説明

IGF−Iポリ(エチレングリコール)コンジュゲート

a)5’から3’の方向に、ポリペプチドをコードする核酸、および配列番号01のトリプシン部位をコードする核酸を含む発現構築物をコードする核酸を提供する工程
b)細胞においてa)の核酸を発現させ、そして細胞および/または培養培地から発現構築物を回収する工程、
c)C末端リジン残基においてポリ(エチレングリコール)と共有結合的にコンジュゲートした配列番号02のアミノ酸配列を有するターゲットペプチドを提供する工程、
d)発現構築物およびターゲットペプチドを、トリプシン突然変異体D189K、K60E、N143H、E151Hと共にインキュベーションする工程、および
e)インキュベーション混合物から1つのポリ(エチレングリコール)にコンジュゲートしたポリペプチドを回収しそれにより産生する工程
を含む、1つのポリ(エチレングリコール)にコンジュゲートしたポリペプチドの産生法を本明細書において報告する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において、ポリ(エチレングリコール)残基を含む第1ポリペプチドを選択的で酵素的にC末端で第2ポリペプチドへとコンジュゲーションするための方法、すなわち酵素的PEG化のための方法を報告する。
【0002】
発明の背景
タンパク質療法の重要性は過去数十年間かけて非常に大きくなった。なぜなら、このクラスの薬物は以前には処置できなかった疾病を標的としているからである。タンパク質薬物の製剤化は困難である。なぜなら、その分子サイズが伝統的な低分子量物質とは非常に異なるからである。さらに、タンパク質は、適切な機能性に必須であるその二次構造および三次構造のようないくつかの他の特徴を有する。それらは多くのタイプの分解または修飾を受けやすく、そしてその製剤は確実に安定でなければならず、そしてその効果的で安全なターゲット用量内に留まっていなければならない。
【0003】
薬学的化合物としてのタンパク質の関与する他の問題は、患者内で引き起こされ、例えば、免疫学的反応、体内からの急速なクリアランスによる半減期の減少、並びに、その作用を発揮する前に薬物を破壊するタンパク質分解的開裂などがある(Brown, L.R., Expert Opinion Drug Deliv. 2 (2005) 29-42)。
【0004】
これらの問題に対処するための1つのアプローチは、タンパク質分子に化学的変化を含めることであり、例えば、タンパク質薬物に1つ以上のポリ(エチレングリコール)残基を共有結合的に付着させることである。この手順はPEG化と呼ばれる。PEG化の利点は、得られるコンジュゲートの分子量および水力学的サイズの増加である。新たなコンジュゲートには、タンパク質分解酵素並びに中和抗体または免疫細胞がより容易に近づきにくくなる。結果として、PEG化は望ましくない開裂から薬物を防ぎ、そしてアレルギー性副作用の可能性を低下させる。増大したサイズはまた体内からのクリアランスにも影響を及ぼす。なぜなら、タンパク質−PEGコンジュゲートはあまりにも大きくて腎による限外濾過によって除去できないからである(Veronese, F.M. and Pasut, G., Drug Discovery Today 10 (2005) 1451-1458; Brown, L.R., Expert Opinion Drug Deliv. 2 (2005) 29-42)。ポリ(エチレングリコール)それ自体も新たな薬物の特性を大きく改善させる。さらにPEGに毒性がないことも大きな利点である。総合すれば、PEG化は、血液循環中のタンパク質医薬の寿命を増加させるための周知の方法である(Kozlowski, A. and Harris, M.J., Journal of Controlled Release 72 (2001) 217-224)。多種多様なPEG化タンパク質薬物、例えばシェリングプラウからのPEG-Intron(登録商標)、ファイザーからのSomavert(登録商標)およびロシュファーマシューティカルズからのPegasys(登録商標)が市販されている(Pasut, G., et al., Expert Opinion on Therapeutic Patents 14 (2004) 859-894)。
【0005】
温和な条件、高い化学的特異性および位置特異性、並びに適切な生成物の収量を有する酵素的で部位特異的な改変に対する関心は高い。この分野におけるいくつかの試みがなされている。Mao et al. (Mao, H., et al., J. Am. Chem. Soc. 126 (2004) 2670-2671)は、C末端改変のためのソルターゼにより媒介されるタンパク質ライゲーション法を開発した。Sato (Sato, H., Advanced Drug Delivery Reviews 54 (2002) 487-504)は、トランスグルタミナーゼに対する特別な基質配列を受け継いだインタクトおよびキメラなタンパク質に、トランスグルタミナーゼを使用してポリ(エチレングリコール)を部位特異的に導入するシステムを確立した。天然タンパク質のN末端を改変するために、免疫グロブリンAプロテアーゼ(IgAプロテアーゼ)がLewinska et al. (Lewinska, M., et al. Bioconjugate Chemistry 15 (2004) 231-234)によって使用されている。突然変異したトリプシン酵素はHoess et al. (WO 2006/015879)によって開発された。
【0006】
発明の要約
本明細書において、1つ以上のポリ(エチレングリコール)分子(群)へのポリペプチドの選択的なC末端における共有結合的なコンジュゲーションのための方法が報告されている。これは、ポリ(エチレングリコール)に共有結合的にコンジュゲーションした小さなペプチドが、PEG化しようとする対象のポリペプチドに酵素的に移行されるという方法である。トリプシン開裂部位に対してC末端にあるStrepタグの存在が、C末端における部位特異的改変を増強することが判明した。
【0007】
本明細書に報告されているような第1の局面は、
a)5’から3’の方向に、
i)ポリペプチドをコードする核酸、および
ii)配列番号01のアミノ酸配列をコードする核酸
を含む融合ポリペプチドをコードする核酸を提供する工程
b)細胞においてa)の核酸を発現させ、そして細胞および/または培養培地から融合ポリペプチドを回収する工程、
c)C末端リジン残基においてポリ(エチレングリコール)残基と共有結合的にコンジュゲートした配列番号02のアミノ酸配列を有するターゲットペプチドを提供する工程、
d)融合ポリペプチドおよびターゲットペプチドを、トリプシン突然変異体D189K、K60E、N143H、E151Hと共にインキュベーションする工程、および
e)インキュベーション混合物から1つのポリ(エチレングリコール)残基にコンジュゲートしたポリペプチドを回収しそれにより生産する工程
を含む、ポリ(エチレングリコール)残基にコンジュゲートしたポリペプチドの生産方法である。
【0008】
1つの態様において、インキュベーションは、
i)融合ポリペプチドおよびターゲットペプチドを緩衝溶液中で塩酸グアニジウムと共にインキュベーションし、
ii)トリプシン突然変異体D189K、K60E、N143H、E151HをZn(II)塩と共にインキュベーションし、そして
iii)i)およびii)のインキュベーション混合物を合わせそしてインキュベーションすることを含む。
【0009】
本明細書において報告したような方法の1つの態様において、融合ポリペプチドは、N末端からC末端の方向に、PEG化しようとするポリペプチド、トリプシン−4X−突然変異体(trypsin-4x-mutant)の開裂部位、およびStrepタグを含む。別の態様において、融合ポリペプチドをコードする核酸は、5’から3’の方向に、i)PEG化しようとするポリペプチドをコードする核酸、ii)配列番号01のアミノ酸配列をコードする核酸、およびiii)配列番号13または27のStrepタグをコードする核酸を含む。
【0010】
別の態様において、インキュベーションは合計で150分間から180分間である。さらなる態様において、融合ポリペプチドをコードする核酸はさらにiii)配列番号13のアミノ酸配列をコードする核酸を含む。1つの態様において、前記ポリペプチドはヒトIGF−Iである。
【0011】
1つの態様において、インキュベーションはHEPES緩衝溶液中で行なう。さらなる態様において、HEPES緩衝溶液中のインキュベーションは少なくとも20時間である。別の態様において、インキュベーションは20時間から54時間である。さらに別の態様において、インキュベーションは20℃で行なう。
【0012】
1つの態様において、融合ポリペプチドは、配列番号10、配列番号11または配列番号12から選択されたアミノ酸配列を有する。さらなる態様において、融合ポリペプチドをコードする核酸は、配列番号10、配列番号11または配列番号12のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸である。
【0013】
本明細書において報告したような1つの局面はまた、配列番号28または配列番号29のアミノ酸配列を有し、そしてC末端リジン残基で1つのポリ(エチレングリコール)残基にコンジュゲートしたポリペプチドである。
【0014】
本明細書において報告したような1つの局面は、配列番号28もしくは配列番号29のアミノ酸配列を有し、そしてC末端リジン残基において1つのポリ(エチレングリコール)残基とコンジュゲートしたポリペプチド、または本明細書において報告したような方法を用いて得られたポリペプチドを含む、薬学的組成物である。
【0015】
本明細書において報告したようなさらなる局面は、アルツハイマー病の処置のための医薬品の製造のための、配列番号28もしくは配列番号29のアミノ酸配列を有し、そしてC末端リジン残基において1つのポリ(エチレングリコール)残基とコンジュゲートしたポリペプチド、または本明細書において報告したような方法を用いて得られたポリペプチドの使用である。
【0016】
本明細書において報告したようなさらなる局面は、医薬品としての使用のための、配列番号28もしくは配列番号29のアミノ酸配列を有し、そしてC末端リジン残基において1つのポリ(エチレングリコール)残基とコンジュゲートしたポリペプチド、または本明細書において報告したような方法を用いて得られたポリペプチドである。
【0017】
本明細書において報告したような1つの局面は、アルツハイマー病の処置または予防における使用のための、配列番号28もしくは配列番号29のアミノ酸配列を有し、そしてC末端リジン残基において1つのポリ(エチレングリコール)残基とコンジュゲートしたポリペプチド、または本明細書において報告したような方法を用いて得られたポリペプチドである。
【0018】
本明細書において報告したような別の局面は、配列番号28もしくは配列番号29のアミノ酸配列を有し、そしてC末端リジン残基において1つのポリ(エチレングリコール)残基とコンジュゲートしたポリペプチド、または本明細書において報告したような方法を用いて得られたポリペプチドの治療有効量をそれを必要とする被験体に投与することを含む、処置方法である。
【0019】
本明細書において報告したような局面はまた、配列番号28または配列番号29のアミノ酸配列を含み、そしてC末端リジン残基において1つのポリ(エチレングリコール)残基とコンジュゲートしたポリペプチドである。
【0020】
本明細書において報告したようなさらなる局面は、配列番号28または配列番号29のアミノ酸配列を含み、そしてC末端リジン残基において1つのポリ(エチレングリコール)残基とコンジュゲートしたポリペプチドを含む薬学的組成物である。本明細書において報告したような別の局面は、神経変性疾患の処置のための、配列番号28または配列番号29のアミノ酸配列を含み、そしてC末端リジン残基において1つのポリ(エチレングリコール)残基とコンジュゲートしたポリペプチドである。1つの態様において神経変性疾患はアルツハイマー病である。
【0021】
発明の詳細な説明
本明細書において1つ(またはそれ以上)のポリ(エチレングリコール)残基(群)への選択的でC末端における共有結合的ポリペプチドのコンジュゲーションのための方法を報告する。これは、ポリ(エチレングリコール)残基に共有結合的にコンジュゲートした小さなペプチドが、PEG化しようとするポリペプチドに酵素的に移行される方法である。
【0022】
本明細書において報告したような酵素的方法は、伝統的で化学的で特別な基質を必要とする手法に代わるものを提供する。本方法を適用することによって、アイソフォームの分離はもはや必要ではない。なぜなら単一の部位特異的な改変が得られるからである。さらに、温和な反応条件がタンパク質の変性を防ぎ、従って、生成物の減少を制限する。さらに、天然に存在するポリペプチドを部位特異的にモノPEG化し、工学操作した突然変異体を過剰にすることが可能である。
【0023】
本明細書において使用する「アミノ酸」という用語は、直接的にまたは前駆体の形態で核酸によってコードされ得るカルボキシα−アミノ酸の基を示す。個々のアミノ酸は、3つのヌクレオチド、いわゆるコドンまたは塩基トリプレットからなる核酸によってコードされる。各アミノ酸は少なくとも1つのコドンによってコードされる。これは「遺伝子コードの縮重」として知られる。本出願内で使用する「アミノ酸」という用語は、アラニン(3文字コード:ala、1文字コード:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リジン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、トレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)、およびバリン(val、V)を含む天然に存在するカルボキシα−アミノ酸を示す。
【0024】
本発明を実施するのに有用である当業者に知られている方法および技術は、例えば、Ausubel, F.M. (ed.), Current Protocols in Molecular Biology, Volumes I to III (1997), Wiley and Sons; Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)に記載されている。
【0025】
本明細書において使用する「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合性である任意および全ての溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収/再吸収遅延剤などを含む。1つの態様において担体は注射または点滴に適している。薬学的に許容される担体は、無菌水性液剤または分散剤、および無菌注射液剤または分散剤の調製のための無菌粉末を含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は当技術分野において公知である。水に加えて、担体は、例えば、等張緩衝生理食塩水溶液である。
【0026】
「ポリ(エチレングリコール)残基」または「PEG」または「PEG分子」という用語は、主な画分または部分としてポリ(エチレングリコール)を含む分子または残基を示す。このようなポリ(エチレングリコール)は、結合反応に必要であるか、分子の化学合成から生じるか、または分子の部分の最適な距離のためのスペーサーである、1つ以上のさらなる化学基(群)を含み得る。これらのさらなる化学基は、ポリ(エチレングリコール)の分子量の計算には使用されない。さらに、このようなポリ(エチレングリコール)は、互いに連結した1つ以上のポリ(エチレングリコール)鎖を含み得る。1つより多くのポリ(エチレングリコール)鎖を有するポリ(エチレングリコール)は複数のアームを持つまたは分岐したポリ(エチレングリコール)と呼ばれる。種々のポリオール(グリセロール、ペンタエリスリトール、およびソルビトールを含む)にポリエチレンオキシドを付加することによって、分岐したポリ(エチレングリコール)を調製することができる。分岐したポリ(エチレングリコール)は、例えば、EP 0 473 084およびUS 5,932,462に報告されている。1つの態様において、ポリ(エチレングリコール)残基は分子量20〜35kDaのポリ(エチレングリコール)残基であり、そして直鎖状のポリ(エチレングリコール)残基である。別の態様において、ポリ(エチレングリコール)残基は35kDaを超える、特に40kDaの分子量を有するポリ(エチレングリコール)残基であり、そして分岐したポリ(エチレングリコール)残基である。さらなる態様において、ポリ(エチレングリコール)残基は40kDaの重量を有し、そして2つのアームを有するポリ(エチレングリコール)残基である。
【0027】
「PEG化」という用語は、ポリペプチドのN末端および/または内部リジン残基におけるポリ(エチレングリコール)分子の共有結合連結を示す。ポリペプチドのPEG化は、最先端の当技術分野において広く知られており、そして例えば、Veronese, F.M., Biomaterials 22 (2001) 405-417によって概説されている。種々の官能基および種々の分子量を有するポリ(エチレングリコール)分子、直鎖状および分岐状PEG並びに種々の連結基を使用して、PEG分子をポリペプチドに連結させることができる(また、Francis, G.E., et al., Int. J. Hematol. 68 (1998) 1-18; Delgado, C., et al., Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Systems 9 (1992) 249-304も参照)。ポリペプチドのPEG化は、水溶液中で、例えばWO00/44785に記載のようにPEG化試薬を用いて、1つの態様においては、分子量5kDa〜40kDaのNHSにより活性化された鎖状または分岐状PEG分子を使用して実施することができる。PEG化はまた、Lu, Y., et al., Reactive Polymers 22 (1994) 221-229に従って固相で実施することもできる。無作為ではなく、N末端がPEG化されたポリペプチドもWO94/01451に従って産生することができる。
【0028】
「ポリペプチド」は、天然で産生されたものであれ合成で産生されたものであれ、ペプチド結合によって共有結合的に接続されたアミノ酸残基からなるポリマーである。約20アミノ酸残基未満のポリペプチドは「ペプチド」と呼ばれ得、一方、2つ以上のポリペプチドからなるか、または100アミノ酸残基より長い長さを有する1つのポリペプチドを含む分子は、「タンパク質」と呼ばれ得る。ポリペプチドはまた、非アミノ酸成分、例えば糖質基、金属イオン、またはカルボン酸エステルを含み得る。非アミノ酸成分は、ポリペプチドが発現されている細胞によって加えられ得、そして細胞のタイプによって異なり得る。ポリペプチドは、本明細書において、そのアミノ酸骨格構造またはそれをコードする核酸の点から定義される。糖質基などの付加は一般的には明記されていないが、それにも関わらず存在し得る。
【0029】
Hoess et al.は、加水分解に対するトリプシンの主な親和性を克服することのできる、トリプシン突然変異体D189K、K60E、N143H、E151H(trypsin-4x-mutant)を作製した。さらにこの突然変異体は、C末端におけるリジンおよびアルギニンの有意なタンパク質分解を示さない。trypsin-4x-mutantは、特異的なモチーフ、すなわちチロシン−アルギニン−ヒスチジン(YRH)配列を認識する。trypsin-4x-mutantは、ヒスチジン残基間にZn2+イオンを含むキレート複合体を構築することによってこの認識部位と特異的に相互作用することができる。この認識配列がヒトポリペプチド中に出現する確率は非常に低い。従って、複数の部位特異的改変および/または望ましくない開裂はかなり可能性が低い。trypsin-4x-mutantによって確実に最善に認識されるためのこの配列のさらなる改変により、チロシン−アルギニン−ヒスチジン−アラニン−アラニン−グリシン(YRHAAG)(配列番号01)のアミノ酸配列からなる改変された「トリプシン部位」である特異的なタグが開発された。このペプチドはポリペプチドのC末端に隔合し得、従ってtrypsin-4x-mutantのための基質を構築する。さらに、部位特異的PEG化を可能とするのにターゲットペプチドが必要である。このペプチドは「トリプシン部位」と重複し、そしてアルギニン−ヒスチジン−アラニン−リジン(RHAK)(配列番号02)のアミノ酸配列からなる。このターゲットペプチドは多種多様な分子に酵素的に移行され得る。trypsin-4x-mutantは、チロシン残基とヒスチジン残基の間のペプチド結合を開裂し、これにより「トリプシン部位」(RHAAG)(配列番号03)の一部を置換する。短い非天然アミノ酸配列(YRHAK)(配列番号04)は、タンパク質と付着した求核試薬との間に留まる。しかしながら、この短い伸長は付着した求核試薬(例えばポリ(エチレングリコール)残基)によってかなり遮蔽され、従って、このペプチドの免疫原性活性はかなり可能性が低い。
【0030】
trypsin-4x-mutantにおける改変は、加水分解副反応を完全に排除することはできない。従って、本明細書において報告したような方法の1つの態様におけるように、正しい時期に複合体Zn2+イオンにエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)を添加することによって、または本明細書において報告したような方法の別の態様におけるように、pHを酸性レベルに調整し、適切な酵素の機能に必要とされるpH範囲としないことによって反応を停止した場合にのみ、最大収量を達成することができる。
【0031】
いくつかの組換えタンパク質は、例えば、その後の精製工程を容易にするために、またはさもなければ単に宿主細胞における適切な産生を確実にするにはあまりにも小さい構築物の発現を可能とするために、特別な融合タグを含む。いくつかのよく確立されたタグはヘキサヒスチジンタグ(Hisタグ)またはStrepタグである。Hisタグは金属アフィニティークロマトグラフィーを通して融合タンパク質を精製するのに使用できるが、Strepタグは、ストレプトアビジンカラムを使用する融合タンパク質の精製に適用される(Terpe, K., Appl. Microbiol. Biotechnol. 60 (2003) 523-533)。いくつかの環境下では、例えば医薬品用に、または単に必要であれば適切なリフォールディングを確実にするためにこれらのタグを開裂することが必要である。規定の認識部位を有するプロテアーゼを使用する酵素的開裂が最も望ましいアプローチである。淋菌に由来する免疫グロブリンAプロテアーゼ(IgAプロテアーゼ)が本明細書において報告したような方法の1つの態様において使用される。IgAプロテアーゼの認識部位は、Yaa Pro a Xaa Proとして報告されている(YaaはProを意味するか、または稀にAla、GlyまたはThr:Pro Ala、Pro Gly、またはPro Thrと組み合わせたProを意味し;XaaはThr、SerまたはAlaを意味する)。淋菌由来のIgAプロテアーゼに対する合成ペプチド基質は公知の自己タンパク質分解部位である(例えばWood and Burton, Infection and Immunity 59 (1991) 1818-1822参照)。IgAプロテアーゼについて知られている認識部位は、以下の配列を含み、「a」は、切断される結合の位置を示し:
【化1】


最初の3つが最も頻繁に選択される。
【0032】
従って、1つの態様において融合ポリペプチドは、N末端からC末端の方向に、Hisタグ、スペーサー、IgAプロテアーゼ開裂部位(IgA部位)、対象のポリペプチド、trypsin-4x-mutant開裂部位(tryp部位)および場合によりストレプトアビジンタグ(strepタグ)を含む。
【0033】
trypsin-4x-mutantを使用する部位特異的改変の酵素的技術は、このタイプの改変に必須である付属物を有する特別な構築物を作ることを必要とした。
【0034】
従って本明細書において報告したような方法の1つの態様において、融合ポリペプチドは、N末端からC末端の方向に、PEG化しようとするポリペプチド、trypsin-4x-mutant開裂部位およびStrepタグを含む。別の態様において融合ポリペプチドをコードする核酸は、5’から3’の方向に、i)PEG化しようとするポリペプチドをコードする核酸、ii)配列番号01のアミノ酸配列をコードする核酸、およびiii)配列番号13または27のStrepタグをコードする核酸を含む。
【0035】
それ故、本明細書において報告したような1つの局面は、
a)5’から3’の方向にi)ポリペプチドをコードする核酸、およびii)配列番号01のアミノ酸配列をコードする核酸を含む核酸によってコードされる融合ポリペプチド、および配列番号02のアミノ酸配列を有し、そしてC末端リジン残基においてポリ(エチレングリコール)残基と共有結合的にコンジュゲートしたターゲットポリペプチドを、トリプシン突然変異体D189K、K60E、N143H、E151Hと共にインキュベーションする工程、そして
b)インキュベーション混合物から1つのポリ(エチレングリコール)残基にコンジュゲートしたポリペプチドを回収およびそれにより産生する工程
を含む、ポリ(エチレングリコール)残基にコンジュゲートしたポリペプチドを産生するための方法である。
【0036】
1つの態様において、融合ポリペプチドは、5’から3’の方向に、i)PEG化しようとするポリペプチドをコードする核酸、ii)配列番号01のアミノ酸配列をコードする核酸、およびiii)配列番号13または27のアミノ酸配列をコードする核酸を含む、核酸によってコードされる。
【0037】
1つの態様において、前記方法は、第1工程として:
a−1)5’から3’の方向に
i)PEG化しようとするポリペプチドをコードする核酸
ii)配列番号01のアミノ酸配列をコードする核酸、および
iii)配列番号13または27のアミノ酸配列をコードする核酸
を含む融合ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞を培養し、そして細胞および/または培養培地から融合ポリペプチドを回収することを含む。
【0038】
1つの態様において、インキュベーションは
i)融合ポリペプチドおよびターゲットペプチドを緩衝溶液中で塩酸グアニジウムと共にインキュベーションし、
ii)トリプシン突然変異体D189K、K60E、N143H、E151HをZn(II)塩と共にインキュベーションし、
iii)i)およびii)のインキュベーション混合物を合わせそしてインキュベーションすることを含む。
【0039】
本発明は、本発明が行なわれた時期には研究室に十分な量で入手可能であったIGF−Iタンパク質を使用することによって以下に例示されている。これは制限と捉えるべきではなく、単に一例として提供される。なぜなら本発明はほぼどのポリペプチドを用いても実践され得るからである。本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲に示される。
【0040】
例示的な構築物は、Hisタグ、スペーサーおよびIGF−Iポリペプチド(部分)のN末端のIgAプロテアーゼ開裂部位(IgA部位)およびトリプシン開裂部位(tryp部位)および場合によりIGF−Iポリペプチド(部分)のC末端のストレプトアビジンタグ(strepタグ)を有していた(図1も参照):
【化2】

【0041】
trypsin-4x-mutantによって触媒されるエステル交換反応の動態を決定するための実験は、400μlという少量の最終容量で行なうことができる。
【0042】
部位特異的に改変しようとするIGF−Iを含む融合ポリペプチドを、酵素反応の前に、2Mトリス(ヒドロキシメタン)アミノメタン(TRIS)緩衝液(最終濃度0.2M)、pH8.0、求核試薬(RHAK−6CF(配列番号02)またはRHAK−MCa−PEG20000(配列番号02))、および塩酸グアニジウム(Gdm−HCl)と共にインキュベーションすることができる。理論によって固めたくはないが、このようにIGF構築物の溶解度を維持することができ、そして低濃度の塩酸グアニジウムがおそらく部分的な変性を誘導し、従って、酵素反応中にC末端が「トリプシン部位」とより良好に近づきやすくなった。trypsin-4x-mutantをZn2+イオンの存在下でプレインキュベーションすることができる。2つの反応混合物AおよびB(混合物AはIGF−Iを含む融合ポリペプチドを含み、混合物Bはtrypsin-4x-mutantを含む)を合わせることによって良好な酵素活性を達成することができる。反応混合物は、pH8.0のpH値を有し得る。全反応混合物を穏やかに振とうしながら30℃でインキュベーションすることができる。180分間の全反応時間を適用し得、そして試料を30分間毎に取り出し得る。Zn2+イオンとEDTAとの錯体を形成することによって酵素反応を停止し得る。最後に、緩衝溶液(100mMトリス、150mM NaClを含む緩衝液S、pH8.0)を1:2の最終希釈比となるまで加えることによって容量を調整することができる。試料をSECによって分析することができる。どの標識を使用するかに依存して、異なるSECカラムを適用することができる。例えば、RHAK−6CFでは100〜7000Daの分離範囲を有するSuperdex(登録商標)ペプチドカラムを使用することができ、RHAK−MCa−PEG20000では3000〜70000Daの分離範囲を有するSuperdex(登録商標)75カラムを使用することができる(GE Healthcare)。
【0043】
RHAK−6CFを用いての部位特異的改変についての収率は、以下のように決定することができる。遊離RHAK−6CFの濃度希釈シリーズを調製することができる(0.5、1、5、10、25、50および100μg/ml)。緩衝液Sを溶媒として使用することができる。なぜならRHAK−6CF蛍光はpH感受性であるからである。検量試料をSECによって分析することができる。514nmにおける照射放出から生じたRHAK−6CFを含むピークのピーク面積を、種々の濃度について決定することができ、そしてプロットし、これにより検量曲線を得る。反応試料を検量試料と同じようにSECによって分析することができ、そして蛍光産物のピーク面積を決定することができる。形成されたRHAK−6CFの量および従って求核試薬を用いての部位特異的改変の収率を、検量曲線を使用することによって決定することができる。
【0044】
全ての構築物について収率は時間と共に増加した。約150分後に最大収率を得ることができる。構築物wt−hIGF−トリプシン部位−strepタグが最善の結果を与え、150分後に17.5%の収率であった。これに対して、wt−hIGF−トリプシン部位およびmut−hIGF(K27R、K65R)は、それぞれ、150分後に11.9%および180分後に13.0%というより小さくそして比較的等しい最大結果を与えた。RHAK−6CFを用いての部位特異的改変中の時間に伴う収率の増加を図2Bに示す。
【0045】
RHAK−MCa−PEG20000を求核試薬として使用した場合、遊離したコンジュゲートしていないRHAK−MCa−PEG20000と、RHAK−MCa−PEG20000で標識されたIGF−Iの分離の問題が起こった。これは、求核試薬とコンジュゲーション産物のサイズが類似していることに起因し得る。従って、この場合には産物の増加を通して部位特異的改変についての収率を決定することは不可能であり、そして異なるアプローチが必要であった。唯だ1つの部位特異的改変が起こるであろうため、改変されていないIGF−I(排出物)の減少は、コンジュゲーション産物の増加に等しくあり得る。改変されていないIGF−Iの減少を、226nmにおける吸光度から生じたHPLCクロマトグラムピーク面積を通して推定した。RHAK−6CFを用いての改変と同様に、RHAK−MCa−PEG20000を用いての改変の収率は時間と共に増加した(図3および4)。構築物wt−hIGF−tryp部位−strepタグを用いて驚くべきことに180分後に23.1%で最も高い収率が得られた。ほぼ同じ結果が、mut−IGF(K27R、K65R)−tryp部位(180分後に20.6%)およびwt−hIGF−tryp部位(180分後に19.9%)について得られた。
【0046】
【表1】

【0047】
種々の融合ポリペプチドのRHAK−6FまたはRHAK−MCa−PEG20000のいずれかを用いての部位特異的改変の比較を表1に示す。一般に、RHAK−MCa−PEG20000を用いての改変が、RHAK−6CFを用いての改変よりも高い収率を有した。しかしPEG化しようとするポリペプチドもまた収率に影響を及ぼした。構築物wt−hIGF−tryp部位−strepタグを用いると、ターゲットポリペプチド(または求核試薬)に関係なく最も高い収率を得ることができる。構築物wt−hIGF−tryp部位およびmut−hIGF−tryp部位はほぼ同じ結果をもたらした。従って、Strepタグの存在は、C末端における部位特異的酵素的改変を増強することが判明した。
【0048】
モノおよびC末端部位特異的改変を確認するために、標識されたIGF−I構築物を質量分析によって分析することができる。この目的のために、各構築物のRHAK−6CFを用いての部位特異的改変のために400μlの反応液を使用することができる。反応液を30℃で150分間インキュベーションすることができ、そしてその後、200μlの10mM EDTA溶液の添加によって停止することができる。その後、200μlの緩衝液Sの添加によって反応溶液を1:2に希釈することができる。全標識反応液をサイズ排除クロマトグラフィーによって精製することができる。RHAK−6CFを含むIGF−I融合ポリペプチドを回収しそして濃縮することができる。精製され部位特異的に改変されたIGF−I構築物を続いて、全分子量について質量分析技術によって分析することができる。消化物(Asp−N−消化物)から生じたフラグメントの分子量により、全ての構築物についてRHAK−6CFを用いての単一でC末端における部位特異的改変が確認された。
【0049】
従って、trypsin-4x-mutantを使用したC末端における部位特異的改変により「トリプシン部位」を有する工学操作されたポリペプチド、例えばIGF−Iを改変するための、新規な酵素的方法が判明した。この新たな技術を使用して、不均一で活性の減少した改変を得るリスクを伴うことなく、ポリペプチド、例えば野生型ヒトIGF−Iを部位特異的に改変することができた。これらの望ましくない副生成物が過去においてPEG化の適用を制限してきた。この新たな酵素的アプローチはPEG化タンパク質性医薬品の調製に容易に使用することができる。PEGを含むターゲットポリペプチドの代わりに、他の可能性のある求核試薬、例えば蛍光ダイ、ビオチン、糖類、およびその他を含む/コンジュゲートしているターゲットポリペプチドも使用することができる。短いペプチドRHAK(配列番号02)を単に付加するだけで、trypsin-4x-mutantシステムを用いての転移にこれらを使用することができる。
【0050】
wt−hIGF−tryp部位−strepタグ構築物の酵素的PEG化のための反応条件を、標識(RHAK−MCa−PEG20000)の量およびtrypsin-4x-mutantの量を減少させることによって、並びに、TRIS緩衝液をHEPES緩衝液に置換することによってさらに最適化した。
【0051】
以下の実施例、配列表および図面は、本発明の理解を助けるために提供され、その真の範囲は添付の特許請求の範囲に示されている。本発明の精神から逸脱することなく、示された手順に改変を行なうことができることが理解される。
【0052】
配列表の説明
配列番号01 改変されたトリプシン部位(tryp部位)
配列番号02 部位特異的PEG化のために必要とされるターゲットペプチド
配列番号03 トリプシン部位の置換部分
配列番号04 残りのペプチド配列
配列番号05〜09および14〜26 IgA−プロテアーゼ開裂部位
配列番号10 Hisタグ−スペーサー−IgA部位−wt-hIGF−tryp部位−strepタグ
配列番号11 Hisタグ−スペーサー−IgA部位−wt-hIGF−tryp部位
配列番号12 Hisタグ−スペーサー−IgA部位−hIGF(K27R、K65R)−tryp部位
配列番号13および27 Strepタグ
配列番号28 N末端hisタグおよびIgAプロテアーゼ開裂部位を含む、モノPEG化ヒトIGF−Iのアミノ酸配列
配列番号29 モノPEG化ヒトIGF−Iのアミノ酸配列
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】種々の構築物の図解。
【図2】RHAK−6CFの検量曲線(A)およびRHAK−6CF標識の収率(B)。A:100mMトリス、150mM NaCl、pH8.0中で調製した以下の濃度を有する希釈シリーズを、SECを使用して分析した:0.5、1、5、10、25、50、100μg/ml。514nmにおけるRHAK−6CFの発光のピーク面積を決定し、そして濃度に対してプロットした。決定係数(R)および適用したトレンドラインの式が示されている。各データ点は3回の反復実験の結果であり、そして±標準誤差で示されている。B:標識反応液を、RHAK−6CFの標識のために4.3.8に従って調製した。試料をSECによって分析した。(左):wt−hIGF−tryp部位−strepタグ、(中央):wt−hIGF−tryp部位、(右):mut−hIGF(K27R、K65R)−tryp部位。
【図3】RHAK−6CFまたはRHAK−MCa−PEG20000を用いての部位特異的改変の収率の比較。(左):RHAK−6CF、(右):RHAK−MCa−PEG20000。
【図4】最適化条件下におけるC末端において改変されたIGF−Iの時間依存的増加(求核試薬:RHAK−MCa−PEG20000)。
【0054】
略称:
「トリプシン側」 アミノ酸配列YRHAAG
6−CF カルボキシフルオレセイン
Gdm−HCl 塩酸グアニジウム
Hisタグ ポリヒスチジンタグ
MCa メチルクマリン
PEG ポリ(エチレングリコール)
Strep ストレプトアビジン
TRIS 2−アミノ−1−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール
Tryp 「トリプシン部位」
IGF−I インシュリン様成長因子1
trypsin-4x-mutant 突然変異体トリプシンD189K、K60E、N143H、E151H
【0055】
材料および方法:
分析用サイズ排除クロマトグラフィー
緩衝液:0.5Mトリス、0.15M NaCl、pH7.5
カラム:Superdex(登録商標)ペプチド10/300GL
システム:Dionex
方法:均一濃度での溶出を、0.5ml/分の流速で行なった。全サイクル時間は70分間であった。50μlの試料を注入した。分離の経過を、220および280nmにおける吸光度シグナルを追うことによって追跡した。
【0056】
標識中のサイズ排除クロマトグラフィー
緩衝液:100mMトリス、150mM NaCl、pH8.0
カラム:Superdex(登録商標)ペプチド10/300GL(RHAK−6CF標識)
Superdex(登録商標)75 10/300GL(RHAK−MCa−PEG20000標識)
システム:Gynkotek(RHAK−6CF標識)
Dionex(RHAK−MCa−PEG20000標識、表8参照)
RHAK−6CF標識法:均一濃度での溶出を、0.5ml/分の流速で行なった。全サイクル時間は60分間であった。
RHAK−MCa−PEG20000標識法:均一濃度での溶出を0.75ml/分の流速で行なった。
全サイクル時間は45分間であった。
50μlの試料(調製の問題のため250μl)を注入した。分離の経過を、220nm、280nm、320nmにおける吸光度シグナル(RHAK−MCa−PEG20000標識)および蛍光シグナル(吸光=490nm、発光=514nm)(RHAK−6CF標識)を追うことによって追跡した。
【0057】
実施例1
部位特異的改変
IGF−I構築物の部位特異的標識は、RHAK−6CFおよびRHAK−MCa−PEG20000を用いて達成された。
【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
各構築物をRHAK−6CFまたはRHAK−MCa−PEG20000のいずれかで標識した。さらに表2に記載の対照も実施した。
【0061】
最終の標識反応における種々の化合物の濃度を表4に列挙する。全ての反応を650μlのシリコン化チューブ中で実施した。タンパク質を2Mトリス緩衝液中で希釈した。続いて、標識したペプチドおよび塩酸グアニジウムを加えた。この混合物(A)を30℃で10分間インキュベーションした。trypsin 4x mutant、ZnClおよび緩衝液S(100mMトリス、150mM NaCl、pH8.0)からなる混合物Bを混合物Aと同じ条件でインキュベーションした。緩衝液Sの必要な容量は、標識反応では400μlおよび対照については250μlの全反応容量となるように選択される。混合物AおよびBを合わせ、そして穏やかに振とうしながら30℃でインキュベーションした。
【0062】
酵素反応を停止するために、反応混合物を、その容量の半分の10mM EDTA(緩衝液S中において調製)および同容量の緩衝液Sと、希釈係数1:2で合わせた。180分間の全反応時間を適用した。
【0063】
【表4】

【0064】
実施例2
部位特異的改変の最適化
反応を室温で1000μlの容量中で行なった。trypsin-4x-mutantを、ZnClおよびPEG標識の存在下において30℃で10分間プレインキュベーションした。その後、塩酸グアニジウムおよびwt−hIGF−tryp部位−strep部位を加えて、以下に示した最終濃度を達成した。反応混合物を20℃で54時間までインキュベーションした。24時間後に25%を超える生成物の収率が達成され、52時間後には最大の32.6%に到達した(図4参照)。
【0065】
反応条件:
100μM wt hIGF−Iトリプシン部位Strepタグ
2μM Trypsin 4x mutant
500μM RHAK−MCa−PEG20000
10μM ZnCl
100mM HEPES
150mM NaCl
1mM CaCl
200mM GdmHCl
【0066】
実施例3
組換えwtおよび突然変異体IGF−I変異体並びにモノPEG化IGF−IによるインビトロにおけるIGF−IRリン酸化
ホスホIGF−IR特異的ELISAを使用して、種々のIGF−I変異体によるIGF−IRの活性化を定量した。一晩かけて血清を枯渇させた後、ヒトIGF−IRを発現する組換えNIH−3T3細胞を、種々の濃度のIGF−I変異体と共にインキュベーションして、細胞内容物におけるIGF−IRの結合および活性化を可能とした。刺激後、冷溶解緩衝液(25mM MES、pH6.5、150mM NaCl、2%Triton−X100、60mM βオクチルグリコシド、2mM NaVO、Complete(登録商標)プロテアーゼ阻害剤)を使用して細胞を溶解にかけ、リン酸化状態を保存した。ヒトIGF−IRα鎖に対するビオチニル化モノクローナル抗体(MAK<huIGF−IRα>hu−1a−IgG−Bi、Roche Diagnostics GmbH)を使用して、全IGF−IRをストレプトアビジンでコーティングされたマイクロプレートの表面に捕捉させ、そしてIGF−IRキナーゼドメイン内のリン酸化Tyr1135/1136に対するモノクローナル抗体(Cell Signaling3024L番)を使用して活性化IGF−IRの画分を決定した。10nMヒトIGF−Iで刺激した細胞を最大対照として使用し、刺激なしの細胞を最小対照として使用した。IGF−IRの活性化率を(結果−最小)/(最大−最小)として計算した。IC50/EC50値を、GraphPad Prism 4.0ソフトウェアを使用して曲線をあてはめることによって決定した。
【0067】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程
a)5’から3’の方向にi)ポリペプチドをコードする核酸、およびii)配列番号01のアミノ酸配列をコードする核酸、を含む核酸によってコードされる融合ポリペプチド、並びに配列番号02のアミノ酸配列を有し、そしてC末端リジン残基においてポリ(エチレングリコール)残基と共有結合的にコンジュゲートしているターゲットポリペプチドを、トリプシン突然変異体D189K、K60E、N143H、E151Hと共にインキュベーションする工程、そして
b)1つのポリ(エチレングリコール)残基にコンジュゲートしたポリペプチドを回収およびそれにより生産する工程
を含む、ポリ(エチレングリコール)残基にコンジュゲートしたポリペプチドの生産方法。
【請求項2】
インキュベーションが、
i)融合ポリペプチドおよびターゲットペプチドを緩衝溶液中で塩酸グアニジウムと共にインキュベーションし、
ii)トリプシン突然変異体D189K、K60E、N143H、E151HをZn(II)塩と共にインキュベーションし、そして
iii)i)およびii)のインキュベーション混合物を合わせそしてインキュベーションすること
を含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
融合ポリペプチドが、5’から3’の方向に、
i)ポリペプチドをコードする核酸、
ii)配列番号01のアミノ酸配列をコードする核酸、および
iii)配列番号13または配列番号27のアミノ酸配列をコードする核酸
を含む核酸によってコードされることを特徴とする、請求項1〜2のいずれか1項記載の方法。
【請求項4】
インキュベーションが150分間から180分間であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程a)の核酸がさらに、
iii)配列番号13のアミノ酸配列をコードする核酸
を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
インキュベーションをHEPES緩衝溶液中で行なうことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ポリペプチドがヒトIGF−Iであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
融合ポリペプチドが、配列番号10、配列番号11または配列番号12から選択されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
融合ポリペプチドをコードする核酸が、配列番号10のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
配列番号28または配列番号29のアミノ酸配列を有し、そしてC末端リジン残基において1つのポリ(エチレングリコール)残基とコンジュゲートしたポリペプチド。
【請求項11】
請求項10記載のポリペプチドまたは請求項7〜9のいずれか1項記載の方法を用いて得られたポリペプチドを含む薬学的組成物。
【請求項12】
アルツハイマー病の処置のための医薬品の製造のための、請求項10記載のポリペプチドまたは請求項7〜9のいずれか1項記載の方法を用いて得られたポリペプチドの使用。
【請求項13】
医薬品として使用するための、請求項10記載のポリペプチドまたは請求項7〜9のいずれか1項記載の方法を用いて得られたポリペプチド。
【請求項14】
アルツハイマー病の処置または予防のための、請求項10記載のポリペプチドまたは請求項7〜9のいずれか1項記載の方法を用いて得られたポリペプチド。
【請求項15】
請求項10記載のポリペプチドまたは請求項7〜9のいずれか1項記載の方法を用いて得られたポリペプチドの治療有効量をそれを必要とする被験体に投与することを含む、処置方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2013−518922(P2013−518922A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552344(P2012−552344)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051631
【国際公開番号】WO2011/098400
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】