EUVマスク用ブランクの良否判定方法及びEUVマスクの製造方法
【課題】EUVマスクの製造コストを低減可能なEUVマスク用ブランクの良否判定方法及びEUVマスクの製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態に係るEUVマスク用ブランクの良否判定方法は、EUVマスク用ブランクに含まれる欠陥の情報及び前記ブランク上に形成されるマスクパターンのデザイン情報に基づいて、前記ブランク上に前記マスクパターンを形成して作製されるEUVマスクを用いて集積回路装置を製造したときに、前記集積回路装置が不良品となるか否かを評価する工程を備える。そして、前記集積回路装置が不良品とならない場合に、前記ブランクを良品と判定する。
【解決手段】実施形態に係るEUVマスク用ブランクの良否判定方法は、EUVマスク用ブランクに含まれる欠陥の情報及び前記ブランク上に形成されるマスクパターンのデザイン情報に基づいて、前記ブランク上に前記マスクパターンを形成して作製されるEUVマスクを用いて集積回路装置を製造したときに、前記集積回路装置が不良品となるか否かを評価する工程を備える。そして、前記集積回路装置が不良品とならない場合に、前記ブランクを良品と判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、EUV(extreme ultra violet:極端紫外線)マスク用ブランクの良否判定方法及びEUVマスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタ等の半導体素子が多数設けられた集積回路装置を製造するためには、集積度を高めるために、パターンを微細化する技術が必要不可欠である。近年、パターンをより一層微細化するために、各種のリソグラフィ技術の開発が盛んに進められている。このようなリソグラフィ技術の一つとして、EUV光を露光光として用いる露光技術がある。露光光として用いられるEUV光の波長は、約13.5nmと極めて短い。このため、EUVリソグラフィ技術は、サイズが50nm以下の極めて微細なパターンを解像するリソグラフィ技術と位置付けられている。
【0003】
このような波長のEUV光を透過させる材料は入手が困難であるため、EUV露光装置の露光光学系は、透過光学系ではなく反射光学系である。また、EUV露光用のEUVマスクは、透過型マスクではなく反射型マスクである。そして、EUVマスクは、基板上に多層膜からなるEUV光の反射膜が設けられたブランクの上に、EUV光を吸収する吸収膜を選択的に形成してマスクパターンを形成することにより、製造される。
【0004】
このようなEUVリソグラフィ技術においては、EUVマスク用のブランク自体が微細構造を持つ構造体である上に、EUV光の波長が極めて短いため、ブランクに起因した欠陥が露光像中に出現する場合がある。従って、EUVリソグラフィの歩留まりを向上させるためには、マスクパターンを形成する前にブランクを検査し、欠陥の無いブランクのみを用いることが望ましい。しかしながら、ブランク中の欠陥を完全になくすことは困難であるため、欠陥の無いブランクのみを用いようとすると、ブランクの歩留まりが低くなり、EUVマスクの製造コストが増加してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−080437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、EUVマスクの製造コストを低減可能なEUVマスク用ブランクの良否判定方法及びEUVマスクの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係るEUVマスク用ブランクの良否判定方法は、EUVマスク用ブランクに含まれる欠陥の情報及び前記ブランク上に形成されるマスクパターンのデザイン情報に基づいて、前記ブランク上に前記マスクパターンを形成して作製されるEUVマスクを用いて集積回路装置を製造したときに、前記集積回路装置が不良品となるか否かを評価する工程を備える。そして、前記集積回路装置が不良品とならない場合に、前記ブランクを良品と判定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係る良否判定方法の対象となるEUVマスク用ブランクを例示する平面図である。
【図2】実施形態に係る良否判定方法の対象となるEUVマスク用ブランクを例示する断面図である。
【図3】実施形態に係るEUVマスク用ブランクの良否判定方法を例示するフローチャート図である。
【図4】(a)及び(b)は、ブランクの位相欠陥が集積回路装置の良否に及ぼす影響を例示する図である。
【図5】(a)及び(b)は、ブランクのパターン阻害欠陥が集積回路装置の良否に及ぼす影響を例示する図である。
【図6】(a)及び(b)は、ブランクのパターン阻害欠陥が集積回路装置の良否に及ぼす影響を例示する図である。
【図7】リダンダンシー回路を持つ集積回路装置を例示する平面図である。
【図8】集積回路装置のリダンダンシー回路を例示する平面図である。
【図9】リダンダンシー回路による救済が可能か否かの判断方法を例示するフローチャート図である。
【図10】実施形態に係るEUVマスクの製造方法を例示する工程断面図である。
【図11】実施形態によって製造されたEUVマスクを例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態は、EUVマスク用ブランクの良否判定方法及びEUVマスクの製造方法の実施形態である。
【0010】
先ず、本実施形態に係るEUVマスク用ブランクの良否判定方法において、判定の対象となるEUVマスク用ブランクについて説明する。
図1は、本実施形態に係る良否判定方法の対象となるEUVマスク用ブランクを例示する平面図であり、
図2は、本実施形態に係る良否判定方法の対象となるEUVマスク用ブランクを例示する断面図である。
【0011】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る良否判定方法の判定対象となるEUVマスク用ブランク(以下、単に「ブランク」という)100においては、石英基板101が設けられている。石英基板101の形状は略直方体の平板状である。石英基板101上には、多層膜102が設けられている。多層膜102においては、モリブデン(Mo)層103及びシリコン(Si)層104が交互に数十層程度積層されている。多層膜102はEUV光の反射膜として機能する。なお、図2においては、図示の便宜上、モリブデン層103及びシリコン層104の積層数は、実際よりも少なく描かれている。
【0012】
上方から見て、ブランク100の形状は矩形であり、中央部には、マスクパターン形成領域106が設定されている。マスクパターン形成領域106は、ブランク100を用いてEUVマスクを製造する際に、多層膜102上にEUV光を吸収する吸収膜が選択的に設けられて、マスクパターン210(図11参照)が形成される領域である。一方、ブランク100の周辺部、すなわち、マスクパターン形成領域106を囲む枠状の領域は、周辺領域107となっている。周辺領域107におけるマスクパターン形成領域106を挟む2ヶ所の領域には、位置参照用マーク108が形成されている。後述するように、ブランク100のマスクパターン形成領域106にマスクパターン210(図11参照)が形成されることにより、EUVマスク200(図11参照)が製造される。また、このEUVマスク200を用いてEUV露光を行うことにより、記憶装置等の集積回路装置300(図7参照)が製造される。本実施形態においては、集積回路装置300はリダンダンシー回路を持つ装置であるものとする。
【0013】
そして、ブランク100には、欠陥が発生している可能性がある。図2においては、ブランク100の欠陥110a、110b及び110cを模式的に示している。
欠陥110aにおいては、石英基板101と多層膜102との間にパーティクル111aが介在している。これにより、多層膜102の下部に積層されたモリブデン層103及びシリコン層104のうち、パーティクル111aの直上域及びその周辺に位置する部分が盛り上がっている。このため、多層膜102の下部におけるパーティクル111aの直上域及びその周辺の部分は、多層膜102におけるその他の部分に対して、モリブデン層103及びシリコン層104の積層膜厚が変動している。但し、モリブデン層103及びシリコン層104の盛り上がりの程度は、多層膜102の上面102aに近づくほど小さくなっており、上面102aは実質的に盛り上がっていない。
【0014】
欠陥110bにおいては、多層膜102の内部にパーティクル111bが存在している。これにより、多層膜102におけるパーティクル111bよりも上層の部分において、モリブデン層103及びシリコン層104が盛り上がっている。この盛り上がりの程度も、多層膜102の上面102aに近づくほど小さくなっているが、上面102aにおいても盛り上がりは完全には消滅しておらず、上面102aにおけるパーティクル111bの直上域及びその周辺は、他の領域に対して盛り上がっている。この結果、多層膜102におけるパーティクル111bよりも上方の部分において、パーティクル111bの直上域及びその周辺の部分は、多層膜102におけるその他の部分に対して、局所的にEUV光の反射率が変化している。
【0015】
欠陥110cにおいては、多層膜102の上面102aにパーティクル111cが付着している。多層膜102におけるパーティクル111cの直下域においては、モリブデン層103及びシリコン層104の積層構造中に欠陥は存在しない。パーティクル111a、111b及び111cは、例えば、多層膜102の成膜時に、雰囲気中に存在していたパーティクルが混入したものである。
【0016】
欠陥110aについては、多層膜102の上面102aにはパーティクル111aの形状を反映した盛り上がりが形成されていないため、多層膜102上にマスクパターンを形成する際の障害にはならない。このため、欠陥110aはマスクパターンの欠陥(以下、「パターン欠陥」という)の原因となることはない。但し、欠陥110aにおいては、モリブデン層103及びシリコン層104の膜厚が変動しているため、多層膜102にEUV光を照射したときの反射光において、欠陥110aに相当する部分とその周辺の部分との間で、EUV光の反射率の局所的変動に伴う位相差が生じてしまう。例えば、EUV光の波長が13.5nmであり、EUV光がマスクに入射するときの入射角が5.8度であるとすると、積層膜厚が約3.5nmずれているだけで、πの位相差が発生してしまう。この結果、反射光における欠陥110aに相当する部分の強度が著しく低下してしまい、暗部となってしまう。このような欠陥を「位相欠陥」という。
【0017】
欠陥110bについては、多層膜102の上面102aがパーティクル111bの形状を反映して盛り上がっているため、マスクパターンを形成する際に障害となる。すなわち、パターン欠陥の原因となりうる。以下、このように、マスクパターンを形成したときにパターン欠陥の原因となりうるようなブランク中の欠陥を、「パターン阻害欠陥」という。また、欠陥110bにおいては、積層膜厚が変動しているため、欠陥110bは位相欠陥でもある。
【0018】
欠陥110cについては、積層膜厚は変動していないため、位相欠陥ではない。但し、多層膜102の上面102aに付着したパーティクル111cがマスクパターンを形成する際の障害となるため、パターン欠陥の原因にはなりうる。従って、欠陥110cはパターン阻害欠陥である。
【0019】
このように、ブランク100には、一種類以上の欠陥が発生している可能性がある。このような欠陥は、ブランク100を検査することにより、検出される。例えば、検査用の光をブランク100に対して照射し、その反射光の強度を測定し、空間プロファイルを作成することにより、ブランク100中の欠陥を検出することができる。例えば、検査用の光として可視光を用いた検査を行えば、多層膜102の上面102aの凹凸を検出することができるため、パターン阻害欠陥を検出することができる。また、検査用の光としてEUV光(極端紫外線)以外の紫外線を用いた検査を行えば、パターン阻害欠陥及び一部の位相欠陥を検出することができる。更に、検査用の光としてEUV光を用いた検査を行えば、パターン阻害欠陥及び位相欠陥をほぼ確実に検出することができる。欠陥の検出結果は、そのブランク100の「欠陥情報」となる。欠陥情報は、例えば、反射光の強度の空間プロファイル若しくは反射光の強度からバックグラウンドを除去したコントラストの空間プロファイル等の一次データ、又は、これらの一次データから各欠陥の位置及び大きさ等を算出した二次データである。これらのデータの座標は、位置参照用マーク108を基準として出力することができる。
【0020】
次に、本実施形態に係るEUVマスク用ブランクの良否判定方法について説明する。
本実施形態に係るEUVマスク用ブランクの良否判定方法は、あるブランク100が、「良品」であるか「不良品」であるかを判定する方法である。
図3は、本実施形態に係るEUVマスク用ブランクの良否判定方法を例示するフローチャート図であり、
図4(a)及び(b)は、ブランクの位相欠陥が集積回路装置の良否に及ぼす影響を例示する図であり、
図5(a)及び(b)は、ブランクのパターン阻害欠陥が集積回路装置の良否に及ぼす影響を例示する図であり、
図6(a)及び(b)は、ブランクのパターン阻害欠陥が集積回路装置の良否に及ぼす影響を例示する図であり、
図7は、リダンダンシー回路を持つ集積回路装置を例示する平面図であり、
図8は、集積回路装置のリダンダンシー回路を例示する平面図であり、
図9は、リダンダンシー回路による救済が可能か否かの判断方法を例示するフローチャート図である。
【0021】
先ず、図3のステップS1に示すように、判定対象とするブランク100についての欠陥情報を取得する。
次に、ステップS2に示すように、取得した欠陥情報を参照して、このブランク100に欠陥が存在するか否かを確認する。そして、欠陥が存在しない場合は、ステップS9に進み、このブランク100は「良品」であると判定する。一方、欠陥が存在する場合は、ステップS3に進み、欠陥についてのより詳細な評価を行う。
【0022】
ステップS3においては、ブランク100に含まれる欠陥の欠陥情報、及びこのブランク100上に形成されるマスクパターンのデザイン情報に基づいて、この欠陥が「キラー欠陥」であるか否かを判断する。マスクパターンのデザイン情報とは、ブランク100上に選択的に形成される吸収膜の形状についての情報であり、例えば、製造しようとする集積回路装置300の配線のレイアウト及び寸法等に対応する情報である。また、キラー欠陥とは、このブランク100上にマスクパターンを形成してEUVマスクを作製し、このEUVマスクを用いて集積回路装置を製造したときに、この集積回路装置がこの欠陥の存在に起因して不良品となるような欠陥をいう。
【0023】
ブランク100に存在する欠陥がキラー欠陥であるか否かは、例えば、マスクパターンのデザイン情報、EUVマスクの積層構造、及びEUV露光の露光条件に基づいて、ブランク100の欠陥が、EUVマスクにEUV光を照射して得られた露光像に及ぼす影響をシミュレートすることによって判断可能である。EUVマスクの積層構造とは、図2に示すように、多層膜102を構成する各層の材料、厚さ及び積層数等をいう。EUV露光の露光条件には、EUVマスクを形成する各材料の特性を示すパラメータ、露光光(EUV光)の波長、照明条件、投影光学系の開口数(NA)、露光量、フォーカス、フレア量、EUV光の入射角、及びレジスト材料の拡散係数等が含まれる。露光像とは、露光対象物、例えばレジスト膜において結像する投影像である。
【0024】
図4(a)及び(b)、図5(a)及び(b)、並びに図6(a)及び(b)は、それぞれ、図の左側から順に、欠陥を含むブランク100と、このブランク100上にマスクパターンを形成して作製されるEUVマスク200と、このEUVマスク200を用いて製造される集積回路装置300を示している。また、各図の(a)は集積回路装置300が不良品となる場合を示し、各図の(b)は集積回路装置300が良品となる場合を示している。
【0025】
例えば、図4(a)及び(b)に示すように、ブランク100に位相欠陥121が存在する場合を考える。このとき、このブランク100を用いて作製されたEUVマスク200においても、位相欠陥121が存在する。また、EUVマスク200には、マスクパターン210が形成されている。マスクパターン210はEUV光を吸収する領域である。このEUVマスク200を用いてEUV露光を行い、集積回路装置300を製造する。このとき、集積回路装置300におけるマスクパターン210が転写された領域には、配線301が形成されるものとする。また、EUVマスク200の位相欠陥121は、露光像においては暗部となり、配線301を広げるように作用する。
【0026】
そして、図4(a)に示すように、EUVマスク200の位相欠陥121に起因して、集積回路装置300の配線301間の距離Lが許容値以下となる場合は、集積回路装置300は不良品と判定される。この場合、ブランク100の位相欠陥121はキラー欠陥である。なお、距離Lがゼロになると、配線301同士が短絡してしまう。この場合も集積回路装置300は不良品と判定されるため、位相欠陥121はキラー欠陥である。
【0027】
これに対して、図4(b)に示すように、例えば、マスク200において、位相欠陥121がマスクパターン210と重なっており、位相欠陥121に起因して配線301間の距離Lが許容値以下とならない場合は、集積回路装置300は良品と判定される。この場合、ブランク100の位相欠陥121はキラー欠陥ではない。
【0028】
また、図5(a)及び(b)に示すように、ブランク100にパターン阻害欠陥122が存在する場合を考える。このとき、このブランク100を用いて作製されたEUVマスク200においては、ブランク100のパターン阻害欠陥122がマスクパターンの形成を阻害するため、パターン欠陥222が発生する。このパターン欠陥222は、EUV光を遮断する不透明欠陥であるとする。
【0029】
そして、図5(a)に示すように、集積回路装置300において、EUVマスク200のパターン欠陥222に起因して、配線301間の距離Lが許容値以下となる場合は、集積回路装置300は不良品と判定される。この場合、ブランク100のパターン阻害欠陥122はキラー欠陥である。なお、距離Lがゼロになる場合は、配線301同士が短絡し、集積回路装置300は不良品と判定されるため、パターン阻害欠陥122はキラー欠陥である。
【0030】
これに対して、図5(b)に示すように、例えば、マスク200において、パターン欠陥222がマスクパターン210と重なっており、パターン欠陥222に起因して配線301間の距離Lが許容値以下とならない場合は、集積回路装置300は良品と判定される。この場合、ブランク100のパターン阻害欠陥122はキラー欠陥ではない。
【0031】
更に、図6(a)及び(b)に示すように、ブランク100にパターン阻害欠陥123が存在する場合を考える。このとき、このブランク100を用いて作製されたEUVマスク200においては、ブランク100のパターン阻害欠陥123がマスクパターンの形成を阻害するため、パターン欠陥223が発生する。このパターン欠陥223は、EUV光を透過させる透明欠陥であるとする。
【0032】
そして、図6(a)に示すように、集積回路装置300において、EUVマスク200のパターン欠陥223に起因して、配線301の幅Wが許容値以下となる場合は、集積回路装置300は不良品と判定される。この場合、ブランク100のパターン阻害欠陥123はキラー欠陥である。なお、幅Wがゼロになる場合は、配線301がオープンとなり、集積回路装置300は不良品と判定されるため、パターン阻害欠陥123はキラー欠陥である。
【0033】
これに対して、図6(b)に示すように、例えば、マスク200において、パターン欠陥223がマスクパターン210間の反射領域、すなわち、多層膜102が露出した領域と重なっており、パターン欠陥223に起因して配線301の幅Wが許容値以下とならない場合は、集積回路装置300は良品と判定される。この場合、ブランク100のパターン阻害欠陥123はキラー欠陥ではない。
【0034】
このようにして、ステップS3においては、ブランク100に発生している各欠陥がキラー欠陥であるか否かを判断する。そして、ステップS4に示すように、ブランク100に存在する全ての欠陥がキラー欠陥ではなく、ブランク100にキラー欠陥が存在しない場合、すなわち、ブランク100の欠陥に起因して集積回路装置300が不良品とならない場合には、ステップS9に進み、このブランク100を「良品」と判定する。一方、ブランク100の欠陥に起因して集積回路装置300が不良品となる場合、すなわち、ブランク100に1個以上のキラー欠陥が存在する場合は、ステップS5に進み、このブランク100の救済の可能性を検討する。
【0035】
ステップS5においては、ステップS4において集積回路装置300が不良品となるとされたブランク100について、ブランク100に対するマスクパターンの形成位置をずらすことによって、このブランク100の救済が可能か否かを検討する。具体的には、マスクパターンのデザイン情報に基づいて、マスクパターンの形成位置をずらすことにより、集積回路装置300が良品となるか否かを判断する。
【0036】
例えば、図4(a)、図5(a)又は図6(a)に示すブランク100は、キラー欠陥を含むブランクである。上述の如く、このまま、このブランク100を用いてEUVマスク200を作製し、このEUVマスク200を用いて集積回路装置300を製造しても、この集積回路装置300は不良品となる。しかしながら、ブランク100に対するマスクパターンの形成位置をずらすことによって、作製されるEUVマスク200において、欠陥とマスクパターン210との相対的な位置関係が変化する。この結果、図4(b)、図5(b)又は図6(b)に示すブランク100のように、欠陥がキラー欠陥ではなくなり、製造される集積回路装置300が良品となる可能性がある。
【0037】
そして、ステップS6に示すように、ブランク100に対するマスクパターンの形成位置をずらすことによって、集積回路装置300が良品となる場合、すなわち、ブランク100を救済することが可能である場合には、ステップS9に進み、このブランク100を「良品」と判定する。一方、マスクパターンの形成位置をずらすことによっては集積回路装置300が良品とならず、ブランク100を救済できない場合には、ステップS7に進み、他の方法によるブランク100の救済の可能性を更に検討する。
【0038】
ステップS7においては、ステップS6においてマスクパターンの形成位置をずらすことによっては救済できないと判断されたブランク100について、集積回路装置300のリダンダンシー回路を用いることによる救済の可能性を検討する。以下、この検討の方法を、集積回路装置300の具体例を挙げて詳細に説明する。
【0039】
先ず、リダンダンシー回路を持つ集積回路装置300の具体例について説明する。
図7に示すように、集積回路装置300は、例えば半導体記憶装置である。集積回路装置300においては、半導体基板310が設けられている。また、半導体基板310の上面に平行な方向であって、相互に直交する2方向として、ワード線方向及びビット線方向が設定されている。集積回路装置300のビット線方向における一端部にはパッド領域311が設けられており、その隣には周辺回路領域312が設けられている。また、周辺回路領域312の更に隣には、複数のセンスアンプ領域313が設けられており、各センスアンプ領域313の更に隣には、メモリセル領域314が設けられている。すなわち、パッド領域311、周辺回路領域312、センスアンプ領域313及びメモリセル領域314は、ビット線方向に沿ってこの順に配列されている。更に、各メモリセル領域314のワード線方向両側には、ロウデコーダ領域315が設けられている。すなわち、メモリセル領域314及びロウデコーダ領域315は、ワード線方向に沿って配列されている。
【0040】
このうち、メモリセル領域314は、基本ユニットとしてのメモリセルが複数個集積された領域であり、メモリセル間に互換性がある。このため、本来使用されるべきメモリセルの他に、リダンダンシー回路として、予備のメモリセルを設けておき、本来使用されるべきメモリセルに不具合が生じた場合には、予備のメモリセルに置き換えることができる。従って、メモリセル領域314は、リダンダンシー回路による救済が可能な領域である。以下、このようなリダンダンシー回路による救済が可能な領域を、「R/D領域」という。
【0041】
具体的には、図8に示すように、メモリセル領域314には、本来使用されるべきメモリセル群321aと、リダンダンシー回路としての予備のメモリセル群321bが設けられている。そして、メモリセル群321aに属するメモリセルに欠陥320が発生した場合には、このメモリセルが属するメモリセル列322a全体を使用禁止とし、その替わりに、メモリセル群321bに設けられたメモリセル列322bを使用する。これにより、集積回路装置300が救済される。
【0042】
また、ロウデコーダ領域315も、互換性のある基本ユニットが複数個集積された領域であるため、リダンダンシー回路による救済が可能なR/D領域である。これに対して、パッド領域311、周辺回路領域312及びセンスアンプ領域313には、リダンダンシー回路が設けられておらず、従って、リダンダンシー回路による救済が不可能な領域である。すなわち、これらの領域はR/D領域ではない。
【0043】
次に、このような集積回路装置300について、リダンダンシー回路による救済が可能か否かの判断方法を説明する。
先ず、図7及び図9のステップS21に示すように、集積回路装置300において、ブランク100の欠陥が転写される位置がR/D領域内にあるか否かを判断する。図7に示す例では、欠陥の位置がメモリセル領域314内又はロウデコーダ領域315内であるか、それ以外であるかを判断する。そして、ブランク100の欠陥に由来する全ての欠陥がR/D領域内、すなわち、メモリセル領域314内又はロウデコーダ領域315内にあれば、ステップS22に進む。一方、ブランク100の欠陥に由来する欠陥が1つでもR/D領域外、例えば、周辺回路領域312内又はセンスアンプ領域313内におけるキラー欠陥であると判断されれば、ステップS24に進み、集積回路装置300はリダンダンシー回路による救済が不可能であると判断する。
【0044】
ステップS22においては、R/D領域内に転写される欠陥の数が、リダンダンシー回路によって救済可能な数以下であるか否かを判断する。リダンダンシー回路を持つ集積回路装置300であっても、リダンダンシー回路によって救済可能な欠陥の数には上限がある。例えば、図8に示す例では、リダンダンシー回路であるメモリセル群321bに属するメモリセル列の数は有限であるため、リダンダンシー回路を適用することによって救済できる欠陥の数も有限である。但し、救済可能な欠陥数の上限は、メモリセル群321bの規模の他に、欠陥の配置にも依存する。そして、R/D領域内に転写される欠陥の数が、リダンダンシー回路によって救済可能な数以下である場合には、ステップS23に進み、この集積回路装置300は、リダンダンシー回路によって救済可能であると判断する。一方、R/D領域内に転写される欠陥の数が、リダンダンシー回路によって救済可能な数よりも多い場合には、ステップS24に進み、この集積回路装置300は、リダンダンシー回路による救済が不可能であると判断する。
【0045】
このように、図3に示すステップS7においては、集積回路装置300におけるブランク100の欠陥が転写される位置がR/D領域内にあり、且つ、この欠陥の数が救済可能な数以下である場合に、集積回路装置300は救済可能であると判断する。なお、集積回路装置300における任意の位置がR/D領域であるか否かは、マスクパターンのデザイン情報から読み取ることができる。また、リダンダンシー回路によって救済可能な欠陥数も、マスクパターンのデザイン情報から読み取ることができる。
【0046】
そして、図3のステップS8に示すように、リダンダンシー回路を用いることにより、集積回路装置300が救済可能である場合は、ステップS9に進み、このブランク100は「良品」であると判定する。一方、リダンダンシー回路を用いても、集積回路装置300を救済できない場合は、ステップS10に進み、このブランク100は「不良品」であると判定する。
【0047】
すなわち、本実施形態においては、ブランク100に欠陥が存在し(ステップS2)、この欠陥がキラー欠陥であり(ステップS4)、マスクパターンの形成位置をずらすことによっては救済できず(ステップS6)、且つ、集積回路装置のリダンダンシー回路を用いても救済できない場合(ステップS8)に、このブランク100を「不良品」と判定し(ステップS10)、それ以外の場合は、「良品」と判定する(ステップS9)。このように製造される集積回路装置が不良品となるか否かを評価することで、ブランク100の良否が判定される。
【0048】
次に、本実施形態に係るEUVマスクの製造方法について説明する。
図10は、本実施形態に係るEUVマスクの製造方法を例示する工程断面図であり、
図11は、本実施形態によって製造されたEUVマスクを例示する断面図である。
図10に示すように、先ず、上述の本実施形態に係るEUVマスク用ブランクの良否判定方法によって「良品」と判定されたブランク100を用意する。次に、このブランク100の多層膜102上の全面に、EUV光を吸収する材料、例えば、タンタル(Ta)を含む材料を堆積させて、吸収膜151を形成する。次に、吸収膜151上に電子ビームによって感光するレジスト膜152を形成する。次に、電子ビーム描画によってレジスト膜152を選択的に露光し、現像することにより、レジストパターンを形成する。次に、レジストパターンをマスクとして異方性エッチングを施すことにより、吸収膜151を選択的に除去する。その後、レジストパターンを除去する。
【0049】
これにより、図11に示すように、ブランク100の多層膜102上に、例えばタンタルを含む材料からなるマスクパターン210が形成される。このようにして、EUVマスク200が製造される。EUVマスク200においては、石英基板101上に多層膜102が設けられたブランク100上に、EUV光を吸収する材料からなるマスクパターン210が形成されている。
【0050】
次に、このEUVマスク200を用いた集積回路装置の製造方法について説明する。
先ず、ウェーハ(図示せず)上にレジスト膜(図示せず)を形成し、被加工材とする。このとき、レジスト膜はウェーハに接していてもよく、ウェーハ上に設けられた絶縁膜上に設けられていてもよく、ウェーハ上に設けられた導電膜上に設けられていてもよい。次に、この被加工材及びEUVマスク200をEUV露光機(図示せず)にセットする。そして、EUV露光機のEUV光源にEUV光を出射させ、EUVマスク200の上面におけるマスクパターン形成領域106(図1参照)を照射する。このとき、マスクパターン210に到達したEUV光はマスクパターン210によって吸収され、マスクパターン210の側方を通過して多層膜102に到達したEUV光は多層膜102によって反射される。これにより、EUVマスク200に照射されたEUV光は選択的に反射され、ウェーハ上のレジスト膜に到達し、露光像を形成する。この結果、レジスト膜が局所的に感光される。
【0051】
その後、被加工材をEUV露光機から取り出し、現像することにより、レジストパターンが形成される。次に、このレジストパターンをマスクとして、処理を施す。例えば、このレジストパターンをマスクとして不純物を選択的に注入し、ウェーハ中に不純物拡散層を形成する。又は、このレジストパターンをマスクとしてエッチングを施して、ウェーハ上に設けられた絶縁膜若しくは導電膜を選択的に除去し、コンタクトホール若しくは配線等を形成する。このようにして、集積回路装置300が製造される。このとき、ブランク100に含まれる欠陥の少なくとも一部はEUVマスク200の欠陥となるが、集積回路装置300がブランク100の欠陥に起因して不良品となることはない。
【0052】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においては、図3のステップS2に示す工程において、欠陥の存在が確認されたブランクについて、ステップS3及びS4に示す工程において、この欠陥がキラー欠陥であるか否かを判断し、キラー欠陥でない場合は、ステップS9に示すように、このブランクを「良品」と判定している。また、ブランク中の欠陥がキラー欠陥である場合であっても、ステップS5及びS6に示す工程において、マスクパターンの形成位置をずらすことによって救済が可能であるか否かを判断し、救済が可能である場合には、このブランクを「良品」と判定している。更に、ステップS7及びS8に示す工程において、リダンダンシー回路を用いることによって集積回路装置の救済が可能であるか否かを判断し、救済が可能である場合には、このブランクを「良品」と判定している。なお、「良品」と判定されたブランクを用いてEUVマスクを作製し、このEUVマスクを用いて集積回路装置を製造した場合は、ブランク中の欠陥に起因して集積回路装置が不良品となることはない。
【0053】
このように、本実施形態によれば、欠陥を含むブランクであっても、製造される集積回路装置が不良品となることを回避できれば、「良品」と判定しているため、ブランクの歩留まりを向上させることができる。この結果、ブランクの製造コストを低減することができ、従って、EUVマスクの製造コストを低減することができ、ひいては、集積回路装置の製造コストを低減することができる。
【0054】
これに対して、仮に、ステップS2に示す工程において欠陥の存在が確認されたブランクを全て不良品と判定してしまうと、欠陥が1つもないブランクを製造することは困難であるため、ブランクの歩留まりが低下し、ブランク及びEUVマスクの製造コストが増加してしまう。これにより、集積回路装置のコストも増加してしまう。
【0055】
なお、本実施形態においては、ブランク中の欠陥に起因して集積回路装置が不良品となるか否かの評価を、ブランク中の欠陥が露光像に及ぼす影響をシミュレートすることによって行う例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、この評価は、実験データに基づいて行ってもよい。例えば、予め、欠陥を含むブランクを用いてEUVマスクを実際に作製し、このEUVマスクにEUV光を照射して露光像を形成し、この露光像に及ぼす欠陥の影響を評価し、このような実験結果を蓄積しておく。そして、この蓄積された実験結果に基づいて、判定対象となるブランクに含まれる欠陥が露光像に及ぼす影響を推定し、集積回路装置が不良品となるか否かを判断してもよい。
【0056】
また、本実施形態においては、図3のステップS5及びS6に示すマスクパターンの形成位置をずらすことによる救済の可能性の検討を、ステップS7及びS8に示すリダンダンシー回路を用いることによる救済の可能性の検討よりも先に行う例を示したが、本発明はこれに限定されず、これらの検討の順序は逆でもよい。また、これらの検討のうち一方のみを実施してもよい。更に、これらの検討に加えて、又はこれらの検討に代えて、他の手段による救済の可能性を検討し、救済が可能である場合には、ブランクを「良品」と判定してもよい。更にまた、マスクパターンの形成位置をずらすことによる救済の可能性の検討、及び、リダンダンシー回路を用いることによる救済の可能性の検討は、実施しなくてもよい。少なくとも、ステップS3及びS4に示すように、キラー欠陥の有無を判定し、キラー欠陥がない場合にはブランクを「良品」と判定し、キラー欠陥がある場合にはブランクを「不良品」と判定しても、欠陥を含むブランクを全て「不良品」と判定する場合と比較して、ブランクの歩留まりを向上させることができる。
【0057】
以上説明した実施形態によれば、EUVマスクの製造コストを低減可能なEUVマスク用ブランクの良否判定方法及びEUVマスクの製造方法を実現することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明及びその等価物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
100:ブランク、101:石英基板、102:多層膜、102a:上面、103:モリブデン層、104:シリコン層、106:マスクパターン形成領域、107:周辺領域、108:位置参照用マーク、110a、110b、110c:欠陥、111a、111b、111c:パーティクル、121:位相欠陥、122、123:パターン阻害欠陥、151:吸収膜、152:レジスト膜、200:EUVマスク、210:マスクパターン、222、223:パターン欠陥、300:集積回路装置、301:配線、310:半導体基板、311:パッド領域、312:周辺回路領域、313:センスアンプ領域、314:メモリセル領域、315:ロウデコーダ領域、320:欠陥、321a、321b:メモリセル群、322a、322b:メモリセル列、L:距離、W:幅
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、EUV(extreme ultra violet:極端紫外線)マスク用ブランクの良否判定方法及びEUVマスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタ等の半導体素子が多数設けられた集積回路装置を製造するためには、集積度を高めるために、パターンを微細化する技術が必要不可欠である。近年、パターンをより一層微細化するために、各種のリソグラフィ技術の開発が盛んに進められている。このようなリソグラフィ技術の一つとして、EUV光を露光光として用いる露光技術がある。露光光として用いられるEUV光の波長は、約13.5nmと極めて短い。このため、EUVリソグラフィ技術は、サイズが50nm以下の極めて微細なパターンを解像するリソグラフィ技術と位置付けられている。
【0003】
このような波長のEUV光を透過させる材料は入手が困難であるため、EUV露光装置の露光光学系は、透過光学系ではなく反射光学系である。また、EUV露光用のEUVマスクは、透過型マスクではなく反射型マスクである。そして、EUVマスクは、基板上に多層膜からなるEUV光の反射膜が設けられたブランクの上に、EUV光を吸収する吸収膜を選択的に形成してマスクパターンを形成することにより、製造される。
【0004】
このようなEUVリソグラフィ技術においては、EUVマスク用のブランク自体が微細構造を持つ構造体である上に、EUV光の波長が極めて短いため、ブランクに起因した欠陥が露光像中に出現する場合がある。従って、EUVリソグラフィの歩留まりを向上させるためには、マスクパターンを形成する前にブランクを検査し、欠陥の無いブランクのみを用いることが望ましい。しかしながら、ブランク中の欠陥を完全になくすことは困難であるため、欠陥の無いブランクのみを用いようとすると、ブランクの歩留まりが低くなり、EUVマスクの製造コストが増加してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−080437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、EUVマスクの製造コストを低減可能なEUVマスク用ブランクの良否判定方法及びEUVマスクの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係るEUVマスク用ブランクの良否判定方法は、EUVマスク用ブランクに含まれる欠陥の情報及び前記ブランク上に形成されるマスクパターンのデザイン情報に基づいて、前記ブランク上に前記マスクパターンを形成して作製されるEUVマスクを用いて集積回路装置を製造したときに、前記集積回路装置が不良品となるか否かを評価する工程を備える。そして、前記集積回路装置が不良品とならない場合に、前記ブランクを良品と判定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係る良否判定方法の対象となるEUVマスク用ブランクを例示する平面図である。
【図2】実施形態に係る良否判定方法の対象となるEUVマスク用ブランクを例示する断面図である。
【図3】実施形態に係るEUVマスク用ブランクの良否判定方法を例示するフローチャート図である。
【図4】(a)及び(b)は、ブランクの位相欠陥が集積回路装置の良否に及ぼす影響を例示する図である。
【図5】(a)及び(b)は、ブランクのパターン阻害欠陥が集積回路装置の良否に及ぼす影響を例示する図である。
【図6】(a)及び(b)は、ブランクのパターン阻害欠陥が集積回路装置の良否に及ぼす影響を例示する図である。
【図7】リダンダンシー回路を持つ集積回路装置を例示する平面図である。
【図8】集積回路装置のリダンダンシー回路を例示する平面図である。
【図9】リダンダンシー回路による救済が可能か否かの判断方法を例示するフローチャート図である。
【図10】実施形態に係るEUVマスクの製造方法を例示する工程断面図である。
【図11】実施形態によって製造されたEUVマスクを例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態は、EUVマスク用ブランクの良否判定方法及びEUVマスクの製造方法の実施形態である。
【0010】
先ず、本実施形態に係るEUVマスク用ブランクの良否判定方法において、判定の対象となるEUVマスク用ブランクについて説明する。
図1は、本実施形態に係る良否判定方法の対象となるEUVマスク用ブランクを例示する平面図であり、
図2は、本実施形態に係る良否判定方法の対象となるEUVマスク用ブランクを例示する断面図である。
【0011】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る良否判定方法の判定対象となるEUVマスク用ブランク(以下、単に「ブランク」という)100においては、石英基板101が設けられている。石英基板101の形状は略直方体の平板状である。石英基板101上には、多層膜102が設けられている。多層膜102においては、モリブデン(Mo)層103及びシリコン(Si)層104が交互に数十層程度積層されている。多層膜102はEUV光の反射膜として機能する。なお、図2においては、図示の便宜上、モリブデン層103及びシリコン層104の積層数は、実際よりも少なく描かれている。
【0012】
上方から見て、ブランク100の形状は矩形であり、中央部には、マスクパターン形成領域106が設定されている。マスクパターン形成領域106は、ブランク100を用いてEUVマスクを製造する際に、多層膜102上にEUV光を吸収する吸収膜が選択的に設けられて、マスクパターン210(図11参照)が形成される領域である。一方、ブランク100の周辺部、すなわち、マスクパターン形成領域106を囲む枠状の領域は、周辺領域107となっている。周辺領域107におけるマスクパターン形成領域106を挟む2ヶ所の領域には、位置参照用マーク108が形成されている。後述するように、ブランク100のマスクパターン形成領域106にマスクパターン210(図11参照)が形成されることにより、EUVマスク200(図11参照)が製造される。また、このEUVマスク200を用いてEUV露光を行うことにより、記憶装置等の集積回路装置300(図7参照)が製造される。本実施形態においては、集積回路装置300はリダンダンシー回路を持つ装置であるものとする。
【0013】
そして、ブランク100には、欠陥が発生している可能性がある。図2においては、ブランク100の欠陥110a、110b及び110cを模式的に示している。
欠陥110aにおいては、石英基板101と多層膜102との間にパーティクル111aが介在している。これにより、多層膜102の下部に積層されたモリブデン層103及びシリコン層104のうち、パーティクル111aの直上域及びその周辺に位置する部分が盛り上がっている。このため、多層膜102の下部におけるパーティクル111aの直上域及びその周辺の部分は、多層膜102におけるその他の部分に対して、モリブデン層103及びシリコン層104の積層膜厚が変動している。但し、モリブデン層103及びシリコン層104の盛り上がりの程度は、多層膜102の上面102aに近づくほど小さくなっており、上面102aは実質的に盛り上がっていない。
【0014】
欠陥110bにおいては、多層膜102の内部にパーティクル111bが存在している。これにより、多層膜102におけるパーティクル111bよりも上層の部分において、モリブデン層103及びシリコン層104が盛り上がっている。この盛り上がりの程度も、多層膜102の上面102aに近づくほど小さくなっているが、上面102aにおいても盛り上がりは完全には消滅しておらず、上面102aにおけるパーティクル111bの直上域及びその周辺は、他の領域に対して盛り上がっている。この結果、多層膜102におけるパーティクル111bよりも上方の部分において、パーティクル111bの直上域及びその周辺の部分は、多層膜102におけるその他の部分に対して、局所的にEUV光の反射率が変化している。
【0015】
欠陥110cにおいては、多層膜102の上面102aにパーティクル111cが付着している。多層膜102におけるパーティクル111cの直下域においては、モリブデン層103及びシリコン層104の積層構造中に欠陥は存在しない。パーティクル111a、111b及び111cは、例えば、多層膜102の成膜時に、雰囲気中に存在していたパーティクルが混入したものである。
【0016】
欠陥110aについては、多層膜102の上面102aにはパーティクル111aの形状を反映した盛り上がりが形成されていないため、多層膜102上にマスクパターンを形成する際の障害にはならない。このため、欠陥110aはマスクパターンの欠陥(以下、「パターン欠陥」という)の原因となることはない。但し、欠陥110aにおいては、モリブデン層103及びシリコン層104の膜厚が変動しているため、多層膜102にEUV光を照射したときの反射光において、欠陥110aに相当する部分とその周辺の部分との間で、EUV光の反射率の局所的変動に伴う位相差が生じてしまう。例えば、EUV光の波長が13.5nmであり、EUV光がマスクに入射するときの入射角が5.8度であるとすると、積層膜厚が約3.5nmずれているだけで、πの位相差が発生してしまう。この結果、反射光における欠陥110aに相当する部分の強度が著しく低下してしまい、暗部となってしまう。このような欠陥を「位相欠陥」という。
【0017】
欠陥110bについては、多層膜102の上面102aがパーティクル111bの形状を反映して盛り上がっているため、マスクパターンを形成する際に障害となる。すなわち、パターン欠陥の原因となりうる。以下、このように、マスクパターンを形成したときにパターン欠陥の原因となりうるようなブランク中の欠陥を、「パターン阻害欠陥」という。また、欠陥110bにおいては、積層膜厚が変動しているため、欠陥110bは位相欠陥でもある。
【0018】
欠陥110cについては、積層膜厚は変動していないため、位相欠陥ではない。但し、多層膜102の上面102aに付着したパーティクル111cがマスクパターンを形成する際の障害となるため、パターン欠陥の原因にはなりうる。従って、欠陥110cはパターン阻害欠陥である。
【0019】
このように、ブランク100には、一種類以上の欠陥が発生している可能性がある。このような欠陥は、ブランク100を検査することにより、検出される。例えば、検査用の光をブランク100に対して照射し、その反射光の強度を測定し、空間プロファイルを作成することにより、ブランク100中の欠陥を検出することができる。例えば、検査用の光として可視光を用いた検査を行えば、多層膜102の上面102aの凹凸を検出することができるため、パターン阻害欠陥を検出することができる。また、検査用の光としてEUV光(極端紫外線)以外の紫外線を用いた検査を行えば、パターン阻害欠陥及び一部の位相欠陥を検出することができる。更に、検査用の光としてEUV光を用いた検査を行えば、パターン阻害欠陥及び位相欠陥をほぼ確実に検出することができる。欠陥の検出結果は、そのブランク100の「欠陥情報」となる。欠陥情報は、例えば、反射光の強度の空間プロファイル若しくは反射光の強度からバックグラウンドを除去したコントラストの空間プロファイル等の一次データ、又は、これらの一次データから各欠陥の位置及び大きさ等を算出した二次データである。これらのデータの座標は、位置参照用マーク108を基準として出力することができる。
【0020】
次に、本実施形態に係るEUVマスク用ブランクの良否判定方法について説明する。
本実施形態に係るEUVマスク用ブランクの良否判定方法は、あるブランク100が、「良品」であるか「不良品」であるかを判定する方法である。
図3は、本実施形態に係るEUVマスク用ブランクの良否判定方法を例示するフローチャート図であり、
図4(a)及び(b)は、ブランクの位相欠陥が集積回路装置の良否に及ぼす影響を例示する図であり、
図5(a)及び(b)は、ブランクのパターン阻害欠陥が集積回路装置の良否に及ぼす影響を例示する図であり、
図6(a)及び(b)は、ブランクのパターン阻害欠陥が集積回路装置の良否に及ぼす影響を例示する図であり、
図7は、リダンダンシー回路を持つ集積回路装置を例示する平面図であり、
図8は、集積回路装置のリダンダンシー回路を例示する平面図であり、
図9は、リダンダンシー回路による救済が可能か否かの判断方法を例示するフローチャート図である。
【0021】
先ず、図3のステップS1に示すように、判定対象とするブランク100についての欠陥情報を取得する。
次に、ステップS2に示すように、取得した欠陥情報を参照して、このブランク100に欠陥が存在するか否かを確認する。そして、欠陥が存在しない場合は、ステップS9に進み、このブランク100は「良品」であると判定する。一方、欠陥が存在する場合は、ステップS3に進み、欠陥についてのより詳細な評価を行う。
【0022】
ステップS3においては、ブランク100に含まれる欠陥の欠陥情報、及びこのブランク100上に形成されるマスクパターンのデザイン情報に基づいて、この欠陥が「キラー欠陥」であるか否かを判断する。マスクパターンのデザイン情報とは、ブランク100上に選択的に形成される吸収膜の形状についての情報であり、例えば、製造しようとする集積回路装置300の配線のレイアウト及び寸法等に対応する情報である。また、キラー欠陥とは、このブランク100上にマスクパターンを形成してEUVマスクを作製し、このEUVマスクを用いて集積回路装置を製造したときに、この集積回路装置がこの欠陥の存在に起因して不良品となるような欠陥をいう。
【0023】
ブランク100に存在する欠陥がキラー欠陥であるか否かは、例えば、マスクパターンのデザイン情報、EUVマスクの積層構造、及びEUV露光の露光条件に基づいて、ブランク100の欠陥が、EUVマスクにEUV光を照射して得られた露光像に及ぼす影響をシミュレートすることによって判断可能である。EUVマスクの積層構造とは、図2に示すように、多層膜102を構成する各層の材料、厚さ及び積層数等をいう。EUV露光の露光条件には、EUVマスクを形成する各材料の特性を示すパラメータ、露光光(EUV光)の波長、照明条件、投影光学系の開口数(NA)、露光量、フォーカス、フレア量、EUV光の入射角、及びレジスト材料の拡散係数等が含まれる。露光像とは、露光対象物、例えばレジスト膜において結像する投影像である。
【0024】
図4(a)及び(b)、図5(a)及び(b)、並びに図6(a)及び(b)は、それぞれ、図の左側から順に、欠陥を含むブランク100と、このブランク100上にマスクパターンを形成して作製されるEUVマスク200と、このEUVマスク200を用いて製造される集積回路装置300を示している。また、各図の(a)は集積回路装置300が不良品となる場合を示し、各図の(b)は集積回路装置300が良品となる場合を示している。
【0025】
例えば、図4(a)及び(b)に示すように、ブランク100に位相欠陥121が存在する場合を考える。このとき、このブランク100を用いて作製されたEUVマスク200においても、位相欠陥121が存在する。また、EUVマスク200には、マスクパターン210が形成されている。マスクパターン210はEUV光を吸収する領域である。このEUVマスク200を用いてEUV露光を行い、集積回路装置300を製造する。このとき、集積回路装置300におけるマスクパターン210が転写された領域には、配線301が形成されるものとする。また、EUVマスク200の位相欠陥121は、露光像においては暗部となり、配線301を広げるように作用する。
【0026】
そして、図4(a)に示すように、EUVマスク200の位相欠陥121に起因して、集積回路装置300の配線301間の距離Lが許容値以下となる場合は、集積回路装置300は不良品と判定される。この場合、ブランク100の位相欠陥121はキラー欠陥である。なお、距離Lがゼロになると、配線301同士が短絡してしまう。この場合も集積回路装置300は不良品と判定されるため、位相欠陥121はキラー欠陥である。
【0027】
これに対して、図4(b)に示すように、例えば、マスク200において、位相欠陥121がマスクパターン210と重なっており、位相欠陥121に起因して配線301間の距離Lが許容値以下とならない場合は、集積回路装置300は良品と判定される。この場合、ブランク100の位相欠陥121はキラー欠陥ではない。
【0028】
また、図5(a)及び(b)に示すように、ブランク100にパターン阻害欠陥122が存在する場合を考える。このとき、このブランク100を用いて作製されたEUVマスク200においては、ブランク100のパターン阻害欠陥122がマスクパターンの形成を阻害するため、パターン欠陥222が発生する。このパターン欠陥222は、EUV光を遮断する不透明欠陥であるとする。
【0029】
そして、図5(a)に示すように、集積回路装置300において、EUVマスク200のパターン欠陥222に起因して、配線301間の距離Lが許容値以下となる場合は、集積回路装置300は不良品と判定される。この場合、ブランク100のパターン阻害欠陥122はキラー欠陥である。なお、距離Lがゼロになる場合は、配線301同士が短絡し、集積回路装置300は不良品と判定されるため、パターン阻害欠陥122はキラー欠陥である。
【0030】
これに対して、図5(b)に示すように、例えば、マスク200において、パターン欠陥222がマスクパターン210と重なっており、パターン欠陥222に起因して配線301間の距離Lが許容値以下とならない場合は、集積回路装置300は良品と判定される。この場合、ブランク100のパターン阻害欠陥122はキラー欠陥ではない。
【0031】
更に、図6(a)及び(b)に示すように、ブランク100にパターン阻害欠陥123が存在する場合を考える。このとき、このブランク100を用いて作製されたEUVマスク200においては、ブランク100のパターン阻害欠陥123がマスクパターンの形成を阻害するため、パターン欠陥223が発生する。このパターン欠陥223は、EUV光を透過させる透明欠陥であるとする。
【0032】
そして、図6(a)に示すように、集積回路装置300において、EUVマスク200のパターン欠陥223に起因して、配線301の幅Wが許容値以下となる場合は、集積回路装置300は不良品と判定される。この場合、ブランク100のパターン阻害欠陥123はキラー欠陥である。なお、幅Wがゼロになる場合は、配線301がオープンとなり、集積回路装置300は不良品と判定されるため、パターン阻害欠陥123はキラー欠陥である。
【0033】
これに対して、図6(b)に示すように、例えば、マスク200において、パターン欠陥223がマスクパターン210間の反射領域、すなわち、多層膜102が露出した領域と重なっており、パターン欠陥223に起因して配線301の幅Wが許容値以下とならない場合は、集積回路装置300は良品と判定される。この場合、ブランク100のパターン阻害欠陥123はキラー欠陥ではない。
【0034】
このようにして、ステップS3においては、ブランク100に発生している各欠陥がキラー欠陥であるか否かを判断する。そして、ステップS4に示すように、ブランク100に存在する全ての欠陥がキラー欠陥ではなく、ブランク100にキラー欠陥が存在しない場合、すなわち、ブランク100の欠陥に起因して集積回路装置300が不良品とならない場合には、ステップS9に進み、このブランク100を「良品」と判定する。一方、ブランク100の欠陥に起因して集積回路装置300が不良品となる場合、すなわち、ブランク100に1個以上のキラー欠陥が存在する場合は、ステップS5に進み、このブランク100の救済の可能性を検討する。
【0035】
ステップS5においては、ステップS4において集積回路装置300が不良品となるとされたブランク100について、ブランク100に対するマスクパターンの形成位置をずらすことによって、このブランク100の救済が可能か否かを検討する。具体的には、マスクパターンのデザイン情報に基づいて、マスクパターンの形成位置をずらすことにより、集積回路装置300が良品となるか否かを判断する。
【0036】
例えば、図4(a)、図5(a)又は図6(a)に示すブランク100は、キラー欠陥を含むブランクである。上述の如く、このまま、このブランク100を用いてEUVマスク200を作製し、このEUVマスク200を用いて集積回路装置300を製造しても、この集積回路装置300は不良品となる。しかしながら、ブランク100に対するマスクパターンの形成位置をずらすことによって、作製されるEUVマスク200において、欠陥とマスクパターン210との相対的な位置関係が変化する。この結果、図4(b)、図5(b)又は図6(b)に示すブランク100のように、欠陥がキラー欠陥ではなくなり、製造される集積回路装置300が良品となる可能性がある。
【0037】
そして、ステップS6に示すように、ブランク100に対するマスクパターンの形成位置をずらすことによって、集積回路装置300が良品となる場合、すなわち、ブランク100を救済することが可能である場合には、ステップS9に進み、このブランク100を「良品」と判定する。一方、マスクパターンの形成位置をずらすことによっては集積回路装置300が良品とならず、ブランク100を救済できない場合には、ステップS7に進み、他の方法によるブランク100の救済の可能性を更に検討する。
【0038】
ステップS7においては、ステップS6においてマスクパターンの形成位置をずらすことによっては救済できないと判断されたブランク100について、集積回路装置300のリダンダンシー回路を用いることによる救済の可能性を検討する。以下、この検討の方法を、集積回路装置300の具体例を挙げて詳細に説明する。
【0039】
先ず、リダンダンシー回路を持つ集積回路装置300の具体例について説明する。
図7に示すように、集積回路装置300は、例えば半導体記憶装置である。集積回路装置300においては、半導体基板310が設けられている。また、半導体基板310の上面に平行な方向であって、相互に直交する2方向として、ワード線方向及びビット線方向が設定されている。集積回路装置300のビット線方向における一端部にはパッド領域311が設けられており、その隣には周辺回路領域312が設けられている。また、周辺回路領域312の更に隣には、複数のセンスアンプ領域313が設けられており、各センスアンプ領域313の更に隣には、メモリセル領域314が設けられている。すなわち、パッド領域311、周辺回路領域312、センスアンプ領域313及びメモリセル領域314は、ビット線方向に沿ってこの順に配列されている。更に、各メモリセル領域314のワード線方向両側には、ロウデコーダ領域315が設けられている。すなわち、メモリセル領域314及びロウデコーダ領域315は、ワード線方向に沿って配列されている。
【0040】
このうち、メモリセル領域314は、基本ユニットとしてのメモリセルが複数個集積された領域であり、メモリセル間に互換性がある。このため、本来使用されるべきメモリセルの他に、リダンダンシー回路として、予備のメモリセルを設けておき、本来使用されるべきメモリセルに不具合が生じた場合には、予備のメモリセルに置き換えることができる。従って、メモリセル領域314は、リダンダンシー回路による救済が可能な領域である。以下、このようなリダンダンシー回路による救済が可能な領域を、「R/D領域」という。
【0041】
具体的には、図8に示すように、メモリセル領域314には、本来使用されるべきメモリセル群321aと、リダンダンシー回路としての予備のメモリセル群321bが設けられている。そして、メモリセル群321aに属するメモリセルに欠陥320が発生した場合には、このメモリセルが属するメモリセル列322a全体を使用禁止とし、その替わりに、メモリセル群321bに設けられたメモリセル列322bを使用する。これにより、集積回路装置300が救済される。
【0042】
また、ロウデコーダ領域315も、互換性のある基本ユニットが複数個集積された領域であるため、リダンダンシー回路による救済が可能なR/D領域である。これに対して、パッド領域311、周辺回路領域312及びセンスアンプ領域313には、リダンダンシー回路が設けられておらず、従って、リダンダンシー回路による救済が不可能な領域である。すなわち、これらの領域はR/D領域ではない。
【0043】
次に、このような集積回路装置300について、リダンダンシー回路による救済が可能か否かの判断方法を説明する。
先ず、図7及び図9のステップS21に示すように、集積回路装置300において、ブランク100の欠陥が転写される位置がR/D領域内にあるか否かを判断する。図7に示す例では、欠陥の位置がメモリセル領域314内又はロウデコーダ領域315内であるか、それ以外であるかを判断する。そして、ブランク100の欠陥に由来する全ての欠陥がR/D領域内、すなわち、メモリセル領域314内又はロウデコーダ領域315内にあれば、ステップS22に進む。一方、ブランク100の欠陥に由来する欠陥が1つでもR/D領域外、例えば、周辺回路領域312内又はセンスアンプ領域313内におけるキラー欠陥であると判断されれば、ステップS24に進み、集積回路装置300はリダンダンシー回路による救済が不可能であると判断する。
【0044】
ステップS22においては、R/D領域内に転写される欠陥の数が、リダンダンシー回路によって救済可能な数以下であるか否かを判断する。リダンダンシー回路を持つ集積回路装置300であっても、リダンダンシー回路によって救済可能な欠陥の数には上限がある。例えば、図8に示す例では、リダンダンシー回路であるメモリセル群321bに属するメモリセル列の数は有限であるため、リダンダンシー回路を適用することによって救済できる欠陥の数も有限である。但し、救済可能な欠陥数の上限は、メモリセル群321bの規模の他に、欠陥の配置にも依存する。そして、R/D領域内に転写される欠陥の数が、リダンダンシー回路によって救済可能な数以下である場合には、ステップS23に進み、この集積回路装置300は、リダンダンシー回路によって救済可能であると判断する。一方、R/D領域内に転写される欠陥の数が、リダンダンシー回路によって救済可能な数よりも多い場合には、ステップS24に進み、この集積回路装置300は、リダンダンシー回路による救済が不可能であると判断する。
【0045】
このように、図3に示すステップS7においては、集積回路装置300におけるブランク100の欠陥が転写される位置がR/D領域内にあり、且つ、この欠陥の数が救済可能な数以下である場合に、集積回路装置300は救済可能であると判断する。なお、集積回路装置300における任意の位置がR/D領域であるか否かは、マスクパターンのデザイン情報から読み取ることができる。また、リダンダンシー回路によって救済可能な欠陥数も、マスクパターンのデザイン情報から読み取ることができる。
【0046】
そして、図3のステップS8に示すように、リダンダンシー回路を用いることにより、集積回路装置300が救済可能である場合は、ステップS9に進み、このブランク100は「良品」であると判定する。一方、リダンダンシー回路を用いても、集積回路装置300を救済できない場合は、ステップS10に進み、このブランク100は「不良品」であると判定する。
【0047】
すなわち、本実施形態においては、ブランク100に欠陥が存在し(ステップS2)、この欠陥がキラー欠陥であり(ステップS4)、マスクパターンの形成位置をずらすことによっては救済できず(ステップS6)、且つ、集積回路装置のリダンダンシー回路を用いても救済できない場合(ステップS8)に、このブランク100を「不良品」と判定し(ステップS10)、それ以外の場合は、「良品」と判定する(ステップS9)。このように製造される集積回路装置が不良品となるか否かを評価することで、ブランク100の良否が判定される。
【0048】
次に、本実施形態に係るEUVマスクの製造方法について説明する。
図10は、本実施形態に係るEUVマスクの製造方法を例示する工程断面図であり、
図11は、本実施形態によって製造されたEUVマスクを例示する断面図である。
図10に示すように、先ず、上述の本実施形態に係るEUVマスク用ブランクの良否判定方法によって「良品」と判定されたブランク100を用意する。次に、このブランク100の多層膜102上の全面に、EUV光を吸収する材料、例えば、タンタル(Ta)を含む材料を堆積させて、吸収膜151を形成する。次に、吸収膜151上に電子ビームによって感光するレジスト膜152を形成する。次に、電子ビーム描画によってレジスト膜152を選択的に露光し、現像することにより、レジストパターンを形成する。次に、レジストパターンをマスクとして異方性エッチングを施すことにより、吸収膜151を選択的に除去する。その後、レジストパターンを除去する。
【0049】
これにより、図11に示すように、ブランク100の多層膜102上に、例えばタンタルを含む材料からなるマスクパターン210が形成される。このようにして、EUVマスク200が製造される。EUVマスク200においては、石英基板101上に多層膜102が設けられたブランク100上に、EUV光を吸収する材料からなるマスクパターン210が形成されている。
【0050】
次に、このEUVマスク200を用いた集積回路装置の製造方法について説明する。
先ず、ウェーハ(図示せず)上にレジスト膜(図示せず)を形成し、被加工材とする。このとき、レジスト膜はウェーハに接していてもよく、ウェーハ上に設けられた絶縁膜上に設けられていてもよく、ウェーハ上に設けられた導電膜上に設けられていてもよい。次に、この被加工材及びEUVマスク200をEUV露光機(図示せず)にセットする。そして、EUV露光機のEUV光源にEUV光を出射させ、EUVマスク200の上面におけるマスクパターン形成領域106(図1参照)を照射する。このとき、マスクパターン210に到達したEUV光はマスクパターン210によって吸収され、マスクパターン210の側方を通過して多層膜102に到達したEUV光は多層膜102によって反射される。これにより、EUVマスク200に照射されたEUV光は選択的に反射され、ウェーハ上のレジスト膜に到達し、露光像を形成する。この結果、レジスト膜が局所的に感光される。
【0051】
その後、被加工材をEUV露光機から取り出し、現像することにより、レジストパターンが形成される。次に、このレジストパターンをマスクとして、処理を施す。例えば、このレジストパターンをマスクとして不純物を選択的に注入し、ウェーハ中に不純物拡散層を形成する。又は、このレジストパターンをマスクとしてエッチングを施して、ウェーハ上に設けられた絶縁膜若しくは導電膜を選択的に除去し、コンタクトホール若しくは配線等を形成する。このようにして、集積回路装置300が製造される。このとき、ブランク100に含まれる欠陥の少なくとも一部はEUVマスク200の欠陥となるが、集積回路装置300がブランク100の欠陥に起因して不良品となることはない。
【0052】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においては、図3のステップS2に示す工程において、欠陥の存在が確認されたブランクについて、ステップS3及びS4に示す工程において、この欠陥がキラー欠陥であるか否かを判断し、キラー欠陥でない場合は、ステップS9に示すように、このブランクを「良品」と判定している。また、ブランク中の欠陥がキラー欠陥である場合であっても、ステップS5及びS6に示す工程において、マスクパターンの形成位置をずらすことによって救済が可能であるか否かを判断し、救済が可能である場合には、このブランクを「良品」と判定している。更に、ステップS7及びS8に示す工程において、リダンダンシー回路を用いることによって集積回路装置の救済が可能であるか否かを判断し、救済が可能である場合には、このブランクを「良品」と判定している。なお、「良品」と判定されたブランクを用いてEUVマスクを作製し、このEUVマスクを用いて集積回路装置を製造した場合は、ブランク中の欠陥に起因して集積回路装置が不良品となることはない。
【0053】
このように、本実施形態によれば、欠陥を含むブランクであっても、製造される集積回路装置が不良品となることを回避できれば、「良品」と判定しているため、ブランクの歩留まりを向上させることができる。この結果、ブランクの製造コストを低減することができ、従って、EUVマスクの製造コストを低減することができ、ひいては、集積回路装置の製造コストを低減することができる。
【0054】
これに対して、仮に、ステップS2に示す工程において欠陥の存在が確認されたブランクを全て不良品と判定してしまうと、欠陥が1つもないブランクを製造することは困難であるため、ブランクの歩留まりが低下し、ブランク及びEUVマスクの製造コストが増加してしまう。これにより、集積回路装置のコストも増加してしまう。
【0055】
なお、本実施形態においては、ブランク中の欠陥に起因して集積回路装置が不良品となるか否かの評価を、ブランク中の欠陥が露光像に及ぼす影響をシミュレートすることによって行う例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、この評価は、実験データに基づいて行ってもよい。例えば、予め、欠陥を含むブランクを用いてEUVマスクを実際に作製し、このEUVマスクにEUV光を照射して露光像を形成し、この露光像に及ぼす欠陥の影響を評価し、このような実験結果を蓄積しておく。そして、この蓄積された実験結果に基づいて、判定対象となるブランクに含まれる欠陥が露光像に及ぼす影響を推定し、集積回路装置が不良品となるか否かを判断してもよい。
【0056】
また、本実施形態においては、図3のステップS5及びS6に示すマスクパターンの形成位置をずらすことによる救済の可能性の検討を、ステップS7及びS8に示すリダンダンシー回路を用いることによる救済の可能性の検討よりも先に行う例を示したが、本発明はこれに限定されず、これらの検討の順序は逆でもよい。また、これらの検討のうち一方のみを実施してもよい。更に、これらの検討に加えて、又はこれらの検討に代えて、他の手段による救済の可能性を検討し、救済が可能である場合には、ブランクを「良品」と判定してもよい。更にまた、マスクパターンの形成位置をずらすことによる救済の可能性の検討、及び、リダンダンシー回路を用いることによる救済の可能性の検討は、実施しなくてもよい。少なくとも、ステップS3及びS4に示すように、キラー欠陥の有無を判定し、キラー欠陥がない場合にはブランクを「良品」と判定し、キラー欠陥がある場合にはブランクを「不良品」と判定しても、欠陥を含むブランクを全て「不良品」と判定する場合と比較して、ブランクの歩留まりを向上させることができる。
【0057】
以上説明した実施形態によれば、EUVマスクの製造コストを低減可能なEUVマスク用ブランクの良否判定方法及びEUVマスクの製造方法を実現することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明及びその等価物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
100:ブランク、101:石英基板、102:多層膜、102a:上面、103:モリブデン層、104:シリコン層、106:マスクパターン形成領域、107:周辺領域、108:位置参照用マーク、110a、110b、110c:欠陥、111a、111b、111c:パーティクル、121:位相欠陥、122、123:パターン阻害欠陥、151:吸収膜、152:レジスト膜、200:EUVマスク、210:マスクパターン、222、223:パターン欠陥、300:集積回路装置、301:配線、310:半導体基板、311:パッド領域、312:周辺回路領域、313:センスアンプ領域、314:メモリセル領域、315:ロウデコーダ領域、320:欠陥、321a、321b:メモリセル群、322a、322b:メモリセル列、L:距離、W:幅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUVマスク用ブランクに含まれる欠陥の情報及び前記ブランク上に形成されるマスクパターンのデザイン情報に基づいて、前記ブランク上に前記マスクパターンを形成して作製されるEUVマスクを用いて集積回路装置を製造したときに、前記集積回路装置が不良品となるか否かを評価する工程を備え、
前記集積回路装置が不良品とならない場合に、前記ブランクを良品と判定することを特徴とするEUVマスク用ブランクの良否判定方法。
【請求項2】
前記評価する工程は、前記集積回路装置が不良品となると評価された場合に、前記集積回路装置のリダンダンシー回路を用いることにより、前記集積回路装置を救済可能か否かを判断する工程を有し、
前記集積回路装置が救済可能である場合に、前記ブランクを良品と判定することを特徴とする請求項1記載のEUVマスク用ブランクの良否判定方法。
【請求項3】
前記判断する工程は、
前記集積回路装置における前記欠陥が転写される位置が、前記リダンダンシー回路によって救済可能な領域内にあるか否かを判断する工程と、
前記領域内に転写される前記欠陥の数が、前記リダンダンシー回路によって救済可能な数以下であるか否かを判断する工程と、
を有し、
前記欠陥が転写される位置が前記領域内にあり、且つ、前記欠陥の数が前記救済可能な数以下である場合に、前記装置が救済可能であると判断することを特徴とする請求項2記載のEUVマスク用ブランクの良否判定方法。
【請求項4】
前記評価する工程は、前記ブランクに対する前記マスクパターンの形成位置をずらすことによって、前記集積回路装置が良品となるか否かを判断する工程を有し、
前記形成位置をずらすことによって前記集積回路装置が良品となる場合に、前記ブランクを良品と判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のEUVマスク用ブランクの良否判定方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のEUVマスク用ブランクの良否判定方法によって良品と判定されたEUVマスク用ブランク上にマスクパターンを形成する工程を備えたことを特徴とするEUVマスクの製造方法。
【請求項1】
EUVマスク用ブランクに含まれる欠陥の情報及び前記ブランク上に形成されるマスクパターンのデザイン情報に基づいて、前記ブランク上に前記マスクパターンを形成して作製されるEUVマスクを用いて集積回路装置を製造したときに、前記集積回路装置が不良品となるか否かを評価する工程を備え、
前記集積回路装置が不良品とならない場合に、前記ブランクを良品と判定することを特徴とするEUVマスク用ブランクの良否判定方法。
【請求項2】
前記評価する工程は、前記集積回路装置が不良品となると評価された場合に、前記集積回路装置のリダンダンシー回路を用いることにより、前記集積回路装置を救済可能か否かを判断する工程を有し、
前記集積回路装置が救済可能である場合に、前記ブランクを良品と判定することを特徴とする請求項1記載のEUVマスク用ブランクの良否判定方法。
【請求項3】
前記判断する工程は、
前記集積回路装置における前記欠陥が転写される位置が、前記リダンダンシー回路によって救済可能な領域内にあるか否かを判断する工程と、
前記領域内に転写される前記欠陥の数が、前記リダンダンシー回路によって救済可能な数以下であるか否かを判断する工程と、
を有し、
前記欠陥が転写される位置が前記領域内にあり、且つ、前記欠陥の数が前記救済可能な数以下である場合に、前記装置が救済可能であると判断することを特徴とする請求項2記載のEUVマスク用ブランクの良否判定方法。
【請求項4】
前記評価する工程は、前記ブランクに対する前記マスクパターンの形成位置をずらすことによって、前記集積回路装置が良品となるか否かを判断する工程を有し、
前記形成位置をずらすことによって前記集積回路装置が良品となる場合に、前記ブランクを良品と判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のEUVマスク用ブランクの良否判定方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のEUVマスク用ブランクの良否判定方法によって良品と判定されたEUVマスク用ブランク上にマスクパターンを形成する工程を備えたことを特徴とするEUVマスクの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−142468(P2012−142468A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100(P2011−100)
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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