ICタグ付き書物及びICタグ付き書物の製造方法
【課題】安価でありながら、書物の背にICタグを装着しても製本後の配送中や陳列の際に受ける衝撃によりICタグが故障することを回避できる技術を提供する。
【解決手段】ICタグ付き書物10は、複数の折丁を丁合し、表紙12が被せられる本文14と、ワイヤを用いて形成されたワイヤアンテナ30及びそのワイヤアンテナ30に接続されたICチップ32を含むICタグ16と、本文14のうち小口の反対側に位置した背22に形成され、ワイヤアンテナ30の外形形状及びICチップ32の外形形状に対応して小口に向けて窪み、その内部にICタグ16を格納する格納部38とを備える。ワイヤアンテナ30を用いているので、ICタグ16の製造コストを大幅に低下させることができ、格納部38にワイヤアンテナ30及びICチップ32を格納しているので、ICタグ16に外力が作用することを低減させてICタグ16の性能の低下を防止することができる。
【解決手段】ICタグ付き書物10は、複数の折丁を丁合し、表紙12が被せられる本文14と、ワイヤを用いて形成されたワイヤアンテナ30及びそのワイヤアンテナ30に接続されたICチップ32を含むICタグ16と、本文14のうち小口の反対側に位置した背22に形成され、ワイヤアンテナ30の外形形状及びICチップ32の外形形状に対応して小口に向けて窪み、その内部にICタグ16を格納する格納部38とを備える。ワイヤアンテナ30を用いているので、ICタグ16の製造コストを大幅に低下させることができ、格納部38にワイヤアンテナ30及びICチップ32を格納しているので、ICタグ16に外力が作用することを低減させてICタグ16の性能の低下を防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグが付属されるICタグ付き書物及びICタグ付き書物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
書物を管理するシステムでは、一般に、RFID(Radio Frequency IDentification:非接触認証)が用いられている。
【0003】
より詳しくは、RFIDを採用したシステムでは、電子タグ(ICタグ)が各書物に取り付けられる。ICタグは、固有情報等を有しており、外部のリーダライタとの間で無線通信を実行可能である。管理者は、リーダライタを介してICタグの固有情報等を取得し、取得した情報に基づいて、書物の生産管理や在庫管理の他、現在位置の管理等を行うことが可能である。
【0004】
ICタグは、例えば、長方形の可撓性を有する基板を有し、基板の略全体に渡って、ダイポールアンテナが一体に設けられている。ダイポールアンテナには、導電性接着剤を用いてICチップが接続されている。外部のリーダライタは、ダイポールアンテナを介して、ICチップに記憶されている固有情報等を読み出すことができる。
【0005】
この種のICタグは、例えば、印刷された紙片の集合物である本文の平坦な背と当該背を覆う背表紙との間に配置され、接着剤により固定される(例えば特許文献1〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−351939号公報
【特許文献2】特開2002−326474号公報
【特許文献3】特開2003−63655号公報
【特許文献4】特開2009−73174号公報
【特許文献5】特開2009−76046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1乃至3が開示する書物では、ICタグが、本文の背又は背表紙に貼り付けられている。一般に、ICタグの厚さはICチップの部分で大きくなっており、これらの書物では、ICチップを覆う背表紙の部分が突出する。
【0008】
突出している背表紙の部分は、書物の搬送や陳列時等に他の書物等と摺動し易く、このため、ICチップとアンテナとの接合部に亀裂が入り、ICタグの通信性能が低下する虞がある。
【0009】
特許文献4及び5が開示する書物では、ICタグが、平坦な本文の背と背表紙との間の接着層に埋め込まれており、ICチップを覆う背表紙の部分が突出することはないと思われる。
【0010】
しかしながら、ICチップを覆う背表紙の部分に外部から衝撃が加わった場合には、接着層を介して衝撃がICチップに伝わる。このため、これらの書物でも、衝撃によって、ICチップとダイポールアンテナとの接合部に亀裂が入り、ICタグの通信性能が低下する虞がある。
また、これらの書物では、接着層がICタグを埋め込むのに十分な厚さを有していなければならず、多量の接着剤が必要になる。
【0011】
一方、コミック本等では、「背」が平らになる切断無線綴じやホットメルト接着剤が折り部に浸透しやすいようにスリット孔を設けた網代綴じといった無線綴じ製本法が用いられている。そして、ICタグインレットを装着するには、背にホットメルト接着剤をコーティングし、ICタグインレットを貼付して本文を表紙で包んで製本を行っていた。この場合、ICタグインレットは、アンテナを形成するためにアルミ箔をエッチングして製造する必要があるため、その分コストが掛かっていた。また、本文の背に貼付されたICタグインレットに搭載されているICチップは、ある程度の厚みを有するため、ICタグインレットのアンテナ部より突出してしまい、搬送中や陳列等の際に受ける衝撃により、ICチップ又はICチップとアンテナとの接合部が破損し、ICタグが通信不能になるケースが多かった。
【0012】
そこで本発明は、安価でありながら、書物の背にICタグを装着しても製本後の配送中や陳列の際に受ける衝撃によりICタグが故障することを回避できる技術の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明はICタグ付き書物及びICタグ付き書物の製造方法を提供する。
【0014】
〔ICタグ付き書物〕
解決手段1:本発明のICタグ付き書物は、複数の折丁を丁合し、表紙が被せられる本文と、ワイヤを用いて形成されたワイヤアンテナ及びそのワイヤアンテナに接続されたICチップを含むICタグと、本文のうち小口の反対側に位置した背に形成され、ワイヤアンテナの外形形状及びICチップの外形形状に対応して小口に向けて窪み、その内部にICタグを格納する格納部とを備えることを特徴とするICタグ付き書物である。
【0015】
解決手段1によれば、ICタグ付き書物は、本文とICタグとを備えており、この本文は、複数の折丁を丁合し、外側から表紙が被せられる。ICタグは、ワイヤを用いて形成されたワイヤアンテナ及びそのワイヤアンテナに接続されたICチップを含み、外部通信手段からの電波で非接触通信を行うことができる。
【0016】
ここで、本文には格納部が形成される。詳しくは、格納部は、本文の背に形成され、ワイヤアンテナの外形形状及びICチップの外形形状に対応して小口に向けて窪んでいる。そして、ICタグは、この格納部に格納されている。これにより、ICタグに含まれるワイヤアンテナ及びICチップは、その全ての部分が本文の背に形成された格納部の内部に格納されているため、本文の背よりも表紙側に突出しない。
【0017】
この結果、製本後、つまり、書籍の梱包作業、搬送作業や陳列作業等の際に本文の背に外力が作用しても、本文の背(格納部以外の部分)が外力を受け止めることになるため、ICチップやアンテナに外力が作用することを低減させることができる。したがって、ICチップやこのICチップとアンテナとの接合部、アンテナ自体への衝撃は緩和され、ICタグの性能の低下を防止(ICチップへの影響を低減)することができる。
【0018】
また、ICタグのアンテナに関しては、ワイヤアンテナを用いているので、アンテナのコストのみならず、ICタグの製造コストを大幅に低下させることができる。この点、従来のインレット(フィルム基材/アンテナ/ICチップ)を使用する場合、アンテナパターンはICチップに合わせて決定しているから、仕様や設計変更によりICチップの性能が変わると、アンテナパターンも変更しなければならない。従来のインレットのアンテナパターンは、アルミ箔をエッチングして製造しているため、アンテナパターンの変更には、手間とコストがかかる。
【0019】
これに対して、本解決手段では、仕様や設計変更によりICチップの性能が変わると、もちろんアンテナパターンや格納部の形状を変更しなくてはならないが、ワイヤアンテナ場合は、ワイヤの形状や長さを簡単に変更することができるので、従来のインレットほど設計変更時のコストや手間がかからない。
【0020】
解決手段2:本発明のICタグ付き書物は、解決手段1に記載のICタグ付き書物において、折丁は、複数の折丁ごとに異なる位置及び大きさの凹みを有し、格納部は、折丁の凹みが連結することにより形成されていることを特徴とするICタグ付き書物である。
【0021】
解決手段2によれば、折丁は、複数の折丁ごとに異なる位置及び大きさの凹みを形成し、その凹みを連結することにより格納部を形成しているので、書物の厚み方向や書物の天地方向に複雑に入り組んだ形状のICタグであっても、その凹みの組み合わせによりICタグの形状に合わせた格納部を形成することができ、その内部にICタグを確実に格納することができる。
【0022】
解決手段3:本発明のICタグ付き書物は、解決手段1又は2に記載のICタグ付き書物において、ワイヤアンテナは、その形状がワイヤアンテナの長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた形状であり、格納部は、ワイヤアンテナの形状に対応して、ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた溝であることを特徴とするICタグ付き書物である。
【0023】
解決手段3によれば、ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた形状に対応して、格納部の溝が形成されているので、ICタグ及びワイヤアンテナの外形形状に一致した格納部によって、ICチップやワイヤアンテナを確実に保護し、ワイヤアンテナのアンテナ形状が外力によって変形してしまうことを防止することができ、ICタグの通信性能の低下を防止することができる。
また、解決手段3によれば、格納部の溝は、ワイヤアンテナが長手方向に直線状である場合とは異なり、本文の複数の頁(折丁)にまたがって形成することができるので、格納部となるべき凹みを形成することで発生する本文の各ページ同士の未接着領域と、本文と背表紙との未接着領域が各頁(各折丁)に分散されることとなり、より精度の高い製本強度(各頁同士の結合度と、本文と背表紙の結合度)が得られる。つまり、ワイヤアンテナが長手方向に直線状である場合には、その形状に合わせて凹みも直線状に形成されることになるため、未接着領域が直線状に存在してしまうことになる。そうすると、未接着領域がある程度かたまって存在してしまい、各頁同士の結合度と、本文と背表紙の結合度とが低下してしまう恐れがある。これに対して、解決手段3では、ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた形状に対応して、格納部の溝が形成されているので、本文と背表紙との間等に未接着領域が存在するとしても、その未接着領域が各頁(各折丁)に分散され、各頁同士の結合度や、本文と背表紙との結合度の低下を最小限に抑えることができる。
【0024】
解決手段4:本発明のICタグ付き書物は、解決手段1から3のいずれかに記載のICタグ付き書物において、格納部は、ICチップを格納する部分が、ワイヤアンテナを格納する部分よりも深く窪んでいることを特徴とするICタグ付き書物である。
【0025】
ICチップとアンテナとを比較すると、ICチップの方が厚みが厚く、それだけICチップの方が突出しているものである。解決手段4によれば、ICチップを格納する部分については、ワイヤアンテナを格納する部分よりも深く窪ませることによって、ICチップをより深く格納することができ、ICチップの厚みを吸収するとともに、外部からの衝撃をより低減させることができる。
【0026】
解決手段5:本発明のICタグ付き書物は、解決手段1から4のいずれかに記載のICタグ付き書物において、ICチップは、その上面が格納部の底面と対向して格納部に格納されることを特徴とするICタグ付き書物である。
【0027】
解決手段5によれば、ICチップは、その上面が格納部の底面と対向して格納部に格納されるので、ICチップを書物の表紙側ではなく、より本文側に近い位置に配置することができ、ICチップの保護を強化することができる。
【0028】
〔ICタグ付き書物の製造方法〕
解決手段6:本発明のICタグ付き書物の製造方法は、表紙が被せられる本文の背に、ワイヤを用いて形成されたワイヤアンテナ及びそのワイヤアンテナに接続されたICチップを含むICタグを格納する格納部を有するICタグ付き書物の製造方法であって、情報を用紙に印刷した複数の刷り本に、格納部となるべき孔を形成する孔形成工程と、複数の刷り本を折り畳んで折丁を作成することにより、刷り本に形成した各孔を重ね合わせて折丁の内部に小空間を形成する折丁作成工程と、折丁を丁合して本文を作成することにより、折丁に形成した小空間を連結させて本文の内部に連結空間を形成する本文作成工程と、本文のうち小口の反対側に位置した背の端部を切削して連結空間を開口させることにより、本文の背に格納部を形成する格納部形成工程と、本文の背に背糊を塗布する塗布工程と、表紙のうち本文の背に接触する位置にICタグを仮留めする仮留め工程と、本文に表紙を被せて本文と表紙とを背糊によって結合させることにより、格納部の内部にICタグを格納する格納工程と、本文及び表紙を断裁して仕上げを行う仕上げ工程とを備えることを特徴とするICタグ付き書物の製造方法である。
【0029】
本発明のICタグ付き書物の製造方法は、例えば以下に示される流れに沿って製造工程が進行する。
〔孔形成工程〕
情報を用紙に印刷した複数の刷り本に、格納部となるべき孔を形成する。孔を形成する位置は、刷り本の折り数によっても変わるが、基本的には折り畳んだ後に、形成した孔が重なる位置に孔を形成する。
【0030】
〔折丁作成工程〕
複数の刷り本を折り畳んで折丁を作成することにより、刷り本に形成した各孔を重ね合わせて折丁の内部に小空間(空隙)を形成する。刷り本に形成した各孔が重なることにより、小さな空間が形成される。
【0031】
〔本文作成工程〕
折丁を丁合して本文を作成することにより、折丁に形成した小空間を連結させて本文の内部に連結空間を形成する。各小空間を連結させることにより、本文の内部に空洞状の連結空間が形成される。
【0032】
〔格納部形成工程〕
本文のうち小口の反対側に位置した背の端部を切削して連結空間を開口させることにより、本文の背に格納部を形成する。連結空間の一部を開口させることにより、本文の背に格納部が露出する。
【0033】
〔塗布工程〕
本文の背に背糊を塗布する。本文の背に背糊を塗布する際には、本文の背のうち格納部を除いた部分に背糊を塗布することが好ましい。
【0034】
〔仮留め工程〕
表紙のうち本文の背に接触する位置にICタグを仮留めする。ICタグの仮留めは、専用の粘着剤等を用いて行い、ICタグを位置決めする。ICタグを仮留めする位置は、ICタグのアンテナ及びICチップが、本文に形成された格納部に対向する位置である。
【0035】
〔格納工程〕
本文に表紙を被せて本文と表紙とを背糊によって結合させることにより、格納部の内部にICタグを格納する。本文に表紙を被せると、自動的にICタグが格納部に格納される。
【0036】
〔仕上げ工程〕
本文及び表紙を断裁して仕上げを行う。この工程では、例えば二方裁ち工程や三方裁ち工程等を採用することができる。この工程により、冊子形状のICタグ付き書物が完成する。
【0037】
このように、解決手段6によれば、複数の刷り本に格納部となるべき孔を予め形成しておき、刷り本を折り畳んで折丁を作成しつつ小空間を形成し、折丁を丁合しつつ連結空間を形成し、背切りをするとともに連結空間を開口させて格納部を形成するので、複数の刷り本に格納部となるべき孔を予め形成しておきさえすれば、あとは通常の製造工程を変更することなく、本文の背に簡単に格納部を形成することができる。
【0038】
この点、一旦本文を形成してから、本文の背に溝(格納部)を形成することも考えられるが、完成した本文の背に溝を形成することは難しく、ましてやアンテナのパターン形状が複雑であればあるほど溝を掘り込む作業は大変手間となり、技術的にも困難である。
これに対して、本解決手段では、複数の刷り本に格納部となるべき孔を予め形成しておくといった簡単な前処理を施すだけで、アンテナのパターン形状が複雑なものであっても、その複雑なパターン形状に対応した格納部を本文の背に簡単に形成することができるという利点がある。
【0039】
解決手段7:本発明のICタグ付き書物の製造方法は、解決手段6に記載のICタグ付き書物の製造方法において、ワイヤアンテナは、その形状がワイヤアンテナの長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた形状であり、孔形成工程では、ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向の形状に対応させて、複数の刷り本ごとに異なる位置及び異なる大きさで孔を形成し、折丁作成工程では、複数の折丁ごとに異なる位置及び異なる大きさで小空間が形成され、本文作成工程では、複数の折丁ごとに異なる位置及び異なる大きさで形成された小空間が連結して本文の内部に連結空間が形成され、格納部形成工程では、ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向の形状に対応して、ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた溝が形成されることを特徴とするICタグ付き書物の製造方法である。
【0040】
解決手段7では、ワイヤアンテナは、その形状がワイヤアンテナの長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた形状である。そして、孔形成工程では、ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向の形状に対応させて、複数の刷り本ごとに異なる位置及び異なる大きさで孔を形成する。ワイヤアンテナの長手方向については、刷り本の天地方向における孔の大きさ(面積)を調整することで対応可能である。ワイヤアンテナの幅方向については、各刷り本の厚み方向における孔の位置を調整することで対応可能である。折丁作成工程及び本文作成工程では、刷り本に形成した孔に応じて、それぞれ小空間及び連結空間が形成される。その結果として、格納部形成工程では、ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向の形状に対応して、ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた溝が形成される。
【0041】
このように、解決手段7によれば、ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向の形状を考慮した孔を形成することにより、ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向の形状に対応した溝が自然と形成され、複雑なアンテナパターン形状に対応した格納部を本文の背に簡単に形成することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、安価でありながら、書物の背にICタグを装着しても製本後の配送中や陳列の際に受ける衝撃によりICタグが故障することを回避できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係るICタグ付き書物10を概略的に示す斜視図である。
【図2】本文14の背22から背表紙24を剥がした状態を示す概略的な斜視図である。
【図3】図1のIII−III線に沿うICタグ付き書物10のICチップ32周辺の概略的な部分断面図である。
【図4】ICタグ付き書物10の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【図5】図2のB線部分に配置される刷り本の様子を概略的に示す平面図である。
【図6】図2のA線部分,C線部分,D線部分に配置される刷り本の様子を概略的に示す平面図である。
【図7】刷り本の折り畳み方を概略的に示す平面図である。
【図8】刷り本を折って得られた折丁を丁合する様子を概略的に示す斜視図である。
【図9】複数の折丁を丁合してからクランプして得られる本文を概略的に示す斜視図である。
【図10】本文の背にミーリングを行う様子を概略的に示す斜視図である。
【図11】ミーリング後の本文を概略的に示す斜視図である。
【図12】本文の背に接着剤を塗布する様子を概略的に示す斜視図である。
【図13】接着剤が塗布された本文の背にICタグ及び背表紙を接着する様子を概略的に示す斜視図である。
【図14】本文及び表紙の三方を三方裁ちすることにより得られたICタグ付き書物10を概略的に示す斜視図である。
【図15】ICタグ付き書物10の耐久試験について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るICタグ付き書物10を概略的に示す斜視図である。
ICタグ付き書物10は、例えば、コミック等の無線綴じ本である。より詳しくは、ICタグ付き書物10は、表紙12、本文14、及び、ICタグ16を有する。本文14は、複数の紙片の集合物であり、扁平な直方体形状を有する。また、本文14は、複数の折丁を丁合して形成され、表紙12が被せられる。表紙12は、本文14の3つの小口、即ち、天、地、及び、前小口を除く部分を覆っている。
【0045】
従って、表紙12は、本文14の2つの広い面を覆う表表紙18及び裏表紙20と、本文14の背22を覆う背表紙24とを有する。表紙12は、展開したときに長方形形状を有し、背表紙24は、表表紙18と裏表紙20との間に位置している。背表紙24は、本文14の背22に対応する長方形形状を有し、背表紙24と本文14の背22との間に、ICタグ16が配置されている。
【0046】
ICタグ16及び背表紙24は、接着剤等によって背22に固定されている。なお、本実施形態では、本文14は、糸や針金を用いずに無線綴じされており、本文14の紙同士も、本文14の背22に塗布された接着剤によって相互に固定されている。
【0047】
図2は、本文14の背22から背表紙24を剥がした状態を示す概略的な斜視図である。
図2に示したように、ICタグ16は、ワイヤを用いて形成されたワイヤアンテナ30と、ワイヤアンテナ30に接続されたICチップ32を含む。本実施形態では、ICタグ16は、電源を有さないパッシブタイプのICタグである。
ICタグ16は、UHF帯を利用した無線ICタグであり、左右の1/4波長のワイヤアンテナ30−1,30−2によって構成される半波長ダイポールアンテナが使用される。
【0048】
ワイヤアンテナ30は、細線形状の導線からなるワイヤを用いてアンテナ状に形成されたものである。導線としては、銅、鉄、アルミニウム、その他の金属等を使用することができる。また、ワイヤアンテナ30は、その形状がワイヤアンテナ30の長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた形状であり、具体的には、ICチップ32を中心として、ICチップ32から「コの字形状」及び「逆コの字形状」が連続して配置された形状である。ワイヤアンテナ30−1をICチップ32を中心として180度回転させると、ワイヤアンテナ30−2に重なる。なお、ワイヤアンテナ30は、各種の形状を採用することができ、図のような折れ曲がった形状でなくてもよい。
【0049】
ICチップ32は、ワイヤアンテナ30−1とワイヤアンテナ30−2との中央部分に位置して取り付けられ、ワイヤアンテナ30に電気的に接続されている。ICチップ32は、固有情報等のデータを記憶するメモリを有するとともに、ワイヤアンテナ30を介して外部のリーダライタと無線通信を行う通信機能、及び、通信結果に基づいて、メモリ中のデータの読み出しや書き換え等を行う機能を有する。
【0050】
一方、ICタグ16の外形形状に対応して、本文14のうち前小口の反対側に位置した背22には、格納部38が形成されている。格納部38は、ワイヤアンテナ30の外形形状及びICチップ32の外形形状に対応して前小口に向けて窪み、その内部にICタグ16を格納する部分である。格納部38は、ワイヤアンテナ30の外形形状及びICチップ32の外形形状に対応して、ワイヤアンテナ30の長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた溝であり、断面が長方形形状の溝である。
【0051】
格納部38は、ICタグ16の外形形状に沿った形状でもよいが、若干の余裕を持たせて少し幅広に溝を形成することもできる。このようにすれば、ワイヤアンテナ30の位置決めを容易化することができる。格納部38の開口面積は、格納部38の開口を通じてICチップ32及びワイヤアンテナ30を格納部38の内部に十分に収容できる大きさに設定するのが好ましい。
【0052】
図3は、図1のIII−III線に沿うICタグ付き書物10のICチップ32周辺の概略的な部分断面図である。図3に示したように、格納部38は、仮留め用の粘着剤等によってワイヤアンテナ30及び補強板34が背表紙24に貼り付けられた状態において、ICチップ32を受け入れている。
補強板34は、ICチップ32の土台(台座)となる部材であり、ICチップ32を補強する役割を果たすものであるが、仕様や設計内容によっては配置しなくてもよい。
【0053】
本実施形態では、格納部38は、主としてICチップ32を格納するチップ格納部38aと、主としてワイヤアンテナ30を格納するアンテナ格納部38bとを有する。そして、ICチップ32を格納するチップ格納部38aは、ワイヤアンテナ30を格納するアンテナ格納部38bよりもICチップ32の厚み分以上深く窪んでいる。ICチップ32をより深く格納することによって、ICチップ32の厚みを吸収するとともに、ICチップ32への外部からの衝撃をより低減させることができる。
【0054】
このとき、ICチップ32の上面32aは、チップ格納部38aの底面と対向してチップ格納部38aに格納されている。ICチップ32を背表紙24側ではなく、より本文14側に近い位置に配置することにより、ICチップ32の保護を強化することができる。ここで、チップ格納部38aの深さは自由に設定できるものであるが、例えば、ICチップ32の上面32aがチップ格納部38aの底に接しないように十分な深さをもって深さを設定すれば、ICチップ32がワイヤアンテナ30等によって吊られた状態となり、外部からの衝撃を吸収することができる。一方、ICチップ32の上面32aがチップ格納部38aの底に接するように格納部38の深さを設定すれば、ICチップ32をチップ格納部38aの内部にしっかりと固定することができる。
【0055】
なお、ICチップ32とワイヤアンテナ30との接合部42は、例えば、ACP(異方性導電ペースト)によって形成されているが、他の公知の方法を用いて、ICチップ32とワイヤアンテナ30とが接続されていてもよい。
【0056】
以下、図4のフローチャートを参照しながら、図5〜図14を用いて、ICタグ付き書物10の製造方法について説明する。
図4は、ICタグ付き書物10の製造方法を概略的に示すフローチャートである。図5は、図2のB線部分に配置される刷り本の様子を概略的に示す平面図である。図6は、図2のA線部分,C線部分,D線部分に配置される刷り本の様子を概略的に示す平面図である。図7は、刷り本の折り畳み方を概略的に示す平面図である。図8は、刷り本を折って得られた折丁を丁合する様子を概略的に示す斜視図である。図9は、複数の折丁を丁合してからクランプして得られる本文を概略的に示す斜視図である。図10は、本文の背にミーリングを行う様子を概略的に示す斜視図である。図11は、ミーリング後の本文を概略的に示す斜視図である。図12は、本文の背に接着剤を塗布する様子を概略的に示す斜視図である。図13は、接着剤が塗布された本文の背にICタグ及び背表紙を接着する様子を概略的に示す斜視図である。図14は、本文及び表紙の三方を三方裁ちすることにより得られたICタグ付き書物10を概略的に示す斜視図である。
【0057】
〔孔形成工程;S10〕
図4に示したように、ICタグ付き書物10の製造方法では、まず、孔形成工程S10が実行される。
孔形成工程S10では、格納部38に相当する部分を除去するための孔76(格納部38となるべき孔76)を開ける。孔形成工程S10では、図5に示したように、本文14の中間層を構成することになる刷り本74の所定の位置に四角形形状や多角形形状の孔76が形成される。刷り本74は、刷り本用の用紙に情報を印刷したシートである。本実施形態では、本文14の喉部側に配置される各頁の側部に孔76が形成されている。孔76が形成される刷り本74の数又は頁数は、ICタグ16の基板26の幅に対応して決定される。なお、孔76は、刷り本74の折り目からは所定距離にて離間している。孔76は、例えば抜き刃を用いて形成することができる。刷り本74のうち、上下3つの孔76は、主としてアンテナ格納部38bに対応しており、中央の比較的大きな凸形状の孔76は、主としてチップ格納部38aに対応している。本実施形態では、孔76は四角形形状等であるが、三角形形状や楕円形状等であってもよい。
【0058】
図5に示す刷り本74は、図2のB線部分に配置される折丁の展開図であり、これと同様に、図6(A)に示したように、図2のA線部分に配置される折丁用の刷り本78、図6(C)に示したように、図2のC線部分に配置される折丁用の刷り本82、図6(D)に示したように、図2のD線部分に配置される折丁用の刷り本86も同様に用意する必要がある。
【0059】
刷り本78及び刷り本82には、それぞれ格納部38となるべき孔80及び孔84が形成されているが、刷り本86には孔が形成されていない。このように、各孔は、ワイヤアンテナ30の長手方向及び幅方向の形状に対応させて、複数の刷り本ごとに異なる位置及び異なる大きさで形成されており、各刷り本に形成される各孔は、すべての刷り本が折り畳まれて折丁となり、その折丁が丁合された本文14となった場合に、それぞれの孔が重なって格納部38を形成する位置に配置されている。また、実際には、図2のA線部分とB線部分との間、及び、図2のB線部分とC線部分との間にも、孔の配列が異なる刷り本を用意する必要があるが、図示は省略している。
【0060】
〔折丁作成工程;S12〕
次に、折丁作成工程S12が実行される。この工程では、各刷り本が所定の折り方によって折り畳まれる。より詳しくは、図7(A)に示したように、展開状態の刷り本74を用意し、図7(B)に示したように、刷り本74を左右方向の中央の折り線で2つ折りにし、図7(C)に示したように、天地方向の中央線で2つ折りにし、図7(D)に示したように、刷り本74を左右方向の中央の折り線で2つ折りにする。これにより、表裏面あわせて16頁の折丁が完成する。折丁作成工程S12によって、刷り本74に形成した各孔76を重ね合わせて折丁の内部に小空間X1が形成される。なお、刷り本78,82,86についても同様の折り方で折り畳む。そして、折丁作成工程S12では、複数の折丁ごとに異なる位置及び異なる大きさで小空間X1が形成される。
【0061】
〔本文作成工程;S14〕
次に、本文作成工程S14が実行される。本文作成工程S14では、刷り本74,78,82,86を折って得られる折丁74a,78a,82a,86aは、図8に示したように、孔が形成されていない折丁86aに、孔が形成されている折丁74a,78a,82aが挟まれて丁合される。そして、丁合された折丁74a,78a,82aは突き揃えられ、図示しないクランプで把持して固定され、これにより図9に示したように、各折丁が集合した本文14が得られる。各折丁を丁合して本文14を作成することにより、複数の折丁ごとに異なる位置及び異なる大きさで形成された小空間X1(図8参照)が連結して、本文14の内部に連結空間X2(図9参照)が形成される。
【0062】
〔格納部形成工程;S16〕
次に、格納部形成工程S16が実行される。格納部形成工程S16では、本文14の背22の端部を切削することにより、連結空間X2(図9参照)を開口させる。図10に示したように、例えばミーリング刃(回転のこぎり刃)54を用いて本文14の背22を3mm程度ミーリングすることによって行われる。この格納部形成工程S16によって、連結空間X2の閉空間が開口し、図11に示したように、本文14の背22に格納部38が形成される。これにより、本文14を形成する折丁に関しては、複数の折丁ごとに異なる位置及び大きさの凹みが本文14の背22側に形成される。
【0063】
例えば、仮に15個の折丁を使用してICタグ付き書物10を製造すると仮定すれば、下から1〜3個目の折丁は凹みなしであり(図2中D線部分参照)、下から4〜6個目の折丁は第1パターンの凹みを有し(図2中C線部分参照)、下から7〜9個目の折丁は第2パターンの凹みを有し(図2中B線部分参照)、下から10〜12個目の折丁は第3パターンの凹みを有し(図2中A線部分参照)、下から13〜15個目の折丁は凹みなしである(図2中D線部分参照)、といった具合である。そして、これらの凹みが連結することにより本文14の背22側に格納部38が形成される。この格納部38は、ワイヤアンテナ30の長手方向及び幅方向の形状に対応して、ワイヤアンテナ30の長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた溝である。
【0064】
〔塗布工程;S18〕
次に、塗布工程S18を実行する。塗布工程S18では、各折丁同士をホットメルト接着剤で結合するために、本文14の背22に背糊を塗布する。本文14の背22に背糊を塗布する際には、本文14の背22のうち格納部38を除いた部分に背糊を塗布する。具体的には、塗布工程S18では、本文14の背22に、例えば図12に示したように、ロールコータ装置56を用いて熱可塑性のホットメルト接着剤が塗布される。ロールコータ装置56は、ホットメルト接着剤を加熱しながら貯えるパン58と、パン58に貯えられたホットメルト接着剤に下側が部分的に浸かっている複数のローラ60とを有する。
【0065】
ホットメルト接着剤の塗布は、本文14の背22をローラ60の上側に接触させながら、本文14をローラ60列に沿って移動させることによって行われる。このように本文14の背22に対して下側からホットメルト接着剤を塗布することによって、一定の厚さにてホットメルト接着剤が塗布される。ただし、ホットメルト接着剤は、格納部38の中には充填されないように塗布することが好ましい。
【0066】
〔仮留め工程;S20〕
次に、仮留め工程S20を実行する。仮留め工程S20では、図13に示したように、表紙12のうち本文14の背22に接触する位置にICタグ16を仮留めする。ICタグ16の仮留めは、専用の粘着剤等を用いて行いてICタグ16を位置決めする。ICタグ16を仮留めする位置は、ICタグ16のワイヤアンテナ30及びICチップ32が、本文14に形成された格納部38に対向する位置である。
【0067】
〔格納工程;S22〕
次に、格納工程S22を実行する。格納工程S22では、ホットメルト接着剤が硬化するよりも前に、本文14に表紙12を被せて本文14と表紙12とを背糊によって結合させることにより、格納部38の内部にICタグ16を格納する。
【0068】
〔三方裁ち工程(仕上げ工程);S24〕
最後に、三方裁ち工程S24が実行される。三方裁ち工程S24では、本文14及び表紙12の天、地、小口の三方を断裁(化粧裁ち)する。これら三方を断裁することにより、図14に示したように、冊子形状のICタグ付き書物10が完成する。本実施形態では、仕上げ工程については、三方裁ち工程を採用する例で説明したが、これはあくまで例示である。仕上げ工程では、印刷された表紙12や本文14を仕上がりサイズ(最終製品としての天地左右の寸法)に合わせて裁断すればよく、仕様や設計、折り方等によっては例えば二方裁ち工程を採用してもよい。
【0069】
このように、本実施形態によれば、高価なエッチングされたアンテナを用いずに、廉価なワイヤアンテナ30を用いているので、製造コストを抑えつつICタグ付き書物10の本文14の背22にICタグ16を装着することができる。
【0070】
また、刷り本作成時(刷り本印刷時)に、刷り本74等に孔76等を開ける簡単な工程(チップ格納部38aやアンテナ格納部38b用の孔を形成する工程)を追加することで、安価であるが厚みのあるワイヤータイプのICタグ16を突出させることなく、ICタグ付き書物10の本文14の背22に装着することができ、ICタグ16の心臓部であるICチップ32を製本後の衝撃から保護することができる。その結果、製本後の搬送中や陳列の際に受ける衝撃により、ICチップ32やICチップ32とワイヤアンテナ30との接合部42の破損を回避することができ、製本工場から出荷されたICタグ付き書物10に装着されたICタグ16に通信不良が発生する問題を回避することができる。
【0071】
〔耐久試験〕
図15は、ICタグ付き書物10の耐久試験について説明する図である。
従来のICタグの装着方法は、無線綴じ製本において、本文の背をミーリング加工した後に、本文の背にICタグインレットを貼付して、表紙で包み込んでいたため、構造上、ICチップが表紙から突出してしまい衝撃に弱かった。
【0072】
そこで、本耐久試験では、ICタグ付き書物の上方600mmから、先端形状が直径8mmの500gの円柱形状の鉄棒100を、背表紙24を上にして載置したICタグ付き書物10のICチップ32へ向けて落下させて、ICタグ16の応答を調べた。
【0073】
従来の装着方法では、5回の落下で通信不良が確認されたが、上述した実施形態のICタグ付き書物10では、鉄棒100を5回落下させても、通信の応答に変化はなかった。
なお、落下回数は、鉄棒100を5回落下させた際に背表紙24に孔が開いて外観上商品価値が大幅に低下したため、その回数である5回を限度とした。
このことから、上述した実施形態のICタグ付き書物10は、従来のICタグ付き書物と比較して、外部からの衝撃に強いことが分かった。
【0074】
本発明は上述した一実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することができる。
例えば、本文14は、切断無線綴じされていたが、無線綴じの一種である網代綴じや、針金や糸を用いて平綴じされていてもよい。また、ICタグ付き書物10は、並製本によって作製されていたが、上製本によって作製されてもよい。つまり、本発明が適用される書物の装丁は、特に限定されることはない。
【0075】
また、格納部38には、接着剤が充填されていなかったが、格納部38の内部に接着剤が充填されていてもよい。
さらに、ICタグ16におけるワイヤアンテナ30のパターンやICチップ32の位置は特に限定されることはなく、ワイヤアンテナ30やICチップ32の位置に応じて、格納部38の位置を変更可能である。
最後に、本発明が適用される書物の種類は、コミックや雑誌に限定されることがないのは勿論である。
【符号の説明】
【0076】
10 ICタグ付き書物
12 表紙
14 本文
16 ICタグ
22 背
24 背表紙
30 ワイヤアンテナ
32 ICチップ
42 接合部
54 ミーリング刃
56 ロールコータ装置
74,78,82,86 刷り本
74a,78a,82a,86a 折丁
X1 小空間
X2 連結空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグが付属されるICタグ付き書物及びICタグ付き書物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
書物を管理するシステムでは、一般に、RFID(Radio Frequency IDentification:非接触認証)が用いられている。
【0003】
より詳しくは、RFIDを採用したシステムでは、電子タグ(ICタグ)が各書物に取り付けられる。ICタグは、固有情報等を有しており、外部のリーダライタとの間で無線通信を実行可能である。管理者は、リーダライタを介してICタグの固有情報等を取得し、取得した情報に基づいて、書物の生産管理や在庫管理の他、現在位置の管理等を行うことが可能である。
【0004】
ICタグは、例えば、長方形の可撓性を有する基板を有し、基板の略全体に渡って、ダイポールアンテナが一体に設けられている。ダイポールアンテナには、導電性接着剤を用いてICチップが接続されている。外部のリーダライタは、ダイポールアンテナを介して、ICチップに記憶されている固有情報等を読み出すことができる。
【0005】
この種のICタグは、例えば、印刷された紙片の集合物である本文の平坦な背と当該背を覆う背表紙との間に配置され、接着剤により固定される(例えば特許文献1〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−351939号公報
【特許文献2】特開2002−326474号公報
【特許文献3】特開2003−63655号公報
【特許文献4】特開2009−73174号公報
【特許文献5】特開2009−76046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1乃至3が開示する書物では、ICタグが、本文の背又は背表紙に貼り付けられている。一般に、ICタグの厚さはICチップの部分で大きくなっており、これらの書物では、ICチップを覆う背表紙の部分が突出する。
【0008】
突出している背表紙の部分は、書物の搬送や陳列時等に他の書物等と摺動し易く、このため、ICチップとアンテナとの接合部に亀裂が入り、ICタグの通信性能が低下する虞がある。
【0009】
特許文献4及び5が開示する書物では、ICタグが、平坦な本文の背と背表紙との間の接着層に埋め込まれており、ICチップを覆う背表紙の部分が突出することはないと思われる。
【0010】
しかしながら、ICチップを覆う背表紙の部分に外部から衝撃が加わった場合には、接着層を介して衝撃がICチップに伝わる。このため、これらの書物でも、衝撃によって、ICチップとダイポールアンテナとの接合部に亀裂が入り、ICタグの通信性能が低下する虞がある。
また、これらの書物では、接着層がICタグを埋め込むのに十分な厚さを有していなければならず、多量の接着剤が必要になる。
【0011】
一方、コミック本等では、「背」が平らになる切断無線綴じやホットメルト接着剤が折り部に浸透しやすいようにスリット孔を設けた網代綴じといった無線綴じ製本法が用いられている。そして、ICタグインレットを装着するには、背にホットメルト接着剤をコーティングし、ICタグインレットを貼付して本文を表紙で包んで製本を行っていた。この場合、ICタグインレットは、アンテナを形成するためにアルミ箔をエッチングして製造する必要があるため、その分コストが掛かっていた。また、本文の背に貼付されたICタグインレットに搭載されているICチップは、ある程度の厚みを有するため、ICタグインレットのアンテナ部より突出してしまい、搬送中や陳列等の際に受ける衝撃により、ICチップ又はICチップとアンテナとの接合部が破損し、ICタグが通信不能になるケースが多かった。
【0012】
そこで本発明は、安価でありながら、書物の背にICタグを装着しても製本後の配送中や陳列の際に受ける衝撃によりICタグが故障することを回避できる技術の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明はICタグ付き書物及びICタグ付き書物の製造方法を提供する。
【0014】
〔ICタグ付き書物〕
解決手段1:本発明のICタグ付き書物は、複数の折丁を丁合し、表紙が被せられる本文と、ワイヤを用いて形成されたワイヤアンテナ及びそのワイヤアンテナに接続されたICチップを含むICタグと、本文のうち小口の反対側に位置した背に形成され、ワイヤアンテナの外形形状及びICチップの外形形状に対応して小口に向けて窪み、その内部にICタグを格納する格納部とを備えることを特徴とするICタグ付き書物である。
【0015】
解決手段1によれば、ICタグ付き書物は、本文とICタグとを備えており、この本文は、複数の折丁を丁合し、外側から表紙が被せられる。ICタグは、ワイヤを用いて形成されたワイヤアンテナ及びそのワイヤアンテナに接続されたICチップを含み、外部通信手段からの電波で非接触通信を行うことができる。
【0016】
ここで、本文には格納部が形成される。詳しくは、格納部は、本文の背に形成され、ワイヤアンテナの外形形状及びICチップの外形形状に対応して小口に向けて窪んでいる。そして、ICタグは、この格納部に格納されている。これにより、ICタグに含まれるワイヤアンテナ及びICチップは、その全ての部分が本文の背に形成された格納部の内部に格納されているため、本文の背よりも表紙側に突出しない。
【0017】
この結果、製本後、つまり、書籍の梱包作業、搬送作業や陳列作業等の際に本文の背に外力が作用しても、本文の背(格納部以外の部分)が外力を受け止めることになるため、ICチップやアンテナに外力が作用することを低減させることができる。したがって、ICチップやこのICチップとアンテナとの接合部、アンテナ自体への衝撃は緩和され、ICタグの性能の低下を防止(ICチップへの影響を低減)することができる。
【0018】
また、ICタグのアンテナに関しては、ワイヤアンテナを用いているので、アンテナのコストのみならず、ICタグの製造コストを大幅に低下させることができる。この点、従来のインレット(フィルム基材/アンテナ/ICチップ)を使用する場合、アンテナパターンはICチップに合わせて決定しているから、仕様や設計変更によりICチップの性能が変わると、アンテナパターンも変更しなければならない。従来のインレットのアンテナパターンは、アルミ箔をエッチングして製造しているため、アンテナパターンの変更には、手間とコストがかかる。
【0019】
これに対して、本解決手段では、仕様や設計変更によりICチップの性能が変わると、もちろんアンテナパターンや格納部の形状を変更しなくてはならないが、ワイヤアンテナ場合は、ワイヤの形状や長さを簡単に変更することができるので、従来のインレットほど設計変更時のコストや手間がかからない。
【0020】
解決手段2:本発明のICタグ付き書物は、解決手段1に記載のICタグ付き書物において、折丁は、複数の折丁ごとに異なる位置及び大きさの凹みを有し、格納部は、折丁の凹みが連結することにより形成されていることを特徴とするICタグ付き書物である。
【0021】
解決手段2によれば、折丁は、複数の折丁ごとに異なる位置及び大きさの凹みを形成し、その凹みを連結することにより格納部を形成しているので、書物の厚み方向や書物の天地方向に複雑に入り組んだ形状のICタグであっても、その凹みの組み合わせによりICタグの形状に合わせた格納部を形成することができ、その内部にICタグを確実に格納することができる。
【0022】
解決手段3:本発明のICタグ付き書物は、解決手段1又は2に記載のICタグ付き書物において、ワイヤアンテナは、その形状がワイヤアンテナの長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた形状であり、格納部は、ワイヤアンテナの形状に対応して、ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた溝であることを特徴とするICタグ付き書物である。
【0023】
解決手段3によれば、ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた形状に対応して、格納部の溝が形成されているので、ICタグ及びワイヤアンテナの外形形状に一致した格納部によって、ICチップやワイヤアンテナを確実に保護し、ワイヤアンテナのアンテナ形状が外力によって変形してしまうことを防止することができ、ICタグの通信性能の低下を防止することができる。
また、解決手段3によれば、格納部の溝は、ワイヤアンテナが長手方向に直線状である場合とは異なり、本文の複数の頁(折丁)にまたがって形成することができるので、格納部となるべき凹みを形成することで発生する本文の各ページ同士の未接着領域と、本文と背表紙との未接着領域が各頁(各折丁)に分散されることとなり、より精度の高い製本強度(各頁同士の結合度と、本文と背表紙の結合度)が得られる。つまり、ワイヤアンテナが長手方向に直線状である場合には、その形状に合わせて凹みも直線状に形成されることになるため、未接着領域が直線状に存在してしまうことになる。そうすると、未接着領域がある程度かたまって存在してしまい、各頁同士の結合度と、本文と背表紙の結合度とが低下してしまう恐れがある。これに対して、解決手段3では、ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた形状に対応して、格納部の溝が形成されているので、本文と背表紙との間等に未接着領域が存在するとしても、その未接着領域が各頁(各折丁)に分散され、各頁同士の結合度や、本文と背表紙との結合度の低下を最小限に抑えることができる。
【0024】
解決手段4:本発明のICタグ付き書物は、解決手段1から3のいずれかに記載のICタグ付き書物において、格納部は、ICチップを格納する部分が、ワイヤアンテナを格納する部分よりも深く窪んでいることを特徴とするICタグ付き書物である。
【0025】
ICチップとアンテナとを比較すると、ICチップの方が厚みが厚く、それだけICチップの方が突出しているものである。解決手段4によれば、ICチップを格納する部分については、ワイヤアンテナを格納する部分よりも深く窪ませることによって、ICチップをより深く格納することができ、ICチップの厚みを吸収するとともに、外部からの衝撃をより低減させることができる。
【0026】
解決手段5:本発明のICタグ付き書物は、解決手段1から4のいずれかに記載のICタグ付き書物において、ICチップは、その上面が格納部の底面と対向して格納部に格納されることを特徴とするICタグ付き書物である。
【0027】
解決手段5によれば、ICチップは、その上面が格納部の底面と対向して格納部に格納されるので、ICチップを書物の表紙側ではなく、より本文側に近い位置に配置することができ、ICチップの保護を強化することができる。
【0028】
〔ICタグ付き書物の製造方法〕
解決手段6:本発明のICタグ付き書物の製造方法は、表紙が被せられる本文の背に、ワイヤを用いて形成されたワイヤアンテナ及びそのワイヤアンテナに接続されたICチップを含むICタグを格納する格納部を有するICタグ付き書物の製造方法であって、情報を用紙に印刷した複数の刷り本に、格納部となるべき孔を形成する孔形成工程と、複数の刷り本を折り畳んで折丁を作成することにより、刷り本に形成した各孔を重ね合わせて折丁の内部に小空間を形成する折丁作成工程と、折丁を丁合して本文を作成することにより、折丁に形成した小空間を連結させて本文の内部に連結空間を形成する本文作成工程と、本文のうち小口の反対側に位置した背の端部を切削して連結空間を開口させることにより、本文の背に格納部を形成する格納部形成工程と、本文の背に背糊を塗布する塗布工程と、表紙のうち本文の背に接触する位置にICタグを仮留めする仮留め工程と、本文に表紙を被せて本文と表紙とを背糊によって結合させることにより、格納部の内部にICタグを格納する格納工程と、本文及び表紙を断裁して仕上げを行う仕上げ工程とを備えることを特徴とするICタグ付き書物の製造方法である。
【0029】
本発明のICタグ付き書物の製造方法は、例えば以下に示される流れに沿って製造工程が進行する。
〔孔形成工程〕
情報を用紙に印刷した複数の刷り本に、格納部となるべき孔を形成する。孔を形成する位置は、刷り本の折り数によっても変わるが、基本的には折り畳んだ後に、形成した孔が重なる位置に孔を形成する。
【0030】
〔折丁作成工程〕
複数の刷り本を折り畳んで折丁を作成することにより、刷り本に形成した各孔を重ね合わせて折丁の内部に小空間(空隙)を形成する。刷り本に形成した各孔が重なることにより、小さな空間が形成される。
【0031】
〔本文作成工程〕
折丁を丁合して本文を作成することにより、折丁に形成した小空間を連結させて本文の内部に連結空間を形成する。各小空間を連結させることにより、本文の内部に空洞状の連結空間が形成される。
【0032】
〔格納部形成工程〕
本文のうち小口の反対側に位置した背の端部を切削して連結空間を開口させることにより、本文の背に格納部を形成する。連結空間の一部を開口させることにより、本文の背に格納部が露出する。
【0033】
〔塗布工程〕
本文の背に背糊を塗布する。本文の背に背糊を塗布する際には、本文の背のうち格納部を除いた部分に背糊を塗布することが好ましい。
【0034】
〔仮留め工程〕
表紙のうち本文の背に接触する位置にICタグを仮留めする。ICタグの仮留めは、専用の粘着剤等を用いて行い、ICタグを位置決めする。ICタグを仮留めする位置は、ICタグのアンテナ及びICチップが、本文に形成された格納部に対向する位置である。
【0035】
〔格納工程〕
本文に表紙を被せて本文と表紙とを背糊によって結合させることにより、格納部の内部にICタグを格納する。本文に表紙を被せると、自動的にICタグが格納部に格納される。
【0036】
〔仕上げ工程〕
本文及び表紙を断裁して仕上げを行う。この工程では、例えば二方裁ち工程や三方裁ち工程等を採用することができる。この工程により、冊子形状のICタグ付き書物が完成する。
【0037】
このように、解決手段6によれば、複数の刷り本に格納部となるべき孔を予め形成しておき、刷り本を折り畳んで折丁を作成しつつ小空間を形成し、折丁を丁合しつつ連結空間を形成し、背切りをするとともに連結空間を開口させて格納部を形成するので、複数の刷り本に格納部となるべき孔を予め形成しておきさえすれば、あとは通常の製造工程を変更することなく、本文の背に簡単に格納部を形成することができる。
【0038】
この点、一旦本文を形成してから、本文の背に溝(格納部)を形成することも考えられるが、完成した本文の背に溝を形成することは難しく、ましてやアンテナのパターン形状が複雑であればあるほど溝を掘り込む作業は大変手間となり、技術的にも困難である。
これに対して、本解決手段では、複数の刷り本に格納部となるべき孔を予め形成しておくといった簡単な前処理を施すだけで、アンテナのパターン形状が複雑なものであっても、その複雑なパターン形状に対応した格納部を本文の背に簡単に形成することができるという利点がある。
【0039】
解決手段7:本発明のICタグ付き書物の製造方法は、解決手段6に記載のICタグ付き書物の製造方法において、ワイヤアンテナは、その形状がワイヤアンテナの長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた形状であり、孔形成工程では、ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向の形状に対応させて、複数の刷り本ごとに異なる位置及び異なる大きさで孔を形成し、折丁作成工程では、複数の折丁ごとに異なる位置及び異なる大きさで小空間が形成され、本文作成工程では、複数の折丁ごとに異なる位置及び異なる大きさで形成された小空間が連結して本文の内部に連結空間が形成され、格納部形成工程では、ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向の形状に対応して、ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた溝が形成されることを特徴とするICタグ付き書物の製造方法である。
【0040】
解決手段7では、ワイヤアンテナは、その形状がワイヤアンテナの長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた形状である。そして、孔形成工程では、ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向の形状に対応させて、複数の刷り本ごとに異なる位置及び異なる大きさで孔を形成する。ワイヤアンテナの長手方向については、刷り本の天地方向における孔の大きさ(面積)を調整することで対応可能である。ワイヤアンテナの幅方向については、各刷り本の厚み方向における孔の位置を調整することで対応可能である。折丁作成工程及び本文作成工程では、刷り本に形成した孔に応じて、それぞれ小空間及び連結空間が形成される。その結果として、格納部形成工程では、ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向の形状に対応して、ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた溝が形成される。
【0041】
このように、解決手段7によれば、ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向の形状を考慮した孔を形成することにより、ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向の形状に対応した溝が自然と形成され、複雑なアンテナパターン形状に対応した格納部を本文の背に簡単に形成することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、安価でありながら、書物の背にICタグを装着しても製本後の配送中や陳列の際に受ける衝撃によりICタグが故障することを回避できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係るICタグ付き書物10を概略的に示す斜視図である。
【図2】本文14の背22から背表紙24を剥がした状態を示す概略的な斜視図である。
【図3】図1のIII−III線に沿うICタグ付き書物10のICチップ32周辺の概略的な部分断面図である。
【図4】ICタグ付き書物10の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【図5】図2のB線部分に配置される刷り本の様子を概略的に示す平面図である。
【図6】図2のA線部分,C線部分,D線部分に配置される刷り本の様子を概略的に示す平面図である。
【図7】刷り本の折り畳み方を概略的に示す平面図である。
【図8】刷り本を折って得られた折丁を丁合する様子を概略的に示す斜視図である。
【図9】複数の折丁を丁合してからクランプして得られる本文を概略的に示す斜視図である。
【図10】本文の背にミーリングを行う様子を概略的に示す斜視図である。
【図11】ミーリング後の本文を概略的に示す斜視図である。
【図12】本文の背に接着剤を塗布する様子を概略的に示す斜視図である。
【図13】接着剤が塗布された本文の背にICタグ及び背表紙を接着する様子を概略的に示す斜視図である。
【図14】本文及び表紙の三方を三方裁ちすることにより得られたICタグ付き書物10を概略的に示す斜視図である。
【図15】ICタグ付き書物10の耐久試験について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るICタグ付き書物10を概略的に示す斜視図である。
ICタグ付き書物10は、例えば、コミック等の無線綴じ本である。より詳しくは、ICタグ付き書物10は、表紙12、本文14、及び、ICタグ16を有する。本文14は、複数の紙片の集合物であり、扁平な直方体形状を有する。また、本文14は、複数の折丁を丁合して形成され、表紙12が被せられる。表紙12は、本文14の3つの小口、即ち、天、地、及び、前小口を除く部分を覆っている。
【0045】
従って、表紙12は、本文14の2つの広い面を覆う表表紙18及び裏表紙20と、本文14の背22を覆う背表紙24とを有する。表紙12は、展開したときに長方形形状を有し、背表紙24は、表表紙18と裏表紙20との間に位置している。背表紙24は、本文14の背22に対応する長方形形状を有し、背表紙24と本文14の背22との間に、ICタグ16が配置されている。
【0046】
ICタグ16及び背表紙24は、接着剤等によって背22に固定されている。なお、本実施形態では、本文14は、糸や針金を用いずに無線綴じされており、本文14の紙同士も、本文14の背22に塗布された接着剤によって相互に固定されている。
【0047】
図2は、本文14の背22から背表紙24を剥がした状態を示す概略的な斜視図である。
図2に示したように、ICタグ16は、ワイヤを用いて形成されたワイヤアンテナ30と、ワイヤアンテナ30に接続されたICチップ32を含む。本実施形態では、ICタグ16は、電源を有さないパッシブタイプのICタグである。
ICタグ16は、UHF帯を利用した無線ICタグであり、左右の1/4波長のワイヤアンテナ30−1,30−2によって構成される半波長ダイポールアンテナが使用される。
【0048】
ワイヤアンテナ30は、細線形状の導線からなるワイヤを用いてアンテナ状に形成されたものである。導線としては、銅、鉄、アルミニウム、その他の金属等を使用することができる。また、ワイヤアンテナ30は、その形状がワイヤアンテナ30の長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた形状であり、具体的には、ICチップ32を中心として、ICチップ32から「コの字形状」及び「逆コの字形状」が連続して配置された形状である。ワイヤアンテナ30−1をICチップ32を中心として180度回転させると、ワイヤアンテナ30−2に重なる。なお、ワイヤアンテナ30は、各種の形状を採用することができ、図のような折れ曲がった形状でなくてもよい。
【0049】
ICチップ32は、ワイヤアンテナ30−1とワイヤアンテナ30−2との中央部分に位置して取り付けられ、ワイヤアンテナ30に電気的に接続されている。ICチップ32は、固有情報等のデータを記憶するメモリを有するとともに、ワイヤアンテナ30を介して外部のリーダライタと無線通信を行う通信機能、及び、通信結果に基づいて、メモリ中のデータの読み出しや書き換え等を行う機能を有する。
【0050】
一方、ICタグ16の外形形状に対応して、本文14のうち前小口の反対側に位置した背22には、格納部38が形成されている。格納部38は、ワイヤアンテナ30の外形形状及びICチップ32の外形形状に対応して前小口に向けて窪み、その内部にICタグ16を格納する部分である。格納部38は、ワイヤアンテナ30の外形形状及びICチップ32の外形形状に対応して、ワイヤアンテナ30の長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた溝であり、断面が長方形形状の溝である。
【0051】
格納部38は、ICタグ16の外形形状に沿った形状でもよいが、若干の余裕を持たせて少し幅広に溝を形成することもできる。このようにすれば、ワイヤアンテナ30の位置決めを容易化することができる。格納部38の開口面積は、格納部38の開口を通じてICチップ32及びワイヤアンテナ30を格納部38の内部に十分に収容できる大きさに設定するのが好ましい。
【0052】
図3は、図1のIII−III線に沿うICタグ付き書物10のICチップ32周辺の概略的な部分断面図である。図3に示したように、格納部38は、仮留め用の粘着剤等によってワイヤアンテナ30及び補強板34が背表紙24に貼り付けられた状態において、ICチップ32を受け入れている。
補強板34は、ICチップ32の土台(台座)となる部材であり、ICチップ32を補強する役割を果たすものであるが、仕様や設計内容によっては配置しなくてもよい。
【0053】
本実施形態では、格納部38は、主としてICチップ32を格納するチップ格納部38aと、主としてワイヤアンテナ30を格納するアンテナ格納部38bとを有する。そして、ICチップ32を格納するチップ格納部38aは、ワイヤアンテナ30を格納するアンテナ格納部38bよりもICチップ32の厚み分以上深く窪んでいる。ICチップ32をより深く格納することによって、ICチップ32の厚みを吸収するとともに、ICチップ32への外部からの衝撃をより低減させることができる。
【0054】
このとき、ICチップ32の上面32aは、チップ格納部38aの底面と対向してチップ格納部38aに格納されている。ICチップ32を背表紙24側ではなく、より本文14側に近い位置に配置することにより、ICチップ32の保護を強化することができる。ここで、チップ格納部38aの深さは自由に設定できるものであるが、例えば、ICチップ32の上面32aがチップ格納部38aの底に接しないように十分な深さをもって深さを設定すれば、ICチップ32がワイヤアンテナ30等によって吊られた状態となり、外部からの衝撃を吸収することができる。一方、ICチップ32の上面32aがチップ格納部38aの底に接するように格納部38の深さを設定すれば、ICチップ32をチップ格納部38aの内部にしっかりと固定することができる。
【0055】
なお、ICチップ32とワイヤアンテナ30との接合部42は、例えば、ACP(異方性導電ペースト)によって形成されているが、他の公知の方法を用いて、ICチップ32とワイヤアンテナ30とが接続されていてもよい。
【0056】
以下、図4のフローチャートを参照しながら、図5〜図14を用いて、ICタグ付き書物10の製造方法について説明する。
図4は、ICタグ付き書物10の製造方法を概略的に示すフローチャートである。図5は、図2のB線部分に配置される刷り本の様子を概略的に示す平面図である。図6は、図2のA線部分,C線部分,D線部分に配置される刷り本の様子を概略的に示す平面図である。図7は、刷り本の折り畳み方を概略的に示す平面図である。図8は、刷り本を折って得られた折丁を丁合する様子を概略的に示す斜視図である。図9は、複数の折丁を丁合してからクランプして得られる本文を概略的に示す斜視図である。図10は、本文の背にミーリングを行う様子を概略的に示す斜視図である。図11は、ミーリング後の本文を概略的に示す斜視図である。図12は、本文の背に接着剤を塗布する様子を概略的に示す斜視図である。図13は、接着剤が塗布された本文の背にICタグ及び背表紙を接着する様子を概略的に示す斜視図である。図14は、本文及び表紙の三方を三方裁ちすることにより得られたICタグ付き書物10を概略的に示す斜視図である。
【0057】
〔孔形成工程;S10〕
図4に示したように、ICタグ付き書物10の製造方法では、まず、孔形成工程S10が実行される。
孔形成工程S10では、格納部38に相当する部分を除去するための孔76(格納部38となるべき孔76)を開ける。孔形成工程S10では、図5に示したように、本文14の中間層を構成することになる刷り本74の所定の位置に四角形形状や多角形形状の孔76が形成される。刷り本74は、刷り本用の用紙に情報を印刷したシートである。本実施形態では、本文14の喉部側に配置される各頁の側部に孔76が形成されている。孔76が形成される刷り本74の数又は頁数は、ICタグ16の基板26の幅に対応して決定される。なお、孔76は、刷り本74の折り目からは所定距離にて離間している。孔76は、例えば抜き刃を用いて形成することができる。刷り本74のうち、上下3つの孔76は、主としてアンテナ格納部38bに対応しており、中央の比較的大きな凸形状の孔76は、主としてチップ格納部38aに対応している。本実施形態では、孔76は四角形形状等であるが、三角形形状や楕円形状等であってもよい。
【0058】
図5に示す刷り本74は、図2のB線部分に配置される折丁の展開図であり、これと同様に、図6(A)に示したように、図2のA線部分に配置される折丁用の刷り本78、図6(C)に示したように、図2のC線部分に配置される折丁用の刷り本82、図6(D)に示したように、図2のD線部分に配置される折丁用の刷り本86も同様に用意する必要がある。
【0059】
刷り本78及び刷り本82には、それぞれ格納部38となるべき孔80及び孔84が形成されているが、刷り本86には孔が形成されていない。このように、各孔は、ワイヤアンテナ30の長手方向及び幅方向の形状に対応させて、複数の刷り本ごとに異なる位置及び異なる大きさで形成されており、各刷り本に形成される各孔は、すべての刷り本が折り畳まれて折丁となり、その折丁が丁合された本文14となった場合に、それぞれの孔が重なって格納部38を形成する位置に配置されている。また、実際には、図2のA線部分とB線部分との間、及び、図2のB線部分とC線部分との間にも、孔の配列が異なる刷り本を用意する必要があるが、図示は省略している。
【0060】
〔折丁作成工程;S12〕
次に、折丁作成工程S12が実行される。この工程では、各刷り本が所定の折り方によって折り畳まれる。より詳しくは、図7(A)に示したように、展開状態の刷り本74を用意し、図7(B)に示したように、刷り本74を左右方向の中央の折り線で2つ折りにし、図7(C)に示したように、天地方向の中央線で2つ折りにし、図7(D)に示したように、刷り本74を左右方向の中央の折り線で2つ折りにする。これにより、表裏面あわせて16頁の折丁が完成する。折丁作成工程S12によって、刷り本74に形成した各孔76を重ね合わせて折丁の内部に小空間X1が形成される。なお、刷り本78,82,86についても同様の折り方で折り畳む。そして、折丁作成工程S12では、複数の折丁ごとに異なる位置及び異なる大きさで小空間X1が形成される。
【0061】
〔本文作成工程;S14〕
次に、本文作成工程S14が実行される。本文作成工程S14では、刷り本74,78,82,86を折って得られる折丁74a,78a,82a,86aは、図8に示したように、孔が形成されていない折丁86aに、孔が形成されている折丁74a,78a,82aが挟まれて丁合される。そして、丁合された折丁74a,78a,82aは突き揃えられ、図示しないクランプで把持して固定され、これにより図9に示したように、各折丁が集合した本文14が得られる。各折丁を丁合して本文14を作成することにより、複数の折丁ごとに異なる位置及び異なる大きさで形成された小空間X1(図8参照)が連結して、本文14の内部に連結空間X2(図9参照)が形成される。
【0062】
〔格納部形成工程;S16〕
次に、格納部形成工程S16が実行される。格納部形成工程S16では、本文14の背22の端部を切削することにより、連結空間X2(図9参照)を開口させる。図10に示したように、例えばミーリング刃(回転のこぎり刃)54を用いて本文14の背22を3mm程度ミーリングすることによって行われる。この格納部形成工程S16によって、連結空間X2の閉空間が開口し、図11に示したように、本文14の背22に格納部38が形成される。これにより、本文14を形成する折丁に関しては、複数の折丁ごとに異なる位置及び大きさの凹みが本文14の背22側に形成される。
【0063】
例えば、仮に15個の折丁を使用してICタグ付き書物10を製造すると仮定すれば、下から1〜3個目の折丁は凹みなしであり(図2中D線部分参照)、下から4〜6個目の折丁は第1パターンの凹みを有し(図2中C線部分参照)、下から7〜9個目の折丁は第2パターンの凹みを有し(図2中B線部分参照)、下から10〜12個目の折丁は第3パターンの凹みを有し(図2中A線部分参照)、下から13〜15個目の折丁は凹みなしである(図2中D線部分参照)、といった具合である。そして、これらの凹みが連結することにより本文14の背22側に格納部38が形成される。この格納部38は、ワイヤアンテナ30の長手方向及び幅方向の形状に対応して、ワイヤアンテナ30の長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた溝である。
【0064】
〔塗布工程;S18〕
次に、塗布工程S18を実行する。塗布工程S18では、各折丁同士をホットメルト接着剤で結合するために、本文14の背22に背糊を塗布する。本文14の背22に背糊を塗布する際には、本文14の背22のうち格納部38を除いた部分に背糊を塗布する。具体的には、塗布工程S18では、本文14の背22に、例えば図12に示したように、ロールコータ装置56を用いて熱可塑性のホットメルト接着剤が塗布される。ロールコータ装置56は、ホットメルト接着剤を加熱しながら貯えるパン58と、パン58に貯えられたホットメルト接着剤に下側が部分的に浸かっている複数のローラ60とを有する。
【0065】
ホットメルト接着剤の塗布は、本文14の背22をローラ60の上側に接触させながら、本文14をローラ60列に沿って移動させることによって行われる。このように本文14の背22に対して下側からホットメルト接着剤を塗布することによって、一定の厚さにてホットメルト接着剤が塗布される。ただし、ホットメルト接着剤は、格納部38の中には充填されないように塗布することが好ましい。
【0066】
〔仮留め工程;S20〕
次に、仮留め工程S20を実行する。仮留め工程S20では、図13に示したように、表紙12のうち本文14の背22に接触する位置にICタグ16を仮留めする。ICタグ16の仮留めは、専用の粘着剤等を用いて行いてICタグ16を位置決めする。ICタグ16を仮留めする位置は、ICタグ16のワイヤアンテナ30及びICチップ32が、本文14に形成された格納部38に対向する位置である。
【0067】
〔格納工程;S22〕
次に、格納工程S22を実行する。格納工程S22では、ホットメルト接着剤が硬化するよりも前に、本文14に表紙12を被せて本文14と表紙12とを背糊によって結合させることにより、格納部38の内部にICタグ16を格納する。
【0068】
〔三方裁ち工程(仕上げ工程);S24〕
最後に、三方裁ち工程S24が実行される。三方裁ち工程S24では、本文14及び表紙12の天、地、小口の三方を断裁(化粧裁ち)する。これら三方を断裁することにより、図14に示したように、冊子形状のICタグ付き書物10が完成する。本実施形態では、仕上げ工程については、三方裁ち工程を採用する例で説明したが、これはあくまで例示である。仕上げ工程では、印刷された表紙12や本文14を仕上がりサイズ(最終製品としての天地左右の寸法)に合わせて裁断すればよく、仕様や設計、折り方等によっては例えば二方裁ち工程を採用してもよい。
【0069】
このように、本実施形態によれば、高価なエッチングされたアンテナを用いずに、廉価なワイヤアンテナ30を用いているので、製造コストを抑えつつICタグ付き書物10の本文14の背22にICタグ16を装着することができる。
【0070】
また、刷り本作成時(刷り本印刷時)に、刷り本74等に孔76等を開ける簡単な工程(チップ格納部38aやアンテナ格納部38b用の孔を形成する工程)を追加することで、安価であるが厚みのあるワイヤータイプのICタグ16を突出させることなく、ICタグ付き書物10の本文14の背22に装着することができ、ICタグ16の心臓部であるICチップ32を製本後の衝撃から保護することができる。その結果、製本後の搬送中や陳列の際に受ける衝撃により、ICチップ32やICチップ32とワイヤアンテナ30との接合部42の破損を回避することができ、製本工場から出荷されたICタグ付き書物10に装着されたICタグ16に通信不良が発生する問題を回避することができる。
【0071】
〔耐久試験〕
図15は、ICタグ付き書物10の耐久試験について説明する図である。
従来のICタグの装着方法は、無線綴じ製本において、本文の背をミーリング加工した後に、本文の背にICタグインレットを貼付して、表紙で包み込んでいたため、構造上、ICチップが表紙から突出してしまい衝撃に弱かった。
【0072】
そこで、本耐久試験では、ICタグ付き書物の上方600mmから、先端形状が直径8mmの500gの円柱形状の鉄棒100を、背表紙24を上にして載置したICタグ付き書物10のICチップ32へ向けて落下させて、ICタグ16の応答を調べた。
【0073】
従来の装着方法では、5回の落下で通信不良が確認されたが、上述した実施形態のICタグ付き書物10では、鉄棒100を5回落下させても、通信の応答に変化はなかった。
なお、落下回数は、鉄棒100を5回落下させた際に背表紙24に孔が開いて外観上商品価値が大幅に低下したため、その回数である5回を限度とした。
このことから、上述した実施形態のICタグ付き書物10は、従来のICタグ付き書物と比較して、外部からの衝撃に強いことが分かった。
【0074】
本発明は上述した一実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することができる。
例えば、本文14は、切断無線綴じされていたが、無線綴じの一種である網代綴じや、針金や糸を用いて平綴じされていてもよい。また、ICタグ付き書物10は、並製本によって作製されていたが、上製本によって作製されてもよい。つまり、本発明が適用される書物の装丁は、特に限定されることはない。
【0075】
また、格納部38には、接着剤が充填されていなかったが、格納部38の内部に接着剤が充填されていてもよい。
さらに、ICタグ16におけるワイヤアンテナ30のパターンやICチップ32の位置は特に限定されることはなく、ワイヤアンテナ30やICチップ32の位置に応じて、格納部38の位置を変更可能である。
最後に、本発明が適用される書物の種類は、コミックや雑誌に限定されることがないのは勿論である。
【符号の説明】
【0076】
10 ICタグ付き書物
12 表紙
14 本文
16 ICタグ
22 背
24 背表紙
30 ワイヤアンテナ
32 ICチップ
42 接合部
54 ミーリング刃
56 ロールコータ装置
74,78,82,86 刷り本
74a,78a,82a,86a 折丁
X1 小空間
X2 連結空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の折丁を丁合し、表紙が被せられる本文と、
ワイヤを用いて形成されたワイヤアンテナ及びそのワイヤアンテナに接続されたICチップを含むICタグと、
前記本文のうち小口の反対側に位置した背に形成され、前記ワイヤアンテナの外形形状及び前記ICチップの外形形状に対応して前記小口に向けて窪み、その内部に前記ICタグを格納する格納部と
を備えることを特徴とするICタグ付き書物。
【請求項2】
請求項1に記載のICタグ付き書物において、
前記折丁は、
複数の折丁ごとに異なる位置及び大きさの凹みを有し、
前記格納部は、
前記折丁の前記凹みが連結することにより形成されていることを特徴とするICタグ付き書物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のICタグ付き書物において、
前記ワイヤアンテナは、
その形状が前記ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた形状であり、
前記格納部は、
前記ワイヤアンテナの形状に対応して、前記ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた溝であることを特徴とするICタグ付き書物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のICタグ付き書物において、
前記格納部は、
前記ICチップを格納する部分が、前記ワイヤアンテナを格納する部分よりも深く窪んでいることを特徴とするICタグ付き書物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のICタグ付き書物において、
前記ICチップは、
その上面が前記格納部の底面と対向して前記格納部に格納されることを特徴とするICタグ付き書物。
【請求項6】
表紙が被せられる本文の背に、ワイヤを用いて形成されたワイヤアンテナ及びそのワイヤアンテナに接続されたICチップを含むICタグを格納する格納部を有するICタグ付き書物の製造方法であって、
情報を用紙に印刷した複数の刷り本に、前記格納部となるべき孔を形成する孔形成工程と、
前記複数の刷り本を折り畳んで折丁を作成することにより、前記刷り本に形成した各孔を重ね合わせて前記折丁の内部に小空間を形成する折丁作成工程と、
前記折丁を丁合して本文を作成することにより、前記折丁に形成した小空間を連結させて前記本文の内部に連結空間を形成する本文作成工程と、
前記本文のうち小口の反対側に位置した背の端部を切削して前記連結空間を開口させることにより、前記本文の背に前記格納部を形成する格納部形成工程と、
前記本文の背に背糊を塗布する塗布工程と、
前記表紙のうち前記本文の背に接触する位置に前記ICタグを仮留めする仮留め工程と、
前記本文に前記表紙を被せて前記本文と前記表紙とを前記背糊によって結合させることにより、前記格納部の内部に前記ICタグを格納する格納工程と、
前記本文及び前記表紙を断裁して仕上げを行う仕上げ工程と
を備えることを特徴とするICタグ付き書物の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のICタグ付き書物の製造方法において、
前記ワイヤアンテナは、その形状が前記ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた形状であり、
前記孔形成工程では、前記ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向の形状に対応させて、複数の刷り本ごとに異なる位置及び異なる大きさで前記孔を形成し、
前記折丁作成工程では、複数の折丁ごとに異なる位置及び異なる大きさで前記小空間が形成され、
前記本文作成工程では、複数の折丁ごとに異なる位置及び異なる大きさで形成された前記小空間が連結して前記本文の内部に連結空間が形成され、
前記格納部形成工程では、前記ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向の形状に対応して、前記ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた溝が形成されることを特徴とするICタグ付き書物の製造方法。
【請求項1】
複数の折丁を丁合し、表紙が被せられる本文と、
ワイヤを用いて形成されたワイヤアンテナ及びそのワイヤアンテナに接続されたICチップを含むICタグと、
前記本文のうち小口の反対側に位置した背に形成され、前記ワイヤアンテナの外形形状及び前記ICチップの外形形状に対応して前記小口に向けて窪み、その内部に前記ICタグを格納する格納部と
を備えることを特徴とするICタグ付き書物。
【請求項2】
請求項1に記載のICタグ付き書物において、
前記折丁は、
複数の折丁ごとに異なる位置及び大きさの凹みを有し、
前記格納部は、
前記折丁の前記凹みが連結することにより形成されていることを特徴とするICタグ付き書物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のICタグ付き書物において、
前記ワイヤアンテナは、
その形状が前記ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた形状であり、
前記格納部は、
前記ワイヤアンテナの形状に対応して、前記ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた溝であることを特徴とするICタグ付き書物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のICタグ付き書物において、
前記格納部は、
前記ICチップを格納する部分が、前記ワイヤアンテナを格納する部分よりも深く窪んでいることを特徴とするICタグ付き書物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のICタグ付き書物において、
前記ICチップは、
その上面が前記格納部の底面と対向して前記格納部に格納されることを特徴とするICタグ付き書物。
【請求項6】
表紙が被せられる本文の背に、ワイヤを用いて形成されたワイヤアンテナ及びそのワイヤアンテナに接続されたICチップを含むICタグを格納する格納部を有するICタグ付き書物の製造方法であって、
情報を用紙に印刷した複数の刷り本に、前記格納部となるべき孔を形成する孔形成工程と、
前記複数の刷り本を折り畳んで折丁を作成することにより、前記刷り本に形成した各孔を重ね合わせて前記折丁の内部に小空間を形成する折丁作成工程と、
前記折丁を丁合して本文を作成することにより、前記折丁に形成した小空間を連結させて前記本文の内部に連結空間を形成する本文作成工程と、
前記本文のうち小口の反対側に位置した背の端部を切削して前記連結空間を開口させることにより、前記本文の背に前記格納部を形成する格納部形成工程と、
前記本文の背に背糊を塗布する塗布工程と、
前記表紙のうち前記本文の背に接触する位置に前記ICタグを仮留めする仮留め工程と、
前記本文に前記表紙を被せて前記本文と前記表紙とを前記背糊によって結合させることにより、前記格納部の内部に前記ICタグを格納する格納工程と、
前記本文及び前記表紙を断裁して仕上げを行う仕上げ工程と
を備えることを特徴とするICタグ付き書物の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のICタグ付き書物の製造方法において、
前記ワイヤアンテナは、その形状が前記ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた形状であり、
前記孔形成工程では、前記ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向の形状に対応させて、複数の刷り本ごとに異なる位置及び異なる大きさで前記孔を形成し、
前記折丁作成工程では、複数の折丁ごとに異なる位置及び異なる大きさで前記小空間が形成され、
前記本文作成工程では、複数の折丁ごとに異なる位置及び異なる大きさで形成された前記小空間が連結して前記本文の内部に連結空間が形成され、
前記格納部形成工程では、前記ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向の形状に対応して、前記ワイヤアンテナの長手方向及び幅方向に交互に折れ曲がって伸びた溝が形成されることを特徴とするICタグ付き書物の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−35485(P2012−35485A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176983(P2010−176983)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】
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