説明

EGR構造

【課題】 エアクリーナからインテークマニホールドに至る間のインテークエアコネクタ内で再循環ガスを吸気に戻して排気ガスの燃焼性を高めようとすると、再循環ガスと吸気中のオイルが混ざり、デポジットとなって、再循環ガス流入口のバルブの作動性が低下するという課題があった。
【解決手段】 再循環ガス流入口(13)の上流側に樋形状部(30)を設けて、インテークエアコネクタ(10)の内壁面に発生するオイルを再循環ガス流入口より上流側で堰き止め、EGRバルブ(20)の弁部(21)と対応しない位置でインテークマニホールド側に流す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気ガスを吸気通路に戻すEGRバルブの上流側のインテークエアコネクタに設けられるガスケット構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関で発生するNOXなどの排気ガスは、環境汚染を促進する物質として排出を低減するように努力されている。この効果的な方法の1つに、排気ガスの一部を吸気側に返すEGR(Exhaust gas recirculation)がある。また、内燃機関のクランク室に漏れた未燃焼ガス(ブローバイガス:Blowby gas)も、環境汚染につながる。そこで、このブローバイガスを吸気側に返すPVC(Positive Clankcase Ventilation)という技術もある。
【0003】
吸気側に返される排気ガス(以下「再循環ガス」と呼ぶ)やブローバイガスを吸気側に返す方法にはさまざまな方法が考えられる。その中で、エンジンのエアクリーナからインテークマニホールドにつながるインテークエアコネクタ部分で、再循環ガスとブローバイガスを吸気と混合させる方法は、比較的容易にこれらのガスを吸気側に返すことができる方法である。また、インテークエアコネクタ部分は、一定の長さを有するパイプなので、吸気と混合する量やタイミングを制御するための装置も配置しやすい。
【0004】
ところで、再循環ガスは排気ガスの一部であるため、煤を含む。一方、ブローバイガスは、未燃焼のガスであり、空気とオイル等の混合ガスである。このブローバイガスは、インテークエアコネクタ中を流れる間に、インテークエアコネクタの内壁を伝って流れるほどの液状に変化する。
【0005】
再循環ガスとブローバイガス中のオイル等が混じり合うと、デポジットと呼ばれる付着物となり堆積する。このデポジットが、インテークエアコネクタ中に再循環ガスを導入するための、EGRバルブ先端に堆積すると、EGRバルブが固着してしまい、開閉できなくなるという課題があった。
【0006】
このような課題に対しては、例えば、特許文献1や2に示すような解決策が提案されている。特許文献1では、デポジットがスロットル弁の周囲に付着するのを防ぐために、再循環ガスをインテークエアコネクタに導入する部分に、下流側に向かって開口する屈曲管を案内通路として設ける技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献2では、ERGバルブ先端を囲繞する筒状部を形成することで、ERGバルブ先端で再循環ガスとブローバイガスが会合しデポジットが形成されることを防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−213019号公報
【特許文献2】特開2001−304051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された屈曲管による案内通路をERGバルブへのデポジット形成防止に用いる場合は、インテークエアコネクタ内に大きな突出部を設けることとなるので、吸気抵抗が生じるという課題が生まれる。エンジンの高いレスポンスを確保するには、吸気路中の吸気抵抗は小さいことが望ましい。
【0010】
また特許文献2に開示された筒状部は、吸気を妨げる筒状部の壁に囲まれていないERGバルブのシャフト部では、再循環ガスとブローバイガスが会合し、デポジットを形成し堆積することとなる。これは、時間経過とともに大きく成長し、筒状部の壁に囲まれたERGバルブ先端まで届くおそれがある。すなわち、経時的にバルブの作動不良を生じさせることとなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記の課題に鑑み想到されたものであり、簡便な成形部により、ERGバルブの先端にデポジットが形成・堆積されないERG構造を提供することを目的とする。
【0012】
具体的には、本発明は、
エアクリーナから車両用内燃機関のインテークマニホールドにエアを送る吸気通路の途中に設けられた再循環ガス導入口を、前記吸気通路内を貫通して設けたEGRバルブによって開閉するEGRの構造であって、
前記吸気通路内の前記EGRバルブより上流部に前記吸気通路の内壁面から前記吸気通路の中央部に向かって突出する樋形状部を設け、
前記樋形状部は前記EGRバルブの先端に対応する以外の位置で削除部分を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明のEGR構造では、前記削除部分には、上流側に吸入開口部を有し、前記EGRバルブより下流側に排出開口部を有する筒形状部が前記吸気通路に沿って設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
吸気に含まれたオイル成分は、インテークエアコネクタ内の内壁面を伝って、下流側に流れるため、樋形状部で堰き止められる。この樋形状部には、ERGバルブの先端に対応する位置以外の位置に削除部分が設けられていて、インテークエアコネクタの内壁面が露出している。そこで、インテークエアコネクタの内壁面に生じたオイル等は、この削除部分から下流側に流出する。このオイルの流れはERGバルブの先端からは離れた位置を流れるため、ERGバルブ先端でデポジットが生じることを回避することができる。
【0015】
また、この削除部分に、樋形状部が設けられた位置から上流部とERGバルブの下流部とに開口部をもつ筒形状部を設けたので、オイル等は、樋形状部からこの筒形状部に流れ、筒形状部からERGバルブの下流側に流される。結果、ERGバルブの先端で、デポジットが発生することを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のEGRバルブ構造を示す図である。
【図2】図1を異なる角度から見た図である。
【図3】樋形状部だけを示す図である。
【図4】樋形状部の削除部分36を説明する図である。
【図5】他の実施の形態のEGRバルブ構造を示す図である。
【図6】他の実施の形態のEGRバルブ構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明のEGR構造1は、エアクリーナからエンジンのインテークマニホールドに至るインテークエアコネクタ10に形成される。なお、エアクリーナおよびインテークマニホールドは記載を省略した。ただし、エアクリーナは符号2の方向にあり、インテークマニホールドは符号3の方向にある。吸気7はエアクリーナ2からインテークマニホールド3方向に流れる。
【0018】
インテークエアコネクタ10には、再循環ガスをインテークエアコネクタ内に導入するための再循環ガス流入口13が設けられている。再循環ガス流入口13には再循環ガスパイプ14が接続されており、エンジンの排気側5に連結されている。また、クランク室内に漏れたブローバイガスは、再循環ガス流入口13の上流に導入される。従って、ブローバイガスを含む吸気7はエアクリーナ2側からインテークマニホールド3側に向かって流れる。そして、その吸気7に再循環ガスが混入され、吸気7aとなりインテークマニホールド3へ流れる。なお、本明細書では説明上エアクリーナ側を上流と呼び、インテークマニホールド側を下流と呼ぶ。
【0019】
EGRバルブ20の先端には弁部21が配置されている。弁部21は、再循環ガス流入口13をふさぐ大きさに形成されている。弁部21にはシャフト22が連結されており、シャフト22はシャフト駆動部23に、軸方向に往復運動可能に固定されている。シャフト22はインテークエアコネクタ10の内壁面に設けられた再循環ガス流入口13に対して、対面するインテークエアコネクタの内壁面を貫通して設けられている。すなわち、再循環ガス流入口13は、インテークエアコネクタ10の中心側から弁部21が当接・離間することで開閉される。
【0020】
シャフト駆動部23は、図示しない制御部によって、アクセルの開閉程度や現在の速度に応じてシャフト22を軸方向に運動させ、再循環ガス流入口13を開閉する。
【0021】
なお、図1ではエアクリーナからインテークマニホールドに至るインテークエアコネクタ10がL字形状に屈曲して配置されている様子を示しているが、本発明のEGR構造1はこのインテークエアコネクタの形状に限定されるものではない。
【0022】
本発明の樋形状部30は、EGRバルブ20に対して直近の上流側に設けられるのが好ましい。EGRバルブ20から離れた場所に設けられると、吸気が樋形状部30を乗り越えて再びインテークエアコネクタ10の断面全体に広がり、EGRバルブ20の弁部21と接触し、デポジットが弁部21に発生してしまうからである。
【0023】
図2には、樋形状部30を上流側から見た図を示す。樋形状部30はインテークエアコネクタ10の内壁面からインテークエアコネクタ断面中央部に向かって突出した形成物である。インテークエアコネクタ10の内壁面と一体的に形成されていてもよいし、別部材で形成した樋形状部30をインテークエアコネクタの内壁面にはめ込んでもよい。
【0024】
樋形状部30の内壁面からの高さ31は、特に制限されないが、樋形状部30が高すぎるとインテークエアコネクタ10の断面の減少に繋がり吸気抵抗となる。また、樋形状部30が低すぎると内壁面を流れるオイルを効果的に堰き止めることができない。従って、樋形状部30の高さは、インテークエアコネクタ10の断面積と予定される最大吸気速度によって適宜決められるものである。
【0025】
図3には樋形状部30だけを示す。図3(a)は、吸気上流側から見た平面図である。図3(b)はA−Aの断面図、図3(c)乃至図3(e)は、樋形状部30のB−Bの断面のバリエーションを示す図である。図3(c)乃至(e)では、矢印2の方向が吸気上流側を表し、矢印16がインテークエアコネクタ10の断面中心側を示す。
【0026】
樋形状部30は、少なくとも上流側に凹み32が形成される。凹み32は樋形状部30の全周に渡って形成されている。凹み32の形状は特に限定されず、方形断面(図3(c)参照)や半円断面(図3(d)参照)などが好適に実現される。好ましくは凹みは、インテークエアコネクタの内壁面側に対して傾斜面で接していることが好ましい(図3(e)参照)。内壁面を伝わるオイル等を凹みに導きやすいからである。
【0027】
樋形状部30には、少なくとも1箇所に上流側から下流側に通じる貫通孔33が形成されている。この貫通孔33は、EGRバルブ20の弁部21が配置されている再還流ガス流入口13と対応した位置以外の位置に形成されている。再還流ガス流入口13と対応した位置とは、再還流ガス流入口13からインテークエアコネクタ10に沿って上流側に遡ったインテークエアコネクタ10の内壁面上の位置を言う。すなわち、図2中では線分34上の位置がこれに当たる。
【0028】
好ましくは貫通孔33は、吸気7の流速が速くなる位置に設けるのが好ましい。本実施の形態では、インテークエアコネクタ10がエアクリーナ2からインテークマニホールド3に向かって屈曲しているので、屈曲部分の外側に当たる部分に配置するのがよい。露結したオイルは、インテークエアコネクタ10の内壁面の吸気7の流速が速い部分を流れるからである。
【0029】
なお、再還流ガス流入口13にはEGRバルブの先端(弁部21)が配置されるので、再還流ガス流入口13と対応した位置とは、EGRバルブの先端(弁部21)に対応する位置と呼んでもよい。
【0030】
インテークエアコネクタ10の内壁面から凹み32に流れ込んだオイル等は、この穴33から下流側に流出する。この貫通孔33を上記のような位置に配置すると、下流側に流出するオイルは、EGRバルブの弁部21に触れることなく下流側に流れる。結果、弁部でデポジットが発生することを回避することができる。
【0031】
なお、貫通孔33は図4に示すように、樋形状部を削除する形36にしてもよい。このような形状では、削除部分36でインテークエアコネクタの内壁面が露出するように形成することとなる。本発明の樋形状部30は、インテークエアコネクタ10の内壁面に露結したオイルをEGRバルブを回避して下流側に流すことであるので、樋形状部分を削除しても、貫通孔を形成してもよい。従って、樋形状部30で上流側から下流側にオイルを流す通路を削除部分36と呼ぶ。すなわち、削除部分36は貫通孔33を含む。
【0032】
また、樋形状部30の削除部分36は、再還流ガス流入口32と対応した位置でなければ複数箇所に設定してもよい((図5(b))。また、削除部分36の幅も、削除部分から流出したオイルがEGRバルブに接触しなければ特に限定されるものではない。
【0033】
なお、好ましくはEGRバルブ30のシャフト駆動部23に対応する位置で樋形状部30の削除部分36を形成しないのがよい。シャフト駆動部23にオイル等が到達すると、シャフト駆動部23でデポジットが形成され、シャフトの駆動に影響を及ぼす場合もあるからである。
【0034】
以上のように、本発明のEGR構造1は、吸気中のオイルをEGRバルブ30の弁部21やシャフト駆動部23に触れない領域のインテークエアコネクタ10の内壁面上に流出させて、下流側に流すのでEGRバルブにデポジットが形成されない。結果、時間経過によるEGRバルブ30の作動不良の発生を抑制することができる。
【0035】
(実施の形態2)
図5には本実施の形態のEGR構造を示す。エアクリーナ2からインテークマニホールド3に至るインテークエアコネクタ10中に配置されたEGRバルブ20の直近上流側に樋形状部30を設けるのは実施の形態1の場合と同じである。
【0036】
本実施の形態では、樋形状部30にはインテークエアコネクタ10に沿って配置された筒形状部40が接続されている。筒形状部の一端の開口部分41は、樋形状部の削除部分36にあり、他端の開口部分42がEGRバルブより下流側に設けられている。インテークエアコネクタ10の内壁面に生じたオイル等は、樋形状部30でかき集められ、この筒形状部40を通ってEGRバルブより下流の他端の開口部分42で流出される。
【0037】
このようにすることで、EGRバルブ周辺にはデポジットが全く生成されない。従って、経時的観点からも、EGRバルブ周辺にデポジットが形成され、EGRバルブの作動不良の原因になるということがない。
【0038】
(実施の形態3)
図6に本実施の形態のEGR構造を示す。エアクリーナ2からインテークマニホールド3に至るインテークエアコネクタ10中に配置されたEGRバルブ20の直近上流側に樋形状部30を設けるのは実施の形態1および2の場合と同じである。
【0039】
図6(a)はインテークエアコネクタ10内のEGRバルブ20および樋形状部30を示す斜視図であり、図6(b)は上方(T方向)から見た平面図であり、図6(c)は側面(S方向)から見た断面図を示す。本実施の形態では、樋形状部30は、インテークエアコネクタ10に沿って、斜めに形成される。そして、樋形状部30の削除部分36は、最も下流側に形成される。削除部分36はEGRバルブの弁部21に相当する位置ではない位置に形成される。
【0040】
インテークエアコネクタ10内は、常に上流から下流に向かう吸気が流れている。従って、樋形状部30が上流から下流に向けて斜めに内壁面と接合されていると、内壁面に発生したオイルは樋形状部30の凹み32を伝わり下流側に流され、最も下流にある削除部分36から下流に流出する。そして、下流側に形成された削除部分36はEGRバルブ20の弁部21に相当する位置でない位置に形成されていれば、EGRバルブにデポジットが形成されることがない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のEGR構造は、車両の吸気システムに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 EGR構造
7 吸気(ブローバイガスを含む吸気)
7a 吸気(ブローバイガスおよび再循環ガスを含む吸気)
10 インテークエアコネクタ
13 再循環ガス流入口
14 再循環ガスパイプ
20 EGRバルブ
21 弁部
22 シャフト
23 シャフト駆動部
30 樋形状部
31 樋形形状部の高さ
32 凹み
33 貫通孔
34 再還流ガス流入口13と対応した位置
36 削除部分
40 筒形状部
41 筒形状部の一端の開口部分
42 筒形状部の他端の開口部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアクリーナから車両用内燃機関のインテークマニホールドにエアを送る吸気通路の途中に設けられた再循環ガス導入口を、前記吸気通路内を貫通して設けたEGRバルブによって開閉するEGRの構造であって、
前記吸気通路内の前記EGRバルブより上流部に前記吸気通路の内壁面から前記吸気通路の中央部に向かって突出する樋形状部を設け、
前記樋形状部は前記EGRバルブの先端に対応する以外の位置で削除部分を有することを特徴とするEGR構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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