説明

Gタンパク質の機能を阻害するために有用な三環式アミドの代謝産物および増殖性疾患の処置方法

本発明は、構造式(I)


により示される三環式アミド化合物および構造的に関連する化合物、ならびに式(I)の化合物の薬学的に受容可能な同位体、塩、溶媒和物、またはエステルの、代謝産物に関する。式(I)において、Rは、Hおよび=Oからなる群より選択され;R〜Rは、同じであっても異なっていてもよく、その各々は、独立して、H、−OH、ハライド、−NH、および=Oからなる群より選択され;組み合わせ実線−破線は、独立して、単結合または二重結合のいずれかを示し、二重結合である組み合わせ実線−破線の数は、2以下であり、その数が2である場合、その二重結合は、隣接しておらず、その数が0である場合、R〜Rのうちの1つは、Hではない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
(発明の分野)
本発明のいくつかの実施形態は、Gタンパク質の機能を阻害するために有用な三環式アミドの代謝産物、関連化合物、および増殖性疾患の処置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラット肉腫(「Ras」)オンコジーンの生物学的重要性、ならびに正常細胞から癌細胞への変換におけるRasと、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ(「FPT」)として公知である酵素との両方の役割が、PCT国際公開番号WO95/00497およびWO95/10516に記載される。これらの公開の各々はまた、酵素ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼの活性を阻害し、それによりRasタンパク質のファルネシル化を阻害する、明確な種類の化合物を記載する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
米国特許第5,847,442号(これは、本明細書中にその全体が参考として援用される)において、ファルネシルトランスフェラーゼの阻害において有用な多数の三環式アミド化合物が、開示される。これらの化合物には、本明細書中で「化合物A」と呼ばれる、以下のもの:
【0004】
【化6】

がある。
【0005】
化合物Aは、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼの阻害において特に有用である。有効量のこの化合物の投与は、米国特許第5,874,442号に記載されるような、細胞(形質転換細胞を含む)の異常な増殖を阻害するため、および癌処置のための、方法を提供する。
【0006】
(発明の要旨)
いくつかの実施形態において、本発明は、構造式(I):
【0007】
【化7】

により示される化合物、および式(I)の化合物の薬学的に受容可能な同位体、塩、溶媒和物、またはエステルに関し、
上記式(I)において、
は、Hおよび=Oからなる群より選択され;
〜Rは、同じであっても異なっていてもよく、その各々は、独立して、H、−OH、ハライド、−NH、および=Oからなる群より選択され;そして
組み合わせ実線−破線は、独立して、単結合または二重結合のいずれかを示し、二重結合である組み合わせ実線−破線の数は、2以下であり、該数が2である場合、該二重結合は、隣接しておらず、該数が0である場合、R〜Rのうちの1つは、Hではない。
【0008】
いくつかの実施形態において、本発明は、構造式(I)により示される化合物に関し、上記式(I)において、R、R、RおよびRは、各々Hであり、Rは、Hおよび−Hからなる群より選択され、二重結合である組み合わせ実線−破線の数は、1以下である。
【0009】
いくつかの実施形態において、本発明は、構造式:
【0010】
【化8】

により示される化合物、およびその薬学的に受容可能な同位体、塩、溶媒和物、またはエステルに関する。さらなる実施形態において、本発明は、上記化合物の純粋でありかつ単離された形態に関する。
【0011】
いくつかの実施形態において、本発明は、構造式:
【0012】
【化9】

により示される化合物、およびその薬学的に受容可能な同位体、塩、溶媒和物、またはエステルに関する。さらなる実施形態において、本発明は、上記の化合物の純粋かつ単離された形態に関する。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明は、構造式:
【0014】
【化10】

により示される化合物、およびその薬学的に受容可能な同位体、塩、溶媒和物、またはエステルに関する。さらなる実施形態において、本発明は、上記の化合物の純粋かつ単離された形態に関する。
【0015】
いくつかの実施形態において、本発明は、構造式:
【0016】
【化11】

により示される化合物、およびその薬学的に受容可能な同位体、塩、溶媒和物、またはエステルに関する。さらなる実施形態において、本発明は、上記の化合物の純粋かつ単離された形態に関する。
【0017】
いくつかの実施形態において、本発明は、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼを阻害する必要がある患者において、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼを阻害する方法に関し、この方法は、治療上有効な量の少なくとも1種の式(I)の化合物を投与する工程を包含する。
【0018】
いくつかの実施形態において、本発明は、膵臓癌、非小細胞肺癌、骨髄性白血病、甲状腺小胞癌、骨髄異形成症候群、表皮癌、膀胱癌、結腸癌、乳癌、または前立腺癌を、そのような癌を処置する必要がある患者において処置する方法に関する。その方法は、治療上有効な量の式(I)の少なくとも1種の化合物を投与する工程、を包含する。
【0019】
いくつかの実施形態において、本発明は、薬学的組成物に関し、その組成物は、治療上有効な量の式(I)の少なくとも1種の化合物を、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、本発明は、式(I)の化合物の、純粋でありかつ単離された形態に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
特定の実施形態において、本発明は、化合物Aの代謝産物に関し、この化合物Aは:(i)インビトロで、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼを潜在的に阻害し得るが、ゲラニルゲラニルタンパク質トランスフェラーゼIを潜在的に阻害し得ず;(ii)ファルネシルアクセプターである形質転換Rasの形態によって誘導される表現型変化をブロックし得るが、ゲラニルゲラニルアクセプターになるように操作された形質転換Rasの形態によって誘導される表現型変化をブロックし得ず;(iii)ファルシルアクセプターであるRasの細胞内プロセシングをブロックし得るが、ゲラニルゲラニルアクセプターになるように操作されたRasの細胞内プロセシングをブロックし得ず;そして/または(iv)形質転換Rasによって誘導される培養物における異常細胞増殖をブロックし得る。以下の4つの化合物(化合物8〜11と名付ける)は、化合物Aの代謝産物である:
【0022】
【化12】

化合物Aは、動物モデルにおける抗腫瘍活性を有すると実証されており、従って、その代謝産物は、対応する有用性を有する。
【0023】
本発明はさらに、化合物Aの代謝産物に構造的に類似である化合物に関し、対応する有用性を有すると考えられる。このような構造的に関連する化合物は、構造式(I):
【0024】
【化13】

により表され、
ここで:
は、Hおよび=Oからなる群より選択され;
〜Rは、同じでも異なっていてもよく、各々は独立して、H、−OH、ハライド、−NHおよび=Oからなる群より選択され;そして
組み合わせ実線−点線は、独立して、単結合または二重結合のいずれかを表し、ここで、二重結合である組み合わせ実線−点線の数は、2より大きくなく、2である場合、その二重結合は隣接していなく、そして0である場合、R〜Rのうちの1つはHでない。
【0025】
本発明は、非晶状態または結晶状態で存在する上記化合物を包含する。
【0026】
本発明は、細胞(形質転換細胞を含む)の異常な増殖を阻害するための方法を提供し、この方法は、治療有効量の式(I)の化合物のうちの少なくとも1種を、そのような処置を必要としている哺乳動物(例えば、ヒト)に投与することによる。異常な細胞増殖とは、正常な制御機構(例えば、接触阻害をなくすこと)に依存しない細胞増殖をいう。これは、(1)活性化Ras発癌遺伝子を発現する腫瘍細胞(腫瘍);(2)Rasタンパク質が他の遺伝子における発癌性変異の結果として活性化される、腫瘍細胞;および(3)異常なRas活性化が起こる他の増殖性疾患の良性細胞および悪性細胞、の異常増殖を包含する。
【0027】
本発明はまた、腫瘍増殖を阻害するための方法を提供し、この方法は、治療有効量の式(I)の化合物のうちの少なくとも1種を、そのような処置を必要としている哺乳動物(例えば、ヒト)に投与することによる。特に、本発明は、活性化Ras発癌遺伝子を発現する腫瘍の増殖を阻害するための方法を提供し、この方法は、有効量の上記代謝産物のうちの1種を投与することによる。阻害され得る腫瘍の例としては、肺癌(例えば、肺腺癌および非小細胞肺癌)、膵癌(pancreatic cancer)(例えば、膵癌(pancreatic carcinoma)(例えば、外分泌膵癌))、結腸癌(例えば、結腸直腸癌(例えば、結腸腺癌および結腸腺腫))、骨髄性白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML))、甲状腺濾胞状癌、骨髄異形成症候群(MDS)、膀胱癌、表皮癌、乳癌ならびに前立腺癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明はまた、(良性および悪性の両方の)増殖性疾患を阻害するための方法を提供し、ここで、Rasタンパク質は、他の遺伝子における発癌性変異の結果として以上に活性化され−−すなわち、Ras遺伝子自体は、発癌性形態への変異により活性化されない−−、上記阻害は、治療有効量の式(I)の化合物のうちの少なくとも1種を、そのような処置を必要としている哺乳動物(例えば、ヒト)に投与することによって達成される。例えば、良性増殖障害神経線維腫症、またはRasがチロシンキナーゼ癌遺伝子(例えば、neu、src、abl、lck、およびfyn)の変異または過剰発現に起因して活性化される腫瘍は、本発明の代謝産物によって阻害され得る。
【0029】
本発明の代謝産物は、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼを阻害し、そして癌遺伝子タンパク質Rasのファルネシル化を阻害する。本発明はさらに、そのような処置を必要としている哺乳動物(特に、ヒト)におけるRasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼを阻害する方法を提供し、この方法は、有効量の式(I)の化合物のうちの少なくとも1種を投与することによる。ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼを阻害するための、患者への式(I)の化合物のうちの少なくとも1種の投与は、上記の癌の処置において有用であり得る。
【0030】
本発明の方法において有用な化合物は、異常な細胞増殖を阻害する。理論により制約されることを望むことなく、これらの化合物は、Gタンパク質(例えば、Ras p21)のイソプレニル化をブロックすることによる、Gタンパク質機能の阻害により機能し得、従って、これらの化合物を増殖性疾患(例えば、腫瘍増殖および癌)の処置において有用なものにすると考えられる。理論によって制約されることを望むことなく、これらの化合物はRasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼを阻害し、従って、Ras形質転換細胞に対して抗増殖活性を示すと考えられる。
【0031】
また、式(I)の化合物は、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼの阻害を包含する方法による、他の処置方法において有用性を有し得る。ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼを阻害する化合物の投与により処置可能なさらなる状態および疾患は、米国仮特許出願60/498,509号に開示され、この仮特許出願は、完全に示される場合、本明細書中で参考として援用される。
【0032】
式(I)の化合物の塩もまた、本発明の範囲内である。本明細書中での式(I)の化合物への言及は、他で特に示されない限り、その塩への言及を包含することが理解される。本明細書中で使用される場合、用語「塩」は、無機酸および/または有機酸で形成された酸性塩、ならびに無機塩基および/または有機塩基で形成された塩基性塩を表す。さらに、式(I)の化合物が、塩基性部分(例えば、ピリジンまたはイミダゾールであるが、これらに限定されない)および酸性部分(例えば、カルボン酸であるが、これらに限定されない)の両方を含む場合、双性イオン(「内部塩」)が形成され得、この双性イオンは、本明細書中で使用される場合、用語「塩」内に包含される。薬学的に受容可能な(すなわち、無毒性で生理学的に受容可能な)塩が好まれるが、他の塩もまた有用である。式(I)の化合物の塩が、例えば、式(I)の化合物と、一定量(例えば、当量)の酸または塩基とを、その塩が沈殿するような媒体中、または水性媒体中で反応させて、続いて凍結乾燥することによって形成され得る。本発明の範囲内の塩形成酸としては、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシレート、マレイン酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩、パモ酸塩/エンボン酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、酪酸塩、メチル硫酸塩、およびフマル酸塩が挙げられる。本発明の範囲内の塩形成塩基としては、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、メグルミン、アンモニウム、アルミニウム、亜鉛、ピペラジン、トロメタミン、リチウム、コリン、ジエチルアミン、4−フェニルシクロヘキシルアミンおよびベンザチンが挙げられる。
【0033】
本発明の化合物の異性体の全て(例えば、幾何異性体、光学異性体など)(その化合物の塩、溶媒和物、エステルおよびプロドラッグ、ならびにそのプロドラッグの塩、溶媒和物およびエステルを含む)(例えば、種々の置換基上の不斉炭素に起因して存在し得る異性体(鏡像異性型(これは、たとえ不斉炭素の非存在下でも存在し得る)を含む))、回転異性型、アトロプ異性体、ならびにジアステレオマー型は、本発明の範囲内に企図される。本発明の化合物の個々の異性体は、例えば、他の異性体を実質的に含み得ないか、または例えば、ラセミ混合物として、または他の立体異性体の全て、もしくは他の選択された立体異性体と混合され得る。本発明のキラル中心は、IUPAC 1974推奨で定義されたように、S立体配置またはR立体配置を有し得る。用語「塩」、「溶媒和物」、「プロドラッグ」などの使用は、本発明の化合物の鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ラセミ化合物またはプロドラッグの、塩、溶媒和物およびプロドラッグに同等に当てはまることが意図される。
【0034】
本明細書中の本文、スキーム、実施例および表における、結合価が不足している任意の炭素原子およびヘテロ原子は、その結合価を満たすのに十分な数の水素原子を有するとみられることもまた、注意されるべきである。
【0035】
上で、および明細書全体にわたって使用される場合、以下の用語は、他で特に示されない限り、以下の意味を有すると理解されるべきである:
「患者」は、ヒトおよび動物の両方を包含する。
【0036】
「哺乳動物」は、ヒトおよび他の哺乳動物を意味する。
【0037】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。「ハロ」または「ハライド」は、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、またはヨード基を意味する。
【0038】
本発明の化合物のプロドラッグおよび溶媒和物もまた、本明細書中で企図される。本明細書中で使用される場合、用語「プロドラッグ」は、被験体への投与の際に、代謝プロセスまたは化学的プロセスにより化学的変換を受けて、式(I)の化合物またはその塩および/もしくは溶媒和物を生じる、薬物前駆体である化合物を表す。プロドラッグの考察は、T.HiguchiおよびV.Stella,Pro−drugs as Novel Delivery Systems,A.C.S.Symposium Seriesの第14巻(1987)、ならびにBioreversible Carriers in Drug Design,Edward B.Roche(編),American Pharmaceutical Association and Pergamon Press(1987)に提供され、これらの両方は、本明細書中で参考として援用される。
【0039】
「溶媒和物」は、本発明の化合物と1種以上の溶媒分子との物理的会合を意味する。この物理的会合は、イオン結合および共有結合(水素結合を含む)の変動する程度を包含する。特定の場合、上記溶媒和物は、例えば、1種以上の溶媒分子が結晶固形物の結晶格子中に取り込まれる場合、単離され得る。「溶媒和物」は、溶液相および単離可能な溶媒和物の両方を包含する。適切な溶媒和物の非限定的な例としては、エタノール和物、メタノール和物などが挙げられる。「水和物」は、溶媒分子がHOである溶媒和物である。
【0040】
「有効量」または「治療有効量」は、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼを阻害し、従って、所望の治療効果を生じることに有効な、本発明の化合物または組成物の量を説明することを意味する。
【0041】
化合物についての、用語「単離された」または「単離形態における」とは、合成プロセスから、もしくは天然供給源から、またはそれらの組み合わせから単離された後の上記化合物の物理的状態をいう。化合物についての、用語「精製された」または「精製形態における」とは、精製プロセスもしくは本明細書中で記載されたプロセス、または当業者に公知のプロセスから得られた後の、本明細書中で記載された標準的な分析技術または当業者に周知の標準的な分析技術により特徴付けられ得るために十分な精度で存在する、上記化合物の物理的状態をいう。
【0042】
化合物中の部分(例えば、置換基、基または環)の数を参照すると、他で特に定義されない限り、成句「2以下」は、0、1または2を意味する。成句「1以下」は、0または1を意味する。
【0043】
例えば、「R〜Rは、同じであっても異なってもよく、各々は独立して、H、−OH、ハライド、−NHおよび=Oからなる群より選択される」という上記の記述は、命名された各置換基(すなわち、R、R、RおよびR)の選択は、その基の任意の他の置換基の選択から独立していることを意味する。従って、例えば、同じ分子中で、RがHであるという選択は、Rの選択から独立しており、このRは−OHであってもよい。
【0044】
以下の溶媒および試薬は、本明細書中で以下に示した略語で呼ばれる:テトラヒドロフラン(THF);エタノール(EtOH);メタノール(MeOH);酢酸(HOAcまたはAcOH);酢酸エチル(EtOAc);N,N−ジメチルホルムアミド(DMF);トリフルオロ酢酸(TFA);トリフルオロ酢酸無水物(TFAA);1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール(HOBT);m−クロロ過安息香酸(MCPBA);トリエチルアミン(EtN);ジエチルエーテル(EtO);クロロギ酸エチル(ClCOEt);1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(DEC);ジイソブチルアルミニウム水和物(DIBAL);イソプロパノール(iPrOH);ジメチルスルホキシド(DMSO);ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);トリクロロ酢酸(TCA);ジチオスレイトール(DTT);トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス);およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)。
【0045】
他で特に示されない限り、本明細書中で述べられる物理的パラメーター(例えば、温度、質量、体積、濃度)の定量測定は、述べられた量からの偏差の適切な範囲を含むことが理解される。
【0046】
本発明の化合物は、以下に記載した手順により調製され得る。
【実施例】
【0047】
(実施例1:化合物8および化合物9の調製)
(工程1)
【0048】
【化14】

Laboutaら(Labouta,A.M.ら,Eur.J.Med.Chem.−Chem.Therm.,第17巻,第6号,pp.531−535,(1982))による手順に従って、4−ピペリドン水和物塩酸塩1(20.0g、130mmol)を、HO(100mL)中に溶解した。トリエチルアミン(58mL、417mmol、3.2当量)を添加し、続いてTHF(100mL)中ジ−tert−ブチルジカルボネート(39.8g、182mmol、1.4当量)の溶液を0℃で添加した。この溶液を、一晩撹拌した(0℃→室温)。次いで、この反応混合物を、減圧下で濃縮し、そしてその残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(10:1ヘキサン−酢酸エチル)により精製し、無色の油状物として、24.0g(93%)のtert−ブチル4−ピペリドン−1−カルボキシレート(076483−141−26;CAS 79099−07−3)(化合物2)を得た。少量のジ−tert−ブチルジカルボネートが生成物中に残ったが(H NMRにより)、この物質は、以下の工程を行うためには適切な純度であった。
【0049】
(工程2)
【0050】
【化15】

Laboutaらによる手順にまた従って、乾燥1,2−ジメトキシエタン(50mL)中のtert−ブチルジエチルホスホノアセテート(15.0g、59.6mmol、1.2当量)を、乾燥1,2−ジメトキシエタン(150mL)中NaH(鉱物油中60%分散、未洗浄、2.38g、59.6mmol、1.2当量)の懸濁液を、0℃で滴下した。化合物2を0.5時間撹拌した後、乾燥1,2−ジメトキシエタン(20mL)中のtert−ブチル4−ピペリドン−1−カルボキシレート(9.9g、49.7mmol)を、上記混合物に0℃で滴下し、次いで、一晩撹拌した(0℃→室温)。次いで、この反応をNaHCO(100mL、飽和水溶液)でクエンチし、それらの層を分離した。この水相を、CHCl(3×20mL)で抽出し、この組み合わせた有機相を乾燥し(MgSO)、濾過し、次いで、減圧下で濃縮した。この残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(95:5ヘキサン−酢酸エチル)により精製し、無色の油状物として、10.2g(69%)のtert−ブチル−1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イリデンアセテート(076483−143−32;CAS 84839−55−4)(化合物3)を得た。
【0051】
(工程3)
【0052】
【化16】

tert−ブチル−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イリデンアセテート(化合物3)(10.2g、34.2mmol)を、乾燥t−BuOH(150mL)中t−BuONa(1.6g、0.5当量)の溶液に溶解した。平衡化を、100℃で0.5時間行い、次いで、室温で一晩行った。次いで、NHCl(飽和水溶液)をpH=7になるまで添加し、そしてこの溶液を、ヘキサン(2×20mL)で抽出し、続いてCHCl(4×20mL)で抽出した。この組み合わせた有機相を乾燥し(MgSO)、濾過し、次いで、減圧下で濃縮した。この残渣(化合物4(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イリデン酢酸(076483−149−30))と化合物5(1−tert−ブトキシカルボニル−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン酢酸(076483−149−30))との混合物)を、さらなる精製をせずに次の工程に移した。
【0053】
残渣を、CHCl(20mL)に溶解し、1,4−ジオキサン(4.0M、17mL、68mmol、2.0当量)中HClの溶液を、0℃で滴下した。この反応を、1時間撹拌させ(0℃→室温)、次いで、このサンプルを減圧下で濃縮し、さらなる精製をせずに次の工程に移した。
【0054】
次いで、その残渣を、3:1 MeOH−HO(150mL)に溶解し、この溶液を、NaOH(1.0 N水溶液)でpH=10に調整した。次いで、ジ−tert−ブチルジカルボネート(11.2g、51.4mmol、1.5当量)を添加し、そしてこの反応を一晩室温で撹拌した。サンプルを減圧下で濃縮した後、HO(50mL)を添加し、続いてクエン酸(5%水溶液)をpH=3になるまで添加した。この生成物を、EtO(3×50mL)で抽出し、そしてこの組み合わせた有機相を乾燥し(MgSO)、濾過し、濃縮して、α,β−不飽和酸とβ,γ−不飽和酸との1:1混合物として、2.6g(3つの工程を経て32%)の生成物を得た。
【0055】
(工程4)
【0056】
【化17】

(+)−4−(3,10−ジブロモ−8−クロロ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[5,6]シクロヘプタ[1,2−b]−ピリジン−11(R)−イル)−ピペリジン(3.8g、8.1mmol)、化合物4、1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イリデン酢酸と化合物5、1−tert−ブトキシカルボニル−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン酢酸(2.61g、10.8mmol、1.3当量)との1:1混合物、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC、2.69g、14.1mmol、1.7当量)および3−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアジン−4(3H)−オン(HOOBT、2.29g、1.7当量)をDMF(100mL)中に溶解した。N−メチルモルホリン(9.5mL、8.8g、87mmol、10.7当量)を添加し、その混合物を室温で50時間攪拌した。NaHCO(50mL、飽和水溶液)を添加し、その後酢酸エチル(100mL)およびHO(100mL)を添加した。その水相を酢酸エチル(6×30mL)で抽出し、合わせた有機相をMgSOで乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。その残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(75:25 ヘキサン−酢酸エチル→25:75 ヘキサン−酢酸エチル)により精製し、灰白色の泡沫状の固形物として、3.66g(65%)の結合生成物を得た。この物質を、α,β不飽和アミドおよびβ,γ−不飽和アミドである、化合物6、tert−ブチル(+)−4−[2−[4−(3,10−ジブロモ−8−クロロ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[5,6]シクロヘプタ[1,2−b]ピリジン−11(R)−イル)−1−ピペリジニル]−2−オキソエチリデン]−1−ピペリジンカルボキシレートと、化合物7、tert−ブチル(+)−4−[2−[4−(3,10−ジブロモ−8−クロロ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[5,6]シクロヘプタ[1,2−b]ピリジン−11(R)−イル)−1−ピペリジニル]−2−オキソエチル]−3,4−ジデヒドロ−1−ピペリジンカルボキシレート(076483−151−29)との9:1混合物、、Mp=112〜125℃として、次の工程に移した。
【0057】
(工程5)
【0058】
【化18】

化合物6、tert−ブチル(+)−4−[2−[4−(3,10−ジブロモ−8−クロロ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[5,6]シクロヘプタ[1,2−b]ピリジン−11(R)イル)−1−ピペリジニル]−2−オキソエチリデン]−1−ピペリジンカルボキシレートと化合物7、tert−ブチル(+)−4−[2−[4−(3,10−ジブロモ−8−クロロ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[5,6]シクロヘプタ[1,2−b]ピリジン−11(R)−イル)−1−ピペリジニル]−2−オキソエチル]−3,4−ジデヒドロ−1−ピペリジンカルボキシレートとの9:1混合物を、CHCl(20mL)中に溶解し、HClの1,4−ジオキサン(4.0M、4.6mL、18.4mmol、4.0当量)溶液を、0℃で滴下した。この混合物を1時間(0℃→室温)攪拌し、次いで、減圧下で濃縮し、さらなる精製なしに次の工程に移した。
【0059】
次いで、この物質をCHCl(25mL)中に溶解し、EtN(2.6mL、18.4mmol、4.0当量)を添加した。トリメチルシリルイソシアネート(2.1g、18.4mmol、4.0当量)をその溶液に室温で滴下し、その反応混合物を1時間攪拌した。次いで、その反応混合物を減圧下で濃縮し、白色の固形物を得た。その残渣を調製TLC(85:15 CHCl−MeOH)により精製し、灰白色の泡沫状の固形物として、900mg(31%)のβ,γ−不飽和アミド、(+)−4−[2−4−(3,10−ジブロモ−8−クロロ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[5,6]シクロヘプタ[1,2−b]ピリジン−11(R)−イル)−1−ピペリジニル]−2−オキソエチリデン]−1−ピペリジンカルボキサミド、化合物9(078017−013−22、主要な異性体)、および黄色の固形物として、122mg(4.2%)のα,β−不飽和アミド、(+)−4−[2−[4−(3,10−ジブロモ−8−クロロ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[5,6]シクロヘプタ[1,2−b]ピリジン−11(R)−イル)−1−ピペリジニル]−2−オキソエチル]−3,4−ジデヒドロ−1−ピペリジン−カルボキサミド、化合物8(078017−015−33、微量の異性体)を得た。mp(化合物9、主要な異性体)=157〜162℃;mp(化合物8、微量の異性体)=167〜171℃。HRMS(化合物9、主要異性体と化合物8、微量の異性体との7.4:1混合物)m/z=637.0404。
【0060】
(化合物10および11を調製するために使用したインキュベーション)
化合物10および化合物11の構造を有する化合物Aの代謝産物を、以下の実施例2〜6に記載される手順に従って調製した。
【0061】
【化19】

(実施例2)
化合物Aの、マウス、ラット、サルおよびヒト由来の肝細胞とのインビトロインキュベーションを、2mLのWaymouth培地、2.54μg(2μM)または63.8μg(50μM)のいずれかの化合物A(約20μCi/mg)および酸素:二酸化炭素 95:5(v/v)の覆い(blanket)の下での2×10細胞を含む、25mLのErlenmeyerフラスコ中で行なった。フラスコを、ゴム栓で蓋をし、気体の組成を維持し、37℃の水浴中に配置した。インキュベーションを、穏やかに振盪しながら5時間継続させた。急速に凍結(−80℃)することにより、反応を終結させた。熱不活性化肝細胞を、コントロールとして、化合物Aと並行してインキュベートした。
【0062】
(実施例3)
化合物A代謝産物のスケールアップした生成を、非誘発動物由来のラット肝臓ミクロソームを使用して行った。ミクロソームを、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.4)1mLあたり1nmolのP450を含有する溶液中でインキュベートした。このインキュベーション混合物はまた、10mM MgCl、5mM グルコース6リン酸、1.5ユニット/mLのグルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ、0.5mMのβ−NADP(β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート)および25μMの化合物A(約20μCi/mg)を含有した。4個のフラスコでインキュベーションを行い、そのそれぞれは、49.4mLの上記混合物を含有し、NADPなしで37℃で2分間プレインキュベートした。その反応を、NADPの添加により開始し、2時間インキュベートし、氷冷水中でその混合物を冷却することにより終結させた。次いで、10個の固相カートリッジ(tC18、10g吸収剤)のそれぞれに等しく分配した体積で、直接適用したインキュベーション混合物を合わせて固相抽出(SPE)を行なった。これらのカートリッジは、予めメタノールおよび水で洗浄した。薬物由来の物質を、総体積670mLのメタノール(カートリッジ1個あたり約70mL)で溶出した。次いで、溶離液を、TurboVap LVワークステーション中で、窒素流下で、37℃でエバポレートし、その抽出残渣を、後のHPLC単離のためにメタノール中に再構成させた。
【0063】
(実施例4)
25μM化合物Aおよび1nmol/mL CYP450で、NADPH生成系(5mM グルコース6リン酸、1.5ユニット/ml グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ、0.5mM β−NADP)および3mMの塩化マグネシウムの存在下で、30分間ヒト肝臓ミクロソームとともにインビトロインキュベーションを行なった。煮沸したミクロソームを、同条件下で、コントロールとしてインキュベートした。30分間のインキュベーション後、そのサンプルを氷上に配置し、SPEに供した。メタノール溶出物を、3組に分け、サンプルの1組をHPLCにより分析し、他の2組を、LC/MSおよびNMRにより分析した。その後、メタノールをアセトニトリルに置換し、化合物10または11とメタノールとの間の化学反応を避けた。
【0064】
NMR分析の結果により、化合物10が、ペンダントピペリジン環中に二重結合を有することを確認した。ラット肝臓ミクロソームとの大規模なインキュベーションの後、化合物10の構造を、NMRにより完全に同定した。
【0065】
(実施例5)
25μMの化合物Aおよび0.2nmol/mLのCYP450で、3mMの塩化マグネシウムおよびNADPH生成系の存在下で、30分間、ヒトCYP3A4 SUPERSOMES(登録商標)と一緒にインビトロインキュベーションを行なった。コントロールの昆虫のミクロソームを、コントロールとして同条件下でインキュベートした。30分間のインキュベーション後、そのサンプルを氷上に配置し、SPEに供した。メタノール溶出物を、2組に分け、サンプルの1組をHPLCにより分析し、もう1組をLC/MSにより分析した。
【0066】
LC/MS分析の結果は、代謝化合物11(室温、約51.9分)および代謝化合物10(室温、約61.6分)のm/zは、それぞれ653および635であることを示した。
【0067】
(実施例6)
組換えヒトCYP3A4酵素(GentestおよびSPRI由来)を、一定量のシトクロムP450(「CYP」)(0.2nmol/mL)および25μMの化合物Aを用いて別々にインキュベートした。インキュベーションは、3mMの塩化マグネシウムおよびNADPH生成系の存在下で、60mLのリン酸カリウム緩衝液(0.05M、pH7.4)中で、空気中で、37℃で30分間行なった。薬物を添加することにより反応を開始し、氷と水との混合物中で、インキュベートしたサンプルを冷却することにより反応を終結させ、ただちに、SPE(アセトニトリルにより溶出)に供した。各サンプルを別々にエバポレートして乾燥させ、質量分析(LC/MSおよびLC/MS/MS)ならびにNMRにより分析した。
【0068】
適切な出発物質、ならびに上記の手順および当該分野で公知の他の手順を使用して、式(I)の他の化合物が生成され得る。
【0069】
(化合物の単離)
以下の単離および精製を行い、それらの工程は、本発明の化合物に適用され得る単離プロセスおよび精製プロセスの例示的な型である。以下の単離は、本発明の化合物を単離するために使用され得る単離の非限定的な例である。当業者に公知の他の単離プロセスは、本発明の化合物を単離することに等しく適用可能である。
【0070】
(化合物10の単離)
ラットの肝臓ミクロソームを用いたスケールアップした生成から得た代謝産物を、SPE後に濃縮し、そしてHPLCにより分離した。HPLC勾配溶出法を、以下の表1に示すように最適化した。この移動相は、酢酸を用いてpH6.0に調整した20mMの酢酸アンモニウムおよびアセトニトリルからなる。流速を、1.0mL/分に設定し、そのカラム温度を40℃に維持した。この溶出を278nmでモニタリングした。
【0071】
【表1】

化合物10のHPLC溶出ピークは、278nmでのUV吸光度に従って、39.2〜41.2分から手作業で回収した。化合物10の画分を、LC−MSにより試験し、分子イオンを(M−2)として検出した。そのカラム回収物をプールし、分析のためにNMRサンプルにした。
【0072】
(代謝化合物10のNMR分析)
化合物Aおよび化合物10のプロトン割り当てを表2に列挙する。4.73ppmおよび6.71ppmで観察された二つの新規の共鳴を除いて、ほとんどの共鳴割り当ては、親化合物Aから変化しないままであった。これらのクロスピークは、プロトン−プロトン相関スペクトルで観察された。これらの二つの共鳴は、H−19’およびH−20’位のオレフィンプロトンに割り当てられる。H−18、H−19およびH−20位のプロトンは、C−19’とH−20’との間の二重結合の形成に起因して、低磁場にシフトした。
【0073】
【表2】

【0074】
【化20】

(化合物11の単離)
BD Genetest(1E)由来の組換えCYP3A4酵素とのスケールアップしたインキュベーションから得た代謝化合物11を、SPEにより溶出し、HPLCにより単離した。移動相は、酢酸を用いてpH6.0に調整した20mMの酢酸アンモニウムおよびアセトニトリルからなった。Lunaフェニル−ヘキシルセミ調製カラム(5μm、250×10mm i.d.、Phenomenex,Inc.、Torrance、CA)を用いるHPLC勾配溶出方法は、表3に示される。流速を4.0mL/分に設定し、カラム温度を室温に設定する。代謝産物画分を、278nmでのそのUV吸光度に従って回収した。その画分を、プールし、25℃でのNMRデータ収集のために、DMSO−d中のNMRサンプルにした。
【0075】
【表3】

(化合物11のNMR分析)
化合物Aおよび化合物11のプロトンNMR割り当てを、以下の表に列挙する。5.54ppmでの新規のプロトンの共鳴を除いて、化合物11のほとんどの共鳴割り当ては、化合物Aの共鳴割り当てから変化しないままであった。H−19とH−19’とでのこの共鳴のクロスピークは、プロトン−プロトン相関スペクトルで観察された。その炭素の化学シフトは、72.7ppmに見出され、これは、C−20’位での第二級アルコールの形成と一致する。従って、化合物11の構造は、以下に示すように割り当てられ、H−20’のプロトンは、化合物Aのペンダントピペリジン環のヒドロキシによって置換される。
【0076】
【表4】

【0077】
【化21】

(アッセイ)
((H−Ras)ファルネシルトランスフェラーゼ阻害アッセイにおける活性)
化合物10および化合物11の薬理学的活性を試験するために、化合物Aを、30リットルの発酵槽中でE.coliのヒトCYP3A4およびヒトオキシドレダクターゼの高レベルの組換え発現とともにインキュベートした。化合物Aを、1リットルの規模で、15〜20%の全収率で、化合物11および化合物10に変換した。この代謝産物を、固相樹脂吸収に従って単離し、そしてHPLCにより精製した。両代謝産物の同定をLS−MS/MSにより確認した。合計4.45mgの化合物10および2.2mgの化合物11を、生物学的活性評価のために提供した。
【0078】
この代謝産物をLC−MS(薬理学的アッセイに使用される条件下で)によって試験した。化合物11混合物は、約75%の純粋な化合物11および約25%の純粋な化合物10を含有することが見出された。この化合物10混合物は、約5%の純粋な化合物11および約95%の純粋な化合物10を含有することが見出された。
【0079】
上記化合物は全て、(H−Ras)ファルネシルトランスフェラーゼ阻害アッセイにおいて、以下のIC50活性を示した:
化合物8 2.6nM
化合物9 23.3nM
化合物11(混合物) 22.5nM
化合物10(混合物) 4.1nM
化合物A(コントロール) 2.4nM。
【0080】
(H−Ras)FPTのためのアッセイ条件)
FPT活性を、[H]ファルネシルピロリン酸からH−Ras(ビオチン−CVLS)のC末端に由来するビオチン化ペプチドへの[H]ファルネシルの転移を測定することにより決定した。この反応混合物は、50mMのTris pH7.7、5mMのMgCl、5μMのZn++、5mMのDTT、0.1%のTriton−X、0.05μMのペプチド、0.03nMの精製されたヒトファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ、0.180μMの[H]ファルネシルピロホスフェート、それに加えて示した濃度の三環系化合物またはビヒクルコントロールを、合計体積100μL中に含有した。この反応混合物をVortemp振盪インキュベーター中で、37℃、45rpmで60分間インキュベートし、0.5% BSAおよび1.3mg/mlのストレプトアビジン SPAビーズを含有する150μLの0.25M EDTAで停止させた。放射活性を、Wallach 1450 Microbeta液体シンチレーションカウンターで測定した。阻害パーセントを、ビヒクルコントロールに対して計算した。
【0081】
(薬学的調製物)
本発明により記載される化合物から薬学的組成物を調製するために、不活性で、薬学的に受容可能なキャリアは、固体または液体のどちらかであり得る。固体形態の調製物としては、散剤、錠剤、分散可能顆粒、カプセル剤、カシェ剤および坐剤が挙げられる。散剤および錠剤は、約5%〜70%の活性成分から構成され得る。適した固体キャリアは、当該分野で公知であって、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖および乳糖が挙げられる。錠剤、散剤、カシェ剤およびカプセル剤は、経口投与に適した固体投薬形態として使用され得る。
【0082】
坐剤の調製に関しては、低融点ワックス(例えば、脂肪酸グリセリドの混合物またはカカオ脂)が最初に融解し、そして活性成分は、攪拌することによりその中に均一に分散される。次いで、この融解均一混合物を好都合な大きさの型に注ぎ、冷却し、それによって凝固させる。
【0083】
液体形態の調製物としては、溶液、懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。水または水−プロピレングリコール溶液は、非経口注射のために使用され得る。
【0084】
液体形態の調製物としてはまた、鼻腔内投与のための溶液が挙げられる。
【0085】
吸入に適したエアロゾル調製物としては、溶液および粉末形態の固体が挙げられ得、それらは、薬学的に受容可能なキャリア(例えば、不活性な圧縮気体)と組み合わされ得る。
【0086】
使用の直前に、経口投与または非経口投与のいずれかのための液体形態調製物に変換されることが意図される固体形態の調製物もまた含まれる。このような液体形態としては、溶液、懸濁液およびエマルションが挙げられる。
【0087】
本発明の化合物はまた、経皮的に送達可能である。経皮組成物は、クリーム、ローション、エアロゾルおよび/またはエマルションの形態をとり得、それらは、この目的に関して当該分野では慣習的であるマトリックス型またはレザバ型の経皮パッチに含まれ得る。
【0088】
好ましくは、この化合物は、経口投与される。
【0089】
好ましくは、この薬学的調製物は、単位投薬形態である。このような形態において、この調製物は、適切な量の活性成分(例えば、所望の目的を達成するのに十分な量)を含む単位用量に再分される。
【0090】
単位用量の調製物中の活性化合物の量は、特定の適用に従って、約0.1mg〜1000mg、より好ましくは、約1mg〜300mgまで変動し得るか、またはこれらの範囲に調節され得る。
【0091】
使用される実際の投薬量は、患者の必要性および処置すべき状態の重篤度に依存して変動され得る。特定の状況に対する適切な投薬量の決定は、当業者の範囲内である。一般に、処置は、その化合物の最適用量より低い、低投薬量で開始する。その後、その投薬量を、その状況下で最適な効果を達成するまで、少量ずつ増加する。便宜上、一日合計投薬量は、分割され得、所望の場合、一日の間に一部分で投与され得る。
【0092】
本発明の化合物およびその薬学的に受容可能な塩の投与の量および頻度は、患者の年齢、状態および体重ならびに処置されるべき症状の重篤度のような因子を考慮して、主治医の判断に従って調節される。代表的な推奨投薬レジメンは、腫瘍増殖をブロックするために、2回〜4回の分割された用量で、10mg/日〜2000mg/日、好ましくは、10mg/日〜1000mg/日の経口投与である。本化合物は、この投薬範囲内で投与される場合、無毒性である。
【0093】
以下は、本発明の化合物を含有する薬学的投薬形態の例である。この薬学的組成物局面における本発明の範囲は、提供される例によって限定されるべきではない。
【0094】
(薬学的投薬形態実施例)
【0095】
【表5】

(製造方法)
適切なミキサー内で、項目1および項目2を、10〜15分間混合する。項目3を含むこの混合物を顆粒化する。この湿気を帯びた顆粒を、必要な場合、粗目篩(例えば、1/4”、0.63cm)を通して粉末にする。この湿気を帯びた顆粒を乾燥させる。必要な場合、この乾燥した顆粒をふるいにかけ、項目4と混合し、10〜15分間混合する。項目5を添加し、1〜3分間混合する。この混合物を圧縮して、適切な打錠機で、適切な大きさかつ重量にする。
【0096】
【表6】

(製造方法)
適切な混合機内で、項目1、項目2および項目3を、10〜15分間混合する。項目4を添加し、1〜3分間混合する。この混合物を、適切なカプセル化機械で、適切な2個の部分からなる硬質ゼラチンカプセル中に充填する。
【0097】
さらなる処方物、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼを阻害する化合物と他の化合物(抗癌剤を含む)との組合せ、ならびにこのような処方物および/または組合せを使用する処置の方法は、米国仮特許出願60/498,509に開示され、これは、本明細書中で十分に示される程度に援用される。
【0098】
本発明を、上記の特定の実施形態と組み合わせて記載してきたが、本発明の多くの代替物、改変および変化が、当業者に明らかである。このような代替物、改変および変化は全て、本発明の精神および範囲内であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(I):
【化1】

により示される化合物、および式(I)の化合物の薬学的に受容可能な同位体、塩、溶媒和物、またはエステルであって、
式(I)において、
は、Hおよび=Oからなる群より選択され;
〜Rは、同じであっても異なっていてもよく、その各々は、独立して、H、−OH、ハライド、−NH、および=Oからなる群より選択され;そして
組み合わせ実線−破線は、独立して、単結合または二重結合のいずれかを示し、二重結合である組み合わせ実線−破線の数は、2以下であり、該数が2である場合、該二重結合は、隣接しておらず、該数が0である場合、R〜Rのうちの1つは、Hではない、
化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、R、R、RおよびRは、各々Hであり、Rは、Hおよび−OHからなる群より選択され、二重結合である前記組み合わせ実線−破線の数は、1以下である、化合物。
【請求項3】
式:
【化2】

により示される、請求項1に記載の化合物、およびその化合物の薬学的に受容可能な同位体、塩、溶媒和物、またはエステル。
【請求項4】
式:
【化3】

により示される、請求項1に記載の化合物、およびその化合物の薬学的に受容可能な同位体、塩、溶媒和物、またはエステル。
【請求項5】
式:
【化4】

により示される、請求項1に記載の化合物、およびその化合物の薬学的に受容可能な同位体、塩、溶媒和物、またはエステル。
【請求項6】
式:
【化5】

により示される、請求項1に記載の化合物、およびその化合物の薬学的に受容可能な同位体、塩、溶媒和物、またはエステル。
【請求項7】
ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼを阻害する必要がある患者においてファルネシルタンパク質トランスフェラーゼを阻害する方法であって、該方法は、
治療上有効な量の請求項1に記載の化合物を投与する工程;
を包含する、方法。
【請求項8】
膵臓癌、非小細胞肺癌、骨髄性白血病、甲状腺小胞癌、骨髄異形成症候群、表皮癌、膀胱癌、結腸癌、乳癌、または前立腺癌を、そのような癌を処置する必要がある患者において処置する方法であって、該方法は、
治療上有効な量の請求項1に記載の化合物を投与する工程;
を包含する、方法。
【請求項9】
薬学的組成物であって、治療上有効な量の請求項1に記載の化合物を、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて含む、組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物の、純粋でありかつ単離された形態。
【請求項11】
請求項3に記載の化合物の、純粋でありかつ単離された形態。
【請求項12】
請求項4に記載の化合物の、純粋でありかつ単離された形態。
【請求項13】
請求項5に記載の化合物の、純粋でありかつ単離された形態。
【請求項14】
請求項6に記載の化合物の、純粋でありかつ単離された形態。

【公表番号】特表2007−516179(P2007−516179A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517555(P2006−517555)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/020032
【国際公開番号】WO2005/003120
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】