説明

HTLV−I関連脊髄症の予防・治療剤およびアポトーシス促進剤

【課題】HTLV−Iに感染した細胞を標的とし、HTLV−I関連脊髄症の根本的な予防および治療に有用なHTLV−I関連脊髄症の予防または治療剤、ならびにHTLV−I感染細胞のアポトーシス促進剤を提供するものである。
【解決手段】本発明のHTLV−I関連脊髄症の予防または治療剤は、アリシンまたはその類縁体を有効成分として含有する。本発明のHTLV−I感染細胞のアポトーシス促進剤は、アリシンまたはその類縁体を有効成分として含有し、HTLV−Iに感染した細胞に対して選択的にアポトーシスを誘引させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HTLV−I関連脊髄症の予防または治療剤、および、HTLV−Iに感染した細胞のアポトーシス促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
HTLV−I関連脊髄症(以下、「HAM」とも呼ぶ)は、末梢血HTLV−I感染CD4陽性T細胞が脊髄の中に浸潤することによって惹起される慢性脊髄炎の病理像を呈する難治性神経疾患である。この疾患の原因となるウイルスは、HTLV−Iというレトロウイルスであり、垂直感染(特に、授乳感染)、血液感染、性感染などによって感染する。HAMの症状は、胸髄の側索を走行する錐体路が侵されることによる、歩行障害、排尿障害などである。
【0003】
従来、HAMの治療法としては、プレドニゾロンやインターフェロン−αの投与、血液浄化方法などが利用されてきた(非特許文献1〜3参照)。しかしながら、これらの治療法はいずれも免疫修飾療法を中心とした対症療法であり、本疾患の原因であるHTLV−I感染細胞の排除を行うものではない。それゆえ、これらの治療法は、HAMの根本的な治療方法ではなく、一時的には効果を発揮しても、病状の進行を止めることはできない。
【0004】
HAMの患者は、カリブ海諸国、西アフリカ、東南アジアなどに多く、日本では特に九州地区に多い。現在、その患者数は日本で1500人程度、世界で5000人程度と考えられているが、HTLV−Iのキャリアは、世界で1000万人〜2000万人といわれている。そのため、HAMに対する根治療法の開発が望まれている。
【非特許文献1】Osame M. et al., Chronic progressive myelopathy associated with elevated antibodies to human T-lymphotropic virus type I and adult T-cell leukemia-like cells. Ann Neurol 1987;21:117-122.
【非特許文献2】Shibayama K. et al., Interferon-alpha treatment in HTLV-I-associated myelopathy: Studies of clinical and immunological aspects. J Neurol Sci 1991;106:186-192.
【非特許文献3】Matsuo H. et al., Plasmapheresis in treatment of human T-lymphotropic virus type-I associated myelopathy. Lancet 1988;ii:1109-1113.
【非特許文献4】西浦義博ら、臨床神経学、日本神経学会発行、2005;45:1041
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の課題に基づいてなされたものであり、HTLV−Iに感染した細胞を標的とし、HTLV−I関連脊髄症の根本的な予防および治療に有用なHTLV−I関連脊髄症の予防または治療剤(以下、予防・治療剤ともいう)、ならびにHTLV−I感染細胞のアポトーシス促進剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した。
先ず、本願発明者らは、ニンニク(Allium sativam)から抽出されるアリシン(diallyl−thiosulfinate)に着目した。アリシンは、下記の式(3)で表される有機硫黄化合物であるが、抗腫瘍効果、抗細菌・抗真菌効果、抗血栓効果などの多彩な生理学的作用を有することが知られている。
【0007】
【化1】

【0008】
本願発明者らは、比較的低濃度のアリシンまたはその類縁体処理によって、HAM患者由来HTLV−I感染T細胞株が傷害を受けることを確認し、かかる知見に基づき、さらに検討を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、以下の通りである。
〔1〕アリシンまたはその類縁体を有効成分として含有する、HTLV−I関連脊髄症の予防または治療剤。
〔2〕アリシン類縁体が、その構造中に下記一般式(1)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、Rは、置換されていてもよい飽和または不飽和の鎖状炭化水素基)で表される基を有するアリシン以外の化合物である、上記〔1〕に記載のHTLV−I関連脊髄症の予防または治療剤。
〔3〕アリシン類縁体が、アリシンを原料として製造される物質である、上記〔1〕に記載のHTLV−I関連脊髄症の予防または治療剤。
〔4〕アリシン類縁体が、下記一般式(2)
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、Rは、置換されていてもよい飽和または不飽和の鎖状炭化水素基)で表されるチアミン化合物、または、その製薬上許容されうる塩である、上記〔1〕に記載のHTLV−I関連脊髄症の予防または治療剤。
〔5〕アリシン類縁体がプロスルチアミンである、上記〔1〕に記載のHTLV−I関連脊髄症の予防または治療剤。
〔6〕アリシンまたはその類縁体を有効成分として含有する、HTLV−I感染細胞のアポトーシス促進剤。
〔7〕アリシン類縁体が、その構造中に下記一般式(1)
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、Rは、置換されていてもよい飽和または不飽和の鎖状炭化水素基)で表される基を有するアリシン以外の化合物である、上記〔6〕に記載のHTLV−I感染細胞のアポトーシス促進剤。
〔8〕アリシン類縁体が、アリシンを原料として製造される物質である、上記〔6〕に記載のHTLV−I感染細胞のアポトーシス促進剤。
〔9〕アリシン類縁体が、下記一般式(2)
【0016】
【化5】

【0017】
(式中、Rは、置換されていてもよい飽和または不飽和の鎖状炭化水素基)で表されるチアミン化合物、または、その製薬上許容されうる塩である、上記〔6〕に記載のHTLV−I感染細胞のアポトーシス促進剤。
〔10〕アリシン類縁体がプロスルチアミンである、上記〔6〕に記載のHTLV−I感染細胞のアポトーシス促進剤。
【発明の効果】
【0018】
本発明のHTLV−I関連脊髄症の予防・治療剤は、HTLV−I感染細胞のアポトーシスを誘引するアリシンまたはその類縁体を有効成分として含有する。そのため、本発明のHTLV−I関連脊髄症の予防・治療剤をHAM患者あるいはHTLV−Iのキャリアに投与すれば、投与対象の末梢血からHTLV−I感染細胞を安全な方法によって選択的に除去することができる。
したがって、本発明のHTLV−I関連脊髄症の予防・治療剤によれば、従来、有効な治療方法が見出されていなかったHTLV−I関連脊髄症の根本治療を行うことができると考えられる。さらには、全世界において約1000万人〜約2000万人存在しているといわれるHTLV−IキャリアからのHTLV−I感染細胞の排除にも貢献できると考えられるため、HTLV−I関連脊髄症の発症予防にも有効である。
【0019】
また、本発明のHTLV−I感染細胞のアポトーシス促進剤は、HTLV−I感染細胞特異的にアポトーシスを誘引させることができる。そのため、本発明のアポトーシス促進剤をHAM患者あるいはHTLV−Iのキャリアに投与すれば、投与対象の末梢血からHTLV−I感染細胞を安全な方法によって選択的に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の内容を詳細に説明する。
(1)HTLV−I関連脊髄症の予防または治療剤
本発明のHTLV−I関連脊髄症の予防または治療剤は、アリシンまたはその類縁体を有効成分として含有する。
本発明にかかる予防・治療剤に有効成分として含まれるアリシンは、ニンニク、ニラ、ラッキョウ、ギョウジャニンニクなどに含まれる有機硫黄化合物であり、下記式(3)で表される構造を有する。
【0021】
【化6】

【0022】
本発明の予防・治療剤に用いられるアリシンは、ニンニク、ニラ、ラッキョウ、ギョウジャニンニクなどから、自体公知の方法により、抽出・精製することによって取得することができる。また、試薬として販売されているアリシン(LTK Laboratories,Inc(発売元:和光純薬))を使用することもできる。
【0023】
また、本発明の予防・治療剤に含まれる有効成分は、アリシン類縁体であってもよい。本発明において、アリシン類縁体とは、その骨格中にアリシンと類似する構造を有するもののことをいう。上記アリシン類縁体としては、その構造中に下記一般式(1)
【0024】
【化7】

【0025】
(式中、Rは、置換されていてもよい飽和または不飽和の鎖状炭化水素基)で表される基を有するもの(但し、アリシンを除く)を挙げることができる。このようなアリシン類縁体の中でも特に、図1(a)に示すアリシンの構造中破線で囲んだ領域を有するもの、あるいは、アリシンを原料として製造される物質であることが好ましい。
【0026】
また、アリシン類縁体としては、下記の一般式(2)
【0027】
【化8】

【0028】
(式中、Rは、置換されていてもよい飽和または不飽和の鎖状炭化水素基)で表されるチアミン化合物、または、その製薬上許容されうる塩であることが好ましい。
【0029】
ここで、上記一般式(1)および(2)におけるR(すなわち、置換されていてもよい飽和または不飽和の鎖状炭化水素基)は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。該炭化水素基としては、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基が挙げられる。
【0030】
置換されていてもよいアルキル基におけるアルキル基としては、例えば炭素数1〜10の直鎖または分枝状のアルキル基が挙げられる。該アルキル基の具体例としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどが挙げられる。この中で炭素数1〜7の直鎖または分枝状のアルキル基が好ましい。さらに炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基がより好ましく、プロピル基が最も好ましい。
【0031】
該アルキル基における置換基としては、例えばハロゲン、ニトロ、アミノ基(アシル基、アルキル基等を1〜2個置換基として有していてもよい。)、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミジノ基、グアニジノ基、カルバモイル基などが挙げられる。
【0032】
置換されていてもよいアルケニル基におけるアルケニル基としては、例えば炭素数2〜16の直鎖状あるいは分枝状アルケニル基がよい。該アルケニル基の具体例としては、例えば、ビニル、アリル(allyl)、クロチル、2−ペンテン−1−イル、3−ペンテン−1−イル、2−ヘキセン−1−イル、3−ヘキセン−1−イル、2−メチル−2−プロペン−1−イル、3−メチル−2−ブテン−1−イル等が挙げられる。この中で炭素数2〜7の直鎖状あるいは分枝状のアルケニル基が好ましい。さらに炭素数2〜5の直鎖状のアルケニル基がより好ましく、アリル基が最も好ましい。
【0033】
該アルケニル基における置換基としては、例えばハロゲン、ニトロ、アミノ基(アルキル基、アシル基等を1〜2個置換基として有していてもよい。)、シアノ基、アミジノ基、グアニジノ基などの基が挙げられる。上記アルケニル基は二重結合に関する異性体(E、Z体)を包含する。
【0034】
置換されていてもよいアルキニル基におけるアルキニル基としては、例えば炭素数2〜16の直鎖状あるいは分枝状アルキニル基がよい。該アルキニル基の具体例としては、炭素数2〜6のアルキニル基(例、エチニル、プロパルギル、2−ブチン−1−イル、3−ブチン−2−イル、1−ペンチン−3−イル、3−ペンチン−1−イル、4−ペンチン−2−イル、3−ヘキシン−1−イルなど)が挙げられる。
【0035】
該アルキニル基における置換基としては、例えばハロゲン、ニトロ、アミノ基(アルキル基、アシル基等を1〜2個置換基として有していてもよい。)、シアノ基、アミジノ基、グアニジノ基などの基が挙げられる。
【0036】
本発明で用いられる上記一般式(2)で表されるチアミン化合物は、自体公知の方法(例えば、ビタミンB総合研究委員会:ビタミン 6(4) 607 (1953)、特許第2685514号公報に記載の方法およびそれらに準じた方法)により、例えば、チオール型ビタミンB1およびアリシンなどを原料として製造される。
【0037】
本発明で用いられるチアミン化合物の塩は、好ましくは製薬上許容されうる塩として用いられる。製薬上許容されうる塩としては、無機塩基との塩、有機塩基との塩、塩基性アミノ酸との塩などが用いられる。用いられる無機塩基としては、例えばアルカリ金属(例、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(例、カルシウム、マグネシウムなど)などが、有機塩基としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ジシクロヘキシルアミンなどが、塩基性アミノ酸としては例えばアルギニン、リジンなどが挙げられる。これらの塩は、自体公知の方法により製造することができる。
【0038】
また、上記アリシン類縁体として、より具体的には下記式(4)で表されるプロスルチアミンが挙げられる。
【0039】
【化9】

【0040】
本発明のHTLV−I関連脊髄症の予防または治療剤は、低毒性であり安全に用いられる。特に、本発明の剤に含まれるアリシン類縁体がプロスルチアミンであれば、当該物質は既に人体に対する安全性が確認されているものであるため、安全に使用することができる。また、アリシンは非常に不安定な物質であるが、プロスルチアミンは安定した物質であるため、生体への安定した投与が可能となる。
【0041】
本発明の剤は、温血哺乳動物(例、ヒト、サル、ウマ、ウシ、イヌ、マウス等)、好ましくはヒトに投与し、HTLV−I関連脊髄症の予防や治療に用いることができる。
【0042】
本発明の予防・治療剤の投与量は、本発明で用いられるアリシンまたはアリシン類縁体の有効量であればよい。例えば有効成分としてアリシンが含まれる場合には、成人(体重50kg)1人にアリシンとして約0.5mg〜500mg/日、好ましくは、約1mg〜50mg/日、特に好ましくは、約5mg〜30mg/日である。なお、有効成分としてプロスルチアミンが含まれる場合には、本発明の予防・治療剤の投与量は、成人(体重50kg)1人にプロスルチアミンとして約0.5mg〜1000mg/日、好ましくは、約10mg〜500mg/日、特に好ましくは、約30mg〜100mg/日である。
【0043】
本発明の予防・治療剤は、種々の剤形を取り得る。該剤形としては、経口投与製剤(例、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤等)、非経口投与製剤(例、注射剤等)などが挙げられる。
【0044】
たとえば経口投与製剤にするには、自体公知の方法に従い、上記のアリシンまたはアリシン類縁体を、たとえば賦形剤(例、乳糖、白糖、デンプンなど)、崩壊剤(例、デンプン、炭酸カルシウムなど)、結合剤(例、デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースなど)または滑沢剤(例、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000など)などを添加して圧縮成形し、次いで必要により味のマスキング、腸溶性あるいは持続性の目的のため自体公知の方法でコーティングすることにより経口投与製剤とすることができる。そのコーティング剤としては、例えば一般のフィルム形成コーティング剤(例、ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔TC−5、信越化学工業(株)〕、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリオキシエチレングリコール等)、ツイーン80、プルロニックF68、腸溶性コーティング剤(例、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メチルメタクリレート・メタクリル酸共重合体〔オイドラギット(ローム社製、ドイツ)〕、メチルアクリレート・メタクリル酸共重合体等)、色素(例、酸化チタン、ベンガラ、タルク)などが用いられる。腸溶性コーティングを行う場合、活性成分を含む中心核と腸溶皮膜との間に、自体公知の方法に従い、上記フィルム形成コーティング剤で一層又は二層以上の中間層を設けることも有効である。
【0045】
また、本発明の予防・治療剤は、注射剤として非経口的に投与することも有効である。該注射剤としては、水性および非水性の等張な無菌の注射液剤があり、これには抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、等張化剤等が含まれていてもよい。また、水性および非水性の無菌の懸濁液剤が挙げられ、これには懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤等が含まれていてもよい。当該製剤は、アンプルやバイアルのように単位投与量あるいは複数回投与量ずつ容器に封入することができる。
【0046】
本発明の予防・治療剤が注射剤の剤形で投与される場合、当該剤に含まれるアリシンまたはアリシン類縁体の量は、約0.1〜50mg、好ましくは約2〜20mgである。なお、本発明の予防・治療剤を注射剤としてヒトに投与した場合、アリシンまたはアリシン類縁体が血中濃度で0.5〜100μMとなるように、好ましくは5〜50μMとなるように、剤の濃度を調整してもよい。
【0047】
本発明の予防・治療剤は、他の薬剤と併用してもよく、かかる薬剤としては、従来HTLV−I関連脊髄症の対症療法として投与されてきたプレドニゾロン、IFN−α、ビタミンCなどが挙げられる。
【0048】
本発明のHTLV−I関連脊髄症の予防・治療剤は、HTLV−I感染細胞のアポトーシスを誘引するアリシンまたはその類縁体を有効成分として含有する。そのため、本発明のHTLV−I関連脊髄症の予防・治療剤をHAM患者あるいはHTLV−Iのキャリアに投与すれば、投与対象の末梢血からHTLV−I感染細胞を安全な方法によって選択的に除去することができる。
【0049】
そして、本発明のHTLV−I関連脊髄症の予防・治療剤によれば、従来、有効な治療方法が見出されていなかったHTLV−I関連脊髄症の根本治療を行うことができると考えられる。さらには、全世界において約1000万人〜約2000万人存在しているといわれるHTLV−IキャリアからのHTLV−I感染細胞の排除にも貢献できると考えられるため、HTLV−I関連脊髄症の発症予防にも有効である。また、後述の実施例から明らかなように、本発明のHTLV−I関連脊髄症の予防・治療剤は、末梢血HTLV−Iプロウイルス量を減少させる。従って、本発明のHTLV−I関連脊髄症の予防・治療剤は、抗ウイルス薬としても有用である。
【0050】
(2)HTLV−I感染細胞のアポトーシス促進剤
本発明のHTLV−I感染細胞のアポトーシス促進剤は、アリシンまたはその類縁体を有効成分として含有する。ここで、「HTLV−I感染細胞のアポトーシスの促進剤」とは、HTLV−Iに感染した細胞に特異的(選択的)にアポトーシスを誘引させる剤のことをいう。
【0051】
本発明にかかるアポトーシス促進剤に含まれるアリシンおよびアリシン類縁体としては、上述した本発明の予防・治療剤に含まれるアリシンおよびアリシン類縁体をそれぞれ同様に使用することが可能であるため、ここではその説明を省略する。
【0052】
本発明のアポトーシス促進剤は、温血哺乳動物(例、ヒト、サル、ウマ、ウシ、イヌ、マウス等)、好ましくはヒトに投与し、HTLV−Iに起因する感染症の予防や治療に用いることができる。また、本発明のアポトーシス促進剤は、低毒性であり安全に用いられる。特に、本発明の剤に含まれるアリシン類縁体がプロスルチアミンであれば、当該物質は既に人体に対する安全性が確認されているものであるため、安全に使用することができる。
【0053】
また、本発明のアポトーシス促進剤は、種々の細胞を含む細胞培養系からHTLV−Iに感染した細胞を選択的に除去するために使用することもできる。
【0054】
本発明のアポトーシス促進剤は、種々の剤形を取り得る。該剤形としては、経口投与製剤(例、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤等)、非経口投与製剤(例、注射剤等)などが挙げられる。該剤形のより具体的な例としては、上述の予防・治療剤と同様のものを挙げることができる。
【0055】
本発明のアポトーシス促進剤の投与量は、本発明で用いられるアリシンまたはアリシン類縁体の有効量であればよい。例えば有効成分としてアリシンが含まれる場合には、成人(体重50kg)1人にアリシンとして約0.5mg〜500mg/日、好ましくは、約1mg〜50mg/日、特に好ましくは、約5mg〜30mg/日である。なお、有効成分としてプロスルチアミンが含まれる場合には、本発明のアポトーシス促進剤の投与量は、成人(体重50kg)1人にプロスルチアミンとして約0.5mg〜1000mg/日、好ましくは、約10mg〜500mg/日、特に好ましくは、約30mg〜100mg/日である。
【0056】
本発明のアポトーシス促進剤が注射剤の剤形で投与される場合、当該剤に含まれるアリシンまたはアリシン類縁体の量は、約0.1〜50mg、好ましくは約2〜20mgである。なお、本発明のアポトーシス促進剤を注射剤としてヒトに投与した場合、アリシンまたはアリシン類縁体が血中濃度で0.5〜100μMとなるように、好ましくは5〜50μMとなるように、剤の濃度を調整してもよい。
【0057】
本発明のアポトーシス促進剤は、他の薬剤と併用してもよく、かかる薬剤としては、プレドニゾロン、IFN−α、ビタミンCなどが挙げられる。
【0058】
本発明のHTLV−I感染細胞のアポトーシス促進剤は、HTLV−I感染細胞特異的にアポトーシスを誘引させることができる。そのため、本発明のアポトーシス促進剤をHAM患者あるいはHTLV−Iのキャリアに投与すれば、投与対象の末梢血からHTLV−I感染細胞を安全な方法によって選択的に除去することができる。従って、本発明のHTLV−I感染細胞のアポトーシス促進剤は、HTLV−I関連脊髄症の予防・治療剤として有用である。また、後述の実施例から明らかなように、本発明のHTLV−I感染細胞のアポトーシス促進剤は、末梢血HTLV−Iプロウイルス量を減少させる。従って、本発明のHTLV−I感染細胞のアポトーシス促進剤は、抗ウイルス薬としても有用である。
【実施例】
【0059】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
1.アリシンおよびプロスルチアミンによるHTLV−I関連脊髄症患者HTLV−I感染T細胞の選択的除去に向けての基礎的検討
【0061】
〔実験の目的〕
本実施例では、HAMに対する根治療法開発へ向けた基礎的検討という観点から、アリシン(上記式(3)または図1(a)の化合物)、プロスルチアミン(上記式(4)または図1(b)の化合物)、および、フルスルチアミン(図1(c)の化合物)を使用し、以下の解析を行なった。1)HAM患者由来HTLV−I感染T細胞株に対する傷害性を種々のHTLV−I感染および非感染T細胞株と比較検討すると共に、そのメカニズムについて解析した。2)HAM患者培養末梢血CD4陽性T細胞中のHTLV−I感染細胞に対する除去効果について、HTLV−Iプロウイルス量を目安に解析した。
【0062】
〔対象〕
HTLV−I感染T細胞株としてHAM患者由来HCT−1、HCT−4、ATL患者由来KOB、臍帯血由来MT−1、MT−2を使用し、HTLV−I非感染T細胞株としてJurkat細胞を使用した。また、末梢血での検討では、HAM患者末梢血CD4陽性T細胞を使用した。
【0063】
〔実施例1〕アリシン、プロスルチアミン、およびフルスルチアミンの各種細胞株に対する傷害性の評価
各種細胞株を2×10cells/mlの濃度で、種々の濃度のアリシンまたはプロスルチアミンまたはフルスルチアミン存在下で24時間培養後、MTSassay(Promega)を行なった。細胞傷害性の評価は、%cell viability(アリシン処理時のOD値/アリシン非処理時のOD値の平均値)で行なった。
【0064】
その結果を、図2(a)〜(c)に示す。図2(a)に示すように、アリシン処理によって用量依存性に各種細胞株は傷害を受け、細胞生存率は低下した。それぞれをLD50で表した場合、それぞれのアリシン濃度はHCT−1:7.0、HCT−4:7.5、KOB:11.5、MT−1:12.5、MT−2:44.6、Jurkat:22.2μMであり、HAM患者由来HTLV−I感染T細胞株(HCT−1、HCT−4)で低値を示し、両者の細胞株は20μMアリシン処理でほぼ完全に死滅した。
【0065】
図2(b)に示すように、HCT−1およびHCT−4は40μMのプロスルチアミン処理によってもほぼ完全に死滅したが、MT−2やJurkatでは細胞傷害に対してやや抵抗性を示し、これらの細胞株でみた場合、用量依存性の生存曲線はアリシン処理時とほぼ同様の傾向を示した。
一方、プロスルチアミンとフルスルチアミンによるHCT−1およびHCT−4に対する傷害効果を比較した場合、図2(c)に示すように、フルスルチアミンは両者の細胞株に対してほとんど傷害を及ぼさなかった。なお、図2(c)において、プロスルチアミン処理をP/HCT−1、P/HCT−4と示し、フルスルチアミン処理をF/HCT−1、F/HCT−4と示す。
【0066】
〔実施例2〕細胞傷害の機序の解析
(1)ミトコンドリア膜電位の低下:HCT−1およびHCT−4を20μMアリシンまたは溶媒存在下で24時間培養後、電位感受性蛍光色素(potential sensitive fluorescent dye)DiOC(3)で染色し、フローサイトメトリー(flow cytometry)で解析した。
その結果を、図3(a)および(b)に示す。図に示すように、HCT−1、HCT−4ともに、20μMアリシン処理によってほとんどの細胞でミトコンドリア膜電位の低下がみられ、細胞傷害はアポトーシスによることが明らかにされた。
【0067】
(2)z−VAD−fmk処理による細胞生存率(cell viability)の変化:HCT−1をpan−caspase阻害剤である100μM z−VAD−fmkで前処理後、10μMアリシン存在下で24時間培養した。培養後、MTSassayにおいて細胞生存率(cell viability)の変化を検討した。
その結果を図4に示す。図に示すように、細胞のアポトーシスがカスパーゼ依存性か非依存性かを解析するために行なったz−VAD−fmkによる前処理によって、10μMアリシン処理によるHCT−1の細胞生存率(cell viability)が有意に上昇した。
【0068】
〔実施例3〕p38 MAPKおよび活性化カスパーゼ−3(caspase−3)のウエスタンブロット解析
HCT−1を、20μMアリシンまたは溶媒存在下に、1時間および3時間培養した。細胞抽出物(cell lysate)を作製し、p38 MAPKのウエスタンブロット解析を行なった。また、HCT−1を、10μMおよび20μMプロスルチアミンまたは溶媒存在下に、1時間および3時間培養した。細胞抽出物(cell lysate)を作製し、p38 MAPKのウエスタンブロット解析を行なった。また、HCT−1を20μMアリシン、20μMプロスルチアミン、または溶媒存在下に、6時間および12時間培養した。細胞抽出物(cell lysate)を作製し、活性化の過程(process)でcleavageされるカスパーゼ−3の存在の有無をウエスタンブロットにて解析した。
【0069】
その結果を、図5〜図7に示す。図5に示すように、HCT−1のphosphorylated−p38 MAPK(図中、P−p38 MAPKと示す)は、20μMアリシン処理によって顕著にdown−regulateされた。図6に示すように、20μMプロスルチアミン処理によってもほぼ同様の結果が得られた。さらに、図7に示すように、20μMアリシンまたはプロスルチアミン処理によってcleavageされたカスパーゼ−3の存在が明らかにされた。
【0070】
〔実施例4〕アリシンおよびプロスルチアミン処理によるHAM患者末梢血CD4陽性T細胞中のHTLV−Iプロウイルス量の変化
末梢血CD4陽性T細胞でのMTSassayにおいて細胞傷害性が生じない5μMおよび10μMアリシン存在下、または溶媒(vehicle)存在下に、末梢血CD4陽性T細胞を1×10cells/mlの濃度で24時間培養した。また、5μMプロスルチアミンまたは溶媒(vehicle)存在下に、末梢血CD4陽性T細胞を1×10cells/mlの濃度で48時間培養した。細胞回収後、Annexin V MicroBead Kits(Miltenyi Biotec)を使用し、アポトーシス細胞を除去した。その後、細胞ペレット(cell pellet)からDNAを抽出し、ライトサイクラー(LightCycler)による定量PCR(プライマー:HTLV−I tax、β−アクチン)を施行し、スタンダードとして用いたMT−2中のHTLV−Iプロウイルス量を1細胞あたり2.2コピーとして、CD4陽性T細胞10個あたりのプロウイルス量を算出した。
【0071】
その結果を、図8および図9に示す。図8(a)に示すように、8例のHAM患者全例の末梢血CD4陽性T細胞において、5μMアリシン処理によって、HTLV−Iプロウイルス量は、溶媒処理の場合に比較して24.6−73.1%(平均:54.8%)にまで減少した。また、図8(b)に示すように、10μMのアリシン処理を行った場合にも、HTLV−Iプロウイルス量は、溶媒処理の場合に比較して28.5−92.8%(平均:61%)にまで減少した。一方、図9に示すように、5μMのプロスルチアミン処理によっても、7例のHAM患者全例の末梢血CD4陽性T細胞において、HTLV−Iプロウイルス量は、溶媒処理の場合に比較して29.9−80.2%(平均:60.7%)にまで減少した。
【0072】
〔結果〕
以上の実施例によって、アリシンは比較的低濃度でHAM患者由来HTLV−I感染T細胞株に対して傷害性を及ぼすことが明らかにされた。さらに、プロスルチアミンもアリシンと同様の効果をもたらしたが、フルスルチアミンにはその効果はなかった。図1の破線域に示すように、プロスルチアミンにはアリシン類似構造が存在するが、フルスルチアミンには存在しない。すなわち、この構造がHTLV−I感染T細胞株に対する傷害性を規定していることを示していることがわかる。その傷害性の機序としては、アリシン処理によってミトコンドリア膜電位の低下がもたらされること、z−VAD−fmkの前処理によって傷害性が阻止されること、アリシンおよびプロスルチアミン処理によりカスパーゼ−3がcleavageされた状態となること、すなわちカスパーゼ−3の活性化に起因するカスパーゼ依存性のアポトーシスが起こることが考えられる。
【0073】
これらの現象を踏まえて、アリシンおよびプロスルチアミンが、HAM患者末梢血CD4陽性T細胞中のHTLV−I感染T細胞にもアポトーシスを惹起し得る可能性を検討した。末梢血CD4陽性T細胞をアリシンにて処理したところ、全体の細胞には傷害性を与えない濃度で、HTLV−Iプロウイルス量が有意に減少した。さらに、末梢血CD4陽性T細胞をプロスルチアミンにて処理したところ、アリシン処理と同様にHTLV−Iプロウイルス量が有意に減少した。これらの結果は、アリシンおよびプロスルチアミンが、HAM患者末梢血中のHTLV−I感染細胞を選択的に除去し得る可能性を持っていること示すものである。
【0074】
以上の結果より、アリシンおよびプロスルチアミンは、HAM患者由来HTLV−I感染T細胞株に対して、カスパーゼ依存的にアポトーシスを引き起こすことが明らかにされた。さらに、アリシンおよびプロスルチアミンは、HAM患者培養末梢血CD4陽性T細胞中のHTLV−I感染T細胞に対してもアポトーシスを誘導し、選択的にHTLV−I感染T細胞を除去し得ることが示された。
【0075】
2.HTLV−I関連脊髄症(HAM)患者に対するプロスルチアミン治療の臨床試験
【0076】
〔研究目的〕
現在までに、HAMに対する治療として種々の治療法が報告されている。その中で現在、主流をなしているのが、副腎皮質ホルモン療法、インターフェロンーα療法といった免疫修飾療法である。しかし、現時点ではHAMに対する根本的な治療法は未だ確立されていない。HAMに対する理想的な治療を考えた場合、HTLV-I感染細胞の体内からの選択的除去にあると考えられる。
本願発明者らは、HAM患者末梢血HTLV-I感染細胞に対してプロスルチアミン(アリナミン(登録商標))がin vitroにおいて、比較的選択的にアポトーシスを惹起しうることを見出した。そこで本実施例では、HAM患者に対するプロスルチアミン治療の臨床試験を行った。
【0077】
〔方法〕
対象:4例のHAM患者(女性2例、男性2例、年齢;51-73歳、罹病期間;13-46年)(表1)。元来投与されている併用薬剤は中止せず、用量・用法を変えずそのまま継続した(表1)。
試験方法:プロスルチアミン40mgを生理食塩水50mlで希釈し、14日間連日点滴静注した。
検査項目:治療前、治療開始1週目、2週目、治療終了1週目で神経学的所見、運動機能障害度、歩行時間の変化などをチェックした。同時に上記ポイントでの、末梢血単核球中のHTLV-Iプロウイルス量の変化を解析した。また、治療前および治療2週目でリンパ球幼若化反応の変化も検討した。
(倫理面への配慮)
本臨床試験は長崎大学倫理委員会の承認を受け、また、施行時には研究の内容を十分に説明した上で、文書によるインフォームド・コンセントを得て行なった。
【0078】
【表1】

【0079】
〔結果〕
表2に臨床所見の変化とリンパ球幼若化反応の変化を示す。各症例とも運動機能障害度(0:障害なし;1:急いで走る時の障害;2:走ったり歩いたりの際の障害;3:走れないが、介助なしに階段昇降可能;4:手すりにつかまって、階段昇降可能;5:介助があれば30m、なくても10m歩行可能;6:介助があれば、10m歩行可能;7:介助があっても、10m歩行不能。這うことはできる;8:車椅子のみ;9:寝たきりだが、体位変換可能;10:体位変換不能;としてスコア化。Matsuo H. et al., Plasmapheresis in treatment of human T-lymphotropic virus type-I associated myelopathy. Lancet 1988;ii:1109-1113.参照。)は治療前後で変化はみられなかったが、個々の症例でみてみると、歩行時間の短縮、長年の車椅子生活で全く立位保持不能であった症例で数秒ではあるが支え立ちが可能となり、二本杖歩行から一本杖歩行が可能になり、痙縮の改善がみられた。リンパ球幼若化反応ではspontaneous PBL proliferationの著明な改善はみられなかった。しかし、非常に興味あることに末梢血HTLV-Iプロウイルス量は治療後の最小プロウイルス量でみた場合、治療前に比較して約30%から50%位にまで減少した(表3)。出現した有害事象としては点滴時の軽い血管痛のみであった。
【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【0082】
本実施例では、HAM患者末梢血からのHTLV-I感染細胞の選択的除去を基盤としたHAM患者に対する根治治療を目指し、プロスルチアミンによる治療を試みた。臨床的効果としては全体的には著明な効果は得られなかったにもかかわらず、個々の症例をよく解析すると、やはり改善傾向は得られたものと考えられる。著明な効果が得られなかった理由の一つとして、本実施例はすべて比較的罹病期間の長い症例を対象としていたことが考えられる。ただ、本実施例の臨床試験で特筆すべきことは、プロスルチアミンの短期間の投与でも末梢血HTLV-Iプロウイルス量が著明に減少したことである。
【0083】
プロスルチアミンはHTLV-I感染細胞に対して抗ウイルス薬として作用し、今後HAMに対する治療薬と成り得る可能性を持っている。
【産業上の利用可能性】
【0084】
上述したように、本発明によれば、従来、有効な治療方法が見出されていなかったHTLV−I関連脊髄症の根本治療を行うことができると考えられる。さらに本発明は、全世界において約1000万人〜約2000万人存在しているといわれるHTLV−IキャリアからのHTLV−I感染細胞の排除にも貢献できると考えられるため、HTLV−I関連脊髄症の発症予防にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、アリシン、プロスルチアミン、フルスルチアミンの構造を示す図である。
【図2】図2(a)は、アリシンによる各種細胞株に対する傷害性を示すグラフである。図2(b)は、プロスルチアミンによる各種細胞株に対する傷害性を示すグラフである。図2(c)は、HCT−1およびHCT−4に対するプロスルチアミン(図中、Pと示す)とフルスルチアミン(図中、Fと示す)による傷害性を示すグラフである。
【図3】図3(a)は、アリシン処理を行ったHCT−1におけるミトコンドリア膜電位の低下を示す図である。図3(b)は、アリシン処理を行ったHCT−4におけるミトコンドリア膜電位の低下を示す図である。
【図4】図4は、HCT−1に対するアリシン傷害性のz−VAD−fmkによる阻止効果を示すグラフである。
【図5】図5は、アリシン処理HCT−1におけるp38 MAPKのウエスタンブロット解析結果を示す図である。
【図6】図6は、プロスルチアミン処理HCT−1におけるp38 MAPKのウエスタンブロット解析結果を示す図である。
【図7】図7は、アリシンまたはプロスルチアミン処理HCT−1におけるカスパーゼ−3の活性化のウエスタンブロット解析結果を示す図である。
【図8】図8(a)は、5μMのアリシン処理によるHAM患者培養CD4陽性T細胞中のHTLV−Iプロウイルス量の変化を示すグラフである。図8(b)は、10μMのアリシン処理によるHAM患者培養CD4陽性T細胞中のHTLV−Iプロウイルス量の変化を示すグラフである。
【図9】図9は、プロスルチアミン処理によるHAM患者培養CD4陽性T細胞中のHTLV−Iプロウイルス量の変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリシンまたはその類縁体を有効成分として含有する、HTLV−I関連脊髄症の予防または治療剤。
【請求項2】
アリシン類縁体が、その構造中に下記一般式(1)
【化1】


(式中、Rは、置換されていてもよい飽和または不飽和の鎖状炭化水素基)で表される基を有するアリシン以外の化合物である、請求項1記載のHTLV−I関連脊髄症の予防または治療剤。
【請求項3】
アリシン類縁体が、アリシンを原料として製造される物質である、請求項1記載のHTLV−I関連脊髄症の予防または治療剤。
【請求項4】
アリシン類縁体が、下記一般式(2)
【化2】


(式中、Rは、置換されていてもよい飽和または不飽和の鎖状炭化水素基)で表されるチアミン化合物、または、その製薬上許容されうる塩である、請求項1記載のHTLV−I関連脊髄症の予防または治療剤。
【請求項5】
アリシン類縁体がプロスルチアミンである、請求項1記載のHTLV−I関連脊髄症の予防または治療剤。
【請求項6】
アリシンまたはその類縁体を有効成分として含有する、HTLV−I感染細胞のアポトーシス促進剤。
【請求項7】
アリシン類縁体が、その構造中に下記一般式(1)
【化3】


(式中、Rは、置換されていてもよい飽和または不飽和の鎖状炭化水素基)で表される基を有するアリシン以外の化合物である、請求項6記載のHTLV−I感染細胞のアポトーシス促進剤。
【請求項8】
アリシン類縁体が、アリシンを原料として製造される物質である、請求項6記載のHTLV−I感染細胞のアポトーシス促進剤。
【請求項9】
アリシン類縁体が、下記一般式(2)
【化4】


(式中、Rは、置換されていてもよい飽和または不飽和の鎖状炭化水素基)で表されるチアミン化合物、または、その製薬上許容されうる塩である、請求項6記載のHTLV−I感染細胞のアポトーシス促進剤。
【請求項10】
アリシン類縁体がプロスルチアミンである、請求項6記載のHTLV−I感染細胞のアポトーシス促進剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−277223(P2007−277223A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62511(P2007−62511)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(504205521)国立大学法人 長崎大学 (226)
【Fターム(参考)】