説明

EGR装置の凍結防止装置

【課題】簡単な構成によってEGRパイプ出口の温度を高めることによりEGRパイプ出口に配置されるEGRバルブの凍結を防止する。
【解決手段】排気側から排気ガスの一部を抜き出して吸気側へ再循環するEGRパイプ11の途中にEGRクーラを備え、EGRクーラ下流の下流側EGRパイプ11bにフランジ部15を介してEGRバルブ13が接続されているEGR装置の凍結防止装置であって、フランジ部15に温水通路16を設け、温水通路16に温水配管23,24を介してエンジン温水22を導くようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外気の極低温時にEGRバルブが凍結する問題を防止するようにしたEGR装置の凍結防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のエンジン等では、排気側から排気ガスの一部を抜き出して吸気側へと戻し、その吸気側に戻された排気ガスでエンジン内での燃料の燃焼を抑制させて燃焼温度を下げることによりNOx(窒素酸化物)の発生を低減するようにした、いわゆる排気ガス再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)が行われている。
【0003】
通常、この種の排気ガス再循環を行うEGR装置の場合には、排気マニホールドから排気管に亘る排気通路の適宜位置と、吸気管から吸気マニホールドに亘る吸気通路の適宜位置との間をEGRパイプにより接続し、該EGRパイプを通して排気ガスを再循環させるようにしている。
【0004】
このとき、EGRパイプの途中にEGRクーラを設けてエンジンに再循環する排気ガスを冷却すると、排気ガスの温度が下がり且つその容積が小さくなることにより、エンジンの出力を余り低下させずに燃焼温度を低下してNOxの発生を効果的に低減することができる。
【0005】
この種のEGR装置にあっては、例えば、外気温度が氷点下になっているような寒冷地での冷間アイドル時(エキブレON)に、EGRクーラの出口付近で排気ガス中の水蒸気が凝縮し、その凝縮水がEGRクーラのチューブ内及びEGRクーラの出口に配置されるEGRバルブ上に溜まり、溜った凝縮水が凍結することにより、EGRクーラのチューブが閉塞する、或いは、EGRバルブが凍結によって作動しなくなる場合が生じて、EGR装置が機能しなくなる虞れがある。
【0006】
この問題を解決するために、従来では、前記EGRパイプの外周に保温・断熱材を巻付けることにより前記EGRパイプを保温することが行われていた。しかし、この方法では、EGRパイプの外周に保温・断熱材を巻き付ける作業が大変でコストが増加する問題があり、更に、極低温の条件では凝縮水の凍結を確実に防止することができない場合があった。
【0007】
このため、弁体を備えたアクチュエータのハウジングに、冷却液体循環系に接続可能なポートを有するウォータージャケットを備えたEGRバルブの構成が、本発明と同一出願人による特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平04−063960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記特許文献1に示すEGRバルブは、ハウジングのウォータージャケットに冷却液体を循環することによりアクチュエータの構成部品の温度上昇を防止するというものであって、弁体の凍結を防止するものではない。従って、特許文献1において弁体の凍結を防止するために、アクチュエータのハウジングに設けたポートに冷却液体を循環させた場合には、弁体はポートの冷却液体によって間接的に暖められることになるため、弁体の温度上昇は低く、そのために弁体上に溜まった凝縮水の凍結を防止する効果は低いという問題がある。又、アクチュエータのハウジングの内部にポートを設けることは、ハウジングの製造を面倒にする問題がある。
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑みてなしたもので、簡単な構成によってEGRパイプ出口の温度を高めることによりEGRパイプ出口に配置されるEGRバルブの凍結を防止するようにしたEGR装置の凍結防止装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のEGR装置の凍結防止装置は、排気側から排気ガスの一部を抜き出して吸気側へ再循環するEGRパイプの途中にEGRクーラを備え、該EGRクーラ下流の下流側EGRパイプにフランジ部を介してEGRバルブが接続されているEGR装置の凍結防止装置であって、前記フランジ部に温水通路を設け、該温水通路に温水配管を介してエンジン温水を導くようにしたことを特徴とする。
【0012】
而して、上記EGR装置の凍結防止装置によれば、下流側EGRパイプとEGRバルブとを接続するフランジ部に設けた温水通路にエンジン温水を導くようにしているので、フランジ部はエンジン温水によって暖められる。従って、寒冷時に、フランジ部の下流に位置するEGRバルブが、EGRクーラにより排気ガスから分離されて導かれる凝縮水によって凍結する問題を防止する。
【0013】
前記温水通路が、下流側EGRパイプの出口フランジのフランジ面に形成した通路溝であることは好ましく、通路溝とした場合には鋳造によって下流側EGRパイプを製造する際の製造が容易になる。
【発明の効果】
【0014】
上記した本発明のEGR装置の凍結防止装置によれば、下流側EGRパイプとEGRバルブとを接続するフランジ部に温水通路を設けてエンジン温水を導くようにしたので、フランジ部はエンジン温水によって暖められ、よって寒冷時に、フランジ部の下流に位置するEGRバルブが、EGRクーラにより排気ガスから分離されて導かれる凝縮水によって凍結する問題を防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明におけるEGR装置の凍結防止装置の一実施例を示す側面図である。
【図2】図1をII方向から見た平面図である。
【図3】本発明を適用するエンジンの一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図3は本発明を適用するエンジンの一例を示す平面図であり、1は複数の気筒2を備えたディーゼルエンジンの場合を示している。このエンジン1には、ターボチャージャ3が備えてあり、図示しないエアクリーナから吸気ダクト4に導かれた吸気5が前記ターボチャージャ3のコンプレッサ3aへと送られ、該コンプレッサ3aで加圧された吸気5がインタクーラ6へと送られて冷却され、該インタクーラ6で冷却された吸気5は吸気ダクト4を介して吸気マニホールド7へ導かれてエンジン1の各気筒2に分配されるようになっている。
【0018】
更に、エンジン1の各気筒2から排出された排気ガス8は、排ガスマニホールド9を介しターボチャージャ3のタービン3bへと送られ、該タービン3bを駆動した排気ガス8は排ガス管10を介し車外へ排出されるようにしてある。
【0019】
又、エンジン1には、排ガスマニホールド9からの排気ガス8の一部を取り出して前記吸気マニホールド7入口の吸気ダクト4に導くためのEGRパイプ11と、該EGRパイプ11の途中に備えて排気ガス8を冷却するEGRクーラ12と、冷却した排気ガス8を吸気ダクト4に再循環する量を調節するためのEGRパイプ11の下流側に備えた開閉自在なEGRバルブ13とを有するEGR装置14が備えられている。
【0020】
前記EGRパイプ11は、EGRクーラ12より上流側の上流側EGRパイプ11aと、EGRクーラ12より下流側の下流側EGRパイプ11bとからなっており、下流側EGRパイプ11bの下流出口と、前記吸気ダクト4部に配置するようにした前記EGRバルブ13とはフランジ部15を介して連結されている。図3中、15aは下流側EGRパイプ11bの出口に備えた出口フランジ、15bは前記EGRバルブ13に備えた固定フランジである。
【0021】
図1、図2は、前記図3のエンジン1に備えた本発明におけるEGR装置の凍結防止装置の一実施例を示すもので、前記吸気ダクト4に組み付けるようにしたEGRバルブ13の固定フランジ15bと、下流側EGRパイプ11bに備えて前記固定フランジ15bに締結する出口フランジ15aとからなるフランジ部15に、温水通路16を設けている。
【0022】
図1では、前記下流側EGRパイプ11bの出口フランジ15aのフランジ面17に通路溝16Aを形成することにより温水通路16を設けた場合を示している。この温水通路16は、出口フランジ15aの内部に設けることもできるが、鋳造によって下流側EGRパイプ11bを製造する場合には図1のようにフランジ面17に連通した通路溝16Aとすることにより製造が容易になる。また、前記出口フランジ15aのフランジ面17に通路溝16Aを形成することに代えて、EGRバルブ13側の固定フランジ15bのフランジ面17に通路溝16Aを形成してもよく、更には、出口フランジ15aのフランジ面17とEGRバルブ13側の固定フランジ15bのフランジ面17の両方に対応して通路溝16Aを形成してもよい。図1中、13AはEGRバルブ13の開度を調整するための駆動機構である。
【0023】
前記出口フランジ15aの周縁の2個所には前記温水通路16と連通する連通路18,19を備えた突部20,21が設けてあり、該各突部20,21にはエンジン温水22を導くようにした温水配管23,24が前記連通路18,19と連通するようにボルト25等を介して固定されている。前記出口フランジ15aに設けられる前記温水通路16は、図2に示すように環状を有してもよいが、例えば半円状の温水通路16として一端を連通路18に連通し、他端を連通路19に連通させた構成としてもよい。
【0024】
前記温水配管23は、エンジン1を構成するエンジンブロックの圧力が高い部位からのエンジン温水22を連通路18に導くように接続してあり、又、前記温水配管24は、温水通路16を流動して連通路19から流出するエンジン温水22をエンジンブロックの圧力が低い部位に戻すように接続してある。
【0025】
上記実施例の作動を以下に説明する。
【0026】
外気温度が氷点下のような状況での冷間アイドル時(エキブレON)には、EGRクーラ12出口の下流側EGRパイプ11b内で排気ガス8中の水蒸気が凝縮し、その凝縮水がEGRバルブ13上に溜まり、この溜った凝縮水が凍結することにより、EGRバルブ13が凍結して作動しなくなる虞れがある。
【0027】
しかし、本発明では、EGRバルブ13と下流側EGRパイプ11bとを連結するフランジ部15に温水通路16を設けて、該温水通路16に温水配管23,24を介してエンジン温水22を循環させるようにしたので、フランジ部15の温度がエンジン温水22によって高められる。そのため、フランジ部15の下流に配置されるEGRバルブ13上に凝縮水が溜っても溜った凝縮水が凍結する問題は防止される。従って、寒冷地においても簡単な構成によりEGRバルブ13の凍結を防止して、EGR装置14を確実に機能させることができる。
【0028】
尚、本発明のEGR装置の凍結防止装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、温水通路の形状は種々変更し得ること、EGR装置を備えた種々のエンジンに適用できること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
8 排気ガス
11 EGRパイプ
11b 下流側EGRパイプ
12 EGRクーラ
13 EGRバルブ
14 EGR装置
15 フランジ部
15a 出口フランジ
16 温水通路
16A 通路溝
17 フランジ面
22 エンジン温水
23,24 温水配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気側から排気ガスの一部を抜き出して吸気側へ再循環するEGRパイプの途中にEGRクーラを備え、該EGRクーラ下流の下流側EGRパイプにフランジ部を介してEGRバルブが接続されているEGR装置の凍結防止装置であって、前記フランジ部に温水通路を設け、該温水通路に温水配管を介してエンジン温水を導くようにしたことを特徴とするEGR装置の凍結防止装置。
【請求項2】
前記温水通路は、下流側EGRパイプの出口フランジのフランジ面に形成した通路溝であることを特徴とする請求項1に記載のEGR装置の凍結防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−53558(P2013−53558A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192397(P2011−192397)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】