説明

HIV−1感染を阻害する変異体Vprタンパク質及びHIV−1感染阻害剤のスクリーニング方法

【課題】 CD4陽性T細胞におけるHIV−1の増殖(複製)とVprタンパク質の多様な細胞増殖抑制機能の解明を通じて、AIDS発症予防、治療方法を提供する。さらに、PICの核移行におけるVprタンパク質の働きを解明し、PICの核移行の鍵となる段階を抑止することによってHIV−1による免疫細胞の感染阻害剤を提供する。
【解決手段】 ヒト免疫不全症ウイルス1型(HIV−1)Vprタンパク質のα−ヘリックス領域内に少なくとも1つの突然変異を有し、前記突然変異によって少なくとも1つのα-ヘリックス構造が不安定化された変異体Vprタンパク質を含むHIV−1増殖阻害剤。また、前記Vprタンパク質とインポーチンαとの結合を阻害するか、及び/又は前記Vprタンパク質の核膜への局在を阻害する化合物をスクリーニングする。
なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒト免疫不全症ウイルス1型(HIV−1)感染を阻害するタンパク質及び該タンパク質をコードするポリヌクレオチド、これらを含む医薬組成物、並びにHIV−1感染阻害剤のスクリーニング方法及び該方法により得られるHIV−1感染阻害剤等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CD4陽性T細胞が破壊されることにより生ずる後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因ウイルスであるHIV−1は、構造遺伝子及び調節遺伝子に加え、アクセサリー遺伝子を有するという特徴がある。アクセサリー遺伝子の一つであるvprは、96個のアミノ酸残基からなる15キロダルトン(kDa)の核タンパク質をコードする。HIV−1、HIV−2、及びSIV等の霊長類のレンチウイルスは、何れも非常によく保存されたVpr様タンパク質を含んでいる。従って、Vprタンパク質はこれらのウイルスの生活環において重要な役割を果たすと考えられる。Vprタンパク質の多くの生物学的機能が報告されており、例えば、ウイルス粒子への取り込み(例えば、非特許文献1参照)、核への局在(例えば、非特許文献2参照)、細胞周期のG/M期又はG期での停止(例えば、非特許文献3及び4参照)、いくつかのウイルスプロモータの弱い活性化(例えば、非特許文献5参照)、ある種の細胞の最終分化の誘導(例えば、非特許文献6参照)、及び多様な細胞質因子との相互作用(例えば、非特許文献7参照)等である。
【0003】
このような多様な生物学的機能は、Vprタンパク質の特異的な構造と関連することが示唆されている。NMRによるVprタンパク質の立体構造解析の結果、フレキシブルなアミノ末端及びカルボキシ末端領域に囲まれて、N末端から17〜33番目、38〜50番目、及び56〜77番目のアミノ酸残基が3つのα−ヘリックスを形成することが報告されている(例えば、非特許文献8参照)。最もN末端に近いα−ヘリックスドメインはVprタンパク質の核への移行、タンパク質の発現及び安定性、並びにウイルス粒子への取り込みに重要である(例えば、非特許文献9参照)。第二のα−ヘリックスドメインもまた、Vprのウイルス粒子への取り込みやオリゴマーを形成する性質にとって重要な意味を持つらしい(例えば、非特許文献10参照)。第三のα−ヘリックスドメインは、核局在、特に、非分裂細胞において組込み前複合体(PIC)の核への移行に関与する決定因子を含んでいる(例えば、非特許文献11参照)。C末端の20個のアミノ酸からなるアルギニンに富む領域は、潜在的な核移行シグナル(NLS)を含み、Vprタンパク質の核移行への主要な役割を果たしている。また、Vprタンパク質の52〜78番目のアミノ酸配列からなるオリゴペプチドは、培養細胞の培養液に添加するだけで細胞分裂非依存的に細胞の核内に取り込まれることも報告されている(非特許文献12参照)。
【0004】
一方、Vprタンパク質を欠損したウイルスはin vitroで複製可能なことから、Vprタンパク質はHIV−1の増殖(複製)に必須な因子ではないことが示唆されている。しかしながら、Vprタンパク質はウイルス感染効率の上昇及びHIV潜伏感染細胞からのウイルス産生を惹起するなど、AIDS発症の主要因子であり、感染初期において重要な役割を果たす(例えば、非特許文献1参照)。マクロファージのような非分裂細胞では、細胞分裂時に特徴的な核膜の崩壊(消失)が起こらないことから、HIV−1の感染が成立するためにはウイルスゲノムが細胞内の核膜を通過しなければならない。このHIV−1ゲノムの核膜通過には、組込み前複合体(PIC)の形成とその核膜への移行が必須である。従来より、PICの核への移行にはPICに含まれる種々のタンパク質中の核移行シグナル(NLS)の協同的な作用によることが示唆されている。これらのタンパク質にはマトリクス抗原(MA)、インテグラーゼ(IN)及びVprタンパク質等が含まれる。MAとINの両者は、機能的なNLSを有し、インポーチンα/βヘテロダイマーとの相互作用を含む古典的な核移行経路を利用しているが、Vprタンパク質の核移行についての詳細な機構は未だ明らかではない。マクロファージにおけるHIV−1の複製に対するVprタンパク質の役割は比較的よく研究されているが、核移行におけるVprタンパク質の役割、特に、その細胞質因子との相互作用に基づく詳細な機構や、生体内で分裂中のT細胞や活性化された末梢血単核細胞(PBMC)における機能については必ずしも明らかではない。
【0005】
【非特許文献1】Cohen, E.A. et al.,1990, Human immunodeficiency virus vpr product is a virion-associated regulatory protein. J. Virol. 64, 3097-3099
【非特許文献2】Gallay, P. et al., 1996, Role of the karyopherin pathway in human immunodeficiency virus type 1 nuclear import. J. Virol. 70, 1027-1032
【非特許文献3】He, J. et al., 1995, Human immunodeficiency virus type 1 viral protein R (Vpr) arrest cells in the G2 phase of the cell cycle by inhibiting p34cdc2 activity. J. Virol. 69, 6705-6711
【非特許文献4】Nishizawa, M. et al., A carboxy-terminally trancated form of the Vpr protein of human immunodeficiency virus type 1 retards cell proliferation independently of G(2) arrest of the cell cycle. Virology 263, 313-322
【非特許文献5】Cohen, E.A. et al., 1990, Identification of HIV-1 vpr product and function. J. Acquir. Immune Defic. Syndr. 3, 11-18
【非特許文献6】Le Rouzic E. et al., 2002, Docking of HIV-1 vpr to the nuclear envelope is mediated by the interaction with the nucleoporin hCG1. J. Biol. Chem. 277, 45091-45098
【非特許文献7】Agostini, I. et al., 1996, The human immunodeficiency virus type 1 Vpr transactivator: cooperation with promoter-bound activator domains and binding to TFIIB. J. Mol. Biol. 261, 599-606
【非特許文献8】Morellet, N. et al., 2003, NMR structure of the HIV-1 regulatory protein VPR. J. Mol. Biol. 327, 215-227
【非特許文献9】Mahalingam, S. et al., 1995, Identification of residues in the N-terminal acidic domain of HIV-1 Vpr essential for virion incorporation. Virology 207, 297-302
【非特許文献10】Singh, S.P. et al., 2000, Functional role of residues corresponding to helical domain II(amino acids 35 to 46) of human immunodeficiency virus type 1 Vpr. J. Virol. 74, 10650-10657
【非特許文献11】Kamata, M., and Aida, Y. 2000, Two putative alpha-helical domains of human immunodeficiency virus type 1 Vpr mediate nuclear localization by at least two mechanisms. J. Virol. 74, 7179-7186
【非特許文献12】Taguchi, T., et al., 2004, Nuclear trafficking of macromolecules by an oligopeptide derived from Vpr of human immunodeficiency virus type-1. Biochem. Biophys. Res. Commun. 320, 18-26
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はCD4陽性T細胞におけるHIV−1の増殖(複製)とVprタンパク質の多様な細胞増殖抑制機能の解明を通じて、AIDS発症予防、治療方法を提供することを目的とする。
【0007】
また本発明は、PICの核移行におけるVprタンパク質の働きを解明し、PICの核移行の鍵となる段階を抑止することによってHIV−1による免疫細胞の感染阻害剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑みて、本発明者らはCD4陽性T細胞の初代培養細胞におけるHIV−1の感染、増殖に対し、種々の変異体Vprタンパク質が及ぼす影響について検討した結果、核移行機能が損なわれた特定の変異体Vprタンパク質を含むウイルスは、CD4陽性T細胞における増殖(複製)能が顕著に低下していることを見出した。そしてこれらの変異体Vprタンパク質がHIV−1の増殖又は感染を阻害しうることを見出して本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、第一の視点において、本発明のHIV−1増殖阻害剤は、ヒト免疫不全症ウイルス1型(HIV−1)Vprタンパク質のα−ヘリックス領域内に少なくとも1つの突然変異を有し、前記突然変異によって少なくとも1つのα-ヘリックス構造が不安定化された変異体Vprタンパク質を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の視点において、HIV−1のVprタンパク質のN末端から60番目のイソロイシン、67番目のロイシン、74番目のイソロイシン、及び81番目のイソロイシンからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸が、α-ヘリックスを不安定化するアミノ酸あるいは側鎖の性質を変化させるアミノ酸へ置換された変異体Vprタンパク質、該タンパク質をコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、及びこれらの何れかを含む医薬組成物を提供することを特徴とする。
【0011】
さらに異なる視点において、本発明は、ヒト免疫細胞へのHIV−1感染を阻害する化合物をスクリーニングする方法を提供する。前記方法は、候補化合物の存在下においてVprタンパク質とインポーチンαとを接触させ、Vprタンパク質がインポーチンαと結合するか否かを検出することを含み、前記Vprタンパク質とインポーチンαとの結合を阻害する化合物がヒト免疫細胞へのHIV−1感染を阻害することを特徴とする。また、本発明のスクリーニング方法の他の実施形態として、候補化合物の存在下においてVprタンパク質を前記ヒト免疫細胞に導入し、Vprタンパク質が核膜に局在するか否かを検出することを含み、前記Vprタンパク質の核膜局在を阻害する化合物がヒト免疫細胞へのHIV−1感染を阻害することを特徴とする。前記Vprタンパク質は、配列番号1に示したアミノ酸配列の17〜74番目のアミノ酸残基によって形成されるα−ヘリックス領域を含む部分Vprタンパク質、又は融合Vprタンパク質であることが好ましい。さらに好ましくは、前記インポーチンαとの結合に関与するVprタンパク質は、配列番号1に示したアミノ酸配列の17〜34番目のアミノ酸残基によって形成されるα−ヘリックス領域を含む部分Vprタンパク質、又は融合Vprタンパク質である。また、前記核膜への局在に関与するVprタンパク質は、配列番号1に示したアミノ酸配列の56〜77番目のアミノ酸残基によって形成されるα−ヘリックス領域を含む部分Vprタンパク質、又は融合Vprタンパク質である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、AIDS発症の重要な段階であるCD4陽性T細胞におけるウイルスの複製又は増殖を抑制することができるため、AIDSの発症予防、又は治療用の薬剤として変異体Vprタンパク質を使用することができる。また、本発明のスクリーニング方法によって得られる化合物は、免疫細胞内においてウイルスゲノムが核内へ移行することを抑止し、HIV−1の感染を阻害することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施において、分子生物学、微生物学、細胞生物学および組換えDNA技術等の一般的方法及び従来技術について、実施者は、特に示されなければ、当該分野の標準的な参考書籍を参照し得る。これらには、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual 第3版(Sambrook & Russell、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001);Current Protocols in Molecular biology(Ausubelら編、John Wiley & Sons、1987);Methods in Enzymologyシリーズ(Academic Press);PCR Protocols: Methods in Molecular Biology(Bartlett & Striling編、Humana Press、2003);Animal Cell Culture: A Practical Approach 第3版(Masters編、Oxford University Press、2000);Antiboides:A Laboratory Manual(Harlowら& Lane編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1987)を参照のこと。また、本明細書において参照される細胞培養、細胞生物学実験のための試薬及びキット類はSigma社やAldrich社、Invitrogen/GIBCO社、Clontech社、Stratagene社、Amerhsam Biosciences社、TaKaRa(タカラバイオ株式会社)等の市販業者から入手可能である。
【0014】
[変異体Vprタンパク質]
本発明は、1つの実施形態において、HIV−1のVprタンパク質に特定の変異を有する変異体Vprタンパク質に関する。HIV−1のいくつかの株について完全な塩基配列が報告されており、例えば、Adachiらによってクローン化された感染性のプロウイルスプラスミドpNL432はHIV−1において知られているすべてのタンパク質を発現する。pNL432中のvpr遺伝子の塩基配列は、例えば、Ogawa K., et al., Journal of Virology, 1989, Vol. 63, No.9, p. 4110-4114, 及びGenBank Accession No. M28355等に公開されている(配列番号1)。特定の変異とは、Vprタンパク質のα−ヘリックス領域内における少なくとも1つの突然変異である。この突然変異はVprタンパク質内に存在する3つのα−ヘリックス構造の少なくとも1つが不安定化されたものであればよく、例えば、Vprタンパク質のN末端から60番目のイソロイシン、67番目のロイシン、74番目のイソロイシン、及び81番目のイソロイシンの少なくとも1つのアミノ酸がα-ヘリックス構造を不安定化するアミノ酸あるいは側鎖の性質を変化させるアミノ酸に置換されていることが好ましい。α-ヘリックスはポリペプチド鎖における主鎖の構造であるが、側鎖の影響も受けることが知られており、例えば、環状イミノ酸であるプロリンは主鎖の水素結合の形成を阻害してα-ヘリックスを不安定化し、一方、側鎖の解離基による静電的な反発や大きな側鎖の立体障害によってもα-ヘリックスの形成が阻害される。ここで、「α-ヘリックス構造を不安定化するアミノ酸」とは、α-ヘリックスを壊す傾向にあるアミノ酸のことであり、一般的には、チロシン、アスパラギン、プロリン、グリシン及びトリプトファン等を挙げることができる。また、「側鎖の性質を変化させるアミノ酸」とは、例えば、側鎖の疎水性を変化させることでありイソロイシンの疎水性影響を減少させるアラニン等を挙げることができる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態において、(a)Vprタンパク質のN末端から67番目のロイシン、及び/又は74番目のイソロイシンがプロリンに置換された変異体Vprタンパク質、又は(b)(a)の変異体Vprタンパク質のN末端から67番目及び74番目以外の1又は数個(1〜9個、好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜2個)のアミノ酸が欠失、置換、又は付加されたタンパク質であって、且つHIV−1の増殖を阻害する活性を有する変異体Vprタンパク質を挙げることができる。
【0016】
より具体的には、配列番号3、4及び5の何れか一つに示したアミノ酸配列を有するタンパク質、又はこれらのタンパク質において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つHIV−1の増殖を阻害する活性を有する変異体Vprタンパク質に関する。本明細書においては、上記各タンパク質を総称して「本発明の変異体Vprタンパク質」と称する。以下、本発明の変異体Vprタンパク質の構造や機能について説明する。なお、配列番号3のアミノ酸配列は67番目のロイシンがプロリンに置換された変異体Vprタンパク質(L67P)のアミノ酸配列を、配列番号4のアミノ酸配列は74番目のイソロイシンがプロリンに置換された変異体Vprタンパク質(I74P)のアミノ酸配列を、配列番号5のアミノ酸配列は20、22、23及び26番目のロイシンがアラニンに置換され、且つ67番目のロイシンがプロリンに置換された変異体Vprタンパク質(αLAL67P)のアミノ酸配列をそれぞれ示す。
【0017】
本発明において、Vprタンパク質の第3のα−ヘリックス領域は、ロイシンが7アミノ酸ごとに4回繰り返しているロイシンジッパーモチーフ様構造を有し(具体的には、60番目のイソロイシン、67番目のロイシン、74番目のイソロイシン、及び81番目のイソロイシンからなる)、二量体形成や他の細胞性因子と相互作用することによってHIV−1ウイルスの複製や増殖に重要な役割を果たすと推定される。従って、この領域に突然変異を有し、且つα−ヘリックス構造が不安定化した変異体Vprタンパク質は、本来の立体構造を維持できなくなったことにより生理的な機能が損なわれる可能性がある。
【0018】
本明細書の実施例に示したように、本発明の変異体Vprタンパク質を細胞内で発現させると核に局在せずに細胞質全体に分散して存在することから、核移行機能が損なわれていることが理解される。また、この細胞内局在性は細胞の種類によって変化することなく、例えばHeLa細胞等の株化培養細胞だけでなく、CD4陽性活性化T細胞においても同様の結果が得られる。一般的に、タンパク質の核への移行には細胞質内の様々な因子との相互作用が必要であるから、本発明の変異体Vprタンパク質はこれらの細胞質因子との相互作用が損なわれるか、あるいは別の細胞質因子と複合体を形成して核移行能力が損なわれたものと考えられる。
【0019】
一方、G期で細胞周期を停止させることはCD4陽性T細胞におけるHIV−1の増殖にとって重要である。特に、感染効率の低いウイルスにとって分裂中の細胞でウイルスを増殖させるためにはVprタンパク質によるG停止機能が重要である。本発明の変異体Vprタンパク質は、このG停止機能が低下することによってウイルスの感染、増殖能が抑制されている。
【0020】
最も特徴的な性質として、本発明の変異体Vprタンパク質を含むウイルスはCD4陽性活性化T細胞に感染、又は増殖する能力を実質的に失っている。本明細書において「感染」とは、標的細胞へ吸着、侵入することのみならず、細胞内(核内)でゲノムDNAへの組込みやRNAの転写を行うことによって子孫ウイルスを産生して細胞外に感染性のウイルス粒子を放出するウイルスの全生活環をも意味する。AIDSの治療薬としてすでにTatタンパク質のトランス活性化やウイルス転写産物の核から細胞質へのRev依存性の輸送を阻害する低分子化合物が知られている。更に、Tat、Rev及びGagタンパク質の顕性不活性(dominant negative)変異体がウイルスの増殖を抑止することが証明されている。従って、本発明の変異体Vprタンパク質は顕性不活性(dominant negative)阻害剤としてHIV−1の感染、増殖を阻害することが期待される。
【0021】
[変異体Vprタンパク質をコードするポリヌクレオチド]
また、本発明は、上記本発明の変異体Vprタンパク質をコードするポリヌクレオチドに関する。「ポリヌクレオチド」とは、一般に、ポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドの両方をいい、それらは修飾されていてもよい。例えば、DNA、cDNA、ゲノムDNA、mRNA、未プロセッシングRNA及びそれらの断片などが挙げられ、それらの長さは特に限定されない。「本発明の変異体Vprタンパク質をコードするポリヌクレオチド」とは、本発明の変異体Vprタンパク質をコードし得る限り、遺伝暗号の縮退に基づく任意の塩基配列を選択することができ、このようなポリヌクレオチドとしては、二本鎖であっても一本鎖であってもよい。DNA/RNAハイブリッドも含まれる。一旦ポリヌクレオチドの塩基配列が確定すると、その後は化学合成によってこのポリヌクレオチドを得ることができる。これらのポリヌクレオチドは当業者において公知の種々の方法で化学合成される。またはクローン化されたvpr遺伝子の全部又は一部を鋳型として部位特異的な変異の導入によって容易に得ることができる。
【0022】
部位特異的なアミノ酸置換又は挿入によりタンパク質中のアミノ酸残基に変異を導入する方法が知られている。当業者に公知の部位特異的変異を導入する方法としては、例えば、Kunkel法(Kunkel, T. A. et al., Methods Enzymol. 154, 367-382 (1987))、ダブルプライマー法(Zoller, M. J. and Smith, M., Methods Enzymol. 154, 329-350 (1987))、カセット変異法(Wells, et al., Gene 34, 315-23 (1985))、メガプライマー法(Sarkar, G. and Sommer, S. S., Biotechniques 8, 404-407 (1990))が挙げられる。
【0023】
[変異体Vprタンパク質を発現する組換えベクター]
本発明の組換えベクターは、適当なベクターに本発明の変異体vpr遺伝子を連結(挿入)することにより得ることができる。本発明の変異体vpr遺伝子を挿入するためのベクターは、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミド DNA、ファージ DNA等が挙げられる。
【0024】
プラスミドDNAとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えばpRSET、pBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110、pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13、YEp24、YCp50等)などが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ(Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11、λZAP等)が挙げられる。さらに、レトロウイルス又はワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。
【0025】
ベクターに本発明の遺伝子を挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクター DNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。
【0026】
本発明の遺伝子は、その遺伝子の機能が発揮されるようにベクターに組み込まれることが必要である。そこで、本発明のベクターには、プロモーター、本発明の遺伝子のほか、所望によりエンハンサーなどのシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)などを含有するものを連結することができる。なお、選択マーカーとしては、例えばジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。
【0027】
[形質転換細胞]
本発明の形質転換細胞は、本発明のポリヌクレオチドを、目的遺伝子が発現し得るように宿主中に導入することにより得ることができる。簡便で効率が良いことから多くの場合、ベクターを用いて形質転換が行われる。ここで、宿主としては、本発明のDNAを発現できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、エッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等のエッシェリヒア属、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)等のリゾビウム属に属する細菌が挙げられる。また、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の酵母、さらにCOS細胞、CHO細胞等の動物細胞が挙げられる。あるいはSf9、Sf21等の昆虫細胞を用いることもできる。
【0028】
大腸菌等の細菌を宿主とする場合は、本発明のポリヌクレオチドを導入した組換えベクターが該細菌中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボゾーム結合配列、本発明の遺伝子、転写終結配列により構成されていることが好ましい。また、プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
【0029】
大腸菌としては、例えばエッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12、DH1などが挙げられ、枯草菌としては、例えばバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)などが挙げられる。プロモーターとしては、大腸菌等の宿主中で発現できるものであればいずれを用いてもよい。例えばtrpプロモーター、lacプロモーター、Pプロモーター、Pプロモーターなどの、大腸菌やファージに由来するプロモーターが用いられる。tacプロモーターなどのように、人為的に設計改変されたプロモーターを用いてもよい。細菌への組換えベクターの導入方法としては、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えばカルシウムイオンを用いる方法(Cohen, S.N. et al. (1972) Proc. Natl. Acad. Sci., USA 69, 2110-2114)、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
【0030】
酵母を宿主とする場合は、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などが用いられる。この場合、プロモーターとしては酵母中で発現できるものであれば特に限定されず、例えばgal1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、AOX1プロモーター等が挙げられる。酵母への組換えベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロポレーション法(Becker, D.M. et al. (1990) Methods. Enzymol., 194,182-187)、スフェロプラスト法(Hinnen, A. et al. (1978) Proc. Natl. Acad. Sci., USA 75, 1929-1933)、酢酸リチウム法(Itoh, H. (1983) J. Bacteriol. 153,163-168)等が挙げられる。
【0031】
動物細胞を宿主とする場合は、サル細胞COS−7、Vero、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、マウスL細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞などが用いられる。プロモーターとしてSRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター等が用いられ、また、ヒトサイトメガロウイルスの初期遺伝子プロモーター等を用いてもよい。動物細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。
【0032】
昆虫細胞を宿主とする場合は、Sf9細胞、Sf21細胞などが用いられる。昆虫細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法などが用いられる。
【0033】
[本発明の変異体Vprタンパク質の製造]
本発明の変異体Vprタンパク質は、例えば、形質転換体を培養し、その培養物から採取することにより得ることができる。「培養物」とは、培養上清のほか、培養細胞若しくは培養菌体又は細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。「本発明の形質転換体を培養する方法」は、宿主の培養に適用される通常の方法に従って行われる。
【0034】
大腸菌や酵母菌等の微生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が用いられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー等が用いられる。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が用いられる。
【0035】
培養は、好ましくは、振盪培養又は通気攪拌培養などの好気的条件下、37℃で6〜24時間行う。培養期間中、pHは7.0〜7.5に保持する。pHの調整は、好ましくは無機又は有機酸、アルカリ溶液等を用いて行う。培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0036】
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、Lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸(IAA)等を培地に添加してもよい。
【0037】
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているRPMI1640培地、DMEM培地又はこれらの培地に牛胎児血清等を添加した培地等が用いられる。培養は、通常、5%CO存在下、37℃で行う。培養中は必要に応じてカナマイシン、ペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0038】
培養後、変異体Vprタンパク質が菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することにより変異体Vprタンパク質を抽出する。また、本発明の変異体Vprタンパク質が菌体外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体又は細胞を除去する。その後、ポリペプチドの単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、前記培養物中から本発明の変異体Vprタンパク質を単離精製することができる。この精製工程の間又は後において、プロテアーゼ処理により精製のために用いられたタグ配列を除去することができる。
【0039】
[HIV−1感染阻害剤のスクリーニング方法]
本発明のHIV−1感染阻害剤のスクリーニング方法は、HIV−1ゲノムを含むPICが免疫細胞の核膜を通過するためにはVprタンパク質の核移行が重要である事実と、このVprタンパク質の核移行がインポーチンαによって媒介され、Vprタンパク質がインポーチンαと結合できなくなることによって完全に核移行が阻害されるという知見に基づくものである。すなわち、Vprタンパク質とインポーチンαとの結合を阻害することによりPICの核移行が抑止される。その結果、核内においてHIV−1ゲノムの複製が行われないためにHIV−1による感染が阻害されるのである。後述する実施例では、マクロファージのような非分裂細胞においてHIV−1ゲノムが複製するためにはPICの核移行が必須であり、この核移行段階を阻害することによりHIV−1の感染力が大きく低下することが示される。また、Vprタンパク質の核移行にはインポーチンαのみが必要であり、インポーチンβのような核移行のための受容体タンパク質を必要としないことも特徴的である。
【0040】
従って、1つの実施形態として、本発明のHIV−1感染阻害剤のスクリーニング方法は、候補化合物の存在下においてVprタンパク質とインポーチンαとを接触させ、Vprタンパク質がインポーチンαと結合するか否かを検出することを含む。候補化合物とは、核酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド様物質、多糖、脂質、又はその他の有機化合物若しくは無機化合物でありうる。これらは化学合成された化合物ライブラリー又は細菌、カビ、放線菌などの培養物中の化合物からなる生物学的混合物であっても良い。
【0041】
本実施形態において使用するVprタンパク質は、上述したHIV−1のVprタンパク質において、配列番号1に示したアミノ酸配列からなる完全長のタンパク質、及びその一部分からなる部分Vprタンパク質の何れであってもよい。この部分Vprタンパク質は、核移行に必要なVprの最小機能ドメインであり、3つのαヘリックス領域(αH1,17〜33;αH2,38〜50;αH3,56〜77)を形成する(図1)。このN末端から17〜74番目のアミノ酸残基によって形成されるαヘリックス領域(「N17C74」という。)の中でαH1とαH3は、インポーチンαと直接結合することが分かっているが、αH1はインポーチンαとの結合を介したVprタンパク質の核移行に必須な領域であることが、また、αH3はVprの核膜局在に必須であり、その核膜局在もVprの核移行に必須であることが明らかとなっている。すなわち、Vprタンパク質の核膜局在又はインポーチンαとの結合の少なくとも1つの機能、好ましくはその両方を阻害することによりVprタンパク質の核移行を抑止し、HIV−1の感染を阻害することができる。
【0042】
さらに、本実施形態にけるVprタンパク質は、これらのインポーチンαとの結合領域を含み、その他のタンパク質やポリペプチドとの融合タンパク質であってもよい。好ましい実施形態において、当該融合タンパク質は、タグペプチド及び/又はレポータータンパク質等を含む。本明細書において、タグペプチドとは、部分Vprタンパク質のN末端又はC末端に付加されたアミノ酸配列であって、該融合タンパク質をアフィニティー精製したり、ウエスタンブロッティング検出する場合の手がかりとなる配列である。例えば、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、チオレドキシン(TrxA)、セルロース結合ドメイン(CBD)、ストレプトアビジン結合ペプチド(例えば、Streptag(商品名))、及びヒスチジンタグ等が挙げられる。
【0043】
グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)は、可溶性の酵素タンパク質であって、この遺伝子配列の下流にフレームを合わせて目的遺伝子を組み込むとGSTとの融合タンパク質として発現させることができる。このための組換えベクターpGEXはアマシャムファルマシアバイオテック社から市販されている。GSTのタンパク質部分を特異的に認識する抗体や、グルタチオンと結合する性質を利用してアフィニティー精製や酵素免疫染色に利用されている。マルトース結合タンパク質(MBP)は、大腸菌のマルトース結合タンパク質であり、MBPとの融合タンパク質はアミロースやアガロースゲルに吸着させた後、過剰のマルトースで遊離して精製できる。また、抗MBP抗体を使用することもできる。チオレドキシン(TrxA)は、酸化還元反応を触媒する大腸菌のタンパク質であり、機能性の一対のチオール基によって金属キレートアフィニティークロマトグラフィーで精製できる。このための担体として、例えばThioBond(商品名)Resin(Invitorogen社製)等が市販されている。セルロース結合ドメイン(CBD)はClostridium cellulovoransとCellulomonas fimi由来のセルロース結合ドメイン配列で、セルロースに特異的に結合する性質を有し、セルロースやキチンなどの不活性な担体に化学的な修飾を行うことなく固定させることができる。ストレプトアビジン結合ペプチドとして、例えば、Strep-tagIIと呼ばれる8個のアミノ酸からなるペプチドが知られており、StrepTactin(商品名)やStreptavidine(商品名)に選択的に結合させて精製することができる。ヒスチジンタグは、連続した又は近傍に配された少なくとも6個のヒスチジンを含むペプチドが好ましい。ヒスチジンタグは、二価の金属原子、特にニッケル原子と親和性が高い。そのためヒスチジンタグを有するタンパク質はニッケルアフィニティーマトリックスにしっかりと結合し、容易に精製することができる。
【0044】
本発明において用いられるレポータータンパク質は、融合タンパク質として検出が容易なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、β−ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)及びエクオリン等を挙げることができる。
【0045】
インポーチンαとは、タンパク質の核移行に関与する可溶性因子であって、インポーチンβ及びNLSを有するタンパク質と結合するアダプター分子である。そして、一般的なNLSを有するタンパク質は、インポーチンα−NLS複合体と結合したインポーチンβによって細胞質からNPCを介して核内へ運ばれる。NLSを有するタンパク質の核内への放出にはGTPアーゼであるRan/TC4も関与している。一方、本発明において、HIV−1のPICを核内へ輸送するVprタンパク質はインポーチンαのみによって輸送されることが示される。従って、Vprタンパク質とインポーチンαとの結合を阻害することはPICの核移行を効果的に阻害することとなるであろう。本発明の方法に用いられるインポーチンαは、ヒトで見出されている6種類の分子(インポーチンα1(Rch1、hSRP1α)、インポーチンα3(Qip1)、インポーチンα4(hSRP1γ)、インポーチンα5(hSRP1、NPI−1)、インポーチンα6、インポーチンα7)の何れでもよく、あるいはマウスや他の哺乳動物由来のインポーチンαでもよい。
【0046】
Vprタンパク質がインポーチンαと結合するか否かを検出するための1つの実施形態として、プルダウンアッセイがある。この方法は、まず、候補化合物の存在下においてVprタンパク質とインポーチンαとを接触させる工程である。これらの混合物は、通常は生体内に近い条件、例えば、20〜40℃で5分〜数時間、好ましくは10分〜1時間程度インキュベートする。次に、Vprタンパク質、及びインポーチンαの何れかを固相の担体に吸着させ、適当な洗浄液で洗浄することにより非結合成分を洗い流す。担体としては、固体または不溶性材料(例えば、ろ過、沈殿、磁性分離などによりタンパク質混合物から分離することができる材料)であって、タンパク質の非特異的な吸着が少ない物が好ましく、例としては、ビーズ(例えば、アガロース、セファロース、セファデックス、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、セルロース、テフロン(登録商標)、孔調節ガラス(CPG))、薄膜(例えば、セルロース、ニトロセルロースポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ナイロン、ガラス繊維、及びテフロン(登録商標)製)のような平坦担体、ガラスプレート、金属プレート、シリコンウエハ、及びマイクロタイタープレート等を含む。タンパク質を固相担体に吸着させるためには種々の方法がある。例えば、Vprタンパク質、及びインポーチンαの何れかに対する抗体を固定化したビーズなどを用いても良い。好ましくは、上述した融合Vprタンパク質中のタグペプチド等を介して固相担体に吸着させることができる。最後に、固相担体に吸着したタンパク質を回収し、固相担体から他の一方のタンパク質を溶出するか或いは固相担体上で直接、他の一方のタンパク質を検出する。検出には特異的な抗体を用いたイムノアッセイや、上述した融合Vprタンパク質中のレポータータンパク質の活性を測定することによる行うことができる。
【0047】
典型的な1つの方法としてGST−プルダウンアッセイがあり、GSTと融合したVprタンパク質及びインポーチンαの何れか一方のタンパク質をコードする遺伝子を、例えばIPTGで発現誘導が可能な発現ベクターにクローン化する。IPTGを添加することによって、この融合タンパク質は、通常、細菌細胞内で発現され、グルタチオン−アガロースビーズ等を用いたアフィニティークロマトグラフィーによって精製される。他の一方のタンパク質は、精製されたものでも、あるいは細胞のライセートの何れでもよく、また、放射性同位元素で標識されていてもよい。このGST融合タンパク質と、他の一方のタンパク質とを、候補化合物の存在下、グルタチオンアガロースビーズと共にインキュベートし、ビーズから回収したタンパク質複合体をSDS−PAGEで分離し、ウエスタンブロッティング、オートラジオグラフィー、又は上記レポータータンパク質の酵素活性等により検出する。
【0048】
他の1つの方法としては、レポータータンパク質、例えば、GFP類似性の蛍光タンパク質との融合タンパク質を用いるFRET(fluorescence resonance energy transfer)法により、候補化合物の存在下でVprタンパク質とインポーチンαの相互作用を検出することができる。FRETは励起されたフルオロフォア供与体から、その約60Å以内にある受容体フルオロフォアへのエネルギー移行現象である。第一のフルオロフォアの励起後に、適当なフィルターを用いて第二のフルオロフォアからの発光を検出するか、または供与体の蛍光半減期を変えることで検出できる(Tsien RY, Annu. Rev. Biochem. 1998, 67, 509-544)。通常用いられている2つのフルオロフォアは、GFPの変異体であるシアン蛍光タンパク質(cyan fluorescent protein:CFP)及び黄色蛍光タンパク質(yellow fluorescent protein:YFP)である。
【0049】
Vprタンパク質とインポーチンαとの結合阻害に対する候補化合物の有効性は、既知量の候補化合物の存在下および不存在下でVprタンパク質がインポーチンαに結合する能力を測定することによって決定することができる。次に、候補化合物の阻止定数(Ki)を競合的インヒビターの式から計算することができる。
【0050】
[HIV−1の増殖を阻害する医薬組成物]
本発明の変異体Vprタンパク質は、上述したようにCD4陽性T細胞のHIV−1感染を阻害し、及び/又は該ウイルスの増殖を阻害しうることから、AIDSの予防及び/又は治療剤として用いることができる。また、本発明のスクリーニング方法により得られる化合物は、HIV−1感染阻害剤として用いることができる。そのような医薬組成物は、経口又は非経口的に全身又は局所投与することができる。
【0051】
本発明の医薬組成物を経口投与する場合は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、トローチ剤、内用水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等のいずれのものであってもよく、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。また、本発明の医薬を非経口投与する場合は、静脈内注射(点滴を含む)、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、坐剤などの製剤形態を選択することができ、注射用製剤の場合は単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供される。
【0052】
これらの各種製剤は、製剤上通常用いられる賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤、等張化剤等などを適宜選択し、常法により製造することができる。
【0053】
上記各種製剤は、医薬的に許容される担体又は添加物を共に含むものであってもよい。このような担体及び添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトースなどが挙げられる。使用される添加物は、本発明の剤型に応じて上記の中から適宜又は組み合わせて選択される。
【0054】
本発明の医薬の投与量は、投与対象の年齢、投与経路、投与回数により異なり、広範囲に変えることができる。この場合、本発明の変異体Vprタンパク質の有効量と適切な希釈剤及び薬理学的に使用し得る担体との組合せとして投与される有効量は、一回につき体重1kgあたり0.01mg〜1000mgの範囲の投与量を選ぶことができ、好ましくは1日1回から数回に分けて1日以上投与される。
【0055】
[非感染性ウイルスの製造方法]
上記医薬組成物としての利用のために、本発明の変異体Vprタンパク質を含むHIV−1を、ドミナントネガティブな形質を有する非感染性ウイルスとして使用することもできる。該ウイルスは本発明の変異体Vprタンパク質のコード領域を含むHIV−1のプロウイルスDNAを培養細胞に形質転換することにより製造することができる。HIV−1のプロウイルスDNAは種々の培養細胞株、例えば、マウス、ミンク、サル、及びヒトの非T細胞株に形質転換することによってこれらの細胞内でウイルスRNA及びタンパク質を合成、集合して感染性のウイルス粒子を産生することが知られている(Adachi, A. et al., 1986, Journal of Virology, 59, 284-291参照)。該プロウイルスDNA中のvpr遺伝子に特定の変異が導入された変異体ウイルスもまたこれらの細胞を用いて製造することが可能である。あるいは、本発明の変異体Vprタンパク質のみをリポソーム等に封入してウイルス様粒子を製造してもよい。抗HIVgp120抗体リポソームに封入して生体内に導入すればHIV感染細胞特異的な送達も可能である。
【実施例1】
【0056】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
[種々のプラスミドの構築と変異体Vprタンパク質の発現]
Vprタンパク質は正規の核移行シグナル(NLS)を含んでいないが、PIC(preintegration complex)と相互作用して核へ移行し重要な役割を果たす。さらに、Vprタンパク質は細胞周期のM期へ入るために必要なCdc2キナーゼの活性化を阻害することによって細胞周期をG期で停止させる。G期はウイルスのLTRが最も活性化されるので、この時期に停止した細胞はウイルス産生が増強される。これに対し、Vprタンパク質によるアポトーシスの誘導はG期での停止とは独立して起こるものもある。このような多様なVprタンパク質の生物学的活性は、上述したようにタンパク質の立体構造と関連していることが示唆されている。
【0057】
そこで、これらの生物学的な活性がVprタンパク質のどのような構造と関連しているかを確かめるために、以下のような種々の変異体Vprタンパク質をコードする発現ベクターを構築した。(i)第2のα−ヘリックスドメイン内にあるヒスチジン(45番目)とイソロイシン(46番目)を、それぞれトリプトファンとアラニンに置換したHI4546WA、(ii)第3のα−ヘリックスドメイン内にある、かさ高い非極性のロイシン(67番目)を小さなアラニンに置換して疎水性の顕著な変化を導入したL67A、(iii)アルギニンに富む領域内にある2つのアルギニン(87番目と88番目)をそれぞれグルタミン酸とアラニンに置換したR8788EA、(iv) 第3のα−ヘリックスドメイン内にあるロイシン(67番目)をプロリンに置換してヘリックス構造を破壊したL67P、及び(v)第1のα−ヘリックスドメイン内にある4つのかさ高い非極性のロイシン(20、22、23、及び26番目)をそれぞれアラニンに置換し、さらに第3のα−ヘリックスドメイン内にあるロイシン(67番目)をプロリンに置換したαLAL67P(図1A参照)。
【0058】
発現ベクターpME18Neoに基づいて作製された種々のプラスミド、即ち、Flag−tag配列と接続された野生型Vprタンパク質;L67A、αLAL67A、及びL67P等のアミノ酸置換変異体;及びコントロールプラスミドpME18Neo−Flagをコードする発現ベクターは既に報告されている(Kamata, M., and Aida, Y., 2000, Journal of Virology, 74, 7179-7186; Nishizawa, M. et al., 1999, Virology, 263, 313-322; Nishizawa, M. et al., 2000, Virology, 276, 16-26参照)。簡単に説明すると、以下に具体的に記載した方法と同様であり、PCRに基づく部位特異的変異導入キットExSite (Stratagene)と、上記各文献に記載されている所定のプライマーセットを用いてプラスミドpSK−Fvprに部位特異的な変異を導入した。
【0059】
変異体R8788EAと、変異体HI4546WAを作製するために、PCRに基づく部位特異的変異導入キットExSite (Stratagene)を用いてプラスミドpSK−Fvprに部位特異的な変異を導入した。増幅用に設計したプライマーセットは以下の通りである。
R8788EA用として:5'-AGGGCAGCAAGAAATGGAGCCAG-3'(配列番号6)及び5'-CTGTCGAGTAACGCCTATTCTGC-3'(配列番号7)、HI4546WA用として:5'-TATGAAACTTACGGGGATACTTGGG-3'(配列番号8)及び5'-CGCCCATTGTCCTAAGTTATGG-3'(配列番号9)。pSK−Fvpr内の変異したvprとFlag配列を含むそれぞれのXhoI-NotI断片を切り出し、pME18Neoにサブクローニングした。
【0060】
HIV−1感染性DNAクローンpNL432のvpr遺伝子に種々の変異を導入した変異体分子クローンを作製するために、上述した方法と同様にPCRに基づく部位特異的変異導入キットExSite (Stratagene)を用いて、HIV−1感染性DNAクローンNF462のNdeI-SalI断片を含むpUC19に部位特異的な変異を導入した。増幅用に設計したプライマーセットは以下の通りである。ΔVpr用として:5'-GAACAAGCCCCAGAAGACCAAGG-3'(配列番号10)及び5'-ACCTGTCCTCTGTCAGTTTCCT-3'(配列番号11)、L67A用として:5'-AAGCACTGTTTATCCATTTCAGA-3'(配列番号12)及び5'-GTTGCAGAATTCTTATTATGG-3'(配列番号13)、HI4546WA用として:5'-TATGAAACTTACGGGGATACTTGGG-3'(配列番号8)及び5'-CGCCCATTGTCCTAAGTTATGG-3'(配列番号9)、L67P用として:5'-CAACCCCTGTTTATCCATTTC-3'(配列番号14)及び5'-TTGCAGAATTCTTATTATGGCTTCC-3'(配列番号15)、並びにαLA用として:5'-CCGAGGAAGCCAAGAGTGAAGCTGTTAGA-3'(配列番号16)及び5'-CCGCCTCGGCTGTCCATTCATTGTATGGCTCC-3'(配列番号17)である。さらにαLAL67Pの多重置換体を作製するために、上記αLA変異断片を含むpUC19と5'-CAACCCCTGTTTATCCATTTC-3'(配列番号14)及び5'-TTGCAGAATTCTTATTATGGCTTCC-3'(配列番号15)のプライマーセットを用いた。pUC19内の変異を含むそれぞれのPflMI-SalI断片を切り出し、pNL432のNdeI-SalI断片を含むpSKにサブクローニングした。
【0061】
以上作製したすべてのプラスミド構築物は、BigDyeターミネーターサイクルシーケンシングキットとABI PRISM310(PEアプライドバイオシステムズ社)を用いて塩基配列を確認した。変異体Vprタンパク質を発現させるための種々のプラスミドの構築を、図1(A)に模式的に示した。
【0062】
このようにして作製した種々の発現ベクターを用いて種々の細胞を形質転換し、野生型及び種々の変異体Vprタンパク質の発現を確認した。宿主細胞として用いたHeLa細胞、アフリカミドリザルCOS−1細胞及びヒトTリンパ球細胞株Jurkatは、2〜10%の熱処理牛胎児血清(FCS)、ペニシリン(100μg/ml)及びストレプトマイシン(100μg/ml)を添加したRPMI1640培地で維持した。ウエスタンブロッティング、免疫蛍光染色、並びにアポトーシス及び細胞周期の検査のために、1×10個のHeLa細胞を20μgの各種発現ベクターで形質転換した。形質転換はジーンパルサー(Bio-Rad)を用いたエレクトロポレーションにより、直径0.4cmのキュベット内で300V、975μFで操作した。COS−1細胞はウイルス保存液の調製に用いた。
【0063】
図1(A)に示した6種類のプラスミドをHeLa細胞に形質転換しそれぞれのタンパク質のアミノ末端領域に存在するFlag-tag配列を認識するモノクローナル抗体M2を用いて形質転換後24時間の細胞から抽出したタンパク質を電気泳動しウエスタンブロッティング法により検出した。図1Bに示したように、何れの変異体Vprタンパク質も検出可能な程度に発現することが分かったが、αLAL67Pは野生型及び他の変異体タンパク質に比べて多少移動度が遅く、立体構造の違いが示唆された。
【0064】
[細胞周期の解析]
種々の発現ベクターで形質転換したHeLa細胞は、48時間後に回収し、1%ホルムアルデヒド、70%エタノールで固定した後Flag配列特異的なモノクローナル抗体M2(Eastman Kodak)で1時間インキュベートした。PBSで洗浄後、細胞をAlexa488と複合化したヤギ抗マウスIgG(Molecular Probes)と45分間インキュベートした。その後細胞を再びPBSで洗浄し、DNA含量を解析するためのヨウ化プロピジウム(PI;50μg/ml)、RNaseA(50μg/ml)及びFSC(2容量%)を含むPBS中に37℃で15分間インキュベートした。10000個の細胞の蛍光強度をFACScanシステムとCell Questソフトウエア(何れもBecton-Dickinson社製)により解析した。Alexaが強い蛍光を発光しない細胞を除いてデータを整理した。G/M期の細胞の相対数はModFit LTソフトウエア(Verity Software House)を用いて計算した。
【0065】
[アポトーシス解析]
アポトーシスの解析のため、フローサイトメトリーを用いてカスパーゼ3活性の2色免疫蛍光染色を行った。20μgのVpr発現プラスミド(野生型又は変異体)で細胞を形質転換後24時間でHeLa細胞を回収し1%ホルムアルデヒド、70%エタノールで固定した後Flag配列特異的なモノクローナル抗体M2(Eastman Kodak)で1時間インキュベートした。PBSで洗浄後、細胞をAlexa488と複合化したヤギ抗マウスIgG(Molecular Probes)と45分間インキュベートした。その後細胞を再びPBSで洗浄し、フィコエリトリン(PE)と複合化したウサギ抗活性化カスパーゼ3抗体(BD Biosciences)と共に4℃で1時間インキュベートした。10000個の細胞の蛍光強度をFACScanシステムとCell Questソフトウエア(何れもBecton-Dickinson社製)により解析した。Alexaが強い蛍光を発光しない細胞を除いてデータを整理した。蛍光染色陽性細胞の相対数をパーセンテージで示した。
【0066】
[細胞内局在性の解析]
種々の変異体Vprタンパク質発現ベクターで形質転換したHeLa細胞は、48時間以内にカバーガラス上にて1%ホルムアルデヒド−PBSで氷上1時間固定し、0.2%Triton X-100を含むPBSで10分間透過処理し、2回PBSで洗浄した。その後細胞をFlag配列特異的なモノクローナル抗体M2(Eastman Kodak)、又は通常のマウス免疫グロブリンG(IgG)で1時間インキュベートした。PBSで洗浄後、細胞をAlexa488と複合化したヤギ抗マウスIgG(Molecular Probes)と45分間インキュベートした。カバーガラスをPBSで洗浄した後スライドガラスの上に載せ共焦点レーザー顕微鏡(LSM510; Carl Zeiss)で観察した。
【0067】
以上の結果を表1にまとめた。第2のαヘリックスドメイン内にアミノ酸置換を有するHI4546WA変異体は、G2停止とアポトーシスを誘導する能力を維持していたが核への局在能力を失っていた。Vprタンパク質のカルボキシ末端ドメインに変異を有するR8788EAは核局在及びアポトーシスを誘導することはできたが細胞周期をG2期で停止させる活性が損なわれていた。カルボキシ末端の特徴的な塩基性アミノ酸残基は核への局在やアポトーシスにとっては必須でないかもしれない。Vprタンパク質の第3のαヘリックスドメインに存在するロイシンをアラニンへ置換した変異体L67AはG2停止を誘導し及び核に局在する活性は維持していたがアポトーシス誘導活性は低下していた。
【0068】
次にこれらの変異体Vprタンパク質を含むウイルスの複製(増殖)について、3人のドナーから採取した活性化されたCD4陽性T細胞初代培養細胞を用いて比較した。3〜4日間隔で培養液上清を回収し、その中に含まれるp24抗原量をELISAにより定量してウイルスの増殖を調べた結果を表1に示した。野生型Vprを含むウイルスについては、高感染力価(5ngのp24抗原相当量)及び低感染力価(0.5ngのp24抗原相当量)の何れの場合も感染性を有し、培養後21日で最も増殖した。vpr遺伝子の翻訳開始コドンATGを欠失させたΔVpr変異体ウイルスは増殖速度の低下が認められた。核局在機能を失ったHI4546WA変異体やG停止機能の低下したR8788EA変異体についてもΔVpr変異体ウイルスと同様に増殖速度が低下していた。これに対し、G停止機能及び核局在性を共に維持しているL67A変異体は野生型ウイルスと同じ増殖速度を有していた。これらの結果は、アポトーシス誘導機能ではなく、核への局在性及びG停止機能が、高感染力価及び低感染力価の何れの場合もCD4陽性T細胞中におけるウイルスの増殖に重要なことが示唆された。
【0069】
【表1】

【0070】
[変異体Vprタンパク質を発現するHIV−1のCD4陽性T細胞への感染と増殖]
ウイルス保存液の調製は以下の2つの方法で行った。第一の方法は、FuGENE6(ロシュダイアグノスティクス)を用いた。形質転換するDNAは無血清のダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;GIBCO)で1:10(w/v)で希釈し、FuGENE6試薬は25mMのHEPES緩衝液で1:2で希釈して室温で5分間インキュベートした。これらを混合し室温にて少なくとも15分間インキュベートした。このDNA複合体を新鮮な培地中のCOS−1細胞に添加し、37℃で5%CO条件下4時間インキュベートした。培地を新鮮なものに置換した後72時間培養を継続した。第二の方法としては、エレクトロポレーション法を用いた。COS−1細胞はPBSで洗浄した後、1×K−PBS(10×K−PBS緩衝液は308mMのNaCl、1207mMのKCl、81mMのNaHPO、及び146mMのKHPOを含む)中に1×10個/mlの濃度の細胞と30μg/μlのプラスミドDNAを添加して再懸濁した。細胞はジーンパルサー(gene pulsar;Bio-Rad)を用いて260V,970μFで操作されたキュベット内にて形質転換した。その後、細胞は新鮮な培地中で37℃、5%CO条件下で培養した。上記のような方法でDNAを導入した後72時間で培養上清を回収し、0.45μmのポアサイズのフィルターでろ過した。
【0071】
このようにして調製したウイルス保存液の感染力価は、それぞれの培養上清中に存在するp24抗原量に基づいて測定した。測定は、2種類の抗体、即ち、p24特異的モノクローナル抗体(Nu24)とパーオキシダーゼ標識モノクローナル抗体(10B5)の組み合わせた酵素免疫法(ELISA)により行った。
【0072】
CD4陽性T細胞の調製は次のように行った。HIV−1血清陰性健常人ドナーからフィコールグラジエント法により末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。回収したPBMCを2度洗浄した後、CD14特異的モノクローナル抗体(MACS system, Militenyi Biotec)でコートしたマイクロビーズを用いて磁気細胞分離システムにより単球(monocyte)を除去した。単球を除去した後、T細胞カラムを用いてCD4陽性T細胞をCD14陰性PBMCから分離した(Tsunetsugu-Yokota et al 2003 J.Virol. 77, 10250-10259参照)。このようにして単離したCD4陽性T細胞(純度95〜98%)をCD3特異的及びCD28特異的モノクローナル抗体とIL2存在下(20U/ml;ジェンザイム社製)で37℃、5%CO条件下で培養して活性化した。
【0073】
CD4陽性T細胞を0.5ng又は5ngのp24抗原を含む種々の希釈ウイルス保存液に37℃で2時間暴露した。細胞を3回洗浄した後、感染細胞(5×10個/ml)を48ウェル組織培養用プレート(コーニング社)に植えつけ、10%牛胎児血清と20U/mlのIL2を含むRPMI1640培地で維持した。3〜4日間隔で培養上清を回収し、上清中に産生されたウイルス量をHIV−1p24gagELISAキット(RETRO TEC)を用いてp24抗原量の経時的な定量によりモニターした。
【0074】
図2は、野生型又は種々の変異体Vprタンパク質をコードしたウイルス(0.5ngのp24抗原相当量)により感染したCD4陽性活性化T細胞の増殖キネティクスを示す。感染後3週間におけるウイルス産生の様子を3〜4日ごとに培養上清に存在するp24抗原量を指標としてモニターした。その結果、図2に示したように野生型又はHI4546WA変異体では経時的にウイルス産生が認められたがL67P及びαLAL67P変異体ウイルスではほとんどウイルスの産生が認められず、CD4陽性T細胞において増殖できないことが示された。ここで重要なことは、Vprタンパク質を欠損した変異体ウイルスにおいては感染後10日目あたりから多少のウイルス産生が検出されたのに対し、本発明に係るL67P及びαLAL67P変異体Vprタンパク質をコードするウイルスではほとんどウイルスの産生が検出されなかったことである。即ち、これらの変異体Vprタンパク質は細胞内におけるウイルスの複製を阻害している可能性があり、HIV−1の感染に対するドミナントネガティブな阻害剤となりうることが強く示唆された。
【0075】
これらの結果を以下の表2にまとめた。HI4546WA変異体はHeLa細胞では細胞質全体に存在するがJurkat細胞やCD4陽性T細胞では核内に移行する。従って、活性化されたCD4陽性T細胞中にはVprタンパク質を核内へ移行させる何らかの細胞質因子の存在することが明らかとなった。一方、L67P変異体やαLAL67P変異体は、CD4陽性T細胞中に存在するこれらの核移行のための細胞質因子との相互作用が阻害され、核へ移行することができないためにウイルスの感染能力が損なわれた可能性がある。あるいは、これらの変異体Vprタンパク質はCD4陽性T細胞中の別の細胞質因子と相互作用することによって細胞質に留まると共に、この細胞質因子の核への移行を阻害することによってウイルスの感染能力を抑制することも考えられる。
【0076】
【表2】

【実施例2】
【0077】
[組換えタンパク質の調製]
GSTタグ及びGFPと融合した種々のVprタンパク質の構築方法は、基本的に以下に示した具体例と同様の方法により行った。すなわち、GSTタグと、αLA変異を有する部分Vprタンパク質N17C74と、GFPとの融合タンパク質は、プラスミドpSK−FαLAを鋳型として、プライマー5'-GCGGATATCCGAATGGACAGCCGA-3'(配列番号18)及び5'-CGCGGATCCCCAATTCTGAAA-3'(配列番号19)を用いて増幅した。増幅したDNA断片はプラスミドpGEX−6P3のBamHI及びNotI部位にサブクローン化した。このようにして作製した種々のGSTタグ付加変異体Vprタンパク質の発現プラスミドは、大腸菌NovaBlue株(ノバジェン社)を用いて発現した。組換え大腸菌を16℃にて一晩培養した後、菌体を集め、回収した菌体を超音波処理にて溶菌し、上清中のGSTタグ付加タンパク質をグルタチオンセファロース4B(アマシャムファルマシアバイオテック社)に吸着させた。吸着したタンパク質を16mMのグルタチオン溶液にて溶出し、核移行解析用バッファー(20mMのHEPES−KOH8pH7.3)、110mM酢酸カリウム、2mM酢酸マグネシウム、5mM酢酸ナトリウム、2mMのEDTA、2mMのDTT)に対して透析し、Vivaspin(ザルトリウス社の商品名)を用いて遠心濃縮した。
【0078】
組み換え型インポーチンα及びβは、N末端側にGSTを持つ融合タンパク質として大腸菌BL21コドンプラス(DE3)−RIL株(ストラタジーン社)で発現させ、グルタチオンセファロース4Bに吸着した後、プロテアーゼにてGSTを切断除去した。また、SV40−NLSはN末端側にGST,C末端側にGFPを持つ融合タンパク質として、Vprタンパク質と同様の方法で調製した。
【0079】
[Vprの核移行におけるインポーチンα及びβの役割]
In vitroでの核移行アッセイは、ジギトニン処理HeLa細胞とVpr、SV40−NLSの精製タンパク質と細胞由来の細胞質画分を用いて行った。HeLa細胞を核移行解析用バッファー中、氷冷下で5分間、25μg/mlジギトニン(Fluka AG)で処理して透過性にした。核移行解析用バッファー中に終濃度で1μMとなるように添加したGFP融合タンパク質を含む40μlの試験サンプルを用いた。この40μlの試験サンプル中には、組み換えインポーチンα、及びβの存在比を変えて添加した。核移行反応は30℃で、30分間進行させた後、氷冷した核移行解析用バッファーで細胞を2回洗浄し、1%ホルムアルデヒドを含む核移行解析用バッファー中、氷上で30分間固定した。このようにして作成した標本を共焦点レーザースキャニング顕微鏡(ラディアンス2100、バイオラッド)で調べた。また、Vpr及びSV40−NLSと、インポーチンα及びβとの結合をプルダウンアッセイにより解析した。
【0080】
Vprの核移行能と、Vprとインポーチンα及びβとの結合能との相関性を、典型的な核移行を示すSV−40のNLSと比較した。その結果、Vprはインポーチンβの量依存的に核移行能が抑制され、同時にインポーチンαとの結合が失われる競合阻害が認められた(図3(a))。この結果はSV−40のNLSとは異なり、Vprがインポーチンα単独で促進される核移行機序を有する事を示している。即ち、Vprはインポーチンαとの結合を介して核移行するが、インポーチンβがある一定量以上存在すると、βがインポーチンαと結合してVprとの結合を奪うため、Vprとインポーチンαとの結合が弱くなることが明らかとなった。
【0081】
次に、インポーチンα側のインポーチンβ結合ドメイン(IBBドメイン)を欠失した変異体ΔIBBインポーチンαを用いて同様の解析を行った(図3(b))。VprはΔIBBインポーチンαと結合し、野生型インポーチンαで観察されたようなインポーチンβの量依存的な結合の阻害は認められなかった。核移行解析では、予想と反して、インポーチンβとは結合するはずのないΔIBBインポーチンαでVprの核移行がβにより阻害された。一方、NLSの核移行は認められなかった。一つの細胞を拡大して断片の蛍光強度でVprの局在を解析すると、Vprに特徴的な核膜局在はインポーチンβの量依存的に阻害された。この結果から、インポーチンβはVprの核膜への局在を阻害する可能性が考えられた。
【0082】
[核移行の蛍光イメージング解析]
GFP融合N17C74、あるいはその変異体の精製タンパク質を最終分化マクロファージの細胞内にマイクロインジェクションした細胞は培養液中で生きたまま使用し、蛍光タンパク質の挙動を蛍光顕微鏡、高解像度CCDカメラを用いて経時的に15分間観察した。その結果を図4に示した。マイクロインジェクション後約1分でN17C74は生細胞内で核移行したが、インポーチンαとの結合能を失った変異体(αZLA)、核膜局在を失った変異体(L67P)、その両方を失った変異体(αLA/L67P)は全く核移行しなかった。従って、Vprの核移行はインポーチンαとの結合と、核膜への局在のいずれかを失うことで阻害されることが示唆された。
【0083】
[変異体ウイルスによるマクロファージへの感染実験]
インポーチンαとの結合及び核膜局在を失った上記vpr変異体をマクロファージ指向性感染性DNAクローンpNF462のvpr遺伝子に組み換えたウイルスを、COS−1細胞を用いて産生させた。各々のウイルス量をp24値で揃えて、3名のドナー由来の最終分化マクロファージに感染させ、その感染性を培養上清中に放出されたp24抗原量で測定した。その結果を図5に示した。インポーチンαとの結合性を失ったαLA変異体ウイルス(◇)及び核膜局在を失ったL67P変異体ウイルス(△)は、Vprの欠失変異体と同様、3人のドナーすべてにおいて野生型ウイルスと比較してウイルスの増殖が著しく減少していた。これらの結果より、インポーチンαとの結合能を失ったVpr変異体を有するHIV−1はマクロファージへの感染効率を失うか、あるいは著しく低下することが明らかとなった。従って、HIV−1のマクロファージへの感染は、Vprとインポーチンαとの結合を阻害することによって、Vprの核移行を抑止することで阻止できることが示唆された。
【0084】
[結論及び考察]
Vprの核移行には、インポーチンαとの結合と核膜局在が必要であることが示唆された。また、インポーチンαの結合あるいは核膜局在の片方でも失ったVpr変異HIV−1はマクロファージ感染効率が著しく低下する事から、マクロファージへの感染はVprの核移行および核膜局在を消失するだけで、阻止できることが示唆された。これらの事実はVprとインポーチンαの結合を標的とした新規抗HIV−1薬の開発が可能である事を示唆している。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】変体Vprタンパク質の構築(A)とHeLa細胞で発現させたタンパク質をウエスタンブロッティングにより検出した結果(B)である。
【図2】種々の変異体Vprタンパク質を発現するHIV−1ウイルスを感染させたCD4陽性T細胞におけるウイルス増殖をモニターしたグラフである。
【図3】Vprの核移行をin vitroでの核移行アッセイにより解析した結果である。(a)Vprとインポーチンαの結合を介した核移行はインポーチンβの量依存的に抑制されることを示す。(b)VprはΔIBBインポーチンαと結合し核移行するが、インポーチンβはその過程だけでなくVprの核膜局在をも阻害することを示す。
【図4】最終分化マクロファージへマイクロインジェクションしたVpr及びその変異体のイメージング解析の結果である。
【図5】変異体ウイルスを用いたマクロファージへの感染実験の結果である。マクロファージへの感染はVprの核移行及び核膜局在を消失するだけで阻止される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト免疫不全症ウイルス1型(HIV−1)Vprタンパク質のα−ヘリックス領域内に少なくとも1つの突然変異を有し、前記突然変異によって少なくとも1つのα-ヘリックス構造が不安定化された変異体Vprタンパク質を含むことを特徴とするHIV−1の増殖阻害剤。
【請求項2】
前記突然変異は、Vprタンパク質のN末端から60番目のイソロイシン、67番目のロイシン、74番目のイソロイシン、及び81番目のイソロイシンからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸がα-ヘリックス構造を不安定化するアミノ酸又は側鎖の性質を変化させるアミノ酸で置換されることである請求項1に記載の阻害剤。
【請求項3】
前記変異体Vprタンパク質が以下の(a)又は(b)からなる請求項1又は2に記載の阻害剤:
(a)Vprタンパク質のN末端から67番目のロイシン、及び/又は74番目のイソロイシンがプロリンに置換された変異体Vprタンパク質、
(b)(a)のタンパク質のN末端から67番目及び74番目以外の1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、又は付加されたタンパク質であって、且つHIV−1の増殖を阻害する活性を有する変異体Vprタンパク質。
【請求項4】
前記変異体Vprタンパク質が、配列番号3〜5の何れかに示したアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、又は付加されたタンパク質であって、且つHIV−1の増殖を阻害する活性を有する請求項1に記載の阻害剤。
【請求項5】
HIV−1のVprタンパク質のN末端から60番目のイソロイシン、67番目のロイシン、74番目のイソロイシン、及び81番目のイソロイシンからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸が、α-ヘリックスを不安定化するアミノ酸又は側鎖の性質を変化させるアミノ酸へ置換されたことを特徴とする変異体Vprタンパク質。
【請求項6】
前記α-ヘリックスを不安定化するアミノ酸がチロシン、アスパラギン、プロリン、又はグリシンである請求項5に記載の変異体Vprタンパク質。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の変異体Vprタンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項7に記載のポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
【請求項9】
請求項8に記載の組換えベクターを含んでなる形質転換細胞。
【請求項10】
請求項5又は6に記載の変異体Vprタンパク質のコード領域を含むHIV−1のプロウイルスDNAを培養細胞に形質転換する工程と、前記形質転換細胞の培養上清より変異体HIV−1を回収する工程と、を含むことを特徴とする非感染性ウイルスの製造方法。
【請求項11】
ヒト免疫細胞へのHIV−1感染を阻害する化合物をスクリーニングする方法であって、候補化合物の存在下においてVprタンパク質とインポーチンαとを接触させ、Vprタンパク質がインポーチンαと結合するか否かを検出すること、
を含み、前記Vprタンパク質とインポーチンαとの結合を阻害する化合物がヒト免疫細胞へのHIV−1感染を阻害することを特徴とする方法。
【請求項12】
ヒト免疫細胞へのHIV−1感染を阻害する化合物をスクリーニングする方法であって、候補化合物の存在下においてVprタンパク質を前記ヒト免疫細胞に導入し、Vprタンパク質が核膜に局在するか否かを検出すること、
を含み、前記Vprタンパク質の核膜局在を阻害する化合物がヒト免疫細胞へのHIV−1感染を阻害することを特徴とする方法。
【請求項13】
前記Vprタンパク質が、配列番号1に示したアミノ酸配列の17〜74番目のアミノ酸残基によって形成されるα−ヘリックス領域を含む部分Vprタンパク質、又は融合Vprタンパク質である請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記Vprタンパク質が、配列番号1に示したアミノ酸配列の17〜34番目のアミノ酸残基によって形成されるα−ヘリックス領域を含む部分Vprタンパク質、又は融合Vprタンパク質である請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記Vprタンパク質が、配列番号1に示したアミノ酸配列の56〜77番目のアミノ酸残基によって形成されるα−ヘリックス領域を含む部分Vprタンパク質、又は融合Vprタンパク質である請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記融合Vprタンパク質が、タグペプチド、及び/又はレポータータンパク質を含む請求項13〜15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記免疫細胞が、マクロファージである請求項11〜16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項11〜17の何れか一項に記載の方法により得られることを特徴とするHIV−1感染阻害剤。
【請求項19】
請求項1〜4の何れか一項に記載のHIV−1の増殖阻害剤若しくは請求項8に記載の組換えベクター、又は請求項18に記載のHIV−1感染阻害剤を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項20】
AIDSの予防及び/又は治療用である請求項19に記載の医薬組成物。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−67994(P2006−67994A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−54161(P2005−54161)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年11月1日 第52回日本ウイルス学会学術集会発行の「第52回 日本ウイルス学会学術集会プログラム・抄録集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年11月20日 日本エイズ学会発行の「日本エイズ学会誌(季刊)第6巻第4号」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年12月9日から12月11日 日本エイズ学会主催の「第18回 日本エイズ学会学術集会・総会」において文書をもって発表
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】