説明

IL−1raの凝集を低下させる方法

IL−1raを少なくとも1つのアクセサリー分子とともにインキュベートすることを含む、凝集性IL−1raの凝集を低下させる方法が提供される。IL−1ra及び少なくとも1つのアクセサリー分子を含むキットも提供される。IL−1ra及び少なくとも1つのアクセサリー分子を含む医薬組成物も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、凝集性インターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)の凝集を低下させる方法に関する。本発明は、IL−1raの凝集を低下させることを含む薬剤調合物を改善する方法にも関する。本発明は、凝集が低下されているIL−1raを使用する疾病を治療する方法にも関する。最後に本発明は、凝集が低下されているIL−1raを含む組成物及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン−1アルファ(IL−1α)、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)及びインターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)は各々、特定の細胞タイプの表面上に見られる1型IL−1受容体(IL−1RI)に結合する。IL−1α及びIL−1βは、炎症反応及び免疫反応に関連する特定の細胞を含む多くの異なる標的細胞への生理学的効果を有する。対照的に、IL−1raはIL−1RIへ結合するが、似たような下流への生物学的反応を誘発しない。むしろ、IL−1raは、IL−1α及びIL−1βのIL−1RIへの結合を競合的に阻害する。IL−1raの大腸菌により生成される1つのバージョンであるアナキンラは関節リウマチの治療用に市販されている。
【発明の開示】
【0003】
要旨
ある実施態様において、凝集性インターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)の凝集を低下させる方法が提供される。ある実施態様において前記方法は、IL−1raを少なくとも1つのアクセサリー分子とインキュベートすることを含む。
【0004】
ある実施態様において、インターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)薬物処方を調製する方法が提供される。ある実施態様において前記方法は、前記凝集性IL−1raを少なくとも1つのアクセサリー分子とインキュベートすることを含む。ある実施態様において、凝集は低下する。
【0005】
ある実施態様において、患者を治療する方法が提供される。ある実施態様において、関節炎を有する患者を治療する方法が提供される。ある実施態様において、関節リウマチを有する患者を治療する方法が提供される。ある実施態様において、変形性関節症を有する患者を治療する方法が提供される。ある実施態様において、クローン病、潰瘍性大腸炎、糸状体腎炎、又は白血病のうちの少なくとも1つを有する患者を治療する方法が提供される。ある実施態様において、IL−1の副作用を有する患者を治療する方法が提供される。ある実施態様において、患者を治療する方法は、(i)凝集性インターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)の治療的有効量と(ii)少なくとも1つのアクセサリー分子とを含む組成物を前記患者へ投与することを含む。
【0006】
ある実施態様において、キットが提供される。ある実施態様においてキットは、凝集性インターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)及び少なくとも1つのアクセサリー分子を含む。
【0007】
ある実施態様において、医薬組成物が提供される。ある実施態様において医薬組成物は、凝集性インターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)及び少なくとも1つのアクセサリー分子を含む。
【0008】
ある実施態様において、少なくとも1つのアクセサリー分子は、凝集性IL−1raの凝集を低下させる濃度にある。ある実施態様において、少なくとも1つのアクセサリー分子は、凝集性IL−1raの凝集の速度を低下させる濃度にある。ある実施態様において、少なくとも1つのアクセサリー分子は、糖及び多荷電陰イオンから選択される。ある実施態様において、少なくとも1つのアクセサリー分子は、多荷電陰イオンである。ある実施態様において、少なくとも1つのアクセサリー分子は1ないし20mMのピロリン酸塩である。ある実施態様において、少なくとも1つのアクセサリー分子は多荷電陰イオンである。ある実施態様において、少なくとも1つのアクセサリー分子は1ないし20mMのピロリン酸塩である。ある実施態様において、少なくとも1つのアクセサリー分子は1ないし20mMのクエン酸塩である。ある実施態様において、少なくとも1つのアクセサリー分子は少なくとも1つの糖である。ある実施態様において、前記糖の少なくとも1つは、グリセロール、ソルビトール又はショ糖である。ある実施態様において、このような糖の少なくとも1つは1ないし3%の濃度にある。
【0009】
ある実施態様において、少なくとも1つのアクセサリー分子は、リジン反応性アクセサリー分子及びアルギニン反応性アクセサリー分子から選択される。ある実施態様において、少なくとも1つのアクセサリー分子は、6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)ヘキサン酸(NBD−X)、リン酸メチルアセチル(MAP)及びシトラコン酸無水物から選択される。
【0010】
典型的な実施態様の詳述。
【0011】
本明細書で使用される節の見出しは、組織化に関する目的のためのみであり、記載されている対象に制限を加えるものとして解釈されるべきではない。本出願において引用されている参考文献はすべて、いずれかの目的のために本明細書に参照によって明示的に組み込まれる。
【0012】
本出願において、単数形の使用は特段に記載されている場合を除き、複数形を含む。本出願において、「又は」の使用は、別に記載されている場合を除き、「及び/又は」を意味する。さらに、「包含する」という語の使用は、「含む」及び「包含された」などの他の形態と同様、制限を加えるものではない。また、「要素」又は「構成要素」などの語は、特段の記載がなければ、1を超えるサブユニットを含む、1つの単位及び要素及び構成要素を含む要素及び構成要素の両者を包含する。
【0013】
さまざまな実施態様において、標準的な技術が、組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養、形質転換及び形質移入に使用できる。さまざまな実施態様において、酵素反応及び精製技術が製造者の規格に従って又は本分野において一般に達成されている又は本明細書に記載されているように実施できる。さまざまな実施態様において、技術及び手段が、本分野で公知の従来の方法に従って、及び明細書を通じて引用され及び論議されているように、及び又は当業者に公知のさまざまな一般的な及びより特殊な参考文献において記載されているように、一般的に使用できる。例えば、Sambrookほか、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989))を参照してほしい。特定の定義が提供されない限り、本明細書に記載されている分析化学、合成有機化学並びに医薬品化学及び製薬化学の実験室的手段及び技術並びにこれらに関連して利用される多くの命名は、本分野で公知であり一般に使用されているものである。さまざまな実施態様において、標準的な技術が化学合成、化学分析、医薬調製、製剤、送達及び患者の治療のために使用できる。ある実施態様において、アミノ酸が別のアミノ酸と「置換」される場合、前記置換は例えば、前記アミノ酸をコードするポリヌクレオチドにおけるコドンを別のアミノ酸をコードするコドンへ変異させることによる組み換えにより実施できる。ある実施態様において、前記コドンを変異することは、本分野で公知のいずれかの方法によって実施できる。
【0014】
定義
本開示に利用されているように、以下の語は、特段の記載がなければ、以下の意味を有すると理解されるべきである。
【0015】
「単離されたポリヌクレオチド」という語は、ゲノムの、cDNAの、又は合成由来のポリヌクレオチド、又はこれらのいくつかの組み合わせを意味すべきである。前記合成由来のポリペプチドは、(1)天然に見い出されるポリヌクレオチドの少なくとも一部を伴っていない、又は(2)天然において結合していないポリヌクレオチドに結合している、又は(3)天然には生じていない。
【0016】
「機能可能に連結される」という語は、構成要素が意図されたように機能できる関係にある構成要素を指す。例えば、コード配列へ「機能可能に連結される」調節配列は、前記コード配列の発現が前記調節配列の機能と適合性のある条件下で達成されるような方法で連結される。
【0017】
「調節配列」という語は、ポリヌクレオチド配列が連結されているコード配列の発現及びプロセシングに影響を及ぼしうるポリヌクレオチド配列を指す。このような調節配列の性質は宿主生物によって異なりうる。ある実施態様に従って、原核生物についての調節配列はプロモーター、リボソーム結合部位、及び転写終結配列を包含できる。ある実施態様に従って、真核生物についての調節配列はプロモーター及び転写終結配列を包含できる。ある実施態様において、「調節配列」は、リーダー配列及び/又は融合パートナー配列を包含できる。
【0018】
「ポリヌクレオチド」という語は、天然に存在する及び/又は天然に存在しない結合によって互いに結合されている天然に存在する及び/又は修飾されたリボヌクレオチド及び/又はデオキシリボヌクレオチドを有するヌクレオチドのポリマー形態を意味する。ある実施態様において、ポリヌクレオチドは少なくとも長さ10塩基である。前記語は、DNA/RNA及びDNA/RNAハイブリッドの一本鎖及び二本鎖の形態、又はこれらの修飾された形態を包含する。
【0019】
「オリゴヌクレオチド」という語は、天然に存在する及び/又は天然に存在しない結合によって互いに結合されている天然に存在する及び/又は修飾されたリボヌクレオチド及び/又はデオキシリボヌクレオチドを有するポリマーを包含する。オリゴヌクレオチドは、ポリヌクレオチドのサブセットであり、一般に約200塩基以下を含む。ある実施態様において、オリゴヌクレオチドは長さ約10ないし約60塩基である。ある実施態様において、オリゴヌクレオチドは、長さ12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は21ないし40塩基である。オリゴヌクレオチドは一本鎖又は二本鎖でありうる。オリゴヌクレオチドは、センス又はアンチセンスのオリゴヌクレオチドでありうる。
【0020】
「天然に存在するヌクレオチド」という語は、デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドを包含する。「修飾されたヌクレオチド」という語は、修飾され若しくは置換された糖基及び/又は修飾され若しくは置換されたヌクレオチド塩基を有するヌクレオチド及びその類似物を包含する。「オリゴヌクレオチド結合」及び「ポリヌクレオチド結合」という語は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホラニラデート、ホスホロアミデート、及びそれらの類似物などの結合を包含する。例えば、LaPlancheほか、Nucl. Acids Res. 14:9081 (1986)、Stecほか、J. Am. Chem. Soc. 106:6077 (1984)、Steinほか、Nucl. Acids Res. 16:3209 (1988)、Zonほか、Anti−Cancer Drug Design 6:539 (1991)、Zonほか、Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach、pp.87−108 (F.Eckstein編、 Oxford University Press、 Oxford England (1991))、Stecほか、米国特許第5,151,510号、Uhlmann及びPeyman Chemical Reviews 90:543 (1990)を参照してほしい。ある実施態様において、オリゴヌクレオチド若しくはポリヌクレオチドは標識を包含できる。
【0021】
対象へ適用される「天然に存在する」という語は、天然に見出されうる対象を指す。例えば、天然資源から単離でき、実験室若しくはその他において人間により修飾されなかった生物体(ウィルスを含む。)において存在するポリペプチド若しくはポリヌクレオチド配列は天然に存在する。
【0022】
「単離されたタンパク質」という語は、合成手段によって作製されたタンパク質又はゲノムDNA、cDNA、RNA又は他のポリヌクレオチドによりコードされているタンパク質を意味する。単離されたタンパク質は(1)通常見出されるであろう少なくともいくつかのあるタンパク質が存在しない、又は(2)同一資源由来の、例えば同一種由来の、他のタンパク質が本質的に存在しない、又は(3)異なる種由来の細胞により発現される、又は(4)天然に存在しない。本明細書で使用されているポリペプチド表記法において、特段の記載がなければ、標準的な使用及び慣例に従って、左手方向はアミノ末端方向であり、右手方向はカルボキシ末端方向である。
【0023】
同様に、特段の記載がなければ、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左手末端は5’末端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左手方向は5’方向と呼ばれる。新生RNA転写産物への5’から3’の付加の方向は転写方向と呼ばれ、前記RNA転写産物の5’末端に対して5’である前記DNA鎖上の配列領域は「上流配列」と呼ばれ、「コード化領域の上流」であり、前記RNA転写産物の3’末端に対して3’である前記DNA鎖上の配列領域は、「下流配列」と呼ばれ、「コード化領域の下流」である。
【0024】
本明細書で使用されるように、「標識」若しくは「標識された」という語は、検出可能な部分の存在を指す。検出可能な部分は、ポリヌクレオチド若しくはポリペプチドの合成中に組み込み得、又は合成後に共有結合的若しくは非共有結合的のいずれかで結合させ得る。標識は、例えば、放射線標識されたアミノ酸の組み込み、標識されたアビジン(例、光学的若しくは比色的方法によって検出できる蛍光部分若しくは酵素活性を含有するストレプトアビジン)で検出できるビオチン部分の結合でありうる。ある実施態様において、前記標識若しくは検出可能な部分は治療用でありうる。ポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドを標識するさまざまな方法が本分野で公知である。ポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドへの標識の例には放射性同位体若しくは放射性核種(例、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例、FITC、ローダミン、ランタニドリン)、酵素標識(例、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光標識、ビオチン基、二次リポーター(例、ロイシンジッパー対配列、二次抗体に対する結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)により認識される予め決めておいたポリペプチドエピトープがあるが、これらには限定されない。ある実施態様において標識は、立体障害についての可能性を低下させるためにさまざまな長さのスペーサーアームによって結合される。
【0025】
本明細書において使用されるように、20個の従来のアミノ酸及びそれらの略語は従来の使用に従う。Immunology−A Synthesis (第2版、 E.S.Golub及びD.R.Gren編、Sinauer Associates, Sunderland, Mass. (1991))を参照してほしい。前記20個の従来のアミノ酸の立体異性体(例、D−アミノ酸)、非天然アミノ酸(α−,α−二置換されたアミノ酸など)、N−アルキルアミノ酸、乳酸、及び他の非通常のアミノ酸も、本発明のポリペプチドについての適切な構成要素でありうる。典型的な非通常アミノ酸の非限定的例には、4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸塩、ε−N,N,N−トリメチルリジン、ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、σ−N−メチルアルギニン及び他の同様のアミノ酸及びイミノ酸が含まれる。
【0026】
当業者は、公知の技術を使用してポリペプチドの適切な変異体を特定できるであろう。ある実施態様において当業者は、活性について重要であると信じられていない領域を対象とすることによって活性を破壊することなく変化させ得るポリペプチドの適切な領域を特定できる。ある実施態様において当業者は、類似のポリペプチド間で保存されているポリペプチドの残基及び部分を同定できる。ある実施態様において、生物活性若しくは構造について重要であるかもしれない領域でさえ、前記生物活性を破壊することなく又は前記ポリペプチド構造に負の影響を与えることなく、保存されたアミノ酸置換を受け入れうる。
【0027】
さらに、ある実施態様において当業者は、構造−機能研究を検討して、活性若しくは構造について重要である類似のポリペプチドにおける残基を同定できる。このような比較の点において、当業者は、類似のタンパク質における活性若しくは構造について重要なアミノ酸残基に対応する、タンパク質におけるアミノ酸残基の重要性を予測できる。ある実施態様において、当業者はこのような予測できる重要なアミノ酸残基について化学的に類似のアミノ酸置換を選択できる。
【0028】
ある実施態様において当業者は、類似のポリペプチドにおける公知の構造に関して3次元構造及びアミノ酸配列を分析できる。さらに、ある実施態様において当業者は、望ましい各アミノ酸残基における単一のアミノ酸置換を含有する検査変異体を作成できる。ある実施態様において前記変異体は次に、当業者に公知の活性アッセイを使用して選別し得る。このような変異体は適切な変異体についての情報を収集するのに使用できるであろう。例えばある実施態様においてもし当業者が、活性の破壊、活性の望ましくなく低下又は不適切な活性をもたらす特定のアミノ酸残基への変化を見い出せば、このような変化による変異体は回避できる。言い換えれば、このような日常的な実験から収集される情報に基づいて、当業者は、単独又は他の変異との組み合わせのいずれかで更なる置換を回避すべきアミノ酸を容易に決定できる。
【0029】
ある実施態様において、欠失、挿入、及び/又は置換(個々に若しくは集約的に「変異体」と呼ばれる。)は、IL−1ra野生型タンパク質のアミノ酸配列内に作製される。本明細書で使用されるように、「IL−1ra野生型タンパク質」は、配列番号3のアミノ酸配列を有するタンパク質を指し、必要に応じてそのN末端に更なるメチオニン残基を有し、それにより前記N末端配列はMRPSGR…である。一般名「アナキンラ」を有する治療用タンパク質は、IL−1ra野生型タンパク質のこの定義内に収まる。アナキンラは、配列番号3と同一の配列番号5の配列を有するが、N末端のメチオニンを有する。ある実施態様において、化学的若しくは酵素的修飾などのIL−1ra野生型タンパク質への変化は、タンパク質の翻訳若しくは合成後になされる。このように変化したIL−1raタンパク質は、個々に若しくは集約的に「誘導体」と呼ばれる。IL−1raという語はIL−1ra野生型タンパク質を包含し、また前記IL−1ra受容体に対してアンタゴニスト活性を有する天然に存在する及び天然に存在しないIL−1ra変異体及び誘導体も包含する。
【0030】
ある実施態様において、「正の電荷を有しないアミノ酸」は、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン及びチロシンから選択される。正の電荷を有しないアミノ酸には、正の電荷を有しない非通常のアミノ酸も含まれるがそれらには限定されない。当業者は、特定のアミノ酸変異体がポリペプチドへ組み込まれるときに正の電荷を有するかどうかを決定できる。
【0031】
ある実施態様において、「電荷を有しないアミノ酸」は、アラニン、システイン、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン及びチロシンから選択される。電荷を有しないアミノ酸には電荷を有しない非通常アミノ酸も含まれるがそれらには限定されない。当業者は、ポリペプチドへ組み込まれるときに特定の非通常性アミノ酸変異体が電荷を有するかどうかを決定できる。
【0032】
ある実施態様において、「電荷を有しない極性アミノ酸」は、システイン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、セリン、スレオニン及びチロシンから選択される。電荷を有しない極性アミノ酸には、電荷を有しない極性のある非通常アミノ酸も含まれるがそれらには限定されない。当業者は、ポリペプチドへ組み込まれるときに、特定の非通常アミノ酸変異体が極性であるかどうか、及びそれが電荷を有するかどうかを決定できる。
【0033】
ある実施態様において、「非芳香族アミノ酸」は、アラニン、アルギニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、セリン、スレオニン及びバリンから選択される。非芳香性アミノ酸には、芳香族ではない非通常アミノ酸も含まれるがそれらには限定されない。当業者は、特定の非通常性アミノ酸変異体がポリペプチドへ組み込まれるときに芳香族であるかどうかを決定できる。
【0034】
「陽イオン−パイ相互作用」という語は、陽イオン性アミノ酸と芳香族アミノ酸との間の非共有結合性相互作用を指す。ある実施態様において、前記陽イオン性アミノ酸はリジンでありうる。ある実施態様において、前記陽イオン性アミノ酸はアルギニンでありうる。ある実施態様において、前記芳香族アミノ酸はフェニルアラニンでありうる。ある実施態様において前記芳香族アミノ酸はチロシンでありうる。ある実施態様において前記芳香族アミノ酸はトリプトファンでありうる。前記陽イオン−パイ相互作用は単一のポリペプチド内(つまり分子内)であり得るか、又は前記陽イオン−パイ相互作用は2つ以上のポリペプチド間(つまり分子間)であり得る。
【0035】
ある実施態様において、IL−1raの特定のアミノ酸残基は陽イオン−パイ相互作用に関係している。図1はIL−1raのX線結晶構造を示す。前記結晶構造は、1ILR.pdbファイル及びVector NTI 3D Molecular Viewer (InforMax社製)を使用して調製された。IL−1raは非対称性二量体として結晶化した。例えば、Vigersほか、J. Biol. Chem., 269: 12874−12879 (1994)を参照してほしい。図2は、図1の前記結晶構造の一部を示す。前記結晶構造において、あるIL−1raサブユニット上のリジン−93は、他のIL−1raサブユニット上のトリプトファン−16との陽イオン−パイ相互作用に関連しているように見える。同様に、あるIL−1raサブユニット上のアルギニン−97は他のIL−1raサブユニット上のチロシン−34との陽イオン−パイ相互作用に関連しているように見える。
【0036】
本明細書で使用される「ポリペプチド断片」という語は、アミノ末端及び/又はカルボキシ末端の欠失を有するポリペプチドを指す。ある実施態様において、断片は長さが少なくとも5ないし201個のアミノ酸である。ある実施態様において、断片は長さが少なくとも5、6、8、10、14、20、50、70、80、90、100、110、125、150、170、175、176、177、180、185、190、又は200個のアミノ酸であることが認識されるであろう。
【0037】
本明細書で使用される「生物試料」という語は、生体若しくは生体であったもの由来の物質のいずれかの量を包含するがそれには限定されない。このような生体にはヒト、マウス、サル、ラット、ウサギ、及び他の動物が含まれるが、これらには限定されない。このような物質には、血液、血清、尿、細胞、器官、組織、骨、骨髄、リンパ節及び皮膚が含まれるが、これらには限定されない。
【0038】
本明細書で使用されるように、「実質的に純粋な」は、対象の巨大分子種が、優勢に存在する主な巨大分子種であることを意味する(つまり、モル濃度ベースで組成物中のいずれかの他の個々の巨大分子種よりも豊富である)。ある実施態様において、実質的に精製された画分は、対象巨大分子種が、存在する巨大分子種すべての少なくとも約50%(重量に基づいた)を含む組成物である。ある実施態様において、実質的に純粋な組成物において、前記対象の巨大分子種は前記組成物中に存在する巨大分子種すべての重量による約80%、85%、90%、95%、又は99%を超えるものを含む。ある実施態様において、前記対象巨大分子種は本質的に均質になるよう精製される(すなわち、夾雑種は従来の検出方法によって組成物中において検出できない)。ある実施態様において、組成物は単一の巨大分子種から本質的になる。
【0039】
患者という語にはヒト及び動物対象が含まれる。
【0040】
インターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)は、インターロイキン−1活性の阻害剤として作用するヒトタンパク質であり、IL−1α及びIL−1βも含むIL−1ファミリーの一員である。IL−1受容体アンタゴニストの非包括的、非制限的、非網羅的リストには、Kineret(R)(アナキンラ)(例、配列番号5のアミノ酸配列を有するタンパク質)、IL−1ra野生型タンパク質(配列番号3の配列を有するタンパク質、又は配列番号5の配列を有するタンパク質を含むがこれらに制限されない。)、細胞内IL−1ra(iclL−1ra)(配列番号6の配列を有するタンパク質を含むがこれに制限されない)、IL−1raβ(例、PCT発行番号第WO99/36541号参照)、IL−1ra変異体、及びIL−1ra誘導体が含まれる。IL−1ra及びその変異体並びに誘導体を含む特定のIL−1ra受容体アンタゴニスト、並びにそれらを作製する及び使用する方法は、例えば米国特許第5,075,222号、米国特許第6,599,873B1号、米国特許第5,863,769号、米国特許第5,858,355号、米国特許第5,739,282号、米国特許第5,922,573号、米国特許第6,054,559号、WO91/08285、WO91/17184、WO91/17249、豪州特許第9173636号、WO92/16221、WO93/21946、WO94/06457、WO94/21275、仏国特許第2706772号、WO94/21235、ドイツ特許第4219626号、WO94/20517、WO96/22793、WO96/12022、WO97/28828、WO99/36541、WO99/51744に記載されている。IL−1受容体アンタゴニストはグリコシル化されている又は非グリコシル化されていないことができる。
【0041】
典型的なIL−1raには、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド及びこのようなポリペプチドの、インターロイキン−1受容体に対するアンタゴニスト活性を有する断片、変異体及び誘導体;配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド及びこのようなポリペプチドの、インターロイキン−1受容体に対するアンタゴニスト活性を有する断片、変異体及び誘導体;配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド及びこのようなポリペプチドの、インターロイキン−1受容体に対するアンタゴニスト活性を有する断片、変異体及び誘導体;並びに配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド及びこのようなポリペプチドの、インターロイキン−1受容体に対するアンタゴニスト活性を有する断片、変異体及び誘導体が含まれるがこれらに制限されない。
【0042】
ある実施態様において、IL−1raという語は、前記インターロイキン−1受容体に対するアンタゴニスト活性を有するIL−1ra変異体を含むがそれらには限定されない。ある実施態様において、IL−1ra変異体は天然に存在している。ある実施態様において、IL−1ra変異体は人工的に構築される。例示的なIL−1ra変異体には、配列番号2、配列番号3、配列番号5又は配列番号6との比較において、1つ以上のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加を有するアミノ酸配列が含まれるがこれらには限定されない。ある実施態様において、IL−1ra変異体は、配列番号3のアミノ酸配列と95%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、IL−1ra変異体は配列番号3のアミノ酸配列と90%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、IL−1ra変異体は、配列番号3のアミノ酸配列と85%同一であるアミノ酸配列を含む。IL−1ra変異体は、配列番号3のアミノ酸配列と75%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0043】
ある実施態様において、IL−1raという語には前記インターロイキン−1受容体に対するアンタゴニスト活性を有するIL−1ra断片が含まれるがこれに限定されない。ある実施態様において、IL−1ra断片は天然に存在する。ある実施態様において、IL−1ra断片は人工的に構築される。典型的なIL−1ra断片には、配列番号2、配列番号3、配列番号5又は配列番号6に記載の配列の断片が含まれるが、これらに限定されない。IL−1ra断片はIL−1ra変異体のサブセットである。
【0044】
ある実施態様において、IL−1raという語には前記インターロイキン−1受容体に対するアンタゴニスト活性を有するIL−1ra誘導体が含まれるがこれに限定されない。ある実施態様において、IL−1ra誘導体は天然に存在する。ある実施態様において、IL−1ra誘導体は人工的に構築される。典型的なIL−1ra誘導体には、配列番号2、配列番号3、配列番号5又は配列番号6に記載の配列の化学的若しくは酵素的に修飾された形態が含まれるがこれらに限定されない。典型的なIL−1ra誘導体には、配列番号2、配列番号3、配列番号5又は配列番号6に記載の配列の変異体の化学的若しくは酵素的に修飾される形態も含まれるが、それらには限定されない。
【0045】
ある実施態様において、IL−1raという語には分泌性リーダー配列を有するIL−1raが含まれるがこれには限定されない。ある実施態様において、分泌性リーダー配列を有するIL−1raは「前駆体IL−1ra」と呼ばれる。典型的な前駆体IL−1raアミノ酸配列は配列番号2に記載されている。「前駆体IL−1ra」という語には、分泌でき、前記インターロイキン−1受容体に対するアンタゴニスト活性を有する形態へとプロセシングされ得る配列番号2の断片、変異体及び誘導体が含まれる。
【0046】
IL−1raという語には、凝集性IL−1ra及び凝集性が低下したIL−1raの両者が含まれる。凝集性IL−1raタンパク質は位置93でリジンを、位置97でアルギニンを有するが、位置93でリジンを及び位置97でアルギニンを有するIL−1raタンパク質がすべて凝集性IL−1raであるというわけではない。「凝集性IL−1ra」には、以下のアッセイに従って39℃で凝集するIL−1ra野生型、変異体及び誘導体タンパク質が含まれる。対象のIL−1raの100mg/mlの溶液を10mMリン酸塩、140mMNaCl、0.5mMEDTA、pH6.5(PSE)中で39℃においてインキュベートする。基準物質として、配列番号5の配列を有するIL−1ra野生型タンパク質の100mg/mlの溶液を39℃においてPSE中でインキュベートする。39℃でのインキュベーションの2時間後に各溶液の光学密度を405nmで測定する。もし前記対象のIL−1raが、インキュベーションの2時間後に前記IL−1ra野生型タンパク質の光学密度の少なくとも60%であるインキュベーションの2時間後の光学密度を有すれば、前記対象のIL−1raは凝集性IL−1raである。
【0047】
「凝集性が低下したIL−1ra」には、前述のアッセイにおいて前記IL−1ra野生型タンパク質の光学密度の60%より低い光学密度を有するIL−1ra変異体及び誘導体タンパク質が含まれる。
【0048】
ある実施態様において、「インターロイキン−1受容体に対するアンタゴニスト活性を有するIL−1ra」という語は、実施例3において記載されているIL−1raシグナル伝達複合体形成アッセイにおいて、配列番号5のアミノ酸配列を有するIL−1ra野生型タンパク質と同じ活性の少なくとも50%であるIL−1ra野生型、変異体又は誘導体タンパク質を指す。「活性の少なくとも50%」は、対象のIL−1raのEC50をIL−1ra野生型タンパク質のEC50と比較することによって決定される。
【0049】
「アルギニン−97」という語は、配列番号3における97番目の位置にある又は配列番号3における97番目の位置にあるアミノ酸残基に対応するIL−1raにおけるアミノ酸の位置にあるアミノ酸残基を指す。例えば、配列番号3のアルギニン−97に対応するアミノ酸は、配列番号5の98番目の位置にあるアルギニンである。前記アルギニンは、依然IL−1raのアルギニン−97と呼ばれる。ある実施態様において、アルギニン−97は「R97」と呼ばれ、前記Rはアルギニンについての単一文字コードであり、97は配列番号3における位置を指す。ある実施態様において、もしR97が別のアミノ酸と置換されれば、前記変異はR97Xと呼ばれ得、Xは前記置換アミノ酸についての単一文字コードである。したがって、制限のない例として、もしR97がアラニンによって置換されれば、前記変異はR97Aと呼ばれ得る。
【0050】
「リジン−93」という語は、配列番号3における93番目の位置にある又は配列番号3における93番目の位置にあるアミノ酸残基に対応するIL−1raにおけるアミノ酸の位置にあるアミノ酸残基を指す。例えば、配列番号3のリジン−93に対応するアミノ酸は、配列番号5の94番目の位置にあるリジンである。前記リジンは、依然IL−1raのリジン−93と呼ばれる。ある実施態様において、リジン−93は「K93」と呼ばれ、前記Kはリジンについての単一文字コードであり、93は配列番号3における位置を指す。ある実施態様において、もしK93が別のアミノ酸と置換されれば、前記変異はK93Xと呼ばれ得、Xは前記置換アミノ酸についての単一文字コードである。したがって、制限のない例として、もしK93がアラニンによって置換されれば、前記変異はK93Aと呼ばれ得る。
【0051】
「トリプトファン−16」という語は、配列番号3における16番目の位置にある又は配列番号3における16番目の位置にあるアミノ酸残基に対応するIL−1raにおけるアミノ酸の位置にあるアミノ酸残基を指す。例えば、配列番号3のトリプトファン−16に対応するアミノ酸は、配列番号5の17番目の位置にあるトリプトファンである。前記トリプトファンは、依然IL−1raのトリプトファン−16と呼ばれる。ある実施態様において、トリプトファン−16は「W16」と呼ばれ、前記Wはトリプトファンについての単一文字コードであり、16は配列番号3における位置を指す。ある実施態様において、もしW16が別のアミノ酸と置換されれば、前記変異はW16Xと呼ばれ得、Xは前記置換アミノ酸についての単一文字コードである。したがって、制限のない例として、もしW16がアラニンによって置換されれば、前記変異はW16Aと呼ばれ得る。
【0052】
「チロシン−34」という語は、配列番号3における34番目の位置にある又は配列番号3における34番目の位置にあるアミノ酸残基に対応するIL−1raにおけるアミノ酸の位置にあるアミノ酸残基を指す。例えば、配列番号3のチロシン−34に対応するアミノ酸は、配列番号5の35番目の位置にあるチロシンである。前記チロシンは、依然IL−1raのチロシン−35と呼ばれる。ある実施態様において、チロシン−34は「Y34」と呼ばれ、前記Yはチロシンについての単一文字コードであり、34は配列番号3における位置を指す。ある実施態様において、もしY34が別のアミノ酸と置換されれば、前記変異はY34Xと呼ばれ得、Xは前記置換アミノ酸についての単一文字コードである。したがって、制限のない例として、もしY34がアラニンによって置換されれば、前記変異はY34Aと呼ばれ得る。
【0053】
ある実施態様において、「低下した凝集」は、(1)条件B下でのポリペプチドの凝集と比較して低下する条件A下での前記ポリペプチドの凝集、及び/又は(2)条件A下での野生型ポリペプチドの凝集と比較して低下する同一の条件A下でのポリペプチド変異体の凝集、及び/又は(3)同一の条件A下での異なるポリペプチド変異体の凝集と比較して低下する条件A下でのポリペプチド変異体の凝集として定義される。制限のない例として、場合(1)について相対的な凝集は以下のように決定できる。条件A下でのポリペプチドの405nmでの光学密度をさまざまな時間で測定する。次に、条件B下での前記ポリペプチドの405nmでの光学密度を同一のさまざまな時間で測定する。各条件下での前記対象ポリペプチドについての凝集曲線を、Y軸上に光学密度で、X軸上に時間でプロットする。もし条件A下での前記ポリペプチドが時間tで、同一の時間tでの条件B下での前記ポリペプチドよりも低い光学密度を有していれば、条件A下でのポリペプチドは条件B下での前記ポリペプチドと比較して凝集が低下したといえる。
【0054】
異なる条件の実施例には、緩衝液組成物における差異、温度における差異、ポリペプチド濃度における差異、アクセサリー分子の有無、アクセサリー分子濃度における差異等が含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
「アクセサリー分子」という語は、1つ以上のポリペプチドの凝集を低下させる分子を指す。ある実施態様において、アクセサリー分子は1つ以上のポリペプチドの凝集を非特異的に低下させる。ある実施態様において、アクセサリー分子は前記ポリペプチドの1つ以上のアミノ酸と相互作用することによって凝集を低下させる。ある実施態様において、アクセサリー分子は、前記ポリペプチドの1つ以上のアミノ酸と共有結合的に相互作用し、「共有結合アクセサリー分子」と呼ばれる。ある実施態様において、アクセサリー分子は、前記ポリペプチドの1つ以上のアミノ酸と非共有結合的に相互作用し、「非共有結合アクセサリー分子」と呼ばれる。
【0056】
ある実施態様において、ポリペプチドの凝集における低下は、前記アクセサリー分子の濃度と関連する。ある実施態様において、アクセサリー分子はポリペプチドの凝集を実質的に除去できる。ある実施態様において、アクセサリー分子はポリペプチドの凝集を少なくとも10%まで低下させる。ある実施態様において、アクセサリー分子はポリペプチドの凝集を少なくとも20%まで低下させる。アクセサリー分子はポリペプチドの凝集を少なくとも30%まで低下させる。アクセサリー分子はポリペプチドの凝集を少なくとも40%まで低下させる。アクセサリー分子はポリペプチドの凝集を少なくとも50%まで低下させる。アクセサリー分子はポリペプチドの凝集を少なくとも60%まで低下させる。アクセサリー分子はポリペプチドの凝集を少なくとも70%まで低下させる。アクセサリー分子はポリペプチドの凝集を少なくとも75%まで低下させる。アクセサリー分子はポリペプチドの凝集を少なくとも80%まで低下させる。アクセサリー分子はポリペプチドの凝集を少なくとも85%まで低下させる。アクセサリー分子はポリペプチドの凝集を少なくとも90%まで低下させる。アクセサリー分子はポリペプチドの凝集を少なくとも95%まで低下させる。
【0057】
ある実施態様において、アクセサリー分子はポリペプチドの凝集の速度を低下させる。ある実施態様において、ポリペプチドの凝集の速度における低下は前記アクセサリー分子の濃度に依存する。ある実施態様において、アクセサリー分子はポリペプチドの凝集を実質的に除去する。ある実施態様において、アクセサリー分子はポリペプチドの凝集の速度を少なくとも10%まで低下させる。ある実施態様において、アクセサリー分子はポリペプチドの凝集の速度を少なくとも20%まで低下させる。ある実施態様において、アクセサリー分子はポリペプチドの凝集の速度を少なくとも30%まで低下させる。ある実施態様において、アクセサリー分子はポリペプチドの凝集の速度を少なくとも40%まで低下させる。ある実施態様において、アクセサリー分子はポリペプチドの凝集の速度を少なくとも50%まで低下させる。ある実施態様において、アクセサリー分子はポリペプチドの凝集の速度を少なくとも60%まで低下させる。ある実施態様において、アクセサリー分子はポリペプチドの凝集の速度を少なくとも70%まで低下させる。ある実施態様において、アクセサリー分子はポリペプチドの凝集の速度を少なくとも75%まで低下させる。ある実施態様において、アクセサリー分子はポリペプチドの凝集の速度を少なくとも80%まで低下させる。ある実施態様において、アクセサリー分子はポリペプチドの凝集の速度を少なくとも85%まで低下させる。ある実施態様において、アクセサリー分子はポリペプチドの凝集の速度を少なくとも90%まで低下させる。ある実施態様において、アクセサリー分子はポリペプチドの凝集の速度を少なくとも95%まで低下させる。
【0058】
ある実施態様において、アクセサリー分子は1つ以上のアミノ酸残基においてポリペプチドと共有結合的もしくは非共有結合的に相互作用する。ある実施態様において、アクセサリー分子は1つ以上の特異的アミノ酸残基と相互作用する。ある実施態様において、アクセサリー分子は前記ポリペプチドの活性を実質的に低下させない。ある実施態様において、アクセサリー分子は前記ポリペプチドの活性を10%超まで低下させない。ある実施態様において、アクセサリー分子は前記ポリペプチドの活性を20%超まで低下させない。アクセサリー分子は前記ポリペプチドの活性を30%超まで低下させない。アクセサリー分子は前記ポリペプチドの活性を50%超まで低下させない。アクセサリー分子は前記ポリペプチドの活性を75%超まで低下させない。
【0059】
ある実施態様において、アクセサリー分子はアミノ酸残基に存在する電荷を除去する。ある実施態様において、アクセサリー分子は前記アミノ酸残基を共有結合的に修飾することによって電荷を除去する。ある実施態様において、アクセサリー分子は前記アミノ酸残基と非共有結合的に相互作用し、それにより電荷を「マスクする」ことによって前記電荷を除去する。
【0060】
典型的な共有結合アクセサリー分子には、6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)ヘキサン酸(NBD−X)、リン酸メチルアセチル(MAP)及びシトラコン酸無水物が含まれるが、これらには制限されない。
【0061】
典型的な非共有結合アクセサリー分子には、糖、単一荷電陰イオン及び多荷電陰イオンが含まれるが、これらには限定されない。アクセサリー分子でありうる典型的な糖にはグリセロール、ショ糖、マンニトール及びソルビトールが含まれるが、これらには限定されない。アクセサリー分子でありうる典型的な単一荷電陰イオンにはリン酸塩及び塩化物が含まれるが、これらには制限されない。アクセサリー分子でありうる典型的な多荷電陰イオンにはピロリン酸塩及びクエン酸塩が含まれるが、これらには限定されない。
【0062】
「アルギニン反応性アクセサリー分子」という語は、アルギニン残基と特異的に相互作用するアクセサリー分子を指す。ある実施態様において、アルギニン反応性アクセサリー分子はアルギニンだけと相互作用する。ある実施態様において、アルギニン反応性アクセサリー分子は、アルギニンに加えて他のアミノ酸と相互作用する。ある実施態様において、アルギニン反応性アクセサリー分子はアルギニンと共有結合的に相互作用する。ある実施態様において、アルギニン反応性アクセサリー分子はアルギニンと非共有結合的に相互作用する。ある実施態様において、アルギニン反応性アクセサリー分子は、アルギニンを含有するポリペプチドの活性を実質的に低下させない。
【0063】
「リジン反応性アクセサリー分子」という語は、リジン残基と特異的に相互作用するアクセサリー分子を指す。ある実施態様において、リジン反応性アクセサリー分子は単にリジンだけと相互作用する。ある実施態様において、リジン反応性アクセサリー分子は、リジンに加えて他のアミノ酸と相互作用する。ある実施態様において、リジン反応性アクセサリー分子はリジンと共有結合的に相互作用する。ある実施態様において、リジン反応性アクセサリー分子はリジンと非共有結合的に相互作用する。ある実施態様において、リジン反応性アクセサリー分子は、リジンを含有するポリペプチドの活性を実質的に低下させない。
【0064】
「多荷電陰イオン」という語は、pH6.5及び25℃で1を超える負の電荷を含む分子を指す。ある実施態様において多荷電陰イオンは、pH6.5及び25℃で平均して1を超えるが2未満の負の電荷を有する。ある実施態様において、多荷電陰イオンは、pH6.5及び25℃で平均して2以上の負の電荷を有する。ある実施態様において、多荷電陰イオンは、pH6.5及び25℃で平均2ないし4の負の電荷を有する。さまざまな実施態様において、当業者は、特定の陰イオンがpH6.5及び25℃で、例えば前記陰イオンについて公開されたpKa値から多荷電陰イオンであるかどうかを決定できる。「単一荷電陰イオン」という語は、pH6.5及び25℃で平均して1以下の負の電荷を有する陰イオンを指す。さまざまな実施態様において、当業者は、特定の陰イオンがpH6.5及び25℃で、例えば前記陰イオンについて公開されたpKa値から単一荷電陰イオンであるかどうかを決定できる。
【0065】
「糖」という語は炭水化物を指す。典型的な糖には単糖類、二糖類及び三糖類が含まれるがこれらには限定されない。制限のない例示的な糖にはグリセロール、ショ糖、マンニトール及びソルビトールが含まれるがこれらには限定されない。
【0066】
疾病若しくは医学的状態は、もし前記自発的若しくは実験的疾病若しくは医学的疾患が体液若しくは組織中のIL−1のレベルの上昇と関係していれば及び/又はもし前記身体から採取された細胞若しくは組織が培養物中におけるIL−1のレベルの上昇を生じていれば、「インターロイキン−1仲介性疾病」であると考慮される。ある実施態様において、このようなインターロイキン−1仲介性疾病も以下の2つの条件のうちの1つ以上によって認識される。すなわち、(1)前記疾病若しくは医学的状態を伴う病理学的所見が、IL−1の投与又はIL−1の発現の上方制御によって動物において実験的に模倣することができる、及び/又は(2)前記疾病若しくは医学的状態の実験的動物モデルにおいて誘発される病状が、IL−1の作用を阻害する因子による治療によって抑制若しくは無効にできる。ある実施態様において、前述の条件の1つまたはそれ以上がIL−1仲介性疾病において満たされる。ある実施態様において、前記条件のすべてがIL−1仲介性疾病において満たされる。
【0067】
急性及び慢性のインターロイキン−1(IL−1)仲介性疾病は、以下に限定されされないが、以下を含む。急性膵炎、筋萎縮性側索硬化症(ALS、又はルー・ゲーリック病)、アルツハイマー病、カヘキシー/食欲不振症(AIDS誘発性カヘキシーを含むがここれに限定されない。)、喘息及び他の肺疾患、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性血管炎、慢性疲労症候群、クロストリジウム関連疾患(クロストリジウム関連下痢を含むがこれに限定されない。)、冠動脈状態及び症状(うっ血性心不全、冠動脈再狭窄、心筋梗塞、心筋不全(例、敗血症と関連した)及び冠状動脈パイパス移植を含むがこれらに限定されない。)、癌[白血病(多発性骨髄腫白血病及び骨髄性白血病(例、AML及びCML)を含むがこれらに限定されない。)及び腫瘍転移を含むがこれらに限定されない。]、糖尿病(インスリン依存性糖尿病を含むがこれに限定されない。)、子宮内膜症、発熱、線維筋痛症、糸球体腎炎、移植片対宿主病及び/又は移植臓器拒絶、出血性ショック、痛覚過敏、炎症性腸疾患、関節の炎症性状態(変形性関節症、乾癬性関節炎及び関節リウマチを含むがこれらに限定されない。)、炎症性眼疾患(限定されないが例えば角膜移植に関連したものを含む。)、虚血[脳虚血(それぞれが神経変性に至り得る例えばトラウマ、癲癇、出血又は発作の結果としての脳障害を含むがこれには限定されない。)を含むがこれに限定されない。]、川崎病、学習障害、肺疾患(急性呼吸窮迫症候群又はARDSを含むがこれらに限定されない。)、多発性硬化症、筋症[例、筋タンパク質代謝(敗血症における筋タンパク質代謝を含むがこれには限定されない。)]、神経毒性(HIVによって誘発される状態を含むがこれに限定されない。)、骨粗鬆症、疼痛(ガン関連疼痛を含むがこれに限定されない。)、パーキンソン病、歯周病、早産、乾癬、再灌流障害、敗血症ショック、放射線療法からの副作用、顎関節症、睡眠障害、ぶどう膜炎並びに炎症性状態(例えば歪み、捻挫、軟骨損傷、トラウマ、整形外科的手術、感染又は他の疾病過程から生じるもの)。
【0068】
いくつかの典型的な実施態様の詳述。
【0069】
凝集性IL−1raの凝集を低下させる方法が提供される。ある実施態様において、凝集を低下させるべき凝集性IL−1raは、配列番号2、配列番号3、配列番号5又は配列番号6におけるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、凝集を低下させるべき凝集性IL−1raは、配列番号2、配列番号3、配列番号5又は配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドの断片、変異体又は誘導体を含み、前記断片、変異体又は誘導体はインターロイキン−1受容体に対するアンタゴニスト活性を有する。
【0070】
IL−1raの凝集は、2つのIL−1raポリペプチドの表面残基の間の1つまたはそれ以上の陽イオン−パイ相互作用から生じうる。例えば、図2に示されるように、あるIL−1ポリペプチドのリジン−93は、第二のIL−1ポリペプチドのトリプトファン−16との陽イオン−パイ相互作用を形成し得る。同様に、あるポリペプチドのアルギニン−97は、第二のポリペプチドのチロシン−34との陽イオン−パイ相互作用を形成し得る。これらの相互作用は、2つのIL−1raポリペプチドを互いに結合させうる。さらに、前記結合が非対称性であり、このことは両者のポリペプチド上の同一面の間に結合が生じないことを意味し、したがって、それぞれのポリペプチドは2つのIL−1raポリペプチドへ同時に結合することができ得る。実際、もしさらなる非対称性結合接触がIL−1raポリペプチド間で可能であれば、1個のIL−1raポリペプチドは2個を超えるIL−1raポリペプチドへ同時に結合得る。もしそれぞれのIL−1raポリペプチドが少なくとも2つの他のIL−1raポリペプチドへ、例えば図8に示される非対称性陽イオン−パイ相互作用を通じて、結合できれば、これら相互作用は溶液中におけるIL−1raの凝集をもたらしうる。
【0071】
ある実施態様において、凝集性IL−1raの凝集は、リジン−93における、アルギニン−97における、又はリジン−93及びアルギニン−97の両者における正の電荷を低下させることによって低下させ得る。ある実施態様において、もし前記位置の一方又は両方の正の電荷を十分に低下させ得れば、陽イオン−パイ相互作用は、形成できず、又はもはやIl−1raの凝集を生じるのに十分安定ではないように弱め得る。ある実施態様において、凝集性IL−1raの凝集は他のメカニズムによって低下させ得る。この方法は、凝集における低下のメカニズムによって制限されない。凝集を低下させるための記載された方法のいずれもが、上に論議された典型的な提唱されたメカニズムによって又は記載された結果に到達するその他のメカニズムによって、生じうる。凝集性IL−1raの凝集を低下できる分子は、凝集を低下させるメカニズムに関係なく及び共有結合的に若しくは非共有結合的に作用するかどうかに関係なく、集約的に「アクセサリー分子」と呼ばれる。
【0072】
ある実施態様において、アクセサリー分子はリジン−93又はアルギニン−97のうちの1方又は両方において正の電荷を低下させることにより、凝集性IL−1raの凝集を低下させ得る。さまざまな実施態様において、アクセサリー分子は、リジン−93において、アルギニン−97において、又はリジン−93及びアルギニン−97の両方において共有結合的に若しくは非共有結合的に正の電荷を低下させ得る。前記アミノ酸のうちの1方又は両方において正の電荷を低下させるとされるアクセサリー分子は、他のメカニズムを通じても凝集を低下させ得又は他のメカニズムによって完全に作用し得る。
【0073】
ある実施態様において、凝集性IL−1raを単一荷電陰イオン分子若しくは多荷電陰イオン分子とインキュベートすることによって、IL−1raの凝集を低下させ得る。ある実施態様において、凝集性の低下したIL−1raを単一荷電陰イオン分子若しくは多荷電陰イオン分子とインキュベートすることによってさらにIL−1raの凝集を低下させ得る。ある実施態様において、凝集における前記低下は、リジン−93において、アルギニン−97において、又はリジン−93及びアルギニン−97の両方において正の電荷と相互作用する単一荷電陰イオン分子若しくは多荷電陰イオン分子から生じうる。実施例2において記載された実験において論議され、図1に示されるように、10mMクエン酸塩を含有するCSE中の凝集性IL−1raをインキュベートすることは、10mMリン酸塩を含有するPSE中の前記凝集性IL−1raをインキュベートすることよりも(405nmでの光学密度によって測定されるように)凝集が時間にわたって低下した。前記実験において、CSE中の凝集は約0.55のOD405に達したのに対し、PSE中の凝集は約1.2のOD405に達した。したがって、CSE中のインキュベーションは、前記実験においてPSE中の凝集に対して50%を超えるまで凝集を低下させた。
【0074】
同様に、実施例2に記載の実験において、CSE中の凝集性IL−1raの凝集の速度は、PSE中の凝集性IL−1raの凝集の速度よりも低かった。図1におけるPSE中の凝集の速度は、Kaggとして記される線の傾斜によって表される。同様の線が図1におけるCSEについて描かれ得、PSEと比較してCSE中の凝集速度が低いことを示す、前記線はより浅い傾斜を有するであろう。
【0075】
ある実施態様において、クエン酸塩はpH6.5でリン酸塩よりも大きな負の電荷を有するため、凝集を低下させる上でより効果的でありうる。ある実施態様において、負の電荷の一定の量は、凝集を低下させる上で他者よりも効果的でありうる。さらに、ある実施態様において、負の電荷の特定の立体配置、例えばアクセサリー分子上の負の電荷間の距離及び前記負の電荷が空間的にどれだけ「固定されている」かも、アクセサリー分子の有効性に影響を及ぼしうる。したがって、ある実施態様において、さまざまなアクセサリー分子の有効性は負の電荷の量によって影響を及ぼされうるが、負の電荷の量は必ずしも決定的であるわけではない。ある実施態様において、多荷電陰イオンは、単一荷電陰イオンよりも凝集を低下させる上でより効果的でありうる。さまざまな実施態様において、当業者は、アクセサリー分子を選択でき、意図する特定の適用のために適切であると決定できる。例えば、特定のアクセサリー分子は、特定の温度でより効果的であり得又はあまり効果的であり得ない。さまざまな実施態様において、当業者は、凝集性IL−1raがインキュベートされるか又は保存されるであろう特定の温度で効果的であるアクセサリー分子を選択できる。ある実施態様において、アクセサリー分子は約20℃ないし45℃で凝集を低下させるのに効果的であるものが選択される。ある実施態様において、アクセサリー分子は、約25℃ないし45℃で凝集を低下させるのに効果的であるものが選択される。ある実施態様において、アクセサリー分子は、約30℃ないし45℃で凝集を低下させるのに効果的であるものが選択される。ある実施態様において、アクセサリー分子は、約35℃ないし45℃で凝集を低下させるのに効果的であるものが選択される。
【0076】
ある実施態様において、アクセサリー分子の濃度を変化させることは、凝集性IL−1raの凝集における低下又は凝集の速度における低下に影響を及ぼしうる。実施例4で論じられ図3に示された実験において、リン酸塩、クエン酸塩又はピロリン酸塩のさまざまな濃度においてインキュベートされた凝集性IL−1raの凝集の速度を考慮した。前記実験において、クエン酸及びピロリン酸塩は、凝集の速度における低下とこのアクセサリー分子の濃度との間に似た相関を示した。クエン酸塩及びピロリン酸塩は両者とも、10mMアクセサリー分子での凝集の速度におけるほぼ90%の低下を示した。前記低下は20mMでクエン酸塩及びピロリン酸塩の両者について増大した後、100mMを超えたところで横ばい状態になった。対照的に、リン酸塩は10mMにおける凝集速度において約20%だけの低下を示し、前記低下は約80mMになるまで横ばい状態にならなかった。実施例4において論議された実験の結果は、ピロリン酸塩及びクエン酸塩が29℃で凝集性IL−1raの凝集の速度を低下させる上で実質的に等しく効果的であることを示唆している。クエン酸塩及びピロリン酸塩の両者は、pH6.5でリン酸塩よりも大きな負の電荷を有する。このことは、ある実施態様において、負の電荷の量が特定のアクセサリー分子の有効性に影響を及ぼしうることを示唆している。
【0077】
ある実施態様において、糖はアクセサリー分子でありうる。アクセサリー分子でありうる典型的な糖は、制限されないが、ショ糖、グリセロール、マンニトール及びソルビトールを含み得る。実施例5は、ショ糖、グリセロール、又はソルビトールの濃度の上昇が、凝集性IL−1raの凝集の速度を低下させる典型的な実験を示す(図4参照)。3%において、前記3つの糖の各々は、0%の糖における20凝集単位(a.u.; 1a.u.は200μlの容積及びSpectroMax(登録商標)プレート読み取り分光光度計を使用したときの1分間あたり405nmにおける1ミリ光学密度単位の上昇に等しい。)を超える凝集の速度と比較して、5a.u.未満まで凝集の速度を低下させた。
【0078】
さまざまな実施態様において、当業者は、例えば実施例4若しくは実施例5の方法を使用することによって、特定の適用のために非共有結合的アクセサリー分子の適切な濃度を決定できる。ある実施態様において、アクセサリー分子は1ないし100mMの濃度で存在しうる。ある実施態様において、アクセサリー分子は1ないし50mMの濃度で存在しうる。ある実施態様において、アクセサリー分子は1ないし20mMの濃度で存在しうる。ある実施態様において、アクセサリー分子は10mMの濃度で存在しうる。
【0079】
ある実施態様において、アクセサリー分子は0ないし10%の濃度で存在しうる。ある実施態様において、アクセサリー分子は0ないし5%の濃度で存在しうる。ある実施態様において、アクセサリー分子は1%、2%、又は3%の濃度で存在しうる。
【0080】
ある実施態様において、IL−1raに対する非共有結合的アクセサリー分子のKは10mM未満である。ある実施態様において、IL−1raに対する非共有結合的アクセサリー分子のKは7mM未満である。ある実施態様において、IL−1raに対する非共有結合的アクセサリー分子のKは5mM未満である。ある実施態様において、IL−1raに対する非共有結合的アクセサリー分子のKは4mM未満である。ある実施態様において、IL−1raに対する非共有結合的アクセサリー分子のKは3mM未満である。ある実施態様において、IL−1raに対する非共有結合的アクセサリー分子のKは0.1mMないし5mMである。ある実施態様において、IL−1raに対する非共有結合的アクセサリー分子のKは1mMないし5mMである。ある実施態様において、IL−1raに対する非共有結合的アクセサリー分子のKは0.1mMないし4mMである。ある実施態様において、IL−1raに対する非共有結合的アクセサリー分子のKは1mMないし4mMである。ある実施態様において、IL−1raに対する非共有結合的アクセサリー分子のKは2mMないし4mMである。
【0081】
ある実施態様において、アクセサリー分子は、凝集性IL−1raを共有結合的に修飾することによって凝集を低下させ得る。ある実施態様において、アクセサリー分子は、凝集の低下したIL−1raを共有結合により修飾することによって凝集をさらに低下できる。ある実施態様において、前記共有結合による修飾はリジン−93において、アルギニン−97において、又はリジン−93及びアルギニン−97の両者において、正の電荷を除去する。ある実施態様において、共有結合したアクセサリー分子は別のメカニズムによって、例えば、凝集性IL−1raポリペプチド間の1つ以上の陽イオン−パイ相互作用又は他の相互作用の形成を立体的に阻害することによって凝集を低下させ得る。
【0082】
IL−1raを共有結合により修飾できる制限のない典型的なアクセサリー分子には、NBD−X、MAP及びシトラコン酸無水物が含まれるがこれらに限定されない。ある実施態様において、NBD−Xは一級アミンを有する誘導体を形成する。実施例3において論議され図2に示された実験において、IL−1ra野生型タンパク質をNBD−X、SEとインキュベートすることによって前記ポリペプチド及びリジン−93のアミノ末端アミン基が誘導体化した。ある実施態様において、NBD−Xによる誘導体化はリジン−93の正の電荷を除去でき、誘導体化されるIL−1raの凝集を低下できる。ある実施態様において、MAPはポリペプチドのリジン残基及びN末端アミノ基をアセチル化する。実施例7において論議され図13ないし15に示された実験において、インキュベーションのさまざまな時間における、IL−1raとMAPとのインキュベーションにより、IL−1raのN末端アミノ基の誘導体化、IL−1raのN末端アミノ基及びリジン−6の誘導体化、IL−1raのN末端アミノ基、リジン−6及びリジン−93の誘導体化、又はIL−1raのN末端アミノ基、リジン−6及びリジン−93及びリジン−96の誘導体化が生じた。ある実施態様において、MAPによる誘導体化は、リジン−93における正の電荷を除去でき、誘導体化されたIL−1raの低下した凝集をもたらし得る。
【0083】
ある実施態様において、他のアミン反応性分子は、1つ以上の正の電荷を除去することによって又は別のメカニズムを通じて、凝集性IL−1raの凝集を低下させ得る。ある実施態様において、共有結合アクセサリー分子により誘導体化されたIL−1raは、同様に誘導体化されなかったIL−1ra野生型タンパク質の少なくとも90%の活性がある。ある実施態様において、共有結合アクセサリー分子により誘導体化されたIL−1raは、同様に誘導体化されなかったIL−1ra野生型タンパク質の少なくとも80%の活性がある。ある実施態様において、共有結合アクセサリー分子により誘導体化されたIL−1raは、同様に誘導体化されなかったIL−1ra野生型タンパク質の少なくとも75%の活性がある。ある実施態様において、共有結合アクセサリー分子により誘導体化されたIL−1raは、同様に誘導体化されなかったIL−1ra野生型タンパク質の少なくとも50%の活性がある。
【0084】
ある実施態様において、IL−1ra及び少なくとも1つのアクセサリー分子を含むキットが提供される。もし構成要素が個別に提供されれば、キットは必要に応じて、前記IL−1raと前記少なくとも1つのアクセサリー分子とを組み合わせるための説明書を含み得る。ある実施態様において、キットは、前記IL−1ra及び前記少なくとも1つのアクセサリー分子を使用するための説明書を含む。ある実施態様において、前記キットは少なくとも1つの共有結合アクセサリー分子及び/又は少なくとも1つの非共有結合アクセサリー分子を含むことができる。キットが少なくとも1つの共有結合アクセサリー分子を含むとき、前記キットはさらに、IL−1raを前記共有結合アクセサリー分子とインキュベートした後に、誘導体化されたIL−1raからいずれかの残存する反応していないアクセサリー分子を除去するための説明書を含むことができる。ある実施態様において、キットは、少なくとも1つの共有結合アクセサリー分子ですでに誘導体化されたIL−1raを含有する。同様に、ある実施態様において、キットは少なくとも1つの非共有結合アクセサリー分子と共に有る組成物中にすでにあるIL−1raを含有できる。
【0085】
ある実施態様において、IL−1raの治療的有効量と、医薬的に許容可能な希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、保存料及び/又はアジュバントとを含む医薬組成物が提供される。
【0086】
ある実施態様において、許容される処方材料は、採用される投与量及び濃度においてレシピエントに対して無毒性である。
【0087】
ある実施態様において、医薬組成物は、前記組成物の例えばpH、モル浸透圧濃度、粘性、透明性、色彩、等張性、香り、無菌性、安定性、溶解若しくは放出の速度、吸収、及び/又は浸透を修飾、維持及び/又は保存するための処方材料を含むことができる。典型的な処方材料には、(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、及びリジンなどの)アミノ酸、抗菌剤、(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、及び亜硫酸水素ナトリウムなどの)抗酸化剤、(ホウ酸塩、炭酸水素塩、トリス−HCl、クエン酸塩、リン酸塩、及び他の有機酸などの)緩衝液、(マンニトール及びグリシンなどの)充填剤、(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの)キレート剤、(カフェイン、ポリビニルピロリドン、β−シクロデキストリン及びヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなどの)複合剤、賦形剤、単糖類、二糖類及び(グルコース、マンノース、及びデキストリンなどの)他の炭水化物、(血清アルブミン、ゼラチン、及び免疫グロブリンなどの)タンパク質、着色料、香料及び希釈剤、乳化剤、(ポリビニルピロリドンなどの)親水性ポリマー、低分子量ポリペプチド、(ナトリウムなどの)塩形成対イオン、(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、及び過酸化水素などの)保存料、(グリセリン、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールなどの)溶媒、(マンニトール及びソルビトールなどの)糖アルコール、懸濁剤、[プルロニクス、PEG、ソルビタンエステル、(ポリソルベート20、ポリソルベート80などの)ポリソルベート、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサパルなどの]界面活性剤若しくは湿潤剤、(ショ糖及びソルビトールなどの)安定性亢進剤、[(塩化ナトリウム及び塩化カリウムなどの)ハロゲン化アルカリ金属、マンニトール、ソルビトールなどの]緊張度亢進剤、送達媒体、希釈剤、賦形剤及び医薬アジュバントが含まれるがこれらに限定されない。例えばRemington‘s Pharmaceutical Sciences、第18版、A.R.Gennaro編、Mack Publishing Company (1990)を参照してほしい。
【0088】
ある実施態様において、IL−1ra及び/又は1つ以上の更なる治療剤は、半減期延長媒体に連結される。典型的な媒体には、Fcドメイン、ポリエチレングリコール、及びデキストランが含まれるがこれらに限定されない。ある典型的な媒体は、例えば米国出願シリアル番号第09/428,082号及び公開されたPCT出願第WO99/25044号に記載されている。
【0089】
ある実施態様において、最適な医薬組成物は、例えば投与の意図された経路、送達フォーマット及び望ましい投与量に依存して当業者によって決定される。例えば、前述のRemington‘s Pharmaceutical Sciencesを参照してほしい。ある実施態様において、このような組成物は、IL−1raの物理的状態、安定性、生体内放出速度、及び生体内クリアランスの速度に影響を及ぼしうる。
【0090】
ある実施態様において、医薬組成物中の一次媒体若しくは担体はまったく、水性若しくは非水性のいずれかでありうる。例えばある実施態様において、適切な媒体若しくは担体は、注射用の水、生理塩類溶液又は人工脳脊髄液でありえ、非経口投与のための組成物中において共通の、他の材料でおそらく補強される。ある実施態様において、中性の緩衝された塩類溶液又は血清アルブミンと混合された塩類溶液はさらに典型的な媒体である。ある実施態様において、医薬組成物は、pH約7.0ないし8.5のトリス緩衝液又はpH4.0ないし5.5の酢酸緩衝液を含み、さらにソルビトール又は前記医薬組成物のための適切な基質を含むことができる。ある実施態様において、IL−1raを含む組成物は、少なくとも1つのアクセサリー分子及び/又は1つ又はそれ以上の更なる治療剤を含み又は含まずして、前記選択された所望の純度を有する組成物をいずれかの最適な処方剤(前述のRemington‘s Pharmaceutical Sciences)と混合することによって、保存用に、凍結乾燥したケーキ又は水溶液の形態に調製できる。さらに、ある実施態様において、IL−1raを含む組成物は、少なくとも1つのアクセサリー分子及び/又は1つ又はそれ以上の更なる治療剤を含み又は含まずして、ショ糖などの適切な賦形剤を使用する凍結乾燥物として調合できる。
【0091】
ある実施態様において、本発明の医薬組成物は非経口送達用に選択できる。ある実施態様において、前記組成物は、吸入のために又は経口用などの消化管を通じての送達のために選択できる。このような医薬的に許容可能な組成物の調製は、本分野の技術内である。
【0092】
ある実施態様において、非経口投与が意図されるとき、治療用組成物は、医薬的に許容可能な媒中の、少なくとも1つのアクセサリー分子及び/又は1つ以上の更なる治療剤の入った若しくは入っていない、所望のIL−1raを含む、発熱物質を含まない、非経口的に許容可能な水溶液の形態にありうる。ある実施態様において、非経口的注射のための媒体は、IL−1raが、少なくとも1つのアクセサリー分子及び/又は1つ以上の更なる治療剤を含み又は含まずして、適切に保存される滅菌済みの等張性溶液として処方される滅菌蒸留水である。ある実施態様において前記調製物は、製剤の徐放性向けに提供でき徐放性製剤注射を介して送達できる注射可能な微粒子、生体内分解性粒子、(ポリ乳酸若しくはポリグリコール酸などの)ポリマー化合物、ビーズ又はリポソームなどの作用物を伴う前記望ましい分子の調合を包含できる。ある実施態様において、ヒアルロン酸も使用でき、循環において時間の持続を促進する効果を有しうる。ある実施態様において、埋め込み可能な薬物送達デバイスは前記望ましい分子を導入するのに使用できる。
【0093】
ある実施態様において、医薬組成物は吸入向けに処方できる。ある実施態様において、IL−1raは、少なくとも1つのアクセサリー分子及び/又は1つ以上の更なる治療剤を含み又は含まずして、吸入用の乾燥粉末として処方できる。ある実施態様において、IL−1raを含む吸入溶液は、少なくとも1つのアクセサリー分子及び/又は1つ以上の更なる治療剤を含みまたは含まずして、エアロゾル送達のための噴霧剤とともに調合できる。ある実施態様において、溶液は噴霧できる。肺への投与はさらに、化学的に修飾されるタンパク質の肺への送達を記載するPCT出願第PCT/US94/001875号に記載されている。
【0094】
ある実施態様において、調合物が経口的に投与でき得ることが意図される。ある実施態様において、前記のように投与されるIL−1raは、少なくとも1つのアクセサリー分子及び/又は1つ又はそれ以上の更なる治療剤を含み又は含まずして、錠剤及びカプセルなどの固体剤形の混合において通常使用される担体と共に又は担体なしで調合される。ある実施態様において、カプセルは、胃腸管中の、生物学的利用能が最大化され、前全身的分解が最小化される場所において、前記調合物の活性部分が放出されるように設計され得る。ある実施態様において、少なくとも1つの更なる作用剤を、IL−1ra及び/又はいずれかのアクセサリー分子及び/又はいずれかの更なる治療剤の吸収を容易にするために、含ませることができる。ある実施態様において、希釈剤、香料、低融点ワックス、植物油、潤滑剤、懸濁剤、錠剤崩壊剤及び結合剤がまた使用できる。
【0095】
ある実施態様において、医薬組成物は、少なくとも1つのアクセサリー分子及び/又は1つ以上の更なる治療剤を含み又は含まずして、錠剤の製造に適した無毒性賦形剤との混合物として、IL−1raの有効な量を含み得る。ある実施態様において、溶液は、錠剤を滅菌水又は別の適切な媒体中に溶解することによって、単位剤形に調製できる。ある実施態様において、適切な賦形剤は、以下に限定されないが、不活性希釈剤(炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム若しくは炭酸水素ナトリウム、ラクトース又はリン酸カルシウムなど)又は結合剤(澱粉、ゼラチン又はアカシアなど)又は潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又は滑石など)などを含む。
【0096】
IL−1raを含む調合物を含み、少なくとも1つのアクセサリー分子及び/又は1つ以上の更なる治療剤を含み又は含まない、徐放又は制御送達調合物である、更なる医薬組成物は、当業者に明らかである。ある実施態様において、リポソーム担体、生体内分解性微粒子又は多孔性ビーズ及び徐放性注射剤などの、他の多様な徐放または制御送達調合剤を調合技術が、また当業者に知られている。例えば、医薬組成物の送達のための多孔性ポリマー微粒子の調節された放出を記載するPCT出願第PCT/US93/00829号を参照。ある実施態様において、徐放性製剤は、成形された物品の形態、例えばフィルム又は微小カプセルの形態における、半透過性ポリマーマトリクスを包含できる。徐放性マトリクスは、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリ乳酸(例えば米国特許第3,773,919号及び欧州特許第058,481号を参照)、L−グルタミン酸及びγエチル−L−グルタミン酸の共重合体(Sidmanほか、Biopolymers, 22:547−556 (1983))、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリル酸)(Langerほか、J. Biomed. Mater. Res., 15:167−277 (1981)及びLanger, Chem. Tech., 12:98−105(1982))、エチレンビニルアセテート(Langerほか、前述)又はポリ−D(−)−3−ヒドロキシブチル酸(欧州特許第133,988号)を含み得る。ある実施態様において、徐放性組成物は、この分野で知られているいくつもの方法のいずれかによって調製できるリポソームを包み得る。例えばEppsteinほか、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:3688−3692 (1985)、欧州特許第036,676号、欧州特許第088,046号及び欧州特許第143,949号を参照。
【0097】
生体内投与のために使用される医薬組成物は典型的に滅菌済みである。ある実施態様において、この組成物は、滅菌用ろ過膜を通じてのろ過により達成できる。ある実施態様において、前記組成物が凍結乾燥されている場合、この方法を使用する滅菌は、凍結乾燥及び再構成の前若しくは後のいずれかに実施できる。ある実施態様において、非経口投与のための組成物は凍結乾燥された形態として又は溶液中に保存できる。ある実施態様において、非経口組成物は、一般に、無菌アクセスポートを有する容器に、例えば皮下注射針によって穿孔可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ若しくはバイアルに、入れられる。
【0098】
ある実施態様において、医薬組成物が調合された後、これは、溶液、懸濁液、ジェル、乳化剤、固体として又は脱水され若しくは凍結乾燥された粉末として、滅菌バイアル中に保存できる。ある実施態様において、このような調合物は、直ちに使用できる形態又は投与前に再構成される(例、凍結乾燥した)形態のいずれかとして、保存できる。
【0099】
ある実施態様において、キットは、単一投与量投与単位を調整するために提供される。ある実施態様において、前記キットは各々、乾燥したタンパク質を有する第一容器及び水性調合物を有する第二容器の両者を含有できる。ある実施態様において、単一及び複数のチャンバーのある予め充填されたシリンジ(例、液体シリンジ及び凍結シリンジ(lyosyringe))を含有するキットが含まれる。
【0100】
ある実施態様において、治療上採用される、少なくとも1つのアクセサリー分子及び/又は1つ又はそれ以上の更なる治療剤を含むまたは含まない、IL−1raを含む医薬組成物の有効量は、例えば治療内容及び目的に依存する。ある実施態様よれば、当業者は、治療のための適切な投与量レベルが、送達される分子により、IL−1raが少なくとも1つのアクセサリー分子及び/又は1つ又はそれ以上の更なる治療剤を含み又は含まずして使用される症状により、投与の経路により及び患者の大きさ(体重、体表面又は器官サイズ)及び/又は条件(年齢及び一般的な健康状態)により、部分的に変動するであろうことを認識する。ある実施態様において、臨床医は、投与量を調節でき、最適な治療効果を得るための投与の経路を修正できる。ある実施態様において、典型的な投与量は、前述の因子に依存して、約0.1μg/kgないし約100mg/kg以上の範囲でありうる。ある実施態様において、前記投与量は0.1μg/kgないし約100mg/kg、又は1μg/kgないし約100mg/kg、又は5μg/kgないし約100mg/kgの範囲でありうる。
【0101】
ある実施態様において投与の頻度は、使用される調合物におけるIL−1ra及び/又はいずれかのアクセサリー分子及び/又はいずれかの更なる治療剤の薬物動態パラメータが考慮される。ある実施態様において、臨床医は、前記組成物を、投与量が所望の効果に達するまで投与する。ある実施態様において、前記組成物は、それゆえ、単回投与として又は経時的な2回以上の投与(所望の分子の同一量を含有してもよいし含有しなくともよい。)として又は埋め込みデバイス若しくはカテーテルを介しての連続注入として、投与できる。適切な投与量の更なる改良は当業者により日常的になされ、当業者により日常的になされる課題の範囲内にある。ある実施態様において、適切な投与量は、適切な投与反応のデータの使用を通じて確定できる。
【0102】
ある実施態様において、前記医薬組成物の投与の経路は公知の方法に従っており、例えば、経口的に、静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋内、眼内、動脈内、門脈内、又は病巣内経路による注射を通じて、徐放系によって又は埋め込みデバイスによって、なされる。ある実施態様において、前記組成物は、大量瞬時投与によって若しくは注入により連続的に又は埋め込みデバイスによって、投与できる。
【0103】
ある実施態様において、前記組成物は、前記所望の分子が吸収又は封入されている膜、スポンジ又は別の適切な材料の埋め込みを介して、局所的に投与できる。ある実施態様において、埋め込みデバイスが使用される場合、前記デバイスはいずれかの適切な組織若しくは器官へと埋め込まれることができ、前記所望の分子の送達は、拡散、時限放出性大量瞬時投与又は連続投与を介してでありうる。
【0104】
ある実施態様において、IL−1raを含み、少なくとも1つのアクセサリー分子及び/又は1つ又はそれ以上の更なる治療剤を含み又は含まない医薬組成物を、エキソビボ様式で使用することが望まれうる。このような場合、患者から取り出された細胞、組織及び/又は器官を、IL−1raを含み、少なくとも1つのアクセサリー分子及び/又は1つ又はそれ以上の更なる治療剤を含み又は含まない医薬組成物に暴露し、その後続いて、前記細胞、組織及び/又は器官を前記患者へ埋め戻す。
【0105】
ある実施態様において、低下した凝集性を有するIL−1ra及び/又はいずれかのアクセサリー分子及び/又はいずれかの更なる治療剤は、ポリペプチドを発現させ及び分泌させるように、この分野で公知の方法を使用して遺伝子工学的に改変された特定の細胞を埋め込むことによって送達できる。ある実施態様において、このような細胞は、動物又はヒト細胞であり、自己起源の、異種起源の又は異種間のものでありうる。ある実施態様において、前記細胞は不死化できる。ある実施態様において、免疫学的反応の機会を低下させるため、細胞を封入して、周囲の組織の浸潤を回避することができる。ある実施態様において、前記封入材料は、典型的に、タンパク質製剤を放出させ得るようにする一方、患者の免疫系による又は取り囲んでいる組織からの他の有害な因子による細胞の破壊を防ぐことを可能にする生体適合性、半透過性のポリマー封入剤又は膜である。
【0106】
(実施例)
実施した実験及び達成した結果を含む以下の実施例は、説明目的のためにのみ提供され、本発明に制限を加えるものとして解決されるべきものではない。
【実施例1】
【0107】
IL−1ra野生型タンパク質の生成。
配列番号5の配列を有するヒト組み換え型インターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)は、細胞回収段階を行っても行わなくともよい、欧州特許第EP0,502,956 B1号において論議される方法に従って、Amgen製造施設において調製できる。あるいは、配列番号5のアミノ酸配列を有するアナキンラがAmgen、Thousand Oaks, CAから得られうる。配列番号5のアミノ酸配列を有する精製されたヒトIL−1raをここに記載の実施例において使用した。
【実施例2】
【0108】
IL−1ra凝集。
リン酸塩緩衝液中及びクエン酸塩緩衝液中における39℃でのIL−1ra凝集を以下のとおり決定した。IL−1raストック溶液(10mMクエン酸ナトリウム、140mMNaCl、0.5mMEDTA(pH6.5)(CSE)中の200ないし220mg/mlタンパク質)の10mlを4℃で一晩、10mMリン酸塩、140mMNaCl、0.5mMEDTA(pH6.5)(PSE)の2×2Lか又はCSEの2×2Lのいずれかに対して透析した。前記透析溶液を0.2μmフィルターを通じてろ過し、IL−1raタンパク質濃度を適切な緩衝液による希釈によって140mg/mlに調整した。
【0109】
各緩衝液中のIL−1raの凝集を、96穴ガラスプレート(Zissner)及び温度調節プレート読み取り分光光度計(SpectraMax Plus(Molecular Devices))を使用して測定した。ウェル1個あたりの試料サイズは180μlであった。前記プレートを前記分光光度計において39℃でインキュベートし、前記光学密度を405nmで1分ごとに測定した。図1は、本実験について、時間の関数としてプロットされた405nmにおける光学密度を示す。凝集の速度を、SoftMax Proプログラム(Molecular Devices)を使用して飽和曲線の初期直線領域の傾斜として決定した。CSE中でインキュベートされたIL−1raの凝集の速度は、PSE中でインキュベートされたIL−1raの凝集の速度と比較して低い。さらに、CSE中でインキュベートされたIL−1raの凝集の程度は、PSE中でインキュベートされたIL−1raの凝集の程度と比較して低い。
【実施例3】
【0110】
IL−1raのNBD−X標識。
表面に露出されたアミノ基を、NBD−X,SE(スクシニミジル6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4イル)アミノ)ヘキサン酸、Molecular Probes)を用いてIL−1raを標識することによって特定した。NBD−Xはアミノ基による誘導体化により蛍光性になる。PSE中の0.2mMIL−1raの20μlμlをPSEの480μlμlで希釈した。ジメチルホルムアミド中の50μg/μlμlNBD−X,SEの8μlを、室温で前記IL−1ra溶液へ2μlμlずつ増分して添加した。反応物を、室温で1時間インキュベートした後、1.5Mヒドロキシルアミン溶液(pH8.5)の50μlμlの添加によって停止させた。反応混合物をPSEで予め平衡化しておいた脱塩のためのゲルろ過カラムに通した。前記タンパク質ピークを、回収し、以下のようにRP−HPLC及びLC−MS/MSによりさらに分析した。
【0111】
逆相HPLCを、Phenomenex Jupiter(登録商標)5μC4カラム(300Å、250×4.6mm)及びオンライン吸光検出器及び蛍光検出器が装備されたHP1100HPLCシステムを使用して実施した。ポリペプチドの存在を検出するため、吸光度を215nmで測定した。アミンにより誘導体化されるNBD−Xの存在を検出するため、480nmでの励起後に蛍光発光を535nmで測定した。溶出を0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)及び水中のメタノールの直線的な30ないし45%の勾配(v/v/v)を使用して実施した。図2は、215nmでのNBD−Xにより標識されたIL−1raの吸光度及び本実験用の480nmでの励起後の535nmでのNBD−Xにより標識されたIL−1raの蛍光発光を示す。蛍光ピークの同定を以下のとおり決定した。
【0112】
2つの主要蛍光ピーク、すなわち、先に溶出する16.75分のピークおよび後に溶出する17.5分のピークを特定した。図2の下部パネルを参照。これらのピークを手動で回収し、以下のとおりLys−Cエンドプロテアーゼにより消化した。各ピークを5回の個別のHPLC実施から回収した。16.75ピークを主として含有する画分のすべてをプールした。17.5分ピークを主として含有する画分のすべてをプールした。前記2つのプールされた試料を次に、SpeedVac濃縮器を使用する遠心分離により乾燥させた。前記プールされた試料の各々を、10mMトリス、0.8M塩酸グイニジニウムを含有する消化緩衝液(pH8.0)490μlμlに溶解した。次に、50μlの消化緩衝液中に5μgのLys−Cプロテアーゼ(配列決定級、Roche Diagnostics)を溶解することによって調製されたLys−Cプロテアーゼ溶液の10μlを、プールされた各試料に添加した。前記試料を37℃で一晩消化した。消化後、生じたペプチドを、Beckman System Gold HPLCの装備されたFinnegan LCQ Decaを使用するLC−MS/MSへ、標準的な製造者プロトコールに従って供した。
【0113】
先に溶出するピーク(16.75分)について、消化により、276amuの加算された質量を有する、IL−1raのアミノ末端ペプチドに対応する、質量1107.8m/zの唯一のペプチドが生じた。このことは、NBD誘導体の存在を示唆する。このペプチドのMS/MS分析は、アミノ酸配列MRPSGRKに加えてメチオニン残基の276amuの追加の質量からなる断片を生じ、IL−1raのアミノ末端メチオニンがNBD−Xにより誘導体化されたことを示唆した。
【0114】
後に溶出するピーク(17.5分)の消化により、1145.9m/zの唯一のペプチドが得られ、NBD誘導体からなる残基72から96に対応するIL−1raペプチドを示唆した。前記ペプチドのMS/MS分析は、位置93でNBDにより誘導体化したリジンを有する残基72から96に対応するアミノ酸配列と一致する断片を生じた。
【0115】
前述の結果によれば、IL−1raの位置93におけるリジンは、この実験において使用された条件下でNBD−Xによる誘導体化が可能である。これらの結果は、位置93におけるリジンは、露出されていて、インタクトなIL−1raタンパク質において溶媒が近づき易い残基であることを、また示唆している。
【実施例4】
【0116】
リン酸塩、クエン酸塩又はピロリン酸塩の存在下でのIL−1raの凝集の速度。
IL−1raの凝集の速度を、いくつもの異なる緩衝液組成物中で決定した。IL−1raストック溶液(CSE中220mg/ml)の10mlを、Pierce Snakeskin透析チューブ(3.5kDaカットオフ)を使用して140mMNaClの2×4Lに対して4℃で透析した。透析したIL−1ra溶液の一定分量をクエン酸塩、リン酸塩又はピロリン酸塩のさまざまな濃度を、0.45Mクエン酸塩の、0.5Mリン酸塩の又は0.45Mピロリン酸塩のストック溶液(すべてpH6.5)及び140mMNaClの適切な量の添加によって調整し、各試料における140mg/mlのIL−1raの終濃度を得た。各試料中のクエン酸塩、リン酸塩又はピロリン酸塩の終濃度は1ないし125mMの範囲であった。
【0117】
各試料中におけるIL−1raの凝集を29℃で4時間、前述の実施例2に記載の1分間隔で405nmにおける光散乱を測定することによってモニターした。凝集の速度を、SoftMax Proプログラム(Molecular Devices)を使用して算出される飽和曲線の直線領域の傾斜として決定した。図3は、この実験において、IL−1raの凝集の速度がクエン酸塩、リン酸塩又はピロリン酸塩の濃度の上昇に伴い低下したことを示す。とりわけ、クエン酸塩若しくはピロリン酸塩の緩衝液中でのIL−1raの凝集の速度は、リン酸塩緩衝液中での凝集の速度よりも急速に低下した。
【0118】
リン酸塩上のイオン化可能な3つの水素の概算されるpKaは、pH6.5及び39℃で、2.148、7.198及び12.35である。クエン酸塩上のイオン化可能な3つの水素の概算されるpKaは、pH6.5及び39℃で、3.128、4.761及び6.396である。ピロリン酸塩上のイオン化可能な4つの水素の概算されるpKaは、pH6.5及び39℃で、0.83、2.26、6.72及び9.46である。例えばGoldbergほか、緩衝液のイオン化反応についての熱力学的定量、J. Phys. Chem. Ref. Data, 31(2): 231−370 (2002)を参照。したがって、前述で論議され前記文献により報告されるpKaに従って概算されるように、リン酸塩はpH6.5及び39℃で主として1個の負の電荷を有すると予測されるのに対し、クエン酸塩はpH6.5及び39℃で3個の負の電荷を有すると予測され、ピロリン酸塩はpH6.5及び39℃で2ないし3個の負の電荷を有すると予測される。
【0119】
このように、これらの結果は、多荷電陰イオンが特定のpHにおいて単一荷電陰イオンよりも効果的にIL−1raの凝集の速度を低下できることを示唆している。前記結果と一致して、単一荷電陰イオンであるNaClはリン酸塩と似たような凝集速度特性を有することがわかった(データは表していない。)。
【実施例5】
【0120】
ショ糖、グリセロール又はソルビトールの存在下でのIL−1raの凝集の速度。
IL−1raの凝集の速度をいくつもの異なる糖の存在下で決定した。IL−1raストック溶液(CSE中の220mg/ml)の10mlを、Pierce Snakeskin透析チューブ(3.5kDaカットオフ)を使用して140mMNaClの2×4Lに対して4℃で透析した。透析したIL−1ra溶液の一定分量をショ糖、グリセロール又はソルビトールのさまざまな%濃度へ、各試料中において140mg/mlのIL−1raの終濃度になるよう、25%ショ糖、25%グリセロール又は25%ソルビトールのストック溶液及び140mMNaClの適切な量を添加することによって調製した。各試料におけるショ糖、グリセロール又はソルビトールの終濃度は0%、1%、2%又は3%であった。凝集の速度を、実施例2に記載の方法を使用して39℃での各IL−1ra溶液の光学密度を測定することによって決定した。図4は本実験において、糖の上昇濃度はIL−1raの凝集の速度の低下をもたらすことを示している。0%糖において、本実験におけるIL−1raの凝集の速度は約22凝集単位(a.u.、1分間あたりの405nmにおけるミリ光学密度における上昇として測定される。)であった。3%ショ糖、グリセロール又はソルビトールにおいては、IL−1raの凝集の速度は0ないし5a.u.の範囲まで低下した。
【実施例6】
【0121】
IL−1raの尿素及び塩酸グアニジンにより誘導される折りたたみ開き(unfolding)。
IL−1raの平衡的な尿素により誘導される折りたたみ開きを以下のとおり実施した。遠紫外線円二色性研究のため、0.86mg/mlIL−1raの1ないし1.5ml試料及び尿素のさまざまな濃度(約0ないし10M)をホイルに包み、それらを光から保護し、室温で一晩(12時間超)インキュベートした。次に、各試料について230nmでの円二色性を23℃で決定した。図9は、本実験用に尿素のさまざまな濃度でインキュベートしたIL−1raについての230nmでの円二色性シグナルを示す。これらデータをプロットし、折りたたみ開き曲線を3状態モデル、すなわち元の状態⇔中間状態⇔折りたたみ開きされた状態、にあてはめた。このモデルにおいて、第一移行の傾斜であるm1、及び第一移行の中間点であるCm1を制約した。これらのパラメータは、遠紫外線CDが前記元の状態と前記中間状態の間を識別できないため、制約された。m1及びCm1について制約された値は、前記元の状態を前記中間状態から識別できるいくつかの蛍光測定値を平均することによって得た。図9に示されているように、IL−1raは本実験において約4ないし6M尿素において包括的な折りたたみ開きへの移行を経た。
【0122】
蛍光研究について、0.086mg/mlIL−1raの1ないし1.5mlの試料及び尿素のさまざまな濃度(約0ないし10M)をホイルに包み、これらを光から保護し、室温で一晩(12時間超)インキュベートした。図10は、尿素のさまざまな濃度においてインキュベートしたIL−1raの353nmでの固有蛍光度を示す。これらのデータをプロットし、折りたたみ開き曲線を前述に論議した前記3状態モデルにあてはめた。本実験においては制約を適用しなかった。図10に示されているように、前記蛍光実験は、0ないし約1.5M尿素での折りたたみ開きの移行の存在を示唆している。前記移行は遠紫外線CD実験においては観察されないため、前記移行は元の状態のような二次構造を有する中間状態の蓄積を反映しうる。前記中間状態は、構造へのより局所的な変化、例えば表面ループの脱安定化に関係し得、一方、IL−1raの疎水性中心は実質的に混乱していないままでありうる。
【0123】
平衡な塩酸グアニジン(GuHCl)により誘導される折りたたみ開きを以下のとおり実施した。遠紫外線円二色性研究のため、0.86mg/mlIL−1raの1ないし1.5ml試料及びGuHClのさまざまな濃度(約0ないし5M)をホイルに包み、これらを光から保護し、室温で一晩(12時間超)インキュベートした。次に、230nmでの円二色性を23℃で各試料について測定した。図11は、GuHClのさまざまな濃度においてインキュベートしたIL−1raについての230nmでの円二色性シグナルを示す。前記データをプロットし、前記折りたたみ開き曲線を3状態モデル、すなわち、元の状態⇔中間状態⇔折りたたみ開きされた状態にあてはめた。このモデルにおいて、m1、Cm1、前記元の状態の基線の傾斜である「ns」、及び前記中間状態の基線の傾斜である「is」を制約した。GuHClにより誘導される折りたたみ開きについてのm1及びCm1の制約された値を、尿素により誘導された折りたたみ開きについて前述したように実質的にして測定した。「ns」及び「is」は、0を超えると制約した。これらのパラメータは、遠紫外線CDが前記元の状態と前記中間状態の間を識別できないため、制約した。図11に示されるように、IL−1raは本実験において約1ないし2MGuHClでの包括的な折りたたみ開きへの移行を経た。
【0124】
蛍光研究について、0.086mg/mlIL−1raの1ないし1.5mlの試料及びGuHClのさまざまな濃度(約0ないし5M)をホイルに包み、これらを光から保護し、室温で一晩(12時間超)インキュベートした。図12は、尿素のさまざまな濃度においてインキュベートしたIL−1raの353nmでの固有蛍光度を示す。前記データをプロットし、折りたたみ開き曲線を前述に論議した前記3状態モデルにあてはめた。本実験においては制約を適用しなかった。図12は、GuHClのさまざまな濃度においてインキュベートしたIL−1raの353nmでの固有蛍光度を示す。前記データをプロットし、折りたたみ開き曲線を前述に論議した前記3状態モデルにあてはめた。本実験においては制約を適用しなかった。図12に示されるように、蛍光データは、約0ないし0.6MGuHClにおける折りたたみ開きの存在を示唆する。前記移行は遠紫外線CD実験において観察されないため、前記移行は元の状態のような二次構造を有する中間状態の蓄積を反映しうる。前記中間状態は、構造へのより局所的な変化に関係し得、及び/又は表面ループの脱安定化に関係し得る。一方、IL−1raの疎水性中心は実質的に混乱していないままでありうる。
【0125】
尿素により誘導された折りたたみ開きとGuHClにより誘導された折りたたみ開きとの差異は、IL−1raの固有蛍光度に及ぼす前記2つの変性剤の異なる効果から生じうる。
【0126】
さらに、各変性剤についての前記CDデータと前記蛍光データとの差異は、タンパク質の三次構造における局所的な変化を検出するトリプトファン固有の蛍光度の能力に起因し得、一方、CDはタンパク質の二次構造における変化を検出する。
【実施例7】
【0127】
リン酸メチルアセチル(MAP)によるIL−1raの誘導体化。
ある実施態様において、リン酸メチルアセチル(MAP)はポリペプチドのリジン残基及びN末端アミンをアセチル化する。MAPを、Klugerほか(1980)J. Org. Chem., 45: 2723において記載されるとおり調製した。生成物の同定をNMR及び質量分析により確認した。
【0128】
クエン酸塩若しくはリン酸塩の存在下にIL−1raをMAPにより次のとおり誘導体化した。クエン酸塩の存在下での誘導体化のために、MAP(水中の10mMストック)の20μl及びIL−1ra(CSE中10mMストック)の20μlを、HPLCバイアル中の10mMクエン酸塩(pH6.5)の160μlへ添加した。反応物を37℃でインキュベートし、HPLC自動サンプリング装置を使用して25μlの一定分量を0、45、90、135、180、225及び270分に採取した。Jupiter 5u C4 300A逆相HPLCカラム(4.6×250mm、Phenomenex、Torrance、CA)、オンライン紫外線検出器及び37℃に設定された温度調節100穴試料トレイが装備されたAgilent110HPLCを使用する逆相HPLCによって各一定分量を分析した。流速を1ml/分に設定し、前記カラムを50℃の温度に維持した。前記カラムを65%緩衝液A(0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液)及び35%緩衝液B(90%アセトニトリル、0.1%TFA水溶液)で15分間(流速1ml/分)予め平衡化した。負荷後、35%から50%緩衝液B(90%アセトニトリル水溶液、0.1%TFA水溶液)に25分かけて傾斜する勾配を使用して前記分析物を溶出した。
【0129】
リン酸塩の存在下での誘導体化のために、MAP(水中10mMストック)の20μl及びIL−1ra(CSE中10mMストック)の20μlを、HPLCバイアル中の10mMリン酸塩(pH6.5)の160μlへ添加した。反応物を37℃でインキュベートし、HPLC自動サンプリング装置を使用して25μlの一定分量を0、45、90、135、180、225及び270分に採取した。クエン酸塩の存在下における誘導体化についての前述と同様に、各一定分量を逆相HPLCにより分析した。
【0130】
クエン酸塩の存在下における誘導体化の結果を図13に示す。リン酸塩の存在下における誘導体化の結果を図14に示す。これら二つのHPLC特性によれば、本実験のMAPによる誘導体化により4つの新たな弱く分離されたIL−1raピークが現れる。
【0131】
IL−1raを10mMピロリン酸塩(pH6.4)の存在下においてまたMAPにより誘導体化した。MAP(水中10mMストック)の20μl及びIL−1ra(CSE中10mMストック)の20μlを、HPLCバイアルにある10mMピロリン酸塩(pH6.4)の160μlへ添加した。前記反応物を37℃でインキュベートし、HPLC自動サンプリング装置を使用して25μlの一定分量を0、45、90、135、180、225及び270分に採取した。クエン酸塩の存在下における誘導体化について前述したようにして、各一定分量を逆相HPLCにより分析した。図15は、クエン酸塩の存在下における、リン酸塩の存在下における、及びピロリン酸塩の存在下における4.5時間(270分間)のMAPによるIL−1raの誘導体化の逆相HPLCの結果の重ね合わせを示す。4つの弱く分離されたピークを本実験で同定し、図15に示す。
【0132】
図15に示す、クエン酸塩の存在下での誘導体化についての270分時点からのピークの各々を以下のとおり、各々の同一性を決定するためにさらに分析した。4つの主要ピークを前述に論議されたHPLC運転から回収した。試料は、5ないし10μlの最終容積へとSpeedVacで濃縮した。次に、消化緩衝液(50mMトリス、0.8M塩酸グアニジン、pH8.0)の90μlを各試料へ添加した後、エンドプロテアーゼlys−C(10μl消化緩衝液中1μg)の10μlを添加した。各試料を37℃で16時間インキュベートした。生じたぺプチドを、Finneganイオントラップを使用するオンラインMS検出器が装備されたAgilent110HPLCを使用するLC−MS/MSにより分析した。使用したHPLCカラムは、Jupiter 5u C18 100A逆相HPLCカラム(2×150mm、Phenomenex、Torrance、CA)であった。流速を1分間あたり0.2mlに設定し、前記カラムを50℃の温度に維持した。前記カラムを98%緩衝液A(0.1%TFA水溶液)及び2%緩衝液B(90%アセトニトリル、0.1%TFA水溶液)を使用して22分間予め平衡化した。負荷後、2%から45%緩衝液Bに50分かけて傾斜する勾配を使用して、前記HPLCカラムから前記分析物を溶出した。前記HPLCカラムからの溶出物の10%をMS分析へ供した。ペプチド上の追加のアセチル基の存在により、修飾されていないペプチドのMS特性と比べて、42m/zの上昇をもたらした。修飾された検出されたペプチド及び特定のアミノ酸残基の特定をMS/MSにより確かめた。
【0133】
ピーク1のIL−1raポリペプチドは、そのN末端アミンにおいてのみ誘導体化されたようである。ピーク2のIL−1raポリペプチドは、そのN末端アミン及びリジン−6において誘導体化されたようである。ピーク3のIL−1raポリペプチドは、そのN末端アミン、リジン−6及びリジン−93において誘導体化されたようである。最後に、ピーク4のIL−1raポリペプチドは、そのN末端アミン、リジン−6、リジン−93、及びリジン−96において誘導体化されたようである。
【0134】
前記N末端アミン以外のすべての位置における誘導体化のレベルは、クエン酸塩若しくはピロリン酸塩の存在下においてよりもリン酸塩の存在下において大きいようである。これらの結果は、クエン酸塩及び/又はピロリン酸塩が、リン酸塩よりも良好に、IL−1raにおいて正に荷電したリジン基をMAPによる誘導体化から保護できることを示唆している。これらの結果は、クエン酸塩及び/又はピロリン酸塩がリン酸塩よりも強い親和性を、正に荷電したリジン残基に対して有していることを示唆していよう。
【0135】
MAPによるIL−1raの誘導体化の速度を、クエン酸塩の存在下におけるIL−1raの誘導体化について図13に示されている(及び図16Aに再生される)データを使用して決定した。特に、図16Aからの各クロマトグラムを、PeakFit(登録商標)(Systat Software)を使用して逆重畳化(deconvolute)した。次に、各時点(0、45、90、135,180、225及び270分)における逆重畳化したピーク(ピーク1から4)の各々の下の面積を積分した。ある時点についての典型的な逆重畳化した特性を図16Bに示す。逆重畳化したピーク1ないし4に図16Bに名付けて示し、それぞれの積分された下の面積をその下に示す。ピーク1は160.28590の積分面積を有した。ピーク2は190.41964の積分面積を有した。ピーク3は181.76548の積分面積を有した。ピーク4は178.18844の積分面積を有した。次に、時点0、45、90、135、180分における逆重畳化したピーク4の積分面積を、前記ピークを生じる反応のインキュベーション時間に対してプロットした。前記プロットを図16Cに示す。生じた線は68.931/時の傾斜を有する。
【0136】
次に、MAPによるIL−1raの誘導体化の速度を、さまざまな緩衝液の存在下で及びさまざまなpHでの前述で論議される方法に従ったさまざまな実験について算出した。次に、前記さまざまな速度を図17に示す棒グラフにプロットした。具体的には、MAPによるIL−1raの誘導体化の速度を、10mMリン酸塩(pH6.3)、10mMクエン酸塩(pH6.3)、10mMピロリン酸塩(pH6.3)、10mMリン酸塩(pH6.5)、20mMリン酸塩(pH6.5)、10mMクエン酸塩(pH6.5)、20mMクエン酸塩(pH6.5)、10mMピロリン酸塩(pH6.5)、20mMピロリン酸塩(pH6.5)、10mMリン酸塩(pH6.7)、10mMクエン酸塩(pH6.7)、及び10mMピロリン酸塩(pH6.7)の存在下で決定した。
【0137】
各pHにおいて、MAPによるIL−1raの誘導体化の速度は、リン酸塩緩衝液におけるよりもクエン酸塩緩衝液若しくはピロリン酸塩緩衝液において低かった。図17を参照してほしい。さらに、20mMのクエン酸塩若しくはピロリン酸塩の存在下における誘導体化の速度は、10mMのクエン酸塩もしくはピロリン酸塩の存在下における誘導体化の速度よりも低かった。これらの結果は、クエン酸塩及び/又はピロリン酸塩がリン酸塩よりも効果的にIL−1raのリジン残基をMAPによる誘導体化から保護できることを示唆する。このように、MAPによるIL−1raの誘導体化の速度は、リン酸塩緩衝液の存在下においてよりもクエン酸塩緩衝液若しくはピロリン酸塩緩衝液の存在下において低い。
【0138】
最後に、IL−1raをMAPにより、pH6.3、pH6.5又はpH6.7における10mMクエン酸塩の存在下において、又はpH6.3、pH6.5又はpH6.7における10mMリン酸塩の存在下において、5.5時間、前述に論議された方法に従って誘導体化した。図18は、前記緩衝液の各々の存在下における5.5時間のMAPによるIL−1ra誘導体化の逆相HPLCの結果の重ね合わせを示す。前記図は、IL−1raが、検査されたpHレベルすべてにおいて、クエン酸塩の存在下においてよりもリン酸塩の存在下においてより大きな程度まで誘導体化されることを示す。これらの結果は、クエン酸塩が、IL−1raのリジン残基をMAPによる誘導体化から、リン酸塩よりも効果的に保護できることを示唆する。
【0139】
図18に示されるデータは、pHが上昇するにつれIL−1raがより大きな程度まで誘導体化されることも示唆する。
【実施例8】
【0140】
リン酸塩のさまざまな濃度の存在下でのIL−1raの凝集。
IL−1raストック(CSE中220mg/ml)の10mlを10mMリン酸塩、100mM NaCl、pH6.5の総量8L(2Lずつの3回の緩衝液交換による2L)に対して4℃で48時間透析した。IL−1ra濃度を、10mMリン酸塩、100mMNaCl(pH6.5)で167mg/mlに調整した。リン酸塩の1Mストックを、リン酸ナトリウムの適切な量を10mMリン酸塩(pH6.5)、100mMNaClに溶解することによって調製した。リン酸塩の20mM、60mM、110mM、210mM、310mM、410mM、510mM、610mM、710mM、810mM、910mM、及び1M作業ストック溶液(pH6.5)を1Mストックから、10mMリン酸塩(pH6.5)、100mMNaClで希釈することによって調製した。
【0141】
リン酸塩のさまざまな濃度におけるIL−1raの凝集を、96穴ガラスプレート(Zissner)及び温度調節プレート読み取り分光光度計(SpectraMax Plus(Molecular Devices))を使用して測定した。167mg/mlのIL−1raストック溶液の180μlを各ウェルへ添加した。リン酸塩作業ストック溶液の20μlを次に各ウェルへ添加した(1個のウェルにつき1作業ストック)。前記ウェルにおけるリン酸塩の終濃度は、0mM、2mM、6mM、11mM、21mM、31mM、41mM、51mM、61mM、71mM、81mM、91mM、100mMであった。前記プレートを前記分光光度計において39℃でインキュベートし、光学密度を405nmで1分ごとに測定した。図19は、本実験についてのリン酸塩の各濃度に対する時間の関数としてプロットされた405nmにおける光学密度を示す。図19におけるデータは、IL−1raの凝集の程度がリン酸塩の濃度上昇に伴い低下することを示唆する。
【実施例9】
【0142】
IL−1raに対するクエン酸塩結合の測定。
クエン酸塩イオン結合部位の数及びIL−1raに対するクエン酸塩結合のKを以下のように決定した。1mMIL−1raの1mlの溶液を、クエン酸塩のさまざまな濃度を有する緩衝液(pH6.5)中に、適切な緩衝液中にIL−1raストック(CSE中220mg/ml)を希釈することによって調製した。具体的には、5mM、10mM及び20mMクエン酸塩のそれぞれ中にIL−1raの1mM溶液(pH6.5)の1mlを調製した。各溶液は70mMNaClも含有した。各溶液の400μlをMicrosep(登録商標)−10スピンカラム(Pall社、1カラムにつき1溶液)に入れた。前記カラムを18℃で35分間、4000×gで回転させた。回転後、前記クエン酸塩のいくらかに結合したIL−1raは残物中に残り、一方、結合していないクエン酸を含有する緩衝液のいくらかはフィルターをろ液として通過する。回転後、前記溶液の約半分は前記フィルターをろ液として通過した。
【0143】
前記残物及びろ液の各々におけるクエン酸塩の量を以下のとおり決定した。ろ液若しくは残物の20μlを逆相HPLCカラム(Supelcosil(登録商標)LC−18カラム、15cm×4.6mm、Sigma−Aldrich、カタログ番号58985)へ負荷した。前記流速は1分間あたり1mlであり、0.1Mリン酸を実施用緩衝液として使用した(均一濃度の溶出)。前記溶出を室温で実施した。前記カラムから溶出したクエン酸の量を215nmで測定した。次に、アッセイされる試料(前記残物若しくはろ液)中のクエン酸塩濃度を前記測定結果から算出した(前記系を0ないし10mMクエン酸塩溶液標準(pH6.5)を使用して較正した)。
【0144】
図20は、IL−1raに結合したクエン酸塩の濃度(残物中のクエン酸塩の濃度からろ液中のクエン酸塩の濃度を差し引いたものとして決定される。)対溶液中の総クエン酸塩濃度のプロットを示す。結合したクエン酸塩の最大濃度Bmaxを前記データから外挿して、1.8218mMとした。IL−1raへのクエン酸塩結合についてのKを決定するために、図20からのデータを使用してスキャッチャードプロットを作成した。前記Kは前記実験から3.846mMと算出した(データを示していない)。さらに、IL−1ra上へのクエン酸塩の結合部位の数を、スキャッチャードプロットに関するx切片から決定した。結合部位の数はこの実験について0.94であった(データは示していない)。これらのデータはIL−1raにおいて1個のクエン酸塩結合部位があることを示唆している。
【実施例10】
【0145】
IL−1ra陰イオン結合部位に対する競合。
ピロリン酸塩によるIL−1ra上のクエン酸塩結合部位に対する競合を以下のとおり決定した。1mMIL−1ra、10mMクエン酸塩(pH6.5)、70mMNaCl及びピロリン酸塩の検査濃度を含有する溶液の400μlをMicrosep(登録商標)−10スピンカラム(Pall社)に入れ、18℃で35分間、4000×gで回転させた。検査したピロリン酸塩の濃度は、0mM、5mM、10mM及び20mMであった。回転後、前記溶液の約半分がろ液として通過した一方、残りの溶液は残物としてフィルター上に残った。前記クエン酸塩及び/又はピロリン酸塩のいくらかへ結合したIL−1raは残物中に留まるのに対し、結合していないクエン酸塩及びピロリン酸塩を含有する緩衝液のいくらかはフィルターをろ液として通過する。残物及びろ液の両者中のクエン酸塩濃度を、実施例9において論議したようにして決定した。リン酸塩によるIL−1ra上の前記クエン酸塩結合部位に対する競合を、ピロリン酸塩について前述したように決定した。
【0146】
図21は、[IL−1raによって結合したクエン酸塩の濃度]対[前記溶液中のクエン酸塩の総濃度に対する競合する陰イオン(ピロリン酸塩又はリン酸塩)の総濃度の比]のプロットを示す。前記データは、ピロリン酸塩が、リン酸塩よりも、IL−1ra上のクエン酸塩結合部位に対するクエン酸塩による競合において、より効果的であることを示唆する。ピロリン酸塩及びリン酸塩の両者がIL−1ra結合部位について競合できるようであり(すなわち、前記部位はクエン酸塩に特異的ではない)、我々はIL−1ra部位上のクエン酸塩結合を陰イオン結合部位と呼ぶ。
【0147】
図21に示されたデータから、IL−1ra上の陰イオン結合部位へのピロリン酸塩結合についてのKを以下の計算を使用して決定した。例えば、Stinson及びHolbrook、Biochem. J. (1973) 131: 719−728を参照してほしい。クエン酸塩結合とピロリン酸塩の結合との間の競合は2つの別個の式として表せる。
【0148】
【化1】

式中、Pはタンパク質であり、この場合はIL−1raであり、Lはリガンドであり、この場合はクエン酸塩であり、Xは競合する陰イオンであり、この場合はピロリン酸塩である。Kはタンパク質へのリガンド結合についてのKであり、P(遊離タンパク質)の濃度×L(遊離リガンド)の濃度/PL(リガンドに結合したタンパク質)の濃度に等しい。Kはタンパク質への競合する陰イオン結合についてのKであり、P(遊離タンパク質)の濃度×X(競合する遊離陰イオン)の濃度/PX(競合する陰イオンに結合したタンパク質)の濃度に等しい。
【0149】
クエン酸塩の見かけの若しくは観察されたK(Kapp)は次のように表せる。
【0150】
【数1】

式中、Lfreeは遊離リガンド(クエン酸塩)の濃度であり、Pfreeは遊離タンパク質(IL−1ra)の濃度であり、PXは競合する陰イオン(ピロリン酸塩)に結合したタンパク質の濃度であり、及びPLはリガンドに結合したタンパク質の濃度である。前記項(PX)を前述の平衡式から得られる(Xfree)(Pfree)/Kと置換することによって、Kappについての式は以下の式に簡単にできる。
【0151】
【数2】

【0152】
したがって、KappをXfreeに対してプロットすると、y切片はKに等しく、傾斜はK/Kに等しいことになる。再整理すると、Kは前記傾斜によって除されたy切片に等しい。
【0153】
クエン酸塩結合についてのKappは、競合している陰イオンの各濃度において、[遊離タンパク質(IL−1ra)の濃度×遊離リガンド(クエン酸塩)の濃度/結合したリガンド(IL−1raへ結合したクエン酸塩)の濃度]として算出される。遊離タンパク質の濃度は、試料中のタンパク質の総濃度から結合したタンパク質の濃度(結合したリガンドの濃度に等しい。)を減じたものであると算出される。競合している遊離陰イオンの濃度であるXfreeは、競合している陰イオンの総濃度が上昇するとき(つまり、クエン酸塩が競合している陰イオンによって前記IL−1ra陰イオン結合部位において置換されるとき)、競合している陰イオンの総濃度から結合したリガンド(IL−1raへ結合したクエン酸塩)の濃度の変化を減じたものに等しい。言い換えれば、Xtotalが増大するとき、
free=Xtotal−ΔXboundである。
【0154】
図22は、図20からのデータ及び前述で論議した計算式を使用して算出された、クエン酸塩についてのKapp対遊離ピロリン酸塩の量のプロットを示す。ピロリン酸塩についてのKを、本実験において2.994mMと算出した。前述のように、y切片は、クエン酸塩のKであるKに等しくあるべきである。本実験において、前記Kは3.894mMであり、実施例9において論議されたIL−1raに対するクエン酸塩結合についてのKの先行実験結果である3.846mMと十分に合致する。
【0155】
同様のプロット(データは示していない)を、図21において示されたリン酸塩のデータについて作成した。この実験において、リン酸塩についてのKを、12.641mMであると算出した。本実験についてのプロットのy切片から決定されたクエン酸塩についてのK(データは示していない)は4.996mMであった。
【0156】
これらのデータは、クエン酸塩及びピロリン酸塩がIL−1raの陰イオン結合部位についてより低いKを有することを示唆する。さらに、ピロリン酸塩は、陰イオン結合部位に対して、クエン酸塩よりもわずかに低いKを有しうる。本実験で見られるより低いKは、実施例2及び4に示されるように、IL−1raの凝集を低下させるピロリン酸塩及びクエン酸塩のより大きな能力と相関している。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】図1は、実施例2で論議された、PSE(10mMリン酸塩(pH6.5)、140mMNaCl、0.5mMEDTA)若しくはCSE(10mMクエン酸塩(pH6.5)、140mMNaCl、0.5mMEDTA)のいずれかにおけるIL−1ra野生型タンパク質の経時的な凝集特性を示す。
【図2】図2は、実施例3において論議された、NBD−Xにより誘導体化されたIL−1ra野生型タンパク質の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)を示す。上部パネルは、215nmでのNBD−Xにより標識されたIL−1raの吸光度を示す。下部パネルは、480nmでの励起後の535nmでの蛍光発光を示す。
【図3】図3は、実施例4で論議された、リン酸塩、ピロリン酸塩及びクエン酸塩陰イオンの濃度上昇の存在下におけるIL−1ra野生型タンパク質についての凝集速度を示す。
【図4】図4は、実施例5で論議された、グリセロール、ソルビトール又はショ糖の上昇濃度の存在下におけるIL−1ra野生型タンパク質についての凝集速度を示す。
【図5】図5は、分泌性リーダー配列を含む前駆体ヒトIL−1raのヌクレオチド配列(配列番号1)及びアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
【図6】図6は、前記分泌性リーダー配列を欠失するヒトIL−1raのアミノ酸配列を含む(配列番号3)。点(・)は、位置93でのリジンを示す。プラス(+)は、位置97でのアルギニンを示す。トリプトファン−16(△)及びチロシン−34(○)の位置も示されている。
【図7】図7は、IL−1raの典型的なX線結晶構造を示す。
【図8】図8は、図1について記載されるX線結晶構造における非対称性IL−1ra二量体の2つのサブユニット間の界面の一部を示す。
【図9】図9は、実施例6において論議された円二色性により検出されるIL−1raの尿素により誘導される平衡折りたたみ開きを示す。
【図10】図10は、実施例6において論議された固有蛍光により検出されるIL−1raの尿素により誘導される平衡折りたたみ開きを示す。
【図11】図11は、実施例6において論議された円二色性によるIL−1raの塩酸グアニジンにより誘導される折りたたみ開きを示す。
【図12】図12は、実施例6において論議された固有蛍光によるIL−1raの塩酸グアニジンにより誘導される折りたたみ開きを示す。
【図13】図13は、実施例7において論議された、10mMクエン酸塩(pH6.5)の存在下でリン酸メチルアセチル(MAP)により親和標識されたIL−1raの逆相HPLCを示す。
【図14】図14は、実施例7において論議された、10mMリン酸塩(pH6.5)の存在下でのリン酸メチルアセチル(MAP)により親和標識されたIL−1raの逆相HPLCを示す。
【図15】図15は、実施例7において論議された、10mMクエン酸塩(pH6.5)、10mMリン酸塩(pH6.5)、又は10mMピロリン酸塩(pH6.4)の存在下で4.5時間(270分間)リン酸メチルアセチルにより親和標識されたIL−1raの逆相HPLC特性の重ね合わせを示す。4つの弱く分離されたピークが1、2、3及び4として名付けて示される。
【図16】図16は、実施例7において論議された、10mMクエン酸塩(pH6.5)の存在下でリン酸メチルアセチルによるIL−1raの誘導体化の速度を示す。図16Aは、図13からのクロマトグラムの再生を示す。図16Bは、図16Aからの各クロマトグラムの解析結果を示す。図16Cは、図16Bから解析された各ピークの積分の対時間プロットを示す。
【図17】図17は、実施例7において論議された、さまざまなpHでのさまざまな緩衝液の存在下におけるIL−1raのMAPによる誘導体化の速度の比較を示す。
【図18】図18は、実施例7において論議された、さまざまなpHレベルでの10mMクエン酸塩若しくは10mMリン酸塩の存在下でリン酸メチルアセチルにより親和標識されるIL−1raの5.5時間の逆相HPLC特性の重ね合わせを示す。
【図19】図19は、実施例8において論議された、100mM NaCl、pH6.5を有する緩衝液中でのリン酸塩のさまざまな濃度におけるIL−1ra野生型タンパク質の経時的凝集特性を示す。
【図20】図20は、実施例9において論議された、クエン酸塩濃度上昇の関数としてのIL−1raへのクエン酸塩の結合を示す。
【図21】図21は、実施例10において論議された、ピロリン酸塩若しくはリン酸塩の濃度上昇によるIL−1raへのクエン酸塩の結合に対する競合を示す。
【図22】図22は、実施例10において論議された、溶液中におけるピロリン酸塩濃度の関数としてのIL−1raへのクエン酸塩の結合についてのKappのプロットを示す。IL−1raの陰イオン結合部位へのピロリン酸塩の結合についてのKは2.994mMであると算出された。
【図23】図23は、典型的なIL−1raのヌクレオチド配列(配列番号4)及びアミノ酸配列(配列番号5)を示す。
【図24】図24は、icIL−1raと呼ばれる典型的なIL−1raのアミノ酸配列(配列番号6)を示す。配列番号6は、配列番号3と同一の配列を有するが、前記N末端にさらに7個のアミノ酸を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)を前記IL−1raの凝集を低下させるために又は前記IL−1raの凝集の速度を低下させるために十分な濃度の少なくとも1つのアクセサリー分子とインキュベートすることを含み、前記少なくとも1つのアクセサリー分子の少なくとも1つが糖及び多荷電陰イオンから選択される、凝集性インターロイキン−1受容体アンタゴニストの凝集を低下させる方法。
【請求項2】
少なくとも1つのアクセサリー分子が多荷電陰イオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多荷電陰イオンが1ないし20mMのピロリン酸塩である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記多荷電陰イオンが1ないし20mMのクエン酸塩である、請求項に記載2の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのアクセサリー分子が糖である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記糖がグリセロール、ソルビトール又はショ糖である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記糖が1ないし3%の濃度にある、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つのアクセサリー分子がリジン反応性アクセサリー分子及びアルギニン反応性アクセサリー分子から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのアクセサリー分子が6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)ヘキサン酸(NBD−X)、リン酸メチルアセチル(MAP)及びシトラコン酸無水物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
凝集性インターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)を前記IL−1raの凝集を低下させるために又は前記IL−1raの凝集の速度を低下させために十分な濃度の少なくとも1つのアクセサリー分子とインキュベートすることを含み、前記少なくとも1つのアクセサリー分子の少なくとも1つが糖及び多荷電陰イオンから選択され、凝集が低下される、インターロイキン−1受容体アンタゴニスト薬剤調合物を調製する方法。
【請求項11】
少なくとも1つのアクセサリー分子が多荷電陰イオンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記多荷電陰イオンが1ないし20mMのピロリン酸塩である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記多荷電陰イオンが1ないし20mMのクエン酸塩である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つのアクセサリー分子が糖である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記糖がグリセロール、ソルビトール又はショ糖である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記糖が1ないし3%の濃度にある、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つのアクセサリー分子がリジン反応性アクセサリー分子及びアルギニン反応性アクセサリー分子から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つのアクセサリー分子が6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)ヘキサン酸(NBD−X)、リン酸メチルアセチル(MAP)及びシトラコン酸無水物から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
(i)凝集性インターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)の治療的有効量とおよび(ii)前記IL−1raの凝集を低下させるために又は前記IL−1raの凝集の速度を低下させるために十分な濃度の少なくともの1つアクセサリー分子とを含む組成物を患者へ投与することを含み、前記少なくともの1つアクセサリー分子の少なくとも1つが糖及び多荷電陰イオンから選択される、患者を治療する方法。
【請求項20】
少なくとも1つのアクセサリー分子が多荷電陰イオンである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記多荷電陰イオンが1ないし20mMのピロリン酸塩である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記多荷電陰イオンが1ないし20mMのクエン酸塩である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1つのアクセサリー分子が糖である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記糖がグリセロール、ソルビトール又はショ糖である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記糖が1ないし3%の濃度にある、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つのアクセサリー分子がリジン反応性アクセサリー分子及びアルギニン反応性アクセサリー分子から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1つのアクセサリー分子が6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)ヘキサン酸(NBD−X)、リン酸メチルアセチル(MAP)及びシトラコン酸無水物から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
(i)凝集性インターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)の治療的有効量とおよび(ii)前記IL−1raの凝集を低下させるために又は前記IL−1raの凝集の速度を低下させるために十分な濃度の少なくともの1つアクセサリー分子とを含む組成物を関節リウマチを有する患者へ投与することを含み、前記少なくともの1つアクセサリー分子の少なくとも1つが糖及び多荷電陰イオンから選択される、関節リウマチを有する患者を治療する方法。
【請求項29】
少なくとも1つのアクセサリー分子が多荷電陰イオンである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記多荷電陰イオンが1ないし20mMのピロリン酸塩である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記多荷電陰イオンが1ないし20mMのクエン酸塩である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1つのアクセサリー分子が糖である、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記糖がグリセロール、ソルビトール又はショ糖である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記糖が1ないし3%の濃度にある、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
少なくとも1つのアクセサリー分子がリジン反応性アクセサリー分子及びアルギニン反応性アクセサリー分子から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
少なくとも1つのアクセサリー分子が6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)ヘキサン酸(NBD−X)、リン酸メチルアセチル(MAP)及びシトラコン酸無水物から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項37】
(i)凝集性インターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)の治療的有効量とおよび(ii)前記IL−1raの凝集を低下させるために又は前記IL−1raの凝集の速度を低下させるために十分な濃度の少なくともの1つアクセサリー分子とを含む組成物を変形性関節症を有する患者へ投与することを含み、前記少なくともの1つアクセサリー分子の少なくとも1つが糖及び多荷電陰イオンから選択される、変形性関節症+を有する患者を治療する方法。
【請求項38】
少なくとも1つのアクセサリー分子が多荷電陰イオンである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記多荷電陰イオンが1ないし20mMのピロリン酸塩である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記多荷電陰イオンが1ないし20mMのクエン酸塩である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
少なくとも1つのアクセサリー分子が糖である、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記糖がグリセロール、ソルビトール又はショ糖である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記糖が1ないし3%の濃度にある、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
少なくとも1つのアクセサリー分子がリジン反応性アクセサリー分子及びアルギニン反応性アクセサリー分子から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項45】
少なくとも1つのアクセサリー分子が6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)ヘキサン酸(NBD−X)、リン酸メチルアセチル(MAP)及びシトラコン酸無水物から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項46】
凝集性インターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)と、前記IL−1raの凝集を低下させるために又は前記IL−1raの凝集の速度を低下させために十分な濃度の少なくとも1つのアクセサリー分子とを含み、前記少なくとも1つのアクセサリー分子の少なくとも1つが糖及び多荷電陰イオンから選択され、凝集が低下される、医薬組成物。
【請求項47】
少なくとも1つのアクセサリー分子が多荷電陰イオンである、請求項46の医薬組成物。
【請求項48】
前記多荷電陰イオンが1ないし20mMのピロリン酸塩である、請求項47の医薬組成物。
【請求項49】
前記多荷電陰イオンが1ないし20mMのクエン酸塩である、請求項47の医薬組成物。
【請求項50】
少なくとも1つのアクセサリー分子が糖である、請求項46の医薬組成物。
【請求項51】
前記糖がグリセロール、ソルビトール又はショ糖である、請求項50の医薬組成物。
【請求項52】
前記糖が1ないし3%の濃度にある、請求項50の医薬組成物。
【請求項53】
少なくとも1つのアクセサリー分子がリジン反応性アクセサリー分子及びアルギニン反応性アクセサリー分子から選択される、請求項46の医薬組成物。
【請求項54】
少なくとも1つのアクセサリー分子が6−(N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ)ヘキサン酸(NBD−X)、リン酸メチルアセチル(MAP)及びシトラコン酸無水物から選択される、請求項46の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2007−531738(P2007−531738A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506351(P2007−506351)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/011332
【国際公開番号】WO2005/097195
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(500049716)アムジエン・インコーポレーテツド (242)
【Fターム(参考)】