説明

ICモジュール、および無線通信媒体

【課題】この発明は、ICチップのバンプと基板のランドとの間の接続の信頼性を高めることができるICモジュール、および無線通信媒体を提供することを課題とする。
【解決手段】無線通信媒体は、基板6上にLSI4をフリップチップにより実装して形成されている。アンテナにLSI4を接続するための2つのランド8a、8bには、それぞれLSI4のバンプ10が2つずつ割り当てられる。バンプ10の間には接着剤が介在され、LSI4とランド8a(8b)を接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板のランドにICチップのバンプを接続したICモジュール、およびこのICモジュールを備えた無線通信媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICモジュールを備えた無線通信媒体として、基板側のアンテナ2とICチップのバンプ電極4との間のギャップを一定に保つことにより特性のバラツキを小さくした非接触ICタグが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この装置では、ICチップと基板を接着する接着剤として、非導電性微粒子16を混入・分散させた微粒子混入樹脂14を用いることで、微粒子16の直径に依存したギャップでアンテナ2とバンプ電極4を対向させるようにしている。
【0003】
しかし、この装置では、1つのアンテナ2(ランド)に対して1つのバンプ電極4(バンプ)を電気的に接続する構造を採用しているため、非接触ICタグに外部から応力が加わった際などに、この電気的な接続が剥れ易く、信頼性に欠ける問題がある。
【0004】
また、この装置では、アンテナとバンプ電極との間に微粒子を含む樹脂を介在させているため、その分電気抵抗が高くなる。このように、アンテナとICチップとの間の接続抵抗が大きくなると、非接触ICタグの通信距離が短くなってしまう。
【特許文献1】特開2004−343000号公報(要約、段落[0020]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、ICチップのバンプと基板のランドとの間の接続の信頼性を高めることができるICモジュール、および無線通信媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のICモジュールは、少なくとも1つのランドを有する基板と、上記ランドそれぞれに少なくとも2つずつ接続する複数個のバンプを有するICチップと、上記ランドに対応する少なくとも2つのバンプを電気的に接続しつつ上記基板に上記ICチップを接着する接着剤と、を有する。
【0007】
上記発明によると、1つのランドに対して少なくとも2つのバンプを接続するため、外部からの応力が接続部分に作用した場合、1つのバンプが剥れても他のバンプが接続を維持し、各ランドに対するバンプの接続の信頼性を高めることができる。
【0008】
また、本発明の無線通信媒体は、無線通信用のアンテナを接続するための2つのランドを有する基板と、上記ランドそれぞれに少なくとも2つずつ接続する複数個のバンプを有するICチップと、上記2つのランドそれぞれに対応する少なくとも2つのバンプを電気的に接続しつつ上記基板に上記ICチップを接着する接着剤と、を有する。
【0009】
上記発明によると、1つのランドに対して少なくとも2つのバンプを接続するため、外部からの応力が接続部分に作用した場合、1つのバンプが剥れても他のバンプが接続を維持し、各ランドに対するバンプの接続の信頼性を高めることができる。
【0010】
また、上記発明によると、1つのランドに対して少なくとも2つのバンプを接続するため、電気抵抗を低くでき、接続抵抗に起因してアンテナによる通信距離が短くなることがない。
【発明の効果】
【0011】
この発明のICモジュール、および無線通信媒体は、上記のような構成および作用を有しているので、ICチップのバンプと基板のランドとの間の接続の信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1には、この発明の実施の形態に係る無線通信媒体の等価回路を示してある。無線通信媒体として、例えば、非接触ICカードや非接触IC冊子などがある。無線通信媒体は、図示しないリーダライタとの間で無線通信するためのアンテナ2、およびLSI4(ICチップ)を有する。
【0013】
この無線通信媒体は、リーダライタから供給される磁力線をアンテナ2を介して電力に変換し、この電力によってLSI4を動作させ、残りの電力でリーダライタにレスポンスを返す。このように、無線通信媒体は、非接触によりリーダライタとの間でデータ通信を行なう。
【0014】
図2には無線通信媒体の要部の構造として特にLSI4の接続構造を平面図にして示してあり、図3にはこの構造を図2の線III-IIIで切断した断面図を示してある。
【0015】
無線通信媒体は、厚さ0.038[mm]のポリエチレンテフタレート(PET)の基板6上に厚さ0.03[mm]のパターン8をアルミニウムにより形成し、且つLSI4をいわゆるフリップチップ(Flip Chip)方式により実装し、さらにこの基板6の表裏面をPET−G非結晶性ポリエステル樹脂(非結晶性PETコポリマー)シート(図示せず)で挟んで真空ホットプレスにて一体化することで形成されている。
【0016】
基板6上に形成されるパターン8には、LSI4をアンテナ2に接続するための2つのランド8a、8bが含まれる。本実施の形態では、基板6上には、LSI4を接続するための4つのランド8a、8b、8c、8dがパターニングされている。
【0017】
一方、LSI4の基板6に対向する側には、各ランド8a、8b、8c、8dそれぞれに電気的に接続するための複数のバンプ10が設けられている。各バンプ10は、0.02[mm]の突出高さで金により形成され、フリップチップ実装によりアルミニウムパターン8に突き刺さるようになっている。
【0018】
特に、本実施の形態では、アンテナ2に接続するためのランド8a、8bそれぞれに対し、2つずつバンプ10を割り当てた。なお、1つのランド8a(8b)に割り当てるバンプ10の数は、少なくとも2つ以上であれば良く、3つ以上設けても良い。
【0019】
上記LSI4を基板6に対してフリップチップ実装する場合、基板6上の実装領域に接着剤9を塗布してその上にLSI4を乗せる。このとき、基板6の各ランド8a、8b、8c、8dそれぞれに対応するバンプ10が接続するようにLSI4を位置決めし、接着剤9によって基板6とLSI4を隙間無く封着する。なお、ここで使う接着剤9は、例えばニッケル粒子などの導電性微粒子を含む異方性接着剤であり、フリップチップによりLSI4を基板6に押圧した際にこの導電性微粒子がランド8とバンプ10を導通するよう機能する。
【0020】
このとき、アンテナ2に接続するための2つのランド8a、8bに対してそれぞれ割り当てられた2つのバンプ10の間にも接着剤9が介在され、この部位でLSI4本体とランド8a(8b)を接着する。このため、1つのランド8に対して1つのバンプ10を接続する場合と比較して、両者間の接続の信頼性を高めることができる。
【0021】
以上のように、本実施の形態によると、特にアンテナ2に接続するための2つのランド8a、8bに対してそれぞれLSI4の2つのバンプ10を接続するようにしたため、例えば、無線通信媒体の外部から応力が加わってLSI4と基板6との間の接続部分に応力が作用した場合であっても、接続の信頼性を高めることができる。つまり、1つのランド8a(8b)に接続した一方のバンプ10が剥れても他方のバンプ10の接続を維持することができる。
【0022】
特に、本実施の形態のように、2つのバンプ10間に接着剤9を介在させて、この部位でLSI4とランド8a(8b)を強固に接着することにより、一方のバンプ10がランド8a(8b)から剥れてしまった後、他方のバンプ10を包囲するように接着剤9が存在することになり、1つのバンプしか設けない場合と比較して2段階で接続状態を維持するようになり、接続の信頼性を極めて高くすることができる。
【0023】
また、1つのランド8a(8b)に対して複数のバンプ10を接続するようにしたため、1つのバンプを接続する場合と比較して、両者の間の電気抵抗を小さくでき、アンテナ2による通信距離が接続抵抗に起因して短くなることを防止できる。
【0024】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。
【0025】
例えば、上述した実施の形態では、1つのランドに対して2つのバンプを接続する場合について説明したが、これに限らず、3つ以上のバンプを1つのランドに接続するようにしても良い。この場合、各バンプの間に接着剤を介在させることが重要であり、バンプの数はスペーシングの問題であり、多ければ多いほど良い。
【0026】
また、上述した実施の形態では、無線通信媒体に本発明の接続構造を適用した場合について説明したが、これに限らず、半導体装置を基板に実装する他のいかなる場合にも本発明を適用できることは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の実施の形態に係る無線通信媒体の回路図。
【図2】図1の無線通信媒体の要部の構造を示す概略平面図。
【図3】図2の線III-IIIで切断した断面図。
【符号の説明】
【0028】
2…アンテナ、4…LSI、6…基板、8a、8b、8c、8d…ランド、9…接着剤、10…バンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのランドを有する基板と、
上記ランドそれぞれに少なくとも2つずつ接続する複数個のバンプを有するICチップと、
上記ランドに対応する少なくとも2つのバンプを電気的に接続しつつ上記基板に上記ICチップを接着する接着剤と、
を有することを特徴とするICモジュール。
【請求項2】
上記接着剤は、上記ICチップと基板を隙間無く封着するように設けられ、上記ランドに対応する少なくとも2つのバンプの間で上記ICチップとランドを接着することを特徴とする請求項1に記載のICモジュール。
【請求項3】
無線通信用のアンテナを接続するための2つのランドを有する基板と、
上記ランドそれぞれに少なくとも2つずつ接続する複数個のバンプを有するICチップと、
上記2つのランドそれぞれに対応する少なくとも2つのバンプを電気的に接続しつつ上記基板に上記ICチップを接着する接着剤と、
を有することを特徴とする無線通信媒体。
【請求項4】
上記接着剤は、上記ICチップと基板を隙間無く封着するように設けられ、上記2つのランドそれぞれに対応する少なくとも2つのバンプの間で上記ICチップとランドを接着することを特徴とする請求項3に記載の無線通信媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−302013(P2006−302013A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123635(P2005−123635)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】