説明

III族窒化物結晶及びその製造方法

【課題】積層欠陥が少ないIII族窒化物結晶を提供する。
【解決手段】III族窒化物からなり半極性面又は非極性面を主面とする種結晶101上にIII族窒化物半導体層102が形成されたIII族窒化物結晶100であって、前記種結晶101の主面内の輝線密度(α)と前記III族窒化物半導体層102の前記主面と平行な面内の輝線密度(β)との比(β/α)が10以下であるか、|β−α|が50以下であるIII族窒化物結晶100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なIII族窒化物結晶及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDなどの発光デバイスは、一般に基板上にハイドライド気相成長法(HVPE法)でIII族窒化物半導体結晶を成長させることにより製造されている。このとき、異種基板上にIII族窒化物結晶を成長させると、積層欠陥が発生するために、効率のよい発光デバイスを提供することができないが(非特許文献1〜4参照)、積層欠陥がないIII族窒化物自立基板上に同種のIII族窒化物結晶を成長させれば、高性能な発光デバイスを提供できることが知られている(非特許文献3参照)。このため、高性能な発光デバイスを提供するためには、積層欠陥などの結晶欠陥ができるだけ少ないIII族窒化物半導体基板を提供することが必要とされている。
【0003】
III族窒化物半導体基板を製造する代表的な方法として、(0001)面などの極性面を主面とするIII族窒化物種結晶上に同種のIII族窒化物結晶を成長させた後に、所望の面が現われるように切り出すことにより、特定の面を主面とする窒化物半導体基板を得る方法がある。例えば、GaN種結晶の(0001)面上にGaNを成長させた後に、(10−10)面が現れるように研磨又は切断することにより非極性面である(10−10)面を主面とするGaN半導体基板を得ることができる(非特許文献2及び非特許文献5参照)。このような方法を利用したIII族窒化物半導体の製造方法は数多く提案されている(例えば、下記特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−501600公報
【特許文献2】特表2006−513122公報
【特許文献3】特開2011−26181公報
【非特許文献1】Applied Physics Express 1 (2008) 091102
【非特許文献2】Phys stat sol (a) 205 No.5 (2008) 1056
【非特許文献3】JJAP 46 No.40 (2007) L960
【非特許文献4】Appl Phys Lett 91 (2007) 191906
【非特許文献5】Applied Physics Express 2 (2009) 021002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、種結晶の極性面上に同種のIII族窒化物結晶を成長させた後に、半極性面や非極性面が現れるように切り出すという手法は、所望の面を切り出すためには大きな成長結晶が必要とされたり、切り出しが可能な範囲が限られて無駄になる結晶部分が多くなったりするという根本的な問題がある。また、半極性面や非極性面を主面とする大きなサイズの結晶を取得しにくいという問題もある。
このような問題に対処するためには、(0001)面のような極性面を主面とする種結晶を用いずに、半極性面や非極性面を主面とする種結晶を用いて主面上に同種のIII族窒化物結晶を成長させれば良いように思われる。しかしながら、実際に半極性面や非極性面を主面とする種結晶を用いて主面上に従来の方法で結晶を成長させると、種結晶に内在する欠陥よりもさらに高い密度で成長結晶中に積層欠陥が発生してしまう。しかも、本発明者らの検討によると、そのような積層欠陥はIII族窒化物結晶の成長に伴って増加する傾向があることが判明した。このため、半極性面や非極性面を主面とする種結晶を用いる手法では、成長結晶から半極性面や非極性面を主面とする結晶を効率良く切り出すことはできても、得られる結晶の積層欠陥が多くて利用できないという別の課題が存在することが問題となっていた。
このような従来技術の課題に鑑みて、本発明者らは、非極性面又は半極性面を主面とする種結晶を用いて、積層欠陥が少ないIII族窒化物結晶を成長させることを目的として鋭意検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の条件下でアモノサーマル法を利用することで非極性面又は半極性面を主面とする種結晶上に積層欠陥の少ない成長結晶を育成できることを見出し、従来の課題を解決することに成功した。その結果、以下の本発明を提供するに至った。
【0007】
[1] III族窒化物からなり半極性面又は非極性面を主面とする種結晶上にIII族窒化物半導体層が形成されたIII族窒化物結晶であって、前記種結晶の主面内の輝線密度(α)と前記III族窒化物半導体層の前記主面と平行な面内の輝線密度(β)との比(β/α)が10以下であるIII族窒化物結晶。
[2] III族窒化物からなり半極性面又は非極性面を主面とする種結晶上にIII族窒化物半導体層が形成されたIII族窒化物結晶であって、前記種結晶の主面内の輝線密度(α)と前記III族窒化物半導体層の前記主面と平行な面内の輝線密度(β)の差|β−α|が50以下であるIII族窒化物結晶。
[3] 前記輝線密度(β)が200cm-1以下である[1]または[2]に記載のIII族窒化物結晶。
[4] 前記主面に垂直な方向の前記III族窒化物半導体層の厚みが0.5mm以上である[1]〜[3]のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶。
[5] 前記主面に垂直な方向の前記III族窒化物半導体層の厚みが前記種結晶の厚みの0.5倍以上である[1]〜[4]のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶。
[6] 前記種結晶の主面の面積が100mm2以上である[1]〜[5]のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶。
[7] 前記III族窒化物半導体層中のフッ素原子濃度が5×1015〜1×1018cm-3である[1]〜[6]のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶。
[8] 前記III族窒化物半導体層中の塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の合計濃度が1×1018cm-3以下である[1]〜[7]のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶。
[9] 窒化ガリウム結晶である[1]〜[8]のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、非極性面又は半極性面を主面とし積層欠陥が少ないIII族窒化物結晶及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】六方晶系の結晶構造の軸と面を説明する図である。
【図2】図2aは結晶構造と積層欠陥との関係示す概略図であり、図2bは結晶構造と積層欠陥との関係を示す上面図であり、図2cは結晶構造と観察される輝線との関係を示す概略図である。
【図3】本発明で用いることができる結晶製造装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明のIII族窒化物結晶及びその製造方法ついて詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
まず、図1を用いて、六方晶系の結晶構造の軸と面との関係について説明する。図1は、六方晶系の結晶構造の軸と面を説明する図である。本明細書においてIII族窒化物結晶の「主面」とは、当該III族窒化物結晶における最も広い面であって、通常は結晶成長を行うべき面を指す。本明細書において「C面」とは、六方晶構造(ウルツ鋼型結晶構造)における{0001}面と等価な面であり、極性面である。例えば、図1の[2−1]に示す(0001)面と(000−1)面を指す。III族窒化物結晶では、C面はIII族面又はV族面であり、窒化ガリウムではそれぞれGa面又はN面に相当する。また、本明細書において「M面」とは、{1−100}面、{01−10}面、[−1010]面、{−1100}面、{0−110}面、{10−10}面として包括的に表される非極性面であり、具体的には図1の[2−2]で示す(1−100)面や、(01−10)面、(−1010)面、(−1100)面、(0−110)面、(10−10)面を意味する。さらに、本明細書において「A面」とは、{2−1−10}面、{−12−10}面、{−1−120}面、{−2110}面、{1−210}面、{11−20}面として包括的に表される非極性面である。具体的には図1の[2−3]で示すような(11−20)面や、(2−1−10)面、(−12−10)面、(−1−120)面、(−2110)面、(1−210)面、を意味する。本明細書において「c軸」「m軸」「a軸」とは、それぞれC面、M面、A面に垂直な軸を意味する。
【0012】
また、本明細書において「非極性面」とは、表面にIII族元素と窒素元素の両方が存在しており、かつその存在比が1:1である面を意味する。具体的には、M面やA面を好ましい面として挙げることができる。本明細書において「半極性面」とは、例えば、III族窒化物が六方晶であってその主面が(hklm)で表される場合、[0001]面以外で、m=0ではない面をいう。また、半極性面は、C面、すなわち(0001)面に対して傾いた面で、かつ非極性面ではない面をいう。表面にIII族元素と窒素元素の両方あるいはC面のように片方のみが存在する場合で、かつその存在比が1:1でない面を意味する。h、k、l、mはそれぞれ独立に−5〜5のいずれかの整数であることが好ましく、−2〜2のいずれかの整数であることがより好ましく、低指数面であることが好ましい。前記III族窒化物結晶の主面として好ましく採用できる半極性面として、例えば(10−11)面、(10−1−1)面、(10−12)面、(10−1−2)面、(20−21)面、(20−2−1)面、(10−12)面、(10−1−2)面、(11−21)面、(11−2−1)面、(11−22)面、(11−2−2)面、(11−24)面、(11−2−4)面などを挙げることができる。
【0013】
[III族窒化物結晶]
本発明のIII族窒化物結晶は、半極性面又は非極性面を主面とする種結晶上にIII族窒化物半導体層が形成されたIII族窒化物結晶であって、前記種結晶の主面内の輝線密度(α)と前記III族窒化物半導体層の前記主面と平行な面内の輝線密度(β)との比(β/α)が10以下である。また、他の態様に係る本発明のIII族窒化物結晶は、半極性面又は非極性面を主面とする種結晶上にIII族窒化物半導体層が形成されたIII族窒化物結晶であって、前記種結晶の主面内の輝線密度(α)と前記III族窒化物半導体層の前記主面と平行な面内の輝線密度(β)の差|β―α|が50以下である。
【0014】
(輝線密度)
III族窒化物種結晶の主面である半極性面又は非極性面上にIII族窒化物半導体結晶を成長させると、成長した結晶に内在する主たる積層欠陥は極性面と平行な面として観測される。積層欠陥は、例えば下記実施例に記載されるように結晶表面を蛍光顕微鏡や低温CL(カソードルミネッセンス法)で観察することにより観測することができる。具体的には、積層欠陥を観察したい結晶表面に405nmの発光を示すようなLED構造を作製し、この表面を蛍光顕微鏡で像観察すると積層欠陥部位に輝線が見える。また、低温PLで観察されるスペクトルには3.41eV(364nm)付近に積層欠陥(基底面積層欠陥;BSF)由来のピーク(BSFピーク)が見えることから、LED構造を作製せず積層欠陥を観察したい結晶そのものであっても、波長分光可能な低温CLで像観察すると、積層欠陥部位に輝線を観察することができる。上述の通り蛍光顕微鏡や低温CLでは積層欠陥部位に対応する輝線を観察することができ、本発明においてはこれらを総称して「輝線」と称する。
【0015】
結晶中の極性面以外の面での積層欠陥の数は、輝線密度(cm-1)として表現することができる。本発明における「輝線密度」は、種結晶の主面と平行な面内における単位長さあたりの輝線の数の平均値を意味する。すなわち、種結晶の主面と平行な面内において単位長さを横切る輝線の数の平均値である。
輝線密度について、図2(a)及び図2(b)を用いて具体的に説明する。図2(a)は、結晶構造と積層欠陥との関係を示す概略図であり、図2(b)は結晶構造と積層欠陥との関係を示す上面図である。図2(a)に示すように、III族窒化物結晶100(例えばGaN結晶)は、種結晶101上にIII族窒化物半導体層102を成長させた構造を有する。また、III族窒化物結晶100は、主面を非極性面(例えばA面((11−20)面))としている。
【0016】
III族窒化物結晶100を蛍光顕微鏡で観察すると、積層欠陥に対応する輝線を確認することができる。積層欠陥は極性面である(0001)面[すなわちC面]に平行に存在する面欠陥であるため、極性面に交差する断面(特に極性面に垂直な断面)を観察すれば積層欠陥を直線状の輝線として確認することができる。例えば、図2(a)に示すようにIII族窒化物半導体層102に積層欠陥(102a)が存在している場合、種結晶の主面と平行な面内において積層欠陥102aは図2(b)に示されるようにc軸に直交する輝線として確認することができる。
図2(a)におけるIII族窒化物結晶100では、種結晶101に内在する積層欠陥が1つであり(図2(a)中の101a)、成長したIII族窒化物半導体層102に内在する積層欠陥も1つである(図2(a)中、102a)。このため、種結晶の輝線密度(α)と前記III族窒化物半導体層の輝線密度(β)との比(β/α)は、1となる。さらに、種結晶の輝線密度(α)と前記III族窒化物半導体層の輝線密度(β)との差|β−α|は、0となる。
【0017】
通常、C面((0001)面)上にc軸方向に結晶成長させて得られた結晶を特定の角度や向きに切断することによって作製した非極性面や半極性面を主面とする種結晶(シード)上に、HVPE法等で種結晶と同種のIII族窒化物半導体層を成長させた場合、種結晶中に内在する積層欠陥の数よりも成長結晶に内在する積層欠陥の数が多くなる。例えば、図2(c)のように、種結晶では積層欠陥の数は少なく、観察される輝線が短いことから輝線密度は小さくなるが、成長結晶では積層欠陥の数は増加し、観察される輝線が長くなることから輝線密度は大きくなる。このことから、積層欠陥はIII族窒化物半導体層の成長が進むにしたがって拡大する、または種結晶では観察されなかった欠陥がIII族窒化物半導体層において新たに発生する可能性が考えられる。このため、従来法にしたがってHVPE法でIII族窒化物半導体層を成長させた結晶は、種結晶中の積層欠陥の数に相当する輝線密度(α)と成長結晶中の積層欠陥の数に相当する輝線密度(β)との比が10よりも大きくなってしまう。また、種結晶中の積層欠陥の数に相当する輝線密度(α)と成長結晶中の積層欠陥の数に相当する輝線密度(β)との差|β−α|が50よりも大きくなってしまう。これに対し、本発明のIII族窒化物結晶は、輝線密度の比(β/α)が10以下である点に特徴がある。さらに他の態様に係る本発明のIII族窒化物結晶は、輝線密度の差|β−α|が50以下である点に特徴がある。
【0018】
本発明のIII族窒化物結晶は、種結晶の輝線密度(α)と前記III族窒化物半導体層の輝線密度(β)との比(β/α)が10以下である。このような範囲の比(β/α)を有するとき、III族窒化物半導体層をさらなる結晶成長用の基板として用いて良好な結晶を成長させたり、LEDなどの半導体発光素子に用いて高い効率を実現したりすることが可能になる。前記比(β/α)は、10以下であり、5以下が好ましく、2以下が特に好ましい。
他の態様に係る本発明のIII族窒化物結晶は、種結晶の輝線密度(α)と前記III族窒化物半導体層の輝線密度(β)との差|β−α|が50以下である。このような範囲の比(β/α)を有するとき、III族窒化物半導体層をさらなる結晶成長用の基板として用いて良好な結晶を成長させたり、LEDなどの半導体発光素子に用いて高い効率を実現したりすることが可能になる。前記差|β−α|は、50以下であり、20以下が好ましく、10以下がより好ましく、3以下が特に好ましい。
【0019】
種結晶の輝線密度は種結晶上に成長する結晶の輝線密度に影響するため、500cm-1以下であることが好ましく、100cm-1以下が更に好ましく、特に好ましくは50cm-1以下である。
III族窒化物半導体層の輝線密度は結晶から切り出される基板上に形成されるデバイス特性に影響を及ぼすため、500cm-1以下であることが好ましく、100cm-1以下が更に好ましく、特に好ましくは50cm-1以下である。
III族窒化物結晶の積層欠陥の多少は、結晶自体を低温(10K)にてPL測定を行うことでも評価することが可能である。バンド端PL強度に対する3.41eV付近の積層欠陥起因のPL強度(低温)としては、0.1以下が好ましく、0.08以下が更に好ましく、0.05以下が特に好ましい。
【0020】
(種結晶)
前記種結晶は、非極性面又は半極性面を主面とするIII族窒化物である。前記種結晶は、例えばGaN結晶を選択した場合は六方晶系の結晶構造を有する。種結晶としては、成長させようとしているIII族窒化物半導体と同種の単結晶が用いられる。種結晶の具体例としては、例えば窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)等の窒化物単結晶が挙げられる。
前記種結晶の取得方法は、特に制限されない。例えば、GaNの種結晶としては、サファイア等の異種基板上に成長させた後に剥離させて得た単結晶、金属GaからNaやLi、Biをフラックスとして結晶成長させて得た単結晶、液相エピタキシ法(LPE法)を用いて得た単結晶、溶液成長法に基づき作製された単結晶及びそれらを切断した結晶などを用いることができる。前記結晶成長の具体的な方法については特に制限されず、例えば、ハイドライド気相成長法(HVPE)法、有機金属化学気相堆積法(MOCVD法)、液相法、アモノサーマル法などを採用することができる。中でも成長結晶の結晶品質の観点から、液相法、アモノサーマル法を採用することが好ましく、アモノサーマル法を採用することがより好ましい。
【0021】
前記種結晶の主面は非極性面又は半極性面である。ここでいう主面とは、結晶を構成する面のうち最大面積を有する面を意味する。本発明では、種結晶の主面上にIII族窒化物半導体層を成長させる。本明細書においては、成長させる種結晶の面を「成長結晶成長面」と称する場合がある。前記種結晶としては、M面を主面とする種結晶、A面を主面とする種結晶、半極性面を主面とする種結晶を用いることができる。これらの主面は劈開して形成してもよい。例えば、劈開して生成したM面を有する種結晶を用いれば、未研磨のM面を有する種結晶や精密研磨したM面を有する種結晶を用いて結晶成長させた場合に比べて、高品質の窒化物結晶を速い成長速度で製造することができる。例えば、III族窒化物結晶が六方晶であってその主面が(hklm)で表される場合、h、k、l、mはそれぞれ独立に−3〜3のいずれかの整数であることが好ましく、−2〜2のいずれかの整数であることがより好ましい。前記III族窒化物結晶の主面の具体例として、{10−10}面、{11−20}面、(10−11)面、(10−1−1)面、(20−21)面、(20−2−1)面などを挙げることができる。
【0022】
種結晶の品質としては、M面を主面とする種結晶の場合、成長結晶の結晶品質の観点から、(10−10)面反射におけるX線回折半値幅が500arcsec以下であるものが好ましく、100arcsec以下であるものがさらに好ましく、50arcsec以下であるものが特に好ましい。主面に存在する貫通転位密度は成長結晶の結晶性の観点から、1×106cm-2以下が好ましく、1×105cm-2以下がさらに好ましく、1×104cm-2以下が特に好ましい。
前記種結晶の厚み(主面に垂直な方向の厚み)は、ハンドリングの容易性の観点から、100μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましく、300μm以上であることが特に好ましい。
【0023】
前記種結晶の主面の面積は、生産性の観点から、100mm2以上であることが好ましく、400mm2以上であることが更に好ましく、1950mm2以上であることが特に好ましい。
前記種結晶における不純物原子の濃度としては、成長結晶の結晶性の観点から、1×1020cm-3以下が好ましく、1×1019cm-3以下が更に好ましく、5×1018cm-3以下が特に好ましい。
前記種結晶の主面の結晶格子面の曲率半径は、成長結晶の歪みの観点から、1m以上であることが好ましく、5mが更に好ましく、10mが特に好ましい。
【0024】
(III族窒化物半導体層)
前記III族窒化物半導体層は、種結晶の主面上に成長されるIII族窒化物半導体からなる層である。前記III族窒化物半導体層は、種結晶と同種のIII族窒化物単結晶を成長させることにより得られる。
前記III族窒化物半導体層を種結晶上に成長させる具体的な方法については特に限定はないが、種結晶の輝線密度(α)とIII族窒化物半導体層の輝線密度(β)との比(β/α)が10以下となるようにするため、また、種結晶の主面内の輝線密度(α)とIII族窒化物半導体層の前記主面と平行な面内の輝線密度(β)の差|β−α|が50以下となるようにするためには、アモノサーマル法を採用することが好ましい。前記アモノサーマル法としては、特にフッ素元素と、塩素、臭素、ヨウ素から構成される他のハロゲン元素から選ばれる少なくとも一種とを含む鉱化剤を用いたアモノサーマル法が好ましい。前記アモノサーマル法については後述する。
III族窒化物からなり半極性面又は非極性面を主面とする種結晶上にIII族窒化物半導体層が形成されたIII族窒化物結晶であって、前記種結晶の主面内の輝線密度(α)と前記III族窒化物半導体層の前記主面と平行な面内の輝線密度(β)の差|β−α|が50以下であるIII族窒化物結晶。
【0025】
前記III族窒化物半導体層の厚みは、生産性の観点から、100μm以上であることが好ましく、500μm以上であることがより好ましく、1mm以上であることがさらに好ましく、5mm以上であることが特に好ましい。また、前記III族窒化物半導体層の厚みは、前記種結晶の厚みの2倍以上であることが好ましく、4倍であることがさらに好ましく、10倍以上であることが特に好ましい。
【0026】
(本発明のIII族窒化物結晶)
上記のIII族窒化物半導体層の成長を行った後の本発明のIII族窒化物結晶の主面は、前記種結晶の主面と一致する。本発明のIII族窒化物結晶は、自立基板であることが好ましい。具体的には、結晶自体の厚み(主面に垂直な方向の厚み)は、100μm以上であることが好ましく、500μm以上であることがより好ましく、1mm以上であることがさらに好ましく、5mm以上であることが特に好ましい。非極性面又は半極性面を主面とした種結晶上に従来のHVPE法を用いてIII族窒化物半導体層を成長させることにより得たIII族窒化物結晶は、その厚みが1mmを超えると成長結晶に内在する積層欠陥数が大幅に増えていく傾向にある。これに対し、本発明のIII族窒化物結晶は、厚みを1mm以上とした場合であっても、比(β/α)が10以下であるため、基板の大型化が可能である。また、他の態様に係る本発明のIII族窒化物結晶は、厚みを1mm以上とした場合であっても、差|β−α|が50以下であるため、基板の大型が可能である。成長させた結晶は、成長結晶の厚みを調整したり、研磨、切断、エッチング等の処理を調節したりすることにより、所望の範囲内に調整することができる。
本発明のIII族窒化物結晶は、周期表13族金属窒化物結晶であることが好ましい。例えば、種結晶及びIII族窒化物半導体層を構成するIII族窒化物として、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化インジウムが好ましく、この中でも窒化ガリウムがさらに好ましい。
【0027】
本発明のIII族窒化物結晶中のフッ素原子濃度は、結晶性の観点から、1×1019cm-3以下であることが好ましく、5×1018cm-3以下であることがより好ましく、1×1018cm-3以下であることがさらに好ましい。下限値としては、例えば1×1014cm-3以上であることが好ましく、1×1015cm-3以上であることがより好ましく、5×1015cm-3以上であることがさらに好ましい。
本発明のIII族窒化物結晶中の塩素、臭素及びヨウ素原子の合計濃度は、結晶性の観点から、1×1019cm-3以下であることが好ましく、5×1018cm-3以下であることがより好ましく、1×1018cm-3以下であることがさらに好ましい。下限値としては、例えば1×1012cm-3以上であることが好ましく、1×1013cm-3以上であることがより好ましく、1×1014cm-3以上であることがさらに好ましい。
【0028】
本発明のIII族窒化物結晶を製造する際に、種結晶の形状を適宜選択することにより、所望の形状を有する窒化物結晶を得ることができる。例えば、M面を有する種結晶を用いてアモノサーマル法により結晶成長を行うことにより、m軸方向に厚みを有する窒化物結晶を一段と高い生産効率で得ることができる。
本発明のIII族窒化物結晶は、III族窒化物半導体層の成長後にそのまま使用してもよいし、加工してから使用してもよい。
【0029】
本発明のIII族窒化物結晶のIII族窒化物半導体層の主面には、貫通転位が存在することがある。通常貫通転位は結晶の成長方向に伸びるように発生するため、半極性面又は非極性面を主面とするIII族窒化物種結晶上に成長した結晶の成長面には、貫通転位が存在することによる。貫通転位はカソードルミネッセンス法(CL測定)で観測される暗点に略一致する。このため、前記III族窒化物結晶に形成される結晶の主面におけるCL測定での貫通転位密度(平均暗点密度)は結晶性の観点から、1×106/cm2以下が好ましく、1×105/cm2以下がさらに好ましく、1×104/cm2以下が特に好ましい。
本発明のIII族窒化物結晶のIII族窒化物半導体層は、結晶性の観点から、内在するクラック数が10本以下であることが好ましく、5本以下であることが更に好ましく、3本以下であることが特に好ましい。
本発明のIII族窒化物結晶のIII族窒化物半導体層は、結晶性の観点から、内在するボイド数が10個以下であることが好ましく、5個以下であることが更に好ましく、3個以下であることが特に好ましい。
【0030】
本発明のIII族窒化物結晶のIII族窒化物半導体層における不純物原子の濃度としては、酸素原子濃度は、結晶性の観点から、1×1020cm-3以下が好ましく、1×1019cm-3以下が更に好ましく、5×1018cm-3以下が特に好ましい。下限値については例えば1×1016cm-3以上であってもよい。水素原子濃度は、結晶性の観点から、1×1020cm-3以下が好ましく、1×1019cm-3以下が更に好ましく、1×1018cm-3以下が特に好ましい。下限値については例えば1×1013cm-3以上であってもよい。珪素原子濃度は、結晶性の観点から、1×1020cm-3以下が好ましく、1×1019cm-3以下が更に好ましく、5×1018cm-3以下が特に好ましい。炭素原子濃度は、結晶性の観点から、1×1019cm-3以下が好ましく、1×1018cm-3以下が更に好ましく、1×1018cm-3以下が特に好ましい。下限値については例えば1×1013cm-3以上であってもよい。
前記種結晶の主面の結晶格子面の曲率半径は、残留歪みの観点から、1m以上であることが好ましく、5mが更に好ましく、10mが特に好ましい。
【0031】
[本発明のIII族窒化物結晶の製造方法]
上述の本発明のIII族窒化物結晶の製造方法は特に限定されず、特許請求の範囲に記載されるIII族窒化物結晶の要件を満たすものであれば、いかなる方法により製造されたものであっても本発明のIII族窒化物結晶に含まれる。例えば、種結晶の結晶品質、成長前の前処理条件、温度・圧力等の成長条件、鉱化剤の種類等を後述する各条件の好ましい範囲において適宜調整することで、また、それらを適宜組み合わせることで特許請求の範囲に記載されるIII族窒化物結晶の要件を満たすものを得ることができる。
本発明のIII族窒化物結晶を製造するための好ましい1つの方法として、フッ素元素と、塩素、臭素、ヨウ素から構成される他のハロゲン元素から選ばれる少なくとも一つの元素とを含む鉱化剤を用いたアモノサーマル法により、半極性面又は非極性面を主面とする種結晶上に同種のIII族窒化物半導体層を成長させる本発明の製造方法を挙げることができる。
【0032】
「アモノサーマル法」は、超臨界状態及び/又は亜臨界状態にあるアンモニア溶媒などの窒素を含有する溶媒を用いて、原材料の溶解−析出反応を利用して所望の材料を製造する方法である。アモノサーマル法を結晶成長へ適用するときは、アンモニア溶媒への原料溶解度の温度依存性を利用して温度差により過飽和状態を発生させて結晶を析出させる。
アモノサーマル法による結晶成長は、高温高圧の超臨界アンモニア環境下での反応であり、さらに、超臨界状態の純アンモニア中へのIII族窒化物の溶解度が極めて小さいため、溶解度を向上させ結晶成長を促進させるために鉱化剤が用いられる。
【0033】
本発明のIII族窒化物結晶の製造方法は、六方晶系の結晶構造を有する種結晶、窒素を含有する溶媒、原料、ならびに鉱化剤を入れた反応容器内の温度及び圧力を、前記溶媒が超臨界状態及び/又は亜臨界状態となるように制御して前記種結晶の表面に窒化物結晶を成長させる工程を含むことが好ましい。
尚、以下特定の鉱化剤を用いたアモノサーマル法を用いて本発明のIII族窒化物結晶を製造する方法を例に説明するが、本発明のIII族窒化物結晶の製造方法はこれに限定されるものではない。
【0034】
(鉱化剤)
前記鉱化剤として、フッ素元素と、塩素、臭素、ヨウ素から構成される他のハロゲン元素から選ばれる少なくとも一つの元素とを含む鉱化剤を用いることが好ましい。
前記鉱化剤に含まれるハロゲン元素の組み合わせは、塩素とフッ素、臭素とフッ素、ヨウ素とフッ素といった2元素の組み合わせであってもよいし、塩素と臭素とフッ素、塩素とヨウ素とフッ素、臭素とヨウ素とフッ素といった3元素の組み合わせであってもよいし、塩素と臭素とヨウ素とフッ素といった4元素の組み合わせであってもよい。好ましいのは、塩素とフッ素を少なくとも含む組み合わせと、臭素とフッ素を少なくとも含む組み合わせと、ヨウ素とフッ素を少なくとも含む組み合わせである。本発明で用いる鉱化剤に含まれるハロゲン元素の組み合わせと濃度比(モル濃度比)は、成長させようとしている窒化物結晶の種類や形状やサイズ、種結晶の種類や形状やサイズ、使用する反応装置、採用する温度条件や圧力条件などにより、適宜決定することができる。
【0035】
例えば、塩素とフッ素を含む鉱化剤の場合、フッ素濃度に対して塩素濃度を1倍以上にすることが好ましく、5倍以上にすることがより好ましく、10倍以上にすることがさらに好ましい。また、フッ素濃度に対して塩素濃度を200倍以下にすることが好ましく、100倍以下にすることがより好ましく、50倍以下にすることがさらに好ましい。
例えば、臭素とフッ素を含む鉱化剤の場合、フッ素濃度に対して臭素濃度を0.1倍以上にすることが好ましく、0.5倍以上にすることがより好ましく、1倍以上にすることがさらに好ましい。また、フッ素濃度に対して臭素濃度を100倍以下にすることが好ましく、50倍以下にすることがより好ましく、20倍以下にすることがさらに好ましい。
例えば、ヨウ素とフッ素を含む鉱化剤の場合、フッ素濃度に対してヨウ素濃度を0.1倍以上にすることが好ましく、0.5倍以上にすることがより好ましく、1倍以上にすることがさらに好ましい。また、フッ素濃度に対してヨウ素濃度を100倍以下にすることが好ましく、50倍以下にすることがより好ましく、20倍以下にすることがさらに好ましい。
【0036】
一般に鉱化剤のフッ素濃度を高くすると、窒化物結晶のM面及びA面の成長速度が速くなる傾向にあり、相対的にC面の成長が遅くなる傾向にある。さらにフッ素濃度を高くしていくと、原料の溶解度が温度に対して負の相関を示すようになるため、高温領域で結晶成長が起こるようになる。一方、鉱化剤の塩素濃度、臭素濃度、ヨウ素濃度を高くすると、原料の溶解度が温度に対して正の相関をより強く示すようになり、また、相対的にC面の成長速度が速くなる傾向にある。塩素、臭素、ヨウ素の順番にこの傾向が強まってゆく。
【0037】
ハロゲン元素を含む鉱化剤の例としては、ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化水素、アンモニウムヘキサハロシリケート、及びヒドロカルビルアンモニウムフルオリドや、ハロゲン化テトラメチルアンモニウム、ハロゲン化テトラエチルアンモニウム、ハロゲン化ベンジルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化ジプロピルアンモニウム、及びハロゲン化イソプロピルアンモニウムなどのアルキルアンモニウム塩、フッ化アルキルナトリウムのようなハロゲン化アルキル金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、ハロゲン化金属等が例示される。このうち、好ましくはハロゲン元素を含む添加物(鉱化剤)であるハロゲン化アルカリ、アルカリ土類金属のハロゲン化物、金属のハロゲン化物、ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化水素であり、さらに好ましくはハロゲン化アルカリ、ハロゲン化アンモニウム、周期表13族金属のハロゲン化物であり、特に好ましくはハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化ガリウムである。
【0038】
前記製造方法では、ハロゲン元素を含有する鉱化剤とともに、ハロゲン元素を含まない鉱化剤を用いることも可能であり、例えばNaNH2やKNH2やLiNH2などのアルカリ金属アミドと組み合わせて用いることもできる。ハロゲン化アンモニウムなどのハロゲン元素含有鉱化剤とアルカリ金属元素又はアルカリ土類金属元素を含む鉱化剤とを組み合わせて用いる場合は、ハロゲン元素含有鉱化剤の使用量を多くすることが好ましい。具体的には、ハロゲン元素含有鉱化剤100質量部に対して、アルカリ金属元素又はアルカリ土類金属元素を含む鉱化剤を50〜0.01質量部とすることが好ましく、20〜0.1質量部とすることがより好ましく、5〜0.2質量部とすることがさらに好ましい。アルカリ金属元素又はアルカリ土類金属元素を含む鉱化剤を添加することによって、c軸方向の結晶成長速度に対するm軸の結晶成長速度の比(m軸/c軸)を一段と大きくすることも可能である。
【0039】
前記製造方法で成長させる窒化物結晶に不純物が混入するのを防ぐために、必要に応じて鉱化剤は精製、乾燥してから使用することができる。前記鉱化剤の純度は、通常は95%以上、好ましくは99%以上、さらに好ましくは99.99%以上である。
前記鉱化剤に含まれる水や酸素の量はできるだけ少ないことが望ましく、これらの含有量は1000ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましく、1.0ppm以下であることがさらに好ましい。
【0040】
なお、前記結晶成長を行う際には、反応容器にハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化リン、ハロゲン化シリコン、ハロゲン化ゲルマニウム、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化ヒ素、ハロゲン化スズ、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化ビスマスなどを存在させておいてもよい。
鉱化剤に含まれるハロゲン元素のアンモニアに対するモル濃度は0.1mol%以上とすることが好ましく、0.3mol%以上とすることがより好ましく、0.5mol%以上とすることがさらに好ましい。また、鉱化剤に含まれるハロゲン元素のアンモニアに対するモル濃度は30mol%以下とすることが好ましく、20mol%以下とすることがより好ましく、10mol%以下とすることがさらに好ましい。濃度が低すぎる場合、溶解度が低下し成長速度が低下する傾向がある。一方濃度が濃すぎる場合、溶解度が高くなりすぎて自発核発生が増加したり、過飽和度が大きくなりすぎたりするため制御が困難になるなどの傾向がある。
【0041】
(溶媒)
前記アモノサーマル法に用いられる溶媒としては、窒素を含有する溶媒を用いることができる。窒素を含有する溶媒としては、成長させる窒化物単結晶の安定性を損なうことのない溶媒が挙げられる。前記溶媒としては、例えば、アンモニア、ヒドラジン、尿素、アミン類(例えば、メチルアミンのような第1級アミン、ジメチルアミンのような第二級アミン、トリメチルアミンのような第三級アミン、エチレンジアミンのようなジアミン)、メラミン等を挙げることができる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
前記溶媒に含まれる水や酸素の量はできるだけ少ないことが望ましく、これらの含有量は1000ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましく、0.1ppm以下であることがさらに好ましい。アンモニアを溶媒として用いる場合、その純度は通常99.9%以上であり、好ましくは99.99%以上であり、さらに好ましくは99.999%以上であり、特に好ましくは99.9999%以上である。
【0042】
(原料)
前記製造方法においては、種結晶上に成長させようとしている窒化物結晶を構成する元素を含む原料を用いる。例えば、周期表13族金属の窒化物結晶を成長させようとする場合は、周期表13族金属を含む原料を用いる。好ましくは13族窒化物結晶の多結晶原料及び/又はガリウムであり、より好ましくは窒化ガリウム及び/又はガリウムである。多結晶原料は、完全な窒化物である必要はなく、条件によっては13族元素がメタルの状態(ゼロ価)である金属成分を含有してもよく、例えば、結晶が窒化ガリウムである場合には、窒化ガリウムと金属ガリウムの混合物が挙げられる。
前記多結晶原料の製造方法は、特に制限されない。例えば、アンモニアガスを流通させた反応容器内で、金属又はその酸化物もしくは水酸化物をアンモニアと反応させることにより生成した窒化物多結晶を用いることができる。また、より反応性の高い金属化合物原料として、ハロゲン化物、アミド化合物、イミド化合物、ガラザンなどの共有結合性M−N結合を有する化合物などを用いることができる。さらに、Gaなどの金属を高温高圧で窒素と反応させて作製した窒化物多結晶を用いることもできる。
【0043】
本発明において原料として用いる多結晶原料に含まれる水や酸素の量は、少ないことが好ましい。多結晶原料中の酸素含有量は、通常10000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、特に好ましくは1ppm以下である。多結晶原料への酸素の混入のしやすさは、水分との反応性又は吸収能と関係がある。多結晶原料の結晶性が悪いほど表面にNH基などの活性基が多く存在し、それが水と反応して一部酸化物や水酸化物が生成する可能性がある。このため、多結晶原料としては、通常、できるだけ結晶性が高い物を使用することが好ましい。結晶性は粉末X線回折の半値幅で見積もることができ、(100)の回折線(ヘキサゴナル型窒化ガリウムでは2θ=約32.5°)の半値幅が、通常0.25°以下、好ましくは0.20°以下、さらに好ましくは0.17°以下である。
【0044】
(反応容器)
本発明のIII族窒化物結晶の製造方法は、反応容器中で実施することができる。
前記反応容器は、窒化物結晶を成長させるときの高温高圧条件に耐え得るもの中から選択することができる。前記反応容器としては、特表2003−511326号公報(国際公開第01/024921号パンフレット)や特表2007−509507号公報(国際公開第2005/043638号パンフレット)に記載されるように反応容器の外から反応容器とその内容物にかける圧力を調整する機構を備えたものであってもよいし、そのような機構を有さないオートクレーブであってもよい。
【0045】
前記反応容器は、耐圧性と耐浸食性を有する材料で構成されているものが好ましく、特にアンモニア等の溶媒に対する耐浸食性に優れたNi系の合金、ステライト(デロロ・ステライト・カンパニー・インコーポレーテッドの登録商標)等のCo系合金を用いることが好ましい。より好ましくはNi系の合金であり、具体的には、Inconel625(Inconelはハンティントン アロイズ カナダ リミテッドの登録商標、以下同じ)、Nimonic90(Nimonicはスペシャル メタルズ ウィギン リミテッドの登録商標、以下同じ)、RENE41(Teledyne Allvac, Incの登録商標)、Inconel718(Inconelはハンティントン アロイズ カナダ リミテッドの登録商標)、ハステロイ(Haynes International,Incの登録商標)、ワスパロイ(United Technologies,Inc.の登録商標)が挙げられる。
これらの合金の組成比率は、系内の溶媒の温度や圧力条件、及び系内に含まれる鉱化剤及びそれらの反応物との反応性及び/又は酸化力・還元力、pHの条件に従い、適宜選択すればよい。これらを反応容器の内面を構成する材料として用いるには、反応容器自体をこれらの合金を用いて製造してもよく、内筒として薄膜を形成して反応容器内に設置してもよく、任意の反応容器の材料の内面にメッキ処理を施してもよい。
【0046】
反応容器の耐浸食性をより向上させるために、貴金属の優れた耐浸食性を利用して、貴金属を反応容器の内表面をライニング又はコーティングしてもよい。また、反応容器の材質を貴金属とすることもできる。ここでいう貴金属としては、Pt、Au、Ir、Ru、Rh、Pd、Ag、及びこれらの貴金属を主成分とする合金が挙げられ、中でも優れた耐浸食性を有するPtを用いることが好ましい。
本発明のIII族窒化物結晶の製造方法に用いることのできる反応容器を含む結晶製造装置の具体例を図3に示す。図3は、本発明で用いることができる結晶製造装置の模式図である。図3に示される結晶製造装置においては、オートクレーブ1中に内筒として装填されるカプセル20中で結晶成長を行う。カプセル20中は、原料を溶解するための原料溶解領域9と結晶を成長させるための結晶成長領域6から構成されている。原料溶解領域9には原料8とともに溶媒や鉱化剤を入れることができ、結晶成長領域6には種結晶7をワイヤーで吊すなどして設置することができる。原料溶解領域9と結晶成長領域6の間には、2つの領域を区画バッフル板5が設置されている。バッフル板5の開孔率は2〜60%であるものが好ましく、3〜40%であるものがより好ましい。バッフル板の表面の材質は、反応容器であるカプセル20の材料と同一であることが好ましい。また、より耐浸食性を持たせ、成長させる結晶を高純度化するために、バッフル板の表面は、Ni、Ta、Ti、Nb、Pd、Pt、Au、Ir、pBNであることが好ましく、Pd、Pt、Au、Ir、pBNであることがより好ましく、Ptであることが特に好ましい。図3に示される結晶製造装置では、オートクレーブ1の内壁とカプセル20の間の空隙には、第2溶媒を充填することができるようになっている。ここには、バルブ10を介して窒素ボンベ13から窒素ガスを充填したり、アンモニアボンベ12からマスフローメーター14で流量を確認したりしながら第2溶媒としてアンモニアを充填することができる。また、真空ポンプ11により必要な減圧を行うこともできる。なお、本発明のIII族窒化物結晶の製造方法を実施する際に用いる結晶製造装置には、バルブ、マスフローメーター、導管は必ずしも設置されていなくてもよい。
【0047】
前記オートクレーブにより耐食性を持たせるためにライニングを使用することもできる。ライニングする材料として、Pt、Ir、Ag、Pd、Rh、Cu、Au及びCのうち少なくとも一種類以上の金属又は元素、もしくは、少なくとも一種類以上の金属を含む合金又は化合物であることが好ましく、より好ましくは、ライニングがしやすいという理由でPt,Ag、Cu及びCのうち少なくとも一種類以上の金属又は元素、もしくは、少なくとも一種類以上の金属を含む合金又は化合物である。例えば、Pt単体、Pt−Ir合金、Ag単体、Cu単体やグラファイトなどが挙げられる。
【0048】
(製造工程)
本発明のIII族窒化物結晶の製造方法の一例について説明する。本発明のIII族窒化物結晶の製造方法を実施する際には、まず、反応容器内に、種結晶、窒素を含有する溶媒、原料、及び鉱化剤を入れて封止する。ここで、前記種結晶としては、C面を主面としてIII族窒化物を成長させた基板を所望の方向に切り出すことによって、主面が非極性面又は半極性面となる基板を得ることができる。これによって、M面などの非極性面、(10−11)、(20−21)などの半極性面を有する種結晶を得ることができる。特に、大口径のC面を有する窒化物結晶を製造した場合は、c軸に垂直な方向に切り出すことにより、大口径の種結晶を得ることができる。
前記材料を反応容器内に導入するのに先だって、反応容器内は脱気しておいてもよい。また、材料の導入時には、窒素ガスなどの不活性ガスを流通させてもよい。反応容器内への種結晶の装填は、通常は、原料及び鉱化剤を充填する際に同時又は充填後に装填する。種結晶は、反応容器内表面を構成する貴金属と同様の貴金属製の治具に固定することが好ましい。装填後には、必要に応じて加熱脱気をしてもよい。
【0049】
図3に示す製造装置を用いる場合は、反応容器であるカプセル20内に種結晶、窒素を含有する溶媒、原料、及び鉱化剤を入れて封止した後に、カプセル20を耐圧性容器(オートクレーブ)1内に装填し、好ましくは耐圧性容器と該反応容器の間の空隙に第2溶媒を充填して耐圧容器を密閉する。
その後、全体を加熱して反応容器内を超臨界状態又は亜臨界状態とする。超臨界状態では一般的には、粘度が低く、液体よりも容易に拡散されるが、液体と同様の溶媒和力を有する。亜臨界状態とは、臨界温度近傍で臨界密度とほぼ等しい密度を有する液体の状態を意味する。例えば、原料充填部では、超臨界状態として原料を溶解し、結晶成長部では亜臨界状態となるように温度を変化させて超臨界状態と亜臨界状態の原料の溶解度差を利用した結晶成長も可能である。
超臨界状態にする場合、反応混合物は、一般に溶媒の臨界点よりも高い温度に保持する。アンモニア溶媒を用いた場合、臨界点は臨界温度132℃、臨界圧力11.35MPaであるが、反応容器の容積に対する充填率が高ければ、臨界温度以下の温度でも圧力は臨界圧力を遥かに越える。本発明において「超臨界状態」とは、このような臨界圧力を越えた状態を含む。反応混合物は、一定の容積の反応容器内に封入されているので、温度上昇は流体の圧力を増大させる。一般に、T>Tc(1つの溶媒の臨界温度)及びP>Pc(1つの溶媒の臨界圧力)であれば、流体は超臨界状態にある。
【0050】
超臨界条件では、窒化物結晶の十分な成長速度が得られる。反応時間は、特に鉱化剤の反応性及び熱力学的パラメータ、すなわち温度及び圧力の数値に依存する。窒化物結晶の合成中あるいは成長中、反応容器内の圧力は結晶性および生産性の観点から、120MPa以上にすることが好ましく、150MPa以上にすることがより好ましく、180MPa以上にすることがさらに好ましい。また、反応容器内の圧力は安全性の観点から、700MPa以下にすることが好ましく、500MPa以下にすることがより好ましく、350MPa以下にすることがさらに好ましく、300MPa以下にすることが特に好ましい。圧力は、温度及び反応容器の容積に対する溶媒体積の充填率によって適宜決定される。本来、反応容器内の圧力は、温度と充填率によって一義的に決まるものではあるが、実際には、原料、鉱化剤などの添加物、反応容器内の温度の不均一性、及びフリー容積の存在によって多少異なる。
【0051】
反応容器内の温度範囲は、結晶性および生産性の観点から、下限値が500℃以上であることが好ましく、515℃以上であることがより好ましく、530℃以上であることがさらに好ましい。上限値は、安全性の観点から、700℃以下であることが好ましく、650℃以下であることがより好ましく、600℃以下であることがさらに好ましい。本発明のIII族窒化物結晶の製造方法では、反応容器内における原料溶解領域の温度が、結晶成長領域の温度よりも高いことが好ましい。温度差(|ΔT|)は、結晶性および生産性の観点から、5℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、100℃以下であることが好ましく、90℃以下であることがより好ましく、80℃以下が特に好ましい。反応容器内の最適な温度や圧力は、結晶成長の際に用いる鉱化剤や添加剤の種類や使用量等によって、適宜決定することができる。
【0052】
前記の反応容器内の温度範囲、圧力範囲を達成するための反応容器への溶媒の注入割合、すなわち充填率は、反応容器のフリー容積、すなわち、反応容器に多結晶原料、及び種結晶を用いる場合には、種結晶とそれを設置する構造物の体積を反応容器の容積から差し引いて残存する容積、またバッフル板を設置する場合には、さらにそのバッフル板の体積を反応容器の容積から差し引いて残存する容積の溶媒の沸点における液体密度を基準として、通常20〜95%、好ましくは30〜80%、さらに好ましくは40〜70%とする。反応容器として図3のようなカプセル20を用いる場合には、溶媒の超臨界状態においてカプセル20内外で圧力がバランスするように、溶媒量を適宜調整することが好ましい。
【0053】
反応容器内での窒化物結晶の成長は、熱電対を有する電気炉などを用いて反応容器を加熱昇温することにより、反応容器内をアンモニア等の溶媒の亜臨界状態又は超臨界状態に保持することにより行われる。加熱の方法、所定の反応温度への昇温速度に付いては特に限定されないが、通常、数時間から数日かけて行われる。必要に応じて、多段の昇温を行ったり、温度域において昇温スピードを変えたりすることもできる。また、部分的に冷却しながら加熱したりすることもできる。
なお、前記の「反応温度」は、反応容器の外面に接するように設けられた熱電対、及び/又は外表面から一定の深さの穴に差し込まれた熱電対によって測定され、反応容器の内部温度へ換算して推定することができる。これら熱電対で測定された温度の平均値をもって平均温度とする。通常は、原料溶解領域の温度と結晶成長領域の温度の平均値を平均温度とする。
【0054】
本発明のIII族窒化物結晶の製造方法においては、成長結晶の結晶品質の観点から、種結晶に前処理を加えておくことができる。前記前処理としては、例えば、種結晶にメルトバック処理を施したり、種結晶の成長結晶成長面を研磨したり、種結晶をエッチング、洗浄するなどが挙げられる。
本発明のIII族窒化物結晶の製造方法においては、オートクレープを昇温する際に、一定の温度を保持して、種結晶の成長結晶成長面にメルトバック処理を施してもよい。当該メルトバック処理によって、種結晶の成長結晶成長面や、装置中の白金部材に付着した結晶核を溶解することができる。前記メルトバック処理の条件としては、育成域と原料域の平均温度差としては0℃以上が好ましく、10℃以上が更に好ましく、20℃以上が特に好ましい。また、100℃以下が好ましく、80℃以下が更に好ましく、60℃以下が特に好ましい。また、メルトバック処理の際の結晶成長領域の温度としては、500℃以上であることが好ましく、550℃以上であることがより好ましく、600℃以上であることがさらに好ましい。また、650℃以下が好ましく、630℃以下がより好ましい。原料溶解領域の温度としては、500℃以上であることが好ましく、550℃以上であることがより好ましく、590℃以上であることがさらに好ましい。また、650℃以下が好ましく、630℃以下がより好ましい。
【0055】
メルトバック処理時の反応容器内の圧力は、100MPa以上にすることが好ましく、150MPa以上にすることがさらに好ましく、180MPa以上にすることが特に好ましい。また、メルトバック処理の処理時間は、1時間以上が好ましく、5時間以上が更に好ましく、10時間以上が特に好ましい。また、200時間以下が好ましく、100時間以下が更に好ましく、50時間以下が特に好ましい。
【0056】
前記前処理において、種結晶の表面(成長結晶成長面)を研磨するには、例えば、ケミカルメカニカルポリッシング(CMP)等で行うことができる。前記種結晶の表面粗さは、例えば、原子間力顕微鏡によって計測した二乗平均平方根粗さ(Rms)が、メルトバックとそれに続く結晶成長を均等に行うとの観点から、1.0nm以下であることが好ましく、0.5nmが更に好ましく、0.3nmが特に好ましい。
前記前処理において、種結晶をエッチングするには、例えば、エッチング液として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の強アルカリを用いることができ、この中でもエッチングレートと取り扱いやすさの観点から水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、水酸化カリウムが特に好ましい。
【0057】
所定の温度に達した後の反応時間については、窒化物結晶の種類、用いる原料、鉱化剤の種類、製造する結晶の大きさや量によっても異なるが、通常、数時間から数百日とすることができる。反応中、反応温度は一定にしてもよいし、徐々に昇温又は降温させることもできる。所望の結晶を生成させるための反応時間を経た後、降温させる。降温方法は特に限定されないが、ヒーターの加熱を停止してそのまま炉内に反応容器を設置したまま放冷してもかまわないし、反応容器を電気炉から取り外して空冷してもかまわない。必要であれば、冷媒を用いて急冷することも好適に用いられる。
本発明のIII族窒化物結晶の製造方法における育成速度は、30μm/day以上であることが好ましく、50μm/day以上であることがより好ましく、また、500μm/day以下であることが好ましい。
【0058】
反応容器外面の温度、あるいは推定される反応容器内部の温度が所定温度以下になった後、反応容器を開栓する。このときの所定温度は特に限定はなく、通常、−80℃〜200℃、好ましくは−33℃〜100℃である。ここで、反応容器に付属したバルブの配管接続口に配管接続し、水などを満たした容器に通じておき、バルブを開けてもよい。さらに必要に応じて、真空状態にするなどして反応容器内のアンモニア溶媒を十分に除去した後、乾燥し、反応容器の蓋等を開けて生成した窒化物結晶及び未反応の原料や鉱化剤等の添加物を取り出すことができる。
【0059】
なお、本発明のIII族窒化物結晶の製造方法にしたがって窒化ガリウムを製造する場合、前記以外の材料、製造条件、製造装置、工程の詳細については特開2009−263229号公報を好ましく参照することができる。該公開公報の開示全体を本明細書に引用して援用する。
本発明のIII族窒化物結晶の製造方法においては、種結晶上にIII族窒化物結晶を成長させた後に、後処理を加えてもよい。前記後処理の種類や目的は特に制限されない。例えば、輝線を光学顕微鏡で容易に観察できるようにするために、育成後の冷却過程で結晶表面をメルトバックしてもよい。
【0060】
(ウエハ)
本発明のIII族窒化物結晶のIII族窒化物半導体層を所望の方向に切り出すことにより、任意の結晶方位を有するウエハ(半導体基板)を得ることができる。本発明の製造方法によって厚くて大口径のM面を有する窒化物結晶を製造した場合は、m軸に垂直な方向に切り出すことにより、大口径のM面ウエハを得ることができる。また、本発明の製造方法によって大口径の半極性面を有する窒化物結晶を製造した場合は、半極性面に平行に切り出すことにより、大口径の半極性面ウエハを得ることができる。これらのウエハも、均一で高品質であるという特徴を有する。
【0061】
(デバイス)
本発明のIII族窒化物結晶やウエハは、デバイス、即ち発光素子や電子デバイスなどの用途に好適に用いられる。本発明のIII族窒化物結晶やウエハが用いられる発光素子としては、発光ダイオード、レーザーダイオード、それらと蛍光体を組み合わせた発光素子などを挙げることができる。また、本発明のIII族窒化物結晶やウエハが用いられる電子デバイスとしては、高周波素子、高耐圧高出力素子などを挙げることができる。高周波素子の例としては、トランジスター(HEMT、HBT)があり、高耐圧高出力素子の例としては、サイリスター(IGBT)がある。本発明のIII族窒化物結晶やウエハは、均一で高品質であるという特徴を有することから、前記のいずれの用途にも適している。中でも、均一性が高いことが特に要求される電子デバイス用途に適している。
【実施例】
【0062】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。以下に記載する実施例、参考例及び比較例では、図3に示す反応装置を用いて窒化物結晶を成長させることを試みた。
【0063】
[実施例1]
ニッケル基合金製オートクレーブを耐圧容器として用い、Pt−Ir製カプセルを反応容器として結晶成長を行った。原料として多結晶GaN粒子をカプセル下部領域(図3における原料溶解領域9)内に設置し、鉱化剤として高純度のNH4IとGaF3をカプセル内に投入した。
さらにカプセル下部の原料溶解領域と上部の結晶成長領域との間に、白金製バッフル板を設置した。種結晶として、HVPE法により成長したM面を主面とするウエハ(10mm×20mm又は5×15mm)を用いた。種結晶の主面はChemical Mechanical Polishing(CMP)仕上げされており、表面粗さは原子間力顕微鏡による計測によりRmsが0.5nm以下であった。これら種結晶を、白金ワイヤーにより、白金製種結晶支持枠に吊るし、カプセル上部の結晶成長領域に設置した。つぎにカプセルの上部にPt−Ir製のキャップを溶接により接続した。
なお、これらの種結晶はあらかじめ、PLスペクトル評価によりBSFピークがないことが確認された。また、蛍光像により任意に選ばれた面内6箇所の輝線密度の平均値が、45cm-1であることが確認された。なお、本明細書でいうBSFピークは種結晶を両面研磨後、10kにてPL測定することにより観測したものである。また、輝線密度は種結晶に用いたウエハの一部を切り出してLED構造を作製の上、蛍光像を観察して測定した。
【0064】
キャップ上部に付属したチューブにバルブを接続し、真空ポンプに通じて真空脱気した後、窒素ボンベに通ずるように操作しカプセル内を窒素ガスにて繰り返しパージを行った。その後、真空ポンプに繋いだ状態で加熱をして脱気を行なった。カプセルを室温まで自然冷却したのちバルブを閉じ、真空状態を維持したままカプセルをドライアイスエタノール溶媒により冷却した。つづいてNH3ボンベに通ずるように導管のバルブを操作したのち再びバルブを開け外気に触れることなくNH3を充填した後、再びバルブを閉じた。NH3充填前と充填後との重量の差から充填量を確認した。
つづいてバルブが装着されたオートクレーブにカプセルを挿入した後に蓋を閉じ、オートクレーブの重量を計測した。次いでオートクレーブに付属したバルブを介して導管を真空ポンプに通じるように操作し、バルブを開けて真空脱気した。カプセルと同様に窒素ガスパージを複数回行った後、真空状態を維持しながらオートクレーブをドライアイスエタノール溶媒によって冷却し、一旦バルブを閉じた。次いで導管をNH3ボンベに通じるように操作した後、再びバルブを開け連続して外気に触れることなくNH3をオートクレーブ(図3におけるオートクレーブ1)に充填した。流量制御に基づき、カプセル内のNH3量とバランスする量のNH3を液体として充填した後、再びバルブを閉じた。オートクレーブの温度を室温に戻し、外表面を十分に乾燥させオートクレーブの重量を計測した。乾燥後のオートクレーブの重量とNH3充填前の重量との差からNH3の重量を算出し充填量を確認した。
【0065】
続いてオートクレーブを、複数に分割されたヒーターで構成された電気炉内に収納した。まずオートクレーブ内部の結晶成長領域の温度が原料溶解領域の温度より20℃(ΔT)高くなるように昇温し、その温度で24時間保持して種結晶及び、白金部材に付着した結晶核をメルトバックした。
さらに結晶成長領域の平均温度が610℃、原料溶解領域の温度が635℃になるまで昇温した後、その温度にて86時間保持した。オートクレーブ内の圧力は約215MPaであった。
その後、オートクレーブの外面の温度が室温に戻るまで自然冷却し、オートクレーブに付属したバルブを開放し、オートクレーブ内のNH3を取り除いた。その後オートクレーブ1を計量しNH3の排出を確認した後、オートクレーブの蓋を開け、カプセルを取り出した。カプセル上部に付属したチューブに穴を開けカプセル内部からNH3を取り除いた。
【0066】
カプセルから取り出したM面結晶を確認したところ、M面の成長厚みは両面で合計720μmであった。また、結晶最表面より切り出されたウエハのPLスペクトル評価では種結晶と同様にBSFピークは観測されなかった。さらに、蛍光像で観測される輝線密度は種結晶と同等の50cm-1であり、成長前とほぼ同密度であることが確認された。ここで、輝線密度は得られた結晶にLED構造を作製の上、蛍光像を観察して測定した。
【0067】
[実施例2]
ニッケル基合金製オートクレーブを耐圧容器として用い、Pt−Ir製カプセルを反応容器として結晶成長を行った。原料として多結晶GaN粒子をカプセル下部領域(図3における原料溶解領域9)内に設置し、鉱化剤として高純度のNH4IとGaF3をカプセル内に投入した。
さらに下部の原料溶解領域と上部の結晶成長領域の間に、白金製バッフル板を設置した。種結晶として、HVPE法により成長したM面を主面とするウエハ(10mm×20mm又は5×15mm)を用いた。種結晶の主面はChemical Mechanical Polishing(CMP)仕上げされており、表面粗さは原子間力顕微鏡による計測によりRmsが0.5nm以下であった。これら種結晶を、白金ワイヤーにより、白金製種結晶支持枠に吊るし、カプセル上部の結晶成長領域に設置した。つぎにカプセルの上部にPt−Ir製のキャップを溶接により接続した。
なお、これらの種結晶はあらかじめ、PLスペクトル評価によりBSFピークがないことが確認された。また、蛍光像により輝線密度が、45cm-1であると確認された。また、輝線密度は種結晶に用いたウエハの一部を切り出してLED構造を作製の上、蛍光像を観察して測定した。
【0068】
キャップ上部に付属したチューブにバルブを接続し、真空ポンプに通じて真空脱気した後、窒素ボンベに通ずるように操作しカプセル内を窒素ガスにて繰り返しパージを行った。その後、真空ポンプに繋いだ状態で加熱をして脱気を行なった。カプセルを室温まで自然冷却したのちバルブを閉じ、真空状態を維持したままカプセルをドライアイスエタノール溶媒により冷却した。つづいてNH3ボンベに通ずるように導管のバルブを操作したのち再びバルブを開け外気に触れることなくNH3を充填した後、再びバルブを閉じた。NH3充填前と充填後との重量の差から充填量を確認した。
つづいてバルブが装着されたオートクレーブにカプセルを挿入した後に蓋を閉じ、オートクレーブの重量を計測した。次いでオートクレーブに付属したバルブを介して導管を真空ポンプに通じるように操作し、バルブを開けて真空脱気した。カプセルと同様に窒素ガスパージを複数回行った。その後、真空状態を維持しながらオートクレーブをドライアイスエタノール溶媒によって冷却し、一旦バルブを閉じた。次いで導管をNH3ボンベに通じるように操作した後、再びバルブを開け連続して外気に触れることなくNH3をオートクレーブに充填した。流量制御に基づき、カプセル内のNH3量とバランスする量のNH3を液体として充填した後、再びバルブを閉じた。オートクレーブの温度を室温に戻し、外表面を十分に乾燥させオートクレーブの重量を計測した。NH3充填前の重量との差からNH3の重量を算出し充填量を確認した。
【0069】
続いてオートクレーブを複数に分割されたヒーターで構成された電気炉内に収納した。まずオートクレーブ内部の結晶成長領域の温度と原料溶解領域の温度が略同一(ΔT=0
)となるように昇温し、その温度で24時間保持して種結晶及び、白金部材に付着した結晶核をメルトバックした。
さらに結晶成長領域の平均温度が610℃、原料溶解領域の温度が635℃になるまで昇温した後、その温度にて9日間保持した。オートクレーブ内の圧力は約215MPaであった。
その後、オートクレーブの外面の温度が室温に戻るまで自然冷却し、オートクレーブに付属したバルブを開放し、オートクレーブ内のNH3を取り除いた。その後オートクレーブを計量しNH3の排出を確認した後、オートクレーブの蓋を開け、カプセルを取り出した。カプセル上部に付属したチューブに穴を開けカプセル内部からNH3を取り除いた。
【0070】
カプセルから取り出したM面結晶を確認したところ、M面の成長厚みは両面で合計3.4mmであった。また、結晶最表面より切り出されたウエハのPLスペクトル評価では種結晶と同様にBSFピークは観測されなかった。さらに、蛍光像で観測される輝線密度は種結晶と同等の40cm-1であり、成長前とほぼ同密度であることが確認された。ここで、輝線密度は得られた結晶にLED構造を作製の上、蛍光像を観察して測定した。
【0071】
[実施例3]
鉱化剤としてNH4IとGaF3に代えてHClを冷却したカプセル内に投入する以外は、実施例1と同じ方法で原料及びカプセルを準備した。
また、実施例1と同様の操作にて、カプセル内およびオートクレーブ内にNH3を充填した後、実施例1と同様に昇温し、種結晶及び、白金部材に付着した結晶核をメルトバック処理した後、さらに結晶成長領域の平均温度が655℃、原料溶解領域の温度が585℃になるまで昇温し、その温度にて20日間保持し結晶育成を行った。結晶育成中のオートクレーブ内の圧力は約255MPaであった。
その後、オートクレーブの外面の温度が室温に戻るまで自然冷却し、オートクレーブ内のNH3を取り除いた。さらに、オートクレーブの蓋を開け、カプセルを取り出し、カプセル上部に付属したチューブに穴を開けカプセル内部からNH3を取り除いた。
カプセルから取り出したM面結晶を確認したところ、M面の成長厚みは両面で合計740μmであった。また、結晶最表面より切り出されたウエハのPLスペクトル評価では種結晶と同様にBSFピークは観測されなかった。さらに、蛍光像で観測される輝線密度は種結晶と同等の60cm-1であり、成長前とほぼ同密度であることが確認された。ここで、輝線密度は得られた結晶にLED構造を作製の上、蛍光像を観察して測定した。
【0072】
[参考例1]
実施例3と同様の操作、条件にてM面種結晶上に結晶成長を行った。成長層中の不純物をSIMSで測定したところ塩素原子濃度は1.85×1017cm-3であった。
【0073】
[実施例4]
ニッケル基合金製のオートクレーブを耐圧容器として用い、Pt−Ir製カプセルを反応容器として結晶成長を行なった。原料として多結晶GaN粒子をカプセル下部領域(図3における原料溶解領域9)内に設置し鉱化剤として高純度のNH4Fをカプセル内に投入した。さらに下部の原料溶解領域と上部の結晶成長領域の間には白金製のバッフル板を設置した。種結晶として、アモノサーマル法により成長したM面を主面とするウエハ(長辺35mm×短辺7mm)を用いた。種結晶の主面はChemical Mechanical Polishing(CMP)仕上げをして、表面粗さは原子間力顕微鏡による計測によりRmsが0.5nm以下であることを確認した。更にPLスペクトル評価によりBSFピークが無く、蛍光像と低温CL像により輝線密度が無い(0cm-1)ことを確認した。この種結晶を白金製のワイヤーとシード支持枠を用いてに吊るし、カプセル上部の結晶成長領域に設置した。
【0074】
次にカプセルの上部にPt−Ir製のキャップを溶接により接続した後、カプセル下部を液体窒素で冷却し、バルブを開け外気に触れることなく高純度のHIを充填した。次いで、カプセルをNH3ガスラインに接続し、外気に触れることなく高純度のNH3を充填した。流量制御に基づき、NH3をカプセルの有効容積の約55%に相当する液体として充填(−33℃のNH3密度で換算)した後、再びバルブを閉じた。その後、キャップ上部のチューブを溶接機により封じ切った。なお、カプセル中に導入されたF濃度はNH3に対して0.5mol%、I濃度は1.5mol%であった。カプセルをバルブが装着されたオートクレーブに挿入し、オートクレーブを密封した。
続いてバルブを開けて真空脱気し真空状態を維持しながらオートクレーブをドライアイスメタノール溶媒によって冷却し導管をNH3ボンベに通じて外気に触れることなくNH3をオートクレーブに充填した。NH3をオートクレーブの有効容積(オートクレーブ容積−充填物容積)の約56%に相当する液体として充填(−33℃のNH3密度で換算)した後、再びバルブを閉じた。
続いてオートクレーブを複数に分割されたヒーターで構成された電気炉内に収納した。まずオートクレーブ内部の結晶成長領域の温度が原料溶解領域の温度より13℃(ΔT)高
くなるように昇温し、その温度で12時間保持して種結晶及び、白金部材に付着した結晶核をメルトバックした。
【0075】
さらにオートクレーブ内部の平均温度が600℃、内部の温度差が20℃になるようにオートクレーブ外面温度で制御しながら昇温し、設定温度に達した後、その温度にて20日間保持した。オートクレーブ内の圧力は215MPaであった。また保持中のオートクレーブ外面制御温度のバラツキは±0.3℃以下であった。
その後、オートクレーブの外面の温度が室温に戻るまで自然冷却し、オートクレーブに付属したバルブを開放し、オートクレーブ内のNH3を取り除いた。その後オートクレーブを計量しNH3の排出を確認した後、オートクレーブの蓋を開け、カプセルを取り出した。カプセル上部に付属したチューブに穴を開けカプセル内部からNH3を取り除いた。
【0076】
カプセルから取り出したM面結晶を確認したところ、M面の成長厚みは両面で合計4.4mmであった。また、結晶成長層より切り出されたウエハのPLスペクトル評価では種結晶と同様にBSFピークは観測されなかった。さらに、蛍光像と低温CL像で観測される輝線密度も種結晶と同様に0cm-1であり、成長前と同じであることが確認された。ここで、輝線密度は得られた結晶にLED構造を作製の上、蛍光像を観察して測定した。加えて、結晶そのものを低温CLで観察して測定した。また、成長層中の不純物をSIMSで測定したところフッ素原子濃度は7×1017cm-3であった。
【0077】
[比較例1]
実施例3と同様の操作、条件にて、原料、カプセル及びオートクレーブを準備した後、メルトバックの操作を行わず、15日間結晶成長を行い、取り出されたM面結晶を確認したところ、M面の成長厚みは両面で合計540μmであった。
一方、PLスペクトル評価では種結晶では観察されなかったBSFピークが観測された。さらに、蛍光像で観測される輝線密度は550cm-1であり、成長中に輝線密度が増えていることが確認された。ここで、輝線密度は得られた結晶にLED構造を作製の上、蛍光像を観察して測定した。
【0078】
[比較例2]
HVPE法によって実施例1と同品質のM面種結晶上に結晶成長を行った。M面の成長厚みは20mmであった。
一方、結晶最表面より切り出されたウエハのPLスペクトル評価では種結晶では観察されなかったBSFピークが観測された。さらに、蛍光像で観測される輝線密度は650cm-1であり、1mm以上成長すると輝線密度が顕著に増えていることが確認された。
【0079】
【表1】

【0080】
前記表1から分かるように、酸性酸化剤を用いたアモノサーマル法を利用し、更に、メルトバックを施した実施例1では種結晶の輝線密度とIII族窒化物半導体層の輝線密度とが同等であり、厚みが片面約300μmにまで成長してもM面表面にて積層欠陥が増殖していないことが確認された。実施例2にも同様に種結晶の輝線密度とIII族窒化物半導体層の輝線密度とが同等であり、厚みが片面約1.5mm以上にまで成長してもM面表面にて積層欠陥が増殖していないことが確認された。さらに、実施例4では種結晶の輝線密度とIII族窒化物半導体層の輝線密度とがゼロであり、輝線がない種結晶を用いるとM面表面の積層欠陥も増殖せずにゼロにできることが確認された。
また、実施例1、2及び4は、結晶の育成速度も高かった。
塩素系鉱化剤を用いた実施例3でもM面表面にて積層欠陥が増殖していないことが確認された。
これに対し、メルトバック処理を行っていない比較例1では、積層欠陥の増殖が認められた。また、種結晶上にHVPE法で結晶を成長させた比較例2は、厚みが片面約1mmを超えると、積層欠陥の増殖が認められた。
【符号の説明】
【0081】
1 オートクレーブ
2 オートクレーブ内面
3 ライニング
4 ライニング内面
5 バッフル板
6 結晶成長領域
7 種結晶
8 原料
9 原料溶解領域
10 バルブ
11 真空ポンプ
12 アンモニアボンベ
13 窒素ボンベ
14 マスフローメーター
20 カプセル
21 カプセル内面
100 III族窒化物結晶
101 種結晶
102 III族窒化物半導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族窒化物からなり半極性面又は非極性面を主面とする種結晶上にIII族窒化物半導体層が形成されたIII族窒化物結晶であって、前記種結晶の主面内の輝線密度(α)と前記III族窒化物半導体層の前記主面と平行な面内の輝線密度(β)との比(β/α)が10以下であるIII族窒化物結晶。
【請求項2】
III族窒化物からなり半極性面又は非極性面を主面とする種結晶上にIII族窒化物半導体層が形成されたIII族窒化物結晶であって、前記種結晶の主面内の輝線密度(α)と前記III族窒化物半導体層の前記主面と平行な面内の輝線密度(β)の差|β−α|が50以下であるIII族窒化物結晶。
【請求項3】
前記輝線密度(β)が200cm-1以下である請求項1または2に記載のIII族窒化物結晶。
【請求項4】
前記主面に垂直な方向の前記III族窒化物半導体層の厚みが0.5mm以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のIII族窒化物結晶。
【請求項5】
前記主面に垂直な方向の前記III族窒化物半導体層の厚みが前記種結晶の厚みの0.5倍以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶。
【請求項6】
前記種結晶の主面の面積が100mm2以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶。
【請求項7】
前記III族窒化物半導体層中のフッ素原子濃度が5×1015〜1×1018cm-3である請求項1〜6のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶。
【請求項8】
前記III族窒化物半導体層中の塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子の合計濃度が1×1018cm-3以下である請求項1〜7のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶。
【請求項9】
窒化ガリウム結晶である請求項1〜8のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−56820(P2013−56820A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−197446(P2012−197446)
【出願日】平成24年9月7日(2012.9.7)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】