説明

FSK信号受信機

【課題】 共振回路14の第1バラクタダイオード14(2)と周波数決定回路10の第2バラクタダイオード10(2)にAFC信号を印加し、受信感度を損わずに、受信可能な信号帯域幅をより拡大したFSK信号受信機を提供する。
【解決手段】 周波数変換部、中間周波増幅部、FSK検波部からなり、FSK検波部は、第1入力端13(1)にFSK信号、第2入力端13(2)に90°移相したFSK信号が供給される乗算回路13と、第2入力端13(2)に接続され、AFC信号を印加した第1バラクタダイオード14(2)を有する共振回路14とによりクワッドラチャ検波回路21を構成し、周波数変換部に局部発振信号を発生するPLL回路9を備え、PLL回路9の周波数決定回路10にAFC信号を印加した第2バラクタダイオード10(2)を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AFC信号により制御されたFSK(周波数シフトキーイング)信号受信機に係り、受信可能な信号帯域幅を拡大させるようにしたFSK信号受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の移動車両においては、車両が盗難にあったり、車両内に侵入されて内部の装置が破損されたりするのを防ぐためにドアを施錠するドアロックを設けている。従来、当該ドアロックの施錠あるいは解錠は、エンジン始動のためのキーをキー孔に挿入することによって行っていたが、利便性の面から、キーをキー孔に挿入することなく携帯用送信機のスイッチを操作することによってドアロックの施錠・解錠を行ういわゆるアクティブキーレスエントリー装置が用いられている。さらに近年では、スイッチを操作しなくても所定の携帯用送受信機を持っていて所定の領域に位置すれば、自動的にドアロックの解錠・施錠を行ういわゆるパッシブキーレスエントリー装置が用いられている。
【0003】
このパッシブキーレスエントリー装置は、車両に搭載される車載用送受信機と、ユーザー等が携帯保持する携帯用送受信機とからなるもので、使用時に、車載用送受信機と携帯用送受信機との間で無線信号を送受信し、その時に送受信した無線信号が正規の信号であれば、車両側の被制御機器に対する所定の制御、例えばドア錠のアンロックが行われ、直ちにその車両を使用できるようにするものであり、一方、送受信した無線信号の一方または双方が正規の信号でなければ、車両側の被制御機器に対する所定の制御、例えばドア錠のアンロックが行われず、直ちに車両の使用ができないものである。
【0004】
かかるパッシブキーレスエントリ装置の動作時には、始めに、車載用送受信機から一定時間毎に自己の車両に固有のIDを含むリクエスト信号が無線送信される。このとき、携帯用送受信機がこのリクエスト信号を受信すると、そのリクエスト信号に含まれる車両のIDと既登録されている正規の車両のIDとを照合し、それらのIDが一致した場合、そのリクエスト信号に応答して自己の携帯用送受信機に固有のIDと車両の被制御機器を所定制御する指令信号とを含んだ無線信号(この信号をレスポンス信号またはアンサー信号とも呼ぶ)を無線送信する。この後、車載用送受信機がこの無線信号を受信すると、無線信号に含まれる車載用送受信機のIDと既登録されている車載用送受信機のIDとを照合し、それらのIDが一致した場合、その無線信号から指令信号を抽出し、抽出した指令信号に従って車両側の被制御機器の所定の制御、例えばドア錠のアンロックが行われる。
【0005】
ところで、キーレスエントリー装置においては、パッシブ動作とアクティブ動作の双方の機能を併せ持つことがより便利であるが、パッシブ動作においては、意図せずにドアの施錠及び解錠が行われるため、車両に接近した位置で動作するのが望まれ、そのために車両側からは通信到達距離が短くなるよう低周波の信号を送信する。一方、アクティブ動作においては、意図した動作を考慮すると、通信到達距離は長いことが望まれ、そのために携帯用送受信機からの送信信号は高周波の信号を送信するのが一般的である。そして、高周波信号を用いた通信においては、高周波の搬送波を信号によって周波数変調したFSK信号や、振幅変調したASK信号を送信する。
【0006】
ところで、携帯用送受信機から送信される高周波無線信号がFSK信号を含んだものである場合には、車載用送受信機の受信機として、そのFSK信号を受信処理できる受信機、とりわけFSK検波回路を有する受信機を用いる必要があり、このような受信機の一例としては、特開2002−27004号公報に開示された受信機がある。
【0007】
ここで、図3は、特開2002−27004号公報に開示された受信機の要部構成を示すブロック図である。
【0008】
図3に示されるように、この受信機は、受信アンテナ41と、バンドパスフィルタ(BPF)42と、高周波増幅段(RF−A)43と、ミキサ段44と、局部発振器(L.O)45と、中間周波フィルタ(IF−F)46と、リミッタアンプ(LM)47と、乗算回路(MPX)48(1)とLC並列共振回路48(2)と90°移相コンデンサ48(3)とからなるクワッドラチャ検波回路48と、ローパスフィルタ(LF)49と、増幅段(AMP)50と、比較器51と、利用回路52とからなっている。この場合、クワッドラチャ検波回路48は、第1入力端及び第2入力端を持った乗算回路48(1)と、インダクタ及びキャパシタを並列接続したLC並列共振回路48(2)と、90°移相コンデンサ48(3)とにより構成されており、乗算回路48(1)の第1入力端と第2入力端との間に90°移相コンデンサ48(3)が接続され、乗算回路48(1)の第2入力端と接地点間にLC並列共振回路48(2)が接続されたものである。
【0009】
前記構成を有するこの受信機は、概略、次のように動作する。
【0010】
FSK信号を含んだ高周波無線信号(以下、ここではFSK信号を含んだ高周波無線信号を高周波信号という)が受信アンテナ41で受信されると、受信された高周波信号は、バンドパスフィルタ42において信号帯域外の不要な周波数成分が除去され、次いで、高周波増幅段43において所定の信号レベルになるように増幅された後、ミキサ段44の第1入力端に供給される。このとき、ミキサ段44の第2入力端には局部発振器45から出力された局部発振信号が供給され、それによってミキサ段44において高周波信号と局部発振信号とが周波数混合され、ミキサ段44から周波数混合信号が出力される。ミキサ段44の出力周波数混合信号は、中間周波フィルタ46によってそれら2つの信号の差周波数である中間周波(IF)信号が抽出され、抽出された中間周波信号は、リミッタアンプ47において制限増幅された後、次続のクワッドラチャ検波回路48の乗算回路48(1)の第1入力端に供給される。これと同時に、中間周波信号は、90°移相コンデンサ48(3)により90°移相され、乗算回路48(1)の第2入力端に供給される。
【0011】
クワッドラチャ検波回路48は、乗算回路48(1)において、第1入力端に供給された中間周波信号と第2入力端に供給された90°移相された中間周波信号とが乗算され、その乗算により乗算回路48(1)からFSK検波信号が出力される。このFSK検波信号は、ローパスフィルタ49においてFSK検波信号以外の不要な信号成分が除去され、次いで増幅段50において所要の信号レベルになるように増幅された後、比較器51に供給される。比較器51は、増幅したFSK検波信号からコード化データを発生させ、得られたコード化データを利用回路52に供給し、利用回路52の制御が行われる。
【0012】
前述のような受信機に用いられるクワッドラチャ検波回路48には、LC並列共振回路48(2)の容量素子を電圧可変容量素子にし、増幅段50の出力から導出されるAFC(自動周波数制御)信号をLC並列共振回路48(2)の電圧可変容量素子に加える手段を採用したもの、すなわち、LC並列共振回路48(2)の電圧可変容量素子のキャパシタンス値をAFC信号に応じて変化させることにより、その並列共振周波数を変化させ、クワッドラチャ検波回路48において検波可能なFSK信号の信号帯域幅、すなわちこの受信機における受信可能な信号帯域幅を拡げるようにした手段が知られている。
【0013】
そして、かかる手段を採用したクワッドラチャ検波回路48における検波可能な中間周波信号帯域幅と、当該手段を採用する前のクワッドラチャ検波回路48における検波可能な中間周波信号帯域幅とを比べると、後者の当該中間周波信号帯域幅が±1kHz程度であるのに対して、前者の当該中間周波信号帯域幅が±7乃至8kHzというように大きく拡大されたものになっている。
【特許文献1】特開2002−27004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このように、クワッドラチャ検波回路48において、AFC信号をLC並列共振回路48(2)に印加し、LC並列共振回路48(2)の並列共振周波数を変化させる手段を採用すれば、クワッドラチャ検波回路48における検波可能なFSK信号の中間周波信号帯域幅を、±1kHzから±7乃至8kHzというように大きく拡大することができるものである。しかるに、この種の受信機においては、受信可能なFSK信号の範囲をさらに拡げるため、当該中間周波信号帯域幅を±7乃至8kHzから±10kHz程度にまで拡げたいという要望が出されている。しかしながら、AFC信号をLC並列共振回路48(2)に印加してLC並列共振回路48(2)の並列共振周波数を変化させる手段を採用しただけでは、さらに当該中間周波信号帯域幅を±2乃至3kHz拡げることは難しいもので、この点の解決が待たれている。
【0015】
本発明は、このような技術的背景に鑑みてなされたもので、その目的は、共振回路の第1バラクタダイオードとPLL回路の周波数決定回路の第2バラクタダイオードにAFC信号を印加し、受信感度を損わずに、受信可能な信号帯域幅をより拡大したFSK信号受信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明によるFSK信号受信機は、高周波信号を中間周波信号に変換する周波数変換部と、中間周波信号を増幅する中間周波増幅部と、中間周波信号をFSK検波してFSK検波信号とAFC信号を導出するFSK検波部とからなるものであって、FSK検波部は、第1入力端にFSK信号、第2入力端に90°移相したFSK信号が供給される乗算回路と、第2入力端に接続され、セラミックフィルタとAFC信号が印加された第1バラクタダイオードとを並列接続した共振回路とからなるクワッドラチャ検波回路を有し、周波数変換部は、局部発振信号を発生するPLL回路を備え、PLL回路の周波数決定回路にAFC信号が印加された第2バラクタダイオードを含んでいる手段を具備する。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明に係るFSK信号受信機によれば、クワッドラチャ検波回路における共振回路にAFC信号を印加した第1バラクタダイオードを接続し、AFC信号に応じて共振回路の共振周波数を変化させてFSK信号に対して検波可能な中間周波信号帯域幅を拡げるとともに、PLL回路の周波数決定回路にAFC信号が印加された第2バラクタダイオードを接続し、PLL回路から出力される局部発振周波数をAFC信号に応じて変化させるので、中間周波回路の信号帯域幅を変えずに、すなわと中間周波回路の信号受信感度を損なうことなく、受信可能な信号帯域幅をより拡大することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明によるFSK信号受信機の一つの実施の形態であって、その要部構成を示すブロック図である。
【0020】
図1に示されるように、この実施の形態によるFSK信号受信機は、高周波信号入力端子1と、バンドパスフィルタ(BPF)2と、低雑音高周波増幅段(LNA)3と、高周波フィルタ(RF−FIL)4と、第1ミキサ段(MIX 1)5と、第1中間周波フィルタ(IF−FIL1)6と、第2ミキサ段(MIX 2)7と、第2中間周波フィルタ(IF−FIL2)8と、PLL回路(PLL)9と、周波数決定回路10と、中間周波増幅段(IFA)11と、リミッタアンプ(LM)12と、乗算回路(MPX)13と、共振回路14と、90°移相回路15と、第1オペアンプ(OA1)16と、比較器(COM)17と、第2オペアンプ(OA2)18と、ローパスフィルタ(LF)19と、データ出力端子20とからなっている。なお、図1において、点線で囲まれた部分は、集積回路(IC)で構成された部分であり、点線外にある各種の素子は、集積回路に外付けされている素子である。
【0021】
PLL回路9は、外付けされた周波数決定回路10を有し、この周波数決定回路10は、水晶振動子10(1)と第2バラクタダイオード10(2)とコンデンサ10(3)と、トリマーコンデンサ10(4)とバッファ抵抗10(5)とを有している。乗算回路13と共振回路14と90°移相回路15とからなる回路部分は、全体でクワッドラチャ検波回路21を構成している。この場合、共振回路14は、セラミックディスクリミネータ(セラミックフィルタ)14(1)と、第1バラクタダイオード14(2)とそれに直列接続された直流阻止コンデンサ14(3)とが並列接続されたもので、第1バラクタダイオード14(2)には、第2オペアンプ18から導出されたAFC信号がバッファ抵抗14(4)を通して供給される。また、ローパスフィルタ19は、それぞれ2個の抵抗19(1)、19(2)と2個のコンデンサ19(3)、19(4)からなっている。
【0022】
そして、バンドパスフィルタ2は、入力端が高周波信号入力端子1に、出力端が低雑音高周波増幅段3の入力端に接続される。低雑音高周波増幅段3は、出力端が第1ミキサ段5の第1入力端に接続されるとともに高周波フィルタ4を通して接地接続される。第1ミキサ段5は、出力端が第2ミキサ段7の第1入力端に接続されるとともに第1中間周波フィルタ6を通して接地接続され、第2入力端がPLL回路9の第1出力端に接続される。第2ミキサ段7は、出力端が第2中間周波フィルタを通して中間周波増幅段11の入力端に接続され、第2入力端がPLL回路9の第2出力端に接続される。PLL回路9は、基準信号入力端が周波数決定回路10に接続される。周波数決定回路10は、水晶振動子10(1)に、第2バラクタダイオード10(2)、コンデンサ10(3)、トリマーコンデンサ10(4)の並列接続回路が直列接続されたもので、水晶振動子10(1)と第2バラクタダイオード10(2)の接続点にAFC信号がバッファ抵抗10(5)を通して供給される。
【0023】
また、中間周波増幅段11は、出力端がリミッタアンプ12の入力端に接続され、リミッタアンプ12は、出力端が直接乗算回路13の第1入力端13(1)に接続されるとともに90°移相コンデンサ15を通して乗算回路13の第2入力端13(2)に接続される。乗算回路13は、第2入力端13(2)が共振回路14を通して接地接続され、出力端が第1オペアンプ16の入力端に接続される。第1オペアンプ16は、出力端が比較器17の入力端に接続されるとともにローパスフィルタ19を通して第2オペアンプ18の入力端に接続される。この場合、第2オペアンプ18とローパスフィルタ19はアクティブローパスフィルタを構成している。比較器17は、出力端がデータ出力端子20に接続される。第2オペアンプ18は、出力端がバッファ抵抗14(4)を通して第1バラクタダイオード14(2)のカソードに接続され、同じくバッファ抵抗10(5)を通して第2バラクタダイオード10(2)のカソードに接続される。
【0024】
ここで、図1に図示されたこの実施の形態による受信機の動作について説明する。
【0025】
受信アンテナ(図1に図示なし)で受信されたFSK信号を含んだ高周波無線信号(以下、ここでもFSK信号を含んだ高周波無線信号を高周波信号という)が高周波信号入力端子1に供給されると、供給された高周波信号は、バンドパスフィルタ2において信号帯域外の不要な周波数成分が除去され、次いで、低雑音高周波増幅段3において所定の信号レベルになるように増幅される。低雑音高周波増幅段3から出力された高周波信号は、高周波フィルタ4において所定の信号周波数成分だけが抽出され、第1ミキサ段5の第1入力端に供給される。このとき、第1ミキサ段5の第2入力端にはPLL回路9の第1出力端から出力された第1局部発振信号が供給され、それによって第1ミキサ段5において高周波信号と第1局部発振信号とが周波数混合され、第1ミキサ段5から第1周波数混合信号が出力される。
【0026】
第1ミキサ段5から出力された第1周波数混合信号は、第1中間周波フィルタ6によってそれら2つの信号の差周波数である第1中間周波信号が抽出され、抽出された第1中間周波信号は、第2ミキサ段7の第1入力端に供給される。このときも、第2ミキサ段7の第2入力端にはPLL回路9の第2出力端から出力された第2局部発振信号が供給され、それによって第2ミキサ段7において第1中間周波信号と第2局部発振信号とが周波数混合され、第2ミキサ段7から第2周波数混合信号が出力される。第2ミキサ段7から出力された第2周波数混合信号は、第2中間周波フィルタ8によってそれら2つの信号の差周波数である第2中間周波信号が抽出され、抽出された第2中間周波信号は、中間周波増幅段11で所定信号レベルになるように増幅され、次いで、リミッタアンプ12において制限増幅された後、次続のクワッドラチャ検波回路21の乗算回路13の第1入力端13(1)に供給される。それと同時に、第2中間周波信号は、90°移相回路15により90°移相され、乗算回路13の第2入力端13(2)に供給される。
【0027】
クワッドラチャ検波回路21は、乗算回路13において、第1入力端13(1)に供給された第2中間周波信号(FSK信号)と第2入力端13(2)に供給された90°移相された第2中間周波信号(90°移相されたFSK信号)とが乗算され、その乗算によって乗算回路13の出力端にFSK検波信号が出力される。乗算回路13から出力されたFSK検波信号は、第1オペアンプ16において差動増幅され、比較器17で波形整形されてデータ出力端子20に供給され、データ出力端子20から図示されない利用回路に供給される。また、第1オペアンプ16の出力は、ローパスフィルタ19と第2オペアンプによって構成されるアクティブローパスフィルタを通してAFC信号(誤差信号)に変換される。
【0028】
第2比較器18から得られたAFC信号は、バッファ抵抗14(4)を通して第1バラクタダイオード14(2)のカソードとバッファ抵抗10(5)を通して第2バラクタダイオード10(2)のカソードにそれぞれ供給され、AFC信号に応じて第1バラクタダイオード14(2)の容量値と第2バラクタダイオード10(2)の容量値とを変化させる。すなわち、共振回路14にFSK信号が印加されたときに、FSK信号が高い周波数に変った状態にあると、AFC信号によって第1バラクタダイオード14(2)の容量値と第2バラクタダイオード10(2)の容量値とを減少させ、FSK信号が低い周波数に変移した状態にあると、第1バラクタダイオード14(2)の容量値と第2バラクタダイオード10(2)の容量値とを増加させるように動作する。
【0029】
ここで、図2は、図1に図示された受信機が呈するAFC信号に対する受信可能な信号周波数帯域比を表す特性図であって、横軸はVで表わしたAFC信号であり、縦軸はkHzで表わした信号周波数帯域比であって、曲線aは第1バラクタダイオード14(2)と第2バラクタダイオード10(2)とを併用した場合である。また、曲線bは第1バラクタダイオード14(2)だけを使用した場合であって、曲線aとの比較のために挙げたものである。
【0030】
図2の特性図に示されるように、共振回路14にAFC信号が印加された第1バラクタダイオード14(2)を用い、周波数決定回路10にAFC信号が印加された第2バラクタダイオード10(2)を用いた場合、曲線aに示すように、第1バラクタダイオード14(2)及び第2バラクタダイオード10(2)に供給されるAFC信号がその有効変化領域である0.5Vから4.5Vまで変動すると、この受信機の受信可能な信号帯域幅が中心周波数に対して略±10kHz程度になる。
【0031】
これに対して、共振回路14にAFC信号が印加された第1バラクタダイオード14(2)だけを用いた場合、曲線bに示すように、第1バラクタダイオード14(2)に供給されるAFC信号がその有効変化領域である0.5Vから4.5Vまで変動すると、この受信機の受信可能な信号帯域幅が中心周波数に対して略±8kHz程度であって、第2バラクタダイオード10(2)を併用すると、略±2kHz程度改善されるようになる。
【0032】
図2に図示された曲線aから判るように、共振回路14にAFC信号が印加された第1バラクタダイオード14(2)を用い、同時に、周波数決定回路10にAFC信号が印加された第2バラクタダイオード10(2)を用いると、この受信機の受信可能な信号帯域幅を、第1バラクタダイオード14(2)だけを用いたものに比べて受信可能な信号帯域幅を拡げることができるもので、このとき、第2バラクタダイオード10(2)の容量変化は、中間周波回路の信号帯域内においてクワッドラチャ検波回路21のS字検波特性を中間周波信号の中心周波数に対して高周波方向または低周波方向にスライドさせるものであるので、中間周波回路の信号帯域を変えることなく、受信可能な信号帯域幅を拡げることが可能になり、その結果、受信感度を損なうことなしに、受信可能な信号帯域幅を拡げることができるようになる。
【0033】
なお、前記実施の形態においては、周波数決定回路10として、水晶振動子10(1)に直列に、第2バラクタダイオード10(2)、コンデンサ10(3)、トリマーコンデンサ10(4)の並列接続回路を接続した構成のものを用いた例を挙げて説明したが、本発明に使用される周波数決定回路10は、かかる構成のものに限られるものでなく、少なくとも水晶振動子10(1)に直列に第2バラクタダイオード10(2)が接続されているものであれば、それら以外の容量素子の接続形態や接続個数等は任意に選択することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明によるFSK信号受信機の一つの実施の形態であって、その要部構成を示すブロック図である。
【図2】図1に図示された受信機が呈するAFC信号に対する受信可能な信号周波数帯域比を表す特性図である。
【図3】特開2002−27004号公報に開示された受信機の要部構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0035】
1 高周波信号入力端子
2 バンドパスフィルタ(BPF)
3 低雑音高周波増幅段(LNA)
4 高周波フィルタ(RF−FIL)
5 第1ミキサ段(MIX 1)
6 第1中間周波フィルタ(IF−FIL1)
7 第2ミキサ段(MIX 2)
8 第2中間周波フィルタ(IF−FIL2)
9 PLL回路(PLL)
10 周波数決定回路
10(1) 水晶振動子
10(2) 第2バラクタダイオード
10(3) コンデンサ
10(4) トリマーコンデンサ
11 中間周波増幅段(IFA)
12 リミッタアンプ(LM)
13 乗算回路(MPX)
13(1) 第1入力端
13(2) 第2入力端
14 LC並列共振回路
14(1) セラミックディスクリミネータ
14(2) 第1バラクタダイオード
15 90°移相コンデンサ
16 第1オペアンプ(OA1)
17 比較器(COM)
18 第2オペアンプ(OA2)
19 ローパスフィルタ(LF)
20 データ出力端子
21 クワッドラチャ検波回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号を中間周波信号に変換する周波数変換部と、中間周波信号を増幅する中間周波増幅部と、中間周波信号をFSK検波してFSK検波信号とAFC信号を導出するFSK検波部とからなるFSK信号受信機であって、前記FSK検波部は、第1入力端にFSK信号、第2入力端に90°移相したFSK信号が供給される乗算回路と、前記第2入力端に接続され、セラミックフィルタと前記AFC信号が印加された第1バラクタダイオードとを並列接続した共振回路とからなるクワッドラチャ検波回路を有し、前記周波数変換部は、局部発振信号を発生するPLL回路を備え、前記PLL回路の周波数決定回路に前記AFC信号が印加された第2バラクタダイオードを含んでいることを特徴とするFSK信号受信機。
【請求項2】
前記周波数決定回路は、水晶振動子と前記第2バラクタダイオードとの直列回路を備えていることを特徴とする請求項1に記載のFSK信号受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−33590(P2006−33590A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211625(P2004−211625)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】