説明

GPVIの阻害によるがんの予防及び処置方法

本発明は、がんを予防及び又は治療するためのGPVI阻害剤、そしてまた、がんを予防及び/又は治療する薬剤の製造におけるこのようなGPVI阻害剤の使用を提供する。本発明のさらなる側面は、GPVI阻害剤を含む薬学的製剤であり、これはがん、好ましくは皮膚がん、より好ましくは黒色腫、そして最も好ましくは悪性皮膚黒色腫の治療に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
がんは、依然として医学にとって代表的な主要課題の1つである。
【背景技術】
【0002】
近年にかけて、多くの研究により特異的なタイプのがんについて特異的療法の選択肢が得られた。特異的療法で治療される特異的な悪性腫瘍の例は、ヘルセプチン(R)によって治療される乳がん、そして他の変種については、例えば、アバスチン(R)で治療される進行した直腸又は肺がん、エルビタックス(R)による進行した直腸がん若しくは頭頚部がん、マブキャンパス(R)(MabCampath)による慢性リンパ性白血病又はゼバリン(R)で治療される濾胞性非ホジキンリンパ腫である。しかし、これらの特異的療法は、いずれも従来の化学療法又は外科的介入と完全に置き換えることはできなかった。実際、ほとんどの新しい治療は、それ自体では効果が不十分であるため、共投薬(co-medication)として化学療法が必要である。一方、化学療法は、重度の、そしておそらく深刻な副作用の負担をもたらすことが不可避である。要するに、がんの治療選択肢は、なお制限されており、たとえ入手可能であっても、心臓血管疾患のような他の生命にかかわる疾患の標準的治療と比較して実質的にあまり許容されていない。
【0003】
がんを治療する治療選択肢の選択は、制限されており、そして有害な副作用と関連しているが、いくつかの非常に攻撃的な悪性腫瘍については、疾患の進行が非常に速いため、多くの場合、診断が遅すぎて、従来の治療をすぐに開始しても妥当な利益を期待することができない。
【0004】
これらの攻撃的変種の1つは、悪性皮膚黒色腫、皮膚がんである。このような黒色腫の発現については、いくつかの危険因子が同定されている。遺伝的素因に加えて、肌の色合い及び髪の色が役割を果たしている。最も多く影響を受けるのは、色白の、すなわち光に敏感なタイプの皮膚を有する人である。特に危険なのは、赤味がかった髪の色の遺伝子である。これらの素因を有する人々の危険性の比較では、肌の色が黒い人が皮膚がんを発症する危険性は、ちょうど10%である。このタイプのがんの進行は、速いだけでなく、また、発症した患者数がかなりにのぼることである。ドイツでは、毎年、約15.000件の新しい症例があり、その結果、約2.000人の患者が死亡している。これは、他の皮膚腫瘍によって生じるすべての致死率よりもかなり多く、そして現在、黒色腫による死亡率は、他のすべてのがんのものよりも急激に高まっている。きわめて早期の段階で診断されると、原発腫瘍を外科的に完全に除去することによる長期的治癒の可能性は、なお高い。しかしながら、他の悪性腫瘍と対照的に、黒色腫は、疾患が診断された時点で、典型的には転移によってすでに体中に広範囲に広がっている。その場合、外科的除去はもはや不可能であり、これまでのところまだ不十分であるが有効な唯一の治療戦略として放射線−又は全身性の化学療法が残されている。他の型の皮膚がんとの比較だけでなく一般にがんの他の変種との比較の両方において、この高い侵襲性及び転移のため、悪性黒色腫は極めて有毒である。他の悪性腫瘍が進行した状態での転移は、疾患の将来的な経過にとって同様に壊滅的である。従って、循環血中に黒色腫又は他のがん細胞が検出されたそれらの患者では、予後はより悪い。いったん複数の器官が発症したら、現在の治療介入による成功の機会は、実質的に低下する。がんのタイプ及び時点にかかわりなく、特異的な腫瘍により転移が起こるとき、悪性細胞は、典型的に血管系を介して広がる。
【0005】
血小板は、止血及び血栓症の過程において重要な役割を果たしている。
血小板は、病変によって露出された内皮下コラーゲンとの相互作用のため、病変部位で停止し、そして活性化される。コラーゲンと血小板との間の相互作用は、本質的に3つの受容体が介在している:1)主な役割がコラーゲンへの血小板の粘着であるα2β1インテグリン受容体、2)フォンウィルブランド因子(VWF)を介して間接的にコラーゲン受容体に結合するGPIb−V〜IX、及び3)コラーゲンに結合して血小板を活性化するシグナル伝達受容体、GPVI。GPVIは、免疫受容体ファミリーのメンバーであり、そして血小板においてFc受容体ガンマ鎖(FcRgamma)で同時発現される。GPVIへのリガンド−結合により、血小板が活性化され、それによって血小板凝集に至る(非特許文献1)。まとめると、α2β1及びGPIb−V〜IX受容体と同様にGPVIは、主に心臓血管又は他の疾患から生じる動脈血栓症の予防のための有望な標的としてみなされている(非特許文献2)。GPVIは、単一治療によりGPVIの長期喪失又は阻害を生じることができるため最も有望な治療標的であった(非特許文献3)。
【0006】
血小板とコラーゲンとの相互作用は、止血及び血栓症の過程で重要な役割を果たしており、これらの3つのコラーゲン受容体を阻害すると抗血栓効果を生じることは、あまり驚くべきことではなかった。血栓症及び止血のための血小板の機能に加えて、それらは、最近、がん成長及び転移における重要な役割が確認された。コラーゲン−受容体阻害の類似の抗血栓効果のため、がん成長及び転移について前記受容体阻害の類似の結果が期待される。α2β1インテグリン受容体を阻止する抗体の投与は、がん細胞の血管外遊出を支持し、すなわち、がん細胞の数を増加させ、これは血流を放置することがあり、そして結果的に、この阻止は、形成された腫瘍の数を増加させる(非特許文献4)。同様に、肺中のB16黒色腫の転移巣の数は、野生型マウスと比較してVWF−ノックアウトマウスではより多く、効果は、VWFを有するマウスと置き換えることによって逆転させることができる(非特許文献5)。従って、GPVIの阻害は、がん促進効果を有することも期待される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Varga-Szabo D. et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 2008, Vol. 28(3), 403-412
【非特許文献2】Clemetson K.J. et al., 2007, Curr. Pharm. Des., vol. 13(26), 2673-2683
【非特許文献3】Nieswandt B. et al., J. Exp. Med. 2001, Vol. 193(4): 459-469
【非特許文献4】Hangan D. et al., Cancer Res. 1996, Vol. 1,56(13), 3142-3149
【非特許文献5】Terraube V. et al., J. Thromb. Haemost. 2006, Vol. 4(3), 519-526
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さて、驚くべきことに、ここでまとめたデータは、反対のことを示している:GPVIの阻害は、がん細胞の成長を劇的に低下させるだけでなく、個々のがん細胞の転移をも減らす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の意味における「GPVIの阻害」とは、以下:例えばアゴニストの結合を阻止することによる、又はリガンドによってGPVI活性化を阻止することによる、又は細胞若しくは細胞フラグメントの表面におけるGPVIの不活化若しくは可逆性若しくは不可逆性の枯渇(depletion)によるGPVIの正常な機能のなんらかの阻止を意味する。
【0010】
本発明の意味における「GPVIの阻害剤」とは、以下:哺乳動物に投与したときに上記定義された「GPVIの阻害」を生じるあらゆる化合物を意味する。
【0011】
GPVIの阻害は、抗GPVI自己抗体から生じる後天性GPVI欠損若しくはGPVIを発現しない遺伝的な先天性欠損のような機構の大きな変化から生じることがあり、又は不完全な細胞内シグナル伝達を伴う機能不全形態及び外部ドメイン脱粒を生じる内因性血小板メタロプロテイナーゼの活性化により発現される(Arthur J.F. et al., Br. J. Haematol. 2007, Vol. 139(3), 363-372)。
【0012】
本発明のGPVI阻害剤の有効成分は、小さな化学物質、ペプチド、ポリペプチド又はモノクローナル若しくはポリクローナル抗体であってもよい。GPVIの阻害剤の非限定的な例は、以下のように分類することができる:
□GPVIに結合したときに細胞表面からのGPVIの枯渇を生じるGPVIに対するリガンド、例えば
○抗体及びそのフラグメント、例えばscFv、Fab、Fv、dAb、Fd又はGPVIに対する二重特異性抗体結合、例えば
・JAQ1(EP20010101406)
・F1232−10−2、F−1232−21−1、F−1232−7−1、
F−1232−19−1、F−1232−37−2、F−1232−18、F−1232−17−1、F−1232−18−3、F−1232−14−2、F−1232−24−1、F−1201−20、F−1232−43−3、F−1201−18、F1199−6、F1232−37−2、YA−Abs−88、YA−Abs−03、F−1249−18−2、F−1245−7−1、F−1246−1−1、F−1249−5−1、F−1249−20−1、F−1249−24−1、F−1249−30−1、F−1245−5−1、F−1246−6−2、F−1249−3−2、F−1245−4−1、F−1249−22−1、F−1251−1−1、F−1257−3−1、F−1232−37−2、F 1239−6−1(WO/2006/118350)
・F1239−1−3、F1239−2−3、F1239−4−2、F1239−5−3、F1239−7−1、F1239−8−1、F1239−8−1、F1239−10−2、F1239−11−1、F1239−15−3、F1239−16−3、F1239−17−2、F1239−18−1、F1239−19−1、F1239−22−2、F1239−22−3、F1239−23−1(WO/2007/116779)
・hGP5C4(PCT/EP2004/013779)
・10B12、16E12、1C3、8A1、4H9、4D5(WO/2003/054020)
・8M14.3、3F8.1、9E18.3、3J24.2、6E12.3、1P10.2、4L7.3、7H4.6、9012.2(WO2001/000810)
□GPVIのタンパク質分解不活化を生じるGPVIに対するリガンド、例えば
○メタロプロテイナーゼの活性化(Bergmeier W. et al., Thromb. Haemost. 2004. Vol. 91(5): 951-958.
□GPVIの機能を阻害するが、以下を阻止することによって細胞表面からGPVIの枯渇を生じないリガンド
○リガンド受容体認識及び/又は
○細胞外マトリックスとの相互作用及び/又は
○GPVI又はそのフラグメントによって、例えば、コラーゲンのGPVI結合部位を遮蔽することによるコラーゲンとの相互作用(WO/2001/16321、WO/2006/131512、WO/2003/008454、WO/2001/000810、WO/2000/068377、WO/2000/68377)及び/又は
○血小板細胞相互作用
□例えば活性化されたGPVIによって誘発されるシグナル伝達カスケードの阻害によって、上記詳述した機構と独立したGPVI機能を低下させるリガンド、
○例えばSykキナーゼ、c−Src、プロテインキナーゼC、ホスホリパーゼCγ2、Fc受容体γのような細胞内シグナル伝達経路に含まれるタンパク質のリン酸化を阻止することによって。
【0013】
本発明のGPVIの阻害剤は、慣用の化学合成によって又はモノクローナル若しくはポリクローナル抗体若しくは抗体のフラグメントの場合、当分野でよく知られている組換え法によって製造することができる(例えば、Benny K.C. Lo, “Antibody engineering, methods and protocols, Humana press, 2003参照)。また、ポリクローナル抗体は、GPVI又はGPVIのフラグメントで免疫化することによって動物中で増やし、続いて精製することができる。
【0014】
本発明のGPVIの阻害剤は、80%を超える純度、より好ましくは95%を超える純度に精製することが好ましく、そして例えばGPVI阻害剤が、汚染巨大分子、特に他のタンパク質及び核酸からのペプチド又はポリペプチドである場合、汚染分子に対して99.9%を超える純度であり、そして感染性因子及び発熱性物質を含まない薬学的に純粋な状態が特に好ましい。好ましくは、本発明のGPVIの単離又は精製された阻害剤は、他のポリペプチドを実質的に含まない。
【0015】
本発明は、がんの予防及び又は治療のための本明細書に記載されたGPVIの阻害剤並びにまたがんを予防及び/又は治療する薬剤の製造におけるこのようなGPVI阻害剤の使用を提供する。従って、本発明の別の態様によれば、がん、好ましくは皮膚がん、より好ましくは黒色腫、そして最も好ましくは悪性皮膚黒色腫の治療に適しているこの阻害剤を含む薬学的製剤が提供される。
【0016】
本発明に記載された阻害剤は、治療上の使用のため薬学的製剤に処方することができる。精製されたタンパク質を慣用の生理学的に適合しうる水性緩衝液中に溶解してもよく、これに、場合により、医薬賦形剤を加えて薬学的製剤を得ることができる。
【0017】
このような薬剤担体及び賦形剤の他に適切な薬学的製剤は、当分野でよく知られている(例えば、“Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins”, Frokjaer et al., Taylor & Francis (2000)又は“Handbook of Pharmaceutical Excipients”, 3rd edition, Kibbe et al., Pharmaceutical Press (2000)参照)。特に、本発明のポリペプチドを含む薬学的組成物は、凍結乾燥された又は安定な可溶性の形態で処方してもよい。ポリペプチドは、当分野で知られているさまざまな手法によって凍結乾燥してもよい。凍結乾燥された製剤は、注射用蒸留水又は滅菌生理食塩水のような1つ又はそれ以上の薬学的に許容しうる希釈剤の添加によって使用前に再構成される。
【0018】
組成物の製剤は、いずれかの薬学的に適切な投与手段によって個体に送達される。種々の送達系が知られており、そしていずれか都合のよい経路によって組成物を投与するために用いることができる。本発明の組成物は、全身的に投与するのが好適である。全身的使用では、本発明の治療タンパク質を慣用の方法に従って非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、大脳内、肺内、鼻腔内又は経皮的)又は経腸的(例えば、経口、膣又は直腸)送達用に処方する。ポリペプチドに基づくGPVIの阻害剤について、最も好適な投与経路は、静脈内投与である。製剤は、注入によって又はボーラス注射によって連続的に投与することができる。いくつかの製剤は、遅延放出系を包含する。
【0019】
小分子に基づくGPVIの阻害剤については、経口投与が最も好ましい投与方式である。経口投与のための錠剤及びカプセル剤としては、慣用の賦形剤、例えば結合剤、増量剤、滑沢剤及び湿潤剤、などが含まれうる。経口液体製剤は、水性若しくは油性の懸濁剤、液剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤又は同種のものの形態のあってもよく、又は使用する際、水若しくは他の適切なビヒクルと再構成するための乾燥産物として存在してもよい。このような液体製剤は、慣用の添加剤、例えば懸濁化剤、乳化剤、非水性ビヒクル及び保存剤を含んでもよい。
【0020】
局所適用に適した製剤は、水性若しくは油性の懸濁剤、液剤、乳剤、ゲル剤又は、好ましくは乳剤性軟膏の形態であってもよい。スプレー適用に有用な製剤は、噴霧液又は乾燥粉末の形態であってもよい。
【0021】
本発明のGPVIの阻害剤は、治療上有効な用量で患者に投与され、耐えられない有害な副作用を生じる用量に達することなく、治療する状態又は適応症の重症度又は拡散を予防する又は弱める所望の効果を生じるのに十分な用量を意味する。正確な用量は、例えば適応症、製剤、及び投与方式のような多数の要因に左右され、そしてそれぞれ個々の適応症について前臨床及び臨床試験で決定しなければならない。
【0022】
本発明の薬学的組成物は、単独で又は他の治療剤と共に投与してもよい。これらの薬剤は、同じ薬剤の一部として組み込んでもよい。
【0023】
本発明の別の態様は、がんの治療、好適には皮膚がんの治療、さらにより好適には黒色腫の治療において同時に、別々に又は逐次的に使用する薬学的製剤を製造するための1つ又はそれ以上の単離されたGPVI阻害剤を含む組成物の使用である。
【0024】
また、本発明のさらに別の態様は、GPVIのシグナル伝達カスケード下流の成分を阻害するための実施例3に記載された方法によって同定可能な阻害剤の使用である。
【0025】
本発明の別の実施態様は、GPVIの阻害剤を同定する方法は、以下の工程を含む:
a)潜在的GPVI阻害剤の適切な量を哺乳動物、好ましくは、ヒト又はマウスのような標準実験室動物種から得た多血小板血漿に添加する工程、
b)場合により、工程(a)の多血小板血漿を潜在的GPVI阻害剤と共にインキュベートする工程、
c)コラーゲン関連ペプチド又はコンブルキシン又はあまり特異的でないコラーゲンを添加してGPVI仲介シグナル伝達によって血小板凝集を誘導することによって血小板の凝集を開始させる工程、
d)工程(c)で測定されるような凝集を、工程(a)の潜在的阻害剤を添加することなくコラーゲン関連ペプチド又はコンブルキシン又はあまり特異的でないコラーゲンを多血小板血漿に加えた時に得られた凝集と比較する工程。
【0026】
工程(a)に記載された潜在的GPVI阻害剤を加えたときに血小板の凝集が損なわれた場合、この化合物は、本発明によるGPVIの阻害剤である。GPVIのこの阻害剤の特異性は、GPVI阻害剤を、好ましくは第一工程と同じ生体からであるが、GPVIが欠損している多血小板血漿に適用する対照実験においてさらに試験することができる。このような欠損は、GPVIノックアウトマウスのようなGPVIの遺伝的欠損によって(Kato K, Kanaji T, Russell S, et al., Blood. 2003;102: 1701-1707)又は実質的にGPVI活性低下を導く他のアプローチ、例えば遺伝子サイレンシング若しくはsiRNAのような技術によって達成することができる。このような欠損は、必ずしも完全である必要はない。GPVI、例えばADP、トロンビン又はアラキドン酸又は類似のものよりも他の受容体を介して血小板を活性化することによってコラーゲン関連ペプチド、コンブルキシン又はあまり特異的でないコラーゲンよりも代替アゴニストによって凝集が誘発されるときに、加えた化合物が、依然としてこのような調製物の凝集を損なう場合、化合物は、(それがGPVIを阻害するにもかかわらず)GPVIについて特異的でない。
【0027】
本発明のさらに別の態様は、がんの治療、好適には皮膚がんの治療、さらにより好適には黒色腫の治療において同時に、別々に又は逐次的に使用する配合薬学的製剤を製造するための1つ又はそれ以上の単離されたGPVI阻害剤を含む組成物の使用である。
【0028】
本発明のさらなる態様は、がんの治療、好適には皮膚がんの治療、さらにより好適には黒色腫の治療において同時に、別々に又は逐次的に使用するための1つ又はそれ以上の単離されたGPVI阻害剤及びGPVIの阻害剤ではない少なくとも1つのさらなる治療化合物を含む組成物である。
【0029】
本発明のなおさらなる態様は、がんの治療、好適には皮膚がんの治療、さらにより好適には黒色腫の治療において同時に、別々に又は逐次的に使用するための1つ又はそれ以上の単離されたGPVI阻害剤及びGPVIの阻害剤ではない少なくとも1つのさらなる治療化合物を含む複合的な組成物である。
【0030】
GPVI阻害は、立証された抗血栓効果を有し、そして出血リスクを生じないことがわかっているため、慣用の外科的介入を受けるがん患者のような出血性合併症のリスク増加にさらされてはならない患者にとってGPVI阻害剤による治療上の介入は、特に有益であると考えられる。
【0031】
特にがん患者では、GPVI阻害は、両方の抗血栓効果と同様に抗がん効果の両方から相乗効果を有しうる。従って、血栓症の増大したリスクを罹患するがん患者ではなおさらそうである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】5×104B16細胞i.v.の約2週間後の陰性(ビヒクル処置した)対照マウスと比較したマウスにおけるGPVI阻害によるがん発生率の低下を示すグラフである。
【図2】1×106B16細胞i.v.の2週間後のビヒクル処置したマウスの肺の画像を示す図である。
【図3】1×106B16細胞i.v.の2週間後のGPVI阻害を有するマウスの肺の画像を示す図である。
【図4】1.5×106B16細胞i.v.の2週間後の肺コロニー数(n=5〜10/群、個々の結果、線によって結ばれた群中央値)を示すグラフである。
【図5】ビヒクルで処置(陰性対照)するか又は一定期間GPVI阻害し、その前若しくは後にB16注射(pre- or post- B16 injection)を開始したB16注入マウスの生存率(n=9〜10/群)を示すグラフである。
【図6】ビヒクル処置(陰性対照)するか又は一定期間GPVI阻害し、その前若しくは後にB16注射を開始したB16注入マウスの経時的な体重(平均、n=9〜10/群)を示す図である。
【実施例】
【0033】
実施例1:
実験の第1セットの目標は、GPVIに結合するモノクローナル抗体JAQ1を用いたC57Bl6マウスの処置において、3種の異なる細胞数でB16細胞の静脈内注射した後に肺中B16黒色腫コロニーの増殖を妨げることができるかどうかを評価することであった。
【0034】
この仮説を検証するために用いたモデルを、以下の方法で行なった。がん細胞を繁殖させるため、American Type Culture Collection(ATCC)から購入した深温凍結から滅菌条件下でB16細胞を調製した。細胞をゆっくり解凍し、そして培地で再懸濁した。1×106 B16細胞をトリパンブルー(tryptan blue)で生存性(viability)について調べた。第1の繁殖のため、それをC57Bl6マウスに皮下注射した。2週間後、生じた皮下腫瘍を取り去り、腫瘍細胞をコラゲナーゼによって分離した。細胞のさらなる繁殖をin vitroで行なった。簡潔に言えば、単離した細胞を、それぞれの培地を充填した培養皿に移した。細胞が視覚的に検出可能な段階に増えたら、トリプシンを用いて付着細胞を流動化した(mobilized)。この段階で、別のin vitro繁殖サイクルを続けるか、又は細胞をC57Bl6試験マウスの尾静脈に静脈内注射してGPVI阻害剤の治療効果を試験した。マウス(Charles River)を標準収容条件下に飼育した。皮膚がんのこの動物モデルの重要なエンドポイントは、以下の通りである:
1)処置群において腫瘍を有すると見出された動物のパーセンテージ(発生率)
2)死亡数(腫瘍で死亡したか又は瀕死であると見られて犠牲にされた動物の数)
3)個々の処置群において動物当たりの肺で見出される腫瘍及び転移の平均数。
【0035】
腫瘍は皮膚中でも増殖するが、腫瘍の濃褐色〜黒色のコントラストが薄い色の肺組織に対して強いコントラストを表わす状況のため、マウスの肺において最も良好に定量化することができる。色が濃い皮膚のバックグラウンドに対しては、このような分析は、あまり確実ではない。さらに、注射された大部分の細胞は、肺微小血管系中で捕捉され、血管内皮に付着する。
【0036】
試験マウスの処置スケジュールを、表1に詳述した。JAQ1又は生理食塩水(陰性対照として)ビヒクルの用量は、すべてのマウスで同一であった。処置は、B16細胞の注射4又は1日前のいずれかに開始し、そして表1に詳述したように継続した。マウスに3種の異なる数、5×104、1×106又は1,5×106のいずれかのB16細胞を注射した。約2週間後、動物を犠牲に、そして肺中のB16コロニー数を測定した。JAQ1による単独治療では、約5日の長期間でGPVIが枯渇した(Nieswandt B. et al., J. Exp. Med. 2001, Vol. 193(4): 459-469)。選択した短い間隔のスケジュールを繰り返すことによって、実験の経過中にGPVI枯渇を完了させたことが保証された。
【0037】
【表1】

【0038】
注射したB16細胞数が少ない場合(5×104B16細胞/マウス,セットA)、JAQ1による処置は、B16細胞のi.v.注入の1日前に開始して、B16肺コロニーを発症した動物数を82%からちょうど18%まで劇的に減少させた(表2、図1)。同様に、肺中のコロニー数は、処置によって同じく減少した。
【0039】
【表2】

【0040】
20x倍で注射したB16細胞数が増加すると(1×106B16細胞/マウス、セットB)、生理食塩水で治療されたすべてのマウスは、コロニーを示したが、その数は非常に高く、確実にカウントすることはできなかった。セットAに対するさらなる違いは、セットAよりも3日早く、すなわちB16細胞注入の4日前に処置を開始したことである。また、B16注入に関するこのより積極的な状況では、JAQ1処置は、B16肺コロニーの明らかな減少をもたらした。生理食塩水で処置したマウスの肺におけるコロニー数は、非常に高く(>100)、確実にカウントすることができず、従って図2及び3は、ビヒクル及びJAQ1で処置した器官の画像を示し(表3)、JAQ1注射の治療効果を明確に示している。
【0041】
【表3】

【0042】
モデルの偶発的な変動のバックグラウンドに対するこの所見のロバストネスを確かめるための繰り返し試験では、増殖したB16細胞は、セットBについてよりもin vitroであまり悪性でないことがわかった。これにより、1.5×106細胞/マウス(セットC)にさらに上げることができた。処置スケジュールは、セットBと同じものであった。また、あまり攻撃的でない細胞によるこのより高い細胞負荷では、B16細胞注入の4日前に開始したJAQ1処置は、依然として肺コロニーの明らかな減少をもたらした(表4、図4)。
【0043】
【表4】

【0044】
まとめるとこのセットのデータは、JAQ1処置が黒色腫コロニーの数を減少させることを実証した。
【0045】
GPVI阻害がこの保護を引き起こす機構を推測することはできる。それは、いくつかの機構が仲介しうる。それは、実験の開始時に注射した悪性細胞の停止を妨げることに由来し得る。しかしながら腫瘍の縮小は、また、実験の開始時の注入、言い換えれば転移によって生じた最初の腫瘍から放出された停止細胞の増殖を妨げることによって引き起こされ得る。しかしながら、循環する細胞の起源が、そのさらなる運命を定めると仮定する理由はなく、すなわち最初の注入は、すでにマウス中で増殖している腫瘍による転移の状態を反映している。また、さらにGPVI欠損は腫瘍の増殖を阻害し、その場合転移が始まる時点を遅らせる、又は転移細胞を循環に放出するプロセスがGPVI欠損によって阻害されるのは妥当だと考えられる。
【0046】
実施例2:
第1の実施例でまとめたデータは、GPVI枯渇が腫瘍の増殖を劇的に弱めるだけでなく、転移も最小限にすることを実証している。しかしながら、受容体枯渇は、悪性細胞の注射前に誘発された。しかしながら、がんの証拠のない予防上のGPVI阻害は、可能性のある臨床設定にとってむしろまれな状態を表しうる。従って、第2の実施例で検証する仮説は、悪性細胞の注入後に開始した場合にも、GPVI阻害が有効であるかどうかであり、従ってがんに対する予防的保護だけでなくすでに確定されたがんの後の処置も可能にするかどうかである。この問題を評価するため、ある特定の時点でのみコロニー数を測定する代わりに、臨床的に最も妥当なエンドポイント、すなわち死亡数を用いて有効性を決定した。さらに、短期治療の最悪の症例のシナリオを選択した。この実施例のC57Bl6マウスは、表5に詳述したように処置した。実施例1の変法として、そして治療時の出発点の潜在的影響を直接比較するため、JAQ1の効果を2つの処置スケジュールによって評価した。1つは、実施例1と同様に悪性細胞の注入4日前に開始し、2つ目のスケジュールは、自由に循環するがん細胞がもはやなくなった時点、B16細胞の注入8時間後に開始した。従って、おそらく全てではないにしてもほとんどの悪性細胞は、停止したか又は内皮に付着したか、又は血管壁を通して血管外遊出した後、周囲組織にすでに浸潤している。これは、処置効果が、肺微小血管系における腫瘍細胞の滞留減少に左右されるかどうか、又は血管外遊出及び達成した転移に関するもののような独立した機構によっても仲介されるかどうかを決定するために重要である。
【0047】
JAQ1による処置は、約1週間に制限した。処置スキームは、投与後の顕著なGPVI阻害を確実にするように設計した。約3〜4日の期間内に、このような単独処置によって達成される阻害が完了し、そして数が増加した完全に適格な血小板がその前駆細胞から放出され、そして阻害された血小板は取り除かれたら、それは減衰し始め、そのため、循環中のその比率は、それに応じて変化する。最後の処置の約1週間後、GPVI阻害のレベルはむしろ低く、そしておそらく、この設定ではわずかである。従って、この実施例では、GPVI阻害は、死亡まで維持されなかったが、悪性細胞の注入後、少なくともに最初の週に限定された。従って、死亡(死亡までの約2〜3週間、典型的には3〜4週間)までの観察期間の主な部分、両処置群の動物は、実際には処置を受けていなかった。
【0048】
【表5】

【0049】
治療期間が非常に短かったにもかかわらず、GPVI阻害は、明らかに死亡を遅らせた(表6及び図5)。また、GPVI阻害をB16細胞の注入の前又は後に開始した場合、死亡数は、非常に類似していたようである。体重の時間経過は、最初の重度の(massive)腫瘍増殖、続いて悪化する全身状態に対応している(図6)。
【0050】
【表6】

【0051】
この実施例の処置前効果により、先の実施例1によって得られた証拠が確認され、GPVIの阻害は、腫瘍増殖及び/又は転移を弱めることを示している。
【0052】
また、実施例1のみに基づき、GPVI阻害の抗がん効果は、GPVIを阻害する抗血栓効果によって説明することができ、がん細胞繁殖は、がん細胞が凝固を誘発する可能性に左右されると考えられ、これは微小血管系中でがん細胞の滞留(retention)を高め、それによってがん細胞が血管外遊出する機会を増加させる。例えば、抗凝固又はフィブリノーゲン欠損動物について有益効果が報告されている(Amirkhosravi A. et al., J. Thrombosis Haemostasis, 2003, Vol. 1, 1972-1976; Palumbo J. S., Cancer Research, 2002, Vol. 62, 6966-6972)。
【0053】
対照的に、実施例2は、GPVI阻害が、悪性細胞注入時に存在したかどうか、又はそれがその後誘発されたかどうかで実質的な違いがなかったことを示す。従って、これらのデータは、肺中のがん細胞の捕捉、そしておそらく血管外遊出でさえ、すでに完了した時点で、例えばGPVI阻害剤の抗血栓効果があまり重要でないと考えられる時点で治療を開始したとしても、最大の抗がん、抗転移効果が達成されうることを示している。
【0054】
また、この実施例は、腫瘍の縮小がGPVI枯渇マウスの死亡遅延に対応することを実証している。重要なことに、GPVI阻害が非常に短期間のこの最悪の症例シナリオにおいても、処置は、明らかに死亡遅延をもたらした。GPVIの連続的な阻害では、治療有効性は、さらにより顕著であると期待される。
【0055】
実施例3:
第3の実施例は、GPVI阻害の治療効果が阻害剤の性質とは独立していることを例証する。阻害性化合物は、適切な濃度の潜在的阻害剤を、好ましくはヒト、又はマウスのような標準実験室動物種から得た哺乳動物の多血小板血漿に加えることによって同定することができる。適した培養期間後、EP1228768に記載されているように、コラーゲン関連ペプチド又はコンブルキシン又はあまり特異的でないコラーゲンを加えることによって血小板の凝集を開始させた。GPVI仲介シグナル伝達によって血小板凝集を誘発させるようにこれらの化合物を用いた(Nieswandt B, Watson SP., Blood. 2003; 15:102: 449-461)。凝集が損なわれた場合、使用した化合物又は方法は、GPVI又はGPVIによって活性化された下流シグナル伝達カスケードの成分を阻害した。対照実験として第2工程では、潜在的GPVI阻害剤を、好ましくは第一工程と同じ生体であるが、GPVIが欠損しているものからの多血小板血漿に適用した。このような欠損は、GPVIノックアウトマウスのような、GPVIの遺伝的欠損によって(Kato K, Kanaji T, Russell S, et al., Blood. 2003;102: 1701-1707)又はGPVI活性を実質的な低下に導く他のアプローチ、例えば遺伝子サイレンシング若しくはsiRNAのような技術によって達成することができる。このような欠損は、必ずしも完全である必要はない。凝集が代替アゴニストにより誘発され、GPVIよりも他の受容体、例えばADP、トロンビン若しくはアラキドン酸又は類似のものを介して血小板を活性化するとき、加えた化合物がこのような調製物の凝集をなお損なう場合、化合物は、(それがGPVIを阻害するにもかかわらず)GPVIについて特異的でない。
【0056】
GPVIを阻害する小分子化学物質についての具体例は、アンギオテンシンII 1型受容体アンタゴニストの代謝物、EXP3179である(Grothusen C, Umbreen S, et al, Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2007 May;27(5): 1184-90)。反復投与又は持続注入のような他のアプローチによって、マウスの血漿レベルがGPVI阻害の連続的に高いレベルに達するのを保証することができる。高レベルの阻害が達成されるかどうかは、コラーゲン誘発血小板凝集を定量化することによって試験することができる。
【0057】
EXP3179のようなGPVI阻害剤が同様に黒色腫のようながんを予防するのに有効かどうか評価するため、十分なGPVI阻害に達するまで、約10匹のマウスの一群をEXP3179で前処置した。好ましくは、これは少なくとも25%又は少なくとも50%又は少なくとも75又は少なくとも90%である。本研究についての適切な収容条件及びマウス系統は、実施例1に詳述した。次に、B16細胞を、おそらくまた、同様に異なる細胞数の範囲又は様々な悪性度の細胞を実施例1に詳述したように静脈内に注入した。EXP3179のようなGPVI阻害剤で継続的に処置し、マウスの生存を記録しながら、約1週間又はそれより長い適切な期間、マウスを観察した。観察期間の終わりにマウスを犠牲にし、そして実施例1に掲記したエンドポイントを定量化した。参照したように、マウスの類似の大群を同じ条件下で保持し、そして注入溶液がB16細胞を含まないことを除いて同じように処置した。この対照群との比較は、EXP3179のような阻害剤によるGPVI阻害がJAQ1のような阻害剤の使用と同様に生存性を改善しながら腫瘍及び転移増殖を弱めるのに有効であることを示している。
【0058】
第2のアプローチでは、がんの診断が為された後に、EXP3179のようなGPVI阻害剤で患者を処置する臨床的により関連した状況を研究しうることを表わす。これは、実施例1に記載した予防上の設定に対して補完的であり、がん細胞を注入した時点で阻害が完全に存在する。実施例2にまとめたこの真に治療的な設定では、がんの誘発(B16細胞の注入による)は、適したGPVI阻害剤による処置の前に起こる。エンドポイントの定量は、同じままである。この治療状況においても、腫瘍及び転移増殖の縮小が見られ、生存率の改善を伴った。
【0059】
GPVIの阻害によるがんの予防及び処置方法に関するGPVI阻害の利益を評価する別のアプローチの可能性としては、GPVIノックアウトマウスの使用であろう。しかしながら、このアプローチを、阻害GPVI機能に導くインタクトGPVIを有するマウスの処置とは異なるものにしているいくつかの基礎的な側面がある。厳密には、GPVIノックアウトマウスの使用は、GPVI遺伝子が破壊された患者を反映しているだけで、これはまれな状況である(総説については、Arthur JF, Dunkley S, Andrews RK.. Br J Haematol. 2007 Nov;139(3): 363-72.参照)。このような症例の特徴は、GPVI欠損ががんの発症中にすでに存在することである。そのため、それは、予防的GPVI阻害処置下にあるがそれにもかかわらずがんを発症している患者の状況を反映している。これは、完全GPVI欠損患者の症例でさらにより明らかになる(GPVIノックアウトマウスによっても反映される)。このような患者におけるGPVI活性の低下を目的とする治療は、意味がない。これに対して、本発明は、最初のうちは阻害されてないGPVI活性を有する個体におけるGPVIの阻害は、がんを予防的に予防するだけでなく、むしろがん診断後にがんを治療的に処置するために可能性を有しうることを示している。また、実施例2に示すようにGPVIの阻害は、疾患の診断後に処置を開始する場合で、従って治療的アプローチとしても有効である。
【0060】
従って、まとめると、GPVI阻害は、予防的な処置としてだけでなく、また黒色腫が確定された患者において、そして転移が顕著なプロセスである段階においても、有効であり得ると結論された。血小板が血管再構築の開始における主な役割を担っているため(Massberg et al., J. Exp. Med., 2006, Vol. 203(5): 1221-1233)、GPVI枯渇は、いくつかの機構、例えばがん増殖又は転移に必要な血管新生に関与するもの、すなわちがん細胞の播種、停止又は侵入などに干渉し又は阻害することを通して作用しうる。従って、GPVI除去剤(GPVI-depleting agents)又はGPVI阻害剤又は他の手段によってGPVIの機能を妨げる薬剤は、新規な抗がん/抗転移薬として用いることができる。それらは、出血性合併症のリスク増加にさらされてはならない患者にとって、特に有益でありうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを予防及び/又は治療する薬剤を製造するためのGPVI阻害剤の使用。
【請求項2】
がんを予防及び/又は治療するためのGPVI阻害剤。
【請求項3】
GPVIがヒトGPVIである、請求項1に記載の使用又は請求項2に記載のがんを予防及び/又は治療するための阻害剤。
【請求項4】
がんタイプが皮膚がんである、請求項1又は3に記載の使用又は請求項2又は3に記載のがんを予防及び/又は治療するための阻害剤。
【請求項5】
がんタイプが黒色腫である、請求項1、3及び4のいずれか1項に記載の使用又は請求項2〜4のいずれか1項に記載のがんを予防及び/又は治療するための阻害剤
【請求項6】
がんタイプが悪性皮膚黒色腫である、請求項1及び3〜5のいずれか1項に記載の使用又は請求項2〜5のいずれか1項に記載のがんを予防及び/又は治療するための阻害剤。
【請求項7】
GPVI阻害剤が抗体である、請求項1及び3〜6のいずれか1項に記載の使用又は請求項2〜6のいずれか1項に記載のがんを予防及び/又は治療するための阻害剤。
【請求項8】
GPVI阻害剤がモノクローナル抗体JAQ1である、請求項1及び3〜7のいずれか1項に記載の使用又は請求項2〜7のいずれか1項に記載のがんを予防及び/又は治療するための阻害剤。
【請求項9】
GPVI阻害剤が小分子である、請求項1及び3〜6のいずれか1項に記載の使用又は請求項2〜6のいずれか1項に記載のがんを予防及び/又は処置するための阻害剤。
【請求項10】
がんの治療において、同時に、別々に、又は逐次的に使用する薬学的製剤を製造するための1つ又はそれ以上の単離されたGPVI阻害剤を含む組成物の使用
【請求項11】
皮膚がんの治療において、同時に、別々に、又は逐次的に使用する配合薬学的製剤を製造するための1つ又はそれ以上の単離されたGPVI阻害剤を含む組成物の使用。
【請求項12】
がんの治療において、同時に、別々に、又は逐次的に使用するための1つ又はそれ以上の単離されたGPVI阻害剤、及びGPVIの阻害剤ではない少なくとも1つのさらなる治療化合物を含む、組成物。
【請求項13】
皮膚がんの治療において、同時に、別々に、又は逐次的に使用するための1つ又はそれ以上の単離されたGPVI阻害剤、及びGPVIの阻害剤ではない少なくとも1つのさらなる治療化合物を含む、配合組成物。
【請求項14】
a)潜在的GPVI阻害剤の適切な量を哺乳動物の多血小板血漿に添加する工程、
b)場合により、工程(a)の多血小板血漿を潜在的GPVI阻害剤と共にインキュベートする工程、
c)コラーゲン関連ペプチド又はコンブルキシン又はコラーゲンを添加してGPVI仲介シグナル伝達によって血小板凝集を誘導することによって血小板の凝集を開始させる工程、
d)工程(c)で測定されるような凝集を、工程(a)の潜在的GPVI阻害剤を添加することなくコラーゲン関連ペプチド又はコンブルキシン又はコラーゲンを多血小板血漿に加えたときに得た凝集と比較する工程:
を含むGPVIの阻害剤の同定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−518203(P2011−518203A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505412(P2011−505412)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002864
【国際公開番号】WO2009/129980
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(597070264)ツェー・エス・エル・ベーリング・ゲー・エム・ベー・ハー (32)
【Fターム(参考)】