説明

ICシート挿入装置及びその装置を用いた冊子にICシートを挿入する方法

【課題】
本発明は、熱可塑性樹脂材料で覆われたICシートを冊子の紙ページに挟んで重ね合わせ、ICシートと重ね合わせた冊子の紙ページを加熱及び加圧して熱融着させる際、紙ページに挟んだ間から溶け出し熱可塑性樹脂材料がはみ出しているか否かの判定することが可能なICシート挿入装置及びその装置を用いた冊子にICシートを挿入する方法に関するものである。
【解決手段】
二丁付き冊子供給部、冊子開き部、ICシート供給部、ページ保持板挿入部、熱圧着部、冷却部と、ページ保持板回収部、ICシートをオーバーページに接着させた二丁付きIC冊子に対して、ICシートとオーバーページの接着性の良否を検査するためのICシート検査部及びICシート検査部において不良と判定された不良品を輩出するための冊子非常排出部とを備えたICシート挿入装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で外部と情報の授受が可能なICチップとアンテナを有するICシートが内蔵されたパスポート、預金通帳、社員証及び学生証等の身分証明用に用いられるICシート挿入装置及びその装置を用いた冊子にICシートを挿入する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パスポート、預金通帳、社員証及び学生証等の身分証明用に用いられる冊子に、外部との情報の授受が可能なICチップ、アンテナを有するICシート等を内蔵したIC冊子については、冊子とICシートそれぞれ独立した品質保証ができ、冊子に貼り付けたICシートの偽造や変造を防止することが可能なIC冊子が提案されている。
【0003】
例えば、IC冊子としては、非接触ICチップとアンテナを緩衝材で挟み込んだICラベルが冊子中央ページに付与された物理的衝撃を保護するIC冊子が開示されている(特許文献1)。
【0004】
このようなICラベルを冊子中央ページに付与するための装置は、例えば、表表紙部、裏表紙部、中味用紙及び溶融する基材で挟み込まれたICシートを有する冊子の作製におけるICシート挿入装置において、溶融する基材がめくられた冊子を搬送する機構と、溶融する基材をV字型にめくるページめくり機構と、溶融する基材の間にICシートを挿入する機構と、溶融する基材の外側に金属板に比べて剥離性の良い非金属のページ保持板を挿入する機構と、ICシートと溶融する基材を接着する加熱接着部と、ICシートと前記溶融する基材をページ保持板で挟んだ状態で冷却する機構と、冷却した冊子からページ保持板を回収する機構を備えたことを特徴とするICシート挿入装置が開示されている(特許文献2)。
【0005】
また、ICラベルを冊子中央ページに接着させる方法としては、ICチップと熱可塑性樹脂材料とから成るICシートに、冊子の紙ページを重ね合わせ、ICシートと重ね合わせた冊子の紙ページを加熱し、ICシートの熱可塑性樹脂の表面を軟化させ、軟化したICシートの熱可塑性樹脂の表面を、冊子の紙ページの繊維に絡ませ、ICシートと重ね合わせた冊子の紙ページを冷却することによって、ICシートと冊子の紙ページとを接着させる技術が開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−148516号公報
【特許文献2】特許第4247492号公報
【特許文献3】特開2008−229881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3のように、熱可塑性樹脂材料で覆われたICシートを冊子の紙ページに挟んで重ね合わせ、ICシートと重ね合わせた冊子の紙ページを加熱及び加圧して熱融着させる際、ICシートの熱可塑性樹脂材料が紙ページの寸法以上に溶けて、紙ページに挟んだ間から溶け出し熱可塑性樹脂材料がはみ出す問題があった。紙ページとページ保持板を剥離する際にページ保持板に熱可塑性樹脂材料が付着し、剥離不良が発生して製造した冊子が不良品になる問題や、熱可塑性樹脂材料のはみ出しにより、各断裁部において、冊子寸法の誤検知による断裁不良が発生する問題や、冊子反転時における反転不良の問題があった。このような冊子の不良品を検知できず製造を続けた場合には、ICシート挿入装置が故障する、多くの不良品が発生して、歩留まりが悪く生産性が上がらないといった問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題の解決を目的とするものであり、熱可塑性樹脂材料で覆われたICシートを冊子の紙ページに挟んで重ね合わせ、ICシートと重ね合わせた冊子の紙ページを加熱及び加圧して熱融着させる際、紙ページに挟んだ間から溶け出し熱可塑性樹脂材料がはみ出しているか否かの判定することが可能なICシート挿入装置及びその装置を用いた冊子にICシートを挿入する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、二丁付き冊子にICシートを挿入するためのICシート挿入装置であって、オーバーページから見開いた状態で積載された二丁付き冊子を搬送部に送り出すための二丁付き冊子供給部と、二丁付き冊子のオーバーページをV字型にめくるための冊子開き部と、 V字型にめくられたオーバーページの間に熱可塑性樹脂で覆われたICシートを挿入するためのICシート供給部と、ICシートが挿入された二丁付き冊子のV字型にめくられたオーバーページの外側に、ページ保持板を挿入するためのページ保持板挿入部と、ICシート、オーバーページ、ページ保持板が密着した状態でプレス板によってページ保持板の両側面から熱圧着する熱圧着部と、熱圧着後、ICシート、オーバーページ、ページ保持板が密着した状態で冷却プレス板によってページ保持板の両側面から冷却する冷却部と、熱圧着部及び冷却部を通過したページ保持板を回収し、保持板回収コンベアによってページ保持板挿入部に送るためのページ保持板回収部と、ICシートをオーバーページに接着させた二丁付きIC冊子に対して、ICシートとオーバーページの接着性の良否を検査するためのICシート検査部と、ICシート検査部において不良と判定された不良品を輩出するための冊子非常排出部とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明のICシート検査部は、ICシートとオーバーページの接着した領域を撮影して撮影画像データを取得する撮影部と、あらかじめ基準値を記憶するための記憶部と、撮影画像データと基準値を比較してICシートとオーバーシートの接着性の良否を判定する演算部とを備えて成る。
【0011】
本発明は、二丁付き冊子供給部、搬送部、冊子開き部、ICシート供給部、ページ保持板挿入部、熱圧着部、冷却部、ページ保持板回収コンベアを備えるページ保持板回収部、ICシート検査部及び冊子非常排出部を備えたIC挿入装置によって二丁付き冊子にICシートを挿入する方法であって、二丁付き冊子供給部によって、オーバーページから見開いた状態で積載された二丁付き冊子を搬送部に送り出す二丁付き冊子供給工程と、冊子開き部によって、搬送部に送り出された二丁付き冊子のオーバーページをV字型にめくる冊子開き工程と、ICシート供給部によって、V字型にめくられたオーバーページの間に熱可塑性樹脂で覆われたICシートを挿入するためのICシート供給工程、ページ保持板挿入部によって、ICシートが挿入された二丁付き冊子のV字型にめくられたオーバーページの外側に、ページ保持板を挿入するためのページ保持板挿入工程と、熱圧着部によって、ICシート、オーバーページ、ページ保持板が密着した状態でプレス板によってページ保持板の両側面から熱圧着する熱圧着工程と、冷却部によって、ICシート、オーバーページ、ページ保持板が密着した状態で冷却プレス板によってページ保持板の両側面から冷却する冷却工程と、ページ保持板回収部によって、熱圧着部及び冷却部を通過したページ保持板を回収し、保持板回収コンベアによってページ保持板挿入部に送るためのページ保持板回収工程と、ICシート検査部によって、ICシートをオーバーページに接着させた二丁付きIC冊子に対して、ICシート検査部によって、ICシートをオーバーページに接着させた二丁付きIC冊子に対して、ICシートとオーバーページの接着性の良否を検査するためのICシート検査工程と、冊子非常排出部によって、ICシート検査部により不良と判定された不良品を排出する冊子非常排出工程によって製造されることを特徴とする二丁付き冊子にICシートを挿入する方法である。
【0012】
本発明のICシート検査工程は、撮影部によって、ICシートとオーバーページの接着した領域を撮影して撮影画像データを取得し、演算部によって、取得した撮影画像データとあらかじめ記憶部に記憶した基準値を比較してICシートとオーバーシートの接着性の良否を判定することを特徴とする請求項3記載の二丁付き冊子にICシートを挿入する方法である。
【発明の効果】
【0013】
熱可塑性樹脂材料で覆われたICシートを冊子の紙ページに挟んで重ね合わせ、ICシートと重ね合わせた冊子の紙ページを加熱及び加圧して熱融着させる際、ICシートの熱可塑性樹脂材料が紙ページの寸法以上に溶けて、紙ページに挟んだ間から溶け出し熱可塑性樹脂材料がはみ出した製品を製造時に良否の判定が可能となるため、多くの不良品の発生を防止すると共に、次工程への流出を未然に防ぐことができるため、生産性が向上する。不良製品は、即座に排出することで、ICシート挿入装置の故障や、搬送ライン上でのトラブルを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】IC冊子の形態を示す図である。
【図2】二丁付きIC冊子と単IC冊子を示す図である。
【図3】二丁付き冊子製造装置、IC挿入装置、冊子断裁装置及びIC書き込み装置を示す図である。
【図4】IC挿入装置を示す図である。
【図5】IC挿入装置の一部を示す図である。
【図6】オーバーページがV字型に開いた二丁付き冊子(1−1)の例を示す図である。
【図7】ICシートがV字型にめくられた二丁付き冊子に挿入された例を示す図である。
【図8】ICシート供給部を示す図である。
【図9】ページ保持板挿入部をフィーダ側から見た図である。
【図10】ページ保持板が離脱した状態を示す図である。
【図11】熱圧着部を示した図である。
【図12】ページ保持板が離脱する図である。
【図13】ページ保持板回収装置の剥離部を示す図である。
【図14】ページ保持板回収装置の回収部を示す図である。
【図15】熱塑性樹脂材料がオーバーページからはみ出す問題を示す図である。
【図16】ICシート検査部(19)を示す図である。
【図17】ICシート検査部(19´)を示す図である。
【図18】二丁付き冊子にICシートを挿入するフォーチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他色々な形態が実施可能である。
【0016】
図1に示すように、IC冊子(1)は、中味ページ(2)、オーバーページ(3)、ICシート(4)、表表紙(5)、裏表紙(6)で構成されている。中味ページ(2)とオーバーページ(3)は紙であり、ICシート(4)表面の材質は熱可塑性樹脂材料である。ICシート(4)は、ICチップとアンテナを熱可塑性樹脂材料で被覆されたものであり、一般に使用されている非接触ICカードと同じ構造である。一般的なICカードは標準規格によってサイズが54mm×86mmに決められているのに対して、冊子に付与するICシート(4)は、冊子の大きさによって、更に大きなサイズとなることから、区分けする意味でICシートと呼ぶことにする。熱可塑性樹脂材料は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PET−G(ポリエチレンテトラフタレートグレインドエチレングリコール)等のプラスチック材料である。IC冊子(1)の中味ページ(2)とオーバーページ(3)は、丁合いされてミシン綴じされている。
【0017】
図2に二丁付きIC冊子(1−2)と単IC冊子(1)を示す。二丁付きIC冊子(1−2)は、単IC冊子(1)が断裁工程前の形態であり、単IC冊子1が二丁を有したものである。図2に示す二丁付きIC冊子(1−2)から単IC冊子(1)への製造工程は、図3に示すように二丁付き冊子製造装置(A)、IC挿入装置(B)、冊子断裁装置(C)及びIC書き込み装置(D)によって製造される。
【0018】
二丁付き冊子製造装置(A)は、中味ページ(2)及びオーバーページ(3)の丁合い、糸綴じ、長辺断裁、表裏表紙貼付を行い、二丁付き冊子(1−1)が製造される。
【0019】
IC挿入装置(B)は、二丁付き冊子製造装置(A)で製造された二丁付き冊子(1−1)にICシート(4)を挿入し、加熱圧着、冷却を行い、二丁付きIC冊子(1−2)が製造される。
【0020】
冊子断裁装置(C)は、IC挿入装置(B)で製造された二丁付きIC冊子(1−2)を規格寸法に断裁し、単IC冊子(1)が製造される。
【0021】
IC書き込み装置(D)は、単IC冊子(1)のICチップにデータを付与して製品化される。
【0022】
本発明のICシートの検査部を備えたICシート挿入装置は、IC挿入装置(B)に検査部を有することを特徴とする。
【0023】
図4に示すようにIC挿入装置(B)は、二丁付き冊子供給部(11)、搬送部(12)、冊子開き部(13)、ICシート供給部(14)、ページ保持板挿入部(15)、熱圧着部(16)、冷却部(17)、ページ保持板回収コンベア(21)を備えるページ保持板回収部(18)、ICシート検査部(19)及び冊子非常排出部(20)を有する。
【0024】
IC挿入装置(B)の二丁付き冊子供給部(11)は、二丁付き冊子製造装置(A)によって製造されたオーバーページ(3)から見開いた状態で所定の数量が積載された二丁付き冊子(1−1)を、図5に示すように最上部から一部ずつ自動吸引による送り出し用エアサッカー(22)により搬送部(12)に送り出される。
【0025】
図5に示すように搬送部(12)に送り出された二丁付き冊子(1−1)は、冊子開き部(13)に設けた開き用エアサッカー(23)及びガイドバー(24)によって、二丁付き冊子(1−1)のオーバーページ(3)がV字型にめくられる。図6にオーバーページ(3)がV字型に開いた二丁付き冊子(1−1)の例を示す。
【0026】
オーバーページ(3)がV字型にめくられた冊子は、間欠に搬送する搬送部(12)によってICシート供給部(14)に搬送される。ICシート供給部(14)は、ICシート(4)が積載されており、ICの通信性をICシート供給部(14)に設けられたIC読取検査部(図示せず)で確認し、正常なICシート(4)は、オーバーページ(3)がV字型にめくられた二丁付き冊子(1−1)に挿入される。さらに、図4に示すようにICシート供給部(14)は、挿入されたICシート(4)が、搬送中にズレないように、オーバーページ(3)と挿入されたICシート(4)の位置合わせを行い、一部分を仮接着させて、搬送時の位置ズレを防止させる。図7にICシート(4)がV字型にめくられた二丁付き冊子(1−1)に挿入された例を示す。なお、通信に異常があったICシートは、ICシート供給部(14)に設けられたIC通信不良排出部(図示せず)からバイパスする。
【0027】
仮接着とは、挿入されたICシート(4)の搬送中のズレを防ぐため、ICシート供給部(14)において、V字型にめくられた二丁付き冊子(1−1)へのICシート(4)挿入後、V字型にめくられたオーバーページ(3)を閉じると同時に、二丁付き冊子(1−1)の帳合い側中央部の一点をオーバーページ(3)両側から熱圧着するものである。
【0028】
さらに、ICシート供給部(14)について詳細に説明する。図8は、ICシート供給部(14)を示す図である。ICシート供給部(14)に積載されたICシート(4)は、押出用エアシリンダ(31)によってICシート(4)を1枚分ずつ前方へ押し出される。押し出されたICシート(4)は押上用エアシリンダ(32)によって上方へ上げられ、挿入用エアシリンダ(33)の先端のグリッパー(34)によって把持される。挿入用エアシリンダ(33)は往復台(35)に固定されており、往復用送りネジ(36)をモータ(37)で正逆に回転させることにより往復運動をする。ICシート(4)を把持した後、挿入用エアシリンダ(33)は挿入位置(図中点線部分)まで移動し、あらかじめ、めくられてガイドバー(24)によってV字型に保持されているオーバーシート(3)の間に挿入される。ICシート(4)が挿入された冊子は、間欠に搬送する搬送部(12)によってページ保持板挿入部に搬送される。
【0029】
図5に示すようにICシート(4)が挿入された二丁付き冊子(1−1)は、ページ保持板挿入部(15)によって、V字型にめくられたオーバーページ(3)の外側にページ保持板(25)が挿入される。ページ保持板(25)は搬送される過程でガイド板(26)により徐々に狭められ、ICシート(4)を内蔵したオーバーページ(3)の外側に、ページ保持板(25)が密着した状態となる。
【0030】
さらに、ページ保持板挿入部(15)について詳細に説明する。図9は、ページ保持板挿入部(15)をフィーダ側から見た図である。ICシート(4)が挿入され、ガイドバー(24)によりV字型に保持されたオーバーページ(3)とガイド板(26)の間に、挿入用エアシリンダ(38)の先端のグリッパー(39)に把持されたページ保持板(25)を挿入する。挿入装置は左右一対となっており、同じタイミングで動作する。
【0031】
図10は、ページ保持板挿入部(15)の側面図である。図示しないページ保持板回収部(18)よりページ保持板回収コンベア(21)で送られてきたページ保持板(25)は、搬送しながらガイド(53)で挿入角度(V字型に保持されたガイド板(26)の略設置角度)まで倒され、図示しないセンサで先端を検出し、取り出し位置で停止する。その後、架台(40)に固定された送りモータ(41)と送りネジ(42)で往復運動を行う往復台(43)上に固定された、挿入用エアシリンダ(38)の先端のグリッパー(39)により把持され、挿入位置(図中点線部分)まで移動し、ガイド(24)とガイド板(26)の間に挿入され、搬送装置により加熱圧着部へ搬送される。
【0032】
図5に示すように、ページ保持板(25)が挿入された二丁付き冊子(1−1)は、熱圧着部(16)に設けた圧着用油圧シリンダー(27)とヒーターを組み込んだプレス板(28)で熱圧着される。例えば、プレス圧力は0.5〜4MPa、温度は120〜150℃としている。なお、熱圧着部(16)に設ける圧着用油圧シリンダー(27)及びプレス板(28)の個数は、限定されるものではない。
【0033】
熱圧着部(16)では、ICシートを被覆する熱可塑性樹脂材料がPET−Gの場合、120℃〜145℃で加熱し、3.85MPaで8秒間以上の加圧することで、PET−Gの表面が軟化し、オーバーページ(3)の繊維に絡みついていく。
【0034】
図5に示すように圧着終了後、圧着用油圧シリンダー(27)は開放するが、熱圧着された冊子はページ保持板で軟化点の温度以上に保持されたまま、かつICシート(4)、オーバーページ(3)、ページ保持板(25)が密着した状態で冷却部(17)に入り、冷却水が循環している冷却プレス板(30)と成型用油圧シリンダー(29)で成型しながら冷却される。例えば、搬送途中で大きく変形したとしても、軟化点以上に温度を保っていることから、十分に冷却プレスで成型が可能である。なお、冷却部(17)に設ける成形用油圧シリンダー(29)及び冷却プレス板(30)の個数は、限定されるものではない。
【0035】
さらに、熱圧着部(16)について詳細に説明する。図11は、熱圧着部(16)を示した図である。プレス板(28)は電熱バー(44)が複数内蔵されており、プレス板(28)全面が均一な温度になるように設計されている。さらに、電熱バー(44)はサーモスタットによって温度制御可能となっている。プレス板(28)は、間欠的に搬送する搬送装置上に設置したセンサによってICシート(4)が挿入された冊子がセットされたことを検出し、圧着用油圧シリンダー(27)によってICシート(4)とオーバーページ(3)を加熱圧着する。ページ保持板(25)は剥離性の良い非金属の基材であり、かつ熱伝導率が低いテフロン(登録商標)などの耐熱性樹脂を使用する。鋼などの金属は一般的に熱伝導率が高く、効率良く加熱、冷却するためには熱伝導率の高い金属材料を使用し、ライン速度を上げて効率的な製造工程を実現する。テフロンの熱伝導率は0.2W/mkであり、鉄の53W/mkに比べて著しく熱伝導性に劣るが、我々の実験結果では、テフロンであれば、厚さ0.8mm〜1.0mmプレス板(28)の温度130℃、加圧力2MPa以上、時間5秒程度で十分に融着が可能であった。テフロンは鋼のような金属板に比べて、剥離性が良く、加熱、冷却時間よりも剥離性を重視するため、テフロンを採用した。融着後冊子はICシート(4)とオーバーページ(3)がページ保持板(25)によって挟まれたまま冷却部(17)に送られ成型されるが、冷却部(17)の構造は、熱圧着部(16)におけるプレス板(28)が冷却水を循環している冷却プレートに置き換わるだけでその他の機構は同様なため、説明を省略する。
【0036】
冷却部(17)では、急激に冷却すると、冊子へ装用されたICシートの反り返りや曲がりが発生するため、19.5℃〜21℃で冷却し、0.58MPaで8秒間以上の加圧をする。これによって、例えば、軟化したPET−Gが紙ページの繊維に絡みついた状態で硬化し、オーバーページ(3)とICシート(4)が接着する。
【0037】
PET−Gは19.5℃〜21℃まで冷却すると融解前の状態に戻るため、紙に絡みついたPET−Gも凝固させることができる。また、この範囲まで冷却することで、半製品として排出した二丁付きIC冊子(1−2)を時間の空くことなく触れることを可能としている。
【0038】
また、冷却温度が19.5℃〜21℃未満の温度の場合又は冷却時間が8秒未満の場合などの急激な冷却では、熱可塑性樹脂材料が融解前の状態に戻らず、変形したままとなってしまう。
【0039】
熱圧着部(16)及び冷却部(17)を通過した後、図12に示すようにページ保持板(25)は離脱され、図4に示すページ保持板回収部(18)において自動回収される。
【0040】
図13はページ保持板回収装置の剥離部を示した図である。熱圧着された冊子は中央のICシート(4)と両側のオーバーページ(3)が融着された状態であり、その外側にページ保持板(25)が密着している。その状態から、剥離用エアシリンダ(45)の先端に取付けられている吸引サッカー(46)により基材(4)からページ保持板(25)が剥離される。この時ページ保持板(25)は剥離性の良い素材であるため、オーバーページ(3)が引っ張られ変形することはない。
【0041】
図14は、ページ保持板回収装置の回収部を示した図である。架台(47)上に固定されたモータ(48)と送りネジ(49)によって往復運動を行う往復台(50)上に固定された回収用エアシリンダ(51)の先端に取り付けられたグリッパー(52)により、剥離用エアシリンダ(45)によって剥離されたページ保持板(25)をつかみ、上部に持ち上げる。往復台(50)はモータ(48)と送りネジ(49)によって、図示しないセンサが取付けてある停止位置(図中点線部分)まで移動し、ページ保持板(25)を一対のガイド(53)の間に開放する。開放されたページ保持板(25)はベルトと駆動機構で構成されるページ保持板回収コンベア(21)によりページ保持板挿入部へ搬送される。
【0042】
なお、熱圧着部(16)及び冷却部(17)において用いるページ保持板(25)の表面に凹凸を設けることで、オーバーページ(3)とICシート(4)を接着させた表面にも凹凸模様が形成され、後のATMや発給機などの装置におけるめくり適性を向上させることができる。凹凸模様の付与されたページ保持板は平面仕上のページ保持板と比較して、オーバーページ(3)表面の摩擦係数を向上させると共に、オーバーページ(3)とICシート(4)の接着面積を増加できるため、ラミネート後の剥離強度の向上に繋がる。また、ページ保持板(25)を用いずに熱圧着、冷却を行った場合、製品は5mm程度反り返り、圧着ムラ、オーバーページの印刷面破損など品質不良を誘発する原因にもなる。
【0043】
ICシート(4)をオーバーページ(3)に接着させた二丁付きIC冊子(1−2)は、図4に示すICシート検査部(19)にて、ICシート(4)とオーバーシート(3)の接着状態を良否判別する。不良品は、冊子非常排出部(20)へ排出し、良品のみを搬送し、次の工程となる冊子断裁装置(図示せず)に送る。
【0044】
回収されたページ保持板(25)は、図4に示すページ保持板回収コンベア(21)で搬送され、ページ保持板挿入部(15)に戻り、また自動供給される。製造中、ページ保持板(25)は自動供給、熱圧着、冷却、自動回収、ページ保持板回収コンベア(21)で搬送の工程を連続的に繰り返される。
【0045】
保持板回収後の二丁付きIC冊子(1−2)は、搬送ライン上のICシート検査部(19)によって、ICシートをオーバーページに接着させた二丁付きIC冊子に対して、ICシート(4)とオーバーページ(3)の接着性の良否を検査する。
【0046】
このとき、図15に示すようにICシート(4)の熱可塑性樹脂が加熱及び加圧されることで、オーバーページ(3)の間から溶け出し、熱塑性樹脂材料がオーバーページ(3)からはみ出す問題が生じる。ICシート検査部(19)は、熱塑性樹脂材料がオーバーページ(3)からはみ出しているか否かの検査であり、はみ出している場合は、不良品として排出され、はみ出していない場合は良品とする。
【0047】
ICシート検査部(19)は、熱圧着部(16)後から冊子非常排出部(20)の間で行われる。図12に示すようにページ保持板(25)が二丁付きIC冊子(1−2)から外れた後に検査することが好ましい。ICシート検査部(19)は、図16に示すように撮影部(19−1)によってICシート(4)の領域を撮影し、撮影された撮影画像データと、あらかじめ定められた記憶部(19−2)に記憶された基準値とを演算部(19−3)で比較し、熱塑性樹脂材料がオーバーページ(3)からはみ出しているか否か判定する。ここでの基準値は、長手方向及び幅方向のサイズ並びにICシートの形状である。なお、撮影に支障がないように白熱球、発光ダイオード、ハロゲンランプ、HIDランプ、LEDスポット照明等を適宜設置することができる。
【0048】
ICシート検査部(19´)の別の形態としては、熱塑性樹脂材料にICの機能性に問題が生じない、赤外吸収材料、紫外線発光材料等の機能性材料を混入させておき、図17に示すように特定波長(紫外線、赤外線)を照射する照射部(19−4)によって特定波長を照射し、撮影部(19−1)によってICシート(4)の領域を撮影し、撮影された撮影画像データを、あらかじめ定められた記憶部(19−2)に記憶された基準値とを演算部(19−3)で比較し、熱塑性樹脂材料がオーバーページ(3)からはみ出しているか否か判定する。撮影画像データの濃度は、はみ出している領域は高濃度となり、はみ出していない領域は低濃度領域となる。よって、基準値については、濃度、長手方向及び幅方向のサイズ並びにICシートの形状とする。
【0049】
撮影部(19−1)は、CCDラインセンサカメラ又はCCDエリアセンサカメラ等によって反射画像データを撮影する。記憶部(19−2)は、ハードディスク、フィレキシブルディスク、MO及びUSB等、特に限定されるものではない。演算部(19−3)は、コンピュータ等の中央演算処理部(CPU)で行われる。照射部(19−4)は紫外線ランプ、赤外線ランプ等の光を照射できるものであれば特に限定されるものではない。
【0050】
ICシート検査部(19)において正常と判断された二丁付きIC冊子(1−2)のみ、図3に示すように次工程である冊子断裁装置への品質保証も行う。
【0051】
図4に示した二丁付き冊子供給部(11)、搬送部(12)、冊子開き部(13)、ICシート供給部(14)、ページ保持板挿入部(15)、熱圧着部(16)、冷却部(17)、ページ保持板回収コンベア(21)を備えるページ保持板回収部(18)、ICシート検査部(19)及び冊子非常排出部(20)を備えたIC挿入装置によって二丁付き冊子にICシートを挿入する方法を示す。図18に二丁付き冊子にICシートを挿入するフォーチャートを示す。
【0052】
第1の工程は、二丁付き冊子供給部によって、オーバーページから見開いた状態で積載された二丁付き冊子を搬送部に送り出す。
【0053】
第2の工程は、冊子開き部によって、第1の工程によって搬送部に送り出された二丁付き冊子のオーバーページをV字型にめくる。
【0054】
第3の工程は、ICシート供給部によって、第2の工程によってV字型にめくられたオーバーページの間に熱可塑性樹脂で覆われたICシートを挿入する。
【0055】
第4の工程は、ページ保持板挿入部によって、第3の工程によってICシートが挿入された二丁付き冊子のV字型にめくられたオーバーページの外側に、剥離性の良い非金属のページ保持板を挿入する。
【0056】
第5の工程は、熱圧着部によって、ICシート、オーバーページ、ページ保持板が密着した状態でプレス板によってページ保持板の両側面から熱圧着する。
【0057】
第6の工程は、冷却部によって、ICシート、オーバーページ、ページ保持板が密着した状態で冷却プレス板によってページ保持板の両側面から冷却する
【0058】
第7の工程は、ページ保持板回収部によって、熱圧着部及び冷却部を通過したページ保持板を回収し、保持板回収コンベアによってページ保持板挿入部に送る。
【0059】
第8の工程は、ICシート検査部によって、ICシートをオーバーページに接着させた二丁付きIC冊子に対して、ICシートとオーバーページの接着性の良否を検査する。
【0060】
第8の工程のICシートとオーバーページの接着性の良否の検査について、詳細に説明する。第8−1の工程で、撮影部によってICシートの領域を撮影し、撮影された撮影画像データを取得する。第8−2の工程で、取得した撮影画像データとあらかじめ記憶部で記憶された基準値と演算部で比較し、熱可塑性樹脂材料がオーバーページからはみ出しているか否か判定する。第8−3の工程で、異常と判定された二丁付きIC冊子について、冊子排出部へ排出する。第8−4の工程で、正常と判断された二丁付きIC冊子について、次工程である断裁工程へ送る。
【符号の説明】
【0061】
1 IC冊子、単IC冊子
1−1 二丁付き冊子
1−2 二丁付きIC冊子
2 中味ページ
3 オーバーページ
4 ICシート
4´ はみ出した熱硬化性樹脂
5 表表紙
6 裏表紙
11 二丁付き冊子供給部
12 搬送部
13 冊子開き部
14 ICシート供給部
15 ページ保持板挿入部
16 熱圧着部
17 冷却部
18 ページ保持板回収部
19 ICシート検査部
20 冊子非常排出部
21 ページ保持板回収コンベア
22 送り出し用エアサッカー
23 開き用エアサッカー
24 ガイドバー
25 ページ保持板
26 ガイド板
27 圧着用油圧シリンダー
28 プレス板
29 成型用油圧シリンダー
30 冷却プレス板
31 押出用エアシリンダ
32 押上用エアシリンダ
33 挿入用エアシリンダ
34 先端のグリッパー
35 往復台
36 往復用送りネジ
37 モータ
38 挿入用エアシリンダ
39 グリッパー
40 架台
41 送りモータ
42 送りネジ
43 往復台
44 電熱バー
45 剥離用エアシリンダ
46 吸引サッカー
47 架台
48 固定されたモータ
49 送りネジ
50 往復台
51 回収用エアシリンダ
52 グリッパー
53 ガイド
A 二丁付き冊子製造装置
B IC挿入装置
C 冊子断裁装置
D IC書き込み装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二丁付き冊子にICシートを挿入するためのICシート挿入装置であって、
オーバーページから見開いた状態で積載された二丁付き冊子を搬送部に送り出すための二丁付き冊子供給部と、
前記二丁付き冊子のオーバーページをV字型にめくるための冊子開き部と、
前記V字型にめくられたオーバーページの間に熱可塑性樹脂で覆われた前記ICシートを挿入するためのICシート供給部と、
前記ICシートが挿入された二丁付き冊子の前記V字型にめくられたオーバーページの外側に、ページ保持板を挿入するためのページ保持板挿入部と、
前記ICシート、前記オーバーページ、前記ページ保持板が密着した状態でプレス板によって前記ページ保持板の両側面から熱圧着する熱圧着部と、
前記熱圧着後、前記ICシート、前記オーバーページ、前記ページ保持板が密着した状態で冷却プレス板によって前記ページ保持板の両側面から冷却する冷却部と、
前記熱圧着部及び前記冷却部を通過した前記ページ保持板を回収し、保持板回収コンベアによって前記ページ保持板挿入部に送るためのページ保持板回収部と、
前記ICシートをオーバーページに接着させた二丁付きIC冊子に対して、前記ICシートと前記オーバーページの接着性の良否を検査するためのICシート検査部と、
前記ICシート検査部において不良と判定された不良品を輩出するための冊子非常排出部とを備えたICシート挿入装置。
【請求項2】
前記ICシート検査部は、前記ICシートと前記オーバーページの接着した領域を撮影して撮影画像データを取得する撮影部と、
あらかじめ基準値を記憶するための記憶部と、
前記撮影画像データと前記基準値を比較して前記ICシートと前記オーバーシートの接着性の良否を判定する演算部とを備えて成る請求項1記載のICシート挿入装置。
【請求項3】
二丁付き冊子供給部、搬送部、冊子開き部、ICシート供給部、ページ保持板挿入部、熱圧着部、冷却部、ページ保持板回収コンベアを備えるページ保持板回収部、ICシート検査部及び冊子非常排出部を備えたIC挿入装置によって二丁付き冊子にICシートを挿入する方法であって、
前記二丁付き冊子供給部によって、オーバーページから見開いた状態で積載された二丁付き冊子を搬送部に送り出す二丁付き冊子供給工程と、
前記冊子開き部によって、前記搬送部に送り出された前記二丁付き冊子のオーバーページをV字型にめくる冊子開き工程と、
前記ICシート供給部によって、前記V字型にめくられたオーバーページの間に熱可塑性樹脂で覆われた前記ICシートを挿入するためのICシート供給工程と、
前記ページ保持板挿入部によって、前記ICシートが挿入された二丁付き冊子の前記V字型にめくられたオーバーページの外側に、ページ保持板を挿入するためのページ保持板挿入工程と、
前記熱圧着部によって、前記ICシート、前記オーバーページ、前記ページ保持板が密着した状態でプレス板によって前記ページ保持板の両側面から熱圧着する熱圧着工程と、
前記冷却部によって、前記ICシート、前記オーバーページ、前記ページ保持板が密着した状態で冷却プレス板によって前記ページ保持板の両側面から冷却する冷却工程と、
前記ページ保持板回収部によって、前記熱圧着部及び前記冷却部を通過した前記ページ保持板を回収し、保持板回収コンベアによって前記ページ保持板挿入部に送るためのページ保持板回収工程と、
前記ICシート検査部によって、前記ICシートを前記オーバーページに接着させた二丁付きIC冊子に対して、ICシート検査部によって、前記ICシートをオーバーページに接着させた二丁付きIC冊子に対して、前記ICシートと前記オーバーページの接着性の良否を検査するためのICシート検査工程と、
前記冊子非常排出部によって、ICシート検査部により不良と判定された不良品を排出する冊子非常排出工程によって製造されることを特徴とする二丁付き冊子にICシートを挿入する方法。
【請求項4】
前記ICシート検査工程は、
撮影部によって、前記ICシートと前記オーバーページの接着した領域を撮影して撮影画像データを取得し、
演算部によって、前記取得した撮影画像データとあらかじめ記憶部に記憶した基準値を比較して前記ICシートと前記オーバーシートの接着性の良否を判定することを特徴とする請求項3記載の二丁付き冊子にICシートを挿入する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−121249(P2012−121249A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274721(P2010−274721)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】