説明

GABAB受容体アゴニストを含有する即時放出特性および/または制御放出特性を有する薬学的剤形

本発明は、一般に、多発性硬化症またはある種の脊髄損傷などの疾患に関連する、痙攣、有痛性痙攣、および筋緊張を含む医学的状態を治療するための、γ-アミノ酪酸(GABAB)受容体アゴニスト、例えばバクロフェンを含有する、即時放出特性および制御放出特性を有する薬学的剤形に関する。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
本発明は、一般に、多発性硬化症、脊髄疾患、もしくはある種の脊髄損傷などの疾患に関連する、痙攣、有痛性痙攣、筋緊張、または痙縮を含む医学的状態を治療するための、γ-アミノ酪酸(GABAB)受容体アゴニスト、例えば、バクロフェンを含有する、即時放出特性および制御放出特性を有する薬学的剤形に関する。
【0002】
多発性硬化症は、自己免疫疾患であるとみなされている。これに関して、個体の免疫系は、神経細胞を取り囲むミエリン鞘を攻撃し得る。この損傷は、筋衰弱、麻痺、協調不全、平衡機能の問題、疲労、および失明の可能性につながる。これらの症状を治療するために、GABABアゴニストのバクロフェンを使用することができる。バクロフェンは、多発性硬化症またはある種の脊髄損傷の患者の状態を改善するための、理学療法など補助的な医学的治療を容易にすることもできる。バクロフェンは、カルバマゼピンの効果に対して、耐性を持つことができない、または不応性となった患者の三叉神経痛の発作の回数および重症度を軽減するためにも使用される。
【0003】
バクロフェン、または4-アミノ-3-(4-クロロフェニル)-ブタン酸は、筋弛緩薬および鎮痙薬である。その作用機序は、不明と思われる。バクロフェンは、脊髄上位部位における作用もまた生じ得、その臨床効果に寄与することもあるが、おそらくは求心性神経末端の過分極によって、脊髄レベルで単シナプス性および多シナプス性の反射の双方を抑制することができるようである。動物を用いた研究において、バクロフェンが、耐性を伴う鎮静状態、傾眠、運動失調、ならびに呼吸および心血管の機能低下の発生によって示されるような、全身性中枢神経系(CNS)の抑制特性を有することが示された。
【0004】
バクロフェンの吸収は、部位特異的である。バクロフェンは、主として上部消化(GI)管で吸収され、バクロフェンの吸収の程度は、下部GI管では実質的に減少する。バクロフェンは、迅速かつ広範囲にわたって吸収される。吸収は、用量依存性で、用量増加に伴って低下することがある。患者にバクロフェンを投与する改善された方法は、長期間にわたる、有効量の薬物の上部GI管への送達を含む。
【0005】
いくつかの副作用が、哺乳動物へのバクロフェンの投与に関係している可能性がある。これらの問題には、悪心、嘔吐、下痢、めまい、日中の鎮静作用、および、頻度は落ちるが、抑うつ性気分障害などの精神病性の状態が含まれる。さらに、1日3回または4回剤形を投与する必要性など頻繁な投薬が必要とされる場合は、投薬計画に対する患者の服薬遵守が最適以下であり得る。したがって、1日1回または2回など頻度のより少ない投薬しか必要としない薬学的剤形が好ましいであろう。さらに、長期間にわたってバクロフェンの安定な血漿中レベルを確立および維持することができる薬学的剤形は、より少ない頻度の投薬しか必要としないことによって、かつ副作用を最小にすることによって、患者に利益をもたらし得る。
【0006】
Baclofen Tablet、10/20mg(Watson Pharmaceuticals, Inc., Corona, CA)およびKEMSTRO(商標)(Schwarz Pharma, Monheim, Germany)として市販されている口腔内崩壊錠を含む、いくつかのバクロフェン薬学的製剤が市販されているが、これらは、バクロフェンの制御放出は提供しない。例えば、KEMSTRO(商標)20mgを1回経口投与すると、投与の約1時間半後に最高血漿中濃度に達する。
【0007】
バクロフェンは、2.5〜4時間の血清半減期を有する。(Drug Monograph: Baclofen American Hospital Formulary Service (AHFS) American Society of Hospital Pharmacists, Inc., Bethesda, MD 2003)。従来の即時放出バクロフェン製剤を経口投与すると、典型的に投与の約4〜8時間で、治療効果のある最小血漿中濃度に達する。したがって、従来の即時放出製剤は、典型的に1日3〜4回の投薬を必要とする。
【0008】
様々な制御放出バクロフェン組成物が報告されている。例えば、1992年2月25日にKhannaに発行された米国特許第5,091,184号(特許文献1)では、口腔粘膜に接着し、粘膜を通して薬物を送達する接着性錠剤を記載している。これらの組成物は、接着性錠剤に付随する諸問題のうちの1つまたは複数を有し、GABA関連薬物にとって最適とは言えない部位に薬物を送達する。さらに、1997年7月29日にPennersらに発行された米国特許第5,651,985号(特許文献2)は、延長された胃内滞留時間を有するマトリックス剤形に関する。Pennersの参考文献に従って作製される剤形は、著しい膨張および膨張した状態での高次元の安定性を有すると記述されている。さらに、バクロフェンを送達するための浸透圧ポンプ型の剤形が、長期間にわたる薬物の持続投与を記載する、1988年8月16日にUrquhartらに発行された米国特許第4,764,380号(特許文献3)において言及されている。
【0009】
それでもなお、頻度のより少ない投薬を実現し、かつ副作用を最小にするために長期間にわたって薬物の安定な血漿中濃度を確立および維持することによって、多発性硬化症またはある種の脊髄損傷のような医学的状態を治療するために、バクロフェンなどのGABAB受容体アゴニストを含有する、制御放出特性を有する薬学的剤形に対する顕著かつ継続的な必要性が依然としてある。これらおよびその他の目的が、本発明によって達成される。
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,091,184号
【特許文献2】米国特許第5,651,985号
【特許文献3】米国特許第4,764,380号
【発明の開示】
【0011】
発明の概要
本発明は、一般に、バクロフェンなどのGABAB受容体アゴニストを含有する、制御放出特性を有する薬学的剤形に関する。これらの剤形は、多発性硬化症またはある種の脊髄損傷などの疾患に関連する、痙攣、有痛性痙攣、および筋緊張のような医学的状態の治療において使用することができる。
【0012】
例えば、本発明の薬学的剤形は、GABABアゴニストおよび薬学的に許容される賦形剤を含む制御放出剤形を含んでよく、この剤形は、模擬腸液媒体において、1時間後の約70%未満のGABABアゴニスト放出、4時間後の少なくとも約20%のGABABアゴニスト放出、および6時間後の少なくとも約30%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す。この態様において、制御放出剤形は、模擬胃液/模擬腸液(1時間で切換え)媒体において、1時間後の約80%未満のGABABアゴニスト放出、4時間後の少なくとも約30%のGABABアゴニスト放出、および6時間後の少なくとも約40%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す。
【0013】
好ましい態様において、GABABアゴニストおよび薬学的に許容される賦形剤を含む制御放出剤形は、模擬腸液媒体において、1時間後の約50%未満のGABABアゴニスト放出、4時間後の少なくとも約40%のGABABアゴニスト放出、および6時間後の少なくとも約50%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す。この好ましい態様において、制御放出剤形は、模擬胃液/模擬腸液(1時間で切換え)媒体において、1時間後の約70%未満のGABABアゴニスト放出、4時間後の少なくとも約40%のGABABアゴニスト放出、および6時間後の少なくとも約50%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す。
【0014】
別の態様において、制御放出GABABアゴニスト剤形は、即時放出GABABアゴニスト成分と組み合わされる。この態様において、即時放出成分は、模擬胃液において、1時間後の少なくとも約80%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す。即時放出成分対制御放出成分の比は、約1:10〜約10:1、好ましくは約1:4〜約4:1、より好ましくは約1:3〜約3:1、最も好ましくは約1:2〜約2:1であろう。
【0015】
別の態様において、本発明の薬学的剤形は、GABABアゴニストおよび薬学的に許容される賦形剤を含む腸溶コーティングされた制御放出成分を含有し、この腸溶コーティングされた制御放出成分は、模擬胃液/模擬腸液(2時間で切換え)媒体において、2時間後の約10%未満のGABABアゴニスト放出、3時間後の少なくとも約40%のGABABアゴニスト放出、および6時間後の少なくとも約70%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す。好ましくは、腸溶コーティングされた制御放出成分は、模擬胃液/模擬腸液(2時間で切換え)媒体において、2時間後の約10%未満のGABABアゴニスト放出、3時間後の少なくとも約50%のGABABアゴニスト放出、および6時間後の少なくとも約80%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す。最も好ましくは、腸溶コーティングされた制御放出成分は、模擬胃液/模擬腸液(2時間で切換え)媒体において、2時間後の約10%未満のGABABアゴニスト放出、3時間後の少なくとも約60%のGABABアゴニスト放出、および6時間後の少なくとも約90%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す。
【0016】
さらに好ましい態様において、剤形は、腸溶コーティングされた制御放出成分との組み合わせで即時放出成分も含有する。例えば、GABABアゴニストは、即時放出ビーズおよび制御放出ビーズの組合せとして調製され、圧縮して錠剤にされ、またはカプセル剤形に入れられてよい。即時放出成分対制御放出成分の比は、約1:10〜約10:1、好ましくは約1:4〜約4:1、より好ましくは約1:3〜約3:1、および最も好ましくは約1:2〜約2:1であろう。
【0017】
本発明は、即時放出特性および徐放特性の双方を有する薬学的剤形を含む。この態様において、GABABアゴニストおよび薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的剤形は、模擬胃液/模擬腸液(2時間で切換え)媒体において、2時間後の約75%未満のGABABアゴニスト放出、および3時間後の少なくとも約80%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す。好ましくは、薬学的剤形は、模擬胃液/模擬腸液(2時間で切換え)媒体において、2時間後の約65%未満のGABABアゴニスト放出、3時間後の少なくとも90%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す。
【0018】
本発明の薬学的剤形は、長期的バクロフェン療法を必要とする患者に1日2回投与するように適合される。したがって、インビボ吸収は、即時放出バクロフェン製剤と比べて延長され、前記バクロフェンの少なくとも80%が絶食条件下、インビボで吸収される時間の中央値は2.5時間より長い。本発明の剤形は、典型的に絶食状態の患者への投与の約30分〜約7時間後、しばしば投与後2.5〜5.5時間の間の平均最高バクロフェンレベル(Cmax)を含むインビボ血漿プロファイルを示すと考えられる。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は、制御放出GABABアゴニスト(好ましくはバクロフェン、バクロフェンプロドラッグ、バクロフェン類似体、またはそれらの混合物、ならびにバクロフェンのラセミ混合物または実質的に純粋なL-バクロフェン鏡像異性生成物)製剤を含む薬学的剤形に関する。制御放出GABABアゴニスト製剤は、腸溶コーティングされた制御放出製剤の形態でもよい。さらに、腸溶コーティングされた制御放出製剤を含む、制御放出GABABアゴニスト製剤は、最終の薬学的剤形において即時放出GABABアゴニスト製剤と組み合わせてもよい。
【0020】
本発明の製剤は、従来の即時放出製剤と比べて、頻度のより少ない投薬を可能にすることが見出された。例えば、長期的GABABアゴニスト療法を必要とする患者の場合、本発明の製剤の1日2回の投与は、従来の即時放出製剤の1日3回の投与と生物学的に同等である。この投薬頻度の減少は、患者にとってより好都合であり、典型的に患者のより良い服薬遵守につながる。さらに、それは、血漿のピーク値およびトラフ値の数を減少させ、これは典型的に有効性の改善および副作用の低減に関連付けられる。
【0021】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、文脈において明確な指示がない限り、単数形の「a」、「an」、および「the」は、複数形への言及を含む。したがって、例えば、プロファイル(a profile)への言及は、当業者に公知であるその等価物を含む、1つまたは複数のそのようなプロファイルへの言及である。実施される例以外で、または特に指示がない場合、本明細書において使用される成分の量または反応条件を表すすべての数字は、すべての場合において、「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。パーセンテージに関連して使用される場合の「約」という用語は、±1%を意味し得る。
【0022】
特定されるすべての特許および他の刊行物は、例えば、本発明に関連して使用され得る、そのような刊行物において記載されている方法論を説明および開示する目的のために、参照により本明細書に組み入れられる。
【0023】
他に規定されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。任意の公知の方法、装置、および材料を本発明の実施および試験において使用してよいが、これに関して好ましい方法、装置、および材料を本明細書で説明する。
【0024】
ブタン酸または4-アミノ-3-(4-クロロフェニル)ブタン酸としても公知の、本発明のバクロフェンには、ラセミ体バクロフェン、鏡像異性的に純粋なL-バクロフェン、およびそれらの類似体、誘導体、プロドラッグ、代謝生成物、ならびに薬学的に許容される任意のそれらの塩が含まれる。
【0025】
バクロフェンは、GABAB受容体アゴニストであり、したがって、他のGABAB受容体アゴニストは、本発明の範囲内に想定される。これらには、4-アミノブタン酸(GABA);3-アミノプロピル)メチルホスフィン酸;4-アミノ-3-フェニルブタン酸;4-アミノ-3-ヒドロキシブタン酸;4-アミノ-3-(4-クロロフェニル)-3-ヒドロキシフェニルブタン酸;4-アミノ-3-(チエン-2-イル)ブタン酸;4-アミノ-3-(5-クロロチエン-2-イル)ブタン酸;4-アミノ-3-(5-ブロモチエン-2-イル)ブタン酸;4-アミノ-3-(5-メチルチエン-2-イル)ブタン酸;4-アミノ-3-(2-イミダゾリル)ブタン酸;4-グアニジノ-3-(4-クロロフェニル)ブタン酸;3-アミノ-2-(4-クロロフェニル)-1-ニトロプロパン;(3-アミノプロピル)亜ホスホン酸;(4-アミノブト-2-イル)亜ホスホン酸;(3-アミノ-2-メチルプロピル)亜ホスホン酸;(3-アミノブチル)亜ホスホン酸;(3-アミノ-2-(4-クロロフェニル)プロピル)亜ホスホン酸;(3-アミノ-2-(4-クロロフェニル)-2-ヒドロキシプロピル)亜ホスホン酸;(3-アミノ-2-(4-フルオロフェニル)プロピル)亜ホスホン酸;(3-アミノ-2-フェニルプロピル)亜ホスホン酸;(3-アミノ-2-ヒドロキシプロピル)亜ホスホン酸;(E)-(3-アミノプロペン-1-イル)亜ホスホン酸;(3-アミノ-2-シクロヘキシルプロピル)亜ホスホン酸;(3-アミノ-2-ベンジルプロピル)亜ホスホン酸;[3-アミノ-2-(4-メチルフェニル)プロピル]亜ホスホン酸;[3-アミノ-2-(4-トリフルオロメチルフェニル)プロピル]亜ホスホン酸;[3-アミノ-2-(4-メトキシフェニル)プロピル]亜ホスホン酸;[3-アミノ-2-(4-クロロフェニル)-2-ヒドロキシプロピル]亜ホスホン酸;(3-アミノプロピル)メチルホスフィン酸;(3-アミノ-2-ヒドロキシプロピル)メチルホスフィン酸;(3-アミノプロピル)(ジフルオロメチル)ホスフィン酸;(4-アミノブト-2-イル)メチルホスフィン酸;(3-アミノ-1-ヒドロキシプロピル)メチルホスフィン酸;(3-アミノ-2-ヒドロキシプロピル)(ジフルオロメチル)ホスフィン酸;(E)-(3-アミノプロペン-1-イル)メチルホスフィン酸;(3-アミノ-2-オキソ-プロピル)メチルホスフィン酸;(3-アミノプロピル)ヒドロキシメチルホスフィン酸;(5-アミノペント-3-イル)メチルホスフィン酸;(4-アミノ-1,1,1-トリフルオロブト-2-イル)メチルホスフィン酸;(3-アミノ-2-(4-クロロフェニル)プロピル)スルフィン酸;3-アミノプロピルスルフィン酸、1-(アミノメチル)シクロヘキサン酢酸などが含まれる。例えば、米国特許第6,664,069号を参照されたい。
【0026】
「類似体」という用語は、特定の化合物またはそのクラスの化学的に修飾された形態を含み、かつ前記化合物またはクラスに特徴的な薬学的および/または薬理学的活性を維持している化合物を意味する。例えば、バクロフェン類似体には、3-チエニル-および3-フリルアミノ酪酸が含まれる。
【0027】
「誘導体」という用語は、酸のエステルまたはアミド、アルコールまたはチオールに対するベンジル基、およびアミンに対するtert-ブトキシカルボニル基などの保護基など、熟練した化学者にはその修飾がルーチンとみなされている、化学的に修飾された化合物を意味する。
【0028】
本明細書で使用される場合、「プロドラッグ」という用語は、患者にこのようなプロドラッグが投与された場合、インビボで本発明の活性な親薬物を放出する、任意の共有結合した担体を含む。プロドラッグは、薬剤の多数の望ましい特質(すなわち、可溶性、生物学的利用能、製造など)を高めることが知られているため、本発明の化合物は、プロドラッグの形態で送達してもよい。本発明のプロドラッグは、ルーチン操作またはインビボのいずれかで修飾が切断されて親化合物になるように、その化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製することができる。インビボでの変換は、例えば、カルボン酸、リン酸、もしくは硫酸のエステルの化学的もしくは酵素的加水分解、または影響を受けやすい官能基の還元もしくは酸化などいくつかの代謝プロセスの結果として起こり得る。本発明の範囲内のプロドラッグには、本発明のプロドラッグが哺乳動物の被験体に投与された場合に、切断されて、遊離のヒドロキシル基、遊離のアミノ基、または遊離のスルフヒドリル基をそれぞれ形成させる任意の基に、ヒドロキシ、アミノ、またはスルフヒドリル基が結合している化合物が含まれる。代謝的切断によってインビボで迅速に変換され得る官能基は、本発明の化合物のカルボキシル基と反応する基のクラスを形成する。これらには、限定されるわけではないが、アルカノイル(アセチル、プロピオニル、ブチリルなど)、非置換および置換アロイル(ベンゾイルおよび置換ベンゾイルなど)、アルコキシカルボニル(エトキシカルボニルなど)、トリアルキルシリル(トリメチルシリルおよびトリエチルシリルなど)、ジカルボン酸と形成されたモノエステル(スクシニルなど)などの基が含まれる。本発明による有用な化合物の代謝的に切断可能な基はインビボで容易に切断されるため、このような基を有する化合物は、プロドラッグの役割を果たす。代謝的に切断可能な基を有する化合物は、これらがその代謝的に切断可能な基の存在のおかげで親化合物に与えられた、高められた可溶性および/または吸収速度の結果として、改善された生物学的利用能を示し得るという利点を有する。
【0029】
プロドラッグの考察は以下の文献で提供される:DESIGN OF PRODRUGS, H. Bundgaard, ed. (Elsevier, 1985); METHODS IN ENZYMOLOGY, K. Widder et al., eds., vol. 42, 309-96 (Academic Press 1985); A TEXTBOOK OF DRUG DESIGN AND DEVELOPMENT, Krogsgaard-Larsen & H. Bundgaard, ed., Chapter 5; Design and Applications of Prodrugs, 113-91 (1991); H. Bundgard, Advanced Drug Delivery Reviews, 1-38 (1992); 8 J. PHARM. SCIENCES 285 (1988) ; N. Nakeya et al., 32 CHEM. PHARM. BULL. 692 (1984) ; T. Higuchi and V. Stella, Prodrugs as Novel Delivery Systems, 14 A.C.S. SYMPOSIUM SERIES: BIOREVERSIBLE CARRIERS IN DRUG DESIGN, Edward B. Roche, ed. (Am. Pharm. Assoc. & Pergamon Press 1987)。これらの各文献は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0030】
したがって、本発明は、GABAB受容体アゴニスト(バクロフェンを含む)のプロドラッグの使用法、それを送達する方法、およびそれを含有する組成物を企図する。例えば、バクロフェンプロドラッグは、Leisen et al., Lipophilicities of Baclofen Ester Prodrugs Correlate with Affinities to the ATP-dependent Efflux Pump P-glycoprotein, 20 PHARM. RES. 772-78 (2003)に記載されている。
【0031】
「代謝生成物」という用語は、化合物の投与された形態に対する身体の作用によってヒトまたは動物の体内で得られる化合物の形態、例えば、メチル化化合物の投与後に、そのメチル化化合物に対する身体による作用の結果として体内で得られる、メチル基を有する化合物の脱メチル化類似体を意味する。代謝生成物自体が生物活性を有してもよい。
【0032】
「薬学的に許容される」という語句は、本明細書においては、妥当な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適しており、過剰な毒性、刺激性、アレルギー応答も、妥当な利益/リスク比に相応する他の問題または合併症も伴わない、化合物、物質、組成物、および/または剤形を意味するために使用される。
【0033】
例えば、「薬学的に許容される塩」とは、特定された化合物がその酸または塩基の塩に変換されている、開示された化合物の誘導体を意味する。このような薬学的に許容される塩には、限定されるわけではないが、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩などが含まれる。薬学的に許容される塩には、例えば、非毒性の無機酸または有機酸から形成された親化合物の従来の非毒性塩または4級アンモニウム塩が含まれる。例えば、このような従来の非毒性塩には、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から誘導されるもの;および酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン(dislfonic)酸、シュウ酸、イセチオン酸などの有機酸から調製される塩が含まれる。
【0034】
本発明の目的では、「制御放出」という用語は、長期間にわたって(すなわち、1時間以上の期間にわたって)1種もしくは複数種の活性な薬学的物質を放出することができる、または、長期間にわたって活性物質の放出を遅延させる、剤形の一部分または全体を意味する。制御放出(CR)の特徴は、持続放出(SR)、長期放出(PR)、調節放出(MR)、遅延放出(DR)、または徐放(ER)と呼んでもよい。本明細書において考察される溶解プロファイルに関連して使用される場合、「制御放出」という用語は、1時間を超える期間にわたって活性物質を送達する、本発明による剤形のその部分を意味する。
【0035】
「即時放出」とは、胃液と接触すると実質的に直ちに活性物質を放出し、約1時間以内に実質的に完全に溶解する剤型の一部分または全体を意味する。即時放出(IR)の特徴は、瞬間(instant)放出(IR)と呼んでもよい。本明細書において考察される溶解プロファイルに関連して使用される場合、「即時放出」という用語は、1時間未満の期間中に活性物質を送達する、本発明による剤形のその部分を意味する。
【0036】
「CMAX」という用語は、本発明の組成物によって示される最高血漿中濃度である。「TMAX」とは、血漿中濃度-時間プロファイルにおいてCMAXが生じる時間を意味する。「CMIN」は、最低血漿中濃度である。「C」は濃度の、「T」は時間の、「max」は最大の、「min」は最小の略記である。血漿レベルの初回ピークとは、活性物質の血漿レベルの最初の上昇を意味し、これに、1回または複数回の追加のピークが続くことがあり、そのうちの1つがCMAXになり得る。本明細書で使用される場合、「GABABアゴニストの平均最高レベル」とは、GABABアゴニストの平均CMAXを意味する。本明細書で記述する血漿中濃度は、典型的に少なくとも12の被験体からなる集団を用いて測定される。
【0037】
前述の血漿中濃度は、剤形の単回経口投与後の血漿レベルを意味してもよく、または、定常状態で得られるレベルを意味してもよい。本明細書で使用される場合、「定常状態」の血漿中濃度とは、体内の薬物の量が実質的に一定となるような、安定なレベルの吸収および排出に達するまで薬物を反復投薬した際に得られる血漿レベルを意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、ヒトを含む任意の哺乳動物を意味する。
【0039】
「有効量」という用語は、所望の治療効果を生じるのに有効な、本発明による化合物/組成物の量を意味する。
【0040】
「賦形剤」という用語は、体内で活性ではない薬理学的に不活性な成分を意味する。HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL EXCIPIENTS(Am. Pharm. Ass'n 1986)を参照されたい。多くの様々な賦形剤を本発明による製剤中で使用することができ、本明細書において提供される一覧が網羅的ではないことが、当業者には認識されるであろう。
【0041】
本発明の有効成分は、投与様式および剤形の性質に応じて、保存剤、増量剤、ポリマー、崩壊剤、流動促進剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味剤、矯味剤、着香剤、滑沢剤、酸性化剤、および予製剤(dispensing agent)など薬学的に許容される担体、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルと混合してもよい。薬学的に許容される担体および賦形剤を含む、このような成分を、経口剤形を調製するために使用することができる。薬学的に許容される担体には、水、エタノール、ポリオール、植物油、脂肪、ロウ、ゲル形成ポリマーおよび非ゲル形成ポリマーを含むポリマー、ならびにそれらの適切な混合物が含まれる。賦形剤の例には、デンプン、アルファ化デンプン、アビセル、ラクトース、乳糖、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム、およびレーキ混合物が含まれる。崩壊剤の例には、デンプン、アルギン酸、および特定の複合ケイ酸塩が含まれる。滑沢剤の例には、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、ならびに高分子量のポリエチレングリコールが含まれる。
【0042】
「絶食条件下の投薬」とは、被験体を一晩、少なくとも10時間絶食させた後、室温水240mlとともに投与量が経口投与される場合として定義される。薬物投与とともに与えられるものを除いて、服用量投与の1時間前から投薬の1時間後まで、液体はまったく与えられない。投与の2時間後に、被験体は、室温水240mlを摂取してもよい。
【0043】
本発明の薬学的剤形は、GABABアゴニストおよび薬学的に許容される賦形剤を含む制御放出剤形を含んでよく、この剤形は、模擬腸液媒体において、1時間後の約70%未満のGABABアゴニスト放出、4時間後の少なくとも約20%のGABABアゴニスト放出、および6時間後の少なくとも約30%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す。この態様において、制御放出剤形は、模擬胃液/模擬腸液(1時間で切換え)媒体において、1時間後の約80%未満のGABABアゴニスト放出、4時間後の少なくとも約30%のGABABアゴニスト放出、および6時間後の少なくとも約40%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す。
【0044】
好ましくは、制御放出剤形は、模擬腸液媒体において、1時間後の約50%未満のGABABアゴニスト放出、4時間後の少なくとも約40%のGABABアゴニスト放出、および6時間後の少なくとも約50%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す。この好ましい態様において、制御放出剤形は、模擬胃液/模擬腸液(1時間で切換え)媒体において、1時間後の約70%未満のGABABアゴニスト放出、4時間後の少なくとも約40%のGABABアゴニスト放出、および6時間後の少なくとも約50%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す。
【0045】
別の態様において、制御放出GABABアゴニスト剤形は、即時放出GABABアゴニスト成分と組み合わされる。この態様において、即時放出成分は、模擬胃液において、1時間後の少なくとも約80%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す。
【0046】
別の態様において、本発明の薬学的剤形は、GABABアゴニストおよび薬学的に許容される賦形剤を含む腸溶コーティングされた制御放出成分を含有し、この腸溶コーティングされた制御放出成分は、模擬胃液/模擬腸液(2時間で切換え)媒体において、2時間後の約10%未満のGABABアゴニスト放出、3時間後の少なくとも約40%のGABABアゴニスト放出、および6時間後の少なくとも約70%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す。好ましくは、腸溶コーティングされた制御放出成分は、模擬胃液/模擬腸液(2時間で切換え)媒体において、2時間後の約10%未満のGABABアゴニスト放出、3時間後の少なくとも約50%のGABABアゴニスト放出、および6時間後の少なくとも約80%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す。最も好ましくは、腸溶コーティングされた制御放出成分は、模擬胃液/模擬腸液(2時間で切換え)媒体において、2時間後の約10%未満のGABABアゴニスト放出、3時間後の少なくとも約60%のGABABアゴニスト放出、および6時間後の少なくとも約90%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す。
【0047】
さらに好ましい態様において、剤形は、腸溶コーティングされた制御放出成分と組み合わせて即時放出成分も含有する。
【0048】
本発明は、即時放出特性および徐放特性の双方を有する薬学的剤形を含む。この態様において、GABABアゴニストおよび薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的剤形は、模擬胃液/模擬腸液(2時間で切換え)媒体において、2時間後の約75%未満のGABABアゴニスト放出、および3時間後の少なくとも約80%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す。好ましくは、薬学的剤形は、模擬胃液/模擬腸液(2時間で切換え)媒体において、2時間後の約65%未満のGABABアゴニスト放出、および3時間後の少なくとも90%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す。
【0049】
本発明の剤形に適したインビトロの溶解試験法は、当業者には公知であり、本明細書において実施例で説明するものを含む。USPパドル法は、United States Pharmacopoeia, Edition XXII (1990)に記載されているパドルおよびバスケット法(Paddle and Basket Method)を意味する。特に、37℃、900mlの模擬胃液(SGF)(pH1.2)または模擬腸液(SIF)(pH6.8)中、50rpmまたは75rpmのUSPパドル法を用いて、本発明によるインビトロの溶解プロファイルが測定され得る。
【0050】
本発明の剤形が、腸溶コーティングされた制御放出を含む制御放出成分、ならびに即時放出成分を含む場合、即時放出成分対制御放出成分の比は、約1:10〜約10:1、好ましくは約1:4〜約4:1、より好ましくは約1:3〜約3:1、および最も好ましくは約1:2〜約2:1である。
【0051】
本発明の薬学的剤形は、従来の即時放出製剤と比べて頻度のより少ない投与を可能にする、活性物質の持続的な吸収を可能にするように適合される。本明細書で使用される場合、「持続的な吸収」とは、絶食条件下、インビボで長期に渡って活性物質が吸収されることを意味する。特に、吸収の大半(すなわち、80〜90%)が起こる期間は、剤形投与後約7時間または8時間まで伸びる。具体的には、本発明の剤形から活性物質の少なくとも80%が吸収される期間の中央値は、投与後2.5時間より長く、典型的に投与後3〜4.5時間である。比較すると、従来の即時放出製剤から活性物質の少なくとも80%が吸収される期間の中央値は、投与後1.5〜2時間である。活性物質がある剤形から吸収される期間は、当業者に公知の数学的方法を用いて、デコンボリューションによって算出することができる。
【0052】
本発明の剤形は、絶食状態の患者への1回量の投与後約30分〜約7時間、しばしば約2.5〜約5.5時間のGABABアゴニスト平均最高レベルを含む、インビボ血漿プロファイルを示すと考えられる。定常状態では、本発明の薬学的剤形は、即時放出剤形から定常状態で得られる値に匹敵するCMINに、より遅い時点で到達すると考えられ、これは、頻度のより少ない投薬を可能にすると考えられる。特に、本発明の40mgの剤形は、1日に2回投与された場合に、1日3回投与される即時放出錠剤の値に類似した、定常状態時の平均血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC)、最高血漿中濃度(CMAX)、および最低血漿中濃度(CMIN)を与えると考えられる。
【0053】
これらの剤形(好ましくは、ビーズ、顆粒、粒子、もしくはそれらの混合物を含有してもよい、錠剤またはカプセル剤)は、バクロフェンを約2mg〜約150mg(好ましくは、約2.5mg〜約100mg)の量で含有してもよく、多発性硬化症またはある種の脊髄損傷などの疾患に関連する、痙攣、有痛性痙攣、および筋緊張を含む医学的状態の治療において使用することができる。
【0054】
1回量または分割量で宿主に投与される、本発明による有用な化合物の1日の総用量は、一般に、1日当たり約0.01mg/kg体重〜約100mg/kg体重、好ましくは1日当たり約0.05mg/kg体重〜約50mg/kg体重の量である。しかしながら、任意の特定の患者に対する特定の用量レベルは、体重、全体的健康状態、性別、食生活、投与時間および投与経路、吸収および排出の速度、他の薬物との組合せ、ならびに治療される個々の疾患の重症度を含む様々な因子に依存することを理解すべきである。個々の組成物および投与方法に対する所望の治療応答を得るために有効な量の有効成分を得るために、本発明の組成物中の有効成分の実際の投与量レベルを変更してもよい。
【0055】
1回量または分割量で宿主に投与される、本発明による有用な化合物の1日の総用量は、例えば、1日当たり約0.01mg/kg体重〜約20mg/kg体重、および好ましくは約0.02mg/kg/日〜約10mg/kg/日の量でもよい。バクロフェンの好ましい用量域は、剤形当たり2.5mg〜100mgである。本発明による剤形は、1日量を構成するのに使用し得るような量またはその一部分を含有してよい。
【0056】
本発明の製剤の好ましい用量強度(dosage strength)には、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、および40mgのバクロフェンを有するものが含まれる。典型的に、ある患者に対する最適投与量は、最初に少ない用量を患者に与え、次いで、最小の副作用しか伴わずに最大の治療的有効性を実現する投与量レベルに患者が到達するまでその用量を徐々に増加させる滴定によって決定される。
【0057】
本発明の1つの態様は、バクロフェンの即時放出およびバクロフェンの遅延放出または遅延型の持続放出が含まれる、制御放出固形経口剤形を提供する。本発明による剤形は、即時放出成分および遅延放出または遅延型持続放出の成分を含んでもよい。これらの2種の成分の組合せは、剤形を経口投与すると、間欠的な放出様式または連続的な様式で薬物を放出することができる。
【0058】
一局面では、本発明は、即時放出バクロフェン成分、および遅延放出もしくは遅延型持続放出または持続放出のバクロフェン成分を含む、制御放出バクロフェン固形経口剤形に関する。即時放出バクロフェン成分は、バクロフェンの即時放出を可能にする1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤とともに配合されたバクロフェンを含み、遅延放出もしくは遅延型持続放出または持続放出のバクロフェン成分は、バクロフェンの遅延放出もしくは遅延型持続放出、または持続放出を可能にする1種または複数種の賦形剤とともに配合されたバクロフェンを含む。例えば、即時放出成分および徐放成分の双方を有する、錠剤などの製剤に関する米国特許第6,372,254号を参照されたい。
【0059】
当業者に明らかである他の剤形のうちで、本発明による固形経口剤形は、錠剤製剤、または個別の単位を詰めたカプセル製剤、またはサシェ製剤でよい。本発明の個別の単位には、ビーズ、顆粒、ペレット、スフェロイド、粒子、錠剤、丸剤などが含まれる。
【0060】
具体的には、剤形の即時放出、遅延放出、遅延型持続放出、および持続放出の成分は、それぞれImpax Laboratories, Incに譲渡されている、2002年4月16日に発行された米国特許第6,372,254号、2002年9月12日に出願された係属中の米国特許出願第10/241,837号、および2003年12月11日に出願された、公開された国際特許出願WO03/101432号において記載されているような多成分系錠剤の1つの成分を含む、熟練した医薬品処方者に公知の任意の形態をとることができる。本発明による制御放出バクロフェン剤形は、バクロフェンを含む核の形態であってもよい。
【0061】
当技術分野において公知の方法によって剤形を製造することができる。いくつかの好ましい方法を以下に記載する。
【0062】
マトリックス剤形
マトリックスという用語は、本明細書において使用される場合、活性物質がその中に組み込まれている固体物質を意味する。溶解媒体に曝露されると、固体物質中にチャネルが形成され、その結果、活性物質が流出できるようになる。本発明による剤形は、コーティングされた、またはコーティングされていないマトリックスの形態でよい。コーティングは、例えば、即時放出バクロフェンを含有してもよく、または別の方法では、マトリックス自体が制御放出バクロフェンを含有してもよい。遅延放出もしくは遅延型持続放出、または持続放出の成分からの薬物放出は、即時性または持続性となり得、例えば、薬物の有効な吸収を確実にするためには経口剤形の経口投与後7時間以内である。
【0063】
制御放出バクロフェン成分は、少なくとも1種の放出遅延層でコーティングされたバクロフェンからなってもよい。遅延型持続放出バクロフェン成分は、少なくとも1種の遅延放出層でコーティングされた、持続放出用にコーティングされたバクロフェンからなってもよい。持続放出バクロフェン成分は、少なくとも1種の持続放出ポリマー、またはマトリックス制御放出ポリマーでコーティングされたバクロフェンからなってもよい。
【0064】
当業者は、所望の溶解プロファイルを実現することができる多種多様の物質からマトリックス物質を選択できることを理解すべきである。物質には、例えば、ポリビニルアルコールなど1種または複数種のゲル形成ポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシプロピルアルキルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロースを含むセルロースエーテル、グァーガム、キサンタン(xanthum)ゴム、およびアルギナートなど天然または合成のゴム、ならびに、エチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、脂肪、ロウ、ポリカルボン酸、またはCarbopol(登録商標)シリーズのポリマーなどのエステル、メタクリル酸コポリマー、およびメタクリル酸ポリマーが含まれ得る。
【0065】
マトリックス剤形を製造する方法は、当技術分野では公知であり、本発明に従って、所望の溶解プロファイルおよび/または血漿プロファイルを生じ得るような任意の方法に依拠してよい。このような方法の1つは、固体ポリマー物質、およびその後で制御放出錠剤の核中に混合され圧縮される1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤とともにバクロフェンを含む。このような錠剤の核は、二層錠剤、圧縮コーティング錠剤、またはフィルムコーティング錠剤としてさらに加工するために使用することができる。
【0066】
即時放出バクロフェンを含有するコーティングを、制御放出錠剤の核の外側に添加して、最終剤形を製造することができる。このようなコーティングは、バクロフェンを、ポリビニルピロリドン(PVP)29/32またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ならびに水/イソプロピルアルコールおよび酢酸トリエチルと混合することによって調製することができる。このような即時放出コーティングを、錠剤の核の上にスプレーコーティングすることができる。即時放出コーティングは、80重量%のバクロフェンおよび20重量%のラクトースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースのタイプ2910からなる混合物を用いて、圧縮コーティング工程によって施すこともできる。圧縮コーティング技術は、当技術分野では公知であり、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,372,254号(Ting et al.)に記載されている。
【0067】
さらに、個々の放出成分の製剤は、当技術分野で周知である適切な造粒法によって生じ得る。湿式造粒法では、結合剤(ポリマー)の溶液を、攪拌しながら混合粉末に加える。塊が湿った雪または黒砂糖の硬さを有するようになるまで、粉末の塊を結合溶液で湿らせる。湿式造粒された物質をふるい分け装置に押し通す。温度管理された容器中にそれを置くことによって、粉砕工程から得られる湿った物質を乾燥させる。乾燥後、ふるい分け装置に通すことによって、顆粒状の物質の粒径を小さくする。滑沢剤を加え、次いで、最終混合物を圧縮して、マトリックス剤形にする。
【0068】
流動層造粒では、上昇気流を用いて、不活性物質および/または活性物質の粒子を垂直管中に懸濁させる。粒子が懸濁されている間に、溶液中の通常の顆粒化物質を管中に噴霧する。錠剤の顆粒化をもたらす1組の管理された条件下で、徐々に粒子が蓄積する。乾燥および滑沢剤の添加後、顆粒状の物質をそのまま圧縮することができる。
【0069】
乾燥造粒法では、活性物質、結合剤、希釈剤、および滑沢剤を混合し、圧縮して錠剤にする。ふるいわけ装置によって望ましいメッシュふるいに通して、圧縮された大きな錠剤を細かく砕く。付加的な滑沢剤を顆粒状の物質に加え、穏やかに混合する。次いで、この物質を圧縮して錠剤にする。
【0070】
粒子ベースの剤形、即時放出粒子
本発明の即時放出/制御放出剤形は、薬学的粒子の形態をとってもよい。この剤形は、活性物質の所望の放出を提供するに十分な比で制御放出粒子と組み合わせて即時放出粒子を含んでもよい。制御放出粒子は、即時放出粒子をコーティングすることによって製造することができる。
【0071】
本明細書で使用される「粒子」という用語は、約0.01mm〜約5.0mm、好ましくは約0.1mm〜約2.5mm、およびより好ましくは約0.5mm〜約2mmの直径を有する顆粒を意味する。当業者は、本発明による粒子はこのサイズ範囲内の任意の幾何学的な形状であってよいこと、ならびに粒子の統計的分布の平均値が上記に挙げた粒子サイズの範囲内に収まる限り、それらは本発明の企図される範囲に含まれるとみなされることを理解すべきである。粒子は、製薬分野において公知である任意の標準的な構造を呈してよい。このような構造体には、例えば、マトリックス粒子、薬物層を有するノンパレル(non-pareil)核、およびその上に多層を有する活性または不活性な核が含まれる。これらの構造体のうちの任意のものに制御放出コーティングを加えて、制御放出粒子を作製することができる。
【0072】
これらの粒子は、粒子を作製するためのいくつかの公知の方法のうちの任意のものに従って製造することができる。即時放出粒子は、活性物質の組合せおよび崩壊剤を含む。適切な崩壊剤には、例えば、デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルシウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、および結晶セルロースが含まれる。
【0073】
前記の成分に加えて、マトリックスは、適切な量の他の物質、例えば、製薬分野において慣用される希釈剤、滑沢剤、結合剤、造粒助剤、着色剤、矯味剤、および流動促進剤を含有してもよい。これらの付加的な物質の量は、所望の製剤に所望の効果を与えるのに十分な量である。粒子を組み込むマトリックスは、望ましいならば、粒子の約75重量%までの量で、製薬分野において慣用される希釈剤、滑沢剤、結合剤、造粒助剤、着色剤、矯味剤、および流動促進剤などこれらの他の物質の適切な量を含有してもよい。
【0074】
好ましい1つの態様において、前述の粒子の有効量をカプセル内に含むように経口剤形を調製する。例えば、摂取され胃液に接触した場合に有効な制御放出用量を実現するのに十分な量の溶融押出し粒子をゼラチンカプセル中に配置してもよい。別の好ましい態様において、従来の錠剤成形装置を用いて、標準技術によって、適切な量の粒子を圧縮して経口錠剤にする。錠剤(圧縮および成形)、カプセル剤(硬質および軟質ゼラチン)、および丸剤を製造するための技術および組成物は、参照により本明細書に組み入れられるREMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, Arthur Osol, ed., 1553-93 (1980)においても記載されている。適切な成分を混合し、その混合物を顆粒化することによって、粒子を作製することができる。得られた粒子を乾燥させ、選別し、所望のサイズを有する粒子を、薬物調製のために使用する。
【0075】
制御放出粒子
本発明の制御放出粒子は、摂取され、胃液に、次いで腸液に曝露された場合に、バクロフェンを緩徐に放出する。例えば、遅延コーティングの厚さを厚くまたは薄くすることによって、すなわち、上塗りの量を変更することによって、本発明の製剤の制御放出プロファイルを変えることができる。その後、得られた固体の制御放出粒子を、摂取され、周囲の液体、例えば、胃液、腸液、または溶解媒体に接触した場合に有効な制御放出用量を実現するのに十分な量だけ、ゼラチンカプセル中に配置してもよい。放出プロファイルを変更するために、疎水性または親水性物質の水分散系で粒子を上塗りしてもよい。疎水性物質の水分散系は、好ましくは、有効量の可塑剤、例えばクエン酸トリエチルをさらに含む。Aquacoat(登録商標)またはSurelease(登録商標)など、予め調製されたエチルセルロースの水分散系を使用してもよい。Surelease(登録商標)を使用する場合は、可塑剤を別途添加する必要はない。
【0076】
1種または複数種の放出修飾剤(release-modifying agent)を加えることによって、本発明の制御放出製剤からの治療的に活性な物質の放出にさらに影響を及ぼすこと、すなわち、所望の速度に調整することができる。放出修飾剤は、有機または無機でよく、使用環境においてコーティングから溶解、抽出、または浸出され得る物質が含まれる。細孔形成剤(pore-former)は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど1種または複数種の親水性物質を含んでもよい。これらの放出修飾剤はまた、半透性ポリマーを含んでもよい。特定の好ましい態様において、放出修飾剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸金属塩、およびそれらの混合物から選択される。
【0077】
制御放出成分はまた、親水性および疎水性ポリマーの組合せを含んでもよい。この態様において、一度投与されると、親水性ポリマーは溶けて無くなり、制御放出成分の構造が弱められ、かつ疎水性ポリマーは、水の浸透を遅らせ、薬物送達系の形状維持に役立つ。
【0078】
疎水性物質は、アルキルセルロース、アクリル酸およびメタクリル酸のポリマーおよびコポリマー、シェラック、ゼイン、硬化ヒマシ油、硬化植物油、またはそれらの混合物からなる群より選択され得る。特定の好ましい態様において、疎水性物質は、限定されるわけではないが、アクリル酸およびメタクリル酸のコポリマー、メタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸シアノエチル、メタクリル酸アミノアルキルコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミンコポリマー、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸無水物)、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ(メタクリル酸無水物)、およびメタクリル酸グリシジルコポリマーを含む、薬学的に許容されるアクリルポリマーである。代替の態様において、疎水性物質は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど1種または複数種のヒドロキシアルキルセルロースなどの物質から選択される。ヒドロキシアルキルセルロースは、好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、または好ましくはヒドロキシエチルセルロースなどヒドロキシ(C1〜C6)アルキルセルロースである。本発明の経口剤形中のヒドロキシアルキルセルロースの量は、特に、所望の活性物質の正確な速度によって決定され、約1%から約80%まで変動し得る。
【0079】
コーティングが疎水性ポリマーの水分散系を含む本発明の態様において、疎水性ポリマーの水分散系中に有効量の可塑剤を含むことにより、フィルムの物理的特性をさらに改善することができる。例えば、エチルセルロースは、比較的高いガラス転移温度を有し、通常のコーティング条件下では柔軟なフィルムを形成しないため、コーティング物質としてそれを使用する前に、エチルセルロースを可塑化する必要がある。一般的にコーティング溶液中に含まれる可塑剤の量は、フィルム形成剤の濃度に基づき、例えば、ほとんどの場合、フィルム形成剤の約1重量パーセント〜約50重量パーセントである。しかしながら、好ましくは、個々のコーティング溶液および適用方法を用いた慎重な実験の後に、可塑剤の濃度が決定される。
【0080】
エチルセルロースに適した可塑剤の例には、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、およびトリアセチンなどの水不溶性可塑剤が含まれるが、他の水不溶性可塑剤(アセチル化モノグリセリド、フタル酸エステル、ヒマシ油など)を使用してもよい。クエン酸トリエチルは、本発明のエチルセルロースの水分散系にとって特に好ましい可塑剤である。
【0081】
本発明のアクリルポリマーに適した可塑剤の例には、限定されるわけではないが、クエン酸トリエチルNF XVI、クエン酸トリブチルなどのクエン酸エステル、フタル酸ジブチル、および場合によっては1,2-プロピレングリコールが含まれる。Eudragit(登録商標)RL/RSラッカー溶液など、アクリルフィルムから形成されるフィルムの弾性を高めるのに適していることが判明した他の可塑剤には、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、フタル酸ジエチル、ヒマシ油、およびトリアセチンが含まれる。クエン酸トリエチルは、エチルセルロースの水分散系にとって特に好ましい可塑剤である。少量のタルクの添加は、加工する間に水分散系が固着する傾向を減らし、研磨剤のように振舞うこともさらに見出された。
【0082】
エチルセルロースの市販の水分散系の1つは、Aquacoat(登録商標)であり、これは、エチルセルロースを水不混和性有機溶媒に溶解し、次いで、界面活性剤および安定化剤の存在下、水中でエチルセルロースを乳化することにより調製される。均質化してサブミクロンの液滴を生成させた後に、有機溶媒を真空下で蒸発させて擬ラテックス(pseudolatex)を形成させる。製造段階の進行中には、擬ラテックス中に可塑剤を組み込まない。したがって、コーティングとして擬ラテックスを使用する前に、Aquacoat(登録商標)を適切な可塑剤と混合する。
【0083】
エチルセルロースの別の水分散系は、Surelease(登録商標)(Colorcon,Inc., West Point,PA,USA)として市販されている。この製品は、製造工程の進行中に可塑剤を分散系中に組み込むことにより調製される。ポリマー、可塑剤(セバシン酸ジブチル)、および安定化剤(オレイン酸)の熱溶融液を、均質な混合物として調製し、次いで、アルカリ性溶液でこれを希釈して、基質上に直接適用できる水分散系を得る。
【0084】
好ましい1つの態様において、アクリルコーティングは、商品名Eudragit(登録商標)でRohm Pharma社から市販されているもののような、水分散系の形態で使用されるアクリル樹脂ラッカーである。付加的な好ましい態様において、このアクリルコーティングは、商品名Eudragit(登録商標)RL30DおよびEudragit(登録商標)RS30DでRohm Pharma社から市販されている2種のアクリル樹脂ラッカーの混合物を含む。Eudragit(登録商標)RL30DおよびEudragit(登録商標)RS30は、低含量の4級アンモニウム基を有するアクリルエステルおよびメタクリルエステルのコポリマーであり、アンモニウム基と残存する中性(メタ)アクリル酸エステルとのモル比は、Eudragit(登録商標)RL30では1:20、Eudragit(登録商標)RS30Dでは1:40である。平均分子量は約150,000ダルトンである。記号表示のRL(高透過性)およびRS(低透過性)とは、これらの物質の透過特性に関する。Eudragit(登録商標)RL/RS混合物は、水および消化液に不溶性であるが、これらから形成されるコーティングは水溶液および消化液中で膨潤性かつ浸透性である。
【0085】
所望の溶解プロファイルを有する制御放出製剤を最終的に得るために、Eudragit(登録商標)RL/RS分散系を任意の所望の比で混合してもよい。例えば、Eudragit(登録商標)RL 100%、Eudragit(登録商標)RL 50%、およびEudragit(登録商標)RS 50%、またはEudragit(登録商標)RL 10%およびEudragit(登録商標)RS 90%など様々なコーティングの組合せのうちの1つに由来する遅延コーティングから、望ましい制御放出製剤を得ることができる。当業者は、他のアクリルポリマー、例えば、Eudragit(登録商標)Lを使用してもよいことを認識すべきである。様々なアクリル樹脂ラッカーの相対量を変更することによって溶解プロファイルを変更することに加えて、例えば、遅延コーティングの厚さを厚くまたは薄くすることによって、最終製品の溶解プロファイルを変えることもできる。
【0086】
本発明の好ましい態様において、可塑化されたアクリルポリマーのTより高い温度で、必要な期間、コーティングされた基質をオーブン硬化に供することによって、安定化された製品が得られ、この際、個々の製剤に対する温度および時間の最適値は実験的に決定される。本発明の特定の態様において、約45℃の温度で約1〜約48時間の期間にわたって行われるオーブン硬化によって、安定化された製品が得られる。本発明の制御放出コーティングでコーティングされた特定の製品は、24〜48時間より長い、例えば、約48〜約60時間またはそれ以上の硬化時間を必要とし得ることも企図される。
【0087】
コーティング溶液は、好ましくは、フィルム形成剤、可塑剤、および溶媒系(すなわち水)に加えて、見た目を良くし、製品の区別を可能にする着色剤も含有する。着色剤は、疎水性物質の水分散系の代わりに、またはそれに加えて、治療的に活性な物質の溶液に加えてよい。例えば、アルコールまたはプロピレングリコールベースの着色剤分散系、粉砕されたアルミニウムレーキ、および二酸化チタンなどの乳白剤の使用を介し、水溶性ポリマー溶液にせん断力を加えながら着色剤を加え、次いで、可塑化されたAquacoat(登録商標)に対して低いせん断力を使用することにより、着色剤をAquacoat(登録商標)に加えることができる。または、本発明の製剤に着色剤を供給する任意の適切な方法を使用してもよい。アクリルポリマーの水分散系を使用する場合に製剤に着色剤を供給するための適切な成分には、二酸化チタン、および酸化鉄顔料などの着色顔料が含まれる。しかしながら、顔料の混合はコーティングの遅延効果を高めることがある。
【0088】
例えば、治療的に活性な物質を水中に溶解し、次いで、Wusterインサートを使用して、基質、例えばノンパレル18/20ビーズ上にその溶液を噴霧することによって、治療的に活性な物質でコーティングされているスフェロイドまたはビーズを調製することができる。任意で、活性物質のビーズへの結合を支援し、かつ/または溶液を着色するなどのために、ビーズをコーティングする前に付加的な成分も加える。例えば、着色剤(例えば、Colorcon, Inc社から市販されているOpadry(登録商標))を含むまたは含まない、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む製品を、ビーズ上に塗布する前に(例えば、約1時間)、溶液および混合した溶液に加えてもよい。次いで、得られたコーティングされた基質、この例ではビーズを、任意で、治療的に活性な物質を疎水性の制御放出コーティングから分離させるためにバリア剤で上塗りしてもよい。適切なバリア剤の例は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むものである。しかしながら、当技術分野において公知の任意のフィルム形成剤を使用してもよい。バリア剤が最終製品の溶解速度に影響を及ぼさないことが好ましい。
【0089】
圧縮コーティングされた、パルス型(pulsatile)剤形
本発明の別の態様において、バクロフェンは、活性物質および1種または複数種のポリマーの圧縮された混合物を含有し、活性物質ならびに親水性および疎水性ポリマーの圧縮された混合物を含有する即時放出成分によって実質的に包み込まれた制御放出成分を用いる経口投与に適した、圧縮コーティングされたパルス型薬物送達系を介して投与される。即時放出成分は、好ましくは、活性物質、ならびに水性媒体に曝露されるとポリマーが迅速に崩壊するような崩壊特性を有する1種または複数種のポリマーの圧縮された混合物を含む。
【0090】
制御放出成分は、好ましくは親水性および疎水性ポリマーの組合せを含む。この態様において、一度投与されると、親水性ポリマーは溶けて無くなり、制御放出成分の構造が弱められ、疎水性ポリマーは、水の浸透を遅らせ、薬物送達系の形状維持に役立つ。
【0091】
本発明によれば、「ポリマー」という用語は、水性環境(例えば水)と接触すると、膨潤、ゲル化、崩壊、または浸食され得る、単一または複数のポリマー物質を含む。例には、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グァーガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、メチルセルロース、結晶セルロース、ポラクリリンカリウム、粉末セルロース、アルファ化デンプン、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリメタクリレート、ポビドン、アルファ化デンプン、シェラック、ゼイン、ならびにそれらの組合せが含まれる。
【0092】
本明細書で使用される「親水性ポリマー」という用語は、カルボキシメチルセルロース、グァーガムもしくはアカシアゴム、トラガカントゴム、またはキサンタンゴムなどの天然ゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、およびポビドンのうちの1種または複数種を含み、このうち、ヒドロキシプロピルメチルセルロースがさらに好ましい。「親水性ポリマー」という用語は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリエテレン(polyethelene)オキシド、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシポリメチレン、ポリエテレングリコール、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリホスファジン、ポリオキサゾリジン、ポリ(ヒドロキシアルキルカルボン酸)、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、カラゲネート(carageenate)アルギネート、アルギン酸アンモニウム、アルガン酸(alganate)ナトリウム、またはそれらの混合物も含んでよい。
【0093】
薬物送達系の「疎水性ポリマー」は、限定されるわけではないが、カルボマー、カルナウバロウ、エチルセルロース、パルミトステアリン酸グリセリル、硬化ヒマシ油、硬化植物油1型、微結晶性ロウ、ポラクリリンカリウム、ポリエチレンオキシド、ポリメタクリレート、またはステアリン酸から選択される1種または複数種のポリマーを含む、本発明の目的を実現するであろう任意の疎水性ポリマーでよく、このうち、硬化植物油1型が好ましい。疎水性ポリマーには、例えば、限定されるわけではないが、アクリル酸およびメタクリル酸のコポリマー、メタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸シアノエチル、メタクリル酸アミノアルキルコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸メチル)コポリマー、ポリアクリルアミド、メタクリル酸アミノアルキルコポリマー、ポリ(メタクリル酸無水物)、ならびにメタクリル酸グリシジルコポリマーを含む、薬学的に許容されるアクリルポリマーが含まれ得る。さらに、アクリルポリマーは、陽イオン性、陰イオン性、または非イオン性ポリマーでよく、メタクリル酸またはメタクリル酸エステルから形成されるアクリレート、メタクリレートでもよい。これらのポリマーは、pH依存性でもよい。
【0094】
腸溶コーティングされた制御放出
1つの態様において、遅延放出または遅延型持続放出のコーティングは腸溶コーティングである。市販されているすべてのpH感受性ポリマーを、腸溶コーティングを形成させるために使用してよい。腸溶コーティングでコーティングされる薬物は、pHが約4.5より低い酸性の胃環境においては最小限しか放出されず、または放出されない。薬物は、適切な遅延時間の後、またはその単位が胃を通過した後に、腸内に存在する、より高いpHで腸溶層が溶解した場合に利用可能となるべきである。薬物放出時間の好ましい持続期間は、絶食条件下での投薬後、最大7時間までの範囲である。
【0095】
腸溶ポリマーには、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、例えば、商品名Eudragit(登録商標)L12.5、Eudragit(登録商標)L100、もしくはEudragit(登録商標)S12.5、S100(Rohm GmbH, Darmstadt, Germany)として公知の物質など、共重合されたメタクリル酸/メタクリル酸メチルエステル、または腸溶コーティングを得るために使用される類似の化合物が含まれる。例えば、Eudragit(登録商標)L 30D-55、Eudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)S100、Eudragit(登録商標)調製物4110D c;Aquateric(登録商標)、Aquacoat(登録商標)CPD30(FMC Corp.);Kollicoat MAE(登録商標)30DおよびKollicoat MAE(登録商標)30DP(BASF);Eastacryl(登録商標)30D(Eastman Chemical, Kingsport, TN)など、ポリマーの水性コロイド分散系または再分散系を適用することもできる。
【0096】
本発明で使用する腸溶ポリマーは、pH感受性ではない他の公知のコーティング製品と混合することによって変更することができる。このようなコーティング製品の例には、E Eudragit(登録商標)、Eudragit(登録商標)RL、Eudragit(登録商標)RSという商品名で一般に販売されている、トリメチルアンモニオエチルメタクリレート塩化物を少量含む中性のメタクリル酸エステル;Eudragit(登録商標)NE30DおよびEudragit(登録商標)NE30という商品名で販売されている、官能基をまったく含まない中性エステル分散系;ならびに他のpH非依存性のコーティング製品が含まれる
【0097】
腸溶コーティングは、制御放出成分を実質的に包み込むと考えられる。「実質的に包み込む」という用語は、ある成分の全体またはほぼ全体の封入を定義することを意図する。このような封入には、好ましくは、少なくとも約80%の封入、より好ましくは少なくとも約90%の封入、およびさらにより好ましくは少なくとも約99%の封入が含まれる。
【0098】
本発明のある態様は、バクロフェンを含む易流動性の製剤を提供する。本明細書で使用される「易流動性」という用語は、通過を遅らせる障害もメカニズムも伴わずに、患者の消化器系を通過する剤形を意味する。したがって、例えば、「易流動性」という用語は、例えば米国特許第5,651,985号で記載されているような、長期間にわたって胃中に存在するように設計される、胃内ラフト型の剤形を除外すると考えられる。
【0099】
本発明による剤形は、バクロフェンと、チザニジン、ダントロレン、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、オピオイド、およびCOX-2阻害剤など少なくとも1種の付加的な活性物質との組合せを含むこともできる。所望の治療効果を実現するために、即時放出もしくは遅延放出、遅延型持続放出、または持続放出の成分中に他の活性物質を一緒に配合することができる。
【0100】
本発明による剤形は、純粋なラセミ体、L-バクロフェン、および2002年2月26日にKaufmanらに発行された米国特許第6,350,769号において言及されている他のGABA関連活性物質にも適用され得る。
【0101】
個々の組成物および投与方法に対する所望の治療応答を得るために有効な量のバクロフェン、ならびに、組合せ製品として使用する場合は有効な量の有効成分を得るために、組成物中のバクロフェン(ラセミ体またはL-バクロフェン)ならびにバクロフェンと組み合わせて使用される任意の活性物質の投与量レベルを変更してもよい。
【0102】
本発明の目的は、医療提供者によって望まれるバクロフェンの制御された生物学的利用能を提供する。生物学的利用能とは、治療的に活性な薬剤が、投与後に体内で利用可能になる程度を意味する。典型的に生物学的利用能は、試験調製物を投与される前に一晩絶食した患者において測定される。次いで、血漿試料を採取し、親化合物および/またはその活性な代謝生成物の血漿中濃度について分析する。これらのデータは、CMAX、血漿中に見出される有効成分の最大量として、または、AUC、血漿中濃度時間曲線下面積として表現することができる。Shargel & Yu, APPLIED BIOPHARMACEUTICS AND PHARMACOKINETICS ch. 10 (3d ed. 1996);APPLIED PHARMACOKINETICS: PRINCIPLES OF THERAPEUTIC DRUG MONITORING, Evans et al., eds. (3 d ed. 1992)も参照されたい。
【0103】
例えば、被験体における生物学的利用能比較試験にバクロフェン製剤を使用してもよい。被験体は、薬物投与前に一晩絶食する。次いで、投薬時、投薬後12時間にわたって1時間毎、次いで、投薬後の16時間および24時間に、血漿試料を採取し、バクロフェンまたはバクロフェン代謝生成物のng/ml濃度について分析する。
【0104】
更に詳述せずとも、上記の記載の恩恵を受ける当業者は、本発明を最大限に利用することができる。以下の実施例は例示にすぎず、開示内容の残りの部分を決して限定しない。
【0105】
実施例
実施例1 バクロフェンでコーティングされた活性なシード(seed)

【0106】
ポビドン(Plasdone K-29/32(登録商標))を精製水に加え、ポビドンが完全に溶解するまで混合する。均一に分散されるまで、上記の溶液中でバクロフェンを混合する。次いで、流動層コーティング装置を使用して、バクロフェン懸濁液で糖スフェアをコーティングして、コーティングされた活性なシードを製造する。
【0107】
実施例2 バクロフェンでコーティングされた活性なシード

【0108】
Hypromellose、タイプ2910(登録商標)、USP(Pharmacoat 606、6cps)を適切な量の精製水に加え、Hypromelloseが完全に溶解するまで混合する。均一に分散されるまで、上記の溶液中でバクロフェンを混合する。次いで、流動層コーティング装置を使用して、バクロフェン懸濁液で糖スフェアをコーティングして、コーティングされた活性なシードを製造する。
【0109】
この製剤の溶解プロファイルを図3に示す。
【0110】
実施例3 バクロフェンを含有する活性な顆粒剤

【0111】
バクロフェン、Starch 1500(アルファ化デンプン)、およびAvicel PH-102(結晶セルロース)を混合する。バクロフェン混合物をHobartミキサー中に満たし、混合して均質な混合物を形成させる。この混合物を精製水とともに顆粒化して粒質物を形成させる。オーブン中、60度の温度でこの粒質物を乾燥して顆粒を形成させる。#30メッシュふるいを用いてこれらの顆粒を選別する。ステアリン酸マグネシウムを混合して、活性な顆粒剤を形成させる。
【0112】
実施例4 バクロフェンを含有する腸溶コーティングされたシード

【0113】
精製水をステンレス鋼容器中に満たし、完全に溶解するまでヒプロメロース中で混合する。次いで、別のステンレス鋼容器中に精製水およびアセトンを満たし、次いでクエン酸アセチルトリブチル中で混合し、クエン酸アセチルトリブチル溶液を形成させる。これに、フタル酸ヒプロメロースを加えて腸溶コーティンング溶液を形成させる。
【0114】
実施例1〜3のいずれかにおいて製造された、バクロフェンのコーティングされた活性なシードを、シールコート溶液でフィルムコーティングして、シールされたバクロフェンビーズを形成させる。次いで、シールされたバクロフェンビーズを腸溶コーティンング溶液でフィルムコーティングして、腸溶コーティングされたシードを製造する。
【0115】
実施例5 バクロフェンを含有する腸溶コーティングされたシード

【0116】
イソプロピルアルコールおよび精製水をステンレス鋼容器中に満たし、次いで、クエン酸トリエチル中で混合する。メタクリル酸コポリマータイプA、NF(Eudragit(登録商標)L100)またはメタクリル酸コポリマータイプC、NF(Eudragit(登録商標)L100-55)を加えて、Eudragit(登録商標)懸濁液を形成させる。Eudragit(登録商標)懸濁液中にタルクを分散させる。実施例4から得られるバクロフェンのコーティングされた活性なシードを、Eudragit(登録商標)懸濁液でフィルムコーティングして、腸溶コーティングされたシードを形成させる。
【0117】
実施例6 バクロフェンのコーティングされた活性なシードおよび腸溶コーティングされたシードを含有する組成物

【0118】
指定部分のコーティングされた活性なシードおよび腸溶コーティングされたシードを一緒に混合し、剤形を形成させる。カプセル剤の場合、シードを混合し、ゼラチンカプセル剤に加える。錠剤の場合、シードを圧縮して錠剤を形成させる。サシェ剤の場合、シードを混合し、小袋の中に詰める。
【0119】
実施例7 バクロフェンを含有する腸溶コーティングされたシード

【0120】
精製水中にPharmacoat 606を溶解し、次いで、バクロフェンをこの水溶液中に分散させて、水性懸濁液を作る。流動層コーティング装置を使用して、バクロフェン懸濁液で糖スフェアをコーティングし、コーティングされた活性なシードを製造する。
【0121】
Eudragit(登録商標)RL100、RS100、およびセバシン酸ジブチルを、アセトンおよびイソプロピルアルコールの混合液中に溶解させる。次いで、タルクおよびステアリン酸マグネシウムをこの溶液中に分散させる。流動層コーティング装置を使用して、コーティングされた活性なシードを上記の懸濁液でコーティングして、持続放出コーティングをされたシードを製造する。
【0122】
アセトンおよび精製水の混合液中にHPMCPおよびクエン酸トリエチルを溶解させる。流動層コーティング装置を使用して、持続放出コーティングされたシードを上記の溶液でコーティングして、腸溶コーティングされたシードを製造する。
【0123】
実施例8 バクロフェン錠剤

【0124】
高せん断造粒機中でバクロフェン、デンプングリコール酸ナトリウム、無水リン酸二カルシウム、および無水ラクトースを混合する。その混合物を精製水とともに湿式造粒し、オーブン中、60度の温度で少なくとも16時間、この粒質物を乾燥させる。#25メッシュふるいを用いてこれらの顆粒を選別する。#18メッシュふるいが装備されたFitzpatric社製の粉砕機によって、大きすぎる顆粒を粉砕する。選別および粉砕された顆粒をステアリン酸マグネシウムと混合し、ロータリー式打錠機を使用してその混合物を圧縮して錠剤にする。
【0125】
実施例9 バクロフェン錠剤

【0126】
高せん断造粒機中でバクロフェン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース一水和物またはマンニトール、および結晶セルロースを混合する。その混合物を精製水とともに湿式造粒し、オーブン中、60度の温度で少なくとも16時間、この粒質物を乾燥させる。#25メッシュふるいを用いてこれらの顆粒を選別する。#18メッシュふるいが装備されたFitzpatric社製の粉砕機によって、大きすぎる顆粒を粉砕する。選別および粉砕された顆粒をステアリン酸マグネシウムと混合し、ロータリー式打錠機を使用してその混合物を圧縮して錠剤にする。
【0127】
実施例10 バクロフェンのコーティングされた活性なシードおよび腸溶コーティングされたシードを含有する組成物

【0128】
Hypromellose、Type 2910、USPを適切な量の精製水に加え、ヒプロメロースが完全に溶解するまで混合する。次いで、均一に分散されるまで、上記の溶液中でバクロフェンを混合する。この懸濁液を#40メッシュのふるいに通してステンレス鋼容器中に入れる。Wursterインサートを装備している流動層コーティング機中に糖スフェアを満たし、排気温度が50±5℃に到達するまで加熱する。上記に由来する活性な懸濁液を噴霧して糖スフェアをコーティングし、次いでそれを60±10℃の温度で5分間乾燥させる。IRシードを#16メッシュのステンレス鋼製ふるいに通す。基準に合うIRシードを回収し、傾斜型コーンブレンダー中で1分間、タルク、USPと混合する。
【0129】
精製水およびアセトンを混合することによって、腸溶溶液を調製する。クエン酸トリエチルおよびメタクリル酸コポリマー、タイプCをこの混合物中で、完全に分散されるまで攪拌する。完全に分散されるまで、上記の溶液中でタルクを混合する。次いで、流動層コーティング装置を使用して、上記のように調製したIRシードをこの腸溶溶液でコーティングして、腸溶コーティングされたシードを製造する。腸溶コーティングされたシードを#14メッシュのステンレス鋼製ふるいに通す。基準に合う腸溶コーティングされたシードを回収し、傾斜型コーンブレンダー中で1分間、タルク、USPと混合する。
【0130】
適切な量のIRシードに適切な量の腸溶コーティングされたシードを加え、カプセル化して、バクロフェンのERカプセル剤を得る。
【0131】
実施例11 バクロフェン錠剤
実施例9に記載したプロセスに従って、以下の組成を有する錠剤を調製した。

【0132】
上記の製剤の溶解プロファイルを図1B(SIF中)および図2(SGF/SIF切換え法)に示す。
【0133】
実施例12 バクロフェンERカプセル剤
実施例7に記載したプロセスを用いて、以下の処方を有するバクロフェン徐放カプセル剤(20mg)を調製した。

【0134】
上記の製剤の溶解プロファイルを図4に示す。
【0135】
実施例13 バクロフェンERカプセル剤
実施例10に記載したプロセスに従って、以下の処方を有するバクロフェンERカプセル剤を調製した。




【0136】
上記の製剤の溶解プロファイルを図5に示す。
【0137】
実施例14 バクロフェンERカプセル剤
腸溶性物質が、クエン酸トリエチルおよびメタクリル酸コポリマー、タイプCの代わりにクエン酸アセチルトリブチルおよびフタル酸ヒドロメロースであることを除いては、実施例10に記載したプロセスに従って、以下の組成物のバクロフェンERカプセル剤を調製した。


【0138】
上記の製剤の溶解プロファイルを図5に示す。
【0139】
実施例15 バクロフェンERカプセル剤
実施例10に記載した方法に従って、以下の組成を有するバクロフェンERカプセル剤を調製した。10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、および40mgのバクロフェンを有する、カプセル剤を調製し、これらの異なる用量強度は正比例していた。

【0140】
実施例16 バクロフェン含有製剤の血漿プロファイルの測定
即時放出成分が12mgのバクロフェンを含有し、腸溶コーティングされた制御放出成分が24mgのバクロフェンを含有し、残りの賦形剤を用量に比例して調整したことを除いては実施例15に従って調製した36mgバクロフェン製剤を比較する生物学的利用能調査を健常志願者20例において行った。この製剤を、絶食条件下で、20mgの参照用即時放出錠剤(Watson Laboratories, Inc.)と比較した。一晩、少なくとも10時間、被験体を絶食させた後、室温水240mlとともに試験試料を経口投与した。薬物投与とともに与えられるものを除いて、服用量投与の1時間前から投薬の1時間後まで、液体はまったく与えられない。被験体は、投与の2時間、6時間、8時間、および12時間後に室温水240mlを摂取した。さらに、被験体は、昼食および夕食とともに480mlの液体を摂取した。投与の0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、4.5時間、5時間、6時間、7時間、8時間、10時間、12時間、16時間、および24時間後に血液試料を採取した。これらの結果を図6に示す。さらに、図6は、用量強度20mgの投与から得られたデータに基づく、30mgの即時放出バクロフェンの模擬血漿中濃度を示す。
【0141】
実施例17 バクロフェン含有製剤の定常状態の血漿プロファイルの測定
単回投与の生物学的利用能のデータに基づき、12時間毎に投与された、実施例15に従って調製した40mgのバクロフェン製剤、および8時間毎に投与された20mgの即時放出バクロフェン錠剤(Watson Laboratories, Inc.)について定常状態のバクロフェンの平均血漿レベルを算出した。これらの結果を図7に示す((C)は本発明の40mgの剤形を表し、(D)は、参照用の20mgの即時放出剤形を表す)。これらの結果は、定常状態では、即時放出製剤によって投与後8時間で得られるCMINに匹敵するCMINに、本発明の40mgの剤形は投与後12時間で到達すると考えられることを示す。
【0142】
本発明をこれまで十分に説明したが、本発明またはその任意の態様の範囲を逸脱することなく、広範囲および同等の範囲の条件、処方、および他のパラメータを用いて本発明の方法を実施できることが、当業者には理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】図1Aは37℃、900ml模擬胃液(pH1.2)中、50rpmのUSPパドル法での測定による、実施例8に従って調製したバクロフェン錠剤製剤20mgのインビトロの溶解プロファイルのグラフである。図1Bは37℃、900ml模擬腸液(pH6.8)中、50rpmのUSPパドル法での測定による、実施例11に従って調製したバクロフェン錠剤製剤20mgのインビトロの溶解プロファイルのグラフである。
【図2】模擬腸液(pH6.8)への切換えを伴う、37℃、1時間、900ml模擬胃液(pH1.2)中、50rpmのUSPパドル法での測定による、実施例11に従って調製したバクロフェン錠剤製剤20mgのインビトロの溶解プロファイルのグラフである。
【図3】37℃、900ml模擬胃液(pH1.2)中、75rpmのUSPパドル法での測定による、実施例2に従って調製したバクロフェンカプセル製剤20mgのインビトロの溶解プロファイルのグラフである。
【図4】模擬腸液(pH6.8)への切換えを伴う、37℃、2時間、900ml模擬胃液(pH1.2)中、75rpmのUSPパドル法での測定による、実施例12に従って調製したバクロフェンカプセル製剤20mgのインビトロの溶解プロファイルのグラフである。
【図5】模擬腸液(pH6.8)への切換えを伴う、37℃、2時間、900ml模擬胃液(pH1.2)中、75rpmのUSPパドル法での測定による、実施例13および14に従って調製したバクロフェンカプセル製剤30mgのインビトロの溶解プロファイルのグラフである。
【図6】実施例16に記載のように測定した、バクロフェン錠剤製剤のインビボ血漿プロファイルのグラフである。
【図7】実施例17に記載のように測定した、定常状態のバクロフェン血漿中濃度をシミュレートするグラフである。(C)は本発明の40mgの剤形を表し、(D)は、参照用の20mgの即時放出剤形を表す。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御放出成分を含む薬学的剤形であって、
該制御放出成分が、GABABアゴニストおよび薬学的に許容される賦形剤を含み;かつ、
該制御放出成分が、模擬腸液媒体において、1時間後の約70%未満のGABABアゴニスト放出、4時間後の少なくとも約20%のGABABアゴニスト放出、および6時間後の少なくとも約30%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す、薬学的剤形。
【請求項2】
制御放出成分が、模擬胃液/模擬腸液(1時間で切換え)媒体において、1時間後の約80%未満のGABABアゴニスト放出、4時間後の少なくとも約30%のGABABアゴニスト放出、および6時間後の少なくとも約40%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す、請求項1記載の薬学的剤形。
【請求項3】
制御放出成分が、模擬腸液媒体において、1時間後の約50%未満のGABABアゴニスト放出、4時間後の少なくとも約40%のGABABアゴニスト放出、および6時間後の少なくとも約50%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す、請求項1記載の薬学的剤形。
【請求項4】
制御放出成分が、模擬胃液/模擬腸液(1時間で切換え)媒体において、1時間後の約70%未満のGABABアゴニスト放出、4時間後の少なくとも約40%のGABABアゴニスト放出、および6時間後の少なくとも約50%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す、請求項3記載の薬学的剤形。
【請求項5】
GABABアゴニストおよび薬学的に許容される賦形剤を含む即時放出成分をさらに含み;
該即時放出成分が、模擬胃液において、1時間後の少なくとも約80%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示し;かつ、
該即時放出成分対制御放出成分の比が約1:10〜約10:1である、請求項1記載の薬学的剤形。
【請求項6】
GABABアゴニストがバクロフェンである、請求項5記載の薬学的剤形。
【請求項7】
即時放出成分対制御放出成分の比が約1:4〜約4:1である、請求項6記載の薬学的剤形。
【請求項8】
即時放出成分対制御放出成分の比が約1:2〜約2:1である、請求項7記載の薬学的剤形。
【請求項9】
腸溶コーティングされた制御放出成分を含む薬学的剤形であって、
該腸溶コーティングされた制御放出成分が、GABABアゴニストおよび薬学的に許容される賦形剤を含み;かつ
該腸溶コーティングされた制御放出成分が、模擬胃液/模擬腸液(2時間で切換え)媒体において、2時間後の約10%未満のGABABアゴニスト放出、3時間後の少なくとも約40%のGABABアゴニスト放出、および6時間後の少なくとも約70%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す、薬学的剤形。
【請求項10】
腸溶コーティングされた制御放出成分が、模擬胃液/模擬腸液(2時間で切換え)媒体において、2時間後の約10%未満のGABABアゴニスト放出、3時間後の少なくとも約50%のGABABアゴニスト放出、および6時間後の少なくとも約80%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す、請求項9記載の薬学的剤形。
【請求項11】
腸溶コーティングされた制御放出成分が、模擬胃液/模擬腸液(2時間で切換え)媒体において、2時間後の約10%未満のGABABアゴニスト放出、3時間後の少なくとも約60%のGABABアゴニスト放出、および6時間後の少なくとも約90%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す、請求項10記載の薬学的剤形。
【請求項12】
GABABアゴニストおよび薬学的に許容される賦形剤を含む即時放出成分をさらに含み、
該即時放出成分が、模擬胃液において、1時間後の少なくとも約80%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示し;かつ、
該即時放出成分対制御放出成分の比が約1:10〜約10:1である、請求項9記載の薬学的剤形。
【請求項13】
GABABアゴニストがバクロフェンである、請求項12記載の薬学的剤形。
【請求項14】
即時放出成分対制御放出成分の比が約1:4〜約4:1である、請求項13記載の薬学的剤形。
【請求項15】
即時放出成分対制御放出成分の比が約1:2〜約2:1である、請求項14記載の薬学的剤形。
【請求項16】
模擬胃液/模擬腸液(2時間で切換え)媒体において、2時間後の約75%未満のGABABアゴニスト放出、および3時間後の少なくとも約80%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す、GABABアゴニストおよび薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的剤形。
【請求項17】
模擬胃液/模擬腸液(2時間で切換え)媒体において、2時間後の約65%未満のGABABアゴニスト放出、および3時間後の少なくとも約90%のGABABアゴニスト放出を含むインビトロの溶解プロファイルを示す、請求項16記載の薬学的剤形。
【請求項18】
GABABアゴニストがバクロフェンである、請求項16記載の薬学的剤形。
【請求項19】
バクロフェンおよび薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的剤形であって、該薬学的剤形を経口投与した場合に、該バクロフェンの少なくとも80%が絶食条件下、インビボで吸収される時間の中央値が2.5時間より長い、薬学的剤形。
【請求項20】
薬学的剤形を経口投与した場合に、バクロフェンの少なくとも80%が絶食条件下、インビボで吸収される時間の中央値が約3時間〜約4.5時間である、請求項19記載の薬学的剤形。
【請求項21】
腸溶コーティングされた制御放出成分および即時放出成分を含む、請求項20記載の薬学的剤形。
【請求項22】
腸溶コーティングされた制御放出成分が、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、共重合されたメタクリル酸、メタクリル酸メチルエステル、およびそれらの混合物からなる群より選択されるポリマーを含む、請求項21記載の薬学的剤形。
【請求項23】
絶食条件下で剤形を経口投与した場合に、剤形が、投与の約2.5時間後〜約5.5時間後の平均最高バクロフェンレベルを含むインビボ血漿プロファイルを示す、請求項21記載の薬学的剤形。
【請求項24】
剤形の投与の約12時間後にCMINを示す、定常状態のインビボ血漿プロファイルを与える、請求項21記載の薬学的剤形。
【請求項25】
バクロフェンが約2mg〜約150mgの量である、請求項6、13、18、または19のいずれか一項記載の薬学的剤形。
【請求項26】
バクロフェンが約20mgの量である、請求項25記載の薬学的剤形。
【請求項27】
バクロフェンが約25mgの量である、請求項25記載の薬学的剤形。
【請求項28】
バクロフェンが約30mgの量である、請求項25記載の薬学的剤形。
【請求項29】
バクロフェンが約35mgの量である、請求項25記載の薬学的剤形。
【請求項30】
バクロフェンが約40mgの量である、請求項25記載の薬学的剤形。
【請求項31】
バクロフェンが、即時放出ビーズおよび制御放出ビーズの組合せとして配合される、請求項6、13、18、または19のいずれか一項記載の薬学的剤形。
【請求項32】
錠剤である、請求項31記載の薬学的剤形。
【請求項33】
カプセル剤である、請求項31記載の薬学的剤形。
【請求項34】
即時放出成分および腸溶コーティングされた制御放出成分中にバクロフェンを含む薬学的剤形であって、
該腸溶コーティングされた制御放出成分が、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、共重合されたメタクリル酸、メタクリル酸メチルエステル、およびそれらの混合物からなる群より選択されるポリマーを含み;かつ、
該薬学的剤形を経口投与した場合に、該バクロフェンの少なくとも80%が絶食条件下、インビボで吸収される時間の中央値が約3時間〜約4.5時間である、薬学的剤形。
【請求項35】
ポリマーが共重合されたメタクリル酸である、請求項34記載の薬学的剤形。
【請求項36】
即時放出成分および制御放出成分中にバクロフェンを含む薬学的剤形であって、
該制御放出成分がマトリックス剤形を含み;かつ、
該薬学的剤形を経口投与した場合に、該バクロフェンの少なくとも80%が絶食条件下、インビボで吸収される時間の中央値が約3時間〜約4.5時間である、薬学的剤形。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−531727(P2007−531727A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506301(P2007−506301)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/011032
【国際公開番号】WO2005/097079
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(506332096)インパックス ラボラトリーズ インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】