説明

FVIII蛋白質及び単離核酸分子あるいはFVIII蛋白質をコードする修飾単離核酸配列、単離された核酸分子、発現ベクター、FVIII蛋白質を発現するホスト細胞、FVIII蛋白質を発現するヒト以外の形質転換生物、FVIII蛋白質を含む組成物、FVIII蛋白質を生成するための方法、FVIII蛋白質の利用、FVIII蛋白質を凝固に有効な量だけ投与するステップを含む方法

【課題】本発明は、FVIII蛋白質や修飾FVIIIポリペプチドの発現を可能にする一方、FVIII蛋白質を含む組成物、特に基質を含む医薬品組成物あるいは凍結乾燥された組成物を含む組成物を提供することを目的としている。
【解決手段】このため、FVIII蛋白質において、修飾FVIIIポリペプチドがエンドサイトーシスを行う可能性のある細胞と相互作用したりその細胞内部に取り込まれたりする能力が修飾されていない対応するFVIIIポリペプチドと比較して減少されたりなくなったりする。また、FVIII蛋白質において、修飾FVIIIポリペプチドがエンドサイトーシスを行う可能性のある細胞からの表面レセプタと相互作用する能力が減少されたりなくなったりする。更に、FVIII蛋白質において、修飾FVIIIポリペプチドの免疫源性がヒトにおいて実質的に低下されたりなくなったりする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、A型血友病患者治療用の脱マンノシル化遺伝子組換えFVIII(「因子VIII」ともいう。)に係り、実質的に非免疫源性であるか、あるいは免疫源性が低い修飾因子VIIIに関するものである。
本発明はさらに上記の修飾された因子VIIIをコードするDNAを含む核酸構成物、及びホスト細胞あるいは生物内で上記の修飾された因子VIIIを発現し生成するための方法に関している。
本発明はさらに、上記修飾された因子VIIIを個体に投与して出血不全を措置するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒトの因子VIII:C(FVIII)は、出血性不全とそれに罹患した男性の死亡の主要な要因であるX染色体に関連した出血性不全であるA型血友病においては十分な役割を果たさない凝固因子である。
従来、出血性不全は全血の注入によって措置されていた。
より最近になって、ヒトの血漿から抽出されたFVIII濃縮物製剤によって治療が行われるようになっている。
しかしながら、血漿から抽出された製品の使用は出血性患者を肝炎やAIDSなどのウィルス伝染性疾患の危険に曝す可能性がある。
このリスクを減らすためにコストがかかる精製方式を用いると治療コストの上昇を招く。
コストの増大と血漿抽出FVIIIの利用可能性が限定されていることから、予防的にではなく、むしろ要求ベースで成り行き任せに治療されている。
遺伝子組み換えで生産されたFVIIIは、純度と安全性、そして入手しやすさという面で血漿から抽出されたFVIIIよりかなり大きな利点を有しており、従って、遺伝子組み換えで生産されたFVIIIの開発に関してはかなりの研究努力が払われている。
FVIIIは特に活性化された後に不安定であるので、血漿から抽出されたものであれ遺伝子組み換えによるものであれ、治療効果を挙げるためには、大量の蛋白質を繰り返し投与する必要がある。
しかしながら、患者が露出されるFVIII蛋白質の量はその活性を抑制する抗体の形成発展と関係している。
こうした周知の免疫源性を考慮に入れると、治療剤として使用するための新しい遺伝子組み換え型のFVIII開発のひとつの目的は、こうした免疫反応を減少させるかあるいは一掃するような製品の開発である。
FVIIIは血液凝固の内因的な経路において因子IXaによる因子Xの活性化を促進する共因子として機能し、この反応はカルシウム・イオンの存在下でマイナスの電荷を有するリン脂質の表面で起きる反応である。
【0003】
FVIII分子は6つの構造的な領域に分けられ、それは三つ組みの領域A(A1、A2、A3)、炭化水素を豊富に含みそれほど重要な役割は果たさない中央領域(領域B)、及び二重化された領域C(C1、C2)である(図5参照)。
FVIIIはA1−とA3−領域の間の非共有二荷金属イオン結合によって結合された重鎖(領域A1−A2−B)と軽鎖(領域A3−C1−C2)の異種二量体として血漿内に分泌される。
血漿においては、FVIIIはフォン・ヴィレブランド因子に結合することによって安定化される。
より具体的には、FVIII軽鎖は非共有的な相互作用によってフォン・ヴィレブランド因子内のアミノ末端の主要結合部位に結合される。
トロンビンによる蛋白質分解性の活性化が開始されると、FVIIIは活性化されて2つの重鎖フラグメント(50kDaフラグメントであるA1と43kDaフラグメントであるA2)及び軽鎖(73kDa鎖であるA3−C1−C2)の異種二量体に変化する。
このFVIIIの活性化形態(FVIIIa)は従って上記の二荷金属イオン結合を通じてトロンビン切断A3−C1−C2軽鎖と結合されたA1‐サブユニットとイオン結合によってA1領域に結合された自由なA2サブユニットで構成されている。
このFVIIIa異種二量体は不安定であり、生理学的な諸条件の下でA2 サブユニットの解離により急激に不活性化される。
FVIII分子はN結合グリコシル化を可能にする25個のコンセンサス配列(Asn−Xxx−Thr/Ser)を含んでおり、そのうちの20個はグリコシル化されていることが示されている(1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,965,199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
FVIII蛋白質は機能的にはA型血友病に冒された患者から抽出された血漿での凝固不全を補うことができる因子と定義することができる。
A型血友病の治療を可能にするためには、ヒトやブタの血漿から精製され、そしてより最近では組み換えDNA技術によってつくりだされている。
米国特許第4,965,199は、例えば、哺乳動物のホスト細胞で治療的に役に立つ量のFVIIIを遺伝子組み換えによって生産するために開発された方法を開示している。
CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞及びBHKC(生まれたてのハムスターの腎臓細胞)でのヒトFVIIIの発現も報告されており、より最近では、領域B欠失FVIIIの有効性も臨床実験で報告されている(米国特許第4,868,112、引用文献2)。
【0006】
市場で入手できる治療用FVIII製品には全長rFVIII(Kogenate(登録商標) Bayer, Advate(登録商標) Baxter, Helixate(登録商標) CSL−Behring)及び領域B欠失rFVIII(RefactoR Wyeth)などの血漿抽出FVIII(pdFVIII)と遺伝子組み換えFVIII(rFVIII)製品がある。
【0007】
しかしながら、治療用のFVIIIが入手できるにも係らず、性質を強化したFVIII類似物に対するニーズが依然として高い。実際、治療用FVIII(pdFVIIIあるいはrFVIII)によるA型血友病患者の治療は、治療用に投与されるFVIII(3,4)の凝固促進活性を中和する抗FVIII抗体(抑制因子)の出現以後、全臨床例の15−30%の範囲にとどまっている。
抑制因子の出現は外来性FVIII蛋白質の投与を繰り返した場合の類似の免疫反応を反映していると考えられる。
一部の血友病は外来性遺伝子組み換え因子VIIIに対しては極端に鋭敏な反応を示し、その治療の有効性を制限する抗因子VIII抗体を形成する。
従って、FVIII抑制因子の形成は、FVIII抑制因子をつくりだす患者が通常の代替治療に対して抵抗性を示すようになるので、医療上の重大な障害になると同時に重大な社会的関心の対象ともなっている。
FVIII抑制因子の出現は治療コストを三倍増大させるとともに(5)、患者の生活の質に劇的な影響を及ぼし、患者の不全状態や死亡を増大させる。
加えて、治療対象のヒトの体内での循環時間が増大したFVIIIを提供するのが高度に望ましく、これはA型血友病の場合のように慢性的及び度々繰り返される疾病では特に有効であろう。
【0008】
FVIIIに対すると有免疫反応の第一段階は抗原提示細胞(APC)によるFVIIIのエンドサイトーシスにあることが示された。
樹状細胞(DC)は外部の影響を受けいないT細胞の活性化とそれに対応する抗原固有免疫反応を開始させる上で最も強力なAPCであることが示唆されている(6,7)。
DCによる抗原エンドサイトーシスは一般的にはマクロピノサイトーシスあるいはレセプタ媒介エンドサイトーシスによって行われる。
実際、DCの表面は無数の細胞内レセプタを示しており、その大部分は二荷イオン、多くの場合カルシウム・イオンの存在に依存している。
多くの細胞内レセプタは、それらが露出された炭水化物認識領域(CRD)を有しているので、抗原上に存在する糖残基に固有性を示し(8)、Cタイプ・レクチン・レセプタ(CLR)と呼ばれている。
1つの抗原上のマンノース残基はDC表面上の一連のマンノース感作性CLRによって認識されることが可能である。
これらのマンノース感作性CLRには、マンノース・レセプタ(MR、CD206)、樹状細胞固有ICAM3グラビング・ノンインテグリン(DC−SIGN, CD209)、デクチン、DEC−205(CD205)などが含まれる。
ポリカーボハイドレート・マンナンは、特にMR及びDC−SIGNに関してこれらのマンノース感作性CLRのためのリガンドであることが示されている(9−11)。
DC上のDC−SIGN分子はICAM−3をT細胞上に固定する。この特殊な相互作用がDCとT細胞間の免疫学的シナプスの開始において重要な役割を果たしているようだ。
従って、リンパ球の活性化はブロッキング抗体抗DC−SIGNによって抑止される可能性がある。
【0009】
FVIII免疫反応の影響を減らすためのいくつかの措置が示された。
例えば、デスモプレシン(FVIIIの生成を促す合成ホルモン)、凝固促進因子(例えばプロトロンビン複合体濃縮物あるいは活性化されたプロトロンビン複合体濃縮物)、遺伝子組み換え因子VIIIaあるいはFVIIIの潅流を用いた耐性を誘発させるための措置などである。
【0010】
その他の抗体の可変領域と相互作用する抗イディオタイプ抗体の使用を内容とする新しい方法が開発され、この方法は上記の抑制因子抗体を中和することを目的としている(12)。
この方法によって、抗FVIII C1領域に向けられたIgG4カッパー・モノクローナル・ヒト抗体が単離され、この抗体はFVIIIの共因子活性及びそのフォン・ウィルブランド因子(vWF)への結合を阻止する働きをする(13)。
同様に、ヒト・モノクローナル抗体抗FVIII C2領域であるBO2C11(IgG4カッパー)も単離され(14)、これはFVIIIのvWF及びリン脂質への結合を抑制するものである。
従って、この抗体は天然及び活性化されたFVIIIの凝固促進作用を完全に抑止する。
モノクローナル抗体の他の例はBOIIB2で、これはFVIII A2領域に向けられたものであり、FVIIIの活性を99%は阻止する。
しかしながら、FVIII誘発免疫反応はポリクローナルな反応であり、抗FVIII抗体に向けられた抗イディオタイプ抗体の使用を内容とする措置ではFVIII免疫反応を部分的に中和出来ただけである。
【0011】
本出願人は、最近、FVIIIのマンノース終端グリコシル化が未成熟なヒト樹状細胞(DC)によるFVIIIの内部化を媒介することを実証した。
これらの結果は、FVIII上に存在するマンノシル化された糖とDCマンノース・レセプタの間の相互作用の抑止がFVIIIの内部化とFVIII固有T細胞の一層の生成を減少させることを実証した。
従って、FVIII免疫源性の減少は、それがマンノース感作性レセプタと相互作用する能力を低下させることで達成できる。
【0012】
本出願人は、さらに驚くべきことに、DCによって示された場合に、アスパラギン239(Asn239)及びアスパラギン2118(Asn2118)から選択される1つ以上のアミノ酸が置換あるいは決失されてT細胞を活性化させる修飾FVIIIの能力がかなり減少あるいはなくされて、患者に対して非免疫源的な、あるいは免疫源性がより低い治療用FVIIIを提供できる可能性があることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、修飾FVIIIポリペプチドを含むFVIII蛋白質において、前記修飾FVIIIポリペプチドがエンドサイトーシスを行う可能性のある細胞と相互作用したりその細胞内部に取り込まれたりする能力が修飾されていない対応するFVIIIポリペプチドと比較して減少されたりなくなったりすることを特徴とする。
また、修飾FVIIIポリペプチドを含むFVIII蛋白質において、前記修飾FVIIIポリペプチドがエンドサイトーシスを行う可能性のある細胞からの表面レセプタと相互作用する能力が減少されたりなくなったりすることを特徴とする。
更に、修飾FVIIIポリペプチドを含むFVIII蛋白質において、前記修飾FVIIIポリペプチドの免疫源性がヒトにおいて実質的に低下されたりなくなったりすることを特徴とする。
【0014】
本発明は修飾FVIIIポリペプチドを含むFVIII蛋白質を提供し、この修飾FVIIIポリペプチドがエンドサイトーシス可能な細胞と相互作用したりその細胞に取り込まれる能力が、修飾されていない対応するFVIIIポリペプチドと比較して低下したり、あるいはその能力がなくなることを特徴としている。
【0015】
1つの具体的な実施の形態では、本発明はエンドサイトーシス可能な細胞からの表面レセプタと相互作用する能力がその表面レセプタがマンノース感作性レセプタである場合に低下したりなくなったりする修飾FVIIIポリペプチドを提供するものであり、特に、表面レセプタがマンノース感作性レセプタであり、さらに具体的にはその表面レセプタがマンノース・レセプタ(MR,CD206)、非インテグリン(DC−SIGN、CD209)を取り込む樹状細胞固有ICAM3、デクチン、及びDEC−205(CD205)で構成される群から選択される場合に、その能力が低下したりなくなったりする修飾FVIIIポリペプチドを提供するものである。
1つの特殊な実施の形態では、エンドサイトーシス可能な細胞は抗原発生細胞(APC)、そして特に樹状細胞、マクロファージ、内皮細胞、あるいはBリンパ球細胞である。
【0016】
他の1つの具体的な実施の形態では、本発明はその免疫源性がヒトにおいて著しく低下されたりなくなったりする修飾FVIIIポリペプチドを提供する。
【0017】
他の態様では、本発明の修飾FVIIIは実質的に脱グリコシル化され、より具体的には本発明の修飾FVIIIポリペプチドは実質的にはマンノース残基脱グリコシル化FVIIIポリペプチドによって終端されたグリカン構造である。
【0018】
より具体的には、本発明の修飾FVIIIポリペプチドはコンセンサス配列Asn−Xxx−Thr/Serを有するグリコシル化コンセンサス・サイトの少なくとも1つのアミノ酸が置換されているか欠失している。
上の式でXxxはいずれかのアミノ酸を示す。
より具体的には、本発明の修飾FVIIIポリペプチドは配列番号SEQ ID No.2で示されている全長ヒトFVIIIポリペプチド配列と比較して、アスパラギン239、アスパラギン2118、セリン241及びトレオニン2120で構成される群から選択される少なくとも1つのアミノ酸の置換あるいは欠失を含んでいる。
1つの具体的な実施の形態で、アスパラギン239は、アラニン、グリシン、セリン、グルタミン、トレオニン、アスパル酸あるいはグルタミン酸で構成される群から選択されるアミノ酸で置換されている。
さらに別の具体的な実施の形態では、アスパラギン239がアラニンで置換されており、そして/又はアスパラギン2118がアラニンで置換されている。
さらに別の実施の形態で、アスパラギン239はグルタミンで置換されており、そして/又はアスパラギン2118がグルタミンで置換されている。
別の実施の形態では、アスパラギン239がグルタミンで置換されており、そして/又はアスパラギン2118がアラニンで置換されている。
別の実施の形態では、アスパラギン239がグルタミンで置換されており、アスパラギン2118がアラニンで置換されている。さらに別の実施の形態では、アスパラギン239がグルタミンで置換されており、そしてアスパラギンがアラニンで置換されている。
別の具体的な実施の形態では、本発明による修飾FVIIIポリペプチドは、(i)配列番号SEQ ID No.6及び/又は(ii)アミノ酸配列SEQ ID No.8の少なくとも1つを含んでいる。
別の具体的な実施の形態では、本発明の修飾FVIIIポリペプチドは(i)配列番号SEQ ID No.12及び/又は(ii)アミノ酸配列SEQ ID No.14の少なくとも1つを含んでいる。
さらに別の具体的な実施の形態では、本発明の修飾FVIIIポリペプチドは(i)配列番号SEQ ID No.6及び/又は(ii)アミノ酸配列SEQ ID No.14を含んでいる。さらに別の実施の形態では、本発明の修飾FVIIIポリペプチドは(i)アミノ酸配列番号SEQ ID No.12及び/又は(ii)アミノ酸配列SEQ ID No.8を含んでいる。
【0019】
別の態様では、本発明の修飾FVIIIポリペプチドは凝固促進因子活性FVIII蛋白質である。
【0020】
他の実施態様では、本発明の修飾FVIIIポリペプチドは配列番号SEQ ID No.10で示されるB領域の全体あるいはその一部が欠失されている。
他の好ましい実施の形態では、本発明による修飾FVIIIポリペプチドはB領域が部分的に欠失しており、より好ましくは、本発明の修飾FVIIIポリペプチドは少なくともB領域の最初の226アミノ酸を含んでいる(配列番号SEQ ID No.10と比較して)。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、本発明による修飾FVIIIポリペプチドで構成されるFVIII蛋白質をコードする単離された核酸分子あるいは修飾され単離された核酸配列を提供することである。
1つの具体的な実施の形態で、FVIII蛋白質をコードする核酸配列は、(1)配列番号SEQ ID No.5で示される核酸配列及び/又は(ii)配列番号No.7で示される核酸配列の少なくとも1つを含んでいる。
さらに別の実施の形態では、FVIII蛋白質をコードする上記の核酸配列は、高刺激性条件の下で、(i))配列番号SEQ ID No.5の核酸配列及び/又は(ii) )配列番号SEQ ID No.7の核酸配列の少なくとも1つとハイブリダイズすることができる単離された核酸分子を含んでいる。
【0022】
他の1つの具体的な実施の形態で、FVIII蛋白質をコードする核酸配列は(i)配列番号SEQ ID No.11及び/又は(ii)配列番号SEQ ID No.13の少なくとも1つを含んでいる。
さらに別の具体的な実施の形態では、FVIII蛋白質をコードする核酸配列は高刺激性条件の下で(i)配列番号SEQ ID No.11及び/又は(ii)配列番号SEQ ID No.13の少なくとも1つとハイブリダイズすることができる単離された核酸分子を含んでいる。
【0023】
別の具体的な実施の形態で、FVIII蛋白質をコードする核酸配列は、(i)配列番号SEQ ID No.5及び/又は(ii)配列番号SEQ ID No.13の少なくとも1つを含んでいる。
さらに別の実施の形態で、FVIII蛋白質をコードする上記の核酸配列は、高刺激性条件の下で(i)配列番号SEQ ID No.5及び/又は(ii)配列番号SEQ ID No.13の少なくとも1つとハイブリダイズすることができる単離された核酸分子を含んでいる。
【0024】
別の実施の形態で、FVIII蛋白質をコードする上記の核酸配列は、(i)配列番号SEQ ID No.11及び/又は(ii)配列番号SEQ ID No.7の少なくとも1つを含んでいる。
さらに別の具体的な実施の形態で、FVIII蛋白質をコードする上記の核酸配列は、高刺激性条件下で、(i)配列番号SEQ ID No.11及び/又は(ii)配列番号SEQ ID No.7の少なくとも1つとハイブリダイズすることができる単離された核酸分子を含んでいる。
【0025】
本発明はさらに、本発明の単離された核酸分子か、あるいは本発明の修飾されたFVIIIポリペプチドをコードする単離された核酸分子を含む発現ベクターを提供する。
【0026】
本発明の1つの目的は、本発明のFVIII蛋白質や修飾FVIIIポリペプチドの発現を可能にする本発明の単離された核酸分子を含む発現ベクターでトランスフェクトされたホスト細胞を提供することである。
【0027】
本発明はさらに、本発明のFVIII蛋白質を発現する非ヒト形質導入生物、特に、微生物、ヒト以外の動物あるいは植物、そして哺乳動物から選択される生物を提供する。
【0028】
本発明のもう1つの目的は、本発明で開示されているようなFVIII蛋白質を含む組成物、特にさらに医薬品として受け入れられる基質を含む医薬品組成物あるいは凍結乾燥された組成物を含む組成物を提供することである。
【0029】
本発明の他の目的は、本発明によるFVIII蛋白質を生産するための方法を提供することであり、この方法は、培地で本発明の核酸分子かあるいは本発明のFVIII蛋白質をコードする酢酸分子て形質転換あるいはトランスフェクトされたホスト細胞を培養するステップと、そして、上記核酸分子の発現によってもたらされたFVIII蛋白質を上記のホスト細胞及び/又は細胞培地から単離するステップで構成されている。
【0030】
本発明はまた、出血性疾患、特にFVIII不全を特徴とする疾患、より具体的にはA型血友病及び後天的A型血友病の治療のために本発明によるFVIII蛋白質の使用を可能にするものである。
【0031】
1つの具体的な実施の形態で、本発明はA型血友病あるいは後天的A型血友病を治療するための治療薬の製造のために本発明のFVIII蛋白質の使用を可能ならしめるものであり、凝固に有効な量の本発明のFVIII蛋白質をそれを必要とする患者に投与するステップを含むA型血友病患者を措置するための方法を提供する。
【発明の効果】
【0032】
以上詳細に説明した如くこの発明によれば、FVIII蛋白質や修飾FVIIIポリペプチドの発現を可能にする、単離された核酸分子を含む発現ベクターでトランスフェクトされたホスト細胞を提供することができる。
また、この発明は、FVIII蛋白質を含む組成物、特にさらに医薬品として受け入れられる基質を含む医薬品組成物あるいは凍結乾燥された組成物を含む組成物を提供することができる。
更に、この発明は、FVIII蛋白質を生産するための方法を提供することができる。
更にまた、この発明は、出血性疾患、特にFVIII不全を特徴とする疾患、より具体的にはA型血友病及び後天的A型血友病の治療のために、FVIII蛋白質の使用を可能にすることができる。
また、この発明は、A型血友病あるいは後天的A型血友病を治療するための治療薬の製造のために、FVIII蛋白質の使用を可能ならしめる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1:FVIIIの樹状細胞(DC)へのマンノース感作性進入(A)FVIII(40μg/ml)を加える2時間前に、5mM EDTA、1mg/mlマンナン、あるいは1mg/ml Dガラクトースで37℃の温度下で30分間予備培養した。 報告された数値は[(37℃MFIinh4℃MFImedium)/(37℃MFImedium4℃MFImedium)]x100で定義される相対抗原取り込み量を示し、この式において、MFIinhとは抑制因子の存在下で検出されるMFIを意味する。 結果は12名のドナーから得られたもので、統計的な有意差は対になっていない学生テストを用いて生データで計算された。(B)マンナンによるDCでのエンドサイトーシスの抑止。 マンナン(1mg/ml)によるDCの予備培養に続いて、デキストラン―FITC(50μg/ml)あるいはルシフェール・イェロウ(200μg/ml)が2時間かけて加えられた。
【図2】図2:DCによるFVIIIのマンノース感作性取り込みはFVIII誘導ペプチドのFVIII固有CD4+T細胞への変化を示す。(A)DRB1*1501/DRB*01の健康なドナーからのDCを培地だけ、及びマンナン(1mg/ml)あるいは抗CD206IgG(10 μg/ml)の存在下で培養し(10000細胞/ウェル)、その後、FVIIIの量を変えて(5.56、2.78、あるいは1.39μg/ml)、20U/ml rhIL−2の条件で2時間37℃の温度下でFVIII固有T細胞クローンD9E9(5000細胞/ウェル)を用いて培養を行った。 T細胞の活性化を培養上澄液内でのIFN−ガンマの放出によって評価した。結果は、3−8の独立した実験の中の1つの典型的な実験で得られたものである。 IFN−ガンマのイールドはD9E9の種々のバッチとそれぞれの実験で用いられたドナーのDC供給源によって変化した。(B)MHC II適合ドナーからのDCをマンナン(1mg/ml)あるいは抗CD206IgG(10 μg/ml)の存在下で予備培養してから、FVIII(5.56μg/ml)あるいはペプチドI2144−T2161(配列番号SEQ ID No. 9)(2μg/ml)及びD9E9を加えた。 各実験で、IFNガンマ生成をそれぞれの実験で得られた最大値で示した(*:P<0.0001、マン−ホイットニー・テストで評価したもの)。 結果は3つのそれぞれ独立した実験で得られたもの。(C)ヒトFVIII固有HLA適合B細胞株LE2E9及びBO2C11、あるいはDCをFVIII(10μg/ml)及びD9E9の存在下で培養した。
【図3】図3:B領域外に存在する予想されたマンノース残基はDCによるFVIIIエンドサイトーシスにおいて重要な役割を果たし、T細胞の活性化をもたらす。(A)DCをマンナン(1,5,10,100及び1000μg/ml)で予備培養してから、FVIII(40μg/ml43nM、黒丸)及びBDD−FVIII(24.31μg/ml、143nM、白丸)、あるいはデキストランFITC(50μg/ml)を加えた。 抗原の取り込みをフロー・サイトメトリで分析した。抑止率はそれぞれの条件でマンナンなしの場合と比較して計算した。 2つの独立した実験の代表的な結果。(B)天然あるいはエンドFIで処理したBDD―FVIII(3.7μg/ml)を7.5%SDS―PAGEで分離して、ニトロセルロース膜上に移した。 移された蛋白質はProtogold(登録商標)で定性するか、あるいはアルカリ性ホスファターゼ接合抗ヒトIgGを用いて10μg/mlCTLD4−7−Fcを用いて培養した。 その軽鎖(LC)と重鎖(HC)をLC及びHC固有モノクローナル抗FVIIIIgGを用いて識別した(図示せず)。(C)BDD−FVIIIのEndoFI措置によるT細胞の活性低下。 結果は3つの独立した実験のうちの1つの代表例を示す。IFNガンマのイールドはD9E9のバッチとそれぞれの実験で用いられたヒトDCの供給源に応じて変化した。 3つの実験の結果を統計的に比較するために、IFNガンマの産出を3つの実験それぞれの最大値を基準として標準化した。 T細胞活性化の標準化されたレベルでの差は、ANOVA及びフィッシャーのPSLDテスト(P<0.0001、データ示さず)の間に評価した限りでは、”medium”と“EndoF1−措置”のと間ではかなり有意の差であった。
【図4】図4:野生タイプあるいは突然変異体FVIII軽鎖によるFVIII固有T細胞クローン(D9E9)の活性化(A)T細胞活性化につながるFVIIIの野生タイプ軽鎖のマンノース感作性DC進入の確認。 FVIIIの精製された血漿誘導軽鎖(野生種LCh)をEndo−F1で処理した。 マンナン(1mg/ml)の存在下での天然野生タイプLch、野生タイプ軽鎖とEndoF1で措置した野生タイプの軽鎖をDC(パネルA)あるいはFVIII固有B細胞クローン(BO2C11、パネルB)に加えて、D9E9細胞と20時間共培養した。 D9E9の活性化は、ELISAで培養上澄み液内のIFN−ガンマを測定することによって評価した。(C)及び(D)FVIII軽鎖のサイトに向けた突然変異発生によるD9E9の活性化の喪失。 BO2C11 B細胞クローンとモノサイト誘導DCを野生タイプLCh(パネルC)あるいは突然変異Asn2118Ala LCh(パネルD)の存在下でD9E9を用いて培養された。 D9E9の活性化を培養上澄み液内のIFNガンマを20時間後に測定することで評価した。
【図5】図5:全長FVIII構造の図式表示 全長ヘテロ二量体ヒトFVIII(配列番号SEQ ID No. 2)は2332個のアミノ酸で構成されており、残基1−1648に対応し領域Al−al−A2−a2−Bを含む『重鎖』をその範囲内に収める共に、さらに、残基1649−2332に対応すると同時に領域a3−A3−C1−C2(アミノ酸残基の番号付けは配列番号SEQ ID No. 2に示されるアミノ酸配列に対応する)を含む『軽鎖』をその範囲内に含んでいる。 FVIII分子はN結合グリコシル化を可能にする25のコンセンサス配列(Asn−Xxx−Thr/Ser)を含んでおり、そしてこの配列のうちの20個はグリコシル化されていることが示された(1)。
【図6】図6:天然全長ヒトFVIII(配列番号SEQ ID No. 1)のアミノ酸配列 下線を付したアミノ酸配列は天然全長ヒトFVIIIの最初の19のアミノ酸を含む信号ペプチドに対応する。 全長ヘテロ二量体ヒトFVIII(配列番号 SEQ ID No. 2)の古典的なアミノ酸番号付けは、位置20に位置するアラニン残基で始まっている。太字で示すアミノ酸残基はコンセンサス・グリコシル化サイトに対応しており、これらのサイトは本発明の実施の形態では優先的に改変される。 B領域はSEQ ID No.1で示されているアミノ酸配列の位置760から位置1667にわたるアミノ酸配列(図6に図示)に対応している。 実施例6で比較対照として用いられており、「FVIIIの精製血漿誘導軽鎖」と称されている天然軽鎖はSEQ ID No.1のアミノ酸配列の位置1668から位置2351(図6に図示)に対応している。 天然のヒトFVIIIの重鎖はSEQ ID No.1のアミノ酸配列の位置19から位置759(図6に図示)に対応している。
【図7】図7:BDD(B領域決失)−ヒトFVIII FVIIIのB領域は凝固促進作用には不可欠ではないことが示された。 図7は、B領域が配列番号SEQ ID No.2の全長ヒトFVIIIから取り除かれた場合に得られるB領域決失ヒトFVIIIに対応するアミノ酸配列と核酸配列の両方を示している。 これらのアミノ酸配列と核酸配列を、アミノ酸(上側)が対応する核酸コドン(下側)と向き合うように合わせた。 BDD−ヒトFVIIIに対応するこれらのアミノ酸配列と核酸配列は相互に無関係に番号付けがなされている(番号は配列の右側に示されている)。 図7に示されているBDDヒトFVIIIのアミノ酸配列は配列番号SEQ ID No.4に対応している。 図7に示されているBDDヒトFVIIIの核酸配列は配列番号SEQ ID No.3に対応している。 太字で示してあるアミノ酸残基(あるいは対応する核酸残基)は本発明の1つの実施の形態において優先的に修飾されるコンセンサス・グリコシル化サイトに対応する。 停止コドンの上に*を示してある。
【図8】図8:Asnを位置239のAlaと置換することにより修飾されたヒトFVIII重鎖(配列番号 SEQ ID No. 2で示す全長ヒトFVIII配列に関連して) 図8は本発明の1つの具体的な実施の形態で実現されたヒトFVIIIの修飾重鎖に対応するアミノ酸配列と核酸配列の両方を示している。これらのアミノ酸配列と核酸配列を、各アミノ酸(上側)が対応する核酸コドン(下側)と向き合うようにして示してある。ヒトFVIIIの修飾重鎖に対応するアミノ酸配列と核酸配列には相互にはまったく無関係に番号付けがなされている(番号は配列の右側に示す)。 図8に示すヒトFVIIIの修飾重鎖のアミノ酸配列は配列番号 SEQ ID No.6の配列に対応する。図8に示すヒトFVIIIの修飾重鎖の核酸配列は配列番号 SEQ ID No. 5の配列に対応する。太字で示すアミノ酸残基(アラニン)(あるいはそれに対応する核酸コドン)は本発明の1つの実施の形態で修飾されたグリコシル化サイト(Asn239)に対応している。
【図9】図9: Asnを位置2118のAlaと置換することにより修飾されたヒトFVIII軽鎖 (配列番号 SEQ ID No.2で示す全長ヒトFVIII配列に関連して) 図9は本発明の1つの具体的な実施の形態で実現されたヒトFVIIIの修飾軽鎖に対応するアミノ酸配列と核酸配列の両方を示している。 これらのアミノ酸配列と核酸配列を、各アミノ酸(上側)が対応する核酸コドン(下側)と向き合うようにして示してある。 ヒトFVIIIの修飾軽鎖に対応するアミノ酸配列と核酸配列には相互にはまったく無関係に番号付けがなされている(番号は配列の右側に示す)。 図8に示すヒトFVIIIの修飾軽鎖のアミノ酸配列は配列番号 SEQ ID No.8の配列に対応する。 図8に示すヒトFVIIIの修飾軽鎖の核酸配列は配列番号 SEQ ID No.7の配列に対応する。 太字で示すアミノ酸残基(アラニン)(あるいはそれに対応する核酸コドン)は本発明の1つの実施の形態で修飾されたグリコシル化サイト(Asn2218)に対応している。
【図10】図10:野生タイプあるいは突然変異体FVIII軽鎖によるマウス内での抗FVIII IgGの生成 ヒトFVIIIの精製された血漿誘導軽鎖(wtLCh)とFVIIIの突然変異されたLCh(Asn2118Ala LCh)を、一週間ごとに4回、FVIII欠失マウスに、静脈経由で注射した(200μL PBS内に0.2μg蛋白質)。 四回目の注射から1週間後に、マウスを出血させて、FVIII固有ELISAを用いて抗FVIIIIgGのレベルを調べた。 90倍に希釈したマウス血清をヒトFVIIIで被覆したELISAプレートで培養した。(Recombinate、Baxter) Bound IgGをペロキシダーゼとその基質であるOPDに結合された抗マウスIgGを用いて明らかにした。 分光計(Tecan Genyos)を用いて492nmで光学密度を測定した。
【図11】図11:三種類のマンノース残基終端グリカン構造の図式表示。
【発明を実施するための形態】
【0034】
ここで用いられる場合、『FVIII蛋白質』とは少なくともFVIIIポリペプチドを含むアミノ酸分子を意味しているが、必ずしもこのポリペプチドには限定されない。
従って、本発明のFVIIIポリペプチドは本発明のFVIII蛋白質のアミノ酸含有量の少なくとも約50%、好ましくは、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、あるいは100%を占めている。
FVIII蛋白質内のFVIIIポリペプチドの割合が100%から違っていると、FVIII蛋白質はいずれか他のアミノ酸配列を含んでいる可能性があり、その場合そのFVIII蛋白質はキメラ性蛋白質と考えるべきである。
FVIII蛋白質内に含まれているその追加的なアミノ酸配列はそのFVIIIポリペプチドに共有結合あるいは非共有結合で結合している可能性があり、いずれか天然あるいは合成ポリペプチドに対応するか、発生したものである可能性もある。
これらの追加的なアミノ酸配列は酵素あるいは活性蛋白質、細胞トラフィック、転座、輸出、分泌などのための信号配列として機能したり、あるいは他の酵素及び/又は処理蛋白質のための認識サイトとしての役割を果たす場合がある。
【0035】
ここで用いられている『FVIIIポリペプチド』という用語は、凝固促進活性と配列番号 SEQ ID No.2の全長ヒトFVIIIと類似したトロンビン活性化の特徴を有しており、配列番号 SEQ ID No.2で示されるポリペプチド配列の1−740と1689−2332領域に対して少なくとも約60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、あるいは100%の同一性を有しているポリペプチドを意味している。
特に、種々の突然変異や保存性のアミノ酸変化も許容可能で、変種FVIIIが凝固促進作用を持っていれば非保存性のアミノ酸変化も許容できる。
フラグメント及びある種のグルコシル化も許容され、あるいは好ましいものであり、そのポリペプチドがその特殊な活性を保持する限り、FVIIIポリペプチドに対するどんな変化でも許容され得る。
【0036】
ここで用いられている『FVIIIポリペプチド』という用語は、また、凝固促進活性と配列番号SEQ ID No.2の全長ヒトFVIIIと類似したトロンビン活性化の特徴を有しており、配列番号SEQ ID No.2で示されるヒト全長FVIIIに対して少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、あるいは100%の同一性を有しているポリペプチドを意味している。
特に、種々の突然変異や保存性のアミノ酸変化も許容可能で、変種FVIIIが凝固促進作用を持っていれば非保存性のアミノ酸変化も許容できる。
フラグメント及びある種のグルコシル化も許容され、あるいは好ましいものであり、そのポリペプチドがその特殊な活性を保持する限り、FVIIIポリペプチドに対するどんな変化でも許容され得る。
【0037】
ここで用いられている『修飾FVIIIポリペプチド』は、いずれの数のアミノ酸、あるいは天然形態、全長、又はBDD−FVIII非重要領域におけるアミノ酸の何らかの変化を含んでいてもよく、その変化にはそのポリペプチド分子のいずれか他の領域での置換及び/又は欠失を含んでいるが、ただし、そのポリペプチド変異体が配列番号SEQ ID No.2の少なくとも約1−740及び/又は1689−2332ポリペプチド配列に対して少なくとも約60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、あるいは100%の同一性を有しており、そして、その変化がその変異体FVIIIの活性に影響を及ぼさないことを条件とする。
【0038】
ここで用いられている『修飾FVIIIポリペプチド』は、示されている基準配列、つまり、配列番号SEQ ID No.2のヒト全長FVIIIに対して60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の配列相同性を有しているアミノ酸配列をその範囲内に含んでいる。
【0039】
ここで用いられている『修飾』という用語は、基準となる(例えば全長FVIII配列などの)ポリペプチドと比較してそのアミノ酸配列に何らかの相違がある分子を意味する。
このアミノ酸の変化としては、天然あるいは全長アミノ酸配列における置換、挿入、欠失、あるいはそうした変化の何らかの組み合わせなどがある。
その置換は単一のものであってもよく、その場合はその分子内のだた1つだけのアミノ酸が置換されている。
また、複数の置換であってもよく、その場合は、同じ分子内で2つ以上のアミノ酸が置換されている。
【0040】
本発明によるFVIIIポリペプチドの特性を改善するために、アミノ酸加工技術を用いてもよい。
単一あるいは複数のアミノ酸置換、欠失、付加を含む新しい突然変異体ポリペプチド、あるいは溶融蛋白質を創出するために、当業者に公知の遺伝子組み換えDNA技術を用いることもできる。
こうした修飾ポリペプチドは、例えば、活性の増減あるいは安定性の増減を示すことができる。
加えて、それらは高いイールドで精製することができ、少なくとも一定の精製及び保存条件下では、対応する自然のポリペプチドより優れた安定性を示す。
【0041】
ここで用いられている『ポリペプチド』という用語は、全長蛋白質分子だけでなく、それ自体で、あるいは他のフラグメントと共に凝固アッセイでFVIIIの凝固促進作用を発生させるフラグメントも含んでいる。
本発明による新しい蛋白質生成物の合成ポリペプチドも本発明の範囲に含まれ、標準的な合成方法で製造することができる。
さらに、ここで用いられているアミノ酸番号付け方式で、アミノ酸残基1は天然の成熟したFVIII蛋白質の最初の残基を意味している。
さらに、『領域』という用語は当業者に公知のFVIIIの近似領域を意味していることは分かるであろう。
【0042】
本発明において用いられているアミノ酸記号は以下のものを含んでいる。
本願では、個々のアミノ酸の最初の一文字か三文字の省略形を用いており、いずれかが適宜用いられており、以下の意味を有する。
AあるいはAla=アラニン、RあるいはArg=アルギニン、NあるいはAsn=アスパラギン、DあるいはAps=アスパル酸、C又はCys=システイン、Q Gln=グルタミン、EまたはGlu=グルタミン酸、GまたはGly=グリシン、HまたはHis=ヒスチジン、IまたはIle=イソロイシン、LまたはLeu=ロイシン、KまたはLys=リシン、MまたはMet= メチオニン、FまたはPhe=フェニルアラニン、PまたはPro=プロリン、SまたはSer=セリン、TまたはThr=トレオニン、WまたはTrp=トリプロファン、YまたはTyr=チロシン、そしてVまたはVal=バリン。
【0043】
さらに、ここで用いられている『修飾FVIIIポリペプチド』の修飾とは、機能や達成される結果が同じである限り、示されている番号や位置に限定されるものではない。
トロンビン切断あるいは凝固促進機能が維持されるなど機能的活性が同じである限り、ヒト全長FVIIIのNまたはC末端やその他の部分に少数のアミノ酸位置が挿入、付加されたり、欠失されてもよい。
また、蛋白質やそれと同様の生物学的活性を示すそのフラグメントや誘導物及び、例えばグリコシル化、蛋白質切断、抗体分子やその他の細胞リガンドに対する結合などによる翻訳中及び翻訳後にそれぞれ異なって修飾される誘導物なども本発明の範囲内にある。
【0044】
ここで用いられている『フラグメント』とは、利用可能性と機能的特徴を保持しているポリペプチドの一部分を意味している。
例えば、本発明の文脈で用いられる場合、FVIIIポリペプチド・フラグメントは血液を凝固させる機能を有している。
【0045】
ここで用いられる場合、FVIII凝固促進活性を有する蛋白質とは、in vitro、ex vivo、あるいはin vivoモデル・システムで因子Xの活性化を惹起する蛋白質のことである。
非限定的な例として述べれば、この定義には全長遺伝子組み換えヒトFVIII及びB領域欠失FVIIIが含まれる。
ここで用いられている『凝固促進活性』及び『活性』FVIIIという用語は同じことを意味しており、凝固アッセイで凝固促進作用を示す1つ以上のポリペプチドあるいは蛋白質を意味している。
FVIIIという用語は、ここではFVIIIaを含んで用いられることもあり、当業者であれば使われている文脈でそれらの用語がトロンビン活性化前のFVIIIとトロンビン活性化FVIII(FVIIIa)のいずれの意味で使われているかは分かるであろう。
ここで用いられている『マンノース残基脱グリコシル化FVIIIポリペプチドで終端しているグリカン構造』とは、1つあるいは複数のマンノース残基で終端されたグリカンを欠失しているFVIIIポリペプチドあるいは修飾FVIIIポリペプチドを意味している。
【0046】
ここで用いられている『マンノース残基で終端されたグリカン構造』とは、ポリペプチドの基本構造からは離れたグリコシル化の箇所で1つあるいは複数のマンノース残基で終端されたグリカン構造を意味しており、こうしたマンノース残基は末端マンノース残基と呼ばれる。
『マンノース残基で終端されたグリカン構造』には、1つあるいは複数のマンノース残基がポリペプチドの主要部分から分岐している単及び複数分岐グリカン構造が含まれ、特に『マンノース残基で終端されたグリカン構造』という用語はオリゴマンノース・タイプ・グリカン構造を含んでいる。(図11)。
【0047】
ここで用いられている『終端マンノース残基』という用語は、グリコシル化の箇所でグリカン構造のアンテナ(突起部)を終端しているポリペプチドの主要部からは離れたマンノース残基を意味している(図11)。
【0048】
ここで用いられている『高刺激性条件の下でハイブリダイズすることができる』という用語は高刺激性条件で発現対象のDNAと相補的なDNAのストランドをアニーリングすることを意味している。
同様に『低刺激性条件の下でハイブリダイズすることができる』という条件は、低刺激性条件で発現対象のDNAと相補的なDNAのストランドをアニーリングすることを意味している。
アニーリング・プロセスのための『高刺激性条件』とは、例えば、ミスマッチした塩基対間の水素結合接触をできなくさせるような高温度及び/又は低塩分含有度などを含んでいる。
こうした条件では、2つのストランドの間に完全ではないとしても実質的な相補性が存在している場合に2つのDNAストランドがアニールでき、これは同じではあるが遺伝子コードの縮退によって多少違っている蛋白質をコードするDNAストランド間で起きることと同様である。
DNAハイブリダイゼーションを促進する適切な刺激性条件としては、例えば、約45℃で6*SSC、その後で50℃で2*SSCの洗浄などが当業者に知られており、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y (1989), 6.31−6.3.6にも見出すことができる。例えば、洗浄ステップでの塩分濃度は50℃での約2* SSCから50℃での約0.2*SSCまでの低刺激性の範囲から選択されてもよい。
加えて、洗浄ステップでの温度を室温、約22℃程度の低刺激性から約75℃の高刺激性条件に上昇させてもよい。
その他の刺激性パラメータは、Maniatis,T., et. al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring N, Y., (1982) , pp. 387−389に述べられている。
Sambrook J. et. al, Molecular Cloning: A laboratory Manual, Second Edition, Volume 2, Cold spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring N, Y., pp. 8.46−8.47 (1989)も参照。
【0049】
ここで用いられている『基質』とは、用いられる用量と濃度で細胞や哺乳動物に対して毒性のない薬学的に許容される基質、賦形剤、あるいは安定剤を意味する。
多くの場合、上記の薬学的に許容される基質は水性pH緩衝液である。薬学的に許容される基質の例としては、リン酸塩、クエン酸塩、及びその他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ジェラチン、あるいは免疫グロブリンなどの蛋白質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;ポリシン、グルタミン、アスパラギン、あるいはリシンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、あるいはデキストリンなどを含むその他の炭化水素;EDTAなどのキレート剤;マンニトールやソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの対イオン;そしてTWEEN(R)、ポリエチレン・グリコール(PEG)、そしてPLURONICS(R)などの非イオン性界面活性剤などがある。
【0050】
ここで用いられている『有効量』とは、有効なあるいは望ましい臨床的あるいは生化学的結果を及ぼすのに十分な量のことである。
有効量は一回あるいは複数回の処方で投与することができる。
本発明の目的においては、抑制剤化合物の有効量とは病状の進行を和らげたり、改善したり、安定化させたり、逆転させたり、遅くさせたり、あるいは遅らせるのに十分な量である。
本発明の好ましい実施の形態においては、『有効量』は血液の凝固を起こすことができる化合物の量を意味している。
【0051】
ここで用いられている『ホスト細胞』とは、本発明のベクターの受容体として用いることが出来る、あるいは用いられている個別の細胞あるいは細胞培養体を含んでいる。
ホスト細胞は1つのホスト細胞の子孫を含み、そしてその子孫は(全体的DNA補体の形態において)最初の親細胞と完全に同一でなくてもよく、偶然的なあるいは微小の突然変異及び/又は変化が含まれていてもよい。
ホスト細胞は血管由来の因子をコードするポリヌクレオチドを含むベクターにin vivoあるいはex vivoでトランスフェクトあるいは感染された細胞も含む。
【0052】
ここで用いられている『精製された』あるいは『単離された』という表現は、その自然の環境から取り出され、自然に結びついている他の構成要素からは単離、分離あるいは開放されている生化学分子を意味している。
【0053】
ここで用いられている『措置』とは、有効なあるいは望ましい臨床結果を得るための行動を意味している。
本発明の目的に即して言えば、有効なあるいは望ましい臨床結果とは、検出可能か否かとは関係なく症状の緩和、病気の範囲の縮小、病状の安定化(悪化しないこと)、病気進行の遅延あるいは遅くさせること、病状の改善あるいは緩和、及び(部分的であれ全体的にであれ)鎮静化などを意味している。
『措置』とは措置を受けない場合に予想される生存期間と比較しての引き延ばされた延長期間も意味している。
『措置』とは治療目的の措置と予防的あるいは防止的措置の両方を意味している。
措置を必要とする人はすでに不全状態を有している人だけでなく、不全を予防しなければならない人も含まれる。
病状の『緩和』とは、措置を受けない場合と比較して、疾病状態の範囲及び/又は望ましくない臨床的兆候を軽減したり、進行の時間的経過が遅くなったり引き延ばされたりすることを意味する。
【0054】
ここで用いられている『ベクター』、『ポリヌクレオチド・ベクター』、『構成物』及び『ポリヌクレオチド構成物』は相互に適宜取り替えて使われている。
本発明のポリヌクレオチド・ベクターとは、RNA、DNA、レトルウイルスに包まれたRNA、アデノウイルスに包まれたDNA、その他のウイルスやウイルス上の形態(例えば、ヘルペス−シンプレックス、及びアデノ随伴ウイルス(AAV))などに取り込まれたDNA、リポソーム、ポリリシンで複合化されたDNA、合成多価陽イオン性分子と複合化したDNA、免疫学的にその分子を『マスク』するために及び/又はその半減期を延ばすためにポリエチレン・グリコール(PEG)などの化合物と複合化されたり、非ウイルス性蛋白質に接合されたDNAなどを意味する。
好ましくは、そのポリヌクレオチドはDNAである。
【0055】
本発明のベクターによるトランスフェクションのためのFVIII誘導物と例えばジヒドロフォレート・リダクターゼ(DHFR)蛋白質をコードするDNA配列で構成される好ましいホスト細胞の選択においては、用いられたDHFR蛋白質のタイプに従ってホストを選択するのが適切である。
野生タイプのDHFR蛋白質を選択した場合は、DHFRを欠失したホスト細胞を選んで、ハイポキサンチン、グリシン、そしてチミジンを欠失した選択的培養体の中でトランスフェクションをうまくいかせるためのマーカーとしてのDHRFコーディング配列を利用できるようにするのが好ましい。
他方、調節塩基配列としてメトトレキセート(MTX)に対する結合親和性が低いDHFR蛋白質を用いる場合は、DHFR抵抗性細胞を用いることは不必要である。
突然変異体DHFRはMTXに対して抵抗性を有しており、ホスト細胞自体がMTXに対する感作性を有しているのであれば、MTXを含む培養液を用いることができる。
あるいまた、ヒグロマイシン抵抗性など、第2の薬品選択可能マーカーが用いられるのであれば、DHFRを欠失しているホスト細胞で、野生タイプのDHFR遺伝子を用いることが可能である。
以下に述べる実施例は、MTXに抵抗性を示すCHO細胞(CHO−DBX11細胞)をホスト細胞として、そしてCMVとSV40プロモータをFVIII誘導体及びDHFRを発生させるための調節塩基配列として用いるベクター上でそれぞれ用いた場合について述べている。その他の選択可能なマーカーとしてはネオマイシン、ヒゴロマイシン、そしてメトトレキセートなどの薬品に対して抵抗性を示す遺伝子などがある。
【0056】
ここで用いられている『DNA』とは塩基A、T、C及びGだけでなく、メチル化核酸、無電荷結合及びチオエートなどのような核酸間修飾、糖類似物、及びポリアミドのような修飾及び/又は代替バックボーン構造など、これらの塩基の類似物や修飾形態も含んでいる。
【0057】
別の態様で、本発明は厳しいハイブリダイゼーション条件下で、上に述べた核酸分子の一部分にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む単離された核酸分子を提供する。
ハイブリダイズするポリヌクレオチドは上に述べたようにプローブ及びプライマーとして有益である。
FVIIIポリペプチド・コーディング配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドの部分は、正確には、上に述べたように5’及び3’塩基部分によって特定でき、ヌクレオチド塩基のサイズに特徴がある。
同様にFVIIIポリペプチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドの部分もプローブやプライマーとして用いることができる。
本発明において好ましいハイブリダイズするポリヌクレオチドは、ラベルされてこの技術分野で知られているハイブリダイゼーション・アッセイ(例えばサザーン及びノーザン・ブロット分析)で用いられると、他の異種配列が等モル量で存在していても最大の信号強度を示すものである。
【0058】
本明細書では、修飾核酸配列はヌクレオチドの置換、決失、あるいは付加によってつくりだされたものを含んでいる。
これら置換、決失、あるいは付加は1つ以上のヌクレオチドを含んでいてもよい。
アミノ酸配列における変性は保存性と非保存性の両方のタイプのアミノ酸置換、決失、あるいは付加をつくりだす可能性がある。
これらの中で特に好ましいのは、本発明のポリペプチドやその部分の性質を変化させないサイレントな置換、決失、及び付加である。
この点では保存性の置換が好ましい。
【0059】
本発明は発現ベクターにおける配列の利用と、原核細胞であれ真核細胞であれホスト細胞及び細胞株へのトランスフェクトを可能にしてくれる。
本発明はまた、発現ベクターから発現されたポリペプチドの精製も可能にする。
この発現ベクターは精製を容易にするために種々の分子タグを含んでいてもよい。
その後で、得られた発現構成物を随意のホスト細胞に変質させることができる。
ホスト細胞からの細胞溶解物はこの分野で公知の既存の方法で単離される。
【0060】
1つの具体的な実施の形態で、本発明のポリペプチドの異常な発現及び/又は作用に関連した疾患や不全を治療、抑止、あるいは防止するために遺伝子治療の方法を用いて、FVIII蛋白質あるいは修飾されたFVIIIポリペプチドをコードする配列を含んだ核酸が投与される。
遺伝子治療とは、本発明の実施の形態においては、治療対象の個体に発現された、あるいは発現可能な核酸を投与することによって行われる治療を意味する。
【0061】
本発明においては、この技術分野で知られているいずれの遺伝子治療方法でも用いることができる。
1つの好ましい態様において、核酸配列は、その内部でそれらの核酸配列が適切なホスト細胞内でポリペプチドを発現する発現ベクターの一部になっているFVIIIポリペプチドをコードする場合がある。
特に、そうした核酸配列はそのポリペプチド・コーディング領域に操作可能に結合されたプロモータを有しており、そのプロモータは誘導可能あるいは構成的であり、そして組織固有であってもよい。
別の特殊な実施の形態では、その内部でポリペプチド・コーディング配列とその他の望ましい配列がそのゲノムの望ましい箇所で相同性遺伝子組み換えを促進する領域で側鎖されていて、従って抗体コード核酸の染色体内発現をもたらすような核酸分子が用いられる。
患者の体内への核酸の送り込みは直接的に行われてもよく、その場合は、患者はその核酸や核酸を担持しているベクターに直接露出されることになる。
間接的に行われる場合は、先ず細胞をin vitroで核酸を用いて変質させておき、そして患者に移植される。
これらの2つの方式は、それぞれin vivo及びex vivo遺伝子治療として知られている。
【0062】
1つの具体的な実施の形態において、核酸配列はin vivoで直接的に投与され、発現されてコードされた生成物をつくりだす。
このことはこの技術分野で公知のいろいろな方法で達成することができ、例えば、それらを適切な核酸発現ベクターの一部として構成し、それらが細胞内に取り込まれるように投与したり、不具合のある又は弱力化されたレトロウイルス性あるいはその他のウイルス性ベクターを用いて感染させるか、むき出しになったDNAを直接注射するか脂質あるいは細胞表面レセプタや感染剤で被覆するか、リポソーム、微粒子、あるいは微小カプセルに入れるか、あるいはそれらを核に入り込むことが知られているペプチドに結合させてそれらを投与するか、(そのレセプタを特異的に発現する細胞タイプに向けさせるために用いることができる)レセプタ媒介エンドサイトーシスを受けるリガンドに結合させて投与したりするなどの方法がある。
【0063】
あるいは、核酸は静脈注射で導入したり、相同性遺伝子組み換えによって発現用のホスト細胞DNAに組み込むこともできる。
1つの具体的な実施の形態ではポリペプチドをコードする核酸を含んでいるウイルス性ベクターを用いることもできる。
遺伝子治療で用いることが出来るポリペプチドをコードする核酸配列は1つあるいは複数のベクターにクローンされ、これによって、遺伝子を患者の体内に入れることが容易になる。
レトロウイルス性ベクター、アデノウイルス性ベクター、及びアデノ関連ウィルスは用いることができるウイルス性ベクターの例である。
レトロウイルス性ベクターはウイルス性ゲノムのパッケージングやホスト細胞DNAへの取り込みを正しく行うのに必要な成分を含んでいる。
【0064】
遺伝子治療の別の方式では、電気穿孔法、リポフェクション、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、あるいはウイルスによる感染などの方法で組織培養中の細胞に遺伝子を移送する。
通常、移送方法は選択可能なマーカーを細胞に移送するステップを含む。
そしてその細胞を選択下に置いてその移送された遺伝をを取り込むか発現している細胞を単離させる。
これらの細胞を次に患者の体内に移す。
この実施の形態では、核酸は得られる組み換え遺伝子をin vivoで投入する前に細胞に導入する。
こうした導入は先行技術で公知のいずれかの方法を用いて実行することができ、その方法としては、トランスフェクション、電気穿孔法、微量注射、その核酸配列を含んでいるウイルス性あるいはバクテリオファージ・ベクターを用いた感染、細胞融合、染色体媒介遺伝子移送、マイクロセル媒介遺伝子移送、スフェロプラスト融合などである。
外来遺伝子を細胞内に導入するためには多数の方法が知られており、受容体側の細胞の成長及び生理学的機能が損なわれない限り、それらの方法を本発明の手順において用いることができる。
【0065】
これらの技術は細胞への核酸の安定した移入を可能にしてくれるものであり、核酸が細胞によって発現可能であり、好ましくは遺伝可能で、その後代細胞によても発現される。
【0066】
遺伝子療法の目的で核酸を導入でき細胞は入手できるどのような望ましい細胞タイプであってもよく、上皮細胞;内皮細胞;ケラチン生成細胞;筋肉細胞;肝細胞;Tリンパ球やBリンパ球、単核白血球、マクロファージ、好中球、好酸球、顆粒球などの血液細胞;種々の幹あるいは前駆細胞、特に骨髄から得られるような造血性幹あるいは前駆細胞、へその緒血液、抹消血液、胎児幹細胞などである。
【0067】
1つの実施の形態で、本発明は血液凝固に関する疾病の治療と関係している。
その方法においては、本発明による新規の治療用化合物がそうした疾病に罹病した、あるいはそうした疾病を罹病しやすい人間の患者に対して血液の凝固を刺激する化合物を提供することで投与することができる。
具体的には、それらの疾病は血友病、特にA型血友病である。治療用化合物の製剤は先行技術で知られており、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., USAが参考資料として好適である。
【0068】
用量は最大の治療効果を得られるように調節することができる。
例えば、1日に何回か分けて投与することもできるし、あるいは治療状況に応じて減らすことも可能である。
活性成分は経口、静脈注射(水溶性の場合)、筋肉内、皮下、鼻孔内、皮内あるいは座薬さらには移植(例えば、徐放分子を使って腹腔内経路や、感作性を増幅させた単球や樹状細胞をin vitroで用いて養子免疫療法の手法で患者に移入したりするなどの方法によって)などの方法で投与することができる。
投与経路に応じて、FVIII蛋白質あるいは修飾FVIIIポリペプチドをその活性成分を不活性化させる可能性がある酵素、酸、及びその他の条件から保護するために、それらをコーティングする必要性が生じる場合もある。
【0069】
注射での使用に適した薬剤形態としては(水溶性の場合)滅菌水溶液、分散剤、あるいは滅菌注射可能溶液あるいは分散剤の即席調合剤用の滅菌粉末などである。
【0070】
すべての場合に、薬剤形態は滅菌性で、注入が容易な程度に流動性を持っていなければならない。
さらに、製造及び保管中の条件下で安定していなければならず、バクテリアや黴などの汚染作用から保護されていなければならない。
基剤としては、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレン・グリコール及び液体ポリエチレン・グリコールなど)、それらの適切な混合物、そしてベジタブル・オイルなどが含まれる。
適正な流動性は、例えば、レチシンなどの皮膜剤の利用、分散剤の場合は必要な粒子サイズを維持することによって、そして界面活性剤などを用いることで維持することができる。
微生物による作用の防止は、例えば、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、テオメサルなどの種々の抗菌剤や抗黴剤を使用することによって行うことができる。
多くの場合、例えば、砂糖や塩化ナトリウムなどの等張剤を含んでいることが好ましい。
注射可能な組成物を長時間かけて吸収させるためには、例えば、アルミニウム・モノステアレート及びゼラチンなどの吸収を遅らせる組成物を用いることができる。
【0071】
無菌注射液を調製するための無菌粉末の場合は、製剤の好ましい方法は真空乾燥及び凍結乾燥技術で、これらの技術は事前に滅菌ろ過されたそれらの溶液から活性成分とその他の付加的な成分を含んだ粉末をつくりだすことができる。
【0072】
ペプチドを上に述べたように適切に保護すると、活性化合物はその不活性希釈剤あるいは吸収可能な基剤と共に経口投与することができ、あるいは、硬い又は柔らかいシェル・ゼラチンに封入するか、錠剤に圧入するか、あるいはダイエット用食品に組み合わせることもできる。
経口で治療用投与を行うためには、活性化合物を賦形剤に組み込んで、摂取可能な錠剤、口腔用錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウェファーなどに組み入れることができる。
【0073】
錠剤、丸薬、カプセルなどはさらに以下のものを含んでいてもよい。
ゴム・トラガカント、アカシア、コーン・スターチあるいはゼラチンなどの結合剤;リン酸ジカルシウムなどの賦形剤;コーン・スターチ、ポテト・スターチ、アルギニン酸などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、さらに、サクロース、ラクトース、あるいはサッカリンなどの甘味料や、ペッパーミント、ウィンター・グリーン・オイル、あるいはチェリー芳香剤などの芳香剤を加味することもできる。
用量単位形態がカプセルの場合、上に列挙した物質に加えて、液体基剤を含んでいてもよい。
用量単位の物理的形状を被覆その他の方法で修正するために、他のいろいろな物質が含まれていても差し支えない。
例えば、錠剤、丸薬、あるいはカプセルをシェラック、糖、あるいはその両方でコーティングしてもよい。
シロップやエリキシル剤は活性化合物、甘味剤としてのサクロース、保存剤としてのメチル及びプロピルパラベン、染料、そしてチェリーあるいはオレンジなどの芳香剤を含んでいてもよい。
もちろん、用量単位を調製するために用いられるどの物質も薬学的に純粋であり、用いられる用量において基本的に非毒性でなければならない。
さらに、活性化合物は持続放出製剤あるいは薬品に組み込むことができる。
【0074】
ここで用いられている『薬学的に許容される基剤及び/又は希釈剤』とは溶剤、分散媒、抗菌性被覆及び抗黴剤、等張剤、及び吸収遅延剤などのいずれか、あるいはそれらのすべてを含む。
薬学的に活性のある物質のためにそうした媒体や薬剤を使用することはこの技術分野でよく知られている。
従来の媒体や薬剤が活性成分と共存できない場合を除いて、治療用組成物におけるその使用は考えられる。
補助的な活性成分をその組成物に組み入れてもよい。
【0075】
投与のし易さと用量の均一性を考えると、非経口組成物を用量単位に製剤するのが特に好適である。
ここで用いられている用量単位形状とは、措置されるべき哺乳動物の個体に対して一回分の用量として用いるのに適している物理的にそれぞれ個別の単位を指しており、各単位が必要な薬学的基質と組み合わされて望ましい治療効果をつくりだすように予め計算され決められた量の活性物質を含んでいる。
本発明による用量単位形状に関する仕様は(a)その活性物質固有の特性と達成されるべき治療効果、及び(b)身体的健康が損なわれているような疾病状態を有している生きた個体における疾病の治療のための活性物質などの配合技術に伴う要件を絶対条件として、それらに従って決められる。
【0076】
主要活性成分は、簡便で効果的な投与ができるように、適切な量で薬学的に供される基剤と共に用量単位形状内に配合される。
【0077】
組成物は、その投与がそれを受容する動物によって耐えられ、あるいはその動物に対して何らかの意味で適している場合に、『薬学的あるいは生理学的に許容される』と言われる。
投与される量が生理学的に有意であれば、そうした薬剤は『治療的に有効な量』で投与されたと表現される。
その存在の結果が受容者である患者の生理に検出可能な変化を生じた時に、その薬剤が生理学的に有意であると認定される。
【0078】
1つの特別な実施の形態では、哺乳動物の細胞培養が本発明で開示されている機能的なヒトFVIII誘導物をつくりだすための外来DNAの発現方法である。
具体的には、遺伝子組み換え蛋白質を生成するために用いられる一般的な哺乳動物細胞としては、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞株、ベビー・ハムスター(BHK)細胞株、COS細胞株、HKB11(腎臓とB細胞のハイブリッド;ATCC#CRL−12568)、COS−1(ATCC CRL 1650)及びマディン・ダービー・イヌ腎臓(MDCK)細胞株などが発現の対象となる。
そうした細胞の発現ベクターは通常(必要であれば)複製源、発現されるべき遺伝子の前に位置するプロモータといずれかの必要なリボソーム結合サイト、RNAスプライシング・サイト、ポリアデニル化サイト、そして転写停止配列を含んでいる。
【0079】
哺乳動物細胞で使用するためには、その発現ベクター上での調節機能はウイルス性物質によって与えることができる。
例えば、通常用いられているプロモータは伸長因子−1(EF−1)、シミアン・ウイルス40(SV40)(15)、サイトメガロウイルス(CMV)(16)、及びアデノウイルス2からの大型後期プロモータ(17)から誘導される。
さらに望ましい遺伝子配列と正常に結合しているプロモータあるいは調節配列を用いることも可能であり、多くの場合、それが望ましい。
ただし、そうした調節配列がホスト細胞系と共存できることが条件である。
【0080】
細胞プロモータはマウス・カッパー遺伝子プロモータ(18)、マウスVHプロモータ(19)、マウス金属結合性−Iプロモータ(20)などである。
発現ベクターはプロモータの下流及びFVIII配列自体の挿入サイトから上流に位置する一連のRNAスプライシング・サイトも含んでいる場合もある。
好ましいRNAスプライシング・サイトはアデノウイルス及び/又は免疫グロブリン遺伝子から得ることができる。
発現ベクターはcDNA FVIII配列内に位置している一連のRNAスプライシング・サイトを含んでいる場合もある。
発現ベクターは、上記挿入サイトから下流に位置するポリアデニル化信号も含まれている。
特に好ましいポリアデニル化信号はSV40からの初期あるいは後期ポリアデニル化信号(Kaufman及びSharp)、アデノウイルス5Elb領域からのポリアデニル化信号、あるいはヒト成長ホルモン遺伝子ターミネータ(21)などである。
発現ベクターはプロモータとRNAスプライシング・サイトと間に位置するアデノウイルス2三部構成リーダーなどの非コーディング・ウイルス性配列とSV40エンハンサなどのエンハンサ配列も含んでいる。
【0081】
本発明で生成される修飾FVIIIは抗FVIII抗体カラムでの親和性クロマトグラフィで精製することができる。
さらなる精製は、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)などの通常の科学的精製手段によって達成することができる。
クエン酸バリウム沈積なども含むその他の精製方法もこの技術分野でも知られており、新規の修飾FVIIIの精製に適用することができる。
基本的に純粋な修飾FVIIIは薬学的使用に用いることができる。
部分的にでもあるいは望ましい均一性まで一度精製されれば、修飾FVIIIを治療的に用いることができる。
【0082】
ここで用いられているI2144−T2161ペプチドは配列番号 SEQ ID No.9の合成ペプチドである。
このペプチドはマンノシル化されておらず、従って、マンナンは樹状細胞(DC)などのような抗原提示細胞(APC)による受容体媒介エンドサイトーシスに対しては影響を示さない。
【0083】
ここで用いられているD9E9細胞はMarc Jacqueminによって開発されたヒトFVIII固有CD4+T細胞クローン(Ref Jacquemin Blood 2003)である。
これらの細胞は、事前にFVIIIあるいはFVIII誘導ペプチドI2144−T2161をエンドサイトーシスした抗原提示細胞で培養された場合にIFNガンマを生成する。
【0084】
ここで用いられているLE2E9細胞はMarc Jacqueminによって開発されたヒトFVIII固有B細胞クローン(Ref Peerlinck Blood 1999)である。
これらの細胞はFVIIIのCIドメインを認識するヒト固有IgG4をつくりだす。
【0085】
ここで用いられているBO2C11細胞はMarc Jacqueminによって開発されたヒトFVIII固有B細胞クローン(Ref Jacquemin Blood 1998)である。
これらの細胞はFVIIIのC2ドメインを認識するヒトFVIII固有IgG4をつくりだす。
【0086】
ここで用いられているCTLD4−7Fc分子はマウス・マクロファージ・マンノース・レセプタ(CD206)のドメイン4−7を含むキメラ性構成物である。
CTLD4−7Fc分子はLuisa Martiness−Pomarez (Linehan 2001 Eur J Immunol)によってつくりだされたものである。
【0087】
ここで用いられている樹状細胞(DC)は専門的な抗原提示細胞で、種々の特殊な表面マーカー(CD1a、CD11c、HLA−DR、CD80、CD86、CD83、CD40・・・)及び種々の機能(抗原のエンドサイトーシス、Tリンパ球に対する抗原の提示)で特徴付けられる。
【0088】
ここで用いられている抗CD206 PAM−1抗体はヒト・マクロファージ・マンノース・レセプタ(CD206)に対して特に向けられた抗体である。
これはP.Allavena (Laboratory of Cellular Immunology, Institute Mario Negri, Milan, Italy)によってつくられたものである。
【0089】
以下の配列は配列番号SEQ ID No.1のアミノ酸配列、つまり、19個のアミノ酸による信号ペプチドを含む天然全長ヒト因子VIIIに対応している。
【0090】
【表1】

【0091】
以下の配列は配列番号SEQ ID No.2のアミノ酸、つまり19個のアミノ酸による信号ペプチドを含んでいない全長ヒトFVIIIに対応している。
【0092】
【表2】

【0093】
以下の配列は配列番号SEQ ID No.3の核酸配列、つまり、ヒトBDD−FVIIIをコードする核酸配列に対応している。
【0094】
【表3−1】

【表3−2】

【0095】
以下の配列は配列番号SEQ ID No.4のアミノ酸配列、つまり、ヒトBDD−FVIIIのアミノ酸配列に対応している。
【0096】
【表4】

【0097】
以下の配列は配列番号SEQ ID No.5核酸配列、つまり、ヒトFVIIIの突然変異体Asn239Alaを含む重鎖をコードする核酸配列に対応している。
【0098】
【表5】

【0099】
以下の配列は配列番号SEQ ID No.6のアミノ酸配列、つまり、ヒトFVIIIの突然変異体Asn239Alaを含む重鎖のアミノ酸配列に対応している。
【0100】
【表6】

【0101】
以下の配列は配列番号SEQ ID No.7の核酸酸配列、つまり、ヒトFVIIIの突然変異体Asn2118Alaを含む軽鎖の核酸配列に対応している。
【0102】
【表7】

【0103】
以下の配列は配列番号SEQ ID No.8のアミノ酸配列、つまり、ヒトFVIIIの突然変異体Asn2118Alaを含む軽鎖のアミノ酸配列に対応している。
【0104】
【表8】

【0105】
以下の配列は配列番号SEQ ID No.9のアミノ酸配列、つまりI2144−T2161ポリペプチドのアミノ酸配列に対応している。
【0106】
【表9】

【0107】
以下の配列は配列番号SEQ ID No.10のアミノ酸配列、つまり、全長ヒトFVIIIのBドメインのアミノ酸配列に対応している。
【0108】
【表10】

【0109】
以下の配列は配列番号SEQ ID No.11の核酸配列、つまり、ヒトFVIIIの突然変異体Asn239GInを含む重鎖をコードする核酸配列に対応している。
【0110】
【表11】

【0111】
以下の配列は配列番号SEQ ID No.12のアミノ酸配列、つまり、ヒトFVIIIの突然変異体Asn239GIを含む重鎖のアミノ酸配列に対応している。
【0112】
【表12】

【0113】
以下の配列は配列番号SEQ ID No.13の核酸配列、ヒトFVIIIの突然変異体Asn2118Glnを含む軽鎖をコードする核酸配列に対応している。
【0114】
【表13】

【0115】
以下の配列は配列番号SEQ ID No.14のアミノ酸配列、つまり、ヒトFVIIIの突然変異体Asn2118Glnを含む軽鎖のアミノ酸配列に対応している。
【0116】
【表14】

【0117】
本発明はここで述べられている具体的な実施の形態に範囲を限定されることは意図していない。
実際、上に述べられたものに対して種々の修正が本発明の範囲内にあることは、上の記述や添付する図面から当業者には明らかであろう。
以下の実施例は本発明の説明のためのものであって、限定を意図するものではない。
【実施例1】
【0118】
実施例1:単球から誘導されたヒト樹状細胞

抹消血単球細胞を10%ヒトAB血清、グルタミン、及び抗生物質で補強したRPMI1640倍溶液内でプラスチック製培養皿に60分間くっつけることによって、健康な成人のヘパリン添加軟膜から単離した。
付着性のない細胞は培養液で3回穏やかに洗浄することで取り除いた。
付着性のある単球は1%ヒトAB血清、抗生物質で補強したX−VIVO15(Cambrex Bio Sciences, Paris, France)内で、そして、500 IU/mLの遺伝子組み換えヒト・インターロイキン4(rhIL−4)、R&D Systems (Lille, France)、そして1000IU/mL遺伝子組み換えヒト顆粒球マクロファージ・コロニー刺激性因子(rhGM−CSF) ImmunoTools (Friesoythe, Germany)の存在下で培養した。
すべての補強物を含んだ培養液の半分を2日に1回取り替えた。5日間培養した後、付着しない、及び樹状細胞を増やしたフラクションに対応するゆるく付着した細胞を取り出して、洗浄し、以後の実験で用いた。
【実施例2】
【0119】
実施例2:ヒト遺伝子組み換え全長FVIII、Bドメイン欠失ヒト遺伝子組み換えFVIIIをフルオレセインと接合

遺伝子組み換えヒト全長FVIII(10000 IU、Kogenate, Bayer)、遺伝子組み換えヒトBドメイン欠失FVIII (BDD−FVIII, 1000 IU, Refacto(登録商標), Wyeth)を水中で安定化させて、5mMのCaCl2を含む重炭酸緩衝液(pH 9.2)で透析にかけ、その後、4℃の温度で7−8時間フルオレセイン5−イソチオシアネート(アイソマーI、Sigma−Aldrich, Saint Quentin Fallavier, France)と結合させた。
ラベルされたFVIIIをさらにRPM1 1640培養液で透析にかけて、結合していないFITCを取り除いた。
FVIII−FITCをウシ血清アルブミンを基準に用いてブラッドフォード・アッセイで定量した。
【実施例3】
【0120】
実施例3:FVIIIエンドサイトーシスに関与したレセプタの性質

手順
DCを5mM EDTA、マンナン(1mg/ml)あるいはガラクトース(1mg/ml)のいずれかを用いて37℃で30分間培養してから、FVIII−FITC (40μg/ml)を2時間かけて添加した。
比較対象として4℃でのエンドサイトーシスを用いた(図示せず)。

結果

図1A:
EDTAの場合は、FVIII−FITCのエンドサイトーシスは92+16.5 %(P<0.01)まで抑制された。
このデータは樹状細胞によるFVIIIエンドサイトーシスにおける二価イオンに依存したレセプタの役割を示唆している。
マンナン感作性摂取のためのモデル競合性リガンドであるポリカーボネート・マンナンはFVIII−FITCの摂取を60+19 %低下させ(p<0.01)、ガラクトース競合性リガンドであるガラクトースにおいては有意な効果は認められなかった。

図1B:
その内部化がレセプタ依存マクロピノサイトーシスによってだけ進行するマンナン感作性CLRに対する典型的なリガンドであるマンナンの特異性をFITCでラベルしたデキストラン、特にCD206、及びルシフェール・イエロウ(LY)を用いて実験的な設定で確認した。
デキストランの内部化はマンナンの存在下では89+9.3%阻止されたが、LYの存在では影響は認められなかった。

結論
これらの結果は、マンノース感作性レセプタが樹状細胞によるFVIIIのエンドサイトーシスのかなりの部分を媒介していることを示唆している。
【実施例4】
【0121】
実施例4:樹状細胞によるFVIIIのマンノース感作性摂取はFVIII固有CD4+

T細胞に対するFVIII誘導ペプチドの提示をもたらす

手順

図2A:
MHC II適合ドナーから発生された樹状細胞を培養液だけ、あるいはマンナン(1mg/ml)あるいは抗CD206 IgG(10μg/ml)の存在下で培養して、その後、いろいろな量の全長FVIII(Kogenate(登録商標))(5.56, 2,78あるいは1.39μg/ml)あるいは20U/ml rhIL−2の存在下で20時間37℃の温度下でFVIII固有T細胞クローンD9E9(5000細胞/ウェル)で培養した。
T細胞の活性化を培養上澄み液内でのIFNガンマの放出によって評価した。

図2B:
MHC−II適合ドナーから発生された樹上細胞をマンナン(1mg/ml)あるいは抗CD206 IgG (10μg/ml)で予備培養してから、FVIII(5.56μg/ml)あるいはペプチドI2144−T2161 (2μg/ml)及びD9E9を加えた。各処理ごとのIFN−ガンマ生成をそれぞれの実験で得られた最大値を基準として示した(*:P<0.0001、Mann−Whitneyテストで評価)。

図1C:
ヒトFVIII固有HLA適合B細胞株LE2E9, BOC2C11,あるいは樹状細胞を単独あるいはマンナン(1mg/ml)の存在下で培養してから、全長FVIII(Kognate(登録商標))(10μg/ml)とD9E9を用いて培養した。

結果
全体として、データは樹状細胞によるマンナン感作性エンドサイトーシスの阻止によって得られた結果であるD9E9活性化に対するマンナンの効果を裏付けている。
【実施例5】
【0122】
実施例5:Dドメイン外に存在している露出マンノース残基がT細胞活性化につながる樹状細胞によるFVIIIエンドサイトーシスにおいて重要な役割を演じている。

手順

図3A:
樹状細胞をマンナン(1、5、100及び1000μg/ml)で予備培養してから、全長FVIII―FITC(Kognate(登録商標))(40μg/ml、143 nM、黒丸)あるいはBDD―FITI(24.31μg/ml、143 nM、白丸)、あるいはデキストラン−FITC(50μg/ml)を追加した。
抗原の取り込みはフロー・サイトメトリーで分析した。抑止率(パーセント)はマンナンなしの場合を基準としてそれぞれの条件について計算した。

図3B:
天然あるいはEndoF1で処理したBDD−FVIII(3.7μg/ml)を7.5%SDS−PAGEで分離して、ニトロセルロース膜上に移した。
移された蛋白質をProtogold(登録商標)を用い明らかにするか、あるいは続いて、アルカリ性フォスファターゼ接合抗ヒトIgGを用いて10μg/mlCTLD4−7で培養した。
軽鎖(LCh)と重鎖(HCh)はLCh及びHch固有モノクローナル抗FVIII IgG(図示せず)でブロッティングすることで確認した。

図3C:
BDD−FVIIIのEndoF1処理によるT細胞の活性化の低下。結果は3つの独立した実験のうちの最も代表的なものを示す。
結果
データは、Bドメイン外に位置しているマンノース終端グリカン類がFVIIIの取り組みに関与していることを裏付けている。

図3B:
EndoF1処理によるオリゴマンノース構造の除去はBDD−FVIIIのミグレーション・プロファイルの変化とCTLD4−7−Fcによる認識の喪失によって示された。

図3C:
EndoF1で処理したBDD−FVIIIはD9E9を活性化したが、その程度は天然のBDD−FVIIIで培養したものと比較すると低かった(樹状細胞の場合P<0.0001)。
BDD−FVIIIの脱マンノシル化はT細胞の活性化の低下において、マンナンを用いての樹状細胞上でのマンノース・レセプタの飽和ほど効果的ではなかった。
D9E9の活性化に関するEndoF1で処理したBDD−FVIIIの残留能力は、マンノース感作性レセプタに対する親和性を示すFVIII上に残っているNアセチル−グルコサミン残基の存在にその理由を求めることが可能であろう。
【実施例6】
【0123】
実施例6:修飾FVIII軽鎖Asn2118AlaのT細胞活性化

手順
E. Saenko博士(メリーランド大学、Maryland, Baltimore, MD. USA)から提供を受けたFVIII(wtLCh)の精製血漿誘導軽鎖をEndo−F1を用い、あるいは用いないで処理した。
wtLCh、マンナン(1mg/ml)の存在下でのwlLCh及びEndoF1で処理したwtLChを樹状細胞(図4)あるいはBO2C11(図4B)に加えて、D9E9細胞と共に20時間共培養した。
D9E9の活性化はELISAで培養上澄液内でIFNガンマを測定することで評価した。
図CとDはLCh−FVIII(Asn2118Ala−LCh−FVIII)のサイト指向突然変異形成によるD9E9の活性化の喪失を示している。
BO2C11B細胞クローンと単球誘導樹状細胞を野生タイプLChの存在下(図4C)あるいは突然変異Asn2118Ala―LCh―FVIIIの存在下(図4C)でD9E9を用いて培養した。
Ala残基でAsn2118を置換するとNマンノシル化のためのサイトが取り除かれる。
D9E9の活性化は培養上澄液内でのIgN
ガンマを20時間測定することで評価した。

結論

図4Aと4B:
最初に、我々はwtLChが単球誘導樹状細胞にマンノース感作性状態で入り込み、FVIII固有D9E9T細胞クローンを活性化することを検証した。
樹状細胞によるD9E9の活性化レベルは、wtLChをマンナンで培養した場合及びEndo−F1で処理したwtLChの場合は未処理のwtLChの場合(図4A)の場合と比較してかなり低かった。
対照的に、FVIII固有B細胞レセプタを通じてFVIIIを細胞内に取り込むBO2C11 B細胞株によるD9E9の活性化は、マンナンの存在下でのwtLChの培養あるいはEndo−F1処理によっても変化が認められなかった(図4B)。
これらのデータは完全なFVIIIによる培養(図3)を連想させ、単球誘導樹状細胞内へのFVIII軽鎖の進入がマンノシル化されたグリカンに依存していることを示している。

図4Cと4D:
FVIIIのC2ドメインにおける立体配座に対して固有を示すモノクローナル・ヒトIgG(つまり、BO2C11細胞クローンによってつくりだされたIfG)を用いたELISAで、Asn2118Ala−LChの適切な畳み込みが確認された。
BO2C11及び樹状細胞の両方を提示すると、wtLChはD9E9を活性化させた。
対照的に、BO2C11の提示によってAsn2118Ala−LCh−FVIIIによるD9E9の活性化は認められたが、抗原提示細胞(APC)として樹状細胞が用いられた場合は、それは認められなかった。
【実施例7】
【0124】
実施例7:遺伝子組み換えFVIII変種のクローニング及び生成

ステップ1:種々のFVIII変種のクローニング
この実施例では、(ATCC、クローンpSP64−FVIIIから)BDD−FVIIIをコードするcDNA、遺伝子組み換え全長FVIII(Kognerate, Bayer)あるいは修正FVIIIが『FVIII』として用いられている。
FVIIIはZero Blunt(登録商標) TOPO(登録商標)を用いてサブクローニング・ベクター(ベクターpCR(登録商標)−Blunt II−TOPO(登録商標))でサブクローニングされた。
適切なプライマーを用いてサイト指向突然変異形成が行われ、4つの異なったFVIII変種cDNAを発生させた。
− 野生タイプの配列
− 単一重鎖変種:コドンACC(Asn239)−>コドンGCC(Ala239)
− 単一重鎖変種:コドンATT(Asn2118)−>コドンGCT(Ala2118)
− 二重重鎖:Asn239Asn2118−>Ala239Ala2118
この挿入物を真核細胞株内で蛋白質を発現させるために,精製してpCDNA3.1(+)ベクター(Invitrogen, Carlbad, CA,, USA)で強制的末端結紮させるか、あるいはpLIVEベクター(Mirus, Madison, WI USA)を用いてin vivoでの流体力学的注入を行った。

ステップ2: 哺乳動物細胞株の一過性トランスフェクション
種々のpCDNA3.1(+)−FVIII変種を種々の真核細胞株:つまり、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞、ベイビー・ハムスター腎臓(BHK)細胞、及びHKB11(腎臓およびB細胞のハイブリッド;ATCC−CRL−12568)にNucleofector(登録商標)技術(Amaxa Biosystems)を用いてトランスフェトさせた。
通常、Nucleofector(登録商標)技術は細胞の70−100%への安定したトランスフェクションを可能にしてくれる。
HKB11細胞は特に遺伝子組み換えFVIIIを生成するために開発されたものである。
サンドイッチELISA、表面プラスモン共鳴(SPR、Biacore(登録商標))とウェスターン・ブロッティングを用いてFVIIIが上澄液内で検出された。
そのFVIIIレベルを市販の遺伝子組み換えFVIII標準サンプル(rFVIII、Kogerate(登録商標)、BayerあるいはBDD BrFVIII Refacto(登録商標) Wyeth)と比較した。
一過性のトランスフェクションは、FVIIIの変種がそれらの細胞でうつくり出されたかどうかを示すものである。

ステップ3: 種々のFVIII構成物のin vivoでのトランスフェクション
pLIVEベクターにクローンした種々のFVIII構成物をFVIII欠損マウスに注入した。
各プラスミド100μgを2mlづつ数秒間かけて静脈注射した。
『流体力学的注入』といわれるこの方法は、過去において、ウィルブランド因子(VWF)をVWF欠損マウスで高レベルで発現させる実績を有している(25)。
これらの実験で、VWFの発現を野生タイプの血漿で見られるものより高いレベルで最大3週間維持した。
これらの実験で、ELISA、SPR、及びウェスターン・ブロッティングを用いてFVIII発現の反応速度についての検証が3週間にわたって行われた。

ステップ4: 哺乳動物細胞の安定的なトランスフェクションと及び小規模生産
安定的なトランスフェクションはステップ2で述べたように行われる。
NucleofectorRを用いての候補細胞のトランスフェクションに続いて、細胞を限定希釈でクローンする。
FVIIIを生成する細胞を増幅して、その細胞株を−80℃で凍結保存する。
小規模生産は一般的な方法を用いてDMEM 1:1−F12で行う。
つまり、細胞を3−4日培養して準密集状態にしてから、上澄液を回収する。
上澄液は、マウス及びヒト・モノクローナル抗FVIIIIgGを用いて、ELISA、表面プラズモン共鳴(BicoreR)、及びウェスターン・ブロッティングによってFVIII変種の存在についてテストする。FVIIIの量は、市販のrFVIII(Kogenrate, BayerあるいはRefacto Wyeth)を基準として用いて、細胞1個あたり1日毎のFVIIIの産出量を計算する。

ステップ5: rFVIII変種の分泌/創出量を増大させるための方法(案)
哺乳動物細胞によるrFVIII産出のレベルは以下のような種々の要因によって制限されている。
例えば
1)FVIIIのA1ドメインと免疫結合蛋白質(BP)などの小胞体(ER)との相互作用。
この相互作用はFVIIIの分泌を抑止する。
2)FVIII分子上でのマンノシル化された糖のLMANI(ERGIC53)への結合がGolgi装置からERへの適切な輸送に必要であり、これがLMANI及びFVIIIの輸送を妨げないように、すべてのN結合グリコシル化を必要としていること
、などである。
逆に、FVIIIの分泌/産出量は以下のような分子生物工学によって増大することが可能である。
1)Nグリコシル化のための6つのサイトを発現するBドメインの先端を切り取った部分を付加すると、野生タイプ・ドメインを欠失したrFVIIIと比較してrFVIIIの産出を数倍増大させる。
2)Phe309をSer残基に導入すると、BiPへの結合を減少させ、FVIIIの分泌を増大させる。
この点で、サイト指向突然変異形成によるN結合グリコシル化のためのサイトの消滅はFVIII生成の減少をもたらす可能性がある。
実際、野生タイプBドメイン欠失cDNAはグリコシル化のための3つのサイトを有している。
サイト指向突然変異形成の後は、1つのサイト、つまりA3上のAsn1810だけが残ると予想され、これでは前記分子の適切な分泌に十分ではないと考えられる。
突然変異されたeFVIII変種によるFVIIIの産出量が低いのであれば、その構成物にFVIIIのBドメインの最初の226個のアミノ酸をコードするcDNA配列を導入することが可能であろう。
この配列はN結合グリコシル化のための6つのサイトを有している。
この目的のためにヒト肝臓抽出物からすでにmRNAが抽出されており、さらにヒトcDNAがつくられている(Instutit Cochin, ParisのCavard博士からの寄贈)。
BドメインをコードするDNAは適当なプライマを用いて増幅することができ、上記4つのFVIII構成物の重鎖と軽鎖の間に挿入される。
そしてそのBドメイン含有構成物をpCDNA3及びpLIVEベクターにクローンする。
細胞がトランスフェクトされて、その発現を上に述べたように調べる。
【実施例8】
【0125】
実施例8:修飾FVIIIの中規模生成

血清で補強した基礎培地でローラー・ボトルを用いて、実施例7のFVIII(野生タイプ/239mut/2118mut/239mut2118mut)を産出した。
ローラー・ボトル内で十分な量の素中のFVIIIが産出されたので、親和性クロマトグラフィを用いて精製した。
上に述べた研究のすべてを行うのに必要な量はそれぞれのFVIII変種毎にほぼ2mg(10,000UI)であると積算された。
精製プロセスでの生産量は25%程度であるので、各FVIII変種に対して8mg(40,000UI)を産出することが必要であろう。
各クローンによるFVIIIの産出をそれぞれのクローンの生産性に応じて適合化させた。
高いレベルで産出するクローンの場合(1日細胞10個あたり5UI以上)、産出はローラー・ボトルを用いてバッチ方式で行われる。
低いレベルで産出するクローンの場合(1日細胞10個あたり5UI以下)、産出はローラー・ボトルを用いて反復バッチで行われる。
【実施例9】
【0126】
実施例9:修飾FVIIIの構造的/機能的一体性

ステップ1. 遺伝子組み換えFVIII変種のin vivoでのトランスフェクション
実施例7あるいは8での種々のFVIII変種をpLIVEベクター内にクローンして、流体力学的注入後にFVIII欠失マウス内で発現させた。
マウス血漿内のFVIIIのレベルをELISA及び機能的凝固アッセイで測定した。尾の切り取り、出血時間の測定、血液ロスの測定に続いて、凝固の是正について調べた。

ステップ2. in vitroでの凝固促進活性
4つの遺伝子組み換えFVIII変種(実施例7)の凝固促進活性をin vitroとin vivoで調べた。
FVIIIを希釈したものをヒトFVIII欠失血漿で培養して、機能的凝固アッセイ(Fibrin Timer CA540, Date−Behring)で測定した。
それとは別に、FVIII活性をクロマトグラフィ手法で評価した。
この場合、FVIIIは活性化された因子IX及び因子Xとリン脂質と混合した。
そして、活性化された因子Xの発生を活性化因子Xのクロマトグラフィ合成基質を用いて測定した。
種々のFVIII変種の比活性を算出した。
Bドメイン欠失FVIII(Refacto(登録商標)、Wyeth)が好ましく、上記のアッセイで用いられた。
FXa発生の結果は基準から得られる値をテスト・サンプルt1/2 (半最大応答)値で割った値で示した。

ステップ3. FVIIIとモノクローナル抗体、ウィルブランド因子、及びリン脂質との相互作用
FVIIIとモノクローナル抗体、ウィルブランド因子、及びリン脂質との相互作用について調べた。

ステップ4. 翻訳後の修正を分析するための方法
a) FVIIIの脱塩、濃縮、及び活性化
FVIIIサンプルの濃縮及び脱塩は一連のさらなる分析の妨げになる可能性のある塩類、単糖類、及び小さな分子などを一掃するために必要である。
脱塩は逆相(RP)Uptishpere 10WC−25QSカラム(Intercchim)を備えたAKTA純化システム(Amersham−Biosciences)を5%MeCH+TFA 0.1%で均衡化させて行う。
溶出は、5−90%勾配の5%MeCH+TFA 0.1%を用いて5CV内で行う。
脱塩された生成物は回収され、Speed−Vac真空蒸発装置内で乾燥させる。
精製されたFVIIIサンプルはトロンビン処理で活性化もされる。
得られたFVIII鎖は、次に、RP−HPLC(Uptisphere UPWODD$25QK)を用い、正常なMeCH+TFA勾配で分離が可能であろう。
b) FVIIIの酵素による脱グリコシル化
i) PNGase F脱グリコシル化
PNGase FはNグリカン構造に特異性を示す酵素である。
脱塩及び乾燥後に、FVIIIを酵素緩衝液内に還元剤を用いて、あるいはそれを用いないで懸濁させ、室温で15分間培養させる。
そして。酵素を加えて(E/S 5mIU/200 μg)、37℃で18時間培養することによって、脱グリコシル化を行う。
ii) Endo−H脱グリコシル化
Endo Hはオリゴマンノース及びハイブリッド・タイプのNグリカン構造に特異性を示す酵素である。
脱塩及び乾燥後に、FVIIIを酵素緩衝液内に還元剤を用いて、あるいはそれを用いないで懸濁させ、95℃で5分間加熱する。
氷上で冷却してから、酵素を加える(E/S: 0.2mIU/μgプロット)。脱グリコシル化反応は37℃の音頭で2時間行われる。
iii) SDS−PAGE分析
FVIIIのグリコシル化は、一部においては、PNGase FあるいはEndo Hを用いた酵素による脱グリコシル化の前後に得られた生成物のSDS−PAGE分析を行うことを特徴としている。
SDS−PAGEはNOVEXシステム(Introgen, Life Technology)で行われる。サンプルを非還元性条件下と還元性条件下で4−12 % ゲル(Novex)に付加する。
200Vで50分間ミグレーションを行った後、蛋白質を銀染色する。
ゲル(Quantity One Software, Biorad)のデジタル走査とインテグレーションの後にいろいろな蛋白質帯域の見かけ分子量を基準蛋白質と比較することによって測定する。
iv) レクチン・ブロット分析
FVIIIを含むグリコシル化(複合タイプ、高マンノース・タイプなど)ペプチド及びポリペプチドの検出は、レクチン・ブロット分析を用いて行われる(Fukuda & Kobata Glycobiology a Pratical Approach)。
上に述べたようにSDS―PAGEによって10μgのFVIIIが分離され、メーカー(Novex)の指示に基づいてニトロセルロースあるいはナイロン膜上に移された。
そして、ブロットした後、その膜をBSAでブロックして、PBST(PBS, Tween 20 0.05%)で洗浄して、それからペロキシダーゼ(Ey labs)でラベルした適切なレクチン(つまり、GNAmDGA、LcH、MNA―M、VFA、PEA、PMA、AMA...)を用いて、4℃で2時間培養した。
PBSTで何回か洗浄した後、比色法あるいは化学蛍光法でぺロキシダーゼを露出させ、得られたブロット画像をスキャナーあるいはCCDカメラで撮影した。
画像分析と定量は、Quantity One Software (Biorad)を用いて分析した。

ステップ5. FVIII一次構造解析の方法
a) FVIIIマッピングで一次構造解析ができる。
この蛋白質配列は独特のものであるので、特殊な酵素(トリプシンあるいはエンドプロテアーゼAsn−N)で消化して発生されたペプチドはその発現対象の蛋白質に独特の特徴を示す。
脱塩乾燥後、FVIIIを変性させ(SM Urea)、還元し(DTT 20モル/SH1モルあたり、そしてアルキル化させた(ヨードアセトアミド40モル/SH1モルあたり)。
次にFVIIIをトリプシン(E/S:1/25 m/n)で消化させたところ、Arg(R)及びLys (K)残基の後の蛋白質が切断された。
Asp (D)残基の前でその蛋白質を切断するAsp−N(E/S:1/100 m/n)も用いた。
蛋白質消化後に、発生されたペプチドは分析のためにLC−MS/MSシステムに直接注入するか、あるいはC18 300Aカラム上で増大アセトニトリル勾配を用いて逆相クロマトグラフィによって分離した。
そして画分を回収して、Speed−Vacを用いて乾燥させてから、Edman Sequencing及びMALDI−TOF MSを用いてさらに分析した。
b) Edman 配列決定
FVIIIのN末端Edman配列決定をマイクロシーケンサー(Procise 491 HT, Applied Biosystems)を用いて結合、切断、及び変換の3段階手順で行った。
そして、逆相クロマトグラフィでアミノ酸を分離した。
N末端残基の分析と同定をSequence Pro (Applied Biosystems)から入手した標準アミノ酸を用いて行い、FVIIIの理論配列との比較を行い、例えばアミノ酸置換の確認を行った。
c) 質量分光分析
MALDI TOF (TOF)
飛行質量分析のマトリックス支援レーザー脱離/イオン化時間(MALDI−TOF MS)は分子量の非常に正確な測定を可能にしてくれる技術である。
MALDI−TOF MSはペプチド、蛋白質、及びグリカンの分析を可能にするイオン化法である。
発現対象のペプチド、蛋白質及びグリカン(FVIII、そのフラグメント、あるいはグリカン)をレーザーの波長で吸収するマトリックスに混合する。
最も一般的に用いられるマトリックスはペプチドの分析に対してはa−シアノ−4−水酸化桂皮酸(HCCA)、蛋白質に対してはシナピン酸(SA)、そして、(DHB)オリゴサッカライドに対しては2−5−ジヒドロベンゾイック酸である。
各ペプチドの同定は質量分光分析でその質量を測定し、それを理論的な蛋白質配列から推定した理論質領値と比較することで行うことができる。
ペプチドの配列決定は任意のペプチドに対するこれらの条件下で得られたフラグメント・イオンに基づいてMS/MS実験(タンデム質量分光分析、TOF/TOF)によって行うことができる。
オリゴサッカライドの同定と特徴づけについても、同様に戦略を用いることができる。
Brucker Autoflex装置を用いることができる。
電気スプレイ・イオン化質量分光分析と組み合わせた液体クロマトグラフィ(LC−ESIMS)
MALDIとは対照的に、電気スプレイ・イオン化(ESI)はマトリックスの使用を必要としない。
ESIでは、サンプル溶液が高電圧下に置かれた毛管内に導入される。
管の出口に強力な電磁場をかけると、帯電した液滴のスプレイが形成され、質量分光分析装置の経路である電磁場と圧力勾配を横断する。
ESIMSによる分析は調査対象のペプチドのクロマトグラフィによる分離後に実行することができ、ペプチド・マップも得られる。
FVIIIの場合、ペプチドの分離はアセトニトリル勾配を用いてUptisphere UP4WOD25QK(Interchim)上で行うことができる。
質量分光分析による検出はMS及びMS/MSデータの回収を可能にしてくれるQq−TOFハイブリッド質量分光分析計(4極−飛行時間、Qsatr−xl, Applied Biosystems)を用いて行う。
従って、アミノ酸配列が得られる。
d) HPCE−LIFオリゴサカッカライド・マッピング
アスパラギンと結合した種々のオリゴサッカライド構造あるいは『N結合構造』の特徴づけと定量はHPCE−LIFで行われる。
PNGaseF処理によってFVIIIから糖が放出され、そして、氷冷エタノールでの蛋白質沈析によって単離される。
これらのサンプルをエグゾグリコシダーゼ(シアリダーゼ、ガラクトシダーゼ、マンノシダーゼ、ヘックスナカーゼ)で処理して、単離された各構造の定量と特徴づけが出来るようにする。
用いられたすべてのグリコシダーゼはProzyme社から入手されたものである。
この段階で、二回目のエタノール沈析を行う。
得られたグリカンをフルオロフォル(APTS)でラベルして、両方の質量及び電荷に基づいて分析する。
2つの基準(グルコース・ホモポリマー、オリゴサッカライド)を用いると、これらの構造の同定が可能になる。
Beckman Counter N−CHO被覆毛管(寸法:50cm x 50μm ID)を用いて毛管電気泳動(ProteomeLab PA800, Bechman Counter)を行う。
実験条件は以下の通り。
分離緩衝体:ゲル・バッファN−Beckmanカウンター;ミグレーション:20℃で25KV、20分、及びレーザー検出:λex=488nm、λem=520nm.
g) NP−HPLCオリゴサッカライド・マッピング
N結合構造として知られているアスパラギンに結合したいろいろなオリゴサッカライド構造の同定と定量も正常相高性能液体クロマトグラフィ(NP−HPLC)によって行うことができる。
これらのNグリカンは特殊な酵素(PNGase F)を用いて放出され、エタノール沈析で単離する。
得られたグリカンを2−アミノベンズアミド(2−AB)フルオロフォルでラベルする。
このラベルされたグリカンはGoldシステム(Beckman)に接続されたAmide−80カラム(Tosohaas)を用いてNP−HPLCで分離する。
サンプル注入の前に、カラムを80%アセトニトリル緩衝液で均衡させる。
オリゴサッカライドを50mギ塩酸アンモニウム(pH: 4.45)の増大勾配で溶出させる。
検出はλex:330nm及びλem:420nmで蛍光発光を用いて行う。
【実施例10】
【0127】
実施例10: FVIII欠損マウスでのAns2118LChの免疫源性

手順
ヒトFVIIIの精製血漿誘導軽鎖(wtLCh)はE Saenco博士 (Univevrsity of Maryland,, Baltimore, MD, USA)から提供されたものである。
FVIIIの突然変異させた軽鎖(Asn2118Ala LCh)が発生生成された。wtLChと突然変異させた軽鎖(0.2μg蛋白質を200μL PBSに希釈したもの)を静脈経由でFVIII欠失マウス(米国、ペンシルバニア大学のKarazian博士から提供)を一週間毎に4回注射した。
第4週目から1週間経った時点で、マウスを出血させ、FVIII特異性ELISAを用いて抗FVIII IgGのレベルを調べた。
ELISA: マウスの血清を90倍に希釈して、ヒトFVIIIで被覆したELISAプレート(Recombinate, Baxter)内で培養した。
結合したIgGをペロキシダーゼに結合したポリクローナル抗マウスIgGとペロキシダーゼ基質(OPD)を用いて露出させた。
分光計(Tecan Genyos)を用いて492nmでの光学密度を測定して、抗FVIII IgGのレベルを求めた。

結果
ヒトFVIIIの精製血漿誘導軽鎖(wtLCh)を静脈経由でFVIII欠失マウスに投与したところ、検出可能なレベルの抗FVIII IgGが誘発された。
興味深いのは、wtLChに対するマウスの免疫応答がこの実験で用いられた6匹のマウスで不均一な結果を示したことである。
対照的に、突然変異されたAsn2118Ala LChでマウスを措置した場合、高レベルの抗FVIII IgGは検出できなかった。

結論
これらのデータは、特殊な免疫応答を誘発するAsn2118Alaの能力はwtLChと比較してかなり低下されることを示している。

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【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾FVIIIポリペプチドを含むFVIII蛋白質において、前記修飾FVIIIポリペプチドがエンドサイトーシスを行う可能性のある細胞と相互作用したりその細胞内部に取り込まれたりする能力が修飾されていない対応するFVIIIポリペプチドと比較して減少されたりなくなったりすることを特徴とするFVIII蛋白質。
【請求項2】
修飾FVIIIポリペプチドを含むFVIII蛋白質において、前記修飾FVIIIポリペプチドがエンドサイトーシスを行う可能性のある細胞からの表面レセプタと相互作用する能力が減少されたりなくなったりすることを特徴とするFVIII蛋白質。
【請求項3】
修飾FVIIIポリペプチドを含むFVIII蛋白質において、前記修飾FVIIIポリペプチドの免疫源性がヒトにおいて実質的に低下されたりなくなったりすることを特徴とするFVIII蛋白質。
【請求項4】
前記表面レセプタがマンノース感作性レセプタであることを特徴とする、請求項2記載のFVIII蛋白質。
【請求項5】
前記表面レセプタがマンノース・レセプタ(MR、CD206)、樹状細胞固有ICAM3捕捉非インテグリン(DC−SIGN, CD209)、デクチン、及びDEC−205(CD205)で構成される群から選択されることを特徴とする、請求項4記載のFVIII蛋白質。
【請求項6】
前記修飾FVIIIポリペプチドの修飾が実質的に脱グリコシル化されたFVIIIポリペプチドをもたらすことを特徴とする、請求項1−5のいずれか1項記載のFVIII蛋白質。
【請求項7】
実質的に脱グリコシル化されたFVIIIが末端マンノース脱グリコシル化FVIIIポリペプチドで終端された実質的なグリカン構造であることを特徴とする、請求項6記載のFVIII蛋白質。
【請求項8】
前記末端マンノース残基で終端されたグリカン構造がオリゴマンノース−タイプのグリカン構造であることを特徴とする、請求項7記載のFVIII蛋白質。
【請求項9】
前記エンドサイトーシス可能細胞は抗原提示細胞(APC)であることを特徴とする、請求項2記載のFVIII蛋白質。
【請求項10】
前記抗原提示細胞(APC)が樹状細胞,マクロファージ、内皮細胞、あるいはBリンパ球細胞であることを特徴とする、請求項9記載のFVIII蛋白質。
【請求項11】
前記FVIII蛋白質が凝固促進活性FVIII蛋白質であることを特徴とする、請求項1−10のいずれか1項記載のFVIII蛋白質。
【請求項12】
前記修飾FVIIIポリペプチドの修飾がコンセンサス配列Asn−Xxx−Thr/Ser(Xxxはいずれかのアミノ酸)を有するグリコシル化コンセンサス・サイトの少なくとも1つのアミノ酸の置換あるいは欠失を内容とすることを特徴とする、請求項1−11のいずれか1項記載のFVIII蛋白質。
【請求項13】
前記修飾FVIIIポリペプチドの修飾が、アスパラギン239、 アスパラギン2118、セリン241、及びトレオニン2120で構成される群から選択される、配列番号 SEQ ID No.2の全長ヒトFVIIIポリペプチドの置換あるいは欠失を内容とすることを特徴とする、請求項1−12のいずれか1項記載のFVIII蛋白質。
【請求項14】
前記修飾がアラニン、グリシン、セリン、グルタミン、トレオニン、アスパル酸、あるいはグルタミン酸で構成される群から選択されるアミノ酸でアスパラギン239を置換することを内容とする、請求項13記載のFVIII蛋白質。
【請求項15】
前記修飾が、少なくとも、アラニン、セリン、グルタミン、トレオニン、アスパル酸あるいはグルタミン酸で構成される群から選択されるアミノ酸によるアスパラギン2118の置換を内容としていることを特徴とする、請求項13記載のFVIII蛋白質。
【請求項16】
前記修飾が、少なくとも、アラニンによるアスパラギン239の置換を内容としていることを特徴とする、請求項14記載のFVIII蛋白質。
【請求項17】
前記修飾が、少なくとも、グルタミンによるアスパラギン239の置換を内容とすることを特徴とする、請求項14記載のFVIII蛋白質。
【請求項18】
前記修飾が、少なくとも、アラニンによるアスパラギン2118の置換を内容とする、請求項15記載のFVIII蛋白質。
【請求項19】
前記修飾が、少なくとも、グルタミンによるアスパラギン2118の置換を内容としていることをと特徴とする、請求項15記載のFVIII蛋白質。
【請求項20】
前記修飾が、アラニンによるアスパラギン239とアスパラギン2118両方の置換を内容とすることを特徴とする、請求項13記載のFVIII蛋白質。
【請求項21】
前記修飾がグルタミンによりアスパラギン239とアスパラギン2118の両方の置換を内容としていることを特徴とする、請求項13記載のFVIII蛋白質。
【請求項22】
前記修飾がアラニンによるアスパラギン239の置換とグルタミンによるアスパラギン2118の置換の両方を含んでいることを特徴とする、請求項13記載のFVIII蛋白質。
【請求項23】
前記修飾がグルタミンによるアスパラギン239の置換とアラニンによるアスパラギン2118の置換の両方を含んでいることを特徴とする、請求項13記載のFVIII蛋白質。
【請求項24】
前記修飾FVIIIポリペプチドの修飾がさらに配列番号 SEQ ID No.10のBドメインの全体あるいは一部の欠失を含んでいることを特徴とする、請求項1−23のいずれか1項によるFVIII蛋白質。
【請求項25】
前記修飾FVIIIポリペプチドが、少なくとも
(i) 配列番号 SEQ ID No.6のアミノ酸配列、及び/又は
(ii) 配列番号 SEQ ID No.8のアミノ酸配列
の1つを含んでいることを特徴とする、請求項1−24のいずれか1項記載のFVIII蛋白質。
【請求項26】
請求項1−25のいずれか1項記載の単離核酸分子あるいはFVIII蛋白質をコードする修飾単離核酸配列において、前記修飾FVIIIポリペプチドをコードする前記核酸配列あるいは前記修飾核酸配列が少なくとも
(i) 配列番号 SEQ ID No.5の核酸配列、及び/又は
(ii) 配列番号 SEQ ID No.7の核酸配列
のいずれか1つを含んでいることを特徴とする、単離核酸分子あるいはFVIII蛋白質をコードする修飾単離核酸配列。
【請求項27】
請求項26の前記単離された核酸配分子、あるいはその相補性核酸分子と、高刺激性条件の下でハイブリダイズすることができる単離された核酸分子。
【請求項28】
請求項26か27のいずれか1項による単離された核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項29】
請求項28の発現ベクターでトランスフェクトされた、あるいは請求項1−19のいずれか1項記載のFVIII蛋白質を発現するホスト細胞。
【請求項30】
請求項1−25のいずれか1項記載のFVIII蛋白質を発現するヒト以外の形質転換生物。
【請求項31】
前記生物が微生物、動物、及び植物から選択されることを特徴とする、請求項30記載のFVIII蛋白質を発現するヒト以外の形質転換生物。
【請求項32】
前記動物が哺乳動物であることを特徴とする、請求項31記載のFVIII蛋白質を発現するヒト以外の形質転換生物。
【請求項33】
請求項1−25のいずれか1項記載のFVIII蛋白質を含む組成物。
【請求項34】
医薬品組成物あるいは凍結乾燥されたことを特徴とする、請求項33記載のFVIII蛋白質を含む組成物。
【請求項35】
さらに、薬学的に許容される基質を含んでいる、請求項33−34のいずれか1項記載のFVIII蛋白質を含む組成物。
【請求項36】
請求項1−25のいずれか1項記載のFVIII蛋白質を生成するための方法において、
a) 培地内で、請求項26又は27記載の核酸分子、あるいは請求項1−25のいずれか1項記載のFVIII蛋白質をコードする核酸分子で形質転換あるいはトランスフェクトされたホスト細胞を成長させるステップと、そして
b) 前記ホスト細胞及び/又は前記培地から、前記核酸分子の発現から得られたFVIII蛋白質を単離するステップ
とで構成されていることを特徴とするFVIII蛋白質を生成するための方法。
【請求項37】
FVIII欠損によって特徴づけられる疾病を治療するための請求項1−25のいずれか1項記載のFVIII蛋白質の利用。
【請求項38】
前記FVIII欠損によって特徴づけられる疾病がA型血友病、あるいは後天的血友病であることを特徴とする、請求項37記載のFVIII蛋白質の利用。
【請求項39】
A型血友病あるいは後天的血友病を治療するための医薬品を製造するための請求項1−25のいずれか1項記載のFVIII蛋白質の利用。
【請求項40】
A型血友病あるいは後天的血友病患者を治療する方法において、それを必要とする患者に対して請求項1−25のいずれか1項記載のFVIII蛋白質を凝固に有効な量だけ投与するステップを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−524453(P2010−524453A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503618(P2010−503618)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001417
【国際公開番号】WO2008/129422
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(508183139)エルエフビー バイオテクノロジース (7)
【出願人】(503068598)インスチチュート ナショナル デ ラ サンテ エト デ ラ ルシェルシェ メディケール (2)
【Fターム(参考)】