説明

HIVVif変異体

Vif野生型コンセンサス配列を表す図1Aに記載のアミノ酸配列の127, 128, 130, 131, 132および142位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されている、Vifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、該ヌクレオチド配列がHIV-IのF12非産生型変異株のVif配列を表す図2に示されるアミノ酸配列をコードするものではない、上記ポリヌクレオチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンチウイルスベクター、およびHIVによる感染(HIVによる重複感染を含む)に対する耐性を付与する方法におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
AIDSは発展途上国では主要な死因の1つであり、その拡散は世界的なものとなりつつある。しかしながらHIV-1撲滅の実現にはほど遠い。現在、高活性抗レトロウイルス療法(HAART)がAIDSの進行と拡散をくい止めるための唯一の効果的な治療法であるが、その長期の使用は、複雑な投薬レジメンの順守、副作用の毒性および高コストなどといった欠点や制限を伴う(Richmanら, 2001)。HIV-1ゲノムの高い突然変異率に起因するその大きなサブタイプ内およびサブタイプ間の遺伝的および抗原的変動性、ならびに不適切なコンプライアンスが、HAART薬物への耐性、および複数のクレードに基づく予防ワクチン開発の度重なる失敗の原因である(Hoら, 2002)。このような背景に基づき、AIDSに対する代替的および/または追加的な治療法の開発は必須である。
【0003】
何年にも渡る前臨床調査から、HIV-1のライフサイクルがいくつもの段階で妨害可能であることが示され、少なくとも抗HIV遺伝子治療の概念が立証された(Buchschacher ら, 2001)。造血幹細胞(HSC)、T細胞前駆細胞またはTリンパ球は、例えば、以下をコードする遺伝子を用いて遺伝学的に改変することができる:リボザイム、デコイ、アンチセンスおよび低分子干渉性RNA(siRNA)分子(ウイルス性および細胞性遺伝子を標的とする)(Buchschacher ら, 2001; Jacque ら, 2002; Novina ら, 2002; Lee ら, 2002; Coburn ら, 2002; Qin ら, 2003)、またはタンパク質、例えばイントラカイン(intrakine)、毒素および一本鎖抗体。しかしながら、抗HIV-1リボザイムまたはウイルスタンパク質のトランスドミナント突然変異体を発現するレトロウイルスベクターで形質導入されたTリンパ球を用いた初期臨床試験の結果は、期待はずれであり(Woffendin ら, 1996; Ranga ら, 1998; Wong-Staal ら, 1998)、これは主に低い遺伝子導入効率、不十分な移植および遺伝子操作されたT細胞の短いin vivo持続性ゆえである。これまで行われたほとんどの前臨床試験および臨床試験は、HSCまたはT細胞に形質導入を行うためのモロニーマウス白血病ウイルス(MLV)由来のレトロウイルスベクターを使用することに基づいていた。しかしながら、MLV由来のベクターには以下のような臨床応用における大きな制限があることが示されている。すなわち、細胞分裂をしないHSCおよびT細胞における低い形質導入効率、治療に使える可能性がある抗HIV産物の不十分な発現、および癌遺伝子挿入による活性化により新生物を誘発する傾向などである(Baum ら, 2003)。
【0004】
抗HIV遺伝子治療の可能性のある標的の中に、ウイルス感染性因子(vif)遺伝子の産物がある。vifは、HIV-1の4つのアクセサリー遺伝子のうちの1つであり、ウイルス複製の後期にRev依存的に発現される(Cullen ら, 1998; Frankel ら, 1998)。Vifタンパク質は、いわゆる「非許容性」細胞における高いウイルス感染性にとって必要とされ、この非許容性細胞には、HIV-1の天然の標的(T細胞およびマクロファージ)ならびに一部のT細胞株、例えばCEM、H9、およびHUT 78 (Fisher ら, 1987; Fouchier ら, 1996; Gabuzda ら, 1992; Sheehy ら, 2002; Simon ら, 1996; von Schedler ら, 1993)が含まれる。この必要性は、HIV-1に対する先天的免疫を付与する最近同定されたCEM15/APOBEC-3G タンパク質(Sheehyら, 2002)の作用をうち消すVifの能力に依存する。このことから、Vifの機能の無能力化または妨害は、代替的な抗HIV-1治療法に相当すると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
F12-vifは、15のユニークなアミノ酸置換を有するvifの天然の突然変異体であり、HIV-1のF12 非産生型変異株において最初に発見された(Federico ら, 1989; Carlini ら, 1992; Carlini ら, 1996)。F12非産生型HIVは、重複感染性HIVの複製阻止を誘発し、F12-Vifがこの産生株の感染力低下においてある役割を果たしている可能性がある。一方、抗HIV活性を有する別のvif変異体を提供すること、およびこうした変異体のための効率的な送達システムを提供することが必要とされている。本発明はこうした課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明者らは、HIV-1に感染したT細胞株におけるin vitroでのHIV-1複製を阻害するのに非常に効果的なvifの新規変異体を開発した。とりわけ、本発明者らは、野生型配列の127, 128, 130, 131, 132および142位に対応するアミノ酸に変更アミノ酸を有するVif タンパク質が、HIVに対する抗ウイルス作用を示すのに十分であることを見出した。さらに、本発明者らは、WT-Vif配列中に組み込まれた、たった6個のユニークなアミノ酸置換を有する、F12-Vifの45アミノ酸領域(Chim3)が、ヒトTリンパ球をHIV-1感染から保護することを示す。さらに、本発明者らは、Chim3が、F12-Vifとは対照的に、非許容性細胞中でのVif欠損ビリオン(Δvif HIV-1)の複製をレスキューすることができないことを示す。このことから、この変異体が患者の体内にサイレントな状態で隠れているΔvif HIV-1準種に遭遇する状況においては、この変異体の使用は、より安全なものとなる。
【0007】
本発明の一実施形態に関連する利点は、変異型Vifトランスジーンが、HIV-1感染細胞中でのみ活性化されるTat依存性の野生型HIV-1 LTRの転写制御下にあり、したがって形質導入されたHSCおよびその子孫における外来抗原の不要な発現が回避されるということ、すなわちHIV-1の発現はHIV-1誘導性の制御下にある、ということである。
【0008】
発明の説明
本発明の第1の態様においては、図1Aに記載の配列の127, 128, 130, 131, 132および142位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されている(すなわち、該アミノ酸はそれぞれH, I, S, P, R およびVではない)、Vifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、該ヌクレオチド配列が図2に記載のアミノ酸配列をコードするものではない、前記ポリヌクレオチドを提供する。
【0009】
本発明の別の態様においては、図1Aに記載の配列の127, 128, 130, 131, 132および142位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されており、かつ22, 29, 41, 48, 66, 80, 109, 185および186位に対応するアミノ酸の1以上がそれぞれ対応してI, I, K, N, V, N, R, RおよびNではない、Vifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0010】
好ましくは、22, 29, 41, 48, 66, 80, 109, 185および186位に対応するアミノ酸はいずれも、それぞれ対応してI, I, K, N, V, N, R, RおよびNではない。
【0011】
一実施形態においては、図1Aに記載の配列の127, 128, 130, 131, 132および142位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されており、かつ22, 29, 41, 66, 80, 109, 185および186位に対応するアミノ酸が、いずれも、それぞれ対応してI, I, K, V, N, R, RおよびNではない。
【0012】
好ましくは127, 128, 130, 131, 132および142位に対応するアミノ酸はいずれも、それぞれ対応してN, V, R, L, SおよびIで置換されている。
【0013】
一実施形態において、48位に対応するアミノ酸はNである。
【0014】
好ましくは、22, 29, 41, 48, 66, 80, 109, 185および186位に対応するアミノ酸は、限定するものではないが、HXB2 登録番号K03455、BRU 登録番号 K02013、SF2 登録番号 K02007、PV22 登録番号 K02083、MN 登録番号M17449およびNL4-3 登録番号 M19921のような、天然Vifに存在するアミノ酸である(図1A, 1Bおよび1Cを参照されたい)。これらの位置に適するアミノ酸は、22 (K), 29 (M), 41 (R), 48 (NもしくはH), 66 (I), 80 (H), 109 (L), 185 (G), 186 (S)であるがこれに限らない。
【0015】
本発明の別の態様においては、図1A に記載の配列の127, 128, 130, 131, 132, 142および185位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されており(すなわち、該アミノ酸はそれぞれ対応してH, I, S, P, R, VおよびGではない)、かつ22, 29, 41, 48, 66, 80, 109および186位に対応するアミノ酸の1以上がそれぞれ対応してI, I, K, N, V, N, RおよびNではない、Vifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0016】
好ましくは、22, 29, 41, 48, 66, 80, 109および186位に対応するアミノ酸はいずれも、それぞれ対応してI, I, K, N, V, N, RおよびNではない。
【0017】
一実施形態においては、図1Aに記載の配列の127, 128, 130, 131, 132, 142および185位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されており、かつ22, 29, 41, 66, 80, 109および186位に対応するアミノ酸が、いずれも、それぞれ対応してI, I, K, V, N, RおよびNではない。
【0018】
好ましくは、127, 128, 130, 131, 132, 142および185位に対応するアミノ酸はそれぞれ対応してN, V, R, L, S, IおよびRで置換されている。
【0019】
一実施形態において、48位に対応するアミノ酸はNである。
【0020】
好ましくは、22, 29, 41, 48, 66, 80, 109および186位に対応するアミノ酸は、限定するものではないが、HXB2 登録番号K03455, BRU 登録番号 K02013, SF2 登録番号 K02007, PV22 登録番号 K02083, MN 登録番号M17449およびNL4-3 登録番号 M19921のような天然Vifに存在するアミノ酸である(図1A, 1Bおよび1Cを参照されたい)。これらの位置に適するアミノ酸は、22 (K), 29 (M), 41 (R), 48 (NもしくはH), 66 (I), 80 (H), 109 (L), 186 (S)であるがこれに限らない。
【0021】
本発明の別の態様においては、図1A に記載の配列の127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されており(すなわちアミノ酸はそれぞれ対応してH, I, S, P, R, V, GまたはSではない)、かつ22, 29, 41 48, 66, 80および109位に対応するアミノ酸の1以上がそれぞれ対応してI, I, K, N, V, NおよびRではない、Vifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0022】
好ましくは、22, 29, 41 48, 66, 80および109位に対応するアミノ酸はいずれも、それぞれ対応してI, I, K, N, V, NおよびRではない。
【0023】
一実施形態においては、図1Aに記載の配列の127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されており、かつ22, 29, 41, 66, 80および109位に対応するアミノ酸はいずれも、それぞれ対応してI, I, K, V, NおよびRではない。
【0024】
好ましくは127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応するアミノ酸は、それぞれ対応してN, V, R, L, S, I, RおよびNで置換されている。
【0025】
一実施形態において、48位に対応するアミノ酸はNである。
【0026】
好ましくは、22, 29, 41, 48, 66, 80, 109位に対応するアミノ酸は、限定するものではないが、HXB2 登録番号K03455, BRU 登録番号 K02013, SF2 登録番号 K02007, PV22 登録番号 K02083, MN 登録番号M17449およびNL4-3 登録番号 M19921のような、天然Vifに存在するアミノ酸である(図1A, 1Bおよび1Cを参照されたい)。これらの位置に適するアミノ酸は22 (K), 29 (M), 41 (R), 48 (NもしくはH), 66 (I), 80 (H), 109であるがこれに限らない。
【0027】
本発明の別の態様においては、図1A に記載の配列の109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されており(すなわち、該アミノ酸はそれぞれ対応してL, H, I, S, P, R, V, GまたはSではない)、かつ22, 29, 41, 48, 66および80位に対応するアミノ酸の1以上がそれぞれ対応してI, I, K, N, VおよびNではない、Vifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0028】
好ましくは、22, 29, 41, 48, 66および80位に対応するアミノ酸はいずれも、それぞれ対応してI, I, K, N, VおよびNではない。
【0029】
一実施形態において、図1A に記載の配列の109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応する各アミノ酸は別のアミノ酸で置換されており、かつ22, 29, 41, 66および80位に対応するアミノ酸はいずれも、それぞれ対応してI, I, K, VおよびNではない。
【0030】
好ましくは、109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応するアミノ酸はそれぞれ対応してR, N, V, R, L, S, I, RおよびNで置換されている。
【0031】
一実施形態において、48位に対応するアミノ酸はNである。
【0032】
好ましくは、22, 29, 41, 48, 66, 80位に対応するアミノ酸は、限定するものではないが、HXB2 登録番号K03455, BRU 登録番号 K02013, SF2 登録番号 K02007, PV22 登録番号 K02083, MN 登録番号M17449およびNL4-3 登録番号 M19921のような、天然Vifに存在するアミノ酸である(図1A, 1Bおよび1Cを参照されたい)。これらの位置に適するアミノ酸は、例えば22 (K), 29 (M), 41 (R), 48 (NもしくはH), 66 (I), 80 (H)であるがこれに限らない。
【0033】
本発明の別の態様においては、図1A に記載の配列の80, 109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されており(すなわちアミノ酸はそれぞれ対応してH, L, H, I, S, P, R, V, GおよびSではない)、かつ22, 29, 41, 48および66位に対応するアミノ酸の1以上がそれぞれ対応してI, I, K, NおよびVではない、Vifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0034】
好ましくは、22, 29, 41, 48および66位に対応するアミノ酸はいずれも、それぞれ対応してI, I, K, NおよびVではない。
【0035】
一実施形態においては、図1Aに記載の配列の80, 109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されており、かつ22, 29, 41, および66位に対応するアミノ酸はいずれも、それぞれ対応してI, I, KおよびVではない。
【0036】
好ましくは、80, 109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応するアミノ酸はそれぞれ対応してN, R, N, V, R, L, S, I, RおよびNで置換されている。
【0037】
一実施形態において、48位に対応するアミノ酸はNである。
【0038】
好ましくは 22, 29, 41, 48および66位に対応するアミノ酸は、限定するものではないが、HXB2 登録番号K03455, BRU 登録番号 K02013, SF2 登録番号 K02007, PV22 登録番号 K02083, MN 登録番号M17449およびNL4-3 登録番号 M19921のような、天然Vifに存在するアミノ酸である(図1A, 1B, および1Cを参照されたい)。これらの位置に適するアミノ酸は、22 (K), 29 (M), 41 (R), 48 (NもしくはH), 66 (I)であるがこれに限らない。
【0039】
本発明の別の態様においては、図1A に記載の配列の66, 80, 109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されており(すなわちアミノ酸はそれぞれ対応してI, H, L, H, I, S, P, R, V, GおよびSではない)、かつ22, 29, 41および48位に対応するアミノ酸の1以上がそれぞれ対応してI, I, KおよびNではない、Vifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0040】
好ましくは、22, 29, 41および48位に対応するアミノ酸はいずれも、それぞれ対応してI, I, KおよびNではない。
【0041】
一実施形態において、図1A に記載の配列の66, 80, 109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応する各アミノ酸は別のアミノ酸で置換されており、かつ22, 29および41位に対応するアミノ酸はいずれも、それぞれ対応してI, IおよびKではない。
【0042】
好ましくは 66, 80, 109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応するアミノ酸はそれぞれ対応してV, N, R, N, V, R, L, S, I, RおよびNで置換されている。
【0043】
一実施形態において、48位に対応するアミノ酸はNである。
【0044】
好ましくは 22, 29, 41および48位に対応するアミノ酸は、限定するものではないが、HXB2 登録番号K03455, BRU 登録番号 K02013, SF2 登録番号 K02007, PV22 登録番号 K02083, MN 登録番号M17449およびNL4-3 登録番号 M19921のような、天然Vifに存在するアミノ酸である(図1A, 1Bおよび1Cを参照されたい)。これらの位置に適するアミノ酸は22( K), 29 (M), 41 (R), 48 (N, H)であるがこれに限らない。
【0045】
本発明の別の態様においては、図1A に記載の配列の48, 66, 80, 109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されており(すなわちアミノ酸はそれぞれ対応してH, I, H, L, H, I, S, P, R, V, GおよびSではない)、かつ22, 29および41位に対応するアミノ酸の1以上がそれぞれ対応してI, IおよびKではない、Vifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0046】
好ましくは、22, 29および41位に対応するアミノ酸はいずれも、それぞれ対応してI, IおよびKではない。
【0047】
好ましくは、48, 66, 80, 109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186に対応するアミノ酸は、それぞれ対応してN, V, N, R, N, V, R, L, S, I, RおよびNで置換されている。
【0048】
好ましくは、22, 29および41位に対応するアミノ酸は、限定するものではないが、HXB2 登録番号K03455, BRU 登録番号 K02013, SF2 登録番号 K02007, PV22 登録番号 K02083, MN 登録番号M17449およびNL4-3 登録番号 M19921のような、天然Vifに存在するアミノ酸である(図1A, 1Bおよび1Cを参照されたい)。これらの位置に適するアミノ酸は22( K), 29 (M), 41 (R)であるがこれに限らない。
【0049】
本発明の別の態様においては、図1A に記載の配列の41, 48, 66, 80, 109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されており(すなわちアミノ酸はそれぞれ対応してR, H, I, H, L, H, I, S, P, R, V, GおよびSではない)、かつ22および29位に対応するアミノ酸の少なくとも1つがIではない、Vifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0050】
好ましくは、41, 48, 66, 80, 109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応するアミノ酸はそれぞれ対応してK, N, V, N, R, N, V, R, L, S, I, RおよびNで置換される。好ましくは、22および29位に対応するアミノ酸は、限定するものではないが、HXB2 登録番号K03455, BRU 登録番号 K02013, SF2 登録番号 K02007, PV22 登録番号 K02083, MN 登録番号M17449およびNL4-3 登録番号 M19921のような、天然Vifに存在するアミノ酸である(図1A, 1Bおよび1Cを参照されたい)。これらの位置に適するアミノ酸は、22( K), 29 (M)であるがこれに限らない。
【0051】
好ましくは22および29位に対応するアミノ酸はどちらもIではない。
【0052】
本発明の別の態様においては、図1A に記載の配列の29, 41, 48, 66, 80, 109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されており(すなわちアミノ酸はそれぞれ対応してM, R, H, I, H, L, H, I, S, P, R, V, GおよびSではない)、かつ22位に対応するアミノ酸がIではない、Vifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0053】
好ましくは、29, 41, 48, 66, 80, 109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応するアミノ酸はそれぞれ対応してI, K, N, V, N, R, N, V, R, L, S, I, RおよびNで置換されている。
【0054】
好ましくは、22位に対応するアミノ酸は、限定するものではないが、HXB2 登録番号K03455, BRU 登録番号 K02013, SF2 登録番号 K02007, PV22 登録番号 K02083, MN 登録番号M17449およびNL4-3 登録番号 M19921のような、天然Vifに存在するアミノ酸である(図1A, 1Bおよび1Cを参照されたい)。この位置に適するアミノ酸はK (リシン)であるがこれに限らない。
【0055】
本発明の別の態様においては、限定するものではないが、HXB2 登録番号K03455, BRU 登録番号 K02013, SF2 登録番号 K02007, PV22 登録番号 K02083, MN 登録番号M17449およびNL4-3 登録番号 M19921 (図1A, 1B, 1Cおよび2参照)のような、天然Vif配列に組み込まれた、図2に記載のF12-Vif配列のアミノ酸126〜170を含むキメラVifタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。その際の天然Vif配列は、F12-Vifではない。
【0056】
本発明の別の態様においては、上に定義したVifポリペプチドの断片をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、該断片が図2に記載の配列のアミノ酸126〜170に対応するアミノ酸を少なくとも含む前記ポリヌクレオチドを提供する。
【0057】
好ましくは、上記断片は図2に記載の配列のアミノ酸126〜170を少なくとも含む。
【0058】
一実施形態においては、上記断片は図2に記載の配列のアミノ酸126〜170からなる。
【0059】
本発明の別の態様においては、Vifポリペプチドの断片をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、前記断片が図1Aに記載の野生型配列の127, 128, 130, 131, 132および142位に対応するアミノ酸に変更アミノ酸を有する前記ポリヌクレオチドを提供する。
【0060】
一実施形態において、上記ポリヌクレオチドによりコードされる断片は、図1Aに記載の野生型配列の185位に対応するアミノ酸に変更アミノ酸をさらに有する。
【0061】
別の実施形態において、上記ポリヌクレオチドによりコードされる断片は、図1Aに記載の野生型配列の186位に対応するアミノ酸に変更アミノ酸をさらに有する。
【0062】
別の実施形態において、上記ポリヌクレオチドによりコードされる断片は、図1Aに記載の野生型配列の109位に対応するアミノ酸に変更アミノ酸をさらに有する。
【0063】
別の実施形態において、上記ポリヌクレオチドによりコードされる断片は、図1Aに記載の野生型配列の80位に対応するアミノ酸に変更アミノ酸をさらに有する。
【0064】
別の実施形態において、上記ポリヌクレオチドによりコードされる断片は、図1Aに記載の野生型配列の66位に対応するアミノ酸に変更アミノ酸をさらに有する。
【0065】
別の実施形態において、上記ポリヌクレオチドによりコードされる断片は、図1Aに記載の野生型配列の48位に対応するアミノ酸に変更アミノ酸をさらに有する。
【0066】
別の実施形態において、上記ポリヌクレオチドによりコードされる断片は、図1Aに記載の野生型配列の41位に対応するアミノ酸に変更アミノ酸をさらに有する。
【0067】
別の実施形態において、上記ポリヌクレオチドによりコードされる断片は、図1Aに記載の野生型配列の29位に対応するアミノ酸に変更アミノ酸をさらに有する。
【0068】
好ましくは図1Aに記載の野生型配列の22位のアミノ酸はIに変更されている。
【0069】
好ましくは図1Aに記載の野生型配列の29位のアミノ酸はIに変更されている。
【0070】
好ましくは図1Aに記載の野生型配列の41位のアミノ酸はKに変更されている。
【0071】
好ましくは図1Aに記載の野生型配列の48位のアミノ酸はNに変更されている。
【0072】
好ましくは図1Aに記載の野生型配列の66位のアミノ酸はVに変更されている。
【0073】
好ましくは図1Aに記載の野生型配列の80位のアミノ酸はNに変更されている。
【0074】
好ましくは図1Aに記載の野生型配列の109位のアミノ酸はRに変更されている。
【0075】
好ましくは図1Aに記載の野生型配列の127位のアミノ酸はNに変更されている。
【0076】
好ましくは図1Aに記載の野生型配列の128位のアミノ酸はVに変更されている。
【0077】
好ましくは図1Aに記載の野生型配列の130位のアミノ酸はRに変更されている。
【0078】
好ましくは図1Aに記載の野生型配列の131位のアミノ酸はLに変更されている。
【0079】
好ましくは図1Aに記載の野生型配列の132位のアミノ酸はSに変更されている。
【0080】
好ましくは図1Aに記載の野生型配列の142位のアミノ酸はIに変更されている。
【0081】
好ましくは図1Aに記載の野生型配列の185位のアミノ酸はRに変更されている。
【0082】
好ましくは図1Aに記載の野生型配列の186位のアミノ酸はNに変更されている。
【0083】
本発明の別の態様においては、図4Aに示すアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列からなるまたは該ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0084】
本発明の別の態様においては、図5Aに示すアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列からなるまたは該ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0085】
本発明の別の態様においては、図15または16に示すヌクレオチド配列からなるまたは該ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0086】
本発明の別の態様においては、本発明のポリヌクレオチドによりコードされるVifポリペプチドおよびVifポリペプチド断片を提供する。
【0087】
本発明の別の態様においては、図4Aまたは図4Bに示すアミノ酸配列を含むまたは該アミノ酸配列からなるポリペプチドを提供する。
【0088】
本発明の別の態様においては、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0089】
好ましくは、上記ベクターは組換えレンチウイルスベクターである。
【0090】
好ましくは、上記レンチウイルスベクターはHIVから誘導することができる。
【0091】
好ましくは、上記ベクターは、ウイルスLTRに機能的に連結された、本発明のポリヌクレオチドをコードする。
【0092】
好ましくは、上記ポリヌクレオチドの発現はtatおよびrev依存性である。
【0093】
好ましくは、本発明のベクターはtat遺伝子およびrev遺伝子を有しない。
【0094】
好ましくは、本発明のベクターは、HIV-1誘導性の制御下で変異型Vifまたは変異型Vif断片を発現することができる。
【0095】
好ましくは、本発明のベクターはgag, polおよびenv遺伝子を欠く。
【0096】
一実施形態において、本発明のベクターは選択マーカー遺伝子をコードするポリヌクレオチド配列をさらに含有する。
【0097】
好ましくは、本発明のベクターは、低親和性の神経成長因子受容体(LNGFR)の少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列をさらに含有する。
【0098】
別の実施形態において、本発明のベクターは、組み込まれたプロウイルスの形態である。
【0099】
本発明の別の態様においては、本発明のベクターから得られうるレトロウイルス粒子を提供する。
【0100】
好ましくは上記レトロウイルス粒子はシュードタイプ化されている。
【0101】
好ましくは、変異型Vifをコードするポリヌクレオチドは、ウイルスの長い末端反復配列(LTR)に機能的に連結されている。
【0102】
本発明の別の態様においては、本発明のベクターと、レトロウイルス性gag-polおよびレトロウイルス性もしくは非レトロウイルス性envとを含む本発明のレトロウイルス粒子を産生するためのレトロウイルス産生系を提供する。特に、シュードタイピング(pseudotyping)の概念は当技術分野でよく知られており、本発明に使用可能である。
【0103】
好ましくは、上記レトロウイルス性gag-polおよびenvは異なるベクターに存在する。
【0104】
好ましくは、上記エンベロープタンパク質は、RD114-TR、VSV-G、GALVおよび4070Aからなる群より選択される。
【0105】
本発明の別の態様においては、本発明のポリヌクレオチドを含んでなる細胞を提供する。
【0106】
本発明の別の態様においては、本発明のレトロウイルス粒子またはベクターを感染させたまたは形質導入した細胞を提供する。
【0107】
好ましくは上記細胞はT細胞である。
【0108】
好ましくは上記細胞は単球、マクロファージまたはリンパ球である。
【0109】
好ましくは上記細胞は造血性CD34+前駆細胞または造血細胞である。
【0110】
好ましくは、本発明の細胞はHIV-1誘導性の制御下で変異型Vifを発現する。
【0111】
本発明の別の態様においては、医薬用である、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、ベクター、レトロウイルス粒子または細胞を提供する。
【0112】
本発明の別の態様においては、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、ベクター、レトロウイルス粒子または細胞および製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0113】
本発明の別の態様においては、HIV感染または関連症状の治療または予防用の医薬の製造のための、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、ベクター、レトロウイルス粒子、細胞または医薬組成物の使用を提供する。HIV感染は重複感染でありうる。
【0114】
このことから、本発明は、有効量の本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、レトロウイルス粒子、細胞または医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、HIV感染または関連症状の治療法または予防法を提供する。
【0115】
本発明のさらなる態様においては、本発明のベクターまたはレトロウイルス粒子を細胞に感染させるまたは形質導入することを含む、HIV感染または関連症状の治療法または予防法を提供する。
【0116】
一実施形態において、上記感染または形質導入はex vivoにて行われ、次いで上記細胞が患者に導入される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0117】
詳細な説明
本発明の種々の好ましい構成および実施形態を非限定的な例によりここに説明する。
【0118】
本発明の実施には、特段の指示がない限り、化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術および免疫学の慣用技法を用いるが、これらは当技術分野の通常の技術を有する者の能力の範囲内にある。かかる技法は刊行物に解説されている。例えば、J. Sambrook, E. F. Fritsch, and T. Maniatis, 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Books 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press; Ausubel, F. M. ら (1995 and periodic supplements; Current Protocols in Molecular Biology, 第9, 13, および16章, John Wiley & Sons, New York, N.Y.); B. Roe, J. Crabtree, and A. Kahn, 1996, DNA Isolation and Sequencing: Essential Techniques, John Wiley & Sons; J. M. Polak and James O’D. McGee, 1990, In Situ Hybridization: Principles and Practice; Oxford University Press; M. J. Gait (編者), 1984, Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, Irl Press; およびD. M. J. Lilley and J. E. Dahlberg, 1992, Methods of Enzymology: DNA Structure Part A: Synthesis and Physical Analysis of DNA Methods in Enzymology, Academic Pressを参照されたい。これらの一般的教材の各々を参照として本明細書に組み入れる。
【0119】
標的細胞
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、レトロウイルス粒子、細胞または医薬組成物は標的細胞に送達することができる。好ましくは、細胞は、免疫系の細胞、例えば、T細胞である。好ましくは細胞は、ヒト免疫系の細胞である。より好ましくは細胞は、HIVにより感染されうる細胞、すなわちHIV許容性細胞である。本発明の組換えレンチウイルスベクターまたは粒子を導入することのできる細胞としては、末梢血リンパ球、単球、マクロファージ、アストロサイトが挙げられる。
【0120】
ウイルス感染性因子(Viral Infectivity Factor: Vif)
本明細書においては、アミノ酸の位置は、図1Aに記載のコンセンサス配列中の特定の位置に「対応する」位置によって特定されることに留意すべきである。このことは、本発明の配列が図1Aに記載の配列を含むものでなければならないことを意味すると解釈されてはならない。当業者ならば、種々のHIV株においてVif配列が変化すると容易に理解するであろう。この図を参照するのは、何らかの具体的なVifタンパク質中の特定のアミノ酸の位置を同定できるようにするためであるに過ぎない。かかるアミノ酸の位置は、配列アライメントプログラム(その使用は当業者に周知である)を用いて普通に同定することができる。
【0121】
HIV-1のようなレンチウイルスは、全ての複製能力のあるレトロウイルスにより発現される構造的なgag、polおよびenv遺伝子の他に、いくつかのアクセサリー遺伝子をコードする。こうしたアクセサリー遺伝子の1つであるvif (ウイルス感染性因子)は、ウマ伝染性貧血ウイルスを除いて全ての既知のレンチウイルスにより発現される。Vifタンパク質は高度に塩基性の23kDaタンパク質であり192アミノ酸から構成される。HIV-1感染個体由来のウイルスDNAの配列解析からは、Vifのオープンリーディングフレームが原型を保っていることが明らかにされた(Sova, ら, 1995; Wieland ら, 1994; Wieland ら, 1997)。比較的未変性の条件では、Vifタンパク質はin vitroにおいて二量体、三量体または四量体を含む多量体を形成する。また、Vifタンパク質は細胞内において互いに相互作用しうることも実証されている。さらなる研究からは、Vif自己会合に影響を及ぼすドメインがこのタンパク質のC末端、特にプロリンに富む151〜164領域に位置することが示唆された(Yang ら, 2001)。
【0122】
vif遺伝子の欠失は、オナガザル科マカク属サルにおけるサル免疫不全ウイルス(SIV)の複製およびSCID-huマウスにおけるHIV-1複製を激減させ(Aldrovandi, G. M. & Zack, J. A., J. Virol. 70:1505-1511, 1996; Desrosiers, R. C., ら, J. Virol. 72:1431-1437, 1998)、このことはin vivoにおけるレンチウイルスの病原的な複製にvif遺伝子が必須であることを示唆する。以前の知見からは、プロウイルスDNAの組込みにおけるVifの役割が支持されている(Simon ら, 1996; von Schwedler ら, 1993; Sova ら, 2001)。また、Vifは、ゲノムRNA(Zhang ら, 2000; Dettenhofer ら, 2000)またはキャプシドアセンブリの後期に関与するHP-68-Gag複合体などのウイルスタンパク質および細胞性タンパク質(Zimmerman ら, 2002)のいずれかと相互作用することも示されている。
【0123】
Vifにより増強される感染性は、ウイルス産生細胞において付与されるが、標的細胞では顕在化するだけである。したがってvif プロウイルスはウイルス産生細胞中でトランスに補足されうるが、標的細胞では補足されない。さらにVif要求性は細胞型特異的である。vifウイルスは、Tリンパ球、最終分化マクロファージ、またはH9のような数種のTリンパ細胞株から産生されるときには陰性の表現型を示す。こうした細胞を「非許容性細胞」とよぶ。しかしながらSupT1やC8166のようないくつかのT細胞株、およびHelaCD4のような他の非T細胞においては、vif HIV-1ウイルスの増殖的複製が達成される。こうした細胞のことを「許容性」細胞という(Gabuzda ら, 1992; von Schwedler ら, 1993; Gabuzda ら, 1994)。この要求性は、非許容性細胞中で選択的に発現されかつHIV-1に対する先天的な免疫を付与する、最近同定されたCEM15/APOBEC-3Gタンパク質(Sheehy ら, 2002)の作用をうち消すVifの能力に依存する。APOBEC-3Gは、ウイルス産生中にvif欠失ビリオン(Δvif HIV-1)に組み込まれるシチジンデアミナーゼ細胞タンパク質であり、それは感染細胞における逆転写中に、生じつつあるプラス鎖cDNAに大量のGからAへの超変異を誘発し、このことはΔvif HIV-1変異体複製の強力な阻害をもたらす(Lecossier ら, 2003; Harris ら, 2003; Mariani ら, 2003; Goff ら, 2003)。この遺伝子ファミリーの当初の創始メンバーであるAPOBECは、RNAに作用し、その標的アポリポタンパク質B mRNA中の単一のシトシン残基のみを脱アミノ化することにより標的アポリポタンパク質B mRNAの発現を調節する(Teng ら, 1998)が、APOBEC-3Gは、そうではなく、1本鎖DNAに対して活性であり、かつより強力である。その活性の結果として、ウイルスDNA中の全シトシン残基の約1%〜2%がウラシルに変換される。APOBEC-3Gによる攻撃後、脱アミノ化は、ウイルス増殖が不可能な高度に変異したDNAを生じるか、またはウラシルに基づく切除経路を開始させることにより標的細胞へのcDNAの蓄積を妨げる。あるいはまた、マイナス鎖における増大した数のウラシルは、プラス鎖合成の開始を損なうと考えられる。
【0124】
VifがAPOBEC-3Gを遮断する作用機構はまだ完全に明らかにされてはいない。しかしながら、Vifが、ビリオン中に封入されたAPOBEC-3G タンパク質のレベルを著しく減少させることは示されている。Vifは、APOBEC-3Gをビリオンから除外するために、アセンブリ中のビリオンと相互作用するAPOBEC-3Gのドメインをマスキングしている可能性があり、ウイルスがアセンブリする細胞中の部位からAPOBEC-3Gを遠ざけている可能性があり、またはAPOBEC-3G分解を誘発している可能性がある。Vifの主な役割は、APOBEC3Gのプロテアソーム依存性分解を誘発することによりHIV-1複製を可能にすることである、ということを示唆する証拠が存在する(Navarro ら, 2004; Trono, 2004)。APOBEC-3Gの分解は、VifによるAPOBEC-3Gのユビキチン化に二次的であり、Vifは、C末端SOCSボックスを介してAPOBEC-3GとE3ユビキチンリガーゼ複合体の間に機能性の架橋を形成する(Addo ら, 2003, and Harris ら, 2003)。
【0125】
ウイルスタンパク質および核酸を含むウイルス成分の発現は、非許容性細胞から産生されるビリオンにおいては変更されない(Fouchier ら, 1996; Gabuzda ら, 1992; von Schwedler ら, 1993)。しかしながら、vif遺伝子の欠失はビリオン形態の変更をもたらす (Borman ら, 1995; Bouyac ら 1997; Hoglund ら, 1994)。
【0126】
Vifの天然の突然変異体であるF12-Vifは、15のユニークなアミノ酸置換を有し、一次HIV-1分離株に感染したHUT 78細胞からクローニングされた非産生性プロウイルスであるF12 HIV-1変異体において最初に同定されたものであり(Federico ら, 1989)、抗HIV-1活性を示す(D’Aloja ら, 1998)。
【0127】
本発明者らは、HIV-1に感染したT細胞株中でin vitroにおいてHIV-1複製を阻害するのに非常に効果的なvifの新規変異体を開発した。より詳細には、本発明者らは、HIV感染からの保護にF12-Vifの全長配列は必要ではないということを見出した。本発明者らは実際に、WT-Vif配列中に組み込まれた、6つのユニークなアミノ酸置換のみを有する、F12-Vifの45アミノ酸領域(F12-Vif-Chim3)が、ヒトTリンパ球をHIV-1感染から保護することを示した。
【0128】
本発明の様々な態様において、Vifタンパク質は、F12-Vifと第2のVif タンパク質のキメラであってもよく、該第2のVifタンパク質は好ましくは天然Vifタンパク質である。例えば第2のVifタンパク質は、HXB2 登録番号K03455、BRU 登録番号 K02013、SF2 登録番号 K02007、PV22 登録番号 K02083、MN 登録番号M17449またはNL4-3 登録番号 M19921 Vif(図1A, 1Bおよび1Cを参照されたい)であり得る。一実施形態において、キメラを作成するために使用する第2のVifタンパク質は、F12-Vifに存在する保存された15のアミノ酸置換(すなわち22, 29, 41, 48, 66, 80, 109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位)を1つも有しない。好ましくは、F12-Vif特異的置換を必要とするキメラの部分はF12-Vifタンパク質由来であり、残部は第2のVif タンパク質由来である。例えば、F12-Vif特異的置換が127, 128, 130, 131, 132および142位 (すなわち、これらの位置のアミノ酸はそれぞれN, V, R, L, SおよびIである) において必要とされるが、22, 29, 41, 48, 66, 80, 109, 185および186位には必要とされないのであれば、少なくともアミノ酸22〜186を含むキメラの部分がF12-Vif由来であり、残部が第2のVifタンパク質由来であり得る。
【0129】
本発明の種々の態様において、本発明のVifタンパク質は、必要とされるアミノ酸位置に点変異を導入することにより作製することができる。例えば、F12-Vif特異的置換が127, 128, 130, 131, 132および142位に必要であれば(すなわち、これらの位置のアミノ酸はそれぞれN, V, R, L, SおよびIである)、天然Vif(例えばNL4-3)のこれらの位置に、かかる部位特異的突然変異を(例えばPCRオーバーラップ技術(Taddeo ら, 1996)を使用して)導入することができる。
【0130】
好ましくは、本発明のVifタンパク質は、標的細胞中で発現したときにHIV-1の複製を低減または阻害する、変異型Vifタンパク質またはその断片である。本発明の変異型Vifは、標準的な突然変異誘発技術を用いて変異させることができる。突然変異誘発というときには、欠失または置換もこれに含まれる。特に好ましい実施形態では、PCRオーバーラップ技術(Taddeo ら, 1996)を用いて部位特異的突然変異を導入する。HIV感染に対して少なくともいくらかの耐性または超耐性を付与する変異型Vifの能力は、ウイルス複製を分析することにより測定することができる。かかるアッセイは当業者に知られており、D'Aloja 2001に記載されている。あるいはまた、変異型HIV Vifを野生型に復帰させ、得られる産物をHIV許容性細胞にトランスフェクトすることもできる。かかる方法はさらなる有用な突然変異の同定を可能にし、そのことにより本発明に有用なさらなる変異体の同定を可能にする。
【0131】
HIV
本明細書において用いるHIVとは、HIV(例:HIV-1、HIV-2)やHTLV(例:HTLV-III)のような、後天性免疫不全症候群(AIDS)およびAIDS関連複合症(ARC)の原因病原体として関与しているウイルスに割り当てられたすべての名称を包含する。2種の主要なHIV型であるHIV-1とHIV-2のうち、HIV-1が世界中で優勢な種である。これまで、HIV-1には2つの主要な群である「M」および「O」が存在する。HIV-1感染の大部分を引き起こすウイルスはM群に属する。O群の分離株はM群とは遺伝学的にかなり離れている。M群のHIV-1サブタイプには、サブタイプA〜Jが含まれる。
【0132】
ポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドはDNAまたはRNAを含みうる。これらは一本鎖または二本鎖でありうる。当業者ならば、遺伝暗号の縮重の結果として多数の異なるポリヌクレオチドが同じポリペプチドをコードすることができる、と理解するであろう。さらに当業者は、慣用技術を用いて、本発明に使用されるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド配列に影響を及ぼさないヌクレオチド置換を行い、該ポリペプチドの発現が予定される特定の宿主生物のコドン使用頻度を反映させることができる、と理解すべきである。ポリヌクレオチドは、当技術分野で利用可能などのような方法により改変してもよい。かかる改変は、本発明のポリヌクレオチドのin vivo活性を増強するためまたはその寿命を延ばすために行うことができる。
【0133】
DNAポリヌクレオチドのようなポリヌクレオチドは、組換えにより、合成により、または当業者に利用可能などのような手段により製造することも可能である。ポリヌクレオチドはまた、標準技術によりクローニングすることができる。
【0134】
長いポリヌクレオチドは一般に、組換え法、例えばPCR (ポリメラーゼ連鎖反応)クローニング技術を用いることにより作製される。これは、クローニングしたいと望むDNA標的配列の1つの領域に隣接するプライマーの対(例えば約15〜30ヌクレオチド)を作製すること、該プライマーを動物またはヒト細胞から得られたmRNAまたはcDNAと接触させること、所望の領域の増幅をもたらす条件化でポリメラーゼ連鎖反応を行うこと、増幅断片を単離すること(例えば反応混合物をアガロースゲルで精製することによる)、および増幅DNAを回収することを含む。プライマーは、増幅DNAが適当なクローニングベクターにクローニングされうるように、適当な制限酵素認識部位を有するよう設計することができる。
【0135】
タンパク質
本明細書において用いる「タンパク質」という用語には、一本鎖ポリペプチド分子、ならびに、個々の構成ポリペプチドが共有結合または非共有結合で連結されている複数のポリペプチドの複合体が含まれる。本明細書において用いる「ポリペプチド」および「ペプチド」という用語は、単量体がアミノ酸であり、それらがペプチド結合またはジスルフィド結合により一緒に連結されているポリマーを言う。サブユニットおよびドメインという用語もまた、生物学的機能を有するポリペプチドおよびペプチドを意味しうる。
【0136】
変異体、誘導体、アナログ、ホモログおよび断片
本明細書において言及した特定のタンパク質およびヌクレオチドの他に、本発明は、その変異体、誘導体、アナログ、ホモログおよび断片をも包含する。
【0137】
本発明の文脈において、所定の配列の変異体とは、(アミノ酸残基であれ核酸残基であれ)特定の残基の配列が、対象のポリペプチドまたはポリヌクレオチドがその内因性機能の少なくとも1つを保持するような方法で、改変されている配列のことである。変異型配列は、天然タンパク質に存在する少なくとも1つの残基の付加、欠失、置換、修飾置換および/または変化により改変されうる。
【0138】
本発明のタンパク質またはポリペプチドに関連して本明細書において用いる「誘導体」という用語は、得られるタンパク質またはポリペプチドがその内因性機能の少なくとも1つを保持することを条件として、その配列へのまたはからの、1つ(またはそれ以上)のアミノ酸残基の、あらゆる置換、変化、改変、置き換え、欠失および/または付加を含む。
【0139】
ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに関連して本明細書において用いる「アナログ」という用語には、あらゆる擬似体、すなわちそれが模倣するポリペプチドまたはポリヌクレオチドの内因性機能の少なくとも1つを有する化合物が含まれる。
【0140】
典型的には、アミノ酸置換としては、改変配列が必要な活性または能力を保持することを条件として、例えば1個、2個もしくは3個、さらには10個もしくは20個の置換を行うことができる。アミノ酸置換には、天然に存在しないアナログの使用が含まれうる。
【0141】
本発明のタンパク質はまた、サイレント変化を生じ、機能的に等価なタンパク質をもたらす、アミノ酸残基の欠失、挿入または置換を有しうる。意図的なアミノ酸置換は、輸送またはモジュレーションの機能が保持される限り、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性および/または両親媒性の性質の類似性に基づいて行うことができる。例えば、負電荷を有するアミノ酸としてはアスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられ、正電荷を有するアミノ酸としてはリシンとアルギニンが挙げられ、類似する疎水性値を有する非荷電性の頭部極性基を有するアミノ酸としてはロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、フェニルアラニンおよびチロシンが挙げられる。
【0142】
保存的置換は、例えば下の表にしたがって行うことができる。第2列で同じ区分にあるアミノ酸、好ましくは第3列で同じ行にあるアミノ酸は、互いに置換可能である:

「断片」は変異体でもあり、この用語は典型的には、機能的にまたは例えばアッセイにおいて興味のあるポリペプチドまたはポリヌクレオチドの所定の領域をさす。したがって「断片」とは、全長ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの一部であるアミノ酸または核酸配列を言う。
【0143】
かかる変異体は、標準的組換えDNA技術、例えば部位特異的突然変異誘発を用いることにより作製することができる。挿入を行う場合は、挿入部位の両側の天然配列に対応する5'および3'隣接領域と共に挿入物をコードする合成DNAを使用する。隣接領域は、天然配列中の部位に対応する都合のよい制限部位を有し、その結果、天然配列を適当な酵素(類)で切断して、合成DNAをその切断物に連結することができる。次に、本発明にしたがいDNAを発現させ、コードされるタンパク質を産生させる。こうした方法は、DNA配列の操作の技術分野で知られている数多くの標準技術を単に説明したに過ぎず、ほかの公知技術も使用可能である。
【0144】
ポリヌクレオチド変異体は、好ましくはコドン最適化配列を含むであろう。コドン最適化は、当技術分野では、RNA安定性を増強し、それゆえ遺伝子発現を高める方法として知られている。遺伝暗号の重複性は、複数の異なるコドンが同一のアミノ酸をコードしうることを意味する。例えばロイシン、アルギニン、およびセリンはそれぞれ6種の異なるコドンによりコードされる。異なる生物は、その異なるコドンの使用について優先性を示す。一例としてHIVのようなウイルスは、多数のレアコドンを使用する。レアコドンが通常使用される対応の哺乳動物コドンに置換されるようにヌクレオチド配列を変更することにより、哺乳動物標的細胞中での該配列の発現増加が達成されうる。当技術分野では、コドン使用頻度の表は、哺乳動物細胞だけでなく様々な他の生物についても知られている。好ましくは、配列の少なくとも1部はコドン最適化される。より好ましくは、配列はその全体がコドン最適化される。
【0145】
ベクター
当技術分野で周知のこととして、ベクターは、ある実在物(entity)を1つの環境から別の環境へと移すことを可能にするまたは促進するツールである。本発明において、そして一例として、組換えDNA技術に使用される一部のベクターは、DNAのセグメント(異種DNAセグメント、例えば異種cDNAセグメントなど)のような実在物を、本発明に使用されるヌクレオチド配列を含むベクターを複製させるため、および/または本発明に使用されるタンパク質を発現させるために、宿主および/または標的細胞内に導入することを可能にする。組換えDNA技術に使用するベクターの例としては、プラスミド、染色体、人工染色体またはウイルスが挙げられるがこれらに限定されない。
【0146】
本発明のポリヌクレオチドは、好ましくはベクターに組み入れられる。好ましくはポリヌクレオチドは、宿主細胞によるコード配列の発現をもたらすことのできる制御配列に機能的に連結される。すなわち、ベクターは発現ベクターである。「機能的に連結される」という用語は、言及される構成要素が意図される様式で機能しうる関係にあることを意味する。コード配列に「機能的に連結された」調節配列は、コード配列の発現がその制御配列に適合する条件下で達成されるように連結されている。
【0147】
制御配列は、例えば、さらなる転写調節要素の付加により改変することができ、その結果、制御配列により指令される転写レベルが、転写モジュレーターに対してさらに応答性となるようにすることができる。
【0148】
本発明のベクターは、例えば、複製起点、任意にポリヌクレオチド発現用のプロモーター、および任意にプロモーターのレギュレーターを備えたプラスミドまたはウイルスベクターでありうる。ベクターは、1以上の、選択マーカー遺伝子および/またはGFPのような追跡可能マーカーを含みうる。ベクターは、例えば、宿主細胞のトランスフェクションまたは形質転換に使用することができる。
【0149】
本発明のタンパク質をコードする配列に機能的に連結される制御配列としては、プロモーター/エンハンサーおよび他の発現調節シグナルが挙げられる。こうした制御配列は、宿主細胞(発現ベクターはこの宿主細胞中で使用するために設計されている)と適合するように選択することができる。「プロモーター」という用語は当技術分野でよく知られており、サイズと複雑性が、最小プロモーターから上流エレメントおよびエンハンサーを含むプロモーターまで及ぶ核酸領域を包含する。
【0150】
プロモーターは、典型的には哺乳動物細胞中で機能するプロモーターから選択されるが、原核生物プロモーターおよび他の真核細胞中で機能するプロモーターも使用可能である。プロモーターは、典型的には、ウイルスまたは真核生物遺伝子のプロモーター配列に由来する。例えばプロモーターは、発現させることになっている細胞のゲノムに由来するプロモーターであってよい。真核生物プロモーターに関しては、該プロモーターは、普遍的に機能するプロモーター(a-アクチン、b-アクチン、チューブリンのプロモーターなど)、あるいはまた組織特異的に機能するプロモーター(ピルビン酸キナーゼ遺伝子のプロモーターなど)でありうる。ウイルスプロモーターも使用可能であり、例えばモロニーマウス白血病ウイルス長型末端反復(MMLV LTR)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーターまたはヒトサイトメガロウイルス(CMV)IEプロモーターが挙げられる。
【0151】
異種遺伝子の発現レベルを細胞の生存期間にわたり調節できるように、プロモーターが誘導性であることも有利である。誘導性とは、プロモーターを用いて達成される発現レベルが調節可能であることを意味する。
【0152】
さらに、こうしたプロモーターはいずれも、さらなる調節配列、例えばエンハンサー配列などの付加により改変することができる。上記2以上の異なるプロモーター由来の配列エレメントを含むキメラプロモーターも使用可能である。
【0153】
本発明のベクターは、ウイルスが標的細胞に侵入した後、複製して感染性ウイルス粒子の子孫を産生することができないように遺伝子操作された、レトロウイルスに基づくベクターでありうる。
【0154】
レトロウイルス
多数の異なるレトロウイルスが同定されている。例として挙げられるのは:マウス白血病ウイルス(MLV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、藤波肉腫ウイルス(FuSV)、モロニーマウス白血病ウイルス(Mo-MLV)、FBRマウス骨肉腫ウイルス(FBR MSV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(Mo-MSV)、エーベルソンマウス白血病ウイルス(A-MLV)、トリ骨髄球腫ウイルス-29 (MC29)、およびトリ赤芽球症ウイルス(AEV)などである。レトロウイルスの詳細なリストは、Coffin ら, 1997, “Retroviruses”, Cold Spring Harbour Laboratory Press 編: JM Coffin, SM Hughes, HE Varmus pp 758-763に見られる。
【0155】
一部のレトロウイルスのゲノム構造に関する詳細が、当技術分野で見出される。一例として、HIVおよびMo-MLVに関する詳細は、NCBI Genbankに見られる(それぞれゲノム登録番号AF033819およびAF033811)。
【0156】
レトロウイルスは大まかに2つのカテゴリーに分類することができる:すなわち「シンプル」と「コンプレックス」である。レトロウイルスはさらに7つの群に分類することができる。このうち5つの群が発癌性を有するレトロウイルスを表す。残りの2群はレンチウイルスおよびスプマウイルスである。こうしたレトロウイルスの総説はCoffin ら, 1997(前掲)に提供されている。
【0157】
各レトロウイルスゲノムは、ビリオンタンパク質および酵素をコードするgag、polおよびenvと呼ばれる遺伝子を含む。プロウイルス中では、これらの遺伝子の両端には、長い末端反復配列(LTR)と呼ばれる領域が隣接する。LTRはプロウイルスの組込みおよび転写に関わる。LTRは、エンハンサー−プロモーター配列として機能し、ウイルス遺伝子の発現を制御することもできる。レトロウイルスRNAのキャプシド化は、ウイルスゲノムの5'末端に存在するpsi配列により生じる。
【0158】
2つのLTR自体は同一の配列であり、U3、RおよびU5と呼ばれる3つのエレメントに分けることができる。U3はRNAの3'末端にユニークな配列に由来する。RはRNAの両端で反復される配列に由来し、U5はRNAの5'末端にユニークな配列に由来する。これら3つのエレメントの大きさは、異なるレトロウイルスの間で大幅に変動しうる。
【0159】
感染性レトロウイルスRNAゲノムの基本的な分子配置は、(5')R - U5 - gag, pol, env - U3 - R(3')である。欠損性レトロウイルスベクターゲノムでは、gag、polおよびenvが不在であっても、非機能性であってもよい。RNA の両端に存在するR領域は反復配列である。U5およびU3は、それぞれRNAゲノムの5'および3'末端に存在するユニーク配列を表す。
【0160】
宿主域および組織親和性(tropism)は、レトロウイルスごとに様々である。いくつかの事例において、この特異性は、組換えレトロウイルスベクターの形質導入能を制限しうる。この理由から、多くの遺伝子治療実験はMLVを用いてきた。4070Aと呼ばれるエンベロープタンパク質を有するある特定のMLVは、両種指向性ウイルスとして知られており、このウイルスは、そのエンベロープタンパク質がヒトとマウス間で保存されているリン酸輸送タンパク質と「ドッキング」することから、ヒト細胞にも感染することができる。この輸送タンパク質は普遍的であるため、こうしたウイルスは多種の細胞に感染することができる。
【0161】
しかしながらいくつかの場合には、特に安全性の観点から、特定された細胞を標的とすることが有益でありうる。env遺伝子を異種env遺伝子と置換することは、特定の細胞型を特異的に標的とするために使用される技術または戦略の一例である。この技術はシュードタイピング(pseudotyping)と呼ばれる。
【0162】
「組換えレトロウイルスベクター」(RRV)という用語は、RNAゲノムが、パッケージング成分の存在下で、標的細胞への感染能を有するウイルス粒子にパッケージングされるのに十分なレトロウイルス遺伝情報を有するベクターを意味する。標的細胞への感染には、逆転写と標的細胞ゲノムへの組込みが含まれる。使用されるRRVは、一般的には、ベクターにより標的細胞へと送達されるための非ウイルス性のコード配列を有する。RRVは、最終標的細胞内で感染性レトロウイルス粒子を産生するための自律複製をすることができない。本発明の「組換えレトロウイルスベクター」はレンチウイルスベクターから誘導される。別の言い方をすると、本発明の組換えレトロウイルスベクターは「組換えレンチウイルスベクター」である。
【0163】
遺伝子治療に使用するための典型的な組換えレトロウイルスベクターにおいては、複製に必須のgag、polおよびenvタンパク質コード領域の1つ以上の少なくとも一部がウイルスから除かれていてもよい。このことはレトロウイルスベクターを複製欠損性とする。その後、除かれた部分を本発明のポリヌクレオチドで置換することにより、宿主ゲノムに自身のゲノムを組込むことのできるウイルスが生成されるが、その改変型ウイルスゲノムは、構造タンパク質の欠失ゆえに自身を増殖させることができない。宿主ゲノムに組み込まれると、ポリヌクレオチドの発現が生じ、結果的に、例えば治療的および/または診断的な効果がもたらされる。このことから、対象の部位へのポリヌクレオチドの導入は、典型的には、ポリヌクレオチドを組換えウイルスベクターに組込むこと、改変型ウイルスベクターをビリオンコート内にパッケージングすること、および標的細胞への形質導入を行うこと、により達成される。
【0164】
複製欠損レトロウイルスベクターは、典型的には、例えばその後の形質導入(パッケージングまたはヘルパー細胞株と組換えベクターの組合せを使用することによる)のための適当な力価のレトロウイルスベクターを用意するために、増殖させる。すなわち、上記の3つのパッケージングタンパク質はトランスで提供されうる。
【0165】
「パッケージング細胞株」は、レトロウイルスのgag、polおよびenv遺伝子の1つ以上を含有する。パッケージング細胞株は、レトロウイルスDNAのパッケージングに必要なタンパク質を産生するが、psi領域の欠失ゆえにキャプシド化をもたらすことができない。しかしながら、ポリヌクレオチドとpsi領域を有する組換えベクターがパッケージング細胞株に導入されると、ヘルパータンパク質は、psi陽性組換えベクターをパッケージングさせて、組換えウイルスストックを産生させることができる。このウイルスストックは、標的細胞のゲノムにポリヌクレオチドを導入するための、細胞の形質導入に使用することができる。
【0166】
ゲノムがウイルスタンパク質を作るために必要な全ての遺伝子を欠失している組換えウイルスは、1度しか形質導入することができず、増殖することができない。こうした、標的細胞への1回の形質導入しか行うことのできないウイルスベクターは、複製欠損型ベクターと呼ばれる。ゆえに、ポリヌクレオチドは、潜在的に危険なレトロウイルスを生じることなく、宿主/標的細胞ゲノムに導入される。利用可能なパッケージング株の概説がCoffin ら, 1997(前掲)に提供されている。
【0167】
レトロウイルスパッケージング細胞株を使用することが好ましいが、この細胞株ではgag、polおよびenvウイルス性コード領域が別々の発現プラスミドに保有され、それらのプラスミドは独立にパッケージング細胞株にトランスフェクトされる。この方法は、3プラスミドトランスフェクション法(Soneoka ら, 1995)とも呼ばれており、野生型ウイルスの産生に3つの組換えイベントが必要であることから、複製能のあるウイルスが産生される可能性を低減させる。組換えが相同性により大幅に促進されることから、ベクターとヘルパーのゲノム間の相同性を低下または排除することも、複製能のあるヘルパーウイルスの産生という問題を低減させる。
【0168】
安定的にトランスフェクトされたパッケージング細胞株に代わるものとしては、一過性にトランスフェクトされた細胞株を使用することがある。一過性のトランスフェクションは、ベクターを開発しているときにベクター産生のレベルを測定するために都合良く使用することができる。これに関連して、一過性のトランスフェクションは、安定したベクター産生細胞株を作製するのに、より長い時間がかかるのを回避し、また、ベクターもしくはレトロウイルスパッケージング成分が細胞にとって毒性である場合にも使用することができる。レトロウイルスベクターを作製するために一般的に使用される成分には、gag/polタンパク質をコードするプラスミド、envタンパク質をコードするプラスミド、およびポリヌクレオチドを含有するプラスミドが含まれる。ベクター産生には、これらの成分の1以上を、他の必要な成分を含有する細胞に一過性にトランスフェクトすることが必要である。
【0169】
本発明のポリペプチドの発現を制御する1つの方法は、レトロウイルス5' LTRを使用することである。ポリヌクレオチド配列はまた、内在性の異種プロモーターに機能的に連結させてもよい。この配置はプロモーター選択に柔軟性を提供する。
【0170】
レンチウイルス群は、「霊長類」型および「非霊長類」型に分けることができる。霊長類レンチウイルスの例としては、ヒト後天性免疫不全症候群(AIDS)の病原体であるヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられる。非霊長類レンチウイルス群としては、プロトタイプ「スローウイルス」ビスナ/マエディウイルス(VMV)、ならびに関連するヤギ関節炎−脳脊髄炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)および最近記載されたネコ免疫不全ウイルス(FIV)およびウシ免疫不全ウイルス(BIV)が挙げられる。好ましくは、本発明のレトロウイルスベクターは、HIVから誘導することができるものである。
【0171】
レンチウイルスファミリーと他の種類のレトロウイルスの違いの1つは、レンチウイルスが、分裂する細胞と分裂しない細胞の両方に感染する能力を有することである。対照的に、他のレトロウイルス(MLVなど)は、分裂しない細胞(例えば筋肉、脳、肺および肝臓組織を形成する細胞)に感染することができない。
【0172】
非分裂細胞への感染がレンチウイルスベクターに特有の特徴であるにしても、安定的かつ効率的な形質導入のために特定の条件を整えることができる。こうした条件としては、HIV-1 Vprの発現(Subbramanian ら, 1998; Vodicka ら, 1998)、HIV-1 polポリプリントラクト(PPT)由来の配列の存在(Follenzi ら, 2000)、および単球/マクロファージ培養物の活性化状態 (Re and Luban, 1997)が挙げられる。
【0173】
ベクターの構成的発現の著しい低下は、例えばベクターHIV-1 LTR プロモーター中のTNFα応答配列(すなわちNF-kB結合部位)を欠失/突然変異させることにより、ベクターをTNFα刺激に対して脱感受性にすることで達成される。
【0174】
HIV-1発現に対するより直接的な依存性はまた、ベクターの転写産物がRev/RRE相互作用の不在下で核保持および分解をうけるようなベクターを設計することにより、達成することもできる(Emerman ら, 1989; Malim ら, 1989)。さらに、レトロウイルスベクターについて既に記載されたように(Grignani ら, 1998)、宿主ゲノムに組み込まれることなくトランスジーンを発現することのできる新世代レンチウイルスベクターの使用は、生物安全性の観点から価値ある重要性をもつと考えられる。
【0175】
Tatタンパク質は、レンチウイルス遺伝子の発現レベルを調節する。長い末端反復配列(LTR)の基底転写活性が弱いことから、プロウイルスの発現は最初に、Tat、Rev、およびNefタンパク質をコードする、多様にスプライシングされた転写産物を少量もたらす。Tatは、新生RNA中のステムループ構造(トランス活性化応答エレメント[TAR])に結合することにより転写を劇的に増大させ、それによりポリメラーゼII複合体による転写伸長を刺激するサイクリンキナーゼ複合体を動員する。好ましくは、変異型Vifをコードするポリヌクレオチドは、Tatにより活性化されるHIV-1 LTRの制御下にあり、それゆえ細胞がHIV-1に感染したときのみ発現する。したがってこのベクター設計は、非感染細胞におけるVif発現を最小限にし、そのことにより免疫原性を低下させ、また、細胞がHIV-1に感染したときのみにVif発現が非常に高いレベルで誘導されることを可能にする。これは他のベクター系と比較してよりよい保護を付与する。
【0176】
一実施形態において、本発明のレンチウイルスベクターは選択マーカーを含む。好ましくは、選択マーカーはトランケートされた低親和性神経成長因子受容体(ΔLNGFR)である。一般的なニュートロフィン受容体である低親和性神経成長因子受容体遺伝子(LNGFR)(p75NTRとも言う)は大部分のヒト造血細胞上に発現されず、このことから免疫蛍光による形質導入遺伝子の発現の定量分析が単一細胞レベルの解像度で可能である。LNGFR発現の蛍光活性化セルソーティング分析を形質導入細胞で行って、遺伝子発現を研究することができる。したがってLNGFRは本発明において選択マーカーとして利用可能である。LNGFRを用いた分析に関するさらなる詳細はMavilio 1994に見出される。トランケートされたLNGFRであるΔLNGFRがMavilio 1994に記載されている。
【0177】
選択マーカーは、内部プロモーターに機能的に連結されてもよく、または5' LTRから発現されてもよい。
【0178】
本発明のレンチウイルスベクターは、単球、マクロファージ、リンパ球または造血幹細胞などの細胞により送達されうる。特に、細胞依存性送達システムが使用される。このシステムでは、レンチウイルスベクターをex vivoにて1以上の細胞に導入し、次いでその細胞を患者に導入する。
【0179】
本発明のレンチウイルスベクターは、単独で投与することもできるが、一般には医薬組成物として投与される。
【0180】
治療
本発明はHIV感染または関連症状の治療に関する。本明細書において治療というとき、それにはHIV関連疾患の、治癒的、対症療法的、および予防的な治療が含まれると理解すべきである。哺乳動物の治療が特に好ましい。ヒトの治療および獣医学的治療の両方が本発明の範囲内にある。
【0181】
したがって、本発明を用いて、HIV感染のリスクのある個体において初期HIV感染を予防する、または少なくとも実質的に阻止するように、細胞内免疫化を行うことができる。本発明はまた、感染の拡大を遮断または少なくとも鈍化させ、また、AIDSもしくはARCの発病を予防または少なくとも遅延させることによるHIV陽性患者の治療的処置において使用することができる。
【0182】
本発明の好ましい実施形態においては、HIV許容性細胞を患者から取り出し、HIV変異型Vifを組込むために本発明のレンチウイルスベクターを該細胞に形質導入し、該細胞を患者に再導入することを含む、HIV感染または重複感染に対する耐性を付与する方法を提供する。かかるex vivo方法はFerrariら, (1991)に記載されている。あるいはまた、レトロウイルスベクターをin vivoで細胞に送達することもできる。
【0183】
レンチウイルスベクターの細胞の核ゲノムへの組込みは、例えばPCRを配列決定またはサザンハイブリダイゼーションと共に使用することによりモニタリングすることができる。
【0184】
医薬組成物
医薬組成物とは、治療上有効な量の製薬上活性な物質を含む、または該物質からなる、組成物である。好ましくは医薬組成物は、製薬上許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を含んでなる(その組み合わせも含まれる)。治療用の許容可能な担体または希釈剤は製薬の技術分野ではよく知られており、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro編1985)に記載されている。製薬上の担体、賦形剤または希釈剤は、意図する投与経路および標準的製薬実務を考慮して選択することができる。医薬組成物は、担体、賦形剤または希釈剤としてまたはそれに加えて、任意の適当な結合剤、滑沢剤、懸濁化剤、コーティング剤、可溶化剤を含むこともできる。
【0185】
製薬上許容可能な担体の例としては、例えば、水、塩溶液、アルコール、シリコーン、ワックス、ワセリン、植物油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、リポソーム、糖、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、界面活性剤、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリドおよび脂肪酸ジグリセリド、石油エーテル系脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0186】
適当であれば、医薬組成物は次の1以上の方法、すなわち、吸入により、坐剤またはペッサリーの形態で、ローション剤、溶液剤、クリーム剤、軟膏剤または散剤の形態で局所的に、皮膚パッチの使用により、デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤を含有する錠剤の形態で経口的に、またはカプセルもしくは卵状容器(ovule)中に単独もしくは賦形剤との混合物として、または矯味剤もしくは着色剤を含有するエリキシル剤、溶液剤もしくは懸濁液剤の形態で投与することができ、あるいはそれらは非経口的に、例えば空洞内(intracavernosally)、静脈内、筋肉内または皮下に注射することができる。非経口投与のためには、組成物を滅菌水溶液の形態で使用するのが最良であり、該溶液は他の物質(例えば該溶液を血液と等張にするのに十分な塩または単糖類)を含有することができる。バッカルまたは舌下投与のためには、組成物を錠剤またはトローチの形態で投与することができ、これらは慣用法により製剤化することができる。
【0187】
いろいろな送達系に応じて、それぞれ異なる組成物/製剤要件が存在しうる。一例として、本発明の医薬組成物は、ミニポンプを用いてまたは粘膜経路により(例えば、吸入用の鼻腔スプレーもしくはエアロゾルとして、または摂取可能な溶液として)、あるいは非経口的に(この場合には組成物は例えば静脈内、筋肉内または皮下経路による送達のために注射可能な形態に製剤化される)送達されるように製剤化することができる。あるいは、製剤を両方の経路から送達されるように設計することもできる。
【0188】
ウイルス感染に影響を及ぼすために使用するポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチド/ベクターは、裸の核酸構築物(好ましくは、宿主細胞ゲノムに相同なフランキング配列をさらに含む)として直接投与することができる。ポリヌクレオチド/ベクターを裸の核酸として投与する場合、核酸の投与量は、典型的には1μg〜10 mg、好ましくは100μg〜1 mgの範囲でありうる。
【0189】
哺乳動物細胞による裸の核酸構築物の取り込みは、いくつかの公知のトランスフェクション技術(例えばトランスフェクション試薬の使用を含む技術)により促進される。こうした試薬の例としてはカチオン性試薬(例えばリン酸カルシウムやDEAE-デキストラン)、およびリポフェクタント(lipofectant)(例えばlipofectamTMやtransfectamTM)が挙げられる。典型的には、核酸構築物をトランスフェクション試薬と混合して組成物とする。
【0190】
本発明の組成物はまた、他の抗レトロウイルス薬、特にAZTやddIのような抗HIV治療薬と併用することができる。
【0191】
熟練した医師ならば、どのような特定の患者および症状についても、最適な投与経路および用量を容易に決定することができることから、上記の投与経路および用量は指針にとどまるものである。
【実施例】
【0192】
以下に、本発明のさらなる好ましい構成と実施形態を非限定的な実施例により説明する。
【0193】
実施例1- 材料と方法
細胞
CEM A3.01は、Tリンパ芽CEM細胞株の誘導クローンであり、HIV-1細胞変性効果に高度に感受性である(Folks ら, 1985)。CEM A3.01、CEMss (Nara ら, 1988)、Sup-T1 (Smith ら, 1984)およびPM1細胞(Lusso ら, 1995)は、10% FCS (EuroClone Ltd, UK)とペニシリン、ストレプトマイシン、グルタミンの組合せ(PSG)を添加したRPMI 1640で増殖させた。ヒト腎細胞293Tは、10% FCSおよびPSGを添加したイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)を用いて増殖させた。
【0194】
Ficoll-Hypaque勾配による遠心分離(Lymphoprep, Nycomed Pharma AS, Norway)を用いて、臍帯血からヒト新生児白血球を純化した。CD4+ T細胞分離キットII (Miltenyi Biotec, Sunnyvale, CA, USA)を使用する負の選択によりCD4+ T細胞を分離した。純度(>95%)およびナイーブ表現型は、それぞれ抗CD4、抗CD45RAおよび抗CD45RO Abs (BD PharmingenTM)を使用するフローサイトメトリーにより確認した。CD4+ Tリンパ球は、10%ヒト血清、50 U/ml IL-2 (Chiron, Emeryville, CA)、25 U/mlのIL-7 (ImmunoTools, Germany)を含有するX-VIVO-15 (BioWhittaker, Cambrex Bio Science, Verviers, Belgium)中で、0.5ビーズ/細胞の比率でのDynabeads CD3/CD28 T細胞エキスパンダー(Dynal Lake Success, NY, USA)の存在下で、3日間培養した。
【0195】
プラスミド
レンチウイルスベクターPΔNは、ホスホグリセロキナーゼ(PGK)プロモーターの制御下にあるトランケート型の低親和性神経成長因子受容体(ΔLNGFR)をコードするPGK-ΔLNGFRカセット(Bonini ら, 1997)を、レンチウイルスベクターpHR2 (Dullら, 1998)のClaI/SacII部位にクローニングすることにより作製した。F12-VifPΔNおよびVifPΔNベクターは、それぞれ、PCR増幅させた611bpのF12-vifまたは野生型(WT)vif配列を、PΔNベクターのClaI部位に挿入することにより得た。WT HIV-1NL4-3 (登録番号 M19921)およびF12-HIV-1 (登録番号 Z11530)のDNAをvif PCRテンプレートとして使用し、次のプライマーを使用した:

(ClaI配列を太字で示す)。全てのPCR増幅断片およびクローニング接合部を完全に配列決定した。本発明者らは、以前に記載されたPΔN レンチウイルスベクター(Vallantiら, 2005)から出発して、キメラWT/F12 vif遺伝子を有する3種のベクターChim1PΔN、Chim2PΔNおよびChim3PΔNを作製した。Chim1PΔNはF12-vifのN末端の最初の87アミノ酸とWT-vifの残りの106アミノ酸をコードし、Chim2PΔNは該2つのドメインがChim1PΔNに関して交換されたキメラタンパク質をコードし、そして最後にChim3PΔNはF12-Vifのアミノ酸領域126〜170がWT-Vif主鎖に挿入されたキメラタンパク質をコードする。最初の2種のキメラ遺伝子は、PCRのテンプレートとして、2種のNL4-3 HIV-1分子クローン突然変異体(F12-HIVゲノム由来のBSpMI-PflMI (259 bp)およびPflMI-EcoRI (440 bp)断片がそれぞれ置換された)のゲノムを使用することにより、取得した。第3のベクターはPrimm s.r.l (Milano, Italy)によるDNA合成により作製した。この3種のキメラ遺伝子をPΔN 空ベクターのClaI部位にクローニングした。すべてのPCR増幅断片およびクローニング接合部を配列決定により確認した。F12-VifPΔN およびWT-VifPΔNは以前に記載されている。pCEM15:HA (Sheehy ら, 2002)プラスミドはM. Malim (King’s College, London, UK)から寄贈された。
【0196】
シュードタイプ化されたレンチウイルスベクターの産生
シュードタイプ化されたレンチウイルスベクターストックは、トランスファーベクターであるGag, Pol, TatおよびRevを発現する第2世代最小パッケージング構築物pCMVΔR8.74、ならびに水疱性口内炎ウイルスエンベロープ糖タンパク質VSV-G (Zufferey ら, 1997)をコードするpMD.Gプラスミドを、293T細胞に一過性に共トランスフェクトすることにより産生させた。細胞を0.4×106/mlにて播種し、その24時間後に3種のプラスミドを2:1:3の比率で用いてFugeneTM6 (Roche Diagnostics Corporation, Indianapolis, IN)によりトランスフェクトした。トランスフェクションの48〜72時間後に上清を回収し、低速遠心分離(1,500 rpmにて10分)により清澄化し、0.45μm 孔径のフィルターに通して濾過した。ウイルス力価は、ウイルスストックの連続希釈物を細胞に形質導入することにより計算した。ウイルスストック正規化は、標準化RTアッセイおよびp24 Ag ELISA手法(Coulter Corporation, Westbrook, ME)を用いることにより行った。
【0197】
細胞への形質導入およびΔLNGFR免疫選択
細胞は遠心接種法(spinoculation)により形質導入した。手短に説明すると、各VSV-Gシュードタイプ化ベクターの上清(RTアッセイにより正規化されたもの)を、1×106細胞と共に最終容量2 ml中でインキュベートし(MOIは0.5〜5)、その後ポリブレン(8μg/ml)の存在下で2,200 rpmにて1時間遠心分離した。48時間後に細胞をPBSで洗浄し、新鮮な完全培地を添加した。形質導入効率は、抗ヒトp75-LNGFRモノクローナル抗体20.4 (ATCC, Rockville, MD)およびR-フィコエリトリン(RPE)-コンジュゲート型ヤギ抗マウス血清(Southern Biotechnology Associates, Birmingham, AL)を用いたΔLNGFR発現のフローサイトメトリー分析(FACScan, Becton Dickinson, Mountain View, CA)により、遠心接種法の少なくとも1週間後にモニタリングした。ΔLNGFR細胞の免疫選択は、MiniMACSマイクロビーズ(Miltenyi Biotec Inc., Sunnyvale, CA)を製造者の説明書に従って使用し、磁気セルソーティングにより行った。FACS染色によるとΔLNGFR細胞の純度は>92%であった。改変した遠心接種法(ポリブレン濃度: 4 μg/ml; 一晩のインキュベーション後にウイルス上清を新鮮な培地で置き換える)を用いて、一次T細胞に形質導入を行った。細胞株について記載したように遠心接種の3日後にΔLNGFRTリンパ球を選択した。
【0198】
ウェスタンブロット分析
全細胞タンパク質抽出物(40μg)を以前に記載された(Bovolenta ら, 2002)ように調製し、12.5% SDS-PAGEによりサイズ分画し、その後、エレクトロブロッティングを用いてHybond ECLニトロセルロースメンブレン(Amersham, Little Chalfont, UK)に転写した。メンブレンを5%低脂肪粉乳中で室温にて1時間ブロッキングし、次いで適当な一次抗体と4℃で一晩インキュベートした。HIV-1HXB2 Vifウサギ抗血清(Goncalves ら, 1994)は、AIDS Research and Reference Reagent Program (Division of AIDS, NIAID, NIH, Bethesda, MD)を介してDana Gabuzda氏から入手したものであり、これを1:1,000希釈にて使用した。ヒトアクチンに対するウサギポリクローナル抗体(Sigma Chemical Corp., St. Louis, MO)を1:250希釈にて使用した。主要なHIV-1タンパク質をすべて認識する、AIDS患者から得られた血清を、1:2,000希釈にて使用した。セイヨウワサビペルオキシダーゼコンジュゲート型二次抗体、抗ウサギ抗体および抗ヒト抗体(Amersham, Little Chalfont, UK)を1:10,000の希釈にて使用し、増強された化学発光システム(ECL, Amersham)を用いて、抗体結合を可視化した。
【0199】
ノーザンブロット分析
CEM A3.01細胞を、8時間に渡り、未処理のまま放置するかまたはシクロへキシミド(10μg/ml; Calbiochem(登録商標))を用いて処理した。Trizol試薬(Life TechnologiesTM Inc., Gaithersburg, MD)を製造者の説明書に従って使用して全RNAを抽出し、それを0.8%アガロース-ホルムアルデヒドゲルで泳動させ、キャピラリー転写によりHybond-Nメンブレン(Hybond-N, Amersham)上に転写し、PerfectHyb PLUSハイブリダイゼーションバッファー(Sigma Chemical Corp., St. Louis, MO)中の106 dpm/mlの32P標識1-kb ΔLNGFR断片を用いてプロービングし、−70℃にてX線フィルムを感光させた(図14)。
【0200】
HIV-1感染
次のHIV-1株を細胞に急性感染させた:実験室用に適応させたX4 HIV-1 IIIB/LAI (ABI, Advanced Biotechnologies, Columbia, MD)、分子クローンX4 HIV-1NL4-3 およびそのΔvif誘導体(Gibbs, 1994)、分子クローンR5 HIV-1 AD8 (ABI, Advanced Biotechnologies, Columbia, MD)、およびK. Peden氏(FDA, NIH, Bethesda, MD)から快く寄贈されたpAD1vif1 HIV株。ウイルス(MOIは0.01〜1の範囲)を37℃にて2〜5時間に渡り細胞に吸着させ、次いでPBSを用いて2回洗浄した。細胞を最終的には完全培地に再懸濁し、0.5〜1×106 /mlにて96ウェルプレートに三重反復して播種した。4日ごとに培養上清を回収し、標準法に従いMg2+依存性RT活性アッセイまたはp24 ELISAについて試験するまで−80℃にて貯蔵した。
【0201】
実施例2 - 変異型VifのTat依存性発現
本発明者らは、Vif変異体をコードするレンチウイルスベクターとパッケージング構築物(Tatの供給源として)を用いて共トランスフェクトした293T 細胞中で、キメラタンパク質がTat依存的に発現されることを示した(図7)。
【0202】
以前に記載されたようにして全細胞抽出物(WCE)を調製した{Bovolenta, 2002 #205}。タンパク質をSDS-PAGEによりサイズ分画し、エレクトロブロッティングによりHybond ECLニトロセルロースメンブレン(Amersham, Little Chalfont, UK)に転写した。メンブレンを5%低脂肪粉乳中でブロッキングし、次いで適当な一次抗体とインキュベートした。HIV-1HXB2 Vifウサギ抗血清{Goncalves, 1994 #241}は、AIDS Research and Reference Reagent Program (Division of AIDS, NIAID, NIH, Bethesda, MD)を介してDana Gabuzda氏から入手したものであり、これを1:1,000希釈にて使用した。
【0203】
これらのタンパク質は異なる細胞内安定性を有し、すなわちF12-Vif (図2)、Chim2 (図4A,B)およびChim3 (図5A,B)はもはや存在せず、これに対してWT-Vif (図1C)とChim1 (図3A,B)は72時間でまだ蓄積される(図7)。
【0204】
実施例3 - 変異型Vif構築物はT細胞中でのHIV-1の複製を阻害する
本発明者らは最初に、偽(mock)形質導入したおよびレンチウイルス(LV)形質導入したCEMA3.01細胞に、X4分子クローンNL4-3を0.1のMOIにて感染させることにより、3種のキメラの潜在的抗ウイルス活性をF12-Vifのそれと比較した。図8Aは、Chim1(これはF12-VifのN末端領域を有する)が抗ウイルス活性を有しないこと、これに対してChim2とChim3の両方(これらはF12-VifのC末端ドメインを発現する)はF12-Vifに匹敵する様式でHIV-1複製を阻害することを示す。F12-Vifの配列は、Chim3中での方がChim2中よりも短い(45アミノ酸対104アミノ酸、それぞれ6個対9個のユニークなアミノ酸置換を含む)ものの、Chim3の抗ウイルス活性はChim2のそれよりも若干高い。したがって、これ以降はF12-Vifの効果と比較するChim3の効果のみを報告し、簡単にするためにChim3の効果と常に似ているChim2の効果を省略する。本発明者らは、CEMss (図8B)およびSup-T1(図8C)許容性細胞にX4 NL4-3 HIV-1を0.1のMOIにて感染させることにより、これらの細胞中でのChim3によるHIV阻害活性を確認した。いずれの場合にも、Chim3はF12-Vifと同じくらい効果的にHIV-1複製を阻害する。最後に、Chim3のR5 HIV-1株に対する阻害活性を試験するために、本発明者らはR5 HIV-1株により感染されうる唯一のT細胞株としてPM1細胞を使用した(Lusso ら, 1995)。偽形質導入したおよびChim3PΔN形質導入した細胞を0.1のMOIのHIV-1 AD8分子クローンでチャレンジし、次いでそれらの感染後6日目におけるウイルス産生を分析した。図8Dに示すように、Chim3を発現する細胞は、偽形質導入細胞に対して4倍低いウイルス放出を示した。
【0205】
実施例4 - Chim3は臍帯血由来のCD4+ Tリンパ球中でのX4およびR5 HIV-1株の両方の複製を阻害する
健康な正常ドナーの臍帯血由来の、予め活性化されたCD4+ Tリンパ球に種々のレンチウイルス(LV)を形質導入し、次いでそれにX4 HIV-1 NL4-3株を0.1のMOIにて感染させた。偽形質導入細胞とは対照的に、組み込まれたChim3遺伝子を有するTリンパ球は、F12-Vifと同程度に、実験の全期間に渡りHIV-1感染を抑制した(図9A)。異なるドナーに由来するCD4+ Tリンパ球に、R5分子クローンHIV-1 AD8を0.1のMOIにて感染させたところ、同じ様な結果が得られた(図9B)。
【0206】
実施例5 - Chim3は臍帯血(CB)由来CD4+ Tリンパ球中でのΔvif HIV-1の複製をレスキューしない
F12-Vif、Chim2およびChim3阻害活性がWT-Vifの存在に依存するか否かを調べるために、本発明者らは、Δvif HIV-1を0.1のMOIにて、非許容性CEM A3.01偽形質導入およびベクター形質導入細胞に感染させた(図10)。予想どおり、Δvif HIV-1は、偽形質導入およびPΔN形質導入細胞中では複製しないが、WT-Vifをトランスで供給した細胞中では効率的に増殖する。際立って、Δvif HIV-1は、F12-Vif発現細胞およびChim2発現細胞からも放出されたが、Chim3発現細胞からは放出されず、このことはChim3 Vifが、患者にサイレント状態で保有されているΔvif HIV-1準種に遭遇したときに、Chim2よりも安全であることを示している(図10)。
【0207】
さらなる実験において、本発明者らは、CD4+ Tリンパ球の偽形質導入細胞、F12-Vif-形質導入およびChim3-形質導入細胞に、X4またはR5指向性の背景で作製したvif欠損ウイルスを0.1のMOIにて感染させ、その後、感染の動態(kinetic)をそれぞれ39日間(X4 Δvif HIV、図11A)および29日間(R5 Δvif HIV、図11B)追跡した。本発明者らが以前に記載したこと(22)およびここでF12-Vifについて確認したこととは対照的に、Chim3はいずれのvif欠損ウイルスの複製をもレスキューしなかったが、ただしR5指向性株については弱いレベルのウイルス複製が観察された(図11B)。総合すると、こうした結果は、Chim3は、F12-Vifにより達成されるレベルと同じようなレベルでHIV複製を阻害するのみならず、より重要なこととして、vif欠損ウイルスの複製を救済しないことを示唆する。したがってこのことから、Chim3は、F12-Vifと比較して、抗HIV遺伝子治療の取り組みのより良い候補となる。実際にChim3は、HIV-1制限因子hHA3Gの反作用因子(counteracting factor)としてのVifの作用に関して、真にドミナントネガティブな表現型を示す。
【0208】
実施例6 - Chim3は、偽形質導入されたHIV-1感染細胞と比較して、形質導入されたHIV-1感染細胞に生存優位性を付与する
Chim3形質導入細胞が、偽形質導入された対応する細胞と比較して、選択的優位性を示しうるかを調べるために、本発明者らは、レンチウイルス(LV)形質導入CEMA3.01と偽形質導入CEMA3.01細胞を均等な割合(50:50)で混合した。次いで細胞を2つの集団に分け、一方は未感染のままとし、もう片方にはX4 HIV-1 NL4-3を0.01のMOIにて感染させた。非感染細胞と比べたNGFR+ 感染細胞の増加率を培養の20日目に計算した。NGFRの発現はFACS分析によりモニタリングした。図12は、いずれの種類の細胞においてもHIV-1感染後にNGFR+ 細胞の増加が見られたことを示す。しかしながら、Chim3-およびF12-Vif-形質導入細胞の増加は対照細胞と比較して2〜5高く、このことはいずれの治療用遺伝子も、遺伝子改変細胞に、より強い選択的優位性を付与することを示す。
【0209】
実施例7 - Chim3は非許容性細胞においてのみ、プロテアソーム中で優先的に分解され、そのレベルは細胞性因子であるヒトAPOBEC3G (hA3G)のレベルと逆相関する
Chim3が、F12-Vifとは対照的に、真にドミナントネガティブな因子のように振る舞うという事実に基づき、本発明者らはChim3形質導入細胞中のhA3Gのレベルがどれくらいであるのか疑問を抱いた。本発明者らは最初に、未感染で、形質導入された非許容性CEM A3.01細胞および許容性Sup-T1細胞中でのキメラの発現の基底レベルを分析した。特筆すべきことに、Chim2およびChim3の発現は他のVifのそれよりも非常に低く(図13A)、このことは該2種のキメラの異なる安定性または発現性を示唆する。
【0210】
Vifは非許容性HeLa細胞および293T 細胞中ではプロテアソームにより分解される(Fujita ら, 2004)ことから、本発明者らは次に、許容性および非許容性細胞中のVifタンパク質のレベルを、プロテアソーム阻害剤MG132の存在下または不在下で調べた。図13Bの上のパネルに示されるように、Chim2およびChim3の両方の発現はSup-T1細胞中でも他のVifよりも低く、MG132を用いた処理はタンパク質の微弱な蓄積のみを誘発する(図13C)。対照的にChim3はMG132処理後に他のVifよりも約3倍多く蓄積する(図13Bの下のパネルと図13C)。より重要なこととして、hA3Gはウェスタンブロット分析ではChim3発現細胞中でのみ検出され、そのレベルはMG132処理細胞中のChim3レベルと逆に相関する(図13B、中央パネル)。こうした結果は、Chim3が、非許容性細胞においてのみプロテアソーム中で優先的に分解されること、および、その低いレベルはhA3Gの正常な発現を可能にすることを示唆する。
【0211】
実施例8 - Chim3はベクターにより正常に発現され、そのmRNAはシクロへキシミド処理後に蓄積する
Chim3の低い発現が、低い転写にも依るものであるか否かを決定するために、本発明者らは、レンチウイルス(LV)形質導入した未感染のCEM A3.01細胞から得られた全RNAに対してNGFRプローブを使用したノーザンブロット分析を行った。上記LVからは、3種の異なるRNA種、すなわち全長型およびスプライシングされたRNA(これらはベクターの5’LTRにより駆動される)、ならびに構成的なPGK-ΔLNGFR mRNA (Vallentiら, 2005)が転写される。TatとRevを欠く未感染細胞中では、5’LTRが実際に機能し、Vifタンパク質が蓄積するが、それは感染細胞中よりは弱い。したがって、検出された2つだけのバンドは、Vifを含むスプライシングされたRNAと、構成的ΔLNGFRのRNAに対応する。驚くべきことに、Chim2およびChim3 LVの発現は他のLVよりも強く(図14A)、合成されるタンパク質のレベルとは逆相関する。この見かけ上の食い違いの理由をさらに検証するために、本発明者らは、タンパク質合成を遮断するシクロへキシミドで細胞を8時間処理した。注目すべきこととして、Chim3 mRNAの蓄積量は他のVifよりも高い(図14BおよびC)。こうした結果は、分析したVifが、Chim3を除き、自身の転写を負のフィードバック機構により調節することを示唆する。Chim3は正常に転写されるが、該タンパク質がプロテアソームにより容易に分解されるので、そのmRNAは転写されにくい。
【0212】
実施例9 - 免疫原性
Vifは単独では、HIV-1タンパク質の中でもさほど免疫原性ではないタンパク質である(Addo ら, 2003)。本発明の変異型Vifポリペプチドは、少なくともHLA-I結合ペプチドを予測するためのBIMAS (http://bimas.cit.nih.gov/)およびRANKPEP (http://www. mifoundation.org/Tools/rankpep.html)アルゴリズムの両方に基づき、この点に関してWT-Vifと大きく変わらないと予想される(データ未掲載)。変異型Vifの低い免疫原性とTat依存性発現は、in vivoにおいて、未感染のレトロウイルス形質導入細胞に対する免疫応答を回避するか、または少なくとも最小化するはずである。他方、野生型HIV-1 LTRは、HIV-1感染細胞におけるトランスジーンの非常に高い発現レベルを保証するが、これはトランスドミナント変異型タンパク質の活性に決定的に重要な要件である。
【0213】
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【図面の簡単な説明】
【0214】
【図1A】5種のVifアミノ酸配列(HXB2 登録番号 K03455, BRU 登録番号 K02013, SF2 登録番号 K02007, PV22 登録番号 K02083, MN 登録番号 M17449)から得られたコンセンサスWTアミノ酸配列を示す。これらの登録番号はNCBI Genbank (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?CMD=search&DB=nucleotide)を参照したものである。
【図1B】上記5種のVifアミノ酸配列、得られたコンセンサス配列、およびF12-Vif配列のアライメントを示す。
【図1C】NL4-3のWT Vifアミノ酸配列を示す。
【図2】HIV1 F12株由来のHIV F12-Vifポリペプチド配列(NCBI登録番号: Z11530)を示す。ユニークなアミノ酸置換を太字で示す。
【図3】図3AにChim1ポリペプチド配列を示す。太字のアミノ酸は野生型Vif (NL4-3)に対する変更アミノ酸を表す。図3Bに、F12-Vif(イタリック体)におよび野生型Vifに対応するChim 1の部分を強調してある。
【図4】図4AにChim2ポリペプチド配列を示す。太字のアミノ酸は野生型Vif(NL4-3)に対する変更アミノ酸を表す。図4Bに、F12-Vif(イタリック体)におよび野生型Vifに対応するChim 2の部分を強調してある。
【図5】図5AにChim3ポリペプチド配列を示す。太字のアミノ酸は野生型Vif (NL4-3)に対する変更アミノ酸を表す。図5Bに、F12-Vif(イタリック体)におよび野生型Vifに対応するChim 3の部分を強調してある。
【図6】プロウイルス形態での、HIV-1に基づくPΔN、WT-VifPΔN、F12-VifPΔN、Chim1-PΔN、Chim2-PΔNおよびChim3-PΔNレンチウイルスベクターの配置図を示す。
【図7】ウェスタンブロットアッセイを用いて、Chim1、Chim2およびChim3の発現を、WT-およびF12-Vif全長タンパク質と比較したときの分析を示す。
【図8】T細胞株中でのキメラタンパク質の抗ウイルス活性を示す。A:NP CEM A3.01偽形質導入(Mock)ならびにF12-Vif-およびChim3PΔN-形質導入細胞に、X4分子クローンHIV-1 NL4-3を、0.1のMOIにて感染させた。感染動態のピーク(15日目)において三重反復してRTアッセイにより測定した値の平均を示す。B:許容性の偽形質導入およびLV-形質導入CEMss細胞に、X4 HIV-1 NL4-3を0.1のMOIにて感染させたときの感染の動態を示す。C:許容性SupT-1偽形質導入およびLV-形質導入細胞にX4 HIV-1 NL4-3を0.1のMOIにて感染させたときの動態を示す。D:非許容性の偽形質導入およびChim3PΔN-形質導入PM1細胞にR5 HIV-1 AD8を0.1のMOIにて感染させ、感染から6日後に測定したRT活性を示す。
【図9】CD4+ Tリンパ球中でのChim3の抗ウイルス活性を示す。臍帯血由来CD4+ Tリンパ球の偽形質導入およびLV-形質導入細胞に、X4 HIV-1 NL4-3 (A)またはR5分子クローンHIV-1 AD8 (B)のいずれかを、0.1のMOIにて感染させた。
【図10】CEM A3.01細胞に図示したレンチウイルスベクターを形質導入し、これにその後HIV-1NL4-3を0.1のMOIにて感染させた該細胞中でのHIV-1複製の動態を示す。
【図11】Chim3がCD4+ Tリンパ球中でX4およびR5 Δvif HIV-1の複製をレスキューしないことを示す。CD4+ Tリンパ球の偽形質導入またはLV-形質導入細胞にX4 Δvif-HIV (A)およびR5 HIV-1 AD-1vif (B)分子クローンを0.1のMOIにて感染させた。HIV-1増殖をそれぞれ39および29日間追跡した。
【図12】HIV-1感染後の、F12-Vif-およびChim3-形質導入細胞の、偽形質導入細胞に対する選択的優位性を示す。LV-形質導入および偽形質導入したCEM A3.01細胞を50:50の比率で混合して培養し、その後これにX4 HIV-1 NL4-3を0.01のMOIにて感染させた。感染細胞と非感染細胞の間の形質導入細胞(NGFR陽性細胞)の増加%を、感染後20日目に計算した。
【図13】WT-Vifと比較したときのChim2およびChim3の発現が低いこと、ならびにChim3が許容性細胞中よりも非許容性細胞中でより効率的にプロテアソームにより分解されることを示す。A:偽およびLV-形質導入された非許容性CEM A3.01または許容性SupT-1細胞中のVifおよびhA3G タンパク質の基底レベルのウェスタンブロット分析を示す。B: プロテアソーム阻害剤MG132を用いて18時間処理した未感染の許容性(SupT-1)または非許容性(CEM A3.01)細胞のいずれかに由来する全細胞抽出物のウェスタンブロット分析を示す。メンブレンを逐次的に抗Vif、抗hA3G(非許容性細胞についてのみ)および抗アクチン抗体でプロービングした。C:Vifタンパク質の増加倍数は、MG132処理有りまたは無しの場合のバンドの強度を測定すること、およびアクチンバンドを利用してタンパク質の量が等しくなるよう正規化することにより計算した。定量は、3回の独立した実験により行った。
【図14】シクロへキシミド処理後の非許容性細胞中でのChim3 mRNAの蓄積を示す。A:非許容性CEM A3.01細胞から全RNA(10μg)を抽出し、次いで分画したRNAをNGFRプローブとハイブリダイゼーションさせた。B:8時間に渡るシクロへキシミド(10μg/ml)処理有りまたは無しの非許容性CEM A3.01細胞から全RNAを抽出し、次いで分画したRNAをNGFRプローブとハイブリダイゼーションさせた。C:Vif mRNAの増加倍数は、NGFRバンドに対して正規化した相対バンドのPhosphorimager定量により計算した。
【図15】Chim3ポリヌクレオチド配列を示す。
【図16】Chim2ポリヌクレオチド配列を示す。
【図17】NL4-3のWT Vifポリヌクレオチド配列を示す。
【図18】F12-Vifポリヌクレオチド配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図1Aに記載の配列の127, 128, 130, 131, 132および142位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されているVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、該ヌクレオチド配列が図2に記載のアミノ酸配列をコードするものではない、前記ポリヌクレオチド。
【請求項2】
図1Aに記載の配列の127, 128, 130, 131, 132および142位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されており、かつ22, 29, 41, 48, 66, 80, 109, 185および186位に対応するアミノ酸の1つ以上がそれぞれ対応してI, I, K, N, V, N, R, RおよびNではない、Vifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項3】
22, 29, 41, 48, 66, 80, 109, 185および186位に対応するアミノ酸が、いずれも、それぞれ対応してI, I, K, N, V, N, R, RおよびNではない、請求項2に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項4】
22, 29, 41, 66, 80, 109, 185および186位に対応するアミノ酸が、いずれも、それぞれ対応してI, I, K, V, N, R, RおよびNではない、請求項2に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項5】
127, 128, 130, 131, 132および142位に対応するアミノ酸が、いずれも、それぞれ対応してN, V, R, L, SおよびIで置換されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項6】
48位に対応するアミノ酸がNである、請求項1, 2, 4および5のいずれか1項に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項7】
22, 29, 41, 48, 66, 80, 109, 185および186位に対応するアミノ酸が、天然Vifに存在するアミノ酸である、請求項2〜6のいずれか1項に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項8】
図1Aに記載の配列の127, 128, 130, 131, 132, 142および185位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されており、かつ22, 29, 41, 48, 66, 80, 109および186位に対応するアミノ酸の1以上がそれぞれ対応してI, I, K, N, V, N, RおよびNではない、Vifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項9】
22, 29, 41, 48, 66, 80, 109および186位に対応するアミノ酸が、いずれも、それぞれ対応してI, I, K, N, V, N, RおよびNではない、請求項8に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項10】
22, 29, 41, 66, 80, 109および186位に対応するアミノ酸が、いずれも、それぞれ対応してI, I, K, V, N, RおよびNではない、請求項8に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項11】
127, 128, 130, 131, 132, 142および185位に対応するアミノ酸がそれぞれ対応してN, V, R, L, S, IおよびRで置換されている、請求項8〜10のいずれか1項に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項12】
48位に対応するアミノ酸がNである、請求項8, 10, および11のいずれか1項に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項13】
22, 29, 41, 48, 66, 80, 109および186位に対応するアミノ酸が天然Vifに存在するアミノ酸である、請求項8〜12のいずれか1項に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項14】
図1Aに記載の配列の127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されており、かつ22, 29, 41, 48, 66, 80および109位に対応するアミノ酸の1以上がそれぞれ対応してI, I, K, N, V, N, およびRではない、Vifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項15】
22, 29, 41, 48, 66, 80および109位に対応するアミノ酸が、いずれも、それぞれ対応してI, I, K, N, V, NおよびRではない、請求項14に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項16】
22, 29, 41, 66, 80および109位に対応するアミノ酸が、いずれも、それぞれ対応してI, I, K, V, NおよびRではない、請求項14に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項17】
127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応するアミノ酸がそれぞれ対応してN, V, R, L, S, I, RおよびNで置換されている、請求項14〜16のいずれか1項に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項18】
48位に対応するアミノ酸がNである、請求項14, 16および17のいずれか1項に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項19】
22, 29, 41, 48, 66, 80, 109位に対応するアミノ酸が天然Vifに存在するアミノ酸である、請求項14〜18のいずれか1項に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項20】
図1Aに記載の配列の109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されており、かつ22, 29, 41, 48, 66および80位に対応するアミノ酸の1つ以上がそれぞれ対応してI, I, K, N, VおよびNではない、Vifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項21】
22, 29, 41, 48, 66および80位に対応するアミノ酸が、いずれも、それぞれ対応して、I, I, K, N, VおよびNではない、請求項20に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項22】
22, 29, 41, 66および80位に対応するアミノ酸が、いずれも、それぞれ対応してI, I, K, VおよびNではない、請求項20に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項23】
109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応するアミノ酸がそれぞれ対応してR, N, V, R, L, S, I, RおよびNで置換されている、請求項20〜22のいずれか1項に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項24】
48位に対応するアミノ酸がNである、請求項20, 22および23のいずれか1項に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項25】
22, 29, 41, 48, 66, 80位に対応するアミノ酸が天然Vifに存在するアミノ酸である、請求項20〜24のいずれか1項に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項26】
図1Aに記載の配列の80, 109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されており、かつ22, 29, 41, 48および66位に対応するアミノ酸の1以上がそれぞれ対応してI, I, K, NおよびVではない、Vifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項27】
22, 29, 41, 48および66位に対応するアミノ酸が、いずれも、それぞれ対応して I, I, K, NおよびVではない、請求項26に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項28】
22, 29, 41, および66位に対応するアミノ酸が、いずれも、それぞれ対応してI, I, K およびVではない、請求項26に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項29】
80, 109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応するアミノ酸がそれぞれ対応してN, R, N, V, R, L, S, I, RおよびNで置換されている、請求項26〜28のいずれか1項に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項30】
48位に対応するアミノ酸がNである、請求項26, 28および29のいずれか1項に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項31】
22, 29, 41, 48および66位に対応するアミノ酸が天然Vifに存在するアミノ酸である、請求項26〜30のいずれか1項に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項32】
図1Aに記載の配列の66, 80, 109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されており、かつ22, 29, 41および48位に対応するアミノ酸の1以上がそれぞれ対応してI, I, KおよびNではない、Vifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項33】
22, 29, 41および48位に対応するアミノ酸が、いずれも、それぞれ対応してI, I, KおよびNではない、請求項32に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項34】
22, 29および41位に対応するアミノ酸が、いずれも、それぞれ対応してI, I およびKではない、請求項32に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項35】
66, 80, 109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応するアミノ酸がそれぞれ対応してV, N, R, N, V, R, L, S, I, RおよびNで置換されている、請求項32〜34のいずれか1項に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項36】
48位に対応するアミノ酸がNである、請求項32, 34および35のいずれか1項に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項37】
22, 29, 41および48位に対応するアミノ酸が天然Vifに存在するアミノ酸である、請求項32〜36のいずれか1項に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項38】
図1Aに記載の配列の48, 66, 80, 109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されており、かつ22, 29および41位に対応するアミノ酸の1以上がそれぞれ対応してI, IおよびKではない、Vifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項39】
22, 29および41位に対応するアミノ酸が、いずれも、それぞれ対応してI, IおよびKではない、請求項38に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項40】
48, 66, 80, 109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応するアミノ酸が、それぞれ対応してN, V, N, R, N, V, R, L, S, I, RおよびNで置換されている、請求項38または39に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項41】
22, 29および41位に対応するアミノ酸が天然Vifに存在するアミノ酸である、請求項38〜40のいずれか1項に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項42】
図1Aに記載の配列の41, 48, 66, 80, 109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されており、かつ22および29位に対応するアミノ酸の少なくとも1つがIではない、Vifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項43】
22および29位に対応するアミノ酸が両方ともIではない、請求項42に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項44】
41, 48, 66, 80, 109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応するアミノ酸がそれぞれ対応してK, N, V, N, R, N, V, R, L, S, I, RおよびNで置換されている、請求項42または43に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項45】
22および29位に対応するアミノ酸が天然Vifに存在するアミノ酸である、請求項42〜44のいずれか1項に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項46】
図1A に記載の配列の29, 41, 48, 66, 80, 109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応する各アミノ酸が別のアミノ酸で置換されており、かつ図1Aにおける22位に対応するアミノ酸がIではない、Vifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項47】
29, 41, 48, 66, 80, 109, 127, 128, 130, 131, 132, 142, 185および186位に対応するアミノ酸がそれぞれ対応してI, K, N, V, N, R, N, V, R, L, S, I, RおよびNで置換されている、請求項46に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項48】
22位に対応するアミノ酸が野生型Vifに存在するアミノ酸である、請求項46または47に記載のVifをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項49】
図2に記載のF12-Vif配列のアミノ酸126〜170を天然Vif配列中に組み込まれた状態で含んでなるキメラVifポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項50】
図4Aに記載のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド。
【請求項51】
図5Aに記載のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド。
【請求項52】
図15に記載のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド。
【請求項53】
図16に記載のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド。
【請求項54】
請求項1〜53のいずれか1項に定義されたVifの断片をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、前記断片が少なくとも図2に記載の配列の126〜170に対応するアミノ酸を含む、前記ポリヌクレオチド。
【請求項55】
図2に記載の配列のアミノ酸126〜170からなるVif断片をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項56】
22位のアミノ酸がIに変更されている、請求項1〜55のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項57】
29位のアミノ酸がIに変更されている、請求項1〜56のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項58】
41位のアミノ酸がKに変更されている、請求項1〜57のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項59】
48位のアミノ酸がNに変更されている、請求項1〜58のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項60】
66位のアミノ酸がVに変更されている、請求項1〜59のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項61】
80位のアミノ酸がNに変更されている、請求項1〜60のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項62】
109位のアミノ酸がRに変更されている、請求項1〜61のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項63】
127位のアミノ酸がNに変更されている、請求項1〜62のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項64】
128位のアミノ酸がVに変更されている、請求項1〜63のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項65】
130位のアミノ酸がRに変更されている、請求項1〜64のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項66】
131位のアミノ酸がLに変更されている、請求項1〜65のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項67】
132位のアミノ酸がSに変更されている、請求項1〜66のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項68】
142位のアミノ酸がIに変更されている、請求項1〜67のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項69】
185位のアミノ酸がRに変更されている、請求項1〜68のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項70】
186位のアミノ酸がNに変更されている、請求項1〜69のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項71】
請求項1〜70のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドによりコードされる、Vifポリペプチドまたはその断片。
【請求項72】
図4Aに記載のアミノ酸配列を含むVifポリペプチド。
【請求項73】
図5Aに記載のアミノ酸配列を含むVifポリペプチド。
【請求項74】
請求項1〜69のいずれか1項に定義されるポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項75】
前記ベクターがレトロウイルスまたはレンチウイルスベクターである、請求項74に記載のベクター。
【請求項76】
前記レンチウイルスベクターがHIVから誘導されるものである、請求項75に記載のベクター。
【請求項77】
前記ポリヌクレオチドがウイルスLTRに機能的に連結されている、請求項75または76に記載のベクター。
【請求項78】
前記ポリヌクレオチドの発現がtat依存性である、請求項75〜77のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項79】
tat遺伝子を欠失している、請求項75〜78のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項80】
前記ポリペプチドの発現がHIV-1誘導性の制御下にある、請求項75〜79のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項81】
gag、polおよびenv遺伝子のいずれか1以上、またはすべてを欠失している、請求項76〜80のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項82】
選択マーカー遺伝子をコードするポリヌクレオチド配列をさらに含む、請求項74〜81のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項83】
p75低親和性神経成長因子受容体(LNGFR)の少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列をさらに含む、請求項74〜82のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項84】
組み込まれたプロウイルスの形態である、請求項75〜83のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項85】
請求項75〜84のいずれか1項に記載のベクターから得られうる、レトロウイルスまたはレンチウイルス粒子。
【請求項86】
前記粒子がシュードタイプ化されている、請求項85に記載のレトロウイルスまたはレンチウイルス粒子。
【請求項87】
請求項75〜84のいずれか1項に記載のベクターと、レトロウイルス性もしくはレンチウイルス性gag-polおよびレトロウイルス性もしくはレンチウイルス性envまたは非レトロウイルス性もしくは非レンチウイルス性envとを含む、請求項85または86に記載のレトロウイルス粒子もしくはレンチウイルス粒子を産生するためのレトロウイルスもしくはレンチウイルス産生系。
【請求項88】
レトロウイルス性またはレンチウイルス性gag-pol、およびenvが異なるベクター中に存在する、請求項87に記載のレトロウイルスもしくはレンチウイルス産生系。
【請求項89】
envがRD114-TR, VSV-G, GALVまたは4070Aから選択される、請求項87または88に記載のレトロウイルスもしくはレンチウイルス産生系。
【請求項90】
請求項1〜70のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む、細胞。
【請求項91】
請求項74〜84のいずれか1項に記載のベクターまたは請求項85もしくは86に記載のレトロウイルス粒子により感染または形質導入された、細胞。
【請求項92】
前記細胞が単球、マクロファージまたはリンパ球である、請求項90または91に記載の細胞。
【請求項93】
前記細胞が造血性CD34+ 前駆細胞または造血細胞である、請求項92に記載の細胞。
【請求項94】
変異型VifがHIV-1誘導性の制御下にある、請求項90〜93のいずれか1項の記載の細胞。
【請求項95】
請求項1〜70のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項71〜73のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項74〜84のいずれか1項に記載のベクター、請求項85もしくは86に記載のレトロウイルス粒子、または請求項90〜94のいずれか1項に記載の細胞、および製薬上許容される担体、希釈剤もしくは賦形剤を含んでなる、医薬組成物。
【請求項96】
医薬用である、請求項1〜70のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項71〜73のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項74〜84のいずれか1項に記載のベクター、請求項85もしくは86に記載のレトロウイルス粒子、または請求項90〜94のいずれか1項に記載の細胞、あるいは請求項95に記載の医薬組成物。
【請求項97】
HIV感染または関連症状の治療または予防用の医薬の製造のための、請求項1〜70のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項71〜73のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項74〜84のいずれか1項に記載のベクター、請求項85もしくは86に記載のレトロウイルス粒子、または請求項90〜94のいずれか1項に記載の細胞、あるいは請求項95に記載の医薬組成物の使用。
【請求項98】
HIV感染が重複感染である、請求項97に記載の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2008−532510(P2008−532510A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500292(P2008−500292)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【国際出願番号】PCT/IB2006/001519
【国際公開番号】WO2006/111866
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(506368992)
【Fターム(参考)】