説明

DNT排水の酸性スラッジ吸着

芳香族化合物のモノ−、ジ−及びトリニトロ芳香族化合物へのニトロ化からの、アルカリ性のプロセス排水を処理するための方法であって、
前記アルカリ性のプロセス排水はpHが7.5〜13であり、及び以下の工程
a)ニトロ化で得られた水性の硫酸含有相の処理から得られた濃硫酸を加えることにより、アルカリ性のプロセス排水を、5未満のpHに酸性化し、分離(析出)する有機相と酸性の水性相から成る混合物Aを形成する工程、
b)混合物Aを新しい下水汚泥と接触させる工程、及び
c)下水汚泥を除去する工程、
を含むことを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族化合物のニトロ化からのアルカリ性のプロセス排水を処理する方法であって、(ニトロ化で得られた水性の硫酸含有相の処理から得られた)濃硫酸を加えることにより、アルカリ性のプロセス排水を酸性化し、及び酸性化された工程の排水を、新しい下水汚泥と接触させ、そして下水汚泥を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ニトロ化合物、例えばモノ−及びジニトロトルエンは、典型的には、硝化酸と称される濃硝酸と濃硫酸の混合物を使用して、対応する芳香族化合物をニトロ化することにより製造される。これはニトロ化の粗製生成物を含む有機相、及び基本的に硫酸、反応の水、及び基本的に硝化酸によって導入される水を含む水性相を形成する。硝酸はニトロ化で殆ど消費される。
【0003】
2相に分離した後、水性の硫酸含有相はニトロ化法の技術に従い、新しい硝酸と(直接的に、又は濃縮の後)再度混合され、そしてニトロ化のために使用される。しかしながら、(不純物、特に金属塩の濃縮を回避するために)硫酸の少なくとも一部は、全工程から、連続的に又は非連続的に排出しなければならない(DE10143800C1参照)。この不純物は、例えば、硝酸内に本来存在していた不純物、(反応及び水性相の処理の過程で存在する厳しい腐食性の条件の下に)反応器及びパイプ材料から浸出する金属化合物である。
【0004】
ニトロ化で得られる水性の硫酸含有相の濃縮で、低硫酸濃度の水性蒸留液(以降、硫酸濃度の水性蒸留液と称する)、及び硫酸含有量が高い相(以降、濃硫酸と称する)が得られる。ニトロ化工程から排出される濃硫酸の部分は、以降、廃物硫酸(waste sulfuric acid)とも称される。
【0005】
芳香族化合物、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の、対応する芳香族ニトロ化合物へのニトロ化の粗製生成物は、所望のニトロ化合物、例えばニトロベンゼン(NB)及びジニトロベンゼン(DNB)、モノ−及びジニトロトルエン(MNT及びDNT)、ニトロクロロベンゼン(NCB)又はニトロキシレンに加え、少量のモノ−、ジ−、及びトリニトロフェノール(以降、ニトロフェノールと称される)、モノ−、ジ−、及びトリニトロクレゾール(以降、ニトロクレゾールと称される)、及びモノ−、ジ−、及びトリニトロキシレノール(以降、ニトロキシレノールと称される)、及び(ヒドロキシル基及びニトロ基を含む)他の化合物、及びモノ−及びジニトロ安息香酸(以降、ニトロ安息香酸と称される)をも含む。
【0006】
ヒドロシキル基、又はカルボキシル基を分子内に含まない芳香族ニトロ化合物は、(本発明において)中性ニトロ芳香族化合物、又は中性ニトロ種とも称される。ニトロフェノール、ニトロクレゾール、ニトロキシレノール及びニトロ安息香酸は、以降、まとめてヒドロキシニトロ芳香族化合物とも称される。
【0007】
ニトロ化からの粗製生成物は、更に使用する前に、望ましくない副生成物を除去する必要がある。典型的には、硝化酸を除去した後、副生成物は、多工程洗浄で、酸性、アルカリ性、及び中性洗浄液を(通常は記載した順に)使用して除去される。アルカリ性の洗浄は、典型的には、水酸化ナトリウム水溶液、重炭酸塩水溶液、又はアンモニア水溶液を使用して行われる。発生するアルカリ性のプロセス排水(廃物水)は、ニトロフェノール、ニトロクレゾール、ニトロキシレート、及びニトロ安息香酸を、使用した塩基の水溶性の塩の状態で含む。これらは典型的には、アルカリ性のプロセス排水に対して、0.2〜2.5質量%の濃度で存在する。アルカリ性のプロセス排水は、ニトロ化で形成された中性ニトロ種、特に反応生成物をも含む。更に、アルカリ性洗浄物は、形成された無機塩をも大きな割合で含む。従って、アルカリ性のプロセス排水は通常、500〜5000ppmのニトレート(硝酸塩)、500〜5000ppmの亜硝酸塩、及び数百ppmのサルフェートを含む。天然のニトロ種は、アルカリ性のプロセス排水中に典型的には、数1000ppmの量で存在する。成分は1000〜20000mg/lの化学的な酸素の需要を生じさせる。
【0008】
ニトロフェノール、ニトロクレゾール、ニトロキシレノール、ニトロ安息香酸、及び特にその酸は、強く着色され、そして環境に対して毒性が高い。更に、ニトロフェノール、及び特にその塩は、比較的高い濃度で、又は固体(物質)で、爆発性であり、そしてこれらを放出する前に排水から除去し、そしてこれらからの環境への危険性がなくなるように処理する必要がある。芳香族ニトロ化合物は、全体的に殺菌性であり、従って、排水の生物学的な精製を可能とするので、芳香族ニトロ化合物を含む排水の精製又は処理が必要である。
【0009】
ニトロフェノール、ニトロクレゾール、ニトロキシレノール、ニトロ安息香酸、及び中性のニトロ安息香酸を排水から除去するための種々の方法(例えば、抽出、吸着、酸化、又は加熱分解)が文献に記載されている。
【0010】
The Encyclopedia of Chemical Technology,Kirk−Othmer,Fourth Edition 1996,Vol.17,p138には、ニトロベンゼンを除去するための抽出法が記載されており、該方法では、適当な温度で排水中に溶解したニトロベンゼンが、ベンゼンを使用した抽出によって除去されている。水中に溶解したベンゼンは、排水を最終的に処理する前に、ストリッピングによって除去される。
【0011】
特許文献1(US−A6506948)に従えば、ベンゼンのニトロ化で得られた水性の洗浄相が、トルエンを使用して直接的に抽出されている(生じるそれぞれの排水流は、別個に抽出される)。トルエン流は、次にニトロ化工程に導かれ、そして変換される。これは、アルカリ性の排水中に溶解したニトロクレゾール、及びニトロ安息香酸を残し、これらは次に別個に除去する必要がある。
【0012】
溶解したニトロ芳香族化合物、及びヒドロキシニトロ芳香族化合物は追加的に、有機溶媒を使用して、抽出によって、酸性媒体中に除去することができる(Ullmanns Enzykopadie der technischen Chemie,4thedition,Volume17,page386)。
【0013】
アルカリ性のプロセス排水中に存在するヒドロキシ芳香族化合物は、(酸性化によって)分離(析出)する有機相に移すことができ、そして次に除去される。このような方法は、特許文献2(EP1493730A1)に記載されている。この工程では、中性及びアルカリ性DNT洗浄液の排水流及び硫酸濃縮物からの排水流が混合され、そして5未満のpHが設定される。硫酸濃縮物(sulfuric acid concentration)からの排水は、硫酸濃縮物の蒸留液で、硫酸濃度が0.2〜1質量%である。酸性化の過程で、有機相が分離(析出)し、除去される。水性相は、更なる排水処理に別個に供給される。ヒドロキシニトロ芳香族化合物の結晶化を防止するために、分離と除去のために使用される装置を加熱する必要がある。
【0014】
特許文献3(EP0005203)には、ヒドロキシニトロ芳香族化合物を含む排水を処理するための熱的な方法が記載されている。この方法では、ヒドロキシニトロ芳香族化合物をその水溶性塩の状態で含む排水は、(空気と酸素の排除を伴って)圧力下に150〜500℃の範囲に加熱される。
【0015】
特許文献4(EP0953546)には、ニトロ化設備からび排水流を処理するための熱的方法が開示されており、該方法では、ヒドロキシニトロ芳香族化合物及び中性の芳香族化合物を同時に分解することができる。
【0016】
特許文献5(WO2009/027416A1)によれば、ニトロ化からのアルカリ性排水を熱分解処理する前に、如何なるヒドロキシル基をも含まず、及び排水中に存在する芳香族ニトロ化合物が抽出によって除去されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】US−A6506948
【特許文献2】EP1493730A1
【特許文献3】EP0005203
【特許文献4】EP0953546
【特許文献5】WO2009/027416A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述した方法の不利な点は、しばしば、熱分解の、又は蒸気ストリッピングの高いエネルギー強度である。アルカリ性のプロセス排水が酸性のpHに調節され、そして分離(析出)する有機相(該有機相は、ヒドロキシニトロ芳香族化合物、及びニトロ安息香酸を含む)が、相分離によってでのみ除去される場合には、「付着物(fouling)」の問題が生じる。このことは、非常に速く分離(析出)する有機相を除去するために使用されるポンプとパイプシステムが、不純物の沈澱と結晶化によって閉塞されることを意味し、従って、浄化に高い要求が有る。更に、ジニトロトルエンの製造では、ジニトロトルエン含有アルカリ性排水から、下水汚泥への吸収によって70℃で溶解した2,4−及び2,6−ジニトロトルエンの多くの部分を(ヒドロキシニトロ芳香族化合物がオゾン化によってダイジェスト(消化)される前に)除去できることが公知である。ここで、ニトロクレゾールは、オゾン化によっては変換することができないという問題が生じる。更に、アルカリ性排水は、なおニトレート(硝酸塩)を含んでおり、これはオゾンによって酸化され、従ってオゾンの需要が高くなる。例えば、アルカリ性のプロセス排水中の3000mg/lのニトレート(硝酸塩)の濃度では、亜硝酸塩酸化のために、約25〜40%のオゾンが消費される。
【0019】
従って、本発明の目的は、芳香族化合物のニトロ化のアルカリ性のプロセス排水からニトロクレゾールを除去することができ、及びエネルギー消費を低減し、及び(通常の処理法を使用した)排水の更なる処理におけるコストを低減することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的は以下の、芳香族化合物のモノ−、ジ−及びトリニトロ芳香族化合物へのニトロ化からの、アルカリ性のプロセス排水を処理するための方法であって、
上記アルカリ性のプロセス排水はpHが7.5〜13であり、及び以下の工程
a)ニトロ化で得られた水性の硫酸含有相の処理から得られた濃硫酸を加えることにより、アルカリ性のプロセス排水を、5未満のpHに酸性化し、分離(析出)する有機相と酸性の水性相から成る混合物Aを形成する工程、
b)混合物Aを新しい下水汚泥と接触させる工程、及び
c)下水汚泥を除去する工程、
を含むことを特徴とする方法によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に従う方法によって処理されたアルカリ性のプロセス排水は、分解が困難な、中性ニトロ種、ニトロクレゾール、及びニトロ安息香酸、及び亜硝酸塩が非常に少ない。(ジニトロトルエンを製造するための設備から)本発明に従い処理された、アルカリ性のプロセス排水中のこれらの化合物の含有量を低減する百分率は、下水汚泥による希釈を考慮して、典型的には以下のようである:
2,4−DNT: 50−57%
2,6−DNT: 50−80%
合計(ニトロクレゾール及びニトロ安息香酸): 70−90%
合計(ニトリル) : 85−95%
【0022】
本発明に従う方法の更なる有利性は、ニトロ芳香族化合物のための製造方法からの酸濃度中に得られた廃物硫酸の全量を、アルカリ性のプロセス排水を酸性化するために使用することができることである。濃硫酸は、ニトロ化の過程での腐食(パイプライン)の結果として、(Fe、Cr、Ni、Ta及び微量の更なる重金属をそのサルフェートの状態で含む)塩を含む。典型的には、塩の濃度が300ppmを超える場合、酸の一部を、いわゆる廃物硫酸として工程から排出し、そして処分するか、又は他の工程で精製する必要がある。従って、この廃物硫酸の使用は特に有利である。この理由は、処分又は処理する費用を節約できるからである。濃縮された廃物硫酸の使用は更に、以下の効果をもたらし、すなわちアルカリ性のプロセス排水が酸性化される場合、アルカリ性のプロセス排水中に溶解した亜硝酸塩の多くの部分を亜硝酸にプロトン化することができ、これは次に硝酸及び窒素酸化物にプロトン化することができるという効果をもたらす。本発明の好ましい実施の形態では、酸性化の過程で分離(析出)した窒素酸化物が、ニトロ化設備の硝酸回収に供給され、そして従って、工程で失われない。本発明に従う方法によって処理された排水流の化学的な酸素の需要は、大きく低減される。濃縮された廃物硫酸の使用は、(希酸が使用される場合のように)浄化されるべき工程排水の量を不必要に増すものではない。
【0023】
本発明に従う方法は、芳香族化合物のニトロ化からのアルカリ性のプロセス排水を処理するために使用される。芳香族化合物は好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、及び/又はジクロロベンゼンである。
【0024】
水酸化ナトリウム水溶液、炭酸塩(カーボネート)又は重炭酸塩水溶液、又はアンモニア水溶液を使用したニトロ化からの粗製生成物の、1工程又は複数工程洗浄から得られたアルカリ性のプロセス排水は、使用される塩基に依存して、pHが、7.5〜13、好ましくは8〜10である(60℃で測定)。
【0025】
本発明に従えば、アルカリ性のプロセス排水は、(ニトロ化で得られた硫酸含有水性相の処理から由来する濃硫酸を加えることによって、)pHが5未満、好ましくは0.5〜3に調節される。pH数量は、それぞれ60℃での測定に基づく。アルカリ性のプロセス排水の酸性化において、ヒドロキシニトロ芳香族化合物、ニトロ安息香酸、及び中性ニトロ種を含む有機相が析出(分離)する。本発明において、酸性化した、当初のアルカリ性のプロセス排水は、析出する有機相と一緒に、混合物Aと称される。
【0026】
酸性化に使用される廃物硫酸は、濃度が85〜95質量%、好ましくは90〜93質量%である。好ましい実施の形態では、ニトロ化で得られた廃物硫酸のみが工程a)での酸性化に加えられ、工程a)で、ニトロ化で得られた廃物硫酸の全てを加えることが特に好ましい。濃硫酸の添加は、オンラインでのpH測定を介して制御することが有利である。
【0027】
アルカリ性のプロセス排水は、典型的には、55〜80℃の温度で得られる。本発明に従えば、アルカリ性のプロセス排水は、濃硫酸を加えることによって、この温度で酸性化される。濃硫酸とアルカリ性のプロセス排水の混合は、相当なガスの発生をもたらす。分離したガス混合物は、NO、特に一酸化窒素、二酸化窒素、及び一酸化二窒素を含む。使用するアルカリ性の洗浄水が、カーボネート、及び/又は重炭酸塩溶液の場合、分離するガスは、典型的には、70〜98.9体積%の二酸化炭素、及び1.1〜30体積%の窒素性ガス(NO)を含む。分離するガスは、好ましくは80〜98体積%の二酸化炭素、及び2〜20体積%の窒素性ガスを含む。工程排水が、アルカリ金属カーボネート及び/又はアルカリ金属重炭酸塩の替わりに、(酸性化の後にガス性の成分を形成しない)他の塩基を含む場合、オフガスはもっぱらNOから構成され、典型的には、47〜98%の一酸化窒素、1〜47%の二酸化窒素、及び1〜6%の一酸化二窒素から構成される。酸性化の過程で分離するNO含有オフガスは、好ましくは除去され、そして硝酸の製造に使用される。除去した窒素酸化物を、ニトロ化設備の硝酸回収に再利用することが特に好ましい。ガス混合物は、典型的には、ニトロ化設備の硝酸回収の一酸化窒素及び二酸化窒素の吸収カラムに供給される。全ガス混合物を直接的に、及びCOを先行して除去することなく及び精製することなく再利用されることが特に有利である。
【0028】
本発明に従う方法の工程b)で使用される吸収剤は、新しい下水汚泥である。ここで、「新しい(fresh)」は、下水汚泥が下水処理設備から由来し、及び本発明に従う方法、又は類似する方法で吸収にいまだ使用されていないことを意味する。本発明に従い、(水に溶解した亜硝酸塩の残りの部分をニトレートに酸化することができる範囲でまだ活性な)生物学的に活性な下水汚泥を使用することが好ましい。このようにして、追加的な積極的効果が達成される。この理由は、亜硝酸塩は、例えば、亜硝酸塩がオゾン処理で最初にニトレートに酸化される必要がある場合には、次の更なる処理で厄介なものになるからである(従って、不必要な消費オゾン)。
【0029】
典型的には、本発明に従い吸収剤として使用される下水汚泥は、固体含有量が10〜25g/lである。
【0030】
本発明に従えば、下水汚泥及び混合物Aは、1分〜数日にわたり、好ましくは2分から1.5日間にわたり、相互に接触される。
【0031】
好ましくは、本発明に従い、下水汚泥及び混合物Aは、これらを共通の容器に導くことによって、相互に接触される。更に好ましくは、混合物A及び下水汚泥は、積極的及び/又は受動的な混合要素を使用して、工程b)で接触される。適切な積極的及び受動的混合要素は、この技術分野の当業者にとって公知である。積極的混合要素は、例えば、攪拌器、超音波、シェーカーを含む。使用される静的混合要素は、例えば、通路(channel)及び内部構造であっても良い。
【0032】
アルカリ性のプロセス排水は、典型的には、50〜80℃の温度で得られる。本発明に従えば、アルカリ性のプロセス排水は、濃縮した廃物硫酸を加えることにより(工程a)、この温度で酸性化もされる。開始時に、混合物Aは、下水汚泥との接触の過程(工程b)で、温度が50〜80℃である。好ましくは、本発明に従い、工程a)でのアルカリ性のプロセス排水及び工程b)の開始時の混合物Aの温度は、60〜75℃である。
【0033】
下水汚泥は、工程b)の開始時で、混合物Aとの接触において、5〜25℃の温度、好ましくは8〜15℃の温度を有する。このことは、冷却効果の結果として、及び下水汚泥中の固体含有量の結果として、アルカリ性のプロセス排水の酸性化で析出(分離)する有機相が沈澱し、そして下水汚泥に吸収されるという有利性を有している。本発明の好ましい実施の形態では、下水汚泥の混合物Aに対する体積割合は、30℃以下の温度が設定されるように選択される。相当な冷却の結果として、融点が30℃を超える有機化合物が沈澱(析出)し、そして下水汚泥の固体成分に分離(析出)する。
【0034】
下水汚泥の混合物Aに対する体積割合は、典型的には、5:1〜1:2、好ましくは3:1〜1:1である。
【0035】
工程b)で下水汚泥を混合物Aと接触させた後、工程c)で下水汚泥が除去される。このことは、この技術分野では公知の、通常の装置を使用して、例えば、デカンター又は遠心分離器を使用して行われ;好ましくは、下水汚泥は、静的分離器を使用して除去される。
【0036】
本発明に従う方法は、非連続的に、又は連続的に行うことができる。好ましくは、本発明に従い、本方法は連続的に行なわれる。
【0037】
以下に実施例を用いて本発明に従う方法を詳細に説明する。
【0038】
実施例1
ガス出口及び内部温度計を有する1000mLの攪拌容器に、最初に(ジニトロトルエンの製造からの)400mLのアルカリ性のプロセス排水を60℃で挿入した。DNT、ニトロクレゾール、及びニトロ安息香酸の濃度を表1に示す。次に、工程排水を、93%の濃縮した廃物硫酸と、2.5のpHが達成されるまで混合した。形成されるガス混合物をガス出口を通して、隣合う(25%KOHで満たされた)吸収器カスケードに流した。ガスの形成が終了すると、400mLの新しい下水汚泥を15℃で、BASF Schwarzheide GmbHからの下水処理装置のBiology Iから加えた。下水汚泥は、乾燥した物質含有量が20g/Lであった。37℃の混合温度が設定された。次に、混合物を30分間攪拌し、そして貯蔵容器に移した。遠心分離の後、浮遊物(supernatant)を分析した。結果を同様に、表1に示した。
【0039】
【表1】

【0040】
実施例2
吸収器(A1)へのガス出口及び内部温度計を有する500mLの攪拌容器(B1)に、(ジニトロトルエンの製造からの)1000mL/hのアルカリ性のプロセス排水を60℃で連続的に、及び(酸濃度からの)93%の濃縮した廃物硫酸を、インラインpHメーターを使用して制御して連続的に挿入した。pHを0.5に調節した。形成されるガス混合物をガス出口を通して、吸収カラム(A1)に導入し、そして従って工程から取り出した。攪拌容器(B1)から、525mLの酸性化された排水を65℃で、容器(B2)に連続的に運んだ。BASF Schwarzheide GmbHの下水処理設備のBiology Iからの、525mL/hの下水汚泥を10℃で、攪拌容器B2に連続的に導入した。下水汚泥は、乾燥物質含有量が20g/Lであった。(70%充填の)5000mL攪拌容器B2から、1025m/hの体積流を25℃でデカンター(D)に連続的に運び、下水汚泥と吸着した有機成分を定着させた後、事前処理した排水流を21℃で提供した。容器B2を、オフガスラインを介して吸着カラム(A1)に接続した。デカンター(D)からの排水流を分析した。処理された、及び処理されていない排水中のDNT、ニトロクレゾール、及びニトロ安息香酸の濃度を、表2に比較した。
【0041】
【表2】

【0042】
実施例3
酸濃度(acid concentration)から廃物硫酸をインライン計量導入器を介して計量導入することにより制御して、pHを2.5に調節したこと以外は、実施例3を実施例2と同様に行った。本発明の処理の前と後でのDNT、ニトロクレゾール、及びニトロ安息香酸の濃度を、表3に比較した。
【0043】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族化合物のモノ−、ジ−及びトリニトロ芳香族化合物へのニトロ化からの、アルカリ性のプロセス排水を処理するための方法であって、
前記アルカリ性のプロセス排水はpHが7.5〜13であり、及び以下の工程
a)ニトロ化で得られた水性の硫酸含有相の処理から得られた濃硫酸を加えることにより、アルカリ性のプロセス排水を、5未満のpHに酸性化し、分離する有機相と酸性の水性相から成る混合物Aを形成する工程、
b)混合物Aを新しい下水汚泥と接触させる工程、及び
c)下水汚泥を除去する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
酸性化のために使用される濃硫酸が、85〜95質量%、好ましくは90〜93質量%の濃度を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ニトロ化で得られた廃物硫酸の全てが、工程a)で使用されることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の方法。
【請求項4】
工程a)で、pHが0.5〜3に調節されることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
混合物A及び下水汚泥が、1分〜2日間にわたり相互に接触されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
芳香族化合物が、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、及び/又はジクロロベンゼンであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程a)でのアルカリ性のプロセス排水、及び工程b)の開始時における混合物Aは、温度が50〜80℃、好ましくは60〜75℃であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程b)の開始時における下水汚泥は、温度が5〜25℃、好ましくは8〜15℃であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程b)で、下水汚泥の混合物Aに対する体積割合は、30℃以下の温度を設定するように選ばれることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程b)で、下水汚泥の混合物Aに対する体積割合は、5:1〜1:2の範囲、好ましくは3:1〜1:1の範囲であることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程b)で、混合物A及び下水汚泥が、能動的及び/又は受動的な混合要素を使用して接触されることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程a)での酸性化の過程で分離する窒素酸化物が除去され、及び硝酸の製造に利用されることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程a)での酸性化の過程で分離する窒素酸化物が除去され、及びニトロ化設備の硝酸の回収に再利用されることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程c)で、下水汚泥が、静的分離器内で除去されることを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
連続的なモードで行われることを特徴とする請求項1〜14の何れか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−514162(P2013−514162A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543655(P2012−543655)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069519
【国際公開番号】WO2011/082974
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】