説明

HPV粒子およびその使用

本発明は、治療に使用することができる改変されたHPV粒子に関する。改変されたHPV粒子は、siRNA分子を含む治療薬を送達するために使用することもできる。改変されたHPV粒子は、HPV(ヒトパピローマウイルス)感染およびHPV関連腫瘍を含む、粘膜組織の疾患または状態の治療のために使用することもできる。いくつかの実施形態において、本発明の態様は、治療薬を粘膜組織に送達できる(例えば局所的に)改変されたHPVに基づく粒子に関する。いくつかの実施形態において、治療薬は、抗ウイルス剤であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、米国特許法第119条(e)項の下、2009年4月13日に出願された米国仮特許出願第61/168,914号への優先権を主張し、この米国仮特許出願は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、ヒトパピローマウイルス様粒子(VLP)および治療薬としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
子宮頚がんは、世界中の女性におけるがんによる死亡の主要な原因の1つであり、毎年233,000人を超える女性がそれにより死亡している。子宮頚がんは、20世紀より前には女性のうちで発生率および死亡率の両方において最も一般的な悪性病変であった。子宮頚がんの発生率の低減は、先進国家における主要な公衆衛生の功績の1つであり、これは、侵襲前疾患についての全住民ベースのスクリーニング、検出および治療プログラムを行ったことが大きな原因である。しかし、先進国家における子宮頚がんの発生率は減少しているが、この疾患は、継続して、世界中の女性における2番目に最も一般的ながんである。
【0004】
パパニコロウ(Pap)スメアは、子宮頚がん、またはその多くがHPVと関連する子宮頚部における前癌性の変化を検出できる。これらのPapスメアは、広範囲のスクリーニング処置が行われた先進国における子宮頚がんの発生率および死亡率を大きく低減させている。スクリーニング処置がまだ限定されている発展途上国において、子宮頚がんは、女性において最も頻繁に報告されるがんであり、発生率は上昇し続けている。
【0005】
寒冷療法、レーザ焼灼法、円錐切除法、ループ式電気焼灼切除法(LEEP)を含む子宮頚部上皮内異常の全ての現在の治療は、流産、頚管完全性の喪失および妊娠不能性を導き得る過剰排泄物、感染、出血、痙攣ならびに頚管無力症を含む著しい副作用をしばしば導く侵襲性の外科処置である。さらに、これらの処置は、外来施設で行われるにちがいないので、治療費用を増加させる。
【0006】
子宮頚部上皮内腫瘍(CIN)とは、侵襲前の病理的な経過から子宮頚がんまでのことである。子宮頚部の細胞学的スメアまたは組織生検において観察される異常は、子宮頚部の上皮細胞の分化の程度の変更を表す。この細胞異形成は、重篤度が異なる3つの群に分類される。CIN Iは、上皮の基底の3分の1に限定された軽度異形成のことであり、CIN IIは、上皮の基底の3分の2に限定された病変のことであり、CIN IIIは、上皮の厚さの3分の2より多くを包含する細胞異形成のことである。
【0007】
米国においておよそ350万人の女性が、毎年、Papスメア試験で異常とされる。これらの女性のうちのおよそ120万人は、扁平上皮内病変(SIL)であり、このうち200,000〜300,000人は、高度に分類される。ラテンアメリカにおける高度CINの発生率は、USでみられるものの3倍を超える。表1は、世界中でのHPV感染の有病率およびCINのまとめを示す。
【0008】
表1:HPVの世界的な有病率およびCIN
【0009】
【表1】

HPV感染は、性的に活動的な個体間に固有のものである。複数の性的パートナーを有する女性は、HPVを獲得する機会がより高く、その結果、HPV関連子宮頚部感染の機会がより高い。高リスクHPV型への感染は、その女性において子宮頚がんが発達する確率を増加させる。前癌性の子宮頚部の状態をスクリーニングし、その後治療することは、HPVに感染した女性において子宮頚がんを防ぐために非常に効果的である。しかし、現在の治療は、しばしば、外科的介入を必要とし、代替の治療選択肢が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様は、疾患を治療し、かつ/または治療薬を送達するための、HPVに基づく粒子およびその使用に関する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物および方法は、粘膜の状態(例えば、粘膜組織、例えば粘膜上皮細胞の疾患および/または感染)を治療するために有用である。
【0011】
いくつかの実施形態において、本発明の態様は、治療薬を粘膜組織に送達できる(例えば局所的に)改変されたHPVに基づく粒子に関する。いくつかの実施形態において、治療薬は、抗ウイルス剤であり得る。抗ウイルス剤は、例えばヒトパピローマウイルス、ヘルペスウイルスまたは粘膜組織を標的にするその他のウイルスによるウイルス感染を治療するために使用することもできる。いくつかの実施形態において、治療薬は、抗がん剤であり得る。抗がん剤は、例えば子宮頚がんまたは粘膜組織の任意のその他のがんを治療するために使用することもできる。いくつかの実施形態において、本発明は、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染を治療する方法、および被験体におけるそれらに限定されないが子宮頚がんを含むHPV関連疾患を治療する方法を提供する。しかし、本発明の改変されたウイルス粒子を、その他の型の治療薬および/または医療用薬剤(例えば撮像剤または造影剤)を送達するために使用できることが認識される。
【0012】
いくつかの実施形態において、本発明の粒子は、任意の粘膜組織(例えば子宮頚部、鼻、口腔またはその他の粘膜組織)に局所送達することができる(例えばクリーム、フォーム、スプレー、エアロゾルまたは局所送達のために適切なその他の製剤の形態で)。しかし、本発明の態様は、局所送達に限定されず、改変された粒子は、皮下、静脈内、非経口および/または任意のその他の適切な送達経路により送達することができる。
【0013】
本明細書に示す方法は、被験体に、ウイルス様粒子(VLP)に基づく送達系により送達される1つ以上の治療薬を投与する工程を含む。あるいくつかの実施形態において、VLPに基づく送達系は、ヒトパピローマウイルス(HPV)様ナノ粒子を含む。いくつかの実施形態において、HPVナノ粒子は、ウイルスL1タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、HPVナノ粒子は、ウイルスL1タンパク質とウイルスL2タンパク質とを含む。L1および/またはL2タンパク質は、いくつかの実施形態において、野生型ウイルスタンパク質であってよい。いくつかの実施形態において、L1および/またはL2タンパク質は、変異および/または挿入/欠失により変更することもできる。あるいくつかの実施形態において、L1および/またはL2を含むHPVナノ粒子の表面露出ループ中のアミノ酸は、変異、挿入および/または欠失される。あるいくつかの実施形態において、表面露出ループ中のアミノ酸の変異、欠失および/または挿入は、HPVナノ粒子の免疫原性の変化を導く。あるいくつかの実施形態において、免疫原性は、ある血清型のHPVナノ粒子が、この血清型に対して産生された抗体によりもはや認識されないような方式で変更できる。これらの実施形態において、変更されたHPVナノ粒子は、血清型特異的抗体を持つ宿主においてイムノサイレントである。
【0014】
よって、いくつかの実施形態において、本発明のHPVに基づく粒子は、免疫原性が低減または変更されるように改変することもできる。このような粒子は、中和抗HPV応答を有する患者への送達のために選択することもできる。いくつかの実施形態において、異なる血清型を有するHPVに基づく粒子の連続物を、被験体に治療目的のために投与して、いずれか1つの血清型に対する中和免疫応答の効果を低減させる。例えば、第1血清型を、被験体への1回目の一連の投与(例えば1、2、3、4、5、5〜10またはそれより多く)のために使用することもできる。その後、第2血清型を、2回目の一連の投与(例えば1、2、3、4、5、5〜10またはそれより多く)のために用いて、第1血清型に対して被験体が発生する中和免疫応答の影響を低減する。さらなる一連の投与が、第3、第4、第5などの血清型を含むことができることが認識される。異なる血清型は、天然に存在する血清型、キメラ血清型、その他の変異血清型、またはそれらの任意の組み合わせであってよい。このような連続的または逐次的な施与を、数ヶ月および/または数年の期間にわたる特定の化合物(例えば異なる血清型のそれぞれにおける同じもの)または異なる化合物の連続物の慢性的な投与(例えば治療)のために使用できることが認識される。
【0015】
いくつかの実施形態において、アミノ酸の変異、欠失および/または挿入は、ウイルスカプシドタンパク質L1および/またはL2に、得られるHPVナノ粒子が、治療薬を標的細胞に送達する能力を失わないような方式で導入される。いくつかの実施形態において、HPVナノ粒子は、核酸(例えばsiRNAまたはshRNA)を標的細胞に移入する能力を喪失しない。
【0016】
いくつかの実施形態において、免疫原性は、ある血清型のHPVナノ粒子が、交差特異的中和抗体を生成する免疫応答を誘導するような方式で変更できる。これらの実施形態において、HPVナノ粒子は、それがその表面上で複数の血清特異的エピトープを示す(例えば表面露出ループへのエピトープの挿入により)か、または血清型間でより保存されたエピトープを示す(例えば、表面露出ループへのL2タンパク質の部分の挿入によるか、またはHPVナノ粒子の表面への保存エピトープの連結により)ような方式で変更される。いくつかの実施形態において、交差特異的中和抗体の生成は、HPV感染細胞数を消去または低減するための治療を受けたHPV感染個体において誘導される。いくつかの実施形態において、HPV感染個体は、HPV関連腫瘍のサイズを消去または低減するための治療を受けている。これらの実施形態において、交差特異的中和抗体の生成は、治療後に残り得るHPV感染細胞の免疫監視のために十分な免疫応答を生じるために誘導することもできる。もたらされる免疫監視は、いくつかの実施形態において、HPVの新しい感染またはHPV感染細胞の再増殖またはHPV感染腫瘍の再発を防ぐために十分である。いくつかの実施形態において、交差特異的中和抗体は、1つ以上のHPV血清型に対して効果的である。
【0017】
あるいくつかの実施形態において、VLPに基づく送達系により送達される治療薬は、核酸である。核酸である治療薬は、例えば、siRNAもしくはshRNA分子またはそれらをコードするプラスミドであり得る。その他の治療薬は、例えば、抗ウイルスまたは抗がん活性を有する小分子などの小分子であり得る。
【0018】
あるいくつかの実施形態において、HPV感染または子宮頚がんなどのHPV関連がんまたは病変を有する被験体に、VLPに基づく送達系により送達される1つ以上の治療薬を投与することにより、HPV感染細胞の死滅および/または排除が導かれる。HPV感染形質転換細胞は、HPV関連がんまたは病変の原因であると考えられる。いくつかの実施形態において、HPV感染細胞の死滅および/または排除は、HPV関連がんの部分的または完全な寛解を導く。
【0019】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される治療方法は、治療薬を含むHPVナノ粒子での治療の前、同時または後のいずれかに、その他の治療薬(例えば抗がん剤および/または抗ウイルス剤)および/または免疫調節剤および/または放射線療法もしくは免疫療法の投与と組み合わせることができる。いくつかの実施形態において、抗がん剤および/または抗ウイルス剤は、HPVナノ粒子により送達できる。いくつかの実施形態において、抗がん剤および/または抗ウイルス剤は、HPVナノ粒子と一緒に投与できるか、または別々に、例えば異なる時間にもしくは異なる投与部位にもしくは異なる投与経路により投与できる。
【0020】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法に従って治療される被験体におけるほとんどまたは全てのHPV感染細胞は、死滅し、排除され、HPVは、HPV感染被験体においてもはや検出できない。その他の実施形態において、被験体におけるいくつかのHPV感染細胞は、死滅するかまたは排除され、HPVは、HPV感染被験体においてまだ検出できる。いくつかの実施形態において、HPV関連病変またはがんを有する被験体は、がんもしくは病変の部分的または完全な寛解を経験し得る。いくつかの実施形態において、被験体は、病変またはがんまたはウイルス感染の再発を経験しない。その他の実施形態において、被験体は、病変またはがんまたはウイルス感染の再発を経験する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される治療方法は、治療薬を含むHPVナノ粒子での治療中および/またはその後の抗ウイルス治療とさらに組み合わせる。抗ウイルス治療は、例えばHPV複製、ウイルス蔓延および/または最初の治療を生き延びたかもしくは新しい感染として被験体の体内に侵入したHPVを有する細胞の再増殖を防ぐために行うこともできる。
【0021】
その他の実施形態において、変更されたHPVナノ粒子は、最初の治療計画の最後に投与される。HPVナノ粒子は、それらが、それらの表面上で複数の血清特異的エピトープを示すか、またはそれらが、血清型間でより保存されたエピトープを示すような方式で変更される。いくつかの実施形態において、このような変更されたHPVナノ粒子の投与は、投与されたエピトープを指向する局部免疫応答を誘導でき、例えば交差特異的中和抗体の増加を誘導するが、これは、新しくHPVに感染した細胞を検出して死滅させることができる免疫監視のために十分である。いくつかの実施形態において、新しいウイルス感染ならびに/または蔓延および再増殖の防止は、HPV関連がんまたは病変の再発を阻害するために十分である。
【0022】
あるいくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法は、1つ以上の治療薬を含むHPVナノ粒子を異なる経路により投与する工程を含む。いくつかの実施形態において、HPVナノ粒子は、局所施与により投与される。いくつかの実施形態において、局部施与は、粘膜を標的にする。例えば、1つ以上の治療薬を含むHPVナノ粒子は、子宮頚部上皮などの上皮に局所的にもしくはその近接部に、または子宮頚部もしくは肛門の上皮癌などの上皮病変に局所的にもしくはその近接部に施与できる。
【0023】
あるいくつかの実施形態において、変更されたウイルスカプシドタンパク質を含むHPVナノ粒子であって、該ウイルスカプシドタンパク質が、本明細書に記載されるような野生型アミノ酸の変異、さらなるアミノ酸の挿入および/または野生型アミノ酸の欠失により変更されているナノ粒子が提供される。あるいくつかの実施形態において、変更されたHPVナノ粒子は、被験体において多少免疫原性であるか、または変更された免疫原性を有する。いくつかの実施形態において、変更されたHPVナノ粒子は、治療薬を標的細胞に送達または移入する能力を維持する。
【0024】
よって、本発明の態様は、1つ以上の化合物を被験体に送達するための方法および組成物に関する。いくつかの実施形態において、改変されたヒトパピローマウイルス(HPV)様粒子が用いられ、該粒子は、免疫原性が変更された表面タンパク質を含むHPV様粒子にパッケージングされた1つ以上の異種化合物を含む。異種化合物は、非HPV分子である(例えば、HPVゲノムでない、HPV核酸でない、かつ/またはその他のHPV分子でない化合物)。このような化合物は、治療化合物またはその他の医療用化合物であってよい。いくつかの実施形態において、化合物は、治療薬もしくは医療用薬剤、核酸もしくは小分子、または撮像剤もしくは造影剤の1つ以上であってよい。いくつかの実施形態において、治療薬は、siRNA、shRNA、アンチセンス核酸またはsiRNA、shRNAもしくはアンチセンス核酸をコードする核酸である。いくつかの実施形態において、siRNA、shRNAまたはアンチセンス核酸は、HPV−E6および/またはHPV−E7を標的にする。いくつかの実施形態において、小分子は、抗ウイルス剤である。いくつかの実施形態において、小分子は抗がん剤(例えばゲムシタビン)である。
【0025】
本発明の方法および組成物は、1つ以上のその他の薬剤(例えば抗ウイルス剤、抗がん剤、例えばゲムシタビン(Gemcitaine)またはそれらの任意の組み合わせ)とともに提供してよいことが認識される。
【0026】
本発明の方法および組成物のいくつかの実施形態において、HPV様粒子は、L1タンパク質またはL1タンパク質およびL2タンパク質を含む。本発明の方法および組成物のいくつかの実施形態において、表面タンパク質は、改変されたFGループ配列を有する改変されたL1タンパク質である。いくつかの実施形態において、L1タンパク質は、HPV16、HPV31、HPV33、HPV34、HPV35、HPV52、HPV58、HPV73またはHPV91血清型の配列を有し、L1タンパク質のFGループは、ヒト被験体中での、該タンパク質の免疫原性を変える1つ以上のアミノ酸変化を有する。いくつかの実施形態において、1つ以上のアミノ酸変化は、配列番号11のX位〜X17位の1つ以上に存在する。いくつかの実施形態において、X16位のアミノ酸は、変更されない。いくつかの実施形態において、配列番号11のX位、X位、X位、X位、X位、X11位およびX14位の1つ以上が改変される。いくつかの実施形態において、配列番号11のX位、X位、X位、X位、X位、X11位およびX14位の2〜3つが改変される。いくつかの実施形態において、配列番号11のX位、X位、X位、X位、X位、X11位およびX14位の4〜7つが改変される。いくつかの実施形態において、配列番号11のX位、X位、X位、X位、X位、X11位およびX14位の3つが改変される。いくつかの実施形態において、配列番号11のX位、X11位およびX14位が改変される。いくつかの実施形態において、配列番号11のX位、X位、X位、X位、X位、X11位およびX14位の全てが改変される。いくつかの実施形態において、L1タンパク質は、配列番号11のX位、X11位およびX14位にそれぞれT、TおよびNへの変化を有し、配列番号11の残りの位置においてはHPV16血清型に特徴的なアミノ酸を有する、HPV16血清型の配列を有する。いくつかの実施形態において、L1タンパク質は、X位、X位、X位、X位、X位、X11位およびX14位がそれぞれF、S、T、S、T、TおよびNに変化し、配列番号11の残りの位置がHPV16血清型に特徴的なアミノ酸を有するHPV16血清型の配列を有する。
【0027】
いくつかの実施形態において、HPV様粒子は、表面タンパク質の血清型に対する中和免疫応答を有さない被験体(例えば、被験体が表面タンパク質の血清型に対して免疫されていないか、または被験体がHPV様粒子における表面タンパク質の血清型と同じ血清型を有するHPVに感染していない場合)に投与されることが認識される。いくつかの実施形態において、被験体の免疫応答は、投与のためのHPV様粒子を選択する前に評価される。
【0028】
いくつかの実施形態において、HPV様粒子は、粘膜組織に投与される。粘膜組織は、本明細書に記載されるいずれの部位であってもよい(例えば子宮頚部、泌尿生殖器、口腔など)。さらに、いくつかの実施形態において、HPV様粒子は、表皮部に投与される(例えば表皮もしくは皮膚のがんまたは感染を治療するため)。
【0029】
本発明の組成物は、局所的に、および/または任意のその他の適切な経路(例えば注射、エアロゾル、スプレーまたはその他の投与の形態)で投与できることが認識される。
【0030】
本発明の組成物は、ウイルス、細菌および/またはその他の微生物もしくは寄生生物に感染した組織に投与することができる。いくつかの実施形態において、感染部位は、いくつかの異なる生物に感染した部位であってもよい(例えば複数のウイルスおよび/またはその他の微生物、例えばHPVおよびヘルペスウイルス、例えばHSV)。よって、本発明の組成物は、いくつかの異なる生物を広く標的にする化合物、もしくはそれぞれが異なる生物を標的にするいくつかの異なる化合物、またはそれらの組み合わせを含むこともできる。いくつかの実施形態において、同じHPV様粒子は、異なる治療化合物を含することもできる。いくつかの実施形態において、組成物または治療計画は、特定の感染を標的にする化合物をそれぞれが含有する2以上の異なるHPV様粒子を含むこともできる。
【0031】
本発明の組成物は、がん(例えば投与部位でのまたは投与部位付近での)を治療するために被験体に投与することができる。いくつかの実施形態において、がんは、感染(例えばHPVまたはHSV感染)と関連するものであってもよい。いくつかの実施形態において、がんは、感染と関連しないものであってもよい。よって、本発明の態様は、皮膚がん(例えば非黒色腫皮膚がん)を治療するために使用することもできる。
【0032】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、免疫系不全を有する被験体に、該免疫系不全に関連する状態(例えば感染、がんまたはその他の状態)を治療するために投与することもできる。免疫系不全は、感染(例えばHIV感染、AIDS)またはその他の状態(例えばがん)を原因とするものでもよい。
【0033】
いくつかの実施形態において、本発明のHPV様粒子は、非特異的免疫応答(例えば投与部位でのまたは投与部位付近での)を促進する組成物とともに投与することもできる。非特異的免疫応答は、感染および/もしくはがんまたはその他の状態を治療するために役に立ち得る。いくつかの実施形態において、異なる血清型を有するいくつかのHPV様粒子の投与に応答した免疫応答の増加が、有益であり得る。よって、本発明のいくつかの組成物は、いくつかの異なる血清型を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、組成物の慢性投与は、化合物を含む第1HPV様粒子を被験体に第1期間投与し、該化合物を含む第2HPV様粒子を該被験体に第2期間投与することにより達成することもでき、ここで、第1および第2HPV様粒子は、異なる血清型を有する。さらなる投与を、さらなる血清型を用いて行うこともできる。いくつかの実施形態において、第1および第2HPV様粒子の血清型は、独立して、天然に存在するかまたは変更された血清型である。いくつかの実施形態において、第1および/または第2HPV様粒子の血清型は、キメラ血清型である。
【0035】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物または方法は、L1ループに融合されたL2配列を含むことによりキメラ血清型を有するHPV様粒子を投与することを含むこともできる。いくつかの実施形態において、L2配列は、L1粒子の表面に結合する。いくつかの実施形態において、L2配列は、HPV31 L2タンパク質の残基13〜88からなる。
【0036】
本発明のこれらおよびその他の態様を、以下の限定しない実施例および発明の記載においてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、HPV−16のE6およびE7遺伝子上のsiRNAの位置を示す。
【図2】図2は、ルシフェラーゼをコードする偽ビリオンの生成におけるZnClの役割を示す棒グラフを示す。ルシフェラーゼ遺伝子発現は、ZnClなしで再集合させた偽ビリオンをトランスフェクトした293FT細胞、ならびにZnClの存在下で作製した偽ビリオンによりトランスフェクトした293FT、TC1、C33およびCaSki細胞において評価した。
【図3】図3は、A)LacZ、E6−1、E6−2、E7−1およびE7−2 shRNAをトランスフェクトしたCaSki細胞から抽出した逆転写mRNAの写真を示す。cDNAを、E6およびE7遺伝子特異的プライマー、ならびに対照としてグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)プライマーを用いてPCR増幅した。B)LacZ、E6−2、E6−1、E7−2およびE7−1 shRNAをトランスフェクトしたCaSki細胞(モック(Mock))からの細胞抽出物のウェスタンブロットの写真を示す。抽出物は、p53およびβ−アクチン抗体を用いて分析した。
【図4】図4は、C33(灰色の柱)、CaSki(黒色の柱)およびTC1(白色の柱)細胞増殖に対するE6およびE7 shRNAの効果を示す棒グラフを示す。細胞(C)に、LacZ、E6−1、E6−2、E7−1およびE7−2 shRNAをトランスフェクトした。
【図5】図5は、C57 BL6マウスにおけるTC1腫瘍成長の阻害を示す写真を示す。TC1細胞にin vitroでトランスフェクトした。A)VLP単独(下)およびE7−1偽ビリオン(上)で処理したTC1細胞の注射の後に得られた腫瘍の比較。B)shRNA偽ビリオンおよびshRNAレンチウイルスでの異なる処理の後の腫瘍の重量の比較についての棒グラフ定量。
【図6】図6は、対照shRNAおよびE7−1 shRNA偽ビリオン(Pv)の腫瘍内注射後のC57 BL6マウスにおけるTC1腫瘍成長の阻害を示すグラフを示す。A)対照shRNAまたはE7−1 shRNA偽ビリオンの1回目の注射後の腫瘍サイズ(平均直径)の進展。B)対照shRNAおよびE7−1 shRNA偽ビリオンで処置したマウスにおける3週間での腫瘍の重量。
【図7】図7(a)は、代表的な表面プラズモン共鳴データのグラフを示す。(b)は、SPRによる立体構造エピトープを認識する15のHPV31 MAb間の相互作用研究から構築したエピトープマップを示す。内部移行を中和する抗体は黒色であり、細胞結合を中和したものに下線を付す。H31.D24抗体は、非中和性であった(箱で囲む)。(c)ヘパリンとのVLPの結合を阻害したAQ5抗体に下線を付す。
【図8】図8は、細菌ディスプレイ法を用いた、非中和MAb(H31.D24)と、4つの中和MAb(H31.B1、H31.F7、H31.F16およびH31.H12)により認識されるHPV31 L1タンパク質エピトープのマッピングを示す。
【図9】図9は、結合前後の偽ビリオンのMAb中和を示す。(a)HPV31 MAbによるHPV31偽ビリオン侵入の阻害。HPV31偽ビリオンを、HPV31 MAbとプレインキュベートし、次いで細胞に加えた。(b)HPV31 MAbによるHPV31偽ビリオン内部移行の阻害。HPV31偽ビリオンを細胞に予め結合させ、次いでHPV31 MAbを加えた。細菌ディスプレイ法を用いて調査した5つのMAbを、図の右側にグループ化する。灰色の柱、型特異的中和MAb;黒色の柱、交差中和F7 MAb。
【図10】図10は、HSおよびECMとのVLPの結合:HPV31 MAbおよびL1 C末端欠失の効果を示す。(a)MAbとのVLPのプレインキュベーション後のヘパリン結合の阻害。(b)MAbとのVLPのプレインキュベーション後のECM結合の阻害。細菌ディスプレイ法を用いて調査した5つのMAbを、図の右側にグループ化する。灰色の柱:型特異的中和MAb;黒色の柱:F7交差中和MAb;塗りつぶしていない柱:D24非中和MAb。値は、SDでの阻害のパーセンテージである。50%より大きい阻害を陽性とみなした。
【図11】図11は、C末端欠失(D9およびD31)を有するかまたは有さない16型および31型についての天然VLP(黒色の柱)ならびに変性VLP(灰色の柱)のヘパリン結合を示す。
【図12】図12は、HPV31のFGループ上の5つのモノクローナル抗体により認識されるエピトープの局在性を示す。HPV31 L1タンパク質のFGループ上の4つのMAbにより認識されるエピトープの位置。
【図13】図13は、それぞれHPV16およびHPV31のFGループの配列アラインメントと、キメラ(XおよびY)を作製するためにHPV16 FGループ野生型配列に挿入した変異とを示す。
【図14】図14は、wt HPV16ならびにキメラHPV XおよびHPV YをトランスフェクトしたCOS−7細胞からの抽出物のルシフェラーゼ活性(計数毎分、CPM)を示すグラフを示す。
【図15】図15は、ELISAアッセイにおいて測定した、HPV16、HPV31、HPV XまたはHPV Yで免疫したマウスからのHPV16、HPV31、HPV XおよびHPV Y特異的抗体の力価(幾何平均力価、GMT)を示す表を示す。
【図16】図16は、キメラVLPであるL1STII(A)および31L1−16L2(13−88)(B)の電子顕微鏡写真(バー=200nm)を示す。
【図17】図17は、ELISAによる、キメラHPV16 L1−STII、HPV16 L1STIIL2SAおよびHPV31 L1−16 L213−88 VLP粒子の抗原性の分析を示す棒グラフを示す。結果は、CamVir−1 Mabを用いるL1反応性に対して調整した。結果は、相対活性、すなわち、考慮する抗原を用いて得られたODと、参照抗原(*)を用いて得られたODとの比率として表す。粒子は、未変性条件下で、立体構造(C)エピトープおよびStrepTagIIまたはL2露出を指向するモノクローナル抗体を用いて分析した。HPV16 L1 STIIおよびHPV16 L1STII L2SAを、StrepTagII配列を指向するモノクローナル抗体であるH16.V5(C)、およびポリクローナルHPV 16 L2抗血清を用いて分析した。HPV16 L1 VLPおよびL1L2 31 VLPを対照として用いた。HPV31 L1−16 L213−88VLPを、H31.F16(C)およびポリクローナルHPV16 L2抗血清を用いて分析した。結果は、2重の平均である。
【図18】図18は、L2タンパク質の発現のウェスタンブロット分析の写真を示す。1)精製L2SA融合タンパク質、2)L1STII VLPとの相互作用後、3)L1 VLPとの相互作用後、4)GFPをコードするHPV58偽ビリオンを形質導入したCos−7細胞において、および5)L2をコードするHPV58偽ビリオンを形質導入したCos−7細胞において。
【図19】図19は、HPV31、HPV58およびHPV18中和抗体の検出を示すグラフを示す。個別のマウス中和力価は、ルシフェラーゼ発現の50%を超える阻害を示す最後の希釈度の逆数の平均である。幾何平均力価をバーにより示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の態様は、HPV粒子に基づく方法および組成物と、医療および/または治療上の用途のためのそれらの使用とに関する。いくつかの実施形態において、HPVに基づく粒子は、1つ以上の薬剤(例えば治療薬、撮像剤および/またはその他の医療用薬剤)を標的細胞または組織(例えば粘膜組織、例えば粘膜組織表面)に送達するために使用することができる。
【0039】
いくつかの実施形態において、本発明の態様は、1つ以上の天然に存在するHPV表面タンパク質(例えばL1および/またはL2タンパク質)を含有し、かつ1もしくは複数の医療用薬剤および/または治療薬が充填されたHPV粒子、あるいはそれらの2以上の組み合わせに関する。いくつかの実施形態において、本発明の態様は、被験体における免疫原性が低減もしくは改変された1つ以上のバリアント表面タンパク質(例えばバリアントL1および/またはL2タンパク質)を含有する改変されたHPVに基づく粒子に関する。改変は、被験体の免疫系による中和を低減または回避するアミノ酸配列の変化であってよい。いくつかの実施形態において、改変されたHPVに基づく粒子は、被験体(例えばヒト被験体)におけるタンパク質の免疫原性を変更する1つ以上のアミノ酸変化を含む組換えHPVタンパク質(例えば組換えL1および/またはL2タンパク質)を含有する粒子である。いくつかの実施形態において、改変されたHPVに基づく粒子は、免疫原性が変更されているが、分子をパッケージングして被験体に送達する能力を保持している。よって、本発明の改変されたHPV粒子には、1つ以上の薬剤(例えばHPV核酸の代わりに)を充填することもできる。このような粒子は、天然に存在するHPV粒子により誘導され得る免疫応答を誘導することなく、被験体に送達できる。
【0040】
本発明のあるいくつかの実施形態は、1つ以上の治療薬を、患部組織(例えば患部粘膜組織)に送達するために有用である。いくつかの実施形態において、患部組織(例えば粘膜組織、上皮組織または内皮組織)は、感染組織であってもよい(例えば、HPVまたはHSVなどのウイルスに感染した)。いくつかの実施形態において、粘膜組織は、子宮頚部組織であり、疾患は、異形成またはがんである(例えば子宮頚部異形成、子宮頚がん、例えば持続性HPV感染に関連するもの)。しかし、いくつかの実施形態において、HPVに基づく粒子は組成物をその他の組織(例えば表皮)に送達するために使用することもできる。いくつかの実施形態において、HPVに基づく粒子は、HPVを治療するために使用することもできる。しかし、いくつかの実施形態において、HPVに基づく粒子は、その他の疾患または状態を治療するために治療薬を送達するために使用することもできる。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態は、1もしくは複数の撮像剤または造影剤を被験体に送達するために有用である。例えば、量子ドット、金属および/またはその他の撮像剤を送達できる。いくつかの実施形態において、薬剤は、早期段階の疾患(例えば早期段階の転移)を追跡するために使用することもできる。いくつかの実施形態において、放射線増感剤を用いて放射線療法の効果を増進してよい。いくつかの実施形態において、薬剤は、腫瘍細胞がそれらの膜上で異なる受容体または糖を発現することを誘導するために送達することもできる。例えば、本発明の態様は、腫瘍細胞において、腫瘍の免疫系認識を増進し得るシグナルの発現を促進する薬剤を送達するために使用することもできる(例えば腫瘍細胞を細胞またはウイルスに似せるようにし得る薬剤)。いくつかの実施形態において、薬剤は、腫瘍細胞による糖の取り込みを遮断するために送達することもできる。しかし、任意の適切な治療薬および/またはその他の医療用薬剤を、本発明の態様に従って送達できることが認識される。
【0042】
いくつかの実施形態において、本発明の態様は、2以上の異なる天然に存在するHPVバリアントからのエピトープを提示するように改変されたHPVに基づく粒子に関する。このような改変された粒子は、2以上の天然に存在するHPVバリアントのいずれかによる感染に対する免疫を提供するために使用することもできる。
【0043】
いくつかの実施形態において、本発明の態様は、治療上の用途のための1つ以上の異なるHPV粒子を投与するためのプロトコールに関する。異なるHPV粒子は、異なるHPVバリアント、異なる薬剤を含有するHPVに基づく粒子、および免疫原性が改変されたHPV粒子の任意の組み合わせであってよい。
【0044】
あるいくつかの実施形態において、HPVナノ粒子は、1つ以上の治療薬を粘膜細胞(例えばHPV感染細胞)に送達するために使用することもできる。その他の実施形態において、改変されたHPVナノ粒子は、1つ以上の治療薬を標的細胞に送達するために使用することもできる。あるいくつかの実施形態において、改変されたHPVナノ粒子は、血清型特異的抗体を持つ宿主においてイムノサイレントである。例えば、第1のHPV血清型(例えばHPV−16)に感染した被験体において、この血清型に対する抗体が発生する。このような被験体において、第1血清型を有するウイルス粒子(例えば野生型HPV16に基づくVLP)は、VLPに基づく薬物送達の効力を低減する免疫応答を誘導し得る。
【0045】
別の例において、被験体は、HPV(例えばGARDASILおよびCERVARIX)に対して免疫されてよく、第1および/または第2の血清型(例えばHPV−16およびHPV18)に対する中和抗体が発生している。このような被験体において、第1および/または血清型を有するウイルス粒子(例えば野生型HPV16またはHPV18に基づくVLP)は、VLPに基づく薬物送達の効力を劇的に低減させる免疫応答を誘導し得る。
【0046】
しかし、宿主中の第1血清型特異的抗体(例えば宿主中のHPV−16血清型特異的抗体)および/または宿主中の第2血清型特異的抗体(例えば宿主中のHPV−18血清型特異的抗体)により、改変されたHPVナノ粒子が認識されないように、本明細書に記載される方法によりHPVナノ粒子を変更できる。異なる血清型からのL1および/またはL2タンパク質を含むこのような改変されたHPVまたはHPVナノ粒子を治療のために使用することもできる。例えば、血清型特異的免疫応答を誘導することなく、および/または宿主応答により中和されることなく、効力を喪失することなく1つ以上の治療薬をHPVで免疫されたかまたはHPVに感染した宿主に送達するために、異なる血清型に基づくこのような改変されたHPVナノ粒子またはVLPを使用することもできる。異なる血清型に基づくこのような改変されたHPVナノ粒子またはVLPを、繰り返し用いて(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回以上の投与)治療薬を送達することもできる。あるいくつかの実施形態において、被験体において、異なる血清型に基づく改変されたHPVナノ粒子またはVLPを認識する新しい抗体が発生する。また、HPVに感染していない被験体において、治療目的のために被験体に投与されるHPVに基づく粒子の血清型に対する免疫応答が発生することがある。これらの場合、異なって変更された第2のHPVナノ粒子またはさらに異なる血清型からのL1および/もしくはL2タンパク質を含む第2のHPVナノ粒子を、元のHPV血清型および第2の変更されたHPVナノ粒子に特異的な免疫応答(例えば中和免疫応答)を誘導することのない、被験体へ(例えばHPV感染細胞またはHPVに対して免疫されたかもしくは本発明のHPVに基づく組成物で治療された被験体内の細胞へ)の治療薬の継続した送達のために使用することもできる。被験体において、第2の変更されたHPVナノ粒子または第2のL1および/もしくはL2タンパク質を含有する第2のVLPに対する免疫応答が発生した場合(または免疫応答の発生を防ぐために)、第3の変更されたHPVナノ粒子または第3のL1および/もしくはL2タンパク質を含有する第3のVLPを使用することもできる。このプロセスは、異なる改変されたHPVナノ粒子の連続物を用いて数回繰り返してよく、かつ/または異なるL1および/もしくはL2タンパク質の連続物を含有する異なるVLPを使用することもできる。いくつかの実施形態において、第1組が被験体において効力を失った場合、被験体において第1組に対する免疫応答が検出された場合、または治療を開始した後の所定の時間(例えば所定の投与回数の後または第1組の投与の所定の期間の後)に、粒子の第1組から別の組に切り替えてよい。
【0047】
あるいくつかの実施形態において、異なる血清型に基づくVLPは、HPVの遺伝子型および/または血清型の類似性に基づいて選択される。いくつかの実施形態において、異なる血清型に基づくVLPは、抗体の中和交差反応性に基づいて選択される。いくつかの実施形態において、被験体においてそれに対する中和抗体が発生した第1および/または第2血清型との関係が最も遠い異なる血清型に基づくVLPが選択される。例えば、HPV18およびHPV45は、密接に関連し、中和抗体の交差保護の程度が高い。HPV16およびHPV31は、密接に関連し、中和抗体の交差保護の程度が高い。HPV58は、HPV16およびHPV18との関係がより遠く、中和抗体による交差保護はほとんどまたは全く観察されない。
【0048】
よって、治療の連続は、本発明のVLP組成物の連続物(例えば1つ以上の治療薬を含有する)を投与する工程を含むことができ、ここで、それぞれの継続的VLP組成物は、異なるHPV血清型、例えば関係が離れた血清型からのVLPに基づく。例えば、HPV16およびHPV18に対して免疫された被験体において、異なる血清型に基づく適切なVLPは、野生型HPV58からのL1および/またはL2タンパク質を含む粒子であり得る。
【0049】
別の実施形態において、被験体においてそれに対する中和抗体が発生した第1および/または第2血清型との関係が遠いVLPは、HPVでないパピローマウイルスから選択することができる。いくつかの実施形態において、VLPは、ヒトでない哺乳動物に感染するパピローマウイルス、例えばウシパピローマウイルス(BVP)またはワタウサギパピローマウイルス(CRVP)またはショープパピローマウイルスからのカプシドタンパク質を含むことができる。治療の連続は、異なるHPV血清型および/またはその他の非ヒト宿主に感染する異なるパピローマウイルスに基づくVLPの連続物を含むことができることが認識される。
【0050】
異なって変更されたHPVナノ粒子または異なる血清型のHPVナノ粒子は、異なって変更されたHPVナノ粒子または異なる血清型のHPVナノ粒子に対する抗体が被験体において発生するまでの治療薬の送達のために使用することができる。上記の方法を用いて、血清型の違いおよび/または免疫応答を変更するる変異に基づいてVLPを変更するあるいくつかの実施形態において、被験体は、被験体の免疫応答による送達系の効力を失うことなく、複数回にわたって治療薬で処置できる。いくつかの実施形態において、このような計画は、全てのHPV感染細胞が実質的に消去され、かつ/またはがんもしくは病変の寛解(部分的または完全)が生じるまでの、HPV感染および/またはHPV関連がんの繰り返しまたは継続した治療を可能にする。しかし、このような計画は、本発明の態様に従うその他の状態の繰り返しまたは継続した治療のために使用できることが認識される。
【0051】
いくつかの実施形態において、被験体は、HPVワクチン(例えば市販で入手可能なもの、例えばGARDASILおよびCERVARIX)を用いてワクチン接種される。これらの実施形態において、免疫は、ワクチンが標的にするウイルスに感染するようになること(例えばワクチン接種により被験体が免疫応答を産生したウイルス)、およびこれらのワクチン特異的ウイルスにより引き起こされるHPV関連疾患が発達することから被験体を保護する。しかし、現在入手可能なワクチンは、全てのHPV遺伝子型および/または血清型の感染に対して保護しない。いくつかの実施形態において、HPVをワクチン接種された被験体は、ワクチンが標的にしない、例えばワクチン接種された被験体においてそれに対する免疫応答が発生していないHPV(例えば高リスクHPV)に感染するようになる。いくつかの実施形態において、ワクチン接種された被験体は、異なるHPV型への感染の複数の発生に遭遇する。いくつかの実施形態において、被験体は、被験体において異なる細胞に感染して、それに保持される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の異なるHPV型に感染するようになることがある。いくつかの実施形態において、ワクチン接種された被験体においてそれに対する免疫応答が発生していない高リスクHPVに感染するようになるワクチン接種された被験体において、ワクチン接種された被験体においてそれに対する免疫応答が発生していない高リスクHPVにより引き起こされるHPV関連疾患、例えばHPV関連異形成またはがんが発達することがある。これらの実施形態において、被験体は、本明細書に記載される方法を用いて本明細書に記載されるVLPを用いて治療してよい。
【0052】
例えば、市販で入手可能なワクチンの1つで免疫した被験体は、HPV16および18に対する中和抗体を発生し、HPV6および11に対する中和抗体も発生することがある。免疫された被験体は、これらのHPV型(HPV16、18(がん)およびHPV6、11(疣贅))により引き起こされる子宮頚部前癌および/または性器疣贅の発生から保護される。免疫によりHPV16および18に対する中和抗体が発生した被験体では、その他のHPV型(例えばHPV16に対して産生された中和抗体についてHPV31、およびHPV18に対して産生された中和抗体についてHPV45)と交差反応性を示すいくつかの中和抗体が発生することがある。しかし、免疫された被験体は、被験体においてそれに対する交差中和抗体が発生していないその他の高リスクHPV型(例えばHPV58、または他のものなど)への感染に対して、まだ感受性である。免疫された被験体が感染し得るさらなる高リスクHPV型は、例えばHPV−33、HPV−35、HPV−39、HPV−51、HPV−52、HPV−56、HPV−59、HPV−68およびHPV−69であり得る。免疫された被験体において交差中和抗体が発生していないか、または十分に特異的な交差中和抗体が発生していないか、または十分な力価の交差中和抗体が発生していないならば、免疫された被験体は、被験体においてそれに対する十分な保護が発生してない高リスクHPV型の1つ以上に感染した場合に、異形成またはがんなどのHPV関連疾患が発達する危険性がまだある。
【0053】
このような被験体において、1もしくは複数の治療薬(例えばE7 siRNA)を含む本明細書に記載される改変VLPまたは異なる(関係がより遠い)血清型のウイルス粒子(例えば野生型HPV58に基づくVLP)を、被験体において十分な保護が発生しなかった高リスクHPVにより引き起こされる、被験体の持続性高リスクHPV感染により発達する早期段階疾患を治療するために被験体に投与することができる。この例において、治療は、早期異形成の消去を可能にし、さらに、その他のさらなるHPV型へのさらなる感染に対するより広い交差保護を被験体に提供し得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、HPVナノ粒子は、ウイルスL1タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、HPVナノ粒子は、ウイルスL1タンパク質およびウイルスL2タンパク質を含む。L1および/またはL2タンパク質は、いくつかの実施形態において、野生型ウイルスタンパク質であってよい。いくつかの実施形態において、L1および/またはL2タンパク質を、得られるL1および/またはL2タンパク質がナノ粒子の集合に必須の「最小」ドメインのみを含むように変異および/または欠失により変更することもできる。いくつかの実施形態において、L1および/またはL2タンパク質は、さらなる機能性を提供するその他のタンパク質および/またはペプチドと融合することもできる。これらのその他のタンパク質は、ウイルス性または非ウイルス性であってよく、いくつかの実施形態において、例えば宿主特異的または細胞型特異的であり得る。VLPは、1つ以上の組換えタンパク質またはその断片(例えば1つ以上のHPV膜および/もしくは表面タンパク質またはその断片)を含有する粒子に基づくものでもよい。いくつかの実施形態において、VLPは、本明細書に記載されるように1つ以上の薬剤を組み込むように加工された天然に存在する粒子に基づくものでもよい。なぜなら、本発明の態様は、この点に限定されないからである。あるいくつかの実施形態において、1つ以上の標的ペプチドを含む粒子を使用することもできる。HPVタンパク質またはペプチドのその他の組み合わせを使用することもできる。なぜなら、本発明の態様は、この点に限定されないからである。
【0055】
いくつかの実施形態において、ウイルス野生型カプシドタンパク質は、変異、挿入および欠失により変更される。今日までに同定されている全ての立体構造依存性型特異的エピトープは、BC、DE、EF、FGおよびHIループとよばれる、アミノ酸配列がHPV型間で非常に相違する超可変ループ内のHPV−VLP表面上で見出されている。ほとんどの中和抗体は、これらの可変ループ内のエピトープに対して作製され、交差反応性、交差中和性および交差保護が限定されて型特異的である。異なるHPV血清型は、異なる型特異的エピトープおよび/または異なるループを指向する抗体を誘導する。
【0056】
特定のHPV血清型に対して作製された抗体の制限された交差反応性を治療のために活用する方法が、本明細書において提供される。あるいくつかの実施形態において、ウイルスカプシドタンパク質、HPV L1および/またはL2は、1つ以上の超可変および/または表面露出ループにある1つ以上のアミノ酸の位置で変異される。変異は、HPV血清型間で保存されていないループ内のアミノ酸の位置で行われる。これらの位置は、完全に非保存的であってもよく、すなわち、任意のアミノ酸がこの位置に存在できるか、またはこの位置は、保存的アミノ酸変化だけを行い得るように保存できる。
【0057】
保存的アミノ酸変化は、機能的、化学的または構造的な考察に従って行うことができる。例えば、保存的アミノ酸変化は、化学的類似性:酸性(D/E)、脂肪族(A/G/I/L/V)、アミド(N/Q)、芳香族(F/W/Y)、塩基性(R/H/K)、ヒドロキシル(S/T)、イミノ(P)、硫黄(C/M);または機能的類似性:酸性(D/E)、塩基性(R/H/K)、疎水性(A/I/L/M/F/P/W/V)、極性(N/C/Q/G/S/T/Y);または電荷の類似性:酸性、塩基性、中性;または構造的類似性:両価性(A/C/G/P/S/T/W/Y)、外側(R/N/D/Q/E/H/K)、内側(I/L/M/F/V)に従って行うことができ、ここで、括弧内のアミノ酸の群の任意のアミノ酸を、その群の中の別のものに変化でき、このような変化は、例えば構造的、機能的または化学的といったあてはめる考察に従って保存的変化と考えることができる。いくつかの実施形態において、1つ以上の因子を考慮してよい。
【0058】
あるいくつかの実施形態において、アミノ酸変化を、1つ以上のループ中に、1つ以上のアミノ酸の位置および1つ以上のループ中の、ある血清型の野生型アミノ酸配列を変更する1もしくは複数の位置に導入して、別のHPV血清型において見出されるアミノ酸配列にする。例えば、あるループにおいて、血清型Xについてのアミノ酸配列がABCDEFGであり、異なる血清型Yの同じループにおいてアミノ酸配列がABHIJGであるならば(ABCDEFGとABHIJFGは異なるアミノ酸配列である)、ABおよびFGを保存して、CDEを変異してよい。変異は、血清型Yにおいて、CもしくはDもしくはEに導入してよく、またはCDもしくはDEもしくはCEに導入してよく、またはCDEに導入してよい。これらの実施形態において、CはHに変異でき、DはIに変異でき、EはJに変異できる。これらの実施形態において、1つ以上のループは、ある血清型(例えばY)のアミノ酸配列を有してよく、タンパク質の残りの部分および(未変更ループ)の残りの部分は、異なる血清型(例えばX)のものである。これらの実施形態において、ウイルスカプシドタンパク質の小さい部分だけが変異される。
【0059】
表2は、異なるHPV型のFGループのアラインメントの例を示す。
【0060】
【表2−1】

【0061】
【表2−2】

表2における例は、変異を任意の「X」位に導入してよく、保存的変異を括弧内に示す任意の位置に導入してよいが、保存されたアミノ酸(太字)は同じに保つことを示す。表2の例に基づいて、当業者は、任意の表面露出超可変ループについて任意の数のHPVウイルスのHPV配列を整列させて、保存されたアミノ酸および保存されていないアミノ酸を、周知のアラインメントプログラムを用いて過度の実験を行うことなく導くことができる。
【0062】
あるいくつかの実施形態において、ある血清型の保存されていない野生型アミノ酸を、別の血清型の等価な野生型アミノ酸に変化させる1つ以上のアミノ酸変化を、1つ以上のループにおいて行ってよい。例えば、表2の例によると、HPV16のFGループの260位の野生型アミノ酸(L)を、HPV31の261位の等価な野生型アミノ酸である(F)に変更してよい。さらに、HPV16のFGループの264位の野生型アミノ酸(A)を、HPV31のの265位の等価な野生型アミノ酸である(S)に変更してよい、などである。この様式により、ある血清型のウイルスカプシドタンパク質の1つ以上のループ(例えばHPV16のL1のFGループ)を、カプシドタンパク質の全てのその他のアミノ酸を野生型(例えばHPV16のL1)に保ちながら、別の血清型の同じウイルスカプシドタンパク質のループ(例えばHPV31のL1のFGループ)のアミノ酸配列を多少密に模倣するように変更してよい。いくつかの実施形態において、特定の血清型の主要なエピトープを持つ1つ以上のループのアミノ酸を、異なる血清型における同じループの等価な位置にあるアミノ酸に、本明細書に記載される方式で変更することにより、HPV感染個体の免疫系のHPV特異的抗体によるウイルス粒子の認識が低減する。いくつかの実施形態において、変更されたHPVナノ粒子は、イムノサイレントであり、HPVに対してHPV感染被験体において発生したHPV特異的抗体により認識されない。例えば、HPV16で免疫したかまたはそれに感染した被験体において、HPV16特異的抗体が発生する。免疫系が、HPV16に由来する野生型L1タンパク質を含むVLPに遭遇すると、免疫応答が生じる。しかし、免疫系が、本明細書に記載される方式で変更されたHPV16に由来するL1タンパク質を含むVLPに遭遇すると、HPV16特異的免疫応答は(最初は)生じない。変更されたVLPでの繰り返しの攻撃の後に、変更されたVLPを受けた被験体において、その粒子を指向する新しい免疫応答が発生する。この場合、異なって変更されたVLPおよび/または別の血清型からのVLPを、本明細書に記載される治療方法について用いることができる。
【0063】
驚くべきことに、ある血清型のウイルスカプシドタンパク質の1つ以上のループが、別の血清型のウイルスカプシドタンパク質のループのエピトープ構造を模倣するように変更されているいくつかの実施形態において、この変更されたカプシドタンパク質を含むVLPは、どちらの血清型を指向する中和抗体によっても認識されない。本発明の態様によると、ループ(例えばFGループ)がメジャーエピトープを含有していても、血清型は、ウイルスカプシドタンパク質の残りの部分の関係におけるそのエピトープにより決定される。ウイルスカプシドタンパク質の残りの部分の配列を変化させずにループだけを改変する場合、元の血清型(またはループ配列が第1血清型の配列から第2血清型の配列に変化している場合は、複数の血清型)に対する抗体により驚くべきことに認識されない新規な血清型が得られる。いくつかの実施形態において、1つ以上の位置は、薬剤(例えば核酸、例えばRNAまたはDNA、例えば組換え核酸、例えば本明細書に記載される治療用核酸)をパッケージングして送達する能力を保持しながら、新しい血清型を作製するために変化できる。
【0064】
いくつかの実施形態において、FGループのX位、X位、X位、X位、X位、X11位およびX14位の1つ以上を変更して、薬剤(例えばHPV核酸とは異なる異種核酸(例えば核酸、例えばRNAまたはDNA、例えば組換え核酸、例えば本明細書に記載される治療用核酸))をまだパッケージングして送達できる新しい血清型を作製してよい。いくつかの実施形態において、第1のL1タンパク質中のこれらの位置の1つ以上は、第1血清型のアミノ酸から、第2血清型のアミノ酸に変化させる。例えば、いくつかの実施形態において、X位、X位、X位、X位、X位、X11位およびX14位の全てを、第1のHPV血清型配列(例えばHPV16血清型配列)から、第2のHPV血清型配列(例えばHPV31血清型配列)に、第1の(例えばHPV16)L1配列の関係において変化させてよい。いくつかの実施形態において、X、X11およびX14だけを、第1のHPV血清型配列(例えばHPV16血清型配列)のアミノ酸から、第2のHPV血清型配列(例えばHPV31血清型配列)に、第1の(例えばHPV16)L1配列の関係において変化させる。いくつかの実施形態において、X、X、X、X、X、X11およびX14の任意の組み合わせ(例えば、これらの位置の任意の1、2、3、4、5、6または7)を、第1血清型のアミノ酸から第2血清型のアミノ酸に、L1配列の残りの部分を変化させずに変更してよい。第1および第2の血清型は、任意の適切な血清型(例えばHPV16、HPV31、HPV33、HPV34、HPV35、HPV52、HPV58、HPV73、HPV91、または特定のFGループ配列を有する任意のその他の血清型)であってよいことが認識される。いくつかの実施形態において、これらの位置のいずれの1つ以上も、任意の保存的または非保存的アミノ酸(変化が、別の天然に存在する血清型からのアミノ酸に相当するかどうかにかかわらず)に、薬剤(例えば天然HPV核酸とは異なる核酸または本明細書に記載される任意のその他の薬剤)をパッケージングして送達する能力を保持する、それ以外は変化しないL1配列またはその部分の関係において変化してよいことも認識される。
【0065】
いくつかの実施形態において、薬剤をまだパッケージングして送達できる改変HPV粒子は、L1タンパク質のX16位に改変を有さない。例えば、改変HPV16は、その他の位置に1つ以上の変化を有し得るが、X16位にアスパラギン(N)を保持する。
【0066】
中和MAbについての主要なエピトープは、HPV血清型間で異なる1つ以上のループ上で同定されていることが認識される。例えば、HPV11についてDEループ中、HPV6についてBCおよびEFループ中、ならびにHPV33についてBC、DEおよびFGループ中、HPV16についてFGループ中、ならびにHPV31についてEFループ中である(例えばFleuryら、Prot.Sci.2009年に記載されるように)。本明細書に記載される方策を用いて、当業者は、メジャーエピトープを含むことが示されているその他のループの配列を整列させて、さらなる改変VLPを作製できる。
【0067】
変更されたカプシドタンパク質がVLPを形成する能力を維持し、標的細胞へ治療薬(複数可)を移入する、得られるVLPの能力を維持しながら、免疫原性を改変もしくは変更するかまたは任意のその他の理由のため(例えば、立体構造変化を誘導もしくは防止するため、荷電アミノ酸基を増加もしくは低減させるため、標的化を変更するため、バイオアベイラビリティーを増加させるため、特定の投与経路による取り込みを増加させるために特定の改変を誘導するため)に、任意の数のアミノ酸変化(変異、欠失、付加)を、ウイルスカプシドタンパク質内の任意のアミノ酸の位置で(表面ループの1つ以上において、内側に面する基を有するアミノ酸を含む部位で、またはカプシドタンパク質中の任意のその他の位置で)行うことができることも認識される。
【0068】
アミノ酸改変は、本明細書で教示されることおよびループ内に配置された直鎖状および立体構造エピトープに関して当該技術において公知であることに従って導入できることがさらに認識される。例えば中和抗体の認識部位であり得るか、または細胞標的化のために重要な位置であり得るか、またはVLPによる細胞侵入を支援し得る立体構造エピトープが同定されている(例えばFleuryら、Prot.Sci.2009年およびSadeyenら、Virology、2002年、309巻:32〜40頁(これらの内容は、本明細書に参照によりその全体が組み込まれる)に記載されるように)。ループ内の1つ以上のアミノ酸の改変は、立体構造エピトープに従って設計してよく、保存されていないものに加えて、保存されている1つ以上のアミノ酸の改変を含んでよい。
【0069】
いくつかの実施形態において、アミノ酸配列をループ内に挿入してよい。例えば、短いアミノ酸配列を、1つ以上の表面露出ループに挿入してよい。短いアミノ酸配列挿入は、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、150、200もしくは250アミノ酸の長さ、または4アミノ酸と250アミノ酸との間の任意の長さであり得る。あるいくつかの実施形態において、挿入断片は、4と50、5と25または5と15アミノ酸の間の長さである。挿入断片は、ループ内のあらゆる場所に挿入できる。いくつかの実施形態において、挿入断片は、ループのほぼ中央に挿入される。あるモチーフがあるループにより示されることが公知であり、そのモチーフを維持することが望まれるならば、挿入断片は、そのモチーフのN末端またはC末端のいずれかのモチーフの外側に作製される。一方、あるループ内に示されるあるモチーフを破壊することが望まれるならば、挿入断片は、そのモチーフ内に作製される。モチーフは直鎖状または構造的であることができ、すなわち、これは、1次アミノ酸配列またはその2次(もしくは3次)構造に基づいてよい。モチーフは、VLP取り込みおよび/もしくは標的細胞認識を容易にし得る細胞認識モチーフであることができるか、またはこれは、ある抗体により認識されるかもしくは抗原性であることが公知のエピトープであってよい。いくつかの実施形態において、挿入断片が、標的化または細胞取り込みを促進するために用いられる場合、挿入断片は、例えばウイルス標的化ドメインを含んでよい。これらのドメインがHPVに限定されないことが認識される。ウイルス標的化ドメインは、所望の任意の細胞を標的にする任意のウイルスに由来してよい。挿入断片は、例えば、受容体認識モチーフなどの宿主特異的細胞認識モチーフも含んでよい。いくつかの実施形態において、挿入断片は、例えばStrep Tag(商標)(STII、WSHPQFEK、配列番号12)などのアフィニティータグのためのエピトープを含むアミノ酸配列を含んでよい。
【0070】
いくつかの実施形態において、挿入は、免疫応答を刺激するために用いられる。これらの実施形態において、挿入断片は、ウイルス起源(例えば種々のHPV血清型から)の1つ以上のエピトープ(例えばポリトープ)を含んでよい。例えば、ポリトープは、種々のHPV血清型、例えばHPV16、18、31、33および45のL1タンパク質の抗原性領域(エピトープ)を含んで構築してよい。いくつかの実施形態において、L2タンパク質の領域を挿入してよい。
【0071】
いくつかの実施形態において、1つ以上のエピトープの挿入により、1つ以上のエピトープに対する免疫応答が被験体において生じる。いくつかの実施形態において、免疫応答は、ウイルス(例えばHPV)への再感染および/またはウイルス(例えば抗ウイルス治療の後の残りのウイルスを起源とする)の再増殖および/またはウイルス関連がん(例えば抗がん治療の後の残りのウイルス形質転換がん細胞を起源とする)の再発に対する保護を与える。
【0072】
いくつかの実施形態において、ペプチドをVLP表面に結合させて、免疫応答の変更もしくは増幅(例えば該ペプチドが1つ以上のエピトープを含むならば)、あるいはVLPの標的化および/もしくは細胞取り込みの変更または増幅(例えば該ペプチドが1つ以上の細胞受容体を含むならば)を誘導してよい。例えば、VLPは、アルブミン結合ドメインを有して、血管または経細胞輸送を増進するペプチド(例えば、基底から頂端への経細胞輸送を増進するインテグリン結合(RGD)モチーフ、ヘパラン硫酸部分またはその他の部分)、ならびに/または標的細胞によるそれらの取り込みを増進する受容体特異的結合ドメイン(例えばEGFR結合ドメイン)、ならびに/またはエンドソームおよび/もしくは核輸送を増進するペプチドによるそれらの輸送を増進できる。
【0073】
いくつかの実施形態において、ペプチドは、適切なリンカー、例えばグルタルアルデヒド、イミドエステルならびにBS(PEG)9、BS(PEG)5、DTSSP、EDC、SM(PEG)2、SMCCおよびスルホSMCC(Thermo scientific)を用いて化学的架橋により結合できる。
【0074】
いくつかの実施形態において、ペプチドは、StrepTag(商標)などのアフィニティータグにより結合できる。
【0075】
いくつかの実施形態において、ペプチドは、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450または500アミノ酸の長さである。
【0076】
あるいくつかの実施形態において、L1タンパク質およびL1+L2タンパク質は、組換えにより生成してよい。あるいくつかの実施形態において、組換えにより生成されたL1タンパク質およびL1+L2タンパク質は、自己集合してウイルス様粒子(VLP)を形成してよい。組換え生成は、細菌、昆虫、酵母または哺乳類宿主系において行ってよい。L1タンパク質を発現してよいか、またはL1+L2タンパク質を、宿主系において同時発現させてよい。
【0077】
宿主系においてL1およびL2組換えウイルスタンパク質を発現させて精製する方法、HPVナノ粒子またはVLPを解体および再集合する方法、ならびにL1およびL2のアミノ酸配列への改変、被験体へのVLPの投与およびVLPを含む医薬組成物の例は、当該技術において周知であり、本明細書に教示される。例えば、米国特許第6,416,945号、第6,991,795号および第7,205,126号は、本明細書に参照により組み込まれる。しかし、本明細書で示す方法および形態は、上記の米国特許に記載されるものに限定されないことが認識される。当業者に公知のその他の方法および形態も採用してよい。
【0078】
あるいくつかの実施形態において、HPVナノ粒子またはVLPには、1つ以上の治療薬が充填される。HPVナノ粒子には、本明細書に記載するように、L1またはL1およびL2ウイルス粒子を解体および再集合することにより充填してよい。ウイルスカプシドタンパク質をVLPに解体/再集合することを支援するために有用な塩は、Zn、CuおよびNi、RuおよびFeの塩を含む。その他の充填方法を使用することもできる。なぜなら、本発明は、この点に限定されないからである。いくつかの実施形態において、HPVナノ粒子には、1つ以上の治療薬を充填してよい。
【0079】
いくつかの実施形態において、L1タンパク質またはL1およびL2タンパク質を含むHPVナノ粒子は、1つ以上の治療薬をさらに含む。あるいくつかの実施形態において、治療薬は、1もしくは複数のsiRNA分子あるいはそれぞれが1もしくは複数のsiRNA分子を発現できる1つ以上の核酸(例えばプラスミドまたはその他のベクター)を含む。いくつかの実施形態において、治療薬は、1もしくは複数のアンチセンス核酸(例えば抗E6および/または抗E7)、それぞれが1もしくは複数のアンチセンス核酸を発現できる1つ以上の核酸(例えばプラスミドまたはその他のベクター)を含む。いくつかの実施形態において、HPVナノ粒子は、2以上の治療薬の組み合わせを含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、治療薬は、RNA干渉の誘導物質または遺伝子サイレンシングのその他の誘導物質である。RNA干渉の誘導物質は、siRNA、shRNA、2重リボ核酸(RNA)分子を含む第1部分と、1本鎖デオキシリボ核酸(DNA)分子を含む第2部分とを含むハイブリッド核酸分子、より長い2本鎖RNA、またはsiRNAもしくはより長いRNA配列を発現するためのDNA構築物であってよい。遺伝子サイレンシングのその他の誘導物質は、DNAメチル化の誘導物質またはリボザイムまたはアプタマーを含む。その他の実施形態において、治療薬は、PNA(ペプチド核酸)などの遺伝子発現の修飾物質であり得る。
【0081】
RNA干渉RNA干渉(RNAi)は、細胞への2本鎖RNA(dsRNA)の導入が、配列依存的な様式で遺伝子発現を翻訳後に阻害するプロセスである。RNAiは、短い(例えば19〜25ヌクレオチド)dsRNAまたは小型干渉RNA(siRNA)により媒介できる。dsRNAは細胞内で切断されてsiRNAを創出し、これらがRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に取り込まれて、複合体が相同内因性mRNAに導かれ、該mRNA転写産物を切断し、mRNAの破壊をもたらす。
【0082】
RNA干渉を細胞において誘導するために、dsRNAを細胞に、単離核酸断片として、または導入遺伝子、プラスミドもしくはウイルスにより導入してよい。あるいくつかの実施形態において、VLPを用いて、dsRNAを標的細胞に送達する。
【0083】
いくつかの実施形態において、短いヘアピンRNA分子(shRNA)を細胞において発現させる。shRNAは、小型ループ配列で分けられた短い逆方向反復を含む。一方の逆方向反復は、遺伝子標的に相補的である。shRNAは、次いで、siRNAに加工され、これが標的遺伝子mRNAを分解する。shRNAは、ヒトH1または7SKプロモーターなどのRNAポリメラーゼIIIプロモーターの制御下にshRNA配列をコードするDNA構築物を有する細胞内で生成できる。代わりに、shRNAは、外因的に合成して、細胞に直接、例えばVLP送達により導入してよい。あるいくつかの実施形態において、shRNA配列は、40と100塩基の間の長さ、または40と70塩基の間の長さである。ヘアピンのステムは、例えば、19と30塩基対の間の長さである。ステムは、G−U対を含んで、ヘアピン構造を安定化してよい。
【0084】
siRNA配列は、標的遺伝子とのそれらの相同性に基づいて選択される。2つのヌクレオチド配列間の相同性は、BLASTプログラム(Altschulら(1990年)J. Mol.Biol.215巻:403〜10頁)またはBestFit(Genetics Computer Group、575 Science Drive、Madison、Wisconsin、USA、Wisconsin 53711)を含む種々のプログラムを用いて決定してよい。配列比較は、FASTAおよびFASTPを用いて行ってよい(PearsonおよびLipman、1988年、Methods in Enzymology183巻:63〜98頁を参照されたい)。siRNA、shRNAおよび/またはmiRNAの設計のためのツールおよび質は、当該技術において公知である。siRNA配列およびスクランブルsiRNA配列の設計のためのウェブに基づくオンラインソフトウェアは、例えばsiDirect、siSearch、SEQ2SVM、Deqor、siRNA Wizard(InvivoGen)である。特異性は、例えばSpecificityServer、miRacleを用いて予想できる。標的配列は、例えばHuSiDa(ヒトsiRNAデータベース)およびsiRNAdb(siRNA配列のデータベース)で研究できる。配列比較は、関連する配列の全長にわたって行ってよいか、あるいはより好ましくは、約または10、15、20、25もしくは30塩基の隣接配列にわたってよい。あるいくつかの実施形態において、siRNAと標的遺伝子との間の相同性の程度は、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%または少なくとも99%または100%である。siRNAは、10bpと30bpの間の長さもしくは20bpと25bpの間であってよいか、またはsiRNAは、20、21もしくは22bpの長さである。
【0085】
RNAiの発生は、培養細胞にsiRNAをトランスフェクトし、その後に対象とするmRNAのRT−PCRを行うことにより検出できる。RNAiがsiRNAにより誘導される場合、対象とするmRNAのレベルは、対照細胞と比較してトランスフェクトされた細胞において低減する。タンパク質生成の低減は、細胞可溶化液のウェスタンブロッティングと、その後に対象とするタンパク質と反応性の抗体を用いてプローブ付加することにより確認できる。
【0086】
いくつかの実施形態において、サイレンシングされる遺伝子は、HPV E6またはE7遺伝子である。siRNA配列は、RNAiを誘導する、E6またはE7遺伝子配列のいずれか1つ、例えばHPV16またはHPV18のものからの10〜30bpの任意の隣接配列であってよい。代わりに、これらの配列からの隣接配列を含むより長いdsRNA断片を使用することもできる。なぜなら、これらは、切断されて細胞内でsiRNAを形成するからである。
【0087】
siRNA分子は、当該技術において公知の標準的な固相または液相合成技術を用いて合成してよい。HPV−16 E6およびHPV−18 E6をそれぞれコードするmRNAに対する合成siRNAは、市販で入手できる(例えばDharmacon Research、Lafayette、USAから)。
【0088】
いくつかの実施形態において、siRNAは、ヌクレアーゼによる分解に対するそれらの感受性を低減することにより細胞内でのsiRNAの安定性を増加させるために、一方または両方の端に1つ以上のデオキシチミジン塩基の突出を有する。
【0089】
いくつかの実施形態において、siRNAは、2重鎖リボ核酸(RNA)分子を含む第1部分と、1本鎖デオキシリボ核酸(DNA)分子を含む第2部分とを含むハイブリッド核酸分子である。
【0090】
ヌクレオチド間の連結は、ホスホジエステル結合または代替物であってよく、例えば式P(O)S、(チオエート);P(S)S、(ジチオエート);P(O)NR’2;P(O)R’;P(O)OR6;CO;またはCONR’2(式中、RはH(もしくは塩)またはアルキル(1〜12C)であり、R6はアルキル(1〜9C)である)の連結基が、−O−または−S−を介して近接ヌクレオチドをつなぐ。
【0091】
改変ヌクレオチド塩基を、天然に存在する塩基に加えて用いることができる。例えば、改変塩基は、siRNA分子の安定性を増加させ、そのことにより、サイレンシングに必要な量を低減させる。改変ヌクレオチド塩基との用語は、共有結合的に改変された塩基および/または糖を有するヌクレオチドを包含する。例えば、改変ヌクレオチドは、3’位のヒドロキシル基以外で5’位のリン酸基以外の低分子量有機基に共有結合により結合した糖を有するヌクレオチドを含む。つまり、改変ヌクレオチドは、2’−O−メチル−;2−O−アルキル;2−O−アリル;2’−S−アルキル;2’−S−アリル;2’−フルオロ−;2’−ハロまたは2;アジド−リボースなどの2’置換糖、炭素環式糖類似体、a−アノマー糖;アラビノース、キシロースもしくはリキソースなどのエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖およびセドヘプツロースも含んでよい。
【0092】
改変ヌクレオチドは、当該技術において公知であり、アルキル化プリンおよびピリミジン、アシル化プリンおよびピリミジンならびにその他の複素環を含む。これらのクラスのピリミジンおよびプリンは、当該技術において公知であり、シュードイソシトシン、N4,N4−エタノシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデニン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンチル−アデニン、1−メチルアデニン、1−メチルシュードウラシル、1−メチルグアニン、2,2−ジメチルグアニン、2メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、−D−マンノシルクエオシン、5−メトキシカルボニルメチルウラシル、5メトキシウラシル、2メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、シュードウラシル(psueouracil)、2−チオシトシン、5−メチル−2チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル5−オキシ酢酸、クエオシン、2−チオシトシン、5−プロピルウラシル、5−プロピルシトシン、5−エチルウラシル、5エチルシトシン、5−ブチルウラシル、5−ペンチルウラシル、5−ペンチルシトシン、および2,6,ジアミノプリン、メチルシュードウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルシトシンを含む。
【0093】
いくつかの実施形態において、siRNA分子またはより長いdsRNA分子は、例えば本明細書に記載されるベクターに含まれる核酸配列の転写により組換えにより作製してよい。ベクターは、任意のRNAまたはDNAベクターであってよい。
【0094】
ベクターは、ヌクレオチド配列が、細胞に適合するプロモーターに作動可能に連結した発現ベクターであり得る。種々の脊椎動物系において用いるために適切なプロモーターは、当該技術において周知である。例えば、適切なプロモーターは、哺乳類レトロウイルスまたはDNAウイルスプロモーター、例えばMLV、CMV、RSV、SV40 IEP(最初期プロモーター)およびアデノウイルスプロモーターなどのウイルスプロモーター、ならびにメタロチオネインプロモーターを含む。強い哺乳類プロモーターを用いてもよい。本質的に同様の転写活性を保持するこのようなプロモーターのバリアントも使用できることが認識される。
【0095】
いくつかの実施形態において、ベクターは、1つがdsRNAのセンス鎖の発現を駆動し、1つがアンチセンス鎖の発現を駆動する少なくとも2つのプロモーターを有してよい。その他の実施形態において、1つがセンス鎖についておよび1つがアンチセンス鎖についてである2つのベクターを使用することもできる。代わりに、ベクターは、ステム−ループ構造を形成するRNAをコードしてよく、これは、その後、細胞により切断されてdsRNAを生成する。
【0096】
核酸構築物は、特定の細胞、ウイルスもしくはその他の遺伝子発現のプロモーターまたはリプレッサーを含有してよい。プロモーターまたはリプレッサーは、構築物が導入される細胞の関係を反映するように設計してよい。例えば、構築物は、構築物からの発現がウイルスタンパク質の存在に依存するようにウイルスプロモーターを含んでよく、そのことにより構築物は、ウイルス感染細胞においてのみ発現する。同様に、構築物は、ある細胞型もしくある発達段階に特異的なプロモーターまたはリプレッサーを有してよい。例えば、ベクターが、HPVに感染した細胞などのウイルス感染細胞における使用のためである場合、疾患原因ウイルスに一致するウイルスプロモーター、例えばHPV感染細胞についてHPVプロモーター(例えばHPV16 E6/E7の発現を引き起こすプロモーター)を用いる。このような実施形態において、ベクターは、ウイルス感染細胞においてのみ発現する。
【0097】
あるいくつかの実施形態において、siRNA治療薬は、標的細胞の細胞死もしくはアポトーシスを促進または媒介する薬剤を標的にする。あるいくつかの実施形態において、siRNA治療薬は、HPVウイルスタンパク質を標的にする。いくつかの実施形態において、siRNA分子が標的にするウイルスタンパク質は、ウイルスE6および/またはE7である。E6 siRNAは、ウイルス癌遺伝子発現の抑制において有効であることが見出されており、E6 siRNAは、有効な成長阻害活性を示す(Yoshinouchiら、2003年)。siRNAにより生じるE7サイレンシングは、アポトーシスによる細胞死を誘導する。いずれの特定の理論と結び付けられることも望まないが、合成小型干渉(si)RNA、具体的には抗アポトーシス性HPV E7癌遺伝子を指向するものが、アポトーシスおよび細胞死を導くE7の存在下でそうでなければ不活性なHPV陽性がん細胞において休眠腫瘍抑制因子経路を回復することが記載されている。いくつかの実施形態において、siRNAによるE7のサイレンシングは、E6を阻害する必要なく、感染宿主細胞のアポトーシスを導くために十分であることがある(Milnerら)。ウイルスE6およびE7についてのsiRNAは、例えばButzら(Oncogene(2003年)22巻、5938〜5945頁)およびMilnerら(特許出願第0117359.0号および第0216929.0号ならびにWO2005/051431)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載される。
【0098】
あるいくつかの実施形態において、HPV−16 E6およびHPV−18 E6は、siRNAが特異的に標的にできる。あるいくつかの実施形態において、HPV−16 E6についてのそれぞれの標的遺伝子は、5’−UACAACAAACCGUUGUGUG(配列番号13、ヌクレオチド377〜395)である。
【0099】
あるいくつかの実施形態において、HPV−18 E6についてのそれぞれの標的配列は、5’−CUAACUAACACUGGGUUAU(配列番号14、ヌクレオチド381〜399)である(Butzらに記載されるように)。
【0100】
その他の実施形態において、E6およびE7 siRNA構築物は、
E6(フォワード):5’GAGGUAUAUGACUUUGCUUTT(配列番号15);
E6(リバース):TTCUCCAUAUACUGAAACGAA5’(配列番号16)
および
E7(フォワード):5’AGGAGGAUGAAAUAGAUGGTT(配列番号17);
E7(リバース):TTUCCUCCUACUUUAUCUACC5’(配列番号18)
である(Milner、WO2005/051431に記載されるように)。
【0101】
その他の実施形態において、E6およびE7 shRNA構築物は、
表3
【0102】
【表3】

である(Bousarghinら、Mol Cancer Ther、2009年、8巻:357〜365頁(参照により本発明に組み込まれる)に記載されるように)。
【0103】
あるいくつかの実施形態において、HPVナノ粒子に集合するL1および/またはL1+L2などのウイルス野生型タンパク質のアミノ酸は、変異および/または置換および/または欠失される。あるいくつかの実施形態において、これらのアミノ酸は、VLP内部の正電荷を増進するように改変される。あるいくつかの実施形態において、改変を導入して、siRNA分子と、VLPの内部に面するアミノ酸の1もしくは複数とのより強い静電的相互作用を可能にし、かつ/またはsiRNAがHPVナノ粒子の外に漏れることを回避する。
【0104】
核酸は高く荷電されており、自由拡散により細胞膜を横切らない。さらに、siRNAの疎水性の特徴およびアニオン性の主鎖が、細胞によるそれらの取り込みを低減する。あるいくつかの実施形態において、治療用抗ウイルスsiRNAを、HPVナノ粒子を投与する被験体に送達して、細胞による取り込み(in vivoで生体膜バリアを横断する)および/またはsiRNAのバイオアベイラビリティーを増加させてよい。
【0105】
HPV感染細胞のみにおいてアポトーシスを促進する薬剤を含むVLP組成物が、これらがHPVに感染した細胞(例えばVLP表面構成要素は、本来感染性のHPVが標的にする同じ細胞型を標的にする)を標的にし、HPV感染細胞を死滅させる薬剤を送達するので、いくつかの実施形態において特に有用であることが認識される。これらの組成物は、いくつかの実施形態においてHPV感染を治癒するために用いることができる。いくつかの実施形態において、適切な投与量(例えば単回投与量または予め決められているが慢性治療でない治療期間にわたる治療の経過)を用いてHPV感染細胞を死滅させることを条件として、慢性治療は必要でない。しかし、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、全てのHPV感染細胞を死滅させるために十分でないことがあり、1より多い治療の経過および/または慢性治療が必要とされる。いくつかの実施形態において、抗ウイルス剤(アポトーシス促進性薬剤とは反対に)を含むVLP組成物を、慢性治療のために使用することもできる。
【0106】
あるいくつかの実施形態において、治療薬は、抗がん剤である。好ましい実施形態において、抗がん剤はゲムシタビンである。
【0107】
あるいくつかの実施形態において、治療薬は、化学療法剤、例えばメトトレキセート、ビンクリスチン、アドリアマイシン、シスプラチン、糖分非含有クロロエチルニトロソウレア、5−フルオロウラシル、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダカルバジン、タキソール、フラジリン、メグラミンGLA、バルルビシン、カルムスチン(carmustaine)およびプロリフェルポサン(poliferposan)、MMI270、BAY12−9566、RASファルネシル(famesyl)トランスフェラーゼ阻害剤、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、MMP、MTA/LY231514、LY264618/ロメトレキソール(Lometexol)、グラモレク、CI−994、TNP−470、ハイカムチン/トポテカン、PKC412、バルスポダール/PSC833、ノバントロン/ミトキサントロン(Mitroxantrone)、メタレット/スラミン、バチマスタット、E7070、BCH−4556、CS−682、9−AC、AG3340、AG3433、インセル/VX−710、VX−853、ZD0101、ISI641、ODN698、TA2516/マルミスタット、BB2516/マルミスタット、CDP845、D2163、PD183805、DX8951f、レモナールDP2202、FK317、ピシバニル/OK−432、AD32/バルルビシン、メタストロン/ストロンチウム誘導体、テモダール/テモゾロミド、エバセット/リポソームドキソルビシン、ユータキサン/パクリタキセル、タキソール/パクリタキセル、キセロード/カペシタビン、フルツロン/ドキシフルリジン、シクロパックス/経口パクリタキセル、経口タキソイド、SPU−077/シスプラチン、HMR1275/フラボピリドール、CP−358(774)/EGFR、CP−609(754)/RAS癌遺伝子阻害剤、BMS−182751/経口白金、UFT(テガフール/ウラシル)、エルガミソール/レバミソール、エニルウラシル/776C85/5FUエンハンサー、カンプト/レバミソール、カンプトサール/イリノテカン、ツモデックス/ラルチトレキセド(Ralitrexed)、ロイスタチン/クラドリビン、パキセクス/パクリタキセル、ドキシル/リポソームドキソルビシン、カエリクス/リポソームドキソルビシン、フルダラ/フルダラビン、ファーモルビシン(Pharmarubicin)/エピルビシン、DepoCyt、ZD1839、LU79553/ビス−ナフタルミド、LU103793/ドラスタチン(Dolastain)、カエリクス(Caetyx)/リポソームドキソルビシン、ゲムザール/ゲムシタビン、ZD0473/Anormed、YM116、ヨウ素(lodine)シード、CDK4およびCDK2阻害剤、PARP阻害剤、D4809/デキシフォサミド、イフェス/メスネクス/イホスファミド(Ifosamide)、バモン/テニポシド、パラプラチン/カルボプラチン、プラチノール/シスプラチン、ベペシド/エトポシド、ZD9331、タキソテール/ドセタキセル、グアニンアラビノシドのプロドラッグ、タキサン類似体、ニトロソウレア、メルファラン(melphelan)およびシクロホスファミドなどのアルキル化剤、アミノグルテチミド、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クロラムブシル(Chlorombucil)、シタラビンHCI、ダクチノマイシン、ダウノルビシンHCl、エストラムスチンリン酸エステルナトリウム、エトポシド(VP16−213)、フロクスウリジン、フルオロウラシル(5−FU)、フルタミド、ヒドロキシウレア(ヒドロキシカルバミド)、イホスファミド、インターフェロンアルファ−2a、アルファ−2b、ロイプロリド酢酸塩(LHRH放出因子類似体)、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミンHCl(ナイトロジェンマスタード)、メルカプトプリン、メスナ、ミトタン(o.p’−DDD)、ミトキサントロンHCl、オクトレオチド、プリカマイシン、プロカルバジンHCl、ストレプトゾシン、タモキシフェンクエン酸塩、チオグアニン、チオテパ、ビンブラスチン硫酸塩、アムサクリン(m−AMSA)、アザシチジン、エリスロポエチン(Erthropoietin)、ヘキサメチルメラミン(HMM)、インターロイキン2、ミトグアゾン(メチル−GAG;メチルグリオキサールビス−グアニルヒドラソン;MGBG)、ペントスタチン(2’デオキシコホルマイシン)、セムスチン(メチル−CCNU)、テニポシド(VM−26)またはビンデシン硫酸塩であるが、これらに限定されない。
【0108】
あるいくつかの実施形態において、治療薬は、免疫療法剤、例えばリブタキシン、ハーセプチン、クアドラメット、パノレクス、IDEC−Y2B8、BEC2、C225、オンコリム、SMART M195、ATRAGEN、オバレックス、ベキサール、LDP−03、ior t6、MDX−210、MDX−11、MDX−22、OV103、3622W94、抗VEGF、ゼナパックス、MDX−220、MDX−447、MELIMMUNE−2、MELIMMUNE−1、CEACIDE、プレターゲット、NovoMAb−G2、TNT、グリオマブ−H、GNI−250、EMD−72000、LymphoCide、CMA 676、モノファーム−C、4B5、ior egf.r3、ior c5、BABS、抗FLK−2、MDX−260、ANA Ab、SMART 1D10 Ab、SMART ABL 364 AbまたはImmuRAIT−CEAであるが、これらに限定されない。
【0109】
あるいくつかの実施形態において、治療薬は抗ウイルス剤である。抗ウイルス剤の例は、例えばDe Clercq J Pharmacol Exp Ther 2001年、297巻:1〜10頁(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるようなポリサルフェート類(PVAS)、ポリスルホネート類(PVS)、ポリカルボン酸類、ポリオキソメタレート類、チコリ酸、ジンテビル、コサラン誘導体、ビシクラム類(すなわちAMD3100)、T−22、T−134、ALX−40−4C、CGP−64222、TAK−779、AZT(アジドチミジン)、ddI、ddC、d4T(ジデヒドロジデオキシチミジン)、3TC(3’−チアジデオキシシチジン)、ABCおよびその他のddN(2’,3’−ジデオキシヌクレオシド)類似体、ネビラピン、デラビルジン、エファビレンツ、エミビリン(MKC−442)、カプラビリン、チオカルボキサニリドUC−781、アシクロビル、バラシクロビル、ペンシクロビル、ファムシクロビル、ブロモビニルデオキシウリジン(BVDU、ブリブジン)、シドホビル、アデホビルジピボキシル、テノホビルジソプロキシル、リバビリン、バラシクロビル、ガンシクロビル、ホルミビルセン(formivirsen)、ホスカルネット、EICAR(5−エチニル−1−β−D−リボフラノシルイミダゾール−4−カルボキサミド)、ミコフェノール酸、ネプラノシンA、3−デアザネプラノシンA、6’−C−メチルネプラノシンA、DHCeA(9−(トランス−2’,トランス−3’−ジヒドロキシシクロペント−4’−エニル)アデニン)またはcDHCeA(9−(トランス−2’,トランス−3’−ジヒドロキシシクロペント−4’−エニル)−3−デアザアデニン)であるが、これらに限定されない。
【0110】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるRNAi治療は、シドホビルでの治療をさらに含む。シドホビルは、例えばHPVにより誘導される喉頭乳頭腫を治療するために用いられる抗ウイルス薬である。シドホビルは、子宮頚癌細胞においても活性を有する。シドホビルは、VLPに基づくRNAi治療(例えばE6もしくはE7特異的siRNAまたはshRNA)の前、同時または後に投与してよい。いくつかの実施形態において、シドホビルは、RNAi分子と同時に投与され、本明細書に記載されるVLPにより送達される。
【0111】
さらなる治療薬は、例えば、シグナル伝達阻害剤、例えばセリン−スレオニンキナーゼの阻害剤、Ras/MAPKの阻害剤、インスリン増殖因子受容体の阻害剤、EGFRおよび/またはPDGFRの阻害剤、VEGFおよび/またはVEGFRの阻害剤などの血管新生抑制剤、PARP修飾物質および阻害剤、ヘッジホッグ経路の阻害剤、代謝経路の阻害に関する薬剤、ベータ−インターフェロン、TDFあるいはcPrPMEDAPである。
【0112】
あるいくつかの実施形態において、1つ以上の治療薬を含むHPVナノ粒子は、HPVに感染した被験体に、該被験体を治療するために十分な量で投与される。あるいくつかの実施形態において、HPVを有する被験体を、1つ以上の治療薬を含むHPVナノ粒子で治療することは、抗がん剤および/または抗ウイルス剤の投与をさらに含む。これらの薬剤は、同じ時間または異なる時間、例えば1つ以上の治療薬を含むHPVナノ粒子の投与の前または後に共投与してよい。
【0113】
あるいくつかの実施形態において、1つ以上の治療薬を含むHPVナノ粒子は、HPVに感染した被験体に局所投与される。局所投与は、適切な医薬組成物または製剤の形態の、1つ以上の治療薬を含むHPVナノ粒子を投与することを含んでよい。あるいくつかの実施形態において、局所投与のために適切な医薬組成物または製剤は、ゲルまたはクリームであってよい。ゲルまたはクリームは、あるいくつかの実施形態において、粘膜に施与してよい。
【0114】
あるいくつかの実施形態において、1つ以上の治療薬を含むHPVナノ粒子は、粘膜表面を有する上皮組織に、例えば子宮頚癌または結腸直腸癌の治療のために投与される。これらの実施形態において、HPVナノ粒子を含む医薬組成物は、ポリマーなどの粘膜接着性物質をさらに含む。粘膜接着性物質は、体腔を裏打ちする粘膜表面、または胃腸上皮、結腸直腸上皮および子宮頚部の管腔表面を含む表面に接着する任意の処方である。粘膜上皮細胞層は、粘稠性分泌物(粘液)に富む。粘膜接着性ポリマーは、結腸直腸上皮または子宮頚部上皮などの湿ったまたは湿潤な粘膜組織表面に接着する能力を有する。
【0115】
多くのポリマーを利用して、ゲル、クリームもしくはその他の接着性物質、例えばヒドロゲル、オルガノゲルもしくは熱可逆性ゲルなどのゲルを形成できる。その他の有用な型のポリマーは、それらに限定されないが、熱可塑性物質およびフィルムを含む。ポリマーは、例えば、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびキトサンならびにそれらの混合物、多糖類(寒天)またはカルボキシメチルセルロースであってよい。いくつかの実施形態において、ゲル、クリームまたはその他の接着性物質は、粘膜接着性の効果を示すその他の材料を含有してよい。このような材料は、二酸化チタン、二酸化ケイ素およびクレイを含む。
【0116】
医薬組成物は、例えばゲルとして直接施与してよいか、あるいはこれは、標的にする組織もしくは細胞にゲルを並置することを可能にする予め組み立てられたパッチまたはその他のデバイスに含まれてよい(例えばMilnerら、WO2005/051431に記載されるように)。例えば、子宮頚部の表面の組織構造に密着する適切な可撓性を有する裏張り層(例えばポリ(塩化ビニル)またはヒドロキシプロピルセルロースを含む)に接着した生体接着性層または粘膜接着性層を有するパッチを、治療薬と所望によりさらなる治療薬(例えば抗がん剤および/または抗ウイルス剤)とを含むHPVナノ粒子を子宮頚部組織に治療的に送達するために採用できる。パッチの物理的特性は、患者に不快感を与えることなく、そして通常の体の動きの間にパッチがずれることなく、数時間から1日以上の日数にわたって保持されることが理想的である。
【0117】
いくつかの実施形態において、1つ以上の治療薬を含むHPVナノ粒子は、プロピレングリコールメチルセルロースの調製物などのゲルの形態で、焦点を当てることが望まれる標的領域への施与のために提供できる。ゲルは、ゲルに懸濁された50mgの活性成分のように、チューブで提供してよい。これらのゲルは、皮膚またはその他の上皮表面(例えば子宮頚部または肛門生殖器領域)に塗布するために特に簡便である。
【0118】
いくつかの実施形態において、ゲルは、長いアプリケータチューブ(例えば直腸または膣アプリケータ)から、例えばそれを直腸または膣内に施与するために一定量供給される。しかし、本発明の組成物は、HPV感染細胞またはその他の標的細胞に到達する任意の適切な形態で投与してよいことが認識される。なぜなら、本発明は、この点に限定されないからである。例えば、本発明の組成物は、坐剤、カプセル剤、クリーム、ゲル、フォーム、スプレー、エアロゾルおよび/または標的領域(例えば口腔、咽頭、子宮頚部、膣、肛門など)と接触できる材料の表面上もしくはその中に含侵された形態あるいはそれらの2以上の任意の組み合わせで提供してよい。
【0119】
いくつかの実施形態において、1つ以上の治療薬を含むHPVナノ粒子は、16ゲージの外套針を用いて短期間の治療のために上皮表面もしくは皮膚の上に施与またはその中に挿入できるクリームあるいは結晶単体あるいはペレットとして施与することもできる。
【0120】
本発明の組成物は、HPVに感染した被験体(例えば持続性高リスクHPV感染を有すると診断されたかまたはそれが判明している被験体)に、異形成もしくはがんを治療し、かつ/または異形成もしくはがんもしくはHPV感染に関連するその他の状態の発達を防ぐために投与してよいことが認識される。しかし、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、別の血清型の高リスクHPV感染に感染している危険性が疑われる持続性高リスクHPV感染を有する被験体に(例えば予防的に)投与してよい。
【0121】
本明細書に記載される組成物が個体に投与される場合、投与は、「予防有効量」または「治療有効量」である。最終組成物が、必要により投与され、これは、治療される疾患および患部領域のサイズに依存する。投与は、例えば毎日、毎週または毎月であってよい。
【0122】
組成物の「有効量」との用語は、組成物単独またはさらなる用量と一緒に、所望の生物学的効果を実現するために必要または十分な量のことをいう。所望の応答は、もちろん、治療される特定の状態に依存する。本明細書で示す教示と組み合わせて、種々の活性化合物の中から選択し、有効性、相対的バイオアベイラビリティー、患者の体重、有害な副作用の重篤度および好ましい投与の形態などの因子を平衡させることにより、本質的な毒性を引き起こさず、それでもまだ特定の被験体を治療するために全体として効果的である、効果的な予防または治療上の処置計画を立案できる。任意の特定の施与の有効量は、治療される疾患もしくは有害状態、被験体のサイズまたは疾患もしくは有害状態の重篤度などの因子に依存して変動できる。個別の成分またはその組み合わせの最大用量、すなわち堅実な医療的判断による最高安全用量が用いられることが一般的に好ましい。しかし、患者は、医療的理由、心理的な理由または実質的に任意のその他の理由により、より低い用量または耐容量に固執してよいことが当業者により理解される。当業者は、過度の実験を必要とせずに、有効量を経験的に決定できる。
【0123】
本明細書に記載される任意の化合物について、治療有効量は、動物モデルから最初に決定できる。治療有効用量は、その他のナノ粒子などの、類似の薬理学的活性を示すことが公知の化合物についてのデータから決定することもできる。施与される用量は、投与される化合物の相対的バイオアベイラビリティーおよび有効性に基づいて調整できる。上記の方法および当該技術において周知のその他の方法に基づいて最大効力を達成する用量を調整することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0124】
あるいくつかの実施形態において、被験体を治療する方法が提供される。被験体は、任意の哺乳動物であってよい。本明細書で用いる場合、障害または疾患、例えばがん、異形成もしくは腫瘍などの有害状態に関して用いる場合の「治療」、「治療される」または「治療する」との用語は、該有害状態の発達に対して被験体の耐性を増加するか、または言い換えると、被験体において該有害事象が発達する可能性を低減する予防的治療と、被験体において該有害状態が発達した後に該疾患と戦うためまたは該有害状態が悪化することを防ぐための治療とのことをいう。
【0125】
あるいくつかの実施形態において、本明細書に記載される治療方法は、いずれのHPV感染被験体についても適切である。あるいくつかの実施形態において、方法は、性器疣贅および/または尋常性疣贅の治療のために提供される。あるいくつかの実施形態において、方法は、早期段階異形成、CIN(II、III)および/または上皮内癌の治療のために提供される。あるいくつかの実施形態において、方法は、子宮頚がんおよび例えば陰唇がん、陰茎がん、口腔扁平上皮癌、頭頚部がんまたは非黒色腫皮膚がんなどの全てのその他のHPV関連腫瘍の治療のために提供される。いくつかの実施形態において、方法は、HPV感染に随伴する感染、例えばヘルペス単純ウイルス感染の治療のために提供される。いくつかの実施形態において、被験体は、ヒトである。あるいくつかの実施形態において、被験体は、女性である。
【0126】
同様に、本発明の態様は、これらの組織の1つ以上の感染(例えば陰唇、陰茎、口腔、膣、皮膚またはその他の組織感染)を治療することに関する。
【0127】
あるいくつかの実施形態において、L1またはL1およびL2を含み、1つ以上の治療薬をさらに含むHPVナノ粒子は、HPV感染被験体における、がん細胞になる可能性を有するHPV感染細胞を標的にしてよい。あるいくつかの実施形態において、L1またはL1およびL2を含み、1つ以上の治療薬をさらに含むHPVナノ粒子は、HPV感染被験体における、がん細胞であるHPV感染細胞を標的にしてよい。
【0128】
あるいくつかの実施形態において、1つ以上の治療薬を含むHPVナノ粒子を、HPVに感染した被験体に投与することにより、該被験体におけるHPV感染がん細胞が死滅する。あるいくつかの実施形態において、1つ以上の治療薬を含むHPVナノ粒子を、HPVに感染した被験体に投与することは、該被験体におけるHPV感染がん細胞のアポトーシスを引き起こす。
【0129】
子宮頚がんは、通常、長期間にわたって緩慢に発達する。子宮頚部にがんが出現する前に、子宮頚部の細胞は、異形成として公知の変化を受け、ここでは、正常でない細胞が子宮頚部組織に出現し始める。より後になって、がん細胞が成長を開始し、子宮頚部内により深くおよび周囲領域に広がる。
【0130】
治療を必要とする被験体を治療するための方法が提供される。治療を必要とする被験体は、好ましくは、HPV感染を有する被験体である。いくつかの実施形態において、被験体は、感染の早期段階にある。いくつかの実施形態において、被験体は、早期段階子宮頚部異形成を示す。いくつかの実施形態において、被験体は、CINを示す。いくつかの実施形態において、被験体は、子宮頚癌を示す。
【0131】
いくつかの実施形態において、方法は、L1またはL1およびL2を含み、1つ以上の治療薬をさらに含むHPVナノ粒子を、HPV感染被験体に、該HPV感染を治療するために十分な量で投与する工程を含む。あるいくつかの実施形態において、HPVナノ粒子は、粘膜に局所投与される。あるいくつかの実施形態において、方法は、抗がん剤および/または抗ウイルス剤を投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の治療薬は、siRNA分子またはsiRNAをコードする分子である。あるいくつかの実施形態において、siRNAは、ウイルスE6および/またはE7を指向する。いくつかの実施形態において、抗がん剤は、ゲムシタビンである。
【0132】
いくつかの実施形態において、VLPは、抗がん剤を、がんを有する被験体に送達するために使用することもできる。
【0133】
あるいくつかの実施形態において、1つ以上の治療薬を含むHPVナノ粒子は、子宮頚部上皮などの上皮に局所的にもしくはその近接部に、または子宮頚部もしくは肛門上皮癌などの上皮病変に局所的にもしくはその近接部に施与できる。いくつかの実施形態において、1つ以上の治療薬は、siRNA分子またはsiRNAをコードする分子である。
【0134】
いくつかの実施形態において、1つ以上の治療薬を含むHPVナノ粒子は、例えば、悪性上皮、例えば泌尿生殖器腫瘍、例えば肛門、膣もしくは子宮頚部腫瘍、例えば子宮頚部CINへの施与により、上皮表面に施与するための局所用調製物にある。
【0135】
いくつかの実施形態において、1つ以上の治療薬を含むHPVナノ粒子は、表皮への施与のため、例えば非黒色腫皮膚がんの治療のための局所用調製物として調製される。
【0136】
いくつかの実施形態において、1つ以上の治療薬は、siRNA分子またはsiRNAをコードする分子である。
【0137】
いくつかの実施形態において、本発明の1もしくは複数のHPV組成物または方法は、HPV感染および/または子宮頚がんのための現在の治療とともに使用することもできる。例えば、本発明の治療方法および/または組成物は、表4に概説する治療技術の1つの前および/または後に使用することもできる。
【0138】
表4は、CINの治療のために現在用いられている一般的な技術を概説する。
【0139】
【表4】

これらの治療は、60〜90%の範囲で変動する効力の率を有する。しかし、これらの治療は全て、子宮頚部組織を除去または破壊する浸潤性の処置であり、しばしば、合併症と関連する。
【0140】
子宮頚がんの病因は、持続性ヒトパピローマウイルス感染に密に連結している(zur Hausenら、2002年において論評されている)。パピローマウイルスは、小型非エンベロープDNAウイルスであり、それらの正20面体カプシドは、L1およびL2タンパク質で構築され、このカプシドは、約8kbpの閉鎖環状2本鎖DNAを包む。50〜60nmの直径のウイルスカプシドは、L1メジャータンパク質の72ペンタマーと、L2マイナーカプシドタンパク質の12〜72コピーとを含有する。
【0141】
16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68およびHPV−69の型を含む15のHPVのサブグループが、高リスクに指定されている。高リスクHPV遺伝子は、ほぼ100%の子宮頚がん組織試料において見出される(Walboomersら、1999年)。ウイルスゲノムの組み込みと、2つの主要なウイルス癌遺伝子、E6およびE7のその後の発現とは、この特定のがんの発生において重要な工程であると考えられている。E6は、p53腫瘍抑制因子タンパク質と結合し、ユビキチン媒介分解のためにそれを標的にさせる(MungerおよびHowley、2002年)。p53は、細胞応答を、種々のストレス刺激、例えば電離放射線または化学療法剤による遺伝毒性損傷に対して編成する。損傷がどの程度広範囲であるかに依存して、p53の活性化は、細胞周期停止、DNA修復機構の活性化またはアポトーシスをもたらし得る(VousdenおよびLu、2002年)。非機能的または存在しないp53は、細胞分裂速度を加速し、遺伝的不安定性を促進し、悪性形質転換を容易にする(Attardi、2005年)。高リスクヒトパピローマウイルス(HPV)によるE6およびE7 mRNAの定常的な発現は、それぞれp53およびpRbの機能を妨げ、子宮頚がんの発生に必須である。
【0142】
さらに、HPV16は、頭頚部腫瘍、主にワルダイヤー輪の組織の小さい部分集合と関連する。低リスクHPV型を含むHPV型のスペクトルが、口腔がんを含む頭頚部のその他の部位の悪性病変、ならびに食道がんに存在することが証明されている(de Villersら)。
【0143】
非黒色腫皮膚がん(基底細胞癌および扁平上皮癌)は、世界中の白人集団のうちで断然最も頻繁ながんである。これらの癌は、日光に曝露された部位で主に生じ、この疾患の病因にUV照射が主要な環境因子であることを示している。細胞遺伝子p53の変異を含むいくつかの遺伝的変化が、さらに関連している。ベータ−パピローマウイルス属におけるいくつかのHPV型は、皮膚の扁平上皮癌と関連していると考えられる。これは、UVにより活性化または抑制される皮膚HPV型(HPV20、HPV38およびHPV27)を含む。
【0144】
よって、本発明の態様は、HPV感染と関連する子宮頚がん以外の状態を治療するために使用することもできる。例えば、本発明の態様は、HPV感染と関連する頭頚部がん(例えば口腔および/または食道がん)を治療するために使用することもできる。しかし、本発明のHPVに基づく粒子が、粘膜疾患または状態(それらがHPV感染により引き起こされたかどうかにかかわらず)を治療するための一般的な送達媒体として使用することもできることが認識される。よって、本発明の方法および組成物は、HSVもしくはHIV感染、および/または例えばGardnerella vaginalis、Neisseria gonorrhoeaeなどの細菌感染、Candida Albicans感染などの真菌感染、あるいは寄生生物Trichomonas vaginalisなどの寄生生物感染、あるいは生殖器での一般的な感染であるその他の感染などのその他の感染を治療するために使用することもできる。
【0145】
いくつかの実施形態において、1つ以上の治療薬を含むHPVナノ粒子は、持続性高リスクHPV感染、子宮頚部異形成、前癌性病変CIN I、II、III(CIN2/3、VIN2/3)および/または上皮内癌を治療するために用いることができる。
【0146】
いくつかの実施形態において、1つ以上の治療薬を含むHPVナノ粒子は、性器疣贅、非黒色腫皮膚がん、頭頚部がん、中咽頭がん、外陰がん、膣がん、陰茎がんおよび/または肛門がんを治療するために用いることができる。
【0147】
本発明の組成物は、治療の部位に応じて女性または男性の被験体に投与してよい。
【0148】
いくつかの実施形態において、HPVに基づくVLPを含む組成物は、上皮細胞、例えば皮膚への治療薬の送達のために使用することもできる。いくつかの実施形態において、組成物は、例えば膿痂疹および膿瘡などの皮膚疾患を引き起こす例えばStaphylococcus、MicrococcusおよびCorynebacterium sp.、Staphylococcus aureusならびにStreptococcus pyogenesを含むグラム陽性細菌により引き起こされる表皮の感染を治療するために投与してよい。いくつかの実施形態において、HPVに基づくVLPを含む組成物は、非黒色腫皮膚がんを治療するために使用することもできる。
【0149】
いくつかの実施形態において、1つ以上の治療薬を含む本明細書に記載される改変されたHPV粒子は、腫瘍、例えば卵巣がん、乳がん、口腔扁平上皮癌、頭頚部がん、NSCLC、SCLC、膀胱がんまたは前立腺がんの治療のために全身投与(例えばi.v.)してよい。いくつかの実施形態において、がん細胞は、HPV VLPについての受容体を提示し、本明細書に記載される改変されたHPV粒子は、これらのがん細胞を標的にするために用いることができる。いくつかの実施形態において、改変HPV粒子は、がん細胞に特異的な標的化薬剤を提示するようにさらに変更してよい。
【0150】
本発明の態様は、その応用において、上記の説明に記載されるかまたは実施例もしくは図面に示される構成および構成要素の配置の詳細に限定されない。本発明の態様は、その他の実施形態が可能であり、種々の方式で実施または行うことができる。また、本明細書で用いられる語法および術語は、説明の目的のためであり、限定とみなされない。「含み(including)」、「含み(comprising)」、または「有し」、「含み(containing)」、「含み(involving)」および本明細書におけるそれらの語尾変化したものの使用は、その後に列挙される要素およびその等価物とさらなる要素とを包含することを意味する。
【実施例】
【0151】
(実施例1)HPV癌タンパク質shRNAをパッケージングしたHPV−VLPによる子宮頚がん細胞増殖の阻害
この研究の主な目的は、HPVに基づくshRNA発現系を構築し、効果的なE6およびE7遺伝子サイレンシングのためのHPV媒介RNA干渉を探索することであった。我々は、ここで、子宮頚がん細胞中のE6およびE7 shRNAを発現するHPV偽ビリオンが、E6およびE7発現の枯渇と、がん細胞増殖の抑制とをもたらし、HPV VLPが、shRNAをコードするプラスミドを子宮頚がんの治療のために送達するために価値があることを示唆することを示す。
【0152】
材料および方法
株化細胞、細胞培養および細胞トランスフェクション
ヒト子宮頚癌株化細胞CaSki(ATCC CRL−150)およびC33−A(ATCC HTB−31;American Type Culture Collection)を、37℃で5%COの湿潤環境において、10%FCS(Invitrogen)、1%ペニシリン/ストレプトマイシンおよび1%ピルビン酸ナトリウムを補ったDMEM中で成長させた。CaSki細胞にはHPV−16が感染し、E6およびE7を発現したが、C33−A細胞はHPV陰性であった。マウス株化細胞TC1(ATCC CRL−2785)に、HPV−16 E6/E7癌タンパク質およびc−Has−Rasを同時形質転換した。これらの細胞を、10mmol/LのHEPES、1mmol/Lのピルビン酸ナトリウムを含み、2mmol/Lの非必須アミノ酸および10%FCSを補ったRPMI1640で増殖させた。マウス293FT細胞(Invitrogen)は、293T株化細胞(ATCC CRL11268)に由来した。これらは、SV40大型T抗原を発現し、500μg/mLのジェネテシン(Invitrogen)の存在下で培養した。
【0153】
トランスフェクションの1日前に、細胞をトリプシン処理し、6ウェルプレートに播種した。細胞に、次いで、Lipofectamine2000(Invitrogen)を用いてshRNAをコードするプラスミド、HPV−31偽ビリオンまたはshRNAをコードするレンチウイルスをトランスフェクトした。細胞は、結果に記載される種々の時間で分析のために採集した。
【0154】
E6およびE7特異的shRNAを発現するプラスミドの設計および生成
pENTR/U6エントリークローンを生成するために、BLOCK−iT U6エントリーベクターを用いた。我々は、まず、定方向クローニングのために必要な4ヌクレオチド突出をそれぞれ含有する相補的DNAオリゴ(Invitrogen)を設計して合成した。E6およびE7 siRNAに対応するshRNAの相補配列は、図1Bに示す。E6−2およびE7−2配列は、Invitrogenからの「shRNAデザイナー」ソフトウェアを用いて選択した。E6−1およびE7−1配列は、JiangおよびMilnerにより記載されたものであった(Oncogene 2002年;21巻:6041〜8頁)。我々は、LacZならびにJiangおよびMilner(Oncogene 2002年;21巻:6041〜8頁)により記載された対照shRNA配列を対照として用いた。全ての配列は、特異性についてBLASTにより確認した。
【0155】
アニーリング緩衝液中で95℃で4分間インキュベーションすることにより、等量のフォワードおよびリバース鎖オリゴをアニールして、2本鎖オリゴを作製した。2本鎖オリゴを作製した後に、これらをpENTER/U6ベクター(Invitrogen)にライゲーションした。プラスミドを配列決定し、増殖させ、Qiagenプラスミドmidiキット(Qiagen、France)を用いて精製した。エントリークローンを、一過性RNA干渉分析のために用いた。
【0156】
E6およびE7 shRNAを発現するHPV偽ビリオンHPV−31の生成
VLPを、コドンを最適化したHPV−31 L1およびL2遺伝子をコードする組換えバキュロウイルス(Fleuryら、Clin Vaccine Immunol 2008年;15巻:172〜5頁)に感染したSf21細胞で発現させた。細胞を27℃で72時間インキュベートした(Touzeら、Nucleic Acids Res 1998年;26巻:1317〜23頁;Bousarghinら、J Clin Microbiol 2004年;40巻:926〜32頁)。細胞を遠心分離により採集し、0.5%NP40を含有するPBSに再懸濁し、室温で30分間放置した。細胞可溶化液を、次いで、14,000×gで15分間、4℃で遠心分離した。核画分をPBSにさらに再懸濁し、超音波処理した。画分を、次いで、予め形成した塩化セシウム勾配の先端に充填し、Beckman SW28ローター(24時間、27,000rpm、4℃)において平衡で遠心分離した。L1陽性画分をPBS中にプールし、遠心分離した(SW28ローター、3時間、28,000rpm、4℃)。VLPを、0.15mol/LのNaClに再懸濁した。
【0157】
偽ビリオンを、いくらかの改変を加えて以前に記載されたようにして作製した(Touzeら、Nucleic Acids Res 1998年;26巻:1317〜23頁)。簡単に述べると、1μgのHPV−31 VLPを、20mmol/LのDTTおよび1mmol/LのEGTAを含有する50mmol/LのTris−HCl緩衝液(pH7.5)中で30分間、室温でインキュベートした。この段階で、shRNA、ルシフェラーゼまたは緑色蛍光タンパク質をコードする発現プラスミド(100ng)を、破壊したVLPに加えた。調製物を、次いで、5mmol/Lの最終濃度までの漸増濃度のCaClで、ZnClとともに(10nmol/L)またはZnClなしで希釈した。VLPへのHPVカプソマー(capsomers)の集合をZnClが増進すると報告されているので、ZnClを用いた(Hanslipら、Biotechnol Prog 2006年;22巻:554〜60頁)。偽ビリオンを、次いで、1×PBSに対して1晩透析し、使用前に4℃で貯蔵した。
【0158】
カプソマー、VLPおよび偽ビリオンの存在は、電子顕微鏡により分析した。この目的のために、試料を炭素被覆グリッド上に塗布し、1.5%酢酸ウラニルでネガティブ染色し、50,000倍の公称倍率で、JEOL1010電子顕微鏡を用いて観察した。
【0159】
E6およびE7 shRNAを発現するレンチウイルスの生成
レンチウイルスの生成は、BLOCK−iTレンチウイルスRNA干渉発現システム(Invitrogen)を用いて行った。簡単に述べると、E7 shRNAをコードするpENTR/U6プラスミドとplenti6/BLOCK−iTDESTとの間のLR組換え反応を行って、plenti6/BLOCK−iT−DEST発現構築物を作製した。レンチウイルスは、293FT細胞に9μgのViraPowerパッケージングミックスと3μgのplenti6/BLOCK−iT−DEST発現プラスミドDNAとを、LipofectAMINE2000(Invitrogen)を用いてトランスフェクトすることにより生成した。細胞培養物上清を、トランスフェクションの48時間後に回収した。レンチウイルスを発現するE7 shRNAの力価は、TC1細胞にレンチウイルスの系列希釈物を感染させることにより決定した。レンチウイルスストック力価は、1×10TU/mLであった。安定的に形質導入されたTC1細胞を、細胞をブラストサイジン選択(10μg/mL)に付すことにより選択した。
【0160】
逆転写PCRによるE6およびE7mRNAレベルの分析
shRNA偽ビリオンをトランスフェクトしたCaSki細胞(10)を1×PBSで洗浄し、mRNAを、Dynabeads mRNA検出キット(Dynal France SA)を製造者の使用説明に従って用いて単離した。1本鎖cDNAを、mRNAから、250μmol/Lの各デオキシヌクレオチド三リン酸、5μmol/Lオリゴ(dT)20、25単位のRNアーゼ阻害剤および20単位のトリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(Roche Diagnostics)を含有する1×インキュベーション緩衝液中で42℃で1時間の逆転写により合成した。cDNA試料を、HPV−16 E6、E7またはグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)に特異的なフォワードおよびリバースプライマーを用いるPCR増幅に供した。用いたプライマー配列は、E6フォワード、5’CACCAAAAGAGAACTGCAATGT3’(配列番号31);およびリバース、TTGCTGTTCTAATGTTGTTCCA(配列番号32);E7フォワード、5’GGAGATACACCTACATTGCATGA3’(配列番号33);およびリバース、GGGGCACACAATTCCTAGTG(配列番号34);グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素フォワード、5’ACAGTCCATGCCATCACTGCC3’(配列番号35);およびリバース、5’GCCTGCTTCACCACCTTCTTG3’(配列番号36)であった。PCRは、200μmol/Lのデオキシヌクレオチド三リン酸、2μmol/Lの各特異的プライマーおよび1単位のTaqポリメラーゼ(Invitrogen)を用いて、E7、E6およびGAPDHについてそれぞれ50℃、55℃または62℃で25サイクルにプログラム設定したGeneAmp9700サーモサイクラー(Pekin Elmer Applied Biosystems、France)中で行った。PCR生成物は、2%アガロースゲル上で視覚化し、GelDocシステム(Bio−Rad)を用いて分析した。
p53の検出
細胞(2×10)をPBS1×で洗浄し、50μLのSDSゲルローディング緩衝液に直接溶解し、95℃で10分間インキュベートした。15マイクロリットルの各試料を、12%SDS−PAGEゲル上で分離した。分離されたタンパク質を、抗体検出のためにニトロセルロースメンブレン上にエレクトロブロットした。ヒトp53タンパク質は、モノクローナル抗体DO−1(Santa Cruz Biotechnologies)を用いて検出し、内因性β−アクチンは、ポリクローナル抗体(Sigma)を用いて検出した。結合した抗体を、アルカリホスファターゼコンジュゲート抗マウスIgG抗体(Sigma)を、基質としてのニトロブルーテトラゾリウムおよびブロモクロロインドリルリン酸塩(Sigma)とともに用いて視覚化した。
β−ガラクトシダーゼおよびルシフェラーゼ活性の検出
β−ガラクトシダーゼプラスミドおよびLacZ shRNAをトランスフェクトしたCaSki、C33−AおよびTC1細胞におけるβ−ガラクトシダーゼの検出は、PBS1×で洗浄し、2%ホルムアルデヒドおよび0.2%グルタルアルデヒドを含有するPBSで固定した細胞において行った。室温で10分後に、細胞を洗浄し、β−ガラクトシダーゼ顕色溶液(2mmol/L MgCl、4mmol/Lフェロシアン化カリウム、4mmol/Lフェリシアン化カリウムおよび1mg/mL X−gal)とインキュベートした。β−ガラクトシダーゼ活性を示す青色の細胞を計数した。ルシフェラーゼ遺伝子発現の検出は、発光アッセイにより測定した(ホタルルシフェラーゼアッセイキット;Interchim)。発光を、10秒間積分し(Victor2、Wallac;Perkin−Elmer)、結果を、ウェルあたりの計数毎秒(cps)として表した。
【0161】
細胞生存性アッセイ
トランスフェクトしたかまたはしていない細胞をトリプシン処理し、次いで、96ウェルプレートに播種した。3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(0.5mg/mL)を、FCSを含まない100μLのDMEM中に播種した細胞に加え、37℃でインキュベートした。2時間後に、100μLのイソプロパノールおよび0.4mmol/LのHClを加え、吸光度を540nmで測定した。細胞生存性を、試験ウェルで得られた吸光度と未処理細胞で得られた吸光度との間の比率として決定した。
【0162】
アポトーシスアッセイ
アポトーシスは、抗ssDNA/APOSTAIN(Abcys)を用いて検出した。簡単に述べると、6ウェルプレートで増殖したTC1細胞(2×10)に、1μgのE6−1、E6−2、E7−1、E7−2 shRNA、および対照shRNAを含有する10μgの偽ビリオンを形質導入した。感染の2日後に、上清を採集し、細胞を氷冷却エタノールで固定した。遠心分離後に、5×10の固定細胞を、250μLのホルムアミドに室温で5分間再懸濁し、次いで、75℃で10分間インキュベートした。この工程の後に、1%脱脂粉乳を含有する2mLのPBSを加えた。15分後に、細胞を遠心分離し、ペレットを、抗ssDNAモノクローナル抗体F7−26を含有する100μLのPBSに再懸濁した。15分間のインキュベーションおよび遠心分離の後に、細胞ペレットを、蛍光コンジュゲート抗マウスIgM(PBSおよび1%脱脂粉乳中に20μg/mL)を含有する100μLのPBSに再懸濁した。15分間のインキュベーションの後に、細胞をすすぎ、遠心分離し、1μg/mLのヨウ化プロピジウムを含有する500μLのPBSに再懸濁した。陰性対照は、特異的1次抗体の代わりにマウスIgMで処理した。細胞を、次いで、Coulter XLフローサイトメータおよびExpo32ソフトウェア(Beckman Coulter、France)を用いて分析した。
【0163】
アポトーシスは、カスパーゼ−Glo3/7アッセイキット(Promega)を用いても調査した。細胞に、上記のように異なるshRNAを形質導入した。形質導入の2日後に、2×10細胞を、白色壁96ウェルプレート(Perkin−Elmer)の各ウェルに移し、100μLのカスパーゼ発光産生基質を加えた。室温で1時間のインキュベーションの後に、プレートを、Luminoscan Ascentルミノメータ(Thermo Electron)上で発光を読み取った。
【0164】
マウスモデルにおける抗腫瘍効果の評価
TC1細胞の腫瘍形成能に対するE6およびE7 shRNA偽ビリオンの効果を調査するために、6群(5匹のマウス/群)の6週齢メスC57BL6マウス(CERJ、Le Genest St Isle、France)に、TC1細胞(2×10)を皮下接種した。マウスへの投与の前に、TC1細胞に、偽ビリオン(10μgのVLP/1μgのE6−1またはE7−1 shRNA)、E7−1 shRNAをコードするレンチウイルス(感染多重度50)または1μgのE7−1 shRNAを、Lipofectamineを用いてトランスフェクトした。対照群は、未処理のTC1細胞を受け(モック)、1つの対照群は、HPV VLPで処理したTC1細胞を受けた。3週間後に、マウスを犠牲にし、腫瘍を切開して秤量した。
【0165】
E7 shRNAをコードする偽ビリオンの抗腫瘍効力も、TC1細胞腫瘍を有するマウスにおいて調査した。2群(10匹のマウス/群)の6週齢メスC57BL6マウスに、TC1細胞(2×10)をs.c.接種した。接種の7日後に、触知可能な腫瘍が全てのマウスにおいて形成され、shRNAを含有する偽ビリオンを、20μg VLP/2μg E7−1または20μg VLP/2μg対照shRNAの用量で2日毎に2週間、各腫瘍に直接注射した。3週間後に、マウスを犠牲にし、腫瘍を抽出して秤量した。全ての動物研究は、地域の動物倫理委員会(CREEA)により承認された。
【0166】
統計分析
データは、平均F SEとして表した。統計分析は、スチューデントのt検定を用いて行い、P<0.05を有意であるとみなした。
【0167】
結果
HPV−16のE6およびE7タンパク質を指向するshRNAの設計
6つの配列を設計して、特異的サイレンシングを促進した。これらの配列のうちの2つ、すなわちsiE6−1(138〜159)およびsiE7−1(101〜119)は、JiangおよびMilner(Oncogene 2002年;21巻:6041〜8頁)によりsiRNAとして既に記載され、それぞれE6およびE7に対応する他の2つの配列siE6−2(421〜441)およびsiE7−2(148〜167)は、Invitrogen shRNAデザイナーソフトウェアを用いて選択し、2つの配列(LacZ shRNAおよびJiangの対照shRNA)は、対照として用いた(図1および表3)。これらの配列をアニールして、pENTR/U6に挿入した。
【0168】
shRNAの送達のための偽ビリオン系の効率を調査するために、TC1、CaSkiおよびC33−A細胞に、LacZ shRNAをコードするpENTR/U6 LacZとともにまたはそれなしで、hガラクトシダーゼをコードするプラスミドをトランスフェクトした。LacZ shRNAの存在下では、h−ガラクトシダーゼ発現の減少が、調査した全ての株化細胞において観察され、TC1、CaSkiおよびC33−A細胞においてそれぞれ80%、83%および81%の阻害であった。
ZnClの存在下でL1カプソマーをVLPに集合させることによる、shRNAをコードする偽ビリオンの生成
HPV VLPを用いて、E6およびE7 shRNAをコードするプラスミドをカプシドに包んだ。これらの偽ビリオンを作製するために、我々は、再集合プロセス中にZnClを加える改変を加えて、以前に記載された解体−再集合法を用いた。簡単に述べると、精製VLPを、EGTAおよびDTTを含有する緩衝液中でインキュベートし、これらの条件において、VLPは、カプソマーに類似する構造に完全に脱凝集された。E7−1 shRNAプラスミドを、次いで加え、調製物を、ZnCl(10nmol/L)を含むかまたは含まずに1%DMSOおよび5mmol/L CaClを含有する緩衝液で希釈して、VLPを再び折り畳んだ。ZnClの存在は、偽ビリオンに類似する構造へのカプソマーの再集合を増加させた。ZnClの存在下では、カプソマーは、24nmの直径で、120〜280nmで長さが変動する管状構造にも集合した。ルシフェラーゼをコードするプラスミドを含有する偽ビリオンの生成におけるZnClの役割を、ZnClを用いてまたは用いずに得られた偽ビリオン調製物が293FT細胞に形質導入される能力を比較することにより評価した。9,981cpsのルシフェラーゼ活性が、ZnClの存在下で作製された偽ビリオンを用いて得られ、ZnClを用いずに得られた偽ビリオンを用いては、これは845cpsだけであった。つまり、L1カプソマーをZnClの存在下でVLPに集合させた場合に、12倍のルシフェラーゼ活性の増加が観察された(図2)。さらに、このようなHPV偽ビリオンがCaSki、C33−AおよびTC1細胞に形質導入される能力を調査した。このような偽ビリオンは、調査した全ての株化細胞に形質導入された(図2)。しかし、ルシフェラーゼ活性のより高いレベルが、CaSki細胞(5,232cps、計数毎秒)またはC33細胞(4,016 cps)よりも、TC1細胞(7,990cps)において観察された。偽ビリオンの非存在下では、57、84、51および41cpsのルシフェラーゼ活性が、それぞれ293FT、TC1、CaSkiおよびC33細胞において観察された。
【0169】
E6およびE7shRNA偽ビリオンによるCaSki細胞の形質導入は、遺伝子サイレンシングの増加と細胞増殖の阻害とを誘導した
細胞における偽ビリオンの遺伝子移入の効率を、緑色蛍光タンパク質をコードするプラスミドを含有する偽ビリオンを用いて調査した。80パーセントのTC1細胞が、フローサイトメトリーにより検出されるように、緑色蛍光タンパク質を発現した(データは示さず)。我々は、E6およびE7 shRNAの効力を、タンパク質発現に干渉するそれらの能力をアッセイすることにより評価した。この目的のために、我々は、まず、E6およびE7(ならびに対照としてのGAPDH)についての全長cDNAを逆転写PCRにより得た。結果は、E7 mRNAが、E7を指向するshRNAの存在下で減少し、Jiang配列を用いて高いレベルの干渉が得られたが、E7−2配列を用いてより少ない減少が観察され、対照shRNAを用いて減少が観察されなかったことを示した(図3A)。同様の結果が、E6 shRNAで処理した細胞においてE6 mRNAの検出について得られた。細胞をE7 shRNAで処理した場合に、E6 mRNAのわずかな減少が観察された。
【0170】
Guら(Cancer Gene Ther 2006年;13巻:1023〜27頁)およびYamatoら(Cancer Gene Ther 2008年;15巻:140〜53頁)により報告されるように、E6は、CaSki細胞において、入手可能な抗体を用いるウェスタンブロッティング分析により検出するには低すぎるレベルで発現されるので、E6 shRNA活性を、p53発現を回復するその能力に基づいてスクリーニングした。我々の結果は、ウェスタンブロッティングにより検出されるp53レベルが、E6−1 shRNAの発現後に24時間にわたって増加し(図3B)、時間とともに減少したことを示した。E7−1、E7−2およびE6−2 shRNAの存在下では、p53発現の増加は、E6−1 shRNAを用いて観察されたものよりも低かった。細胞をLacZ shRNAで処理した場合に、p53発現は検出されなかった。これらの結果は、E6タンパク質のレベルがshRNA処理により低減され、p53は、蓄積されただけでなく、機能的に活性でもあったことを示唆する。
【0171】
E6およびE7発現の阻害が、細胞生存性の低減を誘導できるどうかかを確認するために、5日間の培養後に、540nmでの吸光度を測定する3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド試験を、shRNAをトランスフェクトしたかまたはトランスフェクトしていないCaSkiおよびTC1細胞において行った。我々の知見は、E6およびE7サイレンシングが、細胞生存性の減少を誘導したことを示した(図4)。この低減は、E7 shRNAを用いると、より大きかった(70%細胞増殖阻害)。C33−AなどのHPV陰性子宮頚部細胞に同じshRNAをトランスフェクトした場合に、細胞増殖の阻害は観察されず、このことは、E6およびE7 shRNA細胞による細胞増殖阻害が特異的であることを示した。細胞増殖の低減は、E6−1とE6−2、E7−1とE7−2 shRNAについて同様であった。
【0172】
E6およびE7 shRNA偽ビリオンによるTC1細胞の形質導入は、アポトーシスを誘導しなかった
アポトーシス細胞におけるDNAの熱変性に対する感受性が増加することに基づくアポトーシスアッセイを行って、細胞死がアポトーシスによるものであるかどうかを調査した。このアッセイにおいて、DNAを、ホルムアミドの存在下で加熱することにより変性させ、ssDNAに特異的なモノクローナル抗体F7−26を用いて染色した。フローサイトメトリーにより、E6−1、E6−2、E7−1およびE7−2 shRNAをトランスフェクトしたTC1細胞を用いて、対照shRNAをトランスフェクトした細胞と比較して著しく増加した数のアポトーシス細胞は明らかにならなかった。アポトーシスの存在または非存在をさらに評価するために、カスパーゼ3および7の酵素活性を測定するカスパーゼアッセイも、E6およびE7 shRNA偽ビリオンを形質導入したTC1細胞に対して行った。E6およびE7 shRNAをともに用いて、カスパーゼ活性の増加は観察されなかった。結果は、E6およびE7 shRNAが、TC1細胞増殖の低減を誘導するが、アポトーシス性細胞死の誘導によってではないことを示唆した。
E6およびE7 shRNA偽ビリオンによるIn vitroでのTC1細胞のトランスフェクションは、マウスにおける腫瘍成長の低減を誘導した
E6およびE7 shRNA偽ビリオンの効力は、in vivoで、TC1/マウスモデルを用いても調査した。E6−1およびE7−1 shRNAをコードするHPV偽ビリオン、HPV VLP単独およびE7−1 shRNAをコードするレンチウイルスを用いて、TC1細胞にin vitroで形質導入した。24時間後に、トランスフェクトしていないTC1細胞およびトランスフェクトしたTC1細胞を、C57BL6マウスにs.c.注射した。
【0173】
マウスを21日後に犠牲にし、腫瘍を切開して秤量した。対照マウスにおいて(モックおよびVLP単独)、腫瘍は、1.09〜2.12gの範囲の重量であった(平均、1.64g)。E7−1 shRNAおよびLipofectamineを用いてトランスフェクトしたTC1細胞を用いて、腫瘍重量の低減は観察されなかった(平均、1.61g)。腫瘍の平均重量の42%の低減が、E6−1 HPV偽ビリオンを用いて観察され(P<0.10)、平均サイズの70%〜87%の低減が、それぞれE7−1レンチウイルスおよびE7−1 HPV偽ビリオンを用いて観察された(P<0.05およびP<0.001;図5)。
【0174】
E7 shRNA偽ビリオンによるTC1細胞腫瘍の腫瘍内形質導入は、マウスにおける腫瘍成長の低減を誘導した
E7 shRNAをコードする偽ビリオンのin vivo効力も、TC1細胞腫瘍を有するマウスにおける腫瘍成長を低減するそれらの能力について調査した。E7−1 shRNAは、これらの研究のために、そのin vitro効力に基づいて選択した。E7−1 shRNA偽ビリオンを、2日毎に2週間にわたって腫瘍に直接注射した。1週間後に、腫瘍成長の低減は、対照マウスと比較して、E7−1 shRNAで処置したマウスにおいて観察されなかった(図6A)。腫瘍成長の減少は、次いで、処置の第2週目の間に明確に観察され、第2週目の最後に、対照shRNAで処置したマウスにおいて1.05gの平均腫瘍重量、およびE7−1 shRNA偽ビリオンで処置したマウスにおいて0.49gであった(P=0.045)。
【0175】
(実施例2)HPV31メジャーカプシドタンパク質上の中和立体構造エピトープの同定および機能的意味
【0176】
この研究の主な目的は、HPV31偽ビリオンの抗原構造と中和の機構との特徴決定をすることであった。疑問の1つは、HPV中和抗体を誘導し、ウイルスカプシドとの相互作用による感染に対する保護に寄与するエピトープの正確な位置決定である。
【0177】
立体構造エピトープが、中和抗体生成を担うことが現在ではよく確立されている(Christensenら、Virology 1994年;205巻:329〜35頁;Roseら、J Gen Virol 1994年;75巻:2075〜79頁;Whiteら、J Virol 1998年;72巻:959〜64頁;WhiteらJ Virol 1999年;73巻:4882〜89頁;GiroglouらJ Virol 2001年;75巻:1565〜70頁)。HPVの中和エピトープは立体構造依存性であるので、それらのアミノ酸組成および表面局在化は、完全には特徴決定されていない。
【0178】
これらの研究は、ワクチン設計およびウイルス−細胞相互作用の調査において有用である。さらに、HPVの抗原構造を理解することは、免疫原性が低減されたHPV由来遺伝子療法ベクターを設計するために重要である。このようなベクターを作製するためのある必要条件は、中和免疫応答を誘発するウイルス決定因子をよりよく理解し、中和抗体の生成を担う立体構造エピトープ内の欠失または変異を有する偽ビリオンベクターを設計することである。免疫原性が低減されたこれらの変異ベクターは、ベクターに対する中和抗体を誘導することによる導入遺伝子の効力の劇的な喪失なしで、これらのベクターの再投与を可能にする。
【0179】
材料および方法
HPV31モノクローナル抗体
この研究において用いたHPV31 MAbは、以前に生成および特徴決定された(Fleuryら、Arch Virol 2006年;151巻:1511〜23頁;Fleuryら、Clin Vaccine Immunol 2008年;15巻:172〜75頁)。H31.D24 MAbは、FGループ内で同定された共有直鎖状エピトープ(アミノ酸271〜279)を認識し、H31.F7 MAbは、FGループのN末端部分で同定された立体構造交差中和エピトープを認識する(Fleuryら、Arch Virol 2006年;151巻:1511〜23頁)。その他の13のMAbは、特異的立体構造中和エピトープを認識する。さらに、DEループ上の共通直鎖状エピトープを認識するCamVir−1モノクローナル抗体(CV)(Carpentierら、J Med Virol 2005年;77巻:558〜65頁)を対照として用いた。細菌細胞表面ディスプレイ法を用いて調査したMAbを、粗腹水から、硫酸アンモニウム(最終33%)を用いる塩析により精製し、次いで、リン酸塩緩衝食塩水(PBS)に対して透析した後に、プロテインAG/Sepharose(Pierce;Immunopure IgG精製キット)でのアフィニティクロマトグラフィーを行った。
【0180】
偽ウイルス中和
各モノクローナル抗体の中和能力は、以前に決定された(Fleuryら、Arch Virol 2006年;151巻:1511〜23頁;Fleuryら、Clin Vaccine Immunol 2008年;15巻:172〜5頁)。さらに、我々は、中和が、偽ビリオンの細胞表面結合の前または後のいずれに生じるのかを探索した。試験は、293FT細胞で生成したHPV31偽ビリオンを用いて行い、中和アッセイは、96ウェルプレートに播種し、37℃で24時間インキュベートした、完全ダルベッコ改変イーグル培地(Invitrogen、10%FCS、100IU/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシンを補ったDMEM)中で培養したCos−7細胞を用いて行った。偽ビリオンの細胞表面結合前の中和を測定するアッセイは、MAbと予めプレインキュベートしたHPV31偽ビリオンを細胞(100μL)に37℃で1時間加えることにより行った。偽ビリオンの細胞表面結合後の中和を測定するアッセイは、HPV31偽ビリオンをCos−7細胞に37℃で1時間加えることにより行った。3回洗浄して未結合の偽ビリオンを除去した後に、MAbを100μLのDMEMに加えた。各アッセイについて、上清を37℃で3時間後に除去し、200μL完全DMEMを加えた。37℃でさらに48時間のインキュベーションの後に、トランスフェクトした細胞により発現されるルシフェラーゼを、ホタルルシフェラーゼアッセイキット(Interchim、Montlucon、France)を用いて測定することにより感染性を記録し、ルシフェラーゼ発現を、Multiskanマイクロプレートルミノメータ(Thermo−Fisher Scientific、Courtaboeuf、France)を用いて定量した。ルシフェラーゼ活性が80%を超えて低減された場合に、MAbは中和性であるとみなした。MAbが、偽ビリオンが細胞に結合する前に加えられた場合にのみ偽感染を中和した場合に、細胞への偽ウイルスの結合の阻害を記録した。抗体が、Cos−7細胞への偽ビリオンの添加の前および後に偽ビリオンを中和したならば、MAbは、細胞結合後機構により偽ビリオンを中和するとみなした。
【0181】
組換えL1タンパク質の作製およびVLPの精製
Bac−to−Bacシステム(Invitrogen、Fisher−Scientific、Illkirch、France)を、Spodoptera frugiperla(Sf21)細胞におけるHPV L1タンパク質の発現のために用いた。HPV16、HPV31、HPV16 DC9およびHPV16 DC31(それぞれ9または31アミノ酸のC末端欠失)のL1遺伝子をコードするバキュロウイルスは、以前に作製された(Touzeら、FEMS Microbiol Lett 2000年;189巻:121〜7頁;Touzeら、J Clin Microbiol 1998年;36巻:2046〜51頁)。HPV31 DC9およびHPV31 DC31切断遺伝子を、PCRにより、全長HPV31 L1コドン最適化遺伝子65から、フォワード(GGATCCCACCATGAGCCTGTGGAGACCCAGC、配列番号37)と、それぞれDC9(GGAAGCTTATGTGGTGGTGCTGGCGCTGGGGGC、配列番号38)およびDC31についてのリバースプライマー(GCAAGCTTAGGCCTGCAGCAGGAACTTTCTGCCC、配列番号39)とを用いて増幅した。PCR生成物を、pCR TOPO2.1にTAクローニングによりクローニングした。陽性クローンを配列決定して、不要な変異が存在しないことを確認した。HPV L1遺伝子を、次いで、BamHIおよびHindIIIで予め消化したpFastBac1プラスミドにクローニングした。異なるL1欠失遺伝子をコードする組換えバキュロウイルスは、Bac−to−Bacシステム(Invitrogen)を、製造者の推奨に従って用いて作製した。10%胎児ウシ血清(FCS、Invitrogen)を補ったグレース昆虫培地(Invitrogen、Cergy Pontoise、France)で維持したSf21細胞に、それぞれの組換えバキュロウイルスを感染させ、27℃でインキュベートした。感染の3日後に、細胞を採集し、VLPを以前に記載されたようにして精製した29、40。簡単に述べると、細胞を、Nonidet P40(0.5%)、ペプスタチンAおよびロイペプチン(各1μg/mL、Sigma Aldrich、Saint Quentin Fallavier、France)を含有するPBSに再懸濁し、4℃で30分間放置した。核可溶化液を、次いで遠心分離し、ペレットを、ペプスタチンAおよびロイペプチンを含有する氷冷却PBSに再懸濁し、次いで超音波処理した。試料を、次いで、CsCl勾配に充填し、平衡まで遠心分離した(SW28ローターで22時間、27,000rpm、4℃)。CsCl勾配画分を、屈折率測定により密度について、そして10%ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル(SDS−PAGE)での電気泳動およびクーマシーブルー染色によりL1タンパク質の存在について調査した。陽性の画分をプールし、PBSで希釈し、Beckman SW28ローターでペレットにした(3時間、28,000rpm、4℃)。遠心分離の後に、VLPを0.15mol/L NaClに再懸濁し、最大性能の60%での1回の5秒間のバーストにより超音波処理した。全タンパク質含量を、MicroBCAキット(Pierce、Ozyme、France)を用いて決定した。
【0182】
HPV31 L1 HBc263/264変異体VLPを、293FT細胞において生成した。キメラL1タンパク質をコードするDNAを、2工程PCRプロトコールを用いるコドン最適化HPV31 L1遺伝子の突然変異誘発により得た。オーバーラップPCRを行って、HBcタンパク質のDPASRE配列を、HPV31 L1タンパク質の263/264位に得た。1回目の工程において、1つの断片を、最適化HPV31 L1 DNA配列を鋳型として、そして5’L1−NheI(CCGCTAGCCACCATGAGCCTGTGGAGACCC、配列番号40)および3’L1−DPASRE(CTCTCTGCTGGCGGGGTCGTTGAAGAAGTGCCGCACGAA、配列番号41)をプライマーとして用いて作製した。別の断片を、最適化HPV31 L1 DNA配列を鋳型として、そして3’L1−EcoRI(CGGAATTCTATCACTTCTTGGTTTTCTTCC、配列番号42)および5’L1−DPASRE(GACCCCGCCAGCAGAGAGAGAAGCGGCACCGTGGGCGAG、配列番号43)をプライマーとして用いて増幅した。これらの2つのオーバーラップ断片を、5’L1−NheIおよび3’L1−EcoRIプライマーを用いる2回目のPCR工程においてDNA鋳型として用いた。得られたDNA配列は、HBc78−83コード配列をL1塩基263/264の間に、そしてNheI制限部位を5’、かつEcoRI制限部位を3’に有した。タンパク質発現のために、HPV31 L1 HBc263/264遺伝子をpIRES哺乳類発現ベクター(BDbiosciences、Clontech)にクローニングした。このDNAプラスミド(HPV31 L1 HBc263/264−pIRES)を、伝統的なアルカリ溶解およびフェノール/クロロホルム抽出により調製し、293FT細胞に、Fugene6(Roche Diagnostic、Meylan、France)を製造者の使用説明に従って用いてトランスフェクトするために用いた。細胞に、合計で0.5μgのDNAおよび1μLのFugene6を、培養面積1cmあたりにトランスフェクトした。293FT細胞をトランスフェクションの44時間後に採集し、VLPを前に言及したようにして精製した。
【0183】
VLPにおいて発現される異なるHPV−L1タンパク質の自己集合を、電子顕微鏡観察により調査した。この目的のために、VLP調製物を、炭素被覆グリッドに塗布し、1.5%酢酸ウラニルでネガティブ染色し、50,000倍の公称倍率で、JEOL1010電子顕微鏡を用いて観察した。全ての電子顕微鏡写真は、30,000倍または50,000倍で撮影した。
【0184】
表面プラズモン共鳴によるHPV31 MAbのVLP結合競合の調査
分析は、CM3(カルボキシメチル化デキストラン)センサチップを備えたBiacore1000(Biacore AB、Uppsala、Sweden)を用いて行った。CM3センサチップを、35μLの0.05mol/L 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩および0.2mol/L N−ヒドロキシスクシンイミドを用いて流速5μL/分で処理し、次いで、HPV31 L1 VLP(35μLのPBS緩衝液中に32μg/mL)を、流速5μL/分で共有的にカップリングさせた。残存カルボキシル基を、その後、50μLの1mol/Lエタノールアミン−HCl(pH8.5)により流速10μL/分で遮断した。未結合VLPを、5μLのHCl−グリシン(10mmol/L、pH2.2)を流速10μL/分で注入することにより消去した。流速20μL/分を、室温で行った全ての相互作用分析について用いた。結合したHPV31 L1 VLPによる抗体飽和は、各MAbについて、PBSで1:10に希釈した30μLの腹水の3回の注入により得られた。MAb飽和は、PBSで1:4に希釈した30μLの同じMAbのハイブリドーマ上清の注入により確認した。競合を、次いで、PBSで1:4に希釈した5つの異なるハイブリドーマ上清(各30μL)を継続的に注入することにより確立した。バイオセンサを、次いで、10μLの30mmol/L HClの3回の注入により再生し、別のサイクルの飽和−競合を、同じVLPがカップリングしたフローセルに対して行った。いくつかのその他の再生緩衝液(2mol/L NaCl、10mmol/L NaOHならびに20、25、30および50mmol/L HClを含む)を調査した。選択した緩衝液(30mmol/L HCl)は、結合した抗体を100%除去したが、センサチップからVLPを除去せず、VLP立体構造に影響しないことが示された。なぜなら、立体構造エピトープを指向する抗体は、再生処理前と同様に効果的にVLPとまだ結合していたからである。
【0185】
細菌細胞表面ディスプレイを用いるエピトープマッピング
pFliTrxベクターを用いる細菌細胞表面ディスプレイ法は、ペプチドを拘束するためにチオレドキシンドメイン(TrxA)に挿入された12マーペプチドライブラリーを用いる。このチオレドキシンドメインは、それ自体、メジャー細菌鞭毛タンパク質(FliC)に挿入され、E.coliの表面上に提示される(Luら、Biotechnology(NY)1995年;13巻:366〜72頁;Jamesら、Science 2003年;299巻:1362〜1367頁)。pFliTrxランダムペプチドディスプレイライブラリー(Invitrogen、Cergy Pontoise、France)を、1mLのペプチドライブラリーストック溶液を、100μg/mLアンピシリンを含有する50mLのIMC培地(6g/L NaHPO、3g/L KHPO、0.5g/L NaCl、1g/L NHCl、0.2%カザミノ酸、0.5%グルコース、1mmol/L MgCl)に接種し、次いで25℃で1晩振とう(225〜250rpm)することにより得た。ペプチド発現は、100μg/mLのトリプトファンを、1晩培養物からの1010細菌に、100μg/mLのアンピシリンを含有する50mLのIMC培地中で加え、次いで25℃で6時間振とうすることにより誘導した。
【0186】
抗HPV31抗体に対するライブラリースクリーニングのために、1mL滅菌水中の20μgのMAbで60mmプレート(Nunclon D、Nunc、ATGC、Marne−la−Valle’e、France)を1時間、50rpmでオービタルシェーカー上で穏やかな振動を用いて被覆した。10mLの滅菌水で洗浄した後に、10mLのブロッキング溶液(100μg/mLアンピシリン、1%脱脂粉乳、150mmol/L NaCl、1% a−メチルマンノシドを含有するIMC培地)を加え、振動(50rpm)の下に1時間インキュベートした。ブロッキング溶液をデカントした後に、10mLの細菌細胞培養物に、0.1g粉乳、300μLの5mol/L NaCl、500μLの20% a−メチルマンノシドを加えた(最終濃度:1%脱脂粉乳、150mmol/L NaCl、1% a−メチルマンノシド)。50rpmで1分の穏やかな振動および室温で1時間のインキュベーションの後に、プレートを5回(50rpmで5分)、100μg/mLアンピシリンおよび1% aメチルマンノシドを含有する10mLのIMC培地で洗浄した。結合した細菌細胞を、次いで、プレートを30秒間ボルテックスすることにより洗浄溶液の残存容量中に溶出した。これらを、50mLの培養フラスコに移し、振とうしながら(225〜250rpm)25℃で1晩成長させた。このパニングサイクルをさらに4回繰り返して、5回目のパニングからの1晩培養物を、100μg/mLアンピシリンを含有するRMGプレート(6g/L NaHPO、3g/L KHPO、0.5g/L NaCl、1g/L NHCl、2%カザミノ酸、0.5%グルコース、1mmol/L MgCl、1.5%寒天)上に画線し、30℃で1晩インキュベートした。RMG/アンピシリンプレートからの24〜30コロニーを、それぞれ、100μg/mLアンピシリンを含有する2mL RM培地(6g/L NaHPO、3g/L KHPO、0.5g/L NaCl、1g/L NHCl、2%カザミノ酸、1%グリセロール、1mmol/L MgCl)に接種した。振とうしながら30℃で1晩のインキュベーションの後に、DNAを、伝統的なアルカリ溶解フェノール/クロロホルムDNAミニ調製により抽出した。ヌクレオチド配列分析は、FliTrxフォワード配列プライマーを用いて行った。配列決定は、ABI PRISM 3100 Avant DNAシーケンサー(PerkinElmer、Courtaboeuf、France)で運転した。配列は、Dialign2(Morgensternら、Gioinformatics 1999年;15巻:211〜18頁)を用いて分析した。
【0187】
ELISAによる野生型および変異VLPに対するMAb反応性の検出
マイクロプレートウェル(Maxisorp、Nunc)を、VLPで被覆した。4℃で1晩のインキュベーションおよびPBS−Tween20(0.1%)での2回の洗浄の後に、ウェルを、1%FCSを補ったPBSで、37℃で1時間飽和させた。2重のウェル(2つの試験および1つの対照)を、PBS 5×−Tween(1%)−FCS(10%)で希釈したMAbと37℃で1時間インキュベートした。4回の洗浄の後に、PBS−Tween(1%)−FCS(10%)で1:1,000に希釈したペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウスIg Fc(Sigma Aldrich)をウェルに加え、37℃で1時間インキュベートした。次いで、4回の洗浄の後に、25mmol/Lクエン酸ナトリウムおよび50mmol/L NaHPO中の0.4mg/mLのO−フェニレンジアミンおよび0.03%過酸化水素を加えた。30分後に、反応を、HSO 4Nを用いて停止し、吸光度を490nmで読み取った。データ分析のために、第1抗体の非存在下で得られた光学密度(OD)の値を、試験試料のODの値から減じた。示すデータは、3〜4回の決定の平均である。
【0188】
ヘパリンおよびECMに基づく酵素結合免疫吸着アッセイ
VLPとヘパリンとの間の相互作用を、Giroglouら(J Virol 2001年;75巻:1565〜70頁)によりHPV33 VLPについて記載されるヘパリン結合アッセイに由来するアッセイを用いて試験した。マイクロタイタープレート(Maxisorp、Nunc)を、4℃で1晩、ウェルあたり200ngのヘパリン−BSA(Sigma)またはMatrigelVR(BD Biosciences、Le pont de Claix、France)で被覆した。0.1%Tween20を含有するPBSでの4回の洗浄の後に、非特異的結合部位を、37℃で1時間のPBS+1%FCSとのインキュベーションによりブロックした。洗浄の後に、PBSで希釈した200ng/ウェルのVLPを加えた。37℃で60分間のインキュベーションおよび4回の洗浄の後に、PBS、0.1%Tween20および10%FCSで1:1000に希釈した抗HPV31 VLP MAbを加え、37℃で60分間インキュベートした。37℃で1時間のインキュベーションおよび4回の洗浄の後に、結合した抗体を、セイヨウワサビペルオキシダーゼと共有的に連結したマウス抗IgG抗体を用いて検出した。37℃で1時間のインキュベーションおよび4回の洗浄の後に、O−フェニレンジアミンおよびHを含有する100μLの基質溶液を加えた。反応を、30分後に、100μLの2mol/L HSOを加えることにより停止し、吸光度を492nmで、自動化プレートリーダーを用いて読み取った。VLPを含まない対照ウェルの吸光度を、試験ウェルの値から減じた。同時に、第2のプレートを、ヘパリン−BSAまたはMatrigelVRで被覆した。インキュベーションおよび洗浄の後に、PBS、0.1%Tween20および10%FCSで1:1000に希釈したMAbと37℃で1時間プレインキュベートした200ng/ウェルのVLPを加えた。結合した抗体を、前に記載したようにセイヨウワサビペルオキシダーゼと共有的に連結したマウス抗IgG抗体を用いて検出した。ヘパリンまたはMatrigelとのVLP結合の阻害を、ヘパリンとVLPとの相互作用の前にMAbを加えた場合と後に加えた場合とで観察されるODの低減として算出した。結果は、ODの低減のパーセンテージとして表す。
HSとのVLPの結合およびECMアッセイ
マイクロタイタープレート(Maxisorp、Nunc)を、前に記載したようにしてヘパリン−BSAで被覆した。ブロッキング工程の後に、PBSで希釈したVLPを加えた。37℃で60分のインキュベーションおよび洗浄の後に、PBS、0.1%Tween20および10%FCSで1:5000に希釈したCanVir1 MAbを加え、37℃で60分インキュベートした。結合した抗体を、4回の洗浄の後に、セイヨウワサビペルオキシダーゼと共有的に連結したマウス抗IgG抗体を用いて検出し、次いで、試験を、ヘパリンとMAbとの間の相互作用についての試験において、前に言及したようにして行った。結果は、ODの値として表す。
【0189】
HPV31 L1タンパク質の相同性モデリングによるHPV31エピトープの視覚化
HPV31 L1タンパク質についての配列(GenbankID、P17388)を、Swiss−Modelモデリングツール(swissmodel.expasy.org)に入力した。配列類似性に基づく鋳型検索により、HPV16 L1(PDBコード1DZLおよび2R5H)、HPV−35 L1(2R5J)、HPV−11 L1(2R5K)およびHPV−18 L1(2R5I)が、可能性のある3D鋳型として同定された。HPV31 L1は、HPV16およびHPV35 L1配列とより類似するので、我々は、対応する3D鋳型(1DZL、2R5Hおよび2R5J)を選択して、HPV31のL1構造をモデル化した。HPV31 L1のモデルを、ANAOLEA(swissmodel.expasy.org/anolea/)を用いて評価し、エピトープの位置のさらなる構造分析のために正しいことが見出された。HPV31のL1ペンタマーを、SwissPDBViewerで、HPV31 L1モデルおよびHPV16 VLP(1DZL)の非結晶学的対称(変換行列)についての情報を用いて再構築した(Chenら、Mol Cell 2000年;5巻:557〜67頁)。HPV31 L1 VLPについてのペンタマーの原子座標をPDBフォーマットで保存し、巨大分子構造についての分子画像視覚化ツールであるPYMOLプログラム(pymol.org)を用いて表示した。
【0190】
結果
表面プラズモン共鳴を用いるHPV31 L1 MAbのエピトープマッピング
エピトープマッピングを、HPV31 L1タンパク質に対して産生された15のMAbを用いて行った。これらのMAb間の全ての競合を試験した。例えば[図7(a)]、エピトープ競合は、カップリングしたHPV31 L1 VLPをH31.F16 MAb(粗腹水)で飽和することにより確立され、MAb飽和は、同じMAb(ハイブリドーマ上清)の注入により確認された。H31.F16 MAbを加えた後に生じた低い共鳴単位(RU)(−52RU)は、飽和が達成されたことを証明した。飽和の後に、飽和MAbの解離によるRUの減少があり、このことが、負のRUの理由であった。MAb結合競合が、次いで、H31.B18、H31.D7、H31.E16、H31.E17およびH31.F7 MAb(ハイブリドーマ上清)を継続的に注入することにより確立された。H31.E16およびH31.F7 MAbは、HPV31 L1 VLPと結合せず(それぞれ−1および−13RU)、このことは、これらの2つのMAbにより認識されるエピトープが、H31.F16 MAbにより認識されるエピトープと類似しているかまたは非常に近いことを示唆した。これとは対照的に、VLPとの著しい結合が、H31.B18、H31.D7およびH31.E17 MAbを用いて観察され(それぞれ171、523および69RU)、このことは、これらの抗体が、H31.F16 MAbが認識するものとは異なるエピトープを認識することを示唆した。バイオセンサを、次いで、30mmol/L HClの3回の注入により再生した。この方法を、その他の競合アッセイの全てについて用いた。
【0191】
調査した15のMAbのそれぞれが、少なくとも他の3つと競合したが、全ての他のMAbと競合したMAbはなかった。エピトープマップは、これらの結果を用いて確立し[図7(b)]、H31.F7 MAbにより認識されるエピトープは、このマップで中心の位置であった。このMAbにより認識されるエピトープは、L1 FGループ上で既に同定されていた(Carpentierら、J Med Virol 2005年;77巻:558〜65頁;Fleuryら、Arch Virol 2006年;1511〜23頁)。その他のMAbとの競合がより低いMAb(H31.B18、H31.B1およびH31.H9)は、エピトープマップの周縁に位置した。
【0192】
HPV31/HBc VLPとのHPV31 MAbの結合
MAbの反応性を、HPV31 L1/HBc263/264変異体およびHPV31 L1 wtVLPを用いて分析して、中和エピトープのいくつかが、FGループ上にあるかどうかを同定した。以前に生成したHPV31 L1 VLPに加えて、我々は、HPV31 L1変異体を、B型肝炎コア(HBc)モチーフDPASREを263〜264位に挿入することにより構築した。全ての型特異的MAbとのVLPの結合は、263/264位でのHBcモチーフの挿入により影響を受けた。271位〜279位にある直鎖エピトープ(SVPTDLYIK、配列番号44)を認識する非中和H31.D24 MAbの反応性は、挿入により影響を受けなかったことが注目される。FGループの外側で同定された直鎖状エピトープを認識するCamVir−1 MAbの結合も、導入した変異により影響を受けなかった。交差中和MAb H31.F7は、HPV16およびHPV31 wt VLPの両方と同様に反応したが、263/264位でのHBcモチーフの挿入により影響を受けた。
【0193】
細菌表面ディスプレイを用いる5つのMAbのエピトープマッピング
ペプチドライブラリーのディスプレイのために細菌を用いるエピトープマッピングは、モノクローナルおよびポリクローナルの両方の抗体のマッピングのための新しいアプローチを提供する(Rockbergら、Nat Methods 2008年;5巻:1039〜45頁)。あるこのようなシステムであるpFliTrx細菌ディスプレイシステムを用いて、L1エピトープを同定した。pFliTrxベクターを用いる細菌細胞表面ディスプレイは、ペプチドを拘束するためにチオレドキシンドメインに挿入された12マーのペプチドライブラリーを用いて、立体構造エピトープのディスプレイを可能にする。このチオレドキシンドメインは、それ自体、E.coliのメジャー細菌鞭毛タンパク質に挿入され、細菌の表面上にディスプレイされる。腹水から精製した高力価のMAbで、抗HPV31抗体に対するライブラリースクリーニングのためにNuclon Dプレートを被覆し、複数回のin vitro選択を、プレートと結合したMAbに対して行って、MAbと相互作用するペプチドをディスプレイする細菌を選択した。各回について、細菌ライブラリーを、ポジディブ選択のために細胞培養皿に加えた。未結合の細菌を洗い流し、結合した細菌を回収した。5回のあとに、単一コロニーを選択し、配列決定のためにDNAを単離した。配列を、まず、Dialign2プログラムを用いて分析した。高いスコアで一致するペプチドを選択し、次いで、Dialign2を用いて、全長HPV31 L1タンパク質配列と整列させた。全ての選択したペプチドと一致するHPV31 L1配列を保持した。我々は、まず、このシステムを、HPV31 L1のFGループ内の271位〜279位の以前に同定された直鎖状エピトープ(SVPTDLYIK、配列番号44)を認識するH31.D24 MAbとともに用いた。細菌ディスプレイ選択の後に、24の陽性クローンを配列決定して分析した。H31.D24 MAbを用いて選択された24のペプチドのうち6つが、それぞれのF2の他のものと一致し、HPV31 L1タンパク質と一致し(図8を参照されたい)、同定されたコンセンサス配列は、275位〜279位(DLIYK、配列番号46)であった。
【0194】
細菌ディスプレイを、よって、HPV16、18および58と交差反応性であり、HPV16型および31型について弱く中和性であるMAb H31.F7により認識される中和立体構造エピトープを調査するために用いた。24の陽性クローンを、細菌ディスプレイにより、H31.F7 MAbを用いて選択した。選択した24のペプチドのうち5つは互いに一致し、HPV31 L1タンパク質配列259〜266(RHFFNRSG、配列番号47)と一致した。立体構造エピトープを認識した3つの型特異的中和MAb(H31.F16、H31.H12およびH31.B1)も調査した。各MAbについて陽性クローンを選択した。H31.F16 MAbを用いて選択した5つのペプチド、H31.H12 MAbを用いて選択した5つのペプチドおよびH31.B1 MAbを用いて選択した6つのペプチドは互いに一致し、H31.F16 MAbについてのHPV31 L1タンパク質配列SGTVGESVP(265〜273)(配列番号48)、H31.H12 MAbについてのRSGTVG配列(264〜269)(配列番号49)およびH31.B1 MAbについてのRSGTVGESV配列(264〜272)(配列番号50)と一致した。
【0195】
偽ビリオンの結合前および結合後のMAb中和
HPV16およびHPV33に特異的な抗体は、標的細胞への結合の前および後に中和することが示されている(Selinkaら、J Virol 2003年;77巻:12961〜67頁;Dayら、J Virol 2007年;81巻:8784〜92頁)。抗HPV31 MAbによるウイルス中和の機構を、中和アッセイにより決定し、MAbを、F3偽ビリオンをCOS−7細胞に加える前[図9(a)]または細胞結合の1時間後[図9(b)]のいずれかに加えた。6つのMAb[H31.B1、H31.C24、H31.G5、H31.E16、H31.F7およびH31.D7、図9(b)]は、細胞結合を阻害することによりHPV31偽ビリオンを中和した。なぜなら、これらは、ウイルス結合の前に中和するが、細胞に偽ウイルスが結合した後には中和しないからである[図9(b)]。その他の8つのMAbは、細胞結合後機構によりHPV31偽ビリオンを中和した。なぜなら、これらは、細胞結合の前および後に偽ビリオンを中和したからである。表面プラズモン共鳴分析により得られたエピトープマップ[図7(c)]は、HPV31偽ビリオンを細胞結合の阻害により中和した6つのMAbのうち5つのクラスタを示唆したことが注目される。
【0196】
HSおよびECMとのVLPの結合:HPV31MAbおよびL1 C末端欠失の効果
HPV31 MAbによるヘパリンとのVLP結合の阻害をELISAにより調査し、ここでは、ELISAプレートを被覆するヘパリンとVLPが結合する前にMAbをVLPに加えた。結果は、直鎖状エピトープを認識する非中和H31.D24 MAbが、ヘパリンとのVLPの結合を強く阻害したことを示した。なぜなら、14のMAbのうち6つだけが立体構造F4中和エピトープを認識したからである[図10(a)]。表面プラズモン共鳴分析により得られたエピトープマップは、ヘパリンとのVLPの結合を阻害したMAbのうちのいくつかのクラスタを示した[図7(c)]。細胞への結合の前に偽ビリオンを中和したMAbと、HSの結合を阻害したものとの間に明確な相関関係はなかった。しかし、3つの中和抗体(H31.G5、H31.E16およびH31.D7)は、両方の能力を示した(図10を参照されたい)。ECMタンパク質とのVLPの結合の阻害を、ELISAにより、MatrigelVRをECMの代理として用いて調査した。結果[図10(b)]は、H31.C24(37%阻害)以外の全ての中和抗体によるECMタンパク質とのVLPの結合の阻害(>50%)を示した。非中和抗体H31.D24は、ECMタンパク質とのVLPの結合を阻害しなかった。
【0197】
HPSGとのVLPの相互作用をさらに調査するために、我々は、4つのC末端欠失変異体を用いて、L1タンパク質とのヘパリンの結合を分析した。それぞれ9および31アミノ酸のC末端欠失を有するHPV16 D9およびHPV16 D31変異体は既に生成されており44、HPV31D9およびHPV31D31 L1変異体は、この研究の目的のために同様に生成した。HPV16欠失変異体について以前に観察されたように44、これらのHPV31欠失変異体は、VLPに自己集合し(図7を参照されたい)、これらの4つのC末端欠失VLPは、wtVLPと同様の様式でヘパリンと結合した。しかし、ヘパリンとの結合は、これらのVLPを変性させた場合に喪失し、このことにより、ヘパリンがVLPの立体構造モチーフと結合し、このモチーフが、L1タンパク質のC末端部分に存在しないことが確認される(図11を参照されたい)。HPVによる標的細胞の感染は、HSPG、ECMおよび未知の2次受容体が関与する多段階プロセスであるので、我々は、ECM HPV VLP結合の中和に対するHPV31 MAbの影響を調査した。
【0198】
H31.D24により認識されるエピトープは直鎖状エピトープであり、3つの中和MAb(H31.B1、H31.F16およびH31.H12)により認識されるエピトープは立体構造エピトープであるが、H31.B1 MAbは、部分的に交差中和性および交差反応性である。
【0199】
交差反応性であり部分的に交差中和性のMAbであるH31.F7 MAbにより認識されるエピトープは、259位〜268位(RHFFNRSGTV、配列番号45)でHPV31 L1タンパク質のFGループのN末端部分で同定され[図12、3Dカプソマー構造は、SwissPDBViewerで、HPV31 L1モデルおよびHPV16 VLPのAQ6非結晶学的対称についての情報を用いて再構築した[PDBコード:1DZL、(Chenら、Mol Cell 2000年;5巻:557〜67頁)]]、HPV31モデルによると、カプソマーの表面からはF6ほぼ近づくことができない。このことは、FGループの初期領域がHPV型同士の同一の構造を証明したこと、およびFGループのこの領域が型同士の交差反応性を誘導できるが、抗原性に乏しく、かつ/または近づきにくいに違いないことを示唆したL1タンパク質の構造分析についてのBishopら64の仮説と一致する。
【0200】
HPV16およびHPV33について、種々のL1タンパク質表面露出ループが、1つのループでのみ同定されるエピトープおよびいくつかのループが結合部位に寄与するエピトープに対して中和抗体を誘導することに寄与することが示され15、46、47、L1の非隣接領域が、MAbにより認識される中和エピトープに寄与し得ることが示唆されている。我々の知見は、HPV31中和抗体がFGループを主に指向し、FGループが中和抗体との結合に寄与するだけであることに賛同した。L1超可変ループが互いに近傍にあるという事実は、Rothら47により観察されたようにその他のループにおける変異または挿入がFG立体構造エピトープに影響するという可能性を除外しなかった。我々は、DLYIK(配列番号44)配列(275〜279)を認識した交差反応性H31.D24 MAbが、ヘパリンと結合するHPV31の能力を劇的に低減したことを観察し、よって、HS結合におけるリシン278の役割を確認した。しかし、この抗体は、HPV31偽ビリオンに対して中和効果を有さず41、65、FGループのN末端部分に位置する配列と結合することが公知の立体構造エピトープを認識する3つのその他の中和抗体は、ヘパリンとの結合に対して全く効果を有さないか、または限定された効果を有した。H16.V5およびH16.E70 MAbは、細胞表面との相互作用を遮断しないことが示されている。しかし、これらの中和抗体は、HaCaT細胞により生成されるECMとのウイルスの結合を阻害し、細胞結合後機構により偽ビリオンを中和する43。このことと一致して、我々は、3つの型特異的中和抗体が、VLPとの結合についてHSと競合せず、これらのうち1つ(H31.B1)だけが、細胞とのVLPの結合の阻害により中和されたことを観察した。しかし、これらの抗体は全て、ECMとの結合について競合し、このことは、非中和性H31.D24 MAbと対照的である。これらの結果は、これらの抗体が、HS35とのHPV16 VLPの結合に関与するリシンの立体構造塩基性クラスタの付近のエピトープを認識することを示唆した。クラスタの最も重要なリシンは、H31.D24 MAbにより認識されるエピトープ内に存在することが注目される。さらに、MAbによるHPV31偽ビリオンの結合前および結合後の中和の調査により、HPV31中和抗体の6つが、ウイルス粒子の細胞表面結合を妨げることにより作用し、その他の8つの中和MAbが、それらの内部移行を妨げることにより偽ビリオンに干渉したことが明らかになった。我々の知見は、一連のMAb全体について、中和とHSと結合するMAbの能力との間に相関関係がないことを示す。Lopezら66は、最近、自然感染において検出された抗HPV抗体が、HSとのHPV16の結合を阻害することを報告し、彼らは、最高の中和力価を有するものが、HSとの結合を阻害したものであったことを観察した。結論として、我々の知見は、HPV31中和MAbが、HPV31 L1タンパク質のFGループ上にある立体構造エピトープを認識し、これらが、標的細胞への結合を遮断することまたは細胞結合後の中和のいずれかにより作用することを示した。細菌表面ディスプレイによる3つの型特異的中和エピトープの精密な決定により、FGループの中心部分上のそれらの位置が確認され、FGループの比較的保存されたN末端部分上の交差反応性および部分的に交差反応性の立体構造エピトープが同定された。FGループの溶媒露出アミノ酸残基は、Pro273〜Leu287により規定される軸に沿って形成される溝の両側に分布していた[図12]。我々の知見は、溝の右側部分が、H31.D24 MAbにより認識される直鎖状非中和性エピトープを含有することを示した。これは、ヘパラン硫酸結合のための活発な部分でもあり、よって、H31.D24およびHSがこの領域との結合についてなぜ競合するかを説明する。同定された立体構造中和エピトープは全て、FGループ溝の左側にあった(図12を参照されたい)。これらのエピトープを指向する抗体がHSと強く競合しなかったという事実は、BPV L1タンパク質を指向するMAbについて以前に記載されたような67、MAb結合の形態の差により説明されると考えられる。しかし、その他のいくつかのHPV31中和MAbは、HS結合について競合し、このことは、これらのMAbが、それらのそれぞれのエピトープと結合する場合に異なる傾きを有し、よってHS結合により大きいかもしくはより小さい程度で干渉するか、またはこれらが溝の両側からのアミノ酸残基を指向するかのいずれかであることを示唆した。H31.D24 MAbはVLPの先端と結合したが、このことは、非中和エピトープがHPV粒子の表面上にも存在するとの仮説を支持する。得られた結果は、HPV31のFG超可変ループが、中和エピトープに密集することを示し、HPV31 MAbが、FGループの中心部分上にある、オーバーラップするが別個のエピトープと結合することを示唆し、このことは、FGループがHPV VLPの表面上に露出されることと一致し、よって、中和抗体が、カプソマーの主に先端および頂上にあることが確認される。これらの結果は、ECMへのウイルスの結合の遮断が、重要な中和機構であるが、HSへのウイルスの結合の遮断はそうではないことも支持し、これらのことを確認する。
【0201】
(実施例3)HPV16/31 L1変異体の作製
パピローマウイルスは、小型非エンベロープDNAウイルスであり、それらの正20面体カプシドは、L1およびL2タンパク質で構築され、このカプシドは、約8kbpの閉鎖環状2本鎖DNAを包む。50〜60nmの直径のウイルスカプシドは、L1メジャータンパク質の72ペンタマーと、L2マイナーカプシドタンパク質の12〜72コピーとを含有する。ウイルス様粒子(VLP)に自己集合したL1タンパク質での免疫は、動物モデルにおいて示されたように(Breitburdら、J Virol 1995年;69巻:3959〜63頁;Suzichら、PNAS 1995年;92巻:11553〜57頁;Christensenら、J Virol 1996年;70巻:960〜65頁)、高いレベルの中和抗体の生成を誘導し、型特異的で長期にわたる保護を与える。抗体応答は、VLP外表面上に存在するウイルスカプシドL1タンパク質の外側のループで見出されるエピトープに対して典型的に作製される(Christensenら、Virology 2001年;291巻:324〜34頁;Sadeyenら、Virology 2003年;309巻:32〜40頁;Orozcoら、J Virol 2005年;79巻:9503〜14頁;Yaegashiら、J Virol 1991年;65巻:1578〜83頁)。中和カプシドエピトープは、HPVに対する抗体媒介免疫保護のための重要な決定因子であり、直鎖状および立体構造の両方のエピトープが、HPV L1 VLPおよび偽ビリオンの表面上で同定されている(Yaegashiら、J Virol 1991年;65巻:1578〜83頁;Volpersら、J Gen Virol 1995年;76巻:2661〜67頁;Heinoら、J Gen Virol 1995年;76巻:1141〜53頁;Christensenら、Virology 1996年;224巻:477〜86頁)。
【0202】
HPV16 L1のFGループおよびHPV31 L1のEFループ内のL1残基は、中和抗体の結合に関与することが報告されている(Sadeyenら、Virology 2003年;309巻:32〜40頁;Whiteら、J Virol 1999年;73巻:4882〜89頁;Combitaら、J Virol 2002年;76巻:6480〜86頁;Carterら、J Virol 2003年;77巻:11625〜32頁)。
【0203】
この研究の目的は、キメラHPV粒子の免疫原性を調査することであった。我々は、HPV16のメジャーエピトープを持つL1カプシドタンパク質FG外側ループにおけるアミノ酸(aa256〜294)を、HPV31のL1 FGループの対応するアミノ酸(aa257〜295)で置換して、3つのHPV31様置換(HPV−VLP X)または7つのHPV31様置換(HPV−VLP Y)だけをFGループ内に有する、HPV16 L1の全体的な野生型配列を維持したキメラL1 HPVナノ粒子を作製した(図13)。
【0204】
キメラL1タンパク質を、組換えバキュロウイルスに感染したSf21昆虫細胞から生成して精製した。Sf21昆虫細胞は、キメラL1タンパク質を良好な収率で生成した(2.5〜3mg/リットル)。L1 HPV XおよびL1 HPV Yキメラタンパク質は、HPV16野生型L1と同様に、VLPに集合した。HPV−VLP Y に作製した7つの交換に加えて変異を持つキメラ構築物は、VLPに集合しなかった。
【0205】
キメラVLPの感染性を試験するために、遺伝物質を細胞に移入するそれらの能力についてアッセイした。HPV−VLP XおよびHPV−VLP Yならびに対照HPV16野生型VLPを解離させ、ルシフェラーゼレポータープラスミドを加え、再集合によりVLPにパッケージングさせた。COS−7細胞(アフリカミドリザル腎臓細胞、ATCC CRL−1651)を、VLPとin vitroで接触させ、インキュベートした。インキュベーションの後に、培養培地を除去し、細胞を洗浄し、ルシフェラーゼ溶解緩衝液中で溶解した。図14に示すように、キメラHPV−VLP XおよびYは、野生型HPV−16 VLPの感染能力を保持する。
【0206】
キメラVLPの免疫原性を試験するために、マウス(1群あたり10匹)をHPV16、HPV31および2つのキメラHPV XおよびYで免疫した。図15に示すように、HPV−VLPキメラの免疫反応性は、HPV16とHPV31との間の交差反応性と同程度の大きさであり、これは、最小限である(実際の免疫応答よりも少なくとも2log小さい)。HPV16で免疫したマウスにおいて、HPV16特異的抗体力価は、ELISAにより測定して、約2000GMTであり、これは、予測されたとおりである。驚くべきことに、HPV−VLP XおよびYを感染させたマウスにおいて、L1 HPV−VLP XおよびYが、HPV16野生型アミノ酸配列のほぼ全体を維持するという事実にもかかわらず、HPV16特異的抗体が実質的に見出されない。つまり、これらのキメラは、HPV16特異的抗体を産生しない。予測されたように、HPV31感染マウスにおいて、HPV16特異的抗体を実質的に見出すことはできない。さらにより驚くべき知見は、HPV−VLP XおよびY感染マウスにおいて、このキメラのFGループ、特にL1 HPV YのFGループ(野生型HPV31のFGループとは1アミノ酸だけが異なる(HPV31 291T−N290 HPV16))はHPV31のものに類似するにもかかわらず、HPV31特異的抗体が実質的に見出されないことであった。予測されたように、HPV16感染マウスにおいて、HPV31特異的抗体を実質的に見出すことはできないが、堅実な応答がHPV31について観察される(1900GMT付近)。興味深いことに、XおよびY特異的抗体もHPV16またはHPV31免疫マウスにおいて検出できず、このことは、実質的に交差反応性がないことを示唆する。中程度の交差反応性が、XおよびYについて、XまたはY免疫マウスにおいて検出できる(それぞれXおよびYについて538対857GMT)。
【0207】
データは、由来する種と実質的に交差反応性がない変異を有する偽ビリオンベクターを設計することが可能であることを示す。この大きさで低減された免疫原性は、HPV感染個体におけるベクターに対する中和抗体の誘導により導入遺伝子効力を劇的に喪失することなくこれらのベクターの再投与を可能にする。
【0208】
(実施例4)L2遺伝子をパッケージングするHPV偽ビリオンでの免疫による、異種HPVに対する中和抗体の誘導
ウイルス様粒子(VLP)に自己集合したL1での免疫は、高い力価の中和抗体を誘導し、動物において、相同な実験的感染に対する保護を与える[Breitburdら、J Virol 1995年;69巻(6号):3959〜63頁;Suzichら、PNAS 1995年;92巻(25号):11553〜7頁]。保護は、立体構造エピトープを指向する中和抗体によって媒介されることも示されている。これらの結果は、生殖器HPV型に対するワクチンの工業的な開発を導いている。前臨床研究は、L1 VLPにより誘導される中和抗体が、優勢に型特異的であることを示している[Rodenら、J Virol 1994年;68巻(11号):7570〜4頁;Rodenら、J Virol 1996年;70巻(9号):5875〜83頁]。しかし、低いレベルの交差中和が、HPV6と11、およびHPV16と31との間[Christensenら、Virology 1994年;205巻(1号):329〜35頁;Whiteら、J Virol 1998年;72巻(2号):959〜64頁;Giroglouら、Vaccine 2001年;19巻(13〜14号):1783〜93頁;Combitaら、J Virol 2002年;76巻(13号):6480〜6頁]で、そして高いレベルがHPV18と45との間[McLaughlin−Drubinら、Virology 2003年;312巻(1号):1〜7頁]で報告されている。臨床試験は、免疫応答が、HPV16およびHPV18感染ならびに関連する病変に対する保護と関連することを示している[Aultら、Lancet 2007年;369巻(9876号):1861〜8頁;Paavonenら、Lancet 2007年;369巻(9580号):2161〜70頁]。L1 VLPを含有する現在のHPVワクチンは、強く、主に型特異的な中和抗体応答の作製を促進する。HPV16および18ワクチンを用いる臨床試験も、HPVの型に対する交差保護が、密接に関係する型に限定されることを明らかにしている。HPV31に対する保護は、両方のワクチンについて、そしてHPV45感染に対する保護は、1つのワクチンについてだけ明確に確立された[Paavonenら、Lancet 2007年;369巻(9580号):2161〜70頁;Brownら、J Infect Dis 2009年;199巻(7号):926〜35頁]。認可されたHPVワクチンは、15の高リスクHPV型のうち2つだけを標的にするので、その他の高リスクHPV型の感染を防ぐさらなる方策が必要とされる。
【0209】
L2での免疫は、パピローマウイルス感染の動物モデルにおいて、L1 VLPよりも広い保護を媒介できる交差中和抗体を誘導し[Rodenら、J Virol 1994年;68巻(11号):7570〜4頁;Christensenら、Virology 1991年;181巻(2号):572〜9頁;Yinら、Virology 1992年;187巻(2号):612〜9頁;Chandrachudら、Virology 1995年;211巻(1号):204〜8頁;Gaukrogerら、J Gen Virol 1996年;77巻(7号):1577〜83頁;Campoら、Virology 1997年;234巻(2号):261〜6頁;Rodenら、Virology 2000年;270巻(2号):254〜7頁;Embersら、J Virol 2002年;76巻(19号):9798〜805頁]、前臨床および臨床治験[Gambhiraら、Cancer Res 2006年;66巻(23号):11120〜4頁;Alphsら、PNAS 2008年;105巻(15号):5850〜5頁;Karanamら、Vaccine 2009年;27巻(7号):1040〜9]により、L2ワクチンが、広いスペクトルの交差中和抗体を誘導することが確認されているので、L2タンパク質は、候補の予防ワクチンとして出現している。しかし、L2タンパク質およびL2ペプチドは、L1 VLPよりも免疫原性が小さく、L2タンパク質をL1 VLPに組み込むことは、L1の免疫優性により抗L2応答を増加しない[Rodenら、Virology 2000年;270巻(2号):254〜7頁]。このことは、このようなL2に基づくワクチンが効果的であるならば、新しいワクチン方策が調査されなければならないことを示唆する。
【0210】
この研究の目的は、免疫系へのL2タンパク質の曝露を増加することにより、広いスペクトルのHPVワクチンを作製する可能性について調査することであった。
【0211】
材料および方法
抗体
CamVir−1モノクローナル抗体(BD Biosciences、Le Pont de Claix、France)は、HPV−16 L1タンパク質のアミノ酸203〜209の間にマッピングされた直鎖状エピトープと結合する[Fleuryら、Arch Virol 2006年;151巻(8号):1511〜23頁]。H16.V5 MAbは、HPV16 L1タンパク質の立体構造中和エピトープを指向する[Christensenら、Virology 1996年;223巻(1号):174〜84頁]。ウサギ抗HPV16 L2免疫血清は、Richard Rodenから親切にも提供された。StrepTagII抗体(HRPコンジュゲート)を用いて、HPV VLP上のStepTagIIペプチド(Novagen、VWR、Fontenay sous Bois、France)の存在を検出した。
【0212】
株化細胞
COS−7細胞(アフリカミドリザル腎臓細胞、ATCC CRL−1651)を、10%熱不活化胎児ウシ血清(FCS)、100IU/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンならびに1mmol/Lピルビン酸ナトリウムを補ったダルベッコ改変イーグル培地(Invitrogen、Illkirch、France)で成長させた。293FT株化細胞(Invitrogen)は、SV40 TAgとpCMVPORT6AT.neoプラスミドからのネオマイシン耐性遺伝子とを安定的に発現する293株化細胞の即成長型バリアントである。293FT細胞を、上記のようなダルベッコ改変イーグル培地に1%非必須アミノ酸および500μg/ml G418を加えたもので成長させた。株化細胞は、37℃で5%COの湿潤環境において成長させた。
【0213】
昆虫細胞でのHPV18、HPV31およびHPV58 VLPの生成
HPV58 L1/L2 VLP、HPV31 L1/L2 VLPおよびHPV18 L1/L2 VLPを、以前に記載されたようにして[Touzeら、J Clin Microbiol. 1998年;36巻(7号):2046〜51頁;Combitaら、FEMS Microbiol Lett 2001年;204巻(1号):183〜8頁]、L1およびL2遺伝子の両方をコードする組換えバキュロウイルスに感染したSf21昆虫細胞から生成して精製した。
【0214】
L2ストレプタクチン融合タンパク質(L2SA)の生成および精製
上流(BamHIおよびSalI)と下流(HindIII)の制限部位を含む開始コドンを有さないストレプタクチン(SA)配列[Vossら、Protein Eng 1997年;10巻(8号):975〜82頁]を、Geneart(Regensburg、Germany)により、Spodoptera frugiperdaでの発現のために適合されたコドン使用を用いて合成した。SA配列を、pFastBacDual発現ベクター(Invitrogen)のSalI部位とHindIII部位との間にクローニングして、pFastBacDual SAプラスミドを得た。HPV16 L2 ORFを、次いで、SA ORFの5’端に融合させた。この目的のために、HPV16 L2ΔNLS ORF(アミノ酸12〜442)を、PCRにより、野生型L2遺伝子のHomo sapiensコドン適合バージョン(FN297862)を含有するプラスミドから、HPV16 L2 FおよびHPV16 L2ΔRを用いて増幅させた。フォワードプライマーは、BamHI部位と開始コドンの上流にコザック配列とを導入するように設計し、リバースプライマーは、SalI制限部位を含有した。PCR生成物を、次いで、TAクローニングによりpCR2.1ベクター(Invitrogen)にクローニングした。不要なPCRにより誘導される突然変異誘発がないことを、次いで、配列決定により確認した。pCR2.1−16 L2ΔNLSおよびpFastBacDual SAプラスミドはともに、BamHIおよびSalIでの制限に供し、L2遺伝子をストレプタクチン遺伝子に融合させて、pFastBacDual−16 L2ΔNLS(L2SA)を作製した。
【0215】
L2SAをコードする組換えバキュロウイルスは、Bac−to−Bacシステム(Invitrogen)を、製造者の推奨に従って用いて作製した。Sf21昆虫細胞を27℃で、ペニシリン、ストレプトマイシンおよびアンホテリシンB(Invitrogen)を補ったSF900II培地で成長させた。細胞に、10のm.o.i.で感染させ、4日間成長させた。細胞をこすり落とし、300×gで遠心分離し、次いで、0.5%Nonidet P40および抗プロテアーゼカクテル(Roche、Meylan、France)を含有するPBS1×に再懸濁し、氷上で30分間インキュベートした。可溶化液を4℃で10分間、12,000×gで遠心分離し、上清を細胞質画分とした。核画分であるペレットは、超音波処理に供した(3回のバースト、15秒、Vibracell、Fischer Scientific、France)。L2SAタンパク質の発現を、ウェスタンブロッティングにより分析した。この目的のために、タンパク質を12.5% SDS PAGEにより分離し、ニトロセルロースメンブレン(Protran BA83、Schleicher and Schuell、Mantes la Ville、France)に移した。メンブレンを1晩4℃で、5%脱脂粉乳を含有するTNT(15mmol/L Tris、140mmol/L NaCl、0.05% Tween20)中で飽和させ、次いで、TNT−5%乳で3回洗浄した。メンブレンを、室温で1時間、TNT−5%乳で1/1000に希釈したウサギポリクローナル抗L2とインキュベートし、3回洗浄し、アルカリホスファターゼコンジュゲートヤギ抗マウスIgG Fc(Sigma Aldrich)(TNT−5%乳で1/2,500)を加えた。室温で1時間のインキュベーションおよびTNT−5%乳での3回の洗浄とTNTでの2回の洗浄の後に、イムノブロットを、BCIP/NBT液体基質システム(Sigma−Aldrich、Saint Quentin Fallavier、France)を用いて顕出させた。L2SAタンパク質を、製造者の使用説明(Pierce、Ozyme、Montigny le Bretonneux、France)に従って固定化イミノビオチンでのアフィニティーにより精製した。
【0216】
L1L2SA VLPの生成
L1 16−StepTagII遺伝子を、以前に記載されたように[Sadeyenら、Virology 2003年;309巻(1号):32〜40頁]、StepTagIIペプチド(STII、WSHPQFEK、配列番号12)[Schmidtら、Nat Protoc 2007年;2巻(6号):1528〜35頁]を野生型HPV16 L1カプシド遺伝子の140位〜141位に挿入することを許容するプライマーを用いる2回のPCR工程の後に構築した。1回目のPCR工程において、For L116 STII/リバースSTIIおよびフォワードSTII/rev L116 STIIを、鋳型としてのヒト化コドン使用を示すHPV16 L1遺伝子とともに用いた。このようにして得られた2つのオーバーラップ断片を、2回目のPCR工程において、For L116 STII/rev L116 STIIプライマーを用いて融合させ、L1 16 StrepTagII配列(L1STII)を作製した。最終的なPCR生成物を上記のようにしてクローニングし、配列決定し、pFastBacDualプラスミドのBamHIとHindIIIとの間に最終的にクローニングして、組換えバキュロウイルスを作製した。
【0217】
VLPは、感染昆虫細胞から、CsCl勾配上の超遠心分離により精製した。L1STII VLPと結合するL2SAタンパク質を、L1STII VLPをL2SA融合タンパク質と相互作用緩衝液(100mmol/L TrisHCl pH8、1M Nacl、0.25% TritonX100)中で混合することにより得た。得られたキメラVLP(L1L2SA VLP)を分析するために、VLPを、SW−60ローター(Beckman)での超遠心分離(60,000rpm、1時間)によりペレットにし、次いで、上記のようなウェスタンブロッティングによりL2およびStrepタグの存在に従って分析した。
【0218】
HPV31 L2ペプチド(13〜88)がDEループ内に挿入されたHPV31 VLPの生成
HPV31 L2タンパク質の交差中和エピトープ(アミノ酸13〜88)を、L1タンパク質に挿入するために選択した[Pastranaら、Virology 2005年;337巻(2号):365〜72頁;Gambhiraら、J Virol 2007年;81巻(21号):11585〜92頁;Richardsら、PNAS USA 2006年;103巻(5号):1522〜7頁]。140位〜141位の制限部位XhoIおよびSmaIを含有するHPV31 L1遺伝子の配列は、2回のPCR工程により構築して[Fleuryら、Clin Vaccine Immunol 2008年;15巻(1号):172〜5頁]、HPV31 L2ペプチド配列13〜88(L213−88)を、pIRES31L1L2hを用いて挿入した。1回目のPCR工程において、HPV L1 31の5’および3’部分を、フォワード−L1h31/リバース−L1およびリバース−L1h31/フォワード−L1をプライマーとして用いて増幅した。これらの2つの断片を鋳型として、フォワード−L1h31/リバースL1h31をプライマーとして用いる2回目のPCRにおいて用いた。このPCR生成物を、次いで、pCR TOPO 2.1にクローニングし、配列決定し、予めBamHIおよびHindIIIにより消化したpFastBac1プラスミドにサブクローニングした。HPV31 L2遺伝子の断片13〜88をコードするDNAを、pIRES31L1L2hとL213−88フォワードおよびリバースプライマーとから増幅し、上記のようにしてクローニングした。pCR2.1TOPO/L213−88およびpFastBac1/L1はともにXhoI/SmaIにより消化して、HPV L2ペプチドをコードする配列を挿入した。上記のようにして、L1−L213−88タンパク質をコードする組換えバキュロウイルスを作製し、昆虫細胞に感染させた。
【0219】
表5.用いたオリゴヌクレオチドの配列
【0220】
【表5−1】

【0221】
【表5−2】

HPV58およびHPV31偽ビリオンの生成
HPV31および58偽ビリオンを、コドン改変HPVカプシド遺伝子とともに細胞系を用いて得た[Buckiら、Methods Mol Med 2005年;119巻:445〜62頁]。簡単に述べると、HPV58 L1およびL2遺伝子を、Homo sapiensにおいて高く発現される遺伝子において見出される最も頻繁に用いられるコドンを含有するように設計した(それぞれFN178626およびFN178627)、L1およびL2遺伝子を、哺乳類バイシストロン性発現ベクターpIRES(BDBiosciences、Clontech)にクローニングした。L1遺伝子を、CMV IEプロモーターの下流のMCS AのNheIとEcoRI制限部位との間にクローニングした。L2遺伝子を、その後、pIRES−L1のMCS BのXbaIとNotI制限部位との間にクローニングした。ルシフェラーゼをコードするDNAプラスミド(pGL3 luc、Promega、Charbonnieres−les−Bains、France)または偽ビリオンの生成に用いたpIRES L2ΔNLSは、伝統的なフェノール/クロロホルムDNA調製により調製した。後者のプラスミドは、HPV31 L2のアミノ酸12〜442を、XbaIとNotI制限部位との間にコードするDNA配列を含有する。この配列は、Homo sapiensコドン適合HPV31全長L2遺伝子を含有するプラスミドからPCR増幅した[Fleuryら、Clin Vaccine Immunol 2008年;15巻(1号):172〜5頁]。293FT細胞における偽ビリオンの作製のために、細胞に0.5μgのDNA(0.25μg pGL3−LucまたはpCMV−GFPまたはpIRES−L2プラスミド、0.25μg L1L2プラスミド)と、1μl Fugene6(Roche)とを、培養面積1cmあたりにトランスフェクトした。細胞を、トランスフェクションの2日後に採集し、偽ビリオンを、以前に記載されたようにして精製し[Fleuryら、Clin Vaccine Immunol 2008年;15巻(1号):172〜5頁]、使用前に−80℃で貯蔵した。偽ビリオンの量は、CamVir−1抗体を用いるウェスタンブロッティングにより、既知の濃度の相同な型のVLPと比較することにより決定した。
HPV16および18偽ビリオンの生成
HPV16および18偽ビリオンを、以前に発表された解体−再集合法[Touzeら、Nucleic Acids Res 1998年;26巻(5号):1317〜23頁]にいくらかの改変を加えること[Bousarghinら、Mol Cancer Ther 2009年;8巻(2号):357〜65頁]により生成した。L1/L2 VLP(100μg)を、20mmol/L DTTおよび1mmol/L EGTAを含有する50mmol/L Tris−HCl緩衝液(pH7.5)中、室温で30分間インキュベートした。この段階で、pGL3 luc(10μg)を、破壊されたVLPに加えた。調製物を、次いで、漸増濃度のCaCl(5mmol/Lの最終濃度まで)で、10nM ZnClの存在下に希釈した。偽ビリオンを、次いで、PBS1×に対して1晩透析し、使用前に4℃で貯蔵した。
【0222】
免疫プロトコール
6週齢メスBALB/cマウス(CERJ Janvier、Le Genest St Isle、France)を、異なるワクチン調製物により筋肉内で免疫した。群1のマウスは食塩水を受け、群2〜5のマウスは、それぞれ、10μgのHPV16 L2−SAタンパク質(L2SA)、L1STII−L2SA(L1L2SA VLP)、水酸化アルミニウムとともにまたは水酸化アルミニウムなしのHPV16 L1L2(L1L2 VLP)を受けた。群6および7のマウスは、それぞれ1または10μgのpIRES−HPV31 L2ΔNLSプラスミド(DNA L2)を受けた。群8〜10のマウスは、それぞれHPV31 L1、HPV31 L1−31 L213−88 VLP(L1/L2(13−88)VLP)、HPV31 L1L2 VLP(31 L1L2 VLP)を受けた。群11のマウスは、HEV ORF2108−660発現プラスミド(HEV PsV)を含有する10μgのHPV31偽ビリオンを受けた。群12および13のマウスは、それぞれGFP発現プラスミドを含有するHPV58偽ビリオン(GFP PsV)、およびHPV31L2ΔNLSプラスミドをパッケージングしたHPV58偽ビリオン(L2 PsV)を受けた。L1タンパク質の量は、異なるL1L2 VLPと偽ビリオンとの間で、ウェスタンブロットにより調整した。マウスに、第0日、第7日および第21日に免疫した。最後の注射の2週間後に、血清試料を回収し、−20℃で貯蔵した。全ての動物の処置は、承認されたプロトコールに従って、実験動物の正しい使用およびケアについての推奨に従って行い、実験は、地域の動物倫理委員会により承認された(CREEA Centre Limousin)。
【0223】
ELISAによる抗HPV血清力価の決定
200ナノグラムのVLPを、96ウェルプレート(Maxisorp、Nunc、ATGC、Marne−la−Vallee、France)のウェルの半分に分配し、4℃で1晩インキュベートした。PBS−Tween(0.1%)での2回の洗浄の後に、ウェルを、1% FCSを補ったPBSで、37℃で1時間飽和した。2重のウェル(1つの試験および1つの対照)を、希釈緩衝液(PBS5×、1% Tween、10% FCS)中でのマウス血清の2倍希釈(1:25から開始)と、45℃で1時間インキュベートした。4回の洗浄の後に、PBS−Tween(1%)−FCS(10%)で1:1,000に希釈したペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウスIgG(Fc特異的)(Sigma Aldrich)をウェルに加え、45℃で1時間インキュベートした。4回の洗浄の後に、25mmol/Lクエン酸ナトリウムおよび50mmol/L NaHPO中の0.4mg/ml o−フェニレンジアミンおよび0.03%過酸化水素を加えた。30分後に、反応を、HSO 4Nを用いて停止し、光学密度(OD)を492nmで読み取った。データ分析のために、L2の非存在下で得られたODの値を、試験抗原のODの値から減じた。試験ウェルと対照ウェルとのODの差が0.2より大きい場合に、結果を陽性とみなした。個別の力価は、0.2より大きいODの差を与える最後の希釈度の逆数を表した。個別のマウスについての値は、2重の平均であった。幾何平均力価(GMT)を、各群について算出した。検出可能な抗体力価(<25)を有さない動物には、GMTの算出のために1の力価を指定した。抗L2抗体の検出のために、精製L2SAタンパク質をVLPの代わりにNuncプレートの各ウェルに加えたことが異なる上記と同じELISAを行った。
ELISAによるL1、L2およびStrepタグモチーフの検出
キメラVLPのL1抗原性およびL2またはStrepタグモチーフのVLP表面上での存在を、ELISAにより分析した。マイクロタイタープレートウェルを、4℃で1晩、200ngのVLPで被覆した。VLP表面上でのStrepTagIIモチーフおよびL2タンパク質の存在の調査のためにそれぞれ抗StrepTagIIモノクローナル抗体またはポリクローナル抗L2抗体を、またはHPV16およびHPV31 L1タンパク質の立体構造エピトープの存在を調査するためにそれぞれH16.V5およびH31.F16モノクローナル抗体を用いて、ELISAを上記のようにして行った。
HPV16、18、31および58偽ビリオン中和アッセイ
中和アッセイを、pGL3−lucプラスミドを含有する偽ビリオンによるCOS−7細胞の偽感染の阻害により行った。COS−7細胞(104/ウェル)を、96ウェルプレート(TPP、ATGC)に播種した。37℃で24時間のインキュベーションの後に、細胞を2回洗浄し、その後、偽ビリオン/希釈血清混合物を加えた。偽ビリオンの量は、0.2RLUの相対ルシフェラーゼ活性を得るように調整し(Luminoskan Ascent、Thermo scientific、Courtaboeuf、France)(HPV16について1:500、HPV18について1:50、HPV31について1:800およびHPV58について1:10,000)、50μlの希釈偽ビリオンを、1:25から1:51,200まで不完全DMEM中で2倍希釈により希釈した50μlのマウス血清と混合した。37℃で1時間のインキュベーションの後に、混合物をウェルに加えた。37℃で3時間の後に、100μlの不完全DMEMを加えた。
【0224】
37℃で48時間のインキュベーションの後に、ルシフェラーゼ遺伝子発現を測定した(ホタルルシフェラーゼ1ステップアッセイキット、Fluoprobes、Interchim、Montlucon、France)。結果は、ルシフェラーゼ活性の阻害のパーセンテージとして表した[Richardsら、PNAS USA 2006年;103巻(5号):1522〜7頁]。示すデータは、2重で行った2〜3回の決定の平均である。中和力価は、ルシフェラーゼ活性の少なくとも50%の低減を誘導したマウス血清の最高希釈度の逆数として定義した。幾何平均力価を、各群について算出した。検出可能な中和抗体を有さない動物には、GMTの算出のために1の力価を指定した。HPV16中和抗体は、群10、12および13においてのみ調査した。
【0225】
統計分析
個別の抗体力価および幾何平均力価を比較して、ELISAおよび中和応答を評価した。群の結果(群あたり10匹の動物)は、スチューデントのt検定によりXLStatソフトウェア(Addinsoft、Paris、France)を用いて比較した。
【0226】
結果
HPV31 L2およびHPV16 L2キメラ粒子ならびにL2をコードするHPV58 偽ビリオンの生成
我々は、2つのキメラL1−L2粒子を生成して、広いスペクトルのHPV型に対して保護するL2ワクチンの可能性について調査した。カプシドの外側にL2を施すために、最初は、HPV16 L1改変VLPタンパク質と、ストレプトアビジンの工学的に操作されたバージョンであるストレプタクチンと融合したHPV16 L2タンパク質との間の相互作用に基づいた。このことを達成するために、ビオチン結合ループを模倣する配列であるStrepTagIIペプチド(WSHPQFEK、配列番号12)を、L1タンパク質の140/141位の間にDEループ中で挿入して、ビオチンがL1中和エピトープとカップリングする危険性を有するビオチンとL1 VLPとの化学カップリングを回避した。組換えバキュロウイルスを用いてSf−21昆虫細胞で発現させ、CsCl勾配上で精製した場合に、L1STII組換えタンパク質は、野生型L1タンパク質と同じ外観および同様の収率でウイルス様粒子に自己集合した(図16)。スライドは、酢酸ウラニルでネガティブ染色し、50000倍の倍率で走査型電子顕微鏡により観察した(バー=200nm)。
【0227】
HPV31 L2タンパク質(aa13〜88)を含有する第2のキメラL1/L2タンパク質を、HPV31 L1タンパク質のDEループ内に挿入した。組換えバキュロウイルスを用いて昆虫細胞で発現させた場合に、L1L2(13−88)組換えタンパク質は、良好な形状のVLPの生成を許容しなかったが、タンパク質および/またはカプソマーの凝集物を主にもたらした(図16)。
【0228】
これらの2つのキメラVLPのL1抗原性を、ELISAにより、立体構造エピトープおよび直鎖状エピトープを指向する抗L1 MAbを用いて調査した(図17)。結果は、キメラHPV16 L1STII VLP上のH16.V5により認識される立体構造L1エピトープは影響されなかったことを示した。しかし、HPV31 L1 VLPを用いて観察された場合と比較して、HPV31 L1−L213−88 VLPと結合するH31.F16 MAbの明確な低減が観察された。VLP表面上のStrepTagIIまたはL2ペプチド(13〜88)の存在も、ELISAにより、StrepTagII配列またはポリクローナル抗L2抗体をそれぞれ指向するMAbを用いて調査した。得られた結果(図17)は、StrepTagIIおよびL2配列が、キメラVLPの表面上に存在したことを示した。
【0229】
さらに、5μgのVLPを、1/1の質量比率(1のL2SAタンパク質/1のL1タンパク質)に相当する10μgのL2SA融合タンパク質と混合することにより、L2SAタンパク質と結合するL1STII VLPの能力を決定した。L1STII VLPとのL2SAの結合は、複合したVLPの超遠心分離と、その後のウェスタンブロッティングによるL2SAタンパク質の検出とにより分析した。超遠心分離ペレット中のL2SAおよびL1STII VLPの検出(図18)は、L2SAタンパク質が、VLPと効果的に結合したことを示した。結合は、L2SAを野生型HPV16 VLPと混合した場合には観察されなかった。L1L2SA VLP中のL2タンパク質の存在は、ELISAによっても証明された(図17)。HPV−31 L2ΔNLS遺伝子をコードするプラスミドをパッケージングしたHPV58偽ビリオンを、293FT細胞において生成した。L2遺伝子を形質導入するこれらの能力を、COS−7細胞の感染により調査した。L2タンパク質発現のウェスタンブロット分析は、L2が形質導入の2日後に検出されたことを示した(図18)。COS−7細胞で検出されたL2が、入力した偽ビリオンの存在による可能性を除外するために、COS−7細胞に、GFP遺伝子をパッケージングした同様の偽ビリオンを形質導入した。L2の存在は、これらの条件下では証明されなかった(図18)。
VLPおよび偽ビリオンで免疫したマウスにおける抗HPV16−L2免疫応答
抗HPV16 L2抗体は、非免疫マウス(群1)において検出されなかった。L2SAタンパク質を受けたマウス(群2)において、348の抗L2のGMTが観察された(表6)。抗L2抗体レベルの増加は、HPV16 L1L2SA VLPおよびHPV16 L1L2 VLPで免疫されたマウスにおいて観察され(群3および4)、それぞれ1,160および1,055のGMTであった(p=0.035およびp=0.05)。アジュバントとして水酸化アルミニウムをHPV16 L1L2 VLPに加えること(群5)により、相同抗L2抗体のレベルが、有意でない様式でさらに増加した(p=0.247)。
【0230】
抗L2は、HPV31 L1 VLPで免疫したマウス(群8)では検出されなかったが、L1L213−88 VLPで免疫した全てのマウス(群9)では730のGMTで、そしてLIL2 VLPで免疫したマウス(群10)においてはより高いレベルの1,100のGMTで検出された(p=0.189)。抗L2抗体は、対照偽ビリオンで免疫したマウス(群11および12)と同様のレベルで、855および1,212のGMTで検出された(p=0.459)。これらの対照偽ビリオンとの比較により、抗L2 GMT(2,600)は、L2をコードする偽ビリオンで免疫したマウスにおいてより高かった(それぞれp=0.001およびp=0.101)。
【0231】
表6:
【0232】
【表6】

HPV18、HPV31およびHPV58に対する中和抗体の誘導
HPV16 L2SAタンパク質またはHPV16L1L2 VLPで免疫したマウス(群3〜5)は、異種HPV型(HPV18、HPV31およびHPV58)に対する中和抗体をいずれも発生しなかった(表6)。HPV31に対する低いレベルの中和抗体(GMT85)が、L1およびL2タンパク質の自己集合により得られたHPV16 VLPに水酸化アルミニウムを加えた場合(群5)にだけ検出された。
【0233】
HPV31 L1またはHPV31 L1L2 VLPおよびHPV31 HEV PsVで免疫したマウス(群8、10および11)において、相同HPV31中和抗体が検出され、それぞれ2,800、3,400および5,198のGMTであった(図19)。低い力価のHPV58中和抗体は、HPV31 L1L2 VLP(群10)およびHEV ORF2無関係遺伝子を含有するHPV31偽ビリオン(群11)を受けたマウスでのみ観察された。HPV18に対する中和抗体は、HPV31ワクチン調製物を受けた群8〜11のマウスのいずれにおいても検出されなかった。
【0234】
高いレベルの相同中和抗体が、HPV58偽ビリオン(群12および13)で免疫したマウスにおいて検出され、それぞれ4,650および5,382のGMTであった。低いレベルのHPV31に対する中和抗体(GMT=50)が、GFPをコードする偽ビリオンで免疫したマウスにおいて検出され、抗HPV31中和抗体の劇的な増加(733のGMTで)が、HPV31 L2タンパク質をコードするHPV58偽ビリオンで免疫したマウスにおいて観察された。HPV18に対する中和抗体は、HPV58 L2 PsVで免疫したマウスにおいてだけ、400のGMTで検出された。群10、12および13からのマウスも、HPV16中和抗体について調査した。HPV31 L1L2 VLPで免疫したマウスは、低いレベルのHPV16中和抗体を発生し、40のGMTであった。HPV16中和抗体は、GFPをコードするHPV58 PsVで免疫したマウス(群12)では検出されなかったが、L2をコードするHPV58 PsVで免疫したマウス(群13)では検出され、60のGMTであった。
【0235】
特許、特許出願ならびに科学出版物および参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物を被験体に送達する方法であって、該方法が、
被験体に、改変されたヒトパピローマウイルス(HPV)様粒子を投与する工程であって
、該粒子が、免疫原性が変更された表面タンパク質を含むHPV様粒子にパッケージングされた1つ以上の異種化合物を含む工程、を含む方法。
【請求項2】
前記表面タンパク質が、改変されたFGループ配列を有する改変されたL1タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記L1タンパク質が、HPV16、HPV31、HPV33、HPV34、HPV35、HPV52、HPV58、HPV73またはHPV91血清型の配列を有し、ここで、前記L1タンパク質の前記FGループが、ヒト被験体中での、該タンパク質の免疫原性を変える1つ以上のアミノ酸変化を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上のアミノ酸変化が、配列番号11のX位〜X17位の1つ以上に存在する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
16位のアミノ酸が、変更されない、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
配列番号11のX位、X位、X位、X位、X位、X11位およびX14位の1つ以上が改変される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
配列番号11のX位、X位、X位、X位、X位、X11位およびX14位の2つ〜3つが改変される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
配列番号11のX位、X位、X位、X位、X位、X11位およびX14位の4つ〜7つが改変される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
配列番号11のX位、X位、X位、X位、X位、X11位およびX14位の3つが改変される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
配列番号11のX位、X11位およびX14位が改変される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
配列番号11のX位、X位、X位、X位、X位、X11位およびX14位の全てが改変される、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記L1タンパク質が、配列番号11のX位、X11位およびX14位にそれぞれT、TおよびNへの変化を有し、配列番号11の残りの位置においてはHPV16血清型に特徴的なアミノ酸を有するHPV16血清型の配列を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記L1タンパク質が、配列番号11のX位、X位、X位、X位、X位、X11位およびX14位にそれぞれF、S、T、S、T、TおよびNへの変化を有し、配列番号11の残りの位置においてはHPV16血清型に特徴的なアミノ酸を有するHPV16血清型の配列を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上の化合物が、治療薬または医療用薬剤である、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記治療薬が、核酸または小分子である、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記治療薬が、siRNA、shRNA、またはsiRNAもしくはshRNAをコードする核酸である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記siRNAまたはshRNAが、HPV−E6および/またはHPV−E7を標的にする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記小分子が、抗ウイルス剤である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記小分子が、抗がん剤である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記小分子が、ゲムシタビンである、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記HPV様粒子が、さらなる薬剤とともに投与される、請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記さらなる薬剤が、抗ウイルス剤である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記さらなる薬剤が、抗がん剤である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記さらなる薬剤が、ゲムシタビンである、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
医療用化合物が、撮像剤または造影剤である、請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記HPV様粒子が、前記表面タンパク質の前記血清型に対する中和免疫応答を有さない被験体に投与される、請求項1〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記被験体が、前記表面タンパク質の前記血清型に対して免疫されていない、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記被験体が、前記HPV様粒子における前記表面タンパク質の前記血清型と同じ血清型を有するHPVに感染していない、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記被験体の前記免疫応答が、投与のためのHPV様粒子を選択する前に評価される、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記HPV様粒子が、粘膜組織に投与される、請求項1〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記HPV様粒子が、表皮部に投与される、請求項1〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記粘膜組織が、子宮頚部組織である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記HPV様粒子が、局所投与される、請求項1〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記HPV様粒子が、静脈内投与される、請求項1〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記HPV様粒子が、ウイルスに感染した組織に投与される、請求項1〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記ウイルスが、HPVである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ウイルスが、ヘルペスウイルスである、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記ウイルスが、HSVである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記化合物が、抗ウイルス化合物である、請求項35から38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記化合物が、siRNA、hnRNA、またはウイルスRNAを標的にするアンチセンスRNAである、請求項35から38のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
前記化合物が、siRNA、hnRNA、またはウイルスRNAを標的にするアンチセンスRNAを発現するプラスミドである、請求項35から38のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記HPV様粒子が、HPV感染と関連する癌を有する被験体に投与される、請求項1〜41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記HPV様粒子が、HPV感染と関連するウイルス感染を有する被験体に投与される、請求項1〜42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記ウイルス感染が、HSV感染である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記HPV様粒子が、HPV感染と関連する細菌感染または寄生生物感染を有する被験体に投与される、請求項1〜44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
免疫系不全を有する被験体における皮膚状態を治療する方法であって、
該方法が、請求項1〜45のいずれかに記載の組成物を、免疫系不全を有する被験体の皮膚感染部位に投与する工程であって、
該組成物が、該皮膚感染を治療するための薬剤を含む工程、を含む方法。
【請求項47】
前記免疫系不全が、HIV感染と関連する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記皮膚感染が、ウイルス、細菌、微生物または寄生生物による感染である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
がんを有する被験体に、請求項1〜48のいずれかに記載の局所用組成物を投与する工程であって、該組成物が、該がんの成長または発達を低減するために効果的な化合物を含み、該組成物が、投与部位で非特異的免疫応答を促進するための組成物とともに投与される工程、を含む方法。
【請求項50】
がんを有する被験体に、請求項1〜49のいずれかに記載の局所用組成物を投与する工程であって、該組成物が、該がんの成長または発達を低減するために効果的な化合物を含み、異なる血清型を有する2つ以上の異なるHPV表面タンパク質が、投与部位で免疫応答を促進するために投与される工程、を含む方法。
【請求項51】
化合物を被験体に投与する方法であって、該方法が、
化合物を含む第1HPV様粒子を被験体に第1期間投与する工程と、
前記化合物を含む第2HPV様粒子を前記被験体に第2期間投与する工程と
を含み、ここで、該第1および第2HPV様粒子が、異なる血清型を有する、方法。
【請求項52】
前記第1および第2HPV様粒子の前記血清型が、独立して、天然に存在する血清型であるかまたは変更された血清型である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記第1および/または第2HPV様粒子の前記血清型が、キメラ血清型である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
被験体におけるHPV関連子宮頚がんを治療する方法であって、
HPV関連子宮頚がんを有する被験体に、該HPV関連子宮頚がんを治療するために十分な量で1つ以上の治療薬を含むHPV様粒子を投与する工程
を含む方法。
【請求項55】
前記HPV様粒子が、局所投与される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記HPV様粒子が、子宮頚部上皮などの上皮にもしくはその近接部に局所的に、または子宮頚部もしくは肛門の上皮癌などの上皮病変にもしくはその近接部に局所的に投与される、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
改変されたヒトパピローマウイルス(HPV)様粒子を含む、化合物を被験体に送達するための組成物であって、ここで、該粒子が、免疫原性が変更された表面タンパク質を含むHPV様粒子にパッケージングされた1つ以上の異種化合物を含む、組成物。
【請求項58】
カプシドタンパク質が、L1タンパク質である、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
前記L1タンパク質が、改変されたFGループ配列を有する、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
前記L1タンパク質が、HPV16、HPV31、HPV33、HPV34、HPV35、HPV52、HPV58、HPV73またはHPV91血清型の配列を有し、ここで、前記L1タンパク質の前記FGループが、ヒト被験体中での、該タンパク質の免疫原性を変える1つ以上のアミノ酸変化を有する、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
前記1つ以上のアミノ酸変化が、配列番号11のX位〜X17位の1つ以上に存在する、請求項60に記載の組成物。
【請求項62】
16位のアミノ酸が、変更されない、請求項59から61のいずれかに記載の組成物。
【請求項63】
配列番号11のX位、X位、X位、X位、X位、X11位およびX14位の1つ以上が改変される、請求項59から61のいずれかに記載の組成物。
【請求項64】
配列番号11のX位、X位、X位、X位、X位、X11位およびX14位の2つ〜3つが改変される、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
配列番号11のX位、X位、X位、X位、X位、X11位およびX14位の4つ〜7つが改変される、請求項63に記載の組成物。
【請求項66】
配列番号11のX位、X位、X位、X位、X位、X11位およびX14位の3つが改変される、請求項63に記載の組成物。
【請求項67】
配列番号11のX位、X11位およびX14位が改変される、請求項63に記載の組成物。
【請求項68】
配列番号11のX位、X位、X位、X位、X位、X11位およびX14位の全てが改変される、請求項63に記載の組成物。
【請求項69】
前記L1タンパク質が、配列番号11のX位、X11位およびX14位にそれぞれT、TおよびNへの変化を有し、配列番号11の残りの位置においてはHPV16血清型に特徴的なアミノ酸を有するHPV16血清型の配列を有する、請求項67に記載の組成物。
【請求項70】
前記L1タンパク質が、配列番号11のX位、X位、X位、X位、X位、X11位およびX14位にそれぞれF、S、T、S、T、TおよびNへの変化を有し、配列番号11の残りの位置においてはHPV16血清型に特徴的なアミノ酸を有するHPV16血清型の配列を有する、請求項68に記載の組成物。
【請求項71】
前記1つ以上の化合物が、治療薬または医療用薬剤である、請求項57に記載の組成物。
【請求項72】
前記治療薬が、核酸または小分子である、請求項71に記載の組成物。
【請求項73】
前記治療薬が、siRNA、shRNA、またはsiRNAもしくはshRNAをコードする核酸である、請求項72に記載の組成物。
【請求項74】
前記siRNAまたはshRNAが、HPV−E6および/またはHPV−E7を標的にする、請求項73に記載の組成物。
【請求項75】
前記小分子が、抗ウイルス剤である、請求項72に記載の組成物。
【請求項76】
前記小分子が、抗がん剤である、請求項75に記載の組成物。
【請求項77】
前記小分子が、ゲムシタビンである、請求項75に記載の組成物。
【請求項78】
前記HPV様粒子が、L1タンパク質またはL1タンパク質およびL2タンパク質を含む、請求項57に記載の組成物。
【請求項79】
前記表面タンパク質が、キメラであり、L1ループに融合されたL2配列を含む、請求項57に記載の組成物。
【請求項80】
L2配列が、L1粒子の表面に結合している、請求項57に記載の組成物。
【請求項81】
前記L2配列が、HPV31 L2タンパク質の残基13〜88である、請求項79または80に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2012−523455(P2012−523455A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505858(P2012−505858)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/004299
【国際公開番号】WO2010/120266
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(509302364)インサーム(インスティテュート ナショナル デ ラ セント エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル) (3)
【出願人】(511247323)
【Fターム(参考)】