説明

FPアゴニストとして有用な、芳香族のあるC16〜C20が置換されたテトラヒドロプロスタグランジン類

【課題】新規なPGF類似体であり、これらの化合物は、骨障害や緑内障などの種々の疾患や状態の治療に有用である。したがって、これらの化合物を含む医薬組成物、これらの化合物またはこれらの化合物を含有する組成物を用いた骨障害および緑内障の治療方法を提供する。
【解決手段】化合物の一例を下記に示す。


上記化学式等の光学異性体、ジアステレオマー、およびエナンチオマー、ならびにそれらの薬剤学的に許容され得る塩、生物加水分解可能なそれらのアミド、エステル、およびイミドも含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本対象発明は、ある新規な天然のプロスタグランジンの類似体に関する。具体的には、本対象発明は、新規なプロスタグランジンF類似体に関する。さらに本対象発明は、上記新規なプロスタグランジンF類似体を使用する方法に関する。好ましい使用には、骨障害および緑内障を治療する方法が含まれる。
【背景技術】
【0002】
天然のプロスタグランジン類(PGA、PGB、PGE、PGF、およびPGI)はC−20不飽和脂肪酸である。ヒトにおける天然プロスタグランジンFであるPGFは、脂環式環上のC9位とC11位のヒドロキシル基と、C5位とC6位との間のシス−二重結合と、C13位とC14位との間のトランス−二重結合とにより特徴づけられる。したがって、PGFは以下の化学式を有する。
【0003】
【化1】

【0004】
天然のプロスタグランジンFの類似体は、当該技術分野において既に開示されている。例えば、1977年5月17日に発行されたBindraおよびJohnsonによる特許文献1;1976年7月1日に公開されたBeck,Lerch,Seeger,およびTeufelによる特許文献2;1978年12月5日にに発行されたHayashi,Kori,およびMiyakeによる特許文献3;1977年3月8日に発行されたHess,Johnson,Bindra,およびSchaafによる特許文献4;1973年12月4日に発行されたBergstromおよびSjovallによる特許文献5;P.W.CollinsおよびS.W.Djuricによる非特許文献1;G.L.BundyおよびF.H.Lincolnによる非特許文献2;W.Bartman,G.Beck,U.Lerch,H.Teufel,およびB.Scholkensによる非特許文献3;C.liljebris,G.Selen,B.Resul,J.Sternschantz,およびU.Hacksellによる非特許文献4を参照のこと。
【0005】
天然のプロスタグランジン類は、広範な薬理学的性質を有していることが知られている。例えば、プロスタグランジン類は、平滑筋を弛緩して血管拡張や気管支拡張を引き起こしたり、胃酸分泌を阻害したり、血小板凝集を阻害したり、眼圧を低下させたり、分娩を誘発したりすることが示されている。天然のプロスタグランジン類は、特定のプロスタグランジン受容体に対するそれらの活性により特徴づけられるが、該プロスタグランジン類は一般に任意の1つのプロスタグランジン受容体に特異というわけではない。したがって、天然のプロスタグランジン類は、全身投与したときに、炎症などの副作用の他、表面刺激(surface irritation)を引き起こすことが知られている。体内で天然プロスタグランジン類は速く代謝された後にそれらが放出されることにより、プロスタグランジン類のいくつかの効果を局所域に制限する。これにより、プロスタグランジン類が体全体にあるプロスタグランジン受容体を刺激したり天然のプロスタグランジン類の全身投与で見られる作用効果を引き起こしたりすることが、効果的に防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,024,179号
【特許文献2】ドイツ特許第DT−002,460,990号
【特許文献3】米国特許第4,128,720号
【特許文献4】米国特許第4,011,262号
【特許文献5】米国特許第3,776,938号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「治療上有効なプロスタグランジン類似体およびプロスタグランジン類似体」”Synthesis of Therapeutically Useful Prostaglandin and Prostacyclin Analogs”,Chem.Rev.93巻(1993),1533−1564頁
【非特許文献2】「17−フェニル−18,19,20−トリノルプロスタグランジン類:I,PG1シリーズ」”Synthesis of 17−Phenyl−18,19,20−Trinorprostaglandins:I.The PG1 Series”,Prostaglandins,9巻,1号(1975),1−4頁
【非特許文献3】「黄体融解プロスタグランジン類:合成および生物学的活性」”Luteolytic Prostaglandins:Synthesis and Biological Activity”,Prostaglandins,17巻,2号(1979),301−311頁
【非特許文献4】「17−フェニル−18,19,20−トリノルプロスタグランジンF2αイソプロピルエステルの誘導体:潜在的な緑内障薬剤」”Derivatives of 17−Phenyl−18,19,20−trinorprostaglandin F2α Isopropyl Ester:Potential Antiglaucoma Agents”,Journal of Medicinal Chemistry,38巻,2号(1995),289−304頁
【非特許文献5】Advanced Organic Chemistry
【非特許文献6】Org.React.35巻(1988)513頁
【非特許文献7】Org.React.35巻(1988)513頁;Org.React.35巻(1988)513頁
【非特許文献8】J.Org.Chem.40巻(1975)574頁
【非特許文献9】J.C.S. Chem. Comm.(1975)658頁
【非特許文献10】tetrahedron Lett.(1975)3183頁
【非特許文献11】tetrahedron Lett.23巻(1982)3463頁
【非特許文献12】tetrahedron Lett.(1982)3467頁
【非特許文献13】Prostaglandins24巻(1982)801頁
【非特許文献14】tetrahedron Lett.23巻(1982)1023頁
【非特許文献15】J.Org.Chem.,49巻(1984)3904頁
【非特許文献16】J.Am.Chem.Soc.,111巻(1989)4392頁
【発明の概要】
【0008】
本発明は新規なPGF類似体を提供する。具体的には、本発明は以下の化学式の構造を有する化合物に関する:
【0009】
【化2】

【0010】
上式で、R1、R2、R3、R4、X、およびZは、明細書中に定義するものである。
【0011】
本発明には、上記化学式の光学異性体、ジアステレオマー、およびエナンチオマー、ならびにそれらの薬剤学的に許容され得る塩、生物加水分解可能なそれらのアミド、エステル、およびイミドも含まれる。
【0012】
本発明の化合物は、骨障害や緑内障などの種々の疾患や状態の治療に有用である。したがって、本発明は、これらの化合物を含む医薬組成物も提供する。さらに本発明は、これらの化合物またはこれらの化合物を含有する組成物を用いた骨障害および緑内障の治療方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(用語および定義)
「アシル」は、アミドもしくはカルバメートを形成するために窒素原子をアシル化するのに適した基、またはエステル基を形成するために酸素原子をアシル化するのに適した基である。好ましいアシル基には、ベンゾイル、アセチル、tert−ブチルアセチル、パラ−フェニルベンゾイル、およびトリフルオロアセチルが含まれる。より好ましいアシル基には、アセチルとベンゾイルが含まれる。最も好ましいアシル基はアセチルである。
【0014】
「アルキル」は、1〜18個の炭素原子、好ましくは1〜12個の炭素原子、より好ましくは1〜6個の炭素原子、さらにより好ましくは1〜4個の炭素原子を有する飽和または不飽和の炭化水素鎖である。アルキル鎖は直鎖であっても分枝鎖であってもよい。好ましい分枝アルキルは1つまたは2つの分枝を有し、1つの分枝を有していることが好ましい。好ましいアルキルは飽和である。不飽和アルキルは、1つ以上の二重結合および/または1つ以上の三重結合を有する。不飽和アルキルは、二重結合を1つもしくは2つまたは三重結合を1つ有していることが好ましく、二重結合を1つ有していることがより好ましい。アルキル鎖は、非置換であってもよいし、1〜4個の置換基で置換されていてもよい。好ましいアルキルは、非置換である。好ましい置換アルキルは、一置換、二置換、または三置換である。好ましいアルキル置換基には、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アリール(例えば、フェニル、トリル、アルキルオキシフェニル、アルキルオキシカルボニルフェニル、ハロフェニル)、複素環基(heterocyclyl)、および複素アリールが含まれる。
【0015】
「芳香族環」は、芳香族炭化水素環系である。芳香族環は、単環系または縮合二環系である。単環式芳香族環は、環内に、約5〜約10個の炭素原子を含み、好ましくは5〜7個の炭素原子を含み、最も好ましくは5〜6個の炭素原子を含む。二環式芳香族環は、環内に、8〜12個の炭素原子を含み、好ましくは9または10の炭素原子を含む。芳香族環は、非置換であってもよいし、環上に1〜4個の置換基で置換されていてもよい。好ましい芳香族環置換基には、ハロ、シアノ、アルキル、複素アルキル、ハロアルキル、フェニル、フェノキシ、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。より好ましい置換基には、ハロとハロアルキルが含まれる。好ましい芳香族環にはナフチルとフェニルが含まれる。最も好ましい芳香族環はフェニルである。
【0016】
「炭素環式脂肪族環」は、飽和または不飽和の炭化水素環である。炭素環式脂肪族環は芳香族ではない。炭素環式脂肪族環は、単環系、または縮合二環系、スピロ二環系、もしくは架橋二環系である。単環式の炭素環式脂肪族環は、環内に、約4〜約10個の炭素原子を含み、好ましくは4〜7個の炭素原子を含み、最も好ましくは5〜6個の炭素原子を含む。二環式の炭素環式脂肪族環は、環内に、8〜12個の炭素原子を含み、好ましくは9〜10個の炭素原子を含む。炭素環式脂肪族環は、非置換であってもよいし、環上に1〜4個の置換基で置換されていてもよい。好ましい炭素環式脂肪族環の置換基には、ハロ、シアノ、アルキル、複素アルキル、ハロアルキル、フェニル、フェノキシ、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。より好ましい置換基には、ハロとハロアルキルが含まれる。好ましい炭素環式脂肪族環には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが含まれる。より好ましい炭素環式脂肪族環には、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが含まれる。最も好ましい炭素環式脂肪族環はシクロヘプチルである。
【0017】
「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードである。好ましいハロは、フルオロ、クロロ、およびブロモである。より好ましいハロは、クロロとフルオロであり、特にフルオロが好ましい。
【0018】
「ハロアルキル」は、1つ以上のハロ置換基で置換された、直鎖、分枝、または環式の炭化水素である。好ましいハロアルキルは、C1〜C12であり、より好ましくはC1〜C6であり、さらにより好ましくはC1〜C3である。好ましいハロ置換基は、フルオロとクロロである。最も好ましいハロアルキルは、トリフルオロメチルである。
【0019】
「複素アルキル」は、炭素と、少なくとも1個のヘテロ原子とを含む、飽和または不飽和の鎖であって、2個のヘテロ原子は隣あっていないものである。複素アルキル鎖は、鎖内に、1〜18個の構成原子(炭素およびへテロ原子)を含み、好ましくは1〜12個の構成原子を含み、より好ましくは1〜6個の構成原子を含み、さらにより好ましくは1〜4個の構成原子を含む。複素アルキル鎖は、直鎖であっても分枝鎖であってもよい。分枝複素アルキルは1つまたは2つの分枝を有していることが好ましく、1つの分枝を有していることが好ましい。好ましい複素アルキルは飽和である。不飽和複素アルキルは、1つ以上の二重結合および/または1つ以上の三重結合を有する。不飽和複素アルキルは、二重結合を1つもしくは2つまたは三重結合を1つ有していることが好ましく、二重結合を1つ有していることがより好ましい。複素アルキル鎖は、非置換であってもよいし、1〜4個の置換基で置換されていてもよい。好ましい複素アルキルは、非置換である。好ましい複素アルキル置換基には、ハロ、ヒドロキシ、アリール(例えば、フェニル、トリル、アルキルオキシフェニル、アルキルオキシカルボニルフェニル、ハロフェニル)、複素環基、および複素アリールが含まれる。例えば、次の置換基:アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ)、アリールオキシ(例えば、フェノキシ、クロロフェノキシ、トリルオキシ、メトキシフェノキシ、ベンジルオキシ、アルキルオキシカルボニルフェノキシ、アシルオキシフェノキシ),アシルオキシ(例えば、プロピオニルオキシ、ベンゾイルオキシ、アセトキシ)、カルバモイルオキシ、カルボキシ、メルカプト、アルキルチオ、アシルチオ、アリールチオ(例えば、フェニルチオ、クロロフェニルチオ、アルキルフェニルチオ、アルコキシフェニルチオ、ベンジルチオ、アルキルオキシカルボニルフェニルチオ)、アミノ(例えば、アミノ、モノ−およびジ−C1〜C3アルカニルアミノ(alkanylアミノ)、メチルフェニルアミノ、メチルベンジルアミノ、C1〜C3アルカニルアミド、カルバマミド(carbamamido)、ウレイド、グアニジノ)で置換されたアルキルは、複素アルキルである。
【0020】
「ヘテロ原子」は、窒素原子、硫黄原子、または酸素原子である。2以上のヘテロ原子を含有する基は、異なるヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0021】
「複素環式脂肪族環」は、環内に炭素と1〜約4のヘテロ原子とを含む、飽和または不飽和の環であって、環中では2つのヘテロ原子は隣あっておらず、かつ炭素に結合したヘテロ原子を有する環中の該炭素はさらに該炭素に結合したヒドロキシル基、アミノ基、またはチオール基を有しないものである。複素環式脂肪族環は芳香族ではない。複素環式脂肪族環は、単環系、または縮合二環系もしくは架橋二環系である。単環式の複素環式脂肪族環は、環内に、約4〜約10個の構成原子(炭素およびへテロ原子)を含み、好ましくは4〜7個の構成原子を含み、最も好ましくは5〜6個の構成原子を含む。二環式の複素環式脂肪族環は、環内に、8〜12個の構成原子を含み、好ましくは9個または10個の構成原子を含む。複素環式脂肪族環は、非置換であってもよいし、環上に1〜4個の置換基で置換されていてもよい。好ましい複素環式脂肪族環の置換基には、ハロ、シアノ、アルキル、複素アルキル、ハロアルキル、フェニル、フェノキシ、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。より好ましい置換基には、ハロとハロアルキルが含まれる。好ましい複素環式脂肪族環には、ピペラジル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、およびピペリジルが含まれる。
【0022】
「複素芳香族環」は、環内に炭素と1〜約4個のヘテロ原子とを含む、芳香族環系である。複素芳香族環は、単環系、または縮合二環系である。単環式の複素芳香族環は、環内に、約5〜約10個の構成原子(炭素およびへテロ原子)を含み、好ましくは5〜7個の構成原子を含み、最も好ましくは5〜6個の構成原子を含む。二環式の複素芳香族環は、環内に、8〜12個の構成原子を含み、好ましくは9個または10個の構成原子を含む。複素芳香族環は、非置換であってもよいし、環上に1〜4個の置換基で置換されていてもよい。好ましい複素芳香族環の置換基には、ハロ、シアノ、アルキル、複素アルキル、ハロアルキル、フェニル、フェノキシ、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。より好ましい置換基には、ハロ、ハロアルキル、およびフェニルが含まれる。好ましい複素芳香族環には、チエニル、チアゾロ、プリニル、ピリミジル、ピリジル、およびフラニルが含まれる。より好ましい複素芳香族環には、チエニル、フラニル、およびピリジルが含まれる。最も好ましい複素芳香族環は、チエニルである。
【0023】
「ヒドロキシアルキル」はHO−アルキルを意味する。
【0024】
「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子からなるアルキル鎖基である。
【0025】
「フェニル」は、約1〜約4個の置換基で置換されていてもよいし置換されていなくてもよい、単環式芳香族環である。置換基は、フェニル環上のオルト位、メタ位、もしくはパラ位で置換されていてよく、またはそれらの任意の組み合わせとすることもできる。好ましいフェニル置換基には、ハロ、シアノ、アルキル、複素アルキル、ハロアルキル、フェニル、フェノキシ、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。より好ましいフェニル環上の置換基には、ハロとハロアルキル、が含まれる。最も好ましい置換基はハロである。フェニル環上での好ましい置換形式は、オルトまたはメタである。フェニル環上での最も好ましい置換形式は、オルトである。
【0026】
(化合物)
本対象化合物は、次の構造式を有する化合物に関する。
【0027】
【化3】

【0028】
上記の構造式において、R1は、CO2H、C(O)NHOH、CO25、CH2OH、S(O)25、C(O)NHR5、C(O)NHS(O)25、またはテトラゾールであり;この場合、R5は、アルキル、複素アルキル、炭素環式脂肪族環、複素環式脂肪族環、芳香族環、または複素芳香族環である。好ましいR5は、CH3、C25、C37である。好ましいR1は、CO2H、C(O)NHOH、CO2CH3、CO225、CO237、CO249、CO2372、およびC(O)NHS(O)25である。より好ましいR1は、CO2H、C(O)NHOH、CO2CH3、およびCO235である。最も好ましいR1は、CO2HおよびCO2CH3である。
【0029】
上記の構造式において、R2は、Hまたは低級アルキルである。好ましいR2は、HおよびCH3である。最も好ましいR2はHである。
【0030】
上記の構造式において、Xは、NR67、OR8、SR9、S(O)R9、S(O)29、またはFであり;この場合、R6、R7、およびR8は、H、アシル、アルキル、複素アルキル、炭素環式脂肪族環、複素環式脂肪族環、芳香族環、または複素芳香族環からなる群から独立して選択され;R9は、アルキル、複素アルキル、炭素環式脂肪族環、複素環式脂肪族環、芳香族環、または複素芳香族環である。好ましいR6およびR7はH、CH3およびアシルである。好ましいR8は、H、CH3、CH2CH2OHである。好ましいR9は、CH3およびCH2CH2OHである。好ましいXは、NR67およびOR8である。最も好ましいXは、OHである。
【0031】
上記の構造式において、R3およびR4の双方がHでないことを除いて、R3およびR4は独立して、H、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、OR10、またはSR10であり;この場合、R10は、アルキル、複素アルキル、炭素環式脂肪族環、複素環式脂肪族環、芳香族環、または複素芳香族環である。R10は1〜約8個の構成原子を有する。好ましいR3はHおよびCH3である。好ましいR4はHおよびCH3である。好ましいR10はCH3である。
【0032】
上記の構造式において、Zは、炭素環式脂肪族環、複素環式脂肪族環、芳香族環、または複素芳香族環である。好ましいZは、単環式の炭素環式脂肪族環、単環式の複素環式脂肪族環、単環式の芳香族環、および単環式の複素芳香族環である。より好ましいZは、単環式の芳香族環または単環式の複素芳香族環である。最も好ましいZは、チエニルまたはフェニルである。
【0033】
本発明にはさらに、上記構造式の光学異性体、ジアステレオマー、およびエナンチオマーが含まれる。したがって、立体化学を明確にしていないすべての立体中心(C11、C12、C15、およびC16)において、双方のエピマーが企図される。本発明化合物のそのようなすべての立体中心における好ましい立体化学は、天然のPGFの立体化学と同様のものである。
【0034】
本対象発明の新規なPGF類似体は、骨障害、特に骨質量、骨体積、または骨強度の有意な増加が求められる骨障害の治療に有用であることが見出されている。驚くべきことに、本対象発明化合物は、既知の骨障害治療よりも次の有利な点を提供することが見出されている:(1)新たな小柱(trabeculae)の形成による小柱数の増加、(2)より正常な骨代謝回転率を維持しながら、骨質量および骨体積を増加すること、および(3)皮質多孔度(cortical porosity)を増加することなく骨内膜表面での骨形成を増加すること。
【0035】
薬理学的活性を測定し評価するために、当業者に知られた種々のアッセイを用いて、動物で本対象化合物の検査を行う。例えば、本対象化合物の骨活性は、本対象化合物の骨質量、骨体積、または骨密度を増加する能力を検査するために設計したアッセイを用いて、好都合に実証することができる。そのようなアッセイの具体例は、卵巣摘除したラットのアッセイである。
【0036】
卵巣摘除したラットのアッセイでは、生後6ヶ月のラットに卵巣摘除術を施し、2ケ月そのままにし、次いで1日1回試験化合物を皮下投与する。この研究の終了の際、二重エネルギーX線吸収測定器(dual energy x−ray absorptometry(DXA))または抹消定量コンピュータ断層撮影装置(peripheral quantitative computed tomography(pQCT))またはマイクロコンピュータ断層撮影装置(mCT)により、骨質量および/または骨密度を測定することができる。あるいは、静的または動的な組織体型測定(histomorphometry)を用いて、骨体積または骨形成の増加を測定することができる。
【0037】
緑内障に対する薬理学的活性は、本対象化合物の眼圧を降下させる能力を検査するために設計されたアッセイを用いて実証することができる。そのようなアッセイの具体例は、次のリファレンス:C.liljebris,G.Selen,B.Resul,J.Sternschantz,およびU.Hacksell,非特許文献4に記載されおり、この内容を本明細書に取り入れる。
【0038】
本対象発明に有用な化合物は、慣用的な有機合成を用いて製造することができる。特に好ましい合成は、以下の一般反応スキームである:
【0039】
【化4】

【0040】
スキーム1において、R1、R2、R3、R4、X、およびZは上で定義されている。スキーム1の出発物質として示されている7[3−(R)−ヒドロキシ−5−オキソ−1−シクロペント−1−イル]ヘプタン酸メチル(S1a)は、市販されている(住友化学会社(日本、東京)、またはCaymanケミカル社(Ann Arbor, MI)などから市販)。
【0041】
上記スキーム1において、7[3−(R)−ヒドロキシ−5−オキソ−1−シクロペント−1−イル]ヘプタン酸メチル(S1a)を好ましくはシリルエーテルとして保護し、適当に置換した炭素求核剤の1,4付加反応を生じる条件を享受させる。例えば、ホモ−アリルアルケンのキュプレート(cuprate)付加を用いることができる。これらの操作の結果、S1bで表されるタイプのケトン類が生じ、これを好ましくはホウ素還元剤で容易に還元してアルコール類とする。これらのアルコール類は、さらなる操作の際に必要ならば保護しておくこともできる。これらの操作に続いて、メタ−クロロ過安息香酸などの温和なエポキシ化剤で該オレフィンをエポキシ化して、S1cで表されるタイプの化合物を得る。これらのエポキシド類を種々の条件下で、特にルイス酸の存在下で酸素求核剤と反応させ、式Iで表される化合物を生成する。実施例4および実施例5に式Iの化合物を例示する。
【0042】
式IIで表される化合物は、既知のエステルに施される試薬との反応により、式Iの化合物から容易に生成する。例えば、ヒドロキシルアミンはエステル官能基をヒドロキサム酸に変換し、LiOHはエステルを酸に変換する。実施例1〜3および実施例13〜16に式IIの化合物を例示する。
【0043】
式IIIで表される化合物(実施例20に例示)を生成するために、第2級アルコールをハロゲン化物、エーテル、アミン、硫化物、およびスルホキシドに変換することが知られている種々の試薬で化合物を処理する。この反応は、例えば、非特許文献5中でJerry Marchにより開示されている。次いで、式Iで表される化合物を式IIで表される化合物に変換する方法と実質的に同じ方法を用いて、式IIIの化合物をC1において式IIで表される化合物に順次変換する。
【0044】
【化5】

【0045】
スキーム2において、R1、R2、R3、R4、X、およびZは上で定義されている。スキーム2の出発物質として示されているCoreyラクトン(S2a)は、市販されている(住友化学会社(日本、東京)、またはCaymanケミカル社(Ann Arbor, MI)などから市販)。
【0046】
式IVで表される化合物は、市販のCoreyラクトン(S2a)に手を施して中間体S2bとすることにより生じる。(このような反応の具体例は、本明細書中実施例6で見られる)。中間体S2bをベータ−ケトホスホネートとカップリングするか、あるいは該アルコール類を適当に保護し、オレフィン化反応を行うことにより、該アルコール類の脱保護を適宜行った後、S2cで表されるタイプの化合物が得られる。次いで、これらの化合物についてアルケンおよびケトンの還元を行うと、式IVで表される化合物が得られる。実施例12において式IVの化合物を例示する。
【0047】
式Vで表される化合物は、S2cの化合物から、該アルコール類を適当に保護し、所望するならばR2を付加し、ケトンおよびアルケンを還元し、続いてスキーム1で示した適当な官能基の操作により得られる。実施例25、26、および28に式Vの化合物を例示する。
【0048】
式VIで表される化合物は、式IVまたは式Vのいずれかの化合物から、上記スキーム1で記述したC1エステルの反応により生成することができる。実施例6〜11、17、18、22〜24、27、および29〜31に式VIの化合物を例示する。
【0049】
これらの化合物は、当業者に知られた方法により単離することができる。これらの方法には、抽出、溶媒の蒸発乾固、蒸留、および結晶化が含まれるが、これらに限定するものではない。
【0050】
以下の非限定的な実施例は、本発明の化合物、組成物、および使用を例示したものである。
【実施例】
【0051】
1Hおよび13CNMR、元素分析、質量分析、高分解能質量分析、および/またはIRスペクトルを適宜用いて化合物を分析する。
【0052】
一般に、不活性な溶媒を、好ましくは無水物の形で用いる。例えば、テトラヒドロフラン(THF)はナトリウムとベンゾフェノンとから蒸留し、ジイソプロピルアミンは水素化カルシウムから蒸留しており、その他のすべての溶媒は適当な等級として購入する。クロマトグラフィーは、シリカゲル(70−230メッシュ;Aldrich社)またはシリカゲル(230−400メッシュ;Merck社)のいずれかを適宜用いて行う。薄層クロマトグラフィー分析は、ガラスをマウントしたシリカゲルプレート(200−300メッシュ;Baker)で行い、UV、EtOH中の5%リンモリブデン酸、または10%H2SO4水溶液中のモリブデン酸アンモニウム/硫酸第二セリウムを用いて可視化する。
【0053】
(実施例1)
13,14−ジヒドロ−16,16−ジメチル−16−(2−フルオロフェノキシ)16−テトラノルプロスタグランジンFの調製:
【0054】
【化6】

【0055】
a.7−(2−オキソ−4−(1,1,2,2−テトラメチル−1−シラプロポキシ)シクロペント−1−エニル)ヘプタン酸メチル:−78℃でのCH2Cl2中の7−[3−(R)−ヒドロキシ−5−オキソ−1−シクロペンテン−1−イル]ヘプタン酸メチル(1当量)の溶液に、2,6ルチジン(1.3当量)を15分間にわたって滴下して加える。溶液を−78℃で維持し、CH2Cl2中のTBDMSトリフレート(1.2当量)を15分間にわたって滴下して加える。反応物を室温まで徐々に暖め、室温で15時間攪拌する。1%HCl水溶液をpHが5未満になるまで加え、層を分離する。水層をCH2Cl2で逆抽出し、有機層を合わせる。有機層を食塩水で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濃縮する。残渣を真空下(10mmHg)で蒸留し、シリルエーテルを得る。
【0056】
b.7−(5−(4−メチル−ペント−3−エニル)−2−ヒドロキシ−4−(1,1,2,2−テトラメチル−1−シラプロポキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸メチル:室温でのTHF中のMg0粉末(2当量)のスラリーに、I2の結晶1つを加え、1−ブロモイソプレン(2当量)を10分間にわたって滴下して加える。反応は、添加するに伴い発熱となる。添加終了後、反応物を3時間還流し、室温まで冷却する。グリニャール試薬をTHFとともに蒸留し、次いで攪拌機を備える3首フラスコにカニューレを介して加え、−78℃でTHF/DMSの1:1溶液中のCuBr−硫化ジメチル付加物(DMS)(2当量)で満たす。グリニャール試薬の添加後(約20分間)、反応物を−78℃で1時間攪拌する。次いで、THF中のケトン(1当量)の溶液を25分間にわたって滴下して加える。反応物を−78℃で15分間攪拌し、次いで2時間にわたって室温にゆっくりと暖める。反応物をNH4Cl水溶液および過剰のDMSでクエンチし、蒸発乾固する。反応物を食塩水およびCH2Cl2間に分配させ、層を分離する。水層をCH2Cl2で逆抽出し、有機層を合わせ、乾燥する(Na2SO4)。溶媒を真空で除去し、残渣をSiO2上でクロマトグラフィー精製し(10%ヘキサン/EtOAc)、ケトンを透明な油として得る。
【0057】
このケトンをMeOH中に溶かし、−40℃まで冷却する。ホウ水素化ナトリウム(0.9当量)を10分間にわたって数回に分けて加える。添加終了後、反応物を−40℃で13時間攪拌し、次いで−78℃で12時間攪拌する。反応物を水でクエンチし、食塩水およびCH2Cl2の間で分配させ、層を分離する。水層をCH2Cl2で逆抽出し、有機層を合わせ、乾燥する(Na2SO4)。溶媒を真空で除去し、残渣をSiO2上でクロマトグラフィー精製し(30%EtOAc/ヘキサン類)、無色の油としてアルコールを得る。
【0058】
c.7−(2−ヒドロキシ−5−(2−(3,3−ジメチル(2−オキシラニル)エチル)−4−(1,1,2,2−テトラメチル−1−シラプロポキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸メチル:アルコール(1当量)をCH2Cl2に溶かし、0℃まで冷却する。重炭酸ナトリウムを加え、続いてm−CPBA(純度57%〜85%)(3当量)を15分間にわたって数回に分けて加える。添加終了後、反応物を室温で20時間攪拌する。反応物を水に注ぎ込み、食塩水とCH2Cl2の間で分配させ、層を分離する。水層をCH2Cl2で逆抽出し、有機層を合わせ、乾燥する(Na2SO4)。溶媒を真空で除去し、残渣をSiO2上でクロマトグラフィー精製し(20%EtOAc/ヘキサン類)、エポキシドジアステレオマーの対体を得る。
【0059】
d.13,14−ジヒドロ−16,16ジメチル,16−(2−フルオロフェノキシ)−16−テトラノルプロスタグランジンFメチルエステル:丸底フラスコ中にエポキシド(1当量)および乾燥トルエンを入れ、このフラスコを0℃まで冷却し、次いで2−フルオロフェノール(1.2当量)およびアルミナ(フェノール100mgにつき1g)で処理する。冷浴を取り除き、反応物を窒素下で加熱する。TLCを用いて反応をモニタする。必要ならば過剰なフルオロフェノールを加える。反応物を食塩水でクエンチし、CH2Cl2で抽出する。有機層を1NのHCl、食塩水で3回洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濃縮する。さらに精製することなく、この粗製の反応混合物にCH3CNおよびHF/ピリジン(0.1mmol)をフラスコを0℃に保温したまま加える。0℃で3時間後、反応物を飽和NaClでクエンチする。水層をCH2Cl2で3回抽出し、有機層を合わせ、1NのHCl、食塩水で3回洗浄し、乾燥する(Na2SO4)。カラムクロマトグラフィー精製(7:3,ヘキサン:酢酸エチル)を行った後、エステルが得られる。
【0060】
e.13,14−ジヒドロ−16,16ジメチル,16−(2−フルオロフェノキシ)テトラノルプロスタグランジンF:丸底フラスコに、13,14−ジヒドロ−16,16ジメチル−(2−フルオロフェノキシ)テトラノルプロスタグランジンFメチルエステルおよび3:1のTHF/水の溶液を加える。フラスコを0℃まで冷却し、次いで過剰量(2.5当量)の水酸化リチウムを加え、冷浴を取り除き、反応物を室温で一晩攪拌する。CH2Cl2と飽和クエン酸を反応混合物に加え、水層をCH2Cl2で3回洗浄し、有機層を合わせ、食塩水で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、残渣をクロマトグラフィー精製する(CH2Cl2:メタノール:酢酸、9.6:0.4:0.015)。酸である13,14−ジヒドロ−16,16ジメチル,16−(2−フルオロフェノキシ)テトラノルプロスタグランジンFが得られる。
【0061】
実施例1の方法を実質的に用いて(および適当な出発物質を用いて)、実施例2〜5の以下の本対象化合物を得る。
【0062】
(実施例2)
13,14−ジヒドロ−16,16,−ジメチル,16−(2−メチルフェノキシ)−16−テトラノルプロスタグランジンF
【0063】
【化7】

【0064】
(実施例3)
13,14−ジヒドロ−16,16,−ジメチル,16−(2,3ジフルオロフェノキシ−16−テトラノルプロスタグランジンF
【0065】
【化8】

【0066】
(実施例4)
13,14−ジヒドロ−16,16,−ジメチル,16−(2,5ジフルオロフェノキシ)16−テトラノルプロスタグランジンFメチルエステル
【0067】
【化9】

【0068】
(実施例5)
13,14−ジヒドロ−16,16,−ジメチル,16−(3−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)16−テトラノルプロスタグランジンFメチルエステル
【0069】
【化10】

【0070】
(実施例6)
13,14−ジヒドロ−16,16−ジメチル,16−(4−クロロフェノキシ)−テトラノルプロスタグランジンFの調製:
【0071】
【化11】

【0072】
a.6−(2,5−ジオキソラニル)−7−ヒドロキシ−2−オキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オン:磁気攪拌棒を備えた丸底フラスコ中に、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(1mL)を含有するCH2Cl2中の1,2−ビス(トリメチルシリルオキシ)エタン(1.3当量)を−78℃で入れる。これに、20分以内にCH2Cl2中の1(1当量)の溶液を加える。反応物を−78℃で1時間攪拌し、次いで−25℃に1時間ゆっくりと暖める。反応物を0℃において水でクエンチし、CH2Cl2で抽出し(3回)、MgSO4で乾燥し、真空で濃縮すると、粗製の2が得られる。0℃でメタノール中の粗製の2(1当量)をよく攪拌した溶液に、MeOH中のナトリウムメトキシド(1.2当量)の懸濁液を加える。反応物を0℃で1時間攪拌し、次いで1時間25℃まで暖める。酸イオン交換樹脂を用いて反応物を中和し、この樹脂全体をMeOHで洗浄する(5×)。濾液を真空で濃縮するとシロップが得られ、これを、4:1のヘキサン:酢酸エチルと、CH2Cl2中の2%MeOHとで溶出する、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによる精製を行うと、3が得られる。
【0073】
b.6−(2,5ジオキソラニル)−2−オキサ−7−(1,1,2,2−テトラメチル−1−シラプロポキシ)ビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オン:磁気攪拌棒を備えた丸底フラスコ中で、CH2Cl2中の3(1当量)の溶液を攪拌する。この溶液に−78℃で2,6−ルチジン(1.9当量)を滴下して加え、続いてTBDMSOTf(1.8当量)を加える。反応物を−78℃で30分間攪拌し、次いで−25℃に一晩暖める。反応物を水でクエンチする。有機層を水で洗浄し(3回)、MgSO4で乾燥し、真空で濃縮すると、黄色の油が得られ、これを次いでシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによる精製(ヘキサン、次いでCH2Cl2中の1%MeOH)を行う。次いでこの生成物を1NのHCl(2回)、0.1NのHCl(2回)、水、次いで食塩水で洗浄すると、4が得られる。
【0074】
c.メチル7−(5−(2,5−ジオキソラニル)−2−ヒドロキシ−4−(1,1,2,2−テトラメチル−(1−シラプロポキシ)シクロペンチル)ヘプト−5−エノエート:磁気攪拌棒を備えた丸底フラスコ中で、乾燥トルエン中の4(1当量)の溶液を攪拌する。この溶液に、−78℃でゆっくりとDIBAL(1.24当量)を加える。反応混合物を2時間攪拌し、次いで−0℃まで暖める。飽和NH4Clをこの反応混合物に加え、次いでこれを25℃までゆっくりと暖める。水で蒸留し、不溶性の沈殿物を吸込濾過により取り除き、次いでこの固体をEtOAcで洗浄する(2回)。液層をEtOAcで抽出し(3回)、有機層を合わせ、乾燥し(MgSO4)、真空で濃縮すると、生成物5が得られる。この生成物5はすぐに使用するか一晩−70℃で貯蔵しなければならない。
【0075】
窒素下、0℃でのTHF中の臭化(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウム(2.2当量)の懸濁液に、KHMDS(4.4当量)の溶液を滴下して加える。得られる深いオレンジ色の反応混合物を25℃で1時間攪拌する。−78℃での該反応混合物に、THF中の5(1当量)の溶液を加える。この反応混合物を一晩25℃に暖める。反応物を0℃において水でクエンチし、pHを1NのHClを用いて3.5〜4.0に調整する。水層をEtOAで抽出し(3回)、有機層を合わせ、MgSO4で乾燥し、真空で濃縮すると、粗製の酸を含むシロップが得られる。エーテルおよびMeOH中粗製の酸を0℃でよく攪拌した溶液に、反応混合物が淡い黄色を維持するまで、TMS−ジアゾメタンを加える。氷酢酸1滴を加え、薄層クロマトグラフィーを行うことにより、反応が終了したかを確認する。反応溶液を真空で濃縮し、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー精製(ヘキサン中30%EtOAc)により、6を得る。
【0076】
d.メチル7−(2,4−ジヒドロキシ−5−ホルミルシクロペンチル)ヘプト−5−エノエート:磁気攪拌棒を備える丸底フラスコに、ある量のケタール6を入れる。このフラスコに、1NのHCl1部およびアセトン2部の混合物を十分な量加えてケタールを完全に溶液とする。TLCで確認しながら出発物質が消費されるまで、この物質を通常一晩攪拌する。生成物7を含有する粗製の混合物をエーテルで抽出し、インサイチューでこのエーテル抽出物を好ましくはTMS−ジアゾメタンでエステル化する。これにより生成物8が生成され、これをカラムクロマトグラフィー精製(30%EtOAc/ヘキサン)してもよいし、さらに精製を行わずに用いてもよい。
【0077】
e.1−(ジメトキシホスホノ)−3−(4−クロロフェノキシ)−3−メチルブタン−2−オン:窒素下で乾燥フラスコ中にTHF(無水物)およびメチルジメチルホスホネート(1当量)を加える。この溶液を−78℃まで冷却し、nBuLi溶液(1.1当量、ヘキサン中2.5M溶液)を滴下して加え、次いで1時間攪拌する。2−(4−クロロフェノキシ)−2−メチルプロピオン酸のエステルをTHF中で滴下して加える。これを一晩攪拌し、室温まで暖める。この粗製の混合物を飽和NH4Clでクエンチし、次いでCH2Cl2で抽出し、フラッシュクロマトグラフィー精製(CH2Cl2中5%MeOH)により、9が生成する。
【0078】
f.16,16−ジメチル−16−(4−クロロフェノキシ)−15−オキソ−16−テトラノルPGFメチルエステル:炎で乾燥した磁気攪拌棒を備える丸底フラスコに、DMEおよび水中の3−(2,4−ジクロロフェノキシ)−ジメチル−2−オキソ−プロピルホスホネート(1.65当量)を入れる。この溶液に、臭化リチウム(2当量)、トリエチルアミン(5.30当量)、およびメチル7−(2−ホルミル−3,5−ジヒドロキシシクロペンチル)ヘプト−5−エノエート(1.0当量)を加える。この溶液を室温で24時間攪拌する。エーテルを加え、この溶液を0.1NのHCl、次いで食塩水で1回洗浄する。有機層を乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮する。精製は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール/CH2Cl21:50)により行い、16,16−ジメチル−16−(4−クロロフェノキシ)−15−オキソ−16−テトラノルPGFメチルエステル10が得られる。
【0079】
g.13,14−ジヒドロ−16,16−ジメチル−16−(4−クロロフェノキシ)−16−テトラノルPGF:炎で乾燥した攪拌棒を備える丸底フラ
スコに、メタノール中の10(1.0当量)および三塩化セリウム(1.05当量)を入れる。この溶液を室温で5分間攪拌する。溶液を−10℃まで冷却し、メタノール中のホウ水素化ナトリウム(1.02当量)を加える。溶液を−10℃で3時間攪拌する。混合物を水で処理し、1N塩酸でpHを約6とする。混合物を酢酸エチルで2回抽出し、有機層を合わせ、乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮する。精製は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中3%メタノールから、ジクロロメタン中5%メタノールとする)により行い、15(R)アルコールおよび15(S)アルコールを得る。炎で乾燥した攪拌棒を備える丸底フラスコ中に、酢酸エチル中の上記エピマーアルコールの一方もしくはもう一方またはそれら双方(1当量)およびパラジウム−炭素を入れる。不均質混合物を水素ガスで18時間処理する。次いで、混合物をセライトを通して濾過し、減圧下で濃縮することにより、表題の飽和プロスタグランジンがメチルエステルとして得られる。
【0080】
攪拌棒を備える丸底フラスコに、50/50THF/水の溶液中の上記エステル(1.0当量)および水酸化リチウム一水和物(1.8当量)を入れる。混合物を室温で6時間攪拌し、次いで水で蒸留し、1NのHClで酸性化してpH約2〜3とする。水層を約3回酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせる。合わせた有機層を、乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮し、13,14−ジヒドロ−16,16−ジメチル−16−(4−クロロフェノキシ)−16−テトラノルPGFを得る。
【0081】
実施例6の方法を実質的に用いて(および適当な出発物質を用いて)、実施例7〜14の以下の本対象化合物が得られる。
【0082】
(実施例7)
13,14−ジヒドロ−16−メチル−16−(3−クロロフェノキシ)−16−テトラノルプロスタグランジンF
【0083】
【化12】

【0084】
(実施例8)
13,14−ジヒドロ−16−エチル−16−(2−メチルフェノキシ)−16−テトラノルプロスタグランジンF
【0085】
【化13】

【0086】
(実施例9)
13,14−ジヒドロ−16−イソプロピル16−(2−フルオロフェノキシ)−16−テトラノルプロスタグランジンF
【0087】
【化14】

【0088】
(実施例10)
13,14−ジヒドロ−16−(ヒドロキシメチル)−16−フェノキシ−16−テトラノルプロスタグランジンF
【0089】
【化15】

【0090】
(実施例 11)
13,14−ジヒドロ−16−メチル−16−(4−エチルフェノキシ)−16−テトラノルプロスタグランジンF
【0091】
【化16】

【0092】
(実施例12)
13,14−ジヒドロ−16−メチル−16−(3−クロロフェノキシ)−16−テトラノルプロスタグランジンFメチルエステル
【0093】
【化17】

【0094】
(実施例13)
13,14−ジヒドロ−16−メチル−16−(4−フェニルフェノキシ)−16−テトラノルプロスタグランジンFイソプロピルエステル
【0095】
【化18】

【0096】
実施例14
13,14−ジヒドロ−16,16−ジメチル−16−(4−フェノキシフェノキシ)−16−テトラノルプロスタグランジンFイソプロピルエステル
【0097】
【化19】

【0098】
(実施例15)
13,14−ジヒドロ−16,16−ジメチル−16−(2−フルオロフェノキシ)−16−テトラノルプロスタグランジンFヒドロキサム酸の調製
【0099】
【化20】

【0100】
磁石撹拌棒を備える炎で乾燥させた丸底フラスコ中に、メタノール中の13,14−ジヒドロ−16,16−ジメチル−16−(2−フルオロフェノキシ)−16−テトラノルプロスタグランジンF−メチルエステル(実施例1)(1.0当量)を入れる。この溶液にメタノール(1.25当量)中のヒドロキシルアミンを加え、溶液を18時間攪拌する。次いで、溶液を1Nの塩酸で処理し、酢酸エチルで抽出する。有機層を食塩水で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮する。残渣をクロマトグラフィーにより精製すると、13,14−ジヒドロ−16,16−ジメチル−16−(2−フルオロフェノキシ)−16−テトラノルプロスタグランジンFヒドロキサム酸を得る。
【0101】
実施例16〜18の化合物は、実施例15の方法と実質的に同様の方法により、適当なヒドロキシルアミンまたはスルホンアミドおよび適当な実施例に対応する中間体を用いて調製する。
【0102】
(実施例16)
13,14−ジヒドロ−16−メチル−16−(3−クロロフェノキシ)テトラノルプロスタグランジンF1−ヒドロキサム酸
【0103】
【化21】

【0104】
(実施例17)
13,14−ジヒドロ−16−メトキシメチル−16−(2,3−ジフルオロフェノキシ)−16−テトラノルプロスタグランジンF1−ヒドロキサム酸
【0105】
【化22】

【0106】
(実施例18)
13,14−ジヒドロ−16−メチル−16−(3−メトキシフェノキシ)テトラノルプロスタグランジンF1−N−メタンスルホンアミド
【0107】
【化23】

【0108】
(実施例19)
13,14−ジヒドロ−15−フルオロ−16−(2−フルオロフェノキシ)テトラノルプロスタグランジンFメチルエステルの調製
【0109】
【化24】

【0110】
実施例1のビス−シリルエーテルを、ジエチルアミノサルファトリクロライド(diethylaminosulfur trifluoride)で処理する(次のリファレンス:非特許文献7;非特許文献8;およびこの中で引用しているリファレンスに開示されている)と、実施例1に記述するように脱保護した後、13,14−ジヒドロ−15−フルオロ−16−(2−フルオロフェノキシ)テトラノルプロスタグランジンFメチルエステルが得られる。
【0111】
実施例1の方法を実質的に用いて(および適当にR2を修飾することにより)、実施例20および実施例21の以下の本対象化合物が得られる。
【0112】
(実施例20)
13,14−ジヒドロ−15−メチル−16,16−ジメチル−16−(2−フルオロフェノキシ)−16−テトラノルプロスタグランジンF
【0113】
【化25】

【0114】
(実施例21)
13,14−ジヒドロ−15−フルオロ−16−(2,3−ジフルオロフェノキシ)−16−テトラノルPGF1−ヒドロキサム酸
【0115】
【化26】

【0116】
(実施例22)
13,14−ジヒドロ−15−メチルチオ−15−デヒドロキシ16−メチル−16−(2−メチルフェノキシ)−16−テトラノルプロスタグランジンFの調製
【0117】
【化27】

【0118】
実施例1記述のように適当なビス−シリル化化合物を、塩化メタンスルホニル(1.2当量)および塩基(1.2当量)で順次処理する(次のリファレンス:非特許文献9;非特許文献10;およびこの中で引用されたリファレンスで開示されたように)とメシレート中間体が生じ、次いでこれを直ちに求核剤(ナトリウムチオメトシキド)で処理する(次のリファレンス:非特許文献11およびこの中で引用されたリファレンスで開示されたように)と保護されたチオアルキルエーテルが得られる。続いて実施例1記載の脱保護を行うと、13,14−ジヒドロ−15−メチルチオ−15−デヒドロキシ16−メチル−16−(2−メチルフェノキシ)−16−テトラノルプロスタグランジンFが得られる。
【0119】
実施例22の方法を実質的に用いて、実施例23〜25の以下の本対象化合物が得られる。
【0120】
(実施例23)
13,14−ジヒドロ−15−メチルチオ−15−デヒドロキシ16−メチル−16−(2−メチルフェノキシ)16−テトラノルプロスタグランジンF1−ヒドロキサム酸
【0121】
【化28】

【0122】
(実施例24)
13,14−ジヒドロ−15−メトキシ−16,16ジメチル−16−(2−フルオロフェノキシ)16−テトラノルプロスタグランジンFヒドロキサム酸
【0123】
【化29】

【0124】
(実施例25)
13,14−ジヒドロ−15−(エトキシ)−15−デヒドロキシ16,16−ジメチル−16−フェノキシ16−テトラノルプロスタグランジンFメチルエステル
【0125】
【化30】

【0126】
(実施例26)
13,14−ジヒドロ−15−スルホニルメチル−15−デヒドロキシ16−メチル−16−(2−メチルフェノキシ)−テトラノルプロスタグランジンFメチルエステルの調製:
【0127】
【化31】

【0128】
次のリファレンス:非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14;およびこの中で引用されたリファレンスで記述のように実施例22のメチルエステルを適当な酸化剤で処理する。
【0129】
実施例26の方法を実質的に用いて、実施例27の以下の本対象化合物が得られる。
【0130】
(実施例27)
13,14−ジヒドロ−15−スルホキシルメチル−15−デヒドロキシ16−メチル−16−(2−メチルフェノキシ)−16−テトラノルプロスタグランジンF
【0131】
【化32】

【0132】
(実施例28)
13,14−ジヒドロ−15−メチル−15−メチルアミノ−15−デヒドロキシ16,16−ジメチル−16−(2−フルオロフェノキシ)−16−テトラノルプロスタグランジンFメチルエステルの調製
【0133】
【化33】

【0134】
実施例2から得られる適当な中間体をN−メチルアミンと縮合して、イミンを得る。メチルセリウム求核剤(約1.5当量)を添加することにより(例えば、塩化セリウム仲介求核剤添加、次のレファレンス:非特許文献15;非特許文献16;およびこの中で引用されているレファレンスを参照のこと)とアミノメチル誘導体が得られ、次いでこれを13,14−ジヒドロ−15−メチル−15−メチルアミノ−15−デヒドロキシ16,16−ジメチル−16−(2−フルオロフェノキシ)−16−テトラノルプロスタグランジンFメチルエステルに変換する。
【0135】
実施例28の方法を実質的に用いて、実施例29〜31の以下の本対象化合物が得られる。
【0136】
(実施例29)
13,14−ジヒドロ−15−メチル−15−メチルアミノ−15−デヒドロキシ16−メチル−16−(2−メチルフェノキシ)−テトラノルプロスタグランジンF1−ヒドロキサム酸
【0137】
【化34】

【0138】
(実施例30)
13,14−ジヒドロ−15−メチル−15−(N,N−ジメチルアミノ)−16−エチル−16−(2−フルオロフェノキシ)−16−テトラノルプロスタグランジンFイソプロピルエステル
【0139】
【化35】

【0140】
(実施例31)
13,14−ジヒドロ−16−エチル−16−(2,6−ジフルオロフェノキシ)−16−テトラノルプロスタグランジンFグリセリルエステル
【0141】
【化36】

【0142】
(組成物)
本対象発明の組成物は、安全かつ有効な量の本対象化合物と薬剤学的に許容され得る担体とを含む。本明細書で用いられる「安全かつ有効な量」とは、健全な医学的判断の範囲内で、治療される状態においてポシティブな改変を有意にもたらすには十分だが重篤な副作用を回避するには十分に低い(妥当な利益/危険比において)化合物量を意味する。安全かつ有効な量の化合物は、治療される特定の状態、治療される患者の年齢や健康状態、状態の重篤性、治療の期間、併用治療の性質、利用される特定の薬剤学的に許容され得る担体、および担当医師の知識や経験による要因などにより変わる。
【0143】
化合物の他に、本対象発明の組成物には薬剤学的に許容され得る担体が含まれる。本明細書で用いられる「薬剤学的に許容され得る担体」という用語は、対象への投与に適している、1つまたは複数の相溶な固形物または液体フィラー希釈剤またはカプセル化物質を意味する。本明細書で用いられる「相溶な」という用語は、通常の使用状況下で本化合物の薬剤学的効力を実質的に減じてしまう相互作用がないような形で、本組成物の構成成分が本化合物と混ざり合うことができることや互いに混ざり合うことができることを意味する。薬剤学的に許容され得る担体は、治療される対象への投与に適するように十分に精製度が高いものであって、十分に毒性が低いものでなければならないことは当然のことである。
【0144】
薬剤学的に許容され得る担体またはその構成成分として役立ち得る物質の幾つかの例として、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類;トウモロコシデンプンおよびポテトデンプンなどのデンプン類;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロース類とその誘導体;粉末化したトラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ステアリン酸やステアリン酸マグネシウムなどの固形潤滑剤;硫酸カルシウム;ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびカカオ脂の油などの植物油類;プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール類;アルギン酸;Tweens(登録商標)などの乳化剤;ラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤(wetting agents);着色剤;香味剤;賦形剤;錠剤化剤(tableting agents);安定化剤;抗酸化剤;保存剤;無パイロジェン(pyrogen)水;等張化生理食塩水;ならびにリン酸バッファー液剤である。
【0145】
化合物と併用して用いられる薬剤学的に許容され得る担体の選択は、基本的には本化合物が投与される方法により決められる。本発明の化合物は全身投与してもよい。投与経路には、経皮;経口;皮下注射または静脈内注射を含む非経口;局所;および/または鼻内が含まれる。
【0146】
用いられる本発明の化合物の適当な量は、動物モデルを用いた慣例的な実験により決めることができる。そのような動物には、無傷のまたは卵巣摘除されたラットモデル、クロアシイタチ、イヌおよび非ヒト霊長類モデルの他、不必要となった(disuse)モデルが含まれるが、これらに限定されない。
【0147】
注射用の好ましい単位剤形には、水、生理食塩水、またはそれらの混合物の無菌液剤が含まれる。上記液剤のpHは、約7.4に調整するであろう。注射または外科インプラントに適した担体には、ヒドロゲル、放出調節性品または放出持続性品、ポリ乳酸、およびコラーゲンマトリクスが含まれる。
【0148】
局所適用に適した薬剤学的に許容され得る担体には、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤などが含まれる。本化合物を非経口投与する場合、好ましい単位剤形は錠剤やカプセル剤などである。経口投与において単位剤形の調製に適した薬剤学的に許容され得る担体は、当該技術分野で周知である。これらの選択は、本対象化合物の目的においてあまり厳格なものではない味覚、コスト、自己安定性などの二次的な考慮事項によりなされてもよく、その選択は当業者が困難を要せずに行うことができる。
【0149】
(使用方法)
本発明の化合物は、例えば、目の障害、高血圧、受胎能制御、鼻鬱血、神経因性膀胱障害、胃腸障害、皮膚障害、および骨粗鬆症などを含む、多くの医療障害の治療に有用である。
【0150】
本発明の化合物は、新たな小柱の形成を介して骨体積および小柱数を増加すること、常態の骨代謝回転率を維持しながら骨質量を増加すること、および存在している皮質から骨を取り除かずに骨内膜表面で骨を形成することに有用である。したがって、これらの化合物は骨障害の治療および予防に有用である。
【0151】
骨障害治療用の好ましい投与経路は、経皮および鼻内である。その他の好ましい投与経路には、直腸、舌下、および経口が含まれる。
【0152】
全身投与における本化合物の用量範囲は、1日で、体重1kgあたり約0.01μgから約1000μgであり、好ましくは体重1kgあたり約0.1μgから約100μgであり、最も好ましくは体重1kgあたり約1μgから約50μgである。皮下による用量は、薬物動態学および経皮製剤化の技術分野における当業者に知られている技術に基づき、同様の血清レベルまたは血漿レベルを達成するように設計する。全身投与での血漿レベルは、0.01〜100ナノグラム/ml、より好ましくは0.05〜50ng/ml、最も好ましくは0.1〜10ng/mlの範囲であることが望ましい。これらの用量は1日分の投与割合に基づくものであるが、臨床必要量を計算するのに1週間分または1ヶ月分の蓄積用量を用いてもよい。
【0153】
所望の効果を達成するために、治療する患者、治療する状態、治療する状態の重篤さ、および投与経路などに基づいて用量を変えてもよい。
【0154】
本発明の化合物は、眼圧を低下することにも有用である。したがって、これらの化合物は緑内障の治療に有用である。緑内障の治療に好ましい投与経路は、局所である。
【0155】
(組成物および方法の実施例)
次の非限定的な実施例は本対象発明を例示したものである。次の組成物および方法の実施例は、本発明を限定するものではないが、当業者に本発明の化合物、組成物、および方法を調製し使用するための指針を提供するものである。各々の場合において、本発明範囲内のその他の化合物を、下記の実施例化合物の代わりに用いても同様の結果が得られる。実施例は指針を与えるものであり、治療する状態や患者によりこれを改変してもよいことは、当業者ならば容易に理解できるであろう。
【0156】
(実施例A)
錠剤の形態をとる医薬組成物を混合や直接圧縮などの慣用的な方法により調製し、次のように製剤化する:
成分 量(錠剤あたりmg)
実施例1の化合物 5
微結晶セルロース 100
スターチグリコレートナトリウム 30
ステアリン酸マグネシウム 3
上記組成物を1日に1回経口投与すると、骨粗鬆症を患っている患者での骨体積が著しく増加する。
【0157】
(実施例B)
液剤の形態をとる医薬組成物を慣用的な方法により調製し、次のように製剤化する:
成分
実施例1の化合物 5mg
リン酸バッファー生理食塩水 10mL
メチルパラベン 0.05mL
上記組成物1.0mLを1日に1回皮下投与すると、上記組成物により骨粗鬆症を患っている患者での骨体積が著しく増加する。
【0158】
(実施例C)
眼圧低下用の局所による医薬組成物を慣用的な方法により調製し、次のように製剤化する:
成分 量(質量%)
実施例14の化合物 0.004
デキストラン70 0.1
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.3
塩化ナトリウム 0.77
塩化カリウム 0.12
EDTAニナトリウム(エデト酸ニナトリウム) 0.05
塩化ベンザルコニウム 0.01
HClおよび/またはNaOH pH7.2〜7.5
精製水 100%に調整
【0159】
本対象発明の特定の実施態様を記載したが、本発明の真意および範囲を逸脱することなく、本明細書中に開示された組成物に種々の変形または改変を施すことができることは当業者には明らかである。付属の特許請求の範囲においては、本発明の範囲内にあるそのような改変がすべて含まれることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造式を有する化合物であって、
【化1】

(a)R1は、CO2H、C(O)NHOH、CO25、CH2OH、S(O)25、C(O)NHR5、C(O)NHS(O)25、またはテトラゾールであり;
5は、アルキル、複素アルキル、炭素環式脂肪族環、複素環式脂肪族環、芳香族環、または複素芳香族環であることを特徴とし;
(b)R2は、Hまたは低級アルキルであり;
(c)Xは、NR67、OR8、SR9、S(O)R9、S(O)29、またはFであり;R6、R7、およびR8は、H、アシル、アルキル、複素アルキル、炭素環式脂肪族環、複素環式脂肪族環、芳香族環、または複素芳香族環からなる群から独立して選択されることを特徴とし;R9は、アルキル、複素アルキル、炭素環式脂肪族環、複素環式脂肪族環、芳香族環、または複素芳香族環であることを
特徴とし;
(d)RおよびRが同時にHとはならず、R3およびR4は独立して、H、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、OR10、またはSR10であり;R10は、アルキル、複素アルキル、炭素環式脂肪族環、複素環式脂肪族環、芳香族環、または複素芳香族環であり、R10は1〜8個の構成原子を有することを特徴とし;
(e)Zは、炭素環式脂肪族環、複素環式脂肪族環、芳香族環、または複素芳香族環である
ことを特徴とする化合物;および
前記構造式のすべての光学異性体、ジアステレオマー、もしくはエナンチオマー、または薬剤学的に許容され得るそれらの塩、または生物加水分解可能なそれらのアミド、エステル、もしくはイミドであることを特徴とする化合物。
【請求項2】
1はCO2H、C(O)NHOH、CO2CH3、およびCO237からなる群から選択されることを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項3】
2はHまたはCH3であることを特徴とする請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
XはOHであることを特徴とする請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Zはチエニルまたはフェニルであることを特徴とする請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
Zが置換されており、該置換基がハロ、アルキル、ハロアルキル、シアノ、フェニル、およびフェノキシからなる群から独立して選択される
ことを特徴とする前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
Zが置換されており、該置換基がハロ、アルキル、およびフェニルからなる群から独立して選択されることを特徴とする前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
ヒトまたはその他の哺乳類の骨障害の治療薬の製造における、前記請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項9】
前記骨障害が骨粗鬆症であることを特徴とする請求項8に記載の使用。

【公開番号】特開2010−254705(P2010−254705A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−145432(P2010−145432)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【分割の表示】特願2000−510710(P2000−510710)の分割
【原出願日】平成10年9月4日(1998.9.4)
【出願人】(304028151)デューク ユニバーシティ (5)
【Fターム(参考)】