説明

FGF21変異体およびその使用

本発明は、FGF21変異体ポリペプチドをコードする核酸分子、FGF21変異体ポリペプチド、FGF21変異体ポリペプチドを含む医薬組成物、およびそのような核酸、ポリペプチド、または医薬組成物を使用して、代謝異常を治療するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2008年10月10日に出願された米国特許仮出願第61/195,761号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、FGF21変異体ポリペプチドをコードする核酸分子、FGF21変異体ポリペプチド、FGF21変異体ポリペプチドを含む医薬組成物、およびそのような核酸、ポリペプチド、または医薬組成物を使用して代謝異常を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
FGF21は、FGF19、FGF21、およびFGF23を含む線維芽細胞増殖因子(FGF)のサブファミリーに属する分泌ポリペプチドである(Itoh et al.,2004,Trend Genet.20:563〜69)。FGF21は、ヘパリン非依存性であり、また、グルコース、脂質、およびエネルギー代謝の調節におけるホルモンとして機能するという点から、非定型なFGFである。
【0004】
FGF21は、肝臓cDNAライブラリからヘパリン分泌因子として単離された。これは、肝臓および膵臓で高度に発現され、また、主として肝臓で発現される唯一のFGFファミリーのメンバーである。FGF21を過剰発現するトランスジェニックマウスは、遅い成長率、低レベルの血漿グルコースおよびトリグリセリドの代謝表現型、ならびに加齢に伴う2型糖尿病、膵島過形成、および肥満の不在を示す。糖尿病のげっ歯類モデルにおける組換えFGF21タンパク質の薬理学的投与は、血漿グルコースレベルの正常化、トリグリセリドおよびコレステロールレベルの低下、ならびにグルコース耐性およびインスリン感受性の向上をもたらした。また、FGF21は、エネルギー消費量、身体活動、および代謝率を増加させることにより、体重および体脂肪を減少させる。実験的研究が、ヒトにおける2型糖尿病、肥満、脂質異常症、および他の代謝疾患または代謝障害の治療のためのFGF21の薬理学的投与を支持している。
【0005】
ヒトFGF21は、生体内で短い半減期を有する。マウスおよびカニクイザルでは、ヒトFGF21の有効半減期は1〜2時間である。2型糖尿病の治療における治療薬として使用するためにFGF21タンパク質を開発する上で、半減期が増加することが望ましい。増大した半減期を有するFGF21タンパク質は、タンパク質を投与される患者の投薬頻度を減少させることが可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Itohら、2004年、Trend Genet.20:563〜69
【発明の概要】
【0007】
一実施形態において、本発明は、(a)36位、72位、77位、126位、および175位のうちの1つ以上のリジン残基、(b)37位、38位、46位、91位、69位、77位、79位、87位、91位、112位、113位、120位、121位、125位、126位、175位、170位、および179位のうちの1つ以上のシステイン残基、(c)56位、59位、69位、および122位のうちの1つ以上のアルギニン残基、(d)170位のグリシン残基、(e)171位のグリシン残基、ならびに(a)〜(e)の組み合わせである、少なくとも1つのアミノ酸置換を有する配列番号4のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子を提供する。
【0008】
別の実施形態において、本発明は(a)36位、72位、77位、126位、および175位のうちの1つ以上のリジン残基、(b)37位、38位、46位、91位、69位、77位、79位、87位、91位、112位、113位、120位、121位、125位、126位、175位、170位、および179位のうちの1つ以上のシステイン残基、(c)56位、59位、69位、および122位のうちの1つ以上のアルギニン残基、(d)170位のグリシン残基、(e)171位のグリシン残基、ならびに(a)〜(e)の組み合わせである、少なくとも1つのアミノ酸置換を有する配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする単離された核酸であって、ポリペプチドを配列番号4と少なくとも85%相同にする付加、欠失、またはさらなる置換を含むが、但し、請求項1(a)〜(e)に記載の少なくとも1つのアミノ酸置換はさらに修飾されない、単離された核酸を提供する。
【0009】
また本発明は、本発明の核酸分子を含むベクターおよび宿主細胞を提供する。
【0010】
さらなる実施形態において、本発明は、(a)36位、72位、77位、126位、および175位のうちの1つ以上のリジン残基、(b)37位、38位、46位、91位、69位、77位、79位、87位、91位、112位、113位、120位、121位、125位、126位、175位、170位、および179位のうちの1つ以上のシステイン残基、(c)56位、59位、69位、および122位のうちの1つ以上のアルギニン残基、(d)170位のグリシン残基、(e)171位のグリシン残基、ならびに(a)〜(e)の組み合わせである、少なくとも1つのアミノ酸置換を有する配列番号4のアミノ酸配列を有する、単離されたポリペプチドを提供する。
【0011】
さらに別の実施形態において、本発明は、(a)36位、72位、77位、126位、および175位のうちの1つ以上のリジン残基、(b)37位、38位、46位、91位、69位、77位、79位、87位、91位、112位、113位、120位、121位、125位、126位、175位、170位、および179位のうちの1つ以上のシステイン残基、(c)56位、59位、69位、および122位のうちの1つ以上のアルギニン残基、(d)170位のグリシン残基、(e)171位のグリシン残基、ならびに(a)〜(e)の組み合わせ、である、少なくとも1つのアミノ酸置換を有する配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする単離された核酸であって、ポリペプチドを配列番号4と少なくとも85%相同にする付加、欠失、またはさらなる置換を含むが、但し、請求項1(a)〜(e)に記載の少なくとも1つのアミノ酸置換はさらに修飾されない、単離された核酸を提供する。
【0012】
さらに別の実施形態において、本発明は、(a)36位、72位、77位、126位、および175位のうちの1つ以上のリジン残基、(b)37位、38位、46位、91位、69位、77位、79位、87位、91位、112位、113位、120位、121位、125位、126位、175位、170位、および179位のうちの1つ以上のシステイン残基、(c)56位、59位、69位、および122位のうちの1つ以上のアルギニン残基、(d)170位のグリシン残基、(e)171位のグリシン残基、ならびに(a)〜(e)の組み合わせである、少なくとも1つのアミノ酸置換を有する配列番号4の前記アミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドであって、ポリペプチドを配列番号4と少なくとも85%相同にする付加、欠失、またはさらなる置換を含むが、但し、請求項1(a)〜(e)に記載の少なくとも1つのアミノ酸置換はさらに修飾されない、単離されたポリペプチドを提供する。
【0013】
また、本発明は、(a)36位、72位、77位、126位、および175位のうちの1つ以上のリジン残基、(b)37位、38位、46位、91位、69位、77位、79位、87位、91位、112位、113位、120位、121位、125位、126位、175位、170位、および179位のうちの1つ以上のシステイン残基、(c)56位、59位、69位、および122位のうちの1つ以上のアルギニン残基、(d)170位のグリシン残基、(e)171位のグリシン残基、ならびに(a)〜(e)の組み合わせである、少なくとも1つのアミノ酸置換を任意で有する配列番号4のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドを含む組成物であって、(a)36位、72位、77位、126位、および175位のうちの1つ以上のリジン残基、(b)37位、38位、46位、91位、69位、77位、79位、87位、91位、112位、113位、120位、121位、125位、126位、175位、170位、および179位のうちの1つ以上のシステイン残基、(c)56位、59位、69位、および122位のうちの1つ以上のアルギニン残基、(d)170位のグリシン残基、(e)171位のグリシン残基、ならびに(a)〜(e)の組み合わせである、少なくとも1つのアミノ酸置換を任意で有する配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む第2のポリペプチドにリンカーによって結合される、組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、本発明のポリペプチドの化学修飾された形態も提供する。ポリペプチドの化学修飾された形態は、N末端および/または自然発生もしくは非自然発生のポリマー結合部位に結合したポリマーを含む。本発明は、本発明の医薬組成物を、治療を必要とする患者に投与することを含む、肥満および糖尿病等の代謝異常を治療する医薬組成物および方法をさらに提供する。
【0015】
本発明の特定の実施形態は、特定の実施形態および特許請求の範囲についての以下のより詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】配列に結合した2つのポリマーを有するFGF21分子(例えば、PEG分子)を示すイラストである。
【図2】PEGで化学修飾された単一遺伝子操作されたポリマー結合部位、すなわち、E37C、R77C、およびH125C(左上)、D38C、D46C、およびD79C(右上)、H87C、E91C、およびG113C(左下)、ならびにG120C、R126C、およびN121C(右下)を有する9つのFGF21変異体のPEG化の程度を示す4つのSDS−PAGEゲルを含む図である。
【図3】20kDaのメトキシPEGマレイミド分子で化学修飾された単一遺伝子操作されたポリマー結合部位、すなわち、K69C、R175CおよびY179Cを有する3つのFGF21変異体のPEG化の程度を示すSDS−PAGEゲルを含む図である。
【図4】20kDaのメトキシPEGマレイミド分子の結合によって化学修飾された単一遺伝子操作されたポリマー結合部位、すなわち、E37C、R77C、E91C、野生型FGF21、およびN末端PEG化FGF21(上のプロット)、ならびにG113C、N121C、D46C、野生型FGF21、およびN末端PEG化FGF21(下のプロット)を有するFGF21変異体ポリペプチドに対して行ったELK−ルシフェラーゼアッセイの結果を示す2つのプロットを含む図である。
【図5】20kDaのメトキシ−PEGマレイミドの結合によって化学修飾された単一遺伝子操作されたポリマー結合部位、すなわち、H125C、G120C、R126C、野生型FGF21、およびN末端PEG化FGF21(上のプロット)、ならびにD79C、D38C、野生型FGF21、およびN末端PEG化FGF21(下のプロット)を有するFGF21変異体ポリペプチドに対して行ったELK−ルシフェラーゼアッセイの結果を示す2つのプロットを含む図である。
【図6】20kDaのメトキシPEGマレイミド分子の結合によって化学修飾された単一遺伝子操作されたポリマー結合部位、すなわち、K69C、D79C、野生型FGF21、およびN末端PEG化FGF21(上のプロット)、ならびにR175C、Y179C、野生型FGF21、およびN末端PEG化FGF21(下のプロット)を有する野生型FGF21ポリペプチドおよびFGF21変異体ポリペプチドに対して行ったELK−ルシフェラーゼアッセイの結果を示す2つのプロットを含む図である。
【図7】本発明の連結分子を示すイラストである。
【図8】ビヒクル(PBS)、野生型FGF21、またはN末端PEG化野生型FGF21の単回投与後0時間からのマウスの血糖値レベルにおける変化率を示すプロットである。
【図9】ビヒクル(PBS)、または20、30、もしくは40kDaのメトキシPEGマレイミド分子でN末端PEG化された野生型FGF21の単回投与後0時間からのマウスの血糖値レベルにおける変化率を示すプロットである。
【図10】PBS、あるいは、突然変異R77CもしくはR126K(これらの導入されたポリマー結合部位で、20kDaのメトキシPEGマレイミド分子ならびにFc分子およびG170E FGF21変異体ポリペプチドを含む融合物でさらにPEG化された)を含むN末端PEG化FGF21変異体ポリペプチド(上のプロット);または、突然変異R77C(この導入されたポリマー結合部位で、20kDaのメトキシPEGマレイミド分子でさらにPEG化された)およびP171Gを含むN末端PEG化FGF21変異体ポリペプチド(下のプロット)の単回投与後0時間〜9日間にわたって、マウスの血糖値レベルにおける変化率を示す2つのプロットを含む図である。
【図11】ビヒクル(10mMリン酸カリウム、5%ソルビトール、pH8)、または導入されたポリマー結合部位、すなわち、E91C/H125C、E91C/R175C、E37C/G120C、E37C/H125C、およびE37C/R175Cで、20kDaのメトキシPEGマレイミド分子で二重PEG化されたFGF21変異体ポリペプチドの単回投与後0時間からのマウスの血糖値レベルにおける変化率を示すプロットである。Fc分子およびP171G FGF21変異体ポリペプチドを含む融合物についても調べた。
【図12】ビヒクル(10mMリン酸カリウム、5%ソルビトール、pH8)、または導入されたポリマー結合部位、すなわち、E91C/H121C、G120C/H125C、もしくはE37C/R77Cで、20kDaのメトキシPEGマレイミド分子で二重にPEG化されたFGF21変異体ポリペプチドの単回投与後0時間からのマウスの血糖値レベルにおける変化率を示すプロットである。Fc分子および G170E FGF21変異体ポリペプチドを含む融合物についても調べた。
【図13】ビヒクル(10mMリン酸カリウム、5%ソルビトール、pH8)、または導入されたポリマー結合部位、すなわち、E37C/R77C、E91C/R175C、E37C/H125C、E37C/R77C/P171G、E91C/R77C/P171GおよびE37C/R125C/P171Gで、20kDaのメトキシPEGマレイミド分子で二重にPEG化されたFGF21変異体ポリペプチドの単回投与後0時間からのマウスの血糖値レベルにおける変化率を示すプロットである。
【図14】ビヒクル(10mMリン酸カリウム、5%ソルビトール、pH8);導入されたポリマー結合部位、すなわち、E37C/R77C/P171GおよびE91C/R125C/P171Gで、20kDaのメトキシPEGマレイミド分子で二重にPEG化されたFGF21変異体ポリペプチド;または導入された同じ突然変異、すなわち、20kDaのメトキシPEGマレイミド分子を介して結合されたR77C/P171G(2x)およびR78C/P172G(2x)を有する2つの同一のFGF21変異体ポリペプチドを含む連結分子の単回投与後0時間からのマウスの血糖値レベルにおける変化率を示すプロットである。
【図15】ビヒクル(10mM Tris HCl、150mM NaCl、pH8.5)、または導入されたポリマー結合部位、すなわち、E37C/R77C/P171Gで、20kDaのメトキシPEGマレイミド分子で二重にPEG化され、0.01mg/kg、0.03mg/kg、0.1mg/kg、0.3mg/kg、もしくは1mg/kgの用量で投与されたFGF21変異体ポリペプチドの単回投与後0時間からのマウスの血糖値レベルにおける変化率を用量の関数として示すプロットである。
【図16】ビヒクル(10mMリン酸カリウム、5%ソルビトール、pH8)、または導入されたポリマー結合部位、すなわち、E37C/R77C、E91C/R175C、E37/H125C、E37C/R77C/P171G、E91C/R77C/P171G、およびE37C/R125C/P171Gで、20kDaのメトキシPEGマレイミド分子で二重にPEG化されたFGF21変異体ポリペプチドの単回投与後0時間からのマウスの体重変化を示すプロットである。
【図17】ビヒクル(10mMリン酸カリウム、5%ソルビトール、pH8);導入されたポリマー結合部位、すなわち、E37C/R77C/P171GおよびE91C/R125C/P171Gで、20kDaのメトキシPEGマレイミド分子で二重にPEG化されたFGF21変異体ポリペプチド;または導入された同じ突然変異、すなわち、20kDaのメトキシPEGマレイミド分子を介して結合されたR37C/P171G(2x)およびR77C/P171G(2x)を有する2つのFGF21変異体ポリペプチド)を含む連結分子の単回投与後0時間からのマウスの体重変化を示すプロットである。
【図18】ビヒクル(10mM Tris HCl、150mM NaCl、pH8.5)、または導入されたポリマー結合部位、すなわち、E37C/R77C/P171Gで、20kDaのメトキシPEGマレイミド分子でPEG化され、5つの異なる用量で投与されたFGF21変異体ポリペプチドの単回投与後0時間からのマウスの体重変化を容量の関数として示すプロットである。
【図19A】ビヒクル(四角)、5mg/kg(三角)および25mg/kg(白丸)のPEG化FGF21分子の週1回の投薬を用いた8週間の腎臓空胞試験の間のマウスの体重変化を示す一連の6つのプロットである。システインを標的とする2つのPEG−FGF21を投与されたマウスは、持続的な体重減少を示し、連結分子を投与されたマウスは、主として一過性の体重減少を示した。
【図19B】ビヒクル(四角)、5mg/kg(三角)および25mg/kg(白丸)のPEG化FGF21分子の週1回の投薬を用いた8週間の腎臓空胞試験の間のマウスの体重変化を示す一連の6つのプロットである。システインを標的とする2つのPEG−FGF21を投与されたマウスは、持続的な体重減少を示し、連結分子を投与されたマウスは、主として一過性の体重減少を示した。
【図19C】ビヒクル(四角)、5mg/kg(三角)および25mg/kg(白丸)のPEG化FGF21分子の週1回の投薬を用いた8週間の腎臓空胞試験の間のマウスの体重変化を示す一連の6つのプロットである。システインを標的とする2つのPEG−FGF21を投与されたマウスは、持続的な体重減少を示し、連結分子を投与されたマウスは、主として一過性の体重減少を示した。
【図19D】ビヒクル(四角)、5mg/kg(三角)および25mg/kg(白丸)のPEG化FGF21分子の週1回の投薬を用いた8週間の腎臓空胞試験の間のマウスの体重変化を示す一連の6つのプロットである。システインを標的とする2つのPEG−FGF21を投与されたマウスは、持続的な体重減少を示し、連結分子を投与されたマウスは、主として一過性の体重減少を示した。
【図19E】ビヒクル(四角)、5mg/kg(三角)および25mg/kg(白丸)のPEG化FGF21分子の週1回の投薬を用いた8週間の腎臓空胞試験の間のマウスの体重変化を示す一連の6つのプロットである。システインを標的とする2つのPEG−FGF21を投与されたマウスは、持続的な体重減少を示し、連結分子を投与されたマウスは、主として一過性の体重減少を示した。
【図19F】ビヒクル(四角)、5mg/kg(三角)および25mg/kg(白丸)のPEG化FGF21分子の週1回の投薬を用いた8週間の腎臓空胞試験の間のマウスの体重変化を示す一連の6つのプロットである。システインを標的とする2つのPEG−FGF21を投与されたマウスは、持続的な体重減少を示し、連結分子を投与されたマウスは、主として一過性の体重減少を示した。
【図20】ビヒクルか、または、導入されたポリマー結合部位、すなわち、E37C/R77C/P171G;E37/H125C/P171G;E91C/H125C/P171G;E37C/P171G;R77C/P171G;およびR77C/P171Gで、20kDaのメトキシPEGマレイミド分子で二重にPEG化されたFGF21変異体ポリペプチドを投与したマウスの8週間の腎臓空胞試験の結果を示す2つの棒グラフである(2つの異なる用量をテストした)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
増大した半減期等の強化された特性を有するヒトFGF21タンパク質は、本明細書に記載する方法および標準的な分子生物学的方法を用いて調製することができる。PEG分子等の1つ以上の水溶性ポリマーをタンパク質に結合させることによって、そのタンパク質の半減期を延長できることが知られている。したがって、種々の実施形態において、ポリマーがFGF21タンパク質に結合できるポイントを形成するようにアミノ酸置換をタンパク質に導入することによって、天然FGF21の半減期を延長することができる。そのような修飾されたタンパク質は、本明細書においてFGF21変異体と称され、本発明の実施形態を形成する。またポリマーは、非自然発生ポリマー結合部位の導入と合わせて、FGF21分子のN末端に導入されてもよい。
【0018】
実施例を含む本明細書で使用される組換え核酸方法は、一般に、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)またはCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds.,Green Publishers Inc.and Wiley and Sons 1994)に記述される方法であり、それらの両方が、任意の目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
1.一般的な定義
本明細書で使用されるとき、「a」という用語は、別途記載のない限り1つ以上を指す。
【0020】
「単離された核酸分子」という用語は、(1)タンパク質、脂質、炭水化物、もしくは元の細胞から全核酸が単離されると自然に見出される他の物質の少なくとも約50パーセントから分離された、(2)「単離された核酸分子」が自然において結合するポリヌクレオチドのすべてもしくは一部に連結していない、(3)自然では結合しないポリヌクレオチドに操作可能に結合している、または(4)より大きなポリヌクレオチド配列の一部として自然では発生しない、本発明の核酸分子を指す。好ましくは、本発明の単離された核酸分子は、ポリペプチドの生成における使用、または治療的、診断的、予防的、もしくは研究的使用を妨げるであろう、任意の他の汚染核酸分子あるいはその自然環境において見出される他の汚染物質を本質的に含まない。
【0021】
「単離されたポリペプチド」という用語は、(1)ポリヌクレオチド、脂質、炭水化物、もしくは元の細胞から単離されると自然に見出される他の物質の少なくとも50パーセントから分離された、(2)「単離されたポリペプチド」が自然において結合するポリペプチドのすべてもしくは一部に(共有結合性相互作用または非共有結合性相互作用によって)連結していない(3)自然では結合しないポリペプチドに(共有結合性相互作用または非共有結合性相互作用によって)操作可能に連結している、(4)自然では発生しない、本発明のポリペプチドを指す。好ましくは、単離されたポリペプチドは、その治療的、診断的、予防的、もしくは研究的使用を妨げるであろう、任意の他の汚染ポリペプチドまたはその自然環境において見出される他の汚染物質を本質的に含まない。
【0022】
「ベクター」という用語は、宿主細胞にコード情報を伝えるために使用されえる任意の分子(例えば、核酸、プラスミド、またはウイルス)を指して使用される。
【0023】
「発現ベクター」という用語は、宿主細胞の形質転換に好適であり、挿入された異種核酸配列の発現を指揮するおよび/または支配する核酸配列を含有するベクターをさす。発現は、これらに限定されないが、転写、翻訳、およびRNAスプライシング(イントロンが存在する場合)等のプロセスを含む。
【0024】
「宿主細胞」という用語は、形質転換された細胞か、または核酸配列を用いて形質転換し、次いで、選択された該当する遺伝子を発現することが可能な細胞を指す。この用語は、選択された遺伝子が存在する限り、子孫が形態または遺伝的構造においてその元の親と同一であるかどうかにかかわらず、親細胞の子孫を含む。
【0025】
「自然発生」という用語は、核酸分子、ポリペプチド、宿主細胞等の生物学的物質に関連して使用される場合、自然に見出され、ヒトによって操作されていない物質を指す。同様に、本明細書で使用される「非自然発生」という用語は、自然に見出されないか、またはヒトによって構造的に修飾もしくは合成された物質を指す。ヌクレオチドに関連して使用される場合、「自然発生」という用語は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン、(G)、チミン(T)、およびウラシル(U)の塩基を指す。アミノ酸に関連して使用される場合、「自然発生」という用語は、アラニン(A)、システイン(C)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、フェニルアラニン(F)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、リジン(K)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、アスパラギン(N)、プロリン(P)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、セリン(S)、スレオニン(T)、バリン(V)、トリプトファン(W)、およびチロシン(Y)の20個のアミノ酸を指す。
【0026】
「FGF21ポリペプチド」という用語は、ヒトにおいて発現される任意の自然発生の野生型ポリペプチドを指す。本出願の目的のために「FGF21ポリペプチド」という用語は、209個のアミノ酸残基(配列番号2)から構成され、配列番号1のヌクレオチド配列によってコードされる全長FGF21ポリペプチドと;181個のアミノ酸残基(配列番号4)から構成され、配列番号3のヌクレオチド配列によってコードされ、全長FGF21ポリペプチドのアミノ末端で28個のアミノ酸残基(すなわち、単一のペプチドを構成する)が除去された、そのポリペプチドの成熟型とを指して、交換可能に使用されてもよい。FGF21ポリペプチドは、本明細書に記載されるように、N末端のメチオニン残基の有無にかかわらず発現させることができ、N末端のメチオニン残基は、細菌発現系の設計によって、または機能として付加することができる。
【0027】
「生物学的に活性」という用語は、本明細書に記載されるFGF21変異体ポリペプチドを含むFGF21ポリペプチドに適用される場合、血糖値、インスリン、トリグリセリド、またはコレステロールを低下させる能力、体重を減少させる能力、および耐糖能、エネルギー消費量、またはインスリン感受性を向上する能力等の、野生型FGF21ポリペプチドの自然に生じる活性を指す。FGF21変異体ポリペプチドに適用される場合、この用語はFGF21変異体ポリペプチドに導入された修飾の種類または数に依存しない。例えば、FGF21変異体ポリペプチドの中には、野生型FGF21ポリペプチドと比較して若干低いFGF21活性レベルを有するが、それにもかかわらず、生物学的に活性なFGF21変異体ポリペプチドであると見なされるものがある。特定のFGF21変異体ポリペプチドの活性における相違は、生体内アッセイと生体外アッセイの間で観察することができ、そのような任意の相違は、使用される特定のアッセイに関連する。しかしながら、そのような観察が「生物学的に活性」であるという用語の意味に影響を及ぼすことはなく、任意の生体内および生体外アッセイにおいて、血糖値、インスリン、トリグリセリド、またはコレステロールを低下させる能力、体重を減少させる能力、および耐糖能、エネルギー消費量、またはインスリン感受性を向上する能力等の、野生型FGF21ポリペプチドの自然に生じる活性を示すFGF21変異体ポリペプチドは、「生物学的に活性」である。
【0028】
「有効量」および「治療的有効量」という用語は交換可能に使用され、血糖値、インスリン、トリグリセリド、もしくはコレステロールレベルを低下させる能力、体重を減少させる能力、または耐糖能、エネルギー消費量、もしくはインスリン感受性を向上する能力等の、野生型FGF21ポリペプチドの1つ以上の生物学的活性の観察可能なレベルを維持するために使用されるFGF21変異体ポリペプチドの量を指す。
【0029】
「薬学的に許容される担体」または「生理学的に許容される担体」という用語は、本明細書で使用されるとき、FGF21変異体ポリペプチドの送達を達成または強化するために好適な1つ以上の製剤用物質を指す。そのような物質の例は、参照により本明細書に組み込まれるRemington, supraに見出すことができる。
【0030】
「連結分子(tethered molecule)」という用語は、リンカー分子によって連結された2つ以上のFGF21分子を含むコンストラクトを指す。連結分子は、少なくとも1つのFGF21ポリペプチドを含み、そのうちの少なくとも1つは本明細書に記載されるようなFGF21変異体ポリペプチドであるが、リンカーによって結合された3つ、4つ、もしくはそれ以上のFGF21ポリペプチドまたはFGF21変異体ポリペプチドを含むことができる。したがって、連結分子という用語は、1つもしくは2つのFGF21ポリペプチドまたはFGF21変異体ポリペプチドの組み合わせのみを含む分子に限定されない。
【0031】
「ポリマー結合部位」という用語は、ポリマーとの共有結合的会合に化学的に適応可能であるポリペプチド(例えば、FGF21ポリペプチド)の一次アミノ酸配列の領域を指す(例えば、全ての分子重量のPEG分子、ポリマーのマンノース、グリカン等)。ポリマー結合部位は、単一のアミノ酸(例えば、システイン、リジン、アルギニン、もしくは好適な非自然発生アミノ酸)を意味することができるか、またはこの用語は、配列もしくは空間のいずれかにおいて互いに隣接する2つ以上のアミノ酸を指すことができる。
【0032】
「化学修飾された」という用語は、本明細書に開示するようなFGF21野生型またはFGF21変異体ポリペプチドに関連して使用される場合、その自然に発生した状態から、1つ以上の異種分子の共有結合的結合によって修飾されたFGF21ポリペプチドを指す。異種分子の例は、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、ポリ−(N−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、ヒドロキシルエチルデンプン(HES)、およびポリビニルアルコールを含む。化学修飾されたFGF21ポリペプチドの例は、PEG化野生型FGF21およびFGF21変異体ポリペプチドを含む。
【0033】
2.FGF21変異体ポリペプチド
種々の態様において、本発明は、生体外活性に与える影響を最小限に抑える一方で、FGF21分子の薬物動態特性を向上させることができる、FGF21ポリペプチドおよびFGF21変異体ポリペプチドの部位特異的PEG化のための一連の方法を開示する。これらのPEG化されたFGF21分子の薬物動態プロファイルの向上は、治療剤への曝露を増加することによって、その分子の生体内での有効性に影響を与える。また、本明細書に記載されるストラテジーは複数のPEG化部位の作製に対応しており、それによって、分子の薬物動態特性をさらに向上させると同時に、空胞を形成する可能性を低減することができる。本明細書に記載されるように、2つの主要なストラテジーが、これを達成するために用いられる。
【0034】
一態様において、本発明は、1つ以上の修飾が導入されたFGF21配列に関する。したがって、交換可能に使用されてもよい「FGF21変異体ポリペプチド」および「FGF21変異体」という用語は、野生型FGF21のアミノ酸配列(例えば配列番号2または4)が修飾されたFGF21ポリペプチドを指す。そのような修飾としては、これらに限定されないが、非自然発生アミノ酸類似体との置換、挿入、および切断を含む、1つ以上のアミノ酸置換が挙げられる。したがって、FGF21ポリペプチド変異体としては、これらに限定されないが、本明細書に記載されるように、非自然発生ポリマー結合部位を導入するか、またはタンパク質分解に対してある程度の耐性を付与する、部位特異的FGF21変異体が挙げられる。本発明のFGF21変異体の特定のアミノ酸置換を同定する目的で、切断されたまたは突然変異させたアミノ酸残基のナンバリングは、成熟した181残基のFGF21ポリペプチドのナンバリングに対応する(すなわち、配列のN末端はHPIPDで始まり、これらの残基は、それぞれ、1、2、3、4、および5と表される)。N末端のメチオニン残基は存在してもよいがその必要はなく、このN末端のメチオニン残基は、タンパク質のナンバリングスキームには含まれない。
【0035】
記載したように、非自然発生アミノ酸を含む、1つ以上の置換または挿入を含むFGF21の切断された形態を含むFGF21変異体が、本発明の実施形態を形成する。そのような挿入または置換は、ポリマー結合のための部位として作用することを含む、種々の特性を付与することができる。そのような場合において、本明細書に記載される種々の突然変異に加えて、非自然発生アミノ酸がFGF21配列に組み込まれてもよい。したがって、FGF21変異体は、本明細書に記載される突然変異のうちの1つ以上を含むことができ、また、1つ以上の非自然発生アミノ酸をさらに含むことができる。FGF21配列に挿入されてもよいか、またはFGF21配列の野生型残基と置換されてもよい非自然発生アミノ酸の非限定例のリストは、βアミノ酸、ホモアミノ酸、環状アミノ酸、および誘導体化された側鎖を含むアミノ酸を含む。例としては、(L型またはD型、括弧内は省略形):パラ−アセチル−フェニルアラニン、パラ−アジド−フェニルアラニン、パラ−ブロモ−フェニルアラニン、パラ−ヨード−フェニルアラニンおよびパラ−エチニル−フェニルアラニン、シトルリン(Cit)、ホモシトルリン(hCit)、Nα−メチルシトルリン(NMeCit)、Nα−メチルホモシトルリン(Nα−MeHoCit)、オルニチン(Orn)、Nα−メチルオルニチン(Nα−MeOrnまたはNMeOrn)、サルコシン(Sar)、ホモリジン(hLysまたはhK)、ホモアルギニン(hArgまたはhR)、ホモグルタミン(hQ)、Nα−メチルアルギニン(NMeR)、Nα−メチルロイシン(Nα−MeLまたはNMeL)、N−メチルホモリジン(NMeHoK)、Nα−メチルグルタミン(NMeQ)、ノルロイシン(Nle)、ノルバリン(Nva)、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン(Tic)、オクタヒドロインドール−2−カルボン酸(Oic)、3−(1−ナフチル)アラニン(1−Nal)、3−(2−ナフチル)アラニン(2−Nal)、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン(Tic)、2−インダニルグリシン(IgI)、パラ−ヨードフェニルアラニン(pI−Phe)、パラ−アミノフェニルアラニン(4AmPまたは4−アミノ−Phe)、4−グアニジノフェニルアラニン(Guf)、グリシルリジン(「K(Nε−グリシル)」または「K(グリシル)」または「K(gly)」と略される)、ニトロフェニルアラニン(nitrophe)、アミノフェニルアラニン(aminopheまたはAmino−Phe)、ベンジルフェニルアラニン(benzylphe)、γ−カルボキシグルタミン酸(γ−carboxyglu)、ヒドロキシプロリン(hydroxypro)、p−カルボキシ−フェニルアラニン(Cpa)、α−アミノアジピン酸(Aad)、Nα−メチルバリン(NMeVal)、N−α−メチルロイシン(NMeLeu)、Nα−メチルノルロイシン(NMeNle)、シクロペンチルグリシン(Cpg)、シクロヘキシルグリシン(Chg)、アセチルアルギニン(acetylarg)、α,β−ジアミノプロピオン酸(Dpr)、α,γ−ジアミノ酪酸(Dab)、ジアミノプロピオン酸(Dap)、シクロヘキシルアラニン(Cha)、4−メチル−フェニルアラニン(MePhe)、β,β−ジフェニル−アラニン(BiPhA)、アミノ酪酸(Abu)、4−フェニル−フェニルアラニン(またはビフェニルアラニン、4Bip)、α−アミノ−イソ酪酸(Aib)、β−アラニン、β−アミノプロピオン酸、ピペリジン酸、アミノカプロン酸、アミノヘプタン酸、アミノピメリン酸、デスモシン、ジアミノピメリン酸、N−エチルグリシン、N−エチルアスパラギン酸、ヒドロキシリジン、アロ−ヒドロキシリジン、イソデスモシン、アロ−イソロイシン、N−メチルグリシン、N−メチルイソロイシン、N−メチルバリン、4−ヒドロキシプロリン(Hyp)、γ−カルボキシグルタミン酸、ε−N,N,N−トリメチルリジン、Ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、ω−メチルアルギニン、4−アミノ−O−フタル酸(4APA)、および他の同様のアミノ酸、ならびに具体的に列挙されたアミノ酸のうちのいずれかの誘導体化された形態が挙げられる。
【0036】
本発明の他の実施形態において、FGF21変異体ポリペプチドは、野生型FGF21アミノ酸配列(例えば、配列番号2または4)に少なくとも約85パーセント相同であるが、非自然発生ポリマー結合部位をFGF21変異体ポリペプチドに導入する特異的残基はさらに修飾されていないアミノ酸配列を含む。換言すると、タンパク質分解に対する耐性を強化するように、非自然発生ポリマー結合部位または突然変異を導入するために修飾されたFGF21変異体配列の残基を除いて、FGF21変異体配列の他のすべてのアミノ酸残基の約15パーセントが修飾されてもよい。例えば、FGF21変異体ポリペプチドG170Cでは、170位のグリシン残基以外のすべてのアミノ酸残基の15パーセントまでが修飾されてもよい。さらに他の実施形態において、FGF21ポリペプチド変異体は、野生型FGF21アミノ酸配列(例えば、配列番号2、4、6、または8)に少なくとも約90パーセント、または約95、96、97、98、もしくは99パーセント同一であるアミノ酸配列を含むが、非自然発生ポリマー結合部位を導入するため、またはタンパク質分解耐性を強化するために修飾された特定の残基は、さらに修飾されていない。そのようなFGF21変異体ポリペプチドは、野生型FGF21ポリペプチドの少なくとも1つの活性を保持する。
【0037】
FGF21変異体ポリペプチドは、FGF21ポリペプチドの特定の位置に、本質的に保存的または非保存的のいずれかであるアミノ酸置換を導入することによって、および自然発生または非自然発生のアミノ酸を用いることによって作製することができる。そのような置換は、FGF21ポリペプチドに望ましい特性を付与するように設計または観察される置換に加えて行われてもよい。例として、FGF21変異体ポリペプチドは、非自然発生ポリマー結合部位の導入、またはタンパク質分解に対する耐性の強化等の望ましい特性を達成するように設計された置換を含むことができ、また、野生型FGF21ポリペプチドの生物学的活性を維持することができるがその必要はない、1つ以上の保存的または非保存的な置換をさらに含むことができる。
【0038】
FGF21の突然変異は、保存的または非保存的であってもよい。「保存的アミノ酸置換」は、その位置のアミノ酸残基の極性または電荷に影響がほとんどないかもしくは全くないように、天然アミノ酸残基(すなわち、野生型FGF21ポリペプチド配列の所与の位置に見出される残基)を非天然残基(すなわち、野生型FGF21ポリペプチド配列の所与の位置に見出されない残基)と置換することを含むことができる。また、保存的アミノ酸置換は、生体系における合成ではなく、典型的には化学的合成によって組み込まれる非自然発生アミノ酸残基も包含する。これらは、ペプチド模倣体、およびアミノ酸部分の他の逆転または反転した形態を含む。
【0039】
自然発生残基は、共通する側鎖特性に基づいて次のクラスに分類することができる。
【0040】
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr
(3)酸性:Asp、Glu
(4)塩基性:Asn、Gln、His、Lys、Arg
(5)鎖配向に影響する残基:Gly、Pro、
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe
保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーと同じクラスの別のメンバーとの交換を含むことができる。非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーと別のクラスのメンバーとの交換を含むことができる。
【0041】
所望のアミノ酸置換(保存的または非保存的のいずれか)は、そのような置換が所望される場合に当業者によって決定されてもよい。アミノ酸置換の代表的な(しかし、限定的ではない)リストを表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
2.A.タンパク質分解耐性突然変異を含むFGF21変異体ポリペプチド
FGF21の成熟した形態(すなわち、181残基の形態)が生体内分解を受けることが明らかになっており、それは最終的にタンパク質分解攻撃から生じることが分かった。成熟FGF21の生体内分解は、有効半減期の短縮を引き起こすことが明らかになっており、それは分子の治療可能性に有害な影響を与える可能性がある。したがって、タンパク質分解に対する耐性を示すFGF21変異体を同定するために、該当する試験を行った。この調査の結果として、特にタンパク質分解を受け易いことが明らかになっている成熟FGF21ポリペプチドの部位は、4〜5位、20〜21位、151〜152、および171〜172位でアミノ酸残基間にペプチド結合を含む。
【0044】
許容し難い程度までタンパク質の生物学的活性に影響を及ぼすことなく、成熟FGF21において観察されたタンパク質分解効果を排除する、本発明において利用することのできる代表的置換の非制限的なリストを表2に表す。表2は、例証的であるに過ぎず、他のタンパク質分解耐性置換が同定され、本発明に利用されてもよい。これらのタンパク質分解耐性置換は、1つ以上の非自然発生ポリマー結合部位を導入する置換に加えて行われてもよく、ひいては、それぞれの種類の突然変異によって付与される望ましい特徴を示すFGF21変異体ポリペプチドを作製する。
【0045】
【表2】

【0046】
好ましくは、しかし必ずではないが、タンパク質分解耐性突然変異を含むFGF21変異体ポリペプチドは、野生型FGF21の活性と本質的に同じかまたはそれよりも高い生物学的活性を有する。したがって、本発明の別の実施形態は、1つ以上の非自然発生ポリマー結合部位を含み、タンパク質分解に対して耐性であるが、それでもなお野生型FGF21と同じかまたはそれよりも高い生物学的活性を保持するFGF21変異体ポリペプチドを対象とする。いくつかの場合においてはあまり望ましくはないが、1つ以上の非自然発生ポリマー結合部位を含み、タンパク質分解に対して耐性であるが、若干低めの生物学的活性を示すFGF21変異体が、本発明の別の実施形態を形成する。いくつかの場合において、ある程度のタンパク質分解を維持することが望ましい可能性があり、そのため、1つ以上の非自然発生ポリマー結合部位を含み、タンパク質分解に対して耐性であるが、それでもなお、ある程度のタンパク質分解が起こることを可能にするFGF21変異体もまた、本発明の別の実施形態を形成する。
【0047】
本発明のすべてのFGF21変異体ポリペプチドと同様に、1つ以上の非自然発生ポリマー結合部位を含むタンパク質分解耐性FGF21変異体ポリペプチドは、本明細書に記載されるように調製することができる。例えば、標準的な分子生物学技術に精通する等業者は、本開示とともにその知識を利用して、本発明の1つ以上の非自然発生ポリマー結合部位を含むタンパク質分解耐性FGF21変異体を作製および使用することができる。標準技術は、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養、および形質転換(例えば、電気穿孔、リポフェクション)に使用されてもよい。例えば、任意の目的のために、参照により本明細書に組み込まれるSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manualを参照のこと。酵素反応および精製技術は、製造業者の仕様にしたがって、当該技術分野において一般的に達成されるように、または本明細書に記載されるように行われてもよい。明確に定義されない限り、本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、医学および薬化学に関連して使用される命名法、ならびにその実験手順および技術は、当該技術分野で周知であり、一般的に用いられるものである。標準的技術は、化学合成、化学分析、医薬品の調製、処方および送達、ならびに患者の治療のために用いられてもよい。
【0048】
タンパク質分解に耐性である1つ以上の非自然発生ポリマー結合部位を含むタンパク質分解耐性FGF21変異体は、当該技術分野で既知である方法および本明細書に記載される方法を用いて化学修飾することができる。1つ以上の非自然発生ポリマー結合部位を含むタンパク質分解耐性FGF21変異体ポリペプチドを化学修飾すること(例えば、PEG化)により、タンパク質分解耐性と、所望の薬物動態および薬力学的特性の両方を示す分子を作製することができる。
【0049】
2.B.非自然発生ポリマー結合部位を含むFGF21変異体ポリペプチド
本発明の種々の態様において、FGF21変異体ポリペプチドが開示される。別の態様において、本発明のFGF21変異体ポリペプチドは、非自然発生ポリマー(例えば、PEG化)結合部位(複数化)が導入されたFGF21ポリペプチドを含む。本発明のさらに別の態様において、非自然発生ポリマー(例えば、PEG)結合部位(複数化)が導入されたFGF21変異体ポリペプチドの切断された形態が開示される。非自然発生ポリマー結合部位と、野生型FGF21の生物学的活性を維持することができるがその必要はない、1つ以上の保存的または非保存的な置換と、を含むFGF21変異体ポリペプチドが、本発明の別の態様を形成する。本発明の種々のFGF21ポリペプチド変異体は、本明細書に記載するように、また本明細書に提供される参考文献に記載されるように調製することができる。
【0050】
一実施形態において、本発明のFGF21ポリペプチド変異体は、非自然発生ポリマー結合部位を導入することによって修飾される。実際、一態様においては、これが本発明のFGF21変異体の目的であり、すなわち、半減期を延長するポリマーが、所望の場所でFGF21ポリペプチド変異体と結合できるように、1つ以上の非自然発生ポリマー結合部位を導入することである。選択されるポリマーは、それが結合するタンパク質が生理的環境等の水性環境において沈殿しないように、典型的には、しかし必ずではないが、水溶性である。好適なポリマーの範囲には、ポリマーの混合物が含まれる。最終生成調製物の治療的使用には、ポリマーは、好適な分子量のPEG等、薬学的に許容されるものであることが好ましい。またPEG脂肪酸ブロックコポリマー等の非水溶性ポリマーが、本発明のFGF21ポリペプチド変異体と共役されてもよく、本発明の態様を形成する。
【0051】
本発明のFGF21変異体ポリペプチドの活性は、例えば、実施例10において本明細書に記載されるように、生体外ELK−ルシフェラーゼアッセイを用いて、多様な様式においてアッセイすることができる。
【0052】
また、本発明のFGF21変異体ポリペプチドの活性は、実施例12に示すようにob/obマウスを用いて等、生体内アッセイにおいて評価されてもよい。一般に、これらのポリペプチドのうちの1つ以上の生体内活性を評価するために、試験動物の腹腔内にポリペプチドを投与することができる。1つ以上の所望の期間後、血液サンプルを採取し、血糖値レベルを測定することができる。
【0053】
本発明のすべてのFGF21変異体ポリペプチドと同様に、これらのポリペプチドは、定方向突然変異によって、または細菌発現プロセスの結果として導入されてもよい、アミノ末端のメチオニン残基を任意で含むことができる。
【0054】
本発明のFGF21変異体ポリペプチドは、実施例7に記載するように調製することができる。標準的な分子生物学技術に精通する等業者は、本開示とともにその知識を利用して、本発明のFGF21変異体ポリペプチドを作製および使用することができる。標準技術は、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養、および形質転換(例えば、電気穿孔、リポフェクション)に使用されてもよい。例えば、任意の目的のために、参照により本明細書に組み込まれるSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manualを参照のこと。酵素反応および精製技術は、製造業者の仕様にしたがって、当該技術分野において一般的に達成されるように、または本明細書に記載されるように行われてもよい。明確に定義されない限り、本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、医学および薬化学に関連して使用される命名法、ならびにその実験手順および技術は、当該技術分野で周知であり、一般的に用いられるものである。標準的技術は、化学合成、化学分析、医薬品の調製、処方および送達、ならびに患者の治療のために用いられてもよい。
【0055】
FGF21変異体ポリペプチドの調製後、ポリペプチドは、実施例9において本明細書に記載されるように、ポリマーの結合によって化学修飾することができる。
【0056】
3.非自然発生ポリマー結合部位を含む切断されたFGF21変異体ポリペプチド
本発明の一実施形態は、1つ以上の非自然発生ポリマー結合部位を含む変異体FGF21ポリペプチドの切断された形態を対象とする。そのような切断された変異体ポリペプチドは、化学修飾されてもよいが、その必要はない。
【0057】
本明細書で使用されるとき、「切断されたFGF21変異体ポリペプチド」という用語は、FGF21ポリペプチドのアミノ末端(またはN末端)から1つ以上のアミノ酸残基が除去されたか、FGF21変異体ポリペプチドもしくは化学修飾されたFGF21ポリペプチドのカルボキシル末端(またはC末端)から1つ以上のアミノ酸残基が除去されたか、またはFGF21変異体ポリペプチドもしくは化学修飾されたFGF21ポリペプチドのN末端およびはC末端の両方から1つ以上のアミノ酸残基が除去された、FGF21変異体ポリペプチドまたは化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドを指す。
【0058】
N末端で切断された変異体FGF21、C末端で切断された変異体FGF21、および分子のN末端とC末端の両方で切断された変異体FGF21分子、ならびにこれらの変異体の化学修飾された形態の活性は、例えば、実施例10において本明細書に記載される生体外ELK−ルシフェラーゼアッセイを用いて、多様な様式においてアッセイすることができる。
【0059】
また、本発明の切断された変異体FGF21ポリペプチドおよび化学修飾後の切断された変異体FGF21ポリペプチドの活性は、実施例12に示すようにob/obマウス等の生体内アッセイにおいて評価されてもよい。一般に、これらのポリペプチドのうちの1つ以上の生体内活性を評価するために、試験動物の腹腔内にポリペプチドを投与することができる。1つ以上の所望の期間後、血液サンプルを採取し、血糖値レベルを測定することができる。
【0060】
本発明のすべてのFGF21変異体と同様に、切断された変異体FGF21および化学修飾後の切断された変異体FGF21ポリペプチドは、定方向突然変異によって、または細菌発現プロセスの結果として導入されてもよい、アミノ末端のメチオニン残基を任意で含むことができる。
【0061】
本発明の切断されたFGF21変異体ポリペプチドは、実施例7に記載するように調製することができる。標準的な分子生物学技術に精通する等業者は、本開示とともにその知識を利用して、本発明の切断された変異体FGF21ポリペプチドを作製および使用することができる。標準技術は、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養、および形質転換(例えば、電気穿孔、リポフェクション)に使用されてもよい。例えば、任意の目的のために、参照により本明細書に組み込まれるSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manualを参照のこと。酵素反応および精製技術は、製造業者の仕様にしたがって、当該技術分野において一般的に達成されるように、または本明細書に記載されるように行われてもよい。明確に定義されない限り、本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、医学および薬化学に関連して使用される命名法、ならびにその実験手順および技術は、当該技術分野で周知であり、一般的に用いられるものである。標準的技術は、化学合成、化学分析、医薬品の調製、処方および送達、ならびに患者の治療のために用いられてもよい。
【0062】
切断された変異体FGF21ポリペプチドの調製後、ポリペプチドは、実施例9において本明細書に記載されるように、ポリマーの結合によって化学修飾することができる。
【0063】
4.キャッピングされたC末端のFGF21変異体ポリペプチド
別の実施形態において、本発明は、ポリペプチドのC末端に別の1つ以上の残基を付加して、アミノ酸配列を野生型タンパク質よりも長くすることによってキャッピングされた、1つ以上の非自然発生ポリマー結合部位を含む変異体FGF21ポリペプチドを対象とする。さらに別の実施形態において、本発明は、1つ以上のC末端突然変異をさらに含む1つ以上の非自然発生ポリマー結合部位を含むFGF21変異体ポリペプチドを対象とする。そのようなキャッピングされたC末端突然変異させたFGF21変異体ポリペプチドは、化学修飾されていてもよいが、その必要はない。
【0064】
本明細書で使用されるとき、「キャッピングされたFGF21変異体ポリペプチド」という用語は、FGF21変異体ポリペプチドまたは化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドのC末端に1つ以上のアミノ酸残基が付加されたFGF21変異体ポリペプチドまたは化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドを指す。1つ以上のプロリン残基および1つ以上のグリシン残基を含む、任意の自然発生または非自然発生アミノ酸が、FGF21変異体ポリペプチドをキャッピングするために使用されてもよい。野生型FGF21配列は181残基長に過ぎないが、キャッピングされたFGF21変異体ポリペプチドは、付加された各キャッピング残基ごとにポリペプチドの長さを1残基分延長し、本開示のナンバリングスキームと一致して、キャップ残基のナンバリングは182から開始される。したがって、単一のプロリンでキャッピングされた残基は、P182と表される。より長いキャップも可能であり、それに応じてナンバリングされる(例えば、X182、Y183、Z184、X、Y、およびZは任意の自然発生または非自然発生のアミノ酸)。キャッピング残基は、化学反応によってアミノ酸がポリペプチドのC末端に共有結合的に結合する化学的な方法等の任意の従来方法を用いて、変異体FGF21ポリペプチドに付加することができる。代替として、標準的な分子生物学技術を用いて、キャッピング残基をコードするコドンがFGF21変異体ポリペプチドコード化配列に付加されてもよい。所望の場合は、本明細書に記載される変異体FGF21ポリペプチドのいずれも、1つ以上の残基でキャッピングされてもよい。
【0065】
C末端突然変異が、本発明の別の態様を形成する。本明細書で使用されるとき、「C末端突然変異」という用語は、変異体FGF21ポリペプチドの残基91〜181(ポリペプチドがキャッピングされている場合は、それよりも長い)の領域における1つ以上の変化を指す。FGF21変異体ポリペプチド配列に導入されるC末端突然変異は、非自然発生ポリマー結合部位を導入する1つ以上の突然変異に加えて導入される。C末端突然変異は、FGF21変異体ポリペプチド配列の91〜181の領域における任意の点で導入することができるが、C末端突然変異の代表的な位置は、171位、172位、173位、174位、175位、176位、177位、178位、179位、180位、および181位を含む。C末端突然変異は、本明細書に記載されるような標準的な分子生物学技術を用いて導入することができる。本明細書に記載される変異体FGF21ポリペプチドのいずれも、C末端突然変異を含むことができる。
【0066】
キャッピングされた突然変異および/またはC末端の突然変異の位置および同一性の例を表3に示す。
【0067】
【表3】

【0068】
キャッピングされたおよび/またはC末端突然変異させたFGF21変異体ポリペプチド、ならびにこれらの変異体の化学修飾された形態の活性は、例えば、実施例10において本明細書に記載されるように、生体外ELK−ルシフェラーゼアッセイを用いて、多様な様式においてアッセイすることができる。
【0069】
また、本発明のキャッピングされたおよび/またはC末端突然変異させたFGF21変異体ポリペプチド、ならびに化学修飾後のキャッピングされたおよび/またはC末端突然変異させたFGF21変異体ポリペプチドの活性は、実施例12に示すようにob/obマウス等の生体内アッセイにおいて評価されてもよい。一般に、これらのポリペプチドのうちの1つ以上の生体内活性を評価するために、試験動物の腹腔内にポリペプチドを投与することができる。1つ以上の所望の期間後、血液サンプルを採取し、血糖値レベルを測定することができる。
【0070】
本発明のすべてのFGF21変異体と同様に、キャッピングされたおよび/またはC末端突然変異させたFGF21変異体ポリペプチド、ならびに化学修飾後のキャッピングされたおよび/またはC末端突然変異させたFGF21変異体ポリペプチドは、定方向突然変異によって、または細菌発現プロセスの結果として導入されてもよい、アミノ末端のメチオニン残基を任意で含むことができる。
【0071】
本発明のキャッピングされたおよび/またはC末端突然変異させたFGF21変異体ポリペプチドは、実施例7に記載されるように調製することができる。標準的な分子生物学技術に精通する等業者は、本開示とともにその知識を利用して、本発明のキャッピングされたおよび/またはC末端突然変異させたFGF21変異体ポリペプチドを作製および使用することができる。標準技術は、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養、および形質転換(例えば、電気穿孔、リポフェクション)に使用されてもよい。例えば、任意の目的のために、参照により本明細書に組み込まれるSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manualを参照のこと。酵素反応および精製技術は、製造業者の仕様にしたがって、当該技術分野において一般的に達成されるように、または本明細書に記載されるように行われてもよい。明確に定義されない限り、本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、医学および薬化学に関連して使用される命名法、ならびにその実験手順および技術は、当該技術分野で周知であり、一般的に用いられるものである。標準的技術は、化学合成、化学分析、医薬品の調製、処方および送達、ならびに患者の治療のために用いられてもよい。
【0072】
キャッピングされたおよび/またはC末端突然変異させたFGF21変異体ポリペプチドの調製後、ポリペプチドは、実施例9に記載されるように、ポリマーの結合によって化学修飾することができる。
【0073】
5.自然発生システイン残基を含まないFGF21変異体ポリペプチド
本発明のさらなる態様において、野生型FGF21ポリペプチド配列の両方のシステイン残基が、ジスフィルド結合を形成せず、またポリマー結合部位としての役割も果たさないアラニンまたはセリン等の残基と置き換えられた、FGF21変異体ポリペプチドを調製することができる。続いて、チオール含有残基(例えば、システイン残基、またはチオール基を有する非自然発生アミノ酸)あるいは遊離アミノ基(例えば、リジン残基もしくはアルギニン残基、または遊離アミノ基を有する非自然発生アミノ酸)の形態で非自然発生ポリマー結合部位を導入するFGF21変異体ポリペプチド配列において、置換が行われてもよい。次いで、結合するためにチオール基または遊離アミノ基に依存するPEG等のポリマーは、既知の位置でFGF21変異体ポリペプチド配列に導入されたシステイン、リジン、またはアルギニン残基に標的化されてもよい。このストラテジーは、より効率的かつ制御されたポリマーの配置を促進することができる。
【0074】
1つの手法において、75位および93位に位置する野生型FGF21ポリペプチドの2つの自然発生システイン残基が、チオールを含有しない残基と置換されてもよい。続いて、システイン残基が既知の場所に導入されてもよい。FGF21変異体ポリペプチドは、さらに多くのポリマー結合部位(例えば、システイン残基)を導入することができる他の突然変異を含んでもよいか、またはいくつかの他の所望の特性を達成するように設計されてもよい。そのようなFGF21変異体ポリペプチドの例は、C75A/E91C/C93A/H125C/P171GおよびC75S/E91C/C93S/H125C/P171Gを含む。これらの例では、75位および93位の自然発生システインがアラニンまたはセリン残基に突然変異され、ポリマー結合部位が91位および125位(PEG等のチオール反応性ポリマーの場合)に導入され、171位で追加の突然変異(すなわち、プロリン171とグリシン残基の置換)が行われている。
【0075】
本明細書に開示されるすべてのFGF21変異体ポリペプチドと同様に、野生型FGF21ポリペプチド配列に見出されるシステインのうちのいずれも含有しないが、その代わりに、導入されたポリマー結合部位と、任意で1つ以上の追加の突然変異と、を含むFGF21変異体ポリペプチド、ならびにこれらの変異体の化学修飾された形態の活性は、例えば、実施例10において本明細書に記載されるように、生体外ELK−ルシフェラーゼアッセイを用いて、多様な様式においてアッセイすることができる。これらのポリペプチドの生体内活性は、実施例12に示すようにob/obマウスを用いておよび本明細書に記載されるように生体内アッセイにおいて評価することができる。
【0076】
本発明のすべてのFGF21変異体と同様に、野生型FGF21ポリペプチド配列に見出されるシステインのうちのいずれも含有しないが、その代わりに、導入されたポリマー結合部位と、任意で1つ以上の追加の突然変異と、を含むFGF21変異体ポリペプチド、ならびにこれらのFGF21変異体ポリペプチドの化学修飾された形態の活性は、定方向突然変異によって、または細菌発現プロセスの結果として導入されてもよい、アミノ末端のメチオニン残基を任意で含むことができる。
【0077】
野生型FGF21ポリペプチド配列に見出されるシステインのうちのいずれも含有しないが、その代わりに、導入されたポリマー結合部位と、任意で1つ以上の追加の突然変異と、を含むFGF21変異体ポリペプチドは、例えば、実施例7において本明細書で記載されるように調製することができる。標準的な分子生物学技術に精通する等業者は、本開示とともにその知識を利用して、これらのFGF21変異体ポリペプチドを作製および使用することができる。標準技術は、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養、および形質転換(例えば、電気穿孔、リポフェクション)に使用されてもよい。例えば、任意の目的のために、参照により本明細書に組み込まれるSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manualを参照のこと。酵素反応および精製技術は、製造業者の仕様にしたがって、当該技術分野において一般的に達成されるように、または本明細書に記載されるように行われてもよい。明確に定義されない限り、本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、医学および薬化学に関連して使用される命名法、ならびにその実験手順および技術は、当該技術分野で周知であり、一般的に用いられるものである。標準的技術は、化学合成、化学分析、医薬品の調製、処方および送達、ならびに患者の治療のために用いられてもよい。
【0078】
野生型FGF21ポリペプチド配列に見出されるシステインのうちのいずれも含有しないが、その代わりに、導入されたポリマー結合部位と、任意で1つ以上の追加の突然変異と、を含むFGF21変異体ポリペプチドの調製後、ポリペプチドは、実施例9に記載されるように、ポリマーの結合によって化学修飾されてもよい。
【0079】
6.「連結分子」
本発明のさらに別の態様において、本明細書に記載されるように「連結分子」を調製することができる。「連結分子」は、リンカー分子によって連結された2つのFGF21ポリペプチドを含む分子である。2つのFGF21ポリペプチドを結合させることにより、連結分子の有効半減期および強度を、単一のFGF21ポリペプチドの有効半減期および強度を超えて拡張することができる。
【0080】
本発明の連結分子は、リンカーと、2つのFGF21ポリペプチドとを含み、それらのポリペプチドは、突然変異が導入されていない2つの自然発生FGF21ポリペプチドか、FGF21ポリペプチドに導入されたリンカー結合部位を有する2つのFGF21変異体ポリペプチドか、または1つの自然発生FGF21ポリペプチドと1つのFGF21変異体ポリペプチドとの組み合わせであってもよい。非自然発生リンカー結合部位および1つ以上の追加の突然変異を有する、少なくとも1つのFGF21ポリペプチドを含む連結分子もまた企図され、本発明の別の態様を形成する。したがって、そのような連結分子は、リンカー分子の結合のための部位を形成する突然変異と、連結分子に別の望ましい特性を付与するための別の突然変異とを含むことができる。
【0081】
本明細書で使用されるとき、「リンカー結合部位」という用語は、リンカーが会合することができる官能基を有する自然発生または非自然発生アミノ酸を意味する。1つの例において、リンカー結合部位は、PEG分子と会合することができるチオール基を含有する残基である。
【0082】
6.A.連結分子のFGF21ポリペプチド
連結分子が2つのFGF21変異体ポリペプチドを含む場合、FGF21変異体ポリペプチドは、配列に導入された1つ以上の突然変異を含むことができるが、その突然変異は、FGF21変異体ポリペプチドのそれぞれにおける同じアミノ酸位置にある必要はない。例として、連結分子が2つのFGF21変異体ポリペプチドを含む場合、一方のFGF21変異体ポリペプチドはH125C突然変異を含有することができ、それがリンカー分子のための結合部位を形成してもよい。対照的に、他方のFGF21変異体ポリペプチドはH125以外の位置で突然変異を含有することができ、それが2つのFGF21変異体ポリペプチドを一緒に連結するリンカーの結合点としての役割を果たすことができる。例え1つまたは2つのFGF21変異体ポリペプチドが用いられたとしても、リンカーはFGF21変異体ポリペプチドのN末端に結合することができ、必ずしも導入された結合点が用いられなくてもよい。
【0083】
連結分子が1つまたは2つの自然発生FGF21ポリペプチドを含む場合、リンカーは、結合化学を受け入れられるFGF21ポリペプチドのある点で結合させられてもよい。例えば、自然発生ジスフィルド結合は減少させられてもよく、システイン残基がPEG等のリンカーの結合点としての役割を果たすことができる。別の実施形態において、リンカーは、N末端でまたはリジン側鎖上でFGF21ポリペプチドに結合されてもよい。
【0084】
連結分子のFGF21変異体ポリペプチドのうちの一方または両方は、切断されたFGF21変異体ポリペプチドを含むことができる。本明細書に記載されるように、切断されたFGF21変異体ポリペプチドは、N末端、C末端、またはN末端およびC末端の両方のいずれかにある、任意の数の残基を除去することによって調製することができる。
【0085】
連結分子はまた、リンカー結合部位としては好ましくないかもしれないが、その代わりに、連結分子にいくつかの他の望ましい特性を付与することができる突然変異をポリペプチド配列に含む、一方または両方のFGF21ポリペプチドを含むことができる。したがって、突然変異が連結分子に望ましい特性を付与する1つ以上のFGF21変異体ポリペプチドを含む連結分子が、本発明のさらなる態様を形成する。
【0086】
連結分子の活性は、例えば、実施例10において本明細書に記載されるように、生体外ELK−ルシフェラーゼアッセイを用いて、多様な様式においてアッセイすることができる。
【0087】
また、本発明の連結分子の活性は、実施例12に示すようにob/obマウスを用いて等、生体内アッセイにおいて評価されてもよい。一般に、これらのポリペプチドのうちの1つ以上の生体内活性を評価するために、試験動物の腹腔内にポリペプチドを投与することができる。1つ以上の所望の期間後、血液サンプルを採取し、血糖値レベルを測定することができる。
【0088】
本発明のすべてのFGF21変異体と同様に、FGF21変異体ポリペプチド、野生型FGF21ポリペプチド、または両方の組み合わせであってもよい、連結分子を含むFGF21ポリペプチドは、定方向突然変異によって、または細菌発現プロセスの結果として導入されてもよい、アミノ末端のメチオニン残基を任意で含むことができる。
【0089】
標準的な分子生物学技術に精通する等業者は、本開示とともにその知識を利用して、本発明の連結分子を作製および使用することができる。標準技術は、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養、および形質転換(例えば、電気穿孔、リポフェクション)に使用されてもよい。例えば、任意の目的のために、参照により本明細書に組み込まれるSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manualを参照のこと。酵素反応および精製技術は、製造業者の仕様にしたがって、当該技術分野において一般的に達成されるように、または本明細書に記載されるように行われてもよい。リンカーをFGF21ポリペプチドと会合させるプロセスはリンカーの性質に依存するが、等業者には既知である。リンカー結合化学の例は本明細書に記載される。本発明の連結分子がどのように形成されるかのガイダンスは、例えば、実施例9において本明細書に提供される。
【0090】
明確に定義されない限り、本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、医学および薬化学に関連して使用される命名法、ならびにその実験手順および技術は、当該技術分野で周知であり、一般的に用いられるものである。標準的技術は、化学合成、化学分析、医薬品の調製、処方および送達、ならびに患者の治療のために用いられてもよい。
【0091】
6.B.連結分子のリンカー
2つのFGF21変異体ポリペプチドを一緒に連結するために、任意のリンカーが連結分子に用いられてもよい。リンカー分子は、分岐していてもまたは分岐していなくてもよく、本明細書に記載されるような既知の化学を用いてFGF21変異体ポリペプチドに結合されてもよい。リンカーは主にスペーサとしての役割を果たすため、その化学構造は重要ではない。リンカーは、連結分子(例えば、3つもしくは4つのFGF21変異体または野生型ポリペプチドを含む連結分子)に存在してもよい任意の他のリンカー(単数または複数)と、独立して、同じかまたは異なっていてもよい。一実施形態において、リンカーは、ペプチド結合によって結合されたアミノ酸から構成されてもよい。これらのアミノ酸のうちのいくつかは、等業者には十分に理解されるように、グリコシル化されていてもよい。例えば、シアル化を構成する有用なリンカー配列は、X1X2NX4X5G(配列番号5)であり、式中、X1、X2、X4、およびX5は、それぞれ独立して、任意のアミノ酸残基である。別の実施形態において、リンカー分子は、20kDa、30kDa、または40kDa等の任意のサイズのPEG分子であってもよい。
【0092】
ぺプチジルリンカーが存在する(すなわち、ペプチド結合によって結合されたアミノ酸から構成される)実施形態において、それは、好ましくは1個〜最大約40個のアミノ酸残基、より好ましくは1個〜最大約20個のアミノ酸残基、最も好ましくは1個〜約10個のアミノ酸残基の長さで作られる。一実施形態において、リンカーのアミノ酸残基は、20個の基準アミノ酸のうちのいずれかから選択される。別の実施形態において、リンカーのアミノ酸残基は、システイン、グリシン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、および/またはセリンから選択される。さらに別の実施形態において、ぺプチジルリンカーは、ペプチド結合によって結合されたグリシン、セリン、およびアラニン等の立体障害のないアミノ酸の大部分から構成される。体内循環にタンパク質分解による急速な代謝回転が存在する場合は、それを回避するぺプチジルリンカーが選択されることが望ましいことが多い。したがって、好ましいぺプチジルリンカーは、ポリグリシン、特に、(Gly)4(配列番号6)、(Gly)5(配列番号7)、ポリ(Gly−Ala)、およびポリアラニンを含む。他の好ましいぺプチジルリンカーは、GGGGS(配列番号8)、GGGGSGGGGS(配列番号9)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号10)、および本明細書に提供される実施例において使用される任意のリンカーを含む。しかしながら、本明細書に記載されるリンカーは代表的なものであって、本発明の範囲内のリンカーは、これより大分長くてもよく、また他の残基を含むことができる。
【0093】
ペプチドリンカー部分を含む連結分子の実施形態において、例えば、グルタミン酸残基またはアスパラギン酸残基等の酸性残基は、リンカー部分のアミノ酸配列に配置される。その例は、以下のペプチドリンカー配列を含む:
GGEGGG(配列番号11)、
GGEEEGGG(配列番号12)、
GEEEG(配列番号13)、
GEEE(配列番号14)、
GGDGGG(配列番号15)、
GGDDDGG(配列番号16)、
GDDDG(配列番号17)、
GDDD(配列番号18)、
GGGGSDDSDEGSDGEDGGGGS(配列番号19)、
WEWEW(配列番号20)、
FEFEF(配列番号21)、
EEEWWW(配列番号22)、
EEEFFF(配列番号23)、
WWEEEWW(配列番号24)、または
FFEEEFF(配列番号25)。
【0094】
他の実施形態において、ぺプチジルリンカーは、例えば以下のようなリン酸化部位を構成する:X1X2YX3X4G(配列番号26)、式中、X1、X2、X3、およびX4は、それぞれ独立して任意のアミノ酸残基である;X1X2SX3X4G(配列番号27)、式中、X1、X2、X3、およびX4は、それぞれ独立して任意のアミノ酸残基である;またはX1X2TX3X4G(配列番号28)、式中、X1、X2、X3、およびX4は、それぞれ独立して任意のアミノ酸残基である。
【0095】
ペプチド以外のリンカーも、連結分子に用いることができる。例えば、−NH−(CH2)s−C(O)−(式中、s=2〜20)等のアルキルリンカーが用いられてもよい。これらのアルキルリンカーは、低級アルキル(例えば、C1−C6)低級アシル、ハロゲン(例えば、Cl、Br)、CN、NH2、フェニル等の立体障害のない任意の基によってさらに置換されてもよい。
【0096】
連結分子を形成するために、本発明において任意の好適なリンカーが用いられてもよい。1つの例において、本明細書に記載される連結分子を生成するために用いられるリンカーは、以下の一般構造を有するホモ二官能性のビス−マレイミドPEG分子であり、
X−(CH2CH2O)nCH2CH2−X
式中、Xはマレイミド基である。他の実施形態において、Xは、オルトピリジル−ジスルフィド、ヨードアセトアミド、ビニルスルホン、または当該技術分野においてチオール基に特異的であることが知られる任意の他の反応部分であってもよい。さらに別の実施形態において、Xは、N末端または遺伝子操作されたリジル基のいずれかを介して2つの変異体ポリペプチドを一緒に連結するために用いられるアミノ特異的反応部分であってもよい(例えば、Pasut and Veronese,2006,“PEGylation of Proteins Tailored Chemistry for Optimized Bioconjugates,”Adv.Polym.Sci.192:95〜134を参照のこと)。
【0097】
さらに別の実施形態において、リンカーは以下の一般構造を有することができ、
X−(CH2CH2O)nCH2CH2−Y
式中、XおよびYは、上記の基から選択される異なる反応性部分である。そのようなリンカーは、連結されたヘテロ二量体またはヘテロオリゴマーを作製するために、異なる変異体ポリペプチドの共役を可能にする。
【0098】
さらなる実施形態において、リンカーは、1〜100kDa、好ましくは10〜50kDa(例えば、10、20、30、または40kDa)、またより好ましくは20kDaの分子量を有することができるPEG分子であってもよい。ペプチドリンカーは、上記と同じ様式で誘導体を形成するように変更されてもよい。
【0099】
有用なリンカーの他の例は、参照により、その全体が本明細書に組み入れられる国際公開第2006/042151号に開示されるようなアミノエチルオキシエチルオキシ−アセチルリンカーを含む。
【0100】
本発明の連結分子を形成する場合、リンカーを野生型または変異体のFGF21分子と会合させるために標準化学が用いられてもよい。正確な会合の方法は、結合部位(例えば、アミノ酸側鎖)およびリンカーの性質に依存する。リンカーがPEG分子である場合、標準化学と、システイン残基(突然変異によってFGF21ポリペプチド配列内に導入されてもよいか、または自然発生であってもよい)またはリジン(突然変異によってFGF21ポリペプチド配列内に導入されてもよいか、または自然発生であってもよい)またはN末端アミノ基に見出されるような遊離スルフヒドリル基またはアミノ基と、を用いることによって、結合を達成することができる。
【0101】
7.FGF21変異体の化学修飾
本発明の態様において、FGF21変異体ポリペプチドは化学修飾される。「化学修飾された」という用語は、ポリペプチド上の1つ以上の部位にポリマーを付加することによって修飾されたポリペプチド(例えば、FGF21変異体ポリペプチド)を指す。FGF21変異体ポリペプチドの化学修飾された形態の例は、FGF21変異体ポリペプチドのPEG化およびグリコシル化された形態を含む。
【0102】
本発明の化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドは、PEG等の水溶性ポリマーを含む任意の種類のポリマーを含むことができる。代表的なポリマーは、それぞれ任意の分子量であってもよく、分岐していてもまたは分岐していなくてもよい。ポリマーは、それぞれ典型的には、約2kDa〜約100kDaの平均分子量を有する(「約」という用語は、水溶性ポリマーの調製において、いくつかの分子は記載した分子量よりも多い重さであり、いくつかはそれよりも少ない重さであることを意味する)。各ポリマーの平均分子量は、好ましくは約5kDa〜約50kDaであり、より好ましくは約10kDa〜約40kDaであり、また最も好ましくは約10kDa〜約20kDaである。
【0103】
好適な水溶性ポリマーまたはその混合物は、これらに限定されないが、炭水化物、ポリエチレングリコール(PEG)(モノ−(C1〜C10)、アルコキシ、またはアリールオキシ−ポリエチレングリコールを含む、タンパク質を誘導体化するために使用されたPEGの形態を含む)、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン(例えば約6kDの低分子量デキストラン等)、セルロース、または他の炭水化物ベースのポリマー、ポリ−(N−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、およびポリビニルアルコールを含む。また、共有結合的に結合したFGF21ポリペプチド変異体の多量体を調製するために用いることのできる二機能性架橋分子も、本発明に包含される。また、ポリシアル酸に共有結合的に結合したFGF21変異体も、本発明に包含される。
【0104】
本発明のいくつかの実施形態において、FGF21変異体ポリペプチドは、これらに限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレングリコール、またはポリプロピレングリコールを含む1つ以上の水溶性ポリマーを含むように共有結合的に修正される。例えば、米国特許第4,640,835号、第4,496,689号、第4,301,144号、第4,670,417号、第4,791,192号、および第4,179,337号を参照のこと。本発明のいくつかの実施形態において、FGF21変異体は、これらに限定されないが、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、別の炭水化物ベースのポリマー、ポリ−(N−ビニルピロリドン)−ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、またはそのようなポリマーの混合物を含む、1つ以上のポリマーを含む。
【0105】
本発明のさらに他の実施形態において、ペプチドまたはタンパク質は、部位特異的な様式でFGF21に共役されてもよいが、上記の遺伝子操作された順番の残基は、FGF21に好ましい特性(例えば、強度、安定性、選択性)を付与する。したがって、本発明は、導入されたポリマー結合部位でヘテロタンパク質またはヘテロペプチドに共役されたFGF21変異体ポリペプチドを包含する。好適なタンパク質の例は、FGF21に結合しないHASおよび抗体を含む。
【0106】
7.A.PEG化されたFGF21変異体ポリペプチド
本発明のいくつかの実施形態において、FGF21変異体ポリペプチドは、PEGサブユニットで共有結合的に修飾される。いくつかの実施形態において、1つ以上の水溶性ポリマーが、FGF21変異体の1つ以上の特異的な位置(例えば、N末端)で結合される。いくつかの実施形態において、1つ以上の水溶性ポリマーがFGF21変異体の1つ以上の側鎖に結合し、これらの側鎖は自然発生であってもよいか、または遺伝子操作されたポリマー結合部位の構成要素を形成することができる。いくつかの実施形態において、PEGは、FGF21変異体ポリペプチドの治療能力を向上するために使用される。特定のそのような方法は、例えば、任意の目的のために、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,133,426号において考察される。
【0107】
ポリマーがPEGである本発明の実施形態において、PEG基は任意の都合のよい分子量の基であってもよく、直鎖または分岐鎖であってもよい。PEG基の平均分子量は、好ましくは約2kD〜約100kDa、またより好ましくは約5kDa〜約50kDaの範囲であり、例えば、10、20、30、40、または50kDaである。PEG基は、一般に、PEG部分上の反応基(例えば、アルデヒド、NHS、またはマレイミド、ビニルスルホン、アルキルハロゲン化物)によるFGF21変異体上の反応基(例えば、アミノ基またはチオール基)へのアシル化または還元的アルキル化を介して、FGF21変異体に結合する。
【0108】
FGF21変異体ポリペプチドに結合するポリマー(複数可)がPEGである場、本発明のFGF21変異体ポリペプチドのPEG化は、当該技術分野で既知であるPEG化反応のうちのいずれかを用いて、特異的に実行することができる。そのような反応は、例えば、以下の参考文献に記載される:Zalipsky,1995,Functionalized Poly(ethylene glycol)for Preparation of Biologically Relevant Conjugates,Bioconjugate Chemistry 6:150〜165;Francis et al.,1992,Focus on Growth Factors 3:4〜10;欧州特許第0154316号および第0401384号;ならびに米国特許第4,179,337号。例えば、標的残基がリジン残基(すなわち、反応性アミノ基を持つ残基)である場合、PEG化は、本明細書に記載されるように、アミノ反応性ポリエチレングリコール分子(または類似する反応性の水溶性ポリマー)を用いて、アシル化反応またはアルキル化反応を介して実行することができる。アシル化反応には、選択されるポリマーは単一の反応性エステル基を有することができる。還元的アルキル化には、選択されるポリマーは単一の反応性アルデヒド基を有することができる。反応性アルデヒドは、例えば、水溶性のポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、またはそのモノC1〜C10アルコキシ誘導体もしくはアリールオキシ誘導体(米国特許第5,252,714号を参照のこと)である。当業者には、異なるアミノ特異的部分で活性化された種々の反応性PEGポリマーも既知であり、状況に応じてそれらが用いられてもよい。
【0109】
別の例において、標的残基がシステイン残基(すなわち、反応性スルフヒドリル基を持つ残基)である場合、PEG化は標準的なマレイミド化学を介して実行することができる。この反応には、選択されるポリマーは、1つ以上の反応性マレイミド基、またはビニルスルホン、オルトピリジル−ジスルフィド、もしくはヨードアセトアミド等の他のチロール反応性部分を含有することができる。例えば、Pasut&Veronese,2006,“PEGylation of Proteins as Tailored Chemistry for Optimized Bioconjugates,”Adv.Polym.Sci.192:95〜134;Zalipsky,1995,“Functionalized Poly(ethylene glycol)for Preparation of Biologically Relevant Conjugates,”Bioconjugate Chemistry6:150〜165;およびHermanson,Bioconjugate Techniques,2nd Ed.,Academic Press,2008を参照のこと(これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態において、PEG基をFGF21変異体に結合させるための有用なストラテジーは、溶液中で共役結合を形成することによって、それぞれが他方に対して相互に反応性である特別な官能性を有するFGF21変異体とPEG部分とを合わせることを含む。FGF21変異体は、特異的部位で、適切な官能基で「時前に活性化」される。前駆体は、PEG部分と反応させる前に精製され、十分に特徴付けられる。FGF21変異体とPEGのライゲーションは、通常は水相で起こり、SDS−PAGEまたは逆相分析用HPLCによって容易に監視することができる。詳細な分析は、LC−MSに基づくペプチドのマッピングによって行うことができる。
【0111】
7.B.多糖類FGF21変異体ポリペプチド
多糖類ポリマーは、タンパク質の修飾に使用することのできる別の種類の水溶性ポリマーである。したがって、本発明のFGF21変異体ポリペプチドは、本発明の実施形態を形成するように多糖類ポリマーに結合されてもよい。したがって、FGF21変異体ポリペプチドの遺伝子操作した非自然発生ポリマー結合部位は、多糖類が結合される残基を含むことができる。デキストランは、主にα1〜6結合によって結合されるグルコースの個別サブユニットを含む多糖類ポリマーである。デキストラン自体は多くの分子量の範囲で使用可能であり、約1kD〜約70kDの分子量で容易に使用可能である。デキストランは、それ自体がビヒクルとして使用される好適な水溶性ポリマーであるか、または、または別のビヒクルと合わせて(例えば、Fc)使用される好適な水溶性ポリマーである。例えば、国際公開第96/11953号を参照のこと。治療用または診断用の免疫グロブリンと共役されたデキストランの使用が報告されている。例えば、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許公開第0315456号を参照のこと。また本発明は、約1kDa〜約20kDaのデキストランの使用を包含する。
【0112】
7.C.FGF21変異体ポリペプチドを化学修飾する方法
一般に、化学修飾(例えば、PEG化またはグリコシル化)は、タンパク質を活性化されたポリマー分子と反応させるために用いられる任意の好適な条件下で行うことができる。化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドを調製するための方法は、通常、以下の工程:(a)FGF21変異体ポリペプチドが1つ以上のポリマー分子に結合する条件下で、ポリペプチドを活性化されたポリマー分子(反応性エステル、マレイミド、またはポリマー分子のアルデヒド誘導体等)と反応させる工程と、(b)反応産物を得る工程、を含む。最適な反応条件は、既知のパラメータおよび所望の結果に基づいて決定される。例えば、タンパク質に対するポリマー分子の比率が高いほど、結合するポリマー分子の割合が大きい。本発明の一実施形態において、化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドは、アミノ末端に単一のポリマー分子を有することができ、他の実施形態において、FGF21変異体ポリペプチドは、例えば、ポリペプチドのN末端に1つのポリマー、そしてポリペプチドの別の残基に第2のポリマーのように、一次配列に会合する2つ以上のポリマーを有することができる。代替として、FGF21変異体は、一次配列の2つの異なる残基と会合する2つ以上のポリマーを有することができるが、N末端にはポリマーを有することはできない。
【0113】
一般に、本発明の化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドの投与によって緩和または調節することのできる状態は、天然FGF21ポリペプチドについて本明細書に記載されるものを含む。しかしながら、本明細書に開示される化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドは、野生型FGF21およびFGF21変異体と比較して、半減期の増加等の追加の活性を有することができる。
【0114】
8.FGF21変異体の治療用組成物およびその投与
FGF21変異体ポリペプチドを含む治療用組成物は、本発明の範囲内であり、特に、強化された特性を示す連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、および化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドの同定を考慮して企図される。そのような連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、および化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドの治療用組成物は、投与様式との適合性に合わせて選択される薬学的にまたは生理学的に許容される製剤用物質との混合物中で化学修飾することのできる、治療的有効量の連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドを含むことができる。
【0115】
許容される製剤用物質は、好ましくは、用いられる投与量および濃度で受容する側に毒性を示さない。
【0116】
医薬組成物は、例えば、組成物のpH、モル浸透圧濃度、粘性、透明性、色、等張性、匂い、無菌性、安定性、溶解もしくは放出、吸収、または浸透の速度等を、変更、維持、または保存するための製剤用物質を含有することができる。好適な製剤用物質は、これらに限定されないが、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリジン等)、抗菌剤、抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、もしくは亜硫酸水素ナトリウム等)、緩衝剤(ホウ酸塩、炭酸水素塩、Tris−HCl、クエン酸塩、リン酸塩、もしくは他の有機酸等)、増量剤(マンニトールもしくはグリシン等)、キレート化剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等)、錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、β−シクロデキストリン、もしくはヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン等)、充填剤、単糖類、二糖類、および他の炭水化物(グルコース、マンノース、もしくはデキストリン等)、タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン等)、着色剤、香味剤および賦形剤、乳化剤、親水性ポリマー(ポリビニルポロリドン等)、低分子量ポリペプチド、塩形成対イオン(ナトリウム等)、保存剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、もしくは過酸化水素等)、溶剤(グリセリン、プロピレングリコール、もしくはポリエチレングリコール等),糖アルコール(マンニトールまたはソルビトール等)、懸濁化剤、界面活性剤または湿潤剤(プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート20もしくはポリソルベート80等のポリソルベート、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、またはチロキサポール等)、安定性増進剤(スクロースまたはソルビトール等)、等張性増進剤(アルカリ金属ハロゲン化物―好ましくは塩化ナトリウムもしくは塩化カリウムまたはマンニトールソルビトール等)、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または薬学的アジュバントを含む(例えば、任意の目的のために、参照により本明細書に組み込まれるRemington's Pharmaceutical Sciences(18th Ed.,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Company 1990)およびその続編を参照のこと)。
【0117】
最適な医薬組成物は、例えば、意図される投与経路、送達形態、および所望の投与量に依存して、等業者によって決定される(例えば、Remington's Pharmaceutical Scienceを参照のこと)。そのような組成物は、連結分子、FGF21変異体ポリペプチド(切断されているか、キャッピングされているか、もしくはC末端突然変異されていてもよい)、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドの物理的状態、安定性、体内放出の速度、体内クリアランスの速度に影響を与えることが可能である。
【0118】
医薬組成物中の一次ビヒクルまたは担体は、本質的に、水性または非水性のいずれかであってもよい。例えば、注射に好適なビヒクルまたは担体は、非経口投与のための組成物に共通の他の物質が補充された可能性のある、水、生理食塩水、または人工脳脊髄液であってもよい。中性緩衝食塩水または血清アルブミンと混合した生理食塩水は、さらなる代表的ビヒクルである。他の代表的な医薬組成物は、ソルビトールまたは好適な代替物をさらに含むことができる約pH7.0〜8.5のTris緩衝液、または約pH4.0〜5.5の酢酸緩衝液を含む。本発明の一実施形態において、連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、および化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドの組成物は、所望の純度を有する選択された組成物と、任意の製剤用物質(Remington's Pharmaceutical Sciences, supra)とを、凍結乾燥ケーキまたは水溶液の形態で混合することによって、保存のために調製されてもよい。さらに、連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、および化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドの生成物は、スクロース等の適切な賦形剤を用いて凍結乾燥物として処方されてもよい。
【0119】
本発明の医薬組成物は、非経口送達のために選択されてもよい。代替として、組成物は、吸入のために、または消化管を介した送達(例えば経口等)のために選択されてもよい。そのような薬学的に許容される組成物の調製は、当該技術分野の技術の範囲内である。
【0120】
製剤の成分は、投与部位に許容される濃度で存在する。例えば、組成物を生理学的なpHで、または若干低いpHで、典型的には、約5〜約8のpH範囲内で維持するために緩衝液が用いられる。
【0121】
非経口投与が企図される場合、本発明における使用のための治療用組成物は、薬学的に許容されるビヒクル中に所望の連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドを含む、パイロジェンフリーの、非経口的に許容可能な水溶液の形態であってもよい。非経口注射のために特に好適なビヒクルは滅菌蒸留水であり、連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドが、その中で、適切に保存された無菌の等張液として処方される。さらに別の調製物は、所望の分子と、後にデポー注射を介して送達されてもよい生成物の制御放出または徐放性放出を提供する、注射用ミクロスフェア、生体侵食性粒子、ポリマー化合物(ポリ乳酸またはポリグリコール酸等)、ビーズ、またはリポソームとの処方物を含むことができる。また、ヒアルロン酸が使用されてもよく、循環における徐放期間を促進する効果を有することができる。所望の分子を導入するための他の好適な手段は、移植可能な薬物送達デバイスを含む。
【0122】
一実施形態において、医薬組成物は、吸入のために処方されてもよい。例えば、連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドは、吸入用の乾燥粉末として処方されてもよい。そのような吸入溶液はまた、エアロゾル送達のための噴霧剤とともに処方されてもよい。さらに別の実施形態において、溶液は噴霧されてもよい。肺投与は、化学修飾されたタンパク質の肺送達について記載する国際公開第94/20069号にさらに記載される。
【0123】
また、特定の処方物が経口投与されてもよいことも企図される。本発明の一実施形態において、この様式で投与される連結分子、FGF21変異体ポリペプチド(切断されているか、キャッピングされているか、もしくはC末端突然変異されていてもよい)、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドは、錠剤およびカプセル剤等の固体剤形の配合において習慣的に用いられる担体を用いてまたは用いずに処方することができる。例えば、カプセル剤は、バイオアベイラビリティが最大化され、かつ前全身的な分解が最小化される時に、消化管のポイントで処方物の活性部分を放出するように設計されてもよい。連結分子、FGF21変異体ポリペプチド(切断されているか、キャッピングされているか、もしくはC末端突然変異されていてもよい)、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドの吸収を促進するために、追加の物質が含まれてもよい。また、希釈剤、香味剤、低融点ワックス、植物油、滑沢剤、懸濁化剤、錠剤崩壊剤、および結合剤が用いられてもよい。
【0124】
別の医薬組成物は、錠剤の製造に好適な非毒性賦形剤との混合物中に、治療的に有効な量の連結分子、FGF21変異体ポリペプチド(切断されているか、キャッピングされているか、もしくはC末端突然変異されていてもよい)、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドを含むことができる。滅菌水または別の適切なビヒクルに錠剤を溶解することにより、溶液を単位剤形で調製することができる。好適な賦形剤は、これらに限定されないが、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムもしくは重炭酸塩、ラクトースもしくはリン酸カルシウム等の不活性希釈剤、またはデンプン、ゼラチン、もしくはアカシア等の結合剤、またはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸もしくは滑石等の潤滑剤を含む。
【0125】
当業者には、徐放性送達処方物または制御送達処方物中に、連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドを含む処方物を含む、連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドのさらなる医薬組成物が明白である。リポソーム担体、生体侵食性微粒子または多孔質ビーズ、およびデポー注射等の、多様な他の徐放性送達手段または制御送達手段を処方するための技術もまた、当業者に既知である(例えば、医薬組成物の送達のための多孔質ポリマー微粒子の制御放出について記載する国際公開第93/15722号を参照のこと)。
【0126】
徐放性調製物の追加の例は、例えば、フィルムまたはマイクロカプセル等の成形された物体の形態の、半透性のポリマーマトリクスを含む。徐放性マトリクスは、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号および欧州特許第0058481号)、L−グルタミン酸およびγエチル−L−グルタミン酸塩のコポリマー(Sidman et al.,1983,BioPolymers 22:547〜56)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)(Langer et al.,1981,J.Biomed.Mater.Res.15:167〜277およびLanger,1982,Chem.Tech.12:98〜105)、エチレン酢酸ビニル(Langer et al.,supra)、またはポリ−D(−)−3−ヒドロキシ酪酸(欧州特許第0133988号)を含むことができる。また徐放性組成物は、当該技術分野で既知であるいくつかの方法のうちのいずれかによって調製されてもよいリポソームを含むことができる。例えば、Epstein et al.,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.82:3688〜92;および欧州特許第0036676号、第0088046号、および第0143949号を参照のこと。
【0127】
生体内投与のために用いられる連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドの医薬組成物は、典型的には滅菌されなければならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過によって達成することができる。組成物が凍結乾燥される場合は、この方法を用いる滅菌は、凍結乾燥および再構成の前または後のいずれに行なわれてもよい。非経口投与のための組成物は、凍結乾燥形態でまたは溶液中に保管されてもよい。また、非経口組成物は、一般に、無菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射用の針で穿刺することができるストッパーを有する静脈注射溶液用のバッグまたはバイアル中に入れられる。
【0128】
いったん医薬組成物が処方されると、溶液、懸濁液、ゲル、エマルジョン、固体として滅菌バイアル中に保管されてもよいか、または脱水粉末もしくは凍結乾燥粉末として保管されてもよい。そのような処方物は、すぐに使用できる形態か、または投与の前に再構成する必要のある形態(例えば、凍結乾燥)のどちらで保管されてもよい。
【0129】
特定の実施形態において、本発明は、単回用量の投与単位を生成するためのキットを提供する。キットは、それぞれが、乾燥したタンパク質を有する第1の容器と、水性の処方物を有する第2の容器との両方を含むことができる。また、単一チャンバおよびマルチチャンバのプレフィルドシリンジ(例えば、液体シリンジおよび凍結乾燥製剤用シリンジ(lyosyringe))を含むキットも本発明の範囲内に含まれる。
【0130】
治療に用いられる連結分子、FGF21変異体ポリペプチド(切断されているか、キャッピングされているか、もしくはC末端突然変異されていてもよい)、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドの医薬組成物の治療的有効量は、例えば、治療の内容および目的に依存する。したがって、当業者は、治療に適切な投与量レベルは、送達される分子、連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドが用いられる適応症、投与経路、ならびに患者のサイズ(体重、体表面積、または器官のサイズ)および状態(年齢および総体的な健康)に一部依存して変化することを理解するであろう。したがって、臨床医は、最適な治療効果を得るように、投与量を滴定し、投与経路を変更することができる。典型的な投与量は、上記の因子に依存して、約0.1g/kg〜最大約100mg/kg以上の範囲であってもよい。他の実施形態において、投与量は0.01mg/kg〜最大約10mg/kgの範囲であってもよく、例えば0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1.0mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、または10mg/kgであってもよい。
【0131】
投薬頻度は、使用される処方物における連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドの薬物動態パラメータに依存する。典型的には、臨床医は、所望の効果を達成する投与量に達するまで組成物を投与する。したがって、組成物は、単回用量として、または2回以上の用量(同じ量の所望の分子を含んでも含まなくてもよい)として経時的に、または移植デバイスもしくはカテーテルを介した連続注入として投与されてもよい。適切な投与量のさらなる微調整は、当業者によって日常的に行われ、当業者によって日常的に行われる作業の範囲内である。適切な投与量は、適切な用量応答データの使用を通じて確認することができる。
【0132】
医薬組成物の投与経路は、例えば、経口;静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、門脈内または病巣内の経路による注射;徐放性システムによる;または移植デバイスによる、既知の方法に従う。所望の場合、組成物は、ボーラス注射によって投与されてもよいか、または注入によって連続的に投与されてもよいか、または移植デバイスによって投与されてもよい。
【0133】
代替としてまたは追加として、組成物は、所望の分子が吸収されているかまたは封入されている膜、スポンジ、または他の適切な材料の移植によって、局所的に投与されてもよい。移植デバイスが使用される場合は、デバイスは任意の好適な組織または器官に移植されてもよく、所望の分子の送達は、拡散、持続放出ボーラス、または連続的投与を介してもよい。
【0134】
10.FGF21ポリペプチド変異体の治療的使用
本発明の連結分子、FGF21変異体ポリペプチド(切断されているか、キャッピングされているか、またはC末端突然変異されていてもよい)、および化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドは、これに限定されないが、代謝異常を含む多数の疾患、障害、または状態を治療、診断、寛解、または予防するために使用されてもよい。一実施形態において、治療される代謝異常は糖尿病である。別の実施形態において、代謝異常は肥満である。他の実施形態は、脂質異常症等の代謝疾患または代謝異常、高血圧、非アルコール性脂肪性肝炎等(NASH)等の脂肪肝、粥状動脈硬化等の循環器疾患、および加齢を含む。
【0135】
応用において、糖尿病または肥満等の疾患または障害は、本明細書に記載されるような連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドを、それを必要とする患者に治療的に有効な用量で投与することによって治療することができる。投与は、静脈注射、腹腔内注射、筋肉内注射、または錠剤もしくは液体の形態で経口的に等、本明細書に記載されるように行われてもよい。ほとんどの状況において、所望の投与量は、本明細書に記載されるように臨床医によって決定されてもよく、連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドの治療的に有効な用量を意味することができる。当業者には、連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドの治療的に有効な用量は、とりわけ、投与スケジュール、投与される抗原の単位用量、核酸分子またはポリペプチドが他の治療剤と併用投与されるかどうか、受ける側の免疫状態および健康に依存することは明らかである。「治療的に有効な用量」という用語は、本明細書で使用されるとき、研究者、医師、もしくは他の臨床医に求められる、組織系、動物、もしくはヒトにおける生物学的または医学的な応答(治療しようとする疾患または障害の症状の緩和を含む)を導く、連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドの量を意味する。
【0136】
11.抗体
本発明の連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、および化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドには特異的に結合するが、野生型FGF21ポリペプチドには特異的に結合しない抗体および抗体断片が企図され、本発明の範囲内に含まれる。抗体は、単一特異的なポリクローナルを含むポリクローナル;モノクローナル(MAbs);組換え;キメラ;相補性決定領域(CDR)グラフト化等のヒト化;ヒト;単鎖;および/または二重特異性、ならびにそれらの断片、変異体、あるいは化学修飾された分子であってもよい。抗体断片は、FGF21変異体ポリペプチドのエピトープに特異的に結合する抗体のそれらの部分を含む。そのような断片の例は、全長抗体の酵素的切断によって作製されるFabおよびF(ab’)断片を含む。他の結合断片は、抗体可変領域をコードする核酸配列を含有する組換えプラスミドの発現等の、組換えDNA技術によって作製されるものを含む。
【0137】
連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドを標的とするポリクローナル抗体は、一般に、FGF21変異体ポリペプチドおよびアジュバントの複数回の皮下注射または腹腔内注射によって、動物(例えば、ウサギまたはマウス)において作製される。キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、またはダイズトリプシン阻害因子等の、免疫しようとする種において免疫原性である担体タンパク質に、FGF21変異体ポリペプチドを共役することが有用であり得る。また、免疫応答を強化するためにミョウバン等の凝集剤が用いられる。免疫後に動物から採血し、抗連結分子抗体、抗FGF21変異体ポリペプチド抗体、または抗化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチド抗体の力価について血清をアッセイする。
【0138】
連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドを標的とするモノクローナル抗体は、培養中の連続細胞株による抗体分子の生成をもたらす任意の方法を用いて生成されてもよい。モノクローナル抗体を調製するための好適な方法の例は、ハイブリドーマ法(Kohler et al.,1975,Nature 256:495〜97)およびヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor,1984,J.Immunol.133:3001;Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications 51〜63(Marcel Dekker,Inc.,1987)を含む。また、連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドと反応性であるモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマ細胞株も本明細書によって提供される。
【0139】
本発明の抗FGF21変異体抗体は、FGF21変異体ポリペプチドの検出および定量化のための競合結合アッセイ、直接的および間接的サンドイッチアッセイ、ならびに免疫沈降アッセイ(例えば、参照により、その全体が本明細書に組み込まれるSola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques 147〜158(CRC Press,Inc.,1987を参照のこと)等の任意の既知のアッセイ法に用いることができる。抗体は、用いられるアッセイ法に適した親和性でFGF21変異体ポリペプチドに結合する。
【0140】
特定の実施形態において、診断用途のために、抗連結分子抗体、抗FGF21変異体ポリペプチド抗体、または抗化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチド抗体は、検出可能部分で標識されてもよい。検出可能部分は、直接的または間接的のいずれかで検出可能な信号を生成することが可能な任意の部分であってもよい。例えば、検出可能部分は、3H、14C、32P、35S、125I、99Tc、111In、または67Ga等の放射性同位元素;フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、もしくはルシフェリン等の蛍光または化学発光化合物;あるいはアルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、もしくは西洋ワサビペルオキシダーゼ等の酵素であってもよい(Bayer et al.,1990,Meth.Enz.184:138〜63)。
【0141】
競合結合アッセイは、限られた量の抗連結分子抗体、抗FGF21変異体ポリペプチド抗体、または抗化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチド抗体と結合しようとして、試験サンプル分析物(例えば、連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチド)と競合する標識標準(例えば、FGF21変異体ポリペプチド、またはその免疫学的に活性な部分)の能力に依存する(分析物による)。試験サンプル中の連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドの量は、抗体と結合する標準の量と反比例する。結合する標準の量を決定し易くするために、抗体を典型的には競合の前および後で不溶化して、抗体に結合した標準および分析物が、未結合のままの標準および分析物から都合よく分離できるようにする。
【0142】
サンドイッチアッセイは、典型的には、検出および/または定量化しようとするタンパク質の異なる免疫原性部分またはエピトープにそれぞれ結合可能な、2つの抗体の使用を含む。サンドイッチアッセイにおいて、試験サンプル分析物は、典型的には、固体支持体上に固定された第1の抗体に結合され、その後、第2の抗体が分析物に結合し、ひいては不溶性の3成分複合体を形成する。例えば、米国特許第4,376,110号を参照のこと。第2の抗体は、それ自体が検出可能部分によって標識されてもよいか(直接サンドイッチアッセイ)、または検出可能部分で標識された抗免疫グロブリン抗体を用いて測定されてもよい(間接サンドイッチアッセイ)。例えば、ある種のサンドイッチアッセイは酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)であり、この場合、検出可能部分は酵素である。
【0143】
また、本発明の抗連結分子抗体、抗FGF21変異体ポリペプチド抗体、または抗化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチド抗体は、生体内撮像にも有用である。検出可能部分で標識された抗体は、動物に、好ましくは、血流内に投与されてもよく、宿主内の標識抗体の存在および場所がアッセイされる。体は、核磁気共鳴、放射線医学、または当該技術分野で既知の他の検出手段を用いるかどうかにかかわらず、動物内で検出可能な任意の部分で標識することができる。
【0144】
また、本発明は、連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドの抗体と、および生物学的サンプル中の連結分子、FGF21変異体ポリペプチド、または化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドのレベルを検出するために有用な他の試薬とを含むキットに関する。そのような試薬は、検出可能な標識、ブロッキング血清、陽性対照サンプルおよび陰性対照サンプル、ならびに検出試薬を含むことができる。
【実施例】
【0145】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態およびそれの種々の使用を例示するものである。これらは説明の目的のためのみに記述されているのであって、決して本発明の範囲を限定すると見なされるべきではない。
【0146】
実施例1
FGF21ポリペプチド発現コンストラクトの調製
成熟FGF21配列の5’および3’末端に対応するヌクレオチド配列を有するプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅により成熟FGF21ポリペプチドをコードする核酸配列を得た。表4に、成熟FGF21配列を増幅するために使用したプライマーを列挙する。
【0147】
【表4】

【0148】
FGF21発現コンストラクトを調製するために使用したプライマーは、配列の方向性クローニングのために制限エンドヌクレアーゼ部位を好適な発現ベクター(例えば、pET30(Novagen/EMD Biosciences社製、San Diego,CA)またはpAMG33(Amgen社製、Thousand Oaks,CA))に組み込んだ。発現ベクターpAMG33は、低コピー数のR−100複製開始点、修飾lacプロモーター、およびカナマイシン抵抗性遺伝子を含む。発現ベクターpET30は、pBR322由来の複製開始点、誘導性T7プロモーター、およびカナマイシン抵抗性遺伝子を含む。pAMG33からの発現がより高いことが分かった一方で、pET30は、より信頼性の高いクローニングベクターであることが分かった。したがって、本出願に記載されるコンストラクトの大半は、最初にpET30内で作製し、次いで有効性のスクリーニングを行った。次いで、選択された配列をpAMG33に移してさらに増幅した。
【0149】
FGF21配列は、40.65μLのdH2O、5μLのPfuUltra II反応緩衝液(10×)、1.25μLのdNTP混合物(40mM〜4×10mM)、0.1μLのテンプレート(100ng/mL)、1μLのプライマー1(10μM)、1μLのプライマー2(10μM)、および1μLのPfuUltra II Fusion HS DNAポリメラーゼ(Stratagene社製、La Jolla,CA)を含有する反応混合物において増幅した。増幅反応物を95℃で2分加熱し;その後、所望の産物のキロベース当たり95℃で20秒、60℃で20秒(1サイクルごとに1℃低くして)、および72℃で15秒で10サイクル;その後、所望の産物のキロベース当たり94℃で20秒、55℃で20秒、および72℃で15秒で20サイクル;その後72℃で3分間加熱することによって行った。制限エンドヌクレアーゼNdeIおよびEcoRIで増幅産物を消化し、好適なベクターにライゲートし、次いで、コンピテント細胞に形質転換した。
【0150】
用いた細菌発現系の結果として、発現された成熟FGF21ポリペプチドは、N末端メチオニン残基か、またはfMetもしくはグルコシル化Met等の変異体メチオニン残基を含んでいた。
【0151】
実施例2
細菌からの野生型FGF21ポリペプチドの精製
以下の実施例では、細菌発現系において野生型FGF21ポリペプチドを発現させた。以下に記載される発現の後、野生型FGF21ポリペプチドを、別途記載のない限り、本実施例に記載するように精製した。
【0152】
細菌性封入体から野生型FGF21ポリペプチドを精製するために、2回洗浄した封入体(DWIB)を、グアニジン塩酸塩を含有する可溶化緩衝液およびTris緩衝液中のDTT(pH8.5)中で可溶化し、次いで室温で1時間混合し、可溶化混合物を尿素、アルギニン、システイン、およびシスタミン塩酸塩を含有するリフォールディング緩衝液(pH9.5)に添加し、次いで5℃で24時間混合した(例えば、Clarke,1998,Curr.Opin.Biotechnol.9:157〜63;Mannall et al.,2007,Biotechnol.Bioeng.97:1523〜34;Rudolph et al.,1997,“Folding proteins,”in Protein Function:A Practical Approach(Creighton,ed.,New York,IRL Press),pp57〜99;およびIshibashi et al.,2005,Protein Expr.Purif.42:1〜6を参照のこと)。
【0153】
可溶化およびリフォールディングの後、0.45マイクロメートルのフィルタを通して混合物を濾過した。次いで、膜間差圧(TMP)20psiで分子量カットオフ値10kDのPall社製Omegaカセットを用いて、リフォールディングしたプールをおよそ10倍濃縮し、3カラム体積20mMのTris(pH8.0)を用いてTMP20psiで膜分離した。
【0154】
次いで、精製されたサンプルを、Q−Sepharose HP樹脂を用いて陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィに供した。20mMのTris中の0〜250mMのNaClの線形塩勾配をpH8.0、5℃で実施した。SDS−PAGEによりピーク分画を分析してプールした。
【0155】
次いで、AEX溶出プールを、フェニルセファロースHP樹脂を用いて疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)に供した。0.7M〜0Mの硫酸アンモニウムの減少する線形勾配を用いて、pH8.0および周囲温度でタンパク質を溶出した。SDS−PAGEによりピーク分画を分析(Laemmli,1970,Nature 227:680〜85)してプールした。
【0156】
分子量カットオフ値10kDのPall Omega0.2m2カセットを用いて、TMP20psiで7mg/mLまでHICプールを濃縮した。5体積の10mMのKPO4、5%ソルビトール(pH8.0)をTMP20psiで用いて濃縮物を膜分離し、回収した濃縮物を5mg/mLに希釈した。最後に、Pall社製Mini−Kleenpac 0.2μM Posidyne膜を通して溶液を濾過した。
【0157】
実施例3
FGF21変異体の同定
野生型FGF21は比較的短い半減期を有するため、ある場合においては、治療剤として野生型FGF21を使用することが望ましくない可能性がある。また、ポリペプチドのPEG化等、半減期を延長する従来方法は、FGF21配列の好適なPEG化部位の数および場所によって限定される。野生型FGF21ポリペプチド配列には、7つの自然発生PEG化部位、すなわち、αアミノ基、4つのリジン残基、および2つシステイン残基が存在する。PEG分子は、FGF21がその天然構造を得る能力に有害な影響を与える可能性があるか、または、FGF21とその受容体もしくはβ−klothoとの間の相互作用に有害な影響を与える可能性があるため、これらの部位はPEG化には理想的ではない。また、αアミノ基を除いて、これらの反応性残基は、単一の標的の場所での部位特異的なPEG化を許容しない。したがって、化学修飾に好適な残基に突然変異させることができる野生型FGF21ポリペプチド内の残基を同定するために該当する集中的な試験を開始した。試験の検討事項には、FGF21配列中の残基の場所、およびタンパク質表面上での残基の位置が含まれた。
【0158】
本明細書に記載される化学修飾に有用な残基への突然変異に好適である、野生型FGF21ポリペプチド中の個々の残基を同定する試みで、2つの異なるストラテジーを用いた。
【0159】
実施例3.A
相同性モデルを使用して同定された突然変異候補
第1のストラテジーでは、系統的な合理的タンパク質工学アプローチにおいて、相同性モデルを用いて、FGF21の活性を妨害することなくPEG化に耐える可能性のある表面に露出した側鎖を有する確率の高い残基を同定した。そのような残基を同定するために使用することのできるFGF21のX線構造またはNMR構造が発表されていないため、Protain Databank(PDB)から取得したFGF19(1PWA)の高解像度(1.3Å)X線結晶構造を用いて、MOE(Molecular Operating Environment;Chemical Computing Group;Montreal,Quebec,Canada)モデリングソフトウェアを使用して、FGF21の3D相同性モデルを作製した。PDBに寄託されたタンパク質の中で、アミノ酸配列相同性の点において、FGF19がFGF21のタンパク質に最も密接に関連していたため、FGF19をテンプレートとして選択した。
【0160】
次いで、FGF21相同性モデルを、FGF受容体に結合したFGF−21を示すように拡張した。このモデルは、FGF21とその受容体との相互作用を妨害する可能性がある残基を避ける一方で、FGF21分子の表面上に露出する可能性があり、活性化されたポリマー(例えば、PEG)部分との反応に使用可能である残基を同定するために使用した。種間における残基の配列保存、および天然側鎖の生化学的特性についても考慮がなされた。このスクリーンによって良好な候補であると同定された残基を、この部位の活性の中断を最小限に留めたPEG化の成功が予想される確率にしたがってランク付けした。グループAの残基は最良の候補を示し、グループDの残基は、実用可能ではあるがあまり好ましくない候補を示す。グループAは、N121、H125、H112、R77、H87、E37、およびK69を含む。グループBは、R126、G113、D79、E91、D38、D46、およびG120を含む。グループCは、S71、D89、L86、T70、G39、T40、R36、P49、S48、S123、K122、A81、A111、E110、およびR96を含む。最後に、グループDは、Q18、R19、A26、Q28、E34、A44、A45、E50、L52、Q54、L55、K59、G61、L66、V68、R72、P78、G80、Y83、S85、F88、P90、A92、S94、L98、E101、D102、Q108、L114、H117、P119、P124、D127、P128、A129、P130、R131、およびP140を含む。
【0161】
また、分子のアミノ末端セグメントおよびカルボキシ末端セグメント内の潜在的なPEG化部位は、分子のこれらの部分に関する利用可能な3次元構造データが存在しないので、側鎖の配列アラインメントおよび生化学的特性に基づいて同定した。突然変異に最も好適であると考えられた残基を同定し、続いて、その残基が一連の選択基準にどれだけ適合するかにしたがってグループ化した。FGF21ポリペプチド配列のN末端に関して、残基1〜13を評価したところ、D5が突然変異の最良の候補であることが分かり、また残基H1、P2、I3、P4、およびS6も実行可能であることが分かった。FGF21ポリペプチド配列のC末端に関して、残基141〜181を評価したところ、残基Y179およびR175が突然変異の最良の候補であることが分かり、残基P143、P171、S172、Q173、G174、S176、P177、S178、A180、およびS181が他の候補グループを形成し、また残基P144、A145、P147、E148、P149、P150、I152、A154、Q156、およびG170が、突然変異の第3候補グループを形成した。
【0162】
実施例3.B
望ましくない自然発生ポリマー結合部位を除去することによって作製される
FGF21変異体
第2のストラテジーは、PEGをFGF21に結合させるためにアミノ特異的共役化学を用いた。潜在的に空胞を形成する共役の部位選択的な二重PEG化は、それらが空胞を形成する可能性を有意に減少させることが可能である(例えば、米国特許第6,420,339号を参照のこと)。したがって、本発明の一態様において、FGF21の部位選択的な二重PEG化は、2つの一次アミノ基のみがPEG化のために残るようにタンパク質を突然変異させることによって達成される。
【0163】
野生型FGF21配列(配列番号4)において太字(R残基およびK残基)と下線(K残基)で強調されている通り、FGF21タンパク質は4個のリジン残基と10個のアルギニン残基を含有する。2つの自然発生システイン残基が、太字およびイタリック体で強調されている。
【0164】
【化1】

【0165】
最初に4つの自然発生リジンをアルギニンに突然変異させて、N末端のαアミノ基として1つの一次アミノ基のみを含有する親分子を作製した。これを生体外活性についてテストしたところ、十分に活性であることが分かった。次に、選択されたアルギニンを段階的にリジンと置き換えて、FGF21分子上の種々の位置でPEG化のための第2の一次アミノ基を含有する類似体を最大10個まで作製した。その受容体に結合したFGF21の相同性モデルを検討することで(実施例3Aに記載するように)、推定上の受容体界面に対するそれらの近接性の関数として、提案される共役部位のランク付けをすることができた。埋れていると思われる部位は対象としなかった。
【0166】
種々の位置について次のようにランク付けおよび特徴付けを行った:(a)溶媒に曝露された、受容体界面に遠位である部位:R36、R77、K122&R126;(b)溶媒に曝露された、受容体界面に近位である部位:K56、K59、K69、R72&R175;、および(c)埋れた部位:R17、R19、R131&R135。
【0167】
それぞれが単一のαアミノ基およびΕアミノ基を含有する最終コンストラクトを精製し、実施例9(共役)および10(生体外活性アッセイ)に記載されるように、PEGとの共役の前および後で活性についてテストした。
【0168】
実施例4
単一の突然変異を含むFGF21変異体の同定
実施例3Aおよび3.Bで上述した合理的タンパク質工学アプローチによって作製した、単一の突然変異を含むFGF21変異体の概要を表3に提供する。これらの単一の変異体は、非自然発生ポリマー結合部位、とりわけシステイン残基またはリジン残基を提供し、また組み込む。これらの残基の側鎖は、PEG分子等のポリマーの結合による化学修飾に特に好適である。所望の場合は、導入された非自然発生ポリマー結合部位に加えて、ポリマーが任意でタンパク質のN末端に結合できることが確認された。
【0169】
導入された残基は、野生型レベルのFGF21生物学的活性を維持するように設計されたため、これらのFGF21変異体ポリペプチドは、FGF21の生物学的活性を維持しつつ、1つ以上の非自然発生ポリマー結合部位を提供することが予測される。化学修飾(例えば、PEG化)後、これらの変異体は、生体内で有意な野生型レベルの生物学的活性を維持する一方で、野生型FGF21よりも長い生体内半減期を有すると予測される。
【0170】
突然変異誘発を標的とする位置の数を表5に示すが、それは、181個のアミノ酸残基から構成される成熟FGF21タンパク質の残基の位置に対応する。下5に列挙したFGF21変異体ポリペプチドをコードする核酸配列は、後に記載する技術を用いて調製した。
【0171】
【表5】

【0172】
実施例5
2つの突然変異を含むFGF21変異体の同定
2つの非自然発生ポリマー結合部位を提供するであろう変異体の組み合わせを同定するために、相同性モデルと単一のシステイン変異体から得られたデータとのさらなる分析を行った。化学修飾後、これらのFGF21変異体は、所望の場所でポリペプチドに結合する2つのポリマー(例えば、PEG分子)を有する。本発明のすべてのFGF21変異体ポリペプチドと同様に、ポリマー自体の性質に依存して、ポリマーはポリペプチドのN末端にも結合することができる。二重にPEG化されたFGF21変異体を表すイラストを図1に図式化して示す。
【0173】
合理的タンパク質工学アプローチによって作製した、2つの突然変異を含むFGF21変異体の概要を表6に提供する。これら2つの変異体は、非自然発生ポリマー結合部位、とりわけシステインを組み込む。これらの残基の側鎖は、PEG分子等のポリマーの結合による化学修飾に特に好適である。所望の場合は、導入された非自然発生ポリマー結合部位に加えて、ポリマーが任意でタンパク質のN末端に結合できることが確認された。
【0174】
導入された残基は、野生型レベルのFGF21生物学的活性を維持するように設計されたため、これらのFGF21変異体は、FGF21の生物学的活性を保存しつつ、1つ以上の非自然発生ポリマー結合部位を提供することが予測される。化学修飾(例えば、PEG化)後、これらの変異体は、生体内で相等の強度を維持する一方で、野生型FGF21よりも長い半減期を有すると予測される。
【0175】
表6に示した位置の数は、181個のアミノ酸残基から構成される成熟FGF21タンパク質の残基の位置に対応する。下の表6に列挙したFGF21変異体ポリペプチドをコードする核酸配列は、後に記載する技術を用いて調製した。
【0176】
【表6】

【0177】
実施例6
3つの突然変異を含むFGF21変異体の同定
上記の通り、非自然発生ポリマー結合部位を野生型FGF21ポリペプチド配列に組み込むことができる。このことは、ポリペプチドの所望の場所における部位選択的な化学修飾の機会を提供する。また、野生型FGF21配列の残基P171はタンパク質分解を受け易いことが事前に確認されている。したがって、上記修飾の組み合わせ、さらにP171位の突然変異を導入することにより、強化されたタンパク質分解に対する安定性と部位特異的ポリマー結合部位の両方を有するFGF21分子を作製することができる。
【0178】
2つの非自然発生ポリマー結合部位を提供するであろう変異体の組み合わせを同定するために、相同性モデルのさらなる分析を行った。化学修飾後、これらの変異体は、所望の場所でポリペプチドに結合する2つのポリマー(例えば、PEG分子)を有するであろう。本発明のすべてのFGF21変異体ポリペプチドと同様に、ポリマー自体の性質に依存して、ポリマーがポリペプチドのN末端に結合することができる。分析は、導入された2つのポリマー結合部位の他に、FGF21変異体ポリペプチドのタンパク質分解に対する安定性を強化し、選択されたポリマー結合部位および強化されたタンパク質分解に対する安定性を提供する一方で、同時に野生型FGF21の生体内での生物学的活性を維持または強化するように設計された、P171位での突然変異の評価を含んだ。
【0179】
並行試験において、前述したように部位選択的な混合化学を用いて(参照により組み込まれる米国特許第6,420,339号を参照のこと)、αアミノN末端および導入されたシステイン突然変異の両方で選択的に部位をPEG化する目的で、実施例4で示した表5の単一突然変異の選択サブセットを、安定性を強化するP171突然変異と組み合わせた。これら2つの変異体は、R77C/P171GおよびH125C/P171Gと表され、実施例4の表5に開示される突然変異を用いることが企図されるかもしれない任意の他の組み合わせを例示するものである。
【0180】
P171部位の突然変異に加えて、合理的タンパク質工学アプローチによって作製された2つの突然変異を含むFGF21変異体の概要を表7に提供する。これらの変異体は、2つの非自然発生ポリマー結合部位、とりわけシステインを取りこむ。これらの残基の側鎖は、PEG分子等のポリマーの結合による化学修飾に特に好適である。所望の場合は、導入された非自然発生ポリマー結合部位に加えて、ポリマーが任意でタンパク質のN末端に結合できることが確認された。記載される3つのFGF21変異体は、上記の導入されたポリマー結合部位だけでなく、タンパク質分解に対する安定性をもたらす171位の突然変異も含む。FGF21の3つの変異体の化学修飾後、この突然変異の組み合わせは、2つのポリマー(例えば、PEG分子)をポリペプチド配列と会合させることによってFGF21の半減期を増大させ、また、タンパク質分解による切断部位を排除することによって半減期を増大させる機能を果たす。
【0181】
導入された残基は、生体内で野生型レベルのFGF21の生物学的活性を維持するように設計されたため、これらのFGF21変異体は、FGF21の生物学的活性を維持しつつ、固有の非自然発生ポリマー結合部位を提供することが予測される。化学修飾(例えば、PEG化)後、これらの変異体は、生体内で有意な野生型レベルの生物学的活性を維持する一方で、野生型FGF21よりも長い生体内半減期を有すると予測される。
【0182】
表7に示した位置の数は、181個のアミノ酸残基から構成される成熟FGF21タンパク質の残基の位置に対応する。表7に列挙したFGF21変異体ポリペプチドをコードする核酸配列は、後に記載する技術を用いて調製した。
【0183】
【表7】

【0184】
実施例7
FGF21変異体ポリペプチドの調製および発現
表3(単一の突然変異)、表4(2つの突然変異)、および表5(3つの突然変異、すなわち、2つの突然変異+P171G)に列挙したFGF21変異体(この実施例では集合的に「FGF21変異体」)をコードするコンストラクトを、以下に記載するように野生型FGF21発現ベクターのPCR増幅によって調製した(野生型FGF21発現ベクターの構築は実施例1に記載)。これらの実験の目的は、1つ以上の非自然発生ポリマー結合部位を含み、またある場合にはタンパク質分解に耐性であるFGF21変異体を作製することであった。これらのFGF21変異体の化学修飾された形態は、より長い半減期を示し、またある場合にはタンパク質分解に耐性でもあることが予測される。
【0185】
FGF21変異体コンストラクトは、突然変異させようとするコドン(または複数のコドン)の上流および下流の領域に相同である配列を有するプライマーを用いて調製した。そのような増幅反応に使用したプライマーはまた、およそ15ヌクレオチドの重複配列を提供して増幅産物の再環状化を可能にした、すなわち、ベクター全体が所望の変異体を有することになった。
【0186】
表8に示すプライマーを用いて、天然グリシン残基(すなわち、G170EのFGF21変異体ポリペプチド)の代わりに170位にグルタミン酸残基を有するFGF21変異体をコードする代表的なFGF21変異体コンストラクトを調製した。
【0187】
【表8】

【0188】
表6に示すプライマーは、下に示すようなグリシン残基のグルタミン酸残基との置換を可能にし、上の配列はセンスプライマー(配列番号29)であり、第2および第3の配列(配列番号30および31)はFGF21発現コンストラクトの一部であり、第4の配列はアンチセンスプライマー(配列番号32)である。
【0189】
【化2】

【0190】
FGF21変異体コンストラクトは、実質的に実施例1に記載したPCR条件を用いて調製した。制限エンドヌクレアーゼDpnIで増幅産物を消化し、次いで、コンピテント細胞に形質転換した。得られたクローンの配列決定を行って、ポリメラーゼによるエラーのないことを確認した。
【0191】
コンピテントなBL21(DE3)またはBL21 Star(Invitrogen社製、Carlsbad,CA)細胞を、特定の変異体をコードするコンストラクトで形質転換することにより、FGF21変異体を発現させた。40μg/mLのカナマイシンを補充したTB培地で、通気量を制限しながら形質転換細胞を一晩成長させ、翌朝通気させて、短時間の回復期間後、0.4mMのIPTGで誘導した。誘導から18〜20時間後に、遠心分離によってFGF21変異体ポリペプチドを採取した。
【0192】
用いた細菌発現系の結果として、N末端のメチオニン残基を含むFGF21変異体ポリペプチドを発現させた。
【0193】
実施例8
細菌からのFGF21およびFGF21変異体ポリペプチドの精製
以下の実施例では、細菌発現系において野生型FGF21ポリペプチドを発現させた。実施例7に記載される発現後、FGF21変異体ポリペプチドを、別途記載のない限り、本実施例に記載するように精製した。
【0194】
細菌性封入体からのFGF21変異体ポリペプチドを精製するために、2回洗浄した封入体(DWIB)を、グアニジン塩酸塩を含有する可溶化緩衝液およびTris緩衝液中のDTT(pH8.5)中で可溶化し、次いで室温で1時間混合し、可溶化混合物を尿素、アルギニン、システイン、およびシスタミン塩酸塩を含有するリフォールディング緩衝液(pH9.5)に添加し、次いで5℃で24時間混合した(例えば、Clarke,1998,Curr. Opin. Biotechnol.9:157〜63;Mannall et al.,2007,Biotechnol.Bioeng.97:1523〜34;Rudolph et al.,1997,“Folding proteins,”in Protein Function:A Practical Approach(Creighton,ed.,New York,IRL Press),pp57〜99;およびIshibashi et al.,2005,Protein Expr.Purif.42:1〜6を参照のこと)。
【0195】
可溶化およびリフォールディングの後、0.45マイクロメートルのフィルタを通して混合物を濾過した。次いで、膜間差圧(TMP)20psiで分子量カットオフ値5kDのPall社製Omegaカセットを用いて、リフォールディングしたプールをおよそ10倍濃縮し、3カラム体積20mMのTris(pH8.0)を用いてTMP20psiで膜分離した。
【0196】
次いで、精製サンプルを、Q−Sepharose HP樹脂を用いて陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィに供した。20mMのTris中の0〜250mMのNaClの線形塩勾配をpH8.0、5℃で実施した。SDS−PAGEによりピーク分画を分析してプールした。
【0197】
次いで、AEX溶出プールを、フェニルセファロースHP樹脂を用いて疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)に供した。20mMのTRISを含む0.6M〜0Mの硫酸アンモニウムの減少する線形勾配を用いて、pH8.0および周囲温度でタンパク質を溶出した。SDS−PAGEによりピーク分画を分析(Laemmli,1970,Nature 227:680〜85)してプールした。
【0198】
分子量カットオフ値5kDのPall Omega0.2m2カセットを用いて、TMP20psiで7mg/mLまでHICプールを濃縮した。5カラム体積の20mMのTRIS(pH8.0)をTMP20psiで用いて濃縮物を膜分離し、回収した濃縮物を約5mg/mLに希釈した。最後に、0.22μm酢酸セルロースフィルタを通して溶液を濾過した。
【0199】
実施例9
FGF21変異体の化学修飾
表3〜5に示す選択された位置で置換されたシステインを有するFGF21の変異体を実施例7に記載するように生成し、次いで、20kDaメトキシ−PEG−マレイミドを用いてその分子をPEG化反応に供した。別途記載のない限り、本明細書に開示されるすべてのPEG化されたFGF21野生型および変異体ポリペプチドは、1つ以上の20kDaのメトキシPEGマレイミドポリマーを含む。
【0200】
次いで、部分精製したFGF21分子を5モル当量のTCEPを用いて30分25℃で還元した。次いで、GE Healthcare社製Sephadex G25Mカラムを用いて、還元したFGF21を10mMイミダゾール(pH7.5)に緩衝液交換した。次いで、緩衝液交換したFGF21を、5モル当量の20kDaメトキシ−PEG−マレイミドで30分25℃で反応させた。次いで、得られた反応混合物をイオン交換クロマトグラフィに供して、マルチPEG化分子および非PEG化分子からモノPEG化種を単離した。FGF21変異体ポリペプチドの大部分がメトキシ−PEG−マレイミドと十分に反応し、主にモノPEG化産物を高収率で生成した(図2および3)。
【0201】
連結分子の生成には、部分精製されたFGF21分子を5モル当量のTCEPを用いて30分25℃で還元した。次いで、GE Healthcare社製Sephadex G25Mカラムを用いて、還元したFGF21を10mMイミダゾール(pH7.5)に緩衝液交換した。次いで、緩衝液交換したFGF21を、0.45モル当量の20kDaのPEGビス−マレイミドで60分4°Cで反応させた。次いで、得られた反応混合物をイオン交換クロマトグラフィに供して、他の望ましくない反応産物から連結分子を単離した。追加のイオン交換による精製工程が頻繁に必要とされ、それは、第1のイオン交換プールを約4体積の水で希釈し、再度イオン交換カラムに適用することにより達成した。
【0202】
代替として、前述したようにメトキシ−PEG−プロピオンアルデヒドを使用した還元的アルキル化によって、N末端へのアミン特異的結合を達成した(米国特許第5,824,784号を参照のこと)。簡単に言うと、約2mg/mlの変異体FGF21を、酢酸緩衝液中の5倍モル過剰の20kDのmPEG−プロピオンアルデヒド(pH5.5)、および10mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムと4℃で一晩反応させた。本明細書に記載されるFGF21の野生型分子および変異体分子のN末端PEG化のいずれもが、このストラテジーを用いて達成することができる。
【0203】
N末端および変異体リジンの両方でアミン特異的二重PEG化が必要とされる場合は、メトキシ−NHS(N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル)を用いた。簡単に言うと、約2mg/mlの変異体FGF21を、5倍モル過剰(PEG:アミノ基)のビシン緩衝液中の20kDのmPEG−NHS(pH7.5)と、4℃で約2時間反応させた。
【0204】
FGF21変異体をN末端および変異体Cys位置の両方で二重PEG化するために混合化学アプローチを適用する場合は、前述したようにメトキシ−PEG−プロピオンアルデヒドおよびメトキシ−PEG−マレイミドの両方を連続的に用いた(米国特許第6,420,339号を参照のこと)。簡単に言うと、約2mg/mlの変異体FGF21を、リン酸緩衝液中の1.5倍モル過剰の20kDのmPEG−マレイミド(pH6.5)と4℃で約2時間反応させ、次いで、pHが約pH5になるように調節し、5倍過剰の20kDのmPEG−プロピオンアルデヒドを10mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムとともに添加した。最終反応を4℃で一晩継続させた。
【0205】
すべての異なる反応混合物の精製は、前述したように、Tris緩衝液(pH8)中の陰イオン交換クロマトグラフィを用いた。
【0206】
実施例10
FGF21変異体ポリペプチドおよび
化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドの生体外活性
次いで、FGF21変異体ポリペプチドの非PEG化形態およびN末端PEG化FGF21と比較して活性を評価するために、PEG化FGF21変異体ポリペプチドを生体外アッセイに供した。
【0207】
これらの実験の1つの目的は、ELK−ルシフェラーゼ生体外アッセイにおいてFGF21の活性を保存するFGF21変異体ポリペプチドおよび化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドを同定することであった。ELK−ルシフェラーゼアッセイは、293T細胞がβ−klothoおよびルシフェラーゼ受容体コンストラクトを過剰発現する組換えヒト293T腎細胞系を用いて行った。β−klothoは、FGF21がそのFGF受容体の活性化のために必要とする共受容体である。このアッセイに使用されるFGF受容体は、293T腎細胞で発現される内因性レベルのFGF受容体である。ルシフェラーゼ受容体コンストラクトは、GAL4−ELK1をコードする配列と、Gal4結合部位のタンデムコピーを5つ含有するプロモーター(5×UAS−Luc)によって駆動されるルシフェラーゼ受容体とを含有する。ルシフェラーゼの活性は、リン酸化Erk/ELK1のレベルによって調節され、FGF21の活性を間接的に監視および定量化するために用いられる。
【0208】
ELK−ルシフェラーゼアッセイは、異なる濃度の野生型FGF21またはFGF21変異体ポリペプチドの存在下で293T細胞を6時間培養し、次いで、ルシフェラーゼの活性について細胞可溶化物をアッセイすることにより行った。図4〜6および表3〜5は、1つ、2つ、または3つの突然変異を有するポリペプチドを含む、いくつかの代表的なFGF21変異体ポリペプチドについて得られた生体外の結果をまとめたものである。
【0209】
実施例10.A
1つの突然変異を含むPEG化FGF21変異体ポリペプチドのEC50値
下の表9は、特定の既知の場所に1つの非自然発生ポリマー結合部位を導入する2つの突然変異を含む種々のFGF21変異体ポリペプチドのEC50値をまとめたものである。
【0210】
種々のFGF21変異体ポリペプチドを作製し、その活性を本明細書に記載される生体外ELK−ルシフェラーゼアッセイにおいて判定した。表9は、得られたデータをまとめたものである。

【0211】
【表9】

表9は、PEG化が、本発明の種々のFGF21変異体ポリペプチドのうちのいくつかの生体外活性に与える影響をまとめたものである。
【0212】
図4、5、および6は、単一の点突然変異を含むいくつかのPEG化FGF21変異体について、その結果およびEC50値を図式化して示す。図4および5は、データを表9に示したFGF21変異体のうちのいくつかに関するデータを含む。より具体的には、図4の上のプロットは、PEG化E37C、R77C、E91C変異体およびN末端PEG化野生型FGF21、ならびに非PEG化FGF21に対して行ったERK−ルシフェラーゼアッセイの結果を示す。図4の下のプロットには、PEG化G113C、N121C、D46C変異体およびN末端PEG化野生型FGF21、ならびに非PEG化野生型FGF21についてのデータが示されている。
【0213】
図5を参照すると、上のプロットには、H125C、G120C、R126C変異体およびN末端PEG化野生型FGF21、ならびに非PEG化野生型FGF21についてのデータが示されている。下のプロットには、D79C、D38C変異体およびN末端PEG化野生型FGF21、ならびに非PEG化野生型FGF21についてのデータが示されている。
【0214】
続いて図6の上のプロットを見ると、PEG化K69CおよびD79C変異体、ならびにN末端PEG化野生型FGF21、そして非PEG化野生型FGF21についての図式化データが示されている。図6の下のプロットには、PEG化R175CおよびY179C変異体、ならびにN末端PEG化野生型FGF21、そして非PEG化野生型FGF21についてのデータが示されている。意外なことに、これらの分子の多くは、非PEG化分子の活性に近い生体外活性を有する。
【0215】
実施例10.B
選択されたArg/Lys FGF21変異体のEC50値
実施例3に記載したように、突然変異誘発により自然発生ポリマー結合部位(例えば、PEG化部位)が除去された一連のFGF21変異体ポリペプチドを作製した。これらのFGF21変異体において、最初に反応性Lys基をアルギニンに突然変異させ、N末端のαアミノ基のみをPEG化に使用可能とした。次に、天然または変異のいずれかである選択アルギニン残基を1つずつリジンに変換し、そうすることで、FGF21表面上の規定の位置に第2のPEG化部位を導入した。このストラテジーの1つの目的は、ポリマー(例えば、PEG分子)が1つ以上の特定の既知の場所で共役されるであろうFGF21変異体ポリペプチドを作製することであった。
【0216】
種々のアルギニン/リジンFGF21変異体ポリペプチドを作製し、その活性を本明細書に記載される生体外ELK−ルシフェラーゼアッセイにおいて判定した。表10は、得られたデータをまとめたものである。
【0217】
【表10】

【0218】
実施例10.C
2つの突然変異を含む選択されたPEG化FGF21変異体ポリペプチドの
EC50値
2つの突然変異を含む多くのFGF21変異体ポリペプチドの活性も、本明細書に記載されるERK−ルシフェラーゼアッセイにおいて調べた。これらの変異体を、野生型FGF21配列に、2つの非自然発生ポリマー結合部位(システイン残基の形態)と、強化されたタンパク質分解に対する安定性を提供する突然変異(P171G)とを導入するように遺伝子操作した。
【0219】
種々のFGF21変異体ポリペプチドを作製し、その活性を本明細書に記載される生体外ELK−ルシフェラーゼアッセイにおいて判定した。それらの実験からのEC50値を下の表11に示す。
【0220】
【表11】

【0221】
並行して、実施例10Aに由来する単一のシステイン変異体を用いて二重PEG化FGF21変異体を調製したが、安定性を強化するP171G突然変異も実行した。これらの変異体は、前述したように混合PEG化化学を用いてN末端および遺伝子操作したシステインの両方で部位選択的にPEG化した(米国特許第6,420,339号を参照のこと)。混合PEG化化学は、N末端とシステイン共役部位の区別を可能にするため、異なるポリマーを異なる部位に部位選択的に結合させることも可能である。この場合、一連の共役を調製し、5kDa、10kDa、および20kDaのポリマーの組み合わせをN末端に結合させ、20kDaのポリマーを一貫してシステイン変異体に結合させた。これによりN末端PEG化がFGF21の生体外活性に与える影響を評価することができる。これらの共役は、すべて本明細書に記載する生体外ELK−ルシフェラーゼアッセイにおいてテストした。その結果を表12に示す。
【0222】
【表12】

【0223】
実施例10.D
3つの突然変異を含む選択された化学修飾FGF21変異体ポリペプチドのEC50値
3つの突然変異を含む多くのFGF21変異体ポリペプチドの活性も、本明細書に記載されるERK−ルシフェラーゼアッセイにおいて調べた。これらの変異体を、野生型FGF21配列に、2つの非自然発生ポリマー結合部位(システイン残基の形態)と、強化されたタンパク質分解に対する安定性を提供する突然変異(P171G)とを導入するように遺伝子操作した。
【0224】
種々のFGF21変異体ポリペプチドを作製し、その活性を本明細書に記載される生体外ELK−ルシフェラーゼアッセイにおいて判定した。表13は、得られたデータをまとめたものである。
【0225】
【表13】

【0226】
意外なことに、このデータは、これらの二重PEG化FGF21変異体ポリペプチドの大半が、N末端モノPEG化分子を超える活性を有することを示している。
【0227】
実施例11
選択されたFGF21の連結分子のEC50値
本発明の連結分子は、リンカー分子によって一緒に連結された2つのFGF21ポリペプチド配列を含む。図7は、連結分子の例を図式化して示す。本明細書に記載するように、これらの連結分子は、望ましいレベルの生物学的活性を保持する一方で、より長い半減期を提供するであろうと予想された。
【0228】
種々の連結分子を作製し、その活性を本明細書に記載される生体外ELK−ルシフェラーゼアッセイにおいて判定した。作製した連結分子は、突然変異がリンカー結合部位を導入するFGF21変異体を含む。FGF21変異体のうちのいくつかは二重変異体であり、タンパク質分解に対する安定性を強化するためのP171G突然変異を含む。この生体外試験のための条件および手順は、実施例10に記載するものと同じであった。表14は、得られたデータをまとめたものである。
【0229】
【表14】

表14のデータから、連結分子は、非PEG化分子の活性と等しいかまたはそれを超える驚くほど高い生体外活性(参考までに、0.63であることが分かった)を保持することが見て取れる。
【0230】
実施例12
化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドの生体内活性
FGF21は、血糖値、インスリン、トリグリセリド、もしくはコレステロールレベルの低下、体重の減少、または耐糖能、エネルギー消費量、もしくはインスリン感受性の向上を含む、多くの生物学的活性を保持する。実施例10に記載した最初の生体外評価の後、PEG化FGF21変異体ポリペプチドを生体内でのFGF21の活性についてさらに分析した。PEG化FGF21ポリペプチドをインスリン耐性ob/obマウスに導入し、特定のPEG化FGF21ポリペプチドが血糖値を低下させる能力を測定した。生体内研究のための手順は以下の通りである。
【0231】
テストしようとするPEG化FGF21ポリペプチドを8週齢ob/obマウス(Jackson Laboratory)の腹腔内に注射し、単回投与後の種々の時点(例えば、投与後0、6、24、72、120、および168時間)で血液サンプルを採取した。OneTouch Glucometer(LifeScan,Inc.社製、Milpitas,CA)で血糖値レベルを測定し、血糖値のベースラインレベル(すなわち、0時間)と比較した血糖値の変化率として結果を表した。
【0232】
本明細書に記載されるようにFGF21変異体を作製し、典型的にはシステイン残基である導入されたポリマー結合部位の各々に1つずつ、2つの20kDaメトキシPEGマレイミド分子を付加することによって化学修飾した。突然変異は、2つのPEG分子に別個の既知の結合点を提供するように選択した。本明細書に記載される方法を用いてFGF21変異体のPEG化を達成した。
【0233】
実施例12.A
N末端PEG化野生型FGF21の生体内活性
ob/obマウスモデルにおいて、ポリペプチドのN末端PEG化により化学修飾した野生型FGF21を調べた。同じ実験で非PEG化野生型FGF21についても調べ、PBSを対照として用いた。単一の20kDaのメトキシPEGマレイミド分子を用いて野生型FGF21をN末端でPEG化した。図8は、この実験の結果を示す。
【0234】
天然の野生型FGF21およびN末端PEG化野生型FGF21の両方が、単回投与後に血糖値レベルを30〜40%低減させた。しかしながら、天然の野生型FGF21の投与後24時間で、血糖値レベルはベースラインに戻った。それに対して、N末端PEG化野生型FGF21は、血糖値を低下させる活性を少なくとも72時間維持した。この試験の結果は、野生型FGF21のPEG化が、天然分子の薬力学的効果を延長することを示唆するものである。
【0235】
図9を参照すると、20、30、または40kDaのPEG分子によりN末端でPEG化された野生型FGF21を用いて、ob/obマウスモデルにおいて用量応答試験を行った。図9は、20kDaのPEG分子と比較して、30および40kDaのPEG分子は、より高く、長い間グルコースを低下させる有効性を有することを示しており、PEGのサイズが生体内における薬力学的効果と確実に関連していることを暗示している。
【0236】
実施例12.A.1
N末端および導入されたポリマー結合部位の両方で共役された、
選択された化学修飾FGF21変異体ポリペプチドの生体内活性
N末端および第2の遺伝子操作部位の両方で部位選択的にPEG化されたFGF21のいくつかの化学修飾した変異体をマウスob/obモデルにおいて調べた。これらの二重PEG化FGF21コンストラクトはすべて、N末端と、実施例4に記載したような遺伝子操作したリジンまたは実施例6に記載したような遺伝子操作したシステインのいずれかを含む第2の部位とでPEG化した。
【0237】
異なるグループのPEG化FGF21変異体ポリペプチドを用いて同様の実験を行った。図10は、ビヒクル(PBS)、またはポリマー結合突然変異、すなわち、N末端でもPEG化されたFGF21 R77CおよびN末端でもPEG化されたFGF21 R126K(上のプロット)、ならびに導入されたポリマー結合部位でもPEG化されたN末端PEG化F77/P171G(下のプロット)を含む、FGF21変異体のPEG化形態を注射したマウスの血糖値レベルにおける変化率を示す2つのプロットを含む。20kDaのメトキシPEGマレイミド分子を用いた。この実験の結果は、二重にPEG化されたFGF21変異体が、少なくとも120時間の持続的なグルコース低下を示し、野生型FGF21タンパク質と比較して強化された薬動力学を示すことを再度確認するものであった。
【0238】
実施例12.B
2つまたは3つの突然変異を含む、
選択された化学修飾FGF21変異体ポリペプチドの生体内活性
マウスob/obモデルにおいて、多くの化学修飾されたFGF21変異体ポリペプチドについて調べた。これらの変異体は、導入されたシステイン残基の各々に1つずつ、また、単一の突然変異を含むFGF21変異体ポリペプチドの場合は、ポリペプチドのN末端に、2つの20kDaメトキシPEGマレイミド分子を付加することによって化学修飾した。突然変異は、1つ以上のPEG分子に別個の既知の結合点を提供するように選択した。いくつかのFGF21変異体も、タンパク質分解耐性を強化するためにP171G突然変異を含んだ。PEG化FGF21変異体ポリペプチドをマウスに注射し、9日間にわたる試験の間に間隔を空けてマウスから採血した。
【0239】
実施例12.B.1
グルコースレベルに及ぼす影響
さらに別のグループのPEG化FGF21変異体ポリペプチドを用いて実験を行った。図11は、ビヒクル(PBS)か、または突然変異(すなわち、E91/H125C、E91C/R175C、E37C/G120C、E37C/H125C、E37C/R175C)を含むFGF21変異体の二重PEG化形態を注射したマウスの血糖値レベルにおける変化率を示すプロットである(非PEG化Fc−G170E FGF21についても調べた)。20kDaのメトキシPEGマレイミド分子を用いた。この実験の結果は、二重にPEG化されたFGF21変異体が、野生型FGF21タンパク質と比較して強化された薬動力学を示すことを再度確認するものであった。
【0240】
さらに別のグループのPEG化FGF21変異体ポリペプチドを用いて同様の実験を行った。図12は、ビヒクル(PBS)か、または突然変異(すなわち、導入された重合部位でもPEG化されたN末端PEG化R77C、導入された重合部位でもPEG化されたN末端PEG化R126K、E91/G120C、G120C/H125C、およびE37C/R77C)を含むFGF21変異体の二重PEG化形態を注射したマウスの血糖値レベルにおける変化率を示すプロットである(非PEG化Fc−G170E FGF21についても調べた)。20kDaのメトキシPEGマレイミド分子を用いた。この実験の結果は、二重にPEG化されたFGF21変異体が、野生型FGF21タンパク質と比較して強化された薬動力学を示すことを確認するものであった。
【0241】
別の実験において、図13は、PEG化FGF21変異体が、9日間の試験の間にマウスの血糖値レベルに与える影響を示す。このデータは、天然分子の生体内強度と比較して、PEG化分子が強化された生体内強度を有することを示す。図13では、導入されたポリマー結合部位で二重にPEG化されたPEG化E37C/R77C、E91C/R175C、E37C/H125C、E37C/R77C/P171G、E91C/R175C/P171G、およびE37C/H125C/P171G FGF21変異体を用いて結果を得た。この試験では、2つの20kDaメトキシPEGマレイミド分子でFGF21変異体を修飾し、使用したビヒクルは10mMリン酸カリウム、5%ソルビトール(pH8)であった。
【0242】
図13に示すように、3つの二重変異体の二重PEG化分子E37C/R77C、E91C/R175C、E37C/H125Cが血糖値レベルを低下させ、その効果は単回投与後72時間維持された。興味深いことに、P171G突然変異を導入することにより生体内作用がさらに延長され、最大グルコース低下活性がさらに2日間維持され、合計作用期間は120時間であった。
【0243】
また、3つの突然変異を含むいくつかのFGF21ポリペプチドのグルコース低下能力を、いくつかの連結分子を用いて調べた。使用した3つの変異体は、E37C/R77C/P171GおよびE91C/H125C/P171Gであり、連結分子は、2つの突然変異(すなわち、E37C/P171GおよびR77C/P171G)を含む2つの同一のFGF21変異体ポリペプチドを含んでいた。FGF21の二重PEG化形態、および連結分子のリンカー分子には、20kDaのメトキシPEGマレイミド分子を用いた。この実験の結果を図14に示す。連結されたFGF21変異体と比較して、二重PEG化変異体はさらに強化された薬力学を有する。二重PEG化変異体のグルコース低下活性は、連結されたFGF21変異体の120時間と比較して、少なくとも168時間継続した。
【0244】
図15は、ビヒクル(10mM TRIS、150mM NaCl、pH8.5)または異なる用量の二重にPEG化されたE37C/R77C/P171G FGF21変異体ポリペプチドを9日間にわたって注射したob/obマウスの血統値における変化率を用量の関数として示すプロットである。この実験の結果は、二重にPEG化した3つの変異体E37C/R77C/P171Gが、用量依存的な様式でob/obマウスの血糖値レベルを低下させたことを示した。0.3mg/kgの用量レベルで、ほぼ最大グルコース低下活性に到達し、その効果は少なくとも5日間維持された。用量レベルを1mg/kgに増加した時には、さらに強化された生体内強度および作用期間が観察された。
【0245】
実施例12.B.2
体重に及ぼす影響
2型糖尿病は、体脂肪および体重の増加を伴うことが多い。したがって、治療分子は、体重を減少させる望ましい効果とともに、血糖値レベルを低下させる望ましい効果も有することが好ましい。したがって、本明細書に記載されるPEG化FGF21変異体の多くをマウスの体重に与える影響について評価した。
【0246】
種々のFGF21変異体ポリペプチドが体重に与える影響を調べるために、PEG化野生型およびFGF21変異体ポリペプチドを8週齢ob/obマウス(Jackson Laboratory)の腹腔内に注射し、単回投与後の種々の時点(例えば、投与後0、24、72、120、および168時間)に体重を監視した。
【0247】
図16は、PEG化FGF21変異体が試験期間中にマウスの体重に与える影響を示す。二重にPEG化されたE37C/R77C、E91C/R175C、E37C/H125C、E37C/R77C/P171G、E91C/R175C/P171G、およびE37C/H125C/P171GFGF21変異体ポリペプチドを用いて結果を得た。この試験では、20kDaのメトキシPEGマレイミド分子を用いてFGF21変異体を修飾した。これらのFGF21変異体のグルコースレベルにおける変化に関しても調べ、その結果を図13に示す。総合すると、このデータは、PEG化FGF21変異体を投与されたマウスは、ビヒクル対照と比較して体重増加が少なく、タンパク質分解耐性である突然変異P171Gを含むFGF21変異体ポリペプチドは、P171野生型ポリペプチドより効果的であることを示している。
【0248】
図17は、ビヒクル、または突然変異(すなわち、E37C/R77C/P171G、E91C/H125C/P171G、R77C/P171G)を含むFGF21変異体の二重PEG化形態、および、1つの例には2つのE37C/P171G FGF21変異体ポリペプチドを含み、別の例には2つのR77C/P171G FGF21変異体ポリペプチドを含む、連結分子を注射したマウスの体重における変化を示すプロットである。FGF21のPEG化形態には20kDaのメトキシPEGマレイミド分子を用い、連結分子には20kDaのPEGビス−マレイミドを用いた。これらのFGF21変異体のグルコースレベルにおける変化に関しても調べ、その結果を図14に示す。総合すると、このデータは、PEG化FGF21変異体を投与されたマウスは、ビヒクル対照と比較して体重増加が少ないことを示している。また、二重にPEG化したFGF21変異体ポリペプチドは、調べた連結分子よりも、より効果的に体重を減少させることが観察された。
【0249】
また、二重PEG化FGF21変異体ポリペプチドが体重に与える影響について、反復投与試験において検討した。図18は、ビヒクルまたは異なる用量の二重にPEG化されたE37C/R77C/P171Gを9日間にわたって注射したob/obマウスの体重における変化を用量の関数として示すプロットである。このFGF21変異体のグルコースレベルにおける変化に関しても調べ、その結果を図15に示す。総合すると、このデータは、0.3mg/kgの用量レベルが、単回投与後のob/obマウスの体重増加を減少させるのに十分であることを示している。
【0250】
実施例13
マウス腎臓空胞試験
治療タンパク質の半減期を延長するためにPEGおよび他のポリマーを用いる際に考慮するべき1つの点は、PEG化分子が腎臓に空胞を形成する可能性である。PEGのこの特性は十分に裏付けされており(例えば、Bendele,et al 1998,“Short Communication:Renal Tubular Vacuolation in Animals Treated with Polyethylene‐glycol‐conjugated Proteins,”Toxicological Sciences,42:152〜157およびConover et al.,1996,“Transitional Vacuole Formation Following a Bolus Infusion of PEG‐hemoglobin in the Rat,”Art.Cells,Blood Subs.,and Immob.Biotech.24:599〜611を参照のこと)、予測不可能なことがある。腎臓の空胞形成を誘発するPEG化分子は、典型的には、必ずではないが、分子を治療タンパク質としてあまり望ましくない状態にする。いくつかの状況において、腎臓の空胞形成はそれほど懸念されるものではなく、許容されてもよい。したがって、マウスにおいて長期の腎臓空胞試験を行った。
【0251】
本明細書に記載されるようにFGF21変異体ポリペプチドを作製した。1つの試験を以下のように設計して実行した。雌のC57BL/6マウス(3匹/グループ)に、複数のPEG化FGF21分子を10mg/kgの用量で7日間連続的に皮下注射によって投与し、ビヒクル対照(10mM KHPO4、150mM NaCl、pH8)および2つの陽性対照も同様の様式で投与した。第1日目、第3日目、および第6日目に、各用量投与の前と投与後1〜2時間に、すべての動物に対して詳細な臨床的観察を行い、他のすべての投与日には、投与後1〜2時間にケージの外から観察を行った。各用量投与の前および剖検時に体重を測定した。組織学的評価のために腎臓および肝臓をすべての動物から回収した。表15は、試験の結果をまとめたものである。
【0252】
【表15】

表15は、ビヒクル(10mM Tris、150mM NaCl、pH8.5)、FGF21のN末端PEG化形態、および突然変異H125C、R77C、K69C、G120C、E37C、R175、E91C、N121C、R126C、G113C、D79C、D46C、およびH112Cを含むFGF21変異体のPEG化形態を用いた、7日間にわたるマウス腎臓空胞試験の結果を示す。表中に示すように、1つまたは2つの20kDaメトキシPEGマレイミド分子を用いた。空胞指数の範囲は、対照と比較して空胞における変化が観察されなかった場合を0とし、重度の空胞形成を4とした。表15から明らかであるように、モノPEG化FGF21変異体のすべてが腎臓空胞の形成を誘発した。しかしながら、二重PEG化FGF21変異体は、1つも空胞形成を誘発しなかった。また、マウスの肝臓には空胞形成が観察されなかったことも分かった。
【0253】
1週間の試験後、8週間にわたる長期試験を開始した。この試験では、雌のC57BL/6マウス(5/グループ)に、種々のPEG化FGF21分子を5mg/kgまたは25mg/kgのいずれかの用量で8週間にわたり週に1回皮下注射によって投与し、ビヒクル対照(10mM Tris、150mM NaCl、pH8.5)も同様の様式で投与した。投与前には1日1回、投与日には投与後1〜2時間に、投与のない日には1日1回、すべての動物の臨床症状について観察した。第1日目に開始して、3日目の各投与後、および剖検時に、各用量投与の前に体重を測定した。組織学的評価のために腎臓、肝臓、および脾臓をすべての動物から回収した(瀕死期屠殺および最終安楽死)。
【0254】
図19A〜19Fは、ビヒクル(四角)および2つの用量の二重PEG化FGF21変異体、すなわち、5mg/kg(三角)および25mg/kg(白丸)を用いた8週間の腎臓空胞試験の間に観察された体重変化の結果を示す一連のプロットである。調べたFGF21変異体は、R77C、P171G(図19A);E37C、R77C、P171G(図19B);E37C、H125C、P171G(図19C);E91C、H125C、P171G(図19D);E37C、P171G(図19E)およびR77C、P171G(図19F)を含む。図19Aでは、混合化学アプローチを用いて、FGF21変異体のN末端PEG化、および導入されたポリマー結合部位である77位の非自然発生システインでのPEG化をもたらした。図19B〜19Dでは、単一の化学アプローチを用いて、導入されたポリマー結合部位である非自然発生システイン残基(図19Bの37位および77位、図19Cの37位および125位、図19Dの91位および125位のシステイン)でのPEG化をもたらした。最後に、図19Dおよび19Eにおいて、単一のビスマレイミドPEGを用いて、2つのFGF21変異体を非自然発生システイン残基で結合させた(図21Eの37位および図19Fの77位のシステイン)。
【0255】
図20は、6つの単一PEG化もしくは二重PEG化FGF21変異体の5mg/kgおよび25mg/kgの2つ用量について、8週間の腎臓空胞試験の間に観察された腎臓空胞の平均スコアを示す2つの棒グラフを含む。スコア0は、対照動物に見られた空胞より多くの空胞は観察されなかったことを意味し、一方、スコア4は、対照と比較して重度の空胞形成があったことを意味する。FGF21変異体は、図19A〜19Eに記載されるものと同じであった。したがって、一方のコンストラクトには混合化学アプローチを用いて、FGF21変異体のN末端PEG化、および導入されたポリマー結合部位である77位の非自然発生システインでのPEG化をもたらした。他方の3つのコンストラクトには単一化学アプローチを用いて、導入されたポリマー結合部位である非自然発生システイン残基(1つのコンストラクトの37位および77位、第2のコンストラクトの37位および125位、または第3のコンストラクトの91位および125位のシステイン)でのPEG化をもたらした。最後に、単一のビスマレイミドPEGを用いて2つのFGF21変異体を非自然発生システイン残基(37位または77位のシステイン)で結合させた。P171G突然変異を6つのコンストラクトの各々に導入した。
【0256】
本発明を種々の実施形態に関して説明してきたが、当業者には変形例および修正例が想定されることを理解されたい。したがって、付属の特許請求の範囲は、請求するように本発明の範囲内に含まれるそのような全ての均等な変形例を網羅することが意図される。また、本明細書で用いた項目の見出しは、構成のために使用されているのであって、記載される主題を制限すると見なされるべきではない。
【0257】
この開示に挙げたすべての参考文献は、参照により、本明細書に明示的に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)36位、72位、77位、126位および175位のうちの1つ以上のリジン残基、
(b)37位、38位、46位、91位、69位、77位、79位、87位、91位、112位、113位、120位、121位、125位、126位、175位、170位、および179位のうちの1つ以上のシステイン残基、
(c)56位、59位、69位、および122位のうちの1つ以上のアルギニン残基、
(d)170位のグリシン残基、
(e)171位のグリシン残基、
ならびに(a)〜(e)の組み合わせ、である、少なくとも1つのアミノ酸置換を有する配列番号4のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項2】
請求項1に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項3】
請求項2に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項4】
真核細胞である、請求項3に記載の宿主細胞。
【請求項5】
原核細胞である、請求項3に記載の宿主細胞。
【請求項6】
請求項2に記載のベクターによってコードされるポリペプチドを生成するプロセスであって、前記ポリペプチドを発現させるために好適な条件下で、請求項2に記載のベクターを含む宿主細胞を培養すること、および任意で前記ポリペプチドを単離することを含むプロセス。
【請求項7】
請求項6に記載のプロセスによって生成される、ポリペプチド。
【請求項8】
前記ポリペプチドのC末端に付加されたプロリン残基またはグリシン残基をさらに含む、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項9】
(a)36位、72位、77位、126位、および175位のうちの1つ以上のリジン残基、
(b)37位、38位、46位、91位、69位、77位、79位、87位、91位、112位、113位、120位、121位、125位、126位、175位、170位、および179位のうちの1つ以上のシステイン残基、
(c)56位、59位、69位、および122位のうちの1つ以上のアルギニン残基、
(d)170位のグリシン残基、
(e)171位のグリシン残基、
ならびに(a)〜(e)の組み合わせ、である、少なくとも1つのアミノ酸置換を有する配列番号4のアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項10】
前記ポリペプチドのC末端に付加されたプロリン残基またはグリシン残基をさらに含む、請求項9に記載のポリペプチド。
【請求項11】
前記ポリペプチドは、1つ以上のポリマーに共有結合している、請求項9に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項12】
前記ポリペプチドは、1つのポリマーに共有結合している、請求項11に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項13】
前記ポリマーは、水溶性ポリマーである、請求項12に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項14】
前記水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、ポリ−(N−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、またはポリビニルアルコールである、請求項13に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項15】
前記水溶性ポリマーは、PEGである、請求項14に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項16】
前記ポリマーは、分岐ポリマーである、請求項11に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項17】
前記ポリペプチドは、そのアミノ末端に共有結合したPEG部分を有する、請求項9に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項18】
前記ポリペプチドは、2つのポリマーに共有結合している、請求項9に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項19】
前記2つのポリマーである場合のうちの1つは、水溶性ポリマーである、請求項18に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項20】
前記水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、ポリ−(N−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、またはポリビニルアルコールである、請求項19に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項21】
前記水溶性ポリマーは、PEGである、請求項20に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項22】
前記ポリマーのうちの1つは分岐している、請求項18に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項23】
前記ポリマーの両方が分岐している、請求項18に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項24】
前記ポリペプチドは、そのアミノ末端に共有結合したPEG部分を有する、請求項9に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項25】
請求項9に記載の単離されたポリペプチドと、薬学的に許容される製剤用物質と、を含む、医薬組成物。
【請求項26】
前記薬学的に許容される製剤用物質は、担体、アジュバント、可溶化剤、安定剤、または抗酸化剤である、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
代謝異常を治療するための方法であって、それを必要とするヒト患者に請求項26に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項28】
前記代謝異常は、糖尿病である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記代謝異常は、肥満である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも1つのアミノ酸置換を有する配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、単離された核酸であって、
当該アミノ酸置換は、
(a)36位、72位、77位、126位、および175位のうちの1つ以上のリジン残基、
(b)37位、38位、46位、91位、69位、77位、79位、87位、91位、112位、113位、120位、121位、125位、126位、175位、170位、および179位のうちの1つ以上のシステイン残基
(c)56位、59位、69位、および122位のうちの1つ以上のアルギニン残基、
(d)170位のグリシン残基、
(e)171位のグリシン残基、
ならびに(a)〜(e)の組み合わせであり、
前記ポリペプチドを配列番号4と少なくとも85%相同にする付加、欠失、またはさらなる置換を含むが、但し、請求項1(a)〜(e)に記載の少なくとも1つのアミノ酸置換は、さらに修飾されない、単離された核酸。
【請求項31】
請求項30に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項32】
請求項31に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項33】
真核細胞である、請求項32に記載の宿主細胞。
【請求項34】
原核細胞である、請求項32に記載の宿主細胞。
【請求項35】
請求項30に記載のベクターによってコードされるポリペプチドを生成するプロセスであって、前記ポリペプチドを発現させるために好適な条件下で、請求項30に記載のベクターを含む宿主細胞を培養すること、および任意で前記ポリペプチドを単離することを含む、プロセス。
【請求項36】
請求項35に記載のプロセスによって生成される、ポリペプチド。
【請求項37】
前記ポリペプチドのC末端に付加されたプロリン残基またはグリシン残基をさらに含む、請求項36に記載のポリペプチド。
【請求項38】
(a) 36位、72位、77位、126位、および175位のうちの1つ以上のリジン残基、
(b) 37位、38位、46位、91位、69位、77位、79位、87位、91位、112位、113位、120位、121位、125位、126位、175位、170位、および179位のうちの1つ以上のシステイン残基、
(c)56位、59位、69位、および122位のうちの1つ以上のアルギニン残基、
(d)170位のグリシン残基、
(e)171位のグリシン残基、
ならびに(a)〜(e)の組み合わせ、である、少なくとも1つのアミノ酸置換を有する配列番号4のアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドであって、
前記ポリペプチドを配列番号4と少なくとも85%相同にする付加、欠失、またはさらなる置換を含むが、但し、請求項1(a)〜(e)に記載の少なくとも1つのアミノ酸置換は、さらに修飾されない、単離されたポリペプチド。
【請求項39】
前記ポリペプチドのC末端に付加されたプロリン残基またはグリシン残基をさらに含む、請求項38に記載のポリペプチド。
【請求項40】
前記ポリペプチドは、1つのポリマーに共有結合している、請求項38に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項41】
前記ポリマーは、水溶性ポリマーである、請求項40に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項42】
前記水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、ポリ−(N−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、またはポリビニルアルコールである、請求項41に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項43】
前記水溶性ポリマーは、PEGである、請求項42に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項44】
前記ポリマーは分岐している、請求項40に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項45】
前記ポリペプチドは、そのアミノ末端に共有結合した単一のPEG部分を有する、請求項38に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項46】
前記ポリペプチドは、2つのポリマーに共有結合している、請求項38に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項47】
前記2つのポリマーである場合のうちの1つは、水溶性ポリマーである、請求項46に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項48】
前記水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、ポリ−(N−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、またはポリビニルアルコールである、請求項47に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項49】
前記水溶性ポリマーは、PEGである、請求項48に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項50】
前記ポリマーの両方が水溶性ポリマーである、請求項46に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項51】
前記水溶性ポリマーは、独立して、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、ポリ−(N−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、またはポリビニルアルコール、およびそれらの組み合わせである、請求項50に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項52】
前記水溶性ポリマーの両方がPEGである、請求項46に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項53】
前記ポリマーのうちの1つは分岐している、請求項46に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項54】
前記ポリマーの両方が分岐している、請求項46に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項55】
請求項38に記載の単離されたポリペプチドと、薬学的に許容される製剤用物質と、を含む、医薬組成物。
【請求項56】
前記薬学的に許容される製剤用物質は、担体、アジュバント、可溶化剤、安定剤、または抗酸化剤である、請求項55に記載の医薬組成物。
【請求項57】
代謝異常を治療するための方法であって、それを必要とするヒト患者に請求項56に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項58】
前記代謝異常は、糖尿病である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記代謝異常は、肥満である、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
(a) 36位、72位、77位、126位、および175位のうちの1つ以上のリジン残基、
(b) 37位、38位、46位、91位、69位、77位、79位、87位、91位、112位、113位、120位、121位、125位、126位、175位、170位、および179位のうちの1つ以上のシステイン残基、
(c)56位、59位、69位、および122位のうちの1つ以上のアルギニン残基、
(d)170位のグリシン残基、
(e)171位のグリシン残基、
ならびに(a)〜(e)の組み合わせ、である、少なくとも1つのアミノ酸置換を任意で有する配列番号4のアミノ酸配列を含む、第1のポリペプチドを含む組成物であって、
(a) 36位、72位、77位、126位、および175位のうちの1つ以上のリジン残基、
(b) 37位、38位、46位、91位、69位、77位、79位、87位、91位、112位、113位、120位、121位、125位、126位、175位、170位、および179位のうちの1つ以上のシステイン残基、
(c)56位、59位、69位、および122位のうちの1つ以上のアルギニン残基、
(d)170位のグリシン残基、
(e)171位のグリシン残基、
ならびに(a)〜(e)の組み合わせ、である、少なくとも1つのアミノ酸置換を任意で有する配列番号4の前記アミノ酸配列を含むポリペプチドを含む第2のポリペプチドに、リンカーによって結合される、組成物。
【請求項61】
前記第1のポリペプチド、前記第2のポリペプチド、または両方のポリペプチドは、前記ポリペプチドのC末端に付加されたプロリン残基またはグリシン残基をさらに含む、請求項60に記載のポリペプチド。
【請求項62】
前記リンカーは、ペプチドである、請求項60に記載の組成物。
【請求項63】
前記リンカーは、水溶性ポリマーである、請求項60に記載の組成物。
【請求項64】
前記水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、ポリ−(N−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、またはポリビニルアルコールである、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
前記水溶性ポリマーは、PEGである、請求項64に記載の組成物。
【請求項66】
前記第1のポリペプチド、前記第2のポリペプチド、または両方のポリペプチドは、前記リンカーに加えて、1つのポリマーにさらに共有結合している、請求項60に記載の組成物。
【請求項67】
前記ポリマーは、水溶性ポリマーである、請求項66に記載の組成物。
【請求項68】
前記水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、ポリ−(N−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、またはポリビニルアルコールである、請求項67に記載の組成物。
【請求項69】
前記水溶性ポリマーは、PEGである、請求項68に記載の組成物。
【請求項70】
前記ポリマーは分岐している、請求項63に記載の組成物。
【請求項71】
前記組成物は、そのアミノ末端に共有結合した単一のPEG部分を有する、請求項60に記載の組成物。
【請求項72】
前記組成物は、2つのポリマーに共有結合している、請求項60に記載の組成物。
【請求項73】
前記2つのポリマーである場合のうちの1つは、水溶性ポリマーである、請求項72に記載の組成物。
【請求項74】
前記水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、ポリ−(N−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、またはポリビニルアルコールである、請求項73に記載の組成物。
【請求項75】
前記水溶性ポリマーは、PEGである、請求項74に記載の組成物。
【請求項76】
前記ポリマーの両方が水溶性ポリマーである、請求項72に記載の組成物。
【請求項77】
前記水溶性ポリマーは、独立して、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、ポリ−(N−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、またはポリビニルアルコールおよびそれらの組み合わせである、請求項76に記載の組成物。
【請求項78】
前記水溶性ポリマーの両方がPEGである、請求項77に記載の組成物。
【請求項79】
前記ポリマーのうちの1つは分岐している、請求項72に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項80】
前記ポリマーの両方が分岐している、請求項72に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項81】
請求項60に記載の組成物と、薬学的に許容される製剤用物質と、を含む、医薬組成物。
【請求項82】
前記薬学的に許容される製剤用物質は、担体、アジュバント、可溶化剤、安定剤、または抗酸化剤である、請求項81に記載の医薬組成物。
【請求項83】
代謝異常を治療するための方法であって、それを必要とするヒト患者に請求項81に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項84】
前記代謝異常は、糖尿病である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記代謝異常は、肥満である、請求項83に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図19D】
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【図19E】
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【図19F】
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【図20】
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【公表番号】特表2012−504965(P2012−504965A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531178(P2011−531178)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/060045
【国際公開番号】WO2010/042747
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(500049716)アムジエン・インコーポレーテツド (242)
【Fターム(参考)】