説明

HDAC阻害剤による癌処置法

【課題】癌、例えば中皮腫またはリンパ腫の処置法を提供する。
【解決手段】HDAC阻害剤、例えばスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)を含む薬学的組成物を投与することにより、中皮腫またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を処置する。薬学的組成物の経口製剤は、高いバイオアベイラビリティなどの好ましい薬物動態プロフィールを有し、驚くべきことに長期間にわたって活性化合物の高い血中レベルを提供する。本発明は、これらの薬学的組成物の安全かつ毎日の投与療法をさらに提供し、これは遵守が容易であって、インビボでHDAC阻害剤の処置上有効な量が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利についての声明
本発明は全体または部分的に米国立癌研究所(National Cancer Institute)により授与された助成番号1R21 CA 096228-01の下、政府の支援を受けて行った。政府は本発明において一定の権利を有することになる。
【0002】
発明の分野
本発明は、癌、例えば中皮腫またはリンパ腫の処置法に関する。より具体的には、本発明は、中皮腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、または他の癌もしくは腫瘍の処置法であって、HDAC阻害剤、例えばスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)を含む薬学的組成物を投与することによる方法に関する。薬学的組成物の経口製剤は、高いバイオアベイラビリティなどの好ましい薬物動態特性を有し、驚くことに長期間にわたって活性化合物の高い血中レベルを提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
本出願の全体を通して、様々な出版物を括弧内のアラビア数字により引用する。これらの出版物の完全な引用は本明細書の最後に記載する。これらの出版物の開示は、本発明が属する技術分野の現状をより詳細に説明するため、その全体が参照により本出願に組み入れられる。
【0004】
癌は、細胞群が様々な程度で増殖および分化を正常に支配する制御メカニズムに対して不応性となる障害である。
【0005】
中皮腫は、悪性(癌性)細胞が中皮、すなわち体の内部臓器のほとんどを覆う保護嚢で見いだされる稀な型の癌である。中皮は体の内部臓器のほとんどを覆い、保護する膜である。これは二層の細胞からなる。一層は臓器を直接取り囲み、もう一層はその周りに嚢を形成する。中皮はこれらの層の間に放出する潤滑液を産生し、臓器の動き(心拍動および肺の拡張収縮など)が近接構造に対して容易にすべるようにする。
【0006】
中皮はその体内の位置に応じて異なる名称を有する。腹膜は腹腔内の臓器のほとんどを覆う中皮組織である。胸膜は肺を取り囲み、胸腔壁を裏打ちする膜である。心膜は心臓を覆って保護する。男性の内生殖器を取り囲む中皮組織は精巣鞘膜と呼ばれる。子宮漿膜は女性の内生殖器を覆う。ほとんどの中皮腫症例は胸膜または腹膜において発症する。胸膜中皮から生じる悪性腫瘍はアスベスト曝露に強く関連している。
【0007】
報告された罹患率は過去20年間に上昇しているが、中皮腫はまだ比較的稀な癌である。米国では毎年約2000例の新しい中皮腫症例が診断される。中皮腫は女性よりも男性で多く見られ、加齢に伴ってリスクは高まるが、いかなる年齢の男女いずれにも発生しうる。
【0008】
胸膜内の液貯留による息切れおよび胸部痛が胸膜中皮腫によく見られる症状である。腹膜中皮腫の症状には、体重減少や、腹部の液貯留による腹痛および膨張がある。腹膜中皮腫の他の症状としては、腸閉塞、血液凝固異常、貧血および発熱が見られることがある。癌が中皮から体の他の部位に拡がった場合、症状には疼痛、嚥下障害、または頸部もしくは顔面腫脹が含まれる。
【0009】
中皮腫の予後は悲惨で、根治手術、現行の化学療法、放射線療法、および併用療法への反応は悪い。癌細胞の胸壁および横隔膜内への拡散は、ルーチン検査で検出されないような場合でも鏡検ではよく見られる。
【0010】
リンパ腫はリンパ系、リンパ節ネットワーク、臓器(脾臓、胸腺、および扁桃腺を含む)、および免疫系の一部である脈管の癌である。リンパ腫には多くの異なるタイプがあり、二つの範疇に分けることができる:ホジキン病(HD)および非ホジキンリンパ腫(NHL)である。この二つの間の主な違いは関与する細胞のタイプである。
【0011】
リンパ系は体の免疫系の一部で、感染と戦うのを助ける。これは、骨髄、胸腺、および脾臓などの臓器、ならびに小さいリンパ管のネットワークにより結合されたリンパ節(またはリンパ腺)で構成された複雑な系である。リンパ節は体中に認められる。
【0012】
リンパ球は、リンパ系を通して循環する白血球で、体の免疫系の必須成分である。リンパ球にはB細胞とT細胞の二つの主要なタイプがある。ほとんどのリンパ球は骨髄中で増殖を始める。B細胞は骨髄中で発生を続けるが、T細胞は骨髄から胸腺に行き、そこで成熟する。いったん成熟すれば、B細胞およびT細胞はいずれも体が感染と戦うのを助ける。
【0013】
非ホジキンリンパ腫には20を越える異なるタイプがある。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫はすべての症例の約40%を構成する一般的なタイプである。これはBリンパ球の癌である。びまん性B細胞リンパ腫は青年期から老年期までのいかなる時点でも発生しうる。女性よりも男性でわずかに多く見られる。
【0014】
非ホジキンリンパ腫は低級および高級の二群の一つにも分類される。低級リンパ腫は通常は増殖が遅く、高級リンパ腫はより速く増殖する傾向がある。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は高級リンパ腫で、迅速な処置を必要とする。
【0015】
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の主な処置は化学療法である。化学療法のタイプはリンパ腫の程度や、年齢および全身の健康などの他の因子に依存する。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を処置するために通常投与される二つの薬物は、ドキソルビシンおよびシクロホスファミドと呼ばれる。これらは通常は他の抗癌剤と共に投与される。現在もっとも広く用いられる組み合わせは「CHOP」法と呼ばれる。これは薬物ドキソルビシンおよびシクロホスファミドに加えて、ビンクリスチンおよびプレドニソロンを含む。化学療法は通常は病院で外来患者として投与することができ、4から6ヶ月続く。
【0016】
加えて、骨髄または幹細胞注入を伴う高用量化学療法は、リンパ腫が再発した一部の患者において有効であった。このタイプの処置は非常に集中的な化学療法と、時に放射線療法を含む。副作用が重度となる可能性があるため、45〜50歳よりも高齢の患者には施されないタイプの移植もあれば、処置を受けるのに十分適した65歳までの患者に投与できるものもある。処置の強さはこの年齢を越える患者にとって重篤な副作用のリスクを高める。
【0017】
リンパ腫細胞が体の同じ部分のリンパ節の一つまたは二つの領域に含まれる場合(1期または2期)、放射線療法も用いることができる。放射線療法は化学療法に加えて行ってもよい。
【0018】
試行されてきたもう一つの処置はリツキシマブと呼ばれるモノクローナル抗体である。
【0019】
長年にわたり、癌の化学療法には次の二つの主要な戦略があった:1)性ホルモンの産生または末梢作用を妨害することにより、ホルモン依存性腫瘍細胞増殖を阻止すること;および2)癌細胞を腫瘍および正常細胞群両方を損傷する細胞毒性物質に曝露することにより、癌細胞を直接死滅させること。
【0020】
腫瘍学の分野における多くの進歩にもかかわらず、固形腫瘍の大部分は末期になると不治のままである。細胞毒性処置がほとんどの症例で用いられるが、患者に対して著しい病的状態を引き起こし、有意な臨床上の利益はないことが多い。進行した悪性腫瘍を処置および管理するための、毒性が低く、特異性が高い薬剤が必要である。
【0021】
癌化学療法の代替アプローチは、新生物細胞の終末分化の誘導である(非特許文献1)。細胞培養モデルにおいて、細胞を、環状AMPおよびレチノイン酸(非特許文献2、3)、アクラルビシンおよび他のアンスラサイクリン(非特許文献4)を含む様々な刺激に曝露することにより分化が報告されている。
【0022】
悪性形質転換は必ずしも癌細胞が分化する可能性を破壊するものではないとの多くの証拠がある(非特許文献1、5、6)。正常な増殖制御物質に反応せず、分化プログラムの発現において阻止されていると思われるが、それでも分化して複製をやめるよう誘導することができる、多くの腫瘍細胞の例がある。いくつかの比較的単純な極性化合物(非特許文献5、7〜9)、ビタミンDおよびレチノイン酸の誘導体(非特許文献10〜12)、ステロイドホルモン(非特許文献13)、成長因子(非特許文献6、14)、プロテアーゼ(非特許文献15、16)、腫瘍プロモーター(非特許文献17、18)、ならびにDNAまたはRNA合成の阻害剤(非特許文献4、19〜24)を含む様々な薬剤は、様々な形質転換細胞株およびヒト原発腫瘍外植片がより分化した特徴を発現するよう誘導することができる。
【0023】
初期の研究により、いくつかの形質転換細胞株における分化の有効な誘導物質である一連の極性化合物が特定された(非特許文献8、9)。これらのうち、最も有効な誘導物質はハイブリッド極性/非極性化合物N,N'-ヘキサメチレンビスアセトアミド(HMBA)であった(非特許文献9)。マウスの赤白血病細胞(MELC)の赤血球分化を誘導し、腫瘍原性を抑制するためのこの極性/非極性化合物の使用は、形質転換細胞の誘導物質仲介性の分化を研究する有用なモデルであることが証明されている(非特許文献5、7〜9)。HMBA誘導性MELC終末赤血球分化は多段階プロセスである。培養中のMELC(745A-DS19)にHMBAを加えた後、10から12時間の潜伏期をおいて、終末分化への拘束が検出される。拘束とは、細胞が誘導物質を除去したにもかかわらず終末分化を発現する能力と定義される(非特許文献25)。HMBAへの連続曝露により、細胞の分化への漸進性動員が見られる。本発明者らは、比較的低レベルのビンクリスチンに抵抗性としたMELC細胞株がHMBAの誘導作用に対して顕著に感受性となり、ほとんどまたはまったく潜伏期なく分化誘導しうることを報告している(非特許文献26)。
【0024】
HMBAは広範な細胞株において分化に一致する表現型変化を誘導することができる(非特許文献5)。薬物誘導性効果の特徴がマウス赤白血球細胞系(MELC)において最も広く研究されている(非特許文献5、25、27、28)。MELC分化誘導は時間と濃度の両方に依存する。ほとんどの株においてインビトロで効果を示すために必要な最小濃度は2から3mMであり、細胞群の実質的部分(>20%)で薬物曝露を続けることなく分化を誘導するのに一般に必要とされる連続曝露の最短期間は約36時間である。
【0025】
HMBAの作用の主な標的は不明である。プロテインキナーゼCが誘導物質仲介性の分化の経路に関与しているとの証拠がある(非特許文献29)。インビトロ試験により、ヒト癌の処置における細胞分化剤としてのHMBAの効力を評価するための基礎が提供された(非特許文献30)。HMBAによるいくつかの第I相臨床試験が完了した(非特許文献31〜36)。臨床試験から、この化合物が癌患者の処置反応を誘導しうることが明らかにされている(非特許文献35、36)。しかし、これらの第I相試験は、HMBAの有効性が、部分的には最適な血中レベルを得るのを妨げる用量に関連する毒性、および長期間にわたり大量の薬剤を静脈内投与する必要性により、制限されることも示している。
【0026】
非極性結合によって分けられた極性基を有するHMBA関連のいくつかの化合物は、モルを基準にして、HMBAと同程度に活性(非特許文献37)または100倍活性が高い(非特許文献38)と報告されている。しかし、一つのクラスとして、HMBAおよび関連化合物などの対称二量体は最良の細胞分化剤ではないことが判明している。
【0027】
予想外に、最良の化合物は柔軟なメチレン基の鎖で分けられた二つの極性末端基を含み、極性基の一つまたは両方は大きい疎水性基であることが明らかにされた。好ましくは、極性末端基は異なり、一方だけが大きい疎水性基である。これらの化合物は、予想外にも、HMBAよりも千倍活性が高く、HMBA関連化合物よりも十倍高い。
【0028】
スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)などのヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、腫瘍細胞の増殖停止、分化、および/またはアポトーシスを誘導する能力を有する薬剤のこのクラスに属する(非特許文献39)。これらの化合物は動物における腫瘍増殖の阻害に有効な用量で毒性がないと思われるため、新生物細胞が悪性となる能力に固有のメカニズムに標的指向されている(非特許文献40)。ヒストンアセチル化および脱アセチル化は、それによって細胞内の転写制御が行われるメカニズムであるという一連の証拠がある(非特許文献41)。これらの効果は、ヌクレオソームにおけるヒストンタンパク質のらせんDNAに対する親和性を変えることによるクロマチンの構造変化を通して起こると考えられる。
【0029】
ヒストンは5つのタイプが同定されている(H1、H2A、H2B、H3およびH4と命名)。ヒストンH2A、H2B、H3およびH4はヌクレオソーム内で認められ、H1はヌクレオソーム間に位置するリンカーである。各ヌクレオソームはそのコア内にH1以外の各ヒストンタイプの二つを含み、H1はヌクレオソーム構造の外側部分に単独で存在する。ヒストンタンパク質が低アセチル化状態である場合、ヒストンのDNAリン酸骨格への親和性が高いと考えられる。この親和性によりDNAがヒストンに緊密に結合することになり、DNAは転写制御因子および機構に接近できなくなる。
【0030】
アセチル化状態の制御は二つの酵素複合体、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)とヒストンデアセチラーゼ(HDAC)との間の活性のバランスを通して起こる。低アセチル化状態は関連するDNAの転写を阻害すると考えられる。この低アセチル化状態はHDAC酵素を含む大きい多タンパク質複合体によって触媒される。特に、HDACはクロマチンコアヒストンからのアセチル基除去を触媒することが示されている。
【0031】
HDACのSAHAによる阻害は、X線結晶回折試験によって示されたとおり、酵素の触媒部位との直接相互作用によって起こる(非特許文献42)。HDAC阻害の結果はゲノムに対して広汎な効果を有するとは考えられず、むしろゲノムの小さいサブセットに影響をおよぼすにすぎない(非特許文献43)。HDAC阻害剤と共に培養した悪性細胞株を用いたDNAマイクロアレイによる証拠は、生成物が変化した限られた(1〜2%)数の遺伝子があることを示している。例えば、培養中にHDAC阻害剤で処理した細胞は、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤p21の一貫した誘導を示す(非特許文献44)。このタンパク質は細胞周期停止において重要な役割を果たす。HDAC阻害剤はp21遺伝子の領域におけるヒストンの高アセチル化状態を拡大することによりp21の転写速度を高め、それにより遺伝子を転写機構に接近できるようにすると考えられる。発現がHDAC阻害剤の影響を受けない遺伝子では、領域関連ヒストンのアセチル化において変化は見られない(非特許文献45)。
【0032】
いくつかの場合に、HATまたはHDAC活性の崩壊は悪性表現型の発生に関係することが示されている。例えば、急性前骨髄球性白血病において、PMLおよびRARアルファの融合により産生される腫瘍性タンパク質はHDACの動員を通して特定の遺伝子転写を抑制すると思われる(非特許文献46)。この様式で、新生物細胞は分化を完了することができなくなり、白血病細胞株の過剰増殖につながる。
【0033】
本発明者らのいずれかに発行された米国特許第5,369,108号(特許文献1)、第5,932,616号(特許文献2)、第5,700,811号(特許文献3)、第6,087,367号(特許文献4)および第6,511,990号(特許文献5)は、新生物細胞の終末分化を選択的に誘導するために有用な化合物であって、柔軟なメチレン基の鎖または硬いフェニル基で分けられた二つの極性末端基を有し、極性末端基の一つまたは両方は大きい疎水性基である化合物を開示している。化合物のいくつかは、第一の疎水性基と同じ分子末端に別の大きい疎水性基を有しており、これは分化活性を酵素アッセイにおいて約100倍、細胞分化アッセイにおいて約50倍高める。本発明の方法および薬学的組成物において用いる化合物の合成法は前述の特許に詳細に記載されており、これらの全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0034】
前述の特許に開示された化合物は、その抗腫瘍剤としての生物活性に加えて、炎症疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患、cellulora過剰増殖によって特徴付けられる疾患の酸化ストレスに関連する疾患などの、様々なチオレドキシン(TRX)仲介性の疾患および状態を処置または予防するために有用であることが最近確認された(2003年2月15日出願の米国特許出願第10/369,094号(特許文献6)。さらに、これらの化合物は、神経変性疾患などの中枢神経系(CNS)の疾患を処置するため、および脳の癌を処置するために有用であることが確認された(2002年10月16日出願の米国特許出願第10/273,401号(特許文献7)参照)。
【0035】
前述の特許はHDAC阻害剤の特定の経口製剤または癌、例えば、中皮腫もしくはリンパ腫の処置に有効な記載の化合物の特定の用量および投与計画を開示していない。重要なことに、前述の特許は長期間にわたって活性化合物の高い血中レベルを提供する高いバイオアベイラビリティなどの、好ましい薬物動態特性を有する経口製剤を開示していない。
【0036】
これらの化合物の適当な用量および投与計画を明らかにし、長期間にわたって活性化合物の安定で処置上有効な血中レベルを提供し、癌の処置に有効な製剤、好ましくは経口製剤を開発することが差し迫って必要である。
【特許文献1】米国特許第5,369,108号
【特許文献2】米国特許第5,932,616号
【特許文献3】米国特許第5,700,811号
【特許文献4】米国特許第6,087,367号
【特許文献5】米国特許第6,511,990号
【特許文献6】米国特許出願第10/369,094号
【特許文献7】米国特許出願第10/273,401号
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【発明の開示】
【0037】
発明の概要
本発明は、癌、例えば中皮腫またはリンパ腫の処置法に関する。より具体的には、本発明は、中皮腫またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の処置法であって、HDAC阻害剤、例えばスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)を含む薬学的組成物を投与することによる方法に関する。特定の局面において、本発明の方法は中皮腫を処置するために用いられる。他の局面において、本発明の方法はリンパ腫、例えばDLBCLを処置するために用いられる。
【0038】
薬学的組成物の経口製剤は、高いバイオアベイラビリティなどの好ましい薬物動態特性を有し、驚くことに長期間にわたって活性化合物の高い血中レベルを提供する。本発明は、これらの薬学的組成物の安全な毎日の投与法をさらに提供し、これは従うのが容易で、インビボでHDAC阻害剤の処置上有効な量が得られる。
【0039】
一つの態様において、本発明はそれを必要としている被験者の中皮腫またはDLBCLの処置法であって、本明細書に記載のスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の有効量を含む薬学的組成物を被験者に投与することによる方法を提供する。SAHAは、1日合計用量800mgまでを、好ましくは経口で、1日1、2、または3回、連続的(毎日)または間欠的(例えば1週間あたり3〜5日)に投与することができる。
【0040】
経口SAHAは中皮腫またはDLBCLを患っている患者に対し、第I相臨床試験で安全に投与されている。
【0041】
さらに、本発明はそれを必要としている被験者の中皮腫またはDLBCLの処置法であって、本明細書に記載のHDAC阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の有効量を含む薬学的組成物を被験者に投与することによる方法を提供する。HDAC阻害剤は、1日合計用量800mgまでを、好ましくは経口で、1日1、2、または3回、連続的(毎日)または間欠的(例えば1週間あたり3〜5日)に投与することができる。
【0042】
本発明のHDAC阻害剤および方法は、様々な癌、例えばホジキン病(HD)および非ホジキンリンパ腫(NHL)を含むリンパ腫の処置において有用である。一つの態様において、HDAC阻害剤は中皮腫またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を含む大細胞型リンパ腫を処置する際に有用である。本明細書において定義するとおり「大細胞型リンパ腫」は異常に大きい細胞によって特徴付けられるリンパ腫である。
【0043】
本発明において用いるのに適したHDAC阻害剤には、本明細書において定義されるヒドロキサム酸誘導体、短鎖脂肪酸(SCFA)、環状テトラペプチド、ベンズアミド誘導体、または求電子ケトン誘導体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。本発明の方法において用いるのに適したHDAC阻害剤の具体的な非限定例は下記である:
A)m-カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサミド(CBHA)、トリコスタチンA(TSA)、トリコスタチンC、サリチルヒドロキサム酸、アゼライン酸ビスヒドロキサム酸(Azelaic Bishydroxamic Acid:ABHA)、アゼライン酸-1-ヒドロキサメート-9-アニリド(AAHA)、6-(3-クロロフェニルウレイド)カルポ(carpoic)ヒドロキサム酸(3Cl-UCHA)、オキサムフラチン、A-161906、スクリプタイド、PXD-101、LAQ-824、CHAP、MW2796、およびMW2996から選択されるヒドロキサム酸誘導体;
B)トラポキシンA(TPX)-環状テトラペプチド(シクロ-(L-フェニルアラニル-L-フェニルアラニル-D-ピペコリニル-L-2-アミノ-8-オキソ-9,10-エポキシデカノイル);FR901228(FK 228、デプシペプチド);FR225497環状テトラペプチド;アピシジン環状テトラペプチド[シクロ(N-O-メチル-L-トリプトファニル-L-イソロイシニル-D-ピペコリニル-L-2-アミノ-8-オキソデカノイル)];アピシジンIa、アピシジンIb、アピシジンIc、アピシジンIIa、およびアピシジンIIb;CHAP、HC-トキシン環状テトラペプチド;WF27082環状;ならびにクラミドシンから選択される環状テトラペプチド;
C)酪酸ナトリウム、イソ吉草酸塩、吉草酸塩、4フェニル酪酸塩(4-PBA)、フェニル酪酸塩(PB)、プロピオン酸塩、ブチルアミド、イソブチルアミド、フェニル酢酸塩、3-ブロモプロピオン酸塩、トリブチリン、バルプロ酸およびバルプロ酸塩ならびにPivanex(商標)から選択される短鎖脂肪酸(SCFA);
D)CI-994、MS-27-275(MS-275)[N-(2-アミノフェニル)-4-[N-(ピリジン-3-イルメトキシカルボニル)アミノメチル]ベンズアミド]およびMS-27-275の3'-アミノ誘導体から選択されるベンズアミド誘導体;
E)トリフルオロメチルケトンおよびN-メチル-α-ケトアミドなどのα-ケトアミドから選択される求電子ケトン誘導体;ならびに
F)天然物、サマプリン、およびデプデシンを含むその他のHDAC阻害剤。
【0044】
具体的なHDAC阻害剤には、例えば下記が含まれる:
下記の構造式で表されるスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA):

下記の構造式で表されるピロキサミド:

下記の構造式で表されるm-カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサミド(CBHA):

【0045】
本発明の方法において用いるのに適したHDAC阻害剤の他の非限定例は下記である:
下記の構造で表される化合物

(式中、R3およびR4は独立に置換もしくは無置換、分枝もしくは非分枝アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、もしくはピリジン基、シクロアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、もしくはピリジン基であるか、またはR3およびR4は一緒に結合してピペリジン基を形成し;R2はヒドロキシアミノ基であり;かつnは5から8の整数である);
下記の構造で表される化合物

(式中、Rは置換または無置換フェニル、ピペリジン、チアゾール、2-ピリジン、3-ピリジンまたは4-ピリジンであり、かつnは4から8の整数である);
下記の構造で表される化合物

(式中、Aはアミド部分であり、R1およびR2はそれぞれ置換または無置換アリール、アリールアルキル、ナフチル、ピリジンアミノ、9-プリン-6-アミノ、チアゾールアミノ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ピリジル、キノリニルまたはイソキノリニルから選択され;R4は水素、ハロゲン、フェニルまたはシクロアルキル部分であり、かつnは3から10の整数である)。
【0046】
一つの態様において、HDAC阻害剤を含む薬学的組成物は経口、例えばゼラチンカプセル中で投与する。さらなる態様において、薬学的組成物はさらに微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムからなる。
【0047】
HDAC阻害剤は、患者ごとに変動しうる1日合計用量で投与することができ、変動する投与計画で投与してもよい。適当な用量は、約25〜4000mg/m2の間の1日合計用量を、経口で、1日1回、1日2回、または1日3回、連続的(毎日)または間欠的(例えば1週間あたり3〜5日)に投与するものである。さらに、組成物はサイクルの間に休止期間を含むサイクル(例えば、2から8週間の処置、および処置と処置の間に1週間までの休止期間)で投与してもよい。
【0048】
一つの態様において、組成物は約200〜600mgの用量で1日1回投与する。もう一つの態様において、組成物は約200〜400mgの用量で1日2回投与する。もう一つの態様において、組成物は約200〜400mgの用量で1日2回、間欠的に、例えば、1週間あたり3、4、または5日投与する。もう一つの態様において、組成物は約100〜250mgの用量で1日3回投与する。
【0049】
一つの態様において、1日用量は200mgであり、これを1日1回、1日2回、または1日3回投与することができる。一つの態様において、1日用量は300mgであり、これを1日1回または1日2回投与することができる。一つの態様において、1日用量は400mgであり、これを1日1回または1日2回投与することができる。
【0050】
本発明は、被験者の新生物細胞、例えばリンパ腫細胞の終末分化、細胞増殖停止および/またはアポトーシスを選択的に誘導し、それにより該被験者のそのような細胞の増殖を阻害する方法であって、HDAC阻害剤、例えばSAHA、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の有効量と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む薬学的組成物を被験者に投与することによる方法も提供する。本発明におけるHDAC阻害剤の有効量は、1日合計用量800mgまででありうる。
【0051】
本発明は、被験者のヒストンデアセチラーゼの活性を阻害する方法であって、HDAC阻害剤、例えばSAHA、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の有効量と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む薬学的組成物を被験者に投与することによる方法も提供する。本発明におけるHDAC阻害剤の有効量は、1日合計用量800mgまででありうる。
【0052】
本発明は、新生物細胞、例えばリンパ腫細胞の終末分化、細胞増殖停止および/またはアポトーシスを選択的に誘導し、それによりそのような細胞の増殖を阻害するインビトロでの方法であって、細胞をHDAC阻害剤、例えばSAHA、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の有効量と接触させることによる方法も提供する。
【0053】
本発明は、ヒストンデアセチラーゼの活性を阻害するインビトロでの方法であって、HDAC阻害剤、例えばSAHA、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の有効量と共にヒストンデアセチラーゼによる方法も提供する。
【0054】
本発明はさらに、従い、厳守するのが容易な、HDAC阻害剤を含む薬学的組成物製剤の安全な毎日の投与法を提供する。これらの薬学的組成物は経口投与に適し、新生物細胞の終末分化、細胞増殖停止および/もしくはアポトーシスを選択的に誘導することにより、かつ/またはヒストンデアセチラーゼ(HDAC)を阻害することにより、癌、例えば中皮腫、リンパ腫、または他の癌もしくは腫瘍を処置するのに有用である。
【0055】
発明の詳細な説明
本発明は、癌、例えば中皮腫またはリンパ腫の処置法に関する。より具体的には、本発明は、中皮腫またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の処置法であって、HDAC阻害剤、例えばスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)を含む薬学的組成物を投与することによる方法に関する。特定の局面において、本発明の方法は中皮腫を処置するために用いられる。他の局面において、本発明の方法はDLBCLを含むリンパ腫を処置するために用いられる。
【0056】
本発明の薬学的組成物の経口製剤は、高いバイオアベイラビリティなどの好ましい薬物動態特性を有し、驚くことに長期間にわたって活性化合物の高い血中レベルを提供する。したがって本発明は、これらの薬学的組成物の安全な毎日の投与法をさらに提供し、これは従うのが容易で、インビボでHDAC阻害剤の処置上有効な量が得られる。
【0057】
したがって、一つの態様において、本発明はそれを必要としている被験者の中皮腫またはDLBCLの処置法であって、本明細書に記載のHDAC阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の有効量を含む薬学的組成物を被験者に投与することによる方法を提供する。HDAC阻害剤は、1日合計用量800mgまでを、好ましくは経口で、1日1、2、または3回、連続的(すなわち毎日)または間欠的(例えば1週間あたり3〜5日)に投与することができる。
【0058】
一つの態様において、HDAC阻害剤はスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)である。もう一つの態様において、HDAC阻害剤は本明細書に記載のヒドロキサム酸誘導体である。もう一つの態様において、HDAC阻害剤は本明細書に記載の式1〜51の構造のいずれかによって表される。もう一つの態様において、HDAC阻害剤は本明細書に記載のベンズアミド誘導体である。もう一つの態様において、HDAC阻害剤は本明細書に記載の環状テトラペプチドである。もう一つの態様において、HDAC阻害剤は本明細書に記載の短鎖脂肪酸(SCFA)である。もう一つの態様において、HDAC阻害剤は本明細書に記載の求電子ケトンである。もう一つの態様において、HDAC阻害剤はデプデシンである。もう一つの態様において、HDAC阻害剤は天然物である。もう一つの態様において、HDAC阻害剤はサマプリンである。
【0059】
一つの特定の態様において、本発明はそれを必要としている被験者の中皮腫またはDLBCLの処置法であって、本明細書に記載のスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の有効量を含む薬学的組成物を被験者に投与することによる方法を提供する。SAHAは、1日合計用量800mgまでを、好ましくは経口で、1日1、2、または3回、連続的(毎日)または間欠的(例えば1週間あたり3〜5日)に投与することができる。SAHAは下記の構造で表される。

【0060】
もう一つの特定の態様において、本発明は、被験者の中皮腫またはDLBCLの処置法であって、本明細書に記載の式1〜51による本明細書に記載の構造のいずれかによって表されるヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含み、ただしヒストンデアセチラーゼ阻害剤の量は被験者の中皮腫またはDLBCLを処置するのに有効である、薬学的組成物の有効量を被験者に投与する段階を含む方法に関する。
【0061】
本発明に関連して、その様々な文法上の形の「処置」という用語は、疾患状態、疾患進行、疾患の原因因子(例えば細菌またはウイルス)または他の異常な状態の有害効果を予防する(すなわち、化学的に予防する)、治癒させる、逆転させる、減弱させる、軽減する、最小化する、抑制する、または停止させることを意味する。例えば、処置は疾患の症状(すなわち、必ずしもすべての症状ではない)を軽減すること、または疾患の進行を低下させることを含みうる。本発明の方法のいくつかは病因因子の物理的除去を含むため、当業者であればこれらは本発明の化合物を病因因子への曝露前、または曝露と同時に投与する場合と、本発明の化合物を病因因子への曝露後(かなり後でも)に投与する場合とで、同等に有効であることを理解すると思われる。
【0062】
本明細書において用いられる癌の処置とは、哺乳動物、例えばヒトにおいて、癌の転移を含む癌の進行を部分的もしくは完全に阻害する、遅延させる、もしくは防止すること;癌の転移を含む癌の再発を部分的もしくは完全に阻害する、遅延させる、もしくは防止すること;または癌の発症もしくは発生を部分的もしくは完全に予防(化学的予防)することを意味する。
【0063】
本明細書において用いられる「処置上有効な量」という用語は、所望の生体反応を達成すると思われるいかなる量も含むことが意図される。本発明において、所望の生体反応は、哺乳動物、例えばヒトにおける、癌の転移を含む癌の進行の部分的もしくは完全な阻害、遅延、もしくは防止;癌の転移を含む癌の再発の部分的もしくは完全な阻害、遅延、もしくは防止;または癌の発症もしくは発生の部分的もしくは完全な予防(化学的予防)である。
【0064】
本発明の方法は、癌を有するヒト患者の処置または化学的予防を意図するものである。しかし、この方法は他の哺乳動物の癌の処置においても同様に有効であると考えられる。
【0065】
ヒストンデアセチラーゼおよびヒストンデアセチラーゼ阻害剤
本明細書において用いられるヒストンデアセチラーゼ(HDAC)は、本明細書において用いられるとおり、ヌクレオソームコアヒストンのアミノ末端におけるリシン残基からのアセチル基除去を触媒する酵素である。したがって、HDACはヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)と共に、ヒストンのアセチル化状態を制御する。ヒストンのアセチル化は遺伝子発現に影響をおよぼし、ヒドロキサム酸誘導体のハイブリッド極性化合物であるスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)などのHDAC阻害剤は、インビトロで形質転換細胞の増殖停止、分化および/またはアポトーシスを誘導し、かつインビボで腫瘍増殖を阻害する。HDACは構造上の相同性に基づき、三つのクラスに分類することができる。クラスI HDAC(HDAC 1、2、3および8)は酵母RPD3タンパク質との類似性を有し、核に局在し、転写コリプレッサーに関連する複合体で見いだされる。クラスII HDAC(HDAC4、5、6、7および9)は酵母HDA1タンパク質と類似で、核および細胞質両方の細胞下に局在する。クラスIおよびII HDACはいずれも、SAHAなどのヒドロキサム酸誘導体HDAC阻害剤によって阻害される。クラスIII HDACは、酵母SIR2タンパク質に関係し、ヒドロキサム酸誘導体HDAC阻害剤によって阻害されない、NAD依存性酵素の構造的に遠いクラスを形成する。
【0066】
本明細書において用いられるヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはHDAC阻害剤は、インビボ、インビトロまたは両方でヒストンの脱アセチル化を阻害することができる化合物である。したがって、HDAC阻害剤は少なくとも一つのヒストンデアセチラーゼの活性を阻害する。少なくとも一つのヒストンの脱アセチル化を阻害した結果、アセチル化ヒストンの増加が起こり、アセチル化ヒストンの蓄積はHDAC阻害剤の活性を評価するのに適した生物マーカーである。したがって、アセチル化ヒストンの蓄積を分析することができる方法を用いて、目的の化合物のHDAC阻害活性を調べることができる。ヒストンデアセチラーゼ活性を阻害しうる化合物は他の基質にも結合することができ、したがって酵素などの他の生物活性分子を阻害することもできることが理解される。本発明の化合物は前述のヒストンデアセチラーゼのいずれも、またはいかなる他のヒストンデアセチラーゼも阻害しうることも理解されるべきである。
【0067】
例えば、HDAC阻害剤の投与を受けている患者において、末梢単核細胞ならびにHDAC阻害剤で処置した組織におけるアセチル化ヒストンの蓄積を適当な対照と比べて調べることができる。
【0068】
特定の化合物のHDAC阻害活性を、例えば少なくとも一つのヒストンデアセチラーゼの阻害を示す酵素アッセイを用いて、インビトロで評価することができる。さらに、特定の組成物で処置した細胞におけるアセチル化ヒストンの蓄積を調べることにより、化合物のHDAC阻害活性を評価することができる。
【0069】
アセチル化ヒストン蓄積の分析法は文献において周知である。例えば、Marks, P.A. et al., J. Natl. Cancer Inst., 92:1210-1215, 2000、Butler, L.M. et al., Cancer Res. 60:5165-5170 (2000)、Richon, V.M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 95:3003-3007, 1998、およびYoshida, M. et al., J. Biol. Chem., 265:17174-17179, 1990参照。
【0070】
例えば、HDAC阻害剤化合物の活性を評価するための酵素アッセイは下記のとおりに行うことができる。簡単に言うと、親和性により精製したヒトエピトープ標識(フラグ)HDAC1に対するHDAC阻害剤化合物の効果を、酵素調製物を基質非存在下、氷上で約20分間、指示された量の阻害剤化合物と共にインキュベートすることにより分析する。基質([3H]アセチル標識マウス赤白血病細胞由来ヒストン)を加え、試料を全量30μLとし、37℃で20分間インキュベートする。次いで、反応を停止し、遊離したアセテートを抽出し、放射能放出量をシンチレーション計数により定量する。HDAC阻害剤化合物の活性を評価するのに有用な代替アッセイは、BIOMOL(登録商標) Research Laboratories, Inc., Plymouth Meeting, PAから入手可能な「HDAC Fluorescent Activity Assay; Drug Discovery Kit-AK-500」である。
【0071】
インビボ試験は下記のとおりに行うことができる。動物、例えばマウスにHDAC阻害剤化合物を腹腔内注射する。選択した組織、例えば脳、脾臓、肝臓などを、投与後のあらかじめ決められた時間に摘出する。ヒストンを組織から、基本的にYoshida et al., J. Biol. Chem. 265:17174-17179, 1990に記載のとおりに単離する。等量のヒストン(約1μg)を15%SDS-ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動し、Hybond-Pフィルター(Amershamから入手可能)上に転写する。フィルターを3%ミルクでブロックし、ウサギ精製ポリクローナル抗アセチル化ヒストンH4抗体(α-Ac-H4)および抗アセチル化ヒストンH3抗体(α-Ac-H3)(Upstate Biotechnology, Inc.)をプローブに用いて調べる。アセチル化ヒストンのレベルを、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギ抗体(1:5000)およびSuperSignal化学発光基質(Pierce)を用いて可視化する。ヒストンタンパク質の添加対照として、並行ゲルを行い、クーマシーブルー(CB)で染色する。
【0072】
加えて、ヒドロキサム酸誘導体HDAC阻害剤は、p21WAF1遺伝子の発現をアップレギュレートすることが明らかにされている。p21WAF1タンパク質は、標準の方法を用いて様々な形質転換細胞でHDAC阻害剤との培養の2時間以内に誘導される。p21WAF1遺伝子の誘導はこの遺伝子のクロマチン領域におけるアセチル化ヒストンの蓄積に関係している。したがって、p21WAF1の誘導は、形質転換細胞でHDAC阻害剤によって引き起こされるG1細胞周期停止に関与していると考えられる。
【0073】
典型的には、HDAC阻害剤は5つの一般的クラスに分けられる:1)ヒドロキサム酸誘導体;2)短鎖脂肪酸(SCFA);3)環状テトラペプチド;4)ベンズアミド;および5)求電子ケトン。
【0074】
したがって、本発明はその広い範囲内に、1)ヒドロキサム酸誘導体;2)短鎖脂肪酸(SCFA);3)環状テトラペプチド;4)ベンズアミド;5)求電子ケトン;ならびに/あるいはヒストンデアセチラーゼ阻害において用いるためにヒストンデアセチラーゼを阻害する、新生物細胞において終末分化、細胞増殖停止および/もしくはアポトーシスを誘導する、かつ/または腫瘍において腫瘍細胞の分化、細胞増殖停止および/もしくはアポトーシスを誘導することができる任意の他のクラスの化合物であるHDAC阻害剤を含む組成物を含む。
【0075】
そのようなHDAC阻害剤の非限定例を以下に示す。本発明は本明細書に記載のHDAC阻害剤のいかなる塩、結晶構造、アモルファス構造、水和物、誘導体、代謝物、立体異性体、構造異性体、およびプロドラッグも含むことが理解される。
【0076】
A. ヒドロキサム酸誘導体
スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)(Richon et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95,3003-3007 (1998));m-カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサミド(CBHA)(Richon et al., supra);ピロキサミド;トリコスタチンA(TSA)およびトリコスタチンCなどのトリコスタチン類縁体(Koghe et al. 1998. Biochem. Pharmacol. 56: 1359-1364);サリチルヒドロキサム酸(Andrews et al., International J. Parasitology 30,761-768 (2000));スベロイルビスヒドロキサム酸(SBHA)(米国特許第5,608,108号);アゼライン酸ビスヒドロキサム酸(ABHA)(Andrews et al., supra);アゼライン酸-1-ヒドロキサメート-9-アニリド(AAHA)(Qiu et al., Mol. Biol. Cell 11, 2069-2083 (2000));6-(3-クロロフェニルウレイド)carpoicヒドロキサム酸(3Cl-UCHA);オキサムフラチン[(2E)-5-[3-[(フェニルスルホニル)アミノフェニル]-ペンタ-2-エン-4-イノヒドロキサム酸](Kim et al. Oncogene, 18: 2461 2470 (1999));A-161906、スクリプタイド(Su et al. 2000 Cancer Research, 60: 3137-3142);PXD-101(Prolifix);LAQ-824;CHAP;MW2796(Andrews et al., supra);MW2996(Andrews et al., supra);または米国特許第5,369,108号、第5,932,616号、第5,700,811号、第6,087,367号および第6,511,990号に開示されているヒドロキサム酸のいずれかなど。
【0077】
B. 環状テトラペプチド
トラポキシンA(TPX)-環状テトラペプチド(シクロ-(L-フェニルアラニル-L-フェニルアラニル-D-ピペコリニル-L-2-アミノ-8-オキソ-9,10-エポキシデカノイル))(Kijima et al., J Biol. Chem. 268,22429-22435 (1993));FR901228(FK 228、デプシペプチド)(Nakajima et al., Ex. Cell Res. 241,126-133 (1998));FR225497環状テトラペプチド(H. Mori et al., PCT出願WO 00/08048 (17 February 2000));アピシジン環状テトラペプチド[シクロ(N-O-メチル-L-トリプトファニル-L-イソロイシニル-D-ピペコリニル-L-2-アミノ-8-オキソデカノイル)](Darkin-Rattray et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93,1314313147 (1996));アピシジンIa、アピシジンIb、アピシジンIc、アピシジンIIa、およびアピシジンIIb(P. Dulski et al., PCT出願WO 97/11366);CHAP、HC-トキシン環状テトラペプチド(Bosch et al., Plant Cell 7, 1941-1950 (1995));WF27082環状テトラペプチド(PCT出願WO 98/48825);ならびにクラミドシン(Bosch et al., supra)など。
【0078】
C. 短鎖脂肪酸(SCFA)誘導体
酪酸ナトリウム(Cousens et al., J. Biol. Chem. 254,1716-1723 (1979));イソ吉草酸塩(McBain et al., Biochem. Pharm. 53: 1357-1368 (1997));吉草酸塩(McBain et al., supra);4-フェニル酪酸塩(4-PBA)(Lea and Tulsyan, Anticancer Research, 15,879-873 (1995));フェニル酪酸塩(PB)(Wang et al., Cancer Research, 59, 2766-2799 (1999));プロピオン酸塩(McBain et al., supra);ブチルアミド(Lea and Tulsyan, supra);イソブチルアミド(Lea and Tulsyan, supra);フェニル酢酸塩(Lea and Tulsyan, supra);3-ブロモプロピオン酸塩(Lea and Tulsyan, supra);トリブチリン(Guan et al., Cancer Research, 60,749-755 (2000));バルプロ酸、バルプロ酸塩およびPivanex(商標)など。
【0079】
D. ベンズアミド誘導体
CI-994;MS-275[N-(2-アミノフェニル)-4-[N-(ピリジン-3-イルメトキシカルボニル)アミノメチル]ベンズアミド](Saito et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 4592-4597 (1999));およびMS-275の3'-アミノ誘導体(Saito et al., supra)など。
【0080】
E. 求電子ケトン誘導体
トリフルオロメチルケトン(Frey et al, Bioorganic & Med. Chem. Lett. (2002), 12, 3443-3447; U.S. 6,511,990)およびN-メチル-α-ケトアミドなどのα-ケトアミドなど。
【0081】
F. その他のHDAC阻害剤
天然物、サマプリン、およびデプデシン(Kwon et al. 1998. PNAS 95: 3356-3361)など。
【0082】
好ましいヒドロキサム酸誘導体HDAC阻害剤はスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、m-カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサミド(CBHA)、およびピロキサミドである。SAHAはヒストンデアセチラーゼ酵素の触媒ポケットに直接結合することが明らかにされている。SAHAは培養中の形質転換細胞の細胞周期停止、分化、および/またはアポトーシスを誘導し、齧歯類において腫瘍増殖を阻害する。SAHAは固形腫瘍および血液癌の両方でこれらの効果を誘導する際に有効である。SAHAは動物においてこれらに対する毒性なく腫瘍増殖を阻害する際に有効であることが明らかにされている。SAHAによって誘導される腫瘍増殖の阻害は、腫瘍におけるアセチル化ヒストンの蓄積に関連している。SAHAはラットの発癌物質誘導性(N-メチルニトロソ尿素)乳癌の発生および持続的増殖の阻害において有効である。SAHAをラットに130日間の試験中その飼料中で投与した。したがって、SAHAは、作用機序がヒストンデアセチラーゼ活性の阻害を含む、非毒性の経口活性抗腫瘍剤である。
【0083】
好ましいHDAC阻害剤は、本発明者らのいずれかに発行された米国特許第5,369,108号、第5,932,616号、第5,700,811号、第6,087,367号および第6,511,990号に開示されたものであり、前述の開示はその全内容が参照により本明細書に組み入れられ、その非限定例を以下に示す:
【0084】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式1の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、R1およびR2は同じでも異なっていてもよく;R1およびR2が同じである場合、それぞれは置換または無置換アリールアミノ、シクロアルキルアミノ、ピリジンアミノ、ピペリジノ、9-プリン-6-アミンまたはチアゾールアミノ基であり;R1およびR2が異なる場合、R1=R3-N-R4(R3およびR4はそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、水素原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換、分枝もしくは非分枝アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール アルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシもしくはピリジン基であるか、またはR3およびR4は一緒に結合してピペリジン基を形成する)であり、R2はヒドロキシルアミノ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノまたはアルキルオキシ基であり、かつnは約4から約8の整数である)。
【0085】
式1の特定の態様において、R1およびR2は同じで、置換または無置換チアゾールアミノ基であり;かつnは約4から約8の整数である。
【0086】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式2の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、R3およびR4はそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、水素原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換、分枝もしくは非分枝アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリールアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシもしくはピリジン基であるか、またはR3およびR4は一緒に結合してピペリジン基を形成し、R2はヒドロキシルアミノ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノまたはアルキルオキシ基であり、かつnは約4から約8の整数である)。
【0087】
式2の特定の態様において、R3およびR4はそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、水素原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換、分枝もしくは非分枝アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、もしくはピリジン基であるか、またはR3およびR4は一緒に結合してピペリジン基を形成し;R2はヒドロキシルアミノ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、またはアルキルオキシ基であり;nは5から7の整数であり;かつR3-N-R4とR2とは異なる。
【0088】
式2のもう一つの特定の態様において、nは6である。式2のさらにもう一つの態様において、R4は水素原子であり、R3は置換または無置換フェニルであり、かつnは6である。式2のさらにもう一つの態様において、R4は水素原子であり、R3は置換フェニルであり、かつnは6である(フェニル置換基はメチル、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、アミノ、アミノカルボニル、メチルシアノ、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨード、2,3-ジフルオロ、2,4-ジフルオロ、2,5-ジフルオロ、3,4-ジフルオロ、3,5-ジフルオロ、2,6-ジフルオロ、1,2,3-トリフルオロ、2,3,6-トリフルオロ、2,4,6-トリフルオロ、3,4,5-トリフルオロ、2,3,5,6-テトラフルオロ、2,3,4,5,6- ペンタフルオロ、アジド、ヘキシル、t-ブチル、フェニル、カルボキシル、ヒドロキシル、メトキシ、フェニルオキシ、ベンジルオキシ、フェニルアミノオキシ、フェニルアミノカルボニル、メトキシカルボニル、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノ、ジメチルアミノカルボニル、またはヒドロキシルアミノカルボニル基からなる群より選択される)。
【0089】
式2のもう一つの態様において、nは6であり、R4は水素原子であり、かつR3はシクロヘキシル基である。式2のもう一つの態様において、nは6であり、R4は水素原子であり、かつR3はメトキシ基である。式2のもう一つの態様において、nは6であり、かつR3およびR4は一緒に結合してピペリジン基を形成する。式2のもう一つの態様において、nは6であり、R4は水素原子であり、かつR3はベンジルオキシ基である。式2のもう一つの態様において、R4は水素原子であり、かつR3はγ-ピリジン基である。式2のもう一つの態様において、R4は水素原子であり、かつR3はβ-ピリジン基である。式2のもう一つの態様において、R4は水素原子であり、かつR3はα-ピリジン基である。式2のもう一つの態様において、nは6であり、かつR3およびR4は両方メチル基である。式2のもう一つの態様において、nは6であり、R4はメチル基であり、かつR3はフェニル基である。
【0090】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式3の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、nは5から約8の整数である)。
【0091】
式3の好ましい態様において、nは6である。本態様にしたがい、HDAC阻害剤はSAHA(4)、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤である。SAHAは下記の構造式で表される。

【0092】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式5の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される。

【0093】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式6の構造(ピロキサミド)、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される。

【0094】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式7の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される。

【0095】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式8の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される。

【0096】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式9の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される。

【0097】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式10の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、R3は水素であり、かつR4はシクロアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、もしくはピリジン基であるか、またはR3およびR4は一緒に結合してピペリジン基を形成し;R2はヒドロキシルアミノ基であり;かつnは5から約8の整数である)。
【0098】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式11の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、R3およびR4は独立に置換もしくは無置換、分枝もしくは非分枝アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、もしくはピリジン基、シクロアルキル、アリール、アルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、もしくはピリジン基であるか、またはR3およびR4は一緒に結合してピペリジン基を形成し;R2はヒドロキシルアミノ基であり;かつnは5から約8の整数である)。
【0099】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式12の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、XおよびYはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、ヒドロキシル、アミノまたはヒドロキシルアミノ基、置換または無置換アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノ、またはアリールオキシアルキルアミノ基であり;Rは水素原子、ヒドロキシル、基、置換または無置換アルキル、アリールアルキルオキシ、またはアリールオキシ基であり;かつmおよびnはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、それぞれ約0から約8の整数である)。
【0100】
特定の態様において、HDAC阻害剤は、X、Y、およびRがそれぞれヒドロキシルであり、mおよびnが両方5である、式12の化合物である。
【0101】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式13の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、XおよびYはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、ヒドロキシル、アミノまたはヒドロキシルアミノ基、置換または無置換アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノ、またはアリールオキシアルキルアミノ基であり;R1およびR2はそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、水素原子、ヒドロキシル基、置換または無置換アルキル、アリール、アルキルオキシ、またはアリールオキシ基であり;かつm、nおよびoはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、それぞれ約0から約8の整数である)。
【0102】
式13の一つの特定の態様において、XおよびYはそれぞれヒドロキシル基であり、かつR1およびR2はそれぞれメチル基である。式13のもう一つの特定の態様において、XおよびYはそれぞれヒドロキシル基であり、R1およびR2はそれぞれメチル基であり、nおよびoはそれぞれ6であり、かつmは2である。
【0103】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式14の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、XおよびYはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、ヒドロキシル、アミノまたはヒドロキシルアミノ基、置換または無置換アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノまたはアリールオキシアルキルアミノ基であり;R1およびR2はそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、水素原子、ヒドロキシル基、置換または無置換アルキル、アリール、アルキルオキシ、またはアリールオキシ基であり;かつmおよびnはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、それぞれ約0から約8の整数である)。
【0104】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式15の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、XおよびYはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、ヒドロキシル、アミノまたはヒドロキシルアミノ基、置換または無置換アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノまたはアリールオキシアルキルアミノ基であり;かつmおよびnはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、それぞれ約0から約8の整数である)。
【0105】
式15の一つの特定の態様において、XおよびYはそれぞれヒドロキシル基であり、かつmおよびnはそれぞれ5である。
【0106】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式16の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、XおよびYはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、ヒドロキシル、アミノまたはヒドロキシルアミノ基、置換または無置換アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノまたはアリールオキシアルキルアミノ基であり;R1およびR2は独立に互いに同じまたは異なり、水素原子、ヒドロキシル基、置換または無置換アルキル、アリールアルキルオキシ、またはアリールオキシ基であり;かつmおよびnはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、それぞれ約0から約8の整数である)。
【0107】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式17の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、XおよびYはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、ヒドロキシル、アミノまたはヒドロキシルアミノ基、置換または無置換アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、またはアリールオキシアルキルアミノ基であり;かつnは約0から約8の整数である)。
【0108】
式17の一つの特定の態様において、XおよびYはそれぞれヒドロキシルアミノ基であり;R1はメチル基であり、R2は水素原子であり;かつmおよびnはそれぞれ2である。式17のもう一つの特定の態様において、XおよびYはそれぞれヒドロキシルアミノ基であり;R1はカルボニルヒドロキシルアミノ基であり、R2は水素原子であり;かつmおよびnはそれぞれ5である、式17のもう一つの特定の態様において、XおよびYはそれぞれヒドロキシルアミノ基であり;R1およびR2はそれぞれフルオロ基であり;かつmおよびnはそれぞれ2である。
【0109】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式18の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、XおよびYはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、ヒドロキシル、アミノまたはヒドロキシルアミノ基、置換または無置換アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノまたはアリールオキシアルキルアミノ基であり;R1およびR2はそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、水素原子、ヒドロキシル基、置換または無置換アルキル、アリール、アルキルオキシ、アリールオキシ、カルボニルヒドロキシルアミノまたはフルオロ基であり;かつmおよびnはそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、それぞれ約0から約8の整数である)。
【0110】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式19の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アミノ、ヒドロキシルアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノ、またはアリールオキシアルキルアミノ基である)。特定の態様において、HDAC阻害剤は、R1およびR2が両方ヒドロキシルアミノである、構造式19の化合物である。
【0111】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式20の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アミノ、ヒドロキシルアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノ、またはアリールオキシアルキルアミノ基である)。特定の態様において、HDAC阻害剤は、R1およびR2が両方ヒドロキシルアミノである、構造式20の化合物である。
【0112】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式21の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に互いに同じまたは異なり、ヒドロキシル、アルキルオキシ、アミノ、ヒドロキシルアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルオキシアミノ、アリールオキシアミノ、アルキルオキシアルキルアミノ、またはアリールオキシアルキルアミノ基である)。
【0113】
特定の態様において、HDAC阻害剤は、R1およびR2が両方ヒドロキシルアミノである、構造式21の化合物である。
【0114】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式22の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、Rはシアノ、メチルシアノ、ニトロ、カルボキシル、アミノカルボニル、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノカルボニル、トリフルオロメチル、ヒドロキシルアミノカルボニル、N-ヒドロキシルアミノカルボニル、メトキシカルボニル、クロロ、フルオロ、メチル、メトキシ、2,3-ジフルオロ、2,4-ジフルオロ、2,5-ジフルオロ、2,6-ジフルオロ、3,5-ジフルオロ、2,3,6-トリフルオロ、2,4,6-トリフルオロ、1,2,3-トリフルオロ、3,4,5-トリフルオロ、2,3,4,5-テトラフルオロ、または2,3,4,5,6-ペンタフルオロ基で置換されたフェニルアミノ基であり;かつnは4から8の整数である)。
【0115】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式23の構造(m-カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサミド−CBHA)、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される。

【0116】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式24の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される。

【0117】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式25の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、Rは置換または無置換フェニル、ピペリジン、チアゾール、2-ピリジン、3-ピリジンまたは4-ピリジンであり、かつnは約4から約8の整数である)。
【0118】
式25の一つの特定の態様において、Rは置換フェニル基である。式25のもう一つの特定の態様において、Rは置換基がメチル、シアノ、ニトロ、チオ、トリフルオロメチル、アミノ、アミノカルボニル、メチルシアノ、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨード、2,3-ジフルオロ、2,4-ジフルオロ、2,5-ジフルオロ、3,4-ジフルオロ、3,5-ジフルオロ、2,6-ジフルオロ、1,2,3-トリフルオロ、2,3,6-トリフルオロ、2,4,6-トリフルオロ、3,4,5-トリフルオロ、2,3,5,6-テトラフルオロ、2,3,4,5,6-ペンタフルオロ、アジド、ヘキシル、t-ブチル、フェニル、カルボキシル、ヒドロキシル、メチルオキシ、フェニルオキシ、ベンジルオキシ、フェニルアミノオキシ、フェニルアミノカルボニル、メチルオキシカルボニル、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノ、ジメチルアミノカルボニル、またはヒドロキシルアミノカルボニル基からなる群より選択される置換フェニル基である。
【0119】
式25のもう一つの特定の態様において、Rは置換または無置換2-ピリジン、3-ピリジンまたは4-ピリジンであり、かつnは約4から約8の整数である。
【0120】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式26の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、Rは置換または無置換フェニル、ピリジン、ピペリジン、またはチアゾール基であり、かつnは約4から約8の整数である)。
【0121】
式26の特定の態様において、Rは置換フェニル基である。式26のもう一つの特定の態様において、Rは置換基がメチル、シアノ、ニトロ、チオ、トリフルオロメチル、アミノ、アミノカルボニル、メチルシアノ、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨード、2,3-ジフルオロ、2,4-ジフルオロ、2,5-ジフルオロ、3,4-ジフルオロ、3,5-ジフルオロ、2,6-ジフルオロ、1,2,3-トリフルオロ、2,3,6-トリフルオロ、2,4,6-トリフルオロ、3,4,5-トリフルオロ、2,3,5,6-テトラフルオロ、2,3,4,5,6-ペンタフルオロ、アジド、ヘキシル、t-ブチル、フェニル、カルボキシル、ヒドロキシル、メチルオキシ、フェニルオキシ、ベンジルオキシ、フェニルアミノオキシ、フェニルアミノカルボニル、メチルオキシカルボニル、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノ、ジメチルアミノカルボニル、またはヒドロキシルアミノカルボニル基からなる群より選択される置換フェニル基である。
【0122】
式26のもう一つの特定の態様において、Rはフェニルであり、かつnは5である。もう一つの態様において、nは5であり、かつRは3-クロロフェニルである。
【0123】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式27の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、R1およびR2はそれぞれ直接またはリンカーを通じて結合された、置換または無置換の、アリール(例えばフェニル)、アリールアルキル(例えばベンジル)、ナフチル、シクロアルキル、シクロアルキルアミノ、ピリジンアミノ、ピペリジノ、9-プリン-6-アミノ、チアゾールアミノ、ヒドロキシル、分枝または非分枝アルキル、アルケニル、アルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ピリジル、またはキノリニルもしくはイソキノリニルであり;nは約3から約10の整数であり、かつR3はヒドロキサム酸、ヒドロキシルアミノ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノまたはアルキルオキシ基である)。リンカーはアミド部分、例えば、O-、-S-、-NH-、NR5、-CH2-、-(CH2)m-、-(CH=CH)-、フェニレン、シクロアルキレン、またはその任意の組み合わせ(R5は置換または無置換C1〜C5アルキルである)でありうる。
【0124】
式27の特定の態様において、R1は-NH-R4(R4は置換または無置換の、アリール(例えばフェニル)、アリールアルキル(例えばベンジル)、ナフチル、シクロアルキル、シクロアルキルアミノ、ピリジンアミノ、ピペリジノ、9-プリン-6-アミノ、チアゾールアミノ、ヒドロキシル、分枝または非分枝アルキル、アルケニル、アルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ピリジル、キノリニルまたはイソキノリニルである)である。
【0125】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式28の構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、および薬学的に許容される担体または賦形剤で表される:

(式中、R1およびR2はそれぞれ置換または無置換の、アリール(例えばフェニル)、アリールアルキル(例えばベンジル)、ナフチル、シクロアルキル、シクロアルキルアミノ、ピリジンアミノ、ピペリジノ、9-プリン-6-アミノ、チアゾールアミノ、ヒドロキシル、分枝または非分枝アルキル、アルケニル、アルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ピリジル、キノリニルまたはイソキノリニルであり;R3はヒドロキサム酸、ヒドロキシルアミノ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノまたはアルキルオキシ基であり;R4は水素、ハロゲン、フェニルまたはシクロアルキル部分であり;かつAは同じでも異なっていてもよく、アミド部分、O-、-S-、-NH-、NR5、-CH2-、-(CH2)m-、-(CH=CH)-、フェニレン、シクロアルキレン、またはその任意の組み合わせ(R5は置換または無置換C1〜C5アルキルである)であり;かつnおよびmはそれぞれ3から10の整数である)。
【0126】
さらなる特定の態様において、化合物27または28の範囲内のより具体的な構造を有する化合物は下記のとおりである:
【0127】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式29の構造で表される:

(式中、Aはアミド部分であり、R1およびR2はそれぞれ置換または無置換アリール(例えばフェニル)、アリールアルキル(例えばベンジル)、ナフチル、ピリジンアミノ、9-プリン-6-アミノ、チアゾールアミノ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ピリジル、キノリニルまたはイソキノリニルから選択され;かつnは3から10の整数である)。
【0128】
例えば、式29の化合物は構造30または31を有しうる:

(式中、R1、R2、およびnは式29の意味を有する)。
【0129】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式32の構造で表される:

(式中、R7は置換または無置換アリール(例えばフェニル)、アリールアルキル(例えばベンジル)、ナフチル、ピリジンアミノ、9-プリン-6-アミノ、チアゾールアミノ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ピリジル、キノリニル、またはイソキノリニルから選択され;nは3から10の整数であり、かつYは

から選択される)。
【0130】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式33の構造で表される:

(式中、nは3から10の整数であり、Yは

から選択され、かつR7'は

から選択される)。
【0131】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式34の構造で表される:

アリール(例えばフェニル)、アリールアルキル(例えばベンジル)、ナフチル、ピリジンアミノ、9-プリン-6-アミノ、チアゾールアミノ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ピリジル、キノリニルまたはイソキノリニル;nは3から10の整数であり、かつR7'は

から選択される)。
【0132】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式35の構造で表される:

(式中、Aはアミド部分であり、R1およびR2はそれぞれ置換または無置換アリール(例えばフェニル)、アリールアルキル(例えばベンジル)、ナフチル、ピリジンアミノ、9-プリン-6-アミノ、チアゾールアミノ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ピリジル、キノリニルまたはイソキノリニルから選択され;R4は水素、ハロゲン、フェニルまたはシクロアルキル部分であり、かつnは3から10の整数である)。
【0133】
例えば、式35の化合物は構造36または37を有しうる:

(式中、R1、R2、R4、およびnは式35の意味を有する)。
【0134】
一つの態様において、本発明の方法において有用なHDAC阻害剤は式38の構造で表される:

(式中、Lはアミド部分、O-、-S-、-NH-、NR5、-CH2-、-(CH2)m-、-(CH=CH)-、フェニレン、シクロアルキレン、またはその任意の組み合わせ(R5は置換または無置換C1〜C5アルキルである)からなる群より選択され;かつR7およびR8はそれぞれ独立に置換または無置換アリール(例えばフェニル)、アリールアルキル(例えばベンジル)、ナフチル、ピリジンアミノ、9-プリン-6-アミノ、チアゾールアミノ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ピリジル、キノリニルまたはイソキノリニルであり;nは3から10の整数であり、かつmは0〜10の整数である)。
【0135】
例えば、式38の化合物は式(39)で表すことができる。

【0136】
本発明の方法において用いるのに適した他のHDAC阻害剤には、下記のより具体的な式に示されるものが含まれる:
下記の構造によって表される化合物

(式中、nは3から10の整数である)またはその鏡像異性体。式40の一つの特定の態様において、n=5である。
下記の構造によって表される化合物

(式中、nは3から10の整数である)またはその鏡像異性体。式41の一つの特定の態様において、n=5である。
下記の構造によって表される化合物

(式中、nは3から10の整数である)またはその鏡像異性体。式42の一つの特定の態様において、n=5である。
下記の構造によって表される化合物

(式中、nは3から10の整数である)またはその鏡像異性体。式43の一つの特定の態様において、n=5である。
下記の構造によって表される化合物

(式中、nは3から1,0の整数である)またはその鏡像異性体。式44の一つの特定の態様において、n=5である。
下記の構造によって表される化合物

(式中、nは3から10の整数である)またはその鏡像異性体。式45の一つの特定の態様において、n=5である。
下記の構造によって表される化合物

(式中、nは3から10の整数である)またはその鏡像異性体。式46の一つの特定の態様において、n=5である。
下記の構造によって表される化合物

(式中、nは3から10の整数である)またはその鏡像異性体。式47の一つの特定の態様において、n=5である。
下記の構造によって表される化合物

(式中、nは3から10の整数である)またはその鏡像異性体。式48の一つの特定の態様において、n=5である。
下記の構造によって表される化合物

(式中、nは3から10の整数である)またはその鏡像異性体。式49の一つの特定の態様において、n=5である。
下記の構造によって表される化合物

(式中、nは3から10の整数である)またはその鏡像異性体。式50の一つの特定の態様において、n=5である。
下記の構造によって表される化合物

(式中、nは3から10の整数である)またはその鏡像異性体。式51の一つの特定の態様において、n=5である。
【0137】
そのような化合物の他の例および他のHDAC阻害剤は、すべてBreslow et al.への1994年11月29日発行の米国特許第5,369,108号、1997年12月23日発行の米国特許第5,700,811号、1998年6月30日発行の米国特許第5,773,474号、1999年8月3日発行の米国特許第5,932,616号、および2003年1月28日発行の米国特許第6,511,990号;すべてMarks et al.への1991年10月8日発行の米国特許第5,055,608号、1992年12月29日発行の米国特許第5,175,191号、および1997年3月4日発行の米国特許第5,608,108号;ならびにYoshida, M., et al., Bioassays 17, 423-430 (1995);Saito, A., et al., PNAS USA 96, 4592-4597, (1999);Furamai, R. et al., PNAS USA 98 (1), 87-92 (2001);Komatsu, Y., et al., Cancer Res. 61(11), 4459-4466 (2001);Su, G.H., et al., Cancer Res. 60, 3137-3142 (2000);Lee, B.I. et al., Cancer Res. 61(3), 931-934;Suzuki, T., et al., J. Med. Chem. 42(15), 3001-3003 (1999);Sloan-Kettering Institute for Cancer Research and The Trustees of Columbia Universityへの2001年3月15日公開の公開PCT出願WO 01/18171;Hoffmann-La Rocheへの公開PCT出願WO02/246144;Novartisへの公開PCT出願WO02/22577;Prolifixへの公開PCT出願WO02/30879;すべてMethylgene, Inc.への公開PCT出願WO 01/38322(2001年5月31日公開)、WO 01/70675(2001年9月27日公開)およびWO 00/71703(2000年11月30日公開);Fujisawa Pharmaceutical Co., Ltd.への1999年10月8日公開の公開PCT出願WO 00/21979;Beacon Laboratories, L.L.C.への1998年3月11日公開の公開PCT出願WO 98/40080;およびCurtin M.(HDAC阻害剤の現在の特許状態Expert Opin. Ther. Patents (2002) 12(9): 1375-1384およびその中で引用された参照文献)において見いだすことができる。
【0138】
SAHAまたは他のHDAC阻害剤のいずれも、実験の詳細の項に概要を記載した方法、または米国特許第5,369,108号、第5,700,811号、第5,932,616号および第6,511,990号(その内容は全体が参照により本明細書に組み入れられる)に記載の方法、または当業者には公知のいかなる他の方法に従っても合成することができる。
【0139】
HDAC阻害剤の特定の非限定例を下記の表に示す。本発明は下記に示す化合物に構造が類似であり、ヒストンデアセチラーゼを阻害することができる、いかなる化合物も含むことが理解されるべきである。


【0140】
本発明の化合物は、新生物細胞の終末分化、細胞増殖停止および/またはアポトーシスを選択的に誘導するために有用であり、したがって本明細書に詳細を記載する患者の癌の処置を助ける。
【0141】
化学的定義
「脂肪族基」は非芳香族で、炭素および水素だけからなり、任意に一つまたは複数の不飽和の単位、例えば二重および/もしくは三重結合を含みうる。脂肪族基は直鎖、分枝または環状でありうる。直鎖または分枝の場合、脂肪族基は典型的には約1個から約12個の間の炭素原子、より典型的には約1個から約6個の間の炭素原子を含む。環状の場合、脂肪族基は典型的には約3個から約10個の間の炭素原子、より典型的には約3個から約7個の間の炭素原子を含む。脂肪族基は好ましくはC1〜C12直鎖または分枝アルキル基(すなわち、完全飽和脂肪族基)、より好ましくはC1〜C6直鎖または分枝アルキル基である。例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、およびtert-ブチルが含まれる。
【0142】
本明細書において用いられる「芳香族基」(「アリール基」とも呼ばれる)には、本明細書において定義される炭素環芳香族基、複素環芳香族基(「ヘテロアリールとも呼ばれる)、および縮合多環芳香環系が含まれる。
【0143】
「炭素環芳香族基」は5から14炭素原子の芳香環で、インダンなどの5または6員シクロアルキル基と縮合した炭素環芳香族基が含まれる。炭素環芳香族基の例には、フェニル、ナフチル、例えば1-ナフチルおよび2-ナフチル;アントラセニル、例えば1-アントラセニル、2-アントラセニル;フェナントレニル;フルオレノニル、例えば9-フルオレノニル、インダニルなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。炭素環芳香族基は下記の明示された数の置換基で置換されていてもよい。
【0144】
「複素環芳香族基」(または「ヘテロアリール」)は、5から14環炭素原子およびO、N、またはSから選択される1から4個のヘテロ原子の単環式、二環式または三環式芳香環である。ヘテロアリールの例には、ピリジル、例えば2-ピリジル(α-ピリジルとも呼ばれる)、3-ピリジル(β-ピリジルとも呼ばれる)および4-ピリジル((γ-ピリジルとも呼ばれる);チエニル、例えば2-チエニルおよび3-チエニル;フラニル、例えば2-フラニルおよび3-フラニル;ピリミジル、例えば2-ピリミジルおよび4-ピリミジル;イミダゾリル、例えば2-イミダゾリル;ピラニル、例えば2-ピラニルおよび3-ピラニル;ピラゾリル、例えば4-ピラゾリルおよび5-ピラゾリル;チアゾリル、例えば2-チアゾリル、4-チアゾリルおよび5-チアゾリル;チアジアゾリル;イソチアゾリル;オキサゾリル、例えば2-オキサゾイル、4-オキサゾイルおよび5-オキサゾイル;イソキサゾイル;ピロリル;ピリダジニル;ピラジニルなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。前述の定義の複素環芳香族(またはヘテロアリール)は、芳香族基に関する下記の明示された数の置換基で置換されていてもよい。
【0145】
「縮合多環芳香」環系は、一つまたは複数の他のヘテロアリールまたは非芳香族複素環と縮合した炭素環芳香族基である。例には、キノリニルおよびイソキノリニル、例えば2-キノリニル、3-キノリニル、4-キノリニル、5-キノリニル、6-キノリニル、7-キノリニルおよび8-キノリニル、1-イソキノリニル、3-キノリニル、4-イソキノリニル、5-イソキノリニル、6-イソキノリニル、7-イソキノリニルおよび8-イソキノリニル;ベンゾフラニル、例えば2-ベンゾフラニルおよび3-ベンゾフラニル;ジベンゾフラニル、例えば2,3-ジヒドロベンゾフラニル;ジベンゾチオフェニル;ベンゾチエニル、例えば2-ベンゾチエニルおよび3-ベンゾチエニル;インドリル、例えば2-インドリルおよび3-インドリル;ベンゾチアゾリル、例えば2-ベンゾチアゾリル;ベンゾオキサゾリル、例えば2-ベンゾオキサゾリル;ベンズイミダゾリル、例えば2-ベンゾイミダゾリル;イソインドリル、例えば1-イソインドリルおよび3-イソインドリル;ベンゾトリアゾリル;プリニル;チアナフテニルなどが含まれる。縮合多環芳香環系は、本明細書に記載の明示された数の置換基で置換されていてもよい。
【0146】
「アラルキル基」(アリールアルキル)は、芳香族基、好ましくはフェニル基で置換されたアルキル基である。好ましいアラルキル基はベンジル基である。適当な芳香族基は本明細書に記載しており、適当なアルキル基は本明細書に記載している。アラルキル基に適した置換基は本明細書に記載している。
【0147】
「アリールオキシ基」は、酸素を介して化合物に結合されたアリール基(例えばフェノキシ)である。
【0148】
本明細書において用いられる「アルコキシ基」(アルキルオキシ)は、酸素を介して化合物に結合された、直鎖もしくは分枝C1〜C12または環状C3〜C12アルキル基である。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、およびプロポキシが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0149】
「アリールアルコキシ基」(アリールアルキルオキシ)は、アリールアルキルのアルキル部分上の酸素を介して化合物に結合された、アリールアルキル基(例えばフェニルメトキシ)である。
【0150】
本明細書において用いられる「アリールアミノ基」は、窒素を介して化合物に結合されたアリール基である。
【0151】
本明細書において用いられる「アリールアルキルアミノ基」は、アリールアルキルのアルキル部分上の窒素を介して化合物に結合された、アリールアルキル基である。
【0152】
本明細書において用いられる多くの部分または基は「置換または無置換」のいずれかと言われる。ある部分(moiety)が置換されていると言われる場合、これは当業者には置換に利用可能であることが公知の部分(moiety)のいかなる部分(portion)も置換されうることを意味する。例えば、置換可能な基は水素以外の基(すなわち置換基)で置き換えられた水素原子でありうる。複数の置換基が存在しうる。複数の置換基が存在する場合、置換基は同じでも異なっていてもよく、置換は置換可能部位のいずれにあってもよい。置換のそのような手段は当技術分野において周知である。例示のためであって、本発明の範囲を限定するものと理解されるべきではないが、置換基である基のいくつかの例は下記のとおりである:アルキル基(これも、CF3などの一つまたは複数の置換基で置換されていてもよい)、アルコキシ基(OCF3などで置換されていてもよい)、ハロゲンまたはハロ基(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ、ニトロ、オキソ、-CN、-COH、-COOH、アミノ、アジド、N-アルキルアミノまたはN,N-ジアルキルアミノ(アルキル基も置換されていてもよい)、エステル(-C(O)-OR(Rはアルキル、アリールなどの基であって、置換されていてもよい)、アリール(最も好ましいのはフェニルで、置換されていてもよい)、アリールアルキル(置換されていてもよい)およびアリールオキシ。
【0153】
立体化学
多くの有機化合物は、直線偏光の平面を回転させる能力を有する光学活性体で存在する。光学活性化合物を記載する際、接頭辞DおよびLまたはRおよびSは分子のキラル中心の周りの絶対配置を示すために用いる。接頭辞dおよびlまたは(+)および(-)は化合物による直線偏光の回転の徴候を示すために用い、(-)または は化合物が左旋性であることを意味する。(+)またはdが付いた化合物は右旋性である。所与の化学構造について、立体異性体と呼ばれるこれらの化合物は、互いに重ね合わせ不可能な鏡像であること以外は同じである。
【0154】
特定の立体異性体は鏡像異性体とも呼ばれることもあり、そのような異性体の混合物は鏡像異性混合物と呼ばれることが多い。鏡像異性体の50:50混合物はラセミ混合物と呼ばれる。本明細書に記載の化合物の多くは一つまたは複数のキラル中心を有していてもよく、したがって異なる鏡像異性体で存在しうる。望まれる場合には、キラル炭素はアスタリスク(*)で示すことができる。本発明の式においてキラル炭素への結合を直線で示している場合、キラル炭素の(R)および(S)両方の配置、ならびに両方の鏡像異性体およびその混合物が式内に含まれることが理解される。当技術分野において用いられるとおり、キラル炭素の周りの絶対配置を明記することが望まれる場合、キラル炭素への結合の一方をくさびで示すことができ(平面よりも上の原子への結合)、他方を短い平行線の一連またはくさびで表すことができる(平面よりも下の原子への結合)。カーン-インゴールド-プレローグの表示法を用いて、キラル炭素への(R)または(S)配置を割り当てることができる。
【0155】
本発明のHDAC阻害剤が一つのキラル中心を含む場合、化合物は二つの鏡像異性体で存在し、本発明は鏡像異性体およびラセミ混合物と呼ばれる特定の50:50混合物などの鏡像異性体の混合物の両方を含む。鏡像異性体は当業者には公知の方法により、例えば結晶化によって分離することができるジアステレオ異性塩の形成(CRC Handbook of Optical Resolutions via Diastereomeric Salt Formation by David Kozma (CRC Press, 2001)参照);例えば結晶化、ガス-液体もしくは液体クロマトグラフィによって分離することができるジアステレオ異性誘導体もしくは複合体の形成;一方の鏡像異性体の鏡像異性体特異的試薬との選択的反応、例えば酵素によるエステル化;またはキラル環境、例えばキラルリガンドが結合したシリカなどのキラル支持体上、もしくはキラル溶媒存在下でのガス-液体もしくは液体クロマトグラフィなどにより、分割することができる。所望の鏡像異性体が前述の分離法の一つによって別の化学実体に変換される場合、所望の鏡像異性体を遊離するために、さらなる段階が必要であることが理解されると思われる。または、特定の鏡像異性体を、光学活性試薬、基質、触媒、もしくは溶媒を用いた不斉合成により、または不斉変換により一方の鏡像異性体を他方に変換することにより、合成することもできる。
【0156】
本発明の化合物のキラル炭素における特定の絶対配置の明示は、化合物の明示された鏡像異性体が鏡像異性体過剰(ee)である、すなわち実質的に他の鏡像異性体を含まないことを意味することが理解される。例えば、化合物の「R」体は実質的に化合物の「S」体を含まず、したがって「S」体よりも鏡像異性体過剰である。反対に、化合物の「S」体は実質的に化合物の「R」体を含まず、したがって「R」体よりも鏡像異性体過剰である。本明細書において用いられる鏡像異性体過剰は、特定の鏡像異性体が50%を越えて存在することである。例えば、鏡像異性体過剰は約60%以上、約70%以上など、例えば約80%以上、約90%以上などでありうる。特定の絶対配置が明示されている特定の態様において、示された化合物の鏡像異性体過剰は少なくとも約90%である。特定の態様において、化合物の鏡像異性体過剰は少なくとも約95%、少なくとも約97.5%など、例えば少なくとも99%の鏡像異性体過剰である。
【0157】
本発明の化合物が複数のキラル炭素を有する場合、これは3つ以上の光学異性体を有する可能性があり、ジアステレオ異性体で存在しうる。例えば、二つのキラル炭素がある場合、化合物は4つまでの光学異性体および2対の鏡像異性体((S,S)/(R,R)および(R,S)/(S,R))を有する可能性がある。鏡像異性体の対(例えば(S,S)/(R,R))はお互いに鏡像の立体異性体である。鏡像ではない立体異性体(例えば(S,S)および(R,S))はジアステレオマーである。ジアステレオ異性体対は当業者には公知の方法、例えばクロマトグラフィまたは結晶化により分離することができ、それぞれの対の個々の鏡像異性体は前述のとおりに分離することができる。本発明はそのような化合物の各ジアステレオ異性体およびその混合物を含む。
【0158】
本明細書において用いられる「a」「an」および「the」は、文脈からそうではないことが明らかでないかぎり、単数および複数の指示物を含む。したがって、例えば、「活性物質(an active agent)」または「薬理活性物質(a pharmacologically active agent)」への言及は一つの活性物質ならびに複数の異なる活性物質の組み合わせを含み、「担体(a carrier)」への言及は複数の担体の混合物ならびに一つの担体を含み、他も同様である。
【0159】
本発明は本明細書において開示されるHDAC阻害剤のプロドラッグを含むことも意図される。任意の化合物のプロドラッグは、周知の薬理学的技術を用いて製造することができる。
【0160】
本発明は、前述の化合物に加えて、そのような化合物の同族体および類縁体の使用を含むことが意図される。この文脈において、同族体は前述の化合物に対する実質的な構造上の類似性を有する分子であり、類縁体は構造上の類似性にかかわらず実質的な生物学的類似性を有する分子である。
【0161】
本発明は、HDAC阻害剤の有機および無機酸との薬学的に許容される塩、例えば塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、カルボン酸、リン酸などでありうる酸付加塩を含む薬学的組成物も含む。薬学的に許容される塩は、無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または第二鉄、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基との処理により調製することもできる。
【0162】
本発明は、HDAC阻害剤の水和物を含む薬学的組成物も含む。「水和物」という用語は半水和物、一水和物、二水和物、三水和物などを含むが、それらに限定されるわけではない。
【0163】
本発明は、SAHAの任意の固体もしくは液体の物理的形態または任意の他のHDAC阻害剤を含む薬学的組成物も含む。例えば、HDAC阻害剤は結晶体、アモルファス体であってもよく、任意の粒径を有する。HDAC阻害剤粒子は微粉化してもよく、または塊状化、微粒子顆粒、粉末、油状物、油状懸濁液、または任意の他の固体もしくは液体の物理的形態であってもよい。
【0164】
HDAC阻害剤の処置上の使用
1. 癌の処置
本明細書において示すとおり、本発明のHDAC阻害剤は癌の処置のために有用である。したがって、一つの態様において、本発明は処置を必要としている被験者の癌の処置法であって、本明細書に記載のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の処置上有効な量を該被験者に投与する段階を含む方法に関する。
【0165】
「癌」という用語は、固形腫瘍、新生物、癌腫、肉腫、白血病、中皮腫、リンパ腫などの、新生物細胞の増殖によって引き起こされるいかなる癌も意味する。例えば、癌には下記が含まれるが、それらに限定されるわけではない:胸膜中皮腫、腹膜中皮腫、および良性線維性中皮腫などの中皮腫;急性リンパ球性白血病(ALL)、急性非リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性発揮悦病(CML)および有毛状細胞性白血病などの急性白血病および慢性白血病を含む白血病;皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)などのヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)に関連するリンパ腫、ホジキン病および非ホジキンリンパ腫、大細胞型リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)などのリンパ腫;バーキットリンパ腫;原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫;多発性骨髄腫;脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、骨腫瘍、および軟部組織肉腫などの小児固形腫瘍、頭頸部癌(例えば、口腔、咽頭、および食道)、尿生殖器癌(例えば、前立腺、膀胱、腎臓、子宮、卵巣、精巣、直腸および結腸)、肺癌、乳癌、膵臓癌、黒色腫および他の皮膚癌、胃癌、脳腫瘍、肝臓癌ならびに甲状腺癌などの成人の一般固形腫瘍。
【0166】
2. 中皮腫およびリンパ腫の処置
本明細書において示すとおり、HDAC阻害剤は中皮腫およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を含む様々なタイプのリンパ腫の処置のために有用である。
【0167】
中皮腫には様々なタイプがある。胸膜および腹膜(悪性)中皮腫はアスベスト曝露に関連する中皮組織の腫瘍を含む。組織学的には、これらの腫瘍は類上皮、類肉腫、もしくは線維性、または混合細胞型(二相型とも呼ばれる)からなる。良性線維性中皮腫は稀な胸膜の固形腫瘍で、胸部痛、呼吸困難、発熱、および肥厚性骨関節症を生じる。
【0168】
中皮腫に対して用いられる一つの病期分類システムはブッチャー(Butchart)システムである。このシステムは主に原発悪性腫瘍塊の程度に基づき、中皮腫を第I期から第IV期に分類する。
第I期:中皮腫が胸部の片側にのみ存在し、胸壁内まで増殖していない。
第II期:中皮腫が胸壁を侵襲しているか、もしくは食道(喉と胃をつなぐ食物の通路)、心臓に波及している、または胸部の反対側の胸膜内まで増殖している。胸部リンパ節に波及していることもある。
第III期:中皮腫が横隔膜を通過して腹膜(腹腔の内層)内まで増殖しているか、または胸部の組織を越えてリンパ節に拡がっている。
第IV期:中皮腫が血流により他の臓器にまで拡散している(転移)。
【0169】
もう一つの病期分類システムが最近、国際中皮腫関係団体(International Mesothelioma Interest Group)によって開発された。このシステムでは、腫瘍、リンパ節、および転移についての情報を病期分類と呼ばれるプロセスにおいて組み合わせる。
第I期:疾患が壁側胸膜:同側胸膜、肺、心膜、および横隔膜の被膜内に限局されている。
第II期:第I期のすべて、および胸内(N1またはN2)リンパ節陽性。
第III期:疾患の下記への局所拡散:胸壁または縦隔;心臓または横隔膜を通過して腹膜;胸郭外または対側(N3)リンパ節波及を伴う、または伴わない。
第IV期:疾患の遠隔転移。
【0170】
リンパ腫には多くの異なるタイプがあり、二つの範疇に分けることができる:ホジキン病(HD)および非ホジキンリンパ腫(NHL)である。この二つの間の主な違いは関与する細胞のタイプである。
【0171】
リンパ球にはB細胞とT細胞の二つの主要なタイプがある。ほとんどのリンパ球は骨髄中で増殖を始める。B細胞は骨髄中で発生を続けるが、T細胞は骨髄から胸腺に行き、そこで成熟する。いったん成熟すれば、B細胞およびT細胞はいずれも体が感染と戦うのを助ける。
【0172】
非ホジキンリンパ腫には20を越える異なるタイプがある。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫はすべての症例の約40%を構成する一般的なタイプである。これはBリンパ球の癌である。びまん性B細胞リンパ腫は青年期から老年期までのいかなる時点でも発生しうる。女性よりも男性でわずかに多く見られる。大細胞型リンパ腫は以上に大きい細胞によって特徴付けられるリンパ腫である。
【0173】
ホジキン病NHLはいずれも同じ病期の範疇で分類される。HIV陽性のヒトのほとんどのリンパ腫はT細胞ではなくB細胞に関係する。
【0174】
リンパ腫の病期は非常に重要で、予後および処置の経過を評価する助けとなりうる。4つの病期は下記のとおりである:
第I期:一つの癌部位がある。骨髄への波及はない。
第II期:二つの部位がある。両方が横隔膜の上または下である。骨髄への波及はない。
第III期:横隔膜の上下に部位がある。骨髄への波及はない。
第IV期:骨髄が冒されているか、または癌細胞がリンパ系の外に拡散している。
【0175】
ホジキン病では、病期はさらに下記のとおりに分類される:
ホジキン病分類
B:発熱、体重減少または寝汗がある。
A:発熱、体重減少または寝汗がない。
E:病気がリンパ系の外の臓器に拡散している。
【0176】
等級分け
実際的な目的のため、非ホジキンリンパ腫は低級および高級の二群の一つにも分類される。低級リンパ腫は通常は増殖が遅く、高級リンパ腫はより速く増殖する傾向がある。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は高級リンパ腫である。
【0177】
本明細書において意図されるとおり、本発明のHDAC阻害剤は中皮腫およびリンパ腫のすべての病期、すなわち前述の第I、II、IIIおよびIV期、ならびにHDのA、BおよびE期を処置する際に有用である。加えて、HDAC阻害剤は低級および高級リンパ腫を処置する際に有用である。
【0178】
本明細書において示すとおり、本発明のHDAC阻害剤は中皮腫およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を処置する際に特に有用である。
【0179】
3. HDAC阻害剤の他の使用
HDAC阻害剤は本明細書において前述した任意の癌などの新生物疾患の増殖によって特徴付けられる、より広い範囲の疾患を処置する際に有効である。しかし、HDAC阻害剤の処置上の有用性は癌の処置に限定されるものではない。それよりも、HDAC阻害剤が有用であることが判明している広範囲の疾患がある。
【0180】
例えば、HDAC阻害剤、特にSAHAは、様々な急性および慢性炎症疾患、自己免疫疾患、アレルギー疾患、酸化ストレスに関連する疾患、および細胞過剰増殖によって特徴付けられる疾患の処置において有用であることが明らかにされている。非限定例は、慢性関節リウマチ(RA)および乾癬性関節炎を含む関節の炎症状態;クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患;脊椎関節症;強皮症;乾癬(T細胞仲介性乾癬を含む)および皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、じんま疹などの炎症性皮膚病;脈管炎(例えば、壊死性、皮膚、および過敏性脈管炎);好酸球性筋肉炎、好酸球性筋膜炎;皮膚もしくは臓器の白血球浸潤、脳虚血を含む虚血性傷害(例えば、外傷、てんかん、出血または卒中の結果としての脳傷害で、それぞれ神経変性を引き起こすこともある)を伴う癌;HIV、心不全、慢性、急性もしくは悪性肝疾患、自己免疫性甲状腺炎;全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、肺疾患(例えば、ARDS);急性髄炎;筋萎縮性側索硬化症(ALS);アルツハイマー病;カヘキシー/食欲不振;喘息;アテローム性動脈硬化症;慢性疲労症候群、発熱、糖尿病(例えば、インスリン性糖尿病または若年発症型糖尿病);糸球体腎炎;移植片対宿主拒絶(例えば、移植において);出血性ショック;痛覚過敏;炎症性腸疾患;多発性硬化症;筋疾患(例えば、特に敗血症における筋タンパク質代謝);骨粗鬆症;パーキンソン病;疼痛;早期産;乾癬;再灌流傷害;サイトカイン誘導性毒性(例えば、敗血症性ショック、エンドトキシンショック);放射線療法の副作用、側頭下顎関節疾患、腫瘍転移;または挫傷、捻挫、軟骨損傷、熱傷などの外傷、整形外科手術、感染症もしくは他の疾患過程が原因の炎症状態である。アレルギー疾患および状態には、喘息、アレルギー性鼻炎、過敏性肺疾患、過敏性肺炎、好酸球性肺炎(例えば、レフレル症候群、慢性好酸球性肺炎)、遅延型過敏症、間質性肺疾患(ILD)(例えば、特発性肺線維症、または慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎、全身性硬化症、シェーグレン症候群、多発性筋炎もしくは皮膚筋炎に関連するILD)などの呼吸器アレルギー疾患;全身アナフィラキシーまたは過敏反応、薬物アレルギー(例えば、ペニシリン、セファロスポリンに対して)、昆虫刺傷アレルギーなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0181】
例えば、HDAC阻害剤、特にSAHAは、様々な神経変性疾患の処置において有用であることが明らかにされており、その非網羅リストは下記である:
I. アルツハイマー病;アルツハイマー型の老人性痴呆;およびピック病(脳葉萎縮)などの、他の顕著な神経学的徴候がない進行性痴呆によって特徴付けられる障害。
II. A)主に成人において現れる症候群(例えば、ハンチントン病、痴呆と運動失調および/またはパーキンソン病の症状とを組み合わせた多系統萎縮、進行性核上麻痺(スティール-リチャードソン-オルスゼフスキー症候群)、びまん性レビ小体疾患、ならびに皮質歯状核黒質変性症);およびB)主に小児および青少年において現れる症候群(例えば、ハレルフォルデン-スパッツ病および進行性家族性ミオクロニー性てんかん)などの、進行性痴呆と他の顕著な神経学的異常とを組み合わせた症候群。
III. 振戦麻痺(パーキンソン病)、線条体黒質変性、進行性核上麻痺、捻転性失調(捻転性痙攣;変形性筋緊張異常)、痙性斜頚および他の運動異常、家族性振戦、ならびにジル-ド-ラ-ツレット症候群などの、徐々に発生する姿勢および運動異常症候群。
IV. 小脳変性(例えば、小脳皮質変性およびオリーブ橋小脳萎縮(OPCA));および脊髄小脳変性(フリードライヒ失調症および関連障害)などの、進行性失調症候群。
V. 中枢自律神経系不全症候群(シャイ-ドレーガー症候群)。
VI. 知覚変化を伴わない筋無力および衰弱症候群(筋萎縮性側索硬化症、脊髄筋萎縮(例えば、乳児脊髄筋萎縮(ウェルドニッヒ-ホフマン病)、若年性脊髄筋萎縮(ウォルファルト-クーゲルベルク-ウェランダー病)および他の型の家族性脊髄筋萎縮)、原発性側索硬化症、および遺伝性痙性対麻痺などの運動神経疾患。
VII. 知覚変化を伴う筋無力および衰弱症候群(腓骨筋萎縮(シャルコー-マリー-ツース病)、肥厚性間質性多発神経障害(デジェリーヌ-スコッタス病)、およびその他の型の慢性進行性神経障害などの、進行性神経筋萎縮;慢性家族性多発神経障害)。
VIII. 網膜色素変性症(色素性網膜炎)、および遺伝性視神経萎縮(レーバー病)などの進行性視覚障害症候群。
【0182】
併用療法
本発明の方法は、最初に被験者の新生物細胞を抗腫瘍剤に対して耐性とするために、被験者に抗腫瘍剤を投与する段階と、続いてそのような細胞の終末分化、細胞増殖停止および/もしくはアポトーシスを選択的に誘導する、または癌を処置する、もしくは化学的予防を提供するのに有効な、本発明の任意の組成物の有効量を投与する段階とを含んでいてもよい。
【0183】
抗腫瘍剤は、アルキル化剤、体謝拮抗剤、ホルモン剤、抗生物質、コルヒチン、ビンカアルカロイド、L-アスパラギナーゼ、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、ニトロソ尿素、またはイミダゾールカルボキサミドなどの多くの化学療法剤の一つであってもよい。適当な薬剤は、チューブリンの脱分極を促進する薬剤である。好ましくは、抗腫瘍剤はコルヒチンまたはビンカアルカロイドであり;特に好ましいものはビンブラスチンおよびビンクリスチンである。抗腫瘍剤がビンクリスチンである態様において、好ましくは細胞を約5mg/mlの濃度でビンクリスチンに足して耐性となるよう細胞を処理する。細胞を抗腫瘍剤に対して耐性とするための細胞の処理は、細胞を薬剤と少なくとも3日から5日間接触させることにより行ってもよい。得られた細胞を前述の任意の薬剤と接触させる段階を、前述の通りに行う。前述の化学療法剤に加えて、化合物を放射線療法と共に投与してもよい。
【0184】
用量および投与計画
HDAC阻害剤を用いる投与計画は、タイプ、種類、人種、年齢、体重、性別および処置中の癌のタイプ;処置する癌の重症度(すなわち病期);投与経路;患者の腎および肝機能;ならびに用いる特定の化合物またはその塩を含む様々な因子に従って選択することができる。通常の技術を有する医師または獣医師であれば、処置する、例えば疾患の進行を予防する、阻害(完全または部分的に)する、または停止させるために必要な薬物の有効量を容易に決定し、処方することができる。
【0185】
適当な用量は、1日合計用量約25〜4000mg/m2を1日1回、1日2回または1日3回、連続(毎日)または間欠的(例えば1週間あたり3〜5日)に経口投与することである。例えば、SAHAまたはHDAC阻害剤の任意の一つを800mgまでの1日合計用量で投与することができる。HDAC阻害剤は1日1回(QD)投与することもでき、または1日2回(BID)、および1日3回(TID)などの1日複数回の用量に分割することもできる。HDAC阻害剤は1日合計用量800mgまで、例えば150mg、200mg、300mg、400mg、600mgまたは800mgで投与することができ、これは前述のとおり1日1回の用量で投与してもよく、または1日複数回の用量に分割することもできる。好ましくは、投与は経口である。
【0186】
一つの態様において、組成物を1日1回約200〜600mgの用量で投与する。もう一つの態様において、組成物を1日2回約200〜400mgの用量で投与する。もう一つの態様において、組成物を1日2回約200〜400mgの用量で間欠的に、例えば1週間あたり3、4、または5日投与する。もう一つの態様において、組成物を1日3回約100〜250mgの用量で投与する。
【0187】
一つの態様において、1日用量は200mgで、これを1日1回、1日2回または1日3回投与することができる。一つの態様において、1日用量は300mgで、これを1日1回、1日2回または1日3回投与することができる。一つの態様において、1日用量は400mgで、これを1日1回または1日2回投与することができる。一つの態様において、1日用量は150mgで、これを1日2回または1日3回投与することができる。
【0188】
加えて、投与は連続、すなわち毎日でも、間欠的でもよい。本明細書において用いられる「間欠的」または「間欠的に」という用語は定期的または不定期いずれかの間隔で停止および開始することを意味する。例えば、HDAC阻害剤の間欠的投与は1週間に1から6日の投与であってもよく、または周期的投与(例えば、連続2から8週間の毎日投与と、次いで1週間までの投与しない休止期間)を意味することもあり、または1日おきの投与を意味することもある。
【0189】
SAHAまたは任意のHDAC阻害剤を患者に1日合計用量25〜4000mg/m2で投与することができる。
【0190】
現在好ましい処置プロトコルは1日合計用量約200mgから約600mgの範囲で1日1回、2回、または3回の連続投与(すなわち毎日)を含む。
【0191】
もう一つの現在好ましい処置プロトコルは1日合計用量約200mgから約600の範囲で1日1回、2回、または3回、1週間あたり3日から5日の間の間欠的投与を含む。
【0192】
一つの特定の態様において、HDAC阻害剤を400mgの用量で1日1回または200mgの用量で1日2回連続投与する。
【0193】
もう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤を400mgの用量で1日1回または200mgの用量で1日2回、1週間あたり3日、間欠的に投与する。
【0194】
もう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤を400mgの用量で1日1回または200mgの用量で1日2回、1週間に4日、間欠的に投与する。
【0195】
もう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤を400mgの用量で1日1回または200mgの用量で1日2回、1週間に5日、間欠的に投与する。
【0196】
一つの特定の態様において、HDAC阻害剤を600mgの用量で1日1回、300mgの用量で1日2回、または200mgの用量で1日3回連続投与する。
【0197】
もう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤を600mgの用量で1日1回、300mgの用量で1日2回、または200mgの用量で1日3回、1週間あたり3日、間欠的に投与する。
【0198】
もう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤を600mgの用量で1日1回、300mgの用量で1日2回、または200mgの用量で1日3回、1週間に4日、間欠的に投与する。
【0199】
もう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤を600mgの用量で1日1回、300mgの用量で1日2回、または200mgの用量で1日3回、1週間に5日、間欠的に投与する。
【0200】
加えて、HDAC阻害剤を前述の任意の計画に従い、連続2〜3週間投与した後、休止期間をとってもよい。例えば、HDAC阻害剤を前述の計画の任意の一つに従い、2から8週間投与した後、1週間の休止期間をとる、または300mgの用量で1日2回、1週間あたり3日から5日投与してもよい。もう一つの特定の態様において、HDAC阻害剤を1日3回連続2週間投与した後、1週間の休止期間をとる。
【0201】
当業者であれば、本明細書に記載の様々な用量および投与計画は単に特定の態様を示していることが明らかであるはずで、本発明の広い範囲を限定すると解釈すべきではない。用量および投与計画のいかなる交換、変動および組み合わせも、本発明の範囲内に含まれる。
【0202】
本発明はこれらの製剤の安全な毎日の投与法を提供し、これは従い、厳守するのが容易である。したがって、本発明の製剤は新生物細胞の終末分化、細胞増殖停止、および/またはアポトーシスを選択的に誘導する際に有用であり、したがって患者の腫瘍の処置を助ける。
【0203】
薬学的組成物
本発明の化合物、およびその誘導体、断片、類縁体、同族体、薬学的に許容される塩または水和物を、経口投与に適した薬学的組成物中に、薬学的に許容される担体または賦形剤と共に組み込むことができる。そのような組成物は典型的に、前述の任意の化合物の処置上有効な量と、薬学的に許容される担体とを含む。好ましくは、有効量は適当な新生物細胞の終末分化を選択的に誘導するのに有効で、かつ患者において毒性を引き起こす量よりも少ない量である。
【0204】
本発明の組成物は、経口投与に適した任意の単位用量剤形(液体または固体)、例えばペレット、錠剤、コーティング錠、カプセル剤、ゼラチンカプセル、液剤、懸濁剤、または分散剤の剤形に製剤してもよい。現在好ましい態様において、組成物はゼラチンカプセルの剤形である。
【0205】
例えば、ゴム、デンプン、糖、セルロース材料、アクリル酸エステル、またはその混合物などの、担体または希釈剤として一般に用いられるいかなる不活性賦形剤も本発明の製剤中で用いることができる。好ましい希釈剤は微結晶セルロースである。組成物は崩壊剤(例えばクロスカルメロースナトリウム)および滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム)をさらに含んでいてもよく、加えて結合剤、緩衝剤、プロテアーゼ阻害剤、界面活性剤、可溶化剤、可塑剤、乳化剤、安定化剤、増粘剤、甘味料、フィルム形成剤、またはその任意の組み合わせから選択される一つまたは複数の添加剤を含んでいてもよい。さらに、本発明の組成物は制御放出または即時放出製剤の形であってもよい。
【0206】
一つの態様は、HDAC阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムを含む、経口投与用の薬学的組成物である。もう一つの態様は、HDAC阻害剤としてSAHAを有する。もう一つの態様は、50〜70重量%のHDAC阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物、20〜40重量%の微結晶セルロース、5〜15重量%のクロスカルメロースナトリウムおよび0.1〜5重量%のステアリン酸マグネシウムを含む。もう一つの態様は約50〜200mgのHDAC阻害剤を含む。
【0207】
一つの態様において、薬学的組成物を経口投与し、したがって経口投与に適した剤形、すなわち固体または液体剤形に製剤する。適当な固体経口製剤には、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、ペレットなどが含まれる。適当な液体経口製剤には、液剤、懸濁剤、分散剤、乳剤、オイルなどが含まれる。本発明の一つの態様において、組成物をカプセル剤に製剤する。この態様に従い、本発明の組成物は、HDAC阻害剤活性化合物および不活性担体または希釈剤に加えて、ゼラチン硬カプセルを含む。
【0208】
本明細書において用いられる「薬学的に許容される担体」は、発熱物質を含まない滅菌水などの、薬学的投与に適合性の任意およびすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含むことが意図される。適当な担体は、当技術分野における標準的教科書であるRemington's Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。そのような担体または希釈剤の好ましい例には、水、食塩水、フィンガー液(finger's solution)、デキストロース液、および5%ヒト血清アルブミンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。リポソームおよび固定油などの非水性媒体も用いることができる。薬学的に活性な物質のためのそのような媒質および物質の使用は当技術分野において周知である。任意の通常の媒質または物質が活性化合物と不適合である場合を除き、組成物におけるその使用が意図される。補助的活性化合物も組成物に組み込むことができる。
【0209】
固体担体/希釈剤には、ゴム、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、アルファ化デンプン)、糖(例えば、乳糖、マンニトール、ショ糖、デキストロース)、セルロース材料(例えば、微結晶セルロース)、アクリル酸エステル(例えば、ポリアクリル酸メチル)、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タルク、またはその混合物が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0210】
液体製剤のために、薬学的に許容される担体は水性または非水性溶液、懸濁液、乳濁液、またはオイルであってもよい。非水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。水性担体には、食塩水および緩衝媒質を含む、水、アルコール/水性溶液、乳濁液、または懸濁液が含まれる。オイルの例は石油、動物、植物、または合成由来のもの、例えば、落花生油、ダイズ油、鉱油、オリーブ油、ヒマワリ油、および魚肝油である。溶液または懸濁液は下記の成分も含むことができる:注射用水、食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張性調節剤。pHは塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調節することができる。
【0211】
加えて、組成物は結合剤(例えば、アカシア、トウモロコシデンプン、ゼラチン、カルボマー、エチルセルロース、ガーゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン)、崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、アルギン酸、二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウムクロスポビドン、ガーゴム、グリコール酸デンプンナトリウム、プリモゲル)、様々なpHおよびイオン強度の緩衝剤(例えば、トリス-HCl、酢酸塩、リン酸塩)、表面への吸収を防止するためのアルブミンまたはゼラチンなどの添加物、界面活性剤(例えば、トゥイーン20、トゥイーン80、プルロニックF68、胆汁酸塩)、プロテアーゼ阻害剤、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、浸透促進剤、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリセロール)、すべり促進剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ亜硫酸水素ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール)、安定化剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒロキシプロピルメチルセルロース)、増粘剤(例えば、カルボマー、コロイド状二酸化ケイ素、エチルセルロース、ガーゴム)、甘味料(例えば、ショ糖、アスパルテーム、クエン酸)、着香料(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香料)、保存剤(例えば、チメロサル、ベンジルアルコール、パラベン)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、流動補助剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)、可塑剤(例えば、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル)、乳化剤(例えば、カルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム)、ポリマーコーティング(例えば、ポロキサマーまたはポロキサミン)、コーティングおよびフィルム形成剤(例えば、エチルセルロース、アクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル)ならびに/または補助剤をさらに含んでいてもよい。
【0212】
一つの態様において、活性化合物を、埋込物およびマイクロカプセル化送達系を含む、制御放出製剤などの、体からの急速な排出に対して化合物を保護する担体と共に調製する。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの、生体分解性、生体適合性ポリマーを用いることもできる。そのような製剤の調製法は当業者には明らかであると思われる。材料はAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.からも市販されている。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を有する、感染細胞への標的指向リポソームを含む)も薬学的に許容される担体として用いることができる。これらは当業者には公知の方法、例えば、米国特許第4,522,811号に記載の方法に従って調製することができる。
【0213】
投与の容易さ、および用量の均一性のため、経口組成物を用量単位剤形に製剤することは特に有益である。本明細書において用いられる用量単位剤形とは、処置を受ける被験者の単位用量に合わせた、物理的に別個の単位を意味し、各単位は所望の処置効果が得られるよう計算された所定の量の活性化合物を、必要な薬学的担体と共に含む。本発明の用量単位剤形の明細は、活性化合物の固有の特徴および得られる特定の処置効果、ならびに個人の処置のためにそのような活性化合物を調製する技術分野の固有の制限によって決まり、これらに直接依存する。
【0214】
薬学的組成物は容器、パック、またはディスペンサーに、投与の説明書と共に入れることができる。
【0215】
毎日の投与を数日から数年の期間連続的に繰り返すことができる。経口処置を1週間から患者の一生の間続けてもよい。好ましくは、投与を連続5日間行い、その後さらなる投与が必要かどうかを調べるために患者を評価することができる。投与は連続的でもよく、または間欠的、すなわち連続数日間の処置の後、休止期間を設けてもよい。
【0216】
本発明の化合物を処置の第1日には静脈内投与し、第2日とその後の連続する日はすべて経口投与してもよい。
【0217】
本発明の化合物を、疾患の進行を予防するため、または腫瘍増殖を安定化するために投与してもよい。
【0218】
活性化合物を含む薬学的組成物の調製は、当技術分野においてよく理解されており、例えば、混合、造粒、または錠剤形成工程による。活性処置成分は、薬学的に許容され、活性成分と適合性の賦形剤と混合することが多い。経口投与のために、活性成分を、媒体、安定化剤、または不活性希釈剤などのこの目的のために慣例的な添加物と混合し、慣用法により前述の錠剤、コーティング錠、ゼラチン硬または軟カプセル、水性、アルコールもしくはオイル溶液などの投与に適した剤形に変換する。
【0219】
患者に投与する化合物の量は、患者において毒性を引き起こす量よりも少ない。特定の態様において、患者に投与する化合物の量は、患者の血漿中の化合物濃度を化合物の有毒レベルと同等またはそれ以上にする量よりも少ない。好ましくは、患者の血漿中の化合物濃度を約10nMに維持する。もう一つの態様において、患者の血漿中の化合物濃度を約25nMに維持する。もう一つの態様において、患者の血漿中の化合物濃度を約50nMに維持する。もう一つの態様において、患者の血漿中の化合物濃度を約100nMに維持する。もう一つの態様において、患者の血漿中の化合物濃度を約500nMに維持する。もう一つの態様において、患者の血漿中の化合物濃度を約1000nMに維持する。もう一つの態様において、患者の血漿中の化合物濃度を約2500nMに維持する。もう一つの態様において、患者の血漿中の化合物濃度を約5000nMに維持する。
【0220】
HMBAで、約5g/m2/日から約30g/m2/日、特に約20g/m2/日の量での化合物の投与が患者において毒性を生じることなく有効であることが明らかにされている。本発明の実施において患者に投与すべき化合物の最適量は、用いる特定の化合物および処置中の癌のタイプに依存することになる。
【0221】
本発明の現在好ましい態様において、薬学的組成物はヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤;担体または希釈剤としての微結晶セルロース;崩壊剤としてのクロスカルメロースナトリウム;および滑沢剤としてのステアリン酸マグネシウムを含む。もう一つの現在好ましい態様において、HDAC阻害剤はスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)である。本発明のもう一つの現在好ましい態様は、SAHAを、微結晶セルロース、NF(アビセルPh 101)、クロスカルメロースナトリウム、NF(AC-Di-Sol)およびステアリン酸マグネシウム、NFと共にゼラチンカプセル中に含む固体製剤である。
【0222】
製剤中の活性成分および様々な賦形剤のパーセンテージは変動することがある。例えば、組成物は20から90重量%の間、好ましくは50〜70重量%の間のヒストンデアセチラーゼ(HDAC)を含んでいてもよい。さらに、組成物は10から70重量%の間、好ましくは20〜40重量%の間の担体または希釈剤としての微結晶セルロースを含んでいてもよい。さらに、組成物は1から30重量%の間、好ましくは5〜15重量%の間の崩壊剤としてのクロスカルメロースナトリウムを含んでいてもよい。さらに、組成物は0.1〜5重量%の間の滑沢剤としてのステアリン酸マグネシウムを含んでいてもよい。好ましい他の態様において、組成物は約50〜200mgのHDAC阻害剤(例えば、50mg、100mgおよび200mgのHDAC阻害剤、例えばSAHA)を含む。特に好ましい態様において、組成物はゼラチンカプセルの剤形である。
【0223】
現在好ましい態様は、200mgの固体SAHAを、89.5mgの微結晶セルロース、9mgのクロスカルメロースナトリウムおよび1.5mgのステアリン酸マグネシウムと共にゼラチンカプセル中に含む製剤である。
【0224】
インビトロ法
本発明は、新生物細胞、例えばリンパ腫細胞の終末分化、細胞増殖停止および/またはアポトーシスを選択的に誘導し、それによりそのような細胞の増殖を阻害するインビトロでの方法であって、細胞をHDAC阻害剤、例えばSAHA、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の有効量と接触させることによる方法も提供する。
【0225】
本発明は、ヒストンデアセチラーゼの活性を阻害するインビトロでの方法であって、HDAC阻害剤、例えばSAHA、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の有効量と共にヒストンデアセチラーゼによる方法も提供する。
【0226】
本発明の方法はインビトロで実施することができるが、新生物細胞の終末分化、細胞増殖停止および/またはアポトーシスを選択的に誘導する方法、ならびにHDACを阻害する方法のための好ましい態様は、細胞をインビボで、すなわち処置が必要な新生物細胞または腫瘍細胞を有する被験者に化合物を投与することにより接触させる段階を含むことが意図される。
【0227】
したがって、本発明は、被験者の新生物細胞、例えばリンパ腫細胞の終末分化、細胞増殖停止および/またはアポトーシスを選択的に誘導し、それにより該被験者のそのような細胞の増殖を阻害する方法であって、HDAC阻害剤、例えばSAHA、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の有効量と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む薬学的組成物を被験者に投与することによる方法も提供する。本発明におけるHDAC阻害剤の有効量は、1日合計用量800mgまででありうる。
【0228】
本発明は、被験者のヒストンデアセチラーゼの活性を阻害する方法であって、HDAC阻害剤、例えばSAHA、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の有効量と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む薬学的組成物を被験者に投与することによる方法も提供する。本発明におけるHDAC阻害剤の有効量は、1日合計用量800mgまででありうる。
【0229】
実施例
本発明を下記の実施例において例示する。本項は本発明の理解を助けるために示しているが、添付の特許請求の範囲において示す本発明をいかなる様式でも限定することを意図するものではなく、またそのように解釈されるべきではない。
【0230】
実施例1
SAHAの合成
SAHAは以下に概説する方法に従い、または米国特許第5,369,108号(その内容は全体が参照により本明細書に組み入れられる)に記載の方法に従い、または任意の他の方法に従い合成することができる。
【0231】

22Lフラスコにスベリン酸(3500g、20.09mol)を入れ、加熱により融解した。温度を175℃まで上げ、次いでアニリン(2040g、21.92mol)を加えた。温度を190℃まで上げ、この温度で20分間維持した。融解物を、水(50L)に溶解した水酸化カリウム(4017g)を含むナルゲンタンクに注ぎ込んだ。融解物添加後、混合物を20分間撹拌した。同じ規模で反応を繰り返し、第二の融解物を同じ水酸化カリウム溶液に注ぎ込んだ。混合物を十分に撹拌した後、撹拌機を停止し、混合物を沈降させた。次いで、混合物をセライト(4200g)パッドを通してろ過した(中性副産物(スベリン酸の両端へのアニリンによる攻撃から)を除去するために生成物をろ過した。ろ液は生成物の塩と、未反応のスベリン酸の塩も含んでいた。ろ過が非常に遅く、数日かかったため、混合物を沈降させた)。ろ液を、濃塩酸(5L)を用いて酸性化し、混合物を1時間撹拌し、次いで終夜沈降させた。生成物をろ取し、漏斗上で脱イオン水(4×5L)により洗浄した。湿ったろ過ケークを、脱イオン水(44L)を含む72Lフラスコに入れ、混合物を50℃に加熱し、熱ろ過により固体を単離した(所望の生成物には熱水への溶解性がはるかに高いスベリン酸が混入していた。熱粉砕を数回行って、スベリン酸を除去した。生成物をNMR[D6DMSO]でチェックしてスベリン酸の除去をモニターした)。熱粉砕を50℃の水(44L)で繰り返した。生成物を再度ろ過により単離し、熱水(4L)で洗浄した。減圧源としてNashポンプを用い、65℃の減圧乾燥器で週末の間乾燥した(Nashポンプは液体リングポンプ(水)で、約29インチ水銀まで減圧した。間欠的アルゴンパージを用いて水の除去を助けた);スベラニル酸(4182.8g)を得た。
【0232】
生成物はまだ少量のスベリン酸を含んでいた。したがって、熱粉砕を65℃で、1回に300gの生成物を用い、数回に分けて行った。各部分をろ過し、追加の熱水(合計約6L)で十分に洗浄した。これを繰り返して全バッチを精製した。これにより生成物からスベリン酸が完全に除去された。固体生成物をフラスコ中で混合し、メタノール/水(1:2、6L)を加えて撹拌し、次いでろ過により単離して、フィルター上で週末の間風乾した。これをトレイにのせ、Nashポンプおよびアルゴンブリードを用い、65℃の減圧乾燥器で45時間乾燥した。最終生成物の重量は3278.4gであった(収率32.7%)。
【0233】

撹拌機および冷却器を備えた50Lフラスコに、前段階からのスベラニル酸(3229g)、メタノール(20L)、およびDowex 50WX2-400樹脂(398.7g)を加えた。混合物を還流点まで加熱し、18時間還流を続けた。混合物をろ過してジ樹脂ビーズを除去し、ろ液をロータリーエバポレーターで残渣とした。
【0234】
ロータリーエバポレーターからの残渣を、冷却器および撹拌機を備えた50Lフラスコに移した。フラスコにメタノール(6L)を加え、混合物を加熱して溶液とした。次いで、脱イオン水(2L)を加え、加熱を停止した。撹拌した混合物を冷却し、次いでフラスコを氷浴中に置いて混合物を冷却した。固体生成物をろ過により単離し、ろ過ケークを冷メタノール/水(1:1、4L)で洗浄した。生成物をNashポンプを用い、45℃の減圧乾燥器で合計64時間乾燥して、スベラニル酸メチル(2850.2g、収率84%)を得た。CSL Lot # 98-794-92-31。
【0235】

撹拌機、熱電対、および不活性雰囲気用の入り口を備えた50Lフラスコに、塩酸ヒドロキシルアミン(1451.9g)、無水メタノール(19L)、およびメタノール中30%ナトリウムメトキシド溶液(3.93L)を加えた。次いで、フラスコにスベラニル酸メチル(2748.0g)と、続いてメタノール中30%ナトリウムメトキシド溶液(1.9L)を加えた。混合物を16時間と10分間撹拌した。反応混合物のおよそ2分の1を反応フラスコ(フラスコ1)から撹拌機を備えた50Lフラスコ(フラスコ2)に移した。次いで、脱イオン水(27L)をフラスコ1に加え、混合物を10分間撹拌した。pHメーターでpHを測定し、11.56であった。混合物のpHを、メタノール中30%ナトリウムメトキシド溶液(100ml)を加えることにより12.02に調節し、これにより澄明溶液を得た(この時点で反応混合物は少量の固体を含んでいた。pHを調節して澄明溶液を得、これから生成物を沈殿させた)。フラスコ2の反応混合物を同様に希釈した。すなわち、脱イオン水(27L)を加え、pHを、メタノール中30%ナトリウムメトキシド溶液(100ml)を混合物に加えることにより調節して、pHを12.01とした(澄明溶液)。
【0236】
各フラスコの反応混合物を、氷酢酸の添加によって酸性化し、生成物を沈殿させた。フラスコ1の最終pHは8.98で、フラスコ2の最終pHは8.70であった。両フラスコから生成物を、ブフナー漏斗およびろ布を用いたろ過により単離した。ろ過ケークを脱イオン水(15L)で洗浄し、漏斗を覆い、生成物を漏斗上で15.5時間部分的に減圧乾燥した。生成物を取り出し、5つのガラストレイにのせた。トレイを減圧乾燥器に入れ、生成物を一定重量になるまで乾燥した。第一の乾燥期間は、減圧源としてNashポンプおよびアルゴンブリードを用い、60℃で22時間であった。トレイを乾燥器から取り出し、秤量した。トレイを乾燥器に戻し、生成物を、減圧源としてオイルポンプを用い、アルゴンブリードは用いずに、さらに4時間と10分間乾燥した。材料を二重の4-ミルポリエチレンバッグに包装し、プラスティックの外容器に入れた。試料採取後の最終重量は2633.4g(95.6%)であった。
【0237】
段階4−粗製SAHAの再結晶
粗製SAHAをメタノール/水から再結晶した。撹拌機、熱電対、冷却器、および不活性雰囲気用の入り口を備えた50Lフラスコに、結晶化する粗製SAHA(2525.7g)と、続いて脱イオン水(2625ml)およびメタノール(15755ml)を加えた。材料を加熱還流して溶液を得た。次いで、脱イオン水(5250ml)を反応混合物に加えた。加熱を停止し、混合物を冷却した。混合物が十分に冷却されて、フラスコを安全に取り扱うことが可能になれば(28℃)、フラスコをマントルヒーターから取り出し、冷却浴として用いるための桶に入れた。氷/水を桶に加えて、混合物を-5℃に冷却した。混合物をこの温度以下で2時間維持した。生成物をろ過により単離し、ろ過ケークを冷メタノール/水(2:1、1.5L)で洗浄した。漏斗を覆い、生成物を1.75時間部分的に減圧乾燥した。生成物を漏斗から取り出し、6つのガラストレイにのせた。トレイを減圧乾燥器に入れ、生成物を、減圧源としてNashポンプおよびアルゴンブリードを用い、60℃で64.75時間乾燥した。トレイを秤量のために取り出し、次いで乾燥器に戻し、一定重量になるまで60℃でさらに4時間乾燥した。第二の乾燥期間の減圧源はオイルポンプで、アルゴンブリードは用いなかった。材料を二重の4-ミルポリエチレンバッグに包装し、プラスティックの外容器に入れた。試料採取後の最終重量は2540.9g(92.5%)であった。
【0238】
実施例2
スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)の経口投与
背景
ハイブリッド極性細胞分化剤での処置は、ヒト固形腫瘍由来細胞株および異種移植片の増殖阻害を引き起こした。この効果は部分的にはヒストンデアセチラーゼの阻害によって仲介される。SAHAは実験室および前臨床試験で腫瘍細胞の増殖停止、分化、およびアポトーシスを誘導する能力を有することが明らかにされている、強力なヒストンデアセチラーゼ阻害剤である。
【0239】
目的
第II相試験で用いることができるSAHAの安全な毎日の経口投与法を決定すること。加えて、SAHAの経口製剤の薬物動態特性を評価した。ヒトの絶食時および非絶食時のSAHAの経口バイオアベイラビリティ、ならびに処置の抗腫瘍効果もモニターした。さらに、SAHAの正常組織および腫瘍細胞に対する生物学的効果を評価し、ヒストンアセチル化のレベルに関する反応を記録した。
【0240】
患者
組織学的に証明された、標準的療法に抵抗性であるか、または標準的処置法が存在しない、進行期の成人原発または転移固形腫瘍を有する患者。患者はカルノフスキー尺度≧70%、ならびに十分な血液、肝、および腎機能を有していなければならない。患者はいかなる以前の化学療法、放射線療法または他の研究用抗癌剤処置から少なくとも4週間経過していなければならない。
【0241】
投与計画
第1日に、患者をまず200mgの静脈内投与SAHAで処置した。第2日から、患者を表1に従い経口SAHAの毎日の用量で処置した。各コホートに異なる用量のSAHAを投与した。「QD」は1日1回の投与を示し;「Q12時間」は1日2回の投与を示す。例えば、コホートIVの患者には1日に800mg用量のSAHAを2回投与した。投与は毎日連続で行った。血液試料を経口処置の第1日および第21日に採取した。患者は疾患の進行、腫瘍退縮、許容不可能な副作用、または他の療法による処置のため、経口SAHA処置を終了した。
【0242】
(表1)経口SAHA投与計画

【0243】
結果
血漿レベルの比較により、静脈内投与したSAHA(IV SAHA)に比べて、患者絶食時と非絶食時のいずれにおいても経口投与したSAHAの高いバイオアベイラビリティが認められる。「AUC」は(ng/ml)分でのSAHAのバイオアベイラビリティ推定値で、660ng/mlは2.5μM SAHAと等しい。AUCおよび半減期(t1/2)を併せてみると、経口SAHAの全般的バイオアベイラビリティがIV SAHAよりも良好であることを示している。Cmaxは投与後に観察されるSAHAの最高濃度である。IV SAHAは200mgを2時間かけて注入により投与した。経口SAHAは200mgの1個のカプセルで投与した。表2および3は、時間に対する患者血漿中のSAHAの量を、マーカーとしてアセチル化ヒストン-4(α-AcH4)を用いて定量するHPLCアッセイ(重水素化標準を用いたLCMS)の結果をまとめて示す。
【0244】
(表2)経口SAHAの血漿レベル−患者#1

【0245】
(表3)経口SAHAの血漿レベル−患者#2

【0246】
図1から8は、コホートIおよびIIの患者で経口投与後10時間までのα-AcH4の量を、SAHAを静脈内投与した時のα-AcH4レベルと比較して示すHPLCスライドである。図9は、投与後の表示の時点におけるSAHAの平均血漿濃度(ng/ml)を示している。図9A:第8日の絶食下での経口投与(200mgおよび400mg)。図9B:第9日の摂食時の経口投与(200mgおよび400mg)。図9C:第1日のIV投与。図10は、第8、9および22日のSAHA 200mgおよび400mg経口投与の見かけの半減期を示している。図11は、第8、9および22日のSAHA 200mgおよび400mg経口投与のAUC(ng/ml/hr)を示している。図12は、第8、9および22日の200mgおよび400mg経口投与後のSAHAのバイオアベイラビリティを示している。
【0247】
実施例3
スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)の経口投与−用量漸増
もう一つの実験において、表4に示すとおり、固形腫瘍を有する患者25名をアームAに登録し、ホジキンまたは非ホジキンリンパ腫の患者13名をアームBに登録し、急性白血病の患者1名および脊髄形成異常症候群の患者1名をアームCに登録した。
【0248】
(表4)用量漸増スキームおよび各用量レベルにおける患者数

*アームA=固形腫瘍、アームB=リンパ腫、アームC=白血病
【0249】
結果:
コホートIIで処置した患者11名のうち、1名は第1処置サイクル中に3度の下痢および3度の脱水症のDLTを経験した。9名の患者がコホートIIIに入った。2名は疾患の急速な進行による早期試験停止のため、28日の毒性評価で評価不能であった。残る7名のうち、5名は第1処置サイクル中にDLTを経験した:下痢/脱水症(n=1)、疲労/脱水症(n=1)、食欲不振(n=1)、脱水症(n=1)、および食欲不振/脱水症(n=1)。これらの患者5名は試験薬を中断した後、約1週間で回復した。これらの患者はその後用量を400mg QDに減量し、この用量はよく耐容されるようであった。コホートIIIのすべての患者で、400mg BIDで投与を受けた日数の中央値は21日であった。これらの知見に基づき、400mg q12時間の投与計画は最大耐容量を越えたと判断された。プロトコル改正後、コホートIVにおいて600mgを1日1回の用量で受け入れを続けた。コホートIVに登録した患者7名のうち、2名は疾患の急速な進行による早期試験停止のため、28日の毒性評価で評価不能であった。3名は第1処置サイクル中にDLTを経験した:食欲不振/脱水症/疲労(n=1)、および下痢/脱水症(n=2)。したがって、600mg用量は最大耐容量を越えたと判断され、400mgを1日1回の用量が1日1回経口投与の最大耐容量と決定した。プロトコルを改正して、1日2回投与計画の追加の用量レベルを、200mg BIDおよび300mg BIDで連続投与して評価した。
【0250】
中間薬物動態分析は、200mg QD、400mg QD、および400mg BIDの用量レベルで処置した患者18名に基づいて行った。一般に、絶食状態または摂食時に経口投与したSAHAのCmaxおよびAUCinfの平均推定値は200mgから400mgの用量範囲で用量に比例して増加した。全般的に、外挿によるAUCinfの割合は1%以下であった。見かけの半減期の平均推定値は、絶食状態または摂食時の用量群の間で、61から114分の範囲で変動した。Cmaxの平均推定値は233ng/ml(0.88μM)から570ng/ml(2.3μM)まで変動する。IV注入および経口投与後のAUCinfから計算したSAHAの生体利用可能な割合は約0.48であることが判明した。
【0251】
末梢血単核細胞を処置前、注入直後、およびSAHAカプセルの経口摂取後2〜10時間の間に採取して、正常宿主細胞におけるヒストンアセチル化の程度に対するSAHAの効果を評価した。ヒストンを単離し、抗アセチル化ヒストン(H3)抗体と、続いてHRP-二次抗体をプローブに用いて試験した。予備的分析から、1日400mgの用量レベルでのSAHAカプセル摂取後10時間までに検出することができる、末梢単核細胞中のアセチル化ヒストン蓄積の増加が示された。
【0252】
13名の患者は疾患が反応性または安定した状態で3〜12ヶ月間処置を続けた:甲状腺(n=3)、汗腺(n=1)、腎(n=2)、咽頭(n=1)、前立腺(n=1)、ホジキンリンパ腫(n=2)、非ホジキンリンパ腫(n=2)、および白血病(n=1)。
【0253】
6名の患者はCTスキャンで腫瘍の収縮が見られた。これら6名のうちの3名は部分寛解の基準に合致する(転移咽頭がんの患者1名と非ホジキンリンパ腫の患者2名)。これらの部分寛解は400mg BID(n=2)および600mg QD(n=1)の用量レベルで認められた。
【0254】
前述の用量を1日2回、間欠的にも投与した。患者にSAHAを1日2回、1週間あたり3日から5日投与した。患者の反応はSAHAを300mgで1日2回、1週間あたり3日の投与で認められた。
【0255】
実施例4
SAHAの静脈内投与
表5は、SAHAの静脈内投与を受ける患者の投与計画を示している。患者はコホートIで開始し、300mg/m2のSAHAを連続5日間/週で1週間、合計用量1500mg/m2の投与を受ける。次いで、2週間患者を観察した後、コホートIIへと続き、次いで疾患の進行、腫瘍退縮、許容不可能な副作用、または他の療法による処置のため処置を終了するまで、コホートを進めた。
【0256】
(表5)静脈内投与SAHAの標準用量漸増

*血液癌の患者は用量レベルIIIで開始した。
【0257】
実施例5
SAHAによる中皮腫の処置
中皮腫の患者3名をSAHAによる第I相試験に登録した。患者に経口SAHAを300mgまたは400mgの用量で1日2回、1週間あたり3日投与した。前述の投与法に従いSAHA処置を6ヶ月間行った後、部分寛解一例が観察された。
【0258】
図13は、300mgの用量で1日2回、1週間あたり3日、6ヶ月間のSAHAによる処置の前(PRE-左図)および後(POST-右図)の、患者の中皮腫のCTスキャンである。データはSAHAが患者の中皮腫処置において有効であることを示している。
【0259】
実施例6
SAHAによるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の処置
血液癌および固形腫瘍を含む進行癌の患者68名で経口SAHAの第I相試験を行った。患者にSAHAを200、400または600mg QD、200、300または400mg BID、300mgもしくは400mg(BID)を1週間あたり3日間欠的、または100mg TID(2週間)経口(po)投与した。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の患者7名を試験に登録した。
【0260】
結果
A. 経口SAHA処置による完全寛解(CR)
1名の患者(66歳女性)が第I期小リンパ球性リンパ腫(形質球様)との診断を受け;ブレオマイシン、CPTおよび局所XRT投与を受けて完全寛解を示し;癌が再発し(乳房/皮下小結節、および肺小結節)、フルダラビン/ミトキサントロン、リツキシマブ、CEPT、リポソームドキソルビシンによる処置を受けた。DBLCLに転換し、続いてリツキシマブ、抗-B1、CTX/リポソームドキソルビシン/プレドニゾロン/ビンクリスチンによる処置を受けた。
【0261】
患者は皮下小結節、びまん性腺症、大胃肝腫瘤、両側肺小結節、リンパ腫による骨髄波及を有し、経口SAHA第I相試験にまわされた。患者はSAHA 400mg BIDの投与を1ヶ月間受け、続いて用量を400mg QDに減量し、SAHA処置を合計1年間受けた。
【0262】
図14は、SAHAによる2ヶ月間の処置の前(図14A)および後(図14B)に撮ったCTスキャンで、胃肝腫瘤の収縮を示している。胃肝腫瘤の完全消散が処置2サイクル(4ヶ月)後に観察された。
【0263】
図15は、SAHAによる2ヶ月間の処置の前(図15A)および後(図15B)に撮ったPETスキャンで、処置後の腫瘍退縮を示している。
【0264】
完全寛解(CR)(チェソン基準に合致)がSAHA処置4ヶ月後に得られた。完全寛解(CR)はここまでは14ヶ月間持続し、まだ完全寛解を示している。
【0265】
B. 経口SAHA処置による部分寛解(PR)
DLBCLを有する1名の患者がSAHA 600mg QDの経口投与を受け、SAHA処置を合計5ヶ月間受けた。
【0266】
図16は、SAHAによる1ヶ月間の処置の前(図16A)および後(図16B)に撮ったCTスキャンで、処置後の腫瘍退縮を示している。
【0267】
部分寛解(PR)(チェソン基準に合致)がSAHA処置5ヶ月後に得られた。
【0268】
C. 経口SAHA処置後の腫瘍退縮
1名の患者(75歳女性)が当初転換の徴候を伴う濾胞性リンパ腫で来診した。この患者は最初、シクロホスファミド、ドキソルビシン、エトポシド、およびプレドニゾンの6サイクルで処置を受けた。次いで、DLBCLを示す脾臓摘出を受け、そのためにゼバリン処置を受けた。続いて、リツキシマブの2クールと、最終的にペントスタチン、シクロホスファミドおよびリツキシマブ処置を受けた。
【0269】
患者はSAHA 200mg BIDの経口投与を受け、SAHA処置を6ヶ月間受けた。
【0270】
図17は、SAHAによる2ヶ月間の処置の前(図17A)および後(図17B)に撮ったPETスキャンである。図面に見られるとおり、患者はSAHA処置2ヶ月後にすぐれたPET陰性反応を示し、疾患は持続的に退縮した。
【0271】
本発明を詳細に示し、その好ましい態様に関して記載してきたが、当業者であれば記載の発明の意味から逸脱することなく、形態および詳細において様々な変更を加えうることが理解されると思われる。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲の対象を含む。本明細書において引用されるすべての特許、特許出願、および出版物は参照により本明細書に組み入れられる。
【0272】
引用文献



【図面の簡単な説明】
【0273】
本発明の前述および他の目的、特徴および利点は、添付の図面(図面中、同様の参照文字は異なる図を通して同じ部分を意味する)に示すとおり、下記の本発明の好ましい態様のより詳細な説明から明らかであると思われる。本図面は必ずしも同じ縮尺で作成されておらず、むしろ本発明の原理を説明することが強調されている。
【図1】SAHAの経口または静脈内(IV)投与後の患者血漿中のアセチル化ヒストン-4(α-AcH4)の量を示すウェスタンブロット(パネル上部)の図である。IV SAHAは200mgを2時間かけて注入することにより投与した。経口SAHAは200mgの単一カプセルで投与した。α-AcH4の量を表示の時点で示している。パネル下部:クーマシーブルー染色。
【図2】SAHAの経口または静脈内(IV)投与後の固形腫瘍を有する患者血漿中のアセチル化ヒストン-4(α-AcH4)の量を示すウェスタンブロット(パネル上部)の図である。IVおよび経口SAHAは図1のとおりに投与した。α-AcH4の量を表示の時点で示している。実験は二つ組で示している(図2Aおよび図2B)。パネル下部:クーマシーブルー染色。
【図3】第1日および第21日のSAHAの経口または静脈内(IV)投与後の患者血漿中のアセチル化ヒストン-4(α-AcH4)(図3A)およびアセチル化ヒストン-3(α-AcH3)(図3B-E)の量を示すウェスタンブロット(パネル上部)の図である。IVおよび経口SAHAは図1のとおりに投与した。α-AcH4またはα-AcH3の量を表示の時点で示している。パネル下部:クーマシーブルー染色。
【図4】SAHAの経口または静脈内(IV)投与後の固形腫瘍を有する患者血漿中のアセチル化ヒストン-3(α-AcH3)の量を示すウェスタンブロット(パネル上部)の図である。IVおよび経口SAHAは図1のとおりに投与した。α-AcH3の量を表示の時点で示している。パネル下部:クーマシーブルー染色。
【図5】SAHAの経口または静脈内(IV)投与後の患者血漿中のアセチル化ヒストン-3(α-AcH3)の量を示すウェスタンブロット(パネル上部)の図である。IV SAHAは400mgを2時間かけて注入することにより投与した。経口SAHAは400mgの単一カプセルで投与した。α-AcH4の量を表示の時点で示している。実験は三つ組で示している(図5Aおよび図5B)。パネル下部:クーマシーブルー染色。
【図6】SAHAの経口または静脈内(IV)投与後の固形腫瘍を有する患者血漿中のアセチル化ヒストン-3(α-AcH3)の量を示すウェスタンブロット(パネル上部)の図である。IVおよび経口SAHAは図5のとおりに投与した。α-AcH3の量を表示の時点で示している。パネル下部:クーマシーブルー染色。
【図7】第1日および第21日のSAHAの経口または静脈内(IV)投与後の固形腫瘍を有する患者血漿中のアセチル化ヒストン-3(α-AcH3)の量を示すウェスタンブロット(パネル上部)の図である。IVおよび経口SAHAは図4のとおりに投与した。α-AcH4またはα-AcH3の量を表示の時点で示している。パネル下部:クーマシーブルー染色。
【図8】SAHAの経口または静脈内(IV)投与後の患者血漿中のアセチル化ヒストン-3(α-AcH3)の量を示すウェスタンブロット(パネル上部)の図である。IVおよび経口SAHAは図5のとおりに投与した。α-AcH3の量を表示の時点で示している。パネル下部:クーマシーブルー染色。
【図9A】図9は、投与後の表示の時点におけるSAHAの平均血漿濃度(ng/ml)を示すグラフである。図9A:第8日の絶食下での経口投与(200mgおよび400mg)。
【図9B】図9は、投与後の表示の時点におけるSAHAの平均血漿濃度(ng/ml)を示すグラフである。図9B:第9日の摂食時の経口投与(200mgおよび400mg)。
【図9C】図9は、投与後の表示の時点におけるSAHAの平均血漿濃度(ng/ml)を示すグラフである。図9C:第1日のIV投与。
【図10】第8、9および22日のSAHA 200mgおよび400mg経口投与の見かけの半減期を示す図である。
【図11】第8、9および22日のSAHA 200mgおよび400mg経口投与のAUC(ng/ml/hr)を示す図である。
【図12】第8、9および22日の200mgおよび400mg経口投与後のSAHAのバイオアベイラビリティを示す図である。
【図13】300mgを1日2回、1週間あたり3日の用量でのSAHAによる6ヶ月間の処置の前(左)および後(右)の、患者の中皮腫のCTスキャンを示す図である。
【図14】400mgを1日2回1ヶ月間の後、400mgを毎日1ヶ月間の用量でのSAHAによる2ヶ月間の処置の前(A)および後(B)の、びまん性大細胞型リンパ腫を有する患者から得たCTスキャンを示す図である。
【図15】400mgを1日2回1ヶ月間の後、400mgを毎日1ヶ月間の用量でのSAHAによる2ヶ月間の処置の前(A)および後(B)の、びまん性大細胞型リンパ腫を有する患者から得たPETスキャンを示す図である。
【図16】600mgを毎日の用量でのSAHAによる1ヶ月間の処置の前(A)および後(B)の、びまん性大細胞型リンパ腫を有する患者から得たCTスキャンを示す図である。
【図17】200mgを1日2回の用量でのSAHAによる2ヶ月間の処置の前(A)および後(B)の、びまん性大細胞型リンパ腫を有する患者から得たPETスキャンを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の中皮腫またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の処置法であって、以下の段階を含む方法:
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む薬学的組成物の有効量を被験者に投与する段階であって、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤の量が、該被験者の中皮腫またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を処置するのに有効である、段階。
【請求項2】
被験者の中皮腫を処置するために用いる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
被験者のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を処置するために用いる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
HDAC阻害剤が、下記の構造で表されるスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)である、請求項1記載の方法。

【請求項5】
HDAC阻害剤が、下記の構造で表されるピロキサミドである、請求項1記載の方法。

【請求項6】
HDAC阻害剤が下記の構造で表される、請求項1記載の方法:

式中、R3およびR4は独立に置換もしくは無置換の、分枝もしくは非分枝アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、もしくはピリジン基、シクロアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、もしくはピリジン基であるか、またはR3およびR4は一緒に結合してピペリジン基を形成し;R2はヒドロキシアミノ基であり;かつnは5から8の整数である。
【請求項7】
HDAC阻害剤が下記の構造で表される、請求項1記載の方法:

式中、Rは置換または無置換のフェニル、ピペリジン、チアゾール、2-ピリジン、3-ピリジンまたは4-ピリジンであり、かつnは4から8の整数である。
【請求項8】
HDAC阻害剤が下記の構造で表される、請求項1記載の方法:

式中、Aはアミド部分であり、R1およびR2はそれぞれ置換または無置換のアリール、アリールアルキル、ナフチル、ピリジンアミノ、9-プリン-6-アミノ、チアゾールアミノ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ピリジル、キノリニルまたはイソキノリニルから選択され;R4は水素、ハロゲン、フェニルまたはシクロアルキル部分であり、かつnは3から10の整数である。
【請求項9】
HDAC阻害剤がヒドロキサム酸誘導体、短鎖脂肪酸(SCFA)、環状テトラペプチド、ベンズアミド誘導体、または求電子ケトン誘導体である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
HDAC阻害剤が、SAHA、ピロキサミド、CBHA、トリコスタチンA(TSA)、トリコスタチンC、サリチルヒドロキサム酸、アゼライン酸ビスヒドロキサム酸(Azelaic Bishydroxamic Acid:ABHA)、アゼライン酸-1-ヒドロキサメート-9-アニリド(AAHA)、6-(3-クロロフェニルウレイド)カルポ(carpoic)ヒドロキサム酸(3Cl-UCHA)、オキサムフラチン、A-161906、スクリプタイド、PXD-101、LAQ-824、CHAP、MW2796、およびMW2996からなる群より選択されるヒドロキサム酸誘導体である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
HDAC阻害剤が、トラポキシンA、FR901228(FK 228またはデプシペプチド)、FR225497、アピシジン、CHAP、HC-トキシン、WF27082、およびクラミドシンからなる群より選択される環状テトラペプチドである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
HDAC阻害剤が、酪酸ナトリウム、イソ吉草酸塩、吉草酸塩、4フェニル酪酸塩(4-PBA)、フェニル酪酸塩(PB)、プロピオン酸塩、ブチルアミド、イソブチルアミド、フェニル酢酸塩、3-ブロモプロピオン酸塩、トリブチリン、バルプロ酸およびバルプロ酸塩からなる群より選択される短鎖脂肪酸(SCFA)である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
HDAC阻害剤が、CI-994、MS-27-275(MS-275)、およびMS-27-275の3'-アミノ誘導体からなる群より選択されるベンズアミド誘導体である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
HDAC阻害剤が、トリフルオロメチルケトンおよびα-ケトアミドからなる群より選択される求電子ケトン誘導体である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
HDAC阻害剤が天然物、サマプリン(psammaplin)、またはデプデシンである、請求項1記載の方法。
【請求項16】
薬学的組成物を経口投与する、請求項1記載の方法。
【請求項17】
組成物がゼラチンカプセル中に含まれる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
担体または希釈剤が微結晶セルロースである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
崩壊剤としてクロスカルメロースナトリウムをさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムをさらに含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
組成物を被験者に約25〜4000mg/m2の間の1日合計用量で投与する、請求項16記載の方法。
【請求項22】
組成物を1日1回、1日2回、または1日3回投与する、請求項16記載の方法。
【請求項23】
組成物を約200〜600mgの用量で1日1回投与する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
組成物を約200〜400mgの用量で1日2回投与する、請求項22記載の方法。
【請求項25】
組成物を約200〜400mgの用量で1日2回、間欠的に投与する、請求項22記載の方法。
【請求項26】
組成物を1週間あたり3日から5日投与する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
組成物を1週間あたり3日投与する、請求項25記載の方法。
【請求項28】
組成物を約200mgの用量で投与する、請求項27記載の方法。
【請求項29】
組成物を約300mgの用量で投与する、請求項27記載の方法。
【請求項30】
組成物を約400mgの用量で投与する、請求項27記載の方法。
【請求項31】
組成物を約100〜250mgの用量で1日3回投与する、請求項22記載の方法。
【請求項32】
被験者の中皮腫またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の処置法であって、以下の段階を含む方法:
下記の構造で表されるスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物

と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む薬学的組成物の有効量を被験者に投与する段階であって、SAHAの量が該被験者の中皮腫またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を処置するのに有効である、段階。
【請求項33】
被験者の中皮腫を処置するために用いる、請求項32記載の方法。
【請求項34】
被験者のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を処置するために用いる、請求項32記載の方法。
【請求項35】
薬学的組成物を経口投与する、請求項32記載の方法。
【請求項36】
組成物がゼラチンカプセル中に含まれる、請求項35記載の方法。
【請求項37】
担体または希釈剤が微結晶セルロースである、請求項36記載の方法。
【請求項38】
崩壊剤としてクロスカルメロースナトリウムをさらに含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムをさらに含む、請求項38記載の方法。
【請求項40】
組成物を被験者に約25〜4000mg/m2の間の1日合計用量で投与する、請求項35記載の方法。
【請求項41】
組成物を1日1回、1日2回、または1日3回投与する、請求項35記載の方法。
【請求項42】
組成物を約200〜600mgの用量で1日1回投与する、請求項41記載の方法。
【請求項43】
組成物を約200〜400mgの用量で1日2回投与する、請求項41記載の方法。
【請求項44】
組成物を約200〜400mgの用量で1日2回、間欠的に投与する、請求項41記載の方法。
【請求項45】
組成物を1週間あたり3日から5日投与する、請求項44記載の方法。
【請求項46】
組成物を1週間あたり3日投与する、請求項44記載の方法。
【請求項47】
組成物を約200mgの用量で投与する、請求項46記載の方法。
【請求項48】
組成物を約300mgの用量で投与する、請求項46記載の方法。
【請求項49】
組成物を約400mgの用量で投与する、請求項46記載の方法。
【請求項50】
組成物を約100〜250mgの用量で1日3回投与する、請求項41記載の方法。
【請求項51】
被験者の中皮腫またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の処置法であって、以下の段階を含む方法:
下記の構造で表されるスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物

と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む薬学的組成物の最大約800mgの1日合計用量を被験者に投与する段階であって、SAHAの量が該被験者の中皮腫またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を処置するのに有効である段階。
【請求項52】
被験者の中皮腫を処置するために用いる、請求項51記載の方法。
【請求項53】
被験者のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を処置するために用いる、請求項51記載の方法。
【請求項54】
薬学的組成物を経口投与する、請求項51記載の方法。
【請求項55】
組成物がゼラチンカプセル中に含まれる、請求項54記載の方法。
【請求項56】
担体または希釈剤が微結晶セルロースである、請求項55記載の方法。
【請求項57】
崩壊剤としてクロスカルメロースナトリウムをさらに含む、請求項56記載の方法。
【請求項58】
滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムをさらに含む、請求項57記載の方法。
【請求項59】
組成物を1日1回、1日2回、または1日3回投与する、請求項54記載の方法。
【請求項60】
組成物を約200〜600mgの用量で1日1回投与する、請求項59記載の方法。
【請求項61】
組成物を約200〜400mgの用量で1日2回投与する、請求項59記載の方法。
【請求項62】
組成物を約200〜400mgの用量で1日2回、間欠的に投与する、請求項59記載の方法。
【請求項63】
組成物を1週間あたり3日から5日投与する、請求項62記載の方法。
【請求項64】
組成物を1週間あたり3日投与する、請求項62記載の方法。
【請求項65】
組成物を約200mgの用量で投与する、請求項64記載の方法。
【請求項66】
組成物を約300mgの用量で投与する、請求項64記載の方法。
【請求項67】
組成物を約400mgの用量で投与する、請求項64記載の方法。
【請求項68】
組成物を約100〜250mgの用量で1日3回投与する、請求項59記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−73834(P2009−73834A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232889(P2008−232889)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【分割の表示】特願2006−524891(P2006−524891)の分割
【原出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(507300593)メルク エイチディーエーシー リサーチ エルエルシー (2)
【出願人】(599158890)スローン−ケターリング インスティチュート フォー キャンサー リサーチ (5)
【Fターム(参考)】