説明

EPCAMに対する二重特異性抗体を含む薬学的組成物

本発明は、二重特異性単鎖抗体構築物を含む薬学的組成物を提供する。この二重特異性単鎖抗体構築物は少なくとも2つのドメインを含むかまたは少なくとも2つのドメインからなるように特徴付けられ、それによって、この少なくとも2つのドメインのうちの1つがヒトEpCAMに特異的に結合し、かつアミノ酸配列NXID抗原を含む少なくとも1つのCDR-H3領域を含み、そして第2のドメインがヒトCD3抗原に結合する。本発明はさらに、本発明の薬学的組成物の製造のためのプロセス、腫瘍性疾患の予防、治療、または寛解のための方法、ならびに腫瘍性疾患の予防、治療、または寛解における開示される二重特異性単鎖抗体構築物および対応する手段の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、二重特異性単鎖抗体構築物を含む薬学的組成物に関する。この二重特異性単鎖抗体構築物は少なくとも2つのドメインを含むかまたは少なくとも2つのドメインからなるように特徴付けられ、それによって、この少なくとも2つのドメインのうちの1つがヒトEpCAMに特異的に結合し、かつアミノ酸配列NXDを含む少なくとも1つのCDR-H3領域を含み、そして第2のドメインがヒトCD3抗原に結合する。本発明はさらに、本発明の薬学的組成物の産生のためのプロセス、腫瘍性疾患の予防、治療、または寛解のための方法、ならびに腫瘍性疾患の予防、治療、または寛解における、開示される二重特異性単鎖抗体構築物および対応する手段の使用を提供する。
【0002】
種々の文献が本明細書を通して引用される。これらの文献の開示の開示内容は参照として本明細書に組み入れられる。
【0003】
上皮細胞接着分子(EpCAM、17-1A抗原、KSA、EGP40、GA733-2、ks1-4、またはesaとも呼ばれる)は、特定の上皮においておよび多くのヒト癌腫上での特異的発現を伴う、314アミノ酸の40-kDaの膜内在性糖タンパク質である(Balzar, J. Mol. Med. 1999, 77, 699-712において概説されている)。EpCAMは、マウスモノクローナル抗体17-1A/エドレコロマブ(edrecolomab)によるその認識を通して発見および続いてクローニングされた(Goettlinger, Int J Cancer. 1986; 38,47-53およびSimon, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1990; 87, 2755-2759)。モノクローナル抗体17-1Aは、ヒト結腸癌腫細胞を用いるマウスの免疫によって生成された(Koprowski, Somatic Cell Genet. 1979, 5, 957-971)。
【0004】
EpCAMのEGF様反復は、同種親和性細胞接着における側方のおよび相反する相互作用を媒介することが示され(Balzar, Mol. Cell. Biol. 2001, 21, 2570-2580)、この理由のために、上皮細胞間に優先的に局在している(Litvinov, J Cell Biol. 1997, 139, 1337-1348、 Balzar, J Mol Med. 1999, 77, 699-712、およびTrebak, J Biol Chem. 2001, 276, 2299-2309)。EpCAMは、配向されかつ高度に秩序立った様式で上皮細胞を接着するように働く(Litvinov, J Cell Biol. 1997, 139, 1337-1348)。しかし、それらの上皮にヒトEpCAMを発現するトランスジェニックマウスおよびトランスジェニックラットを用いる実験からのデータは、正常組織上のEpCAMが全身的に投与された抗体に接近可能でないかもしれないことを示唆する(McLaughlin, Cancer Immunol. Immunother., 1999, 48, 303-311)。上皮細胞の悪性形質転換の際に、急速に増殖する腫瘍細胞は、高次の細胞の上皮を放棄している。結果として、EpCAMの表面分布はより無制限となり、この分子は腫瘍細胞上により良好に露出される。それらの上皮細胞起源のために、大部分の癌腫からの腫瘍細胞はなお、それらの表面でEpCAMを発現する。
【0005】
インビボでは、EpCAMの発現は上昇した上皮増殖に関連し、かつ細胞分化とは負に相関する(概説としては、Balzar, 1999, J. Mol. Med. 77, 699-712を参照されたい)。抗EpCAMモノクローナル抗体を使用する免疫組織化学によって検出されるEpCAMの発現は、全ての主要な癌腫で本質的に見られる(Balzar, J Mol Med. 1999, 77, 699-712に概説される)。最高のEpCAM発現は、非小細胞肺癌(De Bree, Nucl Med Commun. 1994, 15, 613-27)および前立腺癌(Zhang, Clin Cancer Res. 1998, 4, 295-302)で観察され、ここでは100%の腫瘍患者試料がポジティブなEpCAM染色を示した。これらの研究において、EpCAMはまた、均一に染色された腫瘍組織に報告され、このことは抗原が所与の腫瘍の細胞の大きな割合で発現されることを示す。その広範囲に及ぶ発現ゆえに、EpCAMは「汎癌腫」抗原と呼ばれる。
【0006】
EpCAMは、種々の癌腫の診断および治療において有益であることが種々の研究において示されてきた。さらに、多くの場合において、腫瘍細胞は、それらの親の上皮またはその癌のより攻撃性でない型よりも、はるかに高い程度までEpCAMを発現することが観察された。例えば、EpCAM発現は、正常な前立腺上皮よりも、新生物組織および腺癌において有意に高いことが示され(n=76;p<0.0001)、このことは、増加したEpCAM発現が前立腺癌の発生の初期の事象を表すことを示唆した(Poczatek, J Urol. 1999, 162, 1462-1644)。さらに、子宮頸部の扁平上皮癌と腺癌の両方の大部分において、強力なEpCAM発現が、増殖の増加および末端分化についてのマーカーの消失と相関する(Litvinov, Am. J. Pathol. 1996, 148, 865-75)。1つの例は、腫瘍細胞上でのEpCAMの過剰発現が生存の予測材料である乳癌である(Gastl, Lancet. 2000, 356, 1981-1982)。さらに、EpCAMは、頭部、頸部、および肺の扁平上皮細胞癌に罹患している患者における汎発する腫瘍細胞の検出のためのマーカーとして記載されてきた(Chaubal, Anticancer Res 1999, 19, 2237-2242, Piyathilake, Hum Pathol, 2000, 31, 482-487)。表皮、口腔、喉頭蓋、咽頭、喉頭、および食道において見い出されるような正常な扁平上皮は、EpCAMを有意に発現しなかった(Quak, Hybridoma, 1990, 9, 377-387)。
【0007】
上述の癌腫に加えて、EpCAMは、大部分の原発性、転移性、および汎発性のNSCLC(非小細胞肺癌細胞)(Passlick, Int J Cancer, 2000, 87, 548-552)、胃癌および胃-食道接合部腺癌(Martin, J Clin Pathol 1999, 52, 701-4)、ならびに結腸直腸癌、膵臓癌、および乳癌に由来する細胞株(Szala, Proc Natl Acad Sci U S A 1990, 87, 3542-6, Packeisen, Hybridoma, 1999, 18, 37-40)で発現されることが示された。
【0008】
臨床試験は、結腸直腸癌を外科的に完全に切除された患者の治療のための17-1A(EpCAM)を指向する抗体の使用が、全体的な生存および距離が離れた転移の頻度に関連する顕著な恩典をもたらすことを示した(Riethmueller, Lancet, 1994, 343, 1177-1183)。EpCAMに対するマウスモノクローナル抗体は、微小残存病変を有する患者の5年間の死亡率(Riethmueller, Lancet, 1994, 343, 1177-1183)、および7年間の死亡率もまた(Riethmueller, Proceedings of the American Society of Clinical Oncology, 1996, 15, 444)減少させることが見い出された。EpCAMを認識するマウスモノクローナル抗体の例は、エドレコロマブ(Edrecolomab)(パノレックス(Panorex))である(Koprowski, Somatic Cell Genet. 1979, 5, 957-971およびHerlyn, Cancer Res., 1980, 40, 717-721)。しかし、結腸癌のアジュバント免疫治療の間のパノレックスの初回投与は、ヴェーゲナー肉芽腫症の発症および悪化をもたらした。このことは、自己免疫疾患を有する患者においてmAb 17-1Aは注意深く適用されるべきであることを示唆する(Franz, Onkologie, 2000, 23, 472-474)。パノレックスの限界は、ヒト抗マウス抗体(HAMA)の急速な形成、そのマウスIgG2a Fc部分によってヒト免疫エフェクターメカニズムと相互作用する限られた能力、および循環中での短い半減期である(Frodin, Cancer Res. 1990, 50, 4866-4871)。さらに、マウス抗体は、患者における反復注射に際して即時型アレルギー反応およびアナフィラキシーを引き起こした(Riethmueller, Lancet, 1994, 343, 1177-1183、Riethmueller, J Clin Oncol., 1998, 16, 1788-1794、およびMellstedt, Annals New York Academy of Sciences. 2000, 910, 254-261)。
【0009】
3622W94と呼ばれるヒト化抗EpCAM抗体は、膵炎および膵臓上皮の損傷の指標であるような血清アミラーゼレベルの増加を生じ、これらは、この高親和性抗EpCAMモノクローナル抗体の用量制限的な毒性であった(LoBuglio, Proceedings of the American Society of Clinical Oncology (要約). 1997, 1562、およびKhor, Proceedings of the American Society of Clinical Oncology (要約), 1997, 847)。
【0010】
EpCAMに対して指向される領域およびCD3に対して指向される領域を含む二重特異性抗体もまた、記載されている。Moeller & Reisfeld 1991 Cancer Immunol. Immunother. 33:210-216の著者らは、EpCAMに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、2種のハイブリドーマOKT3および9.3のいずれかと融合させることによる2種の異なる二重特異性抗体の構築を記載する。さらに、Kroesen, Cancer Research, 1995, 55:4409-4415は、CD3(BIS-1)およびEpCAMに対するクアドローマ二重特異性モノクローナル抗体を記載する。
【0011】
EpCAMに対する二重特異性抗体の他の例には、二重特異性抗体、BiUII、(抗CD3(ラットIgG2b)×抗EpCAM(マウスIgG2a))、そのFc領域を通してFc-レセプターポジティブアクセサリー細胞にまた、(単球/マクロファージ、NK細胞、および樹状細胞と同様に)結合およびこれを活性化する完全Ig分子(Zeidler, J. Immunol., 1999, 163:1247-1252)、ならびに配列VL17-1A-VH17-1A-VH抗-CD3-VL抗-CD3である抗EpCAMx抗-CD3二重特異性抗体が含まれる(Mack, Proc. Natl. Acad. Sci., 1995,92:7021-7025)。
【0012】
さらに、他の形式のEpCAMを含む抗体構築物:例えば、構造VH抗-CD3-VL抗-EpCAM-VH抗-EpCAM-VL抗-CD3を有する二重特異性抗体二重抗体(Helfrich, Int. J. Cancer, 1998, 76:232-239)および2つの異なる腫瘍抗原特異性(腫瘍細胞上で2つの異なる抗原を結合する2つの抗原結合領域)を有し、かつエフェクター細胞上に局在化された抗原についてのさらなる特異性を有する可能性を有し得る三重特異性抗体(DE 195 31 348)が記載されている。
【0013】
ヒトEpCAM抗原に特異的に結合する抗体またはそのフラグメントを同定するためのファージディスプレイ技術を使用する先行技術における種々の記載が存在する(De Kruif JMB, 1995, 248:97-105, WO 99/25818)。しかし、二重特異性形式において治療的適用のために十分である細胞毒性活性を示す、EpCAMに対する抗体を同定することは極度に困難であった。
【発明の開示】
【0014】
従って、T細胞の標的特異的活性化によって媒介される強力な細胞毒性活性を有するEpCAMに特異的な結合ドメインとの二重特異性単鎖分子を提供することが本発明の目的である。
【0015】
従って、本発明の根底にある技術的な問題は、腫瘍性疾患の治療およびまたは寛解のための十分に耐容性を示しかつ便利な医薬の生成のための手段および方法を提供することであった。
【0016】
この技術的問題に対する解決は、特許請求の範囲において特徴付けられる態様を提供することによって達成される。
【0017】
従って、本発明は、二重特異性単鎖抗体構築物を含む組成物、好ましくは薬学的組成物に関し、それによってこの構築物は少なくとも2つの結合ドメインを含むかまたは少なくとも2つの結合ドメインからからなり、それによってこのドメインの1つがヒトEpCAM抗原に結合し、そして第2のドメインがヒトCD3抗原に結合し、ここで、EpCAMに特異的であるこの結合ドメインは、好ましくは、SEQ ID NO:80、88、および96の102〜104位、または好ましくはSEQ ID NO:84および92の106〜108位におけるアミノ酸配列NXDを含む少なくとも1つのCDR-H3領域を含み、ここでXは芳香族アミノ酸である。
【0018】
好ましくは、または代替的に、本発明は、二重特異性単鎖抗体構築物を含む組成物、好ましくは薬学的組成物に関し、それによってこの構築物は少なくとも2つのドメインを含むかまたは少なくとも2つのドメインからからなり、それによってこの少なくとも2つのドメインの1つがヒトEpCAM抗原に特異的に結合し、かつ第2のドメインがヒトCD3抗原に結合し、ここで、EpCAMに特異的であるこの結合ドメインは、少なくとも9個のアミノ酸残基の少なくとも1つのCDR-H3領域を含み、そしてEpCAMに特異的なこの結合ドメインが5×10-9Mよりも高いKD値を有する。
【0019】
本発明に従って、「薬学的組成物」という用語は、患者、好ましくはヒト患者に対する投与のための組成物に関する。好ましい態様において、薬学的組成物は、非経口、経皮的、管腔内、動脈内、くも膜下腔内、もしくは静脈内の投与、または腫瘍への直接注射のための組成物を含む。この薬学的組成物は、注入または注射を介して患者に投与されることが特に想定される。適切な組成物の投与は、異なる方法によって、例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、局所的、または経皮的な投与によってもたらされ得る。本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容されるキャリアをさらに含み得る。適切な薬学的なキャリアの例は当技術分野において周知であり、これには、リン酸緩衝化生理食塩水溶液、水、エマルジョン(例えば油/水エマルジョン)、種々の型の湿潤剤、滅菌溶液などが含まれる。このようなキャリアを含む組成物は周知の従来的な方法によって製剤化されることが可能である。これらの薬学的組成物は、適切な用量で対象に投与され得る。投薬量レジメンは、担当医および臨床的要因によって決定される。医学分野において周知であるように、任意の一人の患者のための投薬量は、患者のサイズ、身体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与の時間および経路、一般的健康、および同時に投与される他の薬剤を含む多くの要因に依存する。投与のための好ましい投薬量は、1日あたり体重キログラムあたりの単位で、0.24μg〜48mgの範囲、好ましくは0.24μg〜24mg、より好ましくは0.24μg〜2.4mg、さらにより好ましくは0.24μg〜1.2mg、および最も好ましくは0.24μg〜240μgの範囲内であり得る。特に好ましい投薬量は本明細書中以下に列挙される。定期的な評価によって進行がモニターされ得る。投薬量は変化するが、DNAの静脈内投与のための好ましい投薬量は、約106〜1012コピーのDNA分子からである。本発明の組成物は、局所的または全身的に投与され得る。投与は、一般的に非経口的、例えば、静脈内であり;DNAもまた、標的部位に直接的に、例えば、内部もしくは外部の標的部位に微粒子銃送達によって、または動脈内の部位にカテーテルによって投与され得る。好ましい態様において、薬学的組成物は、皮下的に、およびさらに好ましい態様においては静脈内に投与される。非経口投与のための調製物には、滅菌した水性もしくは非水性の溶液、懸濁液、および乳化物が含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性キャリアには、生理食塩水および緩衝化培地を含む、アルコール性/水性溶液、乳化物、または懸濁液が含まれる。非経口溶剤には、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンガー溶液、または不揮発性油が含まれる。静脈内溶剤には、液体および栄養補給物、電解質補給物(例えば、リンガーデキストロースに基づくもの)などが含まれる。保存剤および他の添加物(例えば、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなど)もまた、存在することが可能である。さらに、本発明の薬学的組成物は、好ましくはヒト起源のタンパク質性キャリア(例えば、血清アルブミンまたは免疫グロブリンなど)を含んでもよい。本発明の薬学的組成物は、タンパク質性二重特異性単鎖抗体構築物またはそれをコードする核酸分子もしくはベクター(本発明において記載されるようなもの)に加えて、薬学的組成物の意図される使用に依存して、生物学的活性剤をさらに含んでもよいことが想定される。このような剤は、当技術分野において公知である、胃腸系に作用する薬物、細胞増殖抑制剤として作用する薬物、尿酸過剰血症を予防する薬物、T細胞同時刺激分子もしくはサイトカインなどの薬剤、免疫反応を阻害する薬物(例えば、副腎皮質ステロイド)、および/または循環系に作用する(例えば、血圧に作用する)薬物であってもよい。
【0020】
本発明の組成物の投与のための可能性のある指標は、腫瘍性疾患、特に上皮癌/癌腫(例えば、乳癌、結腸癌、前立腺癌、頭頸部癌、皮膚癌、尿生殖器管の癌、例えば、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸部癌、および腎臓癌、肺癌、胃癌、小腸の癌、肝臓癌、膵臓癌、胆嚢癌、胆管の癌、食道癌、唾液腺癌、および甲状腺の癌)である。本発明の組成物の投与は、単一の細胞の生存によって引き起こされる局所的および非局所的な腫瘍の再発によって特徴付けられる、微小残存病変、好ましくは、初期の固形腫瘍、進行した固形腫瘍、または転移性固形腫瘍のために、特に指示される。
【0021】
本発明はさらに、他の化合物、例えば、二重特異性抗体構築物、標的化された毒素、またはT細胞を介して作用する他の化合物との同時投与プロトコールをさらに想定する。本発明の化合物の同時投与のための臨床的レジメンは、他の化合物の投与と同時、その前、またはその後での同時投与を想定し得る。
【0022】
本発明の構築物の効力/活性を実証するための可能性のあるアプローチは、マウスのようなインビボモデルである。適切なモデルは、トランスジェニックおよびキメラのマウスモデルであり得る。ヒトCD3およびヒトEpCAMを発現するマウスモデル、マウスCD3を発現し、かつ腫瘍細胞がそこにヒトEpCAMを発現するキメラマウスモデルがトランスフェクトされ得、そしてヒト腫瘍がそこにEpCAMを発現するヌードマウスを含むキメラマウスモデルが移植され得るか、またはヒトEpCAMを発現する腫瘍細胞が注射され得、そしてさらに、ヒトPBMCが注射される。「二重特異性単鎖抗体構築物」という用語は、2種の抗体由来結合ドメインを含む構築物に関する。
【0023】
この結合ドメインの一方は、ヒトEpCAM抗原(標的分子1)と特異的に結合するか/それと相互作用することが可能である、抗体、その抗体フラグメントまたは誘導体の可変領域(またはその一部)からなる。第2の結合ドメインは、ヒトCD3抗原(標的分子2)と特異的に結合するか/それと相互作用することが可能である、抗体、その抗体フラグメントまたは誘導体の可変領域(またはその一部)からなる。以下に詳述されるように、可変領域の一部は、少なくとも1つのCDR(「相補性決定領域」)、最も好ましくは少なくともCDR3領域であり得る。単鎖抗体構築物における2つのドメイン/領域は、好ましくは、単一鎖として互いに共有結合される。この結合は、直接的に(ドメイン1[CD3抗原に特異的]-ドメイン2[EpCAM抗原に特異的]またはドメイン1[EpCAM抗原に特異的]-ドメイン2[CD3抗原に特異的])、またはさらなるポリペプチドリンカー配列を通して(ドメイン1-リンカー配列-ドメイン2)のいずれかでもたらされ得る。リンカーが使用される事象において、このリンカーは、好ましくは、第1および第2のドメインが互いから独立して、それらのディファレンシャルな結合特異性を保持することが可能であることを保証するために十分である長さおよび配列である。最も好ましく、かつ添付の実施例に実証されるように、本発明の薬学的組成物において利用される「二重特異性単鎖抗体構築物」は、二重特異性単鎖Fv(scFv)である。二重特異性単鎖分子は当技術分野において公知であり、WO 99/54440, Mack, J. Immunol. (1997), 158, 3965-3970, Mack, PNAS, (1995), 92, 7021-7025, Kufer, Cancer Immunol. Immunother., (1997), 45, 193-197, Loeffler, Blood, (2000), 95, 6, 2098-2103およびBruehl, J. Immunol., (2001), 166, 2420-2426において記載される。本発明の特に好ましい分子形式はポリペプチド構築物を提供し、ここで、抗体由来領域は、1つのVHおよび1つのVL領域を含む。scFv形式において、リンカー-ドメインによって互いに連結されたVHドメインおよびVLドメインの分子内配向は、列挙される二重特異性単鎖構築物について決定的でない。従って、両方の可能な配列(VHドメイン-リンカードメイン-VLドメイン;VLドメイン-リンカードメイン-VHドメイン)を有するscFvは、列挙される二重特異性単鎖構築物の特定の態様である。
【0024】
この抗体構築物はまた、例えば、組換え的に産生された構築物の単離および/または調製のためにさらなるドメインを含んでもよい。
【0025】
二重特異的単鎖抗体構築物のための対応する形式は、添付の実施例1に記載されている。
【0026】
「単鎖」という用語は、本発明に従って使用される場合、この二重特異性単鎖構築物の第1および第2のドメインが、好ましくは、単一の核酸分子によってコード可能な同一の線上のアミノ酸配列の形態で共有結合されることを意味する。
【0027】
「結合する/相互作用する」という用語は、本発明の文脈において使用される場合、少なくとも2つの「抗原相互作用部位」の互いとの結合/相互作用と定義される。「抗原相互作用部位」という用語は、本発明に従って、特異的抗原または特異的抗原の群との特異的相互作用の能力を示すポリペプチドのモチーフと定義される。この結合/相互作用はまた、「特異的認識」と定義されると理解される。「特異的に認識する」という用語は、本発明に従って、抗体分子が、本明細書に定義されるヒト標的分子の各々の少なくとも2つのアミノ酸を特異的に相互作用し、および/またはそれに結合することが可能であることを意味する。この用語は、抗体分子の特異性、すなわち、本明細書で定義されるヒト標的分子の特異的領域の間を区別するその能力に関する。その特異的抗原との抗原相互作用部位の特異的相互作用は、例えば、抗原のコンホメーションの変化の誘導、抗原のオリゴマー化などに起因して、シグナルの開始を生じ得る。さらに、この結合は、「キー-ロック原理」の特異性によって例示されてもよい。従って、抗原相互作用部位のアミノ酸配列における特異的モチーフおよび抗原は、それらの一次構造、二次構造、または三次構造の結果として、ならびにこの構造の二次的修飾の結果として互いに結合する。その特異的抗原との抗原相互作用部位の特異的相互作用は、抗原へのこの部位の単純な結合を同様に生じ得る。
【0028】
「特異的相互作用」という用語は、本発明に従って使用される場合、二重特異性単鎖抗体構築物は、同様の構造の(ポリ)ペプチドと交差反応しないか、または本質的に交差反応しないことを意味する。研究の際の二重特異性単鎖抗体構築物のパネルの交差反応性は、例えば、従来的な条件下で(例えば、Harlow および Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988 およびUsing Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999を参照されたい)、関心対象の(ポリ)ペプチドに対して、ならびに多数のより多くまたはより少なく(構造的におよび/または機能的に)密接に関連する(ポリ)ペプチドに対して、二重特異性単鎖抗体構築物のこのパネルの結合を評価することによって試験され得る。関心対象の(ポリ)ペプチド/タンパク質に結合するが、他の(ポリ)ペプチドのいずれかに結合しないか、または本質的に結合しない抗体のみが、関心対象の(ポリ)ペプチド/タンパク質に特異的であると見なされる。特異的抗原との抗原相互作用部位の特異的相互作用の例には、そのレセプターについてのリガンドの特異性が含まれる。この定義は、その特異的レセプターを結合する際にシグナルを誘導するリガンドの相互作用を特に含む。対応するリガンドの例には、その特異的サイトカイン-レセプターと相互作用し/結合するサイトカインが含まれる。セレクチンファミリー、インテグリン、およびEGFのような増殖因子のファミリーの抗原のような抗原に対する抗原相互作用部位の結合もまた、この定義に特に含まれる。この定義にまた特に含まれるこの相互作用についての他の例は、抗体の抗原性結合部位との抗原決定基(エピトープ)の相互作用である。
【0029】
「結合する/相互作用する」という用語はまた、ヒト標的分子またはその一部の2つの領域からなる、コンホメーションエピトープ、構造エピトープ、または不連続エピトープに関連し得る。本発明の文脈において、コンホメーションエピトープは、ポリペプチドがネイティブタンパク質にフォールディングするときに分子の表面上で一緒になる、一次配列中で分離した2つ以上の個別のアミノ酸配列によって定義される(Sela, (1969) Science 166, 1365およびLaver, (1990) Cell 61, 553-6)。
【0030】
「不連続エピトープ」という用語は、本発明の文脈において、ポリペプチド鎖の離れた部分からの残基から集められる非線形エピトープを意味する。これらの残基は、ポリペプチド鎖が三次元構造にフォールディングしてコンホメーション/構造エピトープを構成するときに、分子の表面で一緒になる。
【0031】
本発明の構築物はまた、本明細書中に記載されるヒトCD3複合体または本明細書中以下に開示されるようなその部分の2つの領域からなり、および/またはそれを含むコンホメーション/構造エピトープと特異的に結合/相互作用することが想定される。
【0032】
従って、特異性は、当技術分野において公知である方法、および本明細書に開示および記載される方法によって実験的に決定され得る。このような方法には、ウェスタンブロット、ELISA試験、RIA試験、ECL試験、IRMA試験、EIA試験、およびペプチドスキャンが含まれるがこれらに限定されない。
【0033】
「抗体フラグメントまたはその誘導体」という用語は、Fab、F(ab2)'、Fv、またはscFvのフラグメントなどの単鎖抗体、もしくはそのフラグメント、合成抗体、抗体フラグメント、またはこれらのいずれかの化学的に修飾された誘導体に関する。本発明に従って利用される抗体、またはそれらの対応する免疫グロブリン鎖は、当技術分野において公知である従来的な技術を使用して、例えば、単独でまたは組み合わせて、当技術分野において公知であるアミノ酸の欠失、挿入、置換、付加、および/または組換え、および/または任意の他の修飾(例えば、例えば、グリコシル化およびリン酸化などの翻訳後修飾および化学修飾)の使用によって、さらに修飾され得る。免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列の根底にあるDNA配列にこのような修飾を導入するための方法は、当業者に周知である;例えば、Sambrook(1989)、前掲。
【0034】
「(ポリ)ペプチド」という用語は、本明細書中で使用される場合、ペプチドの群ならびにポリペプチドの群を含む分子の群を説明する。ペプチドの群は、30アミノ酸までの分子からなり、ポリペプチドの群は、30アミノ酸より多くの分子からなる。
【0035】
「抗体フラグメントまたはその誘導体」という用語は、少なくとも1つのCDRを含む(ポリ)ペプチド構築物に特に関する。
【0036】
列挙される抗体分子のフラグメントまたは誘導体は、上記の抗体分子のいびつである(ポリ)ペプチド、および/または化学的/生化学的方法もしくは分子生物学的方法によって修飾される(ポリ)ペプチドと定義される。対応する方法は当技術分野において公知であり、とりわけ実験室用マニュアルに記載されている(Sambrook et al.; Molecular Cloning: A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd edition 1989および3rd edition 2001; Gerhardt et al.; Methods for General and Molecular Bacteriology; ASM Press, 1994; Lefkovits; Immunology Methods Manual: The Comprehensive Sourcebook of Techniques; Academic Press, 1997; Golemis; Protein-Protein Interactions: A Molecular Cloning Manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2002を参照されたい)。
【0037】
EpCAM抗原およびCD3抗原を特異的に認識する二重特異性抗体は、先行技術において、例えば、Mack(Proc. Natl. Acad. Sci., 1995, 92:7021-7025)において記載されている。
【0038】
上述のように、本明細書に記載される二重特異性単鎖構築物に含まれるこの可変ドメインは、さらなるリンカー配列によって接続される。「ペプチドリンカー」という用語は、本発明に従うと、定義された構築物の第1のドメインおよび第2のドメインがそれによって互いに連結されるアミノ酸配列と定義される。このようなペプチドリンカーの本質的な技術的特徴は、このペプチドリンカーがいかなるポリマー化活性も含まないことである。特に好ましいペプチドリンカーは、アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser、すなわち、(Gly)4Serまたはそのポリマー、すなわち、((Gly)4Ser)xによって特徴付けられる。二次構造の促進の非存在を含むこのペプチドリンカーの特徴は当技術分野において公知であり、および例えば、Dall'Acqua et al. (Biochem. (1998) 37, 9266-9273)、Cheadle et al. (Mol Immunol (1992) 29, 21-30)およびRaag および Whitlow (FASEB (1995) 9(1), 73-80)において記載されている。より少ないアミノ酸残基を含むペプチドリンカーもまた特に好ましい。5個未満のアミノ酸を有するペプチドリンカーは、4個、3個、2個、または1個のアミノ酸を含むことが想定される。この「ペプチドリンカー」の文脈において、特に好ましい「単一の」アミノ酸はGlyである。従って、このペプチドリンカーは、単一のアミノ酸Glyからなってもよい。さらに、任意の二次構造をまた促進しないペプチドリンカーが好ましい。このドメインの互いへの連結は、実施例に記載されるように、例えば、遺伝子操作によって提供され得る。融合しかつ作動可能に連結された二重特異性単鎖構築物を調製するための方法、および哺乳動物細胞または細菌においてそれらを発現するための方法は、当技術分野において周知である(例えば、WO 99/54440, Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. 1989および1994またはSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 2001)。
【0039】
本明細書中上記および下記に記載される二重特異性単鎖抗体構築物は、ヒト化または脱免疫された抗体構築物であり得る。(ポリ)ペプチドおよび特に抗体構築物のヒト化および/または脱免疫のための方法は、当業者に公知である。
【0040】
本発明において、驚くべきことに、アミノ酸配列NXD(アスパラギン-X-アスパラギン酸)、好ましくはSEQ ID NO:80、88、および96の102〜104位、またはSEQ ID NO:84および92の106〜108位(ここでXは芳香族アミノ酸である)を含む少なくとも1つのCDR-H3領域を含むEpCAM抗原に対する特異性を有するドメインが、二重特異性単鎖抗体構築物の特異的形成において特に有用であることが見い出された。これらの二重特異性単鎖抗体構築物は、薬学的組成物としては特に有用である。なぜなら、これらの構築物は、これらのアミノ酸を含まない構築物よりも有利であるからである。
【0041】
さらに、驚くべきことに、少なくとも9個のアミノ酸残基の少なくとも1つのCDR-H3領域を含み、かつ5×10-9Mより高いKD値を有するEpCAM抗原についての特異性を有するドメインが、二重特異性単鎖抗体構築物の特異的形式において特に有用であることが見い出された。これらの二重特異性単鎖抗体構築物は、薬学的組成物としては特に有用である。なぜなら、これらの構築物は、9個未満のアミノ酸残基の構築物よりも有利であるからであり、ここでは、EpCAMに特異的な結合ドメインは5×10-9M未満のKD値を有する。
【0042】
先行技術の構築物は、添付の実施例に示されるように、より有利ではないEC50値および/またはより効率的ではないかもしくは完全な精製によって特徴付けられる。本発明に従って利用されるCD3抗原について特異性を有する単鎖構築物のドメインがN末端ならびにC末端の位置で高度に生物反応性であることは特に驚くべきことであった。ここで、特にVH(抗-CD3)-VL(抗-CD3)の配置が特に好ましい。本発明の薬学的組成物において利用される構築物は、有利な産生および精製特性、ならびにそれらの高度な生物活性、すなわち、それらの望ましい細胞毒性活性によって特徴付けられる。特に、本発明の構築物の細胞毒性活性が、従来的なM79x抗CD3構築物およびHD70x抗CD3構築物の細胞毒性活性と比較されたときに、本発明の構築物は、明確により高い生物活性を示した(図11B)。対応する高い生物活性は、細胞毒性試験において決定されるように、低いEC50値から非常に低いEC50値によって反映される。分子のEC50値が低くなるにつれて、高い細胞毒性、すなわち、細胞溶解における構築物の効力が高くなる。他方、EC50値が高くなるにつれて、細胞溶解を誘導する際に分子の有効性が低くなる。「EC50」という用語は、本発明の文脈においては、当技術分野において公知である方法に従って決定され、かつ添付の実施例において例証されるようなEC50値に対応する。標準的な用量-応答曲線は、4つのパラメーターによって規定される。ベースライン応答(下端)、最大応答(上端)、傾き、およびベースラインと最大との間の半分の応答を誘発する薬物濃度(EC50)である。EC50は、ベースライン(下端)と最大応答(上端)との間の半分の応答を誘発する薬物または分子の濃度として定義される。本発明の構築物のより低い濃度のKD値はより高い結合親和性を示し、例えば、10-9Mの低いKDは結合構築物の高い結合親和性を示す。他方、高いKD値(例えば、10-6M)は、より低い結合親和性の構築物の結合ドメインに関連する。
【0043】
細胞溶解のパーセンテージ(すなわち、細胞毒性活性)は、とりわけ、本明細書中上記に開示される放出アッセイ、例えば、51Cr放出アッセイ、LDH放出アッセイなどによって決定され得る。最も好ましくは、本発明の文脈において、蛍光色素放出アッセイが、添付の実施例において例証されるように利用される。本発明では、本明細書中に記載される二重特異性単鎖抗体構築物の、EpCAMポジティブ細胞(添付の実施例3におけるCHO-EpCAM細胞を参照されたい)に対する強力な細胞毒性活性は、好ましくは≦500pg/ml、より好ましくは≦400pg/ml、なおより好ましくは≦300pg/ml、なおより好ましくは≦250pg/ml、最も好ましくは≦200pg/ml、≦100pg/ml、≦50pg/mlのEC50値を含む分子に関する。
【0044】
本発明の薬学的組成物に含まれる二重特異性構築物は、先行技術のM79x抗CD3構築物(VL17-1A-VH17-1A-VHCD3-VLCD3;8628pg/ml)と比較して驚くべきほど高い細胞毒性活性(好ましくは、約10pg/ml〜170pg/mlの範囲)を示した。当業者は、EC50値が生物活性アッセイに依存して変化し得ることを知っている。EC50値に影響を与える要因には、エフェクター細胞の型、エフェクター細胞の活性、標的細胞の型、E:T比、インキュベーション時間、インキュベーション温度、および他の外的環境が含まれ得る。異なる実験における同じ構築物の異なるEC50値が、対照のEC50値と比較され得る。本発明に従う高い細胞毒性活性を有する構築物は、対照よりも少なくとも2.5倍低いEC50値(対照よりも少なくとも2.5倍高い細胞毒性)、好ましくは少なくとも3倍低いEC50値、およびより好ましくは少なくとも5倍低いEC50値を有する。
【0045】
さらに、本発明の構築物は、表面プラズモン共鳴(BIAcore(登録商標))によって測定される驚くべきほど高い親和性でEpCAMを結合する。先行技術のEpCAMおよびCD3結合構築物M79x抗CD3は4×10-6MのKDを有し、本発明の構築物は2.3×10-7〜2.5×10-7MのKDを有する。
【0046】
好ましくは、このNXDモチーフにおけるXはW(トリプトファン)またはY(チロシン)である。
【0047】
本発明の薬学的組成物は二重特異性単鎖抗体構築物を含み、ここでEpCAM特異的ドメインのCDR-H3が少なくとも9アミノ酸残基、好ましくは少なくとも14アミノ酸を含むことがさらに想定される。好ましくは、CDR-H3は18個未満のアミノ酸、より好ましくは15個未満のアミノ酸を含む。従って、好ましくは、CDR-H3は9〜17アミノ酸、より好ましくは9〜15アミノ酸、および最も好ましくは10または14アミノ酸を含む。
【0048】
対応するEpCAM特異的ドメインを含む二重特異性単鎖抗体構築物は、当技術分野において公知の他のEpCAM特異的ドメインよりも、上記の構築物の形式において有利であることが驚くべきことに見い出された。このような効果は、添付の実施例3、4、および5において実証されている。先行技術のEpCAM結合抗体M79は、そのCDR-H3領域に8個のアミノ酸を含み、配列NXDを含まない(図11A)。
【0049】
本発明に従う薬学的組成物はまた、EpCAMに特異的であるその結合ドメインが5×10-9Mより高いKD値を有する構築物を含み得る。
【0050】
この薬学的組成物はさらに、CD3抗原に特異的なこの結合ドメインが10-7Mより高いKD値を有するという特徴によって特徴付けられ得る。
【0051】
このKD値は、複合体が解離する傾向を規定する物理的な値である。結合平衡A+B←→ABについては、解離定数が、2つの反応速度論的定数koffおよびkonの比:[A][B](kon)/[AB](koff)として与えられる。解離定数が小さいほど、AおよびBがより強固に互いに結合する。生物学的な系において、良好な、特異的結合因子は、10-9〜10-7Mの範囲の解離定数を有する。KDは、当業者に公知である多数の方法(例えば、表面プラズモン共鳴(SPR、例えば、BIAcore(登録商標)を用いる)、分析用超遠心分離、等温滴定熱量測定、蛍光異方性、蛍光スペクトル分析、または放射性標識リガンド結合アッセイ)を用いて測定され得る。
【0052】
本発明の構築物のKDは、表面プラズモン共鳴(SPR)スペクトル測定を使用して測定された。リガンドは、固定化された抗原チップ表面に対して注入され、結合に際してのそのチップ表面上での光学密度の変化が測定される。反射角の変化によってモニターされる光学密度の変化は、チップ表面へのリガンド結合の量と直接的に相関する-使用する生物物理学的現象は、表面プラズモン共鳴と呼ばれる。
【0053】
相互作用パートナーの1つは、表面プラズモン共鳴(例えば、BIAcore(登録商標))に基づく装置のセンサーチップの表面上に固定されなければならない。チップ表面上固定化された抗原とのリガンドの結合および解離の反応速度論はリアルタイムで観察される。結合曲線は、反応速度論的速度定数konおよびkoffにフィットされ、見かけの平衡解離定数(KD)を生じる。
【0054】
EpCAMに特異的なこの結合ドメインが1×10-7と5×10-9Mの間の範囲のKD値を有し、かつCD3に特異的なこの結合ドメインが1×10-6と5×10-9Mの間の範囲のKD値を有することが特に好ましい。
【0055】
特に好ましい態様において、薬学的組成物は、CD3抗原に特異的なこの結合ドメインが>1×10-7M(1×10-7Mより高い)KD値を有するという特徴によってさらに特徴付けられ得る。
【0056】
本発明の構築物は、これらが腫瘍細胞を殺傷するために多数回使用され得るという利点を有する。なぜなら、EpCAM結合部分は、5×10-9Mより高いKD値の親和性を有するからである。EpCAM発現腫瘍細胞を結合するための二重特異性構築物の親和性が高すぎる場合、この構築物は、腫瘍細胞が殺傷された場合でさえ1つのEpCAM発現腫瘍細胞に結合しかつその表面上に残存し、殺傷される別の腫瘍細胞に対して継続することができない。本発明の構築物のさらなる利点は、EpCAMに特異的な結合ドメインが高い親和性で結合し(より低いKD値に対応する)、従って、循環しているT細胞を、二重特異性構築物でマークされた腫瘍細胞に導くことである。従って、二重特異性構築物のEpCAMに特異的な結合ドメインのKDは好ましくは10-7〜5×10-9Mの範囲内にあり、CD3に特異的な結合ドメインのKDは好ましくは10-6〜5×10-9Mの範囲内にある。好ましい態様において、EpCAM結合ドメインのKD値はCD3結合ドメインのKD値よりも低く、これはCD3結合ドメインと比較して高い親和性のEpCAM結合ドメインに対応する。
【0057】
さらに、本発明の薬学的組成物は、EpCAM特異的ドメインのCDR-H3が少なくとも9アミノ酸、好ましくは少なくとも14アミノ酸を含む二重特異性単鎖抗体構築物を含むことが想定される。好ましくは、CDR-H3は18アミノ酸未満、より好ましくは15アミノ酸未満を含む。従って、CDR-H3は9〜17アミノ酸、より好ましくは9〜15アミノ酸、および最も好ましくは10または14アミノ酸を含む。
【0058】
本発明の薬学的組成物の好ましい態様において、ヒトEpCAM抗原に特異的なドメインのVH鎖は以下からなる群より選択される。
(a)SEQ ID NO:80、SEQ ID NO:84、SEQ ID NO:88、SEQ ID NO:92、およびSEQ ID NO:96のいずれかに示されるアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:79、SEQ ID NO:83、SEQ ID NO:87、SEQ ID NO:91、およびSEQ ID NO:95に示される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列;
(c)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で(b)において定義される核酸配列の相補鎖とハイブリダイズする核酸配列によってコードされるアミノ酸配列;
(d)(b)および(c)のいずれか一方のヌクレオチド配列に対する遺伝コードの結果としての縮重である核酸配列によってコードされるアミノ酸配列。
【0059】
「ハイブリダイズする」という用語は、本明細書中で使用される場合、本明細書中で定義される二重特異性単鎖構築物またはその部分をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズすることが可能であるポリヌクレオチド/核酸配列をいう。従って、このポリヌクレオチドは、それぞれ、RNAまたはDNAの調製物のノーザンブロット分析もしくはサザンブロット分析におけるプローブとして有用であり得、またはそれらのそれぞれのサイズに依存してPCR分析におけるオリゴヌクレオチドプライマーとして使用され得る。好ましくは、このハイブリダイズするポリヌクレオチドは、少なくとも10個、より好ましくは少なくとも15個の長さのヌクレオチドを含むのに対して、プローブとして使用されるための本発明のハイブリダイズするポリヌクレオチドは、少なくとも100個、より好ましくは少なくとも200個の、または最も好ましくは少なくとも500個の長さのヌクレオチドを含む。
【0060】
いかにして核酸分子を用いてハイブリダイゼーション実験を実行するかは周知であり、すなわち、当業者は、本発明に従って彼らがどのハイブリダイゼーション条件を使用しなくてはならないかを知っている。このようなハイブリダイゼーション条件は、Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (2001) N.Y.などの標準的な教科書において言及されている。本発明に従って好ましいものは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、本発明のポリヌクレオチドまたはその部分にハイブリダイズすることが可能であるポリヌクレオチドである。
【0061】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、例えば、50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mM クエン酸ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH 7.6)、5×デンハルト溶液、10%硫酸デキストラン、および20μg/ml変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中での42℃、一晩のインキュベーション、続いて0.1×SSCにおける約65℃でのフィルターの洗浄をいう。よりストリンジェンシーの低いハイブリダイゼーション条件で本発明のポリヌクレオチドにハイブリダイズする核酸分子もまた意図される。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーおよびシグナル検出の変化は、主として、ホルムアミド濃度(より低いホルムアミドのパーセンテージはより低いストリンジェンシーを生じる);塩濃度、または温度の操作を通して達成される。例えば、よりストリンジェンシーの低い条件は、6×SSPE(20×SSPE=3M NaCl;0.2M NaH2PO4;0.02M EDTA, pH 7.4)、0.5% SDS、30%ホルムアミド、100μg/mlサケ精子ブロッキングDNAを含む溶液中での37℃での一晩のインキュベーション;引き続く50℃での1×SSPE、0.1% SDSを用いる洗浄を含む。さらに、なおより低いストリンジェンシーを達成するために、ストリンジェントなハイブリダイゼーション後に実行される洗浄が、より高い塩濃度(例えば、5×SSC)で行われ得る。上記の条件におけるバリエーションが、ハイブリダイゼーション実験におけるバックグラウンドを抑制するために使用される代替的なブロッキング試薬を含めることおよび/またはそれで置換することを通して達成され得ることに注目されたい。代表的なブロッキング試薬には、デンハルト試薬、BLOTTO、ヘパリン、変性サケ精子DNA、および市販の独自製品の処方物が含まれる。特異的ブロッキング試薬を含めることは、適合性に伴う問題に起因して、上記のハイブリダイゼーション条件の修飾を必要とする可能性がある。
【0062】
列挙される核酸分子は、例えば、DNA、cDNA、RNA、または合成的に製造されるDNAもしくはRNA、または単独でもしくは組み合わせてこれらのポリヌクレオチドのいずれかを含む組換え的に製造されるキメラ核酸分子であり得る。
【0063】
好ましくは、本発明のこの薬学的組成物は、ヒトEpCAM抗原に特異的なVL鎖ドメインが以下からなる群より選択される二重特異性単鎖構築物を含み得る。
(a)SEQ ID NO:82、SEQ ID NO:86、SEQ ID NO:90、SEQ ID NO:94、およびSEQ ID NO:98のいずれかに示されるアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:81、SEQ ID NO:85、SEQ ID NO:89、SEQ ID NO:93、およびSEQ ID NO:97に示される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列;
(c)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で(b)において定義される核酸配列の相補鎖とハイブリダイズする核酸配列によってコードされるアミノ酸配列;
(d)(b)および(c)のいずれか一方のヌクレオチド配列に対する遺伝コードの結果としての縮重である核酸配列によってコードされるアミノ酸配列。
【0064】
本発明の薬学的組成物の好ましい態様において、このヒトCD3特異的ドメインのVH領域およびVL領域は、

からなる群より選択されるCD3特異的抗体に由来する。これらのCD3特異的抗体は当技術分野において周知であり、とりわけ、Tunnacliffe (1989), Int. Immunol. 1, 546-550において記載されている。より好ましい態様において、このCD3特異的ドメインのこのVHおよびVL領域はOKT-3(上記に定義されかつ記載される)に由来する。なおより好ましくは(および添付の実施例において例証されるように)、このVH領域およびVL領域は、Traunecker (1991), EMBO J. 10, 3655-3659によって記載されたCD3分子についての特異性を有する抗体/抗体誘導体であるか、またはそれに由来する。本発明に従って、このVHおよびVL領域は、他のTCRサブユニットの文脈において(例えば、ヒトCD3-ε鎖についてトランスジェニックであるマウス細胞において)ヒトCD3-ε鎖を特異的に認識することが可能である抗体/抗体誘導体などに由来する。これらのトランスジェニックマウス細胞は、ネイティブなまたはほぼネイティブなコンホメーションでヒトCD3-ε鎖を発現する。従って、CD3-ε鎖特異的抗体に由来するVHおよびVL領域は、本発明に従って最も好ましく、この(親の)抗体は、TCR複合体の文脈において提示されるヒトCD3の、ネイティブもしくはほぼネイティブな構造を反映するエピトープ、またはコンホメーションエピトープを特異的に結合することが可能であるはずである。このような抗体は、Tunnacliffe (1989)によって「グループII」抗体として分類されてきた。Tunnacliffe (1989)によるさらなる分類は、CD3に対して指向される「グループI」および「グループIII」の抗体の定義を含む。「グループI」抗体は、UCHT1と同様に、組換えタンパク質として、および細胞表面上でTCRの一部として発現されたCD3-εを認識する。従って、「グループI」抗体は、CD3-ε鎖に高度に特異的である。対照的に、本発明で好ましい「グループII」抗体は、他のTCRサブユニットと結合しているネイティブなTCR複合体中でのみ、CD3-ε鎖を認識する。理論に拘束されることはないが、本発明の文脈において、「グループII」抗体においては、TCR含量がCD3-ε鎖の認識のための必要であることが仮定される。ε鎖と結合されるCD3-γ鎖およびδ鎖もまた、「グループII」抗体の結合に関与する。3つ全てのサブユニットが免疫レセプターチロシン活性化モチーフ(ITAM)を発現し、これは、タンパク質チロシンに基づくキナーゼによってチロシンリン酸化され得る。この理由のために、グループII抗体は、CD3-ε鎖、γ鎖、およびδ鎖を介してT細胞シグナル伝達を誘導し、CD3-ε鎖を介してT細胞シグナル伝達を選択的に誘導するグループI抗体と比較してより強力なシグナルをもたらす。さらに、治療的適用のためには、強力なT細胞シグナル伝達の誘導が望ましいので、本発明の薬学的組成物中に含まれる二重特異性単鎖構築物において利用されるVH(抗CD3)/VL(抗CD3)領域(またはその部分)は、好ましくは、ヒトCD3に対して指向される抗体に由来し、かつTunnacliffe (1989)前掲による「グループII」に分類される。
【0065】
1つの態様において、本発明は、二重特異性単鎖抗体構築物が以下の群から選択されるアミノ酸配列を含む薬学的組成物に関する。
(a)SEQ ID NO:2、4、8、10、12、14、16、18、20、30、36、39、42、44、46、48、50、52、54、56、58、および60のいずれかに示されるアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:1、3、7、9、11、13、15、17、19、29、35、38、41、43、45、47、49、51、53、55、57、および59のいずれかに示される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列;
(c)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で(b)において定義される核酸配列の相補鎖とハイブリダイズする核酸配列によってコードされるアミノ酸配列;
(d)(b)および(c)のいずれか一方のヌクレオチド配列に対する遺伝コードの結果としての縮重である核酸配列によってコードされるアミノ酸配列。
【0066】
本発明はまた、上記に定義されたような二重特異性単鎖抗体構築物をコードする核酸配列を含む薬学的組成物を提供する。
【0067】
この核酸分子は、天然の核酸分子ならびに組換え核酸分子であり得る。従って、この核酸分子は、天然起源、合成、または半合成であり得る。これは、DNA、RNA、ならびにPNA(ペプチド核酸)を含み得るか、またはそのハイブリッドであり得る。
【0068】
従って、本発明は、以下の群から選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む薬学的組成物に関する。
(a)本明細書中に定義される二重特異性単鎖抗体構築物のアミノ酸配列、好ましくは、SEQ ID NO:2、4、8、10、12、14、16、18、20、30、36、39、42、44、46、48、50、52、54、56、58、および60のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む成熟型タンパク質をコードするヌクレオチド配列;
(b)SEQ ID NO:1、3、7、9、11、13、15、17、19、29、35、38、41、43、45、47、49、51、53、55、57、および59のいずれかに示されるDNA配列を含むか、またはこの配列からなるヌクレオチド配列;
(c)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で(b)において定義される核酸配列の相補鎖とハイブリダイズするヌクレオチド配列;
(d)(a)または(b)のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列の1個または数個のアミノ酸の置換、欠失、および/または付加の手段によって、(a)または(b)のヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質に由来するタンパク質をコードするヌクレオチド配列;
(e)(a)または(b)のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して、少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列;
(f)(a)から(e)のいずれか1つのヌクレオチド配列に対する遺伝コードの結果としての縮重である核酸配列。
【0069】
「成熟型タンパク質」という用語は、本発明に伴う文脈において、その対応するmRNAから翻訳され、および任意に続いて修飾されるタンパク質と定義される。
【0070】
「ハイブリダイズする」という用語は、本明細書中上記に、本発明の文脈において定義されている。
【0071】
本発明の薬学的組成物に含まれる核酸分子に、調節配列が加えられ得ることは当業者には明らかである。例えば、プロモーター、転写エンハンサー、および/または本発明のポリヌクレオチドの発現の誘導を可能にする配列が利用され得る。適切な誘導系は、例えば、例えばGossen および Bujard (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (1992, 5547-5551))およびGossen et al. (Trends Biotech. 12 (1994), 58-62)によって記載されるようなテトラサイクリン調節される遺伝子発現、または、例えばCrook (1989) EMBO J. 8, 513-519によって記載されるようなデキサメタゾン誘導性遺伝子発現系である。
【0072】
また、さらなる目的のために、核酸分子が、例えば、チオエステル結合および/またはヌクレオチドアナログを含み得ることが想定される。この修飾は、細胞中のエンドヌクレアーゼおよび/またはエキソヌクレアーゼに対する核酸分子の安定化のために有用であり得る。この核酸分子は、細胞中でこの核酸分子の転写を可能にするキメラ遺伝子を含む適切なベクターによって転写され得る。この点に関して、このようなポリヌクレオチドが「遺伝子標的化」または「遺伝子治療的」アプローチのために使用され得ることもまた理解される。別の態様において、この核酸分子は標識される。核酸の検出のための方法は当技術分野で周知であり、例えば、サザンブロッティングおよびノーザンブロッティング、PCR、またはプライマー伸長がある。この態様は、遺伝子治療アプローチの間に上記の核酸分子の首尾よい導入を確認するためののスクリーニング方法のために有用であり得る。
【0073】
この核酸分子は、上述の核酸分子のいずれかを単独でまたは組み合わせてのいずれかで含む組換え的に産生されたキメラ核酸分子であり得る。好ましくは、この核酸分子はベクターの一部である。
【0074】
従って、本発明はまた、本発明に記載される核酸分子を含むベクターを含む薬学的組成物に関する。
【0075】
多くの適切なベクターが分子生物学における当業者に公知であり、その選択は所望される機能に依存し、これにはプラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージ、および遺伝子操作において慣用的に使用される他のベクターが含まれる。種々のプラスミドおよびベクターを構築するために、当業者に周知である方法(例えば、Sambrookら(前掲)およびAusubel, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1989), (1994)を参照されたい)が使用され得る。または、本発明のポリヌクレオチドおよびベクターは、標的細胞への送達のためにリポソームに再構成され得る。以下でさらに詳細に議論されるように、クローニングベクターは、個別のDNAの配列を単離するために使用された。関連する配列は、特定のポリペプチドの発現が必要とされる発現ベクターに移動され得る。代表的なクローニングベクターには、pBluescript SK、pGEM、pUC9、pBR322、およびpGBT9が含まれる。代表的な発現ベクターには、pTRE、pCAL-n-EK、pESP-1、pOP13CATが含まれる。
【0076】
好ましくは、このベクターは、本明細書中に定義された二重特異性単鎖抗体構築物をコードするこの核酸配列に作動可能に連結された調節配列である核酸配列を含む。
【0077】
このような調節配列(制御エレメント)は当業者に公知であり、プロモーター、スプライシングカセット、翻訳開始コドン、ベクターに挿入を導入するための翻訳および挿入部位を含み得る。好ましくは、この核酸分子は、真核生物細胞または原核生物細胞における発現を可能にする、その発現制御配列に作動可能に連結される。
【0078】
このベクターは、本明細書中に定義される二重特異性単鎖抗体構築物をコードする核酸分子を含む発現ベクターであることが想定される。
【0079】
「調節配列」という用語は、それらがライゲーションされるコード配列の発現をもたらすために必要であるDNA配列をいう。このような制御配列の性質は、宿主生物に依存して異なる。原核生物においては、制御配列には、一般的に、プロモーター、リボソーム結合部位、およびターミネーターが含まれる。真核生物においては、一般的に、制御配列は、プロモーター、ターミネーター、およびある場合においては、エンハンサー、トランス活性化因子、または転写因子が含まれる。「制御配列」という用語は、最小限、その存在が発現のために必要である全ての成分を含むことが意図され、さらなる有利な成分もまた含み得る。
【0080】
「作動可能に連結される」という用語は、そのように記載される成分が、それらの意図される様式で機能することを可能にする関連性にある並列をいう。コード配列に「作動可能に連結される」制御配列は、コード配列の発現が制御配列と適合可能な条件下で達成されるようなやり方でライゲーションされる。制御配列がプロモーターである場合、当業者には、二本鎖核酸が好ましく使用されることが明白である。
【0081】
従って、列挙されるベクターは好ましくは発現ベクターである。「発現ベクター」は、選択された宿主を形質転換するために使用され得る構築物であり、選択された宿主中でコード配列の発現を提供する。発現ベクターは、例えば、クローニングベクター、バイナリーベクターまたは組み込みベクターであり得る。発現は、好ましくは翻訳可能なmRNAへの核酸分子の転写を含む。原核生物および/または真核生物細胞における発現を確実にする調節エレメントは当業者に周知である。真核生物細胞の場合、これらは通常、転写の開始を確実にするプロモーターを含み、ならびに任意に、転写の終結および転写の安定化を確実にするポリAシグナルを含む。原核生物宿主細胞において発現を可能にする可能性のある調節エレメントは、例えば、大腸菌(E. coli)におけるPL、lac、trp、またはtacプロモーターを含み、真核生物宿主細胞中での発現を可能にする調節エレメントの例は、酵母におけるAOX1もしくはGAL1プロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMVエンハンサー、SV40エンハンサー、または哺乳動物および他の動物細胞におけるグロビンイントロンである。
【0082】
転写の開始の原因であるエレメントに加えて、このような調節エレメントはまた、ポリヌクレオチドの下流のSV40-ポリA部位またはtk-ポリA部位などの転写終結シグナルを含み得る。さらに、使用される発現系に依存して、細胞区画にポリペプチドを方向付けるか、または培地にポリペプチドを分泌することが可能であるリーダー配列が、列挙される核酸配列のコード配列に加えられてもよく、これらは当技術分野で周知である;例えば、添付の実施例も参照されたい。リーダー配列は、適切な段階で、翻訳配列、開始配列、および終結配列と、好ましくは、翻訳されたタンパク質またはその部分の分泌を方向付けることが可能であるリーダー配列と、細胞膜周辺腔または細胞外媒体でアセンブルされる。任意に、異種配列が、所望の性質(例えば、発現された組換え産物の安定化または精製の単純化;前記を参照されたい)を付与するN末端同定ペプチドを含む融合タンパク質をコードし得る。この文脈において、適切な発現ベクターは当技術分野で公知であり、例えば、岡山-バーグcDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pEF-Neo、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(In-vitrogene)、pEF-DHFRおよびpEF-ADA(Raum et al. Cancer Immunol Immunother (2001) 50(3), 141-150)、またはpSPORT1(GIBCO BRL)である。
【0083】
好ましくは、発現制御配列は、真核生物宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトすることが可能であるベクターにおける真核生物プロモーター系であるが、しかし、原核生物宿主のための制御配列もまた使用され得る。一旦、ベクターが適切な宿主に取り込まれると、その宿主は、ヌクレオチド配列の高レベル発現のために適切な条件下で維持され、所望される場合、本発明のポリペプチドの収集および精製が続いて行われ得る;例えば、添付の実施例を参照されたい。
【0084】
細胞周期相互作用タンパク質を発現するために使用され得る代替的な発現系は昆虫系である。1つのこのような系において、Autographa californica核多核体病ウイルス(AcNPV)が、Spodoptera frugiperda細胞またはTrichoplusia larvaeにおいて外来性の遺伝子を発現するためのベクターとして使用される。列挙される核酸分子のコード配列は、ポリヘドリン遺伝子などのウイルスの必須でない領域にクローニングされ得、ポリヘドリンプロモーターの制御下に配置され得る。このコード配列の首尾よい挿入はポリヘドリン遺伝子を不活性にし、コートタンパク質の被覆を欠く組換えウイルスを産生する。次いで、組換えウイルスは、本発明のタンパク質が発現されるS. frugiperda細胞またはTrichoplusia larvaeに感染させるために使用される(Smith, j. Virol 46 (1983), 584; Engelhard, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 91 (1994), 3224-3227)。
【0085】
さらなる調節エレメントは、転写エンハンサーならびに翻訳エンハンサーを含み得る。有利には、本発明の上記のベクターは、選択可能なおよび/またはスコア付け可能なマーカーを含む。
【0086】
形質転換された細胞、例えば、植物組織および植物細胞の選択のために有用である選択可能なマーカー遺伝子は当業者に周知であり、例えば、dhfr(これはメトレキサートに対する耐性を付与する(Reiss, Plant Physiol. (Life Sci. Adv.)13 (1994), 143-149));npt(これはアミノグリコシドネオマイシン、カナマイシン、およびパロマイシンに対する耐性を付与する(Herrera-Estrella, EMBO J. 2 (1983), 987-995))およびhygro(これはハイグロマイシンに対する耐性を付与する(Marsh, Gene 32 (1984), 481-485))についての選択の基礎として代謝拮抗物質耐性を含む。さらなる選択可能な遺伝子が記載されており、すなわち、以下が記載されている。trpB(これは細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用することを可能にする);hisD(これは細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用することを可能にする)(Hartman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85 (1988), 8047);マンノース-6-リン酸イソメラーゼ(これは細胞がマンノースを利用することを可能にする)(WO 94/20627)およびODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)(これはオルニチンデカルボキシラーゼインヒビター、2-(ジフルオロメチル)-DL-オルニチン、DFMOに対する耐性を付与する)(McConlogue, 1987, Current Communications in Molecular Biology, Cold Spring Harbor Laboratory ed.)またはAspergillus terreusからのデアミナーゼ(これは、ブラスチシジンSに対する耐性を付与する(Tamura, Biosci. Biotechnol. Biochem. 59 (1995), 2336-2338))。
【0087】
有用なスコア付け可能なマーカーもまた当業者に公知であり、市販されている。有利には、このマーカーは、ルシフェラーゼ(Giacomin, Pl. Sci. 116 (1996), 59-72; Scikantha, J. Bact. 178 (1996), 121)グリーン蛍光タンパク質(Gerdes, FEBS Lett. 389 (1996), 44-47)、またはβ-グルクロニダーゼ(Jefferson, EMBO J. 6 (1987), 3901-3907)をコードする遺伝子である。この態様は、列挙されたベクターを含む細胞、組織、および生物体を単純かつ迅速にスクリーニングするために特に有用である。
【0088】
上記のように、列挙された核酸分子は、例えば、遺伝子治療のために、コードされたポリペプチドを細胞中で発現するために単独でまたはベクターの一部として使用され得る。上記の二重特異性単鎖抗体構築物のいずれか1つをコードするDNA配列を含む核酸分子またはベクターは細胞に導入され、次には関心対象のポリペプチドを産生する。遺伝子治療(これはエクスビボまたはインビボの技術によって細胞に治療遺伝子を導入することに基づく)は、遺伝子移入の最も重要な応用の1つである。インビトロまたはインビボの遺伝子治療のための適切なベクター、方法、または遺伝子送達系は文献に記載されており、当業者に公知である。例えば、以下を参照されたい。

列挙された核酸分子およびベクターは、直接的導入のために、またはリポソーム、もしくはウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、レトロウイルス)を介する細胞への導入のために設計され得る。好ましくは、この細胞は生殖系列細胞、胚性細胞、または卵細胞、またはそれらから由来する細胞であり、最も好ましくは、幹細胞である。胚性幹細胞の例は、とりわけ、Nagy, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 (1993), 8424-8428において記載されている幹細胞であり得る。
【0089】
上記に従って、本発明は、本明細書中に定義される二重特異性単鎖抗体構築物のポリペプチド配列をコードする核酸分子を含む、遺伝子操作において慣用的に使用されるベクター(特に、プラスミド、コスミド、ウイルス、およびバクテリオファージ)を誘導するための方法に関する。好ましくは、このベクターは、発現ベクターおよび/または遺伝子移入もしくは標的化ベクターである。レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、またはウシパピローマウイルスなどのウイルスに由来する発現ベクターは、標的とされた細胞集団への列挙されたポリヌクレオチドまたはベクターの送達のために使用され得る。当業者に周知である方法が組換えベクターを構築するために使用され得る;例えば、Sambrook et al. (前掲)、Ausubel(1989、前掲)または他の標準的教科書において記載される技術を参照されたい。または、列挙される核酸分子およびベクターは、標的細胞への送達のためにリポソームに再構成され得る。本発明の核酸分子を含むベクターは、周知の方法(これは細胞宿主の型に依存して変化する)によって宿主細胞に移動され得る。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションが原核生物細胞のために利用されるのに対して、リン酸カルシウム処理またはエレクトロポレーションが他の細胞宿主のために使用され得る;Sambrook、前記を参照されたい。
【0090】
列挙されるベクターは、pEF-DHFR、pEF-ADA、またはpEF-neoであり得る。
【0091】
ベクターpEF-DHFRおよびpEF-ADAは、当該分野において、例えば、Mack et al. (PNAS (1995) 92, 7021-7025)およびRaum et al. (Cancer Immunol Immunother (2001) 50(3), 141-150)ににおいて記載されている。
【0092】
本発明の薬学的組成物は、上記に定義したベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主を含むことがさらに想定される。
【0093】
この宿主は、少なくとも1つの上記のベクター、または少なくとも1つの上記の核酸分子を、宿主に導入することによって産生され得る。宿主におけるその少なくとも1つのベクターまたは少なくとも1つの核酸分子の存在が、上記の二重特異性単鎖抗体構築物をコードする遺伝子の発現を媒介し得る。
【0094】
宿主に導入される記載された核酸分子またはベクターは、宿主のゲノムに組み込まれ得るか、または染色体外に維持され得るかのいずれかである。
【0095】
宿主は、任意の原型生物または真核生物細胞であり得る。
【0096】
「原核生物」という用語は、本発明のタンパク質の発現のためにDNA分子またはRNA分子で形質転換またはトランスフェクトされ得る全ての細菌を含むことを意味する。原核生物宿主は、グラム陰性細菌ならびにグラム陽性細菌、例えば、大腸菌、S. typhimurium、Serratia marcescensおよびBacillus subtilisなどを含み得る。「真核生物」という用語は、酵母、高等植物、昆虫、および好ましくは哺乳動物の細胞を含むことを意味する。組換え産生手順において利用される宿主に依存して、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質は、グリコシル化されてもよく、またはグリコシル化されなくてもよい。特に好ましいものは、本発明のポリペプチドのコード配列ならびにそれに遺伝子が融合したN末端FLAG-タグおよび/またはC末端His-タグを含むプラスミドまたはウイルスの使用である。好ましくは、このFLAG-タグの長さは約4〜8アミノ酸であり、最も好ましくは8アミノ酸である。上記のポリヌクレオチドは、当業者に一般的に公知である技術のいずれかを使用して宿主を形質転換またはトランスフェクトするために使用され得る。さらに、融合された、作動可能に連結された遺伝子を調製する方法、ならびに例えば、哺乳動物細胞および細菌中でそれらを発現させる方法は、当技術分野において周知である(Sambrook、前掲)。
【0097】
好ましくは、この宿主は細菌、昆虫、真菌、植物、または動物の細胞である。
【0098】
列挙される宿主は、哺乳動物細胞、より好ましくはヒト細胞またはヒト細胞株であり得ることが特に想定される。
【0099】
特に好ましい宿主細胞には、CHO細胞、COS細胞、ミエローマ細胞株(SP2/0またはNS/0など)が含まれる。
【0100】
本発明の薬学的組成物はまた、細胞増殖または細胞刺激のために有用である免疫エフェクター細胞のための活性化シグナルを提供することが可能であるタンパク質性化合物を含み得る。
【0101】
タンパク質性化合物は、上記に規定された二重特異性単鎖抗体構築物のさらなるドメインとしては理解されないが、本発明の薬学的組成物の少なくとも1つのさらなる成分として理解される。
【0102】
本発明に鑑みて、免疫エフェクター細胞のために活性化シグナルを提供するこの「タンパク質性化合物」は、例えば、T細胞のためのさらなる活性化シグナル(例えば、さらなる同時刺激分子:B7ファミリーの分子、Ox40L、4.1BBL)、またはさらなるサイトカイン:インターロイキン(例えば、IL-2)、またはNKG-2D係合化合物であり得る。タンパク質性化合物の好ましい形式は、さらなる二重特異性抗体およびそのフラグメントまたは誘導体(例えば、二重特異性scFv)を含む。タンパク質性化合物は、T細胞レセプターまたはスーパー抗原に特異的なscFvフラグメントを含み得るがそれに限定されない。超抗原は、MHC非依存的な様式でT細胞レセプター可変流域の特定のサブファミリーに直接的に結合し、それによって一次T細胞活性化シグナルを媒介する。タンパク質化合物はまた、T細胞ではない免疫エフェクター細胞のための活性化シグナルを提供し得る。T細胞ではない免疫エフェクター細胞の例は、とりわけ、NK細胞を含む。
【0103】
本発明の薬学的組成物のさらなる技術的特徴は、この薬学的組成物が≧37℃で熱安定性であることである。
【0104】
本発明の代替的な態様は、本発明の薬学的組成物の製造のためのプロセスに関し、このプロセスは、この構築物の発現を可能にする条件下で本明細書に定義される宿主を培養する工程、およびこの培養から産生した二重特異性単鎖抗体構築物を回収する工程を含む。
【0105】
形質転換された宿主は、最適な細胞増殖を達成するために、当技術分野において公知である技術に従って、ファーメンター中で増殖され、かつ培養され得る。次いで、本発明のポリペプチドは、増殖培地、細胞溶解物、または細胞膜画分から単離され得る。本発明の、例えば、微生物によって発現されたポリペプチドの単離および精製は、例えば、調製用クロマトグラフィー分離および免疫学的分離(例えば、本発明のポリペプチドのタグに対して指向されるモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の使用を含むもの)などの任意の慣用的な手段によって、または添付の実施例において記載されるようにであり得る。
【0106】
発現を可能にする宿主の培養のための条件は当技術分野において公知であり、本明細書中の上記に議論される。同じ宿主がこの構築物の精製/回収のための手順についても当てはまる。
【0107】
本発明のさらなる代替的な態様は、腫瘍性疾患の予防、治療、または寛解のための薬学的組成物の調製のための、上記に定義される二重特異性単鎖抗体構築物、上記に定義される核酸配列、上記に定義されるベクター、上記に定義される宿主、および/または上記に定義されるプロセスによって産生されるこれらの使用に関する。特に、本発明の薬学的組成物は、癌の予防、寛解、および/または治療において特に有用であり得る。
【0108】
好ましくは、この腫瘍性疾患は上皮癌または微小残存癌である。
【0109】
上記に定義した二重特異性単鎖抗体構築物、核酸分子、およびベクターが、単独でまたは任意の組み合わせで、標準的なベクターおよび/または遺伝子送達系を使用して、ならびに任意に薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤とともに投与されることが本発明によって想定される。投与に続いて、この核酸分子またはベクターは対象のゲノムに安定に組み込まれ得る。
【0110】
他方、特定の細胞または組織に特異的であるウイルスベクターが使用され得、その細胞中で持続し得る。適切な薬学的キャリアおよび賦形剤は当技術分野において周知である。本発明に従って調製される薬学的組成物は、上記に同定された疾患の予防または治療または遅延のために使用され得る。
【0111】
さらに、遺伝子治療において記載された核酸分子を含む本発明の薬学的組成物を使用することが可能である。適切な遺伝子送達系には、とりわけ、リポソーム、レセプター媒介送達系、裸のDNA、およびヘルペスウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ関連ウイルスなどのウイルスベクターが含まれ得る。遺伝子治療のための身体中の特定の部位への核酸の送達はまた、Williams(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88 (1991), 2726-2729)に記載されるような微粒子銃送達系を使用して達成され得る。さらに、核酸の送達のための方法には、例えば、Verma, Gene Ther. 15 (1998), 692-699において記載されるような粒子媒介遺伝子移入が含まれる。
【0112】
さらに、本発明は、上記に定義される二重特異性単鎖抗体構築物、上記に定義される核酸配列、上記に定義されるベクター、上記に定義される宿主、および/または上記に定義されるプロセスによって産生されるこれらを、有効量で、腫瘍性疾患の予防、治療、または寛解の必要がある必要がある対象に投与する工程を含む、腫瘍性疾患の予防、治療、または寛解のための方法に関する。
【0113】
好ましくは、対象はヒトである。
【0114】
本発明の予防、治療、または寛解のための方法は、免疫エフェクター細胞のための活性化シグナルが可能である上記に定義されたタンパク質性化合物の対象への併用投与を含み得る。この併用投与は、同時併用投与または同時でない併用投与であり得る。
【0115】
腫瘍性疾患が上皮癌、好ましくは腺癌、または微小残存癌、好ましくは初期固形腫瘍、進行した固形腫瘍、もしくは転移性固形腫瘍であることが本発明の使用および方法のために特に好ましい。
【0116】
最後に、本発明は、上記に定義される二重特異性単鎖抗体構築物、上記に定義される核酸配列、上記に定義されるベクター、および/または上記に定義される宿主を含むキットに関する。本発明のキットは、単独でまたは医学的治療または介入の必要性がある患者に投与されるさらなる医薬と組み合わせてのいずれかで、本明細書中上記に記載されるような薬学的組成物を含むこともまた想定される。
【0117】
本発明は、ここで、単に例示であり本発明の範囲の限定としては解釈されない以下の生物学的な実施例に対する言及によって説明される。
【0118】
(実施例1)EpCAM構築物のクローニングおよび発現
種々の構造およびドメイン配置にある抗CD3および抗EpCAMを含む多数の構築物を生成した。抗体3-1の抗EpCAM VHおよびVL可変ドメインをSEQ ID NO:79、80、81、82に、3-5をSEQ ID NO:83、84、85、86に、4-1をSEQ ID NO:87、88、89、90に、4-7をSEQ ID NO:91、92、93、94に、および5-10をSEQ ID NO:95、96、97、98に示す。これらの構築物を表1に要約する。
【0119】
(表1)抗CD3-抗EpCAMおよび抗EpCAM-抗CD3構築物

【0120】
1.1 C末端EpCAM結合部分のクローニング
1.1.1 抗CD3 PCR産物の調製
a) もともとの18アミノ酸リンカーを有する抗CD3構築物(SEQ ID NO:1、2、3および4)
18アミノ酸リンカーを含むN末端のもともとの抗CD3(SEQ ID NO:70)を、CD19xCD3構築物(Loeffler A et al. Blood 2000 95:2098-103)をテンプレートとして、および以下のプライマー

を使用してPCRによって得た。
【0121】
b) もともとの18アミノ酸リンカーおよびCDRH3におけるCysからSerへの変異を有する抗CD3構築物(SEQ ID NO:7、8、9および10)
18アミノ酸リンカーを含むN末端のもともとの抗CD3(SEQ ID NO:70)およびCysからSerへの変異を、CD19x抗CD3(C→S変異)構築物をテンプレートとして、およびプライマーCD3 VH BsrGIおよびCD3 VL BspEI(SEQ ID NO:5および6)を使用してPCRによって得た。Cys-Ser変異を有するCDRH3配列をSEQ ID NO:78に示す。
【0122】
c)(G4S)3リンカーを有する抗CD3-抗EpCAM構築物(SEQ ID NO:11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20)
15アミノ酸標準(G4S)3リンカー(SEQ ID NO:99)を含むN末端抗CD3を、CD19xCD3(Loeffler A et al. Blood 2000 95:2098-103)をテンプレートとしてPCRによって得た。抗CD3 VH領域および抗CD3 VL領域を、以下のプライマー

によって別々に増幅した。PCR産物によって導入された重複する相補的配列を、引き続く融合PCRの間に15アミノ酸(G4S)3(1文字アミノ酸コード)(SEQ ID NO:99)リンカーのコード配列を形成するために使用した。この増幅段階を、プライマー対CD3 VH BsrGI(SEQ ID NO:5)およびCD3 VL BspEI(SEQ ID NO:6)を用いて実行した。
【0123】
1.1.2 VH抗CD3-VL抗CD3xVH抗EpCAM-VL抗EpCAM方向にある抗CD3x抗EpCAM構築物(SEQ ID NO:1、2、SEQ ID NO:3、4、SEQ ID NO:7、8、SEQ ID NO:9、10、SEQ ID NO:11、12、SEQ ID NO:13、14、およびSEQ ID NO:17、18)のクローニング
18アミノ酸リンカー(SEQ ID NO:70)を含むN末端のもともとの抗CD3、または15アミノ酸の標準(G4S)3リンカー(SEQ ID NO:99)を含むN末端のもともとの抗CD3を制限酵素BsrGIおよびBspE1で切断し、続いて、EcoRI/BsrGIフラグメントとして真核生物分泌シグナル(リーダーペプチド)のアミノ酸配列を含むbluescript KSベクター(Stratagene, La Jolla, CA)にクローニングした。EcoRIおよびBspEIを用いるこの構築物の切断後、リーダーペプチドを有するそれぞれの抗CD3 scFvを含む得られるDNAフラグメントを、pEFDHFR中にc末端EpCAM結合部分3-1(SEQ ID NO:79〜82)、4-7(SEQ ID NO:91〜94)、または5-10(SEQ ID NO:95〜98)を含むEcoRI/BspEI切断プラスミドにクローニングした。pEFDHFRはMack et al. Proc. Natl. Sci. USA 92 (1995) 7021-7025に記載された。
【0124】
1.1.3. VH抗CD3-VL抗CD3xVL抗EpCAM-VH抗EpCAM方向にある抗CD3x抗EpCAM構築物(SEQ ID NO:15、16、19、および20)のクローニング
15アミノ酸の標準リンカー(SEQ ID NO:99)を含むVLVH方向にあるC末端抗EpCAM抗体4-7(SEQ ID NO:91〜94)をPCRによって得た。4-7 VH領域および4-7 VL領域を以下のプライマー

によって別々に増幅した。PCR産物に導入された重複する相補性配列を、引き続く融合PCRの間に15アミノ酸(G4S)3(1文字アミノ酸コード)リンカー(SEQ ID NO:99)のコード配列を形成するために使用した。この増幅段階を、プライマー対4-7 VL BspEI FORおよび4-7 VH SalI REV(SEQ ID NO:100、SEQ ID NO:24)を用いて実行した。
【0125】
15アミノ酸の標準リンカー(SEQ ID NO:99)を含むVLVH方向にあるC末端抗EpCAM抗体5-10(SEQ ID NO:95〜98)をPCRによって得た。5-10 VH領域および5-10 VL領域を以下のプライマー

によって別々に増幅した。PCR産物に導入された重複する相補性配列を、引き続く融合PCRの間に15アミノ酸(G4S)3リンカー(SEQ ID NO:99)のコード配列を形成するために使用した。この増幅段階を、プライマー対5-10 VL BspEI FORおよび5-10 VH SalI REV(SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:28)を用いて実行した。
【0126】
これらのPCR産物(5-10 VLVHおよび4-7 VLVH)をBspEIおよびSalIを用いて切断し、5-10 VHVL DNAフラグメントを置き換えたpEFDHFR中のBspEI/SalI切断した抗CD3 VHVL stLx5-10 VHVL(SEQ ID NO:17、18)または抗CD3 VHVL stL x 4-7(SEQ ID NO:13、14)VHVLにライゲーションした。
【0127】
1.1.4. 抗CD3-EpCAM構築物の発現および結合
配列決定による二重特異性単鎖をコードする配列の確認後、真核生物発現のために、このプラスミドをDHFR欠損CHO細胞にトランスフェクトした。DHFR欠損CHO細胞における真核生物タンパク質発現は、Kaufmann R.J. (1990) Methods Enzymol. 185, 537-556において記載されているように実行した。次いで、トランスフェクトされた細胞を拡大し、1リットルの上清を産生した。二重特異性単鎖分子の発現および結合はFACS分析によって確認した。この目的のために、EpCAMポジティブヒト胃癌細胞株KatoIII(American Type Culture Collection(ATCC) Manassas, VA 20108 USAから入手、ATCC番号:HTB-103)を使用した。抗CD3部分の結合はJurkat細胞(ATCC TIB 152)上で実証した。
【0128】
細胞を供給業者の推奨に従って培養し、約200000細胞を、2%FCSを補充した50μl PBS中の10μg/mlの構築物とともにインキュベートした。構築物の結合は、2%FCSを含む50μl PBS中2μg/mlの抗His抗体(Penta-His抗体、BSAフリー、Quiagen GmbH, Hilden, FRGより入手)を用いて検出した。第2段階の試薬として、R-フィコエリトリン結合体化アフィニティー精製F(ab')2フラグメント、ヤギ抗マウスIgG、Fc-γフラグメント特異的抗体、2%FCSを含む50μl PBS中1:100希釈(Dianova, Hamburg, FRGより入手)を使用した。試料をFACSscan(BD biosciences, Heidelberg, FRG)上で測定した。抗CD3および抗EpCAMを含む全ての構築物は、先行技術の抗EpCAM(M79)x抗CD3二重特異性抗体よりも、CD3およびEpCAMに対して強力な結合アフィニティーを示した(図2)。
【0129】
1.2 N末端EpCAM結合部分
1.2.1 抗EpCAMx抗CD3構築物のクローニング
構築物3-5x抗CD3(SEQ ID NO:29、30)のクローニング
VH-VL方向にあるC末端3-5を、3-5x抗CD3(SEQ ID NO:29)分子の構築のためにPCRによって得た。フラグメントIおよびIIを、プライマー対me 81(SEQ ID NO:31)/me 90(SEQ ID NO:34)およびme 83(SEQ ID NO:32)/me 84(SEQ ID NO:33)をそれぞれ使用して、PCRによって増幅した。ホットスタートPCRを、Roche DiagnosticsのExpand High Fidelity Systemを使用して行った。増幅のために20サイクル(94℃/30秒間;60℃/1分間;72℃/1分間)使用し、続いて1サイクル(72℃3分間)使用した。
【0130】
PCRフラグメントIおよびIIを、1.5%アガロースゲル上の電気泳動に供した。フラグメントを混合し(各1ng)、フラグメントIIIの増幅のために、プライマー対me 81(SEQ ID NO:31)およびme 84(SEQ ID NO:33)を用いて実行される次のPCR反応のテンプレートとして使用した。PCRを上記のように実行した。フラグメントIIIをアガロースゲル上で精製し、BssHIIおよびBspEI(Biolabs)で消化し、精製し、次いでpEF-dHFR-シグナルペプチド(77/78)-抗CD3クローニングベクターの対応する部位にクローニングした。これは、抗CD3領域の前での抗標的可変領域のクローニングを容易にする。このベクターは、シグナルペプチドの直後に独特なBssHII部位、その後にBspEI部位、リンカー(G4S)、および抗CD3領域を有する。クローニングした領域を制限消化によって、およびDNA配列決定によって確認した。
【0131】
使用したプライマーの配列は以下の通りである。

【0132】
構築物3-1x抗CD3(SEQ ID NO:35、36)のクローニング
VH-VL方向にあるC末端3-1を、3-1x抗CD3(SEQ ID NO:35)分子の構築のためにPCRによって得た。フラグメントIおよびIIを、プライマー対me 91a(SEQ ID NO:37)/me 90(SEQ ID NO:34)およびme 83(SEQ ID NO:32)/me 84(SEQ ID NO:33)をそれぞれ使用して、PCRによって増幅した。PCRを上記のように実行した。
【0133】
PCRフラグメントIおよびIIを含むアガロースゲルフラグメントを、フラグメントIIIの増幅のために、プライマー対me 91a(SEQ ID NO:37)およびme 84(SEQ ID NO:33)を用いて実行される次のPCR反応のテンプレートとして使用した。PCRを、アニーリングが60℃の代わりに68℃で実行した以外は上記のように実行した。フラグメントIIIをアガロースゲル上で精製し、BsrGIおよびBspEI(Biolabs)で消化し、精製し、次いでpEF-dHFR-M79 x 抗CD3クローニングベクターの対応する部位にクローニングした。クローニングした領域を制限消化によって、およびDNA配列決定によって確認した。

【0134】
構築物4-1x抗CD3(SEQ ID NO:38、39)のクローニング
VH-VL方向にあるC末端4-1を、4-1x抗CD3(SEQ ID NO:38、39)分子の構築のためにPCRによって得た。フラグメントIおよびIIを、プライマー対me 92a(SEQ ID NO:40)/me 90(SEQ ID NO:34)およびme 83(SEQ ID NO:32)/me 84(SEQ ID NO:33)をそれぞれ使用して、PCRによって増幅した。PCRを、60℃のアニーリング温度で上記のように実行した。
【0135】
PCRフラグメントIおよびIIを含むアガロースゲルフラグメントを、フラグメントIIIの増幅のために、プライマー対me 92a(SEQ ID NO:40)およびme 84(SEQ ID NO:33)を用いて実行される次のPCR反応のテンプレートとして使用した。PCRを、アニーリングが60℃の代わりに68℃で実行した以外は上記のように実行した。フラグメントIIIをアガロースゲル上で精製し、BsrGIおよびBspEI(Biolabs)で消化し、精製し、次いでpEF-dHFR-M79 x 抗CD3クローニングベクターの対応する部位にクローニングした。クローニングした領域を制限消化によって、およびDNA配列決定によって確認した。

【0136】
構築物4-7x抗CD3(SEQ ID NO:41、42)のクローニング
VH-VL方向にあるC末端4-7を、4-7x抗CD3(SEQ ID NO:41、42)分子の構築のためにPCRによって得た。フラグメントIおよびIIを、プライマー対me 81(SEQ ID NO:31)/me 90(SEQ ID NO:34)およびme 83(SEQ ID NO:32)/me 84(SEQ ID NO:33)をそれぞれ使用して、PCRによって増幅した。PCRを、60℃のアニーリング温度で上記のように実行した。
【0137】
PCRフラグメントIおよびIIを含むアガロースゲルフラグメントを、フラグメントIIIの増幅のために、プライマー対me 81(SEQ ID NO:31)およびme 84(SEQ ID NO:33)を用いて実行される次のPCR反応のテンプレートとして使用した。PCRを上記のように実行した。フラグメントIIIをアガロースゲル上で精製し、BssHIIおよびBspEI(Biolabs)で消化し、精製し、次いでpEF-dhfr-シグナルペプチド (77/78)-抗CD3クローニングベクターの対応する部位にクローニングした。クローニングした領域を制限消化によって、およびDNA配列決定によって確認した。
【0138】
構築物5-10x抗CD3(SEQ ID NO:43、44)のクローニング
VH-VL方向にあるC末端5-10を、5-10x抗CD3(SEQ ID NO:43、44)分子の構築のためにPCRによって得た。フラグメントIおよびIIを、プライマー対me 92a(SEQ ID NO:40)/me 90(SEQ ID NO:34)およびme 83(SEQ ID NO:32)/me 84(SEQ ID NO:33)をそれぞれ使用して、PCRによって増幅した。PCRを、60℃のアニーリング温度で上記のように実行した。
【0139】
PCRフラグメントIおよびIIを含むアガロースゲルフラグメントを、フラグメントIIIの増幅のために、プライマー対me 92a(SEQ ID NO:40)およびme 84(SEQ ID NO:33)を用いるPCRのテンプレートとして使用した。PCRを、アニーリングが60℃の代わりに68℃で実行した以外は上記のように実行した。フラグメントIIIをアガロースゲル上で精製し、BsrGIおよびBspEI(Biolabs)で消化し、精製し、次いでpEF-dhfr-M79 x 抗CD3クローニングベクターの対応する部位にクローニングした。クローニングした領域を制限消化によって、およびDNA配列決定によって確認した。
【0140】
1.2.2 抗EpCAMx抗CD3二重特異性分子の発現
DHFR遺伝子を欠くCHO細胞を、10%ウシ胎仔血清(Life Technologies、65℃で30分間熱不活化)で、およびHT(ヒポキサンチンおよびチミジン;Life Technologies、カタログ番号:41065-012)で補充したαMEM培地(Life Technologies、カタログ番号:32561)中に維持した。細胞を、pEF-dHFR-3-1x抗CD3(SEQ ID NO:35、36)、pEF-dHFR-3-5x抗CD3(SEQ ID NO:29、30)、pEF-dHFR-4-1x抗CD3(SEQ ID NO:38、39)、pEF-dHFR-4-7x抗CD3(SEQ ID NO:41、42)、およびpEF-dHFR-5-10x抗CD3(SEQ ID NO:43、44)、で、製造業者によって提供される指示書に従ってLipofectamine 2000キット(Invitrogen;カタログ番号11668-019)を使用してトランスフェクトした。48時間後、細胞を、トランスフェクトされた細胞を選択培地(熱不活化した10%透析胎仔ウシ血清(Life Technologies)を含むαMEM培地(カタログ番号:32561))に移すことによって選択に供した。2〜3週間の選択後、細胞を、2リットルの組織培養ローラーボトル(Falcon(カタログ番号:353068;Becton Dickinson Labware))中で、二重特異性分子の産生のために8〜9日間(500mlの選択培地中で)増殖させた。この組織培養培地を4℃で10分間、300g(1300rpm)で遠心分離して、細胞および細胞破壊片を除去した。分泌された二重特異性分子を含む上清を、さらなる分析まで-20℃で保存した。
【0141】
1.2.3 二重特異性抗EpCAMx抗CD3変異体の結合アッセイ
本発明の二重特異性抗EpCAMx抗CD3単鎖構築物の結合強度を分析するために、以下の結合アッセイを実行した。
【0142】
250000Jurkat細胞(CD3結合のため)およびKato細胞(EpCAM結合のため)を、二重特異性構築物を含む粗上清(50μl)と独立して45℃で45分間インキュベートした。その後、細胞を、FACS緩衝液(1%ウシ胎仔血清(FCS)および0.05%アジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝化生理食塩水)で2回洗浄し、マウス抗His抗体(Dianova、DIA910)とともに4℃で60分間インキュベートした。洗浄工程を上記のように実行した。
【0143】
細胞を最後にヤギ抗マウスFITC結合体化抗体(BD 550003)または抗マウスPE結合体化抗体(IgG)(Sigma、P8547)のいずれかとともにインキュベートした。洗浄工程後、10,000の事象をFACS Calibur(B&D)を使用して分析した。全てのEpCAM構築物は強力な結合を示した(図4)。
【0144】
(実施例2)EpCAM構築物の精製
抗EpCAMおよび抗CD3を含む二重特異性単鎖構築物を精製するために、CHO-EpCAM細胞を、HiClone(登録商標)CHO改変DMEM培地(HiQ)を含むローラーボトル中で、収集前7日間増殖させた。細胞を遠心分離によって取り除き、発現されたタンパク質を含む上清を-20℃で保存した。
【0145】
Akta FPLC System(登録商標)(Pharmacia)およびUnicorn Software(登録商標)をクロマトグラフィーのために使用した。全ての化学物質は研究グレードであり、Sigma(Deisenhofen)またはMerck(Darmstadt)から購入した。
【0146】
IMACを、製造業者のプロトコールに従ってZnCl2を負荷したFractogel(登録商標) カラム(Pharmacia)を使用して実行した。このカラムを緩衝液A2(20mM NaPP pH 7.5、0.4M NaCl)で平衡化し、細胞培養上清(500ml)を3ml/分の流速でカラム(10ml)に適用した。カラムを緩衝液A2で洗浄して、未結合試料を除去した。結合したタンパク質を緩衝液B2(20mM NaPP pH 7.5、0.4M NaCl、0.5M イミダゾール)の2段階の勾配を使用して溶出した。段階1においては、10カラム体積の20%緩衝液B2を使用し、段階2においては10カラム体積の100%緩衝液B2を使用した。100%段階からの溶出タンパク質画分を、さらなる精製のためにプールした。
【0147】
ゲル濾過クロマトグラフィーを、PBS(Gibco)で平衡化したSephadex S200 HiPrep(登録商標)カラム(Pharmacia)で実行した。溶出したタンパク質試料(流速1ml/分)をSDS-Pageおよびウェスタンブロット検出に供した。
【0148】
カラムを、分子量決定のために事前に較正した(分子量マーカーキット、Sigma MW GF-200)。
【0149】
タンパク質濃度を、タンパク質アッセイ色素(MicroBCA、Pierce)および標準タンパク質としてIgG(Biorad)を使用して決定した。タンパク質の収率を表2に示す。全ての構築物が産生可能であった。
【0150】
(表2)抗EpCAMおよび抗CD3を含む単鎖二重特異性構築物の収率

【0151】
さらなる高解像度のカチオン交換クロマトグラフィーを、20mM MES緩衝液pH 5.5で平衡化したMiniS(登録商標)カラム(Amersham)で実行した。試料を、カラムに負荷する前に、同じ緩衝液で1:3に希釈した。結合したタンパク質を、60カラム体積中の1M NaCl:0〜30%を含む平衡化緩衝液の勾配で溶出した。残存するタンパク質を、3カラム体積の1M NaClで溶出した(図7)。
【0152】
EpCAM二重特異性単鎖構築物タンパク質を、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)(図5)およびゲル濾過(図6)を含む2段階精製プロセスで単離した。主要な生成物は、PBS中でのゲル濾過によって決定されるようにネイティブ条件下で52kDaの分子量を有した。
【0153】
精製した二重特異性タンパク質を、プレキャスト4〜12%Bis Trisゲル(Invitrogen)を用いて実行される還元条件下のSDS PAGEにおいて分析した。試料の調製および適用を、製造業者のプロトコールに従って実行した。分子量をMultiMark(登録商標)タンパク質標準(Invitrogen)を用いて決定した。ゲルをコロイド状Coomassie(Invitrogeプロトコール)を用いて染色した。単離されたタンパク質の純度は>95%であることが示された(図8A)。ウェスタンブロットをOptitran BA-S83(登録商標)メンブレンおよびInvitrogen Blot Moduleを用いて、製造業者のプロトコールに従って実行した。使用した抗体はPenta His(Qiagen)およびアルカリホスファターゼ(AP)で標識されたヤギ抗マウスIg(Sigma)であり、色素原基質溶液はBCIP/NBT液(Sigma)であった。EpCAM二重特異性タンパク質は、ウェスタンブロットによって特異的に検出することができた(図8B)。主要なシグナルは、精製された二重特異性分子に対応する52kDのSDS PAGE中の主要なバンドに対応する。
【0154】
(実施例3)抗CD3および抗EpCAMを含む構築物の細胞毒性アッセイ
抗CD3および抗EpCAMを含む構築物の生物活性を試験するために、FACSに基づく細胞毒性試験を実行した。
【0155】
細胞毒性試験のために、American Type Cell Culture Collection(ATCC, Manassas, USA)からのCHO細胞を、上皮細胞接着分子(EpCAM)でトランスフェクトした。このトランスフェクションに由来する1つの細胞クローン(CHO-EpCAM細胞と呼ばれる)を実験のために使用した。CHO-EpCAM(1.5×107)を、PBSで洗浄して血清を除き、製造業者の指示書に従ってPKH25色素(Sigma-Aldrich Co.)とともにインキュベートした。細胞染色後にRPMI/10% FCSで2回洗浄した。
【0156】
細胞を計数し、CB15エフェクター細胞と混合した。CD4ポジティブT細胞クローンCB15は、Fickenscher博士(University of Erlangen/Nuernberg, Germany)から提供された。細胞を、供給業者によって推奨されるように培養した。得られる細胞懸濁物は、mlあたり400,000標的および2×106エフェクター細胞を含んだ。96ウェル丸底プレート中のウェルあたり、50μlの混合物を使用した。
【0157】
抗体をRPMI/10% FCS中で必要とされる濃度まで希釈し、この溶液の50μlを細胞懸濁物に加えた。標準的な反応は、37℃/5% CO2中で16時間インキュベートした。ヨウ化プロピジウムを1μg/mlの最終濃度で加えた。室温での10分間のインキュベーション後、細胞をFACSによって分析した。PKH26蛍光を、標的細胞のポジティブ同定のために使用した。細胞毒性を、全ての標的細胞にわたるPIポジティブの比として測定した。シグモイド型用量応答曲線は、代表的には、Prismソフトウェア(GraphPad Software Inc., San Diego, USA)によって決定されるように、>0.97のR2値を有した(図9および図10)。
【0158】
分析プログラムによって計算されたEC50値は、生物活性の比較のために使用した。本発明の全ての構築物は、先行技術の構築物M79x抗CD3(8628pg/ml)よりも少なくとも50倍良好な細胞毒性を示す(最高EC50値169pg/ml)。
【0159】
(実施例4)抗EpCAMおよび抗CD3を含む構築物のEpCAMへの結合アフィニティーのBIAcore(商標)2000による決定
本発明の構築物の優れた結合アフィニティーを示すために、この構築物および先行技術の抗EpCAM構築物(M79)x抗CD3のKD値を決定した。
【0160】
反応速度論的結合実験を、BIAcore(商標)2000、Biacore AB (Uppsala, Sweden)上の表面プラズモン共鳴を使用して、5μL/分の流速および移動緩衝液としてHBS-EP(0.01M HEPES, pH 7.4, 0.15M NaCl, 3mM EDTA, 0.005% サーファクタントP20)を使用して、25℃で実行した。EpCAM抗原の細胞外ドメイン(残基17〜265)を、CM5センサーチップ上のフローセル2-4に固定化した。チップ表面を、80μLの0.1M ヒドロキシスクシンイミドナトリウム、0.4M N-エチル-N'(3-ジメチルアミンプロピル)-カルボジイミド(NHS/EDC)を注入して活性化した。抗原を、0.01M 酢酸ナトリウム、pH4.7中の60μg/mL EpCAMの手動注入によって結合した。異なる密度の抗原を、手動注入の回数の総計を調整することによて、フローセル2-4上で固定化した。フローセル1は空のままであるのに対して、フローセル2は最高の密度のEpCAM(4100 RU)でコートした。フローセル3は、フローセル2に固定化された抗原の量の1/4(974 RU)でコートし、フローセル4は、最も低い密度のEpCAM抗原(265 RU)でコートした。センサーチップの活性化された表面は、85μLの1Mエタノールアミンを注入してブロックし、このチップを5μL/分のHBS-EPの定流で一晩平衡化させて放置した。
【0161】
二重特異性構築物の結合反応速度論を、4μM〜0.07μM濃度範囲である10μLのタンパク質溶液を注入すること、および100秒間についての解離をモニターすることによって測定した。タンパク質を、HBS-EP中で緩衝化した。データを、BIAevalution(商標)ソフトウェアを使用してフィットさせ、1:1 Langmuir結合式(1,2)を用いて解離および結合についての速度定数を決定した。ここで、Aは注入した分析物の濃度であり、B[0]はRmaxである。

【0162】
反応速度論的結合曲線を、各分析した二重特異性構築物の4つの濃度において決定した。生のデータの独立的フィッティングは、平衡解離定数(KD)を計算するために使用された解離および結合の速度定数を生じた。計算されたKD値は、濃度について偏っておらず、信頼できるデータ分析であることを示した。独立して決定された解離定数の平均ならびに標準偏差を表3に要約する。
【0163】
分析した二重特異性構築物は、アフィニティー範囲が規定されたウェル中のチップ表面上に固定化されたEp-CAM抗原に結合する。計算された平均解離定数についての標準偏差は予測される通りである。
【0164】
(表3)EpCAMへの二重特異性構築物結合についての解離定数

【0165】
先行技術の抗EpCAM x 抗CD3構築物M79xCD3は、4.0×10-6MのKDを有したのに対して、驚くべきことに、本発明の構築物は、2.3×10-7〜2.5×10-7Mの範囲のKDを有する。従って、本発明の構築物は、先行技術の構築物よりも15倍よりも強い結合アフィニティーを有する。
【0166】
(実施例5)先行技術の構築物と本発明の構築物との細胞毒性活性の比較
従来のM79xCD3構築物およびHD70xCD3構築物と、NXDモチーフを有する構築物の生物活性を比較するために、以下の細胞毒性アッセイを実行した。
【0167】
KatoIII細胞(ATCC HTB-103)を標的細胞として使用して、5%CO2加湿インキュベーター中、37℃で、10%ウシ胎仔血清を補充したRPMI中で増殖させた。サブコンフルエント培養物を、0.25%トリプシンで処理し、Neubauerチャンバースライド中で計数し、そしてトリパンブルー排除によって生死について調べた。>95%生存度を有する培養物のみを細胞毒性アッセイに使用した。標的細胞を、製造業者のマニュアルに従って、PKH26蛍光膜色素を用いて染色した(Sigma-Aldrich GmbH, Germany, PKH26-GL)。細胞数を、RPMI完全培地中で8×105細胞/mlに調整した。
【0168】
ヒト末梢血単球細胞(PBMC)をエフェクター細胞として使用し、これをフィコール密度勾配遠心分離を使用して健常なドナーから単離し、続いて100×gの遠心分離を行って血小板を除去した。ペレットを10容量の赤血球溶解緩衝液中に再懸濁し、室温で10分間インキュベートした。溶解反応をPBSの添加によって停止した。PBMCをRPMI 1640完全培地中に再懸濁し、細胞数を8×106細胞/mlに調整した。
【0169】
等量の標的およびエフェクター細胞懸濁物を混合し、この懸濁物の50μlを96ウェル丸底プレートの各ウェルに移し、50μlのEpCAM二重特異性抗体の段階希釈物または負の対照としてのRPMI完全培地を加えた。プレートを、加湿インキュベーター中で、16〜20時間、37℃、5%CO2でインキュベートした。50μlヨウ化プロピジウムを1μg/mlの最終濃度で加え、室温で15分間インキュベートした。試料をフローサイトメトリー(FACSCalibur, Becton Dickinson)によって分析した。2×104事象を計数した。
【0170】
標的細胞をそれらのPKH26蛍光標識によって同定し、次いでこの集団中の細胞毒性を決定した。ヨウ化プロピジウム染色によって、生細胞を死滅細胞から分離し、死滅標的細胞のパーセンテージを細胞毒性の尺度として使用した。平均値を対数スケールで二重特異性抗体の濃度に対してプロットし、用量応答曲線を得た(図11B)。対応するEC50値は、GraphPad Prismソフトウェアを用いるデータの非線形フィッティング後に得た。
【0171】
NXDモチーフを有する構築物(SEQ ID NO:36、44、2、および18)の細胞毒性活性を、従来の構築物M79x抗CD3およびHD70-x抗CD3と比較した(図11B)。3-1、5-10、4-7、3-5、および4-1のVH鎖のCDR3領域の、M79、HD70、および3B10との配列アラインメントを図11Aに示す。3-1、5-10、4-7、および4-1のみがNXDモチーフを有し、さらに、CDR3領域の長さは異なる。図11Aにおいて見られるように、3-1、4-1、および5-10は10アミノ酸のCDR-H3領域を有し、3-5および4-7は14アミノ酸を有するのに対して、先行技術のM79は8アミノ酸を有し、3B10は6アミノ酸を有し、およびHD70は18アミノ酸を有する。
【0172】
SEQ ID NO:36、44、2、および18は、従来のM79構築物およびHD70構築物と比較して明白により良好な生物活性を有し(先行技術の構築物のそれぞれ71460および11327pg/mlと比較して、2250pg/ml未満)、これは本発明の構築物の有利な効果を実証した。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】抗CD3-抗EpCAM構築物のDNA配列およびアミノ酸配列である。A)抗CD3 VHVL stL x 3-1 VHVL(SEQ ID NO:11、12)、B)抗CD3 VHVL aL x 4-7 VHVL(SEQ ID NO:1、2)、C)抗CD3 VHVL aL Ser x 4-7 VHVL(SEQ ID NO:7、8)、D)抗CD3 VHVL stL x 4-7 VHVL(SEQ ID NO:13、14)、E)抗CD3 VHVL stL x 4-7 VLVH(SEQ ID NO:15、16)、F)抗CD3 VHVL aL x 5-10 VHVL(SEQ ID NO:3、4)、G)抗CD3 VHVL aL Ser x 5-10 VHVL(SEQ ID NO:9、10)、H)抗CD3 VHVL stL x 5-10 VHVL(SEQ ID NO:17、18)、I)抗CD3 VHVL stL x 5-10 VLVH(SEQ ID NO:19、20)、J)抗CD3 VHVL aL x 3-1 VHVL(SEQ ID NO:45、46)、K)抗CD3 VHVL aL Ser x 3-1 VHVL(SEQ ID NO:47、48)、L)抗CD3 VHVL aL x 3-5 VHVL(SEQ ID NO:49、50)、M)抗CD3 VHVL aL Ser x 3-5 VHVL(SEQ ID NO:51、52)、N)抗CD3 VHVL stL x 3-5 VHVL(SEQ ID NO:53、54)、O)抗CD3 VHVL aL x 4-1 VHVL(SEQ ID NO:55、56)、P)抗CD3 VHVL aL Ser x 4-1 VHVL(SEQ ID NO:57、58)およびQ)抗CD3 VHVL stL x 4-1 VHVL(SEQ ID NO:59、60)。
【図2】構築物のFACS分析である。CD3ポジティブJurkat細胞およびEpCAMポジティブKatoIII細胞における、A)抗CD3 VHVL stL x 5-10 VHVL(SEQ ID NO:18)、B)抗CD3 VHVL stL x 4-7 VHVL(SEQ ID NO:14)、C)抗CD3 VHVL aL x 5-10 VHVL(SEQ ID NO:4)、D)抗CD3 VHVL aL x 4-7 VHVL(SEQ ID NO:2)、E)抗CD3 VHVL aL Ser x 5-10 VHVL(SEQ ID NO:10)、F)抗CD3 VHVL aL Ser x 4-7 VHVL(SEQ ID NO:8)、G)抗CD3 VHVL stL x 3-1 VHVL(SEQ ID NO:12)、H)抗CD3 VHVL stL x 5-10 VLVH(SEQ ID NO:20)、およびI)抗CD3 VHVL stL x 4-7 VLVH(SEQ ID NO:16)。右へのシフトが結合を示す。Jurkat細胞およびKatoIII細胞において、点線は負の対照(二次抗体のみ)のシフトを示し、破線は抗EpCAM-抗CD3対照抗体の結合を示し、太線は関心対象の二重特異性構築物を示す。
【図3】抗EpCAM-抗CD3構築物のDNA配列およびアミノ酸配列である。A)4-7 VLVHx 抗CD3 VHVL(SEQ ID NO:41、42)、B)3-5 VLVHx 抗CD3 VHVL(SEQ ID NO:29、30)、C)3-1 VLVHx 抗CD3 VHVL(SEQ ID NO:35、36)、D)4-1 VLVHx 抗CD3 VHVL(SEQ ID NO:38、39)、およびE)5-10 VLVHx 抗CD3 VHVL(SEQ ID NO:43、44)。
【図4】構築物のFACS分析である。CD3ポジティブJurkat細胞およびEpCAMポジティブKatoIII細胞における、構築物A)4-7 VLVHx 抗CD3 VHVL(SEQ ID NO:42)、B)3-5 VLVHx 抗CD3 VHVL(SEQ ID NO:30)、C)3-1 VLVHx 抗CD3 VHVL(SEQ ID NO:36)、D)4-1 VLVHx 抗CD3 VHVL(SEQ ID NO:39)、およびE)5-10 VLVHx 抗CD3 VHVL(SEQ ID NO:44)。右へのシフトが結合を示す。
【図5】Znキレート化Fractogel(登録商標)カラムからの280nmでのタンパク質画分を含むEpCAM二重特異性抗体の代表的溶出パターンである。50〜450mlの保持時間からの280nmでの高い吸収は、カラムの素通り画分における非結合タンパク質に起因した。530.09mlのピークにおける矢印は、さらなる精製のために使用されたタンパク質画分を含むEpCAM二重特異性構築物を示す。
【図6】Sephadex(登録商標)S200ゲル濾過カラムからの280nmでの代表的なタンパク質溶出パターンである。CD3およびEpCAMに対する二重特異性抗体を含む82.66mlでのタンパク質ピークは、約52kDの分子量に対応する。40〜140mlの保持時間からの画分が収集された。
【図7】A)3-1 x 抗CD3(SEQ ID NO:36)のカチオン交換クロマトグラフィーはタンパク質の全体の電荷のアイソフォームを示す。カチオン交換クロマトグラフィーはMIniS(登録商標)(Amersham)カラム上で実行された。20mM MES緩衝液pH 5.5を用いる洗浄後、タンパク質は、60カラム体積の1M NaCl:0〜30%を含む溶出緩衝液の勾配を用いて溶出された。二重特異性構築物は23.58mlで溶出された。非特異的タンパク質は、50mlで開始して1M NaClを用いて溶出された。B)5-10 x 抗CD3(SEQ ID NO:44)のカチオン交換クロマトグラフィーはタンパク質の全体の電荷のアイソフォームを示す。カチオン交換クロマトグラフィーは図7Aと同様に実行された。二重特異性構築物は35.77mlで溶出された。非特異的タンパク質は、50mlで開始して1M NaClを用いて溶出された。
【図8】A)EpCAM二重特異性単鎖抗体タンパク質画分の代表的なSDS-PAGE分析である。レーンM:分子量マーカー、レーン1:細胞培養上清、レーン2:IMAC素通り、レーン3:IMAC洗浄、レーン4:IMAC溶出、レーン5:ゲル濾過から得られた、EpCAMおよびCD3に対する精製抗体。B)精製EpCAM二重特異性単鎖抗体タンパク質画分の代表的なウェスタンブロット分析。レーン1:細胞培養上清、レーン2:IMAC素通り、レーン3:IMAC洗浄、レーン4:IMAC溶出、レーン5:ゲル濾過から得られた、EpCAMおよびCD3に対する精製抗体。
【図9】C末端EpCAM結合部分、抗CD3x3-1(SEQ ID NO:46)、抗CD3 x-5-10(SEQ ID NO:4)、および抗CD3 x4-7(SEQ ID NO:2)の細胞毒性アッセイである。CB15 T細胞クローンおよびCHO-EpCAM細胞は、5:1のE:T比率で使用された。CHO-EpCAM細胞はPKH26色素で染色され、細胞は二重特異性単鎖抗体とのインキュベーション後にFACS分析を用いて計数された。
【図10】N末端EpCAM結合物、3-1x抗CD3(SEQ ID NO:36)、および5-10x抗CD3(SEQ ID NO:44)の細胞毒性アッセイである。CB15 T細胞クローンおよびCHO-EpCAM細胞は、5:1のE:T比率で使用された。CHO-EpCAM細胞はPKH26色素で染色され、細胞は二重特異性単鎖抗体とのインキュベーション後にFACS分析を用いて計数された。
【図11】A)EpCAM M79、HD70、および3B10のVH鎖のCDR3と比較した、EpCAM 3-1(SEQ ID NO:80)、EpCAM 4-1(SEQ ID NO:88)、EpCAM 5-10(SEQ ID NO:96)、EpCAM 3-5(SEQ ID NO:84)、EpCAM 4-7(SEQ ID NO:92)のVH鎖のCDR3の配列アラインメントである。NXDモチーフは太字で示される。B)3-1x抗CD3(SEQ ID NO:36)、5-10x抗CD3(SEQ ID NO:44)、抗CD3x4-7(SEQ ID NO:2)、および抗CD3x5-10(SEQ ID NO:18)細胞毒性活性の、M79x抗CD3およびHD70x抗CD3対照との比較。PBMC細胞およびKatoIII細胞は、10:1のE:T比で使用された。KatoIII細胞は、ヨウ化プロピジウムで染色し、細胞は二重特異性単鎖抗体とのインキュベーション後にFACS分析を用いて計数された。
【図1A−1】

【図1A−2】

【図1B−1】

【図1B−2】

【図1C−1】

【図1C−2】

【図1D−1】

【図1D−2】

【図1E−1】

【図1E−2】

【図1F−1】

【図1F−2】

【図1G−1】

【図1G−2】

【図1H−1】

【図1H−2】

【図1I−1】

【図1I−2】

【図1J−1】

【図1J−2】

【図1K−1】

【図1K−2】

【図1L−1】

【図1L−2】

【図1M−1】

【図1M−2】

【図1N−1】

【図1N−2】

【図1O−1】

【図1O−2】

【図1P−1】

【図1P−2】

【図1Q−1】

【図1Q−2】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図2D】

【図2E】

【図2F】

【図2G】

【図2H】

【図2I】

【図3A−1】

【図3A−2】

【図3A−3】

【図3B−1】

【図3B−2】

【図3B−3】

【図3C−1】

【図3C−2】

【図3C−3】

【図3D−1】

【図3D−2】

【図3D−3】

【図3E−1】

【図3E−2】

【図3E−3】

【図4A】

【図4B】

【図4C】

【図4D】

【図4E】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重特異性単鎖抗体構築物を含む薬学的組成物であって、該構築物は少なくとも2つのドメインを含むかまたは少なくとも2つのドメインからからなり、該ドメインの1つがヒトEpCAM抗原に結合し、かつ第2のドメインがヒトCD3抗原に結合し、EpCAMに特異的である該結合ドメインは、好ましくは、SEQ ID NO:80、88、および96の102〜104位、または好ましくはSEQ ID NO:84および92の106〜108位におけるアミノ酸配列NXDを含む少なくとも1つのCDR-H3領域を含み、Xは芳香族アミノ酸である、組成物。
【請求項2】
XがWまたはYである、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項3】
CDR-H3が少なくとも9個のアミノ酸残基を含む、請求項1または2記載の薬学的組成物。
【請求項4】
EpCAMに特異的な結合ドメインが5×10-9Mより高いKD値を有する、請求項1から3のいずれか1項記載の薬学的組成物。
【請求項5】
EpCAMに特異的な結合ドメインが1×10-7Mから5×10-9Mの間の範囲のKD値を有し、CD3に特異的な結合ドメインが1×10-6Mから5×10-9Mの間の範囲のKD値を有する、請求項1から4のいずれか1項記載の薬学的組成物。
【請求項6】
二重特異性単鎖抗体構築物を含む薬学的組成物であって、該構築物は少なくとも2つのドメインを含むかまたは少なくとも2つのドメインからからなり、該少なくとも2つのドメインの1つがヒトEpCAM抗原に特異的に結合し、かつ第2のドメインがヒトCD3抗原に結合し、EpCAMに特異的である該結合ドメインは、少なくとも9アミノ酸残基の少なくとも1つのCDR-H3領域を含み、EpCAMに特異的な該結合ドメインは、5×10-9Mより高いKD値を有する、組成物。
【請求項7】
CD3に特異的な結合ドメインが10-7Mより高いKD値を有する、請求項1から6のいずれか1項記載の薬学的組成物。
【請求項8】
CDR-H3領域が少なくとも14アミノ酸を含む、請求項1から7のいずれか1項記載の薬学的組成物。
【請求項9】
ヒトEpCAM抗原に特異的なVH鎖ドメインが以下からなる群より選択される、請求項1から8のいずれか1項記載の薬学的組成物:
(a)SEQ ID NO:80、SEQ ID NO:84、SEQ ID NO:88、SEQ ID NO:92、およびSEQ ID NO:96のいずれかに示されるアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:79、SEQ ID NO:83、SEQ ID NO:87、SEQ ID NO:91、およびSEQ ID NO:95に示される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列;
(c)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で(b)において定義される核酸配列の相補鎖とハイブリダイズする核酸配列によってコードされるアミノ酸配列;
(d)(b)および(c)のいずれか一方のヌクレオチド配列に対する遺伝コードの結果としての縮重である核酸配列によってコードされるアミノ酸配列。
【請求項10】
ヒトEpCAM抗原に特異的なVL鎖ドメインが以下からなる群より選択される、請求項1から9のいずれか1項記載の薬学的組成物:
(a)SEQ ID NO:82、SEQ ID NO:86、SEQ ID NO:90、SEQ ID NO:94、およびSEQ ID NO:98のいずれかに示されるアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:81、SEQ ID NO:85、SEQ ID NO:89、SEQ ID NO:93、およびSEQ ID NO:97に示される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列;
(c)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で(b)において定義される核酸配列の相補鎖とハイブリダイズする核酸配列によってコードされるアミノ酸配列;
(d)(b)および(c)のいずれか一方のヌクレオチド配列に対する遺伝コードの結果としての縮重である核酸配列によってコードされるアミノ酸配列。
【請求項11】
CD3抗原に特異的な結合ドメインが

からなる群より選択される抗体に由来する、請求項1から10のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項12】
二重特異性単鎖抗体構築物が以下の群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1から11のいずれか一項記載の薬学的組成物:
(a)SEQ ID NO:2、4、8、10、12、14、16、18、20、30、36、39、42、44、46、48、50、52、54、56、58、および60のいずれかに示されるアミノ酸配列;
(b)SEQ ID NO:1、3、7、9、11、13、15、17、19、29、35、38、41、43、45、47、49、51、53、55、57、および59のいずれかに示される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列;
(c)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で(b)において定義される核酸配列の相補鎖とハイブリダイズする核酸配列によってコードされるアミノ酸配列;
(d)(b)および(c)のいずれか一方のヌクレオチド配列に対する遺伝コードの結果としての縮重である核酸配列によってコードされるアミノ酸配列。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに定義される二重特異性単鎖抗体構築物をコードする核酸配列を含む薬学的組成物。
【請求項14】
請求項13に定義される核酸配列を含むベクターを含む薬学的組成物。
【請求項15】
ベクターが、請求項13に定義される核酸配列に作動可能に連結されている調節配列をさらに含む、請求項14記載の薬学的組成物。
【請求項16】
ベクターが発現ベクターである、請求項14または15記載の薬学的組成物。
【請求項17】
請求項14から16のいずれかに定義されるベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主を含む薬学的組成物。
【請求項18】
免疫エフェクター細胞のための活性化シグナルを提供することが可能であるタンパク質性化合物をさらに含む、請求項1から17のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項19】
薬学的組成物が37℃以上で熱安定性である、請求項1から18のいずれか1項記載の薬学的組成物。
【請求項20】
請求項1から12のいずれかに定義される二重特異性単鎖抗体構築物の発現を可能にする条件下で請求項17に定義される宿主を培養する工程、および該培養から産生した二重特異性単鎖抗体構築物を回収する工程を含む、請求項1から19のいずれか一項記載の薬学的組成物の産生のためのプロセス。
【請求項21】
腫瘍性疾患の予防、治療、または寛解のための薬学的組成物の調製のための、請求項1から12のいずれかに定義される二重特異性単鎖抗体構築物、請求項13に定義される核酸配列、請求項14から16のいずれかに定義されるベクター、請求項17に定義される宿主、および/または請求項20に記載されるプロセスによって産生されるこれらの使用。
【請求項22】
請求項1から19のいずれか一項記載の薬学的組成物を、腫瘍性疾患の予防、治療、または寛解の必要がある対象に投与する工程を含む、このような予防、治療、または寛解のための方法。
【請求項23】
対象がヒトである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
腫瘍性疾患が上皮癌または微小残存癌である、請求項21記載の使用または請求項22もしくは23記載の方法。
【請求項25】
請求項1から12のいずれかに定義される二重特異性単鎖抗体構築物、請求項13に定義される核酸配列、請求項14から16のいずれかに定義されるベクター、請求項17に定義される宿主、および/または請求項20に記載されるプロセスによって産生されるこれらを含むキット。

【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【公表番号】特表2007−530435(P2007−530435A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529930(P2006−529930)
【出願日】平成16年5月26日(2004.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005687
【国際公開番号】WO2004/106383
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(505298825)マイクロメット アクツィエン ゲゼルシャフト (14)
【Fターム(参考)】