説明

ICタグ対応移動型在庫品管理システム

【課題】在庫品の位置管理や数量管理を行う際に、労力を要さず、管理を行うシステム自体が邪魔になることなく、また、在庫品の置く範囲の増減に関係なく必要な情報を入手するICタグ対応移動型在庫品管理システムを提供する。
【解決手段】被検出物に非接触無線ICタグ101を取り付け、非接触無線ICタグ101対応のリーダアンテナ部102及び無線LAN位置検知システム部104の無線LAN端末部108を移動ロボット部105に配置し、移動する移動ロボット部105の位置情報及び、リーダアンテナ部102で受信した非接触無線ICタグ情報を基地局106に伝達するための手段を構築し、基地局106において、情報入手時刻とともに、在庫品の位置情報及び非接触無線ICタグ情報を画面上に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触無線ICタグ、及び無線LANシステムを用いて、在庫品の位置管理及び数量管理を容易に行う手段に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の在庫品に対する数量管理は、入出庫を行う際に、台帳に記載するか、パーソナルコンピュータにオペレータが手入力して、管理を行っている。
【0003】
また、梱包箱に図5のように、バーコードを貼り付け、バーコード情報をバーコードリーダ端末にて読み取ることにより、サーバにより、集中管理を行うという手段も講じられている。
【0004】
在庫品の位置管理に関しては、種類別に品物を置く位置範囲を決め、表示札を掲示する或いは、入出庫者が記憶するという手段を講じている。
【0005】
最近では、無線LANシステムを活用し、電波の到来時間差測定により、品物の位置の割り出しを行うという手段も構築されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、在庫品の数量管理を人力で行う際には、パーソナルコンピュータへの入力専任オペレータが必要となる。また、台帳に記載する方法の場合も、誰でもが行ってよいというわけでは、なく、やはり専任者が必要となり、記載忘れや入力ミスが発生する場合もある。また、在庫品の位置管理に関し、表示札を掲示する方法を、実施した場合には、掲示してある表示札の場所を探す、或いは、表示札により、大体の場所が判断できても、目的の品物を探さなければならないという行為は残り、労力と時間を要することになる、という問題がある。
【0007】
また、バーコードによる在庫管理を行う場合には、数量管理は、行えるが、在庫品の位置管理はできない。また、バーコードによる数量管理を実施する際には、人力を用いて行うことになり、在庫品の数量が多いときには、かなりの労力と時間を要することになる、という問題もある。
【0008】
さらに、無線LANシステムによる在庫管理手段を講じた場合には、パーソナルコンピュータをシステムに組み込み、パーソナルコンピュータによる操作で、容易に在庫品の位置管理は、行えるが、数量管理を行うには、不向きとなる。また、無線LANシステムの場合には、かなりの電力を要するため、在庫品に取り付ける無線LAN端末は、バッテリーが必要であり、サイズが大きくなってしまい、個々の在庫品全てに取り付けるには、不向きである、という問題がある。
【0009】
また、非接触無線ICタグを使用した、在庫品の位置管理を行った場合、非接触無線ICタグ対応のリーダアンテナ部は、位置が固定され、どの位置のリーダアンテナ部で非接触無線ICタグからの情報信号を受信したかを検出し、位置管理をすることになる。また、非接触無線ICタグとリーダアンテナ部との交信距離は、短いため、広い倉庫や工場内では、リーダアンテナ部の設置数がかなり必要となる。そのため、リーダアンテナ部の設置場所によっては、リーダアンテナ部からのケーブル或いは、リーダアンテナ部を設置するための設備自体が、在庫品の入出庫時に邪魔になる、という問題もある。
【0010】
本発明は、以上述べてきた課題を同時に解決するものであり、在庫管理を行う上において、在庫品の位置情報及び数量情報を必要に応じて提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のICタグ対応在庫品管理システムは、被検出物に取り付ける非接触無線ICタグ、非接触無線ICタグに対応するリーダアンテナ部、リーダアンテナ部への電磁波エネルギーを供給或いは、リーダアンテナ部が受信した情報信号を変換処理するリーダ・ライタ本体部、無線LAN端末部を含む無線LAN位置検知システム部、移動ロボット部、移動ロボット部の動作制御及び、リーダ・ライタ本体部を制御或いは、リーダ・ライタ本体部からの情報信号を解析処理し、無線LAN位置検知システム部への情報伝達或いは、基地局との無線情報通信を行うコントローラ部、コントローラ部に対する移動ロボット部への制御信号の送信及び、コントローラ部と無線LAN位置検知システム部からの情報信号及び情報信号の受付時刻を管理処理し、画像表示及び音声表示を行う基地局、という構成を有し、移動ロボット部にリーダアンテナ部及び無線LAN位置検知システム部の無線LAN端末部を配置している。
この構成により、移動ロボット部の位置検知情報信号が随時基地局へ伝達され、移動ロボット部の位置が基地局において、画像表示される。また、被検出物に取り付けた非接触無線ICタグからの情報信号がリーダアンテナ部経由で基地局に伝達され、移動ロボットの位置に何の被検出物があるかが表示されることとなる。
【0012】
また、本発明のICタグ対応在庫品管理システムは、移動ロボット部において、複数段の棒状の筐体部内面部にリーダアンテナ部を設置し、複数段の棒状の筐体部を、基地局からの制御信号により、自動昇降させる昇降制御部を設けている。この構成により、棒状の筐体部の昇降運動は、基地局からコントロールされ、また、筐体部内に配置されたリーダアンテナ部も、棒状の筐体部とともに昇降運動を行うこととなる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明は、非接触無線ICタグを使用することにより、人力を要することなく無線通信で被検出物の情報が得られ、非接触無線ICタグ対応のリーダアンテナ部及び無線LAN位置検知システム部の無線LAN端末部を移動ロボット部に搭載し、リーダアンテナ部を昇降させることにより、リーダアンテナ部が広範囲を移動することになり、広範囲の被検出物に対応する際にも、リーダアンテナ部の数を増やさずに非接触無線ICタグからの情報信号を受信できる。また、リーダ・ライタ本体部、コントローラ部を移動ロボット部に搭載することにより、基地局との無線通信が可能となり、在庫品の入出庫時にリーダアンテナ部からのケーブルが邪魔になるということもなくなる。さらに、基地局での情報受付時刻が管理され、何時の時点の情報かが明確になる、という効果を有する、ICタグ対応移動型在庫品管理システムを提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図1、図2、図3、図4の実施例により発明実施の態様を説明するが例示は、単に説明用のものであり、発明思想の制限、又は、限定を意味するものではない。
本発明の第1の実施の形態のICタグ対応移動型在庫品管理システムを図1に示す。
図1は、被検出物に取り付ける非接触無線ICタグ101、非接触無線ICタグに対応するリーダアンテナ部102、リーダアンテナ部102への電磁波エネルギーを供給或いは、リーダアンテナ部102が受信した情報信号を変換処理するリーダ・ライタ本体部103、無線LAN端末部108を含む無線LAN位置検知システム部104、移動ロボット部105、移動ロボット部105の動作制御及び、リーダ・ライタ本体部103の動作制御或いは、リーダ・ライタ本体部103からの情報信号を解析処理し、無線LAN位置検知システム部104への情報伝達或いは、基地局106との無線情報通信を行うコントローラ部107、コントローラ部107に対する移動ロボット部105への制御信号の送信及び、コントローラ部107と無線LAN位置検知システム部104からの情報信号及び情報信号の受付時刻を管理処理し、画像表示及び音声表示を行う基地局106、によりシステムを構成し、移動ロボット部105内にリーダアンテナ部103及び無線LAN位置検知システム部104の無線LAN端末部108、を配置した構成である。
以上の構成による動作説明をする。
被検出物に取り付けられた非接触無線ICタグ101は、リーダ・ライタ本体部103でつくられた電磁波エネルギーをリーダアンテナ部102より、受信し、非接触無線ICタグ101は、自己保有の情報を情報信号として、送信する。送信された情報信号をリーダアンテナ部102により、受信し、情報信号は、リーダ・ライタ本体部103へ伝達される。リーダ・ライタ本体部103において、情報信号を復調し、コントローラ部107へ復調後の情報信号を伝達する。
コントローラ部107において、情報信号を無線LAN対応信号に変換し、移動ロボット部105内に配置した無線LAN端末部108へ伝達し、無線LAN端末部108から無線LAN位置検知システム部104へ無線通信により伝達し、基地局106へ伝達する。
或いは、コントローラ部107より、無線通信により、基地局106へ情報信号を伝達する。
このとき、コントローラ部107から直接、基地局106へ情報信号を送信するか、或いは、無線LAN端末部108を経由して、基地局106へ情報信号を伝達するかは、単に、設計上の選択肢である。また、本説明では、リーダ・ライタ本体部103においてリーダアンテナ部102が受信した情報信号を復調しているが、コントローラ部107において復調、或いは、基地局106において復調し、基地局106において情報信号として処理が行える信号に変換してもよく、これらは、単に設計上の選択肢である。
次に、移動ロボット部105に配置した無線LAN位置検知システム部104の無線LAN端末部108からの移動ロボット部105の位置情報信号は、無線LAN位置検知システム部104を経由して、基地局106へ伝達する。本説明では、無線LAN位置検知システム部104は、電波の到来時間差測定に基づく三辺測量を行う手段を用いており、株式会社日立製作所の商標AirLocationを使用している。
以上のように、移動ロボット部105の位置検知情報及び非接触無線ICタグ情報を、基地局106へ伝達する。
また、基地局106より移動ロボット部105の動作制御信号が送信され、受信したコントローラ部107は、移動ロボット部105の動作を制御する。
以上のように、移動ロボット部105にリーダアンテナ部102及び無線LAN位置検知システム部104の無線LAN端末部108を配置することにより、移動ロボット部105の現在の位置情報が基地局106へ伝達され、リーダアンテナ部102が受信した非接触無線ICタグ情報も同時に基地局106へ伝達され、基地局106において、両情報を画面上に表示することにより、何時、どの位置に何の被検出物が存在するのかを確認できる。
【0015】
次に、本発明の第2の実施の形態のICタグ対応移動型在庫品管理システムを図2に示す。
図2は、移動ロボット部201において、複数段の棒状の筐体部204内面部にリーダアンテナ部202を設置し、複数段の棒状の筐体部204を図1記載の基地局106からの制御信号により、自動昇降させる昇降制御部206を有する構成である。以上の構成による動作を説明する。
基地局からの、複数段の棒状の筐体部204に対する自動昇降制御信号をコントローラ部203にて受信し、昇降制御部206へ伝達する。昇降制御部206において、自動昇降制御信号により、モータ部205に加わる電源の極性を変へ、モータ部205を時計方向回転或いは、反時計方向回転をさせる。そのことにより、複数段の棒状の筐体部204は、昇降する。このとき、リーダアンテナ部202は、複数段の棒状の筐体部204の内面部に設置しているため、複数段の棒状の筐体部204が昇降するに伴い、外部から見たときのリーダアンテナ部202の位置も昇降していることになる。
本説明図図2では、それぞれの筐体部204にリーダアンテナ部202を設置しているが、最上部の筐体部204のみの設置或いは、それぞれの筐体部204に複数のリーダアンテナ部202を設置してもよく、単に設計上の選択肢であり、本発明に属する。
次に、図3及び図4にて、複数段の棒状の筐体部304の昇降動作事例を説明する。
図3は、複数段の棒状の筐体部304が昇る状態を示している。
図3に示すように、ローラ部A308a及びローラ部B308bをそれぞれの筐体部304に設置する。ローラ部A308a及びローラ部B308bは、それぞれの筐体部304に軸部が固定され、ロープ301が接する回転部のみが回転する。ロープ301の端末は、それぞれ最上段の筐体部304に固定する。本説明では、テープ306で固定しているが、固定する手段は、限定しない。
モータ部307が図3の回転方向302に回転すると、ロープ301は、下方向305に引っ張られることになる。そのことにより、ロープ301は、たわみ部分がなくなり、隣接するローラ部A308a及びローラ部B308bは、互いに近づく方向に力が生じる。最下段の筐体部304は、図2記載の移動ロボット部201に固定しているため、固定された筐体部304を除いた筐体部304は、上方向303に移動することになる。
図4は、逆に複数段の棒状の筐体部404が下がる状態を示している。
モータ部406が図4の回転方向402に回転すると、ロープ401は、下方向405に引っ張られることになる。そのことにより、最上部の筐体部404が下方向403に移動する。その後、隣接する筐体部404も下方向403に移動することになる。
以上のように、リーダアンテナ部202を、自動昇降する筐体部204に設置することにより、リーダアンテナ部202の位置を上下に移動させることができ、高い位置にある図1記載の非接触無線ICタグ101に対しても、リーダアンテナ部202を接近させることが可能となる。また、上下移動することにより、一つのリーダアンテナ部202での受信可能範囲が広くなる。
以上の説明により、ICタグ対応移動型在庫品管理システムの構築が実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0016】
以上のことから、移動ロボットの行動範囲を設定することにより、リーダアンテナ部やリーダ・ライタ本体部などの設備の配置を変更することなく、自由な範囲での被検出物に対する位置検知情報及び非接触無線ICタグ情報を容易に提供できるICタグ対応移動型在庫品管理システムが構築でき、人力を要することなく、在庫品の位置管理及び数量管理を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の構成事例図を示す。
【図2】本発明の第2の実施形態の構成事例図を示す。
【図3】筐体部の昇降動作原理説明の事例図を示す。
【図4】筐体部の昇降動作原理説明の事例図を示す。
【図5】従来のバーコードにおける事例図を示す。
【符号の説明】
101 非接触無線ICタグ
102 リーダアンテナ部
103 リーダ・ライタ本体部
104 無線LAN位置検知システム部
105 移動ロボット部
106 基地局
107 コントローラ部
108 無線LAN端末部
201 図1記載の移動ロボット部
202 図1記載のリーダアンテナ部
203 図1記載のコントローラ部
204 筐体部
205 モータ部
206 昇降制御部
301 ロープ
302 モータ部の回転方向
303 上方向
304 図2記載の筐体部
305 下方向
306 テープ
307 図2記載のモータ部
308a ローラ部A
308b ローラ部B
401 図3記載のロープ
402 モータ部回転方向
403 下方向
404 図2記載の筐体部
405 下方向
406 図2記載のモータ部
501 バーコード
502 バーコードリーダ端末
503 サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出物に取り付ける非接触無線ICタグ、非接触無線ICタグに対応するリーダアンテナ部、リーダアンテナ部への電磁波エネルギーを供給或いは、リーダアンテナ部が受信した情報信号を変換処理するリーダ・ライタ本体部、無線LAN端末部を含む無線LAN位置検知システム部、移動ロボット部、移動ロボット部の動作制御及び、リーダ・ライタ本体部を制御或いは、リーダ・ライタ本体部からの情報信号を解析処理し、無線LAN位置検知システム部への情報伝達或いは、基地局との無線情報通信を行うコントローラ部、コントローラ部に対する移動ロボット部への制御信号の送信及び、コントローラ部と無線LAN位置検知システム部からの情報信号及び情報信号の受付時刻を管理処理し、画像表示及び音声表示を行う基地局、によりシステムを構成し、移動ロボット部にリーダアンテナ部及び無線LAN位置検知システム部の無線LAN端末部を配置し、非接触無線ICタグからの情報信号をリーダアンテナ部で受信し基地局へ伝達、また、無線LAN端末部を含む無線LAN位置検知システム部で移動する移動ロボット部の位置検知情報を基地局に伝達し、基地局において、位置検知情報、非接触無線ICタグ情報、時刻情報を表示する、ICタグ対応移動型在庫品管理システム。
【請求項2】
移動ロボット部において、複数段の棒状の筐体部内面部にリーダアンテナ部を設置し、複数段の棒状の筐体部を基地局からの制御信号により、自動昇降させる昇降制御部を設けた、請求項1記載のICタグ対応移動型在庫品管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−82976(P2006−82976A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300754(P2004−300754)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(592227737)
【Fターム(参考)】