説明

IL−15抗原アレイとその使用法

本発明は、分子生物学、ウイルス学、免疫学及び医学の分野に関連する。本発明は、規則的に反復した抗原アレイを含有してなる組成物を提供する。このときの抗原はIL-15タンパク質、IL-15変異タンパク質ないしIL-15断片である。より具体的には、本発明は、ウイルス様粒子と、それに結合する少なくとも一のIL-15タンパク質、IL-15変異タンパク質ないし少なくとも一のIL-15断片を含有してなる組成物を提供する。また、本発明は、該組成物の産生方法を提供する。本発明の組成物は、炎症性疾患及び慢性自己免疫性疾患の治療のためのワクチンの産生に有用である。本発明の組成物は、免疫応答、特に抗体応答を効率よく誘導する際に有用である。さらに、本発明の組成物は、示した範囲内の自己特異的な免疫応答を効率よく誘導する際に特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(発明の背景)
発明の分野
本発明は、医学、公衆衛生学、免疫学、分子生物学及びウイルス学の分野に関連する。本発明は、ウイルス様粒子(VLP)と少なくとも一の抗原を含有してなる組成物であって、該抗原がそれぞれVLPに結合されたIL-15タンパク質、IL-15変異タンパク質ないしはIL-15断片である組成物を提供する。
また、本発明は、前述の組成物の産生方法を提供する。本発明の組成物は、特にIL-15が症状を媒介する又は症状の一因となる疾患の治療のため、特に炎症性疾患及び/又は慢性自己免疫性疾患の治療のためのワクチンの産生に有用である。さらに、本発明の組成物は、有効な免疫応答、特に抗体応答を誘導する。さらに、本発明の組成物は、示した範囲内の自己特異的な免疫応答を効率よく誘発するために特に有用である。
【0002】
関連技術
背景
インターロイキン15(IL-15)は、IL-2に構造的及び機能的に関係する14〜15kDの糖タンパク質である、炎症誘発性サイトカインである (Tagaya 等, Immunity, 1996、 4:329-336)。IL-15は結合して、γ鎖(γc)、IL-2Rβ及びIL-15Rαからなるヘテロトリマーレセプターを介してシグナル伝達する。IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15及びIL-21のすべてが、γ鎖を含有するレセプターを利用する一方、IL-2及びIL-15レセプターもIL-2Rβを共有する。IL-15は、IL-15Rαと結合する唯一のサイトカインであることが現在明らかにされている。IL-15は、高い親和性(Ka=1×1011−1)でIL-15Rα単独と結合して、中程度の親和性(Ka=1×10−1)でIL-2Rβとγ鎖との複合体と結合する。
【0003】
単球、マクロファージ、線維芽細胞、ケラチン合成細胞及び樹状細胞を含む様々な細胞及び組織において、IL-15の恒常的発現が報告されている(Waldmann及びTagaya, Annu Rev Immunol. 1999、 17:19-49、Fehniger及びCaligiuri, Blood. 2001、 97:14-32)。IFN-γ及びLPSによって、又はウイルス、細菌ないしは原生動物による感染により刺激される単球について報告されるように、炎症性条件下において、その発現が上方制御される(Kirman 等, Inflamm Res. 1998、 47:285-9、Waldmann 等, Int Rev Immunol. 1998、 16:205-26、Waldmann及びTagaya, Annu Rev Immunol. 1999、 17:19-49、Fehniger及びCaligiuri, Blood. 2001、 97:14-32)。さらに、関節リウマチなどの慢性炎症性疾患では、局所的に産生されたIL-15は、滑液T細胞の動員及び活性化によって、炎症を増幅するようである。このIL-15-誘導効果は、疾患発病学において、役割を果たすことが示唆されている(Kirman 等, Inflamm Res. 1998、 47:285-9.、McInnes 等, Nat. Med. 1996、 2:175-82.、McInnes 等, Nat. Med. 1997、 3:189-95、McInnes及びLiew, Immunol Today. 1998、 19:75-9.、Fehniger及びCaligiuri, Blood. 2001、 97:14-32.)。
【0004】
IL-15に対して特異的なモノクローナル抗体は、多くの慢性炎症性疾患及び/又は自己免疫性疾患を治療する場合に提唱されている。国際公開公報0002582は、炎症性腸疾患を治療するためにIL-15モノクローナル抗体を用いることを開示している。国際公開公報03017935は、IL-15炎症誘導性効果を阻害するため、特に乾癬及び関節炎を治療するためにIL-15モノクローナル抗体を使用することを開示している。
モノクローナル抗体の半減期が人体において、およそ2〜4週間のみであるので、モノクローナル抗体治療には、大量の抗体を繰り返し投与する必要があるという欠点がある(Kaplan, Curr Opin Invest. Drugs. 2002、 3:1017-23.)。高用量の抗体は、注入疾患などの副作用を引き起こしうる。また、ヒト抗体又はヒト化抗体が用いられる場合であっても、アロタイプ応答の患者において、抗抗体が生成され、治療効果が減少するか原因と思われる副作用を引き起こしうる。さらに、ヒト化モノクローナル抗体の高い生産コストによる出費と、常習的な病院訪問者に伴う出費のために、この抗体治療が必要とする多くの患者に利用できなくなる。
【0005】
(発明の概要)
我々は、驚くべきことに、少なくとも一のIL-15タンパク質、IL-15変異タンパク質ないしはIL-15断片を含有してなる本発明の組成物及びワクチンのそれぞれが、強力な免疫応答、特に強力な抗体応答を誘導し、自己抗原IL-15に対する抗体力価を高めることができることを発見した。さらに、我々は、驚くべきことに、本発明の組成物及びワクチンのそれぞれが、関節リウマチなどのIL-15が重大な役割を果たす自己免疫性疾患及び/又は炎症性疾患の誘導及び進行に対して予防的効果及び/又は治療的効果を有する、強力な免疫応答、特に強力な抗体応答を誘導することができることを発見した。さらに、我々は、驚くべきことに、本発明の組成物及びワクチンのそれぞれが、アテローム性動脈硬化の誘導及び進行に対して予防的効果及び/又は治療的効果を有する、強力な免疫応答、特に強力な抗体応答を誘導することができることを発見した。したがって、このことから、免疫応答、特に本発明の組成物及びワクチンのそれぞれによって産生される抗体が、インビボでIL-15を特異的に認識することができ、その機能を阻害しうることが示唆される。
【0006】
したがって、第一の態様では、本発明は、(a) 少なくとも一の第一付着部位を有するウイルス様粒子(VLP);と(b) 少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の抗原;を含んでなり、該少なくとも一の抗原がIL-15タンパク質、IL-15変異タンパク質ないしIL-15断片であり、(a)と(b)が該少なくとも一の第一付着部位と該少なくとも一の第二付着部位を介して結合して、好ましくは規則的に反復した抗原アレイを形成する組成物を提供する。本発明の好適な実施態様では、本発明の使用に好適なウイルス様粒子は、ウイルス、好ましくはRNAバクテリオファージの組み換えタンパク質、好ましくは組み換えコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含有する。
【0007】
ある好適な実施態様では、本発明の組成物は少なくとも一のIL-15変異タンパク質を含有する。IL-15変異タンパク質はIL-15の生物学的活性を持たないが、IL-15とほぼ同じタンパク質構造を保持するのが好ましい。IL-15は強力なT細胞刺激性サイトカインである。したがって、本発明のIL-15変異タンパク質を含んでなる組成物は治療的に有効な医薬を提供する一方、典型的には、体内に生物学的に活性なIL-15が誘導されない。
ある好適な実施態様では、本発明の組成物は少なくとも一のIL-15断片を含有しており、該断片はIL-15の少なくとも一の抗原部位を含むものである。強力で保護的な免疫応答、特に抗体応答が確保される一方で、本発明のIL-15断片の使用により、自己特異的な細胞障害性T細胞応答が誘導される可能性が減少しうる。
【0008】
他の態様では、本発明はワクチン組成物を提供する。さらに、本発明は、ヒト又は動物、好ましくは哺乳動物へのワクチン組成物の投与方法を提供する。本発明のワクチン組成物は、少なくとも一のアジュバントなしで強力な免疫応答、特に抗体応答を誘導することができる。したがって、ある好適な実施態様では、ワクチンはアジュバントを欠いている。アジュバントの使用を避けることによって、望ましくない炎症性T細胞応答が生じる可能性が減少しうる。
ある好適な実施態様では、組成物及びワクチン組成物のそれぞれに含まれる本発明のVLPは、宿主内で組み換えて産生されるものであり、RNAファージのVLPは基本的に宿主のRNA又は宿主のDNA、好ましくは宿主の核酸を含まない。これは、宿主のRNAないしは宿主のDNA、好ましくは宿主の核酸を減少する、好ましくは除去して、望ましくないT細胞応答並びに発熱などの他の望ましくない副作用を避けるという利点がある。
【0009】
ある態様では、本発明は、アテローム性動脈硬化、喘息又は、IL-15タンパク質がその症状を媒介するかその症状の一因となっている、炎症性疾患及び/又は自己免疫性疾患の治療方法であり、本発明の組成物ないしは本発明のワクチン組成物のそれぞれが動物又はヒトに投与されることを含む方法を提供する。IL-15タンパク質がその症状を媒介するかその症状の一因となっている、炎症性疾患及び/又は自己免疫性疾患には、例えば限定するものではないが、関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年性突発性関節炎、乾癬、クローン病がある。
更なる態様では、本発明は、本発明の組成物と受容可能な薬剤的担体を含有してなる薬剤組成物を提供する。
【0010】
より更なる態様では、本発明は、(a) 少なくとも一の第一付着部位を有するVLPを供給する;(b) 少なくとも一の第二付着部位を有するIL-15タンパク質、IL-15変異タンパク質ないしはIL-15断片である、少なくとも一の抗原を供給する;そして(c) 該VLPと該少なくとも一の抗原を組み合わせて、該少なくとも一の第一付着部位と該少なくとも一の第二付着部位を介して少なくとも一の抗原と該VLPが結合している、組成物を産生する、ことを含む、本発明の組成物の産生方法を提供する。
【0011】
(発明の詳細な説明)
定義:
抗原:本明細書で使用するように、「抗原」という用語は、MHC分子によって提示される場合、抗体又はT細胞レセプター(TCR)に結合されうる分子を指す。「抗原」という用語は、本明細書で使用するように、T細胞エピトープも含む。さらに抗原は、免疫系に認識されることができ、及び/又は、B及び/又はTリンパ球の活性化がもたらされる体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答を誘導することができる。しかしながら、このことは、少なくともいくつかの場合において、抗原がTh細胞エピトープを含むかあるいはこれと連結し、アジュバント中に存在することが必要でありうる。抗原は、1つ又は複数のエピトープ(B及びTエピトープ)を有しうる。上記の特異的な反応とは、抗原が、好ましくは典型的には非常に選択的な方式で、その対応する抗体又はTCRと反応し、他の抗原によって誘発される可能性がある多数の他の抗体又はTCRとは反応しないことを示すことを意図する。また、ここで用いた抗原はいくつかの別々の抗原の混合でもよい。
【0012】
抗原性部位:本明細書中において相互に交換可能に用いられる「抗原性部位」なる用語及び「抗原性エピトープ」なる用語は、MHC分子の環境におけるT細胞レセプター又は抗体によって免疫特異的に結合されるポリペプチドの連続的な又は非連続的な部位を意味する。免疫特異的な結合は、非特異的な結合が除外されるが必ずしも交差反応が除外されない。典型的に、抗原性部位は、抗原性部位に特有の空間的な立体構造内に5−10アミノ酸を含有する。
結合(会合) (associated):本明細書中で用いられる「結合(会合) (associated)」なる用語は、2つの分子がともに結合するすべての可能な方法、好ましくは化学的な相互作用を指す。化学的な相互作用には共有的相互作用及び非共有的相互作用が含まれる。非共有的相互作用の典型的な例は、イオン性相互作用、疎水性相互作用、又は水素結合であり、一方、共有的相互作用は、例として共有結合、例えばエステル、エーテル、リン酸エステル、アミド、ペプチド、炭素−リン結合、炭素−イオウ結合、例えばチオエーテル、又はイミド結合ベースである。
【0013】
第一付着部位:ここで用いる「第一付着部位」なる用語は、VLPに天然に生じる又はVLPに人工的に付加される成分であり、第二付着部位が結合する部位を指す。第一付着部位は、タンパク質、ポリペプチド、アミノ酸、ペプチド、糖、ポリヌクレオチド、天然又は合成ポリマー、二次的代謝産物又は化合物(ビオチン、フルオレセイン、レチノール、ジゴキシゲニン、金属イオン、フェニルメチルスルホニルフルオリド)、又は化学反応基、例えばアミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、グアニジル基、ヒスチジル基、又はこれらの組合せであってよい。第一付着部位である化学反応基の好適な実施態様は、リジンなどのアミノ酸のアミノ基である。第一付着部位は、典型的にはVLPの表面上、好ましくはVLPの外表面上に位置する。多数の第一付着部位が、典型的には反復形状で、ウイルス様粒子の表面上、好ましくは外表面上に存在する。好適な実施態様では、第一付着部位は、少なくとも一の共有結合を介して、好ましくは少なくとも一のペプチド結合を介してVLPと会合(結合)する。
【0014】
第二付着部位:ここで用いる「第二付着部位」なる用語は、本発明のIL-15に天然に生じる又は本発明のIL-15に人工的に付加される成分であり、第一付着部位が結合する部位を指す。本発明のIL-15の第二付着部位は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、アミノ酸、糖、ポリヌクレオチド、天然又は合成ポリマー、二次的代謝産物又は化合物(ビオチン、フルオレセイン、レチノール、ジゴキシゲニン、金属イオン、フェニルメチルスルホニルフルオリド)、又は化学反応基、例えばアミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、グアニジル基、ヒスチジル基、又はこれらの組合せであってよい。第二付着部位である化学反応基の好適な実施態様は、好ましくはシステインなどのアミノ酸のスルフヒドリル基である。したがって、「少なくとも一の第二付着部位を有するIL-15タンパク質」、「少なくとも一の第二付着部位を有するIL-15変異タンパク質」、「少なくとも一の第二付着部位を有するIL-15断片」又は「少なくとも一の第二付着部位を有する本発明のIL-15」なる用語は、本発明のIL-15と少なくとも一の第二付着部位を含むコンストラクトを指す。しかしながら、特に、IL-15タンパク質、IL-15変異タンパク質ないしはIL-15断片に天然に生じない第二付着部位の場合、典型的かつ好ましくは、そのようなコンストラクトはさらに「リンカー」を含む。他の好適な実施態様では、第二付着部位は、少なくとも一の共有結合を介して、好ましくは少なくとも一のペプチド結合を介して本発明のIL-15と会合(結合)する。さらに他の好適な実施態様では、第二付着部位は、好ましくはシステインを含むリンカーを介して本発明のIL-15に人工的に付加される。好ましくは、リンカーはペプチドにより本発明のIL-15に融合される。
【0015】
コートタンパク質:本出願において、「コートタンパク質」なる用語と交換可能に用いられる「キャプシドタンパク質」なる用語は、ウイルスキャプシド又はVLP内に内包されうるウイルスタンパク質、好ましくはウイルス、好ましくはRNAファージの天然のキャプシドのサブユニットを指す。典型的かつ好ましくは、「コートタンパク質」なる用語は、ウイルス、好ましくはRNAバクテリオファージのゲノム、又はウイルス、好ましくはRNAバクテリオファージの変異体のゲノムによってコードされるコートタンパク質を指す。より好ましくは、例として、「AP205のコートタンパク質」なる用語は、配列番号14又は、第一メチオニンが配列番号14から切断されているアミノ酸配列を指す。より好ましくは、例として、「Qβのコートタンパク質」はN末端のメチオニンの有無にかかわらず、配列番号1(「Qβ CP」)と配列番号2(A1)を指す。バクテリオファージQβのキャプシドは主にQβ CPと少量のA1タンパク質からなる。
【0016】
本発明のIL-15:本明細書中で用いる「本発明のIL-15」なる用語は、本明細書中で定義する少なくとも一のIL-15タンパク質、少なくとも一のIL-15変異タンパク質ないしは少なくとも一のIL-15断片、又はその組合せを指す。
IL-15タンパク質:本明細書中で用いる「IL-15タンパク質」なる用語は、配列番号:23のヒトIL-15、配列番号:24のマウスIL-15、配列番号:25のラットIL-15、又は任意の他の動物由来の対応するオルソログを含む、あるいは好ましくはそれからなるポリペプチドを包含する。さらにまた、本明細書中で用いる「IL-15タンパク質」なる用語は、配列番号:23のヒトIL-15、配列番号:24のマウスIL-15、配列番号:25のラットIL-15、又は任意の他の動物由来の対応するオルソログと、70%以上、好ましくは80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上及び最も好ましくは97%以上のアミノ酸配列相同性を有する任意の遺伝的に操作した変異体又は天然の変異体を含むか、ないしは好ましくはそれからなる任意のポリペプチドを包含する。本明細書中で用いる「IL-15タンパク質」なる用語は、限定するものではないが、上記に定義するIL-15タンパク質のリン酸化、アセチル化、グリコシル化を含む翻訳後修飾をさらに包含する。好ましくは、本明細書中で定義するIL-15タンパク質は、最大500アミノ酸長、さらにより好ましくは最大300アミノ酸長、さらにより好ましくは最大200アミノ酸長、及びさらにより好ましくは最大150、さらにより好ましくは最大130アミノ酸長からなる。典型的かつ好ましくは、IL-15タンパク質は、例えばELISAにより検査されるような、IL-15に特異的に結合する抗体の産生をインビボで誘導できる。
【0017】
IL-15変異タンパク質:本明細書中の「IL-15変異タンパク質」なる用語は、IL-15タンパク質である任意のポリペプチドであり、IL-15生物学的活性を有さないポリペプチドを包含する。より好ましくは、「IL-15変異タンパク質」なる用語は、配列番号:23のヒトIL-15、配列番号:24のマウスIL-15、配列番号:25のラットIL-15、又は任意の他の動物由来の対応するオルソログと、少なくとも1つ及び最大6つ、好ましくは最大5つ、より好ましくは最大4つ、より好ましくは最大3つ、さらにより好ましくは最大2つ、最も好ましくは1つのアミノ酸が異なる任意のポリペプチドであり、IL-15の生物学活性を有さないポリペプチドを指す。典型的及び好ましくは、IL-15変異タンパク質を含有する本発明の組成物は、IL-15に特異的に結合する抗体の産生をインビボで誘導することができる。本明細書中で用いる「IL-15の生物学活性」なる用語は、Tリンパ球増殖及び/又は分化を刺激することができることを指す。
【0018】
IL-15の生物学活性を測定するための典型的かつ好適なアッセイは欧州特許第0772624号の実施例2に開示されており、出典明記によって本明細書中に組み込まれる。IL-15タンパク質は、ポジティブコントロールとして用いる対応する野生型IL-15を用いた同じ実験において試験される。対応する野生型IL-15は、IL-15タンパク質と同じ種のIL-15を指す。タンパク質濃度アッセイ、例えばブラッドフォード(Bradford)アッセイを行って、化学量論的に等しい量のIL-15タンパク質の変異体と、ポジティブコントロールとして用いたそれに対応する野生型IL-15が同じ実験で試験されることを確認する。試験したIL-15の量とポジティブコントロールとして用いた対応する野生型IL-15が互いに3%以上、好ましくは1%以上異ならない場合に等しい量とみなす。
IL-15タンパク質が等量のポジティブコントロールとして用いた対応する野生型IL-15のIL-15生物学的活性の最大20%、好ましくは10%、より好ましくは5%、さらにより好ましくは1%、さらにより好ましくは0.2%を有する場合、特定のIL-15タンパク質はIL-15の生物学活性を有さない。
【0019】
IL-15断片:本明細書中で用いる「IL-15断片」なる用語は、本明細書中で定義するようなIL-15タンパク質ないしIL-15変異タンパク質の少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、17、18、19、20、25、30の連続するアミノ酸を含有するか、あるいは好ましくはこれらからなる任意のポリペプチド、並びにそれに対して65%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上及びさらにより好ましくは95%以上のアミノ酸配列相同性を有する任意のポリペプチドを包含する。好ましくは、本明細書中で用いる「IL-15断片」なる用語は、本明細書中で定義するようなIL-15タンパク質ないしIL-15変異タンパク質の少なくとも6の連続するアミノ酸を含有するか、あるいは好ましくはこれらからなる任意のポリペプチド、並びにそれに対して80%以上、85%以上、好ましくは90%以上及びさらにより好ましくは95%以上のアミノ酸配列同一性を有する任意のポリペプチドを包含する。IL-15断片の好適な実施態様は、IL-15タンパク質ないしIL-15変異タンパク質の内部欠損型又は切断型である。典型的かつ好ましくは、IL-15断片は、IL-15に特異的に結合できる抗体のインビボでの産生を誘導できる。
【0020】
ポリペプチドのアミノ酸相同性は、ベストフィット(Bestfit)などの公知のコンピュータプログラムを用いて慣習的に測定することができる。ベストフィットないしは任意の他の配列アラインメントプログラムを用いて、好ましくはベストフィットを用いて、特定の配列が例えば参照するアミノ酸配列に対して95%の相同性があるかどうかを決定するために、参照アミノ酸配列の完全長に対する相同性の割合が算出され、参照配列中のアミノ酸残基の合計数の5%以下の相同性にギャップが挿入されるようにパラメータを設定する。ポリペプチド間の相同性の割合を測定する前述の方法は、本発明に開示するすべてのタンパク質、ポリペプチドないしはその断片に適するものである。
結合(linked):ここで用いられる場合、「結合(連結)」なる用語は、可能であれば、好ましくは少なくとも第一付着部位と少なくとも一の第二付着部位がともに連結する化学的な相互作用を意味する。化学的な相互作用には共有的相互作用や非共有的相互作用が含まれる。非共有的相互作用の典型的な例は、イオン性相互作用、疎水性相互作用又は水素結合であるのに対して、共有的相互作用は、共有結合、例えばエステル、エーテル、リン酸エステル、アミド、ペプチド、炭素-リン結合、炭素-イオウ結合、例えばチオエーテル又はイミド結合ベースのものである。ある好適な実施態様では、第一付着部位と第二付着部位は、少なくとも一の共有結合、好ましくは少なくとも一の非ペプチド結合、よりさらに好ましくは、非ペプチド結合のみを介して結合される。しかしながら、ここで用いられる「結合」なる用語は、少なくとも一の第一付着部位と少なくとも一の第二付着部位の直接結合を包含するだけでなく、選択的に好ましくは、中間分子、及びこれによって典型的かつ好ましくは、少なくとも一の、好ましくは一のヘテロ二官能性架橋剤を介して、少なくとも一の第一付着部位と少なくとも一の第二付着部位との間接的な結合も包含する。
【0021】
リンカー:本明細書で使用する「リンカー」は、第二付着部位と本発明のIL-15を結合させるか、第二付着部位を既に含むか、基本的に第二付着部位からなるか第二付着部位からなる。好ましくは、本明細書中で用いる「リンカー」は第二付着部位を、典型的かつ好ましくは、限定するものではないが、一アミノ酸残基として、好ましくはシステイン残基として既に含む。また、本明細書中で用いる「リンカー」は、特に本発明のリンカーが少なくとも一のアミノ酸残基を含有する場合、「アミノ酸リンカー」と称する。したがって、「リンカー」と「アミノ酸リンカー」なる用語は、本明細書中において相互に交換可能に用いられる。しかしながら、この用語は、アミノ酸残基からなるアミノ酸リンカーが本発明の好ましい実施態様である場合でも、このようなアミノ酸リンカーがアミノ酸残基のみからなることを示すことを意味するものではない。リンカーのアミノ酸残基は、当分野で知られている天然に存在するアミノ酸又は非天然アミノ酸、すべてのL型又はすべてのD型、あるいはこれらの混合物から構成されることが好ましい。したがって、スルフヒドリル基又はシステイン残基を含有する分子は本発明のリンカーの好適な実施態様であり、このような分子も本発明内に含まれる。さらに、本発明に有用なリンカーは、C1〜C6アルキル−、シクロアルキル、例えばシクロペンチル又はシクロヘキシル、シクロアルケニル、アリール又はヘテロアリール分子を含有する分子である。さらに好ましくは、C1〜C6アルキル−、シクロアルキル(C5、C6)、アリール、又はヘテロアリール部分と付加的なアミノ酸を含んでなるリンカーも本発明のためのリンカーとして使用可能であり、本発明の範囲内である。本発明のIL-15とリンカーの間の会合(結合)は、少なくとも1つの共有結合によるものであることが好ましく、少なくとも1つのペプチド結合によるものであることがより好ましい。
【0022】
規則的で反復性の抗原アレイ:本明細書で用いる「規則的で反復性の抗原アレイ」なる用語は、一般的に、それぞれウイルス様粒子との関係で抗原中に、典型的に好ましくは非常に規則的に均一に空間的に配置していることに特徴がある、抗原の反復パターンを指す。本発明の一実施態様では、反復パターンは幾何学的パターンである。RNAファージのVLPなどの本発明の特定の実施態様では、好ましくは1から30ナノメーターの間隔、好ましくは2から15ナノメーターの間隔、より好ましくは2から10ナノメーターの間隔、さらにより好ましくは2から8ナノメーターの間隔、さらにより好ましくは1.6から7ナノメーターの間隔を有する、抗原の準結晶性の、厳密に反復的な順序配列を持つ、好適に規則的で反復性の抗原の典型的かつ好ましい例である。
パッケージ化(packaged):本明細書で使用するように、「パッケージ化」という用語は、VLPとの関係でのポリ陰イオン性高分子の状態を指す。本明細書中で用いる「パッケージ化」という用語は、共有、たとえば化学的カップリング、又は非共有、たとえばイオン性相互作用、疎水性相互作用、水素結合などでありうる結合を含む。また、この用語にはポリ陰イオン性高分子の封入ないしは部分的な封入が含まれる。したがって、ポリ陰イオン性高分子を、実際に結合、特に共有結合しなくても、VLPによって封入することができる。好適な実施態様では、少なくとも一のポリ陰イオン性高分子はVLP内に、最も好ましくは非共有的様式にてパッケージ化される。
【0023】
ポリペプチド:本願明細書中で用いられる「ポリペプチド」なる用語は、アミド結合(ペプチド結合ともいう)によって、線形に連結される単量体(アミノ酸)から成る分子を指す。これはアミノ酸の分子鎖を示し、特定の長さの産物を指すわけではない。ゆえに、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド及びタンパク質は、ポリペプチドの定義の中に含まれる。たとえば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化など、ポリペプチドの翻訳後修飾も包含する。
ウイルス粒子:本明細書中で用いられる「ウイルス粒子」なる用語は、ウイルスの形態学的形状を意味する。いくつかのウイルス型には、タンパク質キャプシドに囲まれるゲノムを含む;他のものは付加的な構造(例えばエンベロープ、テイルなど)を有する。
【0024】
ここで用いられるウイルス様粒子(VLP)は、非複製性又は非感染性、好ましくは非複製性かつ非感染性のウイルス粒子を指し、又はウイルス粒子、好ましくはウイルスのキャプシドに類似する非複製性又は非感染性、好ましくは非複製性かつ非感染性の構造を指す。本明細書中で用いる「非複製性」なる用語は、VLPに含まれるゲノムを複製することができないことを意味する。本明細書中で用いる「非感染性」なる用語は、宿主細胞に侵入できないことを意味する。好ましくは、本発明のウイルス様粒子は、ウイルスゲノムないしはウイルスゲノム機能の全て又は一部を欠いているため、非複製性及び/又は非感染性である。一実施態様では、ウイルス様粒子はウイルス粒子であり、このウイルスゲノムは物理的又は科学的に不活性化されている。典型的かつより好ましくは、ウイルス様粒子はウイルスゲノムの複製性及び感染性の相等物のすべて又は一部を欠いている。本発明のウイルス様粒子は、それらのゲノムと異なる核酸を含みうる。本発明のウイルス様粒子の典型的かつ好ましい実施態様では、対応するウイルス、バクテリオファージ、好ましくはRNAファージのウイルスキャプシド等の、ウイルスキャプシドである。「ウイルスキャプシド」又は「キャプシド」なる用語は、ウイルスタンパク質のサブユニットから構成される巨大分子の集合体を指す。典型的には、60、120、180、240、300、360及び360以上のウイルスタンパク質サブユニットである。典型的かつ好ましくは、これらのサブユニットの相互作用により、固有の反復して組織化される、ウイルスキャプシド又はウイルスキャプシド様構造が形成される。前記構造は典型的には球状又は管状である。
【0025】
RNAファージのウイルス様粒子:本明細書中で用いる「RNAファージのウイルス様粒子」なる用語は、RNAファージのコートタンパク質、その変異体ないしは断片を含んでなる、好ましくは基本的にこれからなる、あるいはこれからなるウイルス様粒子を指す。さらに、RNAファージの構造に類似するRNAファージのウイルス様粒子は非複製性及び/又は非感染性であり、RNAファージの複製機構をコードする少なくとも一の遺伝子、好ましくは複数の遺伝子を欠損しており、及び典型的には、宿主にウイルスが接着するか侵入するためのタンパク質又はそれに関与するタンパク質をコードする一又は複数の遺伝子を欠損する。しかしながらまた、この定義には、前述の遺伝子又は遺伝子群が存在するが不活性であるため、RNAファージのウイルス様粒子が非複製性及び/又は非感染性となる、RNAファージのウイルス様粒子が包含される。本開示の範囲内で、「サブユニット」及び「単量体」なる用語は、この文脈において、相互に交換可能に、同等に用いられる。本出願では、「RNAファージ」なる用語及び「RNA-バクテリオファージ」なる用語は、相互に交換可能に使われる。
【0026】
One、a、又はan:用語「one」、「a」、又は「an」を本開示中で使用するとき、それらは、特に示さない限りは、「少なくとも一」、又は「一又は複数」を意味する。
この出願において、抗体は、10−1又はそれ以上、好ましくは10−1又はそれ以上、より好ましくは10−1又はそれ以上、最も好ましくは10−1又はそれ以上の結合親和性(Ka)で、抗原と結合するならば、特異的に結合するものと定義される。抗体の親和性は、(例えばスキャッチャード分析により)通常の当業者によって容易に測定され得る。
【0027】
この発明は、動物又はヒトにおいてIL-15に対する免疫応答を亢進するための組成物及び方法を提供する。本発明の組成物は、(a) 少なくとも一の第一付着部位を有するウイルス様粒子(VLP);と(b) 少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の抗原を含んでなり、該少なくとも一の抗原がIL-15タンパク質、IL-15変異タンパク質ないしはIL-15断片であり、(a)と(b)が該少なくとも一の第一付着部位と該少なくとも一の第二付着部位を介して結合しているものである。好ましくは、IL-15タンパク質、IL-15変異タンパク質ないしはIL-15断片はVLPに結合しており、規則的で反復性の抗原-VLPアレイを形成する。本発明の好適な実施態様では、本発明の少なくとも20、好ましくは少なくとも30、より好ましくは少なくとも60、さらにより好ましくは少なくとも120及びさらにより好ましくは少なくとも180の本発明のIL-15がVLPに結合する。
規則的で反復性の構造を有する当分野で公知の任意のウイルスは、本発明のVLPとして選択してもよい。VLPの調整のために使用されうる具体的なDNAないしRNAウイルスのコート又はキャプシドタンパク質は、国際公開公報2004/009124の25頁の10−21行目、26頁の11−28行目及び28頁の4行目から31頁の4行目に開示されている。これらの開示内容は出典明記により本明細書中に組み込まれる。
【0028】
ウイルスないしウイルス様粒子は産生され、ウイルス感染細胞培養物から精製することができる。ワクチンのためには、結果として生じるウイルスないしウイルス様粒子は病原性を欠失させる必要がある。病原性のウイルスないしウイルス様粒子は、UV照射、ホルムアルデヒド処理等の物理的又は化学的な不活性化によって生成してもよい。あるいは、ウイルスが複製できなくなるように、ウイルスのゲノムを変異ないしは欠損によって遺伝的に操作してもよい。
好適な一実施態様では、VLPは組み換えVLPである。ほとんどすべての一般的に公知のウイルスは配列決定されており、容易に入手可能である。コートタンパク質をコードする遺伝子は当業者に容易に同定されうる。宿主内でコートタンパク質を組み換え発現させることによるVLPの調整は、当業者の共通の知識内である。
【0029】
好適な一実施態様では、ウイルス様粒子は、a) RNAファージ;b) バクテリオファージ;c) B型肝炎ウイルス、好ましくはそのキャプシドタンパク質(Ulrich, 等, Virus Res. 50: 141-182 (1998))又はその表面タンパク質(国際公開公報92/11291);d) はしかウイルス(Warnes, 等, Gene 160:173-178 (1995));e) シンドビスウイルス;f) ロタウイルス(米国特許第5,071,651号及び米国特許第5,374,426号);g) 口蹄疫ウイルス(Twomey, 等, Vaccine 13:1603 1610, (1995));h) ノーウォークウイルス(Jiang, X., 等, Science 250:1580 1583 (1990);Matsui, S.M., 等, J. Clin. Invest. 87:1456 1461 (1991));i) アルファウイルス属;j) レトロウイルス、好ましくはそのGAGタンパク質(国際公開公報96/30523);k) レトロトランスポゾンTy、好ましくはタンパク質p1;l) ヒトパピローマウイルス(国際公開公報98/15631);m) ポリオーマウイルス;n) タバコモザイク病ウイルス;及びo) Flockハウスウイルスからなる群から選択されるウイルスの組み換えタンパク質、その変異体ないしはその断片を含むか、あるいはこれからなる。
好適な一実施態様では、VLPは、その組み換えタンパク質、その変異体ないしはその断片の一以上のアミノ酸配列、好ましくは2つのアミノ酸配列を含むか、これらからなる。一以上のアミノ酸配列を含むかそれらからなるVLPを、本出願ではモザイクVLPと称する。
【0030】
ここで使用される「組み換えタンパク質の断片」なる用語又は「コートタンパク質の断片」なる用語は、野生型組み換えタンパク質又はコートタンパク質それぞれの長さの少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%であり、好ましくはVLPを形成する能力を保持するポリペプチドとして定義される。好ましくは、該断片は、少なくとも一の内部欠失、少なくとも一の切断、又はそれらの少なくとも一の組合せから得られる。「組み換えタンパク質の断片」又は「コートタンパク質の断片」なる用語は、上で定義した「組み換えタンパク質の断片」又は「コートタンパク質の断片」のそれぞれと、少なくとも80%、好ましくは90%、さらにより好ましくは95%のアミノ酸配列同一性を有し、好ましくはウイルス様粒子内に集合化することができるポリペプチドをさらに包含する。
本発明で交換可能に使用される「変異体組み換えタンパク質」なる用語又は「組み換えタンパク質の変異体」なる用語、本発明で交換可能に使用される「変異体コートタンパク質」なる用語又は「コートタンパク質の変異体」なる用語は、野生型組み換えタンパク質又はコートタンパク質それぞれに由来するアミノ酸配列を有するポリペプチドを指し、該アミノ酸配列は野生型配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、90%、95%、97%又は99%の同一性であり、好ましくは集合してVLPを形成する能力を保持している。
【0031】
VLP内へのコートタンパク質又は組み換えタンパク質の変異体又は断片の集合化(アセンブリ)は、当業者には理解されるように、大腸菌中でタンパク質を発現させ、場合によっては細胞可溶化物をゲル濾過することによりキャプシドを精製し、免疫拡散アッセイ(オークタロニーテスト)又は電子顕微鏡法(EM)(Kozlovska, T. M.等, Gene 137:133-37(1993))によりキャプシド形成を分析することにより、試験してもよい。免疫拡散アッセイ及びEMは、細胞可溶化物で直接実施してもよい。
好適な一実施態様では、本発明のウイルス様粒子はB型肝炎ウイルスである。B型肝炎ウイルス様粒子の調整は、特に国際公開公報00/32227、同01/85208及び同01/056905に開示されている。これら3つすべての文書は出典明記によって本明細書中に特別に組み込まれる。本発明の実施における使用に好適なHBcAgの他の変異体は国際公開公報01/056905の34−39頁に開示されている。
【0032】
本発明の更なる好適な一実施態様では、リジン残基はHBcAgポリペプチドに導入され、本発明のIL-15のHBcAgのVLPへの結合を媒介する。好適な実施態様では、本発明の組成物及びVLPは、配列番号20のアミノ酸1−144又は1−149、1−185を含むか、あるいはこれからなるHBcAgを用いて調整される。このアミノ酸は修飾されており、79番目と80番目のアミノ酸がGly-Gly-Lys-Gly-Glyのアミノ酸配列を有するペプチドに置き換わっている。この修飾により配列番号20から配列番号21に変化する。更なる好適な実施態様では、配列番号21の48番目と110番目のシステイン残基、又はその対応する断片、好ましくは1−144又は1−149がセリンに変異される。さらに、本発明は、上記の対応するアミノ酸変異を有するB型肝炎コアタンパク質変異を含有する組成物を包含する。さらに、本発明は、配列番号21に少なくとも80%、85%、90%、95%、97%又は99%の同一性であるアミノ酸配列を含むか、あるいはこれからなるHBcAgポリペプチドを含有する組成物及びワクチンのそれぞれを包含する。
本発明の他の実施態様では、ウイルス様粒子は、組み換えアルファウイルス、より具体的には組み換えシンドビスウイルスである。アルファウイルスは、DNA中間生成物のない感染細胞の細胞質で完全にゲノムRNAを複製する陽性の鎖RNAウイルスである(Strauss, J.及びStrauss, E., Microbiol. Rev. 58: 491-562 (1994))。アルファウイルスファミリのメンバーである、シンドビス(Schlesinger, S., Trends Biotechnol. 11:18-22 (1993))、セムリキ森林ウイルス(SFV) (Liljestrom, P. & Garoff, H., Bio/Technology 9:1356-1361 (1991))及びその他(Davis, N.L. 等, Virology 171:189-204 (1989))は、ワクチン開発の候補として、及び様々な異なるタンパク質のウイルスベースの発現ベクター(Lundstrom, K., Curr. Opin. Biotechnol. 8:578-582 (1997))としての使用についてかなり注目されている。
【0033】
本発明のある実施態様では、本発明のウイルス様粒子は、RNA-ファージの組み換えコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。好ましくは、RNA-ファージは、a)バクテリオファージQβ;b)バクテリオファージR17;c)バクテリオファージfr;d)バクテリオファージGA;e)バクテリオファージSP;f)バクテリオファージMS2;g)バクテリオファージM11;h)バクテリオファージMX1;i)バクテリオファージNL95;k)バクテリオファージf2;l)バクテリオファージPP7、及びm)バクテリオファージAP205からなる群から選択される。
本発明の好適な一実施態様では、組成物は、RNAファージのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含有し、該コートタンパク質は、(a) 配列番号:1(Qβ CPを指す);(b) 配列番号:1と配列番号:2の混合物(Qβ A1タンパク質を指す);(c) 配列番号:3;(d) 配列番号:4;(e) 配列番号:5;(f) 配列番号:6、(g) 配列番号:6と配列番号:7の混合物;(h) 配列番号:8;(i) 配列番号:9;(j) 配列番号:10;(k) 配列番号:11;(l) 配列番号:12;(m) 配列番号:13;及び(n) 配列番号:14からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。一般的に、上記のコートタンパク質はN末端のメチオニンの有無にかかわらずVLP内に集合化することができる。
【0034】
本発明の好適な一実施態様では、VLPは、RNAファージのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片の一以上のアミノ酸配列、好ましくは2つのアミノ酸配列を含むか、あるいはそれらからなるモザイクVLPである。
とても好適な一実施態様では、VLPはRNAファージの2つの異なるコートタンパク質を含むか、あるいはそれらからなるものであり、該2つのコートタンパク質は配列番号1と配列番号2、又は配列番号6と配列番号7のアミノ酸配列を有する。
本発明の好適な実施態様では、本発明のウイルス様粒子は、RNA-バクテリオファージQβ、fr、AP205又はGAの組み換えコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。
好適な一実施態様では、本発明のVLPはRNAファージQβである。Qβのキャプシド又はウイルス様粒子は、直径25nmで、T=3の疑似対称体の、正二十面体ファージ様キャプシド構造を示す。キャプシドは、ジスルフィド架橋により共有結合性の五量体及び六量体で結合して(Golmohammadi, R等, Structure 4:543-5554(1996))、際だって安定したQβキャプシドとなる、コートタンパク質の180のコピーを含む。しかしながら、組換えQβコートタンパク質から作製されるキャプシド又はVLPは、キャプシド内の他のサブユニットへ、ジスルフィド結合を介して結合していないか、又は不完全に結合するサブユニットを含んでいてもよい。Qβのキャプシド又はVLPは、有機溶媒及び変性剤に対し、普通ではない耐性を示す。驚くべきことに、我々は、1Mの高さの濃度のグアニジウム、30%の高さの濃度のアセトニトリル及びDMSOがキャプシドの安定性に影響しないことを発見した。Qβのキャプシド又はVLPの高い安定性は、本発明の哺乳動物及びヒトの免疫化及びワクチン接種における使用に特に有用な性質である。
【0035】
さらに好適な本発明のRNAファージ、特にQβ及びfrのウイルス様粒子は国際公開公報02/056905に開示されており、この開示内容は出典明記により本明細書中に組み込まれる。特に、国際公開公報02/056905の実施例18にQβのVLP粒子の調整について詳しく記載されている。
他の好適な実施態様では、本発明のVLPは、RNAファージAP205のVLPである。また、アミノ酸5のプロリンがスレオニンに置換しているAP205コートタンパク質を含む、AP205 VLPの集合体コンピテント変異体型を本発明の実施に使用してもよく、本発明の他の好適な実施態様となる。国際公開公報2004/007538の特に実施例1及び実施例2には、AP205コートタンパク質を含有するVLPの入手方法、とりわけその発現と精製について記載されている。国際公開公報2004/007538は出典明記によって本明細書中に組み込まれる。AP205 VLPは高い免疫原性があり、本発明のIL-15と結合して、典型的かつ好ましくは、反復様式で配位する本発明のIL-15を表出するワクチンコンストラクトを生成することができる。表出された本発明のIL-15に対して高い抗体力価が誘発されることから、結合した本発明のIL-15が抗体分子との相互作用のためにアクセス可能であり、免疫原性であることが示される。
【0036】
好適な一実施態様では、本発明のVLPは、ウイルス、好ましくはRNAファージの変異体コートタンパク質を含むかあるいはこれからなるものであり、該変異体コートタンパク質は置換及び/又は欠失によって少なくとも一のリジン残基が除去されて修飾されている。他の好適な実施態様では、本発明のVLPは、ウイルス、好ましくはRNAファージの変異体コートタンパク質を含むかあるいはこれからなるものであり、該変異体コートタンパク質は置換及び/又は挿入によって少なくとも一のリジン残基が付加されて修飾されている。あるとても好適な実施態様では、変異体コートタンパク質はRNAファージQβであり、少なくとも1、あるいは少なくとも2のリジン残基が置換又は欠失によって除去されている。またとても好適な実施態様では、変異体コートタンパク質はRNAファージQβのものであり、少なくとも1、あるいは少なくとも2のリジン残基が置換又は挿入によって付加されている。更なる好適な一実施態様では、RNAファージQβの変異体コートタンパク質は、配列番号15−19の何れか一から選択されるアミノ酸配列を有する。特にワクチンの必要性に合わせて調整するために、少なくとも一のリジン残基の欠失、置換又は付加によって、カップリングの程度、すなわち、ウイルス、好ましくはRNAファージのVLPのサブユニット当たりの本発明のIL-15の量を変えることができる。
【0037】
好適な一実施態様では、本発明の組成物及びワクチンは、0.5〜4.0の抗原密度を有する。ここで使用される「抗原密度」なる用語は、サブユニット当たり、好ましくはVLPのコートタンパク質当たり、好ましくはRNAファージのVLPのコートタンパク質当たりに結合する本発明のIL-15の平均数を意味するものである。よって、この値は、本発明の組成物又はワクチン中での、VLP、好ましくはRNAファージのVLPのモノマー又はサブユニット全体の平均として算出される。
本発明の他の好適な実施態様では、ウイルス様粒子は、Qβの変異体コートタンパク質、又はその変異体ないしはその断片、及び対応するA1タンパク質を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。更なる好適な実施態様では、ウイルス様粒子は、アミノ酸配列 配列番号15、16、17、18又は19を有する変異体コートタンパク質及び対応するA1タンパク質を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。
【0038】
また、アミノ酸5のプロリンがスレオニンに、アミノ酸14のアスパラギンがアスパラギン酸に置換しているAP205コートタンパク質を含む、AP205 VLPの集合体化コンピテント変異体型を本発明の実施に用いてもよく、本発明の他の好適な実施態様となる。AP205Pro-5-ThrのクローニングとVLPの精製は国際公開公報2004/007538の特に実施例1及び実施例2に開示されており、出典明記によって本明細書中に組み込まれる。
さらにまた、RNAファージコートタンパク質は、細菌宿主内で発現すると自己集合体化することが示されている(Kastelein, RA. 等, Gene 23:245-254 (1983)、Kozlovskaya, TM. 等, Dokl. Akad. Nauk SSSR 287:452-455 (1986)、Adhin, MR. 等, Virology 170:238-242 (1989)、Priano, C. 等, J. Mol. Biol. 249:283-297 (1995))。特に、GA (Ni, CZ., 等, Protein Sci. 5: 2485-2493 (1996)、Tars, K 等, J. Mol.Biol. 271:759-773(1997))及び、fr (Pushko P. 等, Prot. Eng. 6: 883-891 (1993)、Liljas, L 等 J Mol. Biol. 244:279-290, (1994))の生物学的及び生化学的性質は開示されている。いくつかのRNAバクテリオファージの結晶構造が決定されている(Golmohammadi, R. 等, Structure 4:543-554 (1996))。そのような情報を用いて、表面に曝された残基を同定して、RNAファージコートタンパク質を修飾して、一又は複数の反応性のアミノ酸残基を挿入又は置換によって挿入することができる。RNAファージ由来のVLPの他の利点は、安価で大量の物質を産生することが可能となる細菌での発現回収率が高いことである。
【0039】
好適な一実施態様では、本発明の組成物は少なくとも一の抗原を含有するものであり、該少なくとも一の抗原はIL-15タンパク質、IL-15変異タンパク質ないしはIL-15断片である。好適な一実施態様では、IL-15タンパク質、IL-15変異タンパク質ないしはIL-15断片は、(a) ヒト起源;(b) ウシ起源;(c) ヒツジ起源;(d) イヌ起源;(e) ネコ起源;(f) マウス起源;(g) ブタ起源;(h) ニワトリ起源;(i) ウマ起源;及び(g) ラット起源からなる群から選択される起源から選択される。
好適な一実施態様では、少なくとも一の抗原はIL-15タンパク質である。更なる好適な実施態様では、IL-15タンパク質は、(a) 配列番号22;(b) 配列番号23;(c) 配列番号24;(d) 配列番号25;及び(e) 配列番号22−25の何れかと少なくとも80%、又は好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、又は最も好ましくは少なくとも95%の相同性であるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれらからそれらからなる。
【0040】
他の好適な実施態様では、少なくとも一の抗原はIL-15変異タンパク質である。IL-15変異タンパク質は、IL-15生物活性を有さないが、IL-15に対して特異的な抗体応答を誘導できる。したがって、本発明の抗原としてIL-15変異タンパク質を使用することによって、本発明のVLPに結合したIL-15を導入したことによる予想外で望まれない副作用を確実に回避する。米国特許第6013480号では、IL-15Rα-サブユニットへの結合が可能で、IL-15レセプター複合体のβ-又はγ-サブユニットによるシグナルを変換することができない2つの変異タンパク質が開示されている。また、生物学的な活性がなく、α-サブユニットに結合ができない変異タンパク質が開示されている(Bernard J. 等 J Biol Chem. (2004)、279(23): 24313-22)であった。したがって、ある好適な実施態様では、IL-15変異タンパク質は、(a) 配列番号23、この位置46がEでない、(b) 配列番号23、この位置50がIでない、(c) 配列番号23、この位置46がEでなく、位置50がIでない、(d) 配列番号31、(e) 配列番号32、(f) 配列番号33、及び(g) 配列番号23に少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、又は最も好ましくは少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列であり、このとき、配列番号23の位置46に一致する位置がEでない、又は配列番号23の位置50に一致する位置がIでない、又は配列番号23の位置46に一致する位置がEでなくかつ配列番号23の位置50に一致する位置がIでないアミノ酸配列、(h) 配列番号23、このアミノ酸残基AspとGln108の何れか又はその両方が欠失しているか異なる天然に生じるアミノ酸に置換している、(i) 配列番号23、このアミノ酸残基Gln101とGln108の何れか又はその両方が欠失しているか異なる天然に生じるアミノ酸に置換している、(j) 配列番号42、(j) 配列番号23、この位置8がAspでなく、好ましくはAsp又はGluでない、(k) 配列番号23、このAspとGln108の何れか又はその両方がセリン又はシステインによって、各々置換される、(l) 配列番号23、位置8、101および108の中の少なくとも一つのアミノ酸が欠失しているか好ましくは置換している、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、それからなる。
【0041】
更なるある好適な実施態様では、IL-15変異タンパク質は、位置46はGluでなく、Asp、Gln又はAsnでない、配列番号23のアミノ酸配列を含むか、それからなる。なお更なる好適な実施態様では、IL-15変異タンパク質は、配列番号31のアミノ酸配列を含むか、それからなる。
更なるある好適な実施態様では、IL-15変異タンパク質は、位置50がIle又はLeuでない、配列番号23のアミノ酸配列を含むか、それからなる。更なる好適な実施態様では、IL-15は、位置50がIle、Leu、Ala、Gly又はValでない、アミノ酸配列を有する。なお更なる好適な実施態様では、IL-15変異タンパク質は、配列番号32のアミノ酸配列を含むか、それからなる。
更なるある好適な実施態様では、IL-15変異タンパク質は、位置46がGlu、Asp、Gln又はAsnでなく、位置50がIle、Leu、Ala、Gly又はValでない、配列番号23のアミノ酸配列を含むか、それからなる。なお更なる好適な実施態様では、IL-15変異タンパク質は、配列番号33のアミノ酸配列を含むか、それからなる。
更なる他の好適な実施態様では、少なくとも一の抗原はIL-15断片であり、該IL-15断片は少なくとも一の抗原性部位を含むか、あるいはそれからなる。
【0042】
免疫原性の保持には通常タンパク質の完全長を必要としないことと、通常、タンパク質は複数の抗原エピトープ、すなわち抗原性部位を含有することが知られている。断片又は短いペプチドは、免疫特異的に抗体又は、MHC分子との関係でT細胞レセプターに結合されうる少なくとも一つの抗原性部位を含有するために十分であるかもしれない。抗原性部位又は複数の部位は、当分野の技術者に一般に公知の多くの技術で決定されうる。それは、配列アラインメントや構造予測によって、なされうる。例えば、Rasmolなどのプログラムを用いて、可能性のあるα-ヘリックス、ターン、鎖間及び鎖内ジスルフィド結合などを予測するものがある。さらに、分子の表面に露出する分子又は配列内に埋没される配列を予測するものもある。分子の表面に露出する配列は、おそらく、天然の抗原性部位(一又は複数)を含んでなるため、治療的抗体を誘導する際に有用である。表面ペプチド配列を決定した後、例えば網羅的な突然変異誘発方法によって、この配列の範囲内の抗原性部位を更に決定してもよい(アラニンスキャニング突然変異誘発など、Cunningham BC, Wells JA. Science 1989 Jun 2、 244(4908): 1081-5)。一時的にこの配列内のアミノ酸を順次アラニンに変異し、アラニン突然変異が抗体に対する結合の低減(野生型配列に対して上昇)を示すアミノ酸又は全く結合を失うアミノ酸がおそらく抗原性部位の成分である。
【0043】
抗原性部位(一又は複数)を決定する他の方法は、IL-15 (Geysen, PNAS Vol 81: 3998-4002, (1984) and Slootstra, J. W. 等, (1996) Mol. Divers. 1, 87-96)の完全長配列を包含するオーバーラッピングペプチドを生成することである。通常、最初のスクリーニングとして、5〜10のアミノ酸オーバーラップを有する20〜30のアミノ酸長のペプチドを化学的に合成してもよい。マウスを各々別々のペプチドで免疫化して、それらのマウスからポリクローナル血清を採取する。ポリクローナル血清が天然のIL-15タンパク質を認識するかどうかを、様々な方法、例えばELISA又は免疫沈降法を用いて試験できる。IL-15タンパク質を認識する対応血清のペプチドが最も天然の抗原性部位を含有するもののようである。
抗原として単独で使われるか又は担体に結合されるペプチドは、完全長タンパク質の関係において、ある場合の立体構造と異なる立体構造に変わりうる。したがって、IL-15で免疫化したマウスから得たポリクローナル血清へのペプチドの結合はクロスチェックするべきである。
【0044】
あるいは、齧歯動物を完全長IL-15タンパク質にて免疫化する。各々異なる部分的にオーバーラップしたペプチドとの結果として生じたポリクローナル血清の交差反応性を、多くの方法、例えばELISA、免疫沈降法又は質量分析によって、試験する。(Parker及びTomer, Mol. Biotechnol. 2002, 20, 49-62)。これらのペプチドは合成するか又は組換え体由来のものでありうる。
上述した手順を簡略化して、容易にする技術は有用である。例えば、ペプチドは、ランダムに生成され、ファージの表面にディスプレイすることができる。(Nilsson, Methods Enzymol. 2000、326:480-505、Winter Annu Rev Immunol. 1994、12:433-55、peptide phage display, Smith, Methods Enzymol. 1993、217:228-57)。必要とされる部分的にオーバーラップするペプチドの量は、SPOT技術を用いて有意に減らすことができる(Jerini S technology、 Sigma-Genosys)。
本発明の更なる好適な実施態様では、IL-15断片は、本明細書で定義されるIL-15タンパク質ないしIL-15変異タンパク質の少なくとも5〜12の隣接するアミノを含むか、あるいは好ましくはそれらからなる。
【0045】
ある好適な実施態様では、IL-15断片は、60未満、好ましくは50未満、好ましくは40未満、さらにより好ましくは30未満、さらにより好ましくは20未満のアミノ酸長からなる。
更なる好適な実施態様では、IL-15断片は、配列番号23のアミノ酸44−52、好ましくはアミノ酸44−54、好ましくはアミノ酸43−55を含んでなる。更なるある好適な実施態様では、IL-15断片は、配列番号23の位置46がGluでない、好ましくはGlu、Asp、Gln又はAsnでない、アミノ酸配列を有する。あるいはなお更なる好適な実施態様では、IL-15断片は、配列番号23の位置50がIleでない、好ましくはIle、Leu、Ala、Gly又はValでないアミノ酸配列を有する。
更なる好適な実施態様では、IL-15断片は、配列番号23のアミノ酸64−68、好ましくは62−70、好ましくは61−73を含んでなる。
【0046】
好ましい実施態様では、IL-15断片は、(a) 配列番号34、(b) 配列番号35、(c) 配列番号36、(d) 配列番号37、(e) 配列番号38、(f) 配列番号39、(g) 配列番号40、及び(h) 配列番号34−40の何れかに少なくとも65%、好ましくは少なくとも80%、又は好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、又は最も好ましくは少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるか、それからなる。
本発明は、(a) 少なくとも一の第一付着部位を有するVLPを供給する、(b) 少なくとも一の第二付着部位を有するIL-15タンパク質、IL-15変異タンパク質ないしはIL-15断片である、少なくとも一の抗原を供給する、そして(c) 該VLPと該少なくとも一の抗原を組み合わせて、該第一付着部位と該第二付着部位を介して少なくとも一の抗原と該VLPが結合している、組成物を産生する、ことを含む本発明の組成物の産生方法を提供する。好適な実施態様では、少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の抗原、すなわちIL-15タンパク質、IL-15変異タンパク質ないしIL-15断片の供給は、発現による、好ましくは細菌系、好ましくは大腸菌内での発現によるものである。通常、Hisタグ、Mycタグなどのタグは精製工程を容易にするために加えられる。他の方法では、特に50以下のアミノ酸を有するIL-15断片は化学的に合成できる。
【0047】
本発明の好適な一実施態様では、少なくとも一の第一付着部位を有するVLPは、少なくとも一のペプチド結合を介して少なくとも一の第二付着部位を有する本発明のIL-15に結合する。本発明のIL-15、好ましくはIL-15断片、より好ましくは50アミノ酸以下、さらにより好ましくは30アミノ酸よりも少ない断片をコードする遺伝子が、VLPのコートタンパク質をコードする遺伝子の内部に又は好ましくはNないしC末端の何れかにインフレーム結合する。また、融合は、一部が欠損しているコートタンパク質の変異体内へIL-15断片の配列を挿入することに影響を受けうる、これはさらに切断変異体と称される。切断変異体は、コートタンパク質の配列のN末端ないしC末端、又はその一部の内部が欠損していてもよい。例えば特定のVLP HBcAgについて、アミノ酸79−80外来のエピトープに置換される。好ましくは、融合タンパク質は発現の際にVLP内に集合体化する能力を保持しており、その集合体化は電子顕微鏡で調べることができる。
隣接するアミノ酸残基を付加して、コートタンパク質と外来性のエピトープの間の間隙を増やしてもよい。隣接配列に用いるためにはグリシン残基及びセリン残基が特に好ましい。このような隣接配列によってフレキシビリティが付加される。このフレキシビリティの付加により、VLPサブユニットの配列内へ外来性の配列を融合する際に生じうる不安定性作用が軽減され、外来性のエピトープの存在による集合体化の阻害が軽減される。
【0048】
他の実施態様では、本発明の少なくとも一のIL-15、好ましくは50未満のアミノ酸からなるIL-15断片は、多くの他のウイルスコートタンパク質、例えばQβのA1タンパク質の切断型のC末端に融合するか (Kozlovska, T. M., 等, Intervirology 39:9-15 (1996))又は、CP伸展の位置72と73の間に挿入されてもよい。その他の例として、IL-15断片がfr CPのアミノ酸2と3の間に挿入され、IL-15-fr CP融合タンパク質となってもよい(Pushko P. 等, Prot. Eng. 6: 883-891 (1993))。さらに、IL-15断片は、RNAファージMS-2のコートタンパク質のN末端突出β-ヘアピンに融合してもよい(国際公開公報92/13081)。あるいは、IL-15断片は、パピローマウイルスのキャプシドタンパク質、好ましくはウシパピローマウイルス1型(BPV-1)の主要キャプシドタンパク質L1に融合しうる (Chackerian, B. 等, Proc. Natl. Acad. Sci.USA 96:2373-2378 (1999)、国際公開公報00/23955)。また、IL-15断片へのBPV-1 L1のアミノ酸130−136の置換も、本発明の実施態様である。さらに、ウイルスのコートタンパク質へのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片に本発明の抗原を融合させる実施態様は、国際公開公報2004/009124の62頁の第20行目から68頁の第17行目に開示されており、出典明記によって、本明細書中に組み込まれる。
【0049】
他の好適な実施態様では、本発明のIL-15、好ましくはIL-15断片、さらにより好ましくはアミノ酸配列 配列番号34、35、36、37、38、39又は40を有するIL-15断片を、RNAファージAP205のコートタンパク質、その変異体ないしはその断片のN末端又はC末端に融合する。更なる好適な一実施態様では、融合タンパク質は、スペーサーをさらに含有するものであり、該スペーサーはAP205のコートタンパク質、その断片ないしはその変異体と本発明のIL-15の間に位置する。
本発明の好適な一実施態様では、組成物は、少なくとも一の共有結合を介して少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の本発明のIL-15に結合した少なくとも一の第一付着部位を有するウイルス様粒子を含有するか、あるいは本質的にこれらからなるものであり、該共有結合は非ペプチド結合である。本発明の好適な実施態様では、第一付着部位は、アミノ基、好ましくはリジン残基のアミノ基を含むか、好ましくはそのものである。本発明の他の好適な実施態様では、第二付着部位は、スルフヒドリル基、好ましくはシステインのスルフヒドリル基を含むか、好ましくはそのものである。
【0050】
本発明のとても好ましい実施態様では、少なくとも一の第一付着部位は、アミノ基、好ましくはリジン残基のアミノ基を含むか、好ましくはそのものであり、少なくとも一の第二付着部位は、スルフヒドリル基、好ましくはシステインのスルフヒドリル基を含むか、好ましくはそのものである。
本発明の好ましい一実施態様では、本発明のIL-15は、典型的にかつ好ましくはヘテロ二官能性架橋剤を使用して、化学的架橋によりVLPに結合している。好ましい実施態様では、ヘテロ二官能性架橋剤は、好ましくはアミノ基、より好ましくはVLPのリジン残基(一又は複数)のアミノ基を有する好ましい第一付着部位と反応可能な官能基と、好ましい第二付着部位、すなわち本発明のIL-15に元もとある、ないしは人工的に付加され、場合によっては還元による反応に利用される、好ましくはシステイン(一又は複数)残基のスルフヒドリル基と反応可能なさらなる官能基を含む。いくつかのヘテロ二官能性架橋剤が当該分野で知られている。これらには、好ましい架橋剤であるSMPH(Pierce)、スルホ-MBS、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMPB、スルホ-SMCC、SVSB、SIA、及び例えばPierce Chemical Companyから入手可能な他の架橋剤が含まれ、アミノ基に対して反応可能な一官能基とスルフヒドリル基に対して反応可能な一官能基を有する。上述した全ての架橋剤により、アミノ基との反応後にアミド結合が、またスルフヒドリル基とチオエーテル結合が形成される。本発明の実施に適した他のクラスの架橋剤は、カップリング時に本発明のIL-15とVLPとの間にジスルフィド結合を導入することにより特徴付けられる。このクラスに属する好ましい架橋剤には、例えばSPDP及びスルホ-LC-SPDP(Pierce)が含まれる。
【0051】
好ましい実施態様では、本発明の組成物はリンカーをさらに含有している。本発明のIL-15における第二の付着部位の操作は、この発明の開示に従い、好ましくは第二の付着部位として適切な少なくとも一のアミノ酸を含むリンカーとの結合により達成される。よって、本発明の好ましい実施態様では、リンカーは少なくとも一の共有結合、好ましくは典型的には少なくとも一のペプチド結合により、本発明のIL-15に結合している。好ましくは、リンカーは、第二の付着部位を含む又はそれからなる。さらに好ましい実施態様では、リンカーは好ましくはシステイン残基のスルフヒドリル基を含む。他の好ましい実施態様では、リンカーはシステイン残基である。
【0052】
リンカーの選択は、本発明のIL-15の性質、その生化学的特性、例えばpI、電荷分布、及びグリコシル化に依存するであろう。一般的に、フレキシブルなアミノ酸リンカーが好まれる。本発明のさらに好ましい実施態様では、リンカーはアミノ酸からなり、さらに好ましくは、リンカーは最大で25、好ましくは最大で20、より好ましくは最大で15のアミノ酸からなる。本発明のさらに好適な実施態様では、アミノ酸リンカーは10未満のアミノ酸を含有する。リンカーの好ましい実施態様は:(a) CGG又はCG/GC;(b)N-末端ガンマ1-リンカー(例えばCGDKTHTSPP、配列番号44);(c)N-末端ガンマ3-リンカー(例えばCGGPKPSTPPGSSGGAP、配列番号55);(d)Igヒンジ領域;(e)N-末端グリシンリンカー(例えばGCGGGG、配列番号45);(f)n=0-12、k=0-5である(G)kC(G)n;(g)N-末端グリシン-セリンリンカー(さらに一つのシステインを有するn=1-3の(GGGGS)n(例えば配列番号46、n=1の実施態様に相当));(h)n=0-3、k=0-5、m=0-10、l=0-2である(G)kC(G)m(S)l(GGGGS)n(例えば配列番号47、n=1、k=1、l=1及びm=1の実施態様に相当);(i)GGC;(k)GGC-NH2;(l)C-末端ガンマ1-リンカー(例えばDKTHTSPPCG、配列番号48);(m)C-末端ガンマ3-リンカー(例えばPKPSTPPGSSGGAPGGCG、配列番号49);(n)C-末端グリシンリンカー(GGGGCG、配列番号50);(o)n=0-12及びk=0-5である(G)nC(G)k;(p)C-末端グリシン-セリンリンカー(さらに一つのシステインを有するn=1-3の(SGGGG)n(例えば配列番号51、n=1の実施態様に相当));(q)n=0-3、k=0-5、m=0-10、l=0-2及びo=0-8である(G)m(S)l(GGGGS)n(G)oC(G)k(例えば配列番号52、n=1、k=1、l=1、o=1及びm=1の実施態様に相当)からなる群から選択される。さらに好ましい実施態様では、リンカーは本発明のIL-15のN-末端に融合している。本発明の他の好ましい実施態様では、リンカーは本発明のIL-15のC-末端に融合している。
【0053】
この発明に係る好ましいリンカーは、第2付着部位としてシステイン残基をさらに含むグリシンリンカー(G)n、例えばN-末端グリシンリンカー(GCGGGG)及びC-末端グリシンリンカー(GGGGCG)である。さらに好ましい実施態様は、C-末端グリシン-リジンリンカー(GGKKGC、配列番号53)及びN-末端グリシン-リジンリンカー(CGKKGG、配列番号54)、ペプチドのC-末端のGGCG、GGC又はGGC-NH2(「NH2」はアミド化を表す)リンカー、又はそのN-末端のCGGのリンカーである。一般的に、グリシン残基は、第2付着部位として使用されるシステインと大きなアミノ酸との間に挿入されて、カップリング反応中での、より大きなアミノ酸の潜在的な立体障害が回避される。
【0054】
上記の好適な方法によるヘテロ二官能性架橋剤を用いることによるVLPへの本発明のIL-15の結合により、正方向の様式でVLPに本発明のIL-15をカップリングさせることができる。VLPに本発明のIL-15を連結させるための他の方法には、カルボジイミドEDC、及びNHSを使用し、本発明のIL-15をVLPに架橋させる方法が含まれる。本発明のIL-15は、例えばSATA、SATP又はイミノチオランを用いた反応を介して、まずチオラート化されてもよい。次いで、必要であれば脱保護化した後に本発明のIL-15を以下のようにVLPにカップリングしてもよい。過剰なチオラート化剤を分離した後、本発明のIL-15を、システイン反応基を含有し、システイン残基に対して反応可能な少なくとも一又はいくつかの官能基を表出するヘテロ二官能性架橋剤にて予め活性化させた、VLPと反応させる。このとき本発明のチオラート化IL-15は上記に記載のように反応することができる。場合によっては、少量の還元剤が反応混合物中に含まれる。さらなる方法では、ホモ二官能性架橋剤、例えばグルタルアルデヒド、DSG、BM[PEO]4、BS3、(Pierce)、又はVLPのアミノ基又はカルボキシル基に対して反応する官能基を有する他の既知のホモ二官能性架橋剤を使用して、本発明のIL-15をVLPに結合させる。
【0055】
本発明の他の実施態様では、組成物は、化学的な相互作用を介して本発明のIL-15に結合したウイルス様粒子を含むか、ないしは本質的にそれからなるものであり、この相互作用の少なくとも一は共有結合ではない。例えば、VLPをビオチン化してストレプトアビジン-融合タンパク質として本発明のIL-15を発現することによって本発明のIL-15へのVLPの結合が起こる。また、他の結合対、例えばリガンド-レセプター、抗原-抗体も、ビオチン-アビジンと同様の形で、カップリング試薬として使用することができる。
米国特許第5698424号には、キャプシドを形成可能なバクテリオファージMS-2の修飾コートタンパク質が記載されており、ここでコートタンパク質はN-末端ヘアピン領域にシステイン残基を挿入し、非システインアミノ酸残基により、N-末端ヘアピン領域の外側に位置する各システイン残基を置換することにより修飾される。ついで、挿入されたシステイン残基は、所望される分子種に直接結合し、エピトープ又は抗原性タンパク質等として提示される。
【0056】
しかしながら、キャプシドに露出した遊離のシステイン残基が存在すると、ジスルフィド架橋の形成により、キャプシドのオリゴマー化に至りうることを我々は記す。さらに、ジスルフィド結合によるキャプシドと抗原性タンパク質との結合は、特にスルフヒドリル-部分含有分子に対して不安定であり、さらに、チオエーテル付着よりも血清中で安定性が低下する(Martin FJ. 及び Papahadjopoulos D.(1982) Irreversible Coupling of Immunoglobulin Fragments to Preformed Vesicles. J. Biol. Chem. 257:286-288)。
よって、さらに非常に好ましい実施態様では、VLPと少なくとも一の抗原との結合は、ジスルフィド結合を含まない。さらに好ましくは、少なくとも一の第二の付着は、スルフヒドリル基を含むか、又は該基である。さらにまた本発明の非常に好ましい実施態様では、VLPと少なくとも一の抗原との結合は、硫黄-硫黄結合を含まない。さらに非常に好ましい実施態様では、前記少なくとも一の第一の付着部位は、システインのスルフヒドリル基でないか、又は該基を含まない。またさらに非常に好ましい実施態様では、前記少なくとも一の第一の付着部位は、スルフヒドリル基ではないか、又は該基を含まない。
【0057】
本発明の好適な一実施態様では、VLPは宿主内で組み換えて産生されるものであり、該VLPは宿主RNA、好ましくは宿主核酸を本質的に含まないか、該VLPは宿主DNA、好ましくは宿主核酸を本質的に含まない。好適な一実施態様では、RNAファージのVLPは宿主内で組み換えて産生されるものであり、該RNAファージのVLPは宿主RNA、好ましくは宿主核酸を本質的に含まない。
更なる好適な一実施態様では、組成物は、VLPに結合した、好ましくはVLP内にパッケージ化ないしは封入された少なくとも一のポリ陰イオン性高分子を含有する。更なる好適な実施態様では、ポリ陰イオン性高分子はポリグルタミン酸及び/又はポリアスパラギン酸である。好適な一実施態様では、VLPはRNAファージのものである。宿主RNA、好ましくは宿主核酸の量を少なくするないしは排除することにより、IL-15に特異的な強力な抗体応答を維持しながら、望ましくないT細胞応答、例えば炎症性T細胞応答や障害性T細胞応答、及び他の望ましくない発熱などの副作用が最小限化ないしは低減される。
【0058】
本質的に宿主RNA、好ましくは宿主の核酸を欠く:本明細書中で用いられる「本質的に宿主RNA(又はDNA)、好ましくは宿主の核酸を欠く」なる用語は、VLPに含有される宿主RNA(又はDNA)、好ましくは宿主の核酸の量を意味し、その量は典型的に好ましくは、VLPmg当たり30μgより少ない、好ましくは20μgより少ない、より好ましくは10μgより少ない、さらにより好ましくは8μgより少ない、さらにより好ましくは6μgより少ない、さらにより好ましくは4μgより少ない、最も好ましくは2μgより少ない。上記の範囲内で用いられる宿主は、VLPが組み換えて産生される宿主を意味する。RNA(又はDNA)、好ましくは核酸の量を測定する従来の方法は当業者に周知である。本発明によって、RNA、好ましくは核酸の量を測定する典型的で好適な方法は、同じ指定代理人により2005年10月5日に出願したPCT/EP2005/055009の実施例17に記載される。典型的に好ましくは、Qβ以外のVLPを含んでなる本発明の組成物についてRNA(又はDNA)、好ましくは核酸の量を測定するためには、同一、同種又は類似の条件を用いる。最終的に必要とされる条件の変更は当業者の知識の範囲内である。
【0059】
本明細書中で用いる「ポリ陰イオン性高分子」なる用語は、陰性荷電の反復基を含有する相対的に高分子量の分子を指し、その構造は、実際ないしは概念的には、相対的に低分子量の分子に由来するユニットの複合的な反復物を本質的に含有する。
一態様では、本発明は、本発明の組成物を含有するワクチンを提供する。好適な一実施態様では、ワクチン組成物内のVLPに結合した本発明のIL-15は、動物、好ましくは哺乳動物ないしはヒト起源のものでよい。好適な実施態様では、本発明のIL-15はヒト、ウシ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ブタ又はウマ起源である。
好適な一実施態様では、ワクチン組成物はさらに少なくとも一のアジュバントを含有する。少なくとも一のアジュバントの投与は、本発明の組成物の投与の前、あるいはそれと同時、あるいはその後であってもよい。本明細書中で用いられる「アジュバント」なる用語は、本発明のワクチン及び薬剤組成物のそれぞれと組み合わせると、より亢進した免疫応答を供給しうる、宿主内の貯蔵所となる物質ないしは免疫応答の非特異的刺激因子を意味する。
【0060】
他の好ましい実施態様では、本発明のワクチン組成物はアジュバントを欠く。本発明の有利な特性は、アジュバントを含まない場合でさえ、組成物の免疫原性が高いことである。さらにアジュバントを含んでいないので、自己抗原に対するワクチン接種上の安全上の問題を呈する所望されない炎症性T細胞反応の発生が最小となる。よって、本発明のワクチンの患者への投与は、好ましくはワクチンの投与前、投与と同時、又は投与後に同じ患者に少なくとも一のアジュバントを投与することなく、なされるであろう。
さらに、本発明は、本発明のワクチンが動物又はヒトに投与されることを含む免疫化方法を開示する。動物は、好ましくはネコ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウシ、イヌ、ラット、マウスなどの哺乳動物、特にヒトである。ワクチンは、当分野で公知の様々な方法によって動物又はヒトに投与されてもよいが、通常、注射、注入、吸入、経口投与又は他の適切な理学的方法によって投与されうる。コンジュゲートは、選択的に、筋肉内、静脈内、粘膜経由、経皮、鼻腔内、腹膜内又は皮下投与されてもよい。投与のためのコンジュゲート成分は、滅菌水(例えば、生理食塩液)又は非水溶液及び懸濁液などである。非水溶性溶媒の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、及び注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルなどがある。担体又は密封包帯を、皮膚透過性を増やして、抗原吸収を上げるために用いてもよい。
【0061】
投与される個体に投与が合っていれば、本発明のワクチンは「製薬的に受容可能」であるといえる。さらに、本発明のワクチンは、「治療的に有効な量」(すなわち、所望の生理学的効果を示す量)で投与されうる。免疫応答の性質又は種類は本発明で開示される因子に限定するものではない。以下のメカニズムの説明によって本発明が限定されるものではなく、本発明のワクチンは、IL-15に結合する抗体であり、その濃度を抑え、及び/又は生理学的又は病理学的な働きを阻害する抗体を誘導しうる。
他の態様では、本発明は、本発明で述べられる組成物と受容可能な製薬的担体を含有する薬剤組成物を提供する。本発明のワクチンが個体に投与される場合、コンジュゲートの有効性を改善するために望ましい他の物質、アジュバント、バッファー又は塩類を含有する形態でありうる。薬剤組成物の調整における使用に好適な材料の例は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES (Osol, A, ed., Mack Publishing Co., (1990))を含む多くの情報源に示される。
【0062】
本発明は、本発明の組成物の産生方法であって、(a) 少なくとも一の第一付着部位を有するVLPを供給し;(b) 少なくとも一の第二付着部位を有する本発明のIL-15を供給し;そして(c) 該VLPと本発明の該IL-15を組み合わせて、該第一付着部位と該第二付着部位を介して本発明の該IL-15と該VLPが結合している、組成物を産生する工程を含む産生方法を教示する。
更なる好適な実施態様では、少なくとも一の第一付着部位を有するVLPを提供する工程は、(a) 該ウイルス様粒子を該RNAバクテリオファージのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片に分解して;(b) 該コートタンパク質、その変異体ないしはその断片を精製して;(c) 該精製された該RNAバクテリオファージのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片をウイルス様粒子に再集合体化させる工程をさらに含むものであり、このときの該ウイルス様粒子は宿主RNA、好ましくは宿主核酸を本質的に欠いているものである。より更なる好適な実施態様では、前記の精製したコートタンパク質の再集合体化は、少なくとも一のポリ陰イオン性高分子の存在下にてなされる。
【0063】
本発明は、IL-15が動物又はヒトの重要な病理学的機能を発現する疾患ないし症状の治療及び/又は寛解の方法であって、該疾患ないし症状を患っている動物ないしヒトに本発明の創意に富んだ組成物が投与されることを含む方法を提供する。好適な実施態様では、IL-15が動物又はヒトの重要な病理学的機能を発現する前記の疾患ないし症状は、アテローム性動脈硬化、喘息、移植拒絶反応及び炎症性及び/又は慢性自己免疫性の疾患、例えば限定するものではないが、関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年性突発性関節炎、乾癬からなる群から選択されるものである。あるいは、本発明は、動物、ないし好ましくはヒトのアテローム性動脈硬化、喘息、移植拒絶反応及び炎症性及び/又は慢性自己免疫性の疾患からなる群から選択される疾患の治療のための医薬の製造のための本発明の組成物の使用を提供する。
ある態様では、本発明は、少なくとも一のIL-15アンタゴニストが動物ないしヒトに投与されることを含む、動物ないしヒトの疾患の治療方法であって、該疾患がアテローム性動脈硬化及び喘息からなる群から選択されるものである、治療方法を提供する。あるいは、本発明は、アテローム性動脈硬化及び喘息からなる群から選択される疾患の治療のための医薬の製造のための、少なくとも一のIL-15アンタゴニストの使用を提供する。
【0064】
「IL-15アンタゴニスト」は、様々な手段によって、例えば限定するものではないが、(i) 血中のIL-15濃度を減少する、(ii) Il-15のIL-15レセプター複合体への結合を阻害する、好ましくはIL-15のIL-15レセプター複合体のαサブユニットへの結合を阻害する、又は(iii) IL-15のIL-15レセプター複合体のγサブユニット又はβサブユニットの何れかを介する細胞へのシグナル伝達を阻害する、これによってIL-15の生物学的な活性をアンタゴナイズすることによって、IL-15の機能を阻害する。典型的及び好ましくは、IL-15レセプター複合体、好ましくはαサブユニットへのIL-15の結合は、例えばJ. Biol Chem. 2004 Jun 4;279(23): 24313-22に記載のようなインビトロ結合アッセイによって確認することができる。典型的及び好ましくは、IL-15の機能、典型的及び好ましくはT細胞増殖の刺激のためのその機能は、例えば欧州特許0772624の実施例2に記載のようなインビトロアッセイで確認することができる。
好適な実施態様では、IL-15アンタゴニストは、IL-15に特異的に結合する抗体である。IL-15への抗体の結合により、形成された抗原-抗体複合体がクリアランスされ、これにより血中のIL-15濃度が減少しうる。さらに、IL-15への抗体の結合は、IL-15のそのレセプターへの結合を阻害することで、IL-15がそのレセプターを介したその活性を発現するのを防ぎうる。加えて、IL-15への抗体の結合はIL-15のそのレセプターへの結合を防がない場合でも、抗体の存在によりIL-15レセプター複合体のγ又はβサブユニットに媒介されるシグナル伝達を阻害しうる。
【0065】
IL-15抗体は、ポリクローナルでもモノクローナルでもよく、異なる動物種、例えばマウス、ラット、ウサギ又はヒトの免疫化によって生成することができる。モノクローナル抗体は、使用する技術に従って、マウス、キメラ、CDR-移植、ヒト化、ヒト又は合成された抗体でもよい。したがって、「モノクローナル抗体」なる用語は、均質な抗体集団を有する抗体組成物を意味する。作成される方法又は抗体の供給源によって限定されるものではない。ある好適な実施態様では、前記のIL-15アンタゴニストは、前記抗体の機能的な断片を含むか、そのものである。IL-15に特異的に結合するモノクローナル抗体は当分野で有用である。
好適な実施態様では、前記のIL-15アンタゴニストは、10−1以上、好ましくは10−1以上、より好ましくは10−1以上の結合親和性(Ka)を有するモノクローナル抗体である。
【0066】
ある好適な実施態様では、前記IL-15アンタゴニストは、典型的に好ましくは、国際公開公報03/017935の実施例8に記載のように実施される増殖阻害アッセイによって測定して、100nM未満、好ましくは10nM未満のIC50値でIL-15誘導性T細胞増殖を阻害するモノクローナル抗体である。
好適な実施態様では、前記IL-15アンタゴニストは、J Clin Invest 2003, 112, 1571, Arthritis & Rheumatism. 2005, 52, 2686及び国際公開公報03/017935に記載のように、モノクローナル抗体HuMax-IL-15(146B7、AMG714とも称される)ないしその断片である。
好適な実施態様では、前記IL-15アンタゴニストは、(i) ATCC受入れ番号M110;(ii) ATCC受入れ番号M111;(iii) ATCC受入れ番号M112((i)−(iii)は国際公開公報9626274を参照してもよい);(iv) 146H5、((iv)は国際公開公報03/017935を参照してもよい)、からなる群から選択されるハイブリドーマから得たモノクローナル抗体である。
【0067】
ある好適な実施態様では、前期IL-15アンタゴニストはIL-15に特異的に結合する抗体であり、該抗体が本発明の創意に富んだ組成物に反応して産生されたものである。好ましくは、前記抗体は、好ましくは本発明の創意に富んだ免疫化方法に従って、本発明のワクチンないしは本発明の組成物を摂取した動物ないしヒトの体内で産生される。ある好適な実施態様では、抗体は、本発明の創意に富んだ組成物でマウスを免疫化することによって産生されるモノクローナル抗体である。好ましくは、そのように産生される抗体は、現在のところ有用な技術を用いたヒトの使用を最適化するためにさらに修飾又は操作されるであろう。
ある好適な実施態様では、前記のIL-15アンタゴニストは、IL-15可溶性レセプター又はその断片を含むか、そのものである。ある好適な実施態様では、前記IL-15アンタゴニストは、IL-15可溶性レセプターαサブユニット又はその断片を含むか、そのものである。ある好適な実施態様では、前記IL-15アンタゴニストは、IL-15レセプターαサブユニットの細胞外ドメイン又はその断片を含むか、そのものである。更なるある好適な実施態様では、前記IL-15アンタゴニストは、配列番号41のアミノ酸配列、又は配列番号41に少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、より好ましくは97%の相同性を有するアミノ酸配列を含むか、それからなる。
【0068】
ある好適な実施態様では、前記IL-15アンタゴニストはIL-15変異タンパク質を含むか、そのものである。更なるある好適な実施態様では、前記IL-15変異タンパク質は依然としてIL-15レセプターαサブユニットに結合することができ、IL-15のβ又はγサブユニットの何れかを介する細胞へのシグナル伝達を阻害する。ある好適な実施態様では、前記IL-15変異タンパク質は、配列番号23のアミノ酸配列を含むか、これからなり、配列番号23のAsp8、Gln101及びGln108の少なくとも1つの位置、好ましくは2つ、より好ましくは3つすべての位置が変異されている、好ましくは非保存的な置換によって好ましくは置換されているものである。ある好適な実施態様では、前記IL-15変異タンパク質は、配列番号23のアミノ酸配列を含むか、これからなり、Gln101とGln108の少なくとも一、又は両方が欠損しているか、好ましくは置換されているものである。更なるある好適な実施態様では、前記IL-15変異タンパク質は配列番号42のアミノ酸配列を含むか、これからなる。
【0069】
ある好適な実施態様では、前記IL-15変異タンパク質は、配列番号23のアミノ酸配列を含むか、これからなり、Asp8とGln108の少なくとも一、又は好ましくはこれら両方が欠損しているか、好ましくは異なる天然に生じるアミノ酸残基、さらに好ましくはセリン又はシステインに好ましくは置換されているものである。ある選択的な好適な実施態様では、Gln108はAspに置換される。ある選択的な好適な実施態様では、Asp8はArg又はLysに置換される。
ある好適な実施態様では、前記IL-15変異タンパク質は、配列番号23に少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、又は最も好ましくは少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列を含むか、これからなるものであり、配列番号23のAsp8、Gln101及びGln108に対応する少なくとも1つの位置、好ましくは2つ、より好ましくは3つすべての位置が変異されている、好ましくは非保存的な置換によって好ましくは置換されているものである。ある好適な実施態様では、前記IL-15変異タンパク質は、配列番号42に少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、又は最も好ましくは少なくとも95%の相同性であるアミノ酸配列を含むか、これからなるものであり、配列番号42の101と108に対応する位置がAspのままであるものである。
【実施例】
【0070】
この実施例内で用いるQβ VLP、AP205 VLPなどは、国際公開公報02/056905、国際公開公報04/007538に記載のように大腸菌から組み換えて発現させた後に精製して得たVLPを指す。
【0071】
実施例1
pM-IL-15-FL-CGの構築
プラスミドpModEC1のBamHI部位からPmeI部位の配列(国際公開公報03/040164)を、元の配列とアニールしたオリゴB-FL-L-P R (配列番号34)とB-FL-C-P F (配列番号35)に置換することによって、catatggatc cgctagccct cgagga ctac aaggatgacg acgacaaggg tggttgcggt taataagttt aaacgcggcc gc (配列番号43)に変えた。結果として生じたコンストラクトは、マルチクローニングサイト内にNde I、BamH I、NheI、XhoI、PmeI及びNotIの制限酵素部位を有するpMod-FL-CGとした。
マウスIL-15を、プライマー:IL-15-F (配列番号36)とIL-15-Xho-R (配列番号37)を用いたPCRによって活性化樹状細胞のcDNAライブラリから増幅した。IL-15-Fは内部にNdeI部位を有し、IL-15-XhoIは内部にXhoI部位を有した。PCR産物をNdeIとXhoIにて消化し、同じ酵素で消化したpMod-FL-CG内にライゲーションした。結果として生じたプラスミドは、マウスIL-15、フラッグタグ及びC末端にシステインを含有するリンカーを含んでなる融合タンパク質をコードするpM-IL-15-FC-CGと称した(配列番号30)。
【0072】
実施例2
pM-IL-15-FL-CGの発現
コンピテント大腸菌BL21(DE3)細胞をプラスミドpM-IL-15-FL-CGにて形質転換した。アンピシリン(Amp)含有アガープレートからの単一コロニーを液体培地(150mM MOPS, pH7.0、100μg/mlのAmpを含むSB)中に播き、30℃で220rpmで振とうしながら一晩インキュベートした。ついで、一晩の培養物を同じ培地で1:50に希釈し、30℃でOD600=2.8まで生育した。1mM IPTGにて発現を誘導した。4時間の培養の後に6000rpmで10分間遠心して細胞を回収した。細胞ペレットを0.8mg/mlのライソザイムを含む溶解バッファ(10mM NaHPO、30mM NaCl、10mM EDTA及び0.25% Tween-20)に懸濁して、超音波処理して、ベンゾナーゼにて処理した。48000RCFで20分間遠心分離した後、上清を12% PAGEゲルにて分離し、14.9KDの予測分子量でランしたIL-15-FL-CGの発現を明瞭に示すウェスタンブロットにて抗マウスIL-15(R&D system)によりマウスIL-15の発現を確認した。
【0073】
実施例3
IL-15-FL-CGの精製
初めに、IL-15-FL-CGを抗FLAG M2カラムによって精製した。簡単にいうと、IL-15-FL-CG溶解物を抗FLAG M2カラムに流した。結合しなかった混合物をTBS(50mM Tris HCl、150mM NaCl, pH7.4)にて洗い流した。次いで、IL-15-FL-CGをFLAGペプチド(100μg/ml)を用いたカラムから溶出させた。溶出物をQ Fast Flowカラムによりさらに精製した。
【0074】
実施例4
IL-15タンパク質、IL-15変異タンパク質及びIL-15断片の産生
実質的に実施例1に記載したのと同じプロトコールを用いて、ヒトIL-15(配列番号23)をPCRによって活性化樹状細胞のcDNAライブラリから増幅し、PCR産物をpMod-FL-CG内にライゲーションした。結果として生じたプラスミドは、ヒトIL-15、フラッグタグ及びC末端にシステインを含有するリンカーを含んでなる融合タンパク質をコードするpH-IL-15-FC-CGと称した。
実質的に実施例1に記載したのと同じプロトコールを用いて、ヒトIL-15変異タンパク質を発現するプラスミドを構築した(配列番号31、32又は33)。実質的に実施例2及び3に記載したのと同じプロトコールを適応して、ヒトIL-15タンパク質、ヒトIL-15変異タンパク質を発現させて、精製した。
標準的なプロトコールに従って、様々なIL-15断片(配列番号34−40)を化学的に合成した。さらに、各々のIL-15断片配列のN末端にシステインを融合した。
【0075】
実施例5 結果として再集合体化したQβ VLPが生じる、異なるポリ陰イオン性高分子の存在下における分解/再集合体化による本発明のQβ VLPの調整
(A) Qβ VLPの分解
大腸菌溶解物から精製した45mgのQβ VLP(2.5mg/ml、Bradford分析によって測定)を含むPBS(20mM リン酸塩、150mM NaCl、pH7.5)を10mM DTTにて還元して、撹拌しながら室温に15分間置いた。次いで、塩化マグネシウムを0.7Mの終濃度まで添加し、撹拌しながら室温で15分間インキュベートを続け、カプセル化された宿主細胞RNAを沈殿させた。溶液から沈殿されたRNAを取り除くために、溶液を4000rpm、4℃で10分間遠心した(Eppendorf 5810 R、以下のすべての工程で固定角ローターA-4-62を用いた)。放出された二量体Qβコートタンパク質を含有する上清をクロマトグラフィの精製工程に用いた。
【0076】
(B) 陽イオン交換クロマトグラフィ及びサイズ排除クロマトグラフィによるQβコートタンパク質の精製
二量体コートタンパク質、宿主細胞タンパク質及び残渣の宿主細胞RNAを含有する分解反応の上清を水で1:15に希釈し、10mS/cm以下の伝導率を調整し、SP-セファロースFFカラム(xk16/20, 6 ml, Amersham Bioscience)に流した。カラムは、20mM リン酸ナトリウムバッファ pH7にて予め平衡化した。結合したコートタンパク質は、20mM リン酸ナトリウム/500mM 塩化ナトリウムの勾配法により溶出させ、タンパク質は約25mlの分画容量に回収した。室温で5ml/分の流速のクロマトグラフィを行い、260nm及び280nmの吸光度をモニターした。
第二工程では、単離されたQβコートタンパク質(陽イオン交換カラムから溶出された分画)をセファクリルS-100HRカラム(xk26/60, 320 ml, Amersham Bioscience)に流し(2列)、20mm リン酸ナトリウム/250mm 塩化ナトリウム、pH6.5にて平衡化した。室温で2.5ml/分の流速のクロマトグラフィを行い、260nm及び280nmの吸光度をモニターした。5mlの分画を回収した。
【0077】
(C1) 透析によるQβ VLPの再集合体化
精製したQβコートタンパク質(20mM リン酸ナトリウム pH6.5中に2.2mg/ml)、1のポリ陰イオン性高分子(HO中に2mg/ml)、尿素(HO中に7.2M)及びDTT(HO中に0.5M)を、それぞれ終濃度1.4mg/mlのコートタンパク質、0.14mg/mlのポリ陰イオン性高分子、1M 尿素及び2.5mM DTTに混合した。混合物(各々1ml)を、3.5kDaのカットオフのメンブランを用いて20mM トリスHCl、150mM NaCl pH8にて5℃で2日間透析した。ポリ陰イオン性高分子は以下の通りであった:ポリガラクツロン酸(25000-50000, Fluka)、硫酸デキストラン(MW 5000及び10000, Sigma)、ポリ-L-アスパラギン酸(MW 11000及び33400, Sigma)、ポリ-L-グルタミン酸(MW 3000、13600及び84600, Sigma)、及びパン酵母と小麦麦芽由来のtRNA。
(C2) 透析濾過(ダイアフィルトレーション)によるQβ VLPの再集合体化
33mlの精製したQβコートタンパク質(20mM リン酸ナトリウム pH6.5、250mM NaCl中に1.5mg/ml)を、HO及び尿素(HO中に7.2M)、NaCl(HO中に5M)及びポリ-L-グルタミン酸(HO中に2mg/ml、MW: 84600)と混合した。混合物の容量は50mlであり、成分の終濃度は1mg/mlのコートタンパク質、300mM NaCl、1.0M 尿素及び0.2mg/ml ポリ-L-グルタミン酸であった。次いで、混合物を室温で、500mlの20mM トリスHCl pH8、50mM NaClにて透析濾過した。この透析濾過は、10ml/分の交差流速と2.5ml/分の透過流速で、Pellicon XL薄膜カートリッジ(Biomax 5K, Millipore)を用いた正接流量濾過装置(tangential flow filtration apparatus)にて行った。
【0078】
実施例6 AP205 VLPのインビトロ集合体化(アセンブリ)
(A) AP205コートタンパク質の精製
分解:20mlのAP205 VLP溶液(PBS中に1.6mg/ml、大腸菌抽出物から精製)を、0.2mlの0.5M DTTと混合し、室温で30分間インキュベートした。5mlの5M NaClを添加して、次いで混合物を60℃で15分間インキュベートし、DTT還元コートタンパク質を沈殿させた。混濁した混合物を遠心分離し(ローターSorvall SS34、10000g、10分、20℃)、上清を廃棄し、ペレットを、20mlの1M 尿素/20mM クエン酸ナトリウム pH3.2に播種した。室温で30分間撹拌した後、1.5M NaHPOを加えることによって、pH6.5にばらつきを調整し、その後二量体コートタンパク質を含む上清を得るために遠心分離した(ローターSorvall SS34、10000g、10分、20℃)。
陽イオン交換クロマトグラフィ:上清(上記参照)を20mlの水で希釈して、約5mS/cmの伝導率を調整した。結果として生じた溶液を、20mM リン酸ナトリウム pH6.5バッファにて予め平衡化した6mlのSPセファロースFF (Amersham Bioscience)のカラムに流した。流した後、カラムを48mlの20mM リン酸ナトリウム pH6.5のバッファにて洗浄し、その後、20倍のカラム容量の1M NaClへの比例勾配により結合したコートタンパク質を溶出した。メインピークの分画をプールし、SDS-PAGE及びUV分光法にて分析した。SDS-PAGEによると、単離されたコートタンパク質は本質的に他のタンパク質混入がなく純粋であった。UV分光法によると、タンパク質濃度は0.6mg/ml(総量12mg)であり、1A280単位はAP205コートタンパク質の1.01mg/mlを表す。さらに、A260(0.291)の値に対してA280(0.5999)の値は2であることから、調製物は本質的に核酸を欠いていることが示唆される。
【0079】
(B) AP205 VLPの集合体化
任意のポリ陰イオン性高分子のない条件下における集合体化:上記で溶出されたタンパク質分画を透析濾過し、20mM リン酸ナトリウム pH6.5にて1mg/mlのタンパク質濃度にまでTFFによって、濃縮した。その溶液の500μlを、50μlの5M NaCl溶液と混合し、室温で48時間インキュベートした。混合物中での再集合体化VLPの形成は、非還元SDS-PAGE及びサイズ排除HPLCにて示された。20mM リン酸ナトリウム、150mM NaCl pH7.2にて平衡化したTSKgel G5000 PWXLカラム(Tosoh Bioscience)をHPLC分析に用いた。
ポリグルタミン酸存在下における集合体化:375μlの精製したAP205コートタンパク質(20mM リン酸ナトリウム pH6.5中に1mg/ml)を、50μlのNaCl貯蔵溶液(HO中に5M)、50μlのポリグルタミン酸貯蔵溶液(HO中に2mg/ml、MW: 86400, Sigma)及び25μlのHOと混合した。混合物を室温にて48時間インキュベートした。混合物中における再集合体化VLPの形成は、非還元SDS-PAGE及びサイズ排除HPLCにて示された。混合物中のコートタンパク質がVLP内にほぼ完全に組み込まれたことから、任意のポリ陰イオン性高分子がない条件下で集合体化したAP205コートタンパク質より効率よく、多く集合体化されたことが示された。
【0080】
実施例7
IL-15-FL-CGのQβ VLPと集合化したQβ VLPへのカップリング
実施例3から得た精製したマウスIL-15-FL-CG(153μM)を、等量のTCEPを含むTBS pH7.4にて1時間還元した。還元したIL-15-FL-CG(83μM)を、SMPHで誘導体化した総量50μlの59μMのQβとともに室温で終夜インキュベートした。カップリング反応物を、抗FLAG抗体を用いたウェスタンブロットとSDS-PAGEによって分析した。タンパク質濃度をBradfordによって測定した。クーマシーブルー染色したSDS-PAGEの濃度測定の分析によってカップリング効率を推測した。
実質的に同じ実験条件を適応して、ヒトIL-15-FL-CG(実施例4で得たもの)を、実施例5で得た集合体化したQβ VLP、又は実施例6から得た集合体化したAP205 VLPにカップリングした。
【0081】
実施例8
ヒトIL-15変異タンパク質のQβ VLPと集合化したQβ VLPへのカップリング
実施例4から得た精製したヒトIL-15変異タンパク質(153μM)を、等モルのTCEPを含むTBS pH7.4にて1時間還元した。還元したIL-15変異タンパク質(83μM)を、SMPHで誘導体化した総量50μlの59μMのQβ VLP又は59μMの再集合体化したQβ VLPとともに室温で終夜インキュベートした。カップリング反応物を、抗FLAG抗体を用いたウェスタンブロットとSDS-PAGEによって分析した。タンパク質濃度をBradfordによって測定した。クーマシーブルー染色したSDS-PAGEの濃度測定の分析によってカップリング効率を推測した。
【0082】
実施例9
ヒトIL-15タンパク質のHBcAg1-185-Lysへのカップリング
HBcAg1-185-Lysの構築、その発現及び精製は実質的に国際公開公報03/040164の実施例2−5に記載されている。20mM Hepes、150mM NaCl pH7.2中の120μM HBcAg1-185-Lysキャプシドの溶液を、振とう器上において25℃で、DMSO中の原液から希釈した25倍モル濃度を超えるSMPH(Pierce)の溶液と30分間反応させた。この反応液について、その後、1Lの20mM Hepes、150mM NaCl、pH7.2に対する2時間の透析を4℃で2回行った。次いで、この透析したHBcAg1-185-Lys反応混合液を実施例4で得たヒトIL-15タンパク質と反応させた。カップリング反応物中において、ヒトIL-15タンパク質は誘導体化したHBcAg1-185-Lysキャプシドに対して2倍のモル過剰量とした。カップリング反応は振とう器上で25℃で4時間続けた。カップリング産物は、SDS-PAGEによって分析した。
【0083】
実施例10
免疫原性
実験において、マウスのAグループ(n=5)は、第0日目、第14日目及び第28日目に、アジュバントを含めないで、マウスIL-15-FL-CGとカップリングした50μgのQβ VLPにて皮下的に免疫化した。ネガティブコントロールとして、5匹のマウスにPBSのみを接種した。
実験において、マウスのBグループ(n=5)は、第0日目、第14日目及び第28日目に、アジュバントを含めないで、マウスIL-15-FL-CGとカップリングした25μgのQβ VLPにて皮下的に免疫化した。ネガティブコントロールとして、5匹のマウスにQβ VLPのみを接種した。
表1は、ELISAに示されるように、Qβ-IL-15-FL-CGによる免疫化により、すべてのマウスにおいてIL-15特異的IgG抗体の力価が高くなったことを示す。これは、アジュバンドの添加なしで、ワクチンがIL-15に対する免疫学的な耐性を克服したことを示す。ELISA力価は450nmの最大半減光学密度(OD50%)となる血清の希釈物として定義した。ELISAプレートは組み換えIL-15でコートした。5匹の動物の平均は標準偏差とともに求めた。
同じ実験条件を適応して、再集合体化したQβ VLPにカップリングしたマウスIL-15-FL-CGにてマウスを免疫化し、ELISAにより抗体力価を測定して、Qβ VLPにカップリングしたIL-15-FL-CGとネガティブコントロールによって誘導された抗体力価と比較した。
【0084】
表1A(実験A)

表1B(実験B)

【0085】
実施例11
関節リウマチマウスモデルにおけるQβ VLP-IL-15ワクチンの有効性
インビボの関節炎症状を低減するQβ VLP-IL-15ワクチンの能力を、関節リウマチ(RA)のマウスモデルにおいて、評価した。このモデルにおいて、RAは4つの異なるモノクローナル抗体の混合(関節原性モノクローナル抗体混合物(Arthrogenic Monoclonal Antibody Cocktail)、MD Biosciences)を静脈内注射することによって、誘導した24時間後に、LPSを腹腔内投与をした(K. Terato, 等, J. Immunology, 148: 2102-2108, 1992)。このモデルでは、炎症は急速に進行して、強直及び永続的な関節破壊が2週間続いた。
【0086】
A実験では、マウスグループは、第−70日目、第−56日目及び第−42日目に、50μgのQβ VLP-IL-15で免疫化し、PBSのみを接種したマウスのグループはネガティブコントロールとした。B実験では、マウスグループは、第−42日目、第−28日目及び第−14日目に、25μgのQβ VLP-IL-15で免疫化し、Qβのみで免疫化したマウスのグループはネガティブコントロールとした。3回の免疫処置の後、第0日目に2mgのモノクローナル抗体混合物(Arthrogenic Monoclonal Antibody Cocktail、MD Biosciences)を静脈内投与することによって、マウスにRAを誘導し、24時間後に200μlのLPSを投与した。炎症プロセスは14〜15日間にわたってモニターし、各肢の臨床スコアを求めた。関節炎の臨床スコアは15日間以上測定した。以下の定義にしたがって、各肢に0から3の臨床スコアをつけた:0標準、1指/足の軽度の腫脹及び/又は紅斑、2全足/関節にわたる腫脹及び紅斑、3重度の腫脹、足/関節の変形、強直を有する。1グループにつき5匹のマウスの平均を標準偏差とともに求めた。
図1Aは実験Aの結果を示す。Qβ VLP-IL-15をワクチン接種したマウスはおよそ0.25の平均臨床スコアを発症した。対照的に、PBSを注射したマウスは、同期間にわたって0.97の平均臨床スコアを発症した。図1Bは実験Bの結果を示す。
Qβ VLP-IL-15をワクチン接種したマウスはおよそ0.18の平均臨床スコアを発症したのに対して、コントロールマウスは0.51の平均値であった。
【0087】
実施例12
アテローム性動脈硬化のマウスモデルにおけるQβ VLP-IL-15ワクチンの有効性
7〜8週齢の雄Apoe−/−マウス(The Jackson Laboratory, Bar Harbor ME)に、50μgのQβ-IL-15ワクチン(n=6)(実施例7から得たもの)又は50μgのQβ(n=6)のいずれかを第0、14、28、49、63及び113日目に皮下注射した。始めに、マウスに通常の固形飼料食餌を与え、第21日目に西洋型食餌(20%の脂肪、0.15%のコレステロール、Provimi Kliba AG)に置き換えた。実験期間中、一定の間隔でマウスから血液を採取し、血清中のIL-15に対する抗体応答を測定した。第159日目に屠殺し、基本的には過去に記載のように(Tangirala R.K. 等 (1995) J. Lipd. Res. 36: 2320-2328)、大動脈を単離して調整した。心臓穿刺によって、動物から血液を採取し、コールドPBSを灌流した。次いで、大動脈を露出させ、インサイツで除去した外膜と同じだけ(as much of the adventitia removed in situ)、最後に大動脈を心臓から取り除いた。大動脈は、コールドPBSで満たしたガラスシャーレ上で残留する外膜を洗い流し、大動脈弓を左鎖骨下動脈の5mm下を切片化した。大動脈を縦に切り、黒色のワックス表面上にピンで留め、4%ホルマリンで一晩かけて固定した。次いでオイルレッドOにて終夜をかけて染色した。プラークはデジタル写真上で画像処理ソフトウェア(Motic Image Plus 2.0)により定量化した。プラーク負荷(load)は、腸骨の分岐点までに得られる大動脈の総プラークの表面の合計を、腸骨の分岐点までに測定される大動脈の総表面で除して、パーセンテージで表した。Qβ-IL-15とQβグループ間のプラーク負荷の中央値又は平均の違いを分析した。
【0088】
ELISAプレート上にコートした組み換えIL-15を用いた、典型的なELISAにおいて、抗体応答を測定した。特異的な抗体の結合を、ヤギ抗マウスHRPコンジュゲートを用いて検出した。第0、14、28、56及び102日目のIL-15に対する力価を、アッセイにおいて、最大半量の結合が得られる血清希釈物として算出した。
Ludewig B. 等 (2000) PNAS 97:12752-12757に記載のように、各動物のアテローム性動脈硬化の範囲は大動脈起点(aortic origin)による横断切片の組織学的分析によって、さらに評価した。すべての3の弁尖端から大動脈起点による凍結連続横断切片を採取した。オイルレッドOで染色して、病変サイズを定量化するために、逆にヘマトキシリンで染色した。
抗体応答の測定値の結果を表2に示す。免疫前(d0)血清において、検出可能な力価がほとんどなかったので、QβにカップリングしたマウスIL-15に対する免疫化により、IL-15に対する強力で特異的な抗体応答が誘発されたことが明確に示された。
さらに、IL-15に特異的な抗体応答の誘導により、Qβグループと比較して、Qβ-IL-15グループの平均(47%)及び中間値(46%)のプラーク負荷が減少した。これは、IL-15がアテローム性動脈硬化の発症に伴っており、Qβ-IL-15ワクチンによる抗IL-15抗体の誘導はアテローム性動脈硬化を有利に調整することを示唆している。
【0089】
表2 Qβ-IL-15で免疫化したApoe−/−マウスにおける相乗平均の抗IL-15抗体力価

【0090】
実施例13
マウスIL-15断片のQβ VLPへのカップリング
Qβウイルス様粒子(2mg/l)を2.8mM SMPH(Pierce, Perbio Science)によって、25℃で60分間かけて誘導体化して、次いでPBSにて透析した。IL-1561-73(250μM)および誘導体化したQβ VLP(100μM)を、PBSバッファ中で15℃で、1時間インキュベートした。カップリング産物をSDS-PAGEによって、分析した。我々は、1のQβ単量体に対する1のIL-1561-73分子と1のQβ単量体に対する2のIL-1561-73分子のカップリング産物を同定した。また、IL-1542-55を同様の方法でQβにカップリングした。
【0091】
実施例14
実験的喘息の動物モデルにおけるワクチンの有効性
インビボのQβ-IL-15によるワクチン接種の効果を、オバルブミン(OVA)ベースの喘息のマウスモデルにおいて、評価した。この実験により、Qβ-IL-15によるワクチン接種により生成された抗IL-15抗体の内在性IL-15のインビボ作用を下方制御する能力を試験した。BALB/cマウスの1グループにつき6匹、3つのグループで分析した。マウスは、第7日目、第21日目及び第35日目に、50μgのQβ-IL-15(グループC、実施例7から得たもの)又はコントロールとしてのQβ VLPのみ(グループA及びB)のいずれかにてワクチン接種した。2回目のワクチン接種の後に、Qβ又はIL-15のいずれかに対して高いIgG力価が得られた。第0日目に、グループB及びCのマウスを、腹膜内に2mgのAlに吸着された50μgのOVA(グレードV;Sigma-Aldrich)にて感作した。肺アレルギー性炎症を誘導するために、これらのマウスは、第42日目〜第45日目まで毎日、OVAエアゾールの吸入(2.5%のPBS溶液、Pari TurboBOY;Pariによって、30分間噴霧)により抗体負荷した。ネガティブコントロールとして、グループAのマウスは、第0日目にOVAとAlで処置せず、その後OVAエアゾールによって、抗体負荷も行わなかった。第46日目に、マウスは死亡し、気管支肺胞洗浄(BAL)を行って、BAL内に浸透している細胞の数を数えて、気道過敏症(AHR)を測定した。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1A】Qβ VLP-IL-15にて免疫化したマウスの関節炎の平均臨床スコアを示す。図1Aは50μgのQβ VLP-IL-15で免疫化したマウスとPBSのみを投与したマウスの関節炎の平均臨床スコアを示す。バーは各免疫化グループの平均スコアを表す。
【図1B】Qβ VLP-IL-15にて免疫化したマウスの関節炎の平均臨床スコアを示す。図1Bは25μgのQβ VLP-IL-15で免疫化したマウスとQβのみで免疫化したマウスの関節炎の平均臨床スコアを示す。バーは各免疫化グループの平均スコアを表す。
【図2】Apoe−/−マウスにおけるアテローム性動脈硬化プラーク負荷の数量化及び統計学的分析を示す。バーは、Qβ-IL-15(黒色バー)又はQβ(白色バー)で免疫化したApoe−/−マウスの大動脈における平均アテローム性動脈硬化プラーク負荷を割合で示す。誤差バーは平均の標準偏差を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 少なくとも一の第一付着部位を有するウイルス様粒子(VLP);と
(b) 少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の抗原;
を含んでなる組成物であって、該少なくとも一の抗原がIL-15タンパク質、IL-15変異タンパク質ないしはIL-15断片であり、(a)と(b)が該少なくとも一の第一付着部位と該少なくとも一の第二付着部位を介して結合している、組成物。
【請求項2】
前記IL-15タンパク質が、
(a) 配列番号22;
(b) 配列番号23;
(c) 配列番号24;
(d) 配列番号25;及び
(e) 配列番号22−25の何れかに少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、又は最も好ましくは少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列、
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記IL-15変異タンパク質が、
(a) 配列番号23、この位置46がEでない;
(b) 配列番号23、この位置50がIでない;
(c) 配列番号23、この位置46がEでなく、位置50がIでない;
(d) 配列番号31;
(e) 配列番号32;
(f) 配列番号33;及び
(g) 配列番号23に少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、又は最も好ましくは少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列であり、このとき、配列番号23の位置46に一致する位置がEでない、又は配列番号23の位置50に一致する位置がIでない、又は配列番号23の位置46に一致する位置がEでなくかつ配列番号23の位置50に一致する位置がIでないアミノ酸配列、
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記IL-15断片が、
(a) 配列番号34;
(b) 配列番号35;
(c) 配列番号36;
(d) 配列番号37;
(e) 配列番号38;
(f) 配列番号39;及び
(g) 配列番号34−39の何れかに少なくとも65%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、又は最も好ましくは少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列、
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記VLPがRNAファージの組み換えコートタンパク質、その変異タンパク質ないしはその断片を含有してなる、請求項1ないし4の何れか一に記載の組成物。
【請求項6】
前記RNAファージがRNAファージ Qβ、fr、GA又はAP205である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記第一付着部位が、少なくとも一の共有結合を介して前記第二付着部位に結合しており、好ましくは該共有結合が非ペプチド結合である、請求項1ないし6の何れか一に記載の組成物。
【請求項8】
前記第一付着部位が、アミノ基、好ましくはリジンのアミノ基を含有する、請求項1ないし7の何れか一に記載の組成物。
【請求項9】
前記第二付着部位がスルフヒドリル基、好ましくはシステインのスルフヒドリル基を含有する、請求項1ないし8の何れか一に記載の組成物。
【請求項10】
さらにリンカーを含有する、請求項1ないし9の何れか一に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1ないし10の何れか一に記載の組成物を含有してなるワクチン。
【請求項12】
前記ワクチンがさらに少なくとも一のアジュバントを含有する、請求項11に記載のワクチン。
【請求項13】
動物又はヒトに請求項11又は12に記載のワクチンが投与されることを含む、免疫化方法。
【請求項14】
(a) 請求項1ないし10の何れか一に記載の組成物又は請求項11ないし12の何れか一に記載のワクチン、と
(b) 受容可能な薬剤的担体
を含んでなる薬剤組成物。
【請求項15】
(a) 少なくとも一の第一付着部位を有するVLPを供給する、
(b) 少なくとも一の第二付着部位を有するIL-15タンパク質、IL-15変異タンパク質ないしはIL-15断片である、少なくとも一の抗原を供給する、
(c) 該VLPと該少なくとも一の抗原を結合させて、該少なくとも一の第一付着部位と該少なくとも一の第二付着部位を介して少なくとも一の抗原と該VLPが結合している、組成物を産生する
ことを含む、請求項1ないし10の何れか一に記載の組成物の産生方法。
【請求項16】
動物ないし好ましくはヒトの炎症性疾患及び/又は慢性自己免疫性疾患の治療のための医薬の製造方法のための、請求項1ないし10の何れか一に記載の組成物又は請求項11ないし12の何れか一に記載のワクチンの使用。
【請求項17】
前記炎症性疾患及び/又は慢性自己免疫性疾患が関節リウマチである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
アテローム性動脈硬化の治療のための医薬の製造のための、請求項1ないし10の何れか一に記載の組成物又は請求項11ないし12の何れか一に記載のワクチンの使用。
【請求項19】
喘息の治療のための医薬の製造のための、請求項1ないし10の何れか一に記載の組成物又は請求項11ないし12の何れか一に記載のワクチンの使用。
【請求項20】
アテローム性動脈硬化及び喘息からなる群から選択される疾患の治療のための医薬の製造のための、少なくとも一のIL-15アンタゴニストの使用。
【請求項21】
前記IL-15アンタゴニストがIL-15に特異的に結合するモノクローナル抗体である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記IL-15アンタゴニストがIL-15に特異的に結合する抗体であり、好ましくは該抗体が請求項1ないし10の何れか一に記載の組成物又は請求項11ないし12の何れか一に記載のワクチンに応答して産生されるものである、請求項20又は21に記載の使用。
【請求項23】
前記IL-15アンタゴニストがIL-15変異タンパク質である、請求項20に記載の使用。
【請求項24】
前記IL-15変異タンパク質が、配列番号23のAsp8、Gln101及びGln108の少なくとも1つの位置、好ましくは2つ、より好ましくは3つすべての位置が置換されている、配列番号23に記載のアミノ酸配列を含有してなる、請求項23に記載の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−523132(P2008−523132A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546033(P2007−546033)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056680
【国際公開番号】WO2006/063974
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(304042375)サイトス バイオテクノロジー アーゲー (26)
【Fターム(参考)】