説明

EUVシステムに用いる反射光学素子

【課題】高熱負荷状態でのEUV波長域での使用に適した、反射光学素子を提供する。
【解決手段】本発明は、EUVシステムで用いる反射光学素子(10)に関するものであり、少なくとも部分的には基板材から製造されるベース体(1)と、当該ベース体内に配置された、冷却媒体(7)が流れる少なくとも1つの冷却チャネル(6)とを備える。本発明では、50W/mKよりも大きい熱伝導率を有する材料を基板材として備え、反射光学素子は、基板材に適用され、研磨加工可能なアモルファス材料を含む研磨層を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的に基板材料から生成されるベース体(base body)を有する、EUVリソグラフィシステムに用いる反射光学素子に関するものである。冷却媒体が流れる少なくとも1つの冷却チャネルが、ベース体内に配置される。
【0002】
極紫外波長域(EUV)での光学用途、特にリソグラフィにおいては、ほぼ全反射の光学素子が用いられ、これらの表面は形状及び粗さに関する厳しい条件を満たす必要がある。ガラス、例えば、石英、又は、ZERODUR(登録商標)又はULE(登録商標)のようなガラスセラミックから、このような反射光学素子を製造する方法が従来技術により知られている。これらの素子の表面は、通常、いわゆる超精密研磨(super polishing)によって、表面のマイクロ粗さが0.2nm rms未満になるまで研磨される。
【0003】
しかし、これらの基板材は、高放射パワーで生じうる非常に高い熱負荷状態での動作への適用に限界がある。このことは、光学素子がEUV放射源のための集光コレクタミラー(gathering collector mirror)として構成されていれば、更に当てはまる。この場合、高放射パワーは、EUV波長域で放射されるのみではなく、EUV源から発せられる放射であって、EUV波長域外の放射によっても生じる可能性がある。このような場合、公知のミラー材料の熱伝導性は、反射表面から十分な熱を逃がすためには低すぎる。このため、ミラーが非常に高温になり、ミラーの反射層に歪み及び熱劣化が生じ、機能障害を引き起こす。
【0004】
特許文献1は、反射光学素子の冷却を改善するために、表面に冷却媒体を適用する方法について開示している。この方法は、応力に起因するミラー表面の歪みを実質的に軽減することを目的としている。このような解決方法の不都合な点は、冷却性能が非常に制限されることである。
【0005】
特許文献2は、EUVシステムで用いられるミラーとしての、反射光学素子を開示する。このミラーは、上部分及び下部分を有する二分割可能なベース体を含み、当該ベース体は、シリコン、ZERODUR(登録商標)、銅、又はインバール(登録商標)から製造される。ミラーを冷却するために、冷却チャネルがベース体の上部分に配置され、この冷却チャネルは、100μm以下の直径を有する、いわゆる、マイクロチャネルとして構成される。この場合、マイクロチャネルは、チャネル内で層流が形成されるように設計される。このシステムは非常に複雑であるため、製造コストが高いという点で不都合である。
【0006】
特許文献3は、他の反射光学素子であって、複数のミラー片により構成され、EUVリソグラフィシステムに用いることが可能な反射光学素子を開示する。特許文献3は、ミラー片を構成しうる複数の基板材を開示している。いわゆる、平滑化層及び反射層をミラー片に形成する。ミラー片は、ボンディングにより連結されてミラーを形成する。
【0007】
特許文献4は、EUV用途のためのミラーであって、反射表面が配置されたベース体を備えるミラーを開示している。更に、このミラーはベース体から離間して、ベース体の後ろ側に配置された放熱装置を備えている。この放熱装置及びベース体は、曲げ要素によって相互に接続されている。冷却液が流れる冷却チャネルが放熱装置内に配置されている。これは、冷却液が冷却チャネル内を循環することにより、放熱装置内における温度分布を規定のものとすることを意図している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/051984号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0091485号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0043321号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/0147386号明細書
【発明の概要】
【0009】
本発明の一つの目的は、高熱負荷状態でのEUV波長域での使用に適した、反射光学素子を提供することであり、当該反射光学素子は、更に、光学的に高品質の表面を有し、更に、簡易且つ製造時における費用対効果が高いことを特徴とする。更なる目的は、そのような反射光学素子を製造するための方法を特定することです。
【0010】
この目的は、請求項1に係る特徴を有する反射光学素子と、請求項13に係る特徴を有する製造方法によって達成される。
【0011】
本発明によれば、50W/(mK)よりも大きい熱伝導率を有する材料からなる基板材が提供される。また、基板材に上に形成される、研磨加工(例えば、超精密研磨加工)可能なアモルファス材料を含む研磨層を有する反射光学素子が提供される。基板材は、特に、120W/mK又は160W/mKより大きい熱伝導率を有しうる。このように、比較的高い熱伝導率を有する材料が用いられるので、光学素子の表面から冷却チャネル内の冷却媒体への熱放出が有意に改善される。追加的に適用された研磨層により、超精密研磨によって表面品質を有意に向上させることが可能である。
【0012】
本発明の構成では、基板材として備えられる素材は、60GPaより大きい弾性係数を有する。特に、200GPa又は250GPaより大きい弾性係数を有する素材も、備えられうる。したがって、素材は、比較的高い剛性によって区別されるので、特に、比較的大きい冷却チャネルを基板上で構成し、及び/又は、ベース体の固有振動数を増加させることが可能である。
【0013】
本発明の更なる構成においては、素材は、基板材として備えられ、最大でも、密度は3.5g/cm3である。特に、最大の密度が2.7g/cm3である材料を備えることも可能である。低密度の素材は、ベース体の固有周波数を高め、このような材料から成る光学素子の振動特性を改善する。
【0014】
本発明の更なる構成においては、特に、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金を含む金属基板が基板材として備えられる。したがって、必要とされる物理的特性を有する廉価な素材が備えられる。
【0015】
本発明の更なる構成では、特に、炭化ケイ素SiC及び/又はシリコン含浸SiC(SiSiC)、及び/又は、窒化ケイ素、及び/又は、ポリシリコンを含むセラミック素材が基板材として備えられる。これらの素材は、非常に低い熱膨張性、良好な熱伝導性、非常に高い弾性率、低密度といった特性を有し、本発明に係る光学素子に非常に適している。
【0016】
本発明の更なる構成において、炭化ケイ素金属複合材基板は、特に、炭化ケイ素分散強化アルミニウムとして構成され、基板材として備えられうる。これらの材料は、低い熱膨張性、良好な熱伝導性、高い弾性係数、低密度といった特性を有し、本発明に係る光学素子に非常に適している。
【0017】
本発明の更なる構成では、研磨層のアモルファス材料は、アモルファスシリコンSi、アモルファス一酸化ケイ素SiO、アモルファス二酸化ケイ素SiO、又はニッケルを含む。これらの材料は、本発明に係る基板材と共に、ベース体に用いるのに非常に適している。
【0018】
本発明の更なる構成では、反射光学素子は、研磨層に適用された反射層を備え、研磨層は、モリブデン及びシリコン、又は、ルテニウム及びシリコンで構成される層によって形成されることが好ましい。研磨層は、光学素子の、使用される波長域の入射光の反射を改善する。
【0019】
本発明の更なる構成では、一つの冷却チャネル又は複数の冷却チャネル又は全ての冷却チャネルは、0.5mmより大きい断面積を有し、特に、40mm〜100mmの断面積を有する。この結果、冷却チャネル内の冷却媒体の乱流を実質的に維持することが可能となり、ベース体から冷却媒体への熱移動が改善される。
【0020】
本発明の更なる構成では、一つの冷却チャネル又は複数の冷却チャネルのセクションは、ベース体内にて、相互に平行に、らせん状に、蛇行して、又は、放射状に配置されている。特に、冷却チャネルの方向をベース体の製造方法に適合させることが有利である。更には、光学素子内での温度分布、及び、特に光学素子の表面における温度分布は、冷却チャネルの適切な形状を選択することによって影響を与えることができる。
【0021】
本発明の更なる構成では、少なくとも一つの冷却チャネルのセクションは、セクション内で冷却媒体が乱流を生じるように構成される。乱流は、例えば、冷却チャネル内に撹乱素子を配置し、又は、方向変換、湾曲、その他の不連続性を冷却チャネル内に備えることで、生成される。しかし、冷却媒体の乱流は、冷却媒体が実際に光学素子に入る前の冷却回路の適切な構成によって生じさせることも可能である。
【0022】
本発明に係る、EUVシステムで用いる反射光学素子の製造方法は、
a)50W/mKよりも大きい熱伝導率を有する基板材を含むベース体(1)を製造するステップであって、少なくとも一つの冷却チャネル(6)がベース体内に形成され、冷却チャネルの少なくとも一つのセクションが当該セクション内で冷却媒体(7)が乱流を生じるように構成された、ステップと、
b)前記光学素子の所望表面形状に近似するように、前記ベース体(1)の表面(8)を形成するステップと、
c)前記ベース体(6)の前記表面(8)に対して、アモルファス材料を含む研磨層(2)を適用するステップと、
d)前記光学素子の前記所望表面形状に更に近づけるために前記研磨層(2)を加工するステップと、
を含む。
【0023】
本発明に係る方法は、正確に構成された表面形状を有する反射光学素子を容易かつ安価に製造するものである。そして、製造された反射光学素子は、熱放出において優れているため、高熱負荷を伴うEUVシステムでの使用に適している。上述の方法では、ステップa)及びb)は、一つの加工ステップとして組み合わせることも可能である。組み合わされたステップでは、ベース体の表面は、再加工をすることなく、一連の製造工程で加工される。ベース体の表面を対応する形状の鋳型によって成形することが、この一例として挙げられる。
【0024】
本発明に係る方法の更なる構成では、ステップb)において、表面は、表面精度が最大でも25μm、及び/又は、粗さが最大でもRa=1μmとなるように形成される。この場合、最大でも25μmの表面精度は、表面のあらゆる位置における、所望表面からの誤差の絶対値が25μm以下であるということを意味する。同様に、最大Ra=1μmの粗さは、表面全体における粗さが1μm以下であるということを意味する。したがって、表面は、ステップb)にて、コストのかからない方法で比較的粗く平準化され、表面の最終的な形状は、研磨層及び反射層を適用及び加工することによって定められる。
【0025】
本発明に係る方法の更なる構成では、反射層は、後続するステップにて、研磨層に適用される。研磨層は、光学素子の使用される波長域での入射光の反射を改善する。
【0026】
以下、本発明の例示的実施形態について、添付の図面を参照して更に詳細に示す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る光学素子の断面図である。
【図2】ベース体内の冷却チャネルの様々な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、コレクタミラー10としての本発明に係る光学素子を示す。コレクタミラー10は、10nm〜15nm、特に、13.5nmの極紫外(EUV)波長域での光学用途のために備えられる。コレクタミラー10は、ベース体1、研磨層2、反射層、及び冷却チャネル6を備えている。
【0029】
第1の例示的実施形態では、ベース体1はセラミック基板、特に、炭化ケイ素SiC又はシリコン含浸SiC(SiSiC)で構成される。これらの材料は、120〜170W/mKの良好な熱伝導性、弾性係数250〜350GPaの高い剛性、約3ppm/Kの低い熱膨張係数、及び、約3g/cmの低密度といった特性を有する。
【0030】
第2の例示的実施形態では、ベース体1は金属複合基板、特に、炭化ケイ素分散強化アルミニウムAlSiCで構成される。AlSiCは、160W/mKの良好な熱伝導性、弾性係数約200GPaの高い剛性、約8〜12ppm/K程度の低い熱膨張係数、及び、約3g/cmの低密度、といった特性を有する。
【0031】
第3の例示的実施形態では、ベース体1は金属基板、特に、アルミニウム又はAlSilMgMnのようなアルミニウム合金で構成される。これらの材料は、典型的には130〜220W/mK程度の良好な熱伝導性、弾性係数70GPa、約24ppm/Kの熱膨張係数、及び、約2.7g/cmの密度、といった特性を有する。特に、金属基板は、剛性及び熱膨張性に関して、第1及び第2の例示的実施形態と比較して材料特性に劣る。しかし、金属基板は製造及び加工の点で非常に安価であり、これらの点においては有利である。
【0032】
3つの例示的実施形態の全てにおいて、冷却媒体7が流れる冷却チャネル6がベース体1内に配置されている。上述のベース体1の材料の有利な点の1つは、冷却チャネル6がベース体1の基板材内に気密に埋設されていることである。すなわち、EUV用途では一般的である真空状態で用いられる場合であっても、ベース体1を透過して、冷却媒体7の流れが消失したり、拡散したり、又は漏れたりすることが実質的に抑制できるようにする。光学素子の外側の冷却ラインと、冷却ラインからベース体1内の冷却チャネル6への接続も、同様に密閉して埋設されていることが好ましい。冷却ラインへの接続は、基板への接着結合、半田付け、溶接により形成されても良く、あるいは、研磨加工、粉砕加工、ドリル加工、腐食加工のような、適切な機械的処理によってベース体1の材料から形成されても良い。
【0033】
図2a〜2dは、ベース体1の断面内での冷却チャネル6の様々な配置を示す図である。ベース体1の基板内の冷却チャネル6の分布は、以下に更に詳述するように、ベース体の製造方法に依存する。冷却チャネル6は、ベース体1内に配置されることが好ましく、これにより、ミラー表面4の残余のスルーエンボッシング(through embossing)を最小化する。冷却チャネル6は、例えば、相互に平行に(図2c)、らせん状に(図2a)、蛇行して(図2c)、放射状に(図2d)、又はこれらを組み合わせた形状で(図2b)設けることができる。図2a及び2dに示す例示的実施形態では、冷却媒体は、供給ライン5を介してベース体1の後方から供給される。冷却チャネル6は、基本的には第1収集ライン11から供給され、そして/あるいは、第2収集ライン12(図2d)に導かれる。例えば、図2c及び図2bに(冷却媒体が湾曲している場合についてのみ)示すように、低温又は高温の冷却媒体が隣接した冷却チャネル6内を逆方向に流れることは特に有利である。なぜなら、これにより、ベース体1が広範囲にわたって歪む危険性が低減されるからである。冷却チャネル6は、円形、楕円形、矩形その他の断面形状で設けられうる。更には、各冷却チャネル6はミラー表面4から様々な距離で配置されており、これにより、局所的に異なるミラー表面の熱負荷に対する局所的な冷却性能を実現する。これにより、ミラー表面4の歪みは更に最小化される。冷却チャネル6の断面積は、0.5mm以上であり、好ましくは40mm〜100mmである。これらの断面積の場合、冷却チャネル6内での乱流を維持することができ、その結果、ベース体1から冷却媒体7への熱移動が改善される。
【0034】
使用した冷却媒体7は水であり、脱イオン化水、又は、例えば、グリコールのような、氷点降下のための添加物を混合した水であってもよい。コレクタミラーに供給する前の冷却剤の温度は、水の場合は0℃〜30℃が好ましく、氷点降下剤を添加した場合には0℃以下が好ましい。他の例示的実施形態では、冷却オイル、又は、例えば窒素のような冷却ガスを冷却媒体として用いる。
【0035】
研磨層2を、ベース体1に適用するが、当該研磨層2はアモルファスシリコン、アモルファス一酸化ケイ素SiO、アモルファス二酸化ケイ素SiOを含むか、又は、5〜15%のリン含有量の化学メッキ(chemically-applied)ニッケルで構成した層からなることが好ましい。層厚は、1μm〜300μm以上である。粗さ、及び/又はベース体1の表面8の所望の形状からのずれは、研磨層2によって低減又は補償できる。
【0036】
反射層3は、研磨層2上に形成され、反射層は、コレクタミラー10の目的とする放射波長域に対して最適化されている。反射層3は、更に、放射の入射角に対しても最適化されることが好ましい。波長13.5nm及び放射の入射角が0°〜45°の場合、反射層3は、モリブデン並びにシリコン、及び、ルテニウム並びにシリコンの多重層として備えられることが好ましい。
【0037】
上述した例示的実施形態では、反射光学素子はコレクタミラー10として設けられる。このようなミラーは、多くの場合、切断回転楕円面又は切断回転放物面の形状を有している。しかし、一般性を損ねることなく、本発明は、多様に湾曲したミラー又は平面を有するミラーに適用することが可能である。
【0038】
コレクタミラー10はマウントされ(図示しない)、ミラーの表面形状及び光学システム内におけるミラー位置への影響を可能な限り少なくするように最適化されている。特に、光源又はミラーの周囲環境からの熱の影響を最小化するように、マウントされている。好ましくは、アイソスタティックマウント(isostatic mount)又は準アイソスタティックマウント(quasi-isostatic mount)が備えられる。
【0039】
本発明に係る反射光学素子10は、EUV波長域にて使用するために備えられており、カスタム化用途でのEUVスペクトル域において非常に高い熱負荷に曝される。このような場合、従来技術によるミラーの場合には、従来のミラー材料の熱伝導性は低過ぎるので、動作中にミラーが激しく熱せられ、曲がり、そして/又は、反射層の熱劣化が生じる。本発明に従う反射光学素子10は、非常に高い熱伝導性を有する基板材から製造されるベース体1を備える。基板材の高い熱伝導性は、効率的な熱分散を保証する。冷却チャネル6は、ベース体1内で形成され、当該冷却チャネルは、光学素子の反射表面4の近傍に配置される。これにより、比較的短距離での、表面4からベース体1を経て冷却チャネル6内の冷却媒体7への熱伝導による熱移動が可能となる。熱膨張係数が低く、剛性が高い基板材を選択することで、更なる有利な効果が生じる。表面6での表面歪みとしての冷却チャネル6の構造のスルーエンボッシングの危険性を低減する。さもなければ、逆に、反射光学素子10の形状に影響を与えうる。材料の剛性が高いので、特に、冷却チャネル6は、ベース体1の安定性を損なうことなく大きい断面積で設けられうる。冷却チャネル6内の流れは、乱流であることが好ましく、これにより、ベース体1から冷却媒体7への熱移動が可能となる。基板材の剛性が高く、密度が低いため、ベース体1は固有振動数が高い。これにより、動作中における冷却媒体7の比較的低周波数の乱流によっては、ベース体1は振動しないか、又は小さく振動する。
【0040】
分離した研磨層を適用して、その後、研磨加工し、反射層を設けることによって、EUV波長域での光学素子の使用に十分な表面品質の表面が得られる。これは、理想形状からの最大誤差及び最大粗さに関して適用される。
【0041】
本発明に係る反射光学素子10は、高い熱伝導性を有する基板材よりなるベース体1を設けることによって、容易且つ効果的に製造することができる。ベース体1内では、冷却チャネル6が形成され、ベース体1の表面8は、反射表面4の理想形状に大まかに近似するように形成される。その後、アモルファス材料の研磨層2は、CVD処理、PE-CVD処理、によってベース体の表面1に形成され、研磨層2の表面14は、超精密研磨のような機械的方法、及び/又は化学的方法で反射表面4の理想形状に更に近似される。その後に形成される反射層3によって、光学素子10の反射特性が改善され、想定される用途に適したものとなる。
【0042】
ベース体1の異なる製造方法は、使用される基板材によっては効果的である。
【0043】
セラミック基板から成るベース体1では、冷却チャネル6は、セラミック化処理の前に、あらかじめセラミック素地内に形成しておくことにより、容易かつ効率的に形成することができる。例えば、ドリル加工、粉砕加工、旋回加工、腐食加工などの機械的な材料加工方法、又は、他の適切な物理的若しくは化学的加工方法によって、柔らかい素地に加工することができる。この目的のために、素地は複数のパーツから形成され、冷却チャネル6は、表面の1つ又は複数のパーツに形成されることが好ましい。その後、パーツを相互に接着結合することで、ベース体1を形成し、冷却チャネル6を閉鎖する。セラミック化は、シリコン浸透又はシンタリングによって行い、特に、基板体を形成するためのSiC粉体のシンタリング中において、冷却チャネルはグラファイトインサートによって保護されうる。ミラー基板は、真空密閉され、即ち、実質的に媒質に対して不透性であり、セラミック化後に生成される。更なる例示的実施形態では、素地に形成された冷却チャネルは、ベース体のパーツが接着結合又は相互に連結される前に、保護物質によって充填される。保護物質は、浸透中の冷却チャネルへのシリコンの流入や閉鎖を予防する。セラミック化工程の後、保護物質は燃やされるか、又は、分解によって化学的に、若しくは機械的に除去される。
【0044】
金属基板又は金属複合材基板からなるベース体1の構成では、ベース体は、好ましくは2つのハーフシェルからなり、溶接、半田付け、又は接着結合された継ぎ目を有する。組み立てに先立って、冷却チャネル6は、一方又は両方のハーフシェルに、例えば、ドリル加工、粉砕加工、旋回加工、腐食加工などの機械的処理によって形成される。任意のステップにて、ブランクの鋳造に先立って、冷却チャネル6は基板材より高い融点の材料で充填される。そして、鋳造材料の冷却後、充填材料は化学的に分解されるか、又は機械的に除去される。金属複合材基板からなるベース体1を生成する、更なる例示的実施形態では、基板材より高い融点の材料をブランクの鋳造中に鋳込む。このようなチューブは、例えば、高級鋼、ニッケル又はニッケル合金、又は、基板材の熱膨張係数に可能な限り近い値の熱膨張係数を有する他の材料から製造されうる。チューブは、冷却チャネル6の所望形状に湾曲され、その後、鋳型に挿入される。チューブは、鋳型から1つ又は複数の方向にチューブ端が突き出すように変形されることが好ましく、これにより、突き出し部分に冷却媒体ラインのための接続部を付加することができる。そして、鋳型を溶解物で充填する。チューブを用いることで、確実に、冷却チャネルを気密に設けることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUVシステムで用いる反射光学素子(10)であって、
少なくとも部分的には、50W/mKよりも大きい熱伝導率を有する基板材から生成されるベース体(1)と、
前記基板材に適用され、研磨加工可能なアモルファス材料を含む、研磨層(2)と、を備え、
冷却媒体(7)が流れる少なくとも1つの冷却チャネル(6)は、前記ベース体内に配置されており、前記冷却チャネル(6)の少なくとも一つのセクションは、当該セクション内にて前記冷却媒体(7)が乱流を生じるように構成されている、
ことを特徴とする反射光学素子。
【請求項2】
撹乱素子が少なくとも1つの前記冷却チャネル(6)内の少なくとも1つのセクション内に配置され、又は、前記冷却チャネル(6)の少なくとも1つのセクションが、前記冷却チャネル内において不連続性を有し、これによって、前記セクション内にて前記冷却媒体(7)の乱流が生成されることを特徴とする、請求項1に記載の反射光学素子。
【請求項3】
前記基板材は、60GPaより大きい弾性係数を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の反射光学素子。
【請求項4】
前記基板材は、最大でも密度が3.5g/cm3である、ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の反射光学素子。
【請求項5】
特に、アルミニウム、及び/又は、アルミニウム合金を含む金属基板を、基板材として備えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の反射光学素子。
【請求項6】
特に、炭化ケイ素及び/又はシリコン含浸炭化ケイ素、及び/又は、窒化ケイ素、及び/又は、ポリシリコンを含むセラミック素材を、基板材として備えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の反射光学素子。
【請求項7】
特に、炭化ケイ素分散強化アルミニウムを含む、金属複合材基板を、基板材として備えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の反射光学素子。
【請求項8】
研磨層(2)のアモルファス材料は、アモルファスシリコン、アモルファス一酸化ケイ素、アモルファス二酸化ケイ素、又はニッケルを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の反射光学素子。
【請求項9】
前記反射光学素子(10)は、前記研磨層(2)上に形成された反射層(3)を備えることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の反射光学素子。
【請求項10】
前記反射層(3)は、Mo/Si又はRu/Siの層で形成されることを特徴とする、請求項9に記載の反射光学素子。
【請求項11】
前記冷却チャネル(6)は、0.5mmより大きい断面積を有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の反射光学素子。
【請求項12】
前記断面積は、40mm〜100mmであることを特徴とする、請求項12に記載の反射光学素子。
【請求項13】
一つの冷却チャネル(6)又は複数の冷却チャネルのセクションは、前記ベース体(1)内にて、相互に平行に、らせん状に、蛇行して、又は、放射状に配置されていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の反射光学素子。
【請求項14】
EUVシステムで用いる反射光学素子の製造方法であって、
a)50W/mKよりも大きい熱伝導率を有する基板材を含むベース体(1)を製造するステップであって、少なくとも一つの冷却チャネル(6)が前記ベース体(1)ないに形成され、前記冷却チャネル(6)の少なくとも一つのセクションが、該セクション内で冷却媒体(7)が乱流を生じるように構成された、ステップと、
b)前記光学素子の所望表面形状に近似するように、前記ベース体(1)の表面(8)を形成するステップと、
c)前記ベース体(6)の前記表面(8)に対して、アモルファス材料を含む研磨層(2)を適用するステップと、
d)前記光学素子の前記所望表面形状に更に近づけるために前記研磨層(2)を加工するステップと、
を含むことを特徴とする、反射光学素子の製造方法。
【請求項15】
前記ステップb)において、前記ベース体(1)の前記表面(8)は、表面精度が最大でも25μm、特に、表面精度が最大10μm、及び/又は、粗さが最大でもRa=1μmとなるように、形成されることを特徴とする、請求項14に記載の反射光学素子の製造方法。
【請求項16】
前記反射層(3)は、後続するステップにて、前記研磨層(2)に適用されることを特徴とする、請求項14又は15に記載の反射光学素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−53687(P2011−53687A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−192235(P2010−192235)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(503187084)カール ツァイス レーザー オプティクス ゲーエムベーハー (14)
【Fターム(参考)】