説明

DNA及び抗体を含むハイブリッド基板を調製するための方法及びその使用

本発明は、抗体及びアプタマーが結合する基板を提供する。本発明はまた、試料中の標的分析物を検出する方法を提供し、この方法は標的分析物の基板上の捕捉プローブへの結合を検出するステップを含んでなり、ここである捕捉プローブは抗体を含んでなるとともに他の捕捉プローブはアプタマーを含んでなり、及び全ての捕捉プローブが基板に結合する。加えて、本発明は、捕捉プローブ及び捕捉オリゴヌクレオチドが結合する基板を提供し、ここで捕捉オリゴヌクレオチドはDNAバーコードとハイブリダイズし得る。本発明は同様に試料中の標的分析物を検出する方法を提供し、この方法は試料を捕捉プローブ及び捕捉オリゴヌクレオチドが結合する基板と接触させるステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2005年8月19日付けで出願された米国仮特許出願第60/709,613号明細書に関連するとともにその利益を主張し、その開示は参照により本明細書に援用されるものとする。これらの研究は技術支援作業部会(Technical Support Working Group)から交付番号N41756−04−C−4169により資金援助を受けた。米国政府は本発明に対し一定の権利を有し得る。
【0002】
発明の分野
本発明は、試料中の標的分析物を検出する方法に関し、基板上の捕捉プローブへの標的分析物の結合を検出するステップを含んでなり、ある捕捉プローブは抗体を含んでなるとともに他の捕捉プローブはアプタマーを含んでなり、及び全ての捕捉プローブは基板に結合する。本発明は同様に、試料中の標的分析物を検出する方法に関し、試料をDNAバーコード並びに捕捉プローブ及び捕捉オリゴヌクレオチドが結合する基板と接触させるステップを含んでなる。本発明はさらに、抗体及び捕捉オリゴヌクレオチドが結合する基板に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
分析物の検出は分子生物学研究及び医学的応用の双方において重要である。現在、様々なタンパク質構造の同定には、蛍光、質量分析、ゲル電気泳動、レーザー走査及び電気化学に基づく診断方法が利用可能である(パンデー(Pandey)及びマン(Mann)、2000年、Nature 405:837−846頁;フィールズ(Fields)及びソン(Song)、1989年、Nature 340:245−246頁;イズクスマ(Ijksma)ら、2001年、Anal.Chem.73:901−907頁;サービス(Service)、2000年、Science 287:2136−2138頁)。血球細胞の遺伝的タンパク質変異を同定し、疾患を診断し、組織内に分子プローブを局在化させ、及び分子を精製するか、又は分離過程に効果を及ぼすために、抗体に基づく反応が広範に使用されている(ゾル(Zole)、「Monoclonal Antibodies」、Springer−Verlag、ニューヨーク、2000年、1−5頁)。医学的診断用途について(例えばマラリア及びHIV)、単一の標的タンパク質構造を同定するためには、酵素結合免疫吸着検定法、ウエスタンブロット法、及び間接蛍光抗体検査などの抗体検査が極めて有用である(バトラー(Butler)、2000年、Immunoassay 21:165−209頁;ハーブリンク(Herbrink)ら、1991年、Tech.Diagn.Pathol.2:1−19頁)。
【0004】
DNA検出方法について、放射性標識、分子フルオロフォア、化学発光スキーム、電気化学タグ、及びごく最近では、ナノ構造に基づく標識を使用する、多くのアッセイが開発されている(ナイスワーナー−ペナ(Nicewarner−Pena)ら、2001年、Science 294、137頁;ハン(Han)ら、2001年、Nat.Biotechnol.19、631頁;ツァオ(Zhao)ら、2003年、J.Am.Chem.Soc.125、11474頁;ロルティエ(Lortie)ら、1991年、J.Clin.Microbiol.29、2250頁;ゼフ(Zeph)ら、1991年、Curr.Microbiol.22、79頁;ユー(Yu)ら、2001年、J.Am.Chem.Soc.、123、11155頁;タトン(Taton)ら、2000年、Science 289、1757頁;パーク(Park)ら、2002年、Science 295、1503頁;カオ(Cao)ら、2002年、Science 297、1536頁;サガテリアン(Saghatelian)ら、2003年、J.Am.Chem.Soc.125、344頁)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
場合によっては、単一試料中で核酸分子及びタンパク質などの異なる種類の分析物を検出することも望ましい。現在、これらの異なる種類の分析物を検出する能力は核酸及び抗体/タンパク質を別個の基板上に固定化する必要性により制約されており、これは分析物の検出に異なる種類の捕捉要素(例えば、抗体及び核酸アプタマー)が必要とされる場合には複数の検査又は基板が必要とされるためである。従って、当該技術分野においては、特に、例えばある種類の分析物がタンパク質であるとともに別の種類の分析物が核酸分子であるなど、分析物が異なる種類の分子である場合に、単一試料中で複数の分析物を検出できる効率的かつ迅速なアッセイの必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明は、試料中の少なくとも1つの標的分析物を検出するための方法を提供し、標的分析物は少なくとも2つの結合部位を有し、本方法は、(a)抗体を含んでなる第1の種類の捕捉プローブ及びアプタマーを含んでなる第2の種類の捕捉プローブが結合する基板を提供するステップであって、各種類の捕捉プローブが特異的標的分析物の第1の結合部位に結合し得るステップ、(b)場合により、標的分析物の第2の結合部位に結合し得る少なくとも1種類の検出プローブを提供するステップ、(c)試料を基板及び検出プローブと、標的分析物の第1の結合部位への各種類の捕捉プローブの結合及び場合により標的分析物の第2の結合部位への検出プローブの結合に効果的な条件下で接触させて複合体を形成するステップ、(d)基板を洗浄して非結合物質を除去するステップ、及び(e)複合体の存在又は不在を検出するステップであって、複合体の存在又は不在が試料中の特異的標的分析物の存在又は不在の指標となるステップ、を含む。
【0007】
ある態様においては、試料をまず検出プローブと接触させて試料中に存在する標的分析物を検出プローブに結合させるとともに、次に検出プローブに結合した標的分析物を基板と接触させて標的分析物を基板上の少なくとも1種類の捕捉プローブに結合させる。あるいは、試料をまず基板と接触させて試料中に存在する標的分析物を少なくとも1種類の捕捉プローブに結合させるとともに、次に捕捉プローブに結合した標的分析物を検出プローブと接触させて標的分析物を検出プローブに結合させる。他の態様においては、試料、検出プローブ及び基板上の捕捉プローブを同時に接触させる。
【0008】
捕捉された標的−検出プローブ複合体は、フォトニック的、電子的、音響的、光音響的、重力的、電気化学的、電気光学的、質量分光学的、酵素的、化学的、生化学的、又は物理的手段により検出され得る。
【0009】
ある態様においては、標的分析物はタンパク質であるとともに検出プローブはナノ粒子プローブであり、ナノ粒子プローブは、(a)標的分析物を結合させる抗体、(b)標的分析物を結合させるアプタマー、又は(c)標的分析物を結合させる抗体及びアプタマーの混合物を含む。
【0010】
本発明はまた、試料中の少なくとも1つの標的分析物を検出するための方法も提供し、標的分析物は少なくとも2つの結合部位を有し、本方法は、(a)少なくとも1種類の捕捉プローブ及び少なくとも1種類の捕捉オリゴヌクレオチドが結合する基板を提供するステップであって、捕捉プローブが特異的標的分析物の第1の結合部位に結合し得るとともに捕捉オリゴヌクレオチドがDNAバーコードの第1の部分に結合し得るステップ、(b)少なくとも1種類のDNAバーコード及び標的分析物結合分子が結合する少なくとも1種類のバーコードプローブを提供するステップであって、標的分析物結合分子が特異的標的分析物の第2の結合部位に結合し得るステップ、(c)試料を基板及びバーコードプローブと、標的分析物の第1の結合部位への各種類の捕捉プローブの結合及び標的分析物の第2の結合部位への標的分析物結合分子の結合に効果的な条件下で接触させて第1の複合体を形成するステップ、(d)DNAバーコードを第1の複合体から遊離させるステップ、(e)基板を洗浄して非結合物質を除去するステップ、及び(f)場合により、試料を、DNAバーコードの第2の部分に結合可能な検出オリゴヌクレオチドを有する検出プローブと、DNAバーコード及び検出オリゴヌクレオチド及び捕捉オリゴヌクレオチドの間の結合を可能にする効果的な条件下で接触させて第2の複合体を形成するステップであって、第2の複合体が検出オリゴヌクレオチドに結合するDNAバーコードに結合する捕捉オリゴヌクレオチドを含んでなるステップ、及び(g)標的分析物の存在又は不在を検出するステップであって、第1の複合体(又は場合により第2の複合体)の存在又は不在が試料中の特異的標的分析物の存在又は不在の指標となるステップ、を含んでなる。いくつかの態様において、遊離したDNAバーコードは、検出に先立ち捕捉オリゴヌクレオチドを含有する基板上の別個の領域に移動させ得る。例えば、DNAバーコードが基板の一領域にあってもよいとともに、捕捉オリゴヌクレオチドが基板の別の領域にあってもよく、ここで領域は、例えば何らかの物理的要素(壁など)又は近接により分離されている。あるいは、DNAバーコードはマイクロフルイディクスにより移動させてもよく、ここでDNAバーコード及び捕捉オリゴヌクレオチドは相互接続されるチャンバにより分離される。
【0011】
他の態様において、バーコードプローブ上の標的分析物結合分子は、標的分析物に結合するビオチン化標的認識要素を認識するストレプトアビジン又は抗ビオチン抗体を含んでなる。さらに他の態様において、バーコードプローブ上の標的分析物結合分子は、標的分析物に結合する核酸標識化標的認識要素を認識する核酸を含んでなる。
【0012】
ある態様においては、試料をまずバーコードプローブと接触させて試料中に存在する標的分析物をバーコードプローブに結合させるとともに、次にバーコードプローブに結合した標的分析物を基板と接触させて標的分析物を基板上の少なくとも1種類の捕捉プローブに結合させる。他の態様においては、試料をまず基板と接触させて試料中に存在する標的分析物を少なくとも1種類の捕捉プローブに結合させるとともに、次に捕捉プローブに結合した標的分析物をバーコードプローブと接触させて標的分析物をバーコードプローブに結合させる。あるいは、試料、バーコードプローブ及び基板上の捕捉プローブを同時に接触させる。
【0013】
また、本発明は、抗体及びアプタマーの双方の結合を含んでなる基板も提供する。抗体及びアプタマーは同一の標的分析物に特異的であってもよく(すなわち、双方とも同じ標的分析物に結合する)、又は各々が異なる標的分析物に特異的であってもよい(すなわち、抗体は一標的分析物に特異的に結合し得るとともにアプタマーは異なる標的分析物に結合し得る)。加えて、本発明は、捕捉プローブ(オリゴヌクレオチド、抗体及び/又はアプタマーなど)及び捕捉オリゴヌクレオチドの結合を含んでなる基板を提供する。捕捉プローブは標的分析物に特異的であり得る一方、捕捉オリゴヌクレオチドはDNAバーコードとのハイブリダイゼーションに特異的であり得る。捕捉プローブはタンパク質又は核酸分子に特異的であり得る。ある態様において、基板は複数の種類の捕捉プローブを含んでなってもよく、あるものにはタンパク質が結合するとともにあるものには核酸分子が結合し、それにより単一アッセイにおける単一基板上でのタンパク質及び核酸分子の検出が可能となる。
【0014】
本発明のこれら及び他の実施形態は、以下の詳細な説明及び例に照らして明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
好ましい実施形態の詳細な説明
別途文脈により必要とされない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、及び複数形の用語は単数を含むものとする。
【0016】
本開示に従い利用されるとき以下の用語は、別段に指示されない限り、以下の意味を有するものと理解されるべきである。
【0017】
本明細書で使用されるとき、「核酸配列」、「核酸分子」、又は「核酸」は、本明細書に定義されるとおりの1つ又は複数のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを参照する。
【0018】
用語「ポリヌクレオチド」は本明細書において参照されるとき、長さが少なくとも10塩基の一本鎖又は二本鎖核酸高分子を意味する。ある実施形態において、ポリヌクレオチドを含んでなるヌクレオチドは、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチド又は何れかの種類のヌクレオチドの修飾形態であり得る。前記修飾としては、ブロモウリジンなどの塩基修飾、アラビノシド及び2’,3’−ジデオキシリボースなどのリボース修飾、及びホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニラデート及びホスホロアミデートなどのインターヌクレオチド結合修飾が挙げられる。用語「ポリヌクレオチド」は具体的には、一本鎖及び二本鎖型のDNAを含む。
【0019】
本明細書において参照される用語「オリゴヌクレオチド」は、天然及び/又は非天然のオリゴヌクレオチド結合によって共に結合する天然及び修飾ヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、一般的に一本鎖であるとともに200塩基以下の長さを有するメンバーを含んでなる一部のポリヌクレオチドである。ある実施形態において、オリゴヌクレオチドの長さは10〜60塩基である。ある実施形態において、オリゴヌクレオチドの長さは、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20〜40塩基である。オリゴヌクレオチドは、例えば遺伝子変異体の構築における使用向けに、一本鎖又は二本鎖であってもよい。本発明のオリゴヌクレオチドは、タンパク質コード配列に関連するセンス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0020】
用語「天然ヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドを含む。用語「修飾ヌクレオチド」は、修飾又は置換糖類などを伴うヌクレオチドを含む。用語「オリゴヌクレオチド結合」は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニラデート、ホスホロアミデートなどのオリゴヌクレオチド結合を含む。例えば、ラプランシュ(LaPlanche)ら、1986年、Nucl.Acids Res.、14:9081頁;ステック(Stec)ら、1984年、J.Am.Chem.Soc.、106:6077頁;ステイン(Stein)ら、1988年、Nucl.Acids Res.、16:3209頁;ゾン(Zon)ら、1991年、Anti−Cancer Drug Design、6:539頁;ゾン(Zon)ら、1991年、「OLIGONUCLEOTIDES AND ANALOGUES:A PRACTICAL APPROACH」、87−108頁(F・エクステイン(F.Eckstein)編)、オックスフォード大学出版(Oxford University Press)、英国オックスフォード(Oxford);ステック(Stec)ら、米国特許第5,151,510号明細書;ウルマン(Uhlmann)及びペイマン(Peyman)、1990年、Chemical Reviews、90:543頁を参照されたく、これらの開示はいかなる目的にも参照によって本明細書により援用される。オリゴヌクレオチドは検出可能標識を含むことでオリゴヌクレオチドの検出又はそのハイブリダイゼーションを可能にし得る。
【0021】
本発明の方法において使用される「基板」又は「アドレス可能基板」は、抗体、アプタマー、オリゴヌクレオチド、又は分析物が結合可能な任意の表面であり得る。かかる表面としては、限定はされないが、ナノ粒子、薄膜、電磁ビーズ、又は、ガラス、金属、プラスチック、又は、抗体、アプタマー、オリゴヌクレオチド、若しくは分析物が結合するよう設計される官能基でコーティングされる物質を含んでなる任意の物質が挙げられる。コーティングは単分子層より厚くてもよい。実際、コーティングは十分な厚さの多孔質物質を含むことで多孔質三次元構造を生成することができ、そこに抗体、アプタマー、オリゴヌクレオチド、又は分析物が拡散し得るとともに内表面に結合し得る。
【0022】
抗体、アプタマー、及びオリゴヌクレオチドなどの捕捉プローブの基板への結合は、当業者に周知であるとともに、例えば、全体として参照により援用される、2005年5月6日付け出願の米国特許出願第11/124609号明細書に記載されるとおりの任意の方法により達成され得る。
【0023】
用語「捕捉プローブ」は本明細書で使用されるとき、アプタマー又は抗体、又はアプタマー及び/又は抗体を含んでなる複合体(例えばアプタマー及び/又は抗体が結合する粒子)を参照し得る。
【0024】
本発明の「検出用プローブ」又は「検出プローブ」は、1つ又は複数の検出用アプタマー、抗体、又はオリゴヌクレオチドが付着し得る任意の担体であってもよく、ここで1つ又は複数の検出用アプタマー、抗体、又はオリゴヌクレオチドは特異的標的分析物を結合させる立体構造を含んでなり得る。検出プローブは、フルオロフォア又は蛍光体(例えば、蛍光体又はフルオロフォアがドープされた粒子が挙げられる)、量子ドット、酵素コンジュゲート(セイヨウワサビペルオキシダーゼなど)、又は抗体−DNAコンジュゲート(これは例えば、免疫PCR又はローリングサークル増幅検出アッセイにおいて使用され得る)を含んでなり得る。担体それ自体が標識として働いてもよく、又は検出可能標識を含有するか、若しくはそれで修飾されてもよく、又は検出用アプタマー、抗体、又はオリゴヌクレオチドがかかる標識を担持してもよい。本発明の方法に好適な担体としては、限定はされないが、マイクロ粒子、ナノ粒子、量子ドット、デンドリマー、半導体、ビーズ、上方又は下方変換蛍光体、巨大タンパク質、脂質、炭水化物、又は十分なサイズの任意の好適な無機又は有機分子、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0025】
本明細書で使用されるとき、用語「標識」又は「検出用標識」は、フォトニック的、電子的、光電子的、磁気的、重力的、音響的、酵素的、又は他の物理的又は化学的手段により検出され得る検出可能マーカーを参照する。用語「標識された」は本明細書で使用されるとき、かかる検出可能なマーカーの取り込み(例えば、放射性標識ヌクレオチドの取り込み、又は検出可能マーカーのアプタマー、抗体、又はオリゴヌクレオチドへの付着により)を参照する。
【0026】
「試料」は本明細書で使用されるとき、タンパク質又は核酸などの標的分析物を含んでなる、又は含んでなる可能性があるとともに、本発明の方法において使用され得る任意の量の物質を参照する。例えば、試料は生体試料であり得るとともに、ヒト、動物、植物、真菌、酵母、細菌、ウイルス、組織培養物又はウイルス培養物に由来する生体試料、又は上記の組み合わせから抽出され得る。これらは、固形組織(例えば、骨髄、リンパ節、脳、皮膚)、体液(例えば、血清、血液、尿、喀痰、精液又はリンパ液)、骨格組織、又は個々の細胞を含有するか、又はそれから抽出されてもよい。あるいは、試料は、精製された、又は部分的に精製されたタンパク質又は核酸分子などの分析物、及び、例えば、本発明の方法を成功裏に実施するための然るべき条件を生成するために使用される緩衝液及び/又は試薬を含んでなり得る。
【0027】
用語「分析物」又は「標的分析物」は、本発明の方法により検出又は検定すべき化合物又は組成物を参照する。典型的な分析物としては、限定はされないが、タンパク質、ペプチド、核酸セグメント、小分子、細胞、微生物及びこれらの断片及び産物、又は、付着部位、結合メンバー又は受容体(抗体など)を生じ得る任意の物質を挙げることができる。分析物は、捕捉プローブ及び/又は検出用プローブ(例えば抗体若しくはアプタマー又はその双方)により標的とされ得る少なくとも1つの結合部位、好ましくは少なくとも2つの結合部位(例えば、エピトープ)を有する。
【0028】
分析物は、宿主の体液など、試料中に直接所見される分子であってもよい。試料は直接検査され得るか、又は分析物をより容易に検出可能とするよう前処理されてもよい。さらには、当該分析物は、当該分析物に相補的な特異的結合対メンバーなどの当該分析物の証明となる薬剤を検出することにより判定されてもよく、その存在は当該分析物が試料中に存在するときのみ検出されるであろう。従って、分析物の証拠となる薬剤がアッセイにおいて検出される分析物となる。体液は、例えば、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、便、喀痰、脳脊髄液、涙、粘液などであり得る。
【0029】
用語「特異的結合」は、他の分子の実質的により低い認識と比較して、2個の異なる分子の一方の他方に対する特異的な認識を参照する。一般的に、分子はその表面上又は空洞内に領域を有して2個の分子間に特異的認識を生じさせる。例示的な特異的結合は、抗体−抗原相互作用、酵素−基質相互作用、ポリヌクレオチド相互作用などである。
【0030】
用語「非特異的結合」は、特異的表面構造からは比較的独立した分子間の結合を参照する。非特異的結合は、分子間の疎水性相互作用を含むいくつかの要因の結果として生じ得る。
【0031】
用語「標的認識要素」は、標的分析物の結合に使用され得る任意の結合剤を参照する。例えば、標的認識要素は、抗体、エピトープ結合抗体断片(Fabなど)、Affibody(登録商標)(アフィボディ・AB(Affibody AB)、Bromma、スウェーデン)、ナノボディ分子、単鎖抗体断片(scFv)、又はペプチドであり得る。
【0032】
用語「抗体」は、特定の空間及び極性構造の別の分子に特異的に結合するとともに従ってそれと相補的なものとして定義される免疫グロブリンを参照する。抗体はモノクローナル又はポリクローナルであり得るとともに、宿主の免疫化及び血清の収集などの当該技術分野において周知の技術により(ポリクローナル)、又は連続ハイブリッド細胞系の調製及び分泌タンパク質の収集により(モノクローナル)、又は少なくとも天然抗体の特異的結合に必要なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列又はそれらの突然変異誘発型のクローニング及び発現により調製され得る。抗体としては完全免疫グロブリン又はその断片を挙げることができ、この免疫グロブリンは、IgA、IgD、IgE、IgG1、IgG2a、IgG2b及びIgG3、IgM等の様々なクラス及びアイソタイプを含む。これらの断片としては、Fab、Fv及びF(ab’)、Fab’などを挙げることができる。加えて、特定の分子に対する結合親和性が維持される限り、免疫グロブリンの凝集体、重合体、及びコンジュゲート又はそれらの断片が、適切な場合には使用され得る。
【0033】
タンパク質、ポリペプチド、断片、変異体、及び誘導体などの標的分析物は、当該技術分野において周知の方法を使用して抗体を調製するために使用され得る。従って、標的分析物に結合する抗体及び抗体断片は本発明の方法において、アプタマー検出用プローブが使用される場合には基板上の捕捉プローブとして、アプタマーが基板上の捕捉プローブとして使用される場合には検出用プローブとして、又はアプタマー検出用プローブと組み合わせた検出用プローブとして使用され得る。抗体は、ポリクローナル、単一特異性ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ、ヒト化型、完全ヒト型、単鎖及び/又は二重特異性であり得る。
【0034】
標的分析物を対象とするポリクローナル抗体は一般的に、動物(例えば、ウサギ又はマウス)中で抗原及びアジュバントの頻回皮下又は腹腔内注射により産生される。標的分析物タンパク質、ポリペプチド、又はそれらの変異体、断片又は誘導体は、キーホールリンペットヘモシアニン、血清、アルブミン、ウシチログロブリン、又はダイズトリプシン阻害因子などの、免疫されるべき種において免疫原性の担体タンパク質とコンジュゲートすることが有用であり得る。また、ミョウバンなどの凝集剤を使用して免疫応答は亢進されもする。免疫化後、動物は瀉血されるとともに血清が抗標的分析物抗体力価についてアッセイされる。
【0035】
標的分析物を対象とするモノクローナル抗体は、培養物中の連続細胞系により抗体分子の産生を提供する任意の方法を使用して産生される。モノクローナル抗体を調製するために好適な方法の例としては、コーラー(Kohler)ら、Nature 256:495−97頁(1975年)のハイブリドーマ法、及びヒトB細胞ハイブリドーマ法、コズボール(Kozbor)、J.Immunol.133:3001頁(1984年);ブロデュア(Brodeur)ら、「Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications」51−63頁(Marcel Dekker 1987年)が挙げられる。
【0036】
用語「アプタマー」は本明細書で使用されるとき、インビトロ選択又は当該技術分野において周知の他の種類のアプタマー選択手順(例えばフローサイトメトリー又は高密度アプタマーアレイを伴うビーズに基づく選択)により核酸が分子の混合物に付加されるときに出現する核酸(典型的には、DNA、RNA又はオリゴヌクレオチド)を参照する。アプタマーを結合させるリガンドとしては、限定はされないが、小分子、ペプチド、タンパク質、炭水化物、ホルモン、糖、代謝副産物、補因子、薬物及び毒物が挙げられる。本発明のアプタマーは好ましくは、特定の分析物に特異的である。アプタマーは、診断上の標的検証性及び治療適用性を有し得る。結合の特異性は、アプタマーのそのリガンドに対する解離定数Kdの観点から定義される。アプタマーは高親和性を有し、抗体(pM〜nM)と同様のKd範囲及び抗体と同様/抗体より優れた特異性を伴い得る(テュエーク(Tuerk)及びゴールド(Gold)、1990年、Science、249:505頁;エリントン(Ellington)及びスツォスタック(Szostak)、1990年、Nature 346:818頁)。アプタマーの長さは典型的には、10〜300ヌクレオチドであろう。RNA及びDNAアプタマーは、SELEX(試験管内進化法)などのインビトロ選択試験から生成され得る。アプタマーの使用及び技術の例は、PhotoSELEX(商標)及びRiboreporters(商標)である。アプタマー、その使用、及び製造が、例えば、米国特許第5,840,867号明細書、同第6,001,648号明細書、同第6225,058号明細書、同第6,207,388号明細書及び米国特許出願公開第2002/0001810号明細書に記載され、それらの開示全てが全体として参照により援用される。
【0037】
特異的標的分析物に結合するように構成されるアプタマーは、例えば、オリゴヌクレオチドの初期異種集団を合成するとともに、次にオリゴヌクレオチドを特定の標的分析物に強く結合する集団内から選択することにより選択され得る。特定の標的分子に結合するアプタマーが同定されると、アプタマーは生物学的分野及び他の分野において周知の様々な技術を使用して、例えば、クローニング及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅とそれに続く転写により複製され得る。
【0038】
オリゴヌクレオチドの異種集団の合成及び当該集団内でのアプタマーの選択は、試験管内進化法又はSELEXとして周知の手順を使用して達成され得る。SELEX法は、例えば、ゴールド(Gold)ら、米国特許第5,270,163号明細書及び同第5,567,588号明細書;フィッツウォーター(Fitzwater)ら、「A SELEX Primer」、Methods in Enzymology、267:275−301頁(1996年);及びエリントン(Ellington)及びスツォスタック(Szostak)、「In Vitro Selection of RNA Molecules that Bind Specific Ligands」、Nature、346:818−22頁に記載されている。例えば、異種DNAオリゴマー集団を合成してアプタマーのインビトロ選択用の候補オリゴマーを提供し得る。初期DNAオリゴマー集団は、長さ10〜50ヌクレオチドの固定的な5’及び3’配列が隣接する長さ15〜100ヌクレオチドの一組のランダム配列である。固定領域がPCRプライマーハイブリダイゼーションのための、及びある実施例では、RNAポリメラーゼによる転写の開始のための部位として提供され、RNAオリゴマーの集団が産生される。固定領域はまた、選択されたアプタマーをクローニングするための制限部位も含有する。固定領域の多くの例がアプタマー進化法において使用され得る。例えば、コンラッド(Conrad)ら、「In Vitro Selection of Nucleic Acid Aptamers That Bind Proteins」、Methods in Enzymology、267:336−83頁(1996年);シエシオルカ(Ciesiolka)ら、「Affinity Selection−Amplification from Randomized Ribooligonucleotide Pools」、Methods in Enzymology、267:315−35頁(1996年);及びフィッツウォーター(Fitzwater)ら、「A SELEX Primer」、Methods in Enzymology、267:275−301頁(1996年)を参照されたい。
【0039】
アプタマーは5〜100サイクルの手順において選択される。各サイクルにおいて、オリゴマーは、標的分子に結合され、オリゴマーの結合している標的を単離することにより精製され、標的から遊離され、及び次に20〜30回のPCR増幅により複製される。当該技術分野において周知のアプタマーを産生するための代替的方法もまた、ビーズに基づく選択又はマイクロアレイに基づく選択を含め、使用され得る。
【0040】
限定はされないが、2’−フルオロ−リボヌクレオチドオリゴマー、NH置換及びOCH置換リボースアプタマー、及びデオキシリボースアプタマーを含む、様々なオリゴマーがアプタマー選択に使用され得る。RNA及びDNA集団も同様に、任意の種類の標的分子に結合するよう構成されるアプタマーを提供可能である。いずれの集団内でも、選択されるアプタマーは10〜1013の頻度で発生する(ゴールド(Gold)ら、「Diversity of Oligonucleotide Functions」、Annual Review of Biochemistry、64:763−97頁(1995年)を参照されたい)とともに、最も頻繁なものは標的に対しナノモル結合親和性を有し、この親和性は抗体の同種抗原に対する親和性と同程度に強い。グリフィス(Griffiths)ら、EMBO J.、13:3245−60頁(1994年)を参照されたい。
【0041】
2’−フルオロ−リボヌクレオチドオリゴマーを使用すると、結合親和性が、非置換リボ又はデオキシリボオリゴヌクレオチドで得られるものを10〜100倍上回って増加する可能性がある(パグラティス(Pagratis)ら、「Potent 2’−amino and 2’fluoro 2’deoxyribonucleotide RNA inhibitors of keratinocyte growth factor」Nature Biotechnology、15:68−73頁を参照)。かかる修飾塩基は追加的な結合相互作用を提供するとともにアプタマーの二次構造の安定性を増加させる。これらの修飾はまた、アプタマーをヌクレアーゼに対し耐性にもすることで、現実面での系の適用に大幅に有利となる。リン(Lin)ら、「Modified RNA Sequence pools for in vitro selection」Nucleic Acids Research、22:5229−34頁(1994年);及びパグラティス(Pagratis)ら、「Potent 2’−amino and 2’fluoro 2’deoxyribonucleotide RNA inhibitors of keratinocyte growth factor」Nature Biotechnology、15:68−73頁を参照されたい。
【0042】
アプタマーは、アプタマーを基板に付着又は結合可能にし得る好適な修飾を含んでもよい。好適な、だが非限定的な修飾としては、チオール、アミン、カルボン酸、マレイミド、及びジエンなどの官能基が挙げられる。ハプテン相互作用などの他の方法が使用されてもよい。ハプテン相互作用の例としては、限定はされないが、ストレプトアビジン−ビオチン、x−ビオチン−ビオチン、x−フルオレセイン/フルオレセイン及び当該技術分野において周知の他のハプテン対が挙げられる。アプタマーは、化学合成及び固形支持体上での化学合成を含む、任意の好適な手段により調製され得る。
【0043】
本発明の方法において使用されるアプタマーは、オリゴヌクレオチドテールを含んでもよい。用語「オリゴヌクレオチドテール」は、アプタマーの合成オリゴヌクレオチド伸長部を参照する。この伸長部はアプタマーの合成中に作成されてもよく、又は化学的又は酵素的手段を含む任意の好適な手段を使用してアプタマーの3’又は5’末端に付加されてもよい。この伸長部はアプタマー配列が選択された後に付加される点に留意することは重要である。従って、これはアプタマーの結合活性を決定する配列部分を呈するものではない。伸長部は一般的に一本鎖であるとともに約10〜60塩基の長さを有する。ある実施形態において、オリゴヌクレオチドの長さは、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、及び20〜40塩基である。オリゴヌクレオチドテールは任意の好適な長さで、かつアプタマーのその標的への結合能力を妨げない配列であってもよい。オリゴヌクレオチドテールが所定の配列を有することで、オリゴヌクレオチドテールの少なくとも一部と相補的な配列を有する標識されたオリゴヌクレオチド、例えば、フルオロフォア標識オリゴヌクレオチドをハイブリダイズすることにより、アプタマーの修飾が任意の所望の標識を含むことが可能となる。
【0044】
ある実施形態において、アプタマーは基板又は粒子(例えばナノ粒子又はマイクロ粒子)に結合し得るとともに標的分析物を位置づけ得る(すなわち試料中で結合させ得る)立体構造を含んでなることにより、結合時にアプタマーを介して標的非核酸分析物を基板又は粒子に付着させる。
【0045】
他の実施形態において、アプタマーはオリゴヌクレオチドテール及びオリゴヌクレオチドテールの配列の少なくとも一部と相補的な配列を有する第2のリンカーオリゴヌクレオチドを含んでなり、前記第2のオリゴヌクレオチドは任意選択の標識を有する。オリゴヌクレオチドテールは有利には、多重化、例えば、フルオロフォア、デンドリマー、放射標識、酵素などの異なる検出部分で標識された異なるオリゴヌクレオチドプローブの付着が可能である。オリゴヌクレオチドテールを有するアプタマープローブは、例えば、2005年5月3日付け出願の米国特許出願第11/121165号明細書に記載されるとおりの、直接的又は間接的サンドイッチアッセイを含む、様々なアッセイにおいて標的分析物の検出に広範に有用である。
【0046】
ある実施形態において、「バーコードプローブ」が本発明の方法に使用される。本明細書で使用されるとき、「バーコードプローブ」は、粒子(例えばナノ粒子又はマイクロ粒子)に結合するDNAバーコードを含んでなる複合体である。本明細書で使用されるとき、用語「バーコード」、「生化学的バーコード」、「バイオバーコード」、「バーコードDNA」、「DNAバーコード」、「レポーターバーコード」、「レポーターバーコードDNA」等は全て互いに可換であるとともに同じ意味を有する。DNAバーコードは、デオキシ核酸又はリボ核酸などの核酸であってもよい。好ましくは、DNAバーコードは、所定の配列のオリゴヌクレオチドである。必要に応じて、DNAバーコードは、例えば、ビオチン、放射標識、又は蛍光標識で標識されてもよい。DNAバーコードは好ましくは、標的分析物の一部及び検出オリゴヌクレオチドの一部に結合することにより、検出可能な複合体を形成し得る。
【0047】
DNAバーコードは粒子に直接結合し得るか、又は、任意の付着部分、例えばDNAバーコードの少なくとも一部とハイブリダイズされることによりバーコードを粒子に結合させ得るような粒子に結合するオリゴヌクレオチドを通じて、粒子に結合し得る。DNAバーコードは、バーコードを粒子に付着させるオリゴヌクレオチドからDNAバーコードをデハイブリダイズする条件にバーコードを曝露することにより、粒子から遊離され得る。
【0048】
あるいは、DNAバーコードはそれらが付着する粒子から、上記及び本開示の他所に記載されるとおりバーコードの表面への結合を崩壊させる化学的遊離剤により遊離され得る。かかる薬剤としては、本明細書に記載されるとおり、限定はされないが、他のチオール又はジスルフィド含有分子、ジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリトリトール(DTE)、メルカプトエタノールなどのチオール結合を通じて選好的に微粒子に結合するであろう任意の分子、及びジスルフィド結合を切断することによりDNAバーコードをそれらが結合する微粒子から遊離させるであろう水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤が挙げられる。
【0049】
本明細書に記載されるとおり、バーコードは検出可能なレポーター基で標識され得る。好適なレポーター基としては、限定はされないが、フルオロフォア、発色団、酸化還元活性基、電気的シグネチャを伴う基、放射性基、触媒基、又はラマン標識が挙げられる。
【0050】
ラマン標識は、特有のラマン散乱スペクトルを伴う数多くの分子の中の任意の1つであり得る。酵素免疫測定法において使用される酵素とは異なり、これらの標識種は、安定した単純で安価な分子であり、必要に応じて化学的に修飾され得る。以下の属性により本適用における標識の有効性は亢進される:(a)レーザー励起波長近傍における強い吸収帯(10に近い吸光係数、(b)特異的結合メンバーに対する共有結合を可能にする官能基、(c)光安定性、(d)サブナノグラムの範囲での分析物の検出を可能にするうえで十分な表面及び共鳴の増大、(e)標識及び非標識特異的結合メンバー間の結合相互作用における最小限の干渉、(f)使用される励起波長での強い蛍光放射の最小限の呈示、(g)数個の強いピークを伴う比較的単純な散乱パターン、及び/又は(h)互いに干渉しないため数個の指標分子が同時に分析され得る散乱パターンを伴う標識。
【0051】
以下にこれらのラマン活性標識のいくつかを列挙するが、全てが候補となる可能性を有するわけではない:4−(4−アミノフェニルアゾ)フェニルアルソン酸モノナトリウム塩、アルセナゾI、塩基性フクシン、シカゴスカイブルー、ダイレクトレッド81、ディスパースオレンジ3、HABA(2−(4−ヒドロキシフェニルアゾ)−安息香酸)、エリスロシンB、トリパンブルー、ポンソーS、ポンソーSS、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン、クレシルバイオレット及びp−ジメチルアミノアゾベンゼン。選ばれた標識は当該特異的結合メンバーに共有結合するか、又はそれに付着又は連結し得る。
【0052】
複数のラマン標識を粒子に結合させてマルチコード化ラマン標識を提供し、異なる粒子をインデックス化してもよい。従って、本発明は、複数のラマン色素及びDNA、RNA、抗体、抗原、小分子などの特異的結合物質が粒子に結合している試薬を含む。粒子に基づく検出用プローブのため、ラマン標識又は色素は粒子に直接的又は間接的に付着され得る。ラマン標識は、官能基、例えば金属ナノ粒子などの粒子の表面に結合し得るチオール、アミン、又はホスフィンで修飾され得る。必要に応じて、ラマン色素はさらに、ナノ粒子安定性の向上のためオリゴヌクレオチド(例えば、ポリアデノシン、ポリチミジン)などの分子又は特異的結合対メンバー(核酸標的又は特定のリガンドの受容体の少なくとも一部と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドなど)で官能化され得る。あるいは、ラマン標識は分子又は任意のリンカー、例えば、粒子に結合するための官能基を保有するポリA又はポリTオリゴヌクレオチドとコンジュゲートされ得る。ラマン標識は、例えば、参照により援用される2003年5月7日付け出願の米国特許出願第10/431,341号明細書に記載されるとおり検出され得る。
【0053】
DNAバイオバーコードは場合により、遊離後に増幅、例えば、PCR増幅されるとともに、サンドイッチアッセイなどの任意の好適な手段により検出され得る。好ましくは、DNAバイオバーコードは、例えば、全体として参照により援用される米国特許第6,750,016号明細書及び2004年6月25日付け出願の米国特許出願第10/877,750号明細書に記載されるとおり、アレイ基板及び銀増幅を使用する高感度ナノ粒子ベース検出システムを使用して検出される。あるいは、DNAバイオバーコードは、ビオチン化され得るか、放射活性で標識され得るか、又は蛍光又は任意の他の好適な検出用標識で標識され得る。標識されたDNAバイオバーコードは、溶液に基づく蛍光定量法を含む任意の好適な手段により検出され得る。
【0054】
バイオバーコードアッセイの説明については、全体として参照により援用される2004年6月25日付け出願の米国特許出願第10/877,750号明細書を参照されたい。バイオバーコード増幅アッセイは典型的には2種類の粒子、当該標的に対し親和性を有する基で官能化される磁性微粒子(MMP)及び同標的とともに当該標的のレポーター基として作用し得るオリゴヌクレオチド(バーコードDNA)に対しても親和性を有する第2の基で官能化されるナノ粒子が関与する。標的がタンパク質の場合、磁性粒子上の認識剤は典型的にはモノクローナル抗体であるが、アプタマーであってもよく、及び金ナノ粒子上の認識剤はポリクローナル又はモノクローナル抗体であるが、好ましくはこれはアプタマーであり、磁性粒子上の抗体上のものとは異なるエピトープを認識する。バイオバーコードアッセイにおいて、MMPプローブが当該タンパク質標的を含有する溶液に添加され得る。MMPプローブに標的と反応する機会が与えられた後、バーコードDNAを伴うナノ粒子プローブが添加され、標的を捕捉したMMPプローブを伴うサンドイッチ構造が形成される。好適な分離技術、例えば、磁界を使用してかかるサンドイッチ複合体を試液から分離するとともに、上清を廃棄してもよい。バーコードDNAのデハイブリダイゼーションとそれに続く金ナノ粒子プローブを伴うマイクロアレイ検出により、バーコード配列の同定及び試液中のタンパク質標的量の定量が可能となる。ある実施形態において、DNAバーコードの検出は、本明細書に記載されるとおり、標的分析物を捕捉するために使用されるものと同じ基板上で起こる。あるいは、ナノ粒子に結合するDNAバーコードは、任意の好適な標識(フルオロフォアなど)でさらに修飾されるとともにフルオロフォア検出法などの別の好適な手段により検出され得る。従って、遊離されたDNAバイオバーコードは、バイオバーコードが標識されているか否かにある部分依存して、任意の好適な手段により検出され得る。
【0055】
ある実施形態において、本発明の検出用標識として使用され得る標識により、フォトニック的、電子的、音響的、光音響的、重力的、電気化学的、電気光学的、質量分光学的、酵素的、化学的、生化学的、又は物理的手段による検出が可能となる。代表例としては、蛍光、発光、リン光、又は放射性検出用標識、量子ドット、ナノ粒子、デンドリマー、分子凝集体又はビーズ、ナノ粒子、及び既知の配列を有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションカスケード又は酵素的手段などの、物理的、化学的又は生化学的手段により増幅されるよう設計される。別の態様において、任意選択の標識は、粒子−オリゴヌクレオチドコンジュゲートである。粒子コンジュゲート標識は、粒子に直接的又は間接的に結合する1つ又は複数の種類のDNAバーコードを有する粒子を含んでなる。バーコードは本明細書に記載されるとおり遊離され得るとともに、任意の好適な検出用プローブを使用するサンドイッチアッセイにおけるアレイ基板を含む、任意の好適な手段により検出され得る。粒子は、ナノ粒子及びマイクロサイズ粒子、例えば1μmを含む任意の好適なサイズであってもよいとともに、ポリマー(例えば、ポリスチレン)、金属(例えば、金又は銀)、セラミック、半導体物質などの任意の好適な物質であってもよい。
【0056】
特定のバイオバーコード検出アッセイが、例えば、全体として参照により援用される2004年6月25日付け出願の米国特許出願第10/877,750号明細書に記載されている。タンパク質検出の場合、タンパク質認識イベントに付随する信号の増幅を可能にするようなPCRと同等の方法は極めて少ない。タンパク質検出に対し最も有望なのは、免疫PCR(T・サノ(T.Sano)、C・L・スミス(C.L.Smith)、C・R・カンター(C.R.Cantor)、Science 258、120頁(1992年))及びバイオバーコード増幅(ナム・J・M(Nam,J.M.)、サクストン・C・S(Thaxton,C.S.)、ミルキン・C・A(Mirkin,C.A.)(2003年)Science 301、1884−1886頁;及びナム・J・M(Nam,J.M.)、ストゥバ・S・I(Stoeva,S.I.)、ミルキン・C・A(Mirkin,C.A.)(2004年)J.Am.Chem.Soc.126、5932−5933頁)の手法である。バイオバーコード増幅手法は、これまで調査されてきた系について免疫PCRより感度が高く、酵素的増幅に頼ることがないとともに、複雑性がより低いという利点を有する。バイオバーコードアッセイの説明については、全体として参照により援用される2004年6月25日付け出願の米国特許出願第10/877,750号明細書を参照されたい。
【0057】
本明細書で使用されるとき、用語「粒子」は、好ましくは、金属、シリカ、酸化ケイ素、又はポリスチレンからなる物質の小部分を参照する。「粒子」は、球形又は棒状などの任意の形であり得る。用語「粒子」は本明細書で使用されるとき、具体的には以下に定義及び記載されるとおりのナノ粒子及びマイクロ粒子の双方を包含する。本発明の捕捉プローブ、検出プローブ、及びバーコードプローブは、例えば、抗体、検出オリゴヌクレオチド、バーコード、及び/又はアプタマーのための担体として働く粒子を含んでなり得る。
【0058】
一実施形態において、本発明の方法において使用される粒子はナノ粒子である。本発明の実施において有用なナノ粒子としては、金属(例えば、金、銀、銅及び白金)、半導体(例えば、CdSe、CdS、及びCdS又はZnS被覆CdSe)及び磁性(例えば、強磁性マグネタイト)コロイド物質が挙げられる。本発明の実施において有用な他のナノ粒子としては、ZnS、ZnO、TiO、AgI、AgBr、HgI、PbS、PbSe、ZnTe、CdTe、In、InSe、Cd、CdAs、InAs、及びGaAsが挙げられる。ナノ粒子のサイズは、好ましくは約5nm〜約150nm(平均粒径)、より好ましくは約5〜約50nm、最も好ましくは約10〜約30nmである。ナノ粒子はまた棒状であってもよい。本発明において有用な他のナノ粒子としては、シリカ及びポリマー(例えばラテックス)ナノ粒子が挙げられる。
【0059】
金属、半導体及び磁性ナノ粒子を作製する方法は、当該技術分野において周知である。例えば、シュミット・G(Schmid,G.)(編)「Clusters and Colloids」(VCH、ワインハイム、1994年);ハヤット・M・A(Hayat,M.A.(編)「Colloidal Gold:Principles,Methods,and Applications」(Academic Press、サンディエゴ、1991年);マサート・R(Massart,R.)、IEEE Taransactions On Magnetics、17、1247頁(1981年);アフマディ・T・S(Ahmadi,T.S.)ら、Science、272、1924頁(1996年);ヘングレイン・A(Henglein,A.)ら、J.Phys.Chem.、99、14129頁(1995年);カーティス・A・C(Curtis,A.C.)ら、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.、27、1530頁(1988年)を参照されたい。フルオロフォア又はリン光体で含浸されるシリカナノ粒子を作製する方法もまた、当該技術分野において周知である(タン(Tan)及び共同研究者ら、PNAS、2004年、101、15027−15032頁を参照)。
【0060】
ZnS、ZnO、TiO、AgI、AgBr、HgI、PbS、PbSe、ZnTe、CdTe、In、InSe、Cd、CdAs、InAs、及びGaAsナノ粒子を作製する方法もまた、当該技術分野において周知である。例えば、ウェラー(Weller)、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.、32、41頁(1993年);ヘングレイン(Henglein)、Top.Curr.Chem.、143、113頁(1988年);ヘングレイン(Henglein)、Chem.Rev.、89、1861頁(1989年);ブラス(Brus)、Appl.Phys.A.、53、465頁(1991年);バンクマン(Bahncmann)、「Photochemical Conversion and Storage of Solar Energy」(ペリツェッティ(Pelizetti)及びスキアベッロ(Schiavello)編 1991年)、251頁;ワン(Wang)及びヘロン(Herron)、J.Phys.Chem.、95、525頁(1991年);オルシャブスキ(Olshavsky)ら、J.Am.Chem.Soc.、112、9438頁(1990年);ウシダ(Ushida)ら、J.Phys.Chem.、95、5382頁(1992年)を参照されたい。
【0061】
好適なナノ粒子はまた、例えば、テッド・ペラ社(Ted Pella,Inc.)(金)、アマシャム社(Amersham Corporation)(金)、ナノプローブズ社(Nanoprobes,Inc.)(金)、及びクアントム・ドット社(Quantom Dot,Inc.)(CdSe/ZnSなどのコアシェル半導体粒子)から市販もされている。
【0062】
ナノ粒子は、そのサイズに由来する独特な物理学的及び化学的特性から強い関心の的となってきた。それらの特性によって、ナノ粒子は、従来の検出方法より高感度で、より特異的、かつより費用効果の高い新型の生物学的センサ開発への有望な道を提供する。ナノ粒子を合成するための方法及びそれらから結果として得られる特性を調査するための方法論が、過去10年間、幅広く開発されてきた(編者クラバンド(Klabunde)、「Nanoscale Materials in Chemistry」、Wiley Interscience、2001年)。しかしながら、生物学的感知におけるその使用は、当該生物学的分子でナノ粒子を機能化するためのロバストな方法の欠如により制限されており、これはこれら2つの異なる物質の固有の不適合性に起因していた。修飾オリゴヌクレオチドでナノ粒子を機能化するための高度に効率的な方法が開発されている。全体として参照により援用される、米国特許第6,361,944号明細書及び同第6,417,340号明細書(譲受人:ナノスフィア社(Nanosphere,Inc.)を参照されたい。この方法によりオリゴヌクレオチドで高度に機能化されたナノ粒子がもたらされ、これは驚くべき粒子安定性及びハイブリダイゼーション特性を有する。結果として得られるDNA修飾粒子はまた、高い電解質濃度を含有する溶液中でのその安定性、遠心分離又は凍結に対する安定性、及び繰り返し加熱及び冷却されるときの熱的安定性により明らかなとおり、極めてロバストであることも証明されている。この添加過程はまた、制御可能及び適応可能である。かかる方法を使用してナノ粒子−アプタマーコンジュゲートを生成することもできる。
【0063】
異なるサイズ及び組成のナノ粒子が機能化されたら、オリゴヌクレオチド認識配列のナノ粒子への添加が添加過程を介して制御され得る。ナノ粒子の好適な、だが非限定的な例としては、全てが全体として参照にり本明細書によって援用される、米国特許第6,506,564号明細書、国際特許出願PCT/US02/16382号明細書、2003年5月7日付け出願の米国特許出願第10/431,341号明細書、及び国際特許出願PCT/US03/14100号明細書に記載されるものが挙げられる。
【0064】
アプタマー及び任意選択の希釈オリゴヌクレオチドが結合するナノ粒子は好ましくは、全体として参照により援用される米国特許第6,506,564号明細書に記載されるとおりの、ナノ粒子−オリゴヌクレオチドコンジュゲートを調製するための塩熟成法により調製される。ナノ粒子に結合し得る官能基を含んでなる部分が共有結合するアプタマー及びオリゴヌクレオチドが使用される。部分及び官能基は、オリゴヌクレオチドをナノ粒子に結合させる(すなわち、化学吸着又は共有結合により)ための、米国特許第6,506,564号明細書及び同第6,767,702号明細書(全体として参照により援用される)に記載されるものである。例えば、アルカンチオール又はアルカンジスルフィドが5’又は3’末端に共有結合するオリゴヌクレオチドを使用してオリゴヌクレオチドを、金ナノ粒子を含む様々なナノ粒子に結合させ得る。ホスホロチオエート又はホスホロジチオエート官能基部分が5’又は3’末端に共有結合するチオアプタマーを使用してアプタマーを、金ナノ粒子を含む様々なナノ粒子に結合させ得る。加えて、オリゴヌクレオチドは、金ナノ粒子表面に対し高親和性を有するポリAテールなどのオリゴヌクレオチドテールを介して結合し得る(タルロフ(Tarlov)及び共同研究者ら、JACS、2004年を参照)。あるいは、ストレプトアビジン又はx−ビオチン修飾されたナノ粒子をビオチン化アプタマーと接触させてアプタマーナノ粒子コンジュゲートを形成し得る。
【0065】
アプタマー及び任意選択の希釈オリゴヌクレオチドを、少なくとも一部のアプタマー及びオリゴヌクレオチドを官能基によってナノ粒子と結合させるのに十分な時間だけ水中のナノ粒子と接触させる。かかる時間は実験的に決定され得る。例えば、約12〜24時間という時間が良好な結果を与えることが分かっている。アプタマー及びオリゴヌクレオチドの結合に好適な他の条件もまた実験的に決定され得る。例えば、約10〜20nMのナノ粒子濃度及び室温でのインキュベーションが良好な結果を与える。
【0066】
次に、少なくとも1種の塩が水に添加され塩溶液が形成される。塩は任意の水溶性塩であり得る。例えば、塩は、リン酸緩衝液中の塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、これらの塩の2種又はそれ以上の組み合わせ、又はこれらの塩のうちの1種であってもよい。好ましくは、塩は濃縮溶液として添加されるが、固形としても添加され得るであろう。塩は一度にまとめて水に添加され得るか、又は塩は時間をかけて徐々に添加される。「時間をかけて徐々に」は、塩がある期間により離間される間隔を置いて少なくとも2つの分量で添加されることを意味する。好適な時間間隔は実験的に決定され得る。
【0067】
塩溶液のイオン強度は、少なくとも部分的にオリゴヌクレオチドの互いの静電斥力、及び負に帯電したオリゴヌクレオチドの正に帯電したナノ粒子に対する静電気引力、又は負に帯電したオリゴヌクレオチドの負に帯電したナノ粒子からの静電斥力のいずれかに勝るよう十分でなければならない。塩を時間をかけて徐々に添加することにより静電気引力及び斥力を徐々に低減すると、ナノ粒子に対するオリゴヌクレオチドの面密度は最高になることが分かっている。好適なイオン強度は各塩又は塩の組み合わせについて実験的に決定され得る。リン酸緩衝液中の約0.1M〜約1.0Mの塩化ナトリウムの最終濃度が、好ましくは塩化ナトリウムの濃度を時間をかけて徐々に上昇させるに伴い、良好な結果を与えることが分かっている。
【0068】
塩の添加後、アプタマー、オリゴヌクレオチド及びナノ粒子は塩溶液中で、さらなる十分なオリゴヌクレオチドをナノ粒子に結合させてアプタマー及びオリゴヌクレオチドが結合する安定なナノ粒子コンジュゲートを産生させるうえで十分なさらなる時間だけインキュベートされる。以下に詳細に記載されるであろうとおり、ナノ粒子に対するオリゴヌクレオチドの面密度の増加はコンジュゲートを安定化させることが分かっている。このインキュベーション時間は実験的に決定され得る。約24〜48、好ましくは40時間の総インキュベーション時間が良好な結果を与えることが分かっている(これはインキュベーションの総時間である。塩濃度はこの総時間にわたり徐々に上昇し得る)。塩溶液中でのインキュベーションのこの第2の期間は、本明細書においては「熟成」ステップと称される。この「熟成」ステップに好適な他の条件もまた実験的に決定され得る。例えば、室温かつpH7.0でのインキュベーションが良好な結果を与える。
【0069】
「熟成」ステップの使用により産生される捕捉プローブ−ナノ粒子コンジュゲートは、「熟成」ステップなしに産生されるものより大幅に安定していることが分かっている。上述のとおり、この安定性の増加は、「熟成」ステップにより達成されるナノ粒子の表面に対するオリゴヌクレオチド密度の増加によるものである。「熟成」ステップにより達成される面密度は、ナノ粒子のサイズ及び種類並びにアプタマー/オリゴヌクレオチドの長さ、配列及び濃度に依存するであろう。ナノ粒子を安定にするために適切な面密度及び所望の組み合わせのナノ粒子及びアプタマー/オリゴヌクレオチド向けの面密度を得るために必要な条件は、実験的に決定され得る。
【0070】
DNA修飾ナノ粒子、特にアプタマー修飾金ナノ粒子プローブを調製するための前述の添加方法は、オリゴヌクレオチド及び非核酸標的用の比色感知スキームの開発に至っている。例えば、全体として参照により援用される、米国特許第6,506,564号明細書を参照されたいが、これはDNA修飾ナノ粒子に基づく比色感知スキームを記載している。この方法は、2個の金ナノ粒子プローブの、当該標的、例えば、DNAの2つの異なる領域とのハイブリダイゼーションに基づく。プローブの各々は同一配列を保有する複数のオリゴヌクレオチドで機能化されるため、十分な標的が存在する場合には標的の結合は結果として標的/金ナノ粒子プローブ凝集体の形成をもたらす。DNA標的認識は結果として粒子の粒子間距離の減少による比色上の遷移をもたらす。この比色的変化は、UV可視分光光度計により光学的に、又は肉眼で視覚的にモニタされ得る。加えて、溶液が膜上に凝縮されると色は強まる。それゆえ、単純な比色上の遷移が特異的DNA配列の存在又は不在の証拠を提供する。このアッセイを使用して、モデルDNA標的及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅された核酸配列のフェムトモル量及びナノモル濃度が検出されている。
【0071】
DNA修飾ナノ粒子コンジュゲート、特にアプタマー修飾金ナノ粒子プローブの開発はまた、オリゴヌクレオチド及び非核酸標的についての散乱光をモニタするための比色法にも至っている。全体として参照により援用される、2004年11月22日付け出願の米国特許出願第10/995,051号明細書を参照されたい。散乱に基づく比色検出法は核酸検出において、低い標的濃度でのプローブ−標的結合を可能にする中性又はアニオン性多糖類に基づく改良型ハイブリダイゼーション法と併せると、既に報告されている吸光度に基づくスポット試験より高い感度(>4のオーダー)を提供する。そのうえ、本発明の方法は、大幅に過剰な非複合粒子の存在下で2個又はそれ以上の粒子を含有するプローブ−標的複合体の検出を可能にし、これは低い標的濃度の存在下でのハイブリダイゼーションを促進する。また、本明細書に提供されるとおりのエバネセント誘導散乱と併せた硫酸デキストラン介在プローブ−標的複合体の形成により、細菌の全DNAにおける核酸配列についての、又は抗体−抗原相互作用を伴う単純な同種ハイブリダイゼーション及び比色検出プロトコルが可能となる。
【0072】
本明細書に記載されるとおり、アプタマー及び/又は抗体を含んでなるナノ粒子プローブ、特に金ナノ粒子プローブは、意外にも、かつ予期せず、分析物の検出に好適である。マイクロアレイに基づくアッセイにおける銀に基づく信号増幅手順がさらに、超高感度増強を提供する。銀染色法が銀の還元を触媒する任意の種類のナノ粒子で用いられ得る。貴金属(例えば、金及び銀)からなるナノ粒子が好ましい。バッセル(Bassell)ら、J.Cell Biol.、126、863−876頁(1994年);ブラウン−ハウランド(Braun−Howland)ら、Biotechniques、13、928−931頁(1992年)を参照されたい。銀染色法を使用して、上記のものを含む基板上で実施される任意のアッセイにおいて、検出可能な変化が生成又は増強され得る。特に、銀染色法は単一の種類のナノ粒子を用いるアッセイについて感度を大幅に増強するため、多くの場合に、ナノ粒子、凝集体プローブ及びコアプローブの層を使用しなくてもよいことが分かっている。
【0073】
ナノ粒子は本発明の方法において、例えば光学スキャナ又は平面スキャナを使用して検出され得る。スキャナは、グレースケール値を計算可能なソフトウェアを搭載したコンピュータに連結され得るとともに、グレースケール値が計算されることにより検出された分析物量の定量的尺度が提供される。
【0074】
好適なスキャナとしては、反射モード(例えば、平面走査)で動作可能なコンピュータにドキュメントを走査するために使用されるもの、この機能を実施可能な、又は同じ種類の光学を利用する他の機器、任意の種類のグレースケール感知計測機器、及び本発明に係る基板を走査するよう改良された標準的なスキャナが挙げられる。
【0075】
また、ソフトウェアは、カラースポットについての色数も提供できるとともに走査の画像(例えば、プリントアウト)を生成でき、これは核酸の存在の定性的判定、核酸量、又はその双方を提供するために改めて検討され得る。加えて、アッセイの感度は、陰性結果を表す色を陽性結果を表す色から差し引くことにより上昇し得ることが分かっている。
【0076】
コンピュータは標準的なパーソナルコンピュータであってもよく、これは市販されていて容易に入手可能である。従って、標準的なソフトウェアを搭載する標準的なコンピュータに連結される標準的なスキャナの使用により、アッセイが基板上で実施される際の、核酸を検出及び定量する簡便容易で安価な手段が提供され得る。走査をコンピュータ内に保存して、さらなる参照又は使用向けに結果の記録を保管することもまた可能である。当然ながら、必要に応じて、より洗練された計器及びソフトウェアが使用され得る。
【0077】
ナノ粒子は本発明の方法において、例えば、暗視野顕微鏡法、エバネセント導波路、又はガラス基板の平面照明を含む様々な方法による照明後の共鳴光散乱を使用して検出され得る。粒径が40nm超の金属粒子は、表面プラズモン共鳴周波数で特定の色の光を散乱させる(ユゲラビド・J(Yguerabide,J.);ユゲラビド・E・E(Yguerabide,E.E.)Anal.Biochem.(1998年)、262、157−176頁)とともに、粒子のサイズ、形、及び化学組成を制御することにより基板上の多色標識に使用され得る(タトン・T・A(Taton,T.A.);ル・G(Lu,G.);ミルキン・C・A(Mirkin,C.A.)J.Am.Chem.Soc.(2001年)、123、5164−5165頁;ジン・R・C(Jin,R.C.);カオ・Y・W(Cao,Y.W.);ミルキン・C・A(Mirkin,C.A.);ケリー・K・L(Kelly,K.L.);スキャッツ・G・C(Schatz,G.C.);ツェン・J・G(Zheng,J.G.)Science(2001年)、294、1901−1903頁)。別の実施形態において、ナノ粒子は本発明の方法において、例えば、ナノ粒子凝集に基づく均一溶液(グラハム(Graham)及び共同研究者ら、Angew.Chem.、2000年、112、1103頁)又は固相アッセイにおいて基板上(ポーター(Porter)及び共同研究者ら、Anal.Chem.,1999年、71、4903−4908頁)のいずれかにおいて表面増強ラマン分光法(SERS)を使用して、又は銀の展開に続くSERSを使用して(ミルキン(Mirkin)及び共同研究者ら、Science、2002年、297、1536−1540頁)、検出され得る。
【0078】
別の実施形態において、本発明の粒子は光熱的な撮像により検出され得る(ボワイエ(Boyer)ら、Science、2002年、297、1160−1163頁)。別の実施形態において、本発明の粒子は回折に基づく感知技術により検出され得る(ベイリー(Bailey)ら、J.Am Chem.Soc.、2003年、125、13541頁)。別の実施形態において、本発明の粒子はハイパーレイリー散乱により検出され得る(キム(Kim)ら、Chem Phys.Lett.、2002年、352、421頁)。
【0079】
別の実施形態において、基板に付着するアプタマー及び/又は抗体が2個の電極間に位置してもよく、粒子は導電体材料から作製され得るとともに、本発明の方法における検出ステップが伝導性の変化を検出するステップを含んでなり得る。更に別の実施形態において、各々が異なる標的分析物を認識できる複数のアプタマー及び/又は抗体がアレイ状スポットとして基板に付着するとともにアプタマー及び/又は抗体の各スポットが2個の電極間に位置し、ナノ粒子は導電体材料から作製され、及び本発明の方法における検出ステップが伝導性の変化を検出するステップを含んでなる。電極は、例えば金で作製され得るとともにナノ粒子は金で作製される。あるいは、基板を銀染色と接触させることにより伝導性に変化が生じ得る。
【0080】
ある実施形態において、本発明は、試料中の標的分析物を検出するための方法を提供する。特定の実施形態において、本方法は、少なくとも1種類の捕捉プローブが結合する基板を含んでなる。各種類の捕捉プローブは異なる標的分析物に特異的であり得る(すなわち各プローブは異なる分析物に結合し得る)か、又は各種類の捕捉プローブは同一の標的分析物に特異的であり得るが異なる種類の結合分子を含んでなる(例えばある種類はアプタマーであり得るとともにある種類は抗体であり得るが、アプタマー及び抗体の双方が同じ標的分析物に結合し得る)。特定の実施形態において、本発明の方法は、例えば図1に示されるとおり、基板を標的分析物と接触させるステップ、及び次に分析物を検出プローブと接触させることにより、捕捉プローブ、検出プローブ、及び標的分析物に基板上で複合体を形成させるステップを含んでなる。複合体は本明細書に記載される検出方法を使用して検出可能である。複合体の存在は試料中の標的分析物の存在を指示する。
【0081】
他の実施形態において、基板には捕捉プローブ及び捕捉オリゴヌクレオチドが結合していてもよい。捕捉プローブは、標的分析物に結合し得る抗体及び/又はアプタマーを含んでなり得る。あるいは、捕捉プローブはオリゴヌクレオチドを含んでなり得るとともに核酸分子を含む標的分析物とハイブリダイズし得る。特定の実施形態において、本発明の方法は、標的分析物を基板及びバーコードプローブと接触させることで標的分析物を基板上の捕捉プローブとバーコードプローブとの双方に結合させ、それによって複合体を形成するステップを含んでなる。次にバーコードは本明細書に記載されるとおり遊離され得ることにより、バーコードの第1の部分が捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズ可能となる。遊離されたバーコードは、例えば図2に説明されるとおり、バーコードの第2の部分とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含んでなる検出プローブと接触させる。
【0082】
さらに他の実施形態において、本発明の方法は、検出ステップに先立つ任意の時点で基板から非結合物質(例えば、非結合プローブ及び検出可能信号と干渉し得る任意の他の物質)を洗浄するために使用され得る洗浄ステップを含んでなり得る。
【0083】
ある実施形態において、本発明は、抗体及びアプタマーの双方の結合を含んでなる基板を提供する。抗体及びアプタマーは、同一の標的分析物に特異的であり得る(すなわち、双方が同一の標的分析物に結合する)か、又は各々が異なる標的分析物に特異的であり得る(すなわち、抗体は一標的分析物に特異的に結合し得るとともにアプタマーは別の標的分析物に結合し得る)。基板には、異なる標的分析物を結合させ得ることにより単一アッセイにおいて単一基板上の複数の標的分析物の検出を可能にする複数の捕捉プローブが配列され得る。
【0084】
さらなる実施形態において、本発明は、捕捉プローブ(オリゴヌクレオチド、抗体及び/又はアプタマーなど)及び捕捉オリゴヌクレオチドの結合を含んでなる基板を提供する。捕捉プローブは標的分析物に特異的であり得る一方、捕捉オリゴヌクレオチドはDNAバーコードとのハイブリダイゼーションに特異的であり得る。捕捉プローブはタンパク質又は核酸分子に特異的であり得る。ある態様において、基板は複数の種類の捕捉プローブを含んでなってもよく、あるものはタンパク質を結合させるとともにあるものは核酸分子を結合させ、それにより単一アッセイにおける単一基板上でのタンパク質及び核酸分子の検出が可能となる。
【0085】
本発明の更に別の実施形態においては、試料中の1つ又は複数の分析物を検出するためのキットであって、(a)少なくとも2種類の捕捉プローブが結合する基板であって、一方の種類の捕捉プローブが抗体を含んでなるとともに第2の種類の捕捉プローブがアプタマー又はオリゴヌクレオチドを含んでなる基板、又は(b)少なくとも1種類の捕捉プローブ及び少なくとも1種類の検出プローブが結合する基板であって、捕捉プローブが抗体又はアプタマー又はオリゴヌクレオチドを含んでなり得る基板を含んでなるキットがある。基板には特異的標的分析物用の少なくとも1種の捕捉プローブが配列され得る。キットはまた、本明細書に記載されるとおりの検出プローブ及びバーコードプローブも含んでなり得る。
【実施例】
【0086】
本発明は以下の例示的実施例によりさらに実証される。実施例は例示として提供され、いかなる方法によっても本発明を限定することはない。
【0087】
実施例1:固定化x−IgEアプタマー及びx−IgE抗体を含有する基板上でのヒトIgEの検出
この実施例において、抗体及びDNAアプタマー(配列番号1)を含有する代表的アレイが、ヒトIgE抗体の検出における使用向けに調製された。当初はタセット(Tasset)及び共同研究者らが高い親和性及び高い特異性を伴いヒトIgEに結合するアプタマーオリゴヌクレオチド配列について報告した(ウィーガンド(Wiegand)ら、1996年、The Journal of Immunology、第157巻、221−230頁)。続いて、伸長したステム−ループ構造を伴うアプタマー配列が設計されIgE結合親和性が増大した(リス(Liss)ら、2002年、Anal.Chem、第74巻、4488−4495頁)とともに本実施例においてはIgE検出用に使用された。モノクローナルx−IgE抗体がOEMコンセプト社(OEM concepts,Inc.)[カタログ番号M2−G40 CLONE番号090−11348]から本実施例におけるIgE検出用に購入された。コードリンク(Codelink)スライドがアマシャム社(Amersham,Inc.)から購入された。60nm粒径の金粒子がブリティッシュ・バイオセル・インターナショナル(BBI:British BioCell International)[カタログ番号EM.GC60]により製造された。
配列番号1:5’−GCG CGG GGC ACG TTT ATC CGT CCC TCC TAG TGG CGT GCC CCG CGC PEG PEG NH2−3’
【0088】
固定化x−IgE抗体及びアプタマーのアレイの調製
抗体及びアプタマーがコードリンク(Codelink)スライド(アマシャム社(Amersham,Inc.))上にGeneMachines OmniGrid アクセント・マイクロアレイヤー(ゲノミック・ソリューションズ(Genomic Solutions)、アナーバー(Ann Arbor)、ミシガン州)を使用して配列された。x−IgE抗体が、1×リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)、60mMトレハロース中500ug/mLの最終濃度で緩衝された。x−IgEアプタマーが、150mMリン酸ナトリウムpH8.5、0.005%SDS中で緩衝された。プリント後、スライドが湿室中で一晩インキュベートされたうえ、続いてTBS−T緩衝液(0.05%ツイーン(Tween)20を含有する150mMのNaCl/10mMのトリスベース緩衝液(pH8))で洗浄された。アレイが1×PBS、1mMのMgCl、0.01%ツイーン(Tween)20に浸漬され、及び65℃まで5分間加熱され、水で濯ぎ流され、及び脱水された。10個のサブアレイが各スライド上にプリントされた。各サブアレイは6スポットの抗体及びアプタマーを含有した。
【0089】
抗体修飾金ナノ粒子の調製
ポリクローナル抗ウサギ抗体がプロトス・イムノリサーチ(Protos Immunoresearch)[カタログ番号222](テメキュラ(Temecula)、カリフォルニア州)から購入された。粒径60nmの金ナノ粒子がブリティッシュ・バイオセル・インターナショナル(BBI:British BioCell International)から購入された。簡潔に述べれば、5uLの0.1M炭酸ナトリウム緩衝液が1mlの60nm粒径金粒子に添加されpHが調節された。次に、10μgの抗ウサギ抗体が緩衝された金ナノ粒子に添加され、及び室温で30分間インキュベートされた。抗体−金ナノ粒子コンジュゲートが2100Gで25分間の遠心分離により単離された。遠心分離後上清が除去され、及び粒子が緩衝液(20mMトリス緩衝液(pH7.0)、0.5%BSA及び0.01%アジド)中に再分散された。最終ナノ粒子濃度が、60nm粒径金粒子について推定吸光係数ε520=2.8×1010−1cm−1を使用して520nmのUV可視吸光度により計測された。
【0090】
抗体/アプタマーアレイ上のヒトIgEの検出
本アッセイの第1のステップにおいて、1ug/mLのヒトIgE標的[ケミコン(Chemicon)−カタログ番号A630P]又はヒトIgG陰性対照[シグマ(Sigma)カタログ番号I4506]が、アッセイ緩衝液としての1×PBS緩衝液(pH7.2)、0.01%ツイーン(Tween)20中で7分間、約24℃で、別個の検査アレイ上でインキュベートされた。次にスライドがアッセイ緩衝液で洗浄され、及び次にウサギポリクローナルx−IgE抗体(アッセイ緩衝液中10ug/mL)が各アレイに5分間添加された。アッセイ緩衝液での第2の洗浄後、0.1%BSA、2%硫酸デキストランを含有するアッセイ緩衝液中の抗ウサギ抗体でコーティングされた金プローブ(400pM)がピペットを介して各アレイに添加され、及び3分間インキュベートされ、続いてアッセイ緩衝液で洗浄された。スライドが脱水され、水で濯ぎ流すことにより残留塩が除去され、及び撮像に先立ち再び脱水された。撮像はアレイワークス(Arrayworx)画像分析器(アプライド・プレシジョン社(Applied Precision Inc.))により実施された(図2)。画像データはジェネピクス(Genepix)ソフトウェア(アクソン・インストゥルメンツ(Axon instruments))を使用して定量化された。アレイ上に固定化された抗体及びアプタマーの双方が、それぞれのアレイ位置における信号により指示されるとおりヒトIgE標的に結合する。
【0091】
実施例2:DNAバーコード及びハイブリッドアレイを使用したタンパク質の検出
別の実施例においては、基板に付着する抗体が特異的タンパク質標的を認識し、これは核酸バーコードの付着を伴う抗体−ナノ粒子コンジュゲートにより認識される(図3)。核酸バーコードは遊離されるとともに、ナノ粒子プローブを使用して基板の別個の部分に付着する相補的核酸上で検出される。
【0092】
前述の開示は本発明のある特定の実施形態を強調しているとともにそれと等価な全ての改変案又は代替案が添付の特許請求の範囲に記載されるとおり本発明の趣旨と範囲内であることは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】単一又は複数のタンパク質標的を検出するためのアッセイの概略図を示す。
【図2】本発明のアプタマー/抗体スライドを使用したヒトIgEの検出を示す。
【図3】ハイブリッド抗体/DNAスライド上でのバーコードアッセイの概略図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の少なくとも1つの標的分析物を検出するための方法であって、前記標的分析物が少なくとも2つの結合部位を有し、前記方法が、
a)標的認識要素を含んでなる第1の種類の捕捉プローブ及びアプタマーを含んでなる第2の種類の捕捉プローブが結合する基板を提供するステップであって、各種類の捕捉プローブが特異的標的分析物の第1の結合部位に結合し得るステップと、
b)前記標的分析物の前記第1の結合部位への各種類の捕捉プローブの結合に効果的な条件下で前記試料を前記基板及び前記検出プローブと接触させるステップと、
c)前記基板を洗浄して非結合物質を除去するステップと、
d)前記複合体の存在又は不在を検出し、前記複合体の存在又は不在が前記試料中の前記特異的標的分析物の存在又は不在の指標となるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記標的分析物の第2の結合部位に結合し得る少なくとも1種類の検出プローブを提供するステップをさらに含み、前記検出プローブが前記標的分析物の前記第2の結合部位に結合して複合体を形成し得る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
試料をまず前記検出プローブと接触させて前記試料中に存在する標的分析物を前記検出プローブに結合させるとともに、次に前記検出プローブに結合した前記標的分析物を前記基板と接触させて前記標的分析物を前記基板上の少なくとも1種類の捕捉プローブに結合させる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
試料をまず前記基板と接触させて前記試料中に存在する標的分析物を少なくとも1種類の捕捉プローブに結合させるとともに、次に前記捕捉プローブに結合した前記標的分析物を前記検出プローブと接触させて前記標的分析物を前記検出プローブに結合させる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記試料、前記検出プローブ及び前記基板上の前記捕捉プローブを同時に接触させる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記捕捉された標的−検出プローブ複合体が、フォトニック的、電子的、音響的、光音響的、重力的、電気化学的、電気光学的、質量分光学的、酵素的、化学的、生化学的、又は物理的手段により検出される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記標的分析物がタンパク質であり、前記検出プローブが、
a)前記標的分析物を結合させる抗体と、
b)前記標的分析物を結合させるアプタマーと、
c)前記標的分析物を結合させる抗体及びアプタマーの混合物と、
を含むナノ粒子プローブである、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記ナノ粒子が貴金属から作製される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ナノ粒子が金又は銀から作製される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノ粒子が金から作製される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記検出プローブが、フルオロフォア、蛍光体、量子ドット、酵素コンジュゲート、又は抗体−DNAコンジュゲートを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記基板が、ナノ粒子、薄膜、又は電磁ビーズである、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記基板が平面を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記基板が、ガラス、石英、セラミック、又はプラスチックから作製される、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記検出が、前記基板を銀染色と接触させるステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記検出プローブがナノ粒子を含み、前記検出ステップが前記ナノ粒子により散乱する光を検出するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記基板がアドレス可能である、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
各々が異なる標的分析物を認識できる複数の捕捉プローブがアレイ状スポットとして前記基板に付着する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
捕捉プローブの各スポットが2個の電極間に位置し、及び前記検出プローブが導電体材料から作製されるナノ粒子を含み、前記検出ステップが伝導性の変化を検出するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記電極が金から作製され、前記ナノ粒子が金から作製される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記基板を銀染色と接触させて前記伝導性の変化を生じさせる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記標的認識要素が、抗体、抗体断片、又は単鎖抗体断片(scFv)、又はペプチドを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
試料中の少なくとも1つの標的分析物を検出するための方法であって、前記標的分析物が少なくとも2つの結合部位を有し、前記方法が、
a)少なくとも1種類の捕捉プローブ及び少なくとも1種類の捕捉オリゴヌクレオチドが結合する基板を提供するステップであって、前記捕捉プローブが特異的標的分析物の第1の結合部位に結合し得るとともに前記捕捉オリゴヌクレオチドがDNAバーコードの第1の部分に結合し得るステップと、
b)少なくとも1種類のDNAバーコード及び標的分析物結合分子が結合する少なくとも1種類のバーコードプローブを提供するステップであって、前記標的分析物結合分子が前記特異的標的分析物の第2の結合部位に結合し得るステップと、
c)前記標的分析物の前記第1の結合部位への各種類の捕捉プローブの結合及び前記標的分析物の前記第2の結合部位への前記標的分析物結合分子の結合に効果的な条件下で、前記試料を前記基板及び前記バーコードプローブに接触させて第1の複合体を形成するステップと、
d)前記基板を洗浄して非結合物質を除去するステップと、
e)前記DNAバーコードを前記第1の複合体から遊離させるステップと、
f)前記標的分析物の存在又は不在を検出するステップであって、前記第1の複合体の存在又は不在が前記試料中の前記特異的標的分析物の存在又は不在の指標となるステップと、
を含む方法。
【請求項24】
前記バーコードプローブ上の前記標的分析物結合分子が、前記標的分析物に結合するビオチン化標的認識要素を認識するストレプトアビジン又は抗ビオチン抗体を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記バーコードプローブ上の前記標的分析物結合分子が、前記標的分析物に結合する核酸標識化認識要素を認識する核酸を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記試料を、前記DNAバーコードの第2の部分に結合可能な検出オリゴヌクレオチドを有する検出プローブと、前記DNAバーコードと前記検出オリゴヌクレオチドと前記捕捉オリゴヌクレオチドとの間の結合により第2の複合体の形成を可能にする効果的な条件下で接触させるステップであって、前記第2の複合体が前記検出オリゴヌクレオチドに結合する前記DNAバーコードに結合する前記捕捉オリゴヌクレオチドを含んでなるステップ、及び前記標的分析物の存在又は不在を検出するステップであって、前記第2の複合体の存在又は不在が前記試料中の前記特異的標的分析物の存在又は不在の指標となるステップを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
試料をまず前記バーコードプローブと接触させて前記試料中に存在する標的分析物を前記バーコードプローブに結合させるとともに、次に前記バーコードプローブに結合した前記標的分析物を前記基板と接触させて前記標的分析物を前記基板上の少なくとも1種類の捕捉プローブに結合させる、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
試料をまず前記基板と接触させて前記試料中に存在する標的分析物を少なくとも1種類の捕捉プローブに結合させるとともに、次に前記捕捉プローブに結合した前記標的分析物を前記バーコードプローブと接触させて前記標的分析物を前記バーコードプローブに結合させる、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記試料、前記バーコードプローブ及び前記基板上の前記捕捉プローブを同時に接触させる、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記捕捉プローブが抗体を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記捕捉プローブがアプタマーを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記DNAバーコードがビオチン化される、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
前記DNAバーコードが放射活性で標識される、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
前記DNAバーコードが蛍光標識される、請求項23に記載の方法。
【請求項35】
前記DNAバーコードが、遊離された後、及び前記第2の複合体を検出するステップに先立ち増幅される、請求項23に記載の方法。
【請求項36】
抗体及び前記抗体が結合したアプタマーが結合する基板。
【請求項37】
前記基板が、ナノ粒子、薄膜、又は電磁ビーズである、請求項36に記載の基板。
【請求項38】
前記基板が平面を有する、請求項37に記載の基板。
【請求項39】
前記基板が、ガラス、石英、セラミック、又はプラスチックから作製される、請求項38に記載の基板。
【請求項40】
少なくとも1種の捕捉プローブ及び少なくとも1種の捕捉オリゴヌクレオチドが結合する基板であって、前記捕捉オリゴヌクレオチドがDNAバーコードとハイブリダイズし得る基板。
【請求項41】
前記基板が、ナノ粒子、薄膜、又は電磁ビーズである、請求項40に記載の基板。
【請求項42】
前記基板が平面を有する、請求項40に記載の基板。
【請求項43】
前記基板が、ガラス、石英、セラミック、又はプラスチックから作製される、請求項40に記載の基板。
【請求項44】
試料中の核酸標的分析物及びタンパク質標的分析物を検出するための方法であって、
a)特異的タンパク質標的分析物の第1の結合部位に結合可能な抗体を含んでなる第1の種類の捕捉プローブ及び特異的核酸標的分析物の第1の結合部位に結合可能な核酸配列を含んでなる第2の種類の捕捉プローブが結合する基板を提供するステップと、
b)前記標的タンパク質分析物の第2の結合部位に結合し得る少なくとも1種類の検出プローブ及び前記標的DNA分析物の第2の結合部位に結合し得る少なくとも1種類の検出プローブを提供するステップと、
c)前記試料を前記基板及び前記検出プローブと、前記標的分析物の前記第1の結合部位への各種類の捕捉プローブの結合に効果的な条件下で接触させて第1の複合体を形成するとともに、前記標的分析物の前記第2の結合部位への前記検出プローブの結合に効果的な条件下で接触させて第2の複合体を形成するステップと、
d)前記基板を洗浄して非結合物質を除去するステップと、
e)前記第1の複合体、前記第2の複合体、又は前記第1の複合体及び前記第2の複合体の双方の存在又は不在を検出するステップであって、各複合体の存在又は不在が前記試料中の前記タンパク質標的分析物、前記核酸標的分析物、又は前記タンパク質標的分析物及び前記核酸標的分析物の双方の存在又は不在の指標となるステップと、
を含む方法。
【請求項45】
前記基板がアドレス可能である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
各々が異なる核酸又はタンパク質標的分析物を認識し得る複数の核酸及び抗体捕捉プローブがアレイ状スポットとして前記基板に付着する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
2種以上のタンパク質及び核酸標的分析物が前記基板上で同時に検出される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
試料中の核酸標的分析物及びタンパク質標的分析物を検出するための方法であって、
a)前記タンパク質標的分析物に結合し得る抗体を含んでなる第1の種類の捕捉プローブ及び核酸標的分析物に結合し得る核酸配列を含んでなる第2の種類の捕捉プローブが結合する基板を提供するステップであって、各種類の捕捉プローブが前記特異的標的分析物の第1の結合部位に結合し得るステップと、
b)前記標的分析物の第2の結合部位に結合し得る少なくとも1種類の検出プローブを提供するステップと、
c)前記試料を前記基板及び前記検出プローブと、前記標的分析物の前記第1の結合部位への各種類の捕捉プローブの結合及び前記標的分析物の前記第2の結合部位への前記検出プローブの結合に効果的な条件下で接触させて複合体を形成するステップと、
d)前記基板を洗浄して非結合物質を除去するステップと、
e)前記複合体の存在又は不在を検出するステップであって、前記複合体の存在又は不在が前記試料中の前記タンパク質及びDNA標的分析物の存在又は不在の指標となるステップと、
を含む方法。
【請求項49】
前記基板がアドレス可能である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
各々が異なる核酸又はタンパク質標的分析物を認識し得る複数の核酸及び抗体捕捉プローブがアレイ状スポットとして前記基板に付着する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
2種以上のタンパク質及び核酸標的分析物が前記基板上で同時に検出される、請求項50に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−505106(P2009−505106A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527164(P2008−527164)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/032301
【国際公開番号】WO2007/024676
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(501216012)ナノスフェアー インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】NANOSPHERE INC.
【Fターム(参考)】