する土壌伝播性のバクテリアである。Cryタンパク質は、感受性を有する昆虫の中腸細胞に作用することにより機能する経口中毒物質である。いくつかのCry毒素が線虫に対して活性を有することが明らかにされている。デルタエンドトキシンの広範なリストが、http://www.lifesci.sussex.ac.uk/home/Neil_Crickmore/Bt/intro.html.で維持され、定期的に更新されている。
【0004】
ウエスタンコーンルートワーム(WCR)、Diabrotica virgifera virgifera LeConteは、経済的に重要なトウモロコシ有害生物であり、同生物は、穀物収穫量の損失及び昆虫管理費用に起因して、北米で毎年推定$10億もの歳入喪失を引き起こす(Metcalfの文献、1986年)。WCR管理の実践として、大豆による輪作、化学殺虫剤、及びより最近ではB.t.のCryタンパク質を発現する遺伝子組換え作物が挙げられる。しかし、今日までにCry34Ab1/Cry35Ab1(Ellisらの文献、2002年)、改変されたCry3Aa1(Waltersらの文献、2008年)、及び改変されたCry3Bb1(Vaughnらの文献、2005年)を含む数例のB.t.Cryタンパク質が、WCRに対して商業レベルの有効性を実現するに過ぎない。これらのB.t.タンパク質は、遺伝子組換えトウモロコシの根で産生されると、WCRによるトウモロコシの根の損傷を防止する上で極めて効果的である(Moellenbeckらの文献、2001年、Vaughnらの文献、2005年、米国特許第7361813号)。
【0005】
WCR抵抗性の遺伝子組換えトウモロコシで成功を収めたにも関わらず、いくつかの要因により、WCRを防除するための新しいCryタンパク質を発見し、開発する必要性が生じている。第1に、現在展開されているCryタンパク質が遺伝子組換えトウモロコシ植物中で産生されると、WCRによる根の損傷から強固に保護されることとなり、これによって穀粒収量が確保されるが、人工的な寄生試験において、いくらかのWCR成虫が出現し、不完全な幼虫防除を示唆している。2番目に、抵抗性の昆虫個体群が発生し、ルートワームの防除においてCryタンパク質の長期耐久性が脅かされている。Cryタンパク質に対して抵抗性を有する鱗翅目の昆虫が、コナガ(Plutella xylostella)(Tabashnikの文献、1994年)、キンウワバ(Trichoplusia ni)(Janmaat及びMyersの文献、2003年、2005年)、及びアメリカタバコガ(Helicoverpa zeae)(Tabashnikらの文献、2008年)の領域において発生した。B.t.Cryタンパク質に対して抵抗性を有する昆虫は、いくつかの機構を通じて発生し得る(Heckelらの文献(2007年)、Pigott及びEllarの文献、2007年)。Cryタンパク質に関する複数の受容体タンパク質クラスが昆虫内に同定され、及び各受容体クラス内に複数の例が存在する。特定のCryタンパク質に対する抵抗性は、例えば、受容体タンパク質のカドヘリンドメインの毒素結合部分内の突然変異により発生し得る。更なる抵抗手段は、プロトキシン処理プロテアーゼ(protoxin-processing protease)により媒介され得る。鱗翅目の種に認められるCry毒素抵抗性は、少なくとも4つの異なる主要な抵抗遺伝子を伴う複雑な遺伝学的基礎を有する。同様に、甲虫目の種においてCry毒素抵抗性を制御するための複数の遺伝子が推測される。新規の高い効力を有するCryタンパク質が開発されれば、WCRを管理するための更なるツールがもたらされるであろう。WCR昆虫における抵抗性発生の防止、及びルートワームを防除するためのB.t.技術の長期的有用性の確保を、遺伝子組換えトウモロコシ内で組み合わせることにより、異なる作用機序を有するCryタンパク質を生み出すことができる。
【発明の概要】
【0006】
発明の要旨
本発明は、本明細書でDIG−5と呼ぶ毒素並びにDIG−5の変異体を含む殺虫性のCry毒素、これらの毒素をコードする核酸、当該毒素を用いて有害生物を防除する方法、遺伝子組換え(transgenic)宿主細胞内で当該毒素を産生する方法、及び当該毒素を発現する遺伝子組換え(transgenic)植物を提供する。野生型DIG−5毒素の予測されるアミノ酸配列を配列番号2に示す。
【0007】
実施例1に記載するように、DIG−5タンパク質をコードする核酸は、Dow AgroSciences LLCが社内的にPS198Q7と呼ぶB.t.系統から単離された。完全長コーディング領域に関する核酸配列は決定され、及び完全長タンパク質配列が当該核酸配列から推定された。DIG−5毒素は、Cry7Ba1(Genbank受託番号ABB70817.1)、及びその他のB.チューリンゲンシス(thuringiensis)のCry7タイプタンパク質とある程度の類似性を有する(http://www.lifesci.sussex.ac.uk/home/Neil_Crickmore/Bt/intro.html)。
【0008】
殺虫剤として活性なDIG−5毒素変異体も本明細書において記載され、まとめてDIG−5毒素と呼ぶ。この毒素は、抵抗性甲虫目昆虫個体群の発生を制御するために、単独で又はその他のCry毒素、例えばCry34Ab1/Cry35Ab1(DAS−59122−7)、Cry3Bb1(MON88017)、Cry3A(MIR604)、キメラCry1Ab/Cry3Aa(FR8A、国際公開第2008/121633A1号)、CryET33とCryET34、Vip1A、Cry1Ia、CryET84、CryET80、CryET76、CryET71、CryET69、CryET75、CryET39、CryET79、及びCryET74と組み合わせて使用可能である。
【0009】
DIG−5毒素は、その他の害虫(insect pest)を防除するためにRNAi法と組み合わせて用いることもできる。例えば、DIG−5は、コーンルートワーム内の必須遺伝子又は害虫内の必須遺伝子を抑制するdsRNAと組み合わせて遺伝子組換え植物で利用可能である。かかる標的遺伝子として、例えば液胞型ATPアーゼ(vacuolar ATPase)、ARF−1、Act42A、CHD3、EF−1α、及びTFIIBが含まれる。適する標的遺伝子の例として、国際公開第2007/035650号で開示するように液胞型ATPアーゼが挙げられる。
【0010】
1つの実施形態では、本発明は、
(a)配列番号2の残基114〜655のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(b)配列番号2の残基114〜655のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(c)配列番号2によりコードされる毒素の発現又は活性に悪影響を及ぼさない最大20個のアミノ酸の置換、欠損、又は修飾を含む、配列番号2の残基114〜655のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
から構成される群より選択されるコア毒素セグメントを含む単離されたDIG−5毒素ポリペプチド又はその殺虫剤として(insecticidally)活性な断片を提供する。
【0011】
本発明の別の実施形態では、本発明は、
(a)配列番号2の残基1〜655のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(b)配列番号2の残基1〜655のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(c)配列番号2によりコードされる毒素の発現又は活性に悪影響を及ぼさない最大20個のアミノ酸の置換、欠損、又は修飾を含む、配列番号2の残基1〜655のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
から構成される群より選択されるDIG−5コア毒素セグメントを含む単離されたDIG−5毒素ポリペプチド又はその殺虫剤として活性な断片を提供する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、
(a)配列番号2の残基114〜1149のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(b)配列番号2の残基114〜1149のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(c)配列番号2によりコードされる毒素の発現又は活性に悪影響を及ぼさない最大20個のアミノ酸の置換、欠損、又は修飾を含む、配列番号2の残基114〜1149のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
から構成される群より選択されるDIG−5コア毒素セグメントを含む単離されたDIG−5毒素ポリペプチド又はその殺虫剤として活性な断片を提供する。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、
(a)配列番号2の残基1〜1149のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(b)配列番号2の残基1〜1149のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(c)配列番号2によりコードされる毒素の発現又は活性に悪影響を及ぼさない最大20個のアミノ酸の置換、欠損、又は修飾を含む、配列番号2の残基1〜1149のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
から構成される群より選択されるDIG−5コア毒素セグメントを含む単離されたDIG−5毒素ポリペプチド又はその殺虫剤として活性な断片を提供する。
【0014】
別の実施形態では、本発明はDIG−5毒素を含む植物を提供する。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、有害生物個体群(pest population)を防除する方法であって、前記個体群を、殺有害生物剤として(pesticidally)有効な量のDIG−5毒素と接触させるステップを含む方法を提供する。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、DIG−5毒素をコードする単離された核酸を提供する。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)由来でないプロモーターであって、植物内で発現を推進する能力を有するプロモーターに作動可能に連結した、DIG−5毒素をコードする核酸配列を含むDNA構築物を提供する。本発明は、ゲノムに安定的に組み込まれたDNA構築物を含む遺伝子組換え植物、及び有害生物から植物を保護する方法であって、前記構築物を前記植物に導入するステップを含む方法も提供する。
【0018】
配列の簡単な説明
配列番号1:完全長DIG−5毒素をコードするDNA配列;3447nt。
配列番号2:完全長DIG−5タンパク質配列;1149aa。
配列番号3:トウモロコシ最適化DIG−5コア毒素コーディング領域;1965nt。
配列番号4:Cry1Abプロトキシンセグメント;545aa。
配列番号5:キメラ毒素:DIG−5コア/Cry1Abプロトキシンセグメント;1200aa。
配列番号6:Cry1Abプロトキシンセグメントをコードする双子葉植物最適化DNA配列;1635nt
配列番号7:Cry1Abプロトキシンセグメントをコードするトウモロコシ最適化DNA配列;1635nt
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
DIG−5毒素、及び殺虫剤として活性な変異体。配列番号2の完全長DIG−5毒素に加えて、本発明は、殺虫剤として活性な変異体を含む。用語「変異体」と呼ぶとき、本出願者らは、断片、しかるべき欠損及び挿入突然変異体、及びしかるべき融合タンパク質を含むように意図する。DIG−5は、古典的な3ドメインCry毒素である。本発明に含まれるDIG−5毒素の変異体を記載するに当たり、その前置きとして一般的な3ドメインCry毒素の構造、及び具体的なDIG−5タンパク質毒素の構造を簡潔に総説することが有用であろう。
【0020】
大部分のバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)のデルタエンドトキシン結晶タンパク質分子は、2つの機能的セグメントから構成されている。プロテアーゼ抵抗性コア毒素は第1のセグメントであり、及びタンパク質分子のほぼ前半部分に対応する。完全な約130kDaプロトキシン分子は、昆虫腸内のプロテアーゼにより速やかに処理されて抵抗性のコアセグメントになる。この処理により除去されるセグメントは、本明細書では「プロトキシンセグメント」と呼ぶ。プロトキシンセグメントは、毒素の結晶形成に関与していると考えられている(Arvidsonらの文献(1989年))。従って、プロトキシンセグメントは、毒素分子がプロテアーゼにより処理されるのを抑制し(Haiderらの文献、1986年)、又は毒素の溶解度を低下させ(Aronsonらの文献、1991年)、こうして昆虫へのコアのアクセス性を制限することにより、昆虫に偏よった特異性を毒素に付与することができる。B.t.毒素は特定のクラスに含まれるといっても、長さ及びコア毒素部分からプロトキシン部分に移行する正確な場所についてある程度変化する。コア毒素部分からプロトキシン部分への移行は、一般的に完全長毒素の約50%〜約60%の間で生ずる。配列番号2では、完全長DIG−5ポリペプチドの1149個のアミノ酸からなる配列が開示されており、そのうちのN末端側655個のアミノ酸は、DIG−5コア毒素を含む。配列番号1の5’末端部1965個のヌクレオチドはコア毒素のコーディング領域を含む。
【0021】
3次元結晶構造が、Cry1Aa1、Cry2Aa1、Cry3Aa1、Cry3Bb1、Cry4Aa、Cry4Ba、及びCry8Ea1について決定された。コア毒素に関するこれらの構造は極めて類似しており、及び下記の特徴を有する3つの異なるドメインから構成される(de Maagdらの文献、2003年でレビューされている)。
【0022】
ドメインIは、7つのαへリックスからなる1つの束であり、へリックス5が6つの両親媒性へリックスに取り囲まれている。このドメインからはポア形成が示唆されており、ヘモリジンやコリシンを含むその他のポア形成タンパク質と構造的類似性を共有している。DIG−5タンパク質のドメインIは、配列番号2のアミノ酸残基55〜281を含む。
【0023】
ドメインIIは、βプリズム内に共にパックされた3つの逆平行βシートから形成されている。このドメインのループは、昆虫の中腸受容体に結合する際に重要な役割を演じている。Cry1Aタンパク質では、ドメインIIβシートの頂点部で表面に露出したループは、鱗翅目のカドヘリン受容体との結合に関与している。Cry3AaドメインIIループは、コロラドハムシ(Leptinotarsa decemlineata)(Say)(Colorado potato beetle)の膜結合性メタロプロテアーゼに類似の様式で結合する(Ochoa-Campuzanoらの文献、2007年)。ドメインIIは、ビテリンやジャカリンを含むある種の炭水化物結合タンパク質と構造的類似性を有する。DIG−5タンパク質のドメインIIは配列番号2のアミノ酸残基286〜499を含む。
【0024】
ドメインIIIは2つの逆平行βシートからなるβサンドイッチである。このドメインは、グルカナーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、シアリダーゼ等のタンパク質の炭水化物結合ドメインと構造的に関連する。ドメインIIIは、受容体タンパク質のある種のクラスと結合し、おそらく受容体の第2のクラス、その例として、Cry1Aタンパク質の場合では、アミノペプチダーゼやアルカリホスファターゼが挙げられるが、これらと相互作用するオリゴマー型毒素プレポア(pre-pore)の挿入に関与している(Honeeらの文献(1991年)、Pigott及びEllarの文献、(2007年))。甲虫目では類似するCryドメインIII受容体はまだ見つかっていない。保存性のB.t.配列ブロック2及び3は、ドメイン2のN末端及びC末端近傍にそれぞれマップする。従って、これらの保存性の配列ブロック2及び3は、ほぼ上記3つの機能性ドメイン間に位置する境界領域に該当する。保存性のDNA及びタンパク質のこれらの領域の相同性は、組換えB.t.毒素を工学的に作り出すのに利用されてきた(米国特許第6,090,931号、国際公開第91/01087号、同第95/06730号、同第1998022595号)。DIG−5タンパク質のドメインIIIは、配列番号2のアミノ酸残基509〜653を含む。
【0025】
受容体が結合した後、ドメインIのαへリックス1は除去されることが報告されている。Aronsonらの文献(1999年)では、BBMVに結合したCry1Acは、αへリックス1直後の残基59で始まるプロテイナーゼKの切断から保護されることが実証された。同様の結果がCry1Abについて例証された。Gomezらの文献(2002年)では、BBMV受容体が結合して形成されたCry1Abオリゴマーは、ドメインIのαへリックス1の部分を欠いていることが見出された。また、Soberonらの文献(2007年)では、3次元Cry構造におけるαへリックス1を含む約60個のアミノ酸を欠損するCry1Ab及びCry1AcのN末端欠損突然変異体は、カドヘリンが結合しなくても分子量約60kDaのモノマーをプレポアに会合させることができることも明らかにされた。これらのN末端欠損突然変異体は、Cry抵抗性の幼虫に対して活性を有することが報告された。更に、Diaz-Mendozaらの文献(2007年)では、地中海マツマダラメイガ(corn borer)(Sesamia nonagrioides)に対して活性を維持する43kDa及び46kDaのCry1Ab断片について記載された。これらの断片は、アミノ酸残基116〜423を含むことが実証された。但し、正確なアミノ酸配列は明らかにされておらず、及びこれらのタンパク質分解性断片の活性機構は不明である。Gomezら(2002年)、Soberonら2007年、及びDiaz-Mendozaら(2007年)の文献の結果は、Hofteらの文献(1986年)の結果とは対照的であり、Hofteらは、Cry1AbのN末端から36個のアミノ酸が欠損すると殺虫活性が喪失することを報告した。
【0026】
本発明者らは、DIG−5のタンパク質配列を、構造が公知のCry8Ea1に関するタンパク質配列と比較することにより、へリックス1、2A、2B、及び3の始まりと終わり、及びDIG−5毒素のドメインI内の前記ヘリックス間に位置するスペーサー領域の場所を推測した。これらの場所を表1に記載する。
【0027】
【表1】

【0028】
DIG−5のアミノ末端欠損変異体。本発明の1つの態様では、本発明は、殺虫活性が改善し、及び昆虫が抵抗性を発生するのを防ぐように、ヘリックス1、2A、及び2Bの全て又は一部が欠損しているDIG−5変異体を提供する。これらの改変体は、改善した標的有害生物スペクトル、効力、及び昆虫抵抗性管理等の、改善した特性をDIG−5変異体に付与するように作製される。本願発明のいくつかの実施形態では、本願改変体はプロトキシン活性化、及びポア形成効率に影響を及ぼす可能性があり、以って昆虫に中毒を引き起こす。より具体的には、DIG−5変異体に改善した特性を付与するために、N末端をコードする遺伝子部分を除去する段階的な欠損が記載される。当該欠損では、ドメインI内のαへリックス1の全て、及びαへリックス2の全て又は一部が除去され、一方αへリックス3〜7の構造的完全性は維持される。従って、本願発明はCryタンパク質の有効性に対する改善に一部関連し、同改善は、より有効にポア形成するようにドメインIのαへリックス成分を工学的に作り出すことにより生み出される。より具体的には、本願発明は、Cry1タンパク質のドメインI内にあるαへリックス1及び2に対して相同性を有する推定二次構造を備えた領域内で、N末端欠損を有するように設計される改善したDIG−5タンパク質に一部関連する。
【0029】
DIG−5毒素の殺虫特性を改善する欠損は、推定されたαへリックス2Aが開始する前で始まり、αへリックス2B末端の後で終了し得るが、αへリックス3内まで及ばないのが好ましい。
【0030】
N末端欠損変異体のコーディング配列を設計する際には、メチオニンをコードするATG開始コドンが、欠損変異体を発現するように設計されたヌクレオチド配列の5’末端に挿入される。遺伝子組換え植物で使用するように設計される配列の場合、Varshavsky(1997年)の文献の「N末端規則」に従うのが有利となり得る。いくつかのアミノ酸がタンパク質のN末端残基として表現されると、真核細胞ではタンパク質が不安定化し、及び分解する原因となり得ることが教示される。例えば、酵母菌及び哺乳動物の細胞の観察から収集されたデータから、N末端の不安定化アミノ酸は、F、L、W、Y、R、K、H、I、N、Q、D、E、及びおそらくはPであることが示唆される。タンパク質分解機構の詳細は生物間で若干異なる可能性があるが、上記で認められようなN末端不安定化アミノ酸の同一性は保存的であることから、同様の機構は植物細胞においても機能し得ることが示唆される。例えば、Worleyらの文献(1998年)では、植物の場合、N末端規則には塩基性及び芳香族性残基が含まれることを見出した。可能性として、本願B.t.殺虫性タンパク質のαへリックス3の開始部近傍で植物プロテアーゼによるタンパク質分解切断が生ずると、不安定化N末端アミノ酸が露出し得ることが挙げられる。かかる処理は、切断されたタンパク質を速やかに分解するようにこれを標的とし得るが、またB.t.の殺虫性タンパク質の蓄積を、昆虫を有効に防除するには不十分なレベルに制限し得る。従って、不安定化アミノ酸のうちの1つのアミノ酸で始まるN末端欠損変異体の場合、本出願者らは、翻訳開始メチオニンと不安定化アミノ酸との間にG(グリシン)アミノ酸を規定するコドンを付加することが好ましいと考える。
【0031】
実施例2では、本発明に基づくDIG−5のアミノ末端欠損変異体の具体的な例が記載されている。
【0032】
キメラ毒素。別のCry毒素のプロトキシンセグメントと融合した、1つのCry毒素のコア毒素ドメインを利用するキメラタンパク質が、これまでに報告されている。DIG−5変異体には、コア毒素部分の末端部を通り過ぎたある点で異種性の(heterologous)プロトキシンセグメントと融合した、DIG−5毒素のN末端毒素コア部分(完全長又は上記N末端欠損を有し得る)を含む毒素が含まれる。異種性のプロトキシンセグメントへの移行は、ほぼコア毒素/プロトキシン接合部において生じ得るが、又は別の方法では、天然のプロトキシンの一部分(コア毒素部分を過ぎて延長する)を、下流で生ずる異種性のプロトキシンへの移行と共に保持し得る。例として、本願発明のキメラ毒素は、DIG−5の全毒素部分(アミノ酸1〜655)及び異種性のプロトキシン(アミノ酸655〜C末端)を有する。好ましい実施形態では、プロトキシンの異種性部分は、配列番号5に示すようにCry1Abデルタエンドトキシンに由来する。
【0033】
配列番号4は、本発明のDIG−5変異体で有用なCry1Abプロトキシンセグメントの545個のアミノ酸配列を開示する。本願発明のキメラ毒素に含めるのに最も重要な、本プロトキシンセグメントの最後の約100〜150個のアミノ酸に注目されたい。
【0034】
プロテアーゼ感受性変異体。昆虫の腸内プロテアーゼは、一般的に食物タンパク質から必要とされるアミノ酸を摂取する際に昆虫を支援するように機能する。最も良く理解されている昆虫消化プロテアーゼはセリンプロテアーゼであり、特に鱗翅目の種で最も一般的なタイプとして出現する(Englemann及びGeraertsの文献(1980年))。甲虫目の昆虫は、鱗翅目の腸よりも中性から酸性の腸を有する。甲虫目の幼虫及び成虫の大部分、例えばコロラドハムシ(Colorado potato beetle)は、わずかに酸性の中腸を有し、及びシステインプロテアーゼが主要なタンパク質分解活性をもたらす(Wolfson及びMurdockの文献(1990年))。より正確には、Thie及びHousemanの文献(1990年)では、コロラドハムシ中のカテプシンB様及びカテプシンH様システインプロテアーゼ、及びカテプシンD様アスパルチルプロテアーゼを同定し、及び特徴付けを行った。Gillikinらの文献(1992年)では、ウエスタンコーンルートワームの幼虫の腸内タンパク質分解活性について特徴付けを行い、及び主にシステインプロテアーゼであることを見出した。米国特許第7230167号は、ウエスタンコーンルートワーム内にセリンプロテアーゼであるカテプシンGが存在することを開示した。昆虫の腸内プロテアーゼは多様であり、及びその活性レベルは異なるが、これらは特定のB.t.毒素に対する昆虫の感受性に影響を及ぼす可能性がある。
【0035】
本発明の別の実施形態では、ある種の害虫の感受性を有する幼虫の中腸内におけるタンパク質処理に影響を及ぼすように、プロテアーゼ切断部位を所望の場所に工学的に作り出すことができる。そのようなプロテアーゼ切断部位は、化学的遺伝子合成法又はスプライスオーバーラップPCR法(splice overlap PCR)(Hortonらの文献、1989年)等の方法により導入され得る。例えば、感受性を有する幼虫の中腸内における、所望の欠損ポイントにおけるタンパク質処理に影響を及ぼすように、セリンプロテアーゼ認識配列を任意選択的にCryタンパク質構造内の特異的部位に挿入可能である。そのような方法で利用可能なセリンプロテアーゼには、鱗翅目の中腸セリンプロテアーゼ、例えばトリプシン、又はトリプシン様酵素、キモトリプシン、エラスターゼ等が含まれる(Christellerらの文献、1992年)。更に、未分画の幼虫中腸内プロテアーゼ調製物により生成されるCryタンパク質消化生成物を配列決定することにより、又は刷子縁膜小胞(brush border membrane vesicles)に結合することにより経験的に同定される欠損部位は、タンパク質の活性化に影響を及ぼすように工学的に作り出すことができる。遺伝子の欠損、又はプロテアーゼ切断部位の導入のいずれかによって生み出される改変されたCryタンパク質は、鱗翅目の有害生物、例えばアワノメイガ(Ostrinia nubilalis)、ナンセイアワノメイガ(Diatraea grandiosella)、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)、タマナヤガ(Agrotis ipsilon)、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)、サトウキビメイガ(Diatraea saccharalis)、ロクサグロティス・アルビコスタ(Loxagrotis albicosta)、甲虫目の有害生物、例えばウエスタンコーンルートワーム、サザンコーンルートワーム、ノーザンコーンルートワーム(すなわち、Diabrotica種)及びその他の標的有害生物に対して改善した活性を有する。
【0036】
甲虫目のセリンプロテアーゼ、例えばトリプシン、キモトリプシン、及びカテプシンG様プロテアーゼ、甲虫目のシステインプロテアーゼ、例えばカテプシン(B様、L様、O様、及びK様プロテアーゼ)(Koiwaらの文献(2000年)、及びBownらの文献(2004年))、甲虫目のメタロプロテアーゼ、例えばADAM10(Ochoa-Campuzanoらの文献(2007年))、及び甲虫目のアスパラギン酸プロテアーゼ、例えばカテプシンD様及びE様、ペプシン、プラスメプシン、及びキモシンは、所望の処理部位に適切な認識配列を工学的に作り出すことにより、ある種の害虫の感受性を有する幼虫の中腸内で生じるCryタンパク質処理に影響を及ぼすように更に利用可能である。
【0037】
かかるプロテアーゼ切断部位を導入するのに好ましい場所は、αへリックス2B及びαへリックス3の間のスペーサー領域内、例えば完全長DIG−5タンパク質のアミノ酸109〜113の中にあり得る(配列番号2及び表1)。プロテアーゼ切断部位を導入するのに2番目に好ましい場所は、αへリックス3及びαへリックス4の間のスペーサー領域内(表1)、例えば、配列番号2の完全長DIG−5タンパク質のアミノ酸144〜147の中にあり得る。遺伝子欠損、又はプロテアーゼ切断部位の導入のいずれかにより生み出される改変されたCryタンパク質は、ウエスタンコーンルートワーム、サザンコーンルートワーム、ノーザンコーンルートワーム等を含む、但し、これらに限定されない害虫に対して改善した活性を有する。
【0038】
ポリペプチドのN末端又はC末端残基を含むアミノ酸配列の決定を可能にする様々な技術が存在する。例えば、自動化エドマン分解法が、連続した方式で、1残基当たり98%の正確性を有して最大30個のアミノ酸残基のN末端アミノ酸配列について決定するのに利用可能である。更に、ポリペプチドのカルボキシ末端を含むアミノ酸の配列決定も可能である(Baileyらの文献(1992年);米国特許第6046053号)。従って、いくつかの実施形態では、タンパク質分解処理により、例えば昆虫の腸から調製されたプロテアーゼにより活性化されたB.t.Cryタンパク質について特徴付けが可能であり、及び活性化された毒素断片のN末端又はC末端アミノ酸の同定が可能である。DIG−5変異体は、昆虫、植物、又は微生物のプロテアーゼによるより大型の変異体タンパク質のタンパク質分解切断を可能にし、又は阻止するように、コーディング配列内の適切な位置でプロテアーゼ処理部位を導入又は除去することにより生み出されるが、同変異体は本発明の範囲に含まれる。かかる操作の最終的な結果として、インタクトな(完全長)毒素タンパク質と同等の、又はそれを凌駕する活性を有する毒素断片分子が生み出されると理解される。
【0039】
DIG−5毒素のドメイン。DIG−5毒素の個別のドメイン(及びかかるドメインと90、95、又は97%の同一性を有する変異体)は、その他のCry毒素に由来するドメインと結合体(combinations)を形成するのに有用であり、新規毒素に有害生物毒性スペクトルの拡大、効力の改善、又はタンパク質の安定性の向上を付与すると期待される。DIG−5タンパク質のドメインIは、配列番号2のアミノ酸残基55〜281を含む。DIG−5タンパク質のドメインIIは、配列番号2のアミノ酸残基286〜499を含む。DIG−5タンパク質のドメインIIIは、配列番号2のアミノ酸残基509〜653を含む。ドメインスワッピング又はシャッフリングは、変更されたデルタエンドトキシンタンパク質を生み出す別の機構である。ドメインII及びIIIは、デルタエンドトシンタンパク質間でスワッピングすることができ、その結果、殺有害生物活性又は標的スペクトルが改善したハイブリッド又はキメラ毒素が得られる。ドメインIIは受容体結合に関与しており、及びドメインIIIは受容体タンパク質の特定のクラスと結合し、及びおそらくはオリゴマー型毒素プレポアの挿入に関与している。その他の毒素においていくつかのドメインIII置換体が、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)に対して優れた毒性を発揮することが明らかにされ(de Maagdらの文献(1996年))、及びCry毒素ドメインスワップの設計に関するガイダンスが存在する(Knightらの文献(2004年))。
【0040】
組換えタンパク質作製方法、及びその殺有害生物活性試験法は当技術分野において周知されている(例えば、Naimovらの文献(2001年)、de Maagdらの文献(1996年)、Geらの文献(1991年)、Schnepfらの文献(1990年)、Rangらの文献(1999年)を参照)。Cry1A及びCry3Aタンパク質に由来するドメインIでは、膜中にポアを挿入し、形成する能力について研究されている。ドメインIのαへリックス4及び5は膜挿入及びポア形成で重要な役割を演じており(Waltersらの文献、1993年、Gazitらの文献、1998年;Nunez-Valdezらの文献、2001年)、これ以外のその他のへリックスについては、傘の骨のように膜表面に接触することが提案された(Bravoらの文献(2007年);Gazitらの文献(1998年))。
【0041】
限られた数のアミノ酸について欠損、置換、又は付加を施すことにより構築されるDIG−5変異体。配列番号2のアミノ酸配列に対するアミノ酸の欠損、置換、及び付加は、連続した方式で容易に実施することができ、及びかかる変化が殺虫活性に及ぼす効果はバイオアッセイにより試験可能である。いくつかの変更が数において限定的であれば、かかる試験は理不尽な実験法を伴うことはない。本発明には、殺虫剤として活性なコア毒素変異体が含まれ(配列番号2のアミノ酸1〜655又は配列番号2のアミノ酸114〜655)、同変異体では最大10個、最大15個、又は最大20個のアミノ酸の付加、欠損、又は置換が施された。
【0042】
本発明には、配列番号2のアミノ酸の1〜655、又は配列番号2のアミノ酸の114〜655に対して、90%、95%、又は97%同一であるコア毒素セグメントを有するDIG−5変異体が含まれる。
【0043】
変異体は、ランダムな突然変異を起こさせることにより作製可能であり、又は変異体は設計可能である。設計による突然変異体の場合、生物学的活性を説明する、又は最終的に生物学的活性に関わる3次元構造の決定に関係する毒素の重要な領域においてアミノ酸の同一性が維持されるとき、天然毒素と類似した活性を有する変異体が生成する確率が高い。置換が保存的な場合にも、活性を維持する確率は高くなる。アミノ酸は下記のクラスに分類される:非極性、無電荷極性、塩基性、及び酸性。あるクラスのアミノ酸が同一タイプの別のアミノ酸に置き換わるような保存的な置換では、変異体の生物学的活性が実質的に変化する可能性はほとんどない。表2には各クラスに属するアミノ酸の例が記載されている。
【0044】
【表2】

【0045】
いくつかの事例では、非保存的置換も実施可能である。重要な要因として、これらの置換は毒素の生物学的活性を顕著に減じてはならないことが挙げられる。変異体には突然変異原性に起因してアミノ酸配列が異なるポリペプチドが含まれる。本発明に含まれる変異体タンパク質は生物学的に活性であり、すなわち天然タンパク質が持つ所望の生物学的活性を継続して有する、すなわち殺有害生物活性を維持する。
【0046】
配列レベルで異なるが、同一の又は同様の全体的必須3次元構造、表面電荷分布等を維持する変異体タンパク質も設計可能である。例えば、米国特許第7058515号;Larsonらの文献(2002年);Stemmerの文献(1994a、1994b、1995);及びCrameriらの文献(1996a、1996b、1997)を参照されたい。
【0047】
核酸。DIG−5毒素をコードする単離された核酸は本発明の1つの態様である。これには、配列番号2及び配列番号5をコードする核酸、及びその相補体、並びに配列番号2の殺虫性変異体をコードするその他の核酸が含まれる。「単離された」とは、本出願者は、核酸分子が、人の手によってそれが存在する天然の環境から取り出され、及び異なる環境に配置されることを意味する。遺伝子コードの冗長性から、種々の異なるDNA配列が、本明細書に開示されるアミノ酸配列をコードすることができる。同一の又は本質的に同一の毒素をコードするそのような別のDNA配列を構築することは、当業者において周知されている。
【0048】
遺伝子合成。本明細書に記載する、改善したCryタンパク質をコードする遺伝子は、当技術分野において周知の様々な方法により作製可能である。例えば、亜リン酸トリエステル及びホスホラミダイト化学(Caruthersらの文献、1987年)により、合成遺伝子セグメント及び合成遺伝子を作製することができ、及び商業的ベンダーが、オンデマンドで遺伝子合成を実施するのに利用可能である。完全長遺伝子は、例えば、制限断片のライゲーション、又は重複したオリゴヌクレオチドのポリメラーゼ連鎖反応アッセンブリ(Stewart及びBurginの文献、2005年)による方法を含む様々な方法で構築可能である。更に、部位−特異的な末端オリゴヌクレオチドを用いるPCR増幅法により、末端遺伝子欠損体を作製することが可能である。
【0049】
DIG−5毒素をコードする核酸は、例えば、いくつかの商業的な供給業者のいずれかが現在実践している方法に基づく合成構築法により作製可能である(例えば、米国特許第7482119号B2を参照)。これらの遺伝子、又はその一部分若しくは変異体も、例えば遺伝子シンセサイザー、及び例えば米国特許第5380831号の設計法を使用することにより、合成的に構築可能である。或いは、合成遺伝子又は天然遺伝子の変形体は、点突然変異を作り出す標準的な分子生物学的技法を用いて容易に構築可能である。これらの遺伝子の断片も、標準的な手法に基づき、市販のエキソヌクレアーゼ又はエンドヌクレアーゼを用いて作製可能である。例えば、Bal31等の酵素又は特定部位の突然変異誘発が、これらの遺伝子の末端部からヌクレオチドを計画的に切り取るのに利用可能である。また、様々な制限酵素を用いて、活性な毒素断片をコードする遺伝子断片も取得可能である。
【0050】
DIG−5毒素のアミノ酸配列を前提とした場合、コーディング配列は、意図した宿主が好むコドンを用いてコーディング配列を逆翻訳し、次に問題を引き起こす可能性のある配列を取り除くように、及び定期的な停止コドンを設定して非コーディングリーディングフレーム内の長いオープンコーディング配列を除去するように代替コドンを用いて配列を洗練させることにより、設計可能である。
【0051】
配列同一性の定量。2つのアミノ酸配列、又は2つの核酸配列の同一性の割合(%)を求めるために、配列は最適比較目的で整列される。2配列間の同一性の割合(%)は、当該配列に共通する同一位置数の関数である(すなわち、同一性の割合(%)=同一位置数/総位置数(例えば、重複した位置)×100)。1つの実施形態では、2つの配列は長さが同一である。2配列間の同一性の割合(%)は、ギャップを許容する、又は許容しない下記の技法に類似した技法を用いて求めることができる。同一性の割合(%)を計算する際には、一般的に完全一致数が計測される。
【0052】
2配列間の同一性の割合(%)は、数学的なアルゴリズムを用いて決定可能である。かかるアルゴリズムの非限定的な例として、Altschulらの文献(1990年)、及びKarlinとAltschulの文献(1990年)のアルゴリズム、KarlinとAltschulの文献(1993年)の改変されたアルゴリズム、及びBLASTNとBLASTXプログラムに組み込まれたアルゴリズムが挙げられる。BLASTサーチは、核酸又はタンパク質データベース内の問い合わせ配列に対して、配列の相同性(類似性)を識別するのに好都合に用いられ得る。BLASTNサーチが、本発明において請求の対象とされる核酸分子に対して相同性を有する核酸配列を識別するために実施可能である(スコア=100、ワード長=12)。BLASTXサーチが、本発明において請求の対象とされる殺虫性タンパク質分子に対して相同性を有するアミノ酸配列を識別するために実施可能である(スコア=50、ワード長=3)。
【0053】
Altschulらの文献(1997年)のギャップ化BLAST法(Gapped BLAST)が、比較目的でギャップを有する整列を取得するのに利用可能であり、或いはPSI−Blast法が、分子間の離れた関連性を検出する反復サーチを実施するのに利用可能である、Altschulらの文献(1997年)。BLAST、ギャップ化BLAST、及びPSI−Blastプログラムを使用する際には、各プログラムのデフォルトパラメータが利用可能である。www.ncbi.nlm.nih.gov.を参照されたい。
【0054】
配列を比較するために用いられる数学的アルゴリズムの非限定的な例として、ClustalWアルゴリズム(Thompsonら、(1994年))が挙げられる。ClustalWは配列を比較し、及びアミノ酸配列又はDNA配列全体を整列させ、こうしてアミノ酸配列又はヌクレオチド配列全体の配列保存性についてデータを提供することができる。ClustalWアルゴリズムは、いくつかの市販DNA/アミノ酸分析ソフトウェアパッケージ、例えばVector NTIプログラムスーツ(Vector NTI Program Suite)のALIGNXモジュール(Invitrogen,Inc、Carlsbad、CA)で用いられている。ALIGNXを用いてアミノ酸配列を整列させる際には、2配列間のアミノ酸の類似性(コンセンサス)又は同一性の割合(%)を評価するために、ギャップオープンペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.1、及びblosum63mt2比較マトリックスからなるデフォルト設定を好都合に使用することができる。ALIGNXを用いてDNA配列を整列させる際には、2配列間の同一性の割合(%)を評価するために、ギャップオープンペナルティ15、ギャップ延長ペナルティ6.6、及びswgapdnamt比較マトリックスからなるデフォルト設定を好都合に使用することができる。
【0055】
配列を比較するために利用される数学的なアルゴリズムの別の非限定的な例として、Myers及びMillerの文献(1988年)のアルゴリズムが挙げられる。かかるアルゴリズムはwSTRETCHERプログラムに組み込まれており、同プログラムはwEMBOSS配列アライメントソフトウェアパッケージの一部である(http://emboss.sourceforge.net/より入手可能)。wSTRETCHERは、線形空間を使用する古典的な動的プログラミングアルゴリズムの修正版を用いて2つの配列の最適グローバルアライメントを計算する。アライメントを計算するのに用いられる、置換マトリックス、ギャップ挿入ペナルティ、及びギャップ延長ペナルティが規定され得る。ヌクレオチド配列を比較するためにwSTRETCHERプログラムを利用する際には、ギャップオープンペナルティ16及びギャップ延長ペナルティ4が、スコアリングマトリックスファイルEDNAFULLと共に利用可能である。アミノ酸配列を比較するために利用する際には、ギャップオープンペナルティ12及びギャップ延長ペナルティ2が、EBLOSUM62スコアリングマトリックスファイルと共に利用可能である。
【0056】
配列を比較するために利用される数学的アルゴリズムの更なる非限定的な例として、Needleman及びWunschの文献(1970年)のアルゴリズムが挙げられ、同アルゴリズムは、配列アライメントソフトウェアパッケージ、GAPバージョン10及びwNEEDLEに組み込まれている(http://emboss.sourceforge.net/)。GAPバージョン10は、下記パラメータを用いて配列の同一性又は類似性を求めるのに利用可能である。核酸配列の場合、%同一性及び%類似性は、ギャップウェイト50、及びレングスウェイト3、及びnwsgapdna.cmpスコアリングマトリックスを用いて求められる。アミノ酸配列を比較する場合には、%同一性又は%類似性は、ギャップウェイト8、及びレングスウェイト2、及びBLOSUM62スコアリングプログラムを用いて求められる。
【0057】
wNEEDLEは、2つのインプット配列を読み取り、配列全長にわたり最適なアライメント(ギャップを含む)を見出し、及びその最適なグローバル配列アライメントをファイルに書き出す。このアルゴリズムは、全ての可能性のあるアライメントを洗い出し、及びあらゆる可能性のある残基又はヌクレオチドのマッチに関する数値を含むa.スコアリングマトリックスを用いて最良のアライメントの選択を行う。wNEEDLEは、可能性のある最大スコアを有するアライメントを見つけ出すが、アライメントのスコアは、スコアリングマトリックスから取得されたマッチ数の合計から、整列された配列内のオープニングギャップ及び延長ギャップに起因するペナルティを差し引いたものに等しい。置換マトリックス、並びにギャップオープニング及び延長ペナルティはユーザーにより規定される。アミノ酸配列を比較する場合には、デフォルトギャップオープンペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5、及びEBLOSUM62比較マトリックスが用いられる。wNEEDLEを用いてDNA配列を比較する場合には、ギャップオープンペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5、及びEDNAFULL比較マトリックスが用いられる。
【0058】
同等のプログラム(Equivalent programs)も利用可能である。「同等のプログラム」とは、ALIGNX、wNEEDLE、又はwSTRETCHERにより生成された対応するアライメントと比較したときに、対象となる任意の2つの配列について、ヌクレオチド又はアミノ酸残基のマッチ数が同一である、及び配列の同一性の割合(%)が同一であるアライメントを生成する任意の配列比較プログラムを指すように意図される。%同一性とは、報告された整列領域(長さ方向の任意のギャップを含む)全体にわたる、2つの配列間の同一マッチ(identical matches)の割合(%)であり、及び%類似性とは、報告された整列領域(長さ方向の任意のギャップを含む)全体にわたる、2つの配列間のマッチ数の割合(%)である。
【0059】
アライメントは検証により手作業で実施することもできる。
【0060】
組換え宿主。本願発明の毒素をコードする遺伝子は、多種多様な微生物宿主又は植物宿主に導入可能である。毒素遺伝子が発現すると、直接又は間接的に細胞内で殺有害生物性のタンパク質が産生および維持される。適当な微生物宿主、例えばシュードモナス属(Pseudomonas)を用いて、微生物を有害生物の環境に適用可能であり、その環境では、当該微生物は増殖し、及び摂取される。その結果、有害生物は防除される。或いは、毒素遺伝子の宿主となる微生物は、毒素活性を持続させる、及び細胞を安定化させる条件下で処理可能である。当該処理された細胞は毒性活性を保持し、次に標的とする有害生物の環境に適用可能である。
【0061】
B.t.毒素遺伝子が適当なベクターを介して微生物宿主内に導入され、及び前記宿主が生きた状態で環境に適用される場合には、しかるべき宿主微生物を用いることが必須である。1つ又は複数の対象作物の「フィトスフェア(phytosphere)」(葉面(phylloplane)、葉圏(phyllosphere)、根圏(rhizosphere)、及び/又は根面(rhizoplane))を占有することが公知の微生物宿主が選択される。これらの微生物は、特定の環境(作物及びその他の昆虫生息環境)において野生型土着微生物(wild-type indigenous microorganisms)と競合して打ち勝つことができ、ポリペプチド殺有害生物剤を発現する遺伝子の安定的な維持及び発現を実現し、及び望ましくは、環境的な分解及び不活性化から殺有害生物剤を保護する能力が高まるように選択される。
【0062】
多数の微生物が、多種多様な重要作物の葉面(植物の葉の表面)及び/又は根圏(植物の根の周囲の土壌)に生息することが知られている。これらの微生物には細菌、藻類及び真菌類が含まれる。特に関心がもたれるのは細菌、例えば、シュードモナス(Pseudomonas)属、エルウィニア(Erwinia)属、セラチア(Serratia)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、キサントモナス(Xanthomonas)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、根粒菌(Rhizobium)属、シノリゾビウム(Sinorhizobium)属、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)属、メチロフィルス(Methylophilius)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、アセトバクター(Acetobacter)属、乳酸桿菌(Lactobacillus)属、アルスロバクター(Arthrobacter)属、アゾトバクター(Azotobacter)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、及びアルカリゲネス(Alcaligenes)属;真菌、特に酵母菌、例えばサッカロマイセス(Saccharomyces)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、クリュイベロマイセス(Kluyveromyces)属、スポロボロマイセス(Sporobolomyces)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、及びオーレオバシジウム(Aureobasidium)属などの微生物である。特に関心がもたれるのはフィトスフェア細菌種、例えばシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、アグロバクテリウム・ラジオバクター(Agrobacterium radiobacter)、ロドシュードモナス・スフェロイデス(Rhodopseudomonas spheroides)、キサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)、シノリゾビウム・メリロティ(Sinorhizobium meliloti)(以前はリゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti))、アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)、及びアゾトバクター・ヴィネランディ(Azotobacter vinelandii);並びにフィトスフェア酵母種、例えばロードトルラ・ルブラ(Rhodotorula rubra)、R.グルティニス(R. glutinis)、R.マリナ(R. marina)、R.オーランティアカ(R. aurantiaca)、クリプトコッカス・アルビダス(Cryptococcus albidus)、C.ディフルエンス(C. diffluens)、C.ローレンティ(C. laurentii)、サッカロマイセス・ロゼイ(Saccharomyces rosei)、S.プレトリエンシス(S.pretoriensis)、S.セレビシエ(S. cerevisiae)、スポロボロマイセス・ロゼウス(Sporobolomyces roseus)、S.オドラス(S. odorus)、クリュイベロマイセス・ヴェロネ(Kluyveromyces veronae)、及びオーレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)である。特に関心がもたれるのは色素性微生物である。
【0063】
害虫を防除する方法
昆虫が、遺伝子組換え植物の発現、処方化されたタンパク質組成物(複数可)、スプレー可能なタンパク質組成物(複数可)、ベイトマトリックス(bait matrix)又はその他の送達システムを介して送達される有効量の毒素に接触した場合には、その結果は一般的に昆虫の死亡であり、又は昆虫は、昆虫にとって利用可能であるが毒素を生成するような食糧源を餌とすることができない。
【0064】
本願タンパク質毒素は、様々な方法で標的昆虫と接触するように「適用」又は提供可能である。例えば、遺伝子組換え植物(当該タンパク質は当該植物によって産生される、及び当該植物内に存在する)が利用可能であり、当技術分野において周知されている。毒素遺伝子の発現も、当該植物の特定の組織、例えば根、葉等の中で選択的に実現可能である。これは、例えば組織特異的プロモーターを使用することにより実現可能である。スプレーオンアプリケーション(Spray-on applications)は別の事例であり、及び当技術分野において公知である。対象タンパク質は、所望の最終用途用として適切に処方化することができ、次いで寄生が発見される前、標的昆虫が発見された後、前後両方等において、保護の対象となる植物上及び/又は植物周辺/植物近傍にスプレー(又はさもなければ塗布)される。例えば、ベイト顆粒(bait granules)も利用可能で、及び当技術分野において公知である。
【0065】
遺伝子組換え植物
本願タンパク質は、実際上あらゆるタイプの植物を害虫による損傷から保護するのに利用可能である。かかる植物の例としてほんの数例を挙げれば、トウモロコシ、ヒマワリ、ダイズ、ワタ、キャノーラ、コメ、モロコシ、コムギ、オオムギ、野菜類、観賞植物、コショウ(トウガラシを含む)、サトウダイコン、果物、及び芝等が挙げられる。植物を形質転換する方法は当技術分野において周知されており、及び説明目的で形質転換方法を実施例に記載する。
【0066】
本願発明の好ましい実施形態は、本願殺虫性タンパク質又はその変異体をコードする遺伝子を用いた植物の形質転換である。形質転換植物は、当該形質転換植物細胞内に防除量の本願殺虫性タンパク質又はその変異体が存在することにより、標的害虫による攻撃に対して抵抗性を有する。B.t.殺虫性毒素の殺虫特性をコードする遺伝物質を、特定の害虫が侵蝕する植物のゲノム内に組み込むことにより、成虫又は幼虫は当該飼料植物を消費した後に絶命する。非常に多くの単子葉植物及び双子葉植物のメンバーが形質転換されている。遺伝子組換え農業作物の他、果物、及び野菜類が市販対象となっている。かかる作物には、トウモロコシ、コメ、ダイズ、キャノーラ、ヒマワリ、アルファルファ、モロコシ、コムギ、ワタ、ピーナッツ、トマト、ジャガイモ等が含まれるが、但しこれらに限定されない。外来遺伝物質を植物細胞内に導入するための、並びに導入された遺伝子を安定的に維持し及び発現する植物を得るためのいくつかの技術が存在する。かかる技術には、微粒子上にコーティングされた遺伝物質を細胞内に直接加速するステップが含まれる(米国特許第4945050号、及び同第5141131号)。植物は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属技術を用いて形質転換することができ、米国特許第5177010号、同第5104310号、欧州特許出願第0131624号B1、同第120516号、同第159418号B1、同第176112号、米国特許第5149645号、同第5469976号、同第5464763号、同第4940838号、同第4693976号、欧州特許出願第116718号、同第290799号、同第320500号、同第604662号、同第627752号、同願第0267159号、同第0292435号、米国特許第5231019号、同第5463174号、同第4762785号、同第5004863号、及び同第5159135号を参照されたい。その他の形質転換技術としてWHISKERS(商標)技術が挙げられ、米国特許第5302523号及び同許第5464765号を参照されたい。エレクトロポレーション技術も、植物を形質転換するために用いられており、国際公開第87/06614号、米国特許第5472869号、同第5384253号、国際公開第9209696号、及び同第9321335号を参照されたい。全てのこれら形質転換特許及び出版物を参照により援用する。植物を形質転換させる非常に多くの技術に加えて、外来遺伝子と接触する組織のタイプもやはり変化し得る。かかる組織として胚形成組織、カルス組織タイプI及びII、胚軸、分裂組織等が挙げられ、但しこれらに限定されない。ほとんど全ての植物組織が、当業者の技量範囲内の適当な技術を用いて、脱分化期間中に形質転換可能である。
【0067】
DIG−5毒素をコードする遺伝子は、上記で開示したように、当技術分野において周知の様々な技術を用いて植物細胞に挿入可能である。例えば、形質転換された微生物細胞の選択を可能にするマーカー、及び大腸菌(Escherichia coli)内で機能する複製系を含む多数のクローニングベクターが、高等植物に挿入するための外来遺伝子を調製及び改変するのに利用可能である。かかる操作として、使用目的上の要望に応じて、例えば突然変異の挿入、トランケーション、付加、又は置換を挙げることができる。ベクターは、例えば、pBR322、pUCシリーズ、M13mpシリーズ、pACYC184等を含む。従って、Cryタンパク質又は変異体をコードする配列は、適当な制限部位においてベクター内に挿入可能である。得られたプラスミドは大腸菌(E. coli)の形質転換に用いられ、当該大腸菌の細胞は適当な栄養培地内で培養され、次いで使用可能な量のプラスミドが回収されるように捕集、及び溶解される。配列分析、制限断片分析、電気泳動、及びその他の生化学−分子生物学的手法が、分析法として一般的に実施される。各操作後には、用いられるDNA配列は切断可能、及び次のDNA配列に結合可能である。操作済みの各DNA配列は、同一又は別のプラスミド内にクローン化可能である。
【0068】
植物細胞を形質転換するためのT−DNA−含有ベクターの使用について、欧州特許出願第120516号;Lee及びGelvinの文献(2008年)、Fraleyらの文献(1986年)、及びAnらの文献(1985年)において集中的に研究され、及び十分に記載されており、また当該分野で十分に確立されている。
【0069】
挿入されたDNAが植物ゲノムに組み込まれる(integrated)と、後続世代を通じて比較的安定である。植物細胞を形質転換させるために用いられるベクターは、除草剤又は抗生物質、例えば、とりわけビアラホス、カナマイシン、G418、ブレオマイシン、又はハイグロマイシンに対する抵抗性を形質転換植物細胞に付与するタンパク質をコードする選択マーカー遺伝子を通常含む。個々に採用された選択マーカー遺伝子は、しかるべく形質転換細胞の選択を可能にするはずであり、また一方、挿入DNAを含まない細胞の成長は選択化合物により抑制される。
【0070】
多数の技術が宿主植物細胞内にDNAを挿入するのに利用可能である。そのような技術として、形質転換剤として用いられるアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)又はアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)により送達されるT−DNAを用いた形質転換が挙げられる。更に、植物のプロトプラストと送達対象DNAを含むリポソームとの融合、DNAの直接的な注入、バイオリスティック形質転換(微粒子銃法)、又はエレクトロポレーション、並びにその他の可能な方法が利用可能である。
【0071】
本願発明の好ましい実施形態では、植物は、タンパク質コーディング領域のコドンの利用が植物用に最適化された遺伝子を用いて形質転換される。例えば、本明細書により参照により援用される米国特許第5380831号を参照されたい。また、トランケーションされた毒素をコードする植物も、好都合に利用される。トランケーションされた毒素は、一般的に完全長毒素の約55%〜約80%をコードする。植物で使用するための合成B.t.遺伝子を作製する方法は、当技術分野において公知である(Stewartの文献、2007年)。
【0072】
形質転換技術を問わず、遺伝子は、植物プロモーターをベクターに含めることにより、植物細胞内でB.t.殺虫性毒素遺伝子及び変異体を発現するように改造された遺伝子導入ベクターに組み込まれるのが好ましい。植物プロモーターに加えて、様々な起源に由来するプロモーターが、植物細胞内で外来遺伝子を発現するのに効果的に利用可能である。例えば、オクトピン合成酵素プロモーター、ノパリン合成酵素プロモーター、マンノピン合成酵素プロモーター等の細菌起源のプロモーター;カリフラワーモザイクウイルスの35S及び19Sプロモーター等のウイルス起源のプロモーター等が利用可能である。植物プロモーターとして、リブロース−1,6−ビスリン酸(RUBP)カルボキシラーゼ小サブユニット(ssu)、β−コングリシニンプロモーター、ファゼオリンプロモーター、ADH(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、ヒートショックプロモーター、ADF(アクチン解重合因子)プロモーター、及び組織特異的プロモーターが挙げられ、但し、これらに限定されない。プロモーターは、転写効率を改善し得るしかるべきエンハンサー配列要素も含むことができる。典型的なエンハンサーとして、ADH1−イントロン1、及びADH1−イントロン6が挙げられ、但し、これらに限定されない。構成的プロモーターが利用可能である。構成的プロモーターは、ほぼ全ての細胞型において、及びほぼ全ての時間において連続的な遺伝子発現を指令する(例えば、アクチン、ユビキチン、CaMV 35S)。組織特異的プロモーターは、特異的細胞、又は葉若しくは種子等の組織型における遺伝子発現に関与し(例えば、ゼイン、オレオシン、ナピン、ACP(アシルキャリアタンパク質))、及びこれらのプロモーターも利用可能である。植物のある生育段階において活性であり、並びに特定の植物組織及び器官において活性なプロモーターも利用可能である。かかるプロモーターの例として、根特異的、花粉特異的、胚特異的、トウモロコシ絹糸特異的、ワタ繊維特異的、種子の胚乳特異的、師部特異的なプロモーター等が挙げられ、但しこれらに限定されない。
【0073】
特定の状況下では、誘導性プロモーターを利用するのが望ましい場合がある。誘導性プロモーターは、特異的シグナル、例えば:物理的刺激(例えば、ヒートショック遺伝子);光(例えば、RUBPカルボキシラーゼ);ホルモン(例えば、グルココルチコイド);抗生物質(例えば、テトラサイクリン);代謝産物;及びストレス(例えば、干ばつ)に反応して遺伝子の発現に関与する。植物内で機能するその他の望ましい転写及び翻訳要素、例えば5’非翻訳リーダー配列、RNA転写終結配列、及びポリアデニレート付加シグナル配列が利用可能である。非常に多くの植物−特異的遺伝子導入ベクターが当技術分野で公知である。
【0074】
昆虫抵抗(IR)特性を備える遺伝子組換え作物が、北米全体にわたりトウモロコシ及びワタ植物で一般化しており、及びこれらの特性の利用がグローバルに拡大している。IR及び除草剤耐性(HT)特性を組み合わせた市販の遺伝子組換え作物が複数の種苗会社によって開発された。上記作物は、B.t.殺虫性タンパク質により付与されるIR特性と、HT特性、例えばスルホニルウレア、イミダゾリノン、トリアゾロピリミジン、スルフォンアニリド等のアセト乳酸シンターゼ(ALS)阻害剤、ビアラホス、グルフォシネート等のグルタミンシンテターゼ(GS)阻害剤、メソトリオン、イソキサフルトール等の4−ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(HPPD)阻害剤、グリホサート等の5−エノールピルビルシキミ酸−3−リン酸合成酵素(EPSPS)阻害剤、及びハロキシホップ、キザロホップ、ジクロホップ等のアセチル補酵素Aカルボキシラーゼ(ACCase)阻害剤に対する耐性との組み合わせを含む。その他の例が公知であり、そのような例では、遺伝子組換えにより得られるタンパク質が、いくつかの除草剤化学薬品クラス(herbicide chemical classes)、例えばフェノキシ酸系除草剤、及びピリジルオキシアセテートオーキシン系除草剤(国際公開第2007/053482号A2を参照)、又はフェノキシ酸系除草剤、及びアリルオキシフェノキシプロピオネート系除草剤(国際公開第2005107437号A2、A3を参照)に対する耐性を植物に付与する。IR特性により複数の有害生物問題を制御する能力を持たせることは有益な市販製品概念であり、及び昆虫防除特性及び雑草防除特性が同一の植物内で組み合わされる場合には、かかる製品概念の利便性が強化される。更に、単一の植物においてB.t.殺虫性タンパク質、例えば本願発明のタンパク質等により付与されるIR特性と、1つ又は複数の追加のHT特性、例えば上記特性等を組み合わることに加えて、1つ又は複数の追加のインプット特性(例えば、B.t.誘導タンパク質又はその他の殺虫性タンパク質により付与されるその他の昆虫抵抗性、RNAi等の機構により付与される昆虫抵抗性、疾患抵抗性、ストレス耐性、改善した窒素利用能等)又はアウトプット特性(例えば、高油脂含有量、健康油脂組成物、栄養上の改善等)をプラスすることにより、価値が高められる可能性がある。かかる組み合わせは、従来方式の育種(育種スタック(bleeding stack))を通じて、又はこれを併用した複数遺伝子の同時導入に関係する新規形質転換事象(分子スタック(molecular stack))を通じて得ることができる。利益としては、作物における害虫管理能力及び改善した雑草防除が挙げられ、生産者及び/又は消費者には二次的な利益がもたらされる。従って、本願発明は、農学的な問題がいくらあろうとも、柔軟かつ費用効果的に制御する能力を有する改善した作物品質の完全農学パッケージ(complete agronomic package)を提供するように、その他の特性と併用して利用可能である。
【0075】
標的有害生物
本発明のDIG−5毒素は、害虫防除で使用するのに特に適する。甲虫類(Coleopterans)は、毎年多大な損害を引き起こす農学上、植栽上、及び生活上の有害生物のうちの1つの重要な群である。この昆虫目には葉−摂食性及び根−摂食性の幼虫及び成虫が含まれ、下記のものが挙げられる:ヒゲナガゾウムシ(Anthribidae)科、マメゾウムシ(Bruchidae)科、及びゾウムシ(Curculionidae)科に由来するゾウムシ(weevil)[例えば、ワタミハナゾウムシ(Anthonomus grandis Boheman)、イネミズゾウムシ(Lissorhoptrus oryzophilus Kuschel)、グラナリアコクゾウムシ(Sitophilus grananus Linnaeus)、コクゾウムシ(Sitophilus oryzae Linnaeus)、クローバリーフゾウムシ(Hypera punctata Fabricius)、及びメイズビルバグ(Sphenophorus maidis Chittenden)];ハムシ(Chrysomelidae)科のノミトビヨロイムシ、ウリハムシ、ルートワーム、ハムシ、コロラドハムシ、及び潜葉性昆虫[例えば、コロラドハムシ(Leptinotarsa decemlineata Say)、ウエスタンコーンルートワーム(Diabrotica virgifera virgifera LeConte)、ノーザンコーンルートワーム(Diabrotica barben Smith & Lawrence);サザンコーンルートワーム(Diabrotica undecimpunctata howardi Barber)、コーンノミトビヨロイムシ(Chaetocnema pulicara Melsheimer)、十字花科植物ノミトビヨロイムシ(crucifer flea beetle)(Phyllotreta cruciferae Goeze)、グレープコラスピス(Colaspis brunnea Fabricius)、シリアルリーフビートル(Oulema melanopus Linnaeus)、及びサンフラワービートル(Zygogramma exclamationis Fabricius)];テントウムシ(Coccinellidae)科に由来する甲虫[例えば、インゲンテントウ(Epilachna varivestis Mulsant)];コガネムシ科(Scarabaeidae)の甲虫(chafers)及びコガネムシ科に由来するその他の甲虫[例えば、マメコガネ(Popillia japonica Newman)、ノーザンマスクドコガネムシ(コガネムシ類幼虫(white grub)、Cyclocephala borealis Arrow)、サザンマスクドコガネムシ(コガネムシ類幼虫、Cyclocephala immaculata Olivier)、欧州のコガネムシ科の甲虫(Rhizotrogus majalis Razoumowsky)、コガネムシ類幼虫(Phyllophaga crinita Burmeister)、及びキャロットビートル(Ligyrus gibbosus De Geer)];カツオブシムシ(Dermestidae)科に由来するカツオブシムシ(carpet beetles);コメツキムシ科(Elateridae)に由来するハリガネムシ(wireworms)[例えば、メラノタス(Melanotus)種、コノデルス(Conoderus)種、リモニウス(Limonius)種、アグリオテス(Agriotes)種、クテニセラ(Ctenicera)種、アエオラス(Aeolus)種)];キクイムシ(Scolytidae)科に由来する樹皮下甲虫(bark beetles)、及びゴミムシダマシ(Tenebrionidae)科に由来する甲虫(例えば、エレオデス(Eleodes)種)。上記掲載の任意の属(及びその他)も、一般的に本願発明の一環として標的対象となり得る。上記属のいずれかに属する更なる昆虫も(標的として)、本発明の範囲内に含まれる。
【0076】
鱗翅類は、毎年多大な損害を引き起こす農学上、植栽上、及び生活上の有害生物のうちの別の重要な群である。この昆虫目には葉−摂食性及び根−摂食性の幼虫及び成虫が含まれる。鱗翅類の害虫として下記のものが挙げられるが、但しこれらに限定されない:アコロイア・グリセラ(Achoroia grisella)、アクレリス・グロベラナ(Acleris gloverana)、アクレリス・バリアナ(Acleris variana)、コカクモンハマキ(Adoxophyes orana)、タマナヤガ(Agrotis ipsilon)(black cutworm)、アラバマ・アルギラセア(Alabama argillacea)、アルソフィラ・ポメタリア(Alsophila pometaria)、クルミマダラメイガ(Amyelois transitella)、スジコナマダラメイガ(Anagasta kuehniella)、モモキバガ(Anarsia lineatella)、アニソタ・セナトリア(Anisota senatoria)、サクサン(Antheraea pernyi)、大豆夜蛾(Anticarsia gemmatalis)、アルチプス(Archips)種、アルギロテニア(Argyrotaenia)種、アセティス・ミンダラ(Athetis mindara)、カイコガ(Bombyx mori)、ブッカラトリックス・スルベリエラ(Bucculatrix thurberiella)、スジマダラメイガ(Cadra cautella)、コリストネウラ(Choristoneur)種、コチルス・ホスペス(Cochylls hospes)、オオアメリカモンキチョウ(Colias eurytheme)、ガイマイツヅリガ(Corcyra cephalonica)、サイディア・ラティフェレアナス(Cydia latiferreanus)、コドリンガ(Cydia pomonella)、ダタナ・インテゲリマ(Datana integerrima)、デンドロリマス・シベリカス(Dendrolimus sibericus)、デスミア・フェネラリス(Desmia feneralis)、ディアファニア・ヒアリナタ(Diaphania hyalinata)、アメリカウリノメイガ(Diaphania nitidalis)、ナンセイアワノメイガ(Diatraea grandiosella)(southwestern corn borer))、サトウキビメイガ(Diatraea saccharalis)、ニレシャクトリムシ(Ennomos subsignaria)、エオレウマ・ロフティニ(Eoreuma loftini)、チャマダラメイガ(Esphestia elutella)、エラニス・ティラリア(Erannis tilaria)、キシタゴマダラヒトリ(Estigmene acrea)、ユーリア・サルブリコラ(Eulia salubricola)、ユーポコエリア・アンビグエラ(Eupocoellia ambiguella)、ブドウホソハマキ(Eupoecilia ambiguella)、モンシロドクガ(Euproctis chrysorrhoea)、ユーゾア・メソリア(Euxoa messoria)、ハチノスツヅリガ(Galleria mellonella)、ナシヒメシンクイ(Grapholita molesta)、アメリカブドウホソクロバ(Harrisina americana)、ヘリコベルパ・サブフレクサ(Helicoverpa subflexa)、アメリカタバコガ(Helicoverpa zea)(corn earworm)、ニセアメリカタバコガ(Heliothis virescens)、ヘミロイカ・オリビアエ(Hemileuca oliviae)、ヒマワリヘッドモス(Homoeosoma electellum)、アメリカシロヒトリ(Hyphantia cunea)、ケイフェリア・リコペルシセラ(Keiferia lycopersicella)、ランブディナ・フィセラリア・フィセラリア(Lambdina fiscellaria fiscellaria)、エダシャクガ(Lambdina fiscellaria lugubrosa)、ヤナギドクガ(Leucoma salicis)、ホソバヒメハマキ(Lobesia botrana)、ロクサグロティス・アルビコスタ(Loxagrotis albicosta)(western bean cutworm)、ヘリキスジノメイガ(Loxostege sticticalis)、マイマイガ(Lymantria dispar)、マカラ・チリサリス(Macalla thyrisalis)、マラコソーマ(Malacosoma)種、ヨトウガ(Mamestra brassicae)、ベルタアワヨトウ(Mamestra configurata)、トマトスズメガ(Manduca quinquemaculata)、タバコスズメガ(Manduca sexta)、マメノメイガ(Maruca testulalis)、メランクラ・ピクタ(Melanchra picta)、ナミスジフユナミシャク(Operophtera brumata)、ドクガ(Orgyia)種、アワノメイガ(Ostrinia nubilalis)(European corn borer)、パレアクリタ・ベルナタ(Paleacrita vernata)、パピアペマ・ネブリス(Papiapema nebris)(common stalk borer)、クレスフォンテスタスキアゲハ(Papilio cresphontes)、ワタアカミムシ(Pectinophora gossypiella)、フリガニジア・カリフォルニカ(Phryganidia californica)、フィロノルクテル・ブランカルデラ(Phyllonorycter blancardella)、エゾスジグロシロチョウ(Pieris napi)、モンシロチョウ(Pieris rapae)、プラチペナ・スカブラ(Plathypena scabra)、プラチノタ・フロウエンダナ(Platynota flouendana)、プラチノタ・スタルタナ(Platynota stultana)、プラチプチリア・カルデュイダクチラ(Platyptilia carduidactyla)、ノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella)、コナガ(Plutella xylostella)(diamondback moth)、ポンティア・プロトディス(Pontia protodice)、シューダレチア・ユニパンクタ(Pseudaletia unipuncta)(armyworm)、シュードプルシア・インクルデンス(Pseudoplasia includens)、サブロデス・アエグロタタ(Sabulodes aegrotata)、シズラ・コンシナ(Schizura concinna)、バクガ(Sitotroga cerealella)、リンゴシロヒメハマキ(Spilonta ocellana)、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(fall armyworm)、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)(beet armyworm)、サウルンストポエア・ピチオカンパ(Thaurnstopoea pityocampa)、エンソラ・ビセリエラ(Ensola bisselliella)、イラクサギンウワバ(Trichoplusia hi)、ウデア・ルビガリス(Udea rubigalis)、キシロマイゲス・クリアイリス(Xylomyges curiails)、及びヨーロッパリンゴスガ(Yponomeuta padella)。
【0077】
作物の甲虫目有害生物を防除するために、DIG−5毒素を使用することが検討されている。いくつかの実施形態では、Cryタンパク質が、例えば、ジュウイチホシウリハムシ(Diabrotica undecimpunctata howardi)(southern corn rootworm)、ジアブロティカ・ロンギコルニス・バルベリ(Diabrotica longicornis barberi)(northern corn rootworm)、及びディアブロティカ・ビルジフェラ(Diabrotica virgifera)(western corn rootworm)等のルートワーム、並びにシクロセファラ・ボレアリス(Cyclocephala borealis)(northern masked chafer)、シクロセファラ・イムマキュラータ(Cyclocephala immaculate)(southern masked chafer)、及びマメコガネ(Popillia japonica)(Japanese beetle)の幼虫等の地虫を含む、但しこれらに限定されない害虫を防除するために商業的に利用可能である。
【0078】
ネコブセンチュウ(Meloidogyne icognita)及びダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines)を含む、但しこれらに限定されない寄生線虫類を防除するために、DIG−5毒素を使用することも検討されている。
【0079】
DIG−5毒素の抗体検出
抗毒素抗体。本明細書で開示される毒素に対する、又は同等の毒素に対する、又はこれらの毒素の断片に対する抗体は、当技術分野において標準的な手法を用いて容易に調製可能である。かかる抗体は、DIG−5毒素の有無を検出するのに有用である。
【0080】
B.t.殺虫性毒素が単離されると、毒素に特異的な抗体が、当技術分野において周知の従来法により作り出すことができる。最適な宿主に数週間又は数ヶ月の期間反復して注射すると、免疫反応が誘発され、その結果相当の抗B.t.毒素血清力価が得られる。好ましい宿主は哺乳類であり、及び更に大いに好ましい種はウサギ、ヤギ、ヒツジ、及びマウスである。かかる免疫動物から採取された血液は、B.t.殺虫性毒素と反応する抗血清(ポリクロナール抗体)を得るために、確立された方法により処理され得る。次に抗血清は、当技術分野において公知の技術に基づき、毒素に吸着させることによりアフィニティー精製され得る。アフィニティー精製された抗血清は、当技術分野において公知の手法を用いて、抗血清中の免疫グロブリン分画を単離することにより更に精製され得る。得られた試料は、B.t.殺虫性毒素と反応する免疫グロブリンからなる不均一性の集団である。
【0081】
抗B.t.毒素抗体は、免疫原性担体に結合したB.t.殺虫性毒素の合成ペプチド断片から構成される半−合成免疫原を調製することによっても生成可能である。ペプチド断片の作製に有用な非常に多くのスキーム及び装置が、当技術分野において周知されている。多くの適する免疫原性担体、例えばウシ血清アルブミン又はスカシガイヘモシアニンも、免疫原とキャリアタンパク質とを連結させる技法と同様に、当技術分野において周知されている。半−合成免疫原が構築されれば、B.t.殺虫性毒素断片に特異的な抗体を作製する手法は、天然のB.t.毒素と反応する抗体を作製するのに用いられる手法と同じである。
【0082】
抗B.t.毒素モノクロナール抗体(MAbs)は、精製B.t.殺虫性毒素を用いて容易に調製される。MAbsを作製する方法は15年にわたり実践されており、当業者に周知されている。アジュバント中の精製B.t.殺虫性毒素を反復して腹腔内又は皮下注射すると、ほとんどの動物で免疫反応が誘発される。過免疫性Bリンパ球が動物から取り出され、及び無期限に培養される能力を有する適当な融合パートナー細胞株と融合される。Bリンパ球は過免疫状態となり得、及びMAbsの産生に利用可能な好ましい動物は哺乳動物である。より好ましい動物はラット及びマウスであり、最も好ましくはBALB/cマウス系統である。
【0083】
非常に多くの哺乳動物細胞系統が、ハイブリドーマを産生するための適する融合パートナーとなる。多くのかかる系統が、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC、Manassas、VA)、及び市販供給業者から入手可能である。好ましい融合パートナー細胞系統はマウスミエローマに由来し、及びHL−1(登録商標)フレンドリーミエローマ−653細胞系統(Ventrex、Portland、ME)が最も好ましい。融合したら、得られたハイブリドーマは、1〜2週間選択的増殖培地で培養される。2つの周知された選択システムが、混合ハイブリドーマ培養物から非融合ミエローマ細胞又はミエローマ細胞間融合体を除去するのに利用可能である。選択システムを選択する場合、それは免疫対象マウス系統、及び用いられるミエローマ融合パートナーに依存する。Taggart及びSamloffの文献(1983年)が記載するAAT選択システムが利用可能である。但し、上記の好ましいマウス系統及び融合パートナーと適合性を有することから、Littlefieldの文献(1964年)が記載するHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)選択システムが好ましい。次に、処理済み成長培地が、免疫特異的MAb分泌についてふるい分けされる。酵素結合免疫吸着測定(ELISA)法がこの目的に最適であるが、大容量スクリーニング用に改変されたラジオイムノアッセイ法も許容される。相当数の無関係の又はあまり望ましくない培養物を連続的に漸減するように設計された複数回のふるい分けを実施することができる。B.t.殺虫性毒素と反応するMAbsを分泌する培養物について、既知のB.t.殺虫性毒素との交差反応性に関してふるい分けすることができる。好ましいB.t.殺虫性毒素と選択的に結合するMAbsは、商業的に入手可能な分析法を用いてアイソタイプ化され得る。好ましいMAbsはIgGクラスに属するものであり、更に大いに好ましいMAbsはIgG及びIgG2aサブアイソタイプに属するものである。
【0084】
好ましいMAbsを分泌するハイブリドーマ培養物は、単クローン性及び安定性を確立するために数回サブ−クローン化され得る。真核性、非付着性細胞培養物をサブ−クローニングするための周知の方法として、限界希釈法、ソフトアガロース法、及び蛍光活性化細胞選別法が挙げられる。各サブクローニングの後に、得られた培養物は、安定で好ましいMAb分泌培養物が確立されたことを保証するために、好ましくは抗体分泌及びアイソタイプについて再分析される。
【0085】
抗B.t.毒素抗体は、本発明において請求の対象とされるB.t.殺虫性毒素及びその変異体又は断片を検出する様々な方法で有用である。レポート基(reporting group)で標識された抗体が、様々な環境で抗原の有無を識別するのに利用可能であることは周知されている。放射性同位体で標識された抗体が、ラジオイムノアッセイ法において何十年も、様々な生物体液中の抗原の有無を極めて高精度、高感度で識別するのに用いられてきた。より最近では、酵素標識抗体が、放射性標識抗体に対する代用品としてELISA分析法で用いられるようになった。更に、本発明のB.t.殺虫性毒素と免疫反応する抗体は、ポリスチレンウェル又は粒子等の固定化物質に結合することができ、及び試験サンプル中にB.t.毒素が存在するかどうか調べるために免疫測定法で利用可能である。
【0086】
プローブを用いた検出
本願発明の毒素及び遺伝子を同定する更なる方法は、オリゴヌクレオチドプローブの使用による。そのようなプローブは検出可能なヌクレオチド配列である。それらの配列は、適当な放射性標識により検出可能となり、又は米国特許第6268132号に記載するように本質的に蛍光性とすることができる。当技術分野において周知のように、プローブ分子及び核酸サンプルが2つの分子間で強い塩基対結合を形成することによりハイブリダイズする場合には、当該プローブ及びサンプルは本質的配列相同性を有すると合理的に仮定することができる。好ましくは、ハイブリダイゼーションは、例えばKeller及びManakの文献(1993年)に記載するように、当技術分野において周知の技術によりストリンジェントな条件(stringent conditions)下で実施される。プローブ検出により、ハイブリダイゼーションが生じたかどうか公知の方式で判定する手段が提供される。かかるプローブ分析により、本願発明の毒素をコードする遺伝子を同定する迅速な方法が提供される。本発明に基づきプローブとして用いられるヌクレオチドセグメントは、DNAシンセサイザー及び標準的な手法を用いて合成可能である。これらのヌクレオチド配列は、本願発明の遺伝子を増幅するためのPCRプライマーとしても利用可能である。
【0087】
ハイブリダイゼーション
分子生物学の当業者にとって周知であるように、2つの核酸の類似性は、それらのハイブリダイズする傾向により特徴付けることができる。本明細書で用いる場合、用語「ストリンジェントな条件」又は「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、プローブが、その他の配列よりも検出可能なほどに高いレベル(例えば、少なくともバックグラウンドに対して2倍)でその標的配列にハイブリダイズする(アニールする)ような条件を意味するように意図されている。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、また状況が異なれば異なる。ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄条件の厳密性(stringency)を制御することにより、プローブに対して100%相補的な標的配列が識別可能である(相同プロービング)。或いは、ストリンジェントな条件は、類似性がより低くても検出されるように(非相同プロービング)、配列中にある程度のミスマッチがあってもそれを許容するように調節可能である。一般的に、プローブは、長さ約1000ヌクレオチド未満、好ましくは長さ500ヌクレオチド未満である。
【0088】
一般的に、ストリンジェントな条件とは、pH7.0〜pH8.3で、塩濃度が約1.5M未満のNaイオン、一般的に約0.01〜1.0MのNaイオン濃度(又はその他の塩)、及び温度が、短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)の場合少なくとも約30℃、また長いプローブ(例えば、50ヌクレオチドを上回る)の場合少なくとも約60℃の条件である。ストリンジェントな条件は、ホルムアミド等の不安定化剤を添加することによっても実現可能である。厳密性の低い典型的な条件には、37℃において30%〜35%のホルムアミド、1MのNaCl、1%のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)からなるバッファー溶液を用いて行われるハイブリダイゼーション、及び50℃〜55℃において1×〜2×SSC(20×SSC=3.0MのNaCl/0.3Mのクエン酸三ナトリウム)中で行われる洗浄が含まれる。厳密性が中程度の典型的な条件には、37℃において40%〜45%のホルムアミド、1.0MのNaCl、1%のSDS中で行われるハイブリダイゼーション、及び55℃〜60℃において0.5×〜1×SSC中で行われる洗浄が含まれる。厳密性が高い典型的な条件には、37℃において50%ホルムアミド、1MのNaCl、1%のSDS中で行われるハイブリダイゼーション、及び60℃〜65℃において0.1×SSC中で行われる洗浄が含まれる。任意選択的に、洗浄バッファーは約0.1%〜約1%のSDSを含み得る。ハイブリダイゼーション期間は、一般的に約24時間未満、通常約4〜約12時間である。
【0089】
特異性は、一般的にハイブリダイゼーション後の洗浄の関数であり、重要な要因として最終洗浄溶液のイオン強度及び温度が挙げられる。DNA/DNAハイブリッドの場合、熱融点(T)とは、相補的標的配列の50%が完全にマッチしたプローブとハイブリダイズする温度(規定されたイオン強度及びpHにおける)である。Tはミスマッチ1%毎に約1℃低下する。従って、T、ハイブリダイゼーション条件、及び/又は洗浄条件は、所望の同一性を有する配列のアニーリングを促進するように調節可能である。例えば、>90%の同一性を有する配列を得ようとする場合、Tは10℃低下し得る。一般的に、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度及びpHにおいて、特定の配列及びその相補体に関するTよりも約5℃低くなるように選択される。しかし、厳密性が高い条件では、Tよりも1℃、2℃、3℃、又は4℃低い温度で行われるハイブリダイゼーション及び/又は洗浄を利用することができる。厳密性が中程度の条件では、Tよりも6℃、7℃、8℃、9℃、又は10℃低い温度で行われるハイブリダイゼーション及び/又は洗浄を利用することができ、及び厳密性が低い条件では、Tよりも11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、又は20℃低い温度で行われるハイブリダイゼーション及び/又は洗浄を利用することができる。
【0090】
(℃単位)は、実験的に求めることができ、又は計算により近似することができる。DNA−DNAハイブリッドの場合、TはMeinkoth及びWahl(1984年)の式から近似することができる。
(℃)=81.5℃+16.6(logM)+0.41(%GC)−0.61(%ホルムアミド)−500/L
式中、Mは一価のカチオンのモル濃度、%GCはDNA中のグアノシン及びシトシンヌクレオチドの割合(%)、%ホルムアミドはハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドの割合(%)、及びLは塩基対中のハイブリッドの長さである。
【0091】
或いは、Tは下記の式により記載される(Beltzらの文献、1983年)。
(℃)=81.5℃+16.6(log[Na+])+0.41(%GC)−0.61(%ホルムアミド)−600/L
式中、[Na+]はナトリウムイオンのモル濃度、%GCは、DNA中のグアノシン及びシトシンヌクレオチドの割合(%)、%ホルムアミドはハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドの割合(%)、及びLは塩基対中のハイブリッドの長さである。
【0092】
上記公式、ハイブリダイゼーション及び洗浄組成物、並びに所望のTを用いることにより、当業者は、ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄溶液の厳密性に生じるそれぞれの変化は自ずと説明されることを理解するであろう。所望のレベルのミスマッチにおいて、Tが45℃(水溶液)又は32℃(ホルムアミド溶液)未満となる場合には、より高い温度が利用可能なようにSSC濃度を高めるのが好ましい。核酸のハイブリダイゼーションに対する広範な指針がTijssenの文献(1993年)及びAusubelらの文献(1995年)に記載されている。Sambrookらの文献(1989年)も参照されたい。
【0093】
放射性標識された遺伝子特異的プローブを用いたサザンブロット上での固定化DNAのハイブリダイゼーションは、標準的な方法により実施可能である(Sambrookらの上記文献)。ポリヌクレオチドプローブを標識するのに用いられる放射性同位体として、32P、33P、14C、又は3Hを挙げることができる。放射性同位体のポリヌクレオチドプローブ分子への組み込みは、分子生物学分野の当業者にとって周知の任意のいくつかの方法により実施可能である。(例えば、Sambrookらの上記文献を参照されたい)。一般的に、ハイブリダイゼーション及び後続する洗浄は、請求の対象とされる毒素をコードする遺伝子と相同性を有する標的配列の検出を可能にするストリンジェントな条件下で実施される。二本鎖DNA遺伝子プローブの場合、ハイブリダイゼーションは、6×SSPE、5×デンハート液、0.1%のSDS、0.1mg/mLの変性DNA中で、DNAハイブリッドのTよりも20〜25℃低い温度において、オーバーナイトで実施される[20×SSPEは3MのNaCl、0.2MのNaHPO、及び0.02MのEDTA(エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩);100×デンハート液は20gm/Lのポリビニルピロリドン、20gm/Lのフィコールタイプ400及び20gm/Lのウシ血清アルブミン(フラクションV)である]。
【0094】
洗浄は、一般的に下記のように実施され得る。
1×SSPE、0.1%のSDS中で、室温において15分間、2回(厳密性が低い洗浄)。
0.2×SSPE、0.1%のSDS中で、T−20℃において15分間、1回(厳密性が中程度の洗浄)。
【0095】
オリゴヌクレオチドプローブの場合、ハイブリダイゼーションは、6×SSPE、5×デンハート液、0.1%のSDS、0.1mg/mLの変性DNA中で、ハイブリッドのTよりも10〜20℃低い温度において、オーバーナイトで実施される。オリゴヌクレオチドプローブに関するTは、下記の式により求めることができる(Suggsらの文献、1981年)。
(℃)=2(T/A塩基対の数)+4(G/C塩基対の数)
【0096】
洗浄は、一般的に下記のように実施され得る。
1×SSPE、0.1%のSDS中で、室温において15分間、2回(厳密性が低い洗浄)。
1×SSPE、0.1%のSDS中で、ハイブリダイゼーション温度において15分間、1回(厳密性が中程度の洗浄)。
【0097】
ハイブリダイゼーション用のプローブ分子、及びプローブ及び標的分子間で形成されるハイブリッド分子は、放射性標識以外の手段により検出可能にすることができる。かかる代替法は、本発明の範囲内であるように意図される。
【0098】
本明細書に記載する実施例及び実施形態は説明目的に限られること、並びにそれらに照らして様々な変形形態又は変更形態が当業者にとって示唆され、及び本出願の精神と意図、及び添付の特許請求の範囲内に含まれることと理解されるはずである。
【実施例1】
【0099】
DIG−5毒素をコードする遺伝子の単離
本明細書でDIG−5と呼ぶ殺虫性のCryタンパク質をコードする核酸は、B.t.系統PS198Q7から単離された。テンプレートとしてPS198Q7ゲノムDNAを用いるPCR反応で、フォワード及びリバースプライマーとして用いられるデジェネレートプライマーは、B.t.殺虫性毒素の各クラスの多重配列アラインメント(multiple sequence alignments)に基づき設計された。フォワードプライマーは配列番号1の塩基766〜790に対応し、及びリバースプライマーは配列番号1の塩基2200〜2223の相補体に対応する。この一対のプライマーは、配列番号1のヌクレオチド766〜2223に対応する1458bpからなる断片を増幅するのに用いられた。この配列は、GenomeWalker(商標)Universal Kit(Clontech、Palo Alto、CA)から改変された方法を用いてゲノム歩行法(genome walking)を開始するためにアンカーポイントとして用いられた。DIG−5コーディング領域にまたがる断片の核酸配列が決定された。配列番号1は完全長DIG−5タンパク質をコードする3447bpヌクレオチド配列である。配列番号2は、配列番号1から推定された完全長DIG−5タンパク質のアミノ酸配列である。
【実施例2】
【0100】
DIG−5に由来するドメインIαへリックスの欠損
DIG−5毒素の殺虫性特性を改善するために、連続的、段階的に欠損が作り出され、各欠損はDIG−5タンパク質のN末端部分を取り除く。当該欠損は、ドメインI内のαへリックス1の一部又は全て、及びαへリックス2の一部又は全てを取り除くが、一方、αへリックス3〜αへリックス7の構造的な完全性は維持される。
【0101】
欠損は下記のように設計される。この実施例では、71個の特定の変異体を含む設計原理を説明するために、完全長DIG−5タンパク質をコードする完全長キメラDNA配列(例えば、それぞれ配列番号2及び配列番号1)を利用する。また同実施例では、更なる71個の特定の変異体を提供するために、配列番号5のキメラ配列(Cry1Abプロトキシンセグメントと融合したDIG−5コア毒素をコードするDNA)を利用する。当業者は、DIG−5タンパク質の全て又はN末端部分をコードするその他のDNA配列が所望の結果を実現するために同様に操作可能であることを認識するであろう。第1の欠損変異体コーディング配列を考案するために、αへリックス2Aの開始部近傍のヒスチジン残基(すなわち、配列番号2の完全長DIG−5タンパク質のH71)に関するコドンを含むαへリックス1をコードする全ての塩基が除去される。従って、配列番号1の塩基1〜213を除去すれば、配列番号2のアミノ酸1〜71に対応するコーディング配列が除去される。開始部(すなわち、完全長タンパク質のアミノ酸72に関連するコドンの前)に翻訳開始ATG(メチオニン)コドンを再導入すると、1079個のアミノ酸(すなわち、メチオニン+完全長DIG−5タンパク質のアミノ酸72〜1149)を含む欠損変異体DIG−5タンパク質をコードする3237塩基からなるオープンリーディングフレームを含む欠損変異体コーディング配列が得られる。配列番号2の完全長DIG−5タンパク質の残基72〜113に対応する単一のアミノ酸に関するコドンを更に除去するように連続的、段階的に欠損を生み出すと、αへリックス2A及びαへリックス2Bの一部又は全てが欠損している変異体が得られる。従って、2番目に設計された欠損変異体コーディング配列は、配列番号1の塩基1〜216の除去を必要とし、これによりアミノ酸1〜72に対応するコーディング配列が除去される。機能的オープンリーディングフレームの復元は、残りのコーディング配列の開始部分に翻訳開始メチオニンコドンを再導入することにより再び達成され、従って、1078個のアミノ酸を含む欠損変異体DIG−5タンパク質をコードする3234塩基からなるオープンリーディングフレーム(すなわち、メチオニン+完全長DIG−5タンパク質のアミノ酸73〜1149)を有する第2の欠損変異体コーディング配列が得られる。最後に設計された欠損変異体コーディング配列は、配列番号1の塩基1〜339の除去を必要とし、従ってアミノ酸1〜113に対応するコーディング配列を除去し、及び翻訳開始メチオニンコドンを再導入した後には、1037個のアミノ酸からなる欠損変異体DIG−5タンパク質をコードする3111塩基からなるオープンリーディングフレーム(すなわち、メチオニン+完全長DIG−5タンパク質のアミノ酸114〜1149)を有する欠損変異体コーディング配列が得られる。例示するように、欠損配列を除去した後、機能的オープンリーディングフレームを復元するために、開始メチオニンコドンが残りのコーディング配列の開始部に付加される。また、やはり記載するように、欠損配列を除去すると、完全長タンパク質の残留部分のN末端で、上記した不安定性決定アミノ酸(instability-determining amino acid)のうちの1つが露出したままになる場合には、追加のグリシンコドンがメチオニンコドンと前記不安定性−決定アミノ酸に対応するコドンとの間に付加される。
【0102】
表3は上記方針に基づき設計された特定の変異体を記載する。
【0103】
【表3】


【0104】
表3に記載する毒素をコードする核酸は、上記で議論されたように植物での発現が意図された合成遺伝子に関する一般原理に基づき設計される。
【実施例3】
【0105】
DIG−5B.t.殺虫性タンパク質に関するコーディング配列の植物最適化バージョンの設計
植物コドンバイアスを有するDNA配列が、遺伝子組換え単子葉植物及び双子葉植物でDIG−5タンパク質を産生するために設計され、及び合成された。トウモロコシ(Zea mays L.)に関するコドン使用頻度表(codon usage table)が、GenBankに蓄積された配列から得られた706個のタンパク質コーディング配列(CD)から計算された。タバコ(Nicotiana tabacum, 1268 CDs)、キャノーラ(Brassica napus, 530 CDs)、ワタ(Gossypium hirsutum, 197 CDs)、及びダイズ(Glycine max; ca. 1000 CDs)に関するコドン使用頻度表は、ウェブサイトhttp://www.kazusa.or.jp/codon/のデータからダウンロードされた。トウモロコシ及び双子葉植物の両データセットに共通した高度利用コドンを適切な加重平均相対量で含む、バイアスを有するコドンセットが、いずれの植物タイプにおいても、対応するアミノ酸について総コドン使用量の約10%未満しか用いられていない冗長コドンの全てを除去した後に計算された。DIG−5タンパク質をコードする植物最適化配列を導出するために、得られたDNA配列が植物に最適化されたコドンバイアス表(codon bias table)の全体的なコドン組成を有するように、実験的に求められたDIG−5DNA配列に対してコドン置換が実施された。更に配列の洗練化を実施して、望ましくない制限酵素認識部位、潜在的な植物イントロンスプライス部位、A/T又はC/G残基のロングラン、及びRNAの安定性、植物細胞内のコーディング領域の転写、又は翻訳を阻害し得るその他のモチーフを取り除いた。その他の変更も実施して、望ましい制限酵素認識部位を導入し、及び長い内部オープンリーディングフレーム(+1以外のフレーム)を取り除いた。これらの変更は、全て植物バイアスコドン組成を維持する制限範囲内で実施された。設計された配列の合成は、商業的ベンダーにより実施された(DNA2.0、Menlo Park、CA)。
【0106】
合成遺伝子の作成に関する更なるガイダンスは、例えば、国際公開第97/13402号及び米国特許第5380831号に見出すことができる。
【0107】
DIG−5コア毒素をコードするトウモロコシ最適化DNA配列は、配列番号3に記載されている。Cry1Abプロトキシンセグメントをコードする双子葉植物最適化DNA配列は、配列番号6として開示されている。Cry1Abプロトキシンセグメントをコードするトウモロコシ最適化DNA配列は、配列番号7として開示されている。
【実施例4】
【0108】
DIG−5殺虫性毒素をコードする発現プラスミドの構築及び細菌宿主における発現
植物最適化コーディング領域によりコードされる完全長DIG−5タンパク質を作製するために、工学的に生み出されるシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)(Pf)発現プラスミドを構築する際には、標準的なクローニング法が用いられる。制限エンドヌクレアーゼはNew England BioLabs(NEB;Ipswich、MA)から入手し、及びT4 DNAリガーゼ(Invitrogen)が、DNAライゲーション用として用いられる。プラスミドの調製は、NucleoBond(登録商標)Xtra Kit(Macherey−Nagel Inc、Bethlehem、PA)、又はPlasmid Midi Kit(Qiagen)を用いて、供給業者の説明書に従い実施される。DNA断片は、トリス−酢酸塩アガロースゲル電気泳動後に、Millipore Ultrafree(登録商標)DAカートリッジ(Billerica、MA)を用いて精製される。
【0109】
基本的なクローニング法は、DIG−5毒素コーディング配列(CDS)をpDOW1169に、例えばSpeI及びXhoI制限部位でサブクローニングするステップを必要とし、これにより、同配列はプラスミドpKK223−3(PL Pharmacia、Milwaukee、WI)に由来するPtacプロモーター、及びrrnBT1T2ターミネーターの発現制御下に置かれる。pDOW1169は、RSF1010複製起点、pyrF遺伝子、及び制限酵素認識部位に先行するリボソーム結合部位を備えたミディアムコピープラスミド(medium copy plasmid)であり、同プラスミド中にタンパク質コーディング領域を含むDNA断片が導入され得る(米国特許出願第20080193974号)。発現プラスミドは、DC454(突然変異ΔpyrF及びlsc::lacIQIを有する野生型P.フルオレッセンス(fluorescens)系統に近い)、又はその誘導体内にエレクトロポレーションすることにより形質転換され、SOC−Soy加水分解産物培地内に回収され、及び選択培地(ウラシルを欠いたM9グルコース寒天培地、Sambrookらの上記文献)上に播種される。微生物学的操作の詳細は、Squiresらの文献(2004年)、米国特許出願第20060008877号、米国特許出願第20080193974号、及び米国特許出願第20080058262号に記載されており、本明細書において参照により援用する。コロニーは最初にPCRによりふるい分けされ、次いで陽性クローンがミニプレッププラスミドDNAの制限酵素消化により分析される。挿入物を含む選択されたクローンのプラスミドDNAは、供給業者(Applied Biosystems/Invitrogen)が推奨するようにBig Dye(登録商標)ターミネーター、バージョン3.1を用いて、又はMWG Biotech(Huntsville、AL)等の商業的配列決定ベンダーと契約することにより配列決定される。配列データは、Sequencher(商標)ソフトウェア(Gene Codes Corp.、Ann Arbor、MI)を用いて組み立てられ、及び分析される。
【0110】
振とうフラスコ内での増殖及び発現分析。特徴付け及び昆虫バイオアッセイを行うためのDIG−5毒素は、振とうフラスコにより増殖した発現構築物を内蔵するP.フルオレッセンス(fluorescens)系統(例えば、クローンDP2826)により産生される。1%グルコース及び微量元素が補給されたM9培地内で増殖した種培養物が、5%のグリセロールを含む限定最少培地(Teknova Cat.#3D7426、Hollister、CA)、50mLに播種するのに用いられる。Ptacプロモーターを介するDIG−5毒素遺伝子の発現は、振とうしながら30℃で24時間、初期のインキュベーションを行った後に、イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加することにより誘発される。培養物は誘発時及び誘発後の様々な時間においてサンプル採取される。細胞密度は600nm(OD600)での光学的密度により測定される。シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)の増殖に適する、例えばHuangらの文献(2007年)及び米国特許出願第20060008877号で記載されるようなその他の培地も利用可能である。
【0111】
振とうフラスコサンプルの細胞分画及びSDS−PAGE分析。各サンプル採取時において、サンプルの細胞密度はOD600=20に調節され、及び1mLの分量が14000×gで5分間遠心分離される。細胞ペレットは−80℃で凍結される。凍結された振とうフラスコ細胞ペレットサンプルに由来する可溶性及び不溶性の分画が、EasyLyse(商標)Bacterial Protein Extraction Solution(EPICENTRE(登録商標)Biotechnologies、Madison、WI)を用いて生成される。各細胞ペレットは、EasyLyse(商標)溶液、1mL中に再懸濁され、及び溶解バッファー中で1:4に更に希釈され、及び振とうしながら室温で30分間インキュベーションされる。ライセートは、4℃、14,000rpmで20分間遠心分離され、及び上澄部は可溶性分画として回収される。次に、ペレット(不溶性分画)は、同容積のリン酸緩衝化された生理食塩水(PBS;11.9mM NaHPO、137mM NaCl、2.7mM KCl、pH7.4)中に再懸濁される。
【0112】
サンプルは、β−メルカプトエタノールを含む2×Laemmliサンプルバッファーを用いて1:1に混合され(Sambrookらの上記文献)、及び5分間煮沸した後、推奨XT MOPSバッファー中でCriterion XT ビス−トリス12%ゲル(Bio−Rad Inc.、Hercules、CA)電気泳動に負荷される。ゲルは、製造業者(Bio−Rad)のプロトコールに基づき、バイオセーフクマシー染色剤(Bio-Safe Coomassie Stain)を用いて染色され、及びAlpha Innotech Imaging system(San Leandro、CA)を用いて画像化される。
【0113】
封入体調製物。Cryタンパク質封入体(IB)の調製は、SDS−PAGE及びMALDI−MS(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization Mass Spectrometry:マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法)による実証に基づき、不溶性B.t.殺虫性タンパク質を産生したP.フルオレッセンス(fluorescens)発酵から得られた細胞について実施される。P.フルオレッセンス(fluorescens)発酵ペレットは37℃の水浴中で解凍される。細胞は溶解バッファー(50mMのトリス、pH7.5、200mMのNaCl、20mMのEDTA二ナトリウム塩(エチレンジアミン四酢酸)、1%のTriton X−100、及び5mMのジチオスレイトール(DTT))内で25%w/vに再懸濁される。5mL/Lの細菌プロテアーゼ阻害剤カクテル(P8465 Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)が使用直前に添加される。細胞は最低レベルに設定されたハンドヘルドホモジナイザー(Tissue Tearor、BioSpec Products,Inc.、Bartlesville、OK)を用いて懸濁される。リゾチーム(25mgのSigma L7651、鶏卵卵白由来)が、金属製のスパチュラで混合しながら細胞懸濁液に添加され、及び当該懸濁液は室温で1時間インキュベーションされる。当該懸濁液は氷上で15分間冷却され、次にBranson Sonifier 250を用いて超音波処理される(50%のデューティサイクル、30%のアウトプットで1分間セッションを2回)。細胞溶解物は顕微鏡検査によりチェックされる。必要な場合には、25mgのリゾチームが更に添加され、及びインキュベーション及び超音処理が繰り返される。細胞溶解が顕微鏡検査により確認されたら、当該ライセートは、IBペレットが形成されるように11,500×gで25分間(4℃)遠心分離され、及び上澄部は廃棄される。IBペレットは100mLの溶解バッファーで再懸濁され、上記のようにハンドヘルドミキサーを用いてホモジナイズされ、及び遠心分離される。IBペレットは、上澄部が無色となり、及びIBペレットが堅く引き締まり、そしてオフ・ホワイト色になるまで、再懸濁(50mLの溶解バッファー中で)、ホモジナイゼーション、超音波処理、及び遠心分離することにより繰り返し洗浄される。最終洗浄の場合、IBペレットは2mMのEDTAを含む滅菌濾過された(0.22μm)蒸留水中に再懸濁され、及び遠心分離される。最終ペレットは2mMのEDTAを含む滅菌濾過された蒸留水中に再懸濁され、及び1mLの分量で−80℃で貯蔵される。
【0114】
IB調製物内のタンパク質のSDS−PAGE分析及び定量は、1mLの分量のIBペレットを解凍し、及び滅菌濾過蒸留水で1:20に希釈することにより実施される。希釈サンプルは、次に4×還元サンプルバッファー[250mMのトリス、pH6.8、40%のグリセロール(v/v)、0.4%のブロモフェノールブルー(w/v)、8%のSDS(w/v)、及び8%のβ−メルカプト−エタノール(v/v)]で煮沸され、及び1×トリス/グリシン/SDSバッファー(BioRad)を用いたNovex(登録商標)4〜20%のトリス−グリシン、12+2ウェルゲル(Invitrogen)泳導(run)に負荷される。ゲルは、約60分間、200ボルトで泳導され、次にクマシーブルー(45%のメタノール、10%の酢酸に溶解した50%のG−250/50%のR−250)で染色され、及び蒸留水に溶解した7%の酢酸、5%のメタノールで脱染色される。標的バンドの定量は、標準曲線を作成するために同一ゲル上で泳導されたウシ血清アルブミン(BSA)サンプルに対して、各バンドのデンシトメトリー値を比較することにより行われる。
【0115】
封入体の可溶化。PfクローンDP2826(32mg/mLのDIG−5タンパク質を含む)から得られた6mLの封入体懸濁液が、封入体をペレット化させるように最高レベルに設定されたEppendorf medel 5415C小型微量遠心機(約14,000×g)上で遠心分離される。50mLコニカルチューブ内の貯蔵用バッファー上澄部は除去され、及び25mLの100mMの炭酸ナトリウムバッファー、pH11で置換される。封入体はピペットを用いて再懸濁され、及び完全に混和するようにボルテックス処理される。当該チューブは、標的タンパク質を抽出するために、静かに揺動するプラットフォーム上に4℃、オーバーナイトで配置される。当該抽出物は、30,000×gで30分間、4℃において遠心分離され、及び得られた上澄部は、Amicon Ultra−15再生セルロース遠心濾過器(30,000分子量カットオフ;Millipore)を用いて、5倍に濃縮される。次に、サンプルバッファーは、使い捨てのPD−10カラム(GE Healthcare、Piscataway、NJ)を用いて、10mMのCAPS[3−(シクロヘキサミノ)1−プロパンスルホン酸]、pH10に交換される。
【0116】
ゲル電気泳動。濃縮抽出物は、還元剤として5mMのジチオスレイトールを含むNuPAGE(登録商標)LDSサンプルバッファー(Invitrogen)中で1:50に希釈することにより、電気泳動用に調製され、及び95℃で4分間加熱される。サンプルは、4〜12%のNuPAGE(登録商標)ゲルのレーンに重複して、0.2〜2μg/レーンの範囲の5つのBSA標準品(標準曲線作成用)と並行して負荷される。MOPS SDS泳動バッファー(Invitrogen)を用い、追跡用色素がゲルの最下端に到達するまで、200Vで電圧が印加される。ゲルは45%のメタノール、10%の酢酸に溶解した0.2%のクマシーブルーG−250を用いて染色され、及び最初に45%のメタノール、10%の酢酸を用いて短時間、次にバックグラウンドが透明になるまで7%の酢酸、5%のメタノールを用いて長時間脱染色される。脱染色後に、ゲルはBiorad Fluor−S MultiImagerを用いてスキャンされる。当該装置のQuantity One v.4.5.2ソフトウェアが、染色されたタンパク質バンドのバックグラウンドが差し引かれた容量を得るために、及びストック溶液中のDIG−5タンパク質濃度を算出するのに用いられるBSA標準曲線を作成するために用いられる。
【実施例5】
【0117】
シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)内で産生された改変DIG−5タンパク質の殺虫活性
DIG−5B.t.殺虫性毒素は、甲虫類(Colepteran)昆虫の幼虫を対象とした活性について試験され、同昆虫には、例えば、ウエスタンコーンルートワーム(WCR、Diabrotica virgifera virgifera LeConte)、及びサザンコーンルートワーム(SCR、Diabrotica undecimpunctata howardi)が含まれる。DIG−5B.t.殺虫性毒素は鱗翅目(Lepidopteran)昆虫の幼虫を対象とした活性について更に試験され、同昆虫には、例えば、夜蛾科のガの幼虫(CEW;Helicoverpa zea(Boddie))、欧州のマツマダラメイガ(ECB;Ostrinia nubilalis (Hubner))、cry1F抵抗性のECB(rECB)、ツマジロクサヨトウ(FAW,Spodoptera frugiperda)、Cry1F抵抗性のFAW(rFAW)、コナガ(DBM;Plutella xylostella (Linnaeus))、cry1A抵抗性のDBM(rDBM)、ニセアメリカタバコガ(TBW;Heliothis virescens(Fabricius))、タマナヤガ(BCW;Agrotis ipsilon (Hufnagel))、イラクサキンウワバ(CL;Trichoplusia ni (Hubner))、及びシロイチモジヨトウ(BAW、Spodoptera exigua、beet armyworm)が含まれる。
【0118】
サンプル調製及びバイオアッセイ。10mMのCAPS、pH10中の封入体調製物は、10mMのCAPS、pH10中で適切に希釈され、及び全てのバイオアッセイには本バッファーから構成される対照処理が含まれるが、同処理は、死亡率又は成長阻害についてバックグラウンドチェックするように機能する。
【0119】
バイオアッセイバッファー中のタンパク質濃度は、ゲルデンシトメトリー用の標準曲線を作成するためにBSAを用いながらゲル電気泳動により評価されるが、同ゲルデンシトメトリーは、BioRad画像システム(Quantity One software バージョン4.5.2を備えたFluor−S MultiImager)を用いて測定される。ゲルマトリックス中のタンパク質は、クマシーブルーベースの染色剤を用いて染色され、及び読み取る前に脱染色される。
【0120】
精製されたタンパク質は、人工的な昆虫飼料で飼育された新生幼虫を用いて実施されるバイオアッセイで、殺虫活性について試験される。幼虫、例えばBCW、CEW、CL、DBM、rDBM、ECB、FAW、及びTBWの幼虫は、商業的な昆虫飼育業者(Benzon Research Inc、Carlisle、PA)により維持されているコロニーから得られた卵から孵化される。WCR及びSCRの卵は、Crop Characteristics,Inc.(Farmington、MN)から入手される。rECB及びrFAWの幼虫は、独自のコロニー(Dow AgroSciences LLC、Indianapolis、IN)から捕集された卵から孵化される。
【0121】
バイオアッセイは、昆虫バイオアッセイ用に特別に設計された128−ウェル、プラスチック製トレイ(C−D International、Pitman、NJ)内で実施される。各ウェルは、複数種鱗翅目飼料(Southland Products、Lake Village、AR)又は甲虫目の昆虫の増殖用に設計された独自の飼料(Dow AgroSciences LLC、Indianapolis、IN)、1.0mLを含む。40μLの分量のタンパク質サンプルが、ピペットにより各ウェルの1.5cmの飼料表面上に供給される(26.7μL/cm)。飼料濃度は、ウェルの表面積1平方センチ(cm)当たりのDIG−5タンパク質の量(ng)として計算される。処理済みのトレイは、飼料表面上の液体が蒸発し、又は飼料内に吸収されるまでドラフトチャンバー内で維持される。
【0122】
羽化の数時間内に、個々の幼虫は湿ったラクダの毛のブラシを用いて採取され、及び1ウェル当たり1匹の幼虫となるように処理済みの飼料上に配置される。次に、寄生されたウェルは、透明なプラスチック製の接着シートで密閉され、ガス置換が可能となるように換気される。(C−D International、Pitman、NJ)。バイオアッセイトレイは、制御された環境条件下(28℃、相対湿度約40%、16:8[明:暗])で5日間維持され、その後、各タンパク質サンプルに暴露された昆虫の総数、死亡した昆虫の数、及び生存した昆虫の重量が記録される。死亡の割合(%)及び成長阻害の割合(%)が各処理について計算される。成長阻害(GI)は下記のように計算される。
GI=[1−(TWIT/TNIT)/(TWIBC/TNIBC)]
式中、TWITは処理群の昆虫の総重量であり、
TNITは処理群の昆虫の総数であり、
TWIBCは、バックグラウンドチェック群(バッファー対照)の昆虫の総重量であり、及び
TNIBCは、バックグラウンドチェック群(バッファー対照)の昆虫の総数である。
【0123】
GI50は、GI値が50%である飼料中のDIG−5タンパク質濃度として求められる。LC50(50%致死濃度)は、試験昆虫の50%が絶命する飼料中のDIG−5タンパク質濃度として記録される。統計解析(一元配置ANOVA)が、JMPソフトウェア(SAS、Cary、NC)を用いて実施される。
【実施例6】
【0124】
アグロバクテリウム(Agrobacterium)属の形質転換
標準的なクローニング法が、バイナリー植物形質転換及び発現プラスミドの構築で用いられる。制限エンドヌクレアーゼ及びT4DNAリガーゼはNEBより入手される。プラスミドの調製は、NucleoSpin(登録商標)Plasmid Preparationキット、又はNucleoBond(登録商標)AX Xtra Midiキット(両方共にMacherey−Nagelより入手)を用いて、製造業者の説明書に従って実施される。DNA断片は、QIAquick PCR Purification Kit、又はQIAEX II Gel Extraction Kit(両方共にQiagenより入手)を用いて、ゲル単離後に精製される。
【0125】
改変されたDIG−5タンパク質、又はその断片をコードする核酸配列を含むDNA断片は、商業的ベンダー(例えば、DNA2.0、Menlo Park、CA)により合成可能であり、及び標準的なプラスミドベクター内にクローン化された断片として供給され得るが、又は適当な核酸配列を含むその他の構築物について標準的な分子生物学的操作を行うことによって得ることもできる。各遺伝子内部の固有制限部位は識別可能であり、及び各遺伝子断片が合成可能であり、それぞれ固有の欠損又は挿入を含む。所望の完全長タンパク質、融合タンパク質、又は欠損変異体タンパク質をコードするコーディング領域を得るために、改変されたCry断片をその他のCry断片コーディング領域内に、適切な制限部位においてサブクローン化することができる。例えば、遺伝子の開始部に適当な制限認識部位、及び変異クローンを構築するのに利用可能な各遺伝子に固有の第2の内部制限部位を識別することができる。
【0126】
非限定的な事例では、基本的なクローニング法は、完全長又は改変されたCryコーディング配列(CDS)をNcoI及びSacI制限部位で植物発現プラスミド内にサブクローン化することであり得る。植物発現要素(例えば、植物で発現可能なプロモーター、3’末端転写終了及びポリアデニレート付加決定因子等)の制御下に置かれたしかるべきCryコーディング領域を含む、得られた植物発現カセットは、例えばGateway(登録商標)技術又は標準的な制限酵素断片クローニング手法を利用して、バイナリーベクタープラスミド内にサブクローン化される。Gateway(登録商標)技術が利用される場合には、例えばLR Clonase(商標)(Invitrogen)が、完全長及び改変された遺伝子の植物発現カセットをバイナリー植物形質転換プラスミド内に組み込むのに利用可能である。プラスミドが大腸菌(E.coli)及びアグロバクテリウム(Agrobacterium)属の細胞内に存在するとき、抗生物質スペクチノマイシンに対する抵抗性を付与する細菌遺伝子を内蔵するバイナリー植物形質転換ベクターを利用するのが便利である。所望の宿主植物内で機能する植物で発現可能な選択マーカー遺伝子を含むバイナリーベクタープラスミドを利用するのも便利である。植物で発現可能な選択マーカー遺伝子の例として、抗生物質のカナマイシン、ネオマイシン、及びG418に対する抵抗性をコードする、トランスポゾンTn5(Aph II)のアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ遺伝子、並びにグリホサート;ハイグロマイシン;メトトレキサート;ホスフィノトリシン(ビアラホス)、イミダゾリノン、スルホニルウレア剤、及びトリアゾロピリミジン除草剤、例えばクロロスルフロン(chlorosulfuron)、ブロモキシニル(bromoxynil)、ダラポン(dalapon)等に対する抵抗性又は耐性をコードする遺伝子が挙げられるが、但しこれらに限定されない。
【0127】
アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)系統Z707Sのエレクトロコンピテントセル(Z707のストレプトマイシン抵抗性誘導体;Hepburnらの文献、1985年)が、エレクトロポレーションを用いて調製され、及び形質転換される(Weigel及びGlazebrookの文献、2002年)。エレクトロポレーション後に、1mLのYEPブロス(gm/L:酵母菌抽出物、10;ペプトン、10;NaCl、5)がキュベットに添加され、及び細胞−YEP懸濁液が、水浴中、28℃で、4時間、一定速度で激しく揺動させながらインキュベーションするために15mL培養チューブに移される。細胞は、スペクチノマイシン(200μg/mL)及びストレプトマイシン(250μg/mL)を含むYEP+寒天(25gm/L)上に播種され、及び当該播種物は28℃で2〜4日間インキュベーションされる。十分に分離した単一コロニーが選択され、及び上記のようにスペクチノマイシン及びトレプトマイシンを含む新鮮なYEP+アガープレート上に条痕を生じさせ(streaked)、及び28℃で1〜3日間、インキュベーションされる。
【0128】
バイナリー植物形質転換ベクター内へのDIG−5遺伝子挿入の有無は、選択されたアグロバクテリウム(Agrobacterium)属コロニーから調製されたテンプレートプラスミドDNAで、ベクター特異的プライマーを用いて、PCR分析により確認される。上記のようにスペクチノマイシン及びストレプトマイシンを含むYEP中で増殖したオーバーナイト培養物15mLのうち、4mLの分量から得られた細胞ペレットが、Qiagen Spin Mini Prepsを用いて、製造業者の説明書に従い抽出される。アグロバクテリウム(Agrobacterium)属のエレクトロポレーション形質転換で用いられたバイナリーベクターに由来するプラスミドDNAが、対照として含まれる。PCR反応は、Invitrogenから入手したTaqDNAポリメラーゼを、製造業者の説明書に従い0.5×濃度で用いて完結する。PCR反応は、以下の条件でプログラムされたMJ Research Peltier Thermal cycler内で実施される:ステップ1)94℃、3分;ステップ2)94℃、45秒間;ステップ3)55℃、30秒間;ステップ4)72℃、推定される生成物の長さ1kb当たり1分間;ステップ5)ステップ2までを29回;ステップ6)72℃、10分間。サイクリング後、反応は4℃で維持される。増幅産物はアガロースゲル電気泳動(例えば、0.7%〜1%のアガロース、w/v)により分析され、及びエチジウムブロマイド染色により可視化される。PCR産物がプラスミド対照と同一であるコロニーが選択される。
【0129】
或いは、DIG−5遺伝子の挿入を含むバイナリー植物形質転換ベクターのプラスミド構造が、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属を操作する当業者にとって周知の標準的な分子生物学的方法により候補アグロバクテリウム(Agrobacterium)属単離物から調製されたプラスミドDNAの制限消化物フィンガープリントマッピングにより確認される。
【0130】
アグロバクテリウム(Agrobacterium)属が介在する形質転換法により形質転換植物を得る当業者は、Z707S以外のその他のアグロバクテリウム(Agrobacterium)属の系統も有利に利用可能であり、及び系統の選択は、形質転換される宿主植物種の同一性に依存し得ることを理解するであろう。
【実施例7】
【0131】
双子葉植物におけるDIG−5B.t.殺虫性タンパク質及び変異体の産生
シロイヌナズナ(Arabidopsis)形質転換。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)Col−01は、花卉水浸法(floral dip method)を用いて形質転換される(Weigel及びGlazebrookの文献、2002年)。選択されたアグロバクテリウム(Agrobacterium)属コロニーが、選択用途で適切な抗生物質を含むYEPブロスの培養液1mL〜15mLに播種するために用いられる。培養液は、220rpmの一定速度で激しく揺動させながら、28℃、オーバーナイトでインキュベーションされる。各培養液は、選択用途で適切な抗生物質を含むYEPブロスの2つの500mL培養液に播種するのに用いられ、及び新たな培養液は、一定速度で激しく揺動させながら、28℃、オーバーナイトでインキュベーションされる。細胞は約8700×gで10分間、室温においてペレット化され、及び得られた上澄部は廃棄される。細胞ペレットは以下の成分を含む浸潤培地、500mL内に静かに再懸濁される:1/2×Murashige及びSkoog塩(Sigma−Aldrich)/GamborgのB5ビタミン(Gold BioTechnology、St.Louis、MO)、10%(w/v)のスクロース、0.044μMのベンジルアミノプリン(1mg/mLのストック液を10μL/リットルで含むDMSO溶液)及び300μL/リットルのSilwet L−77。最も新しい花序の水没が保証されるように注意を払いながら、約1月齢の植物が培地に15秒間浸漬される。次に、当該植物は横向きに寝かせられ、及び24時間覆われ(透明又は不透明)、水で洗浄され、及び縦向きに配置される。当該植物を16時間明光/8時間暗光の周期で、22℃において成長させる。浸漬後約4週間経過して種子が採取される。
【0132】
シロイヌナズナ(Arabidopsis)の成長及び選択。新たに採取されたT1種子を乾燥剤の存在下で少なくとも7日間、室温で乾燥させる。種子は、0.1%の寒天/水(Sigma−Aldrich)溶液中で懸濁され、次に4℃で2日間重層化される。栽植目的で調製するために、10.5インチ×21インチの発芽トレイ(T.O.Plastics Inc、Clearwater,MN)内のSunshine Mix LP5(Sun Gro Horticulture Inc.,Bellevue,WA)が微細なバーミキュライトで覆われ、濡れるまでホーグランド液でサブイリゲーションされ(Hoagland及びArnonの文献、1950年)、次に24時間放置して水切りが行われる。重層化された種子はバーミキュライト上に播種され、及び湿度ドーム(KORD Products、Bramalea、Ontario、Canada)で7日間覆われる。種子を発芽させ、及び植物を、Conviron(Models CMP4030、又はCMP3244;Controlled Environments Limited、Winnipeg、Manitoba、Canada)内で、長日条件(16時間明光/8数時間暗光)下、120〜150μmol/m秒の光強度、一定の温度(22℃)及び湿度(40〜50%)の下で成長させる。土壌が濡れた状態ではなく湿った状態に保たれるように、植物は当初ホーグランド液で、その後脱イオン水で給水される。
【0133】
ドームは、播種後5〜6日間で除去され、及び植物は形質転換されない種子から発芽した植物を枯死させる化学的選択剤でスプレー噴霧される。例えば、バイナリー植物形質転換ベクターにより付与された、植物で発現可能な選択マーカー遺伝子がpat又はbar遺伝子である場合には(Wehrmannらの文献、1996年)、形質転換植物は、Finale(5.78%のグルフォシネートアンモニウム、Farnam Companies Inc.、Phoenix、AZ)の1000×溶液でスプレー噴霧することにより選択され得る。その後スプレー噴霧は5〜7日の間隔で2回実施される。生存植物(活発に成長する植物)が、最終スプレー噴霧後7〜10日間経過して識別され、及びSunshine Mix LP5で調製されたポットに移植される。移植された植物は湿度ドームで3〜4日間覆われ、及び上記成長条件下でConviron内に配置される。
【0134】
その他の植物で発現可能な選択マーカー遺伝子(例えば、除草剤耐性遺伝子)が用いられる場合には、形質転換植物を選択するその他の方法も利用可能であることを、双子葉植物形質転換の当業者は理解するであろう。
【0135】
遺伝子組換えシロイヌナズナ(Arabidopsis)の昆虫バイオアッセイ。改変されたCryタンパク質を発現する遺伝子組換えシロイヌナズナ(Arabidopsis)系統が、感受性を有する昆虫種に対して活性を有することが、人工飼料オーバーレイアッセイ(artificial diet overlay assays)で実証される。遺伝子組換え及び非遺伝子組換えシロイヌナズナ系統から抽出されたタンパク質が、しかるべき方法により定量化され、及びタンパク質濃度を標準化するためにサンプル容量が調整される。バイオアッセイが上記のように人工飼料上で実施される。非遺伝子組換えのシロイヌナズナ(Arabidopsis)及び/又はバッファー及び水が、バックグラウンドチェック処理として分析法に含まれる。
【実施例8】
【0136】
スーパーバイナリーベクターを作製するためのアグロバクテリウム(Agrobacterium)属の形質転換
アグロバクテリウム(Agrobacterium)属スーパーバイナリーシステムは、単子葉植物の植物宿主を形質転換するのに好都合に用いられる。スーパーバイナリーベクターを構築し及び確認する方法は十分に確立されている。標準的な分子生物学的及び微生物学的方法がスーパーバイナリープラスミドを作製するのに用いられる。スーパーバイナリープラスミドの構造の検証/確認は、バイナリーベクターについて上記したものと同様の方法を用いて実施される。
【実施例9】
【0137】
単子葉植物におけるDIG−5B.t.殺虫性タンパク質及び変異体の産生
トウモロコシのアグロバクテリウム(Agrobacterium)属が介在する形質転換。High II F cross(Armstrongらの文献、1991年)に由来する種子が、95%のMetro−Mix 360ソイルレス系成長培地(Sun Gro Horticulture、Bellevue、WA)及び5%のclay/loam土壌からなる混合物を含む5ガロンのポット内に植栽される。植物を、高圧ナトリウムランプ及びメタルハライドランプを併用する温室内で、16:8時間の明光:暗光周期にて成長させる。形質転換用の未成熟のF胚を得るために、制御された同胞受粉(sib-pollination)が実施される。胚が約1.0〜2.0mmのサイズになる受粉後8〜10日目に、未成熟の胚が単離される。
【0138】
感染及び同時培養。トウモロコシ雌穂(Maize ears)は、滅菌水でリンスされる前に、液体石鹸で洗浄し、70%のエタノール中に2分間浸漬し、次に20%の市販漂白剤(0.1%の次亜塩素酸ナトリウム)中に30分間浸漬することにより表面滅菌処理される。スーパーバイナリーベクターを含むアグロバクテリウム(Agrobacterium)属細胞の懸濁液が、100mg/Lのスペクチノマイシン、10mg/Lのテトラサイクリン、及び250mg/Lのストレプトマイシンを含むYEP固体培地上で成長した1〜2ループの細菌を、28℃で2〜3日間、100μMのアセトシリンゴンを含む5mLの液体感染培地(LS基本培地(Linsmaier及びSkoogの文献、1965年)、N6ビタミン(Chuらの文献、1975年)、1.5mg/Lの2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)、68.5gm/Lのスクロース、36.0gm/Lのグルコース,6mMのL−プロリン、pH5.2)に移植することにより調製される。均一な懸濁液になるまで溶液はボルテックス処理され、及び濃度は、紫色のフィルターを備えたKlett−Summerson比色計を用いて、最終密度が200Klett単位となるように調整される。未成熟の胚は、2mLの感染培地を含むマイクロ遠心管に直接単離される。培地は除去され、及び密度が200Klett単位のアグロバクテリウム(Agrobacterium)溶液、1mLで置換され、及びアグロバクテリウム(Agrobacterium)と胚の溶液は、室温で5分間インキュベーションされ、次いで同時培養培地(LS基本培地、N6ビタミン、1.5mg/Lの2,4−D、30.0gm/Lのスクロース、6mMのL−プロリン、0.85mg/LのAgNO、100μMのアセトシリンゴン、3.0gm/Lのゲランガム(PhytoTechnology Laboratories.、Lenexa、KS)、pH5.8)に、暗光条件下で、25℃、5日間移植される。
【0139】
同時培養後に、胚は選択的培地に移植され、その後約8週間経過する間に形質転換された単離物が得られる。植物で発現可能なpat又はbar選択マーカー遺伝子を含むスーパーバイナリープラスミドで形質転換されたトウモロコシ組織を選択する場合、LSベースの培地(LS基本培地、N6ビタミン、1.5mg/Lの2,4−D、0.5gm/LのMES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸一水和物;PhytoTechnologies Labr.)、30.0gm/Lのスクロース、6mMのL−プロリン、1.0mg/LのAgNO、250mg/Lのセフォタキシム、2.5gm/Lのゲランガム、pH5.7)が、ビアラホス(Bialaphos)(Gold BioTechnology)と共に用いられる。胚は胚形成性単離物が得られるまで3mg/Lのビアラホスを含む選択培地に移植される。回収された単離物は、再生及び更なる分析用として2週間間隔で新鮮な選択培地に移植することにより蓄積される。
【0140】
その他の植物で発現可能な選択マーカー遺伝子(例えば、除草剤耐性遺伝子)が用いられる場合には、形質転換植物を選択するその他の方法が利用可能であることを、トウモロコシ形質転換の当業者は理解するであろう。
【0141】
再生及び種子の生産。再生する場合、培養物は、「28」導入培地(MS塩及びビタミン、30gm/Lのスクロース、5mg/Lのベンジルアミノプリン、0.25mg/Lの2,4−D、3mg/Lのビアラホス、250mg/Lのセフォタキシム、2.5gm/Lのゲランガム、pH5.7)に弱光条件下(14μEm−2−1)で1週間、次に強光条件下(約89μEm−2−1)で1週移植される。その後、組織は「36」再生培地(植物成長調節剤を含まない点を除き導入培地に同じ)に移植される。小植物が長さ3〜5cmに成長したときに、それらはSHGA培地(Schenk and Hildebrandt salts and vitamins (1972年); PhytoTechnologies Labr.)、1.0gm/Lのミオイノシトール、10gm/Lのスクロース、及び2.0gm/Lのゲランガム、pH5.8)を含むガラス製の培養チューブに移植されて、更に成長し及び徒長枝と根が発生するようにさせる。植物は本明細書にこれまでに記載したものと同一の土壌混合物に移植され、及び温室内で開花するまで育成される。種子を生産するために制御された受粉が実施される。
【実施例10】
【0142】
遺伝子組換えトウモロコシのバイオアッセイ
植物細胞内で産生されるDIG−5タンパク質及び変異体の生物活性は、従来のバイオアッセイ法により(例えば、Huangらの文献、2006年を参照)実証される。有効性は、例えばDIG−5毒素を産生する植物に由来する様々な植物組織又は組織片を、制御された摂食環境で昆虫に摂食させることにより実証することができる。或いは、これまでに本明細書に記載したように、タンパク質抽出物が、DIG−5毒素を産生する植物に由来する様々な植物組織から調製可能であり、及び当該抽出されたタンパク質を人工飼料バイオアッセイに組み込み可能である。かかる摂食分析法の結果は、DIG−5タンパク質又は変異体を産生しない宿主植物に由来する適切な対照組織又はその他の対照サンプルを利用する、同様に実施されるバイオアッセイと比較されることとなることが理解される。
【0143】
本明細書で参照又は引用される全ての特許、特許出願、仮出願、及び出版物をそのまま、本明細書の明示的教示と矛盾しない範囲内で参照により援用する。特に明示又は暗示しない限り、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、本明細書において使用される場合、「少なくとも1つの」を意味する。本明細書で用語「遺伝物質」を使用する場合、全ての遺伝子、核酸、DNA、及びRNAを含むように意図されている。
【0144】
ポリヌクレオチドの核酸残基、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、及びプライマーの名称、並びにタンパク質のアミノ酸残基の名称については、本明細書全体通じてIUPACの標準的略号が採用される。核酸配列は、標準的な5’から3’方向で提示され、及びタンパク質配列は、標準的なアミノ(N)末端からカルボキシ(C)末端方向で提示されている。用語「dsRNA」は二本鎖RNAを意味する。
【0145】
(参考文献)










【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号2の残基114〜655のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(b)配列番号2の残基114〜655のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、および
(c)配列番号2によりコードされる毒素の発現又は活性に悪影響を及ぼさない最大20個のアミノ酸の置換、欠損、又は修飾を含む、配列番号2の残基114〜655のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
から構成される群より選択されるコア毒素セグメントを含む単離されたポリペプチド又はその殺虫剤として活性な断片。
【請求項2】
(a)配列番号2の残基1〜655のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(b)配列番号2の残基1〜655のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、および
(c)配列番号2によりコードされる毒素の発現又は活性に悪影響を及ぼさない最大20個のアミノ酸の置換、欠損、又は修飾を含む、配列番号2の残基1〜655のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
から構成される群より選択されるコア毒素セグメントを含む、請求項1に記載の単離されたポリペプチド又はその殺虫剤として活性な断片。
【請求項3】
請求項1に記載のポリペプチドを含む植物。
【請求項4】
請求項2に記載のポリペプチドを含む植物。
【請求項5】
有害生物個体群を防除する方法であって、前記個体群を、殺有害生物剤として有効な量の請求項1に記載のポリペプチドと接触させるステップを含む方法。
【請求項6】
請求項1に記載のポリペプチドをコードする単離された核酸。
【請求項7】
請求項2に記載のポリペプチドをコードする単離された核酸。
【請求項8】
配列番号1又は配列番号3の配列を有する、請求項6に記載の単離された核酸。
【請求項9】
配列番号2又は配列番号5の請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項10】
バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)由来でないプロモーターであって、植物内で発現を推進する能力を有するプロモーターに作動可能に連結した請求項6に記載のヌクレオチド配列を含むDNA構築物。
【請求項11】
ゲノムに安定的に組み込まれた請求項10に記載のDNA構築物を含む遺伝子組換え植物。
【請求項12】
有害生物から植物を保護する方法であって、請求項10に記載の構築物を前記植物に導入するステップを含む方法。
【請求項13】
コーンルートワームに対する活性を有する、請求項1又は請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項14】
コーンルートワームの必須遺伝子を抑制するdsRNAを含む、請求項11に記載の遺伝子組換え植物。
【請求項15】
前記必須遺伝子が、液胞型ATPアーゼ、ARF−1、Act42A、CHD3、EF−1α、及びTFIIBからなる群より選択される、請求項14に記載の遺伝子組換え植物。
【請求項16】
害虫の必須遺伝子を抑制するdsRNAを含む、請求項11に記載の遺伝子組換え植物。

【公表番号】特表2012−529910(P2012−529910A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516155(P2012−516155)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/038473
【国際公開番号】WO2010/147877
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(501035309)ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー (197)
【Fターム(参考)】